(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】超音波方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01N29/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519504
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 GB2022052448
(87)【国際公開番号】W WO2023052757
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジョン ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー ネイル ハンド
(72)【発明者】
【氏名】イーニン ディン
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC05
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC18
2G047CA01
2G047DA01
2G047DB03
2G047GF17
2G047GG30
(57)【要約】
本開示は、超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定する方法であって、方法は、i)超音波検査装置の超音波軸が前壁部分の公称表面法線に対して角度をなして配置されるように、オブジェクトの前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、超音波検査装置が超音波パルスを放射するステップ、及び超音波パルスのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップと、ii)前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて、時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して、パルスのエコー間の時間遅延を決定するステップを含む方法を提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の前記時間遅延を決定する方法であって、前記方法は、
i)前記超音波検査装置の超音波軸が前壁部分の前記公称表面法線に対して角度をなして配置されるように、前記オブジェクトの前記前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、前記超音波検査装置が超音波パルスを放射するステップ、及び前記超音波パルスのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップと、
ii)前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度に基づいて、前記時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して、前記パルスのエコー間の前記時間遅延を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記オブジェクトの前記前壁部分からのエコーと前記オブジェクトの前記内部または後壁部分からの界面エコーとの間の前記時間遅延を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前壁部分と前記内部または後壁部分とが非平行である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記前壁部分と前記内部または後壁部分との間の前記測定点における前記部分の前記公称厚さに関連する変数を入力として取る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記測定点における前記部分の前記公称音速に関連する変数を入力として取る、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記パルスのエコー間の前記時間遅延の未調整の測定値を入力として取る、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記超音波測定が行われる点における前記超音波軸及び前記部分の相対的な角度配向が、前記部分を通って伝播するときの前記超音波パルスの前記超音波軸が、前記測定点における前記内部または後壁部分の前記公称表面法線に実質的に平行になるように選択される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記時間遅延決定プロセスが、前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度に基づいて、前記調整の程度を決定するための補償モデルを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記補償モデルは、少なくとも1つの行列、少なくとも1つの関数、及び/または少なくとも1つのルックアップテーブルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定点において前記前壁部分と前記内部または後壁部分との間の前記オブジェクト内の前記厚さ、音の材料構造、または音速のうちの少なくとも1つを決定するステップを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記超音波検査装置が、検査されるオブジェクトの前記表面と係合するための変形可能な結合要素を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記超音波検査装置が、位置決め装置、例えば、座標位置決め装置に取り付けられる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記超音波検査装置及びオブジェクトは、前記超音波検査装置の超音波軸及びオブジェクトの前記相対的な配向を変更することができる少なくとも1つの軸を有する位置決め装置上に提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記位置決め装置が、少なくとも2つの直線自由度での前記超音波プローブの並進運動を容易にし、少なくとも1つの回転軸の周りの前記超音波プローブの回転運動を容易にする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度が、前記超音波検査装置によって感知された前記超音波信号とは独立した1つ又は複数の源から決定される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
超音波プローブと検査されるオブジェクトとの相対的な並進位置、及び少なくとも1つの軸の周りの相対的な角度配向を操作できるように構成された、位置決め装置及び前記位置決め装置に取り付けるための超音波検査装置と、超音波検査装置によって前記オブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成された、処理装置と、を備えた装置であって、前記処理装置は、前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて、前記時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して前記パルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の検査方法及び関連装置に関し、特に、オブジェクトの超音波測定値を取得する超音波検査装置を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造されたオブジェクトの品質及び/または寸法を測定して、品質要件/公差に準拠していることを確認することが知られている。航空宇宙タービンブレードなどの高価値コンポーネントの場合、オブジェクトの外部形状は、座標測定機(CMM)に取り付けられた表面接触プローブを使用してサブミクロンの精度まで測定することができる。表面接触(例えば、スキャニング)プローブを備えたCMMを使用してオブジェクトの表面上の複数の点の位置を測定するための技術の例は、US5189806及びWO2009/024783に記載されている。
【0003】
表面測定に加えて、オブジェクトの内部の部分/構造を測定し、及び/または内部の欠陥を識別することがしばしば必要である。例えば、タービンブレードは、典型的には中空であり、極端な温度及び圧力で動作するために、軽量かつ強度の両立を可能にする。そのような中空タービンブレードの内部検査は、典型的には、超音波検査装置、例えば、超音波浸漬システムまたは超音波厚さ測定プローブを使用して行われる。このような超音波検査装置は、検査対象オブジェクトに投影される超音波パルスを放出し、パルスのエコーが超音波検査装置によって記録される。パルスのエコー間の時間遅延は、オブジェクトに関する貴重な情報を提供することができる。そのようなシステムは、パルスエコー超音波検査装置と呼ばれ得る。
【0004】
