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特表2024-536191増強された腫瘍治療のためのポリペプチド治療剤を含有する注入可能なせん断減粘ヒドロゲル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】増強された腫瘍治療のためのポリペプチド治療剤を含有する注入可能なせん断減粘ヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/42
A61K47/02
A61K38/00
A61K39/395 M
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519435
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022045265
(87)【国際公開番号】W WO2023055959
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,949
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/250,441
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ウジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャバルザデ、エフサン
(72)【発明者】
【氏名】オクル、ラフミ
(72)【発明者】
【氏名】カデムホッセイニ、アリレザ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC50
4C076DD27
4C076EE42
4C076EE47
4C076FF32
4C076FF35
4C076FF68
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA24
4C084DA25
4C084DA39
4C084DC01
4C084MA05
4C084MA28
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA12
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
本発明者らは、シリカナノ粒子、ゼラチン系ポリマー、および抗PD-1抗体などのポリペプチドを使用して、新規のせん断減粘生体材料を開発した。せん断減粘生体材料技術は、ポリマーおよびそのようなポリマー内に充填された薬物が、例えば、がん治療および免疫療法における使用のために、カテーテルを通して標的領域に直接容易に送達されることを可能にする。そのような材料を注入するために、ある閾値を上回る力が印加されると、それらは、「薄く」なり、半固体として挙動することで、材料がカテーテルを通して容易に流動することを可能にする。力が除去されると、材料は、即座に、有意な凝集特性を有する軟質固体になり、それが除去または分解することを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと、
シリケートナノ粒子と、
ポリペプチド治療剤と、を含み、
前記ゼラチン、前記シリケートナノ粒子、および前記治療剤が、せん断減粘ヒドロゲルを形成する、せん断減粘ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
約1%(w/w)~約5%(w/w)のゼラチンと、
約1%(w/w)~約5%(w/w)のシリケートナノ粒子と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
7.4のpHを有する環境に配置されたとき、10%または5%未満の薬剤が、15日の期間にわたって前記せん断減粘ヒドロゲルから放出され、
5.0のpHを有する環境に配置されたとき、5%または10%超が、15日の期間にわたってせん断減粘ヒドロゲルから放出される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
約0.5%(w/w)~約85%(w/w)のゼラチンおよびシリケートナノ粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゼラチンに対する前記シリケートナノ粒子の比が、約1.0~約0.1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゼラチンが、メタクリル化ゼラチン(GelMA)、アクリル化ゼラチン、またはチオール化ゼラチンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
約0.5%(w/w)~約99%(w/w)の水をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約0.01%(w/w)~約20%(w/w)のポリペプチド治療剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチド治療剤が、サイトカイン、抗体、抗がん酵素、腫瘍抗原、およびアポトーシス促進性タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチド治療剤は、IL-2、IL-12、IFN-γ、TNF-α、トラスツズマブ、パーツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、カスパーゼ-3、リコンビナーゼ(Cre)、L-アスパラギナーゼ、RNase A、DNase I、cGAMPシンターゼ、グランザイムB、カタラーゼ、OVA、TRP2、Hpg10025-33、p-AH1-A5、MAGE-A3、p53、シトクロムc、KLAKLAKKLAKLAKGG、PTEN、およびサポリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチド治療剤が抗PD-1抗体を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記せん断減粘ヒドロゲルが、0.8mm(2.4Fr)カテーテル/1mL(1cc)シリンジから前記せん断減粘ヒドロゲルを押し出すために、少なくとも5ニュートンであるが30ニュートン未満の射出力を必要とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ヒトがん細胞をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
