(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】病原性医療廃棄物処分のための改善された殺菌-固化方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20240927BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20240927BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01N59/00 C
A01N25/08
A01P3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520746
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 IN2022050745
(87)【国際公開番号】W WO2023058044
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202111045340
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スリジット・シャンカール・プーパナル
(72)【発明者】
【氏名】スルティ・スレンドラン・ナーイル
(72)【発明者】
【氏名】スジャ・ポッタト
(72)【発明者】
【氏名】ハリーシュ・ウンニクリシュナン・ナーイル・サラスワティ
(72)【発明者】
【氏名】ラジーヴ・クマール・スクマーラン
(72)【発明者】
【氏名】サヴィトゥリ・シヴァラマン
(72)【発明者】
【氏名】パルクッタヤーマ・デヴィ・スジャーター
(72)【発明者】
【氏名】アジャヤゴシュ・アヤパンピライ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA13
4H011DG16
(57)【要約】
本発明は、固体試料及び流体試料を同時に処理し、且つ殺菌することが可能である、生物医療廃棄物の効果的な固化のための改善された方法を開示する。方法は、廃棄物試料をアルカリ性水溶液へ添加する工程、次いで画定された体積組成及び/又は質量組成の固体材料を添加して、瞬時の固化及び>99.9%の微生物殺菌をもたらす工程、並びに生物医療廃棄物の処理のための一体型殺菌装置10を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌-固化及び処分のシステムによる、殺菌次いで固化のための方法であって、固化剤A及び塩基性化剤Bの固体粉末を含む殺菌組成物を添加する工程であり、
酸化物系粉末、とりわけ、ケイ素、チタン、亜鉛、又はアルミニウムの酸化物が、前記塩基性化剤Bを使用して9~14の範囲のアルカリ性pHに塩基性化された、被殺菌生物医療廃棄物を含有する、水性溶液に固化剤Aからの固体粉末として添加され、前記固化剤Aの固体粉末が、全体の水の体積の、最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加され、前記塩基性化剤Bの濃度が、水中1~90%w/vであり、より好ましくは水中>40%w/vである、工程
を含む、殺菌-固化及び処分のシステムによる、殺菌次いで固化のための方法。
【請求項2】
前記固化剤Aの前記固体粉末が、結合剤を含むか又は含まないシリカ粉末、60~400メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードシリカゲル粉末、結合剤を含むか又は含まないアルミナ粉末、60~400メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードアルミナ粉末、結合剤を含むか又は含まないチタニア粉末、そのルチル形態若しくはアナターゼ形態、又はルチル形態及びアナターゼ形態の混合における顔料グレードチタニア、或いは結合剤を含むか又は含まない酸化亜鉛粉末、粒径<500μmを有する、その粉末形態における工業グレード酸化亜鉛である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性化剤Bが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで構成される群から選択される、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、金属及び有機カチオンの塩基性塩から選択され、その水性溶液において範囲9~14の最終pHをもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)水中で塩基性化剤Bの水性溶液を調製する工程;
(b)被殺菌生物医療廃棄物を工程(a)で調製された前記水性溶液に添加する工程;
(c)工程(b)で得られた混合物を均一に混合し、及び/又は10~30分間静置させる工程;並びに
(d)固化剤Aの固体粉末を添加し、次いで混合し、及び/又は静置させる工程であって、得られた混合物が、前記固化剤A、前記塩基性化剤B、及び前記生物医療廃棄物の量に応じて固化されるか又はゲル化されるものとして特徴づけられる、工程
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の殺菌-固化のための方法。
【請求項5】
加えられる前記生物医療廃棄物の量が、液体廃棄物及び任意の浸漬可能な量の固体廃棄物、又はその混合物について、塩基性化剤溶液Bの1:1000(v/v)未満である、請求項4に記載の殺菌-固化のための方法。
【請求項6】
固化剤Aの固体粉末が、前記混合物において、全体の水の体積の最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加される、請求項4に記載の殺菌-固化のための方法。
【請求項7】
工程(b)において使用される前記生物医療廃棄物が、塩、糖、金属塩、及び複合体、水性廃棄物、病院の化学品、例えば、ヨウ素、唾液、尿、血液、又は任意の固体試料、とりわけ、綿、ティッシュペーパー、針、注射器、又はスワブ単独で、又はその組み合わせからなる群から選択され、殺菌が、塩基性化剤溶液Bの高いpHによって達成される、請求項4に記載の殺菌-固化のための方法。
【請求項8】
前記固化剤Aの前記固体粉末とアルカリ性廃棄物混合物との間の発熱反応が、病原殺菌のための第2の熱メカニズムをもたらし、前記発熱が50~120℃の範囲である、請求項4に記載の殺菌-固化のための方法。
【請求項9】
請求項1に記載の殺菌組成物で充填された殺菌-固化及び処分のシステムであって、装置が:
(a)上部のコンテナ又はコンパートメントのシステム(1、
図39);
(b)中間のコンテナ又はコンパートメントのシステム(2、
図39);
(c)下部のコンテナ又はコンパートメントのシステム(3、
図39);
(d)前記上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムに連結されたネジ栓(4、
図39);
(e)2個の破壊可能なネジ栓(5、
図39)、前記上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムと前記中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムとの間に連結された一つのネジ栓、及び前記中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムと前記下部のコンテナ又はコンパートメントのシステムとの間に連結されたもう一つのネジ栓
で構成される、殺菌-固化及び処分のシステム。
【請求項10】
前記上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムが、前記固化剤Aの固体粉末で充填される、請求項9に記載の殺菌-固化及び処分のシステム。
【請求項11】
前記中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムが、生物医療廃棄物で充填される、請求項9に記載の殺菌-固化及び処分のシステム。
【請求項12】
前記下部のコンテナ又はコンパートメントのシステムが、塩基性化剤Bの前記水性溶液で充填される、請求項9に記載の殺菌-固化及び処分のシステム。
【請求項13】
生物医療廃棄物が、固体若しくは液体の廃棄物又はその混合物である、請求項9から12のいずれか一項に記載の殺菌-固化及び処分のシステム。
【請求項14】
c)固化剤Aの固体粉末であり、酸化物系粉末、とりわけ、ケイ素、チタン、亜鉛、又はアルミニウムの酸化物が、固化剤Aからの固体粉末として添加され;前記固化剤Aの固体粉末が、全体の水の体積の、最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加される、固化剤Aの固体粉末;及び
d)塩基性化剤Bであり、前記塩基性化剤Bの濃度が、水中1~90%w/vであり、より好ましくは水中>40%w/vである、塩基性化剤B;
を含む殺菌組成物であって、
