IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アナグラム セラピューティクス,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-536161遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素、その製造および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素、その製造および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/20 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N9/20 ZNA
A61K38/46
A61K38/48
A61P1/00
A61P1/18
A61P1/16
A61P3/10
A61P1/04
A61P35/00
A61P43/00
A61P43/00 121
A61K31/07
A61K31/122
A61K31/355
C12N15/55
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519369
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022077426
(87)【国際公開番号】W WO2023056469
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,403
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055724
【氏名又は名称】アナグラム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ギャロット,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリン,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ワイト,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,クラース
(72)【発明者】
【氏名】ゴビンダラジャン,スリダール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA41X
4B065AA41Y
4B065AA43X
4B065AA43Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA31
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084DC02
4C084DC22
4C084MA16
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA681
4C084ZA751
4C084ZB261
4C084ZC232
4C084ZC292
4C084ZC412
4C084ZC521
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206CB28
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZA75
4C206ZB26
4C206ZC52
4C206ZC75
(57)【要約】
遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素、かかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを作製する方法、かかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを含む剤型ならびにトリグリセリド(脂肪)を消化および/または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害を治療するためにかかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対して酸性pH(例えばpH3.0または4.0)で増加した安定性、(ii)対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対して、プロテアーゼ(例えばセリンプロテアーゼおよび/またはアスパラギン酸プロテアーゼ)の存在下で増加した安定性、または(iii)対応する野生型微生物リパーゼ酵素の酵素活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の1つ以上を含む、組換え変異体微生物リパーゼ酵素。
【請求項2】
(a)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基の置換;
(b)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基の置換;
(c)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基の置換;
(d)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基の置換;
(e)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基の置換;
(f)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基の置換;
(g)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基の置換;
(h)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基の置換;
(i)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基の置換;
(j)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基の置換;
(k)野生型バークホルデリア・セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基の置換;
(l)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基の置換;
(m)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基の置換;
(n)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基の置換;
(o)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基の置換;
(p)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基の置換;
(q)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基の置換;
(r)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基の置換;
(s)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基の置換;
(t)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基の置換;
または前述の置換のいずれかの組合せ
を含む、請求項1記載のリパーゼ。
【請求項3】
リパーゼにおいて:
(a)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基はQで置換され;
(b)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基はSで置換され;
(c)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基はAで置換され;
(d)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基はNで置換され;
(e)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基はHで置換され;
(f)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基はLで置換され;
(g)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基はKで置換され;
(h)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基はLで置換され;
(i)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基はLで置換され;
(j)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基はYで置換され;
(k)野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基はRで置換され;
(l)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基はQで置換され;
(m)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基はNで置換され;
(n)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基はIで置換され;
(o)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基はAで置換され;
(p)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基はSで置換され;
(q)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基はVで置換され;
(r)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基はAで置換され;
(s)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基はAで置換され;
(t)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基はAで置換されるか;
またはリパーゼが前述の置換のいずれかの組合せを含む、
請求項2記載のリパーゼ。
【請求項4】
(a)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基の置換(D102);
(b)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基の置換(G125);
(c)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基の置換(T137);
(d)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基の置換(S153);
(e)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基の置換(N154);
(f)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基の置換(F221);
(g)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基の置換(T227);
(h)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基の置換(F249);
(i)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基の置換(V266);
(j)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基の置換(N300);
(k)野生型バークホルデリア・セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基の置換(Q39);
(l)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基の置換(T79);
(m)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基の置換(A128);
(n)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基の置換(V138);
(o)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基の置換(L128);
(p)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基の置換(A170);
(q)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基の置換(A240);
(r)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基の置換(G250);
(s)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基の置換(S260);
(t)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基の置換(S281);
または前述の置換のいずれかの組合せ
を含む、請求項1~3いずれか記載のリパーゼ。
【請求項5】
リパーゼにおいて:
(a)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基はQで置換され(D102Q);
(b)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基はSで置換され(G125S);
(c)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基はAで置換され(T137A);
(d)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基はNで置換され(S153N);
(e)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基はHで置換され(N154H);
(f)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F221L);
(g)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基はKで置換され(T227K);
(h)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F249L);
(i)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基はLで置換され(V266L);
(j)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基はYで置換され(N300Y);
(k)野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基はRで置換され(Q39R);
(l)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基はQで置換され(T79Q);
(m)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基はNで置換され(A128N);
(n)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基はIで置換され(V138I);
(o)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基はAで置換され(L161A);
(p)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基はSで置換され(A170S);
(q)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基はVで置換され(A240V);
(r)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基はAで置換され(G250A);
(s)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基はAで置換され(S260A);
(t)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基はAで置換されるか(S281A);
またはリパーゼが、前述の置換のいずれかの組合せを含む、
請求項4記載のリパーゼ。
【請求項6】
対応する野生型微生物リパーゼに対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの変異を含む、請求項1~5いずれか記載のリパーゼ。
【請求項7】
(a) D102Q、N154HおよびF221Lの置換;
(b) D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Yの置換;
(c) T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Yの置換;
(d) T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(e) T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(f) T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、G250A、V266LおよびN300Yの置換;
(g) T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(h) T79Q、D102Q、G125S、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(i) D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Yの置換;
(j) D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、G250A、V266LおよびN300Yの置換;
(k) D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、G250A、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(l) D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、G250A、V266LおよびN300Yの置換;または
(m) D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換
を含む、請求項5または6記載のリパーゼ。
【請求項8】
α/β-ヒドロラーゼリパーゼである、請求項1~7いずれか記載のリパーゼ。
【請求項9】
セリン-ヒスチジン-アスパラギン酸活性三つ組を含む、請求項1~8いずれか記載のリパーゼ。
【請求項10】
脂質の結合および/または加水分解を可能にするように開く疎水性のふたを含む、請求項1~9いずれか記載のリパーゼ。
【請求項11】
疎水性のふたが、8炭素よりも大きい鎖の長さを有するトリグリセリドの結合および/または加水分解を可能にするように十分に開く、請求項10記載のリパーゼ。
【請求項12】
カルシウム結合部位を含むリパーゼであって、カルシウムがカルシウム結合部位に結合する場合に安定化される、請求項1~11いずれか記載のリパーゼ。
【請求項13】
オキシアニオンホールを含むリパーゼであって、オキシアニオンホールが、脂肪酸結合加水分解の際に作製させる負に荷電した中間体を安定化する、請求項1~12いずれか記載のリパーゼ。
【請求項14】
ファミリー1細菌性リパーゼである、請求項1~13いずれか記載のリパーゼ。
【請求項15】
I.1、I.2またはI.3サブファミリー細菌性リパーゼである、請求項14記載のリパーゼ。
【請求項16】
I.1またはI.2サブファミリー細菌性リパーゼである、請求項15記載のリパーゼ。
【請求項17】
I.2サブファミリー細菌性リパーゼである、請求項16記載のリパーゼ。
【請求項18】
バークホルデリア属、シュードモナス属またはクロモバクテリウム属のリパーゼである、請求項1~17いずれか記載のリパーゼ。
【請求項19】
バークホルデリア・セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、緑膿菌、シュードモナス・ルテオラまたはクロモバクテリウム・ビスコスムのリパーゼである、請求項18記載のリパーゼ。
【請求項20】
バークホルデリア・セパシアリパーゼである、請求項19記載のリパーゼ。
【請求項21】
野生型B.セパシアの87位に対応する位置でのS残基(S87)、野生型B.セパシアの264位に対応する位置でのD残基(D264)および野生型B.セパシアの286位に対応する位置でのH残基(H286)を含む、請求項1~20いずれか記載のリパーゼ。
【請求項22】
配列番号:2~14のいずれかのアミノ酸配列または配列番号:2~14のいずれかに対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~21いずれか記載のリパーゼ。
【請求項23】
表1または表2に列挙される置換または置換の組合せを含む、組換え変異体微生物リパーゼ酵素。
【請求項24】
セリンプロテアーゼの存在下で少なくとも75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する、請求項1~23いずれか記載のリパーゼ。
【請求項25】
対応する野生型リパーゼと比較して、セリンプロテアーゼの存在下で少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する、請求項1~24いずれか記載のリパーゼ。
【請求項26】
セリンプロテアーゼがアスペルギルス・メレウスプロテアーゼである、請求項24または25記載のリパーゼ。
【請求項27】
約pH3.0で少なくとも50分、75分、100分、125分、130分、135分、140分、145分または150分の半減期を有する、請求項1~26いずれか記載のリパーゼ。
【請求項28】
対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する、請求項1~27いずれか記載のリパーゼ。
【請求項29】
アスパラギン酸プロテアーゼの存在下で(例えばpH3.6で)、少なくとも50分、75分、100分、125分、150分、175分、200分、225分、230分または235分の半減期を有する、請求項1~28いずれか記載のリパーゼ。
【請求項30】
対応する野生型リパーゼと比較して、アスパラギン酸プロテアーゼの存在下で(例えばpH3.6で)、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍高い安定性を有する、請求項1~29いずれか記載のリパーゼ。
【請求項31】
アスパラギン酸プロテアーゼがペプシンである、請求項29または30記載のリパーゼ。
【請求項32】
パンクレアチンの存在下で、少なくとも50分、75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する、請求項1~31いずれか記載のリパーゼ。
【請求項33】
対応する野生型リパーゼと比較して、パンクレアチンの存在下で、少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する、請求項1~32いずれか記載のリパーゼ。
【請求項34】
対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い活性を有する、請求項1~33いずれか記載のリパーゼ。
【請求項35】
37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質に対して、pH3.0で少なくとも300、400、500、600、700、800、900または1,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する、請求項1~34いずれか記載のリパーゼ。
【請求項36】
37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質に対して、pH4.0、pH5.0またはpH6.0で少なくとも600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する、請求項1~35いずれか記載のリパーゼ。
【請求項37】
37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質に対して、pH7.0で少なくとも1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する、請求項1~36いずれか記載のリパーゼ。
【請求項38】
トリグリセリド上のsn-1およびsn-3位を優先的に加水分解する、請求項1~37いずれか記載のリパーゼ。
【請求項39】
リパーゼ酵素活性(例えば比活性)が胆汁酸塩により阻害されない、請求項1~38いずれか記載のリパーゼ。
【請求項40】
補リパーゼを必要としない、請求項1~39いずれか記載のリパーゼ。
【請求項41】
架橋および/または結晶化されない、請求項1~40いずれか記載のリパーゼ。
【請求項42】
被験体の胃腸管において、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばDHAおよびEPAまたは長鎖トリグリセリド、例えばオレイン酸もしくはトリオレインを加水分解するように、3.5~7.0の範囲のpHで十分に活性なままである、請求項1~41いずれか記載のリパーゼ。
【請求項43】
同じ条件下で試験した場合にパンクレリパーゼよりも少なくとも2倍、10倍、100倍または1,000倍活性である、請求項42記載のリパーゼ。
【請求項44】
リパーゼの50%、60%、70%、80%または90%より多くが、被験体の食事状態の胃内で60~120分間活性なままである、請求項1~43いずれか記載のリパーゼ。
【請求項45】
被験体の胃において摂取された脂肪の20%より多く、30%より多く、40%より多くまたは50%より多くを脂肪酸およびモノグリセリドに消化する、請求項1~44いずれか記載のリパーゼ。
【請求項46】
リパーゼの50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多くまたは90%より多くが、約240~約360分、被験体の小腸にわたり活性なままである、請求項1~45いずれか記載のリパーゼ。
【請求項47】
被験体の小腸において摂取された脂肪の50%、60%、70%、80%または90%より多くを脂肪酸およびモノグリセリドに消化する、請求項1~46いずれか記載のリパーゼ。
【請求項48】
リパーゼを投与されてない場合に同じ被験体に対して、またはリパーゼを投与されていない同様の被験体に対して、30分、45分、60分、90分または120分以内に25%より多く、35%より多く、50%より多く、100%より多くまたは200%より多くだけ長鎖不飽和脂肪酸の被験体の血漿への吸収を増加する、請求項1~47いずれか記載のリパーゼ。
【請求項49】
脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)の吸収を増加する、請求項1~48いずれか記載のリパーゼ。
【請求項50】
コリンの吸収を増加する、請求項1~49いずれか記載のリパーゼ。
【請求項51】
請求項1~50いずれか記載のリパーゼをコードする核酸。
【請求項52】
請求項51記載の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項53】
組換え変異体リパーゼをコードする核酸配列が、異種細胞における発現についてコドン最適化される、請求項52記載の発現ベクター。
【請求項54】
異種細胞が、バークホルデリア・セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、クロモバクテリウム・ビスコスム、シュードモナス・ルテオラ、シュードモナス・フラギまたは大腸菌の細胞である、請求項53記載の発現ベクター。
【請求項55】
請求項52~54いずれか記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項56】
バークホルデリア・セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、クロモバクテリウム・ビスコスム、シュードモナス・ルテオラまたは大腸菌の細胞である、請求項55記載の細胞。
【請求項57】
請求項55または56記載の細胞を、宿主細胞が組換え変異体微生物リパーゼ酵素を発現するような条件下で増殖させる工程および組換え変異体微生物リパーゼ酵素を精製する工程を含む、組換え変異体微生物リパーゼ酵素を作製する方法。
【請求項58】
請求項1~50いずれか記載のリパーゼならびに薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項59】
微生物性プロテアーゼおよび/または微生物性アミラーゼをさらに含む、請求項58記載の医薬組成物。
【請求項60】
プロテアーゼがアスペルギルス・メレウスプロテアーゼであり、および/またはアミラーゼがコウジ菌アミラーゼである、請求項59記載の医薬組成物。
【請求項61】
経口剤型として製剤化される、請求項58~60いずれか記載の医薬組成物。
【請求項62】
散剤、顆粒剤、ペレット、マイクロペレット、液体または錠剤として製剤化される、請求項58~61いずれか記載の医薬組成物。
【請求項63】
カプセルに封入されるかまたは錠剤剤型として製剤化される、請求項58~62いずれか記載の医薬組成物。
【請求項64】
腸溶性コーティングを含まない、請求項58~63いずれか記載の医薬組成物。
【請求項65】
脂質を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害の治療を必要とする被験体において、増加量の消化されない脂質を生じる脂質を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害を治療する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項58~64いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において疾患または障害を治療する工程を含む、方法。
【請求項66】
脂質の消化不良または吸収不良の治療を必要とする被験体において、脂質の消化不良または吸収不良を治療する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項58~64いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において疾患または障害を治療する工程を含む、方法。
【請求項67】
