(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブプレノルフィンの安定な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20240927BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240927BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240927BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K9/70 401
A61K47/18
A61P25/04
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519651
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022045421
(87)【国際公開番号】W WO2023056043
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516001834
【氏名又は名称】エランコ・ユーエス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Elanco US Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ホステトラー,スコット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076BB34
4C076DD37
4C076DD51
4C076FF34
4C076FF51
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086GA01
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086ZA08
4C086ZA89
4C086ZC61
(57)【要約】
ブプレノルフィン又はその塩を含む製剤を投与することによって、動物、例えば、ネコに疼痛緩和を提供する方法が記載される。ブプレノルフィン又はその塩と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせから選択される添加剤と、を含む製剤、並びにそのような製剤の保存方法及び使用方法も提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手技に関連する術後疼痛の治療を必要とするネコにおいて外科手技に関連する術後疼痛を治療する方法であって、治療有効量のブプレノルフィン又はその塩を含む液体医薬組成物を前記動物に投与することを含み、前記組成物が、経皮的に投与され、前記ネコの背側頸部に適用される、方法。
【請求項2】
関連する疼痛の治療を必要とする動物において関連する疼痛を治療する方法であって、治療有効量のブプレノルフィン又はその塩を含む液体医薬組成物を前記動物に経皮投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記液体医薬組成物が、ブプレノルフィン又はその塩と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの添加剤と、を含む製剤、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ブプレノルフィン又はその塩の濃度が、約5mg/mL以上、約10mg/mL以上、約15mg/mL以上、約20mg/mL以上、約25mg/mL以上、約30mg/mL以上、約35mg/mL以上、又は約40mg/mL以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ブプレノルフィン又はその塩の濃度が、約5mg/mL~約40mg/mL、約10mg/mL~約35mg/mL、又は約10mg/mL~約30mg/mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブプレノルフィン又はその塩が、塩酸ブプレノルフィンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記製剤が、浸透促進剤を更に含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記浸透促進剤の濃度が、約20mg/mL以上、約30mg/mL以上、約40mg/mL以上、約50mg/mL以上、又は約60mg/mL以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記浸透促進剤の濃度が、約20mg/mL~約70mg/mL、約30mg/mL~約60mg/mL、又は約40mg/mL~約60mg/mLである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記浸透促進剤がパジメートОを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記製剤が溶媒を更に含む、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が揮発性溶媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、イソプロパノール、エタノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がエタノールを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤は、25℃で最大3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、又は24ヶ月間保存した後に、前記製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、BHA及び/又はBHTを含有しないがそれ以外の点では同一である製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度よりも低くなるように、安定である、請求項3~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
25℃で3ヶ月間保存した後の前記組成物中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
30℃で3ヶ月間保存した後の前記組成物中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下である、請求項3~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
40℃で3ヶ月間保存した後の前記組成物中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、約3mg/mL以下、約2.5mg/mL以下、約2mg/mL以下、約1.5mg/mL以下、約1mg/mL以下、約0.90mg/mL以下、約0.80mg/mL以下、約0.70mg/mL以下、約0.60mg/mL以下、約0.50mg/mL以下、約0.40mg/mL以下、約0.30mg/mL以下、約0.20mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、又は約0.01mg/mL以下である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
25℃で12ヶ月間保存した後の前記組成物中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、約0.20mg/mL以下、約0.15mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ブプレノルフィン分解産物が、ブプレノルフィンのポリマーを含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ブプレノルフィン分解産物が、ブプレノルフィンの二量体及び/又はその位置異性体を含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの添加剤の濃度が、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.6mg/mL以上、約0.8mg/mL以上、約0.9mg/mL以上、約1.0mg/mL以上、約1.1mg/mL以上、約1.2mg/mL以上、約1.3mg/mL以上、約1.4mg/mL以上、又は約1.5mg/mL以上である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの添加剤の濃度が、約0.1mg/mL~約1.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.9mg/mL、約0.3mg/mL~約0.9mg/mL、約0.4mg/mL~約0.9mg/mL、約0.5mg/mL~約0.9mg/mL、又は約0.6mg/mL~約0.8mg/mLである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記製剤がBHAを含む、請求項3~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤がBHTを含む、請求項3~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が、BHA及びBHTを含むか、又は前記製剤中の抗酸化剤が、BHA及びBHTからなるか、若しくはそれらから本質的になる(すなわち、抗酸化剤の総量の90重量%超、又は更には95重量%超を構成する)、請求項3~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
BHAの濃度が、0.04mg/mL以上、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上である、請求項3~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
BHAの濃度が、約0.04mg/mL~約1.0mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLのBHAである、請求項3~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
