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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】トルク制限カップリング
(51)【国際特許分類】
   F16D 9/06 20060101AFI20240927BHJP
   F16D 1/09 20060101ALI20240927BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16D9/06
F16D1/09 300
F16D7/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519480
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022069080
(87)【国際公開番号】W WO2023051968
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21199694.7
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ティーレン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ベルクストレーム
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス アルビンソン
(57)【要約】
第1の軸(1)と、第1の軸(1)に固く結合された剪断プレート(9)と、第1の軸(1)に対して同軸に配置されたカップリングリング(3,3a)とを有するトルク制限カップリング(20,20a)であって、カップリングリング(3,3a)は、第1の軸(1)の側面に接触する側面を有しており、カップリングリング(3,3a)は、内部環状圧力流体室(6)を備える二重壁部分(3a,4)を有しており、二重壁部分(3a,4)は、流体室(6)が加圧流体で満たされると、この部分が、その半径方向厚さを増大させ、これにより、トルク伝達を可能にするために、カップリングリング(3,3a)の側面と第1の軸(1)の側面との間の圧力および摩擦力が増大し、流体室(6)が加圧流体で満たされていないと、前記カップリングリング(3,3a)はトルクを伝達しないように設計されており、カップリングリング(3,3a)は、圧力を保持するために加圧流体室(6)を閉じる剪断管(8)を有しており、第1の軸(1)がカップリングリング(3,3a)に対して相対的に滑っている場合、つまりトルクが、流体圧力およびカップリングの設計により与えられる所定の伝達可能な最大トルクよりも高い場合には、圧力流体室を開放するために、剪断プレート(9)が剪断管(8)の先端を切断するように設計されており、第1の軸(1)は、円錐形コネクタ(1.1)を有しており、剪断プレート(9)に結合されたまたは剪断プレート(9)の一部である円錐形ブシュ(10)を、円錐形コネクタ(1.1)に押し付けることにより、剪断プレート(9)は、1つの中心ボルト(11)により第1の軸(1)に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸(1)と、該第1の軸(1)に固く結合された剪断プレート(9)と、前記第1の軸(1)に対して同軸に配置されたカップリングリング(3,3a)とを有するトルク制限カップリング(20,20a)であって、
前記カップリングリング(3,3a)は、前記第1の軸(1)の側面に接触する側面を有しており、前記カップリングリング(3,3a)は、内部環状圧力流体室(6)を備える二重壁部分(3a,4)を有しており、該二重壁部分(3a,4)は、前記流体室(6)が加圧流体で満たされると、この部分が、その半径方向厚さを増大させ、これにより、トルク伝達を可能にするために、前記カップリングリング(3,3a)の前記側面と前記第1の軸(1)の前記側面との間の圧力および摩擦力が増大し、前記流体室(6)が加圧流体で満たされていないと、前記カップリングリング(3,3a)はトルクを伝達しないように設計されており、
前記カップリングリング(3,3a)は、圧力を保持するために前記加圧流体室(6)を閉じる剪断管(8)を有しており、前記第1の軸(1)が前記カップリングリング(3,3a)に対して相対的に滑っている場合、つまりトルクが、流体圧力および前記カップリングの設計により与えられる所定の伝達可能な最大トルクよりも高い場合には、前記圧力流体室を開放するために、前記剪断プレート(9)が前記剪断管(8)の先端を切断するように設計されている、トルク制限カップリング(20,20a)において、
