(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール、当該化合物の異性体混合物および香水類における使用
(51)【国際特許分類】
C07C 47/21 20060101AFI20240927BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240927BHJP
C07C 33/025 20060101ALI20240927BHJP
C07C 33/05 20060101ALI20240927BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20240927BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07C47/21 CSP
C07C47/02
C07C33/025
C07C33/05
C07C31/125
C11B9/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520771
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077520
(87)【国際公開番号】W WO2023057421
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リニガー,マルク
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB99
4H006AC45
4H006BB12
4H006FE11
(57)【要約】
(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナールである、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、前記化合物の異性体混合物および香水類における使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナールである、式(R,E)-(Ia)
【化1】
で表される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の式(R,E)-(Ia)で表される化合物と、式(S,E)-(Ia)、式(R,Z)-(Ia)および式(S,Z)-(Ia)
【化2】
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む、異性体混合物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または請求項2に記載の異性体混合物の、フレグランス成分としての使用。
【請求項4】
請求項1に記載の式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または請求項2に記載の異性体混合物を含む、フレグランス組成物。
【請求項5】
式(Ib)、(Ic)および(II)
【化3】
式中、波状結合は、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、および星は、C原子の立体中心を指し示している、
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物をさらに含む、請求項4に記載のフレグランス組成物。
【請求項6】
式(III)
【化4】
式中、
【化5】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、
ならびにR
1、R
2およびR
3はHまたはMeから独立して選択され、
あるいは式中、R
1はHまたはMeであり、ならびにR
2およびR
3は、それらが付加された炭素原子とともにシクロプロピル環を形成する、
で表される化合物の少なくとも1つをさらに含む、請求項4または請求項5に記載のフレグランス組成物。
【請求項7】
式(III)で表される化合物の少なくとも1つが、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)
【化6】
式中、波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示している、
で表される化合物からなる群から選択される、請求項6に記載のフレグランス組成物。
【請求項8】
式(III)
【化7】
式中、
【化8】
は炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
および、波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の配置を指し示し、
ならびにR
1、R
2およびR
3は、HまたはMeから独立して選択され、
あるいは式中、R
1は、HまたはMeであり、ならびにR
2およびR
3は、それらが付加された炭素原子とともにシクロプロピル環を形成する、
で表される化合物、
ただし、化合物は3,7-ジメチルノナン-1-オールではない。
【請求項9】
式(IIIa)、(IIIb)、および(IIId)
【化9】
式中、波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示している、
で表される化合物からなる群から選択される、請求項8の化合物。
【請求項10】
少なくとも1つ以上の請求項8に記載の式(III)で表される化合物を含む、フレグランス組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの式(X)
【化10】
式中、
【化11】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
式中、存在する場合、波状結合は、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、および星は、C原子の立体中心を指し示している、
で表される化合物をさらに含む、請求項4~6のいずれか一項に記載のフレグランス組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の式(R,E)-(Ia)で表される化合物、あるいは請求項2に記載の異性体混合物、あるいは請求項4~7または11に記載のフレグランス組成物、および消費者向製品ベースを含む、消費者向製品。
【請求項13】
請求項8に記載の式(III)で表される化合物、または請求項10に記載のフレグランス組成物、および消費者向製品ベースを含む、消費者向製品。
【請求項14】
消費者向製品ベースが、上質なフレグランス、家庭用製品、洗濯製品、ボディケア製品、化粧製品、およびエアケア製品から選択される、請求項12または13に記載の消費者向製品。
【請求項15】
請求項1に記載の式(R,E)-(Ia)で表される化合物、あるいは請求項2に記載の異性体混合物、あるいは請求項4~7または11に記載のフレグランス組成物、あるいは請求項7において定義される式(III)の化合物、あるいは請求項8に記載のフレグランス組成物の嗅覚的に許容し得る量の、それらへの添加の手段により、消費者向製品ベースを改善するか、授けるか、強化するかまたは修飾する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に、新規有機化合物、およびフレグランス成分としてのその使用に関する。本発明はまた、フレグランス組成物に、および当該化合物を含む消費者向製品に関する。それは、化合物の添加によって消費者向製品ベースを改善するか、強化するか、または修飾する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
シトラール(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール)およびシトロネラール(3,7-ジメチルオクタ-6-エナール)は、柑橘類、レモンのような香気をもつ、既知の化合物である。両方は、香水類において使用されているが、しかしながら、シトラールはアレルゲンであることが知られている。概して、柑橘類ノートは複雑で、多くの異なる側面を有することができる。
したがって、柑橘類および任意にその他のノートをもつ新しいまたは改善されたフレグランス化合物を提供することが所望される。
【発明の概要】
【0003】
要約
本発明の第1の側面に従って、柑橘類およびフローラルな香気ノートをもつ新規化合物が提供される。
本発明の第2の側面に従って、新規化合物を含む異性体混合物が提供される。
本発明の第3の側面に従って、新規化合物または異性体混合物のフレグランス成分としての使用が提供される。
【0004】
本発明の第4の側面に従って、新規化合物または異性体混合物を含むフレグランス組成物および消費者向製品が提供される。さらにまた、フレグランス組成物および消費者向製品は、あるアルコールを含んでいてもよい。
【0005】
本発明の第5の側面に従って、新規化合物のベースへの添加の手段により、消費者向製品ベースを改善、強化または修飾する方法が提供される。
【0006】
本発明の任意の側面のある態様は、以下の利点の1つ以上を提供してもよい。
●柑橘類およびフローラルな香気ノートをもつ新規フレグランス化合物の提供、
●アレルゲン的な特性のない化合物の提供、
●低い香気閾値をもつ高性能化合物の提供。
【0007】
本発明の具体的な1つ以上の側面に関して提供される詳細、例および選好は、本明細書においてさらに記載され、本発明のすべての側面に等しく適用するだろう。本明細書に記載された任意の態様、例および選好のそのすべてのバリエーションにおいての組み合わせは、本明細書に別段に指し示されない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、本発明によって網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】化合物Ia(4つの立体異性体の混合物)は、BOD(生物学的酸素要求量)70%(60日、容易に生分解性)を示した。
【
図2】例3の混合物(アルデヒド混合物Ia、Ib、Ic、II)は、87%(60日間、容易に生分解性)のBOD(生物学的酸素要求量)を示した。
【発明の詳細な説明】
【0009】
詳細な説明
本発明は、シトロネラールが1つのメチル基で形式的に伸長されたホモログが、有意に異なる香気の説明、および格別に強化された性能をもつフレグランス化合物であるという驚くべき知見に基づく。
