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特表2024-536342非対称ビス-ベンゾイミダゾールSTINGアゴニスト免疫複合体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】非対称ビス-ベンゾイミダゾールSTINGアゴニスト免疫複合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P35/00
C07D403/14 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520544
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 US2022045515
(87)【国際公開番号】W WO2023059544
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/251,805
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519211672
【氏名又は名称】ボルト バイオセラピューティクス、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラント, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】クディルカ, ロマス
(72)【発明者】
【氏名】サフィナ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, マシュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C085AA26
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA57
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、1以上のSTINGアゴニスト部分への結合によって連結された抗体を含む、式I、Ab-[L-D]の免疫複合体を提供する。本発明はまた、反応性官能基を含むSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物も提供する。そのような中間体組成物は、リンカーまたは連結部分を介した前記免疫複合体の形成に好適な基質である。本発明はさらに、前記免疫複合体を使用してがんを治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫複合体であって、リンカーによって1以上のSTINGアゴニスト部分に共有結合された抗体を含み、式I:
Ab[L-D]
またはその薬学的に許容される塩を有する前記免疫複合体であり、
式中、
Abは前記抗体であり;
pは1~8の整数であり;
Dは、以下の式を有する前記STINGアゴニスト部分であり;
【化1】
及びXは、Rで任意で置換される5員ヘテロアリールから独立して選択され;
は、H、F、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-(C-Cアルキル)、及びRから成る群から選択され;
2a及びR2bは、-C(=O)N(R及びRから独立して選択され;
は、-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルケニルジイル)-、-(C-Cアルケニルジイル)-O-、-(C-Cアルキニルジイル)-、-(C-Cアルキニルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、及び-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-から成る群から選択され、ここで、アルキルジイル、アルケニルジイル、及びアルキニルジイルは、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、及びRから選択される1以上の基によって任意で置換され;
、X、R、R2a、R2b及びRのうちの1つは、Rで置換され;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルから成る群から選択され、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CHから選択される1以上の基で任意で置換され;
は、
-(C-C12アルキルジイル)-*;
-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-N(R)-*;
-OC(=O)N(R)-*;
-OC(=O)N(R)-(C-C2アルキルジイル)-N(R)-*;
-N(R)-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-*;
-N(R)-(C1-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;及び
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*から成る群から選択され;
星印*はLの結合部位を示し;
は独立してHまたはC-Cアルキルであり;
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R6)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O);
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R)-;
-C(=O)-PEG-N(R)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-C(=O);
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択される前記リンカーであり;
PEGは、式:-(CHCHO)-(CH-を有し、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化2】
を有し;
PEPは、式:
【化3】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO、-OH、-OCH及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC-C20アリールジイル及びC-C20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化4】
は-CH(R)O-、-CH-、-CHN(R)-、及び-CH(R)O-C(=O)-から成る群から選択され、RはH、C-Cアルキル、C(=O)-C-Cアルキル、及び-C(=O)N(Rから選択され、R9は独立してH、C-C12アルキル、及び-(CHCHO)-(CH-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは独立して且つ任意で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCH(CH、-CHOH、-CHOCH、-CHCHOH、-C(CHOH、-CH(OH)CH(CH、-C(CHCHOH、-CHCHSOCH、-CHOP(O)(OH)、-CHF、-CHF、-CF、-CHCF、-CHCHF、-CH(CH)CN、-C(CHCN、-CHCN、-CHNH、-CHNHSOCH、-CHNHCH、-CHN(CH、-COH、-COCH、-COCH、-COC(CH、-COCH(OH)CH、-CONH、-CONHCH、-CON(CH、-C(CHCONH、-NH、-NHCH、-N(CH、-NHCOCH、-N(CH)COCH、-NHS(O)CH、-N(CH)C(CHCONH、-N(CH)CHCHS(O)CH、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH、-NHC(=NH)NH、-NHC(=O)NH、-NO、=O、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、-O(CHCHO)-(CHCOH、-O(CHCHO)H、-OCHF、-OCHF、-OCF、-OP(O)(OH)、-S(O)N(CH、-SCH、-S(O)CH、及び-S(O)Hから独立して選択される1以上の基で置換される、前記免疫複合体。
【請求項2】
前記抗体が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項3】
前記抗体が、PD-L1に結合する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項4】
前記抗体が、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブ、またはこれらのバイオ後続品もしくはバイオベターから成る群から選択される、請求項3に記載の免疫複合体。
【請求項5】
前記抗体が、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項6】
前記抗体が、トラスツズマブ及びペルツズマブ、またはこれらのバイオ後続品もしくはバイオベターから成る群から選択される、請求項5に記載の免疫複合体。
【請求項7】
前記抗体が、CEAに結合する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項8】
前記抗体が、ラベツズマブ、またはそのバイオ後続品もしくはバイオベターである、請求項7に記載の免疫複合体。
【請求項9】
前記抗体が、TROP2に結合する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項10】
前記抗体が、サシツズマブ、またはそのバイオ後続品もしくはバイオベターである、請求項9に記載の免疫複合体。
【請求項11】
及びXが、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、オキサジアゾリル、及びチアジアゾリルから成る群から独立して選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項12】
及びXがそれぞれ、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、及び-CHCH(CHから選択される1以上の基によって置換されるピラゾリルである、請求項11に記載の免疫複合体。
【請求項13】
及びXの一方がRで置換される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項14】
が、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、及び-OCHCHN(CHから成る群から選択される、請求項1~10いずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項15】
が、-OCHである、請求項14に記載の免疫複合体。
【請求項16】
が、Fである、請求項1~10いずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項17】
2a及びR2bがそれぞれ-C(=O)NHである、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項18】
2a及びR2bの一方がRで置換される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項19】
が、-CHCH-、-CH=CH-、及び-C≡C-から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項20】
が、F、-OH及び-OCHから選択される1以上の基で置換されるC-Cアルケニルジイルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項21】
が、-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*である、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項22】
-C12アルキルジイルがプロピルジイルであり、C-C20ヘテロシクリルジイルが、ピペリジイルである、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項23】
及びRの一方がRで置換される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項24】
Lが、-C(=O)-PEG-または-C(=O)-PEG-C(=O)-である、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項25】
Lが前記抗体のシステインチオールに結合する、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項26】
前記PEGについて、mが1または2であり、nが2~10の整数である、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項27】
nが10である、請求項26に記載の免疫複合体。
【請求項28】
LがPEPを含み、PEPはジペプチドであり、以下の式を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体:
【化5】
【請求項29】
AA及びAAが、H、-CH、-CH(CH、-CH(C)、-CHCHCHCHNH、-CHCHCHNHC(NH)NH、-CHCH(CH)CH、-CHSOH、及び-CHCHCHNHC(O)NHから独立して選択されるか、またはAA及びAAが、5員環プロリンアミノ酸を形成する、請求項28に記載の免疫複合体。
【請求項30】
AAが-CH(CHであり、AAが-CHCHCHNHC(O)NHである、請求項28に記載の免疫複合体。
【請求項31】
AA及びAAが、GlcNAcアスパラギン酸、-CHSOH、及び-CHOPOHから独立して選択される、請求項28に記載の免疫複合体。
【請求項32】
PEPが、式:
【化6】
を有し、ここでAA及びAAは、天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択される、請求項28に記載の免疫複合体。
【請求項33】
LがPEPを含み、PEPはトリペプチドであり、以下の式を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体:
【化7】
【請求項34】
LがPEPを含み、PEPはテトラペプチドであり、以下の式を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体:
【化8】
【請求項35】
AAが、Abu、Ala、及びValから成る群から選択され;
AAはNle(O-Bzl)、Oic及びProから成る群から選択され;
AAはAla及びMet(O)から成る群から選択され;
AAはOic、Arg(NO)、Bpa、及びNle(O-Bzl)から成る群から選択される、請求項34に記載の免疫複合体。
【請求項36】
LがPEPを含み、PEPは、Ala-Pro-Val、Asn-Pro-Val、Ala-Ala-Val、Ala-Ala-Pro-Ala、Ala-Ala-Pro-Val、及びAla-Ala-Pro-Nvaから成る群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項37】
LがPEPを含み、PEPは以下の構造から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体:
【化9】
【請求項38】
Lが構造:
【化10】
から選択され、波線はRへの結合点を示す、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項39】
式IIを有するSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物であって、
【化11】
式中、
及びXは、Rで任意で置換される5員ヘテロアリールから独立して選択され;
は、H、F、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-(C-Cアルキル)、及びRから成る群から選択され;
2a及びR2bは、-C(=O)N(R及びRから独立して選択され;
は、-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルケニルジイル)-、-(C-Cアルケニルジイル)-O-、-(C-Cアルキニルジイル)-、-(C-Cアルキニルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、及び-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-から成る群から選択され、ここで、アルキルジイル、アルケニルジイル、及びアルキニルジイルは、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、及びRから選択される1以上の基によって任意で置換され;
、X、R、R2a、R2b及びRのうちの1つは、Rで置換され;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルから成る群から選択され、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CHから選択される1以上の基で任意で置換され;
は、
-(C-C12アルキルジイル)-L;
-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-N(R)-L;
-OC(=O)N(R)-L;
-OC(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-N(R)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-N(R)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-O-L;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-C(=O)N(R)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;及び
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-Lから成る群から選択され;
は、独立して、HまたはC-Cアルキルであり;
Lは、
Q-C(=O)-PEG-;
Q-C(=O)-PEG-Gluc-R-;
Q-C(=O)-PEG-O-;
Q-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-C(=O);
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-Gluc-R-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-;及び
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択されるリンカーであり;
PEGは、式:-(CHCHO)-(CH-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化12】
を有し;
PEPは、式:
【化13】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO、-OH、-OCH及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC-C20アリールジイル及びC-C20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化14】
は-CH(R)O-、-CH-、-CHN(R)-、及び-CH(R)O-C(=O)-から成る群から選択され、RはH、C-Cアルキル、C(=O)-C-Cアルキル、及び-C(=O)N(Rから選択され、R9は独立してH、C-C12アルキル、及び-(CHCHO)-(CH-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
Qは、F、Cl、NO及びSO から独立して選択される1以上の基で置換されたN-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル、マレイミド、及びフェノキシから成る群から選択され;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールジイルは、独立して且つ任意で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCH(CH、-CHOH、-CHOCH、-CHCHOH、-C(CHOH、-CH(OH)CH(CH、-C(CHCHOH、-CHCHSOCH、-CHOP(O)(OH)、-CHF、-CHF、-CF、-CHCF、-CHCHF、-CH(CH)CN、-C(CHCN、-CHCN、-CHNH、-CHNHSOCH、-CHNHCH、-CHN(CH、-COH、-COCH、-COCH、-COC(CH、-COCH(OH)CH、-CONH、-CONHCH、-CON(CH、-C(CHCONH、-NH、-NHCH、-N(CH、-NHCOCH、-N(CH)COCH、-NHS(O)CH、-N(CH)C(CHCONH、-N(CH)CHCHS(O)CH、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH、-NHC(=NH)NH、-NHC(=O)NH、-NO、=O、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、-O(CHCHO)-(CHCOH、-O(CHCHO)H、-OCHF、-OCHF、-OCF、-OP(O)(OH)、-S(O)N(CH、-SCH、-S(O)CH、及び-S(O)Hから独立して選択される1以上の基で置換される、前記STINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項40】
Qが以下から選択される、請求項39に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物:
【化15】
【請求項41】
QがF、Cl、NO、及びSO から独立して選択される1以上の基で置換されたフェノキシである、請求項39に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項42】
Qが2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシである、請求項40に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項43】
Qが2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルホナト-フェノキシである、請求項40に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項44】
Qがマレイミドである、請求項40に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項45】
Lが構造:
【化16】
から選択され、波線はRへの結合点を示す、請求項39に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項46】
表2から選択されるSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物。
【請求項47】
抗体の、請求項39~46のいずれか1項に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物との結合によって調製される免疫複合体。
【請求項48】
医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体と、1以上の薬学的に許容される希釈剤、ビヒクル、担体または賦形剤とを含む、前記医薬組成物。
【請求項49】
がんの治療方法であって、治療有効量の請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項50】
前記がんが、STINGアゴニズムによって誘発される炎症誘発性応答に感受性である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記がんが、膀胱癌、唾液腺癌、子宮内膜癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、大腸癌、胃癌、及び乳癌から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
がんを治療するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫複合体の使用。
【請求項53】
請求項1~10のいずれか1項に記載の式Iの免疫複合体を調製する方法であって、請求項39に記載のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物が前記抗体と結合されている、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮出願は、2021年10月4日に出願された米国特許仮出願第63/251,805号に対する優先権の利益を主張し、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、1つ以上のSTINGアゴニストの非対称ビス-ベンゾイミダゾール分子に結合した抗体を含む免疫複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)は、膜貫通タンパク質173(TMEM173)及びMPYS/MITA/ERISとしても知られ、ヒトではSTING1遺伝子によってコードされるタンパク質である。STINGは特に免疫細胞、肺、及び卵巣にて広く発現される。STINGは、細胞がウイルス、マイコバクテリア、及び細胞内寄生虫のような細胞内病原体に感染した場合にI型インターフェロンの産生を誘導することによって自然免疫にて役割を担う。STINGが介在するI型インターフェロンは、自己分泌シグナル伝達によってそれを分泌する細胞及び傍分泌シグナル伝達による隣接細胞に結合することによって、感染した同じ細胞及び隣接細胞を局所感染から保護する。STINGは、異なる分子機構を介するI型インターフェロンのシグナル伝達にて直接細胞質DNAセンサー(CDS)及びアダプタータンパク質の双方として機能する。STINGは、TBK1を介して下流の転写因子STAT6及びIRF3を活性化させることが示されており、これらは、細胞内病原体に対する抗ウイルス応答及び自然免疫応答に関与する。STINGに結合し、アゴニストとして作用する化合物は、ヒトPBMCとインキュベートした際に1型インターフェロンを含む炎症誘発性サイトカインの分泌を誘導することが示されている(WO2017/175147)。STING調節因子は、種々の障害、例えば、アレルギー性疾患、神経変性疾患、前がん性症候群及びがんの治療に有用であってもよく、且つ免疫原性組成物またはワクチンアジュバントにも有用であってもよい。
【0004】
アクセスできない腫瘍に到達するために及び/またはがん患者や他の対象の治療の選択肢を拡大するために、抗体及び免疫アジュバントを送達するための新しい組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は一般に、リンカーによって1以上のSTINGアゴニスト部分に共有結合した抗体を含み、式I:
Ab-[L-D]
またはその薬学的に許容される塩を有する免疫複合体に関し、
式中、
Abは抗体であり;
pは1~8の整数であり;
Dは、以下の式を有するSTINGアゴニスト部分であり;
【化1】
ここで、X、X、R、R2a、R2b及びRのうちの1つは、リンカーLに結合している。
【0006】
本発明はさらに、疾病、特にがんの治療におけるそのような免疫複合体の使用を対象とする。
【0007】
本発明の別の態様は、ビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物である。
【0008】
本発明の別の態様は、1以上のビス-ベンゾイミダゾール部分への結合によって連結された抗体を含む、治療有効量の免疫複合体を投与することを含む、がんを治療する方法である。
【0009】
本発明の別の態様は、がんを治療するための1以上のビス-ベンゾイミダゾール部分への結合によって連結された抗体を含む免疫複合体の使用である。
【0010】
本発明の別の態様は、1以上のビス-ベンゾイミダゾール部分を抗体と結合させることによって免疫複合体を調製する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これより本発明の特定の実施形態を詳細に参照するが、それらの例は、添付の構造及び式に例証されている。本発明は、列挙される実施形態と組み合わせて説明されるが、それらは、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。逆に、本発明は、すべての代替形、修正形、及び同等物を網羅することが意図されており、それらは、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る。
【0012】
当業者であれば、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載されているものに類似または同等である多くの方法及び材料を理解するであろう。本発明は、決して記載されている方法及び材料に限定されるものではない。
【0013】
定義
「免疫複合体」という用語は、リンカーを介してアジュバント部分に共有結合している抗体コンストラクトを指す。「アジュバント」という用語は、アジュバントに曝露された対象において免疫応答を誘発することができる物質を指す。「アジュバント部位」という用語は、本明細書に記載されているように、例えばリンカーを介して抗体コンストラクトに共有結合されるアジュバントを指す。アジュバント部位は、抗体コンストラクトに結合している間、または対象への免疫複合体の投与後の抗体コンストラクトからの切断(例えば、酵素的切断)後に免疫応答を誘発することができる。
【0014】
「免疫刺激剤」及び「免疫賦活性」という用語は、同等に使用され、リンカーの生体内での切断後、免疫賦活性部分または免疫賦活性化合物に曝露された対象にて免疫応答を誘発できる部分、物質またはアジュバントを指す。「アジュバント部分」または「免疫賦活性部分」という用語は、本明細書に記載されているように、エラスターゼ基質、ペプチドリンカーを介して抗体コンストラクトのような細胞結合剤に共有結合しているアジュバントを指す。アジュバント部分は、抗体コンストラクトに結合している間、または対象への免疫複合体の投与後の抗体コンストラクトからの切断(例えば、酵素的切断)後に免疫応答を誘発することができる。免疫複合体は、標的抗原が結合している間に、活性アジュバント部分を標的とした送達を可能にする。
【0015】
「パターン認識受容体」(PRR)という用語は、病原体に典型的な分子を検出し、自然免疫系の機能を調節する生殖細胞系でコードされた宿主センサーを指す(Mahla,RS.et al,(2013),Frontiers in Immunology,4:248;Kumar,H.et al,(2011),Intl.Rev.of Immun.30:16-34;Schroder K.et al,(2010),Cell,140(6):821-832)。PRRは、樹状細胞、マクロファージ、単球、好中球及び上皮細胞のような自然免疫系の細胞によって主に発現されるタンパク質であり、微生物病原体に関連する病原体関連分子パターン(PAMP)と、細胞の損傷または死滅中に放出される宿主細胞の成分に関連する損傷関連分子パターン(DAMP)とを同定する。PRRはまた、免疫系の他の部分より前、特に適応免疫の前に発生するため、初期パターン認識受容体とも呼ばれる。PRRはまた、抗原特異的な適応免疫応答の開始及び炎症性サイトカインの放出にも介在する。PRRには、トール様受容体(TLR)、STING様受容体、RIG-I様受容体(RLR)、NOD様受容体(NLR)、C型レクチン様受容体(CLR)、及びDNAセンサーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「アジュバント」とは、アジュバントに曝露された対象にて免疫応答を誘発することができる物質を指す。「アジュバント部分」という用語は、本明細書に記載されているように、例えば、リンカーを介して抗体コンストラクトに共有結合されるアジュバントを指す。アジュバント部分は、抗体コンストラクトに結合している間、または対象への免疫複合体の投与後の抗体コンストラクトからの切断(例えば、酵素的切断)後に免疫応答を誘発することができる。
