(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】インビボ近接性に基づく標識化システムおよびその応用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/542 20060101AFI20240927BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 41/00 20200101ALN20240927BHJP
【FI】
G01N33/542 Z
A61K49/00
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520566
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022045654
(87)【国際公開番号】W WO2023059621
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ジェリ、 ジェイコブ、 ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブクシ、 ベニト、 エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、 デビッド、 ダブリュー.、 シー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084NA20
4C084ZC781
4C084ZC782
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA26
4C085KA40
4C085KB56
4C085KB79
4C085KB82
4C085KB92
(57)【要約】
一態様では、細胞膜上のインビボタンパク質・タンパク質相互作用を含む様々な特徴を選択的に同定するために操作可能な微小環境マッピングプラットフォームを提供するための組成物および方法が記載される。いくつかの実施形態において、組成物は、テトラピロール光触媒およびタンパク質標識剤を含み、テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する。反応性中間体は、反応性中間体の拡散半径内にあるタンパク質または他の生体分子と反応または架橋する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接性に基づく標識化のための組成物であって、
テトラピロール光触媒;および
タンパク質標識剤
を含み、前記テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介して前記タンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する、
組成物。
【請求項2】
前記テトラピロール光触媒が、600 nmより大きい波長を有する電磁放射線を吸収する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記テトラピロール光触媒が、600 nm~1100 nmの範囲内の波長を有する電磁放射線を吸収する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記反応性中間体がタンパク質と架橋する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記反応性中間体はタンパク質のC-H結合に挿入する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記タンパク質標識剤がアジド、ジアジリン、フェノール、チアトリアゾール、スルフィリミン、スルホキシミン、イリド、ジアゾ、アニリン、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性中間体がアミニルラジカルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記テトラピロール光触媒が遷移金属中心を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
テトラピロール光触媒が半金属中心を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記反応性中間体が、水環境または水性環境におけるクエンチの前に、10 nm未満の拡散半径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記反応性中間体が、水環境または水性環境におけるクエンチの前に、1~5 nmの拡散半径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記エネルギー移動が単一電子移動である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記エネルギー移動が、前記テトラピロール光触媒の基底状態からのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記基底状態が、前記テトラピロール光触媒の還元励起状態から形成される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
生体分子結合剤が、前記テトラピロール光触媒にカップリングされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記生体分子結合剤が、タンパク質、多糖、核酸、または脂質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記テトラピロール光触媒が、水または水溶液に可溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
生体分子結合剤にカップリングされたテトラピロール光触媒
を含む、複合体。
【請求項19】
前記生体分子結合剤がタンパク質、多糖、核酸、または脂質を含む、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記生体分子結合剤が、細胞表面受容体に特異的なリガンドを含む、請求項18に記載の複合体。
【請求項21】
前記テトラピロール光触媒が、650 nm~1100 nmの範囲内の波長を有する電磁放射線を吸収する、請求項18に記載の複合体。
【請求項22】
前記テトラピロール光触媒が、遷移金属、半金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される金属中心を含む、請求項18に記載の複合体。
【請求項23】
前記金属中心がスズである、請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
近接性に基づく標識化のためのシステムであって、
生体分子結合剤にカップリングされたテトラピロール光触媒を含む複合体;および
タンパク質標識剤
を含み、前記テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介して前記タンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する、
システム。
【請求項25】