【0010】
本発明の第1の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物が提供され、これは(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナールである。
【化1】
【0011】
前記化合物は、柑橘類およびフローラルな香気ノートを驚くべきことに所有する、有用なフレグランス成分である。加えて、それは、シトラールの4.0ng、またはシトロラネールの2.2ngのGC閾値との比較において、0.013ngである格別に低いガスクロマトグラフィー(GC)閾値を有する。関連構造よりも100の因子によってより低いGC閾値をもつかかる性能分子は、より低用量において使用されることができ、それにより化合物の必要とされる量を低減することができる。本発明の化合物の香料的利益は立体化学に依存する:4つの立体異性体のうち1つのみが強い香気物であるが、一方、他は、極めて弱い香気物特性しか示さない。
【0012】
例えば、化合物(R,E)-(Ia)は少なくとも部分的にシトラールの代替物として採用されることができ、少なくともシトラールの要求される量を下げることができ、それによりシトラールに関連する着色の問題を低減し、およびアレルゲン化合物の量を最小限にすることができる。
【0013】
3,7-ジメチルノナ-6-エナールは、これまでに報告されている。例えば、その調製の方法はDE2050677A1において開示されている。しかしながら、そのフレグランス特性は記載されていない。
【0014】
本発明の化合物(R,E)-(Ia)は、純粋な立体異性体として、またはその立体異性体のうちの1つ以上との混合物として、例えばジアステレオイソマーの群において使用されることができる。本発明の化合物とは対照的に、他の立体異性体は、ずっとより弱い香気特性を有する。
【0015】
(S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,E)-(Ia))は、1.4ngのGC閾値、および柑橘類とフローラルなバラのノートをもつワックス様で脂肪の香気を有する。(R,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((R,Z)-(Ia))は、1.2ngのGC閾値を有し、およびその香気は、ワックス様、柑橘類、フルーティーとして説明される。(S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,Z)-(Ia))は、0.75ngのGC閾値、および柑橘類のノートをもつワックス様、脂肪、プラスチックの香気を有する。
【0016】
他の異性体は、有意な香気を所有しないため、それらは、本発明の化合物への混和物として許容されることができる。このような混和物の使用によって、異性体分離のコストを回避でき、全体の製造コストを下げることができる。立体異性体を分割することは、化合物の調製および精製に複雑さを加えるため、よって、化合物をその立体異性体の混合物として使用することが、単に経済的な理由から好ましい。しかしながら、個々の立体異性体を調製することが望まれる場合、これは、当技術分野で知られている方法、例として立体選択的合成、分取HPLCおよびGCに従って達成されてもよい。
【0017】
よって、本発明のさらなる側面においては、(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((R,E)-(Ia))と、(S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,E)-(Ia))、(R,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((R,ZE)-(Ia))および(S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,Z)-(Ia))からなる群から選択される少なくとも他の化合物とを含む異性体混合物(以下に続く文では異性体混合物として言及される)が提供される。
【0018】
本発明の別の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物は、高度に濃厚なまたは本質的に純粋な形態で提供され、化合物(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)、および/または(S,Z)-(Ia)を低い量で含むか、または本質的に含まない。これは、式(R,E)-(Ia)で表される化合物が、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、より特に少なくとも98重量%、さらにより特に99重量%以上で存在することを意味する。
【0019】
本発明の別の側面において、相当な量の式(R,E)-(Ia)で表される化合物を、化合物(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)とともに含む異性体混合物が提供される。これは、式(IIa)で表される化合物が、少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%、より特に少なくとも40重量%、さらにより特に50重量%以上で存在することを意味する。異性体混合物における式(R,E)-(Ia)で表される化合物対式(S,E)-(Ia)、式(R,Z)-(Ia)および/または式(S,Z)-(Ia)で表される化合物の合計の重量比は、約2:8から約99:1までの範囲であってもよい。例えば、異性体混合物は(R,E)-(Ia)、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)、(S,Z)-(Ia)を1:1:1:1の比率において含んでいてもよい。
【0020】
本発明の別の側面において、(R)-異性体(R,E)-(Ia)と(R,Z)-(Ia)との混合物が、純粋な形態またはエナンチオ高濃度の(enantio-enriched)形態において提供される。
本発明の別の側面において、(E)-異性体(R,E)-(Ia)と(S,E)-(Ia)との混合物が、純粋な形態または二重結合のエナンチオ高濃度の形態において提供される。
【0021】
本発明のさらなる側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物の、または(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)、および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物の、フレグランス成分としての使用が提供される:
本発明の別の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物を含む、香料組成物を提供する。
【0022】
本発明の化合物または異性体混合物は、単独でも、または広範囲の天然物、および、精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大員環およびヘテロ環などの目下入手可能な合成分子から選択された既知の香気物の分子と組み合わせても、および/または、香料組成物中の香気物と併せて従来使用される1つ以上の成分または賦形剤、例えば、担体材料、および当技術分野で一般的に使用される他の助剤と合わせて混和されて使用されてもよい。
【0023】
本明細書に使用されるとき「担体材料」は、香気物の観点から実際的に中性の物質、すなわち、香気物の官能特性を有意に変化させない材料を意味する。
【0024】
用語「助剤」は、香料組成物の嗅覚的性能に特に関連しない理由で前記フレグランス組成物に採用され得る成分を指す。例えば、助剤は、フレグランス成分(単数)または成分(複数)、または前記成分(単数または複数)を含有する組成物をプロセシングするための補助剤として作用する成分であってもよく、またはそれはフレグランス成分またはそれを含有する組成物の操作または保管を改善してもよい。それは、色や質感を付与することなどの追加の利点を提供する成分でもあってもまたよいだろう。それは、香料組成物において含有される1つ以上の成分に、耐光性または化学的安定性を付与する成分であってもまたよいだろう。それを含有する香料組成物において一般的に使用されるアジュバントの性質およびタイプの詳細な説明は、網羅的にはなれないが、前記成分が当業者に周知であることは言及されなければならない。
【0025】
本明細書に使用されるとき、「香料組成物」は、式(R,E)-(Ia)に従う化合物、または異性体混合物、および、ベース材料、例として、フタル酸ジエチル(DEP)、ジプロピレングリコール(DPG)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ペンタン-1,2-ジオール、トリエチルシトラート(TEC)およびアルコール(例としてエタノール)などの、香気物と併せて従来から使用される希釈剤とを含む任意の組成物を意味する。任意に、組成物は抗酸化剤アジュバントを含んでもよい。前記抗酸化剤は、Tinogard(登録商標)TT(BASF)、Tinogard(登録商標)Q(BASF)、トコフェロール(その異性体、CAS 59-02-9;364-49-8;18920-62-2;121854-78-2を含有する)、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(BHT、CAS 128-37-0)、および関連されるフェノール、ヒドロキノン(CAS 121-31-9)から選択されてもよい。
【0026】
以下のリストは、式(R,E)-(Ia)に従う化合物または異性体混合物と組み合わせられてもよい既知の香気物分子の例を含む:
●精油および抽出物、例として海狸香、コスタスルート油、オークモスアブソリュート、ゼラニウム油、木苔アブソリュート、バジル油、ベルガモット油およびマンダリン油などの果実油、ミルテ油、パルマローザ油、パッチュリ油、プチグレン油、ジャスミン油、ローズ油、白檀油、アブサン油、ラベンダー油および/またはイランイラン油、