【0017】
「抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的には、それらが所望される生物活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。本明細書で使用されるとき「抗体断片」及びその全ての文法上の変形は、インタクト抗体の抗原結合部位または可変領域を含むインタクト抗体の一部と定義され、その際、当該部分は、インタクト抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体のアイソタイプに応じて、CH2、CH3、及びCH4)を含まない。抗体断片の例には、限定しないで(1)単鎖Fv(scFv)分子;(2)関連する重鎖部分を含まずに一方の軽鎖可変ドメインのみを含有する単鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するその断片;(3)関連する軽鎖部分を含まずに一方の重鎖可変領域のみを含有する単鎖ポリペプチド、または重鎖可変領域の3つのCDRを含有するその断片;(4)非ヒト種由来の単一Igドメインを含むナノボディまたは他の特定の単一ドメイン結合モジュール;及び(5)抗体断片から形成される多重特異性構造体または多価構造体を含む、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;連続するアミノ酸残基の1つの途切れない配列から成る一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書では「単鎖抗体断片」または「単鎖ポリペプチド」と呼ばれる)が挙げられる。1以上の重鎖を含む抗体断片では、重鎖(複数可)は、インタクト抗体の非Fc領域に見られる任意の定常ドメイン配列(例えば、IgGアイソタイプのCH1)を含有することができ、及び/またはインタクト抗体に見られる任意のヒンジ領域配列を含有することができ、及び/またはヒンジ領域配列もしくは重鎖(複数可)の定常ドメイン配列に融合するもしくは位置するロイシンジッパー配列を含有することができる。
【0018】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子またはその断片に由来する抗原結合領域(相補性決定領域(CDR)を含む)を含むポリペプチドを指す。「抗体」という用語は具体的には、所望の生物活性を示す、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、ジスルフィド結合によって接続される、1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖は、免疫グロブリンドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、例えば、軽鎖及び重鎖の可変ドメインまたは領域(それぞれV及びV)、軽鎖及び重鎖の定常ドメインまたは領域(それぞれC及びC)など、サイズと機能によって様々なカテゴリーに分類される。各鎖のN-末端は、抗原認識を主に担う、パラトープと称される、約100~110個以上のアミノ酸の可変領域、すなわち抗原結合ドメインを画定する。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、そして、これらの重鎖によって、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンの分類が定められる。IgG抗体は、4つのペプチド鎖で構成される約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの2つの同一のクラスγ重鎖と約25kDaの2つの同一の軽鎖を含み、したがって四量体の四次構造を含む。2つの重鎖は互いに結合され、それぞれジスルフィド結合によって軽鎖に結合されている。得られた四量体は2つの同じの半分部分を持ち、これらが一緒になってY字型の形状を形成する。枝分かれした両端には、同じの抗原結合ドメインが含まれている。ヒトには4つのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)があり、血清中の存在量の順に名前がつけられている(つまり、IgG1が最も豊富である)。通常、抗体の抗原結合ドメインは、がん細胞への結合の特異性及び親和性にて最も重要である。
【0019】
特定の抗原を標的にする抗体は、特定の抗原を標的にする少なくとも1つの抗原結合領域を持つ二重特異性または多重特異性の抗体を含む。いくつかの実施形態では、標的モノクローナル抗体は、腫瘍細胞を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を持つ二重特異性抗体である。そのような抗原としては、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PD-L1、HER2、Trop2、CEA、EGFR、5T4、ネクチン4、CD19、CD20、CD22、CD30、CD47、CD70、B7H3、B7H4(08Eとしても知られている)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、グリピカン-3、RG1、フコシル-GMl、CTLA-4、及びCD44(WO2017/196598)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「抗体コンストラクト」とは、(i)抗原結合ドメイン及び(ii)Fcドメインを含む、抗体または融合タンパク質を指す。
【0021】
いくつかの実施形態では、結合剤は、抗原結合抗体「断片」であり、これは、抗体の少なくとも抗原結合領域を単独で、または一緒になって抗原結合コンストラクトを構築する他の構成成分と共に含むコンストラクトである。多くの異なる種類の抗体「断片」は当該技術分野で公知であり、例えば、(i)V、V、C及びCHドメインから成る一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって結合した2つのFab断片を含む2価の断片である、F(ab’)断片、(iii)抗体の単一アームのV及びVドメインから成るFv断片、(iv)穏やかな還元条件下でF(ab’)断片のジスルフィド架橋の切断から得られる、Fab’断片、(v)ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、ならびに(vi)2つのドメインが1つのポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって結合されたFv断片の2つのドメイン(つまり、V及びV)から成る1価の分子である、単鎖Fv(scFv)を含む。
【0022】
抗体または抗体断片は、より大きなコンストラクトの一部、例えば、抗体断片の追加の領域への結合または融合コンストラクトの一部であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体断片は、本明細書に記載されているようにFc領域に融合することができる。他の実施形態では、抗体断片(例えば、FabまたはscFv)は、例えば、膜貫通ドメインへの融合(任意選択で介在するリンカーまたは「ストーク」(例えば、ヒンジ領域)によって)及び任意選択の細胞間シグナル伝達ドメインへの融合によって、キメラ抗原受容体またはキメラT細胞受容体の一部であり得る。例えば、抗体断片は、T細胞受容体のγ鎖及び/またはδ鎖に融合され、Trop2を結合するT細胞受容体様コンストラクトを提供し得る。さらに別の実施形態では、抗体断片は、CD1またはCD3を結合するドメイン及びリンカーを含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の一部である。
【0023】
「エピトープ」とは、抗原結合ドメインが結合する(すなわち、抗原結合ドメインのパラトープにて)抗原の任意の抗原決定基またはエピトープ決定基を意味する。抗原決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性がある表面群化から成り、通常、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。
【0024】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。Fc受容体には3つの主要なクラス:(1)IgGに結合するFcγR、(2)IgAに結合するFcαR、及び(3)IgEに結合するFcεRがある。FcγRファミリーには、FcγI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)及びFcγRIIIB(CD16B)のようないくつかのメンバーが含まれる。Fcγ受容体はIgGに対する親和性が異なり、IgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)に対する親和性も異なる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤」という語句は、免疫チェックポイント分子の活性を阻害する任意の調節剤を指す。免疫チェックポイント阻害剤には、免疫チェックポイント分子結合タンパク質、小分子阻害剤、抗体(免疫チェックポイントタンパク質を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体及び多重特異性抗体、例えば、免疫チェックポイントタンパク質のみを標的としない二重特異性抗体または多重特異性抗体、ならびに二重免疫調節剤(同時に2つの免疫調節標的を標的とする)(阻害標的の遮断、抑制細胞の枯渇、及び/またはエフェクター細胞の活性化をもたらす);腫瘍標的免疫調節剤(腫瘍抗原及びCD40または4-1BBのような共刺激分子を標的とすることによって、腫瘍浸潤免疫細胞に強力な共刺激を誘導する);NK細胞リダイレクト剤(腫瘍抗原及びCD16Aを標的とすることによって、NK細胞を悪性細胞にリダイレクトする);またはT細胞リダイレクト剤(腫瘍抗原及びCD3を標的とすることによって、T細胞を悪性細胞にリダイレクトする)である抗体を含む)、抗体誘導体(Fc融合、Fab断片及びscFvを含む)、抗体薬物複合体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、アプタマー、ペプチド及びペプチド模倣物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で言及される核酸またはアミノ酸配列の「同一性」は、対象の核酸またはアミノ酸配列を参照する核酸またはアミノ酸配列と比較することによって決定され得る。同一性パーセントは、最適に整列された対象の配列と最長の配列の長さ(すなわち、対象の配列または参照配列のいずれかの長さ、いずれか長い方)で割った参照配列との間で同じ(すなわち、同一)であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数である。配列のアラインメント及び同一性パーセントの計算は、利用可能なソフトウェアプログラムを使用して実行することができる。そのようなプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee、及びALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えば、BLAST2.1、BL2SEQ、BLASTp、BLASTnなど)、及びFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM及びSSEARCH)(配列アラインメント及び配列相似性検索のため)が挙げられる。配列アラインメントアルゴリズムはまた、例えば、Altschul et al.,J.Molecular Biol.,215(3):403-410(1990),Beigert et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,106(10):3770-3775(2009),Durbin et al.,eds.,Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge University Press,Cambridge,UK(2009),Soding,Bioinformatics,21(7):951-960(2005),Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25(17):3389-3402 1997)及びGusfield,Algorithms on Strings,Trees and Sequences,Cambridge University Press,Cambridge UK(1997)に開示されている。配列の同一性パーセント(%)は、例えば、100×[(同一位置)/min(TG,TG)]として計算することもでき、TG及びTGは、TG及びTGを最小化するアラインメントにおけるペプチド配列A及びBの残基数と内部ギャップ位置の合計である。例えば、Russell et al.,J.Mol Biol.,244:332-350(1994)を参照のこと。
【0027】
結合剤は、抗原結合部位を一緒に形成するIg重鎖及び軽鎖の可変領域ポリペプチドを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれは、フレームワーク領域によって連結された3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含むポリペプチドである。結合剤は、Ig重鎖及び軽鎖を含む、当該技術分野で公知の様々な種類の結合剤のいずれかであり得る。例えば、結合剤は、抗体、抗原結合抗体「断片」、またはT細胞受容体であり得る。
【0028】
「バイオ後続品」とは、例えば、サシツズマブゴビテカン(TRODELVY(登録商標)、Immunomedics、IMMU-132)にて以前に承認されたTrop2を標的とする抗体コンストラクトであるサシツズマブに類似する活性特性を有する抗体コンストラクトを指す。
【0029】
「バイオベター」とは、サシツズマブまたはサシツズマブゴビテカンのような以前に承認された抗体コンストラクトを改善したものである、抗体コンストラクトを指す。バイオベターは、以前に承認された抗体コンストラクトに対して1以上の修飾(例えば、変更されたグリカンプロファイル、または固有のエピトープ)を有することができる。
【0030】
「アミノ酸」とは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に組み込むことができる任意のモノマー単位を指す。アミノ酸には、天然に存在するα-アミノ酸とその立体異性体、及び非天然(天然に存在しない)アミノ酸とその立体異性体が含まれる。所与のアミノ酸の「立体異性体」とは、分子式及び分子内結合が同じであるが、結合及び原子の三次元配置が異なる異性体(例えば、L-アミノ酸及び対応するD-アミノ酸)を指す。アミノ酸は、グリコシル化(例えば、N-結合型グリカン、O-結合型グリカン、ホスホグリカン、C-結合型グリカン、またはグリピケーション)または脱グリコシル化することができる。アミノ酸は、本明細書では、広く知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかによって表され得る。
【0031】
天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、及びそれらのアミノ酸が後で修飾されたもの(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート及びO-ホスホセリン)である。天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リシン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(Dプロ)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
天然に存在するアミノ酸には、シトルリン(Cit)のような翻訳後修飾によってタンパク質に形成されたものが含まれる。
【0033】
非天然(天然に存在しない)アミノ酸には、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、合成アミノ酸、N-置換グリシン、及び天然アミノ酸と同様に機能するL-配置またはD-配置のN-メチルアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。「アミノ酸類似体」とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素と結合している炭素、カルボキシル基、アミノ基)を有するが、側鎖基またはペプチド主鎖が修飾されている非天然アミノ酸、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド及びメチオニンメチルスルホニウムであり得る。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0034】
「リンカー」とは、化合物または材料の2つ以上の部分を共有結合する官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体コンストラクトに共有結合させるのに役立つことができる。
【0035】
「連結部位」とは、化合物や材料中の2つ以上の部分を共有結合させる官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体に共有結合させる役割を果たすことができる。連結部位をタンパク質及び他の材料に接続するための有用な結合には、アミド、アミン、エステル、カルバミン酸、尿素、チオエーテル、チオカルバミン酸、チオカーボネート、及びチオ尿素が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
「二価」とは、2つの官能基を連結するための2つの結合点を含む、化学部位を指す。多価連結部位は、さらなる官能基を連結するための追加の結合点を有することができる。二価ラジカルは、接尾辞「ジイル」で示され得る。例えば、二価連結部位には、二価ポリ(エチレングリコール)、二価シクロアルキル、二価ヘテロシクロアルキル、二価アリール、及び二価ヘテロアリール基のような二価ポリマー部位が含まれる。「二価シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基」とは、分子または材料中の2つの部分を共有結合させるための2つの結合点を有するシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基を指す。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、置換型または非置換型であり得る。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。
【0037】
波線(「
【化2】
」)は、特定の化学部位の結合点を表す。特定の化学部位に2本の波線(「
【化3】
」)が存在する場合、化学部位は双方で、つまり左から右または右から左に読み取って使用できることが理解される。いくつかの実施形態では、存在する2つの波線(「
【化4】
」)を有する特定の部位は、左から右へと読み取られるように使用されると見なされる。
【0038】
「アルキル」とは、示された炭素原子の数を有する、直鎖(線状)または分岐した飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルには、例えば1~12つの任意の数の炭素を含むことができる。アルキル基の例としては、メチル(Me、-CH)、エチル(Et、-CHCH)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CHCHCH)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CHCHCHCH)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CHCH(CH)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH)CHCH)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CHCHCHCHCH)、2-ペンチル(-CH(CH)CHCHCH)、3-ペンチル(-CH(CHCH)、2-メチル-2-ブチル(-C(CHCHCH)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH)CH(CH)、3-メチル-1-ブチル(-CHCHCH(CH)、2-メチル-1-ブチル(-CHCH(CH)CHCH)、1-ヘキシル(-CHCHCHCHCHCH)、2-ヘキシル(-CH(CH)CHCHCHCH)、3-ヘキシル(-CH(CHCH)(CHCHCH))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CHCHCHCH)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CH(CH)CHCH)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CHCH(CH)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH)(CHCH)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CHCH)CH(CH)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CHCH(CH)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH)C(CH、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換型または非置換型であることができる。置換アルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。置換アルキル基をジェミナル置換することができ、その際、アルキルの炭素原子はスピロ、シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを形成する。
【0039】
「アルキルジイル」という用語は二価のアルキルラジカルを指す。アルキルジイル基の例には、メチレン(-CH-)、エチレン(-CHCH-)、プロピレン(-CHCHCH-)などが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルジイル基はまた「アルキレン」基とも呼ばれてもよい。アルキルジイル基は置換または非置換であることができる。置換アルキルジイル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。置換アルキルジイル基をジェミナル置換することができ、その際、アルキルの炭素原子がスピロ、シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを形成する。
【0040】
「アルケニル」は、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、sp2を有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルケニルは、2~約12以上の炭素原子を含むことができる。アルケニル基は、「シス」及び「トランス」配向、代替的に「E」及び「Z」配向を有するラジカルである。例としては、エチレニルまたはビニル(-CH=CH)、アリル(-CHCH=CH)、ブテニル、ペンテニル、及びこれらの異性体を含むが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換型または置換型であり得る。「置換アルケニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。
【0041】
「アルケニレン」または「アルケニルジイル」という用語は、直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素ラジカルを指す。例としては、エチレニレンまたはビニレン(-CH=CH-)、アリル(-CHCH=CH-)などがあるが、これらに限定されない。
【0042】
「アルキニル」とは、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、spを有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキニルは、2~約12個以上の炭素原子を含むことができる。例えば、C-Cアルキニルには、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、-CHC≡CH)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びこれらの異性体が含まれるが、これらに限定されない。アルキニル基は置換型または非置換型であり得る。「置換アルキニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。
【0043】
「アルキニレン」または「アルキニルジイル」という用語は二価のアルキニルラジカルを指す。
【0044】
「カルボサイクル」、「カルボシクリル」、「炭素環」及び「シクロアルキル」という用語は、3~12の環原子または示された原子数を含む、飽和もしくは部分不飽和の単環式、縮合二環式、スピロ、または架橋多環式の集合体を指す。飽和単環式炭素環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式及び多環式炭素環には、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが含まれる。炭素環式基は部分的に不飽和であり、環に1以上の二重結合または三重結合を有する場合もある。部分的に不飽和である代表的な炭素環式基には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
「シクロアルキルジイル」という用語は、二価のシクロアルキルラジカルを指す。
【0046】
「アリール」とは、親の芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、6~20個の炭素原子(C-C20)の一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。アリール基は、単環式である、縮合して二環式もしくは三環式基を形成する、または結合によって連結してビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニルが含まれる。他のアリール基には、メチレン連結基を有するベンジルが含まれる。フェニル、ナフタレンまたはビフェニルなど、一部のアリール基には6~12個の環員がある。他のアリール基には、フェニルまたはナフチルのような6~10個の環員がある。
【0047】
「アリーレン」または「アリールジイル」とは、親の芳香環系の2個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される、6~20個の炭素原子(C-C20)の二価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。いくつかのアリールジイル基は、例示的構造で「Ar」と表され得る。アリールジイルは、飽和環、部分不飽和環、または芳香族炭素環と縮合した芳香環を含む、二環式ラジカルを含む。典型的なアリールジイル基としては、ベンゼン(フェニレン)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニレン、インデニレン、インダニレン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなどに由来するラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールジイル基は「アリーレン」とも呼ばれ、任意で、本明細書に記載されている1以上の置換基によって置換される。
【0048】
「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」という用語は、本明細書では相互交換可能に使用され、3~約20の環原子の飽和または部分不飽和(すなわち1以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及びイオウから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1以上の環原子は任意で、以下に記載されている1以上の置換基によって独立して置換される。複素環は、3~7員環(2~6の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~4のヘテロ原子)を有する単環または7~10員環(4~9の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~6のヘテロ原子)を有する二環、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、もしくは[6,6]系であってもよい。複素環は、Paquette,Leo A.;“Principles of Modern Heterocyclic Chemistry”(W.A.Benjamin,New York,1968)の特に第1章、第3章、第4章、第6章、第7章、及び第9章、“The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs”(John Wiley & Sons,New York,1950~現在)の特に第13巻、第14巻、第16巻、第19巻、及び第28巻、ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。「ヘテロシクリル」は、複素環ラジカルが、飽和環、部分不飽和環、または芳香族炭素環式もしくは複素環式環と縮合したラジカルまたはこれらとスピロ環系を形成したラジカルも含む。複素環式環の例としては、モルホリン-4-イル、ピペリジン-1-イル、ピペラジニル、ピペラジン-4-イル-2-オン、ピペラジン-4-イル-3-オン、ピロリジン-1-イル、チオモルホリン-4-イル、S-ジオキソチオモルホリン-4-イル、アゾカン-1-イル、アゼチジン-1-イル、オクタヒドロピリド[1,2-a]ピラジン-2-イル、[1,4]ジアゼパン-1-イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリニルイミダゾリニル、イミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H-インドリルキノリジニル、及びN-ピリジルウレアが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクリル」は、この定義の範囲内のスピロヘテロシクリル部分も含む。スピロヘテロシクリル部分の例としては、2-オキサスピロ[4.5]デカン、2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン、アザスピロ[2.5]オクタニル及びアザスピロ[2.4]ヘプタニル部分構造が挙げられるが、これらに限定されない。2つの環原子がオキソ(=O)部位で置換された複素環式基の例は、ピリミジノニル及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルである。本明細書の複素環基は、任意選択で、本明細書に記載されている1以上の置換基で独立して置換される。
【0049】
「ヘテロシクリルジイル」という用語は、3~約20個の環原子の二価の飽和または部分的に不飽和(すなわち1以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及びイオウから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1以上の環原子は、任意選択で、記載されている1以上の置換基で、独立して置換される。5員及び6員のヘテロシクリルジイルの例としては、モルホリニルジイル、ピペリジニルジイル、ピペラジニルジイル、ピロリジニルジイル、ジオキサニルジイル、チオモルホリニルジイル、及びS-ジオキソチオモルホリニルジイルが挙げられる。
【0050】
