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特表2024-536328PTPN11阻害剤とKRAS G12C阻害剤を用いた併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】PTPN11阻害剤とKRAS G12C阻害剤を用いた併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/513
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/496
A61K31/517
A61K31/416
A61K31/4375
A61K31/4985
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520076
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022045391
(87)【国際公開番号】W WO2023056020
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,883
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520427136
【氏名又は名称】ナビール ファーマ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【弁理士】
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】カール ダムコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン リム
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】エリ ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ユイティン スン
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー コール
(72)【発明者】
【氏名】ブルック マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】カースティン シンケビシウス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ スティス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド バン ベーンホイゼン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ウッド
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ トゥワイマン-セント ビクター
(72)【発明者】
【氏名】リナ ティン
(72)【発明者】
【氏名】エリック モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ユイ リウ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー マイヤー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086BC42
4C086BC46
4C086BC50
4C086CB09
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は対象のがんを治療する方法を提供する。a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I)によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせ(ただし添え字aとb、Y、Y、ならびにR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に提示されている通りである)を前記対象に投与することを含む前記方法。特に本開示は、KRAS内に1つ以上の変異(KRAS G12Cなど)を持つ対象の固形腫瘍(例えば進行した非小細胞肺がん)を、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(10b)の化合物(すなわち6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オン)を治療に有効な量で用いて治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんを治療する方法であって、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化1】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを前記対象に投与することを含み(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C1-4アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルアミノ、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)、
前記PTPN11阻害剤が式(10b):
【化2】
によって表わされるときには、前記KRAS G12C阻害剤はソトラシブではないことが条件である方法。
【請求項2】
前記PTPN11阻害剤の選択が、
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
からなる群からなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PTPN11阻害剤が、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル) -3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2-メチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(2b):
【化3】
によって表わされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTPN11阻害剤が、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(10b):
【化4】
によって表わされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記KRAS G12C阻害剤が、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446であり、前記PTPN11阻害剤が式(10b)によって表わされるときには、前記KRAS G12C阻害剤はソトラシブ以外であることが条件である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記KRAS G12C阻害剤がアダグラシブ(MRTX-849)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記がんがKRAS G12C変異を特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、尿路上皮癌、胃がん、中皮腫、またはこれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが結腸直腸がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが、KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが、KRAS G12C阻害剤に対する内因性抵抗性および/または獲得抵抗性を特徴とするKRAS G12C陽性がんである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、ソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、アダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
白金に基づく二剤併用化学療法および/または抗PD-1/PD-L1療法を含んでいてそのそれぞれが単剤療法として与えられるか、その両方が併用療法として与えられた以前の少なくとも1回の全身療法のラインのとき、またはその後に、前記がんが進行するか再発している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中に活性化変異を持たない、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が以前にPTPN阻害剤で治療されていない、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が以前に式(I)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が以前に式(I)のPTPN11阻害剤で治療されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が以前にKRAS G12C阻害剤で治療されていない、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が以前にKRAS G12C阻害剤で治療されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象がヒトである、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を同時に投与する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を、前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を含む医薬組成物として投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を逐次的に投与する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記PTPN11阻害剤を、前記KRAS G12C阻害剤を投与する前に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記PTPN11阻害剤を、前記KRAS G12C阻害剤を投与した後に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記PTPN11阻害剤および/または前記KRAS G12C阻害剤を経口投与する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を共同して治療に有効な量で提供する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を相乗的に有効な量で提供する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を、単独で使用するときとは異なる用量で使用する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記PTPN11阻害剤を、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記PTPN11阻害剤を、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記KRAS G12C阻害剤を、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記KRAS G12C阻害剤を、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記治療が1つ以上の治療サイクルを含み;1つ以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;前記PTPN11阻害剤および/または前記KRAS G12C阻害剤を毎日投与する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
式(I)または(10b)の化合物と前記KRAS G12C阻害剤の投与が、式(I)または(10b)の化合物および/または前記KRAS G12C阻害剤の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
式(I)または(10b)の化合物と前記KRAS G12C阻害剤の投与が、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
DLT評価によって求めた用量制限毒性(DLT)率が約19.7%未満であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸増を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約29.8%超であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸減を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量維持を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記治療が用量漸増期間を含み、その用量漸増期間の後、前記治療は用量拡大/最適化期間をさらに含み;式(I)または(10b)の化合物を、用量漸増期間の間に決めた投与計画で投与する、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記用量拡大/最適化期間の間、式(I)または(10b)の化合物の前記投与が1回以上の用量調節を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、約80mg~約150mg、100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、または約300mg~約400mgの1日総用量である、請求項4~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
式(10b)の化合物の治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約550mg、または約700mgの1日総用量である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記KRAS G12C阻害剤の治療に有効な前記量が、約10mg~約2000mgの1日総用量である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記KRAS G12C阻害剤の治療に有効な前記量が、約120mg、約150mg、約240mg、約300mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、約960mg、または約1200mgの1日総用量である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
式(10b)の化合物と前記KRAS G12C阻害剤をそれぞれ経口投与する、請求項4~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記PTPN11阻害剤および/または前記KRAS G12C阻害剤を1日に1回、2回、3回、または4回投与する、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記PTPN11阻害剤および/または前記KRAS G12C阻害剤を1日に1回投与する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を用いた前記治療が、前記がんまたは固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤を用いた前記治療が前記がんまたは固形腫瘍を安定化させる、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量の請求項1~4のいずれか1項に記載のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤とを、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項57】
前記KRAS G12C阻害剤が、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446であり、前記PTPN11阻害剤が式(10b)によって表わされるときには、前記KRAS G12C阻害剤がソトラシブ以外であることが条件である、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量の請求項1~4のいずれか1項に記載のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤とを、
有効な投与のための指示とともに含むキット。
【請求項59】
前記KRAS G12C阻害剤が、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446であり、前記PTPN11阻害剤が式(10b)によって表わされるときには、前記KRAS G12C阻害剤がソトラシブ以外であることが条件である、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤が同時投与のために製剤化されている、請求項58または59に記載のキット。
【請求項61】
前記PTPN11阻害剤と前記KRAS G12C阻害剤が逐次投与のために製剤化されている、請求項58又は59のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は2021年9月30日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/250,883号の優先権を主張するものであり、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦が資金援助した研究開発のもとでなされた発明の権利に関する宣言
適用なし。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列リスト」、表、またはコンピュータプログラムのリストの付録への参照
適用なし。
【背景技術】
【0004】
分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路は、さまざまな細胞活性(細胞増殖、生存、分化、および移動が含まれる)の調節において極めて重要な役割を果たしている。MAPKシグナル伝達経路は受容体チロシンキナーゼ(RTK)によって媒介される。MAPK経路の調節異常は全悪性腫瘍の三分の一超で起こっている。古典的MAPK経路は、Ras(全動物細胞系譜と臓器で発現する関連タンパク質の1つのファミリー)、Raf(レトロウイルスがん遺伝子に関係する3つのセリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼの1つのファミリー)、MEK(分裂促進因子活性化プロテインキナーゼキナーゼ)、およびERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)からなり、細胞表面受容体で発生した増殖シグナルを順次、細胞質シグナル伝達を通じて核へとリレーする。RTKと、MAPK経路(RASやRAFなど)の構成要素はヒトがんの中の変異によって活性化されることがしばしばあり、その結果として構成的経路活性化が起こる。RTKとMAPK経路のいくつかの阻害剤(上皮増殖因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、およびMAPK阻害剤が含まれる)が、これら経路の活性化が発がんドライバーである固形腫瘍の治療に関して承認されている。
【0005】
KRAS(カーステンラット肉腫2ウイルスがん遺伝子ホモログ)はRAS/MAPK経路の一部である。KRASは多彩なヒトがんにおける最も一般的ながん遺伝子の1つである。発がん性KRASが腫瘍形成を促進するという有力な証拠が存在するが、変異KRASを標的とする取り組みは長年にわたって行き詰っている。最近、肺腺癌の約15%と他のがんの0%~8%に存在するG12C変異を持つKRASを特徴とするがんに対する治療剤の開発に進歩が見られた。初期段階の臨床試験からの結果は、このサブグループの多くのがん患者が、これら新規な治療剤から有意な利益を得られる可能性があることを示している。最初のKRAS G12C阻害剤であるソトラシブは、FDA承認試験によって判断され、KRAS G12Cが変異した局所的に進行または転移したNSCLCを持っていて以前に全身療法を少なくとも1回受けた成人患者の治療に関してアメリカ食品医薬品局(FDA)による迅速承認を受けた。別のKRAS G12C阻害剤であるアダグラシブは同じ適応に関してFDA画期的治療薬指定を受けた。追加のKRAS G12C阻害剤も検討中である。
【0006】
RTKの阻害剤とMAPK経路の阻害剤の進歩にもかかわらず、これら経路阻害剤に対する抵抗性が臨床研究と非臨床研究の両方で観察されてきた。このような抵抗性はこの経路の他の構成要素の活性化または上方調節によって駆動される可能性がある。したがってRTKとMAPK経路の阻害剤を含む単剤療法は、承認された経路阻害剤に対する抵抗性が発達しているか発達させる可能性のある腫瘍の治療には十分でない可能性がある
【0007】
プロテイン-チロシンホスファターゼ非受容体型11(PTPN11、Srcホモロジー-2ホスファターゼ(SHP2)としても知られる)は、PTPN11遺伝子によってコードされる非受容体プロテインチロシンホスファターゼである。SHP2はRTKを媒介とするMAPKシグナル伝達経路において鍵となる役割を果たす。このPTPは、2つのタンデム型Srcホモロジー-2(SH2)ドメイン(ホスホ-チロシン結合ドメインとして機能する)、触媒ドメイン、およびC末端尾部を含有する。基底状態では、このタンパク質は典型的には不活性な自己阻害立体配座で存在し、N末端SH2ドメインが活性部位をブロックする。サイトカインと増殖因子によって媒介されるシグナル伝達、SH2ドメインへのリン酸化されたタンパク質の結合によって刺激されて自己阻害が緩和されたとき、活性部位をPTPN11基質の脱リン酸化に利用できるようになる(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30。KS Grossmann, Adv. Cancer Res. 2010, 106, 53-89。W.Q. Huang et. al. Curr. Cancer Drug Targets 2014, 14, 567-588。C. Gordon et. al. Cancer Metastasis Rev. 2008, 27, 179-192。)。
【0008】
生殖細胞系と体細胞のPTPN11内の変異がいくつかのヒト疾患(ヌーナン症候群とレオパード症候群のほか、若年性骨髄単球性白血病、神経芽腫、骨髄異形成症候群、B細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、黒色腫、急性骨髄性白血病、および乳房、肺、および大腸のがんなどの多くのがんが含まれる)で触媒活性の機能獲得をもたらすことが報告されている(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30)。最近の研究により、単一のPTPN11変異がマウスにおいてヌーナン症候群、JMML様骨髄増殖性疾患、および急性白血病を誘導できることが実証された。これら変異はN-SH2ドメインと触媒部位の間の自己阻害を破壊し、基質が酵素の触媒部位に構成的にアクセスすることを可能にする(E. Darian et al, Proteins, 2011, 79, 1573-1588。Z-H Yu et al, JBC, 2013, 288, 10472。W Qiu et al BMC Struct. Biol. 2014, 14, 10)。
【0009】
PTPN11は大半の組織で広く発現しており、多彩な細胞機能(増殖、分化、細胞周期維持、上皮間葉転換(EMT)、分裂促進因子活性化、代謝制御、転写調節、および細胞移動が含まれる)にとって重要なさまざまな細胞シグナル伝達イベントにおいて、多くのシグナル伝達経路(Ras-MAPK、JAK-STAT、またはPI3K-AKT経路が含まれる)を通じて調節の役割を果たす(Tajan, M. et. al. Eur. J. Medical Genetics, 2015, 58, 509-525。Prahallad, A. et. al. Cell Reports, 2015, 12, 1978-1985)。
【0010】
それに加え、PTPN11/SHP2は腫瘍形成の間の免疫回避に関与しているため、SHP2阻害剤はがん患者における免疫応答を促進する可能性があるという証拠が増えつつある(Cancer Res. 2015 Feb 1;75(3):508-18。T Yokosuka T, J Exp Med. 2012, 209(6), 1201。S Amarnath Sci Transl Med. 2011, 3, 111ra120。T Okazaki, PNAS 2001, 98:24, 13866-71)。
【0011】
がんはRTKとMAPK経路の阻害剤(KRAS G12C阻害剤を含む)に対する抵抗性を持つ可能性、または発達させる可能性があるため、がんを治療するために有効で安全な治療剤(組み合わせて使用できる薬剤を含む)が相変わらず必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本開示により、PTPN11阻害剤(例えば本明細書に記載されている式(I)(式(10b)など)によって表わされる化合物)とKRAS G12C阻害剤の両方を投与することによって疾患と障害(例えばがん)を治療する方法が提供される。
【0013】
第1の側面では、本開示により対象のがんを治療する方法が提供され、この方法は、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化1】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを前記対象に投与することを含む(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は本明細書に示されている通りである)。
【0014】
第2の側面では、本開示により対象の固形腫瘍(例えば進行した非小細胞肺がん)を治療する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象に、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化2】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤
を投与することを含む(ただし前記対象は(例えば本明細書に記載されている)KRAS変異を持つ)。いくつかの実施形態では、前記KRAS G12C阻害剤はソトラシブではない。
【0015】
第3の側面では、本開示により、対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤を、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む医薬組成物が提供される(ただし前記PTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0016】
第4の側面では、本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供され、このキットは、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤を、
有効な治療のための指示とともに含む(ただし前記PTPN11阻害剤は、本明細書に定義され記載されている式(I)によって表わされる)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1-1】図1A図1Eは、化合物A(すなわち6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、および1Dは、ノギスによって隔週でモニタした腫瘍体積を示す。図1Cと1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SDを表わす。図1B~1EではN=8匹のマウス/群、図1AではN=10匹のマウス/群。
図1-2】図1A図1Eは、化合物A(すなわち6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、および1Dは、ノギスによって隔週でモニタした腫瘍体積を示す。図1Cと1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SDを表わす。図1B~1EではN=8匹のマウス/群、図1AではN=10匹のマウス/群。
図1-3】図1A図1Eは、化合物A(すなわち6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、および1Dは、ノギスによって隔週でモニタした腫瘍体積を示す。図1Cと1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SDを表わす。図1B~1EではN=8匹のマウス/群、図1AではN=10匹のマウス/群。
図2図2Aおよび図2Bは、式(10b)の化合物を単独で、またはソトラシブ(AMG 510)と組み合わせて用いて治療したときの、NCI-H358皮下細胞系由来の腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積と体重の変化を示す。
図3図3Aおよび図3Bは、式(10b)の化合物を単独で、またはソトラシブ(AMG 510)と組み合わせて用いて治療したときの、NCI-H2122皮下細胞系由来の腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積と体重の変化を示す。
図4-1】図4A図4Dは、NCI-H358(KRAS G12C)モデルにおける式(10b)の化合物とソトラシブ(AMG 510)に関するインビトロ生存率データを示す。図4A:式(10b)がさまざまな濃度であるときの3D生存率。図4B:AMG 510と式(10b)の組み合わせに関するブリスエナジースコア。
図4-2】図4A図4Dは、NCI-H358(KRAS G12C)モデルにおける式(10b)の化合物とソトラシブ(AMG 510)に関するインビトロ生存率データを示す。図4C:DUSP6のレベルにおける倍数変化。図4D:SPRY4のレベルにおける倍数変化。図4C~4Dに示されているように、AMG 510と式(10b)の組み合わせは、いずれかの単独の薬剤と比べてDUSP6とSPRY4のレベルを抑制した。
図5-1】図5A図5Eは、MiaPaca-2 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図5A:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図5B:用量-応答行列と、図5C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図5D~5E:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図5-2】図5A図5Eは、MiaPaca-2 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図5A:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図5B:用量-応答行列と、図5C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図5D~5E:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図5-3】図5A図5Eは、MiaPaca-2 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図5A:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図5B:用量-応答行列と、図5C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図5D~5E:MiaPaca-2細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図6-1】図6A図6Eは、ヒトNSCLC NCI-H358 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図6A:NCI-H358細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。
図6-2】図6A図6Eは、ヒトNSCLC NCI-H358 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図6B:用量-応答行列と、図6C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図6D~6E:NCI-H358細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図6-3】図6A図6Eは、ヒトNSCLC NCI-H358 KRAS G12C変異細胞系における3D増殖アッセイを示す。図6D~6E:NCI-H358細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図7-1】図7A図7Eは、KRAS G12C変異を持つCRC患者由来オルガノイドモデルS002375における3D増殖アッセイを示す。図7A:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図7B:用量-応答行列と、図7C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図7D~7E:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図7-2】図7A図7Eは、KRAS G12C変異を持つCRC患者由来オルガノイドモデルS002375における3D増殖アッセイを示す。図7A:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図7B:用量-応答行列と、図7C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図7D~7E:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図7-3】図7A図7Eは、KRAS G12C変異を持つCRC患者由来オルガノイドモデルS002375における3D増殖アッセイを示す。図7A:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の単剤増殖阻害。アダグラシブと化合物(10b)の段階希釈の組み合わせを用いて細胞を5日間処理した。細胞生存率を評価するためCTGアッセイを実施した(データは平均±SDを表わす、n=3)。図7B:用量-応答行列と、図7C:相乗モデル分析によって8×8行列から生成させた相乗スコア。図7D~7E:S002375細胞に対するアダグラシブと式(10b)の薬組み合わせの用量-応答曲線。
図8図8は、実施例5に記載されているように、KRAS変異を持つ進行した非小細胞肺がんがある患者における、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の臨床研究の全体設計を示す。
図9図9は、BOIN設計を利用して実施した試験のためのフローチャートを示す。略号:BOIN=ベイズ最適間隔設計;DLT=用量制限毒性;MTD=最大耐量。注:λe=19.7%とλd=29.8%。実際には6人の患者/コホートであり、DLT率が1/6以下の場合には用量を漸増させ、DLT率が2/6以上の場合には、用量を漸減させる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.概要
本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん(固形腫瘍など))を治療するための併用療法が提供される。この方法は、対象に、a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤を投与することを含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる(例えば式(10b)によって表わされる化合物))。特にがんは、KRAS変異(Q61X変異以外の変異など、例えばKRAS G12C変異)を特徴とする。いくつかの場合には、がんは固形腫瘍(進行または転移した非小細胞肺がん(NSCLC)など)である。KRAS G12C阻害剤は、少なくとも部分的にKRAS G12Cキナーゼを阻害することができる。KRAS G12C阻害剤として、(例えばG12C変異を持つKRASに対し、別の変異(G12D変異など)を持つKRASに対するよりもより大きい選択性を持つ)選択的KRAS G12C阻害剤が可能である。KRAS G12C阻害剤として、(例えばシステイン12の共有結合型改変が可能な)共有結合型阻害剤が可能である。KRAS G12C阻害剤として非コルバネット阻害剤が可能である。KRAS G12C阻害剤はKRASの不活性(「GDP」)型に結合することができる。KRAS G12C阻害剤はKRASの活性(「GTP」)型に結合することができる。KRAS G12C阻害剤はKRASの不活性(「GDP」)型と活性(「GTP」)型の両方に結合することができる。その医薬組成物とそのキットも対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するために提供される。
【0019】
II.定義
本明細書では、下記の用語は示されている意味を持つ。
【0020】