●アルコール、例として桂皮アルコール((E)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オール);cis-3-ヘキセノール((Z)-ヘキサ-3-エン-1-オール);シトロネロール(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);ジヒドロミルセノール(2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール);Ebanol(商標)((E)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタ-4-エン-2-オール);オイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール);エチルリナロール((E)-3,7-ジメチルノナ-1,6-ジエン-3-オール);ファルネソール((2E,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール);ゲラニオール((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール);Super Muguet(商標)((E)-6-エチル-3-メチルオクタ-6-エン-1-オール);リナロール(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール);メントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール);ネロール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール);フェニルエチルアルコール(2-フェニルエタノール);Rhodinol(商標)(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);Sandalore(商標)(3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタン-2-オール);テルピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロパン-2-オール);またはTimberol(商標)(1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール);2,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール,および/または[1-メチル-2(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル]-メタノール;
●アルデヒドおよびケトン、例としてアニスアルデヒド(4-メトキシベンズアルデヒド);アルファアミル桂皮アルデヒド(2-ベンジリデンヘプタナール);Georgywood(商標)(1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);ヒドロキシシトロネラール(7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール);Iso E Super(登録商標)(1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);Isoraldeine(登録商標)((E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン);Hedione(登録商標)(メチル3-オキソ-2-ペンチルシクロペンタンアセタート);3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール;マルトール;メチルセドリルケトン;メチルイオノン;ベルベノン;および/またはバニリン;
●エーテルおよびアセタール、例としてアンブロクス(登録商標)(3a,6,6,9a-テトラメチル-2,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[e][1]ベンゾフラン);ゲラニルメチルエーテル((2E)-1-メトキシ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン);ローズオキシド(4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン);および/またはSpirambrene(登録商標)(2’,2’,3,7,7-ペンタメチルスピロ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2,5’-[1,3]ジオキサン]);
●エステルおよびラクトン、例としてベンジルアセタート;セドリルアセタート((1S,6R,8aR)-1,4,4,6-テトラメチルオクタヒドロ-1H-5,8a-メタノアズレン-6-イルアセタート);γ-デカラクトン(6-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン);Helvetolide(登録商標)(2-(1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エトキシ)-2-メチルプロピルプロピオナート);γ-ウンデカラクトン(5-へプチルオキソラン-2-オン);および/またはベチベリルアセタート((4,8-ジメチル-2-プロパン-2-イリデン-3,3a,4,5,6,8a-ヘキサヒドロ-1H-アズレン-6-イル)アセタート);
●大員環、例としてアンブレットリド((Z)-オキサシクロへプタデカ-10-エン-2-オン);ブラシル酸エチレン(1,4-ジオキサシクロへプタデカン-5,17-ジオン);および/またはExaltolide(登録商標)(16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン);および
●ヘテロ環、例としてイソブチルキノリン(2-イソブチルキノリン)。
【0027】
さらにまた、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物、ならびに式(Ib)、(Ic)および(II)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物とを含む香料組成物が、提供される。
【化2】
式中、波状結合は、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、および星は、C原子の立体中心を指し示している。
【0028】
式(Ib)、(Ic)および(II)で表される化合物は、C原子にて少なくとも1つの立体中心または少なくとも1つの二重結合を有する。したがって、化合物は、最大4つまでの異性体において存在し、立体中心および/または二重結合の立体配置において変動する。本明細書に記載のとおりの化合物は、実行可能な異性体の任意のもの、またはいくつかのまたはすべての実行可能な異性体の混合物として生じる。
【0029】
式(Ib)および(Ic)で表される化合物は、強い香気を有さない。したがって、それらは、化合物(R,E)-(Ia)との混合物において、化合物(R,E)-(Ia)の産生時に副産物として生じる場合、およびそれらの分離がコストを加える場合、受け入れられることができる。
【0030】
式(II)の化合物は、脂肪、ワックス様、フローラル、バラの柑橘系の香気を有し、また極めて性能が高い(GCTH 0.046ng)。化合物(R,E)-(Ia)との混合物において、より広い嗅覚活性ファセットをもつ強力なブレンドが提供されることができる。例えば、式(R,E)-(Ia)で表される化合物または式(R,E)-(Ia)の異性体混合物と式(II)で表される化合物とを重量によって最大3%までにおいて含む香料組成物は、調香師に好まれる。
【0031】
本発明の別の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物、ならびに式(III)で表される化合物の少なくとも1つを含む香料組成物が提供される。
【化3】
式中、
【化4】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、
ならびにR
1、R
2およびR
3はHまたはMeから独立して選択され、
あるいは式中、R
1はHまたはMeであり、ならびにR
2およびR
3は、それらが付加された炭素原子とともにシクロプロピル環を形成する。
【0032】
式(III)で表される化合物は、C原子にて最大3つまでの立体中心および/または少なくとも1つの二重結合を有することができる。したがって、化合物は、最大16つまでの異性体において存在し、立体中心および/または二重結合の立体配置において変動する。本明細書に記載のとおりの化合物は、実行可能な異性体の任意のもの、またはいくつかのまたはすべての実行可能な異性体の混合物として生じる。
【0033】
式(III)で表される化合物は、化合物(Ia)のアルコール誘導体であり、およびフローラルなノートおよび低い香気閾値を有する。化合物(R,E)-(Ia)との混和における式(III)で表される化合物は、新規のフローラルなアコードを提供する。
【0034】
化合物Iaは、不特定の配置をもつ異性体、または上に記載された複数の異性体の混合物を指す。
例えば、上に言及されたフレグランス組成物は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)で表される化合物からなる群から選択される、少なくとも1つの式(III)で表される化合物を、さらに含む。
【化5】
式中、波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示す。
【0035】
さらにまた、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、あるいは(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物、ならびに式(Ib)(Ic)、(II)および(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物を含む、香料組成物を提供する。
【0036】
式(III)で表される化合物のいくつかは既知である一方、いくつかは、前に報告されておらず、およびしたがって新規である。よって、本発明の別の側面において、式(III)で表される化合物が提供され、
【化6】
式中、
【化7】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、
ならびにR
1、R
2およびR
