(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】低収率供給原料からカーボンブラックを製造する方法、及びそれから製造された製品
(51)【国際特許分類】
C09C 1/50 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C09C1/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519307
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022045225
(87)【国際公開番号】W WO2023055931
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディー.メーザー
(72)【発明者】
【氏名】タイス エフ.クラーク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス イー.マッケルウェイン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エス.クロッカー
(72)【発明者】
【氏名】アクシャイ ゴパン
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック エイチ.ルンプフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エム.ポーティアス
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037BB15
4J037BB36
4J037DD07
4J037DD17
(57)【要約】
低収率カーボンブラック供給原料からカーボンブラックを製造する方法が記載される。これらのカーボンブラック供給原料から製造されるカーボンブラックが更に記載される。本方法によって達成される利点が更に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
【請求項2】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、エチレン若しくは天然ガス又は両方であり、前記全供給原料に基づいて30重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~70重量%の量で存在する、方法。
【請求項3】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、バイオ系供給原料であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
【請求項4】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を含むブレンドを前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
【請求項5】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、以下:
a)前記Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)95未満である、又は、
b)室温及び室圧で前記気体である、又は
c)前記原子H:C比1.3超である、又は
d)前記比重≦1.0である、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、1.02未満の前記比重を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオ系供給原料が、以下:植物油若しくは他の植物由来の油、バイオ由来のエタノール、植物若しくは動物性のワックス若しくは樹脂、動物性脂肪から得られる油、藻類油、下水汚泥若しくは農業廃棄物の熱分解から得られる油、生物起源材料の処理からの副生成物液体、生体材料の水熱液化によって生成される液体、粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ若しくはトール油脂肪酸、リサイクル材料から得られる油、低品質タイヤ、不合格タイヤ若しくは寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、廃棄若しくはリサイクルされたプラスチック若しくはゴム製品の熱分解から得られる油、都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、若しくはバイオマスの熱分解から得られる油、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも第1のカーボンブラック供給原料が、デカント油、スラリー油、コールタール、コールタール誘導体、エチレンクラッカー残渣、又はフェノールクラッカー残渣のうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のカーボンブラック供給原料が、タイヤ熱分解油の蒸留から得られる留分を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記方法において投入される全供給原料の25~90重量%の範囲である、請求項1又は3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記ファーネスカーボンブラック反応器の燃焼チャンバに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記燃焼チャンバが、ある直径を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料が注入される位置から下流の前記燃焼チャンバ直径の少なくとも2倍の距離で注入される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートの後に注入される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、前記燃焼チャンバの下流かつ前記急冷ゾーンの前に第2のスロートを備え、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第2のスロートに注入される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が注入される位置から上流の少なくとも1つの位置、及び前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料の位置の下流の少なくとも1つの別個の位置において、前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の低収率供給原料が注入される位置の前に導入される、前記第1のカーボンブラック供給原料の量が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総量の50%を超える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、少なくとも2つの別個の位置で前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入され、前記別個の位置の一方は他方の下流にある、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の高収率カーボンブラック供給原料を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、100未満の前記BMCIを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、1.23超の前記原子H:C比を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、室温及び室圧で前記気体である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
回収された前記カーボンブラックが、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、又はN990グレードのカーボンブラックである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの場合ガス状及び/又は低収率供給原料を含むことができる、代替カーボンブラック製造供給原料から製造される、カーボンブラックを製造する方法に関する。本発明は更に、ガス状及び/又は低収率カーボンブラック供給原料を含む、代替カーボンブラック製造供給原料から形成される、カーボンブラックに関する。
【0002】
カーボンブラックは、組成物の機械的、電気的、及び光学的特性を改変するために使用されてきた。カーボンブラック及び他の充填剤は、ゴム、プラスチック、紙又は織物用途において使用される組成物の配合及び調製において、顔料、充填剤、並びに/又は補強剤として利用されてきた。カーボンブラック又は他の充填剤の特性は、これらの組成物の種々の性能特性を決定する重要な因子である。エラストマー組成物の重要な用途は、タイヤの製造に関するものであり、最終製品又はその構成要素に特定の特性を付与するために追加成分が添加されることが多い。カーボンブラックは、エラストマー組成物及び他の種類の組成物における機能特性、導電性、レオロジー、表面特性、粘度、外観及び他の特性を改変するために使用されてきた。
【0003】
カーボンブラックの工業生産のための従来の最も一般的なプロセスは、ファーネス法である。この方法では、デカント油などの第1の液体炭素含有供給原料が、燃料希薄高温燃焼ガス流又は燃焼中のガス流中に注入される。供給原料の一部は熱分解し、カーボンブラック及び副生成物(主に水素)を生成する。残りは酸化して、CO、CO2及びH2Oを生成する。従来の又は伝統的な供給原料は、デカント油、スラリー油、コーカー油、コールタール誘導体、又はエチレンクラッカープロセスからの重液残渣である。これらのカーボンブラック供給原料は、同時に重く(比重1.02超)、原子H:C比は最大1.23であり、芳香族化合物に富み(Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上)、室温及び室圧(例えば、1気圧で25℃)で液体である。それらは全て、一般に化石燃料に由来する。
【0004】
ファーネスブラック法は、天然ガスを供給原料として使用するチャネルブラック法及びサーマルブラック法とは異なる。チャネルブラック法は、数千の小さな天然ガス拡散火炎を利用し、少量のカーボンブラックを製造する。カーボンブラックは、水冷金属チャネル又はドラム上に収集される。チャネルブラック法は、約0.05kg C/kgフィードの極めて低い収率を有し、その結果、20世紀半ばに放棄された。サーマルブラック法は、天然ガスフィードを予め加熱されたレンガ上を通過させることによって、特定の種類の超低ストラクチャーカーボンブラックを製造する。天然ガスは吸熱的に熱分解し、熱いレンガ上でカーボンブラックになる。しかしながら、これらのレンガは急速に冷え、副生成物の水素及び天然ガスの燃焼によって定期的に再加熱されなければならない。サーマルブラック法は、超低ストラクチャー及び比較的低い収率で、ニッチなカーボンブラックグレードのみを製造し、タイヤ、プラスチック又は工業用ゴム化合物の補強に必要なカーボンブラックの表面積及び構造の大部分を製造することができない。
【0005】
既存のカーボンブラックファーネス法においてガス状の、再生可能な、リサイクルされた、及び/又は持続可能な低収率供給原料を使用することは、経済的に有用であり、かつ環境的に有益である。これらの供給原料は、必ずしも化石燃料ベースである必要はない。これらの例としては、エタンクラッキング又はバイオエタノールから生成され得るエチレンが挙げられる。別の例は天然ガスであり、これは、化石ベースであってもよく、又は埋立て地若しくは有機物の腐敗から生成されてもよい。更なる例としては、植物油;リサイクルタイヤ、プラスチック、都市廃棄物若しくはバイオマスの熱分解に由来する油、又は埋立て地から生産される天然ガスが挙げられる。
【0006】
残念ながら、これらの低収率カーボンブラック供給原料は、一般に、伝統的に使用されているファーネスカーボンブラック供給原料と比較して、ファーネス法では低収率、低表面積、及び/又は低ストラクチャーになる。ファーネス法におけるこれらの供給原料の性能は、それらを用いてほとんどのASTMグレードに必要とされるストラクチャーを作製することが不可能であり得るほど、劣っている可能性がある。供給原料について所定の表面積で達成可能な最大ストラクチャーは、供給原料のグレード能力を定義するのに役立つ。
【0007】
したがって、既存のカーボンブラックファーネス法において様々な量の低収率カーボンブラック形成供給原料を使用する(その使用を可能にする)ことができ、更に従来のファーネスカーボンブラック供給原料から形成されるカーボンブラックに匹敵するカーボンブラックを製造する(例えば、許容可能な収率及び/又は高表面積及び/又は高ストラクチャーを有するカーボンブラックを製造する)ことができる解決策を提供することが、当業界において必要とされている。これらの低収率供給原料を使用するための新しいプロセスを開発、設計、及び構築する代わりに、既存のファーネス法を使用し、これらの低収率供給原料を使用することは、大きな資本及び開発資源を節約する。
【0008】
全体を通して言及される全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の特徴は、低収率カーボンブラック供給原料(複数可)を含む、供給原料からカーボンブラックを調製又は製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明の更なる特徴は、ガス状カーボンブラック供給原料を含む供給原料からカーボンブラックを調製又は製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる特徴は、低収率カーボンブラック供給原料を含む供給原料から製造されたカーボンブラックを提供することである。
【0012】
本発明の別の特徴は、ガス状カーボンブラック供給原料を含む供給原料から製造されたカーボンブラックを提供することである。
【0013】
更なる特徴は、カーボンブラック供給原料を利用する方法であって、供給原料の総量の少なくとも一部又はそれ以上が低収率カーボンブラック供給原料である方法を提供することである。
【0014】
更なる特徴は、得られるカーボンブラックが許容可能な(例えば、良好な)収率、許容可能な(例えば、高い)表面積、及び/又は許容可能なストラクチャー(例えば、高ストラクチャー)を有するように、低収率カーボンブラック供給原料からカーボンブラックを製造する方法を提供することである。
【0015】
これらの利点及び他の利点を達成するために、及び本発明の目的に従って、本明細書で具体化されかつ広く記載されるように、本発明は、部分的に、カーボンブラックを製造する方法に関する。この方法は、加熱ガス流をカーボンブラック反応器(例えば、ファーネスカーボンブラック反応器)に導入して、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を加熱ガス流と混合し、反応流を形成する工程を含む。本方法は、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成する工程を更に含む。本方法は、反応流中のカーボンブラックを回収することを更に含む。本方法では、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、好ましくは、全供給原料の少なくとも10重量%及び全供給原料の90重量%以下(総重量に基づく)を含む。第1のカーボンブラック供給原料は、好ましくは、室温及び室圧(例えば、1atmで25℃)で液体である。
【0016】
更に、本発明は、部分的に、カーボンブラックを製造するための更なる方法に関する。この方法は、加熱ガス流をカーボンブラック反応器(例えば、ファーネスカーボンブラック反応器)に導入して、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び少なくとも1種の低収率カーボンブラックを含むブレンドを加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成する工程を含む。本方法は、反応流中のカーボンブラックを回収することを更に含む。本方法では、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、好ましくは、全供給原料の少なくとも10重量%及び全供給原料の90重量%以下(総重量に基づく)を構成する。第1のカーボンブラック供給原料は、好ましくは、室温及び室圧(例えば、1atmで25℃)で液体である。
【0017】
更に、本発明は、部分的に、カーボンブラックを形成するために使用される供給原料の少なくとも10重量%が少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料であり、カーボンブラックを形成するために使用される供給原料の少なくとも10重量%が少なくとも1種のカーボンブラック供給原料である、カーボンブラック(複数可)に関する。
【0018】
本発明は更に、限定されないが、本発明のカーボンブラックのいずれか1種以上から形成されたエラストマー複合材などの製品及び/又は物品に関する。
【0019】
