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特表2024-536265微細ホール加工が容易なキャリア箔付き極薄銅箔、これを含む銅箔積層板、及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】微細ホール加工が容易なキャリア箔付き極薄銅箔、これを含む銅箔積層板、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/01 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B15/01
B32B15/08 N
C23C26/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519784
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2022010126
(87)【国際公開番号】W WO2023054865
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130375
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ポム、ウォン チン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キドク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン チョル
【テーマコード(参考)】
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AB02B
4F100AB15D
4F100AB16B
4F100AB16C
4F100AB16D
4F100AB17A
4F100AB17C
4F100AB17D
4F100AB20B
4F100AB21D
4F100AB23D
4F100AB33A
4F100AB33C
4F100AH02A
4F100AH03A
4F100AH04A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05E
4F100BA07
4F100DD01
4F100DD01A
4F100DD03A
4F100DD05C
4F100EH71B
4F100EH71E
4F100EJ15A
4F100EJ42A
4F100EJ64A
4F100EJ82A
4F100GB43
4F100JD01E
4F100JJ03E
4F100JL01
4F100JL14B
4F100JN06
4F100JN21
4F100YY00A
4F100YY00C
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BB06
4K044BC05
4K044CA17
(57)【要約】
キャリア箔付き極薄銅箔及びその製造方法が開示される。本発明は、キャリア箔、剥離層及び極薄銅箔が順次積層されたキャリア箔付き極薄銅箔であって、前記キャリア箔は、前記剥離層に向く面に表面処理層を含む、キャリア箔付き極薄銅箔を提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔、剥離層及び極薄銅箔が順次積層されたキャリア箔付き極薄銅箔であって、
前記キャリア箔は、前記剥離層に向く面に表面処理層を含む、キャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項2】
前記表面処理層は、平均直径10μm以下の突起が配列された表面構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項3】
前記表面処理層は、平均直径2μm以下の突起が配列された表面構造を有することを特徴とする、請求項2に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項4】
前記突起は、8,000~10,000/mmの面積密度を有することを特徴とする、請求項2又は3に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項5】
前記突起は、キャリア箔の表面をエッチングして形成されることを特徴とする、請求項2又は3に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項6】
前記キャリア箔付き極薄銅箔は、剥離後に極薄銅箔のS面に平均直径10μm以下の溝が配列された表面構造が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項7】
前記キャリア箔付き極薄銅箔は、剥離後に極薄銅箔のS面に平均直径2μm以下の溝が配列された表面構造が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項8】
前記溝は、8,000~10,000/mmの密度を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項9】
