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特表2024-536360核酸結合タンパク質を含む脂質ナノ粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】核酸結合タンパク質を含む脂質ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240927BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/235 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/135 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/075 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/095 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/7105
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/28
A61K47/24
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/64
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
A61K31/713
A61K39/12
A61K39/145
A61K39/215
A61K39/235
A61K39/155
C12N15/88 Z ZNA
C07K14/11
C07K14/135
C07K14/165
C07K14/075
C07K14/095
C07K14/47
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520688
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2022059527
(87)【国際公開番号】W WO2023057935
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2021903192
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207227
【氏名又は名称】セキラス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロックマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】オン,チ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC41
4C076DD41
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA57
4C085BA71
4C085BA77
4C085CC08
4C085DD59
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA13
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子及びその使用に関し、脂質ナノ粒子は、RNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチド(例えば、RNA結合タンパク質またはペプチド)をその中に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記核酸結合タンパク質またはペプチドが、RNA結合タンパク質またはペプチドである、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合したRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【請求項4】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドである、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合した脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【請求項6】
RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合した脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【請求項7】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、前記RNAに結合する前に脂質化される、請求項4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、脂肪酸、イソプレノイド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質部分で脂質化される、請求項4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
前記脂肪酸が、トリグリセリド、リン脂質、またはコレステリルエステルである、請求項8に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、N末端及び/またはC末端の求核性側鎖上で脂質化される、請求項4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記求核性側鎖が、システイン、セリン、トレオニン、チロシン及び/またはリジンアミノ酸残基である、請求項10に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、パルミトイル化、ミリストイル化、脂肪酸アシル化、エステル化、プレニル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される、請求項4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、N末端システインパルミトイル化、N末端グリシンミリストイル化、リジンN-アシル化、C末端コレステロールエステル化、システインプレニル化、セリンO-アシル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される、請求項12に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記プレニル化がファルネシル化またはゲラニルゲラニル化である、請求項9に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記脂質部分が、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合及び/またはアミド結合によって前記RNA結合タンパク質またはペプチドに連結される、請求項8に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項16】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、化学的脂質化または酵素的脂質化を使用して脂質化される、請求項4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項17】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、化学的ライゲーション、クリックケミストリー、発現タンパク質ライゲーション及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的脂質化を使用して脂質化される、請求項16に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項18】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、ソルターゼA媒介脂質化、トランスグルタミナーゼ媒介脂質化、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素的脂質化を使用して脂質化される、請求項16に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項19】
前記酵素的脂質化がin vivoまたはin vitroで行われる、請求項18に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが前記RNAを封入する、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項21】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、前記RNAに直接結合する、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項22】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、
a)前記脂質ナノ粒子の毒性を低減し、及び/または
b)前記RNAを安定化し、及び/または
c)前記RNAを分解から保護し、及び/または
d)前記脂質ナノ粒子の核形成を促進し、及び/または
e)1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項23】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、核局在化シグナル(複数可)を除去し、及び/または核外搬出シグナル(複数可)を導入するように修飾される、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項24】
前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、ウイルスまたは非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドである、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項25】
前記ウイルスRNA結合タンパク質が、クラスIII、クラスIV、クラスV、及び/またはクラスVIウイルス由来である、請求項24に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項26】
前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス及びボカウイルスからなる群から選択される呼吸器ウイルスである、請求項25に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項27】
前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、核タンパク質、非構造タンパク質、基質タンパク質、及び/またはヌクレオカプシドタンパク質である、請求項26に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項28】
前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、B型インフルエンザウイルス由来の非構造(NS)タンパク質である、請求項24に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項29】
前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、配列番号9~11のいずれか1つに記載の配列を含む、請求項24に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項30】
前記非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、細胞増殖、細胞シグナル伝達及び/または抗ウイルス経路に関連する細胞タンパク質に由来する、請求項24に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項31】
前記細胞タンパク質が、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、プロテインキナーゼR(PKR)RNA結合タンパク質、Toll様受容体3(TLR-3)結合タンパク質、TLR-7結合タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項32】
前記細胞タンパク質が、配列番号1~8のいずれか1つに記載の配列を含む、請求項30に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項33】
前記脂質ナノ粒子が、PEG脂質、構造脂質、イオン化可能な脂質及び/または中性脂質をさらに含む、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項34】
カチオン性脂質を含まない、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項35】
前記RNAが、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びアンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項36】
前記mRNAが自己複製mRNA(sa-mRNA)または従来のRNA(cRNA)である、請求項35に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項37】
請求項3に記載の脂質ナノ粒子を含む免疫原性組成物。
【請求項38】
請求項3に記載の脂質ナノ粒子または請求項37に記載の免疫原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項39】
治療に使用するための、請求項3に記載の脂質ナノ粒子、請求項37に記載の免疫原性組成物、または請求項38に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2021年10月6日に出願された「Lipid nanoparticle comprising a RNA-binding protein」と題するオーストラリア特許出願第2021903192号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに出願される。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子及びその使用に関し、脂質ナノ粒子は、RNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチド(例えば、RNA結合タンパク質)をその中に含む。
【背景技術】
【0004】
核酸ワクチンは、現在進行中の2019年重症感染症コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックの原因となっている重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する核酸ワクチンを含めて、様々な疾患の治療及び予防に対する有望なアプローチとして最近浮上している。
【0005】
mRNAワクチンは、宿主細胞の細胞質へのmRNAの送達に依存しており、そこでmRNAは抗原タンパク質に転写されて中和抗体の産生を誘発する。しかし、mRNAはサイズが大きく、負に帯電しているため、細胞取り込みが妨げられる。したがって、リポソームまたは脂質ナノ粒子などの脂質送達ビヒクルを使用してmRNAを封入し、血漿中でのRNAの分解を阻害すると同時に、細胞取り込みを促進してmRNAをin vivoで効率的に送達する。
【0006】
脂質送達ビヒクルは、通常、カチオン性脂質と、イオン化可能な脂質、中性脂質、コレステロール、及びPEG化脂質などの他のイオン化可能な脂質成分とから形成される。カチオン性脂質は、1つ以上の炭化水素基を含む親油性領域と、少なくとも1つの正に荷電した極性頭部基を含む親水性領域とを有する両親媒性分子である。カチオン性脂質と核酸は正に荷電した複合体を形成し、核酸が細胞の細胞膜を通過して細胞質に入りやすくなる。
【0007】
しかし、カチオン性脂質のいくつかの有害な細胞毒性効果が知られており、これには、活性酸素種の生成や、人間の不十分な分解による血漿中への蓄積が含まれる。したがって、核酸を分解及び除去から保護し、効果的な細胞内送達及び/またはmRNAの発現/翻訳を提供することができる新規脂質または特定の脂質組成物を同定することに多くの努力が注がれてきた。さらに、有効量の核酸による治療が患者にとって許容できない毒性及び/またはリスクを伴うことがないよう、これらの脂質-核酸粒子は忍容性が高く、適切な治療指数を提供する必要がある。
【0008】
したがって、RNAなどのオリゴヌクレオチドを送達するための改善された脂質ナノ粒子が引き続き必要とされることは、当業者には明らかであろう。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、RNA結合タンパク質もしくはペプチド、または脂質化されたRNA結合タンパク質もしくはペプチドを脂質ナノ粒子に組み込むと、関連するRNAの安定性が増加し、及び/または脂質ナノ粒子の核形成が促進され、及び/または脂質ナノ粒子の毒性及び/または有害な副作用が軽減されるという本発明者らの発見に基づいている。本発明者らはまた、RNA結合タンパク質またはペプチドを脂質ナノ粒子に組み込むことにより、toll様受容体(TLR)刺激/誘導を防ぐことができることを確認した。本発明者らはさらに、核酸結合タンパク質またはペプチド(すなわち、RNA結合タンパク質及びDNA結合タンパク質)を脂質ナノ粒子に組み込むことが保護的であることを確認した。
【0010】
概して、本発明者らによる発見は、核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子の基礎を提供する。本発明者らによる発見はまた、脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子の基礎を提供する。
【0011】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNA結合タンパク質またはペプチドである。一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNA結合タンパク質またはDNA結合タンパク質である。
