(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム障害を有する対象を治療するための方法及び製品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240927BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240927BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240927BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240927BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240927BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240927BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240927BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20240927BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20240927BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/70
A61K9/20
A61K9/107
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/34
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/12
A61P25/08
A61P25/00
A61P25/22
A61K31/198
A61K31/685
A61K33/06
A61K33/30
A61K31/194
A61K31/19
A61K31/185
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520543
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2022059429
(87)【国際公開番号】W WO2023057879
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510007481
【氏名又は名称】ニューリム・ファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEURIM PHARMACEUTICALS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ジサペル,ナヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ラウドン,モシェ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
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4C206ZA02
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(57)【要約】
チカグレロル、またはチカグレロル塩、またはマグネシウムイオン含有化合物、亜鉛イオン含有化合物、リジンもしくはリジン塩、アルギニンもしくはアルギニン塩、レシチン、もしくはそれらの組み合わせを含有し得る第2の薬剤との組み合わせを含有する、錠剤または液体または固体ODTまたはODFまたはSMEDDSを投与することによって、自閉症スペクトラム障害、知的障害、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、不注意、または脆弱X症候群もしくは脳神経炎症と診断された対象を治療するための方法及び製品であって、ODTまたはODFまたはSMEDDSが、15分以内に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩の50%超、及び第2の薬剤の50%超を放出する、方法及び製品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1:0.1~1:50の重量比のチカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩及び第2の薬剤と、賦形剤と、を含む、固体経口崩壊錠剤(ODT)または固体経口溶解フィルム(ODF)または自己微乳化型薬物送達系(SMEDDS)であって、前記ODTまたはODFまたはSMEDDSが、United States Pharmacopoeia Apparatus 2を使用して、37.0±0.5℃で500mLの脱イオン水中、50rpmでパドルを使用して溶解を試験したとき、15分以内に、前記チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも75%、及び前記第2の薬剤の少なくとも75%を放出する、前記固体経口崩壊錠剤(ODT)または固体経口溶解フィルム(ODF)または自己微乳化型薬物送達系(SMEDDS)。
【請求項2】
チカグレロルの最大濃度の約50%及び前記第2の薬剤の最大濃度の約50%が、摂取の1時間以内に健康なヒトの血漿に吸収されるような、インビボ吸収特性を有する、請求項1に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項3】
チカグレロルの最大濃度の約80%及び前記第2の薬剤の最大濃度の約80%が、摂取の8時間以内に健康なヒトの血漿に吸収されるような、インビボ吸収特性を有する、請求項1または請求項2に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項4】
1mg~90mgのチカグレロル及び約5mg~200mgの前記第2の薬剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項5】
前記その薬学的に許容される塩が、塩酸チカグレロル、酒石酸チカグレロル、トレオン酸チカグレロル、グリセリン酸チカグレロル、カプリル酸チカグレロル、クエン酸チカグレロル、フマル酸チカグレロル、または遊離塩基チカグレロルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項6】
前記塩酸チカグレロル、酒石酸チカグレロル、トレオン酸チカグレロル、グリセリン酸チカグレロル、カプリル酸チカグレロル、クエン酸チカグレロル、またはフマル酸チカグレロル、または遊離塩基チカグレロルが、ラセミ形態である、請求項5に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項7】
前記塩酸チカグレロル、酒石酸チカグレロル、トレオン酸チカグレロル、グリセリン酸チカグレロル、クエン酸チカグレロル、カプリル酸チカグレロル、またはフマル酸チカグレロル、または遊離塩基チカグレロルが、少なくとも95%鏡像異性的に純粋な(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオールである、請求項5に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項8】
前記チカグレロルの鏡像異性体が、((1S,2S,3R,5S)-3-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオールである、請求項1に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項9】
前記第2の薬剤が、マグネシウムイオン含有化合物、亜鉛イオン含有化合物、リジンもしくはリジン塩、アルギニンもしくはアルギニン塩、レシチン、またはそれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれか1項または組み合わせに記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項10】
前記マグネシウムイオン含有化合物が、マグネシウムの臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、酢酸塩、トレオン酸塩、酒石酸塩、グリセリン酸塩、クエン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、炭酸塩、リンゴ酸塩、タウリン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、またはピロリン酸塩である、請求項9に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項11】
前記亜鉛イオン含有化合物が、臭化物、ヨウ化物、または亜鉛イオンと塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、炭酸、クエン酸、カプリル酸、カプリン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、もしくはアルファ-ヒドロキシ-カルボン酸との複合体である、請求項9に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項12】
前記リジンが、L-リジンまたはL-リジン塩酸塩である、請求項9に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項13】
前記第2の薬剤が、リジンとレシチンとの組み合わせまたはアルギニンとレシチンとの組み合わせである、請求項9に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項14】
マグネシウムまたは亜鉛化合物と、塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、炭酸、クエン酸、カプリル酸、カプリン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、アルファ-ヒドロキシ-カルボン酸、またはそれらの組み合わせとの複合体を1:0.1~1:50の比でさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項15】
前記チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と前記リジンとの比が1:0.4~1:20である、請求項9~14のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項16】
前記チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と前記マグネシウムイオン含有化合物との比が1:1~1:10である、請求項9~14のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項17】
前記チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と前記亜鉛イオン含有化合物との比が1:5~1:50である、請求項9~14のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項18】
1つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項19】
ポリマー、充填剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、コーティング、またはサブコーティングをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項20】
前記チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、液体、ビーズ、コーティングされた及びコーティングされていないミニ錠剤、ペレット、粉末、層、フィルム、またはコアの形態で含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODFまたはSMEDDS。
【請求項21】
少なくとも50%の吸水率を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項22】
10~40秒の湿潤時間を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項23】
前記ODTが、少なくとも4N/cm
2の引張強度を有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項24】
少なくとも40%の多孔率を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項25】
前記ODTが、少なくとも30Nの硬度を有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項26】
前記ODTが、0.5~3mmの厚さを有する、請求項1~25のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項27】
