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▶ イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティドの特許一覧

特表2024-536358抗CD79B×CD3二重特異性抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抗CD79B×CD3二重特異性抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240927BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240927BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 111
G01N33/53 B
G01N33/53 Y
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520682
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2022108881
(87)【国際公開番号】W WO2023011338
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110881474.1
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ウー ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チエ
(72)【発明者】
【氏名】ホー カイチエ
(72)【発明者】
【氏名】リー リー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ショアイシアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC01
4C085CC07
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA24
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD79bに特異的に結合する抗体並びにCD79b及びCD3に特異的に結合する二重特異性抗体、抗CD79b抗体及び抗CD79b×CD3二重特異性抗体をコードする核酸、核酸を含むベクター、核酸又はベクターを含む宿主細胞、並びに抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)前記VHは、配列番号4に示されるVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLは、配列番号9に示されるVLに含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、
又は
(ii)前記VHは、配列番号14に示されるVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLは、配列番号19に示されるVLに含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号1若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2は、配列番号2若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3は、配列番号3若しくは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
及び/又は
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号6若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2は、配列番号7若しくは配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3は、配列番号8若しくは配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLを含む、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
1)前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、それからなり、前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
又は
2)前記VHは相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)前記重鎖可変領域VHが、
(i)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(iii)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と比較して、1~10個のアミノ酸の置換、挿入、若しくは欠失を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
及び/あるいは
(b)軽鎖可変領域VLが、
(i)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(iii)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列と比較して、1~10個のアミノ酸の置換、挿入、若しくは欠失を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
(1)配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変領域VH、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変領域VL、
又は
(2)配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変領域VH、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変領域VL
を含む、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
(1)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変領域VH、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変領域VL、
又は
(2)配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変領域VH、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変領域VL
を含む、請求項5に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
重鎖及び/又は軽鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)前記重鎖が、
(i)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、
(ii)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(iii)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列と比較して、1~10個のアミノ酸の置換、挿入、若しくは欠失を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
及び/あるいは
(b)前記軽鎖が、
(i)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、
(ii)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(iii)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列と比較して、1~10個のアミノ酸の置換、挿入、若しくは欠失を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
(1)配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖、
又は
(2)配列番号15に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖、及び配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖
を含む、請求項7に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
(1)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖、
又は
(2)配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖、及び配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖
を含む、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体が、IgG1の形態の抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体が、モノクローナル抗体分子、キメラ抗体分子、ヒト化抗体、若しくはヒト抗体分子、又は二重特異性抗体若しくは多重特異性抗体分子であり、前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)若しくは(Fab’)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)、ラクダ科動物抗体(重鎖抗体)、又は直鎖状抗体のうちの1つである、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
第1の重鎖、第1の軽鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含む二重特異性抗体であり、前記第1の重鎖及び前記第1の軽鎖が、CD79bに結合する抗原部位を含み、好ましくは、前記第2の重鎖及び前記第2の軽鎖が、CD3に結合する抗原結合部位を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
1)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号8を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2が、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号33を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
2)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
3)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号12のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
4)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号12のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
5)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号26のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号27のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号28のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
又は
6)前記第1の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号26のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号27のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号28のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1が、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR2が、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記HCDR3が、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1が、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR2が、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記LCDR3が、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
請求項12に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
1)前記第1の軽鎖が、配列番号9に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が、配列番号4に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号34に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39に示されるVLを含む、
2)前記第1の軽鎖が、配列番号9に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が、配列番号4に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号44に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号49に示されるVLを含む、
3)前記第1の軽鎖が、配列番号19に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が、配列番号14に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号34に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39に示されるVLを含む、
4)前記第1の軽鎖が、配列番号19に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が、配列番号14に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号44に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号49に示されるVLを含む、
5)前記第1の軽鎖が、配列番号29に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が、配列番号24に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号34に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39に示されるVLを含む、
又は
6)前記第1の軽鎖が、配列番号29に示されるVLを含み、前記第1の重鎖が配列番号24に示されるVHを含み、前記第2の重鎖が、配列番号44に示されるVHを含み、前記第2の軽鎖が、配列番号49に示されるVLを含む、
請求項12又は13に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
1)前記第1の軽鎖が、配列番号10を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号5を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号35を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号40を含むか、若しくはそれからなる、
2)前記第1の軽鎖が、配列番号10を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号5を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号45を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号50を含むか、若しくはそれからなる、
3)前記第1の軽鎖が、配列番号20の配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号15を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号35を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号40を含むか、若しくはそれからなる、
4)前記第1の軽鎖が、配列番号20の配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号15を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号45を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号50を含むか、若しくはそれからなる、
5)前記第1の軽鎖が、配列番号30の配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号25を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号35を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号40を含むか、若しくはそれからなる、
又は
6)前記第1の軽鎖が、配列番号30の配列を含むか、若しくはそれからなり、前記第1の重鎖が、配列番号25を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の重鎖が、配列番号45を含むか、若しくはそれからなり、前記第2の軽鎖が、配列番号50を含むか、若しくはそれからなる、
請求項12~14のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸を含むベクターであって、好ましくは発現ベクターである、ベクター。
【請求項18】
請求項16に記載の核酸又は請求項17に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞が、原核生物又は真核生物であり、好ましくは、前記宿主細胞が、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は抗体若しくはその抗原結合断片を調製するのに好適な他の細胞であり、好ましくは、前記哺乳動物細胞が、293細胞又はCHO細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項16に記載の核酸を発現するのに好適な条件下で請求項18又は19に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体又はその抗原結合断片を調製するための方法であって、任意に、前記抗体又はその抗原結合断片を単離することを含み、任意に、前記宿主細胞から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することをさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片及び追加の物質を含む、免疫複合体。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項21に記載の免疫複合体、及び任意に医薬補助材料、並びに任意に1つ以上の他の治療薬を含む、医薬組成物。