前記第1の軸(1)は、円錐形コネクタ(1.1)を有しており、前記剪断プレート(9)に結合されたまたは前記剪断プレート(9)の一部である円錐形ブシュ(10)を、前記円錐形コネクタ(1.1)に押し付けることにより、前記剪断プレート(9)は、1つの中心ボルト(11)により前記第1の軸(1)に固定されている
ことを特徴とする、トルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項2】
前記剪断プレート(9)は、少なくとも2つの凹所(18)を有しており、これらの凹所(18)はそれぞれ、前記剪断管(8)を切断するのに適した剪断エッジ(15)を備えており、かつ好適には、前記剪断プレートの互いに反対の側に位置している、請求項1記載のトルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項3】
前記剪断プレート(9)は、軸線(19)に対して少なくとも20°、好適には少なくとも40°の開口角度βを有する開口領域を提供する少なくとも1つの凹所(18)を有している、請求項1または2記載のトルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項4】
前記円錐形コネクタ(1.1)は、6°超の、好適には12°超のテーパの角度αを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項5】
前記円錐形コネクタ(1.1)は、35°未満の、好適には25°未満のテーパの角度αを有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項6】
前記円錐形ブシュ(10)と前記剪断プレート(9)とは、一体に製造されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20,20a)。
【請求項7】
前記トルク制限カップリング(20)は、前記カップリングリング(3)に結合された第2の軸(2)を有しており、前記カップリングリング(3)は、半径方向(R)において前記第1の軸(1)と前記第2の軸(2)との間に配置されたカップリングスリーブ(4)を有しており、該カップリングスリーブ(4)は、内部環状圧力流体室(6)を備えた二重壁部分である、請求項1から6までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項8】
前記カップリングスリーブ(4)の長さLは、50mm~250mm、好適には80mm~180mmである、請求項7記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項9】
半径方向Rにおける前記カップリングスリーブ(4)の厚さは、10mm~30mmである、請求項7または8記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項10】
前記トルク制限カップリング(20)は、前記第1の軸(1)と前記第2の軸(2)との間、または前記第1の軸と前記カップリングリング(3)との間に第1のころ軸受(14)を有しており、かつ前記第1の軸(1)と前記カップリングリング(3)との間に第2のころ軸受(13)を有している、請求項7から9までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項11】
前記第2の軸(2)は、電動モータのロータ(21)の中空軸である、請求項7から10までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項12】
前記第1の軸(1)は、電動モータの被駆動軸であり、負荷(22)または歯車に結合される、請求項1から11までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20)。
【請求項13】
