(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抗微生物性化合物および使用法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20240927BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240927BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240927BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240927BHJP
A01N 43/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07K7/06
A61P31/10
A61K38/08
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P31/04
A61P31/06
A01P3/00
A01N43/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519317
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2022045350
(87)【国際公開番号】W WO2023055999
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524060588
【氏名又は名称】ミドル テネシー ステイト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビッカー, ケビン リー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ロバート マディソン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA32
4C084CA59
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB35
4H011AA03
4H011BB08
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA30
(57)【要約】
ペプトイド、その組成物、および上記ペプトイドを使用する方法。上記ペプトイドは、抗微生物性ペプトイドであり得る。いくつかの実施形態において、上記ペプトイドは、ヒトもしくは動物などの脊椎動物、または植物において、真菌感染、真菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記ペプトイドは、ヒトもしくは動物などの脊椎動物、または植物において、細菌感染、または細菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化22】
の化合物、そのプロトン化形態、その薬学的に受容可能な塩、または両方であって、
ここで:
A
Xは、Hまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり、ここで前記アルキルもしくは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Tは、直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり、ここで前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Qは、ヒドロキシルまたはNH
2であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化23】
【化24】
または一般式R
10NR
11R
12R
13のアルキルアミンであり、
ここで:
各nは、独立して、(C
0~C
3)アルキレンであり;
各yは、独立して、(C
0~C
6)アルキレンであり;
NcpenWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NlinWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NphXである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Xは、独立して、F、Cl、Br、またはIであり;
NpenZである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Zは、独立して、S、またはOであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
10は、独立して、直線状(C
1~C
6)アルキレンであり;
NnphORである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
50は、独立して、(C
1~C
3)アルキルであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
11、各R
12、および各R
13は、独立して、Hまたは(C
1~C
6)アルキルである、化合物、そのプロトン化形態、その薬学的に受容可能な塩、または両方。
【請求項2】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化25】
【化26】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Tは、直線状(C
13)アルキル;直線状(C
15)アルキル;または(CO)R
20であり、ここでR
20は、直線状(C
13)アルキルまたは直線状(C
15)アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
10は、直線状(C
2~C
4)アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
11、R
12、およびR
13は、メチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nnvaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうちのいずれか1つは、Npeaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nlysであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nfurであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Npheであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Napである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造:
【化27】
またはそのプロトン化形態を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
一般式:
【化28】
の化合物、またはそのプロトン化形態であって、ここで:
A
Xは、Hまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり、ここで前記アルキルもしくは前記アルケニルは、必要に応じて、カルボニル基を含み;
Tは、直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり、ここで前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Qは、ヒドロキシルまたはNH
2であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化29】
【化30】
または一般式R
10NR
11R
12R
13のアルキルアミンであり、
ここで:
各nは、独立して、(C
0~C
3)アルキレンであり;
各yは、独立して、(C
0~C
6)アルキレンであり;
NcpenWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NlinWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NphXである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Xは、独立して、F、Cl、Br、またはIであり;
NpenZである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Zは、独立して、S、またはOであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
10は、独立して、直線状(C
1~C
6)アルキレンであり;
NnphORである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
50は、独立して、(C
1~C
3)アルキルであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
11、各R
12、および各R
13は、独立して、Hまたは(C
1~C
6)アルキルである、
化合物;ならびに
薬学的に受容可能なキャリアまたは殺真菌性の受容可能なキャリア、
を含む組成物。
【請求項9】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化31】
【化32】
である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Tは、直線状(C
13)アルキル;直線状(C
15)アルキル;または(CO)R
20であり、ここでR
20は、直線状(C
13)アルキルまたは直線状(C
15)アルキルである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
R
10は、直線状(C
2~C
4)アルキレンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
R
11、R
12、およびR
13は、メチルである、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nnvaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうちのいずれか1つは、Npeaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nlysであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nfurであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Npheであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Napである、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
以下の構造:
【化33】
またはそのプロトン化形態を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項8に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する方法。
【請求項16】
前記被験体は、ヒトまたは動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記被験体において真菌感染、もしくは真菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記真菌感染は、Candida albicans、Candida albicans、Candida auris、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusie、Candida parapsilosis、Rhodotorula mucilaginosa、Rhodotorula minuta、もしくはRhodotorula glutinis、Cryptococcus neoformans、もしくはCryptococcus gattii、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記さらなる抗真菌化合物の投与は、前記組成物の投与と同時に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記被験体において細菌感染、または細菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記さらなる抗真菌化合物の投与は、前記組成物の投与と同時に行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌感染は、グラム陽性またはグラム陰性細菌を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記グラム陽性細菌は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、またはEnterococcus faecalisを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記グラム陰性細菌は、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、またはAcinetobacter baumanniiを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌感染は、結核を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
植物、植物の種子、または前記植物が生長する土壌に、請求項8に記載の組成物を投与する工程を包含する方法。
【請求項29】
前記方法は、前記植物において真菌感染、または真菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記さらなる抗真菌化合物の投与は、前記組成物の投与と同時に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記真菌感染は、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、もしくはPyrenophora tritici-repentisa、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
第2の最小阻害濃度は、第1の最小阻害濃度の200%以下であり、ここで前記第1の最小阻害濃度は、目的の微生物に対する連続耐性獲得アッセイなしに評価され、前記第2の最小阻害濃度は、前記目的の微生物に対する連続耐性獲得アッセイ後に評価される、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
前記目的の微生物は、C.albicansである、請求項33に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月1日出願の米国仮特許出願第63/251,401号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
政府による資金提供
本発明は、アメリカ国立衛生研究所によって授与された1R03AI146393-01A1の下で政府の支援を得て行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
分野
本開示は一般に、ペプトイド、より具体的には、抗微生物性ペプトイド化合物;これを含む組成物;ならびに上記化合物および/または組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
緒言
Candida種は、1年あたり700万症例を超え、死亡率33%の真菌による院内感染(HAI)の主要原因である(Pfallerら,Clin.Microbiol.Rev.20,133-163(2007))。C.albicansは、身体上でまたは口中に一般に見出され、pHまたは栄養素利用性のような環境の変化が存在しなければ、宿主において健康上の問題は概して生じない。カンジダ性敗血症は、血流中のC.albicans感染であり、健常個体において死亡率は40~60%である(Sarmaら,Infect.Drug Resist.10,155-165(2017))。C.albicansは、環境に応じて、出芽酵母、仮性菌糸、または菌糸間でそれらの形態を切り替え得る(Sudberyら,Nat.Rev.Microbiol.9,737(2011))。栄養素が豊富な環境では、C.albicansは主に出芽酵母であるが、環境がより不利になると、それらはより強い菌糸形態へと切り替わる。菌糸形態では、C.albicansは、ポリサッカリド、およびバイオフィルムと称される3Dマトリクスを形成する他の生体分子を分泌する(Douglasら,Trends Microbiol.11,30-36(2003))。バイオフィルムは、病原体が非生物表面(例えば、カウンター、カテーテル、移植される補綴物(Ramageら,FEMS Yeast Res.6,979-986(2006))、および換気装置(Nobileら,Rev.Microbiol.69,71-92(2015)))上で増殖することを許容する。バイオフィルムは、ポリサッカリド、タンパク質、細胞外DNA、ならびに防御および集団感知(QS)のために使用される低分子を含む(Sztajerら,ISME J.8,2256-2271(2014))。上記ポリサッカリド混合物は、治療剤が上記病原体に達することを困難にし、従って、上記病原体と戦うために代替の処置を要する。
【0004】
バイオフィルムは、単一の種、多数の種、またはさらには異なる界に由来する病原体を含み得る(Sztajerら,ISME J.8,2256-2271(2014))。日和見細菌は、真菌性バイオフィルムの中へと潜り込んで、界を横断する(cross-kingdom)バイオフィルムを作り出し得る。これらのシナリオの中で、上記患者は、初期感染のために処置されなければならないのみならず、より複雑な界を横断する感染と戦う多数の抗生物質をも要する。例えば、S.aureusがC.albicansバイオフィルムの中で見出される例が明らかに示されている(Harriottら,Antimicrob.Agents Chemother.53,3914-3922(2009))。両方の種は、QS分子を放出して、いずれかの種が化合物の生成を促進または遅らせるようにシグナルを発し得る。ファルネソールは、C.neoformansを含む大部分の真菌種によって放出される菌糸形成を刺激するQS分子である(Pelegら,Proc.Natl.Acad.Sci.105,14585-14590(2008))。重要なことには、界を横断するバイオフィルムの必ずしも全てが相乗効果的であるわけではない。A.baumanniiは、初期増殖中のC.albicansバイオフィルムの増殖を阻害するが、バイオフィルムがいったん確立されれば、C.albicansは、A.baumanniiの増殖を阻害する(Kostouliasら,Antimicrob.Agents Chemother.60,161-167(2016))。C.albicansは、ファルネソール(A.baumannii増殖を阻害することが示された低分子)の放出を通じてこのことを行い得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pfallerら,Clin.Microbiol.Rev.20,133-163(2007)
【非特許文献2】Sarmaら,Infect.Drug Resist.10,155-165(2017)
【非特許文献3】Sudberyら,Nat.Rev.Microbiol.9,737(2011)
