(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】身体部分の組織特性の決定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B5/022 300Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520711
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022075999
(87)【国際公開番号】W WO2023061704
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーンフェルト パウルス コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ フェーン エフベルト
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA20
4C017AB01
4C017AC01
4C017AC40
4C017AD01
4C017BB01
4C017BB12
4C017BC11
4C017DE01
4C017DE05
4C017DE10
4C017FF05
(57)【要約】
一態様によれば、身体部分の組織特性を決定するコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、身体部分に複数の異なる圧力を印加するようシェルカフ装置を制御するステップであって、シェルカフ装置は、身体部分を少なくとも部分的に囲み、シェルカフ装置は、身体部分の周りに少なくとも部分的に配される硬質シェル部分と、硬質シェル部分を介して身体部分に複数の異なる圧力を印加するように膨張及び/又は収縮する、硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有する、前記制御するステップ、複数の異なる圧力が身体部分に印加されるとき、身体部分の半径の身体部分の半径の変化の半径測定値を取得するステップ、身体部分に印加される異なる圧力の圧力測定値を取得するステップ、並びに半径測定値及び圧力測定値から身体部分の組織特性を決定するステップを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部分の組織特性を決定するコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するようにシェルカフ装置を制御するステップであって、前記シェルカフ装置は、前記身体部分を少なくとも部分的に囲み、前記シェルカフ装置は、前記身体部分の周りに少なくとも部分的に配される硬質シェル部分と、前記硬質シェル部分を介して前記身体部分に前記複数の異なる圧力を印加するように膨張及び/又は収縮する、前記硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有する、前記制御するステップ、
前記複数の異なる圧力が前記身体部分に印加されるとき、前記身体部分の半径又は前記身体部分の半径の変化の半径測定値を取得するステップ、
前記身体部分に印加される前記異なる圧力の圧力測定値を取得するステップ、並びに
前記半径測定値及び前記圧力測定値から前記身体部分の組織特性を決定するステップ
を有する、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記圧力測定値は、前記硬質シェル部分の内側に位置決められるセンサパッドを使用して取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力測定値を取得するステップは、
前記膨張式カフが膨張及び/又は収縮するとき、カフ圧センサを使用して、前記膨張式カフ内の圧力の測定値を取得するステップ、並びに
第1のカフ圧センサ測定値について、前記第1のカフ圧センサ測定値及び対応する半径測定値から前記圧力測定値を決定することによって、前記圧力測定値を決定するステップ
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記身体部分に印加される前記異なる圧力の圧力測定値を決定するステップは、
カフ圧センサ測定値、対応する半径測定値、前記硬質シェル部分の摩擦係数、及び前記硬質シェル部分の全長の関数として圧力測定値を決定するステップを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半径測定値を取得するステップは、1つ以上の半径センサを使用するステップを有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記半径センサは、前記硬質シェル部分の変形を測定するように構成されるセンサである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記半径センサは、前記硬質シェル部分の変形が前記半径センサの1つ以上の電気的特性を変化させるように構成又は配される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記半径センサは、ひずみゲージである、請求項5乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記半径測定値は、前記膨張式カフ内の圧力の測定値、並びに前記膨張式カフ内への及び前記膨張式カフから外への流体の流量の測定値から取得される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記半径測定値は、前記膨張式カフ内の圧力の測定値、前記センサパッドを使用して取得される圧力測定値、前記硬質シェル部分の摩擦係数、及び前記硬質シェル部分の全長から取得される、請求項2、又は請求項2に従属する請求項3乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記半径測定値及び前記圧力測定値から前記身体部分の組織特性を決定するステップは、前記身体部分の半径の変化を、1つ以上の組織特性及び前記身体部分に印加される圧力に関連付ける関数を使用するステップを有する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織特性を決定するステップは、前記取得される半径測定値ΔR
i及び前記取得される圧力測定値Δp
iを使用して、E
arm(Δp
i)=E
0+k・Δp
iを用いて、以下の式
【数4】
の値を求めるステップを有し、E
0は、前記身体部分における組織の弾性率であり、kは、前記組織の非線形E弾性率を表すパラメータであり、v
armは、前記組織のポアソン比であり、R
i0は、前記膨張式カフによる圧力が前記身体部分に印加されないときの前記身体部分の最初の半径であり、及びR
