(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブおよびハイブリッド材料を触媒化学蒸着を介して合成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/164 20170101AFI20240927BHJP
B01J 23/882 20060101ALI20240927BHJP
B01J 8/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C01B32/164
B01J23/882 M
B01J8/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519798
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022044983
(87)【国際公開番号】W WO2023191851
(87)【国際公開日】2023-10-05
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282217
【氏名又は名称】キャズム アドバンスト マテリアルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】CHASM ADVANCED MATERIALS,INC.
【住所又は居所原語表記】480 Neponset Street,Suite 6,Canton,MA United States
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】プラダ シルヴィ,リカルド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】アーサー,デイヴィッド,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G070
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AA10
4G070AB10
4G070BB18
4G070CA06
4G070CA07
4G070CA25
4G070CB17
4G070CB18
4G070CC03
4G146AA11
4G146AA12
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4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA06B
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4G169BC59B
4G169BC66B
4G169BC67B
4G169CB81
4G169DA07
4G169EA02X
4G169FC07
4G169GA20
(57)【要約】
炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成するように構成された反応器システムおよび関連する方法。反応器システムは、反応ガスが触媒に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、反応容積への少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、反応容積への少なくとも1つの触媒粒子入口とを含む。触媒粒子は、触媒粒子が反応ガスと接触する前に、加熱される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成するように構成された反応器システムであって、
反応ガスが触媒粒子に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、
反応ガスを反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、
触媒粒子を反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの触媒粒子入口とを含み、
触媒粒子は、触媒粒子が反応容積内で反応ガスと接触する前に、加熱される、反応器システム。
【請求項2】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ含有材料、カーボンナノチューブハイブリッド材料、およびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の反応器システム
【請求項3】
カーボンナノチューブハイブリッド材料は、カーボンナノチューブ-カーボンブラック、カーボンナノチューブ-グラファイト、カーボンナノチューブ-グラフェンナノプレートレット、カーボンナノチューブ-シリコン、カーボンナノチューブ-アルミナ、カーボンナノチューブ-酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ-シリカ、カーボンナノチューブ-活性炭、カーボンナノチューブ-セメント質材料、カーボンナノチューブ-SiO
x、およびカーボンナノチューブ-炭素繊維材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の反応器システム。
【請求項4】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じるダクトを含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項5】
反応器は、回転管反応器を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項6】
反応容積は、反応温度に加熱される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項7】
触媒粒子は、触媒粒子が反応ガスと接触する前に、ほぼ反応温度まで加熱される、請求項6に記載の反応器システム。
【請求項8】
反応器は、反応器内で生成した炭素含有材料、未反応の反応ガス、および反応副生成物のための出口を備える、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項9】
反応器出口に流体的に連結され、炭素含有材料を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から分離するように構成されたガス/固体セパレータと、炭素源の熱分解により生成された重合炭素化合物を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から凝縮によって分離するように構成されたガス/液体セパレータとをさらに含む、請求項8に記載の反応器システム。
【請求項10】