「含む(Comprise)」、「含む(include)」、および「持つ」と、これらの派生語は、本明細書では、包括的で数量の制限がない用語として交換可能に使用される。例えば「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、または「持っている」の使用は、含まれる、持つ、または含まれるどのような要素も、この動詞を含有する句の対象によって包含されるのがその要素だけではないことを意味する。
【0021】
値の範囲が開示されていて、「n~n」または「nとnの間」という表記が使用されるとき(ただしnとnは数である)、特に断わらない限り、この表記は、それらの数そのものと、その間の範囲を含むことが想定されている。この範囲として、整数、または末端値の間の連続数が可能であり、末端値が含まれる。例えば範囲「2~6個の炭素」は、炭素が整数単位であるために2、3、4、5、および6個の炭素を含むことが想定されている。例えば1μM、3μM、および任意の数の有効数字までのその間のすべて(例えば1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが想定される範囲「1~3μM(マイクロモル)」と比較されたい。
【0022】
「約」は、本明細書では、この用語が修飾する数値を大まかにすることが想定されており、そのような値が誤差の範囲内で変動することを示す。誤差の範囲(データの図または表に与えられている平均値に対する標準偏差など)が具体的に記載されていないとき、「約」という用語は、記載されている値を包含すると考えられる範囲と、有効数字を考慮してその数字に切り上げまたは切り下げることによって含まれると考えられる範囲も意味すると理解すべきである。
【0023】
「アシル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、または他の任意の部分に付着したカルボニルを意味するは、カルボニルに付着した原子であったは炭素である。「アセチル」基は-C(O)CH基を意味する。「アルキルカルボニル」または「アルカノイル」基は、カルボニル基を通じて親分子部分に付着したアルキル基を意味する。このような基の例に含まれるのは、メチルカルボニルとエチルカルボニルである。アシル基の例に含まれるのは、ホルミル、アルカノイル、およびアロイルである。
【0024】
「アルケニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1つ以上の二重結合を持っていて2~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。ある実施形態では、前記アルケニルは2~6個の炭素原子を含む。「アルケニレン」という用語は、2つ以上の位置で付着した炭素-炭素二重結合系(エテニレン [(-CH=CH-)、(-C::C-)]など)を意味する。適切なアルケニル基の例に含まれるのは、エテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、1,4-ブタジエニルなどである。特に断わらない限り、「アルケニル」という用語に「アルケニレン」基を含めることができる。
【0025】
「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの三重結合を持つとともに、示されている数の炭素原子(すなわちC2-6は2~6個の炭素を意味する)を持つ直鎖炭化水素または分岐炭化水素のいずれかを意味する。アルキニルは任意の数の炭素を含むことができる(C、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C、C3-4、C3-5、C3-6、C、C4-5、C4-6、C、C5-6、およびCなど)。アルキニル基の非限定的な例に含まれるのは、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジイニル、1,4-ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニル、および1,3,5-ヘキサトリイニルである。
【0026】
「アルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキルエーテル基を意味する(ただしアルキルという用語は下に定義する通りである)。適切なアルキルエーテル基の例に含まれるのは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシなどである。
【0027】
「アルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。ある実施形態では、前記アルキルは1~10個の炭素原子を含む。さらなる実施形態では、前記アルキルは1~8個の炭素原子を含む。アルキル基は、本明細書で規定されているように、置換されていないか、置換されている。アルキル基の例に含まれるのは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、オクチル、ノイルなどである。「アルキレン」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、2つ以上の位置で付着した直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素に由来する飽和脂肪族基(メチレン(-CH-)など)を意味する。特に断わらない限り、「アルキル」という用語に「アルキレン」基を含めることができる。
【0028】
「アルキルアミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アミノ基を通じて親分子部分に付着したアルキル基を意味する。適切なアルキルアミノ基はモノアルキル化またはジアルキル化することができ、例えばN-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-エチルメチルアミノなどの基を形成する。
【0029】
「アルキルチオ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキルチオエーテル(R-S-)基を意味する(ただしアルキルという用語は上に定義した通りであり、硫黄は一重または二重に酸化されていることが可能である)。適切なアルキルチオエーテル基の例に含まれるのは、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソ-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、メタンスルホニル、エタンスルフィニルなどである。
【0030】
「アミド」と「カルバモイル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、カルボニル基を通じて親分子部分に付着した下記のアミノ基、またはその逆を意味する。「アミド」基は、本明細書では、「C-アミド」と「N-アミド」基を含む。「C-アミド」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-C(O)N(RR’)基を意味し、RとR’は、本明細書に規定されている通りであるか、具体的に列挙された指定の「R」基によって規定されている通りである。いくつかの実施形態では、「アミド」基に含まれるのは、-C(O)NH、C1-4アルキルアミド、およびジ(C1-4アルキル)アミドである。「C1-4アルキルアミド」という用語は、本明細書では、-C(O)NH(C1-4アルキル)を意味する(ただしC1-4アルキルは本明細書に定義されている通りである)。「N-アミド」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、RC(O)N(R’)-基を意味し、RとR’は、本明細書に規定されている通りであるか、具体的に列挙された指定の「R」基によって規定されている通りである。「アシルアミノ」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アミノ基を通じて親部分に付着したアシル基を包含する。「アシルアミノ」基の一例はアセチルアミノ(CHC(O)NH-)である。
【0031】
「アミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NRR’を意味し、RとR’は、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルから独立に選択され、そのいずれも、それ自身は置換されていないか、置換されていることが可能である。それに加え、RとR’は合わさってヘテロシクロアルキルを形成することができ、そのどちらかは、置換されていないか、置換されている。
【0032】
「アリール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1、2、3個の環を含有する炭素環芳香族系を意味し、そのような多環系は互いに縮合している。「アリール」という用語は芳香族基(フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびフェナントリルなど)を包含する。
【0033】
「アリールアルケニル」または「アラルケニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルケニル基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0034】
「アリールアルコキシ」または「アラルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルコキシ基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0035】
「アリールアルキル」または「アラルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキル基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0036】
「アリールオキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、オキシを通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0037】
「カルバメート」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、カルバミン酸のエステル(-NHCOO-)を意味し、それは、窒素または酸末端のいずれかからの親分子部分に付着させることができて、本明細書に規定されているように置換されていないか、置換されている。
【0038】
「O-カルバミル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-OC(O)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0039】
「N-カルバミル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、ROC(O)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0040】
「カルボニル」は、本明細書では、単独ではホルミル[-C(O)H]を含み、組み合わせでは-C(O)-基である。
【0041】
「カルボキシル」または「カルボキシ」は、本明細書では、-C(O)OH、またはカルボン酸塩におけるように対応する「カルボン酸塩」アニオンを意味する。「O-カルボキシ」基はRC(O)O-基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。「C-カルボキシ」基は-C(O)OR基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。
【0042】
「シアノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-CNを意味する。
【0043】
「シクロアルキル」または「炭素環」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、飽和または部分的に飽和した単環、二環、または三環のアルキル基を意味し(ただしそれぞれの環部分は3~12個の炭素原子環原子を含有する)、それは場合により、本明細書に規定されているように置換されていないか、置換されているベンゾ縮合環系が可能である。「シクロアルケニル」という用語は、1または2つの二重結合を持つシクロアルキル基を意味する。ある実施形態では、前記シクロアルキル(またはシクロアルケニル)は5~7個の炭素原子を含むことになる。そのような基の例に含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、オクタヒドロナフチル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、アダマンチルなどである。「二環」と「三環」は、本明細書では、縮合環系(デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンなど)と、多環(多中心)の飽和または部分的不飽和型の両方を含むことが想定されている。後者のタイプの異性体の一般的な例は、ビシクロ[1,1,1]ペンタン、ショウノウ、アダマンタン、およびビシクロ[3,2,1]オクタンである。
【0044】
「エステル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、炭素原子の位置で連結された2つの部分を架橋するカルボキシ基を意味する。
【0045】
「エーテル」は、本明細書では、単独または組み合わせで、炭素原子の位置で連結された2つの部分を架橋するオキシ基を意味する。
【0046】
「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0047】
「ハロアルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、酸素原子を通じて親分子部分に付着したハロアルキル基を意味する。
【0048】
「ハロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、上に定義した意味を持つアルキル基を意味し、その中の1つ以上の水素がハロゲンで置換されている。具体的に包含されるのは、モノハロアルキル、ジハロアルキル、およびポリハロアルキル基である。一例として、モノハロアルキル基は、この基の中にヨード、ブロモ、クロロ、またはフルオロ原子を持つことができる。ジハロ基とポリハロアルキル基は、2つ以上の同じハロ原子、または異なるハロ基の組み合わせを持つことができる。ハロアルキル基の例に含まれるのは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル、およびジクロロプロピルである。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で付着したハロアルキル基を意味する。例に含まれるのは、フルオロメチレン(-CFH-)、ジフルオロメチレン(-CF-)、クロロメチレン(-CHCl-)などである。
【0049】
「ヘテロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、完全に飽和しているか1~3度の不飽和を含有し、記載されている数の炭素原子と、N、O、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子からなる安定な直鎖または分岐鎖、またはその組み合わせを意味する(ただしN原子とS原子は場合により酸化されていてもよく、Nヘテロ原子は場合により四級化されていてもよい)。ヘテロ原子はヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置することができる。2個までのヘテロ原子が連続していてもよい(例えば-CH-NH-OCHなど)。
【0050】
「ヘテロアリール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、N、O、およびSから選択される少なくとも1個の原子を含有する3~15員の不飽和ヘテロ単環、または縮合した単環、二環、または三環の環系であって、縮合環の少なくとも1つが芳香族であるものを意味する。ある実施形態では、前記ヘテロアリールは1~4個のヘテロ原子を環原子として含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロアリールは1~2個のヘテロ原子を環原子として含む。ある実施形態では、前記ヘテロアリールは5~7個の原子を含む。本用語は、縮合多環基であって、複素環基がアリール環と縮合しているもの、ヘテロアリール環が他のヘテロアリール環と縮合しているもの、ヘテロアリール環がヘテロシクロアルキル環と縮合しているもの、またはヘテロアリール環がシクロアルキル環と縮合しているものも包含する。ヘテロアリール基の例に含まれるのは、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどである。代表的な三環複素環基に含まれるのは、カルバゾリル、ベンズインドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどである。
【0051】
「ヘテロシクロアルキル」と、それと交換可能な「複素環」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、それぞれ、少なくとも1個のヘテロ原子を環原子として含有する飽和、部分的不飽和、または完全不飽和(だが非芳香族)の単環、二環、または三環の複素環基を意味し、その中のそれぞれの前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択することができる。ある実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは1~4個のヘテロ原子を環原子として含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは1~2個のヘテロ原子を環原子として含む。ある実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは3~8個の環原子をそれぞれの環の中に含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは3~7個の環原子をそれぞれの環の中に含む。さらに別の実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは5~6個の環原子をそれぞれの環の中に含む。「ヘテロシクロアルキル」と「窒素環」は、スルホン、スルホキシド、第三級窒素環原子のN-オキシド、および炭素環縮合環系とベンゾ縮合環系を含むことが想定されている;それに加え、両方の用語には、複素環基が本明細書に規定されているアリール基、または追加の複素環基に縮合した系も含まれる。複素環基の例に含まれるのは、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどである。複素環基は、具体的に禁止されていない限り、置換されていないか、置換されている。
【0052】
「ヒドラジニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、単結合によって結合された2つのアミノ基、すなわち-N-N-を意味する。
【0053】
「ヒドロキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-OHを意味する。
【0054】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキル基を通じて親分子部分に付着したヒドロキシ基を意味する。
【0055】
「イミノヒドロキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、=N(OH)と=N-O-を意味する。
【0056】
「低級アミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NRR’を意味し、RとR’は水素と低級アルキルから独立に選択され、そのいずれかは置換されていないか、置換されている。
【0057】
「メルカプチル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、RS-基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。
【0058】
「ニトロ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NOを意味する。
【0059】
「オキシ」または「オキサ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-O-を意味する。
【0060】
「オキソ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、=Oを意味する。
【0061】
「ペルハロアルコキシ」は、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を意味する。
【0062】
「ペルハロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。
【0063】
「環(Ring)」、またはそれと同等の「環(cycle)」は、本明細書において化学構造またはその一部に関して使用されるとき、全原子が共通環構造の原子である基を意味する。環は飽和または不飽和が可能であり(特に断わらない限り、その中に芳香族が含まれる)、3員と9員の間が可能である。環が窒素環である場合には、B、N、O、S、C(O)、S(O)から選択される1個と4個の間のヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含有することができる。具体的に禁止されない限り、環は置換されていないか、置換されている。
【0064】
「スルホン酸塩」、「スルホン酸」、および「スルホン」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、スルホン酸が塩の形成に使用されるので-SOH基とそのアニオンを意味する。
【0065】
「スルファニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S-を意味する。
【0066】
「スルフィニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S(O)- を意味する。
【0067】
「スルホニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S(O)-を意味する。
【0068】
「N-スルホンアミド」はRS(=O)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0069】
「S-スルホンアミド」は-S(=O)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0070】
「チア」と「チオ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S-基、または酸素が硫黄で置換されたエーテルを意味する。チオ基の酸化誘導体、すなわちスルフィニルとスルホニルは、チアとチオの定義に含まれる。
【0071】
「チオール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-SH基を意味する。
【0072】
「チオカルボニル」は、本明細書では、単独ではチオホルミル-C(S)Hを含み、組み合わせでは-C(S)-基である。
【0073】
「N-チオカルバミル」はROC(S)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0074】
「O-チオカルバミル」は-OC(S)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0075】
「チオシアナト」は-CNS基を意味する。
【0076】
本明細書の中のどの定義も、他の任意の定義と組み合わせて複合構造基を記述するのに使用できる。慣例により、任意のそのような定義の後続要素は、親部分に付着する要素である。例えば複合基であるアルキルアミドは、アミド基を通じて親分子に付着したアルキル基を表わすと考えられ、アルコキシアルキルという用語は、アルキル基を通じて親分子に付着したアルコキシ基を表わすと考えられる。
【0077】
「結合」が2個の原子または2つの部分の間の共有結合を意味するのは、その結合によって接合された原子がより大きな下部構造の一部と見なされるときである。結合は、特に断わらない限り、単結合、二重結合、または三重結合が可能である。分子の図の中の2個の原子の間の点線は、追加の結合がその位置に存在または不在である可能性があることを示す。
【0078】
「塩」は、本開示の化合物の酸塩または塩基塩を意味する。医薬として許容可能な酸添加塩の実例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩と、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩である。医薬として許容可能な塩基添加塩の例に含まれるのは、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、またはマグネシウム塩、または同様の塩である。医薬として許容可能な塩は非毒性であると理解されている。医薬として許容可能な適切な塩に関する追加情報を見いだすことができるのは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985であり、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0079】
「溶媒和物」は、本明細書に提示されている化合物、またはその塩を意味し、非共有結合分子間力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の溶媒をさらに含む。
【0080】
「水和物」は、水分子との複合体になった化合物を意味する。本開示の化合物は、1/2個の水分子、または1~10個の水分子との複合体になることができる。
【0081】
不斉中心が本明細書に開示されている化合物に存在する。これら中心は、キラル炭素原子のまわりの置換基の立体配置に応じて記号「R」または「S」によって指定される。本開示は、あらゆる立体化学異性体形態(ジアステレオマー、鏡像異性体、およびエピマーの形態が含まれる)のほか、d-異性体とl-異性体、およびこれらを混合したものを包含すると理解すべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含有する市販の出発材料から合成して調製すること、または鏡像異性体生成物の混合物を調製した後に分離すること(ジアステレオマーの混合物に変換した後、分離または再結晶化、クロマトグラフィ技術、キラルクロマトグラフィカラムでの鏡像異性体の直接的分離、または他の任意の適切な方法)により調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市場で入手できるか、さまざまな技術によって製造して分離することができる。それに加え、本明細書に開示されている化合物は幾何異性体として存在することができる。本開示には、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)、およびツザメン(Z)異性体のほか、その適切な混合物が含まれる。それに加え、化合物は互変異性体として存在することができ;あらゆる互変異性体が本開示によって提供される。それに加え、本明細書に開示されている化合物は、非溶媒和物形態のほか、医薬として許容可能な溶媒(水、エタノールなど)との溶媒和物形態で存在することができる。一般に、溶媒和物形態は非溶媒和物形態と同等であると見なされる。
【0082】
「互変異性体」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、素早く相互変換する2つ以上の異性体の1つを意味する。一般に、この相互変換は十分に速いため、個々の互変異性体が別の互変異性体なしの状態で単離されることはない。互変異性体の量の比は、溶媒組成、イオン強度、およびpHのほか、他の溶液パラメータに依存する可能性がある。互変異性体の量の比は、特別な溶液の中と、その溶液中の生体分子結合部位の微小環境の中では異なる可能性がある。互変異性体の例に含まれるのは、ケト/エノール、エナミン/イミン、およびラクタム/ラクチム互変異性体である。互変異性体の追加例には、2-ヒドロキシピリジン/2(1H)-ピリドンと2-アミノピリジン/2(1H)-イミノピリドン互変異性体も含まれる。
【0083】
配座異性体は、本明細書に開示されている化合物として存在する。Rが式:
【化3】
の中のアリールまたはヘテロアリールであるとき、そのアリール基またはヘテロアリール基は、
【化4】
によって表わされるように、ピリミジノン部分に対して異なる立体配置の向きで存在することが可能である。これらの配置は、ピリミジノン部分に対するアリール基またはヘテロアリール基の立体配置に応じて記号「S」または「R」によって指定される。「S」配置と「R」配置の例は国際特許出願第PCT/US2019/045903号の実施例1~20に見いだすことができる(その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている)。式(10b)の化合物は実質的に「R」配置である。
【0084】
「医薬として許容可能な」は、患者の組織と接触させて用いるのに適していて過度な毒性、刺激、およびアレルギー応答がなく、合理的なベネフィット/リスク比であり、想定する用途にとって有効である化合物(塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体など)を意味する。本明細書に開示されている化合物は、本明細書に規定され記載されているように、医薬として許容可能な塩として存在することができる。
【0085】
「併用療法」は、本開示に記載されている治療状態または障害を治療するため2つ以上の治療剤を投与することを意味する。このような投与は、これら治療剤を、例えば、固定された比の活性成分を持つ単一のカプセル、またはそれぞれの活性成分のための複数の別々のカプセルに入れて実質的に同時に共投与することを包含する。それに加え、このような投与は、各タイプの治療剤を逐次的に使用することも包含する。いずれの場合にも、治療計画は、本明細書に記載されている状態または障害の治療において薬の組み合わせの有益な効果を提供することになろう。
【0086】
「PTPN11阻害剤」は、本明細書では、国際特許出願第PCT/US2019/045903に全体が記載されているPTPN11アッセイで測定したとき(例えば実施例21の組み換えヒトPTPN11タンパク質の酵素活性)、PTPN11活性に関して約100マイクロモル(μM)以下、より典型的には約50μM以下のIC50を示す化合物を意味するのに使用される。「IC50」は、酵素の活性を最大値の半分のレベルに低下させる阻害剤(例えばPTPN11)の濃度である。ある実施形態では、PCT/US2019/045903に開示されている化合物は、本明細書に記載されているPTPN11アッセイで測定したとき、PTPN11の阻害に関して約10μM以下のIC50を示し;さらなる実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約1μM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約200nM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約100nM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約50nM以下のIC50を示す。ある実施形態では、式(2b)の化合物はPTPN11(例えばPTPN11-E76K変異酵素)の阻害に関して150nM以下のIC50を示す。ある実施形態では、式(10b)の化合物はPTPN11(例えばPTPN11-E76K変異酵素)の阻害に関して50nM以下のIC50を示す。
【0087】
「治療に有効な量」は、特定された疾患または状態の治療または改善に有用であるか、検出可能な治療効果または阻害効果を示すのに有用な化合物または医薬組成物の量を意味する。正確な量は治療の目的によるであろうし、当業者が既知の技術を利用して確認できるであろう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0088】
「治療する」、「治療している」、および「治療」は、損傷、病状、または状態の治療または改善が成功したことの任意の指標(任意の客観的または主観的なパラメータ、例えば弱化すること;寛解すること;症状が減少すること、または損傷、病状、または状態を患者にとってより耐忍できるようにすること;悪化または衰弱の速度を遅延させること;悪化の最終地点での衰弱をより少なくすること;および/または患者の肉体的または精神的なウエルビーイングを改善することが含まれる)を意味する。症状の治療または改善は客観的または主観的なパラメータに基づくことができ;その中には身体検査、神経精神検査、および/または精神医学的評価の結果が含まれる。
【0089】
「投与する」は、化合物またはその1つの形態を経口投与または静脈内投与などによって対象に治療として提供することを意味する。
【0090】
「患者」または「対象」は、本明細書に提示されている医薬組成物の投与によって治療が可能な疾患または状態に苦しんでいるか、なりやすい生物を意味する。非限定的な例に含まれるのは、ヒト、非ヒト霊長類(例えばサル)、ヤギ、ブタ、ヒツジ、乳牛、シカ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、および他の非哺乳類動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は成人である(例えば年齢が少なくとも18歳)。
【0091】
「組成物」は、本明細書では、指定された成分を指定された量で含む生成物のほか、指定された量の指定された成分の組み合わせから直接または間接に生じる任意の生成物を包含することが想定されている。「医薬として許容可能な」とは、基剤、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合していて、そのレシピエントに対して有害ではない必要があることを意味する。
【0092】
「医薬として許容可能な賦形剤」は、対象への活性剤の投与と対象による活性剤の吸収を助ける物質を意味する。本開示で有用な医薬用賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味剤、香料、および着色剤である。他の医薬用賦形剤が本開示において有用である可能性がある。
【0093】
「錠剤」は、コーティングあり、またはなしの固体医薬製剤を意味する。「錠剤」という用語は、1、2、3、またはより多くの層を持つ錠剤も意味し、前記のタイプの錠剤のそれぞれは、コーティングなし、または1つ以上のコーティングありが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の錠剤は、ローラー圧縮によって、または本分野で知られている他の適切な手段によって調製することができる。「錠剤」という用語は、ミニ錠、溶解錠、チュアブル錠、発泡錠、および口腔内崩壊錠も含む。錠剤は、式(I)または(10b)の化合物と1つ以上の医薬用賦形剤(例えば充填剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤など)を含む。オプションとして、被覆剤も含めることができる。錠剤製剤の重量%を計算する目的では、被覆剤の量は計算に含めない。すなわち本明細書に報告されている重量%は被覆されていない錠剤のものである。
【0094】
特に断わらない限り、例えば錠剤製剤の中の式(I)または(10b)の化合物の含量は、式(I)または(10b)の化合物を無塩かつ無水に換算して規格化した重量に基づいて計算される。すなわち式(I)または(10b)の化合物の中の塩および/または水の含量は計算に含まれない。
【0095】
「KRAS G12C阻害剤」は、本明細書では、G12C変異したKRASの中の変異システイン12を選択的に変化させることによりKRAS(カーステンラット肉腫2ウイルスがん遺伝子ホモログ)の合成または生物活性を標的とする、低下させる、または阻害する化合物を意味する。KRAS G12C阻害剤は、KRAS G12Cを少なくとも部分的に阻害することができる。KRAS G12C阻害剤として、(例えばG12C変異を持つKRASに対し、別の変異(G12D変異など)を持つKRASに対してよりも大きい選択性を持つ)選択的KRAS G12C阻害剤が可能である。これらの場合には、選択的KRAS G12C阻害剤はKRAS G12Cに対して大きな効力を持つとともに、他のKRAS変異に対して低親和性を持つことができる。KRAS G12C阻害剤として(例えばシステイン12の共有結合型改変が可能な)共有結合型阻害剤が可能である。KRAS G12C阻害剤として非コルバネット阻害剤が可能である。KRAS G12C阻害剤はKRASの不活性(「GDP」)型に結合することができる。KRAS G12C阻害剤はKRASの活性(「GTP」)型に結合することができる。KRAS G12C阻害剤は、KRASの不活性(「GDP」)型と活性(「GTP」)型の両方に結合することができる。KRAS G12C阻害剤の例に含まれるのは、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446である。
【0096】
「KRAS陽性がん」は、再構成された、変異した、または増幅されたKRAS遺伝子を持つがんを意味する。「KRAS G12C陽性がん」は、再構成された、変異した、または増幅されたKRAS G12C遺伝子を持つがんを意味する。
【0097】
「KRAS阻害剤に対して抵抗性のがん」および/または「KRAS阻害剤に対して抵抗性のKRAS陽性がんであるがん」は、KRAS阻害剤を用いた以前の治療に対して好ましい応答をしないか、その代わりにKRAS阻害剤に対して好ましい応答をした後にぶり返すか再発するがんまたは腫瘍を意味する。「KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のがん」および/または「KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんであるがん」は、KRAS G12C阻害剤を用いた以前の治療に対して好ましい応答をしないか、その代わりにKRAS G12C阻害剤に対して好ましい応答をした後にぶり返すか再発するがんまたは腫瘍を意味する。
