(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】長寿命触媒を用いた酸化的エステル化のためのプロセス及び触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/52 20060101AFI20240927BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20240927BHJP
C07C 67/39 20060101ALI20240927BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B01J23/52 Z
C07C69/54 Z
C07C67/39
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519409
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022045723
(87)【国際公開番号】W WO2023059677
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ、カーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】フリック、クリストファー ディ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェン-シェン
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、ビクター ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA12
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA20B
4G169BC33A
4G169BC50A
4G169CB07
4G169CB25
4G169CB75
4G169DA06
4G169EA01X
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4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC29
4G169ED03
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC48
4H006BA05
4H006BA10
4H006BA30
4H006BA55
4H006KA35
4H006KC14
4H039CA66
(57)【要約】
触媒は金粒子及びチタン含有粒子を含む。触媒は、少なくとも1つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内にある金粒子を含む。金粒子は、15nm未満の平均直径及び+/-5nmの標準偏差を有する。触媒を使用してメタクロレイン及びメタノールからメチルメタクリレートを調製するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金粒子及びチタン含有粒子を含む触媒であって、前記触媒は、少なくとも1つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内に金粒子を含み、前記金粒子は、15nm未満の平均直径及び±5nmの標準偏差を有する、触媒。
【請求項2】
前記金粒子及び前記チタン含有粒子は、担体材料の外表面上に配置されている、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担体材料は、シリカを含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記チタン含有粒子は、酸化チタンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記金粒子は、前記チタン含有粒子間に均一に分布している、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記金粒子は、10nm未満の平均直径及び+/-2.5nmの標準偏差を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記金粒子の総重量の少なくとも0.1重量%は、前記触媒の表面上に露出している、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記金粒子の総重量の少なくとも0.5重量%は、前記触媒の表面上に露出している、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製するための方法であって、前記方法は、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒の存在下で、メタクロレイン、メタノール及び酸素を含む混合物を反応器内で接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製するための触媒及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の外側領域内で濃縮された貴金属を有する不均一触媒が知られている(例えば、メタクリル酸メチルの製造に使用するための、米国特許第6,228,800号を参照されたい)。
