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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】操作されたNK細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240927BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240927BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K39/395 D
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519543
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022077244
(87)【国際公開番号】W WO2023056346
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,801
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コピック,アリシア ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハサン,エムディー ファクルル
(72)【発明者】
【氏名】クルーム-ペレス,テイラー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BD25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB321
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC752
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB44
4C085CC23
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC41
(57)【要約】
Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、操作されたNK細胞、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系を利用するTIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制されるTIGIT発現、並びにがん及び感染性疾患を治療するためのそれらの使用が本明細書に開示される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、操作されたNK細胞。
【請求項2】
TIGITの前記発現が、TIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制される、請求項1に記載の操作されたNK細胞。
【請求項3】
TIGITの前記発現が、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAにより前記NK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、前記ガイドRNAが、前記TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする、請求項1又は2に記載の操作されたNK細胞。
【請求項4】
TIGITの前記発現が、TIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによって抑制される、請求項1に記載の操作されたNK細胞。
【請求項5】
前記操作されたNK細胞が、ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)、CD96、リンパ球活性化3(LAG3)、TIM-3、NKG2A、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される阻害性受容体の発現において抑制される、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項6】
前記NK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株である、請求項1~5のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項7】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項8】
前記拡大されたNK細胞が、インビトロ又はエクスビボでNK細胞拡大組成物に曝露される、請求項7に記載の操作されたNK細胞。
【請求項9】
前記NK細胞拡大組成物が、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む、請求項8に記載の操作されたNK細胞。
【請求項10】
前記フィーダー細胞又は操作された粒子が、その外面に結合されたFcドメインを含む、請求項9に記載の操作されたNK細胞。
【請求項11】
前記NK細胞拡大組成物が、NK細胞エフェクター剤を更に含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項12】
前記NK細胞エフェクター剤が、IL-21及び/又は41BBLを含む、請求項11に記載の操作されたNK細胞。
【請求項13】
対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記対象に治療有効量のTIGIT阻害剤を投与することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記TIGIT阻害剤が、抗TIGIT抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗TIGIT抗体が、Fc受容体に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体に対する親和性が低下したFc領域を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記チェックポイント遮断薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の操作されたNK細胞を投与することを含み、前記操作されたNK細胞が、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、方法。
【請求項21】
TIGITの前記発現が、TIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
TIGITの前記発現が、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAにより前記NK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、前記ガイドRNAが、前記TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
TIGITの前記発現が、TIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによって抑制される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記操作されたNK細胞が、ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)、CD96、リンパ球活性化3(LAG3)、TIM-3、NKG2A、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される阻害性受容体の発現において抑制される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記拡大されたNK細胞が、インビトロ又はエクスビボでNK細胞拡大組成物に曝露される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記NK細胞拡大組成物が、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フィーダー細胞又は操作された粒子が、その外面に結合されたFcドメインを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記NK細胞拡大組成物が、NK細胞エフェクター剤を更に含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記NK細胞エフェクター剤が、IL-21及び/又は41BBLを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象に治療有効量のTIGIT阻害剤を投与することを更に含む、請求項20~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記TIGIT阻害剤が、抗TIGIT抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗TIGIT抗体が、Fc受容体に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体に対する親和性が低下したFc領域を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含む、請求項20~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記チェックポイント遮断薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
NK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強するためのインビトロ又はエクスビボの方法であって、前記方法が、前記NK細胞のIg及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現を抑制すること、又は前記NK細胞をTIGIT阻害剤とともにインキュベートすることを含む、方法。
【請求項39】
TIGITの前記発現が、TIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
TIGITの前記発現が、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAにより前記NK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、前記ガイドRNAが、前記TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
TIGITの前記発現が、TIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによって抑制される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記操作されたNK細胞が、ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)、CD96、リンパ球活性化3(LAG3)、TIM-3、NKG2A、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される阻害性受容体の発現において抑制される、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記NK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株である、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記拡大されたNK細胞が、インビトロでNK細胞拡大組成物に曝露される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記NK細胞拡大組成物が、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記フィーダー細胞又は操作された粒子が、その外面に結合されたFcドメインを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記NK細胞拡大組成物が、NK細胞エフェクター剤を更に含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記NK細胞エフェクター剤が、IL-21及び/又は41BBLを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記NK細胞をTIGIT阻害剤とともにインキュベートすることを更に含む、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記TIGIT阻害剤が、抗TIGIT抗体である、請求項38又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記抗TIGIT抗体が、Fc受容体に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体に対する親和性が低下したFc領域を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記NK細胞をチェックポイント遮断薬とともにインキュベートすることを更に含む、請求項38~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記チェックポイント遮断薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項38~55のいずれか一項に記載の方法によって調製されたNK細胞を投与することを含む、方法。
【請求項57】
対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、前記対象に、治療有効量のNK細胞及び治療有効量のIg及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項58】
前記NK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞である、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記拡大されたNK細胞が、インビトロ又はエクスビボでNK細胞拡大組成物に曝露される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記NK細胞拡大組成物が、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記フィーダー細胞又は操作された粒子が、その外面に結合されたFcドメインを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記NK細胞拡大組成物が、NK細胞エフェクター剤を更に含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記NK細胞エフェクター剤が、IL-21及び/又は41BBLを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記TIGIT阻害剤が、抗TIGIT抗体である、請求項57~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗TIGIT抗体が、Fc受容体に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体に対する親和性が低下したFc領域を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含む、請求項57~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記チェックポイント遮断薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の操作されたNK細胞を投与することを含み、前記操作されたNK細胞が、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制され、前記操作されたNK細胞が、前記投与する工程の前に、インビトロ又はエクスビボでTIGIT阻害剤とともにインキュベートされる、方法。
【請求項71】
TIGITの前記発現が、TIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
TIGITの前記発現が、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAにより前記NK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、前記ガイドRNAが、前記TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
TIGITの前記発現が、TIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによって抑制される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記操作されたNK細胞が、ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)、CD96、リンパ球活性化3(LAG3)、TIM-3、NKG2A、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される阻害性受容体の発現において抑制される、請求項70~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記NK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株である、請求項70~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である、請求項70~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記拡大されたNK細胞が、インビトロ又はエクスビボでNK細胞拡大組成物に曝露される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記NK細胞拡大組成物が、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記フィーダー細胞又は操作された粒子が、その外面に結合されたFcドメインを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記NK細胞拡大組成物が、NK細胞エフェクター剤を更に含む、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記NK細胞エフェクター剤が、IL-21及び/又は41BBLを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記対象に治療有効量のTIGIT阻害剤を投与することを更に含む、請求項70~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記TIGIT阻害剤が、抗TIGIT抗体である、請求項70~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記抗TIGIT抗体が、Fc受容体に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体に対する親和性が低下したFc領域を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含む、請求項70~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記チェックポイント遮断薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項86に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年09月29日に出願された、米国仮特許出願第63/249,801号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
NK細胞は、一部には、その強固な細胞傷害性、より良好な安全性、及びオフ・ザ・シェルフ(off-the-shelf)療法としてのそれらの可能性のために、がんに対する有望な細胞療法として受け入れられてきた。NK細胞は、先天性免疫系の一部としての第1の応答者であり、がん性細胞を認識し、これを直接的に死滅させる固有の能力を有する。T細胞とは異なり、NK細胞は、MHC及び抗原に依存しない方法で、がん細胞を死滅させる。NK細胞は、生殖細胞系列をコードする活性化受容体及びそれらのリガンドと結合する阻害性受容体のセットを発現し、これらの阻害性受容体及び活性化受容体のシグナル伝達のバランスは、NK細胞活性を制御する。活性化受容体は、悪性及びウイルス感染した細胞において一般的に発現されるそれらのリガンドと結合すると、NK細胞を活性化するが、阻害性受容体は、MHC分子などの健康な細胞上で通常発現するそれらのリガンドと結合すると、NK細胞機能を防止する。NK細胞の活性化及び標的細胞の死滅は、これらの活性化シグナル及び阻害性シグナルの微細な調整に依存する。重要なことに、NK細胞は、FcγR CD16活性化受容体を発現し、この受容体は、腫瘍抗原を標的とする抗体のFc領域と結合し、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の方式で、がん細胞を死滅させることができる。がん細胞は、阻害性受容体のリガンドを上方調節し、これらのリガンドと阻害性受容体との結合は、NK細胞の抗腫瘍活性を防止し、それらの疲弊を促進する。様々ながんでは、阻害性受容体発現の上方調節は、がん細胞に対するより低い細胞傷害性及び炎症誘発性サイトカインIFNγの発現の低下を含む、NK細胞の疲弊表現型と相関する。
【0003】
NK細胞は、腫瘍細胞を直接的に死滅させるだけではなく、炎症促進性サイトカイン及びケモカインの分泌によって、適応免疫系の細胞を含む他の免疫細胞を動員し、協調させ、活性化する。近年の研究は、NK細胞が多くの免疫療法の有効性において重要な役割を果たすことを示している。更に、NK細胞は、効率的に拡大させ、有効性を損なうことなく生存状態で凍結保存することができ、これは移植片対宿主疾患(GVHD)に関連しておらず、オフ・ザ・シェルフ細胞療法として凍結保存されたドナー由来材料の安全な使用の可能性を裏付けている。現在、様々ながん環境において、CAR-NK細胞を含むNK細胞の有効性を評価する臨床試験が多数存在する。PD-1/PD-L1及びCTLA-4に対するチェックポイント阻害剤は、いくつかのがんに対する成功を示している。しかしながら、これらの治療から利益を得ることができるのは少数の患者のみである。更に、がんは、多くの場合、これらの療法に対する耐性を発生させ、一部の患者は、免疫関連の副作用を経験する。これらの観察結果は、免疫療法の利益をより多くの患者に拡大し、かつより良い安全性プロファイルを有する新しい阻害チェックポイントへの関心を引き起こした。
【0004】
免疫グロブリン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)は、NK及びT細胞の両方の主要な阻害性受容体である。TIGITは、阻害性受容体CD96(TACTILE)及びPVRIG、並びに活性化受容体CD226(DNAM-1)と競合し、がん細胞及び抗原提示細胞(APC)上で一般的に発現されるそれらのリガンドCD155(PVR)及びCD112(Nectin-2又はPVRL2)と結合するとともに、腫瘍細胞上でほぼ排他的に発現されるTIGITの新規の独自のリガンドであるPVRL4(Nectin4)と結合する。TIGITシグナル伝達は、複数の工程で腫瘍免疫サイクルを調節する。これにより、これらの細胞によるT細胞増殖、細胞傷害性、及び炎症性サイトカインIFNγの産生を防止する。以前の研究では、TIGITが、がんにおいてT細胞及びNK細胞の両方で上方調節され、多くの場合、それらの疲弊と相関することが報告されている。マウスモデルでは、TIGITの遮断は、NK細胞の細胞傷害性を回復させ、IFNγ及びTNFα発現を増加させ、腫瘍特異的T細胞免疫を促進した。加えて、TIGIT及びPD-1を併せた遮断は、前臨床マウスモデル及び早期臨床試験において、腫瘍制御及び生存を改善する相乗効果を有していた。B16マウスモデルでは、PD-1及びTIGIT遮断の治療有効性は、NK細胞の存在に依存し、NK細胞の枯渇が、その効果を排除した。いくつかの抗TIGIT抗体を、単独で、又は他のチェックポイント阻害剤(具体的には抗PD-1)と組み合わせて、第I相、第II相、及び第III相の臨床試験で試験している。第II相試験は、この併用によるNSCLCにおける無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)の増強を示したが、第III相のSKYSCRAPER-01は、PFSの共同主要評価項目を満たしておらず、試験は、OSを評価するのに十分ではなかった。免疫細胞機能のTIGIT調節の現在の理解の大部分は、T細胞に基づいており、及び/又はマウスモデルに由来するが、ヒトNK細胞におけるTIGITの限定された機構的インビトロ研究のみが存在し、主にNK細胞株に依存する。療法の潜在的な欠点に対処するときに必要とされる機能的及び/又は分子レベルのいずれかでのヒトNK細胞の抗腫瘍機能に対するTIGIT遮断の効果、並びに養子NK細胞及び抗TIGIT抗体の併用治療の可能性を評価するためのTIGIT遮断の効果の理解が欠如している。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様では、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、操作されたNK細胞が本明細書に開示される。TIGITの発現は、TIGIT遺伝子又はその断片の欠失によって抑制され得る。いくつかの実施形態では、TIGITの発現は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAによりNK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、ガイドRNAは、TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする。いくつかの態様では、TIGITの発現は、TIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによって抑制される。いくつかの態様では、任意の先行する態様のNK細胞が、初代NK細胞又はNK細胞株であることが本明細書に開示される。また、NK細胞が、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である、任意の先行する態様のNK細胞も本明細書に開示される。いくつかの態様では、NK細胞は、インビトロ/インビボでNK細胞拡大組成物に曝露され得る(例えば、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソーム)。いくつかの態様では、任意の先行する態様のフィーダー細胞又は操作された粒子は、その外面に結合されたFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、NK細胞拡大組成物は、NK細胞エフェクター剤(例えば、IL-21及び/又は41BBLを含む)を更に含む。
【0006】
本明細書に開示される操作されたNK細胞は、がん又は感染性疾患に対する増強された機能を示す。したがって、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、対象に、治療有効量の任意の先行する態様の操作されたNK細胞を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。同様に、本開示は、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する際に使用するための、治療有効量の任意の先行する態様の操作されたNK細胞を提供する。いくつかの態様では、操作されたNK細胞は、操作されたNK細胞を対象に投与する前に、TIGIT阻害剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの態様では、本方法は、対象に、治療有効量のTIGIT阻害剤及び/又は治療有効量のチェックポイント遮断薬(例えば、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤)を投与することを更に含む。
【0007】
NK細胞の疲弊は、がん又はいくつかの感染性疾患を有する対象において生じる。本明細書に開示される操作されたNK細胞は、増強された機能(例えば、増強された細胞傷害性機能並びに/又はIFNγ、TNFα、及び/若しくはCD107aの増加した発現を含む)を示す。したがって、NK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強するための方法であって、当該方法が、NK細胞のTIGITの発現を抑制すること、又はNK細胞をTIGIT阻害剤とともにインキュベートすることを含む、方法が本明細書に開示される。
【0008】
また、任意の先行する態様のNK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、及び/若しくはNK細胞機能を増強するための方法、並びに/又は任意の先行する態様のがん及び/若しくは転移を治療、減少、阻害、低下、改善、及び/若しくは予防する方法であって、がんが、血液がん、リンパ腫、結腸直腸がん、結腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、腎臓がん、皮膚がん、子宮頸がん、膵臓がん、及び乳がんからなる群から選択される方法である、方法が本明細書に開示される。一態様では、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの態様では、がんは、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、多発性骨髄腫から選択される。別の態様では、がんは、白血病、リンパ腫、肉腫、がん腫から選択され、骨髄、脳、肺、乳房、膵臓、肝臓、頭頸部、皮膚、生殖管、前立腺、結腸、肝臓、腎臓、腹膜内、骨、関節、又は眼に由来し得る。