剥離された極薄銅箔のS面は、Ni及びPを含有することを特徴とする、請求項6又は7に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項10】
前記剥離層と極薄銅箔との間に、
Cuを含み、Ni、Co、Fe、Pb及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属又はその合金を含有するレーザー吸収層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項11】
前記キャリア箔と前記剥離層との間に拡散防止層をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3、6、7及び10のいずれか一項に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項12】
前記剥離層と前記極薄銅箔との間に耐熱層をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3、6、7及び10のいずれか一項に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項13】
請求項1~3、6、7及び10のいずれか一項に記載されたキャリア箔付き極薄銅箔を樹脂基板に積層してなる銅箔積層板。
【請求項14】
キャリア箔、剥離層及び極薄銅箔の積層構造を形成する段階を含むキャリア箔付き極薄銅箔の製造方法であって、
前記積層構造は、
キャリア箔を提供する段階;
前記キャリア箔の一面をエッチング処理して表面処理層を形成する段階;及び
前記表面処理層上に剥離層及び極薄銅箔を順次形成する段階を含むことを特徴とするキャリア箔付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項15】
前記エッチング処理のエッチング液は、硫酸、過酸化水素、含窒素有機化合物、含硫黄有機化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の有機剤を含むことを特徴とする、請求項14に記載のキャリア箔付き極薄銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア箔付き極薄銅箔及びこれを採用した銅箔積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリア箔付き極薄銅箔は、キャリア箔の一面に剥離層と電気銅メッキによる極薄銅箔とが順に形成されたものであり、一般に、銅メッキでなされる極薄銅箔の最外側表面が粗化面として仕上げられている。
【0003】
キャリア箔付き極薄銅箔を用いたプリント配線基板は、次のように製造されてよい。まず、キャリア箔付き極薄銅箔を、樹脂などからなる絶縁性基板の表面に配置した後、加熱及び加圧して銅箔積層板を製造する。次に、製造された積層板に、スルーホール形成、スルーホールメッキを順に行い、全層ホール(plated through hole)を形成した後、前記積層板の表面にある銅箔をエッチングすることで必要な線幅及び線間ピッチを備えた配線パターンを形成し、最後に、ソルダーレジストの形成やその他の処理を行う。
【0004】
一方、近年、銅箔の粗化面をエポキシ樹脂のような接着用樹脂にあらかじめ接着し、前記接着用樹脂を半硬化状態(Bステージ)の絶縁樹脂層として用いることにより、樹脂がある銅箔を表面回路形成用銅箔として用いながら、前記絶縁樹脂層を絶縁基板に熱圧着してプリント配線基板、特にビルドアップ(build-up)配線基板を製造している。このようなビルドアップ配線基板では、各種電子部品の高集積化が要求され、これに対応して配線パターンも高密度化が要求されることにより、微細な線幅や線間ピッチの配線からなる配線パターン、すなわち、微細パターンのプリント配線基板が要求される。例えば、線幅や線間ピッチがそれぞれ20μm前後である高密度プリント配線基板が要求される。ビルドアップ配線基板のビアホール(via hole)形成には、高生産性などの理由から、主にCOガスレーザーによるレーザービア法が用いられている。しかし、従来のキャリア箔極薄銅箔にCOガスレーザーを用いる場合に、COガスレーザーの波長は10,600nm前後の赤外線領域であり、この領域の光を銅箔表面が殆ど反射してしまうため、ビアホール加工を直接行うことができず、ビアホール形成部分の銅箔をあらかじめエッチングして除去した後、基材にビアホール加工を行うコンフォーマルマスク法を採用している。ところが、コンフォーマルマスク法は、極薄銅箔のビアホールを形成したい部分にエッチングレジストを被覆せず、他の部分にはエッチングレジストを被覆しているため、あらかじめ極薄銅箔をエッチングした後にCOガスレーザーで基板(樹脂部分)にビアホール加工をする複雑な方法を取る。したがって、COガスレーザーを用いて極薄銅箔と樹脂部分に同時にビアホール加工ができれば、ビアホール加工の簡素化が可能になる。
【0005】
このため、キャリア箔付き極薄銅箔又はこれを含む銅箔積層板のスルーホール又はビアホールの加工時にCOガスレーザーに対する低い反射率を有し、極薄銅箔と樹脂に同時にビアホール加工ができるキャリア箔極薄銅箔が要求されている。
【0006】