未反応の反応ガスの少なくとも一部を反応器に戻すように構成されたガスリサイクルシステムをさらに含む、請求項9に記載の反応器システム。
【請求項11】
ガスリサイクルシステムは、未反応の反応ガスを反応副生成物から分離するように構成されたガスセパレータを含む、請求項10に記載の反応器システム。
【請求項12】
反応副生成物は、水素を含む、請求項11に記載の反応器システム。
【請求項13】
ガス/固体セパレータによって分離された炭素含有材料を保持するように構成された生成物容器をさらに含む、請求項9に記載の反応器システム。
【請求項14】
生成物容器は、不活性ガスで洗浄される、請求項13に記載の反応器システム。
【請求項15】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じる触媒供給管を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項16】
触媒供給管は、反応器の長さの約1/6~約1/3に沿って延びる、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項17】
反応器は、反応容積直径を有し、触媒供給管は、反応容積の直径の約1/3~約1/2の直径を有する、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項18】
触媒を供給管内に供給し、供給管から反応器内に供給するように構成された触媒供給システムをさらに含む、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項19】
触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で供給管に沿っておよび供給管から移動させるように構成された振動フィーダを含む、請求項18に記載の反応器システム。
【請求項20】
触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒を振動フィーダに供給するように構成された触媒保持容器をさらに含む、請求項19に記載の反応器システム。
【請求項21】
触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で保持容器に供給するように構成されたスクリュフィーダをさらに含む、請求項20に記載の反応器システム。
【請求項22】
触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒をスクリュフィーダに供給するように構成されたスクリュフィーダ供給容器をさらに含む、請求項21に記載の反応器システム。
【請求項23】
反応容積の温度は、サーモウェルを通じて測定される、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項24】
触媒供給管は、反応容積内に位置する出口を有し、サーモウェルは、触媒供給管出口に近接して配置される、請求項23に記載の反応器システム。
【請求項25】
反応容積は、少なくとも400℃に加熱される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項26】
反応容積と触媒とは、反応容積と触媒とが接触する前に、少なくとも400℃に加熱される、請求項25に記載の反応器システム。
【請求項27】
反応容積と触媒とは、反応容積と触媒とが接触する前に、少なくとも650℃に加熱される、請求項26に記載の反応器システム。
【請求項28】
反応器内の触媒の滞留時間は、少なくとも約6分である、請求項25に記載の反応器システム。
【請求項29】
反応ガス中の水素組成は、最大約30%である、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項30】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項31】
CNTは、少なくとも約7ミクロンの長さを有する、請求項30に記載の反応器システム。
【請求項32】
CNTは、少なくとも約500の長さ対直径比を有する、請求項30に記載の反応器システム。
【請求項33】
CNTは、1または複数の、多層CNT、二層CNT、および単層CNTを含む、請求項30に記載の反応器システム。
【請求項34】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも700℃に加熱され、反応ガスはエチレンを含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項35】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも950℃に加熱され、反応ガスはメタンを含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項36】
反応器システムにおいて炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成する方法であって、該反応器システムが、反応温度に加熱されて反応ガスが触媒粒子に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、反応ガスを反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、触媒粒子を反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの触媒粒子入口とを含む、方法において、
触媒粒子を、触媒粒子が反応容積内で反応ガスと接触する前に、ほぼ反応温度まで加熱することを含む、方法。
【請求項37】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ含有材料、カーボンナノチューブハイブリッド材料、およびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
カーボンナノチューブハイブリッド材料は、カーボンナノチューブ-カーボンブラック、カーボンナノチューブ-グラファイト、カーボンナノチューブ-グラフェンナノプレートレット、カーボンナノチューブ-シリコン、カーボンナノチューブ-アルミナ、カーボンナノチューブ-酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ-活性炭、カーボンナノチューブ-セメント質材料、カーボンナノチューブ-SiO、カーボンナノチューブ-SiO
2、およびカーボンナノチューブ-繊維材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じるダクトを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
