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特表2024-536338PTPN11阻害剤とEGFR阻害剤を用いた併用療法
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  • 特表-PTPN11阻害剤とEGFR阻害剤を用いた併用療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】PTPN11阻害剤とEGFR阻害剤を用いた併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/513
A61K45/00
A61K31/517
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520531
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022045383
(87)【国際公開番号】W WO2023056015
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,869
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520427136
【氏名又は名称】ナビール ファーマ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】524122602
【氏名又は名称】ブリッジバイオ サービシズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【弁理士】
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】カール ダムコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン リム
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】エリ ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ユイティン スン
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー コール
(72)【発明者】
【氏名】ブルック マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】カースティン シンケビシウス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ スティス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC46
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は対象のがんを治療する方法を提供する。a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;b)治療に有効な量のEGFR阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせ(ただし添え字aとb、Y、Y、ならびにR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に提示されている通りである)を前記対象に投与することを含む前記方法。特に本開示は、固形腫瘍(例えば進行した非小細胞肺がん)を、EGFR阻害剤(オシメルチニブなど)と組み合わせた式(10b)の化合物(すなわち6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オン)を治療に有効な量で用いて治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんを治療する方法であって、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化1】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを前記対象に投与することを含む方法(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C1-4アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルアミノ、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)。
【請求項2】
前記PTPN11阻害剤の選択が、
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
からなる群からなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PTPN11阻害剤が、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2-メチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(2b):
【化3】
によって表わされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTPN11阻害剤が、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(10b):
【化4】
によって表わされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、EGFRのエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの組み合わせを含むEGFR変異を持つ、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、胆管がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部扁平上皮癌、肺がん、膵臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、EGFR阻害剤に対して抵抗性のEGFR陽性がんである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記がんが、EGFR阻害剤に対する内因性抵抗性および/または獲得抵抗性を特徴とするEGFR陽性がんである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが、EGFR阻害剤に対してEGFRに依存した抵抗性、および/またはEGFRとは独立の抵抗性であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記EGFR阻害剤が選択的EGFR阻害剤である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記EGFR阻害剤がEGFR/HER2二重阻害剤である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、イコチニブ、またはラパチニブである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記EGFR阻害剤がオシメルチニブである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんがオシメルチニブに対して抵抗性のEGFR陽性がんである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記がんがエルロチニブに対して抵抗性のEGFR陽性がんである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が以前にPTPN阻害剤で治療されていない、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が以前に式(I)の化合物以外のPTPN11阻害剤で治療されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が以前に式(I)のPTPN11阻害剤で治療されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が以前にEGFR阻害剤で治療されていない、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が以前にEGFR阻害剤で治療されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象がヒトである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を同時に投与する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を、そのPTPN11阻害剤とそのEGFR阻害剤を含む医薬組成物にして投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を逐次的に投与する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記PTPN11阻害剤を、前記EGFR阻害剤を投与する前に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記PTPN11阻害剤を、前記EGFR阻害剤を投与した後に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記PTPN11阻害剤および/または前記EGFR阻害剤を経口投与する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を共同して治療に有効な量で提供する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を相乗的に有効な量で提供する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤のそれぞれを、それぞれ単独で使用するときとは異なる用量で使用する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記PTPN11阻害剤を、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記PTPN11阻害剤を、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記EGFR阻害剤を、単独で使用するときよりも少ない用量で使用する、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記EGFR阻害剤を、単独で使用するときよりも多い用量で使用する、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療が1つ以上の治療サイクルを含み;前記1つ以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;前記PTPN11阻害剤および/または前記EGFR阻害剤を毎日投与する、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
式(I)または(10b)の化合物と前記EGFR阻害剤の投与が、式(I)または(10b)の化合物および/または前記EGFR阻害剤の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
式(I)または(10b)の化合物と前記EGFR阻害剤の投与が、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
DLT評価によって求めた用量制限毒性(DLT)率が約19.7%未満であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸増を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約29.8%超であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量漸減を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
DLT評価によって求めた用量制限毒性率が約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、式(I)または(10b)の化合物の投与が、直前の治療サイクルの後の用量維持を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記治療が用量漸増期間を含み、その用量漸増期間の後、前記治療は用量拡大/最適化期間をさらに含み;式(I)または(10b)の化合物を、用量漸増期間の間に決めた投与計画で投与する、請求項38~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記用量拡大/最適化期間中、式(I)または(10b)の化合物の投与が1回以上の用量調節を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、約80mg~約150mg、100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約3mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、または約300mg~約400mgの1日総用量である、請求項4~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
式(10b)の化合物の治療に有効な前記量が、無塩かつ無水に換算して約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約550mg、または約700mgの1日総用量である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記EGFR阻害剤がオシメルチニブであり、オシメルチニブの治療に有効な前記量が約80mgの1日総用量である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
式(10b)の化合物を経口投与する、および/または1日に1回投与する、請求項4~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
オシメルチニブを経口投与する、および/または1日に1回投与する、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を用いた前記治療が、前記がんまたは固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤を用いた前記治療が前記がんまたは固形腫瘍を安定化させる、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量の請求項1~4のいずれか1項に記載のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項54】
前記EGFR阻害剤が選択的EGFR阻害剤である、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記EGFR阻害剤がEGFR/HER2二重阻害剤である、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、イコチニブ、またはラパチニブである、請求項53~55のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記EGFR阻害剤がオシメルチニブである、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
対象のがんを治療するため、
a)治療に有効な量の請求項1~4のいずれか1項に記載のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
有効な投与のための指示とともに含むキット。
【請求項59】
前記EGFR阻害剤が選択的EGFR阻害剤である、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
前記EGFR阻害剤がEGFR/HER2二重阻害剤である、請求項58に記載のキット。
【請求項61】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、イコチニブ、またはラパチニブである、請求項58~60のいずれか1項に記載のキット。
【請求項62】
前記EGFR阻害剤がオシメルチニブである、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤が同時投与のための製剤にされている、請求項58~62のいずれか1項に記載のキット。
【請求項64】
前記PTPN11阻害剤と前記EGFR阻害剤が逐次投与のための製剤にされている、請求項58~62のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は2021年9月30日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/250,869号の優先権を主張するものであり、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦が資金援助した研究開発のもとでなされた発明の権利に関する宣言
適用なし。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列リスト」、表、またはコンピュータプログラムのリストの付録への参照
適用なし。
【0004】
上皮増殖因子受容体(EGFR)は、受容体のErbBファミリーの1つのメンバーであり、4つの密接に関係した受容体チロシンキナーゼ、すなわちEGFR(ErbB-1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、およびHER4(ErbB4)の1つのサブファミリーである。これらは似たキナーゼドメイン構造と相同性を共有するが、細胞外ドメインとカルボキシ末端尾部が異なる。EGFRは発生の間に極めて重要な役割を果たすとともに、細胞の増殖、生存、および移動の重要な調節因子である。EGFRの(上方調節または増幅として知られる)過剰発現へと至る変異は多くのがんと関係づけられており、その中に含まれるのは、肺の腺癌(40%のケース)、肛門がん、膠芽腫(50%)、および頭頸部の上皮腫瘍(80~100%)である。EGFRががん遺伝子であると特定されたことでEGFRに対する抗がん治療剤であるEGFR阻害剤の開発につながり、その中には肺がんのためのゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、およびイコチニブと、大腸がんのためのセツキシマブとパニツムマブが含まれる。より最近になり、AstraZenecaが第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤であるオシメルチニブを開発した。追加のEGFR阻害剤に含まれるのは、バンデタニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブである。
【0005】
プロテイン-チロシンホスファターゼ非受容体型11(PTPN11、Srcホモロジー-2ホスファターゼ(SHP2)としても知られる)は、PTPN11遺伝子によってコードされる非受容体プロテインチロシンホスファターゼである。SHP2はRTKを媒介とするMAPKシグナル伝達経路において鍵となる役割を果たす。このPTPは、2つのタンデム型Srcホモロジー-2(SH2)ドメイン(ホスホ-チロシン結合ドメインとして機能する)、触媒ドメイン、およびC末端尾部を含有する。基底状態では、このタンパク質は典型的には不活性な自己阻害立体配座で存在し、N末端SH2ドメインが活性部位をブロックする。サイトカインと増殖因子によって媒介されるシグナル伝達、SH2ドメインへのリン酸化されたタンパク質の結合によって刺激されたとき、自己阻害が緩和され、活性部位をPTPN11基質の脱リン酸化に利用できるようになる(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30。KS Grossmann, Adv. Cancer Res. 2010, 106, 53-89。W.Q. Huang et. al. Curr. Cancer Drug Targets 2014, 14, 567-588。C. Gordon et. al. Cancer Metastasis Rev. 2008, 27, 179-192。)。
【0006】
生殖細胞系と体細胞のPTPN11内の変異がいくつかのヒト疾患(ヌーナン症候群とレオパード症候群のほか、若年性骨髄単球性白血病、神経芽腫、骨髄異形成症候群、B細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、黒色腫、急性骨髄性白血病、および乳房、肺、および大腸のがんなどの多くのがんが含まれる)で触媒活性の機能獲得をもたらすことが報告されている(MG Mohl, BG Neel, Curr. Opin. Genetics Dev. 2007, 17, 23-30)。最近の研究により、単一のPTPN11変異がマウスにおいてヌーナン症候群、JMML様骨髄増殖性疾患、および急性白血病を誘導できることが実証された。これら変異はN-SH2ドメインと触媒部位の間の自己阻害を破壊し、基質が酵素の触媒部位に構成的にアクセスすることを可能にする(E. Darian et al, Proteins, 2011, 79, 1573-1588。Z-H Yu et al, JBC, 2013, 288, 10472。W Qiu et al BMC Struct. Biol. 2014, 14, 10)。
【0007】
PTPN11は大半の組織で広く発現しており、多彩な細胞機能(増殖、分化、細胞周期維持、上皮間葉転換(EMT)、分裂促進因子活性化、代謝制御、転写調節、および細胞移動が含まれる)にとって重要なさまざまな細胞シグナル伝達イベントにおいて、多くのシグナル伝達経路(Ras-MAPK、JAK-STAT、またはPI3K-AKT経路が含まれる)を通じて調節の役割を果たす(Tajan, M. et. al. Eur. J. Medical Genetics, 2015, 58, 509-525。Prahallad, A. et. al. Cell Reports, 2015, 12, 1978-1985)。
【0008】
それに加え、PTPN11/SHP2は腫瘍形成の間の免疫回避に関与しているため、SHP2阻害剤はがん患者における免疫応答を促進する可能性があるという証拠が増えつつある(Cancer Res. 2015 Feb 1;75(3):508-18。T Yokosuka T, J Exp Med. 2012, 209(6), 1201。S Amarnath Sci Transl Med. 2011, 3, 111ra120。T Okazaki, PNAS 2001, 98:24, 13866-71)。
【0009】
がんはEGFR阻害剤に対する抵抗性を持つ可能性、または発達させる可能性があるため、がんを治療するために有効で安全な治療剤(組み合わせて使用できる薬剤を含む)が相変わらず必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示により、PTPN11阻害剤(例えば本明細書に記載されている式(I)(式(10b)など)によって表わされる化合物)とEGFR阻害剤の両方を投与することによって疾患と障害(例えばがん)を治療する方法が提供される。
【0011】
第1の側面では、本開示により対象のがんを治療する方法が提供され、この方法は、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化1】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを前記対象に投与することを含む(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は本明細書に示されている通りである)。
【0012】
第2の側面では、本開示により対象の固形腫瘍(例えば進行した非小細胞肺がん)を治療する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象に、
a)治療に有効な量の式(10b):
【化2】
によって表わされる化合物、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせと;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤
を投与することを含む。
【0013】
第3の側面では、本開示により、対象のがんを治療するための医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む(ただし前記PTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0014】
第4の側面では、本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供され、このキットは、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
有効な投与のための指示とともに含む(ただし前記PTPN11阻害剤は、本明細書に定義され記載されている式(I)によって表わされる)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aおよび図1Bは、オシメルチニブと式(10b)の組み合わせを用いた治療がHCC4006ヒト腫瘍細胞系の増殖をインビトロで相乗的に抑制することを示す。図1Aは、実験の終了時にクリスタルバイオレットで染色した代表的なプレートを示す;図1Bは、示されている濃度のオシメルチニブと式(10b)での平均ブリススコアを示す。ヒートマップの中の色と数は、組み合わせ効果が相乗的(ブリススコア>0)であるか、加算的(ブリススコア=0)であるか、拮抗的(ブリススコア<0)であるかを示す。
図2図2Aおよび図2Bは、インビトロでのHCC4006親細胞系とHCC4006-OsiR腫瘍細胞系におけるオシメルチニブの単剤活性を示す。図2Aは、インビトロ3日増殖アッセイを利用したことを示す。図2Bは、インビトロ14日クローン形成アッセイを利用したことを示す。点線は、どこが相対細胞数の50%阻害であるかを示す。
図3図3Aおよび図3Bは、オシメルチニブと式(10b)の組み合わせを用いた治療がHCC4006-OsiRヒト腫瘍細胞系の増殖をインビトロで相乗的に抑制することを示す。図3Aは、実験終了時にクリスタルバイオレットで染色した代表的なプレートを示す。図3Bは、示されている濃度のオシメルチニブと式(10b)での平均ブリススコアを示す。ヒートマップの中の色と数は、組み合わせ効果が、相乗的である(ブリススコア>0)か、加算的である(ブリススコア=0)か、拮抗的である(ブリススコア<0)かを示す。
図4図4は、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで用いた治療が、インビトロでHCC4006-OsiR細胞においてMAPK経路シグネチャ遺伝子DUSP6の転写産物のレベルを低下させることを示す。
図5図5Aおよび図5Bは、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで用いた治療が、忍容される用量で、生体内でHCC827皮下腫瘍の増殖を抑制することを示す。図5Aは、ノギス測定によって隔週でモニタした腫瘍体積を示し;図5Bは、毎日記録した体重を示す。
図6図6Aおよび図6Bは、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで用いた治療の後にノギスによって隔週でモニタした腫瘍体積を示すは、HCC827-ER1腫瘍の増殖(図6A)とNCI-H1875(C797S+)腫瘍の増殖(図6B)を忍容される用量で抑制する。
図7図7は、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで用いた治療が、HCC827-ER1腫瘍においてDUSP6 mRNAのレベルを抑制することを示す。**はp<0.01を表わす。水平な点線は、DUSP6 mRNAのレベルの50%抑制を示す。
図8図8は、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで用いた治療が、HCC827-ER1腫瘍においてMPAS-プラスシグネチャを抑制することを示す。
図9図9は、BOIN設計を利用して実施した試験のためのフローチャートを示す。略号:BOIN=ベイズ最適間隔設計;DLT=用量制限毒性;MTD=最大耐量。注:λe=19.7%とλd=29.8%。実際には6人の患者/コホートであり、DLT率が1/6以下の場合には用量を漸増させ、DLT率が2/6以上の場合には、用量を漸減させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.概要
本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん(固形腫瘍など))を治療するための併用療法が提供される。この方法は、対象に、a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を投与することを含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる(例えば式(10b)によって表わされる化合物))。EGFR阻害剤は、EGFRキナーゼを少なくとも部分的に阻害することができる。EGFR阻害剤として選択的EGFR阻害剤が可能である。その医薬組成物とそのキットも対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するために提供される。
【0017】
II.定義
本明細書では、下記の用語は示されている意味を持つ。
【0018】
「含む(Comprise)」、「含む(include)」、および「持つ」と、これらの派生語は、本明細書では、包括的で数量の制限がない用語として交換可能に使用される。例えば「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、または「持っている」の使用は、含まれる、持つ、または含まれるどのような要素も、この動詞を含有する句の対象によって包含されるのがその要素だけではないことを意味する。
【0019】
値の範囲が開示されていて、「n~n」または「nとnの間」という表記が使用されるとき(ただしnとnは数である)、特に断わらない限り、この表記は、それらの数そのものと、その間の範囲を含むことが想定されている。この範囲として、整数、または末端値の間の連続数が可能であり、末端値が含まれる。例えば範囲「2~6個の炭素」は、炭素が整数単位であるために2、3、4、5、および6個の炭素を含むことが想定されている。例えば1μM、3μM、および任意の数の有効数字までのその間のすべて(例えば1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが想定される範囲「1~3μM(マイクロモル)」と比較されたい。
【0020】
「約」は、本明細書では、この用語が修飾する数値を大まかにすることが想定されており、そのような値が誤差の範囲内で変動することを示す。誤差の範囲(データの図または表に与えられている平均値に対する標準偏差など)が具体的に記載されていないとき、「約」という用語は、記載されている値を包含すると考えられる範囲と、有効数字を考慮してその数字に切り上げまたは切り下げることによって含まれると考えられる範囲も意味すると理解すべきである。
【0021】
「アシル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、または他の任意の部分に付着したカルボニルを意味するは、カルボニルに付着した原子であったは炭素である。「アセチル」基は-C(O)CH基を意味する。「アルキルカルボニル」または「アルカノイル」基は、カルボニル基を通じて親分子部分に付着したアルキル基を意味する。このような基の例に含まれるのは、メチルカルボニルとエチルカルボニルである。アシル基の例に含まれるのは、ホルミル、アルカノイル、およびアロイルである。
【0022】
「アルケニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1つ以上の二重結合を持っていて2~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。ある実施形態では、前記アルケニルは2~6個の炭素原子を含む。「アルケニレン」という用語は、2つ以上の位置で付着した炭素-炭素二重結合系(エテニレン [(-CH=CH-)、(-C::C-)]など)を意味する。適切なアルケニル基の例に含まれるのは、エテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、1,4-ブタジエニルなどである。特に断わらない限り、「アルケニル」という用語に「アルケニレン」基を含めることができる。
【0023】
「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの三重結合を持つとともに、示されている数の炭素原子(すなわちC2-6は2~6個の炭素を意味する)を持つ直鎖炭化水素または分岐炭化水素のいずれかを意味する。アルキニルは任意の数の炭素を含むことができる(C、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C、C3-4、C3-5、C3-6、C、C4-5、C4-6、C、C5-6、およびCなど)。アルキニル基の非限定的な例に含まれるのは、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジイニル、1,4-ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニル、および1,3,5-ヘキサトリイニルである。
【0024】
「アルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキルエーテル基を意味する(ただしアルキルという用語は下に定義する通りである)。適切なアルキルエーテル基の例に含まれるのは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシなどである。
【0025】
「アルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。ある実施形態では、前記アルキルは1~10個の炭素原子を含む。さらなる実施形態では、前記アルキルは1~8個の炭素原子を含む。アルキル基は、本明細書で規定されているように、置換されていないか、置換されている。アルキル基の例に含まれるのは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、オクチル、ノイルなどである。「アルキレン」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、2つ以上の位置で付着した直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素に由来する飽和脂肪族基(メチレン(-CH-)など)を意味する。特に断わらない限り、「アルキル」という用語に「アルキレン」基を含めることができる。
【0026】
「アルキルアミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アミノ基を通じて親分子部分に付着したアルキル基を意味する。適切なアルキルアミノ基はモノアルキル化またはジアルキル化することができ、例えばN-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-エチルメチルアミノなどの基を形成する。
【0027】
「アルキルチオ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキルチオエーテル(R-S-)基を意味する(ただしアルキルという用語は上に定義した通りであり、硫黄は一重または二重に酸化されていることが可能である)。適切なアルキルチオエーテル基の例に含まれるのは、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソ-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、メタンスルホニル、エタンスルフィニルなどである。
