(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抗SARS-CoV-2抗体及びその使用I
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20240927BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20240927BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240927BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K16/08 ZNA
A61K39/395 S
A61P31/14
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520867
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 AU2022051202
(87)【国際公開番号】W WO2023056521
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524127917
【氏名又は名称】セキラス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロックマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンバーグ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】オン,チ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA19
4C085BA71
4C085CC02
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に結合するタンパク質及びその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体可変領域を含むタンパク質であって、前記抗体可変領域が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイク(S)タンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に結合するかまたは特異的に結合しかつ前記Sタンパク質のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を中和するものであり、かつ前記抗体可変領域は、
(a)配列番号1に示す配列を含む重鎖可変領域(V
H)と、配列番号2に示す配列を含む軽鎖可変領域(V
L)と、を含む抗体、
(b)配列番号3に示す配列を含むV
Hと、配列番号4に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、
(c)配列番号5に示す配列を含むV
Hと、配列番号6に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、
(d)配列番号7に示す配列を含むV
Hと、配列番号8に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、及び
(e)配列番号9に示す配列を含むV
Hと、配列番号10に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体のいずれか1つの前記SARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害するものである、前記タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質は、少なくとも約5μg/mlの半最大阻害濃度(IC
50)で、前記SARS-CoV-2Sタンパク質RBDのACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和するものである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記抗体可変領域は、
(i)前記SARS-CoV-2Sタンパク質RBD中の立体構造エピトープに特異的に結合するものであり、ここで、前記RBDは、配列番号51に示す配列のアミノ酸残基5、6、17、18、及び19を含み、
(ii)変異型Sタンパク質に結合するものであり、ここで、前記変異型Sタンパク質は、
(a)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基におけるDからGへの変異、及び/または
(b)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基におけるNからYへの変異、及び/または
(c)配列番号50のヌクレオチド477に対応する残基におけるSからNへの変異、及び/または
(d)配列番号50のヌクレオチド485に対応する残基におけるGからRへの変異を含み、及び/または
(iii)以下の抗体、すなわち
(a)配列番号1に示す配列を含むV
Hと、配列番号2に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、
(b)配列番号3に示す配列を含むV
Hと、配列番号4に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、
(c)配列番号5に示す配列を含むV
Hと、配列番号6に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、
(d)配列番号7に示す配列を含むV
Hと、配列番号8に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体、及び
(e)配列番号9に示す配列を含むV
Hと、配列番号10に示す配列を含むV
Lと、を含む抗体のいずれか1つによって結合されるエピトープと同じ前記SARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合するものである、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記抗体可変領域は、配列番号51に示す配列を含むペプチドと交差反応するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記タンパク質は、可変フラグメント(Fv)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質は、
(i)単鎖フラグメント可変(Fv)フラグメント(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)抗原結合フラグメント(Fab)、
(vii)F(ab’)
2、
(viii)Fv、
(ix)抗体の定常領域、定常フラグメント(Fc)、または重鎖定常ドメイン(C
H)2及び/またはC
H3に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、及び
(x)抗体からなる群から選択される、請求項5に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質は抗体であり、前記抗体は、
(i)配列番号45に示す配列を含むV
Hと、配列番号46または配列番号6に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(ii)配列番号45に示す配列を含むV
Hの3つの相補性決定領域(CDR)を含むV
Hと、配列番号46または配列番号6に示す配列を含むV
Lの3つのCDRを含むV
Lと、を含むものであるか、または
(iii)配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むV
Hと、配列番号36または配列番号32に示す配列を含むCDR1、配列番号37または配列番号33に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38または配列番号34に示す配列を含むCDR3を含むV
Lと、を含むものである、請求項1~6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質は抗体であり、前記抗体は、
(i)配列番号1に示す配列を含むV
Hと、配列番号2に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(ii)配列番号3に示す配列を含むV
Hと、配列番号4に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iii)配列番号5に示す配列を含むV
Hと、配列番号6に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iv)配列番号7に示す配列を含むV
Hと、配列番号8に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、または
(v)配列番号9に示す配列を含むV
Hと、配列番号10に示す配列を含むV
Lと、を含むものである、請求項1~7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記タンパク質は抗体であり、
(i)前記抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Hを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号21に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号22に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号23に示す配列を含み、
前記抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Lを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号24に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号25に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号26に示す配列を含むか、または
(ii)前記抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Hを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号29に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号30に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号35に示す配列を含み、
前記抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Lを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号36に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号37に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号38に示す配列を含むか、または
(iii)前記抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Hを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号27に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号28に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号35に示す配列を含み、
前記抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Lを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号36に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号37に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号38に示す配列を含むか、または
(iv)前記抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Hを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号29に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号30に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号31に示す配列を含み、
前記抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Lを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号32に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号33に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号34に示す配列を含むか、または
(v)前記抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Hを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号39に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号40に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号41に示す配列を含み、
前記抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むV
Lを含み、
(a)前記CDR1は、配列番号42に示す配列を含み、
(b)前記CDR2は、配列番号43に示す配列を含み、かつ
(c)前記CDR3は、配列番号44に示す配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項10】
抗SARS-CoV-2抗体であって、
(i)配列番号1に示す配列を含むV
Hと、配列番号2に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(ii)配列番号3に示す配列を含むV
Hと、配列番号4に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iii)配列番号5に示す配列を含むV
Hと、配列番号6に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iv)配列番号7に示す配列を含むV
Hと、配列番号8に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるか、または
(v)配列番号9に示す配列を含むV
Hと、配列番号10に示す配列を含むV
Lと、を含むものであるかのいずれか1つである、前記抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項11】
抗SARS-CoV-2抗体であって、
(i)配列番号11を含む核酸から発現されるかまたは配列番号11を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Hと、配列番号12を含む核酸から発現されるかまたは配列番号12を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(ii)配列番号13を含む核酸から発現されるかまたは配列番号13を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Hと、配列番号14を含む核酸から発現されるかまたは配列番号14を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iii)配列番号15を含む核酸から発現されるかまたは配列番号15を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Hと、配列番号16を含む核酸から発現されるかまたは配列番号16を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Lと、を含むものであるか、
(iv)配列番号17を含む核酸から発現されるかまたは配列番号17を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Hと、配列番号18を含む核酸から発現されるかまたは配列番号18を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Lと、を含むものであるか、または
(v)配列番号19を含む核酸から発現されるかまたは配列番号19を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Hと、配列番号20を含む核酸から発現されるかまたは配列番号20を含む核酸によりコードされる配列を含むV
Lと、を含むものである、前記抗SARS-CoV-2抗体。
【請求項12】
SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するための、請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質または抗体の使用。
【請求項13】
SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出する方法であって、請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質または抗体を前記抗原と接触させることと、前記タンパク質または抗体の前記抗原への結合を検出することと、を含み、ここで、前記タンパク質または抗体の前記抗原への結合は、前記抗原がSARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有することを示すものである、前記方法。
【請求項14】
SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するためのタンパク質または抗体のキットまたはパネルであって、請求項1~11のいずれか1項に記載の1つ以上のタンパク質または抗体を含む、前記キットまたはパネル。
【請求項15】
前記抗原が、タンパク質、ペプチド、弱毒化ウイルス、またはウイルス様粒子である、請求項12に記載の使用、請求項13に記載の方法、または請求項14に記載のキットまたはパネル。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項10もしくは11に記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項17】
呼吸器ウイルス感染症を治療し、呼吸器ウイルス感染症を予防し、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるのに使用するためのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
対象において呼吸器ウイルス感染症を治療し、呼吸器ウイルス感染症を予防し、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせる方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項10または11に記載の抗体、及び/または請求項16に記載の医薬組成物を、治療、予防、及び/または進行の遅延を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
治療、予防、及び/または進行の遅延を必要とする対象において呼吸器ウイルス感染症を治療し、呼吸器ウイルス感染症を予防し、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるための薬剤の製造における、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項10または11に記載の抗体、及び/または請求項16に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記呼吸器ウイルス感染症が、SARS-CoV-2感染症、コロナウイルス病2019(COVID-19)、急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の医薬組成物、または請求項18に記載の方法、または請求項19に記載の使用。
【請求項21】
複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の医薬組成物が前記対象に投与される、請求項18もしくは20に記載の方法、または請求項19もしくは20に記載の使用。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項10に記載の抗SARS-CoV-2抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドは配列番号11~配列番号20に示す核酸配列を含む、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、「抗SARS-CoV-2抗体及びその使用I」と題する2021年10月7日に出願されたオーストラリア特許出願第2021903205号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子書式の配列表と共に出願されている。配列表の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に結合するタンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
呼吸器ウイルス感染症は、人間の健康と生命にとって重大な脅威である。感染症、例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)による感染症は、世界的なパンデミックを引き起こし、世界中で数百万人を死亡させていることが知られている。2019年末に、新型SARSウイルス(SARS-CoV-2)が中国でヒトにおいて確認され、2020年3月に世界保健機関はこのウイルスの流行を世界的なパンデミックと宣言した。
【0005】
SARS-CoV-2によるヒトの感染は、高い伝播率を伴う幅広い臨床スペクトルを示している。世界の感染者数と死亡者数は増加し続けており、現在までの感染者数は6億1,500万人を超え、死者数は654万人を超えている。
【0006】
SARS-CoV-2のパンデミックに対して、前例のない多数のワクチン開発が行われており、8種類のワクチンの完全使用が承認され、130を超えるワクチンが第1~3相臨床試験中である。開発中のワクチンの大部分は、SARS-COV-2スパイクタンパク質(すなわちSタンパク質)を認識するよう免疫系を誘発しようとするものである。これは、ハムスターチャレンジモデルにおける組換えSARS-CoVタンパク質の初期の研究で、このアプローチは免疫原性があり、防御的であることが実証されたからである。これら特定の利用可能な治療法について、例えば、COVID-19に対するmRNAワクチンなどについて、その有効性を高めるためにさらなる改良の余地がある。
【0007】
したがって、当業者には明らかなとおり、SARS-CoV-2及びCOVID-19に対する療法の必要性が当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するタンパク質を本発明者らが特定したことに基づいている。具体的には、本発明者らは、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に結合する抗体可変領域を含むタンパク質であって、該抗体可変領域が、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)(細胞の表面に発現する)への該Sタンパク質の結合を中和する、タンパク質を開発した。本発明者らはまた、当該中和タンパク質が、Sタンパク質上の立体構造的な非線形エピトープに特異的に結合することを特定した。
【0009】
概して、本発明者らの発見は、抗体可変領域を含むSARS-CoV-2中和タンパク質のための基礎となるものである。本発明者らによる発見は、対象において疾患または障害(例えば、COVID-19またはARDSなどのSARS-CoV-2感染によって引き起こされる疾患)を治療し、予防し、及び/またはその進行を遅らせる方法のための基礎となるものでもある。本発明者らによる発見はさらに、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するための基礎となるものである。
【0010】
したがって、本開示は、抗体可変領域を含むタンパク質であって、該抗体可変領域が、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合または特異的に結合しかつ該Sタンパク質のACE2への結合を中和するものであるタンパク質を提供する。
【0011】
本開示はまた、抗体可変領域を含むタンパク質であって、該抗体可変領域が、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合または特異的に結合しかつ該Sタンパク質のACE2への結合を中和するものであり、かつ該抗体可変領域が、以下の抗体のいずれか1つとSARS-CoV-2Sタンパク質RBDとの結合を競合的に阻害するものであるタンパク質を提供する。
【0012】
(a)配列番号1に示す配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号2に示す配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む抗体、
(b)配列番号3に示す配列を含むVHと、配列番号4に示す配列を含むVLと、を含む抗体、
(c)配列番号5に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含む抗体、
(d)配列番号7に示す配列を含むVHと、配列番号8に示す配列を含むVLと、を含む抗体、及び
(e)配列番号9に示す配列を含むVHと、配列番号10に示す配列を含むVLと、を含む抗体。
【0013】