【0012】
本発明者らの発見は、RNA結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子の基礎を提供する。本発明者らによる発見はさらに、脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子の基礎を提供する。本発明者らによる発見はまた、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子の基礎を提供する。
【0013】
さらに、本発明者らによる発見は、脂質ナノ粒子をワクチンまたは治療薬として使用する方法の基礎を提供する。
【0014】
したがって、本開示は、RNA(例えば、mRNA)を送達するための脂質ナノ粒子を提供し、この脂質ナノ粒子は、RNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチドをその中に含む。
【0015】
したがって、本開示は、RNA(例えば、mRNA)を送達するための脂質ナノ粒子を提供し、この脂質ナノ粒子は、RNAに結合したRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む。
【0016】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドである。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドである。
【0017】
したがって、本開示は、RNA(例えば、mRNA)を送達するための脂質ナノ粒子を提供し、この脂質ナノ粒子は、RNAに結合した脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドをその中に含む。
【0018】
したがって、本開示は、RNA(例えば、mRNA)を送達するための脂質ナノ粒子を提供し、この脂質ナノ粒子は、RNAに結合した脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む。
【0019】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAに結合する前に脂質化される。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAに結合した後に脂質化される。
【0020】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂肪酸、イソプレノイド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質部分で脂質化される。
【0021】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂肪酸で脂質化される。例えば、脂肪酸は、トリグリセリド、リン脂質、またはコレステリルエステルである。一例では、脂肪酸はトリグリセリドである。別の例では、脂肪酸はリン脂質である。さらなる例では、脂肪酸はコレステリルエステルである。
【0022】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、イソプレノイドで脂質化される。例えば、イソプレノイドはイソプレンである。
【0023】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、N末端及び/またはC末端の求核性側鎖上で脂質化される。
【0024】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、求核性側鎖上で脂質化される。例えば、システイン、セリン、トレオニン、チロシン及び/またはリジンアミノ酸残基上で脂質化される。一例では、求核性側鎖はシステイン残基である。別の例では、求核性側鎖はセリン残基である。さらなる例では、求核性側鎖はトレオニン残基である。一例では、求核性側鎖はチロシン残基である。別の例では、求核性側鎖はリジン残基である。
【0025】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、タンパク質またはペプチドのN末端で脂質化される。
【0026】
RNA結合タンパク質またはペプチドのN末端が核局在化シグナル(複数可)(もしくは配列)及び/または核外搬出シグナルを含むことは当業者には明らかであろう。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、核局在化シグナル(複数可)を除去し、及び/または核外搬出シグナル(複数可)を導入するように修飾される。
【0027】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、核局在化シグナルを除去するように修飾される。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、核局在化シグナル(複数可)を不活性化または除去するように修飾される。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、核局在化シグナル(複数可)(または配列)を含まない。当業者であれば、核局在化シグナルは、タンパク質表面上に露出した正に荷電したリジンまたはアルギニンの1つ以上の配列であり、核輸送によって細胞核に移入するためのタンパク質をタグ付けすることを理解するであろう。核局在化シグナルを修飾する方法は当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例えば、核局在化シグナルは脂質化されるか、除去されるか、または不活性化される。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドのN末端の核局在化シグナルが脂質化される。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドのN末端の核局在化シグナルが除去される。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドのN末端の核局在化シグナルが不活性化される。
【0028】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、核外搬出シグナルを導入するように修飾される。当業者であれば、核外搬出シグナルは、核膜孔複合体を通って細胞核から細胞質に搬出するためのタンパク質を標的とする短いロイシンリッチモチーフであることを理解するであろう。核外搬出シグナルを導入する方法は当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0029】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、タンパク質またはペプチドのC末端で脂質化される。
【0030】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、パルミトイル化、ミリストイル化、脂肪酸アシル化、エステル化、プレニル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される。
【0031】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、パルミトイル化によって脂質化される。例えば、N末端システインパルミトイル化によって脂質化される。
【0032】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、ミリストイル化によって脂質化される。例えば、N末端グリシンミリストイル化によって脂質化される。
【0033】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂肪酸アシル化によって脂質化される。例えば、リジンN-アシル化によって脂質化される。別の例では、セリンO-アシル化によって脂質化される。
【0034】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、エステル化によって脂質化される。例えば、C末端コレステロールエステル化によって脂質化される。
【0035】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、プレニル化によって脂質化される。例えば、プレニル化は、ファルネシル化またはゲラニルゲラニル化である。一例では、プレニル化はシステインプレニル化である。
【0036】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、N末端システインパルミトイル化、N末端グリシンミリストイル化、リジンN-アシル化、C末端コレステロールエステル化、システインプレニル化、セリンO-アシル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される。
【0037】
一例では、脂質部分は、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合及び/またはアミド結合によってRNA結合タンパク質またはペプチドに連結される。
【0038】
一例では、脂質部分は、チオエーテル結合によってRNA結合タンパク質またはペプチドに連結される。
【0039】
一例では、脂質部分は、エステル結合によってRNA結合タンパク質またはペプチドに連結される。
【0040】
一例では、脂質部分は、チオエステル結合によってRNA結合タンパク質またはペプチドに連結される。
【0041】
一例では、脂質部分は、アミド結合によってRNA結合タンパク質またはペプチドに連結される。
【0042】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、化学的脂質化または酵素的脂質化を使用して脂質化される。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、化学的脂質化を使用して脂質化される。一例では、化学的脂質化は、化学的ライゲーション、クリックケミストリー、発現タンパク質ライゲーション、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、酵素的脂質化を使用して脂質化される。例えば、酵素的脂質化は、ソルターゼA媒介脂質化、トランスグルタミナーゼ媒介脂質化、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一例では、酵素的脂質化はin vivoまたはin vitroで行われる。例えば、酵素的脂質化はin vivoで行われる。別の例では、酵素的脂質化はin vitroで行われる。
【0043】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAに直接結合する。別の例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAを脂質ナノ粒子に配合する前にRNAに結合する。さらなる例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAを脂質ナノ粒子に配合した後に脂質ナノ粒子内のRNAに結合し、ここで、核酸結合タンパク質またはペプチドは脂質ナノ粒子内にある。例えば、核酸結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子に封入されたRNAに結合する。
【0044】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子の表面上のRNAにさらに結合する。このような状況では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子内及び脂質ナノ粒子の表面上に存在することになる。脂質ナノ粒子の表面上の核酸結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子内のRNA結合タンパク質またはペプチドと同じである必要はない。
【0045】
例えば、脂質ナノ粒子は、その中のRNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチドで形成することができ、次いで、形成された脂質ナノ粒子を核酸結合タンパク質またはペプチドでコーティングして、任意の封入されていない及び/または部分的に封入されたRNAに結合させることができる。
【0046】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAを封入する。別の例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAのN末端及び/またはC末端の求核性側鎖に結合する。一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAの求核性側鎖に結合する。別の例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、RNAのN末端及び/またはC末端で結合する。例えば、RNAのN末端で結合する。別の例では、RNAのC末端で結合する。例えば、核酸結合タンパク質またはペプチドはRNAを封入しない。
【0047】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドはRNAに直接結合する。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAを脂質ナノ粒子に配合する前にRNAに結合する。さらなる例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAを脂質ナノ粒子に配合した後に脂質ナノ粒子内のRNAに結合し、ここで、RNA結合タンパク質またはペプチドは脂質ナノ粒子内にある。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子に封入されたRNAに結合する。
【0048】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子の表面上のRNAにさらに結合する。このような状況では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子内及び脂質ナノ粒子の表面上に存在することになる。脂質ナノ粒子の表面上のRNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子内のRNA結合タンパク質またはペプチドと同じである必要はない。
【0049】
例えば、脂質ナノ粒子は、その中のRNAに結合したRNA結合タンパク質またはペプチドで形成することができ、次いで、形成された脂質ナノ粒子をRNA結合タンパク質またはペプチドでコーティングして、任意の封入されていない及び/または部分的に封入されたRNAに結合させることができる。
【0050】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAを封入する。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAのN末端及び/またはC末端の求核性側鎖に結合する。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAの求核性側鎖に結合する。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAのN末端及び/またはC末端で結合する。例えば、RNAのN末端で結合する。別の例では、RNAのC末端で結合する。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドはRNAを封入しない。
【0051】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、
a)脂質ナノ粒子の毒性を軽減し、
b)RNAを安定化させ、
c)RNAを分解から保護し、
d)脂質ナノ粒子の核形成を促進し、及び/または
e)1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する。
【0052】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、
a)脂質ナノ粒子の毒性を軽減し、
b)RNAを安定化させ、
c)RNAを分解から保護し、
d)脂質ナノ粒子の核形成を促進し、及び/または
e)1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する。
【0053】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子の毒性を軽減する。
【0054】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAを安定化する。
【0055】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAを分解から保護する。
【0056】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質ナノ粒子の核形成を促進する。
【0057】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害しない。
【0058】
当業者であれば、RNAなどの核酸を認識して結合する一連のToll様受容体、すなわちTLR3、TLR7、TLR8及びTLR9を含むエンドソームToll様受容体が存在することを理解するであろう。これらの受容体の活性化により、炎症性サイトカイン及びI型インターフェロン(インターフェロンI型)が産生される。
【0059】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、1つ以上のエンドソームToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、TLR3、TLR7、TLR8及びTLR9からなる群から選択される1つ以数のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、TLR3によるシグナル伝達の誘導を阻害する。別の例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、TLR7/9によるシグナル伝達の誘導を阻害する。さらなる例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、TLR8によるシグナル伝達の誘導を阻害する。