前述の全般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な特徴を示し、詳細な記述と共に、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明において部分的に使用される低収率供給原料と比較した、従来のカーボンブラック供給原料についての原子H:C(水素原子対炭素原子)比を示すグラフである。
【0022】
【
図2】本発明において部分的に使用される低収率供給原料と比較した、従来のカーボンブラック供給原料の比重を示すグラフである。
【0023】
【
図3】本発明において部分的に使用される低収率供給原料と比較した、従来の供給原料についてのBMCI値を示すグラフである。
【0024】
【
図4A】本発明のカーボンブラックを調製するのに適した反応器の一例の断面図である。
【0025】
【
図4B】本発明のカーボンブラックを調製するのに適した反応器の別の例の断面図である。
【0026】
【
図5】本発明のカーボンブラックを調製するのに適した反応器の更なる例の断面図である。
【0027】
【
図6A】比較例のいくつかで使用された概略インジェクタを側面図で示す。
【
図6B】比較例のいくつかで使用された概略インジェクタを側面図で示す。
【0028】
【
図7】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、無次元収率及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号表示は、表6~表9の実施例番号を指す。
【
図8】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、無次元収率及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号表示は、表6~表9の実施例番号を指す。
【0029】
【
図9】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、OAN及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表6~表9の実施例番号を指す。白色菱形点上の「N」番号表示は、示されたASTMグレードのカーボンブラックについてのデータを示す。例えば、点「N330」は、N330グレードカーボンブラックに典型的な表面積及びストラクチャーを示す。
【
図10】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、OAN及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表6~表9の実施例番号を指す。白色菱形点上の「N」番号表示は、示されたASTMグレードのカーボンブラックについてのデータを示す。例えば、点「N330」は、N330グレードカーボンブラックに典型的な表面積及びストラクチャーを示す。
【0030】
【
図11】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、OAN及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表10、表13及び表15の実施例番号を指す。
【
図12】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、OAN及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表10、表13及び表15の実施例番号を指す。
【
図13】本発明のいくつかの実施例及び比較例について、OAN及びSTSA(m
2/g単位)をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表10、表13及び表15の実施例番号を指す。
【0031】
【
図14】本発明の実施例及び比較例について、所定の表面積について達成可能な収率をプロットしたグラフである。番号のみの表示は、表15の実施例番号を指す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、本明細書に定義されかつ記載される低収率カーボンブラック供給原料を利用する、カーボンブラックを製造する方法に関する。本発明は更に、これらの方法の1つ以上から製造されるカーボンブラックに関する。本発明の方法では、利用される全カーボンブラック供給原料の少なくとも一部は、1種以上の低収率カーボンブラック供給原料であり得る。本発明の方法では、少量から大量の低収率カーボンブラック供給原料を使用することができるだけでなく、製造されるカーボンブラックの品質に関して犠牲がない。したがって、本発明の方法は、環境上の理由及び/又は他の理由のために使用することがより望ましいカーボンブラック供給原料を利用し、更に、ファーネスカーボンブラック法において使用される従来のカーボンブラック供給原料を使用して製造されるカーボンブラックに匹敵する、カーボンブラックを製造する。
【0033】
本発明のカーボンブラックを製造する方法は、加熱ガス流をカーボンブラック反応器(例えば、ファーネスカーボンブラック反応器)に導入することと、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成することと、反応流中のカーボンブラックを回収することと、を含む、それらから本質的になる、それらからなる、又はそれらを包含する。本方法では、好ましくは、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、全供給原料の少なくとも10重量%を構成し、より好ましくは、全供給原料の少なくとも25重量%を構成することができる。
【0034】
本発明の別の方法は、加熱ガス流をカーボンブラック反応器(例えば、ファーネスカーボンブラック反応器)に導入することと、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び少なくとも1種の低収率カーボンブラックを含む、それらから本質的になる、それらからなる、又はそれらを包含する、ブレンドを、加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成することと、反応流中のカーボンブラックを回収することと、を含む、それらから本質的になる、それらからなる、又はそれらを包含する。本方法では、好ましくは、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、全供給原料の少なくとも10重量%を構成し、より好ましくは、全供給原料の少なくとも25重量%を構成することができる。
【0035】
本発明の目的のために、「低収率カーボンブラック供給原料」は、以下の特性の少なくとも1つを有するカーボンブラック供給原料である。
1)Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満(液体フィードについての低芳香族含有量の指標を提供する)(例えば、99未満、95未満、90未満、85未満、80未満、75未満、70未満のBMCI、例えば、50~99、又は60~99、又は70~99、又は50~95、又は50~90のBMCI)、及び/又は、
2)室温(例えば、25℃)及び室圧(1atm)で気体である炭素含有材料、及び/又は、
3)1.23より大きい原子H:C比(例えば、1.24以上、1.25以上、1.26以上、1.27以上、1.28以上、1.29以上、1.30以上、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上のH:C比、例えば、1.235~1.5、又は1.235~1.45、又は1.235~1.4、又は1.235~1.35、又は1.235~1.3、又は1.235~1.29、又は1.235~1.28、又は1.235~1.27、又は1.24~1.5、又は1.25~1.5、又は1.26~1.5、又は1.27~1.5、又は1.28~1.5、又は1.29~1.5、又は1.3~1.5)、及び/又は、
4)最大1.02(例えば、最大1.015、最大1.01、最大1.005、最大1.01、最大1.00、最大0.99、最大0.95、例えば、0.80~1.019、又は0.80~1.015、又は0.80~1.01、又は0.80~1.005、又は0.80~1.00、又は0.80~0.95、又は0.80~0.9、又は0.80~1.015、又は0.90~1.01、又は0.90~1.005、又は1.005~1.015)の比重。
【0036】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性のみを有することができる。低収率カーボンブラック供給原料は、原子H:C特性のみを有することができる。低収率カーボンブラック供給原料は、比重特性のみを有することができる。低収率カーボンブラック供給原料は、ガス特性のみを有することができる。
【0037】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性及び原子H:C特性を有することができる。
【0038】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性及び比重特性を有することができる。
【0039】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性及びガス特性を有することができる。
【0040】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性、原子H:C特性、及び比重特性を有することができる。
【0041】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性、原子H:C特性、及びガス特性を有することができる。
【0042】
低収率カーボンブラック供給原料は、BMCI特性、原子H:C特性、比重特性、及びガス特性を有することができる。
【0043】
低収率カーボンブラック供給原料は、原子H:C特性、及び比重特性を有することができる。
【0044】
低収率カーボンブラック供給原料は、原子H:C特性、及びガス特性を有することができる。
【0045】
低収率カーボンブラック供給原料は、原子H:C特性、比重特性、及びガス特性を有することができる。
【0046】
低収率カーボンブラック供給原料は、比重特性及びガス特性を有することができる。
【0047】
低収率カーボンブラック供給原料は、持続可能な、生物学的な、及び/又はリサイクルされた供給源であるとみなされるものに由来する、供給原料であり得る。例えば、低収率カーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で気体であるエチレンであり得る、又はエチレンを含み得る。エチレンは、バイオ由来のエタノールから、例えば、トウモロコシ発酵、又は他の植物材料発酵から生成することができる。低収率カーボンブラック供給原料の別の例は、天然ガスである。
【0048】
本発明の目的のために、低収率カーボンブラック供給原料は、化石燃料ベースのガソリン生産若しくは石炭分解、又はオレフィンを生産するための分解から誘導されない供給原料であり得る。したがって、低収率カーボンブラック供給原料は、コールタール液、石油精製液、又はエチレンクラッカー残渣以外の供給原料である。
【0049】
低収率液体カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:タイヤ熱分解油、プラスチック熱分解油、リサイクル油、藻類油、植物由来の油、都市固形廃棄物の熱分解に由来する油、バイオマス(例えば、動物又は植物)若しくは農業廃棄物の熱分解又は腐敗に由来する油、パルプ又は紙製造副産物の処理に由来する油、及び/若しくは主に生体材料から供給される別の油、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。例示的な低収率供給原料としては、植物油若しくは他の植物由来の油、バイオ由来のエタノール、植物若しくは動物性ワックス若しくは樹脂、動物性脂肪から得られる油、藻類油、下水汚泥若しくは農業廃棄物の熱分解から得られる油、生物起源材料の処理からの副生成物液体、生体材料の水熱液化によって生成される液体、粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ若しくはトール油脂肪酸、リサイクル材料から得られる油、低品質タイヤ、不合格タイヤ若しくは寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、廃棄若しくはリサイクルされたプラスチック若しくはゴム製品の熱分解から得られる油、都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、若しくはバイオマスの熱分解から得られる油、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの液体供給原料は、原子H:C比が1.23より大きいか、又は比重が最大1.02であるか、又はBMCI値が100未満である。原子H:C比は、ASTM D5291に従って測定することができる。比重は、ASTM D4052によって測定され得る。BMCIは、Smith,H.M.(1940).Correlation Index To Aid In Interpreting Crude-Oil Analyses Technical Paper610.Washington,DC,U.S.Department of the Interior,Bureau of Minesに従って測定され得る。硫黄含有量は、IP-336又はISO8754規格に従って測定され得る。引火点は、ISO2719に従って測定され得る。液体低収率カーボンブラック供給原料の具体例を、以下の表1に示す。
【表1】
【0050】
図1は、従来の高収率カーボンブラック供給原料の原子H:C比を、タイヤ熱分解油(TPO)、植物油(Veg.Oil)、及び2種類の気相供給原料(天然ガスとエチレン)(Gas)と比較したグラフである。従来の供給原料について、H:Cは、2016年~2021年の間で、ファーネスブラック法のためのカーボンブラック供給原料として使用された約1000個の代表的なコールタール液、デカント油、及びECRの集合についてプロットされている。H:C値の範囲は、3つの低収率カーボンブラック供給原料群と比較することができる。従来の供給原料のH:C値は、1.23以下と低いことは明らかである(図の破線)。
図1の低収率カーボンブラック供給原料は全て、H:C値が1.23超である。
【0051】
図2は、タイヤ熱分解油(TPO)及び植物油(Veg.Oil)と比較した、従来の高収率供給原料の比重の例を示すグラフである。従来の供給原料について、比重は、2016年~2021年の間で、ファーネスブラック法のためのカーボンブラック供給原料として使用された約1000個の代表的なコールタール液、デカント油、及びECRの集合についてプロットされている。比重範囲を、2つの低収率カーボンブラック供給原料群と比較する。従来の供給原料は、一般に、1.02より大きい比重(図の破線)を有するが、低収率カーボンブラック供給原料は、1.02以下の比重を有することが明らかである。
【0052】
図3は、タイヤ熱分解油(TPO)及び植物油(Veg.Oil)と比較した、従来の高収率供給原料のBMCI数の例を示すグラフである。従来のカーボンブラック供給原料について、BMCI数は、2016年~2021年の間で、ファーネスブラック法のための供給原料として使用された約1000個の代表的なコールタール液、デカント油、及びECRの集合についてプロットされている。それらのBMCI値を、2つの低収率供給原料群と比較する。ほとんど全ての従来の供給原料は、110より大きいBMCI値を有し、ここに示される全ての例は、100以上のBMCI数を有する(破線)。対照的に、TPO及び植物油群は、100未満のBMCI数を有する。