「ヘテロアリール」という用語は、5、6、または7員環の一価の芳香族基を指し、1つ以上の炭素原子と、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含む約5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2-ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば4-ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、任意選択で、本明細書に記載されている1以上の置換基で、独立して置換される。
【0051】
「ヘテロアリールジイル」という用語は、5、6、または7員環の二価の芳香族ラジカルを指し、1つ以上の炭素原子と、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含む5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。5員及び6員のヘテロアリールジイルの例としては、ピリジルジイル、イミダゾリルジイル、ピリミジニルジイル、ピラゾリルジイル、トリアゾリルジイル、ピラジニルジイル、テトラゾリルジイル、フリルジイル、チエニルジイル、イソオキサゾリルジイルジイル、チアゾリルジイル、オキサジアゾリルジイル、オキサゾリルジイル、イソチアゾリルジイル及びピロリルジイルが挙げられる。
【0052】
複素環またはヘテロアリール基は、可能であれば、炭素(炭素結合した)または窒素(窒素結合した)結合してもよい。例として、限定されないが、炭素結合した複素環またはヘテロアリールは、ピリジンの2、3、4、5もしくは6位、ピリダジンの3、4、5もしくは6位、ピリミジンの2、4、5もしくは6位、ピラジンの2、3、5もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール、もしくはテトラヒドロピロールの2、3、4もしくは5位、オキサゾール、イミダゾール、もしくはチアゾールの2、4もしくは5位、イソキサゾール、ピラゾール、もしくはイソチアゾールの3、4もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7もしくは8位、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7もしくは8位で結合される。
【0053】
例として、限定されないが、窒素結合した複素環またはヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾ-ルまたはβ-カルボリンの9位で結合される。
【0054】
単独または別の置換基の一部としての「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)を指す。
【0055】
単独または別の置換基の一部としての「カルボニル」という用語は、C(O)、C(=O)または-C(=O)-、すなわち、酸素に二重結合し、カルボニルを有する部分の他の2つの基に結合した炭素原子を指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、「第四級アンモニウム塩」という語句は、アルキル置換基(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはブチルのようなC-Cアルキル)で四級化された第三級アミンを指す。
【0057】
「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、傷害、病態、状態(例えば、がん)もしくは症状(例えば、認知障害)の治療または寛解における任意の成功の兆候を指し、緩解、寛解、症状の軽減、もしくは症状、傷害、病態もしくは状態を患者にとってより耐えられるものにする、症状の進行速度の減少、症状もしくは状態の頻度、もしくは期間の減少、または状況によっては症状の発症の防止など、任意の客観的または主観的パラメータが含まれる。症状の治療または寛解は、身体検査の結果を含む、任意の客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0058】
「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は本明細書で、細胞増殖の制御を著しく失うことを特徴とする異常な増殖表現型を示すような、自律的で制御されない増殖を示す細胞を指すために使用される。本発明の文脈において検出、分析、及び/または治療の対象となる細胞には、がん細胞(例えば、がんを有する個体からのがん細胞)、悪性がん細胞、前転移性がん細胞、転移性がん細胞、及び非転移性がん細胞が含まれる。実質的にすべての組織のがんは、知られている。「がん負荷量」という語句は、対象中のがん細胞量またはがん体積を指す。したがって、がん負荷量を減少させることは、対象中のがん細胞数またはがん細胞体積を減少させることを指す。本明細書で使用される「がん細胞」という用語は、がん細胞(例えば、個体を治療することができる任意のがんから、例えば、がんを有する個体から単離された)である、またはがん細胞に由来する任意の細胞(例えば、がん細胞のクローン)を指す。例えば、がん細胞は、確立されたがん細胞株からのものであってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞であってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞からの子孫細胞であってもよい、などである。いくつかの実施形態では、この用語はまた、がん細胞の細胞内部分、細胞膜部分、または細胞溶解物のようながん細胞の一部を指すことができる。細胞腫、肉腫、膠芽腫、メラノーマ、リンパ腫及び骨髄腫のような固形腫瘍、ならびに白血病のような循環癌を含む、多くの種類のがんは、当業者に知られている。
【0059】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、微小残存病変を含み、且つ原発腫瘍及び転移腫瘍の双方を含む、固形腫瘍がん(例えば、皮膚、肺、前立腺、乳房、胃、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓、神経膠芽腫、髄芽腫、平滑筋肉腫、頭頸部扁平上皮癌、黒色腫、及び神経内分泌)、及び液状がん(例えば、血液癌);癌腫;軟部組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;及び脳腫瘍を含むが、これらに限定されない、任意の形態のがんを含む。
【0060】
がんの「病態」には、患者の健康状態を損なうすべての現象が含まれる。これには、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機能の阻害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌物の放出、炎症または免疫反応の抑制または悪化、新生物、前悪性、悪性腫瘍、及びリンパ節のような周辺または遠隔組織または器官への浸潤が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用する場合、「がん再発」及び「腫瘍再発」という語句、ならびにそれらの文法的変形は、がんの診断後の腫瘍またはがん細胞のさらなる増殖を指す。特に、がん組織でさらなるがん細胞増殖が起こると再発が起こり得る。同様に「腫瘍の広がり」は、腫瘍の細胞が局所または遠隔組織や臓器に散在するときに発生し、したがって、腫瘍の広がりには腫瘍の転移が含まれる。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に広がり、正常な臓器機能を圧迫、破壊または阻止することによって関係する組織の機能を損なうときに発生する。
【0062】
本明細書で使用する場合、「転移」という用語は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない、器官または身体部分で癌腫瘍が増殖することを指す。転移は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない器官または身体部分での検出不可能な量のがん細胞の存在である、微小転移を含むと理解されるであろう。転移は、がん細胞が元の腫瘍部位から離れること、がん細胞が身体の他の部位に移動及び/または浸潤することなど、いくつかの段階のプロセスとして定義することもできる。
【0063】
「有効量」及び「治療有効量」という語句は、それが投与される治療効果を生み出す免疫複合体のような物質の投与量または量を指す。実際の投与量は、治療の目的に依存し、また当業者であれば既知の技術を使用して確認可能であろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Edition(McGraw-Hill,2006);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,(Pharmaceutical Press,London,2012)を参照)。がんの場合、治療有効量の免疫複合体は、がん細胞の数を低下、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍増殖をある程度阻害、及び/またはがんに関連する症状のうちの1以上をある程度軽減し得る。免疫複合体が、存在するがん細胞の増殖を阻害し得る、及び/またはそれらを死滅させ得る限り、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。がん療法に関して、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)の評価及び/または奏効率(RR)の決定によって測定することができる。
【0064】
「レシピエント」「個体」「対象」「宿主」及び「患者」という用語は同じ意味で使用され、診断、処置または治療が所望される任意の哺乳類対象(例えば、ヒト)を指す。治療目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物及び畜産動物、動物園、競技用、愛玩動物、例えば犬、馬、猫、牛、羊、山羊、豚、ラクダなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0065】
本発明の文脈における「相乗的アジュバント」または「相乗的組み合わせ」という語句は、受容体アゴニスト、サイトカイン、及びアジュバントポリペプチドのような2つの免疫調節因子の組み合わせを含み、これらは組み合わせて、単独で投与される場合と比較して免疫に対する相乗効果を誘発する。特に、本明細書に開示される免疫複合体は、特許請求されたアジュバント及び抗体コンストラクトの相乗的組み合わせを含む。投与時のこれらの相乗的組み合わせは、例えば、抗体コンストラクトまたはアジュバントが他の部分の非存在下で投与される場合と比較して、免疫に対してより大きな効果を誘発する。さらに、抗体コンストラクトまたはアジュバントのいずれかと単独で投与した場合と比較して、減少した量の免疫複合体を投与してもよい(免疫複合体の一部として投与される抗体コンストラクトの総数またはアジュバントの総数によって測定される)。
【0066】
本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、病巣内、鼻腔内もしくは皮下投与、経口投与、座薬としての投与、局所接触、クモ膜下投与、または徐放出装置、例えば小型浸透ポンプを対象に埋め込むことを意味する。
【0067】
本明細書で数値を修正するために使用される「約」及び「およそ」という用語は、その数値の周囲にある近い範囲を示す。したがって、「X」が値である場合、「約X」または「およそX」は、0.9X~1.1X、例えば、0.95X~1.05X、または0.99X~1.01Xの値を示す。「約X」または「およそX」への言及は特に、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xを示す。したがって、「約X」及び「およそX」は、例えば「0.98X」のクレーム限定について本明細書のサポートを教示及び提供することを意図している。
【0068】
抗体
本発明の免疫複合体は抗体を含む。本発明の実施形態の範囲に含まれるのは、本明細書に記載されている抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの機能的変異体である。本明細書で使用されるとき「機能的変異体」という用語は、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと実質的なまたは有意な配列同一性または類似性を有する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトを指し、この機能的変異体は、それが変異体である抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの生物活性を保持する。機能的変異体は、例えば、標的細胞を認識する能力を親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと類似する程度、同じ程度またはより高度に保持する、本明細書に記載されている抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン(親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン)の変異体を包含する。
【0069】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインに関して、機能的変異体は、アミノ酸配列が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと、例えば、少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一であることができる。
【0070】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含むことができる。あるいはまたはさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能的変異体の生物活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を増強してもよいので、機能的変異体の生物活性は、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと比較して上昇する。
【0071】
本発明の免疫複合体を含む抗体はFc操作された変異体を含む。いくつかの実施形態では、1以上のFc受容体への調節された結合をもたらすFc領域の変異は、以下の変異:SD(S239D)、SDIE(S239D/I332E)、SE(S267E)、SELF(S267E/L328F)、SDIE(S239D/I332E)、SDIEAL(S239D/I332E/A330L)、GA(G236A)、ALIE(A330L/I332E)、GASDALIE(G236A/S239D/A330L/I332E)、V9(G237D/P238D/P271G/A330R)及びV11(G237D/P238D/H268D/P271G/A330R)の1以上、及び/または以下のアミノ酸:E345R、E233、G237、P238、H268、P271、L328及びA330での1以上の変異を含むことができる。Fc受容体結合を調節するためのさらなるFc領域の修飾は、例えば、US2016/0145350、US7416726及びUS5624821に記載されており、これらは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明の免疫複合体を含む抗体は脱フコシル化のようなグリカン変異体を含む。いくつかの実施形態では、結合剤のFc領域は、ネイティブの非修飾Fc領域と比較して、Fc領域のグリコシル化パターンの変化を有するように修飾される。
【0073】
本発明の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当該技術分野で公知であり、特定の物理的及び/または化学的特性を有する1つのアミノ酸を、同じまたは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸に交換するアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性/負に帯電した極性アミノ酸に置換された酸性/負に帯電した極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された正に帯電したアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)、別の塩基性/正に帯電した極性アミノ酸に置換された塩基性/正に帯電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Argなど)、極性側鎖を有する他の非荷電性アミノ酸に置換された極性側鎖を有する非荷電性アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、ベータ分岐側鎖を有する別のアミノ酸に置換されたベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ile、Thr及びVal)、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸に置換された芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp及びTyr)などであり得る。
【0074】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、他の成分、例えば他のアミノ酸が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン機能的変異体の生物活性を実質的に変化させないように、本明細書に記載されている特定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、修飾Fc領域を含み、修飾は1以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0076】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体(例えば、少なくとも2つのアジュバント部分に結合された抗体)は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、1以上のFc受容体(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)及び/またはFcγRIIIB(CD16b))に調節された結合(例えば、結合の増加または結合の減少)をもたらす、Fc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、抗体のFc領域のFcγRIIBへの結合を減少させる、Fc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)及び/またはFcγRIIIA(CD16a)への同じ結合または増加した結合を維持しながら、FcγRIIBへの抗体の結合を減少させる、抗体のFc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、FcγRIIBへの抗体のFc領域の結合を増加させる、Fc領域の1以上の修飾を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、調節された結合は、抗体の天然Fc領域と比較した抗体のFc領域の変異によって提供される。変異は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはこれらの組み合わせにあり得る。「天然Fc領域」は「野生型Fc領域」と同義であり、自然界に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一の、または天然抗体(例えば、セツキシマブ)に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1Fc領域、天然配列ヒトIgG2Fc領域、天然配列ヒトIgG3Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4Fc領域、ならびにこれらの天然に存在する変異型が含まれる。天然配列Fcには、Fcの様々なアロタイプが含まれる(Jefferis et al.,(2009)mAbs,1(4):332-338)。
【0078】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体のFc領域は、天然の非修飾Fc領域と比較して、Fc領域のグリコシル化パターンの変化を有するように修飾される。
【0079】
ヒト免疫グロブリンは、各重鎖のCγ2ドメインのAsn297残基でグリコシル化される。このN-結合型オリゴ糖は、コア七糖であるN-アセチルグルコサミン4マンノース3(GlcNAc4Man3)から成る。エンドグリコシダーゼまたはPNGaseFによる七糖の除去は、抗体Fc領域の配座変化を引き起こすことが知られており、FcγRの活性化に対する抗体結合親和性を大幅に低下させ、エフェクター機能を低下させる可能性がある。コア七糖は、ガラクトース、バイセクトGlcNAc、フコース、またはシアル酸で修飾されることが多く、活性型FcγR及び抑制型FcγRへのFc結合に異なる影響を与える。さらに、α2,6-シアリル化は生体内で抗炎症活性を増強する一方で、脱フコシル化はFcγRIIIa結合を改善し、且つ抗体依存性細胞傷害及び抗体依存性食作用の10倍の上昇をもたらすことが実証されている。したがって、特定のグリコシル化パターンを使用して、炎症性エフェクター機能を制御することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、グリコシル化パターンを変更するための修飾は突然変異である。例えば、Asn297での置換。いくつかの実施形態では、Asn297をグルタミン(N297Q)に変異させる。FcγR制御シグナル伝達を調節する抗体によって免疫応答を制御する方法は、例えば、US7416726、US2007/0014795及びUS2008/0286819に記載されており、これらは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、天然に存在しないグリコシル化パターンを有する操作されたFab領域を含有するように修飾される。例えば、ハイブリドーマは、FcRγIIIa結合及びエフェクター機能の増加を可能にする特定の変異を有する脱フコシル化mAb、脱シアリル化mAbまたは脱グリコシル化Fcを分泌するように遺伝子操作することができる。いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、脱フコシル化されるように操作される。
【0082】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体の全Fc領域は、異なるFc領域と交換され、その結果、抗体のFab領域は、非天然Fc領域に結合される。例えば、通常はIgG1Fc領域を含むセツキシマブのFab領域は、IgG2、IgG3、IgG4またはIgAに結合できる、または通常はIgG4Fc領域を含むニボルマブのFab領域をIgG1、IgG2、IgG3、IgA1またはIgG2に結合できる。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、記載されたFcドメインの安定性を調節する、IgG4 Fc内のS228P変異のような1以上のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、FcRへのFc結合を調節する、本明細書に記載されている1以上のアミノ酸修飾を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾は、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を変化させない。他の実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾はまた、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を増加させる。
【0084】
いくつかの実施形態では、免疫複合体における抗体は修飾Fc領域を含有し、その際、修飾は1以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0085】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、TGFβ1に結合することができる、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)受容体またはその断片を含めることによって修飾される。例えば、受容体は、TGFβ受容体II(TGFβRII)であり得る。いくつかの実施形態では、TGFβ受容体は、ヒトTGFβ受容体である。いくつかの実施形態では、IgGは、本明細書に組み込まれるUS9676863に記載されているように、TGFβRII細胞外ドメイン(ECD)へのC末端融合を有する。「Fcリンカー」を使用してIgGをTGFβRII細胞外ドメインに結合してもよい。Fcリンカーは、標的への結合特異性を維持しながら、分子の適切な三次元折り畳みを可能にする、短くて可撓性のペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、TGFβ受容体のN末端は、抗体コンストラクトのFcに融合されている(Fcリンカーの有無にかかわらず)。いくつかの実施形態では、抗体コンストラクト重鎖のC末端は、TGFβ受容体に融合されている(Fcリンカーの有無にかかわらず)。いくつかの実施形態では、抗体コンストラクト重鎖のC末端リシン残基をアラニンに変異させる。
【0086】
いくつかの実施形態では、免疫複合体における抗体はグリコシル化されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、免疫複合体における抗体は、操作されたシステインが結合には利用可能であるが、免疫グロブリンの折り畳み及び集合を障害せず、または抗原結合及びエフェクター機能を変化させない部位にてシステインの置換を介してアジュバント、標識または薬物の部分の抗体への部位特異的結合を提供するシステインが操作された抗体である(Junutula, et al.,(2008),Nature Biotech.,26(8):925-932;Dornan et al.(2009),Blood,114(13):2721-2729;US7521541;US7723485;US2012/0121615;WO2009/052249)。「システインが操作された抗体」または「システインが操作された抗体変異体」とは、抗体の1以上の残基がシステイン残基で置換されている抗体である。システインが操作された抗体は、均一な化学量論(例えば、単一の操作されたシステイン部位を有する抗体にて抗体あたり2つまでのチエノアゼピン部分)を伴うチエノアゼピンリンカー化合物としてチエノアゼピンアジュバント部分に結合することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、システインが操作された抗体は、免疫複合体を調製するために使用される。免疫複合体は、Kabat番号付けによって番号付けされているように、軽鎖上の部位、例えば149-リシン部位(LC K149C)、または重鎖上の部位、例えば122-セリン部位(HC S122C)に導入された反応性システインチオール残基を有し得る。他の実施形態では、システイン操作抗体は、重鎖(HC A118C)の118-アラニン部位(EU番号付け)に導入されたシステイン残基を有する。この部位には、配列番号付けで121またはKabat番号付けで114の番号が付けられている。他の実施形態では、システインが操作された抗体は、Bhakta,S.et al,(2013)“Engineering THIOMABs for Site-Specific Conjugation of Thiol-Reactive Linkers”,Laurent Ducry(ed.),Antibody-Drug Conjugates,Methods in Molecular Biology,vol.1045,pages 189-203;WO 2011/156328;US 9000130に記載される部位に導入されたシステイン残基を有する。
【0089】
免疫チェックポイント阻害剤
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。別の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1以上の免疫チェックポイントタンパク質とそのリガンドとの間の相互作用を低下させる。免疫チェックポイント分子の発現及び/または活性を低下させる阻害性核酸も、本明細書に開示されている方法で使用することができる。
【0090】
免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ及びアテゾリズマブは、IgG1 Fcを含むように改変され、続いて本発明の免疫複合体に変換され得る。
【0091】
ほとんどのチェックポイント抗体は、細胞を死滅させるエフェクター機能を有するのではなく、シグナル伝達を遮断するように設計されている。本発明の免疫複合体は、骨髄細胞活性化及び炎症誘発性応答を誘発するのに必要な「エフェクター機能性」を取り戻すことができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4、CD152としても知られている)、Igドメイン及びITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)、グルココルチコイド誘発性TNFR関連タンパク質(GITR、TNFRSF18としても知られている)、誘導性T細胞共刺激性(ICOS、CD278としても知られている)、CD96、ポリオウイルス受容体関連2(PVRL2、CD112Rとしても知られている)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1、CD279としても知られている)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1、B7-H3及びCD274としても知られている)、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2、B7-DC及びCD273としても知られている)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3、CD223としても知られている)、B7-H4、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRST4、OX40及びCD134としても知られている)及びそのリガンドOX40L(CD252)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO-1)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2(IDO-2)、がん胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、B及びTリンパ球減衰因子(BTLA、CD272としても知られている)、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、アデノシンA2A受容体(A2Ar)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTAタンパク質)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCTLA4、PD-1、またはPD-L1の阻害剤である。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗体は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標)としても知られている)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)としても知られている)、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)としても知られている)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標)としても知られている)、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標)としても知られている)、及びデュルバルマブ(IMFINZI(登録商標)としても知られている)から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCTLA4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCTLA4に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCTLA4に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0095】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0096】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1とPD-L1との間の相互作用を低下させる。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L2の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L2に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L2に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L2に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L2のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1とPD-L2との間の相互作用を低下させる。
