(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】溶接工程を実行するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/067 20060101AFI20240927BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20240927BHJP
B23K 10/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B23K9/067
B23K9/10 Z
B23K10/00 502C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520020
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2022078816
(87)【国際公開番号】W WO2023066857
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ゼリンガー・ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】イッツェンベルガー・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラットナー・ペーター
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA08
4E082EB05
4E082EC01
(57)【要約】
溶接工程の改良された制御を可能にするWIG溶接工程を実行するための溶接装置1を提供するため、測定巻線24が、点弧装置18に設けられていて、第2電圧測定装置25が、当該測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSを検出するために溶接装置1に設けられていること、及び/又は、測定巻線シミュレーション装置が、当該点弧装置18の仮想測定巻線24をシミュレートし、この仮想測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSを算出するために当該溶接装置1に設けられていること、及び、当該制御装置5は、当該電源電圧U_SQと当該第2電圧測定装置25によって検出された測定巻線電圧U_MESS又は当該測定巻線シミュレーション装置によって算出された測定巻線電圧U_MESSとを当該WIGアークLBでのWIGアーク電圧U_LB_WIGを算出するために使用し、当該算出されたWIGアーク電圧U_LB_WIGを、当該WIG溶接工程を制御するために使用するように構成されていることが提唱されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
WIG溶接工程をワーク(W)で実行するための溶接装置(1)であって、
1つの第1極(P1)と少なくとも1つの第2極(P2)とを有する溶接電源(2)が、溶接装置(1)内に設けられていて、
前記第1極(P1)は、非溶極式の電極(E1)を含むWIG溶接トーチ(6)に電気接続されていて、前記第2極(P2)は、前記ワーク(W)に電気接続可能であり、
前記溶接装置(1)には、WIGアーク(LB_WIG)を前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間に非接触式に点弧するための点弧装置(18)が設けられていて、この点弧装置(18)は、点弧電圧(U_Z)をWIG溶接ケーブル(7)に供給するための二次巻線(23)を有し、
前記溶接装置(1)には、第1電圧測定装置(17)が、前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間の電源電圧(U_SQ)を検出するために設けられていて、
前記溶接装置(1)には、前記WIG溶接工程を制御するために前記電源電圧(U_SQ)を使用するように構成されている制御装置(5)が設けられている当該溶接装置(1)において、
測定巻線(24)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、第2電圧測定装置(25)が、前記測定巻線(24)での測定巻線電圧(U_MESS)を検出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び/又は
測定巻線シミュレーション装置が、前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)をシミュレートし、測定巻線電圧(U_MESS)を前記仮想測定巻線(24)で算出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記電源電圧(U_SQ)と前記第2電圧測定装置(25)によって検出された測定巻線電圧(U_MESS)又は前記測定巻線シミュレーション装置によって算出された測定巻線電圧(U_MESS)とを前記WIGアーク(LB)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用するように構成されていることを特徴とする溶接装置(1)。
【請求項2】
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と一定の比例係数(φ)とから、前記点弧装置(18)の前記二次巻線(23)での電圧降下(U2)を算出し、前記アーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)との差から算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置(1)。
【請求項3】
コイルコア(21)を有するコイル装置(20)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、前記二次巻線(23)及び前記測定巻線(24)が、前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)とが異なることを特徴とする請求項2に記載の溶接装置(1)。
【請求項4】
前記測定巻線数(N_MESS)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、
前記二次巻線数(N2)は、好ましくは5~10、特に好ましくは7であり、及び/又は前記測定巻線数(N_MESS)は、好ましくは最大で2であり、特に1であることを特徴とする請求項3に記載の溶接装置(1)。
【請求項5】
一次巻線数(N1)を有する一次巻線(22)が、前記コイル装置(20)の前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記一次巻線数(N1)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、前記測定巻線数(N_MESS)以上であり、
前記一次巻線数(N1)は、好ましくは2~4、特に2であることを特徴とする請求項3又は4に記載の溶接装置(1)。
【請求項6】
前記制御装置(5)は、前記二次巻線数(N2)と前記測定巻線数(N_MESS)との変圧比(j)を比例係数(φ)として前記二次巻線(23)の電圧降下(U2)を算出するために使用するように構成されていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項7】
前記溶接装置(1)は、MSG溶接工程を実行するように構成されていて、
前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)が、溶極式の電極(E2)を含むMSG溶接トーチ(14)に接続されているか又は接続可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項8】
アナログ式又はデジタル式の測定回路が、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために前記制御装置(5)に設けられていて、
特にフィルタが、少なくとも1つの電圧信号をフィルタリングするために前記測定回路に設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項9】
前記制御装置(5)には、WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又はMSG溶接ケーブル(16)のモデル及び/又は接地ケーブル(M)のモデル及び/又はワーク(W)のモデルを含む溶接電流回路モデルが、前記制御装置(5)に格納されていること、及び
前記制御装置(5)は、前記溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)での電圧降下及び/又は前記接地ケーブルMでの電圧降下及び/又は前記ワークWでの電圧降下を算出し、当該算出された電圧降下を、前記WIGアーク(LB_WIG)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)及び/又は前記MSGアーク(LB_MSG)でのMSGアーク電圧(U_LB_MSG)の算出時に考慮するように構成されていて、
前記WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)のモデルは、好ましくは少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG,R_MSG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG,L_MSG)を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項10】
前記溶接装置(1)には、補助電圧(U_H)を生成するための追加の補助電源(27)が、実行されるWIG溶接工程、特にAC溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するために設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止するように構成されていて、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出されることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項11】
WIG溶接工程を非溶極式の電極(E1)によってワーク(W)で実行するための方法であって、
前記非溶極式の電極(E1)が、WIG溶接ケーブル(7)を介して溶接電源(2)の第1極(P1)に電気接続され、前記ワーク(W)が、前記溶接電源(2)の第2極(P2)に電気接続され、前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間のWIGアーク(LB_WIG)を非接触式に点弧するため、点弧装置(18)の二次巻線(23)によって、点弧電圧(U_Z)が、前記WIG溶接ケーブル(7)に供給され、
