(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】メチルメタクリレートの生成プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 67/44 20060101AFI20240927BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20240927BHJP
B01J 23/52 20060101ALI20240927BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07C67/44
C07C69/54 Z
B01J23/52 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519893
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022045721
(87)【国際公開番号】W WO2023059675
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ、カーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバーティ、リータム
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC69A
4G169CB07
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4G169DA06
4G169DA08
4G169EA01Y
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4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC29
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC48
4H006BA05
4H006BA10
4H006BA25
4H006BA55
4H006BC11
4H006BC31
4H006BE30
4H006KA36
4H006KC14
4H039CA66
4H039CC30
(57)【要約】
メチルメタクリレートを生成するプロセスであって、a)エチレンからプロピオンアルデヒドを生成する工程と、b)プロピオンアルデヒドをホルムアルデヒドと反応させて、メタクロレインを生成する工程と、c)メタクロレインを酸化的エステル化反応において反応させて、メチルメタクリレートを生成する工程とを含む、プロセスが開示される。工程b)は、1バールを超える圧力で実行される。工程c)は、液相反応であり、1つ以上の反応器を含む反応器システムにおいて不均一貴金属含有触媒の存在下で実行される。反応器システムにおけるメタノールとメタクロレインとの平均比は、システムに出入りするメタノール及びメタクロレインの平均量に基づいて20:1未満である。反応器システム内のメタクロレインの平均濃度は、反応器システム内のメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて40重量%未満であり、反応器システム内のメタクロレインの平均濃度は、反応器システムに出入りするメタクロレインの濃度の平均である。酸素は、蒸気相の総量に対して2.5mol%~7.5mol%の範囲の濃度で反応器システム内の蒸気空間内に維持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメタクリレートを生成するためのプロセスであって、
a)エチレンからプロピオンアルデヒドを生成する工程と、
b)前記プロピオンアルデヒドをホルムアルデヒドと反応させてメタクロレインを生成する工程と、
c)前記メタクロレインを酸化的エステル化反応において反応させてメチルメタクリレートを生成する工程とを含み、
ここで、
前記工程b)は、1バールを超える圧力で実行され、
前記工程c)は、液相反応であり、1つ以上の反応器を含む反応器システムにおいて実行され、不均一貴金属含有触媒の存在下で実行され、前記反応器システムにおける前記メタノールと前記メタクロレインとの平均比は、前記システムに出入りする前記メタノール及び前記メタクロレインの平均量に基づいて、20:1未満であり、前記反応器システムにおける前記メタクロレインの平均濃度は、前記反応器システムにおける 前記メタノール及び前記メタクロレインの総重量に基づいて、40重量%未満であり、前記反応器システムにおける前記メタクロレインの平均濃度は、前記反応器システムを出入りする前記メタクロレインの濃度の平均であり、酸素は、前記反応器システムにおける蒸気空間において、蒸気相の総量に対して2.5mol%~7.5mol%の範囲の濃度で維持される、プロセス。
【請求項2】
前記工程b)は、60バールを超える圧力で実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程b)は、100バールを超える圧力で実行される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程c)は、60バールを超える圧力で実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程c)は、100バールを超える圧力で実行される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記不均一貴金属含有触媒はチタンを含み、前記貴金属は金及びパラジウムから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記貴金属は、金である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応器システム内の前記平均メタクロレイン濃度は、前記反応器システム内の前記メタノール及び前