BHTの濃度が、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上である、請求項3~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
BHTの濃度が、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLである、請求項3~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
BHT対BHAの重量比が、約1.1:1以上、約2:1以上、約5:1以上、又は約10:1以上である、請求項3~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤が、
約10mg/mL~約30mg/mLの塩酸ブプレノルフィンと、
約40mg/mL~約60mg/mLのパジメートОと、
約0.5mg/mL~約0.9mg/mLのBHA及びBHTの組み合わせであって、BHT対BHAの前記重量比が約1:1以上である、組み合わせと、
エタノールを含む溶媒と、を含む、請求項3~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記製剤が、単位用量として包装される、請求項3~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記単位用量が、アルミニウム及びポリマーラミネートチューブに含まれる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記単位用量が、約0.5ml~約1.0mlである、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記単位用量が、約1.0mlである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、約5℃~約25℃、約10℃~約25℃、又は約15℃~約25℃の温度で投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物は、投与前に前記製剤が保存される温度の5℃以内の温度で投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物は、投与前に前記組成物が保存されるのとほぼ同じ温度で投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、投与前に加熱されない、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年9月30日に出願された米国仮出願第63/250,723号及び2022年6月3日に出願された米国仮出願第63/348,962号の優先権を主張する国際特許出願であり、その開示全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ブプレノルフィン又はその塩を含有する製剤、方法、使用、及びデバイスに関する。本開示は、動物、例えば、ネコに疼痛緩和を提供する方法を提供する。本開示は、ブプレノルフィン又はその塩の安定な製剤に関する。本開示は、ブプレノルフィン又はその塩の安定な製剤を保存及び出荷する方法、並びにネコの外科手技に関連する術後疼痛等の疼痛を治療又は制御するための関連する使用方法を更に提供する。
【背景技術】
【0003】
ブプレノルフィンは、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、硬膜外、髄腔内、又は舌下を含む多数の異なる投与経路によって送達された場合、広範囲の患者の疼痛を制御するのに有効であることが示されている、μオピオイド受容体の強力な部分アゴニストである。
【0004】
ZORBIUM(ブプレノルフィン経皮溶液)は、例えば、ネコの外科手技に関連する術後疼痛を制御するのに有用な、ブプレノルフィンの長時間作用型経皮製剤である。ZORBIUMの初期の製剤には、活性成分(塩酸ブプレノルフィン)の分解を防止するために冷蔵保存(5℃)が必要であった。たとえ冷蔵保存であっても、貯蔵寿命は約6ヶ月に制限される。医薬品のコールドチェーン保存及び流通は、不便でコストがかかるだけでなく、適切な保存機器を有し、製品のための十分な保存スペースを有する場所に製品の流通の範囲を制限する可能性がある。したがって、流通及び保存のために冷蔵を必要としないブプレノルフィンを含有する製剤に対する必要性が存在する。更に、室温及び/又は高温での保存条件下であっても、向上した貯蔵寿命(例えば、6ヶ月以上)を示すブプレノルフィンを含有する安定な製剤に対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、ブプレノルフィン又はその塩と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの添加剤と、を含む製剤である。
【0006】
本発明の別の態様は、5℃を超える温度で製剤を保存することを含む、製剤を保存するための方法である。
【0007】
本発明の更に別の態様は、5℃を超える温度で製剤を出荷することを含む、製剤を出荷するための方法である。
【0008】
本発明の更なる態様は、製剤を対象に投与することを含む、疼痛の軽減を必要とする哺乳動物対象の疼痛を軽減するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】UPLC(超高速液体クロマトグラフィー)及びMS(質量分析)パラメータを示す。
【
図2】温度ストレス下でのブプレノルフィン製剤のUPLCクロマトグラフを示しており、ピークA及びBとしてその分解産物を含む。
【
図3】温度ストレス下でのブプレノルフィン製剤のUPLCクロマトグラフを示しており、ピークA及びBとしてその分解産物を含む。
【
図4C】より低い強度でm/z933のイオンが抽出された、ピークAのMSスペクトルを示す。
【
図6】製剤Kについて、25℃及び30℃での24ヶ月にわたる全分解の変化を示す。
【
図7】製剤Kについて、25℃及び30℃での添加剤の長期安定性を示す。
【
図8】製剤Kについて、25℃及び30℃での24ヶ月にわたる重量損失に応じて調整された力価の変化を示す。
【
図9】製剤A~Pで使用されるBHA及びBHTの量のコード化レベルに対する、25℃での36ヶ月にわたる力価の予測変化を示す。
【
図10】製剤A~PにおけるBHA及びBHTの総標的量(重量/重量%)に対する力価の予測変化を示す。
【
図11】各チューブタイプ(PF113又はPF413)について、製剤A~PにおけるBHA及びBHTの総標的量(重量/重量%)に対する力価の予測変化を示す。
【
図12】製剤A、B、N及びOについて、窒素に対する力価の予測変化(あり(Y)又はなし(N))を示し、チューブタイプ(PF113又はPF413)と重ね合わせたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、ブプレノルフィン又はその塩を含有する製剤、方法、使用、及びデバイスに関する。本開示は、動物、例えば、ネコに疼痛緩和を提供する方法を提供する。本開示は、ブプレノルフィンの安定な製剤に関する。本開示は、ブプレノルフィンの安定な製剤を保存及び出荷する方法、並びにネコの外科手技に関連する術後疼痛等の疼痛を治療又は制御するための関連する使用方法を更に提供する。
【0011】
様々な使用方法は、疼痛の治療、制御、及び/又は予防を必要とする動物(特にネコ)における疼痛の治療、制御、及び/又は予防に関する。これらの方法は、治療有効量のブプレノルフィン又はその塩を含む医薬組成物を動物に投与することを含み得る。医薬組成物は、液体製剤として製剤化することができる(かつ、例えば、好ましくはパッチの形態ではない)。投与は、本明細書に記載されるように経皮的であり得る(例えば、動物の背側頸部に適用される)。更に、治療、制御、及び/又は予防される疼痛は、(例えば、ネコにおける)外科手技に関連する術後疼痛であり得る。
【0012】
出願人は、ブプレノルフィンを低濃度の特定の添加剤(例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、又はそれらの組み合わせ)とともに製剤化することが、活性成分の分解を有利に低減又は排除し、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の長期的な製剤安定性を提供することを、予想外かつ驚くべきことに発見した。これらの添加剤の組み合わせが、冷蔵されずに室温(約25℃)条件で保存された場合でも、長期的な製剤安定性を提供することが更に予想外に見出された。したがって、本発明は、大幅に改良された貯蔵寿命を有し、コールドチェーン保存及び出荷を必要としない、改善されたブプレノルフィンの製剤を提供する。ブプレノルフィンを含む本開示の製剤は、長期間にわたって周囲温度及びより高い温度で安定であることが示されている。
【0013】
製剤は、任意の好適な量のブプレノルフィン又はその塩を含み得る。例えば、ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約5mg/mL以上、約10mg/mL以上、約15mg/mL以上、約20mg/mL以上、約25mg/mL以上、約30mg/mL以上、約35mg/mL以上、又は約40mg/mL以上であり得る。いくつかの実施形態において、ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約5mg/mL~約40mg/mL、約10mg/mL~約35mg/mL、又は約10mg/mL~約30mg/mLである。更なる実施形態において、ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、又は約30mg/mLである。いくつかの実施形態において、ブプレノルフィンは、塩として、例えば、塩酸ブプレノルフィンとして存在する。
【0014】
ブプレノルフィン製剤は、特に経皮投与を意図する製剤において、浸透促進剤を任意選択的に含んでもよい。浸透促進剤は、皮膚脂質の充填を破壊し、したがって、角質層のバリア機能を変化させ、角質層-表皮界面における薬物の分配を変更し、かつ/又は薬物の熱力学的特性を変化させることによって、その効果を発揮し得る。
【0015】
