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特表2024-536276クランベリー抽出物およびクランベリー種子油を含む化粧品組成物
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  • 特表-クランベリー抽出物およびクランベリー種子油を含む化粧品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】クランベリー抽出物およびクランベリー種子油を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q5/12
A61Q5/02
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519845
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077096
(87)【国際公開番号】W WO2023052491
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2114116.3
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ド トレネレ,モルガーヌ
(72)【発明者】
【氏名】スカンドレラ,アマディン
(72)【発明者】
【氏名】レノー,ロマン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB031
4C083AB291
4C083AC231
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む、局所使用のための化粧品組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む、局所使用のための化粧品組成物。
【請求項2】
クランベリー抽出物が親水性抽出物である、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
クランベリー抽出物が約30%w/wより多い有機酸を含有する、請求項1または請求項2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
クランベリー抽出物が添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
添加剤が、水酸化マグネシウムおよび/またはリン酸三カルシウムを含む、請求項4に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
約5%~約10%w/wの水酸化マグネシウム、および/または約1%w/w未満のリン酸三カルシウムを含む、請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
クランベリー種子油がバージンクランベリー種子油である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
クランベリー抽出物とクランベリー種子油とが、約15:1~約1:0.5の間の比率にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品組成物、および美容上許容し得る基材を含む化粧製品。
【請求項10】
製品が、クリーム、ローション、スプレー、ゲル、フォーム、スティック、シャンプー、コンディショナー、またはムースとして提供される、請求項9に記載の化粧製品。
【請求項11】
化粧製品が、約0.5%~約30%w/w、好ましくは約1%~約25%w/w、最も好ましくは約5%~約15%w/wのクランベリー抽出物、ならびに約0.05%~約10%w/w、好ましくは約0.5%~約5%w/w、最も好ましくは約1%~約3%w/wのクランベリー種子油を含む、請求項9または請求項10に記載の化粧製品。
【請求項12】
ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和または取り除く方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品組成物、または請求項9~11のいずれか一項に記載の化粧製品を、皮膚または頭皮へ局所的に適用することを含む、
前記方法。
【請求項13】
ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症が、感染症によって、アレルギー反応によって、または紫外線への曝露によって引き起こされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヒトの皮膚の炎症が、敏感肌、炎症性皮膚、アトピー性皮膚炎、酒さ、湿疹、および乾癬からなる群から選択される、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒトの頭皮の炎症が、乾燥による炎症性皮膚、痒い頭皮、脂漏性皮膚炎、および接触性皮膚炎などの皮膚炎、頭皮の毛包炎、および頭皮の乾癬からなる群から選択される、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和または取り除くことにおける、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品組成物、または請求項9~11のいずれか一項に記載の化粧製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランベリー抽出物およびクランベリー種子油の組み合わせを含む、局所使用のための化粧品組成物に関する。