3はHまたはMeから独立して選択され、
あるいは式中、R
1は、HまたはMeであり、ならびにR
2およびR
3は、それらが付加された炭素原子とともにシクロプロピル環を形成し、
ただし、化合物は、3,7-ジメチルノナン-1-オールおよび3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オールではない。
【0037】
例えば、式(III)で表される化合物は、式(IIIa)、(IIIb)、および(IIId)で表される化合物からなる群から選択されることができ、
【化8】
式中、波状結合は、存在する場合、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示している。
【0038】
式(IIIa)で表される化合物(2,3,7-トリメチルノン-6-エン-1-オール)は、フローラルなバラの香気、および0.04ngのGC閾値を有する。式(IIIb)で表される化合物(2-メチル-2-(4-メチルヘックス-3-エン-1-イル)シクロプロピル)メタノール)は、フローラルなバラのフルーティーなライチの香気、および1.2ngのGC閾値を有する。および式(IIId)で表される化合物(4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オール)は、フローラルなポメロールのグリーンの香気を有するが、しかし比較的高い15ngのGC閾値を有する。
【0039】
本発明の別の側面では、式(III)で表される化合物の少なくとも1つ以上を含む、フレグランス組成物が提供される。
【0040】
本発明の別の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または(R,E)-(Ia)と、(S,E)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)および/または(S,Z)-(Ia)からなる群から選択される少なくとも1つの他の化合物とを含む異性体混合物、ならびに式(X)で表される化合物の少なくとも1つを含む香料組成物が、提供される。
【化9】
式中、
【化10】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
波状結合は、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、
星は、C原子での立体中心を指し示している。
【0041】
化合物(R,E)-(Ia)との混和における式(X)で表される化合物は、新しい柑橘類アコードを提供する。
【0042】
式(X)で表される化合物は、式(III)で表される化合物の調製において、中間体として使用されており、およびまた興味深い芳香性を有することも見出された。よって、本発明の別の側面において、式(X)で表される化合物が提供され、
【化11】
式中、
【化12】
は、炭素-炭素単結合または二重結合を指し示し、
波状結合は、隣接する二重結合の不特定の立体配置を指し示し、
星は、C原子での立体中心を指し示している。
【0043】
例えば、式(X)で表される化合物は、3,7-ジメチル-2-メチレンノン-6-エナールおよび2,3,7-トリメチルノン-6-エナールからなる群から選択されることができる。
【0044】
本発明のさらに別の側面において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物、または上に定義されるように異性体混合物もしくはフレグランス組成物を含む消費者向製品と、消費者向製品ベースとが提供される。
【0045】
消費者向製品は、例えば、上質なフレグランス、パーソナルケア製品(ボディケア製品、化粧用製品)ファブリックケア製品、ホームケア製品、およびエアケア製品から選択される。本明細書に使用されるとき、「消費者向製品ベース」は、洗浄、柔軟化、およびケアなどの特定の作用を満たす消費者向製品としての使用のための組成物を意味する。
【0046】
式(R,E)-(Ia)で表される化合物またはそれを含む混合物を加えられることができるパーソナルケア製品は、例えばすべての種類のボディケア製品を包含する。とくに関心を引く製品は、例えばシャンプー、コンディショナー、およびヘアスプレーなどのヘアケア製品、ならびにローションまたはクリームといったスキンケア製品である。さらにまた、(R,E)-(Ia)式の化合物またはそれを含む混合物は、石鹸、バスおよびシャワーゲルならびにデオドラントへ加えられてもよい。また、(R,E)-(Ia)の化合物やそれを含む混合物も化粧品に加えられることができる。
【0047】
式(R,E)-(Ia)で表される化合物またはそれを含む混合物を加えられることができるホームケア製品は、全ての種類の洗剤、ウィンドウクリーナー、硬質表面クリーナー、万能クリーナー、および家具用ポリッシュを包含する。好ましくは、製品は、液体であり、例として、布用洗浄剤またはコンディショナー組成物である。
【0048】
式(R,E)-(Ia)に従う化合物、またはそれを含む異性体混合物は、例として、香水類、エアケア製品、家庭用製品、洗濯製品、ボディケア製品および化粧品などの上質なおよび機能的な香水類の任意の分野で、香水が付与された消費者向製品の広い範囲において使用されてもよい。化合物は、特定の物品、および他の香気物成分の性質および分量に応じて、幅広く変動する量において採用されることができる。割合は、典型的には、物品の0.0001から5重量%までである。一態様において、本発明の化合物または(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物は、0.001から0.3重量%まで(例として、0.05を包含する0.01~0.1重量%)の量において布柔軟剤中に採用されてもよい。別の態様において、化合物(R,E)-(Ia)または(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物は、上質な香水類だけでなくシャンプー、布用柔軟剤または布用洗剤などの消費者向製品にも、0.001から30重量%まで(例として、最大約10重量%まで、または最大20重量%まで)、より好ましくは0.01と5重量%との間で使用されていてもよい。しかしながら、熟達した調香師はまた、より低いもしくはより高い濃度にて、効果を達成してもよいか、または新しいアコードを創造してもよいことから、これらの値は例としてのみ与えられる。
【0049】
一態様において、許容し得る量の化合物(R,E)-(Ia)または(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物を含む消費者向製品が提供される。例えば、フレグランスが付与された物品は、物品の総量に基づき、化合物または異性体混合物の0.000001重量%~90重量%(0.00001重量%;0.0001重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、50重量%、60重量%、65重量%を包含する)を含んでもよい。
【0050】
化合物(R,E)-(Ia)またはそれを含む異性体混合物は、消費者向製品ベースにおいて、本発明の化合物、または化合物(R,E)-(Ia)もしくは化合物(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物を含む香料組成物、またはその混合物を、消費者向製品ベースと直接的に混合させることによって採用されてもよく、または、それは、より早いステップにおいて、捕捉材料、例えば、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、炭素またはゼオライトなどの吸収剤、環状オリゴ糖類およびその混合物で封入され、および次いで消費者向製品ベースと混合されてもよい。
【0051】
よって、本発明は、さらなる側面において、従来の技法および方法を使用し、消費者向製品ベースに化合物を直接混合することにより、または消費者向製品ベースに混合してもよい、化合物(R,E)-(Ia)または(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物を含む香料組成物を混合することのいずれかによって、フレグランス成分として化合物(R,E)-(Ia)または(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物を組み込むことを含む消費者向製品の製造方法を、加えて提供する。本発明の化合物の嗅覚的に許容し得る量を上述のとおりの添加により、消費者向製品ベースの香気ノートは、改善されるか、授けられるか(conferred)、強化されるか、または修飾されるであろう。
【0052】
よって、本発明はさらにまた、別の側面において、消費者製品ベースを、それに嗅覚的に許容し得る量の化合物(R,E)-(Ia)、または化合物(R,E)-(Ia)を含む異性体混合物またはフレグランス組成物の添加によって、改善するか、授けるか、強化するかまたは修飾する方法を提供する。
【0053】
さらなる側面において、本発明はさらまた、消費者向製品ベースを、それに嗅覚的に許容し得る量の式(III)で表される化合物、または式(III)で表される化合物を含むフレグランス組成物の添加によって、改善するか、授けるか、強化するか、または修飾する方法を提供する。
【0054】
式(R,E)-(Ia)で表される化合物とその他の化合物は、例えば、対応する第一級アルコール(IV)の酸化などの、異なるプロセスにおいて調製されることができる。
前記対応する第一級アルコールは、エチルリナロール(V)からエチルゲラニオール/エチルネロール(VI)を介する2ステップのプロセスで得られることができる。
【化13】
【0055】
第一級アルコールは、立体選択的な合成によって、個々の異性体の形態において、またはさらに分離された異性体の混合物として、得られることができる。
例えば、アルコール異性体(IV)の混合物は、対応する3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イル4-ニトロ安息香酸(VII)に変換し、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)による個々の異性体への分離を可能にし、個々の化合物(R,E)-(IV)、(S,E)-(IV)、(R,Z)-(IV)、および(S,Z)-(IV)へエステル加水分解された。
【化14】
【0056】