記メタクロレインの総重量に基づいて、10重量%超かつ35重量%未満であり、前記反応器システム内の前記メタクロレインの平均濃度は、前記反応器システムに出入りする前記メタクロレインの濃度の平均である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応器システムにおける前記平均メタクロレイン濃度は、前記反応器システムにおける前記メタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、15重量%超かつ30重量%未満であり、前記反応器システムにおける前記メタクロレインの平均濃度は、前記反応器システムに出入りするメタクロレインの濃度の平均である、請求項8に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一触媒を使用してメタクロレイン及びメタノールの酸化的エステル化を介してメチルメタクリレートを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒド及びアルコールを酸素の存在下で酸化的エステル化によってカルボン酸エステルに転化すること、特にメタクロレイン及びメタノールを酸素の存在下でメチルメタクリレートに転化することは、長年にわたって知られている。例えば、米国特許第4,249,019号は、この目的のためのパラジウム(Pd)-鉛(Pb)触媒及び他の触媒の使用を開示している。
【0003】
典型的なプロセス構成は、スラリー触媒気泡塔反応器及びスラリー触媒連続撹拌タンク反応器(CSTR)を含んでいた。この化学のためのスラリー型反応器は、典型的には、200μm未満のサイズの触媒を使用し、米国特許第6,228,800号は、スラリー反応のための200μm未満のサイズの卵殻型触媒の使用を開示している。スラリー触媒の使用に伴う問題は、触媒の寿命を制限し、生成物流の濾過を困難にする可能性がある触媒摩耗に起因する。中国特許第1931824号によれば、これらの問題は、固定床反応器に充填されるより大きなサイズの触媒の使用によって対処することができる。しかしながら、米国特許出願公開第2016/0251301号に記載されているように、より大きな触媒粒子の使用は、空時収量の低下及び他の潜在的な欠点をもたらす。
【0004】
より大きな触媒粒子を用いる固定床技術は、米国特許第4,520,125号において実施されており、同文書は、固定床システムにおける直径4mmの触媒の使用を開示している。米国特許出願公開第2016/0251301号及び同第2016/0280628号などの、この化学反応のための固定床技術のより最近の議論にあるように、この場合の反応器供給物は比較的希薄であった。
【0005】
商業生産設備では、酸化エステル化反応器の後に、生成物を精製し、脱水され、及び他の方法で精製された未反応反応物を再循環するための蒸留塔からなる分離セクションが続き(例えば、米国特許第5,969,178号を参照されたい)、生成物及び再循環は、多くの場合、生成物流の大部分を構成する。一部には、これは、メタノールが、典型的には、貴重なメタクロレインの転化を最大化するために過剰に酸化エステル化反応器に提供されるためである(例えば、米国特許第7,326,806号を参照されたい)。
【0006】
酸化的エステル化反応器へのメタクロレインの供給濃度は、文献において、非常に低いもの(例えば、米国特許第5,892,102号を参照されたい)から約35重量%(例えば、米国特許第8,461,373号を参照されたい)まで様々である。メタノールは、典型的には、供給物及び下流の分離セクションから酸化エステル化反応器に戻る再循環流の主成分である。
【0007】
この化学反応のための触媒は、パラジウム-鉛触媒を含むパラジウム系触媒(例えば、米国特許第4,249,019号を参照されたい)及び金系又は金含有触媒(例えば、米国特許第7,326,806号及び同第8,461,373号を参照されたい)などの様々な貴金属を含んでいる。
【0008】
メチルメタクリレートの効率的な生成については、選択性を最大化し、全ての副生成物の形成を低減することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、メチルメタクリレートを生成するプロセスであって、
a)エチレンからプロピオンアルデヒドを生成する工程と、
b)プロピオンアルデヒドをホルムアルデヒドと反応させてメタクロレインを生成する工程と、
c)メタクロレインを酸化的エステル化反応において反応させてメチルメタクリレートを生成する工程とを含み、
ここで、
工程b)は、1バールを超える圧力で実行され、
工程c)は、液相反応であり、1つ以上の反応器を含む反応器システムにおいて実行され、不均一貴金属含有触媒の存在下で実行され、反応器システムにおけるメタノールとメタクロレインとの平均比は、システムに出入りするメタノール及びメタクロレインの平均量に基づいて、20:1未満であり、反応器システムにおけるメタクロレインの平均濃度は、反応器システムにおけるメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、40重量%未満であり、反応器システムにおけるメタクロレインの平均濃度は、反応器システムを出入りするメタクロレインの濃度の平均であり、酸素は、反応器システムにおける蒸気空間において、蒸気相の総量に対して2.5mol%~7.5mol%の範囲の濃度で維持される、プロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別途記載のない限り、全ての組成比率は重量パーセント(重量%)であり、全ての温度は℃単位である。別途記載のない限り、平均は、算術平均である。「平均濃度」は、領域に入る濃度及び領域を出る濃度の算術平均であり、ここで、領域は、個々の反応器、反応器システム、又は反応器若しくは反応器システム内のゾーンである。「平均比」は、ある成分の平均濃度と別の成分の平均濃度との比である。例えば、反応器システム中のメタノールとメタクロレインとの平均比は、反応器システムに出入りするメタノールの平均濃度を反応器システムに出入りするメタクロレインの平均濃度で割ることによって計算される。
