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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動車用合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240927BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20240927BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20240927BHJP
   C03C 3/108 20060101ALI20240927BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20240927BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20240927BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/108
C03C3/078
C03C3/097
C03C27/12 R
B60J1/00 H
B32B17/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519759
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022116462
(87)【国際公開番号】W WO2023051151
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111163509.4
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 軍
(72)【発明者】
【氏名】王 哲
(72)【発明者】
【氏名】王 立
(72)【発明者】
【氏名】陳 碧珠
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
4G062
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AK01B
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100GB32
4G061AA03
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD03
4G061DA02
4G061DA09
4G062AA01
4G062BB01
4G062BB06
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC04
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
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4G062HH13
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4G062HH20
4G062JJ01
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4G062JJ07
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4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN29
4G062NN34
(57)【要約】
本願は、自動車用合わせガラスに関する。前記自動車用合わせガラスの製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、温度Tp1とTp2との差は、50℃以下であり、温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第1温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用合わせガラスであって、
その製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下であり、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第1温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロである、ことを特徴とする自動車用合わせガラス。
【請求項2】
前記第2ガラス板の厚さは、前記第1ガラス板の厚さよりも小さく、且つ前記第1ガラス板の組成成分は、予め設定された成分である、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項3】
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、約8wt%~16wt%である、ことを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項4】
前記第2ガラス板におけるアルカリ土類金属化合物の総重量比は、約5wt%を超えない、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項5】