一態様において、式(R,E)-(Ia)で表される化合物を調製するためのプロセスの出発材料は、再生可能な供給源から得られる。かかる出発材料によって、また最終産物は、再生可能な供給源からアクセス可能である。
【0057】
さらなる側面において、本発明の化合物は、マノメトリックレスピロメトリー試験(材料の試験のためのOECDガイドラインNo.301F、パリ、1992)によって実証された通り、生分解性である。
【0058】
本発明は、直ちに、以下の非限定的な例を参照してさら記載される。これらの例は、例証のみを目的としており、当業者によって、バリエーションや修飾が作成されることができることが理解されている。
【実施例】
【0059】
例:
一般:
すべての産物を、フラッシュクロマトグラフィー(FC)または蒸留のいずれかによってワークアップ後、精製した。別様に断りのない限りヘプタンとメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)の混合物を、溶離液として使用した。1Hと13C NMRスペクトルは、C6D6またはCDCl3において測定された。1H NMRスペクトルは、重水素化溶媒の残留水素信号(CDCl3では1H 7.27ppm、13C 77.0ppm、C6D6では1H 7.16ppm、13C 128.4ppm)を参照し、以下のように報告される:化学シフト(δppm)、結合定数J(Hz)。GC-MS分析は、MSD5975質量分析計で実行され、m/zリスト(相対光度)として報告される。電子イオン化(EI)は、70eVにて実行された。香気の説明は、別様に断りのない限り、化合物の異性体混合物の香気を指す。
【0060】
例1: 3,7-ジメチルノナ-6-エナール(R,E)-(Ia)、(S,EE)-(Ia)、(R,Z)-(Ia)、(S,Z)-(Ia)の4つの異性体をすべの合成。
a)3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(IV)の調製
エチルシトロネロール(IV)は、エチルリナロール(V)から開始し、エチルゲラニオール/エチルネロール(VI)を経て、2ステップのプロセスにおいて調製される。
i)3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエン-1-オール(VI)
N2下で、凝縮器を備えた1000mLの三ツ口丸底フラスコを、エチルリナロール(V、637.8g、3.79mol)、VO(OSiPh3)3(20.1g、0.022mol)およびPhMe(139g)で充填し、溶液を還流させた(加熱プレートを110℃に設定)。反応の進行を、70:30のエチルリナロール:エチルゲラニオール/エチルネロール(3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエン-1-オール)の平衡混合物が観察されるまで、GCによって続けた。合計3hの反応時間の後、反応混合物を室温まで冷却した。PhMeを除去すると、粗製の淡褐色の液体(667g)が得られた。反応混合物を、ワイプドフィルム蒸発器(長さ=16cm、外径5.5cm、80℃、0.04mbar)に通し、回収されたVO(OSiPh3)3(17g)と粗製の材料(エチルリナロール+エチルゲラニオール/エチルネロール混合物)(562.8g)を提供した。粗製の材料を濾過し、分留(スルザー充填カラム(長さ=50cm、内径30mm))により、エチルリナロール(250.1g)、次いでエチルゲラニオール/エチルネロール(IV、92g、純度100%、48%)を1:3.36:3.51:5.59の比率で4つの異性体の混合物として分離された収量として得た。
【0061】
E/E、E/Z、Z/EおよびZ/Z異性体の混合物:
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ = 5.47 - 5.37 (m, 4 x 1H), 5.14 - 5.03 (m, 4 x 1H), 4.14 (d, J=6.8 Hz, 2 x 2H), 4.11 - 4.07 (m, 2 x 2H), 2.16 - 1.94 (m, 4 x 6H), 1.89 (br s, 4 x 1H), 1.75 (m, 2 x 3H), 1.67 (m, 4 x 3H), 1.60 (s, 2 x 3H), 1.00 - 0.94 (m, 4 x 3H) ppm
13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 139.6 (s), 139.5 (s), 139.34 (s), 139.28 (s), 137.9 (s), 137.7 (s), 137.3 (s), 137.1 (s), 124.43 (d), 124.37 (d), 123.42 (d), 123.35 (d), 122.3 (d), 122.1 (d), 59.1 (t), 58.78 (t), 58.76 (t), 39.8 (t), 39.5 (t), 32.22 (t), 32.19 (t), 31.9 (t), 26.3 (t), 26.2 (t), 26.1 (t), 25.9 (t), 24.7 (t), 24.6 (t), 23.3 (q), 22.72 (q), 22.68 (q), 16.1 (q), 15.8 (q), 12.73 (q), 12.69 (q),12.67 (q), 12.6 (q) ppm.
【0062】
E/E異性体(メジャー):
13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 139.3 (s), 137.1 (s), 123.4 (d), 122.3 (d), 59.1 (t), 39.5 (t), 32.2 (t), 26.2 (t), 16.1 (q), 15.8 (q), 12.7 (q) ppm.
ピーク1.MS (EI, Rt 6.43 min., 70 eV): 168 (1, [M]+・), 121 (9), 93 (17), 84 (14), 83 (33), 67 (15), 55 (100), 53 (10), 41 (39), 39 (15), 29 (11).
ピーク2.MS (EI, Rt 6.51 min., 70 eV): 168 (1, [M]+・), 121 (9), 93 (18), 84 (14), 83 (35), 67 (15), 55 (100), 53 (10), 41 (38), 39 (14), 29 (10).
ピーク3.MS (EI, Rt 6.62 min., 70 eV): 168 (0, [M]+・), 137 (9), 93 (9), 84 (8), 83 (37), 67 (13), 55 (100), 53 (9), 41 (36), 39 (12), 29 (10).
ピーク4.MS (EI, Rt 6.67 min., 70 eV): 168 (1, [M]+・), 93 (9), 84 (8), 83 (39), 67 (13), 55 (100), 53 (9), 43 (8), 41 (35), 39 (12), 29 (9).
【0063】
ii)3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(IV)
空気雰囲気下で、3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエン-1-オール(IV、92g、0.547mol、純度100%)とMeOH(108g)を、続いてラネーニッケル(0.92g、ペレット状で一気に添加)500mLのオートクレーブ容器に加え、容器を密閉した。撹拌しながら(600rpm)、オートクレーブをN2(1.8バール)で3度、次にH2(2.0バール)で3回フラッシュした。H2圧を10barに調整した後、撹拌を1500rpmに増加する一方、オートクレーブを50℃に加熱した。反応の進行につづき、試料採取を行った。t=6h39minで、オートクレーブの加熱とH2フローを停止した。冷却した後、圧力を解放し、およびオートクレーブをN2(1.8バール)で3回フラッシュした。反応混合物を濾過して不均一触媒を除去し、MeOHを除去して、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(II、78.6g、純度86.9%、収率79.8%)を2:1の比率の2つの二重結合異性体を含む無色の液体として得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 5.14 - 5.03 (m, 2 x 1H, E+Z), 3.74 - 3.60 (m, 2 x 2H, E+Z), 2.09 - 1.89 (m, 2 x 4H, E+Z), 1.67 (q, J=1.2 Hz, 3H, Z), 1.60 (sb, 3H, E), 1.66 -1.13 (m, 2 x 5H, E+Z), 0.98 (t, J=7.5 Hz, 3H, E), 0.96 (t, J=7.5 Hz, 3H, Z), 0.91 (d, J=6.7 Hz, 3H, E), 0.91 (d, J=6.6 Hz, 3H, Z) ppm.
13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 137.0 (s, Z), 136.7 (s, E), 124.3 (d, Z), 123.1 (d, E), 61.1 (2t, E+Z), 39.8 (2t, E+Z), 37.5 (t, Z), 37.2 (t, E), 32.3 (t, E), 29.2 (2d, E+Z), 25.3 (t, E), 25.0 (t, Z), 24.7 (t, Z), 22.8 (q, Z), 19.5 (2q, E+Z), 15.8 (q, E), 12.8 (q, Z), 12.7 (q, E) ppm.
ピーク1.MS (EI, Rt = 6.43 min, 70 eV):170 (3, [M]+・), 123 (39), 95 (18), 83 (18), 81 (42), 71 (18), 70 (19), 69 (21), 67 (26), 55 (100), 41 (45).
ピーク2.MS (EI, Rt = 6.43 min, 70 eV):170 (3, [M]+・), 123 (39), 95 (18), 83 (19), 81 (41), 71 (18), 70 (18), 69 (21), 67 (26), 55 (100), 41 (45).