【0053】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、再生可能な供給原料、バイオ由来又はバイオ系の供給原料、及び/若しくは精製プロセスの他の副生成物、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:植物油又は他の植物由来の油(例えば、トウモロコシ油及び/又はトウモロコシ蒸留油)、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0055】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:バイオ由来のエタノール(トウモロコシ発酵、又は他の植物、野菜若しくは果実由来の発酵産物由来)、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0056】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:植物性又は動物性ワックス及び樹脂、例えば、ラノリン又はラック、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:動物性脂肪から得られた油、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0058】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:藻類油、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0059】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:下水汚泥又は農業廃棄物の熱分解から得られる油、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:生物起源材料の処理からの副生成物液体、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0061】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:生体材料の水熱液化によって生成される液体、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0062】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ、又はトール油脂肪酸(例えば、製紙プロセスから)、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0063】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:再生可能な供給原料、例えば、リサイクル材料から得られる油、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0064】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:低品質タイヤ、不合格タイヤ、又は寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0065】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:廃棄又はリサイクルされたプラスチックの熱分解から得られる油、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0067】
低収率カーボンブラック供給原料の他の例としては、以下:バイオマス、例えば、動物又は植物(例えば、野菜)の熱分解から得られる油(バイオ油)、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
上述したように、本発明では、本発明の方法で利用される(段階的方法で、又はブレンドとして導入される)全供給原料の一部(重量%による)は、1種以上の低収率カーボンブラック供給原料であり、一部は低収率カーボンブラック供給原料ではない。好ましくは、低収率カーボンブラック供給原料(段階的方法で、又はブレンドとして導入される)の量は、使用される全ての供給原料の総重量%に基づいて、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%であるが、100重量%未満、好ましくは、99重量%未満又は95重量%未満、例えば、10重量%~95重量%、又は10重量%~90重量%、又は15重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、又は25重量%~90重量%、又は30重量%~90重量%、又は35重量%~90重量%、又は40重量%~90重量%、又は45重量%~90重量%、又は50重量%~95重量%、又は10重量%~80重量%、又は10重量%~70重量%、又は10重量%~60重量%、又は10重量%~50重量%、又は10重量%~40重量%、又は10重量%~30重量%、又は60重量%~95重量%、又は65重量%~95重量%、又は70重量%~95重量%、又は75重量%~95重量%、又は60重量%~95重量%、又は60重量%~90重量%、又は60重量%~85重量%、又は60重量%~80重量%、又は60重量%~75重量%などである。
【0069】
本発明の目的のために、「第1のカーボンブラック供給原料」又は「高収率カーボンブラック供給原料」は、本明細書で定義されるような低収率カーボンブラック供給原料ではない、供給原料である。第1のカーボンブラック供給原料は、ファーネスカーボンブラック法において伝統的に使用されるカーボンブラック供給原料(「伝統的な」カーボンブラック供給原料)とみなすことができ、又はそのように称することができる。本明細書で更に議論されるように、第1のカーボンブラック供給原料は、選択肢として、少量の低収率カーボンブラック供給原料を含有する、供給原料のブレンドであり得る。
【0070】
第1のカーボンブラック供給原料は、通常、デカント若しくはスラリー油、コールタール若しくはコールタール蒸留留分、又はエチレン若しくはフェノールクラッカー残渣のファミリーからのものである。典型的なファーネス法におけるカーボンブラック製造に関して、それらの明確な特徴を以下に更に説明する。
【0071】
第1のカーボンブラック供給原料は、以下の特性の3つ全てを有する。
1)少なくとも100(例えば、少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、例えば、100~180、101~180、102~180、103~180、104~180、105~180、110~180、115~180、120~180、130~180、140~180、150~180、160~180、100~175、100~170、100~165、110~175、115~175、120~175、125~170、130~170)のBMCI、
2)1.02超(例えば、1.025超、1.03超、1.035超、1.04超、1.05超、例えば、1.021~1.3、又は1.025~1.3、又は1.03~1.3、又は1.05~1.3、又は1.07~1.25)の比重、
3)最大1.23(例えば、最大1.22、最大1.21、最大1.2、最大1.15、最大1.1、最大1.05、最大1、最大0.9、最大0.8、例えば、1.225~0.7、1.225~0.8、1.225~0.9、1.225~1、1.225~1.1、1.22~0.7、1.21~0.7、1.2~0.7)の原子H:C比。
選択肢として、第1のカーボンブラック供給原料はまた、室温及び室圧(例えば、25℃及び1atm)で液体であってもよい。液体であるにもかかわらず、第1のカーボンブラック供給原料は、極めて高い粘度を有するピッチ又は同様の材料であってもよく、顕著な流動性を示す必要はない。
【0072】
第1のカーボンブラック供給原料の例は、以下の表2に示されており、コールタール、コールタールから蒸留された液体、接触分解から得られたデカント又はスラリー油、及びエチレンクラッキングからの残渣油を含む。表2に示すように、これらの供給原料は、H:Cが最大1.23であり、比重が1.02より大きく、BMCI値が少なくとも100である。
【0073】
【0074】
第1のカーボンブラック供給原料はまた、タイヤ熱分解油の精製又は蒸留から得られる留分を含んでもよい。熱分解は、当業者に既知の任意の方法によって達成することができる。例示的な方法としては、これらに限定されないが、米国特許第8350105号及び米国特許出願公開第20180320082号に見出されるものが挙げられ、これらの両方の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。得られた油の蒸留もまた、当業者に既知の任意の方法によって達成され得る。例示的な方法としては、これらに限定されないが、米国特許第9920262号、国際公開第2019236214号に見出されるものが挙げられ、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。タイヤ熱分解油を蒸留し、第1のカーボンブラック供給原料として使用することができる少なくとも1つの留分と、低収率カーボンブラック供給原料である少なくとも1つの留分と、を提供することができる。実際に、蒸留は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20130039841号に開示されているように、カーボンブラック製造プロセスの他の単位プロセスにおいて、例えば、カーボンブラック用の乾燥機のための燃料として、又は第1のカーボンブラック供給原料若しくは第2のカーボンブラック供給原料のいずれか若しくは両方を予熱するためのヒーターのための燃料として、より経済的に使用され得る軽量留分をもたらし得る。したがって、蒸留プロセスとカーボンブラック反応器との統合は、カーボンブラック充填タイヤのリサイクルからの経済的利益及び環境的利益の両方を可能にすることができる。
【0075】
選択肢として、本発明の方法では、利用される供給原料の総量に基づく(重量%で)、第1のカーボンブラック供給原料は、使用される全ての供給原料の総重量%に基づいて、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%であるが、100重量%未満、好ましくは、99重量%未満又は95重量%未満、例えば、10重量%~95重量%、又は10重量%~90重量%、又は15重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、又は25重量%~90重量%、又は30重量%~90重量%、又は35重量%~90重量%、又は40重量%~90重量%、又は45重量%~90重量%、又は50重量%~95重量%、又は10重量%~80重量%、又は10重量%~70重量%、又は10重量%~60重量%、又は10重量%~50重量%、又は10重量%~40重量%、又は10重量%~30重量%、又は60重量%~95重量%、又は65重量%~95重量%、又は70重量%~95重量%、又は75重量%~95重量%、又は60重量%~95重量%、又は60重量%~90重量%、又は60重量%~85重量%、又は60重量%~80重量%、又は60重量%~75重量%などの量で使用され得る(段階的方法で、又はブレンドとして導入される)。利用される供給原料の総量に基づく(重量%で)、第1のカーボンブラック供給原料の他の量は、49重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、例えば、5重量%~49重量%、又は5重量%~45重量%、又は10重量%~40重量%、又は10重量%~35重量%、又は10重量%~30重量%であり得る。
【0076】
第1のカーボンブラック供給原料は、室温(例えば、25℃)及び大気(例えば、1atm)条件下で液体であり得る。「芳香族種に富む」とは、供給原料が存在する多量の芳香族化合物を含むことを意味する。例えば、多量の芳香族化合物は、存在する芳香族化合物の総重量%が少なくとも20重量%であるか、又は少なくとも100のBMCIを有するか、又はその両方である。第1のカーボンブラック供給原料は、供給原料が蒸気の形態になるように加熱することができ、その結果、芳香族種に富む蒸気になり得る、又は芳香族種に富む蒸気として実際に使用され得る。
【0077】
本発明の方法の工程に関して、本方法は、加熱ガス流を形成するか、又は加熱ガス流をカーボンブラック反応器(例えば、ファーネスカーボンブラック反応器)に導入する工程を含む。
【0078】
「加熱ガス流」は、高温ガス又は高温燃焼ガスの流れであってもよい。加熱ガス流は、固体、液体及び/又は気体燃料を、これらに限定されないが、空気、酸素、空気と酸素の混合物などの適切な酸化剤流と接触させることによって発生させることができる。あるいは、液体又は気体燃料を添加せずに、予熱された酸化剤流を通過させてもよい。高温ガスを発生させるために酸化剤流と接触させる際に使用するのに適した燃料の例としては、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコール若しくは灯油などの容易に燃焼可能なガス、蒸気又は液体流のいずれかが挙げられる。一般に、高含有量の炭素含有成分、特に、炭化水素を有する燃料を使用することが好ましい。高温ガスを形成するために混合される燃料と酸化剤の混合物の当量比(以下に定義される)は、10(非常に燃料リッチ)から約0.1(非常に燃料リーン)、又は所定の燃焼器又は酸化装置を使用して高温ガスの生成を依然として可能にする最低値であり得る。上述したように、高温ガスの生成を促進するために、酸化剤流を予熱することができる。本質的に、加熱ガス流は、燃料及び/又は酸化剤を点火又は燃焼させることによって生成される。加熱ガス流では、約1000℃~約3500℃のような温度を得ることができる。
【0079】
カーボンブラック反応器は、好ましくはファーネスカーボンブラック反応器である。より好ましくは、カーボンブラック反応器は、段階的カーボンブラック反応器(例えば、多段階カーボンブラック反応器又は多段階反応器)と呼ばれるファーネス反応器のバージョンである。「段階的」とは、供給原料が、炉の長軸に沿った2つ以上の軸方向位置で導入又は注入されることを意味する。
【0080】
この方法及び本明細書に記載されている他の方法の目的のために、米国特許第4,383,973号、同第7,829,057号、同第5,190,739号、同第5,877,251号、同第6,153,684号、又は同第6,403,695号(全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの多段階カーボンブラック反応器を使用することができる。
【0081】
多段階反応器などのカーボンブラック反応器によりカーボンブラックを形成し、適切な高温ガスを達成してカーボンブラックを形成する一般的なプロセスは、参照により本明細書に組み込まれ、本明細書に記載の変更を加えて本発明に適用することができる、上記の参照特許に更に記載されている。
【0082】
本発明の特定の例又は実施形態は、低収率カーボンブラック供給原料が熱分解油を含むか、それからなるか、又はそれのみであり、これが、本明細書に記載されるように、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料と組み合わされる場合を含む。本発明の目的のために、熱分解油は、第1のカーボンブラック供給原料とのブレンドとして使用することができ、及び/又は段階的に導入することができる(例えば、第1のカーボンブラック供給原料を最初に導入し、次いで、熱分解油を加熱ガス流中に導入する)。ブレンド方式であろうと段階的方式であろうと、熱分解油は、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成することができ、第1のカーボンブラック供給原料は、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成する。先に記載した第1のカーボンブラック供給原料及び低収率カーボンブラックについての様々な重量パーセント範囲を、ここで等しく適用することができる。
【0083】
本発明の特定の例又は実施形態はまた、低収率カーボンブラック供給原料がエチレン及び/若しくは天然ガスを含むか、それらからなるか、又はそれらのみであり、これが、本明細書に記載されるように、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料と組み合わされる場合を含む。本発明の目的のために、エチレン及び/又は天然ガスは、第1のカーボンブラック供給原料とのブレンドとして使用することができ、及び/又は段階的に導入することができる(例えば、第1のカーボンブラック供給原料を最初に導入し、次いで、エチレン及び/又は天然ガスを加熱ガス流に導入する)。ブレンド方式であろうと段階的方式であろうと、エチレン及び/又は天然ガスは、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成することができ、第1のカーボンブラック供給原料は、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成する。好ましい選択肢は、エチレン及び/又は天然ガスが、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の30重量%~90重量%を構成し、第1のカーボンブラック供給原料が、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~70重量%を構成する場合である。先に記載した第1のカーボンブラック供給原料及び低収率カーボンブラックについての様々な重量パーセント範囲を、ここで等しく適用することができる。
【0084】
本発明の特定の例又は実施形態は、低収率カーボンブラック供給原料が、バイオ系カーボンブラック供給原料(例えば、バイオガス、ナタネ油、ダイズ油、パーム油、ヒマワリ油、堅果及び/又はオリーブ油及び/又は他の植物油及び/又は木油に由来する油(複数可))を含むか、それらからなるか、又はそれらのみであり、これが、本明細書に記載されるように、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料と組み合わされる場合を更に含む。本発明の目的のために、バイオ系(又は、バイオ由来)カーボンブラック供給原料は、第1のカーボンブラック供給原料とのブレンドとして使用することができ、及び/又は段階的に導入することができる(例えば、第1のカーボンブラック供給原料を最初に導入し、次いで、バイオ系カーボンブラック供給原料を加熱ガス流中に導入する)。ブレンド方式であろうと段階的方式であろうと、バイオ系カーボンブラック供給原料は、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成することができ、第1のカーボンブラック供給原料は、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の10重量%~90重量%を構成する。好ましい選択肢は、バイオ系カーボンブラック供給原料が、プロセスにおいて利用される全カーボンブラック供給原料の30重量%~90重量%を構成し、第1のカーボンブラック供給原料が10重量%~70重量%を構成する場合である。先に記載した第1のカーボンブラック供給原料及び低収率カーボンブラックについての様々な重量パーセント範囲を、ここで等しく適用することができる。
