(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】イムノアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20240927BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/532 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N33/531 A
G01N33/53 N
G01N33/543 525C
G01N33/532 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520524
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022077389
(87)【国際公開番号】W WO2023052630
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524123366
【氏名又は名称】ナバス エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、アンドリュー
(57)【要約】
本発明は、1種または複数種の遊離軽鎖を同定するためのイムノアッセイに関する。特に、本発明は、少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む、哺乳類試料中の遊離軽鎖(FLC)をアッセイするための方法に関する。本発明はまた、患者における疾患のスクリーニング、診断、モニタリング、または予後のための方法であって、上記アッセイ方法を実施することを含む、方法にも関する。本発明はまた、哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのイムノアッセイにおける鳥類由来抗体(IgY)の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む、哺乳類試料中の遊離軽鎖(FLC)をアッセイするための方法。
【請求項2】
前記IgYが、少なくとも1種の哺乳類免疫グロブリン軽鎖の定常ドメインに対して親和性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IgYが標識されている、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IgYが、蛍光、発光、放射能、同位体標識、または酵素、粒子、もしくは基質への結合によって標識されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記IgYが、粒子または表面に固定化されている、請求項1から請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固定化されたIgYを結合剤として含むバイオセンサの使用を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイが、比ろうアッセイ、比濁アッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、ラテラルフローアッセイ、免疫固定電気泳動(IFE)アッセイ、または酵素結合免疫吸着法(ELISA)アッセイである、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アッセイが、比濁アッセイである、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記IgYが、平均直径が少なくとも40nm、例えば、50~160nmであるナノ粒子上にコーティングされている、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイが、ELISAアッセイである、請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記IgYが、λ(ラムダ)FLCまたはκ(カッパ)FLCに特異的に結合する(または、特異的に結合することが可能である)、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記FLCが、λ(ラムダ)FLC、κ(カッパ)FLC、または総FLCである、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
異なる特異性を有する少なくとも2種のIgYの使用を含み、1種のIgYはラムダFLCに対してより高い親和性を有し、別のIgYはカッパFLCに対してより高い親和性を有する、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
異なる特異性を有する少なくとも2種のIgYの使用を含み、1種のIgYはラムダFLCまたはカッパFLCのいずれかに対してより高い親和性を有し、他のIgYはラムダFLCおよびカッパFLCに対して実質的に同じ親和性を有する、請求項1から請求項13のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料中のκFLCとλFLCの比(FLCκ:λ)が決定される、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記FLCκ:λ比をFLCκ:λの正常範囲と比較し、前記正常範囲からの有意な(例えば、>10%または>5%)偏差を算出し、前記正常範囲からの偏差の増加は、疾患が進行する見通しの増加および/または予後の悪化と関連している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記IgYが、FLCの単量体形態と二量体形態とに対して実質的に等しい反応性を有する、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記IgYが、FLCのすべての多量体形態に対して実質的に等しい反応性を有する、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳類試料が、血液、血清、血漿、唾液、尿、もしくは脳脊髄液、または他の生体液、好ましくは、血清、血漿、または尿の試料である、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者における疾患のスクリーニング、診断、モニタリング、または予後のための方法であって、請求項1から請求項19のうちのいずれか一項に記載のアッセイ方法を実施することと、前記アッセイの結果を少なくとも1つの所定の閾値と比較することおよび/または前記アッセイの結果の正常範囲からの偏差を算出することと、を含む、方法。
【請求項21】