被験体が、膵臓酵素の低レベルの分泌を示すか、または脂肪加水分解もしくは脂肪吸収に影響を及ぼす生理学的状態(例えば低減された胃、十二指腸、肝臓、胆汁または胆嚢の機能);低減された胃腸の通過、運動性、混合、空になること;または脂肪消化不良もしくは脂肪吸収不良もしくは脂肪酸欠損を生じる低減された腸粘膜機能(例えば粘膜損傷により誘導される)を有する、請求項66記載の方法。
【請求項68】
脂質の消化不良または吸収不良が、膵外分泌機能不全(EPI)、吸収不良症候群、嚢胞性線維症、慢性膵炎、急性膵炎、シュワッハマン-ダイヤモンド症候群、脂肪酸障害、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損、ヨハンソン-ブリザード症候群、ゾリンジャー-エリソン症候群、ピアソン骨髄症候群、短腸症候群、肝臓疾患、原発性胆道閉鎖、胆汁うっ滞、セリアック病、脂肪肝疾患、膵炎、糖尿病、加齢、膵臓、胃、小腸、結腸、直腸/肛門、肝臓、肝、胆嚢もしくは食道の癌、悪液質、または胃腸障害(例えばクローン病、過敏性腸症候群または潰瘍性大腸炎)、胃、小腸、肝臓、胆嚢もしくは膵臓の外科的介入(invention)から選択される疾患または障害に関連する、請求項66または67記載の方法。
【請求項69】
脂肪酸の吸収の向上を必要とする被験体において、脂肪酸の吸収を向上する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項58~64いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において脂肪酸の吸収を向上する工程を含む、方法。
【請求項70】
血漿、赤血球または組織において脂肪酸の量の増加を必要とする被験体の脂肪酸の量を増加する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項58~64いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において脂肪酸の量を増加する工程を含む、方法。
【請求項71】
血漿、赤血球または組織においてω-3脂肪酸 対 ω-6脂肪酸の比の増加を必要とする被験体のω-3脂肪酸 対 ω-6脂肪酸の比を増加する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項58~64いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において脂肪酸の量を増加する工程を含む、方法。
【請求項72】
便中の脂肪酸の量の低減を必要とする被験体の便において、脂肪酸の量を低減する方法であって、被験体に、請求項1~50いずれか記載のリパーゼまたは請求項50~56いずれか記載の医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体の便において脂肪酸の量を低減する工程を含む、方法。
【請求項73】
脂肪酸が長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)である、請求項65~72いずれか記載の方法。
【請求項74】
脂肪酸がω-3脂肪酸である、請求項65~73いずれか記載の方法。
【請求項75】
ω-3脂肪酸がDHA、EPAまたはDPAである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
被験体が、1日当たり400、600、800または1,000mg未満のリパーゼまたは医薬組成物を投与される、請求項65~75いずれか記載の方法。
【請求項77】
リパーゼまたは医薬組成物が、脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、D、EまたはK)、アシッドブロッカーまたはトリグリセリドを含む栄養製剤と組み合わせて投与される、請求項65~76いずれか記載の方法。
【請求項78】
被験体が哺乳動物である、請求項65~77いずれか記載の方法。
【請求項79】
被験体がヒトである、請求項65~78いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2021年9月30日に出願された共係属中の米国仮特許出願第63/250,403号の利益およびそれに対する優先権を主張し、該出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的に、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素、かかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを作製する方法、かかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを含む剤型、ならびにトリグリセリド(脂肪)を消化および/または吸収する能力の低下に関連する疾患または障害を治療するためにかかる遺伝子工学で作り変えられたリパーゼを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
長鎖トリグリセリド(脂肪)は、最も豊富で重要な食事性脂質の源である。それらの消化および吸収は、膵臓リパーゼ、補リパーゼ、胆汁酸、身体を通るの通過時間、吸収の部位および食事内容物の間の複雑な相互作用に依存する。膵臓リパーゼは、トリグリセリド分子を加水分解して、2つの脂肪酸分子および2-モノアシルグリセロール分子を生じる。これについて、リパーゼは、トリグリセリド含有液滴の油-水界面に結合する。一旦遊離されると、長鎖遊離脂肪酸および2-モノアシルグリセロール分子は、小腸で吸収されて、血漿および組織に運ばれ、エネルギーとしても使用される。このように、リパーゼが脂肪を消化して、小腸での吸収を容易にするための制限された時間がある。
【0004】
ヒトは典型的に、トリグリセリドを消化するために膵臓リパーゼの十分な供給を生じるが、この複雑な生理学的バランスに有意に影響を及ぼす特定の疾患および障害がある。吸収不良症候群は、トリグリセリドの加水分解または吸収の工程の1つ以上に影響を及ぼす一連の生命を脅かす状態である。脂肪の吸収不良は、(1)通常膵外分泌機能不全(EPI)に関連する膵臓酵素の損なわれた分泌、(2) (a)変化した胃の分泌、(b)乱された胃腸の通過、運動性、混合、空になることおよび/または(c)粘膜の損傷のための腸粘膜機能の決定的な喪失として表される胃、十二指腸、肝臓、胆汁または胆嚢の生理学における改善により引き起こされ得る。嚢胞性線維症(CF)、慢性膵炎(CP)および膵臓癌などの膵臓に影響を及ぼす疾患は、脂肪の吸収不良を生じて栄養失調をもたらし得る。
【0005】
現在の医療水準は、ブタ由来生成物(PERT)、例えばパンクレリパーゼおよびパンクレアチンを使用し、これは、胃腸(GI)管の通過の際の酸変性およびタンパク質分解性の分解からの活性の喪失などのいくつかの制限を有することが知られる(Lankisch et al. (1993) DIGESTION 54:148-155;Thiruvengadam et al. EP (1988) AM. J. PHYSIOL. 255:G476-G481;Guarner et al. (1993) GUT 34:708-712)。ブタ由来酵素は、屠殺場でブタの膵臓から抽出され、不十分に特徴付けられたタンパク質、ブタウイルスおよび他の生物学的物質などの特定の不純物を含み得る。ブタ抽出物(例えばパンクレリパーゼ)に基づく医療水準の生成物は、リパーゼが胃の低いpHおよびタンパク質分解性の分解により不活性化されることにおいて有意な制限を有する(DiMagno et al. (1977) N. ENGL. J. MED. 296(23):1318-22.)。不活性化を防ぐために、現在の調製物はしばしば、フタル酸塩を使用して腸溶性コーティングされ、pHが5.5に達するまで調製物の内容物の放出を防ぐ(Creon(登録商標)、Prescribing Information, Pharmacokinetics;Katherine E. Kelley et al. (2012) ENVIRON. HEALTH PERSPECT. 120(3): 379-384)。脂肪消化および吸収の複雑な性質ならびに酸変性、タンパク質分解性の分解またはアンフォールディングおよび胆汁酸塩阻害のためのリパーゼの固有の不安定性のために失敗した、細菌性または真菌性のリパーゼを使用して脂肪吸収不良を治療するための多くの試みがあった。腸溶性コーティングまたは化学的安定化技術を用いた安定性(生存可能性)を向上するための製造業者の試みは、リパーゼの利用可能性ならびに小腸における適切な脂肪消化および吸収に必要な脂質基質におけるミスマッチをもたらした。さらに、慢性的な使用に関わらず、臨床的な栄養目標が、特に嚢胞性線維症(CF)を有する成人および若年の小児において満たされていないので、現在のPERTは効果がない。現在のPERTの不十分な加水分解は、低減されたカロリー摂取、不十分な体重管理および生活の質に劇的に影響を及ぼす有意なレベルの望ましくないGI症状を生じ得る。さらに、PERT中のリパーゼの不十分な安定性のために、丸薬を嚥下できない乳児、小児および成人に利用可能な液体適合性製剤がない。
【0006】
溶解性に干渉し得る腸溶性コーティングまたは他の技術の必要なしにすぐに活性になり得る安定なリパーゼは、リパーゼが脂肪基質と相互作用し得るより長い時間を有する能力を提供し、さらなる基質加水分解および吸収を可能にする。EPIを有する人々において、膵臓および十二指腸の重炭酸塩分泌は、胃酸負荷を中和するには不十分である。そのため、十二指腸pHは典型的に、健常な被験体と比較して、CFを有する被験体においてより低い。したがって、CF患者は、十二指腸pHが4未満である有意に長い食後期間を有し得る。結果的に、過酸症が存在するこの延長された時間は、被験体におけるリパーゼ酵素が脂肪を消化するために利用可能になる時間を押し出し、脂肪の消化および吸収を遅延し得、十二指腸の有意な部分を抜かす可能性があり、脂肪便および有意な望ましくないGI徴候をもたらす。EPI被験体における小腸緩衝能力の遅延は、不十分な溶解性のための腸溶性コーティングされた生成物の遅延された溶解が、不十分な脂肪吸収の要因であり得るという考えを支持するように思われる(Gelfond et al. (2017) CLINICAL AND TRANSLATIONAL GASTROENTEROLOGY (2017) 8, e81)。
【0007】
長鎖トリグリセリドの吸収は、最初に膵臓リパーゼの酵素作用を必要とするが、中鎖トリグリセリドは、それらのより短い鎖の長さのために、胃リパーゼの作用により腸管腔を通って吸収され得る。全ての脂肪はカロリーの利益を提供するが、それらは生理学的機能に対して異なる影響を有する(St-Ogne et al.(2002) JOURNAL OF NUTRITION 132(3):329-332)。長鎖トリグリセリドおよび中鎖トリグリセリドの両方はカロリーを提供するが、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(例えばドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA))の形態中の長鎖トリグリセリドのみは、膜の構造的構成成分および多くの生理学的機能の制御に関与する生物学的メディエーターを提供する。さらに、長鎖トリグリセリドについて置換される場合、中鎖トリグリセリドは、エネルギー消費および飽満を増加し、全体的なカロリー摂取の低減および体脂肪質量の低減をもたらすことが示されている。このように、長鎖脂質の適切な消化および吸収は、良好な健康にとって重要である。
【0008】
トリグリセリド(脂肪)を消化および/または吸収する能力の低減に関連する傷害の治療における今日までなされてきた努力にかかわらず、かかる障害を治療するための新規で有効な治療についての進行中の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明は部分的に、胃腸管において高められた活性ならびにタンパク質分解性の分解に対して低減された感受性および酸性pHレベルに対する増加された抵抗性を提供するように最適化された遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素の開発に基づく。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素は、消化プロセスの初期、例えば低pH環境が存在する胃を通る輸送の際に(例えば60~120分の範囲)、pH範囲で生理学的に関連のある脂肪(トリグリセリド)を加水分解し得、次いでこれは、短い時間、例えば2~4時間の範囲にわたり小腸を通る移動の際に、生じた脂肪酸の迅速な吸収を容易にする。さらに、本明細書に記載される組換え酵素は、それらの高められた生存可能性を考慮すると、経口投与に適切であり得るので、市販のPERT酵素よりも潜在的に安全でより許容可能であることが企図される。用語「安定性」および「生存可能性」は、リパーゼが、所定の条件下、例えば霊長類被験体の胃腸管において遭遇する条件下で、機能的活性、例えば酵素活性を維持する能力をいうために本明細書において交換可能に使用される。安定性/生存可能性を測定することは、例えばリパーゼが脂質トリグリセリドをモノグリセリドおよび遊離脂肪酸に分解する能力を評価することなど、本明細書に記載される任意の方法を使用してなされ得る。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素は、脂肪(トリグリセリド)を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害を治療するために使用され得る。
【0010】
一局面において、本開示は、組換え変異体微生物リパーゼ酵素(例えば変異体バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼ)に関し、該リパーゼは、以下の特徴、(i)酸性pH(例えばpH3.0または4.0)で、対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対して増加された安定性、(ii)対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対してプロテアーゼ(例えばセリンプロテアーゼおよび/またはアスパラギン酸プロテアーゼ)の存在下で増加された安定性、または(iii)対応する野生型微生物リパーゼ酵素の酵素活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の1つ以上、例えば特徴(i)、(ii)、(iii)、(i)および(ii)、(i)および(iii)、(ii)および(iii)、ならびに(i)、(ii)および(iii)などを含む。
【0011】
ある態様において、リパーゼは:
(a)野生型バークホルデリア・セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基の置換;
(b)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基の置換;
(c)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基の置換;
(d)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基の置換;
(e)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基の置換;
(f)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基の置換;
(g)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基の置換;
(h)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基の置換;
(i)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基の置換;
(j)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基の置換;
(k)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基の置換;
(l)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基の置換;
(m)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基の置換;
(n)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基の置換;
(o)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基の置換;
(p)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基の置換;
(q)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基の置換;
(r)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基の置換;
(s)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基の置換;
(t)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基の置換;
または前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0012】
ある態様において:
(a)野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基はRで置換され;
(b)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基はQで置換され;
(c)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基はQで置換され;
(d)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基はSで置換され;
(e)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基はNで置換され;
(f)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基はAで置換され;
(g)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基はIで置換され;
(h)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基はNで置換され;
(i)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基はHで置換され;
(j)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基はAで置換され;
(k)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基はSで置換され;
(l)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基はLで置換され;
(m)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基はKで置換され;
(n)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基はVで置換され;
(o)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基はLで置換され;
(p)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基はAで置換され;
(q)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基はAで置換され;
(r)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基はLで置換され;
(s)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基はAで置換され;
(t)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基はYで置換されるか;
またはリパーゼは、前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0013】
ある態様において、リパーゼは:
(a)野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基の置換(Q39);
(b)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基の置換(T79);
(c)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基の置換(D102);
(d)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基の置換(G125);
(e)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基の置換(A128);
(f)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基の置換(T137);
(g)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基の置換(V138);
(h)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基の置換(S153);
(i)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基の置換(N154);
(j)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基の置換(L161);
(k)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基の置換(A170);
(l)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基の置換(F221);
(m)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基の置換(T227);
(n)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基の置換(A240);
(o)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基の置換(F249);
(p)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基の置換(G250);
(q)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基の置換(S260);
(r)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基の置換(V266);
(s)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基の置換(S281);
(t)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基の置換(N300);
または前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0014】
ある態様において:
(a)野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基はRで置換され(Q39R);
(b)野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基はQで置換され(T79Q);
(c)野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基はQで置換され(D102Q);
(d)野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基はSで置換され(G125S);
(e)野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基はNで置換され(A128N);
(f)野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基はAで置換され(T137A);
(g)野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基はIで置換され(V138I);
(h)野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基はNで置換され(S153N);
(i)野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基はHで置換され(N154H);
(j)野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基はAで置換され(L161A);
(k)野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基はSで置換され(A170S);
(l)野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F221L);
(m)野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基はKで置換され(T227K);
(n)野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基はVで置換され(A240V);
(o)野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F249L);
(p)野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基はAで置換され(G250A);
(q)野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基はAで置換され(S260A);
(r)野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基はLで置換され(V266L);
(s)野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基はAで置換され(S281A);
(t)野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基はYで置換されるか(N300Y);
またはリパーゼは、前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0015】
ある態様において、リパーゼは、複数の置換、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上の異なる置換を含む。例えば、リパーゼは3個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは4個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは5個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは6個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは7個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは8個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは9個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは10個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは11個の置換を含み得る。代替的に、リパーゼは12個の置換を含み得る。
【0016】
ある態様において、リパーゼは:
(a)D102Q、N154HおよびF221Lの置換;
(b)D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Yの置換;
(c)T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Yの置換;
(d)T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(e)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(f)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、G250A、V266LおよびN300Yの置換;
(g)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(h)T79Q、D102Q、G125S、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(i)D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Yの置換;
(j)D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、G250A、V266LおよびN300Yの置換;
(k)D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、G250A、V266L、S281AおよびN300Yの置換;
(l)D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、G250A、V266LおよびN300Yの置換;または
(m)D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yの置換を含む。
【0017】
ある態様において、リパーゼはα/β-ヒドロラーゼリパーゼであり、リパーゼは、セリン-ヒスチジン-アスパラギン酸三つ組を含む活性部位を含み得る。代替的にまたは付加的に、リパーゼは、例えば8炭素より長い鎖の長さを有する、トリグリセリドの結合および/または加水分解を可能にするように開く疎水性のふたを含み得る。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、カルシウム結合部位を含み、ここでカルシウムがカルシウム結合部位に結合する場合、リパーゼは安定化される。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、オキシアニオンホールを含み、ここでオキシアニオンホールは、脂肪酸結合加水分解の間に生成される負に荷電した中間体を安定化する。
【0018】
ある態様において、リパーゼは真菌性リパーゼまたは細菌性リパーゼである。ある態様において、リパーゼは、ファミリーI細菌性リパーゼ、例えばI.1、I.2またはI.3サブファミリー細菌性リパーゼ、例えばI.1またはI.2サブファミリー細菌性リパーゼである。ある態様において、リパーゼはI.2サブファミリー細菌性リパーゼである。
【0019】