前記テトラピロール光触媒が、600 nm~1100 nmの範囲内の波長を有する電磁放射線を吸収する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記反応性中間体がタンパク質と架橋する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記生体分子結合剤が、細胞表面受容体に特異的なリガンドを含み、前記反応性中間体が前記表面細胞受容体と架橋する、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記反応性中間体はタンパク質のC-H結合に挿入する、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記テトラピロール光触媒のための還元剤をさらに含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記エネルギー移動が単一電子移動である、請求項24に記載のシステム。
【請求項31】
前記エネルギー移動が前記光触媒の基底状態からのものである、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
前記生体分子結合剤がタンパク質、多糖、核酸、または脂質を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項33】
前記タンパク質標識剤がアジド、ジアジリン、フェノール、チアトリアゾール、スルフィリミン、スルホキシミン、イリド、ジアゾ、アニリン、またはそれらの混合物を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項34】
前記テトラピロール光触媒が、遷移金属、半金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される金属中心を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項35】
前記金属中心が、スズおよびケイ素からなる群から選択される、請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
近接性ベース標識化の方法であって、
生体分子結合剤にカップリングされたテトラピロール光触媒を含む複合体を提供すること;
前記生体分子結合剤を用いて標的領域に前記複合体を配置すること;
前記テトラピロール光触媒を用いてタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化すること;および
前記反応性中間体を前記標的領域中の1つ以上のタンパク質にカップリングさせること
を含む、方法。
【請求項37】
前記標的領域がインビボである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記標的領域が細胞膜を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質標識剤が、前記テトラピロール光触媒の基底状態からのエネルギー移動によって活性化される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記テトラピロール光触媒を励起状態に置くために、前記テトラピロール光触媒に600 nm~1100 nmの範囲内の波長を有する電磁放射線を照射する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記テトラピロール光触媒の励起状態が還元剤によってクエンチされ、前記テトラピロール光触媒が基底状態に戻される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記エネルギー移動が単一電子移動である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上のタンパク質が細胞膜に付随している、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上のタンパク質が、細胞膜と接触している隣接細胞に付随している、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
インタラクトームマッピングのために、前記反応性中間体にカップリングされた前記1つ以上のタンパク質を同定することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2021年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/252,244号について、特許協力条約第8条に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、近接性に基づく標識システムに関し、特に、インビボ生物学的環境の高分解能標識を可能にする組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質近接性標識化(ラベリング)は、タンパク質相互作用ネットワークをプロファイリングするための強力なアプローチとして登場してきた。近接性標識を介して、付随するまたはバイスタンダーであるタンパク質を標識する能力は、関心のあるタンパク質または生体分子種の細胞環境および生物学的役割をさらに理解する上で重要な意義を有することができる。現在の近接性標識法はすべて、拡散または物理的接触を介して、隣接タンパク質を少数の選択されたアミノ酸残基上で標識する反応性中間体を酵素に基づいて生成することを伴う。この技術は革新的な影響を有しはしたが、ペルオキシダーゼ活性化を介したフェノキシラジカル(t1/2>100μs)やビオチンリガーゼを介したビオチンAMP(t1/2>60 s)のようなこれら反応性中間体の固有の安定性は、起点から遠く離れた拡散を促進する可能性がある。その結果、これら酵素生成による反応性中間体は、緊密な微小環境内でのプロファイリングに課題をもたらす。さらに、大きな酵素サイズ、標識のための特定のアミノ酸への依存、およびこれらの標識システムを時間的に制御できないことは、限られた空間領域内でのプロファイリングにさらなる課題をもたらす。これらの制限を考慮すると、近接性に基づく標識化のための新しいアプローチが必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、細胞膜上のインビボタンパク質-タンパク質相互作用を含む様々な特徴を選択的に同定するために操作可能な微小環境マッピングプラットフォームを提供するための組成物および方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、組成物は、テトラピロール光触媒およびタンパク質標識剤を含み、テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する。反応性中間体は、反応性中間体の拡散半径内でタンパク質またはその他の生体分子と反応し、または架橋する。タンパク質または他の生体分子が拡散半径内にない場合には、反応性中間体は、周囲の水環境または水性環境によってクエンチされる。本明細書にさらに記載されるように、反応性中間体の拡散半径は、特定の微小環境マッピングの考慮事項に合わせて調整することができ、ナノメートルスケールに制限することができる。いくつかの実施形態では、例えば、拡散半径は、100 nm未満、50 nm未満、20 nm未満、10 nm未満、または5 nm未満であり得、例えば、1~5 nmであり得る。さらに、いくつかの実施形態において、タンパク質標識剤は、例えば分析を補助するためにビオチンまたは発光マーカーなどの、マーカーで官能化することができる。
【0005】
