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特表2024-536298リン酸鉄リチウムカソード材料を含む炭素粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウムカソード材料を含む炭素粉末
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240927BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/136
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519929
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2023016841
(87)【国際公開番号】W WO2023192443
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】63/326,353
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/336,640
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/352,571
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/378,756
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/416,996
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,666
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,672
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,681
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,687
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,694
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,771
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/381,777
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】フーマン ヤグーブネジャド アズル
(72)【発明者】
【氏名】レドゥアン ベガグ
(72)【発明者】
【氏名】ルシー ソニ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス レベンティス
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア バーテルズ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050EA08
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
多孔質炭素マトリックスと、マトリックス内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子、並びに主に水性化学を使用するそれらの製造方法が開示される。埋め込まれていない場合のカソード材料粒子と比較して、集塊粒子は、カソード材料として使用される場合に驚くほど改善された電気化学的特性を示す。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素を含むマトリックス粒子と、
前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子と、
を含む集塊粒子。
【請求項2】
前記複数のカソード材料粒子がリン酸金属リチウム(LMP)粒子を含む、請求項1に記載の集塊粒子。
【請求項3】
前記LMPの前記金属(M)が、Fe、Mn、V、及びFeとMnの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の集塊粒子。
【請求項4】
前記マトリックス粒子が、100nm~20ミクロン、または1~10ミクロンの粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項5】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満の平均粒径D50を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項6】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、150nm未満の平均粒径D50を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項7】
前記マトリックス粒子の、内部細孔に対応する内部比表面積が50m/グラム~150m/グラムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項8】
前記内部比表面積の少なくとも一部が、電解質がアクセスできるように構成されている、請求項7に記載の集塊粒子。
【請求項9】
前記マトリックス粒子がエアロゲルまたはキセロゲルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項10】
前記キセロゲルのエアロゲルが、1つもしくは複数のビーズ、またはモノリスとして形成される、請求項9に記載の集塊粒子。
【請求項11】
前記エアロゲルまたはキセロゲルが、ポリイミド、ポリアミック酸、またはそれらの組み合わせを含むオルガノゲルに由来する、請求項9または10に記載の集塊粒子。
【請求項12】
前記エアロゲルまたはキセロゲルが炭化オルガノゲルである、請求項9~11のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項13】
前記マトリックス粒子が、フィブリル形態を含む細孔構造を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項14】
前記フィブリル形態が、約2~約10nmの範囲の幅を有する炭化材料の支柱を含む、請求項13に記載の集塊粒子。
【請求項15】
前記マトリックス粒子が実質的に均一な細孔径分布を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項16】
前記マトリックス粒子が、約1~約50nm、または約5~約25nmの平均細孔径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項17】
前記マトリックス粒子が細孔を含み、前記細孔の少なくとも一部が前記カソード材料粒子を収容するように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項18】
前記カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、請求項1~17のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【請求項19】
多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子を調製する方法であって、
(a)ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することと、
(b)カソード材料粒子を前記ポリアミック酸の塩の水溶液と混合することと、
(c1)工程(b)の前記混合物をゲル化して分散したカソード材料粒子を含むオルガノゲルを形成し、工程(c1)の前記オルガノゲルを乾燥させて乾燥した中間体を形成すること、または
(c2)工程(b)の前記混合物を乾燥させて乾燥した中間体を形成することと、
(d)前記乾燥した中間体を炭化して前記集塊粒子を形成することと、
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することが、
水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、
前記成分を反応させて前記ポリアミック酸の塩の溶液を得ることと、
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、
前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に添加することと、
前記懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を得ることと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記混合が、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸塩の水溶液を得ることと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムカチオンを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が炭酸塩であり、前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であり、または
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が重炭酸塩であり、前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、
請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記水溶液中の前記ポリアミック酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミック酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記オルガノゲルまたは中間体を乾燥させることが、
任意選択で前記オルガノゲルまたは中間体を洗浄または溶媒交換することと、
前記オルガノゲルもしくは中間体を高温条件にさらして前記オルガノゲルもしくは中間体を凍結乾燥し、または前記オルガノゲルもしくは中間体を超臨界流体二酸化炭素と接触させることと、
を含む、請求項19~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記多孔質炭素マトリックスがエアロゲルまたはキセロゲルを含む、請求項19~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記炭化が、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で行われる、請求項19~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記カソード材料粒子が、少なくとも1種のリン酸金属リチウム(LMP)を含み、前記金属(M)が、鉄、マンガン、バナジウム、及び鉄とマンガンの組み合わせから選択される、請求項19~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記カソード材料粒子がLiFePOを含むか、または本質的にLiFePOからなる、請求項19~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記カソード材料が、工程(b)の前または間に粉砕される、請求項19~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記粉砕が、ローラーミル、遊星ボールミルまたはビーズ撹拌ミルを使用して、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼から選択される少なくとも1種の粉砕媒体を任意に使用して粉砕することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記粉砕が、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から任意に選択される液相中に前記カソード材料を分散させることと、前記カソード材料を湿式粉砕することとを含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記粉砕が、前記ポリアミック酸の塩の水溶液中に前記カソード材料を分散させることと、工程(b)の間に前記カソード材料を湿式粉砕してカソード材料粒子を得ることとを含む、請求項38または請求項39に記載の方法。
【請求項41】
工程(b)が、前記カソード材料を前記水溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で混合することを含む、請求項19~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記オルガノゲルがポリイミドを含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸を前記ポリイミドに変換することを含む、請求項19~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程(c1)における前記混合物のゲル化が、湿潤ゲルモノリスを形成するために型内で行われる、請求項42または43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記乾燥の前に、前記湿潤ゲルモノリスを複数の断片に砕くことを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(e)工程(c1)の前記乾燥した材料を粉砕することを更に含む、請求項50または51に記載の方法。
【請求項47】
前記粉砕により、約50ミクロン未満の平均粒径D50を有する粒子が生成される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程(c1)が、前記ゲル化開始剤を添加した後、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エマルジョンを形成するための混合が、約1~約30分間、または約4~約15分間行われる、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記オルガノゲルがポリアミック酸を含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸の塩を前記ポリアミック酸オルガノゲルに変換することを含み、前記ゲル化開始剤が酸である、請求項19~41のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記酸がカルボン酸である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記カルボン酸が酢酸である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
工程(b)と(c1)の間に、工程(b)の前記混合物を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記混合が、最大約10分間、または約1~約3分間行われる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記混合がホモジナイザーを使用して行われる、請求項48~50または54~55に記載の方法。
【請求項57】
前記ホモジナイザーが、少なくとも1000rpm、例えば約1000~約9000rpmの速度で操作される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記非水混和性液体が、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、トルエン、他の炭化水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48~50または54~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記非水混和性液体がミネラルスピリットである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記非水混和性液体がその中に溶解した界面活性剤を更に含む、請求項48~50または54~59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記界面活性剤が、前記非水混和性液体に対して約1~2重量%の濃度で存在する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
乾燥前に、工程(c1)で形成された前記オルガノゲルのビーズを分離することを更に含む、請求項48~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ビーズが5~30ミクロンの平均サイズを有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
分離が、前記非水混和性液体をデカントすることと、任意選択で前記非水混和性液体をリサイクルすることとを含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記ゲルビーズを、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせで洗浄することを更に含む、請求項62~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する、請求項19~65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記乾燥工程(c2)が噴霧乾燥である、請求項19~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
請求項19~67のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または前記方法によって得ることができる、多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子。
【請求項69】
カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、請求項68に記載の集塊粒子。
【請求項70】
請求項1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含む電極。
【請求項71】
請求項1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含むエネルギー蓄積装置。
【請求項72】
前記エネルギー蓄積装置がLiイオン電池である、請求項71に記載のエネルギー蓄積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月1日に出願された米国仮特許出願第63/381777号、2022年11月1日に出願された米国仮特許出願第63/381771号、2022年10月31日に出願された米国仮特許出願第63/381694号、2022年10月31日に出願された米国仮特許出願第63/381687号、2022年10月31日に出願された米国仮特許出願第63/381681号、2022年10月31日に出願された米国仮特許出願第63/381672号、2022年10月31日に出願された米国仮特許出願第63/381666号、2022年10月18日に出願された米国仮特許出願第63/416996号、2022年10月7日に出願された米国仮特許出願第63/378756号、2022年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/352571号、2022年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/336640号、及び2022年4月1日に出願された米国仮特許出願第63/326353号の優先権及び利益を主張し、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池用の改良されたカソード材料に関する。特に、本開示は、カソード材料がドープされたカーボンエアロゲルを含む多孔質炭素マトリックス材料、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
充電式電池の最も一般的な形式の1つは、リチウムイオン電池(LIB)である。LIBは、携帯用電子機器から自動車に至るまで、様々な用途で広く使用されている。LIBは、リチウムイオンが放電中にアノードからカソードに移動し、充電サイクル(再充電)中にカソードからアノードに移動する電池の一種である。従来、LIBのアノードはグラファイト及び/または合金材料(例えば、Si)、または酸化物(例えば、LiTi12)で形成され、リチウムイオンは、充電サイクル中にグラファイト層内に挿入され、エネルギー貯蔵が行われる。LIBカソード材料は、一般に、ニッケル、コバルト、またはマンガン(「NCM」)もしくはアルミニウムの酸化物化合物である。NCMカソード材料は、他の種類のカソード材料と比較して高い充電容量(約200ミリアンペア時/グラム(mAh/g))を有するため興味深い。しかし、これらの材料は、調製するのに費用がかかる可能性があり、また、必要な前駆体を提供するために高価な鉱石を入手して処理する必要があり、その間に有毒な廃棄物が生成されるため、環境に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
最近、LFP(LiFePO)はリチウムイオン電池(LIB)用の最も有望なカソード材料の1つとして浮上しており、非LFP LIB(例えば、NMC化学物質)で広く使用されているニッケルやコバルトなどの紛争金属を排除している。ただし、この材料の主な課題は、大規模生産におけるコスト/パフォーマンス、特に原材料と製造プロセスのコストにある。電池内で良好に機能する(すなわち、170ミリアンペア時/グラム(mA/g)の理論容量に近づき、少なくとも500または1000回の充電サイクルでの容量損失が最小限に抑えられる)LFP材料は、様々な技術を用いて様々な前駆体から製造することができる。しかし、これらの技術では廃水が発生する可能性があり、高価でエネルギーを大量に消費する処理技術が必要になる。
【0005】
一方、低コスト(かつ低品質)のLFP(ここでは「LC-LFP」)は、酸化鉄(鉱物)から経済的に製造することができるが、その性能は劣っている。一部の種類のLFPの劣った性能は、粒子の炭素被覆が不均一または低品質であること(それにより材料の内部電気抵抗が増加する)、及び/またはリチウムイオン移動度を阻害する結晶学的欠陥に起因する可能性がある。電子移動抵抗及びイオン移動抵抗は両方とも粒径と正の相関を示す。したがって、特にリチウムイオン電池(LIB)での使用のためにLFP電極の性能を最適化するには、LFPの粒径を1ミクロン未満に低減することが含まれる。
【0006】
LFP電極の性能を最適化するには、アニーリングによって結晶欠陥を低減することも含まれる場合がある。しかし、粒径を低減する技術と高温処理は、高温で処理するとLFPの(望ましい)小粒子に望ましくない結晶成長が生じるため、両立しない。望ましくない結晶成長により、カソード粒子内に電子的に絶縁されたゾーンが生じ、リチウム(Li)イオンにアクセスしにくくなり、充電容量が低下する。したがって、LIB作業に適した高性能LFP電極を標的とするには、高度なポリマーとカーボン技術を使用した導電性表面コーティングと粒子レベルの工学の実施が必要である。
【0007】
したがって、本開示は、従来の材料及び方法における上記の欠点を克服しながら、低コストの出発材料から製造される高性能LFP材料に対する当該技術分野のニーズを満たすことを目指す。
【発明の概要】
【0008】
本技術は一般に、多孔質炭素マトリックス粒子及び複数のカソード材料粒子を含む集塊粒子、並びに導電性炭素マトリックス内でカソード材料を調製する方法を対象とする。この方法は一般に、後続のゲル化に適したオルガノゲル前駆体材料の溶液中にカソード材料粒子のスラリーを提供してオルガノゲル(例えば、ポリイミドまたはポリアミック酸ゲル)を形成し、オルガノゲル前駆体材料をゲル化させ、それによって湿潤オルガノゲルの形態の有機マトリックスを形成し、湿潤オルガノゲルを乾燥させることを含む。続いて、乾燥オルガノゲル(エアロゲル、キセロゲル、またはエアロゲル様)を熱分解して、カソード材料の粒子がドープされた多孔質炭素マトリックス材料を形成する。