前記ODTが、100~1000mgの総錠剤重量を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項28】
前記ODFが、20~200μmの厚さを有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項29】
ヒトの口腔中に溶解したときに5.5~7のpHを有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項30】
脱イオン水中に溶解したときに5.5~7のpHを有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項31】
模擬ヒト唾液中に溶解したときに5.5~7のpHを有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の固体ODTまたは固体ODF。
【請求項32】
前記第2の薬剤が、トレオン酸塩含有化合物ではない、請求項1~31のいずれか1項に記載の固体ODTもしくは固体ODF、またはSMEDDS。
【請求項33】
前記第2の薬剤が、ステアリン酸塩含有化合物ではない、請求項1~31のいずれか1項に記載の固体ODTもしくは固体ODF、またはSMEDDS。
【請求項34】
油、界面活性剤、及び補助界面活性剤を含むエマルション組成物を含むSMEDDSの形態である、請求項1~33のいずれか1項に記載の固体ODTもしくは固体ODF、またはSMEDDS。
【請求項35】
(i)前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸、またはそれらの組み合わせであり、
(ii)前記補助界面活性剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラグリコール、またはそれらの組み合わせであり、
(iii)油、カプリル酸、カプリル酸グリセリド、またはそれらの組み合わせである、
請求項34に記載の固体ODTもしくは固体ODF、またはSMEDDS。
【請求項36】
前記エマルション組成物が、前記エマルション組成物の総重量に基づいて10~50重量%の油、5~80重量%の界面活性剤、及び5~80重量%の前記補助界面活性剤を含み、前記SMEDDSが、前記エマルション組成物及びチカグレロルを15:1~3:1の重量比で含む、請求項34または請求項35に記載の固体ODTもしくは固体ODF、またはSMEDDS。
【請求項37】
自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、不注意、脆弱X症候群と診断されたか、またはTNFαが上昇したと診断されたか、または神経炎症の炎症性サイトカインマーカーが上昇したと診断された対象を治療する方法であって、チカグレロル、その鏡像異性体、もしくはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、またはチカグレロル、その鏡像異性体、もしくはその薬学的に許容される塩と第2の薬剤との1:0.1~1:50の重量比の組み合わせを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
前記チカグレロルまたは前記組み合わせを、経口または非経口で投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
チカグレロルまたは前記組み合わせを、鼻腔内、口腔内、舌下、静脈内、経粘膜、または皮下に投与することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
60mg/日未満の前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
40mg/日未満の前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
30mg/日未満の前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
20mg/日未満の前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
チカグレロル血漿レベルが、対象における自閉症症候を治療するのに十分であるように、前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を送達することを含む、請求項37~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
約50~300ng/mLのチカグレロル血漿レベルが、前記対象において達成される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
小児または成人の自閉症症候を治療するのに十分なチカグレロル血漿レベルが少なくとも5時間維持されるように、前記チカグレロル、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩を送達することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記維持されるチカグレロル血漿レベルが、約50~300ng/mLである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
約50~300ng/mLのチカグレロル血漿レベルが少なくとも7時間維持される、請求項46~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
約80~200ng/mLのチカグレロル血漿レベルが少なくとも5時間維持される、請求項36~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
約80~200ng/mLのチカグレロル血漿レベルが少なくとも7時間維持される、請求項36~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記投与が、請求項1~32のいずれか1項に記載の固体ODTまたはODFを前記対象に投与することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
前記投与が、液体組成物中で前記組み合わせを前記対象に投与することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が、カプセル中で前記組み合わせを前記対象に投与することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が、投与の1時間以内に、治療有効量のチカグレロルを提供する、請求項36~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の薬剤が、トレオン酸塩含有化合物ではない、請求項36~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の薬剤が、ステアリン酸塩含有化合物ではない、請求項36~55のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自閉症スペクトラム障害及び関連する障害に罹患している対象を治療するための方法及び材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症または自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的相互作用及びコミュニケーションにおける持続的な困難、ならびに限られた関心及び反復的な行動を特徴とする複雑な神経発達症状である。ASDは通常、生後3年以内に診断され、特徴的な症候または行動特性(コア症候)が現れる。ASDの診断には、現在、以前は別々に診断されていたいくつかの症状:自閉症性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、及びアスペルガー症候群が含まれる。これらの症状の全ては、現在、American Psychiatric Association’s Diagnostic & Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition(DSM-V)に記載されるように、自閉症スペクトラム障害の診断基準に包含される。
【0003】
自閉症は、軽度から、事実上重度に消耗性となるまでのコミュニケーション、行動、社会的課題として現れる可能性がある。自閉症は広範囲にわたるスペクトラム障害であるため、自閉症を有する2人の個人は、非常に異なる行動、発達レベル、及び健康またはサポートのニーズを呈する可能性がある。自閉症の小児及び成人で観察される行動には、他者に関連する問題または人への関心の欠如、特定の音、匂いまたは光に対する極端な感受性、反復的な行動パターン、狭い強迫神経症的関心を有すること、アイコンタクトを回避すること、ルーチンの変化への適応の困難、及び欲求の表現の困難が含まれる。早期診断及び行動介入の進歩にもかかわらず、これまでのところ、ASDのコア症候(社会的コミュニケーションの欠如ならびに、ルーチン及び反復行動への厳守)を特異的に標的とする食品医薬品局(FDA)が承認した医薬品はない。自閉症の治療の中心は、行動療法及び教育介入である。製薬業界は、自閉症の効果的な治療法の開発に繰り返し失敗しており、近年では、オキシトシン、アルバクロフェン、メマンチン、及びマボグルラントを含む一連の製品の失敗がある。自閉症における社会的コミュニケーションを改善するためのブレークスルーと目されたバソプレシン1a受容体アンタゴニストbalovaptan(RG7314)を用いた臨床試験は、無益であるために最近中止された。
【0004】
複数の研究は、炎症、サイトカイン調節不全、及び抗脳自己抗体を含む異常な免疫機能が、自閉症スペクトラム障害の発症に著しく影響を及ぼし得ることを報告する。いくつかの個体は、感染症の外見上の徴候を示さず、代わりに、非臨床的(または無症候性)感染症に罹患している可能性がある(Lintas et al.Association of autism with polyomavirus infection in postmortem brains.J Neurovirol.2010 Mar;16(2):141-9)。
【0005】
自閉症スペクトラム障害及び自閉症のコア症候を治療するための医薬製品に対する長い間満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、自閉症スペクトラム障害及び関連する障害を有する個体において、社会的相互作用の障害、不安、易刺激性、攻撃性、かんしゃく、気分の急激な変化、自傷行為(SIB)、多動性、及び不注意を有する対象を治療するための製品及び方法を含む。ある特定の態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤と組み合わせて投与することを含む。チカグレロルは、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオールとしても知られている。本開示はまた、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩の鏡像異性体を含む。例えば、チカグレロルの1つの鏡像異性体は、(1R,2R,3S,5R)-3-(7-(((1S,2R)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオールである。別途記載のない限り、チカグレロルという用語は、その鏡像異性体を含むように広く解釈されるべきである。
【0007】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を単独で、または第2の薬剤と1:0.1~1:50の重量比で組み合わせて、投与することによって、自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、不注意、脆弱X症候群、または他の神経炎症性障害と診断された対象を治療する方法を含む。
【0008】
一態様では、本開示は、チカグレロル、鏡像異性体、もしくはその薬学的に許容される塩と、第2の薬剤とを含有する経口崩壊錠剤(ODT)または経口溶解フィルム(ODF)を含む。本開示のODT及びODFは、固体経口剤形である。当業者は、ODTまたはODFが、他の経口剤形、例えば、チュアブル錠剤または液体と一緒に丸ごと飲み込む必要がある錠剤とは異なる剤形であること、かつ異なる薬学的特性、製造技術、及び規制要件を有することを即座に認識するであろう。ODT及びODFは、そのような製品を摂取するために噛んだり液体を飲んだりする必要がなく、唾液中での急速な経口崩壊を含む特定の性能特性を有する。
【0009】
一態様では、本開示は、経口崩壊錠剤(ODT)の形態で第2の薬剤と組み合わせて、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0010】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を第2の薬剤と組み合わせて、経口溶解フィルム(ODF)の形態で、投与することを含む。