保存剤、張度調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、糖、およびpH調整剤から選択される薬学的賦形剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物がカテーテル内に配置される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリケートナノ粒子がLAPONITEを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を予め選択された部位に送達する方法であって、
前記組成物を、開口部を含む第1の端部および第2の端部を有する容器内に配置するステップと、
前記容器の前記第2の端部に力を印加するステップであって、前記力が前記組成物を液化するのに十分である、ステップと、
前記開口部を通して前記容器から前記予め選択された部位に前記組成物を送達するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記部位がインビボ部位である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記部位が、がん性細胞を含むインビボ位置にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記容器がカテーテルである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法であって、シリカナノ粒子と、ゼラチンと、ポリペプチドと、場合により薬学的賦形剤とを一緒に組み合わせて、せん断減粘生体適合性組成物を形成することを含む、方法。
【請求項22】
シリカナノ粒子の相対量および/またはゼラチンの相対量が、前記組成物の1つ以上のレオロジー特性および/または前記せん断減粘ヒドロゲルからの前記ポリペプチドの放出プロファイルを調整または調節するように選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
治療有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象において固形腫瘍を治療する方法。
【請求項24】
前記固形腫瘍が、血管腫瘍、脳腫瘍、脊髄腫瘍、頚動脈小体腫瘍、肝臓がん、肺がん、神経内分泌腫瘍、腎臓腫瘍、膵臓腫瘍、および前立腺腫瘍からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記脳腫瘍が髄膜腫または膠芽腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項26】
前記固形腫瘍が、皮膚がん、乳がん、肉腫性腫瘍、およびリンパ腫性腫瘍からなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
前記皮膚がんが、メラノーマ、肥満細胞腫瘍、扁平上皮がん、または基底細胞腫瘍からなる群から選択され、
前記肉腫性腫瘍は、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、および軟骨肉腫からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、治療を必要とする局所領域に投与される、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、前記局所領域への治療有効量の前記ポリペプチド治療剤の持続放出を提供する、請求項29に記載の方法。
【請求項30】
前記局所領域が固形腫瘍を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、腫瘍塞栓形成および治療有効量の前記ポリペプチド治療剤の前記腫瘍への持続放出を提供する、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性剤を含むせん断減粘生体材料、ならびにそれらを作製および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
せん断減粘ヒドロゲルは、せん断応力下で粘性流体として挙動し、その後、応力が除去されると固体様特性を回復する非ニュートン材料である[1]。これらの特性より、注入可能なせん断減粘生体材料(STB)は、最終的な適用部位に近づいた後に流動性注入および局所的平衡を可能にする自己治癒(self-healing)材料の群として注目を集めている。臨床用途では、STBは、針または一般/マイクロカテーテルを使用して、手の圧力によって体内に送達され得る[2~4]。臨床用途を最適化するためには、特定の臨床状況に応じてSTBの物理的特性を調整する必要がある。(1)腫瘍周辺pH(腫瘍の環境pH)、(2)腫瘍細胞密度、(3)腫瘍の細胞外マトリックス合成、(4)治療期間、(5)腫瘍の攻撃性、(6)中心壊死病変形成を含む腫瘍生理機能、(7)腫瘍の接近可能性、(8)薬物溶解度、および(9)薬物/薬剤の親水性を含むが、これらに限定されない、いくつかの生理学的および臨床的パラメータが、製剤設計に影響を及ぼす。物理的特性を変化させることによって、特定の臨床用途(例えば、特定のサイズの血管を閉塞すること、制御された薬物放出、および組織工学スキャフォールドの剛性の調節)に適合したヒドロゲルを合成し得る。