【0060】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、リンカーによって連結された2つのRNA結合タンパク質またはペプチド(すなわち、第1及び第2のRNA結合タンパク質またはペプチド)である。例えば、第1及び第2のRNA結合タンパク質またはペプチドは、アミド結合によって共有結合している。本開示は、他の形態の共有結合及び非共有結合を包含する。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、化学リンカーによって連結することができる。
【0061】
一例では、リンカーは柔軟なリンカー、例えば柔軟なペプチドリンカーである。例えば、第1のRNA結合タンパク質またはペプチドは、柔軟なリンカーを介して第2のRNA結合タンパク質に連結される。
【0062】
一例では、リンカーはペプチドリンカーである。例えば、第1のRNA結合タンパク質またはペプチドは、リンカーを介して第2のRNA結合タンパク質またはペプチドに連結されており、ここで、リンカーは長さが2~31個のアミノ酸のペプチドリンカーである。一例では、リンカーは配列(GlySer)を含み、ここでnは1~6である。例えば、リンカーは、配列SGGGGS(GS6)または配列SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(GS31)を含む。別の例では、リンカーは、配列(Ala)を含み、ここでnは2~31である。
【0063】
一例では、リンカーは剛性リンカーである。例えば、剛性リンカーは配列(EAAAK)を含み、ここで、nは1~3である。一例では、剛性リンカーは(EAAAK)を含み、ここで、nは1~10または約1~100である。例えば、nは少なくとも1、または少なくとも2、または少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10である。一例では、nは100未満である。例えば、nは、90未満、または約80未満、または約60未満、または約50未満、または約40未満、または約30未満、または約20未満、または約10未満である。
【0064】
一例では、核酸結合タンパク質またはペプチドは、ウイルスまたは非ウイルス核酸結合タンパク質またはペプチドである。例えば、核酸結合タンパク質はウイルス核酸結合タンパク質である。別の例では、核酸結合タンパク質は非ウイルス核酸結合タンパク質である。
【0065】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、ウイルスまたは非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドである。
【0066】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドはウイルスRNA結合タンパク質である。例えば、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、クラスIII、クラスIV、クラスV、及び/またはクラスIVウイルス由来である。一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドはクラスIIIウイルス由来である。別の例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドはクラスIVウイルス由来である。さらなる例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドはクラスVウイルス由来である。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドはクラスVIウイルス由来である。
【0067】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス及びボカウイルスからなる群から選択される呼吸器ウイルス由来である。
【0068】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドはインフルエンザウイルス由来である。例えば、インフルエンザウイルスはA型インフルエンザである。別の例では、インフルエンザウイルスはB型インフルエンザである。
【0069】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、呼吸器合胞体ウイルス由来である。
【0070】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、パラインフルエンザウイルス由来である。
【0071】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、メタニューモウイルス由来である。
【0072】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、ライノウイルス由来である。
【0073】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、コロナウイルス由来である。例えば、コロナウイルスは重症急性呼吸器疾患2(SARS-CoV 2)である。
【0074】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、アデノウイルス由来である。
【0075】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、ボカウイルス由来である。
【0076】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、核タンパク質、非構造タンパク質、基質タンパク質、及び/またはヌクレオカプシドタンパク質である。例えば、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは核タンパク質である。別の例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは基質タンパク質である。さらなる例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは核タンパク質である。別の例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは非構造タンパク質である。
【0077】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、配列番号9~11のいずれか1つに記載の配列を含む。
【0078】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、B型インフルエンザウイルス由来の非構造(NS)タンパク質である。例えば、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメイン(RBD)である。一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、B型インフルエンザNS1 RBDAである。別の例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、B型インフルエンザNS1 RBDBである。さらに別の例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、B型インフルエンザNS1 RBDCである。一例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは全長結合ドメインである。別の例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは切断型結合ドメインである。さらなる例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは修飾された結合ドメインである。一例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは配列番号9に記載されている。別の例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは配列番号10に記載されている。さらなる例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは配列番号11に記載されている。一例では、B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインは、配列番号11に記載の第1のB型インフルエンザNS1 RNA結合ドメイン及び配列番号10に記載の第2のB型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインを含む修飾された結合ドメインであり、ここで、第1及び第2のRNA結合ドメインは、適切なリンカーによって連結される。例えば、第1のB型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインの3’末端は、第2のB型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインの5’末端に連結される。
【0079】
一例では、ウイルス核酸結合タンパク質は、ヘパドナウイルス由来である。例えば、ヘパドナウイルスはB型肝炎ウイルス(HBV)である。
【0080】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは核タンパク質であり、ここで、RNA結合タンパク質またはペプチドはRNAを封入し、RNAを安定化し、1つ以上のエンドソームToll様受容体(例えば、TLR3、TLR7、TLR8及び/またはTLR9)によるシグナル伝達の誘導を阻害する。
【0081】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドはヌクレオカプシドであり、ここで、RNA結合タンパク質またはペプチドはRNAを封入し、RNAを安定化し、1つ以上のエンドソームToll様受容体(例えば、TLR3、TLR7、TLR8及び/またはTLR9)によるシグナル伝達の誘導を阻害する。
【0082】
一例では、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは基質タンパク質であり、ここで、RNA結合タンパク質またはペプチドはRNAに結合し、RNAを安定化するが、1つ以上のエンドソームToll様受容体(例えば、TLR3、TLR7、TLR8及び/またはTLR9)によるシグナル伝達の誘導を阻害しない。
【0083】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドである。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、細胞タンパク質に由来する非ウイルスタンパク質またはペプチドである。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、細胞増殖、細胞シグナル伝達及び/または抗ウイルス経路に関連する細胞タンパク質に由来する。
【0084】
一例では、細胞タンパク質は、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、プロテインキナーゼR(PKR)RNA結合タンパク質、Toll様受容体3(TLR-3)結合タンパク質、TLR-7結合タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0085】
一例では、細胞タンパク質は、配列番号1~8のいずれか1つに記載の配列を含む。
【0086】
一例では、細胞タンパク質はTAR RNA結合タンパク質(TRBP)である。例えば、細胞タンパク質はTRBP RNA結合ドメイン(RBD)2である。一例では、細胞タンパク質はTRBP RBDAである。別の例では、細胞タンパク質はTRBP RBDBである。一例では、TRBP RNA結合ドメイン2は全長である。例えば、全長TRBP RNA結合ドメイン2は、配列番号1に記載されている。別の例では、TRBP RNA結合ドメイン2は、切断型結合ドメインである。例えば、切断型TRBP RNA結合ドメイン2は、配列番号2に記載されている。
【0087】
一例では、細胞タンパク質は、プロテインキナーゼR(PKR)RNA結合タンパク質である。例えば、細胞タンパク質は、PKR RNA結合モチーフ2である。一例では、細胞タンパク質は、PKR RNA結合ドメイン(RBD)である。別の例では、細胞タンパク質はPKR RBDAである。さらなる例では、細胞タンパク質はPKR RBDBである。一例では、PKR RNA結合モチーフ2は全長結合モチーフである。例えば、全長PKR RNA結合モチーフ2は、配列番号3に記載されている。別の例では、PKR RNA結合モチーフ2は、切断型結合モチーフである。例えば、切断型PKR RNA結合モチーフ2は配列番号4に記載されている。別の例では、切断型PKR RNA結合モチーフ2は配列番号5に記載されている。
【0088】
一例では、細胞タンパク質はTLR-3 dsRNA結合ドメイン1である。例えば、細胞タンパク質はTLR-3 dsRNA結合ドメイン1(ロイシンリッチリピート1~3)である。別の例では、細胞タンパク質はTLR-3 dsRNA結合ドメイン1(ロイシンリッチリピート17~18)である。一例では、TLR-3 dsRNA結合ドメイン1は配列番号6に記載される。さらなる例では、TLR-3 dsRNA結合ドメイン1は配列番号7に記載されている。別の例では、TLR-3は、TLR-3ロイシンリッチリピート(LRR)Aである。さらに別の例では、TLR-3は、TLR-3 LRRBである。
【0089】
一例では、細胞タンパク質はTLR-7 RNA結合部位である。例えば、細胞タンパク質はTLR-7 RNA結合部位(ロイシンリッチリピート14~15)である。一例では、TLR-7 RNA結合部位は配列番号8に記載されている。別の例では、TLR-7はTLR-7ロイシンリッチリピート(LRR)Aである。
【0090】
一例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質及び/または中性脂質をさらに含む。例えば、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質及び中性脂質をさらに含む。別の例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質、または中性脂質をさらに含む。一例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質、イオン化可能な脂質及び/または中性脂質をさらに含む。例えば、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質、イオン化可能な脂質、及び中性脂質をさらに含む。別の例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、構造脂質、イオン化可能な脂質、または中性脂質をさらに含む。
【0091】
一例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質をさらに含む。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、PEG-DSPE脂質及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0092】
一例では、脂質ナノ粒子は、構造脂質をさらに含む。例えば、構造脂質は、コレステロール、カンペステロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0093】
一例では、脂質ナノ粒子は中性脂質をさらに含む。例えば、中性脂質は、DSPC、DOPE、DLPC、DMPC、DOPC、DPPC、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0094】
一例では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質をさらに含む。
【0095】
一例では、イオン化可能な脂質は、3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]-N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタン(KL25)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、(2R)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2R))、(2S)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2S))、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、2,5-ビス((9z,12z)-オクタデカ-9,12,ジエン-1-イルオキシル)ベンジル-4-(ジメチルアミノ)ブノエート(LKY750)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸、1-オクチルノニルエステル(ヘプタデカン-9-イル8-[2-ヒドロキシエチル-(6-オキソ-6-ウンデコキシヘキシル)アミノ]オクタノエートとも呼ばれる)(SM-102)、2-ヘキシルデカン酸、1,1’-[[(4-ヒドロキシブチル)イミノ]ジ-6,1-ヘキサンジイル]エステル(((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)とも呼ばれる)(ALC-0315)、4-(ジメチルアミノ)-ブタン酸、(10Z,13Z)-1-(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン-1-イル-10,13-ノナデカジエン-1-イルエステル(DLin-MC3-DMAまたはMC3)、((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート))、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸、1-オクチルノニルエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0096】
一例では、脂質ナノ粒子はイオン化可能な脂質を含まない。
【0097】
一例では、脂質ナノ粒子はカチオン性脂質を含まない。
【0098】