浸透促進剤は、任意の好適な量で存在し得る。例えば、浸透促進剤の濃度は、約20mg/mL以上、約30mg/mL以上、約40mg/mL以上、約50mg/mL以上、又は約60mg/mL以上であり得る。いくつかの実施形態において、浸透促進剤の濃度は、約20mg/mL~約70mg/mL、約30mg/mL~約60mg/mL、又は約40mg/mL~約60mg/mLである。他の実施形態において、浸透促進剤の濃度は、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、約50mg/mL、約51mg/mL、約52mg/mL、約53mg/mL、約54mg/mL、約55mg/mL、約56mg/mL、約57mg/mL、約58mg/mL、約59mg/mL、又は約60mg/mLである。好適な浸透促進剤の例は、パジメートОを含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、ブプレノルフィン製剤は、標準的な室温及び圧力では液体である。このことは、対象の皮膚への製剤の経皮投与だけでなく、他の投与経路においても役立つ。
【0017】
液体製剤は、典型的には溶媒を含む。例えば、揮発性溶媒を用いて、経皮投与中に製剤の適用及び吸収を補助してもよい。好適な揮発性溶媒としては、イソプロパノール、エタノール、及びそれらの組み合わせ等のアルコールが挙げられる。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノール(脱水アルコール)である。
【0018】
本発明によれば、ブプレノルフィン製剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される特定の添加剤のうちの少なくとも1つを含む。これらの添加剤のうちの1つ以上の添加は、長期保存安定性を向上させること、及び/又は安定性を維持するための冷蔵保存の必要性を排除することが見出されている。いくつかの実施形態において、製剤は、BHA及びBHTの組み合わせを含有する。いくつかの実施形態において、製剤中の抗酸化剤は、BHA及びBHTからなるか、又はそれらから本質的になる(すなわち、抗酸化剤の総量の90重量%超、又は更には95重量%超を構成する)。この添加剤の組み合わせは、広範囲の温度及び保存条件にわたって優れた製剤安定性を提供する。
【0019】
少なくとも1つの添加剤(BHA及び/又はBHT)の濃度は、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.6mg/mL以上、約0.8mg/mL以上、約0.9mg/mL以上、約1.0mg/mL以上、約1.1mg/mL以上、約1.2mg/mL以上、約1.3mg/mL以上、約1.4mg/mL以上、又は約1.5mg/mL以上であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの添加剤の濃度は、約0.1mg/mL~約1.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.9mg/mL、約0.3mg/mL~約0.9mg/mL、約0.4mg/mL~約0.9mg/mL、約0.5mg/mL~約0.9mg/mL、又は約0.6mg/mL~約0.8mg/mLである。
【0020】
BHAの濃度は、典型的には、0.04mg/mL以上、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上である。例えば、いくつかの実施形態において、BHAの濃度は、約0.04mg/mL~約1.0mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLのBHAである。
【0021】
BHTの濃度は、典型的には、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上である。例えば、いくつかの実施形態において、BHTの濃度は、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLである。
【0022】
BHA及びBHT添加剤の両方を含有する製剤では、BHT対BHAの重量比は、約1.1:1以上、約2:1以上、約5:1以上、又は約10:1以上であり得る。実施例1で詳細に説明されるように、BHA及びBHTの両方の存在は、特に、BHTがBHAと少なくとも同等の量で存在する場合、これらの化合物の両方の減少速度を低下させ、非常に優れた製剤安定性を提供する。いくつかの実施形態において、BHT対BHAの重量比は、約1:1である。
【0023】
いくつかの実施形態において、製剤は、塩酸ブプレノルフィン、パジメートО、エタノール、並びにBHA及びBHT添加剤の組み合わせを含む。そのような実施形態において、塩酸ブプレノルフィンの濃度は、約10mg/mL~約30mg/mLであり、パジメートОの濃度は、約40mg/mL~約60mg/mLであり、BHA及びBHTの組み合わせの濃度は、約0.5mg/mL~約0.9mg/mLであり、BHT対BHAの重量比は、約1:1以上であり、溶媒はエタノールを含む。
【0024】
本発明の製剤中のブプレノルフィンの安定性は、ブプレノルフィン分解産物の濃度における相対的減少を決定することによって評価することができる。これらのブプレノルフィン分解産物を同定し、実施例1に更に記載する。具体的には、ブプレノルフィン分解産物は、偽ブプレノルフィン(ブプレノルフィンの二量体)及び/又はその位置異性体である。
【0025】
いくつかの実施形態において、製剤は、25℃及びより高い温度で最大3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、又は24ヶ月間保存した後に、製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、BHA及び/又はBHTを含有しないがそれ以外の点では同一である製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度よりも低くなるように、安定である。
【0026】
これらのような様々な実施形態において、25℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。この実施形態及び他の実施形態において、30℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。更なる実施形態において、40℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約3mg/mL以下、約2.5mg/mL以下、約2mg/mL以下、約1.5mg/mL以下、約1mg/mL以下、約0.90mg/mL以下、約0.80mg/mL以下、約0.70mg/mL以下、約0.60mg/mL以下、約0.50mg/mL以下、約0.40mg/mL以下、約0.30mg/mL以下、約0.20mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、又は約0.01mg/mL以下であり得る。更に別の実施形態において、25℃で12ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.20mg/mL以下、約0.15mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。
【0027】
本発明の製剤は、単位用量として包装することができる。単位用量は、任意の体積であり得る。例えば、単位用量は、約0.5mL~約1.0mLであってもよい。いくつかの実施形態において、単位用量は約0.7mLである。他の実施形態において、単位用量は約1.0mLである。
【0028】
単位用量は、任意の適切な容器に含まれ得る。いくつかの実施形態において、容器は、チューブである。いくつかの実施形態において、チューブは、アルミニウム及びポリマーラミネートチューブ、例えば、Neopac US,Inc.(Wilson,North Carolina)のPF113チューブである。
【0029】
ブプレノルフィンの投与量は、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約8mg/kg、又は約2.5mg/kg~約7mg/kgの範囲であり得る。
【0030】
本開示はまた、5℃を超える温度で製剤を保存することを含む、本明細書に記載の製剤を保存するための方法を対象とする。製剤は、有利には、約5℃~約25℃の温度で保存され得る。製剤は、最大6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、又はそれ以上保存することができる。
【0031】
本開示の別の態様は、5℃を超える温度で製剤を出荷することを含む、本明細書に記載の製剤を出荷するための方法である。製剤は、約5℃~約25℃の温度で出荷されてもよい。たとえ冷蔵の非存在下であっても、長期間の保存及び出荷操作中に安定性及び有効性を維持する製剤を提供することにより、製剤の取り扱い及び投与が簡素化される。
【0032】
本開示は、本明細書に記載の製剤を対象に投与することを含む、疼痛の軽減を必要とする哺乳動物対象の疼痛を軽減するための方法を更に対象とする。疼痛は、外科手技に関連する術後疼痛であり得る。哺乳動物対象は、任意の哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ネコ又はイヌ等の伴侶動物である。
【0033】
本製剤は、典型的には、それが保存される温度と同様の又はほぼ同じ温度、例えば、約5℃~約25℃、約10℃~約25℃、又は約15℃~約25℃で投与される。例えば、製剤は、投与前に製剤が保存される温度の5℃以内の温度で投与されてもよい。本明細書に記載の製剤は、広範囲の温度にわたって安定であり、冷蔵を必要としないため、投与前に製剤を加熱する必要がない。本発明は、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、又はそれ以上のより長い貯蔵寿命を有し、コールドチェーン保存及び出荷を必要としない(例えば、約25℃で保存することができる)、改善されたブプレノルフィンの製剤を提供する。
【0034】
本製剤は、経皮的、静脈内、筋肉内、皮下、硬膜外、髄腔内、又は舌下に投与され得る。いくつかの実施形態において、製剤は、経皮的に投与される。
【0035】
本発明の製剤は、製剤を収容するためのリザーバと、製剤を対象に適用するためのアプリケータチップと、を備えるアプリケータ内に包装されてもよい。アプリケータチップは、適用箇所を剃毛する必要なく、製品が毛を通って皮膚に到達しやすくなるように設計され得る。本発明の製剤は、単位用量パックに包装されてもよい。パッケージは、製剤の単回用量を含むことが好ましい。包装は、溶媒の揮発又は酸素の侵入を防止するアルミニウムポリマーラミネートチューブ等の任意の好適な材料であり得る。本開示は、伴侶動物の疼痛を治療する方法に使用するためのデバイスを提供する。上記デバイスは、本明細書に記載されるTBS製剤を室温で保存するためのリザーバと、上記動物の皮膚に製剤を投与するためのアプリケータと、を備える。アプリケータは、好ましくは、伴侶動物の被毛を通して製剤を適用するように適合される。