とりわけ本発明は、クランベリー抽出物とクランベリー種子油とが、約15:1~約1:0.5の間の比率にあるクランベリー抽出物およびクランベリー種子油の組合せを含む、局所使用のための化粧品組成物に係る。本発明はまた、本明細書で定義される、クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む化粧品組成物を含む化粧製品のみならず、本明細書で定義される化粧品組成物または化粧製品を皮膚または頭皮へ局所的に適用することを含む、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和するための方法にも関する。本発明はまた、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和することにおいて、本明細書に定義されている化粧品組成物または化粧製品の使用にも係る。
【背景技術】
【0002】
背景
クランベリー(Vaccinium macrocarpon)は、大量の抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、およびフェノール化合物を含有しており、これらがさまざまな食品製品および栄養補助食品での使用の増加を促している。クランベリーからの抽出物は、その抗糖化、抗菌、抗酸化、および抗老化特性のために、多くの化粧品にもまた使用されている。
果実から分離された種子は、クランベリー種子油の供給源である。クランベリー種子油は、オメガ3、オメガ6、およびオメガ9脂肪酸の特徴のある組み合わせのみならず、トコフェロール、トコトリエノール、および高濃度の抗酸化剤を提供する。この油は、その保湿、滋養、抗老化、抗酸化、抗菌、UV保護、抗刺激、および美白の特性のために、多くの化粧品に使用されている。
【0003】
皮膚の炎症は、酸化ストレスと相互依存的な関係にあり、赤み、吹き出物、にきび、しみ、酒さ、黒ずみ、高色素沈着、湿疹、かゆみ、または腫れなどの、さまざまな手段で現れ得る。頭皮の炎症は、同定しにくいものの、頭皮のかさつき、腫れ、または赤みとして観察され得る。
皮膚および頭皮の炎症の不快な感触および外観を弱めるために、市販の鎮静組成物が販売されている。これらの組成物のうち、天然抽出物を含有しているものが近年より人気を博している。ほとんどの天然鎮静組成物は、例えば、アルニカ、アロエベラ、カレンデュラ、カモミール(ビサボロール含有)、ココナッツオイル、緑茶、オートミール、シアバター、およびティーツリーオイルからの抽出物を含有する。
上述の成分ほど広く使われてはいないが、クランベリー抽出物もまた皮膚および頭皮の鎮静特性を有することが示されている。高濃度のクランベリーポリフェノールが、かかる効果の要因であると考えられている。
ヒトの皮膚または頭皮に対して鎮静効果を有する(すなわち、皮膚または頭皮の炎症の症状を軽減または緩和し得る)天然成分および/またはアップサイクル成分を含有する組成物、とりわけクランベリー要素を基にする組成物を提供することが依然として必要である。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
第1の側面において、本発明は、クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む、局所使用のための化粧品組成物を提供する。
さらなる側面において、本明細書で定義されるクランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物、および美容上許容し得る基材を含む、局所使用のための化粧品組成物を含む化粧製品が提供される。
本発明はさらに、本明細書に定義されている化粧品組成物または化粧製品を皮膚または頭皮へ適用することを含む、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和または取り除く方法、とりわけ美容的方法を提供する。
もう1つの側面において、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和または取り除くことにおいて、本明細書に定義されている化粧品組成物または化粧製品の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図面の簡単な説明
図1図1は、クランベリー抽出物、クランベリー種子油、およびクランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせを用いてそれぞれ処置された培養細胞の試料におけるTNF-α定量について、基準(デキサメタゾン)を用いて処置された試料と比較したマンホイットニー検定を使用したノンパラメトリック統計解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細説明
