(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用ロッカーアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519377
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2022076911
(87)【国際公開番号】W WO2023052388
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】サビノ ウルビエタ,アレクサンデル ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アルゴテ キンタナ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ボリェギ スロアガ,イケル
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203CA02
3D203CA04
3D203CA25
3D203CA52
3D203CA63
3D203CA69
3D203CA73
3D203CA74
3D203CB06
3D203CB07
3D203CB09
3D203DB05
(57)【要約】
本開示は、ロッカー(20)と、ロッカー内部のロッカー補強材(30)とを備える車両用ロッカーアセンブリ(10)に関する。本開示は更に、車両用ロッカーアセンブリを製造するための方法(100)に関する。車両用のロッカーアセンブリ(10)は、外側パネル(11)及び内側パネル(12)を含むロッカー(20)と、ロッカーの長手方向(40)に沿って延びるロッカー内部の細長い補強材(30)とを備える。補強材(30)は、セルの格子(31)で作られ、断面が実質的に六角形のセルの中央グループ(33)を含む。セルは、閉断面を形成する複数の壁によって形成される。セルの中央グループ(33)は、6つの隣接するセル(51)に囲まれた中央のセル(50)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側パネル(11)及び内側パネル(12)を含むロッカー(20)と、ロッカー(20)の内部にロッカー(20)の長手方向(40)に沿って延びる細長い補強材(30)とを備えた車両用のロッカーアセンブリ(10)であって、
縦方向(41)及び横方向(42)が、長手方向(40)に対して実質的に垂直なロッカーアセンブリ(10)の断面を画定し、
補強材(30)が、セルの格子(31)から作られ、断面形状が実質的に六角形のセルの中央グループ(33)を含み、セルは、閉じた断面を形成する複数の壁により形成され、
セルの中央グループ(33)は、6つの隣接するセルに囲まれた中央のセルを含み、
セルの格子(31)は、更に、
ロッカー(20)の外側パネル(11)の衝撃を受けるように構成された1以上の外側セルを含むセルの外側側方グループ(61)と、
衝撃をロッカー(20)の内側パネル(12)に伝達するように構成された1以上の内側セルを含むセルの内側側方グループ(62)と、
を含むセルの側方グループ(34)を備える、ロッカーアセンブリ。
【請求項2】
セルの中央グループ(33)のセルは、断面が正六角形を形成している、請求項1に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項3】
外側パネル(11)及び内側パネル(12)に面するように構成されたセルの領域が、外側パネル(11)及び内側パネル(12)の形状に沿っている、請求項1または2に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項4】
セルの格子(31)のセルの壁の厚さが1.5mmから5.5mmである、請求項1から3の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項5】
補強材(30)は、ロッカーアセンブリ(10)が車両に取り付けられたとき、補強材(30)が車両のバッテリボックスの上方に位置するように配置される、、請求項1から4の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項6】
セルの中央グループ(33)の各セルの対向する2つの壁が、断面において横方向(42)に実質的に平行である、請求項1から5の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項7】
セルの中央グループ(33)が、少なくとも2つのセルを有する第1の列(32a)と、少なくとも3つのセルを有する第1の列(32a)に連続する第2の列(32b)と、少なくとも2つのセルを有する第2の列(32b)に連続する第3の列(32c)と、を含み、
第1の列(32a)、第2の列(32b)及び第3の列(32c)が横方向(42)に沿って連続している、請求項6に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項8】
セルの外側側方グループ(61)の外側のセルは外側の列(32out)を形成し、セルの内側側方グループ(62)の内側のセルは内側の列(32in)を形成する、請求項7に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項9】
補強材(30)が押し出し成形材、任意に押し出しアルミニウム合金押し出し成形材で作られている、請求項1から8の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項10】
ロッカー(20)の外側パネル(11)及び内側パネル(12)が超高強度鋼で作られている、請求項1から9の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載のロッカーアセンブリ(10)を製造するための方法(100)であって、
内側パネル(12)及び外側パネル(11)を含むロッカー(20)を提供するステップ(105)と、
請求項1から10の何れか1項に記載の断面を有するアルミニウム製ロッカー補強材(30)を提供するステップ(110)と、
ロッカーアセンブリ(10)の断面を取ったときに、セルの中央グループ(33)のセルが実質的に六角形になるように、ロッカー補強材(30)をロッカー(20)に機械的に取り付けるステップ(115)と、