【0036】
治療薬は、背側頸部(頭蓋骨の基部)に局所的に投与され得る。例えば、必要に応じて毛をかき分けることによって、アプリケータチューブの先端を適用部位の皮膚上に直接配置することができ、全投与容量が単一の場所で投与される。代替的に、投与容量は、2つ以上の部位にわたって分布されてもよい。製剤は、適用中の震え又は摩擦を防ぐために、対象(例えば、ネコ)を優しく保持することによって適用されてもよい。アプリケータを皮膚と接触させ、内容物を分注する。毛との接触を回避しながら、適用部位からアプリケータを除去する。製剤が乾燥する間(投与後約30分)、適用部位との接触を回避するべきである。
【0037】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先するであろう。好ましい方法及び材料は、以下に記載されるが、本明細書に記載される方法及び材料と同様又は同等の方法及び材料は、本発明の実践又は試験で使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び例は、例解的であるにすぎず、限定的であることを意図しない。
【0038】
「約」という用語は、測定可能な数値変数に関連して使用される場合、変数の示された値、及び示された値の実験誤差内又は示された値の±10パーセント内(いずれか大きい方)にある変数の全ての値を指す。
【0039】
「有効量」という用語は、対象に所望の利益をもたらし、治療及び制御の両方のための投与を含む量を指す。この量は、個々の対象によって異なり得、対象の全体的な身体状態及び治療される状態の根本的な原因の重症度、併用治療、並びに有益なレベルで所望の応答を維持するために使用される本開示の化合物の量を含む、いくつかの因子に依存する。
【0040】
有効量は、当業者として、既知の技術の使用によって、及び類似の状況下で得られた結果を観察することによって、主治医によって容易に決定され得る。有効量、用量を決定する際に、限定されないが、患者の種、その大きさ、年齢、及び一般的な健康状態、関与する特定の状態、障害、感染、若しくは疾患、状態、障害、若しくは疾患の程度若しくは関与若しくは重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与様式、投与される調製剤のバイオアベイラビリティ特徴、選択される用量レジメン、併用医薬の使用、及び他の関連する状況を含め、いくつかの因子が、主治医によって考慮される。本開示の有効量、活性成分の治療投与量は、例えば、0.5mg~100mgの範囲であってもよい。具体的な量は、当業者によって決定することができる。これらの投与量は、約1kg~約20kgの質量を有する対象に基づいているが、診断医は、質量がこの重量範囲外になる対象のための適切な用量を決定することができるであろう。本開示の有効量、活性成分の治療投与量は、例えば、対象の0.1mg~10mg/kgの範囲であってもよい。投薬レジメンは、1日1回、週1回、又は月1回の投与であると予想される。
【0041】
「対象」及び「患者」という用語は、非ヒト哺乳動物動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、フェレット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタを指す含む。より具体的な対象は、イヌ及びネコ、更にはマウス、ラット、モルモット、フェレット、及びウサギ等の哺乳動物ペット又は伴侶動物である。
【0042】
「治療すること」、「治療するために」、「治療される」又は「治療」という用語は、限定されないが、既存の症状の進行若しくは重症度の抑制、遅延、停止、軽減、緩和、逆転、又は障害、状態若しくは疾患の予防を含む。治療薬は、治療的に適用又は投与され得る。
【0043】
当業者は、本開示の特定の化合物が異性体として存在することを理解するであろう。任意の比率の、幾何異性体、エナンチオマー、及びジアステレオマーを含む本開示の化合物の全ての立体異性体は、本開示の範囲内であることが企図される。当業者はまた、本開示の特定の化合物が互変異性体として存在することも理解するであろう。本開示の化合物の全ての互変異性体形態は、本開示の範囲内であることが企図される。
【0044】
本明細書の数値範囲の列挙のために、同じ程度の精度でその間に介在する各数が、明示的に企図される。例えば、6~9の範囲について、6及び9に加えて、数字7及び8が企図され、6.0~7.0の範囲について、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に企図される。
【0045】
ある実施形態において、製剤は、ブプレノルフィン又はその塩と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの添加剤と、を含むことができる。
【0046】
ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約5mg/mL以上、約10mg/mL以上、約15mg/mL以上、約20mg/mL以上、約25mg/mL以上、約30mg/mL以上、約35mg/mL以上、又は約40mg/mL以上であり得る。ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約5mg/mL~約40mg/mL、約10mg/mL~約35mg/mL、又は約10mg/mL~約30mg/mLであり得る。ブプレノルフィン又はその塩の濃度は、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、又は約30mg/mLであり得る。
【0047】
ブプレノルフィン又はその塩は、塩酸ブプレノルフィンを含むことができる。
【0048】
製剤は、浸透促進剤を更に含むことができる。浸透促進剤の濃度は、約20mg/mL以上、約30mg/mL以上、約40mg/mL以上、約50mg/mL以上、又は約60mg/mL以上であり得る。浸透促進剤の濃度は、約20mg/mL~約70mg/mL、約30mg/mL~約60mg/mL、又は約40mg/mL~約60mg/mLであり得る。浸透促進剤の濃度は、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、約50mg/mL、約51mg/mL、約52mg/mL、約53mg/mL、約54mg/mL、約55mg/mL、約56mg/mL、約57mg/mL、約58mg/mL、約59mg/mL、又は約60mg/mLであり得る。浸透促進剤は、パジメートОを含むことができる。
【0049】
製剤は、溶媒を更に含むことができる。溶媒は、揮発性溶媒であり得る。溶媒は、イソプロパノール、エタノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。溶媒は、エタノールを含むことができる。
【0050】
製剤は、25℃で最大3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、又は24ヶ月間保存した後に、製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度が、BHA及び/又はBHTを含有しないがそれ以外の点では同一である製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度よりも低くなるように、安定であり得る。
【0051】
25℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。
【0052】
30℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。
【0053】
40℃で3ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約3mg/mL以下、約2.5mg/mL以下、約2mg/mL以下、約1.5mg/mL以下、約1mg/mL以下、約0.90mg/mL以下、約0.80mg/mL以下、約0.70mg/mL以下、約0.60mg/mL以下、約0.50mg/mL以下、約0.40mg/mL以下、約0.30mg/mL以下、約0.20mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、又は約0.01mg/mL以下であり得る。
【0054】
25℃で12ヶ月間保存した後の製剤中のブプレノルフィン分解産物の濃度は、約0.20mg/mL以下、約0.15mg/mL以下、約0.10mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.04mg/mL以下、約0.03mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、又は約0.001mg/mL以下であり得る。
【0055】
ブプレノルフィン分解産物は、ブプレノルフィンのポリマーを含むことができる。
【0056】
ブプレノルフィン分解産物は、ブプレノルフィンの二量体及び/又はその位置異性体を含むことができる。
【0057】
少なくとも1つの添加剤の濃度は、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.6mg/mL以上、約0.8mg/mL以上、約0.9mg/mL以上、約1.0mg/mL以上、約1.1mg/mL以上、約1.2mg/mL以上、約1.3mg/mL以上、約1.4mg/mL以上、又は約1.5mg/mL以上であり得る。
【0058】
少なくとも1つの添加剤の濃度は、約0.1mg/mL~約1.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.9mg/mL、約0.3mg/mL~約0.9mg/mL、約0.4mg/mL~約0.9mg/mL、約0.5mg/mL~約0.9mg/mL、又は約0.6mg/mL~約0.8mg/mLであり得る。
【0059】
