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特表2024-536383併用におけるPD-L1およびCD137に対する多重特異性結合剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】併用におけるPD-L1およびCD137に対する多重特異性結合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/02
A61P35/04
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520898
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022077748
(87)【国際公開番号】W WO2023057534
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,103
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/257,889
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/341,408
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(71)【出願人】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ムイク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ニュルンベルガー クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペンチェヴァ ノラ
(72)【発明者】
【氏名】ユレ-クンケル マリア エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】サヒン ウグル
(72)【発明者】
【氏名】フェラーマイヤー-コプフ ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガリード カストロ パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ブルーム ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼケ フリーデリケ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ エステル シー. ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ギュレン ラース
(72)【発明者】
【氏名】ネイセン ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ポールマン クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】デ クルーク バート-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヒベルト リシャルト
(72)【発明者】
【氏名】スフールマン ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラブレイン アラン
(72)【発明者】
【氏名】クズマノフ イヴァン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD09
4C076DD51
4C076DD67
4C076FF11
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085DD62
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための、ヒトCD137およびヒトPD-L1に結合する結合剤とPD-1阻害剤とを併用した併用療法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法における使用のための結合剤であって、該方法が、PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を該対象に投与する工程を含み、結合剤が、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み;かつ
ここで
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
結合剤。
【請求項2】
PD-L1が、ヒトPD-L1、特に、SEQ ID NO:40に示される配列を含むヒトPD-L1であり、かつ/または、CD137が、ヒトCD137、特に、SEQ ID NO:38に示される配列を含むヒトCD137である、請求項1記載の使用のための結合剤。
【請求項3】
PD-1阻害剤が、PD-1抗体である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項4】
PD-1阻害剤が、PD-1遮断抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項5】
PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項6】
PD-1阻害剤が、ニボルマブまたはそのバイオシミラーである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項7】
(a)第1の結合領域が、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:1または9の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:5または10の軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)第2の抗原結合領域が、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:11の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:15の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項8】
(a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項9】
第1の結合領域が、SEQ ID NO:1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項10】
第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項11】
第1の結合領域が、SEQ ID NO:1または9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項12】
第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項13】
(a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
(b)第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項14】
前記結合剤が、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項15】
前記結合剤が、完全長抗体または抗体断片のフォーマットである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項16】
各可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)とを含む、請求項6~12のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項17】
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列される、請求項13記載の使用のための結合剤。
【請求項18】
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むか、該領域からなるか、または該領域から本質的になる、ポリペプチドと、
(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むか、該領域からなるか、または該領域から本質的になる、ポリペプチドと
を含む、請求項7~17のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項19】
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチドと、
(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチドと
を含む、請求項7~18のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項20】
前記結合剤が、第1の結合アームおよび第2の結合アームを含む抗体であり、
第1の結合アームが、
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含み;かつ
第2の結合アームが、
(iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含む、
請求項7~19のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項21】
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖と、
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖と
を含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項22】
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖であって、第1の重鎖が第1の重鎖定常領域を含み、かつ第1の軽鎖が第1の軽鎖定常領域を含む、第1の重鎖および軽鎖と;
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖であって、第2の重鎖が第2の重鎖定常領域を含み、かつ第2の軽鎖が第2の軽鎖定常領域を含む、第2の重鎖および軽鎖と
を含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項23】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、定常重鎖1(CH1)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域、および定常重鎖3(CH3)領域の1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、請求項18~22のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項24】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々がCH3領域を含み、2つのCH3領域が非対称変異を含む、請求項18~23のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項25】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、前記第1および前記第2の重鎖が、同じ位置で置換されていない、請求項18~23のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項26】
(i)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または
(ii)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第1の重鎖においてRであり、かつEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第2の重鎖においてLである、
請求項25記載の使用のための結合剤。
【請求項27】
同じ第1および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較して、Fc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導する、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項28】
改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)を含む以外は同一の抗体と比較して、前記抗体がFc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導するように、前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項27記載の使用のための結合剤。
【請求項29】
前記改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、SEQ ID NO:19または25に示されるアミノ酸配列を含む、請求項28記載の使用のための結合剤。
【請求項30】
前記Fc媒介エフェクター機能が、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcγ受容体のFe媒介架橋の誘導によって測定される、請求項28または29記載の使用のための結合剤。
【請求項31】
前記Fc媒介エフェクター機能が、C1qへの結合によって測定される、請求項30記載の使用のための結合剤。
【請求項32】
C1qの前記抗体への結合が、野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように、前記第1および第2の重鎖定常領域が改変されており、C1q結合が、好ましくは、ELISAによって判定される、請求項27~31のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項33】
前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235、D265、N297およびP331位に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれ、L、L、D、N、およびPではない、請求項18~32のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項34】
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置が、それぞれ、前記第1および第2の重鎖においてFおよびEである、請求項33記載の使用のための結合剤。
【請求項35】
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置が、それぞれ、前記第1および第2の重鎖定常領域においてF、E、およびAである、請求項33または34記載の使用のための結合剤。
【請求項36】
第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置が、それぞれ、FおよびEであり、
(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか;または
(ii)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、
請求項33~35のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項37】
第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置が、それぞれ、F、E、およびAであり、
(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか;または
(ii)第1の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、
請求項33~36のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項38】
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:19または25に示される配列[IgG1-FC];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~37のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項39】
前記第1または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:20または26に示される配列[IgG1-F405L];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても9個の置換、例えば、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~38のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項40】
前記第1または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:21または27に示される配列[IgG1-K409R];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~38のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項41】
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:22または28に示される配列[IgG1-Fc_FEA];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても7個の置換、例えば、多くても6個の置換、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~37のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項42】
前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:24または30に示される配列[IgG1-Fc_FEAL];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~41のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項43】
前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:23または29に示される配列[IgG1-Fc_FEAR];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
請求項18~42のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項44】
前記結合剤がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項45】
前記結合剤がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項46】
前記第1の軽鎖定常領域が、カッパ(κ)軽鎖定常領域またはラムダ(λ)軽鎖定常領域である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項47】
前記第2の軽鎖定常領域が、ラムダ(λ)軽鎖定常領域またはカッパ(κ)軽鎖定常領域である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項48】
前記第1の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域であり、かつ前記第2の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である;または
前記第1の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域であり、かつ前記第2の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、
先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項49】
カッパ(κ)軽鎖が、
(a)SEQ ID NO:35に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項44~48のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項50】
ラムダ(λ)軽鎖が、
(a)SEQ ID NO:36に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項45~49のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項51】
前記結合剤が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項52】
前記結合剤が、完全長IgG1抗体である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項53】
前記結合剤が、IgG1m(f)アロタイプの抗体である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項54】
前記結合剤が、
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖であって、第1の重鎖がSEQ ID NO:31に示される配列を含み、かつ第1の軽鎖がSEQ ID NO:32に示される配列を含む、第1の重鎖および軽鎖;
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖であって、第2の重鎖がSEQ ID NO:33に示される配列を含み、かつ第2の軽鎖がSEQ ID NO:34に示される配列を含む、第2の重鎖および軽鎖
を含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項55】
前記結合剤が、アカサンリマブまたはそのバイオシミラーである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項56】
前記結合剤が、ヒスチジン、スクロース、およびポリソルベート-80を含む組成物または製剤中にあり、5~6のpHを有する、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項57】
前記結合剤が、約20mM ヒスチジン、約250mM スクロース、約0.02%ポリソルベート-80を含む組成物または製剤中にあり、約5.5のpHを有する、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項58】
前記結合剤が、10~30mgの結合剤/mL、例えば、20mgの結合剤/mLを含む組成物または製剤中にある、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項59】
前記結合剤が、請求項56~58のいずれか一項に定義される通りの組成物中にあり、投与前に0.9% NaCl(食塩水)中で希釈される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項60】
PD-1阻害剤が、PD-1に結合する抗体であり、PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:104、101および100にそれぞれ示される通りの配列を含むVH領域CDR1、CDR2およびCDR3と、SEQ ID NO:107、QASおよびSEQ ID NO:105にそれぞれ示される通りの配列を含むVL領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項61】
PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:111に示される通りのVH配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、請求項60記載の使用のための結合剤。
【請求項62】
PD-1に結合する抗体が、重鎖可変領域(VH)を含み、VHが、SEQ ID NO:111に示される通りの配列を含む、請求項60または61記載の使用のための結合剤。
【請求項63】
PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:112に示される通りのVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項60~62のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項64】
PD-1に結合する抗体が、軽鎖可変領域(VL)を含み、VLが、SEQ ID NO:112に示される通りの配列を含む、請求項63記載の使用のための結合剤。
【請求項65】
PD-1に結合する抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、SEQ ID NO:111に示される通りの配列を含むかまたは前記配列を有し、VLが、SEQ ID NO:112に示される通りの配列を含むかまたは前記配列を有する、請求項60~64のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項66】
PD-1に結合する抗体が、重鎖定常領域を含み、重鎖定常領域が、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の234位に対応する位置に芳香族または非極性アミノ酸、およびEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の236位に対応する位置にグリシン以外のアミノ酸を含む、請求項60~65のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項67】
236位に対応する位置のアミノ酸が、塩基性アミノ酸である、請求項66記載の使用のための結合剤。
【請求項68】
塩基性アミノ酸が、リシン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群より選択される、請求項67記載の使用のための結合剤。
【請求項69】
塩基性アミノ酸が、アルギニン(G236R)である、請求項67または68記載の使用のための結合剤。
【請求項70】
234位に対応する位置のアミノ酸が、芳香族アミノ酸である、請求項66~69のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項71】
芳香族アミノ酸が、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンからなる群より選択される、請求項70記載の使用のための結合剤。
【請求項72】
234位に対応する位置のアミノ酸が、非極性アミノ酸である、請求項66~69のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項73】
非極性アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、請求項72記載の使用のための結合剤。
【請求項74】
非極性アミノ酸が、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、請求項72または73記載の使用のための結合剤。
【請求項75】
234位に対応するアミノ酸が、フェニルアラニン(L234F)である、請求項66~74のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項76】
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の235位に対応する位置のアミノ酸が、酸性アミノ酸である、請求項66~75のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項77】
酸性アミノ酸が、アスパラギン酸またはグルタミン酸である、請求項76記載の使用のための結合剤。
【請求項78】
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の235位に対応する位置のアミノ酸が、グルタミン酸(L235E)である、請求項66~77のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項79】
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中の234、235、および236位に対応する位置のアミノ酸が、234位の非極性または芳香族アミノ酸、235位の酸性アミノ酸、および236位の塩基性アミノ酸である、請求項66~78のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項80】
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域において、234位に対応するアミノ酸がフェニルアラニンであり、235位に対応するアミノ酸がグルタミン酸であり、236位に対応するアミノ酸がアルギニンである(L234F/L235E/G236R)、請求項66~79のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項81】
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:93に示される通りの重鎖定常領域配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む、請求項60~80のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項82】
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:93に示される通りの配列を含む、請求項60~81のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項83】
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域のアイソタイプがIgG1である、請求項60~82のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項84】
PD-1に結合する抗体が、モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体またはそのような抗体の断片である、請求項60~83のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項85】
PD-1に結合する抗体が、低減または枯渇したFc媒介エフェクター機能を有する、請求項60~84のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項86】
PD-1に結合する抗体の定常領域への補体タンパク質C1qの結合が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、請求項60~85のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項87】
PD-1に結合する抗体へのIgG Fc-ガンマ受容体の1つまたは複数の結合が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、請求項60~86のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項88】
1つまたは複数のIgG Fc-ガンマ受容体が、Fc-ガンマRI、Fc-ガンマRIIおよびFc-ガンマRIIIの少なくとも1つから選択される、請求項87記載の使用のための結合剤。
【請求項89】
IgG Fc-ガンマ受容体が、Fc-ガンマRIである、請求項87または88記載の使用のための結合剤。
【請求項90】
PD-1に結合する抗体が、Fc-ガンマRI媒介エフェクター機能を誘導できないか、または、誘導されたFc-ガンマRI媒介エフェクター機能が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、請求項60~89のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項91】
PD-1に結合する抗体が、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/もしくはファゴサイトーシスの少なくとも1つを誘導できないか、または
補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/もしくはファゴサイトーシスの少なくとも1つが、低下した程度で誘導される、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、
請求項60~90のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項92】
野生型抗体と比較して、PD-1に結合する抗体への新生児Fc受容体(FcRn)の結合が影響を受けない、請求項60~91のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項93】
PD-1がヒトPD-1である、請求項60~92のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項94】
PD-1が、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示される通りのアミノ酸配列を有するもしくは含む、または
PD-1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示される通りのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、またはその免疫原性断片である、
請求項93記載の使用のための結合剤。
【請求項95】
PD-1に結合する抗体が、生きている細胞の表面に存在するPD-1の天然エピトープに結合する、請求項60~94のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項96】
PD-1に結合する抗体が、PD-1に結合する第1の抗原結合領域と、別の抗原に結合する少なくとも1つのさらなる抗原結合領域とを含む多重特異性抗体である、請求項60~95のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項97】
PD-1に結合する抗体が、PD-1に結合する第1の抗原結合領域と、別の抗原に結合する第2の抗原結合領域とを含む二重特異性抗体である、請求項96記載の使用のための結合剤。
【請求項98】
PD-1に結合する第1の抗原結合領域が、請求項61~65のいずれか一項に示される通りの重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項96または97記載の使用のための結合剤。
【請求項99】
対象がヒト対象である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項100】
腫瘍またはがんが、固形腫瘍またはがんである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項101】
前記腫瘍が、PD-L1陽性腫瘍である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項102】
腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳腫瘍、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項103】
腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))および頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)からなる群より選択される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項104】
腫瘍またはがんが、肺がん、特に、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである、請求項102または103記載の使用のための結合剤。
【請求項105】
腫瘍またはがんが、転移性、例えば、転移性NSCLCである、請求項100~104のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項106】
肺がん、特に、NSCLCが、上皮成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再構成を有していない、請求項104または105記載の使用のための結合剤。
【請求項107】
肺がん、特に、NSCLCが、がん細胞を含み、PD-L1が、例えば免疫組織染色(IHC)によって評価した場合に、がん細胞または腫瘍細胞の≧1%で発現される、請求項104~106のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項108】
対象が、転移性疾患の先行全身処置を受けたことがない、先行請求項の使用のための結合剤。
【請求項109】
対象が、チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による先行処置を受けたことがない、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項110】
対象が、4-1BB(CD137)標的剤、例えば、抗4-1BB(CD137)抗体、抗腫瘍ワクチンまたは自己細胞免疫療法による先行処置を受けたことがない、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項111】
腫瘍またはがんが、チェックポイント阻害剤による全身処置などの処置後、再発したおよび/または抵抗性である、請求項1~107のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項112】
対象が、少なくとも1種の先行全身療法ライン、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を含む全身療法を受けている、請求項1~107および111のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項113】
がんまたは腫瘍が、再発したおよび/もしくは抵抗性であるか、または、対象が、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤もしくはPD-L1阻害剤による処置後に進行を示しており、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤が、単剤療法としてまたは併用療法の一部として投与される、請求項1~107、111および112のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項114】
最後の先行処置が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤によるものであり、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤が、単剤療法としてまたは併用療法の一部として投与される、請求項1~107および111~113のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項115】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤による最終処置における進行からの時間が、8ヶ月以下、例えば、7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下、または例えば2週間以下である、請求項1~107および111~114のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項116】
最後の先行処置の一部としての抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤の最終投薬からの時間が、8ヶ月以下、例えば、7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下、または例えば2週間以下である、請求項1~107および111~115のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項117】
がんまたは腫瘍が、再発したおよび/または抵抗性であるか、あるいは
対象が、
(i)抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後のプラチナダブレット化学療法、または
(ii)プラチナダブレット化学療法後の抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置
の途中またはその後に進行を示している、
請求項1~107および111~116のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項118】
対象が、タキサン化学療法剤、例えば、ドセタキセルによる先行処置、例えば、タキサン化学療法剤、例えば、ドセタキセルによるNSCLCの先行処置を受けたことがない、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項119】
前記結合剤およびPD-1阻害剤が、少なくとも1つの処置サイクルにおいて投与され、各処置サイクルが、2週間(14日)、3週間(21日)、4週間(28日)、5週間(35日)、または6週間(42日)である、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項120】
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、2週毎(1Q2W)、3週毎(1Q3W)、4週毎(1Q4W)、5週毎(1Q5W)、または6週毎(1Q6W)に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項121】
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項122】
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、各処置サイクルの1日目に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項123】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記結合剤の量が100mgである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項124】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記PD-1阻害剤の量が200mgである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項125】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記PD-1阻害剤の量が400mgである、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項126】
前記結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の200mg用量が、3週間毎(1Q3W)に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項127】
前記結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の400mg用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項128】
腫瘍またはがんが、NSCLCであり、アカサンリマブまたはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量およびニボルマブであるPD-1阻害剤の200mg用量が、3週間毎(1Q3W)に、例えば、各3週間処置サイクルの1日目に投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項129】
最初にPD-1阻害剤が投与され、続いて前記結合剤が投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項130】
前記結合剤が、静脈内(IV)注入を使用して、最低30分間にわたって、例えば、最低60分間にわたって投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項131】
前記結合剤が、静脈内(IV)注入を使用して、30分間にわたって投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項132】
PD-1阻害剤が、静脈内注入として、30分間にわたって投与される、先行請求項のいずれか一項記載の使用のための結合剤。
【請求項133】
(i)CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含む結合剤と、(ii)PD-1阻害剤とを含む、キットであって、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
キット。
【請求項134】
前記結合剤が、請求項1、2および7~58のいずれか一項に定義される通りであり、かつ/または、PD-1阻害剤が、請求項3~6および59~97のいずれか一項に定義される通りである、請求項133記載のキット。
【請求項135】
前記結合剤、PD-1阻害剤、および存在する場合、1つまたは複数の追加の治療剤が、全身投与用、特に、注射または注入、例えば、静脈内注射または注入用である、請求項133または134記載のキット。
【請求項136】
対象において腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法における使用のための、請求項133~135のいずれか一項記載のキット。
【請求項137】
腫瘍もしくはがんおよび/または対象および/または方法が、請求項1~132のいずれか一項に定義される通りである、請求項136記載の使用のためのキット。
【請求項138】
対象において腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法であって、
PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を対象に投与する工程を含み、
結合剤が、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み、かつ
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
その際PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
方法。
【請求項139】
腫瘍もしくはがんおよび/または対象および/または方法および/または結合剤および/またはPD-1阻害剤が、請求項1~132のいずれか一項に定義される通りである、請求項138記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための、ヒトCD137およびヒトPD-L1に結合する結合剤とPD-1阻害剤とを併用した併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
CD137(4-1BB)は、TNFRファミリーのメンバーであり、CD8+およびCD4+ T細胞、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラーT細胞(NK(T)細胞)、B細胞ならびに好中球上の共刺激分子である。T細胞上で、CD137は、構成的に発現されないが、T細胞受容体(TCR)活性化を受けて誘導される(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上で(Gros et al., J. Clin Invest 2014;124(5):2246-59)(非特許文献1))。その天然リガンドである4-1BBLまたはアゴニスト抗体を介した刺激は、TRAF-2およびTRAF-1をアダプターとして用いたシグナル伝達を招く。CD137による初期シグナル伝達は、最終的に核因子(NF)-κBおよび分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路の活性化をもたらすK-63ポリユビキチン化反応を伴う。シグナル伝達は、増加したT細胞共刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟、および延長されたCD8+ T細胞生存を招く。CD137に対するアゴニスト抗体は、様々な前臨床モデルにおいて、T細胞による抗腫瘍制御を促進することが示されている(Murillo et al., Clin Cancer Res 2008;14(21):6895-906(非特許文献2))。CD137を刺激する抗体は、T細胞の生存および増殖を誘導することができ、それにより抗腫瘍免疫応答が増強される。CD137を刺激する抗体は、先行技術に開示されており、ヒトIgG4抗体(AU 2004279877(特許文献1))であるウレルマブ、およびヒトIgG2抗体であるウトミルマブを含む(Fisher et al., 2012, Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733(非特許文献3))。
【0003】
プログラム死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は、33kDaの1回膜貫通I型膜タンパク質である。選択的スプライシングに基づき、3種類のPD-L1アイソフォームが記載されている。PD-L1は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインおよび1つのIg様V型ドメインを含有する。新鮮単離されたT細胞およびB細胞は、ごくわずかな量のPD-L1しか発現せず、CD14+単球の一部(約16%)が、PD-L1を構成的に発現する。しかしながら、インターフェロン-γ(IFNγ)が、腫瘍細胞上のPD-L1をアップレギュレーションすることが知られている。
【0004】
PD-L1は、(1)活性化T細胞上のその受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)に結合することにより腫瘍反応性T細胞を寛容化することによって;(2)腫瘍細胞発現PD-L1を介したPD-1シグナル伝達によりCD8+ T細胞およびFasリガンド媒介溶解に対して腫瘍細胞を耐性にすることによって;(3)T細胞発現CD80(B7.1)を介した逆シグナル伝達によりT細胞を寛容化することによって;ならびに(4)誘導されたT制御性細胞の発生および維持を促進することによって、抗腫瘍免疫を妨害する。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がんおよび結腸がんを含む多くのヒトのがんで発現される(Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6(非特許文献4))。
【0005】
PD-L1遮断抗体は、PD-L1を過剰発現することが知られている数種類のがん(黒色腫、NSCLCを含む)において臨床活性を示している。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。アテゾリズマブは、現在、様々なタイプの固形腫瘍を含む数種類の適応症の免疫療法として臨床試験中であり(例えば、Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265(非特許文献5)を参照のこと)、非小細胞肺がんおよび膀胱がん適応症で承認を受けている。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385(非特許文献6))は、転移性メルケル細胞がんを有する成人および12歳以上の小児患者の治療でFDAから承認を受けており、現在、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がんおよび腎臓がんを含む数種類のがん適応症において臨床試験中である。PD-L1抗体であるデュルバルマブは、局所進行性または転移性の尿路上皮がん適応症で承認を受けており、複数の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床開発段階にある(例えば、Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25(非特許文献7)を参照のこと)。さらなる抗PD-L1抗体が、例えば、WO 2004004771(特許文献2)に記載されている。
【0006】
Horton et al.,(J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2): O10)(非特許文献8)は、アゴニスト4-1BB抗体と中和PD-L1抗体との併用を開示している。WO 2019/025545(特許文献3)は、ヒトPD-L1に結合しかつヒトCD137に結合する結合剤、例えば二重特異性抗体を提供している。
【0007】
しかしながら、当技術分野におけるこれらの進歩にもかかわらず、腫瘍の進行を抑制するまたはがんを処置するための改善された治療法が大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】AU 2004279877
【特許文献2】WO 2004004771
【特許文献3】WO 2019/025545
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gros et al., J. Clin Invest 2014;124(5):2246-59)
【非特許文献2】Murillo et al., Clin Cancer Res 2008;14(21):6895-906
【非特許文献3】Fisher et al., 2012, Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733
【非特許文献4】Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6