【0011】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、鏡像異性体、もしくはその薬学的に許容される塩を、または第2の薬剤と組み合わせて、滴剤、例えば、自己微乳化型薬物送達系(SMEDDS)の形態で、投与することを含む。
【0012】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を、マグネシウム塩と組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を、亜鉛塩と組み合わせて投与することを含む。
【0013】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を、リジンと組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、レシチンと組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、リジン及びレシチンと組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、リジン及びマグネシウム塩と組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、リジン及び亜鉛塩と組み合わせて投与することを含む。一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、アルギニン含有化合物と組み合わせて投与することを含む。
【0014】
一態様では、本開示のODTまたはODFまたはSMEDDS中のチカグレロルの重量は、従来のチカグレロル製品よりも少なく、例えば、90mg未満、60mg未満、40mg未満、35mg未満、30mg未満、または10mg未満である。一態様では、本開示の方法に従って1日当たりに投与されるチカグレロルの重量は、従来のチカグレロルレジメンよりも少なく、例えば、90mg/日未満、60mg/日未満、40mg/日未満、30mg/日未満、20mg/日未満、10mg/日未満、または必要に応じて1日2~4回の0.25~0.5mg/kg体重未満である。いくつかの態様では、本開示のODTまたはODFまたはSMEDDSは、1日に1回のみ投与される。
【0015】
一態様では、本開示は、対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、さらなる成分、例えば、限定されないが、クエン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、カプリル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、及び/またはアルファ-ヒドロキシ-カルボン酸を含む、マグネシウムまたは亜鉛と複合体化する酸と組み合わせて投与することを含む。
【0016】
一態様では、対象は、自閉症スペクトラム障害と診断されている。
【0017】
一態様では、対象は、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、及び/または不注意を有する。一態様では、対象は、脆弱X症候群を有する。
【0018】
一態様では、対象は、乳児、小児、または青年であり、そのような場合、投与されるチカグレロルの量は、体重当たり、例えば、0.01~3mg/kg、1日1~3回で計算される。
【0019】
一態様では、対象は、血漿中の神経炎症のマーカーとして、TNFαまたは炎症性サイトカインの上昇を有すると診断されている。本開示の主題の他の特徴及び特性、ならびに運用方法、構造の関連要素の機能及び部品の組み合わせ、ならびに製造の経済性は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮すると、より明らかになり、これらの全てが本明細書の一部を形成する。
【0020】
一態様では、本開示は、自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、及び/または不注意、脆弱X症候群を有する対象に、または血漿中の神経炎症のマーカーとしてTNFαまたは炎症性サイトカインが上昇していると診断された対象に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0021】
別の態様では、チカグレロル及び第2の薬剤は、チカグレロルの溶解度及びその生物学的利用能を高めるために、自己微乳化型送達系(SMEDDS)に含まれるべきである。例えば、いくつかの態様では、チカグレロル製剤の溶解度は、Brilinta(登録商標)(市販品)におけるチカグレロルと比較して、25℃で少なくとも2倍高い。
【0022】
本発明は、改善されたチカグレロル剤形、特に、自閉症スペクトラム障害及び関連障害に罹患している対象の脳へのチカグレロルの迅速かつ安全な送達を可能にする低用量剤形の必要性に対処する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】SAL-ビヒクル、SAL-チカグレロル(30mg/kg)、VPA-ビヒクル、VPA-チカグレロル(0.3mg/kg)、VPA-チカグレロル(10mg/kg)、及びVPA-チカグレロル(30mg/kg)で治療したマウスについて、社会的エリア、中央エリア、または非社会的エリアで過ごした時間についての3チャンバ試験の結果を示す。
図1のバーは、左から右に、図の凡例のラベルの上から下と同じ順序であり、すなわち、SAL-ビヒクルは最も左のバーであり、VPA-チカグレロル(30mg/kg)は最も右のバーである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の主題の態様は、様々な形態で具体化され得るが、以下の説明は、単に本開示によって包含される主題の具体的な例としてこれらの形態のいくつかを開示することを意図しているにすぎない。したがって、本開示の主題は、そのように記載される形態または実施形態に制限されることが意図されない。
【0025】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数指示物を含む。
【0026】
本明細書で使用され、本技術分野で周知である「治療すること」または「治療」という用語は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチを意味する。有益なまたは望ましい臨床結果としては、検出可能か検出不可能かにかかわらず、1つ以上の症候または症状の緩和または改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の改善または緩和、疾患の再発の減少、寛解(部分または完全)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療すること」及び「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存と比較して、生存を延長することを意味し得る。治療方法として有用であることに加えて、本明細書に記載の方法は、疾患の防止または予防に有用であり得る。
【0027】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書において、範囲形式で表現または提示され得る。そのような範囲形式は、便宜上及び簡潔さのために使用されるだけであり、したがって、範囲の限界として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲を、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるのと同等に含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「約0.01~2.0」の数値範囲は、約0.01~約2.0の明示的に列挙される値を含むだけでなく、示される範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、0.5、0.7、及び1.5などの個々の値、ならびに0.5~1.7、0.7~1.5、及び1.0~1.5などの部分範囲が含まれる。さらに、そのような解釈は、記載される範囲の幅または特性にかかわらず、適用されるべきである。追加的に、全てのパーセンテージは、別途指定されない限り、重量であることに留意されたい。
【0028】
本開示の範囲を理解する上で、本明細書で使用される「含む(including)」または「含む(comprising)」という用語及びそれらの派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/またはステップの存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/またはステップの存在を排除しない、オープンエンドの用語であることを意図している。上記はまた、「含む(including)」、「有する(having)」、及びそれらの派生語などの同様の意味を有する単語にも適用される。「なる(consisting)」という用語及びその派生語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数、及び/またはステップの存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数及び/またはステップの存在を除外する閉じた用語であることが意図される。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載される特徴、要素、成分、群、整数、及び/またはステップ、ならびに特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/またはステップの基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものの存在を指定することが意図される。これらの移行用語のうちのいずれか1つ(すなわち、「含む(comprising)」、「なる(consisting)」、または「本質的になる(consisting essentially)」)への言及は、具体的に使用されない他の移行用語のいずれかに置き換えるための直接的な支持を提供することが理解される。例えば、「含む(comprising)」から「から本質的になる(consisting essentially of)」に用語を修正することは、この定義のために直接的な支持を得るであろう。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の値がエンドポイントを「少し上」または「少し下」であり得ることを提供することによって、数値範囲エンドポイントに柔軟性を提供するために使用される。この用語の柔軟性の程度は、特定の変数によって決定されることができ、経験及び本明細書の関連する説明に基づいて決定することは、当業者の知識の範囲内である。例えば、一態様では、柔軟性の程度は、数値の約±10%以内であり得る。別の態様では、柔軟性の程度は、数値の約±5%以内であり得る。さらなる態様では、柔軟性の程度は、数値の約±2%、±1%、または±0.05%以内であり得る。
【0030】
概して、本明細書では、「または」という用語は、「及び/または」を含む。
【0031】
本明細書で使用する場合、利便性のために、複数の化合物、要素、またはステップを共通のリストに提示してもよい。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが個別で一意のメンバーとして個々に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、反対の表示なしに、共通の群におけるそれらの提示のみに基づいて、同じリストの他のメンバーと事実上同等であると解釈されるべきではない。
【0032】
さらに、特定の組成物、要素、賦形剤、成分、障害、症状、特性、ステップ等は、1つの特定の実施形態または態様の文脈において、または本開示の別個のパラグラフまたはセクションにおいて論じられ得る。これは、単に利便性及び簡潔さのためであり、任意のそのような開示は、本開示及び特許請求の範囲内の任意の場所で見出される任意の他の実施形態または態様に等しく適用可能であり、それらと組み合わせることを意図しており、これらは全て、当出願日の出願及び特許請求の範囲内の発明を形成する。例えば、ODT、ODFまたはSMEDDS、または特定の対象を治療する方法に関して記載される方法ステップ、活性剤、キット、または組成物のリストは、それらの方法ステップ、活性剤、キット、または組成物が、その実施形態または態様の文脈またはセクションに再記載されていなくても、本開示の任意の他の部分に記載されている組成物、製剤、ODT、ODF、SMEDDS、及び方法に関連する実施形態を直接的に支持することを意図しており、かつ実際に見出す。
【0033】