ある態様において、リパーゼは、バークホリデリア属、シュードモナス属またはクロモバクテリウム属のリパーゼである。ある態様において、リパーゼは、バークホルデリア・セパシア(B.セパシア)、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、緑膿菌、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)またはクロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterium viscosum)のリパーゼである。ある態様において、リパーゼはバークホルデリア・セパシアリパーゼである。
【0020】
ある態様において、リパーゼは、野生型B.セパシアの87位に対応する位置でのS残基(S87)、野生型B.セパシアの264位に対応する位置でのD残基(D264)および野生型B.セパシアの286位に対応する位置でのH残基(H286)を含む。これらのアミノ酸は、リパーゼサブファミリーI.1およびI.2の間で保存される(図3参照)。
【0021】
ある態様において、リパーゼは、配列番号:2~14のいずれかのアミノ酸配列または配列番号:2~14のいずれかに対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型微生物リパーゼに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの変異を含む。
【0023】
別の局面において、本開示は、表1または表2に列挙される置換または置換の組合せを含む組換え変異体微生物リパーゼ酵素に関する。
【0024】
ある態様において、本明細書に開示されるリパーゼは、セリンプロテアーゼの存在下で少なくとも75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、セリンプロテアーゼ(例えばアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)プロテアーゼ)の存在下で少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する。
【0025】
ある態様において、リパーゼは、約pH3.0で少なくとも50分、75分、100分、125分、130分、135分、140分、145分または150分の半減期を有する。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する。
【0026】
ある態様において、リパーゼは、アスパラギン酸プロテアーゼの存在下で(例えばpH3.6で)少なくとも75分、100分、125分、150分、175分、200分、225分、230分または235分の半減期を有する。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、アスパラギン酸プロテアーゼの存在下で(例えばpH3.6で)少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍高い安定性を有する。ある態様において、アスパラギン酸プロテアーゼはペプシンである。
【0027】
ある態様において、リパーゼは、パンクレアチンの存在下で少なくとも75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、パンクレアチンの存在下で少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い安定性を有する。代替的にまたは付加的に、ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い活性を有する。
【0028】
ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH3.0で、少なくとも300、400、500、600、700、800、900または1,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH4.0、pH5.0またはpH6.0で、少なくとも600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH7.0で、少なくとも1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。
【0029】
ある態様において、リパーゼは優先的に、トリグリセリド上のsn-1およびsn-3位を加水分解し、および/またはリパーゼ酵素活性(例えば比活性)は、胆汁酸縁により阻害されず、および/またはリパーゼは補リパーゼを必要としない。ある態様において、リパーゼは、架橋および/または結晶化されない。
【0030】
ある態様において、リパーゼは、被験体の胃腸管において、長鎖ポリ不飽和脂肪(LCPUFA)、例えばDHAおよびEPAまたは長鎖トリグリセリド、例えばオレイン酸もしくはトリオレインを加水分解するために、3.5~7.0の範囲のpHで十分に活性なままである。ある態様において、リパーゼは、同じ条件下で試験する場合、パンクレリパーゼよりも少なくとも2倍、10倍、100倍または1000倍活性である。
【0031】
ある態様において、リパーゼの50%、60%、70%、80%または90%より高くは、被験体の食事状態の胃で60~120分間、活性なままである。ある態様において、リパーゼは、被験体の胃において摂取された脂肪の20%、30%、40%または50%より多くを、脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。
【0032】
ある態様において、リパーゼの50%、60%、70%、80%または90%より多くは、被験体の小腸を通って240~360分間活性なままである。ある態様において、リパーゼは、被験体の小腸において摂取された脂肪の50%、60%、70%、80%または90%より多くを、脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。
【0033】
ある態様において、リパーゼは、リパーゼを投与されていない場合の同じ被験体に対して、またはリパーゼを投与されていない同様の被験体に対して、25%、35%、50%、100%または200%より多くだけ、被験体の血漿において30分、45分、60分、90分または120分以内に、長鎖不飽和脂肪酸の吸収を増加する。ある態様において、リパーゼは、脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)の吸収を増加する。ある態様において、リパーゼはコリンの吸収を増加する。
【0034】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載されるリパーゼをコードする核酸に関する。
【0035】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載される核酸配列を含む発現ベクターに関する。ある態様において、組換え変異体リパーゼをコードする核酸配列は、異種細胞における発現のためにコドン最適化される。ある態様において、異種細胞は、B.セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、クロモバクテリウム・ビスコスム、シュードモナス・ルテオラ、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)または大腸菌細胞である。
【0036】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載される発現ベクターを含む細胞に関する。ある態様において、細胞は、B.セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、クロモバクテリウム・ビスコスム、シュードモナス・ルテオラ、シュードモナス・フラギまたは大腸菌細胞である。
【0037】
ある態様において、本開示は、組換え変異体微生物リパーゼ酵素を作製する方法に関し、該方法は、宿主細胞が組換え変異体微生物リパーゼ酵素を発現するような条件下で本明細書に記載される細胞を増殖する工程および組換え変異体微生物リパーゼ酵素を精製する工程を含む。
【0038】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載されるリパーゼおよび薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤を含む医薬組成物に関する。ある態様において、医薬組成物はさらに、微生物性プロテアーゼおよび/または微生物性アミラーゼを含む。ある態様において、プロテアーゼはA.メレウス(A. melleus)プロテアーゼであり、および/またはアミラーゼはコウジ菌アミラーゼである。ある態様において、組成物は、経口剤型として製剤化される。ある態様において、組成物は、散剤、顆粒剤、ペレット、マイクロペレット、液体または錠剤として製剤化される。ある態様において、組成物は、カプセルに封入されるかまたは錠剤剤型として製剤化される。ある態様において、組成物は腸溶性コーティングを含まない。
【0039】
別の態様において、本開示は、増加量の消化されない脂質を生じる脂質を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害の治療を必要とする被験体において、増加量の消化されない脂質を生じる脂質を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害を治療する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において疾患または障害を治療する工程を含む。
【0040】
別の態様において、本開示は、脂質の消化不良または吸収不良の治療を必要とする被験体において、脂質の消化不良または吸収不良を治療する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において疾患または障害を治療する工程を含む。
【0041】
ある態様において、被験体は、膵臓酵素の低レベルの分泌を示すかまたは脂肪加水分解もしくは脂肪吸収に影響を及ぼす生理学的条件(例えば低減した胃、十二指腸、肝臓、胆汁または胆嚢機能);低減した胃腸の通過、運動性、混合、空になること;または脂肪消化不良もしくは脂肪吸収不良もしくは脂肪酸欠損を生じる低減した腸粘膜機能(例えば粘膜損傷により誘導される)を有する。
【0042】
ある態様において、脂質の消化不良または吸収不良は、膵外分泌機能不全(EPI)、吸収不良症候群、嚢胞性線維症、慢性膵炎、急性膵炎、シュワッハマン-ダイヤモンド症候群、脂肪酸障害、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損、ヨハンソン-ブリザード症候群、ゾリンジャー-エリソン症候群、ピアソン骨髄症候群、短腸症候群、肝臓疾患、原発性胆道閉鎖、胆汁うっ滞、セリアック病、脂肪肝疾患、膵炎、糖尿病、加齢、膵臓、胃、小腸、結腸、直腸/肛門、肝臓、肝、胆嚢もしくは食道の癌、悪液質、または胃腸障害(例えばクローン病、過敏性腸症候群または潰瘍性大腸炎)、胃、小腸、肝臓、胆嚢もしくは膵臓の外科的介入(invention)から選択される疾患または障害に関連する。
【0043】
別の態様において、本開示は、脂肪酸の吸収の向上を必要とする被験体において、脂肪酸の吸収を向上する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において脂肪酸の吸収を向上する工程を含む。
【0044】
別の態様において、本開示は、血漿、赤血球または組織において脂肪酸の量の増加を必要とする被験体の血漿、赤血球または組織において、脂肪酸の量を増加する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において脂肪酸の量を増加する工程を含む。
【0045】
別の態様において、本開示は、血漿、赤血球または組織においてω-3 対 ω-6脂肪酸の比の増加を必要とする被験体の血漿、赤血球または組織において、ω-3 対 ω-6脂肪酸の比を増加する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において脂肪酸の量を増加する工程を含む。
【0046】
別の態様において、本開示は、便中の脂肪酸の量の低減を必要とする被験体の便において脂肪酸の量を低減する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体の便において脂肪酸の量を低減する工程を含む。
【0047】
ある態様において、脂肪酸は長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)である。ある態様において、脂肪酸はω-3脂肪酸である。ある態様において、ω-3脂肪酸はDHA、EPAまたはDPAである。ある態様において、被験体は、1日当たり400、600、800または1,000mg未満のリパーゼまたは医薬組成物を投与される。ある態様において、リパーゼまたは医薬組成物は、脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、D、EまたはK)、アシッドブロッカーまたはトリグリセリドを含む栄養製剤と合わせて投与される。
【0048】
ある態様において、被験体は哺乳動物、例えばヒトである。
【0049】
本発明のこれらおよび他の局面および特徴は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲において記載される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の図面に関してより完全に理解され得る。
図1A図1Aは、長鎖トリグリセリドの非存在下で、ふたおよびサブドメインの相互作用のために活性部位が環境から保護され、ふたが活性部位裂溝を覆い、サブドメインがふたを覆う閉じたコンホメーションで存在すると考えられる例示的なリパーゼを概略的に示す。長鎖トリグリセリドの存在下で、リパーゼのコンホメーション変化は、ふたおよびサブドメインが開いて活性部位裂溝を曝露させる開放コンホメーションを生じると考えられる。構造試験により、疎水性脂質結合部位が、油-水界面での活性部位からのふたの後退または開放の動きにより曝露されることが示唆される。
図1B図1Bは、閉じた不活性なコンホメーションおよび開放した活性コンホメーションの両方におけるバークホルデリア・セパシア由来の例示的なリパーゼの三次元構造の空間充填モデルを示す。
図2図2は、アミノ酸118~159がふたを画定し、アミノ酸214~261がふたに面するサブドメインを画定し、残基262~320がαヘリックス11を含み、アミノ酸160~213がαヘリックス7を含むバークホルデリア・セパシア由来のリパーゼのリボンモデルを示す。触媒性三つ組(すなわちセリン87、アスパラギン酸264およびヒスチジン286)に寄与するアミノ酸を示す。
図3図3は、ファミリーI細菌性リパーゼの系統発生樹およびそれらの6つのサブファミリー(I.1~I.6と称される)への分類を図示する。
図4図4は、緑膿菌PAO1(ファミリーI.1、配列番号:29)、シュードモナス・フルオレッセンス(ファミリーI.1、配列番号:30)、バークホルデリア・セパシア(ファミリーI.2、配列番号:1)、イネもみ枯細菌病菌(ファミリーI.2、配列番号:31)、クロモバクテリウム・ビスコスム(ファミリーI.2、配列番号:32)、シュードモナス・ルテオラ(ファミリーI.2、配列番号:33)、シュードモナス・フルオレッセンスABA72135(ファミリーI.1、配列番号:34)、シュードモナス・フルオレッセンスAEV60646(ファミリーI.1、配列番号:35)、シュードモナス属WP-015093259(ファミリーI.3、配列番号:36)、シュードモナス・フラギCAA32193(ファミリーI.1、配列番号:37)、シュードモナス・フラギCAC07191(ファミリーI.1、配列番号:38)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)(配列番号:41)およびシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)LipA (配列番号:42)のリパーゼ配列間のアミノ酸の保存を示す配列アライメントを示す。触媒性三つ組(活性部位)およびカルシウム結合部位を構成するアミノ酸残基を図に示す(ボックスおよび影付き)。リパーゼ遺伝子工学的作り変え(実施例7参照)の最終ラウンドで作製される置換は、野生型B.セパシア配列と比較して示す(ボックスおよび影なし)。
図5図5は、バークホルデリア・セパシア(ファミリーI.2、配列番号:1)、イネもみ枯細菌病菌(ファミリーI.2、配列番号:31)、クロモバクテリウム・ビスコスム(ファミリーI.2、配列番号:32)およびシュードモナス・ルテオラ(ファミリーI.2、配列番号:40)の間の残基の保存を示す配列アライメントを示し、ここでオキシアニオンホール、ふた、サブドメイン、触媒性三つ組およびカルシウム結合部位を構成する保存されたアミノ酸を同定する。野生型B.セパシア配列に対するリパーゼ遺伝子工学的作り変え(実施例7参照)の最終ラウンドで作製されるアミノ酸置換の位置を、暗い輪郭のボックス内に示す。
図6図6は、触媒性のふた、オキシアニオンホール、触媒性三つ組、カルシウムドメインの配置および上位バリアント置換の位置を示すB.セパシアリパーゼの三次元モデルを示す。
図7図7は、活性部位/触媒性三つ組(星)、カルシウム部位(円)、最終ラウンドアミノ酸置換(三角形)、オキシアニオンホール、ふたおよびサブドメインに面するふた(種々の影)の配置を示すB.セパシアリパーゼの概略図である。
図8図8は、遊離脂肪酸検出のための例示的な3工程反応についての概略図である。
図9図9は、pH生存可能性アッセイのフロー図である。リパーゼ溶液は、一連の時点の間に特定のpHでのインキュベーションにより予め処理され、次いで4-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)によりリパーゼ活性についてアッセイされ、405nmで比色定量応答を検出し、それぞれのpHについての経時的なpH安定性を報告する。
図10図10は、リパーゼによる4-ニトロフェノレート(pNP、黄色)へのp-NPP(無色)加水分解の機構を図示する。
図11図11は、ペプシン生存可能性アッセイのフロー図である。リパーゼ溶液は、一連の時点の間にペプシンとのインキュベーションにより予め処理され、次いでリパーゼ活性について4-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)によりアッセイされ、405nmで比色定量応答を検出しペプシンについての経時的な半減期を報告する。
図12図12は、A.メレウスプロテアーゼ(oryzin)生存可能性アッセイのフロー図である。リパーゼ溶液は、一連の時点の間にoryzinとのインキュベーションにより予め処理され、次いでリパーゼ活性について4-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)によりアッセイされ、405nmで比色定量応答を検出し、oryzinについての経時的な半減期を報告する。
図13図13は、A.メレウスプロテアーゼの存在下の安定性、低pHでの安定性、ペプシン/SGFの存在下の安定性、pH4での活性および胆汁酸塩存在下のpH7での活性に対する示されるリパーゼ変異の影響を示すグラフである。
図14図14は、B.セパシアV290リパーゼバリアントに対する遺伝子工学で作り変えられた変異体の安定性または活性を示すグラフである。試験した条件は、A.メレウスプロテアーゼ存在下の安定性(t1/2)、低pHでの安定性(t1/2)、ペプシン/SGFの存在下の安定性(t1/2)およびpH4での活性(U/mg)であった。
図15図15は、示される条件での上位11のB.セパシアリパーゼバリアントの半減期を示すグラフである。3つの対照を使用した:(1)野生型(WT)B.セパシアリパーゼ、(2)V130(初期ラウンドからの上位バリアント)および(3)V290(後期ラウンドの1つからの上位バリアント)。
図16図16は、示される条件(タンパク質分解安定性、低pHでの安定性およびペプシンの存在下の安定性)での上位3のB.セパシアリパーゼバリアント、V325、V366およびV318についてのリパーゼ遺伝子工学的作り変えによる生存可能性向上を示すグラフである。3つの対照を使用した:(1)野生型(WT)B.セパシアリパーゼ、(2)V130バリアントおよび(3)V290バリアント。Y軸は分の時間を示す。
図17図17は、異なる時点(5、30、60、120、180および240分)でのA.メレウスプロテアーゼ処理で生存するリパーゼのパーセンテージを示すグラフである。グラフは、上位3のB.セパシアリパーゼバリアント、V325、V366およびV318ならびに3つの対照(野生型(WT)B.セパシアリパーゼ、V130バリアント、V290バリアント)を示す。
図18図18は、上位3のB.セパシアリパーゼバリアント、V325、V366およびV318ならびに3つの対照(野生型(WT)B.セパシアリパーゼ、V130バリアント、V290バリアント)についての異なる時点(5、30、60および120分でのpH3.0処理で生存するリパーゼのパーセンテージを示すグラフである。
図19図19は、上位3のB.セパシアリパーゼバリアントV325、V366およびV318ならびに3つの対照(野生型(WT)B.セパシアリパーゼ、V130バリアント、V290バリアント)についての異なる時点(5、30、60および120分)でのpH3.58(典型的な食事状態の胃)でのペプシン処理で生存するリパーゼのパーセンテージを示すグラフである。
図20図20Aおよび20Bは、40mg(図20A)および80mg(図20B)の野生型リパーゼ、上位3のバリアント(V318、V325およびV336)およびパンクレリパーゼの食事当たりの活性(遊離脂肪酸放出DHA油)を示すグラフである。
図21図21は、実施例9の実験1に記載されるEPIブタモデルにおけるV325についての用量発見試験のための処理群設計の概略図である。
図22図22は、ω-3トリグリセリド基質および示される用量のV325を投与したまたは酵素なし(「NE」)の動物の血漿中の遊離脂肪酸DHAおよびEPAについてのAUCおよびCmaxを示すグラフである。
図23図23は、図22に提供されるAUCデータから計算される経時的なAUC24平均を示すグラフである。
図24図24は、図22に提供されるCmaxデータから計算されるベースラインを引いたCmaxを示すグラフである。
図25図25は、基質および示される用量のV325を投与したまたは酵素なし(「NE」)の動物の血漿中の総脂肪酸についてのAUCおよびCmaxを示すグラフである。
図26図26は、図25に提供されるAUCデータから計算される経時的なAUC24平均を示すグラフである。
図27図27は、図25に提供されるCmaxデータから計算されるベースラインを引いたCmaxを示すグラフである。
図28図28は、実施例9の実験2に記載されるEPIブタモデルにおけるV325の活性および安定性の評価についての処理群設計の概略図である。
図29図29Aは、ω-3トリグリセリド基質および示される用量のV325を投与した動物の血漿中のDHA + EPAについてのAUCおよびCmaxが、Creon(登録商標)を投与したまたは酵素なし(「NE」)の動物よりも有意に高かったことを示すグラフである。図29Bは、図29Aに提供されるAUCデータから計算される、6、8、12および24の時点の間のベースラインを引いた経時的なAUC平均を示すグラフである。
図30図30Aは、基質および示される用量のV325を投与した動物の血漿中の総脂肪酸についてのAUCおよびCmaxが、Creon(登録商標)を投与したまたは酵素なし(「NE」)の動物よりも有意に高かったことを示すグラフである。図30Bは、図30Aに提供されるAUCデータから計算される、6、8、12および24の時点の間のベースラインを引いた経時的なAUC平均を示すグラフである。
図31図31Aは、V325またはCreon(登録商標)を投与した動物についての胃腸管の異なる区画(胃、十二指腸、回腸)における経時的な遊離脂肪酸放出についてのAUCを示すグラフである。図31Bは、図31Aに提供されるAUCデータから計算される経時的なAUC平均を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
本発明は部分的に、胃腸管において高められた生存可能性および活性、ならびにタンパク質分解性の分解に対する低減された感受性および酸性pHレベルに対する増加された許容性を提供するように最適化された遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素の開発に基づく。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素は、消化プロセスの初期、例えば低pH環境が存在する胃の通過の間のpH範囲で生理学的に関連のある脂肪トリグリセリド(長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)および食事長鎖トリグリセリド)を加水分解し得、次いでこれは小腸を通る移動の間に、生じた脂肪酸の迅速な吸収を容易にする。さらに、本明細書に記載される組換え酵素は、それらの高められた安定性を考慮すると、経口投与に適切であり得、そのため市販のPERT酵素よりも潜在的に安全かつ許容可能であり得ることが企図される。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ酵素は、脂肪(トリグリセリド)を消化または吸収する能力の低減に関連する疾患または障害を治療するために使用され得る。
【0052】
本発明の種々の特徴および局面を、以下でより詳細に議論する。
【0053】
I. リパーゼ
典型的に、リパーゼ酵素は、食事の脂肪(トリグリセリド)を加水分解して、2つの脂肪酸分子およびモノアシルグリセロール分子を生じる。ほとんどのリパーゼは、構造的に関連するが機能的には多様な酵素の最も大きな群の1つであるα/βヒドロラーゼ折りたたみスーパーファミリーのメンバーである。ほとんどのリパーゼの三次元構造は、α/βヒドロラーゼ折りたたみとして公知である共通の折りたたみモチーフを共有する。
【0054】
脂質中のカルボキシエステル結合を加水分解する加水分解性リパーゼ酵素、すなわちカルボキシエステラーゼおよび真のリパーゼは、まとめて脂質分解性酵素と称される。カルボキシエステラーゼ(エステラーゼ)は通常水溶性エステルを加水分解し、真のリパーゼ(リパーゼ)は水不溶性基質も加水分解し得る(Verger (1997) TRENDS IN BIOTECHNOLOGY 15(1):P32-38;Ali et al. (2012) Lipases and Phospholipases, New York, USA, Humana Press, p. 31-51)。トリグリセリド中の脂肪酸鎖の長さが長くなると、トリグリセリドの水溶性は低くなる。結果的に、長鎖トリグリセリドを加水分解する酵素はリパーゼと称され、トリブチリン(短鎖C4脂肪酸)を加水分解するものはエステラーゼと称される(Jaeger et al. (1994) FEMS MICROBIOL REV 15:29-63)。長鎖トリグリセリドは主にヒトの食品中で摂取されるが、短鎖脂肪酸は典型的に、結腸内の嫌気性細菌による炭水化物代謝の副生成物である。リパーゼとエステラーゼを区別する真のリパーゼ(本明細書においてリパーゼとも称される)の特性は、「界面活性化」と称される現象である油-水界面でのそれらの高められた活性である(Schrag et al. (1991) NATURE 351(6329):761-764)。
【0055】
リパーゼは、構造的に保存され、周囲の状態に応じて、活性部位裂溝を覆う「ふた」として機能する可撓性で両親媒性のαヘリックスで覆われる活性部位裂溝を含む。ふたが閉じる場合、活性部位は環境から保護され、トリグリセリド基質に近づけない。図1Aは、長鎖トリグリセリドの非存在下で、ふたとサブドメインの相互作用のために活性部位が環境から保護され、ふたが活性部位裂溝を覆い、サブドメインがふたを覆う閉じたコンホメーションで存在すると考えられる例示的なリパーゼを概略的に示す。しかしながら、長鎖トリグリセリドの存在下で、リパーゼのコンホメーション変化は、ふたおよびサブドメインが開いて活性部位裂溝を曝露する開放コンホメーションを生じる。構造的試験により、疎水性脂質結合部位は、油-水界面での活性部位からのふたの後退または開放の動きにより曝露されることが示唆される。
【0056】
図1Bは、閉じた不活性なコンホメーションおよび開いた活性なコンホメーションの両方におけるバークホルデリア・セパシア由来の例示的なリパーゼの三次元構造の空間充填モデルを示す。不活性なコンホメーションにおいて、ふたは活性部位を覆う。活性なコンホメーションにおいて、ふたおよびサブドメイン(面するふたとも称される)は、多くのリパーゼ間で保存される3つのアミノ酸残基(セリン、ヒスチジンおよびアスパラギン酸)を含む示される活性部位裂溝を曝露するように移動する(Brenner (1988) NATURE 334:528-530; Brady et al. (1990) NATURE 343(6260):767-70; Schrag et al. (1991)上述参照)。
【0057】
図2は、アミノ酸118~159がふたを画定し、アミノ酸214~261がふたに面するサブドメインを画定し、残基262~320がαヘリックス11を含み、アミノ酸160~213がαヘリックス7を含む、B.セパシア由来のリパーゼのリボンモデルを示す。触媒性三つ組(すなわちセリン87、アスパラギン酸264およびヒスチジン286)に寄与するアミノ酸を示す。
【0058】
細菌性リパーゼは、アミノ酸配列および生物学的特性の差に基づいて8個のファミリー(ファミリーI~VIII)に分類されている。それらのうち、図3に示されるファミリーIは、最も大きな群であり、6個のサブファミリー(I.1~I.6と称される)にさらに細分化されており、そのうちI.1、I.2およびI.3は、代表的なグラム陰性細菌性リパーゼである。ファミリーIのリパーゼは高度に保存され、このファミリーのリパーゼの活性は、3つの保存されたアミノ酸、すなわちセリン、ヒスチジンおよびアスパラギン酸により形成される触媒性活性部位の存在に頼る。(Nardini et al.(2000) J. BIOL. CHEM. 275(40):31219-31225;Kim et al. (1997) STRUCTURE 5(2):173-185。)
【0059】
図4は、緑膿菌PAO1(ファミリーI.1、配列番号:29)、シュードモナス・フルオレッセンス(ファミリーI.1、配列番号:30)、バークホルデリア・セパシア(ファミリーI.2、配列番号:1)、イネもみ枯細菌病菌(ファミリーI.2、配列番号:31)、クロモバクテリウム・ビスコスム(ファミリーI.2、配列番号:32)、シュードモナス・ルテオラ(ファミリーI.2、配列番号:33)、シュードモナス・フルオレッセンスABA72135(ファミリーI.1、配列番号:34)、シュードモナス・フルオレッセンスAEV60646(ファミリーI.1、配列番号:35)、シュードモナス属WP-015093259(ファミリーI.3、配列番号:36)、シュードモナス・フラギCAA32193(ファミリーI.1、配列番号:37)、シュードモナス・フラギCAC07191(ファミリーI.1、配列番号:38)、シュードモナス・スタッツェリ(配列番号:41)およびシュードモナス・メンドシナLipA(配列番号:42)のリパーゼ配列間のアミノ酸の保存を示す配列アライメントを示す。触媒性三つ組(活性部位;暗い影付き)およびカルシウム結合部位(明るい影付き)を構成するアミノ酸残基を図に示す。リパーゼ遺伝子工学的作り変え(実施例7参照)において作製される置換を、野生型B.セパシア配列に対して示す(影なしのボックス)。図5は、バークホルデリア・セパシア(ファミリーI.2)、イネもみ枯細菌病菌(ファミリーI.2、配列番号:31)、クロモバクテリウム・ビスコスム(ファミリーI.2、配列番号:32)およびシュードモナス・ルテオラ(ファミリーI.2、配列番号:40)の間の残基の保存を示す配列アライメントを示し、ここでオキシアニオンホール、ふた、サブドメイン、触媒性三つ組およびカルシウム結合部位を構成する保存されたアミノ酸を同定する。野生型B.セパシア配列に対するリパーゼ遺伝子工学的作り変え(実施例7参照)において作製されるアミノ酸置換の配置を図に示す(暗い輪郭のあるボックス)。