bは、前記身体部分における骨の半径である、請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
被験者の生理学的特性の測定値を決定するコンピュータ実施方法であって、前記方法は、
請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法に従って、前記被験者の身体部分の組織特性を決定するステップ、
前記決定される組織特性を使用して、前記硬質シェル部分の内側に位置決められるセンサパッドによる圧力測定値を較正するステップ、及び
前記較正された圧力測定値を使用して、前記生理学的特性の測定値を決定するステップ
を有する、コンピュータ実施方法。
【請求項14】
身体部分の組織特性を決定するためのデバイスであって、前記デバイスは、処理ユニットを有し、前記処理ユニットは、
前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するようにシェルカフ装置を制御するために、前記シェルカフ装置に制御信号を出力し、ここで前記シェルカフ装置は、前記身体部分を少なくとも部分的に囲み、前記シェルカフ装置は、前記身体部分の少なくとも一部の周りに配される硬質シェル部分と、前記硬質シェル部分を介して前記身体部分に前記複数の異なる圧力を印加するように膨張及び/又は収縮する、前記硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有する、
前記複数の異なる圧力が前記身体部分に印加されるとき、前記身体部分の半径又は前記身体部分の半径の変化の測定値を取得し、
前記身体部分に印加される前記異なる圧力の圧力測定値を取得し、並びに
前記半径測定値及び前記圧力測定値から前記身体部分の組織特性を決定する
ように構成される、デバイス。
【請求項15】
身体部分の組織特性を決定するためのシステムであって、前記システムは、
請求項14に記載のデバイス、
身体部分を少なくとも部分的に囲むように構成されるシェルカフ装置であって、前記シェルカフ装置は、前記身体部分の少なくとも一部の周りに配されるように構成される硬質シェル部分と、前記硬質シェル部分を介して前記身体部分に前記複数の異なる圧力を印加するように膨張及び/又は収縮するように構成される、前記硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有し、並びに
前記半径測定値及び前記圧力測定値を供給するための1つ以上のセンサ
を有する、システム。
【請求項16】
コンピュータ可読コードが具現化されるコンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ又は請求項14に記載のデバイスの処理ユニットによる命令実行時に、前記コンピュータ又はデバイスに、請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法を命令行わせるように構成される、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体部分の組織特性を決定するためのシェルカフ装置の使用に関し、特に、身体部分の組織特性を決定するためのコンピュータ実装方法、デバイス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧(BP)は、人/被験者における健康の重要な指標である。米国において、成人人口の約30%が高血圧であると推定されている。高血圧は、明らかな表立った症状がない一般的な健康問題である。血圧は、一般に、加齢と共に上昇し、高齢になると高血圧になるリスクはかなり高い。持続性高血圧は、脳卒中、心不全及び死亡率の上昇に対する重要な危険因子の1つである。被験者の症状は、生活様式の変更、健康的な食事の選択及び薬物療法によって改善することができる。特に、高リスク患者にとって、普通の日常の生活動作を妨げないシステムを用いて、連続的な24時間の血圧モニタリングが非常に重要である。血圧の連続的なモニタリングは、例えば、病院のような医療環境、例えば手術室(OR)又は集中治療室(ICU)にいる患者にも有用である。
【0003】
幾つかの場合において、血圧の絶対測定値を取得し、他の場合において、血圧の相対測定値、例えば、血圧の変化の測定値を取得することができる。特に、血圧は、例えば数分のオーダーという短い時間ウィンドウにわたって変化し、これら変化は、さらなる検診及び場合によっては医学的介入に関連する。
【0004】
血圧及び/又は血圧の変化を測定するために利用可能な多くの異なる技術がある。これらの技法の幾つかは、血圧自体を測定するのに対し、他の技術は、被験者の他の生理学的特性を測定し、例えば、これら生理学的特性の変化又は値を血圧の変化又は値に関連付けることによって、これら生理学的特性を血圧の代理(サロゲート)として使用する。血圧を直接測定するための技術の幾つかは、例えば、カテーテルを介した被験者の動脈への侵襲的なアクセス、又は、例えば、膨張式カフのような、かさばる/不便な機材の使用を必要とする。しかしながら、血圧の代理として使用される生理学的特性の幾つかは、被検者の身体に適用される簡単な及び/又は目立たないセンサを使用して測定することができる。
【0005】
国際公開第2014/121945号は、キンク防止シェルを有する血圧測定システムを記載している。この血圧測定システムは、患者の身体部分を取り囲むように構成され、身体部分に圧力を加えるための加圧手段と、加圧手段と身体部分との間に位置するキンク防止シェルとを有する。圧力トランスデューサ又は圧力センサパッドが、前記シェルの内側面上に設けられる。この配置は、“シェルカフ”又は“シェルカフ装置”と呼ばれ、この配置は、デバイスの構成要素による及び/又はデバイスの外側の空気による拍動信号の減衰を本質的に防止し、これは、高い信号品質に変換され、血液に直接アクセスするためにカテーテルを使用する侵襲的技術と同様の精度で血圧を測定することを可能にする。これは、圧力トランスデューサ又は圧力センサパッドと、測定に適切である身体部分との水理学的(hydraulically)に最適化される接触によって達成される。
【0006】
図1は、身体部分4、本事例では腕の周りに少なくとも部分的に配されるシェルカフ装置2を示す簡略図である。このシェルカフ装置2は、膨張式カフによって包まれる硬質シェル(hard shell)を含み、センサパッド6がこの硬質シェルの内側に配され、身体部分4内の血管10(動脈)を通過する脈波8を測定する。脈波8は、身体部分4の組織に圧力波を生じさせ、これがセンサパッド6によって測定される。
【0007】
より詳細には、上腕動脈10内の脈波8が、皮膚の動きに変化を生じさせる。この皮膚の動きの変化は、センサパッド6内の液体の圧迫を生じさせる。センサパッド6内の液体は、例えば、AK10のようなシリコーンオイルとすることができる。センサパッド6は、このセンサパッド6と同様の液体で満たされる可撓性チューブを介して、圧力信号を測定する圧力センサ(