前記トルク制限カップリング(20)は、トンネル掘削機の主駆動系に使用されるように設計されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のトルク制限カップリング(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の軸と、第1の軸に固く結合された剪断プレートと、第1の軸に対して同軸に配置されたカップリングリングとを有するトルク制限カップリングであって、カップリングリングは、第1の軸の側面に接触する側面を有しており、カップリングリングは、内部環状圧力流体室を備える二重壁部分を有しており、二重壁部分は、流体室が加圧流体で満たされると、この部分が、その半径方向厚さを増大させ、これにより、トルク伝達を可能にするために、カップリングリングの側面と第1の軸の側面との間の圧力および摩擦力が増大するように設計されている、トルク制限カップリングに関する。流体室が加圧流体で満たされていない場合には、カップリングリングはもはやトルクを伝達しなくなる。なぜならば、カップリングリングの接触側面は、摩擦力が存在しないかまたは低下することにより、第1の軸の側面に対して相対的に回転することができるからである。
【0002】
カップリングリングはさらに、圧力を保持するために加圧流体室を閉じる剪断管を有しており、第1の軸がカップリングリングに対して相対的に滑っている場合、つまりトルクが、流体圧力およびカップリングの設計により与えられる所定の伝達可能な最大トルクよりも高い場合には、圧力流体室を開放するために、剪断プレートが剪断管の先端を切断するように設計されている。剪断管の先端を切断することにより、圧力流体室が開放され、流体圧力が軽減される。これにより、カップリングリングの側面と第1の軸の側面との間の表面圧力が低下し、トルクが伝達されなくなる。この構成により、例えば駆動系の負荷側がロックした場合またはトルクが過度に高い場合に、駆動系が過負荷から保護される。
【0003】
圧力流体室が加圧流体で再び満たされて、例えば新たな剪断管により開口が閉じられた後に、カップリングがリセットされ、再び第1の軸とカップリングリングとの間でトルクを伝達する。
【0004】
このようなトルク制限カップリングは、例えば図5による実施形態に示すような、米国特許第4,264,229号明細書に開示された従来技術において公知である。これらのカップリングは、多くの場合、駆動系を過負荷から保護するセーフティカップリングとして使用される。セーフティカップリングは、負荷側においてロックが生じる可能性のある駆動系にとって特に重要である。
【0005】
これらのカップリングは、カップリングリングを含み、カップリングリングの厚さは、このリング内の加圧流体室により増大させることができる。したがって、トルクを伝達するのに十分な接触圧力が形成される。流体圧力が軽減されると、接触圧力と、これに伴う摩擦力とが低下し、トルク伝達はもはや不可能になる。軸とカップリングリングとは、互いに相対的に回転する。
【0006】
トルク制限カップリングは、高い信頼性を提供する必要があり、取付け用に過度に大きなスペースを取ることは望ましくなく、カップリングの解除後に容易に再充填可能であることが望ましい。これらは、多くの用途において異なる要求である。正しい組立ては、極めて難しく、機能性に関して重要である。このことは、より簡単になると共に、故障の影響を受けにくくなる必要がある。
【0007】
本発明の課題は、上述の問題を克服するために、取付け用スペースを節約し、信頼性を高め、より簡単な組立てを可能にすると共に、コストを削減することにより、トルク制限カップリングを改良することにある。
【0008】
この課題は、請求項1記載のトルク制限カップリングにより解決される。本発明による実施形態に関するその他の有利な特徴は、各従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明によるトルク制限カップリングは、第1の軸が円錐形コネクタを有しており、剪断プレートに結合されたまたは剪断プレートの一部である円錐形ブシュを、円錐形コネクタに押し付けることにより、剪断プレートは、1つの中心ボルトにより第1の軸に固定されていることを特徴とする。この本発明の設計により、取付けおよび解除後の再充填がより簡単になる一方で、カップリングは極めて信頼性の高いものである。分解に関しても、このトルク制限カップリングは、公知の設計とは対照的に有利である。
【0010】