固化剤Aの固体粉末が、前記塩基性化剤Bを使用して9~14の範囲のアルカリ性pHに塩基性化された、被殺菌生物医療廃棄物を含有する、水性溶液に添加される、殺菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体試料及び流体試料を同時に処理し、且つ殺菌することが可能である、生物医療廃棄物の効果的な固化のための改善された方法に関連する。詳細には、本発明は、廃棄物試料をアルカリ性水溶液へ添加する工程、次いで画定された体積組成及び/又は質量組成の固体材料を添加して、瞬時の固化及び>99.9%の微生物殺菌をもたらす工程を含む、生物医療廃棄物を殺菌する方法に関連する。より詳細には、本発明は、生物医療廃棄物の処理のための殺菌装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
感染性廃棄物、例えば生物医療試験試料の誤った管理は、微生物/毒素/ウイルスの伝達をもたらし、伝染病及び感染病の広がりを更に進める。WHOによる意見書(2000)によれば、医療廃棄物、例えば、感染した皮下注射針及び注射器の不適切な管理は、世界中でB型肝炎(2100万ケース)、C型肝炎(200万ケース)、及びHIV(0.26万ケース)に関係する感染を引き起こした。WHOから引用された以下の表明は、適切な医療廃棄物管理の重要性及び必要性を強調する(undermine):「医療廃棄物の劣悪な管理は、可能性として、医療従事者、廃棄物処理者、患者、及び地域社会全般を感染、毒性作用及び負傷にさらし、且つ環境を汚染する危険性がある。全ての医療廃棄物材料が、発生の時点で分離され、適切に処理され、安全に処分されることが重要である」(http://www.who.int/topics/medical_waste/en/から再現される)。
【0003】
凝集剤を液体廃棄物に添加することは、漏出及びエアロゾル化の危険性を減らす。綿、鋭利品、及びティッシュペーパー等の固体廃棄物は、感染の広がりをもたらすこともあり、現在使用されている、単純な吸着剤又は次亜塩素酸塩は、こうした廃棄物を常に処理できるわけではない。凝集剤/ゲル化剤が、殺菌剤を含有する場合、未規制医療廃棄物である廃棄物を処分することが可能になり、それは、レッドバギング(red-bagging)よりも費用がかからない。こうして殺菌された医療廃棄物の分離、輸送、及び焼却は、より容易であり、より安全であり、医療機関の医療廃棄物処分の費用を減らす。
【0004】
いくつかの方策が、液体生物医療廃棄物の管理に起用され、それに限定されないが、下水処理法、最短接触時間30分間の、1%次亜塩素酸ナトリウム溶液、水1リットル当たり10~14gの漂白粉末、70%エタノール、4%ホルムアルデヒド、70%イソプロピルアルコール、25%ヨウ素、又は6%過酸化水素を使用した化学処理、塩素又はグルタルアルデヒド等の消毒剤又は殺菌剤を含有する乾燥高吸着性ポリマーを使用した液体廃棄物の固化、閉処分システム等が挙げられる。高い微生物負荷又は豊富なタンパク質含有量を含有する培地が、厳重な殺菌手順を要求し、不活性化が、安全な容器内で最低8時間、1:10希釈の5.23%次亜塩素酸ナトリウムを使用して実現され、次いで衛生的な下水道へ処分され、その後少なくとも10分間、大量の冷水で洗い流すことを論述する、論文「Liquid biomedical waste management: An emerging concern for physicians」、Biswal S、Muller J Med Sci Res2013、4、99~106頁を参照されたい。
【0005】
固化システム(高吸着剤)は、生物医療流体廃棄物の処理及びより安全な処分について、他の方法よりも有利であると考えられる。高吸着性ポリマーは、一般に、それに限定されないが、ビスアクリルアミド、トリアクリレート、ジメタクリレート、又はトリアリルアミンを含むオリゴ官能性モノマー等の内部架橋剤を使用して、それに限定されないが、アクリル酸又はその金属塩/アンモニウム塩及びアルキルアクリレートを含む不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合して調製される。
【0006】
いくつかの特許は、こうした固化システムの開発を啓発してきた。吸着剤構造に基づいた良好な液体保持、浸透性、及び機械強度を有する、表面架橋高吸着性ポリマーの米国特許第7291674B2号を出願参照されたい。
【0007】
ゲル塊を減らした液体固化のための、複数の第2の粒子と組み合わせた、1種又は複数の表面架橋高吸着性粒子、及び液体医療廃棄物を固化する方法の米国特許第8450389B1号を参照されたい。
【0008】
コンテナ、創傷被覆材、及びパケットを備えた、複数の表面架橋高吸着性粒子を含み、ゲル塊を減らした、同様の液体固化システムを含んだ携帯用創傷治療システムの、別の米国特許第9533081B1号を参照されたい。
【0009】
部分加水分解ポリ(ビニルアセテート)の親水性キセロゲル、架橋ポリ(ビニルアルコール)、架橋ヒドロキシアルキルアクリレート及び架橋ヒドロキシアルキルメタクリレート、エチレンオキシドのポリマー及びコポリマー、並びにアクリルアミドのポリマー及びコポリマーを含む、体の老廃物流体固化装置の米国特許第5391351A号を参照されたい。
【0010】
密度を変化させた3種の吸着剤を含み、それによって、その全体の体積にわたって、流動性材料の制御された安定化を実現する、既知の密度の、大量の液体の固化のための固化剤の米国特許第6797857B2号を参照されたい。
【0011】
カプセル内に配置された粉末吸着性材料で液体廃棄物を吸着する上記カプセルであって、水溶性である上記カプセルの本体が吸引キャニスター内に位置した液体廃棄物の吸着をもたらす、カプセルの米国特許第5424265A号を参照されたい。
【0012】
水、水性液体、及び血液を吸着することが可能な粒子状高吸着性ポリマー、並びに上記高吸着性ポリマーを製造する方法の米国特許第9102806B2号を参照されたい。上記高吸着剤は、ポリオレフィン、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンアクリル酸コポリマー、スチレンコポリマー、エチレンアルキルメタクリレートコポリマー、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、そのブレンド、又はそのコポリマーから選択される任意の分類の熱可塑性ポリマー1~10wt%で構成され、表面は、ヒトの皮膚のpH値と同様のpH値を有する、中和された多価金属塩溶液で処理される。
【0013】
ケイ素原子に結合した、最低1個のビニル基又は1個のアリル基、及び高い遠心分離機保持容量を有する、少なくとも1個のSi-O結合を有するシラン誘導体で構成される内部架橋剤を含む高吸着性ポリマーの米国特許第8403904B2号を参照されたい。
【0014】
高吸着性ポリマー、その調製方法、及び液体固化での用途は、複数の特許、すなわち、欧州特許第2739660号、米国特許出願公開第20130310251号、欧州特許第0273141号、米国特許第8476189B1号、日本特許第5527916号公報、米国特許第5578318A号、独国特許第69815670T2号、米国特許第8821363B1号によって記載された。
【0015】
それに限定されないが、使用済み綿、ティッシュペーパー、注射器、及び針を含む固体廃棄物は、一般に、認可された殺菌剤及び/又は消毒剤を使用して殺菌され、焼却されるか又はリサイクルされる。廃棄物埋設、又は埋め立て、セメントで固めた穴での処分、プラスチック発泡体、砂、セメント、又はクレイを使用した不動化、低温/中温/高温の燃焼、制御された焼却、蒸気オートクレーブ処理、ロータリーキルン、マイクロ波処理、化学処理、裁断、融解等が、固体廃棄物を廃棄するための一般的な実践である(WHOのwww.who.int/、及びMedical Waste Management、International Committee of the Red Crossの www.icrc.org/を参照されたい)。漂白剤又は次亜塩素酸塩、水酸化ナトリウム又は他の化学殺菌剤の1~10%溶液が、生物医療廃棄物を殺菌するために使用される。加熱、アルカリ性消化剤、及びマイクロ波もまた、この目的のために使用される。
【0016】
アクリレート系固化剤は、安価であり、極めて利用可能であるが、欠点がある。一般に、完全なゲル化に10~15分かかり、容易にリサイクルされない。それらは、生物分解不可能であり、一部のアクリレートは、可燃性であると示される。研究によれば、複数のアクリレート及びその原材料は、発癌性であり得る。アクリルの製造は、健康への影響及び環境への影響の両方を有する。製造において使用される、複数の化学品及びアクリル工場からの化学廃棄物は、毒性である。次亜塩素酸塩(漂白剤)は、高い有機含有量の廃棄物、例えば血液について常に有効ではない。更に、液体医療廃棄物及び固体医療廃棄物の両方を同時に処理し、不動化し、且つ殺菌することが可能な殺菌システムは、文献において見出されない。
【0017】
用いられる略記
WHO:世界保健機関
min.:分
wt%:質量パーセント
NaOH:水酸化ナトリウム
mg:ミリグラム
mL:ミリリットル