【非特許文献4】Douglasら,Trends Microbiol.11,30-36(2003)
【非特許文献5】Ramageら,FEMS Yeast Res.6,979-986(2006)
【非特許文献6】Nobileら,Rev.Microbiol.69,71-92(2015)
【非特許文献7】Sztajerら,ISME J.8,2256-2271(2014)
【非特許文献8】Harriottら,Antimicrob.Agents Chemother.53,3914-3922(2009)
【非特許文献9】Pelegら,Proc.Natl.Acad.Sci.105,14585-14590(2008)
【非特許文献10】Kostouliasら,Antimicrob.Agents Chemother.60,161-167(2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
出願の概要
プランクトン様に増殖する(planktonically growing)微生物を標的とするのみならず、病原体のバイオフィルムをも標的とする抗微生物性薬剤の開発は、HAIを処置するにあたって非常に有利である。本開示は、ペプトイド、その組成物、および上記ペプトイドを使用して、脊椎動物または植物において、真菌感染および/もしくは細菌感染、ならびに/または細菌感染および/もしくは真菌感染から生成されるバイオフィルムを処置および/または防止する方法を記載する。
【0007】
1つの局面において、本開示は、一般式:
【化1】
の化合物、そのプロトン化形態、その薬学的に受容可能な塩、または両方を記載する。A
Xは、Hまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり、ここで上記アルキルまたは上記アルケニルは、必要に応じて、カルボニル基を含む。Tは、直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C
6~C
20)アルケニルであり得、ここで上記アルキルまたは上記アルケニルは、必要に応じて、カルボニル基を含む。Qは、ヒドロキシルまたはNH
2であり得る。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化2】
【化3】
または一般式R
10NR
11R
12R
13のアルキルアミンである。各nは、独立して、(C
0~C
3)アルキレンである。各yは、独立して、(C
0~C
6)アルキレンである。NcpenWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各Wは、独立して、N、S、またはOである。NlinWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各Wは、独立して、N、S、またはOである。NphXである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各Xは、独立して、F、Cl、Br、またはIである。NpenZである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各Zは、独立して、S、またはOである。R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各R
10は、独立して、直線状(C
1~C
6)アルキレンである。R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関しては、各R
11、各R
12、および各R
13は、独立して、Hまたは(C
1~C
6)アルキルである。
【0008】
別の局面において、本開示は、先の局面の化合物および薬学的に受容可能なキャリアまたは殺真菌性の受容可能なキャリアを含む組成物を記載する。
【0009】
別の局面において、本開示は、上述の局面のうちのいずれか1つの化合物および/または組成物を被験体に投与して、真菌感染、細菌感染、真菌感染から生成されるバイオフィルム、細菌感染から生成されるバイオフィルム、またはこれらの組み合わせを防止および/または処置する方法を記載する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、脊椎動物(例えば、ヒト、飼い慣らされた動物、またはコンパニオンアニマル)である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、植物である。
【0010】
定義
【0011】
本明細書で使用される用語は、別段特定されなければ、関連分野におけるそれらの通常の意味をとることが理解される。本明細書で使用されるいくつかの用語、およびそれらの意味は、以下に示される。
【0012】
別段特定されなければ、「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、「上記、この、その(the)」および「少なくとも1(at least one)」とは、交換可能に使用され、1または1より多いことを意味する。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「または(or)」は、内容が別段明らかに規定しなければ、「および/または(and/or)」を含むその意味において概して使用される。用語「および/または」は、列挙された要素のうちの1つもしくは全て、またはその列挙された要素のうちのいずれか2つもしくはこれより多くの組み合わせを意味する。「および/または」の使用は、場合によっては、他の場合での「または」の使用が「および/または」を意味しない場合もあることを示唆しない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む、包含する(include)」、「含む、包含する(includes)」、「含む、包含する、(including)」、「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」、「含む、包含する(comprising)」などは、それらの制限のない包括的な意味において使用され、「挙げられるが、これらに限定されない(include, but not limited to)」、「挙げられるが、これらに限定されない(includes, but not limited to)」または「挙げられるが、これらに限定されない(including, but not limited to)」を概して意味する。
【0015】
実施形態が、文言「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む、包含する(include)」、「含む、包含する(includes)」、「含む、包含する、(including)」、「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」、「含む、包含する(comprising)」などを用いて本明細書で記載される場合は常に、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」に関して記載される別の点で類似の実施形態がまた提供されることは、理解される。用語「からなる」は、語句「からなる」の後ろに続くものを含み、これらに限定されることを意味する。すなわち、「からなる」は、その列挙された要素が要求されるかまたは必須であること、および他の要素が存在し得ないことを示す。用語「から本質的になる」は、その語句が含まれた後に列挙される任意の要素が含まれること、および列挙された要素以外の要素がその列挙された要素に関する開示の中で特定される活動または行為に干渉しないかまたは寄与しないことを条件として、それら列挙された要素以外の要素が含まれてもよいことを示す。
【0016】
本明細書で使用される場合、組成物または化合物の文脈における「提供する(providing)」とは、上記組成物または化合物を作製する、上記組成物または化合物を購入する、あるいは上記組成物または化合物を別の方法で得ることを意味する。
【0017】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「ある特定の実施形態(certain embodiments)」、または「いくつかの実施形態(some embodiments)」などへの言及は、上記実施形態と関連して記載される特定の特徴、構成、組成、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態の中に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて種々の箇所でのこのような語句の出現は、本開示の同じ実施形態に必ずしも言及するわけではない。さらに、特定の特徴(例えば、化学官能基(例えば、T、AX、Q、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6))、構成、組成、または特性は、1またはこれより多くの実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。
【0018】
本開示全体を通じて、本開示の種々の局面は、範囲形式で示され得る。範囲形式での記載が便宜および簡潔さのために過ぎず、本開示の範囲に対する変更のできない限定として解釈されるべきではないことは、理解されるべきである。よって、範囲の記載は、具体的に開示される全ての考えられる部分範囲およびその範囲内の個々の数値を有すると見做されるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような具体的に開示される部分範囲、ならびに1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6のようなその範囲内の個々の数字を有すると見做されるべきである。このことは、範囲の幅とは無関係に該当する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「脂肪族基(aliphatic group)」とは、飽和または不飽和の直線状または分枝状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキレン、およびアルキニル基を包含するために使用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルキル(alkyl)」とは、アルカンのラジカルである一価の基をいい、直鎖、分枝鎖、環式および二環式のアルキル基、ならびにこれらの組み合わせを含む(置換されていないおよび置換されたアルキル基の両方を含む)。
【0021】
用語「アルキレン(alkylene)」とは、アルカンのラジカルである二価の基をいい、直線状、分枝状、環式、二環式、またはその組み合わせである基を含む。
【0022】
用語「アルケニル(alkenyl)」とは、アルケンのラジカルである一価の基をいい、直線状、分枝状、環式、またはこれらの組み合わせである基を含む。アルケニル基は、1個またはこれより多くの二重結合を有する。上記二重結合の位置は、上記アルケニルに沿った任意の位置に存在し得る。
【0023】
用語「芳香族(aromatic)」とは、ヒュッケル則に従う環式の完全共役平面構造をいい、すなわち、上記化合物は、4n+2個のπ電子を有し、ここでnは、正の整数またはゼロである。例えば、ベンゼンは、6個のπ電子を有する。従って、6=4n+2π。nについて解けば、1が得られる。従って、ベンゼンは、芳香族化合物である。
【0024】
用語「骨格(backbone)」とは、最長の連続鎖をいう。1またはこれより多くの分枝が、上記骨格に共有結合され得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「感染(infection)」とは、被験体の身体における微生物の存在および増加をいう。感染は、臨床上不顕性であり得るか、または微生物によって引き起こされる疾患と関連する症状を生じ得る。感染は、早期段階にあり得るか、または後期段階にあり得る。微生物の例としては、真菌および細菌が挙げられる。
【0026】
本明細書中の説明において、特定の実施形態は、明確性のために分離して説明され得る。特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴と適合しないことを別段明示的に特定されなければ、ある特定の実施形態は、1またはこれより多くの実施形態と関連して本明細書で記載される適合する特徴の組み合わせを含み得る。
【0027】
不連続工程を含む本明細書で開示される任意の方法に関して、上記工程は、任意の実現可能な順序で行われ得る。そして、適切な場合、2またはこれより多くの工程の任意の組み合わせが、同時に行われ得る。
【0028】
上記の本開示の要旨は、各開示される実施形態または本開示のあらゆる実行を記載することは意図されない。以下に続く記載は、例証的実施形態をより詳細に例示する。本出願全体を通じたいくつかの箇所では、例のリストを通じてガイダンスが提供される。その例は、種々の組み合わせにおいて使用され得る。各場合において、その記載されるリストは、代表的グループとして役立つに過ぎず、排他的リストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
【0030】
本開示の例証的実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面とともに読まれるときに最も良く理解され得る。
【0031】
【
図1】
図1は、倒立型ペプトイドライブラリーアガー拡散(Inverted Peptoid Library Agar Diffusion)(iPLAD)アッセイのための個々の段階の図解を示す。段階1:成熟C.albicansバイオフィルムは、組織培養処理したペトリ皿上に形成される。段階2:PLAD連結したペプトイドライブラリービーズを、確立されたバイオフィルムの頂部にある還元剤を含むソフトアガー中に埋め込む。一晩のインキュベーションは、ビーズからのβ鎖ペプトイドの放出を可能にして、真菌と相互作用させる。段階3:細胞生存性インジケーターであるフロキシンBが添加され、上記アガーを通って拡散する。ビーズから放出される上記ペプトイドが真菌に対して毒性である場合、それら真菌は、フロキシンBを排出することができず、それらを赤みがかった色に染色する。段階4:ヒットビーズを除去し、α鎖ペプトイドを、タンデム質量分析法による構造決定のために切断する。
【0032】
【
図2A】
図2Aは、固相PLADリンカーシステム上のRGL9の構造を示す。位置Cは、カチオン性サブモノマーを含み、位置Rは、芳香族または脂肪族のサブモノマーを含む。
【0033】
【
図2B】
図2Bは、RGL9へと組み込まれ得る考えられるカチオン性(C)および芳香族/脂肪族(R)側鎖基の例を示す。
【0034】
【
図2C】
図2Cは、RMG9-11(C.albicansに対するiPLADスクリーニング作戦から特定されたペプトイド)の構造を示す。
【0035】
【
図3】
図3は、RMG9-11誘導体の構造を示す。
【0036】
【
図4-1】
図4は、RMG9-11の質量スペクトルを示す。
【0037】
【
図5】
図5は、サルコシンスキャンにおいて試験したサルコシンRMG9-11誘導体を示す。
【0038】
【
図6-1】
図6は、構造活性関係性(SAR)試験の第1回において試験したRMG9-11誘導体の構造を示す。
【0039】
【
図7】
図7は、SAR第1回ハイブリッド化合物の構造を示す。
【0040】
【
図8-1】
図8は、SAR試験の第2回において試験したRMG9-11誘導体の構造を示す。
【0041】
【
図9】
図9は、企図されたSAR第2回ハイブリッド化合物の構造を示す。
【0042】
【
図10-1】
図10は、第3回構造活性関係性(SAR)試験に関して企図されたRMG9-11誘導体の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
ペプトイド
【0044】
ペプトイド、その組成物、ならびに上記ペプトイドを作製および使用する方法が、本明細書で記載される。いくつかの実施形態において、本開示のペプトイドは、抗微生物性ペプトイドである。いくつかの実施形態において、本開示のペプトイドを含む組成物は、病原性微生物に感染した被験体、または病原性微生物に感染するリスクにある被験体、病原性微生物への感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせに投与され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記ペプトイドを含む組成物は、病原性真菌に感染した被験体、または病原性真菌に感染に感染するリスクにある被験体、または病原性真菌への感染から生じるバイオフィルム、あるいはその組み合わせに投与され得る。病原性真菌への感染としては、例えば、Candida spp.(例えば、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.auris、もしくはC.lusitaniae、またはその組み合わせが挙げられる)への感染;Rhodotorula spp.(例えば、R.mucilaginosa、R.minuta、もしくはR.glutinis、またはその組み合わせが挙げられる)への感染;および/あるいはCryptococcus spp.(例えば、C.neoformansもしくはCryptococcus gattii、またはその組み合わせ)への感染が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記ペプトイドを含む組成物は、病原性細菌に感染した被験体、または病原性細菌に感染するリスクにある被験体、または病原性細菌への感染から生成されるバイオフィルム、あるいはその組み合わせに投与され得る。病原性細菌としては、例えば、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、もしくはMycobacterium tuberculosis、またはその組み合わせが挙げられる。
【0047】
抗微生物性ペプチドおよびペプトイド
【0048】
多くの生物が、抗微生物性ペプチド(AMP)を病原性細菌および真菌に対するそれらの先天的免疫応答の一部として使用する(Zasloffら,Nature 2002,415(6870),389-395)。AMPは、おそらくそれらの概して許容される作用様式に由来して、哺乳動物細胞を超える微生物に対するそれらの比較的高い特異性および観察される薬物耐性がないことを考慮すれば、臨床的抗微生物性薬剤として有利であり得る。真菌に対して使用される大部分のAMPは、細胞膜を標的とし、孔を形成するかまたは細胞透過性における変化を引き起こして、細胞質構成要素の漏出を生じさせ、最終的には、病原体の死滅を生じる(Zasloffら,Nature 2002,415(6870),389-395)。これらのAMPは、哺乳動物細胞膜と真菌細胞膜との間の重要な差異(例えば、真菌細胞膜にのみ存在する主要ステロールであるエルゴステロール)を利用して、上記病原体を選択的に標的とし得る(Walshら,Clin.Infect.Dis.2008,46(3),327-360)。さらに、AMPは、バイオフィルム形成を防止し、確立されたバイオフィルム内の病原体を死滅させることが示されている(Yasirら,Materials 11,(2018);Galdieroら,Pharmaceutics 11,322(2019))。これらの抗バイオフィルムペプチドに関する作用機序は、一般に、膜破壊であるが、細胞シグナル伝達系における干渉またはバイオフィルム自体の破壊がまた、観察されている(Yasirら,Materials 11,(2018))。しかし、ペプチドは、プロテアーゼによって容易に認識されかつ分解されるので、インビボで真菌感染と戦うための臨床的治療剤としてはしばしば不十分である(Lathamら,Nat.Biotech.1999,17(8),755-757;Zhangら,Expert Opin.Pharmacother.2006,7(6),653-663)。
【0049】