1つの利点は、剪断プレートが、取付け用の小さな所要スペースで第1の軸に確実に結合される点にある。円錐形コネクタと、剪断プレートの適切な円錐形ブシュとは、ボルトの極めて低い締付けトルクにおいても、第1の軸と剪断プレートとの間に高い摩擦力を提供する。これにより、より小さなボルトを使用することが可能になり、このことは、一方では構成要素のためのスペースを節約し、かつ他方では組立て用により小さな工具を使用する可能性を生ぜしめる。多くの場合、構成要素自体のためのスペースが制限されているだけでなく、組立て中に工具を取り扱うためのスペースも制限されている。さらに、組立てがより簡単でより迅速になる。
【0011】
この解決手段の1つの別の利点は、カップリングの解除後に再充填するための、より良好なアクセスにある。カップリングの解除後に剪断管を切断し、交換する必要がある。多くの場合、剪断プレートは、剪断管の孔へのアクセスを遮断している。本発明による設計では、剪断プレートは、固定用の1つの中心ボルトのみにより、第1の軸に固定されている。これにより、ボルトを緩め、剪断プレートのみを第1の軸に対して独立して回転させるだけで、剪断プレートの凹所が剪断管の位置を越えることが常に可能になる。剪断管を交換した後に、剪断プレートを任意の角度位置に固定することができる。このようにして、再充填およびカップリングのリセットを最小限の労力で行うことができる。
【0012】
剪断管にアクセスするために、剪断プレート全体を取り外して再び取り付けるか、または第1の軸をカップリングリングに対して相対的に回転させてアクセスする必要はない。このことが必要になるのは、剪断プレートを取り付けるためにより多くのボルトが使用された場合である。これら2つの選択肢は、停止中の駆動系において問題を生ぜしめ、再充填をより複雑にする。
【0013】
その他のメンテナンス作業についても、有利には新たな設計により、分解および再組立てのためのより簡単な方法が得られる。
【0014】
明確に言うと、本発明に基づき請求するように、第1の軸と剪断プレートとの間の円錐形の結合部は、第1の軸におけるピンのような円錐形コネクタと、適切なキャビティを備えた円錐形ブシュとであってもよい。または逆に、円錐形ブシュが円錐形ピンを形成しており、かつ円錐形コネクタが第1の軸に適当な円錐形キャビティとして形成されている。
【0015】
カップリング用の1つの好適な圧力流体は、油またはこの機能に適した別の任意の流体である。
【0016】
1つの好適な実施形態では、剪断プレートは、少なくとも2つの凹所を有しており、これらの凹所はそれぞれ、剪断管を切断するのに適した剪断エッジを備えている。互いに反対側の位置に設けられた2つの凹所により、改良されたバランスが達成される。
【0017】
1つの別の好適な実施形態では、剪断プレートは、軸線に対して少なくとも20°、好適には少なくとも40°の開口角度βを有する開口領域を提供する少なくとも1つの凹所、特に好適には少なくとも2つの凹所を有している。このように拡大された凹所により、特に剪断管にアクセスすると同時に圧力流体ポートにアクセスするための、カップリングリングへのアクセスが、さらに改良される。特に互いに反対側の位置において、少なくとも2つのこのように拡大された凹所を使用することにより、バランスが改良される。
【0018】
剪断エッジを備えた凹所に加えて、別のポートまたはねじ、例えば潤滑油ポートへの同時アクセスも提供する少なくとも2つの別の凹所を有していることが有利な場合がある。このようにして、カップリングの解除後に潤滑油が変更される場合でも、剪断プレートの完全な取外しを回避することができる。
【0019】
さらに、円錐形コネクタが6°超の、好適には12°超のテーパの角度αを有していると、トルク制限カップリングにとって有利である。このような角度αの下限値により、円錐形の結合部が自己保持式になることを回避することができる。鋼-鋼接触に関して通常は0.1~0.2の範囲内の摩擦係数に応じて、自己保持の限度は5°の範囲または最大11°である。自己保持を回避することにより、分解がより簡単になり、剪断プレートを小さな労力で回転させて、カップリングリングにアクセスし易くすることができる。
【0020】
別の好適な実施形態では、円錐形コネクタは、35°未満、好適には25°未満のテーパの角度αを有している。角度αのこのような上限により、円錐形の結合部における押付け効果が最適化され得る。ボルトの予荷重が低くても、結合に必要な強度を達成することができるため、より小さなボルトおよび適度な締付けトルクが使用され得る。
【0021】