前記疾患が、B細胞関連疾患である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が、くすぶり型多発性骨髄腫、完全型免疫グロブリン骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病および急性リンパ性白血病から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのイムノアッセイにおける鳥類由来抗体(IgY)の使用。
【請求項24】
アッセイ方法または請求項1から請求項19のうちのいずれか一項における、請求項1に記載の使用。
【請求項25】
哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのアッセイキットの製造における少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用。
【請求項26】
請求項1から請求項22のうちのいずれか一項に記載の方法に使用するためのアッセイキット。
【請求項27】
哺乳類試料中のFLCのアッセイに使用するための少なくとも1種の鳥類由来抗体を含むアッセイキット。
【請求項28】
少なくとも1つのFLC参照試料をさらに含む、請求項26または請求項27に記載のアッセイキット。
【請求項29】
前記IgYが、基質に付着している、請求項26、請求項27、または請求項28に記載のアッセイキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1種または複数種の遊離軽鎖を同定するためのイムノアッセイに関する。
【0002】
発明の背景
抗体は2本の同一の重鎖と2本の同一の軽鎖とからなり、これらの鎖はそれぞれ可変ドメインと定常ドメインとを含んでいる。軽鎖にはカッパ(κ)型とラムダ(λ)型の2種類がある。各抗体は1つのクラスの軽鎖のみを発現する。通常、軽鎖は重鎖に付着しており、結合軽鎖と呼ばれる。しかしながら、重鎖と結合していない過剰な軽鎖がいくらか存在するのが普通であり、これらは「遊離軽鎖(FLC)」と呼ばれている。FLCは、例えば、個体の血清中、血漿中、または尿中で検出可能である。
【0003】
血清遊離軽鎖(sFLC)は、免疫関連疾患、例えば、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、多発性骨髄腫(MM)、ならびに他の形質細胞障害、例えば、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、および軽鎖沈着症(LCDD)などの診断と管理に重要なバイオマーカーである。sFLCは、免疫刺激疾患(immune-stimulating diseases)、例えば、多発性硬化症、一部の肝疾患、および全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患などのマーカーでもある。
【0004】
正常でも異常でも形質細胞は軽鎖を重鎖よりも多く産生し、これらの過剰な軽鎖は血流中に放出される。これらのFLCは、典型的には、腎臓によって、迅速に除去され、代謝される。sFLCの増加は、腎クリアランスの低下、多クローン性免疫グロブリン産生の増加、または単クローン性免疫グロブリン血症によって起こり得る。
【0005】
FLCは、全分子免疫グロブリンにおいては通常は軽鎖の重鎖への結合によって隠れているFLC表面に対する抗体を作製することによって検出し得る。FLCに対する哺乳類抗体を作製するための方法がこれまでに開示されている(Bradwell et al, Clin. Chem., (2001), 47, 673-680)。
【0006】
イムノアッセイは、抗原(例えば、タンパク質上の部位)とその抗原に特異的な抗体との反応を測定することに基づくものである。遊離軽鎖の検出は、完全な抗体では重鎖に結合しているFLCの領域における少なくとも1つの抗原に対して抗体が作製されるイムノアッセイによって実施することができる。κFLCまたはλFLCの検出用のキットが市販されており、例としては、バインディング・サイト社(The Binding Site Limited)製の「Freelite(商標)」およびシーメンス社(Siemens)製の「N Latex」が挙げられる。これらはそれぞれ、ポリクローナルヒツジ抗体技術および複数のモノクローナル抗体に基づいている。
【0007】
現在のsFLCアッセイの問題点はこれらのアッセイに互換性がないことであり、なぜなら、アッセイ方法が異なれば同じ試料に対して異なる結果が得られる可能性があるためである。FLCのアッセイについて報告されている1つの問題は、これらの分子が不均一な集団であって、かなりの多様性を示し、血液中、血清中、血漿中、および尿中にしばしば重合体形態で存在することが知られていることである。これらは、例えば、二量体、四量体、またはより重合度の高い重合体形態であり得る。κFLCは通常単量体として存在するが、λFLCは二量体を形成する傾向がある(Solling, Scand. J. Clin. Lab. Invest., (1976), 36, 447-452)。抗FLC抗体がすべての分子形態を等モルで認識しない限り、sFLCアッセイではすべての試料で同等の結果が得られるわけではない。カポーニ(Caponi)ら(Clin. Chem. Lab. Med., (2016), 54, 1111-1113)は、既存のFLCアッセイ間のこの不一致を強調している。
【0008】
血清FLCの単量体/二量体比は、健康個体と単クローン性免疫グロブリン血症または他の免疫刺激疾患の患者との間でも異なり得る。例えば、カプラン(Kaplan)ら(Am. J. Hematol., (2014), 89, 882-888)は、ALおよびMMの患者はモノクローナルFLCの二量体化が異常に増加し、FLC二量体のクローナリティ値が単量体よりも高くなることを示した。これらのFLCパターン異常は、MGUS、SMM、およびALアミロイドーシスの患者ならびに健康個体では観察されなかった。
FLC分子の重合体の多様性の重要性は、最初のsFLCアッセイの開発者らによって考慮されていた(Bradwell et al, Clin. Chem., (2001), 47, 673-680)。しかしながら、公表されたデータは、生成された抗体が、単量体形態に比べてより高いアビディティで二量体形態に結合したことを示している。したがって、ブラッドウェル(Bradwell)らによって記述された哺乳類由来ポリクローナル抗体を用いて生み出されたイムノアッセイはFLCの二量体形態を優先的に認識すると予想される。
【0009】
FreeliteアッセイおよびN-Latexアッセイはいずれも特に力価の高い試料においてモノクローナルFLCの濃度をかなり過大評価することと、FLCの重合がその原因であると示されていることとが示されている(de Kat Angelino CM et.al 2010. Clin Chem. 2010 Jul;56(7):1188-90.、およびDi Noto Get.al., Ann Clin Biochem. 2015 May;52(3):327-36)。
