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特表2024-536189アブレーション用のシアシニング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アブレーション用のシアシニング組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/045 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/045
A61P35/00
A61K9/14
A61K9/06
A61K49/00
A61K45/00
A61K31/05
A61K47/34
A61K47/42
A61K47/32
A61K47/36
A61P25/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519432
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022038678
(87)【国際公開番号】W WO2023055473
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,764
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジャバルザデ、エフサン
(72)【発明者】
【氏名】モガダム、サラ エスランボルチ
(72)【発明者】
【氏名】ダビン、カレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA29
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD27
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE37
4C076EE42
4C076EE43
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA19
4C084MA27
4C084MA67
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC752
4C085HH01
4C085JJ03
4C085KB23
4C085LL18
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206CA17
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA47
4C206MA87
4C206NA05
4C206ZA08
4C206ZB26
(57)【要約】
例えば、アブレーション、神経溶解、又は硬化療法における使用のためのシアシニング組成物が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション又は硬化療法で使用するための組成物であって、
有効量のエタノール又はその誘導体と、
ケイ酸塩ナノ粒子と、
水とを含み、
約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、少なくとも90日間所定の位置に留まるインプラントを提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、前記エタノール又はその誘導体を少なくとも90日間溶出するインプラントを提供する、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約1.0~約0.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、約5重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、約10重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
水とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約100:0~約50:50である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比75:25である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比60:40である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ケイ酸塩ナノ粒子は、ケイ酸塩ナノプレートレットを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ケイ酸塩ナノプレートレットは、正に帯電した縁部及び負に帯電した表面を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ケイ酸塩ナノ粒子が負に帯電している、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ケイ酸塩ナノ粒子の平均直径が約5nm~約60nmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ケイ酸塩ナノ粒子の平均厚さが約0.5nm~約2nmである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約1Pa~約200Paの降伏応力を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、シアシニング組成物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は造影剤をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、化学療法剤及び硬化剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、酢酸注射剤、麻酔剤、抗生物質、酵素、生物学的薬剤、生体吸収性ポリマー、生体材料、コンジュゲート、医薬品、遺伝子、ウイルス、血管収縮剤、タンパク質、植物及び動物組織細胞副産物及び誘導体、天然抽出物/化合物、ならびに他の生化学剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
病変を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記病変は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、又は肉腫である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記病変は、嚢胞、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝臓がん、皮膚がん、黒色腫、骨髄腫、頭頸部がん、ユーイング肉腫、上皮腫瘍、又は子宮頸がんである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
硬化療法の方法であって、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記組成物は、血管奇形を治療するために投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
神経溶解において使用するための組成物であって、有効量の神経破壊剤(例えば、エタノール又はフェノール)と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、少なくとも1日間所定の位置に留まるインプラントを提供する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物は、PNIPAM、PLGA、PLA、PEG、PVA、ゼラチン、キトサン、及びコラーゲン、又はそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、前記神経破壊剤を溶出するインプラントを提供する、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は造影剤をさらに含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
疼痛管理の方法であって、治療有効量の請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項31】
疼痛管理の前記方法は、癌治療における緩和ケアのためのものである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
疼痛管理の前記方法は、虚血性安静時疼痛のためのものである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物は、腎除神経のために使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は、膝神経変性のために使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