【0011】
貴金属は、金、プラチナ、イリジウム、オスミウム、銀、パラジウム、ロジウム、及びルテニウムのいずれかである。2つ以上の貴金属が触媒に存在し得、その場合、制限が全ての貴金属の合計に適用される。
【0012】
「触媒中心」は、触媒粒子の重心、すなわち、全ての座標方向における全ての点の平均位置である。直径は、触媒中心を通過する任意の直線寸法であり、平均直径は、全ての可能な直径の算術平均である。アスペクト比は、最長の直径の最短の直径に対する比率である。
【0013】
反応器システムは、指定された反応が行われる1つ以上の反応器を指す。例えば、メチルメタクリレートを生成するためのメタクロレインの酸化エステル化は、反応器システムにおいて行われる指定された反応であり得る。反応器システムは、単一の反応器又は複数の反応器を含み得る。更に、反応器システムは、複数のゾーン、すなわちマルチゾーン反応器システムに細分されてもよい。ゾーンは、物理的な分離によって、例えば、別個の領域を画定する壁若しくはバリアによって、又は反応条件の違い、例えば、触媒、反応物、又は不活性材料、pH調整剤などの他の反応成分の圧力、温度、組成又は濃度などによって定義され得る。例えば、反応器システムは、単一のゾーンを含む単一の反応器、複数のゾーンを含む単一の反応器、各反応器に単一のゾーンを含む複数の反応器、1つ以上の反応器が単一のゾーンと複数のゾーンを含む1つ以上の反応器を有する複数の反応器、又は各々が複数のゾーンを含む複数の反応器を含み得る。定義により、複数の反応器を含む反応器システムは、マルチゾーン反応器システムと考えられる。マルチゾーン反応器の例は、1つ以上の混合ゾーン、冷却ゾーン、及び反応が実行される1つ以上の触媒ゾーンを含む複数のゾーンを含む連続管状反応器であってもよい。マルチゾーン単一反応器の別の例は、液体反応物が循環する触媒ゾーンを画定する触媒を含有する内壁と、反応物が反応器に入り、生成物が反応器から出る、触媒ゾーンの外側の供給/除去ゾーンとを含む撹拌床反応器であってもよい。反応器システムの平均濃度又は任意の比に言及する場合、平均濃度又は比は、反応器システムに入るもの及び反応器システムから出るものに基づいて計算される。
【0014】
反応器システムは、流動床反応器、固定床反応器、トリクルベッド反応器、充填気泡塔反応器、又は撹拌床反応器として構成された反応器を含み得る。好ましくは、反応器システムは、充填気泡塔反応器を含む。
【0015】
触媒は、触媒が存在する反応器に応じて、スラリー又は固定床の形態で存在し得る。例えば、スラリー触媒は、撹拌床反応器又は流動床反応器で使用することができる一方、固定床触媒は、固定床反応器、トリクル床反応器、又は充填気泡塔反応器で使用することができる。好ましくは、触媒は、固定床反応器の形態である。
【0016】
触媒のサイズは、反応器のタイプに基づいて選択することができる。例えば、スラリー触媒は、200μm未満、例えば、10μm~200μmなどの平均粒径を有し得る。固定床触媒は、200μm以上、例えば、200μm~30mmなどの平均粒径を有し得る。好ましくは、触媒粒子の平均直径は、少なくとも60μm、好ましくは少なくとも100μm、好ましくは少なくとも200μm、好ましくは少なくとも300μm、好ましくは少なくとも400μm、好ましくは少なくとも500μm、好ましくは少なくとも600μm、好ましくは少なくとも700μm、好ましくは少なくとも800μm;好ましくは30mm以下、好ましくは20mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは4mm以下、好ましくは3mm以下である。
【0017】
貴金属含有触媒は、貴金属の粒子を含む。好ましくは、貴金属はパラジウム又は金を含み、より好ましくは、貴金属は金を含む。
【0018】
好ましくは、貴金属粒子は、15nm未満、好ましくは12nm未満、より好ましくは10nm未満、更により好ましくは8nm未満の平均粒径を有する。貴金属粒子の平均直径の標準偏差は、+/-5nm、好ましくは+/-2.5nm、より好ましくは+/-2nmである。本明細書で使用される場合、標準偏差は、以下の式によって計算される。
【0019】
【0020】
【数2】
はn粒子数の平均であり、nは少なくとも500である。
【0021】
好ましくは、貴金属含有触媒は、チタン含有粒子を更に含む。
【0022】
チタン含有粒子は、元素チタン又は酸化チタンTiOxを含んでもよい。好ましくは、チタン含有粒子は、酸化チタンを含む。
【0023】
チタン含有粒子は、好ましくは、貴金属含有粒子の平均直径の5倍未満の平均直径、より好ましくは貴金属含有粒子の平均直径の4倍未満の平均直径、更により好ましくは貴金属含有粒子の平均直径の3倍未満の平均粒径、更により好ましくは貴金属含有粒子の平均直径の2倍未満の平均粒径、更により好ましくは貴金属含有粒子の平均直径の1.5倍未満の平均粒径を有する。
【0024】
貴金属含有粒子とチタン含有粒子との重量比は、1:1~1:20の範囲であってもよい。好ましくは、貴金属含有粒子とチタン含有粒子との重量比は、1:2~1:15、より好ましくは1:3~1:10、更により好ましくは1:4~1:9、更により好ましくは1:5~1:8の範囲である。
【0025】
好ましくは、貴金属粒子は、チタン含有粒子の間に均一に分布している。本明細書で使用される場合、「均一に分布」という用語は、貴金属粒子が実質的に凝集せずにチタン含有粒子の間にランダムに分散していることを意味する。好ましくは、貴金属粒子の総数の少なくとも80%が、15nm未満の平均直径を有する粒子中に存在する。より好ましくは、貴金属粒子の総数の少なくとも90%が、15nm未満の平均直径を有する粒子中に存在する。更により好ましくは、貴金属粒子の総数の少なくとも95%が、15nm未満の平均直径を有する粒子中に存在する。
【0026】