超音波浸漬システムは、一般に、試験片を水槽内に完全に浸漬することを含む。単一のパルスエコートランスデューサ、または一対の送信/受信トランスデューサは、コンピュータ制御ロボットアームを使用して部品に対して適切に配置される。水は部品との良好な音響結合を提供するが、特に大きな部品の場合、配置は高価で複雑である。超音波浸漬システムの例は、GB2440959に記載されている。
【0005】
超音波プローブは、部品を水に浸す必要はなく、代わりに典型的には、部品へのカプラント材料(例えば、カップリングゲルまたは液体)の局所的な適用に依存する。そのようなプローブは、手持ちで使用される傾向があるが、そのようなプローブがCMMのクイルにどのように取り付けられ得るかは、以前に説明されている。例えば、US2009/0178482は、CMMのクイルに取り付けられた超音波プローブを記載している。US2009/0178482の超音波プローブは、オブジェクトとの接触が確立されたときにセンサがオブジェクトの表面法線と整列することを可能にするジンバルマウントを含む。US2009/0178482の段落19で説明されているように、検査の前に、ゲルまたはグリースなどの接触材料をオブジェクトの関連する領域に塗布し、超音波プローブとオブジェクトとの間の適切な音響結合を確保する必要がある。乾式接触層を使用する手持ち式超音波プローブも知られている。
【0006】
WO2016/051147は、CMMなどの位置決め装置に取り付けるための超音波プローブの様々な構成を記載している。特に、WO2016/051147は、(硬質/剛性結合要素を有する超音波プローブとは対照的に)変形可能な結合要素を含む超音波プローブを記載している。変形可能な結合要素は、部品への超音波結合を提供し、遅延線としても機能することができる。WO2016/051147はまた、結合要素が、好ましくは、制御された方法でその外面から水及び/または油などの潤滑剤を放出する自己潤滑性材料を含むことができることも記載している。自己潤滑性材料は、親油性(シリコーン)エラストマー、任意に親水性エラストマーを含んでもよい。
【0007】
WO2020/174214は、最適信号の軸(すなわち、その「超音波軸」)を決定するために超音波プローブを較正する方法を記載しており、これにより、部品検査中に所望の信号を達成するためにプローブをその後どのように配向するかを決定することができる。
【0008】
典型的には、超音波検査装置は、測定された超音波信号から時間遅延情報を抽出することができる3つの周知の動作モードのうちの1つを採用する。これらの異なるモードは、典型的には、それぞれモード1、モード2、及びモード3と呼ばれる。モード1では、時間遅延測定は、初期励起パルスと、オブジェクトの内部部分または後壁部分(back-wall feature)からの第1のエコー/反射(総称して「界面エコー」と称される)との間で行われる。モード2測定では、時間遅延測定は、前壁部分(front-wall feature)からのエコー/反射と、内部または後壁部分からの第1の界面エコーとの間で行われる。モード3測定では、時間遅延測定は、内部または後壁部分からの2つ以上の連続した界面エコーの間で行われる。
【発明の概要】
【0009】
以下により詳細に説明するように、本発明は、特に非平行部品、及び/または超音波検査装置の超音波軸が検査点における部品の前壁部分の公称表面法線に対して非平行に配置されるような方法で超音波検査装置が部品に対して配向される例について、離れて放射された超音波プローブのエコー間の時間遅延を決定するための改善された技術に関する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定する方法であって、方法は、i)超音波検査装置の超音波軸が前壁部分の公称表面法線に対して角度をなして配置されるように、オブジェクトの前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、超音波検査装置が超音波パルスを放射するステップ、及び超音波パルスのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップと、ii)前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて、時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して、パルスのエコー間の時間遅延を決定するステップと、を含む方法が提供される。したがって、言い換えれば、時間遅延決定プロセスは、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に関連する変数を入力としてとることができる。
【0011】
発明者らは、時間遅延測定の精度及び/または信頼性、ならびにそれに由来する測定(例えば、オブジェクト内の厚さ、材料構造(例えば、多孔性または密度、結晶形態及び/または配向)、または音速)が、本発明の方法を使用して大幅に改善され得ることを見出した。特に、発明者らは、超音波検査装置が部品に関連して配向される角度にかかわらず、本発明の方法を使用して、一貫した信頼性の高い時間遅延測定値を得ることができることを見出した。
【0012】
本発明は、エンドユーザ/顧客が所望の測定角度ごとに特定の較正を実行する必要性を排除することができる。例えば、顧客は、例えば検査されるオブジェクトと同じ材料を有する平行な較正ブロックを介して、オブジェクト内の音速について単に較正することができる。したがって、本発明は、エンドユーザのために較正プロセスを簡素化及び短縮する利点を提供することができる。
【0013】
決定された時間遅延は、超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスの2つのエコー上の対応する点の間の時間を見つける/測定することによって見つけることができる。例えば、決定された時間遅延は、エコーの対応する特徴(例えば、ピーク)の間の時間を見つける/測定することによって見つけることができる。例えば、決定された時間遅延は、エコーの絶対最大ピーク(「PAM」ピーク)の後のピーク間の時間を見つける/測定することによって見つけることができる。代替的に、時間遅延を決定するための他の方法を使用することができる。例えば、自己相関または相互相関などの相関技術を使用することができ、そこから一次ピークを識別して時間遅延を確立することができる。
【0014】
決定された時間遅延は、オブジェクトの前壁部分からのエコーとオブジェクトの内部または後壁部分からのエコー(以下、総称して「界面エコー」と称する)との間の時間遅延(すなわち、モード2測定)であり得る。決定された時間遅延は、連続する界面/後壁エコー(すなわち、モード3測定)間の時間遅延であり得る。
実験は、プローブを前壁表面法線に対して斜めの入射で測定すると、部品の厚さに依存する時間遅延測定に誤差がある可能性があることを示している。したがって、任意選択で、時間遅延決定プロセスは、入力として(すなわち、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に関する入力変数に加えて)、測定点における部品の公称厚さ(前壁部分と内部または後壁部分との間)に関する変数を追加的に取る。言い換えれば、任意選択で、時間遅延決定プロセスは、測定点における部品の公称厚さ(前壁部分と内部または後壁部分との間)に関連する変数に基づいて時間遅延計算を調整する。任意選択で、時間遅延決定プロセスは、測定点において部品の公称音速に関連する変数を入力として追加的に取る。言い換えれば、任意選択で、時間遅延決定プロセスは、測定点において部品の公称音速に関連する変数に基づいて時間遅延計算を調整する。既知の公称厚さ及び/または音速に基づいて時間遅延計算を調整する代わりに、時間遅延決定プロセスは、パルスのエコー間の時間遅延の未調整の測定値を入力としてとることができる。言い換えれば、好ましくは、時間遅延決定プロセスは、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて調整されていないパルスのエコー間の時間遅延の測定値を入力として取る。したがって、任意選択で、時間遅延決定プロセスは、パルスのエコー間の時間遅延の未調整の測定値に基づいて、時間遅延計算を調整する。
【0015】
任意選択で、前壁部分部と内部または後壁部分部とは非平行である。本発明は、このような非平行な特徴を有するオブジェクトの部品を分析する場合に特に有用である。このような場合には、超音波プローブの方向を超音波測定点における超音波軸と部分との相対的な角度配向に合わせることが望ましいことが多いため、超音波パルスが部品を通って伝播する際の超音波軸(例えば、以下に詳細に説明するように、「屈折超音波パルス」の超音波軸となり得る)を測定点における内部または後壁部分の公称表面法線に実質的に平行となるように選択される。そのような場合、その超音波軸が前壁部分の表面法線に平行でないように超音波プローブを配向する必要があり、それによって本発明の方法が解決する前述の問題につながる。
【0016】
時間遅延決定プロセスは、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて調整の程度を決定するための少なくとも1つの補償(または「補正」)モデルを含むことができる。補償モデルは、少なくとも1つの行列、少なくとも1つの関数、及び/または少なくとも1つのルックアップテーブルを含み得る。