本発明の組成物は、これらに限定されないが、経口的に、非経口的に(皮下的、筋肉内的、静脈内的、経皮的、皮下的、及び皮内的を含む)、経粘膜的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、パッチもしくはマイクロパッチによって、経鼻的に、口腔内に、膣的に、または埋込型リザーバーを介して、剤形の任意の適切な投与経路を使用して投与され得る。いくつかの実施形態では、提供される化合物または組成物は、静脈内及び/または腹腔内に投与可能である。好適な剤形としては、液体形態、ゲル形態、半液体(例えば、何らかの固体を含有する粘性液体などの液体)形態、半固体(何らかの液体を含有する固体)形態、及び/または固体形態が挙げられるが、これらに限定されない。ほんの一例として、錠剤形態、カプセル形態、食品形態、チュアブル形態、非チュアブル形態、徐放性または持続放出性形態、非徐放性または非持続放出性形態(例えば、即時放出性形態)などが使用され得る。液体の薬学的に許容される組成物は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、またはエタノールなどの液体賦形剤中に、またはSMEDDSとして、本開示の化合物を溶解または分散させることによって調製され得る。組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、及びpH緩衝剤などの他の薬剤、医薬品、補助剤、担体、及び補助物質を含有することができる。
【0034】
好ましくは、組成物は、経口、鼻腔内、口腔内、または舌下に投与される。いくつかの態様では、薬学的に許容される組成物を、これらに限定されないが、カプセル、錠剤、水性の懸濁液、または溶液を含む、任意の経口的に許容される剤形で投与することを含む方法。水溶性懸濁液が経口使用のために要求されるとき、活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望の場合、ある特定の甘味剤、香味剤、または着色剤もまた、添加され得る。いくつかの実施形態では、提供される経口製剤は、即時放出または持続/遅延放出用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、錠剤、ロゼンジ、及びトローチを含み、頬側または舌下投与に好適である。提供される化合物は、マイクロカプセル化形態であってもよい。
【0035】
本発明の薬学的に許容される組成物は、経鼻エアロゾルまたは経鼻吸入によって投与されてもよい。
【0036】
いくつかの態様では、本発明の薬学的に許容される組成物は、腹腔内投与のために製剤化される。
【0037】
本開示は、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と、第2の薬剤とを含有するODTを提供する。いくつかの態様では、第2の薬剤は、マグネシウム塩、亜鉛塩、リジン、レシチン、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、ODTは、限定されないが、クエン酸、アスコルビン酸、カプリル酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、アルファ-ヒドロキシ-カルボン酸、アミノ酸、及びそれらのマグネシウム塩または亜鉛塩を含むさらなる成分をさらに含み得る。
【0038】
本開示はまた、チカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と、第2の薬剤とを含有するODFを提供する。いくつかの態様では、第2の薬剤は、マグネシウム含有化合物、亜鉛含有化合物、リジン(例えば、L-リジン)もしくはリジン塩(例えば、リジンHCl)、レシチン、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、ODFは、限定されないが、塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、アルファ-ヒドロキシ-カルボン酸、アミノ酸、及びそれらのマグネシウム塩または亜鉛塩を含むさらなる成分をさらに含み得る。
【0039】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、5mg~200mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、1mg~90mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、4mg~60mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、4mg~50mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、5mg~50mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、5mg~40mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、もしくは65mgのチカグレロル、鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有する。
【0040】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、1mg~300mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、2mg~250mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、3mg~225mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、4mg~200mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、5mg~175mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、5mg~160mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、6mg~150mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、7mg~140mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、8mg~130mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、9mg~120mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、10mg~110mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、15mg~100mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、20mg~80mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、25mg~75mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、30mg~60mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、35mg~55mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、40mg~50mgの第2の薬剤を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、2mg~160mgのリジンを含み得る。いくつかの態様では、第2の薬剤は、ODTまたはODFの総重量の10重量%~50重量%である。
【0041】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:0.1~1:100の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:0.3~1:80の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:0.5~1:70の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:0.8~1:60の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:50の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:40の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:30の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:20の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:10の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:9の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:8の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:7の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:6の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:5の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:4の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:3の比で含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、第2の薬剤に対して1:1~1:2の比で含有する。ある特定の態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を、リジンに対して1:0.1~1:10、1:0.4、1:2、または1:4の比で含有してもよい。
【0042】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、第2の薬剤としてリジンまたはリジン塩を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、第2の薬剤としてレシチンを含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、第2の薬剤としてリジン及びレシチンの組み合わせを含有する。
【0043】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、チカグレロルの遊離塩基または酸付加塩としてチカグレロルを含有する。いくつかの態様では、チカグレロルの酸付加塩は、任意の薬学的に許容される酸付加塩である。いくつかの態様では、チカグレロルの酸付加塩としては、例えば、塩酸チカグレロル、酒石酸チカグレロル、トレオン酸チカグレロル、グリセリン酸チカグレロル、クエン酸チカグレロル、またはフマル酸チカグレロルが挙げられる。
【0044】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、1つ以上のマグネシウム塩もしくはマグネシウム化合物、または亜鉛塩もしくは亜鉛化合物を含有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、臭化物、ヨウ化物、またはマグネシウムまたは亜鉛化合物と、塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、炭酸、クエン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、アルファ-ヒドロキシ-カルボン酸、アミノ酸、及びそれらのマグネシウムもしくは亜鉛塩との複合体を含有する。いくつかの態様では、第2の薬剤または塩は、トレオン酸塩含有化合物ではない(例えば、トレオン酸マグネシウムではない)。いくつかの態様では、第2の薬剤または塩は、ステアリン酸塩含有化合物ではない(例えば、ステアリン酸マグネシウムではない)。
【0045】
ODTは、典型的には、単回単位形態、または、それぞれが活性成分を含有する複数の粒子が単回剤形に圧縮されるマルチユニットシステムとして製造される。ODTを製造するための従来の方法は、柔らかく、壊れやすく、典型的なブリスターパックまたはボトルの包装には適していない錠剤をもたらす可能性がある。したがって、製造及び貯蔵中に安定であり、また許容される破砕性を有するマルチユニットシステムとしてODTを設計することは、依然として課題である。
【0046】
薬学的組成物は、経口崩壊錠剤(ODT)、例えば、圧縮ODTの形態であり得る。本明細書で使用される場合、「経口崩壊錠剤」という用語は、投与後一定時間未満以内に、それを必要とする対象の口腔内で実質的に崩壊する錠剤を指す。崩壊は、例えば、USP<701>崩壊試験(参照により本明細書に援用される)を使用してインビトロで測定することができる。追加的に、「経口崩壊錠剤」は、舌、頬、及び/または口の粘膜組織と接触したときに、対象の頬側口腔に投与された後の錠剤の構造的完全性の喪失を指すことができる。経口崩壊錠剤は、典型的には、舌上に置かれ(舌投与)、それにより唾液の生成を刺激し、組成物の崩壊を促進する。いくつかの態様では、ODTは、本明細書に記載される1つ以上の活性成分及び/または賦形剤を含有する顆粒、ビーズ、ペレット、または粉末の1つ以上の集団を含有し得る。