前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、約15wt% ~25wt%である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項6】
前記第2ガラス板の組成成分は、NaOを含み、且つ前記NaOの含有量は、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量の約60wt%以上である、ことを特徴とする請求項5に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項7】
前記第2ガラス板の組成成分は、重量比が約2wt%~6wt%のZnO及び重量比が約0~3wt%のPを含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項8】
前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項9】
前記第1ガラス板の材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項10】
前記第1ガラスの材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、8wt%~12wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、20wt%~25wt%である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項11】
前記第1ガラスの材質は、主にアルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、12wt%~16wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、15wt%~20wt%である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項12】
前記第1ガラス板の厚さは、約2.1mm以上である、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項13】
前記第1ガラス板は、無色ガラス、着色ガラス、又は塗装面が前記中間層材料に隣接する塗装ガラスである、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項14】
前記第2ガラス板の厚さは、約1.1mm以下である、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項15】
前記第2ガラス板は、イオン交換を行うことができる、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項16】
前記第2ガラス板は、可視光透過率が約88%以上の無色ガラスである、ことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項17】
前記中間層材料は、有機ポリマーである、ことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年9月30日に出願された出願番号が2021111635094、発明の名称が「自動車用合わせガラス」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体を参照により本出願に組み込む。
【0002】
本発明は、合わせガラスの技術分野に関し、特に自動車用合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車用合わせガラスは、非対称であり、一般的に外板ガラスが厚く、内板ガラスが薄い。このような特殊な内外板合わせガラスは、主に、内板ガラスが曲げ成形した後、追加の化学強化を必要とし、その後外板ガラスと接着して合わせガラスを形成する点で伝統的な合わせガラスと異なる。現在、内板ガラスの化学強化方法として、一般的に電子表示カバー業界のガラスの化学強化方法が採用される。しかし、ある材質の内板ガラスは、外板ガラスと組み合わせて曲げ成形時、及び曲げ成形後の内板ガラスの化学強化時、以下の問題が存在する可能性がある。(1)内板ガラスの軟化点は、外板ガラスに適応することができないため、両者が同時に曲げ成形することが困難となる。(2)仮に成形しても、成形後に内外板ガラスの形状が完全にマッチングすることが難しく、接着した後、内外板ガラス間に大きさが異なる隙間が存在し、製品の光学品質に影響を与える。(3)内外板ガラスの成形傾向が一致しない可能性があるため、熱曲げ成形後の中部領域の曲げ程度が一致せず、膨れが生じ、又はエッジに皺が生じ、合わせた後に板割れ又は光学不良を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本願の各種の実施例は、自動車用合わせガラスを提供する。その技術案は、以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
自動車用合わせガラスであって、その製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下であり、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第1温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロである。
【0006】