を含む方法。
【請求項12】
機械的に取り付けるステップ(115)が、セルの中央グループ(33)の各セルの2つの対向するセル壁が断面において横方向(42)に沿って延びるように、補強材(30)を配置することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
機械的に取り付けるステップ(115)が、ロッカーアセンブリ(10)が車両に取り付けられたとき、補強材(30)が車両のバッテリボックスの上方に位置するように補強材(30)を配置することを更に含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ロッカー補強材(30)をロッカー(20)に取り付けるステップ(115)において、2以上の鋼ストリップ(14)が用いられる、請求項11から13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
ロッカー(20)に機械的強度の低い1上のゾーンを形成することを更に含む、請求項11から14の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月29日に出願されたEP21382878.3の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ロッカーと、ロッカー内部のロッカー補強材とを含む車両用ロッカーアセンブリに関する。本開示は更に、車両用ロッカーアッセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車のような車両は、車両がその寿命の間に受ける可能性のある全ての荷重に耐えるように設計された構造骨格を組み込んでいる。構造骨格または「ボディ・イン・ホワイト」(BIW)は、更に、例えば他の自動車との衝突の場合に衝撃に耐え、衝撃を吸収するように設計されている。構造骨格はまた、環境へのCO2などの汚染物質の排出を低減するため、あるいは電気自動車における電力消費を低減するために、可能な限り軽量に設計される。
【0004】
自動車の構造骨格またはBIWは、例えば、バンパー、ピラー(例えば、Aピラー、Bピラー、Cピラー)、サイドインパクトビーム及びロッカーパネルを含むことができる。これらの構造部材及び他の構造部材は、実質的にU字形(「ハット」形とも呼ばれる)の断面を有する1つまたは複数の領域を有することがある。これらの構造部材は、様々な方法で製造することができ、様々な材料で作ることができる。例えば、ロッカーパネルは、鋼、特に超高強度鋼(UHSS)で作られてもよく、プレス硬化によって製造されてもよい。
【0005】
超高強度鋼(UHSS)は、自動車産業において、車両の構造骨格または少なくとも多数のその構成部品のために、最適化された重量単位当たりの最大強度と有利な成形特性を示す。本開示において、UHSSは、(ホットスタンピング後の)最大引張強さが少なくとも1000MPa、好ましくは最大約1500MPaまたは最大2000MPa以上の鋼とみなすことができる。自動車産業で使用されるUHSSの例は、22MnB5鋼である。
【0006】
車両用部品の加工は、金属板、特に鋼板に所望の形状を付与するための成形からなる場合がある。自動車産業で特に使用されるプロセスの一つは、熱間成形ダイクエンチ(HFDQ)である。HFDQプロセスでは、鋼ブランクをオーステナイト化温度以上、Ac1以上またはAc3以上に加熱する。オーステナイト化温度以上に加熱されたブランクは、熱間成形プレスに入れられる。ブランクは変形され、同時に焼き入れ(急冷)される。冷却は通常、いわゆる臨界冷却速度より高い速度で行われる。HFDQにおける鋼の臨界冷却速度は、約27℃/秒である。焼入れの結果、変形ブランクはマルテンサイト組織になる。正確な温度と加熱時間によっては、完全なマルテンサイト組織が得られる。このようにして得られた製品は、高い硬度、それに対応する高い極限引張強さ、高い降伏強さを得ることができる。一方、最大伸び(破断伸び)は比較的低くなる可能性がある。
【0007】
いわゆる「ソフトゾーン」、すなわち延性が高く、極限引張強さ及び降伏強さが低い領域を提供するために、調整された加熱または調整された金型内冷却を使用することができる。これらの領域の組織は、選択的加熱(例えば、ブランクの全ての領域がオーステナイト化温度まで加熱されるわけではない)または調整された冷却(例えば、全ての領域が同じ冷却速度で冷却されるわけではない)により、完全にマルテンサイト化されていない場合がある。マルテンサイト、ベイナイト、フェライト及びパーライトは、熱処理によって1以上になる。
【0008】
通常の加熱冷却だけでなく、HFDQ後の部分的な熱処理も可能である。例えば、誘導加熱器やレーザーを使用して、プレス硬化製品の一部領域を局所的に熱処理することができる。加熱時間、最高温度、冷却速度は、延性、硬度、降伏強さなどの点で所望の機械的特性と、それに対応する組織を得るために適合させることができる。
【0009】
ロッカーは、車両の側面に沿って、ドア用開口部の下方にあり、前輪用開口部と後輪用開口部との間に延びている。ロッカーは「シル」と呼ばれることもある。ロッカーは一般に、ロッカーの長手方向(従って車両の長手方向も)に沿って対応するフランジで互いに接合される2つの部分またはパネル、すなわち内側ロッカーパネルと外側ロッカーパネルとを含む。内側ロッカーパネルは車内側を向いており、外側ロッカーパネルは車外側を向いている。ロッカーは、衝突時、特に横方向の衝突において、車両側面の過度の侵入を避けつつ、十分なエネルギーを吸収するために重要である。ロッカーの性能は、例えばエネルギー吸収と侵入の観点から、例えばユーロNCAPテストなどで試験されることがある。
【0010】
ロッカーは、車両の乗員を保護するためだけでなく、電気自動車(全電気自動車または部分電気自動車)のバッテリボックスを保護するためにも有用である。バッテリボックスは、一般に車両の底部に配置され、車両のフロントアクスルとリアアクスルの間に延びている。これは、車両のバッテリを支持し、収容するために構成されている。車両が衝突に巻き込まれた場合、特に車両の横側面に対して衝突した場合、ロッカーはバッテリボックスへの損傷を回避するか、少なくとも軽減することができる。バッテリボックスの保護を最大化するために、ロッカーはできるだけ多くのエネルギーを吸収できることが望ましい。