【0060】
ファミリーI.2は、グラム陰性細菌であるバークホルデリア・セパシア由来のリパーゼ(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼとしても公知)を含む。B.セパシアリパーゼは、(1)DHAなどの長鎖ポリ不飽和脂肪酸に対して高い活性を有し、(ii)胃腸管内の生理学的に関連のあるpH範囲で広いレベルの活性を有し、(iii)胆汁酸塩またはカルシウムなどの無機物ありおよび無しで活性であり、(iv)触媒活性のために補リパーゼを必要とせず、(v)トリグリセリドのsn-1およびsn-3領域に対してより高いレベルの活性を有してトリグリセリドの加水分解を触媒して2つの脂肪酸および2-モノグリセリドを生じ、それによりヒト膵臓リパーゼを模倣するために、酵素遺伝子工学的作り変えについての良好な開始点を提供する。B.セパシアリパーゼは、約320アミノ酸残基を含み、約33kDaの推定分子量を有し、リパーゼ間で保存される構造的特徴を有する。特に、B.セパシアリパーゼは、触媒性三つ組(保存されたセリン、ヒスチジンおよびアスパラギン酸残基)を含む活性部位裂溝および活性部位を曝露してトリグリセリドの進入を可能にして加水分解させるように開くかまたは活性部位を閉じるように閉じるふたを含む。リパーゼの他の保存された特徴としては、オキシアニオンホールおよびカルシウムイオン結合部位が挙げられる。ファミリーI.1リパーゼ、ファミリーI.2リパーゼおよびファミリーI.3リパーゼの間のこれらの構造的特徴の保存は、これらのリパーゼが、触媒作用および界面活性化の同じ機構を共有することを示唆する(Kim et al. (1997)上述;Nardini et al.(2000)上述;Barbe et al. (2009) PROTEINS 77:509-523;Schrag et al. (1991)上述)。理論に拘束されることを望まずに、リパーゼの界面活性化は主に、活性部位を曝露し、トリグリセリド基質との相互作用のための疎水性表面を提供するリパーゼのコンホメーション変化により生じることが企図される。結晶学的および生化学的な試験により、リパーゼによる加水分解の機構はセリンプロテアーゼのものと同様であることが示された。両方の場合に、加水分解の際に生成されるオキシアニオンは、リパーゼが開放ふたコンホメーションにある場合にいわゆる「オキシアニオンホール」に配置されると考えられる(Kim et al. (1997)、上述)。
【0061】
以下でより詳細に議論されるように、B.セパシアリパーゼは、実施例1、6および7において議論されるように突然変異誘発のラウンドに供され、B.セパシアリパーゼの1つ以上の特性を向上するいくつかのアミノ酸置換を生じ、特定の設計目的、例えば(i)pH3.0~pH7.0の範囲のpH活性、(ii)特定の長鎖ポリ不飽和脂肪酸(例えばドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)および長鎖トリグリセリド(例えばオリーブ油中のオレイン酸)に対する高い基質特異性および活性、(iii)補因子(例えば補リパーゼまたはプロリパーゼ)を必要としないこと、(iv)活性のための胆汁酸塩または無機物の低減または非依存性、(v)高い比活性、(vi)例えば35~40℃の温度範囲で熱安定であることならびに(vii)タンパク質分解について安定であることの1つ以上を有するリパーゼを生成することを達成した。
【0062】
最初に、pHの範囲およびタンパク質分解性の生存可能性を高めた57のアミノ酸置換を同定した(実施例1参照)。16の置換を維持し、さらなる置換を作製し、タンパク質分解性およびpHについての生存可能性を高めた置換の特性の組合せを生じた(実施例6参照)。最終的に、最初に同定された18の置換の種々の組合せを試験し、pH安定性(pH3.0での胃酸に対する生存可能性)およびタンパク質分解性の安定性(pH3.6でのペプシンおよびpH6.4でのアスペルギルス・メレウスプロテアーゼに対する生存可能性)を高めた置換の特定の組合せを同定した(実施例7参照)。これらの試験に基づいて、リパーゼの1つ以上の特性を高めた特定のアミノ酸置換およびかかる置換の組合せがリパーゼのふた、サブドメインおよびオキシアニオンホールに位置することを見出し、これを図5の配列アライメント、図6に示される酵素の三次元リボンモデルまたは酵素の概略的表示(図7)に示す。
【0063】
II. 組換え変異体リパーゼ
特に、本発明は、例えば被験体において増加量の消化されない脂質を生じる脂質を消化または吸収する能力の低減に関連する障害、例えば被験体が低レベルの膵臓酵素の分泌を示すかまたは脂肪加水分解もしくは脂肪吸収に影響する生理学的条件(例えば低減された胃、十二指腸、肝臓、胆汁または胆嚢機能;低減された胃腸の通過、運動性、混合、空になること;または低減された腸粘膜機能(例えば粘膜損傷により誘導される)を有する障害の治療に有用である組換え変異体リパーゼを提供する。ある態様において、リパーゼは、(i)対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対して酸性pH(例えばpH3.0または4.0)での増加した安定性、(ii)対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対してプロテアーゼ(例えばセリンプロテアーゼおよび/またはアスパラギン酸プロテアーゼ)の存在下の増加した安定性、(iii)GI管を通過するのに十分な時間の長さの間の活性(例えば約75~225分の半減期)、または(iv)対応する野生型微生物リパーゼ酵素の酵素活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%を含む。
【0064】
ある態様において、リパーゼは、α/β-ヒドロラーゼリパーゼであり、任意にまたは付加的に、セリン-ヒスチジン-アスパラギン酸活性三つ組を含み得る。ある態様において、リパーゼは、脂質の結合および/または加水分解を可能にするように開く疎水性のふたを含む。疎水性のふたは、8炭素よりも長い鎖の長さを有するトリグリセリドの結合および/または加水分解を可能にするのに十分に開き得る。
【0065】
ある態様において、リパーゼはカルシウム結合部位を含み、ここでカルシウムがカルシウム結合部位に結合する場合、リパーゼは安定化される。ある態様において、リパーゼはオキシアニオンホールを含み、ここでオキシアニオンホールは、脂肪酸結合加水分解の際に生じる負に荷電した中間体を安定化する。ある態様において、リパーゼは真菌性リパーゼまたは細菌性リパーゼである。ある態様において、リパーゼは、ファミリーI細菌性リパーゼであり、I.1、I.2もしくはI.3サブファミリー細菌性リパーゼ、例えばI.1もしくはI.2サブファミリー細菌性リパーゼであり得るかまたはI.2サブファミリー細菌性リパーゼであり得る。
【0066】
ある態様において、リパーゼは、バークホリデリア属、シュードモナス属またはクロモバクテリウム属のリパーゼである。ある態様において、リパーゼは、B.セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、緑膿菌、シュードモナス・ルテオラまたはクロモバクテリウム・ビスコスムのリパーゼである。ある態様において、リパーゼはB.セパシアリパーゼである。
【0067】
ある態様において、リパーゼは、野生型B.セパシアの87位に対応する位置でのS残基(S87)、野生型B.セパシアの264位に対応する位置でのD残基(D264)および野生型B.セパシアの286位に対応する位置でのH残基(H286)を含み、リパーゼサブファミリーI.1とI.2の間で保存されたアミノ酸を示す(図4参照)。
【0068】
そうではないと述べられない限り、本明細書で使用する場合野生型B.セパシアリパーゼは、配列番号:1のアミノ酸配列を有するB.セパシアリパーゼまたは長鎖トリグリセリド基質を脂肪酸に消化するその機能的断片をいう。
【0069】
配列番号:1 (野生型B.セパシアリパーゼ):
【表1】
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「機能的断片」は、長鎖トリグリセリド基質を脂肪酸に消化するための対応する全長リパーゼの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%を有するリパーゼのタンパク質断片であると理解される。
【0071】
ある態様において、リパーゼは、架橋および/または結晶化されない。
【0072】
一局面において、本発明は、配列番号:1の野生型B.セパシアリパーゼの対応する位置に少なくとも1つ(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13、例えば2~13、3~13、4~13、5~13、6~13、7~13、8~13、9~13、10~13、11~13、12~13、2~12、3~12、4~12、5~12、6~12、7~12、8~12、9~12、10~12、11~12、2~11、3~11、4~11、5~11、6~11、7~11、8~11、9~11、10~11、2~10、3~10、4~10、5~10、6~10、7~10、8~10、9~10、2~9、3~9、4~9、5~9、6~9、7~9、8~9、2~8、3~8、4~8、5~8、6~8、7~8、2~6、3~6、4~6または5~6)の変異(1つまたは複数)を含む組換え変異体リパーゼを提供し、ここで少なくとも1つの変異は、野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基の置換;野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基の置換;または前述の置換のいずれかの組合せから選択される。
【0073】
ある態様において、野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基はR、HもしくはKで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基はQ、NもしくはCで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基はQ、NもしくはCで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基はN、C、Q、SもしくはTで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基はN、C、Q、SもしくはTで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基はN、C、Q、SもしくはTで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基はR、HもしくはKで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基はN、C、Q、SもしくはTで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基はR、HもしくはKで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基はA、I、L、MもしくはVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基はF、WもしくはYで置換されるか;またはリパーゼは、前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0074】
ある態様において、野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置での残基はRで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置での残基はQで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置での残基はQで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置での残基はSで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置での残基はNで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置での残基はAで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置での残基はIで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置での残基はNで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置での残基はHで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置での残基はAで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置での残基はSで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置での残基はLで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置での残基はKで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置での残基はVで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置での残基はLで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置での残基はAで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置での残基はAで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置での残基はLで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置での残基はAで置換され;野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置での残基はYで置換されるか;またはリパーゼは、前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0075】
ある態様において、リパーゼは、野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基の置換(Q39);野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基の置換(T79);野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基の置換(D102);野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基の置換(G125);野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基の置換(A128);野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基の置換(T137);野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基の置換(V138);野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基の置換(S153);野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基の置換(N154);野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基の置換(L161);野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基の置換(A170);野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基の置換(F221);野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基の置換(T227);野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基の置換(A240);野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基の置換(F249);野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基の置換(G250);野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基の置換(S260);野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基の置換(V266);野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基の置換(S281);野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基の置換(N300);または前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0076】
ある態様において、野生型B.セパシアリパーゼの39位に対応する位置でのQ残基はRで置換され(Q39R);野生型B.セパシアリパーゼの79位に対応する位置でのT残基はQで置換され(T79Q);野生型B.セパシアリパーゼの102位に対応する位置でのD残基はQで置換され(D102Q);野生型B.セパシアリパーゼの125位に対応する位置でのG残基はSで置換され(G125S);野生型B.セパシアリパーゼの128位に対応する位置でのA残基はNで置換され(A128N);野生型B.セパシアリパーゼの137位に対応する位置でのT残基はAで置換され(T137A);野生型B.セパシアリパーゼの138位に対応する位置でのV残基はIで置換され(V138I);野生型B.セパシアリパーゼの153位に対応する位置でのS残基はNで置換され(S153N);野生型B.セパシアリパーゼの154位に対応する位置でのN残基はHで置換され(N154H);野生型B.セパシアリパーゼの161位に対応する位置でのL残基はAで置換され(L161A);野生型B.セパシアリパーゼの170位に対応する位置でのA残基はSで置換され(A170S);野生型B.セパシアリパーゼの221位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F221L);野生型B.セパシアリパーゼの227位に対応する位置でのT残基はKで置換され(T227K);野生型B.セパシアリパーゼの240位に対応する位置でのA残基はVで置換され(A240V);野生型B.セパシアリパーゼの249位に対応する位置でのF残基はLで置換され(F249L);野生型B.セパシアリパーゼの250位に対応する位置でのG残基はAで置換され(G250A);野生型B.セパシアリパーゼの260位に対応する位置でのS残基はAで置換され(S260A);野生型B.セパシアリパーゼの266位に対応する位置でのV残基はLで置換され(V266L);野生型B.セパシアリパーゼの281位に対応する位置でのS残基はAで置換され(S281A);野生型B.セパシアリパーゼの300位に対応する位置でのN残基はYで置換され(N300Y)るか;またはリパーゼは、前述の置換のいずれかの組合せを含む。
【0077】
ある態様において、1つ以上の変異は、配列番号:1の野生型B.セパシアリパーゼに対する保存的置換であり得、特定の他の態様において、1つ以上の変異は、配列番号:1の野生型B.セパシアリパーゼに対する非保存的置換であり得る。本明細書で使用する場合、用語「保存的置換」は、構造的に同様のアミノ酸での置換をいう。
【0078】
ある態様において、所定のアミノ酸の置換は、疎水性アミノ酸(例えばA、I、L、MまたはV)、正に荷電したアミノ酸(例えばK、RまたはH)、負に荷電したアミノ酸(例えばDまたはE)、極性が中性のアミノ酸(例えばN、C、Q、SまたはT)、芳香族アミノ酸(例えばF、YまたはW)または側鎖体積に基づいて嵩高いアミノ酸または側鎖体積に基づいてより小さいアミノ酸による。アミノ酸は一文字コードで示される。
【0079】
保存的置換は、BLAST (Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズム、BLOSUM置換マトリックス(例えばBLOSUM 62マトリックス)またはPAM置換:pマトリックス(例えばPAM 250マトリックス)によっても定義され得る。非保存的置換は、保存的置換ではないアミノ酸置換である。
【0080】
一局面において、組換え変異体リパーゼ酵素は、表1からの1つ以上の置換を含み、ここで置換の位置を野生型B.セパシア(例えば配列番号:1)に対して示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0081】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つの変異(1つまたは複数)(例えば少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10または少なくとも11の異なる変異)を含む組換え変異体リパーゼを提供する。ある態様において、本発明は、表1から選択される少なくとも1つの変異(1つまたは複数)(例えば少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10または少なくとも11の異なる変異)を含む組換え変異体リパーゼを提供する。ある態様において、1つ以上の変異は、配列番号:1の野生型B.セパシアリパーゼに対して保存的置換であり得、特定の他の態様において、1つ以上の変異は、配列番号:1の野生型B.セパシアリパーゼに対して非保存的置換であり得る。
【0082】
別の局面において、組換え変異体リパーゼは、表2の所定の行に列挙される11までの置換を含み、ここで置換の位置を野生型B.セパシア(例えば配列番号:1)に対して示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0083】
ある態様において、前述の組換え変異体リパーゼのいずれかにおいて、リパーゼは、以下の置換(i)D102Q、N154HおよびF221L;(ii)T79Q、V266LおよびL287V;(iii)L91M、V220AおよびV266L;(iv)G125D、D159NおよびF249L;(v)Q39A、T137AおよびF249L;(vi)D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Y;(vii)D102Q、T137A、F221L、E35S、G250AおよびV305I;(viii)D102Q、N154H、L161A、F221L、S281AおよびI218A;(ix)L91M、D102Q、A128N、N154H、F221LおよびQ177A;または(x)D102Q、S153N、N154H、F221L、Q39RおよびT92Sを含む。
【0084】
ある態様において、前述の組換え変異体リパーゼのいずれかにおいて、リパーゼは、以下の置換(i)D102Q、N154HおよびF221L;(ii)D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Y;(iii)T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Y;(iv)T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Y;(v)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Y;(vi)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、G250A、V266LおよびN300Y;(vii)T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281AおよびN300Y;(viii)T79Q、D102Q、G125S、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Y;(ix)D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Y;(x)D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、G250A、V266LおよびN300Y;(xi)D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、G250A、V266L、S281AおよびN300Y;(xii)D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、G250A、V266LおよびN300Yまたは(xiii)D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yを単独または他の置換との組み合わせのいずれかで含む。
【0085】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、N154HおよびF221Lを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表4】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV130と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0086】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表5】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV290と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0087】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、N300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表6】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV309と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0088】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表7】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV311と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0089】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表8】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV317と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0090】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、N300YおよびG250Aを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表9】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV318と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0091】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表10】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV319と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0092】
本発明はさらに、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表11】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV322と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0093】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266LおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表12】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV325と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0094】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、T227K、V266LおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表13】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV326と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0095】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、T227K、G250A、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表14】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV333と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0096】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、G250A V266LおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表15】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV335と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0097】
本発明はさらに、以下の置換:D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、T227K、F249L、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼ、例えば以下のアミノ酸配列:
【表16】