【0098】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はLAG-3の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はLAG-3に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はLAG-3に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はLAG-3に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG-3のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0099】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はB7-H4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はB7-H4に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はB7-H4に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はB7-H4に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、B7-H4のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0100】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はKIRの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はKIRに対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はKIRに対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はKIRに対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、KIRのような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0101】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTNFRSF4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTNFRSF4に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTNFRSF4に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTNFRSF4に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、TNFRSF4のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0102】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はOX40Lの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はOX40Lに対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はOX40Lに対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はOX40Lに対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はOX40Lのような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、TNFRSF4とOX40Lとの間の相互作用を低下させる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-1の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-1に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-1に対するモノクローナル抗体であり、いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-1に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-1のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0103】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-2の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-2に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-2に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-2に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO-2のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0104】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCEACAM1の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCEACAM1に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCEACAM1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCEACAM1に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はCEACAM1のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0105】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はBTLAの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はBTLAに対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はBTLAに対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はBMAに対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、BTLAのような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0106】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTIM3の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTIM3に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTIM3に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はTIM3に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、TIM3のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0107】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はA2Arの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はA2Arに対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はA2Arに対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はA2Arに対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、A2Arのような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0108】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はVISTAタンパク質の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はVISTAタンパク質に対する抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はVISTAタンパク質に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はVISTAタンパク質に対するヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、VISTAタンパク質のような1以上の免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性を低下させる。
【0109】
抗体標的
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、5T4、ABL、ABCF1、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、ADORA2A、アグレカン、AGR2、AICDA、AIF1、AIGI、AKAP1、AKAP2、AMH、AMHR2、ANGPT1、ANGPT2、ANGPTL3、ANGPTL4、ANPEP、APC、APOC1、AR、アロマターゼ、ATX、AX1、AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質)、B7.1、B7.2、B7-H1、BAD、BAFF、BAG1、BAI1、BCR、BCL2、BCL6、BDNF、BLNK、BLR1(MDR15)、BIyS、BMP1、BMP2、BMP3B(GDFIO)、BMP4、BMP6、BMP8、BMPRTA、BMPR1B、BMPR2、BPAG1(プレクチン)、BRCA1、C19orflO(IL27w)、C3、C4A、C5、C5R1、CANT1、CAPRIN-1、CASP1、CASP4、CAV1、CCBP2(D6/JAB61)、CCLI(1-309)、CCLI1(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Id)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP-3b)、CCL2(MCP-1)、MCAF、CCL20(MIP-3a)、CCL21(MEP-2)、SLC、エクソダス-2、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-I)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CCL3(MIP-Ia)、CCL4(MIPIb)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CCR1(CKR1/HM145)、CCR2(mcp-IRB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBI1)、CCR8(CMKBR8/TERI/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、CD164、CD19、CDIC、CD2、CD20、CD21、CD200、CD-22、CD24、CD27、CD28、CD3、CD33、CD35、CD37、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45RB、CD47、CD52、CD69、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CD8、CD80、CD81、CD83、CD86、CD137、CD152、CD274、CDH1(エカドヘリン)、CDH1O、CDH12、CDH13、CDH18、CDH19、CDH2O、CDH5、CDH7、CDH8、CDH9、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN1C、CDKN2A(p16INK4a)、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、CEBPB、CERI、CHGA、CHGB、チチナーゼ、CHST1O、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、CLDN3、CLDN7(クラウジン-7)、CLDN18.2(クラウジン18.2)、CLN3、CLU(クラステリン)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CNR1、COL18A1、COLIA1、COL4A3、COL6A1、CR2、Cripto、CRP、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(GCSF)、CTL8、CTNNB1(b-カテニン)、CTSB(カテプシンB)、CX3CL1(SCYD1)、CX3CR1(V28)、CXCL1(GRO1)、CXCL1O(IP-IO)、CXCLI1(1-TAC/IP-9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA-78/LIX)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR4、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、CYB5、CYC1、CYSLTR1、DAB2IP、DES、DKFZp451J0118、DNCL1、DPP4、E2F1、エンゲル、エッジ、フェンネル、EFNA3、EFNB2、EGF、EGFR、ELAC2、ENG、エノラ、ENO2、ENO3、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPRA10、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6、EPHRIN-A1、EPHRIN-A2、EPHRINA3、EPHRIN-A4、EPHRIN-A5、EPHRIN-A6、EPHRIN-B1、EPHRIN-B2、EPHRIN-B3、EPHB4、EPG、ERBB2(Her-2)、EREG、ERK8、エストロゲン受容体、Earl、ESR2、F3(TF)、FADD、ファメシルトランスフェラーゼ、FasL、FASNf、FCER1A、FCER2、FCGR3A、FGF、FGF1(aFGF)、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2(bFGF)、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF8、FGF9、FGFR3、FIGF(VEGFD)、FILI(EPSILON)、FBL1(ZETA)、FLJ12584、FLJ25530、FLRT1(フィブロネクチン)、FLT1、FLT-3、FOS、FOSL1(FRA-1)、FY(DARC)、GABRP(GABAa)、GAGEB1、GAGEC1、GALNAC4S-6ST、GATA3、GD2、GDF5、GFI1、GGT1、GM-CSF、GNAS1、GNRH1、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR44、GPR81(FKSG80)、GRCC1O(C1O)、GRP、GSN(ゲルソリン)、GSTP1、HAVCR2、HDAC、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、ヘッジホッグ、HGF、HIF1A、HIP1、ヒスタミン及びヒスタミン受容体、HLA-A、HLA-DRA、HLA-E、HM74、HMOXI、HSP90、HUMCYT2A、ICEBERG、ICOSL、ID2、IFN-a、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、EFNA6、BFNA7、IFNB1、IFNγ、IFNW1、IGBP1、IGF1、IGFIR、IGF2、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP6、DL-1、ILIO、ILIORA、ILIORB、IL-1、IL1R1(CD121a)、IL1R2(CD121b)、IL-IRA、IL-2、IL2RA(CD25)、IL2RB(CD122)、IL2RG(CD132)、IL-4、IL-4R(CD123)、IL-5、IL5RA(CD125)、IL3RB(CD131)、IL-6、IL6RA、(CD126)、IR6RB(CD130)、IL-7、IL7RA(CD127)、IL-8、CXCR1(IL8RA)、CXCR2、(IL8RB/CD128)、IL-9、IL9R(CD129)、IL-10、IL10RA(CD210)、IL10RB(CDW210B)、IL-11、IL11RA、IL-12、IL-12A、IL-12B、IL-12RB1、IL-12RB2、IL-13、IL13RA1、IL13RA2、IL14、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17A、IL17B、IL17C、IL17R、IL18、IL18BP、IL18R1、IL18RAP、IL19、ILIA、ILIB、ILIF10、ILIF5、IL1F6、ILIF7、IL1F8、DL1F9、ILIHYI、ILIR1、ILIR2、ILIRAP、ILIRAPLI、ILIRAPL2、ILIRL1、IL1RL2、ILIRN、IL2、IL20、IL20RA、IL21R、IL22、IL22R、IL22RA2、IL23、DL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL30、IL3RA、IL4、IL4、IL6ST(糖タンパク質130)、ILK、INHA、INHBA、INSL3、INSL4、IRAK1、IRAK2、ITGA1、ITGA2、ITGA3、ITGA6(α6インテグリン)、ITGAV、ITGB3、ITGB4(β4インテグリン)、JAG1、JAK1、JAK3、JTB、JUN、K6HF、KAI1、KDR、KITLG、KLF5(GC Box BP)、KLF6、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、KRT1、KRT19(ケラチン19)、KRT2A、KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン)、LAMA5、LEP(レプチン)、Lingo-p75、Lingo-Troy、LPS、LTA(TNF-b))、LTB、LTB4R(GPR16)、LTB4R2、LTBR、MACMARCKS、MAGまたはOMgp、MAP2K7(c-Jun)、MCP-1、MDK、MIB1、ミッドカイン、MIF、MISRII、MJP-2、MK、MKI67(Ki-67)、MMP2、MMP9、MS4A1、MSMB、MT3(メタロチオネクチン-UI)、mTOR、MTSS1、MUC1(ムチン)、MYC、MYD88、NCK2、ニューロカン、ネクチン-4、NFKBI、NFKB2、NGFB(NGF)、NGFR、NgR-Lingo、NgRNogo66、(Nogo)、NgR-p75、NgR-Troy、NMEI(NM23A)、NOTCH、NOTCH1、NOX5、NPPB、NROB1、NROB2、NRID1、NR1D2、NR1H2、NR1H3、NR1H4、NR112、NR113、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR2F6、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR4A3、NR5A1、NR5A2、NR6A1、NRP1、NRP2、NT5E、NTN4、ODZI、OPRDI、P2RX7、PAP、PART1、PATE、PAWR、PCA3、PCDGF、PCNA、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PECAMI、ペグ-アスパラギナーゼ、PF4(CXCL4)、PGF、PGR、ホスファカン、PIAS2、PI3キナーゼ、PIK3CG、PLAU(uPA)、PLG、PLXDCI、PKC、PKC-β、PPBP(CXCL7)、PPID、PR1、PRKCQ、PRKD1、PRL、PROC、PROK2、PSAP、PSCA、PTAFR、PTEN、PTGS2(COX-2)、PIN、RAC2(P21Rac2)、RANK、RANKリガンド、RARB、RGS1、RGS13、RGS3、RNFI1O(ZNF144)、Ron、ROBO2、RXR、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン)、SDF2、SERPENA1、SERPINA3、SERPINB5(マスピン)、SERPINEI(PAI-I)、SERPINFI、SHIP-1、SHIP-2、SHB1、SHB2、SHBG、SfcAZ、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、SLIT2、SPP1、SPRR1B(Spr1)、ST6GAL1、STAB1、STATE、STEAP、STEAP2、TB4R2、TBX21、TCP1O、TDGF1、TEK、TGFA
、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGEBR1、TGFBR2、TGFBR3、THIL、THBS1(トロンボスポンジン-1)、THBS2、THBS4、THPO、TIE(Tie-1)、TIMP3、組織因子、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TNF、TNF-a、TNFAIP2(B94)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF21、TNFRSF5、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF1O(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNSF14(HVEM-L)、TNFRSF14(HVEM)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TOLLIP、Toll様受容体、TOP2A(トポイソメラーゼ1ia)、TP53、TPM1、TPM2、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、TRKA、TREM1、TREM2、TROP2、TRPC6、TSLP、TWEAK、チロシナーゼ、uPAR、VEGF、VEGFB、VEGFC、ベルシカン、VHL C5、VLA-4、Wnt-1、XCL1(チムホタクチン)、XCL2(SCM-Ib)、XCRI(GPR5/CCXCR1)、YYI、ZFPM2、CLEC4C(BDCA-2、DLEC、CD303、CLECSF7)、CLEC4D(MCL、CLECSF8)、CLEC4E(ミンクル)、CLEC6A(デクチン-2)、CLEC5A(MDL-1、CLECSF5)、CLEC1B(CLEC-2)、CLEC9A(DNGR-1)、CLEC7A(デクチン-1)、PDGFRa、SLAMF7、GP6(GPVI)、LILRA1(CD85I)、LILRA2(CD85H、ILT1)、LILRA4(CD85G、ILT7)、LILRA5(CD85F、ILT11)、LILRA6(CD85b、ILT8)、NCR1(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD337、NKp30)、OSCAR、TARM1、CD300C、CD300E、CD300LB(CD300B)、CD300LD(CD300D)、KIR2DL4(CD158D)、KIR2DS、KLRC2(CD159C、NKG2C)、KLRK1(CD314、NKG2D)、NCR2(CD336、NKp44)、PILRB、SIGLEC1(CD169、SN)、SIGLEC14、SIGLEC15(CD33L3)、SIGLEC16、SIRPα、SIRPB1(CD172B)、TREM1(CD354)、TREM2、ならびにKLRF1(NKp80)から選択される1以上の標的に結合することができる(例えば、それらから選択される標的に特異的に結合する)。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体は、FcR.ガンマ共役受容体に結合する。いくつかの実施形態では、FcR.ガンマ共役受容体は、GP6(GPVI)、LILRA1(CD85I)、LILRA2(CD85H、ILT1)、LILRA4(CD85G、ILT7)、LILRA5(CD85F、ILT11)、LILRA6(CD85b、ILT8)、NCR1(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD337、NKp30)、OSCAR及びTARM1から成る群から選択される。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗体はDAP12共役受容体に結合する。いくつかの実施形態では、DAP12共役受容体は、CD300C、CD300E、CD300LB(CD300B)、CD300LD(CD300D)、KIR2DL4(CD158D)、KIR2DS、KLRC2(CD159C、NKG2C)、KLRK1(CD314、NKG2D)、NCR2(CD336、NKp44)、PILRB、SIGLEC1(CD169、SN)、SIGLEC14、SIGLEC15(CD33L3)、SIGLEC16、SIRPB1(CD172B)、TREM1(CD354)、及びTREM2から成る群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヘムITAM含有受容体に結合する。いくつかの実施形態では、当該ヘムITAM含有受容体はKLRF1(NKp80)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体は、CLEC4C(BDCA-2、DLEC、CD303、CLECSF7)、CLEC4D(MCL、CLECSF8)、CLEC4E(ミンクル)、CLEC6A(デクチン-2)、CLEC5A(MDL-1、CLECSF5)、CLEC1B(CLEC-2)、CLEC9A(DNGR-1)及びCLEC7A(デクチン-1)から選択される1以上の標的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体はCLEC6A(デクチン-2)またはCLEC5Aに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体はCLEC6A(デクチン-2)に結合することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体は、ATP5I(Q06185)、OAT(P29758)、AIFM1(Q9Z0X1)、AOFA(Q64133)、MTDC(P18155)、CMC1(Q8BH59)、PREP(Q8K411)、YMEL1(O88967)、LPPRC(Q6PB66)、LONM(Q8CGK3)、ACON(Q99KI0)、ODO1(Q60597)、IDHP(P54071)、ALDH2(P47738)、ATPB(P56480)、AATM(P05202)、TMM93(Q9CQW0)、ERGI3(Q9CQE7)、RTN4(Q99P72)、CL041(Q8BQR4)、ERLN2(Q8BFZ9)、TERA(Q01853)、DAD1(P61804)、CALX(P35564)、CALU(O35887)、VAPA(Q9WV55)、MOGS(Q80UM7)、GANAB(Q8BHN3)、ERO1A(Q8R180)、UGGG1(Q6P5E4)、P4HA1(Q60715)、HYEP(Q9D379)、CALR(P14211)、AT2A2(O55143)、PDIA4(P08003)、PDIA1(P09103)、PDIA3(P27773)、PDIA6(Q922R8)、CLH(Q68FD5)、PPIB(P24369)、TCPG(P80318)、MOT4(P57787)、NICA(P57716)、BASI(P18572)、VAPA(Q9WV55)、ENV2(P11370)、VAT1(Q62465)、4F2(P10852)、ENOA(P17182)、ILK(O55222)、GPNMB(Q99P91)、ENV1(P10404)、ERO1A(Q8R180)、CLH、(Q68FD5)、DSG1A(Q61495)、AT1A1(Q8VDN2)、HYOU1(Q9JKR6)、TRAP1(Q9CQN1)、GRP75(P38647)、ENPL(P08113)、CH60(P63038)、及びCH10(Q64433)から選択される1以上の標的に結合することができる(例えば、それらから選択される標的に特異的に結合する)。先行するリストでは、受入番号を括弧内で示す。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗体は、CDH1、CD19、CD20、CD29、CD30、CD38、CD40、CD47、EpCAM、MUC1、MUC16、EGFR、Her2、SLAMF7、及びgp75から選択される抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD47、EpCAM、MUC1、MUC16、EGFR、及びHER2から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、Tn抗原及びトムゼン-フリーデンライヒ抗原から選択される抗原に結合する。