【0003】
従来のSTBの物理的特性は、いくつかの炭素系、ポリマー、および無機ナノ材料の組合せによって調節することができる[5~8]。ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサン、コラーゲン、およびアルギネートなどのいくつかの生体材料が、STBを形成するために無機成分と共に以前に使用されている[14~17]。特に、ゼラチンは、非特異的タンパク質の吸着を制限し、溶血を増強し、最終的に凝固時間を延長することで、インビトロでのSTBの実質的に改善された血液適合性を実証する[18]。さらに、組織工学および再生医療におけるゼラチンの適用は、食品医薬品局(FDA)によって承認されている[19~21]。従来のSTBは、止血および血管内塞栓形成のために、ゼラチンを合成クレイナノ粒子であるLAPONITE(登録商標)と混合することによって調製される[18、22]。これらのSTBは、強いせん断減粘挙動、ならびに血液凝固から最小限の炎症反応までの範囲の生体適合性を示す。他の研究者は、この研究を拡張して、塞栓剤[23]、機能化スキャフォールド[24、25]、3Dバイオインク[26]、および薬物送達システム[27]としてSTBを実装した。しかしながら、残念なことに、LAPONITEなどの合成クレイナノ粒子は結晶化ナノ粒子であり、サイズ、表面化学は容易に調整されない。加えて、様々なインビボでの使用におけるLAPONITEの生体適合性をさらに調査する必要があり、この事実により、臨床用途におけるその使用を困難にする。
【0004】
上記の理由により、新しいせん断減粘材料ならびにそれらを作製および使用するための方法が当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
以下に議論されるように、本発明者らは、シリケートナノプレートレット(LAPONITE XLG)およびゼラチンベースのポリマーを使用して、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を負荷した(loaded)注入可能なせん断減粘生体材料(STB)を開発した。注入可能なSTBは、注入の間のせん断応力の適用によって注入され得、そして応力の除去後に迅速に自己治癒し得るヒドロゲルの1つのクラスである。STBは、シリンジを通して容易に適用され、標的部位で迅速なゾル-ゲル転移を受けるその能力により、特に、薬物および細胞の送達のために、ならびに低侵襲様式での血管内塞栓形成のために、生物医学分野においてかなりの注目を集めている。LAPONITE(LAPONITE XLG)は、直径25nm、厚さ約1nmの合成ディスク状シリケートナノ粒子である。LAPONITEの表面は負に帯電しているが、その薄片は正に帯電している。これらの独特の特徴は、このクレイがせん断減粘特性を有するヒドロゲルを形成することを可能にするだけでなく、静電相互作用を介して様々な薬物を吸着することによって薬物を送達する有望な可能性を与える。本明細書において、本発明者らは、LAPONITEおよびゼラチンを含有する注入可能なSTBを利用して、チェックポイント遮断および血管内塞栓形成を組み合わせることによって腫瘍治療を増強する戦略を説明した。スキーム1(図4)に示されるように、PD-1遮断抗体(抗PD-1)分子は、静電相互作用を介してLAPONITEの表面に最初に吸着され、その後、STBの形態でシリンジを介して腫瘍付近の脈管構造に送達される。抗PD-1は、STBから放出され、次いで、腫瘍の内部に入る。
【0006】
本明細書に開示される発明は、多くの実施形態を有する。本発明の実施形態は、例えば、典型的には免疫チェックポイント阻害剤抗体(例えば抗PD-1)などの治療剤である、ゼラチン、シリケートナノ粒子、およびポリペプチドを含む組成物を含む。このような組成物において、ゼラチン、シリケートナノ粒子、およびポリペプチドの量は、せん断減粘ヒドロゲルを形成するように選択される。本発明の特定の実施形態において、組成物は、約1%(w/w)~約5%(w/w)のゼラチン(例えば、約1%(w/w)~約2%(w/w)~約3%(w/w)~約4%(w/w)~約5%(w/w)のいずれかの範囲のゼラチン)(換言すれば、上記の数値のいずれか2つの間の範囲)、および約1%(w/w)~約5%(w/w)のシリケートナノ粒子(例えば、約1%(w/w)~約2%(w/w)~約3%(w/w)~約4%(w/w)~約5%(w/w)のいずれかの範囲のシリケートナノ粒子)を含む。本発明の特定の実施形態では、組成物は、約0.5%(w/w)~約85%(w/w)のゼラチンおよびシリケートナノ粒子(例えば、約0.5%(w/w)~約1%(w/w)~約2%(w/w)~約5%(w/w)~約10%(w/w)~約25%(w/w)~約50%(w/w)~約75%(w/w)~約85%(w/w)のいずれかの範囲のゼラチンおよびシリケートナノ粒子)を含む。本発明の特定の実施形態では、ゼラチンに対するシリケートナノ粒子の比は、約1.0~約0.1(例えば、約1.0~約0.9~約0.8~約0.7~約0.6~約0.5~約0.4~約0.3~約0.2~約0.1のいずれかの範囲)である。特定の実施形態では、ゼラチンは、メタクリル化ゼラチン(GelMA)、アクリル化ゼラチン、またはチオール化ゼラチンである。本発明の特定の実施形態では、組成物は、約0.5%(w/w)~約99%(w/w)の水(例えば、約0.5%(w/w)~約1%(w/w)~約2%(w/w)~約5%(w/w)~約10%(w/w)~約25%(w/w)~約50%(w/w)~約75%(w/w)~約90%(w/w)~約95%(w/w)~約97.5%(w/w)~約99%(w/w)のいずれかの範囲の水)を含む。