図1には図示せず)に接続される。現在のアプリケーションでは、圧力センサ内の液体は、適合性を理由に、センサパッド6内の液体とは異なる液体である。例えば、圧力センサ内の液体はグリセロール(glycerol)でもよい。
【0008】
液体が満たされたセンサパッド6は、硬質シェルによってシェルカフ装置2内に封入され、剛性を提供し、圧力センサによって測定されるのに十分な信号を生じさせる。標準的な血圧カフと同様に、カフを空気で満たして、硬質シェル、従って腕組織を圧迫し、その結果、上腕動脈を閉じることができるアクチュエータ(例えば、空気ポンプ)がある。
【0009】
シェルカフ装置2による血圧測定値は、侵襲的技術を用いて取得される血圧測定値(これらの測定値は同時に取得される)に対して較正される必要がある。動脈10から身体部分4の外側への圧力信号の伝達に組織の硬さが影響を及ぼすので、前記較正は、異なるレベルの組織の硬さを持つ患者の広い範囲に対して行うことができる。シェルカフ装置2は、硬質シェルを含むため、腕の径が異なる患者(被験者)に対応するために、異なるサイズのシェルカフが提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、シェルカフ装置を用いて取得される測定値において、組織特性の個々の変動の影響を考慮に入れることはできない。代わりに、組織特性の変動は、特定のサイズのシェルカフに対する予想される平均の組織特性に従って考慮されるだけである。しかしながら、単一サイズのシェルカフについては、被験者間で組織特性にかなりの相違が存在する。例えば、大きな肥満の腕部を持つ被験者は、同様のサイズの筋肉質の腕部を持つ被験者と比較して異なる組織特性を持つ。
【0011】
従って、例えば、シェルカフ装置を使用して取得される測定値から導出される生理学的特性(例えば、血圧)の任意の推定値又は測定値を考慮に入れることができるように、被験者の身体部分の組織特性を決定することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に記載の技術は、シェルカフ装置を使用して多くの異なる圧力が身
体部分に印加されるので、センサを使用して前記身体部分の半径又は半径の変化の測定値を取得する。前記身体部分の組織特性は、この身体部分の半径の変化と、シェルカフ装置によって印加される圧力との間の関数又は関係から決定することができる。
【0013】
第1の態様によれば、身体部分の組織特性を決定するコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するようシェルカフ装置を制御するステップであり、前記シェルカフ装置は、前記身体部分を少なくとも部分的に囲み、前記シェルカフ装置は、身体部分の周りに少なくとも部分的に配される硬質シェル部分と、硬質シェル部分を介して前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するように膨張及び/又は収縮する、前記硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有する、制御するステップ、前記身体部分に前記複数の異なる圧力が印加されるとき、前記身体部分の半径又は前記身体部分の半径の変化の半径測定値を取得するステップ、前記身体部分に印加される前記異なる圧力の圧力測定値を取得するステップ、並びに前記半径測定値及び前記圧力測定値から前記身体部分の組織特性を決定するステップを有する。
【0014】
第2の態様によれば、被験者の生理学的特性の測定値を決定するコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、第1の態様又はその任意の実施形態による被験者の身体部分の組織特性を決定するステップ、硬質シェル部分の内側に位置決められるセンサパッドによって圧力測定値を較正するために、前記決定された組織特性を使用するステップ、及び前記較正された圧力測定値を使用して、生理学的特性の測定値を決定するステップを有する。
【0015】
第3の態様によれば、身体部分の組織特性を決定するように構成されるデバイスが提供される。(シェルカフ装置に制御信号を出力する処理ユニットを有することができる)このデバイスは、前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するようシェルカフ装置を制御し、複数の異なる圧力が身体部分に印加されるとき、身体部分の半径又は半径の変化の半径測定値を取得(例えば、受信)し、前記身体部分に印加される異なる圧力の圧力測定値を取得(例えば、受信)する、並びに前記半径測定値及び前記圧力測定値から、前記身体部分の組織特性を決定するように構成されるか、そのように構成される処理ユニットを有し、ここで、シェルカフ装置は、前記身体部分を少なくとも部分的に囲み、シェルカフ装置は、身体部分の少なくとも一部の周りに配される硬質シェル部分と、この硬質シェル部分を介して前記身体部分に複数の異なる圧力を印加するために膨張及び/又は収縮する、前記硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフとを有する。
【0016】
第4の態様によれば、被験者の生理学的特性の測定値を決定するように構成されるデバイスが提供される。このデバイスは、第4の態様又はこの第4の態様の任意の実施形態に従って構成され、決定された組織特性を使用して、硬質シェル部分の内側に位置決められるセンサパッドによって圧力測定値を較正し、較正された圧力測定値を使用して前記生理学的特性の測定値を決定するようにも構成される。
【0017】
第5の態様によれば、身体部分の組織特性を決定するためのシステムが提供される。このシステムは、第3又は第4の態様によるデバイスと、身体部分を少なくとも部分的に囲むように構成されるシェルカフ装置と、半径測定値及び圧力測定値を供給する(例えば、取得する)ための1つ以上のセンサとを有し、前記シェルカフ装置は、身体部分の少なくとも一部の周りに配されるように構成される硬質シェル部分、この硬質シェル部分を介して身体部分に複数の異なる圧力を印加するために膨張及び/又は収縮するように構成される、硬質シェル部分を取り囲む膨張式カフ、並びに前記半径測定値及び前記圧力測定値を提供する(例えば、取得する)ための1つ以上のセンサを有する。
【0018】
第6の態様によれば、その中にコンピュータ可読コードを具現化しているコンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品が提供され、このコンピュータ可読コードは、コンピュータによる命令実行時、又は第3若しくは第4の態様或いはこれら態様の任意の実施形態のデバイスの処理ユニットによって、コンピュータ又はデバイスに、第1の態様、第2の態様又はこれら態様の任意の実施形態による方法を行わせるように構成される。
【0019】