【0011】
ロッカーの変形を適切なレベルに保ちながらエネルギー吸収を高める方法として、例えば内側ロッカーパネルと外側ロッカーパネルとの間に、ロッカーに補強材を追加することが考えられる。ロッカー補強材をロッカーに取り付ける材料、形状及び手段を最適化することは、軽量部品を維持しながら、横方向衝突時のエネルギー吸収及びロッカーの完全性を改善するために重要である。
【0012】
本開示は、ロッカー補強材の改良を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0013】
本開示全体を通じて、ロッカー及びロッカーに取り付けられたロッカー補強材の空間的配向を提供するために、縦方向、垂直方向及び横方向が定義される。これらの方向は互いに実質的に垂直である。従って、ロッカーは、長手方向に沿った長さ(長手方向は、ロッカーが取り付けられる車両の走行方向に平行である)、垂直方向に沿った高さ、及び横方向に沿った幅を有し、ロッカーの断面は、長手方向に実質的に垂直な平面によって画定され、従って、垂直方向及び横方向を含む。同様に、ロッカー補強材は、縦方向に沿った長さ、垂直方向に沿った高さ、及び横方向に沿った幅を有し、ロッカー補強材の断面は、縦方向に対して実質的に垂直であり、垂直方向及び横方向を含む。
【0014】
従って、ロッカーが側面衝撃を受ける場合、例えば道路走行時の車両衝突の際、標準化された衝突試験において、側面衝撃は実質的に横方向に沿っていると仮定することができる。実際には、衝撃は少なくとも横方向に実質的に平行な成分を含むことがある。
【0015】
前面衝突、すなわちSORB試験(「Small Overlap Rigid Barrier」)では、衝撃は上記の定義に従って実質的に縦方向に沿っていると仮定することができる。本開示では、主に側面衝突に焦点を当てる。
【0016】
本開示の一態様では、車両用のロッカーアセンブリが提供される。ロッカーアセンブリは、ロッカーと、ロッカーの長手方向に沿って延びるロッカー内部の細長い補強材とを備える。縦方向及び横方向は、長手方向に実質的に垂直なロッカーアセンブリの断面を画定する。ロッカーは外側パネルと内側パネルとからなる。ロッカーの補強材は格子状のセルを含む。セルは、閉じた断面を形成する複数の壁によって形成される。セルの格子は、実質的に六角形の断面を持つセルの中央グループを含む。セルの中央グループは、6つの隣接するセルに囲まれた中央セルを含む。
【0017】
この態様によれば、ハニカム状の補強材をロッカー内部に設けることができる。この補強材は、断面が実質的に六角形のセルの中央グループを有する。中央グループは、6つの隣接するセルに囲まれた中央セルを含み、すなわち、中央のセルの各壁は、隣接する周囲のセルの壁と共有する壁である。このような7つのセルの集合は、本開示全体を通してタイルと呼ばれることがある。従って、中央のセルグループは少なくとも1つのタイル、すなわち本明細書で示すように配置された少なくとも7つのセルから構成される。セルの中央グループのこの構成は、補強材の適度な重量を維持しながら、側面衝突で吸収されるエネルギーを高めることができる。
【0018】
本開示を通じて、セルの格子は、相互に接続された複数のセルとして理解され得る。連続するセルはその間に壁を共有することがある。セルの壁は実質的に直線であってもよいが、1以上のセルの壁が湾曲している例もある。セルは補強材の長手方向に沿って、従ってロッカーの長手方向に沿って溝を形成する。セルの格子は、ハニカム格子であってもよいし、少なくともハニカム格子に類似していてもよい。
【0019】
本開示を通して、セルの六角形の断面には正六角形、すなわち六角形の6つの壁が実質的に同じ長さを持ち、六角形の6つの中心角が約120°である正六角形と、不規則な六角形とが含まれることが理解されよう。不規則な六角形は、次の2つの条件のうち少なくとも1つが起こる六角形として理解することができる:全ての中心角が約120°ではなく、全ての壁が同じ長さではない。
【0020】
幾つかの例では、セルの中央グループの全てのセルが、断面において正六角形を形成することがある。断面が正六角形のセルを有することで、側面衝突時にロッカー補強材、ひいてはロッカーアセンブリが吸収するエネルギーが増大する可能性がある。
【0021】
幾つかの実施例では、セルの格子は、セルの側方グループを更に含むことができる。セルの側方グループは、ロッカーの外側パネルの衝撃を受けるように構成された1以上の外側セルを含むセルの外側側方グループと、衝撃をロッカーの内側パネルに伝達するように構成された1以上の内側セルを含むセルの内側側方グループとを含む。これらの例の幾つかでは、外側及び内側ロッカーパネルに面するように構成されたセルの領域は、外側及び内側ロッカーパネルの形状に沿っている。
【0022】
セルの外側及び内側グループの外側及び内側のセルとして、セルの中央グループに隣接したこれらのグループは、外側及び内側のロッカーパネルの形状に適合した形状を有することがあるので、ロッカー内部で利用可能な空間を最適化しながら、衝突時に吸収されるエネルギーを最大にすることができる。また、内側及び外側のセルの壁は、側面衝突時にロッカーを支持するのに役立ち、それにより、ロッカーの変形及び侵入を低減しつつ、依然として高いエネルギー吸収性を有することができる。ロッカーパネルの一部に続くセル壁は、外側ロッカーパネルからの衝撃を受けるための表面を提供し、側面衝突時の変形に安定性を与えるのに役立ち得る。
【0023】
幾つかの実施例では、ロッカー補強材は、ロッカーアセンブリが車両に取り付けられたときに車両のバッテリボックスの上方に位置するように配置することができる。例えば、ロッカー補強材は、ロッカーの中央部または上部に配置することができる。車両が衝突に巻き込まれてロッカーが損傷した場合、ロッカー補強材はエネルギーを吸収すると同時に、荷重をバッテリボックスの上方に案内または誘導することができるため、バッテリボックス及びバッテリを更に保護することができる。バッテリボックスの位置におけるロッカーアセンブリの侵入は、回避されるか、少なくとも低減される。また、バッテリボックスとロッカーの接触も避けるか、少なくとも減らすことができる。
【0024】