【請求項23】
腫瘍などのCD79b及び/又はCD3に関連する疾患又は障害を予防及び/又は治療するための医薬の調製における、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項21に記載の免疫複合体、又は請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
1つ以上の治療法と組み合わせて、前記抗体若しくはその抗原結合断片、免疫複合体、又は医薬組成物を投与することができる、請求項21又は22に記載の使用。
【請求項25】
前記治療法が、治療モダリティ及び/又は他の治療薬であり、好ましくは、前記治療モダリティが、外科的治療及び/又は放射線療法を含む、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
CD79b及び/又はCD3に関連する疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項21に記載の免疫複合体、又は請求項22に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項27】
試料における抗原CD79b及び/又はCD3を検出するための方法であって、
(a)前記試料を請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(b)前記抗体又はその抗原結合断片及び前記抗原CD79b及び/又はCD3によって形成される複合体を検出することであって、任意に、前記抗体が、検出可能に標識されていることと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、免疫学及び抗体工学の分野に関する。特に、本発明は、CD79b単一特異性抗体並びにCD79b及びCD3に特異的に結合する新規な二重特異性抗体に関する。さらに、本発明は、抗体をコードする核酸、核酸を含むベクター、核酸又はベクターを含む宿主細胞、及び抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、疾患の免疫療法、予防、及び/又は診断におけるこれらの抗体、医薬組成物などの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD79bは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、CD79aとヘテロ二量体を形成し、この2つ及び表面グロブリンはBCR受容体複合体を構成する。BCR自体はシグナル伝達ドメインを有さず、抗原がBCRに結合すると、CD79a/bヘテロ二量体が下流のシグナル伝達に関与し、これはB細胞全体の機能を維持するために重要である。CD79bがノックアウトされた後には、B細胞はプレB段階に制限され、さらに発達及び成熟することができないことが研究によって示されている。
【0003】
B細胞非ホジキンリンパ腫は、NHL症例の約85%を占める。B細胞NHLのファーストライン治療後の再発率は高く(DLBCLのファーストライン治療後の再発率は30~40%である)、再発患者は予後不良(DLBCLのOSは平均で9~12ヶ月である)及び限られた後期段階の治療に直面する。一方で、新規の症例並びに再発及び難治性症例の数は毎年膨大であり(中国及び米国の両方で毎年約8万人の新規の症例)、特に中国では年間の死者数が約5万人に達しており、これは米国の2倍超である。CD79bに対する抗体薬物複合体はNHL患者において一定の臨床効果を示しているが、一部の患者はそれらに対する耐性を発現しており、NHLに対する改善された治療法についての患者の大きなニーズは依然として満たされていない。
【0004】
近年、二重特異性抗体ベースの免疫療法が急速に発展し、それらは細胞傷害性細胞及び腫瘍細胞上の表面抗原に同時に結合することができ、したがって細胞傷害性細胞による腫瘍細胞の死滅を媒介する。抗体薬物複合体と比較して、それらは有効性及び安全性の点で一定の利点がある。
【0005】
本発明は、高い標的特異性及び高い親和性でCD79b及びCD3に結合する二重特異性抗体、特に、腫瘍細胞の表面上に発現するCD79bに結合することによってT細胞を腫瘍細胞の周囲に動員させる二重特異性抗体を提供することにより、このニーズを満たす。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明は、CD79bに結合する新規な抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)VHは、配列番号4に示されるVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、VLは、配列番号9に示されるVLに含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、又は
2)VHは、配列番号14に示されるVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、VLは、配列番号19に示されるVLに含まれるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号1若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号2若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号3若しくは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、
及び/又は
(ii)VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号6若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号7若しくは配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR3は、配列番号8若しくは配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、HCDR3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR3は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む;
2)VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR3は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)重鎖可変領域VHが、
(i)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれらからなるか、又は
(iii)配列番号4若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5、4、3、2、若しくは1つ以下)のアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、アミノ酸変化がCDRにおいて起こっていない、
及び/あるいは
(b)軽鎖可変領域VLが、
(i)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれらからなるか、又は
(iii)配列番号9若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5、4、3、2、若しくは1つ以下)のアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、アミノ酸変化がCDRにおいて起こっていない、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
2)配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL
を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH及び配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
2)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL
を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖及び/又は軽鎖を含む、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)重鎖が、
(i)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれらからなるか、又は
(iii)配列番号5若しくは配列番号15に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは20若しくは10個以下、より好ましくは5、4、3、2、若しくは1つ以下)のアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、アミノ酸変化が重鎖のCDRにおいて起こっておらず、より好ましくは、アミノ酸変化が重鎖可変領域において起こっていない、
及び/あるいは
(b)軽鎖が、
(i)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるか、又は
(ii)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれらからなるか、又は
(iii)配列番号10若しくは配列番号20に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは20若しくは10個以下、より好ましくは5、4、3、2、若しくは1以下)のアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、アミノ酸変化が軽鎖のCDRにおいて起こっておらず、より好ましくは、アミノ酸変化が軽鎖可変領域において起こっていない、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
2)配列番号15に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、CD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
1)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
2)配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のCD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸、核酸を含むベクター、及び核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のCD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片を調製するための方法であって、本明細書に記載の核酸を発現するのに好適な条件下で本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のCD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む、免疫複合体及び医薬組成物を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬の調製における、本発明のCD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片、免疫複合体、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、腫瘍を予防及び/又は治療するための方法であって、有効量の本発明のCD79bに結合する抗体又はその抗原結合断片、免疫複合体、又は医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、試料におけるCD79bを検出するための方法であって、(a)本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片を接触させることと、(b)抗体又はその抗原結合断片及びCD79bによって形成される複合体を検出することとを含む、方法に関する。
【0022】
別の態様において、本発明はまた、CD79b及びCD3の両方を標的化する新規な二重特異性抗体、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞、並びに個体におけるCD79b活性に関連する疾患の治療、予防、及び/又は診断における二重特異性抗体の使用を開示する。
【0023】
したがって、一態様において、本発明は、(i)抗CD79b抗体又はその断片及び(ii)抗CD3抗体又はその断片を含む、CD79b及びCD3の両方に特異的に結合する二重特異性抗体(抗CD79b×CD3二重特異性抗体)を提供する。一実施形態において、本発明は、左右対称である4つのポリペプチド鎖からなる1+1形式の抗CD79b×CD3二重特異性抗体であって、左半分は第1の軽鎖及び第1の重鎖からなり、右半分は第2の重鎖及び第2の軽鎖からなり、第1の軽鎖及び第1の重鎖はCD79b又はCD3を標的化する抗体の重鎖及び軽鎖であり、第2の重鎖及び第2の軽鎖はCD3又はCD79bを標的化する抗体の重鎖及び軽鎖である、抗CD79b×CD3二重特異性抗体を提供する。
【0024】
一実施形態において、本発明は、1+1形式の抗CD79b×CD3二重特異性抗体であって、第1の軽鎖及び第1の重鎖がCD79bに特異的に結合し、第2の重鎖及び第2の軽鎖がCD3に特異的に結合する、抗CD79b×CD3二重特異性抗体を提供する。特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、第1の軽鎖は、配列番号9、19、又は29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号4、14、又は24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号34又は44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号39又は49に含まれる3つの軽鎖CDRを含む。
【0025】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、第1の軽鎖及び第1の重鎖はCD79bに結合し、第2の重鎖及び第2の軽鎖はCD3に結合し、
1)第1の軽鎖は、配列番号9に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号4に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含む、
2)第1の軽鎖は、配列番号9に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号4に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含む、
3)第1の軽鎖は、配列番号19に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号14に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含む、
4)第1の軽鎖は、配列番号19に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号14に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含む、
5)第1の軽鎖は、配列番号29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含む、又は
6)第1の軽鎖は、配列番号29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、第1の重鎖は、配列番号24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含む。
【0026】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、第1の軽鎖は、配列番号9、19、又は29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号9、19、又は29と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4、14、又は24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号4、14、又は24と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34又は44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号34又は44と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39又は49に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号39又は49と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む。
【0027】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、
1)第1の軽鎖は、配列番号9に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号34と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号39と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、
2)第1の軽鎖は、配列番号9に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号44と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号49と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、
3)第1の軽鎖は、配列番号19に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号19と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号14に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号14と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号34と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号39と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、
4)第1の軽鎖は、配列番号19に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号19と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号14に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号14と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号44と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号49と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、
