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特表2024-536333それに関連する障害の処置または予防に有用なベータ-3アドレナリン作動性受容体のモジュレーター
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  • 特表-それに関連する障害の処置または予防に有用なベータ-3アドレナリン作動性受容体のモジュレーター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】それに関連する障害の処置または予防に有用なベータ-3アドレナリン作動性受容体のモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
A61K31/4709
A61P9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520516
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 IB2022059460
(87)【国際公開番号】W WO2023057896
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,060
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500478097
【氏名又は名称】アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー シー. ブラックバーン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
(57)【要約】
ベータ-3アドレナリン作動性受容体の活性をモジュレートする、1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態2である溶媒和物、およびその医薬組成物が提供される。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態2(化合物A)である、溶媒和物。
【請求項2】
25℃および約0から90%相対湿度における動的水蒸気吸着分析により、約0.3%の重量変化を呈する、請求項1に記載の溶媒和物。
【請求項3】
2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.8°±0.2°および18.9°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項1または2に記載の溶媒和物。
【請求項4】
2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.8°±0.2°、18.9°±0.2°、26.6°±0.2°、22.9°±0.2°および8.8°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項1または2に記載の溶媒和物。
【請求項5】
2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.794°±0.2°、18.9°±0.2°、26.6°±0.2°、22.9°±0.2°、8.8°±0.2°、12.6°±0.2°、11.4°±0.2°、18.3°±0.2°および19.9°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項1または2に記載の溶媒和物。
【請求項6】
実質的に図1において描写される通りの粉末X線回折パターンを示す、請求項1または2に記載の溶媒和物。
【請求項7】
約168℃から約176℃の間の外挿開始温度を持つ吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項8】
実質的に図2において描写される通りの示差走査熱量測定サーモグラムを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項9】
融解する前に約0.97%の重量損失を示す熱重量分析プロファイルを示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項10】
実質的に図3において描写される通りの熱重量分析プロファイルを示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項11】
約28mgA/mLの水溶解度を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項12】
単結晶X線分析によって決定された際の三斜晶系によって特徴付けられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項13】
単結晶X線分析によって決定された際のP1空間群によって特徴付けられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項14】
単結晶X線分析によって決定された際の、以下の寸法の単位セル:a=8.7267(2)Å、b=10.6750(3)Å、c=18.3096(5)Å、α=75.811、β=89.605、χ=80.968によって特徴付けられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項15】
無色のカットブロック晶癖によって特徴付けられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項16】
化合物Aである溶媒和物を作製するためのプロセスであって、
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレートをアセトニトリルと接触させるステップと、
化合物Aである溶媒和物を単離するステップと
を含む、プロセス。
【請求項17】
化合物Aである溶媒和物を作製するためのプロセスであって、
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート形態1を水と接触させるステップと、
化合物Aである溶媒和物を単離するステップと
を含む、プロセス。
【請求項18】
請求項16または17に記載のプロセスによって調製される、化合物Aである溶媒和物。
【請求項19】
請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物を含む、組成物。
【請求項20】
請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物と、薬学的に許容できる担体とを含む、剤形。
【請求項22】
個体においてベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための方法であって、それを必要とする前記個体に、治療有効量の請求項1から15もしくは18のいずれか一項に記載の溶媒和物;請求項20に記載の医薬組成物;または請求項21に記載の剤形を投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
個体において障害を処置するまたは予防するための方法であって、それを必要とする前記個体に、治療有効量の請求項1から15もしくは18のいずれか一項に記載の溶媒和物;請求項20に記載の医薬組成物;または請求項21に記載の剤形を投与するステップを含み;ここで、前記障害が、心不全;心不全における心仕事量;心不全に関係する死亡率、再梗塞および/または入院;急性心不全;急性非代償性心不全;うっ血性心不全;重症うっ血性心不全;心不全に関連する臓器損傷(例えば、腎臓の損傷もしくは不全、心臓弁の問題、心拍リズムの問題、および/または肝臓の損傷);左心室機能不全による心不全;正常左室駆出率の心不全;心筋梗塞後の心血管死亡率;左心室不全または左心室機能不全を持つ患者における心血管死亡率;左心室不全;左心室機能不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIV心不全;核医学的心室造影により40%未満のLVEF;ならびに心エコー検査または心室血管造影により35%以下のLVEFから選択される、方法。
【請求項24】
ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防する際に使用するための、請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項25】
