(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびこれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20240927BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L77/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519751
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2022014495
(87)【国際公開番号】W WO2023058986
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132507
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513104239
【氏名又は名称】コーロン プラスティックス,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,チェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ホン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ギ ボン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB05Y
4J002BB06Y
4J002BB15Y
4J002BB21Y
4J002CL01W
4J002CL03X
4J002CL03Z
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
ポリアミド6;長鎖ポリアミド;耐衝撃剤;およびポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含むポリアミド樹脂組成物とこれからなる成形品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド6;
長鎖ポリアミド;
耐衝撃剤;および
ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ;
を含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド6の相対粘度は、1.8~3.4である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記長鎖ポリアミドは、一つの繰り返し単位での窒素原子1個当たりの炭素原子の個数が8個~20個であるポリアミドであって、
PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA13、PA48、PA410、PA412、PA414、PA418、PA58、PA510、PA512、PA514、PA518、PA68、PA610、PA612、PA614、PA618、PA88、PA810、PA812、PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA1410、PA1412、PA1414、PA1418、PA8T、PA9T、PA10T、PA12T、PA8I、PA9I、PA10I、PA12I、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記長鎖ポリアミドは、PA11、PA12、PA610、PA612、PA618、PA1010、PA1012、PA1212、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記長鎖ポリアミドは、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して1重量%~25重量%で含まれる、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記耐衝撃剤は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-オクテンゴム、エチレン-ビニルアセテートゴム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド66の相対粘度は、1.7~3.1である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香族ポリアミドの融点は280℃~330℃であり、ガラス転移温度は80℃~180℃である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせは、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して5重量%~20重量%で含まれる、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
(長鎖ポリアミド):(ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ)の重量比は、10:90~50:50である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して、
10重量%~80重量%のポリアミド6;
1重量%~25重量%の長鎖ポリアミド;
10重量%~50重量%の耐衝撃剤;
5重量%~20重量%のポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ;および
0重量%~10重量%のその他添加剤を含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して、
45重量%~75重量%のポリアミド6;
1重量%~10重量%の長鎖ポリアミド;
15重量%~35重量%の耐衝撃剤;
5重量%~15重量%のポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ;および
0重量%~5重量%のその他添加剤を含む、請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
前記その他添加剤は、可塑剤、難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤、補強剤、離型剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、核剤、滑剤、またはこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【請求項15】
