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特表2024-536332置換ピリミジン-4(3H)-オンとソトラシブを使用する併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】置換ピリミジン-4(3H)-オンとソトラシブを使用する併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P35/00
A61K31/519
A61P43/00 121
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520085
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022045413
(87)【国際公開番号】W WO2023056037
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,883
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520427136
【氏名又は名称】ナビール ファーマ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】524122602
【氏名又は名称】ブリッジバイオ サービシズ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】カール ダムコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン リム
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】エリ ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ユイティン スン
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー コール
(72)【発明者】
【氏名】ブルック マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】カースティン シンケビシウス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ スティス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド バン ベーンホイゼン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ウッド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086ZA59
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、被験体の癌を治療する方法を提供する。この方法は、被験体にa)治療有効量の式(I)の化合物、及びb)治療有効量のソトラシブを投与することを含み、ここで、式(I)の化合物は、(I)、又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせで表される。特に、本開示は、被験体の固形腫瘍(例えば、進行性又は転移性の非小細胞肺癌)を治療有効量の式(10b)の化合物(すなわち、6-((3S),4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オン)をソトラシブと組み合わせて治療することを含み、ここで、被験体は、KRASに1つ又はそれ以上の変異、例えばKRAS G12Cを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における癌を治療する方法であって、被験体に以下を投与することを含む方法:
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化1】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせ、及び
b)治療有効量のソトラシブ(AMG510)。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式(10b):
【化2】
で表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名前を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌がKRAS変異を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌がKRAS G12C変異を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が固形腫瘍を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌、胃癌、中皮腫、又はこれらの組み合わせである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、KRAS G12C阻害剤に耐性であるKRAS G12C陽性癌である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、KRAS G12C阻害剤に対する固有の耐性及び/又は獲得耐性を特徴とするKRAS G12C陽性癌である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、ソトラシブに耐性であるKRAS G12C陽性癌である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、白金ベースの2剤併用化学療法及び/又は抗PD-1/PD-L1療法を含む全身療法の少なくとも1つの以前のライン中又はその後に増悪又は再発し、これらのそれぞれが単独療法で投与されるか又はこれらの両方が併用療法で投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、又はKRAS Q61X中に活性化変異を有さない、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が、過去にPTPN11阻害剤で治療されていない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が、過去に式(I)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、過去に式(I)の化合物で治療されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体が、過去にKRAS G12C阻害剤で治療されていない、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が、過去にKRAS G12C阻害剤で治療されている、請求項1~8及び10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が、過去にソトラシブで治療されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体が実施例3の1)~11)の選択基準のすべてを満たすが、前記被験体は実施例3の1)~17)の除外基準のいずれも満たさない、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体がヒトである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが併用投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが連続的に投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
式(I)又は(10b)の化合物がソトラシブの投与前に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
式(I)又は(10b)の化合物がソトラシブの投与後に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
式(I)若しくは(10b)の化合物又はソトラシブが経口投与されるか、又はソトラシブと式(I)若しくは(10b)の化合物のそれぞれが経口投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
式(I)又は(10b)の化合物が経口投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ソトラシブが経口投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが一緒に治療有効量で提供される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが相乗的に有効な量で提供される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブが、単独で使用される場合とは異なる用量で使用される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
式(I)又は(10b)の化合物が、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
式(I)又は(10b)の化合物が、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ソトラシブが、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ソトラシブが、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記治療する工程が1回又はそれ以上の治療サイクルを含み、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれが約28日間の持続期間を有し、そして式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブが毎日投与される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与が、式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブの1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与が、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減が、用量制限毒性(DLT)の評価によって決定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約19.7%未満である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が前の治療サイクル後の用量漸増を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約29.8%超である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が前の治療サイクル後の用量漸減を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約21.9%~約29.8%の範囲である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が、前の治療サイクル後の用量保持を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記治療する工程が用量漸増期間を含み、ここで、用量漸増期間の後、治療する工程が用量拡大/最適化期間をさらに含み、そして、式(I)又は(10b)の化合物が用量漸増期間中に決定された投与レジメンで投与される、請求項35~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記用量拡大/最適化期間中に、式(I)又は(10b)の化合物の投与が1回又はそれ以上の用量調整を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgである、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~45のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、式(I)又は(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、又は約300mg~約400mgである、方法。
【請求項47】
前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mg、約400mg、又は約550mgである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mgである、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約400mgである、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約550mgである、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
式(10b)の化合物及びソトラシブがそれぞれ経口投与される、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
式(10b)の化合物が1日1回、2回、3回、又は4回投与される、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
式(I)又は(10b)の化合物が1日1回投与され、ソトラシブが1日1回投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
式(I)又は(10b)の化合物が錠剤で提供される、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記治療する工程が、癌又は固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%減少させる、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記治療する工程が、癌又は固形腫瘍を安定化させる、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記被験体が、抗腫瘍奏功に相関する1つ又はそれ以上のバイオマーカーについてさらに評価される、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
被験体における癌を治療するためのキットであって、
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化3】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、若しくはこれらの組み合わせ、又は式(10b)で表される化合物:
【化4】
b)治療有効量のソトラシブを、
効果的な投与のための説明書と共に含むキット。
【請求項60】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが併用投与用に製剤化される、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが連続投与用に製剤化される、請求項59に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願された米国仮出願第63/250,883号に対する優先権を主張し、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援による研究開発の下で行われた発明の権利に関する声明
該当なし。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、又はコンピュータープログラムリストの付録への参照
該当なし。
【背景技術】
【0004】
背景
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路は、細胞増殖、生存、分化、及び運動性を含む多様な細胞活動の調節において重要な役割を果たしている。MAPKシグナル伝達経路は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)によって媒介される。MAPK経路の調節異常は、すべての悪性腫瘍の3分の1以上で発生する。古典的なMAPK経路は、Ras(すべての動物細胞系統及び臓器で発現される関連タンパク質のファミリー)、Raf(レトロウイルス癌遺伝子に関連する3つのセリン/スレオニン特異的プロテインキナーゼのファミリー)、MEK(マイトジェン-活性化プロテインキナーゼキナーゼ)、及びERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)からなり、細胞表面受容体で生成された増殖シグナルを細胞質シグナル伝達を介して核に連続して中継する。RTK及びMAPK経路の構成要素(例えば、RASやRAF)は、ヒトの癌における突然変異によって頻繁に活性化され、その結果、経路が構成的に活性化される。上皮成長因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、及びMAPK阻害剤を含むいくつかのRTK及びMAPK経路阻害剤は、これらの経路の活性化が発癌ドライバーである固形腫瘍の治療に承認されている。
【0005】
KRAS(キルステン(Kirsten)ラット肉腫ウイルス2ウイルス癌遺伝子ホモログ)は、RAS/MAPK経路の一部である。KRASは、さまざまなヒトの癌において最も蔓延している癌遺伝子の1つである。発癌性KRASが腫瘍形成を促進するという説得力のある証拠があるにもかかわらず、変異型KRASを標的とする試みは長年にわたって停滞している。最近、肺腺癌の約15%及びその他の癌の0%~8%に存在するG12C変異を伴うKRASを特徴とする癌に対する治療法の開発が進展している。初期段階の臨床治験の結果は、このサブグループの多くの癌患者がこれらの新規治療法から大きな恩恵を受ける可能性があることを示している。最初のKRAS G12C阻害剤であるソトラシブ(sotorasib)は、過去に少なくとも1回の全身療法を受けたKRAS G12C変異のある局所進行性又は転移性NSCLC(これは、食品医薬品局(FDA)承認の検査で判定された)の成人患者の治療薬として、FDAにより早期承認を受けた。別のKRAS G12C阻害剤であるアダグラシブ(adagrasib)は、同じ適応症に対してFDAの画期的治療薬の指定を取得した。追加のKRAS G12C阻害剤も研究中である。
【0006】
RTK及びMAPK経路阻害剤の進歩にもかかわらず、これらの経路阻害剤に対する耐性が臨床試験及び非臨床試験の両方で観察されている。このような耐性は、経路の他の構成要素の活性化又はアップレギュレーションによって引き起こされている可能性がある。従って、RTK及びMAPK経路阻害剤を含む単剤療法は、承認された経路阻害剤に対して耐性を発現したか又は発現し得る腫瘍の治療には十分ではない可能性がある。
【0007】
タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体型11(PTPN11、Srcホモロジー2ホスファターゼ(SHP2)としても知られている)は、PTPN11遺伝子によってコードされる非受容体タンパク質チロシンホスファターゼである。SHP2は、RTK媒介MAPKシグナル伝達経路において重要な役割を果たす。このPTPには2つのタンデムSrcホモロジー2(SH2)ドメインが含まれ、これらは、ホスホチロシン結合ドメイン、触媒ドメイン、及びC末端テールとして機能している。基底状態では、このタンパク質は、典型的には活性部位をブロックするN末端SH2ドメインを有する不活性な自己阻害構造として存在する。サイトカインにより媒介されるシグナル伝達及びSH2ドメインへのリン酸化タンパク質の成長因子の結合によって刺激されると、自己阻害が解除され、これにより活性部位が、PTPN11基質の脱リン酸化に利用できるようになる(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30. KS Grossmann, Adv. Cancer Res. 2010, 106, 53-89. W.Q. Huang et. al. Curr. Cancer Drug Targets 2014, 14, 567-588. C. Gordon et. al. Cancer Metastasis Rev. 2008, 27, 179-192.)。
【0008】
PTPN11の生殖系列変異及び体細胞変異は、触媒活性の機能獲得をもたらすいくつかのヒト疾患(ヌーナン症候群及びヒョウ症候群;並びに複数の癌、例えば若年性骨髄単球性白血病、神経芽腫、骨髄異形成症候群、B細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、黒色腫、急性骨髄性白血病、乳癌、肺癌、結腸癌)において報告されている。(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30)。最近の研究は、単一のPTPN11変異がマウスにおいてヌーナン症候群、JMML様骨髄増殖性疾患、及び急性白血病を誘発する可能性があることを示している。これらの変異は、N-SH2ドメインと触媒部位の間の自己阻害を破壊し、酵素の触媒部位への基質の構成的アクセスを可能にする(E. Darian et al, Proteins, 2011, 79, 1573-1588. Z-H Yu et al, JBC, 2013, 288, 10472, W Qiu et al BMC Struct. Biol. 2014, 14, 10)。
【0009】
PTPN11は、ほとんどの組織で広く発現されており、Ras-MAPK、JAK-STAT、又はPI3K-AKT経路を含む複数のシグナル伝達経路を介する、増殖、分化、細胞周期維持、上皮間葉転換(EMT)、分裂促進活性化、代謝制御、転写制御、及び細胞遊走を含む多様な細胞機能の多様性にとって重要な様々な細胞シグナル伝達事象において調節的役割を果たしている(Tajan, M. et. al. Eur. J. Medical Genetics, 2015, 58, 509-525. Prahallad, A. et. al. Cell Reports, 2015, 12, 1978-1985)。
【0010】
さらに、PTPN11/SHP2が腫瘍形成中の免疫回避に関与しており、従ってSHP2阻害剤が癌患者の免疫応答を刺激する可能性があるという証拠が増えている(Cancer Res. 2015 Feb 1;75(3):508-18. T Yokosuka T, J Exp Med. 2012, 209(6), 1201. S Amarnath Sci Transl Med. 2011, 3, 111ra120. T Okazaki, PNAS 2001, 98:24, 13866-71)。
【0011】
置換ピリミン-4(3H)-オン化合物は、2019年8月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2019/045903号に開示されているように、PTPN11/SHP2に対する阻害活性を有する化合物のクラスを指し、以下の式:
【化1】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせで表され、式中、下付き文字a及びb、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR13はPCT/US2019/045903に提供されている通りであり、これは、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。特に、置換ピリミン-4(3H)-オン化合物は、式(I):
【化2】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせで表される。特定の実施態様において、式(I)の化合物は化合物(10b)であり、式:
【化3】
で表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名前を有する。
【0012】
式(I)、特に式(10b)の化合物は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)媒介マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路において重要な役割を果たすチロシンホスファターゼ(Matozaki, 2009)であるSrcホモロジー-2ホスファターゼ(SHP2)(タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体型11(PTPN11)としても知られている)の、強力で選択的な経口活性アロステリック阻害剤である。MAPK経路の主要な構成要素には、低分子GTPaseRAS、セリン/スレオニンプロテインキナーゼRAF、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)、及び細胞外シグナル活性化キナーゼ(ERK)が含まれる。細胞内では、SHP2は、上皮成長因子受容体(EGFR)などのRTKの細胞内ドメインにあるリン酸化チロシン残基に結合し、下流のMAPKシグナル伝達経路の活性化を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
癌は、KRAS G12C阻害剤を含むRTK及びMAPK経路阻害剤に対する耐性を有するか又は耐性を発現する可能性があるため、癌を治療するための、組み合わせて使用され得る薬剤を含む、有効かつ安全な治療薬の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
要約
本開示は、様々な癌を治療するための方法を提供し、この方法は、KRAS G12C阻害剤(例えば、AMG510としても知られているソトラシブ)及びPTPN11阻害剤(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)の投与を含む。本明細書で提供される併用療法は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)を含む癌の治療に有用である。
【0015】
1つの態様において、本開示は、それを必要とする被験体における癌(例えば、進行性又は転移性の非小細胞肺癌)を治療する方法を提供し、この方法は、前記被験体に以下を投与することを含む:
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化4】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせ、及び
b)治療有効量のソトラシブ。
【0016】
別の態様において、本開示は、被験体における癌を治療するための医薬組成物を提供し、前記組成物は、
a)治療有効量の式(I)で表される化合物、及び
b)治療有効量のソトラシブを、
医薬的に許容し得る担体又は賦形剤と一緒に含み、
ここで、式(I)の化合物は本明細書に定義及び記載されている通りである。
【0017】
別の態様において、本開示は、被験体における癌を治療するためのキットを提供し、前記キットは、
a)治療有効量の式(I)で表される化合物、及び
b)治療有効量のソトラシブを、
効果的な投与のための説明と一緒に含み、
ここで、式(I)の化合物は本明細書で定義及び記載されている通りである。
【0018】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(10b):
【化5】
で表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名前を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1A~1Eは、化合物A(すなわち、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、及び1Dは、ノギスによって隔週監視された腫瘍体積を示す。図1C及び1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SEMを表す。図1B~1Eについては、N=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
図1B図1A~1Eは、化合物A(すなわち、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、及び1Dは、ノギスによって隔週監視された腫瘍体積を示す。図1C及び1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SEMを表す。図1B~1Eについては、N=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
図1C図1A~1Eは、化合物A(すなわち、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、及び1Dは、ノギスによって隔週監視された腫瘍体積を示す。図1C及び1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SEMを表す。図1B~1Eについては、N=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
図1D図1A~1Eは、化合物A(すなわち、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、及び1Dは、ノギスによって隔週監視された腫瘍体積を示す。図1C及び1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SEMを表す。図1B~1Eについては、N=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
図1E図1A~1Eは、化合物A(すなわち、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン)と組み合わせた式(10b)の化合物が、マウスモデルにおいて耐用量でNCI-H358皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図1A、1B、及び1Dは、ノギスによって隔週監視された腫瘍体積を示す。図1C及び1Eは、記録された体重を示す。データは平均±SEMを表す。図1B~1Eについては、N=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
【0020】
図2A図2A及び2Bは、式(10b)の化合物を単独で又はソトラシブ(AMG510)と組み合わせて治療したときの、NCI-H358皮下細胞株由来腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積及び体重の変化を示す。