【0009】
リン酸鉄リチウム材料を形成する様々な固相及び液相法がこれまでに報告されている。例えば、Wangらの米国特許出願公開第2011/0110838号、Huangらの同第2008/0099720号、Mishimaらの同第2010/0065787号及び同第2011/0091772号、Parkらの米国特許第7,988,879号及びSaidiらの同第7,060,238号、Dongの欧州特許出願公開第1,921,698号、並びにBarkerらの国際特許出願公開第WO2004/092065号を参照されたい。
【0010】
LFP単独では導電率が低く、必要な導電性を得るために追加の炭素(すなわち、LFP/C)を提供することが当該技術分野で知られている。以前に報告された方法は、例えば炭素を含むLFPカソード材料を提供するが、この炭素は通常、炭素粒子(例えばカーボンブラック)を使用して、またはLFP前駆体と糖分子の混合物の熱分解によって添加される。カソード材料に炭素を導入するこれらの従来の方法はいずれも、本明細書に開示される方法に従って提供されるものと同等の導電性マトリックスを提供しない。
【0011】
開示された製品及び方法は、低コスト/低品質のLFP(LC-LFP)材料を含む任意の供給源からのLFPを出発材料として使用することができ、開示された製品及び方法を費用対効果の高いものにする。更に、本明細書に開示される製品及び方法は、LFP粒子が少なくとも部分的に埋め込まれた多孔質炭素マトリックスを提供し、それによって導電性の向上に必要な炭素を提供することによって、そのような材料の劣った性能も克服する。最終材料に存在する炭素の量は、導電性に必要な最小限の量に調整することができ、それによって、最終電池に電荷を貯蔵する成分であるLFPの量を最大化する。
【0012】
熱分解による開示された炭素マトリックスの生成は、本明細書では、オルガノゲルのポリマー(例えば、ポリアミック酸、ポリイミド、またはそれらの組み合わせ)を炭素に熱分解するのに十分高い温度で行われ、同時にLFP粒子における望ましくない結晶成長を防止する。理論に束縛されることを望むものではないが、カーボンマトリックス粒子の細孔内にLFP粒子を少なくとも部分的に埋め込むことにより、この結晶成長の可能性が防止され、さもなければ電池セルの充電容量が低下すると考えられる。
【0013】
更に、本明細書に開示される方法は一般に、環境に優しい化学を利用し、非水性溶媒が使用される場合、溶媒はリサイクルすることができ、この方法による環境への影響が全体的に低くなる。
【0014】
一態様では、多孔質炭素を含むマトリックス粒子と、マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子が提供される。
【0015】
いくつかの態様では、複数のカソード材料粒子はリン酸金属リチウム(LMP)粒子を含む。
【0016】
いくつかの態様では、LMPの金属(M)は、Fe、Mn、V、及びFeとMnの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの態様では、マトリックス粒子は、100nm~20ミクロン、または1~10ミクロンの粒径を有する。
【0018】
いくつかの態様では、複数のカソード材料粒子の少なくとも一部は、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する。
【0019】
いくつかの態様では、マトリックス粒子の、内部細孔に対応する内部比表面積は50m/グラム~150m/グラムである。
【0020】
いくつかの態様では、内部比表面積の少なくとも一部は、電解質がアクセスできるように構成されている。
【0021】
いくつかの態様では、マトリックス粒子はエアロゲルまたはキセロゲルを含む。
【0022】
いくつかの態様では、キセロゲルのエアロゲルは、1つもしくは複数のビーズ、またはモノリスとして形成される。
【0023】
いくつかの態様では、エアロゲルまたはキセロゲルは、ポリイミド、ポリアミック酸、またはそれらの組み合わせを含むオルガノゲルに由来する。
【0024】
いくつかの態様では、エアロゲルまたはキセロゲルは炭化オルガノゲルである。
【0025】
いくつかの態様では、マトリックス粒子は、フィブリル形態を含む細孔構造を有する。
【0026】
いくつかの態様では、フィブリル形態は、約2~約10nmの範囲の幅を有する炭化材料の支柱を含む。
【0027】
いくつかの態様では、マトリックス粒子は実質的に均一な細孔径分布を有する。
【0028】
いくつかの態様では、マトリックス粒子は、約1~約50nm、または約5~約25nmの平均細孔径を有する。
【0029】
いくつかの態様では、マトリックス粒子は細孔を含み、上記細孔の少なくとも一部はカソード材料粒子を収容するように構成されている。
【0030】
いくつかの態様では、カソード材料に対するマトリックス材料中の炭素の重量比は、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である。
【0031】
別の態様では、多孔質炭素マトリックス粒子と、マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子を調製する方法が提供され、この方法は、
(a)ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することと、
(b)カソード材料粒子をポリアミック酸の塩の水溶液と混合することと、
(c1)工程(b)の混合物をゲル化して分散したカソード材料粒子を含むオルガノゲルを形成し、工程(c1)のオルガノゲルを乾燥させて乾燥した中間体を形成すること、または
(c2)工程(b)の混合物を乾燥させて乾燥した中間体を形成することと、
(d)乾燥した中間体を炭化して集塊粒子を形成することとを含む。
【0032】
いくつかの態様では、ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することは、
水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、
成分を反応させてポリアミック酸の塩の溶液を得ることとを含む。
【0033】
いくつかの態様では、混合は、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
水溶性炭酸塩または重炭酸塩をジアミン水溶液に添加することと、
テトラカルボン酸二無水物をジアミンと水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、
溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することとを含む。
【0034】
いくつかの態様では、混合は、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
テトラカルボン酸二無水物をジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、
懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
水溶性炭酸塩または重炭酸塩を懸濁液に添加することと、
懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、ポリアミック酸の塩の水溶液を得ることとを含む。
【0035】
いくつかの態様では、混合は、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、ポリアミック酸塩の水溶液を得ることとを含む。
【0036】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムカチオンを含む。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩は炭酸塩であり、水溶性炭酸塩とジアミンとのモル比は約1~約1.4であり、または、水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩は重炭酸塩であり、水溶性重炭酸塩とジアミンとのモル比は約2~約2.8である。
【0038】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は約0.9~約1.1である。
【0039】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される。
【0040】
いくつかの態様では、ジアミンは、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、ジアミンは1,4-フェニレンジアミンである。
【0041】
いくつかの態様では、水溶液中のポリアミック酸塩の濃度範囲は、ポリアミック酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである。
【0042】
いくつかの態様では、オルガノゲルまたは中間体を乾燥させることは、
任意選択でオルガノゲルまたは中間体を洗浄または溶媒交換することと、
オルガノゲルもしくは中間体を高温条件にさらしてオルガノゲルもしくは中間体を凍結乾燥し、またはオルガノゲルもしくは中間体を超臨界流体二酸化炭素と接触させることとを含む。
【0043】
いくつかの態様では、多孔質炭素マトリックスはエアロゲルまたはキセロゲルを含む。
【0044】
いくつかの態様では、炭化は、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で行われる。
【0045】
いくつかの態様では、カソード材料粒子は、少なくとも1種のリン酸金属リチウム(LMP)を含み、金属(M)は、鉄、マンガン、バナジウム、及び鉄とマンガンの組み合わせから選択される。
【0046】
いくつかの態様では、カソード材料粒子はLiFePOを含むか、または本質的にLiFePOからなる。
【0047】
いくつかの態様では、カソード材料は、工程(b)の前または間に粉砕される。
【0048】
いくつかの態様では、粉砕は、ローラーミル、遊星ボールミルまたはビーズ撹拌ミルを使用して、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼から選択される少なくとも1種の粉砕媒体を任意に使用して粉砕することを含む。
【0049】
いくつかの態様では、粉砕は、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から任意に選択される液相中にカソード材料を分散させることと、カソード材料を湿式粉砕することとを含む。
【0050】
いくつかの態様では、粉砕は、ポリアミック酸の塩の水溶液中にカソード材料を分散させることと、工程(b)の間にカソード材料を湿式粉砕してカソード材料粒子を得ることとを含む。
【0051】
いくつかの態様では、工程(b)は、カソード材料を水溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で混合することを含む。
【0052】
いくつかの態様では、オルガノゲルはポリイミドを含み、工程(c1)におけるゲル化は、ゲル化開始剤を添加してポリアミック酸をポリイミドに変換することを含む。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は無水酢酸である。
【0053】
いくつかの態様では、工程(c1)における混合物のゲル化は、湿潤ゲルモノリスを形成するために型内で行われる。
【0054】
いくつかの態様では、この方法は、乾燥の前に、湿潤ゲルモノリスを複数の断片に砕くことを更に含む。
【0055】
いくつかの態様では、この方法は、(e)工程(c1)の乾燥した材料を粉砕することを更に含む。
【0056】
いくつかの態様では、粉砕により、約50ミクロン未満の平均粒径D50を有する粒子が生成される。
【0057】
いくつかの態様では、工程(c1)は、ゲル化開始剤を添加した後、ポリアミック酸の塩の水溶液を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む。
【0058】
いくつかの態様では、ゲル化開始剤は無水酢酸である。
【0059】
いくつかの態様では、エマルジョンを形成するための混合は、約1~約30分間、または約4~約15分間行われる。
【0060】
いくつかの態様では、オルガノゲルはポリアミック酸を含み、工程(c1)におけるゲル化は、ゲル化開始剤を添加してポリアミック酸の塩をポリアミック酸オルガノゲルに変換することを含み、ゲル化開始剤は酸である。いくつかの態様では、酸はカルボン酸である。いくつかの態様では、カルボン酸は酢酸である。
【0061】
いくつかの態様では、この方法は、工程(b)と(c1)の間に、工程(b)の混合物を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む。
【0062】
いくつかの態様では、混合は、最大約10分間、または約1~約3分間行われる。
【0063】
いくつかの態様では、混合は、ホモジナイザーを使用して行われる。いくつかの態様では、ホモジナイザーは、少なくとも1000rpm、例えば約1000~約9000rpmの速度で操作される。
【0064】
いくつかの態様では、非水混和性液体は、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、トルエン、他の炭化水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、非水混和性液体はミネラルスピリットである。
【0065】
いくつかの態様では、非水混和性液体はその中に溶解した界面活性剤を更に含む。いくつかの態様では、界面活性剤は、非水混和性液体に対して約1~2重量%の濃度で存在する。
【0066】
いくつかの態様では、この方法は、乾燥前に、工程(c1)で形成されたオルガノゲルのビーズを分離することを更に含む。いくつかの態様では、分離は、非水混和性液体をデカントすることと、任意選択で非水混和性液体をリサイクルすることとを含む。
【0067】
いくつかの態様では、ビーズは約5~約30ミクロンの範囲の平均サイズを有する。
【0068】
いくつかの態様では、この方法は、ゲルビーズを、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせで洗浄することを更に含む。
【0069】
いくつかの態様では、複数のカソード材料粒子の少なくとも一部は、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する。
【0070】
いくつかの態様では、乾燥工程(c2)は噴霧乾燥である。
【0071】
更に別の態様では、本明細書に開示される方法によって得られるか、またはそれによって得ることができる、多孔質炭素マトリックス粒子と、マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子が提供される。
【0072】
いくつかの態様では、カソード材料に対するマトリックス材料中の炭素の重量比は、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である。
【0073】
更に別の態様では、本明細書に開示される集塊粒子を含む電極が提供される。
【0074】
更に別の態様では、本明細書に開示される集塊粒子を含むエネルギー蓄積装置が提供される。いくつかの態様では、エネルギー蓄積装置はLiイオン電池である。
【0075】
本開示は、限定されるものではないが、以下の態様を含む。
【0076】
態様1:多孔質炭素を含むマトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む、集塊粒子。
【0077】
態様2:前記複数のカソード材料粒子がリン酸金属リチウム(LMP)粒子を含む、態様1に記載の集塊粒子。
【0078】
態様3:前記LMPの前記金属(M)が、Fe、Mn、V、及びFeとMnの組み合わせからなる群から選択される、態様1または2に記載の集塊粒子。
【0079】
態様4:前記マトリックス粒子が、100nm~20ミクロン、または1~10ミクロンの粒径を有する、態様1~3のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0080】
態様5:前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満の平均粒径D50を有する、態様1~4のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0081】
態様6:前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、150nm未満の平均粒径D50を有する、態様1~5のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0082】
態様7:前記マトリックス粒子の、内部細孔に対応する内部比表面積が50m/グラム~150m/グラムである、態様1~6のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0083】
態様8:前記内部比表面積の少なくとも一部が、電解質がアクセスできるように構成されている、態様1~7のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0084】
態様9:前記マトリックス粒子がエアロゲルまたはキセロゲルを含む、態様1~8のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0085】
態様10:前記キセロゲルのエアロゲルが、1つもしくは複数のビーズ、またはモノリスとして形成される、態様9に記載の集塊粒子。
【0086】
態様11:前記エアロゲルまたはキセロゲルが、ポリイミド、ポリアミック酸、またはそれらの組み合わせを含むオルガノゲルに由来する、態様9~10のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0087】
態様12:前記エアロゲルまたはキセロゲルが炭化オルガノゲルである、態様9~11のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0088】
態様13:前記マトリックス粒子が、フィブリル形態を含む細孔構造を有する、態様1~12のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0089】
態様14:前記フィブリル形態が、約2~約10nmの範囲の幅を有する炭化材料の支柱を含む、態様13に記載の集塊粒子。
【0090】
態様15:前記マトリックス粒子が実質的に均一な細孔径分布を有する、態様1~14のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0091】
態様16:前記マトリックス粒子が、約1~約50nm、または約5~約25nmの平均細孔径を有する、態様1~15のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0092】
態様17:前記マトリックス粒子が細孔を含み、前記細孔の少なくとも一部が前記カソード材料粒子を収容するように構成されている、態様1~16のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0093】
態様18:前記カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、態様1~17のいずれか一項に記載の集塊粒子。
【0094】
態様19:多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子を調製する方法であって、
(a)ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することと、
(b)カソード材料粒子を前記ポリアミック酸の塩の水溶液と混合することと、
(c1)工程(b)の混合物をゲル化して分散したカソード材料粒子を含むオルガノゲルを形成し、工程(c1)の前記オルガノゲルを乾燥させて乾燥した中間体を形成すること、または
(c2)工程(b)の前記混合物を乾燥させて乾燥した中間体を形成することと、
(d)前記乾燥した中間体を炭化して前記集塊粒子を形成することとを含む、前記方法。
【0095】
態様20:前記ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することが、
水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、
成分を反応させて前記ポリアミック酸の塩の溶液を得ることとを含む、態様19に記載の方法。
【0096】
態様21:前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、
前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することとを含む、態様20に記載の方法。
【0097】
態様22:前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に添加することと、
前記懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を得ることとを含む、態様20に記載の方法。
【0098】
態様23:前記混合が、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸塩の水溶液を得ることとを含む、態様20に記載の方法。
【0099】
態様24:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムカチオンを含む、態様19~23のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
態様25:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様19~24のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
態様26:前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が炭酸塩であり、前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であり、または、前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が重炭酸塩であり、前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、態様19~25のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
態様27:前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、態様19~26のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
態様28:前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、態様19~27のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
態様29:前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、態様19~28のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
態様30:前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、態様19~29のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
態様31:前記水溶液中の前記ポリアミック酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミック酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである、態様19~30のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
態様32:前記オルガノゲルまたは中間体を乾燥させることが、