円錐形コネクタと剪断プレートとが一体に製造されていると有利である。これにより、剪断プレートの取扱いがより簡単になると共に、剪断プレートの組立ておよび回転が最小限の労力で可能になる。このことは特に、駆動系内の限られたスペースにおいて好適である。
【0022】
1つの別の好適な実施形態は、追加的に、カップリングリングに結合された第2の軸を有するトルク制限カップリングであり、カップリングリングは、半径方向(R)において第1の軸と第2の軸との間に配置されたカップリングスリーブを有しており、カップリングスリーブは、内部環状圧力流体室を備えた二重壁部分である。この実施形態では、カップリングスリーブは、第1の軸の側面と第2の軸の側面との間でトルクを伝達する。第2の軸は、好適には中空軸により形成されている。利点は、カップリングリングが別個の構成要素である、という点にある。第1および第2の軸は、駆動系の駆動側または負荷側の一部であってもよい。
【0023】
カップリングのための1つの別の好適な実施形態では、カップリングスリーブの長さLは、50mm~250mm、好適には80mm~180mmである。この長さにより、一方ではトルク伝達用の十分な接触領域が存在し、かつ他方では、第2の軸の位置を調整するための十分な長さが存在している。長さLは、カップリングスリーブが第2の軸と接触している、長手方向における外面の長さとみなされる。
【0024】
カップリングスリーブの厚さを変化させることにより十分な接触圧力を生ぜしめるために、カップリングスリーブの厚さtは、10mm~30mmであることが有利である。その結果、必要な表面圧力を形成するために十分な、スリーブの安定性と可撓性とが生じる。伝達可能なトルクにとって重要なのは、カップリングスリーブの直径、長さおよび厚さ等の機械的特性ならびに流体圧力である。
【0025】
さらに、カップリングは、第1の軸と第2の軸との間、または第1の軸とカップリングリングとの間に第1のころ軸受を有しており、かつ第1の軸とカップリングリングとの間に第2のころ軸受を有していると有利である。これらのころ軸受を介して、圧力流体室が加圧流体で満たされていない場合に、第2の軸は、低下された摩擦を伴って第1の軸の周りで回転することができる。これにより、接触面の損傷のリスクが低下する。
【0026】
1つの特に好適な実施形態では、第2の軸は、電動モータのロータの中空軸である。第2の軸の調整の可能性を改善することにより、トルク制限カップリング内にロータの中空軸を直接包含することが可能である。
【0027】
さらに、第1の軸は、電動モータの被駆動軸により形成され、負荷または歯車に結合されることが可能である。
【0028】
この特徴により、トルク制限カップリングを電動モータに組み込むことが可能になり、使用時の取付けスペースが節約される。
【0029】
好適な使用では、トルク制限カップリングは、トンネル掘削機の主駆動系、特に主駆動装置の電動モータに使用されるように設計されている。特にトンネル掘削機では、駆動系を過負荷から確実に保護することが重要である。ただし、取付け用のスペースを節約すると共に、組立てを簡単にする必要もある。
【0030】
以下の図は、本発明による好適な実施形態を示す。上述の特徴は、様々な形式で組み合わせられてもよく、具体的に示す組合せに限定されることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による1つの実施形態を示す概略図である。
図2図2aは、本発明による実施形態を示す正面図であり、図2bは、本発明による実施形態を示す断面図である。
図3図3aおよび図3bは、カップリングスリーブを備えた本発明による別の実施形態を示す図である。
【0032】
以下に、図を詳細に説明する。同じ参照符号は、同じまたは類似の部品または構成要素を意味する。
【0033】
図1には、本発明による1つの好適な実施形態が示されている。トルク制限カップリング20aは、第1の軸1と、カップリングリング3aと、中心ボルト11により第1の軸1に固く結合された剪断プレート9とを含む。カップリングリング3aは、その軸線19でもって第1の軸1と同心的に配置されている。
【0034】