【0010】
現在のところ、国際的に認められているFLC標準物質(reference material)も参照方法(reference method)も存在しない。現在市販されているFLCアッセイの方法論や、FLCの様々な多量体形態を有する試料に対するそれらの応答には、著しい差異が見られる。
【0011】
哺乳類由来抗体を用いた多量体FLCの定量化を容易にするための戦略が提案されており、その中には、軽鎖間(L-L鎖間)ジスルフィド架橋の選択的切断(Jerry and Kunkel, J Immunol November 1, 1972, 109 (5) 982-991)のための還元剤をアッセイ製剤に使用すること(WO2017144896A1)が含まれている。しかしながら、そのような戦略は、追加の工程を必要とし、かつ/または、アッセイの複雑さを増すものであり、そのような方法の適用はまだ成功していない。
【0012】
試料の重合/多量体状態にあまり左右されずにFLCを定量できることが重要である。多量体形態にあまり左右されずにλFLCまたはκFLCを特異的に検出するアッセイを提供することも有利であろう。FLC抗体は、全免疫グロブリン(whole immunoglobulins)における軽鎖との交差反応によりFLCの偽上昇が生じることを回避するために、完全型免疫グロブリン(intact immunoglobulins)において「隠れた」エピトープのみを認識する必要がある。
【0013】
本発明者らは、鳥類由来抗体(IgY)に基づくイムノアッセイ試薬が、FLCの異なる多量体形態に関連する問題を解決することを見出した。
【0014】
発明の概要
第1の態様において、少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む、哺乳類試料中のFLCをアッセイするための方法が提供される。
【0015】
第2の態様において、患者における疾患のスクリーニング、診断、モニタリング、または予後のための方法であって、第1の態様に記載のアッセイ方法を実施することと、アッセイの結果を少なくとも1つの所定の閾値と比較することと、を含む方法が提供される。
【0016】
第3の態様において、哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのイムノアッセイにおける鳥類由来抗体(IgY)の使用が提供される。
【0017】
第4の態様において、哺乳類試料中のFLCのアッセイに使用するための少なくとも1種の鳥類由来抗体を含むアッセイキットが提供される。
【0018】
本発明の種々の実施形態が本明細書に記載されており、技術的に実行可能な場合には、本発明のあらゆる態様に適用可能である。本明細書に記載されるすべての実施形態は、技術的に実行可能な場合には、単独で使用してもよく、他のすべての実施形態と組み合わせて使用してもよい。
【0019】
一実施形態において、上記鳥類由来抗体は、ニワトリ抗体である。
【0020】
別の実施形態において、上記試料は、血清、血漿、または尿である。
【0021】
別の実施形態において、上記FLCは、λFLC、κFLC、または総FLCである。
【0022】
別の実施形態において、上記疾患は、くすぶり型多発性骨髄腫、完全型免疫グロブリン骨髄腫(intact immunoglobulin myeloma)、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病、および急性リンパ性白血病から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記鳥類由来抗体は、支持材に付着している。
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図を参照して、単に例示の目的で示す以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、抗カッパIgYでコーティングされた粒子の検量線を示す。
【
図2】
図2は、抗ラムダIgYでコーティングされた粒子の検量線を示す。
【
図3】
図3は、カッパ抗原に対する還元剤の効果をSDS-PAGEを用いて示す。
【
図4】
図4は、ニワトリIgY抗カッパ粒子により増強した免疫比濁応答と、単量体形態および二量体形態の影響の比較を示す。
【
図5】
図5は、Freelite抗カッパ応答と、単量体形態および二量体形態の影響の比較を示す。
【
図6】
図6は、ラムダ抗原に対する還元剤の効果をSDS-PAGEを用いて示す。
【
図7】
図7は、ニワトリIgY抗ラムダ粒子により増強した免疫比濁応答と、単量体形態および二量体形態の影響の比較を示す。
【
図8】
図8は、Freelite抗ラムダ応答と、単量体形態および二量体形態の影響の比較を示す。
【0026】
詳細な説明
本発明は、少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む、哺乳類試料中のFLCをアッセイするための方法に関する。鳥類由来抗体は、抗FLC抗体となり、抗カッパFLC抗体であっても抗ラムダFLC抗体であってもよい。κFLC量、λFLC量、総FLC量、および/またはκFLCとλFLCの比(κFLC:λFLC比もしくはκ:λ比)を測定することにより、患者におけるいくつかの異なる疾患または病状に関する情報が得られる。正常な形質細胞は過剰な軽鎖を産生し、過剰な軽鎖は血清中に排出される。健康なヒトにおいてはラムダ軽鎖の約2倍のカッパ軽鎖が産生される。健康個体においてはこれらの過剰なFLCは腎臓で再吸収され代謝される。ある特定の疾患を有する個体は、FLCの濃度が高くなり、かつ/または、κFLCとλFLCの比が変化している。単クローン性免疫グロブリン血症は、形質細胞の単一のクローンの異常増殖によって引き起こされる障害である。従来は、λFLCまたはκFLCの一方が増加しているかを調べる。例えば、多発性骨髄腫は悪性形質細胞の単クローン性増殖によって起こり、1種類の免疫グロブリンを産生する1種類の細胞が増加する。その結果、個体内で観察されるλまたはκのいずれかのFLC量が増加する。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、鳥類由来抗体が哺乳類抗体に比べてより強い親和性でFLCに結合し得ること、および/または、鳥類由来抗体によって、異なる多量体形態がより均等に測定され得ることを見出した。異なる多量体形態を実質的に等しい親和性で検出できれば特に有利である。なぜなら、例えば、ALおよびMMの患者はモノクローナルFLCの二量体化が異常に増加している(Kaplan et al, 2014)ためである。既存のsFLCアッセイは、実験哺乳動物を免疫することによって生成された抗体を用いる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、既存のアッセイにおける問題の一部は、ヒトと抗体生成に使用される哺乳動物との間の系統的距離が近いことに帰することができるのではないかと考えられる。