外科的切除後の残存腫瘍細胞のアブレーションのための組成物であって、有効量のアブレーション剤(例えば、エタノール)と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む、組成物。
【請求項36】
前記組成物は、噴霧によって送達される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物は、造影剤をさらに含む、請求項35~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、PNIPAM、PLGA、PLA、PVA、ゼラチン、キトサン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つを含む1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
腫瘍治療の方法であって、治療有効量の請求項35~38のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記腫瘍治療は、完全な外科的切除後に適用される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記腫瘍治療は、完全な外科的切除時に積極的に適用される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍治療は、陽性の切除縁の場合に適用される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物は、腫瘍縁を除去する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍治療は、デバルキング時に積極的に適用される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物は、外科的切除又はデバルキングの後に空間充填材としてさらに役立つ、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物は、化学療法剤及び免疫腫瘍学的薬剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブレーション用のシアシニング(shear-thinning)組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
硬化療法は従来、被嚢性構造を破壊するために使用されてきた。低粘度又は中粘度の液体薬剤は、嚢胞全体又は血管細胞内層全体を被覆したり腫瘍構造全体に浸透したりすることができる。従って、効力の限界は、主に、浸透の失敗によるもの又は破壊的効果に対する薬剤クリアランス及び減衰速度の速さによるものであり、多くの場合、部分的な反応及び硬化の繰り返しにつながる。また、痛みを伴う刺激性の局所組織破壊、非標的効果、及び肺虚脱などの全身吸収に関連する副作用をもたらすことがある非選択的効果によって技術が妨げられてきた。
【0003】
エタノールは標準的な硬化療法剤であり、血管障害、胸膜障害、腫瘍障害、及び嚢胞障害を含む様々な場面で使用されてきた。その作用機序は、表面タンパク質の変性及び抽出によって誘導される細胞傷害性損傷、細胞の高張性脱水、ならびに血液製剤が存在する場合の凝固及び血栓症の組み合わせである。これらの因子は全て、フィブリノイド壊死をもたらす。エタノールの血管壁への深部への浸透及び粘度の欠如は、ほとんどの組織を標的とすることを可能にするが、その効力は、例えば、近くの組織への漏出及び非標的血管壊死によって制限される。加えて、治療の有効性は、複数のセッション及び周囲組織への損傷のリスクがある大量のエタノールの注入を必要とする。
【0004】
神経溶解(Neurolysis)は、疼痛の伝達に関連する神経線維の一時的な変性を誘導するために神経破壊剤(neurolytic agent)が使用される疼痛管理において使用される技術である。この目的のために、エタノール及びフェノールを含む化学的神経破壊薬を、神経叢又は神経節と呼ばれる神経群に送達して、身体の特定の臓器又は領域に対する疼痛を遮断することができる。このような技術は、疾患治療又は他の形態の疼痛管理が無効であることが判明した場合に使用される。神経溶解を介して達成される神経ブロックは、手術不可能な癌、動脈閉塞疾患、及び末梢神経痛を含む状態におけるオピオイドの増量を防止するために使用されている。この意識的な神経損傷は、神経ブロックとして使用され、知覚機能の半永久的な遮断を引き起こし、緩和ケアのための疼痛緩和をもたらす。神経溶解を使用するいくつかの一般的な神経ブロックは、腹腔神経叢又は腕神経叢のブロックを含む。
【0005】
エタノールは、効率的な神経破壊、作用の迅速な開始を引き起こすと考えられ、造影剤と混合する能力が実証されているため、神経溶解用途において一般的に使用される神経破壊剤である。エタノール治療は、3~6ヶ月持続する神経ブロックをもたらし得る。この技術の現在の適用は、組織中のアルコールの低い粘度及び高い分散性に起因して、目的の神経節への大量のエタノールの注入を伴う。この大量のエタノール注入はまた、患者の疼痛に関連するので、より長い保持を伴う神経溶解の局所的方法の開発が必要とされる。
【0006】
少なくとも上記を考慮すると、様々な用途のための硬化療法、神経破壊療法、及び他の療法の制御放出を可能にする新しい組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本開示は、有効量のエタノール又はその誘導体、ケイ酸塩ナノ粒子、及び水を含む、アブレーション又は硬化療法で使用するための組成物であって、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する組成物を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、エタノールは無水エタノールである。
いくつかの実施形態では、本開示の組成物を、それを必要とする患者に注射すると、インプラントは、少なくとも90日間、所定の位置に留まる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物を、それを必要とする患者に注射すると、インプラントは、エタノール又はその誘導体を少なくとも90日間溶出する。
いくつかの実施形態では、組成物は、約5重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約6重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子、又は約8重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子、又は約10重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物中の水とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約100:0~約50:50である。
いくつかの実施形態では、本開示の組成物中のケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約75:25である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物中のケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約60:40である。
いくつかの実施形態では、組成物は、造影剤をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物は、化学療法剤及び硬化剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む。
一態様では、本開示は、病変を治療する方法であって、治療有効量の本開示の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、硬化療法の方法を提供する。
一実施形態によれば、本開示は、エタノール又はフェノールなどの有効量の神経破壊剤と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む、神経溶解に使用するための組成物を記載する。
【0014】
一実施形態では、神経溶解に使用するための組成物は、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ゼラチン、キトサン、又はコラーゲンのうちの少なくとも1つを含む1つ以上のポリマーを含む。
【0015】
一実施形態では、神経溶解に使用するための組成物は、それを必要とする患者に注射すると、神経破壊剤を溶出する。
一実施形態では、神経溶解において使用するための組成物は、造影剤を含む。
【0016】
一実施形態では、本開示は、治療有効量の、神経溶解において使用するための組成物を投与することを含む、疼痛管理の方法を記載する。
一実施形態では、疼痛管理の方法は、癌治療における緩和ケアのためのものである。