電源電圧(U_SQ)が、前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間で検出され、
当該検出された電源電圧(U_SQ)が、前記WIG溶接工程を制御するために制御装置(5)によって使用される当該方法において、
測定巻線電圧(U_MESS)が、前記点弧装置(18)に設けられている測定巻線(24)で検出されること、又は
前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)が、測定巻線シミュレーション装置によってシミュレートされ、測定巻線電圧(U_MESS)が、前記仮想測定巻線(24)で算出されること、及び
前記制御装置(5)は、WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記WIGアーク(LB_WIG)で算出するために前記電源電圧(U_SQ)及び当該検出又は算出された測定巻線電圧(U_MESS)を使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と比例係数(φ)とから、前記二次巻線(23)での電圧降下を算出し、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)とから算出することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置(5)は、前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)との変圧比を比例係数(φ)として前記電圧降下(U2)を算出するために使用し、
前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)は、前記制御装置(5)によって、好ましくはアナログ式又はデジタル式の回路によって算出されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御装置(5)に格納された溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は接地ケーブル(M)での電圧降下及び/又は前記ワーク(W)での電圧降下が算出されること、及び
前記制御装置(5)は、当該算出された電圧降下を前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)の算出時に考慮し、
前記溶接電流回路モデルは、好ましくは、少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG)を含むことを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
実行されるWIG溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するため、補助電圧(U_H)が、追加の補助電源(27)によって生成されること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止し、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出されることを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WIG溶接工程をワークで実行するための溶接装置に関する。この場合、1つの第1極と少なくとも1つの第2極とを有する溶接電源が、溶接装置内に設けられている。この場合、当該第1極は、非溶極式の電極を含むWIG溶接トーチに電気接続されていて、当該第2極は、当該ワークに電気接続可能である。この場合、当該溶接装置には、当該非溶極式の電極と当該ワークとの間のWIGアークを非接触式に点弧するための点弧装置が設けられていて、この点弧装置は、点弧電圧をWIG溶接ケーブルに供給するための二次巻線を有する。この場合、当該溶接装置には、第1電圧測定装置が、当該溶接電源の当該第1極と当該第2極との間の電源電圧を検出するために設けられている。この場合、当該溶接装置には、当該WIG溶接工程を制御するために当該電源電圧を使用するように構成されている制御装置が設けられている。さらに、本発明は、WIG溶接工程を非溶極式の電極によってワークで実行するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のWIG(タングステン不活性ガス)装置又は多重工程装置(金属シールドガス-SMG及びWIG)の場合、アーク電圧を測定するためには、電圧測定装置が必要とされた。一般に、この電圧測定装置は、溶接装置に設置されていて、WIG溶接トーチのためのコネクタ、場合によってはMSG溶接トーチのためのコネクタと接地ケーブルのためのコネクタとの間の電圧を測定する。当該測定された電圧は、近似的にアーク電圧として使用され得て、溶接工程を制御するために使用され得る。アークをWIG電極とワークとの間で非接触的に点弧するため、多くの場合に、いわゆるHF(高周波)点弧が使用される。この場合、一般にパルス化された(例えば2500V以下の)電圧を(高い)点弧電圧に変換するコイル装置を含むいわゆるHF点弧装置が、WIGケーブルに組み込まれている。当該点弧電圧は、電極とワークとの間のガス区間をイオン化する。その結果、アークが点弧される。この場合、当該点弧電圧は、電極間隔に応じて数kV~20kVの範囲内に達し得る。
【0003】
しかしながら、電圧が、これらのコネクタで測定されるので、(アーク電圧として使用される)測定された電圧は、HF点弧装置での電圧降下と、場合によっては溶接トーチまで敷設されている溶接ケーブルでの電圧降下をも含む。一般に、HF点弧装置のコイル装置は、非線形のインダクタンス-電流特性を有し、数アンペアの範囲内の小さい電流時に非常に高いインダクタンスを有する。電流の増大と共に、インダクタンスが飽和し始める。小さい電流の場合は、比較的高い電圧降下に起因して、この非線形の挙動は、電圧測定に不利に作用する。これは、測定結果を不正確にする。その結果、測定された電圧は、場合によっては実際のアーク電圧から大きく外れる。さらに、これは、溶接工程の制御に不利に作用し、場合によっては生成された溶接継目にも不利に作用する。したがって、WIG溶接時に正確なアーク電圧を検出できるようにするためには、HF点弧装置の直ぐ後方で溶接電圧を検出しなければならない。しかしながら、この場合、点弧電圧の電位が10kV以上に達し得て、したがって測定回路の実現が容易に可能でない点が問題である。
【0004】
欧州特許第1021269号明細書は、HF点弧装置とアーク電圧を検出するために電極にある独立した電圧測定装置とを有するWIG溶接装置を開示する。HF電圧を溶接ケーブルに供給するための二次巻線と、測定ケーブルに組み込まれた測定巻線とが、HF点弧装置に設けられている。この測定巻線は、HF電圧が溶接電源の電力部に印加することを回避するために使用される。この測定巻線は、二次巻線と一緒に巻き付けられる細くて良好な絶縁ケーブルから成る。この測定巻線及びこの二次巻線は、同じ巻線方向及び同じ巻線数を有する。同じ電圧が、この測定巻線とこの二次巻線とでそれぞれ誘導される。
【0005】
米国特許出願公開第2561995号明細書は、結合変圧器を含むアーク点弧及び安定化システムを開示する。電圧を溶接回路に供給するための二次巻線、比較的少ない巻線数を有する第1一次巻線及び比較的多い巻線数を有する第2一次巻線が、この結合変圧器に設けられている。アーク溶接回路に対する昇圧挙動(Ueberhoehungsverhaeltnis)及び降圧挙動(Unterhoehungsverhaeltnis)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1021269号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2561995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、溶接工程の改良された制御を可能にする、WIG溶接工程を実行するための溶接装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、測定巻線が当該点弧装置に設けられていて、第2電圧測定装置が当該測定巻線での測定巻線電圧を検出するために当該溶接装置に設けられていること、及び/又は測定巻線シミュレーション装置が当該点弧装置の仮想測定巻線をシミュレートし、測定巻線電圧を当該仮想測定巻線で算出するために当該溶接装置に設けられていること、及び当該制御装置が当該電源電圧と当該第2電圧測定装置によって検出された測定巻線電圧又は当該測定巻線シミュレーション装置によって算出された測定巻線電圧とを当該WIGアークでのWIGアーク電圧を算出するために使用し、当該算出されたWIGアーク電圧を、当該WIG溶接工程を制御するために使用するように構成されていることによって解決される。これにより、WIGアーク電圧のより正確な算出が、WIG溶接時に実行され得る。これにより、溶接工程の制御が改良され得て、したがって溶接品質が改良され得る。
【0009】
好ましくは、当該制御装置は、当該測定巻線電圧と一定の比例係数とから、当該点弧装置の当該二次巻線での電圧降下を算出し、当該アーク電圧を当該電源電圧と当該電圧降下との差から算出するように構成されている。これにより、測定巻線で検出された電圧が、対象となるWIGアーク電圧を簡単に算出するために使用され得る。
【0010】
好ましくは、コイルコアを有するコイル装置が、当該点弧装置に設けられていて、当該二次巻線及び当該測定巻線が、当該コイルコアに配置されている。この場合、当該二次巻線の二次巻線数と当該測定巻線の測定巻線数とが異なる。この場合、当該測定巻線数は、好ましくは当該二次巻線数よりも小さい。この場合、当該二次巻線数は、例えば5~10、特に好ましくは7であり、及び/又は当該測定巻線数は、好ましくは最大で2であり、特に1である。好ましくは、一次巻線数を有する一次巻線が、当該コイル装置の当該コイルコアに配置されている。この場合、当該一次巻線数は、当該二次巻線数よりも小さく、当該測定巻線数以上である、この場合、当該一次巻線数は、好ましくは2~4、特に2である。これにより、有益な比が巻線数同士間で固定されている点弧装置の構成が提供される。
【0011】
好ましくは、当該制御装置は、当該二次巻線数と当該測定巻線数との変圧比を比例係数として当該二次巻線の電圧降下を算出するために使用するように構成されている。これにより、WIGアーク電圧が、点弧装置の構成に依存して算出され得る。
【0012】