第4及び第5の態様によるデバイスの様々な実施形態も想定され、ここで、このデバイスは、本明細書に記載される方法の様々な実施形態に従って動作するように付加的に又はさらに構成される。
【0020】
これらの態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
例示的な実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、被験者の身体部分の周りにあるシェルカフ装置の簡略図である。
【
図2】
図2は、デバイス及びシェルカフ装置を有する、身体部分の組織特性を決定するためのシステムのブロック図である。
【
図3】
図3は、ひずみゲージの形態の半径センサを備える例示的な硬質シェル部分を示す。
【
図4】
図4は、身体部分の簡略化されたモデルの周りの硬質シェル部分の断面を示す。
【
図5】
図5は、身体部分に押し込まれているセンサパッドを示す。
【
図6】
図6は、身体部分の組織特性を決定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述したように、本明細書に記載される技術は、シェルカフ装置を使用して多くの異なる圧力が身体部分に加えられるときに、センサを使用して前記身体部分の半径又は前記身体部分の半径の変化の測定値を取得する。身体部分の組織特性は、身体部分の半径の変化と、シェルカフ装置によって印加される圧力との間の関数又は関係から決定することができる。組織特性は、弾性率、非線形E弾性率(E-modulus)、ポアソン比、varm、除脂肪量(FFM)及び脂肪量(AFM: adipose fat mass)の何れかとすることができる。
【0023】
身体部分の半径又はこの身体部分の半径の変化は、本明細書において“半径センサ”と呼ばれるセンサを使用して測定することができる。この目的のために、多くの異なる種類のセンサを使用することができる。例えば、半径センサは、シェルカフ装置の硬質シェル部分に組み込まれるひずみゲージ、又は最初の(すなわち、圧力が印加される前の)身体部分の半径と、身体部分に圧力を印加するときの身体部分の半径の変化との両方を測定するために使用される、金属ストリップに基づく別個の測定デバイスの何れかとするか、又はその何れかを有する。
【0024】
身体部分に印加される圧力は、シェルカフ装置に関連付けられるセンサパッドを使用して直接測定されるか、又は硬質シェル部分の重複する部分間の既知の摩擦係数、硬質シェル部分の全長及びカフ圧を用いて測定される身体部分の半径の変化と組み合わされる膨張式カフ内の圧力の測定値を介して間接的に測定することができる。硬質シェル部分の全長は、硬質シェル部分の固定パラメータであり、前記身体部分を囲む硬質シェル部分の長さ(2πRによって凡そ与えられ、Rは身体部分の半径である)に、硬質シェル部分の両側の重複する量を加えたものである。両方の方法の間の大きすぎる不一致は、センサパッドによって測定される圧力に誤差があることを示し、これは、測定される圧力から導出される心拍出量又は他の生理学的特性に誤差を自動的にもたらす。これは、特に、腕が硬い小柄な大人で起こり得る。提案される技術を用いて、身体部分上の正確な圧力を決定することができるので、潜在的な誤差を回避又は補償することができる。
【0025】
従って、これらの技術の実施形態は、実際の心拍出量又は他の生理学的特性を決定するために、センサパッドの圧力による測定値の個々の較正に使用することができる1つ以上の組織特性を決定することを可能にする。さらに、実施形態は、特に、腕が硬い小柄な大人に対する心拍出量又は他の生理学的特性の測定における潜在的な誤差の検出を提供し、これらの誤差を補正する。
【0026】
図2は、身体部分の組織特性を決定するための例示的なシステム20を示す。システム20は、シェルカフ装置22及びデバイス24を有する。幾つかの実施形態において、システム20は、決定される組織特性に基づいて、被験者の1つ以上の生理学的特性を決定又は測定するためにも使用される。
【0027】
シェルカフ装置22は、膨張式カフ26及び硬質シェル部分28を有する。硬質シェル部分28は、例えば、腕部又は脚部のような、身体部分の少なくとも一部の周りに配されるべきであり、膨張式カフ26は、硬質シェル部分28を囲む(すなわち、膨張式カフ26が膨張すると、この膨張式カフが硬質シェル部分28を身体部分に押し付けるように、膨張式カフ26は硬質シェル部分28の周りに配される)。硬質シェル部分28は、任意の適切な材料、例えば、0.4~5GPaの範囲の弾性率を持つプラスチック材料から形成することができる。このようなプラスチック材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)とすることができる。硬質シェル部分28の長さ及び/又は厚さは、シェルカフ装置22が使用される身体部分(例えば、腕部又は脚部)の直径に応じて変化する。特に、身体部分の直径が大きいほど、硬質シェル部分28の長さ及び厚さは大きくなる。典型的な厚さは、0.5~5mmの範囲、又は例えば1~2mmの範囲とすることができ、典型的な全長は、0.25~0.7メートルの範囲、及び例えば0.3~0.5メートルの範囲とすることができる。
【0028】
シェルカフ装置22は、(例えば、接続チューブ32を介して)膨張式カフ26に接続されるポンプ30も有する。ポンプ30は、膨張式カフ26を選択的に膨張させるように(例えば、制御信号に応答して)制御可能である。ポンプ30が膨張式カフ26を選択的に収縮させることも可能である、及び/又は膨張式カフ26が選択的に収縮することを可能にする弁(図示せず)が設けられてもよい。
【0029】
膨張式カフ26及び硬質シェル部分28の下にある身体部分の組織特性を決定することを可能にするために、複数の異なる圧力が膨張式カフ26及び硬質シェル部分28によって身体部分に加えられるとき、この身体部分の半径又はこの身体部分の半径の変化を測定するための半径センサ34が設けられる。半径センサ34は、以下にさらに概説されるように、幾つかの異なる形態の何れかとすることができる。半径センサ34は、半径又は半径の変化の測定値を有する測定信号を経時的に出力する。
【0030】
幾つかの実施形態において、例えば、システム20が、決定された組織特性を考慮している被験者の生理学的特性を決定するために使用される場合、シェルカフ装置22は、硬質シェル部分28の内面、すなわち、硬質シェル部分28が身体部分の周りに配されるとき、この身体部分に向いている硬質シェル部分28の面上に位置決められるセンサパッド36をさらに有することができる。膨張式カフ26が膨張するとき、膨張式カフ26及び硬質シェル部分28がセンサパッド36を身体部分に押し付け、センサパッド36が、例えば、身体部分を通過する脈波によって、身体部分内の圧力を測定することを可能にする。センサパッド36は、前記脈波又は圧力波の測定値を有する測定信号を経時的に出力する。センサパッド36は、液体が満たされるパッドでもよい。センサパッド36は、センサパッド36と同様の液体で満たされる可撓性チューブを介して、硬質シェル部分28の外側にあり、圧力を測定する圧力センサに接続することができる。センサパッド36内の液体は、例えば、AK10のようなシリコーンオイルとすることができ、前記圧力センサ内の液体は、例えば、グリセロールのような、センサパッド36内の液体とは異なる液体とすることができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、センサパッド36からの測定値を使用して、身体部分の半径又は身体部分の半径の変化を決定することができ、この事例おいて、別個の半径センサ34は必要とされない。