【0009】
本明細書に記載される治療方法のうちのいずれもまた、本明細書に開示されるがん又は感染性疾患のうちのいずれかを治療するための、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかの医療的使用であるとみなされることを更に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A~1Hは、TIGITシグナル伝達の遮断が、PM21 NK細胞の抗腫瘍活性を増強することを示す。図1Aは、qRT-PCRによる、ナイーブNK細胞及びPM21 NK細胞における阻害性受容体のRNA発現分析を示す。データは、4つの生体複製物の平均±SDとして示される。図1Bは、ナイーブNK細胞及びPM21 NK細胞上のTIGIT発現の頻度を示す(群当たりn=7)。図1Cは、アイソタイプ抗体又は抗TIGIT抗体の存在下でのA549スフェロイドに対するNK細胞の細胞傷害性の代表的な図を示す。データは、3つの技術的複製物の平均として示される。図1D~1Fは、NK細胞においてCD107a(図1D)、IFNγ(図1E)、及びTNFα(図1F)を発現する細胞の頻度を示す。データを、平均として示す(群当たりn=4)。PM21 NK細胞とA549スフェロイドとを7日間共培養した後、NK細胞を、ブレフェルジンA及びGolgi Stopの存在下で6時間にわたってPVR+K562細胞で再刺激し、それぞれの抗体及びアイソタイプで染色した。刺激されていないPM21 NK細胞を除く全ての群を、PVR+K562細胞で刺激した。図1Gは、NK細胞におけるTIGITノックアウトの5日後の親PM21 NK細胞(通常のNK細胞)及びTIGITノックアウトPM21 NK細胞(KO PM21 NK細胞)の代表的なTIGITヒストグラムのオーバーラップを示す。図1Hは、A549スフェロイドの相対的拡大の代表的なグラフを示す。データを、3つの技術的複製物の平均として示す。全てのグラフについて、P値*<0.05、**<0.01、***<0.001。
図2図2は、PM21 NK細胞が、TIGITを有意に上方調節することを示す。
図3図3は、活性化時にTIGITが上方調節されることを示す。
図4図4は、TIGITが、より高い細胞障害機能を有する活性化された細胞上で発現されることを示す。
図5図5は、PVR発現が、おそらくDNAM-1を介してNK細胞の細胞傷害性を増強することを示す。
図6図6は、抗TIGITが、PM21 NK細胞による3D A549細胞の死滅を改善することを示す。
図7図7は、TIGIT遮断薬が、3D A549細胞のPM21 NK細胞死滅を改善することを示す。
図8図8は、TIGIT KO NK細胞が、より高い全体的な細胞傷害性を有することを示す。
図9図9は、TIGITノックアウトNK細胞が、フラトリサイドを防止し、NK細胞数を回復させることができることを示す。
図10図10は、NK細胞フラトリサイドに対するチラゴルマブの効果を示す。
図11図11は、PM21 NK細胞が、阻害性受容体を有意に上方調節することを示す。
図12図12は、PM21 NK細胞の抗腫瘍活性に対するTIGIT遮断薬の効果を試験するための実験設計を示す概略図を示す。
図13図13A及び13Bは、全てのRNA-seq遺伝子を用いた遺伝子セット濃縮分析を示す。
図14図14は、差次的に発現された遺伝子を用いた遺伝子セット濃縮分析を示す。
図15図15は、TIGITの抗体遮断薬が、長期間曝露中のNK細胞のPVR媒介性疲弊を誘導し、肺がん細胞株スフェロイドに対するNK細胞の抗腫瘍活性を回復させる機構を示す。
図16図16A~16Cは、TIGITNK細胞は、TIGITNK細胞と比較して、NK細胞受容体の発現が増加していることを示す。NK細胞を、4名のドナーからのT細胞が枯渇したPBMCからのPM21粒子で12日間拡大させた。NK細胞の活性化受容体及び阻害性受容体の発現をフローサイトメトリーによって決定し、TIGIT又はTIGITNK細胞に対してゲーティングした。TIGITNK細胞(黒色)と比較して、TIGITNK細胞(赤色)上の複数の活性化受容体及び阻害性受容体が上方調節された(図16A)。活性化受容体CD16、NKp30、NKp46、DNAM1、及びNKG2D(図16B)、並びに阻害性受容体CD96、TIM3、NKG2A、LAG3、及びPD1(図16C)を発現するNK細胞のパーセントを、TIGITNK細胞(赤色の三角)及びTIGITNK細胞(黒色の丸)について決定した。データは、ドナー対の線を伴うレーダープロット又は散布図として提示される。統計的有意性を、複数の対応ありt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*として示すか、又はp<0.01である場合に**として示す。
図17図17A~17Dは、TIGIT遮断薬が、3D肺腫瘍スフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を増強したことを示す。NK細胞を、複数のドナーから得られたT細胞が枯渇したPBMCからのPM21粒子で14~16日間拡大させた。動的生存細胞イメージングによって測定された、単層中のA549-NLR肺がん細胞に対する細胞傷害性は、アイソタイプ対照と比較して、α-TIGIT抗体の存在下で有意に改善されなかった。1名のドナーからの経時的な代表的な細胞傷害性曲線を、アイソタイプ対照(黒色の丸)で、又はα-TIGIT存在下(赤色の三角)のいずれかで、0.3:1のNK細胞:A549細胞の存在下で示す(図17A)。NK細胞の0.3:1における複数のドナーからの24、48、及び72時間における細胞傷害性の概要を示す(N=3)(図17A)。複数のNK細胞:A549細胞比で、24、48、及び72時間における1名のドナーについての用量依存性細胞傷害性曲線が示される(図17B)。拡大されたNK細胞を、A549腫瘍スフェロイドと7日間共培養した。NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングによって決定した。1名のドナーからの代表的な細胞傷害性曲線を、アイソタイプ対照(黒色の丸)又はα-TIGIT(赤色の三角)が存在する状態で示す(図17C)。1:1のNK:A549比で72時間における複数のドナーからのNK細胞の細胞傷害性の概要は、TIGIT遮断薬が、細胞傷害性を有意に増加させ(N=6ドナー)、正規化されたアイソタイプ対照の場合に各ドナーについて相対的細胞傷害性が増加したことを示す(図17C)。共培養の7日後、NK細胞を分析して、フローサイトメトリーによって阻害性受容体及び活性化受容体の発現を決定した。TIGIT遮断薬は、アイソタイプ対照(黒い丸)と比較して、α-TIGITの存在下でA549スフェロイドと共培養した場合(赤色の三角)に、主要な阻害性受容体又は活性化受容体の発現を有意に変化させず、発現レベルは、曝露されていないNK細胞(灰色の四角)と同様であった(N=3~5ドナー)(図17D)。データは、ドナー対の線を伴う散布図として、又は標準偏差を表す誤差バーを伴う平均として提示される。統計的有意性を、複数の対応ありt検定によって決定した。用量依存性細胞傷害性曲線について、曲線下面積(Area Under the Curve、AUC)を決定し、対応のないt検定によって比較した。P値を、p>0.05である場合にnsとして、p<0.0001である場合に****として示す。
図18図18A~18Bは、TIGIT遮断薬が、複数の長期間の3D肺腫瘍スフェロイドモデルにおいてNK細胞媒介性の死滅を増強したことを示す。NK細胞を、複数のドナーから得られたT細胞が枯渇したPBMCからのPM21粒子で14~16日間拡大させた。拡大されたNK細胞を、NCI-H1299-NLR、NCI-H358-NLR又はNCI-1975-NLR肺腫瘍スフェロイドと7日間共培養した。NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングによって決定した。1名のドナーからの代表的な細胞傷害性曲線を、アイソタイプ対照(黒色の丸)又はα-TIGIT(赤色の三角)が存在する状態のいずれかで試験した各細胞株について示す(図18A)。72時間における複数のドナーからのNK細胞の細胞傷害性の概要は、TIGIT遮断薬が、細胞傷害性を有意に増加させ、各ドナーがアイソタイプ対照に対して正規化された場合に、相対的細胞傷害性が増強したことを示す(使用されたE:T比は、NCI-H1299について3:1、NCI-H358について1:1、及びNCI-H1975について1:3、N=6ドナー)(図18B)。データは、ドナー対の線を伴う散布図として、又は標準偏差を表す誤差バーを伴う平均として提示される。統計的有意性を、複数の対応ありt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*として示し、p<0.01である場合に**として示す。
図19図19A~19Cは、TIGIT遮断薬が、長期間曝露中のPVR媒介性NK細胞の疲弊を防止することを示す。NK細胞を、T細胞が枯渇したPBMCから14~16日間かけて拡大させた。拡大されたNK細胞を、α-TIGIT又はアイソタイプ対照の存在下でA549スフェロイドと7日間共培養した。共培養の7日後、NK細胞を、ブレフェルジンA及びGolgi Stopの存在下で4~6時間にわたってPVR発現を伴って、又は伴わずに、K562がん細胞で刺激し、表面CD107a、IFNγ及びTNFαのNK細胞発現を、フローサイトメトリーにより分析した。曝露されていない、刺激されていないか、又は刺激されたPM21-NK細胞を対照として使用した。加えて、NK細胞を、A549スフェロイドとの共培養の後に選択し、RNA抽出及びトランスクリプトーム分析に使用した。実験の概略図を(図19A)に示す。各IFNγ、TNFα、及びCD107a発現について、刺激されていない曝露されていないNK細胞(灰色の四角)、曝露されていない刺激されたNK細胞(黒色の四角)、アイソタイプ存在下(灰色の丸)又は抗TIGIT抗体存在下(赤色の三角)で腫瘍曝露されたNK細胞を、PVRK562細胞又はPVRK562細胞のいずれかによる再刺激のために示す。TIGIT遮断薬は、PVRK562細胞(N=4ドナー)で再チャレンジしたときに、IFNγ、TNFα、及びCD107a発現を保存した(図19B)。RNA-seqデータのGSEA分析は、TIGIT遮断薬が、IFNγ、TNFα、及び他の関連する炎症応答遺伝子セットを上方調節したことを示す。概要のグラフは、その-log10(FDR)に基づいて、TIGIT遮断時に上方調節された遺伝子セットを示す(図19C)。データは、標準偏差を表す誤差バーを伴う散布図又は棒グラフとして提示される。統計的有意性を、複数の対応のないt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
図20図20は、K562-mbIL21-41BBL細胞(PM21粒子)に由来する形質膜粒子を利用して、NK細胞増殖を刺激する、フィーダー細胞を含まない拡大技術が開発されたことを示す。この方法は、2週間で、PM21-NK細胞と呼ばれるNK細胞の平均1,700倍の拡大をもたらす(18名のドナーからN=113)。
図21図21A~21Bは、0、48、96、及び144時間後のα-TIGIT又はアイソタイプ対照の存在下で10,000個のNK細胞とともにインキュベートされたNLRを発現するA549がん細胞スフェロイドの生存細胞イメージング細胞傷害性アッセイからの代表的な画像を示し、抗TIGIT抗体の存在下でNK細胞の細胞傷害性の増加を示す(図21A)。1名のドナーからの代表的な生データを、A549相対的拡大単独(灰色の四角)又はアイソタイプ対照(黒色の丸)若しくは抗TIGIT(赤色の三角)を含む0.3:1のNK細胞:A549細胞の存在について示す。
図22図22A~22Bは、NK細胞が、複数のドナーから得られたT細胞が枯渇したPBMCからのPM21粒子で拡大したことを示す。これらの拡大されたNK細胞を、ブレフェルジンA及びGolgi Stopを含むα-TIGIT又はアイソタイプ対照の存在下で、PVR発現を伴いつつ、又は伴わずに、K562がん細胞と4~6時間共培養した。IFNγ及びTNFα及び表面CD107aの発現をフローサイトメトリーによって分析した。NK細胞単独(黒色の丸)と比較して、TIGIT遮断薬(赤色の三角)は、PVR-K562細胞又はPVRK562細胞による刺激時に、IFNγ、TNFα、又は表面CD107aを発現するドナー一致NK細胞の割合を有意に変化させなかったが、TIGIT遮断時にTNFαを発現するNK細胞のわずかな有意な増加がみられた(36%±3%対32%±2% p=0.008)(N=3ドナー)(図22A)。PM21-NK細胞の細胞傷害性に対する短期間TIGIT遮断薬の効果も決定した。PM21-NK細胞を、抗TIGIT又はアイソタイプ対照抗体の存在下でPVR-又はPVR+K562細胞と1時間共培養し、NK細胞の細胞傷害性を、K562細胞のアネキシンV染色によって決定した。濃度依存性の細胞傷害性曲線を、複数のNK:K562比を使用して生成し、曲線下面積を決定した。短期間TIGIT遮断薬は、アイソタイプ対照抗体と比較して、PVR又はPVRK562細胞のいずれかに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を有意に改善しなかった(PVR-K562細胞に対して、335±6%比対325±10%比、PVRK562細胞に対して、346±3%比対341±10%比)(図22B)。
図23図23は、インビトロ疲弊モデルの分析に使用される生データの代表的なゲーティング戦略及びフローサイトメトリードットプロットを示す。
図24図24は、TIGITノックアウトNK細胞に関する特定の知見をまとめた概略図を示す。
図25図25A~25Dは、TIGITが、エクスビボ拡大されたNK細胞において効率的にノックアウトされ得ることを示す。
図26図26A~26Hは、TIGITノックアウトがNK細胞表現型を変化させないことを示す。
図27図27A~27Iは、TIGIT KO NK細胞が、様々な腫瘍スフェロイドに対して、より細胞傷害性であることを示す。
図28図28A~28Cは、TIGIT KO NK細胞が、ADCCを介してより良好に死滅させることを示す。
図29図29A~29Cは、TIGITが、A549スフェロイドに48時間曝露した後の脱顆粒のマーカーであるCD107a表面発現を増加させることを示す。
図30図30A~30Dは、WT PM21-NK細胞とTIGIT KO PM21-NK細胞との間の解糖及びミトコンドリアストレスの比較を示す。
図31図31A~31Bは、TIGIT KO NKが、チラゴルマブ誘導性フラトリサイドを防止し、チラゴルマブの存在下でA549スフェロイドに対する増強された細胞傷害性をもたらすことを示す。
図32図32は、TIGIT KO NK細胞が、インビボでの持続性が向上していることを示す。
図33図33A~33Cは、NK細胞におけるTIGIT KO時の代表的な上方調節及び下方調節された遺伝子セットのヒートマップを示す。
図34図34A~34Dは、TIGIT KO NK細胞の代謝分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法が開示及び説明される前に、それらは、別段明記されない限り、特定の合成方法又は特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されないか、又は別段明記されない限り、特定の試薬に限定されず、したがって、もちろん変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0012】
定義
本出願全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、それらの全体が、本出願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に組み込まれる。開示される参考文献はまた、参考文献に依る文章で考察され、それらに含有される材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd Ed.1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988)、The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、及びHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段明記されない限り、それらに帰する意味を有する。
【0014】
本開示の要素又はその好ましい実施形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙されている要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「~から本質的になる」は、組み合わせに対する任意の本質的な重要性を有する他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法から微量汚染物質及び薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、保存剤などを除外しない。「~からなる」とは、本発明の組成物を投与するための他の成分の微量要素を超えるもの、及び実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0016】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似値として表現される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。範囲の各々の終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが更に理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値はまた、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、したがって「約10」もまた開示される。当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示される場合、「その値以下」、「その値以上」及びその値の間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」及び「10以上」もまた開示される。また、本出願全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点及び始点、並びにデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」及び特定のデータポイント15が開示される場合、10と15との間だけでなく、10より大きい、10以上、10未満、10以下、及び10に等しい、15より大きい、15以上、15未満、15以下、及び15に等しい値が開示されるとみなされることが理解される。また、2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることが理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0017】
対象への「投与」には、対象に薬剤を導入又は送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、移植リザーバー経由、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注入技術)などを含む、任意の好適な経路によって実施することができる。本明細書で使用される「同時投与」(concurrent administration、administration in combination、simultaneous administration、又はadministered simultaneously)は、化合物が、時間的に同じ時点で投与されるか、又は本質的に互いの直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、観察された結果が、時間的に同じ時点で投与された場合に得られる結果と区別できないような十分近い時間に投与される。「全身投与」は、例えば循環系又はリンパ系への入り口を介して、対象の身体の広範囲の領域(例えば、身体の50%超)に薬剤を導入又は送達する経路を介して、対象に薬剤を導入又は送達することを指す。対照的に、「局所投与」は、投与点の領域又はそれに直接隣接する領域に薬剤を導入又は送達し、治療上有意な量で薬剤を全身的に導入しない経路を介して、対象に薬剤を導入又は送達することを指す。例えば、局所投与される薬剤は、投与点の局所的な近傍で容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出不能であるか、又は無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与及び他者による投与が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、非経口、静脈内、腹腔内、若しくは皮下に、又は動脈注入、静脈注入、若しくは人工カテーテル媒介注入を介して投与される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「有益な薬剤」及び「活性薬剤」という用語は、有益な生物学的効果を有する化学化合物又は組成物を指すために本明細書で互換的に使用される。有益な生物学的効果としては、治療効果(すなわち、障害又は他の望ましくない生理学的状態の治療)、及び予防効果(すなわち、障害又は他の望ましくない生理学的状態の予防の)両方が挙げられる。これらの用語はまた、本明細書に具体的に言及される有益な薬剤の薬学的に許容される薬理学的に活性な誘導体を包含し、限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含む。「有益な薬剤」又は「治療薬剤」という用語が使用される場合、次いで、又は特定の薬剤が具体的に特定される場合、この用語は、薬剤自体、並びに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、コンジュゲート、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含むことを理解されたい。
【0019】
「コードする」とは、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又はアミノ酸の定義された配列及びそれらから生じる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして役立つ、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、mRNAの転写及び翻訳の場合、遺伝子は、タンパク質をコードする。
【0020】
「リンカー」という用語は、ポリペプチドの結合部位及び別のポリペプチドの結合部位を有する少なくとも二価の部分を指す。例えば、ポリペプチドは、そのN末端、そのC末端、又は側鎖のうちの1つの官能基を介してリンカーに結合し得る。リンカーは、2つのポリペプチドを少なくとも1つの原子によって、いくつかの実施形態では1つより多くの原子によって分離するのに十分である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に説明される事象又は状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、この記載には、前述の事象又は状況が生じる場合及び生じない場合が含まれる。
【0022】
「遺伝子」又は「遺伝子配列」という用語は、コード配列又は制御配列、又はその断片を指す。遺伝子は、コード配列及び制御配列、又はそれらの断片の任意の組み合わせを含み得る。したがって、本明細書で言及される「遺伝子」は、天然遺伝子の全部又は一部であり得る。本明細書で言及されるポリヌクレオチド配列は、用語「遺伝子」と互換的に使用され得るか、又は任意のコード配列、非コード配列若しくは制御配列、その断片、及びそれらの組み合わせを含み得る。用語「遺伝子」又は「遺伝子配列」は、例えば、コード配列の上流の制御配列(例えば、リボソーム結合部位)を含む。
【0023】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、ヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)から構成されるポリマーを意味する。本明細書で使用される「リボ核酸」及び「RNA」という用語は、リボヌクレオチドからなるポリマーを意味する。本明細書で使用される「デオキシリボ核酸」及び「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチドからなるポリマーを意味する。(「ポリヌクレオチド」及び「ポリペプチド」とともに使用される。)
【0024】
別途明記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの変性バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列といった語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンにおいてイントロンを含有し得る程度にイントロンを含み得る。
【0025】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。
【0026】
「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドモノマーからなる一本鎖又は二本鎖ポリマーを指す。
【0027】
「薬学的に許容される」構成要素は、生物学的又は他の望ましくないものではない構成要素、すなわち、著しく望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含有される製剤の他の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、本発明の薬学的製剤に組み込んで、本明細書に記載のように対象に投与することができる構成要素を指すことができる。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は、一般に、構成要素が毒性試験及び製造試験の必要な基準を満たしているか、又はそれが、米国食品医薬品局によって調製された不活性成分ガイドに含まれることを意味する。
【0028】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と称されることがある)は、一般に安全かつ無毒の薬学的又は治療組成物の調製において有用な担体又は賦形剤を意味し、獣医学的及び/又はヒトの薬学的又は治療的使用が許容される担体を含む。「担体」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、限定されないが、リン酸緩衝食塩水、水、エマルジョン(油/水若しくは水/油エマルジョンなど)、及び/又は様々なタイプの湿潤剤を含むことができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、又は薬学的製剤で使用するために当該技術分野で周知の他の材料を包含する。組成物中で使用するための担体の選択は、組成物の意図される投与経路に依存するであろう。薬学的に許容される担体及びこれらの材料を含有する製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,21st Edition,ed.University of the Sciences in Philadelphia,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,PA,2005に記載される。生理学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、グリセロール、DMSO、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、及び他の有機酸を含む緩衝剤などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギニン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)(ICI,Inc.、Bridgewater,New Jersey)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)(BASF、Florham Park,NJ)などの非イオン界面活性剤が挙げられる。所望の療法的治療のためのそのような用量の投与を提供するために、本明細書に開示される組成物は、担体又は希釈剤を含む組成物の総重量に基づいて、対象化合物のうちの1つ以上の総重量の約0.1重量%~99重量%を有利に含むことができる。
【0030】
本明細書で使用される「配列同一性」という用語は、実質的に等しい長さの2つの配列間の同一性の程度の定量的尺度を示す。核酸又はアミノ酸配列に関わらず、2つの配列の同一性パーセントは、2つのアラインメントされた配列間の正確なマッチの数を、より短い配列の長さで割ったものに、100を乗じたものである。核酸配列の近似アラインメントは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)の局所相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAによって開発され、Gribskov,Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763(1986)によって正規化されたスコアリングマトリックスを使用することによってアミノ酸配列に適用され得る。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実装態様は、Genetics Computer Group(Madison,Wis.)によって、「BestFit」ユーティリティアプリケーションにおいて提供される。配列間の同一性又は類似性パーセントを計算するのに好適な他のプログラムは、一般に当該技術分野で既知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、既定パラメータで使用されるBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下の既定パラメータを使用して使用され得る:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予測=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;並び替え=ハイスコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、GenBankのウェブサイトで確認できる。一般に、置換は、保存的アミノ酸置換であり、第1群:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、第2群:セリン、システイン、スレオニン、及びメチオニン、第3群:プロリン、第4群:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、第5群:アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、及びグルタミンのメンバー内の交換に限定される。