さらに、当該溶接装置がMSG溶接工程を実行するように構成されていることが有益であり得る。この場合、当該溶接電源の当該第1極が、好ましくは第3コネクタを介して溶極式の電極を含むMSG溶接トーチに接続されているか又は接続可能である。これにより、WIG溶接工程のほかに、MIG/MAG溶接工程も、溶接装置によって実行され得る。したがって、非常に柔軟に使用可能な溶接装置が提供される。
【0013】
アナログ式又はデジタル式の測定回路が、当該WIGアーク電圧を算出するために当該制御装置に設けられていてもよい。この場合、特にフィルタが、少なくとも1つの電圧信号をフィルタリングするために当該測定回路に設けられている。WIGアーク電圧を比較的小さい測定巻線電圧に基づいて本発明にしたがって算出することによって、測定回路は、より小さい電位向けに構成され得る。これにより、測定回路は、より簡単に構成され得て、測定範囲がより狭くて済むので、測定巻線電圧のより正確な算出、すなわちWIGアーク電圧のより正確な算出が実行され得る。
【0014】
さらに、当該制御装置には、WIG溶接ケーブルのモデル及び/又はMSG溶接ケーブルのモデル及び/又は接地ケーブルのモデル及び/又はワークのモデルを含む溶接電流回路モデルが当該制御装置に格納されていること、及び当該制御装置が当該溶接電流回路モデルによって、当該WIG溶接ケーブルでの電圧降下及び/又は当該MSG溶接ケーブルでの電圧降下及び/又は当該接地ケーブルMでの電圧降下及び/又は当該ワークWでの電圧降下を算出し、当該算出された電圧降下を、当該WIGアークでのWIGアーク電圧及び/又は当該MSGアークでのMSGアーク電圧の算出時に考慮するように構成されていることが有益であり得る。この場合、当該WIG溶接ケーブルのモデル及び/又は当該MSG溶接ケーブルのモデルは、好ましくは少なくとも1つのオーミック抵抗及び少なくとも1つのインダクタンスを含む。これにより、対象となるWIGアーク電圧が、さらにより正確に算出され得る。何故なら、発生し得る複数の電圧降下が考慮され得るからである。
【0015】
好ましくは、当該溶接装置には、補助電圧を生成するための追加の補助電源が、実行されるWIG溶接工程、特にAC溶接工程中にWIGアークを再点弧するために設けられていること、及び当該制御装置は、当該WIGアークの再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧に基づいて検出し、当該WIGアークの検出時に当該補助電源を停止するように構成されていることが有益であり得る。この場合、当該WIGアークの再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値に基づいて検出される。これにより、本発明にしたがって算出されたアーク電圧が、WIGアークを識別し、次いで当該補助電源を停止するための指標として有益に使用され得る。これにより、AC溶接工程中の極性反転工程時に、溶接電流の望まないオーバーシュートが回避され得る。これにより、不快な大きい騒音が回避され得る。
【0016】
さらに、この課題は、請求項11に記載の方法によって解決される。この方法の好適な実施の形態は、従属請求項12~15に記載されている。
【0017】
以下に、例示的に、概略的に且つ限定しないで本発明の好適な構成を示す
図1~8を引用して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】WIG溶接をワークに対して実行するための溶接装置を示す。
【
図3】点弧装置の二次巻線のL/I特性曲線を示す。
【
図4】
図1による溶接装置の溶接電流回路の電気等価回路図である。
【
図5】交流溶接工程の極性反転工程中の電気溶接パラメータの経時変化を示す。
【
図6】補助電源の電流-電圧の特性曲線を例示する。
【
図7】従来の技術による補助電源の使用の下での交流溶接工程中のWIGアークの再点弧中の電気溶接パラメータの経時変化を示す。
【
図8】本発明による補助電源の使用の下での交流溶接工程中のWIGアークの再点弧中の電気溶接パラメータの経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、溶接工程を実行するための本発明の溶接装置1の構成が例示されている。図示された溶接装置1は、非溶極式の電極による溶接工程、すなわち公知のWIG(WIG=タングステン不活性ガス)溶接を少なくとも実行するために構成されている。この場合、非溶極式の電極として、いわゆるタングステン電極E1又はWIG電極E1が使用される。しかし、オプションとして、
図1に破線で示されているように、装置1は、さらにMIG/MAG溶接工程又は溶接ワイヤとしての溶融式のMSG電極E2による一般的な金属シールドガス溶接(MSG)を実行するために構成されてもよい。したがって、MIG/MAG溶接工程又はWIG溶接工程が、溶接装置1によって実行され得る。この場合、これらの異なる両溶接工程は、通常は同時に実行されない。WIG電極E1は、WIG溶接トーチ6に配置されていて、オプションのMSG電極E2(溶接ワイヤ)は、MSG溶接トーチ14に配置されている。図示された溶接装置1は、手動の溶接工程を実行するために構成されている。この溶接工程の場合、WIG溶接トーチ6(又はMSG溶接トーチ14)が、手動で溶接工によって操作される。しかし、当然に、(図示されていない)溶接ロボットが設けられてもよい。WIG溶接トーチ6及び/又はMSG溶接トーチ14が、当該溶接ロボットによって予め設定されている移動シーケンスにしたがって自動的に移動され得る。溶接ロボットの使用は、公知であるので、これに関してはもはや詳しく説明しない。本発明の要部は、WIG溶接に関する。したがって、以下では、MSG溶接に関しては詳しく言及しない。
【0020】
知られているように、図示された溶接装置1は、例えば移動式又は固定式の溶接機3に設けられ得る溶接電源2を有する。必要な電力が、適切な電気端子4を介して電源Q、例えば三相交流電源から溶接電源2に供給され得る。知られているように、溶接電源2は、第1極P1及び第2極P2を有する。第1極P1は、第1コネクタAB1に電気接続されていて、第2極P2は、第2コネクタAB2に電気接続されている。WIG電極E1を含むWIG溶接トーチ6は、溶接ケーブル7によって第1コネクタAB1に接続され得る。第2コネクタAB2は、溶接工程が実行されなければならないワークWに接地ケーブルMを介して接続され得る。
【0021】
さらに、溶接工程1が、MSG溶接工程を実行するためにも構成されている場合、WIG溶接トーチ6のための第1コネクタAB1と同様に、第3コネクタAB3も、MSG溶接トーチ14を接続するために設けられている。
図1では、第3コネクタAB3は、例えば溶接機3に配置されている。本発明の範囲内では、これらのコネクタAB1,AB2,AB3は、取り外し可能な接続部と固定式の、すなわち取り外し可能でない接続部との双方を意味する。しかし、一般には、取り外し可能な、特に規格化されたコネクタが、コネクタAB1,AB2,AB3として使用される。
【0022】
図1に正の記号と負の記号とによって示されているように、一般に、溶接電源2の第1極P1は、正極として形成されていて、溶接電源2の第2極P2は、負極として形成されている。しかし、基本的には、反対の極又は極P1,P2を反転することも、溶接装置1の作動中に溶接電源2によって可能になる。知られているように、溶接工程に必要な溶接電流が、溶接電源2から溶接ケーブル7を介してWIG溶接トーチ6とこのWIG溶接トーチ6に設けられているWIG電極E1とに供給される。知られているように、溶接ケーブル7は、ホースパケット8に敷設され得る。このホースパケット8には、溶接ケーブル7の他に、溶接工程のために必要であるか又は有益であるさらに別のケーブル及び/又は配管及び/又はホースが設けられてもよい。
【0023】
WIG溶接工程を実行するため、第1電位が、アースケーブルMによってワークW(DC-WIG溶接の場合は、一般に負極)に印加され、第2電位が、溶接ケーブル7を介してWIG電極E1(DC-WIG溶接の場合は、一般に正極)に印加される。これに対して、AC-WIG溶接の場合は、極性が、溶接電流の周波数に応じてワークと電極E1とで交番する。当該極性の交番は、半導体技術によってインバータ29で実行される。極性反転工程(極性の交番)の場合、アークが、零の通過(溶接電流I=0)中に一時的に消弧する。AC-WIG溶接の場合にアークを再点弧することを可能にするため、追加の電圧が、補助電圧源27によってワークと電極E1との間に印加される。一般に、このような追加の補助電圧は、90V~500Vである。WIG電極E1の自由端部と溶接位置12との間のアークLB_WIGの点弧後に、溶接電流路が閉じられ、溶接電流Iが通電する。非溶極式の電極E1に起因して、WIG溶接工程を実行するためには、(溶融式の電極E2によるMIG/MAG溶接とは違って)独立した添加剤Zが、溶接位置12に供給されることがさらに必要であり得る。この添加剤は、手動でも供給され得て、送給装置13aによって機械式にも供給され得る。添加剤ZとワークWの一部とが、アークLB_WIGによって溶融される。これにより、溶接継目Nが形成される。
【0024】
溶融池を周囲に対してシールドし、これにより酸化を回避するため、多くの場合に、(活性又は不活性)シールドガスSGも、溶接工程を実行するために使用される。シールドガスSGは、例えば適切なシールドガス容器9から適切なシールドガス管10を介してWIG溶接トーチ6(及びオプションとしてMSG溶接トーチ14)に供給され得る。シールドガス管9は、例えば、WIG溶接トーチ6に向かうホースパケット8(又はMSG溶接トーチ14に向かうホースパケット16)にも敷設され得る。しかし、当然に、シールドガスSGの独立した供給も可能である。この場合、シールドガスSGの流量を制御するため、圧力制御器11が、例えばシールドガス容器に配置された圧力調整弁として設けられてもよい。さらに、場合によっては、冷却媒体が、WIG溶接トーチ6を冷却するためにホースパケット8を介して供給されてもよい(また、場合によっては、冷却媒体が、MSG溶接トーチ14を冷却するためにホースパケット16を介して供給されてもよい)。
【0025】
さらに、例えば適切なハードウェア及び/又はソフトウェアとして構成され得る制御装置5が、溶接装置1に設けられている。希望した溶接工程を実行するため、制御装置5は、溶接電源2に接続されていて、この溶接電源2を制御するように構成されている。所定の溶接パラメータ、例えば、溶接電圧U、溶接電流I、溶接電流Iの周波数f等のような電気的な溶接パラメータを調整するため、制御装置5は、溶接工程中に溶接電源2を制御する。さらに、電気的でない溶接パラメータを調整するため、制御装置5は、場合によっては溶接装置1にある他のユニットも制御できる。例えば、溶接位置12に供給されるシールドガス量を開ループ制御又は閉ループ制御するため、制御装置5は、シールドガス容器9の圧力制御器11を制御できる。
【0026】