一実施例では、前記第2ガラス板の厚さは、前記第1ガラス板の厚さよりも小さく、且つ前記第1ガラス板の組成成分は、予め設定された成分である。
【0007】
一実施例では、前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、約8wt%~16wt%である。
【0008】
一実施例では、前記第2ガラス板におけるアルカリ土類金属化合物の総重量比は、約5wt%を超えない。
【0009】
一実施例では、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、約15wt% ~25wt%である。
【0010】
一実施例では、前記第2ガラス板の組成成分は、NaOを含み、且つ前記NaOの含有量は、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量の約60wt%以上である。
【0011】
一実施例では、前記第2ガラス板の組成成分は、重量比が約2wt%~6wt%のZnO及び重量比が約0~3wt%のPを含む。
【0012】
一実施例では、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩である。
【0013】
一実施例では、前記第1ガラス板の材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩である。
【0014】
一実施例では、前記第1ガラスの材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、8wt%~12wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、20wt%~25wt%である。
【0015】
一実施例では、前記第1ガラスの材質は、主にアルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、12wt%~16wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、15wt%~20wt%である。
【0016】
一実施例では、前記第1ガラス板の厚さは、約2.1mm以上である。
【0017】
一実施例では、前記第1ガラス板は、無色ガラス、着色ガラス、又は塗装面が前記中間層材料に隣接する塗装ガラスである。
【0018】
一実施例では、前記第2ガラス板の厚さは、約1.1mm以下である。
【0019】
一実施例では、前記第2ガラスは、イオン交換を行うことができる。
【0020】
一実施例では、前記第2ガラス板は、可視光透過率が約88%以上の無色ガラスである。
【0021】
一実施例では、前記中間層材料は、有機ポリマーである。
【0022】
本願の一つ又は複数の実施例の詳細は以下に記載されており、本願の他の特徴、目的及び長所は明細書及び特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかなように、説明された実施例は本願のいくつかの実施例にすぎず、全ての実施例ではない。本願の実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0024】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術・科学用語は、本願に属する当業者が通常に理解される意味と同じである。本明細書で使用される用語は具体的な実施例を説明するためのものだけであり、本願を制限することを意図しない。
【0025】
用語
特に明記されていない限り、または矛盾が存在しない限り、本明細書で使用される用語または語句は以下の意味を持つ。
【0026】
本願では、使用される用語「と/又は」、「又は/と」、「及び/又は」の選択可能な範囲は、2つ又は2つ以上の関連列挙項目のいずれか1つを含み、関連列挙項目の任意及びすべての組合せも含み、上記任意及びすべての組合せは任意の2つの関連列挙項目、任意の更に多くの関連列挙項目、又はすべての関連列挙項目の組合せを含む。
【0027】
本願では、「1種又は複数種」とは、列挙項目のいずれか1種、2種又は2種以上を指す。ここで、「複数種」とは、2種又は2種以上を指す。
【0028】
本願では、使用される「その組み合わせ」、「その任意の組み合わせ」、「その任意の組み合わせ方式」などには、列挙項目のいずれか2つ又はいずれか2つ以上の全ての適切な組み合わせ方式が含まれる。
【0029】
本願では、使用される「適切な組み合わせ方式」、「適切な方式」、「任意の適切な方式」などに記載の「適切」は、本願の技術的解決手段を実施でき、本願の技術的課題を解決でき、本願が予期する技術的効果を実現できることを基準とする。
【0030】
なお、本願では、「好ましくは」は効果がより良い実施形態または実施例を説明するためのものだけであり、本願の保護範囲に対する制限を構成しない。
【0031】
本願では、開放式で説明される技術的特徴は、列挙した特徴から構成された閉鎖式技術案を含み、列挙した特徴を含む開放式技術案も含む。
【0032】
本願では、数値区間を言及する場合、特に説明がない限り、数値区間の両端点を含む。
【0033】
本願では、百分率含有量を言及する場合、特に断らない限り、固液混合と固相-固相混合に対して質量百分率を指し、液相-液相混合に対して体積百分率を指す。
【0034】
本願では、百分率濃度とは、特に断らない限り、最終濃度をいう。最終濃度とは、成分を添加した後の系における当該添加成分の占める割合をいう。
【0035】