反応器は、回転管反応器を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
反応器は、反応器内で生成した炭素含有材料、未反応の反応ガス、および反応副生成物のための出口を備える、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
反応器出口に連結され、炭素含有材料を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から分離するように構成されたガス/固体セパレータをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
未反応の反応ガスの少なくとも一部を反応器に戻すように構成されたガスリサイクルシステムをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ガスリサイクルシステムは、未反応の反応ガスを反応副生成物から分離するように構成されたガスセパレータを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
反応副生成物は、水素を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ガス/固体セパレータによって分離された炭素含有材料を保持するように構成された生成物容器をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
生成物容器は、不活性ガスで洗浄される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じる触媒供給管を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
触媒供給管は、反応器の長さの約1/6~約1/3に沿って延びる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
反応器は、反応容積直径を有し、触媒供給管は、反応容器の直径の約1/3~約1/2の直径を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
触媒を供給管内に供給し、供給管から反応器内に供給するように構成された触媒供給システムをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で供給管に沿っておよび供給管から移動させるように構成された振動フィーダを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒を振動フィーダに供給するように構成された触媒保持容器をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で保持容器に供給するように構成されたスクリュフィーダをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒をスクリュフィーダに供給するように構成されたスクリュフィーダ供給容器をさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
反応容積の温度は、サーモウェルを通じて測定される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
触媒供給管は、反応容積内位置するに出口を有し、サーモウェルは、触媒供給管出口に近接して配置される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
反応容積は、少なくとも400℃に加熱される、請求項36に記載の方法。
【請求項59】
反応容積と触媒とは、少なくとも400℃に加熱される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
反応容積と触媒とは、少なくとも650℃に加熱される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
反応器内の触媒の滞留時間は、少なくとも6分である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
反応ガス中の水素組成は、最大約30%である、請求項36に記載の方法。
【請求項63】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項64】
CNTは、少なくとも約7ミクロンの長さを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
CNTは、少なくとも約500の長さ対直径比を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
CNTは、1または複数の、多層CNT、二層CNT、および単層CNTを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも700℃に加熱され、反応ガスはエチレンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項68】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも950℃に加熱され、反応ガスはメタンを含む、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月1日付提出の米国特許仮出願第63/251,334号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
背景
本開示は、カーボンナノチューブおよび関連のハイブリッド材料の合成に関する。
【背景技術】
【0003】
化学およびエネルギ産業は、地球温暖化の原因となる大気中のガス排出レベルを大幅に削減するための新たな技術的課題に直面している。CO2を排出することなく、炭素および水素などの各分子を最大限に利用するための新しいプロセスまたは触媒反応器が開発されている。メタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、一酸化炭素、その他の炭素源を使用する触媒プロセスまたは熱プロセスから、さまざまな種類の炭素(カーボンナノチューブ、カーボンブラック、人造黒鉛、活性炭など)を製造する企業は、プロセス中にこれらの未反応分子または固形廃棄物を燃焼させることにより、大量のCO2を発生させる。したがって、生成物の選択性と収率とを高め、反応ガスをより有効に利用し、CO2を発生させる燃焼を回避し、生成物の生産コストを大幅に削減することを可能にする、新しいプロセス、触媒、より効率的な反応器を開発することが重要である。
【0004】
