(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】高い破壊靱性を有するイオン交換可能なガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/097 20060101AFI20240927BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C21/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520560
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022045527
(87)【国際公開番号】W WO2023059547
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シャオジュウ
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジエン
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DE02
4G062DF01
4G062EA03
4G062EB03
4G062EC02
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EF02
4G062EF03
4G062EG01
4G062FA01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
ガラス組成物は、60モル%以上から66モル%以下のSiO2、14モル%以上から16モル%以下のAl2O3、7モル%以上から9モル%以下のLi2O、4モル%以上から6モル%以下のNa2O、0.5モル%以上から3モル%以下のP2O5、0.5モル%以上から6モル%以下のB2O3、および0モル%超から1モル%以下のTiO2を含む。このガラス組成物は、0.75MPa√m以上の破壊靱性を有することがある。ガラス組成物は、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、およびB2O3を含み、Li2O/Na2Oのモル比が1.2以上から2.0以下であり、ガラスは、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度を有し、このガラスは、0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する。そのガラス組成物は、化学的に強化可能である。そのガラス組成物は、ガラス系物品または消費者向け電気製品に使用されることがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスにおいて、
60モル%以上から66モル%以下のSiO
2、
14モル%以上から16モル%以下のAl
2O
3、
7モル%以上から9モル%以下のLi
2O、
4モル%以上から6モル%以下のNa
2O、
0.5モル%以上から3モル%以下のP
2O
5、
0.5モル%以上から6モル%以下のB
2O
3、および
0モル%超から1モル%以下のTiO
2、
を含むガラス。
【請求項2】
0モル%超から0.5モル%以下のK
2O、
を含む、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
0モル%以上から4モル%以下のMgO、
を含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
0モル%以上から3モル%以下のCaO、
を含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項5】
0モル%以上から4モル%以下のSrO、
を含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項6】
0モル%以上から1モル%以下のZnO、
を含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項7】
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
中央張力領域、および
60モル%以上から66モル%以下のSiO
2、
14モル%以上から16モル%以下のAl
2O
3、
7モル%以上から9モル%以下のLi
2O、
4モル%以上から6モル%以下のNa
2O、
0.5モル%以上から3モル%以下のP
2O
5、
0.5モル%以上から6モル%以下のB
2O
3、および
0モル%超から1モル%以下のTiO
2、
を含む前記ガラス系物品の中心での組成、
を有するガラス系物品。
【請求項8】
前記圧縮応力層が、
500MPa以上から1500MPa以下の圧縮応力、および/または
前記ガラス系物品の表面から、3μm以上から10μm以下の圧縮応力スパイク深さまで延在する圧縮応力スパイク、
の少なくとも一方を有する、請求項7記載のガラス系物品。
【請求項9】
前記中央張力領域が、60MPa以上から160MPa以下の最大中央張力を有する、請求項7または8記載のガラス系物品。
【請求項10】
前記圧縮深さが0.20t以上から0.25t以下であり、tは前記ガラス系物品の厚さである、請求項7または8記載のガラス系物品。
【請求項11】
消費者向け電気製品において、
前面、背面、および側面を有する筐体、
少なくとも部分的に前記筐体内に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイを覆って配置されたカバー基板、
を備え、
前記筐体および前記カバー基板の少なくとも一方の少なくとも一部は、請求項7または8記載のガラス系物品から作られている、消費者向け電気製品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年10月4日に出願された米国仮特許出願第63/251776号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、広く、電子機器用のカバーガラスに使用するのに適したガラス組成物に関する。より詳しくは、本明細書は、電子機器用のカバーガラスに形成できるイオン交換可能なガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット、携帯型メディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、およびカメラなどの携帯型機器の持ち運ばれる性質上、これらの機器は、地面などの硬質表面に偶発的に落下する状況に特になりやすい。これらの機器には、典型的に、カバーガラスが組み込まれ、このカバーガラスは硬質表面と衝突した際に損傷を受けることがある。これらの機器の多くで、カバーガラスは、ディスプレイ用カバーの機能を果たし、タッチ機能性を備えることがあり、よって、カバーガラスが損傷したときに、機器の使用が悪影響を受ける。
【0004】
関連する携帯型機器が硬質表面上に落とされたときのカバーガラスには、主要な破壊モードが2つある。これらのモードの内の一方は曲げ破壊であり、これは、機器が硬質表面との衝突による動荷重に曝されたときのガラスの曲げにより生じる。他方のモードは鋭い接触による破壊であり、これは、ガラス表面への損傷の導入により生じる。ガラスがアスファルト、花崗岩などのざらざらした硬質表面と衝突すると、ガラス表面に鋭い圧痕が生じ得る。これらの圧痕は、亀裂がそこから発生し、伝搬することのあるガラス表面の破損部位となる。
【0005】
ガラスは、ガラス表面に圧縮応力を誘発させる工程を含むイオン交換技術によって、曲げ破壊に対する耐性を向上させることができる。しかしながら、イオン交換されたガラスは、鋭い接触によるガラスの局所的な圧痕によって生じる高い応力集中のために、動的な鋭い接触に対してまだ脆弱である。
【0006】
ガラス製造業者および手持ち式機器の製造業者は、手持ち式機器の鋭い接触による破壊に対する抵抗性を改善することに継続して取り組んできた。解決策としては、カバーガラス上のコーティングから、機器が硬質表面に落下した際にカバーガラスが直接硬質表面と衝突するのを防ぐベゼルまで、様々なものがある。しかしながら、審美的要件や機能的要件の制約のために、カバーガラスが硬質表面に衝突するのを完全に防ぐことは非常に難しい。
【0007】
また、携帯型機器ができるだけ薄いことも望ましい。したがって、強度に加え、携帯型機器におけるカバーガラスとして使用すべきガラスをできるだけ薄く製造することも望ましい。それゆえ、カバーガラスの強度を増強させることに加え、ガラスが、薄いガラスシートなどの薄いガラス系物品の製造を可能にする過程によって成形できるようにする機械的特性を有することも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、イオン交換などによって、強化することができ、薄いガラス系物品として成形できるようにする機械的性質を有するガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様(1)によれば、ガラスが提供される。このガラスは、60モル%以上から66モル%以下のSiO2、14モル%以上から16モル%以下のAl2O3、7モル%以上から9モル%以下のLi2O、4モル%以上から6モル%以下のNa2O、0.5モル%以上から3モル%以下のP2O5、0.5モル%以上から6モル%以下のB2O3、および0モル%超から1モル%以下のTiO2を含む。
【0010】
態様(2)によれば、0モル%超から0.5モル%以下のK2Oを含む、態様(1)のガラスが提供される。
【0011】
態様(3)によれば、0.1モル%以上から0.5モル%以下のTiO2を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0012】
態様(4)によれば、0モル%以上から4モル%以下のMgOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0013】
態様(5)によれば、0.1モル%以上から1モル%以下のMgOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0014】
態様(6)によれば、0モル%以上から3モル%以下のCaOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0015】
態様(7)によれば、1モル%以上から2モル%以下のCaOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0016】
態様(8)によれば、0モル%以上から4モル%以下のSrOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0017】
態様(9)によれば、0.5モル%以上から2モル%以下のSrOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0018】
態様(10)によれば、0モル%以上から1モル%以下のZnOを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0019】
態様(11)によれば、0モル%以上から0.1モル%以下のSnO2を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0020】
態様(12)によれば、64モル%以上から65モル%以下のSiO2を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0021】
態様(13)によれば、15モル%以上から16モル%以下のAl2O3を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0022】
態様(14)によれば、7モル%以上から8モル%以下のLi2Oを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0023】
態様(15)によれば、4モル%以上から5モル%以下のNa2Oを含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0024】
態様(16)によれば、0.5モル%以上から1.5モル%以下のP2O5を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0025】
態様(17)によれば、3モル%以上から4モル%以下のB2O3を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0026】
態様(18)によれば、ガラスがFe2O3を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0027】
態様(19)によれば、ガラスがZrO2を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0028】
態様(20)によれば、ガラスが、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0029】
態様(21)によれば、Li2O/Na2Oのモル比が1.2以上から2.0以下である、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0030】