ここで、本発明の好ましい、および/または任意の特色を述べる。文脈上別段の要求がない限り、本発明のいずれの側面も、本発明のいずれの他の側面と組み合わされてよい。文脈上別段の要求がない限り、いずれの側面の好ましい、または任意の特色は、本発明のいずれの側面と、ならびにいずれの他の好ましい、または任意の特色と、単独でまたは組み合わせて組み合わされてよい。
【0007】
化粧品組成物
驚くべきことに、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせが、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)でストレスを与えた角化細胞によるサイトカインTNF-αの放出を有意に軽減することにより、相乗的な抗炎症活性を示すことが発見された。とりわけ、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせが使われる場合、クランベリー抽出物とクランベリー種子油のそれぞれが単独で使われる場合に比較して、TNF-α放出が有意に軽減するだけでなく、2つの単独の構成要素の効果を加えることによって期待されるTNF-α放出よりもはるかに低いことが発見された。
【0008】
したがって、本発明は、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組合せを含む、局所使用のための化粧品組成物を提供する。
クランベリー抽出物とクランベリー種子油との両方が得られるクランベリーは、例えば米国から調達されてもよい。
【0009】
クランベリー抽出物
クランベリー抽出物は、オオミツルコケモモ(Vaccinium macrocarpon)のベリーから、好ましくは、それらを圧搾することによって得られる果汁から得られる。
例えば、クランベリー抽出物は、クランベリーの果実から抽出するプロセスによって得られ得る。クランベリーは、収穫、乾燥、および粉砕の後、抽出されるべき所望の構成要素に親和性を有する溶媒と接触されてもよい。その後、濾過ステップにより、所望の構成要素が溶解した溶媒をクランベリーの固体マトリックスから分離し、ネイティブな抽出物を提供してもよい。次に、濾過物を濃縮するために、溶媒を除去、例えば蒸発させてもよい。結果として得られたネイティブな抽出物は、分離、精製、および/またはさらなる製剤化によって、さらに処理されてよい。好適な抽出方法は、超音波抽出、マイクロ波アシスト抽出、またはソックスレー抽出を包含する。
抽出プロセスにおいて使用される溶媒は、親水性でも親油性でもよい。使用される溶媒に依存して、クランベリー抽出物は「親水性抽出物」または「親油性抽出物」と呼ばれることもある。
【0010】
1つの態様において、クランベリー抽出物は親水性抽出物である。
抽出プロセスにおいて使用されてもよい好適な親水性溶媒の例は、水;メタノール、エタノール、プロパノール(ノルマルまたはイソ)、ブタノール(ノルマル、イソ、またはtert)などのアルコール類;アセトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;またはそれらの混合物を包含するが、これらに限定されない。任意で、抽出を促進するために、塩酸または硫酸などの酸、またはトリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、クエン酸、または酢酸などの有機酸、またはそれらの混合物が使用されてもよい。
一態様において、クランベリー抽出物は、クランベリー果汁からポリフェノールを部分的に抽出した後に得られるアップサイクル生成物である。
【0011】
1つの態様において、クランベリー抽出物は、フェノール酸などの有機酸、特にヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシケイ皮酸、キナ酸、リンゴ酸、シキミ酸、およびクエン酸に由来するものを含む。
1つの態様において、所望の構成要素を抽出するために使われる溶媒は、水-エタノール混合物であってもよい。
【0012】
1つの態様において、クランベリー抽出物は、約7%~約30%w/wの間の有機酸を含有してもよい。実例として、クランベリー抽出物は、抽出物の約7重量%、約18重量%、または約30重量%の有機酸を含有してもよい。
ポリフェノール植物源は抗酸化活性を保有し、酸化ストレスおよびその効果を潜在的に防止および制御し得ることが示されている(Silva Caldas, A.P., International Journal of Food Properties, 2018, 21, 582-592、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、フェノール酸などの有機酸の高い含量を持つクランベリー抽出物を使用することは有利である。
【0013】
したがって、一態様において、クランベリー抽出物は、抽出物の約30重量%より多い有機酸を含有する。
任意で、クランベリー抽出物は添加剤とさらに混合されてもよい添加剤とは、天然抽出物へ加えられる物質であり、その安定性、質感、または外観を維持または改善するものである。
例えば、添加剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、水酸化マグネシウム、リン酸三カルシウム、グリセリン、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。それらの役割は、クランベリー抽出物のpHを安定させることである。