一例では、脂質ナノ粒子は、約80nm~200nmの平均粒径を有する。例えば、脂質ナノ粒子は、約100nm~200nmの平均粒径を有する。一例では、脂質ナノ粒子は、約100nm~190nm、または約100nm~180nm、または約110nm~180nm、または約110nm~150nm、または約110nm~140nm、または約110nm~130nmの平均粒径を有する。例えば、脂質ナノ粒子は、約125nmの平均粒径を有する。一例では、脂質ナノ粒子は、約150~200nmの平均粒径を有する。一例では、脂質ナノ粒子は、約160~200nmの平均粒径を有する。例えば、脂質ナノ粒子は、約160nm、または約165nm、または約170nm、または約175nm、または約180nm、または約185nm、または約190nm、または約200nmの平均粒径を有する。一例では、平均粒径は、脂質ナノ粒子のZ平均直径を測定することによって決定される。
【0099】
一例では、脂質ナノ粒子は、約2~約10の窒素対リン酸比を有する。例えば、脂質ナノ粒子は、約2、または約2.5、または約3、または約3.5、または約4、または約4.5、または約5、または約5.5、または約6、または約6.5、または約7、または約7.5、または約8、または約8.5、または約9、または約9.5、または約10の窒素対リン酸比を有する。一例では、脂質ナノ粒子は、約3の窒素対リン酸比を有する。別の例では、脂質ナノ粒子は、約4.5の窒素対リン酸比を有する。さらなる例では、脂質ナノ粒子は、約6の窒素対リン酸比を有する。
【0100】
一例では、RNAの少なくとも50%が脂質ナノ粒子内に封入される。例えば、RNAの少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が脂質ナノ粒子内に封入される。一例では、RNAの少なくとも80%が封入される。別の例では、RNAの少なくとも85%が封入される。封入効率(または封入パーセント)が、蛍光(例えば、RiboGreenを使用して)及び/または電子顕微鏡写真を使用して、本開示の医薬組成物またはmRNAの脱出または活性を測定することによって決定され得ることは、当業者に明らかであろう。
【0101】
一例では、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びアンチセンスRNAからなる群から選択される。
【0102】
一例では、RNAはmRNAである。例えば、mRNAは、自己複製mRNA(sa-mRNA)または従来のmRNA(cRNA)である。一例では、mRNAはsa-mRNAである。別の例では、mRNAはcRNAである。
【0103】
一例では、RNAはsiRNAである。
【0104】
一例では、RNAはmiRNAである。
【0105】
一例では、RNAはアンチセンスRNAである。
【0106】
本開示はまた、本開示の脂質ナノ粒子を含む免疫原性組成物を提供する。例えば、本開示の組成物は、投与されると、対象において免疫応答を誘導することができる。例えば、組成物の投与は、液性免疫応答及び/または細胞性免疫応答を誘導する。一例では、組成物は対象において液性免疫応答を誘導する。例えば、液性免疫応答は、抗体媒介性免疫応答である。別の例では、組成物は、細胞性免疫応答を誘導する。例えば、細胞性免疫応答には、抗原特異的細胞傷害性T細胞の活性化が含まれる。
【0107】
本開示はまた、本開示の免疫原性組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本開示での使用に適した薬学的に許容される担体は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0108】
本開示はまた、治療に使用するための本開示の免疫原性組成物または医薬組成物を提供する。例えば、本開示の免疫原性組成物または医薬組成物は、ワクチンとしての使用に適している。
【0109】
一例では、本開示の免疫原性組成物または医薬組成物は、バイアルで供給される。別の例では、本開示の免疫原性組成物または医薬組成物は、注射器で供給される。
【0110】
一例では、本開示の免疫原性組成物または医薬組成物は、4℃で少なくとも60日間安定である。別の例では、本開示の免疫原性組成物または医薬組成物は、4℃で少なくとも90日間安定である。
【0111】
本開示の追加の実施形態は以下のとおりである。
【0112】
1.RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合したRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【0113】
2.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドである、1に記載の脂質ナノ粒子。
【0114】
3.RNAを送達するための脂質ナノ粒子であって、前記RNAに結合した脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドをその中に含む、前記脂質ナノ粒子。
【0115】
4.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、前記RNAに結合する前に脂質化される、2または3に記載の脂質ナノ粒子。
【0116】
5.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、脂肪酸、イソプレノイド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質部分で脂質化される、2~4のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0117】
6.前記脂肪酸が、トリグリセリド、リン脂質、またはコレステリルエステルである、5に記載の脂質ナノ粒子。
【0118】
7.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、N末端及び/またはC末端の求核性側鎖上で脂質化される、2~6のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0119】
8.前記求核性側鎖が、システイン、セリン、トレオニン、チロシン及び/またはリジンアミノ酸残基である、7に記載の脂質ナノ粒子。
【0120】
9.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、パルミトイル化、ミリストイル化、脂肪酸アシル化、エステル化、プレニル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される、2~8のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0121】
10.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、N末端システインパルミトイル化、N末端グリシンミリストイル化、リジンN-アシル化、C末端コレステロールエステル化、システインプレニル化、セリンO-アシル化、またはそれらの組み合わせによって脂質化される、9に記載の脂質ナノ粒子。
【0122】
11.前記プレニル化がファルネシル化またはゲラニルゲラニル化である、9または10に記載の脂質ナノ粒子。
【0123】
12.前記脂質部分が、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合及び/またはアミド結合によって前記RNA結合タンパク質またはペプチドに連結される、5~11のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0124】
13.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、化学的脂質化または酵素的脂質化を使用して脂質化される、2~12のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0125】
14.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、化学的ライゲーション、クリックケミストリー、発現タンパク質ライゲーション及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的脂質化を使用して脂質化される、13に記載の脂質ナノ粒子。
【0126】
15.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、ソルターゼA媒介脂質化、トランスグルタミナーゼ媒介脂質化、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素的脂質化を使用して脂質化される、13に記載の脂質ナノ粒子。
【0127】
16.前記酵素的脂質化がin vivoまたはin vitroで行われる、15に記載の脂質ナノ粒子。
【0128】
17.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが前記RNAを封入する、1~16のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0129】
18.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、前記RNAに直接結合する、1~17のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0130】
19.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、
a)前記脂質ナノ粒子の毒性を低減し、及び/または
b)前記RNAを安定化し、及び/または
c)前記RNAを分解から保護し、及び/または
d)前記脂質ナノ粒子の核形成を促進し、及び/または
e)1つ以上のToll様受容体によるシグナル伝達の誘導を阻害する、1~18のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0131】
20.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、核局在化シグナル(複数可)を除去し、及び/または核外搬出シグナル(複数可)を導入するように修飾される、1~19のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0132】
21.前記RNA結合タンパク質またはペプチドが、ウイルスまたは非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドである、1~20のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0133】
22.前記ウイルスRNA結合タンパク質が、クラスIII、クラスIV、クラスV、及び/またはクラスVIウイルス由来である、21に記載の脂質ナノ粒子。
【0134】
23.前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス及びボカウイルスからなる群から選択される呼吸器ウイルスである、22に記載の脂質ナノ粒子。
【0135】
24.前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、核タンパク質、非構造タンパク質、基質タンパク質、及び/またはヌクレオカプシドタンパク質である、23に記載の脂質ナノ粒子。
【0136】
25.前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、B型インフルエンザウイルス由来の非構造(NS)タンパク質である、21~24のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0137】
26.前記ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、配列番号9~11のいずれか1つに記載の配列を含む、21~25のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0138】
27.前記非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドが、細胞増殖、細胞シグナル伝達及び/または抗ウイルス経路に関連する細胞タンパク質に由来する、21に記載の脂質ナノ粒子。
【0139】
28.前記細胞タンパク質が、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、プロテインキナーゼR(PKR)RNA結合タンパク質、Toll様受容体3(TLR-3)結合タンパク質、TLR-7結合タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、27に記載の脂質ナノ粒子。
【0140】
29.前記細胞タンパク質が、配列番号1~8のいずれか1つに記載の配列を含む、27または28に記載の脂質ナノ粒子。
【0141】
30.前記脂質ナノ粒子が、PEG脂質、構造脂質、及び/または中性脂質をさらに含む、1~29のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0142】
31.カチオン性脂質を含まない、1~30のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0143】
32.前記RNAが、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びアンチセンスRNAからなる群から選択される、1~31のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
【0144】
33.前記mRNAが自己複製mRNA(sa-mRNA)または従来のRNA(cRNA)である、29に記載の脂質ナノ粒子。
【0145】
34.1~33のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子を含む免疫原性組成物。
【0146】
35.1~33のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子または34に記載の免疫原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【0147】
36.治療に使用するための、1~33のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、34に記載の免疫原性組成物、または35に記載の医薬組成物。
【0148】
配列表の鍵
配列番号1 全長TAR RNA結合タンパク質ドメイン2のアミノ酸配列
配列番号2 切断型TAR RNA結合タンパク質ドメイン2のアミノ酸配列
配列番号3 プロテインキナーゼR RNA結合モチーフ2のアミノ酸配列
配列番号4 切断型プロテインキナーゼR RNA結合モチーフ2(#1)
のアミノ酸配列
配列番号5 切断型プロテインキナーゼR RNA結合モチーフ2(#2)
のアミノ酸配列
配列番号6 Toll様受容体3 dsRNA結合ドメイン1(ロイシンリッチ
リピート1~3)のアミノ酸配列
配列番号7 Toll様受容体3 dsRNA結合ドメイン1(ロイシンリッチ
リピート17~18)のアミノ酸配列
配列番号8 Toll様受容体7 RNA結合部位(ロイシンリッチリピート
14~15)のアミノ酸配列
配列番号9 B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインのアミノ酸配列
配列番号10 切断型B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインのアミノ酸
配列
配列番号11 改変型B型インフルエンザNS1 RNA結合ドメインのアミノ酸
配列
【図面の簡単な説明】
【0149】
図1】ナノルシフェラーゼRNA(nLuc RNA)単独、またはインフルエンザウイルスRNAフリー核タンパク質(NP:nLuc RNA)との組み合わせにおける発光を相対発光量(RLU)で測定することにより評価したルシフェラーゼ産生量によって測定したRNAの量を示すウサギ網状赤血球溶解物アッセイのグラフ表示である。
図2】熱不安定性プロテイナーゼK(PK)及び/またはRNaseを使用してまたは使用せずに処理した後の(A)NP:nLuc RNAサンプル及び(B)nLuc RNA単独サンプル中のRNAの量のグラフ表示である。
図3】最大96時間のインキュベーション後の、(A)4℃、(B)24℃、及び(C)37℃でのnLuc RNA単独サンプル及びNP:nLuc RNAサンプルにおけるnLuc RNAの安定性を示す一連のグラフ表示である。
図4A】インキュベーション後2時間及び4時間でのnLuc RNA単独サンプル及びNP:nLuc RNAサンプルにおけるTLR3誘導のレベルを示すグラフ表示である。
図4B】インキュベーション後2時間及び4時間でのnLuc RNA単独サンプル及びNP:nLuc RNAサンプルにおけるTLR3誘導のレベルを示すグラフ表示である。
図4C】インキュベーション後2時間及び4時間でのnLuc RNA単独サンプル及びNP:nLuc RNAサンプルにおけるTLR8誘導のレベルを示すグラフ表示である。
図4D】インキュベーション後2時間及び4時間でのnLuc RNA単独サンプル及びNP:nLuc RNAサンプルにおけるTLR8誘導のレベルを示すグラフ表示である。
図5】(A)ナノルシフェラーゼRNA(RNA)単独、またはCOVID RNAフリーヌクレオカプシド(RNA+NP(SCov2))との組み合わせにおける発光をRLUで測定することにより評価したルシフェラーゼ産生量によって測定したSARS-CoV-2ヌクレオカプシドによるRNA分解の保護、及び(B)COVID RNAフリーヌクレオカプシドを使用した場合と使用しない場合のnLuc RNAの色素排除エッセイを示す一連のグラフ表示である。
図6】遊離RNAと比較して、RNAと反応したRNA結合ペプチドが提供する保護レベルを示すグラフ表示である。破線は、遊離RNA及び100%保護と同等の、ペプチドが存在しない場合の保護レベル(LHS)を表す。
図7A】RNase阻害剤なしの場合のNP:nLuc RNAサンプルにおけるnLuc RNAの発現を示すグラフ表示である。
図7B】RNase阻害剤ありの場合のNP:nLuc RNAサンプルにおけるnLuc RNAの発現を示すグラフ表示である。
図7C】RNase阻害剤なしの場合のNP:nLuc RNAサンプルにおけるnLuc RNAの発現を示すグラフ表示である。
図7D】RNase阻害剤ありの場合のNP:nLuc RNAサンプルにおけるnLuc RNAの発現を示すグラフ表示である。