5)第1の軽鎖は、配列番号29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号29と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号24と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号34と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号39と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、又は
6)第1の軽鎖は、配列番号29に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号29と少なくとも90%の同一性を有するVLを含み、第1の重鎖は、配列番号24に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号24と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に含まれる3つの重鎖CDRを含み、かつ、配列番号44と少なくとも90%の同一性を有するVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に含まれる3つの軽鎖CDRを含み、かつ、配列番号49と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む。
【0028】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、
1)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
2)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
3)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
4)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
5)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号26のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号28のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号37のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
又は
6)第1の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号26のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号28のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第1の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の重鎖は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR2は、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、HCDR3は、配列番号43のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、第2の軽鎖は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号46のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR2は、配列番号47のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、LCDR3は、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる。
【0029】
別の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、第1の軽鎖は、配列番号9、19、又は29に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4、14、又は24に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34又は44に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39又は49に示されるVLを含む。
【0030】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、
1)第1の軽鎖は、配列番号9に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に示されるVLを含む、
2)第1の軽鎖は、配列番号9に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号4に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に示されるVLを含む、
3)第1の軽鎖は、配列番号19に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号14に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に示されるVLを含む、
4)第1の軽鎖は、配列番号19に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号14に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に示されるVLを含む、
5)第1の軽鎖は、配列番号29に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号24に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号34に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号39に示されるVLを含む、
又は
6)第1の軽鎖は、配列番号29に示されるVLを含み、第1の重鎖は、配列番号24に示されるVHを含み、第2の重鎖は、配列番号44に示されるVHを含み、第2の軽鎖は、配列番号49に示されるVLを含む。
【0031】
別の実施形態において、本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含み、第1の重鎖及び第2の重鎖は、同じ又は異なるFC領域を含む。別の好ましい実施形態において、第1の重鎖及び第2の重鎖に含まれるFc領域は、相互作用して二重特異性抗体の空間構造を安定化する「ノブ」及び「ホール」構造をそれぞれ有する。
【0032】
特定の実施形態において、本明細書に記載の抗CD79b×CD3二重特異性抗体において、第1の重鎖及び第2の重鎖に含まれる可変領域は、Fc領域に対して相同又は異種のいずれかである。別の実施形態において、第1の重鎖及び第2の重鎖に含まれる可変領域は、Fc領域に直接に又はリンカーを介して連結される。特定の実施形態において、リンカーは、当該技術分野で一般的に使用される柔軟なリンカーである。別の実施形態において、リンカーは(G4S)nであり、n=1~6、好ましくはn=1、2、3、又は4である。
【0033】
別の態様において、本発明は、第1の軽鎖、第1の重鎖、第2の重鎖、及び第2の軽鎖を含む抗CD79b×CD3二重特異性抗体であって、
1)第1の軽鎖は、配列番号10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号10からなり、第1の重鎖は、配列番号5と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号5からなり、第2の重鎖は、配列番号35と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号35からなり、第2の軽鎖は、配列番号40と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号40からなる、
2)第1の軽鎖は、配列番号10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号10からなり、第1の重鎖は、配列番号5と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号5からなり、第2の重鎖は、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号45からなり、第2の軽鎖は、配列番号50と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号50からなる、
3)第1の軽鎖は、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号20からなり、第1の重鎖は、配列番号15と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号15からなり、第2の重鎖は、配列番号35と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号35からなり、第2の軽鎖は、配列番号40と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号40からなる、
4)第1の軽鎖は、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号20からなり、第1の重鎖は、配列番号15と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号15からなり、第2の重鎖は、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号45からなり、2の軽鎖は、配列番号50と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号50からなる、
5)第1の軽鎖は、配列番号30と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号30からなり、第1の重鎖は、配列番号25と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号25からなり、第2の重鎖は、配列番号35と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号35からなり、第2の軽鎖は、配列番号40と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号40からなる、
又は
6)第1の軽鎖は、配列番号30と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号30からなり、第1の重鎖は、配列番号25と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号25からなり、第2の重鎖は、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号45からなり、第2の軽鎖は、配列番号50と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むか、若しくは配列番号50からなる、
抗CD79b×CD3二重特異性抗体を提供する。
【0034】
一実施形態において、第1の軽鎖の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖の重鎖可変ドメインが対となってCD79bの抗原認識部位を形成し、第2の重鎖の重鎖可変ドメイン及び第2の軽鎖の軽鎖可変ドメインが対となってCD3の抗原認識部位を形成する。第1の重鎖及び第2の重鎖のそれぞれのFcドメインは、相互作用してFc領域を形成する。特定の実施形態において、第1の重鎖及び第2の重鎖のそれぞれのFcドメインは、相互作用を安定化する変異、例えば、「ノブ・イン・ホール」変異を含む。
【0035】
一態様において、本発明はまた、本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド(核酸)、及びポリヌクレオチドを含むベクターを提供し、ベクターは、好ましくは発現ベクターである。
【0036】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体を作製する方法であって、(i)本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体の発現に好適な条件下で本発明の宿主細胞を培養するステップ、及び(ii)本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体を回収するステップを含む、方法を提供する。
【0037】
一態様において、本発明は、本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体を含む診断キット及び医薬組成物を提供する。さらに、CD79b活性に関連する疾患の治療、予防、及び/又は診断、特に、非ホジキンリンパ腫の治療、予防、及び/又は診断における、本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体、診断キット、又は医薬組成物の使用が提供される。
【0038】
別の態様において、本発明は、CD79b活性に関連する疾患を治療するための方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体又は本発明の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。好ましくは、疾患は、CD79bを過剰発現するがんであり、より好ましくは、疾患は、非ホジキンリンパ腫である。
【0039】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。さらに、本明細書に記載される材料、方法、及び実施例は、例示のみを目的とするものであり、限定することを意図したものではない。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書、図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下に詳細に説明する本発明の好ましい実施形態は、以下の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的で、好ましい実施形態を図面に示す。しかしながら、本発明は図面に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないと理解すべきである。
【0041】
図1図1は、Ramos細胞に対するキメラ抗CD79b抗体の結合能力を示す。
図2図2は、BJAB細胞に対するキメラ抗CD79b抗体の結合能力を示す。
図3図3は、Ramos細胞に対するヒト化抗CD79b抗体の結合能を示す。
図4図4は、BJAB細胞に対するヒト化抗CD79b抗体の結合能を示す。
図5図5は、ヒト化抗CD79b抗体のADCC活性の検出を示す。
図6図6は、BJAB細胞に対する例示的な抗体の結合能力を示す。
図7図7は、WSU-DLCL2細胞に対する例示的な抗体の結合能力を示す。
図8図8は、例示的な抗体によって媒介されるNFATシグナルの活性化を示す。
図9図9は、例示的な抗体によって媒介されるトCD8+T細胞による腫瘍細胞の死滅を示す。
図10図10は、例示的な抗体によるヒトCD8+T細胞の活性化のフローサイトメトリーアッセイを示す。
図11図11は、例示的な抗体によって誘導されるヒトCD8+T細胞による腫瘍細胞の死滅の際に放出されるサイトカインIFN-γの量のフローサイトメトリーアッセイを示す。
図12図12は、例示的な抗体によって誘導されるヒトCD8+T細胞による腫瘍細胞の死滅の際に放出されるサイトカインTNFαの量のフローサイトメトリーアッセイを示す。
図13図13は、例示的な抗体によるヒトCD4+T細胞の活性化のフローサイトメトリーアッセイを示す。
図14図14は、例示的な抗体によって促進されるCD8+T細胞の増殖を示す。
図15図15は、例示的な抗体によって促進されるCD4+T細胞の増殖を示す。
図16図16は、WSU-DLCL2腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおける例示的な抗体の腫瘍阻害効果を示す。
図17図17は、Ramos腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおける例示的な抗体の腫瘍阻害効果を示す。
図18図18は、マウスにおける二重特異性抗体のPKを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
I.定義
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されず、これらは変更されてもよいと理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の範囲を限定するものではなく、特定の実施形態を説明することのみを意図しており、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解すべきである。他に定義されない限り、本明細書で使用される任意の技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0043】
本明細書を説明する目的で以下の定義が使用されるが、必要に応じて、単数形で使用される用語には複数形も含まれてもよく、その逆も同様である。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないと理解すべきである。
【0044】
数値と組み合わせて使用される「約」という用語は、指定された数値より5%小さい下限から指定された数値より5%大きい上限までの範囲の数値を包含することを意図する。
【0045】
「及び/又は」という用語は、2つ以上の選択肢を接続するために使用される場合、選択肢のうちのいずれか1つ又は選択肢のうちの2つ以上を指すと理解すべきであることを意味する。
【0046】
「含む(comprise)」又は「含む(include)」という用語は、記載された要素、整数、又はステップが含まれることを意味するが、任意の他の要素、整数、又はステップを除外するものではない。本明細書で使用される「含む(comprise)」又は「含む(include)」という用語はまた、特に指定しない限り、全体が記載された要素、整数、又はステップからなる状況を包含する。例えば、特定の配列を「含む」抗体可変領域に言及する場合、特定の配列からなる抗体可変領域も包含することが意図される。
【0047】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、一本鎖抗体、インタクトな抗体、又は所望の抗原結合活性を示すそれらの抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含むが、いくつかの場合では、より少ない鎖を含んでもよく、例えば、ラクダの天然抗体は重鎖のみを含んでもよい。
【0048】