【0003】
国際公開第2019/057458号は、触媒粒子の存在下で液相における不均一触媒作用によってアルデヒドからカルボン酸エステルを調製するためのプロセスを開示している。触媒粒子は、0.1重量%~3重量%の金、25重量%~99.8重量%のTiO2、0重量%~50重量%の酸化ケイ素、0重量%~25重量%のAl2O3、0重量%~25重量%のアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物、0重量%~20重量%の酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化コバルトからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物、並びに0重量%~5重量%の少なくとも1つの他の成分からなる。触媒は好ましくは、主に又は排他的に金及びTiO2から構成される。
【0004】
しかしながら、より長い寿命にわたって有効かつ活性であるメタクリル酸メチルの製造のための改善された触媒及びプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、金粒子及びチタン含有粒子を含む触媒であって、少なくとも1つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内にある金粒子を含み、金粒子が、15nm未満の平均直径及び±5nmの標準偏差を有する、触媒に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製するための方法に関し、前記方法は反応器中で、メタクロレイン、メタノール及び酸素を含む混合物を触媒の存在下で接触させる工程を含み、前記触媒が、少なくとも1つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内にある金粒子を含み、前記金粒子が、15nm未満の平均直径及び+/-5nmの標準偏差を有する、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別途記載のない限り、全ての組成比率は重量パーセント(重量%)であり、全ての温度は℃単位である。別途記載のない限り、平均は、算術平均である。「触媒中心」は、触媒粒子の重心、すなわち、全ての座標方向における全ての点の平均位置である。直径は、触媒中心を通過する任意の直線寸法であり、平均直径は、全ての可能な直径の算術平均である。アスペクト比は、最長の直径の最短の直径に対する比率である。別途記載のない限り、粒子の平均粒径は、触媒が調製された後及び触媒が使用される前の粒子の平均粒径を指す。使用触媒は、使用された触媒である。
【0008】
本発明の触媒は、金粒子及びチタン含有粒子を含む。
【0009】
金粒子及びチタン含有粒子は、好ましくは担体材料の外表面上に配置される。
【0010】
好ましくは、金粒子は、チタン含有粒子の少なくとも15nm以内にある。本明細書で使用される場合、「少なくともXnm以内」という語句は、金粒子の縁部が、金粒子に最も近いチタン含有粒子の縁部のXnm以内にあることを意味する。好ましくは、各金粒子は、チタン含有粒子の少なくとも10nm以内、より好ましくはチタン含有粒子の少なくとも8nm以内、更により好ましくはチタン含有粒子の少なくとも6nm以内にある。
【0011】
より好ましくは、触媒は、2つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内にある金粒子を含み、すなわち、金粒子の縁部は、金粒子に最も近い2つのチタン含有粒子の縁部の少なくとも15nm以内にある。好ましくは、触媒は、2つのチタン含有粒子の少なくとも10nm以内、より好ましくは2つのチタン含有粒子の少なくとも8nm以内、更により好ましくは2つのチタン含有粒子の少なくとも6nm以内に金粒子を含む。
【0012】
更により好ましくは、触媒は、少なくとも3つのチタン含有粒子の少なくとも15nm以内に金粒子を含み、すなわち、金粒子の縁部は、金粒子に最も近い少なくとも3つのチタン含有粒子の縁部の少なくとも15nm以内にある。好ましくは、触媒は、少なくとも3つのチタン含有粒子の少なくとも10nm以内、より好ましくは少なくとも3つのチタン含有粒子の少なくとも8nm以内、更により好ましくは少なくとも3つのチタン含有粒子の少なくとも6nm以内に金粒子を含む。
【0013】
金粒子は、15nm未満、好ましくは12nm未満、より好ましくは10nm未満、更により好ましくは8nm未満の平均直径を有する。金粒子の平均直径の標準偏差は、+/-5nm、好ましくは+/-2.5nmである。本明細書で使用される場合、標準偏差は、以下の式によって計算される。
【数1】
、式中、xは、各粒子の径であり、
【数2】
は、n個の粒子の平均であり、及びnは、少なくとも500である。
【0014】
チタン含有粒子は、元素チタン又は酸化チタンTiOxを含んでもよい。好ましくは、チタン含有粒子は、酸化チタンを含む。
【0015】