【0032】
(半径センサ34及びセンサパッド36のどっちの組み合わせがシェルカフ装置22にあっても)半径センサ34及びセンサパッド36からの測定信号は、分析のためにデバイス24に供給される。
【0033】
デバイス24は、本明細書に記載の技術に従って動作して、被験者の身体部分の組織特性を決定する。デバイス24は、半径センサ34から測定信号を、及び/又はセンサパッド36から測定信号を受信するように構成される。幾つかの実施形態において、デバイス24は、(例えば、制御信号をシェルカフ装置22/ポンプ30に送信することによって)ポンプ30の動作を制御し、それによって、適切な時間に膨張式カフ26の膨張を開始するように構成される。
【0034】
デバイス24は、例えば、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチのようなコンピュータデバイス、又は血圧、心拍出量(CO)、1回拍出量(SV)、1回拍出量変動(SVV)或いはパルス輪郭1回拍出量(PCSV)を含む、被験者/患者の様々な生理学的特性をモニタリング(及び任意選択で表示)するのに使用される患者モニタリングデバイス(例えば、臨床環境において患者のベッドサイドに配されるモニタリングデバイス)のような、臨床環境において典型的に見られる他の種類のデバイスの形態であるか、又はその一部でもよい。
【0035】
デバイス24は、このデバイス24の動作を制御する、及び本明細書に説明される方法を実行又は行うように構成される処理ユニット38を含む。処理ユニット38は、本明細書に説明される様々な機能を行うために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて多数の方法で実装される。処理ユニット38は、必要な機能を行うため、及び/又は処理ユニット38の構成要素を制御して、必要な機能を果たすために、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを使用してプログラムされる、1つ以上のマイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサ(DSP)を有する。処理ユニット38は、幾つかの機能を行うための専用ハードウェア(例えば、増幅器、前置増幅器、アナログデジタル変換器(ADC)及び/又はデジタルアナログ変換器(DAC))と、他の機能を行うためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ、コントローラ、DSP及び関連回路)との組合せとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態において使用される構成要素の例は、これらに限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ニューラルネットワークを実装するためのハードウェア及び/又はいわゆる人工知能(AI)ハードウェアアクセラレータ(すなわち、プロセッサ又はメインプロセッサと共に使用されるAIアプリケーションのために特に設計された他のハードウェア)を含む。
【0036】
処理ユニット38は、デバイス24の動作を制御するとき、及び/又は本明細書に説明される方法を実行又は行うとき、処理ユニット38によって使用されるデータ、情報及び/又は信号を記憶することができるメモリユニット40に接続される。例えば、メモリユニット40は、処理ユニット38による後の使用のために、半径測定値、圧力測定値、半径センサ34及び圧力センサ36の一方又は両方からの測定信号の何れかを記憶することができる。幾つかの実装形態において、メモリユニット40は、処理ユニット38が本明細書に説明される方法を含む、1つ以上の機能を行うように、処理ユニット38によって実行されるコンピュータ可読コードを記憶する。特定の実施形態において、前記プログラムコードは、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット、ラップトップ又はコンピュータのためのアプリケーションの形態とすることができる。メモリユニット40は、例えば、RAM、SRAM(static RAM)、DRAM(dynamic RAM)、ROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)及びEEPROM(electrically erasable PROM)のような揮発性並びに不揮発性のコンピュータメモリを含むキャッシュ又はシステムメモリのような、如何なる種類の非一時的な機械可読媒体を有することができ、メモリユニット40は、メモリチップ、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)或いはブルーレイディスク)、ハードディスク、テープストレージソリューション又はメモリスティック、ソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカードなどを含むソリッドステートデバイスの形態で実装することができる。
【0037】
幾つかの実施形態において、デバイス24は、このデバイス24のユーザがデバイス24に情報、データ及び/又は命令を入力することを可能にする、及び/又はデバイス24がこのデバイス24のユーザに情報又はデータを出力することを可能にする、1つ以上の構成要素を含むユーザインターフェース42を有する。ユーザインターフェース42を介して入力され得る情報は、性別、年齢、身長、体重、BMI(body mass index)などの何れかを含むことができる。ユーザインターフェース42によって出力され得る情報は、組織特性に関する情報、組織特性の値、被験者の生理学的特性に関する情報、生理学的特性値などの何れかを含むことができる。ユーザインターフェース42は、これらに限定されないが、キーボード、キーパッド、1つ以上のボタン、スイッチ若しくはダイヤル、マウス、トラックパッド、タッチスクリーン、スタイラス、カメラ、マイクロフォンなどを含む任意の適切な入力構成要素を有することができる、及び/又はユーザインターフェース42は、これらに限定されないが、表示スクリーン、ライト又は光要素、1つ以上のスピーカ、振動要素などを含む任意の適切な出力構成要素を有することができる。