本明細書に記載されるように、テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へ活性化するために励起状態に置くことができる金属中心を含む。いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒の励起状態は、還元剤によってクエンチすることができ、それによって金属中心を基底状態に戻すことができる。その後、テトラピロール光触媒の基底状態から反応性中間体へのエネルギー移動が起こることができる。いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒は、励起状態を達成するために600 nmまたは650 nmより長い波長を有する電磁放射線を吸収する。テトラピロール光触媒は、例えば、励起状態を達成するために650~1100 nmの範囲の波長を有する放射線を吸収し得る。より長い波長の放射線の使用は、放射線が組織を透過することを可能にし、それによって、テトラピロール光触媒が様々なインビボ環境において放射線と相互作用することを可能にする。触媒からタンパク質標識剤へのエネルギー移動は、デクスター(Dexter)エネルギー移動または単一電子移動を含む、本明細書でさらに説明される様々なメカニズムを介して起こり得る。エネルギー移動は、テトラピロール光触媒の励起状態または基底状態から起こり得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒は、金属中心を含む。金属中心は、一部の実施形態では、遷移金属またはケイ素を含むことができる。
【0007】
別の態様において、近接性に基づく標識化のための組成物は、触媒と、チアトリアゾール(thiatriazoles)、スルホキシミン(sulfoximines)、スルフィリミン(sulfilimines)、アニリン(anilines)、アシルアジド(acyl azides)、イリド(ylides)およびジゾ(dizo)化合物からなる群から選択されるタンパク質標識剤とを含む。触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する。反応性中間体は、本明細書に記載されるように、反応性中間体の拡散半径内のタンパク質または他の生体分子と反応または架橋する。触媒は、タンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化するように作動可能な任意の触媒を含むことができる。いくつかの実施形態において、触媒は、本明細書に詳述されるテトラピロール光触媒である。
【0008】
別の態様において、近接性に基づく標識化のための複合体が本明細書に記載される。複合体は、生体分子結合剤にカップリングされた触媒を含む。触媒は、上述のような反応性中間体の生成のためのタンパク質標識剤へのエネルギー移動のための電子構造を有することができる。いくつかの実施形態において、触媒は、本明細書に記載されるテトラピロール光触媒を含む。生体分子結合剤は、一部の実施形態では、マッピングのために触媒を特定の環境に選択的に配置または標的指向化するために使用することができる。生体分子結合剤は、例えば、近接性標識化および関連する分析のために、所望の細胞環境に触媒を配置する。本明細書に記載されるように、細胞環境は、インビボであり得る。いくつかの実施形態で、生体分子結合剤は、タンパク質、多糖、核酸または脂質を含むことができる。場合によっては、生体分子結合剤は、タンパク質、多糖、核酸または脂質を含む多価ディスプレイ系を含むことができる。さらに、生体分子結合剤は、標的タンパク質に対する特異的結合親和性を有する小分子リガンドであってもよい。
【0009】
さらなる態様において、近接性に基づく標識化の方法が本明細書に記載される。近接性に基づく標識化の方法は、触媒を提供することと、その触媒によってタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化することとを含む。反応性中間体は、タンパク質とカップリングあるいは結合する。いくつかの実施形態では、触媒を生体分子結合剤にカップリングして、タンパク質標識剤と共にタンパク質マッピングのための特定の環境に触媒を選択的に配置または標的指向化する。触媒、複合体、およびタンパク質標識剤は、テトラピロール光触媒を含め上記ならびにこれに続く詳細な説明および添付された付録に記載された組成および/または特性を有することができる。
【0010】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明においてさらに記述される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図2】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図3】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図4】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図5】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図6】
図1~
図6は、いくつかの実施形態による、金属中心 (M) を含む様々なテトラピロール環および関連するテトラピロール光触媒を示す。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態による、アジド、フェノール、アニリン、およびチアトリアゾールを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態による、アシルアジドおよびジアジリニンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態による、スルホキシミンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【
図10】
図10は、いくつかの実施形態による、スルフィリミンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【
図11】
図11は、いくつかの実施形態による、イリドを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【
図12】
図12は、いくつかの実施形態による、タンパク質標識剤のための様々なマーカーまたはアフィニティータグを示す。
【
図13】
図13は、いくつかの実施形態による、インビボ近接性に基づく標識化のための本明細書における組成物、システムおよび方法で使用するための様々な遷移金属錯体を図示する。
【
図14】
図14は、いくつかの実施形態による、インビボ近接性に基づく標識化のための本明細書における組成物、システムおよび方法で使用するための様々な有機触媒を図示する。
【
図15】
図15は、いくつかの実施形態による、スズ (Sn) テトラピロール光触媒とタンパク質標識剤との間のエネルギー移動を図示する。
【
図16】
図16は、いくつかの実施形態による、スズ (Sn) テトラピロール光触媒の合成経路を図示する。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、いくつかの実施形態による、スズ (Sn) テトラピロール光触媒を含む複合体の合成経路を示す。
【
図18】
図18は、いくつかの実施形態による、マーカーで官能化されたタンパク質標識剤の合成経路を示す。
【
図19】
図19は、いくつかの実施形態による、本明細書に記載の赤色光吸収テトラピロール光触媒によるアジド安息香酸の変換を示す。
【
図20】
図20は、いくつかの実施形態による、種々の還元剤の存在下および非存在下における本明細書に記載の赤色光吸収テトラピロール光触媒によるアジド安息香酸の変換収率を示す。
【
図21】
図21は、フェニルアジド(Phenyl Azide)またはNADHの存在下におけるSn(OH)-クロリン(Chlorin) e6光触媒の時間分解吸収(time-resolved absorption)分光法である。
【
図22】