図2B図2A及び2Bは、式(10b)の化合物を単独で又はソトラシブ(AMG510)と組み合わせて治療したときの、NCI-H358皮下細胞株由来腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積及び体重の変化を示す。
【0021】
図3A図3A及び3Bは、式(10b)の化合物を単独で又はソトラシブ(AMG510)と組み合わせて治療したときの、NCI-H2122皮下細胞株由来腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積及び体重の変化を示す。
図3B図3A及び3Bは、式(10b)の化合物を単独で又はソトラシブ(AMG510)と組み合わせて治療したときの、NCI-H2122皮下細胞株由来腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積及び体重の変化を示す。
【0022】
図4A図4A~4Dは、NCI-H358(KRASG12C)モデルにおける式(10b)の化合物及びソトラシブ(AMG510)のインビトロ生存率データを示す。図4A:式(10b)の様々な濃度における3D生存率。図4B:AMG510と式(10b)の組み合わせのBlissエネルギースコア化。図4C:DUSP6レベルの倍数変化。図4D:SPRY4レベルの倍数変化。図4C~4Dに示すように、AMG510と式(10b)の組み合わせは、いずれかの薬剤単独と比較して、DUSP6及びSPRY4レベルを抑制した。
図4B図4A~4Dは、NCI-H358(KRASG12C)モデルにおける式(10b)の化合物及びソトラシブ(AMG510)のインビトロ生存率データを示す。図4A:式(10b)の様々な濃度における3D生存率。図4B:AMG510と式(10b)の組み合わせのBlissエネルギースコア化。図4C:DUSP6レベルの倍数変化。図4D:SPRY4レベルの倍数変化。図4C~4Dに示すように、AMG510と式(10b)の組み合わせは、いずれかの薬剤単独と比較して、DUSP6及びSPRY4レベルを抑制した。
図4C-4D】図4A~4Dは、NCI-H358(KRASG12C)モデルにおける式(10b)の化合物及びソトラシブ(AMG510)のインビトロ生存率データを示す。図4A:式(10b)の様々な濃度における3D生存率。図4B:AMG510と式(10b)の組み合わせのBlissエネルギースコア化。図4C:DUSP6レベルの倍数変化。図4D:SPRY4レベルの倍数変化。図4C~4Dに示すように、AMG510と式(10b)の組み合わせは、いずれかの薬剤単独と比較して、DUSP6及びSPRY4レベルを抑制した。
【0023】
図5図5は、KRAS G12C変異を伴う固形腫瘍患者における、ソトラシブと組合わせた式(10b)の第1A/1B相試験を示す。試験計画には、第1a相の用量漸増と第1b相の用量拡大/最適化が含まれる。
【0024】
図6図6は、BOINデザインを使用して実施された試験のフローチャートを示す。略語:BOIN=ベイズ最適区間デザイン(Bayesian optimal interval design)。DLT=用量制限毒性。MTD=最大耐用量。注:λe=19.7%、及びλd=29.8%。実際には、コホートあたり6人の患者で、DLT率が≦1/6の場合は用量を増やし、DLT率が≧2/6の場合は用量を減らす。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
I.総論
本開示は、被験体における癌(例えば、固形腫瘍)の併用療法を提供する。この方法は、被験体に、a)治療有効量の式(I)の化合物(PTPN11阻害剤として)、及びb)治療有効量のソトラシブを投与することを含み、ここで、式(I)の化合物は本明細書に定義及び記載されているとおりである。特に、癌は、Q61X変異以外の変異などのKRAS変異、例えばKRAS G12C変異を特徴とする。いくつかの例では、癌は固形腫瘍、例えば進行性又は転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)である。また、被験体における癌を治療するための医薬組成物及びそのキットも提供される。
【0026】
II.定義
本明細書で使用される場合、以下の用語は示された意味を有する。
【0027】
「含む(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」、並びにこれらの派生語は、本明細書では包括的で自由な用語として交換可能に使用される。例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、又は「有する(having)」の使用は、含まれている(comprised)、含まれている(had)、又は含まれている(included)いかなる要素も、その動詞を含む文節の主語に含まれる唯一の要素ではないことを意味する。
【0028】
値の範囲が開示されており、「n・・・からn」又は「n・・・とnの間」という表記が使用される場合、n及びnは数字であり、特に指定のない限り、この表記は、数値自体と数値間の範囲を含むことを目的としている。この範囲は、最終値間の及びこれらを含む整数又は連続値になる場合がある。一例として、炭素は整数単位で表されるため、「2~6の炭素」の範囲は、2、3、4、5、及び6の炭素を含むことを意図している。例として、「1~3μM(マイクロモル)」という範囲を比較すると、これは、1μM、3μM、及びその間のすべてからの有効数字(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことを意図している。
【0029】
本明細書で使用される「約」は、それが修飾する数値を限定することを意図しており、そのような値が誤差の範囲内で可変であることを示す。データのグラフ又は表に示される平均値に対する標準偏差などの特定の誤差範囲が言及されていない場合、「約」という用語は、記載された値、及び有効数字を考慮して、その数値を切り上げ又は切り下げて含めることもできるその範囲を包含する範囲を意味すると理解されるべきである。
【0030】
「塩」とは、本開示の化合物の酸塩又は塩基塩を指す。医薬的に許容し得る酸付加塩の具体例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩、及び有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩である。医薬的に許容し得る塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、若しくはマグネシウム塩、又は類似の塩が挙げられる。医薬的に許容し得る塩は毒性がないことが理解される。適切な医薬的に許容し得る塩に関するさらなる情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
「溶媒和物」は、非共有結合性分子間力によって結合された化学量論量又は非化学量論量の溶媒をさらに含む、本明細書に提供される化合物又はその塩を指す。
【0032】
「水和物」は、水分子と複合体を形成する化合物を指す。本開示の化合物は、1/2の水分子又は1~10個の水分子と複合体を形成することができる。
【0033】
不斉中心は本明細書に開示される化合物中に存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周囲の置換基の配置に応じて記号「R」又は「S」で指定される。本開示は、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、及びエピマー形態、並びにd-異性体及びl-異性体、並びにそれらの混合物を含むすべての立体化学異性体形態を包含することが理解されるべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発物質から合成的に、又は鏡像異性体生成物の混合物の調製とその後のジアステレオ異性体混合物への変換などの分離、その後の分離又は再結晶、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラムによる鏡像異性体の直接分離によって、又はその他の適切な方法によって調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は市販されているか、さまざまな技術によって製造及び分割することができる。さらに、本明細書に開示される化合物は、幾何異性体として存在し得る。本開示には、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)、及びツズサメン(Z)異性体、並びにそれらの適切な混合物が含まれる。さらに、化合物は互変異性体として存在し得る。すべての互変異性体は、本開示によって提供される。さらに、本明細書に開示される化合物は、非溶媒和形態でも、水、エタノールなどの医薬的に許容し得る溶媒との溶媒和形態でも存在し得る。一般的に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0034】
本明細書で単独又は組み合わせて使用される「互変異性体」は、急速に相互変換する2つ以上の異性体の1つを指す。一般に、この相互変換は十分に速いため、別の互変異性体の非存在下で個々の互変異性体が単離されることはない。互変異性体の量の比率は、溶媒組成、イオン強度、pH、及びその他の溶液パラメーターに依存する可能性がある。互変異性体の量の比率は、特定の溶液中、及び前記溶液中の生体分子結合部位の微小環境で異なり得る。互変異性体の例には、ケト/エノール、エナミン/イミン、及びラクタム/ラクチム互変異性体が含まれる。互変異性体のさらなる例には、2-ヒドロキシピリジン/2(1H)-ピリドン及び2-アミノピリジン/2(1H)-イミノピリドン互変異性体も含まれる。
【0035】
本明細書に開示される化合物には立体構造異性体が存在する。式中、Rがアリール又はヘテロアリールの場合:
【化6】
アリール又はヘテロアリール基は、以下で表されるように、ピリミジノン部分に関して異なるコンフォメーションに置くことができる:
【化7】
【化8】
これらの形態は、ピリミジノン部分に関するアリール又はヘテロアリール基のコンフォメーションに応じて、記号「S」又は「R」で指定される。「S」及び「R」形態の例は、国際特許出願第PCT/US2019/045903号の実施例1~20に見出すことができ、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。式(10b)の化合物は、実質的に「R」形態である。
【0036】
「医薬的に許容し得る」とは、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応を起こすことなく、患者の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比があり、意図された用途に対して有効な化合物(塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体など)を指す。本明細書に開示される化合物は、本明細書に定義及び記載されるように、医薬的に許容し得る塩として存在することができる。
【0037】
「併用療法」とは、本開示に記載の治療状態又は障害を治療するための2つ又はそれ以上の治療薬の投与を意味する。そのような投与は、一定比率の有効成分を有する単一のカプセル剤又は有効成分ごとに複数の別個のカプセル剤などで、実質的に同時にこれらの治療薬を同時投与することを包含する。さらに、そのような投与にはまた、各タイプの治療薬を連続的に使用することも含まれる。いずれの場合でも、治療レジメンは、本明細書に記載の状態又は障害の治療において、薬物の組み合わせの有益な効果を提供するであろう。
【0038】
「PTPN11阻害剤」は本明細書において、PTPN11活性に関して、国際特許出願第PCT/US2019/045903号に一般的に記載されているPTPN11アッセイ(例えば、実施例21の組換えヒトPTPN11タンパク質の酵素活性)で測定した場合、約100マイクロモル(μM)以下、及びより典型的には約50μM以下のIC50を示す化合物を指すために使用される。「IC50」は、酵素(例えば、PTPN11)の活性を最大レベルの半分まで低下させる阻害剤の濃度である。特定の実施態様において、PCT/US2019/045903に開示される化合物は、PTPN11の阻害に関して約10μM以下のIC50を示す;さらなる実施態様において、化合物は、PTPN11の阻害に関して約1μM以下のIC50を示す;なおさらなる実施態様において、化合物は、PTPN11の阻害に関して約200nM以下のIC50を示す;なおさらなる実施態様において、化合物は、PTPN11の阻害に関して約100nM以下のIC50を示す;及びなおさらなる実施態様において、化合物は、本明細書に記載のPTPN11アッセイで測定した場合、PTPN11の阻害に関して約50nM以下のIC50を示す。特定の実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、PTPN11(例えば、PTPN11-E76K変異体酵素)の阻害に関して50nM以下のIC50を示す。
【0039】
「治療有効量」とは、特定された疾患又は状態を治療又は改善するのに、あるいは検出可能な治療効果又は阻害効果を示すのに有用な化合物又は医薬組成物の量を指す。正確な量は、治療の目的に依存し、公知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1 3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); 及び Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
【0040】
「治療する」、「治療している」、及び「治療」は、損傷、病状、又は状態の治療又は改善における成功のあらゆる兆候を指し、客観的又は主観的なパラメーター、例えば、症状の軽減;寛解;縮小;又は傷害、病理、状態を患者に対してより耐容性にすること;変性又は衰退の速度を遅くすること;変性の最終点の衰弱を軽減すること;及び/又は患者の身体的又は精神的健康を改善することを含む。症状の治療又は改善は、身体診療、神経精神医学的診療、及び/又は精神医学的評価の結果を含む、客観的又は主観的パラメーターに基づくことができる。
【0041】
「投与する」とは、経口投与又は静脈内投与などによる、被験体への化合物又はその形態の治療的提供を指す。
【0042】
「患者」又は「被験体」は、本明細書に提供される医薬組成物の投与によって治療できる疾患又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい生体を指す。非限定的な例には、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、シカ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、及び他の非哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施態様において、被験体はヒトである。いくつかの実施態様において、被験体は成人(例えば、少なくとも18歳)である。
【0043】
本明細書で使用される「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに特定の成分を特定の量で組み合わせることによって直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。「医薬的に許容し得る」とは、担体、希釈剤、又は賦形剤が製剤の他の成分と適合性があり、その受容者に有害であってはならないことを意味する。
【0044】
「医薬的に許容し得る賦形剤」とは、被験体への活性薬剤の投与及び被験体による吸収を助ける物質を指す。本開示において有用な医薬賦形剤には、限定されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び着色剤が挙げられる。他の医薬賦形剤も本開示において有用であり得る。
【0045】
「錠剤」とは、コーティング剤を有するか又はコーティング剤を有しない固体の医薬製剤を指す。「錠剤」という用語はまた、1層、2層、3層、又はそれ以上の層を有する錠剤も指し、ここで、前述のタイプの錠剤のそれぞれは、1つ又はそれ以上のコーティング剤を有していても有していなくてもよい。いくつかの実施態様において、本開示の錠剤は、ローラー圧縮又は当技術分野で知られている他の適切な手段によって調製することができる。「錠剤」という用語はまた、ミニ錠、メルト錠、チュアブル錠、発泡錠、及び口腔内崩壊錠も含む。錠剤は、式(I)又は(10b)の化合物と1つ又はそれ以上の医薬賦形剤(例えば、充填剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、滑沢剤など)とを含む。任意選択的に、コーティング剤も含めることができる。錠剤の重量パーセントを計算する目的のため、コーティング剤の量は計算に含まれない。すなわち、本明細書で報告される重量パーセントは、コーティングされていない錠剤のものである。
【0046】
他に明記されない限り、例えば錠剤中の式(I)又は(10b)の化合物の含有量は、無塩・無水ベースの式(I)又は(10b)の化合物の正規化重量に基づいて計算される。すなわち、式(I)又は(10b)の化合物中の塩及び/又は水分含有量は計算に含まれない。
【0047】
本明細書で使用される「KRAS G12C阻害剤」は、G12C変異KRAS中の変異システイン12を選択的に修飾することによって、KRAS(キルステンラット肉腫2ウイルス癌遺伝子ホモログ)の合成又は生物活性を標的とし、低下させ、又は阻害する化合物を指す。KRAS G12C阻害剤は、KRAS G12Cを少なくとも部分的に阻害し得る。KRAS G12C阻害剤は、選択的KRAS G12C阻害剤(例えば、G12D変異などの別の変異を伴うKRASよりも、G12C変異を伴うKRASに対してより高い選択性を有する)であってもよい。このような場合、選択的KRAS G12C阻害剤は、KRAS G12Cに対しては高い効力を有するが、他のKRAS変異に対しては親和性が低い可能性がある。KRAS G12C阻害剤は、共有結合阻害剤(例えば、システイン12を共有結合的に修飾できる)であってもよい。KRAS G12C阻害剤は、非共有結合阻害剤であってもよい。KRAS G12C阻害剤は、KRASの不活性(「GDP」)形態に結合する可能性がある。KRAS G12C阻害剤は、KRASの活性型(「GTP」)に結合する可能性がある。KRAS G12C阻害剤は、KRASの不活性型(「GDP」)及び活性型(「GTP」)の両方に結合し得る。KRAS G12C阻害剤の例は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446を含む。
【0048】
「KRAS陽性癌」とは、KRAS遺伝子が再構成、変異、又は増幅された癌を指す。「KRAS G12C陽性癌」とは、KRAS G12C遺伝子が再構成、変異、又は増幅された癌を指す。
【0049】
「KRAS阻害剤に耐性である癌」及び/又は「KRAS阻害剤に耐性であるKRAS陽性癌である癌」とは、以前のKRAS阻害剤による治療に良好に反応しない癌又は腫瘍を指すか、あるいはRAS阻害剤に良好に反応した後に繰り返されるか又は再発する癌又は腫瘍を指す。「KRAS G12C阻害剤に耐性である癌」及び/又は「KRAS G12C阻害剤に耐性であるKRAS G12C陽性癌である癌」とは、以前のKRAS G12Cによる治療に良好に応答しない癌又は腫瘍を指すか。又は、あるいはKRAS G12C阻害剤に良好に反応した後に繰り返されるか又は再発する癌又は腫瘍を指す。
【0050】
本明細書で使用される「共同治療有効量」とは、治療すべき温血動物、特にヒトに別々に(時系列的にずらして、特に配列特異的に)治療薬が投与される場合に、治療薬が(相加的だが、好ましくは相乗的な)相互作用(共同治療効果)を示す量を意味する。これに該当するかどうかは、特に血中濃度を監視することによって決定でき、両方の化合物が少なくとも特定の時間間隔で治療対象のヒトの血液中に存在することが示される。
【0051】
本明細書で使用される「相乗効果」とは、単独で投与される各薬剤の効果を単純に足し合わせるよりも大きい、少なくとも2つの治療薬[本明細書で定義されるPTPN11阻害剤と本明細書で定義されるKRAS G12C阻害剤]の効果を指す。この効果は、例えば、癌、特に肺癌(例えば、非小細胞肺癌)などの増殖性疾患、又はその症状の症候性増悪を遅らせることができる。同様に、「相乗的に有効な量」とは、相乗効果を得るために必要な量を指す。
【0052】
「a」、「an」、又は「a(n)」は、本明細書において置換基の群又は「置換基群」に関して使用される場合、少なくとも1つを意味する。例えば、ある化合物が「1つの」アルキル又はアリールで置換される場合、その化合物は少なくとも1つのアルキル及び/又は少なくとも1つのアリールで置換され、ここで、各アルキル及び/又はアリールは任意選択的に異なる。別の例において、化合物が「1つの」置換基で置換される場合、化合物は少なくとも1つの置換基で置換され、ここで、各置換基は任意選択的に異なる。
【0053】
III.併用療法
1つの態様において、本開示は、被験体における癌を治療する方法を提供する。この方法は、被験体に以下を投与することを含む:
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化9】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせ;そして
b)治療有効量のソトラシブ(AMG510)。
【0054】
III-1:式(I)の化合物
式(I)の化合物は、医薬的に許容し得る塩の形態又は中性の形態でもよく、それぞれ任意選択的に溶媒和物又は水和物の形態でもよい。
【0055】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は医薬的に許容し得る塩の形態である。いくつかの実施態様において、式(I)の化合物の医薬的に許容し得る酸付加塩は、式(Ia)で示される:
【化10】
式中、HXは医薬的に許容し得る酸付加物である。
【0056】
許容し得る酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などの無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの有機酸から誘導されるものが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は中性の形態である。
【0058】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、実質的に6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)の部分を有し、その立体化学は式(10b)に示される:
【化11】
【0059】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、実質的に式(10b)に示すようにR コンフォメーションである:
【化12】
【0060】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は式(10b):
【化13】
で示され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名前を有する。
【0061】
いくつかの実施態様において、式(I)又は式(10b)の化合物は中性形態である。
【0062】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(10b)の1つ又はそれ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及び/又は構造異性体を含み、それぞれ以下の式で示される:
【化14】
【0063】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定すると少なくとも約95面積%の純度を有する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定すると、約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、又は約98面積%~約99面積%の純度を有する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、約98面積%~約99面積%の純度を有する。
【0064】
いくつかの実施態様において 式(I)の化合物は、上記の式で表される式(10b)の化合物の1つ又はそれ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及び/又は構造異性体を含み、前記1つ又はそれ以上異性体の合計は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定すると、約5面積%以下である。
【0065】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物中に存在する式(I0b)の化合物の対応する鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及び/又は構造異性体は、以下の許容基準を満たす:鏡像異性体(3R,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4S,R)≦1.2面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4R,R)≦0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4S,S)≦0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,R)≦0.5面積%;及びジアステレオ異性体(3R,4S,S)≦0.5面積%であり、これらのそれぞれはキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は少なくとも約95面積%の純度を有し、ここで、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,R)<0.5面積%;及びジアステレオ異性体(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれはキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、又は約98面積%~約99面積%の純度を有し、ここで、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオ異性体(3S,4R,R)<0.5面積%;及びジアステレオ異性体(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれはキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、約98面積%~約99面積%の純度を有し、ここで、鏡像異性体(3R,4R,S)は検出されない;ジアステレオ異性体(3R,4S,R)は約0.86面積%である;ジアステレオ異性体(3S,4R,S)は検出されない;ジアステレオ異性体(3R,4R,R)は約0.07面積%である;ジアステレオ異性体(3S,4S,S)は検出されない;ジアステレオ異性体(3S,4R,R)は検出されない;及びジアステレオ異性体(3R,4S,S)は検出されず、これらのそれぞれはキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される。
【0066】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、及び(10b)の化合物は、溶媒和物及び/又は水和物の形態である。
【0067】
III-2.癌/固形腫瘍
癌は、PTPN11阻害剤及び/又はKRAS G12C阻害剤(例えば、ソトラシブ)の治療に応答する任意の癌であり得る。いくつかの実施態様において、癌は、KRAS G12C変異などのKRAS変異によって引き起こされ、及び/又は特徴付けられる。いくつかの実施態様において、癌は、Q61X変異以外のKRAS変異を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌はKRAS陽性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、KRAS G12C陽性癌(例えば、KRASにおけるG12C変異を特徴とする癌)である。
【0068】
癌は、固形腫瘍及び/又は液性腫瘍によって特徴づけることができる。いくつかの実施態様において、癌には固形腫瘍を含む。いくつかの実施態様において、癌は液性腫瘍を含む。
【0069】
いくつかの実施態様において、癌は、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌、胃癌、中皮腫、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施態様において、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施態様において、癌は、KRAS G12C変異などのKRAS変異を特徴とするNSCLCである。特定の実施態様において、KRASタンパク質はG12C変異を含む。特定の実施態様において、癌は、KRASにおけるG12C変異を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施態様において、癌は、上皮成長因子受容体(EGFR)タンパク質の変異を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施態様において、癌は、EGFR又は未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)における変異を特徴としないNSCLCである。
【0070】
いくつかの実施態様において、癌は、KRAS G12C陽性癌(例えば、KRASにおけるG12C変異を特徴とする癌)である。いくつかの実施態様において、KRAS G12C陽性癌は、非小細胞肺癌、小腸癌、虫垂癌、結腸直腸癌、原発不明の癌、子宮内膜癌、混合癌種、膵臓癌、肝胆道癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、胚細胞癌、卵巣癌、消化管神経内分泌癌、膀胱癌、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、頭頸部癌、食道胃癌、軟部肉腫、中皮腫、甲状腺癌、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施態様において、癌は、小腸癌、虫垂癌、子宮内膜癌、肝胆道癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、胚細胞腫瘍、卵巣癌、消化管神経内分泌腫瘍、膀胱癌、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、頭頸部癌、食道胃癌、軟部肉腫、中皮腫、甲状腺癌、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施態様において、KRAS G12C陽性癌は、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、虫垂癌、子宮内膜癌、原発不明の癌、乳頭癌、胃癌、小腸癌、副鼻腔癌、胆管癌、又は黒色腫である。いくつかの実施態様において、癌は、進行性又は転移性のKRAS G12C陽性固形腫瘍(例えば、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌、胃癌、中皮腫、又はこれらの組み合わせ)である。いくつかの実施態様において、癌は進行性又は転移性のKRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施態様において、癌は進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であるが、但し、固形腫瘍は非小細胞肺癌(NSCLC)以外である。