態様(22)によれば、Li2O/Na2Oのモル比が1.6以上から2.0以下である、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0031】
態様(23)によれば、ガラスが、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0032】
態様(24)によれば、ガラスが、0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0033】
態様(25)によれば、ガラスが提供される。そのガラスは、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、およびB2O3を含み、Li2O/Na2Oのモル比が1.2以上から2.0以下であり、ガラスは、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度を有し、このガラスは、0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する。
【0034】
態様(26)によれば、TiO2をさらに含む、態様(25)のガラスが提供される。
【0035】
態様(27)によれば、K2Oをさらに含む、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0036】
態様(28)によれば、CaOをさらに含む、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0037】
態様(29)によれば、MgOをさらに含む、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0038】
態様(30)によれば、SrOをさらに含む、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0039】
態様(31)によれば、SnO2をさらに含む、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0040】
態様(32)によれば、ガラスがFe2O3を実質的に含まない、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0041】
態様(33)によれば、ガラスがZrO2を実質的に含まない、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0042】
態様(34)によれば、ガラスが、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、態様(25)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0043】
態様(35)によれば、方法が提供される。その方法は、ガラス系基板を溶融塩浴中でイオン交換して、ガラス系物品を形成する工程を含み、そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含み、そのガラス系物品は中央張力領域を含み、そのガラス系基板は、先の態様のいずれかのガラスから作られている。
【0044】
態様(36)によれば、溶融塩浴がNaNO3を含む、態様(35)の方法が提供される。
【0045】
態様(37)によれば、溶融塩浴がKNO3を含む、態様(35)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0046】
態様(38)によれば、溶融塩浴が、380℃以上から470℃以下の温度である、態様(35)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0047】
態様(39)によれば、イオン交換が、10分以上から24時間以下の期間に及ぶ、態様(35)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0048】
態様(40)によれば、ガラス系物品を第2の溶融塩浴中でイオン交換する工程をさらに含む、態様(35)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0049】
態様(41)によれば、第2の溶融塩浴がKNO3を含む、直前の態様の方法が提供される。
【0050】
態様(42)によれば、ガラス系物品が提供される。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層;中央張力領域;および60モル%以上から66モル%以下のSiO2、14モル%以上から16モル%以下のAl2O3、7モル%以上から9モル%以下のLi2O、4モル%以上から6モル%以下のNa2O、0.5モル%以上から3モル%以下のP2O5、0.5モル%以上から6モル%以下のB2O3、および0モル%超から1モル%以下のTiO2を含むガラス系物品の中心での組成を有する。
【0051】
態様(43)によれば、ガラス系物品が提供される。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層;中央張力領域;およびSiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、およびB2O3を含むガラス系物品の中心での組成を有し、Li2O/Na2Oのモル比は1.2以上から2.0以下であり、ガラス系物品の中心での組成と同じ組成および微細構造を有するガラスが、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度、および0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する。
【0052】
態様(44)によれば、圧縮応力層が、500MPa以上から1500MPa以下の圧縮応力を有する、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0053】
態様(45)によれば、中央張力領域が、60MPa以上から160MPa以下の最大中央張力を有する、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0054】
態様(46)によれば、圧縮深さが0.20t以上から0.25t以下であり、tはガラス系物品の厚さである、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0055】
態様(47)によれば、圧縮応力層が、ガラス系物品の表面から圧縮応力スパイク深さまで延在する圧縮応力スパイクを有し、圧縮応力スパイク深さが3μm以上から10μm以下である、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0056】
態様(48)によれば、ガラス系物品が、0.2mm以上から2mm以下の厚さtを有する、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0057】
態様(49)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%超から0.5モル%以下のK2Oを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0058】
態様(50)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0.1モル%以上から0.5モル%以下のTiO2を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0059】
態様(51)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%以上から4モル%以下のMgOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0060】
態様(52)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0.1モル%以上から1モル%以下のMgOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0061】
態様(53)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%以上から3モル%以下のCaOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0062】
態様(54)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、1モル%以上から2モル%以下のCaOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0063】
態様(55)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%以上から4モル%以下のSrOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0064】
態様(56)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0.5モル%以上から2モル%以下のSrOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0065】
態様(57)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%以上から1モル%以下のZnOを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0066】
態様(58)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0モル%以上から0.1モル%以下のSnO2を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0067】
態様(59)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、64モル%以上から65モル%以下のSiO2を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0068】
態様(60)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、15モル%以上から16モル%以下のAl2O3を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0069】
態様(61)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、7モル%以上から8モル%以下のLi2Oを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0070】
態様(62)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、4モル%以上から5モル%以下のNa2Oを含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0071】
態様(63)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、0.5モル%以上から1.5モル%以下のP2O5を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0072】
態様(64)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、3モル%以上から4モル%以下のB2O3を含む、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0073】
態様(65)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、Fe2O3を実質的に含まない、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0074】
態様(66)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、ZrO2を実質的に含まない、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0075】
態様(67)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0076】
態様(68)によれば、ガラス系物品の中心での組成が、1.6以上から2.0以下のLi2O/Na2Oのモル比を有する、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0077】
態様(69)によれば、消費者向け電気製品が提供される。その消費者向け電気製品は、前面、背面、および側面を有する筐体;少なくとも部分的に筐体内に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、および筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品;およびディスプレイを覆って配置されたカバー基板を備える。筐体およびカバー基板の少なくとも一方の少なくとも一部は、態様(42)から直前の態様のいずれかのガラス系物品から作られている。