【0017】
一実施形態では、疼痛管理の方法は、虚血性安静時疼痛のためのものである。
一実施形態では、神経溶解において使用するための組成物は、腎除神経(renal denervation)のために使用される。
【0018】
一実施形態では、神経溶解において使用するための組成物は、膝神経変性(genicular nerve degeneration)のために使用される。
一実施形態によれば、本開示は、外科的切除後の残存腫瘍細胞のアブレーションのための組成物であって、エタノールなどの有効量のアブレーション剤と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む組成物を記載する。
【0019】
一実施形態では、アブレーション用の組成物は、噴霧によって送達される。
一実施形態では、アブレーション用組成物は、造影剤をさらに含む。
一実施形態では、組成物は、PNIPAM、PLGA、PLA、PVA、ゼラチン、キトサン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つを含む1つ以上のポリマーをさらに含む。
【0020】
一実施形態では、本開示は、治療有効量のアブレーション用組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、腫瘍治療の方法を記載する。
一実施形態では、腫瘍治療は、完全な外科的切除後に適用される。
【0021】
一実施形態では、腫瘍治療は、完全な外科的切除時に積極的に適用される。
一実施形態では、腫瘍治療は、陽性の切除縁(surgical margin)の場合に適用される。
【0022】
一実施形態では、組成物は、腫瘍縁を除去する。
一実施形態では、腫瘍治療は、デバルキング(debulking)時に積極的に適用される。
【0023】
一実施形態では、アブレーションのための組成物は、外科的切除又はデバルキングの後に空間充填材としてさらに役立つ。
一実施形態では、組成物は、化学療法剤及び免疫腫瘍学的薬剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、シアシニング組成物Aの写真を示す図。
図2図2は、シアシニング組成物Bの写真を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0026】
本開示全体を通して、様々な特許、特許出願及び刊行物が参照される。これらの特許、特許出願及び刊行物の開示は、本開示の日付の時点で当業者に公知であるような技術水準をより完全に記載するために、その全体が参照により本開示に援用される。本開示は、引用された特許、特許出願及び刊行物と本開示との間に何らかの矛盾がある場合に適用される。
【0027】
「約」という用語は、数値の直前にある場合、当該技術分野において許容される程度の変動をプラス又はマイナスした範囲を意味する。いくつかの実施形態では、本開示の文脈がそうでないことを示さない限り、又はそのような解釈と矛盾しない限り、用語「約」は、その値の10%を包含し、例えば、「約50」は、45~55を意味し、「約25,000」は、22,500~27,500を意味するなどである。例えば、「約49、約50、約55、・・・」などの数値のリストにおいて、「約50」は、先行する値と後続の値との間の間隔の半分未満までの範囲、例えば、49.5より大きく52.5より小さい範囲を意味する。さらに、「約未満」の値又は「約より大きい」値という語句は、本明細書に提供される用語「約」の定義を考慮して理解されるべきである。
【0028】
「有効量」及び「治療有効量」という用語は、本開示において互換的に使用され、患者に投与された場合に、意図される結果を達成することができる化合物又は治療活性剤の量を指す。例えば、本開示の組成物の有効量は、本明細書に開示される疾患又は病状を治療するために必要とされる量である。「有効量」又は「治療有効量」を含む実際の量は、障害の重症度、患者のサイズ及び健康、ならびに投与経路を含むがこれらに限定されない様々な状態に応じて変動する。熟練した医師は、医学分野で公知の方法を使用して適切な量を容易に決定することができる。
【0029】
本明細書で使用される「患者」又は「対象」という用語は、ヒト及び動物、好ましくは哺乳動物を含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、又は肉腫などの病変に罹患しているか、又はそれを発症するリスクがある。
【0030】
本明細書では、他の治療用途の中でも、アブレーション、硬化療法、及び神経破壊に有用な組成物が提供される。いくつかの実施形態において、本開示は、エタノール、水又はその誘導体、及びケイ酸塩ナノ粒子を含む組成物を提供する。使用方法、組成物を含むキット、及び組成物を作製するプロセスもまた提供される。
【0031】
アブレーション及び硬化療法に関して、静脈奇形の管理は、圧迫、外科的切除、及び経皮的硬化療法によるチャネルルーメン(lumen)の閉塞を含む。硬化剤は、直接的な血管壁接触を介して、血管チャネルを閉塞する内皮損傷、炎症、及び線維症を引き起こす。一般的な硬化剤としては、エタノール、(発泡)ポリドカノール、テトラデシル硫酸ナトリウム(STS)、ドキシサイクリン、又はブレオマイシンが挙げられる。純粋なエタノールは最も高い硬化力を有する。しかし、標準的な硬化剤は、非標的血管の壊死及び漏出を引き起こし得る。硬化剤が有効であるために、硬化剤は、流体媒体によってその標的組織に拡散し、硬化をもたらすプロセスを開始するのに十分な期間にわたって標的組織と相互作用しなければならない。硬化剤は液体であり、高濃度から低濃度への拡散は、センチメートル/秒(cm/s)のオーダーである。拡散は、混合を補助し得るが、薬剤を運び去り得る、高速流動系において生じるような乱流によって変動され得る。対照的に、より遅い層流は、薬剤が混合することなく横断することを可能にし、所望の標的に対して完全に無効になる可能性がある。いずれのタイプの流れも、液体製剤及びさらには発泡剤の意図しない塞栓をもたらす可能性がある。透過性と共に流れの量も、最大薬剤濃度を規定し得る。これは、投与される用量及び標的/非標的分布を変化させ得るので、重要であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、硬化剤と内皮との間の接触時間を増加させるために適所に留まることができ、漏出の回避を可能にする高粘度組成物を提供する。エタノール(EtOH)は、腫瘍フィーダー(feeder)血管及び腫瘍血管系の細動脈ルーメンの内皮損傷及び血栓症を引き起こし、それによって腫瘍の梗塞をもたらすことによって、長期持続性の塞栓形成効果をもたらす。エタノールは、任意の血管空間(動脈、静脈、リンパ)に注入されるとき、血管壁から内皮細胞を露出させ、その原形質を沈殿させる。最も頻繁に記載される合併症は、エタノールが大動脈の腹側領域を通過して下腸間膜動脈に至ることによって引き起こされる結腸梗塞である。エタノールのボーラスが肺血管床に到達すると、肺動脈痙攣が起こり得る。痙攣が十分に重篤になると、肺高血圧症及び右心不全に至ることがあり、これは左心充満(left heart filling)の低減及びその結果としての全身性低血圧を引き起こす。重篤な全身性低血圧は、冠状動脈灌流の低減を引き起こす。十分に重篤である場合、これは、電気機械的解離及び心停止などの心不整脈、又は心臓における電気的活動の欠如をもたらし得る。さらに、エタノール注入の速度もまた、効力に影響し得る。血液はエタノールを希釈し、したがって、エタノールがゆっくりと注入される場合、腫瘍細胞に対するエタノールの効果は弱まるが、急速な注入は、血管壁を破壊し、血管鋳型(vessel-casting mold)を形成する可能性がある。多すぎる混合物の注入により、正常な肝臓組織又は胃腸管に供給する血管への逆流がもたらされ得る。
【0033】
本開示の組成物は、いくつかの実施形態において、血管内塞栓剤として無水エタノールの代わりに使用することができる。ゲル製剤は、周囲組織の失活をもたらし得る不注意な非標的エタノール塞栓形成のリスクを低減する。
【0034】
エタノールアブレーションは、エタノールが腫瘍に直接注入される癌治療の一形態である。これは、現在、いくつかのタイプの肝臓及び甲状腺癌に対してのみ使用されており、周囲の組織を損傷し得る大量のエタノールを使用する必要があるため、治療法が限られていることで有名です。これは主に、エタノールを含有することができる線維被膜(fibrous capsule)によって囲まれた腫瘍に対してのみ有効であることを意味する。腫瘍のエタノールアブレーション及び完全な壊死は、3cmより小さい腫瘍において期待され得るが、その効力は、より大きな腫瘍において大幅に減少する。エタノールアブレーションは、肝臓において最も一般的に適用されるが、心筋症、副甲状腺腫瘍及び膵臓腫瘍、副腎転移、ならびに転移性骨盤リンパ節の治療においても使用されて成功してきた。経皮エタノール注入などの液体アブレーション剤の臨床使用は、非効率的な腫瘍内拡散が、腫瘍の残存及び高い再発率をもたらしたために過去10年間で減少してきた。加えて、アブレーションのためのエタノール注入は、門脈血栓症、腹腔内出血、肝不全、及び死亡等の深刻な合併症を伴う可能性がある。エタノールアブレーションは、低コストであること、特殊な機器を必要としないこと、及び広く利用可能であることから、世界中で使用され続けている。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、腫瘍内に残存するゲル組成物を使用することによって、エタノール腫瘍アブレーションの限界を克服する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、従来の液体エタノールアブレーションと比較して、エタノールの漏出の低減を達成する。理論に束縛されるものではないが、本明細書で提供されるアルコール性硬化性組成物の制御された粘度により、それらが腫瘍内でより長く接触したままであることが可能になり、癌細胞の脱水及び硬化が促進される。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される組成物は、薬物の充填を可能にし、腫瘍における薬物の分布及び保持を最大化する。