特定の実施形態では、組成物は、約0.01%(w/w)~約20%(w/w)のポリペプチド治療剤(例えば、約0.01%(w/w)~約0.02%(w/w)~約0.5%(w/w)~約1%(w/w)~約2%(w/w)~約5%(w/w)~約10%(w/w)~約15%(w/w)~約20%(w/w)のいずれかの範囲のポリペプチド治療剤)を含む。特定の実施形態では、ポリペプチド治療剤は、サイトカイン、抗体、抗がん酵素、腫瘍抗原、およびアポトーシス促進性タンパク質またはペプチドからなる群から選択される。特定の実施形態では、ポリペプチド治療剤は、IL-2、IL-12、IFN-γ、TNF-α、トラスツズマブ、パーツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、カスパーゼ-3、リコンビナーゼ(Cre)、L-アスパラギナーゼ、RNase A、DNase I、cGAMPシンターゼ、グランザイムB、カタラーゼ、OVA、TRP2、Hpg10025-33、p-AH1-A5、MAGE-A3、p53、シトクロムc、KLAKLAKKLAKLAKGG、PTEN、およびサポリンからなる群から選択される。典型的には、これらの組成物は、保存剤、張度調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、糖、およびpH調整剤からなる群から選択される薬学的賦形剤をさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、ヒトがん細胞をさらに含む。本発明の組成物は、1つ以上のポリペプチド治療剤または他の薬剤を含む。本発明の例示的な実施形態において、治療剤は抗PD-1抗体である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、成分の量は、7.4のpHを有する環境に配置されたとき、15日の期間にわたって10%未満もしくは5%未満の薬剤が減粘ヒドロゲルから放出され、5.0のpHを有する環境に配置されたとき、15日の期間にわたって5%超もしくは10%超がせん断減粘ヒドロゲルから放出されるような量である。本発明の特定の実施形態では、せん断減粘ヒドロゲルが、0.8mm(2.4Fr)カテーテル/1mL(1cc)シリンジからせん断減粘ヒドロゲルを押し出すために、少なくとも5ニュートンであるが30ニュートン未満の射出力を必要とする。
【0008】
本発明の別の実施形態は、本明細書に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を作製する方法であって、球状シリカナノ粒子、ゼラチン、および抗PD-1抗体などの小治療剤分子、ならびに場合により薬学的賦形剤を一緒に組み合わせて、せん断減粘生体適合性組成物を形成するステップを含む方法である。これらの方法の特定の実施形態では、球状シリカナノ粒子の表面特性、球状シリカナノ粒子の中位径、球状シリカナノ粒子の相対量、および/またはゼラチンの相対量などは、せん断減粘生体適合性組成物の1つ以上のレオロジー特性またはポリペプチド放出プロファイルを調整または調節するように選択される。この様式で本発明の組成物の機械的特性を調節することによって、本発明の実施形態は、種々の異なる臨床用途における使用に適合され得る。
【0009】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を、予め選択された部位(例えば、がん細胞を含むインビボ位置)に送達する方法である。典型的には、このような方法は、開口部を含む第1の末端および第2の末端を有する容器(例えば、カテーテル)中に組成物を配置するステップ;この容器の第2の末端に力を印加するステップであって、この力は、この組成物を液化するのに十分である、ステップ;次いで、この組成物を、この容器から開口部を通して予め選択された部位に送達するステップを含む。いくつかの実施形態では、容器は、組成物が負荷されたシリンジを含み、シリンジは、針および/またはカテーテルチューブと流体連通するように構成される。そのような方法の実施形態は、抗体などの治療用ポリペプチドを送達するために、本明細書に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を使用する治療レジメンを含む。特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において固形腫瘍を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に開示されているせん断減粘生体適合性組成物を投与するステップを含む方法を対象とする。特定の実施形態では、固形腫瘍は、血管腫瘍、脳腫瘍(例えば、髄膜腫または膠芽腫)、脊髄腫瘍、頚動脈小体腫瘍、肝臓がん、肺がん、神経内分泌腫瘍、腎腫瘍、膵臓腫瘍、または前立腺腫瘍から選択される。特定の実施形態では、固形腫瘍は、皮膚がん(例えば、メラノーマ、肥満細胞腫瘍、扁平上皮がん、または基底細胞腫瘍)、乳がん、肉腫性腫瘍(例えば、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、または軟骨肉腫)、およびリンパ腫性腫瘍から選択される。特定の実施形態では、組成物は、治療を必要とする局所領域に投与される。特定の実施形態では、組成物は、治療有効量のポリペプチド治療剤の局所領域への持続放出を提供する。特定の実施形態では、局所領域は固形腫瘍を含む。特定の実施形態では、組成物は、腫瘍塞栓形成および治療有効量のポリペプチド治療剤の腫瘍への持続放出を提供する。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から当業者にとって明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明のいくつかの実施形態を示すが、限定ではなく、例証として与えられることを理解されたい。本発明の趣旨から逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの変更および修正を行うことができ、本発明はそのようなすべての修正を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】PBS(pH=7.4)中の異なるラポナイト/ゼラチン比を有するSTHから放出された抗PD-1を示す。