【0078】
追加の特徴および利点が、以下の詳細な説明に述べられており、一部には、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0079】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理と作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】ここに記載され、開示された実施の形態による、圧縮応力領域を有するガラス系物品の断面の概略図
【
図2A】ここに開示されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示の電子機器の平面図
【
図3】ある実施の形態によるガラス系物品に関する表面からガラス系物品中の深さの関数としての応力のプロット
【
図4】ある実施の形態による組成物から形成された物品および比較組成物から形成された物品に関するイオン交換時間の関数としてのCTのプロット
【
図5】ある実施の形態による組成物から形成された物品および比較組成物から形成された物品に関する表面粗さの関数としての表面衝撃後の破壊応力のグラフ
【
図6】ある実施の形態による組成物から形成された物品および比較組成物から形成された物品に関する増分平面落下試験の表面粗さの関数としての破壊高さのプロット
【
図7】破壊靱性K
ICおよびその断面を決定するための二重片持ち梁(DCB)手順に利用される試料の概略図
【
図8】ある実施の形態による組成物から形成された物品に関する波長の関数としての透過率百分率のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0081】
ここで、様々な実施の形態による、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスを詳しく参照する。リチウムアルミノケイ酸塩ガラスは良好なイオン交換可能性を有し、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスにおいて高強度および高靭性の特性を達成するために、化学強化過程が使用されてきた。リチウムアルミノケイ酸塩ガラスは、ガラス品質の高い、高度にイオン交換なガラスである。ケイ酸塩ガラスの網状構造中にAl2O3を置換すると、イオン交換中に一価陽イオンの相互拡散性が増す。溶融塩浴(例えば、KNO3またはNaNO3)中の化学強化によって、強度が高く、靭性が高く、圧痕亀裂形成抵抗が高いガラスを得ることができる。化学強化によって得られる応力プロファイルは、ガラス系物品の落下性能、強度、靭性、および他の属性を向上させる様々な形状を有することがある。
【0082】
したがって、物理的性質、化学的耐久性、およびイオン交換可能性が良好なリチウムアルミノケイ酸塩ガラスが、カバーガラスとしての使途のために、注目されている。具体的に、より高い破壊靭性を有し、原料費が妥当なリチウム含有アルミノケイ酸塩ガラスが、ここに提供される。異なるイオン交換過程によって、より大きい中央張力(CT)、圧縮深さ(DOC)、および高い圧縮応力(CS)を達成することができる。しかしながら、アルミノケイ酸塩ガラス中にリチウムを添加すると、ガラスの融点、軟化点、または液相粘度が低下することがある。
【0083】
ここに記載されたガラス組成物の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Li2Oなど)の濃度は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられている。実施の形態によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物の成分は、下記に個別に述べられている。ある成分の様々に列挙された範囲のどれも、どの他の成分の様々に列挙された範囲のどれと個別に組み合わされてもよいことを理解すべきである。ここに用いられているように、数字の末尾の0は、その数字の有効数字を表すためである。例えば、「1.0」は有効数字2桁であり、「1.00」は有効数字3桁である。
【0084】
ここに用いられているように、「ガラス基板」は、イオン交換されていないガラス片を称する。同様に、「ガラス物品」は、イオン交換されており、ガラス基板にイオン交換過程を施すことによって形成されたガラス片を称する。「ガラス系基板」および「ガラス系物品」は、それに基づいて定義され、ガラス基板とガラス物品並びに表面コーティングを備えたガラス基板など、ガラスから全体がまたは部分的に作られた基板と物品を含む。ガラス基板とガラス物品は、広く、便宜のために本明細書において称されることがあるが、ガラス基板とガラス物品の説明は、ガラス系基板とガラス系物品に等しく適用されると理解すべきである。
【0085】
高い破壊靭性(KIC)を示す、P2O5およびB2O3を含有するリチウムアルミノケイ酸塩ガラス組成物が、ここに開示されている。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、少なくとも0.75MPa√mのKIC破壊靭性値によって特徴付けられる。ここに記載されたガラスは、破壊靱性を増加させるが、高価であり、商業的利用可能性が制限されることのある、ZrO2、Ta2O5、TiO2、HfO2、La2O3、およびY2O3などの添加剤を含まずに、これらの破壊靱性値を達成することができる。この点に関して、ここに開示されたガラスは、減少した製造費で、匹敵するかまたは改善された性能を提供する。
【0086】
引っ掻き傷性能が望ましいが、落下性能が、携帯型電子機器に組み込まれるガラス系物品にとっての主要な属性となる。破壊靱性およびある深さでの応力が、粗面への落下性能の改善にとって重要である。この理由のために、割れやすさ限界(frangibility limit)に到達する前にガラスに提供できる応力の量を最大にすると、ある深さでの応力および粗面落下性能が高まる。破壊靱性は、割れやすさ限界を制御することが公知であり、破壊靱性を増加させると、割れやすさ限界が増す。ここに開示されたガラス組成物は、高い破壊靱性を有し、非脆性のままでありながら、高い圧縮応力レベルを達成することができる。このガラス組成物のこれらの特徴のために、特定の破壊モードに対処するように設計された改善された応力プロファイルの開発が可能になる。この能力により、ここに記載されたガラス組成物から製造されたイオン交換済みのガラス系物品を、関心のある特定の破壊モードに対処するために異なる応力プロファイルでカスタマイズすることができる。
【0087】
ここに記載された組成物は、高い破壊靱性値を達成しつつ、所望の程度の製造可能性も維持するように選択される。その組成物は、所望の製造限界との適合性を維持しつつ、所望の破壊靱性を生じるために多量のAl2O3およびLi2Oを含む。ここに記載されたガラス組成物から形成されたイオン交換済みのガラス系物品の落下性能は、圧縮深さ(DOC)を増加させることによって改善される。このことは、高いLi/Naモル比を選択することによって少なくとも一部は達成されるであろう。ここに記載されたガラス組成物は、増加した中央張力能力および増加したイオン交換速度で証拠付けられるように、改善されたイオン交換性能を提供しつつ、多すぎるB2O3およびP2O5の含有量で導入されることもある、製造中の自由表面での揮発性の問題も避けられる。
【0088】
ここに記載されたガラス組成物において、SiO2は、最多成分であり、よって、SiO2は、ガラス組成物から形成されるガラス網状構造の主成分である。純粋なSiO2は、比較的低いCTEを有する。しかしながら、純粋なSiO2の融点は高い。したがって、ガラス組成物中のSiO2の濃度が高すぎると、そのガラス組成物の成形性は、より高濃度のSiO2のためにガラスを溶融する難易度が増し、それは転じて、ガラスの成形性に悪影響を及ぼすので、低下するであろう。そのガラス組成物中のSiO2の濃度が低すぎると、そのガラスの化学的耐久性が低下することがあり、そのガラスは、成形後処理の最中に表面損傷を受けやすいであろう。実施の形態において、そのガラス組成物は、一般に、60モル%以上から66モル%以下、例えば、60.5モル%以上から65.5モル%以下、61モル%以上から65モル%以下、61.5モル%以上から64.5モル%以下、62モル%以上から64モル%以下、62.5モル%以上から63.5モル%以下、63モル%以上から65モル%以下、64モル%以上から65モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のSiO2を含む。
【0089】
そのガラス組成物は、Al2O3を含む。Al2O3は、SiO2と同じように、ガラス網状構造形成材の働きをすることがある。Al2O3は、Al2O3の量が多すぎる場合、ガラス組成物から形成されるガラス溶融物中の四面体配位のために、ガラス組成物の粘度を増加させ、ガラス組成物の成形性を低下させることがある。しかしながら、Al2O3の濃度が、ガラス組成物中のSiO2の濃度とアルカリ酸化物の濃度に対して釣り合わされると、Al2O3は、ガラス溶融物の液相温度を低下させ、それによって、液相粘度を向上させ、特定の成形過程とのガラス組成物の適合性を改善することができる。ガラス組成物中にAl2O3を含ませると、ここに記載されたように、破壊靱性値を高くすることができる。実施の形態において、そのガラス組成物は、14モル%以上から16モル%以下、例えば、14.0モル%以上から16.0モル%以下、14.5モル%以上から15.5モル%以下、15.0モル%以上から15.5モル%以下、15モル%以上から16モル%以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度でAl2O3を含む。
【0090】
そのガラス組成物はLi2Oを含む。前記ガラス組成物中にLi2Oを含ませることにより、イオン交換過程をよりよく制御することができ、ガラスの軟化点をさらに低下させ、それによって、ガラスの製造可能性が高まる。そのガラス組成物中にLi2Oが存在することにより、放物形を有する応力プロファイルを形成することもできる。そのガラス組成物中のLi2Oは、ここに記載された高い破壊靱性値を可能にする。実施の形態において、そのガラス組成物は、7モル%以上から9モル%以下、例えば、7.0モル%以上から9.0モル%以下、7.5モル%以上から8.5モル%以下、8.0モル%以上から8.5モル%以下、7モル%以上から8モル%以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のLi2Oを含む。
【0091】
ここに記載されたガラス組成物は、Na2Oを含む。Na2Oは、ガラス組成物のイオン交換可能性に役立ち、ガラス組成物の成形性、およびそれによって、製造可能性も改善することがある。しかしながら、ガラス組成物に加えられるNa2Oが多すぎると、CTEが低くなり過ぎることがあり、融点が高くなり過ぎることがある。それに加え、ガラス中に含まれるNa2Oが、Li2Oの量と比べて多すぎると、イオン交換された時に深い圧縮深さを達成するガラスの能力が低下することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、4モル%以上から6モル%以下、例えば、4.0モル%以上から6.0モル%以下、4.5モル%以上から5.5モル%以下、5.0モル%以上から5.5モル%以下、4モル%以上から5モル%以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のNa2Oを含む。
【0092】
ここに記載されたガラス組成物はP2O5を含む。P2O5を含ませると、ガラス中のイオンの拡散性が増し、イオン交換過程の速度が増加する。組成物に含まれるP2O5が多すぎると、イオン交換過程で与えられる圧縮応力の量が減少することがあり、製造中の自由表面での揮発性が許容できないレベルまで増すことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から3モル%以下、例えば、1.0モル%以上から3.0モル%以下、1モル%以上から2.5モル%以下、1.5モル%以上から2.0モル%以下、0.5モル%以上から2モル%以下、0.5モル%以上から1.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のP2O5を含む。
【0093】
ここに記載されたガラス組成物はB2O3を含む。B2O3を含ませると、ガラスの破壊靱性が増す。詳しくは、そのガラス組成物は三方晶の形態でホウ素を含み、これにより、ガラスのヌープ引っ掻き閾値および破壊靱性が増加する。その組成物に含まれるB2O3が多すぎると、イオン交換過程で与えられる圧縮応力の量が減少し、製造中の自由表面での揮発性が許容できないレベルまで増すことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から6モル%以下、例えば、1.0モル%以上から6.0モル%以下、1モル%以上から5.5モル%以下、1.5モル%以上から5.0モル%以下、2.0モル%以上から5モル%以下、2モル%以上から4.5モル%以下、2.5モル%以上から4.0モル%以下、3.0モル%以上から4モル%以下、3モル%以上から3.5モル%以下、3モル%以上から4モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のB2O3を含む。
【0094】