添加剤Zの送給速度を開ループ制御又は閉ループ制御するため、制御装置5は、オプションの添加剤Zのための送給装置13aも制御できる。制御装置5は、MSG溶接トーチ14にあるオプションの送給装置13bも制御できる。知られているように、溶接ワイヤが、例えばワイヤ貯蔵部13cから送給装置13a/13bに供給され得る。
図1では、ワイヤ貯蔵部13cを含む送給装置13a/13bは、ここでは例えば独立したユニットとして示されているが、送給装置13a/13bは、当然に溶接機3の一部でもよい。一般に、実行すべき溶接工程に主に依存する調整すべき溶接パラメータは既知とみなせ得る。実行される溶接工程に応じて、当然に当該溶接パラメータは定性的に且つ定量的に変更できる。制御装置5は、例えば様々な溶接パラメータ(例えば、溶接電流I、溶接電圧U、溶接電流Iの周波数f等)の時間推移を予め設定されている溶接工程に応じて調整できる。このため、制御装置5は、1つ又は複数の溶接パラメータを予め設定されている目標値に制御するように、例えば1つ又は複数の適切な制御器を有し得る。
【0027】
溶接装置1、例えば溶接機3には、制御装置5と適切に通信するユーザインターフェース15が設けられ得る。ユーザが、このユーザインターフェース15を介して所定の調整を実行できる。例えば、所定の溶接工程が選択され得て、所定の溶接パラメータが選択及び/又は調整され得る。例えば、予め決定された所定の溶接パラメータを有する既定の溶接プログラムも、ユーザによってユーザインターフェース15を介して選択され得る制御装置5に記憶され得る。溶接ロボットが、溶接装置1に設けられている場合に、溶接工程とWIG溶接トーチ6(又はMSG溶接トーチ14)の移動とを同期するため、例えば、制御装置5が、ロボット制御装置と通信できる。当該通信は、例えば上位の(図示されていない)制御装置によって実行され得る。
【0028】
溶接装置1、ここでは溶接機3には、さらに第1電圧測定装置17が、溶接電源2の第1極P1と第2極P2との間の電流源電圧U_SQを検出するために設けられている。第1電圧測定装置17は、独立したユニットとして、
図1に示されているように、例えば電圧計として構成され得るが、制御装置5に適切に組み込まれてもよい。制御装置5は、溶接工程を開ループ制御又は閉ループ制御するために電流源電圧U_SQを使用するように構成されている。例えば、制御装置5は、得られた電流源電圧U_SQに依存して1つ又は複数の制御パラメータを計算でき、溶接電源2を当該1つ又は複数の制御パラメータによって制御できる。
【0029】
従来では、制御装置5は、電流源電圧U_SQを、例えば、アークLB_WIGでの対象となるアーク電圧U_LBに対する目安として近似的に使用し、例えば実際値としてアーク電圧U_LBを調整するために使用される。目標値として、例えば、希望した溶接工程に応じて予め設定されている溶接電圧U又は溶接電圧Uの時間推移が使用され得る。制御装置5の適切な制御器が、所定の調整規則にしたがって実際値と目標値とから調整変数を制御パラメータとして計算できる。このとき、例えば、溶接電圧U及び/又は溶接電流Iの目標値及び/又はこれらから導き出された変数を調整するため、制御装置5は、溶接電源2を当該算出された調整変数によって制御できる。
【0030】
さらに、溶接装置1には、点弧電圧U_Zを生成するための(高周波)点弧装置18が、アークLB_WIGを非溶極式の電極E1とワークWとの間に非溶極式に点弧させるために設けられている。この場合、当該点弧は、溶接工程中の再点弧を意味する。点弧装置18は、溶接電源2の第1極P1とWIG溶接トーチ6又はWIG電極E1との間のケーブルに配置されている。図示された例では、点弧装置18は、溶接電源2と第1コネクタAB1との間の溶接機3に配置されている。しかし、基本的には、点弧装置18は、第1コネクタAB1とWIG溶接トーチ6との間、すなわち溶接機3の外側に設けられてもよい。この場合、第1電圧測定装置17が、第1コネクタAB1と第2コネクタAB2との間の電流源電圧U_SQを直接に検出してもよい。
【0031】
図2には、点弧装置18が簡単に示されている。点弧装置18には、コイルコア21を有するコイル装置20が設けられている。一次巻線22、二次巻線23及び本発明の好適な実施の形態によれば追加の測定巻線24が、コイルコア21に配置されている。特に、一次巻線22は、独立した点弧電圧源19に接続されている。この点弧電圧源19は、例えば
図1に示された電源Qから必要な電力を供給され得る。さらに、本発明によれば、第2電圧測定装置25が、測定巻線電圧U_MESSを測定巻線24で検出するために設けられている。二次巻線23は、溶接電源2の第1極P1とWIG電極E1との間に配置されていて、
図1では、例えば第1極P1と第1コネクタAB1との間に配置されている。一次巻線22は、一定の一次巻線数N1を有し、二次巻線23は、一次巻線数N1以上である一定の二次巻線数N2を有する。以下でさらに詳しく説明する測定巻線24は、一次巻線数N1以下である一定の測定巻線数N_MESSを有する。
【0032】
したがって、コイル装置20は、変圧器の機能を有する。パルス電圧U_PULSが、点弧電圧源19から一次巻線22に印加されると、磁束が、共通のコイルコア21に生成される。経時変化する磁束が、二次巻線23の二次巻線数N2に比例する点弧電圧U_Zを二次巻線23に誘導する。したがって、例えば、点弧電圧U_Zとパルス電圧U_PULSとのの比が、二次巻線数N2と一次巻線数N1との比に一致する。すなわち、
【0033】
【数1】
である。同様に、測定巻線24では、二次巻線の二次巻線数N2に比例し、且つ一次巻線の一次巻線数N1に比例する測定巻線電圧U_MESSを誘導する。したがって、例えば、点弧電圧U_Zと測定巻線電圧U_MESSとの比が、二次巻線数N2と測定巻線数N_MESSとの比に一致する。すなわち、
【0034】
【0035】
点弧電圧U_Zは、溶接ケーブル7に入力される。これにより、ガスが、WIG電極E1とワークWとの間でイオン化され、アークLB_WIGが点弧される。当該ガス区間のイオン化のためには、WIG電極E1とワークWとの間の距離に応じて、知られているように、高電圧が、例えば5kV~15kVの範囲内で生成されなければならない。当該アークの点弧後に、さらに、点弧電圧U_Zは遮断され、溶接工程が開始又は継続される。点弧装置18の好適な構成によれば、二次巻線数N2は、例えば5~10、特に7であり、一次巻線数N1は、例えば2~4、特に2であり、測定巻線数N_MESSは、最大で2、特に1である。パルス電圧U_PULS=2600V、二次巻線数N2=7、一次巻線数N1=2及び測定巻線数N_MESS=1の場合、例えば点弧電圧U_Z=9100Vが生成され得て、測定巻線電圧U_MESSは、上記の関係にしたがってU_MESS=1300Vである。点弧装置18、特に二次巻線23は、減衰チョーク(Sperrdrossel)として溶接電源2の方向に作用する。その結果、高電圧U_Zが、壊れやすいパワーエレクトロニクス機器とセンサ(例えば、第1電圧測定装置17)を損傷させ得ない。
【0036】
上記の点弧装置18、特に二次巻線23での電圧降下に関する問題に起因して、電流源電圧U_SQが、溶接工程を制御するために使用されると、従来では不十分な結果を生じさせる。これは、点弧装置18、特に二次巻線23の非線形のインダクタンス特性が原因である。当該説明のため、
図3には、典型的な特性曲線が示されている。この場合、電流Iに対する二次巻線23の差動インダクタンスが描かれている。インダクタンスLが、例えば1~3アンペアの比較的小さい電流のときに200から500μHを超える範囲内の高い値を呈することが分かり、より高い電流のときのインダクタンスは飽和し始めることが分かる。その結果、WIG溶接ケーブル7中の小さい(溶接)電流Iの場合に、比較的高い電圧降下が、二次巻線23で発生する。その結果、第1電圧測定装置17によって検出された電流源電圧U_SQが、場合によってはアークLB_WIGでの実際のアーク電圧U_LBから大きく異なる。これは、溶接工程の制御に不利に働く。
【0037】
図4には、
図1による溶接装置1の溶接電流回路の等価回路図が示されている。この場合、溶接電源2が、補助電源27及びインバータ29を含み得る(図示せず)。点弧装置18の一次巻線22は、ここではインダクタンL1として示されていて、二次巻線23は、インダクタンスL2として示されていて、測定巻線24は、インダクタンスL_MESSとして示されている。WIG溶接ケーブル7は、オーミック抵抗R_WIGとインダクタンスL_WIGとによってモデル化されている。同様に、WIGアークLB_WIGは、オーミック抵抗R_LB_WIGによってモデル化されている。オプションのMSG溶接ケーブル16は、オーミック抵抗R_MSGとインダクタンスL_MSGとによってモデル化されていて、同様に、MSGアークLB_MSGは、オーミック抵抗R_LB_MSGによってモデル化されている。
【0038】
図4の電圧測定装置17の位置に基づいて、検出された電流源電圧U_SQは、WIG溶接ケーブル7の電圧降下だけを含むのではなくて、特に点弧装置18の二次巻線23、ここではインダクタンスL2の電圧降下も含むことを認識することができる。しかしながら、溶接工程を可能な限り正確に制御するためには、アークLBでのアーク電圧U_LB_WIGが有益である。したがって、溶接工程を制御するために電源電圧U_SQを使用することは場合によっては不十分な結果を招くことが分かる。
【0039】
当該不十分な結果を回避するためには、
図4に破線の電圧測定装置26に基づいて示されているように、確かに、基本的にはアーク電圧U_LB_WIGが、WIGアークLB_WIGのより近くで、例えば点弧装置18の直ぐ後ろで測定され得る。しかしながら、アーク電圧U_LB_WIGを直接に測定することは、容易に可能ではない。何故なら、従来の測定回路は、点弧電圧U_Zの範囲内の高電圧用に設計されていないからである。一方では、このように高い電圧は、当該測定回路の損傷を引き起こし得る。他方では、溶接工程中(すなわち、点弧が既に実行された後)の、数百ボルトの範囲内にあり得るアーク電圧U_LB_WIGの可能な限り正確な測定は不可能である。何故なら、点弧電圧U_Zのための測定範囲は、上記のように数kVの範囲内にある点弧電圧U_Zに対して設計されなければならないからである。
【0040】
それ故に、本発明の好適な実施の形態によれば、測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSが、第2電圧測定装置25によって算出されること、及び、制御装置5が、アークLB_WIGのアーク電圧U_LB_WIGを算出するために電源電圧U_SQ及び測定巻線電圧U_MESSを使用することが提唱されている。したがって、電源電圧U_SQの代わりに、当該算出されたアーク電圧U_LB_WIGが、溶接工程を制御する制御するために使用され得る。
【0041】