【0071】
癌は、KRAS G12C阻害剤の治療に耐性である任意の癌であり得る。いくつかの実施態様において、癌は、本明細書に定義及び記載されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌は、KRASの不活性型(「GDP」)形態の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌は、KRASの活性型(「GTP」)の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌は、KRASの不活性型(「GDP」)及び活性型(「GTP」)の両方の阻害剤であるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。
【0072】
いくつかの実施態様において、本明細書に定義及び記載されるKRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌は、本明細書に定義及び記載されるKRAS G12C阻害剤に耐性であるKRAS G12C陽性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、本明細書に定義され記載されるKRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的耐性を特徴とするKRAS G12C陽性癌である。
【0073】
いくつかの実施態様において、癌は、KRASモジュレーター、白金ベースの治療法、又はタキサン療法などの別の治療法に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌は、KRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、癌は、アダグラシブ(MRTX-849)に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。
【0074】
いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌はソトラシブ(AMG510)又はアダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌はソトラシブ(AMG510)に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌はアダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性のKRAS G12C陽性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)又はアダグラシブ(MRTX-849)に耐性であるKRAS G12C陽性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、ソトラシブ(AMG510)に耐性であるKRAS G12C陽性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、アダグラシブ(MRTX-849)に耐性であるKRAS G12C陽性癌である。
【0075】
固形腫瘍は、PTPN11阻害剤及びKRAS G12C阻害剤(例えば、ソトラシブ)の治療に応答する任意の固形腫瘍であり得る。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRASの1つ又はそれ以上の遺伝子が再構成、変異、又は増幅された腫瘍であるが、但し、腫瘍は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、又はKRAS Q61Xにおける1つ又はそれ以上の追加の活性化変異によって引き起こされる。
【0076】
いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRASの変異によって引き起こされる進行性又は転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRASにおける変異によって引き起こされる進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)であるが、但し、腫瘍は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、又はKRAS Q61Xにおける1つ又はそれ以上のさらなる活性化変異によって引き起こされるもの以外である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、進行性又は転移性のKRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0077】
固形腫瘍はまた、KRAS G12C阻害剤(例えば、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446)の治療に対して耐性である任意の腫瘍であり得る。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、本明細書に定義及び記載されるKRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤に耐性であるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とするKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍はソトラシブ(AMG510)に対して耐性である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍はアダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性であるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)に耐性であるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に耐性であるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害剤に対して耐性であるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)に耐性であるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に耐性であるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。
【0078】
いくつかの実施態様において、癌(例えば固形腫瘍)は、MAPK経路における1つ又はそれ以上の変異、例えばKRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、EGFR、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、又はこれらの組み合わせにおける1つ又はそれ以上の変異を特徴とする。
【0079】
いくつかの実施態様において、癌又は固形腫瘍は、MAPK経路における合成、発現、又は生物活性を標的とする、減少させる、又は阻害する阻害剤、例えばKRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、EGFR、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、及びMuSK受容体、又はこれらの組み合わせの1つ又はそれ以上を標的とする阻害剤の治療に対して耐性である。いくつかの実施態様において、癌又は固形腫瘍は、MAPK経路における合成、発現、又は生物活性を標的とする、減少させる、又は阻害する阻害剤、例えばKRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、又はこれらの組み合わせの1つ又はそれ以上を標的とする阻害剤に対する固有の及び/又は後天的な耐性を特徴とする。MEK阻害剤の例には、コビメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、ミルダメチニブ、及びセルメチニブが含まれる。BRAF阻害剤の例には、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、及びダブラフェニブが挙げられる。EGFR阻害剤の例には、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、及びラパチニブが含まれる。
【0080】
実施態様のいずれか1つにおいて、本明細書に記載されるように、標準治療又は治癒療法は、癌又は固形腫瘍を治療するために利用できない。
【0081】
III-3:被験体
いくつかの実施態様において、被験体はヒトである。いくつかの実施態様において、被験体は医師などの医療従事者のケア下にある。いくつかの実施態様において、被験体は癌と診断されている。いくつかの実施態様において、被験体は再発している。いくつかの実施態様において、被験体は以前に寛解に入っている。いくつかの実施態様において、被験体は、単剤療法コースを以前に受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、以前に放射線療法を受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、以前に免疫療法を受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、以前に化学療法を受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、以前に白金ベースの化学療法を受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、KRASモジュレーター(例えば、KRAS阻害剤)の投与を含む治療レジメンを、以前に受けたか、受けているか、又は受ける予定である。いくつかの実施態様において、被験体は、抗PD-1/PD-L1阻害剤(例えば、チェックポイント阻害剤)の投与を含む治療レジメンを以前に受けたか、受けているか、又は受ける予定である。
【0082】
被験体は、適切な臨床的に検証された及び/又はFDA承認された検査を使用する分子診断によって、そして利用可能な標準治療や治癒療法なしで評価すると、KRAS G12C変異(例えば、本明細書に記載される)を有する進行性(例えば、原発性、転移性、又は再発性)固形腫瘍を有し得る。いくつかの実施態様において、被験体は、本明細書に記載の治療への入院前の少なくとも2年以内に、適切な臨床的に検証された及び/又はFDA承認された検査を使用する分子診断によって評価すると、KRAS G12C変異(例えば、本明細s書に記載される)を有する。
【0083】
いくつかの実施態様において、被験体は、KRASにおける1つ又はそれ以上の変異(例えば、本明細書に記載される)を特徴とする癌を有するが、但し、癌はKRAS G12C変異を特徴とする。いくつかの実施態様において、被験体は、KRAS Q61X変異によって特徴付けられないKRAS G12C変異を特徴とする癌を有する。いくつかの実施態様において、被験体は、KRAS G12C変異及びコドン13における追加の変異(例えば、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、及びG13V変異)を特徴とする癌を有する。いくつかの実施態様において、被験体は、KRAS G12C変異及びコドン61における追加の変異を特徴とする癌を有する。
【0084】
いくつかの実施態様において、被験体はMAPK経路に1つ又はそれ以上の変異を有する。いくつかの実施態様において、MAPK経路における1つ又はそれ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外の1つ又はそれ以上の変異であるが、但し、被験体はKRAS G12C変異も有する。いくつかの実施態様において、被験体は、MAPK経路に、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、及びMuSK受容体における1つ又はそれ以上変異からなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異を有するが、但し、被験体はまたKRAS G12C変異も有する。いくつかの実施態様において、被験体はNRASに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はHRASに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はCRAFに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はBRAFに変異を有する(V600X変異を除く)。いくつかの実施態様において、被験体は、NRAFに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はMAPK/ERKに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はMAPKK/MEKに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はNF1に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はIGFRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はPDGFRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はVEGFRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はFGFRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はCCKRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はNGFRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はEphRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はAXLRに変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はTIE受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はRYK受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はDDR受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はRET受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はROS受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はLTK受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はROR受容体に変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はMuSK受容体に変異を有する。
【0085】
いくつかの実施態様において、被験体はEGFRに変異を有するが、但し、被験体はKRAS G12C変異も有する。いくつかの実施態様において、被験体は、EGFRエクソン19欠失、エクソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、又はそれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体は、EGFRエクソン19欠失及び/又はエクソン20挿入を含むEGFR変異を有する。いくつかの実施態様において、被験体はEGFRエクソン19欠失を有する。いくつかの実施態様において、被験体はEGFRエクソン20挿入を有する。
【0086】
いくつかの実施態様において、被験体はPTPN11にE76K変異などの変異を有さない。
【0087】
いくつかの実施態様において、被験体は、白金ベースの二重化学療法及び/又は抗PD-1/PD-L1療法(これらのそれぞれは単独療法で施されるか、又はこれらの両方は併用療法で施される)を含む少なくとも1つの以前の全身療法中又はその後に増悪又は再発した固形腫瘍を有する。
【0088】
いくつかの実施態様において、被験体は、固形腫瘍における奏功評価基準(RECIST)に従って測定可能な疾患を有する。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブによる被験体の治療は、RECISTに従って疾患状態に測定可能な変化を引き起こす。
【0089】
いくつかの実施態様において、被験体は、ソトラシブと組み合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始前の、少なくとも約4週間以内、又は介入的臨床試験で使用される薬剤の5半減期以内のいずれか短い方の期間内に、過去に介入的臨床試験に参加したことがない。
【0090】
いくつかの実施態様において、被験体は、ソトラシブと組み合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始前の、i)約1週間の期間以内に緩和のための限定された照射野の放射線、又はii)約4週間以内に、約30%を超える骨髄に放射線を、又は広照射野の放射線を、含む放射線療法又は陽子線療法を受けていない。
【0091】
いくつかの実施態様において、被験体は、a)ソトラシブと組み合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始前の、14日間又は5半減期のいずれか長い方の期間以内に、1つ又はそれ以上の強力な又は中程度のCYP3A4の誘導物質若しくは阻害剤及び/又はP-gp誘導物質(ハーブサプリメント、又はグレープフルーツジュース、スターフルーツ、又はセビリアオレンジを含む食品を含む)(例えば、実施例3に記載のとおり)を;b)ソトラシブと組み合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始前の、14日間又は5半減期のいずれか長い方の期間以内に、CYP3A4及び/又はP-gpの既知の基質である薬物を;及び/又はソトラシブと組み合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始の3日以内に、プロトンポンプ阻害剤(PPI)又はH2受容体アンタゴニストなどの1つ又はそれ以上の酸還元剤を、摂取しなかったか、又は摂取していない。
【0092】
いくつかの実施態様において、被験体は、不適切な器官機能は有しておらず、以下に定義されるように、適切な血液学的機能、腎機能、肝機能、及び凝固機能を含む:
血液
a.好中球絶対数<1,500/μL;
b.血小板<100,000/μL;そして
c.ヘモグロビン<9g/dLで、2週間以内の輸血、又は6週間以内の赤血球生成刺激剤(例えば、Epo、プロクリット(Procrit))なし。
腎臓
d.血清クレアチニン>1.5×ULN、但し、クレアチニンクリアランス≧40mL/分でない場合(Cockcroft-Gault式を使用して測定又は計算)
肝臓
e.血清総ビリルビン≧2×施設内正常上限値(ULN)、又は治験責任医師により確認されたギルバート症候群若しくは溶血性貧血の診断がある場合は、≧3.0×施設内ULN;そして
f.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)>2.5×ULN。
凝固
g.国際正規化比(INR)又はプロトロンビン時間(PT)>1.5×ULN。但し、患者が抗凝固療法を受けておらず、PT又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が抗凝固剤の使用目的の治療範囲内である場合;そして
h.活性化部分トロンボプラスチン時間>1.5×ULN、但し、患者が抗凝固療法を受けておらず、PT又はaPTTが抗凝固剤の使用目的の治療範囲内である場合。
【0093】
いくつかの実施態様において、被験体は、測定可能なウイルス量を伴う活動性B型肝炎感染、C型肝炎感染、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有していない。
【0094】
いくつかの実施態様において、被験体は、生命を脅かす疾患、病状、制御されていない活動性感染症、又は器官系機能不全(例えば、腹水、凝固障害、又は脳症)を有していない。
【0095】
いくつかの実施態様において、被験体は、1つ又はそれ以上の心臓関連の疾患又は所見を有さない:
a)治療開始前の過去6か月以内の重大な心血管疾患の病歴(例えば、脳血管障害、心筋梗塞、又は不安定狭心症);
b)ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association )クラスII以上の心不全を含む、臨床的に重大な心疾患;
c)治療開始前の過去12ヶ月以内の左心室駆出率(LVEF)<50%の病歴;
d)安静時補正QT間隔(QTc)>470ミリ秒、提供されたECG装置を使用して、3つの心電図(ECG)から平均して得られる;及び/又は
e)安静時ECGのリズム、伝導、又は波形における臨床的に重大な異常(例えば、第3度心臓ブロック、モビッツII型心臓ブロック、心室不整脈、制御不能な心房細動)。
【0096】
いくつかの実施態様において、被験体は過去3年以内に追加の浸潤性悪性腫瘍と診断されていないが、但し、追加の浸潤性悪性腫瘍は、治癒的に処置された非黒色腫性皮膚癌、表在性尿路上皮癌、上皮内子宮頸癌、又はソトラシブと併用した式(I)若しくは(10b)の化合物による治療中に再発の治療を必要とすると予想されない他の治癒的に処置された悪性腫瘍以外である。
【0097】
いくつかの実施態様において、被験体は、非脳腫瘍からの1つ又はそれ以上の未治療の脳転移を有さない。
【0098】
いくつかの実施態様において、ソトラシブと併用した式(I)又は(10b)の化合物による治療の開始(例えば、サイクル1の1日目)の少なくとも4週間前に脳転移が切除されたか又は放射線療法を受けた被験体は適格であるが、但し、被験体は治療の開始前に以下の基準をすべて満たしているものとする:a)CNS治療グレード≦2に関連する残存神経症状;b)該当する場合、サイクル1の1日目前の少なくとも2週間、プレドニゾン(又は同等品)を1日あたり10mg以下の安定用量又は減少用量で投与されている;及びc)サイクル1の1日目前の4週間以内の追跡調査磁気共鳴画像法(MRI)が新たな病変の出現を示していない。
【0099】
いくつかの実施態様において、被験体は、ソトラシブと併用した式(I)又は(10b)の化合物による治療の登録前の4週間以内に大きな手術を受けていないが、但し、手術又は操作は、末梢に挿入された中心カテーテルラインの配置、胸腔穿刺、穿刺、生検、又は膿瘍ドレナージ以外である。
【0100】
いくつかの実施態様において、被験体は、ソトラシブ又は式(I)若しくは(10b)の化合物、ソトラシブ又は式(I)若しくは(10b)の化合物の活性若しくは不活性賦形剤、又は被験者がどの組み合わせを受けることができるかに応じて、ソトラシブ又は式(I)若しくは(10b)の化合物のいずれかと同様の化学構造若しくはクラスを有する薬物、に対する過敏症の病歴を有さない。
【0101】
いくつかの実施態様において、被験体は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、及び/又はKRAS Q61Xに1つ又はそれ以上の追加の活性化変異を有さない。いくつかの実施態様において、被験体は、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、及び/又はKRAS Q61Xにおける1つ又はそれ以上のさらなる活性化変異を伴う腫瘍を有さない。
【0102】
いくつかの実施態様において、被験体は、これまでにKRAS G12C阻害剤(例えば、本明細書に記載されるもの)で治療されていない。いくつかの実施態様において、被験体はこれまでにソトラシブで治療されていない。いくつかの実施態様において、被験体はこれまでにソトラシブで治療されたことがある。いくつかの実施態様において、被験体はこれまでにソトラシブ以外のKRAS G12C阻害剤で治療された。いくつかの実施態様において、被験体は、これまでにPTPN11阻害剤(例えば、SHP2阻害剤)で治療されていないが、但し、PTPN11阻害剤は式(I)又は(10b)の化合物以外である。いくつかの実施態様において、被験体は、これまでに、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、及びERAS601からなる群から選択されるPTPN11阻害剤で治療されていない。いくつかの実施態様において、被験体はこれまでに式(I)又は(10b)の化合物で治療されていない。いくつかの実施態様において、被験体は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、ERAS601、及び式(I)又は(10b)の化合物で治療されたことがある。いくつかの実施態様において、被験体はこれまでに式(I)又は(10b)の化合物で治療された。いくつかの実施態様において、被験体は、これまでに式(I)又は(10b)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療された。
【0103】
いくつかの実施態様において、被験体は、式(I)又は(10b)の化合物の吸収を妨げる可能性のある胃腸疾患(例えば、胃切除後、短腸症候群、制御不能なクローン病、絨毛萎縮を伴うセリアック病、又は慢性胃炎)を有していない。
【0104】
いくつかの実施態様において、被験体は透析を受けていない。
【0105】
いくつかの実施態様において、被験体は同種骨髄移植の病歴を有さない。
【0106】
ソトラシブと組合わせた式(I)又は(10b)の化合物による治療から利益を得る可能性がある被験体(例えば、ソトラシブと組合わせたSHP2阻害剤化合物(10b)の第1相試験に登録された被験体)に関するさらなる選択基準及び除外基準は、実施例3に記載されている。
【0107】
いくつかの実施態様において、被験体は、実施例3に記載の1)~11)の選択基準のすべてを満たす。いくつかの実施態様において、被験体は、実施例3に記載の1)~11)の選択基準のすべてを満たすが、但し、被験体は、実施例3に記載の1)~17)の除外基準のいずれにも該当しない。
【0108】
III-4:治療サイクルと用量の調整
ソトラシブと併用した式(I)又は(10b)の化合物による治療は、1回又はそれ以上の治療サイクル(例えば、少なくとも1、2、3回、又はそれ以上の治療サイクル)を含み得る。いくつかの実施態様において、治療は、1回又はそれ以上の治療サイクル(例えば、少なくとも1、2、3回、又はそれ以上の治療サイクル)を含む。いくつかの実施態様において、治療は少なくとも2、3回、又はそれ以上の治療サイクルを含む。いくつかの実施態様において、治療には2~3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施態様において、治療には3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施態様において、治療には3回を超える治療サイクルを含む。
【0109】
いくつかの実施態様において、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は毎日投与される。いくつかの実施態様において、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれは、約28日の期間を有すし、ソトラシブは毎日投与される。いくつかの実施態様において、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は毎日投与され、及びソトラシブは毎日投与される。
【0110】
治療は、用量漸増期間を含んでもよく、その間、以前の治療サイクルの後、式(I)若しくは(10b)の化合物又はソトラシブの用量を調節(例えば、用量漸増又は減少)するか又は保持することができる。用量調整は、少なくとも部分的に安全性評価(例えば、用量制限毒性(DLT)評価)に基づくことができる。
【0111】
いくつかの実施態様において、被験体は、第1の化合物用量レベルの第1のソトラシブ用量レベルで、式(I)又は(10b)の化合物とソトラシブによる治療を開始し、続いて第2の化合物用量レベルと第2のソトラシブ用量レベルで治療され、ここで第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルと異なり、及び/又は第2のソトラシブ用量レベルは第1のソトラシブ用量レベルと異なる。いくつかの実施態様において、第2のソトラシブ用量レベルは第1のソトラシブ用量レベルよりも低い。いくつかの実施態様において、第2のソトラシブ用量レベルは第1のソトラシブ用量レベルよりも高い。いくつかの実施態様において、第2の化合物の用量レベルは第1の化合物の用量レベルよりも低い。いくつかの実施態様において、第2の化合物の用量レベルは第1の化合物の用量レベルよりも高い。