カーボンナノチューブを生成するためのいくつかの商業的プロセスがある。最も一般的に使用されているのは、触媒化学気相成長(CCVD)プロセス/方法であり、その理由は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の合成におけるキラル性の分布の制御が優れていて、形態学的特性における生成物の一貫性をもたらし、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の生成におけるスケーラビリティをもたらすからである。カーボンナノチューブの大規模生産に用いられるCCVD法は、流動床反応器または回転管(ロータリキルンとして知られてもいる)反応器を採用している。これらの反応器には、それぞれ長所と短所がある。たとえば、流動床反応器では、反応ガスと触媒との間の熱および物質移動がより良好に行われるため、より精密に制御されたナノチューブ生成物構造を得ることができる。触媒反応もより効率的である。欠点は、粒子の巻き込みおよび流動化の課題により、微粉末の触媒を使用するのが難しいことである。回転管反応器は、微粉末状の触媒でも連続運転が容易であるが、反応ガスと触媒との接触品質が低いという制約がある。これらの制約は、最適化された回転管反応器設計によって改善することができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、最適化された反応器設計、ならびにカーボンナノチューブ(CNT)およびCNTハイブリッド材料を生成するためのシステム、プロセスおよび方法を含む。反応物は、所望の反応温度で、または所望の反応温度に近い温度で接触するように配置される。これにより、CNTおよびCNTハイブリッド材料の収率と品質との両方が向上する。いくつかの実施例では、微粒子(触媒および他の固体材料)と反応ガスとは、反応器内で接触する前に反応温度まで予熱される。少なくとも触媒供給は、反応ガスと接触するまで触媒を不活性環境で保護する手段を含む。
【0006】
いくつかの実施例では、回転管触媒反応器が使用される。いくつかの実施例では、触媒は不活性ガス(たとえば、N2、He、Ar)の流れの下で内管を通して反応器に供給され、これにより固体粒子は、触媒反応が起こるのと同じ温度でガス状炭素源(エチレン、アセチレン、メタン、エタン、一酸化炭素など)と接触する。このような条件下では、先行技術の反応器設計と比較して、より高いカーボンナノチューブ収率が達成され、CNTはより高いアスペクト比(直径の小さい長いチューブ)を有する。反応中のガスと固体との接触品質を向上させるために、フライヤまたは他の粒子分布構造を回転管内に配置することができる。いくつかの実施例では、反応器内の反応物の滞留時間を制御する。いくつかの実施例では、固体反応物の体積は反応器体積の約15%~約30%、より一般的には最大約30%である。
【0007】
プロセス設計のもう一つの側面は、反応器出口でH2-炭素源分離膜を使用することである。この分離により、炭素源がリサイクルされ、効率性が向上し、プロセスに流入する炭素分子がより多く利用される。これによって、CO2排出が少ない、または全くないという点で、このプロセスは環境に優しくなり、水素を他の産業用途、たとえば、水素を必要とする他の化学プロセスとか、熱または電気エネルギの生産に利用することができる。また、この反応器の設計では、非担持の金属触媒を使用することができるため、さまざまなカーボンナノ材料の生成において、より高い柔軟性を提供することができる。
【0008】
本発明は、少なくとも以下の点で先行技術と異なり、先行技術に対して有利である:
【0009】
触媒粒子が気相中の炭素源と同じ温度になるように、触媒を反応器に供給する方法。
【0010】
未反応ガスのリサイクル、これによって、プロセスをより経済的に収益性の高いものにし、また温室効果に寄与するガスの排出を回避する。
【0011】
反応中に生成する炭素源とH2とを選択的に分離するための水素膜の使用。
【0012】
他のプロセスで生成された水素の使用、または熱源、発電、車両輸送での使用など。
【0013】
様々なカーボンナノ材料の合成のための、担持または非担持活性金属触媒を使用するための柔軟性。
【0014】
CNTハイブリッド材料を生成するための他の固体微粒子材料の包含。カーペットおよびメッシュの両方の形態のCNTハイブリッド材料は、2021年10月31日に出願された米国特許出願番号第17/515,520号、および2022年2月8日に出願された米国特許出願番号第17/667,373号に開示されている。これら2つの出願の開示全体は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
他の固体微粒子材料と触媒のプレブレンド。
【0016】
触媒とガス状炭素源の両方を、両者を接触させる前に所望の反応温度にする。
【0017】
他の粒子が吸熱性または発熱性である場合、粒子は所望により予備調整することができる。たとえば粒子は、反応ゾーンで水分を放出しないように、または反応ゾーンで不要な反応物を放出しないように、乾燥または加熱することができる。このような前処理は、いくつかの実施例では、反応器の上流にある第2のロータリキルン反応器を用いて達成できる。
【0018】
いくつかの実施例では、反応器は、物理的な洗浄と各反応に続くバーンアウトの両方に関して、反応運転前の洗浄が容易であるように構成されている。
【0019】
以下に述べるすべての実施例および特徴は、技術的に可能な任意の方法で組み合わせることができる。
【0020】
1つの態様において、炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成するように構成された反応器システムは、反応ガスが触媒粒子に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、反応容積への少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、反応容積への少なくとも1つの触媒粒子入口とを含む。このシステムおよび方法では、触媒粒子は反応ガスに接触する前に加熱される。
【0021】