【0036】
神経溶解は、神経における疼痛シグナルの伝達を遮断することによって疼痛からの永続的な緩和をもたらすことを目的とした、神経又は交錯する神経のネットワーク(すなわち、神経叢)の意図的な破壊を指す。神経ブロックは、罹患した神経の周囲の領域に鎮痛剤を注入することによって神経の機能を一時的に遮断し、疼痛シグナルの伝達を遮断することにより、永続的な損傷を引き起こすことなく神経を一時的に無効にすることを指す。
【0037】
神経溶解を行うことができる多くの技術がある。永続的な神経破壊を引き起こす最も一般的な方法は、アルコールのような化学物質の注入である。あるいは、インターベンショナルラジオロジスト(interventional radiologist)は、神経を破壊するためにアブレーション技術を使用することを選択してもよい。いずれの場合も、インターベンショナルラジオロジストが神経又は神経叢と接触するように針又は熱プローブを局所的に挿入できる場合、その後の化学物質(例えば、エタノール)の注入により、局所的に非常に高濃度のアブレーション剤をもたらし、近隣の組織に望ましくない損傷を引き起こす可能性がある。
【0038】
したがって、本開示は、エタノール及びフェノールなどの神経破壊剤を注射可能な固体デバイスに組み込む、神経溶解において使用するための組成物を提供する。注射可能な固体デバイスは、目的の神経叢又は神経節への直接的な経皮注射を介して、又は内視鏡超音波ガイド送達を介して送達され得る。本開示の組成物は、神経破壊剤と神経叢又は神経節との間の接触時間を増加させるために適所に留まることができる高粘度物質を提供し、したがって、漏出、ならびに治療効果を達成するために治療部位に大量かつ高濃度の神経破壊剤を提供する必要性を回避する。本開示の組成物は、周囲組織のアブレーションをもたらし得る不注意な非標的エタノール神経溶解のリスクを低減する。特定の実施形態において、本開示の組成物は、神経破壊剤として、無水エタノール又はフェノールの代わりに使用され得る。
【0039】
組成物
一態様では、アブレーション又は硬化療法で使用するための組成物であって、有効量のアルコール、ケイ酸塩ナノ粒子、及び水を含み、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する組成物が本明細書で提供される。
【0040】
一態様では、アブレーション又は硬化療法で使用するための組成物であって、有効量のエタノール又はその誘導体、ケイ酸塩ナノ粒子、及び水を含み、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する組成物が本明細書で提供される。
【0041】
一態様では、有効量のエタノール又はその誘導体、ケイ酸塩ナノ粒子、及び水を含む、アブレーションで使用するための組成物であって、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する組成物が本明細書で提供される。
【0042】
一態様では、有効量のエタノール又はその誘導体、ケイ酸塩ナノ粒子、及び水を含む、硬化療法で使用するための組成物であって、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する組成物が本明細書で提供される。
【0043】
本明細書に提供される組成物のいくつかの実施形態では、それを必要とする患者に組成物を注射すると、インプラントは、少なくとも約1日間、所定の位置に留まる。いくつかの実施形態では、インプラントは、少なくとも約5日間、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約60日間、少なくとも約90日間、少なくとも約180日間、少なくとも約1年間、又はそれ以上、所定の位置に留まる。いくつかの実施形態では、インプラントは、少なくとも約90日間、所定の位置に留まる。
【0044】
本明細書で提供される組成物のいくつかの実施形態では、それを必要とする患者に組成物を注射すると、インプラントは、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約7日間、又は少なくとも約2週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約60日間、少なくとも約90日間、少なくとも約180日間、少なくとも約1年間、又はそれ以上、エタノール又はその誘導体を溶出する。本明細書に提供される組成物のいくつかの実施形態では、それを必要とする患者に注射すると、インプラントは、エタノール又はその誘導体を少なくとも5日間溶出する。いくつかの実施形態では、エタノールはインプラントから放出されない。
【0045】
本明細書で提供される組成物のいくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト)とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約1.0~重量比約0.1であり、重量比約1.0、重量比約0.9、重量比約0.8、重量比約0.7、重量比約0.6、重量比約0.5、重量比約0.4、重量比約0.3、重量比約0.2、~重量比約0.1を含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1重量%~約50重量%のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト)を含み、例えば、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、~約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、~約50重量%を含む(それらの間の全ての部分範囲及び値を含む)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約5重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子はラポナイトディスクである。
【0047】
本開示の組成物のいくつかの実施形態では、水とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約10:90~重量比約100:0の範囲であり、例えば、重量比約10:90、重量比約15:85、重量比約20:80、重量比約25:75、重量比約30:70、重量比約35:65、重量比約40:60、重量比約45:55、重量比約50:50、重量比約55:45、重量比約60:40、重量比約65:35、重量比約70:30、重量比約75:25、重量比約80:20、重量比約85:15、重量比約90:10、~重量比約100:0を含む。本開示の組成物のいくつかの実施形態では、水とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約100:0~約50:50である。
【0048】
本開示の組成物のいくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト)とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約90:10~重量比約10:90であり、例えば、重量比約90:10、重量比約85:15、重量比約80:20、重量比約75:25、重量比約70:30、重量比約65:35、重量比約60:40、重量比約55:45、重量比約50:50、重量比約45:55、重量比約40:60、重量比約35:65、重量比約30:70、重量比約25:75、重量比約20:80、重量比約15:85、~重量比約10:90を含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約75:25である。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約60:40である。
【0049】