心不全;心不全における心仕事量;心不全に関係する死亡率、再梗塞および/または入院;急性心不全;急性非代償性心不全;うっ血性心不全;重症うっ血性心不全;心不全に関連する臓器損傷(例えば、腎臓の損傷もしくは不全、心臓弁の問題、心拍リズムの問題、および/または肝臓の損傷);左心室機能不全による心不全;正常左室駆出率の心不全;心筋梗塞後の心血管死亡率;左心室不全または左心室機能不全を持つ患者における心血管死亡率;左心室不全;左心室機能不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIV心不全;核医学的心室造影により40%未満のLVEF;ならびに心エコー検査または心室血管造影により35%以下のLVEFから選択される障害を処置するまたは予防する際に使用するための、請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物。
【請求項26】
ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための医薬を製造する際における、請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物の使用。
【請求項27】
心不全;心不全における心仕事量;心不全に関係する死亡率、再梗塞および/または入院;急性心不全;急性非代償性心不全;うっ血性心不全;重症うっ血性心不全;心不全に関連する臓器損傷(例えば、腎臓の損傷もしくは不全、心臓弁の問題、心拍リズムの問題、および/または肝臓の損傷);左心室機能不全による心不全;正常左室駆出率の心不全;心筋梗塞後の心血管死亡率;左心室不全または左心室機能不全を持つ患者における心血管死亡率;左心室不全;左心室機能不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIV心不全;核医学的心室造影により40%未満のLVEF;ならびに心エコー検査または心室血管造影により35%以下のLVEFから選択される障害を処置するまたは予防するための医薬を製造する際における、請求項1から15または18のいずれか一項に記載の溶媒和物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
心不全(HF)は、構造的および/または機能的心臓異常によって引き起こされる兆候(例えば、頸静脈圧の上昇、肺雑音および末梢浮腫)が付随しうる症状(例えば、息切れ、足首の腫れおよび倦怠感)によって特徴付けられる臨床症候群である。HFは、心臓を損傷させ、弱化させまたは硬化させて、冠動脈疾患、心筋梗塞、高血圧症、心臓弁の欠陥、心筋症、心筋炎、不整脈または他の先天性および慢性状態を含む心臓機能の低下につながる、いくつかの基礎状態によって生じうる。
【0003】
急性心不全は、組織(特に脳)の酸素欠乏を引き起こして死亡につながりうる、心機能の急速な低下である。急性心不全は、以前は無症候性であった個体(例えば、肺水腫または心原性ショックがある個体)において、または慢性心不全の急性増悪がある個体において起こりうる。
【0004】
健康な心臓では、ベータ-1およびベータ-2アドレナリン作動性受容体の作用が優勢であり、Gs共役経路を経由して作用して、心筋収縮の力および頻度を増大させるのに対し、ベータ-3アドレナリン作動性受容体は、Gi共役eNOS経路を経由して作用して、弱い負の変力作用を発揮する。衰えた心臓では、ベータ-1およびベータ-2アドレナリン作動性受容体が下方調節または非感受性にされているのに対し、ベータ-3アドレナリン作動性受容体は上方調節されており、それにより、心臓収縮性に対するベータ-3拮抗作用の負の影響を強調している。
【0005】
急性心不全を経験している個体において、短期的な目標は、収縮性を増大させることおよび血行動態を向上させることである。急性心不全のための現在の標準治療は、変力物質-心臓の収縮の力またはエネルギーを変化させる作用物質の投与を含む。これらの作用物質は、典型的には、集中ケア環境において持続注射によって投与される。そのような作用物質の例は、アドレナリン、ドブタミン、ドーパミン、レボシメンダンおよびノルアドレナリンを含む。しかしながら、これらの作用物質によって与えられる収縮性における初期の向上は、その後に死亡率の加速が続きうる。これらの作用物質の投与後の超過死亡率は、不整脈および心筋虚血につながる、頻脈および心筋酸素消費量の増大に関係するとされてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態2(化合物A)である溶媒和物が提供される。
【0008】
化合物Aである溶媒和物を作製するためのプロセスおよびそれらのプロセスの生成物も提供される。
【0009】
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態1(化合物B)である溶媒和物も提供される。
【0010】
非晶質1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレートも提供される。
【0011】
本明細書で記述されている化合物を含む組成物も提供される。
【0012】
本明細書で記述されている化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物も提供される。
【0013】
本明細書で記述されている化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む、剤形も提供される。
【0014】
個体においてベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための方法であって、それを必要とする前記個体に、治療有効量の本明細書で記述されている化合物またはその医薬組成物もしくは剤形を投与するステップを含む方法も提供される。
【0015】
本明細書で開示される発明のこれらおよび他の態様を、特許開示が進むにつれてより詳細に明記する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】化合物Aである溶媒和物を含有する試料についての粉末X線回折(PXRD)パターンを示す図である。
図2】化合物Aである溶媒和物を含有する試料の熱重量分析(TGA)サーモグラムを示す図である。
図3】化合物Aである溶媒和物を含有する試料についての示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図4A】化合物Aである溶媒和物を含有する試料の動的水蒸気吸着(DMS)プロファイルを示す図である。
図4B】化合物Aである溶媒和物を含有する試料の動的水蒸気吸着(DMS)プロファイルを示す図である。
図5】化合物Aである溶媒和物(下部)および1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態I(化合物B、上部)である溶媒和物を含有する試料についての粉末X線回折(PXRD)パターンを示す図である。
図6】化合物Aの結晶バッチ(左)およびデータ収集のために選択された単結晶(右)の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
明確さおよび一貫性のために、本特許文書全体を通して以下の定義を使用する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「化合物A」は、1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態2を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「化合物B」は、1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態1を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「化合物C」は、水和物等の溶媒和物を含むがこれらに限定されない、その非晶質および結晶性形態を含む1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレートを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「化合物D」は、水和物等の溶媒和物を含むがこれらに限定されない、その非晶質および結晶性形態を含む1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オン、すなわち、化合物Cの遊離塩基を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、処置を必要とする個体に、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤等の経口剤形;IV、IMまたはIP等の注射用剤形;クリーム剤、ゼリー剤、散剤またはパッチ剤を含む経皮剤形;口腔内剤形;吸入用散剤、スプレー剤、懸濁剤等;ならびに直腸坐剤を含むがこれらに限定されない、その個体の体に治療的に有用な形態および治療的に有用な量で導入されうる形態で、本発明の化合物または他の療法、医療もしくは処置を提供することを指す。ヘルスケア従事者は、化合物を試料の形態で個体に直接的に提供することができるか、または、化合物についての口頭もしくは書面による処方箋を提供することによって、化合物を個体に間接的に提供することができる。また、例えば、個体は、ヘルスケア従事者の関与なしに自ら化合物を入手することができる。化合物が個体に投与されると、体は化合物によって何らかの手法で転換される。本発明の化合物が1種または複数の他の作用物質と組み合わせて提供される場合、「投与」は、化合物を含むと理解され、他の作用物質は同時にまたは異なる時間に投与される。組合せの作用物質が同時に投与される場合、それらは単一の組成物で一緒に投与されうるか、またはそれらは別個に投与されうる。