「抗原結合断片」という用語(本明細書では「抗体断片」及び「抗原結合部分」と互換的に使用される)は、インタクトな抗体の一部を含み、かつ、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体とは異なる分子を指す。抗原結合断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ(dAb)、直鎖状抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価又は二重特異性抗体の抗原結合断片、ラクダ科動物抗体(camelid antibodies)、及び抗原(例えば、CD79b及び/又はCD3)に結合する所望の能力を示す他の断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される「結合」及び「特異的結合」という用語は、抗体の結合効果が抗原に対して選択的であり、望ましくない相互作用又は非特異的相互作用と区別することができることを意味する。抗体が特定の抗原に結合する能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、若しくはバイオレイヤー干渉法(ForteBio)、又は当該技術分野で既知の従来の結合アッセイによって決定することができる。例えば、抗体がSPRにおいて約1×10-7以下のKD、約1×10-8以下のKD、約1×10-9以下のKD、約1×10-10以下のKD、又は約1×10-11以下のKDでCD79b及び/又はCD3に結合する場合、該抗体は、「CD79b及び/又はCD3に特異的に結合する」抗体である。しかしながら、CD79b及び/又はCD3に特異的に結合する抗体は、他の種由来のCD79b及び/又はCD3タンパク質と交差反応性を有してもよい。例えば、ヒトCD79b及び/又はCD3に特異的な抗体は、いくつかの実施形態において、カニクイザルCD79b及び/又はCD3と交差反応することができる。交差反応性を決定するための方法には、実施例に記載の方法、及び生物学的光干渉法又はフローサイトメトリーなどの当該技術分野で既知の標準的なアッセイが含まれる。
【0050】
「一本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、遺伝子操作された小分子抗体である。これは、遺伝子工学により、DNAレベルで、天然抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを(通常は合成リンカーペプチド(又はリンカー)を介して)結合することにより得られる、小分子の組換え抗体である。インタクトな抗体分子と比較して、一本鎖scFv抗体は、以下の利点、すなわち、インタクトな抗体の可変領域を有し、したがって、元の抗体の抗原特異性及び抗原結合活性が保持される;Fc領域を有さず、したがって、免疫原性が弱く、ヒトに使用した場合には免疫反応がほとんど起こらない;操作が簡単であり、完全長抗体、scFv-Fc抗体などの新しい特性を有する他の抗原特異的結合分子を調製する際の遺伝子操作成分としての使用に好適であるという利点を有する。
【0051】
「Fc領域」という用語は、本明細書では、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列のFc領域及び変異Fc領域が含まれる。特定の実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、Cys226又はPro230から重鎖のカルボニル末端まで延びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし又は存在してなくてもよい。特に明記しない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.1991に記載される、EUインデックスとも称されるEU番号付けシステムに従って番号付けされる。
【0052】
「ノブインホール」という用語は、本明細書に記載の二重特異性抗体分子の一方のFc鎖上に「ノブ」構造が形成され、他方の鎖上に「ホール」構造が形成されることを意味する。したがって、ホール及びノブは同じ又は同様のサイズであり、2つのFcの相互作用時に一方のFcのノブが他方のFcの対応するホールに配置され、それによってヘテロ多量体の構造が安定するように好適に配置される。(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)。
【0053】
いくつかの実施形態において、ノブは、当該分野の従来技術に従って、小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖で置換することによって構築することができる。いくつかの実施形態において、ホールは、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖で置換することによって構築されてもよい。
【0054】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、典型的には類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの相補性決定領域を含む(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照のこと)を有する。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を提供するのに十分であり得る。
【0055】
「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」又は「高可変領域」は、配列が非常に可変であり、かつ、構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する及び/又は抗原接触残基(「抗原接触部位」)を含む、抗体可変ドメイン中の領域である。CDRは、主に抗原エピトープへの結合に関与する。重鎖及び軽鎖のCDRにはN末端から順に番号が付けられ、一般にCDR1、CDR2、及びCDR3と称される。抗体の重鎖可変ドメインに位置するCDRはまた、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と称される一方、抗体の軽鎖可変ドメインに位置するCDRは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と称される。軽鎖可変領域又は重鎖可変領域の所与のアミノ酸配列において、そのCDR配列は、当該技術分野で周知の様々なスキーム、例えば、抗体の三次元構造及びCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al.,(1989)Nature 342:877-883;Al-Lazikani et al.,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,273:927-948(1997))、抗体配列の変動に基づくKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))、AbM(バス大学(University of Bath)))、Contact(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London))、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールド・ワイド・ウエブ上のimgt.cines.fr/)、並びに多数の結晶構造を使用した親和性伝搬クラスタリングに基づくNorth CDR定義(North et al.,“A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations”,Journal of Molecular Biology,406,228-256,(2011))を使用して決定され得る。
【0056】
例えば、Kabat及びChothia番号付けされたCDR領域は、異なる定義範囲を有する。
【表1】
【0057】
特に明記しない限り、本明細書で使用される「CDR」又は「CDR配列」という用語には、上記のスキームのいずれか1つによって決定されるCDR配列が包含される。
【0058】
CDRはまた、参照CDR配列と同じKabat番号付け位置を有することに基づいて決定することができる。特に明記しない限り、本発明における抗体可変領域(重鎖可変領域残基及び軽鎖可変領域残基を含む)の残基位置は、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に従って番号付けされた位置である。
【0059】
しかしながら、異なる割り当てシステムに基づく抗体の可変領域のCDRの境界は異なる場合があることに注意する必要がある。すなわち、異なる割り当てシステムによって定義される同じ抗体の可変領域のCDR配列は異なる。したがって、本発明において定義される特定のCDR配列を有する抗体の定義に関して、抗体の範囲には、その可変領域配列が特定のCDR配列を含むが、適用される異なるプロトコル(例えば、異なる割り当てシステム規則又はそれらの組み合わせ)に起因して本発明によって定義される特定のCDR境界とは異なる特許請求の範囲に属するCDR境界を有する抗体も包含される。
【0060】
異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。しかしながら、CDRは抗体ごとに異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。最小の重複領域は、Kabat、Chothia、AbM、Contact、及びNorthの方法のうちの少なくとも2つを使用して決定することができ、それにより、抗原結合のための「最小結合単位」が提供される。最小結合単位は、CDRのサブ部分であってもよい。当業者には明らかなように、CDR配列の残りの部分の残基は、抗体の構造及びタンパク質の折り畳みによって決定することができる。したがって、本明細書に提示される任意のCDRの変異体も考慮される。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は変化しないままであるが、Kabat又はChothiaに従って定義される残りのCDR残基は保存的アミノ酸残基に置き換えられてもよい。
【0061】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害若しくは防止し、及び/又は細胞死若しくは細胞破壊を引き起こす物質を指す。
【0062】
「化学療法剤」という用語には、がんの治療に有用な化合物が含まれる。
【0063】
「小分子薬」という用語は、生物学的プロセスを調節することができる低分子量有機化合物を指す。「小分子」は、10kD未満、通常は2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有する分子として定義される。小分子には、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、及び抗体模倣物が含まれるが、これらに限定されない。治療薬として、小分子は、大きな分子と比較して細胞によく浸透し、分解されにくく、免疫応答を誘導することが少ない。
【0064】
「機能的Fc領域」という用語は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有するFc領域を指す。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、又はBCR)の下方制御などが含まれる。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合していることが必要であり、本明細書に開示されるアッセイなどの様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0065】
本明細書に記載される「治療薬」という用語には、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症活性剤、小分子薬、又は免疫調節剤を含む、腫瘍(例えば、がん)の予防又は治療に有効な任意の物質が包含される。
【0066】
本明細書で使用される「免疫調節剤」という用語は、免疫応答を抑制又は調節する天然又は合成の活性剤又は薬物を指す。免疫応答は、体液性応答又は細胞性応答であり得る。
【0067】
「有効量」という用語は、単回又は複数回の用量で患者に投与した後に治療又は予防を必要とする患者において期待される効果を生ずる、本発明の抗体、その断片、複合体、又は組成物の量又は用量を指す。治療又は予防目的の場合、「有効量」は「治療有効量」及び「予防有効量」に分けることができる。有効量は、当業者である担当医によって、哺乳動物の種、大きさ、年齢、及び全身の健康状態、関与する特定の疾患、疾患の程度又は重症度、個々の患者における反応、投与される特定の抗体、投与様式、投与される製剤のバイオアベイラビリティプロファイル、選択された投与レジメン、並びに任意の併用療法の使用などの様々な要因を考慮することによって容易に決定することができる。
【0068】
一実施形態において、本発明の二重特異性抗体の有効量は、対照と比較して、測定可能なパラメータ(例えば、腫瘍増殖率、腫瘍体積など)を好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%、60%、又は70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%又は90%阻害する。
【0069】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入される細胞(このような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これには、継代数に関わらず、元の初代形質転換細胞及びこれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量の点で親細胞と正確に同じでなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞からスクリーニング又は選択された同じ機能又は生物学的活性を有する変異子孫が本明細書に含まれる。
【0070】
本明細書で使用する場合、「多重特異性」抗体という用語は、各々が同じ抗原の異なるエピトープ又は異なる抗原の異なるエピトープに結合する、少なくとも2つの異なる抗原結合部位を有する抗体を指す。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。一実施形態において、第1の抗原標的(CD79b)及び第2の抗原標的(CD3)に対する結合特異性を有する二重特異性抗体が本明細書に提供される。本発明による抗体構築物が(少なくとも)二重特異性であることを考慮すると、該抗体構築物は、天然に存在せず、天然に存在する生成物とは明らかに異なる。したがって、「二重特異性」抗体又は免疫グロブリンは、異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる結合側(binding side)を有する人工ハイブリッド抗体又は免疫グロブリンである。
【0071】
「標的」という用語は、CD79b又はCD3を意味する。「第1の標的及び第2の標的」という用語は、CD79bが第1の標的であり、CD3が第2の標的である、又はその逆を意味する。
【0072】
「サイトカイン」という用語は、細胞集団によって放出され、別の細胞に対する細胞間メディエーターとして作用するタンパク質の総称である。このようなサイトカインの例には、リンホカイン;モノカイン;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11など、IL-12、及びIL-15;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-α又はTNF-β;並びにLIF及びキットリガンド(KL)、及びγ-インターフェロンを含む、他のポリペプチド因子である。本明細書で使用する場合、「サイトカイン」という用語には、天然源由来又は組換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物(人工合成によって生成される小分子実体を含む)、並びにその薬学的に許容される誘導体及び塩が含まれる。
【0073】
「免疫複合体」という用語は、細胞傷害性薬剤又は標識を含むがこれらに限定されない、1つ以上の他の物質に結合した抗体である。
【0074】
「個体」又は「対象」という用語には、哺乳動物が含まれる。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、並びにげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、個体又は対象は、ヒトである。
【0075】
「単離された」抗体という用語は、天然環境の成分から分離された抗体を意味する。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、及びキャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定した際に、95%又は99%を超える純度まで精製される。抗体純度を評価する方法の総説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.,B848:79-87(2007)を参照のこと。
【0076】
配列間の配列同一性の計算は次のように行われる。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するには、最適な比較のために配列をアラインする(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方若しくは両方にギャップを導入することができ、又は比較のために非相同配列を破棄することができる)。好ましい一実施形態において、比較のためにアラインされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は60%であり、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、また100%である。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置で同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、分子はこの位置で同一である。
【0077】
2つの配列を比較して配列間の同一性パーセントを計算するために、数学的アルゴリズムを使用することができる。1つの好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlema and Wunschアルゴリズム((1970) J.Mol.Biol.,48:444-453;http://www.gcg.comで利用可能)を用いて、Blossum62マトリックス又はPAM250マトリックス並びにギャップウェイト16、14、12、10、8、6、又は4及び長さウェイト1、2、3、4、5、又は6を使用して決定される。別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで利用可能)を用いて、NWSgapdna.CMPマトリックス並びにギャップウェイト40、50、60、70、又は80及び長さウェイト1、2、3、4、5、又は6を使用して決定される。特に好ましいパラメータセット(及び特に指定がない限り、使用すべきパラメータセット)は、ギャップペナルティが12、ギャップ延長ペナルティが4、フレームシフトギャップペナルティが5である、Blossum62スコアマトリックスである。
【0078】
2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Millerアルゴリズム((1989)CABIOS,4:11-17)を用いて、PAM120加重リマインダーテーブル(PAM120 weighted remainder table)、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用して決定することができる。
【0079】
さらに又はあるいは、本明細書に記載される核酸配列及びタンパク質配列は、例えば他のファミリーメンバー配列又は関連配列を同定するために、公共データベースに対して検索を行うための「質問配列」としてさらに使用することができる。
【0080】
「医薬補助材料」という用語は、活性物質とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、担体、安定剤などを指す。