触媒中の貴金属粒子は、担体材料の表面上に配置されてもよい。好ましくは、担体材料は、酸化物材料の粒子;好ましくは、γ-、δ-、若しくはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ハフニア、バナジア、酸化ニオブ、酸化タンタル、セリア、イットリア、酸化ランタン、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、貴金属を含む触媒の部分において、担体は、10m2/g超、好ましくは30m2/g超、好ましくは50m2/g超、好ましくは100m2/g超、好ましくは120m2/g超の表面積を有する。貴金属をほとんど含まないか、又は全く含まない触媒の部分において、担体は、50m2/g未満、好ましくは20m2/g未満の表面積を有し得る。担体の平均直径及び最終触媒粒子の平均直径は、著しくは異ならない。
【0027】
好ましくは、触媒粒子のアスペクト比は、10:1以下、好ましくは5:1以下、好ましくは3:1以下、好ましくは2:1以下、好ましくは1.5:1以下、好ましくは1.1:1以下である。触媒粒子の好ましい形状としては、球、円柱、直方体、輪、多葉形状(例えば、クローバー断面)、複数の穴及び「ワゴンホイール」を有する形状、好ましくは球が挙げられる。不規則な形状も使用され得る。
【0028】
貴金属粒子は、触媒全体にわたって分散することができる、又は例えば、勾配濃度若しくは層状構造などの様々な濃度密度を有することができる。好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%は、触媒体積(すなわち、平均触媒粒子の体積)の外側70%、好ましくは触媒体積の外側60%、好ましくは外側50%、好ましくは外側40%、好ましくは外側35%、好ましくは外側30%、好ましくは外側25%である。好ましくは、任意の粒子形状の外側体積は、外側表面に垂直な線に沿って測定された、その内側表面からその外側表面(粒子の表面)まで一定の距離を有する体積に対して計算される。例えば、球形粒子の場合、体積の外側x%は球形シェルであり、その外側表面は粒子の表面であり、その体積は球全体の体積のx%である。好ましくは、貴金属の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%は、触媒の外側体積にある。好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%)は、触媒直径の30%以下、好ましくは25%以下、好ましくは20%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下の表面からの距離内にある。表面からの距離は、表面に垂直な線に沿って測定される。
【0029】
好ましくは、触媒は、シリカを含む担体材料上の金粒子及びチタン含有粒子を含む。好ましくは、金粒子及びチタン含有粒子は、担体粒子上に卵殻構造を形成する。エッグシェル層は、500マイクロメートル以下、好ましくは250マイクロメートル以下、より好ましくは100マイクロメートル以下の厚さを有し得る。
【0030】
好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.1重量%が、触媒の表面に露出しており、表面は、触媒の外表面及び細孔の両方を含む。本明細書で使用される場合、「露出された」という用語は、金粒子の少なくとも一部が別の金粒子又はチタン含有粒子によって覆われていないこと、すなわち、反応物が金粒子に直接接触することができることを意味する。したがって、金粒子は、担体材料の細孔内に配置されてもよく、細孔内で金粒子と直接接触することができる反応物によって依然として露出されていてもよい。より好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.25重量%が、触媒の表面に露出しており、更により好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも0.5重量%が、触媒の表面に露出しており、更により好ましくは、金粒子の総重量の少なくとも1重量%が、触媒の表面に露出している。
【0031】
好ましくは、触媒は、担体の存在下で、金属塩の水溶液から貴金属を沈殿させることによって生成される。好ましい貴金属塩としては、限定するものではないが、テトラクロロ金酸、金チオ硫酸ナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、水酸化金、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、及び酢酸パラジウムが挙げられる。好ましい一実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩の水溶液を多孔性無機酸化物に添加して細孔を溶液で充填し、次いで水を乾燥により除去する初期湿潤技法によって生成される。次いで、得られた材料は、貴金属塩を金属又は金属酸化物に分解するための、焼成、還元、又は当業者に知られている他の処理によって完成触媒に転化される。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールが、溶液中に存在する。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールは、2~12個、好ましくは2~8個、好ましくは3~6個の炭素原子を有する。好ましくは、チオール化合物は、合計で4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヒドロキシル及びカルボン酸基を含む。好ましくは、チオール化合物は、2個以下、好ましくは1個以下のチオール基を有する。チオール化合物がカルボン酸置換基を含む場合、それらは、酸形態、共役塩基形態、又はこれらの混合物で存在し得る。チオール成分はまた、そのチオール(酸)形態又はその共役塩基(チオレート)形態のいずれかで存在し得る。特に好ましいチオール化合物としては、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、及び1-チオグリセロールが挙げられ、それらの共役塩基も含まれる。