を含む組換え変異体B.セパシアリパーゼ、例えば本明細書においてV336と称される組換え変異体リパーゼを提供する。
【0098】
ある態様において、リパーゼは、配列番号:2~14のいずれか1つのアミノ酸配列または配列番号:2~14のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0099】
配列同一性は、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の方法で、例えば公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアを使用して決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるアルゴリズムを使用したBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)分析(Karlin et al., (1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264-2268;Altschul, (1993) J. MOL. EVOL. 36, 290-300; Altschul et al., (1997) NUCLEIC ACIDS RES.25:3389-3402、参照により援用される)は、配列類似性の検索のために調整される。配列データベースの検索における基本的な問題の議論については、参照により十分に援用されるAltschul et al., (1994) NATURE GENETICS 6:119-129参照。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大の整列(alignment)を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定し得る。ヒストグラム、ディスクリプション、アラインメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対する適合を報告するための統計的有意さ閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターについての検索パラメーターは、デフォルト設定にある。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al., (1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919、参照により十分に援用される)。4つのblastnパラメーターは以下の通りに調整され得る:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty));wink=1(クエリに沿ってwink.sup.thの位置毎にワードヒットを生じる);およびgapw=16(ギャップのあるアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。同等のBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であり得る。検索はまた、NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメーターを使用して実施され得る(例えば:-G、オープンギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11;-E、伸長ギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1;-q、ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティー[整数]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチド適合についての報酬(reward)[整数]:デフォルト=1;-e、予測値[実数]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3;-y、ビットでのblast伸長についてのドロップオフ(X):デフォルト=blastnについて20/その他について7;-X、ギャップのあるアラインメントについてのXドロップオフ値(ビット(in bit)):デフォルト=全てのプログラムについて15であるがblastnには適用可能ではない;および-Z、ギャップのあるアラインメントについての最終Xドロップオフ値(ビット):blastnについて50、その他について25)。ペアワイズタンパク質アラインメントについてのClustalWも使用され得る(デフォルトパラメータは、例えばBlosum62マトリックスおよびギャップオープンペナルティー(Gap Opening Penalty)=10およびギャップ伸長ペナルティー=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列間の最適合比較はDNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0100】
a. 低pHで増加した安定性を有する組換え変異体リパーゼ
ある態様において、組換え変異体リパーゼは、酸性pH(例えばpH3.0または4.0)で、対応する野生型リパーゼ酵素に対して増加した安定性を有する。酸性pHでの増加した安定性は、組換え変異体リパーゼが消化系、特に胃の酸性条件を生き延びることを可能にする。通常の食事前の胃のpHは、約1.5~約3.5で変化し、食事後のpHは約5に増加する。食事状態間隔の際に、ゆっくりではあるが継続的な幽門弁を通る(though)胃内容物の空の状態があり、その時までにキームスは約pH4未満になり、食事の60~90%より多くは、十二指腸に移行される。B.セパシア由来の野生型リパーゼ(例えば配列番号:1)は、pH4まで良好な生存可能性を有する。しかしながら、リパーゼがpH4.0未満のpHレベルに供され得る短い期間があり得る。そのため、組換え変異体リパーゼが約pH3.0~3.5まで向上された安定性を示すことが望ましくあり得る。ある態様において、組換え変異体リパーゼは食物と共に摂取され得るので、絶食状態の胃の非常に低いpHでの向上された安定性は必要でないことがある。
【0101】
ある態様において、リパーゼは、約pH3.0で、少なくとも約35分、少なくとも約50分、少なくとも約75分、少なくとも約100分、少なくとも約125分、少なくとも約130分、少なくとも約135分、少なくとも約140分、少なくとも約145分または少なくとも約150分の半減期を有する。例えばある態様において、リパーゼは、約50分~約200分、例えば約50分~約100分、約50分~約150分、約50分~約175分、約50分~約200分、約75分~約100分、約75分~約150分、約75分~約175分、約75分~約200分、約100分~約150分、約100分~約175分、約100分~約200分、約150分~約175分、約150分~約200分の半減期を有する。
【0102】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍高い安定性を有する。例えば、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、約pH3.0で、約1.5倍~約2倍、約1.5倍~約2.5倍、約1.5倍~約3倍、約1.5倍~約3.5倍、約2倍~約2.5倍、約2倍~約3倍、約2倍~約3.5倍、約2.5倍~約3倍、約2.5倍~約3.5倍、約3倍~約3.5倍高い安定性を有し得る。
【0103】
リパーゼの安定性を試験するための方法は当該技術分野で公知であり、例えば本明細書の実施例3に記載される方法が挙げられ得る。ある態様において、低いpHでのリパーゼの安定性は、リパーゼを特定のpH(例えばpH3.0)に曝露し、p-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)を添加し、比色定量アッセイによりp-NPP切断生成物p-ニトロフェノレートの存在または量を検出することにより決定される。
【0104】
b. プロテアーゼの存在下で増加した安定性を有する組換え変異体リパーゼ
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型微生物リパーゼ酵素に対して、プロテアーゼ(例えばセリンプロテアーゼおよび/またはアスパラギン酸プロテアーゼ)の存在下で増加した安定性を有する。ある態様において、本明細書に記載される組換え変異体リパーゼは、胃内ですぐに利用可能であるように設計され、胃内でタンパク質分解性酵素、例えばペプシンおよび他のプロテアーゼに曝露される。プロテアーゼの存在下の増加した安定性は、組換え変異体リパーゼが胃の苛酷な条件で生存することを可能にする。
【0105】
ある態様において、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、対応する野生型リパーゼに対して、アスパラギン酸(例えばペプシン)の存在下で増加した安定性を有する。ペプシンは、低pHレベル(pH1.5~4)で最大の活性を有する。したがって、ある態様において、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼはまた、低pH(例えばpH3.8)で増加した安定性を有する。
【0106】
ある態様において、リパーゼは、ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下で少なくとも約50分、少なくとも約75分、少なくとも約100分、少なくとも約125分、少なくとも約150分、少なくとも約175分、少なくとも約200分、少なくとも約225分、少なくとも約230分または少なくとも約235分の半減期を有する。ある態様において、リパーゼは、ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下で約75分~100分、約75分~約125分、約75分~約150分、約75分~約175分、約75分~約200分、約75分~約225分、約75分~約230分、約75分 約~約235分、約75分~約250分、約100分~約125分、約100分~約150分、約100分~約175分、約100分~約200分、約100分~約225分、約100分~約230分、約100分 約~約235分、約100分~約250分、約125分~約150分、約125分~約175分、約125分~約200分、約125分~約225分、約125分~約230分、約125分 約~約235分、約125分~約250分、約150分~約175分、約150分~約200分、約150分~約225分、約150分~約230分、約150分 約~約235分、約150分~約250分、約175分~約200分、約175分~約225分、約175分~約230分、約175分 約~約235分、約175分~約250分、約200分~約225分、約200分~約230分、約200分 約~約235分、約200分~約250分、約225分~約230分、約225分 約~約235分、約225分~約250分または約235分~250分の半減期を有する。ある態様において、ペプシンは、食事状態の胃の典型的な低pH(例えばpH3.6)で存在する。
【0107】
ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下でリパーゼの安定性を試験するための方法は当該技術分野で公知であり、例えば本明細書の実施例4に記載される方法が挙げられ得る。ある態様において、アスパラギン酸プロテアーゼの存在下でのリパーゼの安定性は、リパーゼをプロテアーゼ(例えばペプシン)に曝露して、ペプシンを不活性化して、p-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)を添加して、比色定量アッセイによりp-NPP切断産物p-ニトロフェノレートの存在または量を検出することにより決定される。
【0108】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下(例えばpH3.6)で、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍高い安定性を有する。ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下(例えばpH3.6)で、約1.5倍~約2倍、約1.5倍~約2.5倍、約1.5倍~約3倍、約1.5倍~約3.5倍、約1.5倍~約4倍、約2倍~約2.5倍、約2倍~約3倍、約2倍~約3.5倍、約2倍 約4倍、約2.5倍~約3倍、約2.5倍~約3.5倍、約2.5倍~約4倍、約3倍~約3.5倍、約3倍~約3.5倍、または約3.5倍~約4倍高い安定性を有する。
【0109】
さらに、ある態様において、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、タンパク質消化のためにプロテアーゼおよびデンプン消化のためにアミラーゼと組み合わせて送達される。したがって、ある態様において、リパーゼは、共投与のためのA.メレウス由来のプロテアーゼに曝露される。A.メレウスプロテアーゼは、pH7~pH8で最大活性を有し、pH5~pH11のpH範囲で50%より高い活性を有するセリンプロテアーゼである。特定のアミノ酸の後のみでタンパク質を切断するトリプシンおよびキモトリプシンなどの哺乳動物プロテアーゼとは異なり、A.メレウスプロテアーゼ(SAPまたはoryzinとも称される)は、小さなオリゴマーおよび個々のアミノ酸までタンパク質を切断する。本明細書に記載される組換え変異体リパーゼは、3~6時間(小腸を通る食事状態の胃からの通過時間)A.メレウスプロテアーゼの存在下にあるように予想されるので、ある態様において、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、このプロテアーゼによる分解に抵抗性である。
【0110】
ある態様において、リパーゼは、A.メレウスプロテアーゼなどのセリンプロテアーゼの存在下で、少なくとも50分、75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する。例えば、リパーゼは、A.メレウスプロテアーゼなどのセリンプロテアーゼの存在下で、約75分~100分、約75分~約125分、約75分~約150分、約75分~約175分、約75分~約200分、約75分~約225分、約100分~約125分、約100分~約150分、約100分~約175分、約100分~約200分、約100分~約225分、約125分~約150分、約125分~約175分、約125分~約200分、約125分~約225分、約150分~約175分、約150分~約200分、約150分~約225分、約175分~約200分、約175分~約225分または約200分~約225分の半減期を有し得る。
【0111】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、A.メレウスプロテアーゼなどのセリンプロテアーゼの存在下で、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍高い安定性を有する。ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、A.メレウスプロテアーゼなどのセリンプロテアーゼの存在下で、約1.5倍~約2倍、約1.5倍~約2.5倍、約1.5倍~約3倍、約1.5倍~約3.5倍、約1.5倍~約4倍、約2倍~約2.5倍、約2倍~約3倍、約2倍~約3.5倍、約2倍 約4倍、約2.5倍~約3倍、約2.5倍~約3.5倍、約2.5倍~約4倍、約3倍~約3.5倍、約3倍~約4倍または約3.5倍~約4倍高い安定性を有する。
【0112】
ペプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼの存在下でのリパーゼの安定性を試験するための方法は当該技術分野で公知であり、例えば本明細書の実施例5に記載される方法が挙げられ得る。ある態様において、アスパラギン酸プロテアーゼの存在下でのリパーゼの安定性は、リパーゼをプロテアーゼ(例えばペプシン)に曝露して、ペプシンを不活性化して、次いでp-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)を添加して、比色定量アッセイによりp-NPP切断産物p-ニトロフェノレートの存在または量を検出することにより決定される。
【0113】
ある態様において、組換え変異体リパーゼは、パンクレアチンと組み合わせて投与される。パンクレアチンは、20までの異なる酵素を含み、有効成分として、3つの主要な酵素の部類:アミラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼを有する。パンクレアチンプロテアーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼAおよびカルボキシペプチダーゼBが挙げられる。パンクレアチンおよびパンクレアチン系調製物、例えばパンクレリパーゼは現在、膵外分泌機能不全を管理するために使用される。したがって、ある態様において、リパーゼは、共投与のためのパンクレアチン内でプロテアーゼに曝露される。そのため遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、パンクレアチンによる分解に抵抗性であり得る。
【0114】
ある態様において、リパーゼは、パンクレアチンの存在下で、少なくとも50分、75分、100分、125分、150分、175分、180分、185分、190分、195分または200分の半減期を有する。例えば、リパーゼは、パンクレアチンの存在下で、約75分~100分、約75分~約125分、約75分~約150分、約75分~約175分、約75分~約200分、約75分~約225分、約100分~約125分、約100分~約150分、約100分~約175分、約100分~約200分、約100分~約225分、約125分~約150分、約125分~約175分、約125分~約200分、約125分~約225分、約150分~約175分、約150分~約200分、約150分~約225分、約175分~約200分、約175分~約225分または約200分~約225分の半減期を有し得る。
【0115】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、パンクレアチンの存在下で、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍高い安定性を有する。ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、パンクレアチンの存在下で、約1.5倍~約2倍、約1.5倍~約2.5倍、約1.5倍~約3倍、約1.5倍~約3.5倍、約1.5倍~約4倍、約2倍~約2.5倍、約2倍~約3倍、約2倍~約3.5倍、約2倍 約4倍、約2.5倍~約3倍、約2.5倍~約3.5倍、約2.5倍~約4倍、約3倍~約3.5倍、約3倍~約4倍または約3.5倍~約4倍高い安定性を有する。
【0116】
パンクレアチンの存在下でリパーゼの安定性を試験するための方法は当該技術分野で公知である。ある態様において、パンクレアチンの存在下でのリパーゼの安定性は、リパーゼをパンクレアチンに曝露して、任意にパンクレアチン内でプロテアーゼを不活性化して、次いでp-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)を添加して、比色定量アッセイによりp-NPP切断産物p-ニトロフェノレートの量を検出することにより決定される。安定性は、パンクレアチンで処理されないリパーゼの対照試料に対するp-NPP切断の量を比較することにより決定される。
【0117】
c. 組換え変異体リパーゼは増加したリパーゼ活性を有し得る
長鎖ポリ不飽和脂肪(LCPUFA)、例えばDHA、EPAおよびAAを含む食事脂質は主に長鎖トリグリセリドの形態である。長鎖トリグリセリドは、エステル結合を介してグリセロール分子に結合される3つの長鎖脂肪酸で作製される。身体による長鎖トリグリセリドの吸収は最初に、トリグリセリドを加水分解により消化し、それらを1つのsn-2モノグリセリドおよび2つの遊離脂肪酸に分解するリパーゼ、例えば膵臓リパーゼの酵素作用を必要とする。用語「遊離脂肪酸」、すなわち他の分子(例えばグリセロール骨格)に取り付けられない脂肪酸は、脂肪消化の副生成物をいうために使用される。用語「消化」および「加水分解」は、脂質トリグリセリドをモノグリセリドおよび遊離脂肪酸に分解するためのリパーゼの酵素作用をいうために交換可能に使用される。加水分解産物モノグリセリドおよび遊離脂肪酸は次いで、エネルギーとして使用され、大きくは受動拡散により腸細胞に吸収される。一旦遊離脂肪酸およびモノグリセリドが吸収されると、それらは、肝臓および最終的に種々の生理学的目的で身体中の組織に輸送される。
【0118】
さらに、脂肪酸の鎖の長さおよび炭素-炭素二重結合の数は、脂肪吸収に影響を及ぼし得る。食物中に見られる食事脂肪酸は、少なくとも12炭素、例えばC16、C18およびC20長鎖脂肪酸として知られる16、18または20炭素を有する長鎖脂肪酸である。C8およびC12として知られる12以下の炭素、例えば8および12炭素を有する中鎖脂肪酸は一般的に食物中には見られず(ココナツを除く)、そのためヒトにおける消化および吸収にはより重要ではない。C2、C3およびC4として知られる数炭素以下、例えば2、3および4炭素を有する短鎖脂肪酸は、便中に見られる主要なアニオンであるが食物中には見られない。短鎖脂肪酸は、結腸中の細菌による消化により生じる。
【0119】
全ての脂肪はカロリー利益を提供するが、それらは生理学的機能に対して異なる影響を有する。短鎖トリグリセリド(SCT)および中鎖トリグリセリド(MCT)は、腸粘膜の絨毛により直接吸収される。MCTは、それらの短い鎖の長さおよび損なわれた膵臓出力または膵臓機能不全を有する患者においても胃のリパーゼの残存活性のために、容易に吸収され得る。長鎖トリグリセリド(LCT)は、直接吸収されないが、代わりに膵臓リパーゼにより遊離脂肪酸およびモノグリセリドに最初に加水分解されなければならず、その後小腸で吸収される。一旦遊離脂肪酸およびモノグリセリドが吸収されると、それらは肝臓および最終的に、種々の生理学的目的のために身体中の組織に輸送される。LCTおよびMCTの両方はカロリーを提供するが、LCT、具体的にLCPUFAのみは、膜および多くの生理学的機能の制御に関連する生物学的メディエーターの構造的構成成分を提供する。LCTから置換される場合、MCTは、エネルギー消費および飽満を増加して、全体的なカロリー摂取の低減および体脂肪質量の低減をもたらすことが示された。これは、MCTを、損なわれた膵臓出力または膵臓機能不全を有する患者にとっての不十分な長期間エネルギー源にする。
【0120】
ある態様において、本明細書に記載される組換え変異体リパーゼは、対応する野生型リパーゼと比較して、少なくとも0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍高い活性(例えば約pH3.0で)を有する。ある態様において、リパーゼは、対応する野生型リパーゼよりも、約1.5倍~約2倍、約1.5倍~約2.5倍、約1.5倍~約3倍、約1.5倍~約3.5倍、約2倍~約2.5倍、約2倍~約3倍、約2倍~約3.5倍、約2.5倍~約3倍、約2.5倍~約3.5倍または約3倍~約3.5倍高い活性(例えば約pH3.0で)を有する。
【0121】
ある態様において、リパーゼは優先的に、トリグリセリド上のsn-1およびsn-3位を加水分解する。ある態様において、リパーゼ酵素活性(例えば比活性)は、胆汁酸塩により阻害されない。ある態様において、リパーゼは補リパーゼを必要としない。
【0122】
ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH3.0で少なくとも300、400、500、600、700、800、900または1,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/mgリパーゼの比活性を有する。ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH3.0で、約300~約400、約300~約500、約300~約600、約300~約700、約300~約800、約300~約900、約300~約1,000、約300~約1,100、約400~約500、約400~約600、約400~約700、約400~約800、約400~約900、約400~約1,000、約400~約1,100、約500~約600、約500~約700、約500~約800、約500~約900、約500~約1,000、約500~約1,100、約600~約700、約600~約800、約600~約900、約600~約1,000、約600~約1,100、約700~約800、約700~約900、約700~約1,000、約700~約1,100、約800~約900、約800~約1,000、約800~約1,100、約900~約1,000、約900~約1,100または約1,000~約1,100μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。
【0123】
ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH4.0、pH5.0またはpH6.0で、少なくとも600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH4.0、pH5.0またはpH6.0で、約600~約700、約600~約800、約600~約900、約600~約1,000、約600~約1,100、約600~約1,200、約600~約1,300、約600~約1,400、約600~約1,500、約600~約2,000、約700~約800、約700~約900、約700~約1,000、約700~約1,100、約700~約1,200、約700~約1,300、約700~約1,400、約700~約1,500、約700~約2,000、約800~約900、約800~約1,000、約800~約1,100、約800~約1,200、約800~約1,300、約800~約1,400、約800~約1,500、約800~約2,000、約900~約1,000、約900~約1,100、約900~約1,200、約900~約1,300、約900~約1,400、約900~約1,500、約900~約2,000、約1,000~約1,100、約1,000~約1,200、約1,000~約1,300、約1,000~約1,400、約1,000~約1,500、約1,000~約2,000、約1,100~約1,200、約1,100~約1,300、約1,100~約1,400、約1,100~約1,500、約1,100~約2,000、約1,200~約1,300、約1,200~約1,400、約1,200~約1,500、約1,200~約2,000、約1,300~約1,400、約1,300~約1,500、約1,300~約2,000、約1,400~約1,500、約1,400~約2,000または約1,500~2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。
【0124】
ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH7.0で、少なくとも1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500または2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。ある態様において、リパーゼは、37% DHAトリグリセリドおよび22%オレイン酸トリグリセリドまたはトリオレインを含む長鎖トリグリセリド基質(例えば表3に記載される例示的な長鎖トリグリセリド基質)に対して、pH7.0で、約1,000~約1,100、約1,000~約1,200、約1,000~約1,300、約1,000~約1,400、約1,000~約1,500、約1,000~約2,000、約1,100~約1,200、約1,100~約1,300、約1,100~約1,400、約1,100~約1,500、約1,100~約2,000、約1,200~約1,300、約1,200~約1,400、約1,200~約1,500、約1,200~約2,000、約1,300~約1,400、約1,300~約1,500、約1,300~約2,000、約1,400~約1,500、約1,400~約2,000または約1,500~2,000μmol脂肪酸(FA)生成/分/リパーゼmgの比活性を有する。
【0125】
ある態様において、リパーゼは、対応する野生型微生物リパーゼ酵素の酵素活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を有する。ある態様において、リパーゼは、対応する野生型微生物リパーゼ酵素の酵素活性の約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約85%、約60%~約90%、約60%~約95%、約60%~約96%、約60%~約97%、約60%~約98%、約60%~約99%、約60%~約100%、約70%~約80%、約70%~約85%、約70%~約90%、約70%~約95%、約70%~約96%、約70%~約97%、約70%~約98%、約70%~約99%、約70%~約100%、約80%~約85%、約80%~約90%、約80%~約95%、約80%~約96%、約80%~約97%、約80%~約98%、約80%~約99%、約80%~約100%、約85%~約90%、約85%~約95%、約85%~約96%、約85%~約97%、約85%~約98%、約85%~約99%、約85%~約100%、約90%~約95%、約90%~約96%、約90%~約97%、約90%~約98%、約90%~約99%、約90%~約100%、約95%~約96%、約95%~約97%、約95%~約98%、約95%~約99%、約95%~約100%、約 約96%~約97%、約96%~約98%、約96%~約99%、約96%~約100%、約97%~約98%、約97%~約99%、約97%~約100%、約98%~約99%、約98%~約100%または約99%~約100%を有する。
【0126】
ある態様において、リパーゼは、3.5~7.0の範囲のpHで、被験体の胃腸管において、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばDHAおよびEPAまたは長鎖トリグリセリド、例えばオレイン酸もしくはトリオレインを加水分解するのに十分に活性なままである。ある態様において、リパーゼは、同じ条件下で試験される場合にパンクレリパーゼよりも少なくとも2倍、10倍、100倍または1000倍活性である。
【0127】
ある態様において、リパーゼの50%、60%、70%、80%または90%より多くは、被験体の食事状態の胃において60~120分間活性なままである。ある態様において、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約70%~約80%または約70%~約90%または約80%~約90%のリパーゼは、被験体の食事状態の胃において60~120分間活性なままである。
【0128】
ある態様において、リパーゼは、被験体の胃において摂取された脂肪の20%、30%、40%または50%より多くを脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。ある態様において、リパーゼは、被験体の胃において摂取された脂肪の約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約30%~約40%、約30%~約50%または約40%~約50%を脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。
【0129】