【0098】
「共同して治療に有効な量」は、本明細書では、治療剤が別々に(時間的にずらして、特に順番特異的に)温血動物(特に治療するヒト)に与えられたときに(加算的、しかし好ましくは相乗的な)相互作用(共同治療効果)を示す量を意味する。それが当てはまるかどうかは特に、血中レベルを追跡し、治療するヒトの血液中に両方の化合物が少なくともある時間の間は存在することを示すことによって判断できる。
【0099】
「相乗効果」は、本明細書では、少なくとも2つの治療剤(すなわち本明細書に規定されているPTPN11阻害剤と、本明細書に規定されているKRAS G12C阻害剤)の効果を意味し、それは、投与されたそれぞれの薬それ自体の効果の単なる和よりも大きい。効果として、例えば増殖性疾患(がんなど、特に肺がん(例えば非小細胞肺がん))またはその症状の症状進行遅延が可能である。同様に、「相乗的に有効な量」は、相乗効果を得るのに必要な量を意味する。
【0100】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「1つの(a(n))」は、本明細書の置換基群または「置換基」に関して使用されるときには、少なくとも1つを意味する。例えば化合物が「1つの」アルキルまたはアリールで置換されている場合、その化合物は少なくとも1つのアルキルおよび/または少なくとも1つのアリールで置換されている(ただしそれぞれのアルキルおよび/またはアリールは場合により異なる)。別の一例では、化合物が「1つの」置換基で置換されている場合、その化合物は少なくとも1つの置換基で置換されている(ただしそれぞれの置換基は場合により異なる)。
【0101】
III.併用療法
第1の側面では、本開示により、対象のがんを治療する方法が提供される。この方法は、その対象に、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化5】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを投与することを含む(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0102】
III-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤をセクションIV.化合物に従ってさらに記述する。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態の任意の1つである。
【0103】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2-メチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(2b):
【化6】
によって表わされる。
【0104】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(10b):
【化7】
によって表わされる。
【0105】
式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は医薬として許容可能な塩の形態または中和形態にすることができ、そのそれぞれは場合により、溶媒和物または水和物の形態である。
【0106】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は、医薬として許容可能な塩の形態である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の医薬として許容可能な酸添加塩は、式(10b-HX):
【化8】
によって表わされる(ただしHXは医薬として許容可能な酸添加である)。
【0107】
許容可能な酸添加塩の例に含まれるのは、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、またはリン酸など)に由来する塩のほか、有機酸(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)に由来する塩である。
【0108】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は中性形態である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は中性形態である。
【0109】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、式(10b):
【化9】
に示されている立体化学を持つ6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)の実質的な部分を持つ。
【0110】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は実質的に、式(10b):
【化10】
に示されているようにR立体配置である。
【0111】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、6-((6S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンの名称を持つ式:
【化11】
によって表わされる。
【0112】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、それぞれ式:
【化12】
によって表わされるように、1つ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると少なくとも約95面積%の純度を持つ。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、または約98面積%~約99面積%の純度を持つ。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約98面積%~約99面積%の純度を持つ。
【0114】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、上記の式によって表わされる1つ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体を含み;前記1つ以上の異性体の合計は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると約5面積%以下である。
【0115】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体は式(10b)の化合物の中に存在するは以下の受け入れ基準を満たす:鏡像異性体(3R,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)≦1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)≦0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)≦0.5面積%(これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる)。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は少なくとも約95面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)<0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、または約98面積%~約99面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)<0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約98面積%~約99面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4S,R)は約0.86面積%であり;ジアステレオマー(3S,4R,S)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4R,R)は約0.07面積%であり;ジアステレオマー(3S,4S,S)は検出されず;ジアステレオマー(3S,4R,R)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4S,S)は検出されず、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。
【0116】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、式(10b)、および式(10b-HX)のいずれか1つの化合物は溶媒和物および/または水和物の形態である。
【0117】
KRAS G12C阻害剤として、がんの治療における使用について記載されている阻害剤が可能である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はKRAS G12Cキナーゼを少なくとも部分的に阻害する。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は(例えばG12C変異を持つKRASに対し、別の変異(G12D変異など)を持つKRASに対してよりも大きい選択性を持つ)選択的KRAS G12C阻害剤である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は(例えばシステイン12の共有結合型改変が可能な)共有結合型阻害剤である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は非コルバネット阻害剤である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はKRASの不活性(「GDP」)型の阻害剤である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はKRASの活性(「GTP」)型阻害剤である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はKRASの不活性(「GDP」)型と活性(「GTP」)型両方の阻害剤である。
【0118】
いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はアダグラシブ(MRTX-849)である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤が式(10b)の化合物であるとき、KRAS G12C阻害剤はソトラシブ(AMG 510)ではない。
【0119】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤はソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤はソトラシブ(AMG 510)である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤はアダグラシブ(MRTX-849)である。
【0120】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(10b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤は、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(10b)によって表わされ;KRAS G12C阻害剤はアダグラシブ(MRTX-849)である。
【0121】
III-2:がん/固形腫瘍
がんとして、PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤(例えばソトラシブまたはアダグラシブ)の治療に応答する任意のがんが可能である。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS変異(KRAS G12C変異など)によって起こる、および/またはKRAS変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、Q61X 変異以外のKRAS変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんはKRAS陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS G12C陽性がん(例えばKRAS内のG12C変異を特徴とするがん)である。
【0122】
がんは固形腫瘍または液体腫瘍を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは液体腫瘍を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、がんは、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、尿路上皮癌、胃がん、中皮腫、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS変異(KRAS G12C変異など)を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、KRASタンパク質はG12C変異を含む。いくつかの実施形態では、がんは、KRASの中のG12C変異を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、上皮増殖因子受容体(EGFR)タンパク質の中の変異を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFRまたは未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の中の変異を特徴としないNSCLCである。
【0124】
いくつかの実施形態では、がんはKRAS G12C陽性がんである(例えばKRASの中のG12C変異を特徴とするがん)。いくつかの実施形態では、KRAS G12C陽性がんは、非小細胞肺がん、小腸がん、虫垂がん、結腸直腸がん、原発不明のがん、子宮内膜がん、混合タイプのがん、膵臓がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、胚細胞がん、卵巣がん、胃腸神経内分泌がん、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃接合部がん、軟組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、または黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんは、小腸がん、虫垂がん、子宮内膜がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、胚細胞腫瘍、卵巣がん、胃腸神経内分泌腫瘍、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃接合部がん、軟組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、または黒色腫である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C陽性がんは、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、虫垂がん、子宮内膜がん、原発不明のがん、膨大部がん、胃がん、小腸がん、副鼻腔がん、胆管がん、または黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したKRAS G12C陽性固形腫瘍(例えば肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、尿路上皮癌、胃がん、中皮腫、またはこれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したKRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したKRAS G12C陽性固形腫瘍だが、その固形腫瘍は非小細胞肺がん(NSCLC)以外である。
【0125】
がんとして、KRAS G12C阻害剤の治療に対して抵抗性の任意のがんも可能である。いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に規定され記載されているように、KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、KRASの不活性(「GDP」)型の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、KRASの活性(「GTP」)型の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS不活性(「GDP」)型と活性(「GTP」)型両方の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。
【0126】
いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に規定され記載されているように、KRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に規定され記載されているように、KRAS G12C 阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に規定され記載されているように、KRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とするKRAS G12C陽性がんである。
【0127】
いくつかの実施形態では、がんは、別の療法(KRASモジュレータ、白金に基づく療法、またはタキサン療法など)に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、アダグラシブ(MRTX-849)に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。
【0128】
いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんはソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんはソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんはアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんはソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんはアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。
【0129】
固形腫瘍として、PTPN11阻害剤とKRAS G12C阻害剤(例えばソトラシブまたはアダグラシブ)の治療に応答する任意の固形腫瘍が可能である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、再構成された、変異した、または増幅された1つ以上の遺伝子をKRASの中に持つ腫瘍だが、その腫瘍が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中の1つ以上の追加活性化変異によって起こるのとは異なる腫瘍であることが条件である。
【0130】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS内の変異によって起こる進行または転移した非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS内の変異によって起こる進行または転移した非小細胞肺がん(NSCLC)だが、 その腫瘍は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中の1つ以上の追加活性化変異によって起こるのとは異なる腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行または転移したKRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0131】
固形腫瘍として、KRAS G12C阻害剤(例えばソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446)の治療に対して抵抗性のあらゆる腫瘍も可能である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はKRAS G12C阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、本明細書に規定され記載されているように、KRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とするKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤の治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤の治療に対して抵抗性のKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性のKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、およびLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤の治療に対して抵抗性のKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性固形腫瘍である。
【0132】
いくつかの実施形態では、がん(例えば固形腫瘍)は、MAPK経路の中の1つ以上の変異(KRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、EGFR、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、またはこれらの組み合わせの中の1つ以上の変異など)を特徴とする。
【0133】
いくつかの実施形態では、がんまたは固形腫瘍は、MAPK経路における合成、発現、または生物活性を標的とする、低下させる、または阻害する阻害剤(KRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、EGFR、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体の1つ以上、またはこれらの組み合わせを標的とする阻害剤など)の治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんまたは固形腫瘍は、MAPK経路における合成、発現、または生物活性を標的とする、低下させる、または阻害する阻害剤(KRAS NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体の1つ以上、またはこれらの組み合わせを標的とする阻害剤など)に対する内因性抵抗性および/または獲得抵抗性を特徴とする。MEK阻害剤の例に含まれるのは、コビメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、ミルダメチニブ、およびセルメチニブである。BRAF阻害剤の例に含まれるのは、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、およびダブラフェニブである。EGFR阻害剤の例に含まれるのは、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブである。
【0134】
実施形態の任意の1つでは、本明細書に記載されているように、標準治療または治癒的療法をがんまたは固形腫瘍の治療に利用できない。
【0135】
III-3:対象
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は医療専門家(医師など)の治療下にある。いくつかの実施形態では、対象はがんと診断されている。いくつかの実施形態では、対象は再発している。いくつかの実施形態では、対象は以前に寛解に至った。いくつかの実施形態では、対象は、単剤療法の治療コースを以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、放射線療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、化学療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、白金に基づく化学療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、KRASモジュレータ(例えばKRAS阻害剤)の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、抗PD-1/PD-L1阻害剤(例えばチェックポイント阻害剤)の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。
【0136】
対象は、臨床で検証された適切な試験および/またはFDAが承認した適切な試験を利用した分子診断によって評価したとき、(例えば本明細書に記載されている)KRAS G12C変異を持つ進行した(例えば原発、転移、または再発)固形腫瘍を持つ一方で、利用可能な標準治療または治癒的療法がないという可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載されている治療への受け入れ前の少なくとも二(2)年以内に、臨床で検証された適切な試験および/またはFDAが承認した適切な試験を利用した分子診断によって評価したとき、(例えば本明細書に記載されている)KRAS G12C変異を持つ。
【0137】
いくつかの実施形態では、対象は、(例えば本明細書に記載されている)KRAS内の1つ以上の変異を特徴とするがんを持つが、そのがんはKRAS G12C変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS Q61X変異を特徴としないKRAS G12C変異を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS G12C変異とコドン13の追加変異(例えばG13D、G13A、G13C、G13R、G13S、およびG13V変異)を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS G12C変異とコドン61の追加変異を特徴とするがんを持つ。
【0138】
いくつかの実施形態では、対象はMAPK経路内に1つ以上の変異を持つ。いくつかの実施形態では、MAPK経路内の前記1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外の1つ以上の変異だが、対象はKRAS G12C変異も持つ。いくつかの実施形態では、対象は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、およびMuSK受容体の中の1つ以上の変異からなる群から選択される1つ以上の変異をMAPK経路内に持つが、その対象はKRAS G12C変異も持つ。いくつかの実施形態では、対象はNRAS内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はHRAS内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はCRAF内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はBRAF内の変異を持つ(V600X変異は除く)。いくつかの実施形態では、対象はNRAF内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はMAPK/ERK内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はMAPKK/MEK内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はNF1内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はIGFR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はPDGFR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はVEGFR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はFGFR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はCCKR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はNGFR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEphR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はAXLR内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はTIE受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はRYK受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はDDR受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はRET受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はROS受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はLTK受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はROR受容体内の変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はMuSK受容体内の変異を持つ。
【0139】
いくつかの実施形態では、対象はEGFR内の変異を持つが、その対象はKRAS G12C変異も持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFR変異(EGFRエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFR変異(EGFRエキソン19欠失および/またはエキソン20挿入が含まれる)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFRエキソン19欠失を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFRエキソン20挿入を持つ。
【0140】
いくつかの実施形態では、対象はPTPN11内に変異(E76K変異など)を持たない。
【0141】
いくつかの実施形態では、対象は、以前の少なくとも1回の全身療法のライン(白金に基づく二剤併用化学療法および/または抗PD-1/PD-L1療法が含まれ、そのそれぞれが単剤療法として与えられるか、その両方が併用療法として与えられる)のとき、またはその後に進行するか再発した固形腫瘍を持つ。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)に従う測定可能な疾患を持つ。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を用いた対象の治療が、RECISTに従う疾患状態の測定可能な変化を引き起こす。
【0143】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせた治療を開始する前の少なくとも約四(4)週間、または介入的臨床研究に用いる薬剤の五(5)半減期のどちらかより短い期間以内前に介入的臨床研究に参加したことがない。
【0144】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する前に、放射線療法または陽子線治療(それに含まれるのは、i)約一(1)週間の期間以内の緩和のための限定された領域の照射、またはii)約四(4)週間の期間以内の骨髄の約30%超への照射、または広い範囲の照射である)を受けたことがない。
【0145】
いくつかの実施形態では、対象が摂取したことがないか、摂取中でないのは、a)式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内前のCYP3A4および/またはP-gpの誘導剤または阻害剤(グレープフルーツジュース、スターフルーツ、またはセビリアオレンジを含有するハーバルサプリメントまたは食品が含まれる)の強力な、または中程度の誘導剤または阻害剤の1つ以上;b)式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内のCYP3A4、P-gp、多剤と毒素の排出タンパク質(MATE)1、および/またはMATE2-Kトランスポータの既知の基質である薬;および/または式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内の1つ以上の酸還元剤(プロトンポンプ阻害剤(PPI)またはH2受容体アンタゴニストなど)である。
【0146】
いくつかの実施形態では、対象は、下に規定する不十分な臓器機能を持たない(十分な血液学的機能、腎臓機能、肝臓機能、および凝固機能であることが含まれる):
血液学
a.絶対好中球カウントが1,500/μL未満;
b.血小板が100,000/μL未満;および
c.2週間以下の輸血、または6週間以下の赤血球生成刺激剤(例えばEpo、Procrit)なしでヘモグロビンが9g/dL未満。
腎臓
d.血清クレアチニンが1.5×ULN超(ただし(測定するか、コッククロフト-ゴールトの式を用いて計算して)クレアチニンクリアランスが40mL以上/分である場合は除く)
肝臓
e.患者がジルベール症候群または溶血性貧血の診断を治験責任医師によって確認された場合には、血清全ビリルビンが1.5×施設内基準値上限(ULN)以上、または3.0×施設内ULN以上;および
f.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)が2.5×ULN超。
凝固
g.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、国際標準化比(INR)またはプロトロンビン時間(PT)が1.5×ULN超;および
h.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたはaPTTが抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、活性化部分トロンボプラスチン時間が1.5×ULN超。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象は、測定可能なウイルス量を持つ活性なB型肝炎感染、C型肝炎感染、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を持たない。
【0148】
いくつかの実施形態では、対象は、生命を脅かす病気、医学的症状、活性な制御されない感染、または臓器系機能不全(例えば腹水、血液凝固障害、または脳症)を持つ持たない。
【0149】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上の心臓関連の疾患または知見を持たない:
a)治療開始前の最後の6ヶ月以内に有意な心血管疾患(例えば脳血管障害、心筋梗塞、または不安定狭心症)の既往歴;
b)臨床的に有意な心疾患(ニューヨーク心臓協会のクラスII以上の心不全が含まれる);
c)治療開始前の過去12ヶ月以内に左室駆出率(LVEF)が50%未満の前歴;
d)提供されたECG機械を用いた3つの心電図(ECG)からの平均として導出した安静時補正QT間隔(QTc)が470ミリ秒超;および/または
e)安静時ECGのリズム、伝導、または形態における臨床的に有意なあらゆる異常(例えば第3度心ブロック、モビッツ2型心ブロック、心室性不整脈、制御されない心房細動)。
【0150】
いくつかの実施形態では、対象は、過去3年以内に追加の浸潤性悪性腫瘍を診断されたことがない(ただしその追加の浸潤性悪性腫瘍は、治癒的治療をされた非黒色腫皮膚がん、表在性尿路上皮癌、上皮内子宮頸がん、または治癒的治療をされていて式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療のコースの間に再発に関して治療を必要とすることが予想されない他の任意の悪性腫瘍以外である)。
【0151】
いくつかの実施形態では、対象は、非脳腫瘍からの1つ以上の未治療脳転移を持たない。
【0152】
いくつかの実施形態では、脳転移が切除されているか、式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する(例えばサイクル1の1日目)少なくとも4週間前に終了する放射線療法を受けた対象が適格だが、その対象が治療の開始前に以下の基準のすべてを満たすことが条件である:a)CNS治療グレード≦2に関係する残留神経症状;b)適用可能な場合には、サイクル1の1日目の前に少なくとも2週間にわたって毎日安定な用量または減らしていく用量の≦10mgのプレドニゾン(または等価物)を投与された;およびc)サイクル1の1日目の前4週間以内の追跡磁気共鳴イメージング(MRI)が新たな病巣の出現を示さない。
【0153】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療への登録の前4週間以内に大きな外科手術を受けたことがない(ただしその外科手術または手続きは、末梢挿入式中心ラインカテーテル留置、胸腔穿刺、穿刺、生検、または膿瘍ドレナージ以外である)。
【0154】