いくつかの態様では、組成物は、ゲルとして構成されてもよく、アブレーション剤(例えば、エタノールなどのアルコール)は、約5~80%w/wで存在してもよく、例えば、約5%w/w、約10%w/w、約15%w/w、約20%w/w、約25%w/w、約30%w/w、約35%w/w、約40%w/w、約45%w/w、約50%w/w、約55%w/w、約60%w/w、約65%w/w、約70%w/w、約75%w/w、~約80%w/wを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子は、ケイ酸塩ナノプレートレットを含む。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノプレートレットは、正に帯電した縁部及び負に帯電した表面を含む。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子は負に帯電している。
【0050】
いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子は、約5nm~約500nmの粒径を有し、例えば、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、約260nm、約270nm、約280nm、約290nm、約300nm、約310nm、約320nm、約340nm、約350nm、約360nm、約370nm、約380nm、約390nm、約400nm、約410nm、約420nm、約430nm、約440nm、約450nm、約460nm、約470nm、約480nm、約490nm、~約500nmを含む(それらの間の全ての部分範囲及び値及び範囲を含む)。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子は、直径約25nm~約50nmである。いくつかの実施形態では、粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0051】
いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子の平均直径は、約5nm~約60nmであり、例えば、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、~約60nmを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、ケイ酸塩ナノ粒子の平均厚さは、約0.5nm~約2nmであり、例えば、約0.5nm、約0.6nm、約0.7nm、約0.8nm、約0.9nm、約1nm、約1.1nm、約1.2nm、約1.3nm、約1.4nm、約1.5nm、約1.6nm、約1.7nm、約1.8nm、約1.9nm、~約2.0nmを含む(それらの間の全ての部分範囲及び値を含む)。いくつかの実施形態では、粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、シアシニング組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、標的領域への送達後に高い安定性を保持しながら、例えば、本明細書で提供される方法に従った、送達システムを介して標的領域に組成物を注射することによる送達に有利であり得る。いくつかの実施形態では、組成物中のケイ酸塩ナノ粒子の量が増加するにつれて、粘度及び機械的特性が増加する。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物の粘度を、標的領域への組成物の送達を可能にし、かつ標的領域での組成物の保持を可能にするように制御することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、粘度測定法によって測定して、約2,000~15,000mPa・sの粘度を有し、例えば、約2,000mPa・s、約2,100mPa・s、約2,200mPa・s、約2,300mPa・s、約2,400mPa・s、約2,500mPa・s、約2,600mPa・s、約2,700mPa・s、約2,800mPa・s、約3,000mPa・s、約3,100mPa・s、約3,200mPa・s、約3,300mPa・s、約3,400mPa・s、約3,500mPa・s、約3,600mPa・s、約3,700mPa・s、約3,800mPa・s、約3,900mPa・s、約4,000mPa・s、約4,100mPa・s、約4,200mPa・s、約4,300mPa・s、約4,400mPa・s、約4,500mPa・s、約4,600mPa・s、約4,700mPa・s、約4,800mPa・s、約4,900mPa・s、約5,000mPa・s、約5,100mPa・s、約5,200mPa・s、約5,300mPa・s、約5,400mPa・s、約5,500mPa・s、約5,600mPa・s、約5,700mPa・s、約5,800mPa・s、約5,900mPa・s、約6,000mPa・s、約6,100mPa・s、約6,200mPa・s、約6,300mPa・s、約6,400mPa・s、約6,500mPa・s、約6,600mPa・s、約6,700mPa・s、約6,800mPa・s、約6,900mPa・s、約7,000mPa・s、約7,100mPa・s、約7,200mPa・s、約7,300mPa・s、約7,400mPa・s、約7,500mPa・s、約7,600mPa・s、約7,700mPa・s、約7,800mPa・s、約7,900mPa・s、約8,000mPa・s、約8,100mPa・s、約8,200mPa・s、約8,300mPa・s、約8,400mPa・s、約8,500mPa・s、約8,600mPa・s、約8,700mPa・s、約8,800mPa・s、約8,900mPa・s、約9,000mPa・s、約9,100mPa・s、約9,200mPa・s、約9,300mPa・s、約9,400mPa・s、約9,500mPa・s、約9,600mPa・s、約9,700mPa・s、約9,800mPa・s、約9,900mPa・s、約10,000mPa・s、約10,100mPa・s、約10,200mPa・s、約10,300mPa・s、約10,400mPa・s、約10,500mPa・s、約10,600mPa・s、約10,700mPa・s、約10,800mPa・s、約10,900mPa・s、約11,000mPa・s、約11,100mPa・s、約11,200mPa・s、約11,300mPa・s、約11,400mPa・s、約11,500mPa・s、約11,600mPa・s、約11,700mPa・s、約11,800mPa・s、約11,900mPa・s、約12,000mPa・s、約12,100mPa・s、約12,200mPa・s、約12,300mPa・s、約12,400mPa・s、約12,500mPa・s、約12,600mPa・s、約12,700mPa・s、約12,800mPa・s、約12,900mPa・s、約13,000mPa・s、約13,100mPa・s、約13,200mPa・s、約13,300mPa・s、約13,400mPa・s、約13,500mPa・s、約13,600mPa・s、約13,700mPa・s、約13,800mPa・s、約13,900mPa・s、約14,000mPa・s、約14,100mPa・s、約14,200mPa・s、約14,300mPa・s、約14,400mPa・s、約14,500mPa・s、約14,600mPa・s、約14,700mPa・s、約14,800mPa・s、約14,900mPa・s、~約15,000mPa・sを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物の降伏応力は、降伏応力よりも大きい圧力の印加時にシアシニング組成物が送達システムを通って自由に流れることができるが、印加される力が降伏強度に打ち勝つのに必要な力よりも小さいとき(例えば、標的部位への組成物の送達時)に流れが実質的に停止し、標的部位に保持されるように硬いゲル状態を形成するように構成されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は、約1Pa~約200Paの降伏応力を有し、例えば、約1Pa、約5Pa、約10Pa、約15Pa、約20Pa、約25Pa、約30Pa、約35Pa、約40Pa、約45Pa、約50Pa、約55Pa、約60Pa、約65Pa、約70Pa、約75Pa、約80Pa、約85Pa、約90Pa、約95Pa、約100Pa、約110Pa、Pa、約115Pa、約120Pa、約125Pa、約130Pa、約135Pa、約140Pa、約145Pa、約150Pa、約155Pa、約160Pa、約165Pa、約170Pa、約175Pa、約180Pa、約185Pa、約190Pa、約195Pa、~約200Paを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、応力降伏は、流量計によって測定される。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、流量計によって測定して、1,000~10,000Paの範囲の貯蔵弾性率(G’)を有し、例えば、約1,000Pa、約1,500Pa、約2,000Pa、約2,500Pa、約3,000Pa、約3,500Pa、約4,000Pa、約4,500Pa、約5,000Pa、約5,500Pa、約6,000Pa、約6,500Pa、約7,000Pa、約7,500Pa、約8,000Pa、約8,500Pa、約9,000Pa、約9,500Pa、~約10,000Paを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、貯蔵弾性率は、流量計によって測定される。