【0017】
上述したように、決定された時間遅延は、オブジェクトの1つ又は複数の特性を決定するために使用することができる。例えば、決定された時間遅延を使用して、測定点における前壁部分と内部または後壁部分との間のオブジェクト内の厚さ、材料構造(例えば、多孔性または密度、結晶形態及び/または配向)、または音速のうちの少なくとも1つを決定することができる。
【0018】
超音波検査装置は、検査されるオブジェクトの表面と係合するための結合要素を備えることができる。結合要素は、変形可能なカップリング要素を含むことができる。言い換えれば、結合要素は、(剛性/硬質カップリング要素とは対照的に)軟質結合要素であり得る。したがって、方法は、結合要素の形状が変形するように、結合要素をオブジェクトの表面上にロードすることを含むことができる。例えば、結合要素は、エラストマーを含むことができる。例えば、結合要素は、ポリマー、例えば、高吸水性ポリマーを含むことができる。
【0019】
結合要素は、例えば、潤滑剤で濡らしておくことができる。任意の適切な潤滑剤を使用することができる。有利には、結合要素は、自己潤滑性材料を含むことができる。自己潤滑性材料は、好ましくは、制御された方法でその外面から水及び/または油などの潤滑剤を放出する。自己潤滑性材料は、親油性エラストマーを含み得る。有利には、自己潤滑性材料は、親水性エラストマーを含む。例えば、親水性エラストマーは、軽度に架橋された親水性ビニルエラストマーまたは超吸収性ポリマーヒドロゲル、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどの非圧縮性ゼラチン状親水性エラストマー材料を含み得る。高水分親水性ポリマー鎖化合物の例は、MMA:VP(すなわち、N-ビニルピロリドン及びメタシル酸メチルのコポリマー)である。この化合物の場合、水分は約35%~95%の範囲で変化することができ、水分が増加するにつれて引き裂き強度が低下するが、優れた音響特性が示される。便利なことに、接触要素/自己潤滑性材料は、球体として提供される。結合要素の好ましい実施形態は、少なくとも1つの親水性エラストマー球体を含む。
【0020】
超音波検査装置は、位置決め装置、例えば、座標位置決め装置に取り付けることができる。位置決め装置は、工作機械、ロボット、またはアームを含み得る。位置決め装置は、手動で操作される位置決め装置であってもよいが、好ましくは、位置決め装置は、例えば、制御下での自動操作のための1つ又は複数のモータ、または1つ又は複数の処理装置(例えば、機械コントローラ)を備える。好ましい実施形態では、座標位置決め装置は、座標測定機を備える。CMMは、デカルト型(例えば、ブリッジ型)CMMまたは非デカルト型(例えば、六脚)CMMであってもよい。 位置決め装置は、少なくとも2つの直線自由度での超音波検査装置及びオブジェクトの相対的な並進運動を容易にすることができる。位置決め装置は、少なくとも1つの回転軸の周りの超音波検査装置及びオブジェクトの相対回転運動を容易にすることができる。
【0021】
超音波検査装置は、少なくとも1つ、及び任意選択で2つの(好ましくは直交する)回転軸を有する関節屈曲部材に取り付けることができる。関節屈曲部材は、連続関節屈曲部材であり得る。任意選択で、関節屈曲部材は、インデックス付き関節屈曲部材を備える(例えば、関節屈曲部材は、関節屈曲部材をロックすることができる一定数の別個の向きを備える)。関節屈曲部材は、少なくとも1つの軸を中心とした超音波プローブの向きを制御するための少なくとも1つのモータを備えることができる。
【0022】
関節屈曲部材は、少なくとも2つの直線自由度に沿って移動可能であり、好ましくは、3つの直交自由度に沿って移動可能である座標位置決め装置の部材に取り付けられ得る。ブリッジ型CMMの場合、そのような部材は、一般に「クイル」または「Zコラム」と呼ばれる。したがって、超音波検査装置は、現場で一般的に5軸座標位置決め装置と呼ばれるものに取り付けることができる。必要に応じて、オブジェクトは、それ自体が直線的及び/または回転可能に移動可能であるように、例えば、回転テーブルに取り付けることができるように、追加的に/代替的に取り付けることができる。
【0023】
前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、超音波検査装置によって感知された超音波信号とは独立した(または言い換えれば、「それ以外の」または「それとは別の」)1つまたは複数の源から既知/決定することができる。例えば、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、1つまたは複数の(例えば、位置)センサから知ることができる/決定することができる。したがって、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、超音波信号を感知するための超音波検査装置の超音波トランスデューサ以外の、または超音波検査装置の超音波トランスデューサとは別の1つまたは複数のセンサから既知/決定することができる。例えば、1つまたは複数の(例えば、位置)センサは、超音波検査装置及びオブジェクトの相対的な配置をモニタするために位置決め装置上に設けることができる。したがって、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、超音波検査装置とオブジェクトとの相対的な配置をモニタするための位置決め装置上のセンサから既知/決定することができる。そのような(例えば、位置)センサは、例えば、位置決め装置の比較的可動部分の相対的な位置及び/または角度(例えば、前述の直線及び/または回転軸の相対的な位置)をモニタするように構成された1つまたは複数の位置エンコーダデバイスを含むことができる。前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、オブジェクトの構成に関する既知の及び/または想定される情報から決定することができる。前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度は、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)情報からのオブジェクトの公称構成に関する既知の情報から知られ/決定され/想定され得る。追加的/代替的に、(例えば、部分が未知の部分である場合、例えば、前壁部分の実際のまたは公称表面法線が未知である場合)、そのような構成情報は、オブジェクトの検査から決定/確認することができる。したがって、方法は、部分を検査することを含み、前壁部分の表面法線を決定し得る。
【0024】
超音波プローブは、結合要素の遠位の本体部分を備えることができる。言い換えれば、超音波プローブは、第1の端部に本体部分を含み、第2の端部に結合要素を含むことができる。超音波プローブは、本体部分を介して位置決め装置に取り付けることができる。超音波プローブ(例えば、本体部分)及び位置決め装置(例えば、関節屈曲部材/回転ヘッド)は、超音波プローブを位置決め装置に取り付けることを可能にするための、特に、超音波プローブを位置決め装置に自動的にロード及びアンロードすることを可能にするため、対応する取り付け特徴を備えることができる。言い換えれば、好ましくは、超音波プローブは、位置決め装置上で、例えば、位置決め装置の操作容積内に位置するラックとの間で自動変更可能である。超音波プローブ(例えば、本体部分)及び位置決め装置は、反復可能なマウントの相補的な特徴、例えば、運動学的マウントの相補的な特徴を含むことができる。超音波プローブ及び位置決め装置のうちの少なくとも1つは、位置決め装置上に超音波プローブを保持するための少なくとも1つの磁石を備えることができる。
【0025】
超音波検査装置自体は、超音波トランスデューサによって受信された超音波測定信号を分析するための少なくとも1つの処理装置を含み、時間遅延を決定することができる。代替的に、超音波測定信号は、検査装置外の処理装置(例えば、外部インターフェース内またはオフラインコンピュータを使用して)によって分析され得る。
【0026】
理解されるように、「処理装置」/「プロセッサ」/「処理用コンポーネント」などへの本明細書の言及は、特定のアプリケーション(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」)のために構成された特注処理装置、ならびにそれが使用されるアプリケーションのニーズに従って(例えば、ソフトウェアを介して)プログラムすることができるより一般的な処理装置を含むことを意図している。したがって、適切な処理装置には、例えば、CPU(中央プロセッサユニット)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(特定用途向け集積回路)などが含まれる。
【0027】
超音波検査装置は、超音波パルスを発するための少なくとも1つのトランスデューサを備えることができる。超音波検査装置は、超音波パルスを感知するための少なくとも1つのトランスデューサを備えることができる。任意選択で、超音波プローブは、超音波パルスを発するための少なくとも1つのトランスデューサ、及び超音波パルスを感知するための少なくとも1つのトランスデューサを備える。任意選択で、超音波パルスを発するための少なくとも1つのトランスデューサは、超音波パルスを感知するために使用されるのと同じセンサである。言い換えれば、超音波検査装置は、超音波パルスを放射及び検出するための単一のトランスデューサを備えることができる。トランスデューサは、圧電素子を含み得る。好ましくは、トランスデューサは、長手方向の音波(L波)を励起する。超音波検査装置は、単一チャネル検査装置を備えることができる。例えば、超音波検査装置は、パルスエコー動作を実行する1つの能動素子/トランスデューサのみを含むことができる。任意選択で、超音波検査装置は、位相アレイ検査装置を備えることができる。