本発明の別の実施の形態によれば、点弧装置18に配置された測定巻線24の代わりに、(図示されていない)測定巻線シミュレーション装置が、溶接装置1の仮想測定巻線24をシミュレーションするために設けられている。この場合、第2電圧測定装置25が省略され得て、仮想測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSが、測定巻線シミュレーション装置によって算出され得る。このとき、制御装置5は、アークLB_WIGのアーク電圧U_LB_WIGを算出するために
電源電圧U_SQ及びシミュレートされた測定巻線電圧U_MESSを使用できる。
【0042】
測定巻線シミュレーション装置は、物理的に存在しない「リアルな」測定巻線24を仮想測定巻線24によってシミュレートし、当該シミュレーションから、仮想測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSを算出するように構成されている。この場合、当該シミュレーションは、特に二次巻線23に通電する電流に基づいて実行される。簡単な構成では、この測定巻線シミュレーション装置は、例えば測定巻線電圧U_MESSが二次巻線23での電流に依存して描かれている特性曲線を含み得る。しかし、この測定巻線シミュレーション装置は、測定巻線電圧U_MESSが二次巻線23での電流と別の入力変数とに依存して描かれている特性曲線をも含み得る。当該特性曲線又は特性要因図は、例えばルックアップテーブルとして制御装置5に実装され得る。当該特性曲線又は特性要因図は、「実際の」測定巻線24を含む実際の点弧装置18で事前に実行された測定から算出され得る。しかし、測定巻線電圧U_MESSを物理的な関係に基づいて分析するため、この測定巻線シミュレーション装置は、「実際の」測定巻線24の物理モデルを含んでもよい。
【0043】
しかし、当然に、測定巻線シミュレーション装置は、「実際の」測定巻線24及び第2電圧測定装置25と併せて設けられてもよい。これにより、例えば、第2電圧測定装置25によって算出された測定巻線電圧U_MESSの妥当性がチェックされ得るか、又は、測定巻線電圧U_MESSが冗長に算出され得る。測定巻線シミュレーション装置は、例えば独立したハードウェア及び/又はソフトウェアとして溶接装置1に組み込まれ得て、制御装置5と適切に通信できる。しかし、特に、測定巻線シミュレーション装置は、制御装置5に組み込まれている。
【0044】
この場合、特に、点弧装置18の電圧降下、特に二次巻線23での電圧降下U2が、第2電圧測定装置25によって検出された測定巻線電圧U_MESS又は測定巻線シミュレーション装置によってシミュレートされた測定巻線電圧U_MESSと、一定の比例係数φとから制御装置5によって算出され、WIGアークLB_WIGでのアーク電圧U_LB_WIGが、
【0045】
【数3】
にしたがって、電源電圧U_SQと電圧降下U2との差から算出される。
【0046】
既に説明したように、一次巻線22の一次巻線数N1と二次巻線23の二次巻線数N2と測定巻線24の測定巻線数N_MESSとは互いに異なる。この場合、測定巻線数N_MESSは、特に一次巻線数N1よりも小さく、一次巻線数N1は、二次巻線数N2よりも小さい。好適な実施の形態では、測定巻線数N_MESS=1、一次巻線数N1=2及び二次巻線数N2=7である。好ましくは、制御装置5は、
【0047】
【数4】
にしたがって、二次巻線23の二次巻線数N2と測定巻線24の測定巻線数N_MESSとの変圧比を比例係数φとして点弧装置18又は二次巻線23の電圧降下U2を算出するために使用する。
【0048】
しかしながら、本発明にしたがって算出されたWIGアーク電圧U_LB_WIGは、さらにWIG溶接ケーブル7の電圧降下を含み、それ故に
図4に破線で示された電圧測定装置26によって検出される電圧に相当する。したがって、WIG溶接ケーブル7の電圧降下を少なくとも算出し、WIGアーク電圧U_LB_WIGの算出時に考慮するため、溶接電流回路の溶接電流回路モデルが、制御装置5に格納されていることが有益であり得る。この場合、特に、溶接電流回路モデルは、WIG溶接ケーブルのモデルを少なくとも含み、場合によってはMSG溶接ケーブルのモデルを少なくとも含む。特に、これらのモデルは、それぞれ少なくとも1つのオーミック抵抗R、ここではR_WIG、R_MSGと、少なくとも1つのインダクタンスL、ここではL_WIG、L_MSGとを含む。これにより、制御装置5は、これらの電圧降下を計算でき、WIGアーク電圧U_LB_WIG又は場合によってはMSGアーク電圧U_LB_MSGの算出時に考慮できる。
【0049】
さらに、接地ケーブルM及び/又はワークWの電圧降下を算出するため、溶接電流回路モデルは、接地ケーブルMのモデル及び/又はワークWのモデルを含んでもよく、アーク電圧U_LB_WIG又は場合によってはMSGアーク電圧U_LB_MSGの算出時に考慮できる。当然に、
図4の溶接電流回路のモデル化は、例示にすぎず簡略化して示されている。溶接装置1の実際の構成を可能な限り正確に図示するため、当然に、溶接電流回路はより複雑に構成され得る。例えば、溶接電流回路モデルのモデルパラメータが、変更可能でもよく、例えばユーザによって、例えばユーザインターフェース15を介して調整され得る。
【0050】
WIGアーク電圧U_LB_WIGの本発明による算出の利点は、測定回路が測定巻線での電位のために設計されるだけで済み、上記のように数kVの範囲内にあり、例えば10kVに達し得る二次巻線23の電位に適合される必要がないことである。点弧装置18を適切に設計した場合(例えば、N2=7、N_MESS=1)、WIGアークLB_WIGの点弧及び点弧電圧U_Z=9100Vのときの最大測定巻線電圧U_MESSは、例えば1300Vに制限され得る。(点弧後又は再点弧同士間の)溶接工程中の通常動作では、WIG溶接ケーブルにおける溶接電圧Uは、例えば437.5Vに達し得る。したがって、測定巻線電圧U_MESSは、j=7の変圧比にしたがって62.5Vに達し得て、一次巻線数N1=2の場合の一次巻線22での電圧は、例えば125Vに達し得る。
【0051】
WIGアークLB_WIGの点弧中に二次巻線23での点弧電圧U_Zよりも遥かに小さい測定巻線24での、例えば1300」Vの電位に起因して、例えば制御装置5では、より狭い測定範囲を有する比較的簡単に構成された回路が、WIGアーク電圧U_LB_WIGを算出するために設けられ得る。この場合、当該測定回路は、例えばデジタル式又はアナログ式の測定回路として構成され得る。デジタル式の測定回路の場合、電源電圧U_SQの信号及び測定巻線電圧U_MESSの信号が、アナログ/デジタル(A/D)変換器によってデジタル化され、引き続き例えば適切な減算器によってデジタル式に減算される。この場合、測定巻線電圧U_MESSから電圧降下U2を計算することは、当該デジタル化の前又は後に実行できる。
【0052】
しかし、好ましくは、WIGアーク電圧U_LB_WIGの算出は、例えば複数の演算増幅器(OPV)、減算器及びフィルタを含み得るアナログ式の測定回路によっても実行できる。知られているように、OPVは、メーカによって予め設定されている最大の入力電流及び/又は入力電圧を有する。これらの予め設定されている入力電流及び/又は入力電圧を超えないようにするため、知られているように、1つ又は複数のオーミック抵抗、いわゆる補償抵抗が、1つのOPVのそれぞれの入力部に直列接続され得る。測定巻線24での測定電圧U_MESSの本発明による検出に起因して、測定巻線24でのより小さい電位に起因して、より小さい補償抵抗で済み、これにより、アナログ式の測定回路がより簡単に構成され得るという利点が奏される。このような測定回路の構成及び機能は、基本的に公知であるので、ここではさらなる詳細を省略する。
【0053】
図5には、交流(AC)溶接工程の極性反転工程中の溶接パラメータである溶接電圧U及び溶接電流Iの経時変化が示されている。本発明の利点を当該経時変化に基づいて再度説明する。知られているように、交流溶接の場合、丸印を有する実線に基づいて示されているように、溶接電流Iの極性が、溶接工程中に正と負との間で交番する。第1電圧測定装置17によって検出された電源電圧U_SQが、印なしの実線によって示されている。点弧装置18の二次巻線23によって(電圧測定装置25から検出された)測定巻線電圧U_MESSに基づいて算出された電圧降下U2が、三角印を有する実線によって示されている。測定装置26(
図4参照)によって検出されたWIGアーク電圧U_LB_WIG′が、×印を有する実線によって示されていて、本発明にしたがって算出されたWIGアーク電圧U_LB_WIGが、破線によって示されている。この場合、測定されるWIGアーク電圧U_LB_WIG′は、専ら比較する目的で示されていて、既に詳しく説明した欠点のために実際には測定されない。時間範囲T_Z内では、測定されるWIGアーク電圧U_LB_WIG′の急峻な低下によって明らかであるように、アークLBが再点弧する。
【0054】
極性反転工程中に、零通過領域内の(例えば、1-5Aの)小さい溶接電流Iに起因して、電源電圧U_SQが、測定されるWIGアーク電圧U_LB_WIG′と大きく異なることが、
図5の経時変化に基づいて良好に認識可能である。これは、
図3の特性曲線に基づいて既に説明したように、二次巻線23のインダクタンスI2と溶接電流Iとこれから発生する電圧降下U1との間の非線形の関係に起因する。これに対して、例えば10Aよりも大きい、値的により大きい電流Iの場合は、二次巻線23の非線形の特性曲線は遥かにより小さい。何故なら、インダクタンスI2、すなわち電圧降下U2は、飽和に起因して遥かにより小さいからである。
図5に示されているように、測定される電源電圧U_SQと測定されるWIGアーク電圧U_LB_WIG′との間の偏差Δ_MESSが、二次巻線23での電圧降下U2と非常に良好に相関することが、測定中に確認された。
【0055】
それ故に、破線に基づいて認識可能であるように、測定される電源電圧U_SQと算出された電圧降下U2との間の差は、測定されるWIGアーク電圧U_LB_WIG′と非常に良好に相関する。したがって、こうして算出されたアーク電圧U_LB_WIGは、重要なWIGアーク電圧U_LB_WIGとして溶接工程を制御するために使用され得る。この場合、上記のように、WIGアーク電圧U_LB_WIGは、第2電圧測定装置25によって検出された測定巻線24での測定巻線電圧U_MESSと比例係数φとに基づいて算出される。この場合、比例係数φは、特に変圧比iに一致する。
【0056】
別の好適な実施の形態によれば、追加の補助電源27が、補助電圧U_Hを生成するために溶接装置1に設けられている。この場合、補助電源27は、(理想的な)電圧源又は(理想的な)電流源として構成され得る。この場合、補助電圧U_Hが、実行されるWIG溶接工程中にWIGアークLB_WIGを再点弧するために使用される。一般に、このような補助電源27は、極性反転工程中に溶接電流Iの零通過時の短期間に90V-500Vの範囲内の比較的高い溶接電圧を溶接電流回路で生成するためにAC溶接工程時に使用される。これにより、WIGアークLB_WIGの再点弧が可能になるか又は支援される。WIGアークLB_WIGの再点弧後に、補助電圧は、可能な限り迅速に再び停止される。