AMPのタンパク質分解不安定性を解決する1つの手段は、N-置換されたグリシン(ペプトイドともいわれるの使用)を含む。ペプチドでは、側鎖R基は、α-炭素に結合されるのに対して、ペプトイドでは、そのR基は、アミド窒素に結合される。この構造変化は、ペプトイドのプロテアーゼによる認識を不可能にすると同時に、ペプチドの有利な特性のうちの多くを維持し、インビボ半減期を延長させる(Culfら Molecules 2010,15(8),5282-5335;Zuckermannら J.Am.Chem.Soc.1992,114(26),10646-10647)。
【0050】
ペプトイド
【0051】
1つの局面において、本開示は、一般式I:
【化4】
のペプトイド、そのプロトン化形態、その薬学的に受容可能な塩、または両方を記載する。いくつかの実施形態において、上記一般式Iのペプトイドは、抗微生物性特性を有し、そのために、抗微生物性ペプトイドである。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「そのプロトン化形態(a protonated form thereof)」とは、ある特定のpH値(例えば、生物学的pH)においてプロトン化され、従って、形式電荷を有する、ペプトイド、R基(R1、R2、R3、R4、R5、またはR6)、T基、AX基、またはQ基に言及する。多数のR基がプロトン化されてもよいので、その形式電荷は、+1より大きくてもよい(例えば、2、+3、+4など)。R基(R1、R2、R3、R4、R5、またはR6)、T基、AX基、またはQ基のうちの1またはこれより多くのものがプロトン化される場合、そのペプトイド全体がプロトン化されているといわれ得る(すなわち、ペプトイドのプロトン化形態)。
【0053】
式Iは、6個のN-置換されたグリシン反復を有するペプトイドである。各反復は、上記ペプトイド骨格のアミド窒素に共有結合された1個の側鎖(R1、R2、R3、R4、R5、またはR6)を有する。上記ペプトイドは、N末端キャップ基T、必要に応じた第2のN末端キャップ基AX(例えば、AXは、HまたはN末端キャップ基Tであり得る)、およびC末端キャップ基Qを有する。
【0054】
一般に、Tは、疎水性である。Tは、直線状もしくは分枝状のアルキル、または直線状もしくは分枝状のアルケニルであり得る。上記アルキルまたはアルケニルは、必要に応じて、カルボニルを含み得る。好ましくは、カルボニル含有アルキルまたはアルケニル基は、一般式(CO)-R20のものであり、ここでR20は、上記アルキルまたはアルケニル基である。いくつかの実施形態において、R20は、少なくともC6、少なくともC10、または少なくともC15の直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、C20以下、C15以下、またはC10以下の直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C6~C20)アルキル、(C6~C15)アルキル、または(C6~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C10~C20)アルキルまたは(C15~C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル(n-pentadactyl)、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、およびn-エイコサニルから選択される直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、一般式(CO)-R20を有し、R20は、直線状(C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、一般式(CO)-R20を有し、ここでR20は、直線状(C13)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、パルミチン酸から誘導される。このような実施形態において、Tは、一般式(CO)-R20を有し、ここでR20は、C15H27である。いくつかの実施形態において、Tは、ミリスチン酸から誘導される。いくつかのこの様な実施形態において、Tは、一般式(CO)-R20を有し、ここでR20は、C13H31である。
【0055】
いくつかの実施形態において、Tは、少なくともC6、少なくともC10、または少なくともC15の直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、C20以下、C15以下、またはC10以下の直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C6~C20)アルキル、直線状(C6~C15)アルキル、または直線状(C6~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C10~C20)アルキルまたは直線状(C15~C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、またはn-エイコサニルである。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-トリデシル(直線状(C13)アルキル;C13H27;ときおりNtriといわれる)である。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-オクチル(直線状(C8)アルキル;C8H17)である。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-ヘキシル(直線状(C6)アルキル;C6H13)である。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-ペンタデシル(直線状(C15)アルキル;C15H31)である。
【0056】
いくつかの実施形態において、Tは、分枝状アルキルである。上記分枝状アルキルは、骨格およびこの骨格に共有結合した1個またはこれより多くの分枝を有する。いくつかの実施形態において、上記骨格は、少なくともC6、少なくともC10、または少なくともC15のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、C20以下、C15以下、またはC10以下のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C6~C20)アルキル、(C6~C15)アルキル、または(C6~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C10~C20)アルキルまたは(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C15~C20)アルキルである。
【0057】
1個またはこれより多くのアルキル分枝は、分枝状アルキルの骨格に共有結合される。いくつかの実施形態において、上記分枝は、少なくともC1、少なくともC5、または少なくともC10のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、C10以下、C5以下、またはC1以下のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、(C1~C10)アルキルまたは(C1~C5)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、(C5~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルキルのアルキル分枝は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、またはドデシルである。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルキルは、上記骨格に共有結合された1つのアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルキルは、上記骨格に共有結合された2個またはこれより多くの分枝を有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、Tは、直線状アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、少なくともC6、少なくともC10、または少なくともC15の直線状アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、C20以下、C15以下、またはC10以下の直線状アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C6~C20)アルケニル、直線状(C6~C15)アルケニル、または直線状(C6~C10)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C10~C20)アルケニルまたは直線状(C10~C15)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直線状(C15~C20)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、n-オクテニル、n-ノネニル、n-デセニル、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル(n-pentadacenyl)、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル、n-オクタデセニル、n-ノナデセニル、およびn-エイコセニルである。いくつかの実施形態において、上記直線状アルケニルは、1個の二重結合を有し得る。いくつかの実施形態において、上記直線状アルケニルは、2個またはこれより多くの二重結合を有し得る。全炭素数(Cn)が偶数である場合の直線状アルケニルの最大の不飽和度、および従って二重結合の最大数は、Cn/2である。全炭素数(Cn)が奇数である場合の直線状アルケニルの最大の不飽和度は、(Cn-1)/2である。上記直線状アルケニルが2個またはこれより多くの二重結合を有する実施形態において、上記二重結合は、上記アルケニルに沿った任意の位置に配置され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、Tは、分枝状アルケニルである。上記分枝状アルケニルは、骨格およびこの骨格に共有結合された1個またはこれより多くの分枝を有する。いくつかの実施形態において、上記骨格は、少なくともC6、少なくともC10、または少なくともC15のアルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、C20以下、C15以下、またはC10以下のアルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C6~C20)アルケニル、(C6~C15)アルケニル、または(C6~C10)アルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C10~C20)アルケニルまたは(C10~C15)アルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C15~C20)アルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C8)アルケニルである。いくつかの実施形態において、上記骨格は、(C12)アルケニルである。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルのアルケニル骨格は、1個の二重結合を有し得る。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルアルケニル骨格は、2個またはこれより多くの二重結合を有する。全炭素数(Cn)が偶数である場合のアルケニル骨格の最大の不飽和度、および従って二重結合の最大数は、Cn/2である。全炭素数(Cn)が奇数である場合のアルケニル骨格の最大の不飽和度は、(Cn-1)/2である。上記分枝状アルケニルのアルケニル骨格が2個またはこれより多くの二重結合を有する実施形態において、上記二重結合は、上記骨格に沿った任意の位置に配置され得る。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルのアルケニル骨格は、2個の二重結合を有する。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルのアルケニル骨格は、3個の二重結合を有する。
【0060】
1個またはこれより多くのアルキル分枝は、上記分枝状アルケニルの骨格に共有結合される。いくつかの実施形態において、上記分枝は、少なくともC1、少なくともC5、または少なくともC10のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、C10以下、C5以下、またはC1以下のアルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、(C1~C15)アルキルまたは(C1~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、(C5~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、直線状アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、分枝状アルキルである。いくつかの実施形態において、上記分枝は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルから選択される。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルの骨格は、1個のアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルの骨格は、2個またはこれより多くのアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、上記分枝状アルケニルのアルケニル骨格は、2個またはこれより多くの二重結合および2個またはこれより多くの共有結合されたアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、Tは、シトリルである。いくつかの実施形態において、Tは、ファルネシルである。
【0061】
AXは、第2のN末端キャップ基または水素原子(H)である。いくつかの実施形態において、AXは、Hである。AXがHではない実施形態において、AXは、Tに関して記載されるとおりの任意のN末端キャップ基であり得る。AXがHではない実施形態において、AXおよびTは、同じであってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、AXおよびTの両方が、n-トリデシル(C13H27)である。他の実施形態において、AXおよびTの両方が、ともにn-ヘキシル(C6H13)(ときおり、Ndhaと称される)である。他の実施形態において、AXおよびTの両方が、ともにn-オクチル(C8H17)(ときおり、Ndoaと称される)である。AXがHではない実施形態において、AXおよびTは、同じでなくてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、Qは、ヒドロキシルである。いくつかの実施形態において、Qは、NH2である。
【0063】
式Iにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、各々独立して、上記ペプトイド骨格の窒素に共有結合された、N-置換されたグリシン側鎖から選択される。
【0064】
一般に、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、以下から選択される:一般式R
10NR
11R
12R
13のアルキルアミン(本明細書中で詳細に考察される);あるいは以下の一般式のうちのいずれか1つを有する基(Nval、Nyalk、Nleun、Ncpen、Nchex、NpenW、NlinW、Nphn、Npea、NphOH、NphX、Nnapn、NnphOR、Nnpyrp、Nnpyrm、Nnpyro、Nnim1、Nnim2、Nchexm、Nnain、Nindn、NpenZ、Narg、サルコシン)、またはそのプロトン化形態:
【化5】
【化6】
【0065】
各nは、独立して、(C0、C1、C2、またはC3)アルキレン(例えば、(C0~C3)アルキレン)である。R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはその組み合わせが各々独立して、Nyalk、Nleun、Ncpen、Nchex、NcpenW、NlinW、Nphn、NphOH、NphX、Nnapn、NnphOR、Nnpyrp、Nnpyrm、Nnpyro、Nnim1、Nnim2、Nnain、Nindn、NpenZ、そのプロトン化形態、またはその組み合わせである場合のいくつかの実施形態において、各nは、独立して、(C0、C1、C2、またはC3)アルキレンである。
【0066】
R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの少なくとも1つがNpeaである場合のいくつかの実施形態において、メチル基が結合される炭素は、R立体化学(NxxI)を有する。R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの少なくとも1つがNpeaである場合のいくつかの実施形態において、メチル基が結合される炭素は、S立体化学(Nspe)を有する。R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの2個またはこれより多くのものがNpeaである実施形態において、各Npeaは、同じ立体化学または異なる立体化学を有し得る。
【0067】
R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの少なくとも1つがNchexmである場合のいくつかの実施形態において、メチル基が結合される炭素は、R立体化学(NchexmR)を有する。R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの少なくとも1つがNchexmである場合のいくつかの実施形態において、メチル基が結合される炭素は、S立体化学(NchexmS)を有する。R1、R2、R3、R4、R5、またはR6のうちの2個またはこれより多くのものがNchexmである実施形態において、各Nchexmは、同じ立体化学または異なる立体化学を有し得る。
【0068】
各yは、独立して、(C
0、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、またはC
6)アルキレン(例えば、(C
0~C
6)アルキレン)である。いくつかの実施形態において、Nyalkは、Nhexである。いくつかの実施形態において、Nyalkは、Nnvaである。
【化7】
【0069】
NnphORの各R
50は、独立して、(C
1、C
2、またはC
3)アルキルである。いくつかの実施形態において、R
50は、メチル(C
1)、エチル(C
2)、またはプロピル(C
3)である。NnphOR環の周りのOR
50の任意の置換パターンが許容される。例えば、上記OR
50基は、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してオルト、パラ、またはメタにあり得る。一実施形態によれば、OR
50は、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してパラにある。いくつかの実施形態において、NnphORは、NphOMeである。
【化8】
【0070】