【0081】
「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の有効な生物学的活性を可能とする形態で存在し、組成物が投与される対象に対して許容できない毒性を有する追加の成分を含まない組成物を指す。
【0082】
「併用療法(combination therapy)」又は「併用療法(combined therapy)」という用語は、がん又は本明細書に記載される感染症を治療するために2つ以上の治療薬が投与されることを意味する。このような投与には、これらの治療薬を実質的に同時に、例えば、一定の割合の活性成分を含む単一のカプセル中で共投与することが含まれる。あるいは、そのような投与には、様々な又は別個の容器中(錠剤、カプセル、粉末、及び液体など)での活性成分の共投与が含まれる。粉末及び/又は液体は、投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。さらに、そのような投与にはまた、各種類の治療薬をほぼ同時に、又は異なる時間に連続的に使用することが含まれる。いずれの場合でも、治療計レジメンは、本明細書に記載の障害又は症状の治療において医薬の組み合わせの有益な効果を提供するであろう。
【0083】
本明細書で使用する場合、「治療」(又は「治療する」又は「治療すること」)は、既存の症状、障害、状態、又は疾患の進行又は重症度を遅らせる、妨げる、阻止する、軽減する、停止する、低下させる、又は逆転させることを指す。
【0084】
本明細書で使用する場合、「予防」(又は「予防する」又は「予防すること」)には、疾患若しくは障害又は特定の疾患若しくは障害の症状の発症又は進行の阻止が含まれる。いくつかの実施形態において、がんの家族歴を有する対象は、予防レジメンの候補である。一般に、がんに関連して、「予防」(又は「予防する」又は「予防すること」)という用語は、特にがんのリスクがある対象において、がんの徴候又は症状が現れる前に薬物を投与することを指す。
【0085】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、これが結合している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造として機能するベクター、及びベクターが導入される宿主細胞のゲノムに結合するベクターが含まれる。いくつかのベクターは、それらが作動可能に連結されている核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0086】
II.抗体
本明細書で使用される「CD79b」、「標的CD79b」、及び「ヒトCD79b」という用語は、CD79b組換えタンパク質を指す。CD79bの細胞外ドメインは、UniProtに従ってアミノ酸29~159からなる。本明細書に記載の「CD79bに対する抗体」及び「抗CD79b抗体」とは、CD79bに特異的に結合する抗体をいう。一実施形態において、CD79bに結合する抗体は、10-9M以下、好ましくは10-9M~10-13Mの解離定数(Kd)を有する。一実施形態において、抗CD79b抗体は、異なる種、好ましくはヒト由来のCD79bに保存されているCD79bのエピトープに結合する。
【0087】
一実施形態において、本明細書に記載の「抗CD79b抗体」は、配列番号4、14、又は24のCDRを含む重鎖可変領域、及び配列番号9、19、又は29のCDRを含む軽鎖可変領域を含む。
【0088】
T細胞又はTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球のクラスである。T細胞応答の特異性は、TCRによる抗原の認識(主要組織適合性複合体(MHC)の文脈で提示される)によって媒介される。TCRの一部として、CD3受容体複合体は、細胞表面上に存在するCD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、及び2本のCD3ε(イプシロン)鎖を含むタンパク質複合体であり、細胞傷害性T細胞(CD8+ナイーブT細胞)及びTヘルパー細胞(CD4+ナイーブT細胞)の活性化に関与する。固定化された抗CD3抗体などによるT細胞上のCD3のクラスター化によって、T細胞の活性化がもたらされ、これはT細胞受容体の関与と似ているが、そのクローンの典型的な特異性とは無関係である。
【0089】
CD3は、すべての成熟T細胞の膜に結合することが見出されている。この高い特異性及びT細胞発生の様々な段階におけるCD3の存在により、CD3は組織切片中のT細胞の有用な免疫組織化学マーカーになる。本発明による抗体構築物は、一般にかつ有利なことに、特異的免疫療法では必要とされない非特異的T細胞活性化をほとんど示さないことが企図される。これは、副作用のリスクが軽減されることを意味する。
【0090】
本明細書において記載される「抗CD3抗体」とは、CD3に結合する抗体を指す。一実施形態において、本明細書に記載の「抗CD3抗体」は、配列番号34又は44のCDRを含む重鎖可変領域及び配列番号39又は49のCDRを含む軽鎖可変領域を含む。
【0091】
本明細書に記載される「CD79b及びCD3に対する二重特異性抗体」、「CD79b及びCD3に特異的に結合する二重特異性抗体」、「抗CD79b×CD3二重特異性抗体」、「CD79b/CD3二重特異性抗体」などの用語は、十分な親和性で標的CD79b及びCD3に結合することができる二重特異性抗体を指し、二重特異性抗体は、T細胞を動員し、標的細胞のリダイレクトされた溶解を可能にすることができる。結合したT細胞は、継続的に標的細胞を溶解することができ、ペプチド抗原のプロセシング及び提示又はクローンT細胞の分化を妨げる免疫回避機構の影響を受けない。一実施形態において、本明細書に記載の「CD79b及びCD3に対する二重特異性抗体」は、CD79bを標的化する配列番号4、14、又は24のCDRを含む重鎖可変領域及び配列番号9、19、又は29のCDRを含む軽鎖可変領域、並びにCD3を標的化する配列番号34又は44のCDRを含む重鎖可変領域及び配列番号39又は49のCDRを含む軽鎖可変領域を含む。抗体は、CD79bを発現するがんを標的化する診断薬及び/又は治療薬として使用され得る。
【0092】
本明細書で提供される抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、以下の利点を有する。いくつかの実施形態において、異なる抗CD79b抗体を異なる親和性を有する抗CD3抗体と組み合わせることによって形成される本発明の抗CD79b×CD3二重特異性抗体は、抗CD79b×CD3二重特異性抗体によって誘導されるCD8+Tによる腫瘍細胞死滅実験においてT細胞活性化の程度及びいくつかのサイトカインの放出レベルを検出ことにより、初期の段階(インビトロスクリーニング段階)においてCD79b/CD3二重特異性抗体の有効性及び安全性の包括的な評価を容易にすることができる。インビトロスクリーニング段階において同様の最大死滅レベル及び低いサイトカイン放出レベルを有する異なる分子がインビボ実験及び毒性実験のために選択され、したがって、そのような二重特異性抗体を臨床現場で使用する際のサイトカインストームのリスクを軽減することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明のCD79b/CD3二重特異性抗体は、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞の表面上のCD79b及び初代T細胞の表面上のCD3に同時に結合し、T細胞によるCD79b陽性腫瘍細胞の死滅を媒介する。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、異なるレベルでCD79bを発現しているB細胞非ホジキンリンパ腫細胞のCD8+Tによる死滅を用量依存的に誘導することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD79b×CD3抗体は、ヒトB細胞非ホジキンリンパ腫細胞の死滅を媒介し、PBMCから単離されたCD8+T細胞及びCD4+T細胞を用量依存的に活性化する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、ヒトCD8+T細胞及びCD4+T細胞の増殖能力を増強する。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、腫瘍増殖の阻害に有効であり、腫瘍増殖阻害は、対照と比較して67%又はさらには100%であり得る。
【0096】
本発明の一実施形態において、アミノ酸変化を有する抗CD79b×CD3二重特異性抗体が本明細書では包含され、アミノ酸変化は、アミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含む。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変化は、アミノ酸置換、好ましくは保存的置換である。
【0097】
好ましい実施形態において、本明細書に記載されるアミノ酸変化は、CDRの外側の領域(例えば、FR)で起こる。より好ましくは、本明細書に記載されるアミノ酸変化は、重鎖可変領域の外側及び/又は軽鎖可変領域の外側の領域で起こる。
【0098】
いくつかの実施形態において、置換は保存的置換である。保存的置換とは、同じクラスの別のアミノ酸によるアミノ酸の置換、例えば、酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸に置換する、塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸に置換する、又は中性アミノ酸を別の中性アミノ酸に置換することを指す。例示的な置換を以下の表に示す。
【表2】
【0099】
特定の実施形態において、置換は、抗体のCDRにおいて起こる。一般に、得られた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加)の修飾(例えば、改善)がなされており、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持している。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体である。
【0100】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるために変更される。抗体のグリコシル化部位の追加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を作り出す又は除去するようにアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成することができる。抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を変更することができる。いくつかの用途では、グリコシル化部位に対する望ましくない修飾を除去すること、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を増強するためにフコースモジュールを除去することは有用であり得る(Shield et al.,(2002) JBC,277:26733を参照のこと)。他の用途では、ガラクトシジル化修飾を行って補体依存性細胞傷害性(CDC)を修飾することができる。
【0101】
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾を本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(置換など)を含むヒトFc領域配列(ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域など)を含んでもよい。Fc変異体の例については、米国特許第7,332,581号、米国特許第6,737,056号、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312及びShields et al.,J.Biol.Chem.,9(2):6591-6604(2001)、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.,164:4178-4184(2000)、米国特許第7,371,826号、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;並びにWO94/29351を参照のこと。
【0102】
特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基によって置換される、「スルホMAb」などのシステイン操作によって修飾された抗体を生成することが必要となり得る。システイン修飾抗体は、例えば米国特許第7,521,541号に記載のようにして生成することができる。
【0103】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知である容易に入手可能な他の非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、グルカン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びグルカン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(グリセロールなど)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
III.本発明の核酸並びにそれを含むベクター及び宿主細胞
一態様において、本発明は、上記の抗CD79b抗体、抗CD3抗体、及び抗CD79b×CD3抗体のいずれか、又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。本発明はまた、ストリンジェントな条件下で上記の核酸にハイブリダイズする核酸、上記の核酸と比較して1つ以上の置換(例えば、保存的置換)、欠失、若しくは挿入を有する核酸、又は上記の核酸と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の同一性を有する核酸配列を包含する。
【0105】
別の態様において、本発明は、上記の核酸を含むベクターを提供する。好ましい実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。本発明が属する技術分野で一般的に使用されるベクターが本発明に適用されてもよいことは当業者によく理解されるところである。
【0106】
一実施形態において、本発明は、核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体をコードするベクターをクローニング又は発現するのに好適な宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が含まれる。一実施形態において、宿主細胞は、真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞又は293細胞)、及び抗体又はその抗原結合断片を調製するのに好適な他の細胞から選択される。
【0107】
IV.医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の抗CD79b×CD3抗体又はその抗原結合断片のいずれかを含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は、医薬組成物である。一実施形態において、組成物は、医薬補助材料をさらに含む。一実施形態において、組成物(例えば、医薬組成物)は、本発明の抗CD79b×CD3抗体又はその抗原結合断片と1つ以上の他の治療薬(例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症活性剤、小分子薬、又は免疫調節剤)との組み合わせを含む。
【0108】
本発明の医薬組成物は、治療される特定の適応症に必要な1つ以上の他の活性成分、好ましくは、互いの活性に悪影響を及ぼさない活性成分をさらに含むことができる。例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症活性剤、小分子薬、又は免疫調節剤などの他の抗がん活性成分を提供することが望ましい場合もある。活性成分は、意図する目的のために有効な量で好適に組み合わされる。
【実施例
【0109】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために説明される。実施例は、本発明の保護範囲をいかなる意味でも限定することを意図するものではなく、また、限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者であれば、本出願の明細書の記載に従って様々な修正を行うことができる。
【0110】
特に明示しない限り、当該技術分野で既知の化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の従来の方法が本発明の実施に使用される。このような方法の説明は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Ed.,2001);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Ed.,1989);Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated in July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985);Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Harlow and Lane,Antibodies(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology、並びにAdvances in Immunologなどの専門誌及びモノグラフに見出すことができる。
【0111】
本発明の抗体の分子構造設計
一態様において、本発明は、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞の表面上のCD79bに結合することができる、CD79bを標的化する単一特異性抗体を設計する。5つの抗CD79b抗体(34F1、11G10、38D9、54H6、及び60D9)に基づいてヒト化を行い、5つのヒト化抗CD79b抗体(hz34F1.14、hz11G10.9.p1、hz38D9B3.11、hz54H6A3.13、及びhz60D9H6.2)を得る。
【0112】
別の態様において、本発明は、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞の表面上のCD79b及びT細胞表面のCD3に同時に結合することができる、CD79b及びCD3を同時に標的化するT細胞エンゲージャー二重特異性抗体を設計する。3つの抗CD79b抗体(38D9B3.11、11G10.9.p1、及び34F1.14)及び異なる親和性を有する2つの抗CD3抗体(sp34.24及びsp34.87)に基づいて、CD79b及びCD3の両方を標的化する二重特異性抗体を設計した。
【0113】
1+1形式を有する6つの二重特異性抗体分子(38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、11G10.9.p1/sp34.87、11G10.9.p1/sp34.24、34F1.14/sp34.87、及び34F1.14/sp34.24)を設計する。二重特異性抗体の重鎖の誤対合はFcの「ノブ・イン・ホール」技術を使用して解決され、ここで、Fcは、IgG1の重鎖定常領域であり、さらに、エフェクター機能を弱めるアミノ酸変異L234A及びL235A(Kabatの「EU」番号付けによる)が導入される。
【0114】
実施例1.ハイブリドーマ細胞の調製
免疫化
CD79bタンパク質(sino、カタログ番号29750-H08H)をフロイント完全アジュバント(Sigma、カタログ番号F5881)で乳化させ、これを使用してBalb/cマウス(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入)を免疫化し、2週間後、CD79bタンパク質をフロイントの不完全アジュバント(Sigma、カタログ番号F5506)で乳化させ、これを使用して2週間に1回の筋肉内注射(マウス1匹当たりタンパク質50μg)によってマウスを3回免疫化した。