【0112】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、ソトラシブ及び/又は式(I)若しくは(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増(例えば、用量増加)、用量保持、又は用量漸減(例えば、用量低減)が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、ソトラシブの1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、ソトラシブの1回又はそれ以上の用量漸減が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、ソトラシブの1回又はそれ以上の用量漸増が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与は、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸減(例えば、用量低減)を含む。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与は、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増(例えば、用量増加)を含む。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、ソトラシブ及び/又は式(I)若しくは(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増(例えば、用量増加)、用量保持、又は用量漸減(例えば、用量漸減)が含まれ、これらのそれぞれは、(例えば、被験体のコホートに関連して)安全性又は用量制限毒性(DLT)評価によって決定される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物と組み合わせたソトラシブの投与には、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減が含まれ、これらのそれぞれは、実施例3及び図6に記載されるように、用量制限毒性(DLT)評価によって決定される。
【0113】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与には、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約19.7%未満である場合、前の治療サイクル後の用量漸増が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約19.7%未満である場合、第1の治療サイクル後の第2の治療サイクルにおける用量漸増が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約19.7%未満である場合、第2の治療サイクル後の第3の治療サイクルにおける用量漸増が含まれる。
【0114】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与には、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約29.8%超である場合、前の治療サイクル後の用量漸減が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約29.8%超である場合、第1の治療サイクル後の第2の治療サイクルにおける用量漸減が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性(DLT)率が例えば約29.8%超である場合、第2の治療サイクル後の第3の治療サイクルにおける用量漸減が含まれる。
【0115】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲にある場合、前の治療サイクル後の用量保持が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)DLT評価によって決定される用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲にある場合、第1の治療サイクル後の第2の治療サイクルにおける用量保持が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、(例えば、被験体のコホートに関連して)cDLT評価によって決定される用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲にある場合、第2の治療サイクル後の第3の治療サイクルにおける用量保持が含まれる。
【0116】
用量漸増期間の後、治療にはさらに用量拡大/最適化期間が含まれる。用量拡大/最適化期間のいくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、用量漸増期間中に決定された投与レジメン(例えば、投与レジメン1又は投与レジメン2)で投与される。
【0117】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与には、1回又はそれ以上の用量調整が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与には、用量拡大/最適化期間中の1回又はそれ以上の用量調整が含まれる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の投与には、任意選択的に、用量拡大/最適化期間中の1回又はそれ以上の用量調節が含まれ;そして、1回又はそれ以上の用量調整は、安全審査委員会(SRC)による安全性評価に従って決定される。
【0118】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及び/又はソトラシブの投与調整、遅延、及び中止は、さらに実施例3の基準に基づく。
【0119】
III-5:治療有効量/投与
式(I)又は(10b)の化合物及び/又はそしてソトラシブは、併用して治療上有効な量又は相乗的に有効な量で提供することができ、又はこれらのそれぞれは、単独で使用される場合とは異なる用量で使用することができる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、併用して治療上有効な量で提供される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、相乗的に有効な量で提供される。
【0120】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及び/又はソトラシブは、単独で使用される場合(例えば、単剤療法治療における場合のように)とは異なる用量で使用される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブはそれぞれ、それぞれが単独で使用される場合とは異なる用量で使用される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブはそれぞれ、それぞれが単独で使用される場合よりも低い用量で使用される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される。いくつかの実施態様において、ソトラシブは、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される。いくつかの実施態様において、ソトラシブは、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される。
【0121】
式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、同時又は連続的に投与することができる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは併用投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブを含む医薬組成物で投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは連続的に投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、ソトラシブの投与前に投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、ソトラシブの投与後に投与される。
【0122】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、又は約300mg~約400mg、又はその中の任意の有用な範囲の、式(I)又は(10b)の化合物である。
【0123】
いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mg、又はその中の任意の有用な範囲の、式(I)又は(10b)である。
【0124】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、又は約1000の式(10b)の化合物である。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩かつ無水ベースで、1日総用量が約250mg、約400mg、又は約550mgの式(10b)の化合物である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩かつ無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩かつ無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩かつ無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物である。
【0125】
いくつかの実施態様において、ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg~約960mg、約240mg~約960mg、約360mg~約960mg、約480mg~約960mg、約600mg~約960mg、約720mg~約960mg、約840mg~約960mg、約120mg~約840mg、約240mg~約840mg、約360mg~約840mg、約480mg~約840mg、約600mg~約840mg、約720mg~約840mg、約120mg~約720mg、約240mg~約720mg、約360mg~約720mg、約480mg~約720mg、約600mg~約720mg、約120mg~約600mg、約240mg~約600mg、約360mg~約600mg、約480mg~約600mg、約120mg~約480mg、約240mg~約480mg、約360mg~約480mg、約120mg~約360mg、約240mg~約360mg、又は約120mg~約240mgのソトラシブである。
【0126】
いくつかの実施態様において、ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgのソトラシブである。
【0127】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで1日総用量が約2000mg以下であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mg以下である。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約2000mg以下であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、又は約300mg~約400mgの式の化合物(10b)、又はその中の任意の有用な範囲であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg~約960mg、約240mg~約960mg、約360mg~約960mg、約480mg~約960mg、約600mg~約960mg、約720mg~約960mg、約840mg~約960mg、約120mg~約840mg、約240mg~約840mg、約360mg~約840mg、約480mg~約840mg、約600mg~約840mg、約720mg~約840mg、約120mg~約720mg、約240mg~約720mg、約360mg~約720mg、約480mg~約720mg、約600mg~約720mg、約120mg~約600mg、約240mg~約600mg、約360mg~約600mgmg、約480mg~約600mg、約120mg~約480mg、約240mg~約480mg、約360mg~約480mg、約120mg~約360mg、約240mg~約360mg、又は約120mg~約240mgのソトラシブである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mg、又はその中の任意の有用な範囲の、式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mg、又はその中の任意の有用な範囲の、式(I0b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgである。
【0128】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg、約400mg、又は約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約840mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約840mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約840mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約720mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約720mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約720mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約600mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約600mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約600mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約480mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約480mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約480mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約360mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約360mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約360mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約240mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約240mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約240mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約400mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mgである。いくつかの実施態様において、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約550mgの式(10b)の化合物であり、及びソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mgである。
【0129】
一般に、式(I)又は(10b)の化合物は経口投与することができる。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は経口投与される。いくつかの実施態様において、錠剤中の式(10b)の化合物は経口投与される。
【0130】
一般に、ソトラシブは経口投与することができる。いくつかの実施態様において、ソトラシブは経口投与される。いくつかの実施態様において、錠剤中のソトラシブは経口投与される。
【0131】
一般に、式(I)又は(10b)の化合物は、1日1回又は複数回(例えば、2、3、4回、又はそれ以上)投与することができる。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、1日1回、2回、3回、又は4回投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日2回投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日おきに投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、4日間投与して3日間休薬され(例えば、化合物を連続4日間投与し、その後連続3日間投与されない)、5日間投与して2日間休薬され、2日間投与して5日間休薬され、1週間投与して1週間休薬され、2週間投与して1週間休薬され、3週間投与して1週間休薬され、又は同様のスケジュールで投与される。
【0132】
一般に、ソトラシブは、1日1回、2回、又は複数回(例えば、2、3、4回、又はそれ以上)投与することができる。いくつかの実施態様において、ソトラシブは1日1回投与される。
【0133】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブはそれぞれ経口投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物及びソトラシブはそれぞれ経口投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、1日1回投与され、及びソトラシブは1日1回投与される。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与され、及びソトラシブは1日1回投与される。
【0134】
式(I)又は(10b)の化合物は、1つ又はそれ以上の投与強度の経口剤形であってもよく、ここで式(I)又は(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで、少なくとも約5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、又は500mgの量で存在する。いくつかの実施態様において、経口剤形は、1つ又はそれ以上の投与強度の錠剤である。錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで、各錠剤中に、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、又は5~100mgの量で存在する。
【0135】
錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで各錠剤中に約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgの量で存在する。錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで各錠剤中に約30mg、50mg、又は100mgの量で存在する。錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで各錠剤中に約30mgの量で存在する。錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで各錠剤中に約50mgの量で存在する。錠剤のいくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで各錠剤中に約100mgの量で存在する。
【0136】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、1日総用量が約2000mg以下の式(10b)の化合物を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、又は約300mg~約400mgの式(10b)の化合物を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgの式(10b)の化合物を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgの式(10b)の化合物を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与され、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg、約400mg、約550mgの式(10b)の化合物を提供する。
【0137】
ソトラシブは、1つ又はそれ以上の投与強度の経口剤形であってよい。いくつかの実施態様において、ソトラシブの経口剤形は、1つ又はそれ以上の投与強度の錠剤である。いくつかの実施態様において、ソトラシブは、各錠剤中に約120mgのソトラシブを含む錠剤として提供される。いくつかの実施態様において、ソトラシブは、各錠剤中に約60mg、120mg、240mg、360mg、又はそれ以上のソトラシブを含む錠剤として提供される。
【0138】
いくつかの実施態様において、ソトラシブは1日1回投与されて、1日総用量が約2000mg以下のソトラシブを提供する。いくつかの実施態様において、ソトラシブは1日1回投与されて、約960mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施態様において、ソトラシブは1日1回投与されて、約120mg~約960mg、例えば約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgの1日総用量を提供する。
【0139】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、1日総用量が約2000mg以下の式(10b)の化合物を提供し、及びソトラシブは1日1回投与されて、約960mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgの式(10b)の化合物を提供し、及びソトラシブは1日1回投与されて、約120mg~約960mg、例えば約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、無塩及び無水ベースで1日1回投与されて、1日総用量が約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgの式(10b)の化合物を提供し、及びソトラシブは1日1回投与されて、約120mg~約960mg、例えば約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約250mg、約400mg、約550mgの式(10b)の化合物を提供し、及びソトラシブは1日1回投与されて、約960mgの1日総用量を提供する。
【0140】
いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、本明細書に記載されるように、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日1回投与される。いくつかの実施態様において、ソトラシブは、本明細書に記載されるように、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日1回投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるように、式(10b)の化合物及びソトラシブはそれぞれ、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日1回投与される。
【0141】
一般に、式(10b)の化合物は、食物なしで被験体に投与することが推奨される(例えば、一晩絶食(最低8時間)後、次に用量摂取後2時間絶食)。被験体には、投与の前後1時間を除いて水を摂取させ、投与時に水(例えば、240mL)が与えられる。いくつかの実施態様において、式(10b)の化合物は、投与の少なくとも約8時間前及び投与の少なくとも約2時間後に、食物なしで被験体に投与される。
【0142】
いくつかの実施態様において、ソトラシブは、式(10b)の化合物の投与後約5分以内に、1日1回投与される。
【0143】
III-6:有効性
「KRAS G12C変異を伴う進行性又は転移性非小細胞肺癌を有する患者におけるKRAS G12C阻害剤ソトラシブと組合わせたSHP2阻害剤化合物(10b)の第1相試験」は、実施例3に要約されるように、被験体における固形腫瘍を軽減又は安定化するために、ソトラシブと組み合わせた式(10b)の化合物の安全性、耐容性、及び有効性を評価することができる。
【0144】
様々な実施態様において、被験体は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8か月、少なくとも9か月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月、少なくとも15か月、少なくとも18か月、少なくとも21か月、又は少なくとも23か月、例えば1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、15か月、18か月、21か月、又は24か月治療を施される。様々な実施態様において、被験体は少なくとも1か月間治療を施される。様々な実施態様において、被験体は少なくとも3ヶ月間治療を施される。様々な実施態様において、被験体は少なくとも6ヶ月間治療を施される。様々な実施態様において、被験体は少なくとも8ヶ月間治療を施される。
【0145】
被験体は、固形腫瘍における奏功評価基準(RECIST)1.1プロトコル(Eisenhauer, et al., Eur J Cancer; 2009; 45(2):228-247)によって決定される、少なくとも安定した疾患(SD)によって測定される治療に応答することができる。RECIST v1.1については、以下の例で詳しく説明する。少なくとも安定した疾患とは、安定した疾患であり、部分奏功(PR)を示したか、又は完全奏功(CR)を示した疾患である(すなわち、「少なくともSD」=SD+PR+CR、しばしば疾患制御と呼ばれる)。様々な実施態様において、安定した疾患は、部分奏功(PR)に適格となるのに十分な縮小も、進行性疾患(PD)に適格となるのに十分な増加も有さない。様々な実施態様において、被験体は少なくとも部分奏功を示す(すなわち、「少なくともPR」=PR+CR、しばしば客観的奏功と呼ばれる)。
【0146】
奏功は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制又は減少、標的又は腫瘍病変の減少、増悪までの時間の遅延、新たな腫瘍又は病変なし、新たな腫瘍形成の減少、又は生存期間若しくは無増悪生存期間(PFS)の増加、及び転移がないことのうちの1つ又はそれ以上によって測定することができる。様々な実施態様において、被験体の疾患の増悪は、腫瘍サイズ、腫瘍病変、又は新たな腫瘍若しくは病変の形成を測定することによって、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、X線、超音波、又はこれらのいくつかの組み合わせを使用して被験体を評価することによって、評価することができる。
【0147】
無増悪生存期間(PFS)は、RECIST1.1プロトコルに記載されているように評価することができる。様々な実施態様において、被験体は少なくとも1ヶ月のPFSを示す。様々な実施態様において、被験体は少なくとも3ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施態様において、被験体は少なくとも6ヶ月のPFSを示す。
【0148】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物を治療有効量のソトラシブと組み合わせて投与すると、被験体における癌又は固形腫瘍を軽減又は実質的に除去することができる。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)とソトラシブとの併用により、固形腫瘍が実質的に除去される。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)とソトラシブの併用は、固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上減少させる。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)とソトラシブの併用は、固形腫瘍の体積を、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約90%、約70%~約80%、約80%~約90%、又はその中の任意の範囲のサイズで減少させる。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)とソトラシブの併用は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%減少させる。
【0149】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物を治療有効量のソトラシブと組み合わせて投与すると、被験体における癌又は固形腫瘍を安定化することができる。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)とソトラシブとの併用により固形腫瘍が安定化される。
【0150】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物を治療有効量のソトラシブと組み合わせて投与すると、被験体における癌又は固形腫瘍の減少又は安定化を一定期間維持することができる(例えば、1~12か月)。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物をソトラシブと組み合わせて使用することにより、固形腫瘍は少なくとも約1ヶ月間減少又は安定化される。いくつかの実施態様において、治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物をソトラシブと組み合わせて使用することにより、固形腫瘍は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12ヶ月の期間にわたって減少又は安定化される。いくつかの実施態様において、固形腫瘍は、約1~約12ヶ月、約1~約6ヶ月、約1~約3ヶ月、又は約1~約2ヶ月の期間、減少又は安定化される。
【0151】
いくつかの実施態様において、被験体は、血漿薬物動態及び/又は薬動力学プロフィールを含む全体的な評価を提供するために、1つ又はそれ以上の検査(例えば、本明細書に記載されるもの)によってさらに評価される。このような検査の例は、例3に記載されている。
【0152】
いくつかの実施態様において、被験体は、1つ又はそれ以上のバイオマーカーについてさらに評価して、1つ又はそれ以上のバイオマーカーと抗腫瘍応答の相関が決定される。このような評価の例を実施例3に記載する。
【0153】
IV.組成物
式(I)又は(10b)の化合物の組成物
式(I)又は(10b)の化合物を含む経口剤形は、1つ又はそれ以上の医薬的に許容し得る担体及び/又は賦形剤を含む任意の経口剤形であり得る。経口製剤には、患者による摂取に適した錠剤、丸剤、粉末剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、トローチ剤、カシェ剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などが含まれる。