kg:キログラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7291674B2号
【特許文献2】米国特許第8450389B1号
【特許文献3】米国特許第9533081B1号
【特許文献4】米国特許第5391351A号
【特許文献5】米国特許第6797857B2号
【特許文献6】米国特許第5424265A号
【特許文献7】米国特許第9102806B2号
【特許文献8】米国特許第8403904B2号
【特許文献9】欧州特許第2739660号
【特許文献10】米国特許出願公開第20130310251号
【特許文献11】欧州特許第0273141号
【特許文献12】米国特許第8476189B1号
【特許文献13】日本特許第5527916号公報
【特許文献14】米国特許第5578318A号
【特許文献15】独国特許第69815670T2号
【特許文献16】米国特許第8821363B1号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】http://www.who.int/topics/medical_waste/en/
【非特許文献2】「Liquid biomedical waste management: An emerging concern for physicians」、Biswal S、Muller J Med Sci Res2013、4、99~106頁
【非特許文献3】WHO @ www.who.int/
【非特許文献4】Medical Waste Management、International Committee of the Red Cross @ www.icrc.org/
【非特許文献5】Kirkham, J.;等、「Self-assembling peptide scaffolds promote enamel remineralization」、J.Dental Res.2007、56、426~430頁
【非特許文献6】Duffo, G. S.;等、「Development of an artificial saliva solution for studying the corrosion behavior of dental alloys」Corrosion 2004、60、594~602頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の主な目的は、固体試料及び流体試料を同時に処理し、且つ殺菌することが可能である、効果的な固化システムの開発に関連する。
【0021】
別の目的は、治療の必要な時点で、コンテナ又は回収容器において回収された固体及び流体の廃棄物の処分を準備する方法を提供することである。
【0022】
第3の目的は、漏出及び職業性暴露の危険性を減らし、それによって固体廃棄物及び液体廃棄物の両方を含む生物医療廃棄物を管理する方法を提供するための、容易で、安全な、費用対効果が大きい方策を提供することである。
【0023】
更に別の目的は、固化後の試料の処理及び輸送を含む処分の準備のために、廃棄物における病原体を破壊するか又は殺菌するか又は不活性化することによって、固体及び流体の廃棄物の処分の準備のための方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の技術的背景を鑑みて、本発明は、生物医療廃棄物の殺菌及び固化のための改善された方法を開示するものである。方法は、固化剤の固体粉末及び塩基性化溶液の使用を包含し、それにより、画定された体積組成及び/又は質量組成の、固体廃棄物試料又は流体廃棄物試料と混合される場合、瞬時の固化及び最高で100%の微生物殺菌がもたらされる。
【0025】
本発明は、微生物、とりわけ、バクテリア、菌類等、ウイルス及び他の毒素を含む病原体の破壊、殺菌、又は不活性化と組み合わせた、回収容器において回収された固体廃棄物及び流体廃棄物の処分を準備するための殺菌システムであって、それによって、処理、取り扱い、及び輸送を含む処分がより容易であり、より安全であり、且つ費用対効果が大きいものであると考えられる、殺菌システムを提供することを意図する。
【0026】
本発明の別の目的は、流体医療廃棄物、とりわけ、塩、糖、唾液、尿、血液、病院の化学品等の流出不可能な環境を作り出す方法であって、漏出及び職業性暴露に関連した危険性が最小化され、更に固体医療廃棄物、とりわけ、綿、ティッシュペーパー、スワブ、針等の処理に関連した危険性が最小化され、未処理試料及び感染性試料の蓄積に関連した危険性が最小化されるか又は固体廃棄物及び液体廃棄物の混合物に>99.9%の微生物殺菌が付与される、方法を提供する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、流体又は固体の医療廃棄物の完全な殺菌のための、pH調整の塩基又はアルカリの水溶液、次いで高濃度のタンパク質、微生物培養物、塩、又は金属イオンを含有する固体試料又は流体試料の瞬時の固化のための上記粉末の1種又は複数である、酸化物系固体粉末の添加を包含する方法を開示する。
【0028】
最終の目的において、本発明は、固体又は液体の試料を回収することが可能な、且つその処分の準備のための事前の病原殺菌で要求されるのに応じて、固体又は液体の試料を不動化することが可能な、必要な容積の一体型試料回収-殺菌-固化装置を作り出すことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の飽和塩(NaCl)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和塩溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和塩溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図2】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の飽和糖(スクロース)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和糖溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和糖溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図3】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の飽和塩(NaCl)溶液及び飽和糖(スクロース)溶液の混合物に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和塩溶液0.5mL+飽和糖溶液0.5mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和塩溶液+糖溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図4】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の6%BSA溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)6%BSA溶液、(c)50%NaOH水1mL+6%BSA溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図5】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の飽和塩(NaCl)溶液及び6%BSA溶液の混合物に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和塩溶液0.5mL+6%BSA溶液0.5mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和塩溶液+6%BSA溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図6】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の飽和重クロム酸カリウム溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図7】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時のヨウ素溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)ヨウ素溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+ヨウ素溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図8】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、60~120メッシュ)添加時の人工血液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)人工血液1mL、(c)50%NaOH水1mL+人工血液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。タンパク質含有量及びヘムをもたらした6%BSAは、鉄(II)錯体で置き換えられた。