図8】NP:nLuc RNA及びnLuc RNAでトランスフェクトしたHela細胞におけるnLuc発現(相対発光量、RLUとして測定)を示すグラフ表示である。
図9】脾臓及び肝臓におけるnLuc RNA発現を示すグラフ表示である。
図10】nLuc mRNAまたはNP-nLuc mRNAを配合したLNPの、最大90日間のインキュベーション後の4℃での経時的な安定性を示すグラフ表示である。
図11A】0:1.5のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図11B】5:1.5のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図11C】10:1.5のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図11D】15:15のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図11E】20:1.5のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図11F】50:1.5のMC3:PEG比での、nLuc mRNAを配合したLNP、並びにnLuc mRNA及び核タンパク質(NP)を配合したLNPの生体内分布を示すグラフ表示である。
図12A】窒素対リン酸比を変化させた場合のLNPサイズを示すmRNAまたはmRNA NuPを配合したLNPのグラフ表示である。
図12B】窒素対リン酸比を変化させた場合の封入効率を示すmRNAまたはmRNA NuPを配合したLNPのグラフ表示である。
図12C】窒素対リン酸比を変化させた場合の生体内分布を示すmRNAまたはmRNA NuPを配合したLNPのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0150】
概要
本明細書全体を通じて、特に別段の記載がない限り、または文脈上別段の解釈が必要でない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、または物質の組成物の群への言及は、それらのステップ、物質の組成物、ステップの群、または物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。
【0151】
当業者であれば、本開示が具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本開示にはそのような変形及び修正がすべて含まれることを理解されたい。本発明はまた、本明細書で個別にまたは集合的に言及または示されるステップ、特徴、組成物及び化合物のすべて、並びに上記ステップまたは特徴のあらゆる組み合わせまたは任意の2つ以上を含む。
【0152】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施例によって範囲が限定されるものではなく、このような特定の実施例は例示のみを目的としている。機能的に同等の生成物、組成物、及び方法は、明らかに本開示の範囲内にある。
【0153】
本開示の任意の例は、特に別段の記載がない限り、本開示の任意の他の実施例に必要な変更を加えて準用されるものとする。
【0154】
特に別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学の)当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0155】
別段の記載がない限り、本開示で使用される組換えタンパク質、細胞培養及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes1-4,IRL Press(1995 and 1996)、F.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのすべての改訂を含む)、Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors) Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在までのすべての改訂を含む)などの情報源の文献全体に記載及び説明されている。
【0156】
本明細書における可変領域及びその一部、免疫グロブリン、抗体及びその断片の説明及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987 and 1991、Bork et al.,J Mol.Biol.242,309-320,1994、Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature 342,877-883,1989、及び/またはAl-Lazikani et al.,J Mol Biol 273,927-948,1997における考察によってさらに明らかにすることができる。
【0157】
本明細書におけるタンパク質または抗体のいかなる考察も、製造及び/または保管中に産生されるタンパク質または抗体のあらゆる変異体を含むことが理解されるであろう。例えば、製造及び/または保管中に、抗体は、(例えば、アスパラギンまたはグルタミン残基で)脱アミド化され、及び/またはグリコシル化が変化し、及び/またはグルタミン残基がピログルタミン酸に変換され、及び/またはN末端もしくはC末端残基が除去もしくは「クリップ」され、及び/またはシグナル配列の一部またはすべてが不完全に処理され、その結果、抗体の末端に残る可能性がある。特定のアミノ酸配列を含む組成物は、記載もしくはコードされた配列及び/またはその記載もしくはコードされた配列の変異体の異種混合物であり得ることが理解される。
【0158】
「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」という用語は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、両方の意味またはいずれかの意味に明確なサポートを提供するものと解釈されるものとする。
【0159】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」のような変形は、記載された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外は意味しないことが理解されるであろう。
【0160】
本明細書で使用される場合、「に由来する」という用語は、特定の完全体がある特定の供給源から必ずしも直接得られるわけではないが、その供給源から取得することができることを示すと解釈されるものとする。
【0161】
選択された定義
本明細書で使用される場合、「脂質ナノ粒子」または「LNP」という用語は、ナノメートルほど(例えば、1~1,000nm)の少なくとも1つの寸法を有し、本明細書に記載される任意の式の化合物を含む脂質ベースの粒子を指すと理解されるものとする。実施形態では、LNPは、細胞、組織、器官、腫瘍などの所望の標的にポリヌクレオチドを送達するための組成物中に配合される。例えば、脂質ナノ粒子またはLNPは、限定されるものではないが、水性体積が両親媒性脂質二重層(例えば、単一、単層または複数、多層)によって封入されているリポソームまたは小胞、非水性コアを有するミセル様脂質ナノ粒子、及び固体脂質ナノ粒子(固体脂質ナノ粒子は脂質二重層を欠く)から選択することができる。
【0162】
本明細書で使用される「脂質化された」または「脂質化」という用語は、タンパク質(すなわち、RNA結合タンパク質またはペプチド)を1つ以上の脂質で共有結合的に修飾するプロセスを指す。
【0163】
本明細書で使用される場合、「RNA結合タンパク質またはペプチド」または「RBP」という用語は、二本鎖または一本鎖RNAに結合し、リボ核タンパク質複合体の形成に関与するタンパク質及びペプチドを指すと理解されるものとする。
【0164】
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続するアミノ酸、または互いに共有結合もしくは非共有結合的に結合している一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと解釈されるものとする。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適切な化学物質またはジスルフィド結合を使用して共有結合することができる。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0165】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、アミド結合によって連結されたアミノ酸残基から構成される化合物を含むことが意図される。ペプチドは、天然のものでも非天然のものでもよく、リボソームにコードされたものでも合成的に誘導されたものでもよい。通常、ペプチドは、2~200個のアミノ酸からなる。例えば、ペプチドは、上記範囲(複数可)内の任意の長さを含めて、10~20個のアミノ酸または10~30個のアミノ酸または10~40個のアミノ酸または10~50個のアミノ酸または10~60個のアミノ酸または10~70個のアミノ酸または10~80個のアミノ酸または10~90個のアミノ酸または10~100個のアミノ酸の範囲の長さを有し得る。
【0166】
本明細書で使用される場合、「組換え」という用語は、人工的な遺伝子組換えの産物を意味すると理解されるものとする。
【0167】
本明細書で使用される場合、「自己複製RNA」という用語は、異種RNA及びタンパク質の発現を可能にするように操作されたRNAウイルスに基づく構築物を指す。自己複製RNA(例えば、裸のRNAの形態)は宿主細胞中で増幅することができ、宿主細胞内での所望の遺伝子産物の発現につながる。
【0168】
本明細書で使用される場合、「従来のRNA」または「cRNA」または「非増幅RNA」という用語は、異種RNA及びタンパク質の発現を可能にするが、RNAが宿主細胞中では増幅できない構築物を指す。
【0169】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを含む任意の動物、例えば哺乳動物を意味すると解釈されるものとする。例示的な対象としては、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象はヒトである。
【0170】
脂質ナノ粒子
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、脂質ナノ粒子は、RNAに結合した核酸結合タンパク質またはペプチドを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、RNAに結合した脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドを含む。
【0171】
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、脂質ナノ粒子は、RNAに結合した脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドを含む。
【0172】
核酸結合タンパク質またはペプチド
本開示は、核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、本開示は、脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0173】
一例では、核酸結合タンパク質は、RNA結合タンパク質またはペプチドである。別の例では、核酸結合タンパク質は、RNA結合タンパク質またはペプチド及びDNA結合タンパク質またはペプチドである。
【0174】
RNA結合タンパク質またはペプチド
本開示は、RNA結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、本開示は、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0175】
RNA結合タンパク質は、例えば、RNAスプライシング、RNA編集、ポリアデニル化、搬出、mRNA安定化、mRNA局在化及び翻訳を含めて、共転写及び転写後の遺伝子発現の多くの側面を調節する。RNA結合タンパク質またはペプチドは、二本鎖または一本鎖RNAに結合し、リボ核タンパク質複合体の形成に関与する。当業者であれば、RNA結合タンパク質またはペプチドがウイルスまたは非ウイルスタンパク質またはペプチドであり得ることを理解するであろう。
【0176】
非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチド
一例では、RNA結合タンパク質は、細胞タンパク質に由来する非ウイルスタンパク質またはペプチドである。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、細胞増殖、細胞シグナル伝達及び/または抗ウイルス経路に関連する細胞タンパク質に由来する。
【0177】
非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは、例えば、RNA認識モチーフ(RRM)、K相同性(KH)ドメイン(タイプI及びタイプII)、RGG(Arg-Gly-Gly)ボックス、Smドメイン;DEAD/DEAHボックス、CCCH型ジンクフィンガー(ZnF)、二本鎖RNA結合モチーフ(dsRBD)、コールドショックドメイン;Pumilio/FBF(PUFまたはPum-HD)ドメイン及びPiwi/Argonaute/Zwille(PAZ)ドメインを含めて、RNA結合を促進する多数の構造モチーフまたはRNA結合ドメインを含む。
【0178】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNA認識モチーフ、K相同性ドメイン(タイプIまたはタイプII)及びCCCH型ジンクフィンガーからなる群から選択されるRNA結合ドメインを含む。
【0179】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNA認識モチーフを含む。例えば、RNA認識モチーフを含むRNA結合タンパク質またはペプチドは、A2BP1、ACF、BOLL、BRUNOL4、BRUNOL5、BRUNOL6、CCBL2、CGI-96、CIRBP、CNOT4、CPEB2、CPEB3、CPEB4、CPSF7、CSTF2、CSTF2T、CUGBP1、CUGBP2、D10S102、DAZ1、DAZ2、DAZ3、DAZ4、DAZAP1、DAZL、DNAJC17、DND1、EIF3S4、EIF3S9、EIF4B、EIF4H、ELAVL1、ELAVL2、ELAVL3、ELAVL4、ENOX1、ENOX2、EWSR1、FUS、FUSIP1、G3BP、G3BP1、G3BP2、GRSF1、HNRNPL、HNRPA0、HNRPA1、HNRPA2B1、HNRPA3、HNRPAB、HNRPC、HNRPCL1、HNRPD、HNRPDL、HNRPF、HNRPH1、HNRPH2、HNRPH3、HNRPL、HNRPLL、HNRPM、HNRPR、HRNBP1、HSU53209、HTATSF1、IGF2BP1、IGF2BP2、IGF2BP3、LARP7、MKI67IP、MSI1、MSI2、MSSP-2、MTHFSD、MYEF2、NCBP2、NCL、NOL8、NONO、P14、PABPC1、PABPC1L、PABPC3、PABPC4、PABPC5、PABPN1、PKR、POLDIP3、PPARGC1、PPARGC1A、PPARGC1B、PPIE、PPIL4、PPRC1、PSPC1、PTBP1、PTBP2、PUF60、RALY、RALYL、RAVER1、RAVER2、RBM10、RBM11、RBM12、RBM12B、RBM14、RBM15、RBM15B、RBM16、RBM17、RBM18、RBM19、RBM22、RBM23、RBM24、RBM25、RBM26、RBM27、RBM28、RBM3、RBM32B、RBM33、RBM34、RBM35A、RBM35B、RBM38、RBM39、RBM4、RBM41、RBM42、RBM44、RBM45、RBM46、RBM47、RBM4B、RBM5、RBM7、RBM8A、RBM9、RBMS1、RBMS2、RBMS3、RBMX、RBMX2、RBMXL2、RBMY1A1、RBMY1B、RBMY1E、RBMY1F、RBMY2FP、RBPMS、RBPMS2、RDBP、RNPC3、RNPC4、RNPS1、ROD1、SAFB、SAFB2、SART3、SERBP1、SETD1A、SF3B14、SF3B4、SFPQ、SFRS1、SFRS10、SFRS11、SFRS12、SFRS15、SFRS2、SFRS2B、SFRS3、SFRS4、SFRS5、SFRS6、SFRS7、SFRS9、SLIRP、SLTM、SNRP70、SNRPA、SNRPB2、SPEN、SR140、SRRP35、SSB、SYNCRIP、TAF15、TRBP、THOC4、TIA1、TIAL1、TNRC4、TNRC6C、TRA2A、TRSPAP1、TUT1、U1SNRNPBP、U2AF1、U2AF2、UHMK1、ZCRB1、ZNF638、ZRSR1、及びZRSR2からなる群から選択される。
【0180】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、K相同性ドメインを含む。例えば、K相同性ドメインはタイプIドメインである。別の例では、K相同性ドメインはタイプIIドメインである。一例では、K相同性ドメインを含むRNA結合タンパク質またはペプチドは、AKAP1、ANKHD1、ANKRD17、ASCC1、BICC1、DDX43,DDX53、DPPA5、FMR1、FUBP1、FUBP3、FXR1、FXR2、GLD1、HDLBP、HNRPK、IGF2BP1、IGF2BP2、IGF2BP3、KHDRBS1、KHDRBS2、KHDRBS3、KHSRP、KRR1、MEX3A、MEX3B、MEX3C、MEX3D、NOVA1、NOVA2、PCBP1、PCBP2、PCBP3、PCBP4、PNO1、PNPT1、QKI、SF1、及びTDRKHからなる群から選択される。
【0181】
一例では、RNA結合ドメインは、CCCH型ジンクフィンガードメインを含む。
【0182】
例示的な非ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドは当業者には明らかであり、例えば、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、プロテインキナーゼR(PKR)、Toll様受容体3(TLR-3)及びToll様受容体7(TLR)が含まれる。
【0183】
ウイルスRNA結合タンパク質