【0028】
「アミド」と「カルバモイル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、カルボニル基を通じて親分子部分に付着した下記のアミノ基、またはその逆を意味する。「アミド」基は、本明細書では、「C-アミド」と「N-アミド」基を含む。「C-アミド」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-C(O)N(RR’)基を意味し、RとR’は、本明細書に規定されている通りであるか、具体的に列挙された指定の「R」基によって規定されている通りである。いくつかの実施形態では、「アミド」基に含まれるのは、-C(O)NH、C1-4アルキルアミド、およびジ(C1-4アルキル)アミドである。「C1-4アルキルアミド」という用語は、本明細書では、-C(O)NH(C1-4アルキル)を意味する(ただしC1-4アルキルは本明細書に定義されている通りである)。「N-アミド」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、RC(O)N(R’)-基を意味し、RとR’は、本明細書に規定されている通りであるか、具体的に列挙された指定の「R」基によって規定されている通りである。「アシルアミノ」という用語は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アミノ基を通じて親部分に付着したアシル基を包含する。「アシルアミノ」基の一例はアセチルアミノ(CHC(O)NH-)である。
【0029】
「アミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NRR’を意味し、RとR’は、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルから独立に選択され、そのいずれも、それ自身は置換されていないか、置換されていることが可能である。それに加え、RとR’は合わさってヘテロシクロアルキルを形成することができ、そのどちらかは、置換されていないか、置換されている。
【0030】
「アリール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、1、2、3個の環を含有する炭素環芳香族系を意味し、そのような多環系は互いに縮合している。「アリール」という用語は芳香族基(フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびフェナントリルなど)を包含する。
【0031】
「アリールアルケニル」または「アラルケニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルケニル基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0032】
「アリールアルコキシ」または「アラルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルコキシ基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0033】
「アリールアルキル」または「アラルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキル基を通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0034】
「アリールオキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、オキシを通じて親分子部分に付着したアリール基を意味する。
【0035】
「カルバメート」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、カルバミン酸のエステル(-NHCOO-)を意味し、それは、窒素または酸末端のいずれかからの親分子部分に付着させることができて、本明細書に規定されているように置換されていないか、置換されている。
【0036】
「O-カルバミル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-OC(O)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0037】
「N-カルバミル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、ROC(O)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0038】
「カルボニル」は、本明細書では、単独ではホルミル[-C(O)H]を含み、組み合わせでは-C(O)-基である。
【0039】
「カルボキシル」または「カルボキシ」は、本明細書では、-C(O)OH、またはカルボン酸塩におけるように対応する「カルボン酸塩」アニオンを意味する。「O-カルボキシ」基はRC(O)O-基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。「C-カルボキシ」基は-C(O)OR基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。
【0040】
「シアノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-CNを意味する。
【0041】
「シクロアルキル」または「炭素環」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、飽和または部分的に飽和した単環、二環、または三環のアルキル基を意味し(ただしそれぞれの環部分は3~12個の炭素原子環原子を含有する)、それは場合により、本明細書に規定されているように置換されていないか、置換されているベンゾ縮合環系が可能である。「シクロアルケニル」という用語は、1または2つの二重結合を持つシクロアルキル基を意味する。ある実施形態では、前記シクロアルキル(またはシクロアルケニル)は5~7個の炭素原子を含むことになる。そのような基の例に含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、オクタヒドロナフチル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、アダマンチルなどである。「二環」と「三環」は、本明細書では、縮合環系(デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンなど)と、多環(多中心)の飽和または部分的不飽和型の両方を含むことが想定されている。後者のタイプの異性体の一般的な例は、ビシクロ[1,1,1]ペンタン、ショウノウ、アダマンタン、およびビシクロ[3,2,1]オクタンである。
【0042】
「エステル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、炭素原子の位置で連結された2つの部分を架橋するカルボキシ基を意味する。
【0043】
「エーテル」は、本明細書では、単独または組み合わせで、炭素原子の位置で連結された2つの部分を架橋するオキシ基を意味する。
【0044】
「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0045】
「ハロアルコキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、酸素原子を通じて親分子部分に付着したハロアルキル基を意味する。
【0046】
「ハロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、上に定義した意味を持つアルキル基を意味し、その中の1つ以上の水素がハロゲンで置換されている。具体的に包含されるのは、モノハロアルキル、ジハロアルキル、およびポリハロアルキル基である。一例として、モノハロアルキル基は、この基の中にヨード、ブロモ、クロロ、またはフルオロ原子を持つことができる。ジハロ基とポリハロアルキル基は、2つ以上の同じハロ原子、または異なるハロ基の組み合わせを持つことができる。ハロアルキル基の例に含まれるのは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル、およびジクロロプロピルである。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で付着したハロアルキル基を意味する。例に含まれるのは、フルオロメチレン(-CFH-)、ジフルオロメチレン(-CF-)、クロロメチレン(-CHCl-)などである。
【0047】
「ヘテロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、完全に飽和しているか1~3度の不飽和を含有し、記載されている数の炭素原子と、N、O、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子からなる安定な直鎖または分岐鎖、またはその組み合わせを意味する(ただしN原子とS原子は場合により酸化されていてもよく、Nヘテロ原子は場合により四級化されていてもよい)。ヘテロ原子はヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置することができる。2個までのヘテロ原子が連続していてもよい(例えば-CH-NH-OCHなど)。
【0048】
「ヘテロアリール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、N、O、およびSから選択される少なくとも1個の原子を含有する3~15員の不飽和ヘテロ単環、または縮合した単環、二環、または三環の環系であって、縮合環の少なくとも1つが芳香族であるものを意味する。ある実施形態では、前記ヘテロアリールは1~4個のヘテロ原子を環原子として含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロアリールは1~2個のヘテロ原子を環原子として含む。ある実施形態では、前記ヘテロアリールは5~7個の原子を含む。本用語は、縮合多環基であって、複素環基がアリール環と縮合しているもの、ヘテロアリール環が他のヘテロアリール環と縮合しているもの、ヘテロアリール環がヘテロシクロアルキル環と縮合しているもの、またはヘテロアリール環がシクロアルキル環と縮合しているものも包含する。ヘテロアリール基の例に含まれるのは、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどである。代表的な三環複素環基に含まれるのは、カルバゾリル、ベンズインドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどである。
【0049】
「ヘテロシクロアルキル」と、それと交換可能な「複素環」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、それぞれ、少なくとも1個のヘテロ原子を環原子として含有する飽和、部分的不飽和、または完全不飽和(だが非芳香族)の単環、二環、または三環の複素環基を意味し、その中のそれぞれの前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択することができる。ある実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは1~4個のヘテロ原子を環原子として含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは1~2個のヘテロ原子を環原子として含む。ある実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは3~8個の環原子をそれぞれの環の中に含む。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは3~7個の環原子をそれぞれの環の中に含む。さらに別の実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは5~6個の環原子をそれぞれの環の中に含む。「ヘテロシクロアルキル」と「窒素環」は、スルホン、スルホキシド、第三級窒素環原子のN-オキシド、および炭素環縮合環系とベンゾ縮合環系を含むことが想定されている;それに加え、両方の用語には、複素環基が本明細書に規定されているアリール基、または追加の複素環基に縮合した系も含まれる。複素環基の例に含まれるのは、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどである。複素環基は、具体的に禁止されていない限り、置換されていないか、置換されている。
【0050】
「ヒドラジニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、単結合によって結合された2つのアミノ基、すなわち-N-N-を意味する。
【0051】
「ヒドロキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-OHを意味する。
【0052】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、アルキル基を通じて親分子部分に付着したヒドロキシ基を意味する。
【0053】
「イミノヒドロキシ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、=N(OH)と=N-O-を意味する。
【0054】
「低級アミノ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NRR’を意味し、RとR’は水素と低級アルキルから独立に選択され、そのいずれかは置換されていないか、置換されている。
【0055】
「メルカプチル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、RS-基を意味し、Rは本明細書に規定されている通りである。
【0056】
「ニトロ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-NOを意味する。
【0057】
「オキシ」または「オキサ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-O-を意味する。
【0058】
「オキソ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、=Oを意味する。
【0059】
「ペルハロアルコキシ」は、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を意味する。
【0060】
「ペルハロアルキル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。
【0061】
「環(Ring)」、またはそれと同等の「環(cycle)」は、本明細書において化学構造またはその一部に関して使用されるとき、全原子が共通環構造の原子である基を意味する。環は飽和または不飽和が可能であり(特に断わらない限り、その中に芳香族が含まれる)、3員と9員の間が可能である。環が窒素環である場合には、B、N、O、S、C(O)、S(O)から選択される1個と4個の間のヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含有することができる。具体的に禁止されない限り、環は置換されていないか、置換されている。
【0062】
「スルホン酸塩」、「スルホン酸」、および「スルホン」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、スルホン酸が塩の形成に使用されるので-SOH基とそのアニオンを意味する。
【0063】
「スルファニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S-を意味する。
【0064】
「スルフィニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S(O)-を意味する。
【0065】
「スルホニル」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S(O)-を意味する。
【0066】
「N-スルホンアミド」はRS(=O)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0067】
「S-スルホンアミド」は-S(=O)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0068】
「チア」と「チオ」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-S-基、または酸素が硫黄で置換されたエーテルを意味する。チオ基の酸化誘導体、すなわちスルフィニルとスルホニルは、チアとチオの定義に含まれる。
【0069】
「チオール」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、-SH基を意味する。
【0070】
「チオカルボニル」は、本明細書では、単独ではチオホルミル-C(S)Hを含み、組み合わせでは-C(S)-基である。
【0071】
「N-チオカルバミル」はROC(S)NR’-基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0072】
「O-チオカルバミル」は-OC(S)NRR’、基を意味し、RとR’は本明細書に規定されている通りである。
【0073】
「チオシアナト」は-CNS基を意味する。
【0074】
本明細書の中のどの定義も、他の任意の定義と組み合わせて複合構造基を記述するのに使用できる。慣例により、任意のそのような定義の後続要素は、親部分に付着する要素である。例えば複合基であるアルキルアミドは、アミド基を通じて親分子に付着したアルキル基を表わすと考えられ、アルコキシアルキルという用語は、アルキル基を通じて親分子に付着したアルコキシ基を表わすと考えられる。
【0075】
「結合」が2個の原子または2つの部分の間の共有結合を意味するのは、その結合によって接合された原子がより大きな下部構造の一部と見なされるときである。結合は、特に断わらない限り、単結合、二重結合、または三重結合が可能である。分子の図の中の2個の原子の間の点線は、追加の結合がその位置に存在または不在である可能性があることを示す。
【0076】
「塩」は、本開示の化合物の酸塩または塩基塩を意味する。医薬として許容可能な酸添加塩の実例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩と、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩である。医薬として許容可能な塩基添加塩の例に含まれるのは、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、またはマグネシウム塩、または同様の塩である。医薬として許容可能な塩は非毒性であると理解されている。医薬として許容可能な適切な塩に関する追加情報を見いだすことができるのは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985であり、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0077】
「溶媒和物」は、本明細書に提示されている化合物、またはその塩を意味し、非共有結合分子間力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の溶媒をさらに含む。
【0078】
「水和物」は、水分子との複合体になった化合物を意味する。本開示の化合物は、1/2個の水分子、または1~10個の水分子との複合体になることができる。
【0079】
不斉中心が本明細書に開示されている化合物に存在する。これら中心は、キラル炭素原子のまわりの置換基の立体配置に応じて記号「R」または「S」によって指定される。本開示は、あらゆる立体化学異性体形態(ジアステレオマー、鏡像異性体、およびエピマーの形態が含まれる)のほか、d-異性体とl-異性体、およびこれらを混合したものを包含すると理解すべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含有する市販の出発材料から合成して調製すること、または鏡像異性体生成物の混合物を調製した後に分離すること(ジアステレオマーの混合物に変換した後、分離または再結晶化、クロマトグラフィ技術、キラルクロマトグラフィカラムでの鏡像異性体の直接的分離、または他の任意の適切な方法)により調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市場で入手できるか、さまざまな技術によって製造して分離することができる。それに加え、本明細書に開示されている化合物は幾何異性体として存在することができる。本開示には、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)、およびツザメン(Z)異性体のほか、その適切な混合物が含まれる。それに加え、化合物は互変異性体として存在することができ;あらゆる互変異性体が本開示によって提供される。それに加え、本明細書に開示されている化合物は、非溶媒和物形態のほか、医薬として許容可能な溶媒(水、エタノールなど)との溶媒和物形態で存在することができる。一般に、溶媒和物形態は非溶媒和物形態と同等であると見なされる。
【0080】
「互変異性体」は、本明細書において単独または組み合わせで使用されるとき、素早く相互変換する2つ以上の異性体の1つを意味する。一般に、この相互変換は十分に速いため、個々の互変異性体が別の互変異性体なしの状態で単離されることはない。互変異性体の量の比は、溶媒組成、イオン強度、およびpHのほか、他の溶液パラメータに依存する可能性がある。互変異性体の量の比は、特別な溶液の中と、その溶液中の生体分子結合部位の微小環境の中では異なる可能性がある。互変異性体の例に含まれるのは、ケト/エノール、エナミン/イミン、およびラクタム/ラクチム互変異性体である。互変異性体の追加例には、2-ヒドロキシピリジン/2(1H)-ピリドンと2-アミノピリジン/2(1H)-イミノピリドン互変異性体も含まれる。
【0081】
配座異性体は、本明細書に開示されている化合物として存在する。Rが式:
【化3】
の中のアリールまたはヘテロアリールであるとき、そのアリール基またはヘテロアリール基は、
【化4】
によって表わされるように、ピリミジノン部分に対して異なる立体配置の向きで存在することが可能である。これらの配置は、ピリミジノン部分に対するアリール基またはヘテロアリール基の立体配置に応じて記号「S」または「R」によって指定される。「S」配置と「R」配置の例は国際特許出願第PCT/US2019/045903号の実施例1~20に見いだすことができる(その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている)。式(10b)の化合物は実質的に「R」配置である。
【0082】
「医薬として許容可能な」は、患者の組織と接触させて用いるのに適していて過度な毒性、刺激、およびアレルギー応答がなく、合理的なベネフィット/リスク比であり、想定する用途にとって有効である化合物(塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体など)を意味する。本明細書に開示されている化合物は、本明細書に規定され記載されているように、医薬として許容可能な塩として存在することができる。
【0083】
「併用療法」は、本開示に記載されている治療状態または障害を治療するため2つ以上の治療剤を投与することを意味する。このような投与は、これら治療剤を、例えば、固定された比の活性成分を持つ単一のカプセル、またはそれぞれの活性成分のための複数の別々のカプセルに入れて実質的に同時に共投与することを包含する。それに加え、このような投与は、各タイプの治療剤を逐次的に使用することも包含する。いずれの場合にも、治療計画は、本明細書に記載されている状態または障害の治療において薬の組み合わせの有益な効果を提供することになろう。
【0084】
「PTPN11阻害剤」は、本明細書では、国際特許出願第PCT/US2019/045903に全体が記載されているPTPN11アッセイで測定したとき(例えば実施例21の組み換えヒトPTPN11タンパク質の酵素活性)、PTPN11活性に関して約100マイクロモル(μM)以下、より典型的には約50μM以下のIC50を示す化合物を意味するのに使用される。「IC50」は、酵素の活性を最大値の半分のレベルに低下させる阻害剤(例えばPTPN11)の濃度である。ある実施形態では、化合物はPCT/US2019/045903に開示されているものは、本明細書に記載されているPTPN11アッセイで測定したとき、PTPN11の阻害に関して約10μM以下のIC50を示し;さらなる実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約1μM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約200nM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約100nM以下のIC50を示し;さらに別の実施形態では、化合物はPTPN11の阻害に関して約50nM以下のIC50を示す。ある実施形態では、式(2b)の化合物はPTPN11(例えばPTPN11-E76K変異酵素)の阻害に関して150nM以下のIC50を示す。ある実施形態では、式(10b)の化合物はPTPN11(例えばPTPN11-E76K変異酵素)の阻害に関して50nM以下のIC50を示す。
【0085】
「治療に有効な量」は、特定された疾患または状態の治療または改善に有用であるか、検出可能な治療効果または阻害効果を示すのに有用な化合物または医薬組成物の量を意味する。正確な量は治療の目的によるであろうし、当業者が既知の技術を利用して確認できるであろう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0086】
「治療する」、「治療している」、および「治療」は、損傷、病状、または状態の治療または改善が成功したことの任意の指標(任意の客観的または主観的なパラメータ、例えば弱化すること;寛解すること;症状が減少すること、または損傷、病状、または状態を患者にとってより耐忍できるようにすること;悪化または衰弱の速度を遅延させること;悪化の最終地点での衰弱をより少なくすること;および/または患者の肉体的または精神的なウエルビーイングを改善することが含まれる)を意味する。症状の治療または改善は客観的または主観的なパラメータに基づくことができ;その中には身体検査、神経精神検査、および/または精神医学的評価の結果が含まれる。
【0087】
「投与する」は、化合物またはその1つの形態を経口投与または静脈内投与などによって対象に治療として提供することを意味する。
【0088】
「患者」または「対象」は、本明細書に提示されている医薬組成物の投与によって治療が可能な疾患または状態に苦しんでいるか、なりやすい生物を意味する。非限定的な例に含まれるのは、ヒト、非ヒト霊長類(例えばサル)、ヤギ、ブタ、ヒツジ、乳牛、シカ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、および他の非哺乳類動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は成人である(例えば年齢が少なくとも18歳)。
【0089】
「組成物」は、本明細書では、指定された成分を指定された量で含む生成物のほか、指定された量の指定された成分の組み合わせから直接または間接に生じる任意の生成物を包含することが想定されている。「医薬として許容可能な」とは、基剤、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合していて、そのレシピエントに対して有害ではない必要があることを意味する。
【0090】
「医薬として許容可能な賦形剤」は、対象への活性剤の投与と対象による活性剤の吸収を助ける物質を意味する。本開示で有用な医薬用賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味剤、香料、および着色剤である。他の医薬用賦形剤も本開示において有用である可能性がある。
【0091】
「錠剤」は、コーティングあり、またはなしの固体医薬製剤を意味する。「錠剤」という用語は、1、2、3、またはより多くの層を持つ錠剤も意味し、前記のタイプの錠剤のそれぞれは、コーティングなし、または1つ以上のコーティングありが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の錠剤は、ローラー圧縮によって、または本分野で知られている他の適切な手段によって調製することができる。「錠剤」という用語は、ミニ錠、溶解錠、チュアブル錠、発泡錠、および口腔内崩壊錠も含む。錠剤は、式(I)または(10b)の化合物と1つ以上の医薬用賦形剤(例えば充填剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤など)を含む。オプションとして、被覆剤も含めることができる。錠剤製剤の重量%を計算する目的では、被覆剤の量は計算に含めない。すなわち本明細書に報告されている重量%は被覆されていない錠剤のものである。
【0092】
特に断わらない限り、例えば錠剤製剤の中の式(I)または(10b)の化合物の含量は、式(I)または(10b)の化合物を無塩かつ無水に換算して規格化した重量に基づいて計算される。すなわち式(I)または(10b)の化合物の中の塩および/または水の含量は計算に含まれない。
【0093】
「EGFR阻害剤」は、本明細書では、上皮増殖因子受容体(EGFR)の合成または生物活性を標的とする、低下させる、または阻害する化合物を意味する。EGFR阻害剤は少なくとも部分的にEGFRを阻害することができる。EGFR阻害剤として選択的EGFR阻害剤が可能である。これらの場合には、選択的EGFR阻害剤は、EGFRに対して大きな効力を持つとともに、他の関連するキナーゼに対して低親和性を持つことができる。EGFR阻害剤の例に含まれるのは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、イコチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オシメルチニブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブである。
【0094】
「EGFR陽性がん」は、再構成された、変異した、または増幅されたEGFR遺伝子を持つがんを意味する。
【0095】
「EGFR阻害剤に対して抵抗性のがん」と「EGFR阻害剤に対して抵抗性のEGFR陽性がんであるがん」は、EGFR阻害剤を用いた以前の治療に対して好ましい応答をしないか、その代わりにEGFR阻害剤に対して好ましい応答をした後にぶり返すか再発するがんまたは腫瘍を意味する。
【0096】
「共同して治療に有効な量」は、本明細書では、治療剤が別々に(時間的にずらして、特に順番特異的に)温血動物(特に治療するヒト)に与えられたときに(加算的、しかし好ましくは相乗的な)相互作用(共同治療効果)を示す量を意味する。それが当てはまるかどうかは特に、血中レベルを追跡し、治療するヒトの血液中に両方の化合物が少なくともある時間の間は存在することを示すことによって判断できる。
【0097】
「相乗効果」は、本明細書では、少なくとも2つの治療剤(すなわち本明細書に規定されているPTPN11阻害剤と、本明細書に規定されているEGFR阻害剤)の効果を意味し、それは、投与されたそれぞれの薬それ自体の効果の単なる和よりも大きい。効果として、例えば増殖性疾患(がんなど、特に肺がん(例えば非小細胞肺がん))またはその症状の症状進行遅延が可能である。同様に、「相乗的に有効な量」は、相乗効果を得るのに必要な量を意味する。
【0098】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「1つの(a(n))」は、本明細書の置換基群または「置換基」に関して使用されるときには、少なくとも1つを意味する。例えば化合物が「1つの」アルキルまたはアリールで置換されている場合、その化合物は少なくとも1つのアルキルおよび/または少なくとも1つのアリールで置換されている(ただしそれぞれのアルキルおよび/またはアリールは場合により異なる)。別の一例では、化合物が「1つの」置換基で置換されている場合、その化合物は少なくとも1つの置換基で置換されている(ただしそれぞれの置換基は場合により異なる)。
【0099】
III.併用療法
第1の側面では、本開示により、対象のがんを治療する方法が提供される。この方法は、その対象に、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤
(ただし前記PTPN11阻害剤は式(I):
【化5】
によって表わされる)、またはその医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせを投与することを含む(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0100】
III-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤をセクションIV.化合物に従ってさらに記述する。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態の任意の1つである。
【0101】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2-メチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(2b):
【化6】
によって表わされる。
【0102】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンという名称を持つ式(10b):
【化7】
によって表わされる。
【0103】
式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は医薬として許容可能な塩の形態または中和形態にすることができ、そのそれぞれは場合により、溶媒和物または水和物の形態である。
【0104】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は、医薬として許容可能な塩の形態である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の医薬として許容可能な酸添加塩は、式(10b-HX):
【化8】
によって表わされる(ただしHXは医薬として許容可能な酸添加である)。
【0105】
許容可能な酸添加塩の例に含まれるのは、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、またはリン酸など)に由来する塩のほか、有機酸(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)に由来する塩である。
【0106】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、および式(10b)のいずれか1つの化合物は中性形態である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は中性形態である。
【0107】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、式(10b):
【化9】
に示されている立体化学を持つ6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)の実質的な部分を持つ。
【0108】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は実質的に、式(10b):
【化10】
に示されているようにR立体配置である。
【0109】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、6-((6S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンの名称を持つ式:
【化11】
によって表わされる。
【0110】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、それぞれ式:
【化12】
によって表わされるように、1つ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると少なくとも約95面積%の純度を持つ。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、または約98面積%~約99面積%の純度を持つ。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約98面積%~約99面積%の純度を持つ。
