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特表2024-536266加工機における加工プロセスの監視方法、及び加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】加工機における加工プロセスの監視方法、及び加工機
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4065 20060101AFI20240927BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G05B19/4065
B23Q17/09 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519786
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022074844
(87)【国際公開番号】W WO2023052063
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021125418.3
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ニースナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ハマン
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ハンク
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029DD02
3C269AB09
3C269BB11
3C269MN16
3C269MN24
3C269MN29
3C269MN40
(57)【要約】
本発明は加工機(1)における加工プロセス(49)を監視する方法に関し、その方法は、上部ツール(11)と下部ツール(9)とを含む加工ツールによってワーク(10)を加工する加工プロセス(49)を含み、各加工プロセス(49)において、時間同期したプロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、加工機(1)のセンサ(29、31、32、33)によって検出し、且つ制御装置(15)に送信し、その加工プロセス(49)中に時間に依存して確定されたプロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、変換によって、力-変位曲線を有する特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)に変換し、その特性曲線は、時間に依存せずに、力-変位-グラフに描かれているものであり、その力-変位グラフにおける特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)の経過から、加工ツール(11、9)の摩耗を互いに別個に確定する、及び/又は、少なくとも1つの加工プロセス(49)の基礎となるワーク(10)の材料を確定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(1)における加工プロセス(49)を監視する方法であって、
加工プロセス(49)において、上部ツール(11)と下部ツール(9)とを含む加工ツールによってワーク(10)を加工し、
各加工プロセス(49)中において、時間同期したプロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、前記加工機(1)のセンサ(29、31、32、33)によって検出し、且つ制御装置(15)に送信し、
前記加工プロセス(49)中に時間に依存して確定された前記プロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、変換によって、力-変位曲線を有する特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)に変換し、その特性曲線は、時間に依存せずに、力-変位グラフに描かれているものであり、
前記力-変位グラフにおける前記特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)の経過から、前記加工ツール(11、9)の摩耗を互いに別個に確定する、及び/又は、少なくとも1つの前記加工プロセス(49)の基礎となる、前記ワーク(10)の材料を確定する、方法。
【請求項2】
複数の連続する加工プロセス(49)から確定された前記プロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)の信号分散を、前記制御装置(15)において除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号分散の除去のために、前記加工プロセス(49)中の上部及び/又は下部ツール(11、9)の追加の変位部分を、及び/又は、上部及び/又は下部ツール(11、9)のストローク運動中の前記加工機(1)の機械フレーム(2)の弾性的な変位部分を、少なくとも1つのセンサ、特に変位センサ(29)、及び/又は加速度センサ(33)によって検出することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号分散の除去のために、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の変位部分の差異を、繰り返しの加工プロセス(49)の際の、前記加工プロセス(49)中の待ち時間(50)の結果として検出することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
検出された変位部分を回帰関数によって評価し、前記上部及び下部ツール(11、9)の初期変位を確定する、又は、
前記機械フレーム(2)の弾性的な変位部分を機械部品及びツール部品の解析モデルによって表現することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
信号分散が除去されたプロセス信号(52、53、54、55、56、58)を、変換によって、時間に依存しない、力-変位グラフにおける力-変位曲線を有する特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)に変換し、