【0032】
本発明の一実施形態では、触媒は、析出沈殿により生成され、ここで、多孔質無機酸化物が好適な貴金属前駆体塩を含有する水溶液に浸漬され、次いで、その塩は、溶液のpHを調整することにより無機酸化物の表面と相互作用される。次いで、得られた処理済み固体を(例えば濾過により)回収し、次いで、貴金属塩を金属又は金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、又は他の前処理によって完成触媒に転化される。
【0033】
触媒床は、不活性又は酸性材料を更に含んでもよい。好ましい不活性材料としては、例えば、アルミナ、粘土、ガラス、炭化ケイ素、及び石英が挙げられる。好ましくは、触媒床の前及び/又は後に位置する不活性又は酸性材料は、触媒の平均直径以上、好ましくは1~30mm;好ましくは少なくとも2mm;好ましくは30mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは7mm以下の平均直径を有する。
【0034】
本発明は、触媒床を含有する酸化的エステル化反応器(OER)内で、酸素含有ガスの存在下でメタクロレインをメタノールで処理することを含むメチルメタクリレート(MMA)を生成するためのプロセスに有用である。
【0035】
スラリー床又は固定床を含み得る触媒床は、触媒粒子を含む。OERシステムは、メタクロレイン、メタノール及びMMAを含む液相と、酸素を含む気相とを更に含む。液相は、副生成物、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(methacrolein dimethyl acetal、MDA)及びイソ酪酸メチル(methyl isobutyrate、MIB)を更に含んでもよい。その形成を制御する工程をとらない場合、MIBは、OERシステムを出る生成物流中のMMA、メタクロレイン、及びメタノールの総重量に対して1重量%(10,000ppm)を超える量でMMA生成物流中に存在し得る。MIBは、MMAから分離することが困難であり得る。したがって、本発明は、生成物流中のMIBの量が、0.1ppm~5000ppm、好ましくは0.1~4000ppm、より好ましくは0.1~3000ppm、更により好ましくは0.1~2500ppm、更により好ましくは0.1~2000ppmの範囲であるように、形成されるMIBの量を制限しようとする。
【0036】
好ましくは、OERシステムに入るメタノールの濃度は、反応器システムに入るメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、32重量%超である。より好ましくは、OERシステムに入るメタノールの濃度は、反応器システムに入るメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、35重量%超、更により好ましくは40重量%超である。好ましくは、OERシステムに入るメタノールの濃度は、反応器システムに入るメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、75重量%未満である。より好ましくは、OERシステムに入るメタノールの濃度は、反応器システムに入るメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、60重量%未満、更により好ましくは50重量%未満である。
【0037】
好ましくは、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノールの濃度は、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、少なくとも65重量%である。より好ましくは、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノールの濃度は、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、少なくとも70重量%である。好ましくは、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノールの濃度は、OERシステムを出る液相生成物流中のメタノール及びメタクロレインの総重量に基づいて、100重量%未満である。好ましくは、OERシステム中のメタノールの平均濃度(すなわち、OERシステムに入る及びOERシステムから出るメタノールの濃度の算術平均)は、OERシステムに入る及びOERシステムから出るメタノール及びメタクロレインの平均総重量(すなわち、OERシステムに入るメタノール及びメタクロレインの総重量と、OERシステムから出るメタノール及びメタクロレインの総重量との算術平均)に基づいて、70重量%超である。より好ましくは、OERシステム中のメタノールの平均濃度は、OERシステムに出入りするメタノール及びメタクロレインの平均総重量に基づいて、75重量%超である。
【0038】
OERシステムにおけるメタノールとメタクロレインとの平均重量比は、20:1~2:1の範囲であることが好ましく、平均重量比は、OERシステムに出入りするメタノールの平均濃度と、OERシステムに出入りするメタクロレインの平均濃度とに基づく。
【0039】
OERシステムの一例は、マルチゾーン又はマルチ反応器システムを含む。第1のゾーン又は反応器において、第1のゾーン又は反応器中のメタノールの平均濃度は、第1のゾーン又は反応器に出入りするメタノール及びメタクロレインの平均総量に基づいて、50重量%~80重量%の範囲である。最終ゾーン又は反応器は、最終ゾーン又は反応器に出入りするメタノール及びメタクロレインの平均総量に基づいて、80重量%~100重量%の範囲の平均メタノール濃度を有する。第1のゾーン又は反応器と最終ゾーン又は反応器との間で、反応器混合物は冷却されてもよい、及び/又は、例えば、最終ゾーン又は反応器に入る気相に空気を添加することなどによって、追加の酸素が添加されてもよい。