【非特許文献5】Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265
【非特許文献6】Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385
【非特許文献7】Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25
【非特許文献8】Horton et al.,(J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2): O10)
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明者らは、驚くべきことに、(i)ヒトCD137に結合しかつヒトPD-L1に結合する結合剤を用いた刺激と(ii)PD-1阻害剤(特に、PD-1抗体)との併用により、免疫応答が増幅されることを見いだした。
【0011】
したがって、第1の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法において使用するための結合剤を提供し、該方法は、PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を該対象に投与する工程を含み、結合剤は、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み;かつ
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体、またはその抗原結合断片ではない。
【0012】
第2の局面では、本開示は、(i)CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の領域を含む結合剤と、(ii)PD-1阻害剤とを含むキットを提供し、
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体、またはその抗原結合断片ではない。
【0013】
第3の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法において使用するための第2の局面のキットを提供する。
【0014】
第4の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法を提供し、該方法は、PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を該対象に投与する工程を含み、結合剤は、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み、かつ
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体、またはその抗原結合断片ではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】CD137×PD-L1二重特異性抗体の予想される作用機序の概略図を示している。(A)PD-L1は、抗原提示細胞(APC)上にも、腫瘍細胞上にも発現される。負の調節分子PD-1を発現するT細胞へのPD-L1の結合は、T細胞活性化シグナルを効果的に無効化し、最終的にT細胞阻害を招く。(B)CD137×PD-L1二重特異性抗体を添加すると、阻害性のPD-1:PD-L1相互作用が、PD-L1特異的アームを介して遮断され、同時に、二重特異性抗体が、細胞-細胞相互作用を通じて、アゴニスト性シグナル伝達をT細胞上に発現されるCD137に提供し、結果として強力なT細胞共刺激をもたらす。
図2】C57BL/6マウスへの1×106個のMC38細胞の皮下接種によって確立されたMC38同系腫瘍モデルを示している。腫瘍が平均体積64mm3に達したときに、マウスを無作為化し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)、抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg)の単独もしくは組み合わせのいずれか、またはPBSで処置した(すべて2QW×3)。A. 示しているデータは、処置群(n=10)当たりの腫瘍体積中央値であり、終了基準に達した動物についてはデータを繰り越す。成長曲線は、処置群内の動物の<50%が生存したままであったとき(PBS、mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB、抗mPD-1)または35日目まで(mbsIgG2a-PD-L1x4-1BBと抗mPD-1との併用)に中断した。矢印は、処置の日を示す。B. 500mm3よりも小さい腫瘍体積を有するマウスの割合として定義される無増悪生存期間は、カプラン・マイヤー曲線として示される。45日目の処置群間の生存を比較するためにマンテル・コックス解析を使用した(表8)。
図3】活性なPD1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイにおけるGEN1046および抗PD-1抗体ニボルマブの増殖用量応答の分析を示している。クローディン-6特異的TCR-およびPD-1-IVT-RNAをエレクトロポレーションしたCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAをエレクトロポレーションした未成熟樹状細胞と、(A)GEN1046(1から0.00015μg/mLの3倍系列希釈で)または(B)ニボルマブ(0.8から0.00005μg/mLの4倍系列希釈で)の存在下で5日間インキュベートした。CD8+ T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示しているデータは、抗体濃度の関数としての拡大指数である。エラーバー(SD)は、実験内の変動を示す((A)ではn=3の反復;(B)ではn=2の2連、1つの代表ドナーからの細胞を使用)。GraphPad Prism software v9.0を使用して、曲線を4パラメーター対数フィットによりフィッティングさせ、EC50値およびヒルスロープ(表9および10に示される)を決定した。
図4】抗PD-1抗体ニボルマブの非存在下または存在下でのGEN1046によるPD-1/PD-L1媒介T細胞阻害の開放、およびCD8+ T細胞増殖の追加の共刺激を示している。クローディン-6特異的TCR-およびPD-1-インビトロ翻訳(IVT)-RNAをエレクトロポレーションしたCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAをエレクトロポレーションした未成熟樹状細胞と、0.2μg/mL、0.0067μg/mLまたは0.0022μg/mLのGEN1046の存在下、一定濃度1.6μg/mLのニボルマブまたは0.8μg/mLの非結合対照抗体IgG1-ctrlと組み合わせて5日間インキュベートした(n=2の技術反復/条件、n=3の個別ドナーからの細胞を使用)。培地のみ、0.8μg/mLのIgG1-ctrlのみおよび1.6μg/mLのニボルマブのみを使用して、GEN1046の非存在下でのベースライン増殖を決定した。CD8+ T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。棒グラフは、FlowJo software v10.7.1を使用して計算された指定条件当たりの拡大指数の平均±SDを表す。破線は、抗PD-1抗体ニボルマブの存在下でのベースライン増殖を表す。
図5】悪性固形腫瘍を有する対象におけるGEN1046の安全性を評価するための拡大コホートを用いたファーストインヒューマンの非盲検用量漸増試験の概略図である。
図6】チェックポイント阻害剤による先行療法を受けていた対象(灰色線)およびチェックポイント阻害剤無処置患者(黒色線)での無増悪生存期間を示しているウォーターフォールプロットである。
図7】CPI経験拡大コホート(GEN1046単剤療法)間の対象における最後の先行抗PD-(L)1以降の、臨床的奏効(PR)を有する対象と病勢安定(SD)または病勢進行(PD)を有する対象を比較した時間の比較である。ウィルコクソン検定を使用して奏効群を比較した。PR対PD:p=0.0017;PR対SD:p=0.034。
図8-1】異なる種のPD-1へのIgG1-PD1の結合を示している。異なる種のPD-1を一過性トランスフェクトしたCHO-S細胞を、IgG1-PD1、ペムブロリズマブ、または非結合対照抗体IgG1-ctrl-FERRおよびIgG4-ctrlとインキュベートし、フローサイトメトリーを使用して結合を分析した。IgG1-PD1とインキュベートした非トランスフェクトCHO-S細胞を陰性対照として含めた。A~B。示しているデータは、4つの実験のうちの1つの代表実験からの2連ウェルの幾何平均蛍光強度(gMFI)±SDである。C~D. 示しているデータは、2つの実験のうちの1つの代表実験からの2連ウェルのgMFI±SDである。E. 示しているデータは、4つの実験のうちの1つの代表実験からの2連ウェルの幾何平均蛍光強度(gMFI)±SDである。略語:gMFI=幾何平均蛍光強度;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;PE=R-フィコエリスリン。
図8-2】図8-1の説明を参照のこと。
図9A】IgG1-PD1とPD-L1およびPD-L2とのヒトPD-1への競合的結合を示している。ヒトPD-1を一過性トランスフェクトしたCHO-S細胞を、IgG1-PD1またはペムブロリズマブの存在下、1μg/mLのビオチン化組み換えヒトPD-L1(A)またはPD-L2(B)とインキュベートした。IgG1-ctrl-FERRを陰性対照として含めた。細胞をストレプトアビジン-アロフィコシアニンで染色し、フローサイトメトリーを使用してストレプトアビジン-アロフィコシアニン+細胞の割合を測定することによって、ビオチン化PD-L1またはPD-L2に結合している細胞の割合を判定した。抗体なし対照および非トランスフェクト試料中のストレプトアビジン-アロフィコシアニン+細胞の割合を破線で示す。示しているデータは、3つの別々の実験のうちの1つの代表実験からの単一反復のものである。略語:Ab=抗体;CHO-S=チャイニーズハムスター卵巣、浮遊;ctrl=対照;FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;PD-L2=プログラム細胞死1リガンド2。
図9B図9Aの説明を参照のこと。
図10】IgG1 PD1によるPD-1/PD-L1チェックポイントの機能的阻害を示している。PD-1/PD-L1軸の遮断を、細胞ベースの生物発光PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを使用して試験した。示しているデータは、5つ(ペムブロリズマブおよびIgG1-PD1)、3つ(IgG1-ctrl-FERR)または2つ(ニボルマブ)の実験のうちの1つの代表実験における2連ウェルの平均発光±SDである。略語:FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;RLU=相対発光量;SD=標準偏差。
図11】抗原特異的T細胞増殖アッセイでのIgG1-PD1によるCD8+ T細胞増殖の増強を示している。ヒトCD8+ T細胞に、CLDN6特異的TCRをコードするRNAおよびPD-1をコードするRNAをエレクトロポレーションし、CFSEで標識した。次いで、T細胞を、IgG1-PD1、ペムブロリズマブ、ニボルマブまたはIgG1-ctrl-FERRの存在下で、CLDN6コードRNAをエレクトロポレーションしたiDCと共培養した。4日後にフローサイトメトリーによってT細胞におけるCFSE希釈を分析し、これを使用して拡大指数を算出した。3つの独立実験で評価した4つのドナーのうちの1つの代表ドナー(26268_B)のデータを示している。エラーバーは、2連ウェルのSDを表す。GraphPad Prismを使用して、曲線を4パラメーター対数フィットによりフィッティングさせた。略語:CFSE=カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;SD=標準偏差。
図12】同種MLRアッセイでのIgG1-PD1誘導IFNγ分泌を示している。同種ヒトmDCおよびCD8+ T細胞の3つの特有のドナーペアを、IgG1-PD1またはペムブロリズマブの存在下で5日間共培養した。IgG1-ctrl-FERRおよびIgG4アイソタイプ対照を陰性対照として含めた。IFNγ分泌は、IFNγ特異的イムノアッセイを使用して上清中で分析した。示しているデータは、3つの特有の同種ドナーペアについての平均±平均の標準誤差(SEM)濃度である。略語:FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;IFN=インターフェロン;IgG=免疫グロブリンG;mDC=成熟樹状細胞;MLR=混合リンパ球反応;SEM=平均の標準誤差。
図13A】同種MLRアッセイでのIgG1-PD1誘導サイトカイン分泌を示している。同種ヒトmDCおよびCD8+ T細胞の3つの特有のドナーペアを、1μg/mLのIgG1-PD1またはペムブロリズマブの存在下で5日間共培養した。IgG1-ctrl-FERRを陰性対照として含めた。サイトカイン分泌は、Luminexを使用して上清中で分析した。(A)サイトカインレベルは、未処理共培養物で測定されたサイトカインレベルに対する平均倍率変化として表す。(B)3つの特有の同種ドナーペアのサイトカイン産生のレベルを示しており、水平線は、平均、上限および下限を示している。略語:FC=倍率変化;FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;GM-CSF=顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;IgG=免疫グロブリンG;IL=インターロイキン;MCP-1=単球走化性タンパク質1;mDC=成熟樹状細胞;MLR=混合リンパ球反応;TNF=腫瘍壊死因子。
図13B図13Aの説明を参照のこと。
図14】膜結合IgG1-PD1へのC1q結合を示している。IgG1-PD1へのC1qの結合は、刺激したヒトCD8+ T細胞を使用して分析した。IgG1-PD1、IgG1-ctrl-FERR、IgG1-ctrl、または陽性対照抗体IgG1-CD52-E430G(不活性変異なし、六量体化増強変異あり)とのインキュベーション後、C1qの供給源としてヒト血清と細胞をインキュベートした。C1qの結合は、FITCコンジュゲートウサギ抗C1q抗体で検出した。示しているデータは、3つの比較実験間の7つのドナーのうちの1つの代表ドナーからの2連ウェルの幾何平均蛍光強度(gMFI)±標準偏差(SD)である。略語:FITC=フルオレセインイソチオシアナート;gMFI=幾何平均蛍光強度;PE=R-フィコエリスロシアニン。
図15-1】IgG1-PD1のFcγR結合を示している。固定化したヒト組み換えFcγR構築物へのIgG1-PD1の結合は、認可を受けたアッセイでのSPRによって分析した(n=1)。IgG1-PD1のFcγRIa(A)、FcγRIIa-H131(B)、FcγRIIa-R131(C)、FcγRIIb(D)、FcγRIIIa-F158(E)、およびFcγRIIIa-V158(F)結合。抗体IgG1-ctrl(FER不活性変異なし)を結合の陽性対照として含めた。略語:ctrl=対照;FcγR=Fcガンマ受容体;IgG=免疫グロブリンG;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;RU=共鳴単位。
図15-2】図15-1の説明を参照のこと。
図16-1】IgG1-PD1およびいくつかの他の抗PD-1抗体のFcγR結合を示している。固定化したヒト組み換えFcγR構築物へのIgG1-PD1、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブおよびセミプリマブの結合は、SPRによって分析した(n=3)。試験抗体のFcγRIa(A)、FcγRIIa-H131(B)、FcγRIIa-R131(C)、FcγRIIb(D)、FcγRIIIa-F158(E)、およびFcγRIIIa-V158(F)結合。IgG1-ctrlおよびIgG4-ctrl抗体を、野生型Fc領域を有するIgG1およびIgG4分子のFcγR結合の陽性対照として含めた。3つの別々の実験の結合応答±SDを示している。略語:ctrl=対照;FcγR=Fcガンマ受容体;IgG=免疫グロブリンG;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;RU=共鳴単位。
図16-2】図16-1の説明を参照のこと。
図17】IgG1-PD1およびいくつかの他の抗PD-1抗体のFcγRIa結合を示している。ヒトFcγRIaを一過性発現するCHO-S細胞へのIgG1-PD1、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブおよびセミプリマブの結合は、フローサイトメトリーによって分析した。IgG1-ctrlおよびIgG1-ctrl-FERRをそれぞれ陽性対照および陰性対照として含めた。略語:ctrl=対照;FcγR=Fcガンマ受容体;FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;huIgG=ヒト免疫グロブリンG;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;PE=R-フィコエリスリン。
図18】マウス血漿試料中の総ヒトIgGを示している。t=0時に1または10mg/kgのIgG1-PD1をマウスに静脈内注射し、注射の10分後、4時間後、1日後、2日後、8日後、14日後および21日後に一連の血漿試料を採取した。血漿試料中の総huIgGは、マウス毎にECLIAによって判定した。データは、3匹の個々のマウスの平均huIgG濃度±SDとして表す。破線は、ヒトでのIgGクリアランスに基づき2コンパートメントモデルによって予測された野生型(wt)huIgGの血漿濃度を示す(Bleeker et al., 2001, Blood. 98(10):3136-42)。点線は、LLOQおよびULOQを示す。略語:huIgG=ヒトIgG;IgG=免疫グロブリンG;LLOQ=定量下限;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;SD=標準偏差;ULOQ=定量上限。
図19A】ヒトPD-1ノックインマウスにおけるIgG1-PD1の抗腫瘍活性を示している。hPD-1 KIマウスへのSC移植によってMC38結腸がん同系腫瘍モデルを確立した。マウスに、0.5、2、もしくは10mg/kgのIgG1-PD1もしくはペムブロリズマブまたは10mg/kgのIgG1-ctrl-FERRを2QW×3投与した(1群当たりマウス9匹)。(A)群が完了する最後の時点までの各群の平均腫瘍体積±SEM。(B)すべての群が完了する最終日(11日目)での異なる群の腫瘍体積。示しているデータは、各処置群での個々のマウスの腫瘍体積、ならびに1処置群当たりの平均腫瘍体積±SEMである。マン・ホイットニー解析を使用して、処置群の腫瘍体積をIgG1-ctrl-FERR処理群と比較した。*p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001。C. 500mm3よりも小さい腫瘍体積を有するマウスの割合として定義される無増悪生存期間は、カプラン・マイヤー曲線として示される。腫瘍体積が500mm3を超える前の16日目に原因不明で死んだ2mg/kgのIgG1-PD1群の1匹のマウスを解析から除外した。略語:2QW×3=週2回を3週間;ctrl=対照;FERR=L234F/L235E/G236R/K409R変異;IgG=免疫グロブリンG;KI=ノックイン;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;SC=皮下;SEM=平均の標準誤差。
図19B図19Aの説明を参照のこと。
図19C図19Aの説明を参照のこと。
図20】同種MLRアッセイでのGEN1046と併用したIgG1-PD1によって誘導されたIL-2分泌を示している。同種ヒトmDCおよびCD8+ T細胞の2つの特有のドナーペアを、IgG1-PD1(1μg/mL)、ペムブロリズマブ(研究用、1μg/mL)、GEN1046(0.001~30μg/mL)、またはペムブロリズマブもしくはIgG1-PD1のいずれかとGEN1046の組み合わせの存在下で5日間共培養した。IgG1-ctrl-FERR(100μg/mL)、IgG4(100μg/mL)、bsIgG1-PD-L1xctrl(30μg/mL)、bsIgG1-ctrlx4-1BB(30μg/mL)およびIgG1-ctrl-FEAL(30μg/mL)を対照抗体として含めた。IL-2分泌は、Luminexによって上清中で分析した。示しているデータは、2つの特有の同種ドナーペアの平均IL-2レベル±SEMである。略語:bsIgG1=二重特異性免疫グロブリンG1;ctrl=対照;FERR=変異L234F/L235E/G236R、K409R;FEAL=変異L234F/L235E/D265A、F405L;IL=インターロイキン;IgG=免疫グロブリンG;mDC=成熟樹状細胞;MLR=混合リンパ球反応;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;SEM=平均の標準誤差。
図21】抗原特異的T細胞刺激アッセイでのGEN1046と併用したIgG1-PD1によるCD8+ T細胞増殖の増強を示している。ヒトCD8+ T細胞に、CLDN6特異的TCRをコードするRNAおよびPD1をコードするRNAをエレクトロポレーションし、CFSEで標識した。次いで、T細胞を、0.8μg/mLのIgG1-PD1、ペムブロリズマブもしくはIgG1-ctrl-FERRの単独または指定濃度のGEN1046との組み合わせのいずれかの存在下で、CLDN6をエレクトロポレーションしたiDCと共培養した。4日後にフローサイトメトリーによってT細胞におけるCFSE希釈を分析し、これを使用して拡大指数を算出した。2つの独立実験で評価した4つのドナーのうちの1つの代表ドナーのデータを示している。エラーバーは、2連ウェルのSDを表す。点線は、モックをエレクトロポレーションした(すなわち、CLDN6を発現しない)iDCと共培養したCD8+ T細胞の拡大指数を示す。略語:CFSE=カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;CLDN6=クローディン6;ctrl=対照;FERR=変異L234F/L235E/G236R、K409R;iDC=未成熟樹状細胞;IgG1=免疫グロブリンG1;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;RNA=リボ核酸;SD=標準偏差;TCR=T-細胞受容体。
図22】抗原特異的CD8+ T細胞刺激後のGEN1046と併用したIgG1-PD1によるサイトカイン分泌の増強を示している。CLDN6特異的TCRおよびPD1を発現するヒトCD8+ T細胞を、CLDN6を発現するiDCと、図21に示しているように、0.8μg/mLのIgG1-PD1、ペムブロリズマブもしくはIgG1-ctrl-FERRの単独または指定濃度のGEN1046との組み合わせのいずれかの存在下で共培養した。培養上清中のサイトカイン濃度は、4日後にマルチプレックス電気化学発光イムノアッセイによって判定した。2つの独立実験で評価した4つのドナーのうちの1つの代表ドナーのデータを示している。エラーバーは、2連ウェルのSDを表す。略語:CLDN6=クローディン6;ctrl=対照;FERR=変異L234F/L235E/G236R、K409R;GM-CSF=顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子;iDC=未成熟樹状細胞;IgG1=免疫グロブリンG1;IFN=インターフェロン;IL=インターロイキン;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;RNA=リボ核酸;SD=標準偏差;TCR=T-細胞受容体。
図23】C57BL/6マウスへの1×106個のMC38細胞のSC接種によって確立されたMC38結腸がんモデルを示している。腫瘍が平均体積60mm3に達したときに、マウスを無作為化し、指定の抗体またはその組み合わせで処置した(すべて2QW×3)。A. 示しているデータは、処置群(n=10)当たりの腫瘍体積中央値であり、終了基準に達した動物についてはデータを繰り越す。成長曲線は、処置群内の動物の<50%が生存したままであったとき(mIgG2a-ctrl-AAKR、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗マウスPD-1抗体[抗mPD-1])または69日目まで(mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用)に中断した。下向きの三角形は、処置の日を示す。B. 500mm3よりも小さい腫瘍体積を有するマウスの割合として定義される無増悪生存期間は、カプラン・マイヤー曲線として示される。
図24】処置を受けて完全腫瘍退縮を示したマウスの(再)負荷および腫瘍ナイーブマウスの対照群を示している。マウスに、抗体処置を開始した後の121日目にSC注射して1×106個のMC38腫瘍細胞を(再)負荷した。示しているデータは、平均腫瘍体積±SEMである。
図25】mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1抗体の単一薬剤としてのもしくは組み合わせのいずれか、または非結合対照抗体IgG2a-ctrl-AAKRで処置したMC38腫瘍担持C57BL/6マウスの末梢血中のサイトカインレベルを示している。末梢血試料は、ベースライン時(処置の1日前[-1日目]、点線)および各処置の2日後(2日目および5日目)に採取した。サイトカイン分析はECLIAによって実施した。
図26】MC38結腸がんモデルから切除した腫瘍組織で発現される細胞性免疫および腫瘍マーカーに関する定量的なIHCおよびISHデータを示している。C57BL/6マウスに1×106個のMC38細胞を接種した。腫瘍が平均体積50~70mm3に達したときに、マウスを無作為化し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1またはその組み合わせで処置した。処置開始後7日目(1処置群当たりn=5)または14日目(1処置群当たりn=5)に腫瘍を切除した。切除した腫瘍試料の一部は、IHC分析を実施するには小さすぎるため、1処置群当たり4~5個の腫瘍を分析した。切除した腫瘍切片(4μm)を、抗CD3、抗CD4、抗CD8もしくは抗PD-L1抗体を使用して免疫組織染色(IHC)により染色したか、またはインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)により4-1BBもしくはPD-L2について染色した。IHCのデータは、スライドで計数された総細胞に対するマーカー陽性細胞の%ならびに1処置群当たりの平均±SEMとして示す。ISHのデータは、1スライド当たりのRNAscope H-スコアならびに1処置群当たりの平均±SEMとして示す。
図27】MC38結腸がんモデルから解離させた腫瘍組織からのCD8 T-細胞サブセットにおけるGzmBおよびKi67発現を示している。C57BL/6マウスに1×106個のMC38細胞を接種した。腫瘍が平均体積50~70mm3に達したときに、マウスを無作為化し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1またはその組み合わせで処置した。処置開始後7日目(処置群当たりn=5)に腫瘍を切除し、単細胞浮遊液に解離させ、フローサイトメトリーによって分析した。示しているデータは、個々のマウスのCD8+ T細胞集団内のGzmB+細胞(A)またはKi67+細胞(B)の割合および1処置群当たりの平均±SEMである。マン・ホイットニー統計分析を実施して、処置群間でCD8+ T細胞集団内のGzmB+細胞またはKi67+細胞の割合を比較した。* p<0.05および**p <0.01。
【0016】
(表1)配列:以下に、とりわけ配列表に示している配列およびSEQ ID NOについて参照する。また、本明細書に記載される本発明の抗体の具体例についても参照するが、それに本発明が限定されるわけではない。これらの例示的であるが非限定的な本発明の抗体は、抗体の名称を参照することにより本明細書において指定される。太字および下線付きの部分は、234位;235位;236位;265位;405位;409位および430位にそれぞれ対応するF;E;G;A;L;RおよびGであり、前記位置は、EU番号付けに従う。SEQ ID No:83および84では、太字のアミノ酸は、制御されたFabアーム交換に必要な-AAKRまたは-AALT変異を表す。可変領域では、IMGTの定義に従って注釈を付けたCDR領域(特に明記しない限りまたは文脈と矛盾しない限り)に下線を引いている。
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本開示を以下により詳しくさらに説明するが、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬は変更可能であるので、本開示は、これらに限定されないと理解されるべきである。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することを目的にしているだけで、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
以降、本開示の要素をより詳しく説明する。これらの要素は具体的な態様と共に列記しているが、これらを任意の様式および任意の数で組み合わせて追加の態様を創作してよいことが理解されるべきである。様々な形で記載される例および好ましい態様は、本開示を明示的に記載された態様のみに限定すると解釈されるべきではない。本記載は、明示的に記載された態様をいくつもの開示されたおよび/または好ましい要素と組み合わせる態様を支持しかつ包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願におけるすべての記載された要素の任意の並べ替えおよび組み合わせは、文脈が特に指示しない限り、本出願の記載によって開示されたと見なされるべきである。例えば、本明細書において使用される結合剤の好ましい態様において、第1の重鎖が、SEQ ID NO:23または29に示されるアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAR]を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなり、本明細書において使用される結合剤の別の好ましい態様において、第2の重鎖が、SEQ ID NO:24または30に示されるアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAL]を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる場合、本明細書において使用される結合剤のさらに好ましい態様において、第1の重鎖は、SEQ ID NO:23または29に示されるアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAR]を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなり、第2の重鎖は、SEQ ID NO:24または30に示されるアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAL]を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0020】
好ましくは、本明細書において使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Kolbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に記載されるように定義される。
【0021】
本開示の実践は、特に指示のない限り、当分野の参考文献(例えば、Organikum, Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin 1990;Streitwieser/Heathcook, "Organische Chemie", VCH, 1990;Beyer/Walter, "Lehrbuch der Organischen Chemie", S. Hirzel Verlag Stuttgart, 1988;Carey/Sundberg, "Organische Chemie", VCH, 1995;March, "Advanced Organic Chemistry", John Wiley & Sons, 1985;Rompp Chemie Lexikon, Falbe/Regitz (Hrsg.), Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1989;Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照のこと)に説明されている従来の化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組み換えDNA技術を採用する。
【0022】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示のない限りまたは文脈と明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に提供されるあらゆるすべての例、または例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本開示をより良好に例示することを意図しているにすぎず、他に主張される本開示の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書における言語は、本開示の実践に必須の任意の主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書における値の範囲の列記は、その範囲内に含まれるそれぞれ個別の値を個々に参照する簡単な方法として役立つことを意図しているにすぎない。本明細書で特に指示のない限り、それぞれ個別の値は、それが本明細書で個別に列記されているかのように本明細書に組み入れられる。
【0024】
本明細書のテキスト全体を通していくつかの資料が引用される。本明細書において引用される資料の各々(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、上記または下記を問わず、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書では、先行発明が理由で、本発明がそのような開示に先行する権利を有していないことを承認するものと解釈されるべきではない。
【0025】
定義
以降、本開示のすべての局面に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示のない限り、以下の意味を有する。任意の定義されていない用語は、その当技術分野で認識されている意味を有する。
【0026】
本明細書および以下の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の解釈を必要としない限り、語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形語は、述べられたメンバー、整数もしくは工程またはメンバー、整数もしくは工程の群を包含するが、任意の他のメンバー、整数もしくは工程またはメンバー、整数もしくは工程の群を排除しないことを暗示するものと理解されるであろう。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、任意の本質的な意義を持つ他のメンバー、整数または工程を排除することを意味する。「含む(comprising)」という用語は、「から本質的になる」という用語を包含し、これは、「からなる(consisting of)」という用語を包含する。したがって、本出願における出現のたびに、「含む」という用語は、「から本質的になる」または「からなる」という用語と置き換えることができる。同様に、本出願における出現のたびに、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語と置き換えることができる。
【0027】
本開示を説明する文脈(とりわけ、特許請求の範囲の文脈)において使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」ならびに類似の指示対象は、本明細書で特に指示のない限りまたは文脈と明確に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を網羅するものと解釈されるべきである。
【0028】
本明細書において使用される場合、「および/または」は、他の特徴または成分の有無にかかわらず、2つの具体的な特徴または成分のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Xおよび/またはY」は、それぞれが本明細書に個別に提示されているかのように、(i)X、(ii)Y、および(iii)XとYのそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。
【0029】
本開示との関連で、「約」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果をなお保証するものと理解している正確度の幅を意味する。この用語は、典型的には、表示された数値からの±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%、および例えば±0.01%の偏差を示す。当業者に十分に理解されるように、所与の技術的効果に対する数値の特定の当該偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然または生物学的な技術的効果は、一般的に、人為的または工学技術的効果のものよりも大きな当該偏差を有し得る。
【0030】
本開示との関連での「結合剤」という用語は、所望の抗原に結合することが可能な任意の作用物質のことを指す。本開示のある特定の態様では、結合剤は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合剤はまた、合成部分、改変された部分または天然に存在しない部分、特に非ペプチド部分も含み得る。そのような部分は、例えば、所望の抗原結合機能または抗原結合領域、例えば抗体または抗体断片を連結し得る。一態様では、結合剤は、抗原結合CDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0031】
本明細書において使用される場合、「免疫チェックポイント」は、免疫系の調節因子、特に、抗原のT細胞受容体認識の幅および量を調節する共刺激性および阻害性シグナルのことを指す。ある特定の態様では、免疫チェックポイントは、阻害性シグナルである。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、CD28結合と置き換わるCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、LAG-3とMHCクラスII分子との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、TIM-3とそのリガンド、例えばガレクチン9、PtdSer、HMGB1およびCEACAM1の1つまたは複数との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、1つまたはいくつかのKIRとそれらのリガンドとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、TIGITとそのリガンドPVR、PVRL2およびPVRL3の1つまたは複数との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、CD94/NKG2AとHLA-Eとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、VISTAとその結合パートナーとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、1つまたは複数のシグレックとそれらのリガンドとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、GARPとそのリガンドの1つまたは複数との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、CD47とSIRPαとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、PVRIGとPVRL2との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、CSF1RとCSF1との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、BTLAとHVEMとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、アデノシン作動性経路の一部、例えば、A2ARおよび/またはA2BRと、CD39およびCD73によって産生されるアデノシンとの間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、B7-H3とその受容体および/またはB7-H4とその受容体との間の相互作用である。ある特定の態様では、阻害性シグナルは、IDO、CD20、NOXまたはTDOによって媒介される。
【0032】
「チェックポイント阻害剤」(CPI)および「免疫チェックポイント(ICP)阻害剤」という用語は、本明細書において同義的に使用される。この用語は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質を全体的または部分的に低減する、阻害する、それと干渉する、または負にモジュレートする、あるいは1つまたは複数のチェックポイントタンパク質の発現を全体的または部分的に低減する、阻害する、それと干渉する、または負にモジュレートする、結合剤などの分子、例えば、免疫チェックポイントを阻害する、特に、免疫チェックポイントの阻害性シグナルを阻害する、結合剤などの分子のことを指す。一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質に結合する。一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質を調節する1つまたは複数の分子に結合する。一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質の前駆体に、例えば、DNAまたはRNAレベルで結合する。本開示に係るチェックポイント阻害剤として機能する任意の作用物質を使用することができる。「部分的に」という用語は、本明細書において使用される場合、当該レベル、例えば、チェックポイントタンパク質の阻害のレベルの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のことを意味する。
【0033】
一態様では、チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントの阻害性シグナルを阻害する任意の化合物、例えば任意の結合剤であることができ、ここで、阻害性シグナルは、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との間の相互作用;CD28結合と置き換わるCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用;LAG-3とMHCクラスII分子との間の相互作用;TIM-3とそのリガンド、例えばガレクチン9、PtdSer、HMGB1およびCEACAM1の1つまたは複数との間の相互作用;1つまたはいくつかのKIRとそれらのリガンドとの間の相互作用;TIGITとそのリガンドPVR、PVRL2およびPVRL3の1つまたは複数との間の相互作用;CD94/NKG2AとHLA-Eとの間の相互作用;VISTAとその結合パートナーとの間の相互作用;1つまたは複数のシグレックとそれらのリガンドとの間の相互作用;GARPとそのリガンドの1つまたは複数との間の相互作用; CD47とSIRPαとの間の相互作用;PVRIGとPVRL2との間の相互作用;CSF1RとCSF1との間の相互作用;BTLAとHVEMとの間の相互作用;アデノシン作動性経路の一部、例えば、A2ARおよび/またはA2BRと、CD39およびCD73によって産生されるアデノシンとの間の相互作用;B7-H3とその受容体および/またはB7-H4とその受容体との間の相互作用;IDO、CD20、NOXまたはTDOによって媒介される阻害性シグナルからなる群より選択される。一態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、KIR阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、およびGARP阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つである。一態様では、チェックポイント阻害剤は、遮断抗体、例えば、PD-1遮断抗体、CTLA4遮断抗体、PD-L1遮断抗体、PD-L2遮断抗体、TIM-3遮断抗体、KIR遮断抗体、LAG-3遮断抗体、TIGIT遮断抗体、VISTA遮断抗体、またはGARP遮断抗体であり得る。PD-1遮断抗体の例としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、およびスパルタリズマブが挙げられる。CTLA4遮断抗体の例としては、イピリムマブおよびトレメリムマブが挙げられる。PD-L1遮断抗体の例としては、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブが挙げられる。
【0034】
一態様では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:43の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:44の軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0035】
一態様では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、ここで、重鎖可変領域は、
(i)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(ii)SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および
(iii)SEQ ID NO:47のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含み、そして
軽鎖可変領域は、
(i)SEQ ID NO:48のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(ii)SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(iii)SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0036】
本明細書に記載される抗PD-1抗体の一態様では、重鎖可変ドメインは、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む。
【0037】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質に、好ましくは、抗体またはB細胞受容体(BCR)などの抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち、免疫グロブリンドメインを特徴とする。この用語は、膜結合免疫グロブリンも可溶性免疫グロブリンも包含する。膜結合免疫グロブリンはまた、表面免疫グロブリンまたは膜免疫グロブリンとも称され、これらは、一般的に、BCRの一部である。可溶性免疫グロブリンは、一般的に、抗体と称される。
【0038】
免疫グロブリンの構造は、十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡潔に述べると、免疫グロブリンは、一般的に、いくつかの鎖、典型的には、ジスルフィド結合を介して連結されている2本の同一の重鎖と2本の同一の軽鎖を含む。これらの鎖は、免疫グロブリンドメインまたは領域、例えば、VLまたはVL(可変軽鎖)ドメイン/領域、CLまたはCL(定常軽鎖)ドメイン/領域、VHまたはVH(可変重鎖)ドメイン/領域、ならびにCHまたはCH(定常重鎖)ドメイン/領域CH1(CH1)、CH2(CH2)、CH3(CH3)、およびCH4(CH4)から主に構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3からなる。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、高度に可動性である。ヒンジ領域中のジスルフィド結合は、IgG分子中の2本の重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には、VLおよびCLからなる。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)とも称される、超可変性の領域(または配列が超可変性であり得るおよび/もしくは構造的に定義されたループの形態であり得る超可変領域)にさらに細分化され得る。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される(また、Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)も参照のこと)。特に明記しない限りまたは文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるCDR配列は、DomainGapAlignを使用してIMGT規則に従って同定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);またインターネットhttpアドレスwww.imgt.org.も参照のこと)。特に明記しない限りまたは文脈と矛盾しない限り、本開示における定常領域中のアミノ酸位置についての参照は、EU番号付けに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci USA. 1969 May;63(1):78-85;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。
【0039】
哺乳動物の免疫グロブリン重鎖には、5つの種類、すなわち、α、δ、ε、γ、およびμがあり、これらは、異なる抗体クラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを担っている。可溶性免疫グロブリンの重鎖に対して、膜または表面免疫グロブリンの重鎖は、膜貫通ドメインおよびそのカルボキシ末端に短い細胞質ドメインを含む。哺乳動物では、2つの種類の軽鎖、すなわち、ラムダおよびカッパがある。免疫グロブリン鎖は、可変領域および定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、ここで、可変部は、高度に多様であり、抗原認識を担っている。
【0040】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書において互換的に使用されてよく、限定として理解されるべきではない。アミノ酸は、アミン(-NH2)およびカルボキシル(-COOH)官能基と各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)を含有する有機化合物である。本開示との関連で、アミノ酸は、構造および化学的特性に基づいて分類され得る。したがって、アミノ酸のクラスは、以下の表の一方または両方に反映され得る:
【0041】
(表2)R基の構造および一般的な化学的特性評価に基づく主要分類
【0042】
(表3)アミノ酸残基の別の物理的および機能的分類
【0043】
本開示の目的として、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。「バリアント」という用語は、すべての変異体、スプライスバリアント、翻訳後に修飾されたバリアント、コンホメーション、アイソフォーム、アレルバリアント、種バリアント、および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。「バリアント」という用語は、特に、アミノ酸配列の断片を含む。
【0044】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列中の単一または2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1つまたは複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列中の特定部位に挿入されるが、結果として生じた産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0045】
アミノ酸付加バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸のアミノおよび/またはカルボキシ末端融合物を含む。
【0046】
アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1つまたは複数のアミノ酸の除去、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあり得る。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端および/またはC末端短縮型バリアントとも呼ばれる。
【0047】
アミノ酸置換バリアントは、配列中の少なくとも1つの残基が除去されて別の残基がその場所に挿入されていることを特徴とする。あるアミノ酸の別のアミノ酸への置換は、保存的置換または非保存的置換として分類され得る。修飾が、相同タンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列中の位置にあること、および/または、アミノ酸が、類似の性質を有する他のアミノ酸と置き換わっていることが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電されているまたは荷電されていないアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖において関連しているアミノ酸のファミリーの1つの置換を伴う。本開示との関連で、「保存的置換」は、あるアミノ酸と類似の構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸との置換であり、そのようなあるアミノ酸残基の同じクラスの別のアミノ酸残基への置換は、上の2つの表に定義される通りである:例えば、共に脂肪族の分岐した疎水性物質であるため、ロイシンは、イソロイシンで置換され得る。同様に、共に小さな負に荷電した残基であるため、アスパラギン酸は、グルタミン酸で置換され得る。天然に存在するアミノ酸はまた、一般的に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分割され得る。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時に、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。一態様では、保存的アミノ酸置換には、以下の群内での置換が含まれる:
-グリシン、アラニン;
-バリン、イソロイシン、ロイシン;
-アスパラギン酸、グルタミン酸;
-アスパラギン、グルタミン;
-セリン、トレオニン;
-リシン、アルギニン;および
-フェニルアラニン、チロシン。
【0048】
「位置…に対応するアミノ酸」という用語および類似表現は、本明細書において使用される場合、ヒトIgG1重鎖中のアミノ酸の位置番号のことを指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアライメントによって見いだされ得る。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」ある配列中のアミノ酸またはセグメントとは、標準的な配列アライメントプログラム、例えばALIGN、ClustalWまたは同等物を、典型的にはデフォルト設定で使用して、他のアミノ酸またはセグメントと整列させ、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。配列またはセグメントを配列中にて整列させ、それにより、本開示に係るアミノ酸位置に対応する配列中の位置を決定する方法は、当技術分野において周知であると考えられる。
【0049】
本開示との関連での「抗体」(Ab)という用語は、通常の生理学的条件下で、好ましくは、相当な期間の半減期、例えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日もしくはそれ以上の日数など、または任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/もしくはモジュレートするのに十分な時間ならびに/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)で、抗原(特に、抗原上のエピトープ)に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体のことを指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって鎖間接続された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質のことを指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体および前述のいずれかの組み合わせを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。可変領域および定常領域はまた、本明細書において、それぞれ可変ドメインおよび定常ドメインとも称される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。VHのCDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3(またはCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)と称され、VLのCDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3(またはCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)と称される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含み、ここで、CHは、定常ドメインCH1、ヒンジ領域、ならびに定常ドメインCH2およびCH3(アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:CH1、CH2、CH3で整列された)にさらに細分化することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)およびC1qなどの補体系の成分を含めた宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は、天然供給源または組み換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであることができ、無傷の免疫グロブリンの免疫活性部分であることができる。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに単鎖抗体およびヒト化抗体を含め、多様な形態で存在し得る。
【0050】
免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。「結合領域」および「抗原結合領域」という用語は、本明細書において互換的に使用され、抗原と相互作用しかつVH領域とVL領域の両方を含む領域のことを指す。本明細書において使用される通りの抗体は、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば、3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。
【0051】
上に示したように、本明細書における抗体という用語は、特に明記しない限りまたは文脈と明確に矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。「抗体」という用語内に包含される抗原結合断片の例としては、(i)Fab'もしくはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO 2007/059782(Genmab)に記載されているような一価抗体;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片;(v)dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546 (1989))であって、VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる、dAb断片(Holt et al;Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90);(vi)カメリドまたはナノボディ分子(Revets et al;Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24);ならびに(vii)孤立した相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVHは、組み換え法を使用し、これらが単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結されてもよく、このVLおよびVH領域は、対合して一価分子を形成する(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として知られており、例として、Bird et al., Science 242, 423-426 (1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)を参照のこと)。そのような単鎖抗体は、特に注記しない限りまたは文脈による明確な指示がない限り、抗体という用語内に包含される。そのような断片は、一般的に、抗体の意味内に含まれるが、これらは、まとめてかつそれぞれ独立して、異なる生物学的性質および有用性を示す本開示の特有の特徴である。本開示との関連でのこれらおよび他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性フォーマットが、本明細書でさらに考察される。また、抗体という用語は、特に指定しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに、酵素的切断、ペプチド合成および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むと理解されるべきである。
【0052】
作製された抗体は、任意のアイソタイプを保有することができる。本明細書において使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例として、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、IgD、IgA(IgA1、IgA2など)、IgE、IgM、またはIgY)のことを指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書において言及される場合、この用語は、具体的なアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されるわけではなく、抗体の配列が、他のアイソタイプよりも、そのアイソタイプ、例えばIgG1に近いことを示すために使用される。したがって、例えば、本明細書に開示されるIgG1抗体は、定常領域の変異を含め、天然に存在するIgG1抗体の配列バリアントであり得る。
【0053】
IgG1抗体は、アロタイプと称される複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7に概説)、そのいずれかは、本明細書における態様のいくつかで使用に適する。ヒト集団においてよく見られるアロタイプバリアントは、a、f、n、zという文字またはそれらの組み合わせによって指定されているものである。本明細書における態様のいずれかで、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含み得る。さらなる態様では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1を含む。
【0054】
本開示との関連での「多重特異性抗体」という用語は、異なる抗体配列によって規定される少なくとも2つの異なる抗原結合領域を有する抗体のことを指す。いくつかの態様では、前記の異なる抗原結合領域は、同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、好ましい態様では、前記の異なる抗原結合領域は、異なる標的抗原に結合する。一態様では、多重特異性抗体は、「二重特異性抗体」または「bs」である。多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体は、本明細書にて後述する二重特異性または多重特異性抗体フォーマットのいずれかを含む、任意のフォーマットのものであることができる。
【0055】
「完全長」という用語は、抗体との関連で使用される場合、抗体が、断片ではなく、特定のアイソタイプについて天然で通常見られる特定のアイソタイプのドメインのすべて、例えば、IgG1抗体では、VH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインを含有することを示す。
【0056】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変およびフレームワーク領域とヒト免疫グロブリン定常ドメインとを有する抗体を含むことを意図している。本明細書に開示されるヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムもしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボの体細胞変異によって導入された変異、挿入または欠失)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、マウスなどの別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされた抗体を含むことを意図していない。
【0057】
「キメラ抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、齧歯動物に由来し)かつ定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体のことを指す。キメラ抗体は、抗体工学によって作製され得る。「抗体工学」は、抗体の様々な種類の改変に対して総称して使用される用語であり、抗体工学のためのプロセスは当業者によく知られている。特に、キメラ抗体は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Ch. 15に記載されていような標準的なDNA技術を使用して作製され得る。したがって、キメラ抗体は、遺伝子操作または酵素的に操作された組み換え抗体であり得る。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、キメラ抗体の作製は、本明細書に記載されるもの以外の方法によって実施され得る。ヒトへの治療的適用のためのキメラモノクローナル抗体は、非ヒト抗体、例えば齧歯動物抗体の予想される抗体免疫原性を低減するように開発される。これらは、典型的には、関心対象の抗原に特異的な非ヒト(例えば、ネズミまたはウサギ)可変領域とヒト定常抗体重鎖および軽鎖ドメインとを含有し得る。「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、キメラ抗体との関連で使用される場合、後述するような免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域のことを指す。
【0058】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト抗体定常ドメインとヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体のことを指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)上にグラフトすることによって達成することができる(WO 92/22653およびEP 0 629 240を参照のこと)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)由来のフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域に代入すること(逆変異)が必要となる場合がある。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定するのを助け得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸逆変異を任意で含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含み得る。任意で、好ましい特性、例えば親和性および生化学的性質を有するヒト化抗体を得るために、追加のアミノ酸修飾が適用される場合があるが、この修飾は、必ずしも逆変異である必要はない。
【0059】
本明細書において使用される場合、別のタンパク質、例えば、親タンパク質「に由来する」タンパク質は、タンパク質の1つまたは複数のアミノ酸配列が、他のまたは親タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸配列と同一であるまたは類似することを意味する。例えば、別のまたは親抗体、結合アーム、抗原結合領域または定常領域に由来する、抗体、結合アーム、抗原結合領域、定常領域などにおいて、1つまたは複数のアミノ酸配列は、他のまたは親抗体、結合アーム、抗原結合領域または定常領域のものと同一であるまたは類似する。そのような1つまたは複数のアミノ酸配列の例としては、VHおよびVL CDRならびに/またはフレームワーク領域、VH、VL、CL、ヒンジもしくはCH領域の1つもしくは複数またはすべてのアミノ酸配列が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ヒト化抗体は、本明細書において非ヒト親抗体「に由来する」と記載することができ、このことは、少なくともVLおよびVH CDR配列が、非ヒト親抗体のVHおよびVL CDR配列と同一であるまたは類似することを意味する。キメラ抗体は、本明細書において非ヒト親抗体「に由来する」と記載することができ、このことは、典型的には、VHおよびVL配列が、非ヒト親抗体のものと同一であり得るまたは類似し得ることを意味する。別の例は、特定の親抗体「に由来する」として本明細書に記載され得る結合アームまたは抗原結合領域であり、このことは、結合アームまたは抗原結合領域が、典型的には、親抗体の結合アームまたは抗原結合領域と同一または類似のVHおよび/もしくはVL CDR、またはVHおよび/もしくはVL配列を含むことを意味する。しかしながら、本明細書の他の箇所に記載するように、変異などのアミノ酸修飾を、抗体、結合アーム、抗原結合領域などのCDR、定常領域または他の箇所に作って、所望の特性を導入することができる。第1のまたは親タンパク質に由来する1つまたは複数の配列との関連で使用される場合、「類似の」アミノ酸配列は、好ましくは、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する。
【0060】
非ヒト抗体は、多数の異なる種、例えば、マウス、ウサギ、ニワトリ、モルモット、ラマおよびヤギで作製することができる。
【0061】
モノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含め、多様な技術によって生産することができる。モノクローナル抗体を生産するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスもしくは発がん性形質転換または抗体遺伝子ライブラリーを使用したファージディスプレイ技術を用いることができ、そのような方法は当業者によく知られている。
【0062】
そのような非ヒト種でのハイブリドーマ生産は、非常によく確立された手順である。免疫化プロトコルおよび融合のための免疫化した動物/非ヒト種の脾臓細胞の単離技術は、当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0063】
本明細書において使用されるとき、文脈と矛盾しない限り、「Fabアーム」または「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖ペアのことを指し、本明細書において「半分子」と互換的に使用される。
【0064】
「抗原結合領域を含む結合アーム」という用語は、抗原結合領域を含む抗体分子または断片を意味する。したがって、結合アームは、例えば、6つのVHおよびVL CDR配列、VHおよびVL配列、FabもしくはFab'断片、またはFabアームを含むことができる。
【0065】
本明細書において使用されるとき、文脈と矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域のことを指し、ここで、該Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。一態様では、「Fc領域」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体のN末端からC末端の方向に、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む領域のことを指す。抗体のFc領域は、様々な免疫系の細胞(エフェクター細胞など)および補体系の成分を含めた宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0066】
本開示との関連で、多重特異性抗体を含む抗体に関して使用される「Fc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導する」という用語は、抗体が、Fc媒介エフェクター機能、特にIgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)結合、C1q結合、ADCCまたはCDCのリストから選択されるそのような機能を、(i)同じCDR配列、特に、前記抗体と同じ第1および第2の抗原結合領域を含むCDR配列と(ii)ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2本の重鎖とを含むヒトIgG1抗体と比較してより少ない程度に誘導することを意味する。
【0067】
Fc媒介エフェクター機能は、FcγRへの結合、C1qへの結合、またはFcγRを介したFc媒介架橋の誘導によって測定され得る。
【0068】
「ヒンジ領域」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域のことを指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat(Kabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition-US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689 (1991))に示される通りのEU番号付けによるアミノ酸216~230に対応する。しかしながら、ヒンジ領域は、本明細書に記載される通りの他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0069】
「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH1領域のことを指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(同書)に示される通りのEU番号付けによるアミノ酸118~215に対応する。しかしながら、CH1領域は、本明細書に記載される通りの他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0070】
「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH2領域のことを指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(同書)に示される通りのEU番号付けによるアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域は、本明細書に記載される通りの他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0071】
「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH3領域のことを指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(同書)に示される通りのEU番号付けによるアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域は、本明細書に記載される通りの他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0072】
「一価抗体」という用語は、本開示との関連で、抗体分子が、抗原の単一分子に結合することが可能であり、したがって抗原架橋できないことを意味する。
【0073】
「CD137抗体」または「抗CD137抗体」は、抗原CD137に特異的に結合する上述した通りの抗体である。
【0074】
「CD137×PD-L1抗体」または「抗CD137×PD-L1抗体」は、1つが抗原CD137に特異的に結合し、1つが抗原PD-L1に特異的に結合する、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体である。
【0075】
「バイオシミラー」(例えば、承認された対照製剤(reference product)/生物学的薬物の)という用語は、本明細書において使用される場合、(a)生物学的製剤が、臨床的に不活性な成分のわずかな違いはあるものの、対照製剤と非常に類似することを実証している分析的研究;(b)動物研究(毒性の評価を含む);ならびに/または(c)1つもしくは複数の臨床研究(免疫原性および薬物動態または薬力学の評価を含む)であって、対照製剤が承認されかつ使用が意図されるおよび承認が求められる1つまたは複数の適切な使用条件において、安全性、純度および有効性を実証するのに十分である(例えば、製剤の安全性、純度および有効性の点で生物学的製剤と対照製剤との間に臨床的に意味のある違いはない)臨床研究のデータに基づき、対照製剤と類似した生物学的製剤のことを指す。いくつかの態様では、バイオシミラー生物学的製剤および対照製剤は、提示ラベルに指示、推奨または提案されている1つまたは複数の使用条件に対して同じ1つまたは複数の作用機序を利用するが、1つまたは複数の作用機序が対照製剤について公知である範囲に限られる。いくつかの態様では、生物学的製剤について提示ラベルに指示、推奨または提案されている1つまたは複数の使用条件は、対照製剤について過去に承認されている。いくつかの態様では、生物学的製剤の投与経路、剤形および/または強度は、対照製剤のものと同じである。バイオシミラーは、例えば、販売されている抗体と同じ一次アミノ酸配列を有する現在知られている抗体であることができるが、異なる細胞型でまたは異なる生産法、精製法もしくは製剤化法によって製造されてもよい。
【0076】
本明細書において使用される場合、「結合する」または「結合することが可能な」という用語は、抗体が所定の抗原またはエピトープに結合する場面で、典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して判定した際に、または、例えば、抗原をリガンドとして、抗体を分析物として使用してBIAcore 3000装置で表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して判定した際に、約10-7 M以下、例えば約10-8 M以下、例えば約10-9 M以下、約10-10 M以下、または約10-11 Mもしくはさらにそれ未満のKDに相当する親和性で結合することである。抗体は、所定の抗原に、所定の抗原または関連性の高い抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合のKDよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例として少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例として少なくとも100,000倍低いKDに相当する親和性で結合する。親和性がより高くなる量は、抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が高度に特異的である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い度合いは、少なくとも10,000倍であり得る。
【0077】
「kd」(sec-1)という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数のことを指す。該値はまた、koff値とも称される。
【0078】
「KD」(M)という用語、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数のことを指す。
【0079】
同じ抗原におよび同じエピトープに結合するなら、2つの抗体は「同じ特異性」を有する。被験抗体がある特定の抗原結合抗体と同じエピトープを認識するどうか、すなわち、抗体が同じエピトープに結合するかどうかは、当業者によく知られた種々の方法によって試験され得る。
【0080】
抗体間の競合は、クロスブロッキングアッセイによって検出することができる。例えば、競合ELISAアッセイがクロスブロッキングアッセイとして使用されてよい。例えば、標的抗原がマイクロタイタープレートのウェル上に被覆されてよく、抗原結合抗体と競合試験抗体候補が添加されてよい。ウェル中の抗原に結合する抗原結合抗体の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する競合試験抗体候補の結合能と正に相関する。具体的には、同じエピトープに対する競合試験抗体候補の親和性が高くなると、抗原被覆ウェルに結合する抗原結合抗体の量が減少する。ウェルに結合する抗原結合抗体の量は、検出可能または測定可能な標識物質で抗体を標識することによって測定することができる。
【0081】
別の抗体、例えば本明細書に記載される通りの重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体と、抗原への結合に対して競合する抗体、または、別の抗体、例えば本明細書に記載される通りの重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体の、抗原に特異性を有する抗体は、本明細書に記載される通りの重鎖および/または軽鎖可変領域のバリアント、例えば、本明細書に記載される通りのCDR中に改変および/またはある程度の同一性を含む抗体であり得る。
【0082】
「単離された多重特異性抗体」は、本明細書において使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない多重特異性抗体のことを指すことを意図している(例として、CD137およびPD-L1に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、CD137またはPD-L1に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない)。
【0083】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、単一の分子組成の抗体分子の調製物のことを指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を呈する。
【0084】
本明細書において使用されるとき、「第1と第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体抗体における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用のことを指す。
【0085】
本明細書において使用されるとき、「第1と第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体抗体における第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との間の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体抗体における第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用のことを指す。
【0086】
本明細書において使用されるとき、「ホモ二量体抗体」という用語は、2つの第1のFabアームまたは半分子を含み、該Fabアームまたは半分子のアミノ酸配列が同じである、抗体のことを指す。
【0087】
本明細書において使用されるとき、「ヘテロ二量体抗体」という用語は、第1および第2のFabアームまたは半分子を含み、第1および第2のFabアームまたは半分子のアミノ酸配列が異なる、抗体のことを指す。特に、第1および第2のFabアーム/半分子のCH3領域、または抗原結合領域、またはCH3領域および抗原結合領域が異なる。
【0088】
「還元条件」または「還元環境」という用語は、抗体のヒンジ領域中のシステイン残基のような基質が酸化されるよりも還元される可能性がより高い、条件または環境のことを指す。
【0089】
本開示はまた、例となる二重特異性抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的バリアントを含む、二重特異性抗体などの多重特異性抗体も記載する。二重特異性抗体との関連で使用されるVL、VH、またはCDRの機能的バリアントは、二重特異性抗体の各抗原結合領域が、親二重特異性抗体の親和性および/または特異性/選択性の少なくともかなりの比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)をなお保持することを可能にし、いくつかの場合では、そのような二重特異性抗体は、親二重特異性抗体よりも大きな親和性、選択性および/または特異性に関連し得る。
【0090】
そのような機能的バリアントは、典型的には、親二重特異性抗体に対してかなりの配列同一性を保持する。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列によって共有される同一位置数の関数である(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して決定され得る。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970)のアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0091】
本開示との関連で、特に指示のない限り、変異を説明するために以下の表記法が使用される:i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと記述され、これは、タンパク質の409位でのリシンのアルギニンによる置換を意味する;そして、ii)特定のバリアントについて、任意のアミノ酸残基を表示するためにコードXaaおよびXを含めた特定の3文字または1文字コードが使用される。したがって、409位でのリシンのアルギニンによる置換は、K409Rと指定され、409位でのリシンの任意のアミノ酸残基による置換は、K409Xと指定される。409位でのリシンの欠失の場合、K409*によって表示される。
【0092】
例示的なバリアントとしては、主に保存的置換によって親配列のVHおよび/もしくはVLならびに/またはCDRと異なるものが挙げられる;例えば、バリアント中の置換の12個、例えば11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個が、保存的アミノ酸残基置換である。
【0093】
本開示との関連で、保存的置換は、表2および3に定義されるようなアミノ酸クラス内の置換によって定義され得る。
【0094】
「CD137」という用語は、本明細書において使用される場合、リガンドTNFSF9/4-1BBLに対する受容体である、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)とも称される、CD137(4-1BB)のことを指す。CD137(4-1BB)は、T細胞活性化に関与すると考えられている。CD137の他の同義語としては、4-1BBリガンド受容体、CDw137、T細胞抗原4-1BBホモログおよびT細胞抗原ILAが挙げられるが、それらに限定されない。一態様では、CD137(4-1BB)は、UniProt登録番号Q07011を有するヒトCD137(4-1BB)である。ヒトCD137の配列はまた、SEQ ID NO:37に示される。SEQ ID NO:37のアミノ酸1~23は、ヒトCD137のシグナルペプチドに対応し;一方、SEQ ID NO:37のアミノ酸24~186は、ヒトCD137の細胞外ドメインに対応し;そして、タンパク質の残部、すなわちSEQ ID NO:37のアミノ酸187~213および214~255由来のものは、それぞれ、膜貫通および細胞質ドメインである。
【0095】
「プログラム死-1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体のことを指す。PD-1(CD279またはSLEB2としても公知)は、インビボで過去に活性化されたT細胞上に優先的に発現され、2つのリガンドPD-L1(B7-H1またはCD274としても公知)およびPD-L2(B7-DCまたはCD273としても公知)に結合する。「PD-1」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体、特に、配列表のSEQ ID NO:113に示される通りのアミノ酸配列(NCBI参照配列:NP_005009.2)を有するタンパク質、または好ましくはSEQ ID NO:115に示される通りの核酸配列(NCBI参照配列:NM_005018.2)によってコードされるタンパク質を含む。「プログラム死リガンド-1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞活性化およびサイトカイン分泌をダウンレギュレーションする、PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つである(もう一方はPD-L2である)。
【0096】
「PD-L1」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、例えば、マカク(カニクイザル)、アフリカゾウ、イノシシおよびマウスのPD-L1(例えば、それぞれ、Genbank登録番号NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023およびNP_068693を参照のこと)、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトPD-L1の配列はまた、SEQ ID NO:40(成熟配列)、およびSEQ ID NO:39に示され、ここで、アミノ酸1~18は、シグナルペプチドであると予測される。「PD-L2」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒトPD-L2(hPD-L2)、hPD-L2のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-L2と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。PD-1のリガンド(PD-L1およびPD-L2)は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞またはマクロファージ、および他の免疫細胞の表面に発現される。PD-1のPD-L1またはPD-L2への結合は、T細胞活性化のダウンレギュレーションをもたらす。PD-L1および/またはPD-L2を発現するがん細胞は、抗がん免疫応答の抑制をもたらすPD-1を発現するT細胞をスイッチオフすることができる。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介増殖の減少、およびがん性細胞による免疫回避をもたらす。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所相互作用を阻害することによって反転させることができ、PD-1とPD-L2との相互作用が同様に遮断される場合、その効果は相加的である。
【0097】
「機能障害」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原刺激に対する免疫応答性が低減された状態にある免疫細胞のことを指す。機能障害には、抗原認識に対する非応答性、ならびに抗原認識を増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)および/または標的細胞殺傷などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力の障害が含まれる。
【0098】
「アネルギー」という用語は、本明細書において使用される場合、T細胞受容体(TCR)を通じて送達される不完全または不十分なシグナルから生じる抗原刺激に対する非応答性の状態のことを指す。T細胞アネルギーはまた、共刺激の非存在下での抗原による刺激でも生じ得、その結果、細胞は、共刺激の状況下にあっても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。非応答性状態はしばしば、IL-2の存在によって覆され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0099】
「疲弊」という用語は、本明細書において使用される場合、多くの慢性感染およびがんの過程で生じる持続的なTCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としての、免疫細胞疲弊、例えばT細胞疲弊のことを指す。これは、不完全または不十分なシグナル伝達を経由するのではなく持続的なシグナル伝達に起因するという点で、アネルギーと区別される。疲弊は、エフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、および機能的なエフェクターまたはメモリーT細胞とは異なる転写状態によって定義される。疲弊は、疾患(例えば、感染および腫瘍)の最適な制御を妨げる。疲弊は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)と細胞内因性の負の制御性経路(阻害性免疫チェックポイント経路、例えば本明細書に記載される通りの)の両方から生じ得る。
【0100】
「T細胞機能を増強すること」は、持続したもしくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導する、惹起するもしくは刺激すること、または疲弊したもしくは不活性なT細胞を復活もしくは再活性させることを意味する。T細胞機能を増強することの例としては、介入前のレベルと比べた、CD8+ T細胞からのγ-インターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、腫瘍クリアランス)の増加が挙げられる。一態様では、増強のレベルは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%またはそれ以上である。この増強を測定する方法は、当業者に公知である。
【0101】
「阻害性核酸」または「阻害性核酸分子」という用語は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のPD-1タンパク質を全体的または部分的に低減する、阻害する、それと干渉する、または負にモジュレートする、核酸分子、例えば、DNAまたはRNAのことを指す。阻害性核酸分子には、非限定的に、オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNAまたはRNA分子、およびアプタマー(例えば、DNAまたはRNAアプタマー)が含まれる。
【0102】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質の発現、特に、PD-1タンパク質、例えば本明細書に記載されるPD-1タンパク質の発現を減少させることが可能な核酸分子のことを指す。オリゴヌクレオチドは、典型的には2~50ヌクレオチドを含む短いDNAまたはRNA分子である。オリゴヌクレオチドは、おそらく、一本鎖または二本鎖である。PD-1阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0103】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、所与の配列に、特にPD-1タンパク質の核酸配列(またはその断片)の配列に相補的な一本鎖DNAまたはRNA分子である。アンチセンスRNAは、典型的には、mRNAに結合することによって、mRNA、例えば、PD-1タンパク質をコードするmRNAのタンパク質翻訳を妨害するために使用される。アンチセンスDNAは、典型的には、特異的で相補的な(コードまたは非コード)RNAを標的化するために使用される。結合が起こると、そのようなDNA/RNAハイブリッドは、RNase Hという酵素によって分解され得る。さらに、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを脊椎動物における遺伝子ノックダウンに使用することができる。例えば、Kryczek et al., 2006(J Exp Med, 203:871-81)は、マクロファージにおいてB7-H4発現を特異的に遮断し、腫瘍関連抗原(TAA)特異的T細胞を有するマウスにおいてT細胞増殖の増加および腫瘍体積の低減をもたらす、B7-H4特異的モルフォリノを設計した。
【0104】
「siRNA」または「低分子干渉RNA」または「低分子阻害性RNA」という用語は、本明細書において互換的に使用され、PD-1タンパク質をコードする遺伝子などの相補性ヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現と干渉する、典型的な20~25塩基対長を有する二本鎖RNA分子のことを指す。一態様では、siRNAは、mRNAと干渉し、それゆえ、翻訳、例えば、PD-1タンパク質の翻訳を遮断する。外因性siRNAのトランスフェクションは、遺伝子ノックダウンに使用され得るが、その効果は、とりわけ、急速に分裂している細胞では、おそらく一過性にすぎない。安定したトランスフェクションは、例えば、RNA修飾によってまたは発現ベクターを使用することによって達成され得る。siRNAによる細胞の安定したトランスフェクションのための有用な修飾およびベクターは、当技術分野において公知である。siRNA配列はまた、2本のストランド間に短いループを導入して「小ヘアピンRNA」または「shRNA」を生じるように修飾され得る。shRNAは、Dicerによって機能的siRNAへとプロセシングされ得る。shRNAは、比較的低い分解およびターンオーバー率を有する。したがって、PD-1阻害剤は、shRNAであり得る。
【0105】
「アプタマー」という用語は、本明細書において使用される場合、標的分子、例えばポリペプチドに結合することが可能な、典型的には25~70ヌクレオチド長の、一本鎖核酸分子、例えばDNAまたはRNAのことを指す。一態様では、アプタマーは、本明細書に記載されるPD-1チェックポイントタンパク質などの免疫PD-1タンパク質に結合する。例えば、本開示に係るアプタマーは、PD-1タンパク質もしくはポリペプチドに、またはPD-1タンパク質もしくはポリペプチドの発現をモジュレートするシグナル伝達経路中の分子に特異的に結合することができる。アプタマーの作製および治療的利用は、当技術分野において周知である(例えば、US 5,475,096を参照のこと)。
【0106】
「低分子阻害剤」または「低分子」という用語は、本明細書において互換的に使用され、上述した通り1つまたは複数のPD-1タンパク質を全体的または部分的に低減する、阻害する、それと干渉する、または負にモジュレートする、通常1000ダルトンまでの低分子量有機化合物のことを指す。そのような低分子阻害剤は、通常、有機化学によって合成されるが、植物、真菌および細菌などの天然供給源から単離もされ得る。低分子量は、低分子阻害剤が細胞膜を急速に通過することを可能にする。例えば、当技術分野において公知の様々なA2ARアンタゴニストは、500ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である。
【0107】
「細胞ベース療法」という用語は、疾患または障害(例えば、がん疾患)の治療を目的とした、免疫PD-1阻害剤を発現する細胞(例えば、Tリンパ球、樹状細胞または幹細胞)の対象への移植のことを指す。
【0108】
「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、本明細書において使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで、正常細胞に影響がないまたは影響が最小限でありながら、がん性細胞または過剰増殖性細胞中で選択的に複製し、その成長を遅らせるまたはその死を誘導することが可能なウイルスのことを指す。PD-1阻害剤の送達のための腫瘍溶解性ウイルスは、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、アプタマー、抗体もしくはその断片または可溶性PD-1タンパク質もしくは融合物などの阻害性核酸分子であるPD-1阻害剤をコードし得る発現カセットを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくは、複製可能であり、発現カセットは、ウイルスプロモーター、例えば、合成初期/後期ポックスウイルスプロモーターの制御下にある。例示的な腫瘍溶解性ウイルスとしては、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ラブドウイルス(例えば、ピコルナウイルス、例えばセネカバレーウイルス;SVV-001)、コクサッキーウイルス、パルボウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、単純ヘルペスウイルス(HSV;OncoVEX GMCSF)、レトロウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、麻疹ウイルス、レオウイルス、シンビスウイルス(Sinbis virus)、WO 2017/209053に例示的に記載されているようなワクシニアウイルス(Copenhagen、Western Reserve、Wyeth株を含む)、およびアデノウイルス(例えば、Delta-24、Delta-24-RGD、ICOVIR-5、ICOVIR-7、Onyx-015、ColoAd1、H101、AD5/3-D24-GMCSF)が挙げられる。PD-1阻害剤の可溶性形態を含む組み換え腫瘍溶解性ウイルスの作製およびその使用方法は、WO 2018/022831に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。腫瘍溶解性ウイルスを弱毒化ウイルスとして使用することができる。
【0109】
「処置サイクル」は、本明細書において、結合剤の薬力学により結合剤の別々の投与量の効果が増大する範囲内の期間、または言い換えれば投与された結合剤が対象の身体から本質的に除去された後の期間として定義される。小さな時間枠で、例えば、短い2~24時間、例えば2~12時間または同日内の複数の少量の用量は、より多量の単回用量と等しいだろう。
【0110】
本文脈において、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態に対抗することを目的とした対象の管理およびケアに関する。この用語は、対象が罹患する所与の状態に対するあらゆる範囲の処置、例えば、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するためのみならず、該状態を予防するための、治療上有効な化合物の投与を含むことを意図しており、ここで、予防は、疾患、状態または障害に対抗することを目的とした個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。一態様では、「処置」は、症状または疾患状態を軟化させる、改善する、阻止するまたは根絶する(治癒する)ことを目的とした、本開示の治療上活性な結合剤、例えば治療上活性な抗体の有効量の投与のことを指す。
【0111】
本開示の結合剤による処置に対する奏効、ならびに処置に対する耐性、処置に対する応答不能および/または処置からの再発は、固形がん治療効果判定基準;バージョン1.1(RECIST Criteria v1.1)に従って判定され得る。RECIST Criteriaは、下記表に示される(LD:最大幅)。
【0112】
(表4)奏効の定義(RECIST Criteria v1.1)
【0113】
「最良総合効果」は、処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の効果である(PDでは、処置開始以降に記録された最小測定値が基準として使用される)。CRまたはPRを有する対象は、客観的奏効と見なされる。CR、PRまたはSDを有する対象は、病勢コントロール下にあると見なされる。NEを有する対象は、非奏効者として数えられる。最良総合効果は、処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の効果である(PDでは、処置開始以降に記録された最小測定値が基準として使用される)。CR、PRまたはSDを有する対象は、病勢コントロール下にあると見なされる。NEを有する対象は、非奏効者として数えられる。
【0114】
「奏効期間(DOR)」は、確認された最良総合効果がCRまたはPRである対象に対してのみ適用され、客観的腫瘍縮小効果(CRまたはPR)が最初に記録されてから、最初のPDまたは原因となっているがんによる死亡の日までの時間として定義される。
【0115】
「無増悪生存期間(PFS)」は、サイクル1の1日目から、最初に進行が認められた日またはあらゆる原因による死亡までの日数として定義される。
【0116】
「全生存期間(OS)」は、サイクル1の1日目から、あらゆる原因による死亡までの日数として定義される。対象が死亡していたか不明の場合、OSは、対象の生存が確認されていた最終日(カットオフ日またはそれ以前)をもって打ち切る。
【0117】
本開示との関連で、「処置レジメン」という用語は、健康を改善かつ維持するために設計された体系化された処置計画のことを指す。
【0118】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、必要な投与量または時間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量のことを指す。結合剤、例えば、多重特異性抗体またはモノクローナル抗体のような抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を惹起する結合剤の能力などの要因に応じて変動し得る。治療有効量はまた、結合剤またはその断片のあらゆる毒性効果または有害効果よりも治療上有益な効果が上回る量である。患者における反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所的な投与経路によって達成される有効なより高い用量)が使用され得る。患者においてある用量で望まない副作用が生じる場合、より低い用量(または異なるより局所的な投与経路によって達成される有効なより低い用量)が使用され得る。
【0119】
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は、異常調節された細胞の成長、増殖、分化、接着および/または遊走を特徴とする疾患を含む。「がん細胞」とは、急速で制御不能な細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける、異常な細胞のことを意味する。
【0120】
本開示に係る「がん」という用語はまた、がん転移を含む。「転移」とは、がん細胞がその元の位置から身体の別の部位に広がることを意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、悪性細胞の原発腫瘍からの分離、細胞外マトリックスの侵入、体腔および血管に進入する内皮基底膜の浸透、ならびにその後に血液によって輸送された後の標的器官の浸潤に依存する。最後に、新たな腫瘍、すなわち二次性腫瘍または転移性腫瘍の標的部位での成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、しばしば、原発腫瘍の除去後であっても起こるが、それは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発生させ得るためである。一態様では、本開示に係る「転移」という用語は、「遠隔転移」に関し、これは、原発腫瘍および局所リンパ節系から離れた転移に関する。
【0121】
「低減する」、「阻害する」、「干渉する」、および「負にモジュレートする」などの用語は、本明細書において使用される場合、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、または約75%以上のレベルの全体的な減少を引き起こす能力のことを意味する。「阻害する」という用語または類似の語句は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわち、ゼロまたは本質的にゼロまでの低減を含む。