チタン含有粒子は、好ましくは金粒子の平均直径の5倍未満の平均直径、より好ましくは金粒子の平均直径の4倍未満の平均直径、更により好ましくは金粒子の平均直径の3倍未満の平均直径、更により好ましくは金粒子の平均直径の2倍未満の平均直径、更により好ましくは金粒子の平均直径の1.5倍未満の平均直径を有する。
【0016】
チタン含有粒子の量に対する金粒子の重量による量は、1:1~1:20の範囲であってもよい。好ましくは、金粒子対チタン含有粒子の重量比は、1:2~1:15、より好ましくは1:3~1:10、更により好ましくは1:3~1:6の範囲である。
【0017】
好ましくは、金粒子は、チタン含有粒子間に均一に分布している。本明細書で使用される場合、「均一に分布した」という用語は、金粒子がチタン含有粒子間に無作為に分散しており、金粒子の凝集が実質的にないこと、例えば、金粒子の総重量に基づいて10重量%未満の金粒子が、別の金粒子と物理的に接触していることを意味する。好ましくは、金粒子の総重量に基づいて7.5重量%未満の金粒子が、別の金粒子と物理的に接触しており、より好ましくは金粒子の総重量に基づいて5重量%未満の金粒子が、別の金粒子と物理的に接触している。
【0018】
好ましくは、担体は、酸化的エステル化反応器における長期間の使用に耐えることができる、耐火性酸化物の粒子である。長期間の使用に耐えることができる材料は、使用中に破砕又は粉砕されることを回避することができる。例えば、酸化チタン(TiOx)は、酸に対して高い耐性を有する担体であるが、高い表面積を有する場合、機械的に弱い可能性がある。
【0019】
好ましくは、担体は、γ-、δ-、若しくはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ハフニア、バナジア、酸化ニオブ、酸化タンタル、セリア、イットリア、酸化ランタン、又はこれらの組み合わせの粒子である。好ましくは、担体は、γ-、δ-、若しくはθ-アルミナ、シリカ、及びマグネシアを含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる。より好ましくは、担体は、シリカを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。担体に関して本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という語句は、担体の機械的強度を低下させ得る材料の存在を除外する。あるいは、「から本質的になる」は、担体が、担体の総重量に対して、少なくとも95重量%の記載された材料を含むことを意味する。
【0020】
好ましくは、担体は、10m2/g超、好ましくは30m2/g超、好ましくは50m2/g超、好ましくは100m2/g超、好ましくは120m2/g超の、表面積を有する。
【0021】
好ましくは、触媒粒子のアスペクト比は、10:1以下、好ましくは5:1以下、好ましくは3:1以下である。形状は限定されないが、触媒粒子の好ましい形状としては、球、円柱、直方体、輪、多葉形状(例えば、クローバー断面)、複数の穴及び「ワゴンホイール」を有する形状、好ましくは球が挙げられる。不規則な形状も使用され得る。
【0022】
好ましくは、金粒子及びチタン含有粒子の少なくとも90重量%は、触媒体積(すなわち、平均触媒粒子の体積)の外側70%、好ましくは触媒体積の外側60%、好ましくは外側50%、好ましくは外側40%、好ましくは外側35%、好ましくは外側30%、好ましくは外側25%である。好ましくは、任意の粒子形状の外側体積は、外側表面に垂直な線に沿って測定された、その内側表面からその外側表面(触媒粒子の表面)まで、一定の距離を有する体積に対して計算される。例えば、球形粒子の場合、体積の外側x%は球形シェルであり、その外側表面は粒子の表面であり、その体積は球全体の体積のx%である。好ましくは、金粒子及びチタン含有粒子の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%は、触媒の外側体積にある。好ましくは、金粒子及びチタン含有粒子の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%)は、触媒直径の30%以下、好ましくは25%以下、好ましくは20%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下の、表面からの距離内にある。表面からの距離は、表面に垂直な線に沿って測定される。好ましくは、金粒子及びチタン含有粒子は、担体粒子上にエッグシェル構造を形成する。エッグシェル層は、500マイクロメートル以下、好ましくは250マイクロメートル以下、より好ましくは100マイクロメートル以下の厚さを有し得る。
【0023】
好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.1重量%は、触媒の表面上に露出している。本明細書で使用される場合、「露出された」という用語は、金粒子の少なくとも一部が、別の金粒子又はチタン含有粒子によって被覆されていないこと、すなわち、反応物が金粒子に直接接触することができることを意味する。したがって、金粒子は、担体材料の細孔内に配置されてもよく、細孔内で金粒子と直接接触することができる反応物質によって、依然として露出されていてもよい。より好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.25重量%は触媒の表面に露出しており、更により好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.5重量%は触媒の表面に露出しており、更により好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも1重量%は触媒の表面に露出している。