【0014】
一態様において、添加剤は水酸化マグネシウムであってもよい。任意で、クランベリー抽出物は、リン酸三カルシウムなどのさらなる添加剤を含有してもよい。
一態様において、クランベリー抽出物は、約10%w/wの水酸化マグネシウムを含有してもよい。
一態様において、クランベリー抽出物は、約1%w/w未満のリン酸三カルシウムを含有してもよい。
一態様において、クランベリー抽出物は、約10%w/wの水酸化マグネシウム、および約1%w/w未満のリン酸三カルシウムを含有してもよい。
クランベリー抽出物は、いずれの好適な形態、例えば液体または粉末の形態であってよい。
【0015】
1つの態様において、クランベリー抽出物は、乾燥などのさらなるプロセスを経てもよい。任意に、乾燥ステップに先立ち、クランベリー抽出物へ添加剤が加えられてもよい。
例えば、クランベリー抽出物は、本明細書に記載のとおりのプロセスによって得られてもよい。クランベリーの果実が砕かれて、水とエタノールの混合物で抽出された後、濾過されてよい。濾過ケークは廃棄され、クランベリーのネイティブな抽出物を得るために、溶媒は、例えば濃縮によって、濾液から除去されてもよい。ポリフェノールが豊富な画分を除去することによって、ネイティブな抽出物がさらに処理されてもよい。ポリフェノールが豊富な画分を除去した後に残った画分は、水酸化マグネシウムおよび/またはリン酸三カルシウムと混合されてもよく、混合物は、例として噴霧乾燥によって乾燥されてもよく、ならびに任意で、さらにふるい分けを経てもよい。
【0016】
クランベリー種子油
クランベリー種子油は、オメガ3脂肪酸(約26%~34%w/w)、オメガ6(約32%~42%w/w)、およびオメガ9(約18%~30%w/w)、ならびにトコフェロール、トコトリエノール、および抗酸化剤を保有する。
クランベリー種子油を抽出するために、溶媒抽出、超音波抽出、超臨界流体抽出、ソックスレー抽出、または機械的な圧搾などの、数多の抽出技術が使用されてよい。
【0017】
クランベリー種子油内で見られるいくつかの化合物は、スチームストリッピングまたは溶媒抽出プロセスの間に破壊または除去されることもあるので、好ましくは、クランベリー種子油は低温圧搾によって得られ、結果としてバージン(すなわち、物理的または機械的手段のみによって産生されたオイル)クランベリー種子油となる。したがって、一態様において、クランベリー種子油は、バージンクランベリー種子油であることもある。
例えば、クランベリー種子油は、本明細書に記載のとおりのプロセスによって得られることもある。果実から除去した種子は、低温圧搾されてろ過されることもある。濾過ケークを廃棄し、濾液(すなわち、バージンクランベリー種子油)はそのまま使用されてもよい。
【0018】
クランベリー抽出物およびクランベリー種子油
上述したように、クランベリー抽出物とクランベリー種子油の両方が、皮膚に適用されるときの有益な特性により、化粧製品に使用されてきた。しかしながら、クランベリー抽出物またはクランベリー種子油の抗炎症効果を評価する研究は、今日まで行われていない。
ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)でストレスを与えられた角化細胞を、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせで処置することによって、クランベリー抽出物またはクランベリー種子油のみ単独での処置と比較して、サイトカインTNF-αの放出が有意に低減することが、驚くべきことに、かつ予想外に観察された。サイトカインTNF-αの放出に対するクランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせの効果は、2つの独立した構成要素の効果を単純に加え合わせることによって予想される効果よりもはるかに高かった。このように、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせの相乗効果が明確に観察され得る(例として、下記の実施例3参照)。
【0019】
一態様において、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との間の比率は、約15:1~約1:0.2の間である。好ましくは、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との間の比率は、約12:1~約1:0.5の間である。例えば、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との間の比率は、約12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:0.9、1:0.8、1:0.7、1:0.6、または1:0.5、とりわけ約10:1または約1:1であってよい。
【0020】
化粧製品
本発明の別の側面は、前項で定義されるクランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物、および化粧品基材を含む化粧品組成物を含む化粧製品を提供する。