【0064】
b)立体異性体分離
3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(IV)は、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)による個々の異性体への分離を可能にするため、対応する3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イル 4-ニトロベンゾエート(VII)に変換され、続いて個々の化合物(R,E)-(IV)、(S,E)-(IV)、(R,Z)-(IV)、および(S,Z)-(IV)へエステル加水分解された。
【0065】
i)3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イル4-ニトロベンゾアート(VI):
DCM(100mL)中の化合物IV(5g、29mmol、1 equiv)の撹拌溶液に、0℃にて、p-ニトロ安息香酸(2)(7.35g、44mmol、1.5 equiv)、DCC(11.3g、55mmol、1.9 equiv)、およびDMAP(1.41g、11.6mmol、0.4 equiv)を加えた。それを室温で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾過した固体をDCM(50mL)で洗浄した。濾液を水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、および減圧下で濃縮した。粗産物(VII)を、HPLCで精製して、3(6g、64%)を無色の液体として得た。
【0066】
ii)SFC分離:
化合物VII(6g)をSFC精製に供し(15%共溶媒:メタノール中イソプロピルアミン0.5%,カラム:ラックスA1(250×30mm、5μ)、流速:3ml/min)、4画(S,E)-(VIIc)、(S,Z)-(VIIa)、(R,E)-(VIIb)、および(R,Z)-(VIId)を得る。
【0067】
iii)エステル加水分解:
rtにてTHF-MeOH-H2O(7:2:1vol)中の化合物(S,Z)-(VII)の攪拌溶液へLiOH.H2O(2 equiv)を加えた。それを室温にて2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、水で希釈し、EtOAcで抽出した。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、および減圧下で濃縮した。粗産物を、溶離液として石油エーテル中の6~7%EtOAcを使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、(S,Z)-(V)((S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール)を無色の液体として得た。
【0068】
化合物(R,E)-(VII)、(S,E)-(VII)および(R,Z)-(VII)は、従って加水分解され、化合物(R,E)-(V)((R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール)、(S,E)-(V)((S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール)および(R,Z)-(V)((R,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール)を産生した。個々の異性体の立体配置は、キラルGCおよびNMR分析によってアサインされた。
【0069】
例2: 3,7-ジメチルノナ-6-エナールの4つの異性体すべての合成:
一般的な手順:CH2Cl2(0.02-0.09M)中のデス・マルチン・ペジナン(1.2 equiv)の溶液に、CH2Cl2(0.02-0.12M)中のアルコールV(1.0 equiv)の溶液を、0℃にて滴下で加えた。反応混合物を、室温にて3時間攪拌し、2M NaOHによってクエンチした。層を分離し、およびCH2Cl2で水層を抽出した。合わせた有機層を、Na2S2O3, sat. ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、および濾過した。溶媒を、減圧下で除去し、および粗製のものを、カラムクロマトグラフィー(SiO2、ビオタージュまたはパスツールピペット、ヘプタン/MTBE混合物)によって精製した。
【0070】
a) (R,E)-Vから得られた(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((R,E)-Ia):
(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(50mg)を一般的な手順で記載されたように酸化し、(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール(10mg、収率20%)を無色油として与えた。
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ (ppm) = 9.35 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 5.11 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 2.02 - 1.67 (m, 7H), 1.54 (s, 3H), 1.22 - 1.13 (m, 1H), 1.09 - 1.03 (m, 1H), 0.99 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 0.74 (d, J = 6.4 Hz, 3H).3C NMR (151 MHz, C6D6) δ (ppm) = 201.2, 137.3, 123.5, 51.3, 37.5, 33.1, 28.1, 26.0, 20.2, 16.3, 13.4.GC-MS (EI) m/z (%):168 (1, [M]+・), 121 (25), 95 (53), 83 (27), 69 (31), 67 (22), 55 (100), 43 (22), 41 (65), 39 (27), 29 (45).
Chiral GC (Sigma-Aldrich, Astec Chiraldex G-DP, 2min@50°C-1°C/min-100°C-5°C/min-2min@200°C): tR/min = 56.67 min.
香気の説明:アルデヒド、ワックス様、脂肪、フローラル、バラ、柑橘類、ジューシー、シトロネラ、水っぽい、プレサイクルモン、ミラルデン、グリーン。
GCTH:0.013ng.
【0071】
b) (S,E)-V)から得られた(S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,E)-Ia):
(S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(0.20g)を一般的な手順で記載されたように酸化し、(S,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール(89mg、収率45%)を無色油として与えた。
1H NMRおよび13C NMRのデータは、例2aと同一である。GC-MS (EI) m/z (%):168 (1, [M]+・), 121 (22), 95 (45), 83 (29), 69 (29), 67 (21), 55 (100), 41 (64), 39 (28), 29 (46), 27 (22).Chiral GC (Sigma-Aldrich, Astec Chiraldex G-DP, 2min@50°C-1°C/min-100°C-5°C/min-2min@200°C): tR/min = 56.45 min.
香気の説明:アルデヒド、ワックス様、脂肪、グリーン、柑橘類の葉、柑橘類、柑橘類ヒストリックス、シトロネラ―ル、バーベナ、フローラル、バラ。
GCTH:1.4ng.
【0072】
c) (S,Z)-V)から得られた(S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((S,Z)-Ia):
(S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(25mg)を、一般的な手順で記載されたように酸化し、(S,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール(10mg、収率43%)を無色油として与えた。1H NMR (600 MHz, C6D6) δ (ppm) = 9.35 (t, J = 2.0 Hz, 1H), 5.06 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 2.00 - 1.75 (m, 6H), 1.75 - 1.69 (m, 1H), 1.66 (d, J = 1.1 Hz, 3H), 1.19 - 1.11 (m, 1H), 1.07 - 0.97 (m, 1H), 0.93 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 0.73 (d, J = 6.8 Hz, 3H) 13C NMR (151 MHz, C6D6) δ (ppm) = 201.2, 137.5, 124.7, 51.3, 37.8, 28.1, 25.7, 25.4, 23.4, 20.1, 13.4.GC-MS (EI) m/z (%):168 (1, [M]+・), 121 (24), 95 (50), 83 (27), 69 (29), 67 (19), 55 (100), 41 (66), 39 (27), 29 (44), 27 (22).
Chiral GC (Sigma-Aldrich, Astec Chiraldex G-DP, 2min@50°C-1°C/min-100°C-5°C/min-2min@200°C): tR/min = 55.38 min.
香気の説明:無水、ワックス様、脂肪、グリーン、脂肪、金属、柑橘類の葉、柑橘類、ジューシー、シトロネラール。
GCTH:0.75ng.
【0073】
d) (R,Z)-Vから得られた(R,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール((R,Z)-Ia):
(R,Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(0.20g)を一般的な手順で記載されたように酸化し、(R,E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール(0.1g、収率56%)を無色油として与えた。
1H NMRおよび13C NMRのデータは、例2cと同一である。GC-MS (EI) m/z (%):168 (1, [M]+・), 121 (28), 95 (50), 83 (27), 69 (30), 67 (21), 55 (100), 41 (66), 39 (28), 29 (46), 27 (21).
Chiral GC (Sigma-Aldrich, Astec Chiraldex G-DP, 2min@50°C-1°C/min-100°C-5°C/min-2min@200°C): tR/min = 55.54 min.
香気の説明:無水、ワックス様、脂肪質、グリーン、金属、脂肪質、柑橘類の葉、柑橘類、ジューシー、フルーティー、シトロネラール。
GCTH:1.2ng.
【0074】
例3: 異性体アルデヒド混合物Ia、Ib、Ic、IIの合成:
オートクレーブを、3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエナール(8.0g、48.1mmol、1.0 equiv、WO2014140032 A1に記載されたように調製)、5%ウェットPd/C(0.20g、0.094mmol、0.2mol%、含水分58%)、およびNa2CO3(0.10g、0.94mmol、2mol%)で充填した。反応混合物を、次に室温にて3bar H2にて22時間水素化させた。粗製のものを、クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留によって精製し、アルデヒドの混合物(6.1g、75%収率(E)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール (E-Ia)の53%+(Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エナール(Z-Ia)の29%+3,7-ジメチルノナ-7-エナール(Ib、E/Z異性体の合計)の13%+3-メチル-7-メチレンノナール(Ic)の1%+3,7-ジメチルノナール(II)の4%)を無色油として与えた。
(E)-Ib(オレフィンシグナル)の特徴的な13C NMRデータ:13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 135.5 (Cq), 118.3 (CH).