【0031】
核酸及びアミノ酸配列同一性を決定するための技術は、当該技術分野で既知である。典型的には、そのような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、及び/又はそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、及びこれらの配列を第2のヌクレオチド又はアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列を、この様式で決定及び比較することもできる。一般に、同一性は、それぞれ2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチド又はアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較され得る。
【0032】
「増加」とは、より多くの量の症状、疾患、組成物、状態、又は活性をもたらす任意の変化を指し得る。増加とは、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個々の、中央値、又は平均の増加であり得る。したがって、増加とは、その増加が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%の増加であり得る。
【0033】
「減少」とは、より少ない量の症状、疾患、組成物、状態、又は活性をもたらす任意の変化を指し得る。ある物質はまた、その物質を含む遺伝子産物の遺伝的出力が、その物質を含まない遺伝子産物の出力と比較して少ない場合に、遺伝子の遺伝的出力を減少させると理解される。また、例えば、減少は、症状が以前に観察されたものよりも少ないような、障害の症状の変化であり得る。減少とは、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個々の、中央値、又は平均の減少であり得る。したがって、減少とは、その減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%の減少であり得る。
【0034】
「断片」は、他の配列に付着しているか否かにかかわらず、特定の領域又は特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、又は他の選択された改変を含み得るが、ただし、断片の活性は、非改変ペプチド又はタンパク質と比較して著しく変化又は障害されない。これらの改変は、ジスルフィド結合が可能なアミノ酸を除去又は付加すること、その生物学的寿命を延ばすこと、その分泌特性を変化させることなどのいくつかの追加の特性を提供することができる。いずれにしても、断片は、NK細胞に対する阻害効果など、生物活性特性を有していなければならない。
【0035】
「阻害する」、「阻害すること」、及び「阻害」とは、活性、応答、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これには、活性、応答、状態、又は疾患の完全な除去が含まれ得るが、これらに限定されない。これには、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患の10%低減も含まれ得る。したがって、低減は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の低減であり得る。
【0036】
発現又は活性の「阻害剤」は、それぞれ、記載される標的タンパク質、例えば、リガンド、アンタゴニスト、及びそれらの相同体及び模倣物の発現又は活性のためのインビトロ及びインビボアッセイを使用して特定される阻害性分子を指すために使用される。阻害剤は、例えば、記載される標的タンパク質、例えば、アンタゴニストの発現を阻害するか、又はそれに結合し、刺激若しくはプロテアーゼ活性を部分的若しくは完全に遮断し、減少させ、防止し、活性化を遅らせ、不活性化し、脱感作するか、又はその活性を下方調節する薬剤である。対照試料(阻害剤で処理されていない)には、100%の相対的活性値が割り当てられる。記載される標的タンパク質の阻害は、対照と比較した活性値が約80%、任意選択的に50%又は25、10%、5%又は1%である場合に達成される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「N末端側」又は「アミノ末端」は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の方向性を指し、N末端を意味しない場合がある。いくつかの態様では、キメラ又は融合のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質が考察される場合、N末端側は、キメラ又は融合のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の構成要素のみを指す場合があり、構造全体を指さない場合がある。例えば、Fcドメインが考察され、Fcドメインがそのアミノ末端又は細胞内に面するN末端側と融合したものとして説明される場合、本明細書で企図されるのは、単一アンカーが、キメラ又は融合構築物のN末端にあり、実際には細胞膜にまたがっているキメラ又は融合のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質である。したがって、そのようなキメラでは、膜貫通アンカーは、Fcドメインのアミノ末端側に結合され、Fcドメインの方向性は、細胞に面するN末端側を有し、それは、典型的には、細胞膜に広がるカルボキシ末端及び細胞外マトリックスに延びるアミノ末端を有する典型的なB細胞上のFcドメインに対して反転している。
【0038】
「低減する」又は単語の他の形態、例えば、「低減すること」又は「低減」とは、事象又は特徴(例えば、腫瘍成長)の低下を意味する。これは典型的には、いくつかの標準値又は期待値に関し、換言すれば、それは相対的であるが、標準値又は相対値が参照されることが必ずしも必要ではないことが理解される。例えば、「腫瘍成長を低減する」とは、標準又は対照と比較して、腫瘍の成長速度を低減することを意味する。
【0039】
「予防する」又はその単語の他の形態、例えば「予防すること」又は「予防」とは、特定の事象若しくは特徴を停止すること、特定の事象若しくは特徴の発達若しくは進行を安定化させるか、若しくは遅らせること、又は特定の事象若しくは特徴が発生する可能性を最小限に抑えることを意味する。予防は、典型的には、例えば、低減よりも絶対的であるため、対照との比較を必要としない。本明細書で使用される場合、何かを低減することができるが、予防することができない場合があるが、低減される何かを予防することができる場合もある。同様に、何かを予防することができるが、低減することができない場合があるが、予防される何かを低減することができる場合もある。低減又は予防が使用される場合、特に具体的に指定しない限り、他の単語の使用も明示的に開示されることを理解されたい。
【0040】
「対象」という用語は、投与又は治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。一態様では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、又はネコであり得る。対象はまた、モルモット、ラット、ハムスター、ウサギ、マウス、又はモグラであり得る。したがって、対象は、ヒト又は獣医学的患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師の治療下にある対象を指す。
【0041】
「治療的に有効な」という用語は、使用される組成物の量が、疾患又は障害の1つ以上の原因又は症状を軽減するのに十分なものであることを指す。そのような軽減は、低減又は変化を必要とするだけであり、排除である必要はない。
【0042】
「治療」という用語は、疾患、病理学的状態、又は障害を治癒するか、軽減するか、安定化させるか、又は予防する意図を有する患者の医学的管理を指す。この用語は、能動的治療、すなわち、疾患、病的な状態、又は障害の改善に特異的に向けられた治療を含み、原因治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病的な状態、又は障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた治療、及び補助的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の改善に向けられた別の特定の療法を補充するために使用される治療を含む。
【0043】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」、及びそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、1つ以上の疾患又は状態の強度又は頻度、疾患又は状態の症状、あるいは疾患又は状態の根本的な原因を、部分的又は完全に予防する、遅延させる、治癒する、快癒する、緩和する、軽減する(relieving)、変更する、治療する(remedying)、改善する(ameliorating)、改善する(improving)、安定化させる、軽減する(mitigating)、及び/又は低減することを、意図又は目的とする組成物の投与が含まれる。本発明による治療は、防止的、予防的、姑息的、又は治療的に適用され得る。予防的治療は、発症前(例えば、がんの明らかな徴候の前)、早期発症中(例えば、がんの初期の徴候及び症状時)、又は確立されたがんの発達後に対象に投与される。予防的投与は、疾患又は感染の症状の兆候前の1日(数日)~数年間行われ得る。
【0044】
操作されたNK細胞
いくつかの態様では、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、操作されたNK細胞が本明細書に開示される。TIGITの発現は、例えば、TIGIT遺伝子又はその断片(例えば、TIGIT遺伝子の1つ以上のエクソン)の欠失によるもの、又はTIGITポリヌクレオチドを標的とするsiRNA又はshRNAによるものを含む任意の手段を使用して抑制され得る。
【0045】
「TIGIT」は、本明細書では、ヒトにおいて、TIGIT遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、TIGITポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:26838、NCBI Entrez Gene:201633、Ensembl:ENSG00000181847、OMIM(登録商標):612859、UniProtKB/Swiss-Prot:Q495A1。いくつかの実施形態では、TIGITポリペプチドは、配列番号1の配列、又は配列番号1と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号1の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号1のTIGITポリペプチドは、成熟TIGITの未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号1のTIGITポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。いくつかの実施形態では、TIGITポリペプチドは、配列番号10又はその断片に対して少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)の同一性を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0046】
いくつかの実施形態では、TIGITの発現は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas)9系をCRISPR/CasガイドRNAによりNK細胞に導入することを含む方法を使用して抑制され、ガイドRNAは、TIGIT遺伝子又はその断片を標的とする。
【0047】
一般に、「CRISPR系」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現又はその活性の指向に関与する転写産物及び他の要素を総称して指し、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNA又は活性部分tracrRNA)、tracr-mate配列(内因性CRISPR系の文脈では「ダイレクトリピート」及びtracrRNAプロセシングされた部分ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPR系の文脈では「スペーサー」とも称される)、又はCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写産物を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR系の1つ以上の要素は、I型、II型、又はIII型CRISPR系に由来する。CRISPR系は、当該技術分野で既知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,697,359号を参照されたい。
【0048】
「ガイドRNA」、「単一ガイドRNA」、及び「合成ガイドRNA」は、互換的に使用され、ガイド配列、tracr配列、及びtracr mate配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。「ガイド配列」という用語は、標的部位を特定するガイドRNA内の約20bpの配列を指し、「ガイド」又は「スペーサー」という用語と互換的に使用され得る。TIGITポリヌクレオチドを標的とする本明細書に記載のgRNAは、配列番号11又はその断片に対して少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)の同一性の配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号11に記載の配列を含む。いくつかの例では、TIGIT gRNAは、TIGITタンパク質UniProtKB/Swiss-Prot:Q495A1の細胞外ドメインのアミノ酸残基113~119(すなわち、配列番号1のアミノ酸残基113~119)に対応する、厳選されたTIGIT RefSeq NM_173799のヌクレオチド372~391(すなわち、配列番号10のヌクレオチド残基372~391)を標的とする。
【0049】
本明細書において、「発現」とは、遺伝子、ポリヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチドなどの核酸からの転写によるmRNAの生成、又はmRNAからの転写によるタンパク質若しくはポリペプチドの生成を意味する。「発現の抑制」は、抑制されていない場合と比較して、転写産物又は翻訳産物の有意な量の減少を指す。
【0050】
本明細書におけるTIGIT発現の抑制は、例えば、TIGITを抑制しないNK細胞(例えば、初代NK細胞、NK細胞株、拡大されていないNK、又は拡大されたNK)における転写産物又は翻訳産物の量と比較して、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、又は約99%以上の量での転写産物又は翻訳産物の有意な量の減少を示す。
【0051】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、阻害性受容体の発現において抑制される。いくつかの実施形態では、阻害剤受容体は、ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)、CD96、リンパ球活性化3(LAG3)、TIM-3、NKG2A、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される。
【0052】
ポリオウイルス受容体(PVR)(CD155とも称される)は、異なるタイプの腫瘍細胞上で発現され、このリガンドと相互作用した後に反対の機能を発揮するNK細胞上の活性化受容体又は阻害性受容体によって認識されることを理解すべきである。活性化受容体は、DNAM-1(CD226)を含み、阻害性受容体受容体は、TIGIT、CD96、及びPVRIGを含む。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたNK細胞は、CD96及びPVRIGからなる群から選択される阻害性受容体の発現において更に抑制される。
【0053】
「ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有(PVRIG)」は、本明細書では、ヒトにおいて、PVRIG遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、PVRIGポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:32190、NCBI Entrez Gene:79037、Ensembl:ENSG00000213413、OMIM(登録商標):617012、UniProtKB/Swiss-Prot:Q6DKI7。いくつかの実施形態では、PVRIGポリペプチドは、配列番号2の配列、又は配列番号2と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号2の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号2のPVRIGポリペプチドは、成熟PVRIGの未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号2のPVRIGポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0054】
「CD96」は、本明細書では、ヒトにおいて、CD96遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、CD96ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:16892、NCBI Entrez Gene:10225、Ensembl:ENSG00000153283、OMIM(登録商標):606037、UniProtKB/Swiss-Prot:P40200。いくつかの実施形態では、CD96ポリペプチドは、配列番号3の配列、又は配列番号3と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号3の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号3のCD96ポリペプチドは、成熟CD96の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号3のCD96ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0055】
「DNAXアクセサリー分子-1(DNAM-1)」又は「CD226」は、本明細書では、ヒトにおいて、CD226遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、DNAM-1ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:16961、NCBI Entrez Gene:10666、Ensembl:ENSG00000150637、OMIM(登録商標):605397、UniProtKB/Swiss-Prot:Q15762。いくつかの実施形態では、DNAM-1ポリペプチドは、配列番号4の配列、又は配列番号4と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号4の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号4のDNAM-1ポリペプチドは、成熟DNAM-1の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号4のDNAM-1ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0056】
「リンパ球活性化3(LAG3)」は、本明細書では、ヒトにおいて、LAG3遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、LAG3ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:6476、NCBI Entrez Gene:3902、Ensembl:ENSG00000089692、OMIM(登録商標):153337、UniProtKB/Swiss-Prot:P18627。いくつかの実施形態では、LAG3ポリペプチドは、配列番号5の配列、又は配列番号5と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号5の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号5のLAG3ポリペプチドは、成熟LAG3の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号5のLAG3ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0057】
「PD-1」は、本明細書では、ヒトにおいて、PDCD1遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、PD-1ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:8760 NCBI Entrez Gene:5133 Ensembl:ENSG00000188389 OMIM(登録商標):600244 UniProtKB/Swiss-Prot:Q15116。いくつかの実施形態では、PD-1ポリペプチドは、配列番号6の配列、又は配列番号6と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号6の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号6のPD-1ポリペプチドは、成熟PD-1の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号6のPD-1ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0058】
「CTLA-4」は、本明細書では、ヒトにおいて、CTLA4遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、CTLA-4ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:2505、NCBI Entrez Gene:1493、Ensembl:ENSG00000163599、OMIM(登録商標):123890、UniProtKB/Swiss-Prot:P16410。いくつかの実施形態では、CTLA-4ポリペプチドは、配列番号7の配列、又は配列番号7と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号7の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号7のCTLA-4ポリペプチドは、成熟CTLA-4の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号7のCTLA-4ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0059】
「TIM-3」は、本明細書では、ヒトにおいて、HAVCR2遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、TIM-3ポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:18437、NCBI Entrez Gene:84868、Ensembl:ENSG00000135077、OMIM(登録商標):606652、UniProtKB/Swiss-Prot:Q8TDQ0。いくつかの実施形態では、TIM-3ポリペプチドは、配列番号8の配列、又は配列番号8と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号8の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号8のTIM-3ポリペプチドは、成熟TIM-3の未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号8のTIM-3ポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0060】
「NKG2A」は、本明細書では、ヒトにおいて、KLRC1遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、NKG2Aポリペプチドは、以下のように、1つ以上の公的に利用可能なデータベースにおいて特定されるものである。HGNC:6374 NCBI Entrez Gene:3821 Ensembl:ENSG00000134545 OMIM(登録商標):161555 UniProtKB/Swiss-Prot:P26715。いくつかの実施形態では、NKG2Aポリペプチドは、配列番号9の配列、又は配列番号9と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、若しくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、又は配列番号9の一部を含むポリペプチドを含む。配列番号9のNKG2Aポリペプチドは、成熟NKG2Aの未成熟形態又は処理前形態を表していてもよく、したがって、配列番号9のNKG2Aポリペプチドの成熟部分又は処理部分が本明細書に含まれる。
【0061】
ポリペプチドの発現レベルを増加させる方法は、例えば、細胞に遺伝子を導入し、発現させることを含み、当該技術分野で既知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入され得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2012/079000A1を参照されたい。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNK細胞は、初代NK細胞又はNK細胞株である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNK細胞は、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞拡大組成物は、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソームを含む。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞又は操作された粒子は、その外面に結合されたFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、NK細胞拡大組成物は、NK細胞エフェクター剤を更に含む。
【0063】
(I)膜結合Fcを含む、操作されたフィーダー細胞、操作された形質膜粒子、及び操作されたエクソソーム
本開示による組成物には、Fcが結合したフィーダー細胞(FC)を含む組成物、Fcが結合した操作された形質膜(PM)粒子を含む組成物、及びFcが結合した操作されたエクソソームを含む組成物が含まれる。Fcが結合した操作されたPM粒子には、Fcが結合したフィーダー細胞由来のPMナノ粒子が含まれる。Fcが結合した操作されたエクソソームには、以下にも更に詳細に記載されるように、Fcが結合したフィーダー細胞由来のエクソソーム又は他の細胞外小胞が含まれた。代替的には、エクソソームは、血小板及び巨核球などの他の供給源に由来し得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「Fcが結合した」という用語は、膜貫通ペプチドを介してフィーダー細胞又は操作された粒子の外面への逆向き(すなわち、細胞内に面するアミノ末端)のFcドメインのカップリングを指すと理解される必要がある。これは、本明細書に開示されるFc融合ペプチドを使用して達成され得る。したがって、本開示の一態様は、以下に更に詳細に記載されるように、少なくとも1つのFcが結合したフィーダー細胞、すなわち、フィーダー細胞の外面に結合されたFcドメインを含むフィーダー細胞を含むフィーダー細胞組成物を提供する。例えば、フィーダー細胞は、フィーダー細胞の外面に結合されたFcドメインを発現するように、すなわち、以下に更に記載されるように、Fc融合ペプチドを発現するように遺伝子改変され得る。本開示の別の態様は、少なくとも1つのFcが結合した操作された粒子、すなわち、フィーダー細胞の外面に逆向きで結合したFcドメインを含む操作された粒子を含む、フィーダー細胞を含まないNK細胞拡大組成物を提供する。いくつかの態様では、フィーダー細胞は、ヒト化抗体でタグ化され得るリガンドを発現するように操作され得る。
【0065】
フィーダー細胞組成物では、少なくとも1つのFcが結合したフィーダー細胞は、任意選択的に、少なくとも1つの細胞NK細胞エフェクター剤を含む。一例では、Fcが結合したフィーダー細胞は、IL-15又はIL-21である1つの細胞NK細胞エフェクターを含む。Fcが結合したフィーダー細胞は、少なくとも2つ以上の異なるNK細胞エフェクター剤を含み得る。