いくつかの実施形態では、対象は、どの組み合わせをその対象が投与される可能性があるかに応じ、KRAS G12C阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物に対して、KRAS G12C阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物の活性または不活性な賦形剤に対して、またはKRAS G12C阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物と似た化学構造またはクラスの薬に対して過敏の前歴を持たない。
【0155】
いくつかの実施形態では、対象は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、および/またはKRAS Q61Xの中に1つ以上の追加活性化変異を持たない。いくつかの実施形態では、対象は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、および/またはKRAS Q61Xの中に1つ以上の追加活性化変異を有する腫瘍を持たない。
【0156】
いくつかの実施形態では、対象は(例えば本明細書に記載されている)KRAS G12C阻害剤を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象はソトラシブまたはアダグラシブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象はソトラシブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象はアダグラシブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象はKRAS G12C阻害剤を用いて以前に治療された。いくつかの実施形態では、対象はソトラシブを用いて以前に治療された。いくつかの実施形態では、対象は、ソトラシブ以外のKRAS G12C阻害剤を用いて以前に治療された。いくつかの実施形態では、対象は、アダグラシブを用いて以前に治療された。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11阻害剤(例えばSHP2阻害剤)を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11阻害剤(例えばSHP2阻害剤)を用いて以前に治療されていない(ただしそのPTPN11阻害剤は式(I)または(10b)の化合物以外である)。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、およびERAS601からなる群から選択されるPTPN11阻害剤を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、ERAS601、および式(I)または(10b)の化合物のいずれか1つを含むSHP2阻害剤を用いて以前に治療されたことがない。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物を用いて以前に治療されたことがある。
【0157】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物の吸収を不可能にする可能性のある胃腸病(例えば胃切除後、短腸症候群、制御されないクローン病、絨毛萎縮を伴うセリアック病、または慢性胃炎)を持たない。
【0158】
いくつかの実施形態では、対象は透析を受けていない。
【0159】
いくつかの実施形態では、対象は同種異系骨髄移植の前歴を持たない。
【0160】
式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療の利益を受ける可能性のある対象(KRAS G12C阻害剤と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究に登録された対象など)に関するさらなる選択基準と除外基準が実施例5に記載されている。
【0161】
いくつかの実施形態では、対象は、実施例5に記載されている選択基準1)~11)のすべてを満たす。いくつかの実施形態では、対象は実施例5に記載されている選択基準1)~11)のすべてを満たすが、その対象は実施例5に記載されている除外基準1)~17)のどの1つも満たさない。
【0162】
III-4:治療サイクルと用量調節
式(I)または(10b)の化合物をKRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いる治療は、1回以上の治療サイクル(例えば少なくとも1、2、3回、またはより多数回の治療サイクル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療は、1回以上の治療サイクル(例えば少なくとも1、2、3回、またはより多数回の治療サイクル)を含む。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも2、3回、またはより多数回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は2~3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は4回以上の治療サイクルを含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;式(I)または(10b)の化合物が毎日投与される。いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;KRAS G12C阻害剤が毎日投与される。いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのぞれぞれは約28日間の継続期間を持ち;式(I)または(10b)の化合物が毎日投与されるとともに;KRAS G12C阻害剤が毎日投与される。
【0164】
治療は用量漸増期間を含むことができ、その間には、直前の治療サイクルの後に、式(I)または(10b)の化合物またはKRAS G12C阻害剤の用量を調節すること(例えば用量漸増または用量漸減)または維持することができる。用量調節は、少なくとも一部が安全性評価(例えば用量制限毒性(DLT)評価)に基づくことができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を用いた治療を第1の化合物用量レベルと第1のKRAS G12C阻害剤用量レベルで開始し、その後、第2の化合物用量レベルと第2のKRAS G12C阻害剤用量レベルで治療される(ただし第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルとは異なる、および/または第2のKRAS G12C阻害剤用量レベルは第1のKRAS G12C阻害剤用量レベルとは異なる)。いくつかの実施形態では、第2のKRAS G12C阻害剤用量レベルは第1のKRAS G12C阻害剤用量レベルよりも低い。いくつかの実施形態では、第2のKRAS G12C阻害剤用量レベルは第1のKRAS G12C阻害剤用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態では、第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルよりも低い。いくつかの実施形態では、第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、KRAS G12C阻害剤および/または式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)、用量維持、または用量漸減(例えば用量減少)を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、KRAS G12C阻害剤の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、KRAS G12C阻害剤の1回以上の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、KRAS G12C阻害剤の1回以上の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸減(例えば用量減少)を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)を含む。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、KRAS G12C阻害剤および/または式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)、用量維持、または用量漸減(例えば用量減少)を含み、そのそれぞれは、(例えば対象のコホートに関する)安全性または用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含み、そのそれぞれは、実施例5と図9に記載されているように、用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。
【0166】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、直前の治療サイクルの後の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量漸増を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、直前の治療サイクルの後の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量維持を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、直前の治療サイクルの後の用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量維持を含む。
【0169】
用量漸増期間の後、治療は用量拡大/最適化期間をさらに含む。用量拡大/最適化期間のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物が、用量漸増期間の間に決定された投与計画(例えば投与計画1または投与計画2)で投与される。
【0170】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は1回以上の用量調節を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量拡大/最適化期間中の1回以上の用量調節を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量拡大/最適化期間中の1回以上の用量調節を含み;その1回以上の用量調節は、安全審査委員会(SRC)によって安全性評価に従って判断される。
【0171】
本明細書に記載されている実施形態の任意の1つでは、1日総用量の中のKRAS G12C阻害剤は調節されない(例えばいかなる用量漸増および/または用量漸減も治療中は許されない)。
【0172】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物および/またはKRAS G12C阻害剤の投与の調節、遅延、および中止は実施例5の基準にさらに基づく。
【0173】
III-5:治療に有効な量/投与
式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、共同して治療に有効な量または相乗的に有効な量で提供すること、またはそのそれぞれを、それぞれが単独で使用されるときとは異なる用量で使用することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、共同して治療に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は相乗的に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物および/またはKRAS G12C阻害剤は、(例えば単剤療法治療におけるように)単独で使用されるときとは異なる用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、それぞれが単独で使用されるときとは異なる用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、それぞれが単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、単独で使用されるときよりも多い用量で使用される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、単独で使用されるときよりも多い用量で使用される。
【0174】
式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、同時に、または逐次的に投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を同時に投与する。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤は、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を含む医薬組成物として投与される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を逐次的に投与する。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を投与する前に式(I)または(10b)の化合物を投与する。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤を投与した後に式(I)または(10b)の化合物を投与する。
【0175】
式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量として、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量が可能である。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、または約300mg~約400mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0176】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg、約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0177】
式(10b)の化合物の治療に有効な量として、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量が可能である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0178】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0179】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、または約1000mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約550mg、または約700mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約150mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約700mgの1日総用量である。
【0180】
いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約10mg~約2000mg、約10mg~約1500mg、約10mg~約1200mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約960mg、約10mg~約840mg、約10mg~約800mg、約10mg~約720mg、約10mg~約600mg、約10mg~約480mg、約10mg~約360mg、約10mg~約300mg、約10mg~約240mg、約10mg~約150mg、約100mg~約2000mg、約100mg~約1500mg、約100mg~約1200mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約960mg、約100mg~約840mg、約100mg~約800mg、約100mg~約720mg、約100mg~約600mg、約100mg~約480mg、約100mg~約360mg、約100mg~約300mg、約100mg~約240mg、約100mg~約150mg、約200mg~約2000mg、約200mg~約1500mg、約200mg~約1200mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約960mg、約200mg~約840mg、約200mg~約800mg、約200mg~約720mg、約200mg~約600mg、約200mg~約480mg、約200mg~約360mg、約200mg~約300mg、約200mg~約240mg、約300mg~約2000mg、約300mg~約1500mg、約300mg~約1200mg、約300mg~約960mg、約300mg~約840mg、約300mg~約720mg、約300mg~約600mg、約300mg~約480mg、約300mg~約360mg、約400mg~約2000mg、約400mg~約1500mg、約400mg~約1200mg、約400mg~約960mg、約400mg~約840mg、約400mg~約720mg、約400mg~約600mg、約400mg~約480mg、約500mg~約2000mg、約500mg~約1500mg、約500mg~約1200mg、約500mg~約960mg、約500mg~約840mg、約500mg~約720mg、約500mg~約600mg、約600mg~約2000mg、約600mg~約1500mg、約600mg~約1200mg、約600mg~約960mg、約600mg~約840mg、約600mg~約720mg、または約600mg~約1200mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約100mg、120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約240mg、約250mg、約300mg、約350mg、約360mg、約400mg、約450mg、約480mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約720mg、約750mg、約800mg、約840mg、約850mg、約900mg、約950mg、約960mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、または約1200mgの1日総用量である。
【0181】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約10mg~約2000mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約100mg~約2000mg、約100mg~約1000mg、約120mg~約960mg、約240mg~約960mg、約360mg~約960mg、約480mg~約960mg、約600mg~約960mg、約720mg~約960mg、約840mg~約960mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約1200mg、約10mg~約960mg、約10mg~約840mg、約10mg~約720mg、約10mg~約600mg、約10mg~約480mg、約10mg~約360mg、約10mg~約300mg、約10mg~約240mg、または約10mg~約150mg、約600mg~約1200mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約480mg~約1200mgの1日総用量である。
【0182】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約120mg、約150mg、約240mg、約300mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、約960mg、または約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約960mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約960mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約960mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgであり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約600mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約600mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量であり;KRAS G12C阻害剤の治療に有効な量は、約600mgの1日総用量である。
【0183】
一般に、式(I)または(10b)の化合物は経口投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態では、錠剤製剤の中の式(10b)の化合物は経口投与される。
【0184】
一般に、KRAS G12C阻害剤は経口投与することができる。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は経口投与される。
【0185】
一般に、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回または複数回(例えば2、3、4、またはより多数回)投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回、2回、3回、または4回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合は1日に1回、2回、3回、または4回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物はは1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に2回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物はは2日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、4日間投与と3日間休み(例えば化合物は4日連続して投与された後、3日連続して投与されない)、5日間投与と2日間休み、2日間投与と5日間休み、1週間投与と1週間休み、2週間投与と1週間休み、3週間投与と1週間休み、または同様のスケジュールで投与される。
【0186】
一般に、KRAS G12C阻害剤は1日に1回、2回、または複数回(例えば2、3、4、またはより多数回)投与することができる。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与される。
【0187】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤はそれぞれ経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤はそれぞれ経口投与される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回投与され;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与される。
【0188】
式(I)または(10b)の化合物は、1つ以上の製剤濃度の経口剤型にすることができ、その中では、式(I)または(10b)の化合物が、無塩かつ無水に換算して少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、または500mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、経口剤型は、1つ以上の製剤濃度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、または5~100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mg、50mg、または100mgの量で各錠剤の中に存在する。
【0189】
式(10b)の化合物は1つ以上の製剤濃度の経口剤型にすることができ、その中では、式(10b)の化合物が、無塩かつ無水に換算して少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、または500mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、経口剤型は、1つ以上の製剤濃度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、または5~100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mg、50mg、または100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約50mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約100mgの量で各錠剤の中に存在する。
【0190】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、式(10b)の化合物約2000mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、約300mg~約400mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供する。
【0191】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、式(10b)の化合物約2000mg以下の1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与されて、約10mg~約2000mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与されて、約100mg~約2000mg、約100mg~約1000mg、約120mg~約960mg、約240mg~約960mg、約360mg~約960mg、約480mg~約960mg、約600mg~約960mg、約720mg~約960mg、または約840mg~約960mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与されて、約480mg~約960mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に1回投与されて、約960mgの1日総用量を提供する。
【0192】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、式(10b)の化合物約2000mg以下の1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与されて、約10mg~約2000mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与されて、約100mg~約2000mg、約100mg~約1000mg、約120mg~約960mg、約240mg~約960mg、約360mg~約960mg、約480mg~約960mg、約600mg~約960mg、約720mg~約960mg、約840mg~約960mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約1200mg、約10mg~約960mg、約10mg~約840mg、約10mg~約720mg、約10mg~約600mg、約10mg~約480mg、約10mg~約360mg、約10mg~約300mg、約10mg~約240mg、または約10mg~約150mg、または約600mg~約1200mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、(例えば本明細書に記載されているように)式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与されて、約120mg~約2000mg、または約600mg~約1200mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与されて、約1200mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供し;KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与されて、約600mgの1日総用量を提供する。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、式(10b)の化合物は、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、KRAS G12C阻害剤は、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、式(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤はそれぞれ、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、式(10b)の化合物は、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、KRAS G12C阻害剤は、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に2回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に式(10b)の化合物は1日に1回投与され、KRAS G12C阻害剤は1日に2回投与される。
【0194】
一般に、式(10b)の化合物は、対象に食事抜きで投与することが推奨される(例えば一晩(最低8時間)絶食した後に用量を摂取し、その後2時間絶食)。対象は、投与の前と後の一(1)時間の間を除いて水を飲むことが許され、対象は投与時に水(例えば240mL)を与えられる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は対象に、投与前の少なくとも約8時間と投与後の少なくとも約2時間は食事抜きにして投与される。
【0195】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物を投与してから約5分後にKRAS G12C阻害剤を1日に1回投与する。
【0196】
III-6:有効性
PTPN阻害剤(例えば式(10b)によって表わされる化合物)をKRAS G12C阻害剤と組み合わせた臨床研究を実施し、この組み合わせが対象のがん(例えば固形腫瘍を含むがん)を縮小または安定化させることの安全性、忍容性、および有効性を評価することができる。いくつかの実施形態では、対象は非小細胞肺がん(NSCLC)を含む固形腫瘍を持つ。いくつかの実施形態では、対象は非小細胞肺がん(NSCLC)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はKRAS変異を特徴とするNSCLCを持つ。
【0197】
さまざまな実施形態では、対象は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも21ヶ月、または少なくとも23ヶ月、例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、21ヶ月、または24ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも1ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも3ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも6ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも8ヶ月にわたって前記療法を投与される。
【0198】
対象は前記療法に応答することができ、それは固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)1.1プロトコルによって判断される少なくとも安定な疾患(SD)によって測定される(Eisenhauer, et al., Eur J Cancer; 2009; 45(2):228-247)。RECIST v1.1は下記の実施例に詳細に論じられている。少なくとも安定な疾患は、安定な疾患、部分奏功(PR)を示した疾患、または完全奏功(CR)を示した疾患である(すなわち「少なくともSD」=SD+PR+CRであり、しばしば疾患制御と呼ばれる)。さまざまな実施形態では、安定な疾患は、部分奏功(PR)と認定される十分な縮小でも、進行疾患(PD)と認定される十分な増加でもない。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも部分奏功を示す(すなわち「少なくともPR」=PR+CRであり、しばしば客観的奏功と呼ばれる)。
【0199】
応答は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制または減少、標的または腫瘍病巣の減少、進行までの時間遅延、新たな腫瘍または病巣の不在、新たな腫瘍形成の減少、生存率または無増悪生存率(PFS)の増加、および無転移のうちの1つ以上によって測定することができる。さまざまな実施形態では、対象の疾患進行は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X線、超音波、またはこれらのいくつかの組み合わせを利用して対象を評価することにより、腫瘍のサイズ、腫瘍の病巣、または新たな腫瘍または病巣の形成を測定することによって評価することができる。
【0200】
無増悪生存(PFS)はRECIST 1.1プロトコルに記載されているようにして評価することができる。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも1ヶ月のPFSを示す。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも3ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は少なくとも6ヶ月のPFSを示す。
【0201】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍を縮小させること、または実質的に排除することができる。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍を実質的に消失させる。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれよりも多く減らす。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約90%、約70%~約80%、約80%~約90%の範囲、またはその中の任意の範囲減らす。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす。
【0202】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍を安定化させることができる。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍を安定化させる。
【0203】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍の縮小または安定化をある期間(例えば1~12ヶ月)にわたって維持することができる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量で用いると少なくとも約1ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた式(10b)の化合物を治療に有効な量で用いると少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、約1~約12ヶ月、約1~約6ヶ月、約1~約3ヶ月、または約1~約2ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。
【0204】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上の試験によってさらに評価されて全体評価(血漿の薬物動態および/または薬力学のプロファイルが含まれる)が提供される。
【0205】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上のバイオマーカーを評価されて、前記1つ以上のバイオマーカーと抗腫瘍応答の相関が明らかにされる。
【0206】
III-7:式(10b)とアダグラシブの併用療法
1つの側面では、本開示により、対象のがんを治療する方法が提供される。この方法は、その対象に、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化13】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のアダグラシブ(MRTX-849)
を投与することを含む。
【0207】
別の1つの側面では、本開示により、NSCLCを治療する方法が提供される。この方法は、対象に、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化14】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のアダグラシブ(MRTX-849)
を投与することを含む。
【0208】