【0028】
標的に特異的に結合する結合分子を用いて試料中の特定の標的分子の量を測定する方法は、当該技術分野においてよく知られている。任意の好適なイムノアッセイ方法を本発明の適切な態様に使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記アッセイは、インビトロアッセイである。いくつかの実施形態では、上記アッセイは、比ろう(nephelometric)アッセイ、比濁(turbidimetric)アッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、ラテラルフローアッセイ、ラジアルフローアッセイ、免疫固定電気泳動(IFE)アッセイ、または酵素結合免疫吸着法(ELISA)アッセイである。場合によっては、上記アッセイは比濁アッセイである。場合によっては、上記アッセイはELISAアッセイである。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記アッセイは、上記鳥類由来抗体と、1つのシグナルを別のシグナル(例えば、光学シグナル、圧電シグナル、電気化学シグナル、電気化学発光シグナルなど)に変換して測定および定量する物理化学的な変換器または検出器とを備えるバイオセンサの使用を含む。特に、このバイオセンサは、鳥類由来抗体とその抗原(FLC)との結合事象を測定可能シグナル(例えば、光学特性の変化)に変換し、そのシグナルを検出し、検出したシグナルをアッセイ結果に処理することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記アッセイは、マルチプレックスアッセイである。マルチプレックス化により、1つの試料中の複数の分析対象物を同時に定量することが可能になる。場合によっては、上記マルチプレックスアッセイは、複数のテストラインを含むラテラルフローデバイスである。場合によっては、上記マルチプレックスアッセイは蛍光アッセイである。いくつかの実施形態では、上記マルチプレックスアッセイは蛍光ビーズを使用する。場合によっては、上記マルチプレックスアッセイは、分析対象物に特異的な捕捉抗体でプレコーティングされた色分けされたビーズを含む。場合によっては、上記マルチプレックスアッセイは、分析対象物に特異的な捕捉抗体でプレコーティングされた色分けされたビーズを含み、例えば、Luminex xMAPアッセイを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記アッセイは実験室ベースである。場合によっては、上記アッセイはポイントオブケアアッセイである。
【0033】
本明細書において「アッセイ」または「アッセイ方法」は、定性的アッセイ方法であってもよく、定量的アッセイ方法であってもよい。定性的アッセイの場合、上記アッセイは、FLC濃度が所定の閾値を上回るか下回るかを示す二値的な結果(例えば、陽性または陰性)を返し得る。このようなアッセイは、初期スクリーニングにおいて、より詳細なさらなる分析が必要とされ得るかどうかを確認するのに特に有用である。定量的アッセイは、一般に、絶対スケールまたは任意スケールのいずれかで数値結果を返す。このようなアッセイは、FLC測定に価値があるものである。なぜなら、定期的な検査が行われ得る「くすぶり型」多発性骨髄腫の場合のように、FLC濃度の変化が疾患の重症度または進行を示す可能性があるためである。このような状況においては、FLCアッセイの数値が安定していることは、疾患が安定していることおよび/または疾患が寛解期にあることを示し得る。これに対して、値が変化していることは、疾患が悪化していることを示し得る。例えば、総FLC濃度の上昇またはカッパ:ラムダ比の異常性の増加は、疾患が進行していることを示し得る。同様に、総FLCの低下またはカッパ:ラムダ比がより正常に近づいていることは、治療および/または管理が成功していることを示し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記アッセイに使用されるIgYの1種または複数種が標識されていてもよい(例えば、標的分子と結合分子との結合を検出できるようにするため)。場合によっては、IgYは、蛍光、発光、放射能、同位体標識、または酵素、結合剤、粒子、もしくは基質への結合(conjugation)によって標識されている。場合によっては、IgYは、基質を検出可能な分析対象物に変換できる酵素で標識されている。このような酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および当該技術分野で公知の他の酵素が挙げられる。場合によっては、IgYは、特異抗原またはビオチンなどの結合対の一方のメンバーに結合されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、IgYは、粒子または表面に固定化されている。固定化により、固定化されたIgY(および任意の被結合成分)を流体相から分離するなどのプロセスが可能になる。このような粒子または表面は、流体相から容易に分離できるサイズおよび材料であればよく(例えば、10nm~10cmまたは100nm~1cm)、ガラス表面もしくはプラスチック表面の領域またはマイクロタイタープレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、もしくは1536ウェルプレート)のウェルなどの、表面またはより大きな物品を含み得る。小さい粒子の凝集によって散乱が増加し、ひいては試料の濁度が増加し得るため、粒子への付着も標識方法として利用できる。
【0036】
場合によっては、IgYは、平均直径が少なくとも40nm(例えば、40~300nm)、例えば、50~260nm、好ましくは80~200nmであるナノ粒子上にコーティングされる。IgYを付着させ得る粒子または表面に適した材料としては、ガラス、セラミック、金属、もしくは金属酸化物(例えばシリカ、チタニア、もしくはジルコニア)などの無機材料;熱可塑性ポリマーもしくは熱硬化性ポリマーなどの合成ポリマー(例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、もしくはフェノール樹脂);および/または天然ポリマーもしくは変性(半合成)天然ポリマー(例えば、ラテックスゴム、セルロース、デンプン、もしくはシルクなどのタンパク質ポリマー)が挙げられる。
【0037】
1つの特定の例は、ガラス、シリカ、ラテックス、金属(例えば、金)、またはポリマー材料(例えば、ポリエチレンもしくはポリスチレン)からなるナノ粒子へのIgYの付着である。
【0038】
1つの特定の例は、ラテックス粒子(Ikerlatポリマー社(Ikerlat Polymers S.L.)、スペイン)のナノ粒子へのIgYの付着であり、上記方法は、
・その任意の実施形態に係る免疫粒子(immunoparticle)を用意することと、