【0066】
フィーダー細胞を含まないNK細胞拡大組成物では、Fcが結合した操作されたPM粒子は、任意選択的に、少なくとも1つの細胞NK細胞エフェクター剤を含む。一例では、Fcが結合した操作された粒子は、IL-15又はIL-21である1つの細胞NK細胞エフェクターを含む。Fcが結合した操作されたPM粒子は、少なくとも2つ以上の異なるNK細胞エフェクター剤を含み得る。
【0067】
少なくとも2つのNK細胞エフェクター剤が存在するフィーダー細胞組成物、又はフィーダー細胞を含まない組成物のいずれかでは、第2のNK細胞エフェクター剤は、例えば、41BBLであり得る。フィーダー細胞又は操作されたPM粒子が1つ以上のNK細胞エフェクター剤を含む、フィーダー細胞組成物又はフィーダー細胞を含まないNK細胞拡大組成物のいずれかでは、NK細胞エフェクター剤は、41BBL、IL-15、IL-2、IL-12、IL-18、IL-21、MICA、UBLP、2B4、LFA-1、Notchリガンド、NKp46に対するリガンド、又はBCM1/SLAMF2、TLRリガンド、及びNKG2Dリガンド、又はサイトカインから選択することができる。例示的なそのような組成物では、少なくとも1つの追加のNK細胞エフェクター剤は、IL-15又はIL-21である。いくつかの実施形態では、NK細胞エフェクター剤は、IL-12、IL-15、及びIL-18から選択され得る。
【0068】
(a)Fcが結合したフィーダー細胞
本開示は、上に詳細に記載したFc融合ペプチドを含むフィーダー細胞を提供する。本明細書に開示される方法における使用のための、並びに本明細書に開示されるPM粒子及びエクソソームの作製における使用のためのNK細胞フィーダー細胞は、放射線照射された自己若しくは同種異系の末梢血単核細胞(PBMC)、又は放射線照射されていない自己若しくは同種異系のPBMC、RPMI8866、HFWT、721.221又はK562細胞、及びEBV-LCL、他の非HLA若しくは低HLA発現細胞株、又は腫瘍ワクチンとして使用され得る患者由来原発腫瘍のいずれかであり得る。Fcが結合したフィーダー細胞は、当該技術分野で周知の標準的な形質導入又はトランスフェクション技術を使用して、本明細書に記載の任意のFc融合ペプチドでフィーダー細胞をトランスフェクション又は形質導入することによって調製され得る。例えば、本明細書に開示されるFc融合ペプチドのcDNAベクターを、細菌(E.coli)、昆虫、又は哺乳動物細胞内での発現を可能にする発現プラスミドにライゲーションすることができる。cDNAベクターは、FLAGタグ化又はHISタグ化され得る。好適なトランスフェクション方法としては、核融合(又はエレクトロポレーション)、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション、カチオン性ポリマートランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン又はポリエチレンイミン)、ウイルストランスフェクション、ビロソームトランスフェクション、ビリオントランスフェクション、リポソームトランスフェクション、カチオン性リポソームトランスフェクション、イムノリポソームトランスフェクション、非リポソーム脂質トランスフェクション、デンドリマートランスフェクション、熱ショックトランスフェクション、マグネトフェクション、リポフェクション、遺伝子銃送達、インパレフェクション(impalefection)、ソノポレーション、光学的トランスフェクション、及び核酸の取り込みを増強した独自の薬剤が挙げられる。トランスフェクション方法は、当該技術分野で周知である(例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”Ausubel et al.,John Wiley&Sons,New York,2003又は“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”Sambrook&Russell,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,3rd edition,2001を参照されたい)。代替的には、分子はマイクロインジェクションによって細胞に導入され得る。例えば、分子は、目的の細胞の細胞質又は核に注射され得る。細胞に導入される各分子の量は変化し得るが、当業者は、適切な量を決定するための手段に精通している。
【0069】
様々な分子を同時に又は連続して細胞に導入し得ることが理解されるであろう。例えば、Fc融合ペプチ及び1つ以上の膜結合NK細胞エフェクター剤を同時にフィーダー細胞に導入することができる。代替的には、1つは最初に導入され、次いで、他の分子は後で細胞に導入され得る。例えば、Fc融合ペプチドで一度トランスフェクション又は形質導入されたフィーダー細胞は、IL-15及び/若しくはIL-21及び/若しくは41BBLなどの膜結合NK細胞エフェクター剤で更にトランスフェクションされてもよく、かつ/又はEBV-LCL及び/若しくは他のNK細胞エフェクター剤として感染されてもよい。代替的には、フィーダー細胞は、Fc融合ペプチド並びにIL-15及び/又はIL-21及び/又は41BBLなどの膜結合NK細胞エフェクター剤、及び/又はEBV-LCL及び/又は他のNK細胞エフェクター剤と同時にトランスフェクション又は形質導入されてもよい。代替的には、以前にトランスフェクション又は形質導入され、IL-15及び/若しくはIL-21及び/若しくは41BBLなどの膜結合NK細胞エフェクター剤を発現し、かつ/又はEBV-LCL及び/若しくは他のNK細胞エフェクター剤として感染された、フィーダー細胞は、Fc融合ペプチドでトランスフェクション又は形質導入されてもよい。また、当該技術分野で既知の化学コンジュゲーション法などの他の手段を使用して、膜結合Fcを達成することができることも理解されるであろう。
【0070】
一般に、細胞は、細胞の成長及び/又は維持に適切な条件下で維持される。好適な細胞培養条件は、当該技術分野で周知であり、例えば、Santiago et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2008,105:5809-5814、Moehle et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2007,104:3055-3060、Urnov et al.,Nature,2005,435:646-651、及びLombardo et al.,Nat.Biotechnol.,2007,25:1298-1306に記載されている。当業者であれば、細胞の培養方法が当該技術分野で既知であり、細胞型に応じて変化し得、変化するであろうことを理解している。全ての場合において、日常的作業の最適化が使用され、特定の細胞型のための最良の技術を決定し得る。
【0071】
Fcが結合したフィーダー細胞を、NK細胞を直接的に刺激するために細胞培養において使用することができるか、又はフィーダー細胞に由来するPM粒子又はエクソソームを調製するために使用することができる。
【0072】
(b)Fcが結合したPM粒子
Fcが結合した操作されたPM粒子には、周知の方法を使用してFcが結合したNK細胞フィーダー細胞から調製し得る、Fcが結合したPM粒子が含まれる。PM粒子は、細胞の形質膜から作製された小胞であるか、又は人工的に作製された小胞(すなわち、リポソーム)である。PM粒子は、脂質二重層、又は単に単一の脂質層を含有し得る。PM粒子は、単層、多層、又は反転形態で調製され得る。PM粒子は、既知の形質膜調製プロトコル又は米国特許第9,623,082号(その全開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどのリポソームを調製するためのプロトコルを使用して、本明細書に記載されるFcが結合したフィーダー細胞から調製され得る。特定の態様では、本明細書に開示されるPM粒子は、平均直径が約170~約300nmの範囲である。
【0073】
(c)Fcが結合したエクソソーム
本明細書に開示されるFcが結合したエクソソームは、周知の方法を使用してFcが結合したNK細胞フィーダー細胞から調製され得るエクソソーム分泌細胞から調製することができ、エクソソームは、米国特許出願公開第2017/0333479号(その全開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、エクソソーム分泌細胞の細胞外産物である。エクソソームは、脂質及びタンパク質を含み、特定のエクソソームにおいて見出されるタンパク質の同一性は、それらを産生する細胞に依存する。本明細書に開示されるエクソソームは、本明細書に開示されるFc融合ペプチド(すなわち、Fc結合している)、及び任意選択的に、エクソソーム膜に存在する1つ以上の刺激ペプチド(NK細胞エフェクター剤)を含む。エクソソームは、例えば、エクソソームの改善された形成又は放出のために操作された細胞株から産生され得る。そのような細胞株には、セクションI(a)に上述したFcが結合した細胞株が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な細胞株は、Fcが結合したK562-mb15-41BBL及びFcが結合したK562である。特定の態様では、本明細書に開示されるエクソソームは、平均直径が約30~約100nm又は約160nmの範囲である。一態様では、エクソソームは、約60~80nmの直径の平均をとる。PM粒子で容易に達成されるよりも小さい粒径を達成するエクソソームを有する能力は、エクソソームが、より小さいサイズが好ましい使用により容易に適応され得ることを意味する。例えば、エクソソームは、生理学的障壁を介した拡散、組織区画を介した生体内分布の増強、又は静脈内注射を必要とする用途において好ましい場合がある。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるNK細胞拡大組成物は、サイトカイン、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、NAM、アスコルベート、又はそれらの任意の組み合わせなどの少なくとも1つの可溶性培地成分を含む細胞培地溶液と組み合わせられる。
【0075】
いくつかの例では、本明細書で使用されるNK細胞拡大組成物及び本明細書に記載されるNK細胞拡大のための方法は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2020/0237822号に記載されるものである。
【0076】
組成物及び方法
また、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載の操作されたNK細胞を投与することを含み、操作されたNK細胞が、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、方法が本明細書に開示される。同様に、本開示は、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する際に使用するための本明細書に開示される治療有効量の操作されたNK細胞であって、操作されたNK細胞が、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現において抑制される、操作されたNK細胞を提供する。
【0077】
また、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、対象に、治療有効量のNK細胞及び治療有効量のIg及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。同様に、本開示は、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する際に使用するための治療有効量のNK細胞及び治療有効量のTIGIT阻害剤を提供する。いくつかの実施形態では、NK細胞は、初代NK細胞又はNK細胞株である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、拡大されたNK細胞である。いくつかの実施形態では、拡大されたNK細胞は、インビトロ又はインビボで、本明細書に開示されるNK細胞拡大組成物に曝露される(例えば、フィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソーム)。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞又は操作された粒子は、その外面に結合されたFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、NK細胞拡大組成物は、NK細胞エフェクター剤を更に含む。NK細胞エフェクター剤は、41BBL、IL-15、IL-2、IL-12、IL-18、IL-21、MICA、UBLP、2B4、LFA-1、Notchリガンド、NKp46に対するリガンド、又はBCM1/SLAMF2、TLRリガンド、及びNKG2Dリガンド、及びサイトカインから選択することができる。例示的なそのような組成物では、少なくとも1つのNK細胞エフェクター剤は、IL-15又はIL-21である。いくつかの実施形態では、NK細胞エフェクター剤は、IL-12、IL-15、及びIL-18から選択され得る。いくつかの実施形態では、NK細胞エフェクター剤は、IL-21及び/又は41BBLを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に治療有効量のTIGIT阻害剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、TIGIT阻害剤は、抗TIGIT抗体(例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ、ドムバナリマブ、BMS-986207、エチギリマブ、EOS-448、COM902、ASP8374、SEA-TGT、BGB-A1217、IBI-939、又はM6223)である。
【0079】
多くの抗TIGIT療法(例えば、抗TIGIT抗体)が開発中であることを理解すべきである。TIGITを標的とするFcコンピテントな治療抗体は、TIGITを発現するNK細胞においてNK細胞フラトリサイドを誘導することができる。TIGITノックアウトNK細胞は、フラトリサイドを防止し、NK細胞数を回復させることができる。これは、例えば図9に示される概略図によって示される。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象に治療有効量のTIGIT阻害剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、TIGIT阻害剤は、抗TIGIT抗体である。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、Fc受容体(例えば、CD16)に結合する断片結晶化可能領域(Fc領域)を含む。そのようなFc受容体へのFc領域の結合は、免疫系のエフェクター機能(例えば、ADCC)の引き金となり得る。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、Fc領域を欠いているか、又は参照対照と比べてFc受容体(例えば、CD16)に対する親和性が低下したFc領域を含む。いくつかの例では、抗TIGIT抗体は、Fc受容体へのFc領域の結合親和性を低下させるFc領域上の1つ以上の変異を含む。
【0081】
「抗体」という用語は、本明細書において広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を両方とも含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、これらの免疫グロブリン分子の断片又はポリマー、及び免疫グロブリン分子のヒト若しくはヒト化態様、又はそれらの断片も、TIGITがその受容体との相互作用から阻害されるようにTIGITと相互作用する能力について選択される限り、これらも「抗体」という用語に含まれる。抗体は、本明細書に記載のインビトロアッセイを使用して、又は類似の方法によって、それらの所望な活性について試験することができ、その後に、それらのインビボ治療活性及び/又は予防活性を、既知の臨床試験方法に従って試験する。ヒト免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの主要なクラスが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、及びIgG-4;IgA-1及びIgA-2へと更に分割され得る。当業者は、マウスについての匹敵するクラスを認識するだろう。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、エプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗体又はその断片」という用語は、キメラ抗体及びハイブリッド抗体を包含し、二重又は複数抗原又はエピトープ特異性を有し、断片、例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFv、ナノボディなどを含み、ハイブリッド断片を含む。したがって、それらの特異的抗原に結合する能力を保持する抗体の断片が提供される。例えば、TIGIT結合活性を維持する抗体の断片は、「抗体又はその断片」という用語の意味に含まれる。そのような抗体及び断片は、当該技術で既知の技術によって作製することができ、実施例に、また、抗体を産生し、特異性及び活性について抗体をスクリーニングするための一般的な方法に記載される方法に従って、特異性及び活性についてスクリーニングすることができる(Harlow and Lane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)を参照されたい)。
【0083】
抗体断片及び抗原結合タンパク質(単鎖抗体)のコンジュゲートも、「抗体又はその断片」の意味に含まれる。
【0084】
「断片」は、他の配列に結合しているか否かにかかわらず、特定の領域又は特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、又は他の選択された改変を含み得るが、但し、抗体又は抗体断片の活性は、改変されていない抗体又は抗体断片と比較して著しく変化又は障害されない。これらの改変は、ジスルフィド結合が可能なアミノ酸を除去又は付加すること、その生物学的寿命を延ばすこと、その分泌特性を変化させることなどのいくつかの追加の特性を提供することができる。いずれにしても、抗体又は抗体断片は、その同種抗原に対する特異的結合などの生物活性特性を有していなければならない。抗体又は抗体断片の機能的領域又は活性領域は、タンパク質の特異的領域の変異誘発、その後の発現されたポリペプチドの発現及び試験によって特定され得る。そのような方法は、当業者に容易に明らかであり、抗体又は抗体断片をコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。(Zoller,M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348-354,1992。)
【0085】
本明細書で使用される場合、「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」という用語は、ヒト抗体及び/又はヒト化抗体も指すことができる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、又はウサギに由来するもの)は、ヒトにおいて通常は抗原性であり、したがって、ヒトに投与される場合、望ましくない免疫応答を生じさせる場合がある。したがって、本法におけるヒト又はヒト化抗体の使用は、ヒトに投与される抗体が望ましくない免疫応答を誘発する機会を少なくするのに役立つ。当業者によって理解されるように、「抗体」という用語に包含される免疫学的結合試薬は、全抗体、二量体、三量体及び多量体抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、組換え及び操作された抗体、及びそれらの断片を含む、全ての抗体及びその抗原結合断片を含むか、又はそれらにまで拡張される。したがって、「抗体」という用語は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指すために使用され、この用語は、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)、単一ドメイン抗体(DAB)、T及びAb二量体、Fv、scFv(単鎖Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、直鎖抗体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片、ビボディ、トリボディ(scFv-Fab融合物、それぞれ二重特異性又は三重特異性);sc-ダイアボディ;カッパ(ラムダ)ボディ(scFv-CL融合物);BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T-cell Engager)、T細胞を誘引するためのscFv-scFvタンデム);DVD-Ig(二重可変ドメイン抗体、二重特異性方式);SIP(小さな免疫タンパク質、ある種のミニボディ);SMIP(「小さなモジュラー免疫医薬」scFv-Fc二量体;DART(ds安定化ダイアボディ「デュアルアフィニティリターゲティング(Dual Affinity ReTargeting)」);小さな抗体模倣物などの抗原結合ドメインを含む抗体断片を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含む。チェックポイント阻害剤としては、限定されないが、PD-1を遮断する抗体(ニボルマブ(BMS-936558又はMDX1106)、CT-011、MK-3475)、PD-L1(MDX-1105(BMS-936559)、MPDL3280A、MSB0010718C)、PD-L2(rHIgM12B7)、CTLA-4(イピリムマブ(MDX-010)、トレメリムマブ(CP-675,206))、IDO、B7-H3(MGA271)、B7-H4、TIM3、LAG-3(BMS-986016)が挙げられる。いくつかの実施形態では、チェックポイント遮断薬は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む。
【0087】
がんは、血液がん、リンパ腫、結腸直腸がん、結腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、腎臓がん、皮膚がん、子宮頸がん、膵臓がん、及び乳がんから選択され得るが、これらに限定されない。一態様では、がんが、固形腫瘍を含む。別の態様では、がんが、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、多発性骨髄腫から選択される。別の態様では、がんは、白血病、リンパ腫、肉腫、がん腫から選択され、骨髄、脳、肺、乳房、膵臓、肝臓、頭頸部、皮膚、生殖管、前立腺、結腸、肝臓、腎臓、腹膜内、骨、関節、及び眼に由来し得る。
【0088】
がんの転移及び/又は再発を阻害し、低下させる、及び/又は予防する本開示の方法が、当該技術分野で既知の任意の抗がん剤の投与を含み得ることが本明細書で意図され、任意の抗がん剤としては、限定されないが、アベマシクリブ、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(Abitrexate)(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン-安定化されたナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、Ado-トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブ二マレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アキンゼオ(ネツピタント及びパロノセトロン塩酸塩)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、注射用アルケラン(メルファラン塩酸塩)、アルケラン錠剤(メルファラン)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アルンブリグ(ブリガチニブ)、アムボクロリン(Ambochlorin)(クロラムブシル)、アムボクロリンクロラムブシル)、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレジア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アーゼラ(オファツムマブ)、アスパラギナーゼErwinia chrysanthemi、アテゾリズマブ、アバスチン(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、バベンチオ(アベルマブ)、BEACOPP、ベセナム(Becenum)(カルムスチン)、ベレオダック(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベスポンサ(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベクザー(トシツモマブ及びヨウ素I131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ビーリンサイト(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボメティクス(カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩)、カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(アレムツズマブ)、カンプトサール、(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、カラク(Carac)(フルオロウラシル--局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール、カルフィルゾミブ、カルムブリス(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチンインプラント、カソデックス(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(Clofarex)(クロファラビン)、クロラール(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、コメトリック(Cometriq)(カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩)、コパンリシブ塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、コテリック(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(Cyfos)(イホスファミド)、サイラムザ(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、シトザール(Cytosar)-U(シタラビン)、シトキサン(Cytoxan)(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(Dacogen)(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダラザレックス(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デファイテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デポサイト(DepoCyt)(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デキスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC-Dome(ダカルバジン)、デュルバルマブ、エフデックス(フルオロウラシル--局所)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(Ellence)(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、エメンド(Emend)(アプレピタント)、エムプリシティ(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、アービタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(Erivedge)(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(Erwinaze)(アスパラギナーゼErwinia