【0058】
いくつかの実施形態では、組成物は、100~1,000Paの範囲の損失弾性率(G”)を有し、例えば、約100Pa、約200Pa、約300Pa、約400Pa、約500Pa、約600Pa、約700Pa、約800Pa、約900Pa、約1,000Pa、約1,500Pa、約2,000Pa、約2,500Pa、約3,000Pa、約3,500Pa、約4,000Pa、約4,500Pa、約5,000Pa、約5,500Pa、約6,000Pa、約6,500Pa、約7,000Pa、約7,500Pa、約8,000Pa、約8,500Pa、約9,000Pa、約9,500Pa、~約10,000Paを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、損失弾性率(G”)は、流量計によって測定される。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は、使用者が組成物の1つ以上の流動的特性を調節する(例えば、5-FRの一般的なカテーテル、2.8Fのカテーテル又は2.4-Frのマイクロカテーテルに手動で圧力を加えることによって)ことを容易にするその能力のために選択された送達システム(例えば、カテーテルなどの容器)内に配置される。いくつかの実施形態では、組成物は、23ゲージ針を介して注射される。いくつかの実施形態では、印加される注射力は約10N未満である。いくつかの実施形態では、組成物は、23ゲージ針を介して注射され、印加される注射力は、約0.1ニュートン(N)~約10Nの間であり、例えば、約0.1N、約0.5N、約1N、約2N、約3N、約4N、約5N、約6N、約7N、約8N、約9N、~約10Nを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。いくつかの実施形態では、組成物は、2.8Fゲージカテーテルを介して注射される。いくつかの実施形態では、印加される注射力は約100N未満である。いくつかの実施形態では、組成物は、2.8Fゲージカテーテルを介して注射され、印加される注射力は、約1N~約100Nの間であり、例えば、約1N、約5N、約10N、約15N、約20N、約25N、約30N、約35N、約40N、約45N、約50N、約55N、約60N、約65N、約70N、約75N、約80N、約85N、約90N、約95N、~約100Nを含む(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)。
【0060】
有利なことに、本開示の組成物の投与は、アブレーション剤の単独の投与と比較して、例えば、注射部位における組成物の保持、薬剤の非標的移動の低減、及び局所毒性の低減をもたらし得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、さらなる利点は、より低用量の塞栓剤が使用され得ることであり、例えば、その結果として、塞栓剤の用量は、多くの場合、より少ないだけでなく、より少ない頻度で適用され得るか、又は塞栓剤単独で観察される副作用の発生率を減少させるために使用され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成物は、造影剤をさらに含む。造影剤は、蛍光透視法による塞栓剤の可視化を可能にする。いくつかの実施形態では、造影剤は、蛍光剤、例えば、フルオレセインもしくはインドシアニングリーンなどの蛍光色素、ヨウ素系造影剤、MRI造影剤もしくはCT造影剤又はそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、造影剤は、タンタル、ヨウ素、又はリピオドールである。検出可能な化合物を用いて、組成物を画像化して、投与時及び/又は投与中のin vivoでの組成物分布をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、組成物は、化学療法剤及び硬化剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、酢酸注射剤、麻酔剤、抗生物質、酵素、生物学的薬剤、生体吸収性ポリマー、生体材料、コンジュゲート、医薬品、遺伝子、ウイルス、血管収縮剤、タンパク質、造影剤、ポリマー、植物及び動物組織細胞副産物及び誘導体、天然抽出物/化合物、ならびに他の生化学剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、硬化剤は、ポリドカノール、テトラデシル硫酸ナトリウム(STS)、ドキシサイクリン又はブレオマイシンである。いくつかの実施形態では、組成物は、抗炎症剤、塞栓剤、及び化学療法剤から選択される治療剤を含む。例示的な塞栓剤としては、例えば、ステンレス鋼コイル、吸収性ゼラチン綿撒糸及び粉末、ポリビニルアルコール発泡体、エタノール、接着剤などが挙げられる。
【0064】
本開示の組成物と組み合わせて使用される抗癌剤は、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド及びテルペノイド(例えば、タキサン)、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、キナーゼ阻害剤、ホルモン療法、分子標的剤などを含む、当業者に公知のクラスのいずれかから選択される薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、シトキサン、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス(Ellence)、フルオロウラシル、ジェムザール、ハラベン、イクスエンプラ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナベルビン、タキソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチン、及びゼローダからなる群から選択される1つ以上の抗癌剤である。
【0065】
いくつかの実施形態では、組成物は、免疫療法に有用な1つ以上の免疫調節剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物中の免疫療法剤は、モノクローナル抗体、免疫エフェクター細胞、養子細胞移植、免疫毒素、ワクチン、及び/又はサイトカインである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、細胞ベースの免疫療法剤、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、イミキモド及び細菌由来の細胞膜画分、IL-2、IL-7、IL-12、様々なケモカイン、合成シトシンリン酸-グアノシン(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド、ならびにグルカンである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1、CTLA-4又はPD-L1チェックポイント阻害剤)などの免疫チェックポイント遮断を誘導する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブからなる群から選択される1つ以上の免疫療法剤である。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上のポリマーをさらに含む。適切なポリマーとしては、合成ポリマー(例えば、PNIPAM、PLGA、PLA、もしくはPVA)、又は天然ポリマー(例えば、ゼラチン、キトサン、もしくはコラーゲン)などが挙げられる。
【0067】
方法
本開示の組成物は、任意の数の方法における用途を見出す。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、病変を治療する方法であって、治療有効量の本開示の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、約0.1mL、約0.25mL、約0.5mL、約0.75mL、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、~約10mLを含む、約0.1mL~10mLの本開示の組成物(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)が、それを必要とする患者に投与される。
【0068】