いくつかの実施例では、上記および/または下記の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組合せを含む。実施例では、炭素含有材料は、カーボンナノチューブ含有材料、カーボンナノチューブハイブリッド材料、およびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む。実施例では、カーボンナノチューブハイブリッド材料は、カーボンナノチューブ-カーボンブラック、カーボンナノチューブ-グラファイト、カーボンナノチューブ-グラフェンナノプレートレット、カーボンナノチューブ-シリコン、カーボンナノチューブ-アルミナ、カーボンナノチューブ-酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ-シリカ、カーボンナノチューブ-活性炭、カーボンナノチューブ-セメント質材料、カーボンナノチューブ-SiOx、およびカーボンナノチューブ-炭素繊維材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの実施例では、上記および/または下記の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組合せを含む。実施例では、触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じるダクトを含む。実施例では、反応器は回転管反応器を含む。実施例では、反応容積は反応温度に加熱される。実施例では、触媒粒子は反応ガスに接触する前に、ほぼ反応温度まで加熱される。実施例では、反応器は、反応器内で生成した炭素含有材料、未反応の反応ガス、および反応副生成物のための出口を備える。実施例では、システムは、反応器出口に流体的に連結され、炭素含有材料を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から分離するように構成されたガス/固体セパレータをさらに含む。触媒を含む容器からの空気のパージ中、または反応器からの反応ガス(例えば、エチレンおよび水素)のパージ中、不活性ガスの流れは、触媒または生成物の微粒子を巻き込む可能性がある。これらの粒子は、大気中に放出される前に捕捉されるべきである。従って、一実施例では、反応器システムは、触媒および生成物容器のパージシステムおよび反応器のガス出口ラインに配置された微粒子フィルタを含む。実施例では、システムは、ガス出口に流体的に結合され、炭素源の熱分解により生成された重合炭素化合物を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から凝縮によって分離するように構成されたガス/液体セパレータ容器をさらに含む。実施例では、反応器システムは、未反応の反応ガスの少なくとも一部を反応器に戻すように構成されたガスリサイクルシステムをさらに含む。実施例では、反応器システムは、未反応の反応ガスを反応副生成物から分離するように構成されたガスセパレータをさらに含む。一実施例では、反応器システムは、質量分析または他の分析技術による組成の分析に使用される複数のガスサンプリングポートを含む。これらのガスサンプリングポートは、反応器入口および反応器出口、ならびにリサイクルシステムに配置することができる。実施例では、反応副生成物は水素を含む。実施例では、反応器システムは、ガス/固体セパレータによって分離された炭素含有材料を保持するように構成された生成物容器をさらに含む。実施例では、生成物容器は不活性ガスで洗浄される。プロセスガスは、触媒供給と同流または向流方向で反応器に供給することができる。
【0023】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組合せを含む。実施例では、触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じる触媒供給管を含む。実施例では、触媒供給管は反応器の長さの約1/6~約1/3に沿って延びる。実施例では、反応器は直径を有し、触媒供給管は反応容積の直径の約1/3~約1/2の直径を有する。実施例では、反応器システムは、触媒を供給管内に供給し、供給管から反応器内に供給するように構成された触媒供給システムをさらに含む。実施例では、触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で供給管に沿っておよび供給管から移動させるように構成された振動フィーダを含む。実施例では、触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒を振動フィーダに供給するように構成された触媒保持容器をさらに備える。実施例では、触媒供給システムは、保持容器に制御可能な速度で触媒を供給するように構成されたスクリュフィーダをさらに含む。実施例では、触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒をスクリュフィーダに供給するように構成されたスクリュフィーダ供給容器をさらに含む。一実施例では、反応容積の温度はサーモウェルを通して測定される。実施例では、触媒供給管は反応容積内に位置する出口を有し、サーモウェルは触媒供給管出口に近接して配置される。
【0024】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組合せを含む。実施例では、反応容積は少なくとも約400℃に加熱される。実施例では、反応体積と触媒とは少なくとも約400℃に加熱される。実施例では、反応容積と触媒とは少なくとも約650℃に加熱される。実施例では、反応器内の触媒の滞留時間は少なくとも6分である。実施例では、反応ガス中の水素組成は最大約30%である。
【0025】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の一つ、またはそれらの任意の組合せを含む。実施例では、炭素含有材料はカーボンナノチューブ(CNT)を含む。実施例では、CNTは少なくとも約7ミクロンの長さを有する。実施例では、CNTは少なくとも約500の長さ対直径比を有する。実施例では、CNTは1または複数の、多層CNT、二層CNT、および単層CNTを含む。実施例では、エチレンが炭素源である場合、反応容積と触媒は少なくとも700℃に加熱される。実施例では、メタンを炭素源とする場合、反応容積と触媒は少なくとも950℃に加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
少なくとも1つの実施例の様々な態様を、縮尺通りに描かれることを意図していない添付の図を参照して以下に説明する。各図は、様々な態様および実施例の説明およびさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本発明の限定の定義として意図されるものではない。図において、様々な図に図示されている同一またはほぼ同一の構成要素は、同様の参照文字または数字で表されている場合がある。分かりやすくするために、すべての図にすべての構成要素を表示しているわけではない。
【0027】
【
図1】本発明の例示的な回転管反応器設計およびCNT生成プロセスの概略図である。
【
図2】異なる反応温度における炭素収率を示している。
【
図3】反応ガス中の水素組成が炭素収率に及ぼす影響を示している。
【