chrysanthemi)、エチオール(Ethyol)(アミフォスチン)、エトポホス(エトポシドリン酸塩)、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エヴァセット(Evacet)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ、(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(Evomela)(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射)、5-FU(フルオロウラシル--局所)、フェアストン(トレミフェン)、ファリーダック(パノビノスタット)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸塩)、フルダラビンリン酸塩、フルオロプレックス(フルオロウラシル--局所)、フルオロウラシル注射、フルオロウラシル--局所、フルタミド、フォレックス(Folex)(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ、フォルフィリ-ベバシズマブ、フォルフィリ-セツキシマブ、フォルフィリノックス、フォルフォックス、フォロチン(プララトレキサート)、FU-LV、フルベストラント、ガーダシル(組換えHPV四価ワクチン)、ガーダシル9(組換えHPV九価ワクチン)、ガザイバ(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジオトリフ(アファチニブ二マレイン酸塩)、グリーベック(イマチニブメシル酸塩)、ギリアデル(カルムスチンインプラント)、グリアデルウェファー(カルムスチンインプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ヘマンジオル(プロプラノロール塩酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、HPV二価ワクチン,組換え体、HPV九価ワクチン,組換え体、HPV四価ワクチン,組換え体、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイドレア(ヒドロキシ尿素)、ヒドロキシ尿素、Hyper-CVAD、イブランス(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシン(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、イドヒファ(Idhifa)(エナシデニブメシル酸塩)、イフェックス(Ifex)(イホスファミド)、イホスファミド、イフォスファミダム(Ifosfamidum)(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン)、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミフィンジ(デュルバルマブ)、イミキモド、イムリジック(Imlygic)(タリモジェンラヘルパレプベク)、インライタ(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンアルファ-2b,組換え体、インターロイキン-2(アルデスロイキン)、イントロンA(組換えインターフェロンアルファ-2b)、ヨウ素I131トシツモマブ及びトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、イストダックス(ロミデプシン)、イキサベピロン、イキサゾミブクエン酸エステル、イクセムプラ(Ixempra)(イキサベピロン)、ジャカフィ(Jakafi)(ルキソリチニブリン酸塩)、JEB、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Ado-トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(パリフェルミン)、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)、キスカリ(Kisqali)(リボシクリブ)、キムリア(チサゲンレクルユーセル)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブ二トシル酸塩、ラルツルボ(Lartruvo)(オララツマブ)、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、リューケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、ロイスタチン(クラドリビン)、レブラン(アミノレブリン酸)、リンフォリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、ロンサーフ(トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩)、ルプロン(Lupron)(ロイプロリド酢酸塩)、ルプロンデポー(ロイプロリド酢酸塩)、ルプロンデポー-Ped(ロイプロリド酢酸塩)、リンパルザ(Lynparza)(オラパリブ)、マルキボ(Marqibo)(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マツラン(Matulane)(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、メキニスト(トラメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソンブロミド、メキセート(Mexate)(メトトレキサート)、メキセート-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、ミトジトレックス(Mitozytrex)(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサフォル)、ムスタルゲン(メクロレタミン塩酸塩)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、マイレラン(ブスルファン)、マイロサール(Mylosar)(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネシツムマブ、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、ネルリンクス(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタント及びパロノセトロン塩酸塩、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラーロ(イキサゾミブクエン酸エステル)、ニラパリブトシル酸塩一水和物、ニボルマブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、ヌプレート(Nplate)(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オドムゾ(ソニデジブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシンメペスクシナート、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、オニバイド(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、オンタック(デニロイキンジフチトクス)、オプジーボ(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩及びネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パノビノスタット、パラプラット(Paraplat)(カルボプラ
チン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、PEG-イントロン(ペグインターフェロンアルファ-2b)、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、ポートラーザ(ネシツムマブ)、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プラリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、プロベンジ(シプリューセル-T)、プリネトール(Purinethol)(メルカプトプリン)、プリキサン(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)二価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)九価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ-2b、レゴラフェニブ、レリストール(メチルナルトレキソンブロミド)、R-EPOCH、レブリミド(Revlimid)(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リボシクリブ、R-ICE、リツキサン(リツキシマブ)、リツキサンHycela(リツキシマブ及びヒアルロニダーゼヒト)、リツキシマブ、リツキシマブ及びヒアルロニダーゼヒト、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(Rydapt)(ミドスタウリン)、スクレロゾール胸膜内エアロゾル(タルク)、シルツキシマブ、シプリューセル-T、ソマチュリンデポー(ランレオチド酢酸塩)、ソニデジブ、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、STANFORD V、滅菌タルク粉末(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、シラトロン(Sylatron)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、シルバント(シルツキシマブ)、シンリボ(オマセタキシンメペスクシナート)、タブロイド(チオグアニン)、TAC、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タグリッソ(オシメルチニブ)、タルク、タリモジェンラヘルパレプベク、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テセントリク、(アテゾリズマブ)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクルユーセル、トラク(Tolak)(フルオロウラシル--局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(テムシロリムス)、トシツモマブ及びヨウ素I131トシツモマブ、トテクト(Totect)(デキスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブ二トシル酸塩)、ユニツキシン(ジヌツキシマブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バンデタニブ、VAMP、バルビ(Varubi)(ロラピタント塩酸塩)、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(Velban)(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(Velsar)(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベネクレクスタ(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、ベージニオ(アベマシクリブ)、ビアデュル(Viadur)(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサール(Vincasar)PFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、VIP、ビスモデギブ、ビストガード(Vistogard)(ウリジントリアセテート)、ボラキサーゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ヴィキセオス(ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム)、ウェルコボリン(Wellcovorin)(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、ザイゲバ(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザルキシオ(Zarxio)(フィルグラスチム)、ゼジューラ(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ジンカード(デキスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(オンダンセトロン塩酸塩)、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ジカディア(セリチニブ)、及び/又はザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)が挙げられる。本明細書ではまた、PD1/PDL1遮断阻害剤(例えば、ランブロリズマブ(lambrolizumab)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ(pidilizumab)、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、又はアベルマブなど)である化学療法剤も企図される。がんの転移及び/又は再発を阻害し、低下させ、及び/又は予防するための開示された組成物及び/又は操作されたNK細胞集団の開示された使用が、上に列挙されたこれらの薬剤に限定されないが、それらを含む当該技術分野で既知の任意の抗がん剤の使用を組み合わせて使用することを含み得ることも、本明細書で意図される。
【0089】
いくつかの態様では、本明細書に開示される操作されたNK細胞及びその細胞全ての使用は、ウイルス感染によって引き起こされる感染性疾患を治療するためのものであり、ウイルス感染は、単純ヘルペスウイルス-1、単純ヘルペスウイルス-2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン-バールウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6、天然痘ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、レオウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型、又はヒト免疫不全ウイルス2型の感染を含む。
【0090】
代替的には、治療方法又は治療のための使用のうちのいずれかでは、追加の治療剤は、5-置換2-デオキシウリジン類似体、ヌクレオシド類似体、(非ヌクレオシド)ピロホスフェート類似体、ヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、及びインテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、及び非環状グアノシン類似体、非環状ヌクレオシドホスホネート(ANP)類似体、C型肝炎ウイルス(HCV)NS5A及びNS5B阻害剤、及びインフルエンザウイルス阻害剤、免疫刺激薬、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、並びに抗有糸分裂阻害剤から選択されるがこれらに限定されない、抗ウイルス剤であり得る。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ガンシクロビル、リトナビル、ロピナビル、サキナビルなど、シメチジン、ラニチジン、カプトプリル、メトホルミン、ブプロピオン、フェキソフェナジン、オクスカルバゼピン、レベテラセタム、トラマドール、又はそれらの異性体互変異性体、類似体、多形体、溶媒和物、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩のうちのいずれかである。
【0091】
いくつかの態様では、本明細書に開示される操作されたNK細胞及びその細胞全ての使用は、細菌感染によって引き起こされる感染性疾患を治療するためのものであり、細菌感染は、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium bovis、Mycobacterium bovis株BCG、BCG亜株、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellular、Mycobacterium africanum、Mycobacterium kansasii、Mycobacterium marinum、Mycobacterium ulcerans、Mycobacterium avium亜種のパラ結核、Nocardia asteroides、他のNocardia種、Legionella pneumophila、他のLegionella種、Acetinobacter baumanii、Salmonella typhi、Salmonella enterica、他のSalmonella種、Shigella boydii、Shigella dysenteriae、Shigella sonnei、Shigella flexneri、他のShigella種、Yersinia pestis、Pasteurella haemolytica、Pasteurella multocida、他のPasteurella種、Actinobacillus pleuropneumoniae、Listeria monocytogenes、Listeria ivanovii、Brucella abortus、他のBrucella種、Cowdria ruminantium、Borrelia burgdorferi、Bordetella avium、Bordetella pertussis、Bordetella bronchiseptica、Bordetella trematum、Bordetella hinzii、Bordetella pteri、Bordetella parapertussis、Bordetella ansorpii、他のBordetella種、Burkholderia mallei、Burkholderia psuedomallei、Burkholderia cepacian、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Chlamydia psittaci、Coxiella burnetii、Rickettsial種、Ehrlichia種、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Escherichia coli、Vibrio cholerae、Campylobacter species、Neiserria meningitidis、Neiserria gonorrhea、Pseudomonas aeruginosa、他のPseudomonas種、Haemophilus influenzae、Haemophilus ducreyi、他のHemophilus種、Clostridium tetani、Clostridium difficile、他のClostridium種、Yersinia enterolitica、及び他のYersinia種、並びにMycoplasma種の感染を含む。
【0092】
いくつかの態様では、本明細書に開示される操作されたNK細胞及びその細胞全ての使用は、真菌感染によって引き起こされる感染性疾患を治療するためのものであり、真菌感染は、Candida albicans、Cryptococcus neoformans、Histoplama capsulatum、Aspergillus fumigatus、Coccidiodes immitis、Paracoccidiodes brasiliensis、Blastomyces dermitidis、Pneumocystis carinii、Penicillium marneffi、又はAlternaria alternateの感染を含む。
【0093】
いくつかの態様では、本明細書に開示される操作されたNK細胞及びその細胞全ての使用は、寄生虫感染によって引き起こされる感染性疾患を治療するためのものであり、寄生虫感染は、Toxoplasma gondii、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium malariae、他のPlasmodium種、Entamoeba histolytica、Naegleria fowleri、Rhinosporidium seeberi、Giardia lamblia、Enterobius vermicularis、Enterobius gregorii、Ascaris lumbricoides、Ancylostoma duodenale、Necator americanus、Cryptosporidium spp.、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania major、他のLeishmania種、Diphyllobothrium latum、Hymenolepis nana、Hymenolepis diminuta、Echinococcus granulosus、Echinococcus multilocularis、Echinococcus vogeli、Echinococcus oligarthrus、Diphyllobothrium latum、Clonorchis sinensis;Clonorchis viverrini、Fasciola hepatica、Fasciola gigantica、Dicrocoelium dendriticum、Fasciolopsis buski、Metagonimus yokogawai、Opisthorchis viverrini、Opisthorchis felineus、Clonorchis sinensis、Trichomonas vaginalis、Acanthamoeba種、Schistosoma intercalatum、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Schistosoma mansoni、他のSchistosoma種、Trichobilharzia regenti、Trichinella spiralis、Trichinella britovi、Trichinella nelsoni、Trichinella nativa、又はEntamoeba histolyticaの感染を含む。
【0094】
代替的には、方法又は使用のうちのいずれかにおいて、追加の治療剤は、ペニシリン、テトラサイクリン、セファロスポリン、リンコマイシン、マクロライド、スルホンアミド、グリコペプチド、アミノグリコシド、及びカルバペネムから選択されるがこれらに限定されない、抗生物質剤であり得る。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、スルファメトキサゾール及びトリメトプリム、クラブラナート(clavulanate)、及びレボフロキサシンである。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるNK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強するための方法、並びに/あるいは本明細書に開示されるがん、転移、及び/又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法のうちのいずれかで投与されるか、又は使用される操作されたNK細胞は、薬学的に許容される担体及び薬学的に許容される賦形剤において製剤化される。
【0096】
がん、転移性状態、又は感染症のタイミングは、多くの場合予測できないため、がん、転移性状態、又は感染症の治療、予防、低減、及び/又は阻害の開示された方法、又はがん、転移性状態、又は感染症のそのような治療、予防、低減、及び/又は阻害のための開示された組成物又は組み合わせのうちのいずれかの使用は、筋肉疾患を治療、予防、阻害、及び/又は低減するために、がん、転移性状態、又は感染症の発症の前又は後に実施され得ることが理解される必要がある。
【0097】
NK細胞の疲弊は、がん又は特定の感染性疾患を有する対象において観察される。本明細書に開示される操作されたNK細胞は、増強された機能(例えば、増強された細胞傷害性機能並びに/又はIFNγ、TNFα、及び/若しくはCD107aの増加した発現を含む)を示す。したがって、NK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強するための方法であって、当該方法が、NK細胞のTIGITの発現を抑制すること、又はNK細胞をTIGIT阻害剤とともにインキュベートすることを含む、方法が本明細書に開示される。開示される方法は、より高い細胞毒性及び/又はADCC機能性を細胞に提供するという付加的な利点を有する。いくつかの例では、操作されたNK細胞は、TIGITの発現を抑制するようにマニピュレーションされていないNK細胞の細胞傷害性若しくはサイトカインの発現の約2倍、細胞傷害性若しくはサイトカインの発現の少なくとも約5倍、又は細胞傷害性若しくはサイトカインの発現の少なくとも約10倍を示す。いくつかの実施形態では、マニピュレーションされていないNK細胞は、疲弊したNK細胞である。いくつかの実施形態では、疲弊したNK細胞は、PD-1、TIGIT、LAG3、及びTIM3のうちの1つ以上のレベルが増加している。いくつかの実施形態では、疲弊したNK細胞は、Ki67、IFNγ、TNFα、及び/又はCD107aのレベルが減少している。いくつかの実施形態では、マニピュレーションされていないNK細胞は、対象(例えば、健康な人又はがん患者)に由来する初代NK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、拡大されたNK細胞又は拡大されていないNK細胞である。いくつかの実施形態では、拡大されたNK細胞は、インビトロ/インビボでNK細胞拡大組成物に曝露される(例えば、本明細書に開示されるフィーダー細胞、操作されたPM粒子、又はエクソソーム)。マニピュレーションされたNK細胞は、がん又は特定の感染性疾患を有する対象に投与され得る。
【0098】
いくつかの態様では、対象におけるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法であって、1)NK細胞を得ることと、2)NK細胞のTIGITの発現を抑制するか、又はNK細胞とTIGIT阻害剤とを接触させることによって、インビトロ又はエクスビボでNK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強することと、3)治療有効量のNK細胞を対象に投与することと、を含む、方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、工程a)のNK細胞は、疲弊したNK細胞である。いくつかの実施形態では、疲弊したNK細胞は、PD-1、TIGIT、LAG3、及びTIM3のうちの1つ以上のレベルが増加している。いくつかの実施形態では、疲弊したNK細胞は、Ki67、IFNγ、TNFα、及び/又はCD107aのレベルが減少している。いくつかの実施形態では、工程a)のNK細胞は、対象(例えば、健康な人又はがん患者)に由来する初代NK細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるNK細胞を再活性化し、NK細胞の疲弊を逆行させ、かつ/又はNK細胞機能を増強するための方法、並びに/あるいは本明細書に開示されるがん、転移、又は感染性疾患を治療する、減少させる、阻害する、低下させる、改善する、及び/又は予防する方法は、対象にTIGIT阻害剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、上述の方法は、対象に治療有効量のチェックポイント遮断薬を投与することを更に含み得る。チェックポイント阻害剤としては、限定されないが、PD-1を遮断する抗体(ニボルマブ(BMS-936558又はMDX1106)、CT-011、MK-3475)、PD-L1(MDX-1105(BMS-936559)、MPDL3280A、MSB0010718C)、PD-L2(rHIgM12B7)、CTLA-4(イピリムマブ(MDX-010)、トレメリムマブ(CP-675,206))、IDO、B7-H3(MGA271)、B7-H4、TIM3、LAG-3(BMS-986016)が挙げられる。いくつかの実施形態では、チェックポイント遮断薬は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、又はCTLA-4阻害剤を含む。
【実施例
【0099】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示された本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物及びそれらが引用される資料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0100】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は単なる日常的な実験を使用して確認することができるであろう。本発明は、特定の実施形態及び実装態様を参照して説明されているが、本発明の範囲又はその発明的概念から逸脱することなく、様々な変更及び追加の変動が行われ得、等価物がその要素に置き換えられ得ることが理解されるであろう。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又はデバイスを本発明の教示に適合させるために多くの修正が行われ得る。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。本発明は、本明細書に開示される特定の実装態様に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内にある全ての実装態様を含むことが意図される。
【0101】
実施例1。TIGIT遮断薬は、エクスビボ拡大されたNK細胞の抗腫瘍活性を改善する。
この研究では、TIGITシグナル伝達を、エクスビボ拡大されたNK細胞の文脈で試験し、NK細胞の抗腫瘍活性に対するTIGIT遮断薬の効果を評価した。
【0102】
方法。NK細胞をサイトカインで一晩かけて活性化するか、又はPM21粒子によってエクスビボ拡大させた。qRT-PCR及びフローサイトメトリーにより、TIGIT発現をNK細胞に対して決定した。細胞傷害性を、3Dで培養されたA549及びNCI-H1299細胞による動的イメージングベースのアッセイ(Incucyte S3)によって評価した。異なる時点で、未治療対照に基づいて、細胞傷害性を計算した。2名の複数のドナーからの結果を、個々のドナーについてのアイソタイプを有するNK細胞の細胞傷害性に対して正規化し、抗TIGITを有するNK細胞の細胞傷害性と比較した。対応のないt検定を使用して、統計的有意性を決定した。PVRを安定して発現するPVRK562細胞を使用して、A549スフェロイドに曝露したNK細胞を再刺激し、IFNγ、TNFα及び表面CD107aを測定した。更に、TIGIT遮断時のNK細胞の表現型変化を、フローサイトメトリーによって活性化受容体及び阻害性受容体のセットを分析することによって試験した。