【0154】
式(I)又は(10b)の化合物を含む経口剤形を調製するために、医薬的に許容し得る担体は固体又は液体のいずれかであり得る。固体製剤には、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても機能し得る、1つ又はそれ以上の物質であり得る。製剤化及び投与技術の詳細は、科学文献及び特許文献に詳しく記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA (“Remington’s”) を参照されたい。
【0155】
粉末剤では、担体は微細に分割された固体であり、微細に分割された活性成分との混合物である。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0156】
粉末剤、カプセル剤、及び錠剤は、好ましくは5%~70%の医薬有効成分(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)又は約10%~約70%の医薬有効成分を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。「製剤」という用語は、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の配合物を含むことを意図し、ここで、活性成分は他の賦形剤の存在下又は非存在下で担体によって囲まれ、従って担体と会合している。同様に、カシェ剤とトローチ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。
【0157】
適切な固体賦形剤には、限定されるものではないが、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカント;低融点ワックス;カカオ脂;炭水化物;限定されるものではないが、乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトール、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、又は他の植物からのデンプンを含む糖類;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム;及びアラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;並びに、限定されるものではないが、ゼラチンやコラーゲンを含むタンパク質が含まれる。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。
【0158】
糖衣錠コアには、濃縮糖溶液などの適切なコーティング剤と共に提供され、これはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物も含み得る。生成物を識別するため又は活性化合物の量(すなわち、用量)を特性解析するために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。剤形の医薬製剤はまた、例えばゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、並びにゼラチン製の軟密封カプセル剤、及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティング剤を使用して経口的に使用することもできる。プッシュフィットカプセル剤は、乳糖又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択的に安定剤と混合された医薬有効成分を含むことができる。ソフトカプセル剤では、医薬有効成分を、安定剤の有無にかかわらず、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。
【0159】
坐剤を調製するには、脂肪酸グリセリド又はカカオ脂の混合物などの低融点ワックスを最初に溶かし、その中に医薬有効成分を撹拌などによって均一に分散させる。次に、溶融した均一な混合物を適当な大きさの型に注ぎ、放冷し、それによって固化させる。
【0160】
液体形態の製剤には、液剤、懸濁剤、及びエマルション、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が含まれる。
【0161】
経口使用に適した水溶液は、医薬有効成分を水に溶解し、所望に応じて適切な着色剤、香味剤、安定剤、及び増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁剤は、細かく分割された活性成分を、粘稠物質、例えば天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、並びに分散剤又は湿潤剤、例えば天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸とヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸とヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)と共に、水中に分散させることによって製造することができる。水性懸濁剤はまた、1つ又はそれ以上の保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル又はn-プロピル、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の香味剤、及び1つ又はそれ以上の甘味剤、例えばショ糖、アスパルテーム又はサッカリンを含有することもできる。製剤は浸透圧を調整することができる。
【0162】
また、使用直前に経口投与用の液体形態製剤に変換することを意図した固体形態製剤も含まれる。このような液体形態には、液剤、懸濁剤、及びエマルジョンが含まれる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0163】
油懸濁剤は、医薬有効成分を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油に、又は鉱油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物に懸濁することによって製剤化することができる。油懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィン、又はセチルアルコールを含み得る。口当たりの良い経口製剤を提供するために、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトール、又はショ糖を添加することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することで保存することができる。注射可能な油ビヒクルの例としては、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。式(I)又は(10b)の化合物を含む医薬製剤はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、上記の植物油又は鉱油、又はこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤には、天然ゴム、例えばアカシアゴム及びトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びこれらの部分エステルとエチレンオキサイドとの縮合生成物。例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが含まれる。エマルションにはまた、シロップやエリキシル剤の配合と同様に、甘味剤や香味剤を含めることもできる。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、又は着色剤を含むこともできる。
【0164】
本開示の組成物(式(I)又は(10b)の化合物を含む)は、多種多様な経口、非経口、及び局所剤形で調製することができる。経口製剤には、患者による摂取に適した錠剤、丸剤、粉末剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、トローチ剤、カシェ剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などが含まれる。本開示の組成物はまた、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内に投与することもできる。また、本明細書に記載の組成物は、吸入により、例えば鼻腔内に投与することもできる。さらに、本開示の組成物は経皮的に投与することができる。本開示の組成物はまた、眼内、膣内、及び直腸内経路によって投与することもでき、座薬、吸入剤、粉末剤、及びエアロゾル製剤を含む(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995; Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111, 1995を参照)。
【0165】
本開示の医薬組成物(式(I)又は(10b)の化合物を含む)を調製するために、医薬的に許容し得る担体は固体又は液体のいずれかであり得る。固体製剤には、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても機能し得る、1つ又はそれ以上の物質であり得る。製剤化及び投与技術の詳細は、科学文献及び特許文献に詳しく記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA (“Remington’s”))を参照されたい。
【0166】
粉末剤では、担体は微細に分割された固体であり、微細に分割された活性成分との混合物である。錠剤では、有効成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、特定の形状及びサイズに圧縮される。
【0167】
粉末剤、カプセル剤、及び錠剤は、好ましくは約5%~約70%の医薬有効成分(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)、又は約10%~約70%の医薬有効成分を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。「製剤」という用語は、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の配合物を含むことを意図し、ここで、活性成分は他の賦形剤の存在下又は非存在下で担体によって囲まれ、従って担体と会合している。同様に、カシェ剤とトローチ剤も含まれる。錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。
【0168】
適切な固体賦形剤には、限定されるものではないが、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカント;低融点ワックス;カカオ脂;炭水化物;限定されるものではないが、乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトール、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、又は他の植物からのデンプンを含む糖類;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム;及びアラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;並びに、限定されるものではないが、ゼラチンやコラーゲンを含むタンパク質が含まれる。架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。
【0169】
糖衣錠コアには、濃縮糖溶液などの適切なコーティング剤が提供され、これはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物も含み得る。製品を識別するため、又は活性化合物の量(すなわち、用量)を特性解析するために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティング剤に添加することができる。本開示の医薬製剤はまた、例えばゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、並びにゼラチン製の軟密封カプセル剤、及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティング剤を使用して経口的に使用することもできる。プッシュフィットカプセル剤は、乳糖又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択的に安定剤と混合された活性化合物(例えば、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブ)を含むことができる。ソフトカプセル剤では、活性化合物(例えば、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブ)を、安定剤の有無にかかわらず、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。
【0170】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリド又はカカオ脂の混合物などの低融点ワックスを最初に融解し、その中に活性化合物(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)を撹拌などによって均一に分散させる。次に、溶融した均一な混合物を適当な大きさの型に注ぎ、放冷し、それによって固化させる。
【0171】
液体形態の製剤には、液剤、懸濁剤、及びエマルジョン、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射の場合、液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化され得る。
【0172】
経口使用に適した水溶液は、本明細書に定義され記載されている活性化合物(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)を水に溶解し、任意の適切な着色剤、香味剤、安定剤、及び増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁剤は、細かく分割された活性成分を、粘稠物質、例えば天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、及び分散剤又は湿潤剤、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルとヘキシトールとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルとヘキシトール無水物との縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)と共に、水中に分散させることによって製造することができる。水性懸濁剤はまた、1つ又はそれ以上の保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル又はn-プロピル、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の香味剤、及び1つ又はそれ以上の甘味剤、例えばショ糖、アスパルテーム又はサッカリンを含有することもできる。製剤は浸透圧を調整することができる。
【0173】
また、使用直前に経口投与用の液体形態製剤に変換することを意図した固体形態製剤も含まれる。このような液体形態には、液剤、懸濁剤、及びエマルジョンが含まれる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0174】
油懸濁剤は、活性化合物(例えば、式(I)又は(10b)の化合物)を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油、又は鉱油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物に懸濁することによって製剤化することができる。油懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィン、又はセチルアルコールを含み得る。口当たりの良い経口製剤を提供するために、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトール、又はショ糖を添加することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することで保存することができる。注射可能な油ビヒクルの例としては、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本開示の医薬製剤はまた、水中油型エマルションの形態であってもよい。油相は、上記の植物油又は鉱油、又はこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤には、天然ゴム、例えばアカシアゴム及びトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びこれらの部分エステルとエチレンオキサイドとの縮合生成物。例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが含まれる。エマルションにはまた、シロップやエリキシル剤の配合と同様に、甘味剤や香味剤を含めることもできる。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、又は着色剤を含むこともできる。
【0175】
本開示の組成物(式(I)又は(10b)の化合物を含む)は、経口、非経口、及び局所的方法を含む任意の適切な手段によって送達することができる。局所経路による経皮投与方法は、アプリケータースティック、液剤、懸濁剤、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末剤、及びエアロゾルとして製剤化することができる。
【0176】
本開示の組成物(式(I)又は(10b)の化合物を含む)は、体内で徐放するためのミクロスフェアとして送達することもできる。例えば、ミクロスフェアは、皮下でゆっくり放出される薬物含有ミクロスフェアの皮内注射による投与用に製剤化することができ、これは、皮内で(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照)、生分解性で注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照)、又は経口投与用のミクロスフェアとして(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照)ゆっくり放出する。経皮経路及び皮内経路の両方は、数週間又は数か月間の継続的送達を可能にする。
【0177】
別の実施態様において、本開示の組成物は、静脈内(IV)投与又は体腔若しくは器官の内腔への投与などの非経口投与用に製剤化することができる。投与用の製剤は、一般に、医薬的に許容し得る担体に溶解された本開示の組成物の溶液を含む。使用できる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、及び等張性塩化ナトリウムであるリンゲル液がある。さらに、滅菌固定油を溶媒又は懸濁媒体として使用することができる。この目的には、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドなどの刺激の少ない固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。これらの溶液は無菌であり、通常、望ましくない物質が含まれていない。これらの製剤は、さまざまな滅菌技術によって滅菌することができる。製剤は、生理的条件に近づけるために、必要に応じて、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの医薬的に許容し得る補助物質を含んでもよい。これらの製剤中の本開示の組成物の濃度は広範囲に変動することができ、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に流体量、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう。IV投与の場合、製剤は、滅菌注射用水性又は油性懸濁剤などの滅菌注射用製剤であってもよい。この懸濁剤は、これらの適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して配合することができる。無菌注射用調製物はまた、1,3-ブタンジオールの溶液などの、非経口的に許容される非毒性の希釈剤又は溶媒中の無菌注射用液剤又は懸濁剤であってもよい。
【0178】
別の実施態様において、本開示の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか又はエンドサイトーシスされるリポソームの使用によって、すなわち、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合してエンドサイトーシスを引き起こすリポソームに付着したリガンド、又はオリゴヌクレオチドに直接付着したリガンドを使用することによって、送達することができる。特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを担持する場合、又はそうでなければ特定の器官に優先的に向けられる場合、リポソームを使用することにより、リガンドを本開示の組成物のインビボでの標的細胞への送達に集中することができる。(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996; Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照)。
【0179】
脂質ベースの薬物送達システムには、脂質溶液、脂質エマルジョン、脂質分散体、自己乳化性薬物送達システム(SEDDS)、及び自己マイクロ乳化性薬物送達システム(SMEDDS)が含まれる。特に、SEDDS及びSMEDDSは、脂質、界面活性剤、及び共界面活性剤の等方性混合物であり、これは、水性媒体中に自発的に分散し、ファインエマルジョン(SEDDS)又はマイクロエマルジョン(SMEDDS)を形成することができる。本開示の製剤において有用な脂質には、限定されるものではないが、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、落花生油、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Solutol(登録商標)、Tween(登録商標)、Capryol(登録商標)、Capmul(登録商標)、Captex(登録商標)、及びPeceol(登録商標)を含む任意の天然又は合成脂質が含まれる。
【0180】
本開示の医薬製剤は、塩として提供することができ、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸を用いて形成することができる。塩は、対応する遊離塩基型の水性又は他のプロトン性溶媒に可溶性になりやすい。他の場合には、調製物は、例えば、1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%ショ糖、2%~7%マンニトール中のpH範囲4.5~5.5の凍結乾燥粉末でもよく、これは、使用前に緩衝液と混合される。
【0181】
本開示の医薬製剤は、塩として提供することができ、塩基、すなわち、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩などのカチオン性塩、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、並びにアンモニウム塩、例えばアンモニウム、例えばアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム塩などのカチオン性塩を用いて形成することができる。
【0182】
ソトラシブの組成物
いくつかの実施態様において、ソトラシブは、ソトラシブ、微結晶セルロース、乳糖一水和物、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤で提供される。いくつかの実施態様において、錠剤はフィルムコーティングされている。いくつかの実施態様において、フィルムコーティング材料は、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、ポリエチレングリコール、タルク、及び黄色酸化鉄を含む。
【0183】
V.キット
別の態様において、本開示は、被験体における癌を治療するためのキットを提供し、キットは、
a)治療有効量の式(I)で表される化合物、及び
b)治療有効量のソトラシブを、
効果的な投与のための説明書と併せて含み、
ここで、式(I)の化合物は本明細書に定義及び記載されているとおりである。
【0184】
癌及び/又は固形腫瘍は、「セクションIII-2:癌/固形腫瘍」に従って記載される。いくつかの実施態様において、癌及び/又は固形腫瘍は、「セクションIII-2:癌/固形腫瘍」に記載されている実施態様のいずれかである。
【0185】
被験体は、「セクションIII-3:被験体」に従って記載される。いくつかの実施態様において、被験体は、「セクションIII-3:被験体」に記載される実施態様のいずれかである。
【0186】
式(I)の化合物は、「セクションIII-1:式(I)の化合物」に従って記載される。いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、「セクションIII-1:式(I)の化合物」に記載される実施態様のいずれかである。いくつかの実施態様において、式(I)のPTPN11阻害剤は式(10b)の化合物である。
【0187】
いくつかの実施態様において、キットは、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与に関する説明書を含む。いくつかの実施態様において、キットは、式(10b)の化合物及びソトラシブの投与のための説明書を含む。いくつかの実施態様において、そのような説明書は、安全規定、並びに式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与のタイミング及び量に関する指示を含む。いくつかの実施態様において、そのような説明書は、安全規定、並びに式(10b)の化合物及びソトラシブの投与のタイミング及び量に関する指示を含む。
【0188】
本明細書に記載の式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、同時投与又は連続投与用に製剤化することができる。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、併用投与用に製剤化される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブは、連続投与用に製剤化される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、ソトラシブの投与前に投与される。いくつかの実施態様において、式(I)又は(10b)の化合物は、ソトラシブの投与後に投与される。
【0189】
VI.実施態様
実施態様1. 被験体における癌を治療する方法であって、被験体に以下を投与することを含む方法:
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化15】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、又はこれらの組み合わせ;及び
b)治療有効量のソトラシブ(AMG510)。
【0190】
実施態様2. 式(I)の化合物が、式(10b):
【化16】
で表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名前を有する、実施態様1に記載の化合物。
【0191】
実施態様3. 前記癌がKRAS変異を特徴とする、実施態様1又は2に記載の方法。
【0192】
実施態様4. 前記癌がKRAS G12C変異を特徴とする、実施態様3に記載の方法。
【0193】
実施態様5. 前記癌が固形腫瘍を含む、実施態様1~4のいずれか1つの方法。
【0194】
実施態様6. 前記癌が、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌、胃癌、中皮腫、又はこれらの組み合わせである、実施態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施態様7. 前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、実施態様6に記載の方法。
【0196】
実施態様8. 前記癌が、KRAS G12C阻害剤に耐性であるKRAS G12C陽性癌である、実施態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施態様9. 前記癌が、KRAS G12C阻害剤に対する固有の耐性及び/又は獲得耐性を特徴とするKRAS G12C陽性癌である、実施態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施態様10. 前記癌が、ソトラシブに耐性であるKRAS G12C陽性癌である、実施態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
実施態様11. 前記癌が、白金ベースの2剤併用化学療法及び/又は抗PD-1/PD-L1療法を含む全身療法の少なくとも1つの以前のライン中又はその後に増悪又は再発し、これらのそれぞれが単独療法で投与されるか又はこれらの両方が併用療法で投与される、実施態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施態様12. 前記被験体が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、又はKRAS Q61X中に活性化変異を有さない、実施態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
実施態様13. 前記被験体が、過去にPTPN11阻害剤で治療されていない、実施態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施態様14. 前記被験体が、過去に式(I)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療されている、実施態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施態様15. 前記被験体が、過去に式(I)の化合物で治療されている、実施態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施態様16. 前記被験体が、過去にKRAS G12C阻害剤で治療されていない、実施態様1~8及び10~15のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