ここに記載されたガラス組成物は、一般に、TiO2を含む。そのガラス組成物に含まれるTiO2が多すぎると、ガラスが、失透しやすくなる、および/または望ましくない着色を示し、同時に液相線を望ましくなく変えることがある。ガラス組成物中にTiO2を含ませると、加工後の処理中などで、強力な紫外線に曝露された場合、ガラスの望ましくない変色が防がれる。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%超から1モル%以下、例えば、0.1モル%以上から1.0モル%以下、0.2モル%以上から0.9モル%以下、0.3モル%以上から0.8モル%以下、0.4モル%以上から0.7モル%以下、0.5モル%以上から0.6モル%以下、0.1モル%以上から0.2モル%以下、0.1モル%以上から0.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のTiO2を含む。
【0095】
前記ガラス組成物はK2Oを含むことがある。そのガラス組成物にK2Oを含ませると、ガラス中のカリウム拡散性が増し、より深い圧縮応力スパイク深さ(DOLSP)をより短いイオン交換時間で達成することができる。その組成物に含まれるK2Oが多すぎると、イオン交換過程中に与えられる圧縮応力の量が減少することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%超から0.5モル%以下、例えば、0.1モル%以上から0.4モル%以下、0.2モル%以上から0.3モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のK2Oを含む。
【0096】
ここに記載されたガラス組成物は、MgOを含むことがある。MgOはガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、ガラスの成形性および製造可能性が向上する。ガラス組成物にMgOを含ませると、ガラス組成物の歪み点とヤング率が改善されることもある。しかしながら、ガラス組成物に加えられるMgOが多すぎると、望ましい成形技術に適合するには、液相粘度が低くなりすぎることがある。MgOを多く添加し過ぎると、ガラス組成物の密度とCTEが望ましくないレベルまで増加することもある。ガラス組成物にMgOを含ませると、ここに記載された高い破壊靱性値を達成するのに役立つ。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%以上から4モル%以下、例えば、0モル%超から4.0モル%以下、0.5モル%以上から3.5モル%以下、1モル%以上から3モル%以下、1.0モル%以上から3.0モル%以下、1.5モル%以上から2.5モル%以下、1モル%以上から2モル%以下、2.0モル%以上から3モル%以下、0.1モル%以上から1モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のMgOを含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、MgOを実質的に含まない、または含まない。ここに用いられているように、「実質的に含まない」という用語は、たとえその成分が、0.1モル%未満など、汚染物質として非常に少量で最終的なガラス組成物中に存在するとしても、その成分は、バッチ材料の成分として意図的に添加されていないことを意味する。
【0097】
ここに記載されたガラス組成物は、CaOを含むことがある。CaOは、ガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、成形性、歪み点、およびヤング率が向上することがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるCaOが多すぎると、ガラス組成物の密度とCTEが許容できないレベルまで増加することがあり、ガラスのイオン交換可能性が望ましくなく妨げられることがある。ガラス組成物にCaOを含めることも、ここに記載された高い破壊靱性値を達成するのに役立つ。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%以上から3モル%以下、例えば、0モル%超から3.0モル%以下、0.5モル%以上から2.5モル%以下、1モル%以上から2モル%以下、1.0モル%以上から2.0モル%以下、1.5モル%以上から2.0モル%以下、1モル%以上から2モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のCaOを含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、CaOを実質的に含まない、または含まない。
【0098】
ここに記載されたガラス組成物は、SrOを含むことがある。SrOは、ガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、成形性、歪み点、およびヤング率が向上することがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるSrOが多すぎると、ガラス組成物の密度とCTEが許容できないレベルまで増加することがあり、ガラスのイオン交換可能性が望ましくなく妨げられることがある。ガラス組成物にSrOを含めることも、ここに記載された高い破壊靱性値を達成するのに役立つ。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%以上から4モル%以下、例えば、0モル%超から4.0モル%以下、0.5モル%以上から3.5モル%以下、1モル%以上から3モル%以下、1.0モル%以上から3.0モル%以下、1.5モル%以上から2.5モル%以下、1モル%以上から2モル%以下、2.0モル%以上から3モル%以下、0.5モル%以上から2モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のSrOを含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、SrOを実質的に含まない、または含まない。
【0099】
ここに記載されたガラス組成物は、ZnOを含むことがある。ZnOは、ガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、成形性、歪み点、およびヤング率が向上することがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるZnOが多すぎると、ガラス組成物の密度とCTEが許容できないレベルまで増加することがある。ガラス組成物にZnOを含めることも、ここに記載された高い破壊靱性値を達成するのに役立ち、UV誘起変色に対する保護が与えられる。実施の形態において、そのガラス組成物は、0モル%以上から1モル%以下、例えば、0モル%超から1.0モル%以下、0.1モル%以上から0.9モル%以下、0.2モル%以上から0.8モル%以下、0.3モル%以上から0.7モル%以下、0.4モル%以上から0.6モル%以下、0.1モル%以上から0.5モル%以下、0モル%以上から0.3モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のZnOを含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、ZnOを実質的に含まない、または含まない。
【0100】
前記ガラス組成物は、1種類以上の清澄剤を必要に応じて含むことがある。実施の形態において、その清澄剤の例としては、SnO2が挙げられるであろう。実施の形態において、SnO2は、0.2モル%以下、例えば、0モル%以上から0.2モル%以下、0モル%以上から0.1モル%以下、0モル%以上から0.05モル%以下、0.1モル%以上から0.2モル%以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲などの量でガラス組成物中に存在することがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、SnO2を実質的に含まない、または含まないことがある。実施の形態において、前記ガラス組成物は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を実質的に含まないことがある。他の実施の形態において、そのガラス組成物は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を含まないことがある。
【0101】
ここに記載されたガラス組成物は、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、およびB2O3から主に形成されることがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、B2O3およびTiO2以外の成分を実質的に含まない、または含まない。実施の形態において、そのガラス組成物は、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、B2O3、TiO2および清澄剤以外の成分を実質的に含まない、または含まない。実施の形態において、そのガラス組成物は、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、B2O3、TiO2、K2O、CaO、MgO、SrO、および清澄剤以外の成分を実質的に含まない、または含まない。
【0102】
実施の形態において、前記ガラス組成物は、Fe2O3を実質的に含まない、または含まないことがある。鉄は、ガラス組成物を形成するために利用される原材料中に多くの場合存在し、その結果、ガラスバッチに能動的に添加していない場合でさえ、ここに記載されたガラス組成物中に検出可能であることがある。
【0103】
実施の形態において、そのガラス組成物は、ZrO2を実質的に含まない、または含まないことがある。そのガラス組成物にZrO2を含ませると、少なくとも一部にはガラス中へのZrO2の低い溶解度のために、ガラス中に望ましくないジルコニア含有物が形成されることがある。ガラスにZrO2を含ませると、破壊靱性が高まることがあるが、費用と供給の制約、並びにこれらの成分の使用を商業目的に望ましくなくすであろう先に記載された失透問題がある。言い方を変えれば、ZrO2を含有することで高い破壊靱性値を達成するここに記載されたガラス組成物の能力は、費用と製造可能性の利点を提供する。
【0104】
実施の形態において、前記ガラス組成物は、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3の少なくとも1つを実質的に含まない、または含まないことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、または含まないことがある。これらの成分は、含まれた場合、ガラスの破壊靱性を増すことがあるが、これらの成分を商業目的に望ましくなくす費用と供給の制約がある。言い方を変えると、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を含ませることで、高い破壊靱性値を達成するここに記載されたガラス組成物の能力は、費用と製造可能性の利点を与える。
【0105】
ここに記載されたガラス組成物は、リチウム対ナトリウムのモル比(Li2O/Na2O)に関して記載されることがある。Li2O/Na2Oモル比を高くすると、ガラス組成物をイオン交換したときに、深い圧縮深さ(DOC)を達成することができる。高いLi2O/Na2Oモル比に寄与するDOC能力の増大により、そのガラス組成物から形成されたイオン交換済み物品が、特に粗面上の、落下性能の改善を示すことができる。実施の形態において、そのガラス組成物は、1.2以上から2.0以下、例えば、1.3以上から1.9以下、1.4以上から1.8以下、1.5以上から1.7以下、1.6以上から2.0以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲のLi2O/Na2Oモル比で特徴付けられる。
【0106】
先に開示されたガラス組成物の物理的性質をここに記載する。
【0107】
実施の形態によるガラス組成物は、高い破壊靱性を有する。どの特定の理論にも束縛される意図はないが、高い破壊靭性により、ガラス組成物に改善された落下性能が与えられることがある。ここに記載されたガラス組成物の高い破壊靱性により、ガラスの耐損傷性が増し、脆性とならずに、中央張力で特徴付けられるように、イオン交換によりガラスに与えられる応力を高くすることができる。ここに利用されるように、破壊靭性は、特に明記のない限り、シェブロンノッチ付き小形角棒法によって測定される、KIC値を称する。KIC値の測定に利用されるシェブロンノッチ付き小形角棒(CNSB)法は、Y*
mが、Bubsey,R.T.等の「Closed-Form Expressions for Crack-Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron-Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements」NASA Technical Memorandum 83796、1~30頁(1992年10月) の式5を用いて計算されることを除いて、Reddy,K.P.R.等の「Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron-Notched Specimens」J.Am.Ceram.Soc., 71 [6], C-310-C-313(1988年)に開示されている。それに加え、KIC値は、ガラス系物品を形成するためにガラス系基板をイオン交換する前にKIC値を測定する場合など、非強化ガラス試料について測定される。ここに述べられたKIC値は、特に明記のない限り、MPa√mで報告されている。