【0103】
結果:TIGIT発現に対するNK細胞拡大/活性化の影響を評価した。トランスクリプトーム分析は、TIGITが、mRNAレベル及びタンパク質レベルの両方で、拡大されたNK細胞又はサイトカイン活性化されたNK細胞のいずれかで上方調節されることを示した。NK細胞の細胞傷害性に対するTIGIT遮断薬の効果を、抗TIGIT抗体又はそれぞれのアイソタイプの存在下で、エクスビボ拡大されたNK細胞とがん細胞とを共培養することによって試験した。TIGIT遮断薬は、48時間後にA549(1.3倍、P<0.0001)及びNCI-H1299(1.29倍、P=0.0003)スフェロイドに対するエクスビボ拡大されたNK細胞の細胞傷害性を有意に増加させた。疲弊を評価するために、A549スフェロイドに7日間曝露されたNK細胞をPVRK562細胞で再刺激した。TIGIT遮断薬は、再刺激されたNK細胞上のIFNγ、TNFα及び表面CD107aの発現の増加をもたらすNK細胞の疲弊を防止した(図1D~1F)。TIGIT遮断薬は、エクスビボ拡大されたNK細胞上の阻害性受容体及び活性化受容体の発現の有意な変化を引き起こさなかった。
【0104】
結論:TIGITは、エクスビボ拡大され、サイトカイン活性化されたNK細胞上で高度に発現する。抗TIGIT抗体によるTIGIT遮断は、エクスビボ拡大されたNK細胞の抗腫瘍活性を有意に改善する。したがって、エクスビボ拡大されたNK細胞及び抗TIGIT抗体は、全体的な抗腫瘍活性を改善する有望な併用療法として橋渡しとなる可能性を有する。
【0105】
実施例2。抗腫瘍応答を改善するためのPM21で拡大されたNK細胞におけるTIGITシグナル伝達の観察。
Treg細胞におけるTIGITシグナル伝達は、阻害性IL-10及びFgl2発現を増加させ、それらの免疫抑制特性を増強する。以前の研究では、TIGITが、がんにおいてNK細胞で上方調節され、多くの場合、それらの疲弊と相関することも観察されている。前臨床マウスモデルでは、TIGITの遮断は、NK細胞の細胞傷害性を回復させ、IFNγ及びTNFα発現を増加させ、腫瘍特異的T細胞免疫を促進した。抗PD-L1と組み合わせた抗TIGITは、抗腫瘍活性を更に増強し、この効果は、NK細胞の存在に依存していた。現在、抗TIGIT抗体は、前臨床モデル及びヒト治験の両方での結果を示している。前臨床マウスモデルでは、抗TIGIT抗体は、単独で、又は抗PD-1/抗PD-L1/抗TIM-3などのチェックポイント阻害剤と組み合わせて、腫瘍成長を防止し、その生存率を増加させる。Genentechによる第II期臨床試験(NCT03563716)は、PD-L1を発現する非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、抗TIGIT単独(17.2%)と比較して、抗PD-L1と組み合わせた抗TIGITが、より高い全奏効率(55.2%)を示すことを調べた。抗TIGIT抗体の治療有効性は、T細胞エフェクター機能の回復及びTreg細胞のADCC依存性枯渇を含む複数の機構に依存する。抗TIGITと他のチェックポイント阻害剤とを組み合わせた複数の前臨床試験及び臨床試験が存在するが、併用療法としての養子NK細胞及び抗TIGITの有効性は、まだ調べられていない。
【0106】
NK細胞は、全末梢血リンパ球の5~10%のみを構成する先天性免疫系の一成分であり、NK細胞を遺伝的に改変することは、依然として課題があり、療法として十分なNK細胞を収集することを困難なものにしている。サイトカイン及びフィーダー細胞に基づく拡大方法を含め、NK細胞を拡大するいくつかの方法が現時点で使用されている。しかしながら、これらの方法には、いくつかの欠点がある。例えば、サイトカインに基づく方法は、NK細胞を顕著に拡大することができない。更に、フィーダー細胞により拡大されたNK細胞は、残留フィーダー細胞の存在が、がん患者において更なる悪性腫瘍のリスクの可能性を発生させ得るため、拡大後に精製する必要がある。粒子(PM21)に基づくNK細胞拡大方法は、更なる精製を必要とすることなく、臨床グレードの細胞傷害性NK細胞を顕著に拡大させることが発見された。これらのNK細胞は、インビトロ及びインビボの両方で強固な抗腫瘍活性を示す。以前の研究は、PM21-NK細胞が、インビトロ及びインビボの両方でがん細胞上のPD-L1発現を誘導することを示した。PD-L1遮断薬は、インビボで抗腫瘍活性及びPM21-NK細胞の持続性を増強し、腫瘍を有するマウスの生存期間を延長したが、PM-21 NK細胞は、大部分がPD-1陰性であった。これらの知見は、PD-L1遮断薬が、直接的及び間接的に、PM21-NK細胞の抗腫瘍応答を増強し得ることを示す。
【0107】
この実施例は、1)PM21 NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の役割を観察し、併用療法としての抗TIGIT及びPM21 NK細胞の可能性を評価し、2)PM21 NK細胞におけるTIGITシグナル伝達を改変することが、それらの抗腫瘍活性を増強することを示す。本明細書のデータは、TIGITが、NK細胞上で高度に発現され、TIGITの遮断薬が、TIGITリガンド+がんスフェロイドに対する細胞傷害性を改善し、IFNγ、TNFα及び表面CD107aの発現を増加させたことを示す。本明細書のデータはまた、PM21 NK細胞におけるTIGIT欠失が、TIGITリガンド+がんスフェロイドに対する細胞傷害性を増加させたことも示す。これらのデータは、TIGITシグナル伝達の遮断薬が、PM21 NK細胞の疲弊を防止することによって、その抗腫瘍活性を増強することを示す。この実施例は、TIGITシグナル伝達が、どのようにしてPM21 NK細胞の特性を調節するかを示し、抗腫瘍活性を改善するための抑制されたTIGIT発現を有する操作されたPM21 NK細胞及び他の併用療法の使用を裏付ける。
【0108】
本明細書の分析は、PM21 NK細胞が、TIGIT、CD96、NKG2A、TIM-3、及びLAG-3を含む阻害性受容体を発現し、この中でTIGITが最も上方調節された受容体であることを特定した。本明細書で提供されるデータは、遮断薬又はTIGIT欠失が、PM21 NK細胞の細胞傷害性を増加させ、IFNγ、TNFα及び表面CD107aの発現を増加させたことを示す。
【0109】
この実施例は、PM21 NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の役割を分析し、PM21 NK細胞のエフェクター機能を改善するための戦略の開発をもたらした。NK細胞におけるTIGITシグナル伝達を遮断して、これらのNK細胞の表現型特性、代謝特性、及び機能特性に対するその影響を分析した。TIGITシグナル伝達がヒトNK細胞をどのように調節するかを理解するために、トランスクリプトーム分析を行った。この実施例は、NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の機能的結果を決定するだけではなく、改変されたNK細胞、及びがん細胞に対してより良い治療有効性を有する併用免疫療法アプローチを開発するのにも役立った。
【0110】
PM21 NK細胞に対する阻害性受容体の発現を理解するために、qRT-PCRによってRNA発現を測定し、フローサイトメトリーによってタンパク質発現を測定することによって、PD-1、CTLA-4、TIGIT、NKG2A、TIM-3、CD96、及びLAG-3を含む阻害性受容体のセットを分析した。これらの研究では、TIGIT、NKG2A、TIM-3、CD96、及びLAG-3を含む複数の阻害性受容体の有意な上方調節が、RNA(図1A図11)及びタンパク質レベルの両方で観察された。それらの中で、TIGITが、NK細胞において最も上方調節された(図1B)。しかしながら、PD-1又はCTLA-4の有意なタンパク質発現は観察されなかった(図11)。この発現分析に基づき、NK細胞の主要な阻害性受容体であるTIGITを、更なる研究のために選択した。以前の研究は、TIGITシグナル伝達の遮断薬が、マウスモデルにおいてNK細胞の抗腫瘍活性を回復させることを示した。PM21 NK細胞の細胞傷害性及び機能特性に対するTIGIT遮断薬の効果を理解するために、PM21 NK細胞をTIGITリガンド+A549 3D肺がんスフェロイドと7日間共培養し、次いで、生存イメージングシステムにより分析した。細胞傷害性アッセイに加えて、PM21 NK細胞の機能表現型を更に分析した。これらの実験は、抗TIGIT抗体によるPM21 NK細胞上のTIGITの遮断が、A549 3D肺がん細胞スフェロイドに対するPM21 NK細胞の細胞傷害性を有意に増強することを示した(図1C)。TIGITシグナル伝達の遮断薬はまた、A549細胞スフェロイドに対するIFNγ、TNFα及び表面CD107aの発現も増強した(図1D、1E、及び1F)。
【0111】
1)PM21 NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の役割を観察し、併用療法としての抗TIGIT及びPM21 NK細胞を評価する。PM21 NK細胞が、ナイーブ又は拡大されていないNK細胞と比較して、TIGITを有意に上方調節することが観察された(図1B及び図2)。ここで、阻害性TIGITシグナル伝達が、PM21 NK細胞の疲弊を促進し、この受容体の遮断薬が、TIGITリガンド+がん細胞に対するPM21 NK細胞の抗腫瘍特性を回復させることができることが示される(図1)。この研究のために、PM21 NK細胞上のTIGITシグナル伝達を遮断して、TIGITシグナル伝達がNK細胞の疲弊に関与する表現型特性、機能特性、及び代謝特性を調節したことを決定した。更に、トランスクリプトーム分析を行って、TIGITシグナル伝達によって調節されるシグナル伝達経路を特定した。最後に、抗TIGIT及びPM21 NK細胞の組み合わせを研究し、併用により抗腫瘍活性を改善することができることを決定した。
【0112】
1.1.PM21 NK細胞の細胞傷害性及びエフェクター機能に対するTIGITシグナル伝達の効果を決定する。TIGITの遮断薬が、A549スフェロイドに対するNK細胞の細胞傷害性並びにIFN-γ、TNF-α、及び表面CD107aの発現を改善することが観察された(図1D及び1F)。TIGITシグナル伝達は、PM21 NK細胞と他のTIGITリガンド+がん細胞3Dスフェロイドとの7日間の共培養中に抗TIGIT抗体で更に遮断され、次いで、生存イメージングシステムにより細胞傷害性を分析した(図6及び7)。PM21 NK細胞を、陰性対照としてのアイソタイプ対照抗体の存在下で、がん細胞スフェロイドと共培養した。共培養の後、NK細胞をPVR+K562細胞で再刺激し、IFN-γ、TNF-α、及び表面CD107aの発現を分析して、それらのエフェクター機能を決定した。共培養されなかったPM21 NK細胞を陽性対照として使用した。これらの実験の概略図を図12に示す。
【0113】
PM21で拡大されたNK細胞は、TIGIT抗体の存在下で、より高度な細胞傷害性を有する。PM21 NK細胞は、他のがんスフェロイドと共培養すると、より少ないIFN-γ、TNF-α、及び表面CD107aを発現するが、一方で、TIGITシグナル伝達の遮断薬は、それらの発現を回復させることができる(図1D~1F)。
【0114】
1.2.トランスクリプトーム分析によって、PM21 NK細胞においてTIGITシグナル伝達を調節する経路及び遺伝子を特定する。阻害性受容体シグナル伝達は、NK細胞における細胞リプログラミングを促進して、抗腫瘍活性を防止し、疲弊を促進し得る。NK細胞におけるTIGITシグナル伝達によって、どの細胞経路及び遺伝子が調節されるかを理解するために、PM21 NK細胞を、抗TIGIT及びアイソタイプ抗体の存在下でA549がんスフェロイドと共培養した。がん細胞とのインキュベーションの後、NK細胞をCD56陽性選択キットで選択し、RNAを抽出してRNA-seqを行った。アセンブリ及び正規化の後、有意に差次的に発現された遺伝子を、0.05未満のカットオフP値で分析することができる。調節不全経路、生物学的プロセス、及び機能は、KEGG経路及び遺伝子オントロジー(GO)分析を行うことによって決定される。
【0115】
加えて、疲弊プロセスに関与する機能的に関連する遺伝子を理解するために、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を行った(図13A~B及び14)。RNA-seq発現分析の結果を、qRT-PCR、ウェスタンブロット、及びフローサイトメトリーによって更に検証する。
【0116】
これらの研究では、TIGITシグナル伝達によって調節される特定の経路及び遺伝子、特に、免疫系、代謝、及びエピジェネティック調節に関連するものは、NK細胞及びがんスフェロイドの共培養後に調節不全になり得ることが観察された。これらの知見は、PM21 NK細胞の抗腫瘍活性を改善するために更に利用することができる、疲弊プロセスに関連する重要な洞察を提供する。
【0117】
1.3.PM21 NK細胞の代謝特性に対するTIGITシグナル伝達の効果を調べる。TIGITシグナル伝達が、NK細胞代謝を調節するかどうかを理解するために、細胞エネルギー表現型決定を、ミトコンドリア呼吸及び解糖電位を同時に測定することによって行う。PM21 NK細胞は、抗TIGIT(実験用)及びアイソタイプ対照(陰性対照)抗体の存在下でのA549がんスフェロイドとの共培養から陽性選択されてもよく、代謝表現型を、Seahorse XF分析機を使用して分析する。
【0118】
GSEA遺伝子濃縮分析を、解糖、ミトコンドリア呼吸、及び決定された調節不全遺伝子によるmTOR及びPI3Kシグナル伝達を含む代謝に関連する経路に関連する遺伝子について行った(図13及び14)。
【0119】
これらの研究は、TIGITシグナル伝達がNK細胞代謝を制御するかどうかについての貴重な洞察を生み出す。加えて、本研究は、TIGITシグナル伝達によって調節されるNK細胞の疲弊に関与する代謝経路及び遺伝子を決定する。
【0120】
実施例3。阻害性受容体TIGITのノックアウトは、エクスビボ拡大されたNK細胞の抗腫瘍応答を増強する。
NK細胞は、免疫系の先天性応答及び適応免疫応答のプライミングの両方におけるそれらの役割に起因して、多くの免疫療法の成功に不可欠である重要な免疫細胞集団である。近年、養子細胞療法及び併用免疫オンコロジー療法で使用するための高度に細胞傷害性のNK細胞を生成することに多くの焦点が当てられている。がん細胞及びNK細胞活性化に対する強固な細胞傷害性は、活性化シグナル及び阻害性シグナルの微調整に依存する。NK細胞阻害性受容体は、多くの場合、刺激され、活性化されると上方調節され、疲弊のマーカーとなり得る。NK及びT細胞の両方における主要な阻害性受容体の1つであるTIGITは、エクスビボ拡大されたNK細胞において高度に発現される。この研究では、エクスビボ拡大されたNK細胞におけるTIGITのノックアウトが、それらの抗腫瘍活性を増強するかどうかを調べる。
【0121】
CRISPRを使用して、エクスビボ拡大されたNK細胞において標的TIGITノックアウトアウト(KO)を作製した。次いで、TIGIT KO NK細胞を野生型NK細胞と比較して、表現型マーカーの任意の変化を決定した。次に、IFNγ、TNFα、及び脱顆粒マーカーCD107aの発現を、がん細胞との共培養後に分析した。最後に、TIGIT KO NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングアッセイを使用して、複数の異なるがん細胞スフェロイドに対する野生型NK細胞と比較した。複数のNK細胞:標的細胞比を経時的に分析して、死滅半減期及び最大死滅を決定した。また、データを用量反応曲線に適合させて、細胞傷害性EC50値を決定した。
【0122】
TIGIT発現を抑制する効果を調べるために、PM21 NK細胞を、TIGIT特異的ガイドRNA及びCas9 RNP複合体によってエレクトロポレーションして、TIGITをノックアウトした。初期のCRISPRベースのノックアウト効率は、75%より大きかった(図1G)。PM21 NK細胞の細胞傷害性に対するTIGITノックアウトの効果を調べるために、TIGIT KO NK細胞をA549スフェロイドと共培養した。抗TIGIT抗体によるTIGIT遮断と同様に、PM21 NK細胞におけるTIGITノックアウトは、A549細胞スフェロイドに対する細胞傷害性を増加させた(図1H)。これらの知見は、TIGIT発現を抑制することが、PM21 NK細胞の抗腫瘍活性を改善することを強く示す。
【0123】
1)PM21 NK細胞のTIGITシグナル伝達を改変して、抗腫瘍活性を増強する。この研究では、PM21拡大されたTIGITノックアウトNK(TIGIT KO PM21 NK)細胞を開発し、これを拡大させ(図1G)、がん細胞に対するそれらの抗腫瘍応答を評価した(図1H及び図8)。これらの実験は、TIGIT KO PM21 NK細胞が、TIGITリガンド+A549肺がん細胞スフェロイドに対して、より高い細胞傷害性を示すことを示した(図1H)。
【0124】
TIGIT KO PM21 NK細胞のより良いノックアウト効率、生存率、及び拡大を達成するために、CRISPRベースのノックアウト方法を最適化し、確立した。更なる研究のために、複数のTIGITリガンド+がん細胞スフェロイドに対するTIGIT KO PM21 NK細胞の細胞傷害性を決定した。TIGIT KO PM21 NK細胞に対する影響を理解するために、TIGIT KO PM21 NK細胞の機能特性及び表現型特性を、拡大後及びインビトロでのがんスフェロイドとの共培養後のフローサイトメトリーベースのタンパク質発現分析及びRNA-seqベースのトランスクリプトーム分析によって調べた。TIGITノックアウトがPM21 NK細胞代謝に及ぼす影響を決定するために、TIGIT KO PM21 NK細胞の代謝表現型を調べた。最後に、NK細胞の持続性及び抗腫瘍活性に対するTIGITノックアウトの効果を、NSGマウスにおいて決定する。1.1.TIGIT KO PM21 NK細胞を開発し、特性決定する。TIGITノックアウト有効性を最適化するために、PM21で拡大されたNK細胞を、複数のガイドRNA及びCas9ヌクレアーゼでエレクトロポレーションした。所望の(>90%)ノックアウト有効性を達成した後、本願発明者らの方法に最適なガイドRNAを選択した。オフターゲット効果は、ゲノムワイドシーケンシング(ガイド-seq)法で分析することができる。TIGIT KO PM21 NK細胞及び通常のPM21 NK細胞(陰性対照)をTIGITリガンド+がん細胞スフェロイドと共培養し、生存イメージングシステムにより分析して、TIGITノックアウトがPM21 NK細胞の細胞傷害性に及ぼす影響を決定した。細胞傷害性の後、NK細胞をPVR+K562細胞で再刺激して、TIGIT KO NK細胞の機能特性を理解するために、IFNγ、TNFα、及び表面CD107aの発現を調べた。
【0125】
この方法は、高いノックアウト有効性(>90%)及び高い生存率を有するTIGIT KO PM21 NK細胞を生成した。更に、TIGIT KO PM21 NK細胞は、親PM21 NK細胞と比較して、TIGITリガンド+がん細胞に対する通常のPM21 NK細胞と比較して、有意に優れた細胞傷害性を有し、より多くのIFNγ、TNFαを発現することが示された。
【0126】
NK細胞を、7日目にTIGIT特異的CRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体(TIGIT KO PM21-NK細胞)で、又はRNPを用いずに(RNPなし対照PM21-NK細胞)でエレクトロポレーションし、PM21粒子(PM21-NK細胞)で合計2週間拡大させた。図12を参照されたい。野生型PM21-NK細胞(WT PM21-NK細胞)(灰色)及びTIGIT KO PM21-NK細胞(赤色)を示す代表的なヒストグラム(図25A)。TIGITノックアウト(KO)効率は、WT PM21-NK細胞と比較して、TIGIT KO PM21-NK細胞において90%より大きかった(図25B)。代表的な拡大曲線は、WT PM21-NK細胞(黒色)及びRNPなし対照PM21-NK細胞(灰色)に匹敵するTIGIT KO PM21-NK細胞の有意な拡大を示す(図25C)。概要のグラフは、WT PM21-NK細胞(平均3,999倍)及びTIGIT KO PM21-NK細胞(平均702.5倍)(N=11ドナー)の拡大を表す(図25D)。データは、標準偏差を表す誤差バーを伴う散布図又は棒グラフとして提示される。
【0127】
1.2.NK細胞の表現型特性、代謝特性、及びトランスクリプトーム特性に対するTIGIT欠失の影響。PM21 NK細胞に対するTIGITノックアウトの全体的な効果を理解するために、TIGIT KO及び親PM21 NK細胞の表現型、代謝、及びトランスクリプトームプロファイルを、拡大後及びがんスフェロイドとの共培養後に決定した。NK細胞を、拡大後及びがんスフェロイドとの共培養後に収集した。表現型特性を研究するために、NK細胞をNK細胞マーカーに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。代謝特性を調べるために、収集したNK細胞を分析して、Seahorse分析機を用いて解糖及びミトコンドリア呼吸を決定した。
【0128】
WT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を12日間かけて拡大させ、WT PM21-NK細胞(黒色)及びTIGIT KO PM21-NK細胞(赤色)上の活性化受容体及び阻害性受容体の発現をフローサイトメトリーによって決定した。TIGITノックアウトは、活性化受容体(図26A)、阻害性受容体(図26B)、及びCD96-DNAM1軸、FasL、及びTrail(図26C)の発現を有意に変化させなかった(N=3ドナー、各々複製物の平均)。拡大されたWT及びTIGIT KO PM21-NK細胞をRNA抽出に使用し、バルクRNAシーケンシングを実施して調節不全遺伝子セットを決定した。遺伝子セット濃縮(GSEA)分析は、TIGITノックアウトが、IL2/STAT5シグナル伝達及びG2Mチェックポイント関連遺伝子セットを含む複数のホールマーク遺伝子セットを上方調節した(図26D)が、P53経路を下方調節した(図26E)ことを示す。IL2/STAT5シグナル伝達(図26F)、G2Mチェックポイント(図26G)及びP53経路(図26H)の濃縮プロット。データは、標準偏差を表す誤差バーを伴う散布図又は棒グラフとして提示される。統計的有意性を、複数の対応のないt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0129】
WT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を、IL12(10ng/ml)、IL15(100ng/ml)及びIL18(50ng/ml)を用いるか、又は用いずに、PVR陰性K562細胞(K562_PVR細胞)又はPVR陽性K562細胞(K562_PVR細胞)で24時間刺激し、NK細胞を、seahorseシステムを用いた解糖速度及びミトコンドリアストレス試験に使用した。K562_PVR及びK562_PVR細胞刺激は、WT PM21-NK細胞(黒色の丸)(N=6ドナー)と比較して、TIGIT KO PM21-NK細胞(塗りつぶされた赤色の三角)において、基底及び代償的な解糖速度を両方とも有意に増加させた(図30A~30B)が、TIGIT KO PM21-NK細胞(N=4ドナー)では、K562_PVR-細胞のみが、基底酸素消費速度(OCR)を増加させた(図30C~30D)。データは、ドナー対の線を伴う散布図として提示される。統計的有意性を、複数の対応ありt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0130】
収集したNK細胞からRNAを抽出し、これを使用して、全RNA seqを用いて親及びTIGIT KO PM21 NK細胞のトランスクリプトームプロファイリングを行った。生データを正規化し、0.05未満のカットオフP値を有する遺伝子を有意に差異的に発現させた。
【0131】
KEGG経路分析、GO分析、及びGSEA遺伝子濃縮分析を実施して、TIGIT調節された経路、生物学的プロセス、及び関連遺伝子セットの機能を決定した。これら全ての実験について、親PM21 NK細胞を対照として使用した。RNA-seqデータの遺伝子セット濃縮分析は、TIGIT KO NK細胞が、mTORC1シグナル伝達及び解糖のためのホールマーク遺伝子セットを上方調節することを示し、このことは、TIGIT KO NK細胞における成長及び代謝の増加を示している。図33は、NK細胞におけるTIGIT KO時の代表的な上方調節及び下方調節された遺伝子セットのヒートマップを示し、図34A~34Dは、TIGIT KO NK細胞の代謝分析を示す。
【0132】
TIGITノックアウトNK細胞はまた、抗腫瘍活性の阻害に関与する重要な経路及び遺伝子の調節不全を防止し、より活性な表現型を示すことができる。更に、代謝プロファイリングは、TIGITシグナル伝達がNK細胞代謝を調節したことを決定する。
【0133】
CRISPRを使用して、エクスビボ拡大されたNK細胞においてTIGITを効率的にノックアウトし、発現レベルを5%未満まで減少させた。TIGITリガンドPVRを発現するRaji細胞と共培養した後、TIGIT KO NK細胞は、IFNγ、TNFα及びCD107αの発現の増加を示した。TIGIT KO NK細胞は、野生型NK細胞と比較して、改善された死滅を示した。TIGIT KO細胞は、6つの異なるがん細胞株の3Dスフェロイドモデルで、半分死滅時間及びEC50細胞傷害性値を有意に減少させつつ、より迅速により多くの標的細胞を死滅させた。NK細胞:標的細胞比が低かった場合、TIGIT KO細胞でも最大細胞傷害性が更に高かった。
【0134】
1.3 NK細胞のサイトカイン発現、脱顆粒及び細胞傷害性に対するTIGIT欠失の効果。エクスビボ拡大されたNK細胞におけるTIGIT遺伝子の欠失は、サイトカイン発現、脱顆粒、及び細胞傷害性が増加したNK細胞をもたらした。改善された抗腫瘍活性を有するこれらのTIGITノックアウトNK細胞は、増強された治療有効性の可能性を有する普遍的なエフェクター集団を提供する。
【0135】
エクスビボ拡大されたWT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を未治療のままにし、A549スフェロイドと48時間共培養するか、又はIL12(10ng/ml)、IL15(100ng/ml)及びIL18(50ng/ml)で4時間刺激した。Golgi Stop及びブレフェルジンAを、フローサイトメトリーによるIFNγ、TNFα及び表面CD107aの分析及びNK細胞発現の4時間前に添加した。TIGITノックアウトは、WT PM21-NK細胞(塗りつぶされた黒色の丸)と比較して、A549スフェロイドに対するTIGIT KO PM21-NK細胞(塗りつぶされた赤色の三角)上の表面CD107a発現を有意に増加させた(図29C)が、IFNγ(図29A)及びTNFα(図29B)は増加しなかった(N=4~8ドナー、各々複製物の平均)。データは、ドナー対の線を伴う散布図として提示される。統計的有意性を、複数の対応ありt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0136】
拡大されたWT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を、卵巣SKOV3及び肺A549、NCI-H358、NCI-H1299、NCI-H1650又はNCI-H1299がん細胞スフェロイドと7日間共培養した。NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングによって決定した。1つの実験からの代表的な生データは、10000個のNK細胞(NCI-H358)及び3333個のNK細胞(SKOV3)を用い、相対的拡大単独(灰色の四角)、又はWT PM21-NK細胞(黒色)若しくはTIGIT KO PM21-NK細胞(赤色)の存在下に対して、NCI-H358及びSKOV-3について示される(図27A及び27D)。NK細胞の細胞傷害性(図27B及び27E)及びEC50図27C及び27F)の代表的なプロットも示す。NK細胞の細胞傷害性の概要のプロットは、TIGIT KO-PM21 NK細胞が、WT PM21-NK細胞と比較して、EC50図27G)、t1/2図27H)及び細胞傷害性最大値(図27I)を有意に増加させることを示す(N=3ドナー、各々複製物の平均)。データは、ドナー対の線を伴う散布図として、又は標準偏差を表す誤差バーを伴う平均として提示される。統計的有意性を、複数の対応のないt検定又は対応ありt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0137】
エクスビボ拡大されたWT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を、セツキシマブを含む場合及び含まない場合で、A549細胞(2D)と48時間共培養した。NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングによって決定した。代表的なグラフは、A549細胞単独(灰色の四角)、WT PM21-NK細胞(塗りつぶされた黒色の丸)、セツキシマブを含むWT PM21-NK細胞(黒色の丸)、TIGIT KO PM21-NK細胞(塗りつぶされた赤色の三角)及びセツキシマブを含むTIGIT KO PM21-NK細胞(赤色の三角)の相対的拡大を示す(図28A)。代表的な細胞傷害性プロット(図28B)は、TIGIT KO(赤色)が、WT NK細胞(黒色)と比較して、より良くA549細胞を死滅させ、セツキシマブの添加は、WT及びTIGIT KO NK細胞(点線)の両方のNK細胞の細胞傷害性を更に改善したことを示す。複数のNK:T比でのA549細胞に対するNK細胞の細胞傷害性の概要のプロット及び表は、セツキシマブが、2.4倍の細胞傷害性EC50でTIGIT KO PM21-NK細胞の細胞傷害性を更に改善することを示した(N=2ドナー、各々複製物の平均)(図28C)。
【0138】
図24の概略図にまとめられているように、TIGIT KO NK細胞は、WT NK細胞と比較して、ADCCを含む増殖及び細胞傷害性を増強している。1)TIGIT KO NK細胞は、WT NK細胞と比較して、PVR腫瘍細胞による刺激時にTNFα産生を増加させた。2)腫瘍スフェロイド曝露されたTIGIT KO NK細胞は、WT PM21-NK細胞と比較して、脱顆粒が増加している。3)RNA-seq分析によって、TIGIT KO PM21-NK細胞では、mTORシグナル伝達、解糖、及びIL2-STAT5シグナル伝達の上方調節が観察された。4)WT PM21-NK細胞をPVR腫瘍細胞による刺激時と比較して、増強された代謝適合性を観察した。5)TIGT KOは、ADCCによって引き起こされるNK細胞フラトリサイドを防止し、Fcコンピテントなα-TIGIT抗体と組み合わせたときの細胞毒性の減少を防止する。