その際、前記初期変位を、増加する加工力、及び、その後の前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の測定された変位の減算又は加算に基づいて、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の位置変位に対する回帰関数によって決定し、前記特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、70、71、72)の前記力-変位曲線に割り当てることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加工プロセス(49)中に、少なくとも1つの力センサ(31)によってストローク力を、少なくとも1つの変位センサ(29)によって前記上部及び/又は下部ツール(11、9)のストローク運動を、及び、少なくとも1つの加速度センサ(33)によって前記機械フレーム(2)の変位部分を、それぞれの前記加工プロセス(49)のための時間に依存して検出し、
前記プロセス信号(52、53、54、56、57、58)からの前記信号分散の除去、及び1つの変換によって、特性曲線(59)の前記力-変位曲線を、前記加工ツール(11、9)の摩耗の確定のための基礎とすることを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
摩耗のない上部及び下部ツール(11、9)の特性曲線(60)の基準の力-変位曲線と、上部ツール(11)の特性曲線(62、63、64、65)の、及び/又は下部ツール(9)の特性曲線(67、68、69)の、前記加工プロセス(49)から確定された力-変位曲線との比較から、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の摩耗状態を確定することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記摩耗状態の分類を、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)に対して別個に又は共同に確定し、
特性曲線(62、63、64、65;67、68、69、71、72)によって検出された前記摩耗状態を前記分類と比較し、
検出された前記摩耗状態が許容される分類から外れている場合に、好ましくは、前記制御装置(15)によってツール交換を指示することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
摩耗のない上部及び下部ツール(11、9)の特性曲線(60)の基準の力-変位曲線と、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の特性曲線(71、72)の確定された前記力-変位曲線の重ね合わせとの比較から、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の摩耗状態を確定することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加工プロセス(49)中に、少なくとも1つの音センサ(32)によって音信号を検出し、フーリエ変換によって周波数領域に変換し、その後、周波数領域の振幅に基づいて基準値との比較を行うことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ワーク(10)からワーク片(8)を切断する切断過程を含む加工プロセス(49)のための上部及び下部ツール(11、9)について、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の摩耗との直接的な相互関係から決定される切断面品質を監視することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ワーク(10)、好ましくは金属薄板を加工するための加工機であって、
上部ツール(11)であって、ストローク駆動装置(13)によって、ストローク軸(14)に沿って、前記上部ツール(11)によって加工されるワーク(10)に向かう方向に、及びその反対方向に移動可能な、上部ツール(11)と、
前記上部ツール(11)と位置合わせされ、ストローク駆動装置(27)によって下部ストローク軸に沿って前記上部ツール(11)に向かう方向に、及びその反対方向に移動可能な下部ツール(9)と、
制御装置(15)と、を備え、その制御装置によって、少なくとも前記上部ツール(11)及び/又は前記下部ツール(9)が、ストローク運動のために制御可能である、加工機において、
前記制御装置(15)は、請求項1~12のいずれか一項に記載の、加工機(1)における加工プロセス(49)を監視する方法を実行するように形成されていることを特徴とする、加工機。
【請求項14】
閉じた機械フレーム(2)、又はC字形状の機械フレームを備えることを特徴とする、請求項13に記載の加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機における加工プロセスを監視する方法、及び加工機に関し、特に、板状のワークを加工ツールによって加工する加工プロセスを実施するための加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、機械スピンドルに設置されたツールクランプ装置を監視するための方法が知られている。ツールクランプ装置に設置された機械スピンドルのクランプ力は、ツール又はツールホルダをクランプ又はリリースさせる作動要素に、クランプ位置の方向に力を加えるバネアセンブリによって生成される。ツール又はツールホルダがリリース及び/又はクランプされる際に、バネ力及び作動要素の変位が連続的に測定され、時間の関数として記録される。これらの記録された関数から、ツールクランプ装置の状態を特徴付ける少なくとも1つのパラメータが確定される。時間の関数としてのバネ力と変位から、バネ特性曲線を変位の関数としてバネ力の形において確定することができ、そのバネ特性曲線の評価によって一連の特性パラメータに関する情報を得ることができる。
【0003】
特許文献2から、特に自動化の際の加工における効果を高めるために、ツール摩耗の監視システムが知られている。その際、ツールの摩耗は、切断力に関連して検出される。力-変位グラフにおける、測定値から取得された直線的に増加する特性曲線によって示されるように、増加する摩耗によって増加する切断力が必要とされる。
【0004】