別の1つの側面では、本開示により、結腸直腸がんを治療する方法が提供される。この方法は、対象に、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化15】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のアダグラシブ(MRTX-849)
を投与することを含む。
【0209】
式(10)の化合物は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤と、セクションIV.化合物に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(10)の化合物は、セクションIII-1に記載されている実施形態の任意の1つである。
【0210】
がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に従って記述される。いくつかの実施形態では、がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に記載されている実施形態の任意の1つである。
【0211】
いくつかの実施形態では、がんまたは固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)または結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、 固形腫瘍は、進行または転移したKRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、アダグラシブ(MRTX-849)に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)を用いた治療に対して抵抗性の非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)を用いた治療に対して抵抗性の非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、アダグラシブ(MRTX-849)を用いた治療に対して抵抗性の非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)またはアダグラシブ(MRTX-849)を用いた治療に対して抵抗性の結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは、ソトラシブ(AMG 510)を用いた治療に対して抵抗性の結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは、アダグラシブ(MRTX-849)を用いた治療に対して抵抗性の結腸直腸がんである。
【0212】
対象は、セクションIII-3:対象に従って記述される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態の任意の1つである。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態のいずれか1つである(ただしKRAS G12C阻害剤は、適用可能であるときにはアダグラシブ(MRTX-849)である)。
【0213】
いくつかの実施形態では、対象は、アダグラシブ(MRTX-849)または式(I)または(10b)の化合物に対して、アダグラシブ(MRTX-849)または式(I)または(10b)の化合物の活性または不活性な賦形剤に対して、またはアダグラシブ(MRTX-849)または式(I)または(10b)の化合物と似た化学構造またはクラスの薬に対して過敏の前歴を持たない。
【0214】
いくつかの実施形態では、対象は、アダグラシブ(MRTX-849)を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、アダグラシブ(MRTX-849)を用いて以前に治療されたことがない。いくつかの実施形態では、対象は、アダグラシブ(MRTX-849)以外のKRAS G12C阻害剤を用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11阻害剤(例えばSHP2阻害剤)を用いて以前に治療されていない(ただし前記PTPN11阻害剤は式(10b)の化合物以外である)。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、およびERAS601からなる群から選択されるPTPN11阻害剤を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、式(10b)の化合物を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、ERAS601、および式(10b)の化合物のいずれか1つを含むSHP2阻害剤を用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物を用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物以外のPTPN11阻害剤を用いて以前に治療されたことがある。
【0215】
治療サイクルと用量調節は、セクションIII-4:治療サイクルと用量調節に従って記述される。いくつかの実施形態では、治療サイクルと用量調節は、セクションIII-4:治療サイクルと用量調節に記載されている実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、治療サイクルと用量調節は、セクションIII-4:治療サイクルと用量調節に記載されている実施形態のいずれか1つである(ただしKRAS G12C阻害剤は、適用可能なときにはアダグラシブ(MRTX-849)である。
【0216】
治療に有効な量および/または投与は、セクションIII-5:治療に有効な量/投与に従って記述される。いくつかの実施形態では、彼、治療に有効な量および/または投与は、セクションIII-5:治療に有効な量/投与に記載されている実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、彼、治療に有効な量および/または投与は、セクションIII-5:治療に有効な量/投与に記載されている実施形態のいずれか1つである(ただしKRAS G12C阻害剤は、適用可能なときにはアダグラシブ(MRTX-849)である)。
【0217】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とアダグラシブ(MRTX-849)は共同して治療に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とアダグラシブ(MRTX-849)は相乗的に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物および/またはアダグラシブ(MRTX-849)はそれぞれ、それぞれが単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。
【0218】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とアダグラシブ(MRTX-849)は(本明細書に記載されているように)同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とアダグラシブ(MRTX-849)は(本明細書に記載されているように)逐次的に投与される。
【0219】
いくつかの実施形態では、アダグラシブ(MRTX-849)の治療に有効な量は、約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、約100mg~約2000mg、約200mg~約2000mg、約300mg~約2000mg、約400mg~約2000mg、約500mg~約2000mg、約600mg~約2000mg、約700mg~約2000mg、約800mg~約2000mg、約900mg~約2000mg、約1000mg~約2000mg、約1100mg~約2000mg、約1200mg~約2000mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、約100mg~約1500mg、約200mg~約1500mg、約300mg~約1500mg、約400mg~約1500mg、約500mg~約1500mg、約600mg~約1500mg、約700mg~約1500mg、約800mg~約1500mg、約900mg~約1500mg、約1000mg~約1500mg、約1100mg~約1500mg、約1200mg~約1500mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、約100mg~約1200mg、約200mg~約1200mg、約300mg~約1200mg、約400mg~約1200mg、約500mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、約700mg~約1200mg、約800mg~約1200mg、約900mg~約1200mg、約1000mg~約1200mg、約1100mg~約1200mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、約600mg~約1200mg、約700mg~約1200mg、約800mg~約1200mg、約900mg~約1200mg、約1000mg~約1200mg、約1100mg~約1200mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、約100mg、120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約240mg、約250mg、約300mg、約350mg、約360mg、約400mg、約450mg、約480mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約720mg、約750mg、約800mg、約840mg、約850mg、約900mg、約950mg、約960mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、または約1200mgの1日総用量である。
【0220】
いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、アダグラシブ約150mg、約300mg、約600mg、または約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、アダグラシブ約600mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、アダグラシブの治療に有効な量は、アダグラシブ約1200mgの1日総用量である。
【0221】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量であり;アダグラシブの治療に有効な量は、約120mg、約150mg、約240mg、約300mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、約960mg、または約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgの1日総用量であり;アダグラシブの治療に有効な量は約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量であり;アダグラシブの治療に有効な量は約1200mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量であり;アダグラシブの治療に有効な量は約1200mgの1日総用量である。
【0222】
いくつかの実施形態では、アダグラシブは経口投与される。
【0223】
いくつかの実施形態では、アダグラシブは1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、アダグラシブは1日に2回投与される。
【0224】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とアダグラシブはそれぞれ経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;アダグラシブは1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;アダグラシブを1日に2回投与される。
【0225】
いくつかの実施形態では、アダグラシブは1日に1回または2回投与され、ソトラシブ約2000mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、アダグラシブは1日に2回投与されて約1500mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、アダグラシブは1日に2回投与されて約1200mgの1日総用量を提供する。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に式(10b)の化合物が1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間にアダグラシブが1日に2回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に式(10b)の化合物が1日に1回投与され、アダグラシブが1日に2回投与される。
【0227】
有効性は、セクションIII-6:有効性に従って記述される。いくつかの実施形態では、彼、治療に有効な量および/または投与は、セクションIII-6:有効性に記載されている実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、彼、治療に有効な量および/または投与は、セクションIII-6:有効性に記載されている実施形態のいずれか1つである(ただしKRAS G12C阻害剤は、適用可能であるときにはアダグラシブ (MRTX-849)である。
【0228】
アダグラシブ(MRTX-849)と組み合わせた式(10b)の化合物の臨床研究を実施し、この組み合わせが対象のがん(例えば固形腫瘍を含むがん)を縮小または安定化させることの安全性、忍容性、および有効性を評価することができる(例えば実施例5の臨床プロトコルと同様)。いくつかの実施形態では、対象は固形腫瘍(非小細胞肺がん(NSCLC)または結腸直腸がんが含まれる)を持つ。いくつかの実施形態では、対象は非小細胞肺がん(NSCLC)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はKRAS変異を特徴とするNSCLCを持つ。いくつかの実施形態では、対象は結腸直腸がんを持つ。
【0229】
いくつかの実施形態では、アダグラシブと組み合わせた式(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす。
【0230】
いくつかの実施形態では、アダグラシブと組み合わせた式(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍を安定化させる。
【0231】
IV.化合物
本開示により、セクションIII:併用療法に記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療する方法で使用するための、式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤、セクションV:組成物に記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するための医薬組成物;およびセクションVI:キットに記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供される。PTPN11阻害剤は、WO2020/033828に規定され記載されている通りである(その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている)。
【0232】
PTPN11阻害剤は、式(I):
【化16】
によって表わされるか、その医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせである(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0233】
式(I)のいくつかの実施形態では、Yは直接的結合である。いくつかの実施形態では、YはCR1718である。いくつかの実施形態では、R17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択される。いくつかの実施形態では、R17とR18はそれぞれ独立に水素またはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、Yは-CHである。
【0234】
式(I)のいくつかの実施形態では、YはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、Yはメチルである。
【0235】
いくつかの実施形態では、化合物は式(Ia):
【化17】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0236】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(Ib):
【化18】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0237】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(Ic):
【化19】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0238】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字aとbはそれぞれ1である。
【0239】
(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、C3-8シクロアルキル、3または6員のヘテロシクリル(N、O、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;その中のヘテロシクリルとシクロアルキルは、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される0~3個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、およびC1-6ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、およびC1-4ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、-CHOH、CFOH、および-CHFOHからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、Cl、Br、メチル、およびCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は水素である。いくつかの実施形態では、R13はClである。いくつかの実施形態では、R13はBrである。いくつかの実施形態では、R13はメチルである。いくつかの実施形態では、R13はCFである。
【0240】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されている。
【0241】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;R14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0242】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群からそれぞれ独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;R14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0243】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されている。
【0244】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0245】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0246】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、C6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0247】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、C6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0248】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0249】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0250】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0251】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミドとC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0252】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されている。
【0253】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R10、およびR11は、独立に水素またはC1-4アルキルである。ある実施形態では、R、R、R10、およびR11はそれぞれ水素である。
【0254】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から独立に選択される。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、独立に水素またはC1-4アルキルである。ある実施形態では、R、R、R、およびRはそれぞれ水素である。
【0255】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R、R、R、およびRは、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-6シクロアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から独立に選択される。
【0256】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11はそれぞれ水素である。
【0257】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(II):
【化20】
によって表わされる(ただしR、R、R、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0258】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1~3個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。
【0259】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびメチルアミノからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RはアミノまたはC1-4アミノアルキルである。ある実施形態では、Rは、アミノ、アミノメチル、またはメチルアミノである。ある実施形態では、Rはアミノまたはアミノメチルである。ある実施形態では、Rはアミノである。ある実施形態では、Rはアミノメチルである。
【0260】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の基で置換されている)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、またはC1-4ヒドロキシアルキルである。ある実施形態では、RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはメチルである。ある実施形態では、Rはエチルである。
【0261】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RはC1-4アミノアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されている)からなる群から選択される。
【0262】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。
【0263】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシ)からなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されている)。
【0264】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。
【0265】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4ヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはヒドロキシメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはエチルである。
【0266】
上記の実施形態のいずれでも、Rのアミドとして特に-C(O)NHが可能である。
【0267】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0268】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0269】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和環を形成する。
【0270】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和環を形成する。
【0271】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、NとOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和環を形成する。
【0272】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0273】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員のシクロアルキル環を形成する。
【0274】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、アミド、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。
【0275】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;Rはアミノまたはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4ヒドロキシアルキルからなる群から選択される。
【0276】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0277】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0278】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0279】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、アミド、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている。
【0280】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;Rはアミノまたはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4ヒドロキシアルキルからなる群から選択される。
【0281】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0282】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0283】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0284】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されており(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)、いくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されている(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。いくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されている(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0285】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0286】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0287】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0288】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0289】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0290】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0291】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化21】
からなる群からなされる(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0292】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化22】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される(ただしR14は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0293】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化23】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される。
【0294】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化24】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0295】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化25】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0296】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化26】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0297】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。
【0298】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化27】
からなる群から独立に選択される。
【0299】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、
【化28】
からなる群から選択され;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される(ただしR14は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0300】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、
【化29】
からなる群から選択される。
【0301】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化30】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12はClである。
【0302】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化31】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は独立にClまたはBrである。
【0303】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0304】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0305】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、-C(O)NHMeで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14はフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、メチルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はN-メチルピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はピラゾリルである。
【0306】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化32】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0307】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化33】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0308】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化34】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14はフェニルまたはピラゾリルからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0309】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化35】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニル、ピラゾリル、およびC1-4アルキルで置換されたピラゾリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、MeNHC(O)-フェニル、ピラゾリル、およびN-メチルピラゾリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12はClであり;R14は、フェニル、MeNHC(O)-フェニル、ピラゾリル、およびN-メチルピラゾリルからなる群から選択される。
【0310】
ある実施形態では、化合物は、式(II):
【化36】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、シアノ、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されている;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている)。
【0311】
ある実施形態では、化合物は、式(III):
【化37】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、シアノ、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されており;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる1または2個の基によって置換されている)。
【0312】
ある実施形態では、化合物は、式(IV):
【化38】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0313】
ある実施形態では、化合物は、式(V):
【化39】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
は、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される)。
【0314】
ある実施形態では、化合物は、式(VI):
【化40】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0315】
ある実施形態では、化合物は、式(VII):
【化41】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0316】
ある実施形態では、化合物は、式(VIII):