そこで、韓国公開特許公報第2013-82320号は、キャリア箔付き極薄銅箔において、剥離層が、第1金属、該第1金属のメッキを容易にする第2金属及び第3金属を含む特定含量の金属合金層からなるキャリア箔付き極薄銅箔を提供している。しかし、このような極薄銅箔にCOレーザーでビアホール加工をする場合にも、依然として銅箔表面がレーザー光の相当部分を反射してしまい、効率的なビアホール加工には限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、レーザーホール加工が容易な新しい構造のキャリア箔付き極薄銅箔及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、COレーザーに対して優れた貫通加工性を有するキャリア箔付き極薄銅箔及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前述したキャリア箔付き極薄銅箔を含む銅箔積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、キャリア箔、剥離層及び極薄銅箔が順次積層されたキャリア箔付き極薄銅箔であって、前記キャリア箔は前記剥離層に向く面に表面処理層を含む、キャリア箔付き極薄銅箔を提供する。
【0011】
本発明において、前記表面処理層は、平均直径10μm以下の突起が配列された表面構造を備えることができる。このとき、前記表面処理層は、平均直径2μm以下の突起が配列された表面構造を有してよい。
【0012】
本発明において、前記突起は、8,000~10,000/mmの面積密度を有してよい。
【0013】
本発明において、前記突起は、キャリア箔の表面をエッチングして形成されるものであってよい。
【0014】
本発明において、キャリア箔付き極薄銅箔は、剥離後に極薄銅箔のS面に平均直径10μm以下の溝が配列された表面構造が形成されてよい。
【0015】
本発明において、キャリア箔付き極薄銅箔は、剥離後に極薄銅箔のS面に平均直径2μm以下の溝が配列された表面構造が形成されてよい。
【0016】
このとき、前記表面構造の溝は8,000~10,000/mmの密度を有してよい。
【0017】
本発明において、剥離された極薄銅箔のS面は、Ni及びPを含有してよい。
【0018】
また、本発明は、前記剥離層と極薄銅箔との間に、Cuを含み、Ni、Co、Fe、Pb及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属又はその合金を含有するレーザー吸収層をさらに含んでよい。
【0019】
本発明のキャリア箔付き極薄銅箔は、前記キャリア箔と前記剥離層との間に拡散防止層をさらに含んでよい。また、本発明のキャリア箔付き極薄銅箔は、前記剥離層と前記極薄銅箔との間に耐熱層をさらに含んでよい。
【0020】
また、上記の他の技術的課題を達成するために、本発明は、前述したキャリア箔付き極薄銅箔を樹脂基板に積層してなる銅箔積層板を提供する。
【0021】
また、上記のさらに他の技術的課題を達成するために、本発明は、キャリア箔、剥離層及び極薄銅箔の積層構造を形成する段階を含むキャリア箔付き極薄銅箔の製造方法であって、前記積層層構造は、キャリア箔を提供する段階;前記キャリア箔の一面をエッチング処理して表面処理層を形成する段階;及び、前記表面処理層上に剥離層及び極薄銅箔を順次形成する段階を含むことを特徴とするキャリア箔付き極薄銅箔の製造方法を提供する。
【0022】
本発明において、前記エッチング処理のエッチング液は、硫酸、過酸化水素、水酸化ナトリウム、含窒素有機化合物、及び含硫黄有機化合物の中から選ばれる1種又は2種以上の有機剤を用いて形成されてよい。含窒素有機化合物としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールなどを使用し、含硫黄有機化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール、チオシアヌル酸などを使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザーホール加工が容易な新しい構造のキャリア箔付き極薄銅箔を提供することが可能になる。また、本発明は、COレーザーに対して精密で且つ優れた貫通加工性を有するキャリア箔付き極薄銅箔及びこれを含む銅箔積層板を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔の積層構造を模式的に示す図である。
図1B】本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔の積層構造を模式的に示す図である。
【0025】
図2A】本発明の一実施例に係るキャリア箔の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
図2B】本発明の一実施例に係るキャリア箔の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0026】
図3A】本発明の一実施例によって製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片からキャリア箔を剥離した後の極箔表面を観察した電子顕微鏡写真である。