任意選択で前記オルガノゲルまたは中間体を洗浄または溶媒交換することと、
前記オルガノゲルもしくは中間体を高温条件にさらして前記オルガノゲルもしくは中間体を凍結乾燥し、または前記オルガノゲルもしくは中間体を超臨界流体二酸化炭素と接触させることとを含む、態様19~31のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
態様33:前記多孔質炭素マトリックスがエアロゲルまたはキセロゲルを含む、態様19~32のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
態様34:前記炭化が、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で行われる、態様19~33のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
態様35:前記カソード材料粒子が、少なくとも1種のリン酸金属リチウム(LMP)を含み、前記金属(M)が、鉄、マンガン、バナジウム、及び鉄とマンガンの組み合わせから選択される、態様19~34のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
態様36:前記カソード材料粒子がLiFePOを含むか、または本質的にLiFePOからなる、態様19~35のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
態様37:前記カソード材料が、工程(b)の前または間に粉砕される、態様19~36のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
態様38:前記粉砕が、ローラーミル、遊星ボールミルまたはビーズ撹拌ミルを使用して、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼から選択される少なくとも1種の粉砕媒体を任意に使用して粉砕することを含む、態様37に記載の方法。
【0114】
態様39:前記粉砕が、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から任意に選択される液相中に前記カソード材料を分散させることと、前記カソード材料を湿式粉砕することとを含む、態様37または38に記載の方法。
【0115】
態様40:前記粉砕が、前記ポリアミック酸の塩の水溶液中に前記カソード材料を分散させることと、工程(b)の間に前記カソード材料を湿式粉砕してカソード材料粒子を得ることとを含む、態様37~39のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
態様41:工程(b)が、前記カソード材料を前記水溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で混合することを含む、態様19~40のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
態様42:前記オルガノゲルがポリイミドを含み、工程(c1)における前記ゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸を前記ポリイミドに変換することを含む、態様19~41のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
態様43:前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、態様42に記載の方法。
【0119】
態様44:工程(c1)における前記混合物のゲル化が、湿潤ゲルモノリスを形成するために型内で行われる、態様19~43のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
態様45:前記乾燥の前に、前記湿潤ゲルモノリスを複数の断片に砕くことを更に含む、態様44に記載の方法。
【0121】
態様46:(e)工程(c1)の前記乾燥した材料を粉砕することを更に含む、態様19~45のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
態様47:前記粉砕により、約50ミクロン未満の平均粒径D50を有する粒子が生成される、態様46に記載の方法。
【0123】
態様48:工程(c1)が、前記ゲル化開始剤を添加した後、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、態様19~43のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
態様49:前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、態様48に記載の方法。
【0125】
態様50:エマルジョンを形成するための混合が、約1~約30分間、または約4~約15分間行われる、態様48~49のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
態様51:前記オルガノゲルがポリアミック酸を含み、工程(c1)における前記ゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸の塩をポリアミック酸オルガノゲルに変換することを含み、前記ゲル化開始剤が酸である、態様19~41のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
態様52:前記酸がカルボン酸である、態様51に記載の方法。
【0128】
態様53:前記カルボン酸が酢酸である、態様52に記載の方法。
【0129】
態様54:工程(b)と(c1)の間に、工程(b)の前記混合物を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、態様51~53のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
態様55:前記混合が、最大約10分間、または約1~約3分間行われる、態様54に記載の方法。
【0131】
態様56:前記混合がホモジナイザーを使用して行われる、態様54または55に記載の方法。
【0132】
態様57:前記ホモジナイザーが、少なくとも1000rpm、例えば約1000~約9000rpmの速度で操作される、態様56に記載の方法。
【0133】
態様58:前記非水混和性液体が、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、トルエン、他の炭化水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様48~50または54~57のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
態様59:前記非水混和性液体がミネラルスピリットである、態様58に記載の方法。
【0135】
態様60:前記非水混和性液体がその中に溶解した界面活性剤を更に含む、態様48~50または54~59のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
態様61:前記界面活性剤が、前記非水混和性液体に対して約1~2重量%の濃度で存在する、態様60に記載の方法。
【0137】
態様62:乾燥前に、工程(c1)で形成された前記オルガノゲルのビーズを分離することを更に含む、態様48~61のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
態様63:分離が、前記非水混和性液体をデカントすることと、任意選択で前記非水混和性液体をリサイクルすることとを含む、態様62に記載の方法。
【0139】
態様64:前記ビーズが約5~約30ミクロンの範囲の平均サイズを有する、態様62または63に記載の方法。
【0140】
態様65:前記ゲルビーズを、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせで洗浄することを更に含む、態様62~64のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
態様66:前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する、態様19~65のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
態様67:前記乾燥工程(c2)が噴霧乾燥である、態様19~66のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
態様68:態様19~67のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または前記方法によって得ることができる、多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子。
【0144】
態様69:カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、態様68に記載の集塊粒子。
【0145】
態様70:態様1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含む電極。
【0146】
態様70:態様1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含むエネルギー蓄積装置。
【0147】
態様71:Liイオン電池である、態様70に記載のエネルギー蓄積装置。
【0148】
本技術の態様の理解を提供するために、添付の図面を参照するが、これらの図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。これらの態様は、添付の図面に限定ではなく例として示されている。本開示における「一(an)」または「1つの(one)」態様への言及は、必ずしも同じ態様を指すわけではなく、それらは少なくとも1つを意味することに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0149】
図1図1は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を製造するための方法100を概略的に示す図である。
図2図2は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を製造するための更なる方法200を概略的に示す図である。
図3図3は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を製造するための更に別の方法300を概略的に示す図である。
図4図4は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を製造するための別の方法400を概略的に示す図である。
図5A図5Aは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の概略図である。
図5B図5Bは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の概略図である。
図6図6は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子600の概略図である。
図7図7は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の概略図である。
図8A図8Aは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図8B図8Bは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図8C図8Cは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図8D図8Dは、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図9図9は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を含む第1サイクルの充放電電圧プロファイルである。
図10図10は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を含むレート性能を示すチャートである。
図11図11は、本開示の1つ以上の非限定的な態様による集塊粒子を含む容量損失を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0150】
以下の説明では、説明の目的で、完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細が記載されている。1つ以上の態様は、これらの具体的な詳細なしで実施されてもよい。ある態様で説明された特徴は、別の態様で説明された特徴と組み合わせることができる。いくつかの例では、本発明を不必要に分かりにくくすることを避けるために、周知の構造及び装置をブロック図形式を参照して説明する。
【0151】
I.概要
本開示は、LMPのナノスケール粒子が、0.5~20ミクロンの平均粒径を有する多孔質炭素粒子またはビーズ内に少なくとも部分的に埋め込まれているLMP-炭素複合材料を記載する。本明細書において、「LMP」は、本明細書に記載されるように、LFP(「リン酸鉄リチウム、ここで金属「M」は鉄である)、LMFP(「リン酸マンガン鉄リチウム、ここで、金属「M」はマンガン及び鉄の固溶体である)、及びLVP(「リン酸バナジウムリチウム」、ここで、金属「M」はバナジウムである)、並びにそれらの混合物を含む「リン酸金属リチウム」を意味する。この集塊粒子構成では、LMPの粒子が炭素マトリックスに埋め込まれていることによって互いに物理的に分離されており、これにより、LMPへの電解液の動力学的に有利なアクセスが可能になり、容量の有意な損失なしに高い充電及び放電速度がサポートされる。
【0152】
原則として、任意の合成手法を通じて得られたLMPを粉砕し、開示されたLMPドープカーボンエアロゲルまたはキセロゲル複合材料の製造に使用することができる。しかしながら、コスト及びスケーラビリティの最適化のために、LMPは、最も低コストの実施を通じて作製される場合があり、一例では、固体炭素熱還元により、酸化鉄(ヘマタイト)、リン酸、炭酸リチウム、及び炭素源からLFPを合成する。このような製造されたままの低コスト(及び低品質)のLFP(本明細書では「LC-LFP」)は、半電池内のカソードとして使用される場合、粒径が超ミクロンであり、性能が非常に悪い(例えば、理論上の比容量169.9mAh/gと比較して約20mAh/g)。前述のLC-LFPを粉砕すると、容量が約80mAh/gまで増加することができるが、これは依然として理論容量の半分未満である。例えば、同じLFPを数時間粉砕すると、容量は78mAh/gに増加し、これは、製造されたままのLC-LFPよりも大幅に高く、大きな粒径がカソード容量に及ぼす抑制効果を示す。4倍に増加したにもかかわらず、この容量は、多くの商業用途、特に輸送用途(例えば、電気自動車)で使用するには依然として低すぎる。
【0153】
本開示によれば、驚くべきことに、LC-LFPがモノリス及びマイクロビーズを含む様々な形状因子でカーボンエアロゲルまたはキセロゲルなどの多孔質炭素マトリックス内に埋め込まれた場合、LC-LFPの電池性能が大幅に改善され得ることが見出された。開示されたLFP-カーボンエアロゲル複合ビーズは、粉砕されたLFP単独と比較してLFPの実用容量が更に50%超増加することを示しており、その結果、プレカーボン集塊形態の同じLFPが100mAh/g未満、または更には70mAh/g未満の容量を有し得る場合、145mAh/gを超える容量が達成可能となる。第2の予期せぬ利点は、集塊粒子カソードが高レート性能を示すことである(C/20と比較して、1Cで80%の容量保持)。第3の利点として、LFPドープ集塊粒子カソードは優れたサイクル寿命を示し、金属リチウムアノードで構成される半電池では1Cの充放電速度で500サイクル後も容量損失がない。
【0154】
全体として、LC-LFPの性能を向上させるために新たに開発されたプロセスは、以下の主要な特徴及び利点によって要約することができる:(1)高比容量LFP-カーボンエアロゲルマイクロ複合ビーズは、低コストのLC-LFP材料から得られ、(2)市販のLFPに比べて高レート性能が達成され、(3)高レートサイクルでも優れた容量保持が達成され、(4)LFP/カーボンエアロゲル材料に使用されるカーボンエアロゲルは費用対効果が高く、その製造は環境に優しく、(5)新しいクラスのLFP材料が多様な用途向けに開発されている。
【0155】
開示された集塊粒子を製造するには、低コストまたはバルクLC-LFPを含む任意の供給源から製造されたLFPを、ポリアミック酸の適切な塩の溶液と混合してスラリーを形成する。本方法の利点は、ポリアミック酸塩溶液の粘度がLFPの粒子を懸濁状態に維持するのに十分であり、ゲル及び形成される最終製品全体にLFP粒子が良好に分散することである。水溶液と混合する前または後にLFPを粉砕して粒径を低減することができ、更に、LFPを、ポリマーマトリックス中のLFP粒子の固体モノリシックまたはマイクロビーズ複合体などの様々な形態に加工することができる。マイクロビーズ複合体のバリエーションでは、LFP懸濁液を含むポリアメート水溶液の微小液滴は二相エマルジョン中の分散相となり、分散中に適切なゲル化開始剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物、酢酸などの酸、または無水酢酸などの酸前駆体)でゲル化される。得られたゲルマイクロビーズを乾燥させて、LFPドープポリイミドまたはポリアミック酸エアロゲルまたはキセロゲルビーズにし、これらを炭化させてLFPドープカーボンエアロゲルまたはキセロゲルマイクロビーズにすることができる。
【0156】
モノリシックLFPドープカーボンエアロゲルマイクロ複合材料の調製は上記のとおりであり、乳化工程の代わりに湿潤懸濁液とゲル化開始剤を型に導入してモノリシック湿潤オルガノゲルを形成する。ゲルを乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲルを形成した後、エアロゲルまたはキセロゲルを粉末形態に粉砕してから、熱分解して炭素マトリックスを含む集塊粒子を形成することができる。あるいは、スラリーをゲル化せず、代わりに噴霧乾燥して、LFP粒子及びポリマーを含む粉末を形成する。これを再び熱分解して炭素マトリックスを形成することができる。集塊粒子は、炭化/熱分解工程中のLFPの望ましくない微結晶成長を制限し、イオン及び電子移動速度が速い高性能カソードを提供する。
【0157】
本開示の第1の一般的な方法では、LMP(MはFe、Mn/Fe、またはVであり得る)のスラリー及びポリアミック酸塩の水溶液をゲル化開始剤(無水物など)と接触させ、ゲル化溶液を非水混和性液体で乳化してポリイミドゲルのビーズを得て、これを分離し、洗浄し、乾燥させて、LMPがドープされたエアロゲルまたはキセロゲルビーズを形成する。本明細書に記載の代替の乳化プロセスでは、スラリーを最初に乳化して液体ビーズを形成し、その後、ゲル化開始剤(酸または無水物など)を使用してゲル化して、湿潤ゲルポリアミック酸及び/またはポリイミドビーズを形成する。再度、これらのビーズを分離し、洗浄し、乾燥させる。第三に、乳化工程を避け、ゲル化開始剤(酸または無水物など)を使用してスラリーを型内でゲル化して、モノリシック湿潤オルガノゲル(ポリアミック酸及び/またはポリイミド)を形成することができる。このモノリスを粒子に砕き、次いで乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲルを形成することができる。
【0158】
本明細書に記載されるLFPドープカーボンエアロゲルマイクロ複合ビーズを調製するために、市販の低コスト(かつ低性能)LC-LFPをボールミル粉砕し、エマルジョンゲル化プロセスを使用してポリイミドまたはポリアミック酸ミクロスフェアに組み込んだ。ミクロスフェアを乾燥させると、低コストのLFPドープポリイミドまたはポリアミック酸キセロゲルまたはエアロゲルが得られ、これらを炭化/アニーリングしてLFPドープカーボンエアロゲルまたはキセロゲルを形成した。
【0159】
本明細書に記載され、及び/または特許請求の範囲に列挙されている1つ以上の態様は、この概要セクションに含まれていない場合がある。
【0160】
II.定義
本開示で使用される用語に関して、以下の定義を提供する。本出願では、用語が出現するテキストの文脈で別の意味が必要でない限り、以下に定義される用語を使用する。
【0161】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。本明細書全体にわたって使用される「約」という用語は、小さな変動を記述し説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±10%以下または±5%以下、例えば±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下または±0.05%以下を指すことができる。本明細書におけるすべての数値は、明示的に示されているか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾されている。「約」という用語で修飾された値には、当然のことながら、その特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0が含まれている必要がある。
【0162】
本開示の文脈内では、いくつかの例において、「フレームワーク」または「フレームワーク構造」という用語は、ゲルまたはエアロゲルの固体構造を形成するフィブリル、支柱、及び/またはコロイド粒子などのナノスケール及び/またはミクロ構造要素のネットワークを指す。フレームワーク構造を構成する構造要素は、約100オングストローム以下の少なくとも1つの特徴的な寸法(例えば、長さ、幅、直径)を有する。熱分解または炭化エアロゲルの例では、「フレームワーク」または「フレームワーク構造」という用語は、線状フィブリル、ナノ粒子、共連続ネットワーク(例えば、両方の移行構造の側面を有する、フィブリル形態と球状形態の間で移行するネットワーク)、またはそれらの組み合わせの相互接続されたネットワークを指してもよい。いくつかの例では、線状フィブリル、ナノ粒子、または他の構造要素は(いくつかの例では節点で)共に連結されて、細孔を画定するフレームワークを形成することができる。
【0163】
本明細書で使用される場合、「エアロゲル」及び「エアロゲル材料」という用語は、形状またはサイズに関係なく、相互接続された固体構造のフレームワークを含み、そのフレームワーク内に統合された相互接続された細孔の対応するネットワークを有し、分散された間隙媒体として空気などの気体を含有する、固体物体を指す。したがって、使用される乾燥方法に関係なく、エアロゲルは、気体によってその全体積全体に膨張する開放非流体コロイドまたはポリマーネットワークであり、実質的な体積減少またはネットワーク圧縮なしに、対応する湿潤ゲルからすべての膨張剤(例えば、溶媒)を除去することによって形成される。
【0164】
一般に、エアロゲルは、以下の物理的及び構造的特性のうちの1つ以上を有する:(a)約2nm~約100nmの範囲の平均孔径、(b)約60%以上の気孔率、(c)約1、約10または約20~約100または約1000m/gの比表面積。通常、このような特性は、窒素吸着ポロシメトリー試験及び/またはヘリウムピクノメトリーを使用して測定される。補強材または電気化学的に活性な種、例えばシリコンまたはリン酸鉄リチウムなどの添加剤を含めると、得られるエアロゲル複合材料の気孔率または比表面積が低下する可能性があることが理解できる。緻密化によっても、得られるエアロゲル複合材料の気孔率が低下する可能性がある。
【0165】
エアロゲル材料はまた、追加の物理的特性、例えば(d)約2.0mL/g以上、好ましくは約3.0mL/g以上の細孔容積、(e)約0.50g/cc以下、好ましくは約0.25g/cc以下の密度、及び(f)全細孔容積の少なくとも50%が、2~50nmの孔径を有する細孔を含むことによって更に特徴付けることができるが、エアロゲル材料としての化合物の特性評価には、これらの追加の特性を満たす必要はない。本明細書における「エアロゲル」への言及には、別段の記載がない限り、材料(例えば、ポリイミド、ポリアミック酸、または炭素)に関係なく、エアロゲル、キセロゲル、クリオゲル、アンビゲル、微孔性材料などとして特徴付けることができる任意のエアロゲルまたは他の連続気泡材料多孔質材料が含まれる。
【0166】