幾つかの例では、セルの中央グループの各セルの対向する2つの壁は、断面において横方向と実質的に平行であってもよい。従って、横方向に沿って延びるセルの2つの対向する壁は、そのセルの上壁及び底壁と呼ばれることがある。言い換えれば、中央のセルのグループの全てのセルは、対応する六角形のセルの2つの対向する頂点を結ぶ1つの対角線が、断面において横方向と実質的に平行になるように配向される可能性がある。このようなセルの向きは、ロッカー補強材によって吸収されるエネルギーを増加させることにも寄与する可能性がある。
【0025】
幾つかの実施例では、セルの格子は列状に編成されている場合がある。中央のセルのグループは、少なくとも2つのセルを有する第1の列、少なくとも3つのセルを有する第1の列に連続する第2の列、及び少なくとも2つのセルを有する第2の列に連続する第3の列を有することができる。第1、第2及び第3の列は横方向に沿って連続している。
【0026】
本開示を通じて、セルの列は、垂直方向に沿って積み重ねられた隣接するセルの集合、すなわち2つ以上のセルとして理解され得る。列を構成するセルの対向する2つの壁は横方向に対して実質的に平行である。列の各セルは、断面が横方向に沿って延びる上壁と下壁を有する。このように、列内で互いに積み重ねられた2つのセルは、底壁/頂壁を共有する(一方のセルの頂壁は他方のセルの底壁に対応する)。
【0027】
これらの例の幾つかでは、セルの中央グループの第1の列は2つのセルで構成され、セルの内側グループの第2の列は3つのセルで構成され、セルの内側グループの第3の列は3つのセルで構成されてもよい。この具体的な構成により、補強材の重量を減らしながら高いエネルギー吸収を達成することができる。特に、セルの中央グループがこれら3つの列で構成され、従ってそれ以上の列を有しない場合に適用され得る。
【0028】
幾つかの例では、セルの外側グループの外側のセルは外側の列を形成し、セルの内側グループの内側のセルは内側の列を形成することができる。すなわち、横方向のセルのグループは、少なくとも2つの外側セルを有するロッカーの外側パネルの衝撃を受けるように構成された外側列と、少なくとも2つの内側セルを有するロッカーの内側パネルの衝撃を受けるように構成された内側列とからなる。外側及び内側ロッカーパネルに面する外側及び内側列のセルの領域は、外側及び内側ロッカーパネルの形状に沿う。
【0029】
幾つかの実施例では、補強材は押し出しプロファイルである。他の例では、プロファイルはロール成形で形成することができる。押出成形は、閉断面を有するプロファイルにより適していると考えられる。
【0030】
幾つかの例では、補強材は押し出しアルミニウム製である。これにより、ロッカー補強材の重量が軽減される。ここで、アルミニウムは、アルミニウム及びその合金を対象とすることができる。特に、アルミニウム6XXX及び7XXX(「6000」及び「7000」シリーズ)を使用することができる。
【0031】
幾つかの例では、セルの格子の壁の厚さ、例えば断面におけるロッカー補強材の全ての壁の厚さは、1.5~5.5mm、具体的には2~4mm、より具体的には約3mmであってよい。これらの寸法は、特に押し出しアルミニウム製ロッカー補強材の場合、所与の重量に対してエネルギー吸収を最大化しながら、補強材に十分な強度を与えることができる。
【0032】
幾つかの実施例では、ロッカーの内側パネル及び外側パネルは、超高強度鋼、具体的にはプレス硬化超高強度鋼、例えばボロン鋼で作ることができる。エネルギー吸収のための軽量アルミニウムと強度のためのUHSSの組み合わせは、エネルギー吸収と耐衝撃性の良好な組み合わせをもたらすことができる。
【0033】
更なる態様では、本明細書に記載のように、ロッカー補強材をロッカーに取り付けた車両用ロッカーアセンブリを製造する方法が提供される。この方法は、内側ロッカーパネル及び外側ロッカーパネルを含むロッカーを提供することと、本開示を通じて説明される例の何れかに従った断面を有するアルミニウム製ロッカー補強材を提供することと、ロッカーアセンブリの断面をとったときに補強材のセルの中央グループのセルが実質的に六角形になるように、ロッカー補強材をロッカーに機械的に取り付けることと、を含む。
【0034】
この方法により、側面衝突時のエネルギー吸収を高めることができる。従って、乗員の安全性が向上する可能性がある。
【0035】
幾つかの実施例では、補強材は、セルの中央グループの各セルの2つの対向するセル壁が断面において横方向に沿って延びるように取り付けられてもよい。すなわち、セルの中央グループの各セルは、横方向に対して実質的に平行な底壁と頂壁とを有していてもよい。この特定の方向にロッカー補強材を取り付けることにより、側面衝突時に吸収されるエネルギーを増大させることができる。
【0036】
幾つかの実施例では、補強材は、ロッカーアセンブリが車両に取り付けられたときに、補強材が車両のバッテリボックスの上方に位置するように取り付けられることがある。これにより、特にバッテリボックスの上方において、車両のバッテリから力とエネルギーをそらすことができる。バッテリボックスへの損傷が低減される可能性がある。バッテリボックスへの侵入も低減される可能性がある。幾つかの例では、補強材はロッカーの上部に取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ロッカーアセンブリの概略的な例の透視図を概略的に示す図である。
【
図2】ロッカーアセンブリの異なる実施例を断面で概略的に示す図である。
【
図3】ロッカーアセンブリの異なる実施例を断面で概略的に示す図である。
【
図4】ロッカーアセンブリの異なる実施例を断面で概略的に示す図である。
【
図5】ロッカーアセンブリの異なる実施例を断面で概略的に示す図である。
【
図6】
図2に示す補強材の別の例を概略的に示す図である。
【
図7】ロッカーアッセンブリの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】従来技術のロッカーアセンブリの3つの例の断面を概略的に示す図である。
【
図9】従来技術のロッカーアセンブリの3つの例の断面を概略的に示す図である。
【
図10】従来技術のロッカーアセンブリの3つの例の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の非限定的な実施例を、添付の図を参照して以下に説明する。 図は例示的な実施態様を示すものであり、特許請求される主題を理解するための補助として使用されるに過ぎず、いかなる意味においても限定するためのものではない。
【0039】