【0108】
実施の形態において、前記ガラス組成物は、0.75MPa√m以上、例えば、0.76MPa√m以上、0.77MPa√m以上、0.8MPa√m以上、またはそれより大きいKIC値を示す。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.75MPa√m以上から0.8MPa√m以下、例えば、0.76MPa√m以上から0.79MPa√m以下、0.77MPa√m以上から0.78MPa√m以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲のKIC値を示す。
【0109】
ここに記載されたガラス組成物は、薄いガラスシートの成形に特に適した製造プロセスに適合する液相粘度を有する。例えば、そのガラス組成物は、フュージョンドロー法やスロットドロー法などのダウンドロー法に適合している。ガラス系基板の実施の形態は、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を使用して成形可能)であると記載されることがある。このフュージョン法では、溶融したガラス原材料を受け取るための通路を有する延伸槽が使用される。この通路は、通路の両側に通路の長さに沿って上部で開いた堰を有する。通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰から溢れ出る。溶融ガラスは、重力のために、延伸槽の外面を2つの流れるガラスフイルムとして流れ落ちる。延伸槽のこれらの外面は、延伸槽の下の縁で接合するように、下方かつ内側に延在する。2つの流れるガラスフイルムはこの縁で合流し、融合して、1つの流れるガラス系物品を形成する。これらのガラスフイルムの融合により、ガラス系基板内に融合線が生じ、この融合線は、製造履歴の追加の知識を必要とせずに、フュージョン成形されたガラス系基板を特定することができる。このフュージョンドロー法は、通路から溢れ出た2つのガラスフイルムが互いに融合するので、結果として得られたガラス系物品の外面のいずれも、装置のどの部分とも接触しないという利点を提示する。それゆえ、フュージョンドロー法で製造されたガラス系物品の表面特性は、そのような接触の影響を受けない。
【0110】
ここに記載されたガラス組成物は、フュージョンドロー法に適合する液相粘度を有するように選択されることがある。それゆえ、ここに記載されたガラス組成物は、既存の成形法に適合しており、そのガラス組成物から成形されたガラス系物品の製造可能性が増す。ここに用いられているように、「液相粘度」という用語は、液相温度での溶融ガラスの粘度を称し、ここで、液相温度は、溶融ガラスが溶融温度から冷めるときに、結晶が最初に現れる温度、または温度を室温から上昇させるときに、一番最後の結晶が溶けてなくなる温度を称する。特に明記のない限り、本出願に開示された液相粘度値は、以下の方法によって決定される。最初に、ガラスの液相温度を、「Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method」と題する、ASTM C829-81(2015)にしたがって測定する。次に、その液相温度でのガラスの粘度を、「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」と題する、ASTM C965-96(2012)にしたがって測定する。ここに用いられている「フォーゲル-フルチャー-タンマン(Vogel-Fulcher-Tamman)(「VFT」)関係」という用語は、粘度の温度依存性を記述し、以下の式:
【0111】
【0112】
で表される。式中、ηは粘度である。VFT A、VFT B、およびVFT TOを決定するために、ガラス組成物の粘度を所定の温度範囲に亘り測定する。次に、最小二乗法でVFT式により粘度対温度の生データをフィッティングして、A、B、およびTOを得る。これらの値により、軟化点より高い任意の温度での粘度点(例えば、200P温度、35000P温度、および200000P温度)が計算できる。特に明記のない限り、ガラス組成物または物品の液相粘度および温度は、その組成物または物品にどのようなイオン交換過程も、またはどの他の強化過程も施す前に、測定される。詳しくは、ガラス組成物または物品の液相粘度および温度は、その組成物または物品がイオン交換溶液に曝露される前、例えば、イオン交換溶液に浸漬される前に、測定される。
【0113】
実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、50kP以上、例えば、55kP以上、60kP以上、65kP以上、70kP以上、75kP以上、またはそれより大きいことがある。実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、50kP以上から80kP以下、例えば、55kP以上から75kP以下、60kP以上から70kP以下、50kP以上から65kP以下、50kP以上から75kP以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲であることがある。より低い液相粘度は、より高いKIC値および改善されたイオン交換能力に関連付けられるが、液相粘度が低すぎると、ガラス組成物の製造可能性が低下してしまう。
【0114】
前記ガラス組成物は、その中に含まれる成分およびガラスが示す性質に関して記載されることがある。実施の形態において、そのガラスは、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2O、P2O5、およびB2O3を含み、Li2O/Na2Oモル比が1.2以上から2.0以下であり、50kP以上から75kP以下の範囲の液相粘度を有し、0.75MPa√m以上の破壊靱性KICを有する。
【0115】
1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラス組成物は、非晶質微細構造を示し、結晶または晶子を実質的に含まないことがあるガラス系物品を形成することがある。言い換えると、ここに記載されたガラス組成物から形成されたガラス系物品では、ガラスセラミック材料が除かれることがある。
【0116】
上述したように、実施の形態において、ここに記載されたガラス組成物は、イオン交換などによって強化して、以下に限られないが、ディスプレイ用カバーなどの用途にとって損傷抵抗であるガラス系物品を製造することができる。
図1を参照すると、ガラス系物品の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力下にある第1の領域(例えば、
図1の第1と第2の圧縮応力層120、122)およびDOCからガラス系物品の中央または内部領域に延在する引張応力または中央張力(CT)下にある第2の領域(例えば、
図1の中央領域130)を有するガラス系物品が示されている。ここに用いられているように、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に交差し、それゆえ、ゼロの応力値を示す。
【0117】
当該技術分野において通常用いられる慣例によれば、圧縮または圧縮応力は負の(<0)応力として表され、張力または引張応力は正の(>0)応力として表される。しかしながら、本明細書を通じて、CSは、正の値または絶対値として表される。すなわち、ここに挙げられるように、CS=|CS|。圧縮応力(CS)は、ガラス系物品の表面で、またはその近くで最大値を有し、CSは、関数にしたがって、表面からの距離dにより変動する。再び
図1を参照すると、第1の区画120は第1の表面110から深さd
1まで延在し、第2の区画122は第2の表面112から深さd
2まで延在する。これらの区画は、共に、ガラス系物品100の圧縮またはCSを規定する。圧縮応力(表面CSを含む)は、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の機器を使用する表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関係する応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。SOCは、次に、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM標準C770-16に記載された手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。
【0118】
実施の形態において、前記ガラス系物品のCSは、500MPa以上から1500MPa以下、例えば、550MPa以上から1500MPa以下、600MPa以上から1500MPa以下、650MPa以上から1450MPa以下、700MPa以上から1400MPa以下、750MPa以上から1350MPa以下、800MPa以上から1300MPa以下、850MPa以上から1250MPa以下、900MPa以上から1200MPa以下、950MPa以上から1150MPa以下、1000MPa以上から1150MPa以下、1050MPa以上から1500MPa以下、1200MPa以上から1300MPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲にある。
【0119】
実施の形態において、Na+およびK+イオンがガラス系物品中に交換され、Na+イオンは、K+イオンより深い深さまでガラス系物品中に拡散する。K+イオンの侵入深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換過程の結果としてのカリウム侵入深さを表すので、DOCとは区別される。カリウムDOLは、典型的に、ここに記載されたガラス物品について、DOCよりも小さい。カリウムDOLは、有限会社折原製作所(日本国)により製造されている市販のFSM-6000表面応力計などの表面応力計を使用して測定される。この表面応力計は、CS測定に関して先に記載されたように、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。カリウムDOLは、圧縮応力スパイクの深さ(DOLSP)を規定することがあり、ここで、応力プロファイルは、急峻なスパイク領域からそれほど急峻ではない深い領域に移行する。この深い領域は、スパイク領域の底部から圧縮深さまで延在する。このガラス系物品のDOLSPは、3μm以上から10μm以下、例えば、4μm以上から9μm以下、5μm以上から8μm以下、6μm以上から7μm以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲にあることがある。
【0120】
両方の主面(
図1における110、112)の圧縮応力は、ガラス系物品の中央領域(130)における貯蔵張力により釣り合わされる。最大中央張力(CT)およびDOCは、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定されることがある。ガラス系物品の応力プロファイルを決定するために、屈折近視野(RNF)法またはSCALPが使用されることがある。応力プロファイルを測定するためにRNF法が使用される場合、SCALPにより与えられる最大CT値がRNF法に使用される。詳しくは、RNFにより決定された応力プロファイルは、SCALP測定により与えられる最大CT値に対して力平衡され、較正される。このRNF法は、ここに全てが引用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8854623号明細書に記載されている。詳しくは、このRNF法は、基準ブロックに隣接してガラス系物品を配置する工程、1Hzと50Hzの間の速度で直交偏光の間で切り換えられる偏光切替光線を生成する工程、その偏光切替光線の出力量を測定する工程、および偏光切替基準信号を生成する工程を含み、直交偏光の各々の出力の測定量は互いの50%以内にある。この方法は、偏光切替光線を、ガラス試料中の異なる深さについて、ガラス試料および基準ブロックに透過させ、次いで、リレー光学系を使用して、透過した偏光切替光線を信号光検出器に中継する工程をさらに含み、その信号光検出器は偏光切替検出器信号を生成する。この方法は、検出器信号を基準信号で割って、正規化検出器信号を形成する工程、およびその正規化検出器信号からガラス試料の特徴を示すプロファイルを決定する工程も含む。
【0121】
最大CT値の測定は、上述した力平衡のために、強化物品に貯蔵された応力の総量の指標である。この理由のために、より高いCT値を達成する能力は、より高度の強化と性能の向上を達成する能力に相関する。実施の形態において、前記ガラス系物品は、60MPa以上、例えば、70MPa以上、80MPa以上、90MPa以上、100MPa以上、110MPa以上、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、150MPa以上、またはそれより大きい最大CTを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、60MPa以上から160MPa以下、例えば、70MPa以上から160MPa以下、80MPa以上から160MPa以下、90MPa以上から160MPa以下、100MPa以上から150MPa以下、110MPa以上から140MPa以下、120MPa以上から130MPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の最大CTを有することがある。