いくつかの態様では、ゲル材料は、特にキセロゲルと呼ばれることがある。本明細書で使用される場合、「キセロゲル」という用語は、実質的な体積減少を回避したり、圧縮を遅らせたりするためのいかなる予防措置も講じることなく、対応する湿潤ゲルからすべての膨張剤を除去することによって形成される、開放非流体コロイドまたはポリマーネットワークを含むエアロゲルの一種を指す。キセロゲルは通常、コンパクトな構造を含む。キセロゲルは常圧乾燥中に体積がかなり減少し、一般に気孔率が約40%以下になる。
【0167】
本明細書で使用される「カーボンエアロゲル」または「カーボンキセロゲル」という用語は、多孔質の炭素系材料を指す。カーボンエアロゲル及びキセロゲルのいくつかの非限定的な例には、炭化ポリイミドゲルなどの炭化エアロゲル及びキセロゲルが含まれる。エアロゲル及びキセロゲルの文脈における「炭化」という用語は、オルガノゲル組成物を少なくとも実質的に純粋な炭素に分解または変換するために熱分解を受けた有機ゲル(例えば、ポリイミド)を指す。本明細書で使用される場合、「熱分解する」または「熱分解」または「炭化」という用語は、熱によって引き起こされる有機マトリックスの純粋なまたは実質的に純粋な炭素への分解または変換を指す。
【0168】
モノリシックエアロゲル材料は、粒子状エアロゲル材料とは区別される。「粒子状エアロゲル材料」という用語は、エアロゲル材料に含まれるエアロゲルの大部分(重量による)が、微粒子、粒子、顆粒、ビーズ、または粉末の形態であるエアロゲル材料を指し、これらは、共に結合したり(すなわち、ポリマー結合剤などの結合剤を介して)、共に圧縮したりすることができるが、個々の粒子間に相互接続されたエアロゲルナノ構造がない。集合的に、この形態のエアロゲル材料は、(モノリシック形態とは対照的に)粉末または粒子形態を有するものと見なされる。粉末の個々の粒子は単一構造を有するにもかかわらず、個々の粒子は本明細書ではモノリスとは見なされないことに留意されたい。電気化学電池へのエアロゲル粉末の組み込みは、通常、粉末からのペーストまたはスラリーの調製、基板上への鋳造及び乾燥を含み、任意選択でカレンダー加工を含んでもよい。
【0169】
本開示の文脈内では、「バインダーレス」または「バインダーフリー」(またはその派生語)という用語は、材料を結合するための結合剤または接着剤を実質的に含まない材料を指す。例えば、モノリシックナノ多孔質炭素材料は、そのフレームワークが単一の連続した相互接続構造として形成されるため、結合剤を含まない。結合剤を含まないことの利点には、導電率や細孔容積などに対する結合剤の影響を回避することが含まれる。一方、エアロゲル粒子は、より大きな機能性材料を形成するために、結合するための結合剤を必要とするが、そのようなより大きな材料は、本明細書ではモノリスであるとは考えられていない。更に、この「バインダーフリー」という用語は、結合剤の使用をすべて排除するものではない。例えば、本開示によるモノリシックエアロゲルは、結合剤または接着剤をエアロゲル材料の主表面上に配置することによって、別のモノリシックエアロゲルまたは非エアロゲル材料に固定することができる。このように、結合剤は積層複合材料を作製し、集電体への電気接触を提供するために使用されるが、結合剤にはモノリシックエアロゲルフレームワーク自体の安定性を維持する機能がない。
【0170】
本明細書で使用される場合、「ゲル化」または「ゲル転移」という用語は、ポリマー系、例えば本明細書に記載のポリイミドまたはポリアミック酸からの湿潤ゲルの形成を指す。ゲル化に関して本明細書に記載される反応またはプロセス中のある時点(「ゲル化点」として定義される)で、ゾルは流動性を失う。本文脈において、ゲル化は、初期のゾル状態(例えば、ポリアミック酸の塩の溶液)から、高粘度の分散状態を経て、分散状態が固化してゾルがゲル化し(ゲル化点)、湿潤ゲル(例えば、ポリイミドまたはポリアミック酸ゲル)が得られるまで進行する。特に、ゲル化及びゲル化点のこのような定義は単純化されており、特定のゲルのチキソトロピー挙動など、応力下での流動性の可能性は考慮されていない。いくつかの態様では、ゲル化は、適切なゲル化開始剤の添加によって誘発される。他の態様では、ゲル化は、例えばポリアミック酸の塩を含む溶液から、溶媒を除去することによって誘発され得る。本明細書に記載されるように、そのような溶媒除去は、噴霧乾燥を含むがこれに限定されない様々な乾燥技術によって達成することができる。
【0171】
本明細書で使用される場合、「湿潤ゲル」という用語は、相互接続された細孔のネットワーク内の移動間質相が主に従来の溶媒または水などの液相、液体二酸化炭素などの液化ガス、またはそれらの組み合わせから構成されるゲルを指す。エアロゲルは通常、最初の湿潤ゲルの生成、続いて、ゲル内の移動間隙液相を空気または別のガスで置換するための処理及び抽出を必要とする。湿潤ゲルの例としては、アルコゲル、ヒドロゲル、ケトゲル、カルボノゲル、及び当業者に公知の任意の他の湿潤ゲルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
本明細書で使用される場合、「平均/平均粒径」という用語はD50と同義であり、粒子の集団の半分がこの点より大きい粒径を有し、半分がこの点未満の粒径を有することを意味する。粒径は、レーザー光散乱技術または顕微鏡技術によって測定することができる。別段の指示がない限り、本明細書で報告される平均粒径は、較正スケールバー及び画像処理ソフトウェア(ImageJなど)を使用したSEM画像の視覚的解釈によって得られる。複数の粒子をランダムに測定し、結果を平均し、標準偏差を計算する。二次粒子や凝集体の場合はレーザー回折粒径分析を使用する。
【0173】
本明細書で使用される場合、「正極」という用語は、カソードと同じ意味で使用される。同様に、「負極」という用語は、アノードと同じ意味で使用される。
【0174】
本開示の文脈内では、「導電率」という用語は、材料が電流を伝導する能力、または材料を通してもしくは材料内で電子が流れることを可能にする他の能力の測定値を指す。導電率は、具体的には、材料の単位サイズあたりの材料の電気伝導度/サセプタンス/アドミッタンスとして測定される。これは通常、S/m(ジーメンス/メートル)またはS/cm(ジーメンス/センチメートル)として記録される。材料の導電率または抵抗率は、当該技術分野で公知の方法によって測定することができ、例えば、限定されないが、インライン四点抵抗率(ASTM F84-99の二重構成試験法を使用する)が含まれる。本開示の文脈内では、特に明記しない限り、導電率の測定値は、ASTM F84に従って取得される(電圧(V)を電流(I)で割ることによって得られる抵抗率(R)測定値)。特定の態様では、本開示の材料は、約10S/cm以上、20S/cm以上、30S/cm以上、40S/cm以上、50S/cm以上、60S/cm以上、70S/cm以上、80S/cm以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の導電率を有する。
【0175】
本開示の文脈内では、「容量」という用語は、電池が貯蔵することができる特定のエネルギーまたは電荷の量を指す。容量は、具体的には、単位質量当たり電池が時間の経過とともに供給できる放電電流として測定される。通常、電極総質量1グラムあたりのアンペア時またはミリアンペア時、すなわちAh/gまたはmAh/gとして記録される。例えば、容量1Ahの電池は、1時間で1アンペア、2時間で0.5アンペアの電流を供給することができる。したがって、1アンペア時(Ah)は3,600クーロンの電荷に相当する。同様に、「ミリアンペア時(mAh)」という用語も電池の貯蔵容量の単位を指し、これはアンペア時の1/1,000である。電池(特にカソード)の容量は、当該技術分野で公知の方法によって決定することができ、例えば、完全に充電された電池に対して、その電池の電圧が放電終了電圧値に達するまで、固定の定電流負荷を印加すること、放電終了電圧に達するまでの時間に定電流を乗じた値が放電容量であること、及び放電容量を電極材料の重量または体積で割ることが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の文脈内では、特に明記しない限り、容量の測定値は、この方法に従って取得される。特に断りのない限り、容量は電池のサイクル10で報告される。
【0176】
本明細書で使用される場合、「電池サイクル寿命」という用語は、電池が、その公称容量がその初期定格容量の80%を下回る前に実行できる完全な充電/放電サイクルの数を指す。サイクル寿命は、時間の経過とともに大きな影響を受けない様々な要因、例えば、下にある基板の機械的強度、カソード材料内の粒子の結合性、及び炭素マトリックスの相互接続性の維持によって影響を受ける可能性がある。これらの要因が実際には時間が経っても比較的変化しないことは、本発明の特定の態様の驚くべき側面であることに留意されたい。サイクル寿命は、当該技術分野で公知の方法によって測定することができ、例えば、電池セルが所定の電流速度及び動作電圧で繰り返し充電/放電サイクルを受けるサイクル試験が含まれるが、これに限定されない。本開示の文脈内では、サイクル寿命の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。本開示の特定の態様では、電池などのエネルギー蓄積装置またはその電極は、約25サイクル以上、50サイクル以上、75サイクル以上、100サイクル以上、200サイクル以上、300サイクル以上、500サイクル以上、1000サイクル以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲のサイクル寿命を有する。
【0177】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、別段の指示がない限り、特定の状況(例えば、実質的に純粋である、実質的に同一であるなど)に関して言及される特徴、量などの大部分、例えば、約95%超、約99%超、約99.9%超、99.99%超、または100%さえも意味する。
【0178】
本明細書では「LFP」に言及する場合があるが、本明細書の教示は、より一般的にカソード材料、特に金属が鉄(すなわち、LFP、LiFePO)、バナジウム、マンガン、または鉄とマンガンの組み合わせから選択され得るリン酸金属リチウム(LMP)に適用可能である。本明細書で論じられるLMPは、単一のリン酸金属リチウム(例えば、LFP)またはそれらの混合物(例えば、LFP及びLVPの粒子、ここでV=バナジウム)を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり得る。あるいは、または組み合わせて、本明細書に記載のLFP材料は、LiFe1-xMnPO(0≦x≦1)などの遷移金属の混合物を含有する連続固溶体であってもよい。「LFP」という用語は、鉄含有LFPのみに限定されるものとして解釈されるべきではなく、「LMP」+炭素コーティングと同じ意味で使用される。
【0179】
III.エアロゲル合成
概要で上述したように、本開示は、LMP-炭素複合粒子及びそれらの合成を対象とする。リチウムイオン電池のカソード材料に有用なこれらの材料は、本明細書では「集塊粒子」または集塊もしくは複合マイクロビーズと同等に呼ばれる。複合粒子は、LMP粒子を合成するか、または事前に合成された(例えば、商業経路を介して)LMP粒子を取得し、LMP粒子をオルガノゲル前駆体と組み合わせることによって形成することができる。
【0180】
本明細書に開示される方法は一般に、有機溶媒を使用せず、かつ有機(例えば、アミン)塩基を使用せずに調製できるポリアミック酸及びポリイミド湿潤ゲルを利用する。本明細書における「有機塩基を使用しない」ポリアミック酸及びポリイミド湿潤ゲルの調製への言及は、アミンなどの炭素系アルカリ性物質が、予め形成されたポリアミック酸の水中での可溶化にも、形成されるときのポリアミック酸のその場での可溶化(すなわち、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の反応による)にも利用されないことを意味する。疑義を避けるため、「有機塩基」への言及には、炭酸塩及び重炭酸塩が含まれず、更に窒素含有カチオン種(アンモニウムまたはグアニジニウムなど)を含む炭酸塩及び重炭酸塩も含まれない。
【0181】
本明細書における水溶液への言及は、溶液が有機溶媒を実質的に含まないことを意味する。有機溶媒に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、有機溶媒が意図的に添加されておらず、そして有機溶媒が微量を超えて存在しないことを意味する。例えば、特定の態様では、水溶液は、1体積%未満の有機溶媒、または0.1体積%未満、または0.01%未満、または更には0体積%の有機溶媒を含むものとして特徴付けることができる。これらの水ベースの方法は、材料と廃棄物の処理コストを削減し、潜在的な安全上及び環境上の危険を低減するのに有利である。
【0182】
A.水性条件下でのポリアミック酸及びポリイミドゲル及びエアロゲル材料の調製
本明細書では、水性条件下でポリアミック酸及びポリイミドゲル材料を調製する方法が利用される。この方法は一般に、有機塩基を使用せずにポリアミック酸塩の水溶液を調製し、続いてポリアミック酸塩をポリアミック酸ゲルもしくはエアロゲル材料、ポリイミドゲルもしくはエアロゲル材料、または対応するカーボンエアロゲル材料に変換することを含む。これらの材料のそれぞれ及び対応する方法(複数可)については、本明細書において以下で更に説明する。
【0183】
一態様では、この方法は、ポリアミック酸を提供し、そのポリアミック酸と水溶性炭酸塩または重炭酸塩とを水中で混合し、それによってポリアミック酸の塩の溶液を提供することを含む。このような態様では、ポリアミック酸は、予め形成されたポリアミック酸であり、これは、購入された市販の材料、または従来の既知の技術(有機溶媒溶液中での調製など)に従って適切なジアミン及びテトラカルボン酸無水物から調製された材料のいずれかである。適切な予め形成されたポリアミック酸は、その場で合成されたポリアミック酸に関して以下に記載されるとおりである。適切な水溶性炭酸塩または重炭酸塩については、以下に更に説明する。
【0184】
あるいは、ポリアミック酸はその場で調製することができる。したがって、別の態様では、ポリアミック酸塩の水溶液は、水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下で、水溶性ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって調製される。一般に、ジアミンを上記炭酸塩または重炭酸塩の存在下でテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリアミック酸塩を形成する。したがって、この方法は、水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、成分を反応させてポリアミック酸塩の溶液を得ることとを含む。ポリアミック酸塩は、炭酸塩または重炭酸塩からのカチオンによって電荷が補償されたアニオン性カルボン酸基を含み、ポリアミック酸塩は水溶性である。この方法で利用される各成分(例えば、水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、水溶性炭酸塩または重炭酸塩など)については、以下に更に説明する。
【0185】
様々な成分の添加順序は変化し得る。例えば、いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩をジアミン水溶液に添加することと、テトラカルボン酸二無水物をジアミンと水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、溶液を、約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することとを含む。
【0186】
いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、テトラカルボン酸二無水物をジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、懸濁液を、約15~約60℃の範囲の温度で、約1分~約24時間の範囲の期間撹拌することと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を懸濁液に添加することと、懸濁液を約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、ポリアミック酸塩の水溶液を得ることとを含む。
【0187】
いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、得られた混合物を約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、ポリアミック酸塩の水溶液を得ることとを含む。
【0188】
非限定的な一般的な反応順序をスキーム1に示す。いくつかでは、反応は一般にスキーム1に従って行われ、試薬及び生成物はスキーム1の式による構造を有する。
スキーム1.水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下でのモノマーの反応によるポリアミック酸の塩の水溶液の形成
【化1】
【0189】
本明細書に開示されるジアミンは、一般に「水溶性ジアミン」と記載される。本明細書で使用される場合、「水溶性ジアミン」という用語は、開示された方法で利用される条件下で合成的に有用な濃度のジアミンが得られるように、ジアミンが水中でかなりの溶解度を有することを意味する。例えば、開示された方法での使用に適したジアミンは、20℃の水に100mL当たり少なくとも約0.01g、100mL当たり少なくとも約0.1g、100mL当たり少なくとも約1g、または100mL当たり少なくとも約10gの溶解度を有し得る。
【0190】
いくつかの態様では、2種以上のジアミンの組み合わせを使用することができる。ゲル材料の特性を最適化するために、ジアミンの組み合わせを使用することができる。いくつかの態様では、単一のジアミンが使用される。
【0191】
スキームIを参照すると、ジアミンの構造は変化し得る。いくつかの態様では、ジアミンは式Iによる構造を有し、式中、Zは脂肪族(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、またはシクロアルキレン)またはアリールであり、それぞれ本明細書で上記に記載されたとおりである。いくつかの態様では、Zは、C2~C12アルキレンまたはC2~C6アルキレンなどのアルキレンである。いくつかの態様では、ジアミンは、限定されないが、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、及びエチレンジアミンなどのC2~C6アルカンジアミンである。いくつかの態様では、アルカンジアミンのC2~C6アルキレンは、メチルなどの1つ以上のアルキル基で置換されている。
【0192】
いくつかの態様では、Zはアリールである。いくつかの態様では、アリールジアミンは、1,3-フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、1,4-フェニレンジアミン(PDA)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、ジアミンは1,3-フェニレンジアミンである。いくつかの態様では、ジアミンは1,4-フェニレンジアミン(PDA)である。
【0193】
引き続きスキーム1を参照すると、テトラカルボン酸二無水物が添加される。いくつかの態様では、2種以上のテトラカルボン酸二無水物が添加される。ゲル材料の特性を最適化するために、テトラカルボン酸二無水物の組み合わせを使用することができる。いくつかの態様では、単一のテトラカルボン酸二無水物が添加される。テトラカルボン酸二無水物の構造は変化し得る。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、式IIによる構造を有し、式中、Lは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせを含み、それぞれ本明細書で上記に記載されたとおりである。いくつかの態様では、Lはアリーレン基を含む。いくつかの態様では、Lは、フェニル基、ビフェニル基、またはジフェニルエーテル基を含む。いくつかの態様では、式IIのテトラカルボン酸二無水物は、表1に提供される1つ以上の構造から選択される構造を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【0194】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物はPMDAである。
【0195】
本明細書に開示される方法は、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を利用する。水溶性炭酸塩または重炭酸塩は様々であってもよい。本明細書で使用される場合、塩に関して「水溶性」という用語は、開示された方法で利用される条件下で合成的に有用な濃度の炭酸塩または重炭酸塩アニオンが得られるように、炭酸塩または重炭酸塩が水中でかなりの溶解度を有することを意味する。例えば、開示された方法での使用に適した水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、20℃の水に100mL当たり少なくとも約0.1g、100mL当たり少なくとも約1g、または100mL当たり少なくとも約10gの溶解度を有し得る。
【0196】
本明細書で使用される場合、「炭酸塩または重炭酸塩」という用語は、炭酸塩または重炭酸塩アニオンを含むアルカリ性物質を指し、特に、炭素-水素共有結合を含むアルカリ性物質(すなわち、アルキルアミン、アリールアミン、及び複素芳香族アミンを含むがこれらに限定されない有機塩基)を除外する。開示された方法での使用に適した水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、非求核性であると更に記載することができ、これは、炭酸塩または重炭酸塩が、プロトン受容体として以外に電子対を供与することによって化学反応に関与しないことを意味する。
【0197】
特定の態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は炭酸塩である。他の特定の態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は重炭酸塩である。引き続きスキーム1を参照すると、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は一般式MCOまたはMHCOを有し、式中、Mは+1の価数を有するカチオン種である。
【0198】
いくつかの態様では、カチオン種Mは、アンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、もしくはアルカリ金属イオンを含むか、またはアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、もしくはアルカリ金属イオンである。いくつかの態様では、カチオン種Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、グアニジニウム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン種Mはリチウムである。いくつかの態様では、カチオン種Mはナトリウムである。いくつかの態様では、カチオン種Mはカリウムである。いくつかの態様では、カチオン種Mはアンモニウム(NH )である。いくつかの態様では、カチオン種Mはグアニジニウム(NH-C(=NH )-NH)である。
【0199】
特に好適な水溶性炭酸塩及び重炭酸塩としては、アルカリ金属の炭酸塩及び重炭酸塩が挙げられる。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸カリウムからなる群から選択される。
【0200】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0201】
添加される水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は変化してもよく、例えば、使用される特定の塩の化学量論に依存し得る。例えば、当業者であれば、塩中に存在する特定のアニオン種(炭酸塩または重炭酸塩)に関連する電荷に依存することを認識するであろう。例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO)は、それぞれ1つのプロトンと反応できる1当量の塩基(重炭酸イオン、HCO )を供給し、更に重炭酸ナトリウムの各モル当量に対して1当量のナトリウムイオンを供給する。対照的に、炭酸ナトリウム(NaCO)は、ポリアミック酸の各繰り返し単位からの2当量のプロトンと反応できる2当量の塩基(炭酸イオン、CO 2-)を供給し、炭酸ナトリウムの各モル当量に対して2当量のナトリウムイオンを供給する。