図22Aは、いくつかの実施形態による、本明細書に記載のテトラピロール光触媒を用いたタンパク質標識化を示す。
図22Bは、いくつかの実施形態による、本明細書に記載のテトラピロール光触媒標識化システムを介したタンパク質ビオチニル化についてのウェスタンブロット結果を提供する。
図22Cは、タンパク質ビオチニル化に対する光制御を詳述する。標識反応を調製し、2分ごとにアリコートを採取した。4、10mおよび16分の時点で試料を赤色光で2分間照射した。
図22Dは、いくつかの実施形態による、青色光および赤色光で開始される光触媒標識化システムによる、組織を通した近接性標識化を詳述する。
【
図23】
図23Aは、いくつかの実施形態による、A549生細胞上の微小環境を標識するための一次抗EGFR抗体および二次抗体を含む赤色光標識化コンジュゲートを示す。
図23Bは、抗EGFR一次抗体有り無しでの光標識細胞のSTED顕微鏡像を提供する。挿入図は、個々のEGFRタンパク質微小環境に重なった放射状の標識クラスターを示す関心領域の拡大を示す。図示されたスケールバーは、一次抗体無しについては2μm、抗EGFRについては3μm、および拡大された挿入図については1μmである。
図23Cは、いくつかの実施形態による、富化されたタンパク質の定量的プロテオミクスボルケーノプロットを詳述する。
【
図24】
図24Aは、いくつかの実施形態による、本明細書に記載の赤色光開始光触媒標識化システムを用いた、全血中の赤血球表面のビオチン化のためのスキームを示す。
図24Bは、アイソタイプ(isotype)TER119指向による光標識化からの赤血球膜溶解物のウェスタンブロット分析を提供する。
図24Cは、いくつかの実施形態による、アイソタイプまたはTER119光標識細胞のフローサイトメトリーを提供する。
図24Dは、いくつかの実施形態による、本明細書に記載の赤色光開始光触媒標識システムを用いた全血標識化後の、同定されたタンパク質の定量的プロテオミクスボルケーノプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載される実施形態は、以下の詳細な説明、実施例、および付録、ならびにそれらの先行および後続の説明を参照することによって、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載される要素、装置、および方法は、詳細な説明および実施例に示される特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本発明の原理を単に例示するものであることを認識すべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者には多数の修正および適合が容易に明らかであろう。
【0013】
[定義]
本明細書において単独または組み合わせで使用される「アルキル」という用語は、任意で1つ以上の置換基で置換される、直鎖または分岐の飽和炭化水素基を指す。例えば、アルキル基はC1-C30またはC1-C18であり得る。
【0014】
本明細書において単独または組み合わせで使用される用語「アリール」は、任意で1つ以上の環置換基で置換される、芳香族単環または多環の環系を指す。
【0015】
本明細書において単独または組み合わせで使用される用語「ヘテロアリール」は、芳香族単環または多環の環系であって環原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素(例えば窒素、ホウ素、酸素および/または硫黄など)であるものを指す。
【0016】
本明細書において単独または組み合わせで使用される用語「複素環」は、単環または多環の環系であって、環系の1つ以上の原子が炭素以外の元素(例えばホウ素、窒素、酸素、および/または硫黄もしくはリンなど)であるものを指し、該環系は任意で1つ以上の環置換基で置換される。複素環系は、芳香環および/または非芳香環を含み得る。
【0017】
本明細書において単独または組み合わせで使用される用語「アルコキシ」は、RO-という部分を指し、ここでRは上記で定義されたアルキル、アルケニル、またはアリールである。
【0018】
本明細書において単独または組み合わせで使用される用語「ハロ」は、周期表のVIIA族の元素(ハロゲン)を指す。化学環境に応じて、ハロは中性状態またはアニオン状態にあり得る。
【0019】
本明細書において特に定義されていない用語には、当該技術分野における通常の意味が与えられる。
【0020】
I.近接性ベースの標識化組成物
一態様において、細胞膜上のインビボタンパク質-タンパク質相互作用を含め、様々な特徴(features)を選択的に同定するために操作可能な、微小環境マッピングプラットフォームを提供するための組成物および方法が本明細書に記述される。いくつかの実施形態において、組成物は、テトラピロール光触媒、およびタンパク質標識剤を含み、テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有する。本明細書に記載されるように、テトラピロール触媒は、タンパク質標識剤へのエネルギー移動に関与する金属中心を含む。いくつかの実施形態において、例えば、触媒は、タンパク質標識剤とのデクスターエネルギー移動に関与する。いくつかの実施形態では、エネルギー移動は、単一電子移動を介して進行し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、タンパク質標識剤へのエネルギー移動は、テトラピロール光触媒電子構造の励起状態から生じることができる。触媒の励起状態は、例えば、一重項励起状態または三重項励起状態であり得る。テトラピロール光触媒の励起状態は、光触媒によるエネルギー吸収を含む1つまたは複数のメカニズムによって生成され得る。いくつかの実施形態において、励起状態は、1つ以上の光子の吸収によって誘導される。他の実施形態において、触媒は、周囲環境における1つ以上の化学種との相互作用によって励起状態に置かれ得る。あるいは、電子移動を含む、タンパク質標識剤へのエネルギー移動は、触媒電子構造の基底状態から生じ得る。テトラピロール光触媒の励起状態は、還元剤によってクエンチされ、テトラピロール光触媒を基底状態に戻すことができる。次いで、エネルギー移動(単一電子移動を含む)が、テトラピロール光触媒の基底状態からタンパク質標識剤へと進行し、反応性中間体の形成をもたらすことができる。
【0022】
いくつかの態様において、テトラピロール光触媒は、励起状態を達成するために600 nmより長い波長を有する電磁放射線を吸収する。例えば、テトラピロール光触媒は、励起状態を達成するために600 nm~1100 nmの範囲の波長を有する放射線を吸収し得る。より長い波長の放射線の使用は、放射線が組織を透過することを可能にし、それによって、テトラピロール光触媒が様々なインビボ環境において放射線と相互作用することを可能にする。本明細書に記載されるように、テトラピロール光触媒は金属中心を含む。一部の実施形態では、金属中心は遷移金属またはケイ素であり得る。
図1~6は、本明細書に記載される一部の実施形態による、金属中心を含む様々なテトラピロール環および関連する光触媒を示す。テトラピロール光触媒は、タンパク質標識剤へのエネルギー移動を行うことと整合する任意の金属中心を含むことができる。一部の実施形態では、金属中心は、遷移金属、アルカリ土類金属、または半金属(メタロイド)である。適切な遷移金属は、貴金属または第4~10族遷移金属を含み得る。一部の実施形態では、テトラピロール光触媒の金属中心は、マグネシウム、亜鉛、スズ、アンチモン、ケイ素、パラジウム、白金、オスミウム、イリジウム、金、鉛、アルミニウム、リン、およびルテニウムからなる群から選択される。
【0023】