【0024】
好ましくは、触媒粒子の平均直径は、少なくとも60ミクロン、好ましくは少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも200ミクロン、好ましくは少なくとも300ミクロン、好ましくは少なくとも400ミクロン、好ましくは少なくとも500ミクロン、好ましくは少なくとも600ミクロン、好ましくは少なくとも700ミクロン、好ましくは少なくとも800ミクロンであり、好ましくは30mm以下、好ましくは20mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは4mm以下である。担体の平均直径及び最終触媒粒子の平均直径は、有意に異ならない。
【0025】
好ましくは、金及び担体の百分率としての金の量は、0.2~5重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.2重量%、好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。
【0026】
好ましくは、触媒は、担体の存在下で、金属塩の水溶液から、金及びチタンを沈殿させることによって生成される。好ましい一実施形態では、触媒は、好適な金前駆体塩及びチタン塩の水溶液を、多孔性無機酸化物に添加して、細孔を溶液で充填し、次いで溶媒及び水を乾燥により除去する、溶液滴下含浸技法によって生成される。次いで、得られた材料は、焼成、還元、又は金塩及びチタン塩を金属又は金属酸化物に分解するための、当業者に既知の他の前処理によって、最終触媒に変換される。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールが、溶液中に存在する。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールは、2~12個、好ましくは2~8個、好ましくは3~6個の炭素原子を有する。好ましくは、チオール化合物は、合計で4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヒドロキシル及びカルボン酸基を含む。好ましくは、チオール化合物は、2個以下、好ましくは1個以下のチオール基を有する。チオール化合物がカルボン酸置換基を含む場合、それらは、酸形態、共役塩基形態、又はこれらの混合物で存在し得る。特に好ましいチオール化合物としては、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、及び1-チオグリセロールが挙げられ、それらの共役塩基も含まれる。
【0027】
本発明の一実施形態では、触媒は、析出沈殿によって生成され、ここで、多孔質無機酸化物が、好適な金前駆体塩及びチタン塩を含有する水溶液に浸漬され、次いで、その塩は、溶液のpHを調整することによって、無機酸化物の表面と相互作用する。次いで、得られた処理済み固体は(例えば、濾過によって)回収され、次いで、焼成、還元、又は金塩及びチタン塩を金属又は金属酸化物に分解するための、当業者に既知の他の前処理によって、最終触媒に変換される。
【0028】
好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)を生成するためのプロセスは、酸化的エステル化反応器(OER)内で実施される。触媒粒子は、スラリー又は触媒床、好ましくは触媒床内に存在し得る。触媒床内の触媒粒子は、典型的には、固体壁、及びスクリーン、又は触媒担体グリッドによって、適所に保持される。いくつかの構成では、スクリーン又はグリッドは、触媒床の両端にあり、固体壁は、側面にあるが、いくつかの構成では、触媒床は、完全にスクリーンで囲まれ得る。触媒床の好ましい形状としては、円柱、直方体、及び円柱シェル、好ましくは円柱が挙げられる。OERは、メタクロレイン、メタノール、及びMMAを含む液相と、酸素を含む気相と、を更に含む。液相は、副生成物、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(MDA)及びイソ酪酸メチル(MIB)を更に含み得る。好ましくは、液相は40~120℃の温度であり、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃の温度であり、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下の温度である。好ましくは、触媒床は、0~2000psig(101kPa~14MPa)の圧力であり、好ましくは2000kPa以下、好ましくは1500kPa以下の圧力である。
【0029】