本願では、温度パラメータを言及する場合、特に限定しない限り、恒温処理であってもよいし、一定温度区間の処理であってもよい。上記恒温処理では、温度が計器制御の精度範囲内で変動することができる。
【0036】
本願では、重量比とは、特に限定がなければ、全体成分における組成成分の重量比を指す。例えば、第2ガラス板においてAlの重量比が約8wt%~12wt%であり、即ち、第2ガラス板においてAlの重量が第2ガラス板の重量を占める百分率である。
【0037】
本願のいくつかの実施例では、自動車用合わせガラスが提供される。自動車用合わせガラスの製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、50℃以下であり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第1温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロであってもよい。
【0038】
好ましくは、前記第2ガラス板の厚さは、前記第1ガラス板の厚さよりも小さく、且つ前記第1ガラス板の組成成分は、予め設定された成分である。例えば、第1ガラス板は、外板ガラスであり、第2ガラス板は、内板ガラスである。好ましくは、前記第1ガラス板の厚さは、約2.1mm以上である。好ましくは、前記第2ガラス板の厚さは、約1.1mm以下である。例えば、第1ガラス板の厚さは、約2.1mm、約2.3mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.8mm、約3.0mm、約3.2mm、約3.5mm、約3.8mm、約4.0mm、約4.2mm、約4.5mm、約5.0mm及びそれ以上の厚さを含むが、これらに限定されない。第2ガラス板の厚さは、約0.5mm、約0.7mm、約0.9mm、約1.1mm又は約0.5mm~1.1mmの範囲内の他の厚さを含むが、これらに限定されない。異なる厚さの組み合わせで、依然として本願の上記技術的効果を有することが可能である。
【0039】
ある場合には、外板ガラスの成分と仕様は、一般的に予め設定されている。外板ガラスは、自動車のガラスアセンブリの色、外観、可視光透過率、赤外紫外透過率、インク、粘着付属品の互換性、及び元板から完成品までの一式のガラス絞り加工装置、プロセスシステム等を大きく決めるため、本願に係る第1ガラス板の材質は、予め設定された材質であってもよい。外板ガラスに比べて、内板ガラス材質は、調整の自由度が高く、かつ、内板の元板の生産プロセスがより多様化し、成分の調整が比較的に実行可能であり、適切な調整を行って外板ガラスにマッチングすることが可能である。本願では、第1ガラス板の予熱材質に応じて、第2ガラス板の材質を調整して、両者の成形温度の差を約50℃以下とすることができる。
【0040】
本願では、ガラスの成形温度(Tp)は、当該ガラスのガラス転移温度(Tg)と当該ガラスの温度補償値(Tb)の和として定義され、Tbの計算式は、ガラスにおける異なる酸化物成分の粘度温度曲線に対する影響に応じて、実例データを合わせて得られ、Tbの計算式では、係数が正である酸化物(例えばSiO、Al)については、当該酸化物の導入により、ガラスの高温粘度を向上させ、対応的に成形温度を向上させることを表し、係数の大きさは、当該酸化物が粘度に与える影響の強弱を表す。他の係数が負である酸化物については、当該酸化物の導入により、ガラスの高温粘度を低下させ、対応的に成形温度を低下させることを表し、係数の大きさは同様に当該酸化物が粘度に与える影響の強弱を表す。一般的は、ガラスの組成成分が異なると、Tgが異なり、Tbも異なり、同時にTgとTbを制御して両者の成形温度Tpが上記条件を満たすようにする必要がある。
【0041】
なお、ガラスのTgは、標準的な方法を参照して測定することができ、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義される。
【0042】
本願では、第1ガラス板の成形温度Tp1は、第1ガラス板のTg1と軟化点との間のある温度であってもよい。この温度で、ガラスは、熱曲げ加工に適する最適な粘度を示し、一定の延性を有して曲げ成形を可能にするだけでなく、流動性が高すぎて、柔らかすぎることによって、ガラスが曲げ過程において各種のよく見かける欠陥(例えば板粘着、型落ち、金型痕跡、不純物の粒子の嵌め込みなど)を発生する。同様に、第2ガラス板の成形温度Tp2も、第2ガラス板のTg2と軟化点との間のある温度であってもよい。
【0043】
上記条件を満たすと、第1ガラス板と第2ガラス板の同時曲げ成形の加工操作可能性を実現し、さらに曲げ成形後の第1ガラス板と第2ガラス板との型の整合度を向上させ、第1ガラス板と第2ガラス板の中央隙間が小さく、中部に明らかな膨れがなく、エッジの皺が小さく、接着した後、合わせガラスの光学性能を向上させる。
【0044】
一実施例では、第1ガラス板の成形温度Tp1と第2ガラス板の成形温度Tp2との差が上記条件を満たすと、第2ガラス板の組成成分は、さらに、前記第2ガラス板の組成成分がAl、少なくとも1種のアルカリ金属化合物及び少なくとも1種のアルカリ土類金属化合物を含むことを満たす。
【0045】
いくつかの実施例では、前記第2ガラス板におけるAlの含有量は、前記第2ガラス板の約8wt%~16wt%を占める。
【0046】
いくつかの実施例では、前記第2ガラス板におけるアルカリ土類金属化合物の総含有量は、前記第2ガラス板の約5wt%を超えない。
【0047】