一例では、該抗体可変領域は、配列番号1に示す配列を含むVHと配列番号2に示す配列を含むVLとを含む抗体のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害する。
【0014】
一例では、該抗体可変領域は、配列番号3に示す配列を含むVHと配列番号4に示す配列を含むVLとを含む抗体のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害する。
【0015】
一例では、該抗体可変領域は、配列番号5に示す配列を含むVHと配列番号6に示す配列を含むVLとを含む抗体のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害する。
【0016】
一例では、該抗体可変領域は、配列番号7に示す配列を含むVHと配列番号8に示す配列を含むVLとを含む抗体のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害する。
【0017】
一例では、該抗体可変領域は、配列番号9に示す配列を含むVHと配列番号10に示す配列を含むVLとを含む抗体のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を競合的に阻害する。
【0018】
競合的阻害を測定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0019】
タンパク質の中和活性を測定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例示的なアッセイには、ベロ(Vero)マイクロ中和アッセイ、サロゲートウイルス中和試験(sVNT)、及びシュードウイルス中和アッセイ(PsV、例えば、293TまたはHeLa-ACE2細胞株を使用)が含まれる。上記から明らかなとおり、該タンパク質はSARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を完全に中和する必要はなく、むしろ統計的に有意な量だけ結合を中和すればよく、例えば、少なくとも約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約100%結合を中和すればよい。
【0020】
一例では、該タンパク質は、sVNTアッセイにおいてSARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を中和する。一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約100%、sVNTアッセイにおいて中和する。一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約30%~約50%、sVNTアッセイにおいて中和する。例えば、約30%、または約35%、または約40%、または約45%、または約50%中和する。一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約30%、sVNTアッセイにおいて中和する。別の一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約40%、sVNTアッセイにおいて中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約45%、sVNTアッセイにおいて中和する。別の一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約50%、sVNTアッセイにおいて中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約50%~約80%、sVNTアッセイにおいて中和する。例えば、約50%、または約55%、または約60%、または約65%、または約70%、または約75%、または約80%中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約80%~約95%、sVNTアッセイにおいて中和する。例えば、約80%、または約85%、または約90%、または約95%、sVNTアッセイにおいて中和する。一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、約90%、sVNTアッセイにおいて中和する。
【0021】
一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を、ベロマイクロ中和アッセイにおいて中和する。例えば、該タンパク質は、阻害濃度(IC)値(例えば、半最大阻害濃度(IC50))を参照して測定されるベロマイクロ中和アッセイにおいて、SARS-CoV-2タンパク質のACE2への結合を中和する。一例では、該タンパク質は、少なくとも約5μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、IC50は、約10μg/mlと120μg/mlとの間である。例えば、IC50は、約5μg/mlと約10μg/mlとの間、例えば、約5μg/ml、または約6μg/ml、または約7μg/ml、または約8μg/ml、または約9μg/ml、または約10μg/mlである。一例では、該タンパク質は、5μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、7μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、該タンパク質は、8μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、IC50は、約10μg/mlと約20μg/mlとの間、例えば、約10μg/ml、または約12μg/ml、または約14μg/ml、または約16μg/ml、または約18μg/ml、または約20μg/mlである。一例では、該タンパク質は、12μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、14μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、20μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、IC50は、約20μg/mlと約50μg/mlとの間、例えば、約20μg/ml、または約25μg/ml、または約30μg/ml、または約35μg/ml、または約40μg/ml、または約45μg/ml、または約50μg/mlである。一例では、該タンパク質は、26μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、28μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、32μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、50μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、IC50は、約50μg/mlと約100μg/mlとの間、例えば、約50μg/ml、または約60μg/ml、または約70μg/ml、または約80μg/ml、または約90μg/ml、または約100μg/mlである。一例では、該タンパク質は、60μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、76μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。さらなる一例では、該タンパク質は、78μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。別の一例では、該タンパク質は、96μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。一例では、IC50は、約100μg/mlと約120μg/mlとの間、例えば、約100μg/ml、または約105μg/ml、または約110μg/ml、または約115μg/ml、または約120μg/mlである。一例では、該タンパク質は、118μg/mlのIC50で、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2トランスフェクトVeroE6細胞への結合を中和する。
【0022】
一例では、該タンパク質は、シュードウイルス中和アッセイ(PsV)において、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を中和する。例えば、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2発現細胞(例えば、HeLa-ACEまたはHEK-293T)への結合を中和する。一例では、該タンパク質は、相対発光量(RLU)を参照して測定されるPsVアッセイにおいて、SARS-CoV-2Sタンパク質のACE2への結合を中和する。一例では、RLUはIC50として表される。例えば、対照サンプル(つまり、該タンパク質が存在しないか、または既知の抗CoV-2抗体が存在するもの)のRLUと比較してRLUを50%減少させるのに必要なタンパク質の濃度として表される。一例では、IC50は、約1μg/mlと10μg/mlとの間である。例えば、IC50は、約1μg/ml、または約2μg/ml、または約3μg/ml、または約4μg/ml、または約5μg/ml、または約6μg/ml、または約7μg/ml、または約8μg/ml、または約9μg/ml、または約10μg/mlである。一例では、IC50は約1.5μg/mlである。別の一例では、IC50は約4.5μg/mlである。さらなる一例では、IC50は約10μg/mlである。別の一例では、RLUは、中和曲線下面積(AUC)として表される。例えば、AUCは、約15,000と65,000との間である。例えば、AUCは約15,000である。別の一例では、AUCは約55,000である。さらなる一例では、AUCは約55,000である。
【0023】
一例では、該タンパク質は抗体可変領域を含み、該抗体可変領域は、
(i)SARS-CoV-2Sタンパク質RBD中の立体構造エピトープに特異的に結合するものであり、ここで、該RBDは、配列番号51に示す配列のアミノ酸残基5、6、17、18、及び19を含み、
(ii)変異型Sタンパク質に結合するものであり、ここで、該変異型Sタンパク質は、
(a)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基におけるDからGへの変異、及び/または
(b)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基におけるNからYへの変異、及び/または
(c)配列番号50のヌクレオチド477に対応する残基におけるSからNへの変異、及び/または
(d)配列番号50のヌクレオチド485に対応する残基におけるGからRへの変異を含み、及び/または
(iii)以下の抗体(a)~(e)のいずれか1つによって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合するものである。
【0024】
(a)配列番号1に示す配列を含むVHと、配列番号2に示す配列を含むVLと、を含む抗体、
(b)配列番号3に示す配列を含むVHと、配列番号4に示す配列を含むVLと、を含む抗体、
(c)配列番号5に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含む抗体、
(d)配列番号7に示す配列を含むVHと、配列番号8に示す配列を含むVLと、を含む抗体、及び
(e)配列番号9に示す配列を含むVHと、配列番号10に示す配列を含むVLと、を含む抗体。
【0025】
一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質RBD中の立体構造エピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含むものであり、該RBDは、配列番号51に示す配列のアミノ酸残基5、6、17、18、及び19を含むものである。
【0026】
一例では、該タンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質RBD中の立体構造エピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含むものであり、該RBDは、配列番号50に示す配列のアミノ酸残基475、476、487、488、及び489を含むものである。
【0027】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含む。
【0028】
一例では、変異型Sタンパク質は、受容体結合ドメインに変異を含む。例えば、該変異は、R346K、K417N、K417T、S438F、N439K、N440K、L441I、K444R、V445A、V445I、G446V、G446S、N450K、L452R、L452P、L455F、K458N、N460T、D467V、I468F、I468T、I468V、E471O、I472V、A475V、G476S、S477G、S477I、S477N、S477R、T478I、T478K、P479L、P479S、N481D、N481H、V483F、V483A、E484D、E484K、E484K、E484O、G485S、Y489H、Y489D、Y489F、Y489C、Y489N、F490L、F490S、P491R、Q493L、S494P、Y495N、T500N、N501S、N501Y、Y505H、及びY508Hからなる群から選択される。一例では、変異型Sタンパク質は、R346K、K417N、K417T、N439K、N439L、L452R、S477N、T478I、V483A、E484D、E484K、及びN501Yからなる群から選択される受容体結合ドメイン中の変異を含む。
【0029】
一例では、変異型Sタンパク質は、T95I、Y144S、Y145N、P337S、F338L、F338C、G339D、E340K、V341I、A344S、T345S、R346K、A348S、A348T、W353R、N354D、N354K、N354S、S359N、D364Y、V367F、S373L、V382L、P384L、P384S、T385A、T393P、V395I、F400C、R403K、R403S、D405V、R408I、Q414E、Q414K、Q414P、Q414R、T415S、K417N、K417T、K417R、I418V、Y421S、Y423C、Y423F、Y423S、D427Y、S438F、N439K、N440K、L441I、K444R、V445A、V445I、G446V、G446S、N450K、L452R、L452P、L455F、K458N、N460T、D467V、I468F、I468T、I468V、E471O、I472V、A475V、G476S、S477G、S477I、S477N、S477R、T478I、T478K、P479L、P479S、N481D、N481H、V483F、V483A、E484D、E484K、E484K、E484O、G485S、Y489H、Y489D、Y489F、Y489C、Y489N、F490L、F490S、P491R、Q493L、S494P、Y495N、T500N、N501S、N501Y、Y505H、Y508H、R509K、V510L、V511E、V512L、L518I、H519O、A520S、A520V、P521R、P521S、A522P、A522S、D614G、P681H、及びD950Nからなる群から選択される変異を含む。
【0030】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)S2’部位にフューリン切断部位を欠くものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含むものであり、及び/または、(iv)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含むものである。
【0031】
一例では、該Sタンパク質は、S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含む。
【0032】
一例では、該Sタンパク質は、S2’部位にフューリン切断部位を欠く。
【0033】
一例では、該Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0034】
一例では、該Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0035】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)S2’部位にフューリン切断部位を欠く。例えば、該変異型Sタンパク質は、配列番号50に示す配列によってコードされる。
【0036】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0037】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0038】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0039】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0040】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0041】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0042】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含み、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0043】
一例では、該Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含み、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0044】
一例では、該Sタンパク質は、(i)S1/S2境界においてフューリン切断部位を欠き、かつ配列番号50のヌクレオチド682~685に対応する残基においてRRARからQQAAへの変異を含み、かつ(ii)S2’部位にフューリン切断部位を欠き、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含み、かつ(iv)配列番号50のヌクレオチド986及び987に対応する残基間に2つのプロリン残基の挿入を含む。
【0045】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)配列番号50のヌクレオチド69及び70に対応する2つの残基が欠失しているものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからHへの変異を含むものである。
【0046】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド69及び70に対応する2つの残基が欠失しており、かつ配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからHへの変異を含む。
【0047】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからHへの変異を含む。
【0048】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからNへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含むものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含むものである。
【0049】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからNへの変異を含む。
【0050】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含む。
【0051】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからNへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含む。
【0052】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからTへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含むものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含むものである。
【0053】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからTへの変異を含む。
【0054】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド417に対応する残基においてKからTへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含む。
【0055】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド95に対応する残基においてTからIへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)配列番号50のヌクレオチド144に対応する残基においてYからSへの変異を含むものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド145に対応する残基においてYからNへの変異を含むものであり、及び/または、(iv)配列番号50のヌクレオチド346に対応する残基においてRからKへの変異を含むものであり、及び/または、(v)配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含むものであり、及び/または、(vi)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含むものであり、及び/または、(vii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含むものであり、及び/または、(viii)配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからHへの変異を含むものであり、及び/または、(ix)配列番号50のヌクレオチド950に対応する残基においてDからNへの変異を含むものである。
【0056】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド95に対応する残基においてTからIへの変異を含む。
【0057】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド144に対応する残基においてYからSへの変異を含む。
【0058】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド145に対応する残基においてYからNへの変異を含む。
【0059】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド346に対応する残基においてRからKへの変異を含む。
【0060】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド950に対応する残基においてDからNへの変異を含む。
【0061】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド95に対応する残基においてTからIへの変異を含み、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド144に対応する残基においてYからSへの変異を含み、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド145に対応する残基においてYからNへの変異を含み、かつ(iv)配列番号50のヌクレオチド346に対応する残基においてRからKへの変異を含み、かつ(v)配列番号50のヌクレオチド484に対応する残基においてEからKへの変異を含み、かつ(vi)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含み、かつ(vii)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含み、(viii)配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからHへの変異を含み、(ix)配列番号50のヌクレオチド950に対応する残基においてDからNへの変異を含む。
【0062】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド478に対応する残基においてTからKへの変異を含むものであり、及び/または、(ii)配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからRへの変異を含むものであり、及び/または、(iii)配列番号50のヌクレオチド452に対応する残基においてLからRへの変異を含むものである。
【0063】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド478に対応する残基においてTからKへの変異を含む。
【0064】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからRへの変異を含む。
【0065】
一例では、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド452に対応する残基においてLからRへの変異を含む。
【0066】
一例では、該変異型Sタンパク質は、(i)配列番号50のヌクレオチド478に対応する残基においてTからKへの変異を含み、かつ(ii)配列番号50のヌクレオチド681に対応する残基においてPからRへの変異を含み、かつ(iii)配列番号50のヌクレオチド452に対応する残基においてLからRへの変異を含む。
【0067】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、
(a)配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含むものであり、及び/または、
(b)配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含むものであり、及び/または、