化粧品基剤は、美容上許容し得るいずれの賦形剤を含んでもよい。美容上許容し得る賦形剤は、ヒトの皮膚または頭皮に使用する化粧品調製品の調製において一般的に使用されるいずれかの賦形剤であり得る。好適な賦形剤は、皮膚の官能特性および浸透性、ならびに活性成分(単数または複数)が皮膚上で活性を維持する時間の総計に影響を与え得る成分を包含するが、これらに限定されない。より具体的には、それらは、水、油または界面活性剤などの液体を包含し、それらは石油、動物、植物または合成由来のもの、たとえばこれらに限定されないが、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、エーテルスルファート、スルファート、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、ジギトニン等、またはそれらの組み合わせを包含する。
【0021】
皮膚へ局所的に適用するための製剤は、いかなる物理的形態をとってもよい。実例として化粧製品は、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体-脂質ナノ粒子、ベシクル、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、ミクロスフェアおよびナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルションおよびナノエマルションの形態であってよく、これらは、本明細書に定義されるとおりの化粧品組成物のより高い浸透性を達成するために添加され得る。
【0022】
化粧製品は、局所的な皮膚への適用または経皮的な適用に有用なあらゆる固体、液体、または半固体形態に産生されてよい。よって、局所的なまたは経皮的な適用のこれらの調製物は、これらに限定されないが、以下を包含する:クリーム、多数のエマルション、たとえばこれらに限定されないが、水中油および/またはシリコーン型エマルション、油および/またはシリコーン中水型エマルション、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルション、および油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルション、マイクロ-エマルション、エマルションおよび/または溶液、液晶、無水組成物、水性分散体、油、ミルク、バルサム、泡、水性または油性ローション、水性または油性ゲル、クリーム、ハイドロ-アルコール溶液、ハイドロ-グリコール溶液、ハイドロゲル、リニメント、セラ、石鹸、フェイスマスク、セラム、多糖類フィルム、軟膏、ムース、ポマード、ペースト、パウダー、バー、ペンシル、およびスプレーまたはエアロゾル(スプレー)、これらは、リーブオンおよびリンスオフ製剤を包含する。
【0023】
本発明の化粧製品はまた、シャンプー、コンディショナー、スプレー、トリートメント、マスク、強化剤、プレシャンプー、ローション、美容液、クリーム、フォーム、ムース、およびゲルを包含するがこれらに限定されない、ヘアケアに典型的に使用されるいずれの製品であってもよい。殊更好ましくは、化粧製品は、シャンプー、抗縮毛ヘアスプレー、美髪ヘアマスク、髪ツヤ美容液、ヘアコンディショナー、髪強化プレシャンプー、または髪保護ローションである。リーブオンおよびリンスオフの製品タイプの両方が好適である。
【0024】
本発明に従う化粧製品は、担体、溶媒、界面活性剤、増粘剤、スタイリングポリマー、抗フケ活性剤、抗菌材料、皮膚および頭皮活性剤、ビタミン、塩、緩衝剤、毛髪成長剤、コンディショニング材料、毛髪固定ポリマー、フレグランス、着色料/発色剤、染料、顔料、乳白剤、真珠光沢補助剤、オイル、ワックス、防腐剤、感覚惹起剤(sensates)、日焼け止め、薬剤、消泡剤、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加剤、皮膜形成剤または材料、pH調整剤、噴霧剤、酸化剤、および還元剤からなる群から選択される1種以上の材料をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の化粧製品は、クリーム、ローション、スプレー、ゲル、フォーム、スティック、シャンプー、コンディショナー、またはムースを包含するがこれらに限定されない、皮膚または頭皮のケアに典型的に使用されるいずれの形態で産生されてよく、好ましくはクリームまたはゲルである。
本発明の化粧品組成物および製品は、必要に応じていずれの好適な任意の成分をその上にさらに含み得る。かかる任意の成分は、化粧品組成物または化粧品製品の必須成分と物理的および化学的に適合すべきであり、そうでなければ、安定性、審美性、または性能を過度に損なうものであってはならない。The CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Tenth Edition (the Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association, Inc, Washington D.C.発行) (2004)が、本発明の組成物および製品へ加えられ得る多種多様な非限定的材料を記載している。
【0026】
化粧品組成物の局所製剤中のクランベリー抽出物の濃度は、最大約30%w/wであり得る。一態様において、化粧製品は、約0.5%~約30%、任意に約1%~約25%、任意に約5%~約15%w/wのクランベリー抽出物を含む。