特許文献3は、工作機械におけるツール摩耗の監視方法を開示している。この方法は、最初に、ツールの摩耗の許容範囲を決定するステップを含む。次いで、切断ツールのデータが、例えば切断力を時間に依存して検出することによって、典型的な加工領域から検出される。次いで、許容範囲に依存して摩耗を確定するために、機械領域の値から特性曲線の係数が確定され、実際に検出されたデータと比較される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019123838A1号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第20050115153A号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0089191A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、加工機における加工プロセスを監視する方法、及び加工機を提案し、それによってワークの加工の際に安定した品質を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、加工機における加工プロセスを監視するための方法によって解決される。その際、加工プロセスにおいて、上部ツールと下部ツールとを含む加工ツールによって、好ましくは板状のワークを加工し、各加工プロセス中に、時間同期したプロセス信号を、加工機のセンサによって制御装置において検出し、加工プロセス中に時間に依存して確定されたプロセス信号を、変換によって、力-変位曲線を有する特性曲線に変換し、その特性曲線は、時間に依存せずに、力-変位グラフに描かれているものであり、力-変位グラフにおける特性曲線の経過から、加工ツールの摩耗を、及び/又は、板状のワークの材料を確定する。加工機のセンサによる、加工ツール及びワークのそれぞれの加工プロセス中に多数のプロセス信号の検出に基づいて、力-変位グラフに時間に依存せずに描かれる特性曲線への確定されたプロセス信号の変換を用いた評価方策によって、加工プロセス内のプロセス信号の変化が、特に加工ツールの摩耗、及び/又は加工されるワークの材料に関して、評価される。その結果、ワークの加工品質、特に切断面品質も評価することができる。上記の制御装置は、加工機内に設けることもできるし、加工機の外部に設けることもできる。また、制御装置とは、信号及び/又は取得された値がクラウドネットワークと交換されること、又は評価がクラウドネットワーク又は同様のネットワークにおいて行われることをも意味すると解される。
【0008】
プロセス信号の変換の前に、複数の連続する加工プロセスから確定されたプロセス信号の信号分散を除去することが好ましい。この信号分散の除去によって、摩耗に関する力-変位曲線の正確な評価、及び/又は、加工されたワークの材料の決定が可能となり、その結果、ワークに施された切断面の品質も確定することができる。
【0009】
信号分散の除去のために、加工プロセス中に、特に加工ツールのストローク運動中に、上部及び/又は下部ツールの追加の変位部分を、同一又は異なる信号を確定する1つ以上のセンサ、特に少なくとも1つの変位センサ、及び/又は少なくとも1つの加速度センサによって検出することが、有利である。
【0010】
さらに、好ましくは、信号分散の除去のために、例えば、変位センサ及び/又は加速度センサのようなセンサによって、加工機の機械フレームの弾性的な変位部分を検出することができる。加工ツール及び機械フレームのこれらの弾性的な変位部分は、加工機における加工ツールのストローク運動における拡張された変位距離につながり、その拡張された変位距離は、力が印加された機械フレームにおける弾性変形に基づいて、又は、力が印加された機械部品、及び、プロセス力が増大した加工ツールから生じる。
【0011】
さらに、信号分散の除去のために、上部及び/又は下部ツールの変位部分の差異を、繰り返しの加工プロセスの際の連続した作業サイクルの結果として、検出することが好ましい。特に、2つの作業サイクル間又は加工プロセス間の待ち時間、及び反復プロセスの際の上部及び/又は下部ツールの移動における異なる加速度、或いは速度の結果として、加工ツールのストローク運動中において、そのような時間的なドリフト、或いは差異が起こり得、それは、プロセス信号の評価を偽ることになる。
【0012】
追加して確定された変位部分を、次いで回帰関数によって評価し、上部及び下部ツールの初期変位を確定する。この初期変位は、加工機の増加した加工力の結果としての上部及び/又は下部ツールの位置変位と、それに続く、ツールのストローク運動の、測定された変位の減算或いは加算とから確定される。これによって、ツールのダイナミクスと加工機のダイナミクスをほとんどフリーズさせることができ、その結果、加工機とツールのダイナミクスに起因する加工信号の信号分散を除去することができる。
【0013】
さらに、信号分散が除去されたプロセス信号を、変換によって、時間に依存しない、力-変位グラフにおける力-変位曲線を有する特性曲線に変換し、その際、加工されるワークに対する加工ツールの初期変位を基準とすることが好ましい。代替的には、機械フレームの弾性的な変位部分は、機械部品とツール部品の解析モデルによって表現することができる。
【0014】
加工プロセス中に、加工機の少なくとも1つのセンサ、特に力センサによってストローク力を、少なくとも1つのセンサ、特に変位センサによって上部ツール及び/又は下部ツールのストローク運動を、少なくとも1つの加速度センサによって機械フレーム及び加工ツールの変位部分を、それぞれの加工プロセスの時間に依存して検出し、信号分散が除去されたプロセス信号から、変換によって、力-変位グラフにおける力-変位曲線を有する特性曲線を、ツール摩耗の確定のために表現することが好ましい。これらのパラメータの考慮と調べによって、力-変位曲線の、及び、ひいては摩耗の正確な評価が可能になる。
【0015】
特に、摩耗のない加工ツールを用いた基準の力-変位曲線と、加工プロセスによって確定された少なくとも1つの力-変位曲線との比較から、加工ツールの摩耗状態を確定することが好ましい。それによって、加工ツールの摩耗の増大を、加工プロセス中に常時、監視することができ、製造されたワークの品質についても言及することができる。
【0016】
上部及び下部ツールについて、摩耗状態の分類を、好ましくは、共同に又は個別に確定し、検出された摩耗状態を、制御装置に記憶された分類と比較する。それによって、加工中に増加する摩耗の継続的な監視が得られ、それは品質管理のために記録することもできる。検出された上部及び/又は下部ツールの摩耗が、加工品質の最低要件が満たされる所定の分類から外れている場合には、好適にも、制御装置によってツール交換のための信号が出力される。
【0017】
さらに、加工プロセス中に、少なくとも1つの音センサによって音信号を各加工プロセスにおいて検出し、その音信号をフーリエ変換によって周波数領域に変換し、その後、周波数領域の振幅に基づいて基準値との比較を行うことが好ましい。基準値も周波数領域の振幅に基づいている。この比較は、力-変位曲線の特性曲線からのメッセージを検証するために使用される。ワークの加工中に、特にパンチ加工の際に、加工されるワークの異なる材料に対して特徴的な音信号が発生する。加工プロセスの検出されたプロセス信号からの力-変位曲線を有する、これらの確定された特性曲線は、現在の加工プロセスにどの材料が関与しているかを示すことを可能とするために、好ましくは、制御装置に記憶された基準の力-変位曲線と比較される。これは、自動生産の準備として正しいワーク材料が提供されることを保証するために、自動生産の際の加工プロセスの監視のために特に重要である。