【0112】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、上記の式によって表わされる1つ以上の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体を含み;前記1つ以上の異性体の合計は、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求めると約5面積%以下である。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の対応する鏡像異性体、ジアステレオマー、および/または配座異性体は式(10b)の化合物の中に存在するは以下の受け入れ基準を満たす:鏡像異性体(3R,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)≦1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)≦0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)≦0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)≦0.5面積%(これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる)。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は少なくとも約95面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)<0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、または約98面積%~約99面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4S,R)<1.2面積%;ジアステレオマー(3S,4R,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3R,4R,R)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4S,S)<0.5面積%;ジアステレオマー(3S,4R,R)<0.5面積%;およびジアステレオマー(3R,4S,S)<0.5面積%であり、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は約98面積%~約99面積%の純度を持ち、鏡像異性体(3R,4R,S)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4S,R)は約0.86面積%であり;ジアステレオマー(3S,4R,S)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4R,R)は約0.07面積%であり;ジアステレオマー(3S,4S,S)は検出されず;ジアステレオマー(3S,4R,R)は検出されず;ジアステレオマー(3R,4S,S)は検出されず、これらのそれぞれは、キラル高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求まる。
【0114】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(2b)、式(10b)、および式(10b-HX)のいずれか1つの化合物は溶媒和物および/または水和物の形態である。
【0115】
EGFR阻害剤として、がんの治療における使用について記載されている阻害剤が可能である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はEGFRキナーゼを少なくとも部分的に阻害することができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はEGFR/HER2二重阻害剤である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は選択的EGFR阻害剤である。
【0116】
いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0117】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブである。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;EGFR阻害剤はオシメルチニブである。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(2b)によって表わされ;EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0118】
いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(10b)によって表わされ;EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブである。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(10b)によって表わされ;EGFR阻害剤はオシメルチニブである。いくつかの実施形態では、PTPN11阻害剤は式(10b)によって表わされ;EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0119】
III-2:がん/固形腫瘍
がんとして、PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤の治療に応答する任意のがんが可能である。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR陽性がん(例えばEGFR内の変異を特徴とするがん)である。
【0120】
いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に記載されているように、EGFR内の変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、EGFRのエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、EGFRのエキソン19欠失、および/またはエキソン20挿入を含むEGFR変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんはEGFRエキソン19欠失を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんはEGFRエキソン20挿入を特徴とする。
【0121】
がんは固形腫瘍または液体腫瘍を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは液体腫瘍を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、がんは、胆管がん、脳がん、乳がん、子宮頚がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肺がん、膵臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR変異(EGFRのエキソン19欠失、および/またはエキソン20挿入など)を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、EGFRのエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、がんは、EGFRエキソン19欠失を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFRエキソン20挿入を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、がんは、KRASまたは未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の中の変異を特徴としないNSCLCである。
【0123】
いくつかの実施形態では、がんはEGFR陽性がん(例えばEGFR内の変異を特徴とするがん)である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したEGFR陽性固形腫瘍(例えば胆管がん、脳がん、乳がん、子宮頚がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肺がん、膵臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、進行または転移したEGFR陽性固形腫瘍だが、その固形腫瘍は非小細胞肺がん(NSCLC)以外である。
【0124】
がんは、EGFR阻害剤(例えば選択的EGFR阻害剤またはEGFR/HER2二重阻害剤)の治療に対して抵抗性の任意のがんも可能である。いくつかの実施形態では、がんはEGFR阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR阻害剤に対して抵抗性のEGFR陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とするEGFR陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR阻害剤に対してEGFRに依存した抵抗性、および/またはEGFRとは独立の抵抗性を特徴とする。
【0125】
いくつかの実施形態では、がんは、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんはオシメルチニブに対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんはエルロチニブに対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、がんは、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤に対して抵抗性のEGFR陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、オシメルチニブに対して抵抗性のEGFR陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、エルロチニブに対して抵抗性のEGFR陽性がんである。
【0126】
いくつかの実施形態では、がんは、別の療法(KRASモジュレータ、白金に基づく療法、またはタキサン療法など)に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、KRAS G12C阻害剤(例えばソトラシブまたはアダグラシブ)などのKRAS阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、白金に基づく療法に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、タキサン療法に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。
【0127】
いくつかの実施形態では、がんは、EGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ (JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、オシメルチニブに対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、エルロチニブに対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。
【0128】
固形腫瘍として、PTPN11阻害剤とEGFR阻害剤(例えばオシメルチニブまたはエルロチニブ)の治療に応答する任意の固形腫瘍が可能である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、再構成された、変異した、または増幅された1つ以上の遺伝子をEGFRの中に持つ腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、再構成された、変異した、または増幅された1つ以上の遺伝子をEGFRの中に持つ腫瘍だが、その腫瘍が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中の1つ以上の追加活性化変異を特徴としないことが条件である。
【0129】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR内の変異によって起こる進行または転移した非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR内の変異によって起こる進行または転移した非小細胞肺がん(NSCLC)だが、その腫瘍が、BRAF V600X、PTPN11(SHP2)、またはKRAS Q61Xの中の1つ以上の追加活性化変異を特徴としないことが条件である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はEGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行または転移したEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0130】
固形腫瘍として、EGFR阻害剤(例えばエルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブ)の治療に対して抵抗性の任意の腫瘍も可能である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤に対して抵抗性のEGFR固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤に対して内因性抵抗性および/または獲得抵抗性であることを特徴とするEGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤の治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はオシメルチニブに対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍はエルロチニブに対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤の治療に対して抵抗性のEGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、オシメルチニブに対して抵抗性のEGFR-陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、エルロチニブに対して抵抗性のEGFR陽性固形腫瘍である。
【0131】
実施形態の任意の1つでは、本明細書に記載されているように、標準治療または治癒的療法をがんまたは固形腫瘍の治療に利用できない。
【0132】
III-3:対象
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は医療専門家(医師など)の治療下にある。いくつかの実施形態では、対象はがんと診断されている。いくつかの実施形態では、対象は再発している。いくつかの実施形態では、対象は以前に寛解に至った。いくつかの実施形態では、対象は、単剤療法の治療コースを以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、放射線療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、化学療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、白金に基づく化学療法を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、KRASモジュレータ(例えばKRAS G12C阻害剤などのKRAS阻害剤)の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11阻害剤の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。いくつかの実施形態では、対象は、抗PD-1/PD-L1阻害剤(例えばチェックポイント阻害剤)の投与を含む治療計画を以前に受けたことがある、現在受けている、または受けることになっている。
【0133】
対象は、RAS変異(KRAS、NRAS、および/またはHRASの中の変異など)を持つ進行した(例えば原発、転移、または再発)固形腫瘍を持つことができる。いくつかの実施形態では、対象はKRAS、NRAS、および/またはHRASの中に変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS変異(KRASのG12C、G12D、G12V、G12R、G12A、G12S、G13C、G13D、G13V、G13R、G13A、G13S、またはQ61Xという変異など)を持つ。いくつかの実施形態では、対象は、Q61X変異以外のKRAS、NRAS、および/またはHRASの変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象は、臨床で検証された適切な試験および/またはFDAが承認した適切な試験を利用した分子診断によって評価したとき、KRAS、NRAS、および/またはHRAS変異を持つが、利用可能な標準治療または治癒的療法はない。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載されている治療への受け入れ前の少なくとも二(2)年以内に、臨床で検証された適切な試験および/またはFDAが承認した適切な試験を利用した分子診断によって評価したとき、KRAS、NRAS、および/またはHRASの変異変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象は、臨床で検証された適切な試験および/またはFDAが承認した適切な試験を利用した分子診断によって評価したとき、Q61X変異以外のKRAS、NRAS、および/またはHRASの変異を持つが、利用可能な標準治療または治癒的療法はない。
【0134】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載されているように、EGFR内の1つ以上の変異を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRのエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRのエキソン19欠失および/またはエキソン20挿入を含むEGFR変異を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエキソン19を特徴とするがんを持つ。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエキソン20挿入を特徴とするがんを持つ。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載されているように、EGFR内に変異を持つ(例えば対象はEGFR内の変異を特徴とするがんを持つ)。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRのエキソン19欠失、エキソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、またはこれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRのエキソン19欠失およびまたはエキソン20挿入を含むEGFR変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFRエキソン19欠失を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFRエキソン20挿入を持つ。
【0136】
いくつかの実施形態では、対象はPTPN11内に変異を持つ。いくつかの実施形態では、対象はPTPN11内に変異(E76K変異が含まれる)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はPTPN11内に変異(E76K変異など)を持たない。
【0137】
いくつかの実施形態では、対象は、以前の少なくとも1回の全身療法のライン(白金に基づく二剤併用化学療法および/または抗PD-1/PD-L1療法が含まれ、そのそれぞれが単剤療法として与えられるか、その両方が併用療法として与えられる)のとき、またはその後に進行するか再発した固形腫瘍を持つ。
【0138】
いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)に従う測定可能な疾患を持つ。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を用いた対象の治療が、RECISTに従う疾患状態の測定可能な変化を引き起こす。
【0139】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を投与する前に、対象は、いかなる化学療法または他の治験療法(ホルモン剤(コルチコステロイドが含まれる)、生物学的薬剤、または標的剤など)を利用した治療を3週間以上受けていないか;対象は、治療開始時にホルモン剤(コルチコステロイドが含まれる)、生物学的薬剤、または標的剤から少なくとも5半減期経過している(どちらか長いほう)。
【0140】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を投与する前に、対象は、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、または生物学的療法、標的療法、またはこれらの組み合わせを含むがん療法で以前に治療されていない。
【0141】
いくつかの実施形態では、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、または生物学的療法、標的療法、またはこれらの組み合わせを含むがん療法を受けたことがあるか受けている対象が式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤で治療されるのは、その対象がそのようながん療法(例えば化学療法、ホルモン療法、免疫療法、または生物学的療法、標的療法、またはこれらの組み合わせ)を、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を用いた治療を開始する前の少なくとも約3週間、またはがん療法で使用する薬剤の五(5)半減期(どちらかより長いほう)の期間にわたって中断する場合である。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の追加活性化変異をPTPN11(SHP2)、MEK、またはRAS(例えばNRAS、HRAS、KRAS)(Q61変異など)の中に持たない。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の追加活性化変異をBRAF V600X、PTPN11(SHP2)、および/またはKRAS(例えばKRAS Q61X変異)の中に持たない。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の追加活性化変異をBRAF V600X、PTPN11(SHP2)、および/またはKRAS(例えばKRAS Q61X変異)の中に有する腫瘍を持たない。
【0143】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を投与する前に、対象は、CYP3A4および/またはP-gpの誘導剤または阻害剤(ハーバルサプリメントが含まれる)の強力な、または中程度の誘導剤または阻害剤の1つ以上を以前に摂取したことがないか、摂取中でない。
【0144】
いくつかの実施形態では、対象は、CYP3A4および/またはP-gpの誘導剤または阻害剤(ハーバルサプリメントが含まれる)の強力な、または中程度の誘導剤または阻害剤の1つ以上を摂取したことがあるか、摂取中であるは、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤で治療されるのは、その対象が、そのような治療を、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を用いた治療を開始する前の少なくとも約五(5)半減期の期間と、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤の治療期間中は中断する場合である。
【0145】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤)を投与する前に、対象は、P-gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、および/またはMATE2-Kのトランスポータの既知の基質である薬を以前に摂取したことがないか、摂取中でない。
【0146】
いくつかの実施形態では、対象は、P-gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、および/またはMATE2-Kトランスポータの既知の基質である薬を摂取したことがあるか、摂取中であるは、式(I)または(10b)の化合物で治療されるのは、その対象が、そのような治療を、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を用いた治療を開始する前と、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤の治療期間中は中断する場合である。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせた治療を開始する前の少なくとも約四(4)週間、または介入的臨床研究に用いる薬剤の五(5)半減期のどちらかより短い期間以内前に介入的臨床研究に参加したことがない。
【0148】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する前に、放射線療法または陽子線治療(それに含まれるのは、i)約一(1)週間の期間以内の緩和のための限定された領域の照射、またはii)約四(4)週間の期間以内の骨髄の約30%超への照射、または広い範囲の照射である)を受けたことがない。
【0149】
いくつかの実施形態では、対象が摂取したことがないか、摂取中でないのは、a)式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内前のCYP3A4および/またはP-gpの誘導剤または阻害剤(グレープフルーツジュース、スターフルーツ、またはセビリアオレンジを含有するハーバルサプリメントまたは食品が含まれる)の強力な、または中程度の誘導剤または阻害剤の1つ以上;b)式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内前のCYP3A4、P-gp、多剤と毒素の排出タンパク質(MATE)1、および/またはMATE2-Kトランスポータの既知の基質である薬;および/または式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせる治療を開始する前の約14日間または五(5)半減期の期間のどちらかより長い期間以内前の1つ以上の酸還元剤(プロトンポンプ阻害剤(PPI)またはH2受容体アンタゴニストなど)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、対象は、下に規定する不十分な臓器機能を持たない(十分な血液学的機能、腎臓機能、肝臓機能、および凝固機能であることが含まれる):
血液学
a.絶対好中球カウントが1,500/μL未満;
b.血小板が100,000/μL未満;および
c.2週間以下の輸血、または6週間以下の赤血球生成刺激剤(例えばEpo、Procrit)なしでヘモグロビンが9g/dL未満。
腎臓
d.血清クレアチニンが1.5×ULN超(ただし(測定するか、コッククロフト-ゴールトの式を用いて計算して)クレアチニンクリアランスが40mL以上/分である場合は除く)
肝臓
e.患者がジルベール症候群または溶血性貧血の診断を治験責任医師によって確認された場合には、血清全ビリルビンが1.5×施設内基準値上限(ULN)以上、または3.0×施設内ULN以上;および
f.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)が2.5×ULN超。
凝固
g.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、国際標準化比(INR)またはプロトロンビン時間(PT)が1.5×ULN超;および
h.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたはaPTTが抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、活性化部分トロンボプラスチン時間が1.5×ULN超。
【0151】
いくつかの実施形態では、対象は、測定可能なウイルス量を持つ活性なB型肝炎感染、C型肝炎感染、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を持たない。
【0152】
いくつかの実施形態では、対象は、生命を脅かす病気、医学的症状、活性な制御されない感染、または臓器系機能不全(例えば腹水症、血液凝固障害、または脳症)を持つ持たない。
【0153】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上の心臓関連の疾患または知見を持たない:
a)治療開始前の最後の6ヶ月以内に有意な心血管疾患(例えば脳血管障害、心筋梗塞、または不安定狭心症)の既往歴;
b)臨床的に有意な心疾患(ニューヨーク心臓協会のクラスII以上の心不全が含まれる);
c)治療開始前の過去12ヶ月以内に左室駆出率(LVEF)が50%未満の前歴;
d)提供されたECG機械を用いた3つの心電図(ECG)からの平均として導出した安静時補正QT間隔(QTc)が470ミリ秒超;および/または
e)安静時ECGのリズム、伝導、または形態における臨床的に有意なあらゆる異常(例えば第3度心ブロック、モビッツ2型心ブロック、心室性不整脈、制御されない心房細動)。
【0154】
いくつかの実施形態では、対象は、進行中であるか、能動的な治療を必要とする追加の悪性腫瘍を持たない(ただしその追加の悪性腫瘍は、皮膚の基底細胞癌、治癒する可能性がある療法を受けた皮膚の扁平上皮癌、または上皮内子宮頸がんを含む)。
【0155】
いくつかの実施形態では、対象は、過去3年以内に追加の浸潤性悪性腫瘍を診断されたことがない(ただしその追加の浸潤性悪性腫瘍は、治癒的治療をされた非黒色腫皮膚がん、表在性尿路上皮癌、上皮内子宮頸がん、または治癒的治療をされていて式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療のコースの間に再発に関して治療を必要とすることが予想されない他の任意の悪性腫瘍以外である)。
【0156】
いくつかの実施形態では、対象は、非脳腫瘍からの1つ以上の未治療脳転移を持たない。
【0157】
いくつかの実施形態では、対象は、原発中枢神経系(CNS)腫瘍、活性なCNS転移、および/または癌性髄膜炎を持たない。いくつかの実施形態では、対象は原発中枢神経系(CNS)腫瘍を持たない。いくつかの実施形態では、対象は、活性なCNS転移、および/または癌性髄膜炎を持たない。
【0158】
いくつかの実施形態では、対象が脳転移を持っていて式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤で治療されるのは、i)その脳転移が安定であり(式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を投与する前の少なくとも4週間にわたってイメージングにより進行の証拠がなく、あらゆる神経症状がベースラインに戻っており);ii)対象が、新たな、または拡大する脳転移の証拠を持たず;iii)対象が、式(I)または(10b)の化合物と(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤を投与する前の前の少なくとも7日間にわたってステロイドおよび/または抗癲癇薬を使用していない場合だが、その対象が癌性髄膜炎を持たないことが条件である。
【0159】
いくつかの実施形態では、脳転移が切除されているか、式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療を開始する(例えばサイクル1の1日目)少なくとも4週間前に終了する放射線療法を受けた対象が適格だが、その対象が治療の開始前に以下の基準のすべてを満たすことが条件である:a)2以下のCNS治療グレードに関係する残留神経症状;b)適用可能な場合には、サイクル1の1日目の前に少なくとも2週間にわたって毎日安定な用量または減らしていく用量の10mg以下のプレドニゾン(または換算)を投与された;およびc)サイクル1の1日目の前4週間以内の追跡磁気共鳴イメージング(MRI)が新たな病巣の出現を示さない。
【0160】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療への登録の前4週間以内に大きな外科手術を受けたことがない(ただしその外科手術または手続きは、末梢挿入式中心ラインカテーテル留置、胸腔穿刺、穿刺、生検、または膿瘍ドレナージ以外である)。
【0161】
いくつかの実施形態では、対象は、どの組み合わせをその対象が投与される可能性があるかに応じ、EGFR阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物に対して、EGFR阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物の活性または不活性な賦形剤に対して、またはEGFR阻害剤、または式(I)または(10b)の化合物と似た化学構造またはクラスの薬に対して過敏の前歴を持たない。
【0162】
いくつかの実施形態では、対象はPTPN11阻害剤(例えばSHP2阻害剤)を用いて以前に治療されていない(ただしそのPTPN11阻害剤は式(I)または(10b)の化合物以外である)。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、およびERAS601からなる群から選択されるPTPN11阻害剤を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、ERAS601、および式(I)または(10b)の化合物のいずれか1つを含むSHP2阻害剤を用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物を用いて以前に治療されたことがある。
【0163】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤(例えばオシメルチニブまたはエルロチニブ)を用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、オシメルチニブまたはエルロチニブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、オシメルチニブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、エルロチニブを用いて以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤(例えばオシメルチニブまたはエルロチニブ)を用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、オシメルチニブまたはエルロチニブを用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、オシメルチニブを用いて以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、エルロチニブを用いて以前に治療されたことがある。