中心ボルト11は、円錐形ブシュ10を、第1の軸1の見えない円錐形コネクタ1.1に押し付ける。剪断プレート9は、それぞれ剪断エッジ15を備えたいくつかの凹所18を有している。伝達可能なトルクの最大限界よりも高い、過度に高いトルクの場合、第1の軸1は、カップリングリング3aに対して相対的に滑る。よって、第1の軸1に固く結合された剪断プレート9は、剪断エッジ15のうちの1つにより、剪断管8の先端を切断する。バランスをとるために、剪断プレートには、全周にわたり規則的に配分されたいくつかの凹所18が存在していてもよい。
【0035】
図2aには、トルク制限カップリング20aの正面図が示されている。カップリングの解除後に再充填するためには、剪断管8を新しいものと交換する必要がある。したがって、剪断管8の孔にアクセスすることが必要になる。中心ボルト11を緩めることにより、剪断プレート9は回転可能になり、任意の角度位置に調節され得る。剪断管8を交換した後に、中心ボルト11を締めることにより、剪断プレートが固定される。
【0036】
図2bには、A-Aに沿った断面図が示されている。駆動系に組み込まれる場合、第1の軸1は負荷21に結合され、カップリングリング3aは駆動装置またはモータ22に結合される。ロックした場合または過度に高いトルクの場合には、剪断管8が剪断プレート9により切断される。流体が、圧力流体室6から圧力流体通路7を通って流出し、これにより、第1の軸1とカップリングリング3aとの間の接触圧力が低下する。トルク伝達は、もはや行われない。カップリング20aが解除される。
【0037】
断面図は、ボルト11用の中心孔5を備えた第1の軸の円錐形コネクタ1.1と、剪断プレート9の円錐形ブシュ10とを示している。好適には、円錐形ブシュ10と剪断プレート9とは、一体に製造されている。択一的に、これらは固く結合された2つの部品として製造されていてもよい。中心ボルト11の締付けトルクにより、円錐形の結合部1.1,10が互いに押し付けられて、剪断プレート9と第1の軸1との間に耐トルク結合部を形成する。この円錐形の結合部において伝達可能なトルクは、カップリングにおいて伝達可能なトルクよりも大幅に高く、かつ剪断管8を確実に切断するために十分に高い必要がある。
【0038】
好適には、円錐角αは35°未満、特に25°未満である。この上限は、低い締付けトルクで、ひいてはより小さなボルトで、より高い圧力に到達するために設定されている。これにより、組立てがより簡単になり、取付け用の工具がより小さくなる。
【0039】
他方では、円錐角αの下限は、好適には少なくとも6°、特に少なくとも12°である。これにより、円錐形の結合部が自己保持式になることが回避される。自己保持は、分解の問題につながると共に、交換のために剪断管8にアクセスするために剪断プレート9を回転させ、剪断プレート9を緩めることを複雑にする恐れがある。
【0040】
図示の態様に対して択一的に、本発明の解決手段は、円錐形ブシュが円錐形ピンを形成しており、かつ円錐形コネクタが第1の軸に適当な円錐形キャビティとして形成されている円錐形結合部により実現されてもよい。
【0041】
図3aおよび図3bには、第1の軸1と、第2の軸2と、カップリングリング3とを別個の構成要素として備える、本発明によるトルク制限カップリング20の1つの好適な実施形態が示されている。第1の軸1は、負荷21に結合されているか、または負荷21に結合されるように設計されている。カップリングリング3は、第1の軸1の円筒面に取り付けられている。カップリングリング3は、結合フランジと、カップリングスリーブ4とを有している。カップリングスリーブ4は、半径方向Rにおいて第1の軸1と第2の軸2との間に配置されている。第2の軸2は、中空の軸またはハブとして設計されている。第2の軸2は、駆動装置22、例えば電動モータのロータに結合されているか、または結合されるように設計されている。
【0042】
カップリングスリーブ4は、第1の軸1の円筒面に接触する内面と、第2の軸2に面接触する外面とを有している。カップリングスリーブ4は、狭小環状ギャップとして設計された圧力流体室6を含む。この圧力流体室6が加圧流体で満たされると、スリーブ4の厚さが増大して、第1の軸1と、カップリングリング3と、第2の軸2の間でトルクを伝達するために所望される接触圧力を形成する。流体圧力が軽減されると、トルクは伝達されなくなり、カップリングリング3は内面において、第1の軸1に対して相対的に滑る。トルク制限カップリングは、流体圧力の軽減により解除される。
【0043】
剪断管8は、圧力流体通路7と圧力流体室6とを閉鎖しており、これにより、流体圧力を維持すると共に、接触圧力およびトルク伝達能力を維持する。剪断管は、破断点を有する専用の先端を有している。先端が切断されると、圧力流体通路7が周囲に開放されて流体圧力が軽減され、トルクがカップリングリング3を介して伝達されなくなる。