【0028】
超音波検査装置は、任意の既知の方法で超音波を励起し、受信することができる。超音波検査装置は、高周波で動作し得る。例えば、動作周波数は、5MHzよりも大きくてもよく、10MHzよりも大きくてもよく、またはより好ましくは15Mzよりも大きくてもよい。例示的な実施形態では、動作周波数は約20MHzである。より高い周波数(例えば、15MHzを超えるものなど)は、変形可能な先端を有するプローブに特に有用であることが分かっており、特に、より高い分解能の測定を提供することが分かっている。より低い周波数では、変形可能な先端の内部でより多くのノイズが発生する可能性があることが分かっている。
【0029】
本発明の別の態様によれば、超音波プローブと検査されるオブジェクトとの相対的な並進位置、及び少なくとも1つの軸の周りの相対的な角度配向を操作できるように構成された、位置決め装置及びその上に取り付けるための超音波検査装置と、超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成された、処理装置と、を備えた装置であって、処理装置は、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて、時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介してパルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成されている装置が提供される。本発明の第1の態様に関連して上述した特徴は、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
【0030】
本発明の別の態様によれば、超音波検査装置を使用して、前壁部分と内部または後壁部分との間のオブジェクトの部分の厚さを測定する方法が提供され、この方法は、i)超音波検査装置の超音波軸が前壁部分の公称表面法線に対して角度をなして配置されるように、オブジェクトの前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、超音波検査装置が超音波パルスを放射するステップ、及びそのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップと、ii)パルスのエコー間の測定された時間遅延から、前壁部分と内部または後壁部分との間の部分の厚さを決定するステップであって、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に関するパラメータを入力としてとる補償モデルが、相対的な角度配向が測定された時間遅延に与える影響を補償するために使用される、方法が提供される。本発明の第1の態様に関連して上述した特徴は、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
【0031】
本発明の別の態様によれば、超音波プローブ及び検査されるオブジェクトの相対並進位置及び少なくとも1つの軸の周りの相対的な角度配向を操作できるように構成された、位置決め装置及びその上に取り付けるための超音波検査装置と、超音波検査装置によって検出された超音波信号から検査される部分の厚さ測定値を決定するように構成された処理装置と、を備えた装置であって、処理装置は、超音波検査装置の超音波軸と検査される部分の前壁部分の公称表面法線との間の角度を入力として取る補償モデルに従ってオブジェクトの部分の厚さを決定するように構成されている装置が提供される。本発明の第1の態様に関連して上述した特徴は、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
【0032】
本発明の別の態様によれば、超音波プローブを介してオブジェクトを測定する方法が提供され、超音波プローブ及びオブジェクトは、超音波プローブ及びオブジェクトの相対的な配向を変更することができる少なくとも1つの軸を有する位置決め装置上に提供され、この方法は、i)オブジェクトの前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、超音波プローブが超音波パルスを放射するステップと、そのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップであって、測定点における超音波プローブ及びオブジェクトの相対的な角度配向が知られている、超音波測定を行うステップと、ii)超音波測定からパルスのエコー間の測定された時間遅延を決定し、入力として相対的な角度配向を取る補償モデルを使用して、決定された時間遅延に対する超音波プローブ及びオブジェクトの相対的な角度配向の影響を補償するステップ、を含む。本発明の第1の態様に関連して上述した特徴は、本発明のこの態様に等しく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、例示的な超音波プローブの基本的な動作原理を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、超音波厚さ測定の原理を示す図である。
【
図3】
図3は、座標測定機(CMM)に取り付けられた超音波プローブを示す図である。
【
図4】
図4は、超音波プローブの異なる機械的部分を示す図である。
【
図5】
図5は、超音波プローブの異なる電気モジュールを示す図である。
【
図6a】
図6aは、超音波プローブの想定されるL波軸と較正されたL波軸との間の差が、部分におけるL波の伝播にどのように影響するかを示す図である。
【
図6b】
図6bは、超音波プローブの想定されるL波軸と較正されたL波軸との間の差が、部分におけるL波の伝播にどのように影響するかを示す図である。
【
図7a】
図7aは、エコー間の測定された時間遅延に対する部分の傾斜角及び厚さの影響を示す図である。
【
図7b】
図7bは、エコー間の測定された時間遅延に対する部分の傾斜角及び厚さの影響を示す図である。
【
図8】
図8は、プローブの超音波軸が較正アーチファクトの前壁部分の表面法線に平行に配置されたときに、超音波プローブの受信機によって受信される前壁エコーの時間領域波形を示す図である。
【
図9】
図9は、プローブの超音波軸が前壁部分の表面法線に対して斜めに配置されたときの、超音波プローブの受信機によって受信された前壁エコーの時間領域波形への影響を示す図である。
【
図10】
図10は、例示的なくさび形較正アーチファクトを示す図である。
【
図11】
図11は、超音波プローブの超音波軸及び測定されたデルタTの入射角の関数としてのデルタT測定値(エコー間の時間遅延)の誤差を示すグラフである。
【
図12】
図12は、連続した後壁エコーが部分の厚さを決定するために使用される例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
例示的な超音波検査装置の基本的な動作原理は、
図1及び
図2を参照して説明される。
図1は、外側本体4を備える超音波プローブ2を示す。圧電素子6及び変形可能な結合素子8を備える超音波波/パルストランスデューサ、例えば、長手方向の波(「L波」)トランスデューサが提供される。理解されるように、バッキング層や整合層(波長板)など、超音波プローブ内で一般的に採用される他のコンポーネントも超音波プローブの一部を形成することができるが、簡略化のため
図1には示していない。オブジェクト10の厚さを測定するために、プローブ2及び/またはオブジェクト10は、変形可能な結合要素8及びオブジェクト10の前壁部分/表面9と係合するように移動される。励起パルスが圧電素子6を横切って印加されると、超音波パルス12がオブジェクト10に投影される。概略的に示されるように、この超音波パルス12は、オブジェクトの後壁部分11(または前壁9と後壁11の部分との間の任意の内部部分)によって反射され、この反射されたエコーは、超音波プローブによって(例えば、圧電素子6を介して)検出される。このプロセスは、パルスエコー測定、またはより口語的には「ピーンイング」(pinging)と呼ばれることがある。理解されるように、厚さ測定推定は、投影された超音波波形の飛行時間または時間遅延測定を使用して行うことができる。
【0035】
図2は、圧電素子6を横切って印加される過渡高電圧励起パルスに応答して、トランスデューサの能動圧電素子6によって受信される超音波信号/波形の例である。「A-スキャン」プロットと呼ばれるこの時間領域波形は、ランダムな非相関電子ノイズを抑制するために、そのような励起パルスの列(例えば、Nの適切な範囲が16~32であり得るが、Nが少なくとも2であるNパルスのシーケンス)からの時間平均応答であり得る。
【0036】
圧電素子6によって生成された初期励起パルスは、