図3B】本発明の一実施例によって製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片からキャリア箔を剥離した後の極箔表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0027】
図4A】本発明の一実施例によって製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片をレーザー貫通ホール加工した後に撮影した電子顕微鏡写真である。
図4B】本発明の一実施例によって製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片をレーザー貫通ホール加工した後に撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載する実施例と図面に示す構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、それらに代替可能な様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。以下では、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。
【0029】
本発明の明細書において、積層(lamination)という用語は、少なくとも2枚以上の層を貼り合わせることを意味する。例えば、第1層と第2層との積層は、第1層と第2層とが直接接触することの他に、前記第1層と第2層との間に付加的な第3層を挟んで貼り合わせることも含む。また、本発明の積層構造において第3層が第1層と第2層との間に存在するということは、第3層が第1層及び第2層と直接接触する状態も、第1層又は第2層と直接接触しない状態も含む。
【0030】
図1A及び図1Bはそれぞれ、本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔の積層構造を模式的に示す図である。
【0031】
まず、図1Aを参照すると、キャリア箔付き極薄銅箔は、キャリア箔100、表面処理層110、拡散防止層120、剥離層130、耐熱層140及び極薄銅箔150が順次に積層された構造を有する。
【0032】
前記キャリア箔100は、極薄銅箔が絶縁基材に接合されるまで支持材(キャリア)として働く。キャリア箔は、アルミ箔、ステンレス鋼箔、チタニウム箔、銅箔又は銅合金箔を使用することができる。例えば、電解銅箔、電解銅合金箔、圧延銅箔又は圧延銅合金箔を使用することができる。好ましくは、前記キャリア箔は電解銅箔であってよく、前記キャリア箔の上面100Bは光沢面又はマット面のいずれであってもよい。また、前記キャリア箔の下面100Aには粗化処理層が形成されてよい。
【0033】
前記キャリア箔は、厚さが1mm以下であってよい。例えば、前記キャリア箔の厚さは7~70μmであってよい。例えば、前記キャリア箔の厚さは12~18μmであってよい。前記キャリア箔の厚さが7μm未満であると、キャリアとして働き難く、前記キャリア箔の厚さが1mmを超えると、キャリアとして働くのに問題はないが、剥離層及び極薄銅箔などの形成のために連続してメッキする場合に、連続メッキライン内での箔の張力を大きくする必要があり、大規模の設備を必要とすることがある。
【0034】
本発明において、前記キャリア箔100と拡散防止層120との間又は前記キャリア箔100と拡散防止層120との境界面には表面処理層110が付加される。本発明において、前記表面処理層110は、平均直径10μm以下、5μm以下、2μm以下、又は1μm以下の微細突起が配列された構造を有する。本発明において、前記微細突起の平均直径は0.5μm以上であることが好ましい。
【0035】
本発明において、前記微細突起の面積密度は、8,000~10,000/mmであることが好ましい。
【0036】
このように、本発明において表面処理層はCOレーザーの波長(例えば、10,600nm)以下の微細突起を有し、後述するように、この微細突起に対応して剥離後に形成される微細溝はレーザー光を散乱させてレーザー光の吸収を促進することができる。
【0037】
また、本発明は、前記表面処理層110にもかかわらず、前記表面処理層110は低粗度の平滑面と見なせばよく、その上に順次形成される極箔150も低粗度の表面を備えることができる。本発明において、前記表面処理層110は0.5~1.5μmの表面粗度を有することが好ましい。
【0038】
好ましくは、本発明において前記表面処理層110はキャリア箔100の表面をエッチング処理して形成されてよい。例えば、前記表面処理層110は、硫酸、過酸化水素、水酸化ナトリウム及び少なくとも1種のBTA(ベンゾトリアゾール)を含むエッチング液で処理して形成されてよい。
【0039】
本発明において、前記拡散防止層120及び耐熱層140は、Ni、Co、Fe、Cr、Mo、W、Al及びPからなる群から選ばれる一つ以上の元素を含んでよい。例えば、前記拡散防止層及び耐熱層は単一金属層であってもよく、2種以上の金属の合金層又は1種以上の金属酸化物層であってもよい。
【0040】