・試料を免疫粒子と反応させることと、
・試料の反射率、散乱、または透過率の変化を検出することと、を含み、試料の反射率、散乱、または透過率の変化は、試料中のFLCの量を示す。
【0039】
試料は、血漿および血清から選択される試料であり、反射率、散乱、または透過率の変化は、透過率の変化であり、上記方法は、比濁法である。
【0040】
上記についての一実施形態によれば、変化は、反射率または散乱の変化であり、上記方法は、比ろう法である。
【0041】
上記方法を比濁法または比ろう法として実施できることは、大きな利点である。なぜなら、そのような方法は、自動化でき、また、世界中のほとんどの臨床化学研究室で日常的に使用されている既存の臨床分析装置で実施できるためである。
【0042】
ある特定の実施形態において、IgY特異的結合剤は、λ(ラムダ)FLCまたはκ(カッパ)FLCに特異的に結合することが可能であってもよい。この文脈における特異的結合とは、5%未満(例えば、0.001%~5%)、好ましくは1%未満の交差反応性を有することとみなしてもよい。すなわち、ラムダ特異的IgYは、カッパに対して5%未満または1%未満の交差反応性を有していてもよい。同様に、カッパ特異的IgYは、ラムダに対して5%未満または1%未満の交差反応性を有していてもよい。
【0043】
交差反応性は、あるアッセイ方法において、アッセイ試料中の標的抗原を用いた場合と、同濃度の試料中の別の抗原を用いて実行された対応するアッセイとの間で生じる相対的シグナルである。本件では、ラムダ特異的IgYのカッパに対する交差反応性は、カッパFLC含有試料を用いた場合のアッセイ方法において生成される、ラムダFLC含有試料で実施した同じアッセイ方法で得られるシグナルに対して相対的なシグナルとなる。同様に、カッパ特異的IgYのラムダに対する交差反応性は、ラムダFLC含有試料を用いた場合のアッセイ方法において生成される、カッパFLC含有試料で実施した同じアッセイ方法で得られるシグナルに対して相対的なシグナルとなる。
【0044】
いくつかの実施形態では、上記FLCは、カッパFLC、ラムダFLC、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記試料は、血液、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、または他の生体液の試料である。上記試料は、血清、血漿、または尿の試料であることが好ましい。被検試料は、哺乳類、好ましくはヒトから採取される。
【0046】
上記鳥類由来抗体(IgY)は、少なくとも1種の哺乳類免疫グロブリン軽鎖の定常ドメインに対して親和性を示す。その実施形態によると、上記IgYポリクローナル抗体は、20.0E-08M未満(例えば、20.0E-08M~1.0E-12M)、好ましくは10.0E-09M、最も好ましくは2.0E-09M未満のKDで、ラムダFLC抗原またはカッパFLC抗原に特異的に結合する。抗体のその抗原に対する結合親和性を測定する1つの好適な手法は、例えばBiacore(商標)アッセイプラットフォームおよびソフトウェア(GEヘルスケア(GE Healthcare)社)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によるものである。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記鳥類由来抗体は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥、およびウズラから選択される鳥類種由来の抗体である。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のすべての態様および実施形態における鳥類由来抗体がニワトリ抗体であってもよい。ニワトリ抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または組換えモノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体または組換えモノクローナル抗体は、個別に使用してもよく、組み合わせて(例えば、マルチクローナル調製物として)使用してもよい。
【0048】
本発明の抗体は、天然のモノクローナルもしくはポリクローナルFLCまたは免疫グロブリン軽鎖カッパおよびラムダの定常領域に特異的な組換え抗原で免疫した免疫ニワトリの卵から精製し得る。
【0049】
本発明の抗体は、周知の抗体精製技術を用いて精製し得る。本発明の抗体を精製するために用い得る抗体精製技術の好適な例としては、硫酸アンモニウムなどによる沈殿(塩析)、ジエチルアミノエステル(DEAE)誘導体またはカルボキシメチル(CM)誘導体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、および、プロテインAまたはプロテインGを用いた、とりわけ、抗体が作製された抗原への結合を含む、アフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。上記に示した技術の組み合わせを抗体の精製に利用してもよいことが理解されるであろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、IgYは、λFLCまたはκFLCに特異的に結合することが可能である。「特異的に結合する」とは、鳥類由来抗体が所望のFLC以外の分子には実質的に結合しないことを意味する。例えば、抗ラムダ抗体は、カッパ抗原または全分子免疫グロブリンの軽鎖を、ラムダFLCに比べてはるかに低い程度にしか認識しない。このような交差反応性を利用して、標的抗原と別の抗原とで結合を比較した相対的シグナルを生成することができる。場合によっては、交差反応性は1%未満である。
【0051】
いくつかの実施形態では、IgYは、FLCの単量体形態と二量体形態とに対して実質的に等しい反応性を有する。このことは、ある特定の試料中FLC濃度からは、FLC抗原の重合性に関係なく、実質的に等しいイムノアッセイシグナルが生成されることを示している。場合によっては、IgYは、FLCのすべての多量体形態に対して実質的に等しい反応性を有する。
【0052】
本明細書で用いる「実質的に等しい」という用語は、2つの値の差が20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であることを示す。
【0053】
いくつかの実施形態では、異なる特異性を有する少なくとも2種のIgYが使用される。場合によっては、少なくとも2種のIgYが存在する場合、1種のIgYはλFLCまたはκFLCのいずれかに対してより高い親和性を有し、他のIgYはλFLCおよびκFLCに対して実質的に同じ親和性を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、試料中のκFLC:λFLC比が決定される。場合によっては、このκFLC:λFLC比が、κFLC:λFLC比の正常範囲と比較され、有意な偏差が存在していれば、病状の存在および/または病状の活性度もしくは重症度の変化を示しているとみなされる。特定の比率またはその比率の偏差が閾値を上回っているか下回っていると、特定の疾患または疾患のグループに起因する可能性があり、さらなる検査によってその曖昧さを解消することができる。また、カッパ対ラムダ比の経時的な変化も、疾患の重症度または進行における変化を示し得る(例えば、再発または寛解を示す)。