図1は、本開示を通して使用される縦方向40、垂直方向41及び横方向42を説明するために、車両、例えば自動車用のロッカーアセンブリ10を概略的に表している。これらの方向は互いに実質的に垂直である。
【0040】
ロッカーアセンブリ10は、ロッカー20と、ロッカー内部の細長い補強材30とを含む。補強材30は、ロッカー20の長手方向40に沿って延びている。ロッカー20は、外側パネル11と内側パネル12とを含む。車両に取り付けられたとき、ロッカー20の内側パネル12は車両の内側に面し、外側パネル11は車両の外側に面する。
【0041】
ロッカー20及びロッカー補強材30は、長手方向40に沿った長さと、長手方向40に実質的に垂直な断面とを有する。断面は、長手方向40に実質的に垂直な2つの方向、すなわち垂直方向41と横方向42との間を含む平面によって画定される。
【0042】
ロッカー20とロッカー補強材30の両方の長手方向40は、ロッカー補強材30を備えたロッカー20が取り付けられ得る車両の長手方向にも対応する。
【0043】
幾つかの実施例では、ロッカー補強材30の長さは、ロッカー20の長さに実質的に等しくてもよい。他の幾つかの例では、ロッカー補強材30の長さは、ロッカー20の長さより短くてもよく、例えば補強材は、それが組み込まれるロッカーの長さの少なくとも25%、または少なくとも50%、または少なくとも75%の長さを有してもよい。ロッカー20は、1以上のロッカー補強材30を含んでいてもよい。
【0044】
ロッカー20の外側パネル11及び内側パネル12は、超高強度鋼(UHSS)、特にプレス硬化超高強度鋼、例えばボロン鋼で作られてもよい。UHSSは、最適化された重量単位当たりの最大強度と有利な成形性を示す。UHSSは、特にプレス硬化操作後に、1500MPa、更には2000MPa以上の高い極限引張強さを示すことがある。このような操作では、鋼ブランクをオーステナイト化温度以上、特にAc3以上に加熱し、ブランクを実質的に完全にオーステナイト化する。この温度以上に一定時間加熱した後、ブランクをプレス加工し、ブランクを変形させる。同時に、ブランクを急冷して実質的に「完全硬化」させ、マルテンサイト組織を得る。焼入れ鋼の例としては、22MnB5鋼などのUHSSやUsibor(登録商標)1500があり、Usibor(登録商標)はArcelor Mittal社から市販されている。
【0045】
外側パネル11及び内側パネル12の下部及び上部は、パネルを互いに、また車両フレームの他の部分に取り付けるための取付フランジ13を含むことができる。
【0046】
補強材30は、幾つかの実施例では、例えばアルミニウム合金の押し出し成形材で作られてもよい。押し出し成形材は、特に長い補強材が必要な場合に適している。他の例では、ロッカー補強材をロール成形してもよい。適切なアルミニウム合金には、アルミニウム6000シリーズまたはアルミニウム7000シリーズが含まれる。適切なアルミニウム合金には、例えば6005、6060、6061、6063、6082、6106が含まれる。
【0047】
アルミニウムを使用することにより、ロッカー補強材30の重量を低減することができ、従ってロッカーアセンブリ10及びロッカーアセンブリが取り付けられる車両の重量を低減することができる。また、アルミニウムを使用することにより、押出成形によって、
図2~5に示すような断面を有するロッカー補強材30を得ることが容易になる。ロッカー補強材30の断面の厚さ及び形状の調整も、アルミニウム及び押出成形の使用によって容易になる。押出成形されたロッカー補強材30の長さも同様に、容易に調整することができる。ロッカー補強材の長さは、特にロッカーの長さに関連して変化する可能性があるが、ロッカー内部の形状及び利用可能なスペースにも役割を果たす可能性がある。
【0048】
エネルギー吸収のための軽量アルミニウムと強度のためのUHSSとの組み合わせは、エネルギー吸収と耐衝撃性との良好な組み合わせをもたらすことができる。
【0049】
図2は、ロッカーアセンブリ10の一例を断面で概略的に示している。
【0050】
ロッカー補強材30は、セルの格子31で作られている。セルの格子31は、断面が実質的に六角形のセルの中央グループ33を含む。
【0051】
セルの中央グループ33は、6つの隣接するセル51に囲まれた中央セル50から構成されている。隣接するセル51はそれぞれ、中心セル50の6つの壁の一つを共有している。中央セル50が6つの隣接するセル51に囲まれているセルの中央グループ33、すなわち1つのタイルからなるセルの中央グループ33を有することで、他の構成のロッカー補強材に比べて側面衝突で吸収されるエネルギー量が増加する可能性がある。
【0052】
幾つかの例では、全てのセルを含むセルの中央グループ33の1つ以上のセルは、断面が正六角形を形成することがある。例えば、
図2において、セルの中央グループ33の全てのセルは、断面において、実質的に同じ長さ及び約120°の中心角を有する壁を有する。他の例では、セルの中央グループ33の1つ以上のセルは、断面が不規則な六角形を形成することがある。全てのセルが断面において正六角形を形成するセルの中央グループ33を有することは、セルの断面が不規則である場合と比較して、ロッカー補強材30によって吸収されるエネルギーを増加させる可能性がある。
【0053】
図3は、ロッカー20の形状が
図2とは異なるロッカーアセンブリ10の断面を示している。ロッカー30内の補強材の位置もこれらの図では異なっており、
図2では、補強材30はロッカー20の上部21に配置されているのに対し、
図3では、補強材はロッカー20の中央部22に配置されている。他の例では、ロッカー補強材30をロッカー20の下部に配置してもよい。
図3の補強材30は
図2の補強材30と同様であるが、中央グループ33のセルの上壁及び底壁、すなわち
図3の横方向42に実質的に平行なセル壁は、セルの側壁よりも長い。従って、これらのセルは、六角形が不規則な六角形断面を有する。
【0054】
幾つかの例では、セルの中央グループ33のセルは、各セルの2つの対向する壁が、断面において横方向42に実質的に平行であるように配向されていてもよい。すなわち、セルの中央グループ33の各セルの上壁と下壁は、断面において横方向42に沿って延びている。このことは、
図2~5の例で見ることができる。例えば、