NlinWおよびNcpenWにおける各Wは、独立して、O、S、またはNである。いくつかの実施形態において、NlinWは、Nmeaである。いくつかの実施形態において、NcpenWは、Nthfである。
【化9】
【0071】
NphXにおける各Xは、独立して、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードである。NphX環の周りのXの任意の置換パターンが許容される。例えば、上記ハロゲンは、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してオルト、パラ、またはメタにあり得る。いくつかの実施形態において、Xは、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してパラにある。いくつかの実施形態において、NphXは、Npfbである。いくつかの実施形態において、NphXは、Npcbである。いくつかの実施形態において、NphXは、Npibである。いくつかの実施形態において、NphXは、Npbbである。
【化10】
【0072】
NphOHの環の周りのヒドロキシルの任意の置換パターンが許容される。例えば、上記ヒドロキシルは、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してオルト、パラ、またはメタにあり得る。いくつかの実施形態において、上記ヒドロキシルは、上記環上のアルキレンスペーサー(n)に対してパラにある。いくつかの実施形態において、NphOHは、Ntryである。
【化11】
【0073】
NpenZの各Zは、独立して、NH、S、またはOである。いくつかの実施形態において、NpenZは、Nfurである。いくつかの実施形態において、NpenZは、Ntmaである。
【化12】
【0074】
いくつかの実施形態において、Ncpenは、Ncpaである。いくつかの実施形態において、Nchexは、Nchaである。いくつかの実施形態において、Nchexは、Nchmである。いくつかの実施形態において、Nphnは、Naniである。いくつかの実施形態において、Nphnは、Npheである。いくつかの実施形態において、Nnapnは、Nnapである。いくつかの実施形態において、Nnapnは、Nnapxである。いくつかの実施形態において、Nnainは、Nainである。いくつかの実施形態において、Nindnは、Ntrpである。いくつかの実施形態において、Nindnは、Nhtrpである。いくつかの実施形態において、Nnpyrは、Npyrまたはそのプロトン化形態である。いくつかの実施形態において、Nnpyrmは、Npyrmまたはそのプロトン化形態である。いくつかの実施形態において、Nnpyroは、Npyroまたはそのプロトン化形態である。いくつかの実施形態において、Nnim1は、Nim1またはそのプロトン化形態である。いくつかの実施形態において、Nnim2は、Nim2またはそのプロトン化形態である。
【化13】
【0075】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6またはこれらの組み合わせは、一般式R10NR11R12R13のアルキルアミンである。R10は、上記ペプトイドの骨格の窒素に共有結合されたアルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、少なくともC1または少なくともC3のものである。いくつかの実施形態において、R10は、C6以下またはC3以下である。いくつかの実施形態において、R10は、(C1~C6)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C1~C3)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C3~C6)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C2)アルキレン、(C3)アルキレン、または(C4)アルキレンである。R11、R12、およびR13は、各々独立して、Hまたは(C1~C3)アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、上記アルキル鎖は、メチル、エチル、またはn-プロピルである。いくつかの実施形態において、R11、R12、およびR13は、Hである。いくつかの実施形態において、R11およびR12は、Hであり、R13は、(C1~C3)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11はHであり、R12およびR13は、各々独立して、(C1~C3)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11、R12、およびR13は、各々独立して、(C1~C3)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11は、Hであり、R12およびR13は、メチルである。いくつかの実施形態において、R11、R12、およびR13は、メチルである。いくつかの実施形態において、R11およびR12は、Hであり、R13は、メチルである。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nlys(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nap(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nae(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nlys(me)
3である。いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nap(me)
3である。いくつかの実施形態において、上記アルキルアミンは、Nae(me)
3である。いくつかの実施形態において、Nlys、Nap、および/またはNaeの窒素は、プロトン化されていてもよく、従って、形式電荷を有し得る(および従って、上記アルキルアミドのプロトン化形態である)。
【化14】
【0077】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R4、およびR5の各1つは、独立して、Nval、Nyalk、Nleun、Ncpen、Nchex、NpenW、NlinW、Nphn、Npea、NphOH、NphX、Nnapn、NnphOR、Nnpyrp、Nnpyrm、Nnpyrol、Nnim1、Nnim2、Nnain、Nindn、Npenz、Nchexm、サルコシン、またはそのプロトン化形態から選択され;R3およびR6の各1つは、独立して、Narg(またはそのプロトン化形態)、Nlys(またはそのプロトン化形態)、Nap(またはそのプロトン化形態)、Nae(またはそのプロトン化形態)、Nlys(me)3、Nap(me)3、またはNae(me)3から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Nnvaであり;R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Npeaであり;R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Nlys(またはそのプロトン化形態)であり;R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Nfurであり;R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Npheであり;R
1、R
2、R
3 R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、Nap(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、R
1は、Nnvaであり;R
2は、Npeaであり;R
3は、Nlys(またはそのプロトン化形態)であり;R
4は、Nfurであり;R
5は、Npheであり;R
6は、Nap(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、Qは、NH
2であり;A
Xは、Hであり;Tは、(C
13H
27)アルキルであり;R
1は、Nnvaであり;R
2は、Npeaであり;R
3は、Nlys(またはそのプロトン化形態)であり;R
4は、Nfurであり;R
5は、Npheであり;R
6は、Nap(またはそのプロトン化形態)である。いくつかの実施形態において、上記ペプトイドは、以下の構造:
【化15】
またはそのプロトン化形態を有する。
【0079】
式Iの例証的なペプトイドの例は、
図3(RMG9-11SAR1;RMG9-11SAR2;RMG9-11SAR3;RMG9-11SAR4;RMG9-11SAR5;RMG9-11SAR6;RMG9-11SAR7;およびRMG9-11SAR8、RMG9-11SAR9、RMG9-11SAR10、RMG9-11SAR11、RMG9-11SAR12、RMG9-11SAR13、RMG9-11SAR14、およびRMG9-11SAR15);
図5(SAR1、SAR2、SAR3、SAR4、SAR5、SAR6、およびSAR7);
図6(9-11-M1、9-11-M2、9-11-M3、9-11-M4、9-11-M5、9-11-M6、9-11-M7、9-11-M8、9-11-M9、9-11-M10、および9-11-M11);
図7(9-11-M12および9-11-M113);
図8(9-11-M14、9-11-M15、9-11-M16、9-11-M17、9-11-M189-11-M19、9-11-M20、9-11-M21、および9-11-M22);
図9(911-M23および9-11-M24);および
図10(9-11-M25、9-11-M26、9-11-M27、9-11-M28、9-11-M29、9-11-M30、9-11-M31、9-11-M32、9-11-M33、9-11-M34、9-11-M35、9-11-M36、9-11-M37、9-11-M38、および9-11-M39);またはそのプロトン化形態に示される。
【0080】
ペプトイドを作製する方法
【0081】
一般に、ペプトイドは、サブモノマープロトコール(Zuckermannら,J.Am.Chem.Soc.114,10646-10647(1992))を使用して、N末端からC末端へと合成される。ペプトイドは、マイクロ波の補助ありで樹脂上に、マイクロ波の補助なしで樹脂上に、マイクロ波の補助ありで溶液中に、またはマイクロ波の補助なしで溶液中に、合成され得る。ペプトイド合成は、一般に、6工程を伴う:樹脂調製、アシル化、アミンカップリング、切断、保護基が存在する場合には保護基の必要に応じた脱保護、および末端官能化。いくつかの実施形態において、上記工程のうちのいくつかが組み合わされ得る。例えば、樹脂からの切断および保護基の脱保護が、同時に達成され得る。本開示のペプトイドは、マイクロ波の補助ありで樹脂上に合成され得る。
【0082】
一般式Iの化合物(ペプトイド)のペプトイド合成の例示的方法は、以下のとおりである。Fmoc保護Rink Amide樹脂を、上記樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)中で膨潤させることによって調製する。上記Fmoc保護基を、上記樹脂をDMF中10~40%ピペリジンとともに5~60分間撹拌することによって除去し、遊離アミンを得る。いくつかの実施形態において、Fmoc脱保護を、上記樹脂をDMF中20%のピペリジンとともに20分間撹拌することによって行う。上記遊離アミンを、上記樹脂、1~4Mのブロモ酢酸、1~6Mのジイソプロピルカルボジイミド、およびDMFを混合して、β炭素上にブロモ基を有するアミド生成物を得ることによって、アシル化する。いくつかの実施形態において、上記樹脂上のアミンを、上記樹脂、2Mのブロモ酢酸、3.2Mのジイソプロピルカルボジイミド、およびDMFを混合することによってアシル化する。アシル化の後、一般式NH2-R(ここでRは、所望のN-置換されたグリシン側鎖または所望のN-置換されたグリシン側鎖の保護された誘導体である)によって記載されるアミン1~6Mを、上記樹脂に添加する。各R基は、保護基(例えば、Boc基)を含み得る。置換反応は、ブロモ基がβ炭素上でNH2-R基によって置き換えられる、従って、アシル化工程において形成されたアミドへのアミンのカップリングの場合に起こる。いくつかの実施形態において、一般式-NH2-Rのアミン2Mを、上記樹脂に添加して、上記置換反応を完了させる。上記アシル化およびアミンカップリング工程を、記載されるペプトイド配列に達するまで反復する。上記樹脂からの切断の前または後に、C末端を官能化し得る。上記ペプトイドおよびN-置換されたグリシン側鎖に存在する任意のBoc保護基を、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシランのカクテルを30分~2時間インキュベートすることによって、上記樹脂から切断し得る。いくつかの実施形態において、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシランのカクテルは、95:2.5:2.5である。いくつかの実施形態において、トリフルオロ酢酸、水、およびトリイソプロピルシランのカクテルを、上記樹脂とともに1時間インキュベートする。上記樹脂からの切断後、N末端を官能化し得る。上記ペプトイドを、0.05%のトリフルオロ酢酸を含む0~100%の水からアセトニトリルの勾配を使用する逆相HPLCシステムで精製し得る。溶媒を、真空中で除去して、ペプトイドを粉末として得ることができる。
【0083】
ペプトイドを試験する方法
【0084】
ペプトイドライブラリーアガー拡散(PLAD)アッセイを、抗微生物性活性を有するペプトイドを特定するために使用し得る。上記PLADアッセイを、Fischerら,ACS Comb.Sci.18,287-291(2016);Corsonら,ACS Med.Chem.Lett.7,1139-1144(2016);Turkettら,ACS Comb.Sci.18,287-291(2016)(これは、本明細書に参考として援用される)に記載されるとおりの方法を使用して達成し得る。上記PLADアッセイは、PLAD化学リンカーを使用する。PLADリンカー構築および合成に関する詳細については、実施例1を参照されたい。上記PLAD化学リンカーは、目的のペプトイドの2つの同一の鎖、αおよびβを記載し、ここで各鎖は、異なる化学的刺激に応じて放出され得る(Fischerら,ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))。PLAD連結ペプトイドを含むビーズを、アガー培地中に埋め込み、ここでアガー培地を、上記目的の微生物とともにインキュベートする。上記β鎖ペプトイドを、還元試薬によって放出する。その還元剤は、上記PLADリンカー内のジスルフィドを切断し、上記β鎖ペプトイドが上記ビーズの周りの微生物と相互作用することを可能にする。その放出されたペプトイドが抗微生物性活性を有する場合、阻害された増殖のゾーンが存在する。上記α鎖ペプトイドは、スクリーニングプロセス中にビーズに結合したままである。上記α鎖ペプトイドを、阻害された増殖のゾーンを示すビーズから切断する。α鎖ペプトイドの化学的切断は、臭化シアンを使用して、PLADリンカーのC末端メチオニンにおいて達成され得る。質量分析シーケンシング(mass spectrometry sequencing)を使用して、阻害された増殖のゾーンを示したβ鎖ペプトイドに相当するα鎖ペプトイドの構造を決定する。PLADアッセイを、目的のペプトイドを、アッセイパラメーターのわずかな改変を通じて、目的の微生物の異なるタイプに対してスクリーニングするために適合し得る。PLADアッセイにおいて使用され得る微生物の例としては、真菌病原体および細菌病原体が挙げられる。真菌病原体の例としては、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.lusitaniae、C.auris、R.mucilaginosa、R.minuta、またはR.glutinis、C.neoformans、およびCryptococcus gattiiが挙げられるが、これらに限定されない。細菌病原体の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、およびMycobacterium smegmatisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
倒立型ペプトイドライブラリーアガー拡散(iPLAD)アッセイは、目的の微生物から生成されるバイオフィルムに対するペプトイドの抗微生物活性を評価するために使用され得る。実施例1は、iPLADアッセイを完了させるために使用され得る例示的方法を示す。簡潔には、上記iPLADアッセイは、4段階を有すると理解され得る。第1の段階では、真菌病原体の培養物を増殖させ、ペトリ皿の表面にバイオフィルムを生成させる。第2の段階では、過剰な培地をそのペトリ皿から除去し、そのバイオフィルムを洗浄する。PLAD連結したペプトイド(またはライブラリー)ビーズおよび還元試薬(ともに、最小量の液化したソフトアガー中に懸濁)を、上記バイオフィルムに添加する。第3の段階では、上記PLAD連結ペプトイドを、上記バイオフィルムとともに一晩インキュベートする。上記還元試薬は、β鎖ペプトイドをライブラリービーズから放出して、上記バイオフィルムと相互作用させる。インキュベーション後、画像化試薬を上記ソフトアガーの頂部に添加し、上記バイオフィルムの中へと拡散させると、上記バイオフィルム内の真菌細胞を殺滅した「ヒット」ペプトイドが明らかになる。第4の段階では、上記ヒットペプトイドが単離され、上記活性ペプトイドのα鎖の構造が、タンデム質量分析法によってデコンボリューションされる。PLADアッセイにおいて使用され得る微生物の例としては、真菌病原体および細菌病原体が挙げられる。真菌病原体の例としては、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.lusitaniae、C.auris、R.mucilaginosa、R.minuta、またはR.glutinis、C.neoformans、およびCryptococcus gattiiが挙げられるが、これらに限定されない。細菌病原体の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、およびMycobacterium smegmatisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