前記成形品は、水素タンクライナーである、請求項14に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアミド樹脂組成物およびこれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境にやさしい輸送機関として水素をエネルギー源で使用する水素自動車が大きな関心を受けている。水素は爆発の危険性があるため、水素を貯蔵および運搬する各種部品は高度な安全性と機能性を備えなければならない。
【0003】
水素を貯蔵する水素タンクは内部がプラスチックライナーで構成され得るが、このような水素タンクライナーは、高圧の水素に耐えることができる高剛性が必要であり、水素を繰り返し充電する間に性能を維持することができる耐久性が必要である。具体的には、水素タンクライナーは、高圧の水素に耐えることができる引張伸度と、水素の透過を防ぐ気体遮断特性に優れていなければならず、水素充電時に低温の環境が作られるが、このような低温でも優れた引張伸度と耐久性を実現しなければならない。このような物性を同時に満たすプラスチック素材の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
常温および低温での機械的物性に優れ、気体遮断性が高く、耐久性に優れたポリアミド樹脂組成物、および、これからなる成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、ポリアミド6;長鎖ポリアミド;耐衝撃剤;およびポリアミド66、芳香族ポリアミドまたはこれらの組み合わせを含むポリアミド樹脂組成物、および、これからなる成形品を提供する。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によるポリアミド樹脂組成物とこれから製造される成形品は、常温だけでなく、-40℃水準の低温でも優れた引張伸度などの機械的物性を示し、優れた気体遮断性と耐薬品性および耐久性を実現する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、具体的な実施形態について当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0008】
ここで使用される用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0009】
ここで「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0010】
ここで「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0011】
また、粒子サイズや平均粒径は、当業者に広く公知となっている方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定したり、または透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)または走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法(DLS;Dynamic Light Scattering method)を利用して測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これを基に計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味し得る。
【0012】
一実施形態では、ポリアミド6;長鎖ポリアミド;耐衝撃剤;およびポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含むポリアミド樹脂組成物を提供する。このようなポリアミド樹脂組成物は、常温、および-40℃水準の低温での引張伸度などの機械的物性に優れ、気体遮断力が高く、耐久性に優れている。
【0013】
ポリアミド6
ポリアミド6(polyamide 6;PA6)は、ε-カプロラクタムまたは6-アミノカプロン酸で製造されたポリアミドを意味し、場合によって他の単量体が共重合されたものであってもよい。ポリアミド6は、引張伸度などの機械的強度に優れ、耐薬品性および成形性に優れている。
【0014】
前記ポリアミド6の相対粘度は、1.8~3.4であり得、例えば2.0~3.0、または2.3~2.8であり得る。ここで相対粘度は、20℃で96%の硫酸100ml中にポリアミド6を1g添加して粘度計で測定したものであり得る。前記ポリアミド6の相対粘度が前記範囲を満たす場合、優れた機械的強度を示すことができ、射出時に適切な流動性を維持することができる。
【0015】
前記ポリアミド6のアミノ末端基の量には特に制限がないが、1.0×10-5~10.0×10-5mol/gであり得、この場合、十分な重合度を得ることができるため、機械的強度などを向上させることができる。
【0016】
前記ポリアミド6は、よく知られた方法で製造したり、商業的に購入可能なものを選択して使用することができる。
【0017】
前記ポリアミド6は、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して10重量%~80重量%で含まれ得、例えば20重量%~80重量%、30重量%~80重量%、40重量%~80重量%、45重量%~75重量%、または50重量%~70重量%で含まれ得る。ポリアミド6が前記範囲で含まれる場合、ポリアミド樹脂組成物を優れた機械的特性と耐久性および成形性を実現することができる。
【0018】
長鎖ポリアミド
長鎖ポリアミド(long chain polyamide)は、繰り返し単位に長い炭素鎖を有するポリアミドであり、具体的に一つの繰り返し単位での窒素原子1個当たりの炭素原子の個数が8個~20個であるポリアミドであり得る。ここで窒素原子1個当たりの炭素原子の個数は、例えば8個~18個、8個~16個、8個~14個、または8個~12個であり得る。一実施形態によるポリアミド樹脂組成物は、長鎖ポリアミドを含むことによって低温での引張伸度などの機械的物性を向上させることができる。
【0019】