【0202】
水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、他の反応成分(例えば、ジアミン)に対するモル比で表すことができる。水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、各セットの反応物及び条件に応じて最適化する必要がある場合がある。いくつかの態様では、モル比は、ポリアミック酸の溶解度を維持するように選択される。いくつかの態様では、モル比は、ポリアミック酸のいかなる沈殿も避けるように選択される。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、約1~約4、または約2~約3の範囲である。いくつかの態様では、モル比は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、または約1.5から、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0までである。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、約2.0~約2.6、例えば、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、または約2.6である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、いくつかの例示的な態様では、ポリアミック酸の実質的にすべての遊離カルボン酸基の中和を可能にする(すなわち、塩を形成する)のに少なくとも十分な塩基が必要であると考えられる。いくつかの態様では、利用される水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、反応中に形成されるポリアミック酸中に存在する実質的にすべてのカルボン酸基を中和する量である。
【0203】
いくつかの態様では、水溶性塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムまたは炭酸グアニジニウムなどの炭酸塩であり、炭酸イオンとジアミンとのモル比は約1.0~約1.3である。
【0204】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、または重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩であり、重炭酸イオンとジアミンとのモル比は約2.0~約2.6である。
【0205】
いくつかの態様では、存在する水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、反応中に形成されるか、または別の方法で反応混合物中に存在するポリアミック酸のカルボン酸基に比較して表すことができる。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムまたは重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩であり、ポリアミック酸のカルボン酸基に対する重炭酸イオンのモル比は約2.0である。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸アンモニウムなどの炭酸塩であり、ポリアミック酸のカルボン酸基に対する炭酸イオンのモル比は約1.0である。
【0206】
存在するジアミン及び二無水物の相対量は、モル比で表すことができる。ジアミンと二無水物とのモル比は、所望の反応時間、試薬構造、及び所望の材料特性に応じて変化し得る。いくつかの態様では、モル比は、約0.1~約10、例えば、約0.1、約0.5または約1~約2、約3、約5または約10である。いくつかの態様では、この比は約0.5~約2である。いくつかの態様では、この比は約1(すなわち、化学量論)、例えば約0.9~約1.1である。特定の態様では、この比は約0.99~約1.01である。
【0207】
ポリアミック酸の分子量は、反応条件(例えば、濃度、温度、反応時間、ジアミン及び二無水物の性質など)に基づいて変化し得る。分子量は、スキーム1の式IIIの構造についての整数「n」の値によって示されるように、ポリアミック酸繰り返し単位の数に基づく。開示された方法によって製造されるポリマー材料の特定の分子量範囲は変化し得る。一般に、分子量を特に考慮することなく、上記の反応条件を変更して、所望の物理的特性を有するゲルを得ることができる。いくつかの態様では、分子量の代用値は、温度、濃度、反応物のモル比、反応時間などの変数によって決定されるポリアミック酸塩溶液の粘度で提供される。
【0208】
反応が行われる温度は変化し得る。適切な範囲は一般に約4℃~約100℃である。いくつかの態様では、反応温度は、約15~約60℃、例えば、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60℃である。いくつかの態様では、温度は約15~約25℃である。いくつかの態様では、温度は約50~約60℃である。
【0209】
反応を一定期間進行させ、一般に、利用可能なすべての反応物(例えば、ジアミン及び二無水物)が互いに反応するまで進行させる。反応が完了するまでに必要な時間は、試薬の構造、濃度、温度によって変化し得る。いくつかの態様では、反応時間は、約1分~約1週間、例えば、約15分~約5日、約30分~約3日、または約1時間~約1日である。いくつかの態様では、反応時間は約1時間~約12時間である。
【0210】
水溶液中のポリアミック酸塩の濃度は変化し得る。例えば、いくつかの態様では、水溶液中のポリアミック酸塩の濃度範囲は、ポリアミック酸の重量に基づいて、約0.01~約0.3g/cmである。
【0211】
B.ポリアミック酸(PAA)とポリイミド(PI)のゲル
いくつかの態様では、この方法は、ポリアミック酸塩の水溶液を対応するポリアミック酸ゲルに変換することを更に含む。一般に、ポリアミック酸塩溶液を対応するポリアミック酸ゲルに変換する方法は、ポリアミック酸塩溶液を酸性化してポリアメート塩をポリアミック酸に変換し、湿潤オルガノゲルとしてポリアミック酸を相分離させることを含む。ポリアミック酸を形成するための酸性化は一般にスキーム2に従う。
【0212】
酸性化の方法は異なる場合がある。例えば、いくつかの態様では、ポリアメート塩溶液を酸溶液に添加し、ここで、ポリアメート塩溶液の酸性化は急速である。あるいは、ポリアメート塩溶液に酸を添加することによって、ポリアメート塩溶液を酸性化してもよい。いくつかの態様では、当業者に公知の条件または技術を使用して、ポリアメート塩溶液を徐々にまたはゆっくりと酸性化してもよい。
【0213】
使用される酸は異なる場合がある。例えば、鉱酸または有機酸を利用することができる。例えば、好適な酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、または酢酸などのカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、特定の条件下で酸を生成する材料を意味する酸前駆体を利用することができる。このような酸前駆体の1つの非限定的な例は無水酢酸であり、これは水と接触して加水分解すると酢酸を遊離する。
スキーム2.ポリアミック酸の塩と酸の反応によるポリアミック酸ゲルの形成
【化2】
【0214】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるように調製されるポリアミック酸湿潤ゲル、または以下に記載される対応するエアロゲルは、残留炭酸塩または重炭酸塩(複数可)を含む。一般に、残留量は微量であるが、炭酸塩もしくは重炭酸塩、及び/または関連する対カチオン(例えば、アルカリ金属イオン、グアニジニウムイオンなど)は、当業者に公知の分析方法によって検出することができる。
【0215】
続いて、得られたポリアミック酸ゲル材料を乾燥させて、ポリアミック酸エアロゲルを形成することができる。ポリアミック酸ゲル材料の酸性化及び形成の方法は、例えば、国際特許出願公開第WO2022125835号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。対応するエアロゲルを形成するための乾燥方法については、以下に更に説明する。
【0216】
いくつかの態様では、この方法は、ポリアミック酸塩の水溶液からポリイミドエアロゲルを形成することを更に含む。一般に、この方法は、ポリアミック酸塩をイミド化してポリイミドゲルを形成することと、ポリイミドゲルを乾燥させてポリイミドエアロゲルを形成することとを含む。ポリアミック酸塩の水溶液をイミド化する方法は、例えば、国際特許出願第PCT/US2021/062706号(その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されており、適切な方法も以下に更に記載される。対応するポリイミドエアロゲルを形成するための乾燥方法については、以下に更に説明する。
【0217】
いくつかの態様では、ポリアミック酸塩をイミド化することは、対応するポリアミック酸を熱的にイミド化することを含む。マイクロ波周波数エネルギーによる湿潤ゲルポリアミック酸材料の照射は、1つの特に適切な熱処理である。遅い熱伝導に依存する従来の加熱と比較して、マイクロ波加熱は迅速かつ効率的なエネルギー伝達を可能にする。したがって、マイクロ波加熱は、本発明の熱イミド化反応を行うのに特に適している。一般に、マイクロ波周波数照射の出力及び時間は、ポリアミック酸のアミド基及びカルボキシル基のかなりの部分をイミド基に変換するのに十分である。アミド基及びカルボキシル基をイミド基に変換するに関連して本明細書で使用される場合、「かなりの部分」とは、アミド基及びカルボキシル基の90%超、例えば95%、99%、99.9%、99.99%、または更には100%がイミド基に変換されることを意味する。
【0218】
他の態様では、ポリアミック酸塩をイミド化することは、化学イミド化を行うことを含み、化学イミド化は、ゲル化開始剤をポリアミック酸の塩の水溶液に添加してゲル化混合物(「ゾル」)を形成することと、ゲル化混合物を(例えば、型内で、またはシート上に流し込み、またはビーズなどの他の様々な形式で)ゲル化させることとを含む。このような態様では、ゲル化開始剤を添加して、イミド化を開始及び促進し、ポリアミック酸塩からポリイミド湿潤ゲルを形成する。
【0219】
ゲル化開始剤の構造は様々であり得るが、一般に、水溶液との反応性が最小限でありながら、反応溶液に少なくとも部分的に可溶性であり、ポリアミック酸塩のカルボン酸基と反応し、ポリアミック酸のカルボキシル基及びアミド基のイミド化を促進するのに効果的な試薬である。好適なゲル化開始剤の種類の一例は、無水酢酸、無水プロピオン酸などのカルボン酸無水物である。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は無水酢酸である。
【0220】
いくつかの態様では、ゲル化開始剤の量は、テトラカルボン酸二無水物またはポリアミック酸の量に基づいて変化し得る。例えば、いくつかの態様では、ゲル化開始剤はテトラカルボン酸二無水物と様々なモル比で存在する。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は、ポリアミック酸と様々なモル比で存在する。ゲル化開始剤とテトラカルボン酸二無水物またはポリアミック酸とのモル比は、所望の反応時間、試薬構造、及び所望の材料特性に応じて変化し得る。いくつかの態様では、モル比は、約2~約10、例えば、約2、約3、約4または約5~約6、約7、約8、約9または約10である。いくつかの態様では、この比は約2~約5である。
【0221】
ゲル化反応を進行させる温度は変化し得るが、一般に約50℃未満、例えば約10~約50℃、または約15~約25℃である。
【0222】
上述のゲル化条件(酸性化及びイミド化の両方)は一般的であり、ゲル化が行われる方法に関して非限定的であることが意図される。例えば、当業者であれば、モノリスまたはビーズ(マイクロビーズを含む)が調製される様々な順列を認識するであろう。例えば、本明細書では、ゲル化混合物を型に流し込むことによってモノリスを形成する方法、ポリアミック酸塩溶液を酸性受容溶液に滴下または噴霧することによって様々なサイズのビーズを形成する方法、またはエマルジョン中でポリアミック酸またはポリイミドゲルのミクロンサイズのビーズを形成する方法が企図される。
【0223】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるように調製されるポリイミド湿潤ゲル、または以下に記載される対応するエアロゲルは、残留炭酸塩または重炭酸塩(複数可)を含む。一般に、残留量は微量であるが、炭酸塩もしくは重炭酸塩、及び/または関連する対カチオン(例えば、アルカリ金属イオン、グアニジニウムイオンなど)は、当業者に公知の分析方法によって検出することができる。
【0224】
C.ポリアミック酸とポリイミドのエアロゲル
本明細書で上述したように、いくつかの態様では、この方法は、ポリアミック酸塩を、対応するポリアミック酸またはポリイミド湿潤ゲルを介してエアロゲル材料に変換することを更に含む。一般に、エアロゲルの形成は、湿潤ゲルを1つ以上の段階で乾燥させることを含む。いくつかの態様では、湿潤ゲル(ポリアミック酸またはポリイミド)を熟成させる。熟成後、得られた湿潤ゲル材料を収集し(例えば、型から取り出す)、最初に水で洗浄または溶媒交換して未反応の有機塩または酸を除去し、その後、湿潤ゲル中に存在する一次反応溶媒(すなわち、水)を適切な二次溶媒中で置換することができる。このような二次溶媒は、超臨界流体二酸化炭素(CO)と混和性である必要があり、1個以上の脂肪族炭素原子を有する直鎖アルコール、2個以上の炭素原子を有するジオール、または分岐アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、ポリオール、エーテル、ケトン、環状エーテルもしくはそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの態様では、二次溶媒は、水、C1~C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはn-、イソ-、もしくはsec-ブタノール)、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、超臨界流体二酸化炭素(CO)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、二次溶媒はエタノールである。
【0225】
湿潤ゲルが形成され、処理されると、次に、処理及び抽出技術を含む抽出方法を使用して、湿潤ゲル材料から湿潤ゲルの液相を少なくとも部分的に抽出して、エアロゲル材料を形成することができる(すなわち、「乾燥」)。液相抽出は、数ある要素の中でも特に、気孔率や密度などのエアロゲルの特性、及び熱伝導率などの関連特性を設計する上で重要な役割を果たす。一般に、エアロゲルは、湿潤ゲルの多孔質ネットワーク及び固体フレームワークに低収縮を引き起こす方法で湿潤ゲルから液相を抽出するときに得られる。湿潤ゲルを様々な技術を使用して乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲルを得ることができる。例示的な態様では、湿潤ゲル材料を周囲圧力、真空下(例えば、凍結乾燥による)、亜臨界条件、または超臨界条件で乾燥させて、対応する乾燥ゲル(例えば、キセロゲルなどのエアロゲル)を形成することができる。
【0226】
いくつかの態様では、乾燥ゲルの表面積を減少させることが望ましい場合がある。表面積の減少が望ましい場合は、エアロゲルを完全にまたは部分的に、様々な気孔率を有するキセロゲルに変換することができる。エアロゲルの高い表面積は、細孔の一部を強制的に崩壊させることで減少させることができる。これは、例えばエアロゲルをエタノールもしくはアセトンなどの溶媒に一定時間浸漬することによって、またはエアロゲルを溶媒蒸気に曝露することによって行うことができる。続いて、溶媒を周囲圧力で乾燥させることによって除去する。
【0227】
エアロゲルは通常、液体移動相の臨界点付近またはそれ以上の温度及び圧力で湿潤ゲル材料から液体移動相を除去することによって形成される。臨界点に達する(臨界付近)か、または臨界点を超える(超臨界、すなわち、系の圧力及び温度がそれぞれ臨界圧力及び臨界温度以上になる)と、液体または蒸気相とは異なる新しい超臨界相が流体中に現れる。その後、液体-蒸気界面、毛細管力、または後退する液体-蒸気境界に典型的に関連する任意の関連する物質移動の制限を導入することなく、溶媒を除去することができる。更に、超臨界相は一般に有機溶媒との混和性がより高いため、このため、より良好な抽出が可能である。超臨界流体乾燥プロセスを最適化するために、共溶媒及び溶媒交換も一般的に使用される。
【0228】
超臨界点未満で蒸発または抽出が発生すると、液体の蒸発によって発生する毛細管力により、ゲル材料内で収縮及び細孔崩壊が引き起こされる可能性がある。溶媒抽出プロセス中に移動相を臨界圧力及び温度付近またはそれ以上に維持すると、このような毛細管力による悪影響が軽減される。本開示の特定の態様では、溶媒系の臨界点直下の近臨界条件を使用すると、収縮が十分に低いエアロゲルまたは組成物の製造が可能になる場合があり、したがって商業的に実現可能な最終製品が製造される。
【0229】
エアロゲルを提供するために、様々な技術を使用して湿潤ゲルを乾燥させることができる。例示的な態様では、湿潤ゲル材料を、周囲圧力、亜臨界条件、または超臨界条件で乾燥させることができる。
【0230】
室温プロセスと高温プロセスの両方を使用して、周囲圧力でゲル材料を乾燥させることができる。いくつかの態様では、溶媒、湿潤ゲルの量、曝露表面積、湿潤ゲルのサイズなどに応じて、溶媒を除去するのに十分な期間、例えば数時間から数週間の範囲の期間、開放容器内で湿潤ゲルを空気に曝露するゆっくりとした常圧乾燥プロセスを使用することができる。
【0231】
別の態様では、湿潤ゲル材料は、加熱によって乾燥される。例えば、湿潤ゲル材料を対流式オーブン内で一定期間加熱して、溶媒(例えば、エタノール)の大部分を蒸発させることができる。部分的に乾燥させた後、ゲルを周囲温度で放置して、一定期間、例えば数時間から数日かけて完全に乾燥させることができる。この乾燥方法によりキセロゲルが生成される。特に、本開示によれば、モノリシック形態の湿潤ゲルを乾燥させると亀裂が生じるが、ビーズ形態の湿潤ゲルは、目標密度Tdが低い(例えば、Td=0.05g cm)溶液からでもその球形を保持することがわかった。
【0232】
いくつかの態様では、湿潤ゲル材料は凍結乾燥によって乾燥される。「凍結乾燥(freeze drying)」または「凍結乾燥(lyophilizing)」とは、溶媒を除去するための低温プロセスを意味し、これは、材料(例えば、湿潤ゲル材料)を凍結させ、圧力を下げ、次いで凍結した溶媒を昇華によって除去することを含む。水は凍結乾燥による除去に理想的な溶媒であり、また、本明細書に開示される方法では水が溶媒であるため、凍結乾燥は開示されたポリイミド湿潤ゲル材料からのエアロゲル形成に特に適している。この乾燥方法により、エアロゲルによく似ている可能性があるクリオゲルが生成される。
【0233】
超臨界乾燥及び亜臨界乾燥の両方を使用して、湿潤ゲル材料を乾燥させることができる。いくつかの態様では、湿潤ゲル材料は亜臨界条件または超臨界条件下で乾燥される。超臨界乾燥の例示的な態様では、超臨界COで溶媒を抽出するために、ゲル材料を高圧容器に入れることができる。溶媒、例えばエタノールを除去した後、容器を一定期間、例えば約30分間、COの臨界点より上に保持することができる。超臨界乾燥後、容器を大気圧まで減圧する。一般に、エアロゲルは、このプロセスによって得られる。
【0234】
亜臨界乾燥の例示的な態様では、室温で約800psi~約1200psiの範囲の圧力で液体COを使用してゲル材料を乾燥させる。この操作は超臨界乾燥よりも速く、例えば、溶媒(例えば、エタノール)は約15分で抽出できる。一般に、エアロゲルは、このプロセスによって得られる。
【0235】
いくつかの追加のエアロゲル抽出技術が当該技術分野で知られており、これらには、エアロゲルの乾燥に超臨界流体を使用する様々なアプローチ、並びに常圧乾燥技術が含まれる。例えば、米国特許第6,670,402号は、実質的に超臨界条件またはそれ以上に予熱及び予圧された抽出器に超臨界(液体ではなく)二酸化炭素を注入することにより、急速な溶媒交換を介してゲルから液相を抽出し、それによってエアロゲルを製造することを教示している。
【0236】
いくつかの態様では、湿潤ゲルからの液相の抽出には、COの超臨界条件が使用される。
【0237】
IV.LFP-エアロゲル集塊粒子
A.集塊粒子合成の例示的なプロセスフロー
図1図2図3、及び図4は、本開示の非限定的な態様によるいくつかの方法を示す流れ図である。図1によれば、一態様では、方法100は、LMP粒子が埋め込まれた集塊粒子を合成するために使用される。工程102において、ポリアミック酸塩の水溶液を調製し、工程104において、カソード材料粒子を混合する。工程106において、混合物にゲル化開始剤、例えば酸または酸無水物を添加することによって、ポリアミドオルガノゲルを形成するためのオルガノゲル形成を開始する。工程108において、工程106からのゲル化混合物を、ゲルの形成が完了する前に乳化してビーズを形成し、ゲル化後に工程110においてビーズを分離し、洗浄する。次に、工程112においてビーズを乾燥させて、LMPが埋め込まれたエアロゲルまたはキセロゲルビーズを形成することができる。次いで、工程114においてビーズを炭化して、本開示の集塊粒子を形成する。
【0238】
あるいは、図2の方法200によれば、工程202においてポリアミック酸塩の水溶液を調製し、工程204においてカソード材料の粒子を混合する。工程206において、ゲル化開始剤、例えば酸無水物を混合物に添加し、工程208において、混合物から型内でゲルを形成させる。工程208で形成されたモノリスゲルをステップ210において粉砕し、任意選択で工程212において乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲル粉末を形成する。工程214においてこの粉末を炭化して、粉末の形態の本開示による集塊粒子を形成する。
【0239】
図3は、本開示による集塊粒子をビーズの形態で形成するための更なる代替方法300を示す。このプロセス300によれば、工程302において、ポリアミック酸塩の水溶液を調製し、工程304においてカソード材料の粒子を混合する。工程306において混合物を乳化した後、工程308において酸などのゲル化開始剤を添加してエマルジョンをゲル化させる。工程310において、形成されたゲルのビーズを分離し、洗浄した後、工程312において乾燥させて、カソード材料粒子が埋め込まれたエアロゲルまたはキセロゲルビーズを形成する。次いで、工程314においてこれらのビーズを炭化して、本開示による集塊粒子を形成する。
【0240】
更なる代替例が図4に示されており、これはプロセス400とラベル付けされている。この態様では、工程402においてポリアミック酸塩の水溶液を調製する。工程404において、カソード材料の粒子を混合する。工程406において、混合物を、例えば噴霧乾燥によって乾燥させて、中間キセロゲルビーズ及び/または粉末を形成する。次に、工程408において中間キセロゲルビーズ及び/または粉末を炭化して、本開示による集塊粒子を形成する。
【0241】
B.LFP合成
本明細書に記載されるように、本明細書で論じられるLMP(M=金属、「LFP」ともいう)材料は、単一のリン酸金属リチウム(例えば、「F」が鉄であるLFP)、またはそれらの混合物(例えば、LFP及びLVPの粒子、ここでV=バナジウム)を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり得る。あるいは、または組み合わせて、本明細書に記載のLFP材料は、LiFe1-xMnPO(0≦x≦1)などの遷移金属の混合物を含有する連続固溶体であってもよい。金属がFeまたはMnの場合、化学式はLiMePOである。金属がVの場合、化学式はLi(POである。
【0242】
本開示は、商業的供給源を含む任意の供給源からのLFP、及び粒径が大きく電気化学的性能が低い粗粒低コストLFP(「LC-LFP」)を含むLMPを利用することができる。ただし、説明のために、LMPを合成する概略的な方法も提供する。
【0243】