実施態様17. 前記被験体が、過去にKRAS G12C阻害剤で治療されている、実施態様1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施態様18. 前記被験体が、過去にソトラシブで治療されている、実施態様1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
実施態様19. 前記被験体が実施例3の1)~11)の選択基準のすべてを満たすが、前記被験体が実施例3の1)~17)の除外基準のいずれかも満たさない、実施態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施態様20. 前記被験体がヒトである、実施態様1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
実施態様21. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが併用投与される、実施態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施態様22. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが連続的に投与される、実施態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
実施態様23. 式(I)又は(10b)の化合物がソトラシブの投与前に投与される、実施態様22に記載の方法。
【0212】
実施態様24. 式(I)又は(10b)の化合物がソトラシブの投与後に投与される、実施態様22に記載の方法。
【0213】
実施態様25. 式(I)若しくは(10b)の化合物又はソトラシブが経口投与されるか、又はソトラシブと式(I)若しくは(10b)の化合物のそれぞれが経口投与される、実施態様1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施態様26. 式(I)又は(10b)の化合物が経口投与される、実施態様1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施態様27. ソトラシブが経口投与される、実施態様1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
実施態様28. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが一緒に治療有効量で提供される、実施態様1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施態様29. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが相乗的に有効な量で提供される、実施態様1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
実施態様30. 式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブが、単独で使用される場合とは異なる用量で使用される、実施態様1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施態様31. 式(I)又は(10b)の化合物が、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される、実施態様30に記載の方法。
【0220】
実施態様32. 式(I)又は(10b)の化合物が、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される、実施態様30に記載の方法。
【0221】
実施態様33. ソトラシブが、単独で使用される場合よりも低い用量で使用される、実施態様30~32のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
実施態様34. ソトラシブが、単独で使用される場合よりも高い用量で使用される、実施態様30~32のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
実施態様35. 前記治療する工程が1回又はそれ以上の治療サイクルを含み、1回又はそれ以上の治療サイクルのそれぞれが約28日間の持続期間を有し、そして式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブが毎日投与される、実施態様1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
実施態様36. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与が、式(I)若しくは(10b)の化合物及び/又はソトラシブの1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減を含む、実施態様1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
実施態様37. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブの投与が、式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減を含む、実施態様36に記載の方法。
【0226】
実施態様38. 式(I)又は(10b)の化合物の1回又はそれ以上の用量漸増、用量保持、又は用量漸減が、用量制限毒性(DLT)評価によって決定される、実施態様37に記載の方法。
【0227】
実施態様39. 用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約19.7%未満である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が前の治療サイクル後の用量漸増を含む、実施態様38に記載の方法。
【0228】
実施態様40. 用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約29.8%超である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が前の治療サイクル後の用量漸減を含む、実施態様38に記載の方法。
【0229】
実施態様41. 用量制限毒性(DLT)率がDLT評価により測定すると約21.9%~約29.8%の範囲である場合、式(I)又は(10b)の化合物の投与が、前の治療サイクル後の用量保持を含む、実施態様38に記載の方法。
【0230】
実施態様42. 前記治療する工程が用量漸増期間を含み、ここで、用量漸増期間の後、治療する工程が用量拡大/最適化期間をさらに含み、そして、式(I)又は(10b)の化合物が用量漸増期間中に決定された投与レジメンで投与される、実施態様35~41のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
実施態様43. 前記用量拡大/最適化期間中に、式(I)又は(10b)の化合物の投与が1回又はそれ以上の用量調整を含む、実施態様42に記載の方法。
【0232】
実施態様44. 前記ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、約600mg、約720mg、約840mg、又は約960mgである、実施態様1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
実施態様45. 前記ソトラシブの治療有効量は、1日総用量が約960mgである、実施態様44に記載の方法。
【0234】
実施態様46. 実施態様1~45のいずれか1つに記載の方法であって、ここで、式(I)又は(10b)の化合物の治療有効量は、無塩及び無水ベースで、1日総用量が約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、又は約300mg~約400mgである、方法。
【0235】
実施態様47. 前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、又は約550mg~約700mgである、実施態様46に記載の方法。
【0236】
実施態様48. 前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mg、約400mg、又は約550mgである、実施態様47に記載の方法。
【0237】
実施態様49. 前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約250mgである、実施態様46~48のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
実施態様50. 前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約400mgである、実施態様46~48のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
実施態様51. 前記治療有効量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の1日総用量が約550mgである、実施態様46~48のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
実施態様52. 式(10b)の化合物及びソトラシブがそれぞれ経口投与される、実施態様1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
実施態様53. 式(10b)の化合物が1日1回、2回、3回、又は4回投与される、実施態様1~52のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
実施態様54. 式(I)又は(10b)の化合物が1日1回投与され、ソトラシブが1日1回投与される、実施態様53に記載の方法。
【0243】
実施態様55. 式(I)又は(10b)の化合物が錠剤で提供される、実施態様1~54のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
実施態様56. 前記治療する工程が、癌又は固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%減少させる、実施態様1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
実施態様57. 前記治療する工程が、癌又は固形腫瘍を安定化させる、実施態様1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0246】
実施態様58. 前記被験体が、抗腫瘍奏功に相関する1つ又はそれ以上のバイオマーカーについてさらに評価される、実施態様1~57のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
実施態様59.被験体における癌を治療するためのキットであって、
a)治療有効量の式(I)で表される化合物:
【化17】
又はその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、構造異性体、互変異性体、若しくはこれらの組み合わせ、又は式(10b)で表される化合物:
【化18】
b)治療有効量のソトラシブを、
効果的な投与のための説明書と共に含むキット。
【0248】
実施態様60. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが併用投与用に製剤化される、実施態様59に記載のキット。
【0249】
実施態様61. 式(I)又は(10b)の化合物及びソトラシブが連続投与用に製剤化される、実施態様59に記載のキット。
【化19-1】
【化19-2】
【化19-3】
【0250】
VIII.実施例
実施例1:式(10b)及び化合物Aのインビボ有効性
A.材料
試験物質#1- 式(10b):
【0251】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0252】
分子式:C2126Cl
【0253】
分子量:437.37
【0254】
試験物質#2-化合物A:
【0255】
化学名:6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S))-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン
【0256】
CAS番号:252403-56-6
【0257】
分子式:C3030
【0258】
分子量:560.6
【0259】
細胞株。
NCI-H358細胞株はATCCから購入した。これは、KRAS G12Cのヘテロ接合性変異を伴うヒトNSCLC細胞株である。細胞を、グルタミン(Thermo Fisher #22400-089)+10%ウシ胎児血清(FBS、Thermo Fisher #10099-141)を含むRPMI1640中で、5%COの37℃の組織培養インキュベーター(Thermo Fisher)内で培養した。
【0260】
試験動物。
この実験にはメスのNOD/SCIDマウス(Beijing Anikeeper Biotech Co.,Ltd)を使用した。異種移植時の動物は生後6~8週齢であった。この試験における動物の管理と使用に関わるプロトコール及び修正又は手順は、実施前にCrown Bioscience Ltd.の動物管理使用委員会(IACUC)によって審査され承認された。試験中、動物の管理と使用は、実験動物管理評価認定協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care:AAALAC)の規定に従って行われた。
【0261】
全てのマウスは、Light Muller Building, Changping Sector of Zhongguancun Scientific Park, No.21 Huoju Road, Changping District, Beijing, China の Crown Bioscience BeijingにあるAAALAC認定動物試験施設で飼育された。すべての動物は、包括的かつ適切に実施された健康監視プログラムを監督する動物施設の獣医師の監督とケアの下で維持された。
【0262】
マウスをポリスルホンIVCケージ(325mm×210mm×180mm)に最大5匹ずつ収容し、12時間点灯/12時間消灯の状態で餌と水を自由に摂取させた。すべての動物に、放射線照射された標準齧歯動物用飼料-ラット及びマウスの成長及び繁殖飼料(Beijing Keao Xieli Feed Co., LTD)を自由に摂取させた。マウスは毎日監視され、ケージは2週間に1回交換された。
【0263】
B.実験手順
配合物。
式(10b)は、0.5%メチルセルロース中で調製された。0.5%メチルセルロース溶液を調製するために、メチルセルロース粉末(400cP、Sigma #M0262)を80℃に加熱した滅菌水に加えた。溶液を撹拌しながら80℃で3~4時間インキュベートし、次に撹拌を続けながら4℃で18時間インキュベートした。滅菌HOで最終容量を調整した後、溶液を4℃でさらに30分間撹拌し、0.45μmの滅菌フィルターを使用して濾過した。調製した0.5%メチルセルロース溶液は、将来の使用に備えて4℃で保存した。
【0264】
0.5%メチルセルロース中の式(10b)の投与懸濁液を調製するために、秤量した化合物をガラスバイアルに入れ、バイアルに0.5%メチルセルロース溶液をシリンジで加えた。30秒間ボルテックス混合した後、バイアルを水浴超音波処理器(Shanghai Kudos Ultrasonic Instrument Co., LTD, モデルSK2510HP)で「高」設定で室温で約20分間、目に見える固体のないオフホワイトの懸濁液が得られるまで超音波処理した。調製した投与懸濁液を、穏やかに連続撹拌しながら4℃で保存した。新鮮な投与懸濁液を週に一度調製した。
【0265】
化合物Aを、Labrasol(Gattefosse #3074)中で調製した。 化合物Aの投与溶液を調製するために、秤量した化合物をガラスバイアルに入れ、そのバイアルにLabrasolを加えた。混合物を30秒間ボルテックス混合し、淡黄色の溶液が得られるまで水浴超音波処理器(Shanghai Kudos Ultrasonic Instrument Co., LTD、モデルSK2510HP)中で約5分間超音波処理した。投与溶液は、穏やかに連続撹拌しながら4℃で保存した。新鮮な投与溶液を週に一度調製した。化合物Aを動物に投与する直前に、投与溶液を等量の滅菌ddHOと混合し、ボルテックス混合し、次に室温で10分間インキュベートし、この時点で均一な溶液が形成され、これを使用してマウスに投与した。希釈した投与溶液は、水の添加後1時間以内に使用した。
【0266】
インビボモデル化、治療及びデータ解析。
NCI-H358細胞を用いた異種移植試験では、滅菌PBS(Hyclone Laboratories #SH30256.01)中の50%マトリゲル(BD bioscience #356234)を含む500万個の細胞を100μLの量で6~8週齢の雌のNOD/SCIDマウス(Beijing Anikeeper Biotech Co.,Ltd)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍サイズの測定はノギスで実施し、標準式:長さx幅/2(式中、長さと幅はそれぞれ腫瘍の長径と短径である)を使用して計算した。
【0267】
平均腫瘍体積が250mmに達したとき、マウスを腫瘍体積と体重の両方に基づいて無作為に8匹の群に分けた。無作為化は、StudyDirectorソフトウェアバージョン3.1.399.19(StudyLog)の「一致分布」法/「階層化」法に基づいて実施された。次に、マウスをビヒクル、3つの用量レベル(100mg/kg QD、30mg/kg QD、及び10mg/kg QD)の1つの化合物A単独、2つの用量レベル(100mg/kg QD及び50mg/kg QD)の1つの式(10b)単独で、又はこれらの2つの化合物の組み合わせで、以下に示すように、強制経口投与(PO)によって処理した。式(10b)を午前中に投与し、化合物Aを午後に投与し、午前と午後の投与で6時間の間隔を空けた。
【化20】
【0268】
投与は、腫瘍細胞の皮下移植の2週間後に開始した。式(10b)の投与量は5mL/kgであり、化合物Aの場合は6mL/kgであり、隔週の測定からの個々のマウスの体重に基づいて調整された。腫瘍体積は週に2回測定された。体重と腫瘍体積は、StudyDirectorソフトウェアバージョン3.1.399.19(StudyLog)で取り込まれた。21日間(10mg/kgの式(10b)を除くすべての投与レベル)又は29日間(10mg/kgの式(10b))の投与後、以下に記載する採血方法に従って、化合物Aの最終投与の2時間後(式(10b)の最終投与の8時間後)に血漿試料を採取した。
【0269】
データは、Microsoft Excel 及び GraphPad Prism 8.0 を使用して解析された。0日目は治療開始の前日であった。体重変化及び腫瘍増殖阻害(TGI)は以下の式に基づいて計算された:
体重変化%=(BW-BW)/BW×100%
BW及びBWは、それぞれ測定1日目及び0日目の個々のマウスの体重である。
TGI%=(C-T)/(C-C)×100%
及びCは、それぞれ測定日の治療群とビヒクル群の平均腫瘍体積である;Cは、0日目のビヒクル群の平均腫瘍体積である。
【0270】
薬物動態分析のための採血。
薬物動態(PK)分析用の生きた動物からの血液は、眼窩後洞を介して採取された。マウスを耳の後ろでしっかりと掴み、わずかに片側に回転させて、使い捨ての滅菌微小毛細管を眼球の後ろに挿入し、ゆっくりと回転させて副鼻腔を破った。血液は毛細管を通って流れ、KEDTAチューブ(Jiangsu KangJian Medical Apparatus Corporation #044022)に直接流れ込み、100μLの容量にした。チューブ内の血液を数回反転させて、EDTAを均一に分配させた。血漿を分離するために、チューブを卓上遠心分離機(Eppendorf、モデル5424R)でブレーキをかけずに8000rpmで5分間遠心分離した。上清(血漿)を微量遠心チューブに慎重に移し、ドライアイス上に置いた後、-80℃で保存した。
【0271】
マウス血漿中の式(10b)及び化合物AのLC-MS/MS定量。
マウス血漿中の式(10b)と化合物Aの濃度を、検証済みのLC-MS/MS法を使用して定量した。血漿試料分析では、各試料20μLを、内部標準としてグリピジド(Glipizide)(100ng/mL)を含むアセトニトリル200μLで沈殿させた。この懸濁液を1分間ボルテックス混合し、4,000rpmで10分間遠心分離し、その後80μLの抽出物をLC-MS/MS分析用に分注した。LC-MS/MS分析は、ポジティブモード(ESI+)で動作する Sciex 6500 TQ-S トリプル四重極質量分析計(MS/MS)と組み合わせたShimadzu Nexera UHPLCシステムで実施した。質量分析源の条件は次のように設定された:イオン噴霧電圧(5500ボルト)、CAD(8)、CUR(35)、TEM(450)、GS1(60)、GS2(60)、EP(10)、CXP(12)、CEM(2000)、及び式(10b)の場合:DP(40)、CE(65)、化合物Aの場合:DP(40)、CE(47)、内部標準の場合:DP(35)、CE(20)。式(10b)と化合物Aを Waters X-Bridge BEH C18カラム(2.1×50mm、1.7μm)を使用して分離し、多重反応監視遷移によって検出した(式(10b)のm/z 437.10>186.10、化合物Aのm/z 561.20>134.20、及び内部標準のm/z 446.20>321.10)。注入量は2μLであった。LC移動相Aは1mM酢酸アンモニウムを含む0.025%蟻酸-水で、Bは5mM酢酸アンモニウムを含む100%メタノールであった。勾配(%B)は、2%(0~0.4分)、2~65%(0.4~1.7分)、65~90%(0.7~1.3分)、90%(1.3~1.9分)、90-2%(1.9~1.91分)、2%(1.91~2.5分)であった。流速は0.6mL/分であった。カラム温度は60℃であった。これらの条件下で、保持時間は、式(10b)については1.42分、化合物A及び内部標準については1.44分であった。この方法は、未処理のCD-1マウス血漿中の式(10b)と化合物Aの両方について、3~3,000nMの分析範囲で検証された。
【0272】
C.結果
ソトラシブ(AMG510)は、KRAS G12C変異体を特異的に標的とするKRAS共有結合阻害剤である。これは、KRAS G12C変異を伴うNSCLCを含む固形腫瘍患者において単剤反応が証明されている。具体的には、CodeBreaK 100試験では、NSCLCを有するサブグループの確認された客観的奏効率(完全奏効又は部分奏効)は32.2%で、疾患制御率(客観的奏効又は疾患の安定)は88.1%であった;無増悪生存期間の中央値は6.3か月であった。Hong et al., N. Engl. J. Med. 2020; 383:1207-1217。公平な機能ゲノミクスアプローチにより、SHP2がKRAS G12C阻害下の脆弱性として特定された。KRAS G12Cの阻害は、SHP2を介してシグナルを送る複数のRTKを介するMAPK経路の適応フィードバック活性化を誘導する。この試験は、インビボでKRAS G12Cを有するヒトNSCLC腫瘍モデルにおいて、KRAS G12C阻害剤である化合物Aと組み合わせたSHP2阻害剤である式(10b)の効果を評価するように計画された。
【0273】
式(10b)と化合物Aの組み合わせによる治療は、KRAS G12Cを有するNSCLCの皮下モデルにおいて腫瘍増殖阻害をもたらした。
マウス腫瘍異種移植モデルは、KRAS G12Cを保有するNCI-H358細胞の皮下移植によって開発され、化合物Aと組み合わせた式(10b)の抗腫瘍奏功をインビボで試験するために使用された。確立されたNCI-H358皮下腫瘍を有するマウスを無作為化し、ビヒクル、化合物A単独、式(10b)単独、又はこれらの2つの化合物の組み合わせを、21日間経口送達して治療した。式(10b)を毎日午前中に投与し、化合物Aを毎日午後に投与し、午前と午後の投与で6時間の間隔を空けた。腫瘍体積をノギスで隔週監視し、体重を記録した。図1A~1Eに示されるデータは平均±SEMを表し、図1B~1EについてはN=8匹のマウス/群であり、及び図1AについてはN=10匹のマウス/群である。
【0274】
図1Aは、式(10b)、化合物A、又は両方の試験物質の組み合わせのいずれかを記載された用量レベルで1日目から28日目まで毎日経口投与した後の、NCI-H358腫瘍担持雌NOD/SCIDマウスの平均(±SEM)腫瘍体積(mm)を示す。
【0275】
図1A、1B、及び1D、並びに表1及び2に示すように、式(10b)単独による治療は、NCI-H358腫瘍の増殖を用量依存的に抑制し、試験21日目に100mg/kg QD及び50mg/kg QDでそれぞれ89%及び46%の腫瘍増殖阻害(TGI)をもたらした。化合物A単独による治療も用量依存的にNCI-H358腫瘍の増殖を抑制し、100mg/kg QD、30mg/kg QD、及び10mg/kg QDで腫瘍退縮が観察された。注目すべきことに、化合物Aの10mg/kg QDと式(10b)の100mg/kg QDとの組み合わせは、いずれの薬剤単独と比較しても、より強力に腫瘍増殖を抑制し、腫瘍退縮を引き起こした(図1A)。式(10b)100mg/kg QDを30mg/kg及び100mg/kg QDの化合物Aのいずれかと組み合わせた場合、おそらくは化合物Aからの強固な単剤奏功により、抗腫瘍活性の顕著な増強が観察された(図1B及び1D)。試験中のマウスの体重の維持によって示されるように(図1C及び1E)、すべての投与条件は耐容性が良好であると考えられた。この試験では無作為なマウスの喪失が観察されたが、用量依存性がないため、マウスの喪失は治療に関連しているとは見なされなかった(表3)。
【表1】

【表2】
TGI%=(C-T)/(C-C)×100%。TとCは、それぞれ測定日の治療群とビヒクル群の平均腫瘍体積である;Cは、0日目のビヒクル群の平均腫瘍体積を示す。血漿濃度については、データは平均±SDを表す。N=4匹のマウス/群。BQL、定量限界(3nM)未満。
【0276】
薬物動態分析(表2)は、化合物Aの最終投与の2時間後に実施したが、これは式(10b)の最終投与の8時間後であった。血漿中の高濃度の化合物Aが検出され、最終投与2時間後に30mg/kgでは2.0μM、100mg/kgでは8.8μMとなった。化合物Aの血漿濃度は、式(10b)による治療によって影響を受けなかった。式(10b)100mg/kgは、単剤(7.5μM)として投与した場合、及び化合物A(5~10μM)と組み合わせて投与した場合、投与8時間後に同様の高血漿濃度をもたらした。式(10b)の50mg/kgの投与も、単剤(4.4μM)として投与した場合及び化合物A(5.5μM)と組み合わせて投与した場合、投与8時間後に同様の高血漿濃度をもたらした。このデータは、マウスにおいて化合物Aと式(10b)との間に薬物間相互作用がないことを示唆している。
【表3】
各事象(マウスの喪失)は1匹のマウスの喪失を示し、日付はマウスが試験から除外された投与日を示す。BWL、体重減少;QD、1日1回投与。
【0277】
D.結論
KRAS G12C変異を伴うNCI-H358 NSCLC異種移植モデルにおいて、化合物Aと組み合わせた式(10b)による治療は、腫瘍増殖を強力に阻害した。詳細には、単剤としての化合物A10mg/kg QDによる治療は腫瘍増殖阻害をもたらし、式(10b)との組み合わせは腫瘍退縮をもたらした。単剤としてのより高用量の化合物A(30mg/kg QD又は100mg/kg QD)による治療は、強力な腫瘍退縮を引き起こした;式(10b)との組み合わせは、腫瘍体積をさらに顕著に抑制することはなかった。100mg/kg QDの式(10b)単独療法による治療は、ほぼ腫瘍の停滞を引き起こす。試験したすべての治療条件は、マウスモデルにおいて十分に許容される。
【0278】
実施例2:式(10b)とソトラシブの組み合わせのインビボ有効性
A.材料
試験物質#1-式(10b):
【0279】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0280】
分子式:C2126Cl
分子量:437.37
【0281】
試験物質#2-ソトラシブ:
【0282】
CAS番号:2296729-00-3
【0283】
分子式:C3030
【0284】
分子量:560.6
【0285】
B.実験手順
腫瘍細胞株の培養。
ヒトNSCLC NCI-H358細胞株(Shanghai Institutes for Biological Sciences of Chinese Academy of Sciences)を、10%熱不活化ウシ胎児血清(Gibco、カタログ10099-141C)を補足したRPMI-1640培地(Gibco、カタログC22400500BT)でインビトロで、5%COを含む37℃のチャンバー内で維持した。第9継代のNCI-H358細胞を解凍して増殖させ、第13継代の細胞を接種のために採取した。ヒトNSCLC NCI-H2122細胞株(American Type Culture Collection)を、10%熱不活化ウシ胎児血清(Gibco、カタログ10091-148)を補足したRPMI-1640培地(Gibco、カタログC22400500BT)でインビトロで、5%COを含む37℃のチャンバー内で維持した。第6継代のNCI-H2122細胞を解凍して増殖させ、第14継代の細胞を接種のために採取した。
【0286】
動物の接種と無作為化。
すべての実験は、実施前にCrown Bioscience, Inc.の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)によって審査及び承認され、実験動物管理評価認定協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care:AAALAC)の規定に従って実施された。NCI-H358試験では、6~8週齢の75匹のNOD/SCID雌マウス(Beijing Anikeeper Biotech Co., Ltd)の右前脇腹領域に、マウス1匹あたり0.1mLの量で1:1比のPBS:マトリゲル(Corning、カタログ354234)に懸濁したNCI-H358腫瘍細胞(マウスあたり5x10細胞)を皮下接種した。平均腫瘍体積が160mmであった細胞接種後13日目に、マウスを腫瘍体積(サイズmm)によって4つの群(1群当たり10匹のマウス)に無作為化した。NCI-H2122試験では、6~8週齢の80匹のBALB/c雌ヌードマウス(GemPharmatech Co., Ltd)の右前脇腹領域に、マウス1匹あたり0.1mLの量で1:1比のPBS:マトリゲル(Corning、カタログ356234)に懸濁したNCI-H2122腫瘍細胞(マウスあたり1x10細胞)を皮下接種した。平均腫瘍体積が180mmであった細胞接種後9日目に、マウスを腫瘍体積(サイズmm)によって4つの群(1群あたり10匹のマウス)に無作為化した。