図2において、セルの中央グループ33のセルは、その上壁と底壁が横方向42に沿って延びている。従って、各セルの対角線は、断面において、横方向42に実質的に平行である。六角形セルのこの特定の向きは、力、または少なくとも力の成分が横方向42に沿って及ぼされる側面衝突において、エネルギーを吸収するのに特に適していると考えられる。この配向は、例えば、断面において、セルの中央グループ33の各セルの対向する2つの壁が、垂直方向41に沿って、または横方向42とは異なる別の方向に沿って整列している場合に関しても、横方向の衝突におけるエネルギーの吸収を増加させることができる。
【0055】
図には図示されていないが、ロッカー補強材30は、断面において、セルの中央グループ33の各セルの対向する2つの壁が垂直方向41に沿って実質的に整列しているようなセルの中央グループ33から構成されていてもよい。これらの例では、断面において垂直方向41に沿って延びる2つの対向する壁は、垂直側壁と呼ばれることがある。更に他の例では、セルの中央グループ33の各セルの対向する2つの壁は、断面において、横方向42及び縦方向41とは異なる方向に対して実質的に平行であってもよい。これらの例では、中央のセルグループ33のセルの壁はいずれも、横方向42及び縦方向41に対して実質的に平行ではないであろう。このような例では、セルの中央グループ33の各セルの対向する2つの壁が、横方向42及び縦方向41に対して実質的に平行ではない。
【0056】
中央グループ33の各セルの対向する2つの壁が横方向42に実質的に平行である場合、セルは列32に編成されていてもよい。従って、中央グループ33は、第1の列32a、第1の列32aに連続する第2の列32b、及び第2の列32bに連続する第3の列32cから構成されてもよい。列は横方向42に沿って連続している。第1の列32aは少なくとも2つのセルからなり、第2の列32bは少なくとも3つのセルからなり、第3の列32cは少なくとも2つのセルからなる。第1の列32a、第2の列32b及び第3の列32cは異なる列である。第1、第2及び第3の列は、横方向に沿って連続している。
【0057】
幾つかの例では、セルの中央グループ33の第1の列32aは2つのセルから構成され、セルの中央グループ33の第2の列32bは3つのセルから構成され、セルの中央グループ33の第3の列32cは3つのセルから構成されてもよい。この特定の構成は、補強材30の重量を低く保ちながら、ロッカー補強材30によって吸収されるエネルギーを最大にすることができる。
【0058】
図4は、ロッカーアッセンブリ10の他の例を断面で示す。
図4において、補強材30のセルの中央グループ33は、
図2の補強材30と同様に、断面が複数の正六角形からなる。しかし、
図4のこの例では、中央のセルのグループ33は2つの中央セル50を含む。同様に、セルの中央グループは列で編成されているため、セルの中央グループは5つの列からなる。
図2と
図3では、隣接する各列のセル数は2:3:2のパターンに従っている。
図4では、隣接する各列のセル数は、2:3:2:3:2のパターンに従っている。従って、2つの列の2つのセルを共有する2つのタイルが見られる。より一般的には、幾つかの例では、各隣接する列のセル数は、パターン2:(3:2)cに従う。ここでCは、3セルと2セルを持つ隣接する列のグループがセルの中央グループ33にいくつ存在するかを示す整数である。別の見方をすれば、T-1個の列を共有するタイルがT個存在することになる。更に一般的には、このパターンはN:(N+1:N)cと書くことができる。このパターンは単なる例示であり、このパターンからの逸脱ももちろんあり得る。
【0059】
図5は、ロッカー補強材30が、7つの列32を有するセルの中央グループ33からなるセルの格子31で作られているロッカーアッセンブリ10の例を示す。この例では、セルの中央グループの各列のセルの数は、5:4:5:4:5:4:4である。従って、各列のセルの数は、ロッカー補強材30の所望の高さ、及び外側及び/または内側ロッカーパネルの形に適合させることができる。高さは、垂直方向41に沿って測定することができる。
【0060】
セルの格子31は、セルの側方グループ34を更に含むことができる。セルの側方グループ34は、ロッカー20の内側パネル12の衝撃を受けるように構成された1つ以上の内側セルからなる内側側方グループ62を含んでいる。横方向セルのグループ34は、ロッカー20の外側パネル11の衝撃を受けるように構成された1つ以上の外側セルからなる外側側方グループ61を更に備える。衝撃は直接衝撃であってもよく、すなわち、外側パネル11が1以上の外側セルに直接接触してもよい。外側ロッカーパネル11及び内側ロッカーパネル12に面するように構成されたセルの一部は、外側ロッカーパネル及び内側ロッカーパネルの形状に沿っている。すなわち、外側ロッカーパネル11からの衝撃を受けるように構成された1つ以上の外側セル61のセル壁、言い換えれば、これらのセルの周辺壁73(
図6参照)は、外側ロッカーパネル11の形状に沿っている。このことは、1以上の内側セル62と内側パネル12にも同様に適用される。他の例では、1以上の外側セルのセル壁及び/または1以上の内側セルのセル壁は、それぞれ対応する外側パネルまたは内側パネルの形状に従う必要はない。
【0061】
セルが列状に配置されている場合、外側セルグループ61の外側セルは外側列32outを形成してもよく、内側セルグループ62の内側セルは内側列32inを形成してもよい。外側列32outは、ロッカー20の外側パネル11の衝撃を受けるように構成されてもよく、内側列32inは、衝撃をロッカー20の内側パネル12に伝達するように構成されてもよい。外側列32out及び内側列32inの各々は、少なくとも2つのセルから構成される。ロッカー20の外側パネル11及び内側パネル12に面するように構成された外側列32out及び内側列32inのセルの一部は、ロッカー20の外側パネル11及び内側パネル12の形状に沿う。
【0062】
例えば、
図2において、内側ロッカーパネル12に面するように構成された内側列32inのセルの壁は、内側ロッカーパネル12の対応する実質的に直線状の部分に適合するように、実質的に直線状である。同様に、外側ロッカーパネル11に面するように構成された外側列32outの上下のセルの壁は、外側ロッカーパネル11の対応する実質的に湾曲した部分に適合するように実質的に湾曲している。外側列32outの中央セルは、外側ロッカーパネル11の対応する部分の形状に沿うように、直線状の壁面を有している。同じ概念が