一態様において、クランベリー抽出物は、粉末の形態で提供されてもよく、ならびに化粧製品に組み込む前に、水、エタノール/水、またはグリセリンなどの溶媒と混合されてもよい。
化粧製品の局所製剤中のクランベリー種子油の濃度は、最大約10%w/wであり得る。一態様において、化粧製品は、約0.05%~約10%、任意に約0.5%~約5%、任意に約1%~約3%w/wのクランベリー種子油を含む。
【0027】
使用方法
本発明はさらに、クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む組成物、または前項で定義されるクランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む組成物を含む化粧製品を皮膚または頭皮へ局所的に適用することを含む、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和するため、または取り除くための方法を提供する。
とりわけ、本発明は、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和するため、または取り除くための化粧方法、すなわち非治療的方法を提供する。
一態様において、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症は、感染症によって、アレルギー反応によって、または紫外線への曝露によって引き起こされることもある。
【0028】
一態様において、ヒトの皮膚の炎症は、敏感肌、炎症性皮膚、アトピー性皮膚炎、酒さ、湿疹、および乾癬からなる群から選択されることもある。
一態様において、ヒトの頭皮の炎症は、乾燥による炎症性皮膚、かゆい頭皮、脂漏性皮膚炎、および接触性皮膚炎などの皮膚炎、頭皮の毛包炎、および頭皮の乾癬からなる群から選択されることもある。
炎症の症状の非限定的な例は、皮膚の、赤み、吹き出物、にきび、しみ、酒さ、黒ずみ、高色素沈着、湿疹、かゆみ、または腫れ、および頭皮のかさつき、腫れ、または赤み、を包含する。
【0029】
もう1つの側面において、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和すること、または取り除くことにおける、クランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む組成物、または前項で定義されるクランベリー種子油と組み合わせたクランベリー抽出物を含む組成物を含む化粧製品の使用が提供される。
とりわけ、本発明は、ヒトの皮膚またはヒトの頭皮の炎症の症状を緩和するためまたは取り除くための化粧品使用、すなわち非治療的使用を提供する。
【実施例
【0030】
本発明は、以下の非限定例を手段として、さらに説明される:
実施例1: クランベリー抽出物の産生プロセス
クランベリーの果実を砕き、水とエタノールとの混合物で抽出し、濾過してもよい。濾過ケークを廃棄してもよく、クランベリーのネイティブな抽出物を得るために、濾過物は濃縮/脱溶媒を経てもよい。結果として得られたネイティブな抽出物はさらに、分離、精製、ならびに水酸化マグネシウムとリン酸三カルシウムとで混合することによってさらなる製剤化に供する。混合物は、噴霧乾燥によって乾燥してもよく、ならびに任意で、さらにふるい分けを経てもよい。
例えば、134kgのクランベリーを砕き、80kgの水で抽出した。液体を固形塊から分離し、濃縮し、ならびに水酸化マグネシウム(8kg)およびリン酸三カルシウム(1kg)と混合するステップを含む、さらなる処理に供した。30%w/wの有機酸とともに、92kgのクランベリー抽出物を得た。
【0031】
実施例2: クランベリー種子油の産生プロセス
果実から除去した種子は、低温圧搾されてろ過されることもある。濾過ケークを廃棄し、濾液(すなわち、バージンクランベリー種子油)はそのまま使用されてもよい。例えば、1.667kgのクランベリーを絞ってスライスし、種子を除去した。種子(約17g)を集め、乾燥させ、低温圧搾して約1gのクランベリー種子油を得た。
【0032】
実施例3: クランベリー抽出物、クランベリー種子油、およびクランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせの抗炎症効果
クランベリー抽出物、クランベリー種子油、およびクランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせが、PMAでストレスを与えた角化細胞の抗炎症活性におよぼす効果を、クランベリー製品で処置しPMA(ホルボール12-ミリスタート13-アセタート)でストレスを与えた正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)のサイトカインTNF-α放出の減少と、PMAでストレスを与えた未処置のNHEKのTNF-α放出とを比較することによって評価した。
【0033】
3.1 細胞培養および処置
細胞培養は、新規の組織診から分離した初代細胞で行った。NHEKを、I型コラーゲンをプレコートした24ウェルプレートに、1ウェルあたり30000細胞にて播種したものを、3つ作成した。
完全培地(HKGSを添加したエピライフ培地、Gibco)、および1%の抗生物質(Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%COにて24時間、細胞をインキュベートした。