【0023】
用語「アンタゴニスト」は、本明細書で使用される場合、アゴニストとしてのβアドレナリン作動性受容体(例えば、内在性リガンド)と競合的に結合することができるが、アゴニストと比較して細胞内応答を活性化させないかまたは実質的に低減させ、それにより、アゴニストまたは部分アゴニストによる細胞内応答を阻害することができる部分を指す。「アンタゴニスト」は、ベースライン細胞内応答を低下させないか、またはアゴニストも部分アゴニストも非存在下で無視できる程度まで低下させる。
【0024】
図を参照する語句「において描写される通りの」は、図「において描写される通りの」グラフィックデータによって特徴付けられている結晶形態および/または形態学を指す。そのようなデータは、例えば、粉末X線ディフラクトグラム、示差走査熱量測定トレースおよび動的水蒸気吸着グラフを含む。当業者ならば、データのそのようなグラフを示す図は、機器の応答における変動ならびに試料濃度および純度における変動等の因子による、例えばピーク相対強度およびピーク位置における小さい変動に供される場合があり、これらは当業者に周知であることを理解するであろう。それでもなお、当業者は、本明細書の図におけるグラフィックデータを不明の結晶形態および/または形態学(晶癖)について生成されたグラフィックデータと容易に比較することができ、グラフィックデータの2つのセットが同じ結晶形態(または形態学)または2つの異なる結晶形態(または形態学)のいずれを特徴付けているかを確認するであろう。本明細書で図「において描写される通りの」グラフィックデータによって特徴付けられると称される化合物Aの結晶性フリープレート晶癖(crystalline free-plate habit)は、当業者に周知であるように、図と比較して、そのような小さい変動を有するグラフィックデータで特徴付けられるあらゆる形態学を含むと理解されるであろう。
【0025】
用語「組成物」は、合成、予備処方、工程内試験等の間に取得/調製された組成物(すなわち、TLC、HPLC、NMR試料)等、少なくとも1つの追加の成分と組み合わせた本明細書で記述されている化合物を指す。
【0026】
用語「水和物」は、本明細書で使用される場合、非共有分子間力によって拘束された化学量論または非化学量論量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0027】
用語「処置を必要とする」および用語「それを必要とする」は、処置に言及する場合、個体または動物が処置を要するまたはそれから利益を得るであろうという、介護者(例えば、ヒトの事例では内科医、看護師、看護従事者等;非ヒト哺乳動物を含む動物の事例では獣医師)によって為された判断を意味するために交換可能に使用される。この判断は、介護者の専門知識の領域内であるが、本発明の化合物によって処置可能である疾患、状態または障害の結果として、個体または動物が病気であるまたは病気になるであろうという知識を含む、様々な因子に基づいて為される。したがって、本発明の化合物は、保護的または予防的方式で使用することができ、本発明の化合物を使用して、疾患、状態または障害を、緩和する、阻害するまたは改善することができる。
【0028】
用語「個体」は、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類およびヒト等の哺乳動物を含むあらゆる動物を指す。一部の実施形態では、「個体」はヒトを指す。
【0029】
用語「医薬組成物」は、それにより組成物が哺乳動物(例えば、限定されないが、ヒト)における指定された効果的な転帰についての調査に適している、少なくとも1種の活性原料を含む特定組成物を指す。当業者ならば、技術者のニーズに基づき、活性原料が所望の効果的な転帰を有するか否かを決定するために適切な技術を理解および認識するであろう。
【0030】
用語「処方すること」は、薬物の使用または他の療法、医療もしくは処置を、指図する、認可するまたは推奨することを指す。一部の実施形態では、ヘルスケア提供者は、化合物の使用、投薬量レジメン、または他の処置を、個体に口頭で助言する、推奨するまたは認可する。ヘルスケア提供者は、化合物、投薬量レジメンまたは処置について、書面による処方箋を提供してもしなくてもよい。さらに、ヘルスケア提供者は、個体に化合物または処置を提供してもしなくてもよい。例えば、ヘルスケア提供者は、化合物を提供することなく、化合物をどこで入手するかを個体に助言することができる。一部の実施形態では、ヘルスケア提供者は、化合物、投薬量レジメンまたは処置についての書面による処方箋を個体に提供することができる。処方箋は、紙に書かれたまたは電子媒体に記録されたものであってよい。加えて、処方箋を、薬局または診療所に電話で伝える(口頭)またはファクスで送信する(書面)ことができる。一部の実施形態では、化合物または処置の試料が個体に与えられる。本明細書で使用される場合、化合物の試料を与えることは、化合物についての暗黙の処方箋を構成する。世界中の異なるヘルスケアシステムが、化合物または処置を処方するおよび施すための異なる方法を使用し、これらの方法は、本明細書における開示によって包含される。
【0031】
ヘルスケア提供者は、例えば、内科医、看護師、看護従事者、または本明細書で開示される障害のための化合物(薬物)を処方するもしくは投与することができる他のヘルスケア専門家を含むことができる。加えて、ヘルスケア提供者は、化合物または薬物を個体に推奨する、処方する、投与する、または受けるのを防ぐことができる任意の者を含むことができ、例えば保険会社を含む。
【0032】
用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、特定の障害に関連する1つまたは複数の症状の出現または発病の排除または低減を指す。例えば、用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、障害の少なくとも1つの症状を最終的に現しうるが未だそうなっていない個体への、防護または予防ベースでの療法の施行を指すことができる。そのような個体は、バイオマーカーの存在等、その後の疾患の出現と相関することが公知であるリスク因子に基づいて同定されうる。代替として、予防療法を、リスク因子の事前同定なしに防護策として施すことができる。障害の少なくとも1つのエピソードおよび/または症状の発病を遅延させることを、予防または防護とみなすこともできる。
【0033】
用語「溶媒和物」は、本明細書で使用される場合、非共有分子間力によって拘束された化学量論または非化学量論量の溶媒をさらに含む化合物を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性、および/または微量でのヒトへの投与に許容できるものである。
【0034】
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、疾患、障害、状態、依存または行動の少なくとも1つの症状を、既に現しているまたは以前に現したことがある個体への、療法の施行を指す。例えば、「処置すること」は、疾患、障害、状態、依存または行動に関して、以下のいずれか:緩和すること、軽快させること、改善すること、向上させること、阻害すること(例えば、発生を停止させること)、和らげること、または退行を引き起こすことを含むことができる。「処置すること」は、症状を処置すること、追加の症状を予防すること、症状の根底にある生理学的原因を予防すること、または疾患、障害、状態、依存もしくは行動の症状を(防護的におよび/または治療的にのいずれかで)阻止することも含むことができる。例えば、障害に関する用語「処置すること」は、特定の障害に関連する1つまたは複数の症状の重症度における低減を意味する。したがって、障害を処置することは、障害に関連するすべての症状の重症度における低減を必ずしも意味するとは限らず、障害に関連する1つまたは複数の症状の重症度における完全な低減を必ずしも意味するとは限らない。
【0035】
用語「治療有効量」は、組織、系、動物またはヒトにおいて、個体、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医もしくは介護者が求めている、以下のうちの1つまたは複数を含みうる生物学的または医薬的応答を誘発する、活性化合物または医薬作用物質の量を指す:
(1)障害を予防すること、例えば、疾患、状態または障害にかかりやすい素因を持っているかもしれないが、関連する病理または症候を未だ経験しても見せてもいない個体において、疾患、状態または障害を予防すること、