【0164】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物の吸収を不可能にする可能性のある胃腸病(例えば胃切除後、短腸症候群、制御されないクローン病、絨毛萎縮を伴うセリアック病、または慢性胃炎)を持たない。
【0165】
いくつかの実施形態では、対象は透析を受けていない。
【0166】
いくつかの実施形態では、対象は同種異系骨髄移植の前歴を持たない。
【0167】
式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療の利益を受ける可能性のある対象(EGFR阻害剤と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究に登録された対象など)に関するさらなる選択基準と除外基準が実施例4に記載されている。
【0168】
いくつかの実施形態では、対象は、実施例4に記載されている選択基準1)~7)のすべてを満たす。いくつかの実施形態では、対象は実施例4に記載されている選択基準1)~7)のすべてを満たすが、その対象は実施例4に記載されている除外基準1)~19)のどの1つも満たさない。
【0169】
III-4:治療サイクルと用量調節
式(I)または(10b)の化合物をEGFR阻害剤と組み合わせて用いる治療は、1回以上の治療サイクル(例えば少なくとも1、2、3回、またはより多数回の治療サイクル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療は、1回以上の治療サイクル(例えば少なくとも1、2、3回、またはより多数回の治療サイクル)を含む。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも2、3回、またはより多数回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は2~3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は3回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、治療は4回以上の治療サイクルを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;式(I)または(10b)の化合物が毎日投与される。いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのそれぞれは約28日間の継続期間を持ち;EGFR阻害剤が毎日投与される。いくつかの実施形態では、1回以上の治療サイクルのぞれぞれは約28日間の継続期間を持ち;式(I)または(10b)の化合物が毎日投与されるとともに;EGFR阻害剤が毎日投与される。
【0171】
治療は用量漸増期間を含み、その間には、直前の治療サイクルの後に、式(I)または(10b)の化合物またはEGFR阻害剤の用量を調節すること(例えば用量漸増または用量漸減)または維持することができる。用量調節は、少なくとも一部が安全性評価(例えば用量制限毒性(DLT)評価)に基づくことができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、対象は、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を用いた治療を第1の化合物用量レベルと第1のEGFR阻害剤用量レベルで開始し、その後、第2の化合物用量レベルと第2のEGFR阻害剤用量レベルで治療される(ただし第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルとは異なる、および/または第2のEGFR阻害剤用量レベルは第1のEGFR阻害剤用量レベルとは異なる)。いくつかの実施形態では、第2のEGFR阻害剤用量レベルは第1のEGFR阻害剤用量レベルよりも低い。いくつかの実施形態では、第2のEGFR阻害剤用量レベルは第1のEGFR阻害剤用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態では、第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルよりも低い。いくつかの実施形態では、第2の化合物用量レベルは第1の化合物用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、EGFR阻害剤および/または式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)、用量維持、または用量漸減(例えば用量減少)を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、EGFR阻害剤の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、EGFR阻害剤の1回以上の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、EGFR阻害剤の1回以上の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸減(例えば用量減少)を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)を含む。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、EGFR阻害剤および/または式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増(例えば用量増加)、用量維持、または用量漸減(例えば用量減少)を含み、そのそれぞれは、(例えば対象のコホートに関する)安全性または用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を式(I)または(10b)の化合物と組み合わせた投与は、式(I)または(10b)の化合物の1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含み、そのそれぞれは、実施例4と図9に記載されているように、用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。
【0173】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、直前の治療サイクルの後の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性(DLT)率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約19.7%未満であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量漸増を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、直前の治療サイクルの後の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると例えば約29.8%超であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量維持を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、直前の治療サイクルの後の用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、第1の治療サイクルの後の第2の治療サイクルにおける用量維持を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量制限毒性率が(例えば対象のコホートに関する)DLT評価によって求めると約21.9%~約29.8%の範囲であるとき、第2の治療サイクルの後の第3の治療サイクルにおける用量維持を含む。
【0176】
治療は用量漸増期間を含んでおり、その間には、直前の治療サイクルの後にEGFR阻害剤の用量を調節(例えば用量漸増または用量漸減)または維持することができる。用量調節は少なくとも一部が安全性評価(例えば用量制限毒性(DLT)評価)に基づくことができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤の投与は1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含み、そのそれぞれは用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、EGFR阻害剤の投与は1回以上の用量漸増、用量維持、または用量漸減を含み、そのそれぞれは用量制限毒性(DLT)評価によって判断される。
【0177】
用量漸増期間の後、治療は用量拡大/最適化期間をさらに含む。用量拡大/最適化期間のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物が、用量漸増期間の間に決定された投与計画(例えば投与計画1または投与計画2)で投与される。
【0178】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は1回以上の用量調節を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量拡大/最適化期間中の1回以上の用量調節を含む。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の投与は、用量拡大/最適化期間中の1回以上の用量調節を含み;その1回以上の用量調節は、安全審査委員会(SRC)によって安全性評価に従って判断される。
【0179】
本明細書に記載されている実施形態の任意の1つでは、1日総用量の中のEGFR阻害剤は調節されない(例えばいかなる用量漸増および/または用量漸減も治療中は許されない)。
【0180】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物および/またはEGFR阻害剤の投与の調節、遅延、および中止は実施例4の基準にさらに基づく。
【0181】
III-5:治療に有効な量/投与
式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、共同して治療に有効な量または相乗的に有効な量で提供すること、またはそのそれぞれを、それぞれ単独で使用するときとは異なる用量で使用することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、共同して治療に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は相乗的に有効な量で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物および/またはEGFR阻害剤は、(例えば単剤療法治療におけるように)単独で使用されるときとは異なる用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、それぞれが単独で使用されるときとは異なる用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、それぞれが単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、単独で使用されるときよりも少ない用量で使用される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、単独で使用されるときよりも多い用量で使用される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、単独で使用されるときよりも多い用量で使用される。
【0182】
式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、本明細書に規定され記載されているように、同時に、または逐次的に投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を同時に投与する。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤は、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を含む医薬組成物として投与する。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を逐次的に投与する。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を投与する前に式(I)または(10b)の化合物を投与する。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤を投与した後に式(I)または(10b)の化合物を投与する。
【0183】
式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量として、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量が可能である。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、または約300mg~約400mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0184】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg、約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(I)または(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0185】
式(10b)の化合物の治療に有効な量として、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量が可能である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、または約80mg~約150mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0186】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。
【0187】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、または約1000mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約550mg、または約700mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約150mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約400mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約550mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約700mgの1日総用量である。
【0188】
(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤の治療に有効な量として、EGFR阻害剤約2000mg以下の1日総用量が可能である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤の治療に有効な量は約2000mg以下の1日総用量である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤の治療に有効な量は、約10mg~約2000mg、約10mg~約1500mg、約10mg~約1200mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約960mg、約10mg~約840mg、約10mg~約800mg、約10mg~約720mg、約10mg~約600mg、約10mg~約480mg、約10mg~約360mg、約10mg~約300mg、約10mg~約240mg、約10mg~約150mg、約100mg~約2000mg、約100mg~約1500mg、約100mg~約1200mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約960mg、約100mg~約840mg、約100mg~約800mg、約100mg~約720mg、約100mg~約600mg、約100mg~約480mg、約100mg~約360mg、約100mg~約300mg、約100mg~約240mg、約100mg~約150mg、約200mg~約2000mg、約200mg~約1500mg、約200mg~約1200mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約960mg、約200mg~約840mg、約200mg~約800mg、約200mg~約720mg、約200mg~約600mg、約200mg~約480mg、約200mg~約360mg、約200mg~約300mg、約200mg~約240mg、約300mg~約2000mg、約300mg~約1500mg、約300mg~約1200mg、約300mg~約960mg、約300mg~約840mg、約300mg~約720mg、約300mg~約600mg、約300mg~約480mg、約300mg~約360mg、約400mg~約2000mg、約400mg~約1500mg、約400mg~約1200mg、約400mg~約960mg、約400mg~約840mg、約400mg~約720mg、約400mg~約600mg、約400mg~約480mg、約500mg~約2000mg、約500mg~約1500mg、約500mg~約1200mg、約500mg~約960mg、約500mg~約840mg、約500mg~約720mg、約500mg~約600mg、約600mg~約2000mg、約600mg~約1500mg、約600mg~約1200mg、約600mg~約960mg、約600mg~約840mg、約600mg~約720mg、または約600mg~約1200mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤の治療に有効な量は、約100mg、120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約240mg、約250mg、約300mg、約350mg、約360mg、約400mg、約450mg、約480mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約720mg、約750mg、約800mg、約840mg、約850mg、約900mg、約950mg、約960mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、または約1200mgの1日総用量である。
【0189】
いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤(例えばオシメルチニブ)の治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤(例えば エルロチニブ)の治療に有効な量は約100mgまたは約150mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤(例えばゲフィチニブ)の治療に有効な量は約250mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤(例えばネラチニブ)の治療に有効な量は約240mgの1日総用量である。
【0190】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約2000mg以下の1日総用量であり;EGFR阻害剤の治療に有効な量は、約10mg~約2000mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量であり;EGFR阻害剤の治療に有効な量は約10mg~約2000mgである。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約550mg~約700mg、またはその中の任意の有用な範囲の1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。
【0191】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mg、約400mg、または約550mgの1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約250mgの1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量の治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約400mgの1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量の治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物の治療に有効な量は、無塩かつ無水に換算して約550mgの1日総用量であり;オシメルチニブの治療に有効な量の治療に有効な量は約80mgの1日総用量である。
【0192】
一般に、式(I)または(10b)の化合物は経口投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態では、錠剤製剤の中の式(10b)の化合物は経口投与される。
【0193】
一般に、本明細書に規定され記載されているEGFR阻害剤は経口投与することができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は経口投与される。いくつかの実施形態では、オシメルチニブは経口投与される。
【0194】
一般に、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回または複数回(例えば2、3、4、またはより多数回)投与することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回、2回、3回、または4回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合は1日に1回、2回、3回、または4回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物はは1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に2回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物はは2日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、4日間投与と3日間休み(例えば化合物は4日連続して投与された後、3日連続して投与されない)、5日間投与と2日間休み、2日間投与と5日間休み、1週間投与と1週間休み、2週間投与と1週間休み、3週間投与と1週間休み、または同様のスケジュールで投与される。
【0195】
一般に、EGFR阻害剤は1日に1回、2回、または複数回(例えば2、3、4、またはより多数回)投与することができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、オシメルチニブは1日に1回投与される。
【0196】
いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤はそれぞれ経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とEGFR阻害剤はそれぞれ経口投与される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は1日に1回投与され;EGFR阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;EGFR阻害剤は1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与され;オシメルチニブは1日に1回投与される。
【0197】
式(I)または(10b)の化合物は、1つ以上の製剤濃度の経口剤型にすることができ、その中では、式(I)または(10b)の化合物が、無塩かつ無水に換算して少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、または500mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、経口剤型は、1つ以上の製剤濃度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、または5~100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)または(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mg、50mg、または100mgの量で各錠剤の中に存在する。
【0198】
式(10b)の化合物は1つ以上の製剤濃度の経口剤型にすることができ、その中では、式(10b)の化合物が、無塩かつ無水に換算して少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、または500mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、経口剤型は、1つ以上の製剤濃度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、または5~100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mg、50mg、または100mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約30mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約50mgの量で各錠剤の中に存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、無塩かつ無水に換算して約100mgの量で各錠剤の中に存在する。
【0199】
(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤は、投与用量が例えば40または80mgの経口剤型にすることができる。いくつかの実施形態では、(例えば本明細書に記載されている)EGFR阻害剤は、投与用量が例えば40または80mgの経口剤型である。いくつかの実施形態では、オシメルチニブは投与用量が約80mgの経口剤型である。
【0200】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、式(10b)の化合物約2000mg以下の1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約350mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約450mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約550mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約650mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約100mg~約700mg、約150mg~約700mg、約200mg~約700mg、約250mg~約700mg、約300mg~約700mg、約350mg~約700mg、約400mg~約700mg、約450mg~約700mg、約500mg~約700mg、約550mg~約700mg、約100mg~約550mg、約150mg~約550mg、約200mg~約550mg、約250mg~約550mg、約300mg~約550mg、約350mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、約450mg~約550mg、約100mg~約400mg、約150mg~約400mg、約200mg~約400mg、約250mg~約400mg、約300mg~約400mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供する。
【0201】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、式(10b)の化合物約2000mg以下の1日総用量を提供し;EGFR阻害剤は1日に1回投与されて、約10mg~約2000mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約100mg~約2000mg、約150mg~約1000mg、約250mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約250mg~約700mg、約250mg~約550mg、約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;EGFR阻害剤は1日に1回投与されて、約10mg~約2000mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg~約400mg、約400mg~約550mg、または約550mg~約700mgの1日総用量を提供し;オシメルチニブは1日に1回投与されて約80mgの1日総用量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は1日に1回投与されて、無塩かつ無水に換算して、式(10b)の化合物約250mg、約400mg、約550mgの1日総用量を提供し;オシメルチニブは1日に1回投与されて約80mgの1日総用量を提供する。
【0202】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とEGFR阻害剤はそれぞれ、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物とオシメルチニブはそれぞれ、本明細書に記載されているように、1回以上の治療サイクルのそれぞれの間に1日に1回投与される。
【0203】
一般に、式(10b)の化合物は、対象に食事抜きで投与することが推奨される(例えば一晩(最低8時間)絶食した後に用量を摂取し、その後2時間絶食)。対象は、投与の前と後の一(1)時間の間を除いて水を飲むことが許され、対象は投与時に水(例えば240mL)を与えられる。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は対象に、投与前の少なくとも約8時間と投与後の少なくとも約2時間は食事抜きにして投与される。
【0204】
EGFR阻害剤は、対象に食事ありまたは抜きで投与することを推奨できる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は対象に食事ありで投与される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、投与前の少なくとも約8時間と投与後の少なくとも約2時間は食事抜きで対象に投与される。
【0205】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物を投与してから約5~約60分後にEGFR阻害剤を1日に1回投与する。
【0206】
III-6:有効性
PTPN阻害剤(例えば式(10b)によって表わされる化合物)をEGFR阻害剤と組み合わせた臨床研究を実施し、この組み合わせが対象のがん(例えば固形腫瘍を含むがん)を縮小または安定化させることの安全性、忍容性、および有効性を評価することができる。いくつかの実施形態では、対象は非小細胞肺がん(NSCLC)を含む固形腫瘍を持つ。いくつかの実施形態では、対象は非小細胞肺がん(NSCLC)を持つ。いくつかの実施形態では、対象はEGFR変異を特徴とするNSCLCを持つ。
【0207】
さまざまな実施形態では、対象は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも21ヶ月、または少なくとも23ヶ月、例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、21ヶ月、または24ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも1ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも3ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも6ヶ月にわたって前記療法を投与される。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも8ヶ月にわたって前記療法を投与される。
【0208】
対象は前記療法に応答することができ、それは固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)1.1プロトコルによって判断される少なくとも安定な疾患(SD)によって測定される(Eisenhauer, et al., Eur J Cancer; 2009; 45(2):228-247)。RECIST v1.1は下記の実施例に詳細に論じられている。少なくとも安定な疾患は、安定な疾患、部分奏功(PR)を示した疾患、または完全奏功(CR)を示した疾患である(すなわち「少なくともSD」=SD+PR+CRであり、しばしば疾患制御と呼ばれる)。さまざまな実施形態では、安定な疾患は、部分奏功(PR)と認定される十分な縮小でも、進行疾患(PD)と認定される十分な増加でもない。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも部分奏功を示す(すなわち「少なくともPR」=PR+CRであり、しばしば客観的奏功と呼ばれる)。
【0209】
応答は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制または減少、標的または腫瘍病巣の減少、進行までの時間遅延、新たな腫瘍または病巣の不在、新たな腫瘍形成の減少、生存率または無増悪生存率(PFS)の増加、および無転移のうちの1つ以上によって測定することができる。さまざまな実施形態では、対象の疾患進行は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X線、超音波、またはこれらのいくつかの組み合わせを利用して対象を評価することにより、腫瘍のサイズ、腫瘍の病巣、または新たな腫瘍または病巣の形成を測定することによって評価することができる。
【0210】
無増悪生存(PFS)はRECIST 1.1プロトコルに記載されているようにして評価することができる。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも1ヶ月のPFSを示す。さまざまな実施形態では、対象は少なくとも3ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は少なくとも6ヶ月のPFSを示す。
【0211】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のEGFR阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍を縮小させること、または実質的に排除することができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍を実質的に消失させる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれよりも多く減らす。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約90%、約70%~約80%、約80%~約90%の範囲、またはその中の任意の範囲減らす。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らす。
【0212】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のEGFR阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍を安定化させることができる。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の治療に有効な量は、固形腫瘍を安定化させる。