いくつかの実施例では、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量は、前記第2ガラス板の約15%wt~25wt%を占める。
【0048】
アルカリ金属は、ガラス生産に必要な酸化物の成分であり、一般的にソーダ、長石などを原料として導入され、ガラス生産の溶製温度を低下させるために用いられる一方、化学強化イオン交換(塩浴中のKがガラス中のNaを交換)に必要な遊離カチオンを提供する。
【0049】
いくつかの実施例では、前記第2ガラス板の組成成分は、NaOを含み、且つ前記NaOの含有量は、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量の約60wt%以上である。ガラスに上記含有量のNaOを含むのは、急速のイオン交換を実現するのに有利である。
【0050】
いくつかの実施例では、前記第2ガラス板の組成成分は、前記第2ガラス板の約2wt%~6wt%の含有量を占めるZnO及び前記第2ガラス板の約0~3wt%の含有量を占めるPを含む。
【0051】
好ましくは、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩である。
【0052】
理解できるように、前記第2ガラス板は、イオン交換を行うことができる。
【0053】
理解できるように、前記第2ガラス板は、可視光透過率が約88%以上である無色ガラスである。
【0054】
自動車用合わせガラスは、寸法が大きく、種類が多く、曲率形状が複雑であり、応力層の深さに対する要求が高く、急速のイオン交換が必要であり、即ち、できるだけ短い交換時間内で所望のできるだけ大きい応力層の深さに達し、生産率を向上させる。なお、急速のイオン交換は、さらにガラスが溶融塩中に浸す時間を低下させることができ、ガラス中の不純物が塩浴中にイオン交換されることを低減させ、溶融塩の耐用性を保証し、溶融塩の交換頻度を低下させる。しかし、ある材質の内板ガラスは、急速のイオン交換で所望の応力層の深さに達することができず、生産率の点でも、溶融塩の交換頻度の点でも、いずれも高いコストが発生する。
【0055】
上記条件を満たすと、第2ガラス板は化学強化時、短時間内で十分に高い表面応力及び応力層の深さを有し、急速のイオン交換強化の効果を有し、自動車用化学強化ガラスの大寸法、大量生産の要求を満たすことができ、生産率を向上させ、さらに溶融塩の交換頻度を低下させ、コストを節約し、また伝統的な物理風冷強化に近いプロセスコストに達することができ、化学強化ガラスが車両用分野の市場によりよく応用されることに便利であり、且つコストが低い。
【0056】
十分に高い表面応力及び応力層の深さとは、交換後の内ガラス板の圧縮応力層の深さは、約30μm以上であり、圧縮応力は、約500MPa以上である。
【0057】
本願では、イオン交換の速度は速く、いくつかの実施例では、イオン交換強化の時間は、4h以下であり、いくつかの実施例では、イオン交換強化の時間は、2h以下である。
【0058】
好ましくは、前記第1ガラス板の材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩である。
【0059】
理解できるように、前記第1ガラス板は、アニールされた低応力ガラス又は物理的に熱強化されたプレストレストガラスである。
【0060】
理解できるように、前記第1ガラス板は、無色ガラス、着色ガラス又は塗装面が前記中間層材料に隣接する塗装ガラスである。
【0061】
いくつかの実施例では、前記第1ガラスの材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、前記第2ガラス板におけるAlの含有量は、前記第2ガラス板の約8wt%~12wt%を占め、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量は、前記第2ガラス板の約20wt%~25wt%を占める。
【0062】
いくつかの実施例では、前記第1ガラスの材質は、主にアルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、前記第2ガラス板におけるAlの含有量は、前記第2ガラス板の約12wt%~16wt%を占め、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量は、前記第2ガラス板の約15wt%~20wt%を占める。
【0063】
いくつかの実施例では、本願的自動車用合わせガラスの中間層は、単層又は複層であってもよく、中間層材料によって製造され得る。
【0064】
好ましくは、中間層材料は、有機ポリマーである。いくつかの実施例では、有機ポリマーには、特殊な機能層が予め複合されていてもよい。
【0065】
好ましくは、有機ポリマーは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリル酸エステル(SGP)を主成分とする、優れる耐老化性、及びガラス表面との十分な粘着性を有するポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0066】
本願は、ガラスにおける異なる酸化物成分の粘度温度曲線に対する影響に応じて、実例データを合わせてガラス板の温度補償値Tbの経験式を得て、ガラス板の成形温度Tpを導出する。第1ガラス板と第2ガラス板の成形温度Tp1とTp2の差を限定することにより、第1ガラス板と第2ガラス板の同時曲げ成形の加工操作可能性を満たし、さらに曲げ成形後の第1ガラス板と第2ガラスの型の整合度を向上させ、それにより、第1ガラス板と第2ガラス板の中央隙間を小さくし、中部に明らかな膨れがなく、エッジの皺が小さく、接着した後、合わせガラスの光学性能を向上させる。