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体またはFc融合タンパク質は、アバゴボマブ、アバタセプト(ORENCIA(登録商標)としても知られている)、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標)としても知られている)、c7E3Fab)、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標)としても知られている)、アデカツムマブ、アレンツズマブ(CAMPATH(登録商標)としても知られている)、MabCampathまたはCampath-1H)、アルツモマブ、アフェリモマブ、アナツモマブ、マフェナトックス、アネツムマブ、アンルキズマブ、アポリズマブ、アクチルモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バピネズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標)としても知られている)、バビツキシマブ、ベクツモマブ(LYMPHSCAN(登録商標)としても知られている)、ベリムマブ(LYMPHO-STAT-B(登録商標)としても知られている)、ベルチリムマブ、ベシリソマブ、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)しても知られている)、ビシロマブ、ブラロバルビタール、ビバツズマブメルタンシン、カムパス、カナキヌマブ(ACZ885としても知られている)、カンツズマブメルタンシン、カプロマブ(PROSTASCINT(登録商標)としても知られている)、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標)としても知られている)、セデリズマブ(CIMZIA(登録商標)としても知られている)、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)としても知られている)、クレノリキシマブ、デカツズマブ、ダクリキシマブ、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標)としても知られている)、デノスマブ(AMG162としても知られている)、デツモマブ、ドリモマブアリトックス、ドリキシズマブ、ダンツマブ、デュリムルマブ、デュルムマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても知られている)、エドバコマブ、エドレコロマブ(Mab17-1A、PANOREX(登録商標)としても知られている)、エファリズマブ(RAPTIVA(登録商標)としても知られている)、エフンギュマブ(MYCOGRAB(登録商標)としても知られている)、エルシリモマブ、エンリモマブペゴール、エピツモマブシツキセタン、エファリズマブ、エピツモマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(REXOMUN(登録商標)としても知られている)、エタネルセプト(ENBREL(登録商標)としても知られている)、エタラシズマブ(エタラツズマブ、VITAXIN(登録商標)、ABEGRIN(登録商標)としても知られている)、エクスビビルマブ、ファノレソマブ(NEUTROSPEC(登録商標)としても知られている)、ファラリモマブ、フェリズマブ、フォントリズマブ(HUZAF(登録商標)としても知られている)、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ(ABXCBL(登録商標)としても知られている)、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)としても知られている)、ゴリムマブ(CNTO148としても知られている)、ゴミリキシマブ、イバリズマブ(TNX-355としても知られている)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標)としても知られている)、イゴボマブ、イムシロマブ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)としても知られている)、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101としても知られている)、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レマレソマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ(HGS-ETR2、ETR2-ST01としても知られている)、レキシツムマブ、リビビルマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ(HGSETR1、TRM-1としても知られている)、マスリモマブ、マツズマブ(EMD72000としても知られている)、メポリズマブ(BOSATRIA(登録商標)としても知られている)、メテリムマブ、ミラツムマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、モタビズマブ(NUMAX(登録商標)としても知られている)、ムロモナブ(OKT3としても知られている)、ナコロマブタフェナトックス、ナプツモマブエスタフェナトックス、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標)、ANTEGREN(登録商標)としても知られている)、ネバクマブ、ネレリモマブ、ニモツマブ(THERACIM hR3(登録商標)、THERA-CIM-hR3(登録商標)、THERALOC(登録商標)としても知られている)、ノフェツモマブメルペンタン(VERLUMA(登録商標)としても知られている)、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)としても知られている)、オレゴボマブ(OVAREX(登録商標)としても知られている)、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標)としても知られている)、パニツムマブ(ABX-EGF、VECTIBIX(登録商標)としても知られている)、パスコリズマブ、ペムツモマブ(THERAGYN(登録商標)としても知られている)、ペルツズマブ(2C4、OMNITARG(登録商標)としても知られている)、ペクセリズマブ、ピンツモマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)としても知られている)、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、MabTHERA(登録商標)としても知られている)、ロベリズマブ、ルピズマブ、サツモマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ(MEDI-507としても知られている)、ソンツズマブ、スタムルマブ(MYO-029としても知られている)、スレソマブ(LEUKOSCAN(登録商標)としても知られている)、タカツズマブ、テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タプリツモマブ、パプトックス、テフィバズマブ(AUREXIS(登録商標)としても知られている)、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)としても知られている)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(CP-675,206としても知られている)、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ(CNTO1275としても知られている)、バパリキシマブ、ベルツズマブ、バパリモマブ、ビシリズマブ(NUVION(登録商標)としても知られている)、ボロシキシマブ(M200も知られている)、ボツムマブ(HUMASPECT(登録商標)としても知られている)、ザルツムマブ、ザノリムマブ(HuMAX-CD4としても知られている)、ジルアリムマブ、ゾリモマブアリトックス、ダラツムマブ、エロツクスマブ、オビンツンズマブ、オララツマブ、ブレンツキシマブベドチン、アフィベルセプト、アバタセプト、ベラタセプト、アフィベルセプト、エタネルセプト、ロミプロスチム、SBT-040(US2017/0158772にて列挙された配列)から選択される。いくつかの実施形態では、抗体はリツキシマブである。
【0117】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、PD-L1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0118】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、分化抗原群274、CD274、B7-ホモログ1、またはB7-H1)は、B7タンパク質スーパーファミリーに属し、且つプログラム細胞死タンパク質1(PD-1、PDCD1、分化抗原群279、またはCD279)のリガンドである。PD-L1はまた、B7.1(CD80)と相互作用することができ、そのような相互作用は、T細胞のプライミングを阻害すると考えられている。PD-L1/PD-1軸は、適応免疫応答の抑制に大きな役割を果たす。より具体的には、PD-L1とその受容体であるPD-1との結合は、T細胞の活性化及び増殖を阻害するシグナルをもたらすと考えられている。PD-L1に結合し、リガンドがPD-1受容体に結合するのを防ぐ薬剤は、この免疫抑制を妨げ、したがって、必要に応じて、例えばがんまたは感染症の治療のために、免疫応答を増強することができる。PD-L1/PD-1経路はまた、自己免疫の予防に寄与し、したがって、PD-L1に対するアゴニスト剤または免疫阻害ペイロードを送達する薬剤は、自己免疫障害の治療に役立ち得る。
【0119】
PD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150701に記載されるように内部移行することができるか、またはPD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150702に記載されるように非内部移行であることができる。
【0120】
PD-L1を標的とする複数の抗体は、例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))及びアベルマブ(BAVENCIO(商標))が、がんの治療のために開発されている。それにもかかわらず、PD-L1に高い親和性で結合し、PD-L1/PD-1シグナル伝達を効果的に阻害する薬剤、及びPD-L1発現細胞に治療ペイロードを送達し得る薬剤を含む、新しいPD-L1結合剤が依然として必要とされている。さらに、自己免疫疾患及び感染症を治療するための新規のPD-L1結合剤が必要とされている。
【0121】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、HER2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0122】
特定の実施形態では、本発明の免疫複合体は抗HER2抗体を含む。本発明の一実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、US5821337の表3に記載されているように、ヒト化抗HER2抗体、例えば、huMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7及びhuMAb4D5-8を含み、それは参照によって本明細書に特に組み込まれる。これらの抗体には、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域が含まれる。ヒト化抗体huMAb4D5-8はトラスツズマブとも呼ばれ、HERCEPTIN(商標)(Genentech,Inc.)の商品名で市販されている。
【0123】
トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、Genentech)は、細胞に基づくアッセイにて、HER2の細胞外ドメインに高親和性で選択的に結合する(Kd=5nM)マウス抗HER2抗体(4D5)のヒト化型である、組換えDNA由来のIgG1κ、モノクローナル抗体である(米国特許第5677171号、同第5821337号、同第6054297号、同第6165464号、同第6339142号、同第6407213号、同第6639055号、同第6719971号、同第6800738号、同第7074404号、Coussens et al(1985)Science 230:1132-9、Slamon et al(1989)Science 244:707-12、Slamon et al(2001)New Engl.J.Med.344:783-792)。
【0124】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、トラスツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブの一方または双方の可変領域をさらに含む。
【0125】
本発明の別の実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、米国特許第7862817号に記載されているように、ヒト化抗HER2抗体、例えば、ヒト化2C4を含む。例示的なヒト化2C4抗体は、ペルツズマブである(CAS登録番号380610-27-5)、PERJETA(商標)(Genentech、Inc.)。ペルツズマブはHER二量体化阻害剤(HDI)であり、他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3及びHER4)と活性なヘテロ二量体またはホモ二量体を形成するHER2の能力を阻害する機能を有する。例えば、Harari and Yarden,Oncogene 19:6102-14(2000);Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol 2:127-37(2001);Sliwkowski Nat Struct Biol 10:158-9(2003);Cho et al.Nature 421:756-60(2003);及びMalik et al.Pro Am Soc Cancer Res 44:176-7(2003)を参照のこと。PERJETA(商標)は乳癌の治療薬として承認されている。
【0126】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、ペルツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体はさらに、ペルツズマブの一方または双方の可変領域を含む。
【0127】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、CEAを特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)は、CD66e(分化抗原群66e)としても知られ、がん胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーである。
【0128】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、CEAを特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0129】
がん胎児性抗原(CEA、CD66e、CEACAM5)の発現の上昇は、特に腫瘍細胞の接着、転移、細胞免疫機構の遮断、及び抗アポトーシス機能を有することなど、腫瘍の種々の生物学的側面に関係している。CEAはまた、多くの癌腫の血液マーカーとしても使用されている。MN-14及びhMN14としても知られている、ラベツズマブ(CEA-CIDE(商標)、Immunomedics、CAS登録番号219649-07-7)は、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、結腸直腸癌の治療のために研究されている(Blumenthal,R.et al(2005)Cancer Immunology Immunotherapy54(4):315-327)。カンプトテシン類似体(ラベツズマブゴビテカン、IMMU-130)に結合したラベツズマブは、がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)を標的とし、再発性または難治性の転移性大腸癌の患者で研究されている(Sharkey,R.et al,(2018),Molecular Cancer Therapeutics 17(1):196-203;Cardillo,T.et al(2018)Molecular Cancer Therapeutics 17(1):150-160)。
【0130】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、TROP2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2(TROP-2)は、TACSTD2遺伝子によってコードされる膜貫通糖タンパク質である(Linnenbach AJ,et al(1993)Mol Cell Biol.13(3):1507-15;Calabrese G,et al(2001)Cytogenet Cell Genet.92(1-2):164-5)。Trop2は、細胞内カルシウムシグナル伝達物質であり、多くのがんで発現が異なり、自己複製、増殖、浸潤、生存のシグナルを細胞に伝達する。Trop2は、幹細胞マーカーと考えられており、多くの正常組織で発現しているのに対し、多くの癌では過剰発現している(Ohmachi T,et al.,(2006)Clin.Cancer Res.,12(10),3057-3063;Muhlmann G,et al.,(2009)J.Clin.Pathol.,62(2),152-158;Fong D,et al.,(2008)Br. J.Cancer,99(8),1290-1295;Fong D,et al.,(2008)Mod. Pathol.,21(2),186-191;Ning S,et al.,(2013)Neurol.Sci.,34(10),1745-1750)。Trop2の過剰発現は予後に重要である。Trop2と相互作用するいくつかのリガンドが提案されている。Trop2は、異なる経路を介して細胞にシグナルを伝達しており、いくつかの転写因子の複雑なネットワークによって転写調節されている。
【0131】
ヒトTROP2(TACSTD2:腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2、GA733-1、EGP-1、M1S1;以下、hTrop2という)は、323のアミノ酸残基から成る単回膜貫通1型細胞膜タンパク質である。ヒト栄養膜細胞及びがん細胞に共通する、免疫抵抗性に関与する細胞膜タンパク質の存在は、以前から示唆されていたが(Faulk W P,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.75(4):1947-1951(1978))、ヒト絨毛癌細胞株の細胞膜タンパク質に対するモノクローナル抗体によって認識される抗原分子が同定され、ヒト栄養膜細胞で発現される分子の1つとしてTrop2と命名された(Lipinski M,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.78(8),5147-5150(1981))。この分子はまた、胃癌細胞株での免疫化によって得られたマウスモノクローナル抗体GA733によって認識される腫瘍抗原GA733(Linnenbach A J,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86(1),27-31(1989))、または非小細胞肺癌細胞での免疫化によって得られたマウスモノクローナル抗体RS7-3G11によって認識される上皮糖タンパク質(EGP-1;Basu A,et al.,Int.J.Cancer,62(4),472-479(1995))としても命名された。しかし、1995年に、Trop2遺伝子がクローニングされ、これらの分子はすべて同一分子であることが確認された(Fornaro M,et al.,Int.J.Cancer,62(5),610-618(1995))。hTrop2のDNA配列及びアミノ酸配列は、公開データベースで利用可能であり、例えば、アクセッション番号NM_002353及びNP_002344(NCBI)で参照することができる。
【0132】
がんとの関連を示唆するこのような情報を受けて、これまでに複数の抗hTROP2抗体が確立されており、その抗腫瘍効果が研究されてきた。これらの抗体の中でも、例えば、ヌードマウス異種移植片モデルにおいてそれ自体で腫瘍活性を示す非結合抗体(WO2008/144891;WO2011/145744;WO2011/155579;WO2013/077458)、及び細胞傷害性薬とともにADCとしての抗腫瘍活性を示す抗体(WO2003/074566;WO2011/068845;WO2013/068946;US7999083)が開示されている。しかしながら、それらの活性の強度または適用範囲は依然として不十分であり、hTrop2は治療標的として、未だ満たされていない医療ニーズがある。
【0133】
がん細胞におけるTROP2発現は、薬剤耐性と相関している。いくつかの戦略は、抗体、抗体融合タンパク質、化学阻害剤、ナノ粒子などを含み、がん細胞上のTrop2を標的としている。これらの様々な治療的処置を用いたin vitro研究及び前臨床研究では、in vitro及びマウスを用いたin vivoの両方で腫瘍細胞の増殖が有意に抑制された。臨床研究では、予後バイオマーカーとして、また、抵抗性を逆転させる治療標的として、Trop2の適用の可能性が検討されている。
【0134】
トポイソメラーゼ阻害剤に連結したTrop2指向性抗体を含む抗体薬物複合体であるサシツズマブゴビテカン(TRODELVY(登録商標)、Immunomedics、IMMU-132)は、少なくとも2回の先行治療を受けた成人患者における転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の治療に適応される。サシツズマブゴビテカンにおけるTrop2抗体は、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38に結合される(US2016/0297890;WO2015/098099)。
【0135】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、カプリン-1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む(Ellis JA,Luzio JP.(1995),J.Biol.Chem.270(35):20717-23;Wang B,et al.(2005),J.Immunol.175(7):4274-82;Solomon S,et al.(2007),Mol.Cell Biol.27(6):2324-42)。カプリン-1はGPIAP1、GPIP137、GRIP137、M11S1、RNG105、p137GPI、及び細胞周期関連タンパク質1としても知られている。
【0136】
細胞質活性化/増殖関連タンパク質-1(カプリン-1)は、細胞周期制御関連遺伝子の調節に関与するRNA結合タンパク質である。カプリン-1は、c-Myc及びサイクリンD2のmRNAに選択的に結合し、G期を通ってS期への細胞の進行を加速し、細胞生存率を高め、細胞増殖を促進する。これは、それが腫瘍形成にて重要な役割を果たす場合があることを示している(Wang B,et al.(2005),J.Immunol.175:4274-4282)。カプリン-1は、単独で、またはRasGAP SH3ドメイン結合タンパク質1及び脆弱X精神遅滞タンパク質のような他のRNA結合タンパク質と組み合わせて作用する。腫瘍形成過程では、カプリン-1は、主に細胞増殖を活性化し、免疫チェックポイントタンパク質の発現を上方調節することによって機能する。ストレス性顆粒の形成を介して、カプリン-1はまた、腫瘍細胞が有害条件に適応する過程にも関与しており、これは放射線及び化学療法の耐性に寄与する。種々の臨床悪性腫瘍におけるその役割を考慮すると、カプリン-1は、バイオマーカーとして、及び新規治療薬開発の標的として使用される可能性がある。(Yang, Z-S, et al (2019),Oncology Letters,18:15-21)。
【0137】
治療及び検出のためのカプリン-1を標的とする抗体が記載されている(WO2011/096519;WO2013/125654;WO2013/125636;WO2013/125640;WO2013/125630;WO2013/018889;WO2013/018891;WO2013/018883;WO2013/018892;WO2014/014082;WO2014/014086;WO2015/020212;WO2018/079740)。
【0138】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、クローディン-1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0139】
クローディン1は、細胞間の密着結合に位置する膜貫通タンパク質ファミリーのクローディンのメンバーであり、肝細胞へのHCV侵入のための共受容体として作用する(Kniesel U,et al.(2000).Cell.Mol.Neurobiol.20(1):57-76;Furuse M,et al.(1998).J.Cell Biol.141(7):1539-50;Swisshelm K,et al.(2005),Adv.Drug Deliv.Rev.57(6):919-28)。クローディン1は、老化関連上皮膜タンパク質、老化関連上皮膜タンパク質1、CLDN1、CLD1、ILVASC、SEMP1としても知られている。
【0140】
クローディンは上皮細胞の極性を維持する管腔上皮シートに豊富に含まれる。クローディン1は、膀胱、卵管、肝臓、膵臓、前立腺、及び皮膚のようなほとんどの組織で発現されている。
【0141】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体はネクチン-4を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0142】
ネクチンは、カルシウム依存性細胞接着に関与する細胞接着分子のタンパク質ファミリーである(Takai Y.et al.(2003),Cancer Science,94(8):655-67;Fuchs,A.et al.(2006),Seminars in Cancer Biology,16(5):359-366;Miyoshi J.et al.(2007),American journal of nephrology,27(6):590-604)。ネクチンは、上皮細胞の中間接合部、または神経細胞の化学的シナプスを含む、多くの異なる組織における細胞間の結合に重要な役割を担う。
【0143】
非対称ビス-ベンゾイミダゾールアジュバント化合物
本発明の免疫複合体は、一方のベンゾイミダゾール基のN-イミダザゾールが第2のベンゾイミダゾール基のO-フェノキシにテザー基によって結合している、非対称ビス-ベンゾイミダゾールアジュバント部分を含む。テザー基は、任意の酸素を含む、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基である。本明細書に記載の非対称ビス-ベンゾイミダゾールアジュバントアジュバント部分は、免疫応答を誘発する化合物(すなわち、免疫刺激剤)である。一般に、本明細書に記載されているアジュバント部分はSTINGアゴニストである。
【0144】
特定のアミドベンゾイミダゾール化合物は全身性活性があるSTING受容体アゴニストを示している (Ramanjulu,J.M.et al.(2018),Nature,564:439-443;Barber,G.N.(2015),Nature Rev.Immunol.15:760-770;US2019/0300513)。
【0145】
STINGは大きく対称的な結合ポケットがあるダイマー構造である。標的抗体に結合した表1のビス-ベンゾイミダゾール化合物は、STINGの結合ポケットの開放型立体配座を標的とし、これに結合するように設計された。小分子アゴニストへの結合は通常、STINGタンパク質の閉鎖型立体配座を誘導する。このことは、リンカーが、特に「非切断性」であれば、結合及び活性化を妨げるリスクを導入する。ビス-ベンゾイミダゾールは、開放型立体配座を介して結合し、活性化することが報告されており、本発明者らは、リンカーの取り付けに適するであろうと予測した(Ramanjulu,J.M.et al(2018 )Nature 564:439-443;Barber,G.N.(2015)Nature Rev Immunol 15:760-770)。
【0146】
表1は、調製され、nmr及び質量分析によって特性評価され、STINGへの結合に関する生化学的アッセイで試験された、例示的な非対称ビス-ベンゾイミダゾール化合物(BBI)を示す。IC50値は、実施例202によるHTRF結合アッセイによって測定した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0147】
ビス-ベンゾイミダゾールリンカー化合物
本発明の免疫複合体は、抗体と非対称ビス-ベンゾイミダゾール-リンカー(BBI-L)化合物との結合によって調製される。ビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物は、リンカーユニット(L)に共有結合したSTINGアゴニストのビス-ベンゾイミダゾール(BBI)部分を含む。リンカーユニットは、免疫複合体の安定性、透過性、溶解性、及び他の薬物動態、安全性、及び有効性の特性に影響を与える官能基ならびにサブユニットを含む。リンカーユニットは、抗体の反応性官能基と反応する、すなわち、結合する反応性官能基を含む。例えば、抗体のリシン側鎖アミノのような求核基は、BBI-リンカー化合物の求電子反応性官能基と反応して免疫複合体を形成する。また、例えば、抗体のシステインチオールは、BBIリンカー化合物のマレイミド基またはブロモアセトアミド基と反応して免疫複合体を形成する。
【0148】
本発明の免疫複合体の設計のための考慮は、(1)生体内循環中のビス-ベンゾイミダゾール(BBI)部分の早期放出を防ぐことと、(2)BBI部分の生物活性形態が所望の作用部位にて適切な速度で放出されることを保証することとを含む。その機能的特性と合わせた免疫複合体の複雑な構造は、抗体、結合部位、リンカー構造、及びビス-ベンゾイミダゾール化合物を含む分子のあらゆる構成成分の慎重な設計と選択を必要とする。リンカーはアジュバント放出のメカニズムと速度を決定する。
【0149】
一般に、リンカーユニット(L)は切断可能であってもよく、または切断可能でなくてもよい。切断可能なリンカーユニットは、ペプチドリンカーユニットを認識して切断し、STINGアゴニストを抗体から分離するカテプシンのような特定のプロテアーゼの基質であるペプチド配列を含んでもよい(Caculitan NG,et al.(2017),Cancer Res .77(24):7027-7037)。
【0150】
切断可能なリンカーユニットは、酸感受性ジスルフィド基のような不安定な機能性を含んでもよい(Kellogg,BA et al.(2011),Bioconjugate Chem.22,717-727;Ricart,A.D.et al.(2011),Clin.Cancer Res.17,6417-6427;Pillow,T.,et al.(2017),Chem.Sci.8,366-370;Zhang D,et al.(2016),ACS.Med.Chem.Lett.7(11):988-993)。
【0151】
いくつかの実施形態では、リンカーは生理学的条件下で切断可能ではない。本明細書で使用されるとき、「生理的条件」という用語は、摂氏20~40度の温度範囲、大気圧(すなわち1気圧)、約6~約8のpH、及び1以上の生理学的酵素、プロテアーゼ、酸、及び塩基を指す。免疫複合体における抗体とSTINGアゴニストとの間の切断できないリンカーの1つの利点は、早期のペイロード放出及び対応する毒性を最小限に抑えることである。STINGは広く発現される受容体であり、したがって特に関連する検討事項である。
【0152】
一実施形態では、本発明は、細胞結合剤と免疫賦活部分との間に、カテプシン、腫瘍関連エラスターゼ酵素、またはプロテアーゼ様もしくはエラスターゼ様活性がある酵素のようなプロテアーゼによって選択的に切断され得る特定のアミノ酸残基の直鎖配列に基づくペプチドラジカルを含むペプチド連結ユニット、すなわちLまたはリンカーを含む。ペプチドラジカルは約2~約12のアミノ酸であってもよい。ペプチドリンカー内の結合を酵素によって切断することによって、免疫賦活部分の活性形態が放出される。このことは、本発明に係る複合体の組織特異性の増大をもたらすので、他の組織型における本発明に係る複合体の毒性のさらなる低下をもたらす。
【0153】
リンカーは、生体媒体、例えば、培養培地または血清にて免疫複合体の十分な安定性を提供し、同時に、免疫賦活部分、すなわち「ペイロード」の放出を伴うその特異的な酵素的切断性または加水分解切断性の結果としての腫瘍組織内で所望の細胞内作用を提供する。
【0154】