(c)配列番号50のヌクレオチド477に対応する残基においてSからNへの変異を含むものであり、及び/または、
(d)配列番号50のヌクレオチド485に対応する残基においてGからRへの変異を含むものである。
【0068】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0069】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含む。
【0070】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド477に対応する残基においてSからNへの変異を含む。
【0071】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド485に対応する残基においてGからRへの変異を含む。
【0072】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド477に対応する残基においてSからNへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0073】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド485に対応する残基においてGからRへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0074】
一例では、該タンパク質は、変異型Sタンパク質に結合する抗体可変領域を含み、該変異型Sタンパク質は、配列番号50のヌクレオチド501に対応する残基においてNからYへの変異を含み、かつ配列番号50のヌクレオチド614に対応する残基においてDからGへの変異を含む。
【0075】
一例では、該タンパク質は、配列番号1に示す配列を含むVHと配列番号2に示す配列を含むVLとを含む抗体によって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含む。
【0076】
一例では、該タンパク質は、配列番号3に示す配列を含むVHと配列番号4に示す配列を含むVLとを含む抗体によって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含む。
【0077】
一例では、該タンパク質は、配列番号5に示す配列を含むVHと配列番号6に示す配列を含むVLとを含む抗体によって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含む。
【0078】
一例では、該タンパク質は、配列番号7に示す配列を含むVHと配列番号8に示す配列を含むVLとを含む抗体によって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含む。
【0079】
一例では、該タンパク質は、配列番号9に示す配列を含むVHと配列番号10に示す配列を含むVLとを含む抗体によって結合されるエピトープと同じSARS-CoV-2Sタンパク質RBD中のエピトープに特異的に結合する抗体可変領域を含む。
【0080】
一例では、該タンパク質は、配列番号51に示す配列を含むペプチドと交差反応する抗体可変領域を含む。一例では、該タンパク質は、配列番号51に示す配列のアミノ酸残基5、6、17、18、及び19を含むペプチドと交差反応する抗体可変領域を含む。配列番号51に示す配列を含むペプチドと交差反応する例示的なタンパク質は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体30B8である。配列番号51に示す配列を含むペプチドと交差反応しない例示的なタンパク質は、抗SARS-CoV-2抗体AS35である。配列番号51に示す配列を含むペプチドと交差反応しないさらなる例示的なタンパク質は、抗SARS-CoV-2抗体B38である。
【0081】
交差反応性を測定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0082】
一例では、該タンパク質は、可変フラグメント(Fv)を含む。
【0083】
一例では、該タンパク質は、
(i)単鎖フラグメント可変(Fv)フラグメント(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)抗原結合フラグメント(Fab)、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)抗体の定常領域、定常フラグメント(Fc)、または重鎖定常ドメイン(CH)2及び/またはCH3に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、または
(x)抗体、からなる群から選択される。
【0084】
例えば、該タンパク質は、VH及びVLを含み、該VH及び該VLは、単一のポリペプチド鎖中にあり、かつ該タンパク質は、
(a)scFv、
(b)di-scFv、及び
(c)抗体の定常領域、Fc、またはCH2及び/またはCH3に連結された(a)または(b)の1つ、からなる群から選択される。
【0085】
一例では、該タンパク質は、VH及びVLを含み、該VH及び該VLは、別々のポリペプチド鎖中にあり、かつ該タンパク質は、
(a)ダイアボディ、
(b)トリアボディ、
(c)テトラボディ、
(d)Fab、
(e)F(ab’)2、
(f)Fv、
(g)抗体の定常領域、Fc、またはCH2及び/またはCH3に連結された(a)~(f)の1つ、及び
(h)抗体、からなる群から選択される。
【0086】
一例では、該タンパク質は抗体である。例示的な抗体は、完全長抗体及び/または裸の抗体である。例えば、該タンパク質は抗SARS-CoV-2抗体である。一例では、抗SARS-CoV-2抗体は、モノクローナル抗SARS-CoV-2抗体である。
【0087】
一例では、該タンパク質は、組換え型、キメラ型、CDR移植型、ヒト化型、類似ヒト化(synhumanized)型、霊長類化型、脱免疫化型、またはヒト型である。
【0088】
一例では、該タンパク質は抗体であり、該抗体は、
(i)配列番号45に示す配列を含むVHと、配列番号46または配列番号6に示す配列を含むVLと、を含むか、
(ii)配列番号45に示す配列を含むVHの3つの相補性決定領域(CDR)を含むVHと、配列番号46または配列番号6に示す配列を含むVLの3つのCDRを含むVLと、を含むか、または
(iii)配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36または配列番号32に示す配列を含むCDR1、配列番号37または配列番号33に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38または配列番号34に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む。
【0089】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHと、配列番号46に示す配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0090】
一例では、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にアラニン(A)もしくはバリン(V)、及び/または、26位にグリシン(G)もしくはアスパラギン酸(D)、及び/または、34位にメチオニン(M)もしくはイソロイシン(I)、及び/または、55位にセリン(S)もしくはアスパラギン(N)、及び/または、56位にグリシン(G)もしくはアスパラギン酸(D)、及び/または、58位にスレオニン(T)もしくはセリン(S)、及び/または、72位にアラニン(A)もしくはプロリン(P)、及び/または、94位にシステイン(C)もしくはチロシン(Y)、及び/または、98位にグリシン(G)もしくはセリン(S)、及び/または、100位にロイシン(L)もしくはチロシン(Y)、及び/または、106位にアラニン(A)もしくはセリン(S)、及び/または、107位にプロリン(P)もしくはトリプトファン(W)を含む。
【0091】
一例では、VLのアミノ酸配列は、配列番号46に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、26位にセリン(S)もしくはアルギニン(R)、及び/または、45位にイソロイシン(I)もしくはバリン(V)、及び/または、102位にアルギニン(R)もしくはリシン(K)を含む。
【0092】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHと、配列番号46に示す配列を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にバリン(V)、26位にグリシン(G)、34位にメチオニン、55位にアスパラギン(N)、56位にグリシン(G)、58位にスレオニン(T)、72位にアラニン(A)、94位にチロシン(Y)、98位にセリン(S)、100位にチロシン(Y)、106位にセリン(S)、及び107位にトリプトファン(W)を含み、そしてVLのアミノ酸配列は、配列番号46に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、26位にセリン(S)、45位にイソロイシン(I)、及び102位にアルギニン(R)を含む。
【0093】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHと、配列番号46に示す配列を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にアラニン(A)、26位にアスパラギン酸(D)、34位にメチオニン(M)、55位にセリン(S)、56位にアスパラギン酸(D)、58位にセリン(S)、72位にプロリン(P)、94位にチロシン(Y)、98位にセリン(S)、100位にチロシン(Y)、106位にセリン(S)、及び107位にトリプトファン(W)を含み、そしてVLのアミノ酸配列は、配列番号46に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、26位にアルギニン(R)、45位にバリン(V)、及び102位にリシン(K)を含む。
【0094】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にアラニン(A)、26位にグリシン(G)、34位にイソロイシン(I)、55位にアスパラギン(N)、56位にグリシン(G)、58位にスレオニン(T)、72位にアラニン(A)、94位にシステイン(C)、98位にグリシン(G)、100位にロイシン(L)、106位にアラニン(A)、及び107位にプロリン(P)を含む。
【0095】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号46または配列番号6に示す配列を含むVLの3つのCDRを含むVLと、を含む抗体である。
【0096】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号46に示す配列を含むVLの3つのCDRを含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にバリン(V)、26位にグリシン(G)、34位にメチオニン(M)、55位にアスパラギン(N)、56位にグリシン(G)、58位にスレオニン(T)、72位にアラニン(A)、94位にチロシン(Y)、98位にセリン(S)、100位にチロシン(Y)、106位にセリン(S)、及び107位にトリプトファン(W)を含み、そしてVLのアミノ酸配列は、配列番号46に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、26位にセリン(S)、45位にイソロイシン(I)、及び102位にアルギニン(R)を含む。
【0097】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号46に示す配列を含むVLの3つのCDRを含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にアラニン(A)、26位にアスパラギン酸(D)、34位にメチオニン(M)、55位にセリン(S)、56位にアスパラギン酸(D)、58位にセリン(S)、72位にプロリン(P)、94位にチロシン(Y)、98位にセリン(S)、100位にチロシン(Y)、106位にセリン(S)、及び107位にトリプトファン(W)を含み、そしてVLのアミノ酸配列は、配列番号46に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、26位にアルギニン(R)、45位にバリン(V)、及び102位にリシン(K)を含む。
【0098】
一例では、該タンパク質は、配列番号45に示す配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLの3つのCDRを含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHのアミノ酸配列は、配列番号45に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、24位にアラニン(A)、26位にグリシン(G)、34位にイソロイシン(I)、55位にアスパラギン(N)、56位にグリシン(G)、58位にスレオニン(T)、72位にアラニン(A)、94位にシステイン(C)、98位にグリシン(G)、100位にロイシン(L)、106位にアラニン(A)、及び107位にプロリン(P)を含む。
【0099】
一例では、該タンパク質は、配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36または配列番号32に示す配列を含むCDR1、配列番号37または配列番号33に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38または配列番号34に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0100】
一例では、VHCDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、1位にグリシン(G)またはアスパラギン酸(D)を含む。
【0101】
一例では、VHCDR2のアミノ酸配列は、配列番号48に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、5位にセリン(S)もしくはアスパラギン(N)、及び/または、6位にグリシン(G)もしくはアスパラギン酸(D)、及び/または、8位にスレオニン(T)もしくはセリン(S)を含む。
【0102】
一例では、VHCDR3のアミノ酸配列は、配列番号49に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、2位にグリシン(G)もしくはセリン(S)、及び/または、4位にリシン(L)もしくはチロシン(Y)、及び/または、10位にアラニン(A)もしくはセリン(S)、及び/または、11位にプロリン(P)もしくはトリプトファン(W)を含む。
【0103】
一例では、該タンパク質は、配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36に示す配列を含むCDR1、配列番号37に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHCDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、1位にグリシン(G)を含み、VHCDR2は、配列番号48に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、5位にアスパラギン(N)、6位にグリシン(G)、8位にスレオニン(T)を含み、そしてVHCDR3は、配列番号49に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、2位にセリン(S)、4位にチロシン(Y)、10位にセリン(S)、11位にトリプトファン(W)を含む。
【0104】
一例では、該タンパク質は、配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36に示す配列を含むCDR1、配列番号37に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHCDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、1位にアスパラギン酸(D)を含み、VHCDR2は、配列番号48に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、5位にセリン(S)、6位にアスパラギン酸(D)、8位にセリン(S)を含み、そしてVHCDR3は、配列番号49に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、2位にセリン(S)、4位にチロシン(Y)、10位にセリン(S)、11位にトリプトファン(W)を含む。
【0105】
一例では、該タンパク質は、配列番号47に示す配列を含むCDR1、配列番号48に示す配列を含むCDR2、及び配列番号49に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号32に示す配列を含むCDR1、配列番号33に示す配列を含むCDR2、及び配列番号34に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。例えば、VHCDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、1位にグリシン(G)を含み、VHCDR2は、配列番号48に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、5位にアスパラギン(N)、6位にグリシン(G)、8位にスレオニン(T)を含み、そしてVHCDR3は、配列番号49に示す配列を含み、該アミノ酸配列は、2位にグリシン(G)、リシン(L)、10位にアラニン(A)、11位にプロリン(P)を含む。
【0106】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、
a.配列番号1のアミノ酸26~34、または
b.配列番号3のアミノ酸26~33、または
c.配列番号5のアミノ酸26~33、または
d.配列番号7のアミノ酸26~33、または
e.配列番号9のアミノ酸26~33に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、
a.配列番号1のアミノ酸52~58、または
b.配列番号3のアミノ酸51~58、または
c.配列番号5のアミノ酸51~58、または
d.配列番号7のアミノ酸26~33、または
e.配列番号9のアミノ酸51~58に示す配列を含み、
(c)該CDR3は、
a.配列番号1のアミノ酸97~108、または
b.配列番号3のアミノ酸97~110、または
c.配列番号5のアミノ酸97~110、または
d.配列番号7のアミノ酸97~110、または
e.配列番号9のアミノ酸97~106に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、
a.配列番号2のアミノ酸27~38、または
b.配列番号4のアミノ酸27~31、または
c.配列番号6のアミノ酸27~32、または
d.配列番号8のアミノ酸27~31、または
e.配列番号10のアミノ酸27~37に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、
a.配列番号2のアミノ酸56~58、または
b.配列番号4のアミノ酸49~51、または
c.配列番号6のアミノ酸50~52、または
d.配列番号8のアミノ酸49~51、または
e.配列番号10のアミノ酸55~57に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、
a.配列番号2のアミノ酸95~103、または
b.配列番号4のアミノ酸88~96、または
c.配列番号6のアミノ酸89~97、または
d.配列番号8のアミノ酸88~96、または
e.配列番号10のアミノ酸94~102に示す配列を含む。
【0107】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号1のアミノ酸26~34に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号1のアミノ酸52~58に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号1のアミノ酸97~108に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号2のアミノ酸27~38に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号2のアミノ酸56~58に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号2のアミノ酸95~103に示す配列を含む。
【0108】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号3のアミノ酸26~33に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号3のアミノ酸51~58に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号3のアミノ酸97~110に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号4のアミノ酸27~31に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号4のアミノ酸49~51に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号4のアミノ酸88~96に示す配列を含む。
【0109】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号5のアミノ酸26~33に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号5のアミノ酸51~58に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号5のアミノ酸97~110に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号6のアミノ酸27~32に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号6のアミノ酸50~52に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号6のアミノ酸89~97に示す配列を含む。
【0110】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号7のアミノ酸26~33に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号7のアミノ酸26~33に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号7のアミノ酸97~110に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号8のアミノ酸27~31に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号8のアミノ酸49~51に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号8のアミノ酸88~96に示す配列を含む。
【0111】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、相補性決定領域(CDR)1と、CDR2と、CDR3と、を含む重鎖可変領域(VH)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号9のアミノ酸26~33に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号9のアミノ酸51~58に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号9のアミノ酸97~106に示す配列を含み、
(ii)該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)該CDR1は、配列番号10のアミノ酸27~37に示す配列を含み、かつ
(b)該CDR2は、配列番号10のアミノ酸55~57に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号10のアミノ酸94~102に示す配列を含む。
【0112】
一例では、該タンパク質は抗体であり、該抗体は、
(i)配列番号1に示す配列を含むVHと、配列番号2に示す配列を含むVLと、を含むか、
(ii)配列番号3に示す配列を含むVHと、配列番号4に示す配列を含むVLと、を含むか、
(iii)配列番号5に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含むか、
(iv)配列番号7に示す配列を含むVHと、配列番号8に示す配列を含むVLと、を含むか、または
(v)配列番号9に示す配列を含むVHと、配列番号10に示す配列を含むVLと、を含む。
【0113】
一例では、該タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2に示すアミノ酸配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0114】
一例では、該タンパク質は、配列番号3に示すアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4に示すアミノ酸配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0115】
一例では、該タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含むVHと、配列番号6に示すアミノ酸配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0116】
一例では、該タンパク質は、配列番号7に示すアミノ酸配列を含むVHと、配列番号8に示すアミノ酸配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0117】
一例では、該タンパク質は、配列番号9に示すアミノ酸配列を含むVHと、配列番号10に示すアミノ酸配列を含むVLと、を含む抗体である。