【0287】
投与。
4群のNCI-H358腫瘍担持雌NOD/SCIDマウス(1群あたり10匹)に、以下の投与レジメンの1つ:1)ビヒクル、2)式(10b)(100mg/kg)、3)ソトラシブ(10mg/kg)、又は4)式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(10mg/kg)の組み合わせを、1日1回、28日間強制経口投与した。4群のNCI-H2122腫瘍担持雌BALB/cヌードマウス(1群あたり10匹)に、以下の投与レジメンの1つ:1)ビヒクル、2)式(10b)(100mg/kg)、3)ソトラシブ(100mg/kg)、又は4)式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(100mg/kg)の組み合わせを、1日1回、21日間強制経口投与した。
【0288】
式(10b)配合物。
式(10b)配合物緩衝液(滅菌脱イオン水中0.5%v/vメチルセルロース)を、所望量のメチルセルロース(Sigma-Aldrich、カタログM0262、粘度400cP)をガラス瓶に秤量することによって調製した。意図した最終容量の75%v/vに相当する滅菌脱イオン水を、撹拌棒による連続磁気撹拌下で添加し、完全に溶解するまで室温で撹拌した。次に、滅菌脱イオン水で緩衝液を最終容量に調整した。補正係数1.025を式(10b)配合物に適用して、純度(97.7%)に対応させた。
【0289】
10mL/kgの式(10b)の使用懸濁液(補正係数を用いて10.25mg/mL)を調製し、100mg/kg用量のマウスに、10mg/kgの投与量で強制経口投与した。式(10b)配合物を調製するために、化合物を正確にガラスバイアルに秤量した。意図した最終容量の70%v/vに相当する式(10b)配合物緩衝液を原薬の入ったガラスバイアルに加え、目に見える大きな凝集物/粒子がない均一な懸濁液が得られるまで、1/4インチのプローブを使用して4~9分間よく混合した。残りの懸濁ビヒクルを、原薬を含む分散液に意図した最終容量に達するまで添加した。懸濁液を30分間よく混合し、4℃で1週間保存し、毎日の投与前及び投与中よく混合した。
【0290】
ソトラシブ配合物。
所望量のHPMC(Sigma-Aldrich、カタログH3785)及びツイーン80(Sigma-Aldrich、カタログP4780)をガラス瓶に秤量することによって、ソトラシブ配合物緩衝液(滅菌脱イオン水中2%v/v HPMC/1%v/vツイーン80)を調製した。意図した最終容量の80%v/vに相当する滅菌脱イオン水を、撹拌棒による連続磁気撹拌下で添加し、完全に溶解するまで室温で撹拌した。次に、緩衝液を滅菌脱イオン水で最終容量に調整した。
【0291】
1mg/mL及び10mg/mLのソトラシブ使用懸濁液を調製し、それぞれ10mg/kg及び100mg/kg用量のマウスに、強制経口投与により10mL/kgの用量で投与した。ソトラシブ配合物を調製するために、化合物を正確にガラスバイアルに秤量した。意図した最終容量の100%v/vに相当するソトラシブ配合物緩衝液を原薬の入ったガラスバイアルに加え、目に見える大きな凝集物/粒子のない均一な懸濁液が得られるまでよく混合した。懸濁液をよく混合し、使用懸濁液をできるだけ早く投与した。懸濁液は毎日調製され、投与前及び投与中よく混合した。
【0292】
腫瘍及び体重の測定。
腫瘍体積は、2次元で無作為化した後、ノギスを使用して週に2回測定し、次の式を使用して体積をmmで表した:腫瘍体積=(長さ×幅×幅)/2、ここで、長さは最長の腫瘍寸法として、幅は長さに垂直な腫瘍の最長寸法として定義された。投与並びに腫瘍及び体重の測定は、層流キャビネット内で実施した。各群の個々のマウスの腫瘍体積(及び平均腫瘍体積(±平均の標準誤差(SEM))を記録した。抗腫瘍効果の指標である腫瘍増殖阻害(TGI)を、各処理群(T)対対照群(C)について、1日目(0)及び示された測定日(i)の腫瘍体積測定値を使用して、式:TGI(%)=(1-(Ti-T0)/(Ci-C0))×100を用いて計算した。TGIは、毎日の連続投与の最後の日の翌日(29日目)に計算され、100%以下の場合にのみ報告された。腫瘍退縮(REG)も評価され、1日目の投与の最初の日と比較して、試験の指示された日の腫瘍体積がより小さい腫瘍として定義された。TGIが100%を超える場合は、代わりに平均腫瘍退縮を報告し、1日目の最初の投与と比較して、示された毎日の連続投与の最後の日の翌日の腫瘍退縮の平均パーセントを決定することによって計算した。
【0293】
体重(BW)も週に2回記録された。個々のマウスの体重及び百分率で表した体重変化は、投与初日の1日目(0)体重と投与後の示された日(i)の体重を使用して各動物について、以下の式を使用して計算した。:BW変化(%)=((BWi/BW0)×100)-100。群の平均体重変化(±SEM)が記録された。群内の20%を超えるマウスが20%以上の体重減少を示した場合、又は群内の20%を超えるマウスが自然に死亡するか、又は安楽死を必要とする苦痛の臨床的兆候があった場合、処理は耐容性があるとみなされなかった。
【0294】
動物の腫瘍及び体重の測定データは、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して記録及び保存された。すべての分析は、GraphPad Prism ソフトウェア(バージョン9)を使用して実施されたか、Microsoft Excel 中で生データから計算された。
【0295】
統計解析。
統計解析は、GraphPad Prism ソフトウェア(バージョン9)を使用して実施された。ビヒクル群を他のすべての群と比較する統計解析では、二元配置反復測定分散分析(ANOVA)とその後の平均値の事後Tukey多重比較検定を、指定された日数にわたって適用した。単独療法群と併用療法群を比較する統計解析では、示された日数にわたる各単独療法群の平均と併用群の平均の間で二元配置反復測定分散分析を実施した。0.05未満のp値は統計的に有意であるとみなされた。
【0296】
実験のエンドポイント。
動物の健康状態は、行動観察と体重チェックを通じて少なくとも週に2回監視された。腫瘍の接種後、動物の罹患率と死亡率を毎日チェックした。定期的な監視中に、動物の運動性、食物と水の摂取量、体重の増減、目と毛のつやの喪失、その他の異常などの行動に対する腫瘍の増殖と処理の影響についてチェックされた。
【0297】
試験のエンドポイントは、動物が以下の安楽死基準の1つに達したときと定義された:1日目と比較して任意の時点で≧20%の体重減少、1日目と比較して72時間で≧15%の体重減少、個体の腫瘍体積≧3000mm、又は各群のすべてのマウスは平均腫瘍体積が≧2000mmに達した時点で安楽死された。NCI-H358試験では、すべての群の動物が34日目又は35日目に安楽死され、NCI-H2122試験では、すべての群の動物が21日目又は22日目に安楽死された。
【0298】
C.結果
ソトラシブ(AMG510)は、KRAS G12C変異体を特異的に標的とするKRAS共有結合阻害剤である。これは、KRAS G12C変異を伴うNSCLCを有する固形腫瘍患者において単剤奏功が証明されている。具体的には、CodeBreaK 100 試験では、NSCLCを有するサブグループの確認された客観的奏効率(完全奏効又は部分奏効)は32.2%で、疾患制御率(客観的奏効又は疾患の安定)は88.1%であった;無増悪生存期間の中央値は6.3か月であった。Hong et al., N. Engl. J. Med. 2020; 383:1207-1217。細胞株の試験では、現行世代のKRAS G12C阻害剤がGDP結合型のKRAS G12Cのみを阻害するため、SHP2阻害剤がKRAS-GDP占有率を増加させ、KRAS G12C阻害剤の有効性を高めることが示されている。公平な機能的ゲノミクスアプローチにより、SHP2がKRAS G12C阻害下で脆弱性を有することが特定された。変異体KRAS G12Cを標的とする治療薬にSHP2阻害を追加すると、いくつかの点で有効性が向上する可能性がある。変異体KRAS G12Cはこれら2つの状態の間である程度の循環を保持しているため、GTP結合型のKRAS G12Cは、ソトラシブの存在下でもERKシグナル伝達を活性化することができる。SHP2阻害は、RASのSOS1依存性GTP負荷を減少させ、これはRAS-GDPレベルの上昇につながり、従ってソトラシブの有効性を高める可能性がある。さらに、RTK/MAPK経路の上流又は下流メディエーターの代償性バイパスシグナル伝達フィードバック活性化が、前臨床及び臨床の両方でKRAS G12C阻害剤の有効性を低下させることが証明されており、SHP2阻害がこのフィードバック活性化を阻害する可能性がある。
【0299】
SHP2阻害はまた、転帰が特に不良である分子サブタイプを有する患者におけるKRAS G12C阻害剤の抗腫瘍活性も増強する可能性がある。例えば、腫瘍抑制因子ケルチ(Kelch)様ECH関連タンパク質1(KEAP1)の変異は、KRAS変異体NSCLCの約20%で見られ、KRASとKEAP1の共変異は予後不良や臨床転帰と関連している。
【0300】
SHP2阻害剤である式(10b)とソトラシブの組み合わせがいずれかの薬剤単独よりも抗腫瘍活性を増強するかどうかを決定するために、2つの試験を行った。試験は、KRAS G12C変異を伴うNSCLC NCI-H358細胞株由来の異種移植片モデルと、KRAS G12C、KEAP1、及びSTK11共変異を伴うNSCLC NCI-H2122細胞株由来の異種移植片モデルを用いて実施した。
【0301】
式(10b)とソトラシブの組み合わせによる処理は、KRAS G12C変異を伴うNSCLC NCI-H358皮下異種移植モデルにおいて腫瘍退縮をもたらした。
KRAS G12C変異を伴う、細胞株由来NCI-H358 NSCLC異種移植片モデルを有する雌NOD/SCIDマウスの腫瘍体積に対する、式(10b)とKRAS G12C阻害剤ソトラシブの併用の影響を評価するために、インビボ試験を実施した。雌のNOD/SCIDマウスの皮下に、NSCLC NCI-H358腫瘍細胞を移植した。腫瘍が平均サイズ160mmに達したとき、マウスを無作為に処理群(群当たりn=10)に分け、示されたレベルのビヒクル、100mg/kgの式(10b)、10mgのソトラシブ、又は100mg/kgの式(10b)と100mgのソトラシブを、1~28日目まで1日1回強制経口投与した。マウスの腫瘍体積は、34日目まで週に2回測定され、29日目までの結果が示されている。
【0302】
図2A及び表4に示すように、式(10b)とソトラシブの組み合わせは、いずれかの試験物質を単独療法として用いる処理よりも有意に高い抗腫瘍活性を示した。式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(10mg/kg)を組み合わせて1日1回経口投与した後、両方の単独療法群と比較して併用群では統計的に有意な腫瘍体積の減少が観察され(図2A及び表4)、29日目の平均腫瘍退縮は83%まで有意に増加した(表4)。結果はまた、式(10b)とソトラシブの両方が、試験された用量レベルで単独療法の抗腫瘍活性を有することを示した。式(10b)(100mg/kg)又はソトラシブ(10mg/kg)を1日1回経口投与した後、ビヒクル群と比較して統計的に有意な腫瘍体積の減少が両処理群で観察され(図2A及び表4)、29日目の平均腫瘍退縮は、式(10b)群及びソトラシブ単独療法群でそれぞれ14%及び13%であった。
【表4】
略語:ANOVA=分散分析;NOD/SCID=非肥満糖尿病/重度複合免疫不全症;n=数;REG=回帰;SEM=平均値の標準誤差。
注:毎日の経口投与は1日目から28日目まで実施され、最後の腫瘍測定は34日目に実施された。統計解析のために、ビヒクル群比較*について、5日目から29日目までの群平均の二元配置反復測定ANOVAに続いて、事後Tukey多重比較検定を実施し、そして併用群比較**について、5日目から29日目までの単独療法群と併用群の平均の二元配置反復測定ANOVAを実施した。
【0303】
図2Bに示すように、体重に対する処理の影響はなく、すべての処理がマウスモデルで十分に耐容された。
【0304】
式(10b)とソトラシブの組み合わせによる処理は、KRAS G12C、KEAP1、及びSTK11共変異を伴うNSCLC NCI-H2122皮下異種移植モデルにおいて腫瘍増殖阻害をもたらす。
KRAS G12C変異を伴う、細胞株由来のNCI-H2122NSCLC異種移植片モデルを有するBALB/cヌードマウスの腫瘍体積に対する、KRAS G12C阻害剤ソトラシブと組合わせた式(10b)の影響を評価するために、インビボ試験を実施した。このモデルはまた、KEAP1のフレームシフト挿入(KEAP1 A203fs)やSTK11のフレームシフト欠失(STK11 G279fs)(これらはKEAP1及びSTK11の機能喪失を引き起こす)を含むいくつかの同時発生変異も有する。腫瘍が平均サイズ180mmに達したとき、マウスを無作為に処理群(群当たりn=10)に分け、示されたレベルのビヒクル、100mg/kgの式(10b)、100mgのソトラシブ、又は100mg/kgの式(10b)と100mg/kgのソトラシブの組み合わせを、1日目から21日目まで1日1回強制経口投与した。マウスの腫瘍体積及び体重を、21日目まで週に2回測定した。
【0305】
図3A及び表5に示すように、式(10b)とソトラシブの組み合わせは、いずれかの試験物質を単独療法として用いる処理よりも有意に高い抗腫瘍活性を示した。式(10b)(100mg/kg)とソトラシブ(100mg/kg)の組み合わせを1日1回経口投与した後、両方の単独療法群と比較して併用群では統計的に有意な腫瘍体積の減少が観察され(図3A及び表5)、21日目の腫瘍増殖阻害は96%まで有意に増加した(表5)。これらの結果はまた、式(10b)とソトラシブの両方が、試験された用量レベルで単独療法の抗腫瘍活性を有することも示した。式(10b)(100mg/kg)又はソトラシブ(100mg/kg)を1日1回経口投与すると、ビヒクル群と比較して統計的に有意な腫瘍体積の減少が両処理群で観察され(図3A及び表5)、21日目の腫瘍増殖阻害は、式(10b)群及びソトラシブ単剤療法群でそれぞれ58%及び72%であった(表5)。
【表5】
略語:ANOVA=分散分析;BALB=Bagg Albino;n=数;SEM=平均値の標準誤差;TGI=腫瘍増殖の阻害。
注:毎日の経口投与は1日目から21日目まで実施され、最後の腫瘍測定は21日目に実施された。統計解析のために、ビヒクル群比較*について、3日目から21日目までの群平均の二元配置反復測定ANOVAに続いて、事後Tukey多重比較検定を実施し、そして併用群比較**について、3日目から21日目までの単独療法群と併用群の平均の二元配置反復測定ANOVAを実施した。
【0306】
図3Bに示すように、体重に対するソトラシブ単剤療法又は併用処理の影響はなく、これらの処理はマウスモデルで充分耐容された。予想外に、式(10b)の単独療法群の数匹のマウスは10%を超える体重減少を示したため、この群の動物を11日目から21日目まで食餌ゲル上に置いた(図3B)。この体重減少の原因は不明であり、この用量レベル(100mg/kg)で以前の試験では観察されていない。重要なことに、式(10b)は、式(10b)とソトラシブの併用群と同じ用量レベル(100mg/kg)で投与され、この併用は充分耐容された(図3B)。
【0307】
D.結論
これらの2つのインビボ試験の結果は、ソトラシブと組み合わせた式(10b)が充分に耐容され、変異体KRAS G12C NSCLC NCI-H358細胞株由来異種移植片モデル及び変異体KRAS G12C及びKEAP1 A203fs NSCLC NCI-H2122細胞株由来の異種移植片モデルにおいて、顕著な抗腫瘍効果を示したことを証明している。これらのインビボ試験は、この併用の臨床評価を裏付けており、SHP2阻害がKRAS G12C阻害剤の応答を増強し、KEAP1やSTK11などの共変異の有無にかかわらず、変異型KRAS G12Cを有する患者の数を増加される可能性があることを示し、これは、ソトラシブと組み合わせた潜在的な治療法として式(10b)が有用性である可能性を示している。

実施例3:KRAS G12C変異を伴う固形腫瘍の患者における、SHP2阻害剤である式(10b)とKRAS G12C阻害剤であるソトラシブとの併用の第1A/1B相試験
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【化21-4】
【化21-5】
【化21-6】
【化21-7】
【化21-8】
【化21-9】
【化21-10】
【0308】

図5は、KRAS G12C変異を伴う固形腫瘍の患者におけるソトラシブと併用した式(10b)の第1A/1B相試験を示す。試験計画には、第1a相の用量漸増と第1b相の用量拡大/最適化が含まれる。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0309】
表6の略語と脚注:
略語:AE=有害事象;aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間;ctDNA=循環腫瘍デオキシリボ核酸;CR=完全奏功;CT=コンピュータ断層撮影;ECG=心電図;ECHO=心エコー図;ECOG=東部協力腫瘍学グループ;EOS=試験の終了;EOT=治療の終了;ET=早期終了;DLT=用量制限毒性;FDA=食品医薬品局;FSH=卵胞刺激ホルモン;FU=追跡調査;HBV=B型肝炎ウイルス;HCV=C型肝炎ウイルス;HIV=ヒト免疫不全ウイルス;ICF=インフォームドコンセントフォーム;INR=国際正規化比率;IV=静脈内;KRAS=キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ;LVEF=左心室駆出率;MRI=磁気共鳴画像法;MUGA=マルチゲート採取スキャン;NA=該当なし;NSCLC=非小細胞肺癌;PD=進行性疾患;PET=陽電子放射断層撮影;PK=薬物動態;PR=部分奏功;PT=プロトロンビン時間;QD=1日1回;QTcF=フリデリシアの補正式を使用したQT;RECIST=固形腫瘍における奏効評価基準;RP1bD=第1b相の推奨用量
A.2019年コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、安全性監視のための電話又はビデオ診療、来院スケジュールの変更、又はその他の適切な臨床試験実施の変更が発生する場合がある。許容される試験日数は最善を尽くすことを目的とするが、必要に応じて調整可能とする。必要であれば、スケジュールの追加変更が行われ、現行のFDA指針(例えば、COVID-19による公衆衛生上の緊急事態における医療品の臨床試験に関するFDA指針)に従って記録される。
B.各28日サイクルで、試験治療薬は24時間(±3時間)ごとに経口投与される。化合物(10b)はソトラシブの前に服用しなければならない。試験来院の前日と当日は、どちらかの試験治療が保留されない限り、両方の試験治療薬を5分間以内に服用必要がある。試験治療薬は、一晩絶食(最低8時間)した後、約240mL(8オンス)の水とともに服用し、服用後2時間絶食しなければならない。水は投与の前後1時間を除いて自由に摂取できる。化合物(10b)は、ソトラシブのQDと組み合わせてQDで摂取される。第1a相用量漸増から選択された2用量の化合物(10b)は、第1b相用量拡大/最適化における化合物(10b)に使用される。用量は、データ全体を審査した後のSRCの決定に基づいて調整することができる。
C.スクリーニング前2年以内に採取された腫瘍試料又は液体生検試料における地方又は中央臨床検査施設によるKRAS G12C変異の記録を確認する。注:登録前に、地方臨床検査施設の確認として中央臨床検査施設によるKRAS G12C状態の決定を行う必要はない。
D.第1a相の場合:局所進行性又は転移性固形腫瘍及びKRAS-G12C変異を有する患者。第1b相の場合:KRAS-G12Ci未治療の局所進行性又は転移性NSCLC及びKRAS-G12C変異を有する患者。
E.再ステージ分類スキャン(CT、MRI、又はPET-CT)は、スクリーニング時、C3D1(±7日)、及びその後PDまで8週間ごと(±7日)に行う必要がある。スキャンは、EOT追跡調査来院から28日以内に行われていない限り、EOT追跡調査来院時に行われる。確認スキャンも、客観的奏功(すなわち、RECIST v1.1によるPR又はCR)の最初の記録から少なくとも4週間後に取得される。取得されるスキャンの種類は、疾患に応じて治験責任医師の裁量で決定される。但し、試験期間中は同じ方法を使用しなければならない。すべてのスキャンは局所的に読み取られる。第1b相の用量拡大/最適化では、スキャンは盲検化された独立した中央審査会によっても読み取られる。X線撮影によるPD以外の理由で試験薬を中止した患者は、(同意が撤回されない限り)X線撮影によるPDが観察されるまで、標準治療画像法に従ってLTFU中にX線撮影による評価が行われ、データは入手可能になった時点で報告される。
F.関連する腫瘍マーカーは、適宜、血液試料を使用して評価される。
G.投与前に適格性を確認しなければならない。
H.地域の規制に従って許可されている、誕生年、性別、身長、人種、民族が含まれる。
I.関連する病歴、現在の病状、腫瘍の病歴(例えば、癌とステージの診断、程度、以前の抗癌治療)、放射線治療歴が含まれる。
J.スクリーニング及びEOT追跡調査来院、又はET(適宜)の際に実施される完全な理学的検査;集中的な検査(例えば、治験責任医師の判断により指示された症状)は、別の来院時に実施される。体重は、完全な検査と集中的な検査の両方に含まれる。
K.採血の前にバイタルサインを測定しなければならない。
L.SAEはインフォームドコンセントの時点から採取しなければならない。病気の増悪のみによる死亡はSAEとして報告されるべきではなく、すべての死亡と同様に、関連するCRFページで記録される必要がある。
M.血液学、化学、凝固、妊娠、及び尿検査の投与前評価は、予定された来院の2日前までに実施することができる。これらのスクリーニング評価がサイクル1の1日目の前48時間以内に実施された場合、脚注W、Yに記載されているように、投与の2時間以内の投与前評価を必要とせずに、これらの結果をベースライン(投与前評価)として使用することができる。
N.閉経状態を確認するために不妊手術を受けていない女性。
O.示されたすべての時点で血清検査を受け、外科的に不妊又は閉経していない女性。患者は、各サイクルのD1から48時間以内に検査で陰性でなければならない。
P.白血球百分率を含む完全な血球数。
Q.臨床化学パネルのパラメーターのリストについては、セクション8.2.2を参照されたい[注:患者は、すべてのスクリーニング検査室、すべての投与前検査室、及びすべての検査室で、投与後2時間まで絶食しなければならない]。
R.ctDNAも含まれる。試料は、化合物(10b)投与の少なくとも7日間連続後に採取されるべきであり、許容される来院期間内に来院をスケジュールできない場合、試料採取から除外され得る。
S.病歴と身体診療を確認し、C1D1の初回投与前に生じた可能性のある所見を更新しなければならない。
T.可能であれば、試験に登録されたすべての患者について新鮮な腫瘍生検を採取しなければならない。分子プレスクリーニング中に新鮮な腫瘍生検が行われず、スクリーニング中に実施不可能な場合は、好ましくは登録後6か月以内、遅くとも2年以内に採取され、KRAS変異の中央検査に十分な腫瘍を含むアーカイブ腫瘍生検を使用することができる。腫瘍生検が得られない場合でも、医療監視員の裁量により、治験責任医師と相談の上、患者を登録することができる。腫瘍生検の採取が行われない患者の登録は、医療監視員によってケースバイケースで処理される。腫瘍組織試料の採取と取り扱いの詳細については、「臨床検体マニュアル」を参照されたい。
U.両方の試験薬の同時投与中断により次のサイクルの開始が遅れた場合、少なくとも1つの試験治療薬の投与が再開されるまで、完了したばかりの28日間のサイクルへの予定外の来院として毎週の評価を記録しなければならない。次のサイクルの初日が試験治療を再開する日となる。化合物(10b)又はソトラシブのいずれかが連続15日間中断された場合、患者は両方の試験薬の投与を永久に中止すべきである。
v.サイクル1の1日目の来院は、月曜日、火曜日、水曜日、又は木曜日に行う必要がある。
w.試験治療薬の投与前(試験治療薬の投与前2時間以内)及び投与後4時間(±15分)に採取する。
x.過去7d以内に行われた場合を除く。
y.来院当日の試験治療薬の投与前の2時間以内に投与前試料を採取する。
z.投与前試料を採取する(すなわち、前日の試験治療薬の投与後約24時間[±2時間]であるが、但し、来院日の試験治療薬の投与前)。
AA.化合物(10b)及びソトラシブPKについて:投与前(試験治療薬の投与前2時間以内)、及び試験治療薬の投与後0.5時間(±5分)、1時間(±10分)、2時間(±15分)、4時間(±15分)、及び6時間(±15分)の血液試料を採取する。定常状態(C2D1)PK試料は、各試験治療薬の少なくとも7日間連続投与後に採取しなければならない。許容される来院期間内に来院をスケジュールできない場合、すべての試料が試料採取から除外される場合がある。
BB.患者が次のサイクルを継続しない場合(すなわち、試験を継続しない場合)、患者は、2時間のPK及び薬動力学的試料を除く、次のサイクルのすべての1日目の来院手順を引き続き受ける必要がある。
CC.サイクル2から始まる各MUGA/ECHO評価に許容される時間枠(±3日)。
DD.サイクル2の1日目(±7d)に試験治療薬の投与後2~6時間の間に投与後試料を採取する。
EE.来院日の試験治療薬の投与前2時間以内及び投与後2時間(±15分)以内に投与前試料を採取する。試料は、試験治療薬の投与後少なくとも7日間連続して採取しなければならない。許容される来院期間内に来院をスケジュールできない場合、すべての試料が採取から除外される場合がある。
FF.12誘導ECGは、スクリーニング時、C1D1、C2D1、C3D1、及びその後の2サイクルごとに3重測定される。
GG.但し、EOT追跡調査来院から4週間以内に完了した場合は除く。
HH.MUGAスキャン又はECHOは、LVEFの評価が過去14日以内に実施されなかった場合にのみ、EOT追跡調査来院時及びET来院時に実施される。
II.X線撮影によるPDの治療を中止した患者、及びPD以外の理由で治療を中止し、その後X線撮影によるPDとなった患者は、EOSまで生存状況及び新しい抗癌剤治療の情報を得るために、約3か月ごとに(電話で)追跡調査される。この生存追跡調査はまた、X線撮影によるPD以外の理由で試験治療を中止したが、さらなる腫瘍評価の同意を撤回した患者にも適用される。生存追跡調査は、すべての患者が試験治療を中止するか、死亡するか、同意を撤回するか、追跡調査ができなくなるか、又はEOSのいずれか早い方まで継続される。長期追跡調査にはまた、疾患応答や2次悪性腫瘍の収集も含まれる。定期的な追跡調査の一環として予定されている場合、診療所への来院が長期追跡調査の電話連絡の代わりになる場合もある。
JJ.CID22は、患者の日記において試験治療の毎日の自己投与が審査される間の電話来院となり、AE及び併用薬に関する情報は情報源文書に記録され、CRFに転記される。
KK.スクリーニング前の2年以内にKRAS変異の記録が存在しない場合に限り、該当する場合は、CLIA認定の検査施設による適切な臨床検証済み及び/又はFDA承認の検査を使用して、KRAS変異の分子プレスクリーニングを行う。
LL.併用薬には、すべての処方薬及び市販薬、ワクチン、又は栄養補助食品(ビタミン、ミネラル、ハーブ)が含まれる。
MM.薬動力学的評価の詳細については、臨床プロトコルのセクション8.5を参照されたい。
NN.DLT評価期間の資格を得るには、患者は28日間の評価期間内に21回の投与を完了している必要がある。追加の詳細については、臨床プロトコルのセクション4.1.2及びセクション9.1.1を参照されたい。
【表7】
略語:PO=経口;QD=1日1回;RP1bD=第1b相の推奨用量;SRC=安全審査委員会
安全性、忍容性、RP1bDを評価するためにSRCが必要と判断した場合、既存のコホートに追加の患者が登録される場合がある。
用量漸増、追加用量レベル、代替用量レベル、及び/又は代替用量スケジュールは、SRCによるデータ全体の審査後、及びSRCが次の用量コホートに関する承認又は推奨を行った後に登録することができる。
【0310】
DLTは、疾患の増悪又は併発疾患に明らかに関連する毒性を除外し、以下の基準のいずれかを満たす試験の最初のサイクル(28日)中に発生する、AE又は異常な検査値として定義される:
・7日を超えて続くグレード3の臨床検査値異常、又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)及び/又はビリルビンのグレード4の臨床検査値異常(期間を問わず)。但し、以下の例外がある。
ベースラインでグレード1のAST/ALTを有する患者(>ULN~2.5×ULN)の場合、AST/ALT値>7.5×ULNはDLTと見なされる。
・以下を除くグレード3以上の非血液毒性:
グレード3の吐き気、嘔吐、又は下痢の持続は72時間であり、適切な支持療法を受けている
グレード3の疲労の持続は1週間未満
グレード3の電解質異常の持続は72時間未満であり、臨床的に複雑ではなく、自然に又は従来の医療介入で解消する
グレード3のアミラーゼ又はリパーゼの持続は72時間未満であり、膵炎の症状と関連しない
・患者が先天性高ビリルビン血症でない限り、ハイの法則(Hy's Law)の基準を満たす(すなわち、≧3×ULN ALT及び/又はAST、≧2×ULN 総ビリルビン、及びアルカリ性ホスファターゼ<2×ULN)。
・グレード3の好中球減少症>7日間。
・グレード4の好中球減少症。
・発熱性好中球減少症[ANC<1000/mmで、1回の口腔温度>38.3℃(101°F)、又は2回連続の口腔温度≧38℃(100.4°F)が少なくとも1時間離して測定された場合]。
・グレード2以上の出血を伴うグレード3の血小板減少症。
・グレード4の血小板減少症、又は血小板輸血を必要とする血小板減少症。
・グレード4の生命に関わる貧血。
・グレード5の毒性。
・SRCによる審査後にDLTとみなされる可能性がある、その他のグレード3以上の臨床的に重大な又は持続性の毒性。
【0311】
有害事象(AE)
AEは、試験薬との因果関係があるとみなされるかどうかにかかわらず、臨床試験に参加する患者における望ましくない病状の発症又は既存の病状の悪化である。従って、AEは、好ましくない意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状、又は疾患(新たな又は悪化した疾患)である可能性がある。臨床試験では、たとえ試験薬が投与されていない場合でも、AEには、ベースライン又は休薬期間を含む任意の時点で、発生する望ましくない病状が含まれる可能性がある。
【0312】
患者が試験薬の初回投与を受けた後、又は治験参加中に発生したすべてのAEは、試験薬に関連するか否かにかかわらず、提供される適切な用紙に記録されなければならない。各AEは、重症度、強度、各試験薬又はその他の要因との因果関係について評価される。SAEは、インフォームドコンセントの時点から記録及び報告される必要がある。
【0313】
来院のたびに、患者は自由回答形式でAEについて質問されるべきであり、また、以前に報告されたAEの状態についても質問されるべきである。