【
図9】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の人工尿に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工尿1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図10】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の人工唾液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工唾液1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図11】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の飽和塩(NaCl)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和塩溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和塩溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図12】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の飽和糖(スクロース)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和糖溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和糖溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図13】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の6%BSA溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)6%BSA溶液、(c)50%NaOH水1mL+6%BSA溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図14】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の飽和重クロム酸カリウム溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図15】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時のヨウ素溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)ヨウ素溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+ヨウ素溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図16】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の人工血液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)人工血液1mL、(c)50%NaOH水1mL+人工血液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。タンパク質含有量及びヘムをもたらした6%BSAは、鉄(II)錯体で置き換えられた。
【
図17】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の人工尿に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工尿1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図18】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、100~200メッシュ)添加時の人工唾液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工唾液1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図19】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の飽和塩(NaCl)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和塩溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和塩溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図20】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の飽和糖(スクロース)溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和糖溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和糖溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図21】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の6%BSA溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)6%BSA溶液、(c)50%NaOH水1mL+6%BSA溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図22】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の飽和重クロム酸カリウム溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図23】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時のヨウ素溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)ヨウ素溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+ヨウ素溶液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図24】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の人工血液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)人工血液1mL、(c)50%NaOH水1mL+人工血液1mL、及び(d)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。タンパク質含有量及びヘムをもたらした6%BSAは、鉄(II)錯体で置き換えられた。
【
図25】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の人工尿に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工尿1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図26】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、230~400メッシュ)添加時の人工唾液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)50%NaOH水1mL+人工唾液1mL、及び(c)固化のためのシリカゲルの添加後を説明する図である。
【
図27】アルミナ(クロマトグラフィーグレード、塩基性、60~325メッシュ)添加時の飽和重クロム酸カリウム溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、及び(d)固化のためのアルミナの添加後を説明する図である。
【
図28】チタニア(アナターゼ及びルチルの混合)添加時の飽和重クロム酸カリウム溶液に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL、(b)飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、(c)50%NaOH水1mL+飽和重クロム酸カリウム溶液1mL、及び(d)固化のためのチタニアの添加後を説明する図である。