【0038】
デバイス24及び/又はシェルカフ装置22の実用的な実施形態は、
図2に示される構成要素に追加される構成要素を含むことができると理解されよう。例えば、デバイス24は、例えばバッテリのような電源又はデバイス24が主電源に接続されることを可能にするための構成要素を含んでもよい。デバイス24は、シェルカフ装置22(例えば、シェルカフ装置22がデバイス24に直接接続されていない場合)、サーバ、データベース及びユーザデバイスを含む、他のデバイスとのデータ接続及び/又は他のデバイスとのデータ交換を可能にするためのインターフェース回路を含むこともできる。
【0039】
幾つかの実施形態において、シェルカフ装置22は、他の特性を測定するための1つ以上のさらなるセンサを有してもよい。例えば、半径センサ34がひずみゲージである実施形態において、シェルカフ装置22が使用されている環境の温度を測定するために使用することができる温度センサを設けることもできる。測定される温度を使用して、この温度の変化に対するひずみゲージによるひずみの測定を補正することができる。代替的に、温度の変化に対し自動的に補正するために、半ホイートストンブリッジ又は全ホイートストンブリッジ構成で結合される複数のひずみゲージを設けることができる。
【0040】
別の手法において、身体部分(例えば、腕部)の形状によりよく合致するように、硬質シェル部分28が先細る(テーパー状となる)実装形態において、複数の半径センサ34が硬質シェル部分28の異なる部分に設けられ、これらの部分の半径又は半径の変化を測定することができる。
【0041】
図3は、ひずみゲージの形態である半径センサ34を備える例示的な硬質シェル部分28を示す。硬質シェル部分28は、この硬質シェル部分28を身体部分の周りに配することができるように、円筒形状に湾曲された又は“丸められた”材料のシートを有する。
図3に示されるように、前記材料の前縁は、領域50において重なっている。膨張式カフ26が膨張するとき、硬質シェル部分28が身体部分に対して圧迫され、領域50における重複する量が増大し、硬質シェル部分28によって形成される円筒形の直径が減少する。硬質シェル部分28の変形によって引き起こされるひずみを測定するために、ひずみゲージの形態の半径センサ34を硬質シェル部分28の外面又は内面に取り付けることができる。代替的に、ひずみゲージ34は、硬質シェル部分28と一体化することができる。好ましくは、硬質シェル部分28は、この材料が重なり合うときの摩擦係数が小さい材料から作られる。これにより、硬質シェル部分28の外側に印加される圧力が変化するにつれて、硬質シェル部28の直径又は大きさをよりスムーズに変化させることができる。
【0042】
図3は、本明細書に記載される技術が使用されることを可能にするために、半径センサ34を含まない既存のシェルカフ装置と共に使用される代替的な手法も示す。この手法において、取り付け部分52が設けられ、この取り付け部分52は、例えば、位置54のような、硬質シェル部分28の外面若しくは内面に取り付けられる又は配されることができ、ひずみゲージの形態の半径センサ34を有する。取り付け部分52の取り付けは、例えば、接着剤、クランプ、ねじ、ボルトなどの任意の適切な取り付け手段を使用して達成することができる。膨張式カフ26が膨張するときの硬質シェル部分28の変形が取り付け部分52の対応する変形を引き起こし、半径センサ34は、この変形に関連付けられるひずみを測定する。特定の実装形態において、取り付け部分52は、0.01mm~5mmの厚さの鉄鋼から形成される。取り付け部分52が硬質シェル部分28に取り付けられる力(クランプ力)は、膨張式カフ26内の圧力に影響を及ぼすことを回避するために、膨張式カフ26が膨張するとき、この膨張式カフ26により加えられる圧力と比較して小さくなるべきである。
【0043】
処理ユニット38又は半径センサ34は、半径センサ34による半径の又は半径の変化の測定を行う及び/又は解釈することを可能にする適切な電子構成要素又はソフトウェアを有することができる。例えば、半径センサ34がひずみゲージである実施形態において、半径センサ34又は処理ユニット38は、ひずみゲージから測定値を取得するために使用されるホイートストンブリッジの形態の電気回路を有することができる。例えば、ポンプ30からの圧力パルス及び/又は心臓の鼓動のパルスのような低周波数ノイズをフィルタリングするために、処理ユニット38又は半径センサ34にローパス周波数フィルタが設けられてもよい。典型的なカットオフ周波数は、好ましくは20ヘルツ(Hz)より低く、より好ましくは0.5Hzより低い。
【0044】
上述したように、半径センサ34は、幾つかの異なる形態の何れかとすることができ、
図3に示されるように配されるひずみゲージは、1つの可能性である。他の種類の半径センサ34は、硬質シェル部分28の1つ以上の寸法又は寸法の変化を測定するための1つ以上のセンサとすることができる。半径又は半径の変化を決定するために測定される寸法は、硬質シェル部分28の直径、硬質シェル部分28の円周、硬質シェル部分28の接線方向の変位又は領域50における硬質シェル部分28が重なる量を含む。1つ以上の寸法を測定するために使用されるセンサの種類は、光センサ(例えば、カメラ、撮像ユニット又はレーザベースのシステムであり、これらは硬質シェル部分28上に視覚的マーカーの配置或いは存在を必要としても、は必要としなくてもよい)、領域50における前記重なる量を測定するために硬質シェル部分28上の異なる位置に配される近接センサ、圧力(タッチ)センサ、(例えば、重なる領域50における硬質シェル部分28の2つの部分間の抵抗、コンダクタンス、インピーダンスなどを測定する)電気特性センサ、硬質シェル部分28の変形が導出される硬質シェル部分28の動きを測定する加速度計、並びに膨張式カフ26が膨張及び収縮するとき、硬質シェル部分28の下にある身体部分に流れる及び/又はそこから流れる流体の体積を測定する(測定される身体部分の体積の変化は、この身体部分を取り囲んでいる硬質シェル部分28の体積の変化を示す)体積センサを含む。
【0045】
別個の半径センサ34が設けられず、身体部分の半径又は半径の変化を決定するために、センサパッド36からの測定値を使用する実施形態において、膨張式カフ26内の総空気(又は他の流体)量の測定値と、膨張式カフ26内の圧力の測定値とを組み合わせて、身体部分の半径の変化と、身体部分の圧力との間の関係を与えることができる。膨張式カフ26内の空気(又は他の流体)の量は、流量計を使用して測定することができ、空気(流体)流の測定値は、膨張式カフ26内の空気(流体)量を与えるために経時的に積分される。
【0046】
半径センサ34を用いずに身体部分の半径を決定するための代替的な方法は、重なっている硬質シェル部分28の事例である。
【0047】
身体部分の半径に対する関係R(Δp
i)は、
【数1】