【0018】
さらに、ワーク、特に板状のワークからワーク片を切断する切断過程のための加工ツールについて、加工ツールの摩耗との直接的な相互関係から決定される切断面品質を監視することが好ましい。このような切断用の加工ツールの、例えばパンチ又はパンチダイの摩耗が増大する場合、ワーク又はワーク片の切断面の経過に変化が生じる。それによって、切断面の品質をツール摩耗に依存して評価することができる。
【0019】
本発明の基底となる課題は、ワーク、特に板状のワークの加工のために提供される加工機によってさらに解決される。この加工機は、上部ツールを有する加工ツールを含み、その上部ツールは、ストローク駆動装置によってストローク軸に沿って、その上部ツールによって加工されるワークに向かう方向及びその反対方向に移動可能であり、また、その上部ツールは、好ましくは、ストローク軸に垂直に延びる上部位置決め軸に沿って、位置決め可能であり、モータ駆動装置を有し、このモータ駆動装置によって上部ツールは上部位置決め軸に沿って移動可能である。また、加工ツールは、下部ツールを含み、その下部ツールは、上部ツールと位置合わせされ、好ましくは、上部ツールに向かう方向及びその反対方向にストローク駆動装置によって下部ストローク軸に沿って移動可能であり、下部ツールのストローク軸に垂直に方向付けられた下部位置決め軸に沿って位置決め可能であり、特に、モータ駆動装置によって下部位置決め軸に沿って移動可能である。加工機に接続された制御装置によって、上部ツール及び下部ツールの移動のためのモータ駆動装置を制御可能である。その制御装置によって、上記の実施形態のいずれか一つの加工機は、ワークの加工のための加工プロセスを監視するために、制御可能である。このような加工機は、好ましくは、自動生産に使用可能である。加工機の状態検出によって、製造されるワークの品質を、自動生産の全体にわたって監視することができる。
【0020】
本発明、並びにその他の有利な実施形態及び更なる形態について、以下において図面に示す実施例を参照してより詳細に説明する。本明細書及び図面から読み取れる特徴は、本発明に従って、個々に、又は任意の組み合わせにおいて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】加工機の斜視図である。
図2図1に代わる加工機の斜視図である。
図3】加工ツールの上部ツールと下部ツールとの概略的な側面図である。
図4図3に代わる加工ツールの上部ツールと下部ツールとの概略的な側面図である。
図5】加工機によって検出された時間同期されたプロセス信号を示すグラフである。
図6】加工機によるワークの切断プロセスの変位-時間グラフである。
図7図6に従った、切断プロセスによって加工されたワークの力-時間グラフである。
図8】加工機の弾性的な機械部分を有する、加工ツールの上部ツールの変位-時間グラフである。
図9】加工機の弾性的な機械部分を有しない上部ツールのパンチ変位の変位-時間グラフである。
図10】力-変位グラフにおける、図9によるプロセス信号の力-変位曲線を示す。
図11】加工ツールの摩耗検出のための複数の特性曲線を有する力-変位グラフである。
図12図3による、摩耗のない及び摩耗のある上部ツールと、摩耗のない及び摩耗のある下部ツールの、切刃の概略的な拡大断面図である。
図13】摩耗のない上部ツールと下部ツールとを用いたパンチ加工の概略的な断面図である。
図14】摩耗のある上部ツールと下部ツールとを用いたパンチ加工の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、例えばパンチプレス機として形成された加工機1を示す。この加工機1は、閉じた機械フレーム2を有する支持構造を含む。機械フレーム2は、2本の水平フレーム部材3、4と、2本の垂直フレーム部材5、6とを含む。機械フレーム2は、フレーム内部空間7を囲んでおり、このフレーム内部空間7は、上部ツール11と下部ツール9とを有する、加工機1の作業領域を形成している。
【0023】
加工機1は、板状のワーク10の加工のために使用され、このワーク10は、簡略化のために図1には示されておらず、加工目的のためにフレーム内部空間7に配置することができる。加工するワーク10は、フレーム内部空間7に設けられたワーク支持部上に載置される。機械フレーム2の下部の水平フレーム部材4に設けられたワーク支持部の凹部には、例えばパンチダイの形態の下部ツール9が取り付けられている。このパンチダイには、ダイ開口部を設けることができる。パンチ加工の際に、パンチとして形成された上部ツール11は、パンチダイとして形成された下部ツールのダイ開口部に突入する。
【0024】
加工機1の加工ツールは、上部ツール11と下部ツール9とを含む。上部ツール11と下部ツール9とは、パンチとパンチダイとの代わりに、ワーク10を成形するための曲げパンチと曲げダイとして使用することもできる。
【0025】
上部ツール11は、プランジャ12の下端のツールホルダに固定されている。プランジャ12は、ストローク駆動装置13の一部であり、このストローク駆動装置13によって、上部ツール11をストローク軸14に沿ってストローク方向に移動することができる。ストローク軸14は、図1に示された加工機1の制御装置15の座標系のZ軸の方向に延びる。ストローク軸14に対して垂直に、ストローク駆動装置13は、二重矢印の方向に、位置決め軸16に沿って移動することができる。位置決め軸16は、制御装置15の座標系のY方向に延びる。上部ツール11を保持するストローク駆動装置13は、モータ駆動装置17によって位置決め軸16に沿って移動する。
【0026】
プランジャ12のストローク軸14に沿った移動、及びは、ストローク駆動装置13の位置決め軸16に沿った位置決めは、モータ駆動装置17によって行われる。そのモータ駆動装置17は、位置決め軸16の方向に延び、機械フレーム2に堅固に連結された駆動スピンドル18を有する駆動装置17、特にスピンドル駆動装置の形態である。ストローク駆動装置13は、位置決め軸16に沿った移動の間、上部フレーム部材3の3本のガイドレール19に案内され、そのうちの2本のガイドレール19は図1に見ることができる。残りの1本のガイドレール19は、目に見えるガイドレール19と平行に延び、数値制御装置15の座標系のX軸方向に間隔を空けて配置されている。ストローク駆動装置13のガイドシュー20はガイドレール19上に延びる。ガイドレール19とガイドシュー20との相互係合は、このガイドレール19とガイドシュー20との連結が鉛直方向に作用する荷重も吸収できるように形成されている。したがって、ストローク装置13は、ガイドシュー20及びガイドレール19を介して機械フレーム2に吊るされている。ストローク駆動装置13の更なる構成要素は、例えば、くさび機構21であり、このくさび機構21によって、下部ツール9に対する上部ツール11の位置が調整可能である。