【0122】
「増加する」または「増強する」などの用語は、一態様では、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、または少なくとも約100%の増加または増強に関する。
【0123】
「生理学的pH」は、本明細書において使用される場合、7.5または約7.5のpHのことを指す。
【0124】
本開示において使用される場合、「重量%」は、重量パーセントのことを指し、これは、物質のグラム(g)量を計量する濃度の単位であり、総組成物のグラム(g)総重量の百分率として表される。
【0125】
「凍結させること」という用語は、液体の、通常は熱の除去による、凝固に関する。
【0126】
「凍結乾燥すること」または「凍結乾燥」という用語は、物質を凍結させ、次いで、周囲の圧力を(例えば、15Pa未満、例えば10Pa未満、5Pa未満もしくは1Paまたはそれ以下)に低下させ、物質中の凍結媒体を固相から気相に直接昇華させることによる、物質のフリーズドライのことを指す。したがって、「凍結乾燥すること」および「フリーズドライ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0127】
本開示との関連での「組み換え」という用語は、「遺伝子工学を通じて作製される」ことを意味する。一態様では、本開示との関連での「組み換え物体」は、天然に存在しない。
【0128】
「天然に存在する」という用語は、本明細書において使用される場合、物体が天然に見いだされ得るということを指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然の供給源から単離することができ、かつ、実験室で人により意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。「天然に見いだされる」という用語は、「天然に存在する」のことを意味し、既知の物体だけでなく、まだ発見されていないおよび/または自然から単離されていないが、将来天然供給源から発見されるおよび/または単離される可能性のある物体も含む。
【0129】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、約2個またはそれ以上、約3個またはそれ以上、約4個またはそれ以上、約6個またはそれ以上、約8個またはそれ以上、約10個またはそれ以上、約13個またはそれ以上、約16個またはそれ以上、約20個またはそれ以上、かつ、最大で約50個、約100個または約150個の、ペプチド結合を介して互いに連結された連続アミノ酸を含む物質のことを指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、特に、少なくとも約151個のアミノ酸を有するペプチドのことを指すが、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において通常は同義語として使用される。
【0130】
「治療用タンパク質」は、対象に治療有効量で提供されたときに、対象の状態または疾患状態に対して正のまたは有利な効果を有する。一態様では、治療用タンパク質は、治癒的または緩和的な性質を有し、疾患または障害の1つまたは複数の症状を改善する、軽減する、緩和する、反転させる、その発症を遅らせるまたはその重症度を低下させるために投与され得る。治療用タンパク質は、予防的性質を有し得、疾患の発症を遅らせるまたはそのような疾患もしくは病理学的状態の重症度を低下させるために使用され得る。「治療用タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチド全体を含み、その治療上活性な断片のことも指すことができる。それはまた、タンパク質の治療上活性なバリアントを含むこともできる。治療上活性なタンパク質の例としては、ワクチン接種用の抗原およびサイトカインなどの免疫刺激剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0131】
「部分」という用語は、一画分のことを指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、該構造の連続したまたは不連続の一画分のことを指し得る。
【0132】
「部」および「断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、1つの連続した要素のことを指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造の一部は、該構造の1つの連続した要素のことを指す。組成物との関連で使用される場合、「部」という用語は、組成物の一部分のことを意味する。例えば、組成物の一部は、組成物の0.1%~99.9%(例えば、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、50%、90%、または99%)の任意の部分であり得る。
【0133】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわち、N末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3'端を欠いている短縮されたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることが可能である。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、短縮されたオープンリーディングフレームが、翻訳を開始する役目を果たす開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5'端を欠いている短縮されたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることが可能である。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくは、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に、少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続アミノ酸を含む。
【0134】
本開示によれば、ペプチドまたはタンパク質の一部または断片は、好ましくは、それが由来するペプチドまたはタンパク質の少なくとも1つの機能的性質を有する。そのような機能的性質は、薬理活性、他のペプチドまたはタンパク質との相互作用、酵素活性、抗体との相互作用、および核酸の選択的結合を含む。例えば、ペプチドまたはタンパク質の薬理活性断片は、断片が由来するペプチドまたはタンパク質の薬理活性の少なくとも1つを有する。ペプチドまたはタンパク質の一部または断片は、好ましくは、少なくとも6個、特に、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または少なくとも50個の、ペプチドまたはタンパク質の連続アミノ酸の配列を含む。ペプチドまたはタンパク質の一部または断片は、好ましくは、最大で8個、特に、最大で10個、最大で12個、最大で15個、最大で20個、最大で30個または最大で55個の、ペプチドまたはタンパク質の連続アミノ酸の配列を含む。
【0135】
本明細書における「バリアント」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾が原因で親アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列のことを意味する。親アミノ酸配列は、天然に存在するまたは野生型(WT)アミノ酸配列であり得るか、野生型アミノ酸配列の改変バージョンであり得る。好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1個~約20個のアミノ酸修飾、好ましくは、1個~約10個または1個~約5個のアミノ酸修飾を有する。
【0136】
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、アレル変異を含む天然に見いだされるアミノ酸配列のことを意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0137】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と、所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは、同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に対して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、いくつかの態様では、連続アミノ酸に対して与えられる。いくつかの態様では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアライメントは、当技術分野において公知のツールで、好ましくは、最良の配列アライメントを使用して、例えば、Alignを使用して、標準設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用して行うことができる。
【0138】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すかのいずれかのアミノ酸の割合のことを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、その配列間で同一であるアミノ酸の割合のことを示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、その配列間で同一であるヌクレオチドの割合のことを示す。
【0139】
「%同一」および「%の同一性」という用語または類似の用語は、特に、比較しようとする配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸の割合を指すことを意図している。該割合は、完全に統計的であり、2つの配列間の相違は、比較しようとする配列の全長にわたってランダムに分布し得るが、必ずしもそうである必要はない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に、セグメントまたは「比較のウインドウ」に関して配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアライメントは、手動によるか、あるいは、Smith and Waterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482による局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443による局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 88, 2444による類似性研究アルゴリズムの助けを借りて、または該アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis.)の助けを借りて行うことができる。いくつかの態様では、2つの配列の同一性パーセントは、United States National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイト上で(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで)利用可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの態様では、NCBIウェブサイト上のBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメーターは、(i)10に設定した期待閾値(Expect Threshold);(ii)28に設定したワードサイズ;(iii)0に設定したクエリー範囲における最大マッチ;(iv)1、-2に設定したマッチ/ミスマッチスコア;(v)線形に設定したギャップコスト;および(vi)低複雑性領域に対するフィルター使用を含む。いくつかの態様では、NCBIウェブサイト上のBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメーターは、(i)10に設定した期待閾値;(ii)3に設定したワードサイズ;(iii)0に設定したクエリー範囲における最大マッチ;(iv)BLOSUM62に設定したマトリックス;(v)存在(Existence):11 Extension:1に設定したギャップコスト;および(vi)条件付き組成スコアマトリックス補正(conditional compositional score matrix adjustment)を含む。
【0140】
同一性の割合は、比較しようとする配列が対応する同一位置の数を決定し、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で割って、これに100を掛けることによって得られる。
【0141】
いくつかの態様では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域に対して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が、200個のアミノ酸残基からなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸残基、いくつかの態様では、連続アミノ酸残基に対して与えられる。いくつかの態様では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長に対して与えられる。
【0142】
相同アミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を示す。
【0143】
本明細書に記載されるアミノ酸配列バリアントは、当業者により、例えば、組み換えDNA操作によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al. (1989)に詳しく記載されている。さらに、本明細書に記載されるペプチドおよびアミノ酸バリアントは、例えば、固相合成および類似の方法によるなどの公知のペプチド合成技術の助けを借りて容易に調製され得る。
【0144】
一態様では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片またはバリアントは、好ましくは、「機能的断片」または「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的バリアント」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一であるまたは類似する1つまたは複数の機能的性質を示す、すなわち、それが機能的に等価である、任意の断片またはバリアントに関する。抗原または抗原配列に関して、1つの特定の機能は、断片またはバリアントが由来するアミノ酸配列によって提示される1つまたは複数の免疫原性活性である。本明細書において使用される場合の「機能的断片」または「機能的バリアント」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つまたは複数のアミノ酸が変更されており、かつ、依然として親分子または配列の機能の1つまたは複数を遂行する、例えば、免疫応答を誘導することが可能なアミノ酸配列を含む、バリアント分子または配列のことを指す。一態様では、親分子または配列のアミノ酸配列における改変は、分子または配列の特性に有意に影響しないまたは変更しない。異なる態様では、機能的断片または機能的バリアントの機能は、低減するが、依然として有意に存在する場合があり、例えば、機能的バリアントの免疫原性は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の態様では、機能的断片または機能的バリアントの免疫原性は、親分子または配列と比較して増強され得る。
【0145】
指定のアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)「に由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源のことを指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、特定の配列またはその断片と同一である、本質的に同一であるまたは相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、特定の配列またはその断片のバリアントであり得る。例えば、当業者には、本明細書での使用に適する抗原は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、これらが由来する天然に存在する配列または天然配列と配列が異なるように変更され得ることが理解されよう。
【0146】
「単離された」は、天然の状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または、例えば、宿主細胞などの、非天然環境で存在することができる。好ましい態様では、本開示において使用される結合剤は、実質的に精製された形態である。
【0147】
用語「遺伝子改変」または単に「改変」は、核酸を用いた細胞のトランスフェクションを含む。「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本開示の目的として、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みも含み、ここで、細胞は、対象、例えば、患者に存在し得る。したがって、本開示によれば、本明細書に記載される核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば、細胞は、患者の器官、組織および/または生体の一部を形成することができる。本開示によれば、トランスフェクションは、一過性または安定的であることができる。トランスフェクションのいくつかの適用のために、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。RNAを、細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核のゲノムに組み込まれないため、外来核酸は、有糸分裂を通じて希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が細胞およびその娘細胞のゲノムに実際に残ることが所望される場合、安定したトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定したトランスフェクションは、トランスフェクションのためのウイルスベースの系またはトランスポゾンベースの系を使用して達成することができる。一般的に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
【0148】
本開示によれば、ペプチドまたはタンパク質の類似体は、それが由来するペプチドまたはタンパク質の改変された形態であって、ペプチドまたはタンパク質の少なくとも1つの機能的性質を有する。例えば、ペプチドまたはタンパク質の薬理活性類似体は、類似体が由来するペプチドまたはタンパク質の薬理活性の少なくとも1つを有する。そのような改変は、任意の化学的改変を含み、タンパク質またはペプチドと関連する任意の分子、例えば炭水化物、脂質および/またはタンパク質もしくはペプチドの単一または複数の置換、欠失および/または付加を含む。一態様では、タンパク質またはペプチドの「類似体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/遮断基の導入、タンパク質分解的切断、または抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる改変された形態を含む。「類似体」という用語はまた、タンパク質およびペプチドのすべての機能的化学等価体まで及ぶ。
【0149】
「活性化」または「刺激」は、本明細書において使用される場合、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されている、T細胞などの免疫エフェクター細胞の状態のことを指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。「活性化された免疫エフェクター細胞」という用語は、中でも、細胞分裂中の免疫エフェクター細胞のことを指す。
【0150】
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクター細胞がその特異的抗原と初めて接触し、エフェクターT細胞などのエフェクター細胞への分化が引き起こされるプロセスのことを指す。
【0151】
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増殖するプロセスのことを指す。本開示との関連で、この用語は、好ましくは、免疫エフェクター細胞が抗原によって刺激され、増殖し、該抗原を認識する特定の免疫エフェクター細胞が増幅される免疫学的応答との関連で使用される。好ましくは、クローン拡大は、免疫エフェクター細胞の分化を導く。
【0152】
本開示に係る「抗原」は、免疫応答を惹起する任意の物質および/または細胞応答などの免疫応答または免疫機構が指向される任意の物質を網羅する。これはまた、特にMHC分子との関連で提示される場合に、抗原が抗原ペプチドにプロセシングされ、免疫応答または免疫機構が1つまたは複数の抗原ペプチドに対して指向される状況も含む。特に、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質、好ましくは、ペプチドまたはタンパク質に関する。本開示によれば、「抗原」という用語は、T細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、本開示との関連での抗原は、任意でプロセシング後に、好ましくは抗原(抗原を発現する細胞を含む)に特異的な、免疫反応を誘導する分子である。一態様では、抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原もしくは細菌抗原、またはそのような抗原に由来するエピトープである。
【0153】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち、特にMHC分子との関連で提示されるときに、免疫系によって認識される、例えば、T細胞またはB細胞における抗体によって認識される、分子中の一部またはその断片のことを指す。一態様では、「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することが可能なタンパク質決定基のことを意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在中で前者への結合が失われるが、後者への結合が失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的に遮断または覆われるアミノ酸残基(言い換えれば、そのアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリントの範囲内にある)を含み得る。
【0154】
タンパク質のエピトープは、好ましくは、タンパク質の連続したまたは不連続の部分を含み、好ましくは、約5~約100、好ましくは、約5~約50、より好ましくは、約8~約0、最も好ましくは、約10~約25アミノ酸長であり、例えば、エピトープは、好ましくは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。本開示との関連でのエピトープは、T細胞エピトープであることが特に好ましい。
【0155】
「任意の」または「任意で」という用語は、本明細書において使用される場合、その後に記載される事象、状況または条件が起こっても起こらなくてもよいこと、そして、その記載が、該事象、状況または条件が起こる場合とそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0156】
本明細書において使用される場合、「連結された」、「融合された」または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインが一緒に接合することを指す。
【0157】
「疾患」(本明細書において「障害」とも称される)という用語は、個体の身体に悪影響を及ぼす異常な状態のことを指す。疾患は、しばしば、特定の症状および兆候を伴う医学的状態と解釈される。疾患は、感染症など、外部源に起因する要因によって引き起こされ得るか、または、自己免疫疾患など、内的な機能障害によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」は、しばしば、より広範に使用され、罹患している個人に疼痛、機能障害、苦痛、社会問題もしくは死亡、または該個人と接触している人にとって同様の問題を引き起こす、あらゆる状態を指す。このより広範な意味では、それは時に、傷害、身体障害(disabilities)、障害、症候群、感染症、単発症状、逸脱行動、ならびに構造および機能上の異型変化を含むが、他の状況および他の目的では、これらは、識別可能なカテゴリーと見なされ得る。多くの疾患に罹患しながら生活することは、人生観および人格を変え得るため、疾患は、通常、身体的にだけでなく、感情的にも個人に悪影響を及ぼす。
【0158】
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善するおよび/または個体の寿命を延ばす(増やす)任意の処置に関する。該処置は、個体において疾患を排除する、個体において疾患の発症を停止もしくは遅らせる、個体において疾患の発症を阻止もしくは遅らせる、個体において症状の頻度もしくは重症度を減少させる、および/または疾患を現在も有しているもしくは過去に有していた個体において再発を減少させる可能性がある。
【0159】
「防止的処置」または「予防的処置」という用語は、個体において疾患の発生を予防することを意図した任意の処置に関する。「防止的処置」または「予防的処置」という用語は、本明細書において互換的に使用される。同様に、「予防するための方法」という用語は、疾患の進行、例えば腫瘍またはがんの進行との関連で、個体において疾患の進行を予防することを意図した任意の方法に関する。
【0160】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。これらは、疾患または障害(例えば、がん)に罹患し得るまたは罹り易い、ヒトもしくは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)、または鳥類(ニワトリ)、魚類または任意の他の動物種を含めた任意の他の非哺乳動物のことを指す。特に明記しない限り、「個体」および「対象」という用語は、特定の年齢を意味するのではなく、したがって、成体、老齢体、子供および新生子を包含する。本開示の態様では、「個体」または「対象」は、「患者」である。
【0161】
「患者」という用語は、処置のための個体または対象、特に、病気に罹った個体または対象のことを意味する。
【0162】
本開示の局面および態様
第1の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法において使用するための結合剤を提供し、該方法は、PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を該対象に投与する工程を含み、結合剤は、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み;かつ
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体、またはその抗原結合断片ではない。
【0163】
CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含む結合剤と、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体との組み合わせも併用も、本明細書に提供される本発明の一部ではないことが理解されるべきである。また、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含む結合剤と、SEQ ID NO:146、147および148にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:149、150および151にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体との組み合わせも併用も、本明細書に提供される本発明の一部ではないことも理解されるべきである(CDRは、Kabatの番号付けによって定義される)。本出願ではペムブロリズマブに言及しており、ペムブロリズマブに関する実験データを本明細書に提示しているが、ペムブロリズマブとの組み合わせまたは併用は、本発明の任意の局面または態様に含まれることを意図していない。
【0164】
CD137およびPD-L1に結合する結合剤
一態様では、CD137は、ヒトCD137、特に、SEQ ID NO:38に示される配列を含むヒトCD137である。一態様では、PD-L1は、ヒトPD-L1、特に、SEQ ID NO:40に示される配列を含むヒトPD-L1である。一態様では、CD137は、ヒトCD137であり、PD-L1は、ヒトPD-L1である。一態様では、CD137は、SEQ ID NO:38に示される配列を含むヒトCD137であり、PD-L1は、SEQ ID NO:40に示される配列を含むヒトPD-Lである。
【0165】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、
(a)ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:1または9の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:5または10の軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:11の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:15の軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0166】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、
(a)ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0167】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0168】
第1の局面に係る結合剤のさらなる態様では、ヒトPD-L1に結合する第2の結合領域は、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0169】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、
(a)ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
(b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合領域は、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0170】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:1または9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0171】
第1の局面に係る結合剤のさらなる態様では、ヒトPD-L1に結合する第2の結合領域は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0172】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、
(a)ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:1または9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
(b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合領域は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0173】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、
(a)ヒトCD137に結合する第1の結合領域は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
(b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合領域は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0174】
結合剤は、特に、抗体、例えば多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。また、結合剤は、完全長抗体または抗体断片のフォーマットであり得る。
【0175】
結合剤がヒト抗体またはヒト化抗体であることがさらに好ましい。
【0176】
各可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)とを含み得る。
【0177】
相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列され得る。
【0178】
第1の局面の一態様では、結合剤は、
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと
を含む。
【0179】
第1の局面の一態様では、結合剤は、
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドと、
(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドと
を含む。
【0180】
第1の局面の一態様では、結合剤は、第1の結合アームおよび第2の結合アームを含む抗体であり、ここで、第1の結合アームは、
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含み;
第2の結合アームは、
(iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含む。
【0181】
第1の局面の一態様では、結合剤は、
(i)第1の重鎖が第1の重鎖定常領域を含み、かつ第1の軽鎖が第1の軽鎖定常領域を含む、CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖と;
(ii)第2の重鎖が第2の重鎖定常領域を含み、かつ第2の軽鎖が第2の軽鎖定常領域を含む、PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖と
を含む。
【0182】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々は、定常重鎖1(CH1)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域および定常重鎖3(CH3)領域の1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含み得る。
【0183】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々は、CH3領域を含み得、ここで、2つのCH3領域は、非対称変異を含む。非対称変異は、前記第1および第2のCH3領域の配列が、非同一位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。例えば、前記第1および第2のCH3領域の一方は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の405位に対応する位置に変異を含有し、前記第1および第2のCH3領域の他方は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の409位に対応する位置に変異を含有する。
【0184】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されていてよく、前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されていてよい。特定の態様では、第1および第2の重鎖は、同じ位置で置換されていない(すなわち、第1および第2の重鎖は、非対称変異を含有する)。
【0185】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、(i)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または(ii)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第1の重鎖においてRであり、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第2の重鎖においてLである。
【0186】
第1の局面の一態様では、結合剤は、同じ第1および第2の抗原結合領域とヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してFc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導する。
【0187】
第1の局面に係る結合剤の1つの特定の態様では、前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)は、抗体が、改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)を含む以外は同一の抗体と比較してFc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導するように改変されている。特に、前記改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々または両方は、SEQ ID NO:19または25に示されるアミノ酸配列を含み得るか、該アミノ酸配列からなり得るか、または該アミノ酸配列から本質的になり得る。
【0188】
Fc媒介エフェクター機能は、結合剤のFcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcγ受容体のFc媒介架橋の誘導を測定することによって判定され得る。特に、Fc媒介エフェクター機能は、結合剤のC1qへの結合を測定することによって判定され得る。
【0189】
結合剤の第1および第2の重鎖定常領域は、C1qの前記抗体への結合が、野生型抗体と比較して低下する、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように改変されていてよく、ここで、C1q結合は、好ましくは、ELISAによって判定される。
【0190】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235、D265、N297およびP331位に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれ、L、L、D、N、およびPではない。
【0191】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置は、それぞれ、前記第1および第2の重鎖においてFおよびEであり得る。
【0192】
特に、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置は、それぞれ、前記第1および第2の重鎖定常領域においてF、E、およびAであり得る。
【0193】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置は、それぞれ、FおよびEであり、ここで、(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか、または(ii)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0194】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置は、それぞれ、F、E、およびAであり、ここで、(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか、または(ii)第1の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0195】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1および/または第2の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:19またはSEQ ID NO:25に示される配列[IgG1-FC];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0196】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:26に示される配列[IgG1-F405L];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても9個の置換、例えば、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0197】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:21または27に示される配列[IgG1-F409R];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0198】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1および/または第2の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:22またはSEQ ID NO:28に示される配列[IgG1-Fc_FEA];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても7個の置換、例えば、多くても6個の置換、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0199】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:24またはSEQ ID NO:30に示される配列[IgG1-Fc_FEAL];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0200】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域は、
(a)SEQ ID NO:23またはSEQ ID NO:29に示される配列[IgG1-Fc_FEAR];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる。
【0201】
第1の局面の一態様では、結合剤は、カッパ(κ)軽鎖定常領域を含む。
【0202】
第1の局面の一態様では、結合剤は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む。
【0203】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、第1の軽鎖定常領域は、カッパ(κ)軽鎖定常領域またはラムダ(λ)軽鎖定常領域である。
【0204】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、第2の軽鎖定常領域は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域またはカッパ(κ)軽鎖定常領域である。
【0205】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、第1の軽鎖定常領域はカッパ(κ)軽鎖定常領域であり、第2の軽鎖定常領域はラムダ(λ)軽鎖定常領域であるか、または、第1の軽鎖定常領域はラムダ(λ)軽鎖定常領域であり、第2の軽鎖定常領域はカッパ(κ)軽鎖定常領域である。
【0206】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、カッパ(κ)軽鎖は、
(a)SEQ ID NO:35に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0207】
第1の局面に係る結合剤の一態様では、ラムダ(λ)軽鎖は、
(a)SEQ ID NO:36に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0208】
第1の局面に係る結合剤(特に、抗体)は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものである。特に、結合剤は、完全長IgG1抗体であり得る。第1の局面の好ましい態様では、結合剤(特に、抗体)は、IgG1m(f)アロタイプのものである。
【0209】
第1の局面に係る結合剤の好ましい態様では、結合剤は、
(i)第1の重鎖がSEQ ID NO:31に示される配列を含み、かつ第1の軽鎖がSEQ ID NO:32に示される配列を含む、CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖;
(ii)第2の重鎖がSEQ ID NO:33に示される配列を含み、かつ第2の軽鎖がSEQ ID NO:34に示される配列を含む、PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖
を含む。
【0210】
第1の局面に係る使用するための結合剤は、特に、アカサンリマブまたはそのバイオシミラーであり得る。
【0211】
現在の好ましい態様では、各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
(a)約0.3~5mg/kg体重もしくは合計で約25~400mg;および/または
(b)約2.1×10-9~3.4×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.7×10-6mol
である。
【0212】
これらの態様によれば、mg/kg単位で定義される用量は、結合剤が投与される対象の体重中央値が80kgであることに基づいて固定用量に変換することができ、その逆もまた同じである。
【0213】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.3~4.0mg/kg体重もしくは合計で約25~320mg;および/または約2.1×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.2×10-6molであり得る。
【0214】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.38~4.0mg/kg体重もしくは合計で約30~320mg;および/または約2.6×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約2.4×10-7~2.2×10-6molであり得る。
【0215】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.5~3.3mg/kg体重もしくは合計で約40~260mg;および/または約3.4×10-9~2.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約2.7×10-7~1.8×10-6molであり得る。
【0216】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.6~2.5mg/kg体重もしくは合計で約50~200mg;および/または約4.3×10-9~1.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約3.4×10-7~1.4×10-6molであり得る。
【0217】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.8~1.8mg/kg体重もしくは合計で約60~140mg;および/または約5.1×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.1×10-7~9.5×10-7molであり得る。
【0218】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.9~1.8mg/kg体重もしくは合計で約70~140mg;および/または約6.0×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.8×10-7~9.5×10-7molであり得る。
【0219】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約1~1.5mg/kg体重もしくは合計で約80~120mg;および/または約6.8×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で約5.5×10-7~8.2×10-7molであり得る。
【0220】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約1.1~1.4mg/kg体重もしくは合計で約90~110mg;および/または約7.7×10-9~9.4×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.1×10-7~7.5×10-7molであり得る。
【0221】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約1.2~1.3mg/kg体重もしくは合計で約95~105mg;および/または約6.8×10-9~8.9×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.5×10-7~7.2×10-7molであり得る。
【0222】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0,8~1.5mg/kg体重もしくは合計で約65~120mg;および/または約5.5×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.4×10-7~8.2×10-7molであり得る。
【0223】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、約0.9~1.3mg/kg体重もしくは合計で約70~100mg;および/または約6.0×10-9~8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約4.8×10-7~6.8×10-7molであり得る。
約0.9~1.1mg/kg体重もしくは合計で約75~90mg;および/または
約6.4×10-9~7.7×10-9mol/kg体重もしくは合計で約5.1×10-7~6.1×10-7mol。
【0224】
さらに、各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.3~4.0mg/kg体重もしくは合計で25~320mg;および/または2.1×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で1.7×10-7~2.2×10-6molであり得る。
【0225】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.38~4.0mg/kg体重もしくは合計で30~320mg;および/または2.6×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で2.4×10-7~2.2×10-6molであり得る。
【0226】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.5~3.3mg/kg体重もしくは合計で40~260mg;および/または3.4×10-9~2.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で2.7×10-7~1.8×10-6molであり得る。
【0227】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.6~2.5mg/kg体重もしくは合計で50~200mg;および/または4.3×10-9~1.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で3.4×10-7~1.4×10-6molであり得る。
【0228】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.8~1.8mg/kg体重もしくは合計で60~140mg;および/または5.1×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.1×10-7~9.5×10-7molであり得る。
【0229】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.9~1.8mg/kg体重もしくは合計で70~140mg;および/または6.0×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.8×10-7~9.5×10-7molであり得る。
【0230】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、1~1.5mg/kg体重もしくは合計で80~120mg;および/または6.8×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で5.5×10-7~8.2×10-7molであり得る。
【0231】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、1.1~1.4mg/kg体重もしくは合計で90~110mg;および/または7.7×10-9~9.4×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.1×10-7~7.5×10-7molであり得る。
【0232】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、1.2~1.3mg/kg体重もしくは合計で95~105mg;および/または6.8×10-9~8.9×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.5×10-7~7.2×10-7molであり得る。
【0233】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0,8~1.5mg/kg体重もしくは合計で65~120mg;および/または5.5×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.4×10-7~8.2×10-7molであり得る。