LMPは、金属酸化物前駆体材料から合成することができる。M=Feの場合、コスト、入手可能性、及び低毒性の理由から、前駆体として天然または人工のFeが選択される。M=Mnの場合、前駆体はMnO、Mn、MnO、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。M=Vの場合、前駆体はV、VO、V、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。前駆体金属酸化物の平均酸化状態が、Mn及びFe前駆体の場合は2.0、V前駆体の場合は3.0を超える場合(すなわち、MnO及びVを除いて本段落に記載されるすべてのもの)、金属をMe(II)酸化状態に定量的かつ化学量論的に還元するために、LFP合成中に炭素源が必要とされる。
【0244】
炭素源の選択は、合成ポリマー(ポリアリールアミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサジン(PBO)、フェノール-ホルムアルデヒド、RF、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン)、バイオポリマー(デンプン、セルロース)、修飾バイオポリマー(アルギン酸、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース[CMC]、スクロース-クエン酸ポリエステル)、バイオマス、または単純な単糖類もしくは二糖類(スクロース、グルコース、フルクトース)など、様々なポリマー源によって異なる。
【0245】
前駆体としてMnOから合成されるLiMnPOの場合、Mn(II)酸化状態のために炭素源による大規模な還元は必要ない。このような場合、CMCまたはアルギン酸などの増粘剤を最大0.5%(MnOに対する重量)まで添加して、乾燥工程全体を通じて成分を懸濁状態に保ち、追加の保護を提供して加熱工程における偶発的な酸化(例えば、O漏出またはキャリアガス中の不純物)を防ぐ。
【0246】
いずれの場合も、炭素源の選択に応じて、バルクLMPの残留炭素含有量が0.1~3重量%となるように、適量の炭素源を添加する。
【0247】
典型的なLMP合成は以下のように進行する:HPO85%、HO(酸化物源に対する重量比1:1~10:1)、LiCO、金属酸化物、及び炭素源/増粘剤を、Li:Fe:Pのモル比が1:1:1となるように、反応容器に任意の順序で添加する。混合は、オーバーヘッド機械混合、高速ブレードミキサー、超音波ミキサー、再循環ミキサーなどの様々な技術を使用して行うことができ、混合時間は15分間~10時間である。
【0248】
乾燥は、熱板、エアーオーブン、強制高温ガス乾燥機(空気またはN)、コンベアベルトオーブン、真空オーブン、タンブル乾燥機、または上記の組み合わせなど、様々な形式で行うことができる。乾燥温度は室温~200℃の範囲である。
【0249】
次いで、乾燥したLMPを300~1000℃の温度範囲で熱処理し、例えば、従来の炉(対流/伝導)、マイクロ波炉または誘導炉などの様々な加熱方法を使用することができる。加熱時間は加熱方法によって数分から数時間まで異なる。マイクロ波及び誘導加熱では短時間の加熱が使用されるが、従来の炉ではより長い加熱時間が使用される。加熱及び冷却速度は、加熱方法に応じて1~1000℃/分とすることができる。
【0250】
炉の雰囲気は静的でも、ガス流または真空によって動的でもよい。ガス流の場合、不活性(ArまたはN)または還元性(水素含有量5~10%molのH-ArまたはH-N)ガス混合物を、反応装入物1kg当たり10mL/分~10L/分の流量で使用することができる。還元性雰囲気が存在する場合、必要な還元性Cの量は比例して少なくなる。
【0251】
加熱は、窒素パージ下のマッフル炉または不活性もしくは還元性ガスブランケットを有する密閉炉など、反応混合物へのO漏れを最小限に抑えるための設備により、空気中で行うこともできる。このような場合、カーボンフェルトなどの脱酸素剤を反応装入物の上に使用して、LMP/Cの酸化を最小限に抑えることができる。
【0252】
C.LMP粉砕
粒径を小さくするためのLMPの粉砕は、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼などの粉砕媒体を使用して、ローラーミル、遊星ボールミルまたは高速ビーズ撹拌ミルなどの様々な粉砕機で行うことができる。粉砕時間は、数分(高エネルギー粉砕機)から数時間(低エネルギー粉砕機)まで様々であり得る。回転は方法に応じて60~10000rpmの範囲で変化し得る。
【0253】
粉砕は乾式または湿式形式で行うことができる。湿式粉砕法の場合、バルクLMP粉末を、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から選択される液相中に分散させる。液体/固体の重量比は0.5:1から10:1まで変化し得る。粉砕媒体(ボールまたはリング)と固体の重量比は5:1から100:1まで変化し得る。
【0254】
粉砕は空気中または不活性ガス雰囲気下で、単一または複数回路パスを用いて静的(バッチ)モードまたは動的(フロー)モードで行うことができる。湿式粉砕の場合、得られた粉砕スラリーを、ポリアミック酸塩と混合するために直接使用することができ、または上述の方法の1つに従って、すなわち、熱板、エアーオーブン、強制高温ガス乾燥機(空気またはN)、コンベアベルトオーブン、真空オーブン、タンブル乾燥機、またはこれらの組み合わせを使用して、周囲温度(例えば、約20℃)~200℃の範囲の乾燥温度で乾燥させる。分散剤は、必要に応じてリサイクルして再利用することができる。湿式粉砕の場合、粉砕は界面活性剤を用いても用いなくても行うことができる。界面活性剤は、固体バルクLMP充填量に対して0.1~5重量%の範囲で変化し得る。
【0255】
粉砕後、LMPの所望の平均粒径は、本明細書に記載のD50を参照して、250nm未満、例えば150nm未満である。
【0256】
D.ゲル前駆体へのLMPの分散
ポリアミック酸塩の水溶液を上記のように調製する。本明細書に記載の任意の方法を使用して、開示された方法の第1工程としてポリアミック酸塩の水溶液を調製することができる。例えば、ポリアミック酸塩は、本明細書に記載されるように、水中で適切なジアミン及びテトラカルボン酸二無水物からその場で調製することができ、または、ポリアミック酸は、本明細書に記載されるように、非水溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド)中で別々に調製し、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を使用して水中に溶解することができる。本発明者らは、本明細書に開示される方法のうち、炭酸グアニジニウム塩もしくは重炭酸グアニジニウム塩及び/または炭酸リチウム塩または重炭酸リチウム塩を使用してポリアミック酸塩の水溶液を形成する場合に特に有利な結果が得られることを見出した。
【0257】
ゲル前駆体溶液(すなわち、ポリアミック酸塩の水溶液)へのナノスケールLMPの分散は、高速ミキサー、高剪断ミキサー、ボールミル、またはロータリーミキサーなどの様々な方法を使用して達成することができる。固液混合比、ポリマー溶液濃度、ポリマー化学の選択、及び混合条件については、実施例で説明する。一般に、混合条件は、規模、オルガノゲルの種類、その濃度などを含む複数の要因に基づいて選択される。一般に、混合は、LMP材料をゲル前駆体溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で行われる。
【0258】
例えば、いくつかの態様では、混合は少なくとも約500rpm、例えば約500~約5000rpmの速度で行われる。いくつかの態様では、混合は、例えばホモジナイザーを使用して、約1000~約9000rpmなどのより高い速度で行われる。特に、このような高速混合は、その方法が、エマルジョンを形成して、LMPが分散したオルガノゲルをビーズの形態で生成することを含む場合に利用される。いくつかの態様では、混合は、約1分~約30分の範囲の期間、例えば約1分~約3分間、約4分~約15分間、または約5分~約10分間行われる。当業者であれば、混合速度及び混合時間は、所望の分散/乳化の所望の程度に応じて変化し得ることを認識するであろう。
【0259】
本開示によれば、ゲル前駆体の粘度が、特に有利な集塊粒子を提供するのに役割を果たすことが判明した。特に、ゲル前駆体溶液の密度は、ナノスケールLMP粒子を分散状態に維持し、得られるオルガノゲルにおいてそれらが互いに分離されたままとなるように互いに分離するのに十分であるべきである。約0.05g/cm(水1グラム当たりのポリマー前駆体溶質の質量)の濃度は、LMP粒子の適切な分散を提供するために特に有利であり得る。
【0260】
バルクLMP粉末をポリアミック酸塩水溶液中で粉砕することも可能である。この場合、「粉砕」工程と「分散」工程が統合されるため、個別の分散は必要ない。これは、ポリアミック酸溶液の高分子電解質性質が粉砕されたLMP粒子の酸化物終端表面を湿潤させるのに高い親和性を有するためである。
【0261】
開示された方法は、LMP(例えば、鉄、マンガン、バナジウム、それらの組み合わせ)を含むカソード材料をポリアミック酸塩の水溶液に混合してスラリーを形成する工程を含む。スラリーを後でゲル化し、次いで乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲルを形成する。スラリーに含まれるLMPの量は、最終製品におけるエアロゲルに対するLMPの目標比率によって異なる。LMPは、上述のように任意の供給源から、好ましくは低コストの供給源(LC-LFP)から得ることができるが、本開示の文脈では、LMPを添加してナノスケール粒子のスラリーを形成することが重要である。これらは、バルクLMP材料を粉砕することによって、例えば市販製品の平均粒径をミクロンスケールからサブミクロン及びナノスケールに縮小することによって得ることができる。
【0262】
粉砕は湿式または乾式プロセスを使用して実施することができる。乾式粉砕プロセスでは、粉末を粉砕媒体とともに容器に添加する。粉砕媒体には通常、酸化ジルコニウム(イットリウム安定化)、炭化ケイ素、酸化ケイ素、石英、またはステンレス鋼のボールまたはロッドが含まれる。得られた粉砕材料の粒径分布は、系に印加されるエネルギーによって、及び出発材料の粒径を粉砕媒体のサイズに一致させることによって制御される。ただし、乾式粉砕は非効率的でエネルギーを消費するプロセスである。湿式粉砕は、乾式粉砕に似ており、粉砕液体が添加される。湿式粉砕の利点は、同じ結果を得るためのエネルギー消費が乾式粉砕よりも15~50%低いことである。湿式粉砕の更なる利点は、粉砕液体が粉砕材料を酸化から保護できることである。湿式粉砕は、より細かい粒子を生成することができ、粒子の凝集が少なくなることも見出されている。したがって、いくつかの態様では、この方法は湿式粉砕を含む。
【0263】
湿式粉砕は、様々な液体成分を使用して行うことができる。他の態様では、粉砕液体または粉砕液体に含まれる成分は、粉砕中または粉砕後に粒子(例えばLFP粒子)の所望の表面化学官能化を提供するように選択される。粉砕液体または粉砕液体に含まれる成分は、粒子(例えばLFP粒子)の化学反応性または結晶形態を制御するために選択することもできる。例示的な態様では、粉砕液体または粉砕液体に含まれる成分は、下流の材料との相溶性または反応性、処理工程または粒子(例えばLFP粒子)の用途に基づいて選択することができる。例えば、粉砕液体または粉砕液体に含まれる成分は、有機または無機エアロゲル材料を形成または製造するプロセスで使用される液体または溶媒と相溶性があり、その液体または溶媒において有用であり、またはその液体または溶媒と同一であり得る。更に別の態様では、粉砕液体は、粉砕液体または粉砕液体に含まれる成分が、LFP粒子表面、または脂肪族もしくは芳香族炭化水素などの中間種上にコーティングを生成するように、または有機もしくは無機エアロゲル材料と反応する交差官能性化合物を架橋もしくは生成することによって、選択することができる。
【0264】
いくつかの態様では、湿式粉砕に使用される溶媒または溶媒の混合物は、粉砕中または粉砕後の粒子の化学官能化を制御するために選択することができる。いくつかの態様では、LMPは、開示された方法においてゲルを形成するために使用されるポリアミック酸塩の溶液中でその場で都合よく粉砕することができる。この方法のこの特定の態様では、粉砕されたLMP粒子をポリアミック酸塩の溶液中に分散させる別個の工程を行う必要はない。なぜなら、これは粉砕プロセスですでに達成されているからである。ポリアミック酸溶液は、粉砕されたLMP粒子の酸化物終端表面を湿潤させ、スラリー中でのLFP粒子の優れた均一な分散を達成することができる。
【0265】
E.オルガノゲルを形成するためのゲル化
ポリアミック酸塩の水溶液をゲル化することによってオルガノゲルを形成するプロセスは、本明細書において、「水性条件下でのポリアミック酸及びポリイミドゲル材料の調製」と題するセクションに記載されており、これらの方法のいずれも、ポリアミック酸塩溶液とLMPの水性スラリーから本開示のゲルを形成するために使用することができる。以下のプロセス1、2、3は、エアロゲルマイクロビーズ及び/またはキセロゲルマイクロビーズの合成のために構成可能である。エアロゲル及び/またはキセロゲルマイクロビーズは、処理温度、溶媒、溶媒蒸発速度、反応速度、乾燥速度、及び他の要因を調整して、湿潤ゲルの気孔率を維持するか、または湿潤ゲルの気孔率を(例えば、乾燥中の細孔崩壊を介して)低減することにより、これらのプロセスでの製造用に選択することができる。
【0266】
i.プロセス1:ポリイミド(PI)ゲルのビーズ
高速ミキサーを用いて1000~5000rpmで5~15分間、粉砕によるナノサイズLMPを適切な量(目標とするLMP/Cエアロゲル比に応じて)のポリアミック酸塩の水溶液に均一に分散させる。
【0267】
得られたスラリーにゲル化開始剤として無水酢酸を添加し、その混合物を水性非混和性媒体(すなわち、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、または他の炭化水素などの分散媒)に注ぎ、そして混合物を高速(1000~9000rpm)で乳化する(ホモジナイザーを使用)。このプロセス中に、ミクロンサイズ(5~30μm)のLMP/PI湿潤ゲルビーズが形成される。乳化プロセスは4~15分間続く。
【0268】
LMP/PI湿潤ゲルビーズの合成は、界面活性剤の存在下または非存在下で行うことができる。界面活性剤を使用する場合、酸性化されたLMP/ポリアミック酸塩溶液スラリーを添加する前に、界面活性剤を非混和性分散媒に溶解する(1~2重量%)。
【0269】
分散媒は主にデカンテーションによってビーズから分離される。分散剤はリサイクル可能である。LMP/PIゲルビーズをエタノールで数回洗浄し、微量の分散媒を除去する。続いて、LMP/PIゲルビーズを乾燥によってLMP/PIエアロゲルまたはキセロゲルビーズに変換する。
【0270】
ii.プロセス2:ポリアミック酸(PAA)ゲルのビーズ
LMP/PAAビーズ合成の場合、上記のスラリーを非水性の水非混和性分散媒(ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、または他の炭化水素)に注ぎ、高速(1000~9000rpm)で乳化する(ホモジナイザーを使用)。1~3分間混合した後(この間、ミクロンサイズ(5~30μm)の液体ビーズが水性スラリーから形成される)、酢酸または無水酢酸を混合物に(混合しながら)添加して、形成されたビーズのゲル化を誘発する。
【0271】
LMP/PAAビーズ合成は、界面活性剤の存在下または非存在下で行うことができる。界面活性剤を使用する場合、LMP/ポリアミックスラリーを添加する前に、界面活性剤を分散媒に溶解する(1~2重量%)。分散媒は主にデカンテーションによってビーズから分離される。分散剤はリサイクル可能である。LMP/PAAゲルビーズをエタノールで数回洗浄し、微量の分散媒を除去する。続いて、LMP/PAAゲルビーズを乾燥によってLMP/PAAエアロゲルまたはキセロゲルビーズに変換する。
【0272】
iii.プロセス3:ポリイミド(PI)ゲルモノリス
高速ミキサーを用いて1000~5000rpmで5~15分間、粉砕によるナノサイズLMPを適切な量(目標とするLMP/Cエアロゲル比に応じて)のポリアミック酸塩水溶液に均一に分散させる。得られたスラリーを、(機械的、磁気的、または他の混合手段を使用して)混合しながら適切な量の無水酢酸を添加することによってゲル化する。超臨界乾燥(エアロゲルを形成するために)または従来の常圧乾燥(キセロゲルを形成するために)の前に、湿潤モノリスゲル(LMP/PI)を小さなゲルの塊(mmサイズ)に粉砕することができる。
【0273】
得られたLMP/PIエアロゲル(またはキセロゲル)材料は、低エネルギー粉砕機を使用してミクロンサイズの粒子(<50μm)からなる粉末に更に粉砕することができる。
全体として、プロセス1、2及び3によって製造されるビーズまたは粒子の平均粒径D50は、有利には0.5~20ミクロン、好ましくは約1ミクロン~10ミクロン、例えば5ミクロンである。粒径が1ミクロン未満であると、電極鋳造中に液体結合剤/炭素添加剤に容易に分散し、ブレード鋳造技術によって均一な厚さのフィルムとして容易に鋳造できるため、アノード/カソードのペアリングに必要な気中密度の再現性が高くなるが、特定の欠点がある(小さすぎると粉塵や静電気などの影響で作業が難しくなり、一般に粉末のタップ密度が低くなり(形状依存性)、エネルギー密度が低くなる)と考えられる。対照的に、10ミクロンを超える粒径は、均一に鋳造することが難しく、電極の空気容量の変動につながり、また、粒子状/粗い外観を有し、電池組み立て中やスタック圧力印加中にセパレーターに穴が開く可能性がある。
【0274】
F.噴霧乾燥
以下のプロセスは、主にキセロゲルマイクロビーズを生成することが実験的に見出されている。本開示による代替の方法では、ポリアミック酸塩の水溶液は、上述のゲル化プロセスを受けない。代わりに、LMP粒子は、上述のようにポリアミック酸塩の水溶液中に分散され、得られたスラリーは、当該技術分野で公知の技術を使用して噴霧乾燥される。これには、加熱しながらスラリーを噴霧して、比較的大きな表面積を有し、すぐに乾燥する小さな液滴を生成することが含まれる。これにより、カソード材料粒子及びポリマーを含む乾燥液滴のビーズが得られる。噴霧乾燥装置のノズル並びに供給物(スラリー)と乾燥ガスの相対流量を制御することにより、5~30μmのサイズを有する集塊粒子を得ることができる。このようにして、形成される集塊粒子は、溶液からのポリマーによって少なくとも部分的に封入されたカソード材料の粒子を含む。
【0275】
G.炭化
いくつかの態様では、この方法は、オルガノゲル(例えば、ポリアミック酸またはポリイミドエアロゲル)を同形カーボンエアロゲルに変換することを更に含み、変換は、適切な条件下でそれぞれのエアロゲルを熱分解することを含む。したがって、いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示されるポリアミック酸またはポリイミドエアロゲルを熱分解(例えば、炭化)することを更に含み、これは、実質的にすべての有機材料を炭素に変換するのに十分な温度及び時間でエアロゲルを加熱することを意味する。熱分解に関連して本明細書で使用される場合、「実質的にすべて」とは、有機材料の95%超が炭素に変換されること、例えば有機材料の99%、または99.9%、または99.99%、または更には100%が炭素に変換されることを意味する。有機エアロゲルを熱分解すると、エアロゲルは、物理的特性(例えば、気孔率、表面積、細孔径、直径など)が対応するカーボンエアロゲル内に実質的に保持される同形カーボンエアロゲルに変換される。
【0276】
熱分解に必要な時間及び温度は変化し得る。いくつかの態様では、ポリイミドエアロゲルは、エアロゲルの炭化のために、約600℃以上、例えば約600℃、約650℃、約700℃、約750℃、約800℃、約850℃、約900℃、もしくは約950℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の処理温度にさらされる。一般に、熱分解は、有機材料または炭素材料の燃焼を防ぐために不活性雰囲気下で行われる。適切な雰囲気としては、窒素、アルゴン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、熱分解は窒素下で行われる。
【0277】
上記の方法によって製造された、例えばエアロゲル、キセロゲル、または噴霧乾燥粒子を含む集塊粒子は、上記のように更に炭化される。これには、実質的にすべての有機材料(ポリマー)を炭素に変換するのに十分な時間、材料を加熱することが必要となる。上述したように、熱分解(炭化)は650℃を超える温度から1000℃までの様々な温度で行うことができる。本開示によれば、800℃の温度が、開示された集塊粒子を熱分解するのに特に有利であり得ることが判明した。カソード材料が埋め込まれていないエアロゲルまたはキセロゲルを熱分解する場合、より高い温度を使用することができる。しかしながら、本明細書に記載のリン酸金属リチウム粒子などのカソード材料の場合、温度が上昇すると、LMP材料の望ましくない結晶が形成され得るというリスクがあり、これは電気化学的性能の低下につながる可能性がある。しかしながら、本開示によれば、集塊粒子中のLMPを取り囲むポリマーネットワークの多孔質性質が、結晶構造におけるこれらの望ましくない変化を抑制することが見出された。したがって、本開示によれば、炭化は、約650℃~約1000℃、または650℃~約800℃の温度で行うことができる。炭化時間は使用される温度によって異なる場合があり、例えば、約800℃での炭化は5~10時間、例えば8時間かけて行うことができるが、より低い温度または高い温度での炭化では、炭化が最大限に進行する(すなわち、すべての有機ゲルが炭素に変換される)ために、それぞれより長いまたはより短い時間が必要とされる場合がある。
【0278】
本開示によれば、最終的な集塊粒子中の炭素の量を調整することが可能である。例えば、いくつかの態様では、Liイオン電池での使用に適した炭素百分率を有する集塊粒子を調製することが望ましく、ここで、炭素の量は、多すぎて最終電池に電荷を保持できないデッドスペース/デッドマスを生じさせることなく、LMPに必要な導電性を提供するのに十分である。市販のLFP-炭素材料には約3%の炭素が含まれている可能性があり、したがって約97%のLFPが含まれる。
【0279】
集塊粒子中の炭素百分率は、次の式を使用して計算することができる:
【数1】
式中、「前駆体質量」とは、水性ゲル前駆体溶液の質量を指し、「前駆体濃度」とは、水性ゲル前駆体溶液の質量当たりのポリマー溶質の質量(グラム単位)を指し、「炭化収率」とは、形成されたゲル中の、炭化中に炭素に変換されるポリマーの割合である。炭化収率は、使用される特定のプロセス及び材料に応じて、約0.3~0.4の範囲で変化し得る。
【0280】
例として、溶液1g当たり0.05gの濃度及び0.4の炭化収率を有する50gのオルガノゲル前駆体を、10gのLMPとともに使用すると、9%のC及び91%のLMPを有する集塊粒子が得られる。上記の式は、ポリマーゲルの炭化から生じる炭素のみを計算する。LMP合成プロセスからの追加の残留炭素が存在する可能性があり、これもまた、集塊粒子内の炭素に寄与する。これは最大約4%になると予想され、1%未満(例えば0.5%)になると予想される。
【0281】
H.材質特性
本開示による集塊粒子500を表現したものを図5A及び図5Bに示す。粒子500は、図5Aに示すように、実質的に球形で多孔質であり、図5Aは、斜視図であり、粒子の表面上の目に見える細孔512、520を示す。また、図5Aから、粒子500のコア504内にある程度突出する、部分的に埋め込まれたLFP粒子508が存在することも明らかである。
【0282】
図5Bは、図5Aの点線X-Xを通る断面図であり、同じ空の表面細孔520及び空の内部細孔516を示す。図5Bはまた、完全に埋め込まれたLFP粒子532を含む占有された内部細孔528を示す。図5Bはまた、部分的に埋め込まれ、したがって集塊粒子500の表面を通って突出するLFP粒子524を示す。
【0283】
全体として、本開示の集塊粒子は、実質的に球形の粒子において50m/gを超えるか、または100m/gを超える可能性がある高い内部表面積を有する。ビーズのサイズは、0.5~50μm、5~30μm、または1~10μmであってもよい。集塊粒子の細孔径は、約1~50nm、例えば約10~約20nmであってもよい。
【0284】
集塊粒子(例えば、ビーズの形態)は、多孔質炭素マトリックスに少なくとも部分的に埋め込まれたカソード材料粒子(例えば、LMPを含む)を含む。換言すれば、カソード材料(例えば、LMP)粒子の一部はマトリックス粒子内に完全に埋め込まれているが、他のカソード材料(例えば、LMP)粒子はマトリックス粒子の表面から、またはマトリックス粒子の表面上に突出する。