【0115】
細胞融合
血清力価が要件を満たす場合に、マウスの脾臓を採取して、Bリンパ球懸濁液を調製した。Bリンパ球懸濁液及びSP2/0ミエローマ細胞(ATCC)を1:2~1:1の割合で混合し、電気融合を行った。融合した細胞を電極皿から50mL遠沈管に移し、HAT含有培地で1~2×10個の細胞/mLに希釈し、細胞懸濁液を96ウェルプレートに100μL/mLで添加した。融合後7日目にスクリーニング培地を交換し、培養から10日後に(細胞増殖状態によってはそれ以上後に)、得られた生成物をフローサイトメトリー(FACS)によって検出し、陽性クローンを選択した。
【0116】
ハイブリドーマ細胞の陽性クローンのスクリーニング(FACS)
抗CD79b抗体を特異的に発現するハイブリドーマ細胞をフローサイトメーター(FACS)により選択した。検出対象の細胞(Ramos)を計数し、1×10個の細胞/mLに希釈し、U字底96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加した。細胞を500gで5分間遠心分離して、細胞培養培地を除去した。96ウェルプレート中のハイブリドーマ培養上清をU字形プレートに100μL/ウェルで添加し、細胞を再懸濁し、氷上で30分間放置した。懸濁液を500gで5分間遠心分離して上清を除去し、細胞をPBSで1回洗浄した。500gで5分間遠心分離してPBSを除去し、FITC標識抗マウスFab二次抗体(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-545-006、PBSで1:500希釈)を100μL/ウェルで添加し、100μLのPE標識抗ヒトFc二次抗体(Biolegend、カタログ番号409304)を陽性対照抗体として添加した。得られた混合物を氷上、暗所で30分間インキュベートした。混合物を500gで5分間遠心分離して上清を除去し、細胞をPBSで1回洗浄した。細胞を50μLの1×PBSで再懸濁し、懸濁液をFACSアッセイのために充填した。陽性クローンをサブクローニングし、モノクローナル細胞を選び出した。
【0117】
陽性ハイブリドーマ細胞のサブクローニング
サブクローニングの手順:培地を200μL/ウェルで96ウェルプレートに添加した。スクリーニング培地と比較すると、この培地は、HATをHT(Gibco、カタログ番号11067-030)に置き換えたことを除き、同じ成分を含む。融合によって選択された陽性ウェル中の細胞を細胞懸濁液に調製し、次いで細胞懸濁液を100μL/ウェルで1列目に添加し、次いで、よく混合した後、1列目の細胞懸濁液を100μL/ウェルで2列目に添加し、次いで、よく混合した後、2列目の細胞懸濁液を100μL/ウェルで次の列に添加した。上記の手順を繰り返した。96ウェルプレートを30分間放置し、顕微鏡で細胞を観察して計数した。約100個の細胞を含む対応する体積を20mLの培地に添加してよく混合し、200μL/ウェルでプレーティングした。1週間後、細胞を顕微鏡で観察し、モノクローナルウェルを同定してマークを付けた。各ウェルの細胞コンフルエンスが50%以上に達したときに、上記のFACSスクリーニング法と同様の方法によって細胞を検出して標的の陽性ウェルを選択し、バイオレイヤー干渉法(ForteBio)を使用することによって、得られたハイブリドーマ細胞上清の抗原に対する親和性を検出した。すべての検出結果を表1に示す。
【表3】
【0118】
実施例2.組換えマウス抗体の調製
抗体の軽鎖及び重鎖の遺伝子配列を実施例1で得たハイブリドーマ候補クローンから抽出した。各株の約5×10個の新たに培養した細胞をRNA抽出のために採取した(Macherey-Nagel、カタログ番号740984.250)。PrimeScript II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Takara)を用いて逆転写を行い、cDNAを得た。5’末端のFR1領域に位置する塩基配列を用いて上流プライマーを設計し、抗体定常領域又はFR4領域に位置する塩基を用いて下流プライマーを設計し、次いで、増幅を行って抗体軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の遺伝子断片を取得した。遺伝子断片をTベクター(Mighty TA-cloning Kit、Takara)に連結し、配列決定のためにモノクローンを選び出し、配列決定の結果をMEGA7ソフトウェアを使用して分析及び比較した。最後に、抗体の軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列の特異性並びに抗体の親和性に従って、組換えマウス抗体を構築した。
【0119】
Nanjing Vazyme Biotech Co.,Ltd.の相同リコンビナーゼ(Exnase(登録商標)II、カタログ番号C112-01)によって、抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の遺伝子断片をそれぞれ、pcDNA3.1ベクターに連結し(IgG1サブタイプを定常領域として選択した)、抗体軽鎖及び重鎖の発現プラスミドを得た。
【0120】
次いで、同じ抗体の軽鎖プラスミドと重鎖プラスミドとをモル比1:1で混合し、ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、カタログ番号23966)によって293F細胞にトランスフェクトした。5~7日間の培養後、細胞生存率が60%未満になったときに細胞培養上清を回収し、プロテインA親和性カラムで精製してモノクローナル抗体を得た。
【0121】
実施例3.バイオレイヤー干渉法により決定される、抗原に対する本発明のキメラ抗体の結合動態
CD79bへの本発明の抗体の結合についての平衡解離定数(KD)をバイオレイヤー干渉法(ForteBio)によって決定した。従来技術のForteBio親和性アッセイを行った(Estep,P.,et al.,“High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning”,MAbs,2013.5(2):270-8)。
【0122】
簡単に説明すると、AMQ(Pall、1506091)センサーをアッセイバッファー中で30分間にわたってオフラインで平衡化し、次いで60秒間にわたってオンラインで平衡化して、ベースラインを確立した。上記で得られた精製抗体をそれぞれ、ForteBio親和性アッセイのためにAHQセンサー(ForteBio)にオンラインで充填した。次いで、抗体を充填したセンサーを抗原CD79bに曝露した後、センサーをアッセイバッファーに移して解離速度を測定した。ForteBio分析ソフトウェアを使用して、KD値を分析した。抗体親和性アッセイの結果を表2に示す。
【表4】
【0123】
実施例4.キメラ抗体及びB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株の結合アッセイ
本発明の抗体が細胞表面上に発現する抗原に結合することができるかどうかを検証するために、本研究では、フローサイトメトリーを使用してRamos細胞及びBJAB細胞への抗体の結合を検出した、実験プロセスは次の通りである:Ramos(ATCC、カタログ番号CRL-1596)及びBJAB(AddexBio、USA、カタログ番号C0003016)を従来の手順に従って継代した。遠心分離及び再懸濁後に細胞を計数し、4×10個の細胞/mLの密度に調整し、充填タンクに注ぎ、マルチチャンネルピペッターを使用して50μL/ウェルで96ウェルプレートに播種した。勾配希釈した抗体試料50μLを各ウェル中の細胞50μLに添加し、次いで、混合物をインキュベーター中で5%CO、37℃で30分間インキュベートした。混合物を400gで5分間遠心分離し、次いで200μLのPBSを添加し、得られた混合物を400gで5分間遠心分離した。この手順を3回繰り返した。ヤギ抗ヒトIgGPE(1:200)を添加し、混合物を暗所、室温で30分間インキュベートした。混合物を200μLのPBSで2回洗浄し、遠心分離し、次いで100μLのPBSに再懸濁し、フローサイトメーターを使用して値を読み取った。値をフィッティングして曲線を取得し、EC50値を計算した。
【0124】
上述のアッセイを用いて行った実験において、Ramos細胞表面上のCD79bへのキメラ抗体の結合は図1に示され、BJAB細胞表面上のCD79bへのキメラ抗体の結合は図2に示される。
【0125】
実施例5.キメラ抗体のヒト化
実施例2で得られたキメラ抗体を従来方法に従ってヒト化した。したがって、ヒト化抗体hz34F1.14、hz11G10.9.p1、hz38D9B3.11、hz54H6A3.13、及びhz60D6H6.2、並びにそれらのCDR配列、軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列、並びに軽鎖及び重鎖アミノ酸配列は実施例9で示される。
【0126】
実施例6.ForteBioによって決定された抗原に対するヒト化抗体の結合動態
ヒトCD79bへの本発明のヒト化抗体の結合の平衡解離定数(KD)をForteBioによって決定した。アッセイは実施例3と同じであり、データを表3に示す。
【表5】
【0127】
表3に列挙したCD79bに対するヒト化抗体の親和性から分かるように、ヒト化抗体は、CD79bへの以前のキメラ抗体の結合を実質的に維持した。
【0128】
実施例7.ヒト化抗体及びB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株の結合アッセイ
Ramos及びBJAB細胞へのヒト化抗体の結合をフローサイトメトリーによって検出した。アッセイは実施例4と同じとした。Ramos細胞表面上のCD79bへのヒト化抗体の結合は図3に示され、BJAB細胞表面上のCD79bへのヒト化抗体の結合は図4に示される。
【0129】
実施例8.抗体媒介性ADCC効果の効果
本実施例では、ADCC効果を媒介し、それによって腫瘍細胞を除去する際の得られた抗体の効果を調べる。本研究では、Promega社のJurkat-ADCC NF-ATルシフェラーゼエフェクター細胞株(以下、ADCCエフェクター細胞と称される)を使用した。NF-ATシグナルの活性化を検出することによって抗体のADCC活性を検出した。具体的な実験プロセスは以下の通りである。
【0130】
1)細胞の調製
標的細胞293T-hCD79b及びADCCエフェクター細胞を計数した。上清を遠心分離により除去した。細胞をPBSで2回洗浄し、検出培地(5%低IgG血清を含む1640培地(Gibco))中に再懸濁した。ADCCエフェクター細胞の濃度を2×10個の細胞/mLに調整し、標的細胞の濃度を2×10個の細胞/mLに調整した。2種類の細胞を1:1の比率で混合し、エフェクターと標的との最終的な比率は10:1であった。
2)プレーティング:混合細胞を50μL/ウェルでプレーティングした。
3)抗体希釈:抗体試料をそれぞれ勾配希釈した。最初のウェル中の最終濃度は300nMであり、4倍希釈を行って10個の勾配を得た。50μLの抗体を各ウェル中で50μLの細胞に添加した。
4)上記の96ウェルプレートをインキュベーター中で37℃で7時間インキュベートした。
5)7時間後、96ウェルプレートを取り出し、解凍したルシフェラーゼアッセイ試薬を100μL/ウェルで添加した。細胞を室温で20分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーを使用して検出した。濃度依存曲線をGraphPadを用いてフィッティングした。
【0131】
図5に示されるように、ヒト化抗体は、ADCCの下流のNF-ATシグナル伝達経路を有効に活性化することができる。
【0132】
実施例9.本発明の二重特異性抗体の発現及び精製
表4に示される組み合わせに従って、3つの異なる抗ヒトCD79bクローン38D9B3.11、11G10.9.p1、及び34F1.14をそれぞれ、2つの異なる抗ヒトCD3クローンHzSP34.87及びHzSP34.24と組み合わせて、合計6つの二重特異性抗体38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、11G10.9.p1/sp34.87、11G10.9.p1/sp34.24、34F1.14/sp34.87、及び34F1.14/sp34.24を別々に構築した。二重特異性抗体はそれぞれ、HEK293細胞中で一過性に発現された。発現の7日後、得られた細胞発酵ブロスを濾過して清澄化し、次いで、捕捉のためにプロテインAカラム(Hitrap Mabselect Sure、GE11-0034-95)を使用してハーフ抗体を得た。A280法によってハーフ抗体の濃度を検出した後、ハーフ抗体を1:1のモル比で混合した。適量の還元剤GSHを添加し、混合物を室温で一晩反応させた。次いで、限外濾過によって還元剤を除去し、反応を停止させた。次いで、MonoS陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して精密な精製を行った。溶出液を限外濾過し、バッファーをPBS(Gibco、70011-044)に交換した。分子量を質量分析法によって決定し、純度をSEC-HPLCによって決定した。CD79b.A7v14b/38E4v1は、特許US20180327492号のCD79b/CD3二重特異性抗体であり、同じ方法を使用して発現させた。得られた上記7つの二重特異性抗体を以下の実施例で使用した。
【表6】
【0133】
具体的なアミノ酸配列リスト(Kabat規則によって定義されたCDR領域)は以下の通りである。
【0134】
38D9B3.11の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号1):GYTFTDYSMH;
HCDR2(配列番号2):WINTETGEPSYADDFKG;
HCDR3(配列番号3):GPY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号4):
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTDYSMHWVRQAPGQGLEWMGWINTETGEPSYADDFKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCYYGPYWGQGTLVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号5):
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTDYSMHWVRQAPGQGLEWMGWINTETGEPSYADDFKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCYYGPYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列:
LCDR1(配列番号6):KASQSVDHDVDSYMD;
LCDR2(配列番号7):SASNLES;
LCDR3(配列番号8):QQINEYPYT;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号9):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCKASQSVDHDVDSYMDWYQQKPGQAPRLLIYSASNLESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQINEYPYTFGGGTKVEIK;
全長軽鎖配列(配列番号10):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCKASQSVDHDVDSYMDWYQQKPGQAPRLLIYSASNLESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQINEYPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0135】
11G10.9.p1の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号11):GYTFTDYWVN;
HCDR2(配列番号12):MIDPSDSETHYNQMFND;
HCDR3(配列番号13):SNYY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号14):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYWVNWVRQAPGQGLEWMGMIDPSDSETHYNQMFNDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCTRSNYYWGQGTLVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号15):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYWVNWVRQAPGQGLEWMGMIDPSDSETHYNQMFNDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCTRSNYYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号16):KSSQSLLDSEGKTYLN;
LCDR2(配列番号17):LVSKLDS;
LCDR3(配列番号18):GTHFPLT;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号19):
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLDSEGKTYLNWLLQKPGQSPQSLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPLTFGGGTKVEIK;
全長軽鎖配列(配列番号20):
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLDSEGKTYLNWLLQKPGQSPQSLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0136】
34F1.14の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号21):GYSFTTYWMN;
HCDR2(配列番号22):MIDPSDSETHYNHLFKD;
HCDR3(配列番号23):AIGY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号24):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTTYWMNWVRQAPGQGLTWMGMIDPSDSETHYNHLFKDRVTMTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRAIGYWGQGTLVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号25):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTTYWMNWVRQAPGQGLTWMGMIDPSDSETHYNHLFKDRVTMTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRAIGYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号26):KSSLSLLDSEGKTYLN;
LCDR2(配列番号27):LVSKLDS;
LCDR3(配列番号28):WQGTHFPLT;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号29):
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCKSSLSLLDSEGKTYLNWFQQRPGQSPRPLISLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPLTFGGGTKVEIK;
全長軽鎖配列(配列番号30):
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCKSSLSLLDSEGKTYLNWFQQRPGQSPRPLISLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0137】
HzSP34.87の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号31):GFTFNTYAMN;
HCDR2(配列番号32):RIRSKYNNYATYYAD;
HCDR3(配列番号33):HYNFGQSYVSWFAY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号34):
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQASGKGLEWVGRIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKSTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARHYNFGQSYVSWFAYWGQGTTVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号35):
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQASGKGLEWVGRIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKSTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARHYNFGQSYVSWFAYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号36):RSSTGAVTTSNYAN;
LCDR2(配列番号37):GTNKRAP;
LCDR3(配列番号38):ALWYSNLWV;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号39):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNKRAPGVPARFSGSLLGDKAALTLLGAQPEDEAEYYCALWYSNLWVFGQGTKLTVL;
全長軽鎖配列(配列番号40):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNKRAPGVPARFSGSLLGDKAALTLLGAQPEDEAEYYCALWYSNLWVFGQGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS。
【0138】
HzSP34.24の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号41):GFTFNTYAMN;
HCDR2(配列番号42):RIRSKYNNYATYYADSVKD;
HCDR3(配列番号43):HGNFGQSYVSWFAY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号44):
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQASGKGLEWVGRIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKSTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARHGNFGQSYVSWFAYWGQGTTVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号45):
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQASGKGLEWVGRIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKSTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARHGNFGQSYVSWFAYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号46):RSSTGAVTTSNYAN;
LCDR2(配列番号47):GTNKRAP;
LCDR3(配列番号48):ALWYSNLWV;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号49):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNKRAPGVPARFSGSLLGDKAALTLLGAQPEDEAEYYCALWYSNLWVFGQGTKLTVL;
全長軽鎖配列(配列番号50):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNKRAPGVPARFSGSLLGDKAALTLLGAQPEDEAEYYCALWYSNLWVFGQGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS。
【0139】
CD79b.A7v14bの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号51):GYTFTTYYMN;
HCDR2(配列番号52):MIDPSDSETHYNQKFQG;
HCDR3(配列番号53):SLAF;
重鎖可変領域VH配列(配列番号54):
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMNWVRQAPGQGLEWIGMIDPSDSETHYNQKFQGRATLTVDTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCSRSLAFWGQGTLVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号55):
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYYMNWVRQAPGQGLEWIGMIDPSDSETHYNQKFQGRATLTVDTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCSRSLAFWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号56):KSSQSLLDSDGKTYLN;
LCDR2(配列番号57):LVSKLDS;
LCDR3(配列番号58):WQGTHFPQT;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号59):
DIVMTQTPLSLPVTPGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQKPGQSPQSLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPQTFGQGTKVEIK;
全長軽鎖配列(配列番号60):
DIVMTQTPLSLPVTPGQPASISCKSSQSLLDSDGKTYLNWLLQKPGQSPQSLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPQTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0140】
38E4v1の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列
重鎖CDR配列は以下の通りである:
HCDR1(配列番号61):GFTFTSYYIH;
HCDR2(配列番号62):WIYPENDNTKYNEKFKD;
HCDR3(配列番号63):DGYSRYYFDY;
重鎖可変領域VH配列(配列番号64):
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFTFTSYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPENDNTKYNEKFKDRVTITADTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCARDGYSRYYFDYWGQGTLVTVSS;
全長重鎖配列(配列番号65):
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFTFTSYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPENDNTKYNEKFKDRVTITADTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCARDGYSRYYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
軽鎖CDR配列は以下の通りである:
LCDR1(配列番号66):KSSQSLLNSRTRKNYLA;
LCDR2(配列番号67):WTSTRKS;
LCDR3(配列番号68):KQSFILRT;
軽鎖可変領域VL配列(配列番号69):
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRTRKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWTSTRKSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSFILRTFGQGTKVEIK;
全長軽鎖配列(配列番号70):
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRTRKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWTSTRKSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSFILRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0141】
polmabの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列:
全長重鎖配列(配列番号71):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSSYWIEWVRQAPGKGLEWIGEILPGGGDTNYNEIFKGRATFSADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCTRRVPIRLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
全長軽鎖配列(配列番号72):
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQSVDYEGDSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSNEDPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0142】
実施例10.本発明の抗体の親和性アッセイ
表面プラズモン共鳴(BiacoreT200)を使用して、ヒトCD79b、ヒトCD3、及びカニクイザルCD3に対する本発明の例示的な抗CD79b/CD3抗体の結合動態を決定した。(1)ヒトCD79b-hisに対する抗体の親和性アッセイ(Sino biological):50mM N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び200mM 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を新たに混合し、10μL/分の流速で420秒間活性化した。次いで、ヒトCD79b-His抗原を10mM酢酸塩(pH5.0)で希釈し、1μg/mLの濃度に希釈した後、抗原溶液をカップリングに供し、値は約50RUであった。次いで、1Mエタノールアミンを10μL/分の流速で420秒間注入して、残りの活性化部位をブロッキングした。実験で使用したバッファーはpH7.4のHBS-EP+溶液であり、ハイパフォーマンスモード下で、2倍勾配希釈(0~80nM)後に得られた抗体をそれぞれ、濃度に基づく昇順に従って30μL/分の流速でチップのチャネル1、2、3及び4に注入し、1つの濃度の測定に1サイクルを使用し、結合時間は180秒であり、解離時間は600秒であった。(2)ヒトCD3E及びCD3G-ビオチン(Sino biological)及びサルCD3E及びCD3G-ビオチン(Sino biological)に対する抗体の親和性アッセイ:50mM NHS及び200mM EDCを新たに混合し、10μL/分の流速で420秒間活性化した。次いで、ストレプトアビジン(Thermo Fisher Scientific)タンパク質を10mM酢酸塩(pH4.5)で希釈し、10μg/mLの濃度に希釈した後、抗原溶液をカップリングに供し、値は約3000RUであった。次いで、1Mエタノールアミンを10μL/分の流速で420秒間注入して、残りの活性化部位をブロッキングした。ヒトCD3E及びCD3Gビオチンタンパク質並びにサルCD3E及びCD3Gビオチンタンパク質をそれぞれ、ストレプトアビジンタンパク質と結合したチップチャネル上に固定化した。2倍勾配希釈後に得られた抗体(0~16nM又は0~40nM又は0~200nM)をそれぞれ、濃度に基づく昇順に従ってチャネル1、2、3、及び4に注入した。流速30μL/分でチップに注入し、1つの濃度の測定に1サイクルを使用し、結合時間は180秒であり、解離時間は300秒であった。
【0143】
上記のアッセイを使用して行った実験において、ヒトCD79b-Hisに対する38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、11G10.9.p1/sp34.87、11G10.9.p1/sp34.24、34F1.14/sp34.87、34F1.14/sp34.24、及びCD79b.A7v14b/38E4v1の親和性は表5に示される。ヒトCD3E及びCD3G(Sino biological)並びにサルCD3E及びCD3GGに対する38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、11G10.9.p1/sp34.87、11G10.9.p1/sp34.24、34F1.14/sp34.87、34F1.14/sp34.24、及びCD79b.A7v14b/38E4v1の親和性は表6及び7に示される。
【表7】
【表8】
【表9】
【0144】
実施例11.本発明の抗CD79b/CD3抗体及びB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株についての結合アッセイ
フローサイトメトリーにより、CD79b陽性B細胞非ホジキンリンパ腫細胞株に対するCD79b/CD3二重特異性抗体の結合能力を検出した。BJAB(AddexBio、USA、カタログ番号C0003016)及びWSU-DLCL2(Nanjing Kebai BiotechnologyCo.,Ltd.、カタログ番号CBP60273)を従来の手順に従って培養及び継代した。遠心分離及び再懸濁後に細胞を計数し、4×10個の細胞/mLの密度に調整し、充填タンクに注ぎ、マルチチャンネルピペッターを使用して50μL/ウェルで96ウェルプレートに播種した。勾配希釈した50μLの抗体試料を各ウェル中の細胞50μLに添加し、混合物をインキュベーター中で5%CO2、37で30分間インキュベートした。混合物を400gで5分間遠心分離し、次いで200μLのPBSを添加し、得られた混合物を400gで5分間遠心分離した。この手順を3回繰り返した。ヤギ抗ヒトIgGPE(1:200)を添加し、混合物を暗所、室温で30分間インキュベートした。混合物を200μLのPBSで2回洗浄し、遠心分離し、次いで100μLのPBSに再懸濁し、フローサイトメーターを使用して値を読み取った。値をフィッティングして曲線を取得し、EC50値を計算した。
【0145】
上記のアッセイを使用して行った実験において、CD79b高発現細胞株であるBJAB細胞の表面上のCD79bに対する例示的な抗体の結合は図6に示され、CD79b低発現細胞株であるWSU-DLCL2細胞の表面上のCD79bに対する例示的な抗体の結合は図7に示される。
【0146】
実施例12.本発明の抗CD79b/CD3抗体によるJurkat-NFAT-Luc細胞の活性化に関するアッセイ
CD79b/CD3二重特異性抗体は、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞の表面上のCD79b及びJurkat-NFAT-Luc細胞の表面上のCD3に同時に結合し、CD79b依存性のCD3架橋を介してNFAT-Lucの下流のシグナル伝達経路を活性化する。本研究では、ルシフェラーゼレポーター遺伝子法に基づき、共培養したJurkat-NFAT-Luc細胞及びCD79b陽性細胞を追加の例示抗体とともに一晩培養した後のルシフェラーゼ発現を検出し、抗体の活性化能を示した。
【0147】
実験方法
アッセイ培地の調製:10%FBS+90%RPMI培地1640
Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム検出溶液の調製:Bio-Glo(商標)バッファー(Promega、G7940)を解凍し、Bio-Glo(商標)基質(Promega、G7940)とよく混合し、混合物を-40℃の冷蔵庫中で保存した。
1.BJAB、WSU-DLCL2、NUGC4、Jurkat-NFAT-Luc細胞をそれぞれ300gで8分間遠心分離し、上清を捨てた。BJAB細胞及びJurkat-NFAT-Luc細胞をそれぞれアッセイ培地に懸濁し、次いで細胞数を計測し、細胞密度を調整し、細胞密度は両方とも6.0×10個であった。腫瘍細胞及びJurkat-NFAT-Luc細胞を、後で使用するために1:1の比率で混合した。
2.細胞懸濁液及び勾配希釈した試験抗体を100μL/ウェルで96ウェル白色細胞培養プレートに添加し、混合物を一晩インキュベートした。
3.Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステムの検出溶液を取り出し、室温で解凍した。
4.ステップ2でインキュベートした試料を取り出し、Bio-Glo ルシフェラーゼアッセイシステム検出液を80μL/ウェルで添加した。
5.プレートをマイクロプレートリーダー(Molecular Device、SpectraMaxI3)で読み取った。
【0148】
上述のアッセイを用いて行った実験において、例示的な抗体は、用量依存的にNFATシグナルを活性化することができ(図8A及び8Bを参照のこと)、例示的な抗体は、非標的細胞NUGC4に対して活性化を示さなかった(図8Cを参照のこと)。
【0149】
実施例13.本発明の抗CD79b/CD3抗体によるB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株の死滅に関するアッセイ
CD79b/CD3二重特異性抗体は、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞の表面上のCD79b及び初代T細胞の表面上のCD3に同時に結合し、CD79b依存性のCD3架橋を介してT細胞を活性化し、T細胞によるCD79b陽性腫瘍細胞の死滅を媒介する。本研究では、ヨウ化プロピジウム(PI)染色法に基づいて、例示的な抗体を共培養したヒトCD8+T細胞及びCD79b陽性細胞に添加してから48時間後の腫瘍細胞のPI陽性率を検出し、CD79b陽性腫瘍細胞に対するヒトCD8+T細胞の死滅能力を評価した。
【0150】