【0234】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.9~1.3mg/kg体重もしくは合計で70~100mg;および/または6.0×10-9~8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で4.8×10-7~6.8×10-7molであり得る。
【0235】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、0.9~1.1mg/kg体重もしくは合計で75~90mg;および/または6.4×10-9~7.7×10-9mol/kg体重もしくは合計で5.1×10-7~6.1×10-7molであり得る。
【0236】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤は、
(a)約1.1mg/kg体重もしくは合計で約80mg;および/または
(b)約6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で約5.5×10-7mol
であり得る。
【0237】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤は、
(a)1.1mg/kg体重もしくは合計で80mg;および/または
(b)6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で5.5×10-7mol
であり得る。
【0238】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
(a)約1.25mg/kg体重もしくは合計で約100mg;および/または
(b)約8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.8×10-7mol
であることが現在好ましい。
【0239】
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
(a)1.25mg/kg体重もしくは合計で100mg;および/または
(b)8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.8×10-7mol
であることが等しく好ましい。
【0240】
結合剤は、任意の方法で、当技術分野において公知の任意の経路によって投与される場合がある。好ましい態様では、結合剤は、全身に、例えば非経口的に、特に静脈内に投与される。
【0241】
結合剤は、本明細書に記載される任意の適切な薬学的組成物の形態で投与される場合がある。好ましい態様では、結合剤は、輸液の形態で投与される。
【0242】
本発明による使用のための結合剤は、静脈内(IV)輸液を使用することによって、例えば最低30分にわたり、例えば最低60分にわたり静脈内輸液によって、例えば、30~120分にわたり静脈内輸液を使用することによって投与される場合がある。好ましくは、本発明による使用のための結合剤は、30分にわたり静脈内(IV)輸液を使用することによって投与される。
【0243】
結合剤は、PD-1阻害剤の投与の前、それと同時、または後に投与することができる。
【0244】
一態様では、結合剤は、PD-1阻害剤の投与前に投与される。例えば、結合剤の投与終了とPD-1阻害剤の投与開始との間のギャップは、少なくとも約10分、例えば少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約25分、少なくとも約30分、少なくとも約35分、少なくとも約40分、少なくとも約45分、少なくとも約50分、少なくとも約55分、少なくとも約60分、少なくとも約90分、または少なくとも約120分、および最大約14日(最大約2週間)、例えば最大約13日、最大約12日、最大約11日、最大約10日、最大約9日、最大約8日、最大約7日(最大約1週間)、最大約6日、最大約5日、最大約4日、最大約3日、最大約2日、最大約1日(最大約24時間)、最大約18時間、最大約12時間、最大約6時間、最大約5時間、最大約4時間、最大約3時間、最大約2.5時間、または最大約2時間であることができる。
【0245】
一態様では、結合剤は、PD-1阻害剤の投与後に投与される。例えば、PD-1阻害剤の投与終了と結合剤の投与開始との間のギャップは、少なくとも約10分、例えば少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約25分、少なくとも約30分、少なくとも約35分、少なくとも約40分、少なくとも約45分、少なくとも約50分、少なくとも約55分、少なくとも約60分、少なくとも約90分、または少なくとも約120分であり、かつ最大約14日(最大約2週間)、例えば最大約13日、最大約12日、最大約11日、最大約10日、最大約9日、最大約8日、最大約7日(最大約1週間)、最大約6日、最大約5日、最大約4日、最大約3日、最大約2日、最大約1日(最大約24時間)、最大約18時間、最大約12時間、最大約6時間、最大約5時間、最大約4時間、最大約3時間、最大約2.5時間、または最大約2時間であることができる。
【0246】
一態様では、結合剤は、PD-1阻害剤と同時に投与される。例えば、結合剤およびPD-1阻害剤は、両方の薬物を含む組成物を使用して投与される場合がある。あるいは、結合剤は、対象の1つの体肢に投与される場合があり、PD-1阻害剤は、対象の別の体肢に投与される場合がある。
【0247】
PD-1阻害剤
一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1に関連する阻害シグナルを阻止する。一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1に関連する阻害シグナル伝達を破壊または阻害する抗体またはその断片である。一態様では、PD-1阻害剤は、阻害シグナル伝達を破壊または阻害する低分子阻害剤である。一態様では、PD-1阻害剤は、阻害シグナル伝達を破壊または阻害するペプチドベースの阻害剤である。一態様では、PD-1阻害剤は、阻害シグナル伝達を破壊または阻害する阻害性核酸分子である。
【0248】
本明細書に記載されるPD-1シグナル伝達を阻害または遮断することは、免疫抑制を阻止または後退させること、およびがん細胞に対するT細胞性免疫の樹立または強化を結果としてもたらす。一態様では、本明細書に記載されるPD-1シグナル伝達の阻害は、免疫系の機能障害を低減または阻害する。一態様では、本明細書に記載されるPD-1シグナル伝達の阻害は、機能障害性の免疫細胞の機能障害を少なくする。一態様では、本明細書に記載されるPD-1シグナル伝達の阻害は、機能障害性のT細胞の機能障害を少なくする。
【0249】
一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻止する。
【0250】
PD-1阻害剤は、必要な特異性の抗原結合性断片を有する抗体部分を含む抗体、その抗原結合性断片、またはその構築物でありうる。抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載される通りである。PD-1阻害剤である抗体またはその抗原結合性断片は、特にPD-1と結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。抗体または抗原結合性断片はまた、本明細書に記載されるさらなる部分とコンジュゲートされている場合がある。特に、抗体またはその抗原結合性断片は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。
【0251】
好ましい態様では、PD-1阻害剤である抗体は単離された抗体である。
【0252】
一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻止する抗体、その断片または構築物である。
【0253】
PD-1阻害剤は、阻害性核酸分子、例えばオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNAまたはRNA分子、およびアプタマー(例えば、DNAまたはRNAアプタマー)、特にアンチセンス-オリゴヌクレオチドの場合がある。一態様では、siRNAであるPD-1チェックポイント阻害剤はmRNAを妨害し、したがって翻訳、例えば、PD-1タンパク質の翻訳を遮断する。
【0254】
一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1受容体と、そのリガンド、PD-L1および/またはPD-L2の1つまたは複数との相互作用を破壊または阻害する抗体、その抗原結合部分またはその構築物である。PD-1と結合し、PD-1とそのリガンドの1つまたは複数との相互作用を破壊または阻害する抗体は、当技術分野において公知である。ある特定の態様では、抗体、その抗原結合部分またはその構築物はPD-1と特異的に結合する。
【0255】
さらなる好ましい態様では、PD-1阻害剤は、PD-1遮断抗体などの、PD-1と結合する抗体である。理論に縛られることなく、CD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含む結合剤と、PD-1と結合する抗体との組み合わせは、併用療法が4-1BBの同時の条件付き活性化を伴ってPD-1経路の完全遮断をもたらすので、併用療法を受けている対象において応答率を増加させ、応答の持続時間の改善をもたらすと考えられる。PD-1遮断抗体は、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。さらに、PD-1と結合する抗体との併用療法が、結合剤によって結合できるPD-L1の量を増加させると考えられる。
【0256】
例示的なPD-1阻害剤は、非限定的に、抗PD-1抗体、例えばBGB-A317(BeiGene;米国特許第8,735,553号、WO2015/35606およびUS2015/0079109を参照されたい)、ランブロリズマブ(例えば、WO2008/156712にhPD109Aならびにそのヒト化誘導体h409A1、h409A16およびh409A17として開示される)、AB137132(Abcam)、EH12.2H7およびRMP1-14(#BE0146; Bioxcell Lifesciences Pvt. LTD.)、MIH4(Affymetrix eBioscience)、ニボルマブ(OPDIVO、BMS-936558;Bristol Myers Squibb;米国特許第8,008,449号;WO2013/173223;WO2006/121168を参照されたい)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475;Merck;WO2008/156712を参照されたい)、ピディリズマブ(CT-011;CureTech;Hardy et al., 1994, Cancer Res., 54(22):5793-6およびWO2009/101611を参照されたい)、PDR001(Novartis;WO2015/112900を参照されたい)、MEDI0680(AMP-514;AstraZeneca;WO2012/145493を参照されたい)、TSR-042(WO2014/179664を参照されたい)、セミプリマブ(REGN-2810;Regeneron;H4H7798N;US 2015/0203579およびWO2015/112800参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al., 2007, J. Hematol. Oncol. 70: 136を参照されたい)、AMP-224(GSK-2661380;Li et al., 2016, Int J mol Sci 17(7):1151およびWO2010/027827およびWO2011/066342参照)、PF-06801591(Pfizer)、チスレリズマブ(BGB-A317;BeiGene;WO2015/35606、米国特許第9,834,606号、およびUS 2015/0079109を参照されたい)、BI 754091、SHR-1210(WO2015/085847を参照されたい)、ならびにWO2006/121168に記載の抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、および5F4、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても知られる;WO2015/085847を参照されたい)、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても知られる;W02014/179664を参照されたい)、GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても知られる;Si-Yang et al., 2017, J. Hematol. Oncol. 70: 136を参照されたい)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;WO2014/194302を参照されたい)、AGEN2034(Agenus;WO2017/040790を参照されたい)、MGA012(Macrogenics;WO2017/19846を参照されたい)、IBI308(Innovent;WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、およびWO2017/133540を参照されたい)、セトレリマブ(JNJ-63723283; JNJ-3283;Calvo et al., J. Clin. Oncol. 36, no. 5_suppl (2018) 58を参照されたい)、ゲノリムズマブ(CBT-501;Patel et al., J. ImmunoTher. Cancer, 2017, 5(Suppl 2):P242を参照されたい)、ササンリマブ(PF-06801591;Youssef et al., Proc. Am. Assoc. Cancer Res. Ann. Meeting 2017; Cancer Res 2017;77(13 Suppl):Abstractを参照されたい)、トリパリマブ(JS-001;US 2016/0272708を参照されたい)、カムレリズマブ(SHR-1210;INCSHR-1210;US 2016/376367;Huang et al., Clin. Cancer Res. 2018; 24(6):1296-1304を参照されたい)、スパルタリズマブ(PDR001;WO2017/106656;Naing et al., J. Clin. Oncol. 34, no. 15_suppl (2016) 3060-3060を参照されたい)、BCD-100(JSC BIOCAD, Russia;WO2018/103017を参照されたい)、バルスチリマブ(AGEN2034;WO2017/040790を参照されたい)、シンチリマブ(IBI-308;WO2017/024465およびWO2017/133540を参照されたい)、エザベンリマブ(BI-754091;US 2017/334995;Johnson et al., J. Clin. Oncol. 36, no. 5_suppl (2018) 212-212を参照されたい)、ジンベレリマブ(GLS-010;WO2017/025051を参照されたい)、LZM-009(US 2017/210806を参照されたい)、AK-103(WO2017/071625、WO2017/166804、およびWO2018/036472を参照されたい)、レチファンリマブ(MGA-012;WO2017/019846を参照されたい)、Sym-021(WO2017/055547を参照されたい)、CS1003(CN107840887を参照されたい)、抗PD-1抗体、例えば、米国特許第7,488,802号、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,168,757号、WO03/042402、WO2010/089411(抗PD-L1抗体をさらに開示している)、WO2010/036959、WO2011/159877(TIM-3に対する抗体をさらに開示している)、WO2011/082400、WO2011/161699、WO2009/014708、WO03/099196、WO2009/114335、WO2012/145493(PD-L1に対する抗体をさらに開示している)、WO2015/035606、WO2014/055648(抗KIR抗体をさらに開示している)、US 2018/0185482(抗PD-L1抗体および抗TIGIT抗体をさらに開示している)、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,779,105号、米国特許第6,808,710号、米国特許第8,168,757号、US 2016/0272708、および米国特許第8,354,509号に記載されているもの、PD-1シグナル伝達経路に対する小分子アンタゴニスト、例えば、Shaabani et al., 2018, Expert Op Ther Pat., 28(9):665-678およびSasikumar and Ramachandra, 2018, BioDrugs, 32(5):481-497に開示されているもの、PD-1に対するsiRNA、例えば、WO2019/000146およびWO2018/103501に開示されているもの、WO2018/222711に開示される可溶性PD-1タンパク質、ならびにPD-1の可溶性形態を含む腫瘍溶解性ウイルス、例えば、WO2018/022831に記載されているものを含む。
【0257】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ(OPDIVO;BMS-936558)もしくはそのバイオシミラー、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475)もしくはそのバイオシミラー、ピジリズマブ(CT-011)、PDR001、MEDI0680(AMP-514)もしくはそのバイオシミラー、TSR-042、REGN2810、JS001、AMP-224(GSK-2661380)、PF-06801591、BGB-A317、BI 754091、またはSHR-1210である。
【0258】
PD-1阻害剤は、特にペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーでありうる。あるいは、抗体は、ニボルマブまたはそのバイオシミラーでありうる。
【0259】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤免疫調節薬は、上記の抗PD-1抗体または抗原結合性断片のうちの1つの相補性決定領域(CDR)、例えば、ニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される1つの抗PD-1抗体または抗原結合性断片のCDRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。
【0260】
いくつかの態様では、抗PD-1抗体のCDRは、Kabat番号付けスキーム(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NTH Publication No. 91-3242)を使用して記述される。
【0261】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される1つの抗PD-1抗体または抗原結合性断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域などの、上記の抗PD-1抗体または抗原結合性断片のうちの1つの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。
【0262】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。
【0263】
ペムブロリズマブのCDR配列は、本明細書においてSEQ ID NO:59~61(それぞれVH CDR 1、2および3)およびSEQ ID NO:62~64(それぞれVL CDR 1、2および3)によって特定される。VHおよびVL配列は、それぞれSEQ ID NO:65および66によって特定され、重鎖および軽鎖配列は、それぞれSEQ ID NO:67および68によって特定される。したがって一態様では、PD-1阻害剤は、それぞれSEQ ID NO:59、60および61に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:62、63および64に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体である。
【0264】
さらなる態様では、PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:65に示される配列を含むまたはそれからなるまたはそれから本質的になる重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:66に示される配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる軽鎖可変領域(VL)を含む抗体である。PD-1阻害剤は、特に、SEQ ID NO:67に示されるアミノ酸配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる重鎖、およびSEQ ID NO:68に示されるアミノ酸配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる軽鎖を含む抗体でありうる。
【0265】
ニボルマブのCDR配列は、本明細書においてSEQ ID NO:69~71(それぞれVH CDR 1、2および3)およびSEQ ID NO:72~74(それぞれVL CDR 1、2および3)によって特定される。VHおよびVL配列は、それぞれSEQ ID NO:75および76によって特定され、重鎖および軽鎖配列は、それぞれSEQ ID NO:77および78によって特定される。したがって一態様では、PD-1阻害剤は、それぞれSEQ ID NO:69、70および71に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:72、73および74に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体である。
【0266】
さらなる態様では、PD-1阻害剤は、SEQ ID NO:75に示される配列を含むまたはそれからなるまたはそれから本質的になる重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:76に示される配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる軽鎖可変領域(VL)を含む抗体である。PD-1阻害剤は、特に、SEQ ID NO:77に示されるアミノ酸配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる重鎖、およびSEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列を含む、それからなるまたはそれから本質的になる軽鎖を含む抗体でありうる。
【0267】
本開示の抗PD-1抗体は、好ましくはモノクローナルであり、多特異性、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片、および上記のいずれかのPD-1結合性断片でありうる。いくつかの態様では、本明細書に記載される抗PD-1抗体は、PD-1(例えば、ヒトPD-1)と特異的に結合する。本開示の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であることができる。
【0268】
本開示のある特定の態様では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載される抗原結合性断片(例えば、ヒト抗原結合性断片)であり、非限定的に、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片を含む。単鎖抗体を含む抗原結合性断片は、可変領域を単独で、または以下:ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインの全体もしくは一部分と組み合わせて含みうる。可変領域と、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインとの任意の組み合わせを含む抗原結合性断片も本開示に含まれる。いくつかの態様では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト、マウス(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。
【0269】
本明細書に開示される抗PD-1抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはそれを超える多特異性でありうる。多特異性抗体は、PD-1の異なるエピトープに対して特異的な場合があり、またはPD-1のみならず異種タンパク質の両方に対して特異的な場合がある。例えば、PCT公報WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt, et al., 1991, J. Immunol. 147:60 69;米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,819号;Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547 1553を参照されたい。
【0270】
本明細書に開示される抗PD-1抗体は、それらが含む特定のCDRに関して記載または明記されうる。所与のCDRまたはFRのアミノ酸配列の正確な境界は、Kabat et al. (1991), "Sequences of Proteins of Immunological Interest," 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (「Kabat」番号付けスキーム);Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948 (「Chothia」番号付けスキーム);MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), "Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography," J. Mol. Biol. 262, 732-745.”(「Contact」番号付けスキーム);Lefranc MP et al., "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains," Dev Comp Immunol, 2003; 27(1):55-77 (「IMGT」番号付けスキーム);Honegger A and Plueckthun A, "Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool," J mol Biol, 2001;309(3):657-70(「Aho」番号付けスキーム);およびMartin et al., "Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm," PNAS, 1989, 86(23):9268-9272,(「AbM」番号付けスキーム)によって記載されたものを含むいくつかの周知スキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。所与のCDRの境界は、特定のために使用されるスキームに応じて変動しうる。いくつかの態様では、所与の抗体またはその領域(例えば、その可変領域)のCDRまたは個別の明記されたCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、上述のスキームのいずれかによって定義されるようなCDR(または特定のCDR)を包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えば、CDR-H3)が、所与のVHまたはVL領域のアミノ酸配列における対応するCDRのアミノ酸配列を含むと述べられる場合、このようなCDRは、上述のスキームのいずれかによって定義される場合の可変領域内の対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を有すると理解される。Kabat、Chothia、AbMまたはIMGT法によって定義される場合のCDRなどの特定の1つまたは複数のCDRの特定のためのスキームが明記されうる。
【0271】
いくつかの態様では、本明細書に提供される抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片のCDR配列におけるアミノ酸残基の番号付けは、Lefranc, M. P. et al., Dev. Comp. Immunol., 2003, 27, 55-77に記載されるIMGT番号付けスキームに従う。
【0272】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗PD-1抗体は、抗体ニボルマブのCDRを含む。WO2006/121168を参照されたい。いくつかの態様では、抗体ニボルマブのCDRは、Kabat番号付けスキーム(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NTH Publication No. 91-3242)を使用して記述される。本開示は、重鎖または軽鎖可変ドメインを含む抗PD-1抗体またはその誘導体を包含し、該可変ドメインは、(a)3つのCDRのセットであって、モノクローナル抗体ニボルマブからのものであるCDRのセット、および(b)4つのフレームワーク領域のセットであって、モノクローナル抗体ニボルマブにおけるフレームワーク領域のセットと異なるフレームワーク領域のセットを含み、該抗PD-1抗体またはその誘導体はPD-1と結合する。ある特定の態様では、抗PD-1抗体はニボルマブである。
【0273】
本明細書に開示される抗PD-1抗体はまた、PD-1(例えば、ヒトPD-1)に対するそれらの結合親和性に関して記載または明記されうる。好ましい結合親和性は、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M未満の解離定数またはKdを有するものを含む。
【0274】
抗PD-1抗体はまた、修飾された、すなわち、抗体がPD-1と結合するのを共有結合が阻止しないような任意の種類の分子と抗体との共有結合によって修飾された、誘導体および構築物を含む。例えば、それに限定されるわけではないが、抗PD-1抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質との連結などによって修飾された抗体を含む。数多くの化学修飾のいずれかが、非限定的に特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む公知の技法によって実行されうる。追加的に、誘導体または構築物は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含む場合がある。
【0275】
好ましい態様では、PD-1阻害剤は、PD-1経路(PD-1とその1つまたは複数のリガンド(PD-L1および/またはPD-L2など)との相互作用)を破壊または阻害する抗体、特に拮抗抗体または遮断抗体である。好ましい一態様では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との相互作用を破壊または阻害する抗体、特に拮抗抗体または遮断抗体である。
【0276】
PD-1阻害剤は、PD-1阻害剤、例えば、阻害性核酸分子または抗体もしくはその断片をコードする核酸、例えばDNAまたはRNA分子の形態で投与されうる。例えば抗体は、本明細書に記載される発現ベクター中にコードされて送達することができる。このような場合、核酸分子は、例えば、プラスミドもしくはmRNA分子の形態で、または送達媒体、例えば、リポソーム、リポプレックスもしくは核酸脂質粒子と複合体化して送達することができる。PD-1t阻害剤はまた、PD-1阻害剤をコードする発現カセットを含む腫瘍溶解性ウイルスを介して投与されうる。PD-1はまた、例えば、細胞ベース療法の形態での、PD-1阻害剤を発現することが可能な内因性または同種細胞の投与によって投与されうる。
【0277】
好ましくは、PD-1阻害剤は、適切な量で投与される。各用量および/または処置サイクルで投与されるPD-1阻害剤の量は、特に、該PD-1阻害剤の5%超、好ましくは10%超、さらに好ましくは15%超、いっそうさらに好ましくは20%超、いっそうさらに好ましくは25%超、いっそうさらに好ましくは30%超、いっそうさらに好ましくは35%超、いっそうさらに好ましくは40%超、いっそうさらに好ましくは45%超、もっとも好ましくは50%超がPD-1と結合する範囲内でありうる。
【0278】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、例えば、各用量および/または各処置サイクルで投与されるPD-1阻害剤の量は、合計約10~約1000mg、例えば合計約100~約600mg、例えば、合計約150~約600mg、合計約150~約500mg、合計約175~約500mg、合計約175~約450mg、合計約200~約450mg、または例えば合計約200~約400mgである。
【0279】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計10~1000mg、例えば合計100~600mg、例えば、合計150~600mg、合計150~500mg、合計175~500mg、合計175~450mg、合計200~450mg、または例えば合計200~400mgである。
【0280】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約100~600mg;および/または合計約6.84×10-7~4.11×10-7molである。
【0281】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約100~400mg;および/または合計約6.84×10-7~2.73×10-6mol、例えば合計100~400mg;および/または合計6.84×10-7~2.73×10-6molである。
【0282】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約200~400mg;および/または合計約6.84×10-7~2.73×10-6mol、例えば合計200~400mg;および/または合計6.84×10-7~2.73×10-6molである。
【0283】
ある特定の態様では、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約200mgまたは約1.37×10-6mol、例えば合計200mgまたは1.37×10-6molである。
【0284】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約200mgまたは約1.37×10-6molであり、例えば合計200mgまたは1.37×10-6molである。
【0285】
ある特定の態様では、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約400mgまたは合計約2.73×10-6、例えば合計400mgまたは合計2.73×10-6である。
【0286】
ある特定の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーであり、投与されるPD-1阻害剤の量は、例えば、各用量および/または各処置サイクルで、合計約400mgまたは合計約2.73×10-6、例えば合計400mgまたは合計2.73×10-6である。
【0287】
PD-1阻害剤は、当技術分野において公知の任意の方法および任意の経路で投与されうる。投与の方式および経路は、使用されるべきPD-1阻害剤の種類に依存する。好ましい態様では、PD-1阻害剤は、全身的に、例えば非経口的に、特に静脈内に投与される。
【0288】
PD-1阻害剤は、本明細書に記載される任意の適切な薬学的組成物の形態で投与されうる。好ましい態様では、PD-1阻害剤は、輸液、例えば静脈内輸液の形態で投与される。
【0289】
PD-1と結合する抗体は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む場合があり、その際、HCDR1、HCDR2およびHCDR3配列は、それぞれSEQ ID NO:104、SEQ ID NO:101、およびSEQ ID NO:100に示される配列を含むまたは有し、LCDR1、LCDR2およびLCDR3配列は、それぞれSEQ ID NO:107、QAS、およびSEQ ID NO:105に示される配列を含むまたは有する。このような抗体の特異的であるが非限定的な例はMAB-19-0202である。
【0290】
「重鎖可変領域」(「VH」とも称される)および「軽鎖可変領域」(「VL」とも称される)という用語は、本明細書においてそれらのもっとも一般的な意味で使用され、フレームワーク領域(FR)とも名付けられる他の領域が散在している相補性決定領域(CDR)を含むことができる任意の配列を含む。フレームワーク領域は、とりわけ、特にVHおよびVLのフォールディングおよび対形成の後にCDRが抗原結合部位を形成できるように、CDRの間隔を空ける。好ましくは、各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。すなわち、「重鎖可変領域」および「軽鎖可変領域」という用語は、ネイティブな抗体または本明細書に例示されるVHおよびVL配列(配列表のSEQ ID NO:109~112)に見出すことができる配列に限定されると解釈すべきでない。これらの用語は、CDRを含み、的確に位置付けることができる任意の配列、例えば、ネイティブな抗体のVLおよびVH領域に由来する、または配列表のSEQ ID NO:109~112に示される配列に由来する配列などを含む。特に、それぞれVHおよびVLの特徴を失わずにフレームワーク領域の配列を改変できる(アミノ酸置換に関するバリアントと、配列長に関するバリアント、すなわち、挿入または欠失バリアントとの両方を含む)ことが当業者によって認識されている。好ましい態様では、任意の改変はフレームワーク領域に限られる。しかし、当業者はまた、PD-1と結合する能力を失わずにCDR、超可変および可変領域も改変できるという事実を十分に認識している。例えば、CDR領域は、本明細書に明記される領域と同一であるまたは高度に相同である。「高度に相同である」によって、1~5つ、好ましくは1~4つ、例えば1~3つまたは1もしくは2つの置換がCDRに行われる場合があることが考えられている。加えて、超可変および可変領域が改変され、その結果、本明細書に具体的に開示される領域と実質的な相同性を示す場合がある。
【0291】
PD-1と結合する抗体において、本明細書に明記される場合のCDRは、2つの異なるCDR特定方法を使用することによって特定されている。本明細書に使用される第1の番号付けスキームは、Kabat(Wu and Kabat, 1970;Kabat et al., 1991)に従い、第2のスキームは、IMGT番号付けである(Lefranc, 1997;Lefranc et al., 2005)。第3のアプローチでは、両方の特定スキームの交わりが使用されている。
【0292】
PD-1と結合する抗体は、本明細書に記載される1つもしくは複数のCDR、CDRのセット、またはCDRのセットの組み合わせを含む場合があり、該CDRをそれらの介在フレームワーク領域(本明細書においてフレーミング領域もしくはFRとも称される)または該フレームワーク領域の部分と一緒に含む。好ましくは、部分は、第1および第4フレームワーク領域の一方または両方の少なくとも約50%を含み、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端の50%および第4のフレームワーク領域のN末端の50%である。組み換えDNA技法によって製造された抗体の構築は、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えばダイアボディーの生産で)またはタンパク質ラベルを含むさらなるタンパク質配列に本開示の可変領域を繋ぐためのリンカーの導入を含む、クローニングまたは他の操作ステップを容易にするために導入されるリンカーによってコードされる、可変領域に対してNまたはC末端側の残基の導入を結果としてもたらす場合がある。
【0293】
PD-1と結合する抗体は、SEQ ID NO:111のいずれか1つに示されるVH配列のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含みうる。一態様では、抗体は、重鎖可変領域(VH)を含み、その際、VHは、SEQ ID NO:111のいずれか1つに示される配列を含む。一態様では、抗体は、SEQ ID NO:112のいずれか1つに示されるVL配列のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一態様では、抗体は、軽鎖可変領域(VL)を含み、その際、VLは、SEQ ID NO:112のいずれか1つに示される配列を含む。
【0294】
PD-1と結合する抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む場合があり、その際、VHは、SEQ ID NO:111に示される配列を含むまたは有し、VLは、SEQ ID NO:112に示される配列、またはこれらの配列のそれぞれのバリアントを含むまたは有する。PD-1と結合する抗体の別の例は、SEQ ID NO:111に示される配列、またはそのバリアントを含むまたは有するVH、およびSEQ ID NO:112に示される配列、またはそのバリアントを含むまたは有するVLを含む場合がある。このような抗体の特異的であるが非限定的な例はMAB-19-0618である。抗体MAB-19-0618は、MAB-19-0202に由来する。該重鎖可変領域(VH)および該軽鎖可変領域(VL)のバリアントならびにこれらのバリアントVHおよびVLのそれぞれの組み合わせもまた、本開示によって包含される。
【0295】
PD-1と結合する抗体は、重鎖および軽鎖を含む場合があり、重鎖は、SEQ ID NO:93または90に示される配列を含むまたは有する重鎖定常領域、およびSEQ ID NO:111に示される配列を含むまたは有する重鎖可変領域(VH)を含み、軽鎖は、SEQ ID NO:97に示される配列を含むまたは有する軽鎖定常領域、およびSEQ ID NO:112に示される配列を含むまたは有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0296】
PD-1と結合する抗体は、重鎖および軽鎖を含む場合があり、重鎖は、SEQ ID NO:93または90に示される配列を含むまたは有する重鎖定常領域、ならびにSEQ ID NO:111に示される配列のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、軽鎖は、SEQ ID NO:97に示される配列を含むまたは有する軽鎖定常領域、ならびにSEQ ID NO:112に示される配列のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。例えば、CDR1、CDR2およびCDR3配列は、本明細書に明記される通りである。
【0297】
PD-1と結合する抗体は、モノクローナル、キメラまたはモノクローナルヒト化抗体またはこのような抗体の断片でありうる。抗体は、例えば、二重特異性抗体を含む全抗体またはその抗原結合性断片であることができる。
【0298】
PD-1と結合する抗体において、C1qと該抗体との結合が野生型抗体と比較して低減されるように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減されるように、1つまたは複数の、好ましくは両方の重鎖定常領域が改変されている場合がある。一態様では、C1qの結合は、ELISAによって決定することができる。
【0299】
本明細書における「野生型」または「WT」または「ネイティブな」によって、アレル変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列が意味される。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0300】
PD-1と結合する抗体において、IgG Fc-ガンマ受容体の1つまたは複数と抗体との結合が野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または100%低減されるように1つまたは複数、好ましくは両方の重鎖定常領域が改変されている場合がある。一態様では、1つまたは複数のIgG Fc-ガンマ受容体は、Fc-ガンマRI、Fc-ガンマRII、およびFc-ガンマRIIIの少なくとも1つより選択される。一態様では、IgG Fc-ガンマ受容体はFc-ガンマRIである。
【0301】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、Fc-ガンマRI媒介エフェクター機能を誘導することができず、またはその際、誘導されたFc-ガンマRI媒介エフェクター機能は、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または100%低減される。
【0302】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介溶解、アポトーシス、ホモタイプ接着および/もしくは食作用のうちの少なくとも1つを誘導することができず、または補体依存性細胞傷害(CDC)媒介溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介溶解、アポトーシス、ホモタイプ接着および/もしくは食作用のうちの少なくとも1つは、低い程度で誘導され、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または100%低減される。
【0303】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害はまた、本明細書において「ADCC」と称される。ADCCは、本明細書に記載されるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能を記述し、これは、好ましくは標的細胞が抗体によってマークされていることを必要とする。
【0304】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原と結合し、抗体のFcドメインが免疫エフェクター細胞の表面のFc受容体(FcR)と会合する場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特異的細胞集団が規定のFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示および対腫瘍T細胞応答の誘導をもたらす様々な程度の即時型腫瘍破壊を直接誘導するためのメカニズムとして見なすことができる。好ましくは、ADCCのインビボ誘導は、対腫瘍T細胞応答および宿主由来抗体応答をもたらす。
【0305】
補体依存性細胞傷害は、本明細書において「CDC」とも称される。CDCは、抗体が指示できる別の細胞死滅法である。IgMは、補体活性化にもっとも効果的なアイソタイプである。IgG1およびIgG3もまた、両方とも古典的補体活性化経路を介してCDCを指示するのに非常に有効である。好ましくはこのカスケードでは、抗原-抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与抗体分子のCH2ドメイン上の近接した複数のC1q結合部位の露出(uncloaking)を結果としてもたらす(C1qは、補体C1の3つのサブコンポーネントのうちの1つである)。好ましくは、これらの露出したC1q結合部位は、以前の低親和性C1q-IgG相互作用を高アビディティーの相互作用に変換し、それが一連の他の補体タンパク質を伴う事象のカスケードを誘起し、エフェクター細胞走化性/活性化作用物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、膜攻撃複合体の形成で終了し、それが細胞膜に小孔を空け、小孔は、細胞内外への水および溶質の自由通過を促進し、アポトーシスをもたらす場合がある。
【0306】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、低減したまたは枯渇したエフェクター機能を有する。一態様では、抗体は、ADCCもしくはCDCまたはその両方を媒介しない。
【0307】
一態様では、新生児型Fc受容体(FcRn)と抗体との結合が野生型抗体と比較して影響されないように、PD-1と結合する抗体の1つまたは複数、好ましくは両方の重鎖定常領域は改変されている。
【0308】
一態様では、抗体が結合できるPD-1はヒトPD-1である。一態様では、PD-1は、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示されるアミノ酸配列を有するもしくは含み、またはPD-1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、またはその免疫原性断片である。一態様では、抗体は、生きた細胞の表面に存在するPD-1のネイティブなエピトープと結合する能力を有する。
【0309】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、重鎖定常領域を含み、その際、重鎖定常領域は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する位置に芳香族または非極性アミノ酸を、およびヒトIgG1重鎖においてEU番号付けによる位置236に対応する位置にグリシン以外のアミノ酸を含む。
【0310】
本明細書に使用される場合の「位置…に対応するアミノ酸」という用語および類似の表現は、ヒトIgG1重鎖中のアミノ酸位置の番号を指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアライメントによって見出される場合がある。したがって、別の配列におけるアミノ酸またはセグメント「に対応する」1つの配列におけるアミノ酸またはセグメントは、ALIGN、ClustalWまたは類似物などの標準的な配列アライメントプログラムを使用して、典型的にはデフォルト設定で他方のアミノ酸またはセグメントとアライメントし、ヒトIgG1重鎖と少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。配列または配列中のセグメントをアライメントし、それにより、本開示によるアミノ酸位置に対応する配列中の位置を決定する方法は、当技術分野において周知であると考えられる。
【0311】
例えば本開示の配列表のSEQ ID NO:93によるアミノ酸配列を参照して、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234~236に対応するアミノ酸位置は、SEQ ID NO:93のアミノ酸位置117~119であり、Fは位置117(EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する)に位置し、Eは位置118(EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置235に対応する)に位置し、Rは位置119(EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236に対応する)に位置する。下記の配列では、FERアミノ酸配列に下線を引き、太字体で示す。
【0312】
【0313】
本明細書に特に示さないかぎり、または文脈と明らかに矛盾しないかぎり、本開示にわたる抗体重鎖定常領域中のアミノ酸位置へのすべての参照は、Kabat(Kabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689 (1991)に記載)に示されるEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のそれぞれの位置に対応する位置を指す。
【0314】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、低減または枯渇したFc媒介エフェクター機能を有する、または同じ抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してFc媒介エフェクター機能をより低い程度に誘導する、重鎖定常領域を含む。
【0315】
特定の一態様では、抗体が、非改変重鎖定常領域(CH)を含むことを除き同一である抗体と比較してFc媒介エフェクター機能をより低い程度に誘導するように、PD-1と結合する抗体中の該重鎖定常領域(CH)は改変されている。
【0316】
本明細書に使用される場合の「Fc媒介エフェクター機能」という用語は、特に、IgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)の結合、C1qの結合、ADCC、CDCおよびそれらの任意の組み合わせのリストより選択される機能を指す。
【0317】
本開示に関連して、多特異性抗体を含む抗体に関係して使用される「低減または枯渇したFc媒介エフェクター機能を有する」という用語は、抗体が、(i)該抗体と同じCDR配列、特に同じ第1および第2の抗原結合領域を含むもの、ならびに(ii)ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖を含むヒトIgG1抗体と比較して、Fc媒介エフェクター機能の、特にIgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)の結合、C1qの結合、ADCCまたはCDCのリストより選択される機能の全体的な減少を、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、もっとも好ましくは75%以上のレベルの減少を引き起こすことを意味する。「枯渇したFc媒介エフェクター機能」または類似の語句は、完全または本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減を含む。
【0318】
本開示に関連して、多特異性抗体を含む抗体に関係して使用される「Fc媒介エフェクター機能をより低い程度に誘導する」という用語は、抗体が、(i)該抗体と同じCDR配列、特に同じ第1および第2の抗原結合領域を含むもの、ならびに(ii)ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖を含むヒトIgG1抗体と比較して低い程度に、Fc媒介エフェクター機能を、特にIgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)の結合、C1qの結合、ADCCまたはCDCのリストより選択される機能を誘導することを意味する。
【0319】