OERは、典型的には、メタクリル酸及び未反応のメタノールとともにMMAを生成する。好ましくは、メタノール及びメタクロレインは、1:10~100:1、好ましくは1:2~20:1、好ましくは1:1~10:1のメタノール:メタクロレインのモル比で反応器に供給される。好ましくは、触媒床は、触媒の上方及び/又は下方に、不活性材料又は酸材料を更に含む。好ましい不活性材料又は酸材料としては、例えば、アルミナ、粘土、ガラス、炭化ケイ素、及び石英が挙げられる。好ましくは、不活性材料又は酸材料は、触媒の平均直径以上、好ましくは20mm以下の平均直径を有する。好ましくは、反応生成物は、メタノール及びメタクロレインに富むオーバーヘッド流を提供する、メタノール回収蒸留塔に供給され、好ましくは、この流はOERに再循環される。メタノール回収蒸留塔からの底流は、MMA、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む。本発明の一実施形態では、MDAは、MMA、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む媒体中で加水分解される。MDAは、メタノール回収蒸留塔からの底流中で加水分解され得、当該流は、MMA、MDA、メタクリル酸、塩及び水を含む。別の実施形態において、MDAは、メタノール回収塔底流から分離された有機相中で加水分解される。MDAの加水分解に十分な水が存在することを確実にするために、水を有機相に添加することが必要であり得、これらの量は、有機相の組成から容易に測定され得る。MDA加水分解反応器の生成物は、相分離され、有機相は、1つ以上の蒸留塔を通過して、MMA生成物並びに軽質及び/又は重質の副生成物を生成する。別の実施形態では、加水分解は、蒸留塔自体の中で実施することができる。
【0030】
好ましい一実施形態は、再循環ループ内に冷却能力を備えた再循環反応器である。好ましい別の実施形態は、反応器間の冷却及び混合能力を備えた一連の反応器である。
【0031】
好ましくは、反応器出口における酸素濃度は、反応器を出るガス流の総体積に基づいて、少なくとも1モル%、より好ましくは少なくとも2モル%、更により好ましくは少なくとも2.5モル%、更により好ましくは少なくとも3モル%、更により好ましくは少なくとも3.5モル%、更により好ましくは少なくとも4モル%、最も好ましくは少なくとも4.5モル%である。好ましくは、反応器を出るガス流中の酸素濃度は、反応器を出るガス流の総量に基づいて、7.5モル%以下、好ましくは7.25モル%以下、好ましくは7モル%以下である。
【0032】
酸化的エステル化のための固定床反応器の、好ましい一実施形態は、細流床反応器であり、これは、触媒の固定床を含有し、気体及び液体供給流の両方を、下向き方向に反応器に通す。細流中では、気相は連続流体相である。したがって、固定床の上方の反応器の上部にあるゾーンは、それらのそれぞれの蒸気圧で窒素、酸素及び揮発性液体成分の蒸気相混合物で充填されることになる。典型的な動作温度及び圧力(50~90℃及び60~300psig(400~2000kPa))では、ガス供給が空気である場合、この蒸気混合物は、可燃性エンベロープ内部にある。したがって、点火源のみが爆燃を開始するのに必要とされ、それにより、一次格納容器の損失、並びに近傍の物理的なインフラストラクチャ及び人員に損害を与える可能性がある。プロセスの安全性の考慮事項に対処するために、可燃性ヘッドスペース雰囲気を回避しながら細流床反応器を動作させるための手段は、蒸気ヘッドスペース内の酸素濃度が限界酸素濃度(LOC)を下回ることを確実にするために十分に低い酸素モル画分を含有する気体供給での動作である。
【0033】
懸念される燃料混合物、温度及び圧力には、LOCの知識が必要である。LOCが温度及び圧力の増加とともに減少するので、メタノールが他の2つの重要な燃料(メタクロレイン及びメタクリル酸メチル)よりも低いLOCを与えることを考えると、保守的な設計は、最高の期待動作温度及び圧力でLOC未満の組成を確実にする供給酸素と窒素との比率を選択する。例えば、最大100℃及び275psig(2MPa)で動作する反応器の場合、窒素中の供給酸素濃度は7.4モル%を超えてはならない。
【実施例】
【0034】
実施例
触媒の調製:
触媒は、チタンで修飾された、主に球状のペレット上の溶液滴下含浸によって調製され、チタンは、最終触媒中にその酸化物形態で存在する。CARiACT Q-20シリカ担体材料(富士シリシア化学株式会社製)100gを、チタン塩で処理して、Tiを担体に添加した。金チオ硫酸ナトリウム4.1gを、水100gに溶解して水溶液とし、次いで、Ti処理担体上に載せた。試料を、120oCで1時間乾燥させ、その後、400oCで4時間焼成した。得られた触媒は、6.5重量%のTi及び1.4重量%のAuを含み、触媒の外表面近くで、わずかに高い金担持量を有していた。
【0035】
未使用の触媒、固定床気泡塔反応器における2000時間のパイロットプラント試験後の触媒、及び固定床気泡塔反応器における15ヶ月の追加の実験室エージング後の触媒について、TEMによって測定された金粒子径を、以下の表1に示す。未使用の触媒、2000時間のパイロットプラント試験後の触媒、及び追加の実験室エージング後の触媒の活性は、触媒の失活をほとんど示さなかった。
【表1】
【0036】
表1に見られるように、本発明の触媒は優れた寿命を示し、測定された粒子径は、2000時間のパイロットプラント試験後、及び15ヶ月の追加の実験室エージング後に、金粒子の凝集又は平均径の変化がほとんどないことを示した。
【国際調査報告】