【0139】
実施例4。TIGIT KO PM21 NK細胞のインビボでの持続性及び抗腫瘍活性を調べる。
がん細胞をNSGマウスに腹腔内に播種し、7日間インキュベートする。その後、親及びTIGIT KO PM21 NK細胞を腹腔内に注射する。IL-2を、NK細胞を補助するために毎週2回注射する。マウスを経時的に監視して、腫瘍の成長及び生存を調べる。マウスのサブグループを、NK細胞注射の14日後に安楽死させる。NK細胞を収集して、NK細胞の持続性及び表現型を決定する。加えて、K562_PVR+細胞で再刺激されたNK細胞、並びにTIGIT KO及び親PM21 NK細胞のエフェクター機能を分析し、比較した。親PM21 NK細胞をこれらの実験で対照として使用する。
【0140】
TIGIT KO PM21 NK細胞は、親PM21 NK細胞と比較して、より優れた持続性を有し、インビボでより強固な抗腫瘍活性を保持する。更に、TIGIT KO PM21 NK細胞は、親PM21 NK細胞と比較して、腫瘍成長を低下させ、腫瘍を有するマウスの生存率を増加させる。
【0141】
以前の臨床試験では、TIGIT遮断薬単独では、腫瘍成長及び生存率を有意に低下させることができないことが示された。他の研究は、TIGIT遮断薬が、NK細胞の抗腫瘍免疫を有意に増加させることを示した。しかしながら、抗PD-1/PD-L1又は抗TIM3と組み合わせた抗TIGIT抗体は、生存率を有意に改善し、腫瘍成長を更に低下させた。TIGIT KO PM21 NK細胞と抗PD-1/PD-L1又は抗TIM3との併用療法を利用することができる。
【0142】
実施例5。インビボでのTIGITの遮断薬と組み合わせたPM21 NK細胞の治療有効性を評価する。
この実施例は、抗TIGITの存在下でPM21 NK細胞がより良い抗腫瘍活性を示すことができるかどうかを調べ、TIGITリガンド+がん細胞をNSGマウスの腹腔内に注射する。抗TIGIT(実験用)又はアイソタイプ対照(陽性対照)とともにPM21 NK細胞を投与して、移植されたマウスを治療する。IL-2を、NK細胞を補助するために毎週2回注射する。腫瘍成長及び生存率を経時的に分析する。14日後にマウスのサブグループを安楽死させ、腹膜洗浄を介してNK細胞を収集する。持続性及び表現型特性を決定するために、回収されたNK細胞を分析する。
【0143】
NK細胞は、抗TIGITと組み合わせて、より高い抗腫瘍活性を示すことができ、これにより、腫瘍制御を改善し、したがって、アイソタイプ又は抗TIGIT単独を注射したマウス群を用いた拡大されたNK細胞と比較して全生存率が向上する。更に、TIGIT遮断薬は、NK細胞の持続性を増加させる。
【0144】
インビボ研究では、抗TIGIT抗体及び抗PD-L1抗体の両方が、PM21 NK細胞とともに注射される。以前の研究はまた、Treg細胞が、TIGITシグナル伝達において役割を果たし、抗TIGIT有効性が、Treg細胞のNK細胞ベースの欠失に依存することを示した。Treg細胞にPM21 NK細胞及び抗TIGIT抗体を注射することができ、Treg細胞の存在下で、インビボでPM21 NK細胞に対するTIGITシグナル伝達の効果を調べる。
【0145】
実施例6。TIGIT遮断薬は、肺がんのモデルにおけるPVR媒介性疲弊を防止することによって、エクスビボ拡大されたNK細胞の抗腫瘍活性を改善する。
エクスビボ拡大されたナチュラルキラー(NK)細胞は、がんに対するそれらの強固な応答のために、養子免疫療法として関心を集めている。NK細胞は、その活性を調節する活性化受容体及び阻害性受容体を発現する。阻害性受容体TIGITは、多くの場合、がんにおいてNK細胞上で上方調節され、NK細胞活性を阻害し、NK細胞の疲弊を促進する。NK細胞機能におけるTIGITの役割に関する理解の大部分は、マウスモデルに由来するが、ヒトNK細胞を使用した機構的インビトロ研究は、限定的である。この研究では、ヒトエクスビボ拡大されたNK細胞の抗腫瘍活性に対するTIGIT遮断薬の効果を評価した。
【0146】
TIGIT発現は、サイトカイン活性化及びPM21粒子拡大されたヒトNK細胞(PM21-NK細胞)上で、qRT-PCR及びフローサイトメトリーによって決定された。複数の肺がん細胞株の2D及び3Dモデルに対するNK細胞の細胞傷害性を、動的生存イメージングベースのアッセイによって評価した。NK細胞の疲弊を評価するために、PVR又はPVRK562細胞を使用して、A549スフェロイド曝露されたPM21-NK細胞を再刺激し、CD107aの表面発現並びにIFNγ及びTNFαの産生を測定した。理論に限定されることを意図するものではないが、PVR媒介性疲弊を防止するTIGIT遮断薬の潜在的な機構を図15に示す。RNA-seq分析を、TIGIT遮断薬を伴って、又は伴わずにA549スフェロイドと共培養した後に選択されたPM21-NK細胞に対して行った。
【0147】
TIGITは、エクスビボ拡大され、活性化されたヒトNK細胞上で高度に発現する。TIGIT遮断薬は、肺がんスフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を有意に改善し、がん細胞スフェロイドへの長期間曝露後にPVR陽性がん細胞に対するエフェクター機能を回復させる。
【0148】
この実施例では、PM21粒子で拡大されたNK細胞(PM21-NK細胞)の抗腫瘍活性に対するTIGIT遮断薬の効果を、肺がんモデルにおいて調査した。エクスビボ拡大及び/又は活性化が、NK細胞上のTIGITを上方調節した。TIGIT遮断薬は、単層中の肺がん細胞に対するPM21-NK細胞の抗腫瘍活性を増加させなかったが、TIGIT遮断薬は、3D肺がんスフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を増加させ、腫瘍スフェロイドへの長期間曝露後のPVR媒介性疲弊を防止した。TIGIT遮断薬は、炎症応答関連遺伝子、NFkBを介したTNFαシグナル伝達、及びIFNγ応答関連遺伝子セットを含むNK細胞抗腫瘍応答に関連する複数の遺伝子セットを上方調節した。この研究は、TIGIT遮断薬が、PVRによって誘導されるNK細胞機能の減少を防止し、エクスビボ拡大された初代ヒトNK細胞の全体的な抗腫瘍応答を増加させることを示した。
【0149】
方法。
細胞培養。特定されていない健康なドナーからのバフィーコート(白血球源)をNK細胞の供給源として使用し、地元の血液バンク(OneBlood)から購入した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配(Ficoll-Paque Plus溶液、GE Healthcare、Chicago,IL,USA)によって分離し、更なる使用のために凍結保存した。NK細胞を、以前に記載されているように(19、20、47)、PM21粒子により拡大させた。簡潔に述べると、T細胞が枯渇したPBMC(EasySep CD3陽性選択キット、StemCell Technologies、Vancouver,Canada)を、200μg/mLのPM21粒子で刺激し、SCGM培地(CellGenix GmbH、Freiburg im Breisgau,Germany)及び100U/mLのIL-2(PeproTech、Cranbury,NJ,USA)を含むRPMI培地中で2~3週間培養した。活性化されたNK細胞について、T細胞が枯渇したPBMCを、IL-2(1000U/ml)又はIL-12(10μg/ml)+IL-15(100μg/ml)+IL-18(50μg/ml)で一晩刺激した。がん細胞株K562、A549、NCI-H358、及びNCI-H1975細胞(ATCC)、並びにNCI-H1299(Dr.Griffith Parks,UCFからの過大なる寄贈)を、10%のFBS、1%の抗生物質/抗真菌薬、及び2mMのGlutamaxを含むRPMI培地中で維持した。A549-NLR、NCI-H358-NLR、NCI-H1975-NLR、及びNCI-H1299-NLR細胞を、市販のNucLight Red Lentivirus(Sartorius)を使用して、安定した形質導入によって生成した。全ての細胞株を、ピューロマイシン選択を介して陽性選択し、続いて均一な陽性集団を選別した(BD FACS Aria II)。全ての細胞を、空気中に5%(体積/体積)CO2を補充した37℃の加湿雰囲気中に維持した。細胞株を、定期的にマイコプラズマについて試験し(E-Myco Plus Mycoplasma PCR Detection Kit、Bulldog-Bio,Inc.,Portsmouth,NH,USA)、Human STR Profiling(ATCCによってサービス提供される)を介して認証した。
【0150】
安定した細胞株生成。K562-GFPLuc細胞を発現するPVRを、PVRコード遺伝子配列を含有する社内で生成されたレンチウイルス粒子(VectorBuilder Inc.、Chicago,IL,USA)を使用して安定した形質導入によって生成し、BD FACSAria II Cell Sorter(BD Biosciences、Franklin Lakes,NJ,USA)を用いて、陽性集団及び陰性集団について選別した。PVR及びPVRK562-GFPLuc細胞株を、必要になるまで凍結保存した。
【0151】
qRT-PCR。NK細胞を、拡大前後に選択し(EasySep CD56陽性選択キット StemCell Technologies、Vancouver,Canada)、全RNAを単離した(Direct-zol RNA Microprepキット、Zymo research、Irvine,CA,USA)。cDNAを合成し(High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit、Applied Biosystems、Waltham,MA,USA)、TIGITのための遺伝子発現プライマーセット(QuantiTect Primer Assay、Qiagen、Hilden,Germany)を使用して、qRT-PCR(Quantstudio 7 PCRシステム、Applied Biosystems、USA)によって、RNA発現レベルを決定した。EIF3D及びRPL13Aを対照遺伝子として使用した。2-ΔΔC 方法(48)を使用して、標的遺伝子の相対的RNA発現を決定した。
【0152】
フローサイトメトリー。以下の抗体をフローサイトメトリー分析に使用した。CD56-PE(クローン:5.1H11)、CD56-APC/Fire(商標)750(クローン:NCAM)、CD56-AF(登録商標)647(クローン:5.1H11)、CD3-FITC(クローン:UCHT1)、TIGIT-PE/Cy7(クローン:A15153G)、CD96-PE(クローン:NK92.39)、DNAM-1-FITC(クローン:TX25)、PVRIG-APC(クローン:W16216D)、PVR-PE(クローン:SKIL2)、PVRL2-APC(クローン:TX31)、PVRL4-AF488(クローン:337516)、NKp30-PE(クローン:P30-15)、NKp46-PE/Dazzle(商標)594(クローン:9E2)、CD16-PeCy5(クローン:3G8)、NKG2D-APC(クローン:1D11)、NKp44-PE-Cy7(クローン:P44-8)、LAG-3-FITC(クローン:11C3C65)、PD-1-PE-Dazzle(商標)594(クローン:EH12.2H7)、TIM-3-PE(クローン:F38-2F2)、TNFα-PE/Dazzle(商標)594(クローン:MAB11)、IFNγ-PerCP5.5(クローン:B27)、CD107a-PE(クローン:H4A3)、CD3-PerCP-eF710(クローン:OKT3)、及びNKG2A-APC(クローン:Z199)。NK細胞を、プレコンジュゲートタンパク質特異性抗体又は対応するアイソタイプ対照抗体で染色した。全ての試料を、Cytoflex(Beckman Coulter、Brea,CA,USA)又はNorthern Lights 2000 Full Spectrum(Cytek、Fremont,CA,USA)フローサイトメーターで獲得し、CytExpert(Beckman Coulter、Brea,CA,USA、v2.4)又はFlowJoソフトウェア(v10.6.2)で分析した。
【0153】
動的生存細胞イメージング細胞傷害性アッセイ。追跡のために核赤色蛍光タンパク質(NucLight Red、NLR)を安定して発現する肺がん細胞株A549-NLR、NCI-H358-NLR、NCI-H1975-NLR及びNCI-H1299-NLRを標的細胞として使用した。単層細胞傷害性アッセイについて、NK細胞を添加する前日に、平底96ウェルプレートにウェル当たり6,000個のがん細胞を播種した。スフェロイド細胞傷害性アッセイについて、5,000個のがん細胞を96ウェル透明丸底超低付着マイクロプレート(Corning、Corning,NY,USA)に播種し、130×gで10分間遠心分離し、3日間インキュベートした後に、スフェロイドを形成した。がん細胞単層又はスフェロイドを、Ultra-LEAFアイソタイプ又は抗TIGIT抗体(Biolegend、San Diego,CA,USA)の存在下で、示されるエフェクターの標的に対する(E:T)比でNK細胞と共培養した。IncuCyte(登録商標)S3 Live-Cell Analysis System(Sartorius、Gottingen,Germany)を用いて、7日間のスフェロイド実験の間、単層を72時間撮像した。2Dアッセイでは、ウェル当たりの赤色オブジェクト数(ROC)、3Dアッセイでは、全赤色オブジェクト積分強度(ROII)(RCU×μm/画像)によって、標的腫瘍細胞の成長を経時的に追跡した。標的細胞単独、又はTIGIT遮断薬を伴うか、又は伴わないNK細胞の存在下での相対的成長を、NK細胞を最初に添加して正規化されたROC(nROC)又は正規化されたROII(nROII)を決定したときに、ROC又はROIIを時間0での値に対して正規化する(ROC/ROCt=0又はROII/ROIIt=0)ことによって決定した。次いで、以下の式に基づいて細胞傷害性(%)を決定した。
【0154】
アネキシンV細胞傷害性アッセイ。組織培養インキュベーター中、PM21-NK細胞を、標的PVR+又はPVR-K562-GFPLuc細胞とともに、示されたエフェクター対標的(E:T)比で、Ultra-LEAFアイソタイプ又は抗TIGIT抗体(Biolegend、San Diego,CA,USA)の存在下で、37℃で60分間共培養した。次いで、細胞を遠心分離し、アネキシン-V-パシフィックブルー抗体で染色し、4℃で15分間インキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。細胞傷害性を、エフェクター(VTCE:T)を有する各ウェルに残存する生存可能な標的細胞(GFP+/アネキシンV-)の絶対量に基づいて決定し、「標的単独」対照ウェル(VTCT ctrl)における平均VTCを参照した。
【0155】
IFNγ及びTNFα発現、並びに脱顆粒。30,000個のNK細胞を、37℃でブレフェルジンA及びGolgi Stop(商標)の存在下、Ultra-LEAFアイソタイプ又は抗TIGIT抗体(Biolegend、San Diego,CA,USA)の存在下でPVR-又はPVR+K562細胞と4~6時間共培養した。試料を、細胞外標的タンパク質特異的抗体(CD3、CD56及びCD107a)で染色した。次いで、NK細胞を固定し、透過化し(eBiosciences IC Fixation及び透過化緩衝剤)、細胞内タンパク質標的(IFNγ及びTNFα)について染色した。データをフローサイトメトリーによって得て、FlowJoソフトウェアによって分析した。図4を参照されたい。
【0156】
インビトロ疲弊モデル。A549-NLR細胞(5000/ウェル)を96ウェル透明丸底超低付着マイクロプレート(Corning、Corning,NY,USA)に播種し、130×gで10分間遠心分離し、3~4日間インキュベートして、スフェロイドを形成した。次いで、NK細胞を、Ultra-LEAFアイソタイプ又は抗TIGIT抗体(Biolegend、San Diego,CA,USA)の存在下で添加した。7日間のインキュベーションの後、NK細胞を、ブレフェルジンA(eBioscience、San Diego,CA,USA)及びGolgi Stop(商標)(BD Biosciences、Franklin Lakes,NJ,USA)の存在下でPVR又はPVRK562-GFPLuc細胞で4~6時間刺激した。試料を採取し、CD56、CD3及びCD107a抗体で染色し、固定し、透過化し(eBioscience IC Fixation及び透過化緩衝剤)、IFNγ及びTNFαについて抗体でプローブ化し、続いて、フローサイトメトリーを使用して分析した。代表的なゲーティング戦略を図23に示す。
【0157】
RNA-seq。NK細胞を、疲弊モデルに記載されるように設定した。7日間の共インキュベーションの後、NK細胞を、NK細胞選択キット(EasySep CD56選択キット、StemCell technologies)で単離し、フローサイトメトリー(Northern Lights 2000 Full Spectrum、Cytek)によって分析して、NK細胞純度を決定した。NK細胞から全RNAを抽出した(Direct-zol microprepキット、Zymo research)。RNA品質(RIN値)をTapeStationによって決定し、polyA選択、ライブラリー調製、及びRNAシーケンシング(Genewiz,Inc、South Plainfield,NJ)に使用した。生のRNA-seqデータ(Fastq)を、FastQCにより品質制御のために分析した。Trimmomaticは、アダプターのトリミングと低品質リードに使用された。HISAT2は、hg38ヒトゲノムによる遺伝子のマッピングに使用され、Stringtieは、アセンブリ及びリードカウントの定量化に使用された。Combat-seqを使用して、試料間のバッチ効果を除去した。EdgeRを使用して、遺伝子発現を正規化し、差次的に発現した遺伝子を決定した。EdgeRから得られた個々の遺伝子の倍率変化及びP値を掛け算して、ランク付けされた遺伝子リストを作製し、事前ランク付けされた遺伝子セット濃縮(GSEA)分析に使用して、濃縮されたホールマーク遺伝子セットを決定した。
【0158】
統計分析。統計分析を、GraphPad Prism 9.3.1によって行った。対応あり又は対応なしの両側スチューデントt検定を用いて、TIGIT発現、細胞傷害性、及び機能アッセイを分析した。全ての実験を、少なくとも3つの生物学的複製物について行った。0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0159】
結果
PM21粒子で拡大されたか、又はサイトカイン活性化されたNK細胞は、TIGITを高度に発現する。健康なドナーから得られたNK細胞を、PM21粒子を使用して拡大させた(19、20)。このフィーダー細胞を含まない拡大技術は、K562-mbIL21-41BBL細胞(PM21粒子)に由来する血漿膜粒子を利用して、NK細胞増殖を刺激し、2週間でNK細胞の平均1,700倍の拡大をもたらす(18名のドナーからのN=113、図20)。PM21粒子(PM21-NK細胞)を使用して一致したドナーから拡大されたPBMC及びNK細胞から単離された休止NK細胞を、qRT-PCR及びフローサイトメトリーによってTIGIT発現について分析した。TIGITは、休止NK細胞と比較して、PM21-NK細胞におけるRNAレベルが上方調節された(6±3倍、p=0.04)(図2、左パネル)。更に、TIGITNK細胞の割合は、休止NK細胞と比較して、PM21-NK細胞において増加し(N=8、p<0.0001)、発現は、休止NK細胞において2%~44%、PM21-NK細胞において39%~88%の範囲であった(図2、右パネル)。他のNK細胞活性化方法もTIGIT発現を誘導するかどうかを決定するために、T細胞が枯渇したPBMCを、IL-2(1000U/mL)又はIL-12(10μg/mL)、IL-15(100μg/mL)及びIL-18(50μg/mL)の組み合わせのいずれかで一晩刺激し、TIGITを発現するNK細胞の割合を、休止NK細胞の割合と比較した。TIGIT発現は、休止NK細胞(21±13%)と比較して、IL-2活性化されたNK細胞(69±3%、p<0.0001)及びIL-12/15/18活性化されたNK細胞(60±15%、p=0.0001)で上方調節され、PM21-NK細胞(67±16%)での発現レベルに匹敵するものであった(図3)。まとめると、これらの所見は、NK細胞が、PM21粒子又はサイトカイン活性化を用いて拡大すると、RNA及び表面タンパク質レベルの両方でTIGITを上方調節することを示す。
【0160】
TIGIT陽性PM21-NK細胞は、TIGIT陰性PM21-NK細胞と比較して、より高いレベルの活性化受容体及び阻害性受容体を発現する。TIGITの発現が、NK細胞の表現型及び/又は活性化状態への何らかの変化と関連しているかどうかを決定するために、主要な活性化受容体及び阻害性受容体の発現のレベルを、TIGITPM21-NK細胞とTIGITPM21-NK細胞との間で比較した。発現が最大レベルではなく、依然として差次的発現を評価することができるときに、拡大の14日目前に、細胞上で差を評価した。一般に、活性化受容体及び他の阻害性受容体の発現は、図16Aにまとめられ、TIGITPM21-NK細胞と比較して、TIGITPM21-NK細胞上で増加した。活性化受容体CD16、NKp30、NKp46、DNAM-1、及びNKG2Dを発現するNK細胞の割合は、ドナー間で変化したが、DNAM-1を除く全ての活性化受容体について、ドナーが一致した対におけるTIGITNK細胞対TIGITNK細胞で増加した(p=0.02以下)。DNAM-1は、TIGITNK細胞及びTIGITNK細胞の両方の98%より多くを平均して、全てのPM21-NK細胞上で遍在的かつ高度に発現した(図16B)。阻害性受容体CD96、TIM-3、NKG2A、及びLAG-3は、PM21-NK細胞上でも発現され、一方で、PD-1は、PM21-NK細胞の2%未満で検出された(図16C)。ドナーが一致したTIGITNK細胞と比較して、CD96(p=0.01)及びTIM-3(p=0.003)を発現したTIGITNK細胞の割合は有意に高かったが、NKG2A及びLAG-3の発現は、TIGITNK細胞とTIGITNK細胞との間で有意に差はなかった。これらの所見は、TIGITNK細胞が、より活性化された細胞亜集団を表し、より高いレベルの重要な活性化受容体及びいくつかの阻害性受容体を発現し、典型的には活性化時に誘導されることを示す。
【0161】
TIGIT遮断薬は、3D肺腫瘍スフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を増強する。PM21-NK細胞抗腫瘍機能に対するTIGIT遮断薬の効果を入手するために、A549肺腫瘍細胞に対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を調べた。この細胞株は、PVR及びPVRL2を発現するが、TIGITに結合することができるPVRL4を発現しない(表1)。3名のドナーからのPM21-NK細胞を、抗TIGIT抗体又はアイソタイプ対照の存在下で0.33:1のNK:A549比で2D A549肺がん細胞単層と共培養し、細胞毒性を生存細胞イメージングアッセイで測定した。PM21-NK細胞死滅の有意な増強は、72時間にわたるTIGIT遮断では生じなかった(アイソタイプ対照対抗TIGIT抗体の存在下での細胞傷害性は、24時間で14±10%対15±9%、48時間で27±11%対31±7%、72時間で44±9%対50±4%であった)(図17A)。濃度依存性細胞傷害性曲線も、1名のドナーについてこれらの各時点について測定し、TIGIT遮断薬を伴う場合、又は伴わない場合で、死滅の差は観察されなかった(24時間で559±18%の比対525±24%の比、48時間で689±17%の比対629±37%の比、及び72時間で751±14%の比対697±25%の比)(図17B)。
表1:TIGITリガンドは、いくつかの肺がん細胞株において発現される。肺がん細胞株A549、NCI-H358、NCI-H1299、及びNCI-H1975をTIGITリガンド特異的抗体で染色し、アイソタイプ対照と比較して、フローサイトメトリーによってリガンド発現を決定した。データは、2つの異なる継代から平均されたリガンド陽性(%)及び平均蛍光強度(MFI)であるがん細胞のパーセントとして提示される。
【0162】
TIGITの遮断が、がん環境をよりよく模倣する肺がんスフェロイドへの曝露中のPM21-NK細胞の細胞傷害性に影響を与えるかどうかを決定するために、PM21-NK細胞をA549細胞スフェロイドと共培養し、共培養終了時のNK細胞表現型とともに経時的なそれらの死滅を評価した。PM21-NK細胞を、抗TIGIT又はアイソタイプ対照抗体の存在下で腫瘍スフェロイドに7日間曝露した。いくつかの時点での代表的な画像は、抗TIGITの存在下でのA549スフェロイドの殺傷の増加を示し、得られたスフェロイドのより小さいサイズ(図21A)及び相対的拡大の低下(図21B)によって明らかである。経時的な細胞傷害性曲線を決定し、1名のドナーからの代表的な曲線及び複数のドナーからの概要の細胞傷害性データを図17Cに示す。TIGIT遮断薬は、ドナー間で平均20%で、72時間でA549スフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を増強した(p<0.0001、1:1のPM21-NK細胞:A549細胞、N=6)(図17C)。複数の活性化受容体及び阻害性受容体の発現を、抗TIGIT抗体の存在下又は不存在下でA549スフェロイドに曝露した後、3名のドナーからの曝露されていない対照PM21-NK細胞及びPM21-NK細胞について評価した。腫瘍曝露単独又はTIGIT遮断薬を伴うものは、アイソタイプ対照又は曝露されていないNK細胞と比較して、阻害性受容体TIM-3、NKG2A、LAG-3、PD-1又はCD96を発現するNK細胞の頻度を変化させなかった(図17D)。同様に、TIGIT遮断剤を伴う場合、又は伴わない場合に、腫瘍曝露後の活性化受容体CD16、NKG2D、NKp30、NKp46及びDNAM-1の発現に差はなかったが、特にアイソタイプ対照では、スフェロイド曝露時にNKG2Dの発現の減少傾向が存在した(図17D)。TIGIT遮断時の肺がんスフェロイドに対するNK細胞の細胞傷害の増強が単一細胞株に制限されていないことを確認するために、抗TIGIT抗体の試験をNCI-H1299、NCI-H358、及びNCI-1075肺がん細胞株においても行った。これらの細胞株は、PVR及びPVRL2も高度に発現するが、H358は、試験したTIGITリガンドの中でも、PVRL4も発現する(表1)。これらの細胞株のスフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を、生存細胞イメージングアッセイを使用して決定した。各細胞株は、標的細胞が死滅された異なる速度を有していたが、全ては、TIGIT遮断時に増強された細胞傷害性を示した(図18A)。死滅の程度にはドナー依存性の変動があったが、TIGIT遮断薬は、試験した全ての細胞株に対するドナーが一致した比較において細胞傷害性を増加させ(NCI-H1299 p=0.02、NCI-H358 p=0.01、NCI-1975 p=0.005)、H1299の死滅を平均12%、H358を18%、及びH1975を驚異的に88%増強した(図18B)。まとめると、これらの所見は、3Dスフェロイドモデルにおいて、TIGIT遮断薬が、NK細胞の表現型の変化なしに、肺がん細胞に対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を増強することを示す。
【0163】
TIGIT遮断薬は、がん細胞スフェロイドとの共培養後に、PVR陽性がん細胞に対するPM21-NK細胞エフェクター機能を保持する。NK細胞の疲弊は、腫瘍への長期間曝露が、エフェクター機能の減少、表現型の変化、又は死滅の減少を引き起こし得る腫瘍微小環境の文脈で生じ得る。NK細胞の疲弊につながる機構は十分に定義されていないが、最近の研究では、阻害性受容体シグナル伝達の悪化の役割が示されている。以前の研究では、慢性的な阻害性シグナル伝達が、細胞傷害性免疫細胞の疲弊を促進し、TIGITが、腫瘍を有するマウスモデル及びがん患者におけるNK細胞の疲弊に関連していることが報告されている。TIGIT遮断薬が、腫瘍スフェロイドへの曝露時のPM21-NK細胞の疲労の徴候を軽減することができるかどうかを決定するために、インビトロ疲弊モデルが開発された。まず、PM21-NK細胞を、抗TIGIT抗体又はアイソタイプ対照抗体のいずれかの存在下でA549スフェロイドと7日間共培養した。次いで、NK細胞をPVR又はPVRK562細胞のいずれかで刺激し、エフェクターサイトカインの産生及び脱顆粒を評価した。曝露されていない刺激されていないPM21-NK細胞を陰性対照として使用し、一方で、PVRK562又はPVRK562のいずれかで刺激された曝露されていないPM21-NK細胞を陽性対照として使用した。インビトロ疲弊モデルの概略図を図19Aに示す。
【0164】
曝露されていないPM21-NK細胞をK562細胞で刺激した場合、IFNγを発現するNK細胞の割合は、PVRK562細胞で刺激した場合に1%未満から15±5%(p=0.0002)に増加し、PVRK562細胞では14±7%(p<0.0001)に増加した(図19B)。A549スフェロイド共培養後のK562細胞による再刺激により、IFNγを発現するPM21-NK細胞の割合が低下し(PVRで8±5%、PVR細胞でp=0.03及び4±3%、p=0.0002)(図19B)、PVR細胞を使用した場合、減少が大きかった(p=0.04)。A549スフェロイドとの共培養中のTIGIT遮断は、PVR細胞による再刺激後のIFNγ発現の腫瘍誘導性減少を軽減せず、これは依然としてIFNγを発現する細胞のわずか9±7%であった。対照的に、PVRK562細胞による再刺激は、NK細胞におけるIFNγ発現を、アイソタイプ対照での3±2%から抗TIGITでの7±4%まで増加させたが、有意性には達しなかった(p=0.1)(図19B)。加えて、抗TIGIT抗体が最初の腫瘍共培養物中に存在した場合、PVR又はPVRK562細胞再刺激の間でIFNγ発現に有意差がなくなり、このことは、初期の差がTIGIT依存性であったことを示している。したがって、腫瘍曝露は、IFNγ生成能力の80%近くの損失を引き起こし、この損失の約30%は、TIGIT/PVR係合に依存する。
【0165】