【
図29】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード)添加時の綿片に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+一片の綿、並びに固化のためのシリカゲルの添加後:(b)60~120メッシュ、(c)100~200メッシュ、及び(d)230~300メッシュを説明する図である。
【
図30】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード)添加時のティッシュペーパーに関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+1枚のティッシュペーパー、並びに固化のためのシリカゲルの添加後:(b)60~120メッシュ、(c)100~200メッシュ、及び(d)230~300メッシュを説明する図である。
【
図31】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード)添加時の針に関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+針、並びに固化のためのシリカゲルの添加後:(b)60~120メッシュ、(c)100~200メッシュ、及び(d)230~300メッシュを説明する図である。
【
図32】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード)添加時の固体スワブに関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+スワブ、並びに固化のためのシリカゲルの添加後:(b)60~120メッシュ、(c)100~200メッシュ、及び(d)230~300メッシュを説明する図である。
【
図33】アルミナ(クロマトグラフィーグレード、塩基性、60~325メッシュ)添加時のティッシュペーパーに関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+1枚のティッシュペーパー、及び(b)固化のためのアルミナの添加後を説明する図である。
【
図34】チタニア(アナターゼ及びルチルの混合)添加時のティッシュペーパーに関係する固化プロセス:(a)50%NaOH水1mL+1枚のティッシュペーパー、及び(b)固化のためのチタニアの添加後を説明する図である。
【
図35】対照群として取り出された試料(A、D)、NaOH水の添加後の試料(B、E)、並びにNaOHの水溶液及び(A~C)大腸菌(E. coli)と(D~F)黄色ブドウ球菌(S. aureus)とを含有するバクテリア培養液の固化後(C、F)で培養されたペトリ皿の写真であって、定量的な実験において完全な殺菌を確認する、写真を説明する図である。
【
図36】シリカゲル(クロマトグラフィーグレード)添加時の固体廃棄物及び液体廃棄物の混合物に関係する大規模な固化プロセス:(a)50%NaOH水中の固体廃棄物及び液体廃棄物の混合物、並びに(b)固化のためのシリカゲル(60~120メッシュ)の添加後を説明する図である。
【
図37】液体試料用の一体型試料回収-殺菌-固化-処分装置の試作品であって、(a)他方の上部に一方を設置した3個の回収バイアルで構成され、(b)上部のバイアルが固体材料A(シリカが一例として示される)を含有し、回収された試料を含む中間のバイアル、及び必要な量の溶液Bで事前に充填された下部のバイアルであるようにした、試作品を説明する図である。回収された試料が試験されると、残留する試料は、(c)中間のコンパートメントと下部のコンパートメントとの間の連結部を壊すことにより、試料を溶液と混合させることによって初めに殺菌され、次いで(d)上部のコンパートメントと中間のコンパートメントとの間の連結部を壊すことによる、材料Aの添加によって固化され得る。
【
図38】固体試料用の一体型試料回収-殺菌-固化-処分装置の試作品であって、(a)他方の上部に一方を設置した2個の回収バイアルで構成され、(b)上部のバイアルが固体材料A(シリカが一例として示される)を含有し、下部のバイアルが必要な量の溶液Bで事前に充填されるようにした、試作品を説明する図である。廃棄物試料は、(c)試料を溶液Bと混合することによって初めに殺菌され、次いで(d)2個のコンパートメントの間の連結部を壊すことによる、材料Aの添加によって固化され得る。
【
図39】
図37に示された液体試料用の一体型試料回収-殺菌-固化-処分装置の試作品の設計を説明する図である。
【
図40】
図38に示された固体試料用の一体型試料回収-殺菌-固化-処分装置の試作品の設計を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
このセクションは、好ましい実施形態において本発明を詳細に記載する。添付の説明/図面は、好ましい実施形態を詳細に記載し、且つ理解する目的のものであり、本発明又はその範囲又はその両方を制限するものではない。
【0031】
広範囲に及ぶ研究で、本発明の発明者等は、水中の安定なナノ材料ゾルに、ポリアミノ酸をその水溶液として添加することにより、瞬時の凝集がもたらされ、上記凝集プロセスは、更に制御されて、慎重に制御された条件下で、ゲル化又は固化を実施することを過去に見出した。しかし、ゾル及びポリアミノ酸の使用は、長期間の処理及び生物医療廃棄物の静置にあまり有効ではなく、使用される水量を最小化し、化学成分の数を減らす、緊急の必要性がある。本発明は、化学成分の、低減された数及び水の最小限の使用を伴う、病原性生物医療廃棄物の殺菌及び固化のための改善された方法を提供する。
【0032】
本発明の主題の、主な実施形態は、微生物、とりわけ、バクテリア、菌類等、ウイルス及び他の毒素を含む病原体の破壊、殺菌、又は不活性化と組み合わせた、治療の時点で回収容器において回収された固体廃棄物及び流体廃棄物の処分の準備のための、改善された殺菌-固化方法を提供し、それによって、処理、取り扱い、及び輸送を含む処分は、より容易で、より安全で、且つ費用対効果が大きいものであると考えられる。固化は、漏出及びエアロゾル化の危険性を減らし、その一方で完全な病原殺菌により、未規制医療廃棄物である、その廃棄物の処分が可能になり、それは、レッドバギングよりもあまり費用がかからない。こうして殺菌された医療廃棄物の分離、輸送、及び焼却は、より容易であり、より安全であり、医療機関の医療廃棄物処分費用を減らす。
【0033】
本発明の別の実施形態は、結合剤を含むか又は含まない、遷移金属、とりわけ、チタン、アルミニウム、ケイ素、又は亜鉛の酸化物を、塩基Bを使用してアルカリ性pHに塩基性化された、被殺菌生物医療実体を含有する水溶液に添加する工程であって、Bの濃度が、水中0.1~90%w/vであり、より好ましくは水中>40%w/vであり、固体Aが、全体の水の体積の、最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加され、瞬時の殺菌、次いで瞬時の固化をもたらすようにする、工程を含む。
【0034】
本発明は、生物医療廃棄物の処理及び処分のための自己殺菌固化方法を提案するものである。本明細書で開示された処理方法は、固化剤、とりわけ、結合剤を含むか又は含まないシリカ粉末、60~400メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードシリカゲル粉末、結合剤を含むか又は含まないアルミナ粉末、60~200メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードアルミナ粉末、結合剤を含むか又は含まないチタニア粉末、そのルチル形態若しくはアナターゼ形態、又はルチル形態及びアナターゼ形態の混合における顔料グレードチタニア、或いは結合剤を含むか又は含まない酸化亜鉛粉末、粒径<500μmを有する、その粉末形態における工業グレード酸化亜鉛を包含し、それにより、画定された体積組成及び/又は質量組成の、塩基のアルカリ性溶液に添加することによって殺菌された、固体廃棄物試料又は流体廃棄物試料と混合される場合、瞬時の固化及び最高で100%の微生物殺菌がもたらされる。
【0035】
特異な実施形態において、本発明は、流体医療廃棄物、とりわけ、塩、糖、唾液、尿、血液、病院の化学品(hapital chemical)等の流出不可能な環境を提供する工程であって、漏出及び職業性暴露に関連した危険性が最小化され、更に固体医療廃棄物、とりわけ、綿、ティッシュペーパー、スワブ、針等の処理に関連した危険性が最小化され、未処理試料及び感染性試料の蓄積に関連した危険性が最小化されるか又は固体廃棄物及び液体廃棄物の混合物に>99.9%の微生物殺菌(disfection)が付与される、工程に関連する。
【0036】
本発明の別の態様は、流体又は固体の医療廃棄物の完全な殺菌のための、pH調整の塩基又はアルカリの水溶液の体積組成、次いで高濃度のタンパク質、微生物培養物、塩、又は金属イオンを含有する固体試料又は流体試料の瞬時の(instanteneous)固化のための、上記粉末の1種又は複数である、酸化物系固体粉末の添加を開示する。