前記長鎖ポリアミドは、例えばPA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA13、PA48、PA410、PA412、PA414、PA418、PA58、PA510、PA512、PA514、PA518、PA68、PA610、PA612、PA614、PA618、PA88、PA810、PA812、PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA1410、PA1412、PA1414、PA1418、PA8T、PA9T、PA10T、PA12T、PA8I、PA9I、PA10I、PA12I、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記長鎖ポリアミドは、単一重合体(homo polymer)または共重合体(copolymer)であり得る。
【0020】
一例として、前記長鎖ポリアミドは、PA11、PA12、PA610、PA612、PA618、PA1010、PA1012、PA1212、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含むことができる。この場合、ポリアミド樹脂組成物は低温での引張伸度が顕著に向上することができる。
【0021】
前記長鎖ポリアミドは、通常の分子量を有することができ、前記長鎖ポリアミドの相対粘度は、25℃で98重量%の硫酸溶液中で測定する時、1.8~4.0であり得る。
【0022】
前記長鎖ポリアミドの含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して1重量%~25重量%であり得、例えば、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、または3重量%~7重量%であり得る。このような含有量範囲を満たす場合、ポリアミド樹脂組成物は優れた低温での機械的強度と耐久性を示すことができる。
【0023】
耐衝撃剤
一実施形態によるポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃剤を含み、そのために高剛性の樹脂を実現することができる。前記耐衝撃剤は、一例としてポリオレフィン系ゴムであり得、例えばエチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-オクテンゴム、エチレン-ビニルアセテートゴム、またはこれらの組み合わせを含むことができる。これらはポリアミド樹脂組成物の他の物性を低下させることなく衝撃強度を顕著に向上させることができる。
【0024】
前記耐衝撃剤は、マレイン酸無水物(maleic anhydride)で改質されたものであり得、例えばマレイン酸無水物でグラフトされたポリオレフィン系ゴム、具体的にマレイン酸無水物でグラフトされたエチレン-オクテンゴムなどであり得る。これを使用する場合、ポリアミド6などの樹脂成分と耐衝撃剤との混和性を改善することができる。
【0025】
前記耐衝撃剤の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して、10重量%~50重量%であり得、例えば10重量%~45重量%、10重量%~40重量%、15重量%~35重量%、または20重量%~30重量%であり得る。耐衝撃剤の含有量が前記範囲を満たす場合、前記ポリアミド樹脂組成物は、優れた衝撃強度を示しながら、低温での引張伸度と耐久性、耐薬品性などが改善され得る。
【0026】
ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ
一実施形態によるポリアミド樹脂組成物は、前述した成分以外に、ポリアミド66と芳香族ポリアミドのうちの少なくとも一つをさらに含むことによって、-40℃水準の低温での引張伸度を画期的に向上させることができる。このようなポリアミド樹脂組成物は、高性能水素タンクライナーの素材としての使用に適している。
【0027】
ポリアミド66
ポリアミド66(polyamide 66;PA66)は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から製造されたポリアミドを意味し、場合によって他の単量体が共重合されたものであってもよい。ポリアミド66は機械的強度、耐薬品性および成形性に優れている。
【0028】
前記ポリアミド66の相対粘度は1.7~3.1であり得る。この場合、ポリアミド66の製造時にメルトテンションが適切で連続生産が可能であり、ガラス繊維などの他の成分との混和性に優れている。ここで相対粘度は、20℃で96%の硫酸100ml中にポリアミド66を1g添加して粘度計で測定したものであり得る。
【0029】
前記ポリアミド66の重量平均分子量は、例えば11,000g/mol~21,000g/molであり得る。前記範囲未満である場合、ポリアミド66の熱安定性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、押出機のスクリュートルクが上昇して生産性が低下することがある。
【0030】
前記ポリアミド66は、よく知られた方法で製造することや、商業的に購入可能なものを選択して使用することができる。
【0031】
前記ポリアミド66は、前記ポリアミド樹脂組成物に一定量添加されて低温での引張伸度を改善することができる。
【0032】
芳香族ポリアミド
前記芳香族ポリアミドは、アミド基構造を有し、部分的に芳香族基を有する半芳香族(semi-aromatic)ポリアミドであり、アミド基の間の炭素個数が6個であると共に、ベンゼン結合構造である芳香族構造を含んでいるポリアミドを意味し得る。
【0033】
前記芳香族ポリアミドの具体的な例には、ポリアミド6I、ポリアミド6I/66、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/DTおよびポリアミド9Tが含まれ得る。一例として前記芳香族ポリアミドは、ポリアミド6Iであり得る。前記ポリアミド6Iは、前記ポリアミド樹脂組成物に一定量添加されて他の物性は低下させることなく低温での引張伸度を改善することができる。
【0034】
前記芳香族ポリアミドの融点は、ほぼ280℃~330℃であり、ガラス転移温度は、ほぼ80℃~180℃であり得る。前記芳香族ポリアミドは通常の分子量を有することができる。
【0035】
前記ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせの含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して、5重量%~20重量%であり得、例えば5重量%~15重量%、または7重量%~13重量%であり得る。前記範囲を満たす場合、前記ポリアミド樹脂組成物は、低温での優れた機械的強度を実現しながら、優れた耐薬品性、耐久性などを実現することができる。
【0036】