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、ウイルスRNA結合タンパク質またはペプチドである。例えば、RNA結合タンパク質は、核タンパク質、基質タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、及び/またはRNAウイルス由来の非構造タンパク質である。
【0184】
表1に示すように、ウイルスがボルティモア分類システムに従って分類されることは当業者には明らかであり、この分類システムは主にウイルスゲノムの転写に基づいている。
【表1】
【0185】
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、RNAウイルス由来である。例えば、RNA結合タンパク質またはペプチドは、クラスIII、クラスIV、クラスV、及び/またはクラスIVウイルス由来である。
【0186】
一例では、RNAウイルスはクラスIIIウイルス(すなわち、二本鎖RNAウイルス)である。クラスIIIウイルスには、例えば、Duplornaviricota門のすべてのウイルス及び(Pisuviricota門の)Duplopiviricetes綱のすべてのウイルスが含まれる。例示的なクラスIIIウイルスとしては、レオウイルス(例えば、オルソレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、またはコルチウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
一例では、RNAウイルスはクラスIVウイルス(すなわち、ポジティブセンス一本鎖RNAウイルス)である。クラスIVウイルスには、例えば、Lenarviricota門、Pisuviricota門(Duplopidiviricetes綱を除く)、及びKitrinoviricota門のウイルスが含まれる。例示的なクラスIVウイルスとしては、トガウイルス(例えば、ルビウイルス、アルファウイルス、またはアルテリウイルス)、フラビウイルス(例えば、ダニ媒介性脳炎(TBE)ウイルス、デング(1、2、3または4型)ウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、ウエストナイル脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワッサン脳炎ウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、パレコウイルス、カルジオウイルス、及びアフトウイルス)、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス1型、2型または3型、コクサッキーAウイルス1型~22型及び24型、コクサッキーBウイルス1型~6型、エコーウイルス(ECHO)1型~9型、11型~27型及び29型~34型、エンテロウイルス68型~71型)、ペスチウイルス(例えば、ウシウイルス性下痢症(BVDV)、豚熱(CSFV)またはボーダー病(BDV))、カリシウイルス(例えば、ノーウォークウイルス、及びノーウォーク様ウイルス(例えば、ハワイウイルス及びスノーマウンテンウイルス))、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)、鶏伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、及び豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV))、並びにE型肝炎ウイルス(HEV)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
一例では、RNAウイルスはクラスVウイルス(すなわち、ネガティブセンス一本鎖RNAウイルス)である。クラスVウイルスには、例えば、Negarnaviricota門のウイルスが含まれる。例示的なクラスVウイルスとしては、オルトミクソウイルス(例えば、A型、B型、及びC型インフルエンザ)、Paramyxoviridaeウイルス(ニューモウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、マウス肺炎ウイルス、及び七面鳥鼻気管炎ウイルス)、パラミクソウイルス1~4型(PIV)、おたふく風邪、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ニパウイルス、ヘニパウイルス、ニューカッスル病ウイルス、モルビリウイルス(例えば、麻疹)、ブニヤウイルス(例えば、カリフォルニア脳炎ウイルス)、フレボウイルス(例えば、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス(例えば、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス)、ラブドウイルス(例えば、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)及びベシクロウイルス(VSV))、デルタ肝炎ウイルス(HDV)及びアレナウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
一例では、クラスV RNAウイルスは、インフルエンザウイルスである。例えば、A型インフルエンザウイルスである。別の例では、B型インフルエンザウイルスである。
【0190】
一例では、RNAウイルスは、クラスVIウイルス(すなわち、ライフサイクル中にDNA中間体を有する一本鎖RNAウイルス)である。クラスVIウイルスには、例えば、Revtraviricetes綱(Artverviricota門、Caulimoviridaeを除く)のウイルスが含まれる。例示的なクラスVIウイルスとしては、ヘパルナウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス(HAV))、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)、及びレトロウイルス(例えば、オンコウイルス、レンチウイルス、またはスプマウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、RNAウイルスはヘパドナウイルスである。例えば、ヘパドナウイルスはB型肝炎ウイルス(HBV)である。
【0191】
リンカー
一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、リンカーを介して連結された第1のRNA結合タンパク質またはペプチド及び第2のRNA結合タンパク質またはペプチドを含む。例えば、リンカーはリンカーペプチドである。
【0192】
一例では、リンカーは柔軟なリンカーである。
【0193】
「柔軟な」リンカーは、溶液中で固定構造(二次または三次構造)を有さないアミノ酸配列である。したがって、このような柔軟なリンカーは、様々な立体構造を自由にとることができる。本開示での使用に適した柔軟なリンカーは当該技術分野で公知である。本発明で使用するための柔軟なリンカーの一例は、リンカー配列SGGGGS/GGGGS/GGGGSまたは(GlySer)である。柔軟なリンカーの別の例は、アラニンリンカー(例えば、Ala)である。
【0194】
リンカーは、RNA結合タンパク質またはペプチドとRNAとの相互作用を実質的に妨げない任意のアミノ酸配列を含み得る。柔軟なリンカー配列に好ましいアミノ酸残基としては、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、プロリン、リジン、アルギニン、グルタミン及びグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
RNA結合タンパク質またはペプチドの間のリンカー配列は、好ましくは5個以上のアミノ酸残基を含む。本開示による柔軟なリンカー配列は、5個以上の残基、好ましくは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個以上の残基からなる。本発明の非常に好ましい実施形態では、柔軟なリンカー配列は、5、7、10または16個の残基からなる。
【0196】
一例では、リンカーは剛性リンカーである。「剛性リンカー」(「半剛性リンカー」を含む)とは、制限された柔軟性を有するリンカーを指す。例えば、比較的剛性のリンカーは、配列(EAAAK)(式中、nは1~3である)を含む。nの値は、1~約10、または約1~100であり得る。例えば、nは少なくとも1、または少なくとも2、または少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10である。一例では、nは100未満である。例えば、nは、90未満、または約80未満、または約70未満、または約60未満、または約50未満、または約40未満、または約30未満、または約20未満、または約10未満である。剛性リンカーは、柔軟性を完全に欠く必要はない。
【0197】
結合タンパク質の脂質化
本開示は、脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0198】
本開示は、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0199】
タンパク質またはペプチドの脂質化が、タンパク質またはペプチド(すなわち、RNA結合タンパク質またはペプチド)への脂質部分の共有結合であることは、当業者には明らかであろう。
【0200】
脂質
本開示での使用に適した脂質部分は当業者には明らかであり、例えば、脂肪酸、イソプレノイド及びそれらの組み合わせが含まれる。一例では、脂質部分は、イソプレノイド、トリグリセリド、リン脂質、コレステリルエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0201】
イソプレノイド
テルペノイドまたはプレノール脂質としても知られるイソプレノイドは分岐脂質であり、2つ以上の炭化水素単位で構成される有機化合物の一種であり、各単位は特定のパターンで配列された5つの炭素原子からなる。これらの5つの炭素単位はイソプレンと呼ばれ、メバロン酸として知られる一般的な中間体から合成され、メバロン酸自体はアセチル-CoAから合成される。イソプレノイドは、それらの炭素骨格に結合したヒドロキシルやカルボニルなどの1つ以上の官能性化学基を有してもよく、これらは、イソプレノイドの多様性を構成する。イソプレノイドは、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)、トリテルペン(C3048)、テトラテルペン(C4064)、または他のポリテルペン(Cとして分類できる。
【0202】
本開示での使用に適したイソプレノイドは、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0203】
一例では、イソプレノイドはモノテルペンである。例示的なモノテルペンとしては、シトロネロール、シトロネラール、シトラール、ゲラニオール、メトール、プソイドイオノン及びβ-イオノンが挙げられる。
【0204】
一例では、イソプレノイドはセスキテルペンである。例示的なセスキテルペンとしては、カダレン、オイダレン、カジネン及びβ-セリネンが挙げられる。
【0205】
一例では、イソプレノイドはジテルペンである。例示的なジテルペンとしては、フィトール及びアビエチン酸が挙げられる。
【0206】
一例では、イソプレノイドはトリテルペンである。例示的なトリテルペンとしては、スクアレン及びβ-アミリンが挙げられる。
【0207】
一例では、イソプレノイドはテトラテルペンである。例示的なテトラテルペンとしては、カロテノイド(例えば、β-カロテン)及びリコピンが挙げられる。
【0208】
脂肪酸
脂肪酸は、カルボン酸官能基で終端された長鎖炭化水素を含む脂質である。脂肪酸は飽和でも不飽和でもよい。一例では、脂肪酸は、6~22個の炭素を有する炭素鎖を含む。例示的な脂肪酸としては、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、α-リノレン酸、及びステアリン酸が挙げられる。
【0209】
脂肪酸は、自然界に遊離型で存在することはほとんどなく、一般にトリグリセリド、リン脂質、及びコレステリルエステルという3種類の主要なエステルとして存在する。
【0210】
一例では、脂肪酸はトリグリセリドである。トリグリセリドは、エステル結合を介して3つの脂肪酸分子に結合したグリセロールからなるトリエステルである。3つの脂肪酸は同じであっても異なっていてもよい。例示的なトリグリセリドはトリステアリンである。
【0211】
一例では、脂肪酸はリン脂質である。リン脂質は、1つ以上のリン酸基を含む親水性極性頭部基と、2つの脂肪アシル鎖を含む疎水性尾部とを含む複合脂質である。極性頭部基は、グリセロール(すなわち、ホスホグリセリド)またはスフィンゴシン分子(すなわち、ホスホスフィンゴ脂質)を介してホスホジエステル結合によって疎水性部分に結合される。リン脂質は飽和でも不飽和でもよい。例示的なホスホグリセリドとしては、ホスファチジン酸(ホスファチジン酸塩)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド(例えば、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)及びホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3))、ホスファチジルグリセロール、及びカルジオリピンが挙げられる。例示的なホスホスフィンゴ脂質としては、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)、セラミドホスホリル脂質、ガラクトセレブロシド、グルコセレブロシド、及びラクトシルセラミドが挙げられる。
【0212】
一例では、脂肪酸はコレステリルエステルである。コレステリルエステルは、コレステロールを長鎖脂肪酸でエステル化したものである。例示的なコレステリルエステルとしては、オレイン酸コレステリル、安息香酸コレステリル及びリノール酸コレステリルが挙げられる。
【0213】
脂質化
例示的な脂質化としては、パルミトイル化、ミリストイル化、脂肪酸アシル化、エステル化、プレニル化、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0214】
パルミトイル化
一例では、脂質部分は、パルミトイル化によってRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0215】
一例では、パルミトイル化はシステインパルミトイル化(S-パルミトイル化としても知られる)である。当業者であれば、システインパルミトイル化がタンパク質のシステイン残基への16炭素パルミトイル基の付加であることを理解するであろう。一例では、パルミトイル基はチオエステル結合を介して付加される。別の例では、パルミトイル基はアミド結合を介して付加される。
【0216】
ミリストイル化
一例では、脂質部分は、ミリストイル化によってRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0217】
一例では、ミリストイル化はN-グリシンミリストイル化である。当業者であれば、N-グリシンミリストイル化が、アミド結合を介した、タンパク質のN末端グリシンへの飽和14炭素脂肪アシル基であるミリストイルの共翻訳または翻訳後結合を指すことを認識するであろう。
【0218】
一例では、ミリストイル化はリジンミリストイル化である。
【0219】
脂肪酸アシル化
一例では、脂質部分は、脂肪酸アシル化によってRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0220】
当業者であれば、脂肪酸アシル化がタンパク質へのアシル基の共有結合を含むことを認識するであろう。
【0221】
一例では、脂肪酸アシル化はリジンN-アシル化である。当業者であれば、リジンN-アシル化が、アセチル-CoAからタンパク質上のリジン残基のイプシロン(ε)-アミノ基へのアセチル部分の転移を指すことを理解するであろう。
【0222】
エステル化
一例では、脂質部分は、エステル化によってRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0223】
一例では、エステル化は、C末端ステロールエステル化、例えばC末端コレステロールエステル化である。当業者であれば、C末端コレステロールエステル化が、少なくとも1つのヒドロキシル(-OH)基をアルコキシ(-O-アルキル)基で置換することであることを理解するであろう。
【0224】
プレニル化
一例では、脂質部分は、プレニル化によってRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0225】
一例では、プレニル化はシステインプレニル化である。当業者であれば、システインプレニル化が、タンパク質のC末端近くのシステイン残基への複数のイソプレン単位の付加であることを理解するであろう。
【0226】
一例では、プレニル化はファルネシル化(すなわち、3つのイソプレン単位の付加)であり、またはプレニル化はゲラニルゲラニル化(すなわち、4つのイソプレン単位の付加)である。
【0227】
一例では、ファルネシル基またはゲラニルゲラニル基とシステイン残基との間の結合はチオエーテル結合である。別の例では、結合は、エステル結合である。さらなる例では、結合はチオエステル結合である。
【0228】
脂質化の方法
脂質修飾は通常、タンパク質またはペプチドのN末端及び/またはC末端において、タンパク質またはペプチド(例えば、システイン、セリン、及びリジン)の求核性側鎖で発生する。
【0229】
脂質化の様々な方法は当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。適切な方法には、化学的脂質化または酵素的脂質化が含まれ得る。
【0230】
化学的脂質化
一例では、脂質部分は、化学ライゲーションを使用してRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。脂質部分は、アミン、カルボン酸、ヒドラジド、またはマレイミド基を含むことができ、脂質部分は、リジンの第一級アミン基またはシステインのチオール基を介して、RNA結合タンパク質またはペプチドに化学的に結合することができる。一例では、脂質部分はマレイミド基を含み、脂質部分は、RNA結合タンパク質またはペプチド中のスルフヒドリル基とのチオエーテル結合の形成を介してRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。一例では、脂質部分はカルボン酸を含み、カルボン酸は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo-NHS)によって活性化される。活性化されたアシルアミノエステルまたはsulfo-NHSエステルは、続いてRNA結合タンパク質またはペプチド中のリジン残基の第一級アミンと反応して、アミド結合を形成する。