【0027】
下部ツール9は、下部位置決め軸25に沿って移動可能に取り付けられている。この下部位置決め軸25は、数値制御装置15の座標系のY軸の方向に延びる。好ましくは、下部位置決め軸25は、上部位置決め軸16と平行に方向付けられている。下部ツール9は、下部位置決め軸25において直接、モータ駆動装置26によって位置決め軸25に沿って移動させることができる。代替的又は付加的に、下部ツール9は、モータ駆動装置26によって下部位置決め軸25に沿って移動させることができるストローク駆動装置27に設けることもできる。この駆動装置26は、好ましくはスピンドル駆動装置として形成されている。下部ストローク駆動装置27は、上部ストローク駆動装置13の構造に対応することができる。同様に、モータ駆動装置26は、モータ駆動装置17に対応することができる。
【0028】
下部ストローク駆動装置27は、同様に、移動できるように下部水平フレーム部材4に割り当てられたガイドレール19に取り付けられている。ストローク駆動装置27のガイドシュー20は、ガイドレール19上に延び、それによって、下部ツール9におけるガイドレール19とガイドシュー20との間の連結も、垂直方向に作用する荷重を吸収することができる。それに応じて、ストローク駆動装置27もまた、ガイドシュー20及びガイドレール19を介して、機械フレーム2上に、且つ、上部ストローク駆動装置13のガイドレール19及びガイドシュー20から距離を置いて吊るされている。また、ストローク駆動装置27は、くさび機構21を含むことができ、このくさび機構21によって、下部ツール9の位置或いは高さが、Z軸に沿って調節可能である。
【0029】
代替的に、上部及び/又は下部駆動装置13、27は、他の駆動部品、或いは駆動コンセプトを用いて形成することもできる。例えば、電気的に制御可能な駆動機構、又は機械的な駆動コンセプトが提供され得る。また、空気圧式の、又は油圧式の駆動コンセプトが使用され得る。
【0030】
制御装置15は、上部位置決め軸16に沿って上部ツール11を移動させるためのモータ駆動装置17と、下部位置決め軸25に沿って下部ツール9を移動させるためのモータ駆動装置26との両方を、互いに独立して制御することができる。それによって、上部ツール11と下部ツール9とを座標系のY軸方向に同期して移動可能である。また、上部及び下部ツール11、9の独立した移動も、異なる方向に制御可能である。この上部及び下部ツール11、9の独立した移動は、同時に制御することができる。上部ツール11と下部ツール9との間の移動の分離によって、ワーク10の加工における柔軟性の向上を達成することができる。上部及び下部ツール11、9は、ワーク10の加工のために、様々な方法によって形成することもできる。
【0031】
図2は、図1に示す加工機1の代替的な実施形態の斜視図を示す。この加工機1は、例えば、機械フレーム2の構造が異なる。この加工機1においては、機械フレーム2はC字形状に形成され、すなわち、上部水平フレーム部材3と下部水平フレーム部材4との間に垂直機械フレーム5が設けられている。上部水平機械部材3の開放端には、例えば上部ツール11が設けられている。反対に、下部水平フレーム部材4の開放端には、下部ツール9が設けられ、上部ツール11に隣接している。上部水平フレーム部材3に、上部ツール11に加えて、又はその代替に、例えば、レーザー切断、又はプラズマ切断のための切断加工ヘッド28を、設けることができる。上部及び下部ツール11、9に代えて及び/又は加えて、曲げツールを設けることもできる。
【0032】
変位可能な実施形態の加工機1は、複数のセンサを備える。これらのセンサによって、加工機1によるワーク10の加工中に様々な信号を検出することができる。これらのセンサは、好ましくは、信号が検出される有効な方向に配置されている。機械フレーム2の曲げ応力、又は、例えば垂直フレーム部材6におけるC字形状の機械フレームの拡張を検出するために、例えば、センサをひずみゲージとして形成することができる。センサはまた、例えば、上部及び/又は下部ツール11、9の移動及び/又はストローク運動中に発生する電流及び/又は電圧のような駆動力の信号を検出することもできる。液圧駆動の場合、センサは、作動ストロークの際に発生する、圧力室内の圧力曲線を検出することもできる。センサはまた、データを確定し監視するために、様々な音レベルを検出することができる。それぞれのセンサの選択と使用は、加工機における加工プロセスの監視のために確定され、分析されるプロセス信号に依存する。例えば、少なくとも1つの変位センサ29は、上部ツール11及び/又は下部ツール9のストローク運動を検出するために、上部ツール11及び/又は下部ツール9上に、又はその中に設けられる。さらに、ワーク10に作用する力を検出するために、少なくとも1つの力センサ31を上部ツール11及び/又は下部ツール9に設けることができる。さらに、少なくとも1つの音センサ32を機械フレーム2に設けることができる。さらに、1つ以上の加速度センサ33を機械フレーム2、上部ツール11及び/又は下部ツール9に設けることができる。C字形状の機械フレーム2が設けられる場合、少なくとも1つの加速度センサ33は、好ましくは、上部及び下部水平フレーム部材3、4の自由端の領域に配置される。
【0033】
図3は、上部ツール11の概略的な側面図と下部ツール9の概略的な断面図を示す。本実施例は、切断ツール又はパンチツールである。上部ツール11は、クランプピン36を有する本体35を含む。本体35には、スタンプ面、或いはパンチ面38を有する切断ツール37が形成されており、この切断ツール37は、切刃39によって全周に亘って囲まれている。下部ツール9はダイ、特に穴あきダイとして形成されている。下部ツール9の本体41には、貫通孔42が設けられている。貫通孔42からワーク10の支持面44への移行部には、切刃46が設けられており、この切刃46には、周囲が拡大された貫通孔42に合流する切断面47が連結している。
【0034】
図4は、図3に示す実施形態に対する上部ツール11及び下部ツール9の代替的な実施形態を示す。本実施形態においては、下部ツール9の切刃46の長さは、上部ツール11の切刃39の長さ及び/又は形状と異なる。本実施形態から、例えば、切刃46をダイ9上の貫通孔42の内側に設けることができ、また貫通孔42の外側にも設けることができることが示される。また、上部ツール11は、長方形のパンチ面38に代えて、正方形のパンチ面又はスタンピング面、又は円形のパンチ面、又はその他の自由な形状のものを含み得る。
【0035】
上部ツール11の切刃39と下部ツール9の切刃46は共に摩耗する。上部及び下部ツール11、9の摩耗は、ワーク10の切断品質、或いは加工品質に悪影響を及ぼす。連続する多数の加工プロセス49(図5参照)の際に、特に自動生産の際に、安定した加工品質を達成するために、以下に詳述する、加工プロセス49の監視が実施される。同時に、加工プロセス49の監視によって、制御装置15による、得られた情報に基づいて加工プロセス49のパラメータの積極的な調整が可能となり、それによって、自動生産中においても自動化された改善を行うことができる。