【0047】
本開示の薬学的組成物は、ODFの形態であり得る。本開示によるODFは、ヒト対象の口内で約1秒~約60秒、例えば、5~50秒、10~40秒、または15~30秒で溶解する。本開示によるODFは、高い柔軟性、濡れ性を有し、口腔粘膜に対して非刺激性である。
【0048】
本開示によるODFは、複数の層を含み得る。1つ以上の活性成分は、ODFの各層に含有されてもよい。いくつかの態様では、1つ以上のポリマー、緩衝液、または酸は、本開示のODFの1つ以上の層に提供され得る。
【0049】
本開示によるODFは、0.01~10ミルの厚さを有し得る。本開示によるODFは、10~200ミクロンの厚さを有し得る。
【0050】
本開示によるODFは、異なる溶解速度の領域を有し得る。本開示によるODFは、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アクリルポリマー、酢酸ビニル、ナトリウムスルホン化ポリエステル、カルボキシル化アクリル、トリメチルペンタンジオール/アジピン酸/グリセリンクロスポリマー、ポリグリセロール-2-ジイソステアレート/IPDIコポリマー、カルボキシル化酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリコン/酢酸ビニル/アルキルアミノアクリレートターポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリ(エチルアクリレートメタクリル酸)コポリマー、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートコハク酸塩、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)モノエチルエステル、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)n-ブチルエステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、プルラン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ペクチン、スターチ、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、プロピルパラベンナトリウム、メチルパラベンナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール(PEG)、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート共重合体、カルボキシビニルポリマー、アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸とC10-C30アルキルアクリレートとのポリマー、デンプン、微結晶性セルロース、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エリサン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質分離物、フマル酸ステアリルナトリウム、ホエイプロテインアイソレート、カゼイン、可塑剤、甘味料及び香味料、着色剤、唾液刺激剤、ならびに増粘剤を含むがこれらに限定されないポリマーを含有し得る。高分子材料は、約0.1%~約99%、例えば、約10%~約90%、約20%~約80%、約30%~約70%、または約40%~約65%の範囲の量で存在する。高分子材料の分子量は、約1,000~900,000、より具体的には、約5,000~600,000、7,000~400,000、10,000~200,000、12,000~100,000、または15,000~80,000の範囲であり得る。ODTまたはODFはまた、1つ以上の溶媒を含有し得る。溶媒としては、有機または無機溶媒、極性有機溶媒、非極性有機溶媒、水、アルコール、塩化メチレン、または糖アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、糖アルコールは、アリトール、アラビトール、デキストロース、ダルシトール、エリスリトール、ガラクチトール、グリコール、グリセロール、イディトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトール、及びそれらの組み合わせを含み得る。可塑剤としては、限定されないが、安息香酸ベンジル、クロロブタノール、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、及びクエン酸トリエチルが挙げられるが、これらに限定されない。追加の任意の成分には、香料、甘味料、及び味覚マスキング剤などの味覚改良剤、着色剤、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロールなどのポリグリコール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの酸化を防止するためのキレート剤、ソルビトール、マンニトール、スクロロース、ラクチトール、エリスリトール、マルチトール、ラクトース、スクロース、キシリトール、シリカ、デキストレート、グルコース、フルクトース、サッカリン、及びナトリウム塩などのその様々な塩などの充填剤、アスパルテームなどのジペプチド甘味料、ジヒドロカルコン化合物、グリチルリジン、ステビアレバウジアナ(ステビオシド)、スクラロース、糖アルコール、糖及びトレハロースなどのスクロースのクロロ誘導体、ならびにヒマシ油、セチルアルコール、及び水素添加植物油を含むがこれらに限定されない表面改質剤及び放出調整剤などの乳化剤が含まれ得る。甘味料としては、可溶性サッカリン塩(例えば、ナトリウム塩及びカルシウム塩)、遊離酸形態のサッカリン、シクラミン酸塩、アスパルテーム、ならびに3,4-ジヒドロ-6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシドのカリウム、カルシウム、ナトリウム、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
薬学的組成物は、水難溶性薬物または薬学的組成物の生物学的利用能を高めるために、経口投与されるSMEDDSの形態であってもよい。SMEDDS製剤は、概して、油または脂質材料、界面活性剤、及び親水性の補助界面活性剤を含むエマルションを含む。水難溶性薬物または医薬品は、自己微乳化型賦形剤製剤中で乳化され、それによって、薬物または医薬品製剤のインビボ生物学的利用能を高める。追加的に、チカグレロルのような水難溶性薬物は、本発明に従って処理することができ、次いで、水難溶性であり得るか、またはそうでない場合もある他の薬物及び/または医薬成分と組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明のSMEDDS薬学的組成物は、チカグレロルの経口投与のために、例えば、エマルション、水性もしくは油性懸濁液、充填された硬質もしくは軟質カプセルもしくはシロップ(50~300mgのチカグレロル/ml)、または調製された粉末もしくは顆粒、トローチ、錠剤もしくはロゼンジに、製剤化されてよい。錠剤及びカプセル剤等の製剤への製剤化のための薬学的に許容される担体または添加剤としては、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース、またはゼラチン等の結合剤、リン酸二カルシウム等の賦形剤、トウモロコシデンプンまたはサツマイモデンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム等の流動促進剤が挙げられる。
【0053】
自己微乳化型製剤の油相は、カプリル酸/カプリン酸グリセリドなどの化合物を含有する1つ以上の脂質またはグリセリドを含むが、他の好適な油相化合物、例えば、ポリオキシルグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、トリグリセリド、プロピレングリコール誘導体、及びモノオレイン酸グリセリルも含むことができる。
【0054】
本発明の自己微乳化型製剤に使用される好適な界面活性剤または乳化剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー及び他の適切な界面活性剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの長鎖アルキルスルホン酸塩/硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、四級アンモニウム塩、ラウリル、セチル、及びステリル、グリセリルエステル、脂肪酸エステル、及びそのポリオキシエチレン誘導体などの脂肪アルコールが挙げられる。
【0055】
本発明の自己乳化型賦形剤製剤とともに使用するのに適した補助界面活性剤は、テトラグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1つ以上、ならびに油/水界面を還元し、エマルションの自発的製剤を可能にすることが知られている、ヘキサノール、ペンタノール、及びオクタノールなどの中間鎖長のアルコールを含んでもよい。
【0056】
薬物を本発明の自己微乳化型賦形剤製剤で乳化することによって薬物及び/または薬学的成分または製剤の生物学的利用能を高めるための薬物送達系を作製する方法は、界面活性剤、補助界面活性剤及び油の混合物中でチカグレロル及び追加の成分を可溶化するステップを含む。次いで、エマルションを、滴剤、軟質または硬質充填ゼラチンカプセルなどの好適な剤形に添加し、放冷することができる。
【0057】
本発明の自己微乳化型製剤中の界面活性剤及び補助界面活性剤の相対的な割合は、製剤の可溶化及び溶解特性に影響を与えることができる。いくつかの態様では、エマルション組成物は、エマルション組成物の総重量に基づいて、約10~50重量%の油と、5~80重量%の界面活性剤と、5~80重量%の補助界面活性剤とを含有し得、自己乳化型薬物送達系は、エマルション組成物とチカグレロルを15:1~3:1の重量比で含有することを特徴とする。
【0058】
本開示の固体製剤は、例えば、投薬レジメンへの患者のコンプライアンスまたはアドヒアランスを維持するための良好な味覚及び口当たりなどの許容できる感覚器特性を有する一方で、開示された薬物動態及び生物学的利用能特性を提供して所望の治療効果を提供することも可能である。味覚マスキング成分は、薬物放出を阻害または遅延させ、薬物溶解度を低下させ、それによって許容できない薬物動態特性を提供することができる。逆に、急速放出を促進する製剤の成分は、望ましくない味または口当たり特性をもたらし得る。したがって、許容される固体ODTまたはODF製剤は、許容される薬物動態を有する、口当たりの良い(例えば、味覚マスクされた)、速い崩壊組成物を提供するために、これらの矛盾する特性のバランスをとらなければならない。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示の経口剤形は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、またはそれらの混合物もしくは組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。ODTは、コア、サブコーティング、及び/またはコーティングを含み得る。
【0060】
いくつかの態様では、活性成分は、例えば、マトリックス、層、ポリマー、ゲル形成領域、及び/またはゲルに封入される。40℃及び75%の相対湿度の加速保存条件下で1~3か月間経口崩壊錠剤を置いた後に測定したときの不純物レベルが、必要な薬学的に許容される仕様を下回り、それによって商業的使用に適するように、安定化を提供することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ODTは、液体溶液または懸濁液中でチカグレロルまたはその薬学的に許容される塩を第2の活性剤と混合し、金型に充填し、凍結乾燥することによって製造されている。いくつかの態様では、本開示のODTまたはODFは、無菌的に製造される。いくつかの態様では、本開示のODTまたはODFは、最終的に滅菌される。
【0062】