図4】実験1の多層CNT(MWCNT)のSEM画像を含む。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で説明するシステム、方法および装置の実施例は、その適用が、以下の説明に記載されたまたは添付の図面に図示された構成の詳細および構成要素の配置に、限定されるものではない。システム、方法および装置は、他の実施例において実施することが可能であり、様々な方法で実施または実行することが可能である。具体的な実施例は、本明細書においては例示のみを目的として提供され、限定を意図するものではない。
特に、任意の1つまたは複数の実施例に関連して論じられる機能、構成要素、要素、および特徴は、他の実施例における同様の役割を排除することを意図するものではない。
【0029】
本明細書に開示される実施例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の方法で他の実施例と組み合わせることができ、「実施例」、「いくつかの実施例」、「代替実施例」、「様々な実施例」、「一実施例」等への言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記載される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すことが意図される。本明細書におけるこのような用語で表すものが、必ずしも全て同一の実施例を指すものではない。
【0030】
また、本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書において単数形で言及されるコンピュータプログラム製品、システム、および方法の例、構成要素、要素、行為、または機能に対するあらゆる言及は、複数を含む実施形態を包含することもでき、本明細書においてあらゆる例、構成要素、要素、行為、または機能に対する複数形の言及は、単数のみを含む例を包含することもできる。したがって、単数形または複数形での言及は、現在開示されているシステムもしくは方法、それらの構成要素、作用、または要素を限定することを意図するものではない。本明細書における「含む」、「含んでなる」、「有する」、「含有する」、「関与する」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物ならびに追加の項目を包含することを意図する。「または」への言及は、「または」を用いて記載される用語が、単一の用語、複数の用語、および記載される用語のすべてを示すことができるように、包括的なものとして解釈され得る。
【0031】
図1は、本開示のCNT/CNTハイブリッド生成プロセスを達成するために使用されるように構成される例示的な回転管反応器システム10の概略図である。以下の説明は、本開示の特定の態様を例示するが、本開示の範囲を限定するものではない。
【0032】
触媒供給システム16は、以下のように動作することができる。粉末状の触媒粒子が触媒供給蓄積容器1に供給される。続いて、不活性ガスの流れを使用して触媒供給蓄積容器1から空気が除去される。不活性ガスは、パージプロセス中に触媒から水分を除去するために、60~150℃の温度で予熱することができる。その後、触媒粒子は、スクリュフィーダを介して第2の触媒供給蓄積容器2に移送される。この装置は、反応器12に供給される触媒の量を制御する。触媒および反応ガス供給システム14は、以下のように動作することができる。第2の触媒供給蓄積容器に収容された触媒粒子は、振動触媒粒子供給システムに結合された金属管を通して回転管反応器に供給される。供給システムは、不要な反応を抑制するために不活性ガス雰囲気に維持される。CNTハイブリッド材料を生成するために、触媒と共に他の材料を添加する場合、これらの他の材料は触媒と共に供給することもできるし、他の材料のための別個の並列供給システムを設けることもできる。第2の供給システムは、触媒供給システムと同じにすることもできるし、反応器に供給する前にこれらの材料を反応温度にするように構成することもできる。いくつかの実施例では、触媒と他の材料は、触媒と他の材料について上述した方法で反応器に供給される前に予めブレンドされる。
【0033】
触媒/その他の材料を反応器に供給する管は、その端部が炉の予熱ゾーンにある回転管の内側に位置するような十分な長さを有する。いくつかの実施例では、内管の長さは炉の高温(反応)ゾーンにある回転管の長さの約1/3~1/6である。いくつかの実施例では、内管の直径は回転管の直径の1/3~1/2である。いくつかの実施例では、反応器の加熱ゾーンが複数ある。いくつかの実施例では、反応器は、ガスまたは電気で加熱される。
【0034】
この配置により、触媒粒子は反応ガスと接触する前に所望の反応温度に達する。内管は、インコネル、チタン等の特殊耐食鋼で作られる。回転管に対する内管の長さおよび直径は、触媒プロセス中の効率的な熱伝達を確保するために選択される。
【0035】
プロセスガスおよび触媒粒子が密接に接触する場所の温度は、反応器入口のブロックに黒実線で示したサーモウェルに導入した熱電対で測定される。合成する材料の種類によっては、固体粒子と反応ガスとの間の質量と熱の移動を改善するために、フライヤまたはその他の質量分布構造(
図1に模式的に示す)を回転管内に配置することができる。
フライヤはまた、回転管内の材料の流れを改善することもできる。反応器内での触媒の滞留時間は、管の回転速度とその傾斜角度とによって制御される。
【0036】
得られた生成物は、たとえばガス/固体セパレータ22を使用して、反応器出口でガスから分離される。弁のシステムは、エチレンおよび水素を除去し、包装される前に材料を冷却する不活性ガス注入を有する容器(たとえば、パージ容器28)に生成物を排出する(たとえば、貯蔵ドラム30内)。
【0037】
液体凝縮器24は、水素分離と反応ガスのリサイクルとの前に、望ましくない反応副生成物を除去するために使用される。
【0038】
有機ポリマー、ナノ多孔性無機材料(セラミック、酸化物、多孔質バイコアガラス等)、緻密金属(Pd、および金属合金)、炭素およびカーボンナノチューブをベースとする膜等を含み得るH2膜セパレータ26を使用して、未反応のエチレン(または他の炭素源反応ガス)および水素が続いて分離される。
【0039】
次いで、未反応の炭素源は、リサイクルシステム20によってリサイクルされ、水素は、他の触媒工業プロセス、または発電もしくは熱生成もしくは輸送などの他の目的に使用することができる。リサイクルガスはエチレンと水素を含むことができ、熱伝達と触媒の活性化を改善することにより、カーボンナノチューブとハイブリッド材料の生成反応を促進する。反応器に供給される未使用のエチレンの量は、カーボンナノチューブ/ハイブリッド材料の生成におけるエチレン転化のレベルに依存する。
【0040】
ガス組成は、質量分析計または他の機器を使用して、
図1に示されるように、いくつかの点で検出することができる。組成データは、ガスの組成および品質の記録など、プロセス制御、およびその他の目的に使用することができる。コントローラ(