図2の「Txパルス」としてラベル付けされる。この初期励起パルスにより、検査L波が結合素子8(遅延線として機能する)に伝播し、結合素子材料(CL)内を音速で移動する。圧電素子6に戻されて受信された第1の反射/エコーピーク(DL1)は、オブジェクト10の前壁表面/部分9からの音の反射から生じる。オブジェクト10の前壁表面/部分9からのこの反射/エコー(すなわち、DL1エコー)は、初期送信パルス(Txパルス)が完全に後退した後の十分な時間に発生することがわかる。
【0037】
超音波の一部は前壁部分によって反射され、オブジェクト10に入ることはないが、十分な割合の超音波が、その後の厚さ測定を行うことができる測定可能な検査パルスとしてオブジェクト10に透過する。変形可能な結合要素8内の音速は、オブジェクト10内の音速と比較して低くなることもあるため、特に、オブジェクトが比較的薄い場合、遅延線/結合要素8からの第2の反射ピーク/エコー(DL2)がトランスデューサに登録される前に、部品10の内部または後壁部分11からの複数の界面反射/エコーが生じ得る。したがって、これらの界面(例えば、内部/後壁)の反射/エコーは、
図2の「A-スキャン」プロットにも見ることができるパルスBW1、BW2、及びBW3を提供する。したがって、A-スキャンで観察される、第1の遅延ライン反射ピークと第2の遅延ライン反射ピーク(DL1及びDL2)との間の時間窓が、プローブの「主測定窓」となる。
【0038】
図3を参照すると、
図1及び2に関連して上述したような位置決め装置200に取り付けられた超音波プローブ100が示されている。位置決め装置は、この場合、座標測定機(「CMM」)の形態の移動構造を備える。CMM200は、次いでキャリッジ206を保持するフレーム204を支持するベース202を備え、キャリッジ206は次いでクイル208(または「Z列」)を保持する。モータ(図示せず)が設けられて、軸208を3つの互いに直交する軸X、Y及びZに沿って(例えば、フレームをY軸に沿って、キャリッジ206をX軸に沿って、及びクイル208をZ軸に沿って移動させることによって)移動させる。
【0039】
クイル208は、関節屈曲ヘッド210を保持し、関節屈曲ヘッドは、インデキシングヘッドまたは連続ヘッドであり得るが、好ましくは連続ヘッドである(例えば、Renishaw plcから入手可能なRevo(登録商標)ヘッド)。理解されるように、連続ヘッドは、少なくとも1つの軸の周りの実質的に任意の角度で、それに取り付けられた装置の配向を可能にし、無限に近い数の角度配向を提供するとしばしば説明される。また、必要に応じて、連続ヘッドの軸を中心とした測定装置の向きは、測定中(例えば、接触プローブが検査されているオブジェクトと接触し、測定情報を取得している間)に変更することができる。対照的に、インデキシングヘッドは、それに取り付けられた測定装置がロックされ得る個別の数の定義された(「インデックスされた」)位置を有する。インデキシングヘッドでは、測定装置の向きを変更できるが、測定データの取得中には変更できない。
【0040】
この実施形態では、関節屈曲ヘッド210は、(図示せず)適切なベアリング及びモータを介して、第1及び第2の回転軸D、Eを中心に、その上に取り付けられたプローブ100の回転を容易にする。
【0041】
関節屈曲ヘッド210によって提供される2つの回転軸(D、E)とCMM200の平行移動の3つの直線軸(X、Y、Z)平行移動軸との組み合わせは、プローブ100が5つの自由度(2つの回転自由度、及び3つの直線自由度)で移動/配置されることを可能にする。
【0042】
さらに、図示されていないが、ベース202、フレーム204、キャリッジ206、クイル208、及び関節屈曲ヘッド210の部品の相対位置を測定するために、測定エンコーダを設けてもよく、これにより、ベース202上に位置するワークピース10に対する測定プローブ100の位置を決定できるようにしてもよい。
【0043】
コントローラ220は、CMM容積内での超音波プローブの位置及び向きを(手動で、例えば、ジョイスティック216などの入力装置を介して、または自動で、例えば検査プログラムの制御下で)制御するなど、CMM200の動作を制御するために、及びCMM200から情報(例えば、測定情報)を受信するために、提供される。表示装置218は、コントローラ220とユーザとのやり取りを補助するために設けることができる。コントローラ220は、例えば、専用の電子制御システムであり得、及び/またはパーソナルコンピュータを含み得る。
【0044】
示されるように、プローブインタフェース150(プローブ100との通信を容易にするための)は、例えば、コントローラ320に設けることができる。
【0045】
理解されるように、本発明は、ロボットアーム、工作機械装置などの他のタイプの位置決め装置と共に使用することができ、例えば、超音波検査装置の超音波軸及びオブジェクトの相対的な向きを追跡、決定、及び/または推測することができる手動で保持された超音波検査装置と共に使用することもできる。
【0046】
本発明は、様々なタイプの超音波検査装置での使用に適している。WO2016/051147及びWO2016/051148は、本発明と共に使用することができる様々なタイプの超音波プローブを記載している。例示のために、
図3のCMMなどの位置決め装置に取り付けられるように構成された、1つの特定のタイプの超音波プローブ100を
図4に関連してより詳細に説明する。超音波プローブ100は、位置決め装置/CMMに取り付けるプローブ100の近位端に設けられた本体部分102を含むベースモジュールを備える。本体102は、必要な電子機器を含み、プローブに電力を供給し、制御データ及び作動命令をプローブに通信する(例えば、超音波測定をスケジュールする)ことができる。超音波データ及び厚さ測定結果を含む電力及び/または制御データは、回転ヘッド通信チャネルを介して及び/または無線で渡され得る。CMMを介して電力が供給されるのではなく、電力は、例えば、本体部分102に位置する電池によって供給され得る。
【0047】
細長いチューブ104(例えば、硬質カーボンファイバーチューブ)は、プローブの軸方向の長さに沿って、本体102から延在する。結合要素108、特に変形可能な結合要素は、本体102の遠位のチューブ104の端部に配置される。記載された実施形態では、変形可能な結合要素108は、親水性エラストマーを含む。任意選択で、変形可能な結合要素108は、交換可能である(例えば、ネジまたはスナップフィットを介して取り付けることができる)。任意選択で、及び説明される実施形態の場合のように、チューブ104から突出する結合要素108の少なくとも一部は、球形である。理解されるように、変形可能な結合要素は、プローブ内のトランスデューサの摩耗プレートと係合し得、変形可能な結合要素108は、結合要素及び遅延線の両方として機能し得る。変形可能な結合要素108は、それが係合するオブジェクト10の表面に容易に適合するように、柔らかく弾性であり得る。
【0048】
使用中、超音波プローブ100は、CMM200によって移動されて、変形可能な結合要素108を検査されるオブジェクト10の前壁部分9と接触させ、それによってオブジェクトとの音響結合を形成する。超音波プローブ100は、(例えば、圧電素子を介して)超音波パルス/波を生成し、これがオブジェクト10に伝えられ、オブジェクト10の内部部分または後壁部分11によって反射される。反射された超音波は、超音波プローブによって感知され、分析されて、オブジェクト10の前壁部分9からの内部部分/後壁部分11の距離を決定する(例えば、オブジェクト10の内部部分/厚さの深さを決定する)。
【0049】
超音波検査装置は、任意の既知の方法で超音波を励起し、受信することができる。超音波検査装置は、高周波で動作し得る。例えば、動作周波数は、5MHzよりも大きくてもよく、10MHzよりも大きくてもよく、またはより好ましくは15Mzよりも大きくてもよい。好ましい実施形態では、動作周波数は約20MHzである。圧電素子を含み得るトランスデューサは、好ましくは、長手方向の音波(L波)を励起する。
【0050】
図5は、超音波プローブ100と共に(例えば、その中に)提供され得るアナログ及びデジタル電子モジュールの例示的な実施形態を概略的に示す。概略的に示されるように、超音波プローブは、超音波トランスデューサ110、例えば、50~150Vで持続時間1/2fの負の遷移(NGT)パルスなどの高電圧インパルス励起パルスの列によって駆動されるときに、高周波時間離散縦波波形(以下「L波」と称する)を伝送するための圧電素子を含むパルスエコー超音波トランスデューサを備える。
【0051】
高電圧(50~150V)ACアナログ信号(例えば、NGTパルス)の繰り返し列を生成することができるアナログ「パルサ」回路112が提供される。パルサ112が提供されるが、代わりに、より高度なデジタル波形シンセサイザを使用して、周波数または振幅変調波形を生成し、より減衰する環境で圧電素子を駆動することができる。パルサ112によって生成された高電圧パルスは、プローブのトランスデューサ内の圧電能動素子110を効果的に駆動して、必要な超音波波形150を出力するが、そのような薄い壊れやすい圧電素子の最大電圧を超えることはない。各パルス起動は、FPGA114または同等のプロセッサから「パルサ」回路112に送信されるイネーブル信号によって、誘発され、時間的に正確に制御され得る。起動のたびに、高速T/Rスイッチ116は、装置が、送信モードと、より長い持続時間受信モードとの間で瞬時に切り替えることができ、その間にシステムは、相互圧電素子110によって測定された送信パルスに対する音響応答を取得し、デジタル記録する。