製剤は、BHAを含むことができる。製剤は、BHTを含むことができる。製剤は、BHA及びBHTを含むことができるか、又は製剤中の抗酸化物質は、BHA及びBHTからなるか、若しくはそれらから本質的になる(すなわち、抗酸化剤の総量の90重量%超、又は更には95重量%超を構成する)。BHAの濃度は、0.04mg/mL以上、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上であり得る。BHAの濃度は、約0.04mg/mL~約1.0mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLのBHAであり得る。BHTの濃度は、約0.1mg/mL以上、約0.2mg/mL以上、約0.3mg/mL以上、約0.4mg/mL以上、約0.5mg/mL以上、約0.7mg/mL以上、又は約1.0mg/mL以上であり得る。BHTの濃度は、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約1.0mg/mL、約0.2mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.7mg/mL、約0.3mg/mL~約0.6mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、又は約0.3mg/mL~約0.4mg/mLであり得る。
【0060】
BHT対BHAの重量比は、約1.1:1以上、約2:1以上、約5:1以上、又は約10:1以上であり得る。
【0061】
製剤は、
約10mg/mL~約30mg/mLの塩酸ブプレノルフィンと、
約40mg/mL~約60mg/mLのパジメートОと、
約0.5mg/mL~約0.9mg/mLのBHA及びBHTの組み合わせであって、BHT対BHAの重量比が約1:1以上である、組み合わせと、
エタノールを含む溶媒と、を含むことができる。
【0062】
製剤は、単位用量として包装することができる。単位用量は、アルミニウム及びポリマーラミネートチューブに含めることができる。単位用量は、約0.5ml~約1.0mlであり得る。単位用量は、約1.0mlであり得る。
【0063】
ある実施形態において、本明細書に記載の製剤を保存するための方法は、5℃を超える温度で製剤を保存することを含み得る。製剤は、約5℃~約25℃の温度で保存することができる。製剤は、最大12ヶ月、24ヶ月、又は36ヶ月保存することができる。製剤は、約25℃で保存することができる。
【0064】
ある実施形態において、本明細書に記載の製剤を出荷するための方法は、5℃を超える温度で製剤を出荷することを含み得る。製剤は、約5℃~約25℃の温度で出荷することができる。製剤は、約25℃で出荷することができる。
【0065】
ある実施形態において、疼痛の軽減を必要とする哺乳動物対象の疼痛を軽減するための方法は、本明細書に記載の製剤を対象に投与することを含み得る。製剤は、経皮的、静脈内、筋肉内、皮下、硬膜外、髄腔内、又は舌下に投与され得る。製剤は、経皮的に投与され得る。
【0066】
疼痛は、外科手技に関連する術後の疼痛であり得る。
【0067】
対象は、ネコであり得る。
【0068】
製剤は、約5℃~約25℃、約10℃~約25℃、又は約15℃~約25℃の温度で投与され得る。
【0069】
製剤は、投与前に製剤が保存され得る温度の5℃以内の温度で投与することができる。
【0070】
製剤は、投与前に製剤を保存され得る温度とほぼ同じ温度で投与することができる。
【0071】
製剤は、投与前に加熱することができない。
【実施例】
【0072】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される、複数の態様を有する。
【0073】
実施例1
様々な量の添加剤BHA及びBHTを含有するブプレノルフィンHClの16個の製剤バッチ(20mg/mLのブプレノルフィン、1チューブ当たり8mg/0.4mL)を、以下の表1及び表2に記載される実験計画法(DOE)に従って調製した。各製剤は、50mg/mLのパジメートО(浸透促進剤)及び脱水エタノール溶媒(適量)も含有していた。
【表1】
【表2】
調製された製剤バッチを、以下の表3に示される試験計画に従って安定性について評価した。
【表3】
【0074】
各時点で、表4に示される特性を収集し、評価に使用した。0ヶ月のデータは、包装後に最初に収集され、それらの結果は、全ての温度/相対湿度での保存条件の一般的な初期時間の結果として使用される。
【表4】
【0075】
(表4に記載されるように)測定される関連物質は、製品が酸化条件に曝露されたときに経時的に増加することが示されている最も顕著な2つのピーク(「分解産物1」及び「分解産物2」)である。以下で更に説明するように、これらのピークは、偽ブプレノルフィン及び偽ブプレノルフィンの位置異性体と一致する2つの分解産物に対応する。この例で分析に使用された全関連物質は、これら2つの個々の関連物質の合計である。
【0076】
「分解産物1」及び「分解産物2」をUPLC-MS法により同定した(
図1)。ブプレノルフィンを含有するが、BHA又はBHTを含有しない対照製剤に、50℃で3日間ストレスを加えた。50μLの製剤を、UPLC及びAligent TOF MSのための50/50水/アセトニトリル950μLで希釈することによって、分析のために試料を調製した。UPLCクロマトグラムのピークA及びBは、それぞれ「分解産物1」及び「分解産物2」に対応する(
図2~3)。ピークAのMSスペクトルは、m/z467の二重に帯電したイオン及びm/z933のイオンであった(
図4A~4B)。より正確な質量値を得るために、m/z933のイオンをより低い強度で抽出した(
図4C)。
【0077】
分析後、適合した最良の経験式はC
58H
80N
2O
8であった。ピークAは、C
58H
80N
2O
8の化学式及び932.5915の正確な質量を有するブプレノルフィンの二量体である偽ブプレノルフィンと一致する。偽ブプレノルフィンの構造を以下に示す。
【化1】
【0078】
ピークBは、そのMSスペクトルに基づいてピークAと異性体であると考えられる(
図5)。ピークBは、偽ブプレノルフィンの位置異性体と一致する。
【0079】
比較のために、ブプレノルフィンは、467.3036の正確な質量を有するC
29H
41NO
4の化学式を有し、その構造を以下に示す:
【化2】
【0080】
表2に列挙されるブプレノルフィン製剤のバッチ当たり40個のチューブをチャンバ内に配置し(保存条件当たり10個のチューブ)、経時的な安定性を監視し、分析方法及び安定性試験計画に従って、力価(すなわち、ブプレノルフィンの濃度)及び分解産物について分析した(表3)。安定性データを以下の表5~8に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0081】
標的製剤の長期安定性分析
表5~8の製剤Kについての24ヶ月にわたるデータを
図6~8に示す。分析のこの部分は、この製剤に焦点を当てている(製剤バッチK、0.5%/0.5%重量/重量のBHA/BHTを含有)。力価の結果に予想外の上昇傾向が観察されたが、全分解産物の結果は、25℃及び30℃の両方で良好な製品品質の許容範囲内である(
図6)。BHTは優先的に酸化され、BHAよりも速く消費されるが、BHA及びBHTの総量は、開始時のBHA及びBHTレベルの10%をはるかに上回ったままである(
図7)。
【0082】
観察された力価の増加の潜在的な原因を更に理解するために、チューブ重量データを調べた(表8を参照)。このデータは、力価の増加と相関する重量の傾向を示す。具体的には、重量の傾向は、PF113チューブでの重量減少、及びPF413チューブでの重量増加のいくつかの証拠があることを示す。
【0083】
PF113チューブからの顕著な液体の漏れは観察されなかった。この試験のために、全てのチューブを手動で充填して密封したが、PF113パッケージ材料の減少傾向の潜在的な原因の1つは、チューブのキャップが密閉された又は持続的なシールを有しておらず、エタノール蒸気の蒸発により製剤がゆっくりと体積及び質量を失ったことである。別の可能性は、手動による最適化されていないシールのために、チューブの密封された端部からエタノール溶媒が漏れたことである。製剤バッチKの重量損失がエタノールの蒸発損失によるものであると仮定して、調整された力価(EtOH損失の体積に対して補正された)を
図8に示す。調整された力価の結果に有意な傾向は認められない。
【0084】
開始時の力価は、20mg/mLの標的力価を顕著に上回っており、そのため、調整された結果は、21.0mg/mLの現在承認されている規制上限許容限界に非常に近いと考えられる。これは、これらの製剤バッチの手動充填に起因する可能性があり、チューブに充填する前にエタノール(EtOH)のいくらかの蒸発損失が生じていた可能性があるため、この材料の商業的生産は、より制御された条件下で自動充填ラインを使用するであろう。
【0085】
窒素雰囲気内での充填による安定性の潜在的な改善、及び2つのチューブタイプ間の違いも評価されたが、いずれも安定性に影響を及ぼす重要な要因ではないことが判明した。
【0086】
結果の考察
表5からの関連データの要約を以下の表9に示す。表9の全ての製剤は、充填中に窒素ブランケットを使用せず、チューブタイプPF113を使用した。表9において、「0」は、0mg/mLのBHA及び/又はBHTを示し、「L」は、BHAでは0.0404mg/mL及びBHTでは0.162mg/mLを示し、「M」は、BHAでは0.162mg/mL及びBHTでは0.404mg/mLを示し、「H」は、BHAでは0.404mg/mL及びBHTでは0.727mg/mLを示す。表9に報告された全活性(塩酸ブプレノルフィン)分解産物の値は、所与の保存温度(25℃、30℃、又は40℃)及び相対湿度で3ヶ月又は12ヶ月で測定された全分解産物から初期(0ヶ月)の全分解産物を差し引いて計算した。
【表9】
【0087】
チューブを25℃及び60%の相対湿度で12ヶ月間保存した場合、BHA単独(製剤I)、BHT単独(製剤D)、又はBHA及びBHTの両方(製剤G、H、K、L及びM)を含有する試験製剤の全塩酸ブプレノルフィン分解産物は、0.0018~0.1322mg/mLの範囲であった。対照的に、製剤N(BHA又はBHTを含有しない)は、25℃で3ヶ月直後に2.1901mg/mLの全分解産物を含有していた。したがって、室温では、BHA又はBHTのうちの少なくとも1つを含有する製剤は、室温での保存期間のわずか4分の1(3ヶ月)後のBHA又はBHTを含まない製剤Nと比較して、たとえ1年の保存後であっても、有意に低い濃度の分解産物を予期せず示した(すなわち、より高い塩酸ブプレノルフィン安定性を示した)。
【0088】