TNFαの生成もまた、腫瘍曝露によって悪影響を受け、その減少の大部分は、TIGIT/PVR軸によって引き起こされた。K562細胞による曝露されていないPM21-NK細胞の刺激は、刺激されていない細胞と比較して、TNFαNK細胞の頻度の増加をもたらした(PVRK562細胞刺激時に4±1%対29±5%、PVRK562細胞ではp<0.0001及び4%対28±3%、p<0.0001)(図19B)。曝露されていない細胞と比較して、アイソタイプ対照又は抗TIGIT抗体のいずれかの存在下でのA549腫瘍曝露は、PVRK562細胞再刺激に応答して誘導されたTNFαNK細胞の頻度の変化をもたらさなかった(アイソタイプ対照の存在下で27±6%、抗TIGIT抗体では30±8%)(図19B)。しかしながら、PVRK562細胞による再刺激は、PVRK562細胞再刺激と比較して(PVR細胞での27±6%対PVR細胞での15±5%、p=0.008)、又はPVRK562細胞で刺激された曝露されていないNK細胞と比較して(曝露されていない場合に28±3%対スフェロイド曝露された場合に15±5%、p=0.0001)、アイソタイプ対照抗体との共培養後のTNFαNK細胞の頻度が低くなった(図19B)。スフェロイド共培養中にTIGITを遮断することで、TNFαNK細胞の頻度の減少を防止し、PVRK562細胞で再刺激した後、NK細胞の28±7%がTNFαを発現し、曝露していない刺激されたNK細胞(28±3%)及びPVRK562細胞で刺激された曝露されたNK細胞(27±6%)と同等の頻度であった(図19B)。したがって、TIGITを遮断することで、NK細胞のTNFα産生能力を完全に回復させた。
【0166】
TIGIT遮断薬はまた、PVR細胞再刺激時の腫瘍共培養後に脱顆粒化するPM21-NK細胞の能力の大部分を回復させた。脱顆粒化のマーカーである表面CD107aの発現は、K562細胞による刺激時に曝露されていないPM21-NK細胞において増加し、脱顆粒化CD107aNK細胞の頻度は、PVRK562細胞により刺激されたときに、刺激されていない場合での6±3%から53±9%に増加し(p<0.0001)、PVRK562細胞刺激後に44±5%に増加した(p<0.0001)(図19B)。アイソタイプ対照抗体の存在下での腫瘍共培養は、K562細胞による再刺激時にCD107aNK細胞の頻度を減少させ(PVRでは37±5%、p=0.004及び19±8% PVR、p<0.0001)、PVR細胞と比較して、PVRK562細胞の場合に、減少がより大きい(p=0.005)。腫瘍共培養中のTIGIT遮断は、PVRK562で再刺激されたNK細胞のCD107a発現のみを回復させ、アイソタイプ対照条件と比較して、CD107aNK細胞の頻度の増加をもたらし(TIGIT遮断の場合に41%対アイソタイプ対照では19%、p<0.0001)、CD107aNK細胞の頻度は、PVRK562で再刺激されたNK細胞で観察されたものと同等であり、TIGIT遮断後も変化しないままであった(PVR細胞再刺激での41%対39% PVR細胞再刺激)。
【0167】
要約すると、腫瘍上のNK細胞の疲弊の証拠が観察され、K562細胞による曝露されていないNK細胞の刺激と比較して、K562細胞による再刺激後に、IFNγ、TNFαを産生するNK細胞の頻度の減少、及び脱顆粒がもたらされ、これらの減少は、PVRK562細胞で再刺激されたときに、より大きかった。TIGIT遮断薬は、腫瘍曝露されたPM21-NK細胞におけるPVR細胞による再刺激時に、IFNγ、TNFαを産生し、CD107aを脱顆粒化するNK細胞の能力を、PVRK562細胞による再刺激に匹敵するレベルまで回復させたか、又はPVRK562細胞で刺激された曝露されていないNK細胞について観察されたレベルまで回復させた。
【0168】
曝露後のPM21-NK細胞のエフェクター機能に対するTIGIT遮断薬の保護効果が転写レベルで生じるかどうかを決定するために、NK細胞をA549スフェロイドと7日間共培養した後に選択し、シーケンシング及びトランスクリプトーム分析のためにRNAを抽出した(図19Aに示される概略図)。遺伝子セット濃縮分析により、TIGIT遮断薬が、NFkBを介したTNFαシグナル伝達、炎症応答、IFNγ応答、及びIFNα応答遺伝子セットを含むホールマーク遺伝子セットを上方調節することが明らかになった(図19C)。トランスクリプトーム内のこれらの濃縮は、A549共培養後のTIGIT遮断時のPM21-NK細胞のより活性化された状態(57)を示す。まとめると、機能分析及びトランスクリプトーム分析からのこれらの観察は、TIGIT遮断薬が、がん細胞スフェロイドへの長期曝露後にPVR陽性がん細胞に対するPM21-NK細胞の抗腫瘍機能を回復させることを示す。
【0169】
エクスビボ拡大されたNK細胞は、それらの広範な抗腫瘍機能に起因して、有望ながん免疫療法プラットフォームとして出現した。以前の臨床試験は、エクスビボ拡大されたNK細胞及びCAR-NK細胞が、GVHDの誘導を伴わないがん療法として安全であることを示した。しかしながら、NK細胞は、腫瘍微小環境におけるがん細胞によってNK細胞の抗腫瘍活性を抑制するために利用可能であり、NK細胞ベースのがん免疫療法の有効性を制限し得るTIGITなどの複数の阻害性受容体を発現する。したがって、阻害性受容体シグナル伝達を理解し、治療的遮断戦略を開発することは、抗腫瘍応答を更に改善する可能性がある。
【0170】
以前の研究では、TIGITシグナル伝達が、がん免疫サイクルの複数の工程を調節し、TIGIT遮断薬が、前臨床試験で腫瘍成長及び生存率を有意に低下させることが示された。TIGITNK細胞は、いくつかのがんにおいて、より疲弊した表現型を示し、TIGITの遮断薬は、がん細胞に対するNK細胞の抗腫瘍活性を改善する。TIGIT遮断薬の効果に関する研究は、これまでのところ前臨床マウスモデルに限定されており、ヒトNK細胞におけるTIGIT遮断薬を特性決定する機構的インビトロ研究は限られている。この研究では、エクスビボ拡大されたPM21-NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の遮断の効果を特性決定し、NK細胞の疲弊のための新規のインビトロモデルで試験した。
【0171】
TIGITは、PM21-NK細胞の表面上で高度に発現されることが発見された。PM21-NK細胞だけでなく、IL-2又はIL-12/15/18で活性化されたNK細胞も、TIGIT発現を上方調節する。このことは、TIGITが、NK細胞活性化のマーカーであることを示す。以前の研究では、IL-15刺激がNK細胞上のTIGIT発現を増加させるという類似の所見が報告された。表現型分析により、TIGITPM21-NK細胞は、TIGITの発現が拡大によるNK細胞の活性化の結果であることを更に裏付ける、より高いレベルの他の阻害性受容体及び活性化受容体を発現することが明らかになった。驚くべきことに、TIGIT遮断薬は、短期間アッセイにおいて、PM21-NK細胞の細胞傷害性に影響を及ぼさなかった。このことは、短期間には、DNAM-1-PVRによって引き起こされる活性化が、PM21-NK細胞におけるTIGIT阻害性シグナル伝達を圧倒することを示す。腫瘍環境におけるTIGITの慢性刺激をより良く模倣し、その遮断を評価するために、細胞傷害性アッセイを、腫瘍スフェロイドを使用して実行した。TIGIT遮断薬は、複数の肺がんスフェロイドに対するPM21-NK細胞の細胞傷害性を改善した。このことは、腫瘍スフェロイドへの長期間曝露中に、TIGITシグナル伝達がNK細胞媒介性死滅を阻害することができることを示す。腫瘍への長期間曝露後のNK細胞のエフェクター機能に対するTIGITシグナル伝達の効果を更に特性決定するために、インビトロ疲弊モデルが開発された。抗TIGIT又はアイソタイプ対照抗体を用いてA549腫瘍スフェロイドに7日間曝露した後、PM21-NK細胞を、PVR又はPVRK562細胞のいずれかで再チャレンジして、各エフェクター機能の低下に対するPVR/TIGIT軸の寄与を識別した。このモデルから、NK細胞の疲弊の徴候は、再曝露時の表面CD107a発現によって測定されるように、エフェクターサイトカインIFNγ及びTNFαの発現の減少、並びに脱顆粒の減少によって明らかであり、TIGITがNK細胞の疲弊の主要であるが唯一の寄与因子ではないことを示す慢性TIGIT係合の結果とは異なる程度までであった。再刺激時のTNFα発現の減少は、腫瘍曝露されたNK細胞をPVR細胞で再チャレンジしたときにのみ観察され、その効果は、TIGIT遮断薬によって完全に緩和された。このことは、このモデルで観察されるTNFα発現の減少が主にTIGITによって引き起こされることを示す。対照的に、腫瘍曝露されたNK細胞におけるIFNγ及びCD107a発現は、PVR及びPVR再刺激の両方に応答して減少した発現を示し、このことは、腫瘍曝露中の更なる機構が、IFNγ産生及び脱顆粒の欠損につながったことを示している。しかしながら、TIGIT遮断薬は、PVR細胞への応答に匹敵するレベルまで、完全に発現レベルを回復させた。注目すべきことに、曝露されていないNK細胞におけるTIGIT遮断は、PVR又はPVRK562細胞のいずれかでの刺激時に、IFNγ、TNFα、又はCD107aの発現に影響を及ぼさなかった(図22A)。PVR又はPVRK562細胞に対する細胞傷害性に対する効果はいずれも観察されなかった(図22B)。実際の回復効果は、NK細胞をPVRがん細胞で再刺激したときの長期間曝露モデルにおいてのみ見られ、TIGIT係合に対する感作が、腫瘍スフェロイド曝露の間に生じることを示す。
【0172】
長期間曝露時のエフェクター機能の低下が観察されたが、曝露されていないPM21-NK細胞と比較して、PM21-NK細胞は、PVRK562細胞による再刺激時に脱顆粒及びTNFαを産生する細胞が50%少ない状態で、依然としていくつかの細胞傷害性機能を保持していた。要約すると、これにより、TIGIT遮断薬が、腫瘍に曝露されたNK細胞におけるTIGITによって引き起こされる疲弊を軽減するための有効なアプローチであり、PVRがん細胞に対するエフェクター機能を保持することができることが示された。A549スフェロイドへの曝露後のNK細胞のトランスクリプトーム分析により、TIGIT遮断が、炎症応答及びTNFαシグナル伝達に関与する遺伝子セットを上方調節することを確認し、これらのNK細胞のより活性化された状態が示された。
【0173】
以前の研究は、がん細胞が、PD-1シグナル伝達遮断に対する耐性を獲得し、T細胞上のTIGITを上方調節し得ることを示した。この所見は、更なる耐性に関与する代替受容体を見つけるために、PM21-NK細胞のTIGIT遮断後の表現型変化を調べることが重要であることを示す。興味深いことに、長期間スフェロイドモデルでのTIGIT遮断時に、PM21-NK細胞上の活性化受容体及び阻害性受容体の有意な変化はなかった。これらの観察は、PD-1シグナル伝達とは異なり、TIGITシグナル伝達の遮断が、代替の耐性機構を獲得する可能性が低いことを示す。複数のマウスモデルにおける研究は、TIGIT遮断薬が、NK及びT細胞の両方の疲弊を防止することができることを示した。抗TIGIT抗体の有効性は、NK細胞に依存し、NK細胞は、T細胞の抗腫瘍活性を増強した。したがって、養子NK細胞は、頻繁にNK細胞コンパートメントを欠くがん患者において、がん細胞に対する全体的なT細胞免疫応答を高めることによって、抗TIGIT抗体の有効性を更に改善し得る。
【0174】
要約すると、この研究は、エクスビボ拡大されたヒトNK細胞におけるTIGIT遮断の分子機構への洞察を提供する。抗TIGIT抗体は、PM21-NK細胞腫瘍免疫及び養子PM21-NK細胞の有効性を有意に改善することができ、抗TIGIT抗体は、肺腫瘍などのがんに対する併用療法として使用することができる。
【0175】
実施例7。TIGIT KO NK細胞は、肺がん細胞に対する増強された細胞傷害性を有し、治療用TIGIT抗体と組み合わせてフラトリサイドに耐性である。
TIGIT遮断薬は、がん治療への新しいアプローチを有望にしており、現在、PD-1/PD-L1遮断と組み合わせて後期段階の臨床開発を受けている。前臨床試験は、TIGIT抗体の抗腫瘍応答におけるNK細胞の関与を示した。更に、マウス研究は、TIGITを標的とする治療抗体にADCCコンピテントFcを含めることが、TIGIT+Tregの枯渇及び/又はFcγ係合を介した骨髄細胞の活性化を介して起こり得る抗腫瘍応答にとって重要であることを示した。したがって、現在開発中の治療用抗TIGIT抗体の大部分は、ADCCにコンピテントであり、いくつかは更に最適化されたFcを有する。チラゴルマブ(Fcコンピテント、Roche)を用いた初期の臨床試験は、TIGITが、抗PD-L1単独(アテゾリズマブ)と比較して、奏効率及び奏効期間を有意に増加させるが、PD-L1陽性細胞の頻度が高い(>50%)腫瘍を有する患者に限ることを示した。初期の結果は非常に有望であったが、チラゴルマブは、NSCLC及びSCLCにおける第3相試験で失敗した。
【0176】
活性化されたNK細胞の大部分は、活性化時に高レベルのTIGITを発現する。活性化されたNK細胞は、腫瘍に応答し、標的腫瘍上でPD-L1の誘導をもたらすIFNγを分泌する。したがって、TIGIT遮断及びPD-L1の誘導を介した活性化されたNK細胞の存在は、PD-(L)1/TIGIT遮断の組み合わせに対する増強された応答をもたらすはずである。しかし、活性化されたNK細胞上で高度に発現されるTIGITへのADCCコンピテント抗体の結合はまた、フラトリサイド及びNK細胞の枯渇を引き起こす場合がある。したがって、養子移植前のNK細胞におけるTIGITのノックアウトは、Fcコンピテント抗TIGIT治療薬と併用される場合、腫瘍のNK細胞死滅を増加させるだけでなく、NK細胞のフラトリサイドを防止することができる。
【0177】
NK細胞フラトリサイドに対するFcコンピテントTIGIT抗体の効果を評価する。以前の研究では、抗TIGIT抗体の有効性は、TIGIT発現Treg細胞のFc依存性の疲弊によるものであることを調べた。PM21 NK細胞は、TIGITを高度に発現するため、Fcコンピテント抗TIGIT抗体が、PM21 NK細胞フラトリサイドを誘導するかどうかを試験した。この実験では、PM21 NK細胞及びTIGIT KO NK細胞を、Fcコンピテント抗TIGIT抗体(実験用)、Fcコンピテントでない抗TIGIT抗体、並びにFcコンピテント抗CD38(陽性対照)とインキュベートして、絶対生存NK細胞を決定して、フラトリサイド効果を理解した。PM21 NK細胞単独を陰性対照として使用することができる。図9及び10は、Fcコンピテント(ヒト化)TIGIT抗体(チラゴルマブ)が、PM21 NK細胞の中程度のフラトリサイドを誘導することができるが、TIGIT KO PM21 NK細胞については誘導することができないことを示す。
【0178】
図31Aに示されるように、WT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞を、非Fcコンピテント抗TIGIT及びFcコンピテント抗TIGIT抗体(チラゴルマブ)と24時間共培養した。NK細胞をDioc6及びDraq7で染色して、生存可能なNK細胞をカウントした。チラゴルマブは、WT PM21-NK細胞に対して有意なフラトリサイドを誘導したが、TIGIT KO PM21-NK細胞に対しては誘導しなかった(N=3ドナー、各々3つの複製物)。データは、標準偏差を表す誤差バーを伴う散布図又は棒グラフとして提示される。統計的有意性を、複数の対応のないt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。図31B)拡大されたWT PM21-NK細胞及びTIGIT KO PM21-NK細胞(3333NK細胞/ウェル)を、非Fcコンピテント抗TIGIT抗体又はFcコンピテント抗TIGIT抗体(チラゴルマブ)を伴い、又は伴わずに、A549スフェロイドと7日間共培養した。NK細胞の細胞傷害性を、動的生存細胞イメージングによって決定した。概要のプロットは、WT PM21-NK細胞が、非Fcコンピテント抗TIGIT抗体(塗りつぶされた青色の四角)と比較して、Fcコンピテント抗TIGIT抗体(塗りつぶされた赤色の三角)の存在下で、A549スフェロイドに対する有意に低い細胞傷害性を示し、非Fc及びFcコンピテント抗TIGIT抗体の存在下で、TIGIT KO PM21-NK細胞に有意な変化はなかったことを示す(N=3ドナー、各々3つの複製物)。データは、標準偏差を表す誤差バーを伴う散布図又は棒グラフとして提示される。統計的有意性を、複数の対応のないt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*、p<0.01である場合に**、p<0.001である場合に***、p<0.0001である場合に****として示す。
【0179】
TIGIG KO NK細胞が改善されたインビボ持続性を示したかどうかを試験するために、1×10個の肺がん細胞株NCI-H358-GFP-luc又はNCI-H1299-GFP-lucを、NSG(NOD-scid IL-2Rγヌル)メスマウスの腹腔内(i.p.)の腔に注射し、3日間播種させた。次いで、マウスを、1名のドナーからのWT又はTIGIT KO NK細胞で治療し、IL-2(25,000U、3回/週)とともにi.p.注射した。NK細胞注射の12日後にマウスを安楽死させた。腹部洗浄を、hCD45細胞上でゲーティングするフローサイトメトリーによって分析した。hCD45集団において、hNK(CD3、CD56)の割合を決定した。H358又はH1299のいずれかの肺腫瘍細胞を注射したマウスからのWT NK細胞(黒色の丸)と比較して、TIGIT KO NK細胞(赤色の三角)で治療されたマウスからより多くのNK細胞を回収し、H358を有するマウスは、統計的有意性に達した(図32)。統計的有意性を、対応のないt検定によって決定した。P値を、p<0.05である場合に*として示す。
【0180】
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【0181】
配列
配列番号1(TIGITのポリペプチド配列)
MRWCLLLIWAQGLRQAPLASGMMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGARFQIPLLGAMAATLVVICTAVIVVVALTRKKKALRIHSVEGDLRRKSAGQEEWSPSAPSPPGSCVQAEAAPAGLCGEQRGEDCAELHDYFNVLSYRSLGNCSFFTETG
配列番号2(PVRIGのポリペプチド配列)
MRTEAQVPALQPPEPGLEGAMGHRTLVLPWVLLTLCVTAGTPEVWVQVRMEATELSSFTIRCGFLGSGSISLVTVSWGGPNGAGGTTLAVLHPERGIRQWAPARQARWETQSSISLILEGSGASSPCANTTFCCKFASFPEGSWEACGSLPPSSDPGLSAPPTPAPILRADLAGILGVSGVLLFGCVYLLHLLRRHKHRPAPRLQPSRTSPQAPRARAWAPSQASQAALHVPYATINTSCRPATLDTAHPHGGPSWWASLPTHAAHRPQGPAAWASTPIPARGSFVSVENGLYAQAGERPPHTGPGLTLFPDPRGPRAMEGPLGVR
配列番号3(CD96のポリペプチド配列)
MEKKWKYCAVYYIIQIHFVKGVWEKTVNTEENVYATLGSDVNLTCQTQTVGFFVQMQWSKVTNKIDLIAVYHPQYGFYCAYGRPCESLVTFTETPENGSKWTLHLRNMSCSVSGRYECMLVLYPEGIQTKIYNLLIQTHVTADEWNSNHTIEIEINQTLEIPCFQNSSSKISSEFTYAWSVENSSTDSWVLLSKGIKEDNGTQETLISQNHLISNSTLLKDRVKLGTDYRLHLSPVQIFDDGRKFSCHIRVGPNKILRSSTTVKVFAKPEIPVIVENNSTDVLVERRFTCLLKNVFPKANITWFIDGSFLHDEKEGIYITNEERKGKDGFLELKSVLTRVHSNKPAQSDNLTIWCMALSPVPGNKVWNISSEKITFLLGSEISSTDPPLSVTESTLDTQPSPASSVSPARYPATSSVTLVDVSALRPNTTPQPSNSSMTTRGFNYPWTSSGTDTKKSVSRIPSETYSSSPSGAGSTLHDNVFTSTARAFSEVPTTANGSTKTNHVHITGIVVNKPKDGMSWPVIVAALLFCCMILFGLGVRKWCQYQKEIMERPPPFKPPPPPIKYTCIQEPNESDLPYHEMETL
配列番号4(DNAM-1のポリペプチド配列)
MDYPTLLLALLHVYRALCEEVLWHTSVPFAENMSLECVYPSMGILTQVEWFKIGTQQDSIAIFSPTHGMVIRKPYAERVYFLNSTMASNNMTLFFRNASEDDVGYYSCSLYTYPQGTWQKVIQVVQSDSFEAAVPSNSHIVSEPGKNVTLTCQPQMTWPVQAVRWEKIQPRQIDLLTYCNLVHGRNFTSKFPRQIVSNCSHGRWSVIVIPDVTVSDSGLYRCYLQASAGENETFVMRLTVAEGKTDNQYTLFVAGGTVLLLLFVISITTIIVIFLNRRRRRERRDLFTESWDTQKAPNNYRSPISTSQPTNQSMDDTREDIYVNYPTFSRRPKTRV
配列番号5(LAG3のポリペプチド配列)
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKPLQPGAEVPVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRAAVHLRDRALSCRLRLRLGQASMTASPPGSLRASDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRNRGQGRVPVRESPHHHLAESFLFLPQVSPMDSGPWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPPTPLTVYAGAGSRVGLPCRLPAGVGTRSFLTAKWTPPGGGPDLLVTGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYTCHIHLQEQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPVSGQERFVWSSLDTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLYQGERLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALPAGHLLLFLILGVLSLLLLVTGAFGFHLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPEPEPEPEPEPEPEPEPEQ
配列番号6(PD-1のポリペプチド配列)
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL
配列番号7(CTLA-4のポリペプチド配列)
MACLGFQRHKAQLNLATRTWPCTLLFFLLFIPVFCKAMHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGKATEVRVTVLRQADSQVTEVCAATYMMGNELTFLDDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYICKVELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSDFLLWILAAVSSGLFFYSFLLTAVSLSKMLKKRSPLTTGVYVKMPPTEPECEKQFQPYFIPIN
配列番号8(TIM-3のポリペプチド配列)
MFSHLPFDCVLLLLLLLLTRSSEVEYRAEVGQNAYLPCFYTPAAPGNLVPVCWGKGACPVFECGNVVLRTDERDVNYWTSRYWLNGDFRKGDVSLTIENVTLADSGIYCCRIQIPGIMNDEKFNLKLVIKPAKVTPAPTRQRDFTAAFPRMLTTRGHGPAETQTLGSLPDINLTQISTLANELRDSRLANDLRDSGATIRIGIYIGAGICAGLALALIFGALIFKWYSHSKEKIQNLSLISLANLPPSGLANAVAEGIRSEENIYTIEENVYEVEEPNEYYCYVSSRQQPSQPLGCRFAMP
配列番号9(NKG2Aのポリペプチド配列)
MDNQGVIYSDLNLPPNPKRQQRKPKGNKNSILATEQEITYAELNLQKASQDFQGNDKTYHCKDLPSAPEKLIVGILGIICLILMASVVTIVVIPSTLIQRHNNSSLNTRTQKARHCGHCPEEWITYSNSCYYIGKERRTWEESLLACTSKNSSLLSIDNEEEMKFLSIISPSSWIGVFRNSSHHPWVTMNGLAFKHEIKDSDNAELNCAVLQVNRLKSAQCGSSIIYHCKHKL
配列番号10(TIGITのポリヌクレオチド配列、参照配列NM_173799)
ACATCTGCTTCCTGTAGGCCCTCTGGGCAGAAGCATGCGCTGGTGTCTCCTCCTGATCTGGGCCCAGGGGCTGAGGCAGGCTCCCCTCGCCTCAGGAATGATGACAGGCACAATAGAAACAACGGGGAACATTTCTGCAGAGAAAGGTGGCTCTATCATCTTACAATGTCACCTCTCCTCCACCACGGCACAAGTGACCCAGGTCAACTGGGAGCAGCAGGACCAGCTTCTGGCCATTTGTAATGCTGACTTGGGGTGGCACATCTCCCCATCCTTCAAGGATCGAGTGGCCCCAGGTCCCGGCCTGGGCCTCACCCTCCAGTCGCTGACCGTGAACGATACAGGGGAGTACTTCTGCATCTATCACACCTACCCTGATGGGACGTACACTGGGAGAATCTTCCTGGAGGTCCTAGAAAGCTCAGTGGCTGAGCACGGTGCCAGGTTCCAGATTCCATTGCTTGGAGCCATGGCCGCGACGCTGGTGGTCATCTGCACAGCAGTCATCGTGGTGGTCGCGTTGACTAGAAAGAAGAAAGCCCTCAGAATCCATTCTGTGGAAGGTGACCTCAGGAGAAAATCAGCTGGACAGGAGGAATGGAGCCCCAGTGCTCCCTCACCCCCAGGAAGCTGTGTCCAGGCAGAAGCTGCACCTGCTGGGCTCTGTGGAGAGCAGCGGGGAGAGGACTGTGCCGAGCTGCATGACTACTTCAATGTCCTGAGTTACAGAAGCCTGGGTAACTGCAGCTTCTTCACAGAGACTGGTTAGCAACCAGAGGCATCTTCTGGAAGATACACTTTTGTCTTTGCTATTATAGATGAATATATAAGCAGCTGTACTCTCCATCAGTGCTGCGTGTGTGTGTGTGTGTGTATGTGTGTGTGTGTTCAGTTGAGTGAATAAATGTCATCCTCTTCTCCATCTTCATTTCCTTGGCCTTTTCGTTCTATTCCATTTTGCATTATGGCAGGCCTAGGGTGAGTAACGTGGATCTTGATCATAAATGCAAAATTAAAAAATATCTTGACCTGGTTTTAAATCTGGCAGTTTGAGCAGATCCTATGTCTCTGAGAGACACATTCCTCATAATGGCCAGCATTTTGGGCTACAAGGTTTTGTGGTTGATGATGAGGATGGCATGACTGCAGAGCCATCCTCATCTCATTTTTTCACGTCATTTTCAGTAACTTTCACTCATTCAAAGGCAGGTTATAAGTAAGTCCTGGTAGCAGCCTCTATGGGGAGATTTGAGAGTGACTAAATCTTGGTATCTGCCCTCAAGAACTTACAGTTAAATGGGGAGACAATGTTGTCATGAAAAGGTATTATAGTAAGGAGAGAAGGAGACATACACAGGCCTTCAGGAAGAGACGACAGTTTGGGGTGAGGTAGTTGGCATAGGCTTATCTGTGATGAAGTGGCCTGGGAGCACCAAGGGGATGTTGAGGCTAGTCTGGGAGGAGCAGGAGTTTTGTCTAGGGAACTTGTAGGAAATTCTTGGAGCTGAAAGTCCCACAAAGAAGGCCCTGGCACCAAGGGAGTCAGCAAACTTCAGATTTTATTCTCTGGGCAGGCATTTCAAGTTTCCTTTTGCTGTGACATACTCATCCATTAGACAGCCTGATACAGGCCTGTAGCCTCTTCCGGCCGTGTGTGCTGGGGAAGCCCCAGGAAACGCACATGCCCACACAGGGAGCCAAGTCGTAGCATTTGGGCCTTGATCTACCTTTTCTGCATCAATACACTCTTGAGCCTTTGAAAAAAGAACGTTTCCCACTAAAAAGAAAATGTGGATTTTTAAAATAGGGACTCTTCCTAGGGGAAAAAGGGGGGCTGGGAGTGATAGAGGGTTTAAAAAATAAACACCTTCAAACTAACTTCTTCGAACCCTTTTATTCACTCCCTGACGACTTTGTGCTGGGGTTGGGGTAACTGAACCGCTTATTTCTGTTTAATTGCATTCAGGCTGGATCTTAGAAGACTTTTATCCTTCCACCATCTCTCTCAGAGGAATGAGCGGGGAGGTTGGATTTACTGGTGACTGATTTTCTTTCATGGGCCAAGGAACTGAAAGAGAATGTG
配列番号11(TIGITを標的とするgRNAの配列)
ACCCTGATGGGACGTACACT
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
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図27-1】
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図28-1】
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図29-1】
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図34-1】
図34-2】
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図34-4】
【配列表】
2024536217000001.xml
【国際調査報告】