PBMCを液体窒素タンクから取り出し、37℃で急速解凍し、予熱した10%FBSを含む1640培地(0.1%DNaseを含む)に滴加し、10mLの混合溶液を得た。混合溶液を400gで5分間遠心分離し、10%FBSを含む10mLの1640培地に再懸濁し、10μLのDNaseを添加した。混合物を37℃及び5%COで2時間放置した。EasySep(商標)ヒトCD8+T細胞濃縮キットを使用してヒトCD8+T細胞を単離し、説明書に従って操作を行った。ヒトCD8+T細胞の密度を10%FBSを含む1640培地を使用して1×10個の細胞/mLに調整し、該細胞をエフェクター細胞として使用した。CD79b陽性細胞BJAB及びWSU-DLCL2を標的細胞として用い、NUGC4を非標的細胞として用いた。細胞を400gで5分間遠心分離し、10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、Cell Trace Far Red Cell染色液(THERMO FISHER、C34564)を添加した。混合物を30分間インキュベートし、400gで5分間遠心分離し、10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、細胞密度を2×10個の細胞/mLに調整した。腫瘍細胞懸濁液及びヒトCD8+T細胞懸濁液を1:5の比率でよく混合し、得られた細胞懸濁液及び勾配希釈した試験抗体を200μL/ウェルで(一般的な)96ウェル丸底培養プレート(カバー付き)に添加した。細胞を二酸化炭素インキュベーター中に置き、37℃で48時間刺激した。細胞を400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、PBS(1:1000に希釈したヨウ化プロピジウム溶液を含む)を100μL/ウェルで添加して、細胞を再懸濁した。混合物を4℃で10分間放置し、フローサイトメーター(BD、FACSCELESTA)を使用して値を読み取った。
【0151】
上述のアッセイを使用して行った実験において、例示的な抗体は、ヒトCD8+T細胞によるBJAB及びWSU-DLCL2標的細胞の死滅を用量依存的に誘導することができ(図9A及び9Bを参照のこと)、例示的な抗体は、非標的細胞NUGC4に対しては死滅を示さなかった(図9Cを参照のこと)。
【0152】
実施例14.本発明の抗CD79b/CD3抗体によるヒトB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株の死滅の際のT細胞活性化及びサイトカイン放出のレベル
本研究では、勾配希釈した例示的な抗体をB細胞非ホジキンリンパ腫細胞及びヒトT細胞の共インキュベーションシステムに添加し、18時間後にヒトT細胞CD25及びCD69に対して二重陽性である細胞の割合をフローサイトメトリーによって検出して、ヒトT細胞及びCD79b陽性腫瘍細胞の共インキュベーションシステムにおける抗体媒介T細胞活性化の程度を評価した。マルチサイトカインアッセイキット(ヒトTh1/Th2/Th17、BD)を使用することによって様々なサイトカインのレベルを同時に検出し、ヒトT細胞及びCD79b陽性腫瘍細胞の共インキュベーションシステムにおいて、サイトカインを放出するT細胞の抗体媒介能力を評価した。
【0153】
実験プロセス
ヒトCD8+T細胞の活性化及びサイトカイン放出の検出:
PBMCを液体窒素タンクから取り出し、37℃で急速解凍し、予熱した10%FBSを含む1640培地(0.1%DNaseを含む)に滴加し、10mLの混合溶液を得た。混合溶液を400gで5分間遠心分離し、10%FBSを含む1640培地10mLに再懸濁し、10μLのDNaseを添加した。混合物を37℃及び5%CO2で2時間放置した。EasySep(商標)ヒトCD8+T細胞濃縮キットを使用してヒトCD8+T細胞を単離し、説明書に従って操作を行った。ヒトCD8+T細胞の密度を10%FBSを含む1640培地を用いて1×10個の細胞/mLに調整し、該細胞をエフェクター細胞として使用した。腫瘍細胞を10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、密度を2×10個の細胞/mLに調整した。腫瘍細胞懸濁液及びヒトCD8+T細胞懸濁液を1:1の比率でよく混合し、得られた細胞懸濁液及び勾配希釈した試験抗体を(最高濃度は100nMである、3倍希釈、12個の勾配)を200μL/ウェルで(一般的な)96ウェル丸底培養プレート(カバー付き)に添加した。細胞を二酸化炭素インキュベーター中に置き、37℃で18時間刺激した。細胞を400gで5分間遠心分離し、PBS(1:100希釈したAPC抗ヒトCD8a、FITC抗ヒトCD69、及びPE抗ヒトCD25を含む)を100μL/ウェルで添加して、細胞を再懸濁した。混合物を4℃で30分間放置し、次いで洗浄し、フローサイトメーター(BD、FACSCELESTA)を用いて値を読み取った。一方、上清を回収し、アッセイキット(ヒトTh1/Th2/Th17キット、BD)の説明書に従ってサイトカインTNFα及びIFN-γの含有量を検出した。
【0154】
ヒトCD4+T細胞活性化の検出:
PBMCを液体窒素タンクから取り出し、37℃で急速解凍し、予熱した10%FBSを含む1640培地(0.1%DNaseを含む)に滴加し、10mLの混合溶液を得た。混合溶液を400gで5分間遠心分離し、10%FBSを含む1640培地10mLに再懸濁し、10μLのDNaseを添加した。混合物を37℃及び5%COで2時間放置した。EasySep(商標)ヒトCD4+T細胞濃縮キットを使用してヒトCD4+T細胞を単離し、説明書に従って操作を行った。ヒトCD4+T細胞の密度を10%FBSを含む1640培地を用いて1×10個の細胞/mLに調整し、該細胞をエフェクター細胞として使用した。腫瘍細胞を10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、密度を2×10個の細胞/mLに調整した。腫瘍細胞懸濁液及びヒトCD4+T細胞懸濁液を1:1の比率でよく混合し、得られた細胞懸濁液及び勾配希釈した試験抗体を200μL/ウェルで(一般的な)96ウェル丸底培養プレート(カバー付き)に添加した。細胞を二酸化炭素インキュベーター中に置き、37℃で18時間刺激した。細胞を400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、PBS(1:100希釈したAPC抗ヒトCD4、FITC抗ヒトCD69、及びPE抗ヒトCD25を含む)を100μL/ウェルで添加し、細胞を再懸濁した。混合物を4℃で30分間放置し、次いで洗浄し、フローサイトメーター(BD、FACSCELESTA)を用いて値を読み取った。
【0155】
結果
上述のアッセイを使用して行った実験において、例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞によるBJAB細胞の死滅の際のCD8+活性化の程度が図10Aに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞によるRamos細胞の死滅の際のCD8+活性化の程度を図10Bに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞によるWSU-DLCL2細胞の死滅の際のCD8+活性化の程度が図10Cに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞によるNUGC4細胞の死滅の際のCD8+活性化の程度が図10Dに示される。例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞による様々な細胞の死滅の際のIFN-γ放出のレベルが図11に示され、例示的な抗体によって誘導されるCD8+T細胞による様々な細胞の死滅の際のTNFα放出のレベルが図12に示される。例示的な抗体によって誘導されるCD4+T細胞及びBJAB細胞の共インキュベーション中のCD4+活性化の程度を図13Aに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD4+T細胞及びRamos細胞の共インキュベーション中のCD4+活性化の程度が図13Bに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD4+T細胞及びWSU-DLCL2細胞の共インキュベーション中のCD4+活性化の程度が図13Cに示され、例示的な抗体によって誘導されるCD4+T細胞及びNUGC4細胞の共インキュベーション中のCD4+活性化の程度が図13Dに示される。CD79b陽性腫瘍細胞の存在下では、例示的な抗体はすべて、PBMCから単離されたCD8+T細胞及びCD4+T細胞を用量依存的に活性化することができ、T細胞活性化の程度はCD3に対する親和性とある程度相関する。CD3に対する親和性が高いほど、T細胞を活性化する能力が高くなる。
【0156】
実施例15.例示的な抗体によるヒトCD8+T細胞の増殖能力の促進に関するアッセイ
PBMCから単離したCD8+T細胞をCellTrace Far Red細胞増殖キットで標識し、標識したヒトCD8+T細胞を腫瘍細胞とともに共培養し、続いて、勾配希釈した例示的な抗体を添加し、96時間後にCD8+T細胞の増殖をフローサイトメーターを使用して検出した。
【0157】
実験手順
ヒトCD8+T細胞の分離:PBMCを液体窒素タンクから取り出し、37℃で急速に解凍し、10%FBSを含む10mLの1640培地(0.1%DNaseを含む)に37℃で滴加した。混合物を25℃、300gで8分間遠心分離し、上清を除去した。細胞を、T75培養フラスコ中、37℃で、10%FBSを含む1640培地(0.1%DNaseを含む)に再懸濁し、混合物をインキュベーター中、37℃、5%COで3時間放置した。EasySep(商標)ヒトCD8+T細胞濃縮キットを使用してヒトCD8+T細胞を単離し、説明書に従って操作を行った。ヒトCD8+T細胞の密度を10%FBSを含む1640培地を用いて5×10個の細胞/mLに調整し、該細胞をエフェクター細胞として使用した。腫瘍細胞を10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、密度を1×10個の細胞/mLに調整した。腫瘍細胞懸濁液及びヒトCD8+T細胞懸濁液を1:1の比率でよく混合し、得られた細胞懸濁液及び勾配希釈した試験抗体を200μL/ウェルで(一般的な)96ウェル丸底培養プレート(カバー付き)に添加した。細胞を二酸化炭素インキュベーター中に置き、37℃で72時間刺激した。細胞を400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、PBS(1:100希釈したPE抗ヒトCD8を含む)を100μL/ウェルで添加して、細胞を再懸濁した。4℃で30分間放置し、洗浄し、フローサイトメーター(BD、FACSCELESTA)を用いて値を読み取った。
【0158】
結果
上述のアッセイを使用して行った実験において、例示的な抗体は、CD79b陽性細胞の存在下でインビトロでCD8+T細胞の増殖を有効に刺激することができた(図14A、14B、及び14Cを参照のこと)が、例示的な抗体は、CD79b陰性NUGC4細胞の存在下でCD8+T細胞のCD79b非依存的かつ非特異的な増殖を示さなかった(図14Dを参照のこと)。
【0159】
実施例16.例示的な抗体によるヒトCD4+T細胞の増殖能力の促進に関するアッセイ
例示的な抗体は、CD79b陽性腫瘍細胞の存在下でインビトロでヒトCD4+T細胞の増殖を用量依存的に刺激することができたが、例示的な抗体は、CD79b陰性NUGC4細胞の存在下でCD4+T細胞のCD79b非依存的かつ非特異的な増殖を示さなかった。
【0160】
実験手順
ヒトCD4+T細胞の分離:PBMCを液体窒素タンクから取り出し、37℃で急速に解凍し、10%FBSを含む10mLの1640培地(0.1%DNaseを含む)に37℃で滴加した。混合物を25℃、300gで8分間遠心分離し、上清を除去した。細胞を、T75培養フラスコ中、37℃で、10%FBSを含む1640培地(0.1%DNaseを含む)に再懸濁し、混合物をインキュベーター中で37℃及び5%COで3時間放置した。EasySep(商標)ヒトCD4+T細胞濃縮キットを使用してヒトCD4+T細胞を単離し、説明書に従って操作を行った。ヒトCD4+T細胞の密度を10%FBSを含む1640培地を用いて5×10個の細胞/mLに調整し、該細胞をエフェクター細胞として使用した。腫瘍細胞を10%FBSを含む1640培地に再懸濁し、密度を1×10個の細胞/mLに調整した。腫瘍細胞懸濁液及びヒトCD4+T細胞懸濁液を1:1の比率でよく混合し、得られた細胞懸濁液と勾配希釈した試験抗体を200μL/ウェルで(一般的な)96ウェル丸底培養プレート(カバー付き)に添加した。細胞を二酸化炭素インキュベーター中に置き、37℃で72時間刺激した。細胞を400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、PBS(1:100希釈したFITC抗ヒトCD4を含む)を100μL/ウェルで添加して細胞を再懸濁した。4℃で30分間放置し、洗浄し、フローサイトメーター(BD、FACSCELESTA)を用いて値を読み取った。
【0161】
結果
上述のアッセイを使用して行った実験において、例示的な抗体は、CD79b陽性細胞の存在下でインビトロでCD4+T細胞の増殖を有効に刺激することができた(図15A、15B、及び15Cを参照のこと)が、例示的な抗体は、CD79b陰性NUGC4細胞の存在下でCD4+T細胞のCD79b非依存的かつ非特異的な増殖を示さなかった(図15Dを参照のこと)。
【0162】
実施例17.動物における本発明の抗CD79b/CD3抗体の有効性アッセイ
本研究では、NOGマウスのPBMCモデルにヒトB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株WSU-DLCl2及びRamos細胞を接種し、例示的な抗体の抗腫瘍効果を測定した。
【0163】
WSU-DLCL2腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおける例示的な抗体の抗腫瘍効果
実験手順
雌NOGマウス(14~17g)をBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入し、該マウスはSPFグレードであった。到着時にマウスを順応させ、7日間隔離した後、研究を開始した。マウスにPBMC細胞を4×10個の細胞/マウス、200μL/マウスの体積で静脈内注射した。PBMC注射後3日目に、WSU-DLCL2細胞を接種した。WSU-DLCL2細胞を従来通りに継代し、遠心分離により回収し、WSU-DLCL2細胞をPBSに分散させた。NOGマウスの右側の背中及び腹部を剃毛し、該マウスにWSU-DLCL2細胞を6×10個の細胞/マウス、200μL/細胞の体積で接種した。
【0164】
投与:WSU-DLCL2細胞の接種後8日目に、マウスをグループ分けし(1群あたり8匹のマウス)、マウスの腫瘍体積に従って薬物投与を行った。投与は3~4日毎に1回、計4回行った。マウスの腫瘍体積及び体重を週2回モニタリングした。接種後22日目に、相対的腫瘍増殖阻害(TGI%)を次式:TGI%=100%*(hIgG対照群の腫瘍体積-治療群の腫瘍体積)/(hIgG対照群の腫瘍体積-hIgG対照群の初期腫瘍体積)によって計算し、対照群の初期腫瘍体積は約90mmであった。腫瘍体積測定:腫瘍の最大長径(L)及び最大短径(W)をノギスで測定し、次式:V=L×W/2によって腫瘍体積を算出した。電子天秤を使用してマウスの体重を測定した。研究全体を通じて、腫瘍がエンドポイントに達したとき、又はマウスの体重が20%以上減少したときにマウスを安楽死させた。腫瘍サイズを得て、腫瘍増殖阻害(TGI%)を計算した。
【0165】
結果
腫瘍増殖曲線は図16に示されており、例示的な抗体はWSU-DLCL2細胞の増殖を有意に阻害することができた。22日目に腫瘍サイズを取得し、腫瘍増殖阻害を計算した。例示的な抗体38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、及び11G10.9.p1/sp34.24は、hIgGと比較して、それぞれ78%、93%、及び67%の腫瘍増殖阻害を示した。CD79b.A7v14b/38E4v1のTGIはわずか36%であった。さらに、投与したマウス群では有意な体重減少は見られなかった。
【0166】
Ramos腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおける例示的な抗体の抗腫瘍効果
実験手順
雌NOGマウス(14~17g)をBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入し、該マウスはSPFグレードであった。到着時にマウスを順応させ、7日間隔離した後、研究を開始した。PBMC細胞を0.1%DNaseを含む予熱したRPMI-1640培地で解凍し、次いでPBSに分散させて、細胞濃度20×10個の細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。マウスにPBMC細胞懸濁液を0.2mL/マウス、すなわち4×10個の細胞/マウスの接種量で静脈内注射した。
【0167】
その後のインビボ実験のために、Ramos細胞を従来通りに継代した。PBMC細胞接種から7日後、Ramos細胞をPBS及びマトリゲル(1:1)に分散させ、7.5×10個の細胞/mLの細胞濃度の細胞懸濁液を調製した。NOGマウスの右背中を剃毛し、該マウスにRamos細胞懸濁液を0.2mL/マウス、すなわち1.5×10個の細胞/マウスの接種量で皮下注射した。
【0168】
腫瘍細胞接種から6日後、マウスをグループ分けし(1群あたり6匹)、マウスの腫瘍体積に従って薬物投与を行い、投与は3~4日毎に1回、連続して4回行った。投与様式は腹腔内注射であり、投与体積は10mL/kg/回とした。マウスの腫瘍体積及び体重を週2回モニタリングし、モニタリングを20日目に終了した。
【0169】
接種後20日目に、相対的腫瘍増殖阻害(TGI%)を以下の式:TGI%=100%×(hIgG対照群腫瘍体積-治療群腫瘍体積)/(hIgG対照群腫瘍体積-投与前のhIgG対照群腫瘍体積)によって計算した。腫瘍体積測定:腫瘍の最大長径(L)及び最大短径(W)をノギスで測定し、腫瘍体積を次式:V=L×W2/2によって算出した。電子天秤を使用してマウスの体重を測定した。
【0170】
結果
腫瘍増殖曲線は図17に示されており、例示的な抗体はRamos細胞の増殖を有意に阻害することができた。20日目に腫瘍サイズを取得し、腫瘍増殖阻害を計算した。例示的な抗体38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、及び11G10.9.p1/sp34.24は、それぞれ76%、90%、及び100%の腫瘍増殖阻害を示した。CD79b.A7v14b/38E4v1のTGIは77%であり、これは38D9B3.11/sp34.87のTGIと同様であった。さらに、投与したマウス群では有意な体重減少は見られなかった。
【0171】
実施例18.動物における本発明の抗CD79b/CD3抗体のPKアッセイ
本研究では、38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、及び11G10.9.p1/sp34.24を10mg/kgで雌Balb/Cマウスに尾静脈注射により投与し、雌Balb/Cマウスにおける薬物動態学的特性を研究した。0.083時間、0.5時間、2時間、6時間、24時間、48時間、4日、7日、14日、及び21日の時点で眼球から血液を採取し、4℃、3000rpmで10分間遠心分離し、血清を採取した。血清中の抗体の含有量をELISAによって測定することにより、マウスにおける38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、及び11G10.9.p1/sp34.24の半減期を計算した。結果を図18に示す。マウスにおける38D9B3.11/sp34.87、38D9B3.11/sp34.24、及び11G10.9.p1/sp34.24の半減期は、それぞれ10.4日、7.3日、及び7.0日であり、3つともすべて、通常のモノクローナル抗体と同様のPKを有していた。
図1
図2
図3
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図10
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【配列表】
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【国際調査報告】