一部の実施形態では、テトラピロール光触媒は、様々な媒体におけるテトラピロール光触媒の溶解度を改変するための1つ以上の官能基で修飾され得る。テトラピロール光触媒は、例えば、水または水性の細胞環境における溶解度を高めるために、ピロールまたはピロール様環上に1つ以上の極性のまたはイオン化可能な官能基を有することができる。一部の実施形態では、テトラピロール光触媒は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、および/またはアミン官能基を有する。あるいは、テトラピロール光触媒は、一つ以上の疎水性構成成分を示すことができる。
【0024】
図15は、いくつかの実施形態による、スズ (Sn) テトラピロール光触媒とタンパク質標識剤との間のエネルギー移動を示す。
図15に示すように、テトラピロールスズ光触媒 (3) は、660 nmの電磁放射の吸収を介して励起状態 (4) に置かれる。還元剤(ここではNADH)は、テトラピロールスズ光触媒の励起状態をクエンチし、触媒を基底状態に戻す。還元されたテトラピロールスズ光触媒 (5) は、タンパク質標識剤(ここではアリールアジド (6))とともに単一電子移動(SET:single electron transfer)を受け、反応性中間体としてアミニルラジカル (7) を形成する。一電子移動は、テトラピロールスズ光触媒を再生する。本明細書に記述される技術的課題に合致する任意の還元剤をテトラピロール光触媒と組み合わせて使用して、光触媒基底状態からのエネルギー移動を促進することができる。
図15に示すように、NADHは適切な還元剤である。いくつかの実施形態において、さらなる還元剤としては、グルタチオンおよびアスコルベートが挙げられる。還元剤の具体的なアイデンティティは、テトラピロール光触媒の具体的なアイデンティティによって決定することができる。
【0025】
電子移動を含む、タンパク質標識剤へのエネルギー移動は、タンパク質標識剤の反応性中間体を形成する。反応性中間体は、当該反応性中間体の拡散半径内でタンパク質または他の生体分子と反応または架橋する。タンパク質または他の生体分子が拡散半径内にない場合、反応性中間体は、周囲環境によってクエンチされ、これは水環境または水性の環境であり得る。反応性中間体の拡散半径は、特定の微小環境マッピング(近接性に基づく標識化)の考慮事項に合わせて調整することができ、ナノメートルスケールに制限することができる。いくつかの実施形態において、例えば、反応性中間体の拡散半径は、周囲環境におけるクエンチの前に、100 nm未満、50 nm未満、10 nm未満、5 nm未満、4 nm未満、3 nm未満、または2 nm未満であり得る。いくつかの実施形態において、拡散半径は、0.5 nm~10 nmであり得る。したがって、反応性中間体は、拡散半径内のタンパク質もしくは他の生体分子と反応もしくは架橋するか、あるいはタンパク質または生体分子が存在しない場合は周囲環境によってクエンチされる。このようにして、触媒とタンパク質標識剤との間の協調的な努力を通じて、局所環境の高分解能をマッピングすることができる。さらに、反応性中間体は、いくつかの実施形態において、クエンチ前に5 ns未満、4 ns未満、または2 ns未満のt1/2を示すことができる。反応性中間体は、例えば、1~5 ns未満のt1/2を示すことができる。さらなる実施形態において、拡散半径は、反応性中間体の半減期を延長することによって、5~500 nmの間に延長することができる。例えば、いくつかの実施形態において、反応性中間体は、1~100μsまたはそれ以上の半減期を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒を生体分子結合剤にカップリングさせて、複合体を提供することができる。生体分子結合剤は、いくつかの実施形態において、マッピングのために触媒を特定の環境に選択的に配置または標的指向化するために使用することができる。生体分子結合剤は、例えば、近接性標識化および関連する分析のために、所望の細胞環境に触媒を配置する。生体分子結合剤は、いくつかの実施形態において、タンパク質、多糖、核酸または脂質を含み得る。いくつかの例において、生体分子結合剤は、タンパク質、多糖、核酸または脂質を含む多価ディスプレイ系を含み得る。さらに、生体分子結合剤は、標的タンパク質に対して特異的な結合親和性を有する小分子リガンドとすることもできる。
【0027】
テトラピロール光触媒からのエネルギー移動の際に反応性中間体を形成するタンパク質標識剤は、いくつかの実施形態において、アジド、ジアジリン、フェノール、チアトリアゾール、スルフィリミン、スルホキシミン、イリド、ジアゾ、アニリン、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、タンパク質標識剤は、例えばビオチンなどの、マーカーで官能化され得る。ある実施形態において、マーカーは、デスチオビオチンである。マーカーは、タンパク質標識剤によって標識されたタンパク質の同定を補助することができる。マーカーは、例えば、ウェスタンブロットおよび/または他の分析技術を介したアッセイ結果において有用となり得る。マーカーは、ビオチンおよびデスチオビオチンに加えて、アルキン、アジド、FLAGタグ、フルオロフォア、およびクロロアルカン官能基を含み得る。
図12は、いくつかの実施形態による様々なマーカーまたはアフィニティータグを示す。
【0028】
図7は、いくつかの実施形態による、アジド、フェノール、アニリン、およびチアトリアゾールを含む様々なタンパク質標識剤を示す。アリールアジドを含む、アジドタンパク質結合剤は、テトラピロール光触媒からのエネルギー移動の際にニトレンまたはアミニルラジカルの反応性中間体を形成することができる。
図8は、いくつかの実施形態による、アシルアジドおよびジアジリニンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
図9は、いくつかの実施形態による、スルホキシミンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
図10は、いくつかの実施形態による、スルフィリミンを含む様々なタンパク質結合剤を示す。
図11は、いくつかの実施形態による、イリドおよびジアゾ化合物を含む様々なタンパク質結合剤を示す。
【0029】
いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へ活性化するための一つ以上の異なる遷移金属触媒によって置換され得る。例えば、遷移金属触媒は、テルピリジン(terpy)などの一つ以上の三座配位子を含むことができる。
図13は、インビボ近接性に基づく標識化のための本明細書における組成物、システムおよび方法において使用される様々な遷移金属錯体を示す。さらに、いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒は、有機染料および/または他の小分子などの、一つ以上の有機触媒によって置換され得る。
図14は、インビボ近接性に基づく標識化のための本明細書における組成物、システムおよび方法において使用される様々な有機触媒を示す。
【0030】
上述のように、いくつかの実施形態において、テトラピロール光触媒、遷移金属触媒、および/または有機触媒は、一つ以上の基で官能化して、触媒の親水性または疎水性を高めることができる。いくつかの実施形態において、触媒は、水環境または水性環境に可溶化するために官能化される。あるいは、触媒は、触媒を細胞透過性にするように官能化される。
【0031】