【0213】
治療に有効な量の式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量のEGFR阻害剤と組み合わせた投与は、対象のがんまたは固形腫瘍の縮小または安定化をある期間(例えば1~12ヶ月)にわたって維持することができる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害剤と組み合わせた式(I)または(10b)の化合物を治療に有効な量で用いると少なくとも約1ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害剤と組み合わせた式(10b)の化合物を治療に有効な量で用いると少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、約1~約12ヶ月、約1~約6ヶ月、約1~約3ヶ月、または約1~約2ヶ月の期間にわたって縮小または安定化する。
【0214】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上の試験によってさらに評価されて全体評価(血漿の薬物動態および/または薬力学のプロファイルが含まれる)が提供される。
【0215】
いくつかの実施形態では、対象は1つ以上のバイオマーカーを評価されて、前記1つ以上のバイオマーカーと抗腫瘍応答の相関が明らかにされる。
【0216】
IV.化合物
本開示により、セクションIII:併用療法に記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療する方法で使用するための、式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤、セクションV:組成物に記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するための医薬組成物;およびセクションVI:キットに記載されているように、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供される。PTPN11阻害剤は、WO2020/033828に規定され記載されている通りである(その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれている)。
【0217】
PTPN11阻害剤は、式(I):
【化13】
によって表わされるか、その医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、または組み合わせである(ただし
添え字aは0または1であり;
添え字bは0または1であり;
は直接的結合またはCR1718であり;
は、C1-4アルキル、アミノ、C1-4アルキルC(O)O-、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から選択され;
は、C6-10アリール、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、および5~10員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;Rの前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;
、R、R10、およびR11は、水素、C1-4アルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
、R、R、およびRは、水素、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、ハロ、およびC1-4アルキルアミノからなる群からそれぞれ独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~5個の基で置換されている)からなる群から選択され;
あるいはRとRは、その両方が結合する炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される0~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ3~7員の飽和環または不飽和環を形成し;添え字mは0、1、または2であり;RとRによって形成される前記の飽和環または不飽和環は、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうちの任意の2つの基は、N、O、およびSから選択される0~2個のヘテロ原子を環頂点として持つ5~6員の環を形成することができ;
、R、R、R、およびR10のうちの任意の2つの基は、直接的結合、または1または2個の原子炭素架橋を形成することができ;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、-NH-NHR19、-NHR19、-OR19、-NHC(O)R19、-NHC(O)NHR19、-NHS(O)NHR19、-NHS(O)19、-C(O)OR19、-C(O)NR1920、-C(O)NH(CH)OH、-C(O)NH(CH)21、-C(O)R21、-NH、-OH、-S(O)NR1920、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)、およびヘテロアリール(N、O、S、およびPから選択される1~5個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;添え字qは0~6の整数であり;R13のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されており;
14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている)からなる群からそれぞれ独立に選択され;
17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択され;
19とR20は、水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
それぞれのR21は、水素、-OH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0218】
式(I)のいくつかの実施形態では、Yは直接的結合である。いくつかの実施形態では、YはCR1718である。いくつかの実施形態では、R17とR18は、水素、C1-4アルキル、およびCFからなる群からそれぞれ独立に選択される。いくつかの実施形態では、R17とR18はそれぞれ独立に水素またはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、Yは-CHである。
【0219】
式(I)のいくつかの実施形態では、YはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、Yはメチルである。
【0220】
いくつかの実施形態では、化合物は式(Ia):
【化14】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0221】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(Ib):
【化15】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0222】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(Ic):
【化16】
によって表わされる(ただし添え字aとb、Y、Y、およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0223】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字aとbはそれぞれ1である。
【0224】
(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、C3-8シクロアルキル、3または6員のヘテロシクリル(N、O、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子を環頂点として持つ)からなる群から選択され;その中のヘテロシクリルとシクロアルキルは、C1-4アルキル、-OH、-NH、-OR21、ハロ、シアノ、およびオキソからなる群から独立に選択される0~3個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、およびC1-6ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、およびC1-4ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、-CHOH、CFOH、および-CHFOHからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、Cl、Br、メチル、およびCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は水素である。いくつかの実施形態では、R13はClである。いくつかの実施形態では、R13はBrである。いくつかの実施形態では、R13はメチルである。いくつかの実施形態では、R13はCFである。
【0225】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されている。
【0226】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群から独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;R14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0227】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールと、5~9員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子基を環頂点として持つ)からなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、NR15C(O)R14、NR15C(O)OR14、NR14C(O)NR1516、NR15S(O)R14、NR15S(O)14、C(O)NR1516、S(O)NR1516、S(O)NR1516、C(O)R14、C(O)OR14、OR14、SR14、S(O)R14、およびS(O)14からなる群からそれぞれ独立に選択される1~5個のR12基で置換されており;R14、R15、およびR16は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0228】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されている。
【0229】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、アミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0230】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、水素、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-10アリール、および5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0231】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、C6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0232】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、C6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0233】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0234】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0235】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0236】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミドとC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。
【0237】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されている。
【0238】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R10、およびR11は、独立に水素またはC1-4アルキルである。ある実施形態では、R、R、R10、およびR11はそれぞれ水素である。
【0239】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から独立に選択される。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、独立に水素またはC1-4アルキルである。ある実施形態では、R、R、R、およびRはそれぞれ水素である。
【0240】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、C(O)、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子または基を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R、R、R、およびRは、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、C3-6シクロアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から独立に選択される。
【0241】
式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11はそれぞれ水素である。
【0242】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(II):
【化17】
によって表わされる(ただしR、R、R、およびR13は、本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0243】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、アミド、シアノ、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1~3個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。
【0244】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびメチルアミノからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RはアミノまたはC1-4アミノアルキルである。ある実施形態では、Rは、アミノ、アミノメチル、またはメチルアミノである。ある実施形態では、Rはアミノまたはアミノメチルである。ある実施形態では、Rはアミノである。ある実施形態では、Rはアミノメチルである。
【0245】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5~6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の基で置換されている)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、またはC1-4ヒドロキシアルキルである。ある実施形態では、RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはメチルである。ある実施形態では、Rはエチルである。
【0246】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RはC1-4アミノアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されている)からなる群から選択される。
【0247】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。
【0248】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシ)からなる群から独立に選択される1~3個の基で置換されている)。
【0249】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択される。
【0250】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4ヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはヒドロキシメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはエチルである。
【0251】
上記の実施形態のいずれでも、Rのアミドとして特に-C(O)NHが可能である。
【0252】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0253】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0254】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和環を形成する。
【0255】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和環を形成する。
【0256】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、NとOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和環を形成する。
【0257】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0258】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員のシクロアルキル環を形成する。
【0259】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、アミド、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリール(そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている)からなる群から選択される。
【0260】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;Rはアミノまたはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4ヒドロキシアルキルからなる群から選択される。
【0261】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0262】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0263】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0264】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;Rは、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;Rは、水素、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、アミド、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されている。
【0265】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;Rはアミノまたはアミノメチルであり;Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4ヒドロキシアルキルからなる群から選択される。
【0266】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、O、およびS(O)から独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0267】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、N、C(O)、およびOから独立に選択される1~3個のヘテロ原子または基を環頂点として持つとともに、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された4~6員の飽和または不飽和の環を形成する。
【0268】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、または5~6員のヘテロアリール基(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12基で置換されており;RとRは、その両方が付着している炭素原子と合わさって、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、C-アルキル、C-アルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換された3~7員のシクロアルキル環を形成する。
【0269】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されており(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)、いくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されている(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。いくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり;置換されていないか、1、2、または3個のR12で置換されている(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0270】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0271】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、および1,2,4-トリアジニルからなる群から選択され;置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0272】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、フェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0273】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される1、2、または3個のR12で置換されている。
【0274】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはフェニルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0275】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rはピリジルであり、置換されていないか、1~3個のR12で置換されており、そのそれぞれは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0276】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化18】
からなる群からなされる(ただしそれぞれのR12は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0277】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化19】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される(ただしR14は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0278】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化20】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択される。
【0279】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化21】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0280】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化22】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0281】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの選択は、
【化23】
からなる群からなされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。
【0282】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。
【0283】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化24】
からなる群から独立に選択される。
【0284】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは、
【化25】
からなる群から選択され;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アミノアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される(ただしR14は本明細書に規定され記載されている通りである)。
【0285】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、
【化26】
からなる群から選択される。
【0286】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化27】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12はClである。
【0287】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化28】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は独立にClまたはBrである。
【0288】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14はC6-10アリールと5~10員のヘテロアリールからなる群から独立に選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0289】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される1つ以上の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は独立に、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。
【0290】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、-C(O)NHMeで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14はフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、メチルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はN-メチルピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はピラゾリルである。
【0291】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化29】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アミノアルキルからなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0292】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化30】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、または5~6員のヘテロアリール(N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を環頂点として持つ)であり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0293】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化31】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14はフェニルまたはピラゾリルからなる群から選択され、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されている。
【0294】
式(I)、(Ia)~(Ic)、および(II)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R
【化32】
によって表わされ;それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニル、ピラゾリル、およびC1-4アルキルで置換されたピラゾリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択され;R14は、フェニル、MeNHC(O)-フェニル、ピラゾリル、およびN-メチルピラゾリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12はClであり;R14は、フェニル、MeNHC(O)-フェニル、ピラゾリル、およびN-メチルピラゾリルからなる群から選択される。
【0295】
ある実施形態では、化合物は、式(II):
【化33】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、シアノ、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されている;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されている)。
【0296】
ある実施形態では、化合物は、式(III):
【化34】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
は、アミノ、C1-4アミノアルキル、およびC1-4アルキルアミノからなる群から選択され;
は、水素、シアノ、アミド、ハロ、およびヒドロキシからなる群から選択されるか、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、および5または6員のヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれも、置換されていないか、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されており;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる1または2個の基によって置換されている)。
【0297】
ある実施形態では、化合物は、式(IV):
【化35】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0298】
ある実施形態では、化合物は、式(V):
【化36】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
は、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される)。
【0299】
ある実施形態では、化合物は、式(VI):
【化37】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0300】
ある実施形態では、化合物は、式(VII):
【化38】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0301】
ある実施形態では、化合物は、式(VIII):
【化39】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのRは、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される)。
【0302】
ある実施形態では、化合物は、式(IX):
【化40】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
は、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選択される)。
【0303】
ある実施形態では、化合物は、式(X):
【化41】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0304】
ある実施形態では、化合物は、式(XI):
【化42】
によって表わされるか、その塩、エステル、またはプロドラッグである(ただし、
はフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは0~3個のR12で置換されており;
それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択され;
13は、水素、ハロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択され;
14はフェニルまたはピラゾリルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基によって置換されており;
それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、C-アルキルアミノ、およびC-アミノアルキルからなる群から独立に選択される)。
【0305】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R、R、R、R12、R13、およびR14は、上記の選択された実施形態のいずれか1つ以上の中に示されている意味を持つことができる。
【0306】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6ジヒドロキシアルキル、およびC3-8シクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-6アルキル、およびC1-6ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、およびC1-4ハロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は、水素、Cl、Br、メチル、およびCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R13は水素である。いくつかの実施形態では、R13はClである。いくつかの実施形態では、R13はBrである。いくつかの実施形態では、R13はメチルである。いくつかの実施形態では、R13はCFである。