【0057】
知られているように、(図示されていない)溶接変圧器が、溶接工程のために必要な溶接電圧を生成するために、本明細書の範囲内では、例えば第1極P1と第2極P2との間の電源電圧U_SQを生成するために溶接電源2に設けられ得る。この場合、補助電源27は、例えば溶接変圧器の別の変圧比を有する追加の巻線として構成され得る。溶接電圧U又は電源電圧U_SQよりも比較的高い補助電圧U_Hが、当該変圧比によって生成され得る。整流部と例えばスイッチング可能なIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)又はMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)との後方で、補助電圧U_Hが、例えば溶接装置1のコネクタAB1,AB2に供給され得る。補助電源27の電流-電圧の特性曲線が、
図6に例示されている。当該特性曲線では、ほぼ線形の関係が、補助電圧U_Hと補助電流I_Hとの間で得られる。I_H=0の補助電流のときの最大補助電圧U_Hmaxは、例えば270Vの範囲内に達し得て、補助電圧U_H=0のときの最大補助電流I_Hmaxは、例えば300A以上の範囲内に達し得る。このような補助電源27の構成及び機能は、従来の技術において基本的に公知であるので、これに関する詳しい説明は省略する。
図1には、補助電源27が、溶接電源2の一部として専ら概略的に示されている。
【0058】
図7には、補助電源27の使用の下での溶接電流I_WIG、WIGアークでのアーク電圧U_LB_WIG及びAC溶接工程の極性反転工程中の補助電圧U_Hの経時変化によるグラフが示されている。図示されたこの経時変化は、従来の技術に相当する。印なしの実線は、WIGアークLB_WIGでのアーク電圧U_LB_WIGを示し、×印を有する実線は、補助電源27の補助電流I_Hを示し、丸印を有する実線は、溶接電流I_WIGを示す。図示された補助エネルギー時間範囲T_H内では、補助電源27が稼働している。この場合、依然として、アークが点弧されていない。すなわち、非常に大きいオーミック抵抗が、溶接電流回路に存在する。補助エネルギー時間範囲T_Hは、例えば250μsの範囲内に達し得る。したがって、アーク電圧U_LB_WIGは、補助エネルギー時間範囲T_H内では、例えば270Vの範囲内の、補助電源27の最大補助電圧U_Hmaxにほぼ一致する。
【0059】
補助エネルギー時間範囲T_Hの終わりには、ここでは図示された(再)点弧時間範囲T_WZ内では、アークLB_WIGが点弧される。これは、アーク電圧U_LB_WIGの非常に急峻な、例えば30V未満の低下によって認識可能である。同時に、溶接電流I_WIG及び補助電流I_Hが急峻に上昇する。課題は、アークLB_WIGの点弧後に、補助電源27が停止されることによって、補助電圧U_Hが、可能な限り迅速に遮断されることである。従来では、アークLB_WIGを検出するため、一定の(再)点弧電流レベルI_WZが使用され、補助電源27が、点弧電流レベルI_WZの到達時に停止された。
図7には、例えば35Aに達し得る点弧電流レベルI_WZが例示されている。溶接電流I_WIGが、例えば
図1及び
図4に示された電流測定装置28によって検出され得て、制御装置5が、検出された溶接電流I_WIGと予め設定されている点弧電流レベルI_WZとに依存して当該補助電源を停止できる。
【0060】
図7では、I_Z=35A~例えば42Aの選択された遮断基準にもかかわらず、溶接電流I_WIGが、非常に高い電流上昇速度によってオーバーシュートすることが認識可能である。この急峻な電流上昇は、溶接工によって一般に不快と感じる音響的に非常に大きい極性反転工程を引き起こす。この関係は、補助電源27のU/I特性曲線(
図6)から導き出され得る。
図6では、例えば20Vの低い補助電圧U_Hの場合に、アークLB_WIGの点弧後に溶接電流I_WIGの急峻な電流上昇を引き起こす、例えば285Aの非常に高い補助電流I_Hが発生することが認識可能である。したがって、補助電源27を可能な限り迅速に停止できるようにするためには、アークLB_WIGの点弧を可能な限り早く検出することが有益であることは明らかである。しかし、点弧電流レベルI_WZをさらにより小さい値に低下させることは得策ではない。何故なら、これにより、場合によっては、安定なアークLB_WIGの(再)点弧が保証され得ないからである。
【0061】
それ故に、本発明の好適な実施の形態によれば、もはや、溶接電流I_WIGが、アークLB_WIGを検出するために使用されるのではなくて、
図8に基づいて説明されるように、本発明にしたがって算出されたアーク電圧U_LB_WIGが使用される。
図8には、
図7と同様に、AC溶接工程の極性反転工程(×印を有する実線)中の溶接電流I_WIG(丸印を有する実線)、WIGアークでのアーク電圧U_LB_WIG(印なしの実線)及び補助電源27の補助電流I_Hの経時変化によるグラフが示されている。同様に、アークLB_WIGが、(再)点弧時間範囲T_WZ内に(再)点弧される。これは、アーク電圧U_LB_WIGの急峻な低下によって認識可能である。
【0062】
この場合、
図7による従来の技術とは違って、アーク電圧LB_WIGの(再)点弧は、(測定される測定巻線電圧U_MESSに基づいて)算出されたアークLB_WIGのアーク電圧U_LB_WIGに基づいて検出され、もはや溶接電流I_WIGに基づいて検出されない。アーク電圧U_LB_WIGは、より正確な指標としてWIG電極E1とワークWとの間のガス区間をイオン化するために使用され得る。制御装置5は、例えば予め設定されている、例えば10V~113Vの範囲内にあり得る(再)点弧電圧レベルU_WZに基づいてWIGアークLB_WIGの(再)点弧を検出できる。
図8では、点弧電圧レベルU_WZ=45Vが、一点鎖線の水平線として例示されている。この場合、補助電源27が、既に遥かにより早く、すなわち例えば3.5Aの明らかにより小さい溶接電流I_WIGのときに検出されることが明らかである。これにより、
図7のような溶接電流I_WIGの大きいオーバーシュートが発生しない。これにより、極性反転工程が、溶接工によってもはや不快と感じられない。WIGアークLB_WIGの再点弧を予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに基づいて検出する代わりに、例えば予め設定されている時間勾配dU_LB_WIG/dtが、WIGアークLB_WIGの再点弧を検出するための要件として使用されてもよい。
【0063】
しかし、場合によっては、例えば望まない態様で、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに到達するか又は予め設定されている点弧電圧レベルを超えるおそれがある。その結果、点弧電圧レベルU_WZは、WIGアークLB_WIGの再点弧のための単独の指標としては場合によっては不十分である。この状況は、例えば、自己誘導電圧が溶接電流回路で誘導されるときに発生し得る。これは、例えば、WIG溶接ケーブル7及び/又は接地ケーブルMが、別の溶接装置の溶接ケーブル(又は別の通電ケーブル)と交差されているか、又は例えば部分的に平行に当該ケーブルに対して空間的に近くに配置されている状況であり得る。この場合、当該別の溶接ケーブル(又は別の通電ケーブル)中の経時変化する電流によって、電圧、いわゆる自己誘導電圧が、対象となる溶接装置1のWIG溶接ケーブル7及び/又は接地ケーブルMで誘導され得る。この自己誘導電圧が、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに到達するか又は当該点弧電圧レベルを超えると、WIGアークLB_WIGの再点弧が実際には全く起きていないのに、当該WIGアークLB_WIGの再点弧が間違って検出され得る。これは、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに加えて、(
図7に基づいて説明したような)補助電源27の予め設定されている(再)点弧電流レベルI_WZが使用されれば、有益に回避され得る。これにより、点弧電流レベルI_WZは、WIGアークLB_WIGの再点弧を検証するために使用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
WIG溶接工程をワーク(W)で実行するための溶接装置(1)であって、
1つの第1極(P1)と少なくとも1つの第2極(P2)とを有する溶接電源(2)が、溶接装置(1)内に設けられていて、
前記第1極(P1)は、非溶極式の電極(E1)を含むWIG溶接トーチ(6)に電気接続されていて、前記第2極(P2)は、前記ワーク(W)に電気接続可能であり、
前記溶接装置(1)には、WIGアーク(LB_WIG)を前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間に非接触式に点弧するための点弧装置(18)が設けられていて、この点弧装置(18)は、点弧電圧(U_Z)をWIG溶接ケーブル(7)に供給するための二次巻線(23)を有し、
前記溶接装置(1)には、第1電圧測定装置(17)が、前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間の電源電圧(U_SQ)を検出するために設けられていて、
前記溶接装置(1)には、前記WIG溶接工程を制御するために前記電源電圧(U_SQ)を使用するように構成されている制御装置(5)が設けられている当該溶接装置(1)において、
測定巻線(24)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、第2電圧測定装置(25)が、前記測定巻線(24)での測定巻線電圧(U_MESS)を検出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び/又は
測定巻線シミュレーション装置が、前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)をシミュレートし、測定巻線電圧(U_MESS)を前記仮想測定巻線(24)で算出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記電源電圧(U_SQ)と前記第2電圧測定装置(25)によって検出された測定巻線電圧(U_MESS)又は前記測定巻線シミュレーション装置によって算出された測定巻線電圧(U_MESS)とを前記WIGアーク(LB)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用するように構成されていることを特徴とする溶接装置(1)。
【請求項2】