【0122】
ここに記載されたガラス組成物の高い破壊靭性値は、性能の改善を可能にすることもある。ここに記載されたガラス組成物を利用して製造されるガラス系物品の脆性限界は、少なくとも一部には破壊靱性に依存する。この理由のために、ここに記載されたガラス組成物の高い破壊靭性により、それから形成されるガラス系物品に、脆性にならずに、大量の貯蔵歪みエネルギーを与えることができる。その後、ガラス系物品に含まれることのある貯蔵歪みエネルギーの量の増加により、ガラス系物品は増加した破壊抵抗を示すことができ、これは、ガラス系物品の落下性能を通じて観察されるであろう。脆性限界と破壊靱性との間の関係は、その全てがここに引用される、2020年3月12日に公開された「Glass-based Articles with Improved Fracture Resistance」と題する米国特許出願公開第2020/0079689A1号明細書に記載されている。破壊靭性と落下性能との間の関係は、その全てがここに引用される、2019年12月5日に公開された「Glass with Improved Drop Performance」と題する米国特許出願公開第2019/0369672A1号明細書に記載されている。
【0123】
上述したように、DOCは、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定される。このDOCは、いくつかの実施の形態において、ガラス系物品の厚さ(t)の一部としてここに与えられる。実施の形態において、そのガラス系物品は、0.20t以上から0.25t以下、例えば、0.21t以上から0.24t以下、または0.22t以上から0.23t以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の圧縮深さ(DOC)を有することがある。ここに記載されたガラス組成物をイオン交換したときに生じる高いDOC値は、特に、深い傷が導入されることのある状況に関して、耐破壊性の改善を提供する。例えば、深いDOCは、粗面に落とされたときの耐破壊性を改善する。
【0124】
ガラス系物品100の厚さ(t)は、表面110と表面112の間で測定される。実施の形態において、ガラス系物品100の厚さは、0.1mm以上から4mm以下、例えば、0.2mm以上から3.5mm以下、0.3mm以上から3mm以下、0.4mm以上から2.5mm以下、0.5mm以上から2mm以下、0.6mm以上から1.5mm以下、0.7mm以上から1mm以下、0.2mm以上から2mm以下の範囲、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲に有ることがある。このガラス系物品を形成するのに利用されるガラス基板は、ガラス系物品に望ましい厚さと同じ厚さを有することがある。
【0125】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換媒体に曝露することによって、ガラス中に形成されることがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、溶融した硝酸塩であることがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、溶融塩浴であることがあり、KNO3、NaNO3、またはその組合せを含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体中に、例えば、ナトリウムまたはカリウムの硝酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの他のナトリウム塩とカリウム塩が使用されることがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、LiNO3などのリチウム塩を含むことがある。イオン交換媒体は、それに加え、ケイ酸など、ガラスをイオン交換するときに一般に含まれる添加剤を含むことがある。イオン交換過程は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層および中央張力領域を含むガラス系物品を形成するために、ガラス系基板に施される。このイオン交換過程に利用されるガラス系基板は、ここに記載されたガラス組成物のいずれを含んでもよい。
【0126】
実施の形態において、前記イオン交換媒体はNaNO3を含む。このイオン交換媒体中のナトリウムはガラス中のリチウムイオンと交換して、圧縮応力を生じる。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、95質量%以下、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、またはそれより少ない量でNaNO3を含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、5質量%以上、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、またはそれより多い量でNaNO3を含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、0質量%以上から100質量%以下、例えば、10質量%以上から90質量%以下、20質量%以上から80質量%以下、30質量%以上から70質量%以下、40質量%以上から60質量%以下、50質量%以上から90質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のNaNO3を含むことがある。実施の形態において、溶融イオン交換媒体は、100質量%のNaNO3を含む。
【0127】
実施の形態において、前記イオン交換媒体はKNO3を含む。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、95質量%以下、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、またはそれより少ない量でKNO3を含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、5質量%以上、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、またはそれより多い量でKNO3を含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、0質量%以上から100質量%以下、例えば、10質量%以上から90質量%以下、20質量%以上から80質量%以下、30質量%以上から70質量%以下、40質量%以上から60質量%以下、50質量%以上から90質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のKNO3を含むことがある。実施の形態において、溶融イオン交換媒体は、100質量%のKNO3を含む。
【0128】
前記イオン交換媒体は、ナトリウムとカリウムの混合物を含むことがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、NaNO3とKNO3の両方を含む溶融塩浴など、カリウムとナトリウムの混合物である。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、80質量%のNaNO3と20質量%のKNO3を含有する溶融塩浴など、上述した量でNaNO3とKNO3のどの組合せを含んでもよい。
【0129】
前記ガラス組成物は、そのガラス組成物から製造されたガラス基板を前記イオン交換媒体の浴中に浸漬すること、そのガラス組成物から製造されたガラス基板上に前記イオン交換媒体を吹き付けること、またはそのガラス組成物から製造されたガラス基板に前記イオン交換媒体を他のやり方で物理的に施すことによって、イオン交換媒体に曝露して、イオン交換されたガラス系物品を形成することがある。そのイオン交換媒体は、そのガラス組成物への曝露の際に、実施の形態によれば、360℃以上から500℃以下、例えば、370℃以上から490℃以下、380℃以上から480℃以下、390℃以上から470℃以下、400℃以上から460℃以下、410℃以上から450℃以下、420℃以上から440℃以下、430℃以上から470℃以下、400℃以上から470℃以下、380℃以上から470℃以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の温度であることがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、10分以上から48時間以下、例えば、10分以上から24時間以下、0.5時間以上から24時間以下、1時間以上から18時間以下、2時間以上から12時間以下、4時間以上から8時間以下、および上述した値の間の全ての範囲と部分的範囲の期間に亘りそのイオン交換溶液に曝露されることがある。
【0130】
イオン交換過程は、第2のイオン交換処理を含むことがある。実施の形態において、第2のイオン交換処理は、第2の溶融塩浴中でガラス系物品をイオン交換する工程を含むことがある。第2のイオン交換処理では、ここに記載されたイオン交換媒体のいずれを利用してもよい。実施の形態において、第2のイオン交換処理では、KNO3を含む第2の溶融塩浴が利用される。
【0131】
前記イオン交換過程は、例えば、ここに全て引用される、米国特許出願公開第2016/0102011号明細書に開示されたような、改善された圧縮応力プロファイルを提供する処理条件下でイオン交換媒体内で行われることがある。いくつかの実施の形態において、そのイオン交換過程は、ここに全て引用される、米国特許出願公開第2016/0102014号明細書に記載された応力プロファイルなどの放物線応力プロファイルをガラス系物品に形成するように選択されることがある。
【0132】
イオン交換過程が行われた後、イオン交換されたガラス系物品の表面での組成が、成形されたままのガラス基板(すなわち、イオン交換過程が行われる前のガラス基板)の組成と異なることを理解すべきである。これは、例えば、それぞれ、Na+またはK+などのより大きいアルカリ金属イオンにより交換された、例えば、Li+またはNa+などの、形成されたままのガラス基板中のアルカリ金属イオンの一種から生じる。しかしながら、ガラス系物品の深さの中心またはその近くでのガラス組成物は、実施の形態において、それでも、そのガラス系物品を形成するために利用される成形されたままのイオン交換されていないガラス基板の組成を有するであろう。ここに用いられているように、ガラス系物品の中心は、tがガラス系物品の厚さである、その全ての表面から少なくとも0.5tの距離である、ガラス系物品における任意の位置を称する。
【0133】
ここに開示されたガラス系物品は、ディスプレイを備えた物品(またはディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電子機器)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐磨耗性またはその組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示の物品が、
図2Aおよび2Bに示されている。詳しくは、
図2Aおよび2Bは、前面204、背面206、および側面208を有する筐体202;その筐体の少なくとも部分的に内側にまたは完全に中にあり、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイ210を含む電気部品(図示せず);およびそのディスプレイを覆うように筐体の前面にまたはその上にあるカバー212を備えた家庭用電子機器200を示している。実施の形態において、カバー212および筐体202の少なくとも一方の少なくとも一部は、ここに記載されたガラス系物品のいずれかを含むことがある。
【実施例】
【0134】
実施の形態が、以下の実施例によりさらに明白になるであろう。これらの実施例は、先に記載された実施の形態を限定するものではないことが理解されよう。
【0135】
ガラス組成物を調製し、分析した。分析したガラス組成物は、下記の表Iに列挙された成分を含み、従来のガラス形成法によって調製した。表Iにおいて、全ての成分はモル%で表され、KIC破壊靱性は、ここに記載されたシェブロンノッチ(CNSB)法で主に測定した。ガラス組成物のポアソン比(ν)、ヤング率(E)、および剛性率(G)は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題する、ASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術によって測定した。基板の589.3nmでの屈折率および応力光学係数(SOC)も、表Iに報告されている。ガラス組成物の密度は、ASTM C693-93(2013)の浮力法を使用して決定した。
【0136】
代わりの破壊靭性K
ICの測定を、二重片持ち梁(DCB)法でいくつかの試料に行い、その測定値も、表Iに報告されている。DCB試験片の形状が