【0052】
対象となる受信した信号の振幅レベルが大幅に変化する可能性がある。したがって、これに対処するために、可変ゲイン増幅器(VGA)118を任意選択で設けて、デジタル取得の前に信号を増幅するために、取得されたA-スキャン応答にわたって利得を誘導することができる。さらに、いくつかの材料による伝搬損失または減衰に起因する各A-スキャン応答内の可変性を均等化するために、距離振幅補正(DAC)として知られる自動利得制御(AGC)の形態も実装され得る。次いで、増幅されたA-スキャンは、適切に広いダイナミックレンジ(例えば、12ビット)のアナログ-デジタル変換器(ADC)120を使用してデジタル化される。ここでは、サンプルレートが測定システムの時間分解能、ひいては厚さ測定の精度に根本的に影響するため、ナイキストレートを上回る十分なオーバーサンプリングが提供される、例えば、125MHz以上のサンプリングレートは、20MHzトランスデューサに適し得る。ADC120からの符号化されたデジタル波形はまた、デジタルフィルタ、例えば、トランスデューサの動作周波数に一致するパスバンドを有する低次FIRを使用するバンドパスフィルタリングを必要とし得る。Tx-Rx電子機器は、個々のA-スキャン内で観察される可能性のあるすべての電子ノイズ源を最小限に抑えるように設計される。このような非相関ノイズは、N回連続した繰り返されるA-スキャン測定値にわたって平均化すること(すなわち、理論上の√N SNR利得を提供すること)によって最も効果的に抑制される。理解されるように、平均化は、必ずしも以下に記載される較正方法の間に行われるわけではない。
【0053】
超音波トランスデューサ110(例えば、圧電素子)は、好ましくは(必ずしもそうではないが)チューブ104の遠位端に向かって(すなわち、変形可能な接触素子108の近くの端に)配置される。他の電子機器は、プローブ内の任意の場所、例えば、本体部分102内に配置することができる。任意選択で、他の電子機器の少なくともいくつかは、プローブの外側、例えば、少なくとも部分的にコントローラ220内に配置され得る。
【0054】
理解されるように、超音波検査装置は、超音波軸105だけでなく機械軸103を有することができる。機械軸が何であるかは、プローブの設計によって異なる。典型的には、超音波検査装置の機械軸は、プローブの座標系に関して定義される。この実施形態では、超音波プローブは、関節屈曲ヘッドに取り付けられ、超音波プローブが関節屈曲ヘッドの軸を中心に回転するにつれて、プローブの座標系は、超音波プローブと共に回転する。2つの垂直な回転軸を有する関節屈曲ヘッドに超音波プローブが取り付けられている場合、超音波プローブの座標系のX軸は、ヘッドの軸のうちの1つ(例えば、
図3に示されるE軸)と整列させることができ、超音波プローブの座標系のZ軸は、他の軸(例えば、
図3に示されるD軸)と整列させることができる。Y軸は、右手直交系を完成させ、軸方向プローブの場合、機械軸は、プローブ座標系のZ軸(例えば、[0 0 0]
T)として定義される。プローブのクランク角バージョンの場合、機械軸は、このZ軸列ベクトルからの指定された一定のオイラー回転である。超音波軸は、超音波波/パルスがプローブ座標系内を移動する方向として定義される。これは、プローブの座標系内の固定ベクトルであり、機械軸と同様に、超音波プローブが関節屈曲ヘッドの軸を中心に回転するにつれて、超音波プローブとともに回転する。
【0055】
図1によって概略的に示されるように、プローブの超音波軸(例えば、L波軸)がプローブ2の機械軸3と整列していると仮定することができ、したがって、超音波プローブがオブジェクトの前面に垂直な機械軸でオブジェクトに係合する場合、超音波/L波軸は、オブジェクトの前面に垂直な部分に投影される。したがって、プローブの超音波軸が座標に固定された単位列ベクトルv
uaとして定義されている場合、プローブの超音波軸がプローブの機械軸と一致している理想的な状況では、v
uaは[0 0 0]
Tとなる。
【0056】
しかしながら、WO2020/174214で説明されているように、その超音波(例えば、L波)軸がプローブの機械軸と完全に整列した超音波プローブを製造することは非常に困難である。むしろ、超音波/L波軸がプローブの機械軸とわずかにずれている可能性が高い(例えば、最大2~3度)。位置ずれの原因には、シャフト及び/または本体とトランスデューサとの間の機械的な位置ずれ、及び/または音響的な位置ずれ(例えば、超音波ビームが完全に対称ではない場合など)が含まれる。
図6aは、想定される超音波/L波軸(点線で示される機械軸103と同じと仮定される)と較正された超音波/L波軸105(実線で示される)との間の位置ずれを概略的に示す。
図6aの位置ずれの程度は、例示の目的のために大幅に誇張されている。
【0057】
想定される超音波軸/L波軸と較正された超音波軸/L波軸の間に小さな位置ずれが存在する場合でも、超音波プローブ装置の性能は損なわれる。特に、超音波プローブ装置から得られる測定値の精度は、想定されるL波軸と較正されたL波軸との間の位置ずれによって悪影響を受ける可能性がある。そのような位置ずれは、界面エコーを複雑にし、その振幅を減少させる。
【0058】
例えば、最も強力な最高振幅のL波によって移動される距離は、機械軸及び超音波軸が完全に一致している場合よりも長くなり、前壁9と後壁11との間の最短経路をとる投影されたL波面の低振幅部分になる。これは、これらの界面エコーの到着時刻または到着時刻差を推定する信号処理アルゴリズムを使用して、時間遅延測定(及びその後のオブジェクト、例えば、厚さ測定)が導出される、より低い振幅及び潜在的に分散された界面エコーをもたらし、これは、そのような高精度厚さ測定システム(例えば、10ミクロン以内)で測定精度を著しく低下させる可能性がある。
【0059】
この問題は、屈折によってさらに深刻になる。すなわち、超音波パルス(L波)が表面に垂直なオブジェクトに入らない場合、それはスネルの法則に従って法線から屈折し、屈折の程度は、変形可能な結合要素及び検査オブジェクト内の入射角及び音速に依存する。そのような場合、部品内の超音波パルスの超音波軸(すなわち、「屈折した超音波パルス」の超音波軸)は、超音波プローブの超音波軸と異なる/平行ではない。
【0060】
機械的/想定軸とプローブの実際の超音波(例えば、L波)軸との間の位置ずれに関連する問題は、超音波(L波)軸を見つけるために超音波プローブを較正することによって大幅に減少させることができる。超音波プローブ100を較正する例示的な方法は、WO2020/174214に記載されている。超音波プローブのL波の較正された軸の知識は、いくつかの理由から有利であり得る。較正されたプローブは、より一貫して最適な界面エコーを返し、本質的に厚さ測定精度を向上させる信号対雑音比を改善する。言い換えれば、超音波プローブのL波の較正された軸の知識は、超音波プローブが最も鮮明な信号を得るように配向されることを可能にする。例えば、検査されるオブジェクト上の所与の点について、L波がオブジェクト内に沿って伝播するための所望の伝播ベクトルが存在し得、そこからターゲット検査軸/ベクトルが決定され得る。ターゲットベクトルは、部品の材料特性を含む部品の想定/既知の形状に基づいて決定することができ、部品に入射する際に予想される超音波パルス(L波)の屈折を補償できるように、スネルの法則を考慮に入れることができる。ターゲットベクトルが決定されると、上記の較正手順からの超音波プローブのL波と機械軸との関係の知識に基づいて、超音波パルス(L波)がオブジェクト内の所望の伝播ベクトルに沿って伝播することを確実にする関節屈曲ヘッドのD及びE角度を計算することが可能である。例えば、プローブは、
図6bに示されるように、プローブの超音波軸(少なくとも、それが後壁部分11に向かって部品内で伝播するときの超音波パルスの超音波軸)が後壁部分11の公称表面法線に実質的に平行になるように配置されることがしばしば好ましい。
【0061】
例えば、厚さ測定中に、超音波プローブ100は、その超音波軸(例えば、L波軸)が、後壁部分11の公称表面法線に平行に配向されるように配置され、強力な界面エコーが受信されることを確実にすることが好ましい。非平行部品(すなわち、前壁部分9及び後壁部分11が平行ではない)では、これは、プローブの超音波軸が前壁部分の公称表面法線に平行でないように配置される必要があることを意味する。上記の説明に沿って、超音波軸に必要な入射ベクトルは、屈折の影響を考慮するためにスネルの法則を適用することによって計算される。この方向では、厚さが測定される線は、前面の測定点及び後壁部分の表面法線に沿った方向によって定義される。
【0062】
非平行部分の厚さを測定するプロセスは、平行部分の測定の場合と同様であり、超音波パルスが放射され、そのエコーが記録及び分析されて部品の厚さを決定する。しかしながら、超音波プローブが、部品内の超音波軸(例えばL波軸)(例えば、「屈折した超音波パルス」の超音波軸)が後壁部分11の公称表面法線に平行であるように屈折を補償するように配向されていても、決定された厚さ測定値に小さな誤差が存在することが見出された。そのような誤差は小さく見えるかもしれないが、タービンブレード検査などのハイエンドアプリケーションでは重大になる可能性がある。
【0063】