別の態様において、近接性に基づく標識化のための組成物は、触媒と、チアトリアゾール、スルホキシミン、スルフィリミン、アニリン、アシルアジド、イリドおよびジゾ化合物からなる群から選択されるタンパク質標識剤とを含む。触媒は、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へ活性化する電子構造を有する。反応性中間体は、本明細書に記載されるように、反応性中間体の拡散半径内のタンパク質または他の生体分子と反応または架橋する。触媒は、タンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化するように操作可能な任意の触媒を含むことができる。いくつかの実施形態において、触媒は、本明細書に詳述される光触媒(テトラピロール光触媒を含む)である。
【0032】
II.複合体
別の態様において、近接性に基づく標識化のための複合体(コンジュゲート)が本明細書に記載される。複合体は、生体分子結合剤にカップリングされた触媒を含む。生体分子結合剤にカップリングされた触媒は、上記セクションIで詳述したテトラピロール光触媒、遷移金属触媒、および有機触媒を含め、本明細書に記載された任意の触媒を含むことができる。さらに、生体分子結合剤は、いくつかの実施形態において、タンパク質、多糖、核酸、または脂質を含み得る。場合によっては、生体分子結合剤は、タンパク質、多糖、核酸、または脂質を含む多価ディスプレイ系を含み得る。ある実施形態において、生体分子結合剤は、標的タンパク質に対する特異的結合親和性を有する小分子リガンドであり得る。生体分子結合剤を利用して、近接性標識化および関連する分析のための所望の細胞外環境に触媒を配置することができる。したがって、生体分子結合剤の具体的なアイデンティティは、近接性に基づく標識化プロセスにおける触媒の配置のための所望の標的部位の化学的および/または立体的要件に従って選択することができる。任意の生体分子標的化部位を選択することができ、標的部位は、本開示において限定されない。いくつかの実施形態において、標的部位は、細胞膜受容体との相互作用を含め、タンパク質-タンパク質相互作用を研究するためのタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、生体分子結合剤は抗体であり、例えば、所望の抗原に結合した一次抗体と相互作用する二次抗体である。他の実施形態において、生体分子結合剤は、上皮成長因子受容体 (EGFR) またはGタンパク質共役受容体などの、細胞膜のタンパク質受容体に対する特異性を有するリガンドである。
【0033】
生体分子結合剤は、触媒に結合させることができる。いくつかの実施形態において、触媒は、生体分子結合剤をカップリングするための反応性ハンドルまたは官能基を含む。いくつかの実施形態において、例えば、触媒は、BCN、DBCO、TCO、テトラジン、アルキン、およびアジドを含むがこれらに限定されない1つ以上のクリックケミストリー部分を含むことができる。
図4は、生体分子結合剤をカップリングするための反応性官能基を有する式 (I) の種々の遷移金属光触媒を示す。
【0034】
III.近接性に基づく標識化のためのシステム
別の態様において、近接性に基づく標識化のためのシステムが本明細書に記載される。システムは、例えば、生体分子結合剤にカップリングされた触媒を含むコンジュゲートと、タンパク質に結合するために触媒によって活性化されるタンパク質標識剤とを含む。コンジュゲートは、上記セクションIIに詳述された実施形態を含め、本明細書に記載された任意の触媒および生体分子結合剤、ならびに本明細書に詳述されたテトラピロール光触媒、遷移金属触媒、および有機触媒を含む関連物を含むことができる。触媒は、例えば、エネルギー移動を介してタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化する電子構造を有することができる。さらに、タンパク質標識剤は、上記セクションIに記載されたタンパク質標識剤を含む、本明細書に記載された任意の標識剤を含むことができる。コンジュゲートおよび関連するタンパク質標識剤の具体的なアイデンティティは、近接性に基づく標識化システムでマッピングされる生物学的環境の化学的性質および/または立体的要件のようないくつかの考慮事項に従って選択することができる。
【0035】
本明細書に記載される近接性に基づく標識化のためのシステムは、様々なアプリケーションで使用され得る。いくつかの実施形態において、システムは、標的の同定を可能にし、ここで、コンジュゲートおよび関連するタンパク質標識剤は、プロテオミクスにより生物学的文脈における1つ以上の分子の同定を可能にする。さらに、コンジュゲートおよびタンパク質標識剤を含むシステムは、インタラクトームマッピングを促進させる。コンジュゲートおよびタンパク質標識剤を標的指向化することは、プロテオミクスにより生物学的文脈における1つ以上の分子および隣接する相互作用体の検出および同定を可能にする。本明細書に記載されるシステムによるそのような分子の同定は、そのような分子および隣接する相互作用体の濃縮および/または精製を可能にし得る。さらに、コンジュゲートおよびタンパク質標識剤を含むシステムは、顕微鏡を介して生物学的文脈における1つ以上の分子の検出および同定をさらに可能にする。
【0036】
IV.近接性に基づく標識化の方法
別の態様において、近接性に基づく標識化の方法が本明細書に記載される。近接性に基づく標識化の方法は、生体分子結合剤にカップリングされた触媒を含むコンジュゲートを提供すること、触媒を用いてタンパク質標識剤を反応性中間体へと活性化すること、および反応性中間体をタンパク質にカップリングすることを含む。コンジュゲートは、テトラピロール光触媒を含む任意の触媒、および上記セクションIIに詳述した実施形態を含め本明細書に記載の生体分子結合剤を含むことができる。さらに、タンパク質標識剤は、上記セクションIに記載のタンパク質標識剤を含め本明細書に記載の標識剤のいずれかを含むことができる。テトラピロール光触媒からのエネルギー移動の際に反応性中間体を形成するタンパク質標識剤は、いくつかの実施形態において、アジド、ジアジリン、フェノール、チアトリアゾール、スルフィリミン、スルホキシミン、イリド、ジアゾ、アニリン、またはそれらの混合物を含むことができる。コンジュゲートおよび関連するタンパク質標識剤の具体的なアイデンティティは、近接性に基づく標識化システムでマッピングされる生物学的環境の化学的性質および/または立体的要件など、いくつかの考慮事項に従って選択され得る。近接性に基づく標識化のいくつかの実施形態では、触媒は、生体分子結合剤の非存在下で提供され得る。
【0037】
本明細書に記載される方法は、細胞膜の局所領域および/または局所細胞外環境を含め、様々なインビボ生物学的環境をマッピングするために利用され得る。本明細書に記載されるように、テトラピロール光触媒が600 nmを超える電磁放射線で活性化される能力は、皮膚のような組織外部よりずっと下のインビボ生物学的環境のマッピングを可能にする。いくつかの実施形態では、5 mmを超える組織深度または10 mmを超える組織深度において環境をマッピングすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、5 mm~50 cmの組織深度にてインビボマッピングが行われ得る。
【0038】