ある態様において、リパーゼの50%、60%、70%、80%または90%より多くは被験体の小腸を通って約240~約360分間活性なままである。ある態様において、リパーゼの約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約70%~約80%または約70%~約90%または約80%~約90%は、被験体の小腸を通って約240~約360分間活性なままである。
【0130】
ある態様において、リパーゼの活性は大腸において低下することが望ましくあり得る。したがって、ある態様において、リパーゼは、10時間、12時間または18時間後に、大腸において低減した活性を有する。ある態様において、リパーゼは、大腸において残存する脂肪の50%未満、60%未満または70%未満または80%未満または90%未満を消化し得る。
【0131】
ある態様において、リパーゼは、被験体の小腸において摂取された脂肪の50%、60%、70%、80%または90%より多くを脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。ある態様において、リパーゼは、被験体の小腸において摂取された脂肪の約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約70%~約80%または約70%~約90%または約80%~約90%を脂肪酸およびモノグリセリドに消化する。
【0132】
ある態様において、リパーゼは、被験体の血漿において、30分、45分、60分、90分または120分以内に、長鎖不飽和脂肪酸の吸収を、リパーゼを投与されていない場合の同じ被験体に対して、またはリパーゼを投与されていない同様の被験体に対して25%、35%、50%、100%または200%より多くだけ増加する。ある態様において、リパーゼは、脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)の吸収を増加する。ある態様において、リパーゼはコリンの吸収を増加する。
【0133】
リパーゼによる脂肪加水分解は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用してアッセイされ得る。例えば、所定の脂質基質を使用して遊離脂肪酸の量を測定するために、改変定量的比色定量アッセイ(Abcam(登録商標)遊離脂肪酸定量キット)が使用され得る。より複雑な脂肪(例えばより長い鎖の長さおよびより多くの二重結合を有する脂肪)は、リパーゼが遊離脂肪酸およびモノグリセリドに加水分解するのにより困難である。1つのかかる複雑な脂肪DHAは、他の脂肪またはLCPUFAに対してより長い炭素鎖およびより多くの二重結合を有するので全体的な脂肪加水分解または消化のための関連のある代替物であり、そのため加水分解することがより困難である。したがって、DHA加水分解をアッセイすることは、全てのトリグリセリドを消化するリパーゼの能力についての有用な代替物である。実験の経過を通じて、油由来の基質DHAはトリグリセリドの形態であり、該方法で測定される生成物は、DHA遊離脂肪酸形態である。
【0134】
一態様において、リパーゼ活性は、約37% DHAトリグリセリドおよび約22%オレイン酸トリグリセリドを含み、残りがほとんどミリスチン酸トリグリセリド、パルミテートトリグリセリド、ステアリン酸トリグリセリドおよびラウリン酸トリグリセリドならびにパルミトレイン酸トリグリセリドで構成される油を使用するDHA加水分解アッセイを使用して測定され得る。(NuCheck, Elysian MN。)かかるDHAトリグリセリド油の主要な構成成分を表3に示す。
【表17】
【0135】
オレイン酸トリグリセリドは、3つの脂肪酸(18炭素)がグリセロール骨格に取り付けられた脂肪基質であり、1つの二重結合を含む。オレイン酸トリグリセリドは、一般的な食事脂肪であり、オリーブ油において約55%~83%のパーセンテージで存在する。オレイン酸のトリグリセリドは、膵臓リパーゼにより加水分解されて、2つのオレイン酸脂肪酸およびsn-2モノグリセリドを形成する。DHAトリグリセリドと同様に、オレイン酸トリグリセリドは、全体的な食事脂肪加水分解の代替物として働き得る。
【0136】
トリオレインは、トリグリセリド形態の精製された形態のオレイン酸である。オリーブ油はロットごとに変化するので、加水分解アッセイにおけるオリーブ油の使用は一貫しない測定値を生じ得る。したがって、トリオレインは、リパーゼがトリグリセリド形態のオレイン酸を加水分解する能力を評価するために使用され得、オリーブ油と比較してより一貫した結果を提供し得る。
【0137】
ある態様において、リパーゼ効力アッセイは、4工程プロセス:1)遊離脂肪酸(FFA)を放出するためのpH6でのトリグリセリドの加水分解、2)FFAの補酵素Aへのコンジュゲーション、3)過酸化水素を生成するためのFFA-補酵素A複合体の酸化および4)比色定量酸化色素を使用した過酸化物の検出により、トリグリセリドからの脂肪酸の放出を測定するために使用される。生じる比色定量色素の量は、リパーゼにより放出されるFFAの量に比例し、リパーゼの比活性は、1分あたりに1μモルの基質を変換するために必要な酵素の量として定義される。アッセイは、本明細書における実施例2にさらに詳細に説明される。
【0138】
開示される組換え変異体リパーゼは、改変、遺伝子工学で作り変えまたは化学的にコンジュゲートされ得ることが企図される。例えば、開示される組換え変異体リパーゼは、標準インビトロコンジュゲーション化学を使用してエフェクター剤にコンジュゲートされ得ることが企図される。エフェクター剤がポリペプチドである場合、リパーゼは、エフェクターに化学的にコンジュゲートされ得るかまたは融合タンパク質としてエフェクターに連結され得る。融合タンパク質の構築は当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0139】
III. リパーゼ作製
本発明のリパーゼ酵素を作製するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、リパーゼをコードするDNA分子は、本明細書に提供される配列情報を使用して化学的に合成され得る。合成DNA分子は、例えば発現制御配列などの他の適切なヌクレオチド配列にライゲーションされて、所望のリパーゼをコードする従来の遺伝子発現構築物を作製し得る。
【0140】
所望のリパーゼをコードする核酸は、発現ベクターに組み込まれ(ライゲーションされ)得、これは従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入され得る。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞にリパーゼ酵素をコードする遺伝子を発現させる条件下で増殖され得る。
【0141】
本発明の組換え変異体リパーゼをコードする核酸は、当該技術分野で公知の方法を使用して、野生型B.セパシアリパーゼをコードするヌクレオチド配列、例えば本明細書に開示される配列番号:1を突然変異させることにより作製され得る。さらに、ある態様において、本発明の組換え変異体B.セパシアリパーゼをコードする核酸は、当該技術分野で公知の方法を使用して、異種細胞、例えばB.セパシア細胞、イネもみ枯細菌病菌細胞、シュードモナス・フルオレッセンス細胞、クロモバクテリウム・ビスコスム細胞、シュードモナス・ルテオラ細胞、シュードモナス・フラギ細胞または大腸菌細胞における発現についてコドン最適化され得る。
【0142】
ある態様において、本開示は、本明細書に記載される発現ベクターを含む細胞に関する。ある態様において、該細胞は、B.セパシア、イネもみ枯細菌病菌、シュードモナス・フルオレッセンス、クロモバクテリウム・ビスコスム、シュードモナス・ルテオラ、シュードモナス・フラギまたは大腸菌の細胞である。
【0143】
一態様において、本開示は、組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列に関する。ある態様において、組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列は、野生型リパーゼ、例えば野生型B.セパシアリパーゼと比較してヌクレオチド置換を含む。B.セパシアリパーゼをコードする野生型核酸は、当該技術分野で公知であり、例えば以下の配列、配列番号:39:
【表18】
を含む。
【0144】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、N154HおよびF221Lを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV130と称される組換え変異体B.セパシアリパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0145】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、N154H、F221L、V266LおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV290と称される組換え変異体B.セパシアリパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0146】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、F249L、V266L、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV309と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0147】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、V266L、S281A、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV311と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0148】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、V266L、S281A、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV317と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0149】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、N300YおよびG250Aを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV318と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0150】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281AおよびN300Yを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV319と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0151】
一態様において、本開示は、以下の置換:T79Q、D102Q、G125S、N154H、F221L、F249L、V266L、S281A、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV322と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0152】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV325と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0153】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、S153N、N154H、F221L、V266L、N300Y、T227KおよびG250Aを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV326と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0154】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、T137A、N154H、F221L、V266L、S281A、N300Y、T227KおよびG250Aを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV333と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0155】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、N300Y、T227KおよびG250Aを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV335と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0156】
一態様において、本開示は、以下の置換:D102Q、G125S、S153N、N154H、F221L、F249L、V266L、S281A、N300YおよびT227Kを含む組換え変異体リパーゼをコードする例示的なヌクレオチド配列、例えば本明細書においてV336と称される組換え変異体リパーゼをコードするヌクレオチド配列に関する。
【0157】
特定の発現および精製条件は、使用される発現系に応じて変化する。例えば、遺伝子が大腸菌中で発現される場合、遺伝子は、遺伝子工学で作り変えられた遺伝子を適切な細菌性プロモーターおよび原核生物シグナル配列から下流に配置することにより発現ベクターにクローニングされ得る。発現された分泌タンパク質を標的化して、ペリプラズム空間に蓄積させ、そこで浸透圧ショックまたはフレンチプレスもしくは超音波処理による細胞の破壊によりタンパク質を採取する。次いで、屈折体を可溶化し、タンパク質を当該技術分野で公知方法により再度折りたたみ、切断する。
【0158】
リパーゼは、リパーゼの発現を可能にする条件下でかかるリパーゼをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を増殖(培養)することにより産生され得る。発現後、リパーゼを、当該技術分野で公知の技術、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)およびヒスチジンタグなどのアフィニティタグを使用して採取および精製または単離し得る。リパーゼについての例示的な発現および精製プロトコルは、Liu et al. (2011) APPL. MICROBIOL. BIOTECHNOL.92(3):529-37に記載される。
【0159】
IV. 医薬組成物および用量
治療用途について、本明細書に記載される組換えリパーゼは、好ましくは薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤と合わされる。用語「薬学的に許容され得る」は、本明細書で使用する場合、過度な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を有することなく、妥当な利益/リスク比に釣り合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適した、正常な医学的判断の範囲内にあるこれらの化合物、材料、組成物および/または剤型をいう。
【0160】
用語「薬学的に許容され得る担体」は、本明細書で使用する場合、過度な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を有することなく、妥当な利益/リスク比に釣り合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適したバッファ、担体および賦形剤をいう。薬学的に許容され得る担体は、リン酸緩衝化食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば油/水または水/油エマルジョンなど)および種々の型の湿潤化剤などの標準的な医薬担体のいずれかを含む。該組成物はまた、安定化剤および保存剤を含み得る。担体、安定化剤およびアジュバントの例について、例えばAdeboye Adejare, Remington: The Science and Practice of Pharmacy (23rd ed. 2020)参照。薬学的に許容され得る担体としては、薬学的投与に適合性であるバッファ、溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で公知である。
【0161】
ある態様において、リパーゼは、例えば経腸的経路(例えば経口)によりpH増加剤、例えばプロトンポンプ阻害剤(PPI)と共に製剤化または(同時または連続のいずれかで)共投与されて、例えば酸性環境中、例えば胃腸管中でリパーゼの安定性を高め得る。
【0162】
プロトンポンプ阻害剤は、その主要な作用が、顕著で長時間持続する胃酸産生の低減である薬物の群である。プロトンポンプ阻害剤は、胃壁細胞の水素/カリウムアデノシントリフォスファターゼ酵素系(H+/K+ATPaseまたはより一般的にちょうど胃プロトンポンプ)を遮断することにより作用する。プロトンポンプは、胃酸分泌の最終段階であり、胃管腔へのH+イオンの分泌の直接的な原因であり、それを、酸分泌を阻害するための理想的な標的にする。プロトンポンプ阻害剤の例としては:オメプラゾール(商標名:LOSEC(登録商標)、PRILOSEC(登録商標)、ZEGERID(登録商標));ランソプラゾール(商標名:PREVACID(登録商標)、ZOTON(登録商標)、INHIBITOL(登録商標));エソメプラゾール(商標名:NEXIUM(登録商標))およびパントプラゾール(商標名:PROTONIX(登録商標)、SOMAC(登録商標)、PANTOLOC(登録商標))が挙げられる。
【0163】
ある態様において、リパーゼは、例えば微生物性プロテアーゼおよび/または微生物性アミラーゼと共に製剤化または共投与(同時または連続のいずれかで)され得る。アミラーゼは、デンプン、グリコーゲンおよび多糖のα-1,4-グルコシド結合を加水分解して、マルトースおよびグルコースの混合物を生じる。ある態様において、プロテアーゼはA.メレウスプロテアーゼであり、および/またはアミラーゼはコウジ菌アミラーゼである。ある態様において、組成物は、経口剤型として製剤化される。ある態様において、組成物は、散剤、顆粒剤、ペレット、マイクロペレット、液体または錠剤として製剤化される。ある態様において、組成物は、カプセルに封入されるかまたは錠剤剤型として製剤化される。ある態様において、組成物は、腸溶性コーティングを含まない。
【0164】
本明細書に開示される組換えリパーゼを含む医薬組成物は、単位剤型で存在し得、任意の適切な方法で調製され得る。医薬組成物は、その意図される投与経路、例えば経口投与と適合性であるように製剤化されるべきである。医薬組成物は、種々の形態であり得る。例えばこれらとしては、液体溶液、分散剤または懸濁物、錠剤、丸薬、散剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体および固体剤型が挙げられる。好ましい形態は、投与および治療適用の意図される様式に依存する。
【0165】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソームまたは高濃度での安定な保存に適した他の規則正しい構造として製剤化され得る。滅菌溶液は、本明細書に記載される薬剤を、必要な場合は上に列挙される成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要な量で一体化し、次いで濾過滅菌により調製され得る。一般的に、分散剤は、本明細書に記載される薬剤を、基本的分散媒体および上に列挙されるものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに一体化することにより調製される。滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、本明細書に記載される薬剤の粉末および以前に滅菌濾過されたその溶液由来の任意のさらなる所望の成分を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合は必要な粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持され得る。
【0166】
被験体に投与されるリパーゼの量は、例えば食事内容物および摂取された脂肪の量または摂取された脂肪の種類ならびに所定の被験体が有し得る年齢、体重、性別、健康状態またはトリグリセリドを消化および/または吸収する能力の低減に関連する疾患もしくは障害などのいくつかの変数に依存する。例示的な用量としては、1日当たり400、600、800または1,000mg未満のリパーゼまたは医薬組成物が挙げられ得る。1回の食事当たりのリパーゼの総単位は、約10,000、20,000、50,000、100,000、200,000、400,000またはそれ以上であり得る。
【0167】
V. 治療的用途
本発明は、被験体における増加された量の消化されない脂質に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する。ある態様において、疾患または障害は、被験体の胃腸管内の増加された量の消化されない脂質に関連する。該方法は、被験体に、単独または別の治療剤と組み合わせてのいずれかで開示される組換えリパーゼの有効量を投与して、被験体において疾患または障害を治療する工程を含む。用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、血漿および組織中の脂肪酸の取り込みの向上または小腸における消化されない脂肪の低減などの有益または望ましい結果をもたらすのに十分な活性剤(例えば本発明の組換えリパーゼ)の量をいう。有効量は、1つ以上の投与、適用または用量において投与され得、特定の製剤化または投与経路に限定されることを意図しない。
【0168】
ある態様において、該方法は、被験体に、単独または別の治療剤と組み合わせてのいずれかで開示される組換えリパーゼの有効量を経口投与して、被験体において疾患または障害を治療する工程を含む。
【0169】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、被験体、例えばヒトにおける疾患の治療を意味する。これは、(a)疾患の阻害、すなわちその発症の阻止;および(b)疾患の軽減、すなわち疾患状態の後退を引き起こすことを含む。用語「治療すること(treating)」はまた、被験体における疾患の症状を改善することを含み得る。本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本明細書に記載される方法および組成物により治療される生物をいう。かかる生物としては好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0170】
増加量の消化されない脂質に関連する疾患または障害の例としては、被験体が低レベルの膵臓酵素の分泌を示すかまたは脂肪加水分解もしくは脂肪吸収に影響を及ぼす生理学的状態を有するもの(例えば低減された胃、十二指腸、肝臓、胆汁または胆嚢の機能);低減された胃腸の通過、運動性、混合、空になること;または脂肪消化不良もしくは脂肪吸収不良もしくは脂肪酸欠損を生じる低減された腸粘膜機能(例えば粘膜損傷により誘導される)が挙げられる。例えば、かかる疾患および障害としては、膵外分泌機能不全(EPI)、吸収不良症候群、嚢胞性線維症、慢性膵炎、急性膵炎、シュワッハマン-ダイヤモンド症候群、脂肪酸障害、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損、ヨハンソン-ブリザード症候群、ゾリンジャー-エリソン症候群、ピアソン骨髄症候群、短腸症候群、肝臓疾患、原発性胆道閉鎖、胆汁うっ滞、セリアック病、脂肪肝疾患、膵炎、糖尿病、加齢、膵臓、胃、小腸、結腸、直腸/肛門、肝臓、肝、胆嚢もしくは食道の癌、悪液質、または胃腸障害(例えばクローン病、過敏性腸症候群または潰瘍性大腸炎)、胃、小腸、肝臓、胆嚢および膵臓の外科的介入(invention)が挙げられ得る。本明細書に記載される方法および組成物を用いた治療に適した他の被験体は、乳児および脂質の消化不良または吸収不良を示す増加した可能性を有する重要なケアにおけるものである。
【0171】
別の態様において、本開示は、脂肪酸の吸収の向上を必要とする被験体において脂肪酸の吸収を向上する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与し、それにより被験体において脂肪酸の吸収を向上する工程を含む。
【0172】
別の態様において、本開示は、血漿、赤血球または組織中の脂肪酸の量の増加を必要とする被験体の血漿、赤血球または組織において脂肪酸の量を増加させる方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与して、被験体において脂肪酸の量を増加させる工程を含む。
【0173】
別の態様において、本開示は、血漿、赤血球または組織中のω-3対ω-6脂肪酸の比の増加を必要とする被験体の血漿、赤血球または組織においてω-3対ω-6脂肪酸の比を増加する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体において脂肪酸の量を増加させる工程を含む。
【0174】
別の態様において、本開示は、便中の脂肪酸の量の低減を必要とする被験体の便において脂肪酸の量を低減する方法に関し、該方法は、被験体に、本明細書に記載されるリパーゼまたは医薬組成物の有効量を投与して、それにより被験体の便において脂肪酸の量を低減させる工程を含む。ある態様において、脂肪酸は長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)である。ある態様において、脂肪酸はω-3脂肪酸である。ある態様において、ω-3脂肪酸はDHA、EPAまたはDPAである。
【0175】
ある態様において、被験体は、1日当たり400、600、800または1,000mg未満のリパーゼまたは医薬組成物を投与される。1回の食事当たりのリパーゼの総単位は、約10,000、20,000、50,000、100,000、200,000、400,000またはそれ以上であり得る。
【0176】
ある態様において、リパーゼまたは医薬組成物は、脂肪溶解性ビタミン(例えばビタミンA、D、EまたはK)、アシッドブロッカーまたはトリグリセリドを含む栄養製剤と組み合わせて投与される。
【0177】
ある態様において、被験体は哺乳動物である。ある態様において、被験体はヒトである。
【0178】
本明細書に記載される方法および組成物は、単独または他の治療剤および/またはモダリティーと組み合わせて使用され得る。用語「組み合わせて」投与されるは、本明細書で使用する場合、患者に対する治療の効果がある時点で重複するように2つ(またはそれ以上)の異なる治療が、障害を有する被験体の苦痛の経過の間に被験体に送達されることを意味すると理解される。ある態様において、1つの治療の送達は、第2のものの送達が開始される際に依然として行われているので、投与期間の重複がある。これは、時々本明細書において「同時(simultaneous)」または「同時(concurrent)送達」と称される。他の態様において、1つの治療の送達は、他の治療の送達が開始する前に終了する。いずれかの場合のある態様において、組み合された投与のために治療はより効果的である。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えばより少ない第2の治療を用いて同等の効果が見られるか、または第2の治療は、第1の治療の非存在下で第2の治療が投与される場合に見られるよりも大きい程度にまで症状を低減するか、または第1の治療により同様の状況が見られる。ある態様において、送達は、症状または障害に関連する他のパラメーターの低減が、他のものの非存在下で送達される1つの治療により観察されるものよりも大きいようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、全体的に相加的または相加的よりも大きいものであり得る。送達は、送達される第1の治療の効果が、第2のものを送達する場合に依然として検出可能であるようなものであり得る。
【0179】
本記載を通して、組成物が具体的な構成成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が具体的な工程を有する、含むまたは含むと記載される場合、さらに、記載される構成成分から本質的になるかまたはそれからなる本発明の組成物があること、ならびに記載されるプロセス工程から本質的になるかまたはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0180】
本願において、要素または構成成分が記載される要素または構成成分のリストに含まれるおよび/またはそれから選択されるといわれる場合、要素または構成成分が記載される要素または構成成分のいずれか1つであり得るか、あるいは要素または構成成分が記載される要素または構成成分の2つ以上からなる群より選択され得ることが理解されるべきである。
【0181】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法の要素および/または特徴は、本明細書において明示的であるか黙示的であるかのいずれであろうと、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の方法において組み合され得ることが理解されるべきである。例えば特定の化合物について参照がなされる場合、文脈からそうではないことが理解されない限り、化合物は、本発明の組成物の種々の態様において、および/または本発明の方法において使用され得る。すなわち、本願において、態様は、記載および図示される明確かつ簡潔な適用を可能にする方法で記載されかつ示されるが、態様は本教示および本発明(1つまたは複数)から逸脱することなく、種々に組み合され得るかまたは分離され得ることが意図され理解される。例えば、本明細書に記載されかつ示される全ての特徴は、本明細書に記載され、示される発明(1つまたは複数)の全局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0182】
表現「の少なくとも1つ」は、文脈および用途からそうではないと理解されない限り、該表現の後に記載されるもののそれぞれおよび記載されるものの2つ以上の種々の組合せを個々に含むことが理解されるべきである。3つ以上の記載されるものに関する表現「および/または」は、文脈からそうではないと理解されない限り同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0183】
それらの文法的同等物を含む用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」または「含む(containing)」の使用は、そうではないと具体的に記載されないかまたは文脈から理解されない限り、例えばさらなる記載されない要素または工程を排除しない開放型および非限定的であると一般的に理解されるべきである。
【0184】
用語「約」の使用が量的値の前にある場合、本発明は、具体的にそうではないと記載されなければ、具体的な量的値自体も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されないか推測されない限り、名目上の値から±10%の変動をいう。