プロテアーゼ、カテプシンまたはエラスターゼの酵素活性は、生理的条件下で免疫複合体の共有結合の切断を触媒することができる。酵素活性は腫瘍組織に関連する細胞の発現産物である。ターゲッティングペプチドの切断部位での酵素活性が免疫複合体をターゲッティングペプチド及び連結基を含まない活性がある免疫賦活薬に変換する。切断部位は酵素によって特異的に認識されてもよい。カテプシンまたはエラスターゼは、特定のペプチドのC末端アミノ酸残基と免疫複合体の免疫賦活部分との間の特定のペプチド結合の切断を触媒してもよい。
【0155】
一実施形態では、本発明は、細胞結合剤と免疫賦活部分との間に、グルクロニダーゼ(Jeffrey SC,et al(2006)Bioconjug Chem.17(3):831-40)、またはスルファターゼ(Bargh JD,et al(2020)Chem Sci.11(9):2375-2380)による切断の基質を含む連結ユニット、すなわち、Lまたはリンカーを含む。特に、Lは、以下の式から選択されるGlucユニットを含み得る:
【化5】
【0156】
本発明の免疫複合体の特異的切断は、免疫系の腫瘍浸潤細胞及び白血球分泌酵素の存在を利用して、腫瘍部位での抗癌剤の活性化を促進する。
【0157】
BBIリンカー化合物に好適な反応性求電子反応性官能基(式IIのQ)には、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステル及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジル(スルホ-NHS)エステル(アミン反応性);カルボジイミド(アミン及びカルボキシル反応性);ヒドロキシメチルホスフィン(アミン反応性);マレイミド(チオール反応性);N-ヨードアセトアミド(チオール反応性)のようなハロゲン化アセトアミド;アリールアジド(一級アミン反応性);フッ化アリールアジド(炭素-水素(C-H)挿入を介した反応性);ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル(アミン反応性);テトラフルオロフェニル(TFP)及びスルホテトラフルオロフェニル(STP)エステル(アミン反応性);イミドエステル(アミン反応性);イソシアン酸(ヒドロキシル反応性);ビニルスルホン(チオール、アミン、及びヒドロキシル反応性);ピリジルジスルフィド(チオール反応性);及びベンゾフェノン誘導体(C-H結合挿入を介した反応性)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる試薬には、Hermanson,Bioconjugate Techniques,2nd Edition,Academic Press,2008に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
本発明は、免疫複合体の設計、調製及び使用に対する制限ならびに課題に対する解決策を提供する。プロテアーゼのペプチドユニット及び基質を含むもののようないくつかのリンカーは、血流中で不安定であってもよく、それによって、標的細胞での内部移行前に許容できない量のアジュバント/薬物を放出してもよい(Khot,A.et al(2015),Bioanalysis,7(13):1633-1648)。他のリンカーは、血流中では安定性を提供し得るが、細胞内放出の有効性に悪影響が及ぼされ得る。所望の細胞内放出を提供するリンカーは通常、血流中での安定性に乏しい。換言すると、血流安定性及び細胞内放出は通常、反比例関係にある。さらに、標準的な結合プロセスで、抗体上に負荷されたアジュバント/薬物部分の量(すなわち、薬物負荷)、結合反応で形成される凝集体の量、及び得ることができる最終精製結合の収率は、相関する。例えば、凝集体の形成は一般に、抗体に結合されるアジュバント/薬物部分及びその誘導体の当量数に正相関する。高い薬物負荷のもとでは、形成された凝集体は治療用途については除去されなければならない。結果として、薬物負荷が介在する凝集体形成は、免疫複合体の収率を低下させ、プロセスの規模拡大を困難し得る。
【0159】
例示的な実施形態は、STINGアゴニストである式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物を含む:
【化6】
式中、
及びXは、Rで任意で置換される5員ヘテロアリールから独立して選択され;
は、H、F、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-(C-Cアルキル)、及びRから成る群から選択され;
2a及びR2bは、-C(=O)N(R及びRから独立して選択され;
は、-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルケニルジイル)-、-(C-Cアルケニルジイル)-O-、-(C-Cアルキニルジイル)-、-(C-Cアルキニルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、及び-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-から成る群から選択され、ここで、アルキルジイル、アルケニルジイル、及びアルキニルジイルは、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、及びRから選択される1以上の基によって任意で置換され;
、X、R、R2a、R2b及びRのうちの1つは、Rで置換され;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルから成る群から選択され、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CHから選択される1以上の基で任意で置換され;
は、
-(C-C12アルキルジイル)-L;
-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-N(R)-L;
-OC(=O)N(R)-L;
-OC(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-N(R)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-N(R)-L;
-N(R)-(C-C12-アルキルジイル)-O-L;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-C(=O)N(R)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-L;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-L;
-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-L;及び
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-Lから成る群から選択され;
は、独立して、HまたはC-Cアルキルであり;
Lは、
Q-C(=O)-PEG-;
Q-C(=O)-PEG-Gluc-R-;
Q-C(=O)-PEG-O-;
Q-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-C(=O);
Q-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-Gluc-R-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-C(=O)-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-(CH-C(=O)N(R)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-;及び
Q-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択されるリンカーであり;
PEGは、式:-(CHCHO)-(CH-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化7】
を有し;
PEPは、式:
【化8】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO、-OH、-OCH及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC-C20アリールジイル及びC-C20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化9】
は-CH(R)O-、-CH-、-CHN(R)-、及び-CH(R)O-C(=O)-から成る群から選択され、RはH、C-Cアルキル、C(=O)-C-Cアルキル、及び-C(=O)N(Rから選択され、R9は独立してH、C-C12アルキル、及び-(CH2CO)-(CH-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
Qは、F、Cl、NO及びSO-から独立して選択される1以上の基で置換されたN-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル、マレイミド、及びフェノキシから成る群から選択され;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールジイルは、独立して且つ任意で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCH(CH、-CHOH、-CHOCH、-CHCHOH、-C(CHOH、-CH(OH)CH(CH、-C(CHCHOH、-CHCHSOCH、-CHOP(O)(OH)、-CHF、-CHF、-CF、-CHCF、-CHCHF、-CH(CH)CN、-C(CHCN、-CHCN、-CHNH、-CHNHSOCH、-CHNHCH、-CHN(CH、-COH、-COCH、-COCH、-COC(CH、-COCH(OH)CH、-CONH、-CONHCH、-CON(CH、-C(CHCONH、-NH、-NHCH、-N(CH、-NHCOCH、-N(CH)COCH、-NHS(O)CH、-N(CH)C(CHCONH、-N(CH)CHCHS(O)CH、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH、-NHC(=NH)NH、-NHC(=O)NH、-NO、=O、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、-O(CHCHO)-(CHCOH、-O(CHCHO)H、-OCHF、-OCHF、-OCF、-OP(O)(OH)、-S(O)N(CH、-SCH、-S(O)CH、及び-S(O)Hから独立して選択される1以上の基で置換される。
【0160】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、Qが以下から選択されるものが含まれる:
【化10】
【0161】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、QがF、Cl、NO、及びSO から独立して選択される1以上の基で置換されたフェノキシであることが含まれる。
【0162】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、Qが2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシであることが含まれる。
【0163】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、Qが2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルホナト-フェノキシであることが含まれる。
【0164】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、Qがマレイミドであることが含まれる。
【0165】
式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー化合物の例示的な実施形態には、Lが構造:
【化11】
から選択され、波線はRへの結合点を示すことが含まれる。
【0166】
非対称ビス-ベンゾイミダゾールのSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物(BBI-L)の例示的な実施形態は、表2に示される。各STINGアゴニスト-リンカー中間化合物は、調製され、nmr、質量分析によって特性評価され、示される構造及び質量を有することが示された。表2のSTINGアゴニスト-リンカー中間化合物は、抗体に結合した場合にがん及び他の障害を治療するための有用な治療活性を予測し得る、STINGアゴニストの選択性の驚くべき且つ予想外の特性を示し得る。
【表2-1】
【表2-2】
【0167】
免疫複合体
本発明の免疫複合体は、骨髄細胞のような免疫エフェクター細胞と同様にSTINGを発現している腫瘍細胞自体の標的特異的活性化を誘導する。腫瘍ターゲティングは、オフターゲットのSTING活性化をできるだけ減らす特異性をもたらし、当該免疫複合体は、食細胞作用がエフェクター細胞の活性化を高めるだけでなく、免疫複合体の取り込み及びその後の腫瘍抗原のプロセッシング及び提示も増加させることを可能にする。
【0168】
免疫複合体の例示的な実施形態は、リンカーによって1以上のSTINGアゴニストの非対称ビス-ベンゾイミダゾール(BBI)部分に共有結合された抗体を含み、式I:
Ab-[L-D]
またはその薬学的に許容される塩を有する前記免疫複合体であり、
式中、
Abは抗体であり;
pは1~8の整数であり;
Dは、以下の式を有するSTINGアゴニスト部分であり;
【化12】
及びXは、Rで任意で置換される5員ヘテロアリールから独立して選択され;
は、H、F、Cl、Br、I、-CN、-OH、-O-(C-Cアルキル)、及びRから成る群から選択され;
2a及びR2bは、-C(=O)N(R及びRから独立して選択され;
は、-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-O-(C-Cアルキルジイル)-O-、-(C-Cアルケニルジイル)-、-(C-Cアルケニルジイル)-O-、-(C-Cアルキニルジイル)-、-(C-Cアルキニルジイル)-O-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-、-(C-Cアルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cアルキルジイル)-、及び-(C-Cアルキルジイル)-N(R)S(O)-(C-Cアルキルジイル)-から成る群から選択され、ここで、アルキルジイル、アルケニルジイル、及びアルキニルジイルは、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、及びRから選択される1以上の基によって任意で置換され;
、X、R、R2a、R2b及びRのうちの1つは、Rで置換され;
は、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルから成る群から選択され、F、Cl、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CHから選択される1以上の基で任意で置換され;
は、
-(C-C12アルキルジイル)-*;
-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-N(R)-*;
-OC(=O)N(R)-*;
-OC(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-N(R)-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-*;
-N(6)-(C1-C12アルキルジイル)-N(R)-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-N(R)-(C-C12アルキルジイル)(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)-*;
-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-O-*;
-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*;及び
-S(=O)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-*から成る群から選択され;
星印*はLの結合部位を示し;
は独立してHまたはC-Cアルキルであり;
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O);
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R)-;
-C(=O)-PEG-N(R)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)-C(=O);
-C(=O)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)N(R)-(C-C12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-N(R)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)N(R)-PEG-SS-(C-C12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH-C(=O)-PEP-N(R)-(C-C12アルキルジイル)N(R)C(=O)-(C-Cモノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択される前記リンカーであり;
PEGは、式:-(CHCHO)-(CH-を有し、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化13】
を有し;
PEPは、式:
【化14】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO、-OH、-OCH及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC-C20アリールジイル及びC-C20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化15】
は-CH(R)O-、-CH-、-CHN(R)-、及び-CH(R)O-C(=O)-から成る群から選択され、RはH、C-Cアルキル、C(=O)-C-Cアルキル、及び-C(=O)N(Rから選択され、R9は独立してH、C-C12アルキル、及び-(CHCHO)-(CH-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールジイルは、独立して且つ任意で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCH(CH、-CHOH、-CHOCH、-CHCHOH、-C(CHOH、-CH(OH)CH(CH、-C(CHCHOH、-CHCHSOCH、-CHOP(O)(OH)、-CHF、-CHF、-CF、-CHCF、-CHCHF、-CH(CH)CN、-C(CHCN、-CHCN、-CHNH、-CHNHSOCH、-CHNHCH、-CHN(CH、-COH、-COCH、-COCH、-COC(CH、-COCH(OH)CH、-CONH、-CONHCH、-CON(CH、-C(CHCONH、-NH、-NHCH、-N(CH、-NHCOCH、-N(CH)COCH、-NHS(O)CH、-N(CH)C(CHCONH、-N(CH)CHCHS(O)CH、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH、-NHC(=NH)NH、-NHC(=O)NH、-NO、=O、-OH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、-OCHCHN(CH、-O(CHCHO)-(CHCOH、-O(CHCHO)H、-OCHF、-OCHF、-OCF、-OP(O)(OH)、-S(O)N(CH、-SCH、-S(O)CH、及び-S(O)Hから独立して選択される1以上の基で置換される。
【0169】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、X及びXが、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、オキサジアゾリル、及びチアジアゾリルから成る群から独立して選択されることが含まれる。
【0170】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、X及びXはそれぞれ、-CH、-CHCH、-CH=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHCHCH、-CH(CH、及び-CHCH(CHから選択される1以上の基によって置換されるピラゾリルであることが含まれる。
【0171】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、X及びXの一方がRで置換されることが含まれる。
【0172】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Rが-OCH、-OCHCH、-OCHCHOCH、-OCHCHOH、及び-OCHCHN(CHから成る群から選択されることが含まれる。
【0173】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Rが-OCHであることが含まれる。
【0174】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、RがFであることが含まれる。
【0175】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、R2a及びR2bがそれぞれ-C(=O)NHであることが含まれる。
【0176】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、R2a及びR2bの一方がRで置換されることが含まれる。
【0177】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Rが-CHCH-、-CH=CH-及び-C≡C-から選択されることが含まれる。
【0178】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、RがF、-OH及び-OCHから選択される1以上の基で置換されているC-Cアルケニルジイルであることが含まれる。
【0179】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Rが-O-(C-C12アルキルジイル)-(C-C20ヘテロシクリルジイル)-*であることが含まれる。
【0180】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、C-C12アルキルジイルがプロピルジイルであり、且つC-C20ヘテロシクリルジイルがピペリジイルであることが含まれる。
【0181】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、R及びRの一方がR5で置換されることが含まれる。
【0182】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Lが-C(=O)-PEG-または-C(=O)-PEG-C(=O)-であることが含まれる。
【0183】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Lが抗体のシステインチオールに結合していることが含まれる。
【0184】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、PEGについて、mが1または2であり、nが2~10の整数であるか、またはnが10であることが含まれる。
【0185】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、LがPEPを含み、PEPはジペプチドであり、以下の式:
【化16】
を有し、式中、AA及びAAが、H、-CH、-CH(CH、-CH(C)、-CHCHCHCHNH、-CHCHCHNHC(NH)NH、-CHCH(CH)CH、-CHSOH、及び-CHCHCHNHC(O)NHから独立して選択されるか、またはAA及びAAが、5員環プロリンアミノ酸を形成することが含まれる。
【0186】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、AAが-CH(CHであり、AAが-CHCHCHNHC(O)NHであることが含まれる。
【0187】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、AA及びAAが、GlcNAcアスパラギン酸、-CHSOH、及び-CHOPOHから独立して選択されることが含まれる。
【0188】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、PEPが式:
【化17】
を有し、ここでAA及びAAは、天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択されることが含まれる。
【0189】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、LがPEPを含み、PEPはトリペプチドであり、以下の式を有することが含まれる:
【化18】
【0190】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、LがPEPを含み、PEPはテトラペプチドであり、以下の式:
【化19】
を有し、式中、
AAはAbu、Ala、及びValから成る群から選択され;
AAはNle(O-Bzl)、Oic及びProから成る群から選択され;
AAはAla及びMet(O)から成る群から選択され;
AAはOic、Arg(NO)、Bpa、及びNle(O-Bzl)から成る群から選択されることが含まれる。
【0191】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、LがPEPを含み、PEPはAla-Pro-Val、Asn-Pro-Val、Ala-Ala-Val、Ala-Ala-Pro-Ala、Ala-Ala-Pro-Val、及びAla-Ala-Pro-Nvaから成る群から選択されることが含まれる。
【0192】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、LがPEPを含み、PEPは以下の構造から選択されることが含まれる:
【化20】
【0193】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態には、Lが構造:
【化21】
から選択され、波線はRへの結合点を示すことが含まれる。
【0194】
本発明は、式Iの実施形態のすべての合理的な組み合わせ、及び特徴の並べ替えを含む。
【0195】
特定の実施形態では、本発明の免疫複合体化合物は免疫賦活活性を有するものを含む。本発明の抗体薬物複合体は、有効用量のビス-ベンゾイミダゾール薬物を腫瘍組織に選択的に送達し、それによって、複合体化されていないビス-ベンゾイミダゾールと比べて、治療指数(「治療濃度域」)を増加させながら、さらに高い選択性(すなわち、さらに低い効果的用量)が達成されてもよい。
【0196】
薬物負荷は、式Iの免疫複合体内の抗体当たりのBBI部分の数である、pによって表される。薬物(BBI)負荷は抗体当たり1~約8の薬物部分(D)の範囲であってもよい。式Iの免疫複合体は、1~約8の範囲の薬物部分に結合された抗体の混合物または集団を含む。いくつかの実施形態では、抗体に結合され得る薬物部分の数は、リシン及びシステインのような反応性または利用可能なアミノ酸側鎖残基の数によって制限される。いくつかの実施形態では、遊離システイン残基は、本明細書に記載されている方法によって抗体アミノ酸配列中に導入される。そのような態様では、pは、1、2、3、4、5、6、7または8、及びその範囲、例えば、1~8または2~5であってもよい。そのような態様では、p及びnは等しい(すなわち、p=n=1、2、3、4、5、6、7もしくは8、またはその間のいくつかの範囲)。式Iの例示的な免疫複合体化合物には、1、2、3または4の操作されたシステインアミノ酸を有する抗体が挙げられるが、これらに限定されない(Lyon,R.et al.(2012)Methods in Enzym.502:123-138)。いくつかの実施形態では、1以上の遊離のシステイン残基が、遺伝子操作を使用することなく、鎖内及び鎖間のジスルフィド結合(ネイティブジスルフィド基)を形成する抗体にすでに存在しており、その場合、既存の遊離の還元システイン残基を使用して、抗体を薬物に結合させてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は1以上の遊離システイン残基を生成するために、抗体の結合前に還元条件に曝露される。
【0197】
いくつかの免疫複合体について、pは、抗体上の結合部位の数によって制限され得る。例えば、本明細書に記載されている特定の例示的な実施形態におけるように、結合がシステインチオールである場合、抗体は、1つのみもしくは限定された数のシステインチオール基を有してもよく、または1つのみもしくは限定された数の反応性が十分なチオール基を有してもよく、それに、薬物が結合されてもよい。他の実施形態では、抗体における1以上のリシンアミノ基が利用可能であり、式IIのBBIリンカー化合物との結合に対して反応性であってもよい。特定の実施形態では、されに高い薬物負荷、例えば、5超のpは、特定の抗体薬物複合体の凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の喪失を引き起こし得る。特定の実施形態では、免疫複合体の平均薬物負荷は、1~約8、約2~約6または約3~約5の範囲である。特定の実施形態では、抗体は、リシンまたはシステインのような反応性求核基を明らかにするために変性条件に供される。
【0198】
免疫複合体の負荷(薬物/抗体比)は、異なる方法で、ならびに例えば、(i)抗体と比較してモル過剰のBBIリンカー中間化合物を制限すること、(ii)結合反応時間または温度を制限すること、及び(iii)最適化された抗体反応性のための部分的または制限的還元変性条件によって制御されてもよい。
【0199】
抗体の1を超える求核性基が薬物と反応する場合、結果として生じる生成物は、抗体に結合した1以上の薬物部分が分布する免疫複合体化合物の混合物であることを理解すべきである。1抗体当たりの平均数薬物は、抗体に特異的及び薬物に特異的である、二重ELISA抗体アッセイによって混合物から算出され得る。個々の免疫複合体分子は、質量分析法によって混合物中で特定され、HPLC、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、分離されてもよい(例えば、McDonagh et al.(2006)Prot.Engr.Design & Selection,19(7):299-307;Hamblett et al.(2004),Clin.Cancer Res.10:7063-7070;Hamblett,K.J.,et al.”Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate,”Abstract No.624,American Association for Cancer Research,2004,Annual Meeting,March,27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March,2004;Alley,S.C.,et al.”Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates,”Abstract No.627,American Association for Cancer Research,2004,Annual Meeting,March,27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March,2004を参照にこと)。特定の実施形態では、単一の負荷値を有する均一の免疫複合体が、電気泳動またはクロマトグラフィーによって複合混合物から単離されてもよい。