(Z)-Ib(オレフィンシグナル)の特徴的な13C NMRデータ:13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 135.7 (Cq), 119.0 (CH).
Ic(オレフィンシグナル)の特徴的な13C NMRデータ:13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 107.6 (=CH2).
【0075】
3,7-ジメチルノナナール(II)の参照試料は、文献手順FR2124279 A1に従って、調製された。2つのジアステレオ異性体の混合物の分析データは、次のとおりであった。13℃ NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 203.1, 51.1, 51.1, 36.9, 34.3, 29.5, 29.4, 28.2, 28.4, 24.4, 20.0, 19.9, 19.2, 19.1, 11.4, 11.4.
香気の説明:フレッシュシトラスメタリック(オレンジ、ジューシー)グリーン。
GCTH:0.19ng.
【0076】
例4: 2,3,7-トリメチルノン-6-エン-1-オールIIIaの合成:
a)3,7-ジメチル-2-メチレンノン-6-エナール
3,7-ジメチルノナ-6-エナール(2.50g、14.9mmol、1.0equiv、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オールのラセミ体をE/Z混合物から例2に従って調製)を、与えるための文献手順(WO2018024820A1,例1)を使用し、アルファ-メチル化し、クーゲルロール蒸留後、3,7-ジメチル-2-メチレンノン-6-エナール(1.92g、収率71%、E/Z異性体の混合物57:43)を与えた。
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 194.6, 155.4, 155.4, 137.4, 137.1, 133.0, 123.7, 122.5, 35.9, 35.6, 32.3, 31.0, 31.0, 25.6, 25.3, 24.7, 22.8, 19.5, 19.5, 15.8, 12.8, 12.7.
香気の説明:脂肪、無水、金属、魚、柑橘類。
【0077】
b)2,3,7-トリメチルノン-6-エナール
3,7-ジメチル-2-メチレンノン-6-エナール(1.80g、9.98mmol、1.0 equiv)を、文献手順(WO2018024820A1、例2)を用いて水素化し、クーゲルロール蒸留後、2,3,7-トリメチルノン-6-エナール(1.50g、収率78%、4異性体の混合物)を無色油として与えた。
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 205.7, 205.7, 205.6, 205.6, 137.5, 137.3, 137.3, 123.6, 123.5, 122.4, 122.3, 51.5, 51.5, 50.5, 35.0, 34.7, 33.4, 32.3, 32.3, 32.1, 32.1, 25.4, 24.7, 22.8, 22.8, 17.3, 17.3, 15.9, 15.4, 15.3, 12.8, 12.7, 9.8, 9.8, 8.1, 8.1
香気の説明:柑橘類のシトラール、レモングラス、脂肪、アルデヒド。
GCTH:16ng.
【0078】
c)2,3,7-トリメチルノン-6-エン-1-オール
エタノール中のNaBH4(0.10g、2.63mmol、0.6 equiv)の溶液(4mL)へ、室温にて、エタノール中の2,3,7-トリメチルノン-6-エナール(0.80g、4.39mmol、1.0 equiv)の溶液(4mL)を加えた。その温度にて3時間攪拌した後、反応混合物を、水でクエンチし、およびMTBEで希釈した。層を分離し、飽和(sat.)で有機層を、洗浄した。NaHCO3およびブライン、MgSO4上で乾燥し、および減圧下で濃縮した。粗製のものを、カラムクロマトグラフィーおよびクーゲルロール蒸留によって精製し、2,3,7-トリメチルノン-6-エン-1-オール IIIa(0.48g、収率59%、4つの異性体の15:24:25:36の比率の混合物)を、無色油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 5.26 - 4.95 (m, 1H), 3.72 - 3.50 (m, 1H), 3.49 - 3.39 (m, 1H), 2.13 - 1.85 (m, 4H), 1.74 - 1.45 (m, 6H), 1.43 - 1.30 (m, 1H), 1.26 - 1.06 (m, 1H), 0.97 (m, 3H), 0.92 - 0.87 (m, 3H), 0.81 (m, 3H).13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 136.9, 124.4, 124.3, 123.2, 123.1, 66.8, 66.0, 66.0, 40.6, 39.5, 35.4, 35.1, 34.1, 33.0, 32.3, 25.7, 24.7, 22.8, 16.9, 16.8, 15.8, 15.8, 14.3, 13.5, 13.5, 12.8, 11.3, 12.8.
香気の説明:脂肪、バラ、シトロネロール、わずかにワックス様のダスティー。
GCTH:0.04ng.
【0079】
例5: (2-メチル-2-(4-メチルヘックス-3-エン-1-イル)シクロプロピル)メタノールIIIbの合成:
CH2Cl2(60mL)中のジエチル亜鉛の溶液(69.5mL、69.5mmol、ヘキサン1M、1.3 equiv)に、-15℃にてジヨードメタン(10.79mL、134mmol、2.5 equiv)を、加えた。その後、反応混合物を、同じ温度にて1時間攪拌するままにした。これに、CH2Cl2(50mL)中の3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエン-1-オールの溶液(9g、53.5mmol、1.0 equiv, Rojahn, W. et al.に従って調製)を加えた。Dragoco Report (German Edition) 1978, 25, 248に従って調製された))に、-15℃にて加えた。反応混合物を、室温にて20時間攪拌するままにした。反応混合物を15℃で塩化アンモニウム水溶液(50mL)を加えてクエンチし、水(50mL)で希釈し、セライトベッドを通して濾過した。濾過液を、CH2Cl2(250mL×2)で抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、粗製の淡黄色の液体を得、AgNO3に含浸させた230-400サイズのシリカゲルを石油エーテル中に4-5%の酢酸エチルで溶出させ、2回精製し、(2-メチル-2-(4-メチルヘクス-3-エン-1-イル)シクロプロピル)メタノールIIIb(4.7g、収率48%、4つの異性体を8:25:15:52の比率で混合したもの)を、無色油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 5.18 - 5.02 (m, 1H), 3.78 - 3.42 (m, 2H), 2.16 - 1.92 (m, 4H), 1.71 - 1.59 (m, 3H), 1.44 - 1.30 (m, 2H), 1.22 - 1.11 (m, 1H), 1.11-1.06 (m, 3H), 1.01 - 0.84 (m, 4H), 0.56 - 0.43 (m, 1H), 0.17 - 0.07 (m, 1H).13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 137.3, 137.0, 136.9, 136.7, 124.2, 122.9, 122.9, 63.9, 63.5, 41.4, 41.1, 34.5, 34.2, 32.3, 27.3, 26.2, 25.6, 25.3, 25.3, 25.0, 24.7, 24.3, 24.3, 22.8, 20.2, 20.2, 19.9, 17.7, 17.6, 17.6, 17.5, 17.0, 17.0, 15.8, 12.8, 12.7.
香気の説明:フローラル、バラ、エチルシトロネロール、フルーティーライチ。
GCTH:1.2ng.
【0080】
例6: 3,7-ジメチルノナン-1-オールIIIcの合成:
オートクレーブを、3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエナール(2.0g、12.0mmol、1.0 equiv、WO2014140032 A1において記載されたように調製)、Raney-Ni(0.65g、使用前にエタノールで洗浄)、および20mLエタノールで充填した。反応混合物を、30bar、100℃にて2時間水素化した。濾過および濃縮後、粗製のものを、クロマトグラフィーにより精製し、3,7-ジメチルノナン-1-オールIIIc(0.97g、収率47%、ジアステレオ異性体2個)を無色油として与えた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 3.77 - 3.59 (m, 2H), 1.67 - 1.50 (m, 2H), 1.44 - 0.97 (m, 11H), 0.94 - 0.80 (m, 9H).13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 61.2, 40.0, 40.0, 37.5, 37.4, 36.9, 36.8, 34.4, 29.5, 29.5, 29.5, 29.4, 24.4, 19.4, 11.4, 11.4.