【0085】
図4A及び
図4Bは、使用することができるカーボンブラック反応器(
図4Aの50及び
図4Bの80)の断面図を示す。
図4Aでは、高温燃焼ガスは、液体又は気体燃料流9の形態の燃料を、酸化剤流5、例えば、空気、酸素又は空気と酸素の混合物(当技術分野では「酸素富化空気」としても既知である)と接触させることによって、燃焼ゾーン又は燃焼チャンバ1内で生成される。燃料は、炭化水素(例えば、メタン、天然ガス、アセチレン)、水素、アルコール、灯油、燃料混合物などの、任意の容易に燃焼可能なガス、蒸気、又は液体流であってよい。多くの場合、選択される燃料は、高含有量の炭素含有成分を有する。
【0086】
種々の気体燃料又は液体燃料(例えば、炭化水素)が、燃焼燃料として使用され得る。当量比は、燃料を完全に燃焼させるのに化学量論的に必要な酸化剤の量に対する燃料の比である。燃焼ゾーンにおける当量比の典型的な値は、1.2~0.2の範囲である。高温燃焼ガスの生成を促進するために、酸化剤流を予熱することができる。
【0087】
本発明では、燃焼工程は、燃焼燃料を完全に又はほぼ完全に消費することができる。酸素、燃料選択、バーナー設計、ジェット速度、混合条件及び/若しくはパターン、空気、酸素富化空気若しくは純酸素に対する燃料の比、温度、及び/若しくは他の因子を調整、又は最適化することができる。
【0088】
高温燃焼ガス流は、ゾーン1及び2からゾーン3及び4へと下流に流れる。カーボンブラック供給原料は、他の反応器構成要素及びフィードに対して、1つ以上の適切な位置で導入される。燃焼チャンバのゾーン2は、1種以上のカーボンブラック供給原料が導入される場所であり得る。
図4Aでは、インジェクタ10及び/又はインジェクタ6を使用して、カーボンブラック供給原料を反応器に導入することができる。インジェクタ10は、例えば、第1のカーボンブラック供給原料を反応器に導入又は注入することができる。代替として、第1のカーボンブラック供給原料はまた、軸方向パイプ又はランス(
図4Bにおいてパイプ又はランス63として示される)を使用してチャンバ内に導入されてもよい。更なる代替として、第1のカーボンブラック供給原料は、複数の方法によって同時に注入又は導入されてもよい。反応器又は燃焼チャンバに曝露されるランス又は任意の他のインジェクタは、当技術分野で既知の方法によって、冷却されるか、又は燃焼チャンバ内の過剰な熱から保護される必要があり得る。
【0089】
更なるカーボンブラック供給原料、例えば、低収率カーボンブラック供給原料を、インジェクタ6によって注入点7で反応器ゾーン3に導入することができる。本発明では、一般に、第1のカーボンブラック供給原料の全部ではないにしても少なくとも一部は、低収率カーボンブラック供給原料を反応器に導入する前に注入又は導入することができる。好ましくは、反応器中で使用される第1のカーボンブラック供給原料の大部分(50%超)は、いずれの低収率カーボンブラック供給原料も導入する前に導入される。ゾーン3及び4は反応ゾーンであり、ゾーン8は急冷ゾーンである。Qは、急冷ゾーン8の前のゾーン4の長さを表す。
【0090】
カーボンブラック供給原料は、燃焼ガス流中への供給原料の最適な分配のために設計された1つ以上のノズルを通して、燃焼ガス流中に注入することができる。このようなノズルは、単一流体又は二流体のいずれであってもよい。二流体ノズルは、例えば、蒸気、空気、又は窒素を使用し、供給原料を噴霧することができる。単一流体ノズルは圧力噴霧されてもよく、又は供給原料はガス流中に直接注入されてもよい。後者の場合、噴霧化は、ガス流の力によって生じる。
【0091】
カーボンブラック供給原料は、軸方向注入ランスによって注入されてもよく、又は中央パイプを使用することができ、及び/又は流れ方向に垂直な平面で反応器の周囲に配置された1つ以上の放射状ランスを使用することができる。反応器は、流れ方向に沿って放射状ランスを有する、いくつかの平面を含むことができる。ランスのヘッドに噴霧ノズル又は注入ノズルを配置することができ、それによって、供給原料は加熱ガス流の流れに混合される。
【0092】
図4Bは、本発明で使用することができる、ファーネス法におけるカーボンブラック反応器の別の例の断面を示す。この例では、
図4Aと同様に、酸化剤流51は、燃焼チャンバ55内で燃焼燃料52と混合される。
【0093】
チャンバ55内で調製された高温燃焼又は部分燃焼ガス流は、スロート又は縮小部64に向かって方向Aに流れる。第1のカーボンブラック供給原料は、低収率カーボンブラック供給原料の前に、ファーネスカーボンブラック反応器80に導入される。第1のカーボンブラック供給原料は、任意の中央パイプ63を使用して、又はランス若しくはインジェクタ若しくは一式のランス56を使用して、又は57によって示されるようにスロート64に若しくはその付近に配置されたランス若しくはインジェクタを介して、導入することができる。第1のカーボンブラック供給原料は、これらの位置の1つで、又はこれらの位置の2つで同時に、又は3つ全ての位置で同時に導入することができる。第1の供給原料注入の方式及び分割は、2つ以上の位置が使用される場合、これらの位置の間で、生成物特性及びプロセス経済性を改変するために変更され得る。インジェクタ及び燃焼チャンバ自体(又は、その一部)は、当技術分野で既知の方法によって必要に応じて冷却することができる。
【0094】
図4Bでは、任意の中央パイプインジェクタ63と縮小部64の中央との間の長さは、長さ60として示されている。この中央パイプが使用される場合、この長さは、好ましくは、第1の縮小部64の最も狭い直径の1×(倍)~10倍である。中央パイプが、第1のカーボンブラック供給原料の導入のためのインジェクタ又はランスアレイ57と同時に使用される場合、長さ60は、上述のようにすることができるか、又は0程度に小さくすることができる。この長さを調整することにより、ストラクチャー及びプロセスの経済性のバランスをとることが可能になる。燃焼チャンバの高さ又は直径54が示されており、この高さは高さ又は直径64よりも大きく、高さ又は直径64は高さ又は直径54よりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%小さくてもよい。
【0095】
第1のカーボンブラック供給原料の導入に続いて、供給原料と混合された高温ガス流は、第1の反応チャンバ58に入る。このチャンバの目的は、カーボンブラックを生成する熱分解反応が誘導時間を完了して開始できるように、滞留時間を提供することであり、及び任意選択で、米国特許第7,829,057号に教示されているように、後のストラクチャー成長のためのシード粒子集団を生成することである。このチャンバ66の長さは、典型的には、第1の縮小部64の最も狭い直径の1倍から20倍であり得る。
【0096】
第1の反応チャンバ58の端部において、低収率カーボンブラック供給原料を導入することができる。それは、第2の縮小部65内又はその近くに配置されたインジェクタ又はインジェクタアレイ59を使用して導入されてもよい。あるいは、それは、実質的に縮小部65の上流であるがチャンバ58内のランスを用いて導入されてもよい。
【0097】
低収率カーボンブラック供給原料の導入後、混合物は、第2の反応チャンバ61に流入する。次に、当技術分野で既知のように、液体又は蒸気62の冷却スプレーを用いて急冷される。低収率カーボンブラック供給原料の注入点59から急冷位置62までの長さは、
図4Bでは67で示されている。この長さは、ファーネス法の技術分野で既知のように、特定の生成物特性を制御する滞留時間を提供するように設定される。
【0098】
別の配置では、第1のカーボンブラック供給原料を位置63及び/又は56で導入し、次いで、低収率カーボンブラック供給原料を位置57及び/又は59で導入し、両方の位置を使用する場合には同時に導入することができる。これは、カーボンブラックストラクチャー能力と収率又はプロセス経済性との間の有益なトレードオフを提供することができる。全ての上記の実施形態では、使用される第1のカーボンブラック供給原料の少なくとも一部、好ましくは大部分(50%超)、例えば、第1のカーボンブラック供給原料の全ては、低収率カーボンブラック供給原料の前及び上流に導入される。
【0099】
本発明の更に別の例では、第1のカーボンブラック供給原料は、上述のBMCI、比重、及びH:Cパラメータを満たす高収率カーボンブラック供給原料と低収率カーボンブラック供給原料とのブレンドであってもよく、但し、ブレンドが、第1のカーボンブラック供給原料について上述のBMCI、比重及びH:Cパラメータを満たすことを条件とする。ブレンドは、50質量%超の高収率カーボンブラック供給原料(例えば、60質量%~99質量%などの50.5質量%~99.5質量%の高収率カーボンブラック供給原料)を含有してもよい。同様に、低収率カーボンブラック供給原料は、任意選択で、高収率カーボンブラック供給原料と、第1のカーボンブラック供給原料に要求されるBMCI、H:C及び比重パラメータのうちの少なくとも1つを満たさない非高収率カーボンブラック原料とのブレンドでもよく、但し、ブレンドも、第1のカーボンブラック供給原料に要求されるBMCI、H:C及び比重パラメータのうちの少なくとも1つを満たさないことを条件とする。非高収率カーボンブラック供給原料は、この任意のブレンドの全供給原料の50質量%超(例えば、60重量%~99重量%など、50.5重量%~99.5重量%の非高収率カーボンブラック供給原料)の量で存在してもよい。加えて、全ての注入位置の合計を通して反応器に導入される第1のカーボンブラック供給原料の総量は、反応器内の任意の場所で使用されるカーボンブラック供給原料の総量に基づいて50重量%未満である。低収率カーボンブラック供給原料の総量は、全供給原料に基づいて50重量%を超える。
【0100】
選択肢として、本発明の1つの方法では、方法は、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を加熱ガス流と共にカーボンブラック反応器に導入し、反応流を形成する工程を含む。第1のカーボンブラック供給原料は、1種、又は2種以上の異なる第1のカーボンブラック供給原料の組み合わせであってもよい。2つ以上の種類の供給原料が第1のカーボンブラック供給原料として利用される場合、複数の第1のカーボンブラック供給原料は、一緒にブレンドされて、1つ以上の位置を通して1つのブレンドされた供給原料として注入されてよく、又は各供給原料は、同じ若しくは異なる位置で燃焼チャンバに別個に注入されてもよい。
【0101】
選択肢として、本発明の1つの方法では、方法は、少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を反応流に導入する工程を含む。低収率カーボンブラック供給原料は、1種、又は2種以上の異なる低収率カーボンブラック供給原料の組み合わせであってもよい。2つ以上の種類の供給原料が低収率カーボンブラック供給原料として利用される場合、複数の低収率カーボンブラック供給原料は、一緒にブレンドされて、1つ以上の位置を通して1つのブレンドされた供給原料として注入されてよく、又は各供給原料は、同じ若しくは異なる位置で燃焼チャンバに別個に注入されてもよい。
【0102】
一般に、本発明の方法のいずれかで利用されるカーボンブラック供給原料のいずれも、高温燃焼ガス流の内部領域に貫入するインジェクタを使用して、単一流又は複数流によって反応器に注入することができる。インジェクタは、高温燃焼ガスとカーボンブラック供給原料(複数可)との高い混合率及びせん断をより確実にすることができる。これは、供給原料が、好ましくは速い速度及び/又は高い収率で熱分解し、本発明のカーボンブラックを形成することを確実にする。
【0103】
図5は、本発明を実施するために使用することができ、以下に記載する実施例1~実施例13を製造するために使用した反応器の具体的な例を示す。
【0104】
第1のカーボンブラック供給原料は、反応器中の1つの位置で、又は反応器中の複数の位置で導入することができる。この供給原料の導入は、例えば、
図5に示すように、反応器90中の最大径のDチャンバ75を有する燃焼チャンバ74内に配置された中央パイプ又はランス73によって行うことができる。中央パイプは、反応器のほぼ中心線(軸中心)上に配置することができる。中央パイプは、先端にインジェクタヘッド77又はスプレーヘッドを有することができる。先端上のインジェクタは、例えば、先端の周囲に1つ以上の穴(2つ又は3つ又は4つ又はそれ以上)を有することができる(例えば、複数の穴610のうちの1つが示される
図6Aに示されるように、概略均等に離間された複数の穴)。この注入点は、中央パイプを用いて行うことができるか、又は他の注入装置を使用して達成することができる。
【0105】
本発明の一実施形態では、低収率カーボンブラック供給原料は、反応器中の1つの位置で、又は反応器中の複数の位置で導入することができる。示されるように、本発明のこの方法では、反応器中の1つ以上の位置は、第1のカーボンブラック供給原料が注入又は導入される1つ以上の位置の下流(複数可)である。低収率カーボンブラック供給原料の導入は、例えば、
図4A及び
図4Bに示されるように、反応器の燃焼チャンバ内に供給原料を導入する1つ以上のインジェクタ(例えば、反応器の壁上に位置する金属パイプ(複数可))を用いて行うことができる。インジェクタは、先端にインジェクタヘッド又はスプレーヘッドを有することができる。先端上のインジェクタは、例えば、先端の周囲に1つ以上の穴(2つ又は3つ又は4つ又はそれ以上)を有することができる(概略均等に離間された複数の穴)。
【0106】
選択肢として、低収率カーボンブラック供給原料の反応器及び反応流への導入は、例えば、
図4A及び
図4Bに示されるように、供給原料が反応器を通る反応流の横方向の流れに対して垂直に導入されるようにすることができる。垂直は、反応流への供給原料の真の垂直注入から±15度であり得る。
【0107】
選択肢として、低収率カーボンブラック供給原料の反応器への導入は、第1のカーボンブラック供給原料が先に導入された反応器の直径よりも狭い直径を有する位置であり得る。この位置は、いくつかのカーボンブラック反応器における「スロート」とみなすことができる。
図4A及び
図4Bは、反応器におけるこのスロート又はスロート領域の例を提供する。このより狭い直径は、第1のカーボンブラック供給原料が先に導入された反応器の直径よりも少なくとも10%小さい、少なくとも20%小さい若しくは少なくとも30%小さい、又は10%~40%小さい直径を有することができる。
図5では、これはDチャンバ75対Dスロート76である。
【0108】
選択肢として、低収率カーボンブラック供給原料の反応器及び反応流への導入は、第1のカーボンブラック供給原料が反応器に導入又は注入される場所から距離D
A(
図5では、この距離はLパイプ、78として示される)の位置で行うことができ、このD
Aは、反応器の燃焼チャンバの最も狭い直径の少なくとも1倍又は少なくとも2倍である(又は、第1のカーボンブラック供給原料が導入若しくは注入された反応器の直径の少なくとも2倍である)。この距離は、反応器の燃焼チャンバの直径の少なくとも2.25倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.75倍、少なくとも3倍、少なくとも3.25倍、少なくとも3.5倍、少なくとも3.75倍、又は少なくとも4倍であり得る(又は、第1のカーボンブラックが導入若しくは注入された反応器の直径の少なくとも2.25倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.75倍、少なくとも3倍、少なくとも3.25倍、少なくとも3.5倍、少なくとも3.75倍、若しくは少なくとも4倍である)。
【0109】
低収率カーボンブラック供給原料は、1つ以上のインジェクタを通して位置83で導入することができる。
【0110】
供給原料(第1のカーボンブラック供給原料及び低収率カーボンブラック供給原料)が反応流と混合された後、本発明の方法は一般に、反応を急冷する工程を含む。
図5では、これは急冷スプレー81である。80として示されるスロート76の後の反応ゾーンは、最大直径D反応器を有する。L急冷は、低収率カーボンブラック供給原料が導入される場所から急冷が起こる場所までの長さを示す。
【0111】
反応は、反応器の急冷ゾーン(
図4Aのゾーン8参照)で停止される。
図4Aに示すように、急冷8は、反応ゾーン4の下流に位置し、水などの急冷流体を新たに形成されたカーボンブラック粒子の流れの中に噴霧する。一般に、急冷は、カーボンブラック粒子を冷却し、ガス流の温度を低下させ、反応速度を低下させるのに役立つ。Qは、反応ゾーン4の開始点から急冷点8までの距離であり、急冷の位置に応じて変化する。任意選択で、急冷は段階的であってもよく、又は反応器中のいくつかの点で行われてもよい。圧力スプレー、ガス噴霧スプレー、又は他の急冷技術も利用できる。カーボンブラックを形成するための反応を完全に急冷することに関して、カーボンブラック製造供給原料の導入の下流で反応を急冷するための当業者に既知のいかなる手段が使用されてもよい。例えば、水又は他の適切な流体であってもよい急冷流体を注入し、化学反応を停止させることができる。
【0112】
急冷後、冷却されたガス及びカーボンブラックは、任意の従来の冷却手段、及びそれによって生成物が回収される分離手段へと下流に通過する。ガス流からのカーボンブラックの分離は、集塵器、サイクロン分離器、バッグフィルター、又は当業者に既知の他の手段などの従来の手段によって容易に達成される。カーボンブラックをガス流から分離した後、カーボンブラックを任意選択でペレット化工程に付すことができる。