製剤安定性におけるこの驚くべき改善は、より高い保存温度及び相対湿度(両方とも安定性に悪影響を及ぼす可能性がある)でも観察された。30℃及び65%の相対湿度で3ヶ月後、BHA及びBHTのうちの少なくとも1つを含有する試験製剤D、G、H、I、K、L及びMの全塩酸ブプレノルフィン分解産物の濃度は、0.0013~0.06mg/mLの範囲であった。対照的に、製剤Nは、4.3268mg/mLの全塩酸ブプレノルフィン分解産物を含有していた。同様に、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月後、試験製剤D、G、H、I、K、L及びMの全分解産物の濃度は、0.0188~1.9905mg/mLの範囲であり、一方、製剤Nは、8.1993mg/mLの全分解産物を含有していた。このように、30℃又は40℃の高い保存温度で3ヶ月後、BHA又はBHTのうちの少なくとも1つを含む製剤は、驚くべきことに、BHA又はBHTを含まない製剤Nと比較して、塩酸ブプレノルフィン分解産物の有意により低い濃度を示した。
【0089】
更に、高(H)レベル又は中(M)レベルのBHA及びBHTの両方を含有する製剤(製剤H、K、及びL)は、BHA及びBHTのうちの1つのみを含有する製剤(製剤D及びI)、並びに低(L)レベルのBHA又はBHTを含有する製剤(製剤G及びM)と比較して、更に安定であった。製剤H、K、及びLは、25℃では12ヶ月後に、25℃、30℃、及び40℃では3ヶ月後に、蓄積した全分解産物が最も少なかった。
【0090】
表7のBHA/BHT安定性データは、これらの予期しなかった結果を更に強調する。例えば、25℃で12ヶ月後、BHAの残留濃度は、大(H)量のBHTを含有する製剤LのBHAの残留濃度(元のBHAの99.27%)と比較して、BHTを含有しない製剤Iでは低い(元のBHAの77.97%)。同様に、25℃で12ヶ月後、BHTの残留濃度は、大(H)量のBHAを含有する製剤LのBHTの残留濃度(元のBHTの86.95%)と比較して、BHAを含有しない製剤Dで低い(元のBHTの62.73%)。25℃で12ヶ月後に高(H)レベルのBHA及び中(M)レベルのBHTを含有する製剤Kを調べると、BHTレベルは、BHAレベル(元のBHTの98.81%)と比較して更に低下している(元のBHAの79.37%)。同様に、25℃で12ヶ月後に高(H)レベルのBHA及びBHTの両方を含有する製剤Lを調べると、BHTレベルは、BHAレベル(元のBHAの99.27%)よりも更に低下している(元のBHTの86.95%)。したがって、BHTレベルは、概して、BHAレベルよりも高い速度で減少するが、BHA及びBHTの両方の存在は、これらの化合物の両方の減少速度を低下させ、非常に優れた製剤安定性を提供する。
【0091】
要約すると、これらの結果は、比較的低い濃度の添加剤BHA及び/又はBHT、更により好ましくはBHA及びBHTが、予想外に大幅に増強された長期保存安定性を提供することを示す。更に、この結果は、たとえ製剤が高い温度及び相対湿度で保存された場合でも、冷蔵なしで増強された長期保存安定性を達成できることを示している。
【0092】
実施例2
36ヶ月安定性分析
この試験の設計は、温度の関数としての経時変化率の評価及びモデリングを提供した。アレニウスの時間スケール最小二乗(ATLS)方法論をこのデータに適用して、所望の市販の保存条件(基準温度=25℃)での予測変化率及び所望の市販の貯蔵寿命(36ヶ月)にわたる予測総変化率を推定した。Rauk et al.,“Arrhenius Time-Scaled Least Squares:A Simple,Robust Approach to Accelerated Stability Data Analysis for Bioproducts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,103:2278-2286,2014,DOI 10.1002/jps.24063を参照されたい。この分析でデータを適合させるために使用されるモデルは、線形トレンドモデル又は二次トレンドモデルのいずれかである。
Y
batch(t
ref)=θ
batch+α
batcht
ref (1)
又は
Y
batch(t
ref)=θ
batch+α
batcht
ref+β
batcht
2
ref (2)
式中、
【数1】
及びT
ref=298.15K(25℃に相当する)。
【0093】
このモデルは、アレニウスの速度モデルを使用して時間スケールtrefを変更することによって、温度の上昇に伴う変化率の加速度の影響をキャプチャする。データに最も良好に適合するモデル(アレニウスの時間スケールの線形(1)又は二次(2)のいずれか)が選択される。モデルにおいて推定される重要なパラメータは、活性化エネルギーEaであり、これは、モデル予測のための二乗誤差の和を最小化する値を見つけることによって選択される。各バッチは、推定されるインターセプト、θbatch、線形スロープ、αbatchを有し、二次モデルが選択される場合、曲率項βbatchを有する。このモデルは、選択された基準温度及び所与の保存時間における各バッチの経時的な変化の予測を行うことを可能にする。計算は、JMP Version14.1.0で稼働するJMP Accelerated Stability Analysis Tool(Elanco R&D バージョン1.0)を使用して行った。
【0094】
25℃の保存条件で36ヶ月にわたる力価の予測変化を、各製剤バッチについて決定した(以下の表10を参照)。大幅な予測変化(>15%)を示した製剤バッチを特定した(製剤バッチF、C、N、A、B、及びO)。この初期スクリーニング分析の結果、製剤バッチF、C、N、A、B、及びOを安定性に関する更なる分析から除外した。
【表10】
【0095】
9ヶ月の加速安定性データに基づくATLS加速予測安定性モデリングからの予測品質属性を、以下の表に示す。基準温度を25℃に設定し、標的保存期間を36ヶ月に選択した。
【表11】
【0096】
各製剤バッチで使用されるBHA及びBHTの量のコード化レベルに対して25℃での36ヶ月にわたる予測変化をプロットすること(
図9)により、使用される添加剤の量における強い相関が示される。製剤中のBHA及びBHTの合計量(重量/重量%)に対して予測変化をプロットすること(
図10)によっても強い関係が示され、添加剤の少なくとも0.05%重量/重量の合わせた量が、経時的に非常に小さい予測変化をもたらす。
図11にチューブタイプごとにこの関係の別個のプロットを示しており、使用されるチューブのタイプによって変化率の差が非常に小さいことを示している。
【0097】
充填に窒素ブランケットを使用した環境を用いることの影響を比較するために、全体的な実験計画の下位計画(バッチ、A、B、N、及びO)を考慮した。これらの4つのバッチは全て、BHA及び/又はBHT添加剤を使用せずに生成された。
図12は、窒素に対する予測変化(Y又はN)を示し、チューブタイプと重ね合わせたものである。窒素又はチューブタイプによる統計的に有意な影響の兆候はない。加えて、これらの製剤の全てが、非常に低い安定性を有すると同定された。そのため、窒素下での充填のみの使用は、分解に対する適切な保護を提供しないと考えられる。チューブタイプによって見かけ上の差があるが、その差は統計的に有意ではなかった。しかしながら、PF113チューブは、より良好な見かけ上の安定性を有する(経時的な変化が少ない)。
【0098】
実施例3
経皮ブプレノルフィン溶液を、以下の表12に示されるように配合した。製剤は、脱水アルコール(エタノール)に可溶化された20mg/mLのブプレノルフィンを(塩酸塩として)含有する。この溶液はまた、皮膚浸透促進剤として賦形剤パジメートО(50mg/mL)、並びにBHA(0.39mg/mL)及びBHT(0.39mg/mL)を含有する。製剤は、0.4mL又は1.0mLの投与容量を有する単位用量のアルミニウム及びポリマーラミネートチューブを使用して包装することができる。これにより、単回用量の製剤をネコの皮膚に直接適用することができる。
【表12】
【0099】
実施例4
薬物動態(PK)を評価するために、経皮ブプレノルフィン溶液(TBS)を、25mg/mLのブプレノルフィン(遊離塩基として計算)、透過促進剤として5%w/v(50mg/mL)のパジメートО、及びエタノールを含有するように配合した。製剤を調製するために、ブプレノルフィンHCl(Spectrum Chemical Mfg.Corp.、New Brunswick,NJ,USA)を少量のエタノール(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO,USA)に溶解し、パジメートО(Sigma-Aldrich)を添加して混合した。製剤を、エタノールを用いて所定の体積とし、使用するまで、ゴム栓及びアルミニウム圧着トップで密封された10mLの琥珀色ガラスバイアルに等分した。試験のバイオアベイラビリティ相では、製剤を同じ方法で調製したが、最終的なブプレノルフィン濃度は20mg/mLであった。試験のバイオアベイラビリティ部分のための対照物品は、塩酸ブプレノルフィン注射液(Buprenex、Reckitt Benckiser Pharmaceuticals,Inc.、Richmond,VA,USA)であった。
【0100】
本試験の第1のPK相では、1歳~4歳の範囲の体重2.35~6.35kgの、ヒトに慣れた短毛の成猫12匹(去勢した雄7匹及び無傷の雌5匹)を使用した。本試験の第2のバイオアベイラビリティ相では、9~13ヶ月の範囲の体重4.20~6.35kgの、ヒトに慣れた短毛の成猫雄12匹(去勢した6匹及び無傷の6匹)を使用した。
【0101】
10、30、又は50mg(n=4/群)の単回用量のTBSを投与するように動物を無作為化した。無作為化は、用量群間のバランスを維持するために、体重によってブロックを作った。動物は、治療薬投与前に絶食させなかった。無針注射器の先端を使用して、背側頸部(頭蓋骨の基部)の毛刈りされていない皮膚にTBSを局所投与した。注射器の先端を適用部位の皮膚上に直接配置し、注射器を移動させることなく、単一の位置で全投与容量を投与した。投与されたTBSの体積は、10、30、又は50mg用量群で、それぞれ0.4、1.2、及び2mLであった。溶液が乾燥する間にネコが震える又は毛繕いするのを防ぐために、投与後2分間ネコを優しく拘束した。血漿ブプレノルフィンアッセイのための血液試料(約1mL/試料)を、投与前、並びに投与後2、4、12、24、48、72、及び168時間に、全てのネコから収集した。試料を、注射器及び針を使用して頸静脈穿刺によって収集し、直ちにK2EDTAチューブに移し、4℃で15分間、1500gで遠心分離することによって血漿処理するまで氷上に置いた。血漿試料を、分析まで-20℃以下で凍結保存した。動物の行動学的影響及び散瞳(0=なし、1=あり)を評価し、用量を投与する前、並びに投与後2、4、12、24、48、72、及び168時間に直腸体温を測定した。行動は、以下のように5点スケールでスコア化した。0:正常、1:鎮静(従順で大人しい。徴候には就眠、尾を腹側に巻き付ける、及び喉を鳴らすことが含まれる;人間との交流にはあまり反応しない);2:多幸感(誇張された社交的及びはしゃいだ行動。徴候には、ニャーと鳴く、ローリング、前足でのニーディング、甘噛み、及びケージに頭や体を擦り付けることが含まれる);3:軽度に不快(落ち着きがなく、不協和の状態。徴候には、放心状態での凝視、過敏反応、体を揺らす、及び/又は啼鳴が含まれ、自発運動の増加を伴う場合がある。明白な恐怖又は混乱の徴候はなく、攻撃性の徴候もない。最初は鎮静しているように見える場合があるが、突然驚愕する、すなわち過敏反応を示す);4-不快(不安又は興奮の状態。徴候には、存在しない物体を凝視する、過敏反応、突然の動き、及び/又は啼鳴が含まれ、自発運動の増加を伴う場合がある。ネコは明らかに混乱しているか怯えており、攻撃的になる場合がある)。