例えば、単一金属層を形成するメッキは、ニッケルメッキ、コバルトメッキ、鉄メッキ、アルミニウムメッキなどが用いられてよい。2元系合金層を形成するメッキは、ニッケル-コバルトメッキ、ニッケル-鉄メッキ、ニッケル-クロムメッキ、ニッケル-モリブデンメッキ、ニッケル-タングステンメッキ、ニッケル-銅メッキ、ニッケル-リンメッキ、コバルト-鉄メッキ、コバルト-クロムメッキ、コバルト-モリブデンメッキ、コバルト-タングステンメッキ、コバルト-銅メッキ、コバルト-リンメッキなどが用いられてよい。3元系合金層を形成するメッキは、ニッケル-コバルト-鉄メッキ、ニッケル-コバルト-クロムメッキ、ニッケル-コバルト-モリブデンメッキ、ニッケル-コバルト-タングステンメッキ、ニッケル-コバルト-銅メッキ、ニッケル-コバルト-リンメッキ、ニッケル-鉄-クロムメッキ、ニッケル-鉄-モリブデンメッキ、ニッケル-鉄-タングステンメッキ、ニッケル-鉄-銅メッキ、ニッケル-鉄-リンメッキ、ニッケル-クロム-モリブデンメッキ、ニッケル-クロム-タングステンメッキ、ニッケル-クロム-銅メッキ、ニッケル-クロム-リンメッキ、ニッケル-モリブデン-タングステンメッキ、ニッケル-モリブデン-銅メッキ、ニッケル-モリブデン-リンメッキ、ニッケル-タングステン-銅メッキ、ニッケル-タングステン-リンメッキ、ニッケル-銅-リンメッキ、コバルト-鉄-クロムメッキ、コバルト-鉄-モリブデンメッキ、コバルト-鉄-タングステンメッキ、コバルト-鉄-銅メッキ、コバルト-鉄-リンメッキ、コバルト-クロム-モリブデンメッキ、コバルト-クロム-タングステンメッキ、コバルト-クロム-銅メッキ、コバルト-クロム-リンメッキ、コバルト-モリブデン-リンメッキ、コバルト-タングステン-銅メッキ、コバルト-モリブデン-リンメッキ、コバルト-タングステン-銅メッキ、コバルト-タングステン-リンメッキ、コバルト-銅-リンメッキなどが用いられてよい。
【0041】
好ましくは、前記拡散防止層120及び耐熱層140は、Ni及びPを含んでよい。
【0042】
前記拡散防止層120は、前記キャリア箔付き極薄銅箔を絶縁基板と高温でプレスする場合に、銅が剥離層に拡散することを抑制させる。剥離層への銅の拡散は、キャリア箔と極薄銅箔との金属結合を生成することがあり、これらの強い結合力によってキャリア箔の剥離が困難になることがあるが、拡散防止層120はこのような反応を抑制させることができる。
【0043】
前記キャリア箔付き銅箔において、剥離層130は、極薄銅箔とキャリア箔を剥離する時に剥離性を向上させるための層であり、前記キャリア箔を綺麗に且つ容易に剥離させるために導入される。前記剥離層はキャリア箔と一体に除去される。
【0044】
本発明において、前記剥離層130は、剥離性を有する金属又は金属合金を含んでよい。剥離性金属は、モリブデン又はタングステンを含んでよい。また、前記剥離層130は、メッキ触媒を含んでよい。例えば、前記剥離層130は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでよい。
【0045】
また、前記剥離層は、剥離性を有する有機剥離層であってもよい。例えば、前記剥離層は、BTA系列からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機物を含んでよい。
【0046】
前記極薄銅箔150は、厚さが12μm以下であってよい。好ましくは、前記極薄銅箔は、厚さが1.5~5μmであってよい。
【0047】
本発明において、前記極薄銅箔は、0.5~1.5μmの表面粗度(Rz)を有することが好ましい。
【0048】
極薄銅箔は用途によって粗化面と非粗化面を有してよい。粗化面は、ノドュレーション(nodulation)処理によって形成されてよく、非粗化面は、銅箔形成時に光沢剤と抑制剤を添加することによって形成されてよい。
【0049】
本発明において、極薄銅箔の表面はさらに表面処理されてよい。例えば、耐熱及び耐化学性処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか一つ又はこれらの組合せなどを挙げることができ、いずれの表面処理を行うかは、以降の工程によって適切に選択されてよい。
【0050】
耐熱及び耐化学性処理は、例えば、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム、モリブデン及びコバルトなどの金属のいずれか一つ又はこれらの合金をスパッタリング又は電気メッキ、無電解メッキによって金属箔上に薄膜形成することによって行うことができる。費用の観点では電気メッキが好ましい。
【0051】
クロメート処理には、6価~3価のクロムイオンを含む水溶液を用いることができる。クロメート処理は、単純な浸漬処理も可能であるが、好ましくは、陰極処理で行われてよい。例えば、陰極処理は、重クロム酸ナトリウム0.1~70g/L、pH 1~13、浴温度15~60℃、電流密度0.1~5A/dm、電解時間0.1~100秒の条件で行うことが好ましい。また、クロメート処理は、防錆処理上に実施することが好ましく、これによって耐湿及び耐熱性をより向上させることができる。
【0052】