【0040】
好ましくは、OERシステムを出るガス流中の酸素濃度は、OERシステムを出るガス流の総体積に基づいて、少なくとも1モル%、より好ましくは少なくとも2モル%、更により好ましくは少なくとも2.5モル%、更により好ましくは少なくとも3モル%、更により好ましくは少なくとも3.5モル%、更により好ましくは少なくとも4モル%、最も好ましくは少なくとも4.5モル%である。好ましくは、OERシステムを出るガス流中の酸素濃度は、OERシステムを出るガス流の総量に基づいて、7.5mol%以下、好ましくは7.25mol%以下、好ましくは7mol%以下である。
【0041】
好ましくは、OERシステム内の液相は、40~120℃;好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも55℃の温度である。OERシステム内の液相の温度は、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下である。OERシステムが2つ以上の反応器及び/又は2つ以上のゾーンを含む場合、各反応器及び/又はゾーン内の温度は同じであっても異なっていてもよい。例えば、反応器又はゾーンを出る反応混合物は、次の反応器又はゾーンに入る前に冷却されてもよい。
【0042】
好ましくは、OERシステム中の触媒床は、1~150バール(100~15000kPa)の圧力下にある。理論によって限定されることを望むものではないが、増大した圧力でOERシステムを動作させることは、液相中に存在する酸素の量を増加させることによって、生成物流中に存在するMIBの量を低下させると考えられる。したがって、OERシステムの触媒床内の圧力は、少なくとも10バール、好ましくは少なくとも20バール、好ましくは少なくとも30バール、好ましくは少なくとも40バール、又は好ましくは少なくとも60バールであってもよい。例えば、OERシステムの触媒床内の圧力は、少なくとも100バール下にあってもよい。OERシステムが2つ以上の反応器及び/又はゾーンを含む場合、各反応器及び/又はゾーン内の圧力は、同じであっても異なっていてもよい。
【0043】
OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムを出るメチルメタクリレートのグラム-モル毎に0.02kg~2kgの範囲の触媒の量で存在し得る。好ましくは、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムを出るメチルメタクリレートのグラム-モル毎に、少なくとも0.02kg~0.5kgの触媒の量で存在する。好ましくは、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムを出るメチルメタクリレートのグラム-モル毎に、0.4kg未満の触媒、より好ましくは0.3kg未満の触媒、更により好ましくは0.25kg未満の触媒、更により好ましくは0.2kg未満の触媒の量で存在する。
【0044】
反応器を出るメチルメタクリレートの量は、OERシステムにおけるメタクロレインの転化率に依存する。例えば、OERシステムに入るメタクロレインの50%転化率では、生成されるメチルメタクリレートの各モルに対して2モルのメタクロレインが必要となる。この例では、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.01~1kgの範囲の触媒の量で存在し得る。OERシステムに入るメタクロレインの25%転化率では、生成されるメチルメタクリレートの各モルに対して4モルのメタクロレインが必要とされ、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.005~0.5kgの範囲の触媒の量で存在し得る。OERシステムに入るメタクロレインの75%転化率では、生成されるメチルメタクリレートの各モルに対して1.33モルのメタクロレインが必要とされ、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.015~1.5kgの範囲の触媒の量で存在し得る。いかなる外部再循環流も無視すると、OERシステムは、好ましくは、OERシステムにおいて、メタクロレインからメチルメタクリレートへの少なくとも25%の転化率、より好ましくは少なくとも35%の転化率、更により好ましくはメタクロレインからメチルメタクリレートへの少なくとも40%の転化率を示す。未反応メタクロレインをOERシステムに再循環する外部再循環流の添加もまた、プロセスの全体的な転化効率を改善するために利用することができる。
【0045】
貴金属含有触媒が金を含む場合、金は、1時間にわたって反応器システムを出るMMAのグラム-モル毎に0.0001kg~0.1kgの範囲の量で存在してもよい。好ましくは、金は、1時間にわたって反応器システムを出るMMAのグラム-モル毎に少なくとも0.0001kg~0.005kgの量で存在する。好ましくは、金は、1時間にわたって反応器システムを出るMMAのグラム-モル毎に0.004kg未満の量で存在する。
【0046】
反応器システムに入るメタクロレインの量に対するOERシステム中の不均一貴金属含有触媒の量に関して、OERシステムに入るメタクロレインの50%転化率において、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒中の金は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.00005~0.05kgの金の範囲の量で存在し得る。OERシステムに入るメタクロレインの25%の転化率において、OERシステム内の不均一貴金属含有触媒中の金は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.000025~0.025kgの範囲の触媒の量で存在し得る。OERシステムに入るメタクロレインの75%の転化率において、OERシステム中の不均一貴金属含有触媒中の金は、1時間にわたって反応器システムに入るメタクロレインのグラム-モル毎に0.000075~075kgの範囲の触媒の量で存在し得る。