触媒および生体分子結合剤を含むコンジュゲートは、例えば関心対象の受容体など、細胞膜の特定の局所領域に標的指向化することができる。タンパク質標識剤の活性化は、標的局所領域におけるタンパク質(複数可)および/または他の分子を同定することができる。特に、活性化されたタンパク質標識剤は、標的細胞領域と接触している別の細胞に付随する分子を同定または標識することもできる。したがって、本明細書に記載されたシステムおよび方法を用いて細胞間相互作用および細胞間環境を解明しマッピングすることができる。前述の方法は、プロテオミクスにより生物学的文脈において、インタラクトームマッピング、ならびに1つ以上の分子および隣接する相互作用体の同定を可能にする。本明細書に記載された方法によるそのような分子の同定は、そのような分子および隣接する相互作用体の濃縮および/または精製を可能にし得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数の光触媒が、本明細書に記載された近接性に基づく標識化のシステムおよび方法で使用され得る。これらの光触媒は、異なる吸収プロファイルを示すことができ、それによって、提供される励起放射線の波長に依存して選択的な近接性ベースの標識化を可能にする。いくつかの実施形態では、特許協力条約出願番号PCT/US2020/036285に記載された光触媒および関連するタンパク質標識剤を、本明細書に記載された光触媒およびタンパク質標識剤と共に使用することができる。例えば、375~450 nmの波長を有する光を使用して、PCT/US2020/036285に記載された光触媒およびタンパク質標識剤を用いた近接性ベースの標識化を実行することができる。さらに、650~1100 nmの波長を有する光を使用して、上記セクションIおよびIIに記載されたテトラピロール光触媒およびコンジュゲートを用いて本明細書に記載されたいくつかの実施形態における近接性に基づく標識化を実行することができる。異なる光触媒は、異なる細胞環境を標的とする異なる生体分子結合剤を有することができる。光触媒間で異なるタンパク質標識剤を使用することもできる。この分析体制の下で、多数の局所的細胞環境をマッピングすることができ、それによって、これまで知られていなかった生体分子の相互作用および関係を解明することができる。
【0040】
これらおよび他の実施形態は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0041】
[実施例1―テトラピロール光触媒の合成]
スズ (Sn) 金属化クロリンe6光触媒を、
図16の反応スキームに従って合成した。クロリンe6トリメチルエステル(7.6 mg、0.12ミリモル)および塩化スズ二水和物(26.8 mg、0.12ミリモル)を、磁気撹拌棒を備えた8 mlバイアルに加え、2% NaOAc/氷酢酸溶液(0.03 M)に溶解した。次に、この溶液を60℃に加熱し、2時間撹拌した。次にこの混合物を室温に冷却し、10 mlの1N HClで希釈し、200 mlのDCMで3回抽出した。合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、暗青色固体として化合物S1を得た(3.6 mg、収率38.3%)。
【0042】
[実施例2―テトラピロール光触媒の合成]
クロリンe6-PEG3-NHBoc (S2) を、
図17Aの反応スキームに従って合成した。クロリンe6(100 mg、0.15ミリモル、Cayman Chemicals、カタログ番号21684)、EDC・HCl(20.8 mg、0.11ミリモル)、トリエチルアミン(42.5μl、0.31ミリモル)、およびDMAP(1.2 mg、0.012ミリモル)を、磁気撹拌棒を備えた40 mlバイアルに加え、次にDMF(0.2 M)に溶解した。10分後、t-Boc-Nアミド-PEG3-アミン(68.3 mg、0.23ミリモル、BroadPharm、カタログ番号BP-20583)を添加し、混合物を室温で12時間撹拌した。その後、炭酸カリウム(20mg、2当量)およびヨウ化メチル(67.8μl、1.09ミリモル)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応完了後、1 mlのDMSOを添加し、次いで、得られた溶液を、調製HPLCによって直接精製し(10-100% ACN/H
2O w/0.1%ギ酸)、暗緑色油として化合物S2を得た(21.2 mg、収率15.2%)。NHBoc-PEG3-アミンのエタン性(C34)カルボン酸への選択的縮合は、二次元NMR相関によって確認され、以前に観察された位置選択性と一致する。
【0043】
クロリンe6 Sn(OH) DBCO (S3) を、
図17Bの反応機序に従って合成した。S2(14.0 mg、0.015ミリモル)および塩化スズ二水和物(35.1 mg、0.15ミリモル)を、磁気撹拌棒を備えた8 mlバイアルに加え、2% NaOAc/氷酢酸溶液に溶解した(0.03M)。次に、この溶液を60℃に加熱し、2時間撹拌した後、50μlの濃HClを添加した。1時間後、反応物を室温まで冷却し、次いでDCM(3 mM)で希釈した。次に、バイアルにN
2を15分間注入し、0℃に冷却した後、DIPEA(500μl、29.0ミリモル)およびDBCO-NHS(25.0 mg、0.062ミリモル、BroadPharm)を添加した。反応物を不活性雰囲気下、暗所、室温で12時間撹拌した。次いで、反応物を減圧下で濃縮し、最少量のDMSO中に取り、調製HPLC(10-100% ACN/H
2O w/ 0.1%水酸化アンモニウム)で直接精製し、暗青色フィルムとしてテトラピロール光触媒を得た(6.8 mg、収率35.3%)。
【0044】
[実施例3―マーカーで官能化されたタンパク質標識剤]
ビオチン-PEG3-フェニルアジドを、
図18の反応スキームに従って合成した。4-アジド安息香酸(50.0 mg、0.30ミリモル)、PyBOP(224 mg、0.43ミリモル、1.1当量)、およびトリエチルアミン(83.7μl、0.61ミリモル、2当量)を8 mlのバイアルに加え、0.5 mlのDMFに溶解した。反応混合物を室温で20分間撹拌した後、ビオチン-PEG3-アミン(Biotin-PEG3-amine)(128 mg、0.30ミリモル、1当量)を添加した。この得られた溶液をそれから室温で12時間撹拌した後、粗混合物を減圧下で濃縮し、DMSOに再溶解し、シリンジフィルター(13 mm、0.2μm、PTFE、cat:9720002)を通過させ、調製HPLC(10-100% ACN/H
2O w/ 0.1%ギ酸)を介して直接精製して、薄茶色のワックスとして化合物を得た(83.0 mg、収率48.1%)。
【0045】
[実施例4―赤色光テトラピロール光触媒活性]
異なる酸化還元特性を有するいくつかの赤色光光触媒(Catalyst)を、
図19に示すように、4-アジド安息香酸の変換について試験した。Sn-金属化クロリンe6触媒(3) を用いて、微量の変換率(5%)と少量のアニリン生成物2(2%)が観察された(
図20、エントリー番号a)。グルタチオン、アスコルビン酸ナトリウム、またはNADHを含む、化学量論的還元剤(Reductant)を添加すると、収率の劇的な改善がもたらされ(
図20、エントリー番号b~d)、NADHが最も効果的であった(収率83%)。
【0046】
これらのデータから、反応機序経路が提案され、この経路は、
図15に示すように、NADHによる励起状態光触媒(4) の還元的クエンチングを介して高度に還元性の有機基底状態(E
1/2=-0.69 V vs Ag/AgCl)を形成することから始まる。この還元種はアリールアジド1(E
p/2=-0.61 V vs Ag/AgCl)への単一電子移動(SET)を行う準備ができており、それによって触媒 (3) を再生する(
図15)。アジドラジカルアニオン (6) のメソリティック開裂により分子状窒素が放出され、迅速なプロトン化により近接性標識化の反応中間体としてアミニルラジカル種 (7) が明らかになる。超高速過渡吸収分光法により、励起されたSn-クロリン触媒はアリールアジド1ではなくNADHによってクエンチされることが明らかになり、提案された基底状態の還元的電子移動機序が支持された(
図21)。
【0047】
さらに、Sn-クロリンe6触媒の電気化学的還元は、NADHの存在下での光励起触媒の過渡吸収信号と有意なスペクトル重複を持つ種を生成し、還元基底状態触媒の生成を支持した。
【0048】
[実施例5―テトラピロール光触媒システムを用いたインビトロ標識化]
インビトロにおけるテトラピロール光触媒活性は、水溶液中で組換えタンパク質を共有結合的にタグ付けすることによって確立された。