図7に示されており、重要なパラメータは、亀裂長さa、印加荷重P、断面寸法wと2h、および亀裂誘導溝の厚さbである。試料を、幅2h=1.25cmおよびw=0.3mmから1mmに及ぶ厚さの長方形に切断し、試料の全長は5cmから10cmと様々であるが、これは重要な寸法ではない。ダイヤモンドドリルで両端に孔を開けて、試料を試料ホルダおよび荷重に取り付ける手段を提供した。亀裂「誘導溝」は、ダイヤモンド刃を備えたウエハーダイシングソーを使用して、平らな両面に試料の長さを切り込み、刃の厚さに相当する180μmの高さで、プレートの全厚の約半分(
図7の寸法b)の材料の「ウェブ」を残した。ダイシングソーの高精度の寸法公差により、試料間のばらつきを最小にすることができる。このダイシングソーを、a=15mmの初期亀裂を切るためにも使用した。この最終操作の結果として、亀裂先端の近くに非常に薄い材料の楔を形成し(刃の曲率のために)、試料内の亀裂発生をより容易にできた。試料の底部の孔にある鋼線で、金属製試料ホルダ内に試料を取り付けた。低荷重条件下で試料を水平に維持するために、試料を反対の端部で支持した。上部の孔に、ロードセル(FUTEK、LSB200)と直列のバネを引っ掛け、次いで、ロープと高精度スライドを使用して、引き伸ばして、徐々に荷重を印加した。デジタルカメラおよびコンピュータに取り付けられた5μmの解像度を有する顕微鏡を使用して、亀裂をモニタした。以下の式:
【0137】
【0138】
を使用して、印加した応力強度KPを計算した。各試料について、ウェブの先端に亀裂を最初に発生させ、次いで、応力強度を正確に計算するために、寸法比a/hが1.5より大きくなるまで、開始亀裂を注意深く、未臨界成長させた。この時点で、5μmの解像度を有する遊動顕微鏡を使用して、亀裂の長さaを測定し、記録した。次に、トルエンを一滴、亀裂の溝に入れ、毛管力によって、溝の全長に沿って運び、破壊靭性に達するまで、動かないように亀裂をピン止めした。次に、試料が破壊されるまで、荷重を増加させ、破壊荷重および試料寸法から臨界応力強度KICを計算した。KPは、測定方法のために、KICと等しい。
【0139】
ここに用いられている「徐冷点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×1013.18ポアズである温度を称する。ここに用いられている「歪み点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×1014.68ポアズである温度を称する。ガラス組成物の歪み点と徐冷点は、ASTM C336-71(2015)のファイバ伸長法またはASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度(BBV)法を使用して決定した。
【0140】
ここに用いられている「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズである温度を称する。ガラス組成物の軟化点は、ASTM C336-71(2015)のファイバ伸長法またはASTM C1351Mと類似の、温度の関数として107から109ポアズの無機ガラスの粘度を測定する平行板粘度(PPV)法を使用して決定した。
【0141】
0~300℃の温度範囲に亘る線熱膨張係数(CTE)は、ppm/℃で表され、ASTM E228-11にしたがって押し棒式膨脹計を使用して決定した。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
厚さ0.5mmの基板を表Iの組成物から形成し、続いて、イオン交換して例示の物品を形成した。イオン交換は、基板を溶融塩浴中に浸漬する工程を含んだ。この塩浴は、100質量%のNaNO3を含み、420℃の温度であった。表IIにおいて、イオン交換の長さ、イオン交換処理で生じた質量増加、およびイオン交換済み物品の最大中央張力(CT)が報告されている。最大中央張力(CT)は、ここに記載された方法にしたがって測定した。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
基板を表Iの組成物31と比較組成物C1から形成した。分析した比較組成物C1は、63.31モル%のSiO2、15.2モル%のAl2O3、6.74モル%のB2O3、4.30モル%のNa2O、6.82モル%のLi2O、1.00モル%のMgO、1.55モル%のCaO、1.02モル%のSrO、および0.05モル%のSnO2を含んでいた。表IIIの物品DD、DE、およびDFは、比較組成物D1から形成し、この理由のために比較例である。この基板に、第1の溶融塩浴中に浸漬し、第2の溶融塩浴中に浸漬する二段階イオン交換過程を施した。全ての溶融塩浴は420℃の温度であり、各浴の組成とイオン交換時間が表IIIに報告されている。基板の厚さ、589.3nmでの屈折率、および応力光学係数(SOC)も表IIIに報告されている。その物品の中央張力は、第1のイオン交換浴でイオン交換した後(CT1)と第2のイオン交換浴によるイオン交換処理の完了後(CT2)に測定した。それに加え、物品の圧縮応力とスパイク深さ(DOLsp)を、第2のイオン交換浴によるイオン交換処理の完了後に測定した。
【0184】
【0185】
表IIIの物品DBの応力プロファイルは、
図3に示されるように、RNFで測定した。物品DBは、厚さの約22%である、111μmの圧縮深さ(DOC)を有した。
【0186】
基板を表Iの組成物31と比較組成物C1から形成した。基板の全ては、0.5mmの同じ厚さを有していた。基板に、2.5時間から5時間に及ぶ時間に亘り、420℃の温度で、100質量%のNaNO
3の組成を有する溶融塩浴中のイオン交換を施した。このイオン交換処理で製造された物品のCTを測定した。そのCTは、
図4にイオン交換時間の関数としてプロットされている。組成物31から形成された基板(三角形)は、
図4に示されるように、比較組成物C1から形成された基板(円形)よりも高いCTを達成した。
【0187】
物品DBに、衝撃面が様々なグリットレベルを有する、表面衝撃試験を行った。破壊応力は、表面衝撃後に4点曲げ試験を使用して測定した。比較物品は、比較組成物C2から形成された0.5mm厚の基板を、1時間25分の時間に亘り、430℃の温度で、40質量%のNaNO
3と60質量%のKNO
3の組成を有する第1の溶融塩浴中でイオン交換し、続いて、25分の時間に亘り、380℃の温度で、1質量%のNaNO
3と99質量%のKNO
3の組成を有する第2の溶融塩浴中でイオン交換することによって、形成した。分析した比較組成物C2は、59.09モル%のSiO
2、17.94モル%のAl
2O
3、4.08モル%のB
2O
3、8.79モル%のNa
2O、8.00モル%のLi
2O、0.07モル%のK
2O、1.23モル%のMgO、0.01モル%のZnO、0.02モル%のCaO、0.66モル%のP
2O
5、および0.04モル%のSnO
2を含んでいた。比較組成物C2から形成された比較物品は、物品DBと比べた場合、より高いCT値と、より低いDOCを示した。比較組成物C2から形成された比較物品に、物品DBと同じ表面衝撃試験および4点曲げ試験を行った。表面衝撃試験および4点曲げ試験の結果が
図5に示されている。物品DBは、少なくとも一部にはより深いDOCのために、より深い傷深さで、改善された性能を示した。
【0188】
物品DBおよび比較組成物C2から形成された物品に、粗面上の増分平面落下試験も行った。試験物品を、携帯型電子機器を模したパックに取り付け、80グリットまたは180グリットのいずれかの粗さを有する表面に、高さを累進的に増加させながら、落下させた。各表面粗さで18個の試料を試験した。180グリットについて、物品DBおよび比較組成物C2から形成された物品の両方とも、最大の落下高さで多数の試料が耐えた。物品DBの試料は、C2試料よりも8%大きい平均破壊高さを有した。80グリットについて、物品DBの試料は、C2試料よりも39%大きい平均破壊高さを有した。物品DBの試料の改善された性能は、特に粗面について、C2試料と比べた場合、増加したDOCによるものであろう。落下試験の結果が、
図6に示されている。
【0189】
基板を表Iの組成物66から形成し、その後、イオン交換して、例示の物品を形成した。イオン交換は、基板を溶融塩浴中に浸漬する工程を含んだ。イオン交換済みの例示の物品の透過率を0.7mmの深さで測定した。透過率パーセントが、
図8に波長の関数として示されている。イオン交換済みの例示の物品は、380nmから2000nmの波長範囲に亘り90.5%以上の透過率を示した。このイオン交換済みの例示の物品の圧縮応力層の屈折率も、590nmで測定し、1.52であることが分かった。イオン交換済みの例示の物品の光弾性定数は、30.8nm/cm/MPaであると測定された。ビッカース硬度を、例示の基板(イオン交換前)とイオン交換済みの例示の物品(イオン交換後)について、200gの荷重で測定し、それぞれ、595kgf/mm
2と670kgf/mm
2の値が得られた。イオン交換済みの例示の物品に、所定の時間について、所定の温度での溶媒中の浸漬により、化学的耐久性を試験した。結果として生じた表面積当たりの質量損失を、表IVに示されるように測定した。
【0190】
【0191】
組成物66から形成されたイオン交換済みの例示の物品の誘電率および損失正接も、表Vに報告されるように、様々な周波数で測定した。
【0192】
【0193】
本明細書に記載された全ての組成の成分、関係、および比は、特に明記のない限り、モル%で与えられている。本明細書に開示された全ての範囲は、範囲が開示された前または後に明白に述べられていようとなかろうと、広く開示された範囲により包含される任意と全ての範囲および部分的範囲を含む。
【0194】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに開示された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという前提で、包含することが意図されている。
【0195】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0196】
実施形態1
ガラスにおいて、
60モル%以上から66モル%以下のSiO2、
14モル%以上から16モル%以下のAl2O3、
7モル%以上から9モル%以下のLi2O、
4モル%以上から6モル%以下のNa2O、
0.5モル%以上から3モル%以下のP2O5、
0.5モル%以上から6モル%以下のB2O3、および
0モル%超から1モル%以下のTiO2、
を含むガラス。
【0197】
実施形態2
0モル%超から0.5モル%以下のK2O、
を含む、実施形態1に記載のガラス。
【0198】
実施形態3
0.1モル%以上から0.5モル%以下のTiO2、
を含む、実施形態1または2に記載のガラス。
【0199】
実施形態4
0モル%以上から4モル%以下のMgO、
を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載のガラス。
【0200】
実施形態5
0.1モル%以上から1モル%以下のMgO、
を含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載のガラス。
【0201】
実施形態6
0モル%以上から3モル%以下のCaO、
を含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載のガラス。
【0202】
実施形態7
1モル%以上から2モル%以下のCaO、
を含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラス。
【0203】
実施形態8
0モル%以上から4モル%以下のSrO、
を含む、実施形態1から7のいずれか1つに記載のガラス。
【0204】
実施形態9
0.5モル%以上から2モル%以下のSrO、
を含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載のガラス。
【0205】
実施形態10
0モル%以上から1モル%以下のZnO、
を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラス。
【0206】
実施形態11
0モル%以上から0.1モル%以下のSnO2、
を含む、実施形態1から10のいずれか1つに記載のガラス。
【0207】
実施形態12
64モル%以上から65モル%以下のSiO2、
を含む、実施形態1から11のいずれか1つに記載のガラス。
【0208】
実施形態13
15モル%以上から16モル%以下のAl2O3、
を含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載のガラス。
【0209】
実施形態14
7モル%以上から8モル%以下のLi2O、
を含む、実施形態1から13のいずれか1つに記載のガラス。
【0210】
実施形態15
4モル%以上から5モル%以下のNa2O、
を含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載のガラス。
【0211】
実施形態16
0.5モル%以上から1.5モル%以下のP2O5、
を含む、実施形態1から15のいずれか1つに記載のガラス。
【0212】
実施形態17
3モル%以上から4モル%以下のB2O3、
を含む、実施形態1から16のいずれか1つに記載のガラス。
【0213】
実施形態18
前記ガラスがFe2O3を実質的に含まない、実施形態1から17のいずれか1つに記載のガラス。
【0214】
実施形態19
前記ガラスがZrO2を実質的に含まない、実施形態1から18のいずれか1つに記載のガラス。
【0215】
実施形態20