【0047】
触媒床中のpHは、2~10の範囲であってもよい。いくつかの触媒は、酸性条件下で不活性化され得る。したがって、触媒が耐酸性でない場合、触媒床のpHは4~10;好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも5.5;好ましくは9以下、好ましくは8以下、好ましくは7.5以下である。
【0048】
反応器システムのpHを上昇させるために、塩基材料を添加してもよい。塩基材料は、アレニウス塩基(すなわち、水中で解離して水酸化物イオンを形成する化合物)、ルイス塩基(すなわち、電子対を供与することができる化合物)、又はブレンステッド-ローリー塩基(すなわち、プロトンを受容することができる化合物)を含み得る。アレニウス塩基の例としては、アルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。ルイス塩基の例としては、アミン、スルフェート、及びホスフィンが挙げられるが、これらに限定されない。ブレンステッド-ローリー塩基の例としては、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。アンモニアは、ルイス塩基又はブレンステッド-ローリー塩基のいずれかであり得る。
【0049】
本発明者らは、反応器システムにおける塩基材料の高い局所濃度が、副生成物としての望ましくないマイケル付加物の形成を引き起こし得ることを発見した。したがって、マイケル付加物の形成の最小化を助けるために、塩基材料は、好ましくは、反応器システムに入る前に少なくとも1つの他の材料と混合される。好ましくは、塩基材料は、反応器システムの外部の位置で導入され、1つ以上の反応物又は希釈剤と混合されて塩基含有流を形成する。例えば、塩基材料は、メタノール、水、又は非反応性溶媒、すなわち、反応器システムにおけるメチルメタクリレートの形成に悪影響を及ぼさない溶媒と混合されてもよい。反応器システムの外部の位置は、混合容器であってもよい。あるいは、反応器の外部の位置は、乱流、バッフル、ジェットミキサー、又は他の混合方法などによって十分な混合が起こる供給ライン又は再循環ラインなどの、成分が反応器システムに移動するラインであってもよい。
【0050】
好ましくは、塩基含有流中の塩基材料の量は、塩基含有流の総重量に基づいて、50重量%以下、好ましくは25重量%以下、好ましくは20重量%以下、好ましくは15重量%以下、好ましくは10重量%以下、好ましくは5重量%以下、又は好ましくは1重量%以下である。塩基材料は、好ましくは、反応器システムに入る前の塩基含有流の総重量に対して、1:2未満、例えば、1:3未満、1:4未満、1:5未満、1:10未満、1:20未満、又は1:100未満の倍率で希釈される。
【0051】
好ましくは、塩基含有流は、反応器システムに添加される前に、塩基含有流内の塩基材料の濃度の局所的スパイクを回避するために十分に混合される。例えば、塩基含有流が少なくとも95%の均質度に達すること、すなわち、塩基材料の濃度の変動が、反応器システムに入る前の塩基含有流の塩基材料の平均濃度の+/-5%以内で逸脱することが好ましい。好ましくは、塩基含有流は、塩基材料の導入から4分以内、より好ましくは2分以内、更により好ましくは塩基材料の導入から1分以内に95%の均質度に達する。
【0052】
混合容器の場合、添加剤が95%の均質度に達するのに必要な時間はΘ95-で定義され、これは、Grenville及びNienow、The Handbook of Industrial Mixing、507~509頁によって開示された方法によって計算することができ、この方法は、乱流中の撹拌タンクについて以下の式を与える。
【0053】
【数3】
式中、Tはタンクの直径、Hは液体の高さ、Dはインペラの直径、N
Pはインペラ(複数可)の特徴的な動力数、Nは、インペラ速度である。静的ミキサーやジェット混合容器などについても同様の表現が存在する。
【0054】
好ましくは、塩基材料は、反応器システムの内部又は外部のいずれにおいても反応器システムに添加されない。好ましくは、塩基材料が反応器システムに添加されない場合、貴金属含有触媒は、金及びチタン含有粒子からなる触媒などの耐酸性触媒を含む。塩基材料の非存在下でOERシステムを動作させることは、いくつかの利点を提供し得る。1つの利点は、マイケル付加物の生成が少ないことによる選択性の向上と及び空時収量(STY)の増加である。別の利点は、水性廃棄物を処理するためのコスト削減によるコスト削減である。塩基材料が使用された酸化エステル化プロセスを出る水性廃棄物は、大量の無機塩を生成する可能性があり、この無機塩は、生物学的水処理プロセスで処理することが困難又は不可能であり得る。これは、次に、焼却のような他の廃棄物処理プロセスの使用を必要とし得る。
【0055】
OERは、典型的には、メタクリル酸及び未反応メタノールとともにMMAを含む液体生成物流を生成する。好ましくは、反応生成物は、メタノール及びメタクロレインに富む塔頂流を提供するメタノール回収蒸留塔に供給され、好ましくは、この流はOERに再循環される。メタノール回収蒸留塔からの底流は、MMA、MIB、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む。MDAは、好ましくは、MMA、MDA、メタクリル酸、塩及び水を含む媒体中で加水分解される。MDAは、メタノール回収蒸留塔からの底流中で加水分解され得る。この加水分解は、メタノール回収塔内で起こり得る。メタノール回収蒸留塔からの底流は、追加のMDA加水分解のために別のアセタール加水分解反応器に送られてもよい。あるいは、MDAは、有機相がメタノール回収塔底流から分離された後に、別のアセタール加水分解反応器中で加水分解されてもよい。MDAの加水分解に十分な水が存在することを確実にするために、水を有機相に添加することが必要であり得、これらの量は、有機相の組成から容易に測定され得る。適切なMDA除去を確実にするために、酸流を加水分解反応器に添加してもよい。MDA加水分解反応器の生成物は、相分離され、有機相は、1つ以上の蒸留塔を通過して、MMA生成物並びに軽質及び/又は重質の副生成物を生成する。