【0055】
カッパ軽鎖とラムダ軽鎖の比の正常範囲はこれまでに確立されている(例えば、Rajkumar et al. Blood (2005) 106 (3): 812-817)。これらの正常範囲は、1つの製造会社のアッセイ(Freelite(商標)アッセイ、バインディング・サイト社、バーミンガム、英国)を用いて確立されたものであり、他のFLCアッセイで特定された範囲とは異なる可能性もある。
【0056】
一実施形態において、異常なFLC比とは、0.26未満または1.65を超える、ラムダ鎖に対するカッパ鎖の比率、例えば0.10未満または5.0を超える比率と定義することができる。ある特定の実施形態では、疾患進行(例えば、MGUS、くすぶり型骨髄腫、または孤発性骨形質細胞腫などの前駆状態から活動性骨髄腫へ)のリスクの増加が、正常なカッパ:ラムダ比からの偏差の増加と関連している可能性がある。同様に、ある特定の増殖状態(例えば、多発性骨髄腫または慢性リンパ性白血病)における予後の悪化が、正常なカッパ:ラムダ比からの偏差の増加と関連している可能性がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、総FLC濃度の量が測定される。場合によっては、FLCの総量が正常値よりも高いか低いかを決定するために、総FLC濃度が標準の所定値と比較される。健康個体の血清中のカッパ鎖およびラムダ鎖の濃度の正常範囲は、カッパ鎖が3.3~19.4mg/L、ラムダ鎖が5.7~26.6mg/Lと定義されている[Katzmann et al. 2002, Clin Chem 48: 1437-1444]。これらの範囲は、Freelite(商標)アッセイ(バインディング・サイト社、バーミンガム、英国)を用いて定義されたものであり、他のFLCアッセイで特定された範囲とは異なる可能性もある。現在使用されているFLCアッセイのキャリブレーションは、標準化の難しさをはらんでいる。現在、sFLCには国際的に認められた基準測定系がなく(Tate et al. 2009. The Clinical biochemist. Reviews vol. 30,3: 131-40)、そのため、FLCアッセイが異なれば結果が著しく相違する可能性があり(Schieferdecker et al. 2020. Blood cancer journal vol. 10,1 2. 9)、FreeliteアッセイによるFLC濃度の平均過大評価は10倍の過大評価であると見積もられている(Helden et al. 2019. Hematol Med Oncol 4:1-7)。この場合、健康個体の血清中のカッパ鎖およびラムダ鎖の濃度の実際の正常範囲は、カッパ鎖で0.33~1.94mg/L、ラムダ鎖で0.57~2.66mg/Lという低い範囲になり得る。
【0058】
正常なFLC濃度よりも高いFLC濃度に対する適切なカットオフ値は、アッセイの状況に応じて異なり得る。例えば、広範な初回スクリーニングアッセイでは、低いFLC濃度を「正常」として使用し、偽陽性の割合が高くなることを容認する場合があり、偽陽性はさらなる調査後に割引かれる。積極的または侵襲的な検査または治療を決める一要素として用いられるアッセイは、より高い値を「正常」に使用する場合がある。したがって、ある特定の実施形態では、カッパFLCの正常なFLC濃度は、0.2~50mg/L、例えば、0.2~50mg/L、0.33~1.94mg/L、2.0~50mg/L、または3.3~19.4mg/Lなどであると考えることができる。正常範囲からの有意な偏差とは、臨床的脈絡(clinical context)に応じて、例えば、正常範囲よりも高いもの、またはその範囲の上限よりも10%高いものもしくはその範囲の上限よりも例えば20%高いものと考えることができる。
【0059】
sFLCの濃度が正常よりも高いことは、生存率が低下する可能性が有意に増加することと関連している。総FLC濃度は、対象において経時的にモニタリングすることもでき、その場合、総FLC濃度の上昇は、疾患の重症度の増加(例えば、再発)を示し、総FLC濃度の低下は、疾患の重症度の低下(例えば、寛解)を示す。
【0060】
総sFLC濃度とκFLC:λFLC比の両方を測定できることは有利である。なぜなら、腎クリアランス障害または免疫グロブリンの多クローン性増加を有する患者の場合、sFLCレベルは上昇するかもしれないが、sFLCκ:λ比は正常であるからである。一方で、カッパ産生形質細胞クローンまたはラムダ産生形質細胞クローンのいずれかの異常な増殖を有する患者の場合は、通常、sFLCκ:λ比が異常になる。
【0061】
異常な遊離カッパ/ラムダ比は、MGUS、くすぶり型骨髄腫、孤発性骨形質細胞腫などの前駆状態から活動性骨髄腫に進行するリスクの増加と関連しており、多発性骨髄腫および慢性リンパ性白血病においては、より悪い転帰の前兆となる。よって、本発明のアッセイは、そのような状態における予後または適切な治療計画を決定する際の補助として使用することができる。
【0062】
したがって、追加的な態様において、本発明は、単クローン性形質細胞疾患(単クローン性免疫グロブリン血症および/または単クローン性骨髄腫など)を腎障害および/または多クローン性形質細胞疾患から区別する方法であって、総FLCが上昇した患者におけるκFLC:λFLC比を測定することを含み、κFLC:λFLCの異常な比が単クローン性形質細胞疾患を示す、方法を提供する。
【0063】
また、患者における疾患のスクリーニング、診断、モニタリング、または予後のための方法であって、少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む哺乳類試料中のFLCをアッセイするための方法と、アッセイ結果を少なくとも1つの所定の閾値と比較することとを含む、方法も提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、上記疾患はB細胞関連疾患である。場合によっては、上記疾患は、くすぶり型多発性骨髄腫、完全型免疫グロブリン骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病、および急性リンパ性白血病から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、対象が障害を有すると診断した後、上記方法は、当該障害を治療するための治療薬(例えば、治療上有効な量)を対象に投与することをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、対象が障害を有すると診断した後、上記方法は、血漿交換または幹細胞移植などの治療を行うことをさらに含む。