【0231】
一例では、脂質部分はマレイミド基を含む。例えば、脂質部分は、マレイミド基でキャップされたリン脂質である。一例では、脂質部分は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-マレイミド(DSPE-マレイミド、DSPE-Mal)である。
【0232】
一例では、脂質部分は、Kolb et al.(2001)、WO2003/101972及びMalkoch et al.(2005)に開示されているような様々な「クリックケミストリー」戦略を使用して、RNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。
【0233】
一例では、脂質部分は、発現タンパク質ライゲーションを使用して、RNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。発現タンパク質ライゲーションは、生理的pHの水溶液中での、C末端チオエステルを有するタンパク質またはペプチドとN末端システインを有するタンパク質またはペプチドとの間の化学選択的ライゲーションを含む。一例では、C末端チオエステルは、遺伝子操作によってRNA結合タンパク質またはペプチドに挿入され、脂質部分はN末端システイン残基を有するペプチドに融合される。
【0234】
Takahara & Kamiya(2020)に開示されている方法など、当業者に公知の他の化学的脂質化方法を使用してもよい。
【0235】
酵素的脂質化
一例では、脂質部分は、酵素的脂質化を使用してRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。酵素的脂質化は、in vivoまたはin vitroで行うことができる。いくつかの例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、脂質化酵素によって認識されるコンセンサス配列を含むように当業者に公知の技術を使用して遺伝子操作される。
【0236】
一例では、脂質部分は、ソルターゼA媒介脂質化を使用してRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。ソルターゼA(例えば、Staphylococcus aureus由来のSrtA)は、Ca2+の存在下で、ペプチド転移反応を介して、分泌タンパク質を細菌の細胞壁ペプチドグリカンに共有結合する。この例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、C末端にLPXTGモチーフ(例えば、LPETG)を含むように遺伝子操作され、脂質部分は、求核剤及びオリゴ-グリシンモチーフ(例えば、トリグリシン、テトラグリシンまたはペンタグリシン)を含む。ソルターゼを付加すると、RNA結合タンパク質またはペプチドは、ペプチド結合を介して脂質に共有結合される。
【0237】
一例では、脂質部分は、トランスグルタミナーゼ媒介脂質化を使用してRNA結合タンパク質またはペプチドに結合される。トランスグルタミナーゼ(例えば、微生物由来トランスグルタミナーゼ:MTG)は、Ca2+の非存在下でペプチドまたはタンパク質中のグルタミン残基とリジン残基の間の反応を触媒し、不可逆的な架橋を形成する。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、例えばN末端またはC末端にMTGリジン認識配列(例えば、MRHKGS)を含むように遺伝子操作され、脂質部分は、MTGグルタミン認識配列(例えば、LLQG)を含む。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドは、例えばN末端またはC末端にMTGグルタミン認識配列(例えば、LLQGまたはLQ)を含むように遺伝子操作され、脂質部分は、MTGリジン認識配列(例えば、MRHKGS)を含む。
【0238】
Takahara & Kamiya(2020)に開示されている方法など、当業者に公知の他の酵素的脂質化方法を使用してもよい。
【0239】
追加の脂質
一例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、ステロール構造脂質及び/または中性脂質をさらに含む。一例では、脂質ナノ粒子は、PEG脂質、ステロール構造脂質、イオン化可能な脂質及び/または中性脂質をさらに含む。一例では、脂質ナノ粒子はカチオン性脂質を含まない。
【0240】
PEG脂質
一例では、本開示は、PEG化脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0241】
PEG化脂質への言及が、ポリエチレングリコールで修飾された脂質であることは、当業者には明らかであろう。例示的なPEG化脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、及びPEG修飾ジアルキルグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、PEG-DSPE脂質及びそれらの組み合わせを含む。
【0242】
中性脂質
一例では、本開示は、中性脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0243】
本開示での使用に適した中性または両性イオン性脂質は当業者には明らかであり、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、及びスフィンゴミエリンが含まれる。脂質は飽和でも不飽和でもよい。
【0244】
構造脂質
一例では、本開示は、構造脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0245】
例示的な構造脂質としては、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸及びα-トコフェロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0246】
一例では、構造脂質はステロールである。例えば、構造脂質はコレステロールである。別の例では、構造脂質はカンペステロールである。
【0247】
イオン化可能な脂質
一例では、本開示は、イオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0248】
本開示での使用に適したイオン化可能な脂質は当業者には明らかであり、例えば、3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]-N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタン(KL25)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、(2R)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2R))、(2S)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2S))、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、2,5-ビス((9z,12z)-オクタデカ-9,12,ジエン-1-イルオキシル)ベンジル-4-(ジメチルアミノ)ブノエート(LKY750)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸、1-オクチルノニルエステル(ヘプタデカン-9-イル8-[2-ヒドロキシエチル-(6-オキソ-6-ウンデコキシヘキシル)アミノ]オクタノエートとも呼ばれる)(SM-102)、2-ヘキシルデカン酸、1,1’-[[(4-ヒドロキシブチル)イミノ]ジ-6,1-ヘキサンジイル]エステル(((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)とも呼ばれる)(ALC-0315)、4-(ジメチルアミノ)-ブタン酸、(10Z,13Z)-1-(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン-1-イル-10,13-ノナデカジエン-1-イルエステル(DLin-MC3-DMAまたはMC3)、((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート))、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸、1-オクチルノニルエステル及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0249】
薬学的に許容される担体
適切には、本開示の脂質ナノ粒子を対象に投与するための組成物または方法において、脂質ナノ粒子は、当該技術分野で理解されているように、薬学的に許容される担体と組み合わされる。したがって、本開示の一例は、本開示の脂質ナノ粒子を薬学的に許容される担体と組み合わせて含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0250】
一般的に、「担体」とは、任意の対象、例えばヒトに安全に投与することができる固体または液体の充填剤、結合剤、希釈剤、封入物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁剤、コーティングまたは滑沢剤を意味する。特定の投与経路に応じて、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co. N.J.USA,1991)に記載されているように、当該技術分野で公知の様々な許容可能な担体を使用することができる。
【0251】
本開示の脂質ナノ粒子は、予防的または治療的処置のために、非経口投与、局所性投与、経口投与もしくは局所投与、筋肉内投与、エアロゾル投与、または経皮投与に有用である。一例では、脂質ナノ粒子は、筋肉内、皮下または静脈内など、非経口的に投与される。例えば、脂質ナノ粒子は、筋肉内投与される。
【0252】
投与すべき脂質ナノ粒子の製剤化は、投与経路及び選択された製剤(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)に応じて変化する。投与すべき脂質ナノ粒子を含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容される担体中で調製することができる。溶液またはエマルジョンの場合、適切な担体としては、例えば、生理食塩水及び緩衝媒体を含めて、水溶液またはアルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油を挙げることができる。様々な適切な水性担体が当業者に公知であり、水、緩衝水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、ブドウ糖溶液及びグリシンが挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、様々な添加剤、保存剤、流体、栄養補給剤または電解質補給剤を挙げることができる(一般に、Remington’s Pharmaceutical Science,16th Edition,Mack,Ed.1980を参照)。組成物は、生理的条件に近づけるために、必要に応じて、pH調整剤及び緩衝剤並びに毒性調整剤などの薬学的に許容される補助物質(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウム)を任意に含むことができる。脂質ナノ粒子は、液体段階で保存することができ、または当該技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技術に従って、保存のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体中で再構成することができる。
【0253】
選択された媒体中の活性成分(複数可)(すなわち、RNA)の最適濃度は、当業者に公知の手順に従って経験的に決定することができ、また所望の最終的な医薬製剤に依存する。
【0254】
製剤化の際、本開示の組成物は、投与製剤に適合する方法で、かつ治療的/予防的に有効な量で投与される。本開示の脂質ナノ粒子の投与の用量範囲は、所望の効果を生み出すのに十分な量である。例えば、組成物は有効量の封入されたRNAを含む。一例では、組成物は治療有効量のRNAを含む。別の例では、組成物は予防有効量のRNAを含む。
【0255】
用量は副作用を引き起こすほど多量であってはならない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、性別及び疾患の程度によって変化し、これは、当業者によって決定することができる。合併症が発生した場合には、個々の医師が投与量を調整することができる。
【0256】
RNA
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、ここで、核酸結合タンパク質またはペプチドがRNAに結合している。例えば、本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、ここで脂質化された核酸結合タンパク質またはペプチドがRNAに結合している。
【0257】
本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、ここで、RNA結合タンパク質またはペプチドがRNAに結合している。例えば、本開示は、RNAを送達するための脂質ナノ粒子を提供し、ここで、脂質化されたRNA結合タンパク質またはペプチドがRNAに結合している。
【0258】
本開示のRNAは、天然または非天然に存在するRNAであってもよく、あるいは1つ以上の修飾された核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含んでもよい。本開示での使用に適したRNAには、5’非翻訳領域(5’-UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、及び/またはコード配列もしくは翻訳配列も含まれ得ることは、当業者には明らかであろう。さらに、RNAは、5’キャップ構造、鎖終結ヌクレオチド、ステムループ(例えば、ヒストンステムループ)、3’テーリング配列(例えば、ポリアデニル化シグナルまたは1つ以上のポリAテール)を含み得る。
【0259】
本開示の一例では、RNAは自己複製mRNA(sa-mRNA)である。
【0260】
本開示の一例では、RNAは従来のmRNA(cRNA)である。
【0261】
調製方法
本開示の脂質ナノ粒子の適切な調製方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例えば、本開示の脂質ナノ粒子は、製剤化分野で周知のアプローチを使用して作製することができる。例えば、適切なLNPは、ヘリンボーンマイクロミキシング及び2つの流体の流れ(一方は、典型的には水溶液中にメッセンジャーRNAを含有し、もう一方は、典型的にはエタノール中に様々な必要な脂質成分を有する)のT字ジャンクション混合を含めて、マイクロ流体工学などの混合プロセスを使用して形成することができる。
【0262】
次に、LNPは、例えばエタノール中約50mMの濃度で、リン脂質(DOPEまたはDSPCなど、Avanti Polar Lipids、Alabaster、ALを含む商業的供給源から購入できる)、PEG化脂質(PEG-DMGとしても知られる1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコールなど、Avanti Polar Lipids、Alabaster、ALを含む商業的供給源から購入できる)、及び構造脂質/ステロール(コレステロールなど、Sigma-Aldrichを含む商業供給源から購入できる)を混合することによって調製することができる。溶液は、保存中、例えば-20℃で冷蔵する必要がある。様々な脂質を組み合わせて所望のモル比を得て、そして、水及びエタノールで、例えば約5.5mM~約25mMの最終的な所望の脂質濃度まで希釈することができる。
【0263】
RNA(sa-mRNAまたはcRNAを含むが、これらに限定されない)を含むLNP組成物は、上記の脂質溶液とRNAを含む溶液とを、例えば、約5:1~約50:1の脂質成分対RNAの重量:重量比で混合することによって調製することができる。NanoAssemblrマイクロ流体システムを使用して、約3ml/分~約18ml/分の流速で脂質溶液をRNA溶液に迅速に注入して、水対エタノールの比が約1:1~約4:1の懸濁液を生成することができる。
【0264】
sa-mRNAまたはcRNAを含むLNP組成物の場合、脱イオン水中の1.0mg/ml濃度のRNA溶液を、pH3~6の50mMクエン酸ナトリウム緩衝液で希釈してストック溶液を形成することができる。
【0265】
当該技術分野で知られているように、LNP組成物を、pH6の50mMクエン酸緩衝液中に10倍希釈することによってさらに処理し、そして、元の体積に濃縮するまで、300,000分子量カットオフ膜(mPES)を用いてタンジェンシャルフロー濾過(TFF)に供することができる。続いて、一例では、クエン酸緩衝液を、10倍体積の新しい緩衝液によるダイアフィルトレーションを使用して、pH7.5の20mMトリス緩衝液、80mM塩化ナトリウム、及び3%スクロースを含有する緩衝液と置き換えることができる。LNP溶液を、例えば5~10mLの体積まで濃縮し、0.2ミクロンのPESシリンジフィルターを使用して濾過し、バイアルに等分し、Corning(登録商標)CoolCell(登録商標)LX細胞凍結容器を使用してサンプルが-80℃に達するまで1℃/分で凍結することができる。サンプルは必要になるまで-80℃で保存してもよい。
【0266】
上記の方法により、ナノ沈殿と粒子形成が引き起こされる。T字ジャンクション及び直接注入を含むがこれらに限定されない代替プロセスを使用して、同じナノ沈殿を達成することができる。
【0267】
いくつかの実施形態では、LNP製剤の脂質成分は、約2モル%~約25モル%のリン脂質(中性脂質)、約18.5モル%~約60モル%の構造脂質(ステロール)、及び約0.2モル%~約10モル%のPEG化脂質を含み、ただし、総モル%は100%を超えない。いくつかの実施形態では、LNP製剤の脂質成分は、約5モル%~約20モル%のリン脂質、約30モル%~約55モル%の構造脂質、及び約1モル%~約5モル%のPEG化脂質を含む。特定の実施形態では、脂質成分は、約10モル%のリン脂質、約48モル%の構造脂質、及び約2.0モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質はDOPEまたはDSPCであり得る。他の実施形態では、PEG脂質はPEG-DMGであってもよく、及び/または構造脂質はコレステロールであってもよい。