【0314】
可能であれば、個々の関連する徴候又は症状ではなく、特定の疾患又は症候群が治験責任医師によって特定され、用紙に記録されるべきである。観察又は報告された徴候又は症状が、治験責任医師によって特定の疾患又は症候群の構成要素とみなされない場合、それは用紙上に別のAEとして記録されるべきである。
【0315】
注:調査中の状態/適応症の予期せぬ悪化又は増悪は、AEとして報告されるべきである。但し、(治験責任医師の臨床判断に基づく)調査中の疾患の予想される日ごとの変動又は予想される増悪は、AEとはみなされない。病気の増悪は、関連するCRFページに記録される必要がある。病気の増悪のみによる死亡はSAEとして報告されるべきではないが、すべての死亡と同様にCRFに記録される必要がある。
【0316】
治験責任医師によって臨床的に重要であると判断される、すなわち、さらなる調査及び/又は治療が必要と判断される異常な検査所見(例えば、臨床化学、血液学、及び尿検査)、特種な検査(例えば、スキャン、MUGA/ECHO)、又は他の異常な評価(例えば、身体診療所見、ECG、及びバイタルサイン)は、AEとして記録される。試験中に検出されたか又はベースラインで存在し、試験治療への曝露後に著しく悪化した、臨床的に重要な異常な検査所見、特種な検査、又はその他の異常な評価は、AEとして報告される。但し、試験対象の疾患に関連する、臨床的に重要な異常な検査所見、特種な検査、又はその他の異常な評価は、治験責任医師が患者の状態について予想よりも深刻であると判断した場合を除き、又は試験の開始時に存在し、悪化してない限り、AEとして報告すべきではない。
【0317】
医学的又は外科的処置(例えば、内視鏡検査、虫垂切除術)はAEではない;処置を必要とする状態は、新規又はベースラインから悪化したなら、AEである。試験の開始以来悪化していない既存の状態に対する選択的処置又は事前計画された介入もAEではない;既存の状態は病歴として記録される必要がある。望ましくない医学的出来事が発生したわけではないが、社会的理由及び/又は便宜により入院した状況はAEではない。
【0318】
すべての患者について、外部の検査室で行われた検査評価を含むすべての検査所見を検討し、それらがAEを構成するかどうかを判断することは、治験責任医師の責任である。治験責任医師は外部検査所見を評価し、AEとみなされるものの臨床的重要性を判断する。このような場合、検査報告書には治験責任医師が署名し、日付を記入しなければならない。
【0319】
重篤な有害事象(SAE)
【0320】
SAEは、任意の用量で因果関係に関係なく発生する以下のような任意のAEである:
・死亡の結果又は死亡は、AEの結果であり、死因が不明な場合に死亡をAEとして記録しなければならない場合を除き、AE自体ではない。
・生命を脅かすもの
生命を脅かすとは、治験責任医師又は試験スポンサーの意見で、反応が起こったときに患者が即死の危険にさらされていることを意味する(すなわち、もしそれがより厳しい形で起こった場合に、仮説的に死亡を引き起こした可能性のある反応は含まない))。
・患者の入院又は既存の入院の延長が必要である。
一般に、入院とは、医師の診察室や外来診療では適切ではなかった観察及び/又は治療のために、患者が病院又は救急病棟に拘留されること(通常は少なくとも一晩の滞在を伴う)を意味する。
入院中に発生する合併症はAEである。合併症によって入院が長引く場合、又はその他の重大な基準を満たす場合、その出来事は深刻である。
試験期間中に予定されていたが、ICFの署名前に計画された入院及び/又は外科手術は、患者が試験に登録される前に病気又は疾患が存在していた場合、試験中に予期しない方法で悪化しなかった場合にはAEとはみなされない(例えば、計画より早く手術が行われた)。
・持続的又は重大な障害/無能力をもたらす。
障害は、人の通常の生活機能を遂行する能力が大幅に損なわれることとして定義される。
この定義は、単純な頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、インフルエンザ、日常生活機能を妨害したり防止したりする可能性はあるが実質的な破壊を構成しない偶発的な外傷(例えば、足首の捻挫)などの比較的軽微な医学的重要性の経験を含めることを意図したものではない。
・先天異常/先天性欠損症である。
・重要な医療事象である。
重要な医療事象とは、死に至ることはない、生命を脅かすものではない、又は入院を必要とする可能性はないが、適切な医学的判断に基づいて、患者に危険を及ぼす可能性があり、SAEの定義にリストされている結果の1つを予防するために医学的又は外科的介入が必要となる可能性がある場合に、SAEとみなされる可能性がある事象である。このような医療事象の例には、救急治療室や自宅での集中治療を必要とするアレルギー性気管支けいれん、患者の入院には至らない血液疾患やけいれん、薬物依存症や薬物乱用の発症などが挙げられる。
【0321】
「深刻な」という用語と「重度の」という用語は同義ではないため、区別しなければならない。「重度の」という用語は、特定の事象の強度(重症度)(軽度、中等度、又は重度の心筋梗塞など)を説明するためによく使用される。但し、事象自体は医学的重要性が比較的低い場合がある(重度の頭痛など)。これは、患者/事象の転帰や、通常は患者の生命や機能に脅威をもたらす事象に関連する行動基準に基づく「深刻な」とは異なる。重度のAEは必ずしも深刻であると考える必要はない。例えば、数時間持続する吐き気は重度の吐き気とみなされる可能性があるが、その事象が深刻な基準を満たさない場合はSAEとはみなされない。一方、軽度の障害のみをもたらす脳卒中は軽度とみなされるが、上記の深刻な基準に基づいてSAEとして定義されるであろう。深刻さ(重度ではない)は、規制上の報告義務を定義するためのガイドとして機能する。
【0322】
AEの強度は、https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/CTCAE_v5_Quick_Reference_5x7.pdfでアクセスできるNCI CTCAE v5.0を使用して等級付けされ、その開示はその全体が参照により組み込まれる。
【0323】
投与、投与量の調整、遅延、及び中止
SRC審査に基づいて代替投与スケジュールが実施されない限り、各治療サイクルは28日間の期間となる。投与を中断する理由がなければ、前のサイクルが完了するとすぐに新しいサイクルが開始される。化合物(10b)及びソトラシブは、1)下記のようにAEが存在する場合を除き、2)SRCが、観察された安全性、耐容性、PK/薬動力学データに基づいて代替の投与スケジュールを推奨する場合を除き、又は3)患者が、AEの評価、PK試料の採取、又は検査室での評価のために診療所を受診する場合を除き、中断することなく自己投与される。このような来院の際、患者は試験スタッフの指示に従って診療所で化合物(10b)とソトラシブを同時に服用することになる。診療所以外で行われる採血の場合、患者は化合物(10b)及びソトラシブを服用し、試験スタッフの指示に従って投与情報を記録/提供する。化合物(10b)の各用量は、24時間(±3時間)ごとに1回、約240mL(8オンス)の水とともに経口的に摂取されるべきである。患者は、一晩絶食(最低8時間)した後、化合物(10b)を摂取し、その後、用量を服用した後2時間絶食すべきである。水は投与の前後1時間を除いて自由に摂取できる。飲み忘れた場合でも、飲み忘れを補うために次の用量を増量することはない。患者は予定された時間に次の定期用量を服用する。
【0324】
ソトラシブは食物の有無にかかわらず摂取することができるが、2つの試験治療薬は化合物(10b)について記載したように絶食状態で摂取すべきである。化合物(10b)はソトラシブの前に服用すべきである。試験来院の前日と当日、両方の試験治療薬を5分以内に服用する必要がある。
【0325】
化合物(10b)又はソトラシブのいずれかが永久に中止された場合、患者は他の試験治療も同様に中止されなければならない。化合物(10b)又はソトラシブによる単独療法は、この試験では許可されていない。
【0326】
両方の試験治療薬(化合物(10b)とソトラシブ)を永久に中止する理由には、限定されるものではないが、以下が含まれる:
・患者はDLTを発症し、低用量の試験治療薬を継続できない(この例の他の場所で説明されているように);
・いずれの試験治療薬も、化合物(10b)又はソトラシブのいずれかについて他の箇所で概説されている理由により、永久に中止される;
・RECIST v.1.1に従って治験責任医師の評価による疾患の増悪;
・治験責任医師及び/又はスポンサーによって判断される患者へのリスク;
・治験責任医師及び/又はスポンサーによって判断される、プロトコルへの重大な非遵守;
・患者が妊娠した;
・患者の決定;
・試験以外の抗癌剤治療の開始;及び
・投与中断から15日以内に治療を再開しない。
【0327】
試験からの離脱の具体的な理由には以下が含まれる:
・患者による同意の撤回。患者はさらなる治療を損なうことなく、いつでも自由に試験への参加を撤回することができる;
・追跡調査不能(書面による、電話による試みが3回行われ、その後、内容証明郵便による試みが1回行われた後、連絡が取れない場合と定義される);
・何らかの原因による死亡;
・試験を中止するというスポンサーの決定;及び
・治験責任医師の決断。
【0328】
各患者について、経口薬剤(化合物(10b)又はソトラシブ)当たり最大2回の用量漸減が許容される。各経口薬剤の用量漸減については、この例の他の場所で詳細に説明される。
【0329】
化合物(10b)
化合物(10b)の用量変更の決定は、CTCAEグレーディングスケールv5.0に基づき、かつ表8に従って行われるべきである。薬剤関連の有害事象が表に明記されていない場合、患者の安全のため、治験責任医師の裁量により、用量が減量されるか、保留されるか、あるいは永久に中止されることがある。
【0330】
各患者について、化合物(10b)の最大2回の用量漸減が許容される。化合物(10b)の用量漸減は、表7に概説するように、次に低い、以前に試験された用量レベルでの治療を意味する。以前に試験した化合物(10b)の最低用量を下回る用量漸減が必要な場合、その用量は、治験責任医師と医療監視員の間で議論した後に選択されるべきである。
【表8】
これらの一般的なガイドラインは、治験責任医師への助言を構成し、特定の症例について医療監視員との話し合いによって補足される場合がある。
【0331】
その他の許容される化合物(10b)の用量変更
上記以外の治療の中断及び用量の変更は、治験責任医師と医療監視員との議論及び理論的根拠の適切な記録の後、化合物(10b)について考慮することができる。
【0332】
いかなる変更も、次のガイドラインの範囲内である必要がある。
・化合物(10b)のさらなる用量漸減は、臨床的に重大な薬物関連AEをグレード≦1に保つために行うことができる。毒性が解消したとき、患者の最善の利益(例えば、重篤な骨髄抑制、乳酸アシドーシス)で判断される場合には、一度に1用量レベルを超える用量調整を考慮することができる。
・化合物(10b)に関連すると考えられるグレード3のAEが観察された場合、毒性を解消するために治療を最大2週間延期し、治験責任医師の裁量で用量を減らして再治療することができる。グレード3の吐き気、嘔吐、下痢、又は臨床的に重大な電解質異常が発生し、最適な治療により3日以内に解決する場合は、用量を減らすことなく治療を再開することができる。グレード3の吐き気、嘔吐、下痢、又は臨床的に重大な電解質異常が3日を超えて再発した場合は、症状の解消後に用量を減らして治療を再開することができる。
・患者が複数のAEを経験した場合、化合物(10b)の用量決定は最も重篤なAEに基づいて行われる。
・用量漸減が必要であり、その後臨床的に重大な薬物関連AEが再発した患者は、さらに1回の用量漸減を受ける可能性がある。2回の用量漸減後も事象が継続する患者は試験から撤退する。低用量は、まず、この試験の用量漸増の一環としてSRCによって承認された低用量に基づき、より低い用量が必要な場合には、試験NAV-1001でSRCによって承認された用量に基づく。
【0333】
ソトラシブ
ルマケラス(LUMAKRAS)の製品ラベル(ルマケラス添付文書2021、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によれば、副作用が発生した場合、ソトラシブについては2回の用量漸減が許可されている(1日あたり480mgへの減量;1日あたり240mgへの減量)。患者が1日あたり240mgの最小用量に耐えられない場合は、薬剤の投与を中止しなければならない。
【0334】
副作用によるソトラシブの用量変更を表9に示す。
【表9】
略語:ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、CTCAE=有害事象の共通用語基準;ILD=間質性肺疾患、ULN=正常上限
注:グレードはCTCAE v5.0に基づく。
出典:製品ラベル ルマケラス(LUMAKRAS)(ルマケラス添付文書2021、その全体が参照により組み込まれる)
【0335】
有効性評価
再ステージ分類スキャン(コンピュータ断層撮影[CT]、MRI、又は陽電子放出断層撮影/CT[PET-CT])が実施される。確認スキャンは、客観的奏功(すなわち、RECIST v1.1によるPR又はCR)の最初の記録から少なくとも4週間後に取得しなければならない。取得されるスキャンの種類は、疾患に応じて治験責任医師の裁量に任されている。但し、試験期間中は同じ方法を使用しなければならない。
【0336】
X線撮影によるPD以外の理由で治療を中止した患者は、標準治療画像法に従ってX線撮影による評価を継続し、データが入手可能になったときに報告されるか、又はその後の抗癌療法の開始、死亡、又は患者がX線撮影による評価の同意を撤回した場合の、どちらか最初に発生したものが報告される。
【0337】
腫瘍奏功は、RECIST v1.1(Eisenhauer Eur J Cancer; 2009; 45(2):228-247)を使用して評価される。腫瘍奏功は試験の治験責任医師によって局所的に評価される;試験の第1b相部分のスキャンも、盲検化独立中央審査(BICR)によって読み取られる。無増悪生存期間は、最初に記録された増悪又は何らかの原因による死亡の日付に基づいて決定される。
【0338】
薬物動態学(PK)及び薬動力学(PD)
薬物動態
化合物(10b)及びソトラシブのPK評価のための血液試料は、試験に参加する登録患者全員から採取される。化合物(10b)及びソトラシブのPKについての血液試料採取の時点を表10に概説する。試料の採取と保管に関する詳細については、「実験室マニュアル」を参照されたい。
【表10】
投与前試料を採取する(すなわち、前日の試験治療薬の投与後約24時間[±2時間]、但し、来院日の試験治療薬の投与前)。
【0339】
PKサンプリングの日に、患者は試験スタッフの指示に従って診療所で試験薬を服用しなければならない。薬を忘れて自宅で服用した患者は、その日のPK分析から除外される;血液試料を採取してはならない。実際の採血日時及びサンプリング前の最後の試験薬投与の時刻を含む完全な投与情報を、すべてのサンプリング日に取得し、適切な採血CRFに記録しなければならない。予定されたサンプリング時間を逃した場合、又はこのスケジュールに従って試料が採取されなかった場合、実際の採取日時が記録され、残りの試料は可能な限りスケジュールどおりに採取される。
【0340】
定常状態(C2D1以降)のPK試料は、各試験治療の投与の少なくとも連続7日間後に採取されるべきである。試験来院が許容可能な時間枠内で再スケジュールできない場合は、PK試料を採取すべきではない。
【0341】
PK採血当日に化合物(10b)又はソトラシブ投与後4時間以内に嘔吐が起きた場合、嘔吐の時刻(24時間時計を使用)を記録すべきである。嘔吐した物質を補充するために、追加の化合物(10b)又はソトラシブを摂取すべきではない。治療サイクル中の嘔吐の発生と頻度はAE CRFに記録しなければならない。PK採取はすべてのコホートで予定どおり継続しなければならない。
【0342】
薬動力学
血液及び腫瘍試料を使用して、ソトラシブと組み合わせた化合物(10b)の薬動力学的効果、並びに、限定されるものではないが表11に提供される評価を含む、抗腫瘍応答及び耐性の潜在的な機構を評価する。これらの試料はまた、ソトラシブと組み合わせた化合物(10b)に対する応答又は耐性を予測するために使用できるバイオマーカーを開発するためにも使用される。
【0343】
可能であれば、試験に登録されたすべての患者について新鮮な腫瘍生検試料を採取すべきである。分子プレスクリーニング中に新たな腫瘍生検が行われず、スクリーニング中に実施不可能な場合は、KRAS G12C変異の中央検査のための十分な腫瘍があり、できれば登録後6か月以内、遅くとも2年以内に採取されたアーカイブ腫瘍生検を使用することができる。細針吸引物やその他の細胞学試料は受け入れられない。
【0344】
腫瘍生検が得られない場合でも、治験責任医師と相談して医療監視員の裁量により、患者を登録することができる。腫瘍生検の採取が行われない患者の登録は、医療監視員によってケースバイケースで処理される。
【0345】
得られた試料は、以下を含むさまざまなバイオマーカー試験に使用される:
・その発現が化合物(10b)によって調節され、薬動力学的バイオマーカーとして機能し得る遺伝子又は遺伝子の特徴を同定するための、生検された腫瘍組織内の及び血液中を循環している遺伝子の発現。
・薬剤耐性の潜在的なメカニズムを評価するための、腫瘍生検及びctDNA(液体生検)の分子プロファイリング(例えば、NGS、PCRなど)。
・MAPK経路フラックスの尺度としての、腫瘍組織における免疫組織化学によるpSHP2及びpERKの評価。
・腫瘍免疫細胞の浸潤と活性化の尺度としての、IHC又はマルチプレックス免疫蛍光による腫瘍生検における腫瘍微小環境(TME)プロファイリング。
【表11】
化合物(10b)を投与してから少なくとも連続7日間後に試料を採取しなければならない。
【0346】
BOINデザイン(BOIN design)
目標毒性率 φ=0.25のBOINデザインを使用して、ソトラシブと組み合わせた化合物(10b)のMTDを求める。図6に示すように、BOINデザインは、誤った用量割り当ての確率を最小限に抑えるように最適化された以下の規則を使用して、用量漸増/漸減をガイドする。
・現在の用量で観察されたDLT率が≦0.197の場合、用量を次に高い用量レベルに増加させる;
・それが≧0.298の場合、用量を次に低い用量レベルに段階的に下げる;
・それ以外の場合は、現在の投与量を維持する。
【0347】
過剰投与制御の目的のため、Pr(pj>0.25|データ)>0.95(式中、pjは用量レベルjの真のDLT率であり、j=1,...,3)の場合、用量j及びそれ以上の高レベルはさらなる検査から除外される。この事後確率は、ベータ二項モデル yj|pj~二項(p)とp~一様(0,1)に基づいて評価される(ここでy は、用量レベルjでDLTを経験した患者の数である)。最低用量が除外されれば、安全のために試験を中止する。確率カットオフ0.95は、目標DLT率 φ≦1/6の場合、3/5の患者がDLTを経験する用量が除外されるという一般的な慣行と一致するように選択される。
【0348】
BOINデザインを実施する工程は以下のように説明される:
1.次にのコホートの患者に用量を割り当てるために(これはSRCによって行われる)、表12に示されている規則に従い、及び目標毒性率25%に基づいて、用量の漸増/漸減が行われる。表12を使用する場合は、次の点に注意する:
a.「除外する」とは、毒性が強すぎるため、これらの用量で将来の患者を治療することを防ぐために、現在及びより高い用量を試験から除外することを意味する。
b.用量が除外されると、用量は自動的に次の低いレベルに漸減される。最低用量が除外されると、安全のために試験は中止される。この場合、用量をMTDとして選択する必要はない。
c.何のアクション(すなわち、漸増、漸減、又は除外)も開始されない場合、新しい患者は現在の用量で治療される。
d.現在の用量が最低用量であり、規則が用量漸減を示している場合、DLTの数が安全のために試験が終了する除外境界に達しない限り、新規患者は最低用量で治療される。
e.現在の用量が最高用量であり、規則が用量漸増を示している場合、新しい患者は最高用量で治療される。
f.動作状況/実際の状況により過剰登録が発生した場合(すなわち、現在のコホートサイズあたりDLT評価可能な患者が7名を超える)、次の用量レベルの決定は、コホート内のDLT評価可能な患者の実際の数に基づいて行われる。
2.用量漸増は、化合物(10b)250mg+ソトラシブ960mg(すなわち、最低用量レベル)で登録される5~7人のDLT評価可能な患者から開始する。表12については、例示を目的としており、登録された6人の評価可能な患者のいずれかに1つのDLTが観察された場合、次の用量レベルに漸増される。登録された評価可能な患者6名中2名以上でDLTが観察された場合は、より低用量に漸減される。
3.より高い用量レベルに漸増される場合は、2.と同じアプローチに従う。
4.用量漸増の最大試料サイズは、21名のDLT評価可能な患者であり、任意の用量レベルのコホートで、10名のDLT評価可能な患者である。
【表12】
略語:DLT=用量制限毒性
何のアクション(すなわち、漸増、漸減、又は除外)も開始されない場合、次の患者コホートを治療するために現在の用量を維持する。「DLTの数」は、少なくとも1つのDLTを有する患者の数であることに注意されたい。
【0349】
試験が完了した後、Liu and Yuan (2015) に規定されているように、単調回帰に基づいてMTDが選択される。この計算は、BOINデザインデスクトッププログラムの[推定MTD]タブによって実施される。具体的には、MTDとして、DLT率の単調推定値が目標DLT率に最も近い用量を選択する。同点がある場合、単調推定値が目標DLT率より低い場合はより高い用量レベルを選択し、単調推定値が目標DLT率以上である場合はより低い用量レベルを選択する。コホート拡張のためのRP1bDは、毒性(すなわち、MTD)、並びに他の臨床的考慮事項、例えばPK/薬動力学に基づいて選択される。
【0350】
表13はBOINデザインデスクトッププログラム(MD Anderson Cancer Center, 2021)を使用する試験の1000回のシミュレーションに基づく試験デザインの動作特性を示す。動作特性は、デザインが真のMTDがあればそれを高い確率で選択し、DLT率が目標の0.3に最も近い用量レベルに、より多くの患者を割り当てることを示している。
【表13】
略語:BOIN=ベイズ最適区間デザイン;DL=進行中の化合物(10b)単独療法試験(NCT04528836)においてSRCによって認可された最高用量;DLT=用量制限毒性
用量漸増、代替用量レベル、及び/又は代替用量スケジュールは、SRCによる安全性データ全体の審査後、及びSRCが次の用量コホートに関する承認又は推奨を行った後に進められる。
注:「早期停止%」は、過剰なDLTによる早期停止を指す。
【0351】
有効性
患者の評価と統計
疾患の評価は、臨床的に又は本明細書に概説するRECIST v1.1基準に従ってより頻繁な評価が必要とされない限り、固形腫瘍を有する患者でスクリーニング時に行われ、その後は8週間ごとに行われる。
【0352】
連続変数については記述統計が提供され、カテゴリー変数を要約するために度数表が使用される。最良の全体的な奏功と、測定可能な疾患を有する患者においてCR、PR、SD、及びPDを経験した患者の割合が、対応する95%の正確なCIとともに表示される。
【0353】
事象までの時間変数(例えば、DOR、PFS、及びOS)は、カプランマイヤー法によって分析される。事象発生までの時間の中央値が、25パーセンタイル、75パーセンタイル、最小値、及び最大値とともに推定され、カプランマイヤー曲線がプロットされる。
【0354】
抗腫瘍効果-固形腫瘍
腫瘍奏功は、第1b相の用量拡大/最適化における主要な有効性エンドポイントである;患者は標準的な基準を使用して評価される(注:すべての患者は試験登録時に測定可能な疾患を患っていなければならないため、RECIST v1.1基準に従って評価される)。この試験の目的のために、腫瘍奏功は、患者が治療を受けている間、8週間(±7日)ごと(すなわち、奇数サイクルの1日目)、その後PDまで評価しなければならない。PD以外の理由で治療を中止した患者の疾患評価については、臨床プロトコールのセクション7.6に概説されている。ベースラインスキャンに加えて、客観的奏功(すなわち、PR又はCR)の最初の記録から少なくとも4週間後に確認スキャンも取得される。
【0355】
この試験では、RECIST v1.1を使用して奏功及び増悪が評価される;RECIST委員会によって提案された新しい国際基準(Eisenhauer et al., Eur J Cancer; 2009; 45(2):228-247)。RECIST基準では、腫瘍病変の最大直径(一次元測定)のみの変化が使用される。
【0356】
疾患パラメーター
測定可能な疾患。測定可能な病変は、スキャン(CT、MRI、又はPET-CT、スキャン片の厚さは5mm以下でなければならない)によって、少なくとも1つの寸法(記録される最長直径[LD])が10mm以上の正確に測定できる病変として定義される。すべての腫瘍の測定値はミリメートル(又はセンチメートルの小数部分)で記録しなければならない。
【0357】
測定不能な疾患。小さな病変(LD<10mm、又は10mm以上から15mm未満の病理学的リンパ節)を含む、他のすべての病変(又は疾患部位)は、測定不可能な疾患とみなされる。骨病変、軟髄膜疾患、腹水、胸水/心外膜液、皮膚リンパ管炎/肺、炎症性乳房疾患、腹部腫瘤(CT、MRI、又はPET-CTによる監視は行われない)、及び嚢胞性病変はすべて完全に測定不可能である。
【0358】
標的病変。すべての関連臓器を代表する、臓器あたり最大2病変、合計5病変までのすべての測定可能な病変を標的病変として特定し、ベースラインで記録及び測定しなければならない。標的病変は、そのサイズ(LDを伴う病変)及び正確な繰り返し測定(画像技術又は臨床的)への適合性に基づいて選択しなければならない。すべての標的病変のLDの合計が計算され、ベースライン合計LDとして報告される。ベースライン合計LDは、客観的な腫瘍奏功を特性解析するための参照として使用される。
【0359】
非標的病変。5つの標的病変を超える測定可能な病変を含む他のすべての病変(又は疾患部位)は、非標的病変として特定されるべきであり、ベースラインでも記録されるべきである。これらの病変の測定値は必須ではないが、経過観察中はそれぞれの病変の有無に注意しなければならない。
【0360】
測定可能な疾患の評価方法
全ての測定値は、定規又はノギスを使用して測定し、メートル法で記録しなければならない。すべてのベースライン評価は、できるだけ治療開始の直前に実施する必要があり、決して治療開始の4週間以上前に実施してはならない。
【0361】
ベースライン時及び追跡調査中に、特定され報告された各病変を特性解析するには、同じ評価方法及び同じ技術が使用すべきである。治療の抗腫瘍効果を評価するために両方の方法が使用されている場合は、画像ベースの評価が臨床検査による評価よりも優先される。
【0362】
奏功評価のために選択された病変を測定するためには、CT、MRI、又はPET-CTスキャンを使用すべきである:。これらの技術は、連続した厚さ5mm以下の切片で実施すべきである。ベースライン時及び追跡調査中に、特定され及び報告された各病変を特性解析するには、同じ評価方法及び同じ技術を使用すべきである。
【0363】
腫瘍マーカー:腫瘍マーカーのみを使用して奏功を評価することはできない。マーカーが最初に正常の上限を超えている場合、患者が完全な臨床的奏功を示しているとみなされるためには、マーカーが正常化しなければならない。臨床試験を支援する前立腺特異抗原及びCA-125応答の標準的使用に関する具体的な追加基準が開発されている。
【0364】
細胞学、組織学:これらの技術は、まれなケース(例えば、既知の残存する良性腫瘍が残る可能性がある胚細胞腫瘍などの腫瘍タイプにおける残存病変)においてPRとCRとを区別するために使用することができる。
【0365】
測定可能な腫瘍が奏功又は安定した疾患の基準を満たした場合、治療中に出現又は悪化する滲出液の新生物起源の細胞学的確認は、奏功又は安定した疾患(滲出液は治療の副作用である可能性がある)とPDを区別するために必須である。
【0366】
奏功基準
標的病変の評価
完全奏効(CR):すべての標的病変の消失。
【0367】
部分奏功(PR):ベースライン合計LDを基準として、標的病変のLDの合計の少なくとも30%の減少。
【0368】
進行性疾患(PD):治療開始以来又は1つ若しくはそれ以上の新たな病変の出現以来記録された最小合計LDを基準として、標的病変のLDの合計の少なくとも20%の増加。
【0369】
安定した疾患(SD):治療開始以来の最小の合計LDを基準として、PRに適格となるのに十分な縮小も、PDに適格となるのに十分な増加もない。
【0370】
非標的病変の評価
完全奏効(CR):すべての非標的病変の消失及び腫瘍マーカーレベルの正常化。
【0371】
注:腫瘍マーカーが最初に正常の上限を超えている場合、患者が完全な臨床的奏功があるとみなされるためには、これらは正常化しなければならない。
【0372】
安定した疾患(SD):1つ又はそれ以上の非標的病変の持続及び/又は正常限界を超える腫瘍マーカーレベルの維持
【0373】
進行性疾患(PD):1つ又はそれ以上の新たな病変の出現及び/又は既存の非標的病変の明らかな増悪
【0374】
「非標的」病変の明らかな増悪のみは例外的であるが、そのような状況では治療医師の意見が優先されるべきであり、増悪状態は後で審査委員会(又は治験責任医師)によって確認されるべきである。
【0375】
最良の全体的奏功の評価
最良の全体的奏功は、治療の開始から疾患の増悪/再発までに記録された最良の奏功である(治療開始以来記録された最小測定値をPDの基準とする)。患者の最善の奏功の割り当ては、測定基準と確認基準の両方の達成度に依存する。
【表14】
【0376】
奏功期間
全体的奏功の持続時間:DORは、CR又はPR(最初に記録された方)の測定基準が満たされた時間から、再発又はPDが客観的に記録された最初の日まで測定される(PDの基準として、治療の開始以来記録された最小の測定値を採用する)。
【0377】
全体的なCRの持続時間は、CRについての測定基準が最初に満たされた時間から再発性疾患が客観的に記録される最初の日まで測定される。
【0378】
安定した疾患の持続時間:安定した疾患は、治療の開始以来記録された最小の測定値を基準として、治療の開始から増悪の基準が満たされるまで測定される。
【0379】
無増悪生存期間
無増悪生存期間(PFS)は、治療開始日から、何らかの原因による最初に記録された増悪又は死亡として定義される事象の日までと定義される。患者に事象がなかった場合、PFSはSAPに記載されている詳細に従って打ち切られる。PFSのカプランマイヤー分析が提供される。
【0380】
上記開示は、理解を明確にする目的で、例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び修正が実施され得ることを理解するであろう。さらに、本明細書に提供される各参考文献は、あたかも各参考文献が個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書に提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先するものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C-4D】
図5
図6
【国際調査報告】