図1B】PBS(pH=7.4)中の異なる抗体濃度で負荷した様々な組成物から放出された抗PD-1を示す。
図1C】同上。
図1D】異なるpH条件下での抗PD-1抗体を負荷したSTBを含む様々な組成物からの放出プロファイルデータを示す。
図1E】同上。
図2A】異なる抗体濃度を有するSTBの様々な組成物からのせん断応力データを示す。
図2B】同上。
図2C】異なる抗体濃度を有するSTBの様々な組成物の機械的特性を示す。
図2D】同上。
図3A】本発明の実施形態で治療された腫瘍の写真を示す。
図3B】抗PD-1抗体を負荷したSTBの直接接触抗がん効果を評価するインビボ研究からのデータを提供する。
図3C】屠殺の日の腫瘍重量研究からのデータを示す。
図4】抗PD-1送達と血管内塞栓形成とを組み合わせることによって腫瘍治療を増強するための注入可能なSTHの二重機能の図であるスキーム1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の説明では、本明細書の一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す添付の図面を参照する場合がある。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、構造的変更を行ってもよいことを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語、表記、および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明確にするために、および/または容易に参照するために本明細書において定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも、当技術分野において一般的に理解されるものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書に説明または参照される技術および手順の態様の多くは、当業者によって十分に理解され、一般的に使用される。以下の本文は、本発明の様々な実施形態を説明する。
【0013】
せん断減粘生体材料(STB)技術は、内部に負荷された固体ポリマーおよび薬物がカテーテルなどの手段によって標的領域に直接容易に送達されることを可能にする独特の特性を提供する。これを考慮して、本発明者らは、シリカナノ粒子およびゼラチンベースのポリマーを使用して、新規なせん断減粘生体材料のクラスを開発した。本発明の実施形態は、例えば、シリカナノ粒子、ゼラチン、および抗体などのポリペプチドを含むせん断減粘生体適合性組成物を含む。無機複合組成物の中で、シリカは、「一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe)(GRAS)」FDAとして分類され、最も生体適合性の材料の1つと考えられている。このことを考慮して、シリケートナノ粒子は、表面電荷および生物活性特性を有するそれらの均一な粒子サイズに起因して、活性成分またはレオロジー改質剤として医薬品、化粧品、および食品産業において使用されてきた[9、10]。加えて、シリカナノ粒子のサイズ、構造、表面特性を容易に調整することができ、これらの特性により、シリカナノ粒子は、多種多様な生物医学的用途において有用な材料のクラスを提供することができる。
【0014】
本発明の組成物は、さらなる成分(例えば、さらなるポリマー、賦形剤、治療剤など)を含み得る。例えば、本発明の組成物は、1つ以上の食品医薬品局(FDA)承認ポリマーまたは細胞適合性ポリマーを含み得る。このようなポリマーとしては、アルギネート、キトサン、コラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、コンドロイチン硫酸(ChS)、デキストリン、ゼラチン、フィブリン、ペプチド、およびシルクが挙げられる。合成ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポロキサマー(Pluronic(登録商標))(PEO-PPO-PEO)、ポリオキサミン(Tetronic(登録商標))(PEO-PPO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-グルタミン酸)(PLga)、ポリ無水物、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリアニリンなど)もまた、本発明の組成物中に含まれ得る。当該分野で公知のように、ヒドロゲルの調製物は、化学的または物理的のいずれかで架橋された材料を含むように作製されてもよい。
【0015】
本発明の組成物の特定の実施形態は、例えば、薬学的賦形剤(例えば、保存剤、張度調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、糖、およびpH調整剤からなる群より選択されるもの)を含む。ヒトへの投与に適切な組成物について、「賦形剤」という用語は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins,21st ed.(2006)(その内容は、本明細書中に参照により援用される)に説明される成分を含むことを意味するが、これらに限定されない。
【0016】