Fc媒介エフェクター機能は、結合剤とFcγ受容体との結合、C1qとの結合、またはFcγ受容体のFc媒介交差結合の誘導を測定することによって決定されうる。特に、Fc媒介エフェクター機能は、結合剤とC1qおよび/またはIgG FC-ガンマRIとの結合を測定することによって決定されうる。
【0320】
PD-1と結合する抗体の使用に関係する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236に対応する位置のアミノ酸は、塩基性アミノ酸である。
【0321】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書において互換的に使用される場合があり、限定的と理解されるべきでない。アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共にアミン(-NH2)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物である。本開示に関連して、アミノ酸は、構造および化学的特徴に基づき分類されうる。
【0322】
本開示において、アミノ酸残基は、以下の略語を使用することによって表現される。また、特に明示的に示さないかぎり、ペプチドおよびタンパク質のアミノ酸配列は、N末端からC末端(左端から右端)へと同定され、N末端は、第1の残基として同定される。アミノ酸は、以下のようにそれらの3文字略語、1文字略語、またはフルネームで呼ばれる。Ala:A:アラニン;Asp:D:アスパラギン酸;Glu:E:グルタミン酸;Phe:F:フェニルアラニン;Gly:G:グリシン;His:H:ヒスチジン;Ile:I:イソロイシン;Lys:K:リシン;Leu:L:ロイシン;Met:M:メチオニン;Asn:N:アスパラギン;Pro:P:プロリン;Gln:Q:グルタミン;Arg:R:アルギニン;Ser:S:セリン;Thr:T:トレオニン;Val:V:バリン;Trp:W:トリプトファン;Tyr:Y:チロシン;Cys:C:システイン。
【0323】
天然に存在するアミノ酸はまた、一般的に、4つのファミリーに類別されうる:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に、一緒に芳香族アミノ酸として分類される。
【0324】
PD-1と結合する抗体の使用に関係する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236に対応する位置の塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群より選択される。一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236に対応する位置の塩基性アミノ酸は、アルギニン(G236R)である。このようなアミノ酸置換はまた、本明細書においてG236Rと称される。「G236R」という用語は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236でアミノ酸グリシン(G)がアルギニン(R)によって置換されていることを示す。本開示の範囲内で、他のアミノ酸位置およびアミノ酸について類似の用語が使用される。逆のことが示されないかぎり、これらの用語で参照されたアミノ酸位置は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のアミノ酸位置である。
【0325】
PD-1と結合する抗体の使用に関する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する位置のアミノ酸は、芳香族アミノ酸である。一態様では、この位置の芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンからなる群より選択される。
【0326】
PD-1と結合する抗体の使用に関係する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する位置のアミノ酸は、非極性アミノ酸である。一態様では、この位置の非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンからなる群より選択される。一態様では、この位置の非極性アミノ酸は、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンからなる群より選択される。
【0327】
PD-1と結合する抗体の使用に関係する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する位置のアミノ酸は、フェニルアラニン(L234F)である。
【0328】
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234および236に対応する位置の、可能性のあるアミノ酸の例示的な組み合わせは、下の表に示される。
【0329】
(表5)
【0330】
例えば、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234および236に対応する位置に、特に以下のアミノ酸が、PD-1と結合する抗体の重鎖定常領域に存在しうる:234F/236R、234W/236R、234Y/236R、234A/236R、234L/236R、234F/236K、234W/236K、234Y/236K、234A/236K、234L/236K、234F/236H、234W/236H、234Y/236H、234A/236H、または234L/236H。
【0331】
位置234および236の上述のアミノ酸またはアミノ酸置換が、PD-1と結合する抗体の1つの重鎖だけに、またはPD-1と結合する抗体の両方の重鎖に存在しうる。抗体の第1および第2の重鎖に存在するそれぞれのアミノ酸は、相互に独立して選択されうる。
【0332】
例えば、PD-1と結合する抗体の少なくとも1つの重鎖は、以下の配列(SEQ ID NO: 93)を含むことができる:
【0333】
PD-1と結合する抗体に関係する一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234および236に対応する位置のアミノ酸が上に明記される通りであり、さらにはEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置235に対応する位置のアミノ酸が酸性アミノ酸である前記重鎖。一態様では、この位置の酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸より選択される。一態様では、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置235に対応する位置のアミノ酸は、グルタミン酸(L235E)である。
【0334】
PD-1と結合する抗体に関係する一態様では、重鎖定常領域において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234、235および236に対応する位置のアミノ酸は、位置234の非極性または芳香族アミノ酸、位置235の酸性アミノ酸および位置236の塩基性アミノ酸である。
【0335】
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234、235および236に対応する位置の、可能性のあるアミノ酸の例示的な組み合わせは、下の表に示される。
【0336】
(表6)
【0337】
例えば、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234、235および236に対応する位置に、特に、PD-1と結合する抗体の重鎖定常領域に以下のアミノ酸が存在しうる:234F/235E/236R、234W/235E/236R、234Y/235E/236R、234A/235E/236R、234L/235E/236R、234F/235D/236R、234W/235D/236R、234Y/235D/236R、234A/235D/236R、234L/235D/236R、234F/235L/236R、234W/235L/236R、234Y/235L/236R、234A/235L/236R、234L/235L/236R、234F/235A/236R、234W/235A/236R、234Y/235A/236R、234A/235A/236R、234L/235A/236R、234F/235E/236K、234W/235E/236K、234Y/235E/236K、234A/235E/236K、234L/235E/236K、234F/235D/236K、234W/235D/236K、234Y/235D/236K、234A/235D/236K、234L/235D/236K、234F/235L/236K、234W/235L/236K、234Y/235L/236K、234A/235L/236K、234L/235L/236K、234F/235A/236K、234W/235A/236K、234Y/235A/236K、234A/235A/236K、234L/235A/236K、234F/235E/236H、234W/235E/236H、234Y/235E/236H、234A/235E/236H、234L/235E/236H、234F/235D/236H、234W/235D/236H、234Y/235D/236H、234A/235D/236H、234L/235D/236H、234F/235L/236H、234W/235L/236H、234Y/235L/236H、234A/235L/236H、234L/235L/236H、234F/235A/236H、234W/235A/236H、234Y/235A/236H、234A/235A/236H、または234L/235A/236H。
【0338】
位置234、235および236の上述のアミノ酸またはアミノ酸置換は、抗体の1つの重鎖だけまたは抗体の両方の重鎖に存在しうる。抗体の第1および第2の重鎖に存在するそれぞれのアミノ酸は、相互に独立して選択されうる。
【0339】
例えば、PD-1と結合する抗体の少なくとも1つの重鎖は、以下の配列(SEQ ID NO:90または93):
を含むことができる。
【0340】
例えば、表5および6に示されるように、本出願における位置234、236および235のすべての記載されたアミノ酸置換の任意の順列および組み合わせは、該当するならば、文脈が他のことを示さないかぎり、本出願の記載によって開示されていると見なすべきである。例えば、抗体の一態様では、第1の重鎖は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234~236に対応する位置にアミノ酸FERを含む、または第1の重鎖は、SEQ ID NO: 93に示されるアミノ酸配列を含むもしくはそれから本質的になるもしくはそれからなり、該抗体の第2の重鎖は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234~236に対応する位置に他のアミノ酸、例えばアミノ酸AAGもしくはLLGを含む、または該抗体の第2の重鎖は、SEQ ID NO:92もしくは98に示されるアミノ酸配列を含むもしくはそれから本質的になるもしくはそれからなる。抗体の別の態様では、第1および第2の重鎖は、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234~236に対応する位置に同じアミノ酸、すなわちEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置234に対応する位置に同じ芳香族または非極性アミノ酸、例えばF、およびEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の位置236に対応する位置にグリシン以外の同じアミノ酸、例えばRを、例えばFERまたはFLRの特異的組み合わせで含む。
【0341】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、少なくとも1または2つの重鎖定常領域を含み、その際、位置234に対応するアミノ酸はフェニルアラニンであり、位置235に対応するアミノ酸はグルタミン酸であり、位置236に対応するアミノ酸はアルギニンである(L234F/L235E/G236R=FER)。
【0342】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、SEQ ID NO:93に示される重鎖定常領域配列のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む1つまたは複数の重鎖定常領域(CH)を含む。
【0343】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、1つまたは複数、例えば2つの重鎖定常領域(CH)を含み、その際、重鎖定常領域は、SEQ ID NO:93に示される配列を含む。
【0344】
抗体は、好ましくはIgG1アイソタイプである。
【0345】
本明細書に使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラスを指す。本明細書においてIgG1アイソタイプについて言及される場合、この用語は、特異的アイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されず、その抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1と配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば、本明細書に開示されるIgG1抗体は、定常領域に変異を含む、天然に存在するIgG1抗体の配列バリアントでありうる。
【0346】
IgG1抗体は、アロタイプと呼ばれる複数の多型バリアントとして存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7に総説される)、そのいずれもが、本明細書における態様のいくつかに使用するために適している。ヒト集団中の一般的なアロタイプバリアントは、文字a、f、n、zまたはそれらの組み合わせによって命名されるものである。本明細書における態様のいずれかでは、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含みうる。さらなる態様では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1を含む。
【0347】
哺乳動物には2種類の軽鎖、すなわち、ラムダおよびカッパがある。免疫グロブリン鎖は、可変領域および定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、その際、可変部分は、高度に多様であり、抗原の認識を説明する。
【0348】
例えばまたは態様では、本発明により使用される抗体、好ましくはモノクローナル抗体は、好ましくはヒトIgG1/κもしくはヒトIgG1/λ定常部を含むIgG1、κアイソタイプもしくはλアイソタイプである、または抗体、好ましくはモノクローナル抗体は、IgG1、λ(ラムダ)もしくはIgG1、κ(カッパ)抗体、好ましくはヒトIgG1、λ(ラムダ)もしくはヒトIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。
【0349】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、SEQ ID NO:97に示されるLC配列のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖定常領域(LC)を有する軽鎖を含む。一態様では、抗体は、SEQ ID NO:97に示される配列を含む軽鎖定常領域(LC)を有する軽鎖を含む。
【0350】
本発明の一態様では、PD-1と結合する抗体は、完全長IgG1抗体、例えば、IgG1、κである。本発明の一態様では、結合剤は、完全長ヒトIgG1抗体、例えば、IgG1、κである。
【0351】
一態様では、PD-1と結合する抗体は、他の結合特異性に誘導体化、連結または共発現させることができる。別の態様では、抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、Fab'断片)と誘導体化、連結または共発現させることができる。例えば、(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有会合またはその他によって)1つまたは複数の他の分子実体、例えば別の抗体と(例えば、二重特異性または多特異性抗体を産生させるために)機能的に連結することができる。
【0352】
PD-1と結合する抗体はヒト抗体でありうる。本明細書に使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒトPD-1と結合するヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボで体細胞変異によって導入された変異)を含みうる。
【0353】
本開示は、PD-1に対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープ(またはさらなる標的エピトープ)に対する第2の結合特異性(またはさらなる結合特異性)を含む二重特異性および多特異性分子の使用を含む。
【0354】
一態様では、PD-1と結合する多特異性抗体の第1の抗原結合領域は、本明細書に示される重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0355】
PD-1と結合する多特異性抗体の使用に関係する一態様では、抗体は、完全長抗体、例えば上述の完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する第1および第2の結合アームを含む。一態様では、第1および第2の結合アームは、モノクローナル抗体に由来する。例えばまたは好ましい態様では、第1および/または第2の結合アームは、好ましくはヒトIgG1/κまたはヒトIgG1/λ定常部を含む、IgG1、κアイソタイプまたはλアイソタイプに由来する。
【0356】
本発明により使用される多特異性または二重特異性抗体の、PD-1と結合する該第1の抗原結合領域は、PD-1との結合をPD-L1および/またはPD-L2と競合する抗体の重鎖および軽鎖可変領域を含みうる。多特異性または二重特異性抗体の使用に関係する一態様では、PD-1と結合する第1の抗原結合領域は、本明細書に示される重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0357】
本明細書に使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識および活性化相と対照的に、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞は、骨髄またはリンパ起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞および細胞傷害性T細胞(CTL)を含むT細胞、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、マスト細胞、および好塩基球)を含む。
【0358】
「標的細胞」は、抗体によって標的付けることができる、対象(例えば、ヒトまたは動物)における任意の望ましくない細胞を意味するものとする。好ましい態様では、標的細胞は腫瘍細胞である。
【0359】
処置すべき対象および腫瘍またはがん
本開示により処置すべき対象は、好ましくはヒト対象である。
【0360】
好ましい一態様では、処置すべき腫瘍またはがんは、固形腫瘍またはがんである。腫瘍またはがんは、転移性腫瘍またはがんでありうる。
【0361】
好ましくは、腫瘍またはがんは、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵がん、肝がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がんおよび中皮腫からなる群より選択されうる。より好ましくは、腫瘍またはがんは、黒色腫、肺がん、結腸直腸がん、膵がん、および頭頸部がんからなる群より選択される。
【0362】
特定の態様では、腫瘍またはがんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭または喉頭のがん)および子宮頸がんからなる群より選択される。
【0363】
好ましくは、腫瘍はPD-L1陽性腫瘍である。ある特定の態様では、PD-L1ががん細胞または腫瘍細胞の≧1%に発現されていることが好ましい。PD-L1の発現は、当業者に公知の技法を使用して決定される場合があり、例えば免疫組織化学(IHC)によって評価される場合がある。
【0364】
腫瘍またはがんは、特に肺がんでありうる。肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば扁平上皮または非扁平上皮NSCLCでありうる。肺がんは、推定される年齢調整罹患率が100,000人あたり22.4人の2番目に多い悪性腫瘍であって、男性および女性の両方で、がんによる死亡原因の第1位である(Kantar, 2021)。世界中で、2020年に肺がんのおよそ2,206,771人の新症例および1,796,144人の死亡が推定されている(GLOBOCAN, 2020)。非小細胞肺がん(NSCLC)は、全症例の85%~90%を占め、この疾患の全ステージにわたり5年生存率は約18%であり、転移性疾患についてはわずか3.5%である(Jemal et al., 2011)(Kantar, 2021;SEER, 2018)。1Lの設定では、処置は典型的に、分子およびバイオマーカー分析ならびに腫瘍の組織学に応じて、免疫療法と組み合わせたプラチナベース化学療法、または標的療法からなる(NCCN, 2021d)。最近になって、PD-1およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤の出現が、ドライバー変異を有しない患者についてのアウトカムを改善した(非扁平上皮集団の約62%および扁平上皮集団の77%(Kantar, 2021))。腫瘍がある特定の発がん変異を有しない患者、またはチェックポイント阻害剤(CPI)オプションに対するバイオマーカーを発現しない患者には、より多くの処置選択肢が必要である。応答を高めるための補足的なアプローチとの新規な組み合わせは、この集団における満たされていないニーズにさらに対処する場合がある。2L設定における患者について、受けた前治療に応じてSOCは、プラチナベース化学療法、CPI単剤療法、またはラムシルマブを併用するもしくは併用しないドセタキセルに限定される。第3ライン(3L)設定の患者について、化学療法単剤療法が標準的である。毒性を限定し、この集団における有効性を潜在的に高めるために新規な治療法が必要である(NCCN, 2021d)。
【0365】
腫瘍またはがんが肺がんである一態様では、腫瘍またはがんは非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである。腫瘍またはがんは、特に転移がん、例えば転移NSCLCでありうる。
【0366】
腫瘍またはがんが肺がん、特にNSCLCである一態様では、腫瘍またはがんは、上皮成長因子(EGFR)感作変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転位/ROS1再編成を有しない。EGFR感作変異は、承認済みチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による処置を適用できる変異である。
【0367】
腫瘍またはがんが肺がん、特にNSCLCである一態様では、腫瘍またはがんは、がん細胞を含み、PD-L1は、がん細胞の≧1%に発現される。このような発現は、当業者に公知の任意の手段および方法、例えば、免疫組織化学(IHC)によって決定される、例えば、局所SOC検査(好ましくはFDA承認済み検査)によってまたは中央検査室で決定される場合がある。
【0368】
一態様では、対象は、転移性疾患の事前全身処置を受けていない、すなわち、対象は、本発明による処置を受ける前に転移性疾患のいかなる全身処置も受けていない。この態様により、腫瘍またはがんは、好ましくは肺がん、例えばNSCLCである。
【0369】
一態様では、対象は、チェックポイント阻害剤/免疫チェックポイント(ICP)阻害剤による事前処置を受けていない、すなわち、第1の局面による処置の前に、対象は、ICP阻害剤による処置を受けていない。さらなる態様では、対象は、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による事前処置を受けていない。これらの態様では、腫瘍またはがんは好ましくは肺がん、例えばNSCLCである。
【0370】
さらなる態様では、対象は、4-1BB(CD137)標的化作用物質、抗腫瘍ワクチン、または自己細胞免疫療法による事前処置を受けていない。一態様では、対象は、抗4-1BB(CD137)抗体による事前処置を受けていない。これらの態様では、腫瘍またはがんは、好ましくは肺がん、例えばNSCLCである。
【0371】
他の態様では、腫瘍またはがんは、処置、例えばチェックポイント阻害剤による全身処置の後に再発しており、かつ/または難治性である。対象は、少なくとも1つの全身前治療、例えばPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含む全身治療を受けたことがありうる。がんまたは腫瘍は、特に再発するおよび/もしくは難治性になる場合がある、または対象は、PD-1阻害剤もしくはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後に進行した場合があり、このPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤は、単剤療法または併用療法の一部として投与される。
【0372】
特定の態様では、本発明による処置は、前治療、例えば上に定義されたものを受けたことがある対象に提供され、その際、最終の前治療は、PD1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体により、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤は、単剤療法または併用療法の一部として投与される。最終の前治療は、上に定義されるPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤によるものでありうる。
【0373】
好ましくは、本発明による治療法は、PD1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による最終処置を受けた対象の進行からの時間が8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である対象に提供される。
【0374】
類推によって、最終の前処置の一部としてのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の最終投薬からの時間が8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である場合に、本発明による治療法を対象に与えることが好ましい場合がある。
【0375】
さらなる態様では、がんまたは腫瘍は、再発しているおよび/もしくは難治性である、または対象は、
(i)抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後のプラチナ併用化学療法、または
(ii)プラチナ併用化学療法後の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による処置
の途中および後に進行した。また、これらの態様では、腫瘍またはがんは、好ましくは肺がん、例えばNSCLCである。
【0376】
本発明による処置を受けている対象は、特に、タキサン化学療法薬;例えばドセタキセルまたはパクリタキセルによる前処置、例えばタキサン化学療法薬、例えばドセタキセルによるNSCLCの前処置を受けたことがない対象でありうる。
【0377】
処置レジメン
結合剤およびPD-1阻害剤は、任意の適切な方法により、例えば静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、節内、または腫瘍内に投与することができる。
【0378】
第1の局面の一態様では、結合剤は、対象に全身投与により投与される。好ましくは、結合剤は、対象に静脈内注射または輸液により投与される。一態様では、結合剤は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0379】
一態様では、PD-1阻害剤は、特に対象に全身投与によって投与される。好ましくは、PD-1阻害剤は、対象に静脈内注射または輸液によって投与される。一態様では、PD-1阻害剤は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0380】
一態様では、結合剤およびPD-1阻害剤は、特に対象に全身投与によって投与される。好ましくは、結合剤およびPD-1阻害剤は、対象に静脈内注射または輸液によって投与される。一態様では、結合剤およびPD-1阻害剤は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0381】
一態様では、各処置サイクルは、約2週間(14日)、3週間(21日)または4週間(28日)、5週間(35日)または6週間(48日)である。好ましい態様では、各処置サイクルは、3週間(21日)である。他の好ましい態様では、各処置サイクルは6週間(48日)である。
【0382】
特定の態様では、結合剤の1用量およびPD-1阻害剤の1用量が、2週間毎(1Q2W)、3週間毎(1Q3W)または4週間毎(1Q4W)、5週間毎(1Q5W)に、好ましくは3週間(1Q3W)毎に投与または注入される。他の態様では、結合剤の1用量およびPD-1阻害剤の1用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される。結合剤の量およびPD-1阻害剤の量は、好ましくは上に定義される通りである。
【0383】
いくつかの態様では、1用量および各用量は、各処置サイクルの1日目に投与または注入される。例えば、結合剤の1用量およびPD-1阻害剤の1用量が、各処置サイクルの1日目に投与されうる。
【0384】
いくつかの態様では、結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の200mg用量が3週間毎(1Q3W)に投与される。
【0385】
他の態様では、結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の400mg用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される。
【0386】
特定の態様では、アカスンリマブ(acasunlimab)またはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量、およびニボルマブまたはそのバイオシミラーであるPD-1阻害剤の200mg用量が、3週間毎(1Q3W)に、例えば各3週間処置サイクルの1日目に投与される。
【0387】
特定の態様では、腫瘍またはがんはNSCLCであり;アカスンリマブまたはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量、およびニボルマブまたはそのバイオシミラーであるPD-1阻害剤の200mg用量は、3週間毎(1Q3W)、例えば各3週間処置サイクルの1日目に投与される。
【0388】
他の態様では、アカスンリマブまたはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量、およびニボルマブまたはそのバイオシミラーであるPD-1阻害剤の400mg用量は、6週間毎(1Q6W)、例えば各6週間処置サイクルの1日目に投与される。
【0389】
なお他の態様では、腫瘍またはがんはNSCLCであり;アカスンリマブまたはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量、およびニボルマブであるPD-1阻害剤の400mg用量は、6週間毎(1Q6W)、例えば各6週間処置サイクルの1日目に投与される。
【0390】
PD-1阻害剤が最初に投与され、続いて結合剤が投与される場合がある。あるいは、結合剤が最初に投与され、続いてPD-1阻害剤が投与される。
【0391】
各用量は、最低30分かけて、例えば最低60分、最低90分、最低120分または最低240分かけて投与または注入されうる。
【0392】
結合剤は、特に、静脈内(IV)輸液を使用することによって30分かけて、例えば最低40分、最低50分かけて、または例えば最低60分かけて投与されうる。
【0393】
PD-1阻害剤は、特に、静脈内輸液として30分かけて、例えば最低40分、最低50分かけて、または例えば最低60分かけて投与されうる。
【0394】
結合剤およびPD-1阻害剤は、同時に投与されうる。代替的な好ましい態様では、結合剤およびPD-1阻害剤は、別々に投与される。
【0395】
結合剤およびPD-1阻害剤は、任意の適切な形態で(例えば、それ自体ネイキッドで)投与されうる。しかし、結合剤およびPD-1阻害剤は、本明細書に記載される任意の適切な薬学的組成物の形態で投与されることが好ましい。一態様では、少なくとも結合剤およびPD-1阻害剤は、別々の薬学的組成物の形態(すなわち、結合剤について1つの薬学的組成物およびPD-1阻害剤について1つの薬学的組成物)で投与され、好ましくは結合剤およびPD-1阻害剤は、別々の薬学的組成物の形態(すなわち、結合剤について1つの薬学的組成物およびPD-1阻害剤について1つの薬学的組成物)で投与される。
【0396】
組成物または薬学的組成物は、担体、賦形剤および/または希釈剤のみならず、公知の佐剤を含む薬学的組成物に適した任意の他の構成成分と共に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示された技法などの従来技法により製剤化されうる。薬学的に許容される担体または希釈剤のみならず、任意の公知の佐剤および賦形剤は、結合剤および/またはPD-1阻害剤ならびに選ばれた投与様式に適するべきである。薬学的組成物の担体および他の構成成分への適合性は、選ばれた化合物または薬学的組成物の所望の生物学的特性に顕著なマイナスの影響をもたないこと(例えば、抗原結合に対して実質的な影響未満であること[10%以下の相対阻害、5%以下の相対阻害など])に基づき決定される。
【0397】
組成物、特に結合剤の薬学的組成物およびPD-1阻害剤の薬学的組成物は、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、洗剤(例えば、非イオン性洗剤、例えばTween-20またはTween-80)、安定化剤(例えば、糖または無タンパク質アミノ酸)、保存剤、可溶化剤、および/または薬学的組成物への包含に適した他の材料を含みうる。
【0398】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、薬学分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0399】
薬学的担体、賦形剤または希釈剤は、意図された投与経路および標準的な薬学的慣行を考慮して選択することができる。
【0400】
薬学的に許容される担体は、活性化合物、特に結合剤およびPD-1阻害剤と生理学的に適合性のあらゆるすべての適切な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌および抗真菌剤、等張化剤、抗酸化剤および吸収遅延剤などを含む。
【0401】
(薬学的)組成物に利用されうる適切な水性および非水性担体の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル、および/または様々な緩衝剤を含む。他の担体は、薬学の技術分野において周知である。
【0402】
薬学的に許容される担体は、無菌水溶液または分散液、および無菌注射液または分散液の即時調製用の無菌粉末を含む。薬学的活性物質のためのこのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒質または作用物質が活性化合物と不適合性である場合を除き、(薬学的)組成物へのそれらの使用が考えられている。
【0403】
本明細書に使用される場合の「賦形剤」という用語は、本開示の(薬学的)組成物中に存在しうるが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例は、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤を含むが、それに限定されるわけではない。
【0404】
「希釈剤」という用語は、希釈および/または低粘稠化剤に関係する。そのうえ、「希釈剤」という用語は、流体、液体または固体の懸濁物および/または混合媒のうちの任意の1つまたは複数を含む。適切な希釈剤の例は、エタノール、グリセロールおよび水を含む。
【0405】
(薬学的)組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、その他;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール、その他;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、その他を含みうる。
【0406】
(薬学的)組成物はまた、組成物中に等張化剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは塩化ナトリウムを含みうる。
【0407】
(薬学的)組成物はまた、組成物の保存期間または有効性を高めうる、選ばれた投与経路に適した1つまたは複数の佐剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤または緩衝剤を含有しうる。組成物、例えば植え込み剤、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放性製剤は、本明細書に使用される場合、化合物を急速放出から守る担体を用いて調製されうる。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、および単独もしくはワックスを伴うポリ乳酸、または当技術分野において周知の他の材料を含みうる。このような製剤の調製のための方法は、当業者に一般的に公知であり、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson、ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0408】
「薬学的に許容される塩」は、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸を使用することによって形成されうる、例えば酸付加塩を含む。さらに、適切な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩);アンモニウム(NH4 +);および適切な有機リガンドと共に形成される塩(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルホン酸アルキルおよびスルホン酸アリールなどの対アニオンを使用して形成される4級アンモニウムおよびアミンカチオン)を含みうる。薬学的に許容される塩の説明的な例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、カンホレート、カンフルスルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクテート(galactate)、ガラクツロン酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、アルサニル酸グリコリル、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチルスルフェート、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシレート、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸/二リン酸塩、フタル酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、その他を含むが、それに限定されるわけではない(例えば、S. M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 66, pp. 1-19 (1977)を参照されたい)。薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために使用される場合があり、本開示に含まれる。
【0409】
一態様では、本明細書に使用される結合剤およびPD-1阻害剤は、適当なインビボ分布を確実にするために製剤化されうる。非経口投与のための薬学的に許容される担体は、無菌水溶液または分散物、および無菌注射液または分散物の即時調製用の無菌粉末を含む。薬学的活性物質のためのこのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒質または作用物質が活性化合物と不適合性である場合を除き、組成物へのそれらの使用が考えられている。他の活性または治療用化合物もまた、組成物に組み入れられる場合がある。
【0410】
注射用の薬学的組成物は、典型的には、製造および保存の条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、その他)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含有する水性または非水性の溶媒または分散媒でありうる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合に必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されうる。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅らせる作用物質、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことによってもたらされる場合がある。無菌注射液は、適切な溶媒中に活性化合物を必要量で、例えば必要に応じて上に列挙される成分の1つまたは成分の組み合わせと共に組み入れ、続いて精密濾過滅菌を行うことによって調製されうる。一般的に、分散物は、基本分散媒および例えば上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する無菌媒体に活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法の例は、任意の追加的な所望の成分が加わった活性成分の粉末を、事前に無菌濾過されたその溶液からもたらす真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0411】
無菌注射液は、適切な溶媒に活性化合物を必要量で、必要に応じて上に列挙された1つの成分または成分の組み合わせを組み入れ、続いて精密濾過滅菌を行うことによって調製されうる。一般的に、分散物は、上に列挙されたものからの基本分散媒および必要な他の成分を含有する無菌媒体に活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法の例は、任意の追加的な所望の成分が加わった活性成分の粉末を、事前に無菌濾過されたその溶液からもたらす真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0412】
ある特定の態様では、本発明による使用のための結合剤は、ヒスチジン、スクロースおよびポリソルベート80を含み、約5~約6のpH、例えば5~6のpHを有する組成物または製剤の状態に製剤化される。特に、本発明による使用のための結合剤は、約20mMのヒスチジン、約250mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート80を含み、約5.5のpHを有する組成物または製剤中に、例えば、20mMのヒスチジン、250mMのスクロース、0.02%のポリソルベート80を含み、5.5のpHを有する組成物または製剤中にある場合がある。製剤は、特定の態様では、約10~約30mg/mLの結合剤、例えば10~30mg/mLの結合剤、特に約20mg/mLの結合剤、例えば20mg/mLの結合剤を含みうる。
【0413】
本発明による使用のための結合剤は、上に規定された組成物の状態で提供される場合があり、次いで投与前に0.9% NaCl(食塩水)中に希釈される場合がある。
【0414】
第2の局面では、本開示は、(i)CD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含む結合剤、ならびに(ii)PD-1阻害剤を含むキットを提供し、
ここで、
(a)CD137と結合する第1の結合領域が、それぞれSEQ ID NO:2、3、および4に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:6、7、および8に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;かつ
(b)PD-L1と結合する第2の結合領域が、それぞれSEQ ID NO:12、13、および14に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:16、17、および18に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
場合、
PD-1阻害剤は、それぞれSEQ ID NO:59、60 および61に示されるCDR1、CDR2 およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:62、63、および64に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、またはその抗原結合性断片ではない。
【0415】
第1の局面に関して(特に結合剤およびPD-1阻害剤に関して)本明細書に開示される態様は、第2の局面のキットにも適用される。一態様では、キットは、少なくとも2つの容器を含み、その際、その1つは結合剤(それ自体または(薬学的)組成物の形態で)を収容し、第2の容器は、PD-1阻害剤(それ自体または(薬学的)組成物の形態で)を収容する。
【0416】
第3の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは予防する、またはがんを処置するための方法に使用するための第2の局面のキットを提供する。第1の局面(特に結合剤、PD-1阻害剤、処置レジメン、特定の腫瘍/がん、および対象に関する)および/または第2の局面に関して本明細書に開示される態様はまた、第3の局面の使用のためのキットに適用される。
【0417】
第4の局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは予防するため、またはがんを処置するための方法が提供され、該方法は、該対象に、PD-1阻害剤の投与前、それと同時、またはその後に結合剤を投与する工程を含み、その際、結合剤は、CD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含み、かつ
ここで、
(a)CD137と結合する第1の結合領域は、それぞれSEQ ID NO:2、3、および4に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:6、7、および8に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;かつ
(b)PD-L1と結合する第2の結合領域は、それぞれSEQ ID NO:12、13、および14に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:16、17、および18に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
場合、
PD-1阻害剤は、それぞれSEQ ID NO:59、60 および61に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:62、63、および64に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、またはその抗原結合性断片ではない。
【0418】
(特に、結合剤、PD-1阻害剤、処置レジメン、特定の腫瘍/がん、および対象に関する)第1の局面に関して本明細書に開示される態様はまた、第4の局面の方法に適用される。
【0419】
さらなる局面では、本開示は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは予防する、またはがんを処置するための方法に使用するためのPD-1阻害剤を提供し、該方法は、該対象に、結合剤の投与の前、それと同時、またはその後にPD-1阻害剤を投与する工程を含み、その際、結合剤は、CD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含み、かつ
ここで、
(a)CD137と結合する第1の結合領域が、それぞれSEQ ID NO:2、3、および4に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:6、7、および8に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;かつ
(b)PD-L1と結合する第2の結合領域が、それぞれSEQ ID NO:12、13、および14に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:16、17、および18に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
場合、
PD-1阻害剤は、それぞれSEQ ID NO:59、60および61に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにそれぞれSEQ ID NO:62、63、および64に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、またはその抗原結合性断片ではない。
【0420】
(特に結合剤、PD-1阻害剤、処置レジメン、特定の腫瘍/がん、および対象に関する)第1の局面に関して本明細書に開示される態様はまた、このさらなる局面の使用のためのPD-1阻害剤に適用される。
【0421】
本発明のさらなる局面は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは予防すること、またはがんを処置することに使用するためのCD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含む結合剤に関し、対象が受けた最終の前処置は、PD1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体によるものであった。
【0422】
PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による対象の最終処置での進行からの時間は、好ましくは8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である。
【0423】
最終の前処置の一部としてのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の最終投薬からの時間は、好ましくは8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である。
【0424】
結合剤は、本発明の第1の局面に関して上に規定される特徴のいずれかを有する場合があると理解されている。同様に、結合剤が投与される腫瘍もしくはがんおよび/または対象は、上に規定される通りでありうる。投与の経路および頻度ならびに投与される結合剤の量は、上記の本発明の第1の局面に関係して規定されうる。
【0425】
本発明のなおさらなる局面は、対象における腫瘍の進行を低減もしくは予防する、またはがんを処置する方法であって、該対象にCD137と結合する第1の結合領域およびPD-L1と結合する第2の結合領域を含む結合剤を投与する工程を含む方法を提供し、その際、対象が受けた最終の前処置は、PD1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体によるものであった。
【0426】
PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による対象の最終処置での進行からの時間は、好ましくは8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である。
【0427】
最終の前処置の一部としてのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の最終の投薬からの時間は、好ましくは8ヶ月以下、例えば7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下または例えば2週間以下である。
【0428】
結合剤は、本発明の第1の局面に関係して上に規定される特徴のいずれかを有する場合があると理解されている。同様に、結合剤が投与される腫瘍もしくはがんおよび/または対象は、上に規定される通りでありうる。投与の経路および頻度ならびに投与される結合剤の量は、上記の本発明の第1の局面に関係して規定されうる。
【0429】
本明細書に参照される文書および研究の引用は、前記のいずれかが関連する先行技術であるという承認として意図されない。これらの文書の内容に関するすべての記述は、本出願者に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容が正確であることを認めるものではない。
【0430】
本明細書(以下の実施例を含む)は、当業者が様々な態様を作製および使用できるように提示される。具体的な装置、技術、および適用の記載は、単に例として提供される。本明細書に記載される実施例への様々な変形は、当業者に容易に明らかであり、本明細書に定義された一般原理は、様々な態様の精神および範囲から逸脱することなく他の実施例および用途に適用されうる。したがって、様々な態様は、本明細書に記載され、示された実施例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるべきである。
【0431】
本開示の項目
1.
対象における腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法における使用のための結合剤であって、該方法が、PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を該対象に投与する工程を含み、結合剤が、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み;かつ
ここで
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
結合剤。
2.
PD-L1が、ヒトPD-L1、特に、SEQ ID NO:40に示される配列を含むヒトPD-L1であり、かつ/または、CD137が、ヒトCD137、特に、SEQ ID NO:38に示される配列を含むヒトCD137である、項目1の使用のための結合剤。
3.