前記ガラスが、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、実施形態1から19のいずれか1つに記載のガラス。
【0216】
実施形態21
Li2O/Na2Oのモル比が1.2以上から2.0以下である、実施形態1から20のいずれか1つに記載のガラス。
【0217】
実施形態22
Li2O/Na2Oのモル比が1.6以上から2.0以下である、実施形態1から21のいずれか1つに記載のガラス。
【0218】
実施形態23
前記ガラスが、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度を有する、実施形態1から22のいずれか1つに記載のガラス。
【0219】
実施形態24
前記ガラスが、0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する、実施形態1から23のいずれか1つに記載のガラス。
【0220】
実施形態25
ガラスは、
SiO2、
Al2O3、
Li2O、
Na2O、
P2O5、および
B2O3、
を含み、
Li2O/Na2Oのモル比が1.2以上から2.0以下であり、
前記ガラスは、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度を有し、
前記ガラスは、0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する、ガラス。
【0221】
実施形態26
TiO2をさらに含む、実施形態25に記載のガラス。
【0222】
実施形態27
K2Oをさらに含む、実施形態25または26に記載のガラス。
【0223】
実施形態28
CaOをさらに含む、実施形態25から27のいずれか1つに記載のガラス。
【0224】
実施形態29
MgOをさらに含む、実施形態25から28のいずれか1つに記載のガラス。
【0225】
実施形態30
SrOをさらに含む、実施形態25から29のいずれか1つに記載のガラス。
【0226】
実施形態31
SnO2をさらに含む、実施形態25から30のいずれか1つに記載のガラス。
【0227】
実施形態32
前記ガラスがFe2O3を実質的に含まない、実施形態25から31のいずれか1つに記載のガラス。
【0228】
実施形態33
前記ガラスがZrO2を実質的に含まない、実施形態25から32のいずれか1つに記載のガラス。
【0229】
実施形態34
前記ガラスが、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、実施形態25から33のいずれか1つに記載のガラス。
【0230】
実施形態35
方法において、
ガラス系基板を溶融塩浴中でイオン交換して、ガラス系物品を形成する工程、
を含み、
前記ガラス系物品は、該ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含み、該ガラス系物品は中央張力領域を含み、前記ガラス系基板は、実施形態1から34のいずれか1つに記載のガラスから作られている、方法。
【0231】
実施形態36
前記溶融塩浴がNaNO3を含む、実施形態35に記載の方法。
【0232】
実施形態37
前記溶融塩浴がKNO3を含む、実施形態35または36に記載の方法。
【0233】
実施形態38
前記溶融塩浴が、380℃以上から470℃以下の温度である、実施形態35から37のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
実施形態39
前記イオン交換が、10分以上から24時間以下の期間に及ぶ、実施形態35から38のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
実施形態40
前記ガラス系物品を第2の溶融塩浴中でイオン交換する工程をさらに含む、実施形態35から39のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
実施形態41
前記第2の溶融塩浴がKNO3を含む、実施形態40に記載の方法。
【0237】
実施形態42
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
中央張力領域、および
60モル%以上から66モル%以下のSiO2、
14モル%以上から16モル%以下のAl2O3、
7モル%以上から9モル%以下のLi2O、
4モル%以上から6モル%以下のNa2O、
0.5モル%以上から3モル%以下のP2O5、
0.5モル%以上から6モル%以下のB2O3、および
0モル%超から1モル%以下のTiO2、
を含む前記ガラス系物品の中心での組成、
を有するガラス系物品。
【0238】
実施形態43
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
中央張力領域、および
SiO2、
Al2O3、
Li2O、
Na2O、
P2O5、および
B2O3、
を含む前記ガラス系物品の中心での組成、
を有し、
Li2O/Na2Oのモル比は1.2以上から2.0以下であり、前記ガラス系物品の中心での組成と同じ組成および微細構造を有するガラスが、50kP以上から75kPの範囲の液相粘度、および0.75MPa・m0.5以上の破壊靱性KICを有する、ガラス系物品。
【0239】
実施形態44
前記圧縮応力層が、500MPa以上から1500MPa以下の圧縮応力を有する、実施形態42または43に記載のガラス系物品。
【0240】
実施形態45
前記中央張力領域が、60MPa以上から160MPa以下の最大中央張力を有する、実施形態42から44のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0241】
実施形態46
前記圧縮深さが0.20t以上から0.25t以下であり、tは前記ガラス系物品の厚さである、実施形態42から45のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0242】
実施形態47
前記圧縮応力層が、前記ガラス系物品の表面から圧縮応力スパイク深さまで延在する圧縮応力スパイクを有し、該圧縮応力スパイク深さが3μm以上から10μm以下である、実施形態42から46のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0243】
実施形態48
前記ガラス系物品が、0.2mm以上から2mm以下の厚さtを有する、実施形態42から47のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0244】
実施形態49
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%超から0.5モル%以下のK2O、
を含む、実施形態42から48のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0245】
実施形態50
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0.1モル%以上から0.5モル%以下のTiO2、
を含む、実施形態42から49のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0246】
実施形態51
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%以上から4モル%以下のMgO、
を含む、実施形態42から50のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0247】
実施形態52
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0.1モル%以上から1モル%以下のMgO、
を含む、実施形態42から51のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0248】
実施形態53
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%以上から3モル%以下のCaO、
を含む、実施形態42から52のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0249】
実施形態54
前記ガラス系物品の中心での組成が、
1モル%以上から2モル%以下のCaO、
を含む、実施形態42から53のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0250】
実施形態55
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%以上から4モル%以下のSrO、
を含む、実施形態42から54のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0251】
実施形態56
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0.5モル%以上から2モル%以下のSrO、
を含む、実施形態42から55のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0252】
実施形態57
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%以上から1モル%以下のZnO、
を含む、実施形態42から56のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0253】
実施形態58
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0モル%以上から0.1モル%以下のSnO2、
を含む、実施形態42から57のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0254】
実施形態59
前記ガラス系物品の中心での組成が、
64モル%以上から65モル%以下のSiO2、
を含む、実施形態42から58のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0255】
実施形態60
前記ガラス系物品の中心での組成が、
15モル%以上から16モル%以下のAl2O3、
を含む、実施形態42から59のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0256】
実施形態61
前記ガラス系物品の中心での組成が、
7モル%以上から8モル%以下のLi2O、
を含む、実施形態42から60のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0257】
実施形態62
前記ガラス系物品の中心での組成が、
4モル%以上から5モル%以下のNa2O、
を含む、実施形態42から61のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0258】
実施形態63
前記ガラス系物品の中心での組成が、
0.5モル%以上から1.5モル%以下のP2O5、
を含む、実施形態42から62のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0259】
実施形態64
前記ガラス系物品の中心での組成が、
3モル%以上から4モル%以下のB2O3、
を含む、実施形態42から63のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0260】
実施形態65
前記ガラス系物品の中心での組成が、Fe2O3を実質的に含まない、実施形態42から64のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0261】
実施形態66
前記ガラス系物品の中心での組成が、ZrO2を実質的に含まない、実施形態42から65のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0262】
実施形態67
前記ガラス系物品の中心での組成が、Ta2O5、HfO2、La2O3、およびY2O3を実質的に含まない、実施形態42から66のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0263】
実施形態68
前記ガラス系物品の中心での組成が、1.6以上から2.0以下のLi2O/Na2Oのモル比を有する、実施形態42から67のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0264】
実施形態69
消費者向け電気製品において、
前面、背面、および側面を有する筐体、
少なくとも部分的に前記筐体内に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイを覆って配置されたカバー基板、
を備え、
前記筐体および前記カバー基板の少なくとも一方の少なくとも一部は、実施形態42から68のいずれか1つに記載のガラス系物品から作られている、消費者向け電気製品。
【符号の説明】
【0265】
100 ガラス系物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の区画
122 第2の区画
130 中央領域
200 家庭用電子機器
202 筐体
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー
【国際調査報告】