【0067】
本願は、上記自動車用合わせガラスの製造方法をさらに提供する。
【0068】
この自動車用合わせガラスの製造方法は、予め設定された温度で、前記第1ガラス板及び第2ガラス板を曲げ成形させるステップと、曲げ成形後の前記第1ガラス板と第2ガラス板を分離し、曲げ成形後の前記第2ガラス板に化学強化処理を行うステップと、前記中間層材料を、曲げ成形後の前記第1ガラス板と化学強化処理後の前記第2ガラス板との間に配置し、加熱加圧して、合わせガラスを製造するステップと、を含む。
【0069】
理解できるように、前記第1ガラス板及び第2ガラス板を曲げ成形させるステップは、さらに、第1ガラス板及び第2ガラス板に前処理を行うステップを含み、前記前処理は、前記第1ガラス板及び第2ガラス板を切断・面取りして、所望の特定の輪郭を形成し、最終製品の曲げ形状及び寸法に応じて、第1ガラス板と第2ガラス板の寸法積層差を予め設定し、積層して曲げた後の2層のガラスのエッジを一致させることを含む。
【0070】
好ましくは、上記予め設定された温度で、前記第1ガラス板及び第2ガラス板を曲げ成形させるステップは、上記第1ガラス板と第2ガラス板を重ね合わせ、両者の重ね合わせ面に耐高温隔離粉末を施し、積層ガラス板を得ることと、上記積層ガラスを成形金型に配置し、予め設定された温度で、上記積層ガラスを曲げ成形させると、を含む。
【0071】
理解できるように、上記積層ガラス板を曲げ成形させる方法として、ガラスの自重で熱曲げによって金型に貼り合わせて成形を完了させてもよく、又はリング状の下型及び中実の上型によって圧着を補助して成形を完了させてもよい。
【0072】
好ましくは、連続炉又はトンネル炉内で、炉体温度を予め設定することにより、積層ガラス板を上下で均一かつ対称に加熱して成形を行う。成形方式は、重力成形法を採用して、重力で曲げて金型の輪郭に貼り合わせて、所望の形状を形成してもよいし、加圧方法を採用して、自重で完全に成形されていない積層ガラス板をリング状の下型と中実の上型との間に配置して加圧成形し、所望の形状を形成してもよい。成形後、積層ガラス板を徐々に室温まで冷却してアニールを完了させ、曲げ成形後の積層ガラス板を得る。
【0073】
好ましくは、上記予め設定された温度は、前記第1ガラス板の成形温度である。
【0074】
理解できるように、連続炉又はトンネル炉内には、1つ又は複数のチャンバーを含むことができる。1つのチャンバーがある場合、昇温することにより、チャンバーの温度を予め設定された温度まで上昇させ、上記予め設定された温度は、前記第1ガラス板の成形温度である。複数のチャンバーがある場合、昇温することにより、各チャンバーの温度を上昇させ、各チャンバーは、勾配温度分布を呈するように設定することができ、チャンバー内の最高温度は、予め設定された温度であり、上記予め設定された温度は、前記第1ガラス板の成形温度である。
【0075】
好ましくは、上記耐高温隔離粉末は、ガラス板の表面と反応しない粉末材料であり、珪藻土又は炭酸カルシウムを含むが、これらに限定されない。一実施例では、珪藻土の粒径は、約5μm~15μmである。
【0076】
曲げ成形後の第1ガラス板と第2ガラス板との間に耐高温隔離粉末が添加されているため、両者を分離することができ、そして曲げ成形後の第2ガラス板に化学強化処理を行う。
【0077】
好ましくは、前記化学強化処理は、予熱、イオン交換、冷却、洗浄のステップを含む。
【0078】
具体的には、曲げ成形後の第2ガラス板を、対応する寸法の化学強化載置フレーム内に配置し、ガラス板を均一に固定し、載置フレームをガラス板とともに予熱キャビティ内でイオン交換温度に近くなるまで均一に加熱した後(約350~400℃)、熔融KNOの塩浴に浸してイオン交換を行い、イオン交換の温度及び時間を設定し、応力及び深さを特定の要求に達し、交換完了後に載置フレームをガラス板とともにゆっくり持ち上げ、粘着した液体のKNOの滴がきれいになった後、冷却キャビティ内に入れて約100℃以下まで均一に冷却し、冷却完了後のガラスを脱イオン水に浸して余分なKNOを除去する。化学強化処理後の第2ガラス板を対応的に同時に曲げる第1ガラス板と再び組み合わせて、接着処理を行う。
【0079】
上記接着処理は、前記中間層材料を、曲げ成形後の前記第1ガラス板と化学強化処理後の前記第2ガラス板との間に配置し、加熱加圧して、上記自動車用合わせガラスを製造することを含む。
【0080】
予加圧(又は真空引き)及び高温高圧プロセスで処理された後、2枚のガラスとポリマー中間膜を揃え、一体に均一に粘着し、自動車用合わせガラスを得る。
【0081】
一実施例では、自動車用合わせガラスの構造は、凸面を有し、車体に取り付けた後、凸面が車外に向かい、上記第1ガラス板は、車外に向かう側に位置し、上記第2ガラス板は、車内に向かう側に位置する。
【0082】
好ましくは、自動車用合わせガラスは、車体の前後フロントガラス、ルーフガラス又は前後ドアガラスであってもよい。
【0083】
一実施例では、上記曲げ成形の予め設定された温度は、約593℃であり、成形後の上記第2ガラス板の化学強化の予め設定されたイオン交換温度は、約420℃である。
【0084】
一実施例では、イオン交換時間は、約2時間であり、ガラスの応力及び深さに対する要求を満たすことができる。
【0085】
以下、具体的な実施例と比較例を参照してさらに説明する。以下の具体的な実施例に関わる原料は、特に説明しない限り、いずれも市販から得ることができ、使用する器械は、特に説明しない限り、いずれも市販から得ることができ、関わるプロセスは、特に説明しない限り、いずれも当業者の一般的な選択である。