いくつかの実施形態では、ODTは、コーティングで被覆され得る。ある特定の実施形態では、コアに適用される腸溶性コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートコハク酸塩(HPMCAS)、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、シェラック、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、またはそれらの混合物もしくは組み合わせのうちの1つ以上を含み、それぞれの可能性は、別の態様を表す。様々な実施形態では、複数のコアは、腸溶性コーティングの下塗りとしてのサブコーティング、及び/または腸溶性コーティングの上塗りとしての逆腸溶性ポリマーを含むコーティングでさらに被覆される。それぞれの可能性は、別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、コアに適用されるサブコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、またはそれらの混合物もしくは組み合わせのうちの1つ以上を含み、それぞれの可能性は、別の態様を表す。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明のODTは、水溶性ポリマー、2つ以上の水溶性ポリマーの組み合わせ、または水溶性ポリマーと水不溶性もしくは難溶性ポリマーとの組み合わせを含む。本発明の経口溶解製剤に使用され得る水溶性ポリマーには、セルロース誘導体、合成ポリマーポリアクリレート、及び天然ゴムが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本発明の経口溶解製剤に使用される水溶性ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、アミロース、デキストラン、カゼイン、プルラン、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、トラガカント、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
特定の実施形態では、製剤中の水溶性ポリマーの濃度は、約20%~約90%(重量)、または約40%~約80%(重量)であってもよい。上記ポリマーは、ODTをコーティングするために使用することができる。コーティングは、味覚マスキングバリアとして(すなわち、ODT内に含まれる薬物の粒子の表面上で)機能することができ、また、成分を大気分解から保護し、外観を改善することができる。このコーティングが崩壊を遅らせる可能性がある場合、急速崩壊剤も組成物に含めることができる。飲み込み可能な錠剤製剤の錠剤コアまたは造粒混合物における、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、ラクトース、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、微結晶セルロースなどの崩壊剤の使用が知られている。このような要素は、崩壊を促進するために、高分子コーティングと組み合わせて使用され得る。加えて、当業者に既知の崩壊剤のいずれかは、ポリマーでコーティングされたときに、ODTの崩壊ならびにチカグレロル及び第2の薬剤の溶解を改善するために使用することができる。
【0065】
圧縮ODTは、例えば、総錠剤重量の約2重量%~約25重量%の量の崩壊剤を含み得る。ある特定の実施形態では、ODTは、1つ以上の追加の賦形剤を含有し得る。そのような賦形剤は、総錠剤重量の約50重量%以下の量で、結合剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤、流動促進剤、潤滑剤、可塑剤、粘着防止剤、アルカリ性物質、張力増強剤、湿潤剤、緩衝剤、防腐剤、香味剤、乳白剤、着色剤、抗酸化剤、またはそれらの混合物もしくは組み合わせからなる群から選択され得る。
【0066】
賦形剤は、分配剤、例えば、コロイドSiO2、フュームドシリカ、珪藻土、カオリン、タルク、及び/または三ケイ酸マグネシウムアルミニウムであり得る。
【0067】
潤滑剤の好適な例としては、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、及びモノステアリン酸グリセリルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物のための好ましい潤滑剤は、フマル酸ステアリルナトリウムもしくはステアリン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、1つ以上の潤滑剤は、本開示の固体剤形の約0.1~5重量%の量で含まれ得る。
【0068】
任意の発泡性化合物は、ガスを放出する化合物を含む。例えば、ガスは、可溶性酸源、アルカリ一水素炭酸塩または他の炭酸塩源と、口内の水及び/または唾液との間の化学反応によって放出されてもよい。そのような化学反応によって生成されるガスは、二酸化炭素であり得る。酸源は、人間の消費に安全である任意のものであり得、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸などの食用酸を含み得る。炭酸塩源は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの乾燥した固体炭酸塩及び重炭酸塩を含む。本発明の好ましい発泡性カップルは、クエン酸(無水)/炭酸水素ナトリウムである。いくつかの態様では、1つ以上の発泡性化合物は、本開示の固体剤形の約1~30重量%の量で含まれ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明による経口溶解製剤は、限定されないが、ドクサートナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル、ポロキサマー、ポリソルベート(Tween)、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、及びそれらの組み合わせを含む界面活性剤を含み得る。存在する場合、界面活性剤は、約0.1重量%~約10重量%、例えば約1重量%~約5重量%の間で製剤に含まれ得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、コーティングに含まれてもよい。いくつかの他の実施形態では、界面活性剤は、圧縮性増強剤として使用することができる。本開示の利点を受けて、当業者は、他の成分が製剤の1つ以上の特性を強化するために含まれ得ることを理解するであろう。例えば、本発明による経口溶解製剤は、崩壊剤、消泡剤、抗酸化剤、緩衝剤、または着色剤を含み得る。
【0070】
いくつかの態様では、本開示の抗接着剤または流動促進剤は、タルク、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、非晶質二酸化ケイ素、及びケイ酸カルシウムを含み得る。いくつかの態様では、抗接着剤及び流動促進剤化合物は、約0.1~5重量%の量で使用されてもよい。
【0071】
いくつかの態様では、本発明の経口溶解製剤は、賦形剤として乳化剤を含み得る。本明細書で使用される場合、乳化剤は、可溶化剤及び湿潤剤の両方を含む。好適な乳化剤としては、ポリビニルアルコール、ソルビタンエステル、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステアレート、ポロキサマー、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(Cremophor)、水素化野菜油、胆汁酸塩、ポリソルベート、エタノール、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤は、製造中の湿式造粒プロセス中の圧縮性を改善することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の経口崩壊性製剤またはSMEDDSは、甘味料または香味剤を含んでもよい。概して、本技術分野で既知の任意の天然または合成の香味剤または甘味料は、本発明の経口崩壊または溶解製剤に使用され得る。例えば、甘味料または香味剤には、精油、水溶性抽出物、糖、単糖、オリゴ糖、アルドース、ケトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、スクロース、マンニトールキシリトール、D-ソルビトール、エリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール、マリトール、アセスルファムカリウム、タリン、グリチルリジン、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメートナトリウム、オイゲニルホルメートアルデヒドフレーバリング、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の組成物として用いられ得る崩壊剤(disintegrant)または「崩壊剤(disintegrating agent)」は、本発明の組成物の崩壊/分散を測定可能な程度まで加速することができる任意の材料として定義され得る。したがって、崩壊剤は、例えば、標準的な米国薬局方(USP)崩壊試験方法に従って測定される、約30秒以下のインビトロ崩壊時間を提供し得る(FDA Guidance for Industry:Orally Disintegrating Tablets;December 2008を参照)。これは、例えば、水及び/または粘液(例えば、唾液)と接触して配置されたときに、膨潤し、ウィッキング及び/または変形することが可能である材料によって達成され得、したがって、そのように湿潤したときに、錠剤製剤を崩壊させる。好適な崩壊剤(例えば、Rowe et al,Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.(2009)に定義される)としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換HPC、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、修飾セルロースガム等のセルロース誘導体;適度に架橋されたデンプン、修飾デンプン、ヒドロキシルプロピルデンプン及びプレゲル化デンプン等のデンプン誘導体;ならびにアルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、キトサン、コロイド二酸化ケイ素、ドクサートナトリウム、グアーガム、アルミニウムケイ酸マグネシウム、ポラクリリンカリウム及びポリビニルピロリドン等の他の崩壊剤が挙げられる。2つ以上の崩壊剤の組み合わせが使用され得る。崩壊剤としては、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、及びクロスカルメロースナトリウムなどの、いわゆる「超崩壊剤(superdisintergrant)」(例えば、Mohanachandran et al,International Journal of Pharmaceutical Sciences Review and Research,6,105(2011)に定義される)が挙げられる。2つ以上の超崩壊剤の組み合わせが使用され得る。崩壊剤は、本発明の組成物中で超崩壊剤と組み合わせてもよい。崩壊剤及び/または超崩壊剤は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは、0.5~15重量%、例えば、1~8重量%、例えば、約2~約7重量%(例えば、約5重量%、例えば、約4重量%)で使用される。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の経口崩壊製剤は、弱酸、または弱酸性緩衝液形成材料を含む粒子を含み得る。弱酸性緩衝液形成材料は、本発明の組成物に提供される場合、組成物が水及び/または唾液(例えば、本発明の組成物の投与部位で)に溶解されたときに弱酸性緩衝液系を提供し、約4.0~約6.5(例えば、約6.25)のpHの提供を可能にし、特にチカグレロル及び第2の薬剤の溶解、及び/またはその後のチカグレロル及び第2の薬剤の口腔粘膜にわたる吸収を容易にするために、適切な時間の長さ(例えば、約30秒、例えば、約1分)~約3分(例えば、約2分、例えば、約1.5分)で、この範囲内でpHを維持することを可能にするのに十分な量で存在する材料を含む。弱酸性材料は、ヒトの消費に安全である弱酸、例えば、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、カプリル酸、コハク酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、塩化アンモニウム、好ましくは酒石酸、及びより好ましくはクエン酸などの食品酸、またはそのような酸の組み合わせを含む。
【0075】
弱酸性、または弱酸性緩衝液形成材料の粒径は、約1pm~約10,000pmの範囲である。前述のような、経口投与後に上記のpHの範囲の維持を可能にする好適な量の弱酸性材料は、総製剤の少なくとも約1重量%~約10重量%の範囲である。前述のような、経口投与後に上記のpHの範囲の維持を可能にする弱酸性緩衝液形成材料の好適な総量は、総製剤の少なくとも約1重量%~約15重量%の範囲である。
【0076】
様々な実施形態では、経口崩壊錠剤は、約20N~約100Nの硬度、及び5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、または0.2%以下の破砕性を有する。他の実施形態では、ODTは、投与後約20、15、10、5、1、0.5分未満以内に、それを必要とする対象の口腔内で実質的に崩壊する。崩壊は、例えば、USP<701>崩壊試験を使用してインビトロで測定することができる。
【0077】
いくつかの態様では、ODTまたはODFまたはSMEDDSは、標準的な溶解試験を使用して、5、10、15、または20分以内に、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を放出する。例えば、溶解は、好適な溶解媒体、例えば、pH7.0の水、pH6.8(50mM)のリン酸緩衝液、またはpH6.8の模擬ヒト唾液を使用して、溶解装置USP2(パドル)で測定されてもよい。体積は、500mLであり得る。温度は、37.0±0.5℃であってもよい。速度は、50rpmであってもよい。溶解の総時間は、5、10、15、20、30、60、120、360、480、720、及び960分でサンプリングされ得る。