【0113】
本発明の方法のいずれについても、選択肢として、製造されるカーボンブラックは、コア及びコーティングを有するカーボンブラックではない。
【0114】
本発明の方法のいずれについても、選択肢として、カーボンブラックは、反応器中でin situで完全に形成される。
【0115】
選択肢として、本発明の方法で使用されるカーボンブラック供給原料又は他の成分のいずれか1つ以上を、反応器への導入前に予熱することができる。例えば、1963年6月25日にAustinに発行された米国特許第3,095,273号、1966年11月29日にOrbachに発行された米国特許第3,288,696号、1976年10月5日にChengらに発行された米国特許第3,984,528号、1982年2月16日にChengらに発行された米国特許第4,315,901号、1988年8月23日にGravleyらに発行された米国特許第4,765,964号、1999年12月7日にLynumらに発行された米国特許第5,997,837号、2006年8月29日にGodalらに発行された米国特許第7,097,822号、2014年10月28日にNesterらに発行された米国特許第8,871,173(B2)号又はカナダ特許第682982号(全ての文書は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、適切な予熱温度及び/又は予熱技術を本発明で使用することができる。あるいは又は加えて、低収率カーボンブラック供給原料は、高収率供給原料に関して典型的な温度よりも高い温度に予熱されてもよい。例えば、低収率カーボンブラック供給原料は、周囲圧力であっても、600℃を超える温度、例えば、600~800℃に加熱され得る。低収率カーボンブラック供給原料は低濃度のアスファルテンを有するので、そのような高温への加熱は、有意な量のコークス又は他の固体非カーボンブラック種を生成しない。あるいは又は加えて、例えば、Unrauへの米国特許第10,829,642号(この全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、カーボンブラック供給原料のいずれか1つ以上を、反応器に導入する前に、増量剤流体と混合してもよい。
【0116】
選択肢として、本方法は、周期表の少なくとも1種のIA族又はIIA族元素(又は、そのイオン)であるか、又はそれを含有する少なくとも1種の物質の非存在下で行われる。
【0117】
選択肢として、本発明の方法のいずれかでは、本方法は、周期表の少なくとも1種のIA族又はIIA族元素(又は、そのイオン)であるか、又はそれを含有する少なくとも1種の物質を導入する工程を含むことができる。好ましくは、物質は、少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する。例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、若しくはラジウム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの成分の1つ以上の任意の混合物は、物質中に存在することができる。物質は、固体、溶液、分散体、気体、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。同じ若しくは異なるIA族又はIIA族金属を有する2種以上の物質を、使用することができる。複数の物質が使用される場合、これらの物質は、一緒に、別個に、連続して、又は異なる反応位置で添加され得る。本発明の目的のために、物質は、金属(又は、金属イオン)自体、これらの元素の1種以上を含有する化合物(これらの元素の1種以上を含有する塩を含む)などであり得る。好ましくは、物質は、カーボンブラック生成物を形成するために進行中の反応に金属又は金属イオンを導入することができる。本発明の目的のために、好ましくは、物質は、上記のような完全な急冷の前に導入される。例えば、物質は、カーボンブラック製造供給原料の一方若しくは両方の導入前、カーボンブラック製造供給原料のいずれか一方若しくは両方の導入中に、カーボンブラック製造供給原料のいずれか若しくは全ての導入後、又は、全ての供給原料の導入後であるが完全な急冷前、を含む、完全な急冷前の任意の時点で添加することができる。物質の2つ以上の導入点を、使用することができる。IA族又はIIA族金属含有物質の量は、カーボンブラック生成物が形成され得る限り、いかなる量であってもよい。例えば、物質の量は、200ppm以上のIA族又はIIA族元素が最終的に形成されるカーボンブラック生成物中に存在するような量で、添加することができる。形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族又はIIA族元素の他の量としては、約200ppm~約5000ppm以上が挙げられ、他の範囲は、約300ppm~約1000ppm、又は約500ppm~約1000ppmであってもよい。これらのレベルは、金属イオン濃度に関するものであり得る。上述したように、形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族又はIIA族元素のこれらの量は、1種の元素又は2種以上のIA族若しくはIIA族元素に関するものであってよく、したがって、形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族又はIIA族元素の合計量である。物質は、任意の従来の手段を含む任意の様式で添加され得る。換言すれば、物質は、カーボンブラック製造供給原料が導入されるのと同じ方法で添加することができる。物質は、気体、液体、若しくは固体、又はこれらの任意の組み合わせとして添加することができる。物質は、一箇所又は数箇所で添加することができ、単一流又は複数流として添加することができる。物質は、供給原料、燃料及び/又は酸化剤と、それらの導入前又は導入中に混合することができる。
【0118】
本発明の方法のいずれかによって形成されるカーボンブラックに関して、形成又は製造されるカーボンブラックは、任意の強化グレード又は非強化グレードのカーボンブラックであり得る。強化グレードの例は、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、及びN375である。半強化グレードの例は、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、及び/又はN990である。
【0119】
カーボンブラックは、ファーネスブラックであってもよい。
【0120】
カーボンブラックは、比表面積、ストラクチャー、凝集体サイズ、形状、及び分布、並びに/又は表面の化学的及び物理的特性によって特徴付けることができる。カーボンブラックの特性は、当技術分野で既知の試験によって分析的に決定される。例えば、窒素吸着表面積、及び表面積の別の尺度である統計的厚さ表面積(STSA)は、ASTM試験手順D6556に従う窒素吸着によって決定される。ヨウ素価は、ASTM手順D-1510を用いて測定することができる。カーボンブラック「ストラクチャー」は、一次カーボンブラック粒子が互いに融合することによって形成される、カーボンブラックの凝集体のサイズ及び複雑さを表す。本明細書で使用する場合、カーボンブラックストラクチャーは、ASTM D-2414に記載されている手順に従って、100グラムのカーボンブラック当たりの油のミリリットル数として表される、未粉砕カーボンブラックの吸油量(OAN)として測定することができる。圧縮試料吸油量(COAN)は、機械的応力の適用によって容易に変化しない、カーボンブラックストラクチャーの部分を測定する。COANは、ATSM D3493に従って測定される。凝集体サイズ分布(ASD)は、Brookhaven Instrument製のモデルBI-DCPを備えたディスク遠心光沈降計を使用して、ISO15825法に従って測定される。
【0121】
特定の用途に適した特性を有するカーボンブラック材料は、ASTM規格(例えば、ASTM D1765 Standard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Productsを参照されたい)、例えば、N100、N200、N300、N500、N600、N700、N800若しくはN900シリーズのカーボンブラック、例えば、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787若しくはN990カーボンブラック、又は他の商用グレード規格によって選択及び定義され得る。
【0122】
カーボンブラックは、5m2/g~250m2/g、11m2/g~250m2/g、20m2/g~250m2/g又はそれ以上、例えば、少なくとも70m2/g、例えば、70m2/g~250m2/g、又は80m2/g~200m2/g、又は90m2/g~200m2/g、又は100m2/g~180m2/g、110m2/g~150m2/g、120m2/g~150m2/gなどの範囲などの任意のSTSAを有することができる。選択肢として、カーボンブラックは、約5~約35mg I2/gカーボンブラックのヨウ素価(I2 No)を有することができる(ASTM D1510による)。
【0123】
本明細書に開示されるカーボンブラック粒子は、ASTM D6556の手順に従ってBrunauer/Emmett/Teller(BET)技術によって測定される、5m2/g~300m2/g、例えば、50m2/g~300m2/g、例えば、100m2/g~300m2/gのBET表面積を有することができる。BET表面積は、約100m2/g~約200m2/g又は約200m2/g~約300m2/gであり得る。
【0124】
吸油量(OAN)は、40mL/100g~200mL/100g、例えば、60mL/100g~200mL/100g、例えば、80mL/100g~200mL/100g、例えば、100mL/100g~200mL/100g、又は120mL/100g~200mL/100g、140mL/100g~200mL/100g、160mL/100g~200mL/100g、又は、例えば、40mL/100g~150mL/100g、又は40mL/100g~150mL/100gであり得る。
【0125】
COANは、約40mL/100g~約150mL/100g、例えば、約55mL/100g~約150mL/100g、例えば、約80mL/100g~約150mL/100g、又は約80mL/100g~約120mL/100gの範囲内であり得る。
【0126】
カーボンブラックは、ケイ素含有種及び/又は金属含有種などを含有する炭素生成物であることができ、これは、そのような種をカーボンブラック製造供給原料のいずれか又は両方と共に、又はそれに加えて導入する更なる工程を含むことによって達成することができる。カーボンブラックは、本発明の目的のために、少なくとも1つのカーボン相及び少なくとも1つの金属含有種相又はケイ素含有種相を含む、多相凝集体(ケイ素処理カーボンブラックとしても既知であり、例えば、Cabot Corporation製ECOBLAK(商標)材料など)であり得る。
【0127】
上述したように、カーボンブラックは、ゴムブラック、特に、強化グレードのカーボンブラック又は半強化グレードのカーボンブラックであり得る。
【0128】
選択肢として、本発明のカーボンブラックは、カーボン表面に直接結合している(例えば、共有結合している)官能基又は化学基(例えば、イオン性若しくは非イオン性の小分子又はポリマーに由来する)を有することができる。カーボンブラック粒子の表面に直接結合(例えば、共有結合)することができる官能基の例及び表面改質を実施するための方法は、例えば、1996年9月10日にBelmontに発行された米国特許第5,554,739号及び1999年7月13日にJohnsonらに発行された米国特許第5,922,118号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。一例として、ここで使用することができる表面改質カーボンブラックは、スルファニル酸又はパラ-アミノ-安息香酸(PABA)のいずれかとHCl及びNaNO2との反応によって形成される、ジアゾニウム塩でカーボンブラックを処理することによって得られる。例えば、ジアゾニウム塩を使用するスルファニル酸又はパラ-アミノ-安息香酸プロセスによる表面改質は、カーボンコーティング上に有効量の親水性部分を有するカーボンブラックをもたらす。
【0129】
カーボンブラックは、Belmontらへの米国特許第8,975,316号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って表面改質することができる。
【0130】
カーボンブラックの表面に結合した官能基を提供するために使用することができる他の技術は、2007年11月27日にNiedermeierらに発行された米国特許第7,300,964号に記載されている。
【0131】
酸化(改質)カーボンブラックは、例えば、2011年4月12日にKowalskiらに発行された米国特許第7,922,805号及び2002年10月29日にKarlに発行された米国特許第6,471,763号(これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、カーボンブラックに対して使用されるものと同様の方法で調製することができる。酸化カーボンブラックは、イオン性基及び/又はイオン化可能基を表面上に導入するために酸化剤を使用して酸化されたものである。そのような粒子は、表面上により高い程度の酸素含有基を有し得る。酸化剤としては、酸素ガス、オゾン、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムを含む過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜ハロゲン酸塩、硝酸などの酸化性酸、並びに過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム又は硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤の混合物、特に、酸素及びオゾンなどのガス状酸化剤の混合物も使用することができる。塩素化及びスルホニル化などの他の表面改質方法も、イオン性基又はイオン化可能基を導入するために使用することができる。カーボンブラックは、当業者に既知の任意の方法によって表面改質されてもよい。例えば、カーボンブラックは、米国特許第10767028号(その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、熱処理されてもよい。
【0132】
カーボンブラックは、様々な用途、例えば、ゴム製品、例えば、タイヤ構成要素における補強剤として利用することができる。
【0133】
カーボンブラックは、例えば、タイヤトレッド、特に、乗用車、軽車両、トラック及びバスのタイヤ、オフロード(「OTR」)タイヤ、飛行機タイヤなどのトレッド;サブトレッド;ワイヤスキム;サイドウォール;リトレッドタイヤ用のクッションゴム;及び他のタイヤ用途に使用される、ゴム物品に組み込むことができる。
【0134】
他の用途では、粒子は、エンジンマウント、ハイドロマウント、橋梁支承及び免震装置、タンクトラック又はトレッド、採鉱ベルト、ホース、ガスケット、シール、ブレード、隙間充填物品、バンパー、防振部品などの工業用ゴム物品に使用することができる。
【0135】
カーボンブラックは、タイヤ構成要素及び/若しくは他の工業用ゴム最終用途のための第1の補強剤の代わりに又はそれに加えて添加することができる。カーボンブラックは、内部バッチミキサー、連続ミキサー若しくはロールミルに基づく適切な乾式、若しくは湿式混合プロセスにおいて、天然及び/又は合成ゴムと混合することができる。
【0136】
あるいは、カーボンブラックは、液体マスターバッチプロセスによってゴムに混合されてもよい。例えば、本明細書に記載される粒子を含有するスラリーはまた、バット中でエラストマーラテックスと混合され、次いで、米国特許第6,841,606号に記載される技術を使用して、酸などの凝固剤の添加によって凝固され得る。
【0137】
カーボンブラックは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2000年4月11日にMabryらに発行された米国特許第6,048,923号に従って導入することができる。例えば、エラストマーマスターバッチを調製するための方法は、粒状充填剤流体及びエラストマーラテックス流体を凝固反応器の混合ゾーンに同時に供給することを含むことができる。凝固ゾーンは混合ゾーンから延在し、好ましくは、入口端から排出端まで下流方向に断面積が次第に増加する。エラストマーラテックスは、天然又は合成のいずれであってもよく、粒子状充填剤は、上記のような材料を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。粒状充填剤は、好ましくは、注入流体の連続高速ジェットとして混合ゾーンに供給され、ラテックス流体は、低速で供給される。粒子状充填剤流体の速度、流量及び粒子濃度は、凝固ゾーンの少なくとも上流部分内でのラテックス流体の高せん断による混合と、混合物の流れの乱れによる混合と、を引き起こすのに十分であり、それによって、排出端の前にエラストマーラテックスを粒子状充填剤と共に実質的に完全に凝固させる。実質的に完全な凝固は、酸又は塩の凝固剤を必要とせずに起こり得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,075,084号に開示されているように、追加のエラストマーを、凝固反応器の排出端から出てくる材料に添加してもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,929,783号に開示されているように、次に、凝固物を、脱水押出機に供給することができる。好適なマスターバッチプロセスの他の例は、Chungらへの米国特許第6,929,783号、Berriotらの米国特許出願公開第2012/0264875(A1)号、Yanagisawaらの米国特許出願公開第2003/0088006(A1)号、及びYamadaらに発行された欧州特許第1834985(B1)号に開示されている。