必要に応じて、本発明の組成物は、1つ以上のポリペプチド治療剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤など)を含む。本明細書に開示される本発明の実施形態において、ポリペプチド治療剤は、抗PD-1抗体である。本発明の組成物は、薬物、細胞、タンパク質、および生物活性分子(例えば、酵素)などの治療剤の担体またはスキャフォールドとして使用するために製剤化され得る。担体として、このような組成物は、薬剤を組み込むことができ、種々の病理学的状態の治療のために体内の所望の部位に薬剤を送達し得る。病理学的状態には、例えば、感染症および炎症性疾患(例えば、パーキンソン病、細菌性および抗菌性感染症、糖尿病など)、ならびにがん(例えば、結腸がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、リンパ腫がんなど)が含まれる。さらに、スキャフォールドとして、本発明の組成物は、組織修復および所望の組織の再生(例えば、軟骨、骨、網膜、脳、および神経組織の修復、血管再生、創傷治癒など)において使用するための細胞および他の薬剤のための柔軟な滞留空間を提供することができる。さらに、本発明の実施形態は、例えば、免疫系の構成要素を調節するために、免疫療法に有用な免疫調節剤を含み得る。本発明のそのような実施形態における使用に適合され得る特定の例示的な材料及び方法は、例えば、Hydrogels:Design,Synthesis and Application in Drug Delivery and Regenerative Medicine 1st Edition,Singh,Laverty and Donnelly Eds;およびHydrogels in Biology and Medicine(Polymer Science and Technology)UK ed.Edition by J.Michalek et al.において見出される。
【0017】
本発明の実施形態は、例えば、ゼラチン、シリケートナノ粒子、およびポリペプチドを含む組成物を含む。このような組成物において、ゼラチン、シリケートナノ粒子、およびポリペプチドの量は、せん断減粘ヒドロゲルを形成するように選択される。本発明の特定の実施形態では、組成物は、約1%~約5%のゼラチン、および約1%~約5%のシリケートナノ粒子を含む。典型的には、これらの組成物は、保存剤、張度調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、糖、およびpH調整剤からなる群から選択される薬学的賦形剤をさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、ヒトがん細胞をさらに含む。本発明の例示的な実施形態では、ポリペプチドは抗PD-1抗体である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、使用者が組成物の1つ以上のレオロジー特性を調節することを容易にするその能力について選択された容器(例えば、カテーテル)内に配置される。本発明の実施形態における使用のために適合され得る特定の例示的な材料および方法は、例えば、Biomedical Hydrogels:Biochemistry,Manufacture and Medical Applications(Woodhead Publishing Series in Biomaterials)1st Edition;Steve Rimmer (Editor)において見出される。本発明の例示的な実施形態である図2A~2Dに示されるように、組成物の成分は、望ましいレオロジー特性を提供するように選択される。
【0019】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を、予め選択された部位(例えば、個体が外傷もしくは傷害を経験したか、またはがんなどの病変を示すインビボ位置)に送達する方法である。典型的には、このような方法は、開口部を含む第1の末端および第2の末端を有する容器(例えば、カテーテル)中に組成物を配置するステップ;この容器の第2の末端に力を印加するステップであって、この力は、この組成物を液化するのに十分である、ステップ;次いで、この組成物を、この容器から開口部を通して予め選択された部位に送達するステップを含む。そのような方法の実施形態は、例えば、図3A~3Cに示されるような治療剤を送達するために、本明細書に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を使用する治療レジメンを含む。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書に開示されるせん断減粘生体適合性組成物を作製する方法であって、シリカナノ粒子およびゼラチン、ポリペプチド(例えば、抗PD-1抗体)、ならびに場合により薬学的賦形剤を一緒に組み合わせて、せん断減粘生体適合性組成物を形成するステップを含む方法である。これらの方法の特定の実施形態では、シリカナノ粒子の表面特性、シリカナノ粒子の中位径、シリカナノ粒子の相対量、および/またはゼラチンの相対量などは、せん断減粘生体適合性組成物の1つ以上のレオロジー特性またはポリペプチド放出プロファイル特性を調整または調節するように選択される。この様式で本発明の組成物の機械的特性を調節することによって、本発明の実施形態は、種々の異なる臨床用途における使用に適合され得る。これに関連して、例えば、米国特許出願公開第20050227910号明細書、同第20100120149号明細書、同第20120315265号明細書、同第20140302051号明細書、および同第20190290804号明細書;ならびにLee,Biomaterials Research volume 22,Article number:27(2018);Thambi et al.,J Control Release.2017 Dec 10;267:57-66.doi:10.1016/j.jconrel.2017.08.006.Epub 2017 Aug 4;およびGianonni et al.,Biomater.Sci.,2016(これらの内容は、参照により援用される)に開示されているものなどの、当技術分野で認められている多種多様な材料および方法を、本発明の実施形態における使用に適合させることができる。