【0037】
本発明の別の態様は、固体又は液体の試料を回収することが可能な、及び必要に応じて、試料を凝集すること/ゲル化すること/固化することが可能な、及びその処分の準備のために殺菌することが可能な、及びその処分の準備のための先の病原殺菌で要求されるのに応じて、固体又は液体の試料を不動化することが可能な、必要な容積の一体型試料回収-殺菌-固化装置を作り出すことを対象とする。
【0038】
一実施形態において、本発明は、殺菌-固化及び処分のシステムによる、殺菌次いで固化のための方法であって、固化剤A及び塩基性化剤Bの固体粉末を含む殺菌組成物を添加する工程であり、酸化物系粉末、とりわけ、ケイ素、チタン、亜鉛、又はアルミニウムの酸化物が、塩基性化剤Bを使用して9~14の範囲のアルカリ性pHに塩基性化された、被殺菌生物医療廃棄物を含有する、水溶液に固化剤Aからの固体粉末として添加され、固化剤Aの固体粉末が、全体の水の体積の、最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加され、塩基性化剤Bの濃度が、水中1~90%w/v、より好ましくは水中>40%w/vである、工程を含む、殺菌-固化及び処分のシステムによる、殺菌次いで固化のための方法を提供する。
【0039】
更に別の実施形態において、固化剤Aの固体粉末は、結合剤を含むか又は含まないシリカ粉末、60~400メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードシリカゲル粉末、結合剤を含むか又は含まないアルミナ粉末、60~400メッシュサイズのクロマトグラフィーグレードアルミナ粉末、結合剤を含むか又は含まないチタニア粉末、そのルチル形態若しくはアナターゼ形態の、又はルチル形態及びアナターゼ形態の混合の、顔料グレードチタニア、或いは結合剤を含むか又は含まない酸化亜鉛粉末、その粉末形態において粒径<500μmを有する、工業グレード酸化亜鉛である。
【0040】
更に、上記塩基性化剤Bは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで構成される群から選択される、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、金属及び有機カチオンの塩基性塩から選択され、その水溶液において範囲9~14の最終pHをもたらす。
【0041】
更に別の実施形態において、本発明は:
(a)水中で塩基性化剤Bの水溶液を調製する工程;
(b)被殺菌生物医療廃棄物を工程(a)で調製された上記水溶液に添加する工程;
(c)工程(b)で得られた混合物を均一に混合し、及び/又は10~30分間静置させる工程;並びに
(d)固化剤Aの固体粉末を添加し、次いで混合し、及び/又は静置させる工程であって、得られた混合物が、固化剤A、塩基性化剤B、及び生物医療廃棄物の量に応じて固化されるか又はゲル化されるものとして特徴づけられる、工程
を含む、殺菌-固化のための方法に関連する。
【0042】
更に、加えられる生物医療廃棄物の量は、液体廃棄物及び任意の浸漬可能な量の固体廃棄物、又はその混合物について、1未満:1000(v/v)塩基性化剤溶液Bである。固化剤Aの固体粉末は、混合物において、全体の水の体積の最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加される。
【0043】
本発明の更に別の実施形態において、本発明は、工程(b)において使用される生物医療廃棄物が、塩、糖、金属塩、及び複合体、水性廃棄物、病院の化学品、例えば、ヨウ素、唾液、尿、血液、又は任意の固体試料、とりわけ、綿、ティッシュペーパー、針、注射器、又はスワブ単独で、又はその組み合わせからなる群から選択され、殺菌が、塩基性化剤溶液Bの高いpHによって実施される、殺菌-固化のための方法に関連する。
【0044】
更に、固化剤Aの固体粉末とアルカリ性廃棄物混合物との間の発熱反応は、病原殺菌のための第2の熱メカニズムをもたらし、上記発熱は50~120℃の範囲である。
【0045】
更に別の実施形態において、本発明は、殺菌組成物で充填された殺菌-固化及び処分のシステムであって、装置が:
(a)上部のコンテナ又はコンパートメントのシステム(1、
図39);
(b)中間のコンテナ又はコンパートメントのシステム(2、
図39);
(c)下部のコンテナ又はコンパートメントのシステム(3、
図39);
(d)上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムに連結されたネジ栓(4、
図39);
(e)2個の破壊可能なネジ栓(5、
図39)、上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムと中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムとの間に連結された一つのネジ栓、及び中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムと下部のコンテナ又はコンパートメントのシステムとの間に連結されたもう一つのネジ栓
で構成される、殺菌-固化及び処分のシステムを提供する。
【0046】
更に、上部のコンテナ又はコンパートメントのシステムは、殺菌-固化及び処分のシステムにおいて固化剤Aの固体粉末で充填される。中間のコンテナ又はコンパートメントのシステムは、生物医療廃棄物で充填される。下部のコンテナ又はコンパートメントのシステムは、塩基性化剤Bの水溶液で充填される。更に、生物医療廃棄物は、固体若しくは液体の廃棄物又はその混合物である。
【0047】
更に別の実施形態において、本発明は:
a)固化剤Aの固体粉末であり、酸化物系粉末、とりわけ、ケイ素、チタン、亜鉛、又はアルミニウムの酸化物が、固化剤Aからの固体粉末として添加され;固化剤Aの固体粉末が、全体の水の体積の、最低1%(w/v)で、且つ最高500%(w/v)で添加される、固化剤Aの固体粉末;及び
b)塩基性化剤Bであり、塩基性化剤Bの濃度が、水中1~90%w/vであり、より好ましくは水中>40%w/vである、塩基性化剤B;
を含む殺菌組成物であって、
固化剤Aの固体粉末が、塩基性化剤Bを使用して9~14の範囲のアルカリ性pHに塩基性化された、被殺菌生物医療廃棄物を含有する、水溶液に添加される、殺菌組成物を提供する。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、説明として与えられ、故に本発明の範囲を制限するものと考えられるべきではない。
【0049】
(実施例1:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。水性廃棄物が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0050】
(実施例2:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した濃縮塩溶液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。塩化ナトリウムの飽和水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0051】
(実施例3:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した濃縮糖溶液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。スクロースの飽和水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0052】
(実施例4:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した濃縮塩溶液及び濃縮糖溶液の混合物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。塩化ナトリウム及びスクロースの飽和水溶液の混合物が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0053】
(実施例5:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用したタンパク質を含有する水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。BSAの6%水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。BSAの完全形態は、ウシ血清アルブミンである。
【0054】
(実施例6:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用したタンパク質を含有する濃縮塩溶液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。6%BSAを含有する塩化ナトリウムの飽和水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0055】