最小阻害濃度(MIC)アッセイは、目的の微生物に対するペプトイドの活性を決定するために使用され得る。実施例1は、MICアッセイを完了させるために使用され得る例示的方法を示す。MICアッセイは、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)に示されるガイドラインを介して行われ得る。一例のMICアッセイでは、目的のペプトイドを、目的の微生物を含む溶液へと希釈する。上記ペプトイド-微生物溶液を、設定温度(例えば、37℃)で設定時間量にわたってインキュベートする。インキュベーション後の微生物の増殖または増殖の欠如を、手動での観察によって、または細胞生存性の色素および蛍光測定の助けを借りて決定する。MICアッセイは、技術的および生物学的に複製して行われ得る。目的の微生物を殺滅することが公知の化合物を、陽性コントロールとして含め得る。MICは、一般に、微生物増殖を防止する上記目的のペプトイドの最低濃度として定義される。MICアッセイにおいて使用され得る微生物の例としては、真菌病原体および細菌病原体が挙げられる。真菌病原体の例としては、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.lusitaniae、C.auris、R.mucilaginosa、R.minuta、またはR.glutinis、C.neoformans、およびCryptococcus gattiiが挙げられるが、これらに限定されない。細菌病原体の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、およびMycobacterium smegmatisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態において、微生物は、本開示のペプトイドに対する耐性を発生させることができない。耐性改変体の出現を防止する抗微生物性化合物は、非常に所望される治療剤である。なぜなら抗微生物ストラテジーは、代表的には、標的微生物が耐性を発生させる場合にもはや用いられることができなくなるからである。本開示のペプトイドは、標的微生物における耐性の発生を低減するという活性を有し得る。連続継代耐性獲得アッセイは、目的の微生物が目的のペプトイドに対する耐性を獲得する能力を評価し、それによって、上記ペプトイドが標的微生物における耐性の発生を低減するという活性を有するか否かを決定するために使用され得る。例示的な連続継代耐性獲得アッセイは、実施例1に記載される。連続継代耐性獲得アッセイにおいて使用され得る微生物の例としては、真菌病原体および細菌病原体が挙げられる。真菌病原体の例としては、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.lusitaniae、C.auris、R.mucilaginosa、R.minuta、またはR.glutinis、C.neoformans、およびCryptococcus gattiiが挙げられるが、これらに限定されない。細菌病原体の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、およびMycobacterium smegmatisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
単一継代耐性獲得アッセイは、目的の微生物が目的のペプトイドに対する耐性を獲得する能力を評価し、それによって、上記ペプトイドが標的微生物における耐性の発生を低減するという活性を有するか否かを決定するために使用され得る。例示的な単一継代耐性獲得アッセイは、実施例1に記載される。MICアッセイにおいて使用され得る微生物の例としては、真菌病原体および細菌病原体が挙げられる。真菌病原体の例としては、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.lusitaniae、C.auris、R.mucilaginosa、R.minuta、またはR.glutinis、C.neoformans、およびCryptococcus gattiiが挙げられるが、これらに限定されない。細菌病原体の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Acinetobacter baumannii、およびMycobacterium smegmatisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
耐性獲得アッセイの前に得られるMICおよび耐性獲得アッセイ中に得られるMICの比率は、微生物が目的のペプトイドに対する耐性を発生させる能力を定量するために使用され得る。獲得または耐性アッセイの例としては、連続継代耐性獲得アッセイおよび単一継代耐性獲得アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。下限は所望されないが、実際には、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイの前に得られるMICの200%以下、150%以下、125%以下、105%または102%以下であり得る。いくつかの実施形態において、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイ前に得られるMICの150%以上、125%以上、105%以上、または102%以上であり得る。いくつかの実施形態において、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイ前に得られるMICの102%~200%、102%~150%、102%~125%、または102%~105%であり得る。いくつかの実施形態において、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイ前に得られるMICの105%~125%、105%~150%、または105%~200%であり得る。いくつかの実施形態において、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイ前に得られるMICの125%~150%または125%~200%であり得る。いくつかの実施形態において、耐性獲得アッセイのMICは、耐性獲得アッセイ前に得られるMICの50%~200%であり得る。1つの実施形態において、本開示のペプトイドに対して耐性を発生させることができない微生物は、Candida spp.(例えば、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.auris、またはC.lusitaniaeのような)である。
【0090】
目的のペプトイドは、病原性微生物の異なる株に対して評価され得る。例えば、MICアッセイは、C.albicans、例えばC.albicans、C.albicans M1(基準株)、C.albicans M2、C.albicans M3、C.albicans M4、C.albicans M5、C.albicans M6、C.albicans M7、およびC.albicans ATCC 64124によって生成されるバイオフィルムに対する目的のペプトイドの活性を評価するために使用され得る。特定の治療的処置に対して耐性であることが公知である株に対する目的のペプトイドの活性を評価することは、有益であり得る。例えば、C.albicans M2、C.albicans M3、およびC.albicans M5は、フルコナゾール処置に耐性である。さらに、ATCC 64124は、アンホテリシンB、フルコナゾール、カスポファンギン、およびフルシトシンに対して耐性の多剤耐性C.albicans株である。薬物耐性微生物株に対して活性を示すペプトイドは、その薬物耐性微生物株に感染した被験体を処置するために有利であり得る。薬物耐性微生物株に対して活性を示すペプトイドは、微生物感染を有する被験体を処置するために有利であり得る。なぜなら微生物は、これらのペプトイドに対する耐性を発生させる可能性がより低いからである。
【0091】
目的のペプトイドは、治療的処置としてのそれらの使用を評価するために、インビボでの実験を介して評価され得る。インビボでの生物モデルとしては、植物、マウス、ラット、ネコ、ブタ、ウシ、サル、およびヒトが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0092】
組成物および使用方法
【0093】
別の局面において、本開示は、本明細書で記載されるペプトイド、またはその塩のうちの少なくとも1つを活性成分として含む組成物(例えば、薬学的組成物および殺真菌組成物)を記載する。本開示の文脈内では、ペプトイドの記載は、上記ペプトイドを遊離塩基および/または塩(例えば、上記ペプトイドの薬学的に受容可能な塩)として含むと理解される。用語「遊離塩基(free base)」とは、アミン(複数可)の共役塩基(非プロトン化)に言及する。ペプトイドの薬学的に受容可能な塩とは、適切な対イオン(例えば、アニオンまたはカチオン)への1またはこれより多くのイオン結合を通じて中和されているイオン化されたかまたはイオン化可能な薬物物質に言及する。本明細書で記載されるとおりの任意のペプトイドは、本明細書で記載される任意の組成物中の活性成分であり得る。
【0094】
実施形態において、上記組成物は、薬学的組成物である。上記薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアとともに製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「キャリア(carrier)」は、任意の溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝化剤、キャリア溶液、懸濁物、コロイドなどを含む。薬学的活性物質のためのこのような媒体および/または薬剤の使用は、当該分野で周知である。いずれかの従来の媒体または薬剤が上記活性成分と非適合性である限りを除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。本明細書で使用される場合、「薬学的に受容可能な(pharmaceutically acceptable)」とは、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない物質に言及する。例えば、上記物質は、上記ペプトイドまたはその薬学的に受容可能な塩とともに、これが含まれる薬学的組成物の他の成分のうちのいずれかと有害な様式でいかなる望ましくない生物学的効果も相互作用をも引き起こすことなしに、個体に投与され得る。
【0095】
上記ペプトイドのうちの少なくとも1つは、薬学的組成物中に製剤化され、次いで、本開示の方法に従って、選択した投与経路に適合される種々の形態において、被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、コンパニオンアニマル、または飼い慣らされた動物))に投与される。上記製剤は、経口投与、直腸投与、膣投与、局所投与、鼻投与、眼投与または非経口投与(皮下、筋肉内、腹腔内、および静脈内が挙げられる)に適切なものを含む。上記製剤は、便利なことには、所定の投与経路による送達に適した形態で示され得、薬学分野で周知の方法によって調製され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、ペプトイドは、1またはこれより多くのさらなる活性薬剤(例えば、抗真菌化合物)と組み合わせて製剤化される。本質的に任意の公知の治療剤が、さらなる活性薬剤として含まれ得る。併用療法における上記さらなる活性薬剤の作用は、上記ペプトイドに対して累積的であってもよいし、例えば、副作用または被験体の医学的状態の他の局面を管理するために補助的であってもよい。いくつかの実施形態において、上記併用療法は、アゾール、ポリエン、フルオロシトシン、アンホテリシンB、フルコナゾール、および/またはエキノカンジンを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、殺真菌組成物である。上記殺真菌組成物は、活性薬剤として、本明細書で記載されるペプトイド、またはその塩、および殺真菌性の受容可能なキャリアを含む。本明細書で使用される場合、「殺真菌的に受容可能な(fungicidal acceptable)」とは、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない物質に言及し、例えば、その物質は、上記ペプトイドまたはその殺真菌的に受容可能な塩とともに、これが含まれる殺真菌組成物の他の成分のうちのいずれかと有害な様式でいかなる望ましくない生物学的効果も相互作用をも引き起こすことなしに、植物に投与され得る。本開示の少なくとも1つのペプトイドは、殺真菌組成物中に製剤化され、次いで、本開示の方法に従って、植物、植物の種子、または植物が生長する土壌へと投与される。上記製剤は、上記植物が生長する土壌を、または上記植物を直接的に処理するために適したものを含む。製剤のタイプとしては、ベイト剤、ゲル、ダスト(dust)、顆粒水和剤(water dispersible granule)、乾燥粉末剤(dry powder)、溶解粉末剤(soluble powder)、乾燥粒剤、ペレット、乳剤(emulsion)、液剤、懸濁剤(suspension)、含浸製品(impregnated product)、肥料配合物(fertilizer combination)、またはエアロゾルが挙げられ得る。
【0098】
上記殺真菌性の受容可能なキャリアとしては、賦形剤が挙げられ得る。賦形剤としては、例えば、希釈剤、溶媒、またはアジュバントが挙げられ得る。アジュバントとしては、適合性の薬剤(compatibility agent)、活性化剤、緩衝化剤、消泡剤、スプレー着色剤、流動制御材(drift control agent)、水質調整剤(water conditioner)、界面活性剤、またはこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、ペプトイドは、1またはこれより多くのさらなる活性薬剤(例えば、殺真菌化合物)と組み合わせて製剤化される。任意の公知の植物処理薬剤が、さらなる活性薬剤として含まれ得る。上記併用療法におけるさらなる活性薬剤の作用は、上記ペプトイドに対して累積的であってもよいし、補助的であってもよい。いくつかの実施形態において、併用療法は、上記併用療法は、1またはこれより多くの殺真菌剤(例えば、アゾキシストロビン、ベノミル、プロピコナゾール、トリシクラゾール、カルベンダジム、メタラキシル、ジフェノコナゾール、ヘキサコナゾール(hexaconazle)、アシベンゾラル、ポリオキシンD塩、フルオキサストロビン、カルボン酸、リン酸の一カリウム塩および二カリウム塩、シモキサニル、クロロタロニル、テブコナゾール、塩化銅、水酸化銅、ミネラルオイル、ピラクロストロビン、硫酸銅、シモキサニル、マンコゼブ、ボスカリド、トリフロキシストロビン(trifluxystrobin)、ジメトモルフ、過炭酸ナトリウム、チオファネート-メチル、銅アンモニアアセテート(cuprammonium acetate)、硫黄、テブコナゾール、フォセチル-Al、ミクロブタニル、シアゾファミド、フェナミドン、ミクロブタニル、クレソキシム-メチル、またはメトラフェノンが挙げられるが、これらに限定されない)を含む。
【0100】
実施形態において、本開示のペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物は、被験体、例えば、脊椎動物(例えば、ヒト、コンパニオンアニマル、もしくは飼い慣らされた動物)における真菌感染または細菌感染、および疾患の処置、制御または防止において有用性が見出され得る。治療的処置は、感染の症状の発生の前に;診断の前に;診断後に;または真菌、細菌、もしくは両方への感染の症状の発生の後に、開始され得る。活性薬剤(例えば、本開示のペプトイドまたはこれを含む組成物)は、所望の効果を生じるために有効な量で被験体に投与される。よって、有効量のペプトイドは、真菌感染、細菌感染、または両方を処置するために、被験体に投与され得る。有効量は、症状を低減する;症状の拡大を防止する;感染の1もしくはこれより多くの微生物を殺滅する;または被験体から感染を一掃するために適切な量である。
【0101】
上記製剤は、単一用量または多数の用量で投与され得る。活性薬剤の有用な投与量は、それらのインビトロでの活性および動物モデルにおけるインビボでの活性を比較することによって決定され得る。いくつかの感染性疾患に関しては、病原性細菌または真菌の代わりが、初期データを集めるために使用され得る。例えば、M.smegmatisは、M.tuberculosisの代わりとして使用され得る。マウス、および他の動物における有効投与量をヒトへと外挿するための方法は、当該分野で公知である。
【0102】
ペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物は、真菌感染、細菌感染、真菌感染から生成されるバイオフィルム、細菌感染から生成されるバイオフィルム、真菌および細菌感染から生成されるバイオフィルム、またはこれらの組み合わせを処置または防止するために使用され得る。例示的な真菌感染としては、Candida spp.(例えば、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、C.auris、C.lusitaniae、またはその組み合わせが挙げられる)への感染;Rhodotorula spp(例えば、R.mucilaginosa、R.minuta、R.glutinis、またはその組み合わせが挙げられる)への感染;および/またはCryptococcus spp.(例えば、C.neoformans、Cryptococcus gattii、またはその組み合わせが挙げられる)への感染が挙げられるが、これらに限定されない。細菌感染の例としては、グラム陰性微生物、グラム陽性微生物、またはマイコバクテリアへの感染が挙げられる。グラム陰性細菌の例としては、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、またはAcinetobacter baumannii、またはその組み合わせが挙げられる。グラム陽性細菌の例としては、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、またはその組み合わせが挙げられる。マイコバクテリアの例は、Mycobacterium tuberculosisである。
【0103】
本開示のペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物はまた、真菌、細菌、または両方への感染の発生を防止または遅らせるために、予防的に投与され得る。予防的である処置は、例えば、リスクのある被験体が真菌または細菌への感染の症状を発現させる前に開始され得る。本明細書で使用される場合、用語「リスクのある(at risk)」とは、その記載されるリスクを実際に有してもよいし、有していなくてもよい被験体に言及する。従って、例えば、感染状態の「リスクにある」被験体は、被験体が、微生物による感染のいかなる検出可能な指標も未だ発現させていないとしても、および上記被験体が、微生物の無症状の量を有し得るか否かにかかわらず、他の個体が、感染状態を有すると特定されている、および/またはおそらく感染性因子に曝されている領域に存在する被験体である。真菌または細菌への感染を発生させる特定のリスクにある被験体の例は、免疫不全状態の個体である。処置は、感染の症状の診断または発生の前、その間、またはその後に行われ得る。症状の発生後に開始される処置は、上記状態のうちの1つの症状の重篤度の減少、または上記症状の完全な除去を生じ得る。本開示のペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物は、真菌または細菌感染の任意の段階で上記被験体(例えば、脊椎動物(例えば、哺乳動物))へと導入され得る。
【0104】
本開示のペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物の投与は、他の処置の前、その間、および/またはその後に行われ得る。このような併用療法は、他の抗真菌薬剤または抗細菌薬剤の使用の間、および/またはその後に、ペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物の投与を伴い得る。ペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物の投与は、数時間、数日、またはさらには数週間でさえ、他の抗真菌薬剤の投与から時間が隔てられ得る。
【0105】
被験体(例えば、ヒト患者)への上記ペプトイドまたはこれを含む組成物の投与が、真菌感染もしくは細菌感染またはこれらと関連する症状を低減または排除するために;被験体内での感染または症状の進行を停止させるもしくは遅らせるために;および/あるいは集団内の感染の拡がり、または別の集団への感染の移動を制御、制限または防止するために、有効であり得ることは、理解されるべきである。
【0106】