図7aを参照すると、平行な前壁9及び後壁11の部分を有するオブジェクト10を通る断面が概略的に示されている。超音波プローブ(その本体は、簡略化のために
図7aに示されていない)は、その超音波軸(例えば、そのL波軸)105が、後壁部分11の公称表面法線に平行に延在するように配置される。超音波測定は、(超音波パルスを放射し、部品から受信したエコーを分析することによって)測定点Pにおけるオブジェクトの厚さtを決定するために行われる。しかしながら、オブジェクト10が非平行な前壁9’及び後壁11の部分を有する場合(例えば、
図7aの点線及びダッシュ線9’によって示されるように、前壁が傾斜していた場合)、本発明なしで、点Pにおけるオブジェクトの厚さの測定(この時点で、オブジェクトは平行な部分を有する部分の厚さと同じ厚さtを有する)は、超音波プローブの超音波軸(
図7aの105’で図示)が、超音波パルスが部品内を移動する軸(この場合、「屈折超音波パルス」と呼ぶことができる
図7aの105''で図示)が後壁部分11の公称表面法線に平行に延在するように屈折を補正するために適切な角度をつけられていても、わずかに異なる厚さの測定値を提供することが分かっている。したがって、平行オブジェクト及び非平行オブジェクトの点Pでは、平行部品及び非平行部品の測定された厚さtは、測定値は同じになるはずだが、これは、超音波プローブによって受信された信号を分析するための標準的な方法を使用した場合、これは当てはまらないことが判明した。
【0064】
発明者らは、プローブの超音波軸105/105’が前壁面で部品に入るときの傾斜角が、超音波プローブのトランシーバ6によって受信される超音波パルスエコーに影響を及ぼし、それによって、超音波パルスのエコーの時間遅延の測定に悪影響を及ぼし、その後、そこから導き出されるオブジェクトの特性(例えば、測定点でのオブジェクト内の厚さ、多孔性または密度、または音速など)に悪影響を及ぼすことを確認した。特に、傾斜角が前壁エコーに大きな影響を及ぼす可能性があることがわかっている。例えば、
図8は、プローブの超音波軸105が、前壁部分の表面法線に平行な前壁及び後壁部分を有する較正アーチファクトの測定を行うように配置され、プローブの超音波軸105が、前壁及び後壁部分の表面法線に平行に配置されるときに、超音波プローブの受信機6によって受信される前壁エコー(DL1)の時間領域波形を示す。
図9はまた、
図8の同じ信号を示しているが、プローブの超音波軸105が、非平行な前壁及び後壁部分を有する(特に、1.877°のくさび角を有する)較正アーチファクトを測定するように配置され、(
図7aの105''によって示されるように、屈折した超音波パルスが部品内を移動する軸が、較正アーチファクトの後壁部分の公称表面法線に平行に延在するように)超音波プローブが前壁部分の表面法線に対して角度をなして配置される場合、超音波プローブの受信機6によって受信される前壁エコー(DL1)の時間領域波形を示す。見てわかるように、前壁エコー(DL1)の振幅は、大幅に抑制され、そのピークの位置もシフトしている。
【0065】
時間遅延測定に対する前壁エコーの歪みの影響を例示するために、ここで、時間遅延がモード2方法を介して導出される例、すなわち、時間遅延測定が前壁部分からのエコー/反射と内部または後壁部分からの第1の界面エコー/反射との間で行われる例を示す。例えば、モード2は、前壁エコー(DL1)及び第1の界面エコー(BW1)において、絶対最大ピーク(「PAM」ピーク)の後のピークを識別し、それらの間の時間遅延(デルタT)を決定することによって実行することができる。部品の厚さを測定する場合、時間遅延測定値は、部品内の音速の知識から(例えば、事前の音速較正プロセスを介して)厚さ測定値に変換される。
【0066】
しかしながら、
図8及び9に示されるように、前壁表面法線に対して斜めの入射でプローブを用いて測定すると、前壁エコー(DL1)の形状が変化/歪む。変化/歪みは、トランスデューサ上の各点から前面に戻り、トランスデューサに戻る経路長さの変動の増加に起因すると考えられ、その結果、音響信号は、減少した振幅でより長い期間にわたってトランスデューサによって遮断される。DL1の歪みは、測定された時間遅延(デルタT)の減少をもたらし、これは、例えば、厚さの誤差に変換される。時間遅延の減少(デルタT)は、前壁部分の表面法線に対する超音波軸の入射角に関連する。
【0067】
実験は、前壁表面法線に対して斜めの入射でプローブを用いて測定を行うと、部品の厚さに依存しているように見える時間遅延測定に誤差が生じる可能性があることを示している。例えば、
図7bを参照すると、前壁部分9に対して同じ傾斜角αであっても、部品が第1の厚さt(すなわち、後壁部分11を有する)または第2の厚さt'(すなわち、後壁部分11’を有する)を有する場合、時間遅延測定における誤差の程度は異なるであろう。完全には理解されていないが、この誤差源は、測定点での部品の厚さに基づいて再現可能であることが実験で分かっており、それが伝播するときの屈折した超音波パルスの回折によって引き起こされる可能性がある。したがって、以下でより詳細に説明するように、必要に応じて、部品の公称厚さを補償の一部として考慮することができる。
【0068】
本発明によれば、これらの誤差に対処するための戦略は、所与の入射角に対する「補正」(例えば、デルタT補正)を見つけることである。さらに、必要に応じて、所与の入射角に対する「補正」の代わりに、または同様に、部品厚さに対する「補正」を見つけることができる。デルタT補正が決定される場合、補正は、非平行部分上の測定されたデルタTに加えることができ、エコー内の歪みを補償して、非平行測定から等価な平行部分デルタTを取得できる。次いで、補正されたデルタTを使用して、必要に応じて、平行な部分を有する標準的な較正部分からの較正された音速を使用して、その厚さ、多孔性または密度などのオブジェクトの特性を決定することができる。
【0069】
1つの例示的な実施形態によれば、超音波プローブによって得られた時間遅延測定値を調整する(すなわち、補正/補償する)ために部品の検査中に使用することができる「補正」または「補償」モデルは、くさびアーチファクトを使用して生成され、その例を
図10に示す。示されるように、例示的なくさびアーチファクト300は、その中に複数のくさび形状のステップ302、304、306、308を形成した材料のブロックを備える(最後部の「ステップ」3 10は、検査中にくさびアーチファクトを固定できるように、単なる平行クランプ部分である)。1つの特定の例では、複数のそのようなくさびアーチファクトが使用され、いくつかはスチールから作られ、他はアルミニウムから作られ、それらのくさび形状のステップは、3度から10度の間のくさび角度を有し、2mmから20mmの範囲の厚さを覆った。くさび形状のステップを、超音波プローブを使用して検査して、ステップのそれぞれについて測定されたデルタT値のデータセットを生成する。特に、測定されたデルタT値は、超音波プローブをいくつかの異なる方向(すなわち、くさび形状のステップの前壁部分の表面法線に対して異なる斜角で配置された超音波プローブの超音波軸の入射角で)で得られた。必要に応じて、データセットはまた、異なる超音波プローブ、及び/または較正アーチファクトの異なる方向などの異なる状況で取得された、測定されたデルタT値を含むことができる。
【0070】
くさび形状のステップはまた、代替の測定プロセス(例えば、CMM上のタッチトリガープローブ)を介して検査され、各くさび形状のステップの前面上の任意の点での正確な厚さを決定された。この厚さ測定のセットを使用して、任意の測定位置での「真の」デルタTを決定した。
【0071】
次いで、デルタT調整/補正/補償項は、超音波プローブによって得られた未調整のデルタTと真のデルタTとの間の差として定義することができる。
【0072】
この例では、次数2の2D多項式適合をデータセットに適用して、
図11に示すように、入射角と測定されたデルタTの関数としてデルタT補正/補償面を定義した。上述したように、時間遅延は、その厚さなどのオブジェクトの特性を決定するために使用することができる。したがって、この関数を使用して、前壁部分の公称表面法線に対する超音波プローブの超音波軸の傾斜角、及び測定されたデルタTに基づいて、オブジェクトの一部の特性(例えば、厚さ)の補償された測定値を提供することができる。例えば、部分の厚さTは、以下の式を介して決定することができる。
【0073】
T=CLPart.deltaT/2+CLPart.α(InclinationAngle,deltaT)/2+C (1)
ここで、
deltaT=超音波プローブによって測定された未調整deltaT;
α=2D多項式適合から決定された「関数」;
C=厚さオフセット補正定数(一貫した/系統的な厚さ測定誤差を補正するため。Cは、CLPartを求めるときに決定することができる);
CLPart=較正ロック/部品/材料の音速である。
【0074】
あるいは、検査点における部分の公称厚さが知られている場合、関数αは、未調整のデルタT値の代わりに、公称厚さを入力として取ることができる。
【0075】
理解されるように、上記の式は、傾斜角と公称厚さ/未調整のデルタTの両方を補償する。しかしながら、これは必ずしもそうである必要はなく、関数/方程式は、それらのうちの1つのみを補償するように構成され得る(その場合、較正方法/くさびアーチファクトは、それに応じて調整され得る)。例えば、別の実施形態では、部分の厚さTは、以下の式を介して決定され得る。