【0078】
いくつかの態様では、ODTまたはODFまたはSMEDDSは、標準的な溶解試験を使用して、5、10、15、または20分以内に、マグネシウムもしくは亜鉛の化合物または塩の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を放出する。
【0079】
いくつかの態様では、ODTまたはODFまたはSMEDDSは、pH約6.8での模擬唾液を使用して、5、10、15、または20分以内に、マグネシウムもしくは亜鉛の化合物または塩の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を放出する。
【0080】
いくつかの態様では、投与後1時間以内に、チカグレロルの最大濃度の約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%以上及び第2の活性薬剤の最大濃度の約50%以上が、インビボでヒト対象の血漿中に吸収される。いくつかの態様では、投与後6時間以内に、チカグレロルの最大濃度の約70%、75%、80%、85%以上、及び第2の活性剤の最大濃度の約70%が、インビボでヒト対象の循環血漿に吸収される。いくつかの態様では、投与後8時間以内に、チカグレロルの最大濃度の約80、85、90、95%以上及び第2の活性剤の最大濃度の約80%以上が、インビボでヒト対象の循環血漿に吸収される。いくつかの態様では、本開示のODTまたはODFは、対象による経口摂取から1時間以内に、治療有効量のチカグレロルを対象の脳に提供する。
【0081】
いくつかの態様では、ODTまたはODFまたはSMEDDS中のチカグレロル及び/または第2の薬剤の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%以上が、口腔粘膜(例えば、舌下または舌上または口腔内)を介して吸収される。
【0082】
本開示は、肝臓代謝、胃腸代謝を最小限に抑え、より一貫した用量を脳に送達し、チカグレロルの心臓効果を回避するのに好適な構造及び物理的特性を有するODTまたはODFまたはSMEDDSを提供する。したがって、本開示は、経粘膜投与の方法を提供する。本開示は、活性化合物が急速に吸収され、血流中に直接入るような物理的特性を有するODTまたはODFまたはSMEDDSを提供する。したがって、本開示のODT及びODFまたはSMEDDSは、胃の分解及び肝臓代謝を通してではなく、対象の脳に薬物を迅速に移動させることができる。
【0083】
いくつかの態様では、ODTまたはODFまたはSMEDDSは、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上の吸水率を有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、または65秒の湿潤時間を有する。
【0084】
いくつかの態様では、ODTまたはODFは、4、4.5、5、5.5、6、6.5N/cm2、またはそれ以上の引張強度を有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、15、20、25、30、35、40、45、50%以上の多孔率を有する。
【0085】
いくつかの態様では、ODTは、30、35、40、45、50、55、60N、またはそれ以上の硬度を有する。いくつかの態様では、ODTは、0.5、1、1.5、2、2.5、または3mmの厚さを有する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000mgの総錠剤重量を有する。
【0086】
そのような物理的特性を提供するために、本開示のODT及びODFは、口腔内のチカグレロルの溶解度を最大化する成分の組み合わせを含有する。マグネシウム、亜鉛、リジン、及びレシチンなどの化合物は、チカグレロルの溶解度を低下させることができるが、本開示は、所望の治療効果を提供するために開示された薬物動態及び生物学的利用能特性を提供しながら、チカグレロルの高い溶解度を提供し、投与レジメンへの患者のコンプライアンスまたはアドヒアランスを維持するために満足のいく良好な味及び口当たりを有する構造及び成分を有するODT及びODFを提供する。いくつかの態様では、ODTまたはODFは、ヒトの口腔中に、脱イオン水中に、または模擬ヒト唾液中に溶解した場合、5.5~7のpH、例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0のpHを有する。
【0087】
いくつかの態様では、本開示は、本開示に従って、チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を、単独でまたは本開示の第2の薬剤と組み合わせて投与することによる、自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、不注意、または脆弱X症候群を有する対象を治療するための使用または方法を含む。チカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩は、第2の薬剤と同時投与することができる。同時投与は、第2の薬剤とともにチカグレロル、その鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与する任意の適切な方法を含み得る。場合によっては、化合物は、同じ剤形で、または同時に投与される第1及び第2の剤形で存在する。場合によっては、第1の剤形は、第2の剤形の後に投与されるか、または第2の剤形は、第1の剤形の後に投与される。場合によっては、第1及び第2の剤形は、交互の順番で投与される。いくつかの態様では、本開示は、本開示のODTまたはODFまたはSMEDDSを投与することによる、自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、不安障害、気分障害、社会的相互作用の障害、易刺激性、攻撃性、自傷行為、多動性、不注意、または脆弱X症候群を有する対象を治療するための使用または方法を含む。一態様では、本開示の方法に従って1日当たりに投与されるチカグレロルの重量は、従来のチカグレロルレジメンよりも少なく、例えば、180mg/日未満、120mg/日未満、100mg/日未満、90mg/日未満、80mg/日未満、60mg/日未満、40mg/日未満、30mg/日未満、20mg/日未満、または10mg/日未満である。いくつかの態様では、本開示は、アセチルサリチル酸とチカグレロルを同時投与する方法を含む。いくつかの態様では、同時投与は、5mg~300mg、10~280mg、20~260mg、30~250mg、40~200mg、50~180mg、60~160mg、70~150mg、80~140mg、90~130mg、75~100mg、または100mg未満のアセチルサリチル酸を含む。
【0088】
いくつかの態様では、本開示の方法は、異常行動チェックリスト(ABC-C)上の行動上の問題を減少させるであろう。ABC-Cは、発達障害を有する人々の薬物及びその他の治療効果を測定するグローバル行動チェックリストである。これは、様々な行動の問題を記述する58項目に基づいて、易刺激性、無気力、不適切な発話、多動性、及び常同行動を含む5つのサブスケールで構成されている。
【0089】
いくつかの態様では、本開示の方法は、Clinical Global Impression Scale(CGI)上の行動上の問題であろう。CGIは、研究精神科医がCGI-Sと同じ尺度を使用してベースラインに対する全体的な臨床症状を判断するために使用する。研究精神科医は、ベースラインからの改善を評価する。CGIは、症候を評価する7点の主観的尺度からなる。このスケールでは、1、2、及び3のスコアは、それぞれ、正常、症候のある程度の存在、及び軽度の行動を表す。4のスコアは、中等度の行動を表す。5、6、及び7のスコアは、それぞれ、著しい、重症、及び最も重症の行動を表す。
【0090】
いくつかの態様では、本開示の方法は、Modified Overt Aggression Scale(IBR-MOAS)上の行動上の問題であろう。IBR-MOASは、攻撃性のタイプごとに4つのレベルの重症度を持つ5つのタイプの攻撃性(自己及び他者に対する言葉による攻撃性、物、自己、及び他者に対する身体的攻撃性)を含む質問票である。5種類の攻撃性を評価するセクションのみが、再評価に使用される:他人に対する言葉による攻撃、自己に対する言葉による攻撃、他人に対する身体的攻撃、物に対する身体的攻撃、自己に対する身体的攻撃。各項目の発生頻度は以下の通りである:0=ない(発生しない);1=ほとんどない(平均で1年に1回から1か月に1回程度);2=時々(平均で1か月に数回から週に数回程度);3=頻繁(平均で1日に1回から数回程度);及びU(以前に発生していたが過去1年はない)。
【0091】
いくつかの態様では、本開示の方法は、行動機能に関する質問(QABF)測定に関する行動上の問題であろう。QABFは、発達障害を有する個人の行動機能の間接的な評価である。それは、25の項目を含む。QABFには、5つの行動機能カテゴリーがある:注意の獲得、要求からの逃避、身体的、物の獲得、及び非社会的(すなわち、感覚的または自動的に維持される)。各質問は、頻度記述子「ない」、「ほとんどない」、「ある程度ある」、「頻繁にある」で採点される。特定の機能のスコアが4ポイント以上の場合、機能が認められる。
【0092】
ある特定の態様では、特定の投薬レジメンは、医薬組成物を投与して、約50~1000ng/mL、100~800ng/mL、約120~700ng/mL、約140~600ng/mL、約160~520ng/mL、約180~500ng/mL、約200~480ng/mL、約220~460ng/mL、約240~420ng/mL、約260~400ng/mL、約500ng/mL、約530ng/mL、約560ng/mL、約580ng/mL、約600ng/mL、または約620ng/mLの範囲でチカグレロル血漿レベルを達成または維持することを伴う。いくつかの態様では、用量レベルは、投与後2時間で1~1000ng/mlの血漿レベルに達することを目的とする。いくつかの態様では、約50~300ng/mLのチカグレロル血漿レベルが、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間維持されるような、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩。いくつかの態様では、約30~50ng/mLのチカグレロル血漿レベルが、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間維持されるような、チカグレロルまたはその薬学的に許容される塩。
【0093】
18歳超のヒトにおけるチカグレロルの経口投与は、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg、例えば、60~180mgのチカグレロル、例えば、1日1回または2回である。いくつかの態様では、投与レジメンは、反応に応じて週間隔で増加され得る。
【0094】
18歳以下のヒトの場合、用量は、1日1、2、3、または4回、0.1~3mg/kg体重の範囲であり得る。
【0095】
本開示の組み合わせを対象に安全に送達する方法は、投与前、投与中、及び/または投与後に対象の心電図、脈拍、及び血圧を測定することを含むことができる。追加的に、本開示の組み合わせを対象に安全に送達する方法は、組み合わせの投与を継続しながら肝臓酵素レベルを測定することを含むことができる。ある特定の態様では、例えば一過性のトランスアミナーゼ上昇に起因して、肝臓酵素レベルが異常である場合、腎臓、肝臓、腸、または心臓を保護するためのステップをとり得る。いくつかの事例では、方法は、投与前に対象の肝臓酵素レベルを測定する予備ステップをさらに含む。これは、ベースラインの肝臓酵素レベルを確立するために行うことができる。本方法は、投与ステップを開始した後の所定の期間での肝臓酵素レベルの測定を含むこともできる。いくつかの実施形態では、対象の肝臓酵素レベルは、4時間間隔、6時間間隔、8時間間隔、12時間間隔、24時間間隔などで監視され得る。代替的に、肝臓は、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約154時間、約168時間、対象が退院する日、またはそれらの組み合わせで検査することができる。
【0096】
実施例1:
【表1】
1)200~500rpmで撹拌しながら、ゼラチン及びその他の成分を精製水に溶解させる。
2)精製水を用いて溶液の最終体積を補う。
3)さらに15分間、200~500rpmで撹拌して溶液を混合する。
4)予め形成されたブリスターシートの各空洞に溶液を投与する(好ましくは分注ピペットを使用する)。
5)充填したブリスターを-20~-110℃の範囲の温度で凍結する。
6)ブリスターを凍結乾燥機で凍結乾燥させる。
7)乾燥した凍結乾燥物を含むブリスターシートをブリスター包装機のパンチングキャリアウェブに置き、包装機のシールステーションを通ってブリスターシートを輸送する
8)ブリスターを、施蓋ホイルで密封し、最終的なブリスターにパンチする。
【0097】
実施例2:
【表2】
1)200~500rpmで撹拌しながら、ゼラチン及びその他の成分を精製水に溶解させる。
2)精製水を用いて溶液の最終体積を補う。
3)さらに15分間、200~500rpmで撹拌して溶液を混合する。
4)予め形成されたブリスターシートの各空洞に溶液を投与する(好ましくは分注ピペットを使用する)。
5)充填したブリスターを-20~-110℃の範囲の温度で凍結する。
6)ブリスターを凍結乾燥機で凍結乾燥させる。
7)乾燥した凍結乾燥物を含むブリスターシートをブリスター包装機のパンチングキャリアウェブに置き、包装機のシールステーションを通ってブリスターシートを輸送する
8)ブリスターを、施蓋ホイルで密封し、最終的なブリスターにパンチする。
【0098】
実施例3:
【表3】
製剤中の成分を混合し、硬度3~5kgのシングルストローク錠剤機で直径5mm、厚さ2~3mmの錠剤に圧縮する。完全にブレンドされた組成物は、素錠に圧縮される。
【0099】
【0100】
製剤中の成分を混合し、硬度3~5kgのシングルストローク錠剤機で直径5mm、厚さ2~3mmの錠剤に圧縮する。完全にブレンドされた組成物は、素錠に圧縮される。
【0101】
【0102】
チカグレロル及びプルランを正確に秤量し、蒸留水に溶解させる。この溶液をよく混合し、続いて可塑剤及び超崩壊剤を添加する。次いで、得られた均一な溶液をペトリ皿(直径6cm)に注ぎ、600℃のオーブンで24時間乾燥させる。フィルムを慎重にペトリ皿から取り出し、所望のサイズ(2×2cm2)にカットする。
【0103】
【0104】
チカグレロル及びプルランを正確に秤量し、蒸留水に溶解させた。この溶液をよく混合し、続いて可塑剤及び超崩壊剤を添加した。次いで、得られた均質溶液をペトリ皿(直径6cm)に注ぎ、600℃のオーブンで24時間乾燥させた。フィルムを慎重にペトリ皿から取り出し、所望のサイズ(2×2cm2)にカットした。
【0105】
【0106】
チカグレロル及びプルランを正確に秤量し、蒸留水に溶解させた。この溶液をよく混合し、続いて可塑剤及び超崩壊剤を添加した。次いで、得られた均質溶液をペトリ皿(直径6cm)に注ぎ、600℃のオーブンで24時間乾燥させた。フィルムを慎重にペトリ皿から取り出し、所望のサイズ(2×2cm2)にカットした。
【0107】
【0108】
チカグレロル及びプルランを正確に秤量し、蒸留水に溶解させた。この溶液をよく混合し、続いて可塑剤及び超崩壊剤を添加した。次いで、得られた均一な溶液をペトリ皿(直径6cm)に注ぎ、600℃のオーブンで24時間乾燥させた。フィルムを慎重にペトリ皿から取り出し、所望のサイズ(2×2cm2)にカットした。
【0109】
実施例9:
ODT T1~T11は、本開示の態様をさらに例示する:
【表9】
【表10】
(1)以下との複合体:塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、炭酸、クエン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、またはアルファ-ヒドロキシ-カルボン酸。
(2)塩形態:硫酸塩、酢酸塩、トレオン酸塩、酒石酸塩、グリセリン酸塩、クエン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、硫酸塩、乳酸塩、炭酸塩、リンゴ酸塩、タウリン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、またはピロリン酸塩。
(3)酸:酒石酸、グリセリン酸、トレオン酸、カプリル酸またはグルコン酸。
ODT成分の相対量は、上述の態様に従う。
【0110】
実施例10:
ODF F1~F11は、本開示の態様をさらに例示する:
【表11】
【表12】
(1)以下との複合体:塩酸、ピロリン酸、タウリン酸、硫酸、酢酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、アスコルビン酸、トレオン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、グリセリン酸、グリセルアルデヒド、またはアルファ-ヒドロキシ-カルボン酸。
(2)塩形態:硫酸塩、酢酸塩、トレオン酸塩、酒石酸塩、グリセリン酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩、塩化物、硫酸塩、乳酸塩、炭酸塩、リンゴ酸塩、タウリン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、またはピロリン酸塩。
酸:酒石酸、グリセリン酸、トレオン酸、カプリル酸またはグルコン酸。
ODF成分の相対量は、上述の態様に従う。
【0111】
実施例11:
(Na et al.Strategic approach to developing a self-microemulsifying drug delivery system to enhance antiplatelet activity and bioavailability of ticagrelor.Int J Nanomedicine.2019 Feb 15;14:1193-1212;CN104971042A;及びKR102007731B1(そのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)から改変された自己微乳化型製剤(総重量:800mg)は、油(Capmul MCM;45.0w/w%)、界面活性剤(Cremophor EL;38w/w%)、及び補助界面活性剤(Transcutol P;17w/w%)を混合することによって調製した。混合物を穏やかに撹拌して、均一な溶液を作製し、次いで、100mgのチカグレロル及び100mgのカプリル酸亜鉛を添加し、混合して、均一な製剤を作製した。混合物の個々の滴剤は、5mgのチカグレロル及び5mgのカプリル酸亜鉛を含む。
【表13】
【0112】
実施例12:
SMEDDS S1~S11は、本開示の態様をさらに例示する:
【表14】
【表15】
【0113】
実施例13:インビボ実験:-自閉症のバルプロ酸(VPA)モデル
妊娠中のバルプロ酸(VPA)への曝露は、小児における自閉症のリスクを増加させることが実証されている。さらに、この薬物に出生前に曝露したげっ歯類は、ヒト自閉症症状の行動表現型特性を示す。このモデルは、単一の自閉症関連遺伝子の変異を有するトランスジェニックモデルよりも、環境/エピジェネティック起源の特発性自閉症の多くの症例を、よりよく表す可能性がある。VPAモデルは、強力な構造及び臨床的妥当性を有する環境的に誘発されたモデルである。VPA誘発性げっ歯類モデルは、ヒトの自閉症スペクトルにおける行動要素及び社会要素に対する医薬品の推定有効性を試験するために、技術的に認識され、十分に確立され、広く利用されている動物モデルである。
【0114】
C57BL/6Jマウスを7~8週齢で得て、交尾を行わせ、胚性0日目(E0)に膣栓の存在によって妊娠が確認された。E12.5で、妊娠中の雌は、生理食塩水(SAL)に溶解されたバルプロ酸(VPA、500mg/kg)のナトリウム塩の単回腹腔内注射を受けた。対照雌は、等体積のSALのみを受けた。出生日をP0(出生後ゼロ日)として記録した。子をP21(出生後21日目)に離乳し、雄の子を4~5群で収容した。雄の子に対して実験を行った。マウスは、温度及び湿度制御された環境に収容され、食物及び水への自由アクセスを有していた。動物は、12時間の明暗スケジュールで維持され、午前8時にライトが点灯した。
【0115】
VPA処置マウスの雄の子を4つの群に分けた(群当たりn=8~9):VPA-ビヒクル)+50μgのZnSO4、VPA-チカグレロル(0.3mg/kg)+50μgのZnSO4、VPA-チカグレロル(10mg/kg)+50μgのZnSO4及びVPA-チカグレロル(30mg/kg)+50μgのZnSO4。SAL処置マウスの雄の子を2つの群に分けた(群当たりn=10):SAL-ビヒクル及びSAL-チカグレロル(30mg/kg)+50μgのZnSO4。6週齢から8週齢まで、マウスは、生理食塩水(5μl/g ip)またはチカグレロル(i.p.)のいずれかの週1回の注射を3回受けた。最後の注射の24時間後に、3チャンバテストを実施した。
【0116】
行動アッセイ-3チャンバテスト
3チャンバテストは、CNS障害のげっ歯類モデルにおける一般的な社会性及び社会的新奇性への関心の形態で認知を評価する。このテストは、同一だが空であるチャンバにおいて一匹で過ごす時間と比較して、別のマウスと時間を過ごす傾向である社交性を測定する。
【0117】
装置は、アクリルボックス(長さ:62cm、幅:41cm、高さ:30.5cm)で、3つのチャンバに分かれている。マウスが3つのチャンバを自由に探索できるように、5cm×5cmの開口部を仕切り壁に作製した。マウスを最初に装置の中央チャンバに入れ、5分間慣らした。順応期間の完了後、試験マウスを保持ケージに移動させて、寝具材料を再分配した。次いで、小さなケージに閉じ込められた新しいマウスを一方のチャンバ(社会的エリア)に配置し、空の小さなケージを他方のチャンバに新しい物体(非社会的エリア)として配置した。マウスを最初に中央チャンバに入れ、チャンバを10分間自由に探索させ、3つのエリア(社会的、中央、及び非社会的エリア)のそれぞれで費やされた時間を記録した。
【0118】
統計学的分析:データの統計分析は、一元配置または二元配置RM ANOVA(SigmaStat 3.1)を使用して実施した。Tukey HSD法で事後比較を行った。データが正規分布していない場合、Kruskal-Wallis、ランク上の一元配置ANOVA、続いて、Dunn法を使用した。全てのデータは、平均値±SEMとして表された。有意なレベルをp<0.05に設定した。
【0119】
結果:社会的エリアで費やされた時間の一元配置ANOVAは、6つの群間の有意差を明らかにした(F(5,48)=5.201、p<0.001)。事後比較では、SAL-ビヒクル群と比較して、VPA-ビヒクル群は、社会的エリアで費やされた時間の有意な減少を示した(p<0.05)(
図1、左パネル)。VPA-ビヒクル群と比較して、VPA-チカグレロル(10mg/kg)群及びVPA-チカグレロル(30)群の両方が、社会的エリアで費やされた時間の有意な増加を示した(p<0.01及びp<0.001)。SAL-ビヒクル群とSAL-チカグレロル(30)群との間の社会的エリアで費やされた時間に有意差はなかった(p>0.05)。
【0120】
中央エリアで費やされた時間の一元配置ANOVAは、6つの群間で有意差を明らかにした(F(5,48)=3.821、p<0.01)。事後比較では、VPA-ビヒクル群と比較して、VPA-チカグレロル(30)群は、中央エリアで費やされた時間の有意な減少を示した(p<0.05)(
図1、中央パネル)。
【0121】
非社会的エリアで費やされた時間の一元配置ANOVAは、6つの群間の有意差を明らかにした(F(5,48)=5.230、p<0.001)。事後比較では、SAL-ビヒクル群と比較して、VPA-ビヒクル群は、非社会的エリアで費やされた時間の有意な増加を示した(p<0.01)(
図1、右パネル)。VPA-ビヒクル群と比較して、VPA-チカグレロル(10mg/kg)及びVPA-チカグレロル(30mg/kg)群の両方が、非社会的エリアで費やされた時間の有意な減少を示した(両方とも、p<0.01)。SAL-ビヒクル群とSAL-チカグレロル(30mg/kg)群との間の非社会的エリアで費やされた時間に有意差はなかった(p>0.05)。
【0122】
結論:チカグレロル及び亜鉛塩の週1回の3回の投与は、子宮内でVPAに曝露されたC57BL/6Jマウスによって示される、自閉症関連症候である社交性の欠損を減弱させた。対照マウスと比較して、VPA群の3チャンバ試験において障害が観察された。対照的に、10及び30mg/kgの用量でのチカグレロル処置群は、刺激マウスとともにケージの近く(「社会的」エリア)で過ごした時間の有意な増加を示した。データは、関連する自閉症動物モデルにおけるチカグレロルの出生後効果を示し、これは、自閉症患者における社会性欠損の増強を示す。
【0123】
上記のプロトコールまたはその類似の変形はいずれも、医薬製品に関連する様々な文書に記載され得る。この文書には、プロトコール、統計分析計画、治験責任医師パンフレット、臨床ガイドライン、投薬ガイド、リスク評価及び仲介プログラム、処方情報、及び医薬製品に関連する可能性のあるその他の文書が含まれるが、これらに限定されない。そのような文書は、有益であり得るか、または規制当局によって規定され得るように、本開示によるODTまたはODF医薬製品とともにキットとして物理的に包装され得ることが具体的に企図される。
【0124】
本開示の主題は、特徴の様々な組み合わせ及び部分的組み合わせを含む特定の例示的な実施形態を参照してかなり詳細に説明及び示されているが、当業者は、本開示の範囲内に包含されるように、他の実施形態及びその変形及び変更を容易に理解するであろう。さらに、そのような実施形態、組み合わせ、及び部分的組み合わせの説明は、特許請求される主題が特許請求の範囲に明示的に列挙されたもの以外の特徴または特徴の組み合わせを必要とすることを伝えることを意図するものではない。したがって、本開示の範囲は、以下の添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に包含される全ての変更及び変形を含むことが意図される。
【国際調査報告】