【化42】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのRは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0317】
ある実施形態では、化合物は、式(IX):
【化43】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
は、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される)。
【0318】
ある実施形態では、化合物は、式(X):
【化44】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0319】
ある実施形態では、化合物は、式(XI):
【化45】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0320】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、R12、R13、およびR14は、上記の選択された実施形態のいずれか1つ以上の中に示されている意味を持つことができる。
【0321】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、およびC1-6ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、およびC1-4ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、Cl、Br、メチル、およびCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は水素である。いくつかの実施形態では、R13はClである。いくつかの実施形態では、R13はBrである。いくつかの実施形態では、R13はメチルである。いくつかの実施形態では、R13はCFである。
【0322】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは1~3個のR12で置換されている。いくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは2または3個のR12で置換されている。いくつかの実施形態では、Rは2または3個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたピリジルである。
【0323】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。
【0324】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化46】
からなる群から独立に選択される。
【0325】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12はClである。
【0326】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化47】
からなる群から独立に選択される。
【0327】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;第1と第2のR12はそれぞれClであり;第3のR12はBrである。いくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;第1と第2のR12はそれぞれClであり;第3のR12は、
【化48】
からなる群から独立に選択される。
【0328】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、-C(O)NHMeで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14はフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、メチルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はN-メチルピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はピラゾリルである。
【0329】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、RはアミノまたはC1-4アミノアルキルである。ある実施形態では、Rはアミノまたはアミノメチルである。ある実施形態では、Rはアミノである。ある実施形態では、Rはアミノメチルである。
【0330】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、またはC1-4ヒドロキシアルキルである。ある実施形態では、RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはメチルである。ある実施形態では、Rはエチルである。
【0331】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはメチルである。
【0332】
式(IV)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのRは独立に、アミノまたはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、それぞれのRは独立に、アミノまたはメチルである。
【0333】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、
【化49-1】
【化49-2】
【化49-3】
からなる群から選択される式によって表わされる。
【0334】
上記の任意の実施形態をこれら実施形態の任意の1つ以上と組み合わることのできる実施形態も提供されるが、その組み合わせが互いに排他的でないことが条件である。
【0335】
本明細書では、2つの実施形態が「互いに排他的である」のは、一方が他方とは異なる何かであると規定されるときである。例えば2つの基が合わさってシクロアルキルを形成する一実施形態は、一方の基がエチルであり他方の基が水素である一実施形態と互いに排他的である。同様に、1つの基がCHである一実施形態は、同じ基がNHである一実施形態と互いに排他的である。
【0336】
本明細書に開示されている化合物は、医薬として許容可能な塩として存在することができる。本開示は塩の形態になった上に列挙した化合物を含み、その中に含まれるのは酸添加塩である。適切な塩に含まれるのは、有機酸と無機酸の両方とで形成される塩である。そのような酸添加塩は通常は医薬として許容可能であろう。しかし医薬として許容可能でない塩の塩が問題の化合物の調製と精製に有用である可能性がある。塩基添加塩も形成することができて医薬として許容可能である可能性がある。
【0337】
「医薬として許容可能な」という表現は、過度な毒性、刺激、およびアレルギー応答なく患者の組織に接触させて用いるのに適していて、合理的なベネフィット/リスク比であり、想定する用途に有効な化合物(または塩、互変異性体、双性イオン形態など)を意味する。
【0338】
「医薬として許容可能な塩」という用語は、本明細書では、水溶性または油溶性または分散可能で本明細書に規定されているように医薬として許容可能な本明細書に開示の化合物の塩または双性イオン形態を表わす。塩は、化合物の最終的な単離と精製の間に調製すること、または遊離塩基の形態の適切な化合物と適切な酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸添加塩に含まれるのは、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、(p-トシル酸)、およびウンデカン酸塩である。また、本明細書に開示されている化合物の中の塩基性の基を、塩化、臭化、およびヨウ化したメチル、エチル、プロピル、およびブチル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル;塩化、臭化、およびヨウ化したデシル、ラウリルミリスチル、およびステリル;および臭化ベンジルと臭化フェネチルで四級化することができる。医薬として許容可能な添加塩の形成に使用できる酸の例に含まれるのは、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸など)と有機酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸など)である。塩は、化合物とアルカリ金属またはアルカリ土類のイオンの配位によって形成することもできる。したがって本開示では、本明細書に開示されている化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などを考慮する。
【0339】
塩基添加塩は、化合物の最終的な単離と精製の間にカルボキシ基を適切な塩基(金属カチオンの水酸化物、カルボン酸塩、または重炭酸塩など)と、またはアンモニア、または有機第一級、第二級、または第三級アミンと反応させることによって調製することができる。医薬として許容可能な塩のカチオンに含まれるのは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウムのほか、非毒性第四級アミンのカチオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N’-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなど)である。塩基添加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンに含まれるのは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンである。
【0340】
化合物の塩は遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって作製できる。
【0341】
V.組成物
式(I)または(10b)の化合物を含む経口剤型は、医薬として許容可能な1つ以上の基剤および/または賦形剤を含む任意の経口剤型にすることができる。経口調製物に含まれるのは、患者によって摂取されるのに適した錠剤、ピル、粉末、ドラジェ、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などである。
【0342】
式(I)または(10b)の化合物を含む経口剤型を調製するには、医薬として許容可能な基剤は固体または液体のどちらかが可能である。固体形態調製物は、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、座薬、および分散可能な顆粒を含む。固体基剤は1つ以上の物質であることが可能であり、それは、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても機能することができる。製剤化と投与のための技術に関する詳細は学術文献と特許文献によく記述されており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0343】
粉末では、基剤は細かく分割した固体であり、それは、細かく分割した活性成分との混合物になっている。錠剤では、活性成分を必要な結合特性を持つ基剤と適切な割合で混合し、望む形とサイズに圧縮する。
【0344】
粉末、カプセル、および錠剤は、式(I)または(10b)の化合物を5%~70%含有するか、式(I)または(10b)の化合物を約10%~約70%含有することが好ましい。適切な基剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物を、カプセルを提供する基剤としての封入材料とともに含む製剤を含むことが想定されている(カプセルの中では、活性成分が、他の賦形剤あり、またはなしで基剤によって取り囲まれているため、基剤は活性成分に付随する)。同様に、カシェとロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ、およびロゼンジを経口投与に適した固体剤型として使用できる。
【0345】
適切な固体賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ワックス;カカオバター;炭水化物:糖(その非限定的な例に含まれるのは、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン);セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなど);およびゴム(アラビアゴムとトラガカントゴムが含まれる)のほか、タンパク質(その非限定的な例に含まれるのはゼラチンとコラーゲンである)である。望むのであれば崩壊剤または可溶剤を添加することができ、それは例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)である。
【0346】
適切なコーティング(濃縮糖溶液など)を持つドラジェコアが提供され、それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有することができる。染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加して生成物を同定すること、または活性化合物の量(すなわち用量)を特徴づけることができる。この剤型の医薬調製物は、例えばゼラチン製の押し嵌め式カプセルのほか、ゼラチンとコーティング(グリセロールまたはソルビトールなど)でできた軟質密封カプセルを用いて経口で用いることもできる。押し嵌め式カプセルは、充填剤または結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定剤と混合した式(I)または(10b)の化合物を含有することができる。軟質カプセルの中では、式(I)または(10b)の化合物を、適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなど)の中に安定剤あり、またはなしで溶解または懸濁させることができる。
【0347】
座薬を調製するため、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物など)を最初に融解させ、式(I)または(10b)の化合物をその中に、例えば撹拌することによって均一に分散させる。融解した均一な混合物をその後便利なサイズの鋳型の中に注ぎ、放置して冷却し、そのことによって固化させる。
【0348】
液体形態調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション(例えば水、または水/プロピレングリコール溶液)が含まれる。
【0349】
経口で用いるのに適した水溶液は、式(I)または(10b)の化合物を水に溶かし、望むときには適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口で用いるのに適した水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を水の中に、粘性材料(天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなど)、および分散剤または湿潤剤(天然のホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)など)とともに分散させることによって作製することができる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなど)、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香剤、および1つ以上の甘味剤(スクロース、アスパルタム、またはサッカリンなど)も含有することができる。製剤の浸透圧を調節することができる。
【0350】
経口投与のため使用する少し前に液体形態調製物に変換することが想定される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態に含まれるのは、溶液、懸濁液、およびエマルションである。これら調製物は、活性成分に加え、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工と天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶剤などを含有することができる。
【0351】
油懸濁液は、式(I)または(10b)の化合物を植物油(ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナツ油など)、または鉱物油(液体パラフィンなど);またはこれらを混合したものの中に懸濁させることによって製剤にすることができる。油懸濁液は増粘剤(蜜蝋、硬いパラフィン、またはセチルアルコールなど)を含有することができる。甘味剤(グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど)を添加して口当たりのよい経口調製物を提供することができる。これら製剤は、抗酸化剤(アスコルビン酸など)を添加して保存することができる。注射可能な油ビヒクルの一例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。式(I)または(10b)の化合物を含む医薬製剤は、水中油型エマルションの形態にすることもできる。油相として、上記の植物油または鉱物油、またはこれらを混合したものが可能である。適切な乳化剤に含まれるのは、天然ゴム(アカシアゴムとトラガカントゴムなど)、天然ホスファチド(ダイズレシチンなど)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。エマルションは、シロップとエリキシルの製剤におけるように、甘味剤と着香剤も含有することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0352】
別の1つの側面では、本開示により、対象のがんを治療するための医薬組成物が提供され、この組成物は、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤を、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0353】
がんおよび/または固形腫瘍はセクションIII-2:がん/固形腫瘍に従って記述される。いくつかの実施形態では、がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に記載されている実施形態のいずれか1つである。
【0354】
対象は、セクションIII-3:対象に従って記述される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態のいずれか1つである。
【0355】
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は式(10b)の化合物である。
【0356】
式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に従ってさらに記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態のいずれかである。
【0357】
KRAS G12C阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。
【0358】
いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はアダグラシブ(MRTX-849)である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤が式(10b)によって表わされるとき、KRAS G12C阻害剤はソトラシブ以外である。
【0359】
(式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤を含む)本開示の組成物は、多彩な経口、非経口、および局所の剤型で調製することができる。経口調製物に含まれるのは、患者による摂取に適した錠剤、ピル、粉末、ドラジェ、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などである。本開示の組成物は、注射によって、すなわち静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内に投与することもできる。また、本明細書に記載されている組成物は吸入によって投与することができる(例えば鼻腔内)。それに加え、本開示の組成物は経皮投与することができる。本開示の組成物は、眼内、膣内、および直腸内の経路によって投与することもでき、その中に含まれるのは、座薬、吹送、粉末、およびエアロゾル製剤である(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995; Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111, 1995を参照されたい)。
【0360】
(式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤を含む)本開示の医薬組成物を調製するため、医薬として許容可能な基剤は、固体または液体のどちらかが可能である。固体形態調製物は、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、座薬、および分散可能な顆粒を含む。固体基剤は1つ以上の物質であることが可能であり、それは、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても機能することができる。製剤化と投与のための技術に関する詳細は学術文献と特許文献によく記述されており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0361】
粉末では、基剤は細かく分割した固体であり、それは、細かく分割した活性成分との混合物になっている。錠剤では、活性成分を必要な結合特性を持つ基剤と適切な割合で混合し、望む形とサイズに圧縮する。
【0362】
粉末、カプセル、および錠剤は、活性化合物を5%~70%含有するか、活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤)を約10%~約70%含有することが好ましい。適切な基剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物を、カプセルを提供する基剤としての封入材料とともに含む製剤を含むことが想定されている(カプセルの中では、活性成分が、他の賦形剤あり、またはなしで基剤によって取り囲まれているため、基剤は活性成分に付随する)。同様に、カシェとロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ、およびロゼンジを経口投与に適した固体剤型として使用できる。
【0363】
適切な固体賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ワックス;カカオバター;炭水化物:糖(その非限定的な例に含まれるのは、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン);セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなど);およびゴム(アラビアゴムとトラガカントゴムが含まれる)のほか、タンパク質(その非限定的な例に含まれるのはゼラチンとコラーゲンである)である。崩壊剤または可溶剤を添加することができ、それは例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)である。
【0364】
適切なコーティング(濃縮糖溶液など)を持つドラジェコアが提供され、それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有することができる。染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加して生成物を同定すること、または活性化合物の量(すなわち用量)を特徴づけることができる。本開示の医薬調製物は、例えばゼラチン製の押し嵌め式カプセルのほか、ゼラチンとコーティング(グリセロールまたはソルビトールなど)でできた軟質密封カプセルを用いて経口で用いることもできる。押し嵌め式カプセルは、充填剤または結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定剤と混合した活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤)を含有することができる。軟質カプセルの中では、活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤)を、適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなど)の中に安定剤あり、またはなしで溶解または懸濁させることができる。
【0365】
座薬を調製するため、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物など)を最初に融解させ、活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤) をその中に、例えば撹拌することによって均一に分散させる。融解した均一な混合物をその後便利なサイズの鋳型の中に注ぎ、放置して冷却し、そのことによって固化させる。
【0366】
液体形態調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション(例えば水、または水/プロピレングリコール溶液)が含まれる。非経口注射のため、液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液の中の溶液に製剤化することができる。
【0367】
経口で用いるのに適した水溶液は、本明細書に規定され記載されている活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤)を水に溶かし、オプションの適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口で用いるのに適した水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を水の中に、粘性材料(天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなど)、および分散剤または湿潤剤(天然のホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)など)とともに分散させることによって作製することができる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなど)、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香剤、および1つ以上の甘味剤(スクロース、アスパルタム、またはサッカリンなど)も含有することができる。製剤の浸透圧を調節することができる。
【0368】
経口投与のため使用する少し前に液体形態調製物に変換することが想定される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態に含まれるのは、溶液、懸濁液、およびエマルションである。これら調製物は、活性成分に加え、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工と天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶剤などを含有することができる。
【0369】
油懸濁液は、活性化合物(例えば式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤)を植物油(ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナツ油など)、または鉱物油(液体パラフィンなど);またはこれらを混合したものの中に懸濁させることによって製剤にすることができる。油懸濁液は増粘剤(蜜蝋、硬いパラフィン、またはセチルアルコールなど)を含有することができる。甘味剤(グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど)を添加して口当たりのよい経口調製物を提供することができる。これら製剤は、抗酸化剤(アスコルビン酸など)を添加して保存することができる。注射可能な油ビヒクルの一例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本開示の医薬製剤は、水中油型エマルションの形態にすることもできる。油相として、上記の植物油または鉱物油、またはこれらを混合したものが可能である。適切な乳化剤に含まれるのは、天然ゴム(アカシアゴムとトラガカントゴムなど)、天然ホスファチド(ダイズレシチンなど)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。エマルションは、シロップとエリキシルの製剤におけるように、甘味剤と着香剤も含有することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0370】
(式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤を含む)本開示の組成物は適切な任意の手段(経口、非経口、および局所の方法が含まれる)によって送達することができる。局所経路による経皮投与法は、塗布棒、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、およびエアロゾルとして製剤化することができる。
【0371】
(式(I)の化合物とKRAS G12C阻害剤を含む)本開示の組成物はマイクロスフェアとして送達して体内でゆっくり放出させることもできる。例えばマイクロスフェアは、生物分解性で注射可能なゲル製剤として(例えばGao Pharm. Res. 12:857-863, 1995参照);または経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えばEyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997参照)、皮内注射を通じて薬含有マイクロスフェアを投与するための製剤にすることができ;皮下でゆっくり放出する(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995。経皮経路と皮内経路の両方が、数週間または数ヶ月にわたる一定した送達を提供する。
【0372】
別の一実施形態では、本開示の組成物は、非経口投与(静脈内(IV)投与など)のための製剤、または体腔または臓器の内腔への投与のための製剤にすることができる。投与するための製剤は一般に、医薬として許容可能な基剤の中に溶かした本開示の組成物の溶液を含むことになる。許容可能なビヒクルと使用可能な溶媒に含まれるのは、水とリンゲル液(等張塩化ナトリウム)である。それに加え、減菌不揮発性油を溶媒または懸濁培地として用いることができる。この目的のため、任意の非刺激性不揮発性油(合成モノグリセリドまたはジグリセリドが含まれる)を用いることができる。それに加え、脂肪酸(オレイン酸など)を同様に注射可能な調製物で使用することができる。これら溶液は殺菌されており、望ましくない物質を一般に含まない。これら製剤はさまざまな殺菌技術によって殺菌することができる。製剤は、生理学的状態を近似するのに必要な医薬として許容可能な補助物質(pHの調節剤と緩衝剤、毒性調節剤(例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)など)を含有することができる。これら製剤の中の本開示の組成物の濃度は広く変化する可能性があり、選択される投与の具体的な様式と患者の必要性に応じ、主に流体の体積、粘性、体重などに基づいて選択されることになる。IV投与のためには、製剤は減菌された注射可能な調製物(注射可能な水性または油性の減菌懸濁液など)であることが可能である。この懸濁液は、これらの適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を用いて製剤にすることができる。減菌された注射可能な調製物は、非毒性で非経口が許容される希釈剤または溶媒(1,3-ブタンジオールの溶液など)の中の減菌された注射可能な溶液または懸濁液であることも可能である。
【0373】
別の一実施形態では、本開示の組成物の製剤は、細胞膜と融合するかエンドサイトーシスを受けるリポソームを利用して送達すること、すなわちリポソームに付着するかオリゴヌクレオチドに直接付着していて細胞の表面膜タンパク質受容体に結合し、その結果としてエンドサイトーシスを起こすリガンドを用いて送達することができる。リポソームを利用することにより、特にリポソーム表面が標的細胞に対して特異的なリガンドを有する場合、またはそうでなく特定の臓器へと優先的に向かわせる場合には、標的細胞への本開示の組成物の生体内送達に焦点と当てることができる。(例えばAl-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996;Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995;Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989参照)。
【0374】
脂質に基づく薬物送達システムに含まれるのは、脂質溶液、脂質エマルション、脂質分散液、自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、および自己マイクロ乳化薬物送達システム(SMEDDS)である。特にSEDDSとSMEDDSは、脂質、界面活性剤、および共界面活性剤の等方性混合物であり、水性媒体の中に自発的に分散して細かいエマルション(SEDDS)またはマイクロエマルション(SMEDDS)を形成することができる。本開示の製剤の中で有用な脂質に含まれるのは任意の天然または合成の脂質であり、その非限定的な例に含まれるのは、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナツ油、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Solutol(登録商標)、Tween(登録商標)、Capryol(登録商標)、Capmul(登録商標)、Captex(登録商標)およびPeceol(登録商標)である。
【0375】
本開示の医薬製剤は塩として提供することができ、多くの酸(その非限定的な例に含まれるのは、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などである)を用いて形成することができる。塩は、対応する遊離塩基形態である水性溶媒または他のプロトン性溶媒の中により多く溶ける傾向がある。他の場合には、調製物として、例えば1mM~50mMのヒスチジン、0.1%~2%のスクロース、2%~7%のマンニトールの中でpH4.5~5.5の範囲にて凍結乾燥させた粉末が可能であり、使用前にバッファと組み合わされる。
【0376】
本開示の医薬製剤は塩として提供することができ、塩基を用いて形成することができる。すなわち塩は、カチオン性塩、例えばアルカリ金属とアルカリ土類金属(ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)の塩のほか、アンモニウム塩(アンモニウム、トリメチル-アンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アンモニウム塩など)である。
【0377】
VI.キット
別の1つの側面では、本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供され、このキットは、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のKRAS G12C阻害剤を、
有効な投与のための指示とともに含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0378】
がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に従って記述される。いくつかの実施形態では、がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に記載されている実施形態のいずれかである。
【0379】
対象は、セクションIII-3:対象に従って記述される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態のいずれかである。
【0380】
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は式(10b)の化合物である。
【0381】
式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態のいずれかである。
【0382】
KRAS G12C阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはKRAS G12C阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。
【0383】
いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI 1823911、MK-1084、LY3537982、またはLY3499446である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C阻害剤はアダグラシブ(MRTX-849)である。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤が式(10b)によって表わされるとき、KRAS G12C阻害剤はソトラシブ以外である。
【0384】