【0076】
T=CLPart.deltaT/2+CLPart.α(InclinationAngle)/2+C (2)
非平行部分を測定するための上記の実施形態では、内部または後壁部分からの界面エコーは、部分内の超音波パルスの超音波軸(この場合は「屈折した超音波パルス」の超音波軸)が内部/後壁部分の表面法線に整列されているために歪まない。したがって、非平行部分の実施形態では、前壁及び界面/後壁エコーの歪みに差があり、歪みの差は、前壁及び界面/後壁の角度に基づいて異なるであろう。したがって、前壁及び界面/後壁の角度に基づいて誤差が変化する。超音波検査装置の超音波軸が、前壁部分の公称表面法線に対して角度をなして配置されている(すなわち、それらが互いに平行ではない)平行な部分を測定する場合、前面及び界面/背面エコーの歪みの程度は、i)超音波軸と前壁との間の入射角、及びii)部分内の超音波軸(この場合は「屈折した超音波パルス」の超音波軸)と界面/後壁との間の入射角が同じであるため、前壁エコーと界面/後壁エコーの歪みの程度は同じになることに留意されたい。したがって、前壁エコー及び後壁エコーのこのような共通の歪みによって誤差が発生したり導入されたりすることはない。しかしながら、DL1及びBW1(またはモード3技術を使用して測定した場合はBW2)エコーの経路長の変化に起因して補償が必要であり、これは、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度に依存する。そのような状況には、デルタT補正/補償を決定及び使用するための上述の技術を使用することができる。
【0077】
上記は、「補正」または「補償」モデルを決定するための実験的方法を説明する。理解されるように、そのようなモデルを決定するための代替技術には、レイリー・ソマーフェルド回折理論などの数値的手法を使用したシミュレーションが含まれる。
【0078】
上記は、モード2測定を実装するシステムの特定の実施形態を説明する。しかしながら、モード3測定を実施するシステム、例えば、2つの連続した後壁エコーを使用するシステムにも同じ技術を使用することができる。そのようなモード3測定では、第2の(BW2)エコーは同じ角度でトランスデューサに入射されるため、DL1と同じように歪み、特許に記載された同じ誤差源の原因となる。
【0079】
これは、上記のようにデルタT補償項を使用することによって修正することができる。デルタT補償を求めるためのプロセスは、上述したのとまったく同じであろう。唯一の違いは、BW1エコーがエコー1(TOA1)の到着時刻を見つけるために処理され、BW2がエコー2(TOA2)のTOAを見つけるために処理されることであり、時間遅延はその後、TOA2からTOA1を差し引くことによって計算される。理解されるように、界面/後壁の反射の間の超音波ビーム/パルスによって移動される水平/横方向の距離に起因して、部分が界面/後壁表面のより大きなセクションにわたって平面であるという仮定がある。また理解されるように、BW2エコーの経路長がBW1エコーと異なるため(
図12に示されるように)、部品の厚さTを決定するための式は、それに応じて、例えば、以下のように修正することができる。
【0080】
【0081】
ここで、Kαは、超音波パルスが測定位置の厚さまでたどる経路に関係し、式(2)と同じである。
【0082】
上述したように、関数 α が未調整のデルタT(または公称厚さ値)を入力パラメータとして取ることは必須ではない。言い換えれば、入射角(すなわち、前壁部分の公称表面法線に対する超音波検査装置の超音波軸の角度)の補償の一部として部分の厚さを考慮することは必須ではない。したがって、そのような場合、補償モデル/関数は、異なる厚さを有するセクションの測定から生成される必要はなく、代わりに、1つの厚さで得られた測定から生成され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査装置によってオブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間
の時間遅延を決定する方法であって、前記方法は、
i)前記超音波検査装置の超音波軸が前壁部分
の公称表面法線に対して角度をなして配置されるように、前記オブジェクトの前記前壁部分と係合した超音波プローブを用いて、前記超音波検査装置が超音波パルスを放射するステップ、及び前記超音波パルスのエコーを記録するステップを含む超音波測定を行うステップと、
ii)前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度に基づいて、前記時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して、前記
超音波パルスのエコー間の前記時間遅延を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記オブジェクトの前記前壁部分からのエコーと前記オブジェクト
の内部または後壁部分からの界面エコーとの間の前記時間遅延を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前壁部分と前記内部または後壁部分とが非平行である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記前壁部分と前記内部または後壁部分との間
の測定点におけ
る部分
の公称厚さに関連する変数を入力として取る、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記測定点における前記部分
の公称音速に関連する変数を入力として取る、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記時間遅延決定プロセスが、さらに、前記
超音波パルスのエコー間の前記時間遅延の未調整の測定値を入力として取る、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前
記測定点における前記超音波軸及び前記部分の相対的な角度配向が、前記部分を通って伝播するときの前記超音波パルスの前記超音波軸が、前記測定点における前記内部または後壁部分の前記公称表面法線に実質的に平行になるように選択される、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記時間遅延決定プロセスが、前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度に基づいて、前記調整の程度を決定するための補償モデルを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記補償モデルは、少なくとも1つの行列、少なくとも1つの関数、及び/または少なくとも1つのルックアップテーブルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定点において前記前壁部分と前記内部または後壁部分との間の前記オブジェクト内
の厚さ、音の材料構造、または音速のうちの少なくとも1つを決定するステップを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記超音波検査装置が、検査されるオブジェクト
の表面と係合するための変形可能な結合要素を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記超音波検査装置が、位置決め装置、例えば、座標位置決め装置に取り付けられる、
請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記超音波検査装置及びオブジェクトは、前記超音波検査装置の超音波軸及びオブジェクトの前記相対的な
角度配向を変更することができる少なくとも1つの軸を有する位置決め装置上に提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記位置決め装置が、少なくとも2つの直線自由度での前記超音波プローブの並進運動を容易にし、少なくとも1つの回転軸の周りの前記超音波プローブの回転運動を容易にする、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記前壁部分の前記公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の前記角度が、前記超音波検査装置によって感知され
た超音波信号とは独立した1つ又は複数の源から決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
超音波プローブと検査されるオブジェクトとの相対的な並進位置、及び少なくとも1つの軸の周りの相対的な角度配向を操作できるように構成された、位置決め装置及び前記位置決め装置に取り付けるための超音波検査装置と、超音波検査装置によって前記オブジェクトに放射される超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成された、処理装置と、を備えた装置であって、前記処理装置は
、前壁部分
の公称表面法線に対する前記超音波検査装置の超音波軸の角度に基づいて、前記時間遅延の計算を調整する時間遅延決定プロセスを介して前記
超音波パルスのエコー間の時間遅延を決定するように構成されている、装置。
【国際調査報告】