【0307】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは1~3個のR12で置換されている。いくつかの実施形態では、Rはフェニルまたはピリジルであり、そのそれぞれは2または3個のR12で置換されている。いくつかの実施形態では、Rは2または3個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたピリジルである。
【0308】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、およびOR14からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、ハロ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。
【0309】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化43】
からなる群から独立に選択される。
【0310】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、およびCFからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、Rは2個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12はClである。
【0311】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;それぞれのR12は、F、Cl、Br、CH、OCH、CF
【化44】
からなる群から独立に選択される。
【0312】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;第1と第2のR12はそれぞれClであり;第3のR12はBrである。いくつかの実施形態では、Rは3個のR12で置換されたフェニルであり;第1と第2のR12はそれぞれClであり;第3のR12は、
【化45】
からなる群から独立に選択される。
【0313】
式(II)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルアミドで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、-C(O)NHMeで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、R14はフェニルである。いくつかの実施形態では、R14は、置換されていないか、C1-4アルキルアミド、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、およびC1-4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の基で置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、C1-4アルキルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14は、メチルで置換されたピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はN-メチルピラゾリルである。いくつかの実施形態では、R14はピラゾリルである。
【0314】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、RはアミノまたはC1-4アミノアルキルである。ある実施形態では、Rはアミノまたはアミノメチルである。ある実施形態では、Rはアミノである。ある実施形態では、Rはアミノメチルである。
【0315】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、またはC1-4ヒドロキシアルキルである。ある実施形態では、RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはメチルである。ある実施形態では、Rはエチルである。
【0316】
式(II)または(III)のいくつかの実施形態では、Rはアミノであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノであり;Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノであり;Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rはアミノメチルであり;RはC1-4アルキルである。ある実施形態では、Rはアミノメチルであり;Rはメチルである。
【0317】
式(IV)~(XI)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、それぞれのRは、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、およびC1-4ハロアルキルからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、それぞれのRは独立に、アミノまたはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態では、それぞれのRは独立に、アミノまたはメチルである。
【0318】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、
【化46-1】
【化46-2】
【化46-3】
からなる群から選択される式によって表わされる。
【0319】
上記の任意の実施形態をこれら実施形態の任意の1つ以上と組み合わることのできる実施形態も提供されるが、その組み合わせが互いに排他的でないことが条件である。
【0320】
本明細書では、2つの実施形態が「互いに排他的である」のは、一方が他方とは異なる何かであると規定されるときである。例えば2つの基が合わさってシクロアルキルを形成する一実施形態は、一方の基がエチルであり他方の基が水素である一実施形態と互いに排他的である。同様に、1つの基がCHである一実施形態は、同じ基がNHである一実施形態と互いに排他的である。
【0321】
本明細書に開示されている化合物は、医薬として許容可能な塩として存在することができる。本開示は塩の形態になった上に列挙した化合物を含み、その中に含まれるのは酸添加塩である。適切な塩に含まれるのは、有機酸と無機酸の両方とで形成される塩である。そのような酸添加塩は通常は医薬として許容可能であろう。しかし医薬として許容可能でない塩の塩が問題の化合物の調製と精製に有用である可能性がある。塩基添加塩も形成することができて医薬として許容可能である可能性がある。
【0322】
「医薬として許容可能な」という表現は、過度な毒性、刺激、およびアレルギー応答なく患者の組織に接触させて用いるのに適していて、合理的なベネフィット/リスク比であり、想定する用途に有効な化合物(または塩、互変異性体、双性イオン形態など)を意味する。
【0323】
「医薬として許容可能な塩」という用語は、本明細書では、水溶性または油溶性または分散可能で本明細書に規定されているように医薬として許容可能な本明細書に開示の化合物の塩または双性イオン形態を表わす。塩は、化合物の最終的な単離と精製の間に調製すること、または遊離塩基の形態の適切な化合物と適切な酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸添加塩に含まれるのは、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、(p-トシル酸)、およびウンデカン酸塩である。また、本明細書に開示されている化合物の中の塩基性の基を、塩化、臭化、およびヨウ化したメチル、エチル、プロピル、およびブチル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル;塩化、臭化、およびヨウ化したデシル、ラウリルミリスチル、およびステリル;および臭化ベンジルと臭化フェネチルで四級化することができる。医薬として許容可能な添加塩の形成に使用できる酸の例に含まれるのは、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸など)と有機酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸など)である。塩は、化合物とアルカリ金属またはアルカリ土類のイオンの配位によって形成することもできる。したがって本開示では、本明細書に開示されている化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などを考慮する。
【0324】
塩基添加塩は、化合物の最終的な単離と精製の間にカルボキシ基を適切な塩基(金属カチオンの水酸化物、カルボン酸塩、または重炭酸塩など)と、またはアンモニア、または有機第一級、第二級、または第三級アミンと反応させることによって調製することができる。医薬として許容可能な塩のカチオンに含まれるのは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウムのほか、非毒性第四級アミンのカチオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N’-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなど)である。塩基添加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンに含まれるのは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンである。
【0325】
化合物の塩は遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって作製できる。
【0326】
V.組成物
式(I)または(10b)の化合物を含む経口剤型は、医薬として許容可能な1つ以上の基剤および/または賦形剤を含む任意の経口剤型にすることができる。経口調製物に含まれるのは、患者によって摂取されるのに適した錠剤、ピル、粉末、ドラジェ、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などである。
【0327】
式(I)または(10b)の化合物を含む経口剤型を調製するには、医薬として許容可能な基剤は固体または液体のどちらかが可能である。固体形態調製物は、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、座薬、および分散可能な顆粒を含む。固体基剤は1つ以上の物質であることが可能であり、それは、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても機能することができる。製剤化と投与のための技術に関する詳細は学術文献と特許文献によく記述されており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0328】
粉末では、基剤は細かく分割した固体であり、それは、細かく分割した活性成分との混合物になっている。錠剤では、活性成分を必要な結合特性を持つ基剤と適切な割合で混合し、望む形とサイズに圧縮する。
【0329】
粉末、カプセル、および錠剤は、式(I)または(10b)の化合物を5%~70%含有するか、式(I)または(10b)の化合物を約10%~約70%含有することが好ましい。適切な基剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物を、カプセルを提供する基剤としての封入材料とともに含む製剤を含むことが想定されている(カプセルの中では、活性成分が、他の賦形剤あり、またはなしで基剤によって取り囲まれているため、基剤は活性成分に付随する)。同様に、カシェとロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ、およびロゼンジを経口投与に適した固体剤型として使用できる。
【0330】
適切な固体賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ワックス;カカオバター;炭水化物:糖(その非限定的な例に含まれるのは、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン);セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなど);およびゴム(アラビアゴムとトラガカントゴムが含まれる)のほか、タンパク質(その非限定的な例に含まれるのはゼラチンとコラーゲンである)である。望むのであれば崩壊剤または可溶剤を添加することができ、それは例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)である。
【0331】
適切なコーティング(濃縮糖溶液など)を持つドラジェコアが提供され、それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有することができる。染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加して生成物を同定すること、または活性化合物の量(すなわち用量)を特徴づけることができる。この剤型の医薬調製物は、例えばゼラチン製の押し嵌め式カプセルのほか、ゼラチンとコーティング(グリセロールまたはソルビトールなど)でできた軟質密封カプセルを用いて経口で用いることもできる。押し嵌め式カプセルは、充填剤または結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定剤と混合した式(I)または(10b)の化合物を含有することができる。軟質カプセルの中では、式(I)または(10b)の化合物を、適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなど)の中に安定剤あり、またはなしで溶解または懸濁させることができる。
【0332】
座薬を調製するため、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物など)を最初に融解させ、式(I)または(10b)の化合物をその中に、例えば撹拌することによって均一に分散させる。融解した均一な混合物をその後便利なサイズの鋳型の中に注ぎ、放置して冷却し、そのことによって固化させる。
【0333】
液体形態調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション(例えば水、または水/プロピレングリコール溶液)が含まれる。
【0334】
経口で用いるのに適した水溶液は、式(I)または(10b)の化合物を水に溶かし、望むときには適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口で用いるのに適した水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を水の中に、粘性材料(天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなど)、および分散剤または湿潤剤(天然のホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)など)とともに分散させることによって作製することができる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなど)、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香剤、および1つ以上の甘味剤(スクロース、アスパルタム、またはサッカリンなど)も含有することができる。製剤の浸透圧を調節することができる。
【0335】
経口投与のため使用する少し前に液体形態調製物に変換することが想定される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態に含まれるのは、溶液、懸濁液、およびエマルションである。これら調製物は、活性成分に加え、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工と天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶剤などを含有することができる。
【0336】
油懸濁液は、式(I)または(10b)の化合物を植物油(ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナツ油など)、または鉱物油(液体パラフィンなど);またはこれらを混合したものの中に懸濁させることによって製剤にすることができる。油懸濁液は増粘剤(蜜蝋、硬いパラフィン、またはセチルアルコールなど)を含有することができる。甘味剤(グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど)を添加して口当たりのよい経口調製物を提供することができる。これら製剤は、抗酸化剤(アスコルビン酸など)を添加して保存することができる。注射可能な油ビヒクルの一例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。式(I)または(10b)の化合物を含む医薬製剤は、水中油型エマルションの形態にすることもできる。油相として、上記の植物油または鉱物油、またはこれらを混合したものが可能である。適切な乳化剤に含まれるのは、天然ゴム(アカシアゴムとトラガカントゴムなど)、天然ホスファチド(ダイズレシチンなど)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。エマルションは、シロップとエリキシルの製剤におけるように、甘味剤と着香剤も含有することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0337】
別の1つの側面では、本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するための医薬組成物が提供され、この組成物は、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
医薬として許容可能な基剤または賦形剤とともに含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0338】
がんおよび/または固形腫瘍はセクションIII-2:がん/固形腫瘍に従って記述される。いくつかの実施形態では、がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に記載されている実施形態のいずれかである。
【0339】
対象は、セクションIII-3:対象に従って記述される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態のいずれかである。
【0340】
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は式(10b)の化合物である。
【0341】
式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に従ってさらに記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態のいずれかである。
【0342】
EGFR阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。
【0343】
いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0344】
(式(I)の化合物とEGFR阻害剤を含む)本開示の組成物は、多彩な経口、非経口、および局所の剤型で調製することができる。経口調製物に含まれるのは、患者による摂取に適した錠剤、ピル、粉末、ドラジェ、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などである。本開示の組成物は、注射によって、すなわち静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内に投与することもできる。また、本明細書に記載されている組成物は吸入によって投与することができる(例えば鼻腔内)。それに加え、本開示の組成物は経皮投与することができる。本開示の組成物は、眼内、膣内、および直腸内の経路によって投与することもでき、その中に含まれるのは、座薬、吹送、粉末、およびエアロゾル製剤である(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995; Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111, 1995を参照されたい)。
【0345】
(式(I)の化合物とEGFR阻害剤を含む)本開示の医薬組成物を調製するため、医薬として許容可能な基剤は、固体または液体のどちらかが可能である。固体形態調製物は、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、座薬、および分散可能な顆粒を含む。固体基剤は1つ以上の物質であることが可能であり、それは、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても機能することができる。製剤化と投与のための技術に関する詳細は学術文献と特許文献によく記述されており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0346】
粉末では、基剤は細かく分割した固体であり、それは、細かく分割した活性成分との混合物になっている。錠剤では、活性成分を必要な結合特性を持つ基剤と適切な割合で混合し、望む形とサイズに圧縮する。
【0347】
粉末、カプセル、および錠剤は、活性化合物を5%~70%含有するか、活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)を約10%~約70%含有することが好ましい。適切な基剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物を、カプセルを提供する基剤としての封入材料とともに含む製剤を含むことが想定されている(カプセルの中では、活性成分が、他の賦形剤あり、またはなしで基剤によって取り囲まれているため、基剤は活性成分に付随する)。同様に、カシェとロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ、およびロゼンジを経口投与に適した固体剤型として使用できる。
【0348】
適切な固体賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ワックス;カカオバター;炭水化物:糖(その非限定的な例に含まれるのは、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン);セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなど);およびゴム(アラビアゴムとトラガカントゴムが含まれる)のほか、タンパク質(その非限定的な例に含まれるのはゼラチンとコラーゲンである)である。崩壊剤または可溶剤を添加することができ、それは例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)である。
【0349】
適切なコーティング(濃縮糖溶液など)を持つドラジェコアが提供され、それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有することができる。染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加して生成物を同定すること、または活性化合物の量(すなわち用量)を特徴づけることができる。本開示の医薬調製物は、例えばゼラチン製の押し嵌め式カプセルのほか、ゼラチンとコーティング(グリセロールまたはソルビトールなど)でできた軟質密封カプセルを用いて経口で用いることもできる。押し嵌め式カプセルは、充填剤または結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定剤と混合した活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)を含有することができる。軟質カプセルの中では、活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)を、適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなど)の中に安定剤あり、またはなしで溶解または懸濁させることができる。
【0350】
座薬を調製するため、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物など)を最初に融解させ、活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)をその中に、例えば撹拌することによって均一に分散させる。融解した均一な混合物をその後便利なサイズの鋳型の中に注ぎ、放置して冷却し、そのことによって固化させる。
【0351】
液体形態調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション(例えば水、または水/プロピレングリコール溶液)が含まれる。非経口注射のため、液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液の中の溶液に製剤化することができる。
【0352】
経口で用いるのに適した水溶液は、本明細書に規定され記載されている活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)を水に溶かし、オプションの適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口で用いるのに適した水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を水の中に、粘性材料(天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなど)、および分散剤または湿潤剤(天然のホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)など)とともに分散させることによって作製することができる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなど)、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香剤、および1つ以上の甘味剤(スクロース、アスパルタム、またはサッカリンなど)も含有することができる。製剤の浸透圧を調節することができる。
【0353】
経口投与のため使用する少し前に液体形態調製物に変換することが想定される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態に含まれるのは、溶液、懸濁液、およびエマルションである。これら調製物は、活性成分に加え、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工と天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶剤などを含有することができる。
【0354】
油懸濁液は、活性化合物(例えば式(I)の化合物とEGFR阻害剤)を植物油(ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナツ油など)、または鉱物油(液体パラフィンなど);またはこれらを混合したものの中に懸濁させることによって製剤にすることができる。油懸濁液は増粘剤(蜜蝋、硬いパラフィン、またはセチルアルコールなど)を含有することができる。甘味剤(グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど)を添加して口当たりのよい経口調製物を提供することができる。これら製剤は、抗酸化剤(アスコルビン酸など)を添加して保存することができる。注射可能な油ビヒクルの一例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本開示の医薬製剤は、水中油型エマルションの形態にすることもできる。油相として、上記の植物油または鉱物油、またはこれらを混合したものが可能である。適切な乳化剤に含まれるのは、天然ゴム(アカシアゴムとトラガカントゴムなど)、天然ホスファチド(ダイズレシチンなど)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。エマルションは、シロップとエリキシルの製剤におけるように、甘味剤と着香剤も含有することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0355】
(式(I)の化合物とEGFR阻害剤を含む)本開示の組成物は適切な任意の手段(経口、非経口、および局所の方法が含まれる)によって送達することができる。局所経路による経皮投与法は、塗布棒、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、およびエアロゾルとして製剤化することができる。
【0356】
(式(I)の化合物とEGFR阻害剤を含む)本開示の組成物はマイクロスフェアとして送達して体内でゆっくり放出させることもできる。例えばマイクロスフェアは、生物分解性で注射可能なゲル製剤として(例えばGao Pharm. Res. 12:857-863, 1995参照);または経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えばEyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997参照)、皮内注射を通じて薬含有マイクロスフェアを投与するための製剤にすることができ;皮下でゆっくり放出する(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995。経皮経路と皮内経路の両方が、数週間または数ヶ月にわたる一定した送達を提供する。
【0357】
別の一実施形態では、本開示の組成物は、非経口投与(静脈内(IV)投与など)のための製剤、または体腔または臓器の内腔への投与のための製剤にすることができる。投与するための製剤は一般に、医薬として許容可能な基剤の中に溶かした本開示の組成物の溶液を含むことになる。許容可能なビヒクルと使用可能な溶媒に含まれるのは、水とリンゲル液(等張塩化ナトリウム)である。それに加え、減菌不揮発性油を溶媒または懸濁培地として用いることができる。この目的のため、任意の非刺激性不揮発性油(合成モノグリセリドまたはジグリセリドが含まれる)を用いることができる。それに加え、脂肪酸(オレイン酸など)を同様に注射可能な調製物で使用することができる。これら溶液は殺菌されており、望ましくない物質を一般に含まない。これら製剤はさまざまな殺菌技術によって殺菌することができる。製剤は、生理学的状態を近似するのに必要な医薬として許容可能な補助物質(pHの調節剤と緩衝剤、毒性調節剤(例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)など)を含有することができる。これら製剤の中の本開示の組成物の濃度は広く変化する可能性があり、選択される投与の具体的な様式と患者の必要性に応じ、主に流体の体積、粘性、体重などに基づいて選択されることになる。IV投与のためには、製剤は減菌された注射可能な調製物(注射可能な水性または油性の減菌懸濁液など)であることが可能である。この懸濁液は、これらの適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を用いて製剤にすることができる。減菌された注射可能な調製物は、非毒性で非経口が許容される希釈剤または溶媒(1,3-ブタンジオールの溶液など)の中の減菌された注射可能な溶液または懸濁液であることも可能である。
【0358】
別の一実施形態では、本開示の組成物の製剤は、細胞膜と融合するかエンドサイトーシスを受けるリポソームを利用して送達すること、すなわちリポソームに付着するかオリゴヌクレオチドに直接付着していて細胞の表面膜タンパク質受容体に結合し、その結果としてエンドサイトーシスを起こすリガンドを用いて送達することができる。リポソームの利用により、特にリポソーム表面が標的細胞に対して特異的なリガンドを有する場合、またはそうでなく特定の臓器へと優先的に向かわせる場合には、標的細胞への本開示の組成物の生体内送達に焦点と当てることができる。(例えばAl-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996;Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995;Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989参照)。
【0359】
脂質に基づく薬物送達システムに含まれるのは、脂質溶液、脂質エマルション、脂質分散液、自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、および自己マイクロ乳化薬物送達システム(SMEDDS)である。特にSEDDSとSMEDDSは、脂質、界面活性剤、および共界面活性剤の等方性混合物であり、水性媒体の中に自発的に分散して細かいエマルション(SEDDS)またはマイクロエマルション(SMEDDS)を形成することができる。本開示の製剤の中で有用な脂質に含まれるのは任意の天然または合成の脂質であり、その非限定的な例に含まれるのは、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナツ油、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Solutol(登録商標)、Tween(登録商標)、Capryol(登録商標)、Capmul(登録商標)、Captex(登録商標)およびPeceol(登録商標)である。
【0360】
本開示の医薬製剤は塩として提供することができ、多くの酸(その非限定的な例に含まれるのは、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などである)を用いて形成することができる。塩は、対応する遊離塩基形態である水性溶媒または他のプロトン性溶媒の中により多く溶ける傾向がある。他の場合には、調製物として、例えば1mM~50mMのヒスチジン、0.1%~2%のスクロース、2%~7%のマンニトールの中でpH4.5~5.5の範囲にて凍結乾燥させた粉末が可能であり、使用前にバッファと組み合わされる。
【0361】
本開示の医薬製剤は塩として提供することができ、塩基を用いて形成することができる。すなわち塩は、カチオン性塩、例えばアルカリ金属とアルカリ土類金属(ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)の塩のほか、アンモニウム塩(アンモニウム、トリメチル-アンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アンモニウム塩など)である。
【0362】
VI.キット
別の1つの側面では、本開示により、対象の疾患または障害(例えばがん)を治療するためのキットが提供され、このキットは、
a)治療に有効な量のPTPN11阻害剤と;
b)治療に有効な量のEGFR阻害剤を、
有効な投与のための指示とともに含む(ただしPTPN11阻害剤は、本明細書に規定され記載されている式(I)によって表わされる)。
【0363】
がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に従って記述される。いくつかの実施形態では、がんおよび/または固形腫瘍は、セクションIII-2:がん/固形腫瘍に記載されている実施形態のいずれかである。
【0364】
対象は、セクションIII-3:対象に従って記述される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載されている実施形態のいずれかである。
【0365】
式(I)によって表わされるPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は式(10b)の化合物である。
【0366】
式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に従ってさらに記述される。いくつかの実施形態では、式(I)のPTPN11阻害剤は、セクションIV.化合物に記載されている実施形態のいずれかである。