【0034】
インキュベートの最後に、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)を用いて2回洗い、ヒドロコルチゾンおよび1%の抗生物質を除いたエピライフ完全培地(エピライフ+ヒトケラチン生成細胞成長添加物(HKGS)サプリメント、Gibco)中で、37℃、5%COにて、24時間活性要素とともにプレインキュベートした。
24時間のプレインキュベートの後、PMA(ホルボール12-ミリスタート13-アセタート、Sigma)の1ng/mLにて細胞にストレスを与え、37℃、5%COにて24時間インキュベートした。
比較に使用した化合物を、表1に示す。無処置細胞をブランクとして使用した。既知の抗炎症剤(デキサメタゾン)で処置した細胞を参照として使用した。
【0035】
表1:NHEKに対する抗炎症効果について試験した化合物およびクランベリー産物
【表1】

未処置かつ培地を用いて培養した皮膚細胞を、陰性対照として使用した。
培養の最後に、細胞培地を採取し、2000gにて、10分間、4℃にて遠心分離し、死細胞を除外した。培地は、-20℃にて保管した。
処置毒性を評価するため、TNF-α定量の標準化のためにMTTアッセイを行った。
アッセイは4回で行った。
【0036】
3.2 MTTアッセイ
基礎培地中1mg/mLにて希釈したMTT溶液(Sigma)を各ウェルに加え、37℃、5%COにて3時間インキュベートした。その後、培地を除去し、300μLのジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)を各ウェルへ加え、ホルマザンの結晶を溶解した。均質化は、オービタル攪拌下で数分間行った。光学濃度は、560nmの波長にて測定した。
【0037】
3.3 TNF-αの定量
TNF-αの定量は、Human TNF-alpha Quantikine ELISA kit (DTA00D, R&D Systems)を用いて実行した。
ヒトTNF-αに特異的なモノクローナル抗体でプレコートした96ウェルプレート中で、試料および標準範囲をAssay Diluent RD1Fの存在下で2時間インキュベートした。供給者によって提供された洗浄バッファーを用いて4回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素(HRP)と抱合したヒトTNF-αに特異的なポリクローナル抗体を、オービタル攪拌下で2時間インキュベートした。4回の洗浄に続いて、暗所で30分間、基質溶液をウェルへ加えた。HRPによるこの基質の触媒作用は、最初のステップにおいて結合したTNF-αの量に比例して青色を生成する。発色は停止液によって停止し、黄色に変化した。光学濃度は、マイクロプレートリーダー (TECAN SPARK(登録商標)10M)を用いて450nmおよび540nmにて測した。
【0038】
450nmでの光学濃度を540nmでの光学濃度で減算した後、Myassaysウェブサイト(http://myassays.com)を介して4パラメータロジスティック曲線分析を行った。
定量化は二重に行った。
定量は、MTTアッセイを介して測定した光学濃度で正規化した。
【0039】
3.4 統計分析
シャピロ・ウィルク正規性検定により、試料はガウスの法則に従っていないことが明らかとなった。その結果として、クラスカルウォリスANOVA、それに続きマンホイットニーのU検定を用いて、ノンパラメトリック統計分析を行った。結果は、p<0.1(#でマークした)、p<0.05(*でマークした)、p<0.01(**でマークした)、ならびにp<0.001(***でマークした)を有意と考えた。
【0040】
図1は、表1における試料1~7について、マンホイットニー検定を使用したノンパラメトリック統計分析の結果を示す。
定量化が、PMAストレスの24時間後(表1における項目1)、角化細胞はサイトカインTNF-αを有意に放出したことを実証した。デキサメタゾン(1μM、項目2)を用いた前処置は、サイトカインの放出を46%***有意に低減させた。これらの結果によって、モデルの応答性が確認された。
【0041】
同じ条件において、0.5mg/mLでのクランベリー抽出物(項目3)、0.05%v/v(項目4)、ならびに0.005%v/v(項目5)でのクランベリー種子油は、項目1の試料と比較して、TNF-α放出をそれぞれ16%*、34%***、および32%***有意に低減させた。
0.5mg/mLでのクランベリー抽出物と0.05%v/vでのクランベリー種子油との組み合わせ(すなわち、1:1の比率、項目4)の存在下においては、TNF-α放出の減少は有意に高かった(75%***)。低減は、各構成要素個々による低減を合計することによって予期されるものよりも有意に優れていた。
【0042】
0.5mg/mLでのクランベリー抽出物と0.005%v/vでのクランベリー種子油との組み合わせ(すなわち、10:1の比率、項目6)の存在下においては、61%***のTNF-α放出の減少が有意であった(p<0.001)。この減少は、各構成要素個々による低減を単純に合計することによって予期されるものよりも高かった。
したがって、クランベリー抽出物とクランベリー種子油との組み合わせが、クランベリー抽出物およびクランベリー種子油の各々単独と比較して、相乗的な抗炎症性能を有することが示されている。
図1
【国際調査報告】