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と一定の比例係数(φ)とから、前記点弧装置(18)の前記二次巻線(23)での電圧降下(U2)を算出し、前記アーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)との差から算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置(1)。
【請求項3】
コイルコア(21)を有するコイル装置(20)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、前記二次巻線(23)及び前記測定巻線(24)が、前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)とが異なることを特徴とする請求項2に記載の溶接装置(1)。
【請求項4】
前記測定巻線数(N_MESS)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、
前記二次巻線数(N2)は、好ましくは5~10、特に好ましくは7であり、及び/又は前記測定巻線数(N_MESS)は、好ましくは最大で2であり、特に1であることを特徴とする請求項3に記載の溶接装置(1)。
【請求項5】
一次巻線数(N1)を有する一次巻線(22)が、前記コイル装置(20)の前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記一次巻線数(N1)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、前記測定巻線数(N_MESS)以上であり、
前記一次巻線数(N1)は、好ましくは2~4、特に2であることを特徴とする請求項3又は4に記載の溶接装置(1)。
【請求項6】
前記制御装置(5)は、前記二次巻線数(N2)と前記測定巻線数(N_MESS)との変圧比(j)を比例係数(φ)として前記二次巻線(23)の電圧降下(U2)を算出するために使用するように構成されていることを特徴とする請求項
3又は4に記載の溶接装置(1)。
【請求項7】
前記溶接装置(1)は、MSG溶接工程を実行するように構成されていて、
前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)が、溶極式の電極(E2)を含むMSG溶接トーチ(14)に接続されているか又は接続可能であることを特徴とする請求項
1に記載の溶接装置(1)。
【請求項8】
アナログ式又はデジタル式の測定回路が、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために前記制御装置(5)に設けられていて、
特にフィルタが、少なくとも1つの電圧信号をフィルタリングするために前記測定回路に設けられていることを特徴とする請求項
1又は7に記載の溶接装置(1)。
【請求項9】
前記制御装置(5)には、WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又はMSG溶接ケーブル(16)のモデル及び/又は接地ケーブル(M)のモデル及び/又はワーク(W)のモデルを含む溶接電流回路モデルが、前記制御装置(5)に格納されていること、及び
前記制御装置(5)は、前記溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)での電圧降下及び/又は前記接地ケーブルMでの電圧降下及び/又は前記ワークWでの電圧降下を算出し、当該算出された電圧降下を、前記WIGアーク(LB_WIG)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)及び/又は前記MSGアーク(LB_MSG)でのMSGアーク電圧(U_LB_MSG)の算出時に考慮するように構成されていて、
前記WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)のモデルは、好ましくは少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG,R_MSG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG,L_MSG)を含むことを特徴とする請求項
1又は7に記載の溶接装置(1)。
【請求項10】
前記溶接装置(1)には、補助電圧(U_H)を生成するための追加の補助電源(27)が、実行されるWIG溶接工程、特にAC溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するために設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止するように構成されていて、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出されることを特徴とする請求項
1に記載の溶接装置(1)。
【請求項11】
WIG溶接工程を非溶極式の電極(E1)によってワーク(W)で実行するための方法であって、
前記非溶極式の電極(E1)が、WIG溶接ケーブル(7)を介して溶接電源(2)の第1極(P1)に電気接続され、前記ワーク(W)が、前記溶接電源(2)の第2極(P2)に電気接続され、WIGアーク(LB_WIG)を前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間に非接触式に点弧するため、点弧装置(18)の二次巻線(23)によって、点弧電圧(U_Z)が、前記WIG溶接ケーブル(7)に供給され、
電源電圧(U_SQ)が、前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間で検出され、
当該検出された電源電圧(U_SQ)が、前記WIG溶接工程を制御するために制御装置(5)によって使用される当該方法において、
測定巻線電圧(U_MESS)が、前記点弧装置(18)に設けられている測定巻線(24)で検出されること、又は
前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)が、測定巻線シミュレーション装置によってシミュレートされ、測定巻線電圧(U_MESS)が、前記仮想測定巻線(24)で算出されること、及び
前記制御装置(5)は、WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記WIGアーク(LB_WIG)で算出するために前記電源電圧(U_SQ)及び当該検出又は算出された測定巻線電圧(U_MESS)を使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と比例係数(φ)とから、前記二次巻線(23)での電圧降下を算出し、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)とから算出することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置(5)は、前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)との変圧比を比例係数(φ)として前記電圧降下(U2)を算出するために使用し、
前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)は、前記制御装置(5)によって、好ましくはアナログ式又はデジタル式の回路によって算出されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御装置(5)に格納された溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は接地ケーブル(M)での電圧降下及び/又は前記ワーク(W)での電圧降下が算出されること、及び
前記制御装置(5)は、当該算出された電圧降下を前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)の算出時に考慮し、
前記溶接電流回路モデルは、好ましくは、少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG)を含むことを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
実行されるWIG溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するため、補助電圧(U_H)が、追加の補助電源(27)によって生成されること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止し、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出されることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
しかし、場合によっては、例えば望まない態様で、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに到達するか又は予め設定されている点弧電圧レベルを超えるおそれがある。その結果、点弧電圧レベルU_WZは、WIGアークLB_WIGの再点弧のための単独の指標としては場合によっては不十分である。この状況は、例えば、自己誘導電圧が溶接電流回路で誘導されるときに発生し得る。これは、例えば、WIG溶接ケーブル7及び/又は接地ケーブルMが、別の溶接装置の溶接ケーブル(又は別の通電ケーブル)と交差されているか、又は例えば部分的に平行に当該ケーブルに対して空間的に近くに配置されている状況であり得る。この場合、当該別の溶接ケーブル(又は別の通電ケーブル)中の経時変化する電流によって、電圧、いわゆる自己誘導電圧が、対象となる溶接装置1のWIG溶接ケーブル7及び/又は接地ケーブルMで誘導され得る。この自己誘導電圧が、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに到達するか又は当該点弧電圧レベルを超えると、WIGアークLB_WIGの再点弧が実際には全く起きていないのに、当該WIGアークLB_WIGの再点弧が間違って検出され得る。これは、予め設定されている点弧電圧レベルU_WZに加えて、(
図7に基づいて説明したような)補助電源27の予め設定されている(再)点弧電流レベルI_WZが使用されれば、有益に回避され得る。これにより、点弧電流レベルI_WZは、WIGアークLB_WIGの再点弧を検証するために使用され得る。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
WIG溶接工程をワーク(W)で実行するための溶接装置(1)であって、
1つの第1極(P1)と少なくとも1つの第2極(P2)とを有する溶接電源(2)が、溶接装置(1)内に設けられていて、