図1には示されていない)には、ガス組成データ(および他の変数)が入力され、所望のプロセス条件を維持するために使用されるバルブ、ヒータ、粒子供給装置、および他のプロセス機器(すべて
図1には示されていない)を制御する。
【0041】
以下の実施例の詳細な説明は、本開示の範囲を例示するが、限定するものではない。
【0042】
実施例1:カーボンナノチューブの収率に及ぼすガス-触媒の接触温度と滞留時間との影響。
【0043】
先行技術と本発明との相違を示すために、先行技術(R.Prada Silvy, Y. Tan,米国特許第9855551号明細書)に従って調製したFeCoMo/MgO-Al2O3触媒を採用した。一連の実験が行われ、触媒と反応ガス(C2H4 60%V、H2 10%V、およびN2 30%V)との接触温度と、回転管内の滞留時間(分)との影響が調査された(結果は表1)。
【0044】
実験1~4は、触媒を異なる温度(150、300および500℃)で反応ガスと接触させ、その後、反応温度(650℃)に達するまでオーブンを急速に加熱した。実験1、3、4では、回転管反応器内での触媒の滞留時間は10分であったが、実験2では16分であった。本発明を代表する実験5および6では、触媒を反応温度(650℃)に達するまで窒素気流下で予熱し、その後、それぞれ6分および10分の滞留時間で反応ガスと接触させた。
【0045】
反応器内の材料の滞留時間は、プロセスの生産性を決定するパラメータである。実験2、3および5で得られた結果を比較すると、炭素収率(すなわち、生成物中の炭素の割合)において同様の結果が観察される。反応温度まで予熱された触媒は、先行技術(それぞれ10分および16分)よりも短い滞留時間(6分)で同じ割合の炭素を示すことがはっきりとわかる。最も炭素収率が高いのは、触媒を650℃に予熱し、滞留時間を10分とした場合である。
【0046】
【0047】
実施例2:異なる温度における触媒の反応性
【0048】
別の組の実験では、反応温度の影響を調べた。この場合、触媒を異なる温度(300~750℃の範囲)で10分間の滞留時間、反応ガスと接触させた。結果を
図2に示す。T≦450Cでは、触媒と炭素源との反応は観察されなかった。炭素収率は反応温度の上昇に伴い徐々に増加し、T≧675Cでプラトーに達した。触媒失活の兆候は、T≧700Cで観察された。触媒の失活が起こると、炭素収率が低下し、活性金属凝集体の焼結によりチューブの直径が増大する。
【0049】
実施例3:
【0050】
反応ガス中のH
2組成が炭素収率にどのような影響を及ぼすかを調べるために、675Cで実行された別の一連の実験が行われた。これらの結果は、リサイクルガス中の所望の最大H
2組成を確立するのに役立つ。
図3は、炭素収率が、H
2の割合が約30%Vまでは一定であり、その後、反応混合物中の割合が高くなるにつれて徐々に減少し始めることを示している。
【0051】
実施例4:先行技術と本発明とで合成したCNTの特性。
【0052】
カーボンナノチューブの直径と長さとは、走査型電子顕微鏡(SEM)分析法で測定した。
図4および
図5は、それぞれ実験1と実験6とに対応するSEM画像を示し、10KXおよび100KXの倍率で撮影した。実験6(
図5)は、長いMWCNT(L≧7ミクロン)を示しており、先行技術の実験1(
図4)のCNT(L=2~3ミクロン、D=14±2nm)よりも小さな直径(11±2nm)(したがって、L/D比は500以上)を有する。
【0053】
実施例5:多層カーボンナノチューブおよび水素の連続生成。
【0054】
この実施例は、
図1に示す本発明のシステム、反応器およびプロセスを用いたカーボンナノチューブの生成を示す。表2は、異なる触媒供給速度におけるCNTおよびH
2の生成量、ならびに再生エチレンおよびH
2の量を示す。反応器入口のエチレン流量は11L/minである。回転管反応器内の触媒滞留時間は10分である。反応温度は675℃、炭素収率は各条件で80%であった。供給ガス中のH
2の組成は、20%Vである。触媒の滞留時間は、回転管の回転速度と傾斜角度とによって制御される。反応器への触媒供給量を増加させると、エチレンの消費量と水素の生成量とが徐々に増加する。C
2H
4/触媒の接触時間が4.6L/gの場合、より高いCNTと水素生成量とが得られ、リサイクルC
2H
4の割合は約20%である。
【0055】
【0056】
実施例6:メタンからの単層および二層カーボンナノチューブの連続製造。
【0057】
この実施例は、
図1に示す本発明のシステムおよび関連プロセスを用いて、メタンの触媒分解からSWCNTおよび二層CNT(DWCNT)を製造することを例示する。
【0058】
反応温度、反応ガス中のメタン組成、および触媒の種類は、SWCNTまたはDWCNTを選択的に製造するための重要な合成パラメータである。
SWCNT合成の場合、反応温度は950℃以下、好ましくは800~900℃の温度範囲であるべきである。メタンは、窒素などの不活性ガス、または水素で希釈することができる。SWCNTを選択的に製造するためには、メタン組成は50%V以下、好ましくは20~30%Vである。
【0059】
DWCNT合成の場合、反応温度は900℃より高く、好ましくは950~1000℃の範囲である。反応ガス中のメタン組成は25~50%V、好ましくは25~40%Vの間で変化する。
【0060】
SWCNTおよびDWCNT合成の両方に使用される触媒の種類は、MgO、Al2O3、TiO2、SiO2およびそれらの混合物などの金属酸化物に担持された遷移金属(典型的には、Fe、Co、Ni、Moなど)の組み合わせを含む。SWCNTとDWCNTとの両方の反応ゾーンにおける触媒の滞留時間は、通常5分以上である。
【0061】
FeMo/MgO触媒(全金属2%、Fe/Mo原子比=2)を、温度975℃、反応器内の滞留時間5分で混合ガスCH4+H2(30%CH4)と接触させた。メタンガス流と触媒の接触時間は、反応1分あたり1.13L/gであった。表3は、DWCNTの連続生産で得られた結果を示す。灰分と熱重量分析とから求めた触媒1gあたりのDWCNT析出量は、反応器に投入した触媒1gあたり0.25gであった。これは20%の炭素収率に相当する。添加された未使用メタンは41%で、熱、エネルギ、その他の産業用途のために生成されたH2は、触媒1gあたり11.2L/hであった。メタン組成反応によるSWCNTとDWCNTとの選択率は、使用する触媒の種類、ガス供給中のCH4/H2組成比、および反応温度に依存する。
【0062】
【0063】
以上、少なくとも1つの実施例のいくつかの態様を説明したが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に生じることを理解されたい。このような変更、修正、および改良は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。従って、前述の説明および図面は例示に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の適切な解釈から決定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成するように構成された反応器システムであって、