【0044】
カップリングを解除した場合の確実な回転のために、2つの軸1,2を安定させる2つのころ軸受13,14が設けられている。第1のころ軸受14は、第1の軸1と第2の軸2との間に配置されており、第2のころ軸受13は、第1の軸1とカップリングリング3との間に配置されている。択一的に、第1のころ軸受14が、第1の軸1とカップリングリング3との間に配置されてもよい。好適には、一方または両方のころ軸受13,14は、玉軸受として設計されている。択一的に、ころ軸受は、例えば針状ころ軸受または円錐ころ軸受として、または任意の別の種類のころ軸受として設計されていてもよい。
【0045】
剪断リング9は、1つの中心ボルト11により第1の軸1に結合されていることが再び示されている。第1の軸1は、ピン状に形成された円錐形コネクタ1.1を有しており、剪断プレート9は、円錐形ブシュ10を有している。スペーサリング12が、ブシュ10およびボルト11に均一に力が加えられることを可能にする。
【0046】
図3aには、軸線19に沿ったトルク制限カップリング20の断面図が示されている。図3bには、図3aに示した線B-Bに沿った正面図が示されている。取り付けられた剪断リング9は、1つの中心ボルト11により第1の軸に結合されている。剪断リング9は、それぞれ剪断エッジ15を備えたいくつかの凹所18を有しており、過度に高いトルクの場合にカップリングを解除するためのものである。トルクがカップリングリング3の伝達可能な最大トルクよりも高い場合には、第2の軸2とカップリングリング3とが内面において、第1の軸1と、結合された剪断リング9とに対して相対的に滑る。このことは、剪断リング9の剪断エッジ15が剪断管8の先端を切断して、流体圧力が軽減されることにつながる。図示の例では、剪断プレート9は、開口角度βを備える拡大された開口領域を有する2つの凹所18を有している。メンテナンスまたは再充填用の、カップリングリング3へのより良好なアクセスを提供するために、特に、圧力流体ポート16および剪断管8への同時アクセスを提供するために、開口角度βは、特に少なくとも20°、または好適には少なくとも40°である。 別の凹所18aは、例えば潤滑油ポート等の別のポートまたはねじへの同時アクセスも提供するために有利である。2つの凹所18および2つの凹所18aの互いに反対の側の位置は、剪断プレート9のバランスを改善するためのものである。
【0047】
カップリングが伝達可能な最大限界値をトルクが超えると、第1の軸1は、第2の軸2に結合されたカップリングリング3に対して相対的に滑る。剪断リング9がカップリングリング3に対して相対的に回転して、剪断管8の先端を切断し、これにより、カップリングが解除される。解除後には、剪断管8の交換および圧力流体ポート16を介した、加圧流体による圧力流体室の再充填が必要である。
【0048】
締付けねじ17により、カップリングリング3が第2の軸2にねじ締結される。特に好適なのは、カップリングスリーブ4上の第2の軸2の位置を締付けねじ17により調整することができるように設計された、4つのねじ17のセットである。調整は、実質的に長手方向において、あらゆる製造誤差または組立て誤差に適合させるように行われる。これらのねじ17を締め付けることにより、第2の軸2がカップリングスリーブ4上で移動させられる。カップリングスリーブ4の側面と第2の軸2の側面との間の結合は、テーパ結合または圧着結合であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 第1の軸
1.1 円錐形コネクタ
2 第2の軸
3,3a カップリングリング
4 カップリングスリーブ
5 中心孔
6 圧力流体室
7 圧力流体通路
8 剪断管
9 剪断リング
10 円錐形ブシュ
11 中心ボルト
12 スペーサリング
13 第2のころ軸受
14 第1のころ軸受
15 剪断エッジ
16 圧力流体ポート
17 締付けねじ
18 凹所
18a 別の凹所
19 軸線
20,20a トルク制限カップリング
21 負荷へ
22 モータまたは駆動装置へ
α テーパの角度
β 凹所の開口角度
R 半径方向
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
【国際調査報告】