【0285】
多孔質炭素マトリックスに少なくとも部分的に埋め込まれたカソード材料(例えば、LMP)粒子は、多孔質炭素ネットワークによって互いに隔離されており、これは、カソード材料(例えば、LMP)粒子が近接している可能性があるが、それらが一般に互いに直接接触していない(すなわち、互いに接していない)ことを意味する。
【0286】
図6は、LFP粒子608を取り囲む炭素ネットワーク604を有する、本開示による集塊粒子600を概略的に示す。図6は単なる例示であるが、LFP粒子608は炭素ネットワーク604によって間隔をあけて保たれ、一部のLFP粒子は粒子600内に完全に埋め込まれているが、他のLFP粒子は部分的に埋め込まれており、粒子600の表面上で目に見えることが改めて理解され得る。
【0287】
炭素マトリックスは、フィブリル構造、すなわち、上述のフィブリルを含む構造を有してもよい。マトリックス内には炭素フィブリルの階層が存在する可能性がある。図7は、図7の炭素ネットワーク604をより詳細に示す。図7に示すように、炭素ネットワーク704は、LMP粒子708の表面でフィブリル712に分岐する。いくつかの態様では、LFP表面と接触するフィブリル721は、LFP粒子と接触していないフィブリルよりも薄く、より高い密度を有し得る。理論に束縛されることを望むものではないが、LMP粒子の表面でのより薄く、より高密度のフィブリルは、LFP粒子の表面をコーティングし、導電性を向上させるのに役立つと考えられる。
【0288】
図8A図8Dは、本開示による集塊粒子の4枚の走査型電子顕微鏡写真を含む。図8A及び図8Bは、LFP:炭素の質量比が75:25の集塊粒子を示し、一方、図8C及び図8Dは、LFP:炭素の質量比が90:10である。倍率は、図8A及び図8Cでは10,000倍、図8B及び図8Dでは50,000倍である。図5A及び図5Bの概略図と同様に、図8A図8DのSEMは、表面に見える埋め込まれたLFP粒子を有する実質的に球形の集塊粒子を示す。
【0289】
I.電気化学的特性
本開示の集塊粒子は、驚くべきことに、イオン及び電子移動速度が速い非常に高性能のカソード材料として機能する。これは少なくとも部分的には、導電性カーボンマトリックス中でLFP粒子が十分に分離されたこと、及びゲルを炭化する際の望ましくないLFP結晶成長を回避することによるものである。
【0290】
本開示で使用される出発LC-LFP材料は、約20mAh/gの容量を有し得る。粉砕後、この容量は約80mAh/gまでわずかに改善される可能性がある。LFP粒子を含む本開示の集塊粒子は、140mAh/gを超え、最大約160mAh/gまでの容量を達成することができる。
【0291】
上述したように、既存の従来技術のLFP材料では、導電性の低いLFP材料の導電性を改善するために少量の炭素を添加することが一般的である。炭素の添加はデッドスペース、すなわち電荷を保持できない電池セルの質量に相当するため、炭素の量は最小限に抑える必要がある。したがって、市販のLFP-C材料には約3%の炭素が含まれる可能性がある。本開示の集塊粒子は、上述したように、製造中に炭素前駆体(ポリマー)の量を変えることにより、10%以下、5%以下、3%以下の炭素など、異なる量の炭素で製造することができ、残りはLMPである。
【0292】
実験により、本開示の集塊粒子は、比較的多量の炭素(10%など、例えば図9及び本明細書における以下の議論を参照)を含む場合でも、C/20の充電速度で約130mAh/gの総容量(LMP及び炭素の質量について正規化された)を有し得ることが示された。これは、市販されているLFP-Cを試験対照とし、そのまま使用した場合の充電容量に近い。更に、本開示の集塊粒子は、対照サンプルと比較して、改善された第1サイクルのクーロン効率(FCE)を有する。
【0293】
本開示による集塊粒子の場合、本明細書において上述したように、炭素含有量を減少させるとデッドマスが減少するため、より少ない炭素量を有することにより、140mAh/g以上、例えば150~160mAh/gのより高い容量が達成されることが予想される。
【0294】
本開示の集塊粒子は、優れた容量保持性を有する。カソード材料として使用される場合、集塊粒子は、Cレートが増加するにつれて容量を非常によく保持し、半電池では1CのCレートで80%を超える容量保持率を示す。一方、対照LFP粒子は、1Cで約50%の容量を失い、すなわち、電荷保持率はわずか50%である。
【0295】
本開示の集塊粒子はまた、極めて良好なサイクル寿命を示す。本発明の材料は、数百回の充電サイクル後でも全く容量損失を示さないが、従来技術の製品は、直接比較すると、初期容量の約75%を失うと予想される。
【0296】
本開示の集塊粒子は、単に粉砕されたLFPと比較して、LFPの実際の容量が更に50%超増加していることを示しており、その結果、低品質、低性能、及び安価なバルクLFPから出発する場合であっても、LFP材料では145mAh/gを超える容量が達成可能となる。集塊粒子の更なる予想外の利点は、C/20と比較して1Cで少なくとも80%の容量保持率という高レート性能である。第三に、本開示の材料は、金属リチウムアノードを有する半電池において、1Cの充放電速度で300サイクル後でも容量損失がなく、優れたサイクル寿命を示す。
【0297】
実験例
本開示によるLFP/カーボンエアロゲル材料の合成の2つの実施例を説明する。
【0298】
J.LC-LFP合成
出発物質100gのLC-LFPを次のように調製した:51.9gのバルク酸化鉄(Fe)を200mlの水中で30分間撹拌した。このスラリーに74.94gのリン酸(85%)を添加して、30分間混合した。次いで、25.22gのLiCOを段階的に混合物に添加した。得られたスラリーを更に1時間混合した。
【0299】
別に、1,4-フェニレンジアミン(PDA、14.86g)を808gの水に溶解し、続いてトリエチルアミン(TEA:33.44g、46.09mL、PDAまたはPMDAに対するモル/モル比2.4:1)及びPMDA(ピロメリット酸二無水物29.97g、0.138mol、PDAに対するモル/モル比1:1)を添加することによって、ポリアメート塩溶液を調製した。得られたポリアメート水溶液の75.0g部分を(Fe還元のための炭素源として)無機混合物に添加し、激しく混合した。得られたスラリーを混合しながら130℃まで加熱して水を除去した。完全に乾燥したら、LFP前駆体固体を微粉末に粉砕し、その後不活性ガス下、800℃で8時間熱処理した。得られたLFPは、1~10μmの範囲の一次粒径、及び20mAh/gの低い比容量を示した。このLC-LFPを、本開示によるLFP/カーボンエアロゲル合成に使用する前に、10時間ボールミル粉砕して粒径を500nm未満に減少させた。ボールミル粉砕後、粉砕されたLFPの比容量は約80mAh/gに改善された。
【0300】
II.LFMnP(Fe:Mn=2:1)合成
工程1:混合酸化物前駆体の調製。硫酸第一鉄(FeSO.7HO、90.6g)及び硫酸マンガン(MnSO.HO、27.5g)を脱イオン水に溶解し、30分間混合した。この溶液をシュウ酸溶液(500mLのHO中90.0g)に滴加すると、混合金属シュウ酸塩であるFe2/3Mn1/3.2HOが直ちに形成された。添加完了後、沈殿物を濾過し、水で複数回洗浄した。乾燥後、固体を空気炉内で350℃で1時間か焼して粉末化し、酸化分解して混合酸化物であるスピネルMnFeを生成した。別に、PDA(14.86g)を808gの水に溶解し、続いてトリエチルアミン(TEA:33.44g、46.09mL、PDAまたはPMDAに対するモル/モル比2.4:1)及びPMDA(29.97g、0.0.138mol、PDAに対するモル/モル比1:1)を添加することによって、ポリアメート塩水溶液を調製した。
【0301】
工程2:LFMnPの調製。工程1で得られた混合酸化物を微粉末に粉砕し、200mLの水中で30分間撹拌した。この懸濁液にリン酸(85%、56.3g)を添加し、混合物を30分間混合した。次に、LiCO(19.0g)を混合物に段階的に添加し、続いて37.5gの上記ポリアメート溶液を酸化物無機混合物(三価鉄の還元のための炭素源として)に添加し、混合物を激しく混合した。得られたスラリーを混合しながら130℃まで加熱して溶媒(水)を除去した。乾燥した混合酸化物前駆体を微粉末に粉砕し、不活性ガス下、800℃で8時間加熱した。
【0302】
III.LVP合成
バルクLVPを次のように調製した:酸化バナジウム(V)(V、29.6g)を100mLの水中で30分間撹拌した。この懸濁液にリン酸(85%、56.30g)を添加し、混合物を30分間混合した。次いで、LiCO(18.9g)を混合物に段階的に添加した。得られたスラリーを1時間混合した。別に、PDA(14.86g)を808gの水に溶解し、続いてトリエチルアミン(TEA:33.44g、46.09mL、PDAまたはPMDAに対するモル/モル比2.4:1)及びPMDA(29.97g、0.138mol、PDAに対するモル/モル比1:1)を添加することによって、ポリアメート塩溶液を調製した。上記ポリアメート溶液の75.0g部分を(Vの還元のための炭素源として)無機混合物に添加し、スラリーを激しく混合した。新しいスラリーを混合しながら130℃まで加熱して溶媒(水)を除去した。乾燥したLVP前駆体を微粉末に粉砕し、不活性ガス下、800℃で8時間加熱した。
【0303】
IV.異なる重量比でのLFP/ミクロンサイズのカーボンエアロゲルビーズの水性調製
エマルジョン中のポリアミック酸のリチウム塩水溶液のゲル化によりミクロンサイズのLFP/ポリアミック酸ゲルビーズを調製した。ポリアミック前駆体溶液の目標密度を約0.05g/cmに固定し、PDA(14.86g)を808gの水に溶解し、続いて炭酸リチウム(12.13g、PDAまたはPMDAに対するモル/モル比1.2:1)を添加し、混合物を5~15分間撹拌することによって調製した。PMDA(29.97g、0.138mol、PDAに対するモル/モル比1:1)を混合物に添加し、その混合物を室温で24~48時間撹拌した。得られたポリアミック酸の炭酸塩水溶液は、室温で約400~500cPの粘度を有していた。
【0304】
2つの異なる材料(LFP/ミクロンサイズのカーボンエアロゲルビーズの重量比が75/25及び90/10である)をゾルゲル法によって調製した。合成手順は、事前に調製したポリアミック前駆体溶液に粉砕したLC-LFPを分散させることから開始した。使用される量は、炭化後のポリイミドエアロゲルの炭素収率(約43%)、LFP炭素比率、LC-LFPの使用量に基づいて決定した。公称75/25比率のサンプルの場合、6gのLC-LFPを100gのポリアミック前駆体溶液と混合し、公称90/10比率のサンプルの場合、6gのLC-LFPを40gのポリアミック前駆体溶液と混合した。
【0305】
LC-LFP/ポリアミック前駆体溶液混合物を、2.5mmジルコニアビーズ(混合物50gに対してビーズ10g)の存在下で、高剪断ミキサーを使用して2500rpmで5分間混合して、得られたスラリー中でのポリアミック前駆体溶液中のLFPのより良好な分散を確保した。
【0306】
無水酢酸(75/25材料の場合、3.21g、2.97mL、ポリアミック酸中のPMDAに対するモル/モル比4.3、または90/10材料の場合、1.28g、1.19mL、ポリアミック酸中のPMDAに対するモル/モル比4.3)を、得られたLFP/ポリアミックスラリーに添加し、60秒間磁気的に撹拌した。その期間の終わりに、ロスミキサーを4000rpmで使用して、剪断下で前駆体溶液を非混和性相に注いだ。非混和性相を、8.35gの界面活性剤(Hypermer(登録商標)H70)を500mLのミネラルスピリットに溶解することによって調製した。前駆体溶液をミネラルスピリット相に1:4v/v比で添加した。高剪断下で4~5分間撹拌した後、混合物をロスミキサーから取り出し、1~3時間放置した。
【0307】
低密度相(ミネラルスピリット溶液)をデカントした。ゲルビーズを減圧濾過により回収し、エタノールで3回溶媒交換した。エタノール交換(洗浄)されたゲルビーズを、超臨界COを使用して乾燥させ、これは、75/25及び90/10 LFP/PIエアロゲルビーズと呼ばれる。
【0308】
エアロゲル材料を炭化するために、それぞれ5℃/分及び1℃/分の加熱勾配及び冷却速度を使用して、窒素流下で2つの材料の熱処理を800℃で8時間実施した。
【0309】
V.LFP/カーボンエアロゲルの特性及び性能
構造特性及びテクスチャ特性
75/25及び90/10材料(本明細書の図はLFP/カーボンエアロゲルのこれらの比を指す)は、BET表面積分析方法で測定した場合、それぞれ126m/g及び58m/gという比較的高い表面積を示した。
【0310】
図8A図8Dに示すように、SEM顕微鏡写真は、1~10μmの範囲のビーズサイズを有する集塊75/25材料の球形度及びカーボンエアロゲルフレームワーク内によく分散したLFPを明確に示す。LFP/CA 90/10材料の場合、PIポリマーの量が少ないとLFP凝集体が完全に含まれていないため、マイクロ複合材料の球形度が低下する。それでも、多孔質カーボンエアロゲル中の十分に分離されたLFP粒子は明らかである。
【0311】
電気化学的性能
LFP-炭素集塊粒子をカソードとしてAl箔集電体上に鋳造し、コイン型電池サイズの半電池のカソードとして使用した。比較の目的で、市販のLFP(Landt Instrumentsから購入)を含むカソードを有するコイン型半電池を同一条件下で組み立て、様々なCレートで定電流充放電サイクルを行った。
【0312】
図9は、3つのLFP-炭素集塊粒子の電圧プロファイル及び第1サイクルのクーロン効率(FCE)を示す。明らかに、市販のLFP-Cは、150mAh/gの最高容量を提供し、FCEは90%よりわずかに低い。LFP-炭素集塊粒子の中でも、LFP-炭素集塊粒子90:10(LFP:炭素)は、130mAh/gでより高い比容量を示し、96%を超える優れたFCEを示す。一方、LFP-炭素集塊粒子75:25は、90mAh/g未満の低い比容量を示し、FCEが90%をわずかに上回っている。LFP-炭素集塊粒子の高炭素バリアントの比容量及びFCEが低いのは、炭素量が多いためであり、これはデッドマス、より高い副反応、及び表面閉塞の一因となる。
【0313】
図10は、市販のLFPと比較した、LFP-炭素集塊粒子カソードの高レート性能を示す。両方のLFP-炭素集塊粒子電極において、CレートがC/20から1Cに増加するにつれて容量保持率は80%を超えるが、市販のLFPでは容量が約50%減少する。したがって、本開示のLFP-炭素集塊粒子は、優れた高レート性能を有する。
【0314】
図11は、1Cサイクル速度でのLFP-炭素集塊粒子電極のサイクル寿命を示し、それを市販製品のサイクル寿命と比較するものである。明らかに、LFP-炭素集塊粒子電極は、300サイクル後でも全く容量損失がないが、市販のサンプルは同じ期間にわたって初期容量の約75%を失った。これは、本開示の製品の高レートでのサイクル復元力が非常に良好であることを実証している。
【0315】
本出願では、特定の米国特許、米国特許出願、及び他の資料(例えば論文)が参照により組み込まれている。しかしながら、そのような米国特許、米国特許出願、及び他の資料のテキストは、そのようなテキストと本明細書に記載された他の記述及び図面との間に矛盾が存在しない範囲でのみ、参照により組み込まれる。このような矛盾が生じた場合、参照により組み込まれた米国特許、米国特許出願、及び他の資料におけるこのような矛盾するテキストは、明確に参照により本特許に組み込まれないものとする。
【0316】
本発明の更なる修正及び代替の態様は、本説明を考慮すれば当業者には明らかとなるであろう。したがって、本説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示することを目的とする。本明細書に示され説明される本発明の形態は、態様の例として解釈されるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書に図示及び説明されているものと置き換えられてもよく、部分及びプロセスは逆にされてもよく、本発明の特定の特徴は独立して利用されてもよく、これらはすべて、本発明の本説明から利益を得た後、当業者には明らかとなるであろう。特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素に変更を加えることができる。
【0317】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、用語「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」並びにそれらの変形は、特定の特徴、工程または整数が含まれることを意味する。この用語は、他の特徴、工程、または成分の存在を排除するものとして解釈されるべきではない。本発明は、開示及び請求された特徴を含むか、それらからなる、または本質的にそれらからなる。
【0318】
本発明はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及または示される部分、要素、工程、実施例及び/または特徴、並びに2つ以上の上記部分、要素、工程、実施例及び/または特徴のあらゆる組み合わせから広く構成され得る。特に、本明細書に記載される態様、実施例及び態様のいずれかにおける1つ以上の特徴は、本明細書に記載される任意の他の態様、実施例及び態様からの1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0319】
本開示と組み合わせて、本明細書で参照される任意の1つ以上の公開文書に開示された任意の特徴に対して保護を求めることができる。
【0320】
本発明の特定の例示的な態様を説明してきたが、添付の特許請求の範囲はこれらの態様のみに限定されることを意図したものではない。特許請求の範囲は、文字通りに、合目的的に、及び/または同等物を包含するように、解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0320
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0320】
本発明の特定の例示的な態様を説明してきたが、添付の特許請求の範囲はこれらの態様のみに限定されることを意図したものではない。特許請求の範囲は、文字通りに、合目的的に、及び/または同等物を包含するように、解釈されるべきである。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[実施形態1]
多孔質炭素を含むマトリックス粒子と、
前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子と、
を含む集塊粒子。
[実施形態2]
前記複数のカソード材料粒子がリン酸金属リチウム(LMP)粒子を含む、実施形態1に記載の集塊粒子。
[実施形態3]
前記LMPの前記金属(M)が、Fe、Mn、V、及びFeとMnの組み合わせからなる群から選択される、実施形態2に記載の集塊粒子。
[実施形態4]
前記マトリックス粒子が、100nm~20ミクロン、または1~10ミクロンの粒径を有する、実施形態1~3のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態5]
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満の平均粒径D50を有する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態6]
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、150nm未満の平均粒径D50を有する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態7]
前記マトリックス粒子の、内部細孔に対応する内部比表面積が50m /グラム~150m /グラムである、実施形態1~6のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態8]
前記内部比表面積の少なくとも一部が、電解質がアクセスできるように構成されている、実施形態7に記載の集塊粒子。
[実施形態9]
前記マトリックス粒子がエアロゲルまたはキセロゲルを含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態10]
前記キセロゲルのエアロゲルが、1つもしくは複数のビーズ、またはモノリスとして形成される、実施形態9に記載の集塊粒子。
[実施形態11]
前記エアロゲルまたはキセロゲルが、ポリイミド、ポリアミック酸、またはそれらの組み合わせを含むオルガノゲルに由来する、実施形態9または10に記載の集塊粒子。
[実施形態12]
前記エアロゲルまたはキセロゲルが炭化オルガノゲルである、実施形態9~11のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態13]
前記マトリックス粒子が、フィブリル形態を含む細孔構造を有する、実施形態1~13のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態14]
前記フィブリル形態が、約2~約10nmの範囲の幅を有する炭化材料の支柱を含む、実施形態13に記載の集塊粒子。
[実施形態15]
前記マトリックス粒子が実質的に均一な細孔径分布を有する、実施形態1~14のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態16]
前記マトリックス粒子が、約1~約50nm、または約5~約25nmの平均細孔径を有する、実施形態1~15のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態17]
前記マトリックス粒子が細孔を含み、前記細孔の少なくとも一部が前記カソード材料粒子を収容するように構成されている、実施形態1~16のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態18]
前記カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、実施形態1~17のいずれか一項に記載の集塊粒子。
[実施形態19]
多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子を調製する方法であって、
(a)ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することと、
(b)カソード材料粒子を前記ポリアミック酸の塩の水溶液と混合することと、
(c1)工程(b)の前記混合物をゲル化して分散したカソード材料粒子を含むオルガノゲルを形成し、工程(c1)の前記オルガノゲルを乾燥させて乾燥した中間体を形成すること、または
(c2)工程(b)の前記混合物を乾燥させて乾燥した中間体を形成することと、
(d)前記乾燥した中間体を炭化して前記集塊粒子を形成することと、
を含む、前記方法。
[実施形態20]
前記ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することが、
水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、
前記成分を反応させて前記ポリアミック酸の塩の溶液を得ることと、
を含む、実施形態19に記載の方法。
[実施形態21]
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、
前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
を含む、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に添加することと、
前記懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を得ることと、
を含む、実施形態20に記載の方法。
[実施形態23]
前記混合が、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸塩の水溶液を得ることと、
を含む、実施形態20に記載の方法。
[実施形態24]
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムカチオンを含む、実施形態20~23のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態25]