【0056】
酸化的エステル化反応において使用されるメタクロレインは、好ましくは、アルドール縮合又はマンニッヒ縮合のいずれかによって生成される。好ましくは、メタクロレインは、適切な触媒の存在下でプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとのマンニッヒ縮合によって形成される。プロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとのモル比は、1:20~20:1、好ましくは1:1.5~1.5:1、より好ましくは1:1.25~1.25:1、更により好ましくは1:1.1~1.1:1の範囲であってもよい。
【0057】
マンニッヒ縮合プロセスにおいて使用され得る触媒の例としては、例えば、アミン-酸触媒が挙げられる。アミン-酸触媒の酸としては、無機酸(例えば、硫酸及びリン酸)及び有機モノ-、ジ-、又はポリカルボン酸(例えば、脂肪族C1-C10モノカルボン酸、C2-C10ジカルボン酸、C2-C10ポリカルボン酸)が挙げられ得るが、これらに限定されない。アミン酸触媒の好適なアミンには、例えば、式NHR1R2のものが含まれ、式中、R1及びR2は、各々独立して、C1~C10アルキルであり、任意選択的に、エーテル、ヒドロキシル、第2級アミノ、若しくは第3級アミノ基で置換されるか、又はR1及びR2は、隣接する窒素と一緒になって、C5~C7複素環を形成し得、任意選択で、更なる窒素原子及び/若しくは酸素原子を含有し、任意選択で、C1~C4アルキル若しくはC1~C4ヒドロキシアルキルによって置換される。
【0058】
マンニッヒ縮合反応は、好ましくは、少なくとも20℃の温度及び1バール超の圧力で反応器中でアミン-酸触媒の存在下でプロピオンアルデヒド、ホルムアルデヒド、及びメタノールを反応させることによって液相中で実行される。反応器の温度は、20℃~220℃、好ましくは80℃~220℃、より好ましくは120℃~220℃の範囲であってもよい。反応器の圧力は、1バール超~150バールの範囲であり得る。
【0059】
阻害剤を反応器に添加して、望ましくない生成物の形成を防止することができる。例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-ヒドロキシ-TEMPO)を反応器に添加することができる。
【0060】
メタクロレインを生成するために使用されるプロピオンアルデヒドは、エチレンのヒドロホルミル化によって調製することができる。ヒドロホルミル化プロセスは当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,427,486号、同第5,087,763号、同第4,716,250号、同第4,731,486号、及び同第5,288,916号に開示されている。エチレンのプロピオンアルデヒドへのヒドロホルミル化は、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンを一酸化炭素及び水素と接触させることを伴う。ヒドロホルミル化触媒の例としては、例えば、有機ホスフィン、有機ホスファイト、及び有機ホスホルアミダイトなどの金属-有機リン配位子錯体が挙げられる。一酸化炭素と水素との比は、1:10~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲であってもよい。ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の範囲の温度で行われ得る。
【0061】
プロピオンアルデヒドを調製するために使用されるエチレンは、エタノールの脱水から調製されてもよい。例えば、エチレンは、エタノールの酸触媒脱水によって調製することができる。エタノール脱水は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第9,249,066号に開示されている。好ましくは、エタノールは、石油ベースの供給源から調製されるエタノールとは対照的に、植物材料又はバイオマスなどの再生可能資源から供給される。MMAを生成するためのプロセスにおいてバイオ資源エタノールのみを使用することにより、再生可能資源に由来するMMAの炭素原子の最大40%(すなわち、MMA中の5個の炭素原子のうちの2個)がもたらされる。
【0062】
MMA中の再生可能な炭素含有量を更に増加させるために、追加の出発材料も再生可能な資源から調製することができる。例えば、ホルムアルデヒドは合成ガスから調製することができ、合成ガスはバイオマスから調製することができる。プロピオンアルデヒドの調製にも使用することができる一酸化炭素も、Liら、ACS Nano、2020年4月14日、4905~4915に開示されているように、再生可能資源から調製することができる。これらの追加の生物資源を使用することにより、再生可能な炭素の量を更に増加させることができる。
【0063】
あるいは、MMAを生成するための出発材料は、再循環された材料から調製することができる。例えば、再循環された二酸化炭素をメタノールを生成するために使用することができ、メタノールをホルムアルデヒドを生成するために使用することができる。
【0064】
好ましくは、MMA中の炭素原子の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも80%、及び更により好ましくは100%が、再生可能又は再循環された内容物に由来する。
【国際調査報告】