【0138】
カーボンブラックは、天然又は合成ゴムを利用して、適切なゴム配合物中で評価することができる。使用されるカーボンブラックの適切な量は、通常の実験、計算によって、比較可能な製造プロセスにおける標準的なASTMファーネスブラックの典型的な充填量、使用される技術及び/又は装置に特有のパラメータ、他の添加剤の有無、最終製品の所望の特性などの要因を考慮することによって、決定することができる。
【0139】
ゴムコンパウンドのための補強剤としてのカーボンブラックの性能は、例えば、粒子を利用するゴム組成物の性能を、所定の用途に適したカーボンブラックグレードの使用を除いて全ての点で同様である比較ゴム組成物の性能と比較して、決定することによって評価することができる。他のアプローチでは、本発明に従って調製された組成物について得られた値は、所定の用途における所望のパラメータに関連するような当技術分野で既知の値と比較され得る。
【0140】
適切な試験としては、生ゴム(green rubber)試験、硬化試験、及び硬化ゴム試験が挙げられる。適切な生ゴム試験の中で、ASTM D4483は、100℃でのML1+4ムーニー粘度試験のための試験方法を示す。スコーチ時間は、ASTM D4818に従って測定される。
【0141】
硬化曲線は、ASTM D5289に従って、0.5°、100cpm、及び150℃(NR)~160℃(SBR)で、ゴム加工試験機(RPA2000)によって得られる。
【0142】
硬化試料の性能特性は、一連の適切な試験によって決定することができる。引張強度、破断点伸び、及び様々な歪み(例えば、100%及び300%)での応力は全て、ASTM D412方法Aによって得られる。貯蔵弾性率、損失弾性率、及びtanδを含む動的機械的特性は、10Hz、60℃、及び0.1%~63%の様々な歪み振幅での歪み掃引試験によって得られる。ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定される。ダイB型硬化ゴム試料の引裂強度は、ATSM D624に従って測定される。
【0143】
未分散面積は、様々な報告された方法に従って、切断断面積の硬化ゴムコンパウンドについて反射モード光学顕微鏡によって得られた画像を分析することによって計算される。分散は、Z値(S.Otto and Al in Kautschuk Gummi Kunststoffe,58Jahrgang,NR7-8/2005,New Reference value for the description of Filler Dispersion with the Dispergrader1000NTと題された論文に記載されている方法に従って、網状化後に測定される)によっても表すことができる。規格ISO 11345は、ゴム中のカーボンブラック及びカーボンブラック/シリカのマクロ分散度の迅速かつ比較による評価のための視覚的方法を規定している。
【0144】
耐摩耗性は、Cabot Abrader(Lambourn型)による硬化ゴムの摩擦損失に基づく指数として定量化される。魅力的な耐摩耗性の結果は、有利な摩耗特性を示すことができる。良好なヒステリシス結果は、自動車タイヤ用途のための低い転がり抵抗(及び、対応してより高い燃料経済性)、低減された熱の蓄積、タイヤ耐久性、トレッド寿命及びケーシング寿命、自動車のための燃料経済性特徴などと関連付けられ得る。
【0145】
ヨウ素価(I2No.)は、ASTM試験手順D1510に従って決定される。STSA(統計的厚さ表面積)は、ASTM試験手順D-5816に基づいて決定される(窒素吸着によって測定される)。OANは、ASTM D2414に基づいて決定される。COANは、ASTM D3493(例えば、D3493-20)に基づいて決定される。
【0146】
他に特定されない限り、本明細書においてパーセントとして記載される全ての材料比率は、重量パーセントである。
【0147】
本発明は、以下の実施例によって更に明らかにされるが、これらの実施例は、本質的に単なる例示であることが意図される。
【実施例】
【0148】
実施例
【0149】
本発明及び本明細書に提示される実施例の目的のために、いくつかの用語の以下の説明が提供される。
【0150】
当量比:部分酸化プロセスについての全当量比ΦOとは、全ての投入燃料及び供給原料の化学量論的燃焼に必要な酸化剤のモル流量を、実際の酸化剤のモル流量で割った比である。したがってΦOが1より大きい場合、混合物は燃料リッチであり、1より小さい場合、混合物は燃料リーンである。カーボンブラックの製造は、好ましくは、ΦOが実質的に燃料リッチ、典型的には1.6より大きい場合に行われる。
【0151】
高温燃焼ガスを生成する燃焼チャンバについての当量比ΦPとは、供給されるバーナー燃料及び酸化剤の量によって定義される。ΦPは、典型的には燃料リーンであり、0.33~0.9の値をとる。
【0152】
当量比Φ
Iは、燃焼チャンバに、
図5に示される中央パイプで導入される任意の追加の燃料又はフィードを加えた当量比であるが、スロートで導入されるフィードは除外される。
【0153】
収率:収率Yは、
図5の燃焼チャンバに使用される天然ガスを含まない、カーボンブラック反応器に注入される供給原料の総質量当たりに得られる固体炭素の質量であり、単位は[kg C/kg供給原料]である。Yは、反応器内で生成された固体炭素の総質量流量を供給原料の総質量流量で割ったものに等しく、これは、本明細書の実施例では、供給原料、バーナー燃料及び全ての酸化剤の投入流量、並びに生成されたテールガスの組成を測定することによって測定される。
【0154】
炭素含有量:炭素含有量[C]は、[kg C/kg供給原料]の単位での、反応器に導入される全てのカーボンブラック供給原料の質量平均炭素含有量であり、供給原料を介して反応器に入る炭素原子の総質量流量を供給原料の総質量流量で割ったものに等しい。この値は、デカント油及びエチレン供給原料の測定された流量、並びにそれらの測定された元素組成に従って計算される。
【0155】
無次元収率:無次元収率Y/[C]は、上記収率を炭素含有量で割ったものである。これは、得られた最大可能収率の割合を表す。例えば、Y/[C]=0.5である場合、これは、反応器に入る供給原料炭素の1/2が固体炭素に変換されたことを意味する。残りは、気相種として失われた。
【0156】
トルエン抽出可能成分、I2、STSA、OAN、及びCOAN
【0157】
OAN及びCOANは乾燥ペレットについて分析され、上記で特定されたASTM規格に従う。I2価及びSTSAは、上記で特定されたASTM法によって乾燥ペレットについて分析される。
【0158】
反応器の構成及び操作
【0159】
実施例では、デカント油を第1のカーボンブラック供給原料として使用し(表5)、エチレンガスを低収率カーボンブラック供給原料又はガス状カーボンブラック供給原料として使用した。
【0160】
図5に示すように、カーボンブラックファーネス法を利用して、天然ガス及び高温空気を燃焼チャンバ内で混合し、高温燃焼ガス流を提供する。この燃焼ガスは、燃料リーン(酸化剤リッチ)であり、典型的には0.32~0.8の当量比Φ
Pを有していた。燃焼チャンバは耐火物でライニングされており、その内径は表3に示されている。
【0161】
いくつかの実施例では、
図5に示すように、中央パイプ73を用いて供給原料の一部を導入した。このパイプは、スロートのほぼ中心線上に水平に配置された。パイプの外径は5.4cmであった。パイプを通る供給原料が液体デカント油である場合、中央パイプの長軸に垂直な6つの等間隔の開口穴を有する円形全面スプレー又は圧力スプレーを使用した。
【0162】
中央パイプ内の供給原料が低収率カーボンブラック供給原料であるエチレンであった場合、
図5に示されるようなガスインジェクタ77が、実施例の表に示される寸法で使用された。このガスインジェクタ(
図6A、先端の周りに半径方向に等間隔に配置された合計3つの穴のうちの1つの穴610を示す)又は
図6B(1つの穴611を有する同軸ガスインジェクタ)を、中央パイプの端部に取り付けた。供給原料がこのように注入されなかった場合、中央パイプを取り外した。
【0163】
次に、チャンバからの燃焼ガスは、使用される場合には中央パイプ(
図5参照)で導入された供給原料と共に、より狭いスロート(
図5の76)に入るように縮小部に送られた。スロートにおいて、スロートの内周の周りに均等に配置された3つのガスインジェクタを使用して、低収率カーボンブラック供給原料エチレンを注入した。インジェクタは、内径約2cmのまっすぐな金属管であった。これらは、
図5に示すように、流れの方向に対して垂直に配置された。
【0164】
スロートを、耐火物でライニングされた反応器チャンバに取り付けた。反応器チャンバは、供給原料がカーボンブラック粒子への熱分解を完了するための滞留時間を提供した。
図5に示される注入面の下流の距離L急冷で、カーボンブラックファーネス法に典型的であるように、水噴霧を使用して急冷した。急冷の下流で、フィルターを使用し、テールガス流からカーボンブラック粒子を分離した。フィルターにあるカーボンブラックを、I
2吸収及びトルエン抽出可能成分のためにサンプリングした(S20)。次に、カーボンブラックをペレット化し、STSA、OAN及びCOANの測定のために乾燥させた。
【0165】
濾過されたテールガスをサンプリングし、その組成を各条件について測定し、収率を決定した。
【表4】
【0166】
図5の燃焼チャンバに供給された天然ガスは、実施例について表4に示す通りの測定された平均組成を有していた。成分はガスクロマトグラフィーにより測定した。
【表5】
【0167】
表4.実験データの天然ガス平均組成
【0168】
実施例で使用したエチレンは純度99%(重量)のエチレンであり、これ以上分析しなかった。
【0169】
これらの実施例における液体デカント油は、表2の供給原料Gであり、そこに列挙される特性、並びに以下の表5で示される特性を有していた。
【0170】
【0171】
結果
【0172】
表6~表9は、
図5のファーネス法におけるカーボンブラックの製造の例を示す。実施例1~実施例5及び実施例11~実施例13は、低収率カーボンブラック供給原料エチレンが炉中で単独で、スロート中、中央パイプ中、又はエチレンの一部を中央パイプ中で、続いて残りをスロートに注入するという段階分けのいずれかで使用された場合に何が起こるかを示す。実施例6~実施例10及び実施例14~実施例18は、エチレン単独の場合と比較して、本発明の利点を示す。本発明では、全供給原料のうちの少量は、中央パイプを介して注入される第1のカーボンブラック供給原料であり、低収率カーボンブラック供給原料であるエチレンはスロートに注入された。
【0173】
結果に示されるように、低収率カーボンブラック供給原料単独の使用は、所定の表面積に対して低い収率をもたらし(
図7、
図8)、ストラクチャー能力(OAN又はCOANによって示されるように)はほとんどのASTMカーボンブラックグレードに適合するには低すぎた(
図9、
図10)。理論に束縛されるものではないが、これらの結果は、少なくとも部分的には、第1のカーボンブラック供給原料と比較して、低収率カーボンブラック供給原料の芳香族含有量が低いことに起因し得る。
【0174】
本明細書の実施例によって少なくとも部分的に示されるように、本発明によっていくつかの利点が得られる。第1に、本発明を実施した場合、低収率カーボンブラック供給原料を単独で使用した場合と比較して、無次元収率が大幅に向上する。第2に、高ストラクチャーに達する能力は、本発明の方法の使用によって大幅に増大する。低収率カーボンブラック供給原料単独の段階分け(実施例4及び実施例5)は、これらのゲインを達成しない。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0175】
収率の改善
【0176】
図7は、実施例1~実施例5及び実施例6~実施例10から得られた無次元収率を表面積に対してプロットしたものである。データポイント上の番号表示は、表6~表9の実施例番号を指す。実施例1~実施例5では、エチレンが使用される唯一の供給原料である。実施例1では、エチレンはスロートのみに注入される。実施例2及び実施例3では、エチレンは、同軸インジェクタを使用して、中央パイプのみを使用して注入される(
図6B)。実施例4及び実施例5では、エチレン供給原料の一部を中央パイプで段階分けし(35質量%及び50質量%)、残りをスロートを使用して注入する。
【0177】
プロットの実施例6~実施例10は、実施例1~実施例5と比較した場合の本発明の効果を示す。実施例6~実施例10では、供給原料の一部(25質量%又は40質量%)をデカント油とし、表7に示すように中央パイプを通して注入した。これらの実施例についての無次元収率は全て、低収率カーボンブラック供給原料単独で達成されたものを十分に上回っていた。特に、
図7の実施例1、実施例3、実施例4及び実施例5を、実施例6及び実施例7と比較されたい。比較的少量(25%)の第1のカーボンブラック供給原料の使用は、30~35m
2/g STSAの所定の表面積範囲において、得られる収率を大幅に増加させた。
【0178】
一般に、無次元収率は、他の条件を一定に保持して、カーボンブラックファーネス法における表面積の増加と共に減少する。これは、表面積が大きいがより高い温度を必要とし、より多くの酸化及び固体炭素へのより少ない収率をもたらすためである。したがって、無次元収率対表面積のプロットは、おおよそ、表面積の増加に伴う低下傾向になる。この効果は、
図7の楕円で強調されている。本発明で製造されたカーボンブラックの分類(実施例6~実施例10)は、その収率がエチレン単独から製造されたもの(実施例1~実施例5)よりもはるかに高い傾向線上にある。
【0179】
また、エチレン供給原料単独の段階分け(実施例4及び実施例5)は、所定の表面積で得られる収率をあまり改善しないことに留意されたい。第1のカーボンブラック供給原料又は高芳香族含有量材料は、効果を生じるために第1の段階において必要とされるように見える。
【0180】
表8及び表9は、Φ
Pがより高い値を有する、同様の一式の例を提示している。結果を、
図8にプロットする。実施例11、実施例12は、エチレンのみをスロート又は中央パイプのいずれかで注入したことから、本発明の態様を伴わない操作を表す。実施例14~実施例18は、少量のデカント油を中央パイプを介して供給したときの本発明の利点を示す。再び、
図7と同様に、本発明は、所定の表面積で達成可能な収率を大幅に増加させ、この順位は、Φ
Pとは無関係に維持される。ここでも、本発明で製造されたカーボンブラックの分類(実施例14~実施例18)は、その収率がエチレン単独から製造されたもの(実施例11、実施例12)よりもはるかに高い傾向線上にあった。
【0181】
特定の理論に束縛されるものではないが、第1段階で導入される第1のカーボンブラック供給原料からの種粒子の生成は、重要ではないか、又は少なくとも本発明による収率増加の効果を生み出す唯一の要因ではないと仮定される。実施例6及び実施例7についてのΦIの値は1.6未満であり、中央パイプの油からカーボンブラック粒子がほとんど製造されなかったことを示唆している。それにもかかわらず、収率の利益が達成された。したがって、効果は、少なくとも部分的にデカント油の芳香族含有量に起因し得る。
【0182】
固定表面積でのストラクチャーの改善
【0183】
本発明の第2の利点は、
図9に示すように、所定の表面積で達成可能なストラクチャーの実質的な増加を提供することであった。この図では、データポイント上の番号表示は、表6~表9の実施例番号を指す。白色菱形点上の「N」の表示は、所定の表面積における粒子ストラクチャーに対するASTMグレード要件を指す。ここに示した全ての実施例は、アルカリ金属添加剤を使用しておらず、したがって、記載した操作構成に対して達成可能な最大のストラクチャーを示している。見てわかるように、芳香族が欠乏した低収率カーボンブラック供給原料単独(実施例1、実施例3及び実施例5)では、非常に低ストラクチャーのカーボンブラックグレードが得られた。本発明の使用では、はるかに高い最大ストラクチャーが得られた(実施例6~実施例10)。
【0184】
実施例3に示されるように、エチレン供給原料単独の段階分けは、低収率カーボンブラック供給原料から達成可能なストラクチャーをほとんど改善しなかったことも注目される。代わりに、芳香族リッチな、すなわち、第1のカーボンブラック供給原料は、第1段階で注入されなければならないように見える。
【0185】
図9に含まれるのは、一般的な、ASTMに記載されたカーボンブラックグレードの典型的なストラクチャーを表す点である(白色菱形)。これは、本発明が、それ自体では一般的なカーボンブラックグレードを製造することができない供給原料をどのように使用することができるかを説明し、そのような供給原料を使用してこれらのグレードを製造する方法を提供するのに役立つ。
【0186】
同様に、