PD-1阻害剤が、PD-1抗体である、項目1~3のいずれか一つの使用のための結合剤。
4.
PD-1阻害剤が、PD-1遮断抗体である、項目1~4のいずれか一つの使用のための結合剤。
5.
PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
6.
PD-1阻害剤が、ニボルマブまたはそのバイオシミラーである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
7.
(a)第1の結合領域が、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:1または9の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:5または10の軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)第2の抗原結合領域が、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:11の重鎖可変領域(VH)と、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むSEQ ID NO:15の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
8.
(a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
9.
第1の結合領域が、SEQ ID NO:1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
10.
第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
11.
第1の結合領域が、SEQ ID NO:1または9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5または10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
12.
第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
13.
(a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
(b)第2の結合領域が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
14.
前記結合剤が、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
15.
前記結合剤が、完全長抗体または抗体断片のフォーマットである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
16.
各可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)とを含む、項目6~12のいずれか一つの使用のための結合剤。
17.
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列される、項目13の使用のための結合剤。
18.
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むか、該領域からなるか、または該領域から本質的になる、ポリペプチドと、
(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むか、該領域からなるか、または該領域から本質的になる、ポリペプチドと
を含む、項目7~17のいずれか一つの使用のための結合剤。
19.
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチドと、
(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチドと
を含む、項目7~18のいずれか一つの使用のための結合剤。
20.
前記結合剤が、第1の結合アームおよび第2の結合アームを含む抗体であり、
第1の結合アームが、
(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含み;かつ
第2の結合アームが、
(iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、
(iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドと
を含む、
項目7~19のいずれか一つの使用のための結合剤。
21.
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖と、
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖と
を含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
22.
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖であって、第1の重鎖が第1の重鎖定常領域を含み、かつ第1の軽鎖が第1の軽鎖定常領域を含む、第1の重鎖および軽鎖と;
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖であって、第2の重鎖が第2の重鎖定常領域を含み、かつ第2の軽鎖が第2の軽鎖定常領域を含む、第2の重鎖および軽鎖と
を含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
23.
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、定常重鎖1(CH1)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域、および定常重鎖3(CH3)領域の1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、項目18~22のいずれか一つの使用のための結合剤。
24.
第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々がCH3領域を含み、2つのCH3領域が非対称変異を含む、項目18~23のいずれか一つの使用のための結合剤。
25.
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、前記第1および前記第2の重鎖が、同じ位置で置換されていない、項目18~23のいずれか一つの使用のための結合剤。
26.
(i)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または
(ii)EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第1の重鎖においてRであり、かつEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置におけるアミノ酸が、前記第2の重鎖においてLである、
項目25の使用のための結合剤。
27.
同じ第1および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較して、Fc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導する、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
28.
改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)を含む以外は同一の抗体と比較して、前記抗体がFc媒介エフェクター機能をより少ない程度に誘導するように、前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、項目27の使用のための結合剤。
29.
前記改変されていない第1および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、SEQ ID NO:19または25に示されるアミノ酸配列を含む、項目28の使用のための結合剤。
30.
前記Fc媒介エフェクター機能が、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcγ受容体のFe媒介架橋の誘導によって測定される、項目28または29の使用のための結合剤。
31.
前記Fc媒介エフェクター機能が、C1qへの結合によって測定される、項目30の使用のための結合剤。
32.
C1qの前記抗体への結合が、野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように、前記第1および第2の重鎖定常領域が改変されており、C1q結合が、好ましくは、ELISAによって判定される、項目27~31のいずれか一つの使用のための結合剤。
33.
前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235、D265、N297およびP331位に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれ、L、L、D、N、およびPではない、項目18~32のいずれか一つの使用のための結合剤。
34.
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置が、それぞれ、前記第1および第2の重鎖においてFおよびEである、項目33の使用のための結合剤。
35.
EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置が、それぞれ、前記第1および第2の重鎖定常領域においてF、E、およびAである、項目33または34の使用のための結合剤。
36.
第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234およびL235位に対応する位置が、それぞれ、FおよびEであり、
(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか;または
(ii)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、
項目33~35のいずれか一つの使用のための結合剤。
37.
第1および第2の重鎖定常領域の両方のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のL234、L235およびD265位に対応する位置が、それぞれ、F、E、およびAであり、
(i)第1の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか;または
(ii)第1の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、
項目33~36のいずれか一つの使用のための結合剤。
38.
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:19または25に示される配列[IgG1-FC];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~37のいずれか一つの使用のための結合剤。
39.
前記第1または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:20または26に示される配列[IgG1-F405L];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても9個の置換、例えば、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~38のいずれか一つの使用のための結合剤。
40.
前記第1または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:21または27に示される配列[IgG1-K409R];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~38のいずれか一つの使用のための結合剤。
41.
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:22または28に示される配列[IgG1-Fc_FEA];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても7個の置換、例えば、多くても6個の置換、多くても5個、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~37のいずれか一つの使用のための結合剤。
42.
前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:24または30に示される配列[IgG1-Fc_FEAL];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~41のいずれか一つの使用のための結合剤。
43.
前記第1および/または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
(a)SEQ ID NO:23または29に示される配列[IgG1-Fc_FEAR];
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても6個の置換、例えば、多くても5個の置換、多くても4個、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列から本質的になるか、または該アミノ酸配列からなる、
項目18~42のいずれか一つの使用のための結合剤。
44.
前記結合剤がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
45.
前記結合剤がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
46.
前記第1の軽鎖定常領域が、カッパ(κ)軽鎖定常領域またはラムダ(λ)軽鎖定常領域である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
47.
前記第2の軽鎖定常領域が、ラムダ(λ)軽鎖定常領域またはカッパ(κ)軽鎖定常領域である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
48.
前記第1の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域であり、かつ前記第2の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である;または
前記第1の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域であり、かつ前記第2の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、
先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
49.
カッパ(κ)軽鎖が、
(a)SEQ ID NO:35に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
項目44~48のいずれか一つの使用のための結合剤。
50.
ラムダ(λ)軽鎖が、
(a)SEQ ID NO:36に示される配列;
(b)(a)における配列の部分配列、例えば、(a)で定義された配列のN末端またはC末端から開始して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
(c)(a)または(b)で定義されたアミノ酸配列と比較して、多くても10個の置換、例えば、多くても9個の置換、多くても8個、多くても7個、多くても6個、多くても5個、多くても4個の置換、多くても3個、多くても2個の置換、または多くても1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
項目45~49のいずれか一つの使用のための結合剤。
51.
前記結合剤が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
52.
前記結合剤が、完全長IgG1抗体である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
53.
前記結合剤が、IgG1m(f)アロタイプの抗体である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
54.
前記結合剤が、
(i)CD137に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第1の重鎖および軽鎖であって、第1の重鎖がSEQ ID NO:31に示される配列を含み、かつ第1の軽鎖がSEQ ID NO:32に示される配列を含む、第1の重鎖および軽鎖;
(ii)PD-L1に結合することが可能な前記抗原結合領域を含む第2の重鎖および軽鎖であって、第2の重鎖がSEQ ID NO:33に示される配列を含み、かつ第2の軽鎖がSEQ ID NO:34に示される配列を含む、第2の重鎖および軽鎖
を含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
55.
前記結合剤が、アカサンリマブまたはそのバイオシミラーである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
56.
前記結合剤が、ヒスチジン、スクロース、およびポリソルベート-80を含む組成物または製剤中にあり、5~6のpHを有する、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
57.
前記結合剤が、約20mM ヒスチジン、約250mM スクロース、約0.02%ポリソルベート-80を含む組成物または製剤中にあり、約5.5のpHを有する、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
58.
前記結合剤が、10~30mgの結合剤/mL、例えば、20mgの結合剤/mLを含む組成物または製剤中にある、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
59.
前記結合剤が、項目56~58のいずれか一項に定義される通りの組成物中にあり、投与前に0.9% NaCl(食塩水)中で希釈される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
60.
PD-1阻害剤が、PD-1に結合する抗体であり、PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:104、101および100にそれぞれ示される通りの配列を含むVH領域CDR1、CDR2およびCDR3と、SEQ ID NO:107、QASおよびSEQ ID NO:105にそれぞれ示される通りの配列を含むVL領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
61.
PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:111に示される通りのVH配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、項目60の使用のための結合剤。
62.
PD-1に結合する抗体が、重鎖可変領域(VH)を含み、VHが、SEQ ID NO:111に示される通りの配列を含む、項目60または61の使用のための結合剤。
63.
PD-1に結合する抗体が、SEQ ID NO:112に示される通りのVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、項目60~62のいずれか一つの使用のための結合剤。
64.
PD-1に結合する抗体が、軽鎖可変領域(VL)を含み、VLが、SEQ ID NO:112に示される通りの配列を含む、項目63の使用のための結合剤。
65.
PD-1に結合する抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、SEQ ID NO:111に示される通りの配列を含むかまたは前記配列を有し、VLが、SEQ ID NO:112に示される通りの配列を含むかまたは前記配列を有する、項目60~64のいずれか一つの使用のための結合剤。
66.
PD-1に結合する抗体が、重鎖定常領域を含み、重鎖定常領域が、EU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の234位に対応する位置に芳香族または非極性アミノ酸、およびEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の236位に対応する位置にグリシン以外のアミノ酸を含む、項目60~65のいずれか一つの使用のための結合剤。
67.
236位に対応する位置のアミノ酸が、塩基性アミノ酸である、項目66の使用のための結合剤。
68.
塩基性アミノ酸が、リシン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群より選択される、項目67の使用のための結合剤。
69.
塩基性アミノ酸が、アルギニン(G236R)である、項目67または68の使用のための結合剤。
70.
234位に対応する位置のアミノ酸が、芳香族アミノ酸である、項目66~69のいずれか一つの使用のための結合剤。
71.
芳香族アミノ酸が、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンからなる群より選択される、項目70の使用のための結合剤。
72.
234位に対応する位置のアミノ酸が、非極性アミノ酸である、項目66~69のいずれか一つの使用のための結合剤。
73.
非極性アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、項目72の使用のための結合剤。
74.
非極性アミノ酸が、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群より選択される、項目72または73の使用のための結合剤。
75.
234位に対応するアミノ酸が、フェニルアラニン(L234F)である、項目66~74のいずれか一つの使用のための結合剤。
76.
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の235位に対応する位置のアミノ酸が、酸性アミノ酸である、項目66~75のいずれか一つの使用のための結合剤。
77.
酸性アミノ酸が、アスパラギン酸またはグルタミン酸である、項目76の使用のための結合剤。
78.
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中のEU番号付けによるヒトIgG1重鎖中の235位に対応する位置のアミノ酸が、グルタミン酸(L235E)である、項目66~77のいずれか一つの使用のための結合剤。
79.
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域中の234、235、および236位に対応する位置のアミノ酸が、234位の非極性または芳香族アミノ酸、235位の酸性アミノ酸、および236位の塩基性アミノ酸である、項目66~78のいずれか一つの使用のための結合剤。
80.
PD-1に結合する抗体の前記重鎖定常領域において、234位に対応するアミノ酸がフェニルアラニンであり、235位に対応するアミノ酸がグルタミン酸であり、236位に対応するアミノ酸がアルギニンである(L234F/L235E/G236R)、項目66~79のいずれか一つの使用のための結合剤。
81.
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:93に示される通りの重鎖定常領域配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む、項目60~80のいずれか一つの使用のための結合剤。
82.
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:93に示される通りの配列を含む、項目60~81のいずれか一つの使用のための結合剤。
83.
PD-1に結合する抗体の重鎖定常領域のアイソタイプがIgG1である、項目60~82のいずれか一つの使用のための結合剤。
84.
PD-1に結合する抗体が、モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体またはそのような抗体の断片である、項目60~83のいずれか一つの使用のための結合剤。
85.
PD-1に結合する抗体が、低減または枯渇したFc媒介エフェクター機能を有する、項目60~84のいずれか一つの使用のための結合剤。
86.
PD-1に結合する抗体の定常領域への補体タンパク質C1qの結合が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、項目60~85のいずれか一つの使用のための結合剤。
87.
PD-1に結合する抗体へのIgG Fc-ガンマ受容体の1つまたは複数の結合が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、項目60~86のいずれか一つの使用のための結合剤。
88.
1つまたは複数のIgG Fc-ガンマ受容体が、Fc-ガンマRI、Fc-ガンマRIIおよびFc-ガンマRIIIの少なくとも1つから選択される、項目87の使用のための結合剤。
89.
IgG Fc-ガンマ受容体が、Fc-ガンマRIである、項目87または88の使用のための結合剤。
90.
PD-1に結合する抗体が、Fc-ガンマRI媒介エフェクター機能を誘導できないか、または、誘導されたFc-ガンマRI媒介エフェクター機能が、野生型抗体と比較して、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、項目60~89のいずれか一つの使用のための結合剤。
91.
PD-1に結合する抗体が、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/もしくはファゴサイトーシスの少なくとも1つを誘導できないか、または
補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/もしくはファゴサイトーシスの少なくとも1つが、低下した程度で誘導される、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下する、
項目60~90のいずれか一つの使用のための結合剤。
92.
野生型抗体と比較して、PD-1に結合する抗体への新生児Fc受容体(FcRn)の結合が影響を受けない、項目60~91のいずれか一つの使用のための結合剤。
93.
PD-1がヒトPD-1である、項目60~92のいずれか一つの使用のための結合剤。
94.
PD-1が、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示される通りのアミノ酸配列を有するもしくは含む、または
PD-1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:113もしくはSEQ ID NO:114に示される通りのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、またはその免疫原性断片である、
項目93の使用のための結合剤。
95.
PD-1に結合する抗体が、生きている細胞の表面に存在するPD-1の天然エピトープに結合する、項目60~94のいずれか一つの使用のための結合剤。
96.
PD-1に結合する抗体が、PD-1に結合する第1の抗原結合領域と、別の抗原に結合する少なくとも1つのさらなる抗原結合領域とを含む多重特異性抗体である、項目60~95のいずれか一つの使用のための結合剤。
97.
PD-1に結合する抗体が、PD-1に結合する第1の抗原結合領域と、別の抗原に結合する第2の抗原結合領域とを含む二重特異性抗体である、項目96の使用のための結合剤。
98.
PD-1に結合する第1の抗原結合領域が、項目61~65のいずれか一項に示される通りの重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む、項目96または97の使用のための結合剤。
99.
対象がヒト対象である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
100.
腫瘍またはがんが、固形腫瘍またはがんである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
101.
前記腫瘍が、PD-L1陽性腫瘍である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
102.
腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳腫瘍、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
103.
腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))および頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)からなる群より選択される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
104.
腫瘍またはがんが、肺がん、特に、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである、項目102または103の使用のための結合剤。
105.
腫瘍またはがんが、転移性、例えば、転移性NSCLCである、項目100~104のいずれか一つの使用のための結合剤。
106.
肺がん、特に、NSCLCが、上皮成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再構成を有していない、項目104または105の使用のための結合剤。
107.
肺がん、特に、NSCLCが、がん細胞を含み、PD-L1が、例えば免疫組織染色(IHC)によって評価した場合に、がん細胞または腫瘍細胞の≧1%で発現される、項目104~106のいずれか一つの使用のための結合剤。
108.
対象が、転移性疾患の先行全身処置を受けたことがない、先行項目の使用のための結合剤。
109.
対象が、チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による先行処置を受けたことがない、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
110.
対象が、4-1BB(CD137)標的剤、例えば、抗4-1BB(CD137)抗体、抗腫瘍ワクチンまたは自己細胞免疫療法による先行処置を受けたことがない、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
111.
腫瘍またはがんが、チェックポイント阻害剤による全身処置などの処置後、再発したおよび/または抵抗性である、項目1~107のいずれか一つの使用のための結合剤。
112.
対象が、少なくとも1種の先行全身療法ライン、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を含む全身療法を受けている、項目1~107および111のいずれか一つの使用のための結合剤。
113.
がんまたは腫瘍が、再発したおよび/もしくは抵抗性であるか、または、対象が、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤もしくはPD-L1阻害剤による処置後に進行を示しており、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤が、単剤療法としてまたは併用療法の一部として投与される、項目1~107、111および112のいずれか一つの使用のための結合剤。
114.
最後の先行処置が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤によるものであり、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤が、単剤療法としてまたは併用療法の一部として投与される、項目1~107および111~113のいずれか一つの使用のための結合剤。
115.
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤による最終処置における進行からの時間が、8ヶ月以下、例えば、7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下、または例えば2週間以下である、項目1~107および111~114のいずれか一つの使用のための結合剤。
116.
最後の先行処置の一部としての抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD1阻害剤またはPD-L1阻害剤の最終投薬からの時間が、8ヶ月以下、例えば、7ヶ月以下、6ヶ月以下、5ヶ月以下、4ヶ月以下、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、3週間以下、または例えば2週間以下である、項目1~107および111~115のいずれか一つの使用のための結合剤。
117.
がんまたは腫瘍が、再発したおよび/または抵抗性であるか、あるいは
対象が、
(i)抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後のプラチナダブレット化学療法、または
(ii)プラチナダブレット化学療法後の抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置
の途中またはその後に進行を示している、
項目1~107および111~116のいずれか一つの使用のための結合剤。
118.
対象が、タキサン化学療法剤、例えば、ドセタキセルによる先行処置、例えば、タキサン化学療法剤、例えば、ドセタキセルによるNSCLCの先行処置を受けたことがない、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
119.
前記結合剤およびPD-1阻害剤が、少なくとも1つの処置サイクルにおいて投与され、各処置サイクルが、2週間(14日)、3週間(21日)、4週間(28日)、5週間(35日)、または6週間(42日)である、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
120.
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、2週毎(1Q2W)、3週毎(1Q3W)、4週毎(1Q4W)、5週毎(1Q5W)、または6週毎(1Q6W)に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
121.
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
122.
前記結合剤の一用量およびPD-1阻害剤の一用量が、各処置サイクルの1日目に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
123.
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記結合剤の量が100mgである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
124.
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記PD-1阻害剤の量が200mgである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
125.
各用量でかつ/または各処置サイクルにおいて投与される前記PD-1阻害剤の量が400mgである、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
126.
前記結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の200mg用量が、3週間毎(1Q3W)に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
127.
前記結合剤の100mg用量およびPD-1阻害剤の400mg用量が、6週間毎(1Q6W)に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
128.
腫瘍またはがんが、NSCLCであり、アカサンリマブまたはそのバイオシミラーである結合剤の100mg用量およびニボルマブであるPD-1阻害剤の200mg用量が、3週間毎(1Q3W)に、例えば、各3週間処置サイクルの1日目に投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
129.
最初にPD-1阻害剤が投与され、続いて前記結合剤が投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
130.
前記結合剤が、静脈内(IV)注入を使用して、最低30分間にわたって、例えば、最低60分間にわたって投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
131.
前記結合剤が、静脈内(IV)注入を使用して、30分間にわたって投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
132.
PD-1阻害剤が、静脈内注入として、30分間にわたって投与される、先行項目のいずれか一つの使用のための結合剤。
133.
(i)CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含む結合剤と、(ii)PD-1阻害剤とを含む、キットであって、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
場合、
PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
キット。
134.
前記結合剤が、項目1、2および7~58のいずれか一項に定義される通りであり、かつ/または、PD-1阻害剤が、項目3~6および59~97のいずれか一項に定義される通りである、項目133のキット。
135.
前記結合剤、PD-1阻害剤、および存在する場合、1つまたは複数の追加の治療剤が、全身投与用、特に、注射または注入、例えば、静脈内注射または注入用である、項目133または134のキット。
136.
対象において腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法における使用のための、項目133~135のいずれか一つのキット。
137.
腫瘍もしくはがんおよび/または対象および/または方法が、項目1~132のいずれか一項に定義される通りである、項目136の使用のためのキット。
138.
対象において腫瘍の進行を低減もしくは抑制するまたはがんを処置するための方法であって、
PD-1阻害剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に、結合剤を対象に投与する工程を含み、
結合剤が、CD137に結合する第1の結合領域およびPD-L1に結合する第2の結合領域を含み、かつ
ここで、
(a)CD137に結合する第1の結合領域が、SEQ ID NO:2、3、および4にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6、7、および8にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
(b)PD-L1に結合する第2の結合領域が、SEQ ID NO:12、13、および14にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16、17、および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
その際PD-1阻害剤が、SEQ ID NO:59、60および61にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:62、63、および64にそれぞれ示されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体またはその抗原結合断片ではない、
方法。
139.
腫瘍もしくはがんおよび/または対象および/または方法および/または結合剤および/またはPD-1阻害剤が、項目1~132のいずれか一項に定義される通りである、項目138の方法。
【0432】
本開示のさらなる局面が、本明細書に開示される。
【実施例
【0433】
実施例1:MC38マウス結腸がん腫瘍の増生
方法
10% 熱失活ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地中でMC38マウス結腸がん細胞を37℃、5% CO2で培養した。対数期増殖している細胞培養物からMC38細胞を回収し、定量した。MC38細胞(PBS 100μL中に1×106個の腫瘍細胞)を雌C57BL/6マウス(Vital River Laboratories Research Models and Servicesから入手;実験開始時に6~8週齢)の右下側腹部に皮下注射した。
【0434】
ノギスを使用して腫瘍の増殖を週に3回評価した。ノギスの測定値から腫瘍体積(mm3)を([長さ]×[幅]2)/2として計算し、式中、長さは、腫瘍の最長寸法であり、幅は、その長さと垂直の腫瘍の最長寸法である。
【0435】
腫瘍が64mm3の体積中央値に達したときに処置を開始した。処置前に等しい平均腫瘍体積(64mm3)を有する群にマウスを無作為化した(n=10匹/群)。処置日に、マウスにmbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg;注射体積10μL/g体重;週2回、3週間[2QW×3])、抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg;注射体積10μL/g体重;2QW×3;クローンRMP1-14;Leinco Technologies, cat. no. P372)、mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)と抗mPD-1との組み合わせ(10mg/kg;2つの別々の注射[mbsIgG2a-PD-L1x4-1BBに続く20分後の抗mPD-1]を注射体積10μL/g体重;2QW×3で)、またはPBSを注射体積10μL/g体重で腹腔内注射した(表7)。
【0436】
病気の臨床徴候についてマウスを毎日モニタリングした。無作為化の後に体重測定を週に3回行った。腫瘍体積が1500mm3を超えた場合、または動物が人道的なエンドポイントに達した場合(例えば、マウスが>20%の体重減少を示した場合、腫瘍が潰瘍形成[>75%]を示した場合、重篤な臨床徴候が観察された場合、および/または腫瘍の増殖がマウスの身体活動を遮断した場合)に、個々のマウスについて実験を終了した。
【0437】
(表7)処置群および投薬レジメン
a 2QW×3:週2回、3週間
【0438】
結果
PBSにより処置されたMC38担持マウスでは、急速な腫瘍増生が観察された(図2A)。抗mPD-1(10mg/kg)またはmbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)により処置されたマウスでは、腫瘍増生の遅延が観察され、腫瘍増生のより顕著な遅延がmbsIgG2a-PD-L1x4-1BBによって誘導された(図2A)。mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)と抗mPD-1(10mg/kg;両方とも2QW×3)との組み合わせにより処置されたマウスでは、このモデルでいずれかの作用物質単独について完全な腫瘍退縮が観察されなかったのと比較して、処置開始後21日目に10匹中6匹のマウスで完全な腫瘍の退縮が観察された(図2A)。Kaplan-Meier分析は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせによる処置が、PBS処置群と比較した場合(p<0.001)、およびいずれかの抗体単独と比較した場合(p≦0.001;Mantel-Cox;図2B、表8)に、500mm3未満の腫瘍体積を有するマウスのパーセントとして定義される無増悪生存率に有意な増加を誘導したことを示した。したがって、単剤療法としての各作用物質によって示された活性と比べて優れた(p<0.05)抗腫瘍有効性として定義される治療的相乗性がこの組み合わせで観察された。これらの結果は、GEN1046と抗PD-1抗体との組み合わせががん患者における抗腫瘍免疫応答をさらに増幅して、持続性で重大な臨床応答を生じ、かつ生存率を高めるということを評価するための理論的根拠を提供している。
【0439】
(表8)C57BL/6マウスにおけるMC38モデルでmbsIgG2a-PD-L1x4-1BB、抗mPD-1(単独または併用)によって誘導される無増悪生存率のMantel-Cox分析
1無増悪生存率についてのカットオフとして腫瘍体積<500mm3を使用した。Mantel-Cox分析を45日目に行った。
【0440】
実施例2:活性PD1/PD-L1系による抗原特異的T細胞アッセイにおけるGEN1046および抗PD-1抗体ニボルマブの増殖用量反応を決定するための抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ
GEN1046またはニボルマブによるT細胞増殖の誘導を測定するために、活性PD1/PD-L1系による抗原特異的T細胞増殖アッセイを行った:
【0441】