【0086】
実施例及び比較例
表1に示すガラス板の酸化物成分及び表2に示す第1ガラス板と第2ガラス板の組み合わせを参照して、実施例及び比較例の合わせガラスを製造した。第1ガラス板の厚さは、約3.5mmであり、第2ガラス板の厚さは、約1.1mmであった。具体的な製造方法は、以下の通りである。
(1)第1ガラス板及び第2ガラス板を切断・エッジングして、所望の特定の輪郭を形成した。第2ガラス板と第1ガラス板を重ね合わせ、両者の重ね合わせ面に粒径が約5μm~15μmの珪藻土を施し、積層ガラス板を得た。前記積層ガラス板をリング状の下型に配置し、連続炉内に入れた。連続炉内に1つのチャンバーがあり、チャンバーの温度を約593℃まで上昇させ、積層ガラス板を上下で均一かつ対称に加熱し、中実の上型と下方のリング状の金型によって圧着を補助して成形させた。成形完了後、室温までゆっくり冷却して、アニールを完了し、曲げ成形後の積層ガラス板を得た。
(2)曲げ成形後の第1ガラス板と第2ガラス板を分離し、曲げ成形後の第2ガラス板を対応する寸法の化学強化載置フレーム内に配置し、ガラス板を均一に固定し、載置フレームをガラス板とともに予熱チャンバー内に均一に加熱し、そして熔融KNOの塩浴に浸してイオン交換を行い、イオン交換温度を約420℃とし、応力と深さが特定の要求に達した後、冷却、洗浄、取り出しを行った。
(3)第1ガラス板と化学強化後の第2ガラス板との間に有機ポリマー膜を配置し、予加圧(又は真空引き)及び高温高圧プロセスで処理した後、2枚のガラスと有機ポリマー膜を揃え、一体に均一に接着して自動車用合わせガラスを得た。製造された合わせガラスは、自動車のフロントガラス製品として用いることができる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
成形後の第1ガラス板と第2ガラス板の中央隙間とエッジ隙間の状況に応じて、上記実施例及び比較例が奏する技術的効果を評価する。
【0090】
なお、電子表示カバーに比べて、自動車用化学強化ガラスは、表面応力に対する要求が低く、応力層の深さに対する要求がより高く、自動車用ガラスの化学強化炉にとって、炉体の寸法を大きくしても、一回の強化載置量が依然として低いため、できるだけ短い時間内で十分な応力層の深さを取得する必要がある。そのため、第2ガラス板がイオン交換の開始後、前4時間の平均イオン交換速度に応じて、上記実施例及び比較例が奏する技術的効果を評価した。その結果は、表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表3からわかるように、実施例1~4では、曲げ成形後の第1ガラス板と第2ガラス板の中央隙間が小さく、第1ガラス板と第2ガラス板の中部領域には、明らかな膨れがなく、エッジ隙間が小さく、エッジの皺が小さく、型の整合性が高く、最終の合わせガラスの形状は、熱曲げ成形後の積層ガラスに一致することが可能であり、製品全体の光学品質を向上させるのに有利である。一方、実施例1~4に係る第2ガラス板は、急速のイオン交換強化の効果を有し、イオン交換開始後の前4時間内で、平均応力層の深さの交換速率は、12μm/h以上である。個別の実施例では、2h前後の交換条件で40μm前後の応力層の深さを取得し、自動車用化学強化ガラスの大寸法、大量生産の要求を満たすことができ、伝統的な物理風冷による強化に近いプロセスコストに達し、化学強化ガラスが自動車分野の市場によりよく応用されることに便利である。また、ガラスが溶融塩中に浸する時間を減少させ、ガラスにおいて不純物が塩浴にイオン交換されることを低減させ、溶融塩の耐用性を保証し、溶融塩の交換頻度を低下させ、コストを節約する。
【0093】
以上説明した実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについては説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載される範囲内であると考えられるべきである。
【0094】
上記の実施例は、本願のいくつかの実施形態を示しているに過ぎず、その叙述は具体的かつ詳細であるが、本願の発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。当業者であれば、本願の思想から逸脱することなく、本願の範囲に含まれるいくつかの変形および改善を行うことができることに留意されたい。したがって、本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
自動車用合わせガラスであって、その製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下であり、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
本願のいくつかの実施例では、自動車用合わせガラスが提供される。自動車用合わせガラスの製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、50℃以下であり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロであってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用合わせガラスであって、