図3~5の補強材30にも適用される。
【0063】
格子31の各列32のセルの数に関して、幾つかの実施例では、(M+1:M)c:M+1のパターンに従うことができる。
図2と
図3では、Mは2、Cは2であり、
図4では、Mは2、Cは3である。
【0064】
幾つかの例では、セル31の格子の壁はすべて実質的に同じ厚さを有することができる。セルの壁の厚さは、例えば1mmから6mmの間であってよい。例えば、幾つかの例では、壁の厚さは約2mmであってもよい。他の例では、壁の厚さは約3.5mmである。補強材のセルの壁の厚さは、側面衝突においてロッカーアセンブリ10によって吸収されるエネルギーの量を最適化するために変化させることができる。
【0065】
幾つかの他の実施例では、セルの格子31の壁は異なる厚さを有してもよい。幾つかの実施例では、セルの格子31の周囲70を形成するセル壁は、セルの格子31の周囲内に囲まれたセル壁とは異なる厚さを有してもよい。断面における補強材の周囲70は、
図2の補強材30と同じ断面を有する補強材30を示す
図6に見ることができる。
図6の補強材30の周縁部70は、周壁に囲まれたセルの壁よりも厚い。
【0066】
セルの格子の周囲70は、4つの部分、すなわち、上部71、下部72、外側部分73及び内側部分74から構成され得る。外周の内側部分74は、セルグループの内側セル62のセル壁、例えば内側列32inのセル壁を含み、外周の外側部分73は、セルグループの外側セル61のセル壁、例えば外側列32outのセルを含む。外周の上部71は、外周の内側74と外側73の上部と結合し、外周の下部72は外周の内側74と外側73の下部と結合する。
【0067】
幾つかの実施例では、格子セルの外周の外側部分73、例えば格子外周70に属する外側列32outの実質的に垂直な壁の厚さは、格子セルの外周の内側部分74、例えば格子外周70に属する内側列32inの実質的に垂直な壁の厚さより小さくてもよい。
【0068】
幾つかの例では、外側セル61の周囲セル壁の厚さは1~2mm、例えば約1.5mmであってよく、一方、内側セル62の周囲セル壁の厚さは4~6mm、例えば約5mmであってよい。
【0069】
横方向の衝突で最初に衝突する可能性のあるセル壁の部分が、最後に衝撃を感じる可能性のあるセル壁の部分よりも厚さが薄い場合、補強材30の内側部分、ひいてはロッカー20が過度に変形することはない。
【0070】
幾つかの実施例では、セルの格子31の周辺上部71及び/または下部72の壁、即ち実質的に横方向42に沿って延びるセルの格子31の外周を形成するセル壁は、周辺外側のセル壁、即ちセルの格子31の外周73に属するセル壁と実質的に等しい厚さを有することがある。
【0071】
本明細書で示す断面寸法を有する押出アルミニウム製のロッカー補強材30は、エネルギー吸収を最大にしつつ、ロッカー補強材に適切な強度、例えば鋼製のロッカー補強材と同様の強度を与えることができる。
【0072】
ロッカー補強材30の幅は、ロッカー20の幅と同様であってもよいが、ロッカー20の幅よりも小さくてもよい。幅は横方向42に沿って測定することができる。このようにして、補強材30の断面における外周部70の内側部分74と内側ロッカーパネル12の内面との間の空間を最小にすることができる。同様に、補強材30の断面における外周部70の外側部分73と外側11ロッカーパネルの内面との間の空間も最小にすることができる。幾つかの実施例では、補強材30は、少なくとも長手方向40に沿った幾つかの領域において、ロッカーの内側パネル及び/または外側パネルの表面に接触することがある。
【0073】
ロッカー20及びロッカー補強材30は、1以上の締結部材14を介して互いに取り付けられることがある。
図3~5において、締結部材14は、2つのストリップ、例えばスチールストリップからなる。鋼ストリップは、高強度鋼、特に高強度低合金鋼で作られてもよい。一例として、ArcelorMittal社によって商品化されたHSLA420を使用することができる。同様の鋼としては、Docol(登録商標)420LAがある。これらの例で使用される「420」は、鋼の最小降伏強度を示す。他の鋼を使用することもできる。
【0074】
ストリップの端部は、外側11及び/または内側12のロッカーパネルの取付けフランジ13に接合することができる。別の端部は補強材30に、例えば補強材の底部または頂部に接合することができる。
図3~5の例では、第1のストリップが補強材の上部に接合されているのに対し、第2のストリップが補強材の下部に接合されていることを示している。取り付けは、ネジまたはリベットを介して行うことができる。この種の締結具は、ロッカー補強材30の中央部分をロッカー20に接合するのに特に適しているが、補強材30の長手方向の一端または両端をロッカー20に取り付けるのにも使用できる。
【0075】
補強材30とロッカー20、特に補強材30の長手方向端部を取り付ける他の可能な方法は、ストリップ、例えば鋼ストリップの端部を内側または外側ロッカーパネル12、11の内側部分に接合し、ストリップの他端を補強材の長手方向端部に接合することによってもよい。従って、ストリップは長手方向40に沿って延びていてもよい。
【0076】
締結部材14は、任意の適切な接続要素を含んでもよい。締結部材14は、ストリップ、ブラケット、リベット、ねじ、ボルト、接着剤及び樹脂のうちの少なくとも1つ以上を含むことができる。接着剤及び樹脂の使用は、振動を低減する可能性がある。
【0077】
ロッカーアセンブリ10は、車両に取り付けられたときに補強材30が車両のバッテリボックスの上方に配置されるように構成されることがある。幾つかの実施例では、補強材30は、ロッカー30の中央部22または上部21に配置される。これらの実施例の幾つかでは、セルの格子31の周囲72の下部とロッカーの底部との間の垂直ギャップは、セルの格子31の周囲71の上部とロッカーの頂部との間の垂直ギャップと実質的に等しいかまたはそれより大きくてもよい。
【0078】
ロッカー補強材30のこの特定の位置決めは、車両が衝突に巻き込まれたときにロッカーと電池ボックスとの接触を回避するか、または少なくとも低減することができる。補強材30をバッテリボックスの上方に配置することで、バッテリボックスの上方でロッカーを圧縮する側圧力を誘導することができ、その結果、バッテリボックスへの損傷を低減できる可能性がある。
【0079】