として導出され得ることが示される。ここで、εは、(センサパッドの圧力とカフ圧との間の比率であり、これは以下でさらに説明する)有効性であり、μは、重なっているシェル部分間の摩擦係数であり、L
tは、硬質シェル部分28の全長であり、これは異なるシェルカフのサイズで異なる。従って、身体部位の半径を決定するために、有効性ε及び摩擦係数μを知る又は測定する必要がある。この手法は簡単であり、別個の半径センサを必要としなくても、摩擦係数μは、重なっているシェル部分間で変動するので、精度が低い可能性があり、身体部分の半径を計算するために使用されるモデルは、
図5を参照して以下に説明される影響を理由に、完全には適用可能ではない
【0048】
上述したように、硬質シェル部分28内にある圧力センサ(センサパッド36)の応答は、被験者の組織特性に強く影響を受けるので、被験者の1つ以上の組織特性を決定することが有用である。原則として、身体部分の外側に印加される圧力による身体部分の半径の変化から、この身体部分の非線形弾性率(E-modules)を決定することが可能である。これらの関係の詳細は、以下にさらに論じられるが、圧力の増大に伴う身体部分の半径の減少が比較的に大きいことは、同じ圧力の変化に対して半径の減少がより少ない被験者と比較すると、異なる組織特性を持つ被験者の兆候であることが理解される。
【0049】
図4の図は、身体部分60の簡略化されたモデルの周りにある硬質シェル部分28の断面を示す。身体部分60は、円形の断面を持つと仮定され、身体部分60の中心に半径R
bを持つ骨62、動脈64及び他の軟組織66を含む。このモデルにおいて、軟組織66は、均一(すなわち、均一な密度及び他の物質特性)であると考えられるが、脂肪、筋肉などを表す異なる組織切片を含む、より複雑なモデルが使用され得ることが理解されよう。半径センサ34は、硬質シェル部分28上に設けられ、例えばひずみゲージとすることができる。センサパッド36は、硬質シェル部分28の内面に位置決められ、身体部分60内に押し付けられる。硬質シェル部分28は、身体部分60に巻き付けられ、硬質シェル部分28の前縁が互いに重なる重複領域50が存在する。重複する量(すなわち、シェルが重なる長さL
0)は、
L
0=L
t-2πR
i(Δp
i) (2)
によって与えられ、ここで、L
tは、身体部分60の周方向における硬質シェル部分28の全長であり、R
i(Δp
i)は、身体部分60の内側に印加される圧力(Δp
iと表される)の関数とする身体部分の半径である。硬質シェル部分28の全長L
tは、硬質シェル部分28の一方の側から硬質シェル部分28の他方の側まで測定される硬質シェル部分28の固定パラメータである。
図4を参照すると、全長L
tは、重複領域50における硬質シェル部分28の長さを含む、身体部分60の周りの硬質シェル部分28の全長である。身体部分60の内部に印加される圧力は、センサパッド36によって測定される。
図4には示されていないが、膨張式カフ26が膨張するとき、圧力が硬質シェル部分28に(硬質シェル部分28に向かう矢印によって示されるように)印加されるように、膨張式カフ26が硬質シェル部分28の周りに配される。
【0050】
硬質シェル部分28の厚さtは、
t=R0-Ri (3)
によって与えられ、ここで、R0は、身体部分60の中心から硬質シェル部分28の外面までの距離である。Ri0で示される身体部分の最初の半径は、膨張式カフ26によって身体部分60に圧力が印加されていない又は非常に小さな圧力が印加されているとき、半径センサ34を使用して測定又は決定することができる。
【0051】
半径センサ34を使用して、膨張式カフ26内の圧力(Δp
0)が変化しながら、身体部分60の半径又は半径の変化を測定する。センサパッド36を使用して、硬質シェル部分28によって身体部分60に印加される圧力(Δp
i)を測定する。以下の式(4)
【数2】
は、
E
arm=(Δp
i)=E
0+k・Δp
i (5)
を用いて、1つ以上の組織特性(すなわち、弾性率、非線形E弾性率、ポアソン比、v
arm、除脂肪量(FFM)及び脂肪量(AFM: adipose fat mass)が、半径の変化ΔR
i及び身体部分60に印加される圧力からどのように導出することができるかを示し、ここで、E
0は、組織66の弾性率であり、kは、組織66の非線形E弾性率を表すパラメータであり、v
armは、(組織66が均一な物質であると仮定すると)組織66のポアソン比である。ポアソン比は、0.4~0.5のオーダーであり、小さなひずみで弾性変形する非圧縮性の等方性物質は0.5である。
【0052】
式(4)に示される関係は、
図4の簡略化された身体部分のモデルに基づくものであり、例えば、身体部分が、例えば筋肉及び脂肪のような異なる種類の組織で構成されると考えられるような、より複雑なモデルに対しては、異なる関係を導出することができることが理解されよう。
【0053】
上記の手法において、センサパッド36を用いて身体部分60の圧力(Δpi)を測定する。しかしながら、代替的な手法において、身体部分60への圧力は、Δp0で表される膨張式カフ26内の圧力(“カフ圧”)を測定することによって決定することができる。硬質シェル部分28の特性のために、カフ圧Δp0は、身体部分60を圧迫している硬質シェル部分28の内側の圧力Δpiとは異なる(大きい)。
【0054】
センサパッド36によって測定される圧力とカフ圧との間に、簡単な解析的関係が見つかった。これらの圧力間の比率は、有効性εと呼ばれる。有効性εは、摩擦係数、硬質シェル部分の全長(L
t)及び(印加される圧力の関数である)実際の身体部分の半径に依存する。前記有効性εは、式6
【数3】
によって与えられる。従って、測定される身体部分の半径、既知の摩擦係数及び硬質シェル部分28の全長を用いて、身体部分の内側の圧力を、前記カフ圧を介して決定することができる。より圧迫され易い身体部分は、より低い有効性を与えることが分かっている。0.15未満の(硬質シェル部分28の物質の)摩擦係数で約0.4程度の低い有効性を取得することが可能である。
【0055】
有効性εの導出は、センサパッド36による圧力の測定を検証することを可能にする。特に、圧力の印加時に半径の変化が比較的に小さい、より小さいサイズの身体部分については、センサパッド36による圧力測定が、身体部分に作用する実際の圧力ではないという危険性がある。このことが
図5に示される。小さく、硬い身体部分の場合、センサパッド36が、この身体部分内に完全に押し付けられなくてもよく、センサパッド36内の圧力は、身体部分のその他の部分に作用する圧力よりも大きくすることができる。従って、有効性εの使用は、センサパッド36による圧力の測定を、測定されるカフ圧に基づいて検証することを可能にする。
【0056】
図6のフローチャートは、本明細書に記載される技術に従って身体部分の組織特性を決定する方法を示す。この方法は、デバイス24によって、特に処理ユニット38によって行うことができる。前記方法は、例えば、メモリユニット40に記憶される、適切なコンピュータ可読コードを実行するデバイス24又は処理ユニット38の結果として行われる。