本開示のペプトイド、またはこれを含む組成物は、ヒトにおいてのみならず、動物においても、真菌感染または細菌感染、および疾患の処置、制御、または防止において有用性が見出され得る。本開示のペプトイド、またはこれを含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマル、飼い慣らされた動物(例えば、家畜、研究のために使用される動物)、または野生の動物に投与され得る。コンパニオンアニマルとしては、イヌ、ネコ、ハムスター、アレチネズミ、およびモルモットが挙げられるが、これらに限定されない。飼い慣らされた動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、家禽、ヤギ、およびラマが挙げられるが、これらに限定されない。研究用動物としては、マウス、ラット、イヌ、サル(ape)、およびサル(monkey)が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、例えば、小規模または大規模の公衆衛生感染制御プログラムの一部であり得る。上記ペプトイド、またはこれを含む組成物は、例えば、野生動物または飼い慣らされた動物の集団において真菌感染または細菌感染を低減、制御または排除するための予防的手段として動物飼料に添加され得る。上記ペプトイド、またはこれを含む組成物は、例えば、コンパニオンアニマルまたは飼い慣らされた動物または動物集団の慣用的なまたは特殊な獣医学的処置の一部として投与され得る。
【0107】
上記ペプトイドまたはこれを含む組成物の動物への投与が、真菌細菌もしくは細菌感染またはこれらと関連する症状を低減または排除するために;被験体内での感染または症状の進行を停止させるもしくは遅らせるために;および/あるいは集団内の感染の拡がり、または別の集団への感染の移動を制御、制限または防止するために、有効であり得ることは、理解されるべきである。
【0108】
いくつかの実施形態において、本開示のペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物は、植物の真菌感染の処置、制御または防止において有用性が見出され得る。よって、いくつかの実施形態において、本開示は、有効量のペプトイドを含む殺真菌組成物、またはこれを含む殺真菌組成物を植物に投与する工程を包含する方法を記載する。
【0109】
例示的な真菌感染としては、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、Pyrenophora tritici-repentisa、またはその組み合わせへの感染が挙げられるが、これらに限定されない。本開示は、本開示のペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物を上記被験体に投与することによって、真菌感染を有するか、または発生させるリスクにある植物を処理する治療的方法を提供する。治療的処置は、診断前に、真菌への感染の症状の発生前に、診断後に、または真菌への感染の症状の発生後に開始される。
【0110】
本開示のペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物はまた、真菌への感染の発生を防止または遅らせるために、予防的に投与され得る。予防的である処置は、例えば、植物が真菌への感染の症状を発現する前に開始され得る。本開示のペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物は、真菌感染の任意の段階で上記植物に導入され得る。
【0111】
本開示のペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物の植物への投与は、小規模または大規模の植物防疫(plant health)の感染制御プログラムの一部であり得る。上記ペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物は、例えば、作物集団において真菌感染を低減、制御または排除するための予防的手段として肥料に添加され得る。上記ペプトイド、またはこれを含む殺真菌組成物の投与が、真菌感染またはこれと関連する症状を低減または排除するために;被験体内での感染または症状の進行を停止させるもしくは遅らせるために;および/あるいは集団内の感染の拡がり、または別の集団への感染の移動を制御、制限または防止するために、有効であり得ることは、理解されるべきである。
【0112】
実施形態において、本開示のペプトイド、またはこれを含む組成物は、健康補助食品または栄養補助食品としての有用性が見出され得る。よって、本開示のペプトイド、またはこれを含む組成物は、栄養食品、健康補助食品または栄養補助食品として(例えば、丸剤またはカプセル剤形態において)パッケージされ得る。さらに、ペプトイド、またはこれを含む組成物は、「栄養補給(nutraceutical)」食品または「機能性」食品と一般にいわれるものを得るために、食品に添加され得る。ペプトイド、またはこれを含む組成物が添加され得る食品としては、動物飼料;穀物;乳製品(例えば、ヨーグルト、カッテージチーズ);油(水素添加もしくは部分的水素添加油が挙げられる);スープ;および飲料が挙げられるが、これらに限定されない。1個またはこれより多くの親油性または疎水性置換を有するペプトイドは、好ましくは、可溶化を容易にするために、油分のあるまたは脂肪分のある食品へと組み込まれ得る。
【0113】
本発明は、特許請求の範囲において規定される。しかし、非限定的な例示的局面の非網羅的な列挙が、以下に提供される。これらの局面の特徴のうちのいずれか1またはこれより多くのものが、本明細書で記載される別の例、実施形態、または局面のうちのいずれか1またはこれより多くの特徴と組み合わされ得る。
【0114】
例示的局面
【0115】
局面1. 局面1は、一般式:
【化16】
の化合物、そのプロトン化形態、またはその薬学的に受容可能な塩であって、
ここで:
A
Xは、Hまたは直線状もしくは分枝状の(C6~C20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C6~C20)アルケニルであり、ここで上記アルキルまたは上記アルケニルは、必要に応じて、カルボニル基を含み;
Tは、直線状もしくは分枝状の(C6~C20)アルキルまたは直線状もしくは分枝状の(C6~C20)アルケニルであり、ここで上記アルキルまたは上記アルケニルは、必要に応じて、カルボニル基を含み;
Qは、ヒドロキシルまたはNH2であり;
R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、各々独立して、
【化17】
【化18】
もしくはそのプロトン化形態、または一般式R
10NR
11R
12R
13のアルキルアミンであり、
ここで:
各nは、独立して、(C
0~C
3)アルキレンであり;
各yは、独立して、(C
0~C
6)アルキレンであり;
NcpenWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NlinWである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Wは、独立して、N、S、またはOであり;
NphXである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Xは、独立して、F、Cl、Br、またはIであり;
NapenZである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各Zは、独立して、S、またはOであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
10は、独立して、直線状(C
1~C
6)アルキレンであり;
NnphORである各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
50は、独立して、(C
1~C
3)アルキルであり;
R
10NR
11R
12R
13である各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、および/またはR
6に関して、各R
11、各R
12、および各R
13は、独立して、Hまたは(C
1~C
6)アルキルである、
化合物である。
【0116】
局面2. 局面2は、局面1に記載の化合物であって、ここでR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、各々独立して、
【化19】
【化20】
【0117】
またはそのプロトン化形態である化合物である。
【0118】
局面3. 局面3は、局面1~2に記載の化合物であって、ここでTは、直線状(C13)アルキル;直線状(C15)アルキル;シトリル;ファルネシル;または(CO)R50であり、ここでR50は、直線状(C13)アルキルまたは直線状(C15)アルキルである化合物である。
【0119】
局面4. 局面4は、局面1~3に記載の化合物であって、ここでR10は、直線状(C2~C4)アルキレンである化合物である。
【0120】
局面5. 局面5は、局面1~4の化合物であって、ここでR11、R12、およびR13はメチルである化合物である。
【0121】
局面7. 局面6は、局面1~5の化合物であって、ここでR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nnvaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうちのいずれか1つは、Npeaであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nlysであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Nfurであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Npheであり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちのいずれか1つは、Napである、化合物である。いくつかのこのような局面において、Tは、直線状(C
13)アルキルまたは(CO)R
50であり、ここでR
50は、直線状(C
13)アルキルまたは直線状(C
15)アルキルであり;Qは、-NH
2である。
局面7. 局面5は、局面1~5の化合物であって、構造:
【化21】
またはそのプロトン化形態を有する化合物である。
【0122】
局面8. 局面8は、局面1~7のいずれか1つに記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。
【0123】
局面9. 局面9は、局面8に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する方法である。
【0124】
局面10. 局面10は、局面9に記載の方法であって、ここで上記被験体は、ヒトまたは動物である方法である。
【0125】
局面11. 局面11は、局面9または10に記載の方法であって、ここで上記方法は、上記被験体において真菌感染、もしくは真菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する方法である。
【0126】
局面12. 局面12は、局面9~11のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記真菌感染は、Candida albicans、Candida albicans、Candida auris、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusie、Candida parapsilosis、Rhodotorula mucilaginosa、Rhodotorula minuta、もしくはRhodotorula glutinis、Cryptococcus neoformans、もしくはCryptococcus gattii、またはこれらの任意の組み合わせを含む方法である。
【0127】
局面13. 局面13は、局面9~12のいずれか1つに記載の方法であって、さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する方法である。
【0128】
局面14. 局面14は、局面9~13のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記さらなる抗真菌化合物の投与は、上記組成物の投与と同時に行われる方法である。
【0129】
局面15. 局面15は、局面9~14のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記方法は、上記被験体において細菌感染、または細菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する方法である。
【0130】
局面16. 局面16は、局面9~15のいずれか1つに記載の方法であって、さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する方法である。
【0131】
局面17. 局面16は、局面9~16のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記さらなる抗真菌化合物の投与は、上記組成物の投与と同時に行われる方法である。
【0132】
局面18. 局面18は、局面9~17のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記細菌感染は、グラム陽性またはグラム陰性細菌を含む方法である。
【0133】
局面19. 局面19は、局面9~18のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記グラム陽性細菌は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、またはEnterococcus faecalisを含む方法である。
【0134】
局面20. 局面20は、局面9~19のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記グラム陰性細菌は、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、またはAcinetobacter baumanniiを含む方法である。
【0135】
局面21. 局面21は、局面9~20のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記細菌感染は、結核を含む方法である。
【0136】
局面22. 局面22は、局面8~14のいずれか1つに記載の組成物を植物、植物の種子、または上記植物が生長する土壌に投与する工程を包含する方法である。
【0137】
局面23. 局面23は、局面22に記載の方法であって、ここで上記方法は、上記植物において真菌感染、または真菌感染から生成されるバイオフィルム、またはその組み合わせを処置または防止する工程をさらに包含する方法である。
【0138】
局面24. 局面24は、局面22または23に記載の方法であって、ここで上記方法は、さらなる抗真菌化合物を投与する工程をさらに包含する方法である。
【0139】
局面25. 局面25は、局面22~24のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記さらなる抗真菌化合物の投与は、上記組成物の投与と同時に行われる方法である。
【0140】
局面26. 局面26は、局面22~25のいずれか1つに記載の方法であって、ここで上記真菌感染は、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、またはPyrenophora tritici-repentisaを含む方法である。
【0141】
局面37. 局面27は、局面1~8のいずれか1つに記載の化合物または組成物であって、ここで第2の最小阻害濃度は、第1の最小阻害濃度の200%以下であり、ここで上記第1の最小阻害濃度は、目的の微生物に対する連続耐性獲得アッセイなしに評価され、上記第2の最小阻害濃度は、上記目的の微生物に対する連続耐性獲得アッセイ後に評価される化合物または組成物である。
【0142】
局面38. 局面38は、局面37の化合物または組成物であって、ここで上記目的の微生物は、C.albicansである化合物または組成物である。
【実施例】
【0143】
実施例
【0144】
本開示は、以下の実施例によって例証される。特定の例、材料、量、および手順が本明細書で示されるとおりの開示の範囲および趣旨に従って広く解釈されるべきであることは、理解されるべきである。
【0145】
実施例1
【0146】
iPLADアッセイを、例示的なペプトイドRMG9-11を発見するために使用した。iPLADアッセイは、
図1に示されるとおりの4つの段階で理解され得る。第1の段階では、RPMI-MOPS中でのC.albicansの一晩培養物は、TC処理したペトリ皿の表面に成熟バイオフィルムを生成した。第2の段階では、培地を除去し、上記バイオフィルムをPBSで洗浄し、その後、42℃で液化したソフトアガー中のPLAD連結ペプトイドライブラリービーズおよび還元試薬の混合物を上記バイオフィルムの頂部に添加し、固化させた。最小量のアガーを、ライブラリービーズとバイオフィルムとの間の良好な接触を提供するために使用した。第3の段階では、一晩のインキュベーションから、還元試薬がβ鎖ペプトイドを、バイオフィルムと相互作用したライブラリービーズから放出することを可能にした。フロキシンBを、上記ソフトアガーの頂部に添加し、上記バイオフィルムの中へと拡散させ、「ヒット」の周りに位置したピンク色がかった環によって可視化されたバイオフィルム内の真菌細胞を殺滅したペプトイドを明らかにした。最後に、段階4では、ヒットを単離し、α鎖の構造を、タンデム質量分析法によってデコンボリューションした。
【0147】
いったん最適化したら、iPLADアッセイを、C.albicansバイオフィルムに対するコンビナトリアルペプトイドライブラリーRGL9をスクリーニングするために使用した。コンビナトリアルライブラリーは、特有かつ多様な化合物の大きな収集物を合成および迅速にスクリーニングすることができることから、リード分子の供給源として有利である(Lamら,Chem.Rev.97,411-448(1997))。ペプトイドライブラリーRGL9に関する設計は、一般配列Ntri-N
R-N
R-N
C-N
R-N
R-N
C-リンカーを有し、ここでNtriは、トリデシルアミン脂質テールであり、N
Rは、無作為化された脂肪族および芳香族モノマーであり、N
Cは、無作為化されたカチオン性モノマーである(
図2Aおよび
図2B)。リポペプトイドを得るためのコンビナトリアルライブラリーのN末端におけるトリデシルアミンテールの付加は、ライブラリー長を低減し、MS/MSによるヒット配列決定を改善するために使用されるストラテジーである(Turkettら,ACS Comb.Sci.19,229-233(2017);Chongsiriwatanaら,Antimicrob.Agents Chemother.55,417-420(2011))。全てのこれらのモノマーの付加を通じて、RGL9は、およそ1.6×10
5の特有の化合物という理論的多様性を有した。この理論的多様性は、合成中に使用される樹脂の量(これは0.5gであった)によって制限され、およそ3.2×10
4の特有のペプトイドというRGL9に関する実際の多様性を与えた。
【0148】
iPLADアッセイを使用してRGL9をスクリーニングするために、C.albicans成熟バイオフィルムを、RPMI-MOPSに真菌細胞溶液を接種し、一晩インキュベートすることによって生成した。バイオフィルムを、PBSで穏やかに洗浄して、あらゆるプランクトン様または死滅したC.albicans細胞を除去した。RPMI-MOPSソフトアガーと14mMのTCEPおよびPBS中で平衡化したRGL9樹脂の2~5mgアリコートを、上記洗浄したバイオフィルムに添加し、一晩インキュベートした。細胞生存性を決定し、ヒットを特定するために、フロキシンB(5μM)を上記ソフトアガーの頂部に添加し、1時間インキュベートした。フロキシンBを流出できない死細胞によって形成される赤いハローを有する任意のビーズは、「ヒット」と考えられ、手動で除去し、個々のチューブへと入れ、1%のドデシル硫酸ナトリウム溶液中で沸騰させて、培地および細胞デブリを除去することによって清浄にした。次いで、α鎖ペプトイドを、臭化シアンを使用して上記ビーズから切断し、タンデム質量分析法によって分析して、未知のペプトイド配列を決定した。