【0102】
バイオアベイラビリティを評価するために、20mgの単回用量のTBS(1mL)又は0.05mgのIVブプレノルフィン(n=6/群)を投与するように無作為化した。無作為化は、用量群間のバランスを維持するために、体重によってブロックを作った。動物は、治療薬投与前に絶食させなかった。経皮ブプレノルフィン溶液を、試験の第1相と同じ様式で、すなわち、背側頸部に局所投与した。注射用ブプレノルフィンをボーラスとしてIV投与した。IV薬物送達を確実にするために、40μg/kgの筋肉内用デクスメデトミジン塩酸塩(Dexdomitor,Zoetis Inc.、Florham Park,NJ,USA)による鎮静下で、一時的な橈側皮静脈カテーテルを各ネコに配置した。カテーテル留置後及びブプレノルフィン注射前に、0.2mg/kgの筋肉内用アチパメゾール(Antisedan,Zoetis Inc.)を投与することによって鎮静作用を逆転させた。ブプレノルフィンのIV投与後、カテーテルを滅菌食塩水で洗い流し、動物から除去した。血漿ブプレノルフィンアッセイのための血液試料(約2mL/試料)を、投与前、並びに投与後1、2、4、12、24、48、96、168、及び240時間に、TBSで治療したネコから、投与前、並びに投与後5分及び15分、1、2、4、12、及び24時間に、IVブプレノルフィンを投与したネコから収集した。この試験の第1相で説明されるように試料を収集して保存した。
【0103】
試験の第1のPK相では、検証済みの液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法を用いて、血漿試料をブプレノルフィン濃度について分析した。ブプレノルフィンHCl(Cerilliant(登録商標)、Round Rock,TX,USA)の100μg/mLストック溶液を50:50メタノール(Honeywell Burdick& Jackson、Morristown、NJ,USA):水に希釈して、0.500~1250ng/mLの範囲の作業標準溶液、並びに3.00、375、及び1000ng/mLの品質管理(QC)作業溶液を作製した。同様に、内部標準(IS)ブプレノルフィン-d4(Cerilliant(登録商標)、Round Rock,TX,USA)の100μg/mLストック溶液をアセトニトリルに希釈して、10ng/mLの作業IS溶液を作製した。次いで、10.0μLの適切な作業標準溶液又はQC作業溶液を、対照であるブランクネコ血漿50.0μLに添加することによって較正及びQC標準を調製した。同様に、10.0μLの50:50のメタノール:水を、50.0μLの全ての試験試料、ブランク、及びゼロ対照に添加した。続いて、250μLのIS作業溶液を全ての較正標準、QC、試験、及びゼロ対照試料に添加し、250μLのアセトニトリルを全てのブランクに添加した。試料を2分間ボルテックス混合し、次いで10分間遠心分離した。50(50.0)μLの上清を、250μLの逆浸透水を含む96ウェルの溶出プレートに移し、2分間ボルテックス混合した。水希釈試料は、Analyst Software v1.5.1(AB SCIEX)データ取得システムを使用して実施されたピーク面積積分を用いて、TurboIonSpray TMインターフェース(AB SCIEX、Framingham,MA,USA)を備えたAPI 5000TMトリプル四重極型質量分析計を使用して定量化した。HPLC分離は、Phenomenex Gemini C18(50×3mm、5μm粒径)カラム(Phenomenex、Torrrance,CA,USA)を使用して、0.700mL/分に設定された流速及び30μCのカラム温度で達成した。移動相Aは、水中0.1%のギ酸で構成され、移動相Bは、アセトニトリル中0.11%のギ酸で構成された。移動相勾配は、0.0~0.5分に10%移動相Bで始まり、0.5~2.0分に10%から80%移動相Bに切り替わり、3.0~3.1分に80%から10%移動相Bに戻った。注入体積は5μLであり、質量分析計検出は、正イオン化モードを使用して、ブプレノルフィンについては468.5m/z→396.3m/zへの遷移、ISブプレノルフィン-d4については472.5m/z→400.3m/zへの遷移をモニタリングすることによって実施した。両方の分析物は、典型的には、1.82分でカラムから溶出した。標準曲線は、Excel(Version 11、Microsoft Corporation、Redmond,WA,USA)を使用して、1/x2の重み付けを用いた線形回帰を使用して決定し、xは公称試料濃度であり、0.9977~0.9993の典型的な二乗相関係数(R2)値であった。全ての濃度計算は、ISに対するブプレノルピンのピーク面積比に基づくものであった。ブプレノルフィンの較正濃度範囲は0.100~250ng/mLであり、定量下限(LLOQ)は0.100ng/mLであった。アッセイ内及びアッセイ間精度(すなわち、変動係数)は≦5.95%であり、正確性(すなわち、相対誤差)は0.00%~2.67%の範囲であった。同様の検証されたLC-MS/MS法を、修正を加えて試験の第2のバイオアベイラビリティ相に使用した。ブプレノルフィンの較正濃度範囲は0.200~100ng/mLであり、定量下限(LLOQ)は0.200ng/mLであった。ブプレノルフィン代謝産物ノルブプレノルフィンは、血漿ブプレノルフィンの定量を妨げないことが実証された。アッセイ内及びアッセイ間精度(すなわち、変動係数)は≦8.2%であり、正確性(すなわち、相対誤差)は-4.3%~7.5%の範囲であった。
【0104】
血漿ブプレノルフィン濃度<LLOQを要約統計の計算から除外した。PKパラメータは、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)Version 6.2(Build 6.2.0.495,Pharsight(登録商標)-A Certara Company、St.Louis,MO,USA)を用いて、非コンパートメントPK分析法を用いて各対象について計算した。血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の計算には線形台形規則を使用した。TBSの絶対バイオアベイラビリティ(F)を、体重に応じて投与量を調整したAUCの幾何平均の比率として計算した。
【0105】
試験の第1相では、10、30、及び50mg群において体重ベースで投与された用量の範囲は、それぞれ、1.57~4.35、4.72~13.03、及び7.87~21.73mg/kgであった。3つの血漿ブプレノルフィン濃度は、外れ値とみなされた。30mg群から2つの濃度を除外した:12時間試料は54.6ng/mLであり、48時間試料は72.6ng/mLであった。10mg治療群の24時間時点から除外された単一濃度は24.8ng/mLであった。これらの外れ値が観察された理由は、試験監査によって決定されなかったが、測定された濃度は再アッセイによって確認された。その後、これら3つの観察結果を除去し、血漿中濃度の要約統計及びPK分析を再計算することによって、血漿中ブプレノルフィン濃度について感度分析を行った。除去した外れ値との差はなく、したがって、試料は以下の分析から除外されたままであった。試験の第1相では、血漿ブプレノルフィンは、投与後2~4時間にピーク平均濃度に達し、全ての試料は、投与後168時間にわたってLLOQを上回ったままであった。50mgのTBS群における平均血漿ブプレノルフィン濃度は、30mg用量群における濃度と比較して時にわずかに高かったか、又は同じであった。平均(範囲)Cmax値は、10、30、及び50mgのTBS投与後、それぞれ10.5(3.02~18.1)、18.6(10.6~27.6)、及び22.5(19.5~29.0)ng/mLであった。Cmax発生期間(tmax)は、10mg用量群における72時間の単一の値を除いて、2~12時間の範囲であった。平均末端半減期(t1/2)は、78.3~91.2時間の範囲であった。外挿されたAUCの平均パーセンテージは、用量群にわたって21.8%~24.9%の範囲であった。時間0から無限大までの曲線下の平均(範囲)面積(AUC0-∞)は、10、30、及び50mg用量の後、それぞれ、578(218~967)、1590(658~3310)、及び2070(1500~2710)hr・ng/mLであった。30及び50mg用量群では、それぞれ、10mg群と比較して、AUC0-∞に2.8倍及び3.6倍の増加が見られた。一過性の鎮静作用及び多幸感は、投与後2時間以内に始まるのが観察された。10mg群では、ネコの25~50%に24時間鎮静作用が認められた(行動スコア=1)。30及び50mg群では、48時間にわたって25~50%のネコに鎮静作用が観察され、72時間後には影響は観察されなかった。多幸感(行動スコア=2)は、全ての用量群のネコの25~75%に24時間にわたって観察され、72時間を超えると多幸感は観察されなかった。軽度の不快感(行動スコア=3)も不快感(行動スコア=4)も、試験のいずれの時点でも観察されなかった。平均直腸体温は、投与後12時間でピークに達し、30及び50mgのTBS用量群(それぞれ38.9及び39.1℃)では10mg用量群(38.5℃)よりも高かった。平均温度は、投与後168時間にわたって、ベースライン(37.4~37.8℃)よりも0.6~0.9℃高いままであった。散瞳は、投与後4~12時間に、各用量群のネコの75%~100%に観察された。10及び30mgのTBS用量群のいずれのネコにおいても、投与後48時間以降には散瞳は観察されなかった。散瞳は、投与後72時間にわたって、50mgのTBSを投与されたネコの少なくとも50%に観察された。72時間の観察を超えると、いかなるネコにも散瞳は観察されなかった。試験の第2相では、体重ベースで、IV及びTBS投与後の平均(範囲)ブプレノルフィン投与量は、それぞれ、0.00972(0.00787~0.0112)及び3.95(3.33~4.76)mg/kgであった。
【0106】