【0036】
後述する監視方法は、上部及び下部ツール11、9の摩耗を確定することができる。また、加工のワーク10、特に板状のワークのどの材料が基礎を成しているかを調べ、確定することも可能である。さらに、ワーク片8にさらなる加工が予定されており、それによってワーク10から生成される残留グリッドが廃棄物として機能する場合に、ワーク10から切り出されたワーク片8の切断面品質についても言及することができる。また、1つ以上のワーク片8が廃棄物として分離又は切り取られたワーク10の切断面品質についても言及することができる。その際、ワーク10の加工は、切抜き、パンチング、切断、切落し等を含むことができる。
【0037】
図5は、例えば3回の連続する加工プロセス49について時間同期されたプロセス信号を表示する概略的なグラフを示す。この加工プロセス49は、例えば、図3に示すようなパンチツールを用いたワーク10のパンチ加工に関するものである。加工プロセス49中には、上部ツール11及び/又は下部ツール9の後続のストロークが制御される前に、例えば、板状のワーク10が新たな加工位置に移動されるまで、及び/又は上部ツール11及び下部ツール9が対応する加工位置に移動されるまで、上部及び下部ツール11、9の待機時間又は待ち時間50が存在する。グラフには、時間的に同期した複数のプロセス信号が示されており、各プロセス信号はセンサによって検出される。プロセス信号52は、例えば、変位センサ29によって上部ツール11のストローク運動を検出することができる。これは、特に、上部ツール11のみがストローク運動によって制御される場合に適用される。プロセス信号53は、例えば切断過程の際に力センサ31によって確定された力を示す。プロセス信号54は、例えば加速度センサ33によって取得され、加工プロセス49中の機械フレーム2の拡張の際の変位部分を示す。プロセス信号55は、音センサ32によって確定される。プロセス信号56及び/又は57及び/又は58は、それぞれ加速度センサ33によって検出される。加速度センサ33は、機械フレーム2のX、Y及び/又はZ方向における変位部分を検出することができる。プロセス信号52~58の検出のための個々のセンサの名称は例示的なものに過ぎず、データ又は情報は、検出されたプロセス信号から他のセンサによっても計算され、決定され得るものと、解される。
【0038】
図6は、例えば、加工プロセス49の多数の特性曲線を重ね合わせたものからの、上部ツール11の変位-時間グラフを示す。時刻t1に上部ツール11のワーク10への接近移動が開始する。時刻t2に上部ツール11がワーク10に突当る。時刻t3に切断過程が終了する。このことから、切断過程開始時に、例えば10%の信号分散が既に発生し得ることがわかる。時刻t3付近の切断領域においては、例えば40%の信号分散が存在する可能性がある。信号分散は干渉によって引き起こされ、その結果、ワークの加工中に変化が生じ、それは加工品質に悪影響を及ぼす。これらの信号分散は、プロセス信号の評価に影響を与え、以下に説明するように除去される。
【0039】
図7は、上部ツール11のワーク10に対するストローク運動及びパンチ加工の際の、複数の加工プロセス49の、図6によるストローク変位と同時の、力-時間グラブにおける特性曲線を示す。時刻t2における力の増加から、切断過程の開始を認識することができる。既にこの時点おいても、印加される力において、例えば15%の力の信号分散がある、すなわち、上部ツール11がワーク10に接触する時刻は、複数の連続する加工ステップの際に、時系列において同一ではない。このような時系列においては、実際には観察できない信号分散が可視化される。ワーク10が切断される時刻t3についても同様である。
【0040】
多数の連続する加工プロセス49について図6及び図7に示される信号分散は、以下の事実に基づいている。すなわち、特に、力を負荷された上部及び/又は下部ツール11、9の、並びに機械フレーム2の弾性的な変形の結果として、上部及び下部ツール11、9の追加的な変位部分、及び機械フレーム2の弾性的な変位部分が、上部及び/又は下部ツール11、9のストローク運動においてより長いストローク変位をもたらす。さらに、加工プロセス49中の待ち時間50の結果として、上部及び/又は下部ツール11、9のストローク運動に時間的なずれ、或いは差異が生じる。この時間的な差異は、例えば、電気モータの変化する応答挙動、加工機1に設けられる油圧バッファア貯蔵部の充填レベルなどに起因する。
【0041】
図8は、例えば、上部ツール11のストローク変位を、機械フレーム2の弾性的な変位部分とともに示す。Y軸は、機械フレーム2の弾性的な変位部分を示し、その変位部分はX軸に沿って経時的に描かれている。特性曲線58は、例えば、センサによって検出可能な変位測定によって検出された変位部分を示す。
【0042】
図9は、図8に類似したグラフを示しており、その際、例えば加速度センサ33によって検出された弾性的な変位部分が、機械フレーム2において除去されている。例えば、時刻t4における特性曲線58の最初の屈曲は、上部ツール11のワーク10への突当りを示し、一方、時刻t5における特性曲線58の後続の屈曲は、上部ツール11のワーク10への貫通を示す。機械フレーム2の弾性的な部分は、特性曲線58の値から直接測定することもできる、又は、弾性的な成分の解析モデルによって回帰関数として確定することもできる。機械フレーム2の変位部分を加算或いは減算することによって、この信号分散だけを特性曲線58から除去することができる。このステップは、ツールダイナミクス及び機械ダイナミクスのフリーズ、或いはツールダイナミクス及び機械ダイナミクスの除去ともいうことができる。例えば、加工プロセス49中の切断力曲線を示すプロセス信号53についても同様である。
【0043】
これに基づいて、プロセス信号55~58の時間依存性の除去は、変位-時間グラフの特性曲線58を力-変位グラフに変換することによって行われる。図10は、この変換によって得られた特性曲線59の、そのような力-変位曲線を示す。図5による時間同期されたプロセス信号55~58に対して時間に依存しないことによって、個々の加工プロセス、特に曲げプロセス又は切断プロセスの特性曲線59の推移が、より比較可能になる。それによって、一定のワーク及びツール条件下において、各移動変位に対して同一の仕事、すなわち、変位当たりの同一の力が要求されるため、特性曲線59のばらつきを低減することができる。
【0044】
時間依存性の除去によって、摩耗に関して、ひいては、好ましくは、製造された切断面の品質に関して、上部及び/又は下部ツール11、9の力-変位曲線の正確な評価も可能となる。
【0045】