(2)障害を阻害すること、例えば、関連する病理または症候を経験しているまたは見せている個体において、疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理および/または症候のさらなる発生を停止させること)、および
(3)障害を改善すること、例えば、関連する病理または症候を経験しているまたは見せている個体において、疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理および/または症候を逆転させること)。
【0036】
化合物
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態2(化合物A)である溶媒和物が提供される。
【0037】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、25℃および約0から90%相対湿度における動的水蒸気吸着分析により、約0.3%の重量変化を呈する。
【0038】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.8°±0.2°および18.9°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す。
【0039】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.8°±0.2°、18.9°±0.2°、26.6°±0.2°、22.9°±0.2°および8.8°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す。
【0040】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、2θを単位として、15.3°±0.2°、19.1°±0.2°、17.794°±0.2°、18.9°±0.2°、26.6°±0.2°、22.9°±0.2°、8.8°±0.2°、12.6°±0.2°、11.4°±0.2°、18.3°±0.2°および19.9°±0.2°においてピークを含むX線粉末回折パターンを示す。
【0041】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、報告されるピークが、2θを単位として、約±0.2°だけ変動しうることを実質的に意味する、実質的に図1において描写される通りの粉末X線回折パターンを示す。
【0042】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、約168℃から約176℃の間の外挿開始温度を持つ吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【0043】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、報告されるDSC特色が約±4℃だけ変動しうることおよび報告されるDSC特色が1グラム当たり約±20ジュールだけ変動しうることを実質的に意味する、実質的に図2において描写される通りの示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0044】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、融解する前に約0.97%の重量損失を示す熱重量分析プロファイルを示す。
【0045】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、報告されるTGA特色が約±5℃だけ変動しうることおよび報告されるTGA特色が約±2%の重量変化だけ変動しうることを実質的に意味する、実質的に図3において描写される通りの熱重量分析プロファイルを示す。
【0046】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、約28mgA/mLの水溶解度を示す。
【0047】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、単結晶X線分析によって決定された際の三斜晶系によって特徴付けられる。
【0048】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、単結晶X線分析によって決定された際のP1空間群によって特徴付けられる。
【0049】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、単結晶X線分析によって決定された際の、以下の寸法の単位セル:a=8.7267(2)Å、b=10.6750(3)Å、c=18.3096(5)Å、α=75.811、β=89.605、χ=80.968によって特徴付けられる。
【0050】
一部の実施形態では、化合物Aである溶媒和物は、無色のカットブロック晶癖(cut block habit)によって特徴付けられる。
【0051】
本明細書で記述されているプロセスのいずれかによって調製される、化合物Aである溶媒和物も提供される。
【0052】
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート半水和物形態1(化合物B)である溶媒和物も提供される。
【0053】
一部の実施形態では、化合物Bである溶媒和物は、報告されるピークが、2θを単位として、約±0.2°だけ変動しうることを実質的に意味する、実質的に図5において描写される通りの粉末X線回折パターンを示す。
【0054】
一部の実施形態では、化合物Bである溶媒和物は、約203℃から約206℃の間の外挿開始温度を持つ吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【0055】
一部の実施形態では、化合物Bである溶媒和物は、融解する前に約0.75%の重量損失を示す熱重量分析プロファイルを示す。
【0056】
非晶質1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレートも提供される。
【0057】
プロセス
化合物Aである溶媒和物を作製するためのプロセスであって、1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレートをアセトニトリルと接触させるステップと、化合物Aである溶媒和物を単離するステップとを含むプロセスが提供される。
【0058】
化合物Aである溶媒和物を作製するためのプロセスであって、1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート形態1を水と接触させるステップと、化合物Aである溶媒和物を単離するステップとを含むプロセスも提供される。
【0059】
1-エチル-3-((R)-3-((S)-2-ヒドロキシ-3-(3-(メチルスルホニル)フェノキシ)プロピルアミノ)-1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イルスルホニル)キノリン-4(1H)-オンメシレート(化合物C)である化合物は、当業者によって使用される関連する公開文献の手順に従って調製されうる。例えば、米国特許第10,479,797号および米国特許出願公開第2020-0385395号を参照されたく、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
組成物および製剤
製剤は、任意の好適な方法によって、典型的には、活性化合物を液体もしくは微粉化された固体担体または両方と要される割合で均一に混合し、次いで、必要ならば、得られた混合物を所望の形状に形成することによって、調製されてよい。
【0061】
結合剤、充填剤、許容できる湿潤剤、打錠用滑沢剤および崩壊剤等の従来の添加剤を、経口投与のための錠剤およびカプセル剤において使用してよい。経口投与のための液体調製物は、液剤、乳剤、水性または油性懸濁剤およびシロップ剤の形態であってよい。代替として、経口調製物は、使用前に水または別の好適な液体ビヒクルで再溶解されうる乾燥粉末の形態であってよい。懸濁化または乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含む)、保存剤および香味剤および着色剤等の追加の添加物を、液体調製物に添加してよい。非経口剤形は、本明細書で提供される化合物を好適な液体ビヒクルに溶解し、溶液を濾過滅菌した後、適切なバイアルまたはアンプルを充填および密閉することによって調製されてよい。これらは、剤形を調製するための当技術分野において周知である多くの適切な方法のほんの数例である。
【0062】