図10は、表8及び表9からのストラクチャー対表面積を示す。再び、本発明は、低収率カーボンブラック供給原料の上流に芳香族リッチ供給原料を注入することによって、一般的なカーボンブラックグレードに必要とされるストラクチャー及び表面積を得ることができるが、低収率カーボンブラック供給原料単独では、これは、通常のカーボンブラックファーネス法では不可能であることを示す。
【0187】
表10A及び表10Bの実施例19~実施例26、並びにこれらに基づく図は、低収率カーボンブラック供給原料が重質タイヤ熱分解油、すなわち、HTPOであった例を示す。HTPOは、使用済みタイヤ断片の熱分解によって生成される、リサイクル油である。次に、油を蒸留し、「重質」又はより高い比重の油留分を生成する。これらの実施例に使用したHTPOは、表11に示す特性を有していた。これらの実施例のための従来の供給原料は、同様に示される、デカント油であった。
【表11】
【表12】
【表13】
*トウモロコシ油について375℃の平均沸点から推定。
【0188】
実施例19~実施例26の反応器構成を、
図5に示す。この構成の重要な寸法を、表12に示す。これらの実施例では、場合によって、全供給原料の一部(デカント油、又はデカント油とHTPOとのブレンドのいずれか)を、表12に示すインジェクタを使用して中央パイプ73に注入した。全供給原料の残りを、
図5のスロート76に注入した。スロートインジェクタは、スロートの周囲に等間隔で配置された直径0.7~1.5mmの4本の小管のセットであり、それらがクロスフローに対して垂直に向くように設置された。スロートインジェクタのサイズは、液体供給原料がスロートのクロスフローに十分に浸透するように選択された。
【表14】
【0189】
図11に示されるように、純粋なHTPOを使用した場合、単一の注入位置では、OANによって測定されるストラクチャーは低かった(実施例19及び実施例20)。実施例21及び実施例22では、30%のデカント油と70%のHTPOとのブレンドがスロートで使用され、ストラクチャーが増加する。実施例23及び実施例24では、総供給原料量の30%を中央パイプで注入し、残りをスロートで注入したことを除いて、この同じブレンドを使用した。実施例25及び実施例26では、デカント油を純粋な供給原料として中央パイプに注入し、一方、HTPOを純粋な供給原料としてスロートに注入し、デカント油が注入される全供給原料の30%を構成し、HTPOが70%を構成するようにした。第1のカーボンブラック供給原料が従来の供給原料であり、低収率供給原料が下流に注入されたこの方法が、最大のストラクチャー能力を生み出した。
【0190】
表13の実施例27、実施例28は、
図4Bに示されるような構成が使用された実施例を示す。表14は、これらの実施例で使用した反応器の寸法を示す。
図12は、これらの実施例を、実施例21及び実施例22と共にプロットしている。
【表15】
【表16】
【0191】
図12の全ての実施例は、30%のデカント油と70%のHTPOの全体的な供給原料混合物を使用した。この混合物を
図5の構成を有する単一スロートに注入した場合、比較的低いストラクチャーが得られる(実施例21及び実施例22)。この低ストラクチャーは、部分的に、実施例27及び実施例28と比較して、相対的に高いアルカリ添加剤の結果であったが、実施例21及び実施例22は、アルカリが使用されない場合であっても、最も低いストラクチャーである。同じ混合物が2つのスロート位置に注入された場合、より高いストラクチャーが得られた(実施例28)。しかしながら、全ての第1の供給原料、すなわち従来の供給原料が第1のスロートに注入され、低収率供給原料のみを第2のスロートで使用した場合、所定の表面積でより高いストラクチャーが達成された(実施例27)。データポイント上の点線表示はあくまでも目安であり、その傾きは実施例22と実施例21の間の傾きと一致する。
【0192】
表15の実施例29~実施例33は、低収率供給原料が植物油、この場合は蒸留トウモロコシ油であった場合の実施例を示す。表11は、実験で使用したこの植物油の特性を示す。これらの実施例の反応器構成は、表12のような寸法で
図4Bに示される。
【表17】
【0193】
図13は、弱い供給原料のストラクチャー能力を向上させる、例示的な実施形態の能力を示す。これらの実施例は全て、カーボンブラック供給原料として、30%のデカント油及び70%の蒸留トウモロコシ油を使用した。実施例29及び実施例30では、これらの2つの供給原料を直接ブレンドして、反応器の単一のスロートに注入した。これは、90mL/100g未満のOANを有する、低いストラクチャーをもたらす。実施例31では、2つのスロートを使用したが、供給原料を直接ブレンドした場合、ストラクチャーはやや改善されたが、依然として低かった。
【0194】
しかしながら、全てのデカント油が第1のスロートのみに入る例示的な実施形態では、実施例32及び実施例33に示すように、ストラクチャーが大幅に増加した。これを行うために、50%デカント油と50%トウモロコシ油とのブレンドを第1のスロートに注入して、100%トウモロコシ油を第2のスロートに注入した。これらの実施例における全体的な供給原料の使用は、実施例29~実施例33と同じであり、使用した全供給原料の30%はデカント油であり、70%は蒸留トウモロコシ油であった。
【0195】
本明細書で提供される実施形態の使用はまた、
図14に示されるように、所定の表面積で達成可能な収率を改善した。30%デカント油及び70%トウモロコシ油の単一スロートへの直接ブレンドは、低収率をもたらした(実施例29及び実施例30)が、デュアルスロートを使用することは、これをわずかに改善しただけであった(実施例31)。しかしながら、全てのデカント油を第1のスロートのみに注入した場合(第1のスロートに50%デカント油及び50%トウモロコシ油、第2のスロートに100%トウモロコシ油)、無次元収率は著しく改善した(実施例32及び実施例33)。
図14の点線は、実施例29及び実施例30で観察された表面積に対する収率の傾きを表す。この種の負の傾きは、ファーネスカーボンブラック法に典型的である。
【0196】
本発明は、以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序及び/又は任意の組み合わせで含む。
1.カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を上記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する上記反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成することと、
反応流中のカーボンブラックを回収することと、
を含み、第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体である、方法。
2.低収率カーボンブラック供給原料は、以下:
a)上記Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)95未満である、又は、
b)室温及び室圧で上記気体である、又は
c)上記原子H:C比1.3超である、又は
d)上記比重1.0以下である、
のうちの少なくとも1つである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
3.低収率カーボンブラック供給原料は、エチレンである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
4.低収率カーボンブラック供給原料は、天然ガスである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
5.低収率カーボンブラック供給原料は、1.02未満の上記比重を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
6.低収率カーボンブラック供給原料は、タイヤ熱分解油、又はタイヤ熱分解油の蒸留若しくは分留から得られる油である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
7.低収率カーボンブラック供給原料は、コールタール液、石油精製液、又はエチレンクラッカー残渣、若しくはフェノールクラッカー残渣以外の供給原料である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
8.低収率カーボンブラック供給原料は、プラスチック熱分解油、高H:C:デカント油、再生可能な供給原料、バイオ由来の供給原料、若しくは精製プロセスの他の副生成物、又はこれらの任意の組み合わせである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
9.上記バイオ由来の供給原料は、以下:植物油若しくは他の植物由来の油、バイオ由来のエタノール、植物若しくは動物性ワックス若しくは樹脂、動物性脂肪から得られる油、藻類油、下水汚泥若しくは農業廃棄物の熱分解から得られる油、生物起源材料の処理からの副生成物液体、生体材料の水熱液化によって生成される液体、粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ若しくはトール油脂肪酸、リサイクル材料から得られる油、低品質タイヤ、不合格タイヤ若しくは寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、廃棄若しくはリサイクルされたプラスチック若しくはゴム製品の熱分解から得られる油、都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、若しくはバイオマスの熱分解から得られる油、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
10.低収率カーボンブラック供給原料は、上記方法において投入される全供給原料の10~90重量%の範囲である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
11.低収率カーボンブラック供給原料は、上記方法において投入される全供給原料の25~90重量%の範囲である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
12.ファーネスカーボンブラック反応器は、燃焼チャンバと、燃焼チャンバの下流のスロートと、スロートの下流の反応チャンバと、反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、第1のカーボンブラック供給原料は、ファーネスカーボンブラック反応器の燃焼チャンバに注入され、低収率カーボンブラック供給原料は、スロートに注入される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
13.燃焼チャンバは、ある直径を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、第1のカーボンブラック供給原料が注入される位置から下流の燃焼チャンバ直径の少なくとも2倍の距離で注入される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
14.上記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、少なくとも2つの別個の位置で上記ファーネスカーボンブラック反応器に導入され、別個の位置の一方は他方の下流にある、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
15.上記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、少なくとも2つの別個の位置で上記ファーネスカーボンブラック反応器に導入され、別個の位置の一方は他方の下流にある、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
16.上記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の低収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
17.上記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の上記第1のカーボンブラック供給原料を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
18.上記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、上記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の上記低収率カーボンブラック供給原料を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
19.上記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、上記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の第1のカーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
20.上記低収率カーボンブラック供給原料は、100未満の上記BMCIを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
21.上記低収率カーボンブラック供給原料は、1.23超の上記原子H:C比を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
22.上記低収率カーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で上記気体である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
23.回収された上記カーボンブラックは、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、又はN990グレードのカーボンブラックである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
24.少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
25.少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、エチレン若しくは天然ガス又は両方であり、上記全供給原料に基づいて30重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~70重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
26.少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、バイオ系供給原料であり、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
27.カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を上記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を存在する上記反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成することと、
反応流中のカーボンブラックを回収することと、
を含み、第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
28.カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を上記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する上記反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成することと、
反応流中のカーボンブラックを回収することと、
を含み、第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、エチレン若しくは天然ガス又は両方であり、上記全供給原料に基づいて30重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~70重量%の量で存在する、方法。
29.カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を上記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を存在する上記反応流と下流で混合し、カーボンブラックを形成することと、
反応流中のカーボンブラックを回収することと、
を含み、第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、バイオ系供給原料であり、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
30.カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を含むブレンドを上記加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成することと、
反応流中のカーボンブラックを回収することと、