その製造材は、第1ガラス板、第2ガラス板及び中間層材料を含み、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板は、組成成分が異なり、
温度Tp1とTp2との差は、約50℃以下であり、
温度Tp1は、第1ガラス板の転移点温度Tg1と第1温度補償値Tb1の和として定義され、温度Tp2は、第2ガラス板の転移点温度Tg2と第温度補償値Tb2の和として定義され、温度Tpの一般式は、Tp=Tg+Tbとして定義され、
転移点温度Tgは、ガラスの粘度が約1013.4ポアズである場合の温度として定義され、
第1温度補償値Tb1と第1ガラス板の組成成分の重量比は、Tb1が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
第2温度補償値Tb2と第2ガラス板の組成成分の重量比は、Tb2が、約100×(3.5×SiO+6.5×Al-5×(NaO+KO)-3×(CaO+MgO)-6×B-2.5×(ZnO+P))に等しいという条件を満たし、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板において、Al、KO、CaO、MgO、B、ZnO及びPのうちの1種又は複数種の含有量がゼロである、ことを特徴とする自動車用合わせガラス。
【請求項2】
前記第2ガラス板の厚さは、前記第1ガラス板の厚さよりも小さく、且つ前記第1ガラス板の組成成分は、予め設定された成分である、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項3】
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、約8wt%~16wt%である、ことを特徴とする請求項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項4】
前記第2ガラス板におけるアルカリ土類金属化合物の総重量比は、約5wt%を超えない、ことを特徴とする請求項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項5】
前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、約15wt% ~25wt%である、ことを特徴とする請求項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項6】
前記第2ガラス板の組成成分は、NaOを含み、且つ前記NaOの含有量は、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総含有量の約60wt%以上である、ことを特徴とする請求項5に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項7】
前記第2ガラス板の組成成分は、重量比が約2wt%~6wt%のZnO及び重量比が約0~3wt%のPを含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項8】
前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項9】
前記第1ガラス板の材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項10】
前記第1ガラスの材質は、主にソーダ石灰ケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、8wt%~12wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、20wt%~25wt%である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項11】
前記第1ガラスの材質は、主にアルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩であり、前記第2ガラス板の材質は、主にアルミノケイ酸塩であり、
前記第2ガラス板におけるAlの重量比は、12wt%~16wt%であり、前記第2ガラス板におけるアルカリ金属化合物の総重量比は、15wt%~20wt%である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項12】
前記第1ガラス板の厚さは、約2.1mm以上である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項13】
前記第1ガラス板は、無色ガラス、着色ガラス、又は塗装面が前記中間層材料に隣接する塗装ガラスである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項14】
前記第2ガラス板の厚さは、約1.1mm以下である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項15】
前記第2ガラス板は、イオン交換を行うことができる、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項16】
前記第2ガラス板は、可視光透過率が約88%以上の無色ガラスである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【請求項17】
前記中間層材料は、有機ポリマーである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自動車用合わせガラス。
【国際調査報告】