本発明の化合物は、当業者に周知の技術を使用して、医薬組成物に製剤化されうる。本明細書で言及されているもの以外の好適な薬学的に許容できる担体は、当技術分野において公知であり、例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000、Lippincott Williams&Wilkins(編集者:Gennaroら)を参照されたい。
【0063】
防護または処置において使用するために、本明細書で提供される化合物は、代替使用において、生または純粋な化学物質として投与されうることが可能であるが、化合物または活性原料を、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬製剤または組成物として提示することが好ましい。
【0064】
医薬製剤は、経口、直腸、鼻内、局所(口腔内および舌下を含む)、膣内もしくは非経口(筋肉内、皮下および静脈内を含む)投与に好適なもの、または吸入、吹送によるもしくは経皮パッチ剤による投与に好適な形態のものを含む。経皮パッチ剤は、薬物の分解が最低限である効率的な方式での吸収のために薬物を提示することによって、薬物を制御された速度で分注する。典型的には、経皮パッチ剤は、不浸透性のバッキング層、単一の感圧接着剤、および剥離ライナー付きの取り外し可能な保護層を含む。当業者ならば、技術者のニーズに応じて所望の効果的な経皮パッチ剤を製造するために適切な技術を理解および認識するであろう。
【0065】
故に、本明細書で提供される化合物は、従来のアジュバント、担体または賦形剤と一緒に、医薬製剤およびその単位投薬量の形態に入れられ、そのような形態で、すべて経口使用のための、錠剤もしくは充填カプセル剤等の固体、液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、ゲル剤もしくはそれを充填したカプセル剤等の液体、直腸投与のための坐剤の形態で;または非経口(皮下を含む)使用のための滅菌注射用溶液の形態で用いられてよい。そのような医薬組成物およびその単位剤形は、従来の原料を従来の割合で、追加の活性化合物または素成分(principle)を加えてまたは加えずに含んでよく、そのような単位剤形は、用いられるように意図された1日投薬量範囲に見合った、任意の好適な有効量の活性原料を含有してよい。
【0066】
経口投与では、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤または液体の形態であってよい。医薬組成物は、好ましくは、特定の量の活性原料を含有する投薬量単位の形態で作製される。そのような投薬量単位の例は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはバレイショデンプン等の従来の添加物を加えた;結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン等の結合剤を加えた;コーンスターチ、バレイショデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム等の崩壊剤を加えた;ならびにタルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を加えた、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤または懸濁剤である。活性原料は、組成物として注射によって投与されてもよく、ここで、例えば、生理食塩水、デキストロースまたは水が、好適な薬学的に許容できる担体として使用されてよい。
【0067】
本明細書で提供される化合物は、医薬組成物における活性原料として、具体的にはベータ-3アドレナリン作動性受容体モジュレーターとして、使用されうる。「医薬組成物」の文脈で定義される用語「活性原料」は、薬学的利益を提供しないとして概して認められるであろう「不活性原料」とは対照的に、一次薬理効果を提供する、医薬組成物の成分を指す。
【0068】
本明細書で提供される化合物を使用する場合の用量は、広い範囲内でならびに恒例によりおよび内科医または他の臨床医に公知の通りに変動することができ、各個々の事例において個々の条件に合わせられる。これは、例えば、処置される疾病の性質および重症度によって、患者の状態によって、用いられる化合物によって、または急性もしくは慢性的な病状が処置されるのかまたは防護が行われるのかによって、または本明細書で提供される化合物に加えてさらなる活性化合物が投与されるか否かによって決まる。代表的な用量は、約0.001mgから約5000mg、約0.001mgから約2500mg、約0.001mgから約1000mg、約0.001mgから約500mg、約0.001mgから約250mg、約0.001mgから100mg、約0.001mgから約50mgおよび約0.001mgから約25mgを含むがこれらに限定されない。とりわけ比較的多量が必要とされると考えられる場合、日中に複数回用量、例えば2、3または4回用量が投与されてよい。個体に応じておよびヘルスケア提供者から適切と考えられる通りに、本明細書で記述されている用量から上へまたは下へ逸脱することが必要な場合がある。
【0069】
処置において使用するために要求される活性原料の量は、投与ルートだけでなく、処置されている状態の性質ならびに患者の年齢および状態にも伴って変動することになり、最終的に主治医または臨床医の裁量によることになる。概して、当業者ならば、モデルシステム、典型的には動物モデルにおいて取得したインビボデータをヒト等の別のものにいかにして外挿するかを理解する。一部の状況では、これらの外挿は、哺乳動物、好ましくはヒト等の別のモデルと比較した動物モデルの重量に基づいているにすぎない場合があるが、より多くの場合、これらの外挿は、単に重量に基づくのではなく、むしろ様々な因子を組み込んでいる。代表的な因子は、患者の種類、年齢、体重、性別、食習慣および医学的状態、疾患の重症度、投与ルート、用いられる特定の化合物の活性、効能、薬物動態および毒物学プロファイル等の薬理学的考察、薬物送達システムが利用されるか否か、急性もしくは慢性的な病状が処置されているのかまたは防護が行われるのか、または本明細書で提供される化合物に加えておよび薬物組合せの一部としてさらなる活性化合物が投与されるか否かを含む。本明細書で提供される化合物および/または組成物で病態を処置するための投薬量レジメンは、上記で列挙した様々な因子に従って選択される。故に、用いられる実際の投薬量レジメンは、広く変動してよく、したがって、好ましい投薬量レジメンから逸脱してよく、当業者ならば、これらの典型的な範囲外の投薬量および投薬量レジメンを試験することができ、適切な場合、本明細書で提供される方法において使用してよいことを認めるであろう。
【0070】
所望の用量は、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3、4回またはそれ以上のサブ用量として、好都合に提示されてよい。サブ用量自体が、例えば、いくつかの個々にゆるく間隔をとった投与にさらに分割されてよい。日用量は、とりわけ比較的多量が投与される場合、適切と考えられる通りに、いくつかの、例えば、2、3または4部投与に分割されうる。適切ならば、個体の行動に応じて、指示された日用量から上へまたは下へ逸脱することが必要な場合がある。
【0071】
本明細書で提供される化合物は、多種多様な経口および非経口剤形で投与されうる。剤形は、活性成分として、本明細書で提供される化合物を含みうることが、当業者には明白であろう。
【0072】
本明細書で提供される化合物から医薬組成物を調製するために、好適な薬学的に許容できる担体の選択は、固体、液体のいずれか、または両方の混合物であることができる。固体形態調製物は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤を含む。固体担体は、賦形剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても作用しうる、1種または複数の物質であることができる。
【0073】
散剤において、担体は、微粉化された活性成分との混合物である微粉化された固体である。
【0074】
錠剤において、活性成分は、必要な結合能を有する担体と好適な割合で混和され、所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0075】
散剤および錠剤は、様々なパーセンテージの量の活性化合物を含有してよい。散剤または錠剤における代表的な量は、0.5から約90パーセントまでの活性化合物を含有してよく、しかしながら、技術者は、この範囲外の量が必要な場合を知っているであろう。散剤および錠剤のための好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。用語「調製物」は、担体を加えたまたは加えない活性成分が担体で囲まれ、故にそれと会合しているカプセル剤を提供する、担体として封入材料を加えた活性化合物の製剤を指す。同様に、カシェ剤およびキャンディー剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびキャンディー剤は、経口投与に好適な固体形態として使用されうる。