シランカップリング処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性シラン、アミノ官能性シラン、オレフィン官能性シラン、アクリル官能性シラン、メタクリル官能性シラン及びメルカプト官能性シランからなる群から選ばれる一つ以上の物質又は混合物が使用されてよい。例えば、シランカップリング剤を水などの溶媒に0.1~15g/Lの濃度で溶解させ、室温~70℃の温度で金属箔に塗布したり、電着して吸着させる。シランカップリング処理後には加熱、紫外線照射などによって安定した結合を形成できる。加熱は、100~200℃の温度で2~60秒間行われてよい。
【0053】
以下では、図1Bを参照して本発明の他の実施例を説明する。
【0054】
図1Bに示すキャリア箔付き極薄銅箔は、図1Aに示したものとは違い、剥離層130及び耐熱層140との間にレーザー吸収層160がさらに含まれている。
【0055】
前記レーザー吸収層160は、低い光沢度と暗い色のメッキ層で構成される。例えば、前記レーザー吸収層160は、Cuを含み、Ni、Co、Fe、Pb及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属又はその合金、例えば1種、2種又は3種の金属又はその合金を含んでよい。
【0056】
本発明において、前記レーザー吸収層160の厚さは0.01~1μmであることが好ましい。より好ましくは、前記レーザー吸収層160の厚さは0.05~0.5μmであってよい。0.05μmの厚さでは、吸収層が色の変化に及ぼす影響が殆どなく、1μm以上の厚さでは、色が暗すぎてレーザー加工時に貫通してしまうという不良が発生し得る。
【0057】
図1Bに示すキャリア箔付き極薄銅箔は、レーザー吸収層160の付加によって、より高いレーザー吸収率を示すことができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されただけで、いかなる意味でもこれによって本発明が限定されるものと解釈されることはない。
【0059】
<実施例1>
【0060】
次の順序で積層構造を形成した。
【0061】
[A.キャリア箔]
【0062】
光沢面の表面粗度(Rz)1.2μm、厚さ18μmの電解銅箔を100g/Lの硫酸で5秒間浸漬し、酸洗処理後に純水で洗浄した。
【0063】
[B.表面処理層]
【0064】
次の前処理液でキャリア箔の表面を前処理して活性化させた。
【0065】
a.硫酸:200~300g/L、過酸化水素:50~150g/L、含窒素有機化合物、含硫黄有機化合物の中から選ばれる1種又は2種以上の有機剤を使用する。
【0066】
b.温度:40℃
【0067】
c.pH:0.01~0.5
【0068】
d.浸漬時間:5秒
【0069】
[C.拡散防止層]
【0070】
次の条件のメッキ欲でNi-Pメッキによる拡散防止層を形成した。
【0071】
a.Ni濃度:10~20g/L、P濃度5~15g/L
【0072】
b.pH:4.0、温度:30℃、電流密度:1.5A/dm、メッキ時間:2秒
【0073】
形成された拡散防止層の付着量は、金属(Ni)付着量301ug/dmであった。
【0074】
[D.剥離層]
【0075】
次の条件のメッキ欲でMo-Ni-Feメッキによる剥離層を形成した。
【0076】
a.Mo濃度:10~30g/L、Ni濃度:3~10g/L、Fe濃度:1~7g/L、クエン酸ナトリウム:100~200g/L、pH:10.2(アンモニア水30ml/L添加)
【0077】
b.温度:30℃、電流密度:10A/dm、メッキ時間:7秒
【0078】
形成された剥離層の付着量は1.01mg/dmであったし、剥離層の組成はMo 62.31重量%、Ni 30.8重量%、Fe 6.89重量%であった。
【0079】
[E.耐熱層]
【0080】
次の条件のメッキ欲でNi-Pメッキによって耐熱層を形成した。
【0081】
a.Ni濃度:10~20g/L、P濃度5~15g/L、pH:4.0
【0082】
b.温度:30℃、電流密度:1.5A/dm、メッキ時間:2秒
【0083】
形成された拡散防止層の付着量は、金属(Ni)付着量301ug/dmであった。
【0084】
[F.銅箔極箔]
【0085】
次の条件のメッキ欲で厚さ2μmの銅箔を形成した。
【0086】
a.CuSO-5HO:300g/L、HSO:150g/L
【0087】
b.温度:35℃、電流密度:20A/dm、メッキ時間:30秒
【0088】
[G.付加処理]
【0089】
極箔銅箔の表面に、耐熱及び耐化学性処理、クロメート処理、シランカップリング処理をさらに行った。
【0090】
<実施例2>
【0091】
剥離層と耐熱層との間にレーザー吸収層を付加する以外は、実施例1と同じ方法でキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。レーザー吸収層は次の条件のメッキ欲で形成した。
【0092】
a.銅濃度:1~5g/L、ニッケル濃度:1~5g/L、コバルト濃度:1~10g/L、硫酸アンモニウム:10~50g/L、クエン酸ナトリウム:30~70g/L
【0093】
b.pH:4.5、温度:30℃、電流密度:20A/dm、メッキ時間:4秒
【0094】
<実施例3>
【0095】
剥離層として有機剥離層を形成した以外は、実施例2と同じ方法でキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。有機剥離層は次の条件のメッキ欲で形成した。