【0118】
一例では、該タンパク質は抗体であり、
(i)該抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVHを含み、
(a)該CDR1は、配列番号21に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号22に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号23に示す配列を含み、
該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVLを含み、
(a)該CDR1は、配列番号24に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号25に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号26に示す配列を含むか、または
(ii)該抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVHを含み、
(a)該CDR1は、配列番号29に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号30に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号35に示す配列を含み、
該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVLを含み、
(a)該CDR1は、配列番号36に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号37に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号38に示す配列を含むか、または
(iii)該抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVHを含み、
(a)該CDR1は、配列番号27に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号28に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号35に示す配列を含み、
該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVLを含み、
(a)該CDR1は、配列番号36に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号37に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号38に示す配列を含むか、または
(iv)該抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVHを含み、
(a)該CDR1は、配列番号29に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号30に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号31に示す配列を含み、
該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVLを含み、
(a)該CDR1は、配列番号32に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号33に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号34に示す配列を含むか、または
(v)該抗体は、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVHを含み、
(a)該CDR1は、配列番号39に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号40に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号41に示す配列を含み、
該抗体はさらに、CDR1と、CDR2と、CDR3と、を含むVLを含み、
(a)該CDR1は、配列番号42に示す配列を含み、
(b)該CDR2は、配列番号43に示す配列を含み、かつ
(c)該CDR3は、配列番号44に示す配列を含む。
【0119】
一例では、該タンパク質は、配列番号21に示す配列を含むCDR1、配列番号22に示す配列を含むCDR2、及び配列番号23に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号24に示す配列を含むCDR1、配列番号25に示す配列を含むCDR2、及び配列番号26に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0120】
一例では、該タンパク質は、配列番号29に示す配列を含むCDR1、配列番号30に示す配列を含むCDR2、及び配列番号35に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36に示す配列を含むCDR1、配列番号37に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0121】
一例では、該タンパク質は、配列番号27に示す配列を含むCDR1、配列番号28に示す配列を含むCDR2、及び配列番号35に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号36に示す配列を含むCDR1、配列番号37に示す配列を含むCDR2、及び配列番号38に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0122】
一例では、該タンパク質は、配列番号29に示す配列を含むCDR1、配列番号30に示す配列を含むCDR2、及び配列番号31に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号32に示す配列を含むCDR1、配列番号33に示す配列を含むCDR2、及び配列番号34に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0123】
一例では、該タンパク質は、配列番号39に示す配列を含むCDR1、配列番号40に示す配列を含むCDR2、及び配列番号41に示す配列を含むCDR3を含むVHと、配列番号42に示す配列を含むCDR1、配列番号43に示す配列を含むCDR2、及び配列番号44に示す配列を含むCDR3を含むVLと、を含む抗体である。
【0124】
本開示はまた、抗SARS-CoV-2抗体を提供し、該抗体は、
(i)配列番号1に示す配列を含むVHと、配列番号2に示す配列を含むVLと、を含むか、
(ii)配列番号3に示す配列を含むVHと、配列番号4に示す配列を含むVLと、を含むか、
(iii)配列番号5に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含むか、
(iv)配列番号7に示す配列を含むVHと、配列番号8に示す配列を含むVLと、を含むか、または
(v)配列番号9に示す配列を含むVHと、配列番号10に示す配列を含むVLと、を含む。
【0125】
一例では、該抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号1に示す配列を含むVHと、配列番号2に示す配列を含むVLと、を含む。
【0126】
一例では、該抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号3に示す配列を含むVHと、配列番号4に示す配列を含むVLと、を含む。
【0127】
一例では、該抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号5に示す配列を含むVHと、配列番号6に示す配列を含むVLと、を含む。
【0128】
一例では、該抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号7に示す配列を含むVHと、配列番号8に示す配列を含むVLと、を含む。
【0129】
一例では、該抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号9に示す配列を含むVHと、配列番号10に示す配列を含むVLと、を含む。
【0130】
本開示はまた、VH及びVLを含む抗SARS-CoV-2抗体を提供し、ここで該VHは、ヒト重鎖定常領域に連結されており、かつ該VLは、ヒト軽鎖定常領域に連結されている。
【0131】
一例では、該タンパク質または該抗体は、上記タンパク質または抗体のいずれかをコードする核酸によりコードされるタンパク質または抗体の任意の形態である。
【0132】
本開示は、抗SARS-CoV-2抗体を提供し、該抗体は、
(i)配列番号11を含む核酸から発現されるかまたは配列番号11を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号12を含む核酸から発現されるかまたは配列番号12を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含むか、
(ii)配列番号13を含む核酸から発現されるかまたは配列番号13を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号14を含む核酸から発現されるかまたは配列番号14を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含むか、
(iii)配列番号15を含む核酸から発現されるかまたは配列番号15を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号16を含む核酸から発現されるかまたは配列番号16を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含むか、
(iv)配列番号17を含む核酸から発現されるかまたは配列番号17を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号18を含む核酸から発現されるかまたは配列番号18を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含むか、
(v)配列番号17を含む核酸から発現されるかまたは配列番号17を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号18を含む核酸から発現されるかまたは配列番号18を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む。
【0133】
一例では、本開示は、配列番号11を含む核酸から発現されるかまたは配列番号11を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号12を含む核酸から発現されるかまたは配列番号12を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。
【0134】
一例では、本開示は、配列番号13を含む核酸から発現されるかまたは配列番号13を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号14を含む核酸から発現されるかまたは配列番号14を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。
【0135】
一例では、本開示は、配列番号15を含む核酸から発現されるかまたは配列番号15を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号16を含む核酸から発現されるかまたは配列番号16を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。
【0136】
一例では、本開示は、配列番号17を含む核酸から発現されるかまたは配列番号17を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号18を含む核酸から発現されるかまたは配列番号18を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。
【0137】
一例では、本開示は、配列番号19を含む核酸から発現されるかまたは配列番号19を含む核酸によりコードされる配列を含むVHと、配列番号20を含む核酸から発現されるかまたは配列番号20を含む核酸によりコードされる配列を含むVLと、を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。
【0138】
本開示はさらに、本明細書に記載のタンパク質または抗SARS-CoV-2抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0139】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号11~配列番号20に示す核酸配列を含む。
【0140】
一例では、該ポリヌクレオチドは、
(i)配列番号11に示す核酸配列を含むVHと、配列番号12に示す核酸配列を含むVLと、を含むか、または
(ii)配列番号13に示す核酸配列を含むVHと、配列番号14に示す核酸配列を含むVLと、を含むか、または
(iii)配列番号15に示す核酸配列を含むVHと、配列番号16に示す核酸配列を含むVLと、を含むか、または
(iv)配列番号17に示す核酸配列を含むVHと、配列番号18に示す核酸配列を含むVLと、を含むか、または
(v)配列番号19に示す核酸配列を含むVHと、配列番号20に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0141】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号11に示す核酸配列を含むVHと、配列番号12に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0142】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号13に示す核酸配列を含むVHと、配列番号14に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0143】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号15に示す核酸配列を含むVHと、配列番号16に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0144】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号17に示す核酸配列を含むVHと、配列番号18に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0145】
一例では、該ポリヌクレオチドは、配列番号19に示す核酸配列を含むVHと、配列番号20に示す核酸配列を含むVLと、を含む。
【0146】
一例では、本開示のポリヌクレオチドは、異種プロモーターに作動可能に連結されている。
【0147】
本開示はさらに、プロモーターに対し作動可能に連結された本開示の核酸を含む発現コンストラクトを提供する。このような発現コンストラクトは、ベクター内、例えばプラスミド内のものであり得る。
【0148】
抗体可変領域を含むタンパク質を形成する単一のポリペプチドに関する本開示の例において、発現コンストラクトは、そのポリペプチド鎖をコードする核酸に連結されたプロモーターを含んでもよい。
【0149】
抗体可変領域を含むタンパク質を形成する複数のポリペプチドに関する本開示の例において、本開示の発現コンストラクトは、該複数のポリペプチドのうちの1つ(例えば、VHを含む)をコードしかつプロモーターに作動可能に連結された核酸と、該複数のポリペプチドのうちのもう1つ(例えば、VLを含む)をコードしかつもう1つのプロモーターに作動可能に連結された核酸と、を含む。
【0150】
別の一例では、発現コンストラクトは、2シストロン性の発現コンストラクトであり、例えば、5′から3′の順に作動可能に連結された以下の構成要素、すなわち
(i)プロモーター、
(ii)第1のポリペプチドをコードする核酸、
(iii)配列内リボソーム進入部位、及び
(iv)第2のポリペプチドをコードする核酸、を含む。
【0151】
例えば、第1のポリペプチドはVHを含み、かつ第2のポリペプチドはVLを含むか、または第1のポリペプチドはVLを含み、かつ第2のポリペプチドはVHを含む。
【0152】
本開示はまた、別々の発現コンストラクトも意図しており、別々の発現コンストラクトのうち1つは、第1のポリペプチド(例えば、VHを含む)をコードし、そのもう1つは、第2のポリペプチド(例えば、VLを含む)をコードする。例えば、本開示はさらに組成物を提供し、該組成物は、
(i)ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現コンストラクト(例えば、プロモーターに作動可能に連結されたVHを含む)と、
(ii)ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の発現コンストラクト(例えば、プロモーターに作動可能に連結されたVLを含む)と、を含み、
ここで、該第1及び第2のポリペプチドは、結合して抗体可変領域を含むタンパク質を形成するものである。
【0153】
本開示はさらに、抗体可変領域を含む該タンパク質を発現する単離された細胞を提供するか、または本開示のタンパク質または抗体を発現するよう遺伝子修飾された組換え細胞を提供する。例えば、本開示は、本開示のタンパク質または抗体を調製するための単離された細胞の使用を提供する。別の例では、該細胞は、本開示の核酸を含むか、または本開示の発現コンストラクトを含むか、または
(i)プロモーターに作動可能に連結された、ポリペプチド(例えば、VHを含む)をコードする核酸を含む第1の発現コンストラクトと、
(ii)プロモーターに作動可能に連結された、ポリペプチド(例えば、VLを含む)をコードする核酸を含む第2の発現コンストラクトと、を含み、
ここで、該第1及び第2のポリペプチドは、結合してタンパク質または抗体を形成するものである。
【0154】
本開示はさらに、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するためのタンパク質または抗体の使用を提供する。
【0155】
本開示はまた、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出する方法を提供する。該方法は、本明細書に記載のタンパク質または抗体を抗原と接触させることと、該タンパク質または抗体の該抗原への結合を検出することと、を含み、ここで、該タンパク質または抗体の該抗原への結合は、該抗原がSARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有することを示すものである。
【0156】
本開示はさらに、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するためのタンパク質もしくは抗体のキットまたはパネルを提供する。該キットまたはパネルは、本明細書に記載の1つ以上のタンパク質または抗体を含む。
【0157】
一例では、該抗原は、タンパク質、ペプチド、弱毒化ウイルス、またはウイルス様粒子である。例えば、該抗原は、タンパク質であり、例えば、抗体または抗原結合フラグメントである。例えば、該抗原は、ペプチドである。例えば、該抗原は弱毒化ウイルスである。例えば、該抗原はウイルス様粒子である。
【0158】
本開示はまた、該タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0159】
一例では、担体は薬学的に許容されるものである。
【0160】
本開示はさらに、薬剤として使用するための、本開示のタンパク質、または抗体、または核酸、または発現コンストラクト、または細胞、または組成物を提供する。
【0161】
本開示はさらに、対象において呼吸器ウイルス感染症の治療に使用するための、対象において呼吸器ウイルス感染症の予防に使用するための、及び/または、対象において呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるのに使用するための本開示のタンパク質、抗体、または組成物を提供する。一例では、本開示のタンパク質、または抗体、または核酸、または発現コンストラクト、または細胞、または組成物は、対象において呼吸器ウイルス感染症の治療に使用するためのものである。別の一例では、本開示のタンパク質、または抗体、または核酸、または発現コンストラクト、または細胞、または組成物は、対象において呼吸器ウイルス感染症の予防に使用するためのものである。さらなる一例では、本開示のタンパク質、または抗体、または核酸、または発現コンストラクト、または細胞、または組成物は、対象において呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるのに使用するためのものである。
【0162】
本開示はまた、治療、予防、及び/または進行遅延が必要な対象において、呼吸器ウイルス感染症を治療する方法、呼吸器ウイルス感染症を予防する方法、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせる方法を提供する。該方法は、該対象に、本開示のタンパク質、または抗体、または核酸、または発現コンストラクト、または細胞、または組成物を投与することを含む。例えば、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症を治療する方法を提供する。別の一例では、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症を予防する方法を提供する。さらなる一例では、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせる方法を提供する。
【0163】
本開示はさらに、治療、予防、及び/または進行遅延が必要な対象において、呼吸器ウイルス感染症の治療に使用するための、呼吸器ウイルス感染症の予防に使用するための、及び/または、呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるのに使用するための薬剤の製造における本開示のタンパク質、または抗体、または組成物の使用を提供する。例えば、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症を治療するための薬剤の製造における、本開示のタンパク質、または抗体、または組成物の使用を提供する。別の一例では、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症を予防するための薬剤の製造における、本開示のタンパク質、または抗体、または組成物の使用を提供する。さらなる一例では、本開示は、進行遅延が必要な対象において呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるための薬剤の製造における、本開示のタンパク質、または抗体、または組成物の使用を提供する。
【0164】
一例では、該対象は、呼吸器ウイルス感染症を患っている(すなわち、該対象は治療を必要としている)。
【0165】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症、コロナウイルス病2019(COVID-19)、急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0166】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症はSARS-CoV-2感染症である。
【0167】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症はCOVID-19である。
【0168】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症はARDSである。
【0169】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症はSARS-CoV-2感染症及びCOVID-19である。
【0170】
一例では、該呼吸器ウイルス感染症はCOVID-19及びARDSである。
【0171】
一例では、本開示は、SARS-CoV-2感染症の治療、SARS-CoV-2感染症の予防、及び/またはSARS-CoV-2感染症の進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。例えば、本開示は、SARS-CoV-2感染症の治療に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、SARS-CoV-2感染症の予防に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、SARS-CoV-2感染症の進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。
【0172】
一例では、本開示は、COVID-19の治療、COVID-19の予防、及び/またはCOVID-19の進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。例えば、本開示は、COVID-19の治療に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、COVID-19の予防に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、COVID-19の進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。
【0173】
一例では、本開示は、ARDSの治療、ARDSの予防、及び/またはARDSの進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。例えば、本開示は、ARDSの治療に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、ARDSの予防に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。別の一例では、本開示は、ARDSの進行の遅延に使用するための本開示の医薬組成物を提供する。