反応ガスが触媒粒子に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、
反応ガスを反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、
触媒粒子を反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの触媒粒子入口とを含み、
触媒粒子は、触媒粒子が反応容積内で反応ガスと接触する前に、加熱される、反応器システム。
【請求項2】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ含有材料、カーボンナノチューブハイブリッド材料、およびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の反応器システム
【請求項3】
カーボンナノチューブハイブリッド材料は、カーボンナノチューブ-カーボンブラック、カーボンナノチューブ-グラファイト、カーボンナノチューブ-グラフェンナノプレートレット、カーボンナノチューブ-シリコン、カーボンナノチューブ-アルミナ、カーボンナノチューブ-酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ-シリカ、カーボンナノチューブ-活性炭、カーボンナノチューブ-セメント質材料、カーボンナノチューブ-SiO
x、およびカーボンナノチューブ-炭素繊維材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の反応器システム。
【請求項4】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じるダクトを含
み、反応器は、回転管反応器を含み、反応容積は、反応温度に加熱され、触媒粒子は、触媒粒子が反応ガスと接触する前に、ほぼ反応温度まで加熱される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項5】
反応器は、反応器内で生成した炭素含有材料、未反応の反応ガス、および反応副生成物のための出口を備え
、反応器出口に流体的に連結され、炭素含有材料を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から分離するように構成されたガス/固体セパレータと、炭素源の熱分解により生成された重合炭素化合物を、未反応の反応ガスおよび反応副生成物から凝縮によって分離するように構成されたガス/液体セパレータとをさらに含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項6】
未反応の反応ガスの少なくとも一部を反応器に戻すように構成されたガスリサイクルシステムをさらに含
み、ガスリサイクルシステムは、未反応の反応ガスを反応副生成物から分離するように構成されたガスセパレータを含む、請求項
5に記載の反応器システム。
【請求項7】
反応副生成物は、水素を含む、請求項
6に記載の反応器システム。
【請求項8】
ガス/固体セパレータによって分離された炭素含有材料を保持するように構成された生成物容器をさらに含
み、生成物容器は、不活性ガスで洗浄される、請求項
5に記載の反応器システム。
【請求項9】
触媒粒子入口は、反応器の外部から反応容積内に通じる触媒供給管を含
み、触媒供給管は、反応器の長さの約1/6~約1/3に沿って延びる、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項10】
反応器は、反応容積直径を有し、触媒供給管は、反応容積の直径の約1/3~約1/2の直径を有する、請求項
9に記載の反応器システム。
【請求項11】
触媒を供給管内に供給し、供給管から反応器内に供給するように構成された触媒供給システムをさらに含
み、触媒供給システムは、触媒を制御可能な速度で供給管に沿っておよび供給管から移動させるように構成された振動フィーダを含む、請求項
9に記載の反応器システム。
【請求項12】
触媒供給システムは、不活性ガスで洗浄され、触媒を振動フィーダに供給するように構成された触媒保持容器
と、触媒を制御可能な速度で保持容器に供給するように構成されたスクリュフィーダと、不活性ガスで洗浄され、触媒をスクリュフィーダに供給するように構成されたスクリュフィーダ供給容器とをさらに含む、請求項
11に記載の反応器システム。
【請求項13】
反応容積の温度は、サーモウェルを通じて測定される、請求項
1に記載の反応器システム。
【請求項14】
反応容積と触媒とは、反応容積と触媒とが接触する前に、少なくとも650℃に加熱され
、反応器内の触媒の滞留時間は、少なくとも約6分である、請求項
1に記載の反応器システム。
【請求項15】
反応ガス中の水素組成は、最大約30%である、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項16】
炭素含有材料は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項17】
CNTは、少なくとも約7ミクロンの長さを有する、請求項
16に記載の反応器システム。
【請求項18】
CNTは、少なくとも約500の長さ対直径比を有する、請求項
16に記載の反応器システム。
【請求項19】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも700℃に加熱され、反応ガスはエチレンを含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項20】
反応容積と触媒とは、接触前に両方とも少なくとも950℃に加熱され、反応ガスはメタンを含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項21】
反応器システムにおいて炭素含有反応ガスを触媒粒子に曝露することによって炭素含有材料を生成する方法であって、該反応器システムが、反応温度に加熱されて反応ガスが触媒粒子に曝露される加熱された反応容積を含む反応器と、反応ガスを反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの反応ガス入口ポートと、触媒粒子を反応容積に導入するように構成された少なくとも1つの触媒粒子入口とを含む、方法において、
触媒粒子を、触媒粒子が反応容積内で反応ガスと接触する前に、ほぼ反応温度まで加熱することを含む、方法。
【国際調査報告】