【0021】
本発明の例示的な材料および方法
本発明の例示的な実施形態として、本発明者らは、シリケートナノプレートレット(LAPONITE XLG)およびゼラチンベースのポリマーを使用して、抗PD-1抗体が負荷された注入可能なせん断減粘生体材料(STB)を開発した。せん断減粘生体材料技術は、内部に負荷された薬物が針またはカテーテルを通して標的領域に直接容易に送達されることを可能にする独特の特性を提供する。本発明者らは、せん断減粘生体材料が、1)注入可能であって適用が容易であり、2)注入後の高い機械的安定性によって高い局在化を示すという事実に焦点を当てた。したがって、本発明者らは、固形腫瘍を治療するために、抗がん剤抗PD-1抗体をせん断減粘材料に負荷した。
【0022】
本発明者らは、ICI負荷生体材料について3つの異なるSTB組成物(ゼラチン4.5%/LAPONITE1.5%[6NC25];ゼラチン3.0%/LAPONITE3.0%[6NC50];ゼラチン1.5%/LAPONITE4.5%[6NC75])を試験し、抗PD-1抗体放出プロファイルを30日間分析した(図1A)。STBからの抗PD-1の放出速度は、STB中のLAPONITE含有量の増加と共に急激に減少した。図1Bおよび1Cに示すように、抗体濃度を0.5μg/mgSTB~5.0μg/mgSTBの範囲に調整した場合、抗PD-1の放出速度は、6NC50の場合、1μg/mgSTB(2.58±0.05%)から5.0μg/mgSTB(8.92±0.14%)に顕著に増加した(図1C)。一方、抗PD-1の最も高い放出は、6NC25の場合、1μg/mgSTBの抗体濃度で観察された(図1B)。異なるpH値(7.4、6.0、および5.0)を有するPBSを使用して、抗PD-1の放出に対するその影響を評価した(図1Dおよび1E)。結果は、抗PD-1の放出が酸性条件において大幅に改善されたことを示す。
【0023】
図2Aおよび2Bに示されるように、同様のせん断応力-せん断速度曲線が、異なる濃度の抗PD-1を負荷した6NC25において観察され、37℃での抗体の負荷後の6NC25および6NC50のせん断減粘挙動に対して有意な影響がないことを示した。貯蔵弾性率は、高ひずみ(100%)および低ひずみ(1%)の適用後の液体様挙動から固体様挙動への回復を反映する。図2Cおよび2Dは、高(100%)から低(1%)振動歪み振幅の5サイクル後の、異なる濃度の抗PD-1を負荷したSTBの貯蔵弾性率を示した。6NC25および6NC50の場合、100%ひずみ振動中の貯蔵弾性率は、5サイクル後の高ひずみ中の初期値よりわずかに低く、LAPONITEおよびゼラチンからなる有機-無機ハイブリッドネットワークの急速な回復を示した。これらの結果は、STBのせん断減粘能および貯蔵弾性率の両方が、異なる濃度の抗PD-1の負荷にかかわらず、生理学的温度下で安定したままであることを示す。
【0024】
最後に、B16F10メラノーマ腫瘍細胞をC57Bl/6Jマウスに皮下注入することによって作製されたメラノーマ腫瘍モデルにおいて、ICI-STBのインビボ抗がん有効性を分析した(図3A)。概して、STB(6NC25)自体は抗がん有効性を示さなかったが、腫瘍サイズは抗PD-1を負荷した6NC25において減少した。2日毎にカリパスによって測定された腫瘍成長曲線において、抗PD-1を負荷したSTB群は、メラノーマ成長を阻害することが見出された(図3B)。興味深いことに、ICI-STB(抗PD-1を負荷した6NC25)の腫瘍重量中央値は、他の腫瘍重量よりも小さかった(図3C)。
【0025】
要約すると、本発明者らは、選択された所望の特性を有する抗PD-1抗体、ゼラチン、および生体適合性シリカナノ粒子の複合体を有する新規なせん断減粘生体材料を開発した。ゲル化/シリカナノ粒子の粒子サイズおよび組成などのシリカナノ粒子の特性を調整することによって、機械的特性およびレオロジー特性は、異なる要件を満たすように慎重に調整され得る。これらの実験で使用される全ての組成物は、異なるサイズのカテーテルを通して注入可能である。レオロジー試験は、せん断減粘特性による迅速な回復および機械的安定性を示した。ゼラチン-シリカナノ粒子ベースのSTBは、優れた生物学的安定性、体温押出性、せん断減粘挙動、および迅速なネットワーク回復性を示す。これらの魅力的な物理化学的特性は、インビボでの容易な投与に有利であり、ゼラチン-シリカナノ粒子ベースのSTBは、薬物送達、血管内塞栓形成、組織再生、バイオプリンティングにおいて、および他の生物医学的用途のために、大きな可能性を保持し得る。
【0026】
参考文献
【0027】
【表1-1】
【0028】
【表1-2】
【0029】
【表1-3】
【0030】
【表1-4】
【0031】
本明細書で言及される全ての刊行物(例えば、上記で数字として列挙された参考文献、および米国特許出願公開第20180104059号明細書)は、引用された刊行物に関連して態様、方法、および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に援用される。
【0032】
この仮出願に含まれる付属書は、雑誌に掲載するためにフォーマットされた発明の開示を提供する。本開示は、本発明の様々な態様および実施形態を示す。この付属書は、参照により本明細書に援用される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと、
シリケートナノ粒子と、
ポリペプチド治療剤と、を含み、
前記ゼラチン、前記シリケートナノ粒子、および前記ポリペプチド治療剤が、せん断減粘ヒドロゲルを形成する、せん断減粘ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
約1%(w/w)~約5%(w/w)のゼラチンと、