【0174】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの発症前または発症後に投与される。本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの発症前に投与される。本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの発症後に投与される。
【0175】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、呼吸器ウイルス感染症の検出後に投与される。例えば、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、対象におけるSARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの検出後に投与される。本明細書に記載の任意の方法の別の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、SARS-CoV-2感染症の検出後に投与される。一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、SARS-CoV-2感染症の検出後であるが、COVID-19の発症前に投与される。一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、ARDSの検出後に投与される。
【0176】
一例では、対象は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSを発症するリスクを有する。例えば、対象は、SARS-CoV-2感染症を発症するリスクを有する。別の一例では、対象は、COVID-19を発症するリスクを有する。さらなる一例では、対象は、ARDSを発症するリスクを有する。
【0177】
一例では、本開示の組成物は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの1つ以上の症状の重症度を軽減するのに十分な量で、またはSARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの1つ以上の症状の発症を予防するのに十分な量で、投与される。SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDSの症状は当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0178】
本開示は、対象において免疫応答を誘導する方法を提供する。該方法は、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物を、免疫応答の誘導を必要とする対象に投与することを含む。
【0179】
本開示はまた、免疫応答の誘導を必要とする対象において免疫応答を誘導するための薬剤の製造における、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物の使用を提供する。
【0180】
一例では、該方法または該使用は、免疫応答の誘導を必要とする対象に、本開示のタンパク質、抗体、及び/または医薬組成物を投与することを含む。
【0181】
一例では、該方法または該使用は、免疫応答の誘導を必要とする対象に、本開示の複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の医薬組成物を投与することを含む。
【0182】
一例では、該方法または該使用は、免疫応答の誘導を必要とする対象に、本開示の複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の医薬組成物を投与することを含み、ここで該複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は同じものである。
【0183】
一例では、該方法または該使用は、免疫応答の誘導を必要とする対象に、本開示の複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の医薬組成物を投与することを含み、ここで該複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は異なるものである。例えば、該方法または該使用は、最初のタンパク質、抗体、及び/または医薬組成物を対象に投与することと、その後のタンパク質、抗体、及び/または医薬組成物を対象に投与することと、を含む。
【0184】
一例では、複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は、同時にまたは逐次的に投与される。例えば、複数のタンパク質及び/または複数の抗体は、同じ組成物中に配合される。別の一例では、複数のタンパク質及び/または複数の抗体は、同時にまたは逐次的に投与される別個の組成物中に配合される。
【0185】
一例では、複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は、異なる時点で投与される。一例では、第1回目、及び、第2回目、及び/またはその後の用量は、所定の間隔で、例えば、約24~28週間の間隔で、または約48~56週間の間隔で、投与される。例えば、各用量は、それぞれ約24~26週間、または約38~42週間、または約50~54週間の間隔で投与される。
【0186】
一例では、複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は、別々に処方され、別々の時間間隔で対象に投与される。一例では、複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は、呼吸器ウイルス感染症が発症する前のそれぞれの時点で投与される。別の一例では、第1のタンパク質、抗体、または組成物が、呼吸器ウイルス感染症の発症前に対象に投与され、第2のタンパク質、抗体、または組成物が、呼吸器ウイルス感染症の発症後に対象に投与される。さらなる一例では、複数のタンパク質、複数の抗体、及び/または複数の組成物は、呼吸器ウイルス感染症が発症した後のそれぞれの時点で投与される。例えば、第1のタンパク質、抗体、または組成物が、SARS-CoV-2ウイルス感染症の発症後に対象に投与され、第2のタンパク質、抗体、または組成物が、SARS-CoV-2ウイルス感染症の発症後であるがCOVID-19及び/またはARDSの発症前に対象に投与される。
【0187】
一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、細胞性免疫応答を誘導する。タンパク質が細胞性免疫応答を誘導するかどうかを決定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例えば、細胞性免疫応答には、抗原特異的細胞傷害性T細胞の活性化の評価が含まれる。一例では、T細胞は、CD4T細胞及び/またはCD8T細胞である。
【0188】
一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物の投与は、CD4T細胞性の免疫応答を誘導する。
【0189】
一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物の投与は、CD8T細胞性の免疫応答を誘導する。
【0190】
一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物の投与は、CD4T細胞性かつCD8T細胞性の免疫応答を誘導する。
【0191】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、対象は、哺乳動物、例えばヒトなどの霊長類である。
【0192】
本開示はまた、本開示の少なくとも1つのタンパク質または抗体を、必要に応じてデリバリーシステム及び/または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤中に、含むキットであって、対象において呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDS)を治療または予防するのに使用される説明書とともに該タンパク質または該抗体が包装されたキットを提供する。
【0193】
本開示はまた、本開示の少なくとも1つのタンパク質または抗体を、必要に応じてデリバリーシステム及び/または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤中に、含むキットであって、呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDS)に罹患しているかまたは罹患するリスクを有する対象にタンパク質、抗体、または医薬組成物を投与するための説明書とともに該タンパク質または該抗体が包装されたキットを提供する。
【0194】
本開示はまた、本開示の複数のタンパク質または複数の抗体を、必要に応じてデリバリーシステム及び/または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤中に、含むキットであって、呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDS)に罹患しているかまたは罹患するリスクを有する対象にタンパク質、抗体、または医薬組成物を投与するための説明書とともに該タンパク質または該抗体が包装されたキットを提供する。
【0195】
一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、バイアル中で供給される。別の一例では、本開示のタンパク質、抗体、または医薬組成物は、シリンジ中で供給される。
【0196】
配列表の一覧
配列番号1 抗体6G6のVHのアミノ酸配列
配列番号2 抗体6G6のVLのアミノ酸配列
配列番号3 抗体19G2のVHのアミノ酸配列
配列番号4 抗体19G2のVLのアミノ酸配列
配列番号5 抗体30B8のVHのアミノ酸配列
配列番号6 抗体30B8のVLのアミノ酸配列
配列番号7 抗体39E7のVHのアミノ酸配列
配列番号8 抗体39E7のVLのアミノ酸配列
配列番号9 抗体33E10のVHのアミノ酸配列
配列番号10 抗体33E10のVLのアミノ酸配列
配列番号11 抗体6G6のVHのヌクレオチド配列
配列番号12 抗体6G6のVLのヌクレオチド配列
配列番号13 抗体19G2のVHのヌクレオチド配列
配列番号14 抗体19G2のVLのヌクレオチド配列
配列番号15 抗体30B8のVHのヌクレオチド配列
配列番号16 抗体30B8のVLのヌクレオチド配列
配列番号17 抗体39E7のVHのヌクレオチド配列
配列番号18 抗体39E7のVLのヌクレオチド配列
配列番号19 抗体33E10のVHのヌクレオチド配列
配列番号20 抗体33E10のVLのヌクレオチド配列
配列番号21 抗体6G6のVHCDR1のアミノ酸配列
配列番号22 抗体6G6のVHCDR2のアミノ酸配列
配列番号23 抗体6G6のVHCDR3のアミノ酸配列
配列番号24 抗体6G6のVLCDR1のアミノ酸配列
配列番号25 抗体6G6のVLCDR2のアミノ酸配列
配列番号26 抗体6G6のVLCDR3のアミノ酸配列
配列番号27 抗体19G2のVHCDR1のアミノ酸配列
配列番号28 抗体19G2のVHCDR2のアミノ酸配列
配列番号29 抗体30B8及び抗体39E7のVHCDR1のアミノ酸配列
配列番号30 抗体30B8及び抗体39E7のVHCDR2のアミノ酸配列
配列番号31 抗体30B8のVHCDR3のアミノ酸配列
配列番号32 抗体30B8のVLCDR1のアミノ酸配列
配列番号33 抗体30B8のVLCDR2のアミノ酸配列
配列番号34 抗体30B8のVLCDR3のアミノ酸配列
配列番号35 抗体39E7及び抗体19G2のVHCDR3のアミノ酸配列
配列番号36 抗体39E7及び抗体19G2のVLCDR1のアミノ酸配列
配列番号37 抗体39E7及び抗体19G2のVLCDR2のアミノ酸配列
配列番号38 抗体39E7及び抗体19G2のVLCDR3のアミノ酸配列
配列番号39 抗体33E10のVHCDR1のアミノ酸配列
配列番号40 抗体33E10のVHCDR2のアミノ酸配列
配列番号41 抗体33E10のVHCDR3のアミノ酸配列
配列番号42 抗体33E10のVLCDR1のアミノ酸配列
配列番号43 抗体33E10のVLCDR2のアミノ酸配列
配列番号44 抗体33E10のVLCDR3のアミノ酸配列
配列番号45 抗体30B8、抗体39E7、及び抗体19G2のVHのアミノ酸コンセンサス配列
配列番号46 抗体39E7及び抗体19G2のVLのアミノ酸コンセンサス配列
配列番号47 抗体30B8、抗体39E7、及び抗体19G2のVHCDR1のアミノ酸コンセンサス配列
配列番号48 抗体30B8、抗体39E7、及び抗体19G2のVHCDR2のアミノ酸コンセンサス配列
配列番号49 抗体30B8、抗体39E7、及び抗体19G2のVHCDR3のアミノ酸コンセンサス配列
配列番号50 SARS-CoV-2Sタンパク質全長(wt)のアミノ酸配列
配列番号51 ペプチド40のアミノ酸配列
【図面の簡単な説明】
【0197】
【
図1】野生型SARS-CoV-2Sタンパク質及び変異型SARS-CoV-2Sタンパク質を中和するのに必要なモノクローナル抗体クローン6G6(A)及びモノクローナル抗体クローン30B8(B)の濃度を示す一連のグラフである。データはシュードウイルスアッセイにより測定された50%阻害濃度(IC50)として表されている。
【発明を実施するための形態】
【0198】
全般
本明細書全体を通して、具体的に別段明記されない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一のステップ、単一の組成物、ステップ群、または組成物群への言及は、それらのステップ、それらの組成物、ステップ群、または組成物群のうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含すると解釈すべきである。
【0199】
当業者には明らかなとおり、本開示は、具体的に記載されているもの以外への変形及び変更が容易に可能である。当然のことながら、本開示は、そのような変形及び変更をすべて含むものである。本開示はまた、個別にまたは包括的に本明細書で言及しまたは示しているステップ、特徴、組成物、及び化合物の全てを含むものであり、さらに、それらのステップまたはそれらの特徴の任意の2つ以上の任意のもの及びそれらのステップまたはそれらの特徴の任意の2つ以上の組み合わせすべてを含むものである。
【0200】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施例によって範囲を限定されるものではなく、そのような特定の実施例が目的するところは、単なる例示である。機能的に等価の物、組成物、及び方法が本開示の範囲内にあることは明らかなことである。
【0201】
本開示のいかなる例も、別段の具体的な記載がない限り、本開示の任意の他の例に準用できると解釈すべきである。
【0202】
別段の具体的な定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有するものと解釈すべきである。
【0203】
別途指定されない限り、本開示で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的手順である。かかる技法は、例えば、以下の出典における文献に記載説明されている。J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor)、Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press (1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors)、DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、これまでの更新をすべて含む)、Ed Harlow and David Lane (editors)Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(これまでの更新をすべて含む)。
【0204】
本明細書における可変領域及びその部分、免疫グロブリン、抗体、及びそれらのフラグメントの説明及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987 and 1991、Bork et al.,J Mol.Biol.242,309-320,1994、Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature 342,877-883,1989、及び/またはAl-Lazikani et al.,J Mol Biol 273,927-948,1997の記述によってさらに明確になり得る。
【0205】
本明細書におけるタンパク質または抗体のあらゆる記述には、製造及び/または保管中に生成されるタンパク質または抗体のあらゆる変形物が含まれると解すべきである。例えば、製造中または保存中に、抗体は(例えば、アスパラギンまたはグルタミン残基において)脱アミド化される可能性があり、及び/またはグリコシル化が変化する可能性があり、及び/またはグルタミン残基がピログルタミン酸に変換される可能性があり、及び/またはN末端またはC末端の残基が除去されまたは「切り取られ」る可能性があり、及び/またはシグナル配列の一部またはすべてが不完全に処理される可能性があり、その結果、抗体の末端に残る可能性がある。特定のアミノ酸配列を含む組成物が、記載された配列もしくはコードされた配列及び/またはその記載されたもしくはコードされた配列の変異体の不均質な混合物であることも考えられる。
【0206】
「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」という用語は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると解されるものであり、両方の意味またはいずれかの意味を明確に支持していると解釈すべきである。
【0207】
本明細書を通じて、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」のような変化形は、記載された要素、完結物、もしくはステップ、または記載された要素群、完結物群、もしくはステップ群を包含することを意味する一方、任意の他の要素、完結物、もしくはステップ、または任意の他の要素群、完結物群、もしくはステップ群を除外することを意味していないと解釈すべきである。
【0208】
本明細書で使用される「~に由来する」という用語は、特定される完結物が、特定の供給源から得られる一方、必ずしもその供給源から直接得られるものとは限らないことを示していると解すべきである。
【0209】
選択された定義
本明細書で使用する「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」(「2019新型コロナウイルス(2019-nCoV)」及び「ヒトコロナウイルス2019(HCoV-19またはhCoV-19)」としても知られている)という用語は、コロナウイルス病2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルス株を指すと解されるものである。
【0210】
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合により連結された一連の連続するアミノ酸、または互いに共有結合によりもしくは非共有結合的に連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を包含すると解されるものである。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適当な化学結合またはジスルフィド結合により共有結合させることができる。非共有結合の例には、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0211】
本明細書で使用される「ポリペプチド」または「ポリペプチド鎖」という用語は、ペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸を意味すると解される。例えば、タンパク質は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合により連結された一連の連続するアミノ酸、または互いに共有結合によりもしくは非共有結合的に連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を包含すると解されるものである。一連のポリペプチド鎖は、適当な化学結合またはジスルフィド結合により共有結合させることができる。非共有結合の例には、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0212】
本明細書で使用する「組換え」という用語は、人工的な遺伝子組換えの産物を意味すると解されるものである。
【0213】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、複数のポリペプチド鎖(例えば、軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチド及び重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチド)で構成される可変領域を含むタンパク質を意味すると解されるものである。抗体は、一般に定常ドメインも含み、定常ドメインの一部は、定常領域に配置され得、定常領域には、重鎖の場合、定常フラグメントまたは結晶化可能フラグメント(Fc)が含まれる。VHとVLは相互作用してFvを形成する。このFvは、1つまたはいくつかの密接に関連した抗原に特異的に結合できる抗原結合領域を含んでいる。一般に、哺乳類由来の軽鎖は、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかであり、哺乳類由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、またはμである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスのものとすることができる。「抗体」という用語は、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、類似ヒト化抗体、及びキメラ抗体も包含する。
【0214】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、または「全抗体」という用語は、実質的にインタクトな形態にある抗体を指して同義的に使用され、これは、抗体の抗原結合フラグメントと対照的な意味である。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、野生型配列の定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。
【0215】
本明細書で使用される「可変領域」という用語は、ここに規定されるように、抗原に特異的に結合することができかつ相補性決定領域(CDR)(すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖及び/または重鎖の部分を指す。例示的な可変領域は、3つまたは4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び場合によりFR4)を3つのCDRとともに含んでいる。IgNARに由来するタンパク質の場合、タンパク質はCDR2が欠如している場合がある。VHとは重鎖の可変領域を指す。VLとは軽鎖の可変領域を指す。
【0216】
本明細書で使用される「相補性決定領域」(同義語CDR、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)という用語は、抗原結合にその存在が必要な抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは通常、CDR1、CDR2、及びCDR3として識別される3つのCDR領域を有する。CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸の位置は、本開示の実施において、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987 and 1991に従い規定することができ、あるいは、その他の番号付けシステム、例えば、Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature 342,877-883,1989、及び/またはAl-Lazikani et al.,J Mol Biol 273:927-948,1997の標準的番号付けシステム、Lefranc et al.,Devel.And Compar.Immunol.,27:55-77,2003のIMGT番号付けシステム、またはHonnegher and Plukthun J. Mol.Biol.,309:657-670,2001のAHO番号付けシステムにより規定することができる。
【0217】
本明細書で使用する「フレームワーク領域」(FR)という用語は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0218】
本明細書で使用する「Fv」という用語は、複数のポリペプチドで構成されているか単一のポリペプチドで構成されているかにかかわらず、VLとVHが結合して抗原結合部位を有する(すなわち抗原に特異的に結合することができる)複合体を形成する任意のタンパク質を意味すると解されるものである。抗原結合部位を形成するVH及びVLは、単一のポリペプチド鎖内にあってもよく、異なるポリペプチド鎖内にあってもよい。さらに、本開示のFv(及び本開示の任意のタンパク質)は、複数の抗原結合部位を有してもよく、それらは、同じ抗原に結合する場合もあれば、同じ抗原に結合しない場合もある。この用語は、抗体に直接由来するフラグメントのほか、組換え手段を使用して生成されるそのようなフラグメントに対応するタンパク質をも包含すると解されるものである。いくつかの例では、VHは、重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されておらず、及び/または、VLは、軽鎖定常ドメイン(CL)に連結されていない。例示的なFv含有ポリペプチドまたはタンパク質としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、もしくはさらに高次の複合体、または定常領域もしくはそのドメイン(例えばCH2またはCH3ドメイン)に連結された上記のいずれか(例えばミニボディ)が挙げられる。「Fabフラグメント」は、抗体の一価の抗原結合フラグメントから構成されるものである。「Fabフラグメント」は、酵素パパインによる全抗体の消化によって無傷の軽鎖と重鎖の一部から構成されるフラグメントを得ることにより作製でき、あるいは、組換え手段を使用して作製できる。抗体の「Fab’フラグメント」は、全抗体をペプシンで処理し、続いて還元して無傷の軽鎖と、VH及び単一の定常ドメインを含む重鎖の一部と、から構成される分子を作製することによって得ることができる。この方法で処理した抗体ごとに2つのFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは、組換え手段によっても作製することができる。抗体の「F(ab’)2フラグメント」は、2つのジスルフィド結合によって結合された2つのFab’フラグメントの二量体から構成され、全抗体分子を酵素ペプシンで処理することにより(その後、還元を行わないで)得られる。「Fab2」フラグメントは、組換えフラグメントであり、これは、例えばロイシンジッパーまたはCH3ドメインを使用して連結された2つのFabフラグメントを含む。「単鎖Fv」または「scFv」は、抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含む組換え分子である。この組換え分子において、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域は、適当な可動性ポリペプチドリンカーによって共有結合されている。