図11は、例えば、特性曲線の複数の力-変位曲線が互いに割り当てられた力-変位グラフを示す。X軸に沿って変位、特にパンチ変位が描かれ、Y軸に沿って切断力が描かれている。図11によるこのグラフは、摩耗のない、上部及び/又は下部ツール11、9及び/又は加工ツールに対する、上部ツール11及び/又は下部ツール9及び/又は加工ツールの検出された摩耗を示すために役立つ。
【0046】
図12は、概略的に拡大された上部ツール11の切刃39、及び下部ツール9の切刃46を示す。上部ツール11及び下部ツール9がまだ未使用の場合には、切刃39及び46は、例えば、実線で示すように、直角に、特に角がとがって形成されている。使用の過程において、これらの切刃39、46は摩耗する。その際、これらの切刃39、46は破線40で示すように丸みを帯びる。上部ツール11の切刃39は、その際、下部ツール9の切刃46よりもはるかに激しく、且つ速く摩耗する。
【0047】
図13は、加工プロセス中の上部及び下部ツール11、9の切刃の拡大された概略的な断面図を示しており、その加工プロセスの際に、ワーク10から、ワーク片8が上部及び下部ツール11、9のパンチ加工によって切断される。上部ツール11の切刃39及び下部ツール9の切刃46は摩耗していない。この場合、ワーク10或いはワーク片8には、次のような切断面特性が得られる。エッジ引込み部(Kanteneinzug)の高さhEが小さい。エッジ引込み部の幅bEも小さく、わずかに丸みを帯びている。これに続いて、平滑切断部(Glattschnitt)の高さhSが延び、これに続いて破壊ゾーン(Bruchzone)の高さhBが存在する。ワーク10又はワーク片8の下端には、わずかな切断バリ(Schnittgrat)の高さhGしか存在しない。切断面に沿ったワーク片8とワーク10との関係は、ほぼ類似して示されるが、鏡像的である。
【0048】
図14は、図13に類似した、概略的な断面図を示す。これに対して、上部ツール11の切刃39及び下部ツール9の切刃46は、例えば図12に破線40にて示すように、それぞれ摩耗40を有する。この結果、切断面特性は以下の変化を生じる。エッジ引込み部の幅bEとエッジ引込み部の高さhEとは著しく増加する。平滑切断部の高さhSは増加し,破壊ゾーンの高さhBは減少する。その際、下部ツール9の切刃46の摩耗の増大によって、切断バリの高さhGが増大する。特に、それによって、ワーク片8にかなりのバリが形成される。このような切断結果が生じた場合には、上部及び/又は下部ツール11、9を交換しなければならない。
【0049】
上部ツール11及び下部ツール9について図13及び図14に従って説明したこれらの状態は、図11の特性曲線において見ることができる。特性曲線60は、摩耗のない、すなわち図12の実線に従った形状を有する上部ツール11及び下部ツール9の力-変位曲線を示す。範囲61に位置する特性曲線62、63、64、65は、上部ツール11の切刃39の摩耗の増加を示している。その際、例えば、パンチ変位の増加に伴う特性曲線64は、特性曲線63又は62と比較して摩耗の増加を特徴付ける。範囲66の特性曲線は、下部ツール9の摩耗を表し、例えば特性曲線67は、その右側の他の特性曲線68、69よりも摩耗が少ないことを示している。上部ツール11の特性曲線62、63、64、65は、例えば3つの分類に細分化されている。特性曲線62は0.25mmの丸みを有するクラス1の摩耗を示し、特性曲線63は例えば0.5mmの丸みを有するクラス2の上部ツールの摩耗を示す。下部ツール9についても同様で、特性曲線67においては、クラス1のツールの摩耗の丸みは0.025mmに過ぎない。特性曲線68は、例えば0.05mmなどの丸みを有するクラス2の下部ツールの摩耗を示している。特性曲線71は、例えば特性曲線62及び67に従って摩耗が重ね合わされた上部ツール11及び下部ツール9を示している。特性曲線72は、特性曲線63及び67による、上部ツール11及び下部ツール9の摩耗の重ね合わせを示している。それによって、上部ツール11及び/又は下部ツール9の摩耗のない状態を示す特性曲線60との比較によって、上部ツール11及び/又は下部ツール9の摩耗の増加を個別に確定することができ、所定の分類に従って評価を行うことができる。
【0050】
材料又は板厚の認識のために、音センサ32によって確定されたプロセス信号55に基づいて、図11による、類似した力-変位グラフを作成することができる。例えば、アルミニウム、鉄鋼、又はステンレス鋼についての確定される特性曲線は、互いに異なる。
【符号の説明】
【0051】
1 加工機
2 機械フレーム
3 水平フレーム部材
4 水平フレーム部材
5 垂直フレーム部材
6 垂直フレーム部材
7 フレーム内部空間
8 ワーク片
9 下部ツール
10 ワーク
11 上部ツール
12 プランジャ
13 ストローク駆動装置
14 ストローク軸
15 制御装置
16 上部位置決め軸
17 モータ駆動装置
18 駆動スピンドル
19 ガイドレール
20 ガイドシュー
21 くさび機構
25 下部位置決め軸
26 モータ駆動装置
27 ストローク駆動装置
29 変位センサ
31 力センサ
32 音センサ
33 加速度センサ
35 本体
36 クランプピン
37 切断ツール
38 パンチ面
39 切刃
40 摩耗した切刃
41 本体
42 貫通孔
44 支持面
46 切刃
47 切断面
49 加工プロセス
50 待ち時間
52 プロセス信号
53 プロセス信号
54 プロセス信号
55 プロセス信号
56 プロセス信号
58 特性曲線
60 上部ツールの特性曲線
61 範囲
62 特性曲線
63 特性曲線
64 特性曲線
65 下部ツールの特性曲線
66 範囲
67 特性曲線
68 特性曲線
69 特性曲線
71 特性曲線
72 特性曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(1)における加工プロセス(49)を監視する方法であって、
加工プロセス(49)において、上部ツール(11)と下部ツール(9)とを含む加工ツールによってワーク(10)を加工し、
各加工プロセス(49)中において、時間同期したプロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、前記加工機(1)のセンサ(29、31、32、33)によって検出し、且つ制御装置(15)に送信し、
前記加工プロセス(49)中に時間に依存して確定された前記プロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)を、変換によって、力-変位曲線を有する特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)に変換し、その特性曲線は、時間に依存せずに、力-変位グラフに描かれているものであり、