【0149】
このスクリーニングから、RMG9-11の発見がもたらされた(
図2C)。再合成したRMG9-11の最小阻害濃度(MIC)を、CSLIガイドライン(CLSI.Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically,11th Edition.Clinical and Laboratory Standards Institute(2018);CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.Clinical and Laboratory Standards Institute(2008))を介して、C.albicans、C.neoformans、およびESKAPE細菌に対して最初に決定した。表1は、真菌病原体および細菌病原体に対するRMG9-11の最小阻害濃度(MIC)値を示す。C.albicans臨床単離物は、基準株(M1)、フルコナゾール感受性株(M4およびM6)、およびフルコナゾール耐性株(M2、M3、M5、およびM7)を含む。ATCC 64124は、アンホテリシンB、フルコナゾール、カスポファンギン、およびフルシトシンに対して耐性である多剤耐性C.albicans株である。全てのMICを、少なくとも3日の異なる日に、CSLIガイドラインの下で、三連で行った。
【0150】
C.albicansに対するRMG9-11のMICは、6.25μg/mLであり、これは、他の抗真菌ペプトイド(Chongsiriwatanaら,Antimicrob.Agents Chemother.55,417-420(2011))およびこの真菌病原体に対するいくつかの臨床的処置(フルコナゾールおよびフルシトシンを含む)(Pintoら,Microbiol.Res.163,579-585(2008))に匹敵する。以前に発見された抗真菌ペプトイドで観察されたように、RMG9-11は、C.neoformansを殺滅するにあたってC.albicansより有効であった(Spicerら,Biopolymers 110,e23276(2019);Rygeら,Chemotherapy 54,152-156(2008);Greenら,Int.J.Antimicrob.Agents 56,106048(2020))が、それぞれ、6.25から3.13μg/mLへの2倍の改善に過ぎなかった。RMG9-11のバイオフィルムMIC(BMIC)は、MICと比較して16倍増大した(BMIC=100μg/mL)。BMICはしばしば、確立されたバイオフィルムに関して細胞数の100~1000倍の増大を含めた多くの理由から、MICと比較して上昇する。他の理論から、バイオフィルムの負に荷電したポリサッカリドマトリクスがカチオン性抗微生物性のペプチドおよびペプトイドを包み、病原体標的のそれらへの関与を妨げ得ることが示唆される(Yasirら,Materials 11,(2018))。
【表1-1】
【表1-2】
【0151】
RMG9-11を、フルコナゾール感受性に関わらず、6.25~12.5μg/mLの間のMICを有するC.albicansのフルコナゾール耐性株および感受性株に対して評価した。励みになることには、RMG9-11は、アンホテリシンB、カスポファンギン、フルコナゾール、およびフルシトシン薬物耐性を有するC.albicans株であるATCC 64124(6.25μg/mL)に対して効力を維持した。C.aurisに対するRMG9-11の効力を調査した。C.aurisは、2007年に、Candidaの多剤耐性株として同定され、最初に日本、続いて、アフリカおよび欧州の症例で観察された(Kathuriaら,J.Clin.Microbiol.53,1823-1830(2015);Bormanら,mSphere 1,4-6(2016);Bormanら,mSphere 1,4-6(2009);Magoboら,Emerg.Infect.Dis.20,1250-1251(2014))。RMG9-11に関するC.aurisでの有効性の減少はごくわずかに認められ(12.5μg/mL)、これは、C.aurisが大部分の臨床用抗真菌剤に対して耐性であることを考慮すれば、励みになった(Duら,PLOS Pathog.16,e1008921(2020))。他の一般的なCandida種(tropicalis、krusei、glabrata、およびparapsilosis)を、RMG9-11が汎用のCandida処置として使用され得るか否かを決定するために評価した。RMG9-11は、試験した全てのCandida種に対して3.13~6.25μg/mLの範囲に及ぶMIC値を有し、C.albicansと比較して有効性を維持またはさらには改善して、有望と思われる。RMG9-11の効力を、細菌病原体、特に、ESKAPE細菌に対して評価して、RMG9-11がより幅広いスケールで使用され得るか否かを決定した。
【0152】
ESKAPE細菌は、グラム陽性およびグラム陰性種の両方を含む最も一般的な多剤耐性かつ院内の細菌病原体からなる(Pendletonら,Expert Rev.Anti-infect.Ther.11,297-308(2013))。励みになることには、RMG9-11は、グラム陰性であるK.pnuemoniae(50μg/mL)を除いて、グラム陰性およびグラム陽性細菌の両方に対して中程度の活性を有した(3.13~12.5μg/mL;
図3)。RMG9-11のこの広いスペクトルの抗微生物性活性は、特に、真菌および哺乳動物の膜が類似のリン脂質組成を有することから、哺乳動物の細胞傷害性についての懸念を当然のことながらもたらす。
【0153】
RMG9-11の哺乳動物の細胞傷害性を評価した(表2)。表2は、いくつかの異なる哺乳動物細胞系に対するRMG9-11の細胞傷害性分析を示す。肝臓(HepG2)、線維芽細胞(3T3)、およびケラチノサイト(HaCat)の生存細胞における50%低減を生じたペプトイド濃度(TD50;毒性用量50%)を示す。単一ドナーのヒト赤血球(hRBC)の10%溶血(HC10)を生じたペプトイド濃度もまた示す。選択比(SR)を、プランクトン様C.albicansに対するMICで除算した細胞傷害性として計算した。
【0154】
試験した哺乳動物細胞系(HepG2、3T3、およびHaCat)を、RMG9-11とともに72時間インキュベートし、細胞生存性を、生存細胞がMTTをホルマザンへと還元するMTT還元アッセイを使用して、ミトコンドリア活性を介して決定した。毒性を、生存細胞の50%低減を生じる上記ペプトイドの濃度(毒性用量50%またはTD
50と称される)として報告する。RMG9-11の細胞傷害性を、HepG2肝細胞癌の細胞に対して最初に決定した(114μg/mLのTD
50、C.albicansに対するMICで毒性はなく、中程度の選択比(SR)18を与えた)(表2)。SRは、MICで除算したTD
50として定義し、化合物の治療範囲の尺度を提供する。代表的には、開発および最適化を通して継続する大部分のリード化合物に関して、10というSRは好ましい一方で、100というSRは、前臨床動物モデル評価へと移る化合物に関してはより望ましい。RMG9-11は、マウス線維芽細胞(3T3;TD
50=39μg/mL)およびケラチノサイト(HaCat;TD
50=53μg/mL)に対する毒性の増大を示したが、毒性は、MICにおいてなお最小であった。溶血分析は、RMG9-11がhRBCに対して中程度に毒性(HC
10 29μg/mLおよびSR 5)であることを示した。
【表2】
【0155】
新たなおよび既存の抗微生物性化合物の両方が直面した最も重篤な危機のうちの1つは、病原体がその化合物に対して耐性を急激に発生させ、これがその化合物を役に立たなくすることである。これは、全ての主要な市販の抗微生物性薬物で観察される論点であり、抗真菌薬物に伴うますます広く認められている論点である(Clatworthyら,Nat.Chem.Biol.3,541-548(2007);Wiederholdら,Infect.Drug Resist.10,249-259(2017))。C.albicansがRMG9-11に対する耐性を獲得する能力を、2つの技術;連続および単一継代を使用して評価した。Chingらは、耐性獲得の単一継代評価のための方法を記載した。ここではこれを、RMG9-11で使用した(Chingら,Sci.Rep.10,8754(2020))。簡潔には、C.albicansの単一のコロニーを、RPMI-MOPS中で一晩インキュベートした。次いで、真菌培養物を、0~80%MICの範囲に及ぶRMG9-11の濃度とともに24時間または48時間のいずれかにわたってインキュベートした。24時間および48時間のいずれかにわたってRMG9-11の全ての濃度に曝された真菌は、標準的なMICアッセイのペプトイドに対してなお等しく感受性であった(MIC=6.25μg/mL;表3)。これらの知見は、C.albicansが、RMG9-11に対する耐性を発生させることができないことを示唆する。この知見をさらに確かなものにするために、C.albicansを、Samuelsenらによって記載されるように(Samuelsenら,FEBS Lett.579,3421-3426(2005))、連続継代耐性獲得アッセイ介して、漸増濃度のRMG9-11に導入した。最初に、C.albicansを、ペプトイド非含有培地中で増殖させ、1~25%MICの範囲に及ぶRMG9-11の漸増濃度に連日導入した。連続継代アッセイと単一継代アッセイとの間の1つの大きな差異は、1つの継代から次の継代への接種方法にある。単一継代は、1つの個々のコロニーに依拠する一方で、連続継代は、一連の真菌濃度(細胞/mL)に焦点を当てる。連続継代の最後には、RMG9-11の徐々に増大する濃度に曝したC.albicansを使用して、旧来のMICアッセイを準備した。理論的には、真菌が、MIC未満の抗真菌薬剤での連続継代中に耐性を発達させてしまったとすると、これらの真菌に対するRMG9-11のMICは、増大するはずである。微生物の耐性獲得へのこの代替のアプローチは、6.25μg/mLのMICを維持するRMG9-11を伴う単一継代方法と同じ結果を有した(表3)。全体的に、これらのデータは、C.albicansがRMG9-11に対する耐性を急速に発生させることができないことを示し、潜在的なリード抗真菌薬剤としてのこのペプトイドの有望性を検証する。本発明者らの知る限りでは、これは、微生物がペプトイドに対して耐性を獲得する能力の最初の評価であるが、長い間、ペプトイドの耐性を獲得する確率は低いという仮説が立てられていた。
【表3】
【0156】
RMG9-11の抗真菌有効性、哺乳動物細胞傷害性、および選択比は、反復構造活性関係性(SAR)試験を通じて改善され得る(Middeltonら,Bioorg.Med.Chem.Lett.28,3514-3519(2018))。一連の提唱されるRMG9-11誘導体を、
図3に示す。この誘導体リストは網羅的ではない。広い範囲の誘導体を調査し得、各ペプトイドモノマーのファーマコフォアの重要性を決定するために、最初のサルコシンスキャンによってガイドし得る。
【0157】
略語
【0158】
iPLAD,倒立型ペプトイドライブラリーアガー拡散;AMP,抗微生物性ペプチド;YPD,酵母エクストラクトペプトンデキストロース;MIC,最小阻害濃度;TD50,毒性用量50%;HC10,溶血濃度10%;SR,選択比。
【0159】
実験法
【0160】
材料
【0161】
試薬を、Fisher Scientific(Waltham,MA)、Alfa Aesar(Haverhill,MA)、Amresco(Solon,OH)、TCI America(Portland,OR)、Anaspec(Fremont,CA)、EMD Millipore(Billerica,MA)、Peptides International(Louisville,KY)、およびChem-Implex(Wood Dale,IL)から購入した。使用した全ての試薬は、95%を超える純度であった。ヒト赤血球(hRBC)を、Innovative Research(Novi,MI)から獲得した。BocおよびMmt保護ジアミンを、Chem-Impex(Wood Dale,IL)から購入または以前に記載されるように合成した。44枚の顕微鏡画像を、Leica M165FC顕微鏡を使用して獲得した。全ての質量スペクトルを、Waters Synapt HDMS QToFでイオン移動度を用いて獲得した。全ての蛍光および吸光度読み取りを、Spectramax M5プレートリーダーで獲得した。化合物の精製を、Supelco Ascentis C18カラム(5μM;25cm×21.2mm;Sigma-Aldrich 581347-U)および0.05%のトリフルオロ酢酸を含む水からアセトニトリルへの0から100%の勾配で、Varian Prepstar SD-1によって達成した。
【0162】
RGL9ライブラリー合成
【0163】
PLADリンカーを、以前に記載されたように合成した(Fischerら,ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))。RGL9を、PLADリンカーを含むTentaGel上にスプリット-アンド-プール法(split-and-pool method)を使用して合成した。簡潔には、樹脂(500mg)を、ジメチルホルムアミド(DMF)中のブロモ酢酸(BrAcOH;2M)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC;3.2M)を使用してブロモアシル化し、マイクロ波の補助(10%出力;15秒;2回)の後に10分間撹拌した。次いで、樹脂を、4本のカチオン性または10本の非カチオン性反応バイアルのいずれかへと等しく分け、DMF中のアミン溶液(2M)で処理し、マイクロ波の補助の後に45分間撹拌した。次いで、樹脂を一緒にプールし、ブロモアシル化、分割、アミノ化、プールプロセスの全体を、6回反復した。4位および7位は、カチオン性サブモノマーのために取っておき、2位、3位、5位、および6位を、非カチオン性サブモノマーのために取っておいた/スプリット-アンド-プール合成中に使用したアミンは、Boc-エチレンジアミン、Boc-ジアミノプロパン、Boc-ジアミノブタン、Mmt-ジアミノプロパン、ホモトリプタミン、フルフリルアミン、4-(アミノメチル)フェノール、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、メトキシエチルアミン、ナフチルアミン、イソプロピルアミン、(+/-)フェニルエチルアミン、およびプロピルアミンであった。これは、RGL9に、1.6×107の理論的多様性を与えた。スプリット-アンド-プール合成が完了した後に、トリデシルアミンの最終付加を、ペプトイド化学を使用して完了させた。次いで、末端アミンを、樹脂装填能力(resin loading capacity)と比較して、10モル当量で、DMF中5%のN-メチルモルホリン(NMM)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc2O)を使用してBoc保護した。アルギニン摸倣物を形成するためにグアニジニル化を意図したアミンを、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸(TFA;1%)を使用してMmt脱保護し、樹脂と撹拌した(5回、10分)。グアニジル化を、ライブラリーを一晩、ピラゾールカルボキサミジン(10モル当量)と、5%のNMM-DMF中の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;1モル当量)とともに撹拌することによって達成した。全体的なBoc脱保護を、それぞれ95:2.5:2.5比のTFA、水、およびトリイソプロピルシラン(TIS)で1時間処理し、続いて、ジクロロメタンで洗浄することによって達成して、最終的なRGL9ペプトイドライブラリーを得た。
【0164】
iPLADアッセイ
【0165】
酵母ペプトンデキストロース(YPD)アガープレートに、C.albicansの凍結ストックを画線培養し、一晩、37℃でインキュベートした。単一のコロニーを、OD530=0.15~0.25の間の濁度を達成するまで、塩類溶液(0.85%)に添加した。細胞溶液(100μL)を、RPMI-MOPS(pH7;6mL)に添加し、細胞処理ペトリ皿(60mm)にプレートし、一晩、37℃でインキュベートした。培地を除去し、バイオフィルムを、PBSで穏やかに洗浄した(3回)。RPMI-MOPSソフトアガー(0.75%w/v)を液化し、使用時まで42℃で維持した。RGL9(0.5mL PBS中2~5mg)およびTCEP(100mM;580μL)をソフトアガーに添加し(4mL全容積)、バイオフィルムの頂部にプレートした。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。フロキシンB(10μg/mL;1mL)を上記ソフトアガーの頂部に添加し、さらに1時間インキュベートした。赤いハローを伴うビーズを、外科用ピンセットで取り出し、微量遠心管中に入れ、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS;1%)中で20分間沸騰させ、続いて、PBSで洗浄した(3回)。これらのビーズ上の残りのα鎖ペプトイドを、塩酸(0.1M)を含むアセトニトリル:水(1:1)中の臭化シアン(40mg/mL)とともに遮光して室温で一晩インキュベートすることによって樹脂から切断した。上記臭化シアン溶液を、真空中で除去し、TFA(0.05%)を含むアセトニトリル:水(1:1)中で再懸濁し、MSを介して分析し、未知のペプトイドの構造を得るためにMS/MSを使用して配列決定した。
【0166】
ペプトイド合成
【0167】
MS/MSによって決定されたペプトイド配列を、標準的なサブモノマーアプローチ(Zuckermannら,J.Am.Chem.Soc.114,10646-10647(1992))を使用する抗微生物性特徴づけのために再合成した。ペプトイドを、ポリスチレン(PS)表面(rink)アミド樹脂上で合成した。樹脂を、DMF中で20分間膨潤させた。樹脂を、DMF中20%のピペリジンを使用してFmoc脱保護し、10分間、2回撹拌した。比色Kaiser試験によって除去を確認した。樹脂を、無水DMF中でBrAcOH(2M)およびDIC(3.2M)を使用してブロモアシル化し、マイクロ波の補助後に10分間撹拌した。DMFで洗浄した後、アミンを、マイクロ波の補助後に無水DMF中で25分間、樹脂と選択したアミン(2M)を撹拌することによってカップリングし、続いて、DMFで洗浄した。このプロセスを反復して、所望のペプトイドを形成した。ペプトイドを樹脂から切断し、Boc基を、TFA、水、TIS(95:2.5:2.5)とともに1時間撹拌することによって同時に脱保護した。TFA溶液を、上記溶液に空気を吹き込むことによって除去し、続いて、TFA(0.05%)を含むアセトニトリル:水(1:1)中で再懸濁し、MSによって検証した。次いで、ペプトイドを、SUPLRCO C-18カラムおよび0.05%のTFAを含む水からアセトニトリル(0から100%)の勾配で、RP-HPLCを使用して精製した。溶媒を真空中で除去して、ペプトイドを白色粉末として得た。
【0168】
真菌最小阻害濃度アッセイ
【0169】
真菌病原体C.albicansおよびC.neoformansに対するペプトイドの最小阻害濃度(MIC)を、CLSIガイドライン(Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.”CLSI.2008.)に従って決定した。コロニーを、画線培養したYPDプレートから0.85%の塩類溶液へと移して、0.18~0.25の間のOD530を達成した。この接種物をRPMI-MOPSへと1:100希釈し、次いで、さらに、RPMI-MOPSへと1:20希釈した。198μLの接種物を、96ウェル黒色壁プレートの各ウェルへと播種した。100×ペプトイド溶液の2倍段階希釈物を、水中で調製し、2μLのペプトイドを各ウェルに三連で添加した。プレートを、37℃で、C.neoformansについては72時間、およびC.albicansについては24時間インキュベートし、その後、手動での観察によってMICを評価した。MICを、真菌増殖を防止する化合物の最低濃度として定義した。このアッセイを、各化合物で別の日に3回反復した。