一部の実施形態では、本開示は、本開示の組成物を必要とする対象における病変のサイズを低減する方法であって、本開示の組成物を必要とする対象に本開示の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、病変は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、又は肉腫である。いくつかの実施形態では、病変は、その対象における癌性病変、前癌性病変、良性病変、又は腫瘍(growth)から選択される。いくつかの実施形態では、病変は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、病変は非嚢胞腫瘍(non-capsulated tumor)である。いくつかの実施形態では、病変は、嚢胞、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝臓がん、皮膚がん、黒色腫、骨髄腫、頭頸部がん、ユーイング肉腫、上皮腫瘍、又は子宮頸がんである。いくつかの実施形態では、本開示は、がん、又は前がん性病変もしくは良性病変(スキンタグなど)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、病変は、上皮腫瘍又は前がん性上皮病変である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、硬化療法の方法を提供する。いくつかの実施形態では、約0.1mL、約0.25mL、約0.5mL、約0.75mL、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、~約10mLを含む、約0.1mL~10mLの本開示の組成物(それらの間の全ての値及び部分範囲を含む)が、それを必要とする患者に投与される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、標的領域に塞栓(例えば、血管内塞栓)を形成するために使用される。
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、経動脈的塞栓アブレーション(TEA)に有用である。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、塞栓形成と腫瘍内への治療薬放出(例えば、血管内)との組み合わせに有用である。
【0072】
いくつかの実施形態では、組成物は、血管奇形を治療するために投与される。
一態様では、本開示は、造影剤(例えば、タンタルなどの蛍光透視造影剤)を用いて組成物の分布を(例えば、蛍光透視法によって)可視化する方法を提供する。
【0073】
本方法において、本明細書に提供される組成物の投与は、非経口投与を含む。非経口投与の例としては、静脈内(IV)投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、骨内投与、髄腔内投与、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物の投与は、注射又は注入を介して行われる。いくつかの実施形態では、注射は、カテーテル(例えば、マイクロカテーテル)などの送達システムによる経血管注射を介して、又は標的領域への直接穿刺及び注射を介して行われる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示は、キットを必要とする患者において病変を治療する際に使用するためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、キットを必要とする患者において硬化療法で使用するためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、投与のための指示を含み得る。例えば、キットは、本明細書に記載の方法を実施するのに好適な様式で本開示の組成物を投与するための説明書を含むことができる。
【0076】
キットは、本明細書に記載の組成物のための1つ以上の容器を含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、組成物及び情報資料のための別個の容器、仕切り又は複数の区画を含有する。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、又はシリンジ中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、キットの別個の要素は、単一の分割されていない容器内に含有される。例えば、組成物は、情報資料がラベルの形態で添付されたボトル、バイアル、又はシリンジに含まれる。いくつかの実施形態では、キットは、各々が本明細書に記載される組成物の1つ以上の単位剤形を含有する、複数(例えば、1パック)の個別の容器を含む。例えば、キットは、各々が針を備え、各々が本明細書に記載される組成物の単回単位用量を含有する複数のシリンジと、注入セットとを含むことができる。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、水分又は蒸発の変化に対して不透水性)、及び/又は遮光性であり得る。
【0077】
神経溶解
神経溶解は、疼痛伝達に関連する神経線維の一時的又は永続的な変性を誘導するために神経破壊剤が使用される疼痛管理において使用される技術である。エタノール及びフェノールを含む化学的神経破壊薬を、神経叢又は神経節と呼ばれる神経群に送達して、身体の特定の臓器又は領域に対する疼痛を遮断することができる。
【0078】
組織中のアルコールの低い粘度及び高い分散性により、この技術の現在の適用は、治療効果を確実にするために、目的の神経節への大量のエタノールの注入を伴う。この大量のエタノール注入はまた、患者の疼痛に関連するので、より長い保持を伴う神経溶解の局所的方法の開発が必要とされる。
【0079】
したがって、本開示は、エタノール及びフェノールを含む神経破壊剤を注射可能な固体デバイスに組み込むことによって、神経溶解において使用するための組成物を提供する。注射可能な固体デバイスは、目的の神経叢又は神経節への直接的な経皮注射を介して、又は内視鏡超音波ガイド送達(EUS)を介して送達され得る。注射可能な固体デバイスは、神経破壊剤を目的の部位に安定的に送達することができ、送達部位から離れる神経破壊剤の拡散の影響を最小化する。いくつかの実施形態では、本開示は、神経破壊剤と神経叢又は神経節との間の接触時間を増加させるために適所に留まり、漏出を回避することができる、高粘度組成物を提供する。本開示の組成物は、いくつかの実施形態では、無水エタノール又はフェノールの代わりに、神経破壊剤として使用され得る。ゲル製剤は、周囲組織のアブレーションをもたらし得る不注意な非標的エタノール神経溶解のリスクを低減する。
【0080】
噴霧可能なゲル形成
外科的切除は、依然として、多くの原発性悪性癌の治療の基本である。臨床におけるこの技術の普及にもかかわらず、残存腫瘍浸潤及び循環腫瘍細胞の結果としての癌再発は、依然として問題である。外科的切除は、癌の完全な根絶を目的とした原発性腫瘍の除去を含む。残念なことに、この理想は、癌細胞が切除領域の縁部に存在する場合に陽性の切除縁が生じ得るので、常に達成されるわけではない。一般的な原発性腫瘍については、陽性の切除縁が、治療された患者の約5%~35%に生じる。陽性の切除縁が生じる場合、化学療法及び放射線療法を含む補助療法が必要とされ、これは、経済的及び予後的に大きな影響を与え得る。
【0081】
組織損傷又は近くの重要臓器のリスクのために完全な外科的切除を行うことができない領域では、デバルキングが行われる。デバルキングは、化学療法又は放射線をより効果的にするために、できるだけ多くの腫瘍を除去するプロセスである。本質的に、この技術は、手術部位に残存する腫瘍細胞を残すため、再発の機会を残す。したがって、原発腫瘍の再増殖又は他の領域へのその転移を防止するために、切除手術時に残存する腫瘍細胞を局所的に除去する必要性が依然として存在する。
【0082】
実施形態において、本開示は、エタノールを含むアブレーション剤を噴霧可能な固体デバイスに組み込むことによって、腫瘍アブレーションにおいて使用するための組成物を提供する。噴霧可能な固体デバイスは、いくつかの実施形態では、外科的切除時に積極的に使用することができる。噴霧可能な固体デバイスは、原発性腫瘍切除又はデバルキングが別の手順で実施された後、及び陽性の切除縁の実証後に、さらに使用することができる。実施形態では、噴霧可能な固体デバイスは、外科的切除又はデバルキング後に空間充填材としての役割を果たす。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、化学療法又は放射線療法などの補助療法の代わりに使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、化学療法又は放射線療法などの補助療法と並行して使用することができる。
【0083】
[実施例]
実施例1:硬化性シアシニング組成物の調製。ケイ酸塩ナノプレートレットラポナイトを水/エタノール溶液中に分散させることによって組成物を調製した。滅菌水(4℃)を使用して、ゲル化前にナノプレートレット粒子の完全な分散及び剥離を可能にした。ナノ複合材料組成物を、3000rpmで5分間スピードミキシング(speed mixing)することによって作製し、このプロセスを3回繰り返した。ナノプレートレットゲルを室温で放置して完全に水和させた。組成物ゲルを50mlのマスターシリンジに移し、3000rpmで5分間混合した。メスルアーコネクタを有するマスターシリンジを使用して、最終的に1cc又は3ccのCOPシリンジを充填し、4℃の冷蔵庫で硬化させた。