【0219】
タンパク質またはその抗原結合部位と抗原との相互作用に関して本明細書で使用する「結合する」という用語は、その相互作用が抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は通常タンパク質全体ではなく、特定のタンパク質構造を認識してそれに結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」とタンパク質を含む反応において、エピトープ「A」を含む分子(または遊離の標識されていない「A」)が存在すると、抗体に結合する標識された「A」の量は減少する。
【0220】
本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、本開示のタンパク質が、特定の抗原またはそれを発現する細胞に対して、それに代わる抗原または細胞に比べて、より高頻度に、より速く、より長い持続期間で、及び/またはより高い親和性で、反応または結合することを意味していると解されるものである。例えば、タンパク質は、多反応性天然抗体(すなわち、ヒトに天然に存在するさまざまな抗原に結合することが知られている天然抗体)によって一般的に認識される抗原に対してよりも、SARS-CoV-2Sタンパク質に対して、実質的により高い親和性(例えば、1.5倍または2倍または5倍または10倍または20倍または40倍または60倍または80倍~100倍または150倍または200倍)で結合する。一般に、必ずしもではないが、結合についての言及は、特異的結合を意味し、また各用語は、他の用語を明確に支持しているものとして解されるものである。
【0221】
本明細書で使用する「中和する」という用語は、タンパク質が、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を、遮断、低減、または防止できることを意味すると解されるものである。このことから明らかなとおり、当該タンパク質は、Sタンパク質RBDのACE2への結合を完全に中和する必要はなく、むしろ統計的に有意な量で結合を中和すればよく、例えば、sVNT PsV及びベロマイクロ中和アッセイを含む中和アッセイによって測定する場合、例えば少なくとも約30%、または40%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、結合を中和すればよい。
【0222】
本明細書で使用する「抗原」という用語は、細胞性免疫応答及び/または体液性免疫応答を誘導、誘発、増加、または増強する1つ以上のエピトープを含む分子または構造を指す。
【0223】
「競合的に阻害する」という用語は、本開示のタンパク質(またはその抗原結合部位)が、言及された抗体またはタンパク質のSARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合を低減または阻止することを意味すると解されるものである。このことは、タンパク質(または抗原結合部位)と抗体が同じエピトープまたは重複するエピトープに結合することに起因し得る。上記から明らかなとおり、タンパク質は抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ結合を統計的に有意な量で、例えば、少なくとも約10%、または20%、または30%、または40%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%減少させればよい。好ましくは、タンパク質は、抗体の結合を少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましく少なくとも約80%または85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、減少させる。結合の競合的阻害を測定するための方法は、当該技術分野で知られており、及び/または本明細書に記載されている。例えば、抗体を、タンパク質の存在下または不在下のいずれかで、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDにさらす。抗体の結合が、タンパク質の不在下よりもタンパク質の存在下で少ない場合、タンパク質は抗体の結合を競合的に阻害するものと考えられる。一例では、競合阻害は立体障害によるものではない。
【0224】
2つのエピトープについて「重複する」という用語は、2つのエピトープが、十分な数のアミノ酸残基を共有しており、その結果、1つのエピトープに結合するタンパク質(またはその抗原結合部位)が、もう1のエピトープに結合するタンパク質(または抗原結合部位)の結合を競合的に阻害できるようになっていることを意味すると解されるものである。例えば、「重複する」エピトープは、少なくとも1、または2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または20のアミノ酸を共有する。
【0225】
本明細書で使用する「半最大阻害濃度(IC50)」という用語は、生物学的プロセスを半分阻害するのに必要な化合物(例えば、本明細書に記載のタンパク質)の濃度を指す。例えば、本明細書に記載のタンパク質の少なくとも約5μg/mlは、Sタンパク質RBDのACEトランスフェクトVeroE6細胞への結合を半分中和する。
【0226】
本明細書で使用する用語「エピトープ」(同義語「抗原決定基」)は、抗体可変領域を含むタンパク質が結合するSタンパク質RBDのある領域を意味すると解されるものである。この用語は、タンパク質が接触する特定の残基または構造に必ずしも限定されるものではない。例えば、この用語には、タンパク質が接触する複数のアミノ酸にわたる領域、及び/または、この領域の外側の5~10個、2~5個、または1~3個のアミノ酸が含まれる。いくつかの例では、エピトープは、Sタンパク質RBDが折りたたまれたときに互いに近くに位置する一連の不連続なアミノ酸、すなわち「立体構造エピトープ」を含む。また当業者には明らかなとおり、「エピトープ」という用語はペプチドまたはポリペプチドに限定されるものではない。例えば、「エピトープ」という用語には、分子の化学的に活性な表面基、例えば、糖側鎖、ホスホリル側鎖、またはスルホニル側鎖など、が含まれ、特定の例では、特定の三次元構造特性、及び/または特定の電荷特性を有する場合がある。
【0227】
本明細書で使用する「交差反応する」または「交差反応性」という用語は、特定の抗原に対して生じたタンパク質が別の抗原(例えば、抗原の変異型)に対して競合する親和性を有することを意味すると解されるものである。
【0228】
本明細書で使用する「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」という用語は、ホスホジエステル骨格に共有結合した一連の連続するヌクレオチド(または塩基)を意味すると解されるものである。
【0229】
本明細書において、呼吸器ウイルス感染症を発症する「リスクを有する」対象は、呼吸器ウイルス感染症の検出可能な症状を有している場合もあれば、有していない場合もあり、また、本開示に従う治療の前に呼吸器ウイルス感染症の検出可能な症状を示している場合もあれば、示していない場合もある。「リスクを有する」は、対象が1つ以上の危険因子を有することを意味し、当該危険因子は、当該技術分野で知られている、及び/または本明細書に記載されているように、呼吸器ウイルス感染症の発症と相関する測定可能なパラメータである。
【0230】
本明細書で使用する「対象」という用語は、ヒトを含む任意の動物、例えば哺乳動物を意味すると解されるものである。例示的な対象には、ヒト及びヒト以外の霊長類が含まれるが、これらに限定されない。一例では、対象はヒトである。
【0231】
本明細書で使用する「治療」、「治療する」、または「治療すること」という用語は、本明細書に記載のタンパク質、抗体、または医薬組成物を投与することにより対象において呼吸器ウイルス感染症の少なくとも1つの症状を軽減または除去することを包含する。
【0232】
本明細書で使用する「予防」、「予防する」、または「予防すること」という用語は、対象における特定の呼吸器ウイルス感染症の発生または再発に関して予防を行うことを包含する。対象は、呼吸器ウイルス感染症にかかりやすいかまたは呼吸器ウイルス感染症を発症するリスクを有するが、まだ呼吸器ウイルス感染症と診断されていないものであり得る。
【0233】
本明細書で使用する「進行を遅らせる」「進行の遅延」という表現は、対象における呼吸器ウイルス感染症の進行及び/または呼吸器ウイルス感染症の少なくとも1つの症状の進行を軽減するかまたは遅らせることを包含する。
【0234】
「有効量」は、必要な投薬量及び期間で所望の結果を達成するのに有効な量以上を指す。例えば、所望の結果は、治療結果または予防結果であり得る。有効量は、1回以上の投与でもたらすことができる。本開示のいくつかの例では、「有効量」という用語は、上記の呼吸器ウイルス感染症の治療に効果を発揮するのに必要な量を意味する。本開示のいくつかの例では、「有効量」という用語は、上記の疾患または病気について変化をもたらすのに必要な量を意味する。有効量は、治療される疾患もしくは病気、または変化する因子に応じて変わり得、さらに、体重、年齢、人種的背景、性別、健康状態、及び/または身体状態、ならびに治療される哺乳動物に関する他の因子に応じて変わり得る。典型的には、有効量は、医師による日常的な治験及び実験を通じて決定できる比較的広い範囲(例えば、「用量」範囲)内に入ることになる。したがって、この用語は、本開示を特定の量(例えば、重量または数)の結合タンパク質に限定するものと解釈すべきものではない。有効量は、単回用量で、または治療期間にわたって1回もしくは数回繰り返される用量で投与することができる。
【0235】
「治療上有効な量」は、特定の疾患または病気の測定可能な改善をもたらすのに必要な最小限の濃度以上である。本明細書において治療上有効な量は、患者の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する本開示のタンパク質または抗体の能力などの要因に応じて変わり得る。治療上有効な量は、治療上有益な効果が分子の任意の毒性または有害な作用を上回る量でもある。
【0236】
本明細書で使用する「予防上有効な量」という用語は、本明細書に記載の病気または疾患の1つ以上の検出可能な症状の発症を予防しまたは阻害しまたは遅らせるのに十分な本開示の分子の量を意味すると解されるものである。
【0237】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質
SARS-CoV-2は、エンベロープ型のポジティブセンス一本鎖RNAウイルスのコロナウイルス科の一種である。SARS-CoV-2タンパク質は、4つの構造タンパク質、すなわちスパイク(S)、膜(M)、ヌクレオカプシド(N)、エンベロープ(E)で構成されている。
【0238】
Sタンパク質は、標的のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を認識し、ウイルスと標的細胞膜の融合を媒介する役割を担っており、これが感染プロセスの鍵と考えられる。Sタンパク質は、高度にグリコシル化された大きなI型膜貫通タンパク質である。これには、S1とS2の2つのサブユニットが含まれている。S1サブユニットには、2つの重要なドメインがある。これらは、N末端ドメイン(NTD)として知られるものと、ACE2への結合を担う受容体結合ドメイン(RBD)として知られるものである。S2には、それぞれヘプタッドリピート(HR)、セントラルヘリックス(CH)、コネクタドメイン(CD)と呼ばれる3つのドメインがある。さらに、S1/S2にはフューリン切断部位がある。
【0239】
Sタンパク質は、融合前と融合後の2つの異なる立体構造を持つホモ三量体としてウイルス表面から突き出ている。ビリオン表面上のSタンパク質の三量体集合体が、ビリオンに独特の「コロナ」すなわち王冠のような外観を与えている。Sタンパク質RBDのACE2への結合は、融合前から融合後への構造変化を引き起こし、その結果、S1サブユニットとS2サブユニットが解離し、S2サブユニットが非常に安定した融合後の立体構造に変換される。
【0240】
本開示は、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合しかつSタンパク質RBDのACE2への結合を中和するタンパク質を提供する。一例では、該タンパク質は、本明細書に記載の抗体と競合して、SARS-CoV-2RBDのACE2への結合を中和する。
【0241】
抗体可変領域を含むタンパク質
本開示は、Sタンパク質RBDに特異的に結合しかつSタンパク質のACE2への結合を中和する抗体可変領域を含むタンパク質を提供する。
【0242】
本開示はさらに、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するための当該タンパク質の使用を提供する。
【0243】
抗体
本開示は、例えば本明細書に記載の可変領域を含む抗SARS-CoV-2抗体を提供する。例えば、本開示は、抗SARS-CoV-2中和抗体を提供する。例示的な抗SARS-CoV-2中和抗体は、6G6、19G2、30B8、39E7、及び33E10である。
【0244】
一例では、該抗体は組換え抗体である。例えば、抗体またはその可変領域を含むタンパク質は、例えば当該技術分野で知られている、または本明細書に簡単に記載されているような標準的な方法を使用して作製される。
【0245】
モノクローナル抗体は、本開示が意図する例示的な抗体である。「モノクローナル抗体」または「mAb」または「MAb」という用語は、同じ抗原(複数可)に対して、例えば、抗原内の同じエピトープに対して結合可能である均質な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源や抗体の作製法について限定されるものではない。
【0246】
脱免疫化タンパク質、キメラタンパク質、ヒト化タンパク質、類似ヒト化タンパク質、霊長類化タンパク質、及びヒトタンパク質
本開示のタンパク質は、ヒト化タンパク質であってもよい。
【0247】
「ヒト化タンパク質」という用語は、ヒト抗体からのFRに移植または挿入された非ヒト種(例えば、マウスまたはラットまたは非ヒト霊長類)由来の抗体からのCDRを含むヒト様可変領域を含むタンパク質(このタイプの抗体は「CDR移植抗体」とも呼ばれる)を指していると解されるものである。ヒト化タンパク質には、ヒトタンパク質の1つ以上の残基が1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されている、及び/またはヒトタンパク質の1つ以上のFR残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられている、タンパク質も含まれる。また、ヒト化タンパク質は、ヒト抗体にも非ヒト抗体にも存在しない残基を含んでもよい。タンパク質の任意のさらなる領域(例えば、Fc領域)は通常ヒトのものである。ヒト化は、当該技術分野で知られている方法、例えば、米国特許第5225539号、米国特許第6054297号、米国特許第7566771号、または米国特許第5585089号の方法を用いて実施することができる。「ヒト化タンパク質」という用語は、例えば、米国特許第7732578号に記載のスーパーヒト化タンパク質も包含する。
【0248】
本開示のタンパク質は、ヒトタンパク質であってもよい。本明細書で使用される「ヒトタンパク質」という用語は、可変抗体領域と、必要に応じて、定常抗体領域とを有し、それらの領域がヒト(例えば、ヒトの生殖系細胞または体細胞)に存在するものであるかまたはそのような領域を用いて作られるライブラリーに由来するものである、タンパク質を指す。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば、ランダム突然変異または部位特異的突然変異によりインビトロで導入される変異(特に、タンパク質の少数の残基、例えば、タンパク質の残基のうち1、2、3、4、または5個の保存的置換または変異を伴う変異)を含むことができる。このような「ヒト抗体」は、必ずしもヒトの免疫応答の結果として生成される必要はない。むしろ、このような「ヒト抗体」は、組換え手段(例えば、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング)を用いて、及び/または、ヒト抗体定常領域及び/またはヒト抗体可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)により、及び/または(例えば、米国特許該5565332号に記載されるように)誘導性選択(guided selection)を用いて、生成させることができる。この用語は、このような抗体の親和性成熟型の形態も包含する。本開示の目的のため、ヒトタンパク質には、ヒト抗体からのFRを含むタンパク質、またはヒトFRのコンセンサス配列からの配列を含むFRを含むタンパク質であって、CDRの1つ以上がランダムまたはセミランダムであるもの(例えば、米国特許第6300064号及び/または米国特許第6248516号に記載されるように)が含まれると考えられる。
【0249】
本開示のタンパク質は、類似ヒト化タンパク質であってもよい。「類似ヒト化タンパク質」という用語は、WO2007/019620に記載の方法により調製されるタンパク質を指す。類似ヒト化タンパク質は、抗体の可変領域を含むものであり、そこにおいて可変領域は、新世界霊長類抗体可変領域からのFRと非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRとを含むものである。例えば、類似ヒト化タンパク質は、抗体の可変領域を含むものであり、そこにおいて可変領域は、新世界霊長類抗体可変領域からのFRとマウス抗体またはラット抗体からのCDRとを含むものである。
【0250】
本開示のタンパク質は、霊長類化タンパク質であってもよい。「霊長類化タンパク質」は、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)の免疫化の後に生成された抗体からの可変領域(複数可)を含む。必要に応じて、非ヒト霊長類抗体の可変領域を、ヒト定常領域に連結して霊長類化抗体を作製する。霊長類化抗体を作製するための例示的な方法は、米国特許第6113898号に記載されている。
【0251】
一例では、本開示のタンパク質はキメラタンパク質である。「キメラタンパク質」という用語は、タンパク質であって、ある抗原結合ドメインが特定の種(例えば、マウスもしくはラットのようなネズミ科動物)に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するものである一方、その残りの部分が別の種(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属するタンパク質からのものである、タンパク質を指す。一例では、キメラタンパク質は、非ヒト抗体(例えば、ネズミ科動物抗体)からのVH及び/またはVLを含むキメラ抗体であり、その抗体の残りの領域はヒト抗体からのものである。このようなキメラタンパク質の作製は当該技術分野で知られており、標準的な手段(例えば、米国特許第6331415号、米国特許第5807715号、米国特許第4816567号、及び米国特許第4816397号に記載の手段)によって達成することができる。
【0252】
本開示は、例えばWO2000/34317及びWO2004/108158に記載されているような、脱免疫化タンパク質も意図する。脱免疫化抗体及び脱免疫化タンパク質は、1つ以上のエピトープが除かれており、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープが除かれており(すなわち、変異しており)、そのため対象が当該抗体またはタンパク質に対して免疫応答を引き起こす可能性が低くなっている。
【0253】
抗体フラグメント
単鎖Fv(scFv)フラグメント及び二量体scFv(di-scFv)
当業者には明らかなとおり、scFvは、単一のポリペプチド鎖にVH領域及びVL領域を含む。このポリペプチド鎖は、VHとVLとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvは、抗原結合のための必要な構造を形成することができる(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに結合してFvを形成する)。例えば、リンカーは12個以上のアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3は、scFvにとってより好ましいリンカーの1つである。
【0254】
本開示はまた、ジスルフィド安定化Fv(すなわちdiFvまたはdsFV)を意図する。ジスルフィド安定化Fvにおいて、単一のシステイン残基が、VHのFR及びVLのFRにそれぞれ導入されており、該システイン残基は、ジスルフィド結合によって連結されて安定なFvを生成する(例えば、Brinkmann et al.,1993を参照のこと)。
【0255】
代替的にまたは追加的に、本開示は、二量体scFv、すなわち、非共有結合または共有結合によって(例えばロイシンジッパードメイン(例えば、FosまたはJunに由来する)によって)連結された2つのscFv分子を含むタンパク質を提供する(例えば、Kruif and Logtenberg,1996を参照のこと)。あるいは、2つのscFvは、例えば米国特許出願公開第20060263367号に記載されているように、十分な長さのペプチドリンカーにより連結されており、両方のscFvの形成及び抗原への結合が可能になっている。
【0256】
scFvのレビューについては、Pluckthun(1994)を参照のこと。
【0257】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
抗体抗原結合ドメインを含む例示的なタンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びより高次のタンパク質複合体、例えばWO98/044001及びWO94/007921に記載のものである。
【0258】
例えば、ダイアボディは、2つの結合したポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、ここで各ポリペプチド鎖は構造VL-X-VHまたはVH-X-VLを含み、この構造中、VLは、抗体軽鎖可変領域であり、VHは、抗体重鎖可変領域であり、Xは、単一ポリペプチド鎖内でVH及びVLを結合させる(またはFvを形成する)には不十分な残基を含むリンカーであるか、または存在せず、さらにここで一方のポリペプチド鎖のVHは他方のポリペプチド鎖のVLに結合して抗原結合部位を形成する、すなわち、1つ以上の抗原に特異的に結合可能なFv分子を形成する。VL及びVHは、各ポリペプチド鎖で同じであってもよく、あるいはVL及びVHは、各ポリペプチド鎖で異なっており二重特異性ダイアボディ(すなわち、異なる特異性を有する2つのFvを含む)を形成してもよい。
【0259】
ミニボディ
当業者には明らかなとおり、ミニボディは、抗体のVHドメイン及びVLドメインが抗体のCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインに融合されているものである。場合によって、ミニボディは、VHとVLとの間にヒンジ領域を含み、この立体構造はフレックスミニボディと呼ばれることもある。ミニボディは、CH1やCLを含まない。一例では、VHドメイン及びVLドメインは、抗体のヒンジ領域及びCH3ドメインと融合されている。当該ミニボディの可変領域の少なくとも1つが、本開示の態様でSタンパク質RBDに結合する。例示的なミニボディ及びその作製方法は、例えば、WO94/09817に記載されている。
【0260】
定常ドメインの融合
本開示は、可変領域及び定常領域またはそれらのドメイン(複数可)(例えば、Fc、CH2ドメイン、及び/またはCH3ドメイン)を含むタンパク質を包含する。定常領域及び定常ドメインという用語の意味は、本明細書の開示及び本明細書に示す参考文献に基づき、当業者には明らかである。
【0261】
本開示のタンパク質の作製に有用な定常領域の配列は、複数の異なる供給源から取得することができる。いくつかの例では、タンパク質の定常領域またはその部分は、ヒト抗体に由来する。さらに、定常ドメインまたはその部分は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の抗体クラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意の抗体アイソタイプに由来し得る。
【0262】
さまざまな定常領域の遺伝子配列が、公的にアクセス可能な供託物の形態で入手可能であるか、またはその配列が公的に入手可能なデータベースから入手可能である。定常領域としては、特定のエフェクター機能を有するもの(もしくは特定のエフェクター機能が欠如したもの)、または免疫原性を低減するための特定の修飾を伴うものが選択され得る。
【0263】
本開示は、例えば米国特許第7217797号、米国特許第7217798号、または米国出願公開第20090041770号(半減期が増加したもの)、または米国出願公開第2005037000号(ADCCの増加)に記載されているような、変異型定常領域または変異型定常ドメインを含むタンパク質も意図する。
【0264】
タンパク質の作製
一例では、本開示のタンパク質または抗体は、当該タンパク質を作製するのに十分な条件下で、細胞株を培養することによって(例えば、本明細書に記載されるように、及び/または、当該技術分野で知られているように)作製される。
【0265】
組換え発現