(実施例7:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した金属イオン及び強力な酸化剤を含有する水溶液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。重クロム酸カリウムの飽和水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0056】
(実施例8:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した病院の化学品を含有する水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。ヨウ素の濃縮水溶液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0057】
(実施例9:アルミナ粉末(60~400メッシュ)を使用した水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。上記の実施例1~8で挙げられた水性廃棄物が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体アルミナ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0058】
(実施例10:チタニア粉末(アナターゼ及びルチルの混合)を使用した水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。上記の実施例1~8で挙げられた水性廃棄物が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体チタニア粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0059】
(実施例11:酸化亜鉛粉末(粒径<500μm)を使用した水性廃棄物の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。上記の実施例1~8で挙げられた水性廃棄物が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体酸化亜鉛粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0060】
(実施例12:人工唾液の調製)
人工唾液は、以下の2つの手順:(i)Ca(NO3)21.5mM、KH2PO40.90mM、KCl130mM、及びpH7.4のトリス緩衝液60mMを混合する工程(Kirkham, J.;等、「Self-assembling peptide scaffolds promote enamel remineralization」、J.Dental Res.2007、56、426~430頁を参照されたい)、(ii)蒸留水100mL中で、塩化ナトリウム(0.06g)、塩化カリウム(0.072g)、塩化カルシウム二水和物(0.022g)、リン酸二水素カリウム(0.068g)、リン酸水素二ナトリウム十二水和物(0.086g)、チオシアン酸カリウム(0.006g)、炭酸水素ナトリウム(0.15g)、及びクエン酸(0.003g)をpH6.5で混合する工程(Duffo, G. S.;等、「Development of an artificial saliva solution for studying the corrosion behavior of dental alloys」Corrosion 2004、60、594~602頁を参照されたい)に従って調製された。
【0061】
(実施例13:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した人工唾液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工唾液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカゲル粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0062】
(実施例14:アルミナ粉末(60~400メッシュ)を使用した人工唾液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工唾液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体アルミナ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0063】
(実施例15:チタニア粉末(アナターゼ及びルチルの混合)を使用した人工唾液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工唾液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体チタニア粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0064】
(実施例16:酸化亜鉛粉末(粒径<500μm)を使用した人工唾液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工唾液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体酸化亜鉛粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0065】
(実施例17:人工尿の調製)
コンテナ内の蒸留水75mLに尿素(1.82g)を添加して、十分に振り混ぜて溶解させた。塩化ナトリウム(0.75g)、塩化カリウム(0.45g)、及びリン酸ナトリウム(0.48g)が、上記の混合物に更に添加されて、溶解するまで十分に混合された。pHは5から7の間に調節された。クレアチニン(200mg)及びアルブミン粉末(5mg)が添加され、穏やかに混合された。こうして得られた人工尿は、それぞれの実験の前にグルコース数mgを更に加えられた。
【0066】
(実施例18:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した人工尿の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工尿が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカゲル粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0067】
(実施例19:アルミナ粉末(60~400メッシュ)を使用した人工尿の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工尿が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体アルミナ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0068】
(実施例20:チタニア粉末(アナターゼ及びルチルの混合)を使用した人工尿の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工尿が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体チタニア粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0069】
(実施例21:酸化亜鉛粉末(粒径<500μm)を使用した人工尿の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工尿が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体酸化亜鉛粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0070】
(実施例22:人工血液の調製)
BSAの6%溶液が蒸留水中で調製された。少量の鉄(II)錯体が添加されて、ヘムを模倣し、色を付与した。BSAの完全形態はウシ血清アルブミンである。
【0071】
(実施例23:シリカゲル粉末(60~120メッシュ、100~200メッシュ、又は230~400メッシュ)を使用した人工血液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工血液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体シリカゲル粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0072】