【0185】
工程の順序または特定の行為を行うための順序は、本発明が実行可能なままである限りは重要でないことが理解されるべきである。さらに2つ以上の工程または行為は同時に行われてもよい。
【0186】
任意および全ての例、または本明細書における例示的用語、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、本発明を単によりよく説明することが意図され、特許請求されない限りは、本発明の範囲に限定を課さない。本明細書における用語は、任意の特許請求されない要素を本発明の実施に必須として示すように解釈されるべきではない。
【実施例
【0187】
実施例
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することを意図しない。
【0188】
実施例1-リパーゼ遺伝子工学的作り変えのリパーゼ選択
この実施例には、生理的に関連のある脂肪に対してpH3.5~7にわたり高レベルの活性を維持しながら、食事状態の胃(低pHおよびペプシン)の苛酷な条件に対するならびに胃腸(GI)管の長さおよび小腸を通る胃の通過時間にわたるタンパク質分解性の分解に対する向上された安定性を有する組換え変異体バークホルデリア・セパシアリパーゼの設計が記載される。
【0189】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えの目標は、以下の特徴:
・pH3.0~7にわたり高レベルの活性を維持しながら、食事状態の胃(低pHおよびペプシン)の苛酷な条件に対するおよび小腸を通るGI管の長さにわたるタンパク質分解性の分解に対する固有の安定性;
・関連のあるpH範囲において活性の損失のないタンパク質分解に対する向上された安定性;
・関連のあるpHで、および目的のGI管(胃、十二指腸、空腸、近位回腸)の長さにわたるタンパク質分解性の分解に対する活性および生存可能性;
・野生型リパーゼと比較して高い活性プロフィール(単位/mg)の維持;ならびに
・胃において脂肪を吸収可能な脂肪酸およびモノグリセリドに消化することを開始するように安定化されること
の1つ以上を有するリパーゼ酵素を設計することであった。
【0190】
膵外分泌機能不全(EPI)を有するヒトについての脂肪のベンチマーク生理学的滞留時間を、リパーゼ遺伝子工学的作り変えの目標のための基準として使用した。具体的に、EPIを有するヒトについて、(1)胃内の低pH環境を通る通過時間は約60~90分であり、(2)胃プロテアーゼ(例えばペプシン)を通る通過時間は、消費される食事の内容物に応じて約90~約120分であり、(3)小腸を通る通過時間は約240~約360分である。
【0191】
遺伝子工学的作り変えの考察についてのリパーゼの特徴としては:
・腸溶性コーティングを必要としない、消化管の生理学的に関連のあるpH条件(pH3.5~7)でのリパーゼ活性;
・長鎖ポリ不飽和トリグリセリド(例えばDHA)およびトリオレイン酸(純粋なオレイン酸トリグリセリド;オリーブ油および標準的なヒトの食事における一般的なトリグリセリドの主要な構成成分)を含む生物学的に関連のある脂肪を消化する能力;
・消化管の生理学的に関連のあるpH条件でのリパーゼ溶解性.
・活性に必要とされない補リパーゼ;
・胆汁酸塩により阻害されないこと;
・sn-2に対するトリグリセリド上のsn-1およびsn-3位についての加水分解優先.
・低pHでの生存可能性;
・胃内のペプシンに対する生存可能性;
・リパーゼが共製剤化される特定のA.メレウスプロテアーゼにおけるタンパク質分解性の分解に対する生存可能性;ならびに
・37℃(体温)での熱安定性
が挙げられた。
【0192】
生理学的に関連のあるpH条件(pH4.0~7.0)での活性について、胆汁酸塩有りおよび無しで多くのリパーゼをスクリーニングおよび評価した。例示的なリパーゼを図3に示し、例示的なリパーゼの配列アライメントを図4および5に示す。
【0193】
突然変異分析に使用する基礎の(すなわち開始)リパーゼはB.セパシア由来、微生物由来I.2クラスのリパーゼ酵素であり、配列番号:1のアミノ酸配列を有した。リパーゼ酵素からI.2リパーゼを選択し、これを、消化することが最も困難な脂肪、例えばω-3脂肪(DHAおよびEPAトリグリセリド)などの広範囲の脂肪(トリグリセリド)に対して試験した。これらのリパーゼは、(i)長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばDHAに対して高い活性、(ii)生理学的に関連のあるpH範囲(pH3.5~7)での広いレベルの活性および(iii)胆汁酸塩有りおよび無しでの高い活性を示すので、突然変異分析のためにI.2クラスリパーゼを選択した。
【0194】
リパーゼ遺伝子工学的作り変え
一般に、以下の反復プロセス:
1. タンパク質の重要な特性の同定およびそれぞれの重要な特性を試験するための頑強なハイスループット分析方法の開発
2. バリアントのアレイを作製するための部位指向性突然変異誘発による(though)タンパク質のアミノ酸配列に対する変化の作製
3. それぞれの分析方法およびそれぞれの変化がタンパク質性能にどのように影響したかの等級に対するそれぞれのバリアントの発現および試験
4. 前もって定義された試験目標を満足するさらなる試験への前進のための上位バリアントの選択
を使用して、タンパク質の特性を選択および向上するために、タンパク質遺伝子工学的作り変えを使用した。
【0195】
工程4の終了時-最適な性能のバリアントを次のラウンドのための「親」または「基礎」配列として使用し、作製されたバリアントが所望の特性を有するまで、工程2~4を反復する。
【0196】
低pHおよびタンパク質分解性の分解はしばしばタンパク質の表面上で生じるので、B.セパシアリパーゼの三次元分子モデリングによりタンパク質の表面上のアミノ酸を同定した。理論に拘束されることを望まずに、タンパク質表面上の低pHおよびタンパク質分解性の分解は、ふたまたはサブドメインの不適切な折りたたみをもたらし得、これは酵素の活性を低減し得ると考えられる。
【0197】
B.セパシアリパーゼ(配列番号:1)は、細菌性リパーゼのI.2サブファミリーのメンバーである。このサブファミリー内のそれぞれのリパーゼは、構造的に関連があり、いくつかの共通の特徴を有する。また、リパーゼのI.1およびI.2ファミリーは、関連のある高いアミノ酸配列類似性を共有し、セリン-ヒスチジン-アスパラギン酸活性ドメイン、カルシウム結合部位、活性部位を保護するように働くふたおよびサブドメイン、ジスルフィド架橋などのいくつかの構造的特徴を共有し、正確な折りたたみを確実にするためにフォールダーゼ(foldase)(リパーゼ特異的フォールダーゼ(「Lif」))を必要とする。
【0198】
突然変異誘発のために考慮されるアミノ酸置換は、多くのI.2リパーゼにわたる評価に由来した。B.セパシアリパーゼについての向上された生成物特性は、サブグループI.1、I.2およびI.3などのファミリーIリパーゼの他のメンバーに適用可能であるべきであることが企図される。このアプローチを図示するために、細菌性リパーゼの系統発生樹の一部を図3に示し、選択されたI.1、I.2およびI.3細菌性リパーゼの配列アライメントを図4に示す。
【0199】
リパーゼ遺伝子工学的作り変え
多くの変異体B.セパシアリパーゼを設計し、それぞれは野生型配列に対して3つまでのアミノ酸置換を有した。最初のラウンドにおいて、それぞれの変異体DNA配列は、3つまでのアミノ酸変化(いわゆる置換)を含み、発現された場合に、3つのアミノ酸変化を有するタンパク質、いわゆるバリアントを生じた。
【0200】
B.セパシアリパーゼにおける上位の選択された別個のアミノ酸置換を表4に列挙する。
【表19】
【0201】
最初のラウンドの1つからのアミノ酸の上位の組合せの一覧を表5に示す。
【表20】
【0202】
簡潔に、変異体B.セパシアリパーゼをコードするDNA断片を発現ベクターにクローニングし、遺伝子配列決定により全ての構築物を確認した。リパーゼ酵素は、大腸菌のペリプラズム空間に発現された。浸透圧ショックを使用して外側の細胞膜を破砕し、リパーゼを採取した。
【0203】
組換え変異体B.セパシアリパーゼを、実施例2、実施例3、実施例4および実施例5のそれぞれに記載されるように、リパーゼ活性、pH生存可能性、ペプシンプロテアーゼ安定性およびA.メレウスプロテアーゼタンパク質分解性安定性について試験した。
【0204】
リパーゼ遺伝子工学的作り変え作戦(campaign)からの組換え変異体B.セパシアリパーゼの分析により、バリアントV130が、試験された条件にわたり最良の正味の正の効果を有したことが明らかになった。V130は、3つの置換(D102Q、N154HおよびF221L)を含んだ。V130バリアント置換は、さらなるB.セパシアリパーゼを設計したその後のラウンドにおいてさらに改変された。酵素活性、pH生存可能性、ペプシンプロテアーゼ安定性およびA.メレウスプロテアーゼタンパク質分解性安定性の1つ以上に対する所定のそれらの影響の使用のために、さらなる13の置換を選択した。先に持ち越された置換を上述の表4に示す。
【0205】
実施例2-リパーゼ活性アッセイ
リパーゼ遺伝子工学的作り変え作戦の目標は、pH4~pH7の広い食事状態範囲にわたり活性であり、胆汁酸塩により阻害されず、このpH範囲で可溶性であり、37℃で安定である変異体リパーゼを作製することであった。この実施例には、リパーゼ変異体が、加水分解および栄養吸収が起こる消化管の一部において活性を示す可能性があるかどうかを決定するためのリパーゼアッセイが記載される。
【0206】
それらの鎖の長さおよび二重結合を考慮すると、LCPUFAは消化することが非常に困難であるので、LCPUFA-トリグリセリドに対するリパーゼ活性を試験した。さらに、オリーブ油の主要な構成成分であり、標準的なヒトの食事の高い構成成分であるオレイン酸に対してリパーゼ活性を試験した。
【0207】
哺乳動物リパーゼとは対照的に、B.セパシアリパーゼは、触媒活性のために補リパーゼを必要とせず、胆汁酸塩の存在下および非存在下で安定であることが示された。B.セパシアリパーゼは、トリグリセリドのsn-1およびsn-3領域に対してより高いレベルの活性を有してトリグリセリドの加水分解を触媒して脂肪酸およびモノグリセリドを生じ、それによりヒトの膵臓酵素と同様の機能を有する。
【0208】
LCPUFAは、通常魚油に見られるトリグリセリドである。sn-1およびsn-3領域における加水分解活性についての優先は、ヒト膵臓リパーゼと一致し、これは血漿への吸収および腸細胞および組織への組み込みのために、脂肪が2つの脂肪酸および1つのモノグリセリドへと消化されることを可能にする。
【0209】
所定の基質(例えば脂肪)の代謝回転は、酵素活性(分解で生存する単位/mg)および関連のあるpHレベルでの基質に対する酵素の相互作用により駆動される。
【0210】
リパーゼが胆汁酸塩により阻害されないことを確実にするために、pH7で8mMの胆汁酸塩の存在下でも活性アッセイを行った。胆汁酸塩は≦pH6で相当に可溶性ではないのでこのpHを選択した。使用した胆汁酸塩およびそれらの相対比を表6に示す。
【表21】
【0211】
リパーゼによる脂肪消化は油/水界面で起こり、これをモデル化するために、生理学的に関連のある基質を使用してリパーゼ活性アッセイを行い、油-水エマルジョンを作製した。アッセイが遺伝子工学で作り変えられたリパーゼにおける向上を区別し得ることを確実にするために、消化がより困難であるために基質として長鎖脂肪を使用した。また、LCPUFA欠失、特にDHAおよびEPAは、EPI、CFおよび/または吸収不良を有する被験体において示された。
【0212】
活性アッセイについて、DHAトリグリセリドおよびオレイン酸トリグリセリドの両方において重度に富化された基質を選択した。
【0213】
DHAは、それぞれの脂肪酸が22の炭素を有し、6個の二重結合を含むトリグリセリドであり、食事において一般的に遭遇する最も長い鎖の脂肪酸の1つである。さらに、ω-3脂肪酸、例えばDHAおよびEPAは、膜の構造的構成成分であり、種々の生理学的機能の制御に関連する生物学的メディエーターでもあるので、これらの脂肪酸は、組成物、開発ならびに心臓、肝臓および神経組織の機能において、ならびに炎症および免疫系の制御において重要な役割を有する。LCPUFAならびにω-3脂肪酸、特にDHAおよびEPAは、EPI、CFおよび/または吸収不良を有する被験体において欠乏することが示された。
【0214】
オレイン酸は、一般的な食事性脂肪である別の脂肪基質であり、オリーブ油の約55%~83%までを構成する。オリーブ油の組成における多様性を考慮すると、オリーブ油と同様の合成脂肪であるトリオレインは、より一定した結果を提供するので、活性アッセイにおける使用のために選択された。トリオレインのそれぞれの脂肪酸はオレイン酸である(18の炭素および1個の不飽和結合を含む)。
【0215】
活性アッセイにおける使用のために選択されるDHA油は藻類由来であり、約37% DHAトリグリセリドおよび約22%オレイン酸トリグリセリドを含み(Nu-chek, Elysian, MN)、残りはほとんどミリスチン酸トリグリセリドおよびパルミテートトリグリセリドで構成される。主要な構成成分の量を表3に示す。
【0216】
該アッセイにおいて、特定のpHで基質をバッファ中に乳化し、基質にリパーゼを添加した。(リパーゼにトリグリセリドを消化させて可溶性遊離脂肪酸を形成させる)固定のインキュベーション時間後、リパーゼを熱不活性化した。アリコートを抜き取り、脂肪酸を補酵素Aでタグ付加する脂肪酸定量化キットを使用した。次いでタグ付加脂肪酸を比色定量または蛍光測定シグナルのいずれかにより定量した。SDS-PAGEを使用してそれぞれのリパーゼの濃度を確立し、アッセイデータと合わせて比活性を提供した。
【0217】
野生型B.セパシアリパーゼが目的のpH範囲(pH4.0~7.0)にわたりDHAに対して強力な活性を有し、胆汁酸塩により阻害されないことを考慮すると、遺伝子工学的作り変え作戦の目標は、酵素の生存可能性観点を向上するためになされた変化が活性レベルを低減せず、リパーゼを胆汁酸塩により阻害されるようにしないことを確実にすることであった。したがって、リパーゼ遺伝子工学的作り変えの目標は、以下:
・3.0~7のpH範囲において高い活性があり、酵素が食事状態の胃から空腸の末端まで脂肪を消化し得ることを確実にすること;
・pH7.0でリパーゼが胆汁酸塩により阻害されないことを確実にすること;
・リパーゼが37℃で安定であることを確実にすること;および
・リパーゼが目的のpH範囲(pH3.0~7)で可溶性であることを確実にすること
に焦点を当てた。
【0218】
さらに、リパーゼ遺伝子工学的作り変えプロセスにより作製されるそれぞれのバリアントは、以下の方法:
・pH4、37℃でDHAトリグリセリド油基質を使用して;
・pH7、37℃でDHAトリグリセリド油基質を使用して;および
・pH7、37℃でDHAトリグリセリド油基質を8mM胆汁酸塩と共に使用して
活性について試験した。
【0219】
簡潔に、DHA油基質を水中で乳化させ、アラビアゴムで安定化して、安定なエマルジョンを形成した。次いでエマルジョンを適切な体積の特定のpHバッファに添加して、pHを調整した。15分後、加熱によりリパーゼを不活性化して反応を停止した。作製された脂肪酸は、市販の遊離脂肪酸アッセイキット(例えばABCAM, UK, Free Fatty Acid Assay Kit)を使用して定量した。最終の反応は、比色定量的に検出し得る応答を生じた。
【0220】
評価された置換の活性は、pH4での活性とpH7での活性の間で強い相関を示し、1つのpHで活性に影響を及ぼすアミノ酸変化は他のpHでの活性にも影響を及ぼすことが示される。表1におけるこれらの置換(例えばS153N、L287V、I232L、Y129N、V143A、A128N、N154H、F249L)は、目的の重要なpH範囲で活性を向上する能力を有し、さらなる遺伝子工学的作り変えのために優先された。
【0221】
実施例3-pH生存可能性アッセイ
この実施例には、胃の低pH条件におけるリパーゼ生存可能性を決定するためのアッセイが記載される。
【0222】
リパーゼ遺伝子工学的作り変え作戦の目標は、酸性条件の消化系、特に胃で生存可能なリパーゼを作製することであった。CFを有する小児の胃吸引物のpHは約2から5より高くまでの範囲である。食事前pHは低い(約pH2)が、食事を消費してすぐにpHは迅速にpH5より高くに増加し、次いで約120分かけてpH2までゆっくり低下する。食事状態間隔の際に、幽門弁を通って胃の内容物がゆっくりではあるが連続的に空になり、その時までにキームスはpH4未満になり、食事の60~90%より多くは十二指腸へと通過する。B.セパシア由来の野生型(開始)リパーゼは、pH4まで良好な生存可能性を有する。しかしながら、リパーゼがpH4.0未満のpHレベルに供され得る時間があり得る。そのため、リパーゼ遺伝子工学的作り変えの1つの目標は、pH3.0~3.5まで生存可能性を向上することであった。リパーゼは食物と共に患者に摂取されるので、絶食状態の胃の非常に低いpHでの生存可能性は、関心がより低い。しかしながら、pH4未満まで低下する場合に後期の食事状態の胃に残る任意のリパーゼに関連する不活性化のリスクがある。
【0223】
したがって、pH3.0~3.5で少なくとも60~90分の半減期を有するリパーゼが望ましい。これは、リパーゼの半分以下が、胃の通過の際に低い酸により不活性化されることを確実にする。野生型B.セパシアリパーゼは40~50分の半減期を有するので、目的は、50~100%の向上を達成することであった。
【0224】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えにより作製されたそれぞれのリパーゼの生存可能性を試験するために、低pHおよび37℃でリパーゼ生存可能性を評価するためのハイスループットマイクロ力価プレートアッセイを開発した。このpH範囲(pH3.2~3.5)で、野生型リパーゼは、40~50分の半減期を有し、該方法は、アミノ酸置換の効果およびリパーゼ生存可能性における関連のある向上を区別することが可能であることを十分に区別している。
【0225】
酸生存可能性アッセイを説明するフローチャートを図9に示す。簡潔に、リパーゼをアッセイpH(3.0~pH3.3)、37℃で30分~120分間バッファに添加した。それぞれの時間間隔でアリコートを抜き取り、pHを中和した。それぞれのアリコートの活性は、リパーゼにより切断されてp-ニトロフェノールを形成する合成基質p-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)を使用して測定し、比色定量または蛍光測定シグナルのいずれかによりこれを定量する。次いでデータを、酸に曝露されなかった対照と比較し、データを分析して半減期を確立した。方法の記載を以下のパート(a)に提供する。
【0226】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えが進歩するにつれて、バリアントは向上された生存を有することが予想された。該方法の時間枠内で向上がバリアント間の区別を困難にした場合、pHを低下して、ストリンジェンシーを増加し、バリアントの区別を補助した。したがって、pH生存可能性について以下の方法:pH約3.0~3.5またはそれ以下、37℃で2時間p-NPP基質を使用して上位のバリアントを試験し、バリアント間の区別を可能にした。
【0227】
p-NPP蛍光測定検出を使用したpH生存可能性アッセイ
96ウェルプレートのそれぞれのウェルにおいて、それぞれのリパーゼを含むペリプラズムの試料を、特定のアッセイpHに設定された2x濃縮バッファに同時に添加した。生存可能性アッセイについて、添加時間をT=0とみなした。特定の時点で、アリコートを抜き取り、娘プレートに移した。1/10希釈のために反応体積を1:9で停止/指示バッファに希釈した。pHシフトは任意の酸媒介分解を阻止した。生存リパーゼは、p-NPP比色定量基質を加水分解することを開始した。リパーゼを用いたp-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)の反応は、405nmで強力な比色定量応答を有し、測定し得るパルミテートおよびパラ-ニトロフェノレートを生じた。リパーゼ反応によるp-NPP加水分解の機構を図10に示す。405nmで動的モードにおいて娘プレートを連続的に読んだ。実験のそれぞれの連続する時点は、より少ない生存リパーゼを有し、速動性曲線はより浅い傾斜を有した。それぞれの時点の傾斜を使用して、それぞれのリパーゼバリアントの半減期を確立した。バリアントを、WT-リパーゼ対照(大腸菌中で発現)および市販の精製WTリパーゼ(Amano Enzyme, Nagoya, Japan)の対照を含んだアッセイ対照と一緒に走らせた。
【0228】
生存可能性の観点から、pH生存可能性の向上がプロテアーゼに対する性能に有害に影響を与えないことおよびその逆が望ましかった。
【0229】
実施例4-ペプシン生存可能性アッセイ
この実施例には、ペプシン条件におけるリパーゼタンパク質分解性生存可能性を決定するためのアッセイが記載される。
【0230】
ある態様において、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、胃内に存在するペプシンで生存する。酵素が胃内でペプシンに曝露されることを防ぐ腸溶性コーティングを有するので、これは、パンクレリパーゼに基づく標準医療生成物について問題にはなり得ない。対照的に、本明細書に記載される遺伝子工学で作り変えられたB.セパシアリパーゼは、ある態様において、胃内ですぐに利用可能であるように設計され、ペプシンに曝露される。ペプシンは、低pHレベル(pH1.5~4)で最大の活性を有するアスパラギン酸プロテアーゼである。このように、遺伝子工学で作り変えられたB.セパシアリパーゼを、リパーゼ生存可能性に対するペプシンの影響について評価した。
【0231】
それぞれのリパーゼバリアントの生存可能性を試験するために、約pH4および37℃でペプシンを用いたリパーゼ生存可能性を評価するためのハイスループットマイクロタイタープレートアッセイを開発した。添加したペプシンの開始量は、3.2mg/mLのペプシン濃度を示唆するSimulated Gastric Fluid (SGF) Test SolutionについてのUSPチャプターに基づいた。ペプシンをリパーゼ溶液に添加して、ペプシンに関して3.2mg/mLおよびリパーゼに関して0.01mg/mLである溶液を形成した。リパーゼ遺伝子工学的作り変えが進歩するにつれて、アッセイ時間を延長することなく区別を強制するためにペプシンの量を増加した。予備的な遺伝子工学的作り変えは19mg/mL(USPに対して6x)を使用し、後期は32mg/mL(USPに対して10x)を使用した。存在するバックグラウンドタンパク質がなく、このようにリパーゼ以外のペプシンが攻撃するタンパク質がないために、この条件は、胃の通常の条件よりも苛酷であり得る。したがって、該方法は、リパーゼバリアントの生存可能に対するアミノ酸置換の効果を区別し得た。
【0232】
アッセイにおいて、リパーゼを、pH4でペプシンを含むバッファに添加した。それぞれの時間間隔でアリコートを抜き取り、pHを中和してペプシンを不活性化した。リパーゼにより切断されて、比色定量または蛍光測定シグナルのいずれかにより定量されるp-ニトロフェノールを形成する合成基質p-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)を使用して、それぞれのアリコートの活性を測定した。次いでデータを、ペプシンに曝露されない対照と比較し、データを分析して、半減期として表されるリパーゼ生存可能性を確立した。
【0233】
遺伝子工学で作り変えられたリパーゼの目標は、0.01mg/mLでのリパーゼが、32mg/mLのペプシンを用いてpH4で少なくとも90~120分の半減期を有することを確実にすることであった。過剰な量のペプシンが存在することを考慮すると、この目標は、胃の通過の際に最小のリパーゼがペプシンにより不活性化されなかったことを確実にした。野生型B.セパシアリパーゼは50~70分の半減期を有するので、最小の50~125%の向上が望ましくあった。
【0234】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えプロセスの間に作製されたそれぞれのバリアントを、0.01mg/mLリパーゼをpH3.5で32mg/mLペプシンに添加することにより、pH生存可能性について試験した。以下に詳細に記載されるようにp-NPP基質を使用した検出を、37℃で30分間行った。
【0235】
0.01mg/mLのリパーゼをpH3.5で32mg/mLのペプシンに添加することにより、上位のバリアントをpH生存可能性について試験した。以下に詳細に記載されるように、p-NPP基質を使用した検出を、37℃で2時間行った。
【0236】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えが進歩するにつれて、バリアントは向上された生存を有すると予想された。該方法の時間枠以内に、向上がバリアント間の区別を困難にする場合は、pHを低下してペプシンの作用を増加し、バリアントの区別を補助した。
【0237】
p-NPP蛍光測定検出を使用したペプシン生存可能性アッセイ
ペプシン生存可能性アッセイを示すフローチャートを図11に示す。
【0238】
96ウェルプレートのそれぞれのウェルにおいて、それぞれのリパーゼ含有ペリプラズムの試料を、特定の濃度でペプシンを含む特定のアッセイpHで設定された2x濃縮バッファに同時に添加した。特定の時点で、アリコートを抜き取り、娘プレートに移した。反応体積を、1/10希釈のために停止/指示バッファに1:9で希釈した。生存するリパーゼは、p-NPP比色定量基質の加水分解を開始した。リパーゼを用いたp-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)の反応は、405nmで強力な比色定量応答を有するパルミテートおよびパラ-ニトロフェノレートを生じた。この反応を図10に示す。実験におけるそれぞれの連続する時点は、より少ない生存するリパーゼを有し、速動性曲線はより浅い傾斜を有した。それぞれの時点の傾斜を使用して、それぞれのリパーゼバリアントの半減期を確立した。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼバリアントは、野生型リパーゼ対照(大腸菌において発現)および精製野生型リパーゼ(Amano Enzyme, Nagoya, Japan)の対照を含むアッセイ対照と一緒に走らせた。
【0239】
種々の変異およびバリアントについてのペプシン安定性についての例示的な結果を例えば図13~16および19に示す。
【0240】
実施例5-タンパク質分解性(A.メレウスプロテアーゼ)生存可能性アッセイ
この実施例には、A.メレウスプロテアーゼ条件下でのリパーゼ生存可能性を決定するためのアッセイが記載される。
【0241】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えのための目標は、胃および小腸内に存在するプロテアーゼの存在下での向上したリパーゼの生存可能性であった。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、タンパク質およびデンプン消化のためのプロテアーゼおよびアミラーゼのそれぞれと組み合わせて送達され得る。このように、リパーゼは、共投与のためにA.メレウス由来のプロテアーゼに曝露され得る。A.メレウスプロテアーゼは、pH7~pH8で最大活性を有し、pH5~pH11のpH範囲で50%より高い活性を有するセリンプロテアーゼである。特定のアミノ酸の後ろのみでタンパク質を切断するトリプシンおよびキモトリプシンなどの哺乳動物プロテアーゼとは異なり、A.メレウスプロテアーゼ(SAPまたはoryzinとも称される)は、タンパク質を非特異的に、小さなオリゴマーおよび個々のアミノ酸まで切断する。このように、A.メレウスプロテアーゼは、膵臓プロテアーゼに対する遺伝子工学で作り変えられたリパーゼ生存可能性を評価するための代表的な苛酷な条件を提供する。併用について選択される場合、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、3~6時間(食事状態の胃から小腸を通る通過時間)A.メレウスプロテアーゼの存在下にあると予想されるので、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼはこのプロテアーゼによる分解に抵抗性であることが望ましい。
【0242】
リパーゼ遺伝子工学的作り変えにより作製されるそれぞれのリパーゼの生存可能性を試験するために、pH6~pH7および37℃でA.メレウスプロテアーゼを用いてリパーゼ生存可能性を評価するためのハイスループットマイクロタイタープレートアッセイを開発した。最大のA.メレウスプロテアーゼタンパク質分解性活性の範囲にあり小腸内で見られる典型的なpHを表すので、このpHを選択した。pH6.0で0.01mgリパーゼと共に3.3mg/mLプロテアーゼを用いて初期の試験を行った。添加されたプロテアーゼのこの量は、1時間未満の実験時間枠要件での区別を可能にするように選択された。このインビトロアッセイについて、プロテアーゼ 対 リパーゼの比は、共投与について予想される製剤におけるものよりも少なくとも100倍高かった。存在するバックグラウンドタンパク質がなく、このようにリパーゼ以外のプロテアーゼが攻撃するタンパク質がないために、この条件は、胃の通常の条件よりも苛酷であり得る。したがって、該方法は、リパーゼバリアントの生存可能性に対するアミノ酸置換の効果を区別し得た。
【0243】
以下により詳細に記載されるアッセイにおいて(「p-NPP蛍光測定検出を使用したA.メレウスプロテアーゼ生存可能性アッセイ」参照)、リパーゼを、プロテアーゼを含むバッファにpH6.0で添加した。それぞれの時間間隔でアリコートを抜き取り、pHを中和してプロテアーゼを不活性化した。それぞれのアリコートの活性は、リパーゼにより切断されて、比色定量または蛍光測定シグナルのいずれかにより定量されるp-ニトロフェノールを形成する合成基質p-ニトロフェニルパルミテート(p-NPP)を使用して測定した。次いでデータを、プロテアーゼに曝露されない対照と比較し、データを分析してリパーゼ半減期を確立した。
【0244】
最終分析の一部としての後に続く実験における条件は、より現実的な場合、通常の(非膵臓機能不全)試験被験体についての食事状態の腸のものをモデル化するように設定された。これらの場合において、比は、pH6.0で、0.01mgリパーゼおよび10mg/mLカゼインと一緒の0.33mg/mLプロテアーゼであった。
【0245】
これらの条件下の初期の実験は、生存可能性の向上を示した。
【0246】
p-NPP蛍光測定検出を使用したA.メレウスプロテアーゼ生存可能性アッセイ
A.メレウス生存可能性アッセイの概観を図12に示す。
【0247】
96ウェルプレートのそれぞれのウェルにおいて、それぞれのリパーゼ含有ペリプラズムの試料を、特定の濃度でA.メレウスプロテアーゼを含む特定のアッセイpH(pH6で中心化した)で設定された2x濃縮バッファに同時に添加した。A.メレウスプロテアーゼの終濃度は、1.6mg/mL~3.3mg/mLの範囲であった。添加時間は生存可能性アッセイについてT=0とみなされた。特定の時点でアリコートを抜き取り、娘プレートに移し、上記のp-NPPアッセイについて記載されるように指示バッファに直接希釈した。生存リパーゼは、p-NPP比色定量基質を加水分解することを開始した。リパーゼを用いたp-NPP(p-ニトロフェニルパルミテート)の反応は、405nmで強力な比色定量応答を有するパルミテートおよびパラ-ニトロフェノレートを生じる。この反応を図11に示す。405nmの動力学モードで娘プレートを連続的に読んだ。oryzinは依然として活性であったので、(より多くのリパーゼが持続するタンパク質分解により不活性化されたので)速動性曲線は経時的に曲がった。実験におけるそれぞれの連続する時点は、より少ない生存リパーゼを有し、速動性曲線はより浅い最初の傾斜を有した。それぞれの時点の傾斜を使用して、それぞれのリパーゼバリアント半減期を確立した。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼバリアントは、WT-リパーゼ対照(大腸菌において発現)および市販の精製WTリパーゼ(Amano Enzyme, Nagoya, Japan)の対照を含むアッセイ対照と共に走らせた。