組換えタンパク質の場合、組換えタンパク質をコードする核酸を1つ以上の発現コンストラクト(例えば、発現ベクター(複数可))に入れ、次いでそれ/それらを宿主細胞(例えば、ジスルフィド架橋または結合をもたらし得る細胞、例えば、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞)にトランスフェクトする。例示的な哺乳類細胞としては、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他の場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞が挙げられる。このような目的を達成するための分子クローニング技術は当該技術分野で知られており、例えば、AusubelまたはSambrookに記載されている。さまざまなクローニング及びインビトロ増幅法が組換え核酸の構築に好適である。組換え抗体を作製する方法も当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第4816567号、米国特許第7923221号、及び米国特許第7022500号を参照のこと。
【0266】
本開示のタンパク質をコードする核酸は、単離の後、さらなるクローニング(DNAの増幅)のため、または無細胞系もしくは細胞内で発現させるために、発現コンストラクトまたは複製可能なベクター内に挿入される。例えば、核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。
【0267】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、最も広い文脈で解釈するものとし、ゲノム遺伝子の転写制御配列を含むものである。そのような配列には、TATAボックスまたは開始エレメント(的確な転写開始に必要とされる)がある。それは、例えば、発生刺激及び/または外部刺激に応答してあるいは組織特異的態様で核酸の発現を改変する、追加の制御エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー、及びサイレンサー)を伴う場合もあれば、伴わない場合もある。また、本文脈において「プロモーター」という用語は、組換え核酸、合成核酸、もしくは融合核酸、または誘導体を示すためにも使用される。そのような組換え核酸、合成核酸、もしくは融合核酸、または誘導体は、プロモーターが作動可能に連結された核酸の発現をもたらし、活性化し、または強化するものである。例示的なプロモーターは、当該核酸の発現をさらに強化し、及び/または、当該核酸の空間的発現及び/または時間的発現を改変するための、1つ以上の特定の制御エレメントのさらなるコピーを含むことができる。
【0268】
本明細書で使用される「作動可能に連結」という用語は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。
【0269】
細胞内での発現のために多くのベクターが利用可能である。通常、ベクター構成要素には、シグナル配列、本開示のタンパク質をコードする配列(例えば、本明細書で提供される情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列の1つ以上が含まれるが、これらに限定されるものではない。タンパク質の発現に好適な配列は、当業者には明らかなものである。例えば、例示的なシグナル配列としては、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、もしくは熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー、もしくは酸性ホスファターゼリーダー)、または哺乳類分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が挙げられる。
【0270】
例示的なプロモーターとしては、原核生物において活性なプロモーター(例えば、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーター)が挙げられる。
【0271】
哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、小核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターまたはその活性断片を含むハイブリッド制御エレメントが挙げられる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、AUSTRALIAN CELL BANK CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293細胞または懸濁培養下での成長のためにサブクローニングされた293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、AUSTRALIAN CELL BANK CCL 10)、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0272】
酵母細胞(例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、及びS.pombeからなる群より選択される酵母細胞)内での発現に適した典型的なプロモーターとしては、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、またはTEF1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0273】
単離された核酸分子またはそのような核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを発現のため細胞内に導入する手段は、当業者に知られている。所定の細胞に使用する技法は、好結果を収めている既知の技法に依存する。組換えDNAを細胞内に導入するための手段としては、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン媒介のトランスフェクション、例えば、リポフェクタミン(Gibco、MD、USA)及び/またはセルフェクチン(Gibco、MD、USA)の使用によるリポソーム媒介のトランスフェクション、PEG媒介のDNA取込み、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルスを用いる形質導入)、ならびに微粒子衝撃(例えば、とりわけ、DNAでコーティングされたタングステン粒子または金粒子(Agracetus Inc.,WI,USA)の使用による微粒子衝撃)が挙げられる。
【0274】
本開示のタンパク質の作製に使用される宿主細胞は、使用する細胞タイプに応じてさまざまな培地で培養され得る。市販の培地、例えば、Ham’s Fl0(Sigma)、最小必須培地((MEM)(Sigma)、RPMl-1640(Sigma))、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などは、哺乳類細胞の培養に好適である。本明細書で言及される他の細胞タイプを培養するための培地は、当該技術分野で知られている。
【0275】
タンパク質の単離
本開示のタンパク質または抗体は、単離、精製することができる。
【0276】
本開示のタンパク質または抗体を精製するための方法は、当該技術分野で知られており、及び/または本明細書に記載されている。
【0277】
組換え技法を使用する場合、本開示のタンパク質または抗体は、細胞内または細胞周辺腔で産生させることができ、あるいは、培地中に直接分泌させることができる。タンパク質を細胞内で産生させる場合、第1のステップとして、微粒子状デブリである宿主細胞または溶解断片を、例えば、遠心分離または限外濾過により除去する。タンパク質を培地中に分泌させる場合、最初に、このような発現系からの上清を市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して濃縮することができる。タンパク質分解を阻害するためにPMSFのようなプロテアーゼ阻害物質が前述のステップのうちのいずれかに含まれていてもよく、さらに外来性汚染微生物の増殖を防止するために抗生物質が含まれていてもよい。
【0278】
細胞から調製されるタンパク質を、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィーもしくはプロテインGクロマトグラフィー)、または以上の任意の組合せにより精製することができる。これらの方法は当該技術分野で知られており、例えば、WO99/57134またはZola(1997)に記載されている。
【0279】
また、当業者には明らかなとおり、本開示のタンパク質を修飾して、精製または検出を容易にするためのタグ、例えば、ポリヒスチジンタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグ、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タグ、またはサルウイルス5型(V5)タグ、またはFLAGタグ、またはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むようにしてもよい。例えば、該タグはヘキサ-hisタグである。次いで、得られたタンパク質を、当該技術分野で知られている方法、例えば、親和性精製により精製する。例えば、ヘキサ-hisタグを含むタンパク質を精製するため、当該タンパク質を含む試料を、固体または半固体支持体上に固定したヘキサ-hisタグと特異的に結合するニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)に接触させ、試料を洗浄して非結合タンパク質を除去し、次いで結合タンパク質を溶離させる。代替的または追加的に、タグに結合するリガンドまたは抗体を、親和性精製法で使用する。
【0280】
複合体(コンジュゲート)
本開示はまた、任意の例に従う本明細書に記載のタンパク質の複合体(コンジュゲート)を提供する。例えば、抗体可変領域を含むタンパク質は、検出可能な標識、治療化合物、コロイド、毒素、核酸、ペプチド、タンパク質、対象における本タンパク質の半減期を増加させる化合物、及びこれらの混合物と複合体化される。
【0281】
本明細書で使用する「複合体」または「複合体化」という用語は、間接的結合及び直接的結合の両方を包含すると解されるものである。例えば、直接的な複合体化には、化学結合があり、これは、非共有結合、または共有結合、または遺伝的結合(「融合」とも呼ばれる)であり得る。一例では、複合体化は共有結合、例えばジスルフィド結合である。
【0282】
本明細書で使用する「検出可能な標識」とは、分子タグもしくは原子タグまたは分子マーカーもしくは原子マーカーであって、視覚的にまたは適切な検出器を使用することによって検出できる光学的シグナルもしくは光学的生成物または他のシグナルまたは生成物を生成するかまたは生成するように誘導できるタグまたはマーカーをいう。検出可能な標識は、当該技術分野で周知であり、例えば放射性標識、酵素標識、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、補欠分子族、造影剤、及び超音波剤を含む。
【0283】
一例では、任意の例による本明細書に記載のタンパク質は、別のタンパク質と複合体化または連結される。そのような別のタンパク質は、本開示の別のタンパク質または抗体可変領域を含むタンパク質(例えば、抗体またはそれに由来するタンパク質(例えば、本明細書に記載の通り))を含むものである。その他のタンパク質も排除されるものではない。その他のタンパク質は、当業者には明らかであり、例えば、免疫調節剤、または半減期延長タンパク質、またはとりわけ血清アルブミンに結合するペプチドまたは他のタンパク質を含む。
【0284】
例示的な血清アルブミン結合ペプチドまたはタンパク質は、米国出願公開第20060228364号または米国出願公開第20080260757号に記載されている。
【0285】
本開示のタンパク質を修飾して、当該技術分野で知られており容易に入手可能なさらなる非タンパク質部分を含むものとすることができる。例えば、タンパク質の誘導体化に好適な部分は、生理学的に許容されるポリマー、例えば、水溶性ポリマーである。このようなポリマーは、安定性の増加及び/またはクリアランスの低減(例えば、腎臓による)及び/または本開示のタンパク質の免疫原性の低減に有用である。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリプロピレングリコール(PPG)が挙げられる。
【0286】
一例では、任意の例に従う本明細書に記載のタンパク質は、検出及び/または単離を容易にするための1つ以上の検出可能なマーカーを含む。例えば、そのような化合物には、蛍光標識、例えば、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ならびにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7、フルオレセイン(5-カルボキシフルオセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)がある。これらの蛍光物質における吸収及び発光の最大値は、それぞれ以下の通りである。FITC(490nm、520nm)、Cy3(554nm、568nm)、Cy3.5(581nm、588nm)、Cy5(652nm、672nm)、Cy5.5(682nm、703nm)、及びCy7(755nm、778nm)。
【0287】
代替的または追加的に、任意の例に従う本明細書に記載のタンパク質は、例えば、蛍光半導体ナノ結晶(例えば、米国特許第6,306,610号に記載のもの)で標識される。
【0288】
代替的または追加的に、タンパク質は、磁性化合物または常磁性化合物で標識される(例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、希土類材料、ネオジム-鉄-ホウ素、二価鉄-クロム-コバルト、ニッケル-二価鉄、コバルト-白金、またはストロンチウムフェライトなどで標識される)。
【0289】
本開示のタンパク質のアッセイ
本開示のタンパク質は、当該技術分野で公知の方法及び/または以下に記載する方法を使用して、物理的及び生物学的活性及び/または安定性について容易にスクリーニングされる。
【0290】
SARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの結合
本開示から当業者には明らかなとおり、本開示のタンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合する(または特異的に結合する)。タンパク質への結合を評価するための方法は、当該技術分野において知られており、例えばScopes(Protein purification:principles and practice,Third Edition,Springer Verlag,1994参照)に記載されている。このような方法には通常、タンパク質を標識し、それを固定化化合物と接触させることが含まれる。洗浄して非特異的結合タンパク質を除去した後、標識の量、そして結果として結合タンパク質を検出する。もちろん、タンパク質を固定化し、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDに結合する化合物を標識することもできる。パニング型アッセイも使用することができる。代替的または追加的に、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することもできる。
【0291】
上記のアッセイは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDに対する本開示のタンパク質の結合レベルを検出するために使用することもできる。結合レベルを検出する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例えば、結合レベルはバイオセンサーを使用して測定される。
【0292】
中和アッセイ
本開示のタンパク質は、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合しかつSタンパク質RBDのACE2への結合を中和するその能力についてインビトロでスクリーニングすることができる。適切なアッセイは、当業者には明らかであり、例えば、ベロマイクロ中和アッセイ、sVNTアッセイ、またはシュードウイルス中和アッセイ(例えば、HEK-293T細胞またはHela-ACE2細胞を使用)を含む。
【0293】
一例では、中和アッセイはベロマイクロ中和アッセイである。簡単に説明すると、SARS-Cov-2野生型ウイルスをベロ細胞(すなわち、アフリカミドリザルから抽出した腎臓上皮細胞から単離したベロ系統)で継代する。試験タンパク質の2倍段階希釈物を100TCID50(すなわち組織培養感染量の中央値)のSARS-CoV-2と1時間インキュベートし、ベロ細胞で残存ウイルス感染価を評価する。ウイルスの細胞変性効果を、例えば5日目に読み取る。中和抗体力価を、上述したようなReed/Muench法を使用して算出する(Houser et al.,2016、Subbarao et al 2004)。
【0294】
一例では、中和アッセイはサロゲート中和試験(sVNT)である。簡単に言うと、プレートのウェルを、炭酸塩-重炭酸塩コーティング緩衝液(例えば、pH9.6)中のhACE2タンパク質でコーティングする。試験タンパク質とプレインキュベートしたHRP結合SARS-CoV-RBD及びHRP結合SARS-CoV-2を、異なる濃度でhACE2に添加し、例えば室温で1時間インキュベートする。未結合のHRP結合抗原を洗浄によって除去する。比色シグナルは、HRPと発色基質(例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB))との酵素反応で発生する。一例では、450nm及び570nmで吸光度を読み取る。
【0295】
一例では、中和はシュードウイルス中和アッセイである。簡単に説明すると、SARS-2-COV-2スパイクプラスミドをウイルスバックボーンプラスミド(例えばpDR-NLΔenvFLUC)とともに例えばHEK-293T細胞に同時トランスフェクションすることによって、SARS-2-スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたHIVレポーターウイルスを作製する。トランスフェクション後にシュードウイルスを回収し、濾過によって清澄化する。相対ルシフェラーゼ単位感染量(RLU)としてレポートされるウイルスストック力価を、ウイルス感染の読み取り値としてルシフェラーゼ活性を測定するHela-hACE2細胞の限界希釈感染によって算出する。
【0296】
競争的結合の測定
抗体6G6、19G2、30B8、39E7、及び/または30E10(または本明細書に記載の任意の他の抗体)の結合を競合的に阻害するタンパク質を決定するためのアッセイは、当業者には明らかである。例えば、6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10を、検出可能な標識、例えば、蛍光標識または放射性標識と複合体化させる。次いで、標識された抗体及び試験タンパク質を混合し、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDまたはその領域、あるいはそれを発現する細胞と接触させる。次いで、標識された6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10のレベルを測定し、タンパク質の非存在下で標識抗体をSARS-CoV-2Sタンパク質RBD、領域、または細胞と接触させたときに測定したレベルと比較する。標識された6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10のレベルが、試験タンパク質の非存在下と比較して、試験タンパク質の存在下で低下している場合、そのタンパク質は、6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10がSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDまたはその領域に結合するのを競合的に阻害していると考えられる。
【0297】
必要に応じて、試験タンパク質を、6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10と異なる標識と複合体化する。このような代替標識により、SARS-CoV-2Sタンパク質RBD、またはその領域、または細胞への試験タンパク質の結合レベルを検出することができる。
【0298】
別の例では、タンパク質を、SARS-CoV-2Sタンパク質RBD、またはその領域、またはそれを発現する細胞に結合できるようにした後、SARS-CoV-2Sタンパク質RBD、またはその領域、またはそれを発現する細胞を6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10と接触させる。タンパク質の非存在下と比較して、タンパク質の存在下で結合される6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10の量が減少すれば、タンパク質が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDへの6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10の結合を競合的に阻害していることがわかる。標識タンパク質を使用し、まず6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10をSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDに結合させることで、相互アッセイを実行することもできる。この場合、6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10の非存在下と比較して、6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10の存在下でSARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合する標識タンパク質の量が減少すれば、このタンパク質が、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDへの6G6、19G2、30B8、39E7、または30E10の結合を競合的に阻害していることがわかる。
【0299】
タンパク質のエピトープマッピング
SARS-CoV-2Sタンパク質RBDの1つ以上のエピトープに対する本明細書に開示されるタンパク質の結合部位を決定するためのアッセイは、当業者には明らかである。一例では、タンパク質を、SARS-CoV-2Sタンパク質RBDの直線状エピトープに結合させることができる。例えば、本明細書に記載のタンパク質をSARS-CoV-2Sタンパク質のエピトープと接触させ、結合を特定のアッセイ(例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、X線結晶構造解析、3D電子顕微鏡法、液体クロマトグラフィ-質量分析)によって測定する。一例では、アッセイはX線結晶構造解析である。
【0300】
タンパク質、抗体、または医薬製剤の用途
本明細書で論じられるように、本開示は、対象において呼吸器ウイルス感染症を治療し、呼吸器ウイルス感染症を予防し、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせる方法であって、対象にタンパク質、抗体、または医薬製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0301】
一例では、タンパク質、抗体、または医薬製剤は、対象における呼吸器ウイルス感染症及び/またはその症状の重症度を軽減する量で対象に投与される。
【0302】
一例では、呼吸器ウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及びARDS、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0303】
一例では、呼吸器ウイルス感染症はSARS-CoV-2感染症である。
【0304】
一例では、呼吸器ウイルス感染症はCOVID-19である。
【0305】
一例では、呼吸器ウイルス感染症はARDSである。
【0306】
一例では、対象は呼吸器ウイルス感染症を患っている(すなわち、治療を必要としている)。
【0307】
一例では、対象は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、ARDS、またはそれらの組み合わせを患っている。
【0308】
一例では、本方法は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、ARDS、またはそれらの組み合わせに罹患している対象を特定することをさらに含む。そのような対象を特定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。
【0309】
一例では、対象は呼吸器ウイルス感染症を発症するリスクを有する。例えば、対象は、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、ARDS、またはそれらの組み合わせを発症するリスクを有する。例えば、対象はSARS-CoV-2感染症を発症するリスクを有する。例えば、対象はCOVID-19を発症するリスクを有する。例えば、対象はARDSを発症するリスクを有する。
【0310】
対照集団よりも呼吸器ウイルス感染症を発症するリスクが高い対象者は、リスクを有することになる。対照集団は、呼吸器ウイルス感染症に罹患していないかまたは呼吸器ウイルス感染症の家族歴を有する一般集団(例えば、年齢、性別、人種、及び/または民族が一致する)から無作為に選択された1人以上の対象を含み得る。呼吸器ウイルス感染症に関連する「危険因子」がその対象に関連していることが判明した場合、その対象は補体媒介性疾患のリスクを有するとみなすことができる。危険因子には、例えば対象の集団に関する統計的研究または疫学研究を通じて特定の呼吸器ウイルス感染症に関連するあらゆる活動、形質、事象、または特性が含まれる。したがって、潜在的な危険因子を特定する研究に対象が具体的に含まれていない場合でも、対象は、呼吸器ウイルス感染症のリスクを有すると分類できる。
【0311】
一例では、本開示の方法は、呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、ARDS、またはそれらの組み合わせ)のあらゆる症状を軽減する。
【0312】
当業者には明らかなように、対象における呼吸器ウイルス感染症の症状の「軽減」は、同様に呼吸器ウイルス感染症を患っているが本明細書に記載の方法による治療を受けていない別の対象と相対的なものである。これは、必ずしも2つの対象を並べて比較することを必要とするものではない。むしろ集団データに依存し得る。例えば、本明細書に記載の方法による治療を受けていない呼吸器ウイルス感染症に罹患している対象の集団(必要に応じて、治療された対象と類似の対象の集団(例えば、年齢、体重、人種))を評価し、その平均値を、本明細書に記載の方法で治療された対象または対象集団の結果と比較する。