いくつかの実施形態では、キットは、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を投与するための指示を含む。いくつかの実施形態では、キットは、式(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を投与するための指示を含む。いくつかの実施形態では、そのような指示は、安全性の規定に関する指示のほか、式(I)または(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を投与するタイミングと量を含む。いくつかの実施形態では、そのような指示は、安全性の規定に関する指示のほか、式(10b)の化合物とKRAS G12C阻害剤を投与するタイミングと量を含む。いくつかの実施形態では、そのような指示は、安全性の規定に関する指示のほか、式(10b)の化合物とアダグラシブ(MRTX-849)を投与するタイミングと量を含む。
【0385】
本明細書に記載の式(I)または(10b)によって表わされるPTPN11阻害剤と本明細書に記載のKRAS G12C阻害剤は、同時投与または逐次投与のために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤とKRAS G12C阻害剤は同時投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤とKRAS G12C阻害剤は逐次投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤は、KRAS G12C阻害剤を投与する前に投与する。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤は、KRAS G12C阻害剤を投与した後に投与する。
【0386】
VII.実施形態
実施形態1。対象のがんを治療する方法であって、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化49】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のアダグラシブ(MRTX-849)
を前記対象に投与することを含む方法。
【0387】
実施形態2。式(10b)の化合物が、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(Ra)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ
【化50】
によって表わされる、実施形態1に記載の方法。
【0388】
実施形態3。前記がんがKRAS変異を特徴とする、実施形態1または2に記載の方法。
【0389】
実施形態4。前記がんがKRAS G12C変異を特徴とする、実施形態3に記載の方法。
【0390】
実施形態5。前記がんが固形腫瘍を含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0391】
実施形態6。前記がんが、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、尿路上皮癌、胃がん、中皮腫、またはこれらの組み合わせである、実施形態1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0392】
実施形態7。前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施形態6に記載の方法。
【0393】
実施形態8。前記がんが結腸直腸がんである、実施形態6に記載の方法。
【0394】
実施形態9。前記がんが、KRAS G12C阻害剤に対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、実施形態1~8のいずれか1項に記載の方法。
【0395】
実施形態10。前記がんが、KRAS G12C阻害剤に対する内因性抵抗性および/または獲得抵抗性を特徴とするKRAS G12C陽性がんである、実施形態1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0396】
実施形態11。前記がんが、アダグラシブに対して抵抗性のKRAS G12C陽性がんである、実施形態1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0397】
実施形態12。白金に基づく二剤併用化学療法および/または抗PD-1/PD-L1療法を含んでいてそのそれぞれが単剤療法として与えられるか、その両方が併用療法として与えられた以前の少なくとも1回の全身療法のラインのとき、またはその後に、前記がんが進行するか再発している、実施形態1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0398】
実施形態13。前記対象が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中に活性化変異を持たない、実施形態1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0399】
実施形態14。前記対象が以前にPTPN11阻害剤で治療されていない、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0400】
実施形態15。前記対象が以前に式(10b)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療されている、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0401】
実施形態16。前記対象が以前に式(10b)の化合物で治療されている、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0402】
実施形態17。前記対象が以前にKRAS G12C阻害剤で治療されていない、実施形態1~9と11~16のいずれか1項に記載の方法。
【0403】
実施形態18。前記対象が以前にKRAS G12C阻害剤で治療されている、実施形態1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0404】
実施形態19。前記対象が以前にアダグラシブで治療されている、実施形態1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0405】
実施形態20。前記対象が実施例5による1)~11)の選択基準のすべてを満たすが、実施例5による1)~17)の除外基準のいずれか1つを満たさない、実施形態1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0406】
実施形態21。前記対象がヒトである、実施形態1~20のいずれか1項に記載の方法。
【0407】
実施形態22。式(10b)の化合物とアダグラシブを同時に投与する、実施形態1~21のいずれか1項に記載の方法。
【0408】
実施形態23。式(10b)の化合物とアダグラシブを逐次的に投与する、実施形態1~21のいずれか1項に記載の方法。
【0409】
実施形態24。式(10b)の化合物を、アダグラシブを投与する前に投与する、実施形態23に記載の方法。
【0410】
実施形態25。式(10b)の化合物を、アダグラシブを投与した後に投与する、実施形態23に記載の方法。
【0411】
実施形態26。式(10b)の化合物またはアダグラシブを経口投与するか、アダグラシブと式(10b)の化合物のそれぞれを経口投与する、実施形態1~25のいずれか1項に記載の方法。
【0412】
実施形態27。式(10b)の化合物を経口投与する、実施形態1~26のいずれか1項に記載の方法。
【0413】
実施形態28。アダグラシブを経口投与する、実施形態1~27のいずれか1項に記載の方法。
【0414】
実施形態29。式(10b)の化合物とアダグラシブを、合わせて治療に有効な量で提供する、実施形態1~28のいずれか1項に記載の方法。
【0415】
実施形態30。式(10b)の化合物とアダグラシブを、相乗的に有効な量で提供する、実施形態1~28のいずれか1項に記載の方法。
【0416】
実施形態31。式(10b)の化合物および/またはアダグラシブを、単独で使用するときとは異なる用量で使用する、実施形態1~30のいずれか1項に記載の方法。
【0417】
実施形態32。式(10b)の化合物を、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、実施形態31に記載の方法。
【0418】
実施形態33。式(10b)の化合物を、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、実施形態31に記載の方法。
【0419】
実施形態34。アダグラシブを、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、実施形態31~33のいずれか1項に記載の方法。
【0420】
実施形態35。アダグラシブを、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、実施形態31~33のいずれか1項に記載の方法。
【0421】
実施形態36。前記治療が1つ以上の治療サイクルを含み;1つ以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;式(10b)の化合物および/またはアダグラシブを毎日投与する、実施形態1~35のいずれか1項に記載の方法。
【0422】
実施形態37。式(10b)の化合物とアダグラシブの投与が、式(10b)の化合物および/またはアダグラシブの1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、実施形態1~36のいずれか1項に記載の方法。
【0423】
実施形態38。式(10b)の化合物とアダグラシブの投与が、式(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、実施形態37に記載の方法。
【0424】
実施形態39。式(10b)の化合物の前記1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減が、用量制限毒性(DLT)評価によって決定される、実施形態38に記載の方法。
【0425】
実施形態40。DLT評価によって求めた用量制限毒性(DLT)率が約19.7%未満であるとき、式(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸増を含む、実施形態39に記載の方法。
【0426】
実施形態41。DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約29.8%超であるとき、式(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸減を含む、実施形態39に記載の方法。
【0427】
実施形態42。DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、式(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量維持を含む、実施形態39に記載の方法。
【0428】
実施形態43。前記治療が用量漸増期間を含み、その用量漸増期間の後、前記治療は用量拡大/最適化期間をさらに含み;式(10b)の化合物を、用量漸増期間の間に決めた投与計画で投与する、実施形態36~42のいずれか1項に記載の方法。
【0429】
実施形態44。前記用量拡大/最適化期間の間、式(10b)の化合物の投与が1回以上の用量調節を含む、実施形態43に記載の方法。
【0430】
実施形態45。アダグラシブの治療に有効な前記量が、約600mg、約720mg、約840mg、約960mg、または約1200mgの1日総用量である、実施形態1~44のいずれか1項に記載の方法。
【0431】
実施形態46。アダグラシブの治療に有効な前記量が約1200mgの1日総用量である、実施形態45に記載の方法。
【0432】
実施形態47。式(10b)の化合物の治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、または約300mg~約400mgの1日総用量である、実施形態1~46のいずれか1項に記載の方法。
【0433】
実施形態48。治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量である、実施形態47に記載の方法。
【0434】
実施形態49。治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(10b)の化合物約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量である、実施形態48に記載の方法。
【0435】
実施形態50。治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(10b)の化合物約250mgの1日総用量である、実施形態47~49のいずれか1項に記載の方法。
【0436】
実施形態51。治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(10b)の化合物約400mgの1日総用量である、実施形態47~49のいずれか1項に記載の方法。
【0437】
実施形態52。治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(10b)の化合物約550mgの1日総用量である、実施形態47~49のいずれか1項に記載の方法。
【0438】
実施形態53。式(10b)の化合物とアダグラシブをそれぞれ経口投与する、実施形態1~52のいずれか1項に記載の方法。
【0439】
実施形態54。式(10b)の化合物を1日に1、2、3回、または4回投与する、実施形態1~53のいずれか1項に記載の方法。
【0440】
実施形態55。式(10b)の化合物を1日に1回投与し;アダグラシブを1日に2回投与する、実施形態54に記載の方法。
【0441】
実施形態56。式(10b)の化合物を錠剤製剤で提供する、実施形態1~55のいずれか1項に記載の方法。
【0442】
実施形態57。前記治療が、前記がんまたは固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす、実施形態1~56のいずれか1項に記載の方法。
【0443】
実施形態58。前記治療が前記がんまたは固形腫瘍を安定化させる、実施形態1~56のいずれか1項に記載の方法。
【0444】
実施形態59。前記対象で抗腫瘍応答と相関する1つ以上のバイオマーカーをさらに評価する、実施形態1~58のいずれか1項に記載の方法。
【0445】
実施形態60。対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化51】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせ、または式:
【化52】
によって表わされる化合物と;
b)治療に有効な量のアダグラシブ(MRTX-849)
を、有効な投与のための指示とともに含むキット。
【0446】
実施形態61。式(10b)の化合物とアダグラシブが同時投与のために製剤化されている、実施形態60に記載のキット。
【0447】
実施形態62。式(10b)の化合物とアダグラシブが逐次投与のために製剤化されている、実施形態60に記載のキット。
VIII.略号のリスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0448】
IX.実施例
実施例1:式(10b)と化合物Aの生体内有効性
A.材料
試験製品#1 - 式(10b):
【0449】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0450】
分子式:C2126Cl
【0451】
分子量:437.37
【0452】
試験製品#2 - 化合物A:
【0453】
化学名:6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン
【0454】
CAS#:252403-56-6
【0455】
分子式:C3030
【0456】
分子量:560.6
【0457】
細胞系。NCI-H358細胞系をATCCから購入した。これは、KRAS G12Cのヘテロ接合性変異を有するヒトNSCLC細胞系である。これら細胞を、5%CO2にした37℃の組織培養インキュベータ(Thermo Fisher)の中の、グルタミン(Thermo Fisher #22400-089)+10%ウシ胎仔血清(FBS、Thermo Fisher #10099-141)を含有するRPMI 1640の中で培養した。
【0458】
試験動物。雌NOD/SCIDマウス(北京安凱毅博生物技術有限公司)をこの実験で使用した。動物は異種移植片移植時に6~8週齢であった。この研究における動物のケアと使用に関するプロトコルとあらゆる修正または手続きは、実行前にCrown Bioscience Ltd.の動物実験委員会(IACUC)によって審査されて承認された。研究中、動物のケアと使用を実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の規制に従って実施した。
【0459】
全マウスを、中国北京市昌平区火炬街21号の中関村科技園の昌平セクタ、Light Muller BuildingにあるAAALACに認証されたCrown Bioscience Beijingの動物研究施設に収容した。すべての動物を、包括的かつうまく考えられた健康管理プログラムを監督する動物施設の獣医の管理とケアのもとで維持した。
【0460】
マウスは最大で5匹をポリスルホン製IVCケージ(325mm×210mm×180mm)に収容し、12時間明/12時間暗にして餌と水に自由にアクセスさせた。全動物が、照射標準齧歯類用飼料である大鼠和小鼠生長繁殖飼料という餌(北京科奥協力飼料有限公司)を自由に摂取した。マウスは毎日モニタし、ケージは2週間に1回変えた。
【0461】
B.実験手続き
製剤。式(10b)を0.5%メチルセルロースの中で調製した。0.5%メチルセルロース溶液を調製するため、メチルセルロース粉末(400cP、Sigma #M0262)を80℃に加熱した減菌水に添加した。この溶液を80℃で撹拌しながら3~4時間にわたってインキュベートした後、4℃で連続的に撹拌しながら18時間にわたってインキュベートした。最終体積を減菌H2Oで調節した後、溶液を4℃でさらに30分間撹拌した後、0.45μMの殺菌フィルタを用いて濾過した。将来使用するため、調製した0.5%メチルセルロース溶液を4℃で保管した。
【0462】
式(10b)投与懸濁液を0.5%メチルセルロースの中で調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルの中に入れ、0.5%メチルセルロース溶液を注射器でバイアルに添加した。30秒間撹拌した後、バイアルを「高」設定の水浴超音波処理器(上海科導超声波器有限公司、モデルSK2510HP)の中で室温にて約20分間にわたって超音波処理すると、目に見える固体がない灰白色の懸濁液が得られた。調製した投与懸濁液を軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与懸濁液を週に1回調製した。
【0463】
化合物AをLabrasol(Gattefosse #3074)の中で調製した。化合物A投与溶液を調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルに入れ、Labrasolをバイアルに添加した。この混合物を30秒間撹拌し、水浴超音波処理器(上海科導超声波器有限公司、モデルSK2510HP)の中で約5分間にわたって超音波処理すると、淡い黄色の溶液が得られた。この投与溶液を軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与溶液を週に1回調製した。動物に化合物Aを投与する直前、投与溶液を同体積の減菌ddH2Oと混合し、撹拌した後、室温で10分間インキュベートした。その時点で均一な溶液が形成されたため、マウスに投与するのに使用した。希釈した投与溶液は水の添加後1時間以内に使用した。
【0464】
生体内モデリング、治療、およびデータ分析。NCI-H358細胞を用いた異種移植片研究のため、500万個の細胞を50%マトリゲル(BD Bioscience #356234)とともに含む減菌PBS(Hyclone Laboratories #SH30256.01)を100μLの体積で雌6~8週齢のNOD/SCIDマウス(北京安凱毅博生物技術有限公司)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズ測定をノギスで実施し、標準的な式:長さ×幅/2(ただし長さと幅は腫瘍のそれぞれ長径と短径であった)を用いて計算した。
【0465】
平均腫瘍体積が250mmに到達したとき、マウスを腫瘍体積と体重の両方に基づいて無作為化して8つの群にした。無作為化は、StudyDirectorソフトウエアバージョン3.1.399.19(StudyLog)の中の「一致した分布」法/「層化」法に基づいて実施した。次いでマウスの処理を、下に示すように、強制経口投与(PO)を通じ、ビヒクルを用いて、化合物Aだけを3つの用量レベル(100mg/kg QD、30mg/kg QD、および10mg/kg QD)の1つを用いて、式(10b)だけを2つの用量レベル(100mg/kg QDと50mg/kg QD)の1つを用いて、またはこれら2つの化合物の組み合わせを用いて実施した。式(10b)を午前に投与し、化合物Aを午後に投与したが、午前と午後の投与は6時間離した。
【表2】
【0466】
投与は腫瘍細胞を皮下移植してから約2週間後に開始した。投与体積は、式(10b)については5mL/kg、化合物Aについては6mL/kgであり、隔週の測定からの個々のマウスの体重に基づいて調節した。腫瘍体積は1週間に2回測定した。体重と腫瘍体積はStudyDirectorソフトウエアバージョン3.1.399.19(StudyLog)に取り込んだ。投与を21日間(10mg/kgの式(10b)以外のすべての用量レベル)または29日間(10mg/kgの式(10b))にわたって実施した後、血漿サンプルを、化合物Aの最終投与の2時間後(式(10b)の最終投与の8時間後)に、下記の血液回収法に従って回収した。
【0467】
Microsoft ExcelとGraphPad Prism 8.0を用いてデータを分析した。0日目は、治療開始日の前日であった。体重変化と腫瘍増殖阻害(TGI)を以下の式に基づいて計算した。
体重変化%=(BW-BW)/BW×100%
BWとBWはそれぞれ、測定日Iと0日目の個々のマウスの体重である。
TGI%=(C-T)/(C-C)×100%
とCはそれぞれ、測定日の治療群とビヒクル群の平均腫瘍体積であり;Cは0日目のビヒクル群の平均腫瘍体積である。
【0468】
薬物動態を分析するための血液回収。薬物動態(PK)分析のため、生きた動物から後眼窩静脈叢を通じて血液を取得した。マウスを耳の後ろでしっかりと掴んで一方の側に少し回転させ、使い捨て殺菌マイクロキャピラリチューブを眼球の裏側に挿入してからそっと回転させて副鼻腔を破れるようにした。血液が毛細管を通ってKEDTA管(江蘇康健医療用品有限公司#044022)に直接流入し、100μLの体積になった。管の中の血液を数回反転させてEDTAを均一に分布させた。血漿を分離するため、管をベンチトップ遠心分離(Eppendorf、モデル5424R)の中で5分間にわたって8000rpmで中断することなく遠心分離した。上清(血漿)を微量遠心管に注意深く移し、ドライアイスの上に置いた後に-80℃で保管した。
【0469】
マウス血漿中の式(10b)と化合物AのLC-MS/MS定量。検証されたLC-MS/MS法を利用してマウス血漿中の式(10b)と化合物Aの濃度を定量した。血漿サンプルを分析するため、Glipizide(100ng/mL)を内部標準として含有する200μLのアセトニトリルを用いて20μLの各サンプルを沈殿させた。この懸濁液を1分間撹拌し、4,000rpmで10分間遠心分離した後、80μLの抽出液をLC-MS/MS分析のため等分した。LC-MS/MS分析を、ポジティブモード(ESI+)で作動するSciex 6500 TQ-Sトリプル四重極質量分析器(MS/MS)にカップルした島津Nexera UHPLCシステムで実施した。質量分析源の条件は以下に示したように設定した:イオンスプレー電圧(5500ボルト)、CAD(8)、CUR(35)、TEM(450)、GS1(60)、GS2(60)、EP(10)、CXP(12)、CEM(2000)に加え、式(10b)については:DP(40)、CE(65)、化合物Aについては:DP(40)、CE(47)、内部標準については:DP(35)、CE(20)。式(10b)と化合物AをWaters X-Bridge BEH C18カラム(2.1×50mm、1.7μm)を用いて分離し、多重反応モニタリング遷移によって検出した(式(10b)についてはm/z 437.10>186.10、化合物Aについてはm/z 561.20>134.20、内部標準についてはm/z 446.20>321.10)。注入体積は2μLであった。LC移動相Aは、1mMの酢酸アンモニウムを含有する0.025%ギ酸-水であり、Bは、5mMの酢酸アンモニウムを含有する100%メタノールであった。勾配(%B)は、2%(0~0.4分)、2~65%(0.4~1.7分)、65~90%(0.7~1.3分)、90%(1.3~1.9分)、90~2%(1.9~1.91分)、2%(1.91~2.5分)であった。流速は0.6mL/分であった。カラムの温度は60℃であった。これらの条件下で、保持時間は、式(10b)については1.42分、化合物Aと内部標準については1.44分であった。この方法は、未治療のCD-1マウス血漿において式(10b)と化合物Aの両方について3~3,000nMの分析範囲で検証された。
【0470】
C.結果
ソトラシブ(AMG 510)はKRAS G12C変異体を特異的に標的とするKRAS共有結合型阻害剤である。これは、固形腫瘍(KRAS G12C変異を有するNSCLCが含まれる)を持つ患者で単剤応答を示した。具体的には、CodeBreaK 100研究において、NSCLCを持つサブグループは、確認された客観的奏功率(完全奏功または部分奏功)が32.2%、疾患制御率(客観的奏功または安定な疾患)が88.1%であり;無増悪生存期間中央値は6.3ヶ月であった。Hong et al., N. Engl. J. Med. 2020; 383:1207-1217。偏りのない機能ゲノミクスのアプローチにより、SHP2がKRAS G12C阻害下で脆弱であることも特定された。KRAS G12Cの阻害は、SHP2を通じてシグナルを伝達する多くのRTKを通じ、MAPK経路の適応フィードバック活性化を誘導する。この研究は、KRAS G12Cを有するヒトNSCLC腫瘍モデルにおいて、KRAS G12C阻害剤である化合物Aと組み合わせたSHP2阻害剤式(10b)の効果を生体内で評価する設計にした。
【0471】
式(10b)と化合物Aの組み合わせを用いた治療の結果、KRAS G12Cを有するNSCLCの皮下モデルにおいて腫瘍の増殖が阻害された。KRAS G12Cを有するNCI-H358細胞を皮下移植してマウス腫瘍異種移植片モデルを開発し、化合物Aと組み合わせた式(10b)の抗腫瘍応答を生体内で調べるのに使用した。確立されたNCI-H358皮下腫瘍を有するマウスを無作為化しし、ビヒクル、化合物Aだけ、式(10b)だけ、またはこれら2つの化合物の組み合わせを経口で送達して21日間治療した。式(10b)は毎日午前に投与し、化合物Aは毎日午後に投与したが、午前と午後の投与は6時間離した。腫瘍体積をノギスによって隔週でモニタするとともに、体重を記録した。図1A~1Eに示されているデータは平均±SEMを表わし、図1B~1EについてはN=8匹のマウス/群、図1Aについては10匹である。
【0472】
図1Aは、式(10b)、化合物A、または両方の試験物の組み合わせのいずれかを示されている用量レベルで1~28日目に毎日経口投与した後の、NCI-H358腫瘍を有する雌NOD/SCIDマウスの平均(±SEM)腫瘍体積(mm)を示す。
【0473】
図1A、1B、および1Dと表1および2に示されているように、式(10b)だけを用いた治療は用量に依存してNCI-H358腫瘍の増殖を抑制し、それぞれ100mg/kg QDと50mg/kg QDで研究の21日目に腫瘍増殖阻害(TGI)が89%と46%になった。化合物Aだけを用いた治療もNCI-H358腫瘍の増殖を用量に依存して抑制し、100mg/kg QD、30mg/kg QD、および10mg/kg QDで腫瘍退縮が観察された。注目すべきことに、10mg/kg QDの化合物Aと100mg/kg QDの式(10b)の組み合わせは、いずれかの薬剤だけと比べて腫瘍増殖をより強力に抑制し、腫瘍退縮を引き起こした(図1A)。100mg/kg QDの式(10b)を30mg/kgと100mg/kg QDいずれかの化合物Aと組み合わせたとき(図1Bと1D)、おそらく化合物Aからのロバストな単剤応答に起因して抗腫瘍活性の注目すべき増強が観察された。すべての投与条件が、研究中のマウスの体重維持によって示されるように、よく忍容されたと見なされた(図1Cと1E)。この研究ではマウスのランダムな死が観察されたが、用量依存性がないためマウスの死は治療に関係するとは見なされなかった(表3)。
【表3】
【表4】
TGI%=(C-T)/(C-C)×100%。TとCは測定日における治療群とビヒクル群の平均腫瘍体積であり;Cは、0日目におけるビヒクル群の平均腫瘍体積である。血漿濃度については、データは平均±SDを表わす。N=4匹のマウス/群。BQL、定量限界未満(3nM)。
【0474】
化合物Aを最後に投与してから2時間後に薬物動態分析(表2)を実施した。これは、式(10b)を最後に投与してから8時間後であった。血漿中で化合物Aが高濃度で検出され、最後に投与してから2時間後に、30mg/kgでは2.0μM、100mg/kgでは8.8μMになった。化合物Aの血漿濃度は式(10b)を用いた治療の影響を置けなかった。100mg/kgの式(10b)は、単剤(7.5μM)として、および化合物A(5~10μM)との組み合わせとして投与したとき、投与の8時間後に同様の高い血漿濃度を生じさせた。50mg/kgの式(10b)を投与しても、単剤(4.4μM)として、および化合物A(5.5μM)との組み合わせとして投与したとき、投与の8時間後に同様に高い血漿濃度になった。データは、マウスでは化合物Aと式(10b)の間に薬-薬相互作用がないことを示唆する。
【表5】
各事象(マウスの死)は1匹のマウスの死を示しており、日は、マウスを研究から取り除いた投与日を示す。BWL、体重減少;QD、毎日1回投与。
【0475】
D.結論
KRAS G12C変異を有するNCI-H358 NSCLC異種移植片モデルでは、式(10b)を化合物Aと組み合わせて用いた治療は腫瘍増殖をロバストに阻害した。詳細には、単剤として10mg/kg QDの化合物Aを用いた治療の結果として腫瘍の増殖が阻害され、式(10b)との組み合わせの結果として腫瘍が退縮した。単剤として化合物Aをより大きな用量(30mg/kg QDまたは100mg/kg QD)で用いた治療はロバストな腫瘍退縮を引き起こしたが;式(10b)との組み合わせが腫瘍体積をさらに顕著に抑制することはなかった。式(10b)を100mg/kg QDで用いる単剤療法を利用した治療は、腫瘍をほぼ静止状態にする。マウスモデルでは、調べた全治療条件がよく忍容される。
【0476】
実施例2:式(10b)とソトラシブの組み合わせの生体内有効性
A.材料
試験製品#1 - 式(10b):
【0477】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0478】
分子式:C2126Cl
【0479】
分子量:437.37
【0480】
試験製品#2 - ソトラシブ:
【0481】
CAS#:2296729-00-3
【0482】
分子式:C3030
【0483】
分子量:560.6
【0484】
B.実験手続き
腫瘍細胞系培養。5%COにした37℃のチャンバーの中で、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco、カタログ10099-141C)を補足したRPMI-1640培地(Gibco、カタログC22400500BT)を用いてヒトNSCLCNCI-H358細胞系(中国科学院の上海生物科学研究所)をインビトロで維持した。9継代のNCI-H358細胞を解凍し、増殖させ、13継代の細胞を接種のため回収した。5%COにした37℃チャンバーの中で、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco、カタログ10091-148)を補足したRPMI-1640培地(Gibco、カタログC22400500BT)を用いてヒトNSCLC NCI-H2122細胞系(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)をインビトロで維持した。6継代のNCI-H2122細胞を解凍し、増殖させ、14継代の細胞を接種のため回収した。
【0485】
動物の接種と無作為化。全実験が実行前にCrown Bioscience Inc.、動物実験委員会(IACUC)によって審査されて承認され、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の規制に従って実施された。NCI-H358研究のため、1:1の比にしたPBSとマトリゲル(Corning、カタログ354234)の中にNCI-H358腫瘍細胞(5×10個の細胞/マウス)を懸濁させ、75匹の6~8週齢の雌NOD/SCIDマウス(北京安凱毅博生物技術有限公司)の右前脇腹領域の皮下にマウス1匹につき0.1mLの体積で接種した。細胞接種の13日後に平均腫瘍体積が160mmになったとき、マウスを無作為化し、腫瘍体積(サイズmm)によって4つの群(10匹のマウス/群)に分けた。NCI-H2122研究のため、1:1の比にしたPBSとマトリゲル(Corning、カタログ356234)の中にNCI-H2122腫瘍細胞(1×10個の細胞/マウス)を懸濁させ、80匹の6~8週齢の雌BALB/cヌードマウス(GemPharmatech Co.,Ltd)の右前脇腹領域の皮下にマウス1匹につき0.1mLの体積で接種した。細胞接種の9日後に平均腫瘍体積が180mmになったとき、マウスを無作為化し、腫瘍体積(サイズmm)によって4つの群(10匹のマウス/群)に分けた。
【0486】
投与。NCI-H358腫瘍を有する雌NOD/SCIDマウス(10匹の動物/群)の4つの群に以下の治療計画の1つを投与した:1)ビヒクル、2)式(10b)(100mg/kg)、3)ソトラシブ(10mg/kg)、または4)式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(10mg/kg)の組み合わせを1日に1回、強制経口投与によって28日間の期間。NCI-H2122腫瘍を有する雌BALB/cヌードマウス(10匹の動物/群)の4つの群に以下の治療計画の1つを投与した:1)ビヒクル、2)式(10b)(100mg/kg)、3)ソトラシブ(100mg/kg)、または4)式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(100mg/kg)の組み合わせを1日に1回、強制経口投与によって21日間の期間。
【0487】
式(10b)の製剤。望む量のメチルセルロース(Sigma-Aldrich、カタログM0262、粘度400cP)を計量してガラス瓶に入れることによって式(10b)製剤バッファ(0.5%v/vのメチルセルロースを含む減菌脱イオン水)を調製した。想定する最終体積の75%v/vに等しい減菌脱イオン水を撹拌棒で連続的に磁気撹拌しながら添加し、完全に溶解するまで室温で撹拌した。次いでこのバッファを減菌脱イオン水で最終体積にした。純度(97.7%)に合わせるため1.025という補正因子を式(10b)の製剤に適用した。
【0488】
10mg/mL(補正因子付きで10.25mg/mL)の式(10b)作業懸濁液を調製し、10mL/kgの投与体積で強制経口投与によってマウスに100mg/kgの用量を投与した。式(10b)の製剤を調製するため、化合物を正確に計量してガラス製バイアルに入れた。想定する最終体積の70%v/vに等しい式(10b)製剤バッファを、薬物質を含有するガラス製バイアルに添加し、目に見える大きな塊/粒子のない均一な懸濁液になるまで1/4インチのプローブを用いて4~9分間にわたってよく混合した。懸濁ビヒクルの残量を添加し、想定する最終体積の薬物質含有分散液にした。懸濁液を30分間にわたってよく撹拌し、4℃で1週間保管した後、毎日の投与前と投与中によく混合した。
【0489】
ソトラシブ製剤。望む量のHPMC(Sigma-Aldrich、カタログH3785)とTween80(Sigma-Aldrich、カタログP4780)を計量してガラス瓶に入れることによってソトラシブ製剤バッファ(2%v/vのHPMC/1%v/vのTween80を含む減菌脱イオン水)を調製した。想定する最終体積の80%v/vに等しい減菌脱イオン水を、撹拌棒を用いて連続的に磁性撹拌しながら添加し、完全に溶解するまで室温で撹拌した。次いで減菌脱イオン水を用いてこのバッファを最終体積にした。
【0490】
1mg/mLと10mg/mLのソトラシブ作業懸濁液を調製し、10mL/kgの投与体積で強制経口投与によってマウスにそれぞれ10mg/kgと100mg/kgの用量を投与した。ソトラシブ製剤を調製するため、化合物を正確に計量してガラス製バイアルに入れた。想定する最終体積の100%v/vに等しいソトラシブ製剤バッファを、薬物質を含有するガラス製バイアルに添加し、目に見える大きな塊/粒子のない均一な懸濁液になるまでよく混合した。この懸濁液をよく混合し、この作業懸濁液をできるだけ早く投与した。懸濁液は毎日調製し、投与前と投与中によく混合した。
【0491】
腫瘍と体重の測定。無作為化後、ノギスを用いて2方向で腫瘍の体積を週に2回測定し、式:腫瘍体積=(長さ×幅×幅)/2(ただし長さは腫瘍の最長サイズと定義され、幅は、長さに対して垂直な腫瘍の最長サイズと定義される)を用いて体積をmmで表わした。投与のほか、腫瘍と体重の測定は層流キャビネットの中で実施した。それぞれの群に関する個々のマウスの腫瘍体積(と平均腫瘍体積(±平均値の標準誤差(SEM))を記録した。治療(T)群と対照(C)群のそれぞれについて、1日目(0)と、示されている測定日(i)の平均腫瘍体積の測定値を用い、抗腫瘍有効性の1つの指標である腫瘍増殖阻害(TGI)を、式:TGI(%)=(1-(Ti-T0)/(Ci-C0))×100を利用して計算した。連続的な毎日の投与の最終日(29日目)の翌日にTGIを計算し、100%以下である場合にだけ報告した。腫瘍退縮(REG)も評価し、研究の示されている日に、投与の初日である1日目よりも小さい腫瘍体積を持つ腫瘍と定義した。TGIが100%超であった場合には平均腫瘍退縮を代わりに報告し、投与の初日である1日目と比べた示されている連続的な毎日の投与の最終日の翌日の腫瘍退縮の平均的なパーセントを求めることによって計算した。