【0367】
EGFR阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に従って記述される。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、セクションIII-1:PTPN11阻害剤および/またはEGFR阻害剤に記載されている実施形態のいずれかである。
【0368】
いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、またはラパチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブである。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0369】
いくつかの実施形態では、キットは、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を投与するための指示を含む。いくつかの実施形態では、キットは、式(10b)の化合物とEGFR阻害剤を投与するための指示を含む。いくつかの実施形態では、そのような指示は、安全性の規定に関する指示のほか、式(I)または(10b)の化合物とEGFR阻害剤を投与するタイミングと量を含む。いくつかの実施形態では、そのような指示は、安全性の規定に関する指示のほか、式(10b)の化合物とEGFR阻害剤を投与するタイミングと量を含む。
【0370】
本明細書に記載の式(I)または(10b)によって表わされるPTPN11阻害剤と本明細書に記載のEGFR阻害剤は、同時投与または逐次投与のために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤とEGFR阻害剤は同時投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤とEGFR阻害剤は逐次投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤は、EGFR阻害剤を投与する前に投与する。いくつかの実施形態では、式(I)または(10b)のPTPN11阻害剤は、EGFR阻害剤を投与した後に投与する。
VII.略号のリスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0371】
VIII.実施例
実施例1:HCC4006細胞系における表現型と薬力学応答
A.材料
試験製品#1 - 式(10b):
【0372】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0373】
分子式:C2126Cl
【0374】
分子量:437.37
【0375】
試験製品#2 - オシメルチニブ(Selleck Chem #S7279):
【0376】
CAS#:1421373-65-0
【0377】
分子量:499.61
【0378】
細胞系。HCC4006細胞系をATCCから購入した。これはEGFR活性化変異(EGFRエキソン19欠失)を有する非小細胞肺がん(NSCLC)細胞系であり、第3世代のEGFR阻害剤であるオシメルチニブに対してインビトロで感受性であることが実証されている。これら細胞を、5%CO2にした37℃の組織培養インキュベータ(NUAIRE、NU-5510)の中の、4mMのglutamax(Thermo Fisher #72400-120)+10%ウシ胎仔血清(FBS、Sigma #F2442)を含有するRPMI-1640の中で培養した。HCC4006-OsiR(オシメルチニブ抵抗性)細胞系は、1μMのオシメルチニブ(Selleck Chem #S7279)の存在下で培養することによるHCC4006細胞に由来した。これらの細胞を、4mMのglutamax(Thermo Fisher #72400-120)+10%ウシ胎仔血清(FBS、Sigma #F2442)+1μMのオシメルチニブを含有するRPMI-1640の中で維持した。HCC4006-OsiR細胞は、インビトロでの3日増殖アッセイにおいてオシメルチニブのIC50がHCC4006親細胞と比べて40倍のシフトを示した(図2A)。ゲノム特徴づけから、HCC4006-OsiRモデルは親モデルと同じEGFR活性化変異(すなわちエキソン19欠失)を維持しており、EGFR T790M変異を持たず、複数のRTK(AXL、FGFR1、PDGFR、およびIGF-1Rβが含まれる)の発現を増大させることが実証された。HCC4006-OsiR細胞は、間葉の特徴の増加と上皮の特徴の減少も示す。
【0379】
B.実験手続き
インビトロ3日増殖アッセイ。HCC4006細胞またはHCC4006-OsiR細胞を96ウエルのプレート(Corning #3603)内の100μLの培地(RPMI-1640+10%FBS)の中に1,500個の細胞/ウエルで播種し、一晩放置して付着させた。翌日、細胞を、DMSOまたは段階希釈したオシメルチニブ(9点滴定:0.15nM~1,000nMの最終濃度)を含有する100μLの培地に切り換えた。DMSOの最終濃度は0.1%であった。3日間の処理後、Cell Titer-Glo 2.0細胞生存アッセイ(Promega #G9241)を利用して生存細胞の数を求めた。
【0380】
Cell Titer-Glo 2.0細胞生存アッセイ。Cell Titer-Glo 2.0細胞生存アッセイ(Promega #G9241)を製造者のプロトコルに従って利用して相対的生存細胞数を求めた。簡単に述べると、100μLのCell Titer-Glo試薬を96ウエルのプレートの各ウエルに添加した。プレートをVWRアドバンスト3500オービタルシェイカー(VWR #89032-096)の上に載せて100rpmで室温にて5分間震盪した後、光から保護して室温で15分間インキュベートした。その後、PheraStarプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて蛍光を定量した。蛍光の読みは、Microsoft Excelを用いて各細胞系のDMSO処理済みサンプルの平均に規格化した。データはGraphPad Prism 8.0にプロットした。非線形フィットを利用して用量応答曲線を作成した。IC50は、定量した細胞数がDMSO処理済み細胞の50%だった化合物の濃度を意味する。IC50はGraphPad Prism 8.0を用いて内挿した。
【0381】
インビトロクローン形成アッセイ。HCC4006細胞またはHCC4006-OsiR細胞を24ウエルのプレート(Corning #353047)内の0.5mLの培地(RPMI-1640+10%FBS)の中に800個の細胞(HCC4006)または1000個の細胞(HCC4006-OsiR)/ウエルで播種し、一晩放置して付着させた。翌日、DMSOまたは段階希釈した式(10b)(3点滴定:0.37μM、1.1μM、または3.3μMの最終濃度)を含有する0.25mLの培地を各ウエルに添加した。その直後、DMSOまたは段階希釈したオシメルチニブ(5点滴定:HCC4006細胞については0.46nM~37nM、HCC4006-OsiR細胞については4.1nM~333nM)を含有する0.25mLの培地を各ウエルに添加した。化合物を培地の中で4×最終濃度にあらかじめ希釈し、DMSOの最終濃度は24ウエルにつき1mLの培地の中に0.2%であった。処理の12~14日後、プレートをクリスタルバイオレット溶液で染色した。
【0382】
クリスタルバイオレット染色、定量、およびブリススコア計算。100mLの1%クリスタルバイオレット溶液(Sigma #V5265)、100mLの100%エタノール、および800mLのddH2Oを混合することによって0.1%クリスタルバイオレット染色溶液を調製した。培地を細胞培養ウエルから除去し、1mLの減菌したダルベッコのリン酸塩緩衝化生理食塩水(DPBS、Life technologies #14190-144)をそっと各ウエルに添加した。DPBSを除去した後、0.5mLの0.1%クリスタルバイオレット染色溶液をそれぞれの24ウエルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートした。染色溶液をウエルから取り出して廃棄した。各ウエルを次いで1mLのddH2Oで洗浄した。その後、上清が無色になるまで、水道水で満たした大きなバケツにプレートを2~4回浸した。残留液体を振って取り除き、プレートを覆わずに上下逆さまにして放置して一晩乾燥させた。完全に乾燥すると、イメージスキャナ(EPSON Perfection V700)を用いてプレートを300dpiでスキャンした。
【0383】
シグナルを定量するため、0.5mLの10%酢酸(Fisher #BP2401-212)を乾燥したプレートの各ウエルに添加した。プレートをVWRアドバンスト3500オービタルシェイカー(VWR #89032-096)の上に載せて100rpmで室温にて30分間震盪してクリスタルバイオレットを溶解させた。その後、各ウエルから100μLの溶液を透明な96ウエルのプレート(Spectra Plate 96MB、PerkinElmer #6005640)に移し、590nmでの吸光度をPheraStarプレートリーダー(BMG Labtech)で読んだ。シグナルが飽和した場合には、OD590が3.5未満になるまで溶液を同体積の10%酢酸でさらに希釈した。
【0384】
OD590の読み(に希釈因子を掛けた値)を、Microsoft Excelを用いてDMSO処理済みサンプルの平均に規格化した。式(A+B)-A×B/100(ただしAとBは所与の用量の薬剤AとBによって誘導される増殖阻害のパーセンテージであった)を用いてブリス期待値を計算した。ブリススコアは、それら2つの薬剤の組み合わせによって生じた増殖阻害の検出値(%)とブリス期待値の間の差である。プラスのブリススコアは効果が相乗的である組み合わせを示す。Prism GraphPad 8.0を用いてブリススコアに関するヒートマップを作成した。
【0385】
インビトロ薬力学アッセイ - Taqman qRT-PCRアッセイ。HCC4006-OsiR細胞を6ウエルのプレート(Corning #353046)内の2mLの培地の中に播種し、一晩放置して付着させた。播種密度は処理と実験の長さに応じて調節した(表1)。播種の翌日(1日目)、各ウエルにDMSOまたは12μMの式(10b)を含有する1mLの培地と、DMSOまたは400nMのオシメルチニブを含有する1mLの培地を添加することによって細胞を処理した。4時間後、培地を除去し、各ウエルの中で1%の2-メルカプトエタノールを含む350μLのRLT溶解バッファ(Qiagen #79216)を用いて細胞を溶解させることによって4時間サンプルを回収した。サンプルを正しいやり方で処理するか、さらに分析するまで-20℃で保管した。3日目と8日目に、48時間サンプルと7日サンプルを同様にして回収した。これら2つの時点で回収した細胞は、サンプル回収の24時間前に、化合物を含有する新鮮な培地に切り換えた。
【表2】
【0386】
RNeasyミニRNA単離キット(Qiagen #74106)を用いてRNAをライセートから抽出した。単離したRNAを、Nanodrop 8000(Thermo Fisher)を用いて定量した。反応ごとに1μgの全RNAを用い、BioRad Tetrad2サーマルサイクラーで高性能cDNA逆転写キット(Thermo Fisher #4368813)を利用してcDNAを合成した(25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5分間、その後4℃に保持)。ddH2Oを用いてcDNAをさらに1:10に希釈した。384ウエル形式のQuantStudio 6(Thermo Fisher)上で以下のTaqmanプローブとTaqmanユニバーサルマスターミックスIIを販売者のプロトコルに従ってUNG(Thermo Fisher #4440040)なしで用いて定量リアルタイムPCRを実施した。各ウエルは、FAM染料で標識した興味ある標的プローブ(DUSP6、Thermo FisherアッセイID Hs01044001_m1)と、VIC染料で標識した内在性対照(ヒトRPLPO、Thermo Fisher #4326314E)を含有する。各cDNAについて3回の技術的反復実験をした。
【0387】
ΔΔCt法を利用してqRT-PCRデータを分析した。下記の式を用いてmRNAの相対レベルを計算した。倍数変化を計算するため、各サンプルのmRNAの相対レベルをDMSO処理済みサンプル中のmRNAのレベルに規格化した(DMSO処理済みサンプルの倍数変化を「1」に設定した。計算はMicrosoft Excelで実施し、グラフをGraphPad Prism 8.0で作成した。
mRNAの相対レベル=2^(対照遺伝子の-興味ある遺伝子の
【0388】
C.結果
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるオシメルチニブは、腫瘍がEGFRの中に活性化変異を有する転移NSCLCを持つ患者の第1選択治療のために現在USで承認されている。オシメルチニブで治療中の患者は獲得抵抗性が臨床での主要な課題となっており、最終的に疾患進行を経験することになる。代替RTK(「RTKバイパス」)を活性化させてRTKの下流のMAPK経路シグナル伝達を維持するというのが、第1世代と第3世代のEGFR阻害剤の両方に対する臨床で観察された抵抗性機構である。SHP2阻害は多くのRTKの下流のMAPK経路に影響を与えるため、式(10b)などのSHP2阻害剤はオシメルチニブの活性を強化する可能性があり、したがってオシメルチニブ抵抗性腫瘍においても活性を持つ可能性があるという仮説が立てられる。下記の実験を設計し、「RTKバイパス」抵抗性機構を持つオシメルチニブ感受性モデルとオシメルチニブ抵抗性モデルの両方において、オシメルチニブと組み合わせた式(10b)というSHP2阻害剤のインビトロ活性を評価した。
【0389】
式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた処理は、オシメルチニブ感受性HCC4006細胞の増殖をインビトロで相乗的に抑制する。インビトロクローン形成アッセイにおいて、オシメルチニブと式(10b)の組み合わせは、オシメルチニブ感受性HCC4006ヒト腫瘍細胞系の増殖を用量に依存して抑制した(図1A)。調べた濃度の大半で、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた処理は、同じ濃度のそれぞれの単剤を用いた処理よりも細胞増殖を強力に抑制した。ブリススコアの計算から、調べた大半の濃度でブリススコアが0よりも大きいことが示され、これは、インビトロでHCC4006細胞の増殖を抑制することにおけるオシメルチニブと式(10b)の間の相乗的効果を示唆する(図1B)。
【0390】
HCC4006-OsiRモデルはインビトロでオシメルチニブに対する獲得抵抗性を示す。オシメルチニブに対する獲得抵抗性を持つ細胞系モデルにおける式(10b)の活性を評価するため、1μMのオシメルチニブの存在下でEGFRmutHCC4006細胞を3ヶ月間培養することによってHCC4006-OsiR細胞系を生成させ、HCC4006-OsiR細胞が親細胞と似た速度で増殖するようにした。3日増殖アッセイ(図2A)では、予想通り、HCC4006親細胞はオシメルチニブに対して感受性であり、IC50は27.0±7.9nMであった。逆にHCC4006-OsiR細胞はオシメルチニブに対して抵抗性であり、このアッセイにおいて1,000nM(調べた最大濃度)では抗増殖効果がなかった。したがって3日インビトロ増殖アッセイにおいてHCC4006-OsiR細胞内のオシメルチニブのIC50は1,000nM超であり、これはHCC4006親細胞内と比べて少なくともほぼ40倍大きかった。さらに、14日クローン形成アッセイでは、HCC4006-OsiR細胞はオシメルチニブに対する顕著な抵抗性も示し、HCC4006親細胞と比べてIC50が20倍シフトした(IC50は、HCC4006では12.2±2.5nM、HCC4006-OsiRでは257±241nMである)(図2B)。
【0391】
ゲノム特徴づけから、HCC4006-OsiRモデルは親モデル(すなわちエキソン19欠失)と同じEGFR活性化変異を維持しており、EGFR T790M変異を持たず、複数のRTK(AXL、FGFR1、PDGFR、およびIGF-1Rβが含まれる)の発現を増大させることが実証された。HCC4006-OsiR細胞は、間葉の特徴の増加と上皮の特徴の減少も示す。
【0392】
式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた処理は、インビトロでオシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiR細胞の増殖を相乗的に抑制した。インビトロクローン形成アッセイにおいて、オシメルチニブと式(10b)の組み合わせは、オシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiRヒト腫瘍細胞系の増殖を用量に依存して抑制した(図3A)。調べた大半の濃度で、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた処理は、それぞれの単剤を同じ濃度で用いた処理よりも細胞増殖をより強力に抑制した。ブリススコアの計算から、調べた濃度の大半でブリススコアが0よりも大きいことが示され、これは、インビトロでHCC4006-OsiR細胞の増殖を抑制することに関するオシメルチニブと式(10b)の間の相乗効果を示唆する(図3B)。
【0393】
単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)は、インビトロでオシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiR細胞においてMAPK経路シグナル伝達を抑制する。MAPKシグネチャ遺伝子(DUSP6など)の転写産物のレベルをMAPK経路活性の読み出しとして利用することができる。オシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiRモデルでは、100nMのオシメルチニブ(HCC4006親系での14日クローン形成アッセイにおけるオシメルチニブの約8倍のインビトロIC50)は、4時間、48時間、または7日間の処理でDUSP6 mRNAのレベルを抑制せず、このモデルがオシメルチニブ抵抗性であることと合致していた(図4)。逆に、式(10b)は調べた全3つの時点でDUSP6 mRNAレベルを強力に抑制し、この抑制は4時間の処理後に最もロバストであった;DUSP6転写産物のレベルは式(10b)を用いた長い処理(すなわち48時間または7日間の処理)の後に部分的に回復した。これはおそらく、上流シグナル伝達因子に対するpERK/pMEKの負のフィードバックの放出に起因する。3μMの式(10b)と100nMのオシメルチニブの組み合わせを用いた処理は、nDUSP6 mRNAのレベルに対して式(10b)を単剤として3μMで用いた処理と同様の効果を持っていた(図4)。式(10b)をより低濃度(1μMと0.5μM)で単剤として、または100nMのオシメルチニブとの組み合わせで用いた処理も調べると、データは、組み合わせ処理がDUSP6 mRNAのレベルに対して式(10b)単剤と同様の影響を持っていたことも示唆している。これは、増殖アッセイにおける観察、すなわち組み合わせ処理が式(10b)単剤よりも細胞増殖をより強力に抑制したこととは異なる(図3A)。したがって、インビトロでのHCC4006-OsiR細胞の増殖に対する式(10b)とオシメルチニブの間の組み合わせ効果の裏には追加の機構が存在する可能性が大きい。まとめると、これらのデータは、単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)が、インビトロでオシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiR細胞においてMAPK経路シグナル伝達を抑制することを示唆している。
【0394】
D.結論
式(10b)とオシメルチニブを組み合わせた処理は、オシメルチニブ感受性HCC4006とオシメルチニブ抵抗性HCC4006-OsiRという両方のヒト腫瘍細胞系の増殖をインビトロで相乗的に抑制する。それに加え、単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)は、インビトロでHCC4006-OsiR細胞において(DUSP6転写産物レベルによって測定される)MAPK経路シグナル伝達を強力に抑制する。
【0395】
実施例2:オシメルチニブと組み合わせた式(10b)の生体内抗腫瘍有効性
A.材料
試験製品#1 ? 式(10b):
【0396】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0397】
分子式:C2126Cl
【0398】
分子量:437.37
【0399】
試験製品#2 - オシメルチニブ(ChemieTeK #CT-A9291):
【0400】
CAS#:1421373-65-0
【0401】
分子量:499.61
【0402】
細胞系。HCC827細胞系をATCCから購入した。これはEGFR活性化変異(EGFRエキソン19欠失)を有する非小細胞肺がん(NSCLC)細胞系であり、第3世代のEGFR阻害剤であるオシメルチニブに対して感受性であることがインビトロと生体内で実証されている。細胞を、5%CO2にした37℃の組織培養インキュベータの中のRPMI-1640培地(Sigma #RO883)+10%FBS(Sigma #F7524)+2mMのL-グルタミン(Sigma #59202C)の中で培養した。HCC827-ER1(エルロチニブ抵抗性)細胞系はCrown Bioscience UK LtdのHCC827細胞に由来した。これら抵抗性細胞は、漸増濃度のエルロチニブの存在下で培養することによって生成させた。これら細胞を、RPMI-1640培地(Sigma #RO883)+10%FBS(Sigma #F7524)+2mMのL-グルタミン(Sigma #59202C)+42μMのエルロチニブ(LC Laboratories #E-4007)の中で維持した。HCC827-ER1細胞はエルロチニブのIC50がインビトロでHCC827親細胞と比べて10,000倍のシフトを示した(Crown Bioscience UK Ltdからの未公開データ)。ゲノム特徴づけから、HCC827-ER1モデルは親モデルと同じEGFR活性化変異(すなわちエキソン19欠失)を維持しており、EGFR T790M変異を持たず、抵抗性機構としてc-MET増幅を有することが実証された。
【0403】
試験動物。雌無胸腺ヌードマウス(Envigo、Hsd:無胸腺ヌード-Foxn1nu)をこの実験で使用した。動物は、異種移植片移植時に5と6週齢の間であった。動物福祉は、欧州議会の指令2010/63/EUと、科学的な目的に使用する動物の保護に関する2010年9月22日の評議会に沿ったUK動物科学的手続き法1986(ASPA)に従っている。全実験データの管理と報告の手続きは、適用可能なCrown Bioscience UKのガイドラインと標準的な作業手続きに厳密に従った。
【0404】
全マウスを、ヒルクレスト、ドッジフォード・レーン、ラフバラー、連合王国にあるCrown Bioscience UK Ltdの敷地のISO 9001:2015認定動物研究施設に収容した。全動物を、包括的でうまく考えられた健康管理プログラムを監督する動物施設のNVS(指名獣医)とNACWO(動物の世話と福祉の責任者)の管理と世話のもとで維持した。獣医学のサービスはフルタイムを基準として提供され、獣医と医療スタッフは、緊急時および/または特別な状況には1日に24時間、1週間に7日呼び出される。マウスはケージの中に最大で5匹の動物にして収容され、12時間明/12時間暗で餌と水に自由にアクセスできた。全動物がTeklad 2919という餌と水を自由に摂取した。マウスは毎日モニタし、ケージは2週間ごとに交換した。
【0405】
B.実験手続き
製剤。式(10b)を0.5%メチルセルロースの中で調製した。0.5%メチルセルロース溶液を調製するため、メチルセルロース粉末(400cP、Sigma #M0262)を80℃に加熱した減菌水に添加した。この溶液を80℃で撹拌しながら3~4時間インキュベートした後、4℃で連続的に撹拌しながら18時間インキュベートした。最終体積を減菌H2Oで調節した後、この溶液を4℃でさらに30分間撹拌した、次いで0.45μMの殺菌フィルタを用いて濾過した。将来使用するため、調製した0.5%メチルセルロース溶液を4℃で保管した。
【0406】
式(10b)投与懸濁液を0.5%メチルセルロースの中で調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルの中に入れ、0.5%メチルセルロース溶液を注射器でバイアルに添加した。30秒間撹拌した後、バイアルを「高」設定の水浴超音波処理器(Fisher Scientific超音波浴5.7Lモデル3800、#15337418)の中で室温にて約20分間にわたって超音波処理すると、目に見える大きな白色の固体がない灰白色の懸濁液が得られた。調製した投与懸濁液を軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与懸濁液を週に1回調製した。
【0407】
オシメルチニブを0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の中で調製した。0.5%HPMC溶液を調製するため、0.5gのHPMC粉末(Sigma #H9262)をガラス製ビーカーの中の約80mLの減菌水に添加し、磁気撹拌プレート上で約1時間混合した。全粉末が溶けると、溶液を100mLのメスフラスコに移した。ビーカーを減菌水で洗浄し、その洗浄水を用いて最終体積を100mLに調節した。将来使用するため、調製した0.5%HPMC溶液を4℃で保管した。
【0408】
オシメルチニブ投与懸濁液を0.5%HPMCの中で調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルに入れ、調製した0.5%HPMCを添加した。この混合物を磁気撹拌プレートの上に室温で一晩放置して全粒子をよく懸濁させた。調製した投与懸濁液は、軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与懸濁液を週に1回調製した。
【0409】
生体内モデリング、治療、およびデータ分析。HCC827細胞とHCC827-ER1細胞を用いた異種移植片研究のため、500万個の細胞を含む200μLのマトリゲル(Corning #354234)を5~6週齢の雌無胸腺ヌードマウス(Envigo UK)の左脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズをノギスで測定し、標準式:長さ×幅2/2(ただし長さと幅はそれぞれ腫瘍の長径と短径であった)を用いて計算した。平均体積が400mmに達したとき、マウスを腫瘍体積と体重の両方に基づいて無作為化して5匹のマウスからなる複数の群に分け、経口強制投与(PO)を通じ、ビヒクル(午前に0.5%メチルセルロース、QD+午後に0.5%HPMC、QD)、オシメルチニブ(午前に0.5%メチルセルロース、QD+午後にオシメルチニブ5mg/kg、QD)、式(10b)(式(10b):午前に100mg/kg、QD+午後に0.5%HPMC、QD)、または組み合わせ(式(10b):午前に100mg/kg、QD+午後にオシメルチニブ5mg/kg)で治療した。投与は腫瘍細胞を皮下移植してから約3週間後に開始した。投与体積は各化合物について5mL/kgであり、毎日の測定からの個々のマウスの体重に基づいて調節した。腫瘍の体積は週に2回測定した。
【0410】
Microsoft ExcelとGraphPad Prism 8.0を用いてデータを分析した。0日目は、治療開始日の前日であった。体重変化は以下の式に基づいて計算した。
体重変化%=(BW-BW)/BW×100%
BWとBWはそれぞれ、測定日Iと0日目の個々のマウスの体重である。
【0411】
薬物動態を分析するための血液回収。薬物動態(PK)分析のため、生きた動物から後眼窩静脈叢を通じて血液を取得した。マウスを拘束チューブの中に入れ、伸展位で後肢を固定した。その動物の足を硬い表面の上に乗せ、減菌した25gの針(BD Microlance 3)を足の頂部の伏在静脈の中に挿入した。針を抜き、EDTAで覆った毛細血液チューブ(Microvette CB 300 K2E)を用いて血液を毛細管現象により体積が100μLになるまで回収した。このチューブを数回ひっくり返してEDTAを均一に分布させた後、4℃にて13,000rpmで5分間にわたって遠心分離(VWR Micro Star 17R)して血漿を生成させた。上清(血漿)を注意深く1.5mLのチューブに移し、-80℃で保管した。
【0412】
マウス血漿中の式(10b)とオシメルチニブのLC-MS/MS定量。検証されたLC-MS/MS法を利用してマウス血漿中の式(10b)またはオシメルチニブの濃度を定量した。各分析のため、イミプラミン(70ng/mL)を内部標準として含有する200μLのアセトニトリルを用いて25μLの血漿サンプルを沈殿させた。この懸濁液を10分間撹拌した後、ベンチトップ遠心分離機(Eppendorf 5424R)の中で4,000rpmにて10分間遠心分離し、次いで175μLの上清を新しいチューブに移して125μLの水で希釈してからLC-MS/MS分析した。
【0413】
式(10b)またはオシメルチニブのLC-MS/MS分析を、ポジティブモード(ESI+)で作動するWaters Xevo TQ-Sトリプル四重極質量分析器(MS/MS)にカップルしたWaters Acquity UPLCシステムで実施した。質量分析器の検出条件は以下のようであった:キャピラリ電圧、3kV;コーン電圧、50ev;衝突エネルギー、25ev;供給源の温度、150℃;脱溶媒和温度、400℃;脱溶媒和ガス流、1000L/時;コーンガスグロー、0.15mL/分。式(10b)またはオシメルチニブはSUPELCO Ascentis fused-core C18カラム(2.7μm、2.1×20mm)を用いて分離し、多重反応モニタリング遷移によって検出した(式(10b)についてはm/z 437.3>186.0;オシメルチニブについてはm/z 500.0>385.1;イミプラミンについてはm/z 281.1>208.1)。注入体積は5μLであった。LC移動相Aは0.1%酢酸水であり、Bは0.1%酢酸-アセトニトリルであった。勾配は、5%B(0~0.3分)、5~95%B(0.3~1.3分)、95%B(1.3~1.7分)、95~5%B(1.7~1.71分)、5%B(1.71~2分)であり、流速は0.75mL/分であった。カラムの温度は40℃であった。これらの条件下で、保持時間は、式(10b)については1.29分、オシメルチニブについては1.27分、内部標準については1.37分であった。この方法は、未処理のCD-1マウス血漿中で1~1000ng/mLの分析範囲の式(10b)またはオシメルチニブについて検証された。MAssLynx v.4.0ソフトウエアを用いて全データを処理した。
【0414】
C.結果
オシメルチニブは、腫瘍がEGFRの中に活性化変異を有する転移NSCLCを持つ患者の第1選択治療のために現在USで承認されている。オシメルチニブで治療中の患者は獲得抵抗性が臨床での主要な課題となっており、最終的に疾患進行を経験することになる。代替RTK(「RTKバイパス」)(c-MET増幅など)を活性化させてRTKの下流のMAPK経路シグナル伝達を維持するというのが、第1世代と第3世代のEGFR阻害剤の両方に対する臨床で観察された抵抗性機構である。SHP2はRTKシグナル伝達の極めて重要な1つのメディエータであるため、「RTKバイパス」によって媒介されるオシメルチニブ抵抗性をSHP2阻害剤によって標的とすることができるという仮説が立てられる。下記の実験を設計し、オシメルチニブと組み合わせた式(10b)というSHP2阻害剤の生体内活性を、「RTKバイパス」抵抗性機構を表わすc-MET増幅を持つオシメルチニブ感受性モデルとオシメルチニブ抵抗性モデルの両方において評価した。
【0415】
単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)を用いた治療は、NSCLCのEGFRmutオシメルチニブ感受性皮下モデルにおいて腫瘍増殖阻害を誘導する。オシメルチニブ感受性マウス腫瘍異種移植片モデルをHCC827細胞の皮下移植によって開発し、単剤治療としてのほか、オシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)の生体内での抗腫瘍応答を調べるのに使用した。確立されたHCC827皮下腫瘍(平均腫瘍体積が約400mm)を有するマウスを、経口で送達されるビヒクル、5mg/kgのオシメルチニブ、100mg/kgの式(10b)、またはこれら2つの化合物の組み合わせを用いて治療した;各化合物はQDで21日間にわたって投与した。図5Aに示されているように、単剤としての100mg/kg QDの式(10b)はHCC827腫瘍の増殖を強力に抑制し、腫瘍が静止状態になった。逆に、単剤として5mg/kg QDで投与されたオシメルチニブはロバストな腫瘍退縮を引き起こした。予想通り、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた治療は腫瘍退縮を生じさせ、単独のオシメルチニブで観察された退縮と同様であった。この実験で調べた全投与条件が、研究中のマウスの体重維持によって示されるように、よく忍容された(図5B)。
【0416】
薬物動態分析(表2)から、オシメルチニブの最終投与から24時間後、すなわち式(10b)の最終投与から約6~8時間後には、血漿中のオシメルチニブの濃度はLC-MS/MS法の定量限界(2nM)未満であり、100mg/kgの式(10b)の投与によって似た血漿濃度が、単剤として投与したとき(14.1μM)と、オシメルチニブとの組み合わせで投与したとき(19.3μM)に見られることが実証された。
【表3】
【0417】
単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)を用いた治療は、NSCLCのEGFRmutオシメルチニブ抵抗性皮下モデルにおいて腫瘍増殖阻害を誘導する。マウス腫瘍異種移植片モデルをオシメルチニブ抵抗性HCC827-ER1細胞の皮下移植によって開発した。インビトロでは、HCC827-ER1細胞は、エルロチニブのIC50がHCC827親細胞と比べて10,000倍のシフトを示した(Crown Bioscience UK Ltdからの未公開データ)。ゲノム特徴づけから、HCC827-ER1モデルは、親モデルと同じEGFR活性化変異(すなわちエキソン19欠失)を維持しており、EGFR T790M変異を持たず、抵抗性機構としてc-MET増幅を有することが実証されたため、オシメルチニブに対して抵抗性であることが予想される。HCC827-ER1異種移植片モデルを用い、単剤治療としてのほか、オシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)の抗腫瘍応答を生体内で調べた。確立されたHCC827-ER1皮下腫瘍(平均腫瘍体積が約400mm)を有するマウスを、経口で送達されるビヒクル、5mg/kgのオシメルチニブ、100mg/kgの式(10b)、またはこれら2つの化合物の組み合わせで治療し、そのときそれぞれの薬をQDで21日間にわたって投与した。図6Aに示されているように、オシメルチニブ抵抗性HCC827-ER1モデルでは、100mg/kg QDの式(10b)で治療したマウスの腫瘍は、腫瘍の静止状態を示し、HCC827親モデルにおいて式(10b)で観察されたことと同様であった(図5A)。しかし5mg/kgのオシメルチニブで治療したマウスの腫瘍は治療期間中に増殖を続けた。これは、HCC827-ER1モデルでは、HCC827モデルと比べてオシメルチニブ感受性が低下したことを示す。重要なことだが、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた治療の結果としてロバストな腫瘍退縮が起こり、親HCC827モデルにおいてオシメルチニブ治療だけで見られたのと同様であった。研究中の体重の維持(L10平均BWL)によって実証されたように、この実験で調べた全投与条件が忍容された。さらに、図6Bに示されているように、NCI-H1975(C797S+)モデルでは、単独で、またはオシメルチニブとの組み合わせで式(10b)を用いて治療したマウスの腫瘍はロバストな腫瘍退縮という結果になった。
【0418】
薬物動態分析から、HCC827-ER1異種移植片モデルにおける全3つの治療アームの血漿レベル(表3)がHCC827親モデルで観察された(表1)のと同様であることが実証された。この結果は、オシメルチニブを用いた治療に式(10b)というSHP2阻害剤を追加するとHCC827-ER1モデルの再感受性化が起こり、オシメルチニブ感受性HCC827親モデルにおいて単独のオシメルチニブで観察されたのと同様、HCC827-ER1モデルにおいて併用療法でロバストな抗腫瘍応答が生じることを実証している。