【0084】
組成物A
ラポナイト(9%;3.6g/40gの水-アルコール溶液)を水-アルコール溶液(60%~40%w/w)と混合することによってシアシニング組成物Aを調製した。
【0085】
組成物B
ラポナイト(9%;3.6g/54gの水-アルコール溶液)を水-アルコール溶液(74%~26%w/w)と混合することによってシアシニング組成物Aを調製した。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション又は硬化療法で使用するための組成物であって、
有効量のエタノール又はその誘導体と、
ケイ酸塩ナノ粒子と、
水とを含み、
約2,000~15,000mPa・sの粘度を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、少なくとも90日間所定の位置に留まるインプラントを提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、前記エタノール又はその誘導体を少なくとも90日間溶出するインプラントを提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約1.0~約0.1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、約5重量%~約15重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、約10重量%のケイ酸塩ナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
水とエタノール又はその誘導体との比は、重量比約100:0~約50:50である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比75:25である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ケイ酸塩ナノ粒子とエタノール又はその誘導体との比は、重量比60:40である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ケイ酸塩ナノ粒子は、ケイ酸塩ナノプレートレットを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ケイ酸塩ナノプレートレットは、正に帯電した縁部及び負に帯電した表面を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ケイ酸塩ナノ粒子が負に帯電している、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ケイ酸塩ナノ粒子の平均直径が約5nm~約60nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ケイ酸塩ナノ粒子の平均厚さが約0.5nm~約2nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約1Pa~約200Paの降伏応力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、シアシニング組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は造影剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、化学療法剤及び硬化剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、酢酸注射剤、麻酔剤、抗生物質、酵素、生物学的薬剤、生体吸収性ポリマー、生体材料、コンジュゲート、医薬品、遺伝子、ウイルス、血管収縮剤、タンパク質、植物及び動物組織細胞副産物及び誘導体、天然抽出物/化合物、ならびに他の生化学剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
病変を治療する方法において使用するための請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、治療有効量の前記組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、組成物
【請求項21】
前記病変は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、又は肉腫である、請求項20に記載の組成物
【請求項22】
前記病変は、嚢胞、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝臓がん、皮膚がん、黒色腫、骨髄腫、頭頸部がん、ユーイング肉腫、上皮腫瘍、又は子宮頸がんである、請求項20に記載の組成物
【請求項23】
硬化療法の方法において使用するための請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、治療有効量の前記組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、組成物
【請求項24】
前記組成物は、血管奇形を治療するために投与される、請求項23に記載の組成物
【請求項25】
神経溶解において使用するための組成物であって、有効量の神経破壊剤(例えば、エタノール又はフェノール)と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、少なくとも1日間所定の位置に留まるインプラントを提供する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物は、PNIPAM、PLGA、PLA、PEG、PVA、ゼラチン、キトサン、及びコラーゲン、又はそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物は、それを必要とする患者に注射すると、前記神経破壊剤を溶出するインプラントを提供する、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は造影剤をさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
疼痛管理の方法において使用するための請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、治療有効量の前記組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、組成物
【請求項31】
疼痛管理の前記方法は、癌治療における緩和ケアのためのものである、請求項30に記載の組成物
【請求項32】
疼痛管理の前記方法は、虚血性安静時疼痛のためのものである、請求項30に記載の組成物
【請求項33】
前記組成物は、腎除神経のために使用される、請求項30に記載の組成物
【請求項34】
前記組成物は、膝神経変性のために使用される、請求項30に記載の組成物
【請求項35】
外科的切除後の残存腫瘍細胞のアブレーションのための組成物であって、有効量のアブレーション剤(例えば、エタノール)と、ケイ酸塩ナノ粒子と、水とを含む、組成物。
【請求項36】
前記組成物は、噴霧によって送達される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物は、造影剤をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、PNIPAM、PLGA、PLA、PVA、ゼラチン、キトサン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つを含む1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
腫瘍治療の方法において使用するための請求項35~38のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、治療有効量の前記組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、組成物
【請求項40】
前記腫瘍治療は、完全な外科的切除後に適用される、請求項39に記載の組成物
【請求項41】
前記腫瘍治療は、完全な外科的切除時に積極的に適用される、請求項39に記載の組成物
【請求項42】
前記腫瘍治療は、陽性の切除縁の場合に適用される、請求項39に記載の組成物
【請求項43】
前記組成物は、腫瘍縁を除去する、請求項39に記載の組成物
【請求項44】
前記腫瘍治療は、デバルキング時に積極的に適用される、請求項39に記載の組成物
【請求項45】
前記組成物は、外科的切除又はデバルキングの後に空間充填材としてさらに役立つ、請求項39に記載の組成物
【請求項46】
前記組成物は、化学療法剤及び免疫腫瘍学的薬剤からなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【国際調査報告】