【0268】
LNP内のRNAの封入効率は、少なくとも50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であり得る。いくつかの実施形態では、封入効率は少なくとも80%であり得る。特定の実施形態では、封入効率は少なくとも90%であり得る。
【0269】
本開示の脂質ナノ粒子のアッセイ
当該技術分野で公知の方法及び/または以下に記載の方法を使用して、物理的及び生物学的活性及び/または安定性について本開示の脂質ナノ粒子を容易にスクリーニングする。
【0270】
RNA分解の評価
一例では、RNaseによるRNA分解のレベルが評価される。例えば、RNAは、単独で、またはRNA結合タンパク質もしくはペプチドと組み合わせて、RNaseで処理される。
【0271】
一例では、RNAのレベルは、リアルタイムPCRを使用して、RNAse処理済みサンプル及び未処理サンプルにおいて評価される。一例では、RNA結合タンパク質またはペプチドを含まないRNAサンプルにおけるサイクル閾値(CT)値は、RNA結合タンパク質またはペプチドを含むRNAサンプルと比較して増加しており、これは、RNA分解を示す。
【0272】
RNA翻訳の評価
一例では、RNA翻訳は、in vitro翻訳系を使用して評価される。本開示で使用するのに適した系は当業者には明らかであり、例えばウサギ網状赤血球溶解物アッセイが含まれる。
【0273】
一例では、ウサギ網状赤血球溶解物アッセイが使用される。
【0274】
一例では、RNAは、RNA結合タンパク質またはペプチドの存在下または非存在下で評価される。
【0275】
一例では、RNAはナノルシフェラーゼRNA(nLuc RNA)であり、RNA翻訳の量は、相対発光量(RLU)で発光を測定することにより評価したルシフェラーゼ産生量によって測定される。一例では、アッセイは4℃、24℃及び/または37℃で行われる。別の例では、アッセイは、サンプルを0時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間または96時間インキュベートした後に行われる。
【0276】
TLR誘導の評価
一例では、TLR3及び/またはTLR8誘導のレベルが評価される。例えば、RNA単独、またはRNA結合タンパク質もしくはペプチドと組み合わせたRNAによるTLR3及び/またはTLR8誘導のレベルが評価される。一例では、TLR3及び/またはTLR8誘導は、TLR誘導NfKBレポーターアッセイを使用して評価される。このアッセイでは、NfKBは分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)に操作的に連結されている。RNAは、いずれかの細胞型(条件付き形質導入されたTLR3または条件付き形質導入されたTLR8)に導入される。TLR受容体の結合は、NfKB活性化を誘導し、ひいてはSEAPを誘導する。一例では、SEAPレベルは、化学反応及び発熱量の読み出しによって決定される。
【実施例
【0277】
実施例1:RNaseによる分解からのRNAの保護
MPHをRNaseで処理することによってRNAフリー一価プールハーベスト(MPH)を調製した。
【0278】
RNase A(Promega)を使用してMPH(B/Malaysia/2506/2004)を37℃で1時間、2回処理した。140μlの処理済み及び未処理MPH(60μl中に溶出)からRNAを抽出し、リアルタイムPCRを使用して赤血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)RNAについて試験した。結果は、HA RNAのCT値が増加せず、NA RNAのCT値がわずかに増加したことを示し(表2、実験1A)、これは、ウイルスRNAの分解が最小限であることを示した。
【0279】
RNaseが不活性である場合には、RNAの抽出と分析の前に、異なるRNase(RNase ONE、Promega M4261)を使用してMPHを2回処理した。HA及びNA RNAの両方のCT値が増加し(表2、実験1B)、これは、存在するウイルスRNAの量の減少(<83倍)を示した。
【0280】
RNase ONEサンプル緩衝液の存在下でRNase ONEの用量を減らして使用してMPH(180μl)のさらなるサンプルを2回処理した。処理済みサンプルの分析では、用量依存的にRNA濃度が減少し、CT値が増加することが示され(表2、実験1C)、これは、MPHをRNase ONEで処理すると、RNAの分解レベルが低いことを示した(<35倍)。全体として、処理済みMPHにおけるRNAの分解レベルは予想外に低かった。
【0281】
次に、MPH(B/Malaysia/2506/2004)を、破壊緩衝液の存在下または非存在下でRNase ONEで処理した。破壊緩衝液の使用は、RNaseで処理したMPHにおけるウイルスRNAの分解を増加させなかった(表2、実験2)。
【0282】
MPHをRNaseで処理すると、ウイルスRNAのみがわずかに減少し、これは、RNAをRNaseによる分解から保護する可能性を示した。
【表2】
【0283】
実施例2:インフルエンザウイルスからのRNAフリー核タンパク質の精製
透析、濃縮、及び界面活性剤処理を行い、続いてグリセロール段階勾配遠心分離を行ってNP:RNA粒子を単離することにより、インフルエンザウイルスからRNAフリー核タンパク質(NP)を単離した。RNAフリーNPを単離するために、さらなるグリセロール及び塩化セシウム勾配遠心分離工程を実施した。
【0284】
実施例3:RNAフリーNPがRNAに結合する
RNAフリーNPがRNAを保護するか否かを評価するために、NPをナノルシフェラーゼmRNAと組み合わせ、サンプルを40℃に加熱するか、または室温でインキュベートした後、MOPS-アガロースゲル電気泳動によって分析した。mRNAの濃度(250ng)を維持しながら、反応中のNPの濃度を増加させると(0から4000ng)、検出可能なmRNAのレベルはより高い分子量にシフトした。
【0285】
16:1(NP 4000Ng、mRNA 250ng)の比率では、ナノルシフェラーゼmRNAはゲルに入ることができないようにシフトされた。これらの結果は、NP濃度が増加すると、RNAと複合体を形成できるNPの量が増加することを示す。
【0286】
ウサギ網状赤血球溶解物をin vitro翻訳系として使用したところ、16:1(NP 4000ng、mRNA 250ng)の比率では、相対発光量(RLU)で発光を測定することにより評価したルシフェラーゼ産生量は、ルシフェラーゼRNA単独に匹敵するが、4000ngのNP単独ではシグナルが2~3分の1に減少することが示された(図1)。これらの結果は、NP濃度が増加した場合、RNAはin vitro翻訳を阻害することなくNPに結合することを示す。
【0287】
実施例4:RNAフリーNPがRNAを分解から保護する
RNAフリーNPがRNAを保護するか否かを評価するために、NP:RNA及びRNA単独をRNaseアッセイで評価した。簡単に説明すると、NP:RNAまたはRNAをRNaseで処理し、30℃で5~10分間インキュベートした。サンプルを、1μlの熱不安定性プロテイナーゼK(PK、NEB P8111S)を使用してまたは使用せずにさらに処理した。反応物を37℃で15~30分間インキュベートし、続いて60℃で10~20分間インキュベートしてPKを不活化した。必要に応じて、1~2μlのRNasine(Promega N2611)を添加した。リアルタイムPCRを使用して、処理済みサンプル及び未処理サンプルにおいて存在するRNAのレベルを評価した。
【0288】
図2に示すように、RNaseで処理したNP:RNAではCT値の増加はなく、これは、ウイルスRNAの分解がないことを示す。対照的に、RNase単独で処理したRNAのCT値は有意に増加し(p=0.0005)、これは、存在するウイルスRNAの量の減少を示した。これらの結果は、NPの存在下で、RNAがRNaseによる分解から保護されることをさらに確認する。
【0289】
NPを分解するPKをNP:RNAに添加すると、CT値のわずかな増加が示され、これは、RNAの分解が最小限であることを示した。RNaseと組み合わせてPKを添加すると、CT値の有意な増加(<0.0001)が示され、これは、存在するウイルスRNAの量の減少を示した。これらの結果は、NPの存在下で、RNAがRNaseによる分解から保護されることをさらに確認する。
【0290】
実施例5:RNAフリーNPが4℃、24℃、及び37℃でRNAを分解から保護する
ナノルシフェラーゼRNA(nLuc RNA)を保護するNPの能力が温度依存性であるか否かを評価するために、NP:nLuc RNA及びnLuc RNAを4℃、24℃、及び37℃で最大96時間インキュベートし、RLUで発光を測定することによってルシフェラーゼ産生量を評価した。
【0291】
図3に示すように、4℃ではNP:nLuc RNAとnLuc RNA単独の間でRLUに有意な差はなかった。24℃では、NP:nLuc RNAと比較して、インキュベーション後96時間でnLuc RNAのRLUに顕著な減少が見られ(p=0.0034)、これは、NPにより分解からRNAが保護されていることを示した。37℃で8時間後、NP:nLuc RNAと比較してnLuc RNAのRLUが顕著に減少し、これは、NPによるRNAのさらなる長期保護を実証した。
【0292】
実施例6:RNAフリーNPがTLR誘導を保護する
NPの存在がdsRNAまたはss RNAのRNA誘導、TLR3及び/またはTLR8誘導を阻害するか否かを評価するために、TLR誘導NfKBレポーターアッセイを使用した。このアッセイでは、NfKBは分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)に操作的に連結されている。RNAは、いずれかの細胞型(条件付き形質導入されたTLR3または条件付き形質導入されたTLR8)に導入される。TLR受容体の結合は、NfKB活性化を誘導し、ひいてはSEAPを誘導する。SEAPレベルは、化学反応及び発熱量の読み出しによって決定することができる。
【0293】
図4に示すように、RNA単独はTLR3とTLR8の両方の誘導を刺激し、NPの存在はインキュベーション後2時間及び4時間の両方でTLR3及びTLR8の誘導を減少させる。
【0294】
実施例7:RNAフリーNPとマレイミド-DSPE脂質との結合
10%エタノールの存在下でNP(0.85mg/ml)をDSPE(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルエタノールアミン、8mM)とともにインキュベートすることにより、NPをマレイミド-DSPEと結合させた。標識されたNPと標識されていないNPを非還元ゲル上で泳動して、タンパク質の分子量を評価し、タンパク質とNPの分子量シフトとの結合を確認した。さらに、DSPEは懸濁液(すなわち、リポソーム)を形成するため、組成物を遠心分離し、上清を評価した。
【0295】
その後、脂質化されたNP:RNAは遠心分離によってプルダウンすることができるが、脂質の存在下(すなわち、NPの存在下ではない)で、RNA単独はプルダウンできないことが示された。
【0296】
実施例8:COVIDヌクレオカプシドがRNAを保護する
SARS-CoV-2由来のRNAフリーヌクレオカプシド(NP(SCoV2))を、インフルエンザウイルスについて上述したように精製した。nLuc RNAを分解から保護するNP(SCoV2)の能力を、最大168時間RLUで発光を測定することにより評価したルシフェラーゼ産生量を測定することによってin vitro翻訳系で評価した。
【0297】
図5に示すように、時間の経過とともにnLuc RNA単独のRLUが減少し、これは、nLuc RNAの分解を示した。16:1及び8:1(w/w)でNP(SCoV2):nLuc RNA組成物のRLUがわずかに減少したように見え、これはRNAの分解を示唆したが、各時点でのNP(SCoV2):nLuc RNA物質のPCR分析により、RNAが無傷で分解されていないことが確認された。
【0298】
さらに、NP(SCoV2)に封入されたRNAのアクセス可能性を、リボグリーン色素排除アッセイを使用して評価した。図5Bに示すように、NP(SCoV2)の濃度が増加すると、nLuc RNAへの色素の結合が妨げられるが、蛍光シグナルに基づくと、16:1の比率(NP 4000ng、mRNA 250ng)で、依然として色素がRNAにアクセス可能である。これは、NP(SCoV2)がRNAをコーティングして保護するが、RNAを完全には封入しないことを示唆する。
【0299】
実施例9:RNA結合ペプチドの調製
細胞及びウイルスのタンパク質配列を調べて、RNAに結合する可能性のあるタンパク質ドメイン及びペプチド配列を同定した。細胞タンパク質からの配列は、細胞増殖、細胞シグナル伝達、及び/または抗ウイルス経路に関連するタンパク質と相関するが、ウイルスタンパク質からの配列は非構造タンパク質及び核タンパク質に由来する。
【0300】
TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、プロテインキナーゼR(PKR)、Toll様受容体3(TLR-3)、及びTLR-7を含む細胞タンパク質に由来する配列からペプチドを設計した(表3)。ウイルスRNA結合タンパク質には、インフルエンザ由来の核タンパク質及び非構造タンパク質が含まれていた(表4)。
【0301】
RNA結合ペプチド配列を、既知の核局在化シグナルを除外するか、またはペプチド結合RNAが細胞に導入されたときにこの物質の正確な局在化を促進するために核外搬出シグナルを含むように修飾した(表3)。
【表3】
【表4】
【0302】
実施例10:RNA結合ペプチドの存在下における分解からのRNAの保護
RNA結合ペプチド(RBP)がRNAを保護するか否かを評価するために、リアルタイムPCRを使用してRBP:RNA及びナノルシフェラーゼ(nLuc)RNA単独を評価し、RNase処理後に残存するnLuc RNAのレベルを示した。評価したRBPは、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)ドメインA及びB、プロテインキナーゼR(PKR)ドメインA及びB、インフルエンザ非構造タンパク質(NS RBD)ドメインA、B、及びC、Toll様受容体7(TLR-7)TLR-7であった。
【0303】
簡単に説明すると、RBPとNLuc RNAを混合し、37℃で1時間インキュベートすることによってRBP:RNAサンプルを調製した。次に、RBP:RNA及びNLuc RNAのサンプルを、RNase(Promega M426A)を使用して、及び使用せずに調製した。RNaseで処理したサンプルを室温で30分間インキュベートした。リアルタイムPCRを使用して、処理済みサンプル及び未処理サンプルにおいて存在するRNAのレベルを評価した。
【0304】
SYBR-green(QuantiNova SYBR green RT-PCR kit #208152)の存在下でリアルタイムPCRを実施した。
【0305】
CT値を比較し(表5)、保護率を計算した。図6に示すように、NS RBDC、TRBP RBDA、及びTRBP RBDBは、RNase分解からRNAを保護するレベルを示した。残りの結合ドメインは、残存RNAが非ペプチド結合RNAのレベルを下回ることを示した。
【表5】
【0306】
HBV、デング熱、RSV、A型インフルエンザも評価した(図7)。データは、RNaseを添加するとHBV結合がRNAを保護することを示す。しかし、組換えデング熱は、非保護的であるRSVと同様の転写を許可しない。組換えA型及びB型インフルエンザNPは部分的にしか保護しない。
【0307】
実施例11:RNA:NPのin vivo発現
NP:RNAが細胞内で翻訳され得るか否かを評価するために、Hela細胞をNP:RNAまたはnLuc RNA単独でトランスフェクトした。簡単に説明すると、10ng/ウェルのNP:RNAまたはnLuc RNAをリポフェクタミン3000とともに細胞に添加した。トランスフェクションの2時間後に細胞を洗浄し、トランスフェクションの24時間後にRLUで発光を測定することによってnLuc産生量を評価した。図8に示すように、NP:RNAはHela細胞で発現する。
【0308】
図9に示すように、脾臓及び肝臓でもnLuc RNA発現を測定した。
【0309】
実施例12:NP:mRNA LNPの製剤化
核タンパク質に結合したRNAを使用して、及び使用せずにLNPを調製した。核タンパク質が完全に封入されているか否かを判断するために、様々なLNP製剤を開発し(表6)、平均サイズ(Z-Ave)及び多分散性指数(PDI)について分析した(表7)。核タンパク質を使用して、または使用せずLNPを開発し、RNAをLNPの内部(内部)または表面上(外部)に配置した。
【表6】
【表7】
【0310】
実施例13:NP:LNP熱安定性
NP:LNP製剤の経時的な安定性を評価するために、LNPのZ平均直径を測定することによって注射後60日及び90日後に4℃でLNPを評価した。図10に示すように、NPを含むLNPは4℃で経時的に熱安定性を示した。
【0311】
実施例14:LNP mRNAのin vivo生体内分布
0:1.5、15:1.5及び50:1の生体内分布を評価するために、NPを含むLNP製剤及びNPを含まないLNP製剤をマウスに筋肉内注射し、次に、注射後6日目の臓器の生体内分布を、各臓器1mgあたりの発光シグナル(RLU)量を測定することによって評価した。
【0312】
図11に示すように、NP:mRNAまたはnLuc mRNA単独を配合したLNPは、流入リンパ節及び非流入リンパ節、脾臓、肝臓及び筋肉で検出された。mRNA-LNPと比較した場合、15:1.5 NP-mRNA-LNP製剤を投与されたマウスの流入リンパ節及び非流入リンパ節並びに肝臓でRLUの増加が観察された。
【0313】
LNP内の窒素(N)対リン酸(P)比(N/P)を変更する効果も評価した。図12に示すように、3、4.5、及び6のN/P比が、LNPサイズ(A)及び封入効率(B)に及ぼす影響を評価した。生体内分布に対する影響も評価し、結果を図12Cに示す。すべてのN/P比(3、4.5、及び6)で、他のすべての臓器におけるLNP-mRNA及びNuP-LNP-mRNAの同様の生体内分布が観察された。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
【配列表】
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【国際調査報告】