【0200】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、表3の免疫複合体から選択される。in vitroでの免疫複合体活性の評価は、実施例203及び204の方法に従って行ってもよい。
【表3】
【0201】
STING活性化は、IRF3(インターフェロン調節因子3)のシグナル伝達を介したI/III型IFN(インターフェロン)の誘導と標準的に関連するが、例えば、NF-κB(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー)経路を介したTNFα(腫瘍壊死因子α)のような炎症誘発性サイトカインを誘導することもできる。特定の免疫複合体は、STING活性化(実施例203)と一致する、IFN λ1(インターフェロンラムダ1)と同様にTNFαを誘発する能力を示し得る。
【0202】
免疫複合体の組成物
本発明は、本明細書に記載されている複数の免疫複合体と、任意でそのための担体、例えば、薬学的または薬理学的に許容される担体とを含む、組成物、例えば、薬学的または薬理学的に許容される組成物または製剤を提供する。免疫複合体は、組成物にて同じであっても異なっていてもよく、すなわち、組成物は、抗体コンストラクト上の同じ位置に連結された同じ数のBBIアジュバントを有する免疫複合体を含むことができ、及び/または抗体コンストラクトの異なる位置に連結された同じ数のBBIアジュバントを有する、抗体コンストラクトの同じ位置に連結された異なる数のアジュバントを有する、もしくは抗体コンストラクトの異なる位置に連結された異なる数のアジュバントを有する免疫複合体を含むことができる。
【0203】
例示的な実施形態では、免疫複合体化合物を含む組成物は免疫複合体化合物の混合物を含み、その際、免疫複合体化合物の混合物における1抗体当たりの平均薬物(BBI)負荷は、約2~約5である。
【0204】
本発明の免疫複合体の組成物は、約0.4~約10のアジュバントの抗体コンストラクトに対する平均比(DAR)を有することができる。当業者であれば、抗体コンストラクトに結合したBBIアジュバントの数が、本発明の複数の免疫複合体を含む組成物において免疫複合体ごとに変化し得ることから、アジュバントの抗体コンストラクト(例えば、抗体)に対する比は、薬物対抗体比(DAR)と呼ばれ得る平均として測定できることを認識するであろう。アジュバントの抗体コンストラクト(例えば、抗体)に対する比は、任意の適切な手段によって評価することができ、その多くは当該技術分野で既知である。
【0205】
結合反応から免疫複合体を調製する際の1抗体当たりのアジュバント部分の平均数(DAR)は、質量分析法、ELISAアッセイ、及びHPLCのような従来の手段によって特徴付けることができる。pの観点から組成物中の免疫複合体の定量的分布もまた、決定することができる。いくつかの事例で、pが特定の値である均一の免疫複合体の、他の薬物負荷を有する免疫複合体からの分離、精製、及び特性評価は、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成され得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、1つ以上の薬学的にまたは薬理学的に許容される賦形剤を含む。例えば、本発明の免疫複合体は、IV投与または体腔もしくは器官の内腔への投与などの非経口投与用に調製することができる。あるいは、免疫複合体を腫瘍内(腫瘍内に)に注射することができる。注射用の組成物は一般に、薬学的に許容される担体に溶解された免疫複合体の溶液を含むであろう。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、及び塩化ナトリウムのような1以上の塩の等張液、例えばリンゲル溶液がある。さらに、減菌された固定油を、溶媒または懸濁媒質として従来どおり使用することができる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用できる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が、注射剤の調製において同様に使用され得る。これらの組成物は、望ましくは滅菌されており、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌され得る。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤のような薬学的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。
【0207】
組成物は、任意の適切な濃度の免疫複合体を含むことができる。組成物中の免疫複合体の濃度は大きく変動する可能性があり、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に流体量、粘度、体重などに基づいて選択される。特定の実施形態では、注射用の溶液製剤中の免疫複合体の濃度は、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。
【0208】
免疫複合体によるがんの治療法
本発明は、がんを治療するための方法を提供する。当該方法は、治療有効量の本明細書に記載されている免疫複合体(例えば、本明細書に記載されている組成物)を、それを必要とする対象、例えば、がんを有し、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む。当該方法は、治療有効量の本発明の免疫複合体(IC)を投与することを含む。
【0209】
本発明の免疫複合体は、種々の過剰増殖性の疾患または障害、例えば、腫瘍抗原の過剰発現を特徴とするものを治療するのに使用され得ることが企図される。例示的な過剰増殖性障害としては、良性または悪性の固形腫瘍、ならびに血液疾患(白血病及びリンパ系腫瘍など)が挙げられる。
【0210】
別の態様では、薬物として使用するための免疫複合体が提供される。特定の実施形態では、本発明は、有効量の免疫複合体を個体に投与することを含む、個体を治療する方法で使用するための免疫複合体を提供する。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載されている、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。
【0211】
さらなる態様では、本発明は、薬物の製造または調製での、免疫複合体の使用を提供する。一実施形態では、薬物は、がんの治療のためのものであり、その方法は、がんを有する個体に有効量の薬物を投与することを含む。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載されている、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。
【0212】
癌腫とは、上皮組織から生じる悪性腫瘍である。上皮細胞は、体の外側表面を覆い、内部空洞を覆い、且つ腺組織の内層を形成する。癌腫の例として、腺癌(腺(分泌)細胞、例えば、乳、膵臓、肺、前立腺、胃、胃食道接合部及び結腸で始まる癌);副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞癌;卵巣癌;上皮内癌;腺管癌;乳癌;基底細胞癌;扁平上皮癌;移行細胞癌;結腸癌;鼻咽頭癌;多房嚢腫性腎細胞癌;燕麦細胞癌;大細胞肺癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌などを含むが、これらに限定されない。癌腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常、続発性転移として)、肺、乳房、皮膚に見られることがある。
【0213】
軟部組織腫瘍は、結合組織に由来するまれな腫瘍の非常に多様な群である。軟部腫瘍の例としては、胞状軟部肉腫、類血管腫型線維性組織球腫、軟骨粘液線維腫、骨格軟骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫、子宮内膜間質腫瘍、ユーイング肉腫、線維腫症(デスモイド)、乳児性線維腫腫、消化管間質腫瘍、骨巨細胞腫、腱鞘巨細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、子宮筋腫、平滑細胞腫、脂肪芽細胞腫、典型的な脂肪腫、紡錘細胞または多形脂肪腫、異型脂肪腫、軟骨様脂肪腫、高分化脂肪肉腫、粘液様/円形細胞脂肪肉腫、多形脂肪肉腫、粘液型悪性線維性組織球腫、高悪性線維組織球腫、粘液線維肉腫、悪性末梢神経鞘腫、中皮腫、神経芽細胞腫、骨軟骨腫、骨肉腫、原始神経外胚葉性腫瘍、胞巣状横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、良性または悪性シュワン腫、滑膜肉腫、エヴァンズ腫瘍、結節性筋膜炎、デスモイド型線維腫症、孤立性線維性腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、腱鞘巨細胞腫(TGCT)、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)、線維性骨異形成症、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫、神経線維腫、軟組織の多形腺腫、ならびに線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞及び神経鞘細胞に由来する腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
肉腫は、間葉起源の細胞で、例えば骨で、または軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織、もしくは他の結合組織もしくは支持組織を含む体の軟部組織で生じる、まれなタイプのがんである。異なる種類の肉腫は、がんが形成する場所に基づく。例えば、骨肉腫は骨に生じ、脂肪肉腫は脂肪に生じ、横紋筋肉腫は筋肉に生じる。肉腫の例には、アスキン腫瘍;ブドウ状肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性神経鞘腫;骨肉腫;及び軟部組織肉腫(例えば、胞状軟部肉腫;血管肉腫;葉状嚢肉腫;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);類腱腫;線維形成性小円形細胞腫;類上皮肉腫;骨外性軟骨肉腫;骨外性骨肉腫;線維肉腫;胃腸間質腫瘍(GIST);血管外皮細胞腫;血管肉腫(より一般的には「血管肉腫」と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);神経芽肉腫;滑膜肉腫;及び未分化多形性肉腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
奇形腫は、例えば、毛髪、筋肉、及び骨を含むいくつかの異なる種類の組織(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のうちのいずれか及び/またはすべてに由来する組織を含むことができる)を含有してもよい生殖細胞腫瘍の一種である。奇形腫は、女性においては卵巣に、男性においては精巣に、及び小児においては尾骨に、最もよく発生する。
【0216】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを作る細胞)で発生するがんの形態である。黒色腫は、ほくろ(皮膚黒色腫)において始まる場合があるが、眼の中または腸の中のような他の色素組織でも始まる場合がある。
【0217】
メルケル細胞癌はまれな種類の皮膚癌であり、通常、顔面、頭部または頸部に肉色または青みがかった赤色の結節として現れる。メルケル細胞癌は皮膚の神経内分泌癌とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌を治療する方法は、Trop2に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、サシツズマブ、そのバイオ後続品、またはそのバイオベター)を含有する免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌は投与が行われるときに転移している。
【0218】
白血病は、骨髄のような血液形成組織から発生し、多数の異常血球の生成及び血流への侵入を引き起こすがん細胞である。例えば、白血病は、通常であれば血流中で成熟する骨髄由来の細胞で発生する可能性がある。白血病は、病気の発生と進行の速さ(例、急性と慢性)、及び影響を受ける白血球の種類(例、骨髄性とリンパ性)にちなんで名付けられる。骨髄性白血病は、骨髄性白血病または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病は、リンパ芽球性白血病またはリンパ球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まり、腫れることがある。白血病の例としては、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を含むが、これらに限定されない。
【0219】
リンパ腫は、免疫系の細胞から始まるがんである。例えば、リンパ腫は、通常であればリンパ系で成熟する骨髄由来細胞に発生する可能性がある。リンパ腫には2つの基本的なカテゴリーがある。リンパ腫の1つのカテゴリーはホジキンリンパ腫(HL)であり、リードステルンベルク細胞と呼ばれる種類の細胞の存在によって特徴付けられる。現在、HLには6つの認識されている種類がある。ホジキンリンパ腫の例としては、結節性硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球減少型CHL、リンパ球豊富型CHL、及び結節性リンパ球優位型HLが挙げられる。
【0220】
リンパ腫の他のカテゴリーは非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、これには免疫系細胞のがんの大規模で多様な群が含まれる。非ホジキンリンパ腫はさらに、緩徐な(成長の遅い)経過をたどる癌と、攻撃的な(成長の速い)経過をたどる癌に分けることができる。現在、NHLには61つの認識されている種類がある。非ホジキンリンパ腫の例は、AIDS関連リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞性リンパ腫、芽細胞性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非開裂細胞性リンパ腫)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾ガンマ・デルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻T細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、処置関連T細胞リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含むが、これらに限定されない。
【0221】
脳腫瘍には、脳組織の癌が含まれる。脳腫瘍の例には、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、及び前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽細胞腫)が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
本発明の免疫複合体は、治療にて、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。例えば、本発明の免疫複合体は、化学療法剤のような少なくとも1つの追加の治療剤と共に同時投与され得る。このような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)、及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、免疫複合体の投与は、追加の治療剤及び/またはアジュバントの投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。免疫複合体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0223】
本発明の免疫複合体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所療法のために所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期であるか、または長期であるかに部分的に依存して、任意の適した経路、例えば、静脈内または皮下注入のような注入によることができる。単回投与または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス点滴を含むが、これらに限定されない種々の投薬スケジュールが本明細書にて企図される。
【0224】
本明細書に記載されている免疫複合体は、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、それらのバイオ後発品、及びそれらのバイオベターと同じ種類のがん、特に乳癌、特にトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌、膀胱癌、及びメルケル細胞癌を治療するのに使用することができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている免疫複合体は、膀胱癌、唾液腺癌、子宮内膜癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、大腸癌、胃癌、及び乳癌の治療にて効果的であってもよい。
【0226】
免疫複合体は、サシツズマブ、サシツズマブゴビテカン、それらのバイオ後続品、及びそれらのバイオベターに利用される投薬計画のような任意の好適な投薬計画を使用して、治療有効量でそれを必要とする対象に投与される。例えば、当該方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、特定の複合体、及び治療される癌の種類と重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0227】
別の態様では、本発明は、がんを防ぐための方法を提供する。この方法は、治療有効量の免疫複合体を(例えば、上記のような組成物として)対象に投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、予防されるべき特定のがんに感受性である。例えば、この方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、特定の複合体、及び治療される癌の種類と重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0228】
本発明のいくつかの実施形態は、上記のようながんを治療するための方法を提供し、そこでがんは乳癌である。乳癌は乳房の様々な領域から生じる可能性があり、様々な種類の乳癌が特性評価されている。例えば、本発明の免疫複合体は、非浸潤性乳管癌;浸潤性乳管癌(例えば、乳房の管状癌、髄様癌、粘液癌、乳頭癌、または篩状癌);非浸潤性小葉癌;浸潤性小葉癌;炎症性乳癌;トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌のような他の形態の乳癌を治療するために使用することができる。
【0229】
いくつかの実施形態では、がんはSTINGによって誘導される炎症誘発性応答に感受性である。
【実施例
【0230】
非対称ビス-ベンゾイミダゾール化合物及び(BBI-L)式II化合物及び中間体の調製
実施例1 1-(3-((5-カルバモイル-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-7-イル)オキシ)プロピル)-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-7-メトキシ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキサミド、BBI-1の合成
【化22】
【0231】
4-クロロ-3-メトキシ-5-ニトロ-ベンズアミド、1bの調製
4-クロロ-3-メトキシ-5-ニトロ-安息香酸メチル、1a(15g、61.07mmol、1当量)のNH・HO(136.98g、977.13mmol、150.5mL、純度25%、16当量)中溶液を50℃で24時間攪拌した。混合物を濾過して1b(11.2g、48.57mmol、収率79.53%)を薄黄色固体として得、これをさらに精製することなく、次のステップに使用した。H NMR (DMSO-d, 400 MHz) δ8.30 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 4.02 (s, 3H).
【0232】
3-メトキシ-4-(メチルアミノ)-5-ニトロ-ベンズアミド、1cの調製
1b(3g、13.01mmol、1当量)のDIEA(16.8g、130mmol、22.7mL、10当量)中溶液に、メタンアミン(4.39g、65.0mmol、5当量、HCl)を加え、100mLの密封管中、120℃で24時間攪拌した。反応混合物をHO(100mL)の添加によりクエンチし、濾過し、水(50mL)で洗浄して、赤色固体を得た。粗生成物をMTBE/PE=20/80mlで20℃で30分間トリチュレートして、1c(3.2g、粗製)を赤色固体として得た。H NMR (DMSO-d, 400 MHz) δ 8.08 (s, 1H), 7.50 (s, 1H), 3.88 (s, 3H), 2.91 (d, J = 6.8 Hz , 3H).
【0233】
3-アミノ-5-メトキシ-4-(メチルアミノ)ベンズアミド、1dの調製
MeOH(25mL)、THF(25mL)及びHO(25mL)中の1c(3.2g、14.21mmol、1当量)の溶液に、NaCO(6.02g、56.8mmol、4当量)及び亜ジチオン酸ナトリウム、Na(17.3g、99.5mmol、21.6mL、7当量)を加えた。混合物を20℃で1時間攪拌した。次いで、減圧下で濃縮してMeOH及びTHFを除去し、残渣をHO(50mL)で希釈し、濾過して、1d(2.3g、11.78mmol、収率82.91%)を黄色固体として得、これをさらに精製することなく、次のステップに使用した。H NMR (DMSO-d, 400 MHz) δ 6.94 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.70 (s, 3H)
【0234】
2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-7-メトキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキサミド、1fの調製
1d(2.1g、10.7mmol、1当量)のDMF(30mL)中溶液に、2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニルイソチオシアナート、1e(2.31g、11.8mmol、1.1当量)を0℃で加え、混合物を同温度で0.5時間攪拌し、次いでEtN(3.27g、32.3mmol、4.5mL、3当量)及びEDCI(6.19g、32.3mmol、3当量)を加え、25℃でさらに12時間攪拌した。反応物をNaHCO水溶液(30mL)中に注ぎ、濾過し、HO(15mL×3)で洗浄し、乾燥させて、粗生成物を得た。次いで、粗生成物をCHCN(50mL)で20℃で20分間トリチュレートして、1f(2.9g、8.14mmol、収率75.65%)を白色固体として得た。H NMR (DMSO-d, 400 MHz) δ7.99 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.42-7.35 (m, 2H), 6.66 (s, 1H), 4.62-4.60 (m, 2H), 3.97 (s, 3H), 3.84 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 1.34 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0235】
2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-7-ヒドロキシ-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、1gの調製
1f(1.2g、3.37mmol、1当量)のDCM(40mL)中溶液に、BBr(8.44g、33.7mmol、3.2mL、10当量)を0℃で滴下した。添加後、混合物を20℃で72時間攪拌した。混合物を氷水中に注ぎ、NaHCO水溶液でpH=6に調整し、30分間攪拌し、次いで濾過して、1g(0.7g、2.04mmol、収率60.72%)を白色固体として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.54 (s, 1H), 7.29 (s, 1H), 6.85 (s, 1H), 4.67 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.09 (s, 3H), 2.30 (s, 3H), 1.45 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0236】
N-[3-[6-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-3-メチル-ベンゾイミダゾール-4-イル]オキシプロピル]カルバミン酸tert-ブチル、1hの調製
1g(400mg、1.17mmol、1当量)のDMF(10mL)中溶液に、KCO(226mg、1.64mmol、1.4当量)及びN-(3-ブロモプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(292mg、1.23mmol、1.05当量)を加え、次いで50℃で2時間攪拌した。反応混合物を氷水(20mL)の0℃での添加によりクエンチし、次いでEtOAc(20mL)で希釈し、EtOAc(15mL×2)で抽出した。合わせた有機層をブライン20mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をEtOAc/PE=5/1で20℃で5分間トリチュレートして、1h(0.57g、粗製)を白色固体として得た。
【0237】
7-(3-アミノプロポキシ)-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、1iの調製
1h(0.47g、941umol、1当量)のEtOAc(0.5mL)中溶液に、HCl/EtOAc(4M、11.8mL、50当量)を加えた。混合物を25℃で1時間攪拌した。次いで、濃縮して、1i(400mg、917.63umol、収率97.53%、HCl)を白色固体として得、これを次のステップに直接使用した。
【0238】
7-[3-(4-カルバモイル-2-メトキシ-6-ニトロ-アニリノ)プロポキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、1jの調製
1i(440mg、1.01mmol、1当量、HCl)のブタン-1-オール(7.24g、97.71mmol、8.9mL、96.8当量)中溶液に、NaHCO(424mg、5.05mmol、5当量)及びDIEA(652mg、5.05mmol、879uL、5当量)を加え、次いで20℃で30分間攪拌した。中間体1b(244mg、1.06mmol、1.05当量)をN下にて20℃で加え、120℃でさらに12時間攪拌した。その後、混合物を濃縮して残渣を得、残渣をEtOAc(10mL)、続いて氷水(10mL)で希釈し、10分間攪拌した。沈殿物を濾過して、1j(0.4g、674umol、収率66.76%)を黄色固体として得た。
【0239】
7-[3-(2-アミノ-4-カルバモイル-6-メトキシ-アニリノ)プロポキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、1kの調製
MeOH(0.5mL)及びTHF(0.5mL)、HO(0.5mL)中の1j(100mg、168umol、1当量)の溶液に、亜ジチオン酸ナトリウム(205mg、1.18mmol、7当量)及びNaCO(71.4mg、674umol、4当量)を加えた。混合物を25℃で2時間攪拌した。次いで、濃縮してMeOH及びTHFを除去し、残渣をHO(5mL)で希釈し、5分間攪拌した。沈殿物を濾過して、1k(80mg、142umol、収率84.26%)を黄色固体として得た。
【0240】
BBI-1の調製
1k(50mg、89umol、1当量)のDMF(1.5mL)中溶液に、中間体1e(19mg、98umol、1.1当量)を0℃で加え、30分間攪拌した。次いでEtN(27mg、266umol、37uL、3当量)及びEDCI(51mg、266umol、3当量)を加え、混合物を20℃でさらに16.5時間攪拌した。反応物をNaHCO水溶液(1mL)に加え、濾過し、HO(1mL×3)で洗浄し、乾燥させて、粗生成物を得た。残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna 80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:25%から55%、8分)によって精製して、BBI-1(14mg、19.32umol、収率21.77%)を白色固体として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.63 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.28 (s, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 4.75-4.69 (m, 4H), 4.49-4.46 (m, 2H), 4.33-4.30 (m, 2H), 4.04 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.51-2.48 (m, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 1.47 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.33 (t, J = 7.2 Hz, 3H).LCMS (ESI):C354012に対する質量計算値724.32 m/z 実測値725.3 [M+H]
【0241】
実施例2 1-[4-[6-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-3-メチル-ベンゾイミダゾール-4-イル]オキシブチル]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-7-メトキシ-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、BBI-2の合成
【化23】
N-[4-[6-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-3-メチル-ベンゾイミダゾール-4-イル]オキシブチル]カルバミン酸tert-ブチル、2aの調製
2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-7-ヒドロキシ-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、1g(800mg、2.34mmol、1当量)のDMF(10mL)中溶液に、KCO(355mg、2.57mmol、1.1当量)を50℃で加え、0.5時間攪拌し、次いでN-(4-ブロモブチル)カルバミン酸tert-ブチル(648mg、2.57mmol、527uL、1.1当量)を加えた。混合物を50℃で12時間攪拌した。反応混合物を氷水(20mL)の0℃での添加によりクエンチし、沈殿物を濾過し、2a(1.2g、粗製)を白色固体として得、これをさらに精製することなく、次のステップに使用した。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.63 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 6.73 (s, 1H), 4.77-4.67 (m, 2H), 4.32-4.22 (m, 2H), 3.98 (s, 3H), 3.17 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 2.01-1.90 (m, 2H), 1.81-1.70 (m, 2H), 1.49-1.43 (m, 12H).