【表4】
【0419】
D.結論
オシメルチニブ感受性EGFRmutHCC827モデルとオシメルチニブ抵抗性HCC827-ER1異種移植片モデルの両方において、100mg/kg QD POの式(10b)は腫瘍増殖をロバストに抑制し、腫瘍静止状態へと至らせる。後者のモデルでは、オシメルチニブを用いた治療に式(10b)というSHP2阻害剤を追加すると、このモデルの再感受性化がオシメルチニブ感受性HCC827親モデルと比べて起こり、腫瘍退縮に至る。
【0420】
実施例3:生体内の薬物動態と薬力学の効果
C.材料
試験製品#1 - 式(10b):
【0421】
化学名:6-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル]-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチル-3,4-ジヒドロピリミジン-4-オン
【0422】
分子式:C2126Cl
【0423】
分子量:437.37
【0424】
試験製品#2 - オシメルチニブ(ChemieTeK #CT-A9291):
【0425】
CAS#:1421373-65-0
【0426】
分子量:499.61
【0427】
細胞系。HCC827-ER1(エルロチニブ抵抗性)細胞系はCrown Bioscience UK LtdのHCC827細胞(ATCC)に由来した。これら抵抗性細胞は、漸増濃度のエルロチニブの存在下で培養することによって生成させた。これらの細胞は、RPMI-1640培地(Sigma #R0883)+10%FBS(Sigma #F7524)+2mMのL-グルタミン(Sigma #59202C)+42μMのエルロチニブ(LC Laboratories #E-4007)の中で維持した。HCC827-ER1細胞は、インビトロでのエルロチニブのIC50がHCC827親細胞と比べて10,000倍のシフトを示した(Crown Bioscience UK Ltdからの未公開データ)。ゲノム特徴づけから、HCC827-ER1モデルは親モデルと同じEGFR活性化変異(すなわちエキソン19欠失)を維持しており、EGFR T790M変異を持たず、抵抗性機構としてc-MET増幅を有することが実証された。
【0428】
試験動物。雌無胸腺ヌードマウス(Envigo、Hsd:無胸腺ヌード-Foxn1nu)をこの実験で使用した。動物は、異種移植片移植時に5と6週齢の間であった。動物福祉は、欧州議会の指令2010/63/EUと、科学的な目的に使用する動物の保護に関する2010年9月22日の評議会に沿ったUK動物科学的手続き法1986(ASPA)に従っている。全実験データの管理と報告の手続きは、適用可能なCrown Bioscience UKのガイドラインと標準的な作業手続きに厳密に従った。
【0429】
全マウスを、ヒルクレスト、ドッジフォード・レーン、ラフバラー、連合王国にあるCrown Bioscience UK Ltdの敷地のISO 9001:2015認定動物研究施設に収容した。全動物を、包括的でうまく考えられた健康管理プログラムを監督する動物施設のNVS(指名獣医)とNACWO(動物の世話と福祉の責任者)の管理と世話のもとで維持した。獣医学のサービスはフルタイムを基準として提供され、獣医と医療スタッフは、緊急時および/または特別な状況には1日に24時間、1週間に7日呼び出される。マウスはケージの中に最大で5匹の動物にして収容され、12時間明/12時間暗で餌と水に自由にアクセスできた。全動物がTeklad 2919という餌と水を自由に摂取した。マウスは毎日モニタし、ケージは2週間ごとに交換した。
【0430】
B.実験手続き
製剤。式(10b)を0.5%メチルセルロース中で調製した。0.5%メチルセルロース溶液を調製するため、メチルセルロース粉末(400cP、Sigma #M0262)を80℃に加熱した減菌水に添加した。この溶液を80℃で撹拌しながら3~4時間インキュベートした後、4℃で連続的に撹拌しながら18時間インキュベートした。最終体積を減菌H2Oで調節した後、溶液を4℃でさらに30分間撹拌し、次いで0.45μMの殺菌フィルタを用いて濾過した。将来使用するため、調製した0.5%メチルセルロース溶液を4℃で保管した。
【0431】
式(10b)投与懸濁液を0.5%メチルセルロースの中で調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルの中に入れ、0.5%メチルセルロース溶液を注射器でバイアルに添加した。30秒間撹拌した後、バイアルを「高」設定の水浴超音波処理器(Fisher Scientific超音波浴5.7Lモデル3800、#15337418)の中で室温にて約20分間にわたって超音波処理すると、目に見える大きな白色の固体がない灰白色の懸濁液が得られた。調製した投与懸濁液を軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与懸濁液を週に1回調製した。
【0432】
オシメルチニブを0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の中で調製した。0.5%HPMC溶液を調製するため、0.5gのHPMC粉末(Sigma #H9262)をガラス製ビーカーの中の約80mLの減菌水に添加し、磁気撹拌プレート上で約1時間混合した。全粉末が溶けると、溶液を100mLのメスフラスコに移した。ビーカーを減菌水で洗浄し、その洗浄水を用いて最終体積を100mLに調節した。将来使用するため、調製した0.5%HPMC溶液を4℃で保管した。
【0433】
オシメルチニブ投与懸濁液を0.5%HPMCの中で調製するため、計量した化合物をガラス製バイアルに入れ、調製した0.5%HPMCを添加した。この混合物を磁気撹拌プレートの上に室温で一晩放置して全粒子をよく懸濁させた。調製した投与懸濁液は、軽く連続的に撹拌しながら4℃で保管した。新鮮な投与懸濁液を週に1回調製した。
【0434】
生体内モデリング、治療、およびデータ分析。HCC827-ER1細胞を用いた異種移植片研究のため、500万個の細胞を含む200μLのマトリゲル(Corning #354234)を5~6週齢の雌無胸腺ヌードマウス(Envigo UK)の左脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズをノギスで測定し、標準式:長さ×幅/2(ただし長さと幅はそれぞれ腫瘍の長径と短径であった)を用いて計算した。平均体積が400mmに達したとき、マウスを腫瘍体積と体重の両方に基づいて無作為化して12匹のマウスからなる複数の群に分け、経口強制投与(PO)を通じ、ビヒクル(午前に0.5%メチルセルロース、QD+午後に0.5%HPMC、QD)、オシメルチニブ(午前に0.5%メチルセルロース、QD+午後に5mg/kg、QDのオシメルチニブ)、式(10b)(式(10b):午前に100mg/kg、QD+午後に0.5%HPMC、QD)、または組み合わせ(式(10b):午前に100mg/kg、QD+午後に5mg/kgのオシメルチニブ)で治療した。投与は腫瘍細胞を皮下移植してから約3週間後に開始した。投与体積は各化合物について5mL/kgであり、毎日の測定からの個々のマウスの体重に基づいて調節した。投与とサンプル回収は下記のスケジュールに従った。午前投与と午後投与の間に6時間の間隔があり、腫瘍/血漿サンプルは24時間の投与サイクルの間の3つの時点で回収した。
【表5】
【0435】
薬物動態を分析するための血液回収。薬物動態(PK)分析のため、生きた動物から後眼窩静脈叢を通じて血液を取得した。マウスを拘束チューブの中に入れ、伸展位で後肢を固定した。その動物の足を硬い表面の上に乗せ、減菌した25gの針(BD Microlance 3)を足の頂部の伏在静脈の中に挿入した。針を抜き、EDTAで覆った毛細血液チューブ(Microvette CB 300 K2E)を用いて血液を毛細管現象により体積が100μLになるまで回収した。
【0436】
このチューブを数回ひっくり返してEDTAを均一に分布させた後、4℃にて13,000rpmで5分間にわたって遠心分離(VWR Micro Star 17R)して血漿を生成させた。上清(血漿)を注意深く1.5mLのチューブに移し、-80℃で保管した。
【0437】
マウス血漿中の式(10b)とオシメルチニブのLC-MS/MS定量。検証されたLC-MS/MS法を利用してマウス血漿中の式(10b)またはオシメルチニブの濃度を定量した。各分析のため、イミプラミン(70ng/mL)を内部標準として含有する200μLのアセトニトリルを用いて25μLの血漿サンプルを沈殿させた。この懸濁液を10分間撹拌した後、ベンチトップ遠心分離機(Eppendorf 5424R)の中で4,000rpmにて10分間遠心分離し、次いで175μLの上清を新しいチューブに移して125μLの水で希釈してからLC-MS/MS分析した。
【0438】
式(10b)またはオシメルチニブのLC-MS/MS分析を、ポジティブモード(ESI+)で作動するWaters Xevo TQ-Sトリプル四重極質量分析器(MS/MS)にカップルしたWaters Acquity UPLCシステムで実施した。質量分析器の検出条件は以下のようであった:キャピラリ電圧、3kV;コーン電圧、50ev;衝突エネルギー、25ev;供給源の温度、150℃;脱溶媒和温度、400℃;脱溶媒和ガス流、1000L/時;コーンガスグロー、0.15mL/分。式(10b)またはオシメルチニブはSUPELCO Ascentis fused-core C18カラム(2.7μm、2.1×20mm)を用いて分離し、多重反応モニタリング遷移によって検出した(式(10b)についてはm/z 437.3>186.0;オシメルチニブについてはm/z 500.0>385.1;イミプラミンについてはm/z 281.1>208.1)。注入体積は5μLであった。LC移動相Aは0.1%酢酸水であり、Bは0.1%酢酸-アセトニトリルであった。勾配は、5%B(0~0.3分)、5~95%B(0.3~1.3分)、95%B(1.3~1.7分)、95~5%B(1.7~1.71分)、5%B(1.71~2分)であり、流速は0.75mL/分であった。カラムの温度は40℃であった。これらの条件下で、保持時間は、式(10b)については1.29分、オシメルチニブについては1.27分、内部標準については1.37分であった。この方法は、未処理のCD-1マウス血漿中で1~1000ng/mLの分析範囲の式(10b)またはオシメルチニブについて検証された。MAssLynx v.4.0ソフトウエアを用いて全データを処理した。
【0439】
生体内薬力学アッセイ - 転写産物バイオマーカー分析。RNeasyミニRNA単離キット(Qiagen #74106)を用いてHCC827-ER1異種移植片腫瘍から全RNAを単離した。約5~10mgの凍結した腫瘍組織を、ドライアイスの上で、1匙の無RNアーゼステンレス鋼製ビーズ(MedSupply Partners #NA-SSB16-RNA)を収容したエッペンドルフ・セーフ-ロックチューブ(Eppendorf #022600028)に移した。チューブを普通の氷の上に移動させ、1%の2-メルカプトエタノール(Sigma #M6250)を含む350μLのRLT溶解バッファ(Qiagen #79216)を添加した。これらのチューブを次いでBullet Blenderホモジェナイザー(NextAdvance #BBX24)に移し、速度8で3分間作動させた。組織が見えなくなるまで追加して作動させた。その後、キットのマニュアルの中の標準的な全RNA単離プロトコルに従ってRNAの単離を実施した。50μLの無ヌクレアーゼ水を用いてRNAを溶離させた。単離されたRNAを、Nanodrop 8000(Thermo Fisher)を用いて定量した。
【0440】
Taqman qRT-PCRアッセイ。反応ごとに1μgの全RNAを用い、BioRad Tetrad2サーマルサイクラーで高性能cDNA逆転写キット(Thermo Fisher #4368813)を利用してcDNAを合成した(25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5分間、その後4℃に保持)。ddH2Oを用いてcDNAをさらに1:10に希釈した。384ウエル形式のQuantStudio 6(Thermo Fisher)上で以下のTaqmanプローブとTaqmanユニバーサルマスターミックスIIを販売者のプロトコルに従ってUNG(Thermo Fisher #4440040)なしで用いて定量リアルタイムPCRを実施した。各ウエルは、FAM染料で標識した興味ある標的プローブ(DUSP6、Thermo FisherアッセイID Hs01044001_m1)と、VIC染料で標識した内在性対照(ヒトRPLPO、Thermo Fisher #4326314E)を含有する。各cDNAについて3回の技術的反復実験をした。
【0441】
ΔΔCt法を利用してqRT-PCRデータを分析した。下記の式を用いてmRNAの相対レベルを計算した。倍数変化を計算するため、各サンプルのmRNAの相対レベルを、同じ時点に回収したビヒクル処理済み腫瘍の平均に規格化した(ビヒクル処理済み腫瘍の平均を「1」に設定した。計算はMicrosoft Excelで実施し、グラフをGraphPad Prism 8.0で作成した。
mRNAの相対レベル=2^(対照遺伝子の-興味ある遺伝子の
【0442】
RNAシークエンシングアッセイ(QuantSeqアッセイ)。QuantSeq 3’ mRNA-Seq FWDキット(Lexogen #015)を販売者の標準的プロトコルに従って用いてRNAライブラリを調製した。簡単に述べると、500ngの全RNA入力と11サイクルのcDNAのPCR増幅を利用してライブラリを生成させた。40サンプルまでのバッチを多重化し、High Output Kit v2を用いて各バッチをNextSeq 500(Illumina)上で走らせた(75サイクル)(Illumina #TG-160-2005)。
【0443】
R Bioconductorを用いてサンプル分析を実施した。GENCODE 23転写産物アノテーションに適合した転写産物のカウントは、kallisto(v0.44.0)を擬似モードで走らせて取得した。遺伝子のカウントは、一意的にマッピングされた全リードを合計することによって取得し、差次的発現分析をDESeq2のデフォルト設定で用いて実施した。ヒートマップをGraphPad Prism 8.0で作成した。
【0444】
C.結果
「RTKバイパス」抵抗性機構を表わすc-MET増幅があるEGFRmutオシメルチニブ抵抗性モデルであるHCC827-ER1皮下異種移植片では、オシメルチニブと組み合わせた式(10b)を用いた治療が腫瘍退縮を引き起こす(実施例2)。下記の実験を設計し、オシメルチニブと組み合わせた式(10b)の薬物動態(PK)と薬力学(PD)の効果を同じモデルにおいて特徴づけた。
【0445】
HCC827-ER1モデルにおいてオシメルチニブと組み合わせた式(10b)のPKとPDを求めるため、確立されたHCC827-ER1皮下腫瘍(平均腫瘍体積が約400mm)を有するマウスを、経口で送達されるビヒクル、5mg/kg QDのオシメルチニブ、100mg/kg QDの式(10b)、またはこれら2つの化合物の組み合わせで1日間治療した。式(10b)は午前に投与し、オシメルチニブは午後に投与し、投与の間に6時間の間隔を空けた。血漿と腫瘍のサンプルは24時間投与サイクルの間の3つの時点、すなわち式(10b)の6時間後/オシメルチニブの24時間後(オシメルチニブの投与トラフ)、式(10b)の8時間後/オシメルチニブの2時間後(オシメルチニブのほぼ投与ピーク)、および式(10b)の24時間後/オシメルチニブの18時間後(式(10b)の投与トラフ)に回収した。
【0446】
式(10b)は、単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで投与されたとき、マウスにおいて血漿中で大きな濃度を実現する。薬物動態分析(表3)から、オシメルチニブは、単剤として、または式(10b)との組み合わせで投与されたとき、約700nMの血漿濃度(単剤療法としては681nM、式(10b)との組み合わせでは792nM)に達することが実証され、これはオシメルチニブのヒトCmaxと同等である。オシメルチニブの血漿濃度は投与の18時間後に低ナノモルの範囲であり、投与の24時間後に定量限界未満であった(定量限界は2nMであった)。これらのオシメルチニブ血漿濃度は、対応する有効性研究(実施例2)において同じ時点に観察された濃度と同等であった。式(10b)を100mg/kgで用いた治療は、単剤療法としてと、オシメルチニブとの組み合わせで投与されたときに大きな血漿濃度を生じさせ、投与の6時間後と8時間後に約30~50μM、投与の24時間後に約1μMであった(表4)。PK/PD研究における血漿中の式(10b)の濃度は、有効性研究(実施例2)からの濃度と(実験的変動内)で全体的に似ていた。各化合物の濃度は、マウスが単剤療法または組み合わせを受けたときで同等であった。これは、マウスではその2つの化合物の間に薬-薬相互作用がないことを示唆する。
【表6】
【0447】
単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)を用いた治療は、HCC827-ER1異種移植片腫瘍におけるDUSP6 mRNAのレベルを抑制する。EGFRmutオシメルチニブ抵抗性モデルにおいてオシメルチニブと式(10b)の組み合わせを評価したインビトロでの研究(実施例1)と同様、DUSP6 mRNAをMAPK経路活性の読み出しとして使用した。図7に示されているように、5mg/kgのオシメルチニブを用いた治療(親HCC827異種移植片モデルで腫瘍静止状態を引き起こした用量(実施例2))は、DUSP6 mRNAのレベルに対してほとんど影響がなく、観察された最大の抑制は50%未満であった。これは、オシメルチニブに対して抵抗性であるHCC827-ER1モデルに一致する。逆に、式(10b)を100mg/kgで単剤として用いた治療は、投与の6時間後と8時間後の時点でDUSP6 mRNAのレベルを90%超抑制した(図7の第1と第2の時点)。式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた治療は、これらの時点で、DUSP6 mRNAに対して単独の式(10b)と同様の影響があった。式(10b)を投与した24時間後(図7の第3の時点)には、式(10b)を用いた治療はHCC827-ER1腫瘍の中のDUSP6 mRNAを中程度抑制し(50%未満の抑制)、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた治療は、DUSP6 mRNAのレベルをより強力に抑制した(50%超の抑制)。組み合わせ群におけるDUSP6 mRNAの抑制は、全3つの時点でオシメルチニブ単剤療法群と比べて統計的により大きかった。
【0448】
合わせると、データは、式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせとして用いた治療が、HCC827-ER1異種移植片腫瘍の中のDUSP6 mRNAのレベルを抑制したことを示している。DUSP6 mRNAに対する併用治療のより大きな効果が、式(10b)の投与トラウにおいて観察され、それはオシメルチニブ治療の18時間後であった。
【0449】
式(10b)を単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせとして用いた治療は、HCC827-ER1異種移植片腫瘍の中のMPAS-プラスシグネチャを抑制した。DUSP6 mRNAのレベルに加え、他のMAPK経路遺伝子を調べた。MPAS(MAPK経路活性スコア)シグネチャは10個の遺伝子のシグネチャであり、MAPK経路活性を反映している。この遺伝子シグネチャを臨床で用いてERK阻害剤GDC-0994の薬力学効果を評価した。MPASシグネチャに基づき、13遺伝子シグネチャ(「MPAS-プラス」)を開発した。その中に含まれるのは、10個のMPAS遺伝子と、多くの細胞系モデルでSHP2阻害剤によって変化する3個の追加のMAPK標的遺伝子(ETV1、EGR1、およびFOSL1)である。DUSP6 mRNAのレベルに関して観察されたのと同様、オシメルチニブを5mg/kgで単剤として用いた治療は、すべての時点でMPAS-プラスシグネチャに対する効果がほとんどなかった(図8)。式(10b)を投与してから6時間後と8時間後の時点で、単剤として、またはオシメルチニブとの組み合わせで100mg/kgの式(10b)を用いた治療は、MPAS-プラス遺伝子のmRNAレベルを強力に抑制した;式(10b)単独、またはオシメルチニブとの組み合わせの同様の効果は、この効果が主に式(10b)によって起こることを示唆している。式(10b)を投与してから24時間後の時点で、式(10b)とオシメルチニブの組み合わせを用いた治療は、MPAS-プラス遺伝子のmRNAのレベルをいずれかの化合物だけの場合よりも強力に抑制した。合わせると、MAPKシグネチャを用いた転写産物分析から、単剤としての、またはオシメルチニブとの組み合わせでの式(10b)を用いた治療が、オシメルチニブ抵抗性HCC827-ER1腫瘍の中でMAPK経路シグナル伝達を抑制したことが実証される。
【0450】
実施例4:固形腫瘍を持つ患者における、EGFR阻害剤と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究
EGFR阻害剤(例えばオシメルチニブまたはエルロチニブ)と組み合わせたSHP2阻害化合物(10b)の臨床研究を実施することができる。研究の対象は固形腫瘍(非小細胞肺がん(NSCLC)(例えばEGFR変異を特徴とするNSCLC)など)を持つ。対象は以前に標準治療を終えていてもよい。
【0451】
臨床研究は、EGFR阻害剤と組み合わせて用いるときの化合物(10b)の安全性、忍容性、および最大耐量(MTD)および/または第2相推奨用量(RP2D)を評価するための用量漸増相を含むことができる。用量漸増研究の追加の目的に含めることができるのは、EGFR阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の抗腫瘍活性の予備的評価(固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)v1.1に従って治験責任医師によって評価される客観的奏功率[ORR、完全奏功(CR)率+部分奏功(PR)率]、応答の持続期間[DOR]、および無増悪生存[PFS]と、全生存[OS]によって規定される);組み合わせで与えられる化合物(10b)とEGFR阻害剤の薬物動態(PK)の特徴づけ(例えば血漿または血清濃度-時間データからの化合物(10b)とEGFR阻害剤の曲線下面積[AUC]、最大薬濃度[Cmax]、Cmaxまでの時間[Tmax]、半減期));EGFR阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の循環中と腫瘍内の標的関与(target engagement)(薬力学活性)の特徴づけ(例えばEGFR阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の活性の循環中と腫瘍内の標的関与バイオマーカーにおける生の、規格化した、および/またはベースライン調整した分析物シグナル);および化合物(10b)と組み合わせて与えられたときのEGFR阻害剤の免疫原性の特徴づけである。末梢と腫瘍内のバイオマーカーも評価することができる。用量漸増相は例えば5~20人の患者を含むことができる。
【0452】
臨床研究は、対象(例えばEGFR変異がある進行したNSCLCを持っていて標準治療が失敗した対象)でEGFR阻害剤と組み合わせて使用されるとき、RECISTv1.1に従う(治験責任医師による)ORRによって規定される化合物(10b)の抗腫瘍活性を評価するため用量拡大/最適化期間も含むことができる。用量拡大/最適化研究の追加の目的に含めることができるのは、EGFR阻害剤と組み合わされた化合物(10b)の抗腫瘍活性の追加測定の評価(RECISTv1.1によって規定される(盲検独立中央判定[BICR]による)ORRと、(治験責任医師とBICRによる)DORおよびPFS、ならびにOS);RP2Dの化合物(10b)をEGFR阻害剤と組み合わせたときの安全性と忍容性の評価;組み合わせで与えられる化合物(10b)とEGFR阻害剤のPKの特徴づけ;EGFR阻害剤と組み合わせた化合物(10b)の循環中と腫瘍内の標的関与(薬力学活性)の特徴づけ;および化合物(10b)と組み合わせて与えられたときのEGFR阻害剤の免疫原性の特徴づけである。末梢と腫瘍内のバイオマーカーも評価することができる。用量拡大/最適化相には例えば10~50人の患者を含めることができる。
【0453】
あるいは臨床研究は、1つ以上の投与コホートを含む単一の期間を含むことができる。
【0454】
臨床研究で使用するEGFR阻害剤として、例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、イコチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オシメルチニブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、およびラパチニブが可能である。EGFR阻害剤は経口投与することができる。
【0455】
化合物(10b)は本明細書に記載されている通りである。化合物(10b)は例えば50と100mgの経口カプセルとして投与することができる。
【0456】
研究に含まれる対象は、以前に、EGFR阻害剤を含む少なくとも1回の治療ラインを、1回の治療ラインとして、または別の治療剤との組み合わせで受けた受けたことがあってもよい。この研究の対象は、固形腫瘍((例えば本明細書に記載されている)EGFR変異を特徴とする固形腫瘍など)を持っている可能性がある。例えばこの研究の対象は、EGFR変異を持つNSCLC(EGFR陽性の局所的に進行または転移したNSCLCなど)を有する可能性がある。この研究の対象は、EGFRナイーブ(例えばEGFR TKIナイーブ)である可能性がある。
【0457】
選択基準
臨床研究に参加する患者は、下に列挙した選択基準(適用可能なとき)を満たすものとする:
1.スクリーニング来院時に署名したインフォームドコンセントを提出する意思があってそれを提出できるほか、研究終了まですべての研究来院と研究条件に従うことができる18歳以上の個人。
2.スクリーニングの前1年以内に回収された腫瘍または液体生検のサンプルを検査した地方または中央の検査室からのEGFR変異の文書がある。
3.RECIST v1.1による測定可能な疾患を持つ。
4.治験責任医師の判断によれば、研究治療の開始後に12週間超の余命がある。
5.女性は、子どもを持つ可能性があるか、以前に卵管結紮(スクリーニングの1年以上前)、全子宮摘出を受けたことがある、または閉経している(12ヶ月連続の無月経と定義され、追跡ホルモンレベル評価によって確認されている)場合には、血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン試験が陰性でなければならない。
6.子どもを持つ可能性のある患者は、研究期間中と、女性患者については研究治療を最後に投与した後の少なくとも5ヶ月間、または男性患者については研究治療を最後に投与した後の105日間にわたって(個々の患者についてどちらか長いほう)2つの避妊法を利用せねばならない。女性患者は、本研究の間は妊娠または授乳の状態になってはならない。女性と男性の患者は、研究治療を最後に投与した後のそれぞれ少なくとも5ヶ月間または105日間にわたり、生殖を目的とした卵子(卵細胞、卵母細胞)または精子の提供に同意してもならない。
7.局所的に進行していて切除不能であるか、転移したNSCLCが組織学的文書にされている。
【0458】
除外基準
下に列挙した除外基準のいずれかに合致する患者は研究への参加の適格でないとする。
1.サイクル1の1日目の来院の直前4週間以内に、または適用可能な場合には研究血球薬の5回の半減期以内に(どちらか短いほう)、介入臨床研究に参加したことがある。患者は常に、下記のウォッシュアウト期間に関する特定の併用薬に適用される他の適格基準を守らねばならない。
2.緩和のため研究治療の開始前1週間以内に限定された照射野の放射線療法または陽子線治療を受けた、または研究治療の開始前4週間以内に骨髄の30%超への照射、または広い範囲の照射を受けた。
3.以下のいずれかを摂取した:
a.サイクル1の1日目から14日以内または5半減期以内(どちらかより長いほう)に、強力な、または中程度のシトクロムP450(CYP)3A4の誘導剤または阻害剤、またはP-糖タンパク質(P-gp)の誘導剤または阻害剤(グレープフルーツジュース、スターフルーツ、またはセビリアオレンジを含有するハーバルサプリメントまたは食品が含まれる)、および/または
b.サイクル1の1日目の7日前に停止し、研究期間中に停止している場合を除き、P-gp、乳がん抵抗性タンパク質(BCRP)、多剤と毒素の排出タンパク質(MATE)1、またはMATE2-Kの既知の基質である薬。
4.下に規定するように不十分な臓器機能を持つ:
血液学
a.白血球細胞カウントが2,000/μL未満;
b.絶対好中球カウントが1,500/μL未満;
c.血小板が100,000/μL未満;および
d.2週間以下の輸血、または6週間以下の赤血球生成刺激剤(例えばEpo、Procrit)なしでヘモグロビンが9g/dL未満。
腎臓
e.血清クレアチニンが1.5×ULN超(ただし(測定するか、コッククロフト-ゴールトの式を用いて計算して)クレアチニンクリアランスが40mL以上/分である場合は除く)
肝臓
g.患者がジルベール症候群または溶血性貧血の診断を治験責任医師によって確認された場合には、血清全ビリルビンが1.5×施設内基準値上限(ULN)以上、または3.0×施設内ULN以上;および
h.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)が2.5×ULN超。
凝固
i.患者が抗凝固剤療法を受けていて、プロトロンビン時間(PT)または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、国際標準化比(INR)またはPTが1.5×ULN超;および
j.患者が抗凝固剤療法を受けていて、PTまたはaPTTが抗凝固剤の想定される用途の治療域内にある場合を除き、活性化部分トロンボプラスチン時間が1.5×ULN超。
5.測定可能なウイルス量を持つ活性なB型肝炎感染(B型肝炎表面抗原[HBsAg]またはB型肝炎ウイルス[HBV]DNAの存在によって明確にされる)、C型肝炎感染(C型肝炎ウイルス[HCV]抗体と陽性HCV DNAの存在によって明確にされる)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を持つ。
6.生命を脅かす病気、医学的症状、活性な制御されない感染、または臓器系機能不全(例えば腹水、血液凝固障害、または脳症)、または(治験責任医師の見解では、参加している患者の安全を損なう可能性、または研究転帰の完全性を妨げるか損なう可能性のある)他の理由がある。
7.以下の心臓関連の問題または知見のいずれかを持つ:
a.研究治療開始前の最後の6ヶ月以内に有意な心血管疾患(例えば脳血管障害、心筋梗塞、または不安定狭心症)の既往歴;
b.臨床的に有意な心疾患(ニューヨーク心臓協会のクラスII以上の心不全が含まれる);
c.研究治療開始前の過去12ヶ月以内に左心室駆出率(LVEF)が50%未満の前歴;
d.研究目的のスポンサーによって提供されたECG機械を用いた3つの心電図(ECG)からの平均として導出した安静時補正QT間隔(QTc)が470ミリ秒超;および/または
e.安静時ECGのリズム、伝導、または形態における臨床的に有意なあらゆる異常(例えば第3度心ブロック、モビッツ2型心ブロック、心室性不整脈、制御されない心房細動)。
8.過去3年以内に、治癒的治療をされた非黒色腫皮膚がん、表在性尿路上皮癌、上皮内子宮頸がん、または治癒的治療をされるか注意深くモニタされていて研究のコース中に再発または進行の治療を必要とすることが予想されない他の任意の悪性腫瘍とは別の浸潤性悪性腫瘍の診断を持つ。
9.非脳腫瘍からの未治療の脳転移を持つ。脳転移が切除されているか、サイクル1の1日目の少なくとも4週間前に終了する放射線療法を受けた患者が適格だが、研究薬を最初に投与する前にその患者が以下の基準のすべてを満たすことが条件である:a)2以下のCNS治療グレードに関係する残留神経症状;b)サイクル1の1日目の前に少なくとも2週間にわたって毎日安定な用量または減らしていく用量の10mg以下のプレドニゾン(または換算)を投与された(適用可能な場合);およびc)サイクル1の1日目の前4週間前以内の追跡磁気共鳴イメージング(MRI)が新たな病巣の出現を示さない。
10.研究登録の4週間前以内に大きな外科手術を受けた。
注:これは、末梢挿入式中心ラインカテーテル留置、胸腔穿刺、穿刺、生検、または膿瘍ドレナージなどの手続きを受けたことがある患者を含まない。
11.どの組み合わせを患者が投与される可能性があるかに応じ、EGFR阻害剤または化合物(10b)に対して、EGFR阻害剤または化合物(10b)の活性または不活性な賦形剤に対して、またはEGFR阻害剤または化合物(10b)と似た化学構造またはクラスの薬に対して過敏の前歴を持つ。
12.以前にSHP2阻害剤(例えばTNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、およびPF-07284892)を受けたことがある。
13.治験責任医師の見解では、化合物(10b)および/またはEGFR阻害剤の吸収を不可能にする可能性のある胃腸病(例えば胃切除後、短腸症候群、制御されないクローン病、絨毛萎縮を伴うセリアック病、または慢性胃炎)を持つ。
14.透析中である。
15.同種異系骨髄移植の前歴を持つ。
16.経口薬(カプセル、錠剤)を、製品の剤型を噛むこと、壊すこと、潰すこと、開くこと、またはそれ以外のやり方で変化させることなく飲み込むことができない。
17.自己免疫疾患であることが判明しているか疑われる(例外として患者が登録を許可されるのは、1型糖尿病、ホルモン置換だけを必要とする甲状腺機能低下症、全身治療を必要としない皮膚障害(例えば白斑、乾癬、または脱毛症)、または外部トリガーの不在下では再発が予想されない状態の場合である)。
18.コルチコステロイド(プレドニゾン換算で10mg超)または他の免疫抑制薬のいずれかを用いた全身治療をサイクル1の1日目から14日以内に必要とする状態を持つ。活性な自己免疫疾患の不在下では、プレドニゾン換算で10mg超の吸入または局所のステロイドと副腎置換ステロイドが許容される。
19.最初の研究治療の前30日以内にいずれかの生/弱毒化ワクチンを受けた。
【0459】
研究設計
研究は、初期スクリーニング期間(例えば30日のスクリーニング期間)と、その後の複数の連続した治療サイクルとそれに続く治療後の追跡期間を含む治療期間を含むことができる。投与は1年以上続く可能性があるが、患者が研究治療を中断するか、研究から離脱する場合は別である。
【0460】
臨床研究の用量漸増相はベイズ最適間隔(BOIN)設計に従うことができる。複数の用量レベルの化合物(10b)を用量漸増研究で利用することができる(250mg、400mg、および550mgの2つ以上など)。EGFR阻害剤は、化合物(10b)と組み合わせて適切な用量(アメリカ食品医薬品局によって承認された用量など)で投与されることになる。用量漸増相を利用して研究の用量漸増相で用いられるRP2Dが決定される。
【0461】
臨床研究の用量漸増相では、対象は、化合物(10b)をその用量漸増相からのRP2DでEGFR阻害剤と組み合わせて投与される。用量漸増相の結果に応じ、異なる用量レベルでの化合物(10b)の投与を含む1つ以上の追加コホートを利用することができる。
【0462】
化合物(10b)またはEGFR阻害剤の投与は、例えば薬関連有害事象が発生した際には調節することができる。
【0463】
図9は、BOIN設計を利用して実施した試験のためのフローチャートを示す。略号:BOIN=ベイズ最適間隔設計;DLT=用量制限毒性;MTD=最大耐量。注:λe=19.7%とλd=29.8%。実際には6人の患者/コホートであり、DLT率が1/6以下の場合には用量を漸増させ、DLT率が2/6以上の場合には、用量を漸減させる。
【0464】
これまでの開示は、理解を明確にする目的で図解と実施例によっていくらか詳細に記述してきたが、当業者は、ある変更と改変を添付の請求項の範囲内で実施できることがわかるであろう。それに加え、本明細書に提示されている各参考文献は、その全体が、各参考文献が参照によって個別に組み込まれているかのように同じ程度で参照によって組み込まれている。本出願と本明細書に提示されている参考文献の間に齟齬が存在する場合には、本出願が優先する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】