【0076】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリドの混和物またはココアバター等の低融点ワックスを最初に融解させ、撹拌する等により活性成分をその中に均質に分散させる。次いで、融解した均質混合物を好都合なサイズの鋳型に注ぎ入れ、冷却させ、それにより凝固させる。
【0077】
膣内投与に好適な製剤は、活性原料に加えて、当技術分野において適切であることが公知であるような担体を含有する、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤として提示されてよい。
【0078】
液体形態調製物は、液剤、懸濁剤および乳剤、例えば、水または水-プロピレングリコール溶液を含む。例えば、非経口注射液調製物は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化されうる。注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性または油脂性懸濁液は、好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用し、公知の技術に従って製剤化されてよい。滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容できる賦形剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液としてのものであってもよい。許容できるビヒクルおよび溶媒の中でも、用いられうるのは、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌固定油が溶媒または懸濁媒として慣例的に用いられる。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いてよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注射液の調製における使用を見出している。
【0079】
故に、本明細書で提供される化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注射または持続注入による)のために製剤化されてよく、アンプル、予め充填されたシリンジ内に単位用量形態で、小体積注入で、または保存剤が添加された複数回用量容器内に提示されてよい。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルション等の形態をとってよく、懸濁化、安定化および/または分散剤等の配合剤を含有してよい。代替として、活性原料は、滅菌固体の無菌単離によってまたは溶液からの凍結乾燥によって取得された、使用前の好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水による構成用の粉末形態であってよい。
【0080】
経口使用に好適な水性製剤は、活性成分を水に溶解または懸濁し、好適な着色剤、香味剤、安定化および増粘剤を所望される通りに添加することによって、調製されうる。
【0081】
経口使用に好適な水性懸濁剤は、微粉化された活性成分を、天然もしくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、または他の周知の懸濁化剤等の粘性材料を加えた水に分散させることによって作製されうる。
【0082】
使用直前に、経口投与のための液体形態調製物に変換されることが意図されている固体形態調製物も含まれる。そのような液体形態は、液剤、懸濁剤および乳剤を含む。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有してよい。
【0083】
表皮への局所投与のために、本明細書で提供される化合物は、軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤として、または経皮パッチ剤として製剤化されてよい。
【0084】
軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、水性または油性基剤を用い、好適な増粘および/またはゲル化剤を添加して製剤化されてよい。ローション剤は、水性または油性基剤を用いて製剤化されてよく、概して、1種または複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤または着色剤も含有することになる。
【0085】
口内への局所投与に好適な製剤は、香味基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性剤を含むキャンディー剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤中に活性原料を含むトローチ剤;ならびに、好適な液体担体中に活性原料を含む口内洗浄剤を含む。
【0086】
液剤または懸濁剤は、従来の手段によって、例えばスポイト、ピペットまたはスプレーを用いて鼻腔に直接的に適用される。製剤は、単回または複数回用量形態で提供されてよい。スポイトまたはピペットの後者の事例では、これは、患者が適切な所定の体積の液剤または懸濁剤を投与することによって実現されてよい。スプレー剤の事例では、これは、例えば定量噴霧スプレーポンプを活用して実現されてよい。
【0087】
気道への投与は、活性原料が好適な噴射剤を加えた加圧パックで提供される、エアゾール製剤を活用して実現されてもよい。本明細書で提供される化合物またはそれらを含む医薬組成物が、エアゾールとして、例えば鼻エアゾールとしてまたは吸入によって投与される場合、これは、例えば、スプレー、ネブライザー、ポンプネブライザー、吸入装置、定量吸入器または乾燥粉末吸入器を使用して行われうる。本明細書で提供される化合物のエアゾールとしての投与のための医薬形態は、当業者に周知のプロセスによって調製されうる。それらの調製のために、例えば、水、水/アルコール混合物または好適な生理食塩溶液中の、本明細書で提供される化合物の溶液または分散体を、慣習的な添加物、例えば、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを増大させるための吸収エンハンサー、可溶化剤、分散剤およびその他を使用して用いることができ、適切ならば、慣習的な噴射剤は、例えば、二酸化炭素、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンまたはジクロロテトラフルオロエタン等のCFC等を含む。エアゾールは、好都合に、レシチン等の界面活性剤も含有してよい。薬物の用量は、定量弁の設置によって制御されてよい。
【0088】
鼻腔内製剤を含む気道への投与が意図されている製剤では、化合物は概して、例えば10ミクロン以下のオーダーの小さい粒径を有することになる。そのような粒径は、当技術分野において公知の手段によって、例えば微粒子化によって取得されてよい。所望される場合、活性原料の持続放出を与えるのに適応している製剤が用いられてよい。
【0089】
代替として、活性原料は、乾燥粉末、例えば、好適な散剤基剤、例を挙げると、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)中の、化合物の混合粉体の形態で提供されてよい。好都合なことに、粉末担体は鼻腔内でゲルを形成することになる。粉末組成物は、単位用量形態で、例えばゼラチン製のカプセルもしくはカートリッジで、または吸入器を活用して粉末が投与されうるブリスターパックで例えば提示されてよい。
【0090】
医薬調製物は、好ましくは単位剤形である。そのような形態では、調製物は、適切な分量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位剤形は包装された調製物であることができ、包装は、バイアルまたはアンプル中の分包された錠剤、カプセル剤および散剤等、個々の分量の調製物を含有する。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤もしくはキャンディー剤自体であることができ、または、包装された形態の適切な数のこれらのいずれかであることができる。
【0091】
経口投与のための錠剤またはカプセル剤および静脈内投与のための液体が好ましい組成物である。
【0092】
一部の実施形態は、「組合せ療法」のための医薬組成物を生成する方法であって、本明細書で開示される化合物実施形態のいずれかに従う少なくとも1種の化合物を、少なくとも1種の公知の医薬作用物質および薬学的に許容できる担体と一緒に混和するステップを含む方法を含む。
【0093】