【0242】
7-(4-アミノブトキシ)-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、2bの調製
2a(1.1g、2.14mmol、1当量)のEtOAc(5mL)中溶液に、HCl/EtOAc(4M、26.7mL、50当量)を加えた。混合物を25℃で0.5時間攪拌した。次いで、濃縮して、2b(0.8g、1.93mmol、収率90.34%)をオフホワイト固体として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.83 (s, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 4.65 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.36 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.20 (s, 3H), 3.08 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.37 (s, 3H), 2.09-2.01 (m, 2H), 2.00-1.90 (m, 2H), 1.49 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0243】
7-[3-(4-カルバモイル-2-メトキシ-6-ニトロ-アニリノ)プロポキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、2cの調製
2b(570mg、1.27mmol、1当量、HCl)のブタン-1-オール(9.39g、127mmol、11.6mL、100当量)中溶液に、DIEA(818mg、6.33mmol、1.10mL、5当量)、NaHCO(532mg、6.33mmol、5当量)及び4-クロロ-3-メトキシ-5-ニトロ-ベンズアミド、1b(292mg、1.27mmol、1当量)を加えた。混合物をN下にて120℃で15時間攪拌した。反応混合物をHO(50mL)の20℃での添加によりクエンチし、次いでEtOAc(30mL)で希釈し、EtOAc(30mL×2)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をEtOAc/PE=10/1で20℃で30分間トリチュレートして、2c(500mg、842umol、収率66.49%)を黄色固体として得た。
【0244】
7-[4-(2-アミノ-4-カルバモイル-6-メトキシ-アニリノ)ブトキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、2dの調製
MeOH(5mL)、THF(5mL)及びHO(5mL)中の2c(400mg、658umol、1当量)の溶液に、NaCO(279mg、2.63mmol、4当量)及び二ナトリウム;BLAH(802mg、4.61mmol、7当量)を加えた。混合物を25℃で2時間攪拌した。その後、反応物を濃縮してMeOH及びTHFを除去し、HO(10mL)を加え、5分間攪拌した。沈殿物を濾過して、2d(200mg、346umol、収率52.60%)を黄色固体として得た。
【0245】
BBI-2の調製
2d(50mg、86umol、1当量)のDMF(1mL)中溶液に、2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニルイソチオシアナート、1e(18mg、95umol、1.1当量)を0℃で加え、30分間攪拌し、次いでEtN(26mg、259umol、36uL、3当量)及びEDCI(49mg、259umol、3当量)を加えた。混合物を20℃でさらに2時間攪拌した。混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna 80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:25%から45%、8分)によって精製して、BBI-2(26mg、35.19umol、収率40.66%)を白色固体として得た。H NMR (DMSO-d, 400 MHz) δ8.05-7.90 (m, 2H), 7.68 (s, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.37-7.26 (m, 2H), 6.63 (s, 1H), 6.58 (s, 1H), 4.67-4.52 (m, 4H), 4.48-4.44 (m 2H), 4.23 (t, J= 4.8 Hz, 2H), 3.95 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 2.11-1.97 (m, 5H), 1.92-1.88 (m, 2H), 1.43-1.23 (m, 6H).LCMS (ESI):C364212に対する質量計算値738.34 m/z 実測値739.3 [M+H]
【0246】
実施例3 1-(4-((5-カルバモイル-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-7-イル)オキシ)ブチル)-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-7-(3-(ピペラジン-1-イル)プロポキシ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキサミド、BBI-3の合成
【化24】
4-[3-[5-カルバモイル-2-[4-[6-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-3-メチル-ベンゾイミダゾール-4-イル]オキシブチルアミノ]-3-ニトロ-フェノキシ]プロピル]ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル、3bの調製
7-(4-アミノブトキシ)-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、2b(300mg、666umol、1.3当量、HCl)のブタン-1-オール(3.68g、49.65mmol、4.5mL、96.8当量)中溶液に、NaHCO(215mg、2.56mmol、99uL、5当量)及びDIEA(331mg、2.56mmol、446uL、5当量)を加え、次いで20℃で30分間攪拌し、4-[3-(5-カルバモイル-2-クロロ-3-ニトロ-フェノキシ)プロピル]ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル、3a(227mg、513umol、1当量)をN下にて20℃で加え、120℃で12時間攪拌した。混合物を濃縮して残渣を得、次いでEtOAc(20mL)及び氷水(30mL)で希釈し、沈殿物を濾過して、3b(0.4g、粗製)を赤色固体として得た。
【0247】
4-[3-[3-アミノ-5-カルバモイル-2-[4-[6-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-3-メチル-ベンゾイミダゾール-4-イル]オキシブチルアミノ]フェノキシ]プロピル]ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル、3cの調製
THF(5mL)、MeOH(5mL)及びHO(5mL)中の3b(0.4g、488umol、1当量)の溶液に、亜ジチオン酸ナトリウム(595mg、3.42mmol、743uL、7当量)及びNaCO(207mg、1.95mmol、4当量)を加えた。混合物を25℃で2時間攪拌した。水(5mL)を加え、混合物を濃縮してTHF及びMeOHを除去し、次いで濾過して、3c(0.24g、304umol、収率62.28%)を黄色固体として得た。
【0248】
4-(3-((5-カルバモイル-1-(4-((5-カルバモイル-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-7-イル)オキシ)ブチル)-2-(1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-7-イル)オキシ)プロピル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル、3dの調製
3c(240mg、304umol、1当量)のDMF(5mL)中溶液に、2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニルイソチオシアナート、1e(65mg、334umol、1.1当量)を0℃で加え、この温度で10分間攪拌し、次いでEtN(92mg、911umol、127uL、3当量)及びEDCI(175mg、911umol、3当量)を加えた。混合物を25℃でさらに12時間攪拌した。次いで、NaHCO水溶液(5mL)中に注ぎ、濾過し、ケーキをHO(1mL×3)で洗浄し、乾燥させて、3d(200mg、210umol、収率69.21%)を黄色固体として得た。
【0249】
BBI-3の調製
3d(0.2g、210umol、1当量)のEtOAc(1mL)中溶液に、HCl/EtOAc(4M、2.63mL、50当量)を加えた。混合物を25℃で1時間攪拌した。反応物を濃縮し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna 80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:10%から40%、8分)によって精製して、BBI-3(70mg、82.26umol、収率39.12%)を白色固体として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.60 (s, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.36 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 6.63 (s, 1H), 4.70 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 4.65-4.60 (m, 2H), 4.37-4.30 (m, 4H), 3.77 (s, 3H), 3.31-3.26 (m, 4H), 2.88-2.84 (m, 4H), 2.79 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.30 (s, 3H), 2.21-2.18 (m, 2H), 2.16-2.13 (m, 5H), 2.09-2.01 (m, 2H), 1.47-1.34 (m, 8H).LCMS (ESI):C425414に対する質量計算値850.44 m/z 実測値851.6 [M+H]
【0250】
実施例L-1 7-[4-[5-カルバモイル-7-[3-[4-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル]ピペラジン-1-イル]プロポキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]ベンゾイミダゾール-1-イル]ブトキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、BBI-L-1の合成
【化25】
【0251】
2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-N-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル]アセトアミド、L-1bの調製
2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)酢酸(155mg、997umol、1当量)のDCM(10mL)中溶液に、HATU(398mg、1.05mmol、1.05当量)及びEtN(151mg、1.50mmol、208uL、1.5当量)ならびに2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エタノール、L-1a(500mg、997umol、1当量)を加えた。混合物を0℃で1時間攪拌した。次いで、氷水(20mL)とDCM(20mL)に分配した。有機相を分離し、ブライン10mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);12g SepaFlash(登録商標)Silica Flash Column、0~100%酢酸エチル/石油エーテルから0~50%メタノール/酢酸エチルのグラジエント@45mL/分の溶出)によって精製して、L-1b(440mg、689umol、収率69.11%)を無色油状物として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ 6.77 (s, 2H), 4.21 (s, 2H), 3.75-3.71 (m, 2H), 3.70-3.59 (m, 38H), 3.59-3.55 (m, 2H), 3.48-3.44 (m, 2H).
【0252】
2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-N-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(2-オキソエトキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル]アセトアミド、L-1cの調製
L-1b(240mg、376umol、1当量)のDCM(10mL)中溶液に、デス-マーチンペルヨージナン(1,1,1-トリアセトキシ)-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンゾヨードキソール-3(1H)-オン、CAS登録番号87413-09-0(478mg、1.13mmol、3当量)を0℃で加えた。混合物を25℃で1時間攪拌した。次いで、濾過し、濃縮して、L-1c(0.2g、粗製)を無色油状物として得、これをさらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0253】
BBI-L-1の調製
7-[4-[5-カルバモイル-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-7-(3-ピペラジン-1-イルプロポキシ)ベンゾイミダゾール-1-イル]ブトキシ]-2-[(2-エチル-5-メチル-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]-1-メチル-ベンゾイミダゾール-5-カルボキサミド、BBI-3(55mg、51umol、1当量、2TFA)のMeOH(2mL)中溶液に、L-1c(97.4mg、153umol、3当量)を加え、25℃で20分間攪拌し、次いでNaBHCN(9.61mg、153umol、3当量)を加えた。混合物を25℃で2時間攪拌した。その後、反応物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna 80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:20%から50%、8分)によって精製して、BBI-L-1(21.4mg、14.54umol、収率28.53%)を白色固体として得た。H NMR (MeOD, 400 MHz) δ7.62 (s, 2H), 7.47 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 6.89 (s, 2H), 6.75 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 4.73-4.66 (m, 2H), 4.66-4.60 (m, 4H), 4.39-4.31 (m, 4H), 4.17 (s, 2H), 3.86-3.81 (m, 2H), 3.78 (s, 3H), 3.66-3.62 (m, 8H), 3.61-3.58 (m, 30H) 3.55-3.51 (m, 2H), 3.37 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.07-2.74 (m, 6H), 2.30 (s, 3H), 2.25-2.13 (m, 7H), 2.10-2.02 (m, 2H), 1.48-1.28 (m, 8H).LCMS (ESI):C701021619に対する質量計算値1470.75 m/z 実測値1471.9 [M+H]
【0254】
実施例201 免疫複合体(IC)の調製
例示的な手順では、リシンに基づく結合の調製については、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、pH8.3の100mMのホウ酸塩、50mMの塩化ナトリウム、1mMのエチレンジアミン四酢酸を含有する結合緩衝液に抗体を緩衝液交換する。緩衝液交換した抗体の濃度を、結合緩衝液を使用して約5~25mg/mlに調整し、滅菌濾過した。式IIのビス-ベンゾイミダゾール-リンカー(BBI-L)中間化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)のいずれかに溶解して5~20mMの濃度にする。結合のために、抗体を4~約20モル当量のBBI-Lと混合する。場合によっては、20%(v/v)までの追加のDMAまたはDMSOを加え、結合緩衝液中でのBBI-Lの溶解度を改善した。反応を、20℃または30℃または37℃で約30分~4時間進行させる。得られた複合体を、2つの連続するZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して、未反応のBBI-Lから精製する。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で予め平衡化する。アジュバントの抗体に対する比(DAR)を、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続されたACQUITY(商標)UPLC H-class(Waters Corporation,Milford,MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって推定する。
【0255】
例示的な手順では、システインに基づく結合の調製については、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、2mMのEDTAを含むpH7.2のPBSを含有する結合緩衝液に抗体を緩衝液交換する。鎖間ジスルフィドを、2~4モル過剰のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはジチオスレイトール(DTT)を使用して37℃で30分~2時間にわたり還元する。結合緩衝液で予め平衡化したZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して過剰なTCEPまたはDTTを除去した。緩衝液交換した抗体の濃度を、結合緩衝液を使用して約5~20mg/mlに調整し、滅菌濾過した。BBI-Lをジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)のいずれかに溶解して5~20mMの濃度にする。結合のために、抗体を10~20モル当量のBBI-Lと混合する。場合によっては、20%(v/v)までの追加のDMAまたはDMSOを加え、結合緩衝液中でのBBI-Lの溶解度を改善した。反応を20℃で約30分~4時間進行させる。得られた複合体を、2つの連続するZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して未反応のBBI-Lから精製する。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で予め平衡化する。アジュバントの抗体に対する比(DAR)を、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続されたACQUITY(商標)UPLC H-class(Waters Corporation,Milford,MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって推定する。
【0256】
結合後に、未反応のBBI-L及び/または高分子量の凝集物を取り除く可能性があるために、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマト分画、限外濾過、遠心限外濾過、接線濾過、及びこれらの組み合わせをさらに使用して複合体を精製してもよい。
【0257】
別の例示的な手順では、G-25 SEPHADEX(商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を使用してpH8.3にて100mMのホウ酸、50mMの塩化ナトリウム、1mMのエチレンジアミン四酢酸を含有する結合緩衝液に抗体の緩衝液を交換する。次に当該緩衝液を使用して、溶出液をそれぞれ約1~10mg/mlの濃度に調整し、次いで滅菌濾過する。抗体を20~30℃に予熱し、2~20(例えば、7~10)モル当量の式(II)のビス-ベンゾイミダゾール-リンカー(BBI-L)中間化合物と迅速に混合する。反応を30℃で約16時間進行させ、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化した2つの連続するG-25脱塩カラムに通して免疫複合体(IC)を反応物から分離して、表2の免疫複合体(IC)を提供する。アジュバントの抗体に対する比(DAR)は、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation) に接続されたACQUITY(商標)UPLC Hクラス(Waters Corporation,Milford,MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定される。
【0258】
結合については、抗体は、抗体の安定性または抗原結合特異性に悪影響を及ぼさない、当該技術分野で既知の水性緩衝液系に溶解させてもよい。リン酸緩衝生理食塩水を使用してもよい。BBI-Lは、本明細書の別の箇所に記載されている少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒を含む溶媒系に溶解される。いくつかのそのような態様では、BBI-Lはトリス緩衝液pH8(例えば、50mM Tris)中に約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mM、及びこれらの範囲内、例えば、約5mM~約50mMまたは約10mM~約30mMの濃度まで溶解される。いくつかの態様では、BBI-LはDMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、またはアセトニトリル、または別の好適な双極性非プロトン性溶媒に溶解される。
【0259】
あるいは結合反応では、当量過剰のBBI-L溶液を希釈し、抗体溶液と合わせてもよい。BBI-L溶液は好適には、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒及び少なくとも1つの極性プロトン性溶媒で希釈されてもよく、これらの例には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及び酢酸が挙げられる。抗体に対するチエノアゼピン-リンカー中間体のモル当量は、約1.5:1、約3:1、約5:1、約10:1、約15:1または約20:1、及びこれらの範囲内、例えば、約1.5:1~約20:1、約1.5:1~約15:1、約1.5:1~約10:1、約3:1~約15:1、約3:1~約10:1、約5:1~約15:1、または約5:1~約10:1であってもよい。反応の完了は、LC-MSのような当該技術分野で知られている方法によって好適にモニターされてもよい。結合反応は通常、約1時間~約16時間の範囲内で完了する。反応が完了した後、試薬を反応混合物に加えて、反応を停止させてもよい。抗体チオール基がBBI-Lのマレイミドのようなチオール反応性基と反応する場合、未反応の抗体チオール基はキャッピング試薬と反応させてもよい。好適なキャッピング試薬の例はエチルマレイミドである。
【0260】
結合後に、免疫複合体は、例えば、これらに限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマト分画、限外濾過、遠心限外濾過、接線濾過、及びこれらの組み合わせのような当該技術分野で既知の精製方法によって精製され、結合されていない反応物質及び/または結合凝集体から分離されてもよい。例えば、精製の前に、免疫複合体を20mMコハク酸ナトリウム、pH5などで希釈してもよい。希釈した溶液をカチオンイオン交換カラムに適用した後、例えば、少なくとも10カラム容量の20mMコハク酸ナトリウム、pH5で洗浄する。複合体は、PBSなどの緩衝液で好適に溶出されてもよい。
【0261】
実施例202 HTRF結合アッセイ
本発明の非対称ビス-ベンゾイミダゾール化合物(BBI)を、ヒトSTING WT結合アッセイを応用した生化学的ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイで評価した(“HTRF,A guide to Homogeneous Time Resolved Fluorescence”,(2021)PerkinElmer Cisbio;Mathis,G.Clinical Chemistry,41(9):1391-1397)。簡単に説明すると、6Hisタグ付きSTINGタンパク質を、テルビウムクリプテート標識抗6His抗体、d2標識2’,3’-cGAMP、及び様々な濃度の被験物質とともに384ウェルプレートフォーマットでインキュベートした。各ウェルのドナー及びアクセプターの発光シグナルをそれぞれ665nm及び615nmでプレートリーダーによって測定し、シグナルの比を使用して、d2-標識2’,3’-cGAMPの環状ジヌクレオチド結合の阻害率(%)を算出した。これらのデータから生成した用量反応曲線を使用して、IC50値を算出した。
【0262】
実施例203 免疫複合体の機能的評価、PBMCアッセイ
本発明の免疫複合体は、標的抗原発現腫瘍細胞と共培養される初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する共培養アッセイにて評価され得る。簡単に言えば、PBMCは、密度遠心分離によって健康なヒト供与体血液(Stanford血液センター)から新たに単離される。次に、完全培地(10%のFBSを補充したRPMI)にて10:1のエフェクターの標的に対する比でPBMCを抗原発現腫瘍細胞と共培養し、示された被験物質の濃度の範囲で一晩インキュベートする。活性化は、LEGENDPLEX(商標)サイトカインビーズアッセイ(BioLegend)によってIFNλ1及びTNFαのような炎症誘発性サイトカインの分泌によって測定される。
【0263】
実施例204 in vitroでの免疫複合体活性の評価
この実施例は、本発明の免疫複合体が樹状細胞などの骨髄活性化を誘発するのに有効であり、したがって、がんの治療に有用であることを示している。
【0264】
ヒト通常型樹状細胞の単離: ヒト通常型樹状細胞(cDC)は、密度勾配遠心分離によって健康な血液ドナー(Stanford Blood Center,Palo Alto,California)から得られたヒト末梢血からネガティブに選択された。簡単に説明すると、細胞を最初に、ROSETTESEP(商標)ヒトCD3枯渇カクテル(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用して富化し、細胞調製物からT細胞を除去する。次にcDCを、EASYSEP(商標)ヒト骨髄DC富化キット(Stem Cell Technologies)を使用して、ネガティブ選択によって更に富化する。
【0265】
cDC活性化アッセイ: 8×10個のAPCを、ISAC標的抗原を発現する腫瘍細胞と共に10:1のエフェクター(cDC)対標的(腫瘍細胞)比で共培養した。細胞を、10%のFBSを補充したRPMI-1640培地を含有する96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中で、示される場合には、本発明の指示された免疫複合体(上記の実施例に従って調製)の様々な濃度でインキュベートした。約18時間、一晩インキュベートした後、無細胞上清を収集し、BioLegend LEGENDPLEXサイトカインビーズアレイを使用して(TNFαを含む)サイトカイン分泌について分析した。
【0266】
骨髄細胞型の活性化を、様々な骨髄集団を利用する記載のアッセイに加えて、様々なスクリーニングアッセイを用いて測定することができる。これらは、健康なドナー血液から単離された単球、M-CSF分化マクロファージ、GM-CSF分化マクロファージ、GM-CSF+IL-4単球由来樹状細胞、健康なドナー血液から単離された従来の樹状細胞(cDC)、及び免疫抑制状態に分極した骨髄細胞(骨髄由来抑制細胞またはMDSCとも呼ばれる)を含み得る。MDSC分極細胞としては、例えばM2aΜΦ(IL4/IL13)、M2cΜΦ(IL10/TGFb)、GM-CSF/IL6MDSC、及び腫瘍教育単球(TEM)などの免疫抑制状態に向けて分化した単球が挙げられる。TEM分化は、腫瘍馴化培地(例えば、786.O、MDA-MB-231、HCC1954)を用いて行うことができる。原発性腫瘍関連骨髄細胞はまた、解離した腫瘍細胞懸濁液に存在する初代細胞を含み得る(Discovery Life Sciences)。
【0267】
骨髄細胞の記載された集団の活性化の評価は、単培養として、または免疫複合体が抗体のCDR領域を介して結合し得る目的の抗原を発現する細胞との共培養として行うことができる。18~48時間のインキュベーション後に、フローサイトメトリーを使用した細胞表面共刺激分子の上方制御、または分泌された炎症性サイトカインの測定によって活性化を評価することができる。サイトカイン測定の場合、無細胞上清を採取し、フローサイトメトリーを用いてサイトカインビーズアレイ(例えば、Biolegend製LegendPlex)により分析する。
【0268】
本明細書において引用されている、刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、参照することにより、それらの参考文献のそれぞれが参照することにより組み込まれるべき旨の個別具体的な表示があるかのように、かつ、その全体が本明細書に規定されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】