【0170】
真菌バイオフィルム最小阻害濃度アッセイ
【0171】
真菌病原体C.albicansに対するペプトイドのバイオフィルム最小阻害濃度(MIC)を、CLSIガイドライン(CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.Clinical and Laboratory Standards Institute,2008)に従って決定した。コロニーを、画線培養したYPDプレートから0.85%の塩類溶液へと移して、0.15~0.25の間のOD530を達成した。この接種物をRPMI-MOPSへと1:100希釈し、次いで、さらに、RPMI-MOPSへと1:20希釈した。200μLの接種物を、96ウェル黒色壁プレートの各ウェルへと播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。培地を穏やかに除去し、PBSで3回穏やかに洗浄した。RPMI-MOPS(198μL)を各ウェルに添加した。100×ペプトイド溶液の2倍段階希釈物を、水中で調製し、2μLのペプトイドを各ウェルに三連で添加し、次いで、37℃で24時間インキュベートした。PRESTOBLUE(20μL)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートし、その後、SPECTRAMAX M5プレートリーダーで蛍光を測定した(励起555nm;発光585nm)。
【0172】
細菌最小阻害濃度アッセイ
【0173】
ESKAPE細菌(Enterococcus faecium ATCC 6569;Staphylococcus aureus ATCC 29213;Klebsiella pneumoniae ATCC 13883;Acinetobacter baumanii ATCC 19606;Pseudomonas aeruginosa ATCC 25619;Enterococcus faecalis ATCC 29212;およびEscherichia coli ATCC 25922)に対するペプトイドの最小阻害濃度(MIC)を、CLSIガイドライン(CLSI.Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically,11th Edition.Clinical and Laboratory Standards Institute,2018)に従って決定した。Mycobacterium smegmatisに対するMICを同様に、CLSIガイドライン(Woods,G.L.ら Susceptibility Testing of Mycobacteria,Nocardiae,and Other Aerobic Actinomycetes,2nd edition.(2011))に従って決定した。画線培養したトリプティックソイアガープレートから拾い上げたコロニーを、トリプティックソイブロス(TSB)へと添加して、OD600=0.08~0.15の濁度を達成した。接種物を、カチオン調節ミュラーヒントンブロス(CAMHB)へと1:200希釈し、90μLを、96ウェル黒色壁プレートの各ウェルへとプレートした。10×ペプトイドの2倍系列希釈物(10μL)を各ウェルに三連で添加し、37℃で、ESKAPE細菌については24時間、およびM.smegmatisについては72時間インキュベートした。テトラサイクリン(20μg/mL)を、陽性コントロールとして使用するとともに、DI水をビヒクルコントロールとして使用した。ESKAPE細菌についてのインキュベーション後に、PRESTO BLUE(10μL)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートし、その後、SPECTRAMAX M5プレートリーダーで蛍光を測定した(励起555nm;発光585nm)。M.smegmatisについてのインキュベーション後に、ウェルを、CLSIガイドラインに従ってスコア付けして、MICを決定した。このアッセイを別個の日に3回反復した。
【0174】
哺乳動物細胞傷害性
【0175】
肝細胞癌(HepG2)、マウス線維芽細胞(3T3)、およびヒトケラチノサイト(HaCat)細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)、ならびに1%のペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミン(PSG)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、37℃および5% CO2において培養した。細胞を収集し、フェノールレッド非含有DMEM中で1×105~4×105個の細胞/mLへと調節し、96ウェルプレートにプレートした(100μL)。10×ペプトイドの2倍系列希釈物(11.1μL)を各ウェルに三連で添加した。水(ビヒクル)を陰性コントロールとして使用した。プレートを、37℃で5% CO2中、72時間インキュベートした。チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT)を各ウェルに添加し(5mg/mL;20μL)、3時間インキュベートした。培地を除去し、DMSO(100μL)を添加し、プレートを37℃で10分間インキュベートした。プレートを、SPECTRAMAX M5プレートリーダーで読み取った(吸光度570nm)。コントロールと比較して増殖の50%低減を生じる化合物の濃度(毒性用量50%;TD50)を、GRAFITを使用して決定した。この手順を、別個の日に3回反復した。
【0176】
溶血アッセイ
【0177】
溶血活性を、単一ドナーのヒト赤血球(hRBC)を使用して決定した。hRBCを、PBSで洗浄および遠心分離(1000RPM;10分)を3回行い、PBS中に再懸濁し、96ウェルプレート中でアリコートに分けた(100μL)。PBS中で10×ペプトイド最終濃度の2倍系列希釈物を調製し、ウェルに三連で添加した。PBSをビヒクルコントロールとして、1%のTriton(登録商標)X-100を陽性コントロールとして使用した。プレートを、1時間(37℃;5% CO
2)インキュベートし、次いで、遠心分離し(1000RPM;10分)、上清を新たな96ウェルプレート中でPBSへと1:20希釈した。プレートを、SPECTRANAX M5プレートリーダーで読み取った(吸光度405nm)。パーセント溶血を、以下の式によって決定した:
【数1】
GRAFITを使用して、50%溶血活性の濃度(HC50)およびHill係数(H)を決定した。次いで、10%での溶血活性(HC
10)を以下の式によって決定した:
HC
10=HC
50[10%/(100%-10%)]
1/H
【0178】
連続継代耐性獲得アッセイ
【0179】
C.albicansによるRMG9-11に対する耐性獲得を、以前に公開され方法に従う連続継代アッセイを使用して決定した。凍結したストック画線培養プレートからのC.albicansの43個の単一コロニーを、塩類溶液(0.85%)へと添加して、OD530=0.15~0.25を達成した。RPMI-MOPS(pH7;5mL)を、105個の細胞/mLの濃度に達成するように細胞溶液に接種した(OD530 1.000=3×107個の細胞/mL)。RMG9-11を、1%MICで添加し、一晩インキュベートした(200RPM;37℃)。新鮮なRMPI-MOPSを、5%MIC濃度のペプトイドを含む一晩細胞溶液に接種した。このプロセスを反復し、5から10%、最終的には25%MICへと連続的に増大させた。MICを、CLSIガイドライン(CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.Clinical and Laboratory Standards Institute,2008)に従って、連続継代培養物からの細胞を使用して、25%MICンキュベーション後に行った。これを、生物学的複製のために凍結したストックからの4枚の別個の画線培養したプレートで行った。
【0180】
単一継代耐性獲得アッセイ
【0181】
単一継代を介する第2の耐性獲得を、RMG9-11に関して、連続継代結果の確認として以前に公開された方法(Chingら,Sci.Rep.10,8754(2020))に従ってC.albicansに対して行った。単一のC.albicansコロニーを、RPMI-MOPS(pH7;5mL)へと接種し、一晩インキュベートした(200RPM;37℃)。一晩の溶液を、0、10、20、40、60、および80%MIC濃度のRMG9-11を含むRPMI-MOPS(pH7;5mL)へと1:1000希釈し、24時間インキュベートした(200RPM;37℃)。一晩の溶液を、0、10、20、40、60、または80%MIC RMG9-11を含むYPDまたは新鮮なRPMI-MOPSのいずれかへと1:1000希釈し、さらに24時間インキュベートした。YPD溶液を使用して旧来のMICアッセイを設定し、24時間後に獲得した耐性を評価した一方で、48時間RPMI-MOPS溶液を、化合物なしのYPDへと1:1000希釈し、一晩インキュベートした。翌日、MICをこれらの細胞溶液で行って、48時間後に耐性獲得を評価した。このアッセイを、生物学的複製のために凍結したストックからの4枚の別個の画線培養したプレートで行った。
【0182】
実施例2
【0183】
RMG9-11サルコシンスキャン
【0184】
RMG9-11の反復構造活性関係性(SAR)を行って、改善された生物学的活性および選択性を有する誘導体を開発することを目標として、この化合物の誘導体を調査した。最初に、サルコシンスキャンを完了させて、各モノマーの薬理学的重要性を決定した。この試験では、RMG9-11の各モノマーをサルコシン、すなわちN-メチルグリシン(これは、アラニンのペプトイド等価物である)で置換した誘導体を合成した。(
図5)。Candida albicansに対する抗真菌有効性(最小阻害濃度またはMIC)およびHepG2肝臓細胞に対する哺乳動物細胞傷害性(毒性用量50%またはTD
50)を、各化合物に関して決定した(表4)。
【表4】
【0185】
これらのデータは、1位(一般式Iの位置T)における親油性トリデシルテールが、薬理学的に重要であり、抗真菌有効性および細胞傷害性の両方に最も寄与することを示した。2番目は、3位(R2)におけるフェニルエチル基(Npea)であり、続いて、6位(R5)におけるベンジル基(Nphe)、5位(R6)におけるフルフリル基(Nfur)、2位(R1)におけるプロピル基(Nnva)、ならびに4位(R3)および7位(R6)におけるカチオン性基(NlysおよびNap)であった。カチオン性基は、細胞傷害性を主に軽減し、あるとしても、抗真菌有効性にはほとんど寄与しない。さらに、2位(R1)におけるプロピル基は、抗真菌有効性または細胞傷害性のいずれにもほとんど寄与せず、開発のために、この部位が生物学的ペナルティーをあまり受けることなく改変され得るという仮説を立てた。
【0186】
反復SAR第1回
【0187】
反復SARの第1回は、3位(R
2;
図6)における置換を探索した誘導体とともに、2つの種々雑多な誘導体を調査した。構造をESI-MSによって確認し、疎水性をRP-HPLC精製中の溶離時間におけるパーセントアセトニトリルによっておよびMarvinSketchを使用して決定して、pH7.4での分配係数を計算した(表5)。トリデシルテール(911-M1)の代わりに14炭素の脂肪酸(ミリスチン酸)テールに置き換わる1位(式1の基T)のただ1つの誘導体を調査した。これは、この脂肪酸が以前に毒性を低減しながらC.albicansに伴う活性を改善することを示したことから試験された(Green RM,Bicker KL.Evaluation of peptoid mimics of short,lipophilic peptide antimicrobials.Int J Antimicrob Agents.2020;56(2):106048.doi:10.1016/j.ijantimicag.2020.106048)。第2の種々雑多な誘導体を、抗真菌活性に影響を与えることなく毒性を低減しようとして、2位(R
1)のプロピル基(Nnva)をカチオン性基で置換して試験した(911-M2)。3位における置換(R
2)は、ベンジル基(Nphe;911-M3)、パラ-フルオロベンジル基(Npfb;911-M4)、パラ-クロロベンジル基(Npcb;911-M5)、パラ-ブロモベンジル基(Npbb;911-M6)、フルフリル基(Nfur;911-M7)、チオフェン基(Ntma;911-M8)、シクロヘキシル基(Ncha;911-M9)、シクロヘキシルメチル基(Nchexm;911-M10)、およびS-シクロヘキシルエチル基(NchexmS;911-M11)を含んだ。
【表5】
【0188】
抗真菌活性を、全ての誘導体に関して、C.albicansおよびCryptococcus neoformansに対して決定した。これをMICとして報告する(表6)。哺乳動物細胞傷害性を、HepG2肝臓細胞に対して決定した。これをTD
50として報告する(表6)。これらのデータは、脂肪酸テールを有する化合物911-M1およびS-シクロヘキシルエチル基(NchexmS)を有する化合物911-M11が、C.albicansに対して中程度に改善した抗真菌活性を有したことを示す。興味深いことには、化合物911-M8および911-10は、C.neoformansに対して1μg/mL未満の活性を示した。第1回における誘導体の大部分は、RMG9-11と比較して類似のまたは増大した細胞傷害性を有したので、TD
50をMICで除算することによって計算される選択比(SR)を減少させた。さらなるカチオン性基を有する化合物911-M2は、細胞傷害性の劇的な減少を示したが、抗真菌活性の減少も示した。第1回からの最も有望な化合物は、911-M1であり、これは、改善された抗真菌活性および減少した細胞傷害性の両方を有し、改善されたSRを生じた。第1回のいくつかの有望な要素を組み合わせて、有望な生物学的特性を有すると仮定される第1回のハイブリッドを生成した。具体的には、これらの要素は、1位(基T)におけるミリスチン脂肪酸((CO)-R
20、ここでR
20は、直線状(C
13)アルキルである)、2位(R
1)における余分のカチオン性基、および3位(R
2)におけるS-シクロヘキシルエチル基(NchexmS)であった。全3個の要素(911-M12)または最後の2つの要素(911-M13)を含むハイブリッドを合成し、特徴づけた(
図7および表7)。これらのハイブリッドは、911-M1と比較して、増大した選択性を示さなかったので、1位(基T)におけるミリスチン酸は、SAR開発の第2回へと持ち越された。
【表6】
【表7】
【0189】
反復SAR第2回
【0190】
反復SARの第2回は、サルコシンスキャンによって決定される場合の2番目に最も薬理学的に重要なモノマー、6位(R
5;
図8Aおよび8B)におけるベンジル基(Nphe)の改変を調査した。第1回の間に特定された1位(基T)における最適なミリスチン酸テール((CO)-R
20(ここでR
20は、直線状(C
13)アルキル;C
13H
31である)は、全ての第2回の誘導体において保持した。6位(R
5)における置換は、イミダゾール基(Nim1;911-M14)、ナフチル基(Nnap;911-M15)、パラ-メトキシベンジル基(NphOMe;911-M16)、S-シクロヘキシルエチル基(NchexmS;911-M17)、フルフリル基(Nfur;911-M18)、パラ-フルオロベンジル基(Npfb;911-M19)、シクロヘキシルメチル基(Nchm;911-M20)、チオフェン基(Ntma;911-M21)、および(±)-フェニルエチル基(Npea;911-M22)を含んだ。構造をESI-MSによって確認し、疎水性を、MarvinSketchを使用して決定して、pH7.4での分配係数を計算した(表8)。
【表8】
【0191】
抗真菌活性を、全ての誘導体に関して、C.albicansおよびC.neoformansに対して決定した。これをMICとして報告する(表9)。哺乳動物細胞傷害性を、HepG2肝臓細胞に対して決定した。これをTD50として報告する(表9)。これらのデータは、第2回の誘導体がいずれも、911-M1と比較して、改善された選択性を有しなかったことを示す。大部分の化合物は、イミダゾール基(Nim1)を含む911-M14(これは、顕著な活性の減少を有した)を除いて、911-M1に類似の抗真菌活性を有した。毒性は変動したが、大部分の化合物は、顕著により毒性であったシクロヘキシル基を含むもの(911-M17、Nchexm;および911-M20、Nchm)を除いて、911-M1に匹敵した。第2回内で、化合物911-M18は、151.96±8.04μg/mLというTD50で最良の細胞傷害性プロフィールを有した。これは、わずかではあるが、911-M1より有意に良好ではなかった。
【0192】
図9は、第1回および第2回において調査した有望な改変の内のいくつかの組み合わせを試験するために設計されている一連の第2回のハイブリッドを示す。
図10は、5位(R
4)におけるフルフリル基、続いて、2位(R
1)におけるプロピル基に対する改変を調査するために合成される第3回の誘導体の例を示す。
【表9】
【0193】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、および刊行物、ならびに電子的に入手可能な資料(例えば、ヌクレオチド配列提出(例えば、GenBankおよびRefSeqにおけるもの)およびアミノ酸配列提出(例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるもの、ならびにGenBankおよびRefSeqにおける註釈されたコード配列からの翻訳)を含む)の完全な開示が、それらの全体において参考として援用される。刊行物の中で参照される補助的な資料(例えば、補助的な表、補助的な図、補助的な材料および方法、ならびに/または補助的な実験データ)は、同様にそれらの全体において参考として援用される。本出願の開示と、本明細書で参考として援用される任意の文書の開示(複数可)との間で何らかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示が優先するものとする。前述の詳細な説明および実施例は、理解を明瞭にするために示されているに過ぎない。不必要な限定は、そこから理解されるべきではない。本開示は、示され、記載される正確な細部に限定されない。というのは、当業者に自明なバリエーションに関しては、特許請求の範囲によって定義される開示内に含まれるからである。
【0194】
別段示されなければ、明細書および特許請求の範囲の中で使用される構成要素の量、分子量などを表す全ての数字は、全ての場合に、用語「約(about)」によって修飾されていると理解されるべきである。よって、別段逆に示されなければ、明細書および特許請求の中で示される数値パラメーターは、本開示によって得ようと求められる望ましい特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、および均等論を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告される有効数字の桁数に鑑みて、および通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0195】
本開示の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、全ての数値は、それらそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる範囲を本質的に含む。
【0196】
全ての見出しは、読み手の便宜のためであり、特定されなければ、その見出しに続く本文の意味を限定するために使用されるべきではない。
【図】
【国際調査報告】