IV群からの血漿ブプレノルフィン濃度は、投与後5分での平均13.6ng/mLから、投与後4時間までには0.231ng/mLに急速に低下し、4時間を超えるとLLOQであった。対照的に、TBS群からの平均血漿ブプレノルフィン濃度は、1時間でピークに達し、徐々に減少した;平均濃度は、投与後1、24、96、及び240時間に、それぞれ、11.6、7.11、1.86、及び0.513ng/mLであった。TBS投与後のCmax及びtmaxは、それぞれ15.1(4.82~25.6)ng/mL及び7.33(1~24)時間であり、IV投与後の初期濃度(C0)は18.4(14.2~27.5)ng/mLであった。IV投与後のクリアランス(Cl)は16.7(12.4~23.2)mL/分・kgであった。IV及びTBS投与後のt1/2は、それぞれ0.82(0.59~0.97)及び64.9(39.1~85.7)時間であった。外挿されたパーセントAUCは、全ての対象で<20%であった。TBSの推定絶対バイオアベイラビリティ(F)は16.0%(90%CI:[11.8%~21.7%])であった。
【0107】
本試験における様々なTBS用量の局所適用の後、平均血漿ブプレノルフィン濃度が、3つ全ての用量で2時間のサンプリング時間に2.3ng/mLを超えたことから、迅速な作用の開始が示唆される。10、30、及び50mgのTBS用量にわたる平均末端半減期は、78.3~91.2時間の範囲であり、持続時間の延長を支持するものであった。ブプレノルフィンの平均濃度は、30及び50mgの用量で168時間にわたって2.3ng/mLを超え、48時間のサンプリングポイントを除いて、10mgの用量で72時間にわたって2.3ng/mLを超えていた。薬理学的効果を更に支持するように、血漿ブプレノルフィン濃度は、一過性の鎮静作用、多幸感、散瞳、及び直腸体温の上昇を含む、オピオイド曝露と一致する行動学的及び生理学的効果と時間的に関連していた。
【0108】
2~72時間のサンプリングポイントでの平均血漿ブプレノルフィン濃度は、10、30、及び50mgのTBS投与後に、それぞれ、1.63~8.3、4.61~17.1、及び7.90~22.3ng/mLの範囲であった。バイオアベイラビリティは16%(12.4~23.5%)であり、これは推定標的に近く、ネコにおけるパッチからのブプレノルフィンのバイオアベイラビリティの推定値と同様であった。
【0109】
これらの結果は、TBSの単回投与が、全ての試験用量で複数日間の鎮痛を提供する可能性が高い血漿ブプレノルフィン濃度をもたらしたことを示しているが、その鎮痛有効性を決定するために、様々な用量にわたるTBSの更なる試験が保証されている。TBSの製品特性は、制限された作用期間、反復投与の必要性、制御物質の分注、投与間隔の突出痛を含む、ネコに使用される他の承認された又は調合されたブプレノルフィン製品の制限を克服する可能性を有し、院内での、心配のない、ストレスのない投与、及び作用期間の延長を提供する。加えて、TBSは、診療所での予防的疼痛管理鎮痛プロトコルに容易に含めることができる。
【0110】
実施例5
ネコの術後疼痛の制御のための経皮ブプレノルフィン溶液(TBS)の投与量を選択するために、前向き、二重マスク化、プラセボ対照、多施設の第2相臨床試験を実施した。TBSを、16及び20mg/mLのブプレノルフィン(遊離塩基として計算)、5%w/v(50mg/mL)のパジメートО、及びエタノールを含有する2つの強度に配合した。陰性対照の獣医学的製品は、5%w/v(50mg/mL)のパジメートО及びエタノールを含有するプラセボ経皮溶液であった。経皮溶液を、使用するまで、ゴム栓及びアルミニウム圧着トップで密封された10mlの琥珀色ガラス血清バイアルに包装した。
【0111】
115(115)匹のネコを、前肢抜爪術と併せた外科的不妊手術の前に、プラセボ溶液、低TBS投与量(1.91~2.07mg/kg)又は高TBS投与量(4.27~4.88mg/kg)の単回局所用量に無作為化した。投与される用量は、体重範囲に適合するネコの単位投与量に基づいていた。低TBS用量に割り当てられたネコの場合、より小さいネコ(1.2~3kg)には4mgを投与し、より大きいネコ(>3~7.5kg)には10mgを投与した。16mg/mLのTBS製剤を低TBS群に使用し、より小さいネコ及びより大きいネコで、それぞれ、0.25及び0.625mLの投与容量であった。高TBS用量に割り当てられたネコの場合、より小さいネコ(1.2~3kg)には8mgを投与し、より大きいネコ(>3~7.5kg)には20mgを投与した。20mg/mLの溶液を高TBS群に使用し、より小さいネコ及びより大きいネコで、それぞれ、0.4及び1mLの投与容量であった。経皮ブプレノルフィン溶液を、低TBS用量に割り当てられたものについては手術の2~4時間前、高TBS用量に割り当てられたものについては手術の1~2時間前に投与した。マスク化を維持するために、無作為化に従って、経皮プラセボ溶液を手術の1~2時間又は2~4時間前に投与した。治療薬投与に割り当てられた単一の人物が、無針注射器を使用して、背側頸部(頭蓋骨の基部)に治療薬を局所的に投与した。必要に応じて、毛をかき分けることによって、注射器の先端を適用部位の皮膚上に直接配置し、注射器を移動させることなく、単一の位置で全投与容量を投与した。
【0112】
インタラクティブな疼痛評価及び生理学的変数は、麻酔回復後96時間を通して定量化され、鎮痛が不十分であると考えられたときはいつでもレスキュー鎮痛が行われた。一般化線形混合効果モデル解析から推定された全体的な治療成功率は、プラセボ、低TBS、及び高TBS用量群で、それぞれ0.10(95%CI:[0.02~0.36])、0.56(95%CI:[0.25~0.83])、0.71(95%CI:[0.38~0.91])であった。両方のTBS治療群の成功率は、プラセボよりも優れていた。全ての治療群において有害事象は稀であったが、試験期間中の術後体温は、プラセボと比較して、低TBS用量及び高TBS用量のネコで、それぞれ平均0.31(95%CI:[0.08~0.55])℃及び0.30(95%CI:[0.05~0.53])℃高かった。低TBS投与量及び高TBS投与量の両方が、安全かつ効果的であることが見出された。
【0113】
実施例6
ネコの術後疼痛の制御のために実施例5で使用された経皮ブプレノルフィン溶液(TBS)の安全性及び有効性を評価するために、前向き、二重マスク化、プラセボ対照、多施設の第3相臨床試験を実施した。米国の12の治験実施施設からの合計228匹のネコが、登録基準を満たし、そのうち107匹のプラセボで治療したネコ及び112匹のTBSで治療したネコが、プロトコルごとの有効性分析に含まれた。TBSの用量は、1.2~3キログラムのネコに対して8mg(0.4ml)、>3~7.5キログラムのネコに対して20mg(1ml)であり、前肢抜爪術と併せた待機的外科的不妊手術を受ける1~2時間前に、背側の毛刈りされていない頸部の皮膚に局所的に適用した。インタラクティブな疼痛評価及び生理学的変数は、麻酔からの回復後96時間を通して定量化され、疼痛制御が不十分であると評価されたときはいつでもレスキュー鎮痛が投与された。治療成功率は、プラセボ群とTBS群でそれぞれ0.40(95%信頼区間[CI]:[0.28~0.53])と0.81(95%CI:[0.70~0.89])であり、差は有意であった(<p.05)。有害事象は同様の頻度で発生したが、いずれの治療群でも臨床的に有意ではなかった。この試験期間中の術後の体温は、TBSで治療したネコのベースラインよりも平均0.35(95%CI:[0.20-0.50])℃高く、臨床的に有意ではなく、ネコにおけるオピオイドに典型的な観察であった。これらの結果は、手術の1~2時間前に単回の局所用量を適用した場合、TBSが、ネコの整形外科的及び軟部組織の術後疼痛の制御に安全かつ有効であるという実質的な証拠として役立つ。
【0114】
実施例7
経皮ブプレノルフィン溶液(TBS)を、体重1.2~3kgのネコには8mgの単位用量として、体重3~7.5kg超のネコには20mgの>単位用量として投与した。これは、体重ベースで2.7~6.7mg/kgの投与量に相当する。この安全性試験では、1X用量を6.7mg/kgと定義した。32匹のネコ(雄16匹、雌16匹)を、プラセボに無作為に割り当て、1、2、及び3XのTBSを、4日ごとに3回用量で背側頸部皮膚に局所投与した。各用量投与の前(0時間)、並びに各治療の1、2、4、8、12、24、36、48、及び72時間後、並びに12日目又は13日目の安楽死の前に、臨床観察、行動スコア、散瞳スコア(あり/なし)、及び生理学的変数を評価又は測定した。臨床病理のための血液試料を、1日目、4日目、8日目、及び安楽死の前に収集した。呼吸器、心臓血管、又は消化管への影響の証拠はほとんど見られなかった。呼吸数は、全ての群で基準範囲を上回り、3回目の投与間隔中、3X群においてプラセボと比較して10呼吸/分低かった。心拍数に差はなかった。プラセボ及びTBSで治療したネコにおいて、便秘は、ほぼ等しい数で一過性に観察された。行動スコアは、1回目の投与間隔では鎮静作用又は多幸感が一過性であったが、投与間隔ごとにより長くなったことを示した。散瞳は、1回目の投与間隔で延長され、遠近調節と一致して3回目の投与間隔までには減少した。TBSで治療したネコにおける平均体温は、プラセボで治療したネコよりも最大0.6℃(1.8°F)高かった。血清化学、血液学、又は尿検査の結果に臨床的に関連する変化はなく、TBSに起因する肉眼的又は顕微鏡的な観察もなかった。これらのデータは、TBSが、承認された用量及び期間の倍数で16週齢のネコに投与された場合、安全で十分に忍容性があり、ブプレノルフィン代謝の遅延、投薬ミス、又は投薬レジメンの変更の場合に臨床的安全性を支持することを実証する。
【0115】
前述の詳細な説明及び添付の実施例は、単なる例示であり、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ定義される本発明の範囲の限定として解釈されるべきではないことが理解される。
【0116】
開示される実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者には明らかであろう。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、又は使用方法に関するものを含むがこれらに限定されないかかる変更及び修正は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0117】
本明細書では、特定の例、態様、実施形態等について言及されているが、そのような例、態様、実施形態等の様々な要素を互いに組み合わせることは、本開示の範囲内である。
【国際調査報告】