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態20~24のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態26]
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が炭酸塩であり、前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であり、または
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が重炭酸塩であり、前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、
実施形態20~25のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態27]
前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、実施形態20~26のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態28]
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、実施形態20~27のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態29]
前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、実施形態20~28のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態30]
前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、実施形態20~29のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態31]
前記水溶液中の前記ポリアミック酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミック酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cm である、実施形態20~30のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態32]
前記オルガノゲルまたは中間体を乾燥させることが、
任意選択で前記オルガノゲルまたは中間体を洗浄または溶媒交換することと、
前記オルガノゲルもしくは中間体を高温条件にさらして前記オルガノゲルもしくは中間体を凍結乾燥し、または前記オルガノゲルもしくは中間体を超臨界流体二酸化炭素と接触させることと、
を含む、実施形態19~31のいずれかに記載の方法。
[実施形態33]
前記多孔質炭素マトリックスがエアロゲルまたはキセロゲルを含む、実施形態19~32のいずれかに記載の方法。
[実施形態34]
前記炭化が、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で行われる、実施形態19~33のいずれかに記載の方法。
[実施形態35]
前記カソード材料粒子が、少なくとも1種のリン酸金属リチウム(LMP)を含み、前記金属(M)が、鉄、マンガン、バナジウム、及び鉄とマンガンの組み合わせから選択される、実施形態19~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態36]
前記カソード材料粒子がLiFePO を含むか、または本質的にLiFePO からなる、実施形態19~35のいずれかに記載の方法。
[実施形態37]
前記カソード材料が、工程(b)の前または間に粉砕される、実施形態19~36のいずれかに記載の方法。
[実施形態38]
前記粉砕が、ローラーミル、遊星ボールミルまたはビーズ撹拌ミルを使用して、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼から選択される少なくとも1種の粉砕媒体を任意に使用して粉砕することを含む、実施形態37に記載の方法。
[実施形態39]
前記粉砕が、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から任意に選択される液相中に前記カソード材料を分散させることと、前記カソード材料を湿式粉砕することとを含む、実施形態37または38に記載の方法。
[実施形態40]
前記粉砕が、前記ポリアミック酸の塩の水溶液中に前記カソード材料を分散させることと、工程(b)の間に前記カソード材料を湿式粉砕してカソード材料粒子を得ることとを含む、実施形態38または実施形態39に記載の方法。
[実施形態41]
工程(b)が、前記カソード材料を前記水溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で混合することを含む、実施形態19~40のいずれかに記載の方法。
[実施形態42]
前記オルガノゲルがポリイミドを含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸を前記ポリイミドに変換することを含む、実施形態19~41のいずれかに記載の方法。
[実施形態43]
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、実施形態42に記載の方法。
[実施形態44]
工程(c1)における前記混合物のゲル化が、湿潤ゲルモノリスを形成するために型内で行われる、実施形態42または43のいずれかに記載の方法。
[実施形態45]
前記乾燥の前に、前記湿潤ゲルモノリスを複数の断片に砕くことを更に含む、実施形態44に記載の方法。
[実施形態46]
(e)工程(c1)の前記乾燥した材料を粉砕することを更に含む、実施形態50または51に記載の方法。
[実施形態47]
前記粉砕により、約50ミクロン未満の平均粒径D50を有する粒子が生成される、実施形態46に記載の方法。
[実施形態48]
工程(c1)が、前記ゲル化開始剤を添加した後、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、実施形態42に記載の方法。
[実施形態49]
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、実施形態48に記載の方法。
[実施形態50]
エマルジョンを形成するための混合が、約1~約30分間、または約4~約15分間行われる、実施形態48または49に記載の方法。
[実施形態51]
前記オルガノゲルがポリアミック酸を含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸の塩を前記ポリアミック酸オルガノゲルに変換することを含み、前記ゲル化開始剤が酸である、実施形態19~41のいずれかに記載の方法。
[実施形態52]
前記酸がカルボン酸である、実施形態51に記載の方法。
[実施形態53]
前記カルボン酸が酢酸である、実施形態52に記載の方法。
[実施形態54]
工程(b)と(c1)の間に、工程(b)の前記混合物を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、実施形態51~53のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態55]
前記混合が、最大約10分間、または約1~約3分間行われる、実施形態54に記載の方法。
[実施形態56]
前記混合がホモジナイザーを使用して行われる、実施形態48~50または54~55に記載の方法。
[実施形態57]
前記ホモジナイザーが、少なくとも1000rpm、例えば約1000~約9000rpmの速度で操作される、実施形態56に記載の方法。
[実施形態58]
前記非水混和性液体が、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、トルエン、他の炭化水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態48~50または54~57のいずれかに記載の方法。
[実施形態59]
前記非水混和性液体がミネラルスピリットである、実施形態58に記載の方法。
[実施形態60]
前記非水混和性液体がその中に溶解した界面活性剤を更に含む、実施形態48~50または54~59のいずれかに記載の方法。
[実施形態61]
前記界面活性剤が、前記非水混和性液体に対して約1~2重量%の濃度で存在する、実施形態60に記載の方法。
[実施形態62]
乾燥前に、工程(c1)で形成された前記オルガノゲルのビーズを分離することを更に含む、実施形態48~61のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態63]
前記ビーズが5~30ミクロンの平均サイズを有する、実施形態62に記載の方法。
[実施形態64]
分離が、前記非水混和性液体をデカントすることと、任意選択で前記非水混和性液体をリサイクルすることとを含む、実施形態62または63に記載の方法。
[実施形態65]
前記ゲルビーズを、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせで洗浄することを更に含む、実施形態62~64のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態66]
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する、実施形態19~65のいずれかに記載の方法。
[実施形態67]
前記乾燥工程(c2)が噴霧乾燥である、実施形態19~66のいずれかに記載の方法。
[実施形態68]
実施形態19~67のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または前記方法によって得ることができる、多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子。
[実施形態69]
カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、実施形態68に記載の集塊粒子。
[実施形態70]
実施形態1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含む電極。
[実施形態71]
実施形態1~18または68~69のいずれか一項に記載の集塊粒子を含むエネルギー蓄積装置。
[実施形態72]
前記エネルギー蓄積装置がLiイオン電池である、実施形態71に記載のエネルギー蓄積装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造有し、炭化オルガノゲルエアロゲルまたはキセロゲルを含むマトリックス粒子と、
前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子と、
を含む集塊粒子。
【請求項2】
前記複数のカソード材料粒子がリン酸金属リチウム(LMP)粒子を含む、請求項1に記載の集塊粒子。
【請求項3】
前記LMPの前記金属(M)が、Fe、Mn、V、及びFeとMnの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の集塊粒子。
【請求項4】
前記マトリックス粒子が、100nm~20ミクロン、または1~10ミクロンの粒径を有する、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項5】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満の平均粒径D50を有する、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項6】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、150nm未満の平均粒径D50を有する、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項7】
前記マトリックス粒子の、内部細孔に対応する内部比表面積が50m/グラム~150m/グラムである、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項8】
前記内部比表面積の少なくとも一部が、電解質がアクセスできるように構成されている、請求項7に記載の集塊粒子。
【請求項9】
前記キセロゲルのエアロゲルが、1つもしくは複数のビーズ、またはモノリスとして形成される、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項10】
前記フィブリル形態が、約2~約10nmの範囲の幅を有する炭化材料の支柱を含む、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項11】
前記マトリックス粒子が実質的に均一な細孔径分布を有する、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項12】
前記マトリックス粒子が、約1~約50nm、または約5~約25nmの平均細孔径を有する、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項13】
前記マトリックス粒子が細孔を含み、前記細孔の少なくとも一部が前記カソード材料粒子を収容するように構成されている、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項14】
前記カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、請求項に記載の集塊粒子。
【請求項15】
多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子を調製する方法であって、
前記多孔質炭素マトリックスがエアロゲルまたはキセロゲルを含み、
前記カソード材料粒子が少なくとも1種のリン酸金属リチウム(LMP)を含み、
前記金属(M)が、鉄、マンガン、バナジウム、及び鉄とマンガンの組み合わせから選択され、前記方法は、
(a)水溶性ジアミンと、水溶性炭酸塩または重炭酸塩と、テトラカルボン酸二無水物とを水中で混合することと、前記成分を反応させて前記ポリアミック酸の塩の溶液を得ることとを含む、ポリアミック酸の塩の水溶液を調製することと、
(b)カソード材料粒子を前記ポリアミック酸の塩の水溶液と混合することと、
(c1)工程(b)の前記混合物をゲル化して分散したカソード材料粒子を含むオルガノゲルを形成し、工程(c1)の前記オルガノゲルを乾燥させて乾燥した中間体を形成すること、または
(c2)工程(b)の前記混合物を乾燥させて乾燥した中間体を形成することと、
(d)前記乾燥した中間体を炭化して前記集塊粒子を形成することと、
を含む、前記方法。
【請求項16】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成することと、
前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成することと、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することと、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に添加することと、
前記懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を得ることと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記混合が、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加することと、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミック酸塩の水溶液を得ることと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムカチオンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が炭酸塩であり、前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であり、または
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が重炭酸塩であり、前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記水溶液中の前記ポリアミック酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミック酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記オルガノゲルまたは中間体を乾燥させることが、
任意選択で前記オルガノゲルまたは中間体を洗浄または溶媒交換することと、
前記オルガノゲルもしくは中間体を高温条件にさらして前記オルガノゲルもしくは中間体を凍結乾燥し、または前記オルガノゲルもしくは中間体を超臨界流体二酸化炭素と接触させることと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記炭化が、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記カソード材料粒子がLiFePOを含むか、または本質的にLiFePOからなる、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記カソード材料が、工程(b)の前または間に粉砕される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記粉砕が、ローラーミル、遊星ボールミルまたはビーズ撹拌ミルを使用して、アルミナ、ジルコニア、及びステンレス鋼から選択される少なくとも1種の粉砕媒体を任意に使用して粉砕することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記粉砕が、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、またはそれらの混合物から任意に選択される液相中に前記カソード材料を分散させることと、前記カソード材料を湿式粉砕することとを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記粉砕が、前記ポリアミック酸の塩の水溶液中に前記カソード材料を分散させることと、工程(b)の間に前記カソード材料を湿式粉砕してカソード材料粒子を得ることとを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
工程(b)が、前記カソード材料を前記水溶液中に分散させるのに十分な期間及び条件下で混合することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
前記オルガノゲルがポリイミドを含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸を前記ポリイミドに変換することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程(c1)における前記混合物のゲル化が、湿潤ゲルモノリスを形成するために型内で行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記乾燥の前に、前記湿潤ゲルモノリスを複数の断片に砕くことを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(e)工程(c1)の前記乾燥した材料を粉砕することを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記粉砕により、約50ミクロン未満の平均粒径D50を有する粒子が生成される、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
工程(c1)が、前記ゲル化開始剤を添加した後、前記ポリアミック酸の塩の水溶液を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
エマルジョンを形成するための混合が、約1~約30分間、または約4~約15分間行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記オルガノゲルがポリアミック酸を含み、工程(c1)におけるゲル化が、ゲル化開始剤を添加して前記ポリアミック酸の塩を前記ポリアミック酸オルガノゲルに変換することを含み、前記ゲル化開始剤が酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項45】
前記酸がカルボン酸である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記カルボン酸が酢酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
工程(b)と(c1)の間に、工程(b)の前記混合物を非水混和性液体と混合してエマルジョンを形成することを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記混合が、最大約10分間、または約1~約3分間行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記混合がホモジナイザーを使用して行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記ホモジナイザーが、少なくとも1000rpm、例えば約1000~約9000rpmの速度で操作される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記非水混和性液体が、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、灯油、オクタン、トルエン、他の炭化水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記非水混和性液体がミネラルスピリットである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記非水混和性液体がその中に溶解した界面活性剤を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
前記界面活性剤が、前記非水混和性液体に対して約1~2重量%の濃度で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
乾燥前に、工程(c1)で形成された前記オルガノゲルのビーズを分離することを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項56】
前記ビーズが5~30ミクロンの平均サイズを有する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
分離が、前記非水混和性液体をデカントすることと、任意選択で前記非水混和性液体をリサイクルすることとを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記ゲルビーズを、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせで洗浄することを更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記複数のカソード材料粒子の少なくとも一部が、250nm未満、または150nm未満の平均粒径D50を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項60】
前記乾燥工程(c2)が噴霧乾燥である、請求項15に記載の方法。
【請求項61】
請求項15に記載の方法によって得られるか、または前記方法によって得ることができる、多孔質炭素マトリックス粒子と、前記マトリックス粒子内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数のカソード材料粒子とを含む集塊粒子。
【請求項62】
カソード材料に対する前記マトリックス材料中の炭素の重量比が、30:70未満、10:90未満、または5:95未満である、請求項61に記載の集塊粒子。
【請求項63】
請求項に記載の集塊粒子を含む電極。
【請求項64】
請求項に記載の集塊粒子を含むエネルギー蓄積装置。
【請求項65】
前記エネルギー蓄積装置がLiイオン電池である、請求項64に記載のエネルギー蓄積装置。
【国際調査報告】