一方、前記ポリアミド樹脂組成物内で、(長鎖ポリアミド):(前記ポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ)の重量比は、10:90~50:50であり得、例えば20:80~40:60などであり得る。このような重量比を満たす場合、低温での引張伸度を極大化することができ、価格競争力を備えることができる。
【0037】
その他添加剤
前記ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じてその他添加剤をさらに含むことができる。前記その他添加剤は、例えば可塑剤、難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤、補強剤、離型剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、核剤、滑剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0038】
前記その他添加剤は、前記ポリアミド樹脂組成物全体重量に対して0重量%~10重量%で含まれ得、例えば0.1重量%~9重量%、0.1重量%~6重量%、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、または0.2重量%~1重量%で含まれ得る。この場合、他の物性に影響を与えずに当該添加剤の目的を達成することができる。
【0039】
前記ポリアミド樹脂組成物は、一例として10重量%~80重量%のポリアミド6;1重量%~20重量%の長鎖ポリアミド;10重量%~50重量%の耐衝撃剤;5重量%~20重量%のポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ;および0重量%~10重量%のその他添加剤を含むことができる。
【0040】
具体的な例として、前記ポリアミド樹脂組成物は、45重量%~75重量%のポリアミド6;1重量%~10重量%の長鎖ポリアミド;15重量%~35重量%の耐衝撃剤;5重量%~15重量%のポリアミド66、芳香族ポリアミド、またはこれらの組み合わせ;および0重量%~5重量%のその他添加剤を含むことができる。
【0041】
このようなポリアミド樹脂組成物は、機械的特性と耐薬品性および耐久性に優れ、特に低温での引張伸度などの機械的特性に優れているため、水素をエネルギー源として使用する装置において水素貯蔵部品の素材として適しており、一例として前記ポリアミド樹脂組成物は、水素タンクライナー用ポリアミド樹脂組成物であり得る。
【0042】
一実施形態では、前述したポリアミド樹脂組成物からなる成形品を提供する。前記成形品は、例えば水素をエネルギー源として使用する運送機関において水素貯蔵装置であり得、一例として水素自動車用水素タンクライナーであり得る。
【0043】
一実施形態による成形品は、-40℃の低温での引張伸度が70%以上であり得る。
【0044】
[実施例]
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるのではない。
【0045】
実施例1
ポリアミド6(PA6)60重量%、長鎖ポリアミドとしてPA1012を5重量%、耐衝撃剤としてエチレン-オクテンゴム(EOR)25重量%、およびポリアミド66(PA66)10重量%を混合して押出機を利用してポリアミド樹脂組成物を製造する。
【0046】
押出温度を250℃~280℃に変化させ、スクリュー速度を250rpmから450rpmにして前記ポリアミド樹脂組成物を押出し、冷却してペレットを製造する。得られたペレットを射出成形機に投入して多目的試験片の形態である成形品を製造する。
【0047】
実施例2
実施例1でPA66の代わりにPA6Iを使用したことを除き、実施例1と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0048】
実施例3
実施例1でPA66の代わりにPA66とPA6I調合物を使用したことを除き、実施例1と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0049】
実施例4
実施例2で長鎖ポリアミドを25%使用したことを除き、実施例2と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0050】
比較例1および比較例2
PA66を使用せず、下記表1に記載された含有量で各成分を混合したことを除き、実施例1と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0051】
比較例3
長鎖ポリアミドを使用せず、下記表1に記載された含有量で各成分を混合したことを除き、実施例1と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0052】
比較例4
耐衝撃剤を使用せず、下記表1に記載された含有量で各成分を混合したことを除き、実施例1と同様な方法で組成物および成形品を製造する。
【0053】
【0054】
評価例
実施例と比較例で製造した成形品に対して常温(23℃)および低温(-40℃)での引張強度、引張伸度、および衝撃強度を下記の方法で評価し、その結果を下記表2に示す。
【0055】
引張強度および引張伸度は、ISO 527により50mm/min条件で評価する。
【0056】
アイゾッド衝撃強度は、ISO 180により試片中央部に切欠が存在する厚さ3.2mmの試片を23℃条件で5.5Jのインパクトハンマーを利用して評価する。
【0057】
低温での物性は、-40℃で4時間にかけて試片をエージングした後、液体窒素で-40℃雰囲気を維持するチャンバーの中で引張強度、引張伸度、アイゾッド衝撃強度などを評価する。
【0058】
【0059】
前記表2を参照すれば、実施例1~実施例4は、常温および低温での引張強度、引張伸度、衝撃強度などの物性が全て優れていることを確認できる。反面、PA66やPA6Iを使用しない比較例1の場合、低温での引張伸度が顕著に低く、ここで長鎖ポリアミドの含有量を増加させた比較例2の場合、引張伸度が比較例1に比べて増加したが、実施例水準には至らないことが確認される。長鎖ポリアミドを使用しない比較例3の場合にも、低温での引張伸度が顕著に低いという問題があり、耐衝撃剤を使用しない比較例4の場合、常温および低温で衝撃強度が顕著に低く、加工上の問題により低温での引張伸度が相当低いという問題がある。
【0060】
以上で好適な実施例形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【国際調査報告】