図22Aに示すように、炭酸脱水酵素を標識化に供した(10モル%テトラピロール光触媒、1 mM NADH、500μM PhN
3-ビオチン)。タンパク質のロバストなビオチン化が観察された(
図22B)。光触媒、PhN
3プローブ、または光の非存在下ではラベリングは観察されず、標識化強度は照射時間の増加に比例した。さらに、標識に対する光依存性が観察され、2分間の光パルス後にビオチン化が不連続的に増加した(
図22C)。この技術をインビボでの近接性標識化に応用するという長期的な目標を踏まえて、光源と試料の間の組織層を増加させていきながら本標識化システムの効率を調べた(
図22D)。青色光活性化光触媒プロトコールと赤色光活性化光触媒プロトコールの両方が、組織による妨害の不存在下ではロバストなビオチン化を達成したが、わずか1.5 mmの組織が光源を妨害すると青色光活性化光触媒のビオチン化効率の急激な低下(~90%)が観察され、青色光は真皮層を通過しにくいことが確認された。逆に、赤色光活性化テトラピロール光触媒は、増加していく組織量(>10 mm)を通して、検出可能な標識化を示した(
図22D)。
【0049】
[実施例6―テトラピロール光触媒システムによる細胞標識化]
テトラピロール光触媒に基づく赤色光活性化標識化のシステムを確立したところで、赤色光活性化による細胞標識化を検討した。モデル系として、細胞表面受容体-チロシンキナーゼである上皮成長因子受容体 (EGFR) を選択した。Sn-クロリン光触媒にコンジュゲート化された二次抗体を合成し、これは
図23Aに示すように、一次抗体と共にEGFRに誘導することができた。
【0050】
A549細胞を、抗EGFR抗体の存在下または非存在下で、免疫標的指向化による光標識化(1mM NADH、500μM PhN
3-ビオチン、30分間照射)に供した。空間選択的ビオチン化は、誘導放出抑制(STED:stimulated emission depletion)超解像顕微鏡を介して評価した。
図23Bに示すように、Sn-クロリン光触媒標識化は、抗EGFR抗体の存在下でのみロバストな細胞表面ビオチン化を示し、非特異的結合またはオフターゲット標識化が低いことを示した。STED顕微鏡により提供される高解像度は、EGFRと標識の共局在化の定性的評価も可能にした。
図23Bに示すように、EGFR染色と強く重なるビオチン化シグナルが観察され、これは標識化がEGFR微小環境に限定されていることを示している。
【0051】
標識化の空間選択性を評価するために、ビオチン化クラスターの半値幅(fwhm:full width at half-maximum)を測定したところ、標識化事象のガウス分布は87±33 nm(n=50クラスター)と推定された。この分布は、青色光光触媒種を用いて生成されるカルベン(~2 ns)よりもアミニルラジカル中間体の寿命(~50μs)が長いことが知られていることと符合しているが、しかしいずれにしても、個々のタンパク質微小環境におけるナノスケールの事象をプロファイリングする能力を備えた、本明細書に記載されている赤色光近接性標識化システムを提供できている。
【0052】
次に、光標識化された細胞から膜溶解物画分を生成し、ストレプトアビジン濃縮および定量的プロテオミクスに供した。STED分析と一致して、EGFR濃縮は抗EGFR抗体に曝露された試料でのみウェスタンブロットにより観察された。ここでは、定量的タンデムマスタグ(TMT)プロテオミクスによりlog
2 (FC) >1の濃縮されたタンパク質が29個明らかになった(
図23C)。満足すべきことに、EGFRはデータセット中で最も濃縮されたタンパク質であった。これらの濃縮されたタンパク質のうち、12個はEGFRに対して以前に検証された物理的相互作用を有するものであり(
図23C)、これはEGFR自己リン酸化を制御することが知られている膜貫通型糖タンパク質であるCD44を含んでいる。さらに、最も濃縮されたタンパク質の一つであるAXLは、EGFRリン酸化の既知の基質である。同じく受容体タンパク質チロシンキナーゼであるEPHA2およびEPHB2は、データセットにおいて高度に濃縮されており、EGFRの小胞輸送を調節することが知られている。全体として、これらのデータは、シグナル伝達経路における空間的接続をプロファイリングするための近接性標識化プラットフォームとしての、本明細書に記載される赤色光吸収テトラピロール光触媒システムの精度を実証している。
【0053】
[実施例7―テトラピロール光触媒システムによる細胞標識化]
次に、青色光活性化が実現できない複雑な設定において、本明細書に記載されるテトラピロール光触媒標識化システムを評価することを探った。これらの線に沿って、全血は、高いレベルの生化学的複雑性を提示するところ、テトラピロール光触媒標識化システムがこの設定において選択的近接性標識化を達成するために使用できるか否かを問うた。成熟赤血球に対して生成された、よく特徴付けされた抗体であるTER119を、細胞表面標識化のためのターゲティングモダリティとして選択した(
図24A)。興味深いことに、TER119はモノクローナルであるにもかかわらず、赤血球上のいくつかの標的に結合することが示されており、全血のフローサイトメトリー分析のためのゴールドスタンダード赤血球マーカーであり続けている。
【0054】
最初に、Sn-クロリン触媒をTER119と非標的指向化アイソタイプコンジュゲートTER119の両方にコンジュゲート化させたが、アイソタイプコンジュゲートでは最小限のシグナルが観察された(
図24B)。標識の強度はTER119濃度に比例した一方、どの量のアイソタイプでもビオチン化は観察されなかった(
図24B)。注目すべきことに、青色光活性化による近接性標識化光触媒を用いてこの実験を繰り返したが、すべての条件でシグナルは観察されず、青色光に観察されていた組織透過性の低さと合致した(
図22D)。並行して、光標識した血液を、蛍光Neutravidin-DyLight 650で染色することにより、フローサイトメトリーを通じて分析した。
図24Cに示すように、アイソタイプ反応では最小限のシグナルが観察されたが、TER119反応ではビオチン化細胞の有意な(~15倍)増加が見られ、これは、全血中で赤血球が標識されていることを示している。最後に、濃縮膜溶解物に対して定量的プロテオミクスを行った(
図24D)。データセットにおいて強く濃縮[log
2(FC) > 1]された24のタンパク質が観察され、その大部分は既知の赤血球細胞表面タンパク質であった(
図24D)。特に、ベイシジン(Bsg)、Cd36、Kel、赤血球膜関連タンパク質(Ermap)、55 kDa赤血球膜タンパク質(Mpp1)、バンド3アニオン輸送体タンパク質(B3at)、およびタンパク質4.2(Epb 4.2)は最も濃縮されたものに含まれていた。これらの標的は、主要なマウス赤血球膜タンパク質および血液抗原群糖タンパク質を構成し、主要なTER119抗原アンサンブルを表わしている可能性が高い。さらに、スペクトリンアルファおよびベータならびにアンキリンおよびアルファ-アデュシン(adducin)を含むいくつかの細胞骨格タンパク質の濃縮が観察された(
図24D)。
【0055】
前述のことを踏まえると、本明細書に記載されたテトラピロール光触媒、タンパク質標識剤、およびコンジュゲートに基づいて、赤色光活性化近接性標識化プラットフォームが開発された。このシステムは、標識化に対して感光的および時間空間的制御を示し、単純なおよび複雑な生物学的環境の両方で動作することができる。
【0056】
本発明の様々な目的を達成するために、本発明の様々な実施形態を説明してきた。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらの多くの修正および適合が当業者には容易に明らかとなるであろう。
【国際調査報告】