香気の説明:フローラル、バラ、牡丹、フルーティー、ライチ、ブドウ、グリーン、ワックス様、熱鉄。
GCTH:3.1ng.
【0081】
例7: 4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オールIIIdの合成:
a) 3,7-ジメチルノナ-6-エン酸
0℃のアセトン(230mL)中の3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-オール(23g、135mmol)の溶液へ、ジョーンズ試薬(135mL)を、1時間の期間にわたって加えた。反応混合物を、25℃にて1時間攪拌した。減圧下で、アセトンを濃縮し、水(350mL)で希釈し、および酢酸エチル(1×700mL)で抽出した。有機抽出物を、5%NaOH溶液(1×300mL)で洗浄した。水溶液層を、concを用いてpH=~1-2に酸性化した。HCl(55mL).産物を、酢酸エチル(2×600mL)で、抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、および減圧下で濃縮した。粗産物を、8%のエチル酢酸-石油エーテルを使用し、クロマトグラフィーによって精製し、3,7-ジメチルノナ-6-エン酸(8g、32%)を、無色油として得た。
【0082】
b) N-メトキシ-N,3,7-トリメチルノン-6-エナミド
CH2Cl2(150mL)中の3,7-ジメチルノナ-6-エン酸(15g、81mmol)およびN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(10.3g、106mmol)の懸濁液へ、EDC*HCl(20.29g、106mmol)とDMAP(15.91g、130mmol)を、25℃にて加えた。混合物を、室温にて16時間攪拌した。反応混合物を、水(300mL)で希釈し、CH2Cl2(250mL×2)で抽出した。合わせた有機層を、1.5N HCl溶液(1x150mL)、ブライン溶液(1x150mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、および減圧下で濃縮した。粗産物を、8~10%エチルアセテートおよび石油エーテルを溶離液として使用し、クロマトグラフィーで精製し、N-メトキシ-N,3,7-トリメチルノン-6-エナミド(15.6g、84%)を、無色の液体として得た。
【0083】
c) 4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オン
THF(160mL)中のN-メトキシ-N,3,7-トリメチルノン-6-エナミド(17g、74.8mmol)の攪拌溶液に、不活性雰囲気下、0℃にて臭化メチルマグネシウム(ジエチルエーテル中 3.0M)(40mL、120mmol)を滴下で加えた。添加後、反応混合物を、25℃にて1時間攪拌するままにした。反応の完了後、反応質量を、飽和水溶液(saturated aq.)でクエンチした。NH4Cl溶液(150mL)を、5℃にて、酢酸エチル(250mL×2)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン溶液(1×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、および減圧下で濃縮した。粗産物を、石油エーテル中の4~6%酢酸エチルを溶離液としてクロマトグラフィーで精製し、4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オン(11.5g、84%)を無色の液体として得た。
香気の説明:脂肪(石鹸)のフルーティーな柑橘類。
【0084】
d)4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オール
メタノール(65mL)中の4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オン(6.4g、35.1mmol)の攪拌溶液に、0℃にて部分ずつNaBH4(0.664g、17.5mmol)を加えた。反応混合物を、室温にて1.5時間攪拌した。反応混合物を、0℃に冷却し、氷水(40mL)でクエンチし、および酢酸エチル(2x150mL)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン(1×60mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、および減圧下で濃縮した。粗産物を、7~8%の酢酸エチル&石油エーテルを溶離液として使用し、クロマトグラフィーにより精製し、4,8-ジメチルデク-7-エン-2-オール(5.25g、81%、4つの異性体を8:28:60:4の割合の混合物)を無色油として得た。
13C NMR (101 MHz, CDCl3, 2 major isomers) δ (ppm) = 124.3, 124.3, 123.1, 66.2, 65.8, 46.9, 46.8, 38.0, 37.7, 37.3, 37.0, 32.3, 29.5, 29.5, 29.1, 25.3, 25.2, 25.0, 24.7, 24.3, 24.3, 23.6, 23.6, 22.9, 20.1, 19.3, 19.3, 15.8, 12.8, 12.8.
香気の説明:フローラル、バラ、牡丹、ポメロール、グリーン、グレープフルーツ、ワックス様、脂肪、わずかにステアリン酸。
GCTH:15ng.
【0085】
例8: 化合物Ia(4つの立体異性体の混合物)の生分解結果
マノメトリックレスピロメトリー試験(OECDガイドライン.No. 301F, Paris 1992)を、a)化合物Ia(4つの立体異性体の混合物)およびb)例3の混合物(アルデヒド混合物Ia、Ib、Ic、II)の生分解性にアクセスするために使用した。
【0086】
結果は、
a) 化合物Ia(4つの立体異性体の混合物)は、BOD(生物学的酸素要求量)70%(60日、容易に生分解性)を示し(
図1)、および
b) 例3の混合物(アルデヒド混合物Ia、Ib、Ic、II)は、87%(60日間、容易に生分解性)のBOD(生物学的酸素要求量)を示す(
図2)ことを示した。
【0087】
完全な鉱化に要する理論の酸素消費量の60%の合格レベルに達する場合、化合物は、生分解性に分類されることができる。
28日間の試験の期間内に10日以内に合格レベルが達された場合、それは容易に生分解される。10日間のウィンドウは、生分解度が10%に達した時に始まる。
28日間の試験期間後に、合格レベルが得られた場合、化合物は本質的に生分解性であると分類できる。
【0088】
例9: 香水類例
基本アコードREFは、表1に概説されるように、本発明に従う異なる化合物および比較化合物の添加により修飾されている。
【表1】
【0089】
REF:このアコードは、フローラルなバラのムスクベースのノートをもつ、新鮮な柑橘類のグレープフルーツのトップノートの特質を提示する。それは、シャンプーまたはシャワージェル中の使用を意図される。本適用は、0.8%にて、シャンプー中である。
A: Iaの4つの異性体の混合物の0.3%の添加は、すでに新鮮な、アルデヒド、活気に満ちたファセットだけでなく、天然の特質ならびに知覚された有効性嗅覚のきっかけを補強する柑橘類のジューシーなファセットをもたらす。
【0090】
B: 比較して、1%シトロネラールの添加は、若干のジューシーさもまたもたらすが、特に欧米では、通常は消費者に好まれないシトロネラの嗅覚のきっかけを与える傾向がある。
C: 3%のシトロネラールの添加は、明確なシトロネラ特性を与え、消費者の選好のためにさらにいっそう指向する。
【0091】
D: 例3の異性体アルデヒド混合物の0.3%の添加は、緑色、鮮やか、金属、および柑橘系、レモングラスの効果をもたらし、それはまた、Iaの4つの異性体の混合物とは明らかに異なる嗅覚活性への貢献により、自然性および知覚効果を強化する。
E: 例4(IIIa)の6%化合物の添加は、アコードに柔らかなフローラルなバラの深みをもたらし、ジューシーな柑橘類の嗅覚の測面およびケアの自然さのヘドニックな側面を強化する。
F: Iaの4つの異性体の0.3%および例4(IIIa)の化合物の6%の混合物の組み合わせは、リフトおよびトップノートのための活気のある自然さ、ならびにヘドニックおよび水中におけるブルームのためのケアのジューシーな側面の両方を組み合わせる。
【国際調査報告】