ベータ-3アドレナリン作動性受容体モジュレーターが医薬組成物における活性原料として利用される場合、これらはヒトだけではなく非ヒト哺乳動物における使用も意図したものであることに留意されたい。動物ヘルスケアの領域における最近の進歩は、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ等)におけるおよび家畜動物(例えば、ウマ、雌ウシ等)におけるベータ-3アドレナリン作動性受容体関連疾患または障害の処置のための、ベータ-3アドレナリン作動性受容体モジュレーター等の活性剤の使用が考慮されることを要求するものである。当業者には、そのような環境におけるそのような化合物の有用性を容易に理解する資質があると考えられる。
【0094】
障害および処置の方法
本明細書で開示される化合物は、いくつかの疾患、障害、状態および/または適応症(これらは本明細書において累積的に「障害」と称される)の処置または予防において有用である。当業者ならば、障害、または処置もしくは予防の方法が本明細書で開示される場合、そのような開示は、第2の医学的使用(例えば、障害の処置において使用するための化合物、障害の処置のための化合物の使用、および障害の処置のための医薬の製造における化合物の使用)を包含することを認めるであろう。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、障害の処置または予防に有用である。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、障害のサブタイプの処置または予防に有用である。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、障害の症状の処置または予防に有用である。
【0096】
ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害の予防に有用である。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害の処置または予防に有用である。
【0097】
本発明の一態様は、個体においてベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための方法であって、それを必要とする個体に、治療有効量の本発明の化合物;本発明の医薬品製品;または本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。
【0098】
本発明の一態様は、個体において心不全を処置するまたは予防するための方法であって、それを必要とする個体に、治療有効量の本発明の化合物;本発明の医薬品製品;または本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。
【0099】
本発明の一態様は、低血圧患者または境界域低血圧患者を処置するための方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物;本発明の医薬品製品;または本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。本発明の一態様は、個体においてベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0100】
本発明の一態様は、個体において心不全を処置するまたは予防するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0101】
本発明の一態様は、低血圧患者または境界域低血圧患者を処置するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0102】
本発明の一態様は、正常血圧患者を処置するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0103】
本発明の一態様は、高血圧患者を処置するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0104】
本発明の一態様は、心筋梗塞後の患者を処置するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0105】
本発明の一態様は、療法によるヒトまたは動物の体の処置の方法において使用するための、本発明の化合物;本発明の医薬品製品;または本発明の医薬組成物に関する。
【0106】
本発明の一態様は、個体においてベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害を処置するまたは予防するための方法において使用するための、本発明の化合物;本発明の医薬品製品;または本発明の医薬組成物に関する。
【0107】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心不全;心不全における心仕事量の低減;心不全に関係する死亡率、再梗塞および/または入院;急性心不全;急性非代償性心不全;うっ血性心不全;重症うっ血性心不全;心不全に関連する臓器損傷(例えば、腎臓の損傷もしくは不全、心臓弁の問題、心拍リズムの問題、および/または肝臓の損傷);左心室機能不全による心不全;正常左室駆出率の心不全;心筋梗塞後の心血管死亡率;左心室不全または左心室機能不全を持つ患者における心血管死亡率;心筋梗塞後の状態;左心室不全;左心室機能不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIII心不全;ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIV心不全;核医学的心室造影により40%未満のLVEF;ならびに心エコー検査または心室血管造影により35%以下のLVEFからなるリストから選択される。
【0108】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心不全である。
【0109】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心不全における心仕事量の低減である。
【0110】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心不全に関係する死亡率、再梗塞および/または入院である。
【0111】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、急性心不全である。
【0112】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、急性非代償性心不全である。
【0113】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、うっ血性心不全である。
【0114】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、重症うっ血性心不全である。
【0115】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心不全に関連する臓器損傷(例えば、腎臓の損傷もしくは不全、心臓弁の問題、心拍リズムの問題、および/または肝臓の損傷)である。
【0116】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、左心室機能不全による心不全である。
【0117】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、正常左室駆出率の心不全である。
【0118】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心筋梗塞後の心血管死亡率である。
【0119】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、左心室不全または左心室機能不全を持つ患者における心血管死亡率である。
【0120】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心筋梗塞後である。
【0121】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、左心室不全である。
【0122】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、左心室機能不全である。
【0123】
医師は、患者の心不全をその症状の重症度に従って分類することができる。以下の表は、最も一般的に使用される分類システムであるニューヨーク心臓協会(NYHA)機能的分類について記述するものである。これは、身体活動中にどの程度制限されるかに基づいて患者を4つのカテゴリーのうちの1つに入れる。
【0124】
【表1】
【0125】
したがって、一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスII心不全である。
【0126】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIII心不全である。