【0248】
それぞれの変異体についてのデータを分析して、半減期として表される生存可能性のそれぞれの個々の置換の影響を決定した。データはモデル予測(0.01未満のp値)と十分に相関し、モデルが観察される生存半減期を高度に予測することが示された。
【0249】
実施例6-さらなるリパーゼ遺伝子工学的作り変え
この実施例には、B.セパシアリパーゼ遺伝子工学的作り変えプロセスにおけるさらなる工程が示される。
【0250】
それぞれの所望の特性を向上した置換およびどの置換がそれぞれの所望の特性に有害であったかに関する情報は、新規のアミノ酸置換を予測するようにモデリングする際に考慮された。モデリングは、新規のアミノ酸置換をさらに評価することを提唱した。
【0251】
上位の変異体B.セパシアリパーゼをバリアントとして表7に示す。
【表22】
【0252】
バリアントは、V130基礎バリアントに含まれるものの上位に対して2~6個のさらなるアミノ酸置換を含んだ。それぞれのバリアントリパーゼは、分析群(低pHでの安定性、プロテアーゼの存在下の安定性等)におけるそれぞれの試験に対して表されて評価された。それぞれの新規の置換は、アレイにわたり5つの異なるバリアント中に存在し、これは多変量統計デコンボリューションツールを使用してどのアミノ酸置換が向上の原因であったかを同定することを可能にするように十分な反復を提供した。そうではないと示されない限り、変異体設計、発現、精製、およびpH、ペプシン、およびA.メレウスプロテアーゼ安定性のアッセイは全て上述のように行った。
【0253】
低い酸条件pH3.2の存在下およびA.メレウスプロテアーゼの存在下の生存可能性は、以前に行ったものと同じ様式で試験した。
【0254】
野生型B.セパシアリパーゼは、ペプシンに対していくらかの耐性を示したが、遺伝子工学的作り変えの1つの目標は、ペプシンに対する生存可能性を90~120分まで向上することであった。最初に、19mg/mLのペプシンおよびpH4.0で、バリアントは区別できなかった。いくらかの遺伝子工学的作り変えの後、ストリンジェンシーを増加するために、ペプシンの濃度を32mg/mLに増加し、負荷のpHを3.8まで低下してペプシンの作用を増加し、有益なアミノ酸置換の区別を補助した。
【0255】
所望の特性(低pH生存、アスパラギン酸プロテアーゼおよびセリンプロテアーゼに対する生存)の組合せに基づいて、上位の置換を使用した。
【0256】
リパーゼ遺伝子工学的作り変え作戦の組換え変異体B.セパシアリパーゼの分析により、6個の置換(D102Q、N154H、F221L、V266L、G125SおよびN300Y)を含むバリアントV290を同定した。このバリアントは、最良の正味の正の効果を有し、6個の置換は一緒になって、十分に働くことが分かったので、V290バリアント置換を、塩基配列を形成するように先に移動させた。結果的に、これらの6個の置換を含む変異体B.セパシアリパーゼ酵素を、さらなるB.セパシアリパーゼの設計における親として使用した。さらに、示される向上の強度に基づいて含めるために、12個のさらなる置換を選択した。置換は、目的の全てのパラメーターの向上の強度に基づき、表8に示す。
【表23】
【0257】
表9は、pH生存可能性についての上位のB.セパシアリパーゼアミノ酸置換を示す。
【表24】
【0258】
表10は、セリンプロテアーゼ生存可能性についての上位のB.セパシアリパーゼアミノ酸置換を示す。
【表25】
【0259】
表11は、ペプシン生存可能性についての上位のB.セパシアリパーゼアミノ酸置換を示す。
【表26】
【0260】
含まれることについて評価した特定のアミノ酸置換についての例示的なデータを図13に示す。A.メレウスプロテアーゼの存在下の安定性、低pHでの安定性、ペプシン/SGFの存在下の安定性、pH4での活性および胆汁酸塩存在下のpH7での活性を、上述の多変量統計デコンボルーションツールを使用してそれぞれのアミノ酸置換について評価した。示されるように、特定の変異は、他のものではなく特定の条件下の安定性において正の変化を生じた。いくつかの変異は、活性を低下したが安定性の増加を生じた(例えばV266L参照)。また、いくつかの変異は、試験された全ての変数の低下を生じ(例えばN157I参照)、ほとんどの場合において、かかる変異は、選択プロセスを通じて進まなかった。しかしながら、組合せにおけるさらなる試験のために、種々のアミノ酸が最終的に選択された。
【0261】
実施例7-最終リパーゼ遺伝子工学的作り変え
この実施例には、上で同定された最良のバリアントを使用したB.セパシアリパーゼ遺伝子工学的作り変えが示される。
【0262】
新規の置換が導入されたより初期のラウンドとは異なり、最終ラウンドの目的は、生成物特性の相加的、相乗的(synergistic)または相乗的(potentiating)な向上を達成するために、異なる構成において以前のラウンドからの全ての最良に機能するアミノ酸置換を再度組み合わせることであった。最終ラウンドにおいて、46個のバリアントをV301~V346と示した。それぞれの最終バリアントは、8~11個のアミノ酸置換を含んだ(開始の野生型B.セパシアリパーゼ配列と比較した場合の約3%の変化)。最終バリアントについての完全な一覧を表12に示す。
【表27-1】
【表27-2】
【0263】
そうではないと示されない限り、変異体設計、発現、精製、およびpH、ペプシン、およびA.メレウスプロテアーゼ生存可能性のアッセイは全て、上述のものと本質的に同様に行った。しかしながら、該試験の目標は、さらなる分析のために最良の最終バリアントを評価および選択することであった。
【0264】
pH4.0、pH7.0および胆汁酸塩有り、pH7.0で活性を維持または向上もしながら、A.メレウスプロテアーゼ、ペプシンおよび低pH(pH3.0)に対する生存可能性の向上を示すそれらの全体的な能力に基づいて、上位の機能するバリアントを選択した。試験の最初のラウンドにおいて、全ての46バリアントをスクリーニングして、主要な特性のそれぞれに対する性能に基づいてプールを上位の11バリアントに制限するために結果を使用した。これらのデータを図14に示し、上位の11バリアントを強調する。
【0265】
次いで上位のバリアントを再度スクリーニングして、最初に結果を確認し、より統計的検出力を可能にした。上位の11バリアントに加えて、以下の3つの対照:(1)大腸菌において発現される野生型B.セパシアリパーゼ、(2)V130、最初のラウンドからの上位のバリアントの1つ、(3)V290、後期のラウンドからの上位バリアントの1つを評価した。上位のバリアントは、320アミノ酸を有する野生型B.セパシアリパーゼに対して合計10個のアミノ酸置換を含み、これは野生型B.セパシアリパーゼとの97%の相同性の原因であった。これらの対照は、向上の視覚化を容易にし、見られる相対的な向上を理解するために、リパーゼ遺伝子工学的作り変えプロセスにおけるより初期のバリアントの出力に対するそれぞれのバリアントの性能を示すことを可能にした。
【0266】
11のバリアントは、低い酸条件(pH3.2)およびペプシン(pH3.8)に対しての両方において優れた生存を示した。このように、酸負荷のpHを3.04に低下して酸の作用を増加し、ペプシン負荷のpHを3.58に低下してバリアントの区別を補助した。対応する生存可能性データの要約を図15に示す。結果は、上位の11バリアントのそれぞれに対してV130~V290の性能を通じて、野生型リパーゼからの向上の明確な前進があり、A.メレウスプロテアーゼに対してV311のみを除いて、半減期の全ては、試験した全ての条件下で全ての11バリアントについてV290よりも高かったことを示す。低pHでのバリアントリパーゼの生存可能性の向上は、pH3での活性の増加により確認される。
【0267】
実施例8-上位の遺伝子工学で作り変えられたB.セパシアリパーゼの選択
この実施例には、選択のための2軸アプローチを用いた上位の2つのB.セパシアリパーゼバリアントの選択が示され、ここで生存可能性の観点からの上位の2つのバリアントは、活性の観点からの最良のバリアントと同様に進められた。
【0268】
生存可能性の観点から上位の2つのバリアントを選択するために使用されるデータセットを表13に示す。
【表28】
【0269】
3つの生存可能性特性のそれぞれについて、野生型から、最初のラウンド由来の上位のバリアント(V130)への、および最終的に最終ラウンド由来の上位の候補(V325およびV336)への向上の前進があった。pH6でのA.メレウスプロテアーゼ生存についての150~180分より長い半減期目標は、改変の最後のラウンドにより達成された。最終のバリアントは、pH6で190分より長く生存した。pH3.5での60~90分生存の半減期目標も達成された。最終バリアントは、3.04のよりストリンジェントなpHで150分より長く生存した。pH4での90~120分のペプシン生存の半減期目標も達成された。最終バリアントは、3.58のよりストリンジェントなpHで235分より長く生存した。例示的なデータおよび目標(点線)を図16に提供する。
【0270】
それぞれの特性についての向上要因を表14に列挙し、これは、野生型(WT)酵素と比較して、4つのB.セパシアリパーゼバリアントについての生存可能性向上要因を示す。
【表29】
【0271】
上位のバリアントにおけるA.メレウスプロテアーゼ向上要因は、野生型よりも3.6倍抵抗性であった。上位バリアントにおけるpH3.04での低pH向上要因は、野生型よりも3.2~3.3倍抵抗性であった。上位バリアントにおけるpH3.58でのペプシン向上要因は、野生型よりも3.4~4.3倍抵抗性であった。それぞれの生存可能性試験について、一連の時点で生存するリパーゼのパーセンテージを、以下のチャートに示す。pH6でのA.メレウスプロテアーゼ生存可能性を、図17および表15に示し、ここで上位のバリアント(V325およびV336)を、野生型リパーゼならびに最初のラウンド由来の上位バリアント(V130)およびその後のラウンドの1つ由来の上位バリアント(V290)と比較した。
【表30】
【0272】
pH3.0での(ay)低pH生存可能性を、図18および表16に示す。
【0273】
表16は、一連の時点で、pH3.0で生存するリパーゼのパーセンテージを示し、ここで上位バリアント(V325およびV336)を、野生型リパーゼならびに上位バリアント(V130)および上位バリアント(V290)と比較した。
【表31】
【0274】
pH3.58でのペプシン生存可能性を図19および表17に示す。
【0275】
表17は、一連の時点で、pH3.58でのペプシンの存在下で生存するリパーゼのパーセンテージを示し、ここで上位バリアント(V325およびV336)を、野生型リパーゼならびに上位バリアント(V130)および上位バリアント(V290)と比較した。
【表32】
【0276】
上位バリアントの2つV325およびV336を、野生型リパーゼおよび3つの異なる濃度のパンクレリパーゼに対して同じアッセイプレート上で、一対一で試験した。得られたデータを図20Aおよび図20Bに示す。このチャートにおいて、それぞれのリパーゼバリアントの40mgおよび80mgの活性を、パンクレリパーゼの4つのカプセル(4x300mg-合計1,200mgパンクレリパーゼ)の活性と共に示す。
【0277】
4~7の重要なpH範囲において、上位バリアント(V325およびV336)のそれぞれは、野生型比活性と同等であるかまたはそれに対して適度な向上を示すかのいずれかの比活性を有する。これは、これらの候補のぞれぞれが、食事状態の胃から空腸および近位回腸の末端への脂肪を消化し得ることを確実にする。上位バリアント(V325およびV336)のいずれも胆汁酸塩により阻害されなかった。4~7の重要なpH範囲および過食の基準において、80mgの野生型リパーゼまたはバリアントの全ては、4カプセルのパンクレリパーゼのものよりも少なくとも10倍高い比活性を有した。pH4で、パンクレリパーゼはほとんど活性を有さなかった。文献が、ブタ膵臓調製物、例えばパンクレリパーゼが酸により分解されることを報告することを考慮すると、パンクレリパーゼは胃の通過で生存するためにpH5.5の腸溶性コーティングを必要とするので、この結果は驚くべきものではなかった。バリアントにおける最大活性増大は低pH(pH3)で観察された(データは示さず)。これらの向上は、リパーゼの触媒効率における真の向上の結果ではないが、その代わり生存可能性の有意な向上の結果である。
【0278】
この実施例は、遺伝子工学で作り変えられたリパーゼバリアントが、タンパク質分解に対して安定なままであり、胃の低酸性および苛酷な条件に抵抗し、患者において生理学的に関連のある脂肪(DHA)の欠失に対して高度に活性なままであることを示す。上位の遺伝子工学で作り変えられたリパーゼは、全ての目標を満足し、高い活性を維持した。遺伝子工学で作り変えられたリパーゼの増加した生存可能性は、脂肪加水分解を最大化し、性能を向上し、脂肪加水分解の欠失を有する患者、例えば医療水準処置に応答しなかった患者を治療するように、リパーゼをすぐに活性にすると考えられる。
【0279】
実施例9:リパーゼバリアントV325についての投薬試験
この実施例には、膵外分泌機能不全(EPI)または吸収不良を有する患者を用いた臨床的試験における使用のための用量選択を支持するための投薬試験が記載される。
【0280】
投薬試験には、多量養素の取り込みを試験するためおよび経口投与される膵臓酵素の異なる調製物を評価するために使用される、膵臓機能不全の確立された外科的モデルである、EPIについてのブタモデルが使用された(Donaldson et al. (2009) ADV. MED. SCI. 54(1):7-13;Pierzynowska et al. (2018) ARCH. MED. SCI. 14(2):407-414;Freedman et al. (2004) N. ENGL. J. MED. 350(6):560-9, Abello et al. (1989) PANCREAS 4(5):556-64)。
【0281】
ヒトおよびブタは、胃腸管、尿生殖器構造ならびに脳および膵臓の発生に関して機能的および発生的に多くの類似性を共有するので、EPIブタモデルを選択した(Gonzalez et al. (2015) TRANSL RES. 166(1):12-27;Luu et al. (2020) BMC GASTROENTEROL 20:403)。ヒトの食事におけるビタミンおよび無機物の毎日の許容量ならびにブタの毎日の栄養素の必要性の比較により、2つの種の間の類似性が明らかになる。EPIブタモデルは、天然のブタ酵素(パンクレアチン、パンクレリパーゼ)および膵外分泌機能不全におけるそれらの役割を評価するために十分適合されるように思われる。EPIブタモデルは、微生物由来酵素の有効性を試験するためにも適合されている(Grujic et al. (2015) 「The Long Term Positive Effect of G-Tube Feeding with an In-Line Enzyme Cartridge (EFIC) on the Tissue Levels of DHA and EPA in Pig Model of Exocrine Pancreatic Insufficiency (EPI)」, PEDIATRIC PULMONOLOGY 50:405-406)。
【0282】
ブタにおける膵外分泌機能不全は、膵液を十二指腸に排出する主要な膵管として働く副外分泌膵管の結紮により達成される。外科的結紮は、十二指腸に放出される消化酵素のレベルを劇的に低減し、脂肪、タンパク質および炭水化物の消化および吸収の低減を生じる。また、EPIを有するヒトにおけるものと同様に十二指腸pHも低減され、腸管腔における酵素活性についての別の負の影響を生じる。(Martin et al. (2014) 「A novel point-of-care lipase (ALCT-460) increases fat hydrolysis and omega 3 fat absorption in pics with exocrine pancreatic insufficiency,」JOURNAL OF CYSTIC FIBROSIS 13(Supplement 2): S58;Martin et al. (2014) 「Increased Total Fat and Long Chain Polyunsaturated Fatty Acid Absorption in Pigs with Exocrine Pancreatic Insufficiency Fed a Formula Pre-Hydrolyzed with a Novel Point-of Care Lipase (ALCT-460), PEDIATRIC PULMONOLOGY 49:408)。小腸における増加した酸性は、ミセル形成および脂質吸収に影響する胆汁酸沈殿も引き起こし得る。これらの観察の全ては、EPIを有するヒトにおいて観察された結果と一致する(Corring et al. (1977) J. NUTR. 107(7):1216-21、Lankisch (1993) DIGESTION 54 Suppl 2:21-9)。
【0283】
EPIブタモデルは、消化の副生成物(例えばリパーゼについて脂肪酸およびモノグリセリド)ならびに血漿および組織(赤血球、腸細胞)におけるそれらの取り込みを評価することにより、多量養素吸収の特定の測定値を評価するために使用された。EPIブタモデルからの証拠は、プロテアーゼおよびアミラーゼと組み合わせたV325リパーゼの安全性、有効性および安定性の実質的な支持を提供する。
【0284】
実験設計
18匹(n=18)の若年のブタに外科的手術を行い、EPIを誘導した。試験処置期間は12匹(n=12)の若年のEPIのブタを含んだ。EPIの発症は、成長の停止および脂肪便により確認した。処置期間に含まれた12匹のEPIのブタは、脂肪便および重量の程度に基づいて選択した。ブタは、それぞれ約10±2kgであると計量された。ブタに、朝の食餌の際に体重の約1%および午後の食餌の際の体重の約3%で、体重の4%の食餌を与えた。
【0285】
試験は2つの試験期間を含んだ。
・実験1は、EPIまたは吸収不良を有するヒト患者についての用量選択を支持するための投薬試験であった。
・実験2は、実験1から6匹のブタを選択して継続した。実験2は、カニューレを胃、十二指腸および近位回腸に配置することにより分析されたキームス内の消化の副生成物を評価することにより測定された場合の、リパーゼ、プロテアーゼおよびアミラーゼの放出特性ならびに活性を評価した。
【0286】
実験1-プロトコル
該試験設計は、5つのブロックを含み、それぞれのブロックは、吸収を評価するために、標準的なヒトの食事と共にプロテアーゼおよびアミラーゼと一緒に与えられた変動するV325リパーゼ用量の試験を容易にするように3日にわたり進行した。処理群設計の概略図を図21に提供する。示されるように、1、4、7、10および13日目に、ブタは、V325リパーゼおよび選択された基質(4g DHAおよびEPAトリグリセリド(「DHA+EPA」)、10gホエー(「W」)および20gジャガイモデンプン(「PS」))を受けた。24時間後(すなわち2、5、8、11および14日目)に採血を行い、48時間後(すなわち3、6、9、12および15日目)に第2の採血を行った。群1について、用量1を1日目に与え、用量2を4日目に与え、用量3を10日目に与え、用量4を13日目に与えた。群2について、用量4を1日目に与え、用量3を4日目に与え、用量2を10日目に与え、用量1を13日目に与えた。3、6、9および12日目は、洗い流し日を示し、その後次の処置を開始した。主要な目的は、プロテアーゼおよびアミラーゼと組み合わせたV325リパーゼの安全性、用量および性能を評価することであった。
【0287】
基質吸収負荷試験(SACT)により、十分に制御され、標準化された試験環境における脂肪、タンパク質およびデンプンの個々の基質についての加水分解の副生成物に直接関連する吸収の臨床的バイオマーカーを評価した。吸収は、変動用量のV325リパーゼを使用して評価した。SACTは、管腔内(小腸:十二指腸、空腸、回腸)酵素活性の測定および胃腸管腔を通る栄養素吸収の直接評価を提供し得る。SACTにおいて、V325リパーゼは、固定量の食物(上記参照)および基質(4g DHAおよびEPAトリグリセリド)と共に経口投与され、吸収の際の脂質分解反応の生成物(1つまたは複数)(例えばDHAおよびEPA脂肪酸、合計で24の脂肪酸を有する)を血中でモニタリングした。
【0288】
それらの鎖の長さおよび二重結合の数のために、消化および吸収することが最も困難な食事性脂肪であるので、リパーゼ活性の測定のために、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)のトリグリセリドをSACT負荷基質として使用した(Burdge et al. (2005) REPROD. NUTR. DEV. 45:581-597;Hussein et al. (2005) JOURNAL OF LIPID RESEARCH 46:269-280)。DHAおよびEPAは、臨床的に有意義な脂肪酸であり、生物学的に関連するものであり、成長および発生に重要である。インビボリパーゼ活性(脂質分解)を評価するためのSACTにおける基質としてのDHAおよびEPAトリグリセリドの使用は、検証されたガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)法(OmegaQuant, South Dakota)を使用した24時間にわたる血中のそれらの分解生成物(DHAおよびEPA脂肪酸)の測定を可能にする。さらに、必須脂肪酸のEPAおよびDHAへの内因性の変換は過度に制限されるので、これらの脂肪酸は、外因的に投与されたV325リパーゼの有効性を測定するための特有の直接的な吸収バイオマーカーである。DHA/EPA負荷試験は、外因的に投与されたリパーゼが長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)を消化する能力を直接的に評価し、脂質分解のストリンジェントな試験および経時的な吸収読出しは、信頼性のある薬物動態学的測定値、例えばDHAおよびEPAについてのCmax、TmaxならびにAUCである。脂肪酸、具体的に血漿および赤血球中のDHAおよびEPAは、食事性の脂肪取込みと強く相関し、CFを有するヒトにおける全体的な脂肪吸収についてのバイオマーカーである。
【0289】
表18に示されるように、魚油(約4g DHAおよびEPA)由来のω-3トリグリセリドを含む丸薬をブタに投与して、24時間にわたり少量の血液を6~8回採取することにより、SACTを行った(例えばFreedman et al. (2004) N. ENGL. J. MED. 350(6):560-9も参照)。
【表33】
【0290】
血漿中の脂肪吸収は、24時間にわたり曲線下面積(AUC)および濃度ピーク(Cmax)またはピーク濃度の時間(Tmax)を評価することにより決定した。したがって、V325リパーゼ(または比較物)のための変化は、標準化された様式で測定した。EPA(20:5n-3)およびDHA(22:6n-3)に加えて、以下の22脂肪酸(分類による):
a) 飽和(14:0、16:0、18:0、20:0、22:0 24:0)、
b) 一不飽和(16:1、18:1、20:1、24:1)、
c) トランス不飽和(16:1、18:1、18:2)、
d) n-6ポリ不飽和(18:2、18:3、20:2、20:3、20:4、22:4、22:5)、および
e) n-3ポリ不飽和(18:3、22:5)
を測定した。
【0291】
これらの24脂肪酸の合計は、血液の総脂肪酸含有量を構成し、それぞれの個々の脂肪酸は、合計のパーセントまたは濃度(例えばμg/mL)として表され得る。図21に示されるように、それぞれのSACT期間は、酵素なしの期間と比較して、それぞれのV325リパーゼ用量に対応する血漿取込みの評価を提供した。この実験の間に5(5)SACT期間:4(4)リパーゼ用量、20mg、40mg、80mg、120mgおよび酵素なし期間があった。
【表34】
【0292】
結果 実験1
図22に示されるように、V325リパーゼは、対照(酵素なし(「NE」) + 基質)と比較して有意に高いAUCおよびCmaxを示し、Tmaxは約4時間であった。上昇するV325リパーゼ(40mg、80mg、120mg)は、対照と比較して、24時間にわたり有意に高いDHA+EPAの取り込みを示した(40mg p=0.02、80mg p=0.04、120mg p=0.03)。経時的なAUC24平均を図23に示す(40mg=42%、80mg=83%、120mg=63%)。図24に示されるように、ベースラインを引いたCmaxは、酵素なしと比較して、40mg、80mgおよび120mg用量のV325リパーゼについて有意に高かった(p=0.02、0.0006、0.009、それぞれ)。
【0293】
総脂肪酸(FA)(n=24総脂肪酸)を評価した場合に同様の応答が観察された。図25に示されるように、V325リパーゼAUCおよびCmaxは、対照(酵素なし+基質)と比較した場合に有意に高かった。上昇するV325リパーゼ用量(20mg、40mg、80mg、120mg)は、対照と比較して、8時間にわたり総脂肪酸のより高い取込みを示した(図25)。AUCおよびCmaxは、対照(酵素なし)と比較した場合に、より高いV325用量(80mg、120mg)で約2~3倍高かった。V325用量(80mg、120mg)についてのAUCは、酵素なしと比較した場合に有意に増加した(p=0.006、0.02)。総脂肪酸についての経時的なAUC24平均を図26に示す(40mg=42%、80mg=83%、120mg=63%)。図27に示されるように、V325用量(80mg、120mg)についてのCmaxは、酵素なしと比較した場合に有意に増加した(p=0.003、0.006)。一般的な食事性脂肪オレイン酸、パルミテート、ステアリン酸およびエライジン酸(OPSE);飽和脂肪酸;ならびに有益な脂肪酸(DHA+EPA+ドコサペンタエン酸(DPA))について同様の結果が見られた(データは示さず)。
【0294】
実験2-プロトコル
キームスおよび血漿の両方の吸収のマーカーを実験2において評価した。血漿吸収についての試験は実験1と同様に行った。
【0295】
オレイン酸の放出により測定される場合の酵素活性を評価するためにキームスを使用し、トリグリセリド消化の最終生成物を評価するために脂肪酸の血漿バイオマーカーを使用した。オレイン酸は一般的な食事性脂肪であり、オリーブ油の主要な部分であり、リパーゼUSP法において歴史的に使用されている。キームスは、胃から十二指腸へと通過して小腸を通る部分的に消化された食物の濃い半流体の塊りである。キームスは、天然の食事後の状態(例えばpH、食事含有物、胆汁酸塩、微量栄養素相互作用)を含み、脂質分解副生成物(例えばオレイン酸の脂肪酸)の放出により測定される場合のリパーゼの活性、安定性および性能を評価するための高度に関連のある食事性基質である。
【0296】
この実験の際に、市販のブタ酵素生成物(Creon(登録商標)パンクレリパーゼ)も比較物として使用した。図28は、実験プロトコルの概略図を提供する。4(4)試験期間:2つのV325リパーゼ用量(80mg、120mg)、Creon(登録商標)50,000単位および酵素なし期間があった。EPIモデルは、ブタ抽出物(パンクレアチン、パンクレリパーゼ)の評価について初めから開発されて最適化されたので、Creon(登録商標)パンクレリパーゼは天然のブタ酵素を含むため、EPIブタは向上された性能を示すことが予想された。Creon(登録商標)について嚢胞性線維症を有するヒトに推奨される最大のヒトを比較体として使用した(2,500体重kg)。
【0297】
キームスは、表20に示される消化管の種々の位置および時点で回収した。
【表35】
【0298】
リパーゼ活性は、キームスにおける脂質分解、具体的にオレイン酸(c:18:1 n-9)の放出(μM/分/キームスmL)を測定した。オレイン酸の放出は、生理学的に関連のある6.0のpHで比色定量法(リパーゼ検出キットab102524, Abcam, UK)を使用して評価した。
【0299】
結果 実験2
血漿:図29Aに示されるように、V325リパーゼは、Creon(登録商標)(パンクレリパーゼ)および対照(NE:酵素なし)と比較した場合にDHA+EPAの有意に高いAUCおよびCmaxを示した。V325リパーゼは、Creon(登録商標)または対照よりも高い全体的なAUCおよびCmaxを有してより早期の取り込みTmaxを示した。図29Bに示されるように、V325は、Creon(登録商標)と比較した場合に、AUCについてのDHA+EPA平均変化において20~30%の増加を示した。応答におけるこれらの変化は、6から24時間まで一貫した。総脂肪酸について同様の結果が観察された(図30Aおよび30B参照)。
【0300】
V325活性および安定性:図31に示されるように、V325リパーゼは、Creon(登録商標)と比較して、試験したそれぞれのGI区画(胃、十二指腸、回腸)において脂肪酸(オレイン酸)の有意に高いおよび早い放出を示した。さらにおよび重要なことに、V325リパーゼ用量は、インビボにおいてV325リパーゼの安定性を示すそれぞれの区画において同様の脂肪酸放出プロフィールを示した。V325リパーゼは、胃および十二指腸においてすぐに脂肪の消化を開始し、生理学的環境において酵素遺伝子工学的作り変え安定性を確認する目的のGI区画にわたり維持された活性を有する。脂肪がリパーゼによりどこで切断されるかを理解することは、それらがどのように吸収されるかおよび用量選択についての情報を与える。キームスにおいて酵素活性を評価することは、天然の食後の状態(例えばpH、食事含有物、胆汁酸塩、微量栄養素相互作用)における活性の評価を可能にする。リパーゼCmaxは、試験されたそれぞれの区画において同様であり、V325リパーゼの安定性を支持した。
【0301】
より早い放出および吸収はV325により示されるように、上部小腸においてより生理学的な吸収を可能にする。主要な吸収輸送体は、上部小腸に位置すると思われるので、遅い酵素放出または不十分な安定性は、生理学的な吸収を可能にしない。さらに、十二指腸と回腸の間でキームス粘度は有意に増加する。したがって、V325により示されるより早い脂質分解はより高い混合および向上された性能を可能にする。
【0302】
この実施例は、V325リパーゼの投与が、pH6.0でCreon(登録商標) 50,000と比較して、有意に高い脂肪酸(オレイン酸)の放出を生じることを示す。また、V325リパーゼによる脂肪酸のより早い放出ならびに胃および小腸の重要な区画にわたるその安定性は、V325リパーゼが、酵素なし対照だけでなく、医療水準(Creon(登録商標))とも比較して、向上した性能を提供することの証拠である。
【0303】
参照による援用
本明細書に参照される特許および科学文献のそれぞれの全開示は、全ての目的のために参照により援用される。
【0304】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において具体化され得る。そのため、前述の態様は、全ての観点において、本明細書に記載される発明の限定ではなく例示としてみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内にある全ての変更が、本発明に包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29-1】
図29-2】
図30-1】
図30-2】
図31
【配列表】
2024536161000001.xml
【国際調査報告】