【0492】
体重(BW)も週に2回記録した。個々のマウスの体重と体重変化(パーセントで表示)を、各動物について、投与の初日である1日目(0)の体重と、投与してから示されている(i)日が経過した後の体重を用い、以下の式:BW変化(%)=((BWi/BWO)×100)-100を利用して計算した。平均体重変化(±SEM)を群について記録した。治療が忍容されたと見なさなかったのは、群内のマウスの20%超で20%以上の体重減少がある場合、または群内のマウスの20%超が自然に死ぬか、安楽死を必要とする苦痛の何らかの臨床徴候を示した場合である。
【0493】
Study Director(商標)ソフトウエア(バージョン3.1.399.19)を用いて動物の腫瘍と体重の測定データを記録して保存した。すべての分析は、GraphPad Prismソフトウエア(バージョン9)を用いて実施するか、Microsoft Excelの生データから計算した。
【0494】
統計分析。GraphPad Prismソフトウエア(バージョン9)を用いて統計分析を実施した。ビヒクル群を他のすべての群と比較する統計分析のため、平均の二元配置反復測定分散分析(ANOVA)に続けて事後テューキー多重比較検定を、示されている数の日に適用した。単剤療法群と組み合わせ群を比較する統計分析のため、示されている日の数でのそれぞれの単剤療法群の平均と組み合わせ群の平均の間で二元配置反復測定ANOVAを実施した。0.05未満のp値を統計的に有意と見なした。
【0495】
実験エンドポイント。動物の健康を、行動観察と体重チェックを通じて週に少なくとも2回モニタした。腫瘍を接種した後、動物の罹患率と死亡率を毎日チェックした。定型的なモニタリングの間、動物の行動(移動、餌と水の消費、体重増/減、目/毛のつや、および他のあらゆる異常など)に対する腫瘍増殖と治療のあらゆる効果をチェックした。
研究のエンドポイントは、動物が安楽死のための以下の基準の1つに達したときと決めた:1日目と比べて任意の時点で体重が20%以上減少した、72時間で1日目と比べて体重が15%以上減少した、個々の腫瘍体積が3000mm以上になった、または平均腫瘍体積が2000mm以上に達したときに各群の全マウスを安楽死させた。NCI-H358研究では、全群の動物を34日目または35日目に安楽死させ、NCI-H2122研究では、全群の動物を21日目または22日目に安楽死させた
【0496】
C.結果
ソトラシブ(AMG 510)はKRAS G12C変異体を特異的に標的とするKRAS共有結合型阻害剤である。これは、固形腫瘍(KRAS G12C変異を有するNSCLCが含まれる)を持つ患者で単剤応答を示した。具体的には、CodeBreaK 100研究において、NSCLCを持つサブグループは、確認された客観的奏功率(完全奏功または部分奏功)が32.2%、疾患制御率(客観的奏功または安定な疾患)が88.1%であり;無増悪生存期間の中央値は6.3ヶ月であった。Hong et al., N. Engl. J. Med. 2020; 383:1207-1217。細胞系の研究から、現世代のKRAS G12C阻害剤はKRAS G12CのGDP結合型だけを阻害するのに対し、SHP2阻害剤はKRAS-GDP占有率を増加させ、KRAS G12C阻害剤の有効性を増強することが示された。偏りのない機能ゲノミクスのアプローチにより、SHP2がKRAS G12C阻害下で脆弱であることも特定された。変異KRAS G12Cを標的とする治療剤にSHP2阻害を付加すると有効性がいくつかのやり方で改善する可能性がある。変異KRAS G12Cはこれら2つの状態間のある程度のレベルの循環を保持しているため、KRAS G12CのGTP結合型は、ソトラシブの存在下でERKシグナル伝達を相変わらず活性化させることができる。SHP2の阻害はRASのSOS1依存性GTPローディングを減少させ、 それがRAS-GDPのレベル上昇につながり、したがってソトラシブの有効性を増強することができる。それに加え、RTK/MAPK経路の上流または下流いずれかのメディエータの補償的バイパスシグナル伝達フィードバック活性化が臨床前と臨床の両方でKRAS G12C阻害剤の有効性を低下させることが実証されているため、SHP2の阻害はこのフィードバック活性化を阻害する可能性がある。
【0497】
SHP2阻害は、転帰が特に悪かった分子サブタイプを持つ患者でKRAS G12C阻害剤の抗腫瘍活性を増強する可能性もある。例えば腫瘍サプレッサであるケルチ様ECH関連タンパク質1(KEAP1)内の変異がKRAS変異NSCLCの約20%で見いだされており、KRASとKEAP1の共変異は、より悪い予後および臨床転帰と関係している。
【0498】
2つの研究を実施し、式(10b)のSHP2阻害剤とソトラシブの組み合わせがいずれかの単独の薬剤よりも抗腫瘍活性を増強するかどうかを調べた。研究は、(KRAS G12C変異を有する)NSCLC NCI-H358細胞系由来異種移植片モデルと、 (KRAS G12C、KEAP1、およびSTK11の共変異を有する)NSCLCNCI-H2122細胞系由来異種移植片モデルを用いて実施した。
【0499】
式(10b)とソトラシブの組み合わせを用いた治療の結果、KRAS G12C変異を有するNSCLC NCI-H358皮下異種移植片モデルにおいて腫瘍が退縮した。生体内研究を実施し、KRAS G12C阻害剤であるソトラシブと組み合わせた式(10b)が、KRAS G12C変異を有する細胞系由来NCI-H358 NSCLC異種移植片モデルを持つ雌NOD/SCIDマウスの腫瘍体積に及ぼす影響を評価した。雌NOD/SCIDマウスにNSCLC NCI-H358腫瘍細胞を皮下移植した。腫瘍が160mmの平均サイズに到達したとき、マウスを無作為化して治療群(n=10匹/群)に分け、強制経口投与によって毎日1回、示されているレベルのビヒクル、100mg/kgの式(10b)、10mg/kgのソトラシブ、または100mg/kgの式(10b)と100mg/kgのソトラシブの組み合わせを1日目から28日目まで投与した。マウスの腫瘍体積を34日目まで週に2回測定した。結果は29日目まで示されている。
【0500】
図2Aと表4に示されているように、式(10b)とソトラシブの組み合わせは、いずれかの試験物を単剤療法として用いた治療よりも有意に大きい抗腫瘍活性を示した。式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(10mg/kg)を組み合わせた1日1回の経口投与の後、この組み合わせ群では両方の単剤療法群と比べて統計的に有意な腫瘍体積の減少が観察され(図2Aと表4)、29日目の平均腫瘍退縮は83%へと有意に増加した(表4)。結果は、式(10b)とソトラシブの両方が、調べた用量レベルで単剤療法の抗腫瘍活性を持つことも示した。式(10b)(100mg/kg)またはソトラシブ(10mg/kg)の1日1回の経口投与の後、ビヒクル群と比べて腫瘍体積の統計的に有意な減少が両方の治療群で観察され(図2Aと表4)、29日目の平均腫瘍退は、式(10b)とソトラシブの単剤療法群についてそれぞれ14%と13%であった。
【表6】
略号:ANOVA=分散分析;NOD/SCID=非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症;n=数;REG=退縮;SEM=平均の標準誤差。
注:毎日の経口投与を1日目から28日目まで実施し、最後の腫瘍測定は34日目に実施した。統計分析については、ビヒクル群比較のため群平均の二元配置反復測定ANOVAを5日目から29日目まで実施した後、事後テューキー多重比較検定を実施し*、組み合わせ群比較のため単剤療法群と組み合わせ群の平均の二元配置反復測定ANOVAを5日目から29日目まで実施した**。
【0501】
図2Bに示されているように、体重に対するこれら治療の影響はなく、全治療がマウスモデルにおいてよく忍容された。
【0502】
式(10b)とソトラシブの組み合わせを用いた治療の結果、KRAS G12C、KEAP1、およびSTK11の共変異を有するNSCLC NCI-H2122皮下異種移植片モデルで腫瘍の増殖が阻害された。生体内研究を実施し、KRAS G12C阻害剤であるソトラシブと組み合わせた式(10b)が、KRAS G12C変異を有する細胞系由来のNCI-H2122NSCLC異種移植片モデルを持つBALB/cヌードマウスの腫瘍体積に及ぼす影響を評価した。このモデルは、いくつかの共発生変異(KEAP1とSTK11の機能喪失を引き起こすKEAP1の中のフレームシフト挿入(KEAP1 A203fs)とSTK11の中のフレームシフト欠失(STK11 G279fs)が含まれる)も持つ。腫瘍が180mmの平均サイズに到達したとき、マウスを無作為化して治療群(n=10匹/群)に分け、示されているレベルのビヒクル、100mg/kgの式(10b)、100mg/kgのソトラシブ、または100mg/kgの式(10b)と100mg/kgのソトラシブの組み合わせを毎日1回、強制経口投与によって1日目から21日目まで投与した。マウスの腫瘍体積と体重を21日目まで週に2回測定した。
【0503】
図3Aと表5に示されているように、式(10b)とソトラシブの組み合わせは、単剤療法としてのいずれかの試験物を用いた治療よりも有意に大きい抗腫瘍活性を示した。式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(100mg/kg)の組み合わせを1日に1回経口投与した後、統計的に有意な腫瘍体積減少が、両方の単剤療法群と比べて組み合わせ群で観察され(図3Aと表5)、21日目の腫瘍増殖阻害は96%まで有意に増加した(表5)。結果は、式(10b)とソトラシブの両方が、調べた用量レベルで単剤療法の抗腫瘍活性を持つことも示した。式(10b)(100mg/kg)またはソトラシブ(100mg/kg)を1日に1回経口投与した後、腫瘍体積の統計的に有意な減少がビヒクル群と比べて両方の治療群で観察され(図3Aと表5)、21日目には式(10b)とソトラシブそれぞれの単剤療法群で腫瘍増殖阻害が58%と72%であった(表5)。
【表7】
略号:ANOVA=分散分析;BALB=バッグ・アルビノ;n=数;SEM=平均の標準誤差;TGI=腫瘍増殖阻害。
注:毎日の経口投与を1日目から21日目まで実施し、最後の腫瘍測定は21日目に実施した。統計分析については、ビヒクル群比較のため群平均の二元配置反復測定ANOVAを3日目から21日目まで実施した後、事後テューキー多重比較検定を実施し*、組み合わせ群比較のため単剤療法群と組み合わせ群の平均の二元配置反復測定ANOVAを3日目から21日目まで実施した**。
【0504】
図3Bに示されているように、ソトラシブ単剤療法または併用療法が体重に影響を与えることはなく、これら治療はマウスモデルでよく忍容された。意外なことに、式(10b)単剤療法群の中の何匹かのマウスは体重減少が10%超であり、したがってこの群の動物は11日目~21日目にダイエットゲルを与えられた(図3B)。この体重減少の原因は不明であり、以前の研究ではこの用量レベル(100mg/kg)で観察されなかった。重要なことだが、式(10b)は式(10b)とソトラシブの併用群において同じ用量レベル(100mg/kg)で投与され、この組み合わせはよく忍容された(図3B)。
【0505】
D.結論
これら2つの生体内研究からの結果は、ソトラシブと組み合わせた式(10b)がよく忍容されることを実証しており、変異KRAS G12C NSCLC NCI-H358細胞系に由来する異種移植片モデルと、変異KRAS G12CとKEAP1 A203fs NSCLC NCI-H2122細胞系に由来する異種移植片モデルにおいて有意な抗腫瘍の利益を示した。これらの生体内研究は、前記組み合わせの臨床評価をサポートするとともに、SHP2阻害がKRAS G12C阻害剤の応答を強化し、共変異(KEAP1またはSTK11など)あり、またはなしの変異KRAS G12Cを持つためソトラシブと組み合わせた潜在的な治療法としての式(10b)からの利益を得られる可能性がある患者の数を増やせることを示している。
【0506】
実施例3:式(10b)とアダグラシブの組み合わせの有効性(インビトロ)
A.方法
腫瘍細胞系培養。5%COにした37℃チャンバーの中で、10%熱不活化ウシ胎仔結(Gibco、カタログ16140071)を補足したDMEM培地(Gibco、カタログ11995065)を用いてヒト膵臓がんMiaPaca-2細胞系をインビトロで維持した。5継代のMiaPaca-2細胞を接種のため回収した。5%COにした37℃チャンバーの中で、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco、カタログ16140071)を補足したRPMI-1640培地(Gibco、カタログ21875034)を用いてヒトNSCLC NCI-H358細胞系をインビトロで維持した。14継代のNCI-H358細胞を接種のため回収した。細胞外マトリックスを持つ三次元(3D)がんオルガノイド構造は生理学的に重要なモデルであることが実証されている。したがって3D細胞生存アッセイを利用してさまざまなKRAS G12C変異がん細胞系(MiaPaca-2とNCI-H358が含まれる)でアダグラシブ(MRTX849)と式(10b)の組み合わせを調べた。3D増殖アッセイのため、1,500個の細胞/ウエルを100%CULTREX(R&D systems、カタログ3700-100-01)と混合し、腫瘍微小環境を模倣するためオルガノイド増殖培地を補足した96ウエルのプレートに播種した。以下の成分をアドバンストDMEM/F-12に添加することによりMiaPaca-2の完全オルガノイド増殖培地を調製した。その成分は、R-スポンジン-1(100ng/mL)、ノギン(100ng/ml)、ガストリン(10nM)、FGF 10(100ng/ml)、EGF(50ng/ml)、A83-01(500nM)、B27サプリメント(1×)、N-アセチルシステイン(1mM)、ニコチンアミド(10mM)、GlutaMax(1×)、HEPES(10mM)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100U/ml-100μg/ml)、およびPrimocin(100μg/ml)である。以下の成分をアドバンストDMEM/F-12に添加することによりNCI-H358の完全オルガノイド培地を調製した。その成分は、R-スポンジン-1(100ng/ml)、ノギン(100ng/ml)、FGF 7(25ng/ml)、FGF 10(100ng/ml)、A83-01(500nM)、Y-27632(5μM)、SB202190(1μM)、B27サプリメント(1×)、N-アセチルシステイン(1.25mM)、ニコチンアミド(10mM)、GlutaMax(1×)、HEPES(10mM)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100U/ml-100μg/ml)、およびPrimocin(100μg/ml)である。播種の24時間後、表6に示されているように段階希釈を用いて細胞を異なる最終濃度のアダグラシブ(MRTX849)と式(10b)で処理した。
【表8】
【0507】
5日間インキュベートした後、3D Cell Titer-Glo(Promega、カタログG9683)アッセイを実施して細胞生存率とIC50値を求め、GraphPad Prism 9.4.0の中の用量応答アルゴリズムを用いてデータをフィットさせた。HSA応答行列とLoeweモデル分析を用いて相乗効果を評価した。
【0508】
患者由来のオルガノイドの確立、培養、および特徴づけ。以前に治療されていないCRC患者からインフォームドコンセントのもとで外科的に切除した腫瘍組織を取得した(MT Group)。病理医が検討した後、正常な隣接組織を除去した。機械的破壊と酵素消化の組み合わせによってCRC腫瘍細胞を単離した。全エクソームシークエンシングのためゲノムDNAを腫瘍オルガノイドから単離し、腫瘍特異的体細胞変異を同定した。CRC S002375オルガノイドを確立し、増殖させ、マトリゲル/CULTREXを含む完全オルガノイド培地の中で維持した。以下の成分をアドバンストDMEM/F-12に添加することにより完全オルガノイド培地を調製した。その成分は、R-スポンジン-1 (200ng/ml)、ノギン(100ng/ml)、ガストリン(10nM)、EGF(50ng/ml)、A83-01(500nM)、SB202190(1μM)、B27サプリメント(1×)、N-アセチルシステイン(1.25mM)、ニコチンアミド(10mM)、GlutaMax(1×)、HEPES(10mM)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100U/ml-100μg/ml)、およびPrimocin(100μg/ml)である。3D増殖アッセイのため、1,000個の細胞/ウエルを10%CULTREX(R&D systems、カタログ3700-100-01)と混合し、オルガノイド増殖培地を補足した384ウエルのULAプレートに播種した。播種の24時間後、表6に示されているように段階希釈を用いて細胞を異なる最終濃度のアダグラシブ(MRTX849)と式(10b)で処理した。インキュベーションの5日後、3D Cell Titer-Glo(Promega、カタログG9683)アッセイを実施して細胞生存率とIC50値を求め、GraphPad Prism 9.4.0の中の用量応答アルゴリズムを用いてデータをフィットさせた。HSA応答行列とLoeweモデル分析を用いて相乗効果を評価した
【0509】
B.結果
KRAS G12CとSHP2の阻害の併用療法は、KRAS G12C変異がん細胞において単剤療法よりも強い抗腫瘍活性を及ぼす。KRAS G12C変異細胞系は、表7、図5A、および図6Aに示されているように、アダグラシブと式(10b)による阻害に対して優れた感受性を示した。図5B~5Eと図6B~6Eに示されているように、併用治療は、KRAS G12C阻害単剤療法またはSHP2阻害単剤療法よりも強い細胞傷害効果を与えた。患者由来のオルガノイド(PDO)が原発腫瘍の形態、遺伝子型、および表現型の特徴を再現して腫瘍不均一性を模倣する能力が、それらオルガノイドを疾患生物学に関するわれわれの理解を深めるための、がんをモデル化するためドライバー遺伝子の機能を調べるための、生体外個別化薬スクリーニングのため個々の患者からの試料を評価するための強力なツールにしている。表7と図7A~7Eに示されているように、アダグラシブと式(10b)の相乗効果をCRC PDOにおいてさらに確認した。まとめると、インビトロと生体外のデータは、アダグラシブと式(10b)による阻害の併用療法が、膵臓がん、NSCLC、およびCRCにおいてそれぞれの単剤療法よりも強い抗腫瘍応答を誘導することを実証した。
【表9】
【0510】
実施例4:式(10b)とアダグラシブの組み合わせの有効性(生体内)
A.材料
試験製品#1 - 式(10b):
【0511】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0512】
分子式:C2126Cl
【0513】
分子量:437.37
【0514】
試験製品#2 - アダグラシブ(MRTX849):
【0515】
CAS番号2326521-71-3
【0516】
分子式:C3235ClFN
【0517】
分子量:604.13
【0518】
細胞系。KRAS G12C MiaPaca(膵臓がん)、NCI-H2122(肺がん)、およびSW837(結腸直腸がん)細胞系を用いる。SW837細胞はRPMI 1640+10%ウシ胎仔血清の中で培養し、MiaPaca-2細胞はDMEM+10%ウシ胎仔血清の中で培養し、NCI-H2122細胞はRPMI-1640+10%ウシ胎仔血清の中で培養する。全3つの細胞系を5%CO2にした37℃の組織培養インキュベータの中で培養する。
【0519】
試験動物。雌免疫不全マウスをこれらの実験で用いる。動物は異種移植片移植時に5~12週齢である。この研究における動物のケアと使用に関するプロトコルとあらゆる手続きは、研究開始前に動物実験委員会によって審査されて承認された。
【0520】
全動物を獣医学のスタッフの管理とケアのもとで維持する。毎日モニタリングする。マウスは12時間明/12時間暗で標準飼料と水に自由にアクセスできる。
【0521】
B.実験手続き
製剤。式(10b)を0.5%メチルセルロースの中で調製し、将来使用するため4℃で保管する。
【0522】
アダグラシブ(MRTX849)を以前に記載されているようにして例えば遊離塩基として製剤化し、10%のCaptisolと50ミリモル/Lのクエン酸塩バッファ、pH5.0の中の溶液として再懸濁させる。
【0523】
生体内増殖、治療、およびデータ分析。異種移植片の研究のため、減菌細胞を、50%のマトリゲルを含有できる減菌した培地またはPBSに懸濁させる。50~200μLの体積を5~12週齢の雌マウスの脇腹に皮下注射する。腫瘍のサイズをノギスで測定し、標準式(例えば:長さ×幅/2(ただし長さと幅は、腫瘍のそれぞれ長径と短径である)を用いて計算した。
【0524】
平均腫瘍体積が約100~300mmに到達したとき、マウスを腫瘍体積と体重の両方に基づいて無作為化して複数の群に分ける。次いでマウスを下記の表の中の以下の治療の1つに割り当てる。組み合わせのため、腫瘍を静止状態にする1~100mg/kg PO QDの範囲の用量のアダグラシブを選択する。
【表10】
【0525】
投与は、腫瘍体積がほぼ100と300mmの間に到達すると開始する。計画した用量(mg/kg)を実現するため、投与する化合物の量は個々のマウスの体重に基づく。腫瘍体積は1週間に2回測定する。体重と腫瘍体積を研究記録に取り込む。投与と体重と腫瘍体積のデータ回収は、ビヒクル対照群の腫瘍体積が少なくとも1,000mmになるまで続ける。
【0526】
グラフ作成と統計分析の市販のソフトウエアパッケージを用いてデータを分析する。体重変化と腫瘍増殖阻害(TGI)を記録する。
【0527】
実施例5:固形腫瘍を持つ患者における、KRAS G12C阻害剤と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究
KRAS G12C阻害剤(例えばソトラシブ以外のKRAS G12C阻害剤)と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究を実施することができる。研究の対象は固形腫瘍(非小細胞肺がん(NSCLC)など)を持つ。場合によりそのNSCLCは、KRAS変異(例えばQ61変異(コドン12または13の変異など)以外のKRAS変異を特徴とする。対象は以前に標準治療を終えていてもよい。
【0528】
臨床研究は、KRAS G12C阻害剤と組み合わせて用いるときの化合物(10b)の安全性、忍容性、および第2相推奨用量(RP2D)を評価するための用量漸増相を含むことができる。用量漸増研究の追加の目的に含めることができるのは、KRAS G12C阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の抗腫瘍活性の予備的評価(固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)v1.1に従って治験責任医師によって評価される客観的奏功率[ORR、完全奏功(CR)率+部分奏功(PR)率]、応答の持続期間[DOR]、および無増悪生存[PFS]と、全生存[OS]によって規定される);化合物(10b)とKRAS G12C阻害剤の組み合わせで与えられる化合物(10b)とKRAS G12C阻害剤の薬物動態(PK)の特徴づけ(例えば血漿または血清濃度-時間データからの曲線下面積[AUC]、最大薬濃度[Cmax]、Cmaxまでの時間[Tmax]、半減期));KRAS G12C阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の循環中と腫瘍内の標的関与(target engagement)(薬力学活性)の特徴づけ(例えばKRAS G12C阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の活性の循環中と腫瘍内の標的関与バイオマーカーにおける生の、規格化した、および/またはベースライン調整した分析物シグナル);および化合物(10b)と組み合わせて与えられたときのKRAS G12C阻害剤の免疫原性の特徴づけである。末梢と腫瘍内のバイオマーカーも評価することができる。用量漸増相は例えば5~10人の患者を含むことができる。
【0529】
臨床研究は、対象(例えばKRAS変異がある進行したNSCLCを持っていて標準治療が失敗した対象)でKRAS G12C阻害剤と組み合わせて使用されるとき、RECISTv1.1に従う(治験責任医師による)ORRによって規定される化合物(10b)の抗腫瘍活性を評価するため用量拡大/最適化期間も含むことができる。用量拡大/最適化研究の追加の目的に含めることができるのは、KRAS G12C阻害剤と組み合わされた化合物(10b)の抗腫瘍活性の追加測定の評価(RECISTv1.1によって規定される(盲検独立中央判定[BICR]による)ORRと、(治験責任医師とBICRによる)DORおよびPFS、ならびにOS);RP2Dの化合物(10b)をKRAS G12C阻害剤と組み合わせたときの安全性と忍容性の評価;組み合わせで与えられる化合物(10b)とKRAS G12C阻害剤のPKの特徴づけ;KRAS G12C阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の循環中と腫瘍内の標的関与(薬力学活性)の特徴づけ;および化合物(10b)と組み合わせて与えられたときのKRAS G12C阻害剤の免疫原性の特徴づけである。末梢と腫瘍内のバイオマーカーも評価することができる。用量拡大/最適化相には例えば10~30人の患者を含めることができる。
【0530】
臨床研究で使用するKRAS G12C阻害剤として、例えばアダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、LY3537982、またはLY3499446が可能である。KRAS G12C阻害剤は経口投与することができる。
【0531】
化合物(10b)は本明細書に記載されている通りである。化合物(10b)は例えば50と100mgの経口カプセルとして投与することができる。
【0532】
研究に含まれる対象は、以前に、白金に基づく二剤併用化学療法と抗PD-(L)1療法を含む少なくとも1回の治療ラインを、1回の治療ラインとして、または複数の個別の治療ラインとして与えられて受けた受けたことがあってもよい。この研究の対象は、固形腫瘍(KRAS変異(例えば本明細書に記載されているコドン12または13の中の変異)を特徴とする固形腫瘍など)を持っている可能性がある。例えばこの研究の対象は、KRAS変異を持つNSCLCを有する可能性がある。
【0533】
選択基準
臨床研究に参加する患者は、下に列挙した選択基準(適用可能なとき)を満たすものとする:
1.スクリーニング来院時に署名したインフォームドコンセントを提出する意思があってそれを提出できるほか、研究終了まですべての研究来院と研究条件に従うことができる18歳以上の個人。
2.スクリーニングの前2年以内に回収された腫瘍または液体生検のサンプルを検査した地方または中央の検査室からのKRAS G12C変異の文書があり、標的にできる以前に同定された他のドライバー変異(すなわち上皮増殖因子受容体[EGFR]、未分化リンパ腫キナーゼ[ALK]、ROS1)を持たない。
3.RECIST v1.1による測定可能な疾患を持つ。
4.治験責任医師の判断によれば、研究治療の開始後に最低12週間超の余命がある。
5.子どもを持つ可能性のある女性は、スクリーニング中と投与開始後48時間以内は血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン試験が陰性であること、または子宮摘出、両側卵管切除、または両側卵巣摘出を経験していること、または閉経していること(12ヶ月連続の無月経と定義され、追跡ホルモンレベル評価によって確認されている)が必要とされる。
6.子どもを持つ可能性のある患者は、研究期間中と、女性患者については研究治療を最後に投与した後の少なくとも90日間、または男性患者については研究治療を最後に投与した後の105日間にわたって(個々の患者についてどちらか長いほう)2つの避妊法を利用せねばならない。女性患者は、本研究の間は妊娠または授乳の状態になってはならない。女性と男性の患者は、研究治療を最後に投与した後のそれぞれ少なくとも90日間または105日間にわたり、生殖を目的とした卵子(卵細胞、卵母細胞)または精子の提供に同意してもならない。受け入れ可能な避妊法は付録2に十分に記載されている。
7.患者は、アメリカ合衆国東海岸がん臨床研究グループ(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)0~1(付録1参照)であって、直前2週間にわたって悪化がない必要がある。
第1a相用量漸増だけ
8.KRAS G12C阻害剤治療が初めてであるかどうかに関係なく、KRAS G12C変異を持ち、組織学的記録があって、局所的に進行して切除不能な、または転移した固形腫瘍を持つ。
9.利用可能なあらゆる標準治療のとき、またはその後に進行または疾患再発がある。
第1b相用量増加/最適化だけ
10.KRAS G12C阻害剤を用いた治療が初めてであるかどうかに関係なく、組織学的記録があって、局所的に進行して切除不能な、または転移したNSCLCを持つ。
11.少なくとも1回の全身療法のラインのとき、またはその後に進行または疾患再発している(白金に基づく二剤併用化学療法または抗PD-(L)1療法、または両方がまとめて1回のラインとして、または複数の個別の治療ラインとして与えられねばならない)。
【0534】
除外基準
下に列挙した除外基準のいずれかに合致する患者は研究への参加の適格でないとする。
1.サイクル1の1日目の来院の直前4週間以内に、または適用可能な場合には研究血球薬の5回半減期以内に(どちらか短いほう)、介入臨床研究に参加したことがある。患者は常に、下記のウォッシュアウト期間に関する特定の併用薬に適用される他の適格基準を守らねばならない。
2.緩和のため研究治療の開始前1週間以内に限定された照射野の放射線療法または陽子線治療を受けた、または研究治療の開始前4週間以内に骨髄の30%超への照射、または広い範囲の照射を受けた。
3.以下のいずれかを摂取した:
a.サイクル1の1日目から14日以内または5半減期以内(どちらかより長いほう)に、強力な、または中程度のシトクロムP450(CYP)3A4の誘導剤または阻害剤、またはP-糖タンパク質(P-gp)誘導剤(グレープフルーツジュース、スターフルーツ、またはセビリアオレンジを含有するハーバルサプリメントまたは食品が含まれる)、および/または
b.研究1日目の前14日以内、または薬またはその主要な活性代謝産物の5半減期以内(どちらかより長いほう)に、既知のシトクロムP450(CYP)3A4とP-糖タンパク質(P-gp)感受性基質(狭い治療濃度域を持つ)を使用、および/または
c.サイクル1の1日目の前14日以内、または5半減期以内(どちらかより長いほう)に、酸還元剤(プロトンポンプ阻害剤(PPI)またはH2受容体アンタゴニストなど)。
4.下に規定するように不十分な臓器機能を持つ:
血液学
a.絶対好中球カウントが1,500/μL未満;
b.血小板が100,000/μL未満;および
c.2週間以下の輸血、または6週間以下の赤血球生成刺激剤(例えばEpo、Procrit)なしでヘモグロビンが9g/dL未満。
腎臓
d.血清クレアチニンが1.5×ULN超(ただし(測定するか、コッククロフト-ゴールトの式を用いて計算して)クレアチニンクリアランスが40mL以上/分である場合は除く)
肝臓
e.患者がジルベール症候群または溶血性貧血の診断を治験責任医師によって確認された場合には、血清全ビリルビンが2×施設内基準値上限(ULN)以上、または3.0×施設内ULN以上;および
f.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)が2.5×ULN超。
凝固
g.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、国際標準化比(INR)またはプロトロンビン時間(PT)が1.5×ULN超;および
h.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたはaPTTが抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、活性化部分トロンボプラスチン時間が1.5×ULN超。
5.測定可能なウイルス量を持つ活性なB型肝炎感染(B型肝炎表面抗原[HBsAg]またはB型肝炎ウイルス[HBV]DNAの存在によって明確にされる)、C型肝炎感染(C型肝炎ウイルス[HCV]抗体と陽性HCV DNAの存在によって明確にされる)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を持つ。
6.生命を脅かす病気、医学的症状、活性な制御されない感染、または臓器系機能不全(例えば腹水、血液凝固障害、または脳症)、または(治験責任医師の見解では、参加している患者の安全を損なう可能性、または研究転帰の完全性を妨げるか損なう可能性のある)他の理由がある。
7.以下の心臓関連の問題または知見のいずれかを持つ:
a.研究治療開始前の最後の6ヶ月以内に有意な心血管疾患(例えば脳血管障害、心筋梗塞、または不安定狭心症)の既往歴;
b.臨床的に有意な心疾患(ニューヨーク心臓協会のクラスII以上の心不全が含まれる);
c.研究治療開始前の過去12ヶ月以内に左心室駆出率(LVEF)が50%未満の前歴;
d.研究目的のスポンサーによって提供されたECG機械を用いた3つの心電図(ECG)からの平均として導出した安静時補正QT間隔(QTc)が470ミリ秒超;および/または
e.安静時ECGのリズム、伝導、または形態における臨床的に有意なあらゆる異常(例えば第3度心ブロック、モビッツ2型心ブロック、心室性不整脈、制御されない心房細動)。
8.インフォームドコンセントの時点から過去3年以内に、治癒的治療をされた非黒色腫皮膚がん、表在性尿路上皮癌、上皮内子宮頸がん、または治癒的治療をされるか注意深くモニタされていて研究のコース中に再発または進行の治療を必要とすることが予想されない他の任意の悪性腫瘍とは別の浸潤性悪性腫瘍の診断を持つ。
9.非脳腫瘍からの未治療の脳転移を持つ。脳転移が切除されているか、サイクル1の1日目の少なくとも4週間前に終了する放射線療法を受けた患者が適格だが、研究薬を最初に投与する前にその患者が以下の基準のすべてを満たすことが条件である:a)2以下のCNS治療グレードに関係する残留神経症状;b)サイクル1の1日目の前に少なくとも2週間にわたって毎日安定な用量または減らしていく用量の10mg以下のプレドニゾン(または等価物)を投与された;およびc)サイクル1の1日目の前4週間前以内の追跡磁気共鳴イメージング(MRI)が新たな病巣の出現を示さない。
10.研究登録の4週間前以内に大きな外科手術を受けた。
注:これは、末梢挿入式中心ラインカテーテル留置、胸腔穿刺、穿刺、生検、または膿瘍ドレナージなどの手続きを受けたことがある患者を含まない。
11.どの組み合わせを患者が投与される可能性があるかに応じ、KRAS G12C阻害剤または化合物(10b)に対して、KRAS G12C阻害剤または化合物(10b)の活性または不活性な賦形剤に対して、またはKRAS G12C阻害剤または化合物(10b)と似た化学構造またはクラスの薬に対して過敏の前歴を持つ。
12.BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中に既知の活性化変異を有する腫瘍を持つ。
13.以前にSHP2阻害剤(例えばTNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、またはPF-07284892)を受けたことがある。
14.治験責任医師の見解では、化合物(10b)および/またはKRAS G12C阻害剤の吸収を不可能にする可能性のある胃腸病(例えば胃切除後、短腸症候群、制御されないクローン病、絨毛萎縮を伴うセリアック病、または慢性胃炎)を持つ。
15.透析中である。
16.同種異系骨髄移植の前歴を持つ。
17.経口薬(カプセル、錠剤)を、製品の剤型を噛むこと、壊すこと、潰すこと、開くこと、またはそれ以外のやり方で変化させることなく飲み込むことができない。
【0535】
研究設計
研究は、初期スクリーニング期間(例えば30日のスクリーニング期間)と、その後の複数の連続した治療サイクルとそれに続く治療後の追跡期間を含む治療期間を含むことができる。投与は1年以上続く可能性があるが、患者が研究治療を中断するか、研究から離脱する場合は別である。
【0536】
臨床研究の用量漸増相はベイズ最適間隔(BOIN)設計に従うことができる。3つの用量レベルの化合物(10b)を用量漸増研究で利用することができる(250mg、400mg、および550mgなど)。KRAS G12C阻害剤は、化合物(10b)と組み合わせて適切な用量(アメリカ食品医薬品局によって承認された用量など)で投与されることになる。このような用量は、例えば1日に約10と2000mgの間が可能である。用量漸増相を利用して研究の用量漸増相で用いられるRP2Dが決定される。
【0537】
臨床研究の用量拡大/最適化相では、対象は、化合物(10b)を用量漸増相からのRP2DでKRAS G12C阻害剤と組み合わせて投与される。拡大/最適化相の結果に応じ、異なる用量レベルでの化合物(10b)の投与を含む1つ以上の追加コホートを利用することができる。
【0538】
化合物(10b)またはKRAS G12C阻害剤の投与は、例えば薬関連有害事象が発生した際には調節することができる。
【0539】
図8は、固形腫瘍を持つ患者における、KRAS G12C阻害剤と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究を示す。研究設計は用量漸増と用量拡大/最適化を含む。
【0540】
図9は、BOIN設計を利用して実施した試験のためのフローチャートを示す。略号:BOIN=ベイズ最適間隔設計;DLT=用量制限毒性;MTD=最大耐量。注:λe=19.7%とλd=29.8%。実際には6人の患者/コホートであり、DLT率が1/6以下の場合には用量を漸増させ、DLT率が2/6以上の場合には、用量を漸減させる。
【0541】
これまでの開示は、理解を明確にする目的で図解と実施例によっていくらか詳細に記述してきたが、当業者は、ある変更と改変を添付の請求項の範囲内で実施できることがわかるであろう。それに加え、本明細書に提示されている各参考文献は、その全体が、各参考文献が参照によって個別に組み込まれているかのように同じ程度で参照によって組み込まれている。本出願と本明細書に提示されている参考文献の間に齟齬が存在する場合には、本出願が優先する。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
【国際調査報告】