【0067】
また、哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのイムノアッセイにおける鳥類由来抗体(IgY)の使用も提供される。
【0068】
また、哺乳類試料中のFLCをアッセイするためのアッセイキットの製造における少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用も提供される。
【0069】
また、哺乳動物試料中のFLCのアッセイに使用するための少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)を含むアッセイキットも提供される。
【0070】
いくつかの実施形態では、上記アッセイキットは、少なくとも1つのFLC参照試料(reference sample)をさらに含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、上記アッセイキット中のIgYは基質に付着している。
【0072】
上記アッセイキットは、試料中のλFLCもしくはκFLCの量またはFLCの総量を定量することができる。
【0073】
また、哺乳類の対象における少なくとも2種のB細胞関連疾患を区別する方法も提供される。
【0074】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも1種の鳥類由来抗体(IgY)の使用を含む、哺乳類試料中の遊離軽鎖(FLC)をアッセイするための方法であって、FLC単量体:二量体比が決定される、方法に関する。この決定は、本発明の方法を、FLC単量体およびFLC二量体に対して異なる応答を示す別の方法と比較することによって達成され得る。特に、本発明のアッセイ方法は、単量体:二量体比の影響を比較的受けない結果を提供し(後述の実施例を参照)、他のある特定の公知のアッセイ方法は、ある特定の多量体形態に対してより高い感度を提供するため、同じ試料に対して実施された2つのアッセイ方法の結果を比較することにより、その試料のFLC含有量の多量体組成に関する情報が得られる可能性がある。このように、本発明のアッセイ方法と別のアッセイ方法(Freeliteアッセイ方法またはN-latexアッセイ方法など)との間で結果の偏差を決定することによって、単量体:二量体比を決定することができる。このことは特に、上記別のアッセイが哺乳類(例えば、ヒツジ、マウス、またはラット)の抗体結合に基づくものである場合に当てはまる。
【0075】
したがって、一実施形態において、本発明の方法は、別のアッセイ方法を用いて同じ試料に対して別のFLCアッセイを追加的に実施することと、当該別のアッセイ方法の結果を、(本明細書中の任意の実施形態に記載の)少なくとも1種の鳥類由来抗体の使用を含むアッセイ方法の結果と比較することと、を含み得る。このような別のアッセイ方法は、例えば、ヒツジ抗体などの哺乳類抗体の結合に基づくアッセイ方法であってもよい。このような哺乳類抗体は、抗FLC抗体となり、抗カッパFLC抗体であっても抗ラムダFLC抗体であってもよい。このような哺乳類抗体は、モノクローナル抗体(例えば、複数のモノクローナル抗体)であってもポリクローナル抗体であってもよい。
【0076】
一実施形態において、上記別のアッセイ方法は、比濁アッセイ法、比ろうアッセイ法、または電気泳動アッセイ法であってもよい。
【0077】
一実施形態において、(本明細書中の任意の実施形態に記載の)少なくとも1種の鳥類由来抗体の使用を含むアッセイ方法と別のアッセイ方法(例えば、哺乳類抗体の使用を含む)との両方が、同じ検出方法(比濁法、比ろう法、または蛍光など)を利用する。
【0078】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0079】
実施例
実施例1:ポリクローナル鳥類抗体の調製とそのアフィニティー精製
a)鳥類FLC抗体の調製
ヒトFLCに対するポリクローナルIgY抗体の生成には、以下の免疫プロトコルを用いることができる。
各免疫実験に10~20羽のニワトリを使用する。リン酸緩衝液中の高純度免疫原10mgをフロイントアジュバントで乳化し、ニワトリの筋肉内または皮下に注射した。注射は2~4週間ごとに繰り返した。注射開始から10~12週間後に採卵した。卵から卵黄を単離し、卵黄からのIgY画分を脱脂した後、従来技術の卵抗体単離方法(Larsson A, et.al 1993 Poultry Science 72:1807-1812, 1993による総説)に従って従来の方法で硫酸アンモニウム沈殿によって単離した。
上記の例における免疫原は、精製ベンス・ジョーンズタンパク質、急性腎不全患者から精製されたポリクローナル遊離軽鎖、全分子免疫グロブリンの分画によって生成された精製FLC、および免疫グロブリン軽鎖の定数領域のアミノ酸配列に対応する組換えペプチドから選択される。
【0080】
b)ポリクローナル抗体画分のアフィニティー精製
吸収工程:
精製IgG、IgA、およびIgMタンパク質10mgを、GEヘルスケア社のHITRAP NHS活性化HPカラムに、カラムの添付文書に記載されている方法に従って固定化した。
単離IgY画分を、リン酸緩衝生理食塩水で4mg/mlに希釈した。このIgY溶液200~300mlを前記カラムに通し、非吸着(flow-through)画分を回収した。
次いで、この非吸着画分を、以下の方法を用いてそれぞれのFLCの混合物に対してアフィニティー精製した:
・高純度ヒト遊離軽鎖5mgを、GEヘルスケア社のHITRAP NHS活性化HPカラムに、カラムの添付文書に記載されている方法に従って固定化した。
・非吸着画分100mlを前記カラムに通し、その後、リン酸緩衝生理食塩水25mlを通した。
・固定化されたFLCに特異的な親和性を持つ抗体を、pH=2.9の0.1モルクエン酸緩衝液15mlでカラムから溶出させた。溶出した特異的抗FLC抗体をリン酸緩衝生理食塩水に対して透析し、分子量カットオフが30.000ダルトンのAmicon Ultra遠心分離濾過装置を用いて3~5mg/mlに濃縮した。
【0081】
実施例2:FLCの比濁アッセイ
(a)抗FLC抗体でコーティングされたナノ粒子の調製
実施例1で調製した抗カッパ抗体または抗ラムダ抗体のアリコート(例えば、IgY5mg)をpH8.4~8.6のMOPS緩衝液に対して透析した後、4%w/vクロロメチル活性化ナノ粒子(スペインのIkerlatポリマー社または米国のサーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)から入手可能)のアリコート1mlを添加した。
精製抗FLC抗体へのナノ粒子の添加後、混合物を33℃で24~72時間撹拌する。ホウ酸緩衝液中に10mg/mlのウシ血清アルブミンを含有する等量のグリシンブロッキング緩衝液(pH8.6)を添加し、混合物を33℃で4~18時間インキュベートした。