前記第1極(P1)は、非溶極式の電極(E1)を含むWIG溶接トーチ(6)に電気接続されていて、前記第2極(P2)は、前記ワーク(W)に電気接続可能であり、
前記溶接装置(1)には、WIGアーク(LB_WIG)を非接触式に点弧するための点弧装置(18)が、前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間に設けられていて、この点弧装置(18)は、点弧電圧(U_Z)をWIG溶接ケーブル(7)に供給するための二次巻線(23)を有し、
前記溶接装置(1)には、第1電圧測定装置(17)が、電源電圧(U_SQ)を検出するために前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間に設けられていて、
前記溶接装置(1)には、前記WIG溶接工程を制御するために前記電源電圧(U_SQ)を使用するように構成されている制御装置(5)が設けられている当該溶接装置(1)において、
測定巻線(24)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、第2電圧測定装置(25)が、前記測定巻線(24)での測定巻線電圧(U_MESS)を検出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び/又は
測定巻線シミュレーション装置が、前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)をシミュレートし、測定巻線電圧(U_MESS)を前記仮想測定巻線(24)で算出するために前記溶接装置(1)に設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記電源電圧(U_SQ)と前記第2電圧測定装置(25)によって検出された測定巻線電圧(U_MESS)又は前記測定巻線シミュレーション装置によって算出された測定巻線電圧(U_MESS)とを前記WIGアーク(LB)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用するように構成されて当該溶接装置(1)。
2.
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と一定の比例係数(φ)とから、前記点弧装置(18)の前記二次巻線(23)での電圧降下(U2)を算出し、前記アーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)との差から算出するように構成されている上記1に記載の溶接装置(1)。
3.
コイルコア(21)を有するコイル装置(20)が、前記点弧装置(18)に設けられていて、前記二次巻線(23)及び前記測定巻線(24)が、前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)とが異なる上記2に記載の溶接装置(1)。
4.
前記測定巻線数(N_MESS)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、
前記二次巻線数(N2)は、好ましくは5~10、特に好ましくは7であり、及び/又は前記測定巻線数(N_MESS)は、好ましくは最大で2であり、特に1である上記3に記載の溶接装置(1)。
5.
一次巻線数(N1)を有する一次巻線(22)が、前記コイル装置(20)の前記コイルコア(21)に配置されていて、
前記一次巻線数(N1)は、前記二次巻線数(N2)よりも小さく、前記測定巻線数(N_MESS)以上であり、
前記一次巻線数(N1)は、好ましくは2~4、特に2である上記3又は4に記載の溶接装置(1)。
6.
前記制御装置(5)は、前記二次巻線数(N2)と前記測定巻線数(N_MESS)との変圧比(j)を比例係数(φ)として前記二次巻線(23)の電圧降下(U2)を算出するために使用するように構成されている上記3~5のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
7.
前記溶接装置(1)は、MSG溶接工程を実行するように構成されていて、
前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)が、溶極式の電極(E2)を含むMSG溶接トーチ(14)に接続されているか又は接続可能である上記1~6のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
8.
アナログ式又はデジタル式の測定回路が、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を算出するために前記制御装置(5)に設けられていて、
特にフィルタが、少なくとも1つの電圧信号をフィルタリングするために前記測定回路に設けられている上記1~7のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
9.
前記制御装置(5)には、WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又はMSG溶接ケーブル(16)のモデル及び/又は接地ケーブル(M)のモデル及び/又はワーク(W)のモデルを含む溶接電流回路モデルが、前記制御装置(5)に格納されていること、及び
前記制御装置(5)は、前記溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)での電圧降下及び/又は前記接地ケーブルMでの電圧降下及び/又は前記ワークWでの電圧降下を算出し、当該算出された電圧降下を、前記WIGアーク(LB_WIG)でのWIGアーク電圧(U_LB_WIG)及び/又は前記MSGアーク(LB_MSG)でのMSGアーク電圧(U_LB_MSG)の算出時に考慮するように構成されていて、
前記WIG溶接ケーブル(7)のモデル及び/又は前記MSG溶接ケーブル(16)のモデルは、好ましくは少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG,R_MSG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG,L_MSG)を含む上記1~8のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
10.
前記溶接装置(1)には、補助電圧(U_H)を生成するための追加の補助電源(27)が、実行されるWIG溶接工程、特にAC溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するために設けられていること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止するように構成されていて、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出される上記1~9のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
11.
WIG溶接工程を非溶極式の電極(E1)によってワーク(W)で実行するための方法であって、
前記非溶極式の電極(E1)が、WIG溶接ケーブル(7)を介して溶接電源(2)の第1極(P1)に電気接続され、前記ワーク(W)が、前記溶接電源(2)の第2極(P2)に電気接続され、WIGアーク(LB_WIG)を前記非溶極式の電極(E1)と前記ワーク(W)との間に非接触式に点弧するため、点弧装置(18)の二次巻線(23)によって、点弧電圧(U_Z)が、前記WIG溶接ケーブル(7)に供給され、
電源電圧(U_SQ)が、前記溶接電源(2)の前記第1極(P1)と前記第2極(P2)との間で検出され、
当該検出された電源電圧(U_SQ)が、前記WIG溶接工程を制御するために制御装置(5)によって使用される当該方法において、
測定巻線電圧(U_MESS)が、前記点弧装置(18)に設けられている測定巻線(24)で検出されること、又は
前記点弧装置(18)の仮想測定巻線(24)が、測定巻線シミュレーション装置によってシミュレートされ、測定巻線電圧(U_MESS)が、前記仮想測定巻線(24)で算出されること、及び
前記制御装置(5)は、WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記WIGアーク(LB_WIG)で算出するために前記電源電圧(U_SQ)及び当該検出又は算出された測定巻線電圧(U_MESS)を使用し、当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)を、前記WIG溶接工程を制御するために使用する当該方法。
12.
前記制御装置(5)は、前記測定巻線電圧(U_MESS)と比例係数(φ)とから、前記二次巻線(23)での電圧降下を算出し、前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)を前記電源電圧(U_SQ)と前記電圧降下(U2)とから算出する上記11に記載の方法。
13.
前記制御装置(5)は、前記二次巻線(23)の二次巻線数(N2)と前記測定巻線(24)の測定巻線数(N_MESS)との変圧比を比例係数(φ)として前記電圧降下(U2)を算出するために使用し、
前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)は、前記制御装置(5)によって、好ましくはアナログ式又はデジタル式の回路によって算出される上記12に記載の方法。
14.
前記制御装置(5)に格納された溶接電流回路モデルによって、前記WIG溶接ケーブル(7)での電圧降下及び/又は接地ケーブル(M)での電圧降下及び/又は前記ワーク(W)での電圧降下が算出されること、及び
前記制御装置(5)は、当該算出された電圧降下を前記WIGアーク電圧(U_LB_WIG)の算出時に考慮し、
前記溶接電流回路モデルは、好ましくは、少なくとも1つのオーミック抵抗(R_WIG)及び少なくとも1つのインダクタンス(L_WIG)を含む上記11~13のいずれか1項に記載の方法。
15.
実行されるWIG溶接工程中にWIGアーク(LB_WIG)を再点弧するため、補助電圧(U_H)が、追加の補助電源(27)によって生成されること、及び
前記制御装置(5)は、前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧を当該算出されたWIGアーク電圧(U_LB_WIG)に基づいて検出し、前記WIGアーク(LB_WIG)の検出時に前記補助電源(27)を停止し、
前記WIGアーク(LB_WIG)の再点弧が、好ましくは、予め設定されている電圧閾値(U_WZ)に基づいて検出される上記11~14のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【国際調査報告】