約1%(w/w)~約5%(w/w)のシリケートナノ粒子と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
7.4のpHを有する環境に配置されたとき、10%または5%未満の薬剤が、15日の期間にわたって前記せん断減粘ヒドロゲルから放出され、
5.0のpHを有する環境に配置されたとき、5%または10%超が、15日の期間にわたってせん断減粘ヒドロゲルから放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.5%(w/w)~約85%(w/w)のゼラチンおよびシリケートナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゼラチンに対する前記シリケートナノ粒子の比が、約1.0~約0.1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゼラチンが、メタクリル化ゼラチン(GelMA)、アクリル化ゼラチン、またはチオール化ゼラチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約0.5%(w/w)~約99%(w/w)の水をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約0.01%(w/w)~約20%(w/w)のポリペプチド治療剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチド治療剤が、サイトカイン、抗体、抗がん酵素、腫瘍抗原、およびアポトーシス促進性タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチド治療剤は、IL-2、IL-12、IFN-γ、TNF-α、トラスツズマブ、パーツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、カスパーゼ-3、リコンビナーゼ(Cre)、L-アスパラギナーゼ、RNase A、DNase I、cGAMPシンターゼ、グランザイムB、カタラーゼ、OVA、TRP2、Hpg10025-33、p-AH1-A5、MAGE-A3、p53、シトクロムc、KLAKLAKKLAKLAKGG、PTEN、およびサポリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチド治療剤が抗PD-1抗体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記せん断減粘ヒドロゲルが、0.8mm(2.4Fr)カテーテル/1mL(1cc)シリンジから前記せん断減粘ヒドロゲルを押し出すために、少なくとも5ニュートンであるが30ニュートン未満の射出力を必要とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ヒトがん細胞をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
保存剤、張度調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、糖、およびpH調整剤から選択される薬学的賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
組成物がカテーテル内に配置される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリケートナノ粒子がLAPONITEを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法であって、シリカナノ粒子と、ゼラチンと、ポリペプチドと、場合により薬学的賦形剤とを一緒に組み合わせて、せん断減粘生体適合性組成物を形成することを含む、方法。
【請求項18】
シリカナノ粒子の相対量および/またはゼラチンの相対量が、前記組成物の1つ以上のレオロジー特性および/または前記せん断減粘ヒドロゲルからの前記ポリペプチドの放出プロファイルを調整または調節するように選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療有効量の前記組成物を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象において固形腫瘍を治療する方法において使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物
【請求項20】
前記固形腫瘍が、血管腫瘍、脳腫瘍、脊髄腫瘍、頚動脈小体腫瘍、肝臓がん、肺がん、神経内分泌腫瘍、腎臓腫瘍、膵臓腫瘍、および前立腺腫瘍からなる群より選択される、請求項19に記載の組成物
【請求項21】
前記脳腫瘍が髄膜腫または膠芽腫である、請求項20に記載の組成物
【請求項22】
前記固形腫瘍が、皮膚がん、乳がん、肉腫性腫瘍、およびリンパ腫性腫瘍からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物
【請求項23】
前記皮膚がんが、メラノーマ、肥満細胞腫瘍、扁平上皮がん、または基底細胞腫瘍からなる群から選択され、
前記肉腫性腫瘍は、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、および軟骨肉腫からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物
【請求項24】
前記組成物が、治療を必要とする局所領域に投与される、請求項19に記載の組成物
【請求項25】
前記組成物が、前記局所領域への治療有効量の前記ポリペプチド治療剤の持続放出を提供する、請求項24に記載の組成物
【請求項26】
前記局所領域が固形腫瘍を含む、請求項25に記載の組成物
【請求項27】
前記組成物が、腫瘍塞栓形成および治療有効量の前記ポリペプチド治療剤の前記固形腫瘍への持続放出を提供する、請求項19に記載の組成物
【国際調査報告】