【0057】
ステップ101、103及び105によって表される前記方法の測定段の間、シェルカフ装置22は、1つ以上の組織特性が決定されるべき身体部分の周りに部分的に又は完全に配される。シェルカフ装置22は、前記身体部分の周りに部分的に又は完全に配される硬質シェル部分28を有し、この硬質シェル部分28を取り囲む膨張式カフ26がある。膨張式カフ26は、ポンプ30を介して膨張及び/又は収縮し、硬質シェル部分28を介して、複数の異なる圧力を身体部分に経時的に印加することができる。
【0058】
従って、第1のステップにおいて、シェルカフ装置22は、複数の異なる圧力を身体部分に印加するように制御される。シェルカフ装置22は、デバイス24又は処理ユニット38によって制御することができ、特に、ポンプ30は、膨張式カフ26を膨張及び/又は収縮させるように制御することができる。ステップ101において、膨張式カフ26を連続的に膨張或いは収縮させることができる、又は膨張式カフ26を段階的に膨張或いは収縮させることができる(すなわち、膨張式カフ26を第1の圧力まで膨張/収縮させ、その圧力を短い時間期間維持し、膨張式カフ26を別の圧力まで膨張/収縮させるなど)。処理ユニット38は、適切な制御信号をシェルカフ装置22に出力することによって、シェルカフ装置22による複数の異なる圧力の印加を制御することができる。
【0059】
ステップ103において、身体部分の半径の測定値又は身体部分の半径の変化の測定値が取得される。これらの測定値は、“半径測定値”と呼ばれる。半径測定値は、複数の異なる圧力が身体部分に加えられるとき(すなわち、膨張式カフ26が膨張及び/又は収縮するとき)に取得される。すなわち、異なる印加される圧力に対し夫々、複数の半径測定値が取得される。
【0060】
幾つかの実施形態において、半径測定値は、1つ以上の半径センサ34を使用して取得される。半径センサ34は、硬質シェル部分28の変形を測定するように構成されるセンサとすることができる。硬質シェル部分28が身体部分の周りに配されるので、硬質シェル部分28の変形は、この硬質シェル部分28の下にある身体部分の半径の変化をもたらす。半径センサ34は、硬質シェル部分28の変形が、例えば、抵抗、キャパシタンス、インダクタンスのような、半径センサ34の1つ以上の電気特性を変化させるように構成又は配される。半径測定値は、これらの電気特性の変化から導出することができる。幾つかの実施形態において、半径センサ34はひずみゲージである。
【0061】
代替の実施形態において、半径測定値は、膨張式カフ26内の圧力の測定値、並びに膨張式カフ26内への及び膨張式カフ26から外への流体の流量の測定値から取得することができる。これらの実施形態において、膨張式カフ26内の圧力を測定するためにカフ圧センサを設けることができ、膨張式カフ26内への及び/又は膨張式カフ26から外への流体の流量を測定するために流量計を設けることができる。従って、これらの代替の実施形態において、半径測定値は、膨張式カフ26内の圧力の測定値並びに膨張式カフ26内への及び膨張式カフ26から外への流体の流量の測定値を処理することによって取得される。
【0062】
ステップ105において、身体部分に印加される異なる圧力の測定値が取得される。これらの測定値は、“圧力測定値”と呼ばれる。これら圧力測定値は、半径測定値と同時に取得されるので、各々の半径測定値に対し、そのときに身体部分に印加される圧力の対応する測定値が存在する。これは、印加される圧力の変化に対する、身体部分の半径の変化が観察されることを可能にする。
【0063】
幾つかの実施形態において、圧力測定値は、硬質シェル部分28の内側に位置決められるセンサパッド36を使用して取得される。代替の実施形態において、膨張式カフ26が膨張及び/又は収縮するとき、カフ圧センサを使用して、膨張式カフ26内の圧力の測定値を取得することができ、夫々のカフ圧センサの測定値及び対応する半径測定値(すなわち、カフ圧センサの測定値と概ね同時に取得される半径測定値)から、圧力測定値を決定することができる。特に、圧力測定値は、前記カフ圧センサの測定値、前記対応する半径測定値、硬質シェル部分28の摩擦係数、及び硬質シェル部分28の全長から決定することができる。
【0064】
ステップ103及び105において、これら測定値が取得されると、ステップ107において、半径測定値及び圧力測定値から身体部分の組織特性を決定することができる。幾つかの実施形態において、ステップ107は、身体部分の半径の変化を1つ以上の組織特性及びこの身体部分に印加される圧力に関連付ける関数を使用するステップを有する。この関数は、身体部分の構造のモデルに基づくことができる。例えば、このモデルは、組織特性が身体部分全体にわたって均一であると、又は身体部分の特定の部分は脂肪を有し、他の部分は筋肉を有し、各々は異なる組織特性を持つと仮定することができる。
【0065】
幾つかの実施形態において、ステップ107は、組織特性E0、k及びvarmの何れかを決定するために、式(4)の値を求めるステップを有する。
【0066】
幾つかの実施形態において、組織特性が決定されると、この組織特性は、被験者の生理学的特性を決定するために、シェルカフ装置22を使用して取得される圧力測定値を較正するために使用される。生理学的特性は、血圧、心拍出量、一回拍出量(SV)、一回拍出量変動、又はパルス輪郭一回拍出量(PCSV)の何れかとすることができる。決定された組織特性に従って圧力測定値を較正するための技術を当業者は分かっているであろう。例えば、国際公開第2019/211210号は、組織特性FFM(除脂肪量)及びAFM(脂肪量)に基づくSV及びPCSVの較正を記載し、本明細書に記載される技術を使用して、これらの組織特性を決定し、それによって前記較正を改善することができる。
【0067】
開示される実施形態に対する変形は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、本明細書に記載される原理及び技術を実施するとき、当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べていなくても、それらが複数あることを排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に列挙される幾つかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、例えば、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体上に記憶又は配布されことができるが、他の形態、例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介して配布されることもできる。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】