(実施例24:アルミナ粉末(60~400メッシュ)を使用した人工血液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工血液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体アルミナ粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0073】
(実施例25:チタニア粉末(アナターゼ及びルチルの混合)を使用した人工血液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工血液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体チタニア粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0074】
(実施例26:酸化亜鉛粉末(粒径<500μm)を使用した人工血液の固化)
50%NaOH溶液が水中で作られた。人工血液が上記の溶液に添加され(1:1)、十分に混合された。固体酸化亜鉛粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。
【0075】
(実施例27:シリカゲル(60~400メッシュ)粉末、アルミナ(60~400メッシュ)粉末、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)粉末、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)粉末における固体スワブの不動化)
50%NaOH溶液が、8mLのガラスバイアルにおいて水中で作られ、一片のスワブ(4cm)を浸漬させた。それは、十分に混合され、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)の固体粉末が添加されて、瞬時の固化をもたらした。
【0076】
(実施例28:シリカゲル(60~400メッシュ)粉末、アルミナ(60~400メッシュ)粉末、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)粉末、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)粉末における注射針の不動化)
50%NaOH溶液が、8mLのガラスバイアルにおいて水中で作られ、針(4~6cm)を浸漬させた。それは、十分に混合され、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)の固体粉末が添加され、瞬時の固化をもたらした。
【0077】
(実施例29:シリカゲル(60~400メッシュ)粉末、アルミナ(60~400メッシュ)粉末、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)粉末、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)粉末における綿廃棄物の不動化)
50%NaOH溶液が、ガラスバイアルにおいて水中で作られ、一片の廃棄綿を浸漬させた。それは、十分に混合され、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)の固体粉末が添加され、瞬時の固化をもたらした。
【0078】
(実施例30:シリカゲル(60~400メッシュ)粉末、アルミナ(60~400メッシュ)粉末、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)粉末、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)粉末におけるティッシュペーパーの不動化)
50%NaOH溶液が、ガラスバイアルにおいて水中で作られ、1枚のティッシュペーパーを浸漬させた。それは、十分に混合され、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)の固体粉末が添加され、瞬時の固化をもたらした。
【0079】
(実施例31:シリカゲル(60~400メッシュ)粉末、アルミナ(60~400メッシュ)粉末、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)粉末、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)粉末における大規模な混合廃棄物の不動化)
50%NaOH溶液が、ガラスビーカーにおいて水中で作られ、様々な廃棄物(固体及び液体-注射器、針、スワブ、綿、ティッシュ、人工尿、人工血液、及び人工唾液、ヨウ素、重クロム酸カリウム、塩、糖等)の混合物が加えられた。それは、十分に混合され、シリカゲル(60~400メッシュ)の固体粉末が添加され、瞬時の固化をもたらした。
【0080】
(実施例32:抗菌研究)
大腸菌(Escherichia coli)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の培養物は、ルリアベルターニ(LB)培地において調製され、大腸菌又は黄色ブドウ球菌について、コロニー形成単位(cfu)がおよそ1~3×106毎ミリリットルである(600nmでの光学密度に基づいて予め標準化された)18時間経過段階(old stage)で試験のために取り出された。塩基Bの50%水溶液1mLが、バクテリア培養液(broath)(添加溶液(spiking solution))1mLに添加され、瓶を回すことによって混合させた。試料は、規則的な時間間隔の後、分析用に取り出された。シリカゲル(60~120メッシュ)の固体粉末が添加されて瞬時の固化を実施した。試料は、規則的な時間間隔の後、分析用に更に取り出された。全ての試料は、無菌食塩水中で10×に希釈されたものとして取り出され、希釈溶液100μLがLB寒天プレートに播かれ、37℃で終夜インキュベートされた。並行して、元のバクテリア懸濁液が無菌食塩水中で順次希釈され、適切な希釈物100μLがLB寒天プレートに播かれ、対照群の役割を果たす試験試料としてインキュベートされた。翌日、適用された希釈に基づいてコロニーが計算され、ゾルに添加された元のバクテリア懸濁液のCFU/mLの数及びゲル化殺菌剤におけるCFUが計算された。有効性は、以下の通り[(バクテリア懸濁液におけるCFU数-ゲル化殺菌剤におけるCFU数)/バクテリア懸濁液におけるCFU数]×100として計算され、%で表された。
【0081】
(実施例33:流体試料用の一体型試料回収-殺菌-処分装置の試作品)
流体試料用の一体型試料回収-殺菌-処分装置は、以下の通り試作された:3個のプラスチック回収バイアルは、他方の上部に一方を設置し、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)の固体粉末を含有した上部のバイアル、試料回収用の中間のバイアル、必要な量の水酸化ナトリウムの50%水溶液で事前に充填された下部のバイアルであるようにした。設計により、上部のコンパートメントをねじって開けることができ、試料は、中間のコンパートメントに回収され得る。回収された試料が試験されると、残留する試料は、中間のコンパートメントと下部のコンパートメントとの間の連結部を壊すことにより、下部のコンテナにおいて試料をアルカリ性溶液と初めに混合させることができ、次いで上部のコンパートメントと中間のコンパートメントとの間の連結部を壊すことにより、上部のコンパートメントから対応する固体粉末を添加することによって、殺菌され、固化され得る。3種の流体混合物を混合することによって、実施例32において実証されたように完全な病原殺菌が可能になる。
【0082】
(実施例34:固体試料用の一体型試料回収-殺菌-処分装置の試作品)
固体試料用の一体型試料回収-殺菌-処分装置は、以下の通り試作された:固体試料(例えば:綿廃棄物)用のプラスチック回収コンテナを他方のプラスチックバイアルのその上部に設置し、上部のバイアルが、シリカゲル(60~400メッシュ)、アルミナ(60~400メッシュ)、チタニア(titamia)(アナターゼ及びルチルの混合)、又は酸化亜鉛(粒径<500μm)を含有し、下部のバイアルが必要な量の水酸化ナトリウムの50%水溶液で事前に充填されるようにした。設計により、上部のコンパートメントをねじって開けることができ、固体試料は、下部のコンパートメントで回収され得る。十分な数の固体試料が、下部のコンテナにおいて回収されると、試料は、2個のコンパートメントの間の連結部を壊すことにより、アルカリ性試料を対応する固体粉末と混合させることによって、殺菌され、固化され得る。溶液の混合及びゲル化により、実施例32に実証されたように完全な病原殺菌が可能になる。
【0083】
発明の利点
- 固有の抗菌作用
- 要求される水量の最小化
- 混合時の瞬時の殺菌及び固化
- 1分以内の>99.9%の微生物殺菌
- 漏出及び職業性暴露の危険性を低減すること
- 未規制医療廃棄物である廃棄物の処分を可能にすること
- 流体医療廃棄物及び固体医療廃棄物の両方の除染に適用可能であること
- より安全であり、より容易であり、費用対効果が大きいこと
- 任意の量の流体廃棄物を管理することへの適合性
- タンパク質、金属イオン、塩、又は他の不純物からの非干渉
【国際調査報告】