【0096】
a.カルボキシベンゾトリアゾール濃度:1~5g/L、銅濃度:5~15g/L、HSO濃度:150g/L
【0097】
b.温度:40℃、浸漬時間:30秒
【0098】
<比較例1>
【0099】
表面処理層を省いた以外は、実施例1と同様にしてキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。
【0100】
<比較例2>
【0101】
表面処理層を省いた以外は、実施例2と同様にしてキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。
【0102】
<実験例>
【0103】
実施例1~3、比較例1及び比較例で製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片から表面粗度(Rz)を測定した。また、製造された試片を剥離し、剥離された面(S面)の光沢度、色を測定した。表面粗度、光沢度及び色の測定条件は、次の通りである。
【0104】
a.表面粗度
【0105】
測定装備:SURFCOM 1400D(TSK,東京精密)
【0106】
測定規格:IPC-TM-650規格によって測定
【0107】
b.光沢度
【0108】
測定装備:Gloss Metal VG7000,NIPPON DENSHOKU
【0109】
測定規格:Gs(60゜)、JIS Z871-1997
【0110】
c.色
【0111】
測定装備:CM-2500d,KONIKA MINOLTA
【0112】
測定規格:SCE、L*測定
【0113】
実施例1~3、比較例1及び比較例で製造されたキャリア箔付き極薄銅箔試片のレーザー加工性を評価した。レーザー加工条件は、次の通りである。
【0114】
d.レーザー加工性評価
【0115】
製造されたキャリア箔付き極薄銅箔を剥離した後、得られた極薄銅箔試片に対して、二酸化炭素ガスレーザービアホール(via hole)加工機を用いて、30μmホールサイズ加工のためにビームを使用し、レーザー出力7W及び5Wにおいてワンショット(one-shot)加工による銅箔に形成されたビアホールのサイズを測定した。この時、レーザー加工装備は、Hitachi社製のLaser drilling machine LC-4K seriesを用いた。
【0116】
下表1に、表面粗度、光沢度、色及びレーザー加工性の評価結果を整理して示す。
【0117】
【表1】
【0118】
表1から、キャリア箔表面に表面処理層が形成された実施例1において、表面処理層が形成されていない比較例1に比べて、剥離された極箔のS面光沢度が低く、COレーザーによるホールサイズが増加していることが分かる。一方、表面処理層とレーザー吸収層を共に形成した実施例2及び実施例3において、実施例1に比べて光沢度及び色の差がより目立ち、レーザーホールサイズが増加していることが分かる。
【0119】
図2A及び図2Bはそれぞれ、実施例1の製造過程のうち、表面処理層の形成前と後のキャリア箔表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0120】
この写真から、表面処理によって表面に突起構造が発達していることが分かる。
【0121】
図3A及び図3Bはそれぞれ、比較例1及び実施例2の試片から剥離された状態の極薄銅箔のS面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0122】
この写真から、表面処理層が形成されていない比較例1では、キャリア箔表面と同じ状態を示すのに対し、実施例2では、平均直径2μm以下の凹んでいる複数の溝が配列された陰刻構造が確認できる。この構造は、図2Bの表面陽刻構造に実質的に対応する構造であることが分かる。
【0123】
図4A及び図4Bはそれぞれ、実施例2及び比較例1によって製造された試片のレーザー加工後の貫通ホールを撮影した電子顕微鏡写真である。図示のように、同じレーザー出力において実施例の試片に、比較例に比べて大きい開口直径の孔が形成されていることが分かる。この結果は、本発明の積層構造を有するキャリア箔付き極薄銅箔は、従来に比べてより短時間で及び/又はより広い直径のビアホール又はスルーホールの形成を可能にすることを示す。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施例を詳細に説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、上述した実施例に対して本発明の範疇から逸脱しない限度内で様々な変形が可能であることが理解できよう。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定して定められてはならず、添付する特許請求の範囲、及びこの特許請求の範囲と均等なものによって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、キャリア箔付き銅箔及びこれを採用した銅箔積層板に適用可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】