前記力-変位グラフにおける前記特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)の経過から、前記加工ツール(11、9)の摩耗を互いに別個に確定する、及び/又は、少なくとも1つの前記加工プロセス(49)の基礎となる、前記ワーク(10)の材料を確定する、方法。
【請求項2】
複数の連続する加工プロセス(49)から確定された前記プロセス信号(52、53、54、55、56、57、58)の信号分散を、前記制御装置(15)において除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号分散の除去のために、前記加工プロセス(49)中の上部及び/又は下部ツール(11、9)の追加の変位部分を、及び/又は、上部及び/又は下部ツール(11、9)のストローク運動中の前記加工機(1)の機械フレーム(2)の弾性的な変位部分を、少なくとも1つのセンサ、特に変位センサ(29)、及び/又は加速度センサ(33)によって検出することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号分散の除去のために、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の変位部分の差異を、繰り返しの加工プロセス(49)の際の、前記加工プロセス(49)中の待ち時間(50)の結果として検出することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
検出された変位部分を回帰関数によって評価し、前記上部及び下部ツール(11、9)の初期変位を確定する、又は、
前記機械フレーム(2)の弾性的な変位部分を機械部品及びツール部品の解析モデルによって表現することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
信号分散が除去されたプロセス信号(52、53、54、55、56、58)を、変換によって、時間に依存しない、力-変位グラフにおける力-変位曲線を有する特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、71、72)に変換し、
その際、前記初期変位を、増加する加工力、及び、その後の前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の測定された変位の減算又は加算に基づいて、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の位置変位に対する回帰関数によって決定し、前記特性曲線(59、60、62、63、64、65、67、68、69、70、71、72)の前記力-変位曲線に割り当てることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加工プロセス(49)中に、少なくとも1つの力センサ(31)によってストローク力を、少なくとも1つの変位センサ(29)によって前記上部及び/又は下部ツール(11、9)のストローク運動を、及び、少なくとも1つの加速度センサ(33)によって前記機械フレーム(2)の変位部分を、それぞれの前記加工プロセス(49)のための時間に依存して検出し、
前記プロセス信号(52、53、54、56、57、58)からの前記信号分散の除去、及び1つの変換によって、特性曲線(59)の前記力-変位曲線を、前記加工ツール(11、9)の摩耗の確定のための基礎とすることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
摩耗のない上部及び下部ツール(11、9)の特性曲線(60)の基準の力-変位曲線と、上部ツール(11)の特性曲線(62、63、64、65)の、及び/又は下部ツール(9)の特性曲線(67、68、69)の、前記加工プロセス(49)から確定された力-変位曲線との比較から、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の摩耗状態を確定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記摩耗状態の分類を、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)に対して別個に又は共同に確定し、
特性曲線(62、63、64、65;67、68、69、71、72)によって検出された前記摩耗状態を前記分類と比較し、
検出された前記摩耗状態が許容される分類から外れている場合に、好ましくは、前記制御装置(15)によってツール交換を指示することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
摩耗のない上部及び下部ツール(11、9)の特性曲線(60)の基準の力-変位曲線と、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の特性曲線(71、72)の確定された前記力-変位曲線の重ね合わせとの比較から、前記上部及び/又は下部ツール(11、9)の摩耗状態を確定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記加工プロセス(49)中に、少なくとも1つの音センサ(32)によって音信号を検出し、フーリエ変換によって周波数領域に変換し、その後、周波数領域の振幅に基づいて基準値との比較を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
ワーク(10)からワーク片(8)を切断する切断過程を含む加工プロセス(49)のための上部及び下部ツール(11、9)について、前記上部ツール(11)及び下部ツール(9)の摩耗との直接的な相互関係から決定される切断面品質を監視することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
ワーク(10)、好ましくは金属薄板を加工するための加工機であって、
上部ツール(11)であって、ストローク駆動装置(13)によって、ストローク軸(14)に沿って、前記上部ツール(11)によって加工されるワーク(10)に向かう方向に、及びその反対方向に移動可能な、上部ツール(11)と、
前記上部ツール(11)と位置合わせされ、ストローク駆動装置(27)によって下部ストローク軸に沿って前記上部ツール(11)に向かう方向に、及びその反対方向に移動可能な下部ツール(9)と、
制御装置(15)と、を備え、その制御装置によって、少なくとも前記上部ツール(11)及び/又は前記下部ツール(9)が、ストローク運動のために制御可能である、加工機において、
前記制御装置(15)は、請求項1又は2に記載の、加工機(1)における加工プロセス(49)を監視する方法を実行するように形成されていることを特徴とする、加工機。
【請求項14】
閉じた機械フレーム(2)、又はC字形状の機械フレームを備えることを特徴とする、請求項13に記載の加工機。
【国際調査報告】