本発明によるロッカーアセンブリ、例えば
図2のロッカーアセンブリ10の挙動は、簡略化されたサブシステムにおけるユーロNCAPの試験において、先行技術の幾つかのロッカーアセンブリの挙動と比較された。比較された状況では、全ての補強材は押し出しアルミニウムで作られている。先行技術の3つの例を
図8、9、10に示す。ロッカーアセンブリはボルボ車用で、特にモデルXC60(
図8)、XC90(
図9)、S90(
図10)用である。先行技術のロッカーアセンブリのこれらの例及び
図2のロッカーアセンブリのロッカーアセンブリのセクション質量あたりの吸収エネルギー(本明細書ではAE/SMと略記する)を以下の表に示す。セクション質量(SM)は、ロッカーアセンブリのセクション(長手方向部分)の長さ当たりのロッカーアセンブリ10の重量を示す。通常、断面1メートル当たりのキログラム単位で表される。この長さは、長手方向40に沿って測定される。本明細書ではAE(AI)/SM(AI)と略記される、アルミニウム補強材の断面質量当たりのアルミニウム補強材によって吸収されるエネルギーも表中に示される。
図2のロッカーアセンブリ10の例のデータは、約2.0mmの厚さを有する補強材30について示されている。
【0080】
【0081】
表1から分かるように、本発明によるロッカー補強材及びロッカーアセンブリは、従来技術のロッカーアセンブリ及びロッカー補強材に対して、エネルギー吸収の増加をもたらす可能性がある。
【0082】
図7は、ロッカー20と、ロッカー20に取り付けられたロッカー補強材30とからなる車両用ロッカーアセンブリ10を製造するための方法100のフローチャートを示している。ロッカー20及びロッカー補強材300は、本開示全体を通して説明されるロッカー20及びロッカー補強材30の何れであってもよい。
【0083】
方法100は、ブロック105において、ロッカー20を提供することを含む。ロッカーは、外側パネル11と内側パネル12とからなる。ロッカー20は、例えばUHSSのような硬化鋼で作ることができる。
【0084】
方法100は、ブロック110において、本明細書に開示されるような断面を有する、例えば
図2~6の何れかに図示されるようなアルミニウム製ロッカー補強材30を提供することを更に含む。幾つかの実施例では押出成形が使用されてもよい。
【0085】
押出成形によってそのような断面を有するアルミニウム製ロッカー補強材30を得るために、本明細書に開示されているような断面形状を有するダイスを最初に得ることができる。ダイスは鋼鉄製とすることができる。ダイスを通るアルミニウムの均一な流れを促進するために、ダイスを400~600℃の温度に予熱することができる。ダイスが押出プレスに装填されると、アルミニウムビレットは、例えば400~600℃の温度に予熱されて可鍛性にされ、ラムによってダイスに押し付けられ、ダイスを通過する。所望の断面を持つアルミニウム押出材が得られる。ロッカー補強材30を得るために、アルミニウム押出材の冷却、位置合わせ及び/または切断を追加的に行ってもよい。
【0086】
方法100は更に、ブロック115において、ロッカー補強材30をロッカー20に機械的に取り付けて、ロッカーアセンブリ10の断面をとったときにセルの中央グループ33のセルが実質的に六角形になるようにすることを含む。
【0087】
幾つかの実施例では、補強材30は、セルの中央グループ303各セルの2つの対向するセル壁が横方向42に沿って延びるように取り付けることができる。この特定の方向は、衝突時に吸収されるエネルギーを増加させる可能性がある。
【0088】
幾つかの実施例では、補強材30は、ロッカーアセンブリが車両に取り付けられたときに補強材30が車両のバッテリボックスの上方に位置するように取り付けられることがある。これにより、力とエネルギーが車両のバッテリ、特にバッテリボックスの上方からそらされる可能性がある。バッテリボックスへのダメージが軽減される可能性がある。また、バッテリボックスへの侵入も低減される可能性がある。幾つかの実施例では、補強材30は、ロッカー20の上部21に取り付けられている。
【0089】
上で説明したように、ロッカー補強材30は、外側ロッカーパネル11及び/または内側ロッカーパネル12に取り付けることができる。この目的のために、鋼ストリップのような締結部材14を使用してもよい。外側ロッカーパネルと内側ロッカーパネルは互いに接合されていてもよい。
【0090】
「ソフトゾーン」、すなわち機械的強度の低い領域(極限引張強さ及び降伏強さは低いが、延性が高い可能性のある領域)を、取付け点として想定されるロッカー20の特定の領域に設けてもよい。例えば、ねじ、リベット、または同様の締結具が取り付けられるロッカーパネルの領域には、ソフトゾーンを設けることができる。これにより、例えばロッカー20がUHSS製で補強材30がアルミニウム製の場合、ロッカー20とロッカー補強材30との取り付けが容易になる。また、ロッカーの取り付け箇所にソフトゾーンを設けることで、これらの箇所に応力が集中し、衝撃を受けた場合に早期に破断したり亀裂が生じたりすることを避けるか、少なくとも低減することができる。
【0091】
ソフトゾーンは、これらのソフトゾーンが形成される領域におけるロッカーの延性及びエネルギー吸収を改善するために、追加的または代替的に、一方または両方のロッカーパネル11、12に設けることができる。
【0092】
ソフトゾーンは、例えば、熱間成形ダイクエンチ後の部分熱処理によって形成することができる。レーザーまたは誘導加熱器を使用して、ロッカーパネル上に異なる微細構造の領域を局所的に形成することができる。
【0093】
幾つかの実施例では、ロッカー20の取付けフランジ13は、プレス硬化された超高強度鋼のソフトゾーンとして形成することができる。フランジ13がロッカー20の残りの部分よりも柔らかいゾーンとして作られる場合、フランジ13は、締結部材14と同様に、互いに容易に接合され得る。取り付け点における応力集中は回避されるか、少なくとも低減され得る。
【0094】
本明細書では多数の実施例のみを開示したが、他の代替、変更、使用及び/または同等物が可能である。更に、説明した実施例の全ての可能な組み合わせも対象となる。従って、本開示の範囲は、特定の実施例によって限定されるべきではなく、後に続く特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。
【国際調査報告】