【0313】
一例では、本開示の任意の例にしたがって本明細書に記載の方法を実施すると、臨床応答の増強及び/または疾患進行の遅延がもたらされる。
【0314】
「臨床応答」とは、病気の症状の改善を意味する。臨床応答は、特定の時間枠内、例えば、治療の開始からまたは最初の投与から約8週間以内または約8週間で達成され得る。臨床応答は、24週間超、または48週間以上などの一定期間、持続することもある。
【0315】
コロナウイルス病2019(COVID-19)
本開示は、例えば、COVID-19を治療し、COVID-19を予防し、及び/またはCOVID-19の進行を遅らせる方法を提供する。
【0316】
COVID-19は、SARS-CoV-2によって引き起こされる感染症である。COVID-19は、2019年12月に中国湖北省武漢で初めて確認され、進行中のパンデミックに至っている。一般的な症状には、発熱、咳、倦怠感、息切れ、嗅覚と味覚の喪失などがある。大部分の症例は軽度の症状で終わるが、一部の症例はARDSに進行する。暴露から症状の発生までの時間は、通常約5日であるが、2日から14日にわたることがある。現在、COVID-19に対するワクチンや特定の抗ウイルス治療法はなく、対処には、症状の治療、対症療法、隔離、及び実験的措置が含まれる。
【0317】
したがって、いくつかの例では、対象はSARS-CoV-2感染症に罹患している。一例では、対象は、COVID-19、例えば、重度のCOVID-19に罹患している。特に、重度のCOVID-19は、ARDSを引き起こすことがよくある。本開示の方法は、重度のCOVID-19に罹患している対象においてARDSを治療または予防するために使用することができる。
【0318】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
本開示は、例えば、対象においてARDSを治療し、ARDSを予防し、及び/またはARDSの進行を遅らせる方法を提供する。
【0319】
ARDSは、生命にかかわる疾患であり、両側性肺浸潤、重度の低酸素血症、肺胞毛細管膜関門の破壊(すなわち肺血管漏出)を特徴とし、非心原性肺水腫を引き起こす。現在、効果的な薬物療法はない。
【0320】
インフルエンザやコロナウイルス感染症などの感染性の病因が、ARDSの主な原因である。したがって、本開示の一例では、ARDSはインフルエンザまたはコロナウイルス感染症に関連する。例えば、ARDSはインフルエンザに関連する。別の例では、ARDSは、SARS-COV感染症などのコロナウイルス感染症に関連する。一例では、ARDSはSARS-CoV-2感染症に関連する。
【0321】
ARDSは、ベルリン定義にしたがって分類されており、次のものを含む。
【0322】
(1)臨床的発作または呼吸器症状の発症から1週間以内の症状、
(2)急性低酸素性呼吸不全(少なくとも5cmの持続気道陽圧(CPAP)または呼気終末陽圧(PEEP)で300mmHg以下のPaO2/FiO2比によって判定される。ここで、PaO2は動脈内の酸素分圧であり、FiO2は吸入酸素の割合である)、
(3)浸出、硬化、または無気肺によって十分に説明されない肺のX線写真上の両側陰影、及び
(4)心不全または体液過剰によって十分に説明されない浮腫/呼吸不全。
【0323】
一例では、対象は、ARDSを有するかまたはARDSに罹患している(すなわち、対象はARDSのベルリン定義を満たしている)。例えば、対象は処置を必要としている(すなわち、治療、予防、及び/または進行遅延を必要としている)。
【0324】
一例では、対象は、ARDSに関連する症状を有するか、またはARDSに関連する症状を患っている。ARDSに関連する症状及びARDSを発症するリスクを有する対象を特定する方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。例えば、対象には次の症状が1つ以上またはすべて存在する。
【0325】
(a)毎分30回を超える呼吸頻度、
(b)室内空気の酸素飽和度(SpO2)が93%以下、
(c)動脈血酸素分圧と吸気酸素分圧との比(PaO2/FiO2)が300mmHg未満、
(d)SpO2/FiO2比が218未満、及び
(e)50%を超えるX線撮影による肺浸潤。
【0326】
現在、ARDSは、軽度、中等度、または重度に分類されており、この順に死亡率が増加していく。ARDSの重症度は、ベルリン定義にしたがって次のように分類できる。
【0327】
(a)軽度のARDS:少なくとも5cmのCPAPまたはPEEPで200~300mmHgのPaO2/FiO2、
(b)中等度のARDS:少なくとも5cmのPEEPで100~200mmHgのPaO2/FiO2、そして
(c)重度のARDS:少なくとも5cmのPEEPで100mmHg以下のPaO2/FiO2。
【0328】
一例では、ARDSは軽度のARDSである。別の例では、ARDSは中等度のARDSである。さらなる例では、ARDSは重度のARDSである。
【0329】
本方法は、既存のARDSの治療に加えて、ARDSの発症を予防するためにも使用できる。したがって、一例では、対象はARDSを患っていない。
【0330】
医薬組成物
本開示のタンパク質及び抗体(有効成分と同義)は、予防的治療または療法的治療のために、非経口投与、局所投与、経口投与、もしくは局在的投与、エアロゾル投与、または経皮投与用の医薬組成物に製剤化するのに有用である。医薬組成物は、投与方法に応じてさまざまな単位剤形で投与され得る。例えば、経口投与に好適な単位剤形としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、及びロゼンジが挙げられる。
【0331】
本開示の医薬組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、または皮下投与、または体腔もしくは器官もしくは関節の内腔への投与に有用である。投与のための組成物は、通常、薬学的に許容される担体、例えば、水性担体に溶解した本開示のタンパク質または抗体の溶液を含む。さまざまな水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用することができる。組成物は、必要に応じて生理的条件に近づけるための薬学的に許容される担体、例えば、pH調整剤、緩衝剤、及び毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。このような製剤における本開示のタンパク質または抗体の濃度は、広く変動し得、選択する特定の投与様式及び患者のニーズに応じて、主に体液の体積、粘度、体重などに基づき選択される。例示的な担体としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。混合油及びオレイン酸エチルのような非水性媒体も使用することができる。リポソームも担体として使用することができる。媒体は、等張性及び化学的安定性を強化する少量の添加剤、例えば、緩衝剤及び保存料を含んでもよい。
【0332】
本開示のタンパク質または抗体は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、またはその他のこのような経路を介する注入用(腫瘍もしくは疾患部位内への蠕動投与及び直接的点滴注入(腔内投与)を含む)に製剤化することができる。有効成分として本開示の化合物を含む水性組成物の調製は、当業者に知られている。
【0333】
本開示に従う好適な医薬組成物は、通常、ある量の本開示のタンパク質または抗体と、それと混合された許容される医薬担体(例えば、無菌水性溶液)とを含み、意図される用途に応じて、ある範囲の最終濃度をもたらすものである。調製の技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.Mack Publishing Company,1980に例示されるように、当該技術分野で広く知られている。
【0334】
投薬量及び投与
製剤化の後、本開示のタンパク質及び抗体は、用量の処方に適合した態様でかつ治療的/予防的に有効であるような量で投与される。
【0335】
用量は、有害な副作用を引き起こすほど多量であってはならない。一般的に、用量は、年齢、状態、性別、患者における疾患の程度によって変わってくるが、当業者によって決定することができる。用量は、何らかの合併症の場合、個々の医師により調整され得る。
【0336】
用量は、1日1回以上の投与を1日または数日間行う場合、約0.1mg/kg~約300mg/kg、例えば約0.2mg/kg~約200mg/kg、例えば約0.5mg/kg~約20mg/kgの範囲で変動し得る。
【0337】
いくつかの例では、タンパク質または抗体は、その後の(維持用量)よりも高い初回(または負荷)用量で投与される。例えば、タンパク質または抗体は、約1mg/kg~約30mg/kgの間の初回用量で投与される。その後、タンパク質または抗体は、約0.0001mg/kg~約1mg/kgの間の維持用量で投与される。維持用量は、7~35日ごと、例えば14日ごと、21日ごと、または28日ごとに投与することができる。
【0338】
いくつかの例では、用量漸増レジメンが使用され、その場合、タンパク質または抗体は、その後の用量で使用されるよりも低い用量で最初に投与される。この投与レジメンは、対象が最初有害事象を患っている場合に役立つ。
【0339】
対象が治療に十分に反応していない場合、1週間に複数回投与してもよい。代替的また追加的に、用量を増加させて投与してもよい。
【0340】
対象は、タンパク質及び/または抗体の1回より多い投与または一連の投与によって再治療してもよく、例えば少なくとも約2回のタンパク質及び/または抗体の投与、例えば約2~60回の投与、より具体的には約2~40回の投与、最も具体的には約2~20回の投与によって再治療してもよい。
【0341】
別の例では、所定の間隔で任意の再治療を行ってもよい。例えば、その後の投与は、例えば、約24~28週間または48~56週間またはそれ以上など、さまざまな間隔で行うことができる。例えば、各投与は、約24~26週間、または約38~42週間、または約50~54週間ごとの間隔で行われる。
【0342】
キット
本開示の別の例は、上記のように呼吸器ウイルス感染症を治療し、呼吸器ウイルス感染症を予防し、及び/または呼吸器ウイルス感染症の進行を遅らせるのに有用な本開示のタンパク質を含むキットを提供する。
【0343】
一例では、キットは、(a)タンパク質を、必要に応じてデリバリーシステム及び/または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤中に、含む容器と、(b)対象において呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、及び/またはARDS)を治療し、予防し、及び/またはその進行を遅らせるための説明が示された添付文書と、を含む。
【0344】
本開示のこの例によれば、添付文書は、容器上にあるかまたは容器に付随するものである。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から形成してもよい。容器は、本開示の病気または疾患に有効な組成物を保持するかまたは含んでおり、滅菌取り出し口を有してもよい(例えば、容器は、静注溶液バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、タンパク質である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、治療に適格な対象(例えば、呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症、COVID-19、またはARDS)を有するかまたは発症しやすい対象)を、投与量と治療の間隔についての特定のガイダンス及び提供されるその他の薬剤についての特定のガイダンスに従って治療するために使用されるものであることを示している。キットは、薬学的に許容される希釈緩衝液を含む別の容器をさらに含んでもよい。そのような希釈緩衝液は、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、及び/またはデキストロース溶液などである。キットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的に及びユーザの立場から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0345】
本開示の別の一例は、本明細書に記載される任意の方法(例えば、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原の検出)において使用するための、本開示のタンパク質または抗体を含むキットを提供する。
【0346】
一例では、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘導するのに十分な立体構造を有する抗原を検出するためのタンパク質または抗体のキットまたはパネルは、本明細書に記載される1つ以上のタンパク質または抗体を含む。一例では、抗原は、タンパク質、ペプチド、弱毒化ウイルス、またはウイルス様粒子である。
【0347】
本開示には、以下の非限定的な実施例が含まれる。
【実施例】
【0348】
実施例1:モノクローナル抗体の開発
SARS-CoV-2Sタンパク質RBDに対するモノクローナル抗体を、10μgのHEK293 SARS-C0V2 Sタンパク質(S1サブユニット、Hisタグ(Sino Biological))とそれに等容量の完全フロイントアジュバントとの混合物でBalb/cマウスを免疫することにより作製した。膝窩リンパ節をBalb/c免疫マウスから採取し、上述したようにリンパ球を融合かつ選択し(Pietrzykowski et al 2002)、ハイブリドーマ細胞株を生成させた。ハイブリドーマ細胞をクローン化し、4μg/mlのSARS-C0V2スパイクタンパク質(S1サブユニット、RBD Hisタグ(バキュロウイルスで発現(Sino Biological))を使用して、固相ELISAによりスクリーニングした。抗体結合を、HRPヤギ抗マウスIgG(ガンマ)とそれに続くクロマトグラフィー変換により検出した。反応性の確認は、その後の固相ELISAを使用した2019nCoV Sタンパク質RBD、Fcタグ(Acro Biosystems)による抗体分泌ハイブリドーマのスクリーニングにより行った。各クローン化モノクローナル抗体のアイソタイプ(重鎖/軽鎖)を、製造元の説明書に従いRoche IsoStripマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Merck 11493027001)を使用して決定した。
【0349】
合計34個の抗SARS-CoV-2Sタンパク質モノクローナル抗体をELISAによって特定した。モノクローナル抗体クローン30B8及び6G6を使用し、固相ELISAにおいて、酵母及び大腸菌(これらは異なるグリコシル化プロファイルを有する)で発現されるSARS-CoV-2Sタンパク質RBDに結合する能力をさらに測定した。モノクローナル抗体30B8及び6G6は、大腸菌で発現されるSARS-CoV-2Sタンパク質RBDに対して反応性がないか反応性が弱かったが、酵母で発現されるSARS-CoV-2Sタンパク質RBDに対しては中程度の反応性を示した。
【0350】
これらの結果は、大腸菌で発現されるSARS-CoV-2Sタンパク質RBDは哺乳動物の発現系を反映するタンパク質構造を持たないことを示唆する。酵母で発現されるSARS-CoV-2Sタンパク質RBDは、モノクローナル抗体30B8及び6G6に結合するが、三量体の形態ではないと考えられる。というのも、30B8捕捉/検出ELISAは陰性であった一方、30B8捕捉及び6G6検出ELISAは陽性であったからである。
【0351】
実施例2:SARS-CoV-2のインビトロ中和アッセイ
実施例1に記載の方法により作製しかつ特定した34種の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の中和能力を測定するために、以下の3つの異なるウイルス中和アッセイを実施した。(1)ベロマイクロ中和、(2)シュードウイルス中和、及び(3)sVNT(サロゲートウイルス中和試験)。結果を下の表1にまとめる。
【0352】
シュードウイルスアッセイの使用は、細胞へのウイルス侵入を防ぐ抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の能力を実証するためであり、一方、ベロ中和アッセイ(上記)の使用は、細胞へのウイルスの侵入を中和しさらにウイルスの複製を防ぐ抗SARS-CoVモノクローナル抗体の能力を実証するためである。中和スクリーニングの結果、多くの抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体候補が、sVNTアッセイにおいてRBDのACE2への結合を立体的に妨害できることがわかり、一方、他のアッセイにおいてはシュードウイルスの侵入及び/または野生型ウイルスの侵入及び複製を阻害できないことがわかった。抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体候補は、3つのアッセイのうちの少なくとも1つ以上で中和能力を示した(表1)。
【0353】
【0354】
ベロマイクロ中和アッセイ
野生型SARS-CoV-2ウイルスは、ベロ細胞内で複数回の複製を行うことができる。そこで、実施例1に記載の方法により作製しかつ特定した34種の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体のウイルス複製阻止能力を試験した。
【0355】
抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の2倍段階希釈物を100TCID50のSARS-CoV-2分離株CoV/Australia/VIVC01/2020(Caly et al 2020)とともに1時間インキュベートした。そして、SARS-CoV-2モノクローナル抗体プレインキュベーションありとなしにおいて、残存感染価を、感染後5日目にベロ細胞で評価した。中和抗体力価は、上述したReed/Muench法を使用して算出した(Houser et al.,2016、Subbarao et al 2004)。
【0356】
シュードウイルスアッセイ
抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体がシュードウイルス上のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインに結合し、それによってウイルスの細胞への侵入を防ぐ能力を調べるために、シュードウイルスアッセイを実施した。SARS-2-スパイクタンパク質でシュードタイプ化したHIVレポーターウイルスを、リポフェクタミン同時トランスフェクションによって作製した。トランスフェクションでは、8μgの異なるSARS-2-COV-2スパイクプラスミドを、16μgのウイルスバックボーンプラスミド(pDR-NL Δenv FLUC)とともに、8.106HEK-293T細胞に導入した。抗体中和を分析するために、ウイルスストックを、参照Wuhan配列及び循環スパイク変異体から作製した。表2は、パネル用に選択したSARS-COV-2スパイクを示している。
【0357】
【0358】
トランスフェクションの48時間後にシュードウイルスを回収し、45μmフィルターで濾過して清澄化し、等分して-80℃で保存した。相対ルシフェラーゼ単位感染量(RLU)としてレポートされるウイルスストック力価を、ウイルス感染の読み取り値としてルシフェラーゼ活性を測定するHela-hACE2細胞(中和アッセイで使用した同じ標的細胞)の限界希釈感染によって算出した。
【0359】
実施例1で作製したモノクローナル抗体の中和活性を試験するために、抗体の1/5段階希釈液(FBSに対するDMEM)を、150μl容量の100.000RLUのウイルスと混合した。ウイルス-抗体混合物を37℃で1時間インキュベートして中和を可能にした。インキュベーション後、ウイルス-抗体混合物を96ウェルプレートに播種した1.104Hela-ACE2細胞に加え(細胞-ウイルス-抗体の総量250μl)、1500gで2時間スピノキュレーションした。細胞をさらに37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。
【0360】
インキュベーション期間の終わりに、150μlの培地を細胞から除去する一方、プレート上に100μlの培地を残した。そして等容量のBritelite Plus試薬(ルシフェラーゼ酵素基質カタログ番号6066769)を2分間添加して、細胞溶解と酵素による発光生成物への変換とを行った。ウイルス感染価を読み取るために、100μlの細胞溶解物をブラックウォールプレートに移し、FLUOStarマイクロプレートリーダーで発光シグナルを測定した。
【0361】
抗体候補を二連で試験し、中和百分率を求めた。中和百分率は、ウイルス対照(ハイブリドーマ培地の希釈液でインキュベーしたウイルス)とテストウェルとの間の平均RLUの差を算出し、その結果を、ウイルス対照と非感染細胞対照ウェル(バックグラウンド)との間の平均RLUの差で割り、100倍することによって求めた。
【0362】
中和抗体力価は、ウイルス対照ウェルのレベルと比較して相対発光量(RLU)を50%減少させるのに必要なモノクローナル抗体濃度(μg/ml)として表される。中和パーセント対IgG濃度をプロットしたグラフを作成し、非線形回帰モデル(log[Ab濃度]vs応答/3パラメータ曲線)を使用して中和曲線を最近似した。各近似曲線(r2係数0.7超)から、50%阻害濃度(IC50)値を推定した。IC50値は、各近似滴定曲線における50%中和に対応する抗体濃度を示す。
【0363】
図1は、モノクローナル抗体6G6及び30B8の、野生型SARS-COV-2スパイクタンパク質(Wuhan)、単一変異型SARS-COV-2スパイクタンパク質(D614G、N501Y)、及び二重変異型SARS-COV-2スパイクタンパク質(G485R-D614G、N501Y-D614G)に対する、シュードウイルスアッセイによって測定した、中和能力を示している。
図1のSARS-COV-2スパイクタンパク質は、表2(上記)に記載されたものである。モノクローナル抗体6G6は、抗体30B8と比較して、野生型及びすべての変異型SARS-COV-2スパイクタンパク質を中和するのに必要な抗体濃度が低く、より高い中和能力を示した。モノクローナル抗体30B8は、野生型SARS-COV-2スパイクタンパク質(Wuhan)の中和と比較して、変異型N501Y SARS-COV-2スパイクタンパク質を中和するのにより高い濃度が必要であった。モノクローナル抗体6G6は、単一変異型N501Y SARS-COV-2スパイクタンパク質に比べて、二重変異型SARS-COV-2スパイクタンパク質(N501Y-D614G)を中和するのに必要な濃度が、より低かった。
【0364】
sVNT(サロゲートウイルス中和試験)
sVNTは、サロゲート中和アッセイであり、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体とタグ付きRBDタンパク質を混合することにより、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体がスパイクタンパク質RBDの組換えACE2タンパク質(プラスチックプレート上に結合されている)への結合を阻害できるかどうかを判定するものである。sVNTは、モノクローナル抗体のRBDへの結合能力についてスクリーニングするのに有用なアッセイである。
【0365】
hACE2タンパク質(GenScript)を、100mM炭酸-重炭酸コーティング緩衝液(pH9.6)中100ng/ウェルでコーティングした。HRPが結合したSARS-CoV-2 HRP複合化SARS-CoV-RBD(GenScript)を、OptEIAアッセイ希釈液(BD)中のさまざまな濃度でhACE2コーティングプレートに室温で1時間添加した。未結合のHRP複合化抗原を、リン酸緩衝生理食塩水、0.05%ツイーン-20(PBST)で洗浄することにより除去した。比色シグナルを、HRPと発色基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(Invitrogen))との酵素反応によって発生させた。等容量のTMB停止溶液(KPL)を加えて反応を停止させ、Cytation5マイクロプレートリーダー(BioTek)を使用して450nm及び570nmでの吸光度を読み取った。サロゲート中和試験(sVNT)では、6ngのHRP-RBD(いずれかのウイルス由来)を1:20に希釈したモノクローナル抗体とともに37℃で1時間プレインキュベートし、続いてhACE2のインキュベーションを室温で1時間行った。阻害(%)=(1-試料OD値/ネガティブ対照OD値)x100
【0366】
実施例3:ハイブリドーマ配列解析
抗体配列決定プロトコルでは、ハイブリドーマ細胞からmRNAを単離した後、cDNA合成と重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子のPCR増幅を行った。次に、遺伝子をpGEN-T easyベクターにクローニングした。クローンをPCRによってスクリーニングし、陽性クローンを配列決定した(サンガー配列決定)。VH遺伝子配列及びVL遺伝子配列の分析を、IMGT/V-Questプログラム(The International Immunogenetics Information System;http://www.imgt.org/IMGT_vquest/vquest)を使用して行った。
【0367】
実施例4:エピトープ結合
抗体30B8ならびに2つの公的に入手可能な抗SARS-CoV-2抗体B38(Wu et al.,Science 368:1274-128,2020に開示)及びAS35(カタログ番号SPD-S68 Acrobiosystems)を、13個のビオチン化ペプチド(1個のネガティブコントロールを含む)のプールに対する結合について、試験した。各ペプチドは、15アミノ酸長であり、各ペプチドは4アミノ酸の重複を有していた。
【0368】
B38もAS35も、分析したどのペプチドに対しても、バックグラウンドを超えるOD応答を示さなかった。抗体30B8は、バックグラウンドを超えるOD応答を示し、ペプチド40(配列番号51:SGSGAGSTPCNGVEGFNCY)に対してのみ交差反応した。
【0369】
マッピングにより、抗体30B8がペプチド40のアミノ酸残基5、6、17、18、及び19に対応する非線形エピトープAGNCYに結合することがわかった。
【0370】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【配列表】
【国際調査報告】