【0127】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類システムを使用したクラスIV心不全である。
【0128】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、核医学的心室造影により40%未満のLVEFである。
【0129】
一部の実施形態では、ベータ-3アドレナリン作動性受容体媒介性障害は、心エコー検査または心室血管造影により35%以下のLVEFである。
【0130】
開示される受容体および方法の他の使用は、とりわけ、本開示の再検討に基づき、当業者に明らかとなるであろう。
【0131】
認められるであろう通り、本発明の方法のステップは、任意の特定の回数または任意の特定のシーケンスで実施される必要はない。本発明の追加の目的、利点および新規特色は、例証的であることが意図されており限定的であることは意図されていないその以下の例を検査すると、当業者に明らかとなるであろう。
【実施例
【0132】
(実施例1)
安定形態のスクリーニング
研究の目的は、周囲条件下のAPD418メシレートについて最も安定な結晶形態を同定することであった。
【0133】
安定形態のスクリーニングのための手順
化合物Cを、種々の溶媒(表1)中、周囲温度(21℃±1℃)で2週間にわたってスラリー化した。可能であれば、過剰な化合物を溶媒/溶媒混合物に添加し、ガラス高速液体クロマトグラフ(HPLC)バイアルに入れて蓋をして、媒質が懸濁液を形成するために妥当な固体材料を有し、懸濁液がPXRD分析のために回収するのに少なくとも十分な固体を有することを確実にした。溶液のままであったジメチルスルホキシドを除き、すべての試料についてスラリーを取得した。1日間の平衡後に溶解度を決定し、スラリーを2週間にわたって撹拌させた。温度をモニターし、研究の期間中にわたって21℃±1℃であることが決定された。2週間の終わりに、スラリーを撹拌から除去し、0.45μmのナイロンフィルターを使用する遠心濾過によって固体を単離し、終夜風乾させ、次いで、PXRDによって分析した。選択された試料をTGAおよびDSCによっても分析した。
【0134】
【表2】
【0135】
溶解度分析のための手順
溶解度は、周囲温度(21℃±1℃)における約24時間の平衡後に、重量分析によって決定した。Eppendorf 5417Cモデル遠心分離機を使用する遠心濾過によって、試料を分離した。懸濁液試料を、0.45μmのナイロンメンブレンフィルター付きの遠心フィルターチューブに入れ、10000rpmで1分間にわたって回転させた。10から20μLの濾液アリコートを、TA Instruments Q5000で事前に風袋の重さを量った別個の熱重量分析パンに入れた。濾液を乾燥させて、乾燥残存固体重量を実現した。溶解度は、乾燥残存重量をアリコート体積で割ることによって算出した。
【0136】
粉末X線回折のための手順
X線回折分析は、PANalyticalエキスパートプロMPD粉末X線回折計(EQ0233)を使用して実施した。試料は、数ミリグラムの化合物を試料ホルダーに載置し、平らに伸ばすことによって調製した。
【0137】
熱重量分析のための手順
TGAは、TA Instruments Q5000(EQ1982)で実施した。
【0138】
示差走査熱量測定のための手順
DSCは、TA Instruments DSC Q2000(EQ1980)で実施した。
【0139】
動的水蒸気吸着のための手順
動的水蒸気吸着分析は、TA Instruments Q5000SA(EQ2418)を使用して実施した。約5mgの化合物を、風袋の重さを量った試料ホルダーに入れることによって、試料をDMS分析のために調製した。
【0140】
結果
溶解度結果が以下で提供される。結果は、8mMより大きい溶解度を持つ若干数のスラリー試料を示した。化合物Aは、ほとんどの有機溶媒中で低い溶解度(≦1mM)を有し、アセトニトリル中ではわずかに向上した溶解度を持ち、メタノール、ジメチルスルホキシドおよび水性系中では高い溶解度(>20mM)を有する。
【0141】
【表3】
【0142】
化合物Cを、有機溶媒、水および混合溶媒系を含む13種の溶媒系中でスラリー化した。8mMより大きい溶解度は、少なくとも5種のスラリー系(表4;大部分は水性または混合系)で取得されて、スクリーニングにおける信頼性を可能にした。すべての系は、溶媒系(水性、部分水性または無水)に関わりなく最終形態として形態2をもたらした。他の新たな多形は観察されなかった。選択された試料のTGA分析は、最大110℃で0.7から1.1%の範囲内のTGAにおける重量損失を指し示し、融解によって0.02から0.15%の追加の損失があった。これらの結果は、この結晶形態について後に確立された半水和物の化学量論と一致していた。半水和物は、水を添加していない9種の異なる有機溶媒中でスラリー化した後であっても、無水物形態に変換しなかった。この結果は、化合物が非常に低い臨界水分活性を有するという主張を裏付ける。加えて、DSC結果は、168℃から176℃の範囲内の開始で吸熱(融解に起因する)を示し、他の有意な熱事象はなかった。他の形態は観察されず、他には公知の結晶形態(形態1)のみが水中で形態2に変換することが示されたため、形態2は周囲条件で安定な形態と指定される。
【0143】
【表4】
【0144】
化合物Aは、25℃および非常に低い湿度/水分活性状態でその半水和物の格子を維持することが示された。この形態の代表的な特徴付けを、図1~4Bに示す。TGA結果は、TGA室内で乾式ガスに曝露されると約30~40℃で始まる重量の約1%の損失を指し示す。他の有意な重量損失は観察されない。対応する広く浅い吸熱は、DSCにおいて見られる。これらの事象は、強い乾燥条件に曝露された場合の水の損失に起因する(半水和物形態は約1.24重量%に相当する)。しかしながら、水の損失とされるこれはDMSにおいては見られず、乾燥ステップ中に水の総重量変化は約0.35%であり、一定の重量が実現されるまで40℃および約1%RHの条件で約1時間以内である。DMSが、0から90%までのRHおよび25℃でDMSスキャン中にわずか0.3%の水の総収穫量を示したことから、該形態は非吸湿性とみなされる。本質的に完全に再水和した後、25℃で30%RHから90%RHの間における重量変化は、わずか約0.1%であった。
【0145】
結論
形態1は、水中で形態2に変換する。加えて、安定形態のスクリーニングは、形態2が、周囲温度でいかなる他の形態にも変換しないことを指し示した。スクリーニングから新たなPXRDパターンは観察されなかった。
【0146】
(実施例2)
水溶解度
水性媒質への化合物Aの溶解度を、種々のpH値で測定した。遊離塩基の共役酸イオン化定数および固有溶解度は、測定されたpH-溶解度データを、単一塩基分子についてのヘンダーソン・ハッセルバルヒ方程式の傾き切片形態に当てはめることによって導出した。化合物Cの遊離塩基(化合物D)の固有溶解度は0.53mg/mLであると決定され、pKaは7.44であると決定された。HCl塩は、5.3mgA/mL(A=活性遊離塩基)の水溶解度を有していたのに対し、メシル酸塩は28mgA/mLの水溶解度を示した。メシル酸塩に関連するpHmaxは、5.7であると決定された。
【0147】
(実施例3)
単結晶構造決定
化合物Aの単結晶X線構造は、アセトニトリルおよび1.5%H2O溶液から成熟化によって取得された結晶を使用して、100K(-173℃)で決定された。図6を参照されたい。結晶は三斜であり、空間群P1は、[I>2σ(I)]を有する強度データについて最終R=3.02%を持つ。非対称単位において、プロトン化APD418の2個の分子、2個のCHSO 対アニオンおよび1個の水分子があり、いずれも完全に秩序化されている。単位セルは、以下の寸法:a=8.7267(2)Å、b=10.6750(3)Å、c=18.3096(5)Å、α=75.811、β=89.605、χ=80.968を有していた。晶癖は無色のカットブロックであった。
【0148】
化合物の絶対立体化学が決定された。5員環におけるキラル炭素についての立体中心はR配置であるのに対し、水酸化アルキルキラル炭素についての立体中心はS配置である。フラックパラメーターは-0.008である。
【0149】
結晶構造モデル由来の模擬PXRDパターン(100Kデータ収集に対応する)は、データ収集温度における差異によって引き起こされたピーク位置における小さい体系的なシフトを持つバルク試料についての実験的ディフラクトグラムと一致する。この結果は、単結晶構造がバルク材料を代表することを確認するものであり、これは形態2と一致することが示された。
【0150】
当業者ならば、本明細書で明記されている例証的な例への種々の修正、追加、代用および変形が、本発明の趣旨から逸脱することなく為されうるものであり、したがって、本発明の範囲内であるとみなされることを認めるであろう。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
【国際調査報告】