を含み、第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、上記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
31.任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の任意の方法から製造されたカーボンブラック。
【0197】
本発明は、本明細書の任意の文章及び/又は段落に記載される、上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組み合わせを含むことができる。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせは、本発明の一部とみなされ、組み合わせ可能な特徴に関して限定することを意図するものではない。
【0198】
本出願人らは、全ての引用文献の全内容を本開示に具体的に組み込む。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲上限又は好ましい値及び任意の範囲下限又は好ましい値の任意の対から形成される、全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に記載されている場合、別段の記載がない限り、その範囲は、その端点、並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【0199】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって示される本発明の真の範囲及び趣旨と共に、例示としてのみみなされることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0199
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0199】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって示される本発明の真の範囲及び趣旨と共に、例示としてのみみなされることが意図される。
以下の項目[態様1]~[態様25]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を、前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
[態様2]
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を、前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、エチレン若しくは天然ガス又は両方であり、前記全供給原料に基づいて30重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~70重量%の量で存在する、方法。
[態様3]
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を、前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、バイオ系供給原料であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
[態様4]
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を含むブレンドを、前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
[態様5]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、以下:
a)前記Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)95未満である、又は、
b)室温及び室圧で前記気体である、又は
c)前記原子H:C比1.3超である、又は
d)前記比重≦1.0である、
のうちの少なくとも1つである、態様1~4のいずれか一態様に記載の方法。
[態様6]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、1.02未満の前記比重を有する、態様1~4のいずれか一態様に記載の方法。
[態様7]
前記バイオ系供給原料が、以下:植物油若しくは他の植物由来の油、バイオ由来のエタノール、植物若しくは動物性のワックス若しくは樹脂、動物性脂肪から得られる油、藻類油、下水汚泥若しくは農業廃棄物の熱分解から得られる油、生物起源材料の処理からの副生成物液体、生体材料の水熱液化によって生成される液体、粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ若しくはトール油脂肪酸、リサイクル材料から得られる油、低品質タイヤ、不合格タイヤ若しくは寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、廃棄若しくはリサイクルされたプラスチック若しくはゴム製品の熱分解から得られる油、都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、若しくはバイオマスの熱分解から得られる油、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、態様3に記載の方法。
[態様8]
前記少なくとも第1のカーボンブラック供給原料が、デカント油、スラリー油、コールタール、コールタール誘導体、エチレンクラッカー残渣、又はフェノールクラッカー残渣のうちの1つ以上を含む、態様1~7のいずれか一態様に記載の方法。
[態様9]
前記第1のカーボンブラック供給原料が、タイヤ熱分解油の蒸留から得られる留分を含む、態様1~8のいずれか一態様に記載の方法。
[態様10]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記方法において投入される全供給原料の25~90重量%の範囲である、態様1又は3~9のいずれか一態様に記載の方法。
[態様11]
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記ファーネスカーボンブラック反応器の燃焼チャンバに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入される、態様1~10のいずれか一態様に記載の方法。
[態様12]
前記燃焼チャンバが、ある直径を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料が注入される位置から下流の前記燃焼チャンバ直径の少なくとも2倍の距離で注入される、態様11に記載の方法。
[態様13]
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートの後に注入される、態様1~12のいずれか一態様に記載の方法。
[態様14]
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、前記燃焼チャンバの下流かつ前記急冷ゾーンの前に第2のスロートを備え、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第2のスロートに注入される、態様13に記載の方法。
[態様15]
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が注入される位置から上流の少なくとも1つの位置、及び前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料の位置の下流の少なくとも1つの別個の位置において、前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入される、態様1~14のいずれか一態様に記載の方法。
[態様16]
前記少なくとも1種の低収率供給原料が注入される位置の前に導入される、前記第1のカーボンブラック供給原料の量が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総量の50%を超える、態様15に記載の方法。
[態様17]
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、少なくとも2つの別個の位置で前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入され、前記別個の位置の一方は他方の下流にある、態様1~16のいずれか一態様に記載の方法。
[態様18]
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、態様1~17のいずれか一態様に記載の方法。
[態様19]
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の高収率カーボンブラック供給原料を含む、態様1~18のいずれか一態様に記載の方法。
[態様20]
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、態様1~19のいずれか一態様に記載の方法。
[態様21]
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、態様1~20のいずれか一態様に記載の方法。
[態様22]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、100未満の前記BMCIを有する、態様1~21のいずれか一態様に記載の方法。
[態様23]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、1.23超の前記原子H:C比を有する、態様1~22のいずれか一態様に記載の方法。
[態様24]
前記低収率カーボンブラック供給原料が、室温及び室圧で前記気体である、態様1~23のいずれか一態様に記載の方法。
[態様25]
回収された前記カーボンブラックが、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、又はN990グレードのカーボンブラックである、態様1~24のいずれか一態様に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料を前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成することと、
前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を、存在する前記反応流と下流で混合し、前記カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
a)前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在
するか、b)前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、エチレン若しくは天然ガス又は両方であり、前記全供給原料に基づいて30重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~70重量%の量で存在するか、又はc)前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、バイオ系供給原料であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
【請求項2】
カーボンブラックを製造する方法であって、
加熱ガス流をファーネスカーボンブラック反応器に導入することと、
全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料及び前記全供給原料の少なくとも10重量%を構成する少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料を含むブレンドを前記加熱ガス流と混合し、反応流を形成し、カーボンブラックを形成することと、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収することと、
を含み、前記第1のカーボンブラック供給原料は、室温及び室圧で液体であり、以下の特性:
-Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100以上、
-原子H:C比1.23以下、及び
-比重1.02超、
を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料は、以下の特性:
Bureau of Mines Correlation Index(BMCI)100未満、若しくは、
原子H:C比1.23超、若しくは、
比重1.02以下、
のうちの少なくとも1つを有するか、又は
室温及び室圧で気体であり、
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料は、熱分解油であり、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料は、前記全供給原料に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、方法。
【請求項3】
前記バイオ系供給原料が、以下:植物油若しくは他の植物由来の油、バイオ由来のエタノール、植物若しくは動物性のワックス若しくは樹脂、動物性脂肪から得られる油、藻類油、下水汚泥若しくは農業廃棄物の熱分解から得られる油、生物起源材料の処理からの副生成物液体、生体材料の水熱液化によって生成される液体、粗製トール油、トール油ロジン、トール油ピッチ若しくはトール油脂肪酸、リサイクル材料から得られる油、低品質タイヤ、不合格タイヤ若しくは寿命末期タイヤの熱分解から得られる油、廃棄若しくはリサイクルされたプラスチック若しくはゴム製品の熱分解から得られる油、都市固形廃棄物の熱分解から得られる油、若しくはバイオマスの熱分解から得られる油、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のカーボンブラック供給原料が、タイヤ熱分解油の蒸留から得られる留分を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記方法において投入される全供給原料の25~90重量%の範囲である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記ファーネスカーボンブラック反応器の燃焼チャンバに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記燃焼チャンバが、ある直径を有し、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料が注入される位置から下流の前記燃焼チャンバ直径の少なくとも2倍の距離で注入される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバの下流のスロートと、前記スロートの下流の反応チャンバと、前記反応チャンバの下流の急冷ゾーンと、を有し、前記第1のカーボンブラック供給原料が、前記スロートに注入され、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記スロートの後に注入される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ファーネスカーボンブラック反応器が、前記燃焼チャンバの下流かつ前記急冷ゾーンの前に第2のスロートを備え、前記低収率カーボンブラック供給原料が、前記第2のスロートに注入される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が注入される位置から上流の少なくとも1つの位置、及び前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料の位置の下流の少なくとも1つの別個の位置において、前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の低収率供給原料が注入される位置の前に導入される、前記第1のカーボンブラック供給原料の量が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総量の50%を超える、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、少なくとも2つの別個の位置で前記ファーネスカーボンブラック反応器に導入され、前記別個の位置の一方は他方の下流にある、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の第1のカーボンブラック供給原料が、前記第1のカーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の高収率カーボンブラック供給原料を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて95重量%~100重量%の非高収率カーボンブラック供給原料を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の低収率カーボンブラック供給原料が、前記低収率カーボンブラック供給原料の総重量に基づいて50重量%未満の高収率カーボンブラック供給原料を含む、ブレンドである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】