このインキュベーション後、粒子を総量10mlに希釈し、分子量カットオフが1.000kダルトンのFloat-A-Lyzer G2透析装置を用いて、0.1%Tween(登録商標)20、10mg/mlの卵アルブミン、および保存剤を含有するpH8.8のTris-NaCl緩衝液R2、2000ml量に対して透析した後、希釈または遠心濃縮を用いてこの保存用緩衝液(R2)中の最終粒子濃度に調整する。
【0082】
(b)抗FLC抗体でコーティングされたナノ粒子を用いたFLCのアッセイ
アッセイ用のキャリブレータは、精製FLCと、精製FLCのOD280を用いて値付けされた(assigned)値とを用いて調製した。キャリブレータ範囲は0-1.6-3.1-6.3-12.5-25.0-50.0mg/Lであった。
ポリエチレングリコールのような可溶性ポリマー、塩類、およびpH緩衝液を混合してアッセイ用緩衝液(R1)を調製し、アッセイのキャリブレーションにおけるアッセイ結果の比濁シグナルがバインディング・サイト社のFreeliteアッセイキャリブレーションに一致するまで、最適化した。このアッセイ用緩衝液の一例は、25mMのTRIS、180mMのNaCl、0.1%Tween(登録商標)20、および0.4%PEG6000、pH7.4である。
ラテックスにより増強された比濁イムノアッセイを、臨床化学分析装置(ALCOR、Edifインスツルメンツ社(Edif Instruments s.r.l.)、アルデアティーナ通り 132-00179 ローマ)で確立した。この典型的なFLCアッセイは、試料3μl、R1(アッセイ用緩衝液)180μl、およびR2(抗体でコーティングされたナノ粒子)60μlを使用した。
検量線を、抗カッパナノ粒子については
図1、抗ラムダナノ粒子については
図2に示す。
【0083】
実施例3:カッパFLCおよびラムダFLCの単量体および二量体構造の検討
図3は、天然型および還元型のカッパFLC抗原のSDS-PAGEゲルを示す。精製カッパ抗原を、SDS-PAGE(5~20%)ゲルに流した。天然と表示されたレーンは、約24kDaに単量体カッパFLC、約48kDaに二量体カッパFLCを明確に示す非還元カッパ抗原を含有する。単量体に対応するバンドは、二量体のバンドよりも強い。DTTと表示されたレーンは、同じカッパ抗原であるが、SDS_PAGEに流す前に100mMのDTTで還元したものである。L-システインと表示されたレーンは、同じカッパ抗原を、SDS‐PAGEゲルに流す前に15mMのL-システインで還元したものである。二量体のMWに対応するバンドが見えないため、これらの還元剤(DTTおよびL-システイン)が二量体のカッパFLCを単量体形態のカッパFLCに効率よく変換することは明らかである。
図6は、天然型および還元型のラムダFLC抗原のSDS-PAGEゲルを示す。精製ラムダ抗原をSDS-PAGE(5~20%)ゲルに流した。天然と表示されたレーンは、約24kDaに単量体ラムダFLC、約48kDaに二量体ラムダFLCを明確に示す非還元カッパ抗原を含有する。単量体に対応するバンドはかろうじて見える程度であるが、二量体のバンドははるかに強い。DTTと表示されたレーンは、同じラムダ抗原をSDS_PAGEに流す前に100mMのDTTで還元したものである。L-システインと表示されたレーンは、同じラムダ抗原をSDS‐PAGEゲルに流す前に15mMのL-システインで還元したものである。二量体のMWに対応するバンドがほとんどまたは全く見えないため、これらの還元剤(DTTおよびL-システイン)が二量体のラムダFLCを単量体形態のラムダFLCに効率よく変換することは明らかである。
【0084】
実施例4:比濁アッセイにおけるFLCの重合体構造の影響
(a)軽鎖二量体の単量体への変換
カッパFLCは主に単量体として発生し、ラムダFLCは主に二量体として発生すると考えられている。非還元SDS‐PAGEゲルにより、天然状態において、アッセイキャリブレーションに用いたカッパ抗原は主に単量体からなり(
図3)、ラムダ抗原は主に二量体からなる(
図6)ことが確認された。
グルタチオン、L-システイン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、B-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)、およびジチオエリスリトール(DTE)などの還元剤は、例えば多量体軽鎖などの分子間のジスルフィド結合を還元する。DTTおよびL-システインによるカッパ二量体からカッパ単量体への還元の効率を
図3に示す。DTTおよびL-システインによるラムダ二量体からラムダ単量体への還元の効率を
図6に示す。
【0085】
(b)FLCの比濁アッセイに基づくニワトリ抗体におけるFLCの重合体構造の影響
カッパおよびラムダの2つの別々のキャリブレータシリーズを前述と同様に調製した。単量体キャリブレータ範囲を調製するために、第1のキャリブレータセットをアッセイ用緩衝液中で15mMのL-システインとインキュベートした。第2のキャリブレータ(FLCの二量体および単量体形態を含有する天然のキャリブレータ)セットを、L-システインを含まないアッセイ用緩衝液中でインキュベートした後、免疫比濁アッセイで標準曲線を作成した。実施例2に記載したようにALCOR臨床化学アッセイを使用した。天然カッパFLCキャリブレータおよび単量体カッパFLCキャリブレータのアッセイ検量線を
図4に示す。天然ラムダFLCキャリブレータおよび単量体ラムダFLCキャリブレータのアッセイ検量線を
図7に示す。
【0086】
(c)FreeliteカッパキットおよびFreeliteラムダキットにおけるFLCの重合体構造の影響
Freelite Human Kappa Freeキット(製品コード:LK016.CB)およびFreelite Human Lambda Freeキット(製品コード:LK018.CB)(いずれもバインディング・サイト社(バーミンガム、B15 1QT、英国)製)を、ALCOR臨床化学分析装置で実行するように構成した。当業者は、任意の適切な自動臨床化学分析装置でこれらのアッセイのパラメータ設定を最適化することができる。
カッパおよびラムダの2つの別々のキャリブレータシリーズを前述と同様に調製した。単量体キャリブレータ範囲を調製するために、第1のキャリブレータセットをアッセイ用緩衝液中で15mMのL-システインとインキュベートした。第2のキャリブレータ(FLCの二量体および単量体形態を含有する天然のキャリブレータ)セットを、L-システインを含まないアッセイ用緩衝液中でインキュベートした後、Freeliteアッセイで標準曲線を作成した。天然カッパFLCキャリブレータおよび単量体カッパFLCキャリブレータのアッセイ検量線を
図5に示す。天然ラムダFLCキャリブレータおよび単量体ラムダFLCキャリブレータのアッセイ検量線を
図8に示す。
【図】
【図】
【図】
【図】
【図】
【図】
【図】
【図】
【国際調査報告】