健康なドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)からHLA-A2+末梢血単球細胞(PBMC)を得た。抗CD14 MicroBeads(Miltenyi;cat. no. 130-050-201)を製造業者の説明書に従って使用する磁気活性化細胞分取(MACS)技術によってPBMCから単球を単離した。末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)を将来的なT細胞単離のために凍結した。未熟DC(iDC)への分化のために、5% ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH, cat. no. H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH, cat. no. 11360-039)、可欠アミノ酸(Life technologies GmbH, cat. no. 11140-035)、100IU/mL ペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH, cat. no.15140-122)、1000IU/mL 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi, cat. no. 130-093-868)および1000IU/mL インターロイキン-4(IL-4;Miltenyi, cat. no. 130-093-924)を含有するRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH, cat. no. 61870-044)中で1×106個/mlの単球を5日間培養した。この5日間に1回、培地の半分を新鮮培地と交換した。未接着細胞を収集することによってiDCを回収し、2mM EDTAを含有するPBSと37°で10分間インキュベートすることによって接着細胞を剥離した。洗浄後、将来的な抗原特異的T細胞アッセイのために、10% v/v DMSO(AppliChem GmbH, cat. no A3672,0050)+50%v/v ヒトAB血清を含有するRPMI GlutaMAX中でiDCを凍結した。
【0442】
抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ開始の1日前に、同じドナーからの凍結PBLおよびiDCを解凍した。抗CD8 MicroBeads(Miltenyi, cat. no. 130-045-201)を製造業者の説明書に従って使用するMACS技術によってPBLからCD8+ T細胞を単離した。BTX ECM(登録商標)830 エレクトロポレーションシステムデバイス(BTX;500V、1×3msパルス)を使用して、4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH, cat. no. 732-0023)に入れたX-Vivo15(Biozym Scientific GmbH, cat. no.881026)250μL中約10~15×106個のCD8+ T細胞に、クローディン-6特異的マウスTCRのアルファ鎖をコードする10μgのインビトロ翻訳(IVT)-RNA、およびベータ鎖をコードする10μgのIVT-RNA(HLA-A2拘束型;WO2015150327 A1に記載)、およびPD-1をコードする10μgのIVT-RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、5% ヒトAB血清を補充した新鮮IMDM培地(Life Technologies GmbH, cat. no. 12440-061)中に細胞を移し、37℃、5% CO2で少なくとも1時間休ませた。PBS中の1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen, cat. no. C34564)を製造業者の説明書に従って使用してT細胞を標識し、5% ヒトAB血清を補充したIMDM培地中で一晩(O/N)インキュベートした。
【0443】
上記のエレクトロポレーションシステム(300V、1×12msパルス)を使用して、X-Vivo15培地 250μL中、最大5×106個の解凍iDCに完全長クローディン-6をコードする1μg(GEN1046用量反応)または3μg(ペムブロリズマブ用量反応)のいずれかのIVT-RNAをエレクトロポレーションし、5%ヒトAB血清を補充したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0444】
翌日、細胞を回収した。DC上のクローディン-6およびPD-L1ならびにT細胞上のTCRおよびPD-1の細胞表面発現をフローサイトメトリーによってチェックした。Alexa647コンジュゲート型CLDN6特異的抗体(市販されていない;自家生産)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1, eBioscienes, cat. no.12-5983)でDCを染色し、抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH, cat. no. 553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1, eBioscience, cat. no. 17-2799)でT細胞を染色した。エレクトロポレーションされたDCを、エレクトロポレーションされたCFSE標識T細胞と共に、96ウェル丸底プレートに入れた、5% ヒトAB血清を補充したIMDM GlutaMAX中、GEN1046(1~0.00015μg/mLの3倍系列希釈)または臨床グレードのニボルマブ(0.8~0.00005μg/mLの4倍系列希釈;Opdivo, Phoenix Apotheke, PZN 11024601)の存在下で1:10の比でインキュベートした。5日後に、CFSE希釈に基づくT細胞増殖のフローサイトメトリー分析をBD FACSCanto(商標)IIまたはBD FACSCelesta(商標)フローサイトメータ(Becton Dickinson GmbH)で行った。FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を使用して、取得されたデータを分析した。処置条件あたりの拡大増殖指数(expansion index)の値(全体的な培養物の拡大増殖倍率を決定する)を計算し、GEN1046またはニボルマブ濃度の関数としてプロットした。用量反応曲線を作成し、GraphPad Prismバージョン9(GraphPad Software, Inc.)で4パラメータ対数フィットを使用してEC20、EC50、EC90およびHill傾き値を計算した。
【0445】
表9に示されたEC20、EC50、EC90およびHill傾き値を用いて1~0.00015μg/mLの3倍系列希釈でGEN1046の用量反応を分析した(図3A)。検査した4人のドナーにわたり強い増殖誘導効果が0.0064μg/mLの平均EC50で見られた。
【0446】
表10に示されたEC50、EC90およびHill傾き値を用いて0.8~0.00005μg/mLの4倍系列希釈でニボルマブの用量反応を分析した(図3B)。検査した4人のドナーにわたり強い増殖誘導効果が0.0784μg/mLの平均EC50で見られた。
【0447】
(表9)抗原特異的T細胞増殖アッセイによって測定された場合のCD8+ T細胞拡大増殖データに基づくGEN1046のEC20、EC50およびEC90値の決定。示されたデータは、4パラメータ対数フィットに基づいて計算された値である。
【0448】
(表10)抗原特異的T細胞増殖アッセイによって測定された場合のCD8+ T細胞拡大増殖データに基づく承認済み抗PD-1抗体ニボルマブのEC50およびEC90値の決定。示されたデータは、4パラメータ対数フィットに基づいて計算された値である。平均は算術平均である。
【0449】
実施例3:抗PD-1抗体ニボルマブの存在下または非存在下でのGEN1046によるPD-1/PD-L1媒介T細胞阻害の解除およびCD8+ T細胞増殖の追加的な共刺激
抗PD-1抗体ニボルマブまたはIgG1-対照抗体と組み合わせたDuoBody-PD-L1x4-1BBによるT細胞増殖の誘導を測定するために、活性PD1/PD-L1系を用いた抗原特異的T細胞増殖アッセイを行った(実施例2に類似の一般アッセイ設定)。簡単に言えば、96ウェル丸底プレートに入れた、5%ヒトAB血清を補充したIMDM GlutaMAX中の一定濃度のニボルマブまたはIgG1-ctrl対照抗体と組み合わせたGEN1046の存在下で、クローディン-6-IVT-RNAをエレクトロポレーションされたDCを、クローディン-6特異的TCR-IVT-RNAおよびPD1-IVT-RNAをエレクトロポレーションされたCFSE標識T細胞と共に(1:10の比で)インキュベートした。最適、最適半値および最適以下の有効濃度(0.2μg/mL>EC90;0.0067μg/mL≒EC50;0.0022μg/mL≒EC20、実施例2、表9参照)に相当する3つの異なる濃度のGEN1046を検査した。ニボルマブおよびIgG1-ctrl対照抗体を、ニボルマブについてのEC90値を十分超える濃度であるそれぞれ濃度1.6μg/mLおよび0.8μg/mLで検査した(実施例2、表10参照)。培地および0.8μg/mL IgG1-ctrlのみを使用してベースライン増殖を決定した。ニボルマブ(1.6μg/mL)を追加的なチェックポイント阻害対照として使用した。5日後にBD FACSCanto(商標)IIまたはBD FACSCelesta(商標)フローサイトメータ(Becton Dickinson GmbH)でCFSEの希釈に基づくT細胞増殖のフローサイトメトリー分析を行った。取得されたデータを、FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を使用して解析した。処理条件あたりの拡大増殖指数の値を計算し、GraphPad Prismバージョン9(GraphPad Software, Inc.)を使用してプロットした。
【0450】
PD-L1および同族抗原を発現しているDCと共にPD-1およびクローディン-6特異的TCR発現CD8+ T細胞をインキュベートした結果、試験された3つのドナーすべてで培地のみおよびIgG1-ctrl処理培養物において1をわずかに超える拡大増殖指数の値で最小の増殖誘導がもたらされた(図4を参照されたい)。共培養の設定にニボルマブを添加することによってPD-1:PD-L1媒介阻害を解除した結果として、グラフに破線で示す拡大増殖指数の中等度の増加がもたらされた。T細胞増殖におけるより顕著であるばかりでなく、用量依存的な増加が、GEN1046の添加後に観察され、試験された最高濃度の結果として、中および低濃度の単一化合物処理条件と比較して最高の増殖誘導がもたらされた。注目すべきは、最低濃度の0.0022μg/mL GEN1046(ニボルマブと組み合わせない)の結果として、ニボルマブのみの対照について記録された値と同等または下回りさえした拡大増殖指数の値がもたらされ、最適以下のPD-1:PD-L1チェックポイント遮断が示された。著しく対照的に、試験されたGEN1046濃度と無関係に、ニボルマブと組み合わせたGEN1046についてのT細胞増殖誘導は、ニボルマブなしのGEN1046条件よりも常に優れていた。ニボルマブあり条件とニボルマブなし条件の間の拡大増殖指数の差は、中および低GEN1046濃度について特に強かった。特に、最適以下のGEN1046条件(0.0022μg/mL≒EC20)の場合、ニボルマブの添加は、ニボルマブのみの対照について観察された増殖と比較してかなり高い拡大増殖指数でCD8+ T細胞の増殖を救済した。
【0451】
実施例4:悪性固形腫瘍を有する対象におけるGEN1046の安全性を評価するための拡大コホートを用いたファーストインヒューマンの非盲検用量漸増試験
本研究は、GEN1046(DuoBody(登録商標)-PD-L1×4-1BB)の非盲検多施設第1/2a相安全性試験である。本試験は、ファーストインヒューマン(FIH)用量漸増(第1相)および拡大(第2a相)の2つのパートからなる。用量漸増は、悪性固形腫瘍を有する対象においてGEN1046を評価して、最大耐用量(MTD)もしくは最大投与用量および/または推奨第2相用量(RP2D)を決定した。
【0452】
拡大は、非小細胞肺がん(NSCLC)(PD-1/L1前処置、PD-1/L1無処置)、尿路上皮がん(UC)、子宮内膜がん(EC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)(PD-1/L1阻害剤による前処置を受けていた対象およびこのような処置を受けていない対象における):ならびに頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)についての選択された固形腫瘍拡大コホートにおける選択された用量の安全性、耐容性、PK、および抗腫瘍活性をさらに評価する。
【0453】
(表11)拡大コホート
【0454】
試験デザインの略図を図5に提供する。用量漸増および拡大コホートのみならず、用量漸増からの予備的結果のさらなる開示は、国際公開公報第2021/156326号に提供されている。
【0455】
予備的結果および結論
・ FIH試験の漸増期で評価された25~1200mg Q3Wの用量は安全であり、一般的に耐容性良好であった。MTDには達しなかった。
・ 安全性データの予備的評価は、用量依存性を示さず、AEの頻度に関して用量反応がないことを示している。
・ FIH試験の用量漸増相における80~200mg Q3WのGEN1046用量でRECIST v1.1に従う反応が観察された。追加的に、100mg Q3Wの用量による拡大でも反応が観察された。
・ 薬力学的マーカーの一貫したモジュレーション(増殖している[Ki67+]エフェクターメモリーCD8+ T細胞および総CD8+ T細胞ならびにIFNγおよびIP-10のレベル増加)が≦200mgの用量レベルで末梢血中に観察された。これらのエンドポイントのモジュレーション低減が、より高い用量レベル(≧400mg)で観察された。
・ 半機械論的PK/薬力学モデル(WO2021/156326の実施例13参照)は、トリマー形成についてベル型反応を予測し、これは約100mg Q3Wでピークに達した。PD-L1 ROに関してトリマーレベルと標的会合とのバランスを取るために、GEN1046に対して最適な初期反応を提供しうる100mg Q3Wの用量を選んだ。
・ チェックポイント阻害剤による前処置を受けた対象では無増悪生存期間(PFS)がより長かった(図6)。
・ チェックポイント阻害剤で前処置されたNSCLC対象におけるGEN1046単剤療法への臨床応答は、最終の抗PD-1前治療からの時間と関連する(図7)。
〇 GEN1046単剤療法で利益を受けたNSCLC対象は、最終の抗PD-1作用物質による処置を受けたのがより最近である傾向を示した。
抗PD-1作用物質含有治療からの時間がより短いことは、残存抗PD-1活性がGEN1046に対する反応を促進していることを示唆しうる。これを裏付けて、クリニックで抗PD-1作用物質により処置された患者は、治療用抗体によるPD-1受容体の長期占有を示し、それは200日を超えて持続することができる(Brahmer et al., JCO 2010; 28(19): 3167-3175)。治療用a-PD-1作用物質が依然としてPD-1受容体と結合していることは、今度は、多数のフリーPD-L1分子がGEN1046との結合のために利用可能であることにつながりうる。
残存a-PD-1活性の存在は、また、PD-1経路のより完全な遮断を可能にする場合があり(PD-1と、PD-L1およびPD-L2の両方との遮断相互作用)、これは、CPI後の設定でのGEN1046の生物学的活性に重要でありうる。
より最近の抗PD-1処置は、例えば、抗腫瘍免疫応答を開始することによって腫瘍微小環境に直接の影響を有する場合があり、抗PD-1含有療法を受けて進行後、GEN1046が直ちにまたはすぐに与えられた場合に、抗腫瘍免疫応答はGEN1046によって強化されることができる。
〇 反応者は、a-PD-1前処置による受容体占有(RO)を反映しうる、「低い」PD-1+ CD8 T細胞頻度を示した。
〇 逆に、非反応者は、より消耗した表現型を示しうる、一般的に高いPD-1+ CD8 T細胞頻度を示した。
【0456】
実施例5:IgG1-PD1およびスクリーニング材料の生成
本明細書に使用される技術および方法は、本明細書に記載される、または本質的に公知の方法で、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Yに記載されるように実行される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に具体的に示さないかぎり、製造業者の情報に従って実行される。
【0457】
PD-1およびFcγR構築物
様々な完全長PD-1バリアントをコードするプラスミドを生成した:ヒト(ホモ サピエンス(Homo sapiens);UniProtKB ID: Q15116)、カニクイザル(マカカ ファスシクラリス(Macaca fascicularis);UniProtKB ID: B0LAJ3)、イヌ(カニス ファミリアリス(Canis familiaris);UniProtKB ID: E2RPS2)、ウサギ(オリクトラグス クニクルス(Oryctolagus cuniculus);UniProtKB ID: G1SUF0)、ブタ(スス スクロファ(Sus scrofa);UniProtKB ID: A0A287A1C3)、ラット(ラッツス ノルベギクス(Rattus norvegicus);UniProtKB ID: D3ZIN8)、およびマウス(ムス ムスクルス(Mus musculus);UniProtKB ID: Q02242)のみならず、ヒトFcγRIaをコードするプラスミド(UniProt KB ID: P12314)。
【0458】
完全長PD-1またはFcγRバリアントを一過性発現しているCHO-S細胞株の生成
CHO-S細胞(懸濁増殖に適応したCHO細胞のサブクローン;ThermoFisher Scientific, cat. no. R800-07)に、FreeStyle(商標)MAX試薬(ThermoFisher Scientific, cat. no. 16447100)およびOptiPRO(商標)無血清培地(ThermoFisher Scientific, cat. no. 12309019)を製造業者の説明書に従って使用してPD-1またはFcγRプラスミドをトランスフェクトした。
【0459】
抗体バリアントの生産
IgG1-PD1
ニュージーランド白ウサギ3匹に組み換えヒトHisタグ付きPD-1タンパク質(R&D Systems, cat. no. 8986-PD)を免疫処置した。血液からB細胞を1つ選別し、ヒトPD-1酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、細胞性ヒトPD-1結合アッセイおよびヒトPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイによりPD-1特異的抗体の産生について上清をスクリーニングした。スクリーニング陽性B細胞からRNAを抽出し、シーケンシングを行った。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、Fcγ受容体との相互作用を最小化するために変異L234AおよびL235Aを含むヒト免疫グロブリン定常部(IgG1/κ)のN末端をクローニングした(LALA;Labrijn et al., Sci Rep 2017, 7:2476)が、その際、アミノ酸位置番号はEU番号付けに従う(SEQ ID NO:98)。
【0460】
293-freeトランスフェクション試薬(Novagen/Merck)を使用するHEK293-FreeStyle細胞の一過性トランスフェクションをTecan Freedom Evo装置によって行った。プレートオートサンプラーを備えるDionex Ultimate 3000 HPLCでプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、細胞上清から産生されたキメラ抗体を精製した。ヒトPD-1 ELISA、細胞性ヒトPD-1結合アッセイ、ヒトPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ、およびT細胞増殖アッセイによる特定の再試験でさらに分析するために精製抗体を使用した。キメラウサギ抗体MAB-19-0202(SEQ ID NO:109および110)を最高性能のクローンとして特定し、その後ヒト化した。
【0461】
キメラPD-1抗体MAB-19-0202の可変領域配列を次の表に示す。表12は、重鎖の可変領域を示すのに対し、表13は軽鎖の可変領域を示す。両方の場合で、Kabat番号付けによりフレーミング領域(FR)のみならず相補性決定領域(CDR)が規定されている。下線のアミノ酸は、IMGT番号付けによるCDRを示す。太字は、KabatおよびIMGT番号付けの交わりを示す。
【0462】
(表12)
【0463】
(表13)
【0464】
構造モデリング介助CDR移植、ヒト免疫グロブリン定常部(LALA変異を有するIgG1/κ)の遺伝子合成されクローニングされたN末端によってヒト化重鎖および軽鎖可変領域抗体配列を生成した。さらなる分析、特にヒトPD-1 ELISA、細胞性ヒトPD-1結合アッセイ、ヒトPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ、およびT細胞増殖アッセイによる再検査のためにヒト化抗体を使用した。ヒト化抗体MAB-19-0618(SEQ ID NO:111および112)を最高性能のクローンとして特定した。
【0465】
組み換えヒト化配列の抗体IDへのヒト化軽鎖および重鎖の割り付けを表14に挙げる。ヒト化軽鎖および重鎖の可変領域配列を表15および16に示す。表15は、重鎖の可変領域を示すのに対し、表16は軽鎖の可変領域を示す。両方の場合で、Kabat番号付けによるフレーミング領域(FR)のみならず相補性決定領域(CDR)が規定されている。下線のアミノ酸は、IMGT番号付けによるCDRを示す。
【0466】
(表14)
【0467】
(表15)
【0468】
(表16)
【0469】
MAB-19-0618の重鎖および軽鎖の可変領域の配列を遺伝子合成し、Fcサイレンシング変異L234F、L235EおよびG236R(FER)を含むヒトIgG1m(f)重鎖定常ドメインをコードするコドン最適化配列を有する発現ベクターへのライゲーション非依存クローニング(LIC)によってクローニングし、その際、アミノ酸位置番号はEU番号付け(SEQ ID NO:93)およびヒトカッパ軽鎖定常ドメイン(SEQ ID NO:97)に従う。結果として得られた抗体をIgG1-PD1と名付けた。
【0470】
GS Xceed(登録商標)発現システム(Lonza)を使用して、IgG1-PD1を発現している安定細胞株を生成した。IgG1-PD1の重鎖および軽鎖をコードする配列をLonza Biologics plcによりそれぞれ発現ベクターpXC-18.4およびpXC-Kappa(グルタミンシンセターゼ[GS]遺伝子を含む)にクローニングした。次に、重鎖ベクターからの完全な発現カセットを軽鎖ベクターにライゲートすることによってIgG1-PD1の重鎖および軽鎖の両方をコードするダブル遺伝子ベクター(DGV)を構築した。制限酵素PvuI-HF(New England Biolabs, R3150L)を用いてこのDGVのDNAを線状化し、CHOK1SV(登録商標)GS-KO(登録商標)細胞の安定トランスフェクションのために使用した。機能的特徴付けのためにIgG1-PD1を精製した。
【0471】
IgG1-CD52-E430G
Fcドメイン(SEQ ID NO:95)中にE430Gヘキサマー化強化変異(WO2013/004842 A2)およびCAMPATH-1H、CD52特異的抗体と同一の抗原結合ドメインを有するヒトIgG1抗体をC1q結合実験における陽性対照として使用した(Crowe et al., 1992 Clin Exp Immunol. 87(1):105-110)(SEQ ID NO:116および120)。
【0472】
対照抗体
b12と同一の抗原結合ドメインを有するヒトIgG1抗体、HIV1 gp120特異的抗体をいくつかの実験で陰性対照として使用した(Barbas et al., Jmol Biol. 1993 Apr 5;230(3):812-2)。デノボ遺伝子合成(GeneArt Gene Synthesis;ThermoFisher Scientific, Germany)によってb12のVHおよびVLドメイン(SEQ ID NO:123および127)を調製し、選択された結合ドメインに応じて、ヒトIgG1m(f)アロタイプ(SEQ ID NO:92)もしくはそのバリアント(L234F/L235E/G236R変異および本研究に関連して機能的に無関係なFcドメインにおける追加的なK409R変異を含む、FERR変異と略される)(SEQ ID NO:94)のヒトIgG1重鎖定常領域(すなわちCH1、ヒンジ、CH2およびCH3領域)を含む、またはヒトIgG4重鎖定常領域(SEQ ID NO:96)もしくはヒトカッパ軽鎖(LC)の定常領域(SEQ ID NO:97)を含む発現ベクターにクローニングした。生産細胞株での重鎖および軽鎖発現ベクターのトランスフェクションによって抗体を得て、それを機能的特徴付けのために精製した。
【0473】
実施例6:IgG1-PD1と様々な種からのPD-1との結合
異なる動物種からのPD-1を一過性発現しているCHO-S細胞を使用して、IgG1-PD1と、非臨床毒性試験のために一般的に使用される種のPD-1との結合をフローサイトメトリーによって評価した。
【0474】
CHO-S細胞(5×104個/ウェル)を丸底96ウェルプレートに蒔いた。IgG1-PD1、IgG1-ctrl-FERR、およびペムブロリズマブの抗体希釈液(1.7×10-4~30μg/mLまたは5.6×10-5~10μg/mL、3倍希釈)を、Genmab(GMB)蛍光活性化細胞分取(FACS)緩衝液(0.1%[w/v]ウシ血清アルブミン[BSA; Roche, cat. no. 10735086001]および0.02%[w/v]アジ化ナトリウム[NaN3;bioWORLD, cat. no. 41920044-3]を補充したリン酸緩衝食塩水[PBS;Lonza、cat. no. BE17-517Q、蒸留水中に1×PBSまで希釈])中に調製した。試験した最高濃度(30μg/mLまたは10μg/mL)の場合だけ、ペムブロリズマブについてのIgG4アイソタイプ対照(BioLegend, cat. no. 403702)を包含した。細胞を遠心分離し、上清を除去し、抗体希釈液50μL中、細胞を4℃で30分間インキュベートした。GMB FACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、遮光して二次抗体R-フィコエリトリン(PE)-コンジュゲート型ヤギ-抗ヒトIgG F(ab')2(Jackson ImmunoResearch, cat. no. 109-116-098;GMB FACS緩衝液で1:500希釈)50μLと共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をGMB FACS緩衝液で2回洗浄し、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA;Sigma-Aldrich, cat. no. 03690)および4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)生存度マーカー(1:5,000;BD Pharmingen, cat. no. 564907)を補充したGMB FACS緩衝液中にこれを再懸濁した。生存細胞(DAPI排除により特定)との抗体結合を、FlowJoソフトウェアを使用してIntellicyt(登録商標)iQue PLUS Screener(Intellicyt Corporation)でフローサイトメトリーによって分析した。GraphPad Prismで非線形回帰分析(4パラメータ用量反応曲線フィット)を使用して結合曲線を分析した。
【0475】
細胞表面にヒト、カニクイザル、イヌ、ウサギ、ブタ、ラット、またはマウスPD-1タンパク質を発現するように一過性トランスフェクトされたCHO-S細胞を使用するフローサイトメトリーによってIgG1-PD1と、異なる種のPD-1との結合を評価した。ヒトおよびカニクイザルPD-1(図8A~B)についてIgG1-PD1の用量依存性結合が観察された。ペムブロリズマブは同等の結合を示した。IgG1-PD1は、最高濃度の場合のみ、げっ歯類PD-1(マウス、ラット;図8C~D)との実質的に低減した交差反応性が観察され、毒性研究で頻繁に使用される他の種(ウサギ、イヌ、ブタ;図8E)のPD-1との結合は観察されなかった。トランスフェクトされていない対照細胞とのIgG1-PD1の結合は観察されず(図8E)、陰性対照として包含されたIgG1-ctrl-FERRと、試験されたいずれの種のPD-1との結合も観察されなかった(図8)。
【0476】
結論として、IgG1-PD1は、膜発現型ヒトおよびカニクイザルPD-1と同等の結合、ならびにマウス、ラット、ウサギ、イヌ、およびブタPD-1と有意に低い結合または無結合を示した。
【0477】
実施例7:表面プラズモン共鳴によって決定されたヒトおよびカニクイザルPD-1との結合
Biacore 8K SPRシステムを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって固定化IgG1-PD1、ペムブロリズマブ、およびニボルマブと、ヒトおよびカニクイザルPD-1との結合を分析した。C末端Hisタグを有する組み換えヒトおよびカニクイザルPD-1細胞外ドメイン(ECD)をSino Biological(それぞれcat. no. HPLC 10377-H08Hおよび90311-C08H)から得た。
【0478】
アミンカップリングおよびヒト抗体捕捉キット、タイプ2(Cytiva, cat. no. BR100050およびBR100839)を製造業者の説明書に従って使用して、Biacore Series S Sensor Chips CM5(Cytiva, cat. no. 29149603)に抗Fc抗体を共有結合的にコーティングした。
【0479】
続いて、HBS-EP+ 緩衝液(Cytiva, cat. no. BR100669;蒸留水中に1×まで希釈[B Braun, cat. no. 00182479E])中に希釈したIgG1-PD1(2nM)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb、ロット番号ABP6534;1.25nM)、およびペムブロリズマブ(Merck Sharp & Dohme, lot. no. T019263;1.25nM)を25℃、流速10μL/minおよび接触時間60秒で表面に捕捉した。この結果として、約50共鳴単位(RU)の捕捉レベルがもたらされた。
【0480】
HBS-EP+ 緩衝液の3スタートアップサイクル後、ヒトまたはカニクイザルPD-1 ECD試料(0.19~200nM;HBS-EP+ 緩衝液中に2倍希釈;12サイクル)を注入して、結合曲線を作成した。抗体がコーティングされた表面(活性表面)で分析された各試料を、抗体を有しないパラレルフローセル(参照表面)でも分析し、これをバックグラウンド補正のために使用した。
【0481】
各サイクルの終わりに、10mM グリシンHCl pH 1.5(Cytiva, cat. no. BR100354)を使用して表面を再生した。予め規定された「捕捉を使用するマルチサイクル速度論」評価法を使用して、Biacore Insight Evaluationソフトウェア(Cytiva)でデータを解析した。データのより良好な曲線フィットを可能にするために最高濃度のヒトまたはカニクイザルPD-1(200nM)を有する試料を分析から省略した。
【0482】
固定化IgG1-PD1は、1.45±0.05nMの結合親和性(KD)でヒトPD-1 ECDと結合した(表17)。ニボルマブおよびペムブロリズマブは、IgG1-PD1のKDと同等の結合親和性で、すなわち低ナノモル濃度範囲のKD値(それぞれ4.43±0.08nMおよび3.59±0.10nM)でヒトPD-1 ECDと結合した(表17)。
【0483】
固定化IgG1-PD1は、カニクイザルPD-1 ECDと、ヒトPD-1に対するIgG1-PD1の親和性と同等の2.74±0.58nMのKDで結合した(表18)。ニボルマブおよびペムブロリズマブは、カニクイザルPD-1 ECDに対するIgG1-PD1のKDと同等およびヒトPD-1 ECDに対するニボルマブおよびペムブロリズマブのKDと同等の結合親和性で、すなわち低ナノモル濃度範囲のKD値で(それぞれ2.93±0.58nMおよび0.90±0.06nMで)カニクイザルPD-1 ECDと結合した(表18)。
【0484】
(表17)表面プラズモン共鳴によって決定された場合の、PD-1抗体と、ヒトPD-1の細胞外ドメインとの結合親和性
ヒトPD-1のECDに対するIgG1-PD1、ニボルマブ、およびペムブロリズマブの会合速度定数ka(1/Ms)、解離速度定数kd(1/s)および平衡解離定数KD(M)をSPRによって決定した。
a 3つの独立した実験からの平均およびSD。
b 2つの独立した実験からの平均およびSD。
略語:KD=平衡解離定数;ka=会合速度定数;kd=解離速度定数またはオフレート;SD=標準偏差。
【0485】
(表18)表面プラズモン共鳴によって決定された場合の、PD-1抗体とカニクイザルPD-1の細胞外ドメインとの結合親和性。
カニクイザルPD-1のECDに対するIgG1-PD1、ニボルマブ、およびペムブロリズマブの会合速度定数ka(1/Ms)、解離速度定数kd(1/s)および平衡解離定数KD(M)をSPRによって決定した。
a 3つの独立した実験からの平均およびSD。
b 2つの独立した実験からの平均およびSD。
略語:KD=平衡解離定数;ka=会合速度定数;kd=解離速度定数またはオフレート;SD=標準偏差。
【0486】
実施例8:PD-1リガンド結合およびPD-1/PD-L1シグナル伝達に対するIgG1-PD1の効果
IgG1-PD1が古典的免疫チェックポイント阻害剤として機能することを確認するために、IgG1-PD1がPD-1リガンドの結合およびPD-1のチェックポイント機能を破壊する能力をインビトロで評価した。
【0487】
膜発現型ヒトPD-1に対するIgG1-PD1と組み換えヒトPD-L1およびPD-L2との競合結合をフローサイトメトリーによって評価した。ヒトPD-1を一過性トランスフェクトしたCHO-S細胞(実施例5参照;5×104個/ウェル)を丸底96ウェルプレート(Greiner, cat. no. 650180)のウェルに添加し、ペレットにし、氷上に置いた。PBS(Cytiva, cat. no. SH3A3830.03)中に希釈したビオチン化組み換えヒトPD-L1(R&D Systems, cat. no. AVI156)またはPD-L2(R&D Systems, cat. no. AVI1224)を細胞に添加し(終濃度:1μg/mL)、その直後、PBS中に希釈したIgG1-PD1、ペムブロリズマブ(MSD, lot no. T019263およびT036998)、またはIgG1-ctrl-FERRの濃度範囲を添加した(終濃度:30μg/mL~0.5ng/mLを3倍希釈段階で)。次いで、細胞をRTで45分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(R&D Systems, cat. no. F0050;PBS中に1:20希釈)50μLと共に遮光して4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、GMB FACS緩衝液20μL中に再懸濁した。Intellicyt(登録商標)iQue Screener PLUS(Sartorius)を用いてFlowJoソフトウェアを使用するフローサイトメトリーによってストレプトアビジン-アロフィコシアニンの結合を分析した。
【0488】
生物発光細胞ベースPD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイ(Promega, cat. no. J1255)を本質的に製造業者によって説明されたように使用してPD-1およびPD-L1の機能的相互作用に対するIgG1-PD1の効果を決定した。簡潔には、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞とPD-1エフェクター細胞との共培養物を、系列希釈したIgG1-PD1、ペムブロリズマブ(MSD、lot no. 10749880またはT019263)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb、lot no. 11024601)、またはIgG1-ctrl-FERR(最終アッセイ濃度:3倍希釈で15~0.0008μg/mLまたは5倍希釈で10~0.0032μg/mL)と共に37℃、5% CO2で6時間インキュベートした。次いで、細胞を再構成Bio-Glo(商標)と共にRTで5~30分間インキュベートし、その後、Infinite(登録商標)F200 PRO Reader (Tecan)またはEnVision Multilabel Plate Reader(PerkinElmer)を使用して発光(相対発光量[RLU]で)を測定した。
【0489】
GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形回帰分析(4パラメータ用量反応曲線フィット)によって用量反応曲線を分析し、フィットされた曲線から最大(阻害)効果の50%が観察された濃度(EC50/IC50)が得られた。IgG1-PD1は、ヒトPD-L1およびPD-L2と膜発現型ヒトPD-1との結合を用量依存的に破壊し(図9)、PD-L1結合阻害についてのIC50値は2.059±0.653μg/mL(13.9±4.4nM)であり、PD-L2の結合阻害については1.659±0.721μg/mL(11.2±4.9nM)、すなわちナノモル濃度範囲であった(表19)。ペムブロリズマブは、同等の効力で、すなわちナノモル濃度範囲のIC50値で、PD-L1およびPD-L2の結合阻害を示した。
【0490】
細胞ベース生物発光PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを使用してPD-1/PD-L1系の機能的遮断を試験した。ヒトPD-1を発現し、NFAT-RE駆動ルシフェラーゼを有するレポーターJurkat T細胞と、ヒトPD-L1および抗原非依存的TCR活性化因子を発現しているPD-L1 aAPC/CHOK1細胞との共培養物を、濃度希釈系列のIgG1-PD1、ペムブロリズマブ、またはニボルマブの非存在下および存在下でインキュベートした。IgG1-ctrl-FERRを陰性対照として包含した。PD-1/PD-L1相互作用の遮断の結果として、PD1/PDL1媒介阻害シグナルの解除がもたらされ、TCR活性化およびNFAT-RE媒介ルシフェラーゼの発現につながった(発光を測定)。IgG1-PD1は、PD-1+レポーターT細胞においてTCRシグナル伝達の用量依存性増加を誘導した(図10)。EC50は、0.165±0.056μg/mL(1.12±0.38nM;表20)であった。ペムブロリズマブは、TCRシグナル伝達のPD-1媒介阻害を同様に、0.129±0.051μg/mL(0.86±0.34nM)のEC50で、すなわち同等の効力で軽減した。ニボルマブは、TCRシグナル伝達の阻害を、0.479±0.198μg/mL(3.28±1.36nM)のEC50で、すなわちわずかに低い効力で軽減した。
【0491】
要約すると、IgG1-PD1は、PD-1リガンドの結合を遮断し、PD-1免疫チェックポイント機能を破壊することによってインビトロで古典的免疫チェックポイント阻害剤として作用する。
【0492】
(表19)PD-1リガンド結合のIgG1-PD1媒介阻害のIC50
競合結合曲線からIC50値を計算した。
略語:IC50=阻害効果の50%が観察された濃度;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;PD-L2=プログラム細胞死1リガンド2;SD=標準偏差。
【0493】
(表20)PD1/PD-L1チェックポイント遮断のEC50
PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおいてPD-1+レポーターT細胞とPD-L1 aAPC/CHO-K細胞との共培養物を濃度系列のIgG1-PD1、ペムブロリズマブ、またはニボルマブと共にインキュベートした。結果としてレポーターT細胞において下流のTCRシグナル伝達およびルシフェラーゼ発現をもたらすPD-1/PD-L1チェックポイント機能の阻害を、発光を測定することによって決定した。結果としての用量反応曲線から、EC50値を計算した。
略語:aAPC=人工抗原提示細胞;CHO=チャイニーズハムスター卵巣;EC50=最大効果の50%が観察される濃度;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;PD-L1=プログラム細胞死1リガンド1;SD=標準偏差;TCR=T細胞受容体。
【0494】
実施例9:IgG1-PD1が活性化T細胞の増殖を高める能力を決定するための抗原特異的増殖アッセイ
IgG1-PD1がT細胞の増殖を高める能力を決定するために、PD-1を過剰発現しているヒトCD8+ T細胞を使用して抗原特異的増殖アッセイを行った。
【0495】
健康なドナー(Transfusionszentrale、University Hospital, Mainz, Germany)からHLA-A*02+末梢血単球細胞(PBMC)を得た。抗CD14 MicroBeads(Miltenyi;cat. no. 130-050-201)を製造業者の説明書に従って使用する磁気活性化細胞分取(MACS)技術によってPBMCから単球を単離した。T細胞単離のために10% DMSO(AppliChem GmbH, cat. no A3672,0050)および10% ヒトアルブミン(CSL Behring, PZN 00504775)を含有するRPMI 1640中で末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)を凍結保存した。未熟DC(iDC)に分化させるために、1×106個/mLの単球を、5%プールヒト血清(One Lambda Inc., cat. no. A25761)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH, cat. no. 11360-039)、1×可欠アミノ酸(Life Technologies GmbH, cat. no. 11140-035)、200ng/mL 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi, cat. no. 130-093-868)および200ng/mL インターロイキン-4(IL-4;Miltenyi, cat. no. 130-093-924)を含有するRPMI 1640(Life Technologies GmbH, cat. no. 61870-010)中で5日間培養した。培養3日後、培地の半分を新鮮培地と交換した。5日目に非接着細胞を収集することによってiDCを回収し、2mM EDTAを含有するダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)と共に37°で10分間インキュベートすることによって接着細胞を剥離した。DPBSで洗浄後、将来的に抗原特異的T細胞アッセイに使用するために10% DMSOを含有するウシ胎仔血清(FBS;Sigma-Aldrich, cat. no. F7524)中にiDCを凍結保存した。
【0496】
抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ開始の1日前に、同じドナーからの凍結PBLおよびiDCを解凍した。抗CD8 MicroBeads(Miltenyi、cat. no. 130-045-201)を製造業者の説明書に従って使用するMACS技術によってPBLからCD8+ T細胞を単離した。約10×106~15×106個のCD8+ T細胞に、X-Vivo15培地(Lonza, cat. no. BE02-060Q)250μL中、ヒトクローディン-6(CLDN6; HLA-A*02-拘束型;WO2015150327 A1に記載)に特異的なマウスTCRのアルファおよびベータ鎖をコードするそれぞれ10μgのインビトロ翻訳(IVT)-RNAに加えて、PD-1をコードするIVT-RNA(UniProt Q15116)10μgをエレクトロポレーションした。細胞を4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH, cat. no. 732-0023)に移し、BTX ECM(登録商標)830エレクトロポレーションシステム(BTX; 500V、1×3msパルス)を使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、5%プールヒト血清を含有する新鮮IMDM GlutaMAX培地(Life Technologies GmbH, cat. no. 319800-030)に細胞を移し、37℃、5% CO2で少なくとも1時間休ませた。PBS中1.6μMのカルボキシフルオセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Life Technologies GmbH, cat. No V12883)を製造業者の説明書に従って使用してT細胞を標識し、5%プールヒト血清を補充したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0497】
最大5×106個の解凍したiDCに、上記のエレクトロポレーションシステム(300V、1×12msパルス)を使用してX-Vivo15培地 250μL中、完全長ヒトCLDN6(WO2015150327 A1)をコードするIVT-RNA 2μgをエレクトロポレーションし、5%プールヒト血清を補充したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0498】
翌日に細胞を回収した。iDC上のCLDN6の細胞表面発現のみならずT細胞上のCLDN6特異的TCRおよびPD-1の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって確認した。この目的のために、iDCをDyLight650コンジュゲート型CLDN6特異的抗体(市販されていない;自家生産)で染色した。T細胞をブリリアントバイオレット(BV)421-コンジュゲート型抗マウスTCR-β鎖抗体(Becton Dickinson GmbH, cat. no. 562839)およびアロフィコシアニン(APC)-コンジュゲート型抗ヒトPD-1抗体(Thermo Fisher Scientific, cat. no. 17-2799-42)で染色した。
【0499】
エレクトロポレーションしたiDCを、エレクトロポレーションしたCFSE標識T細胞と共に、IgG1-PD1、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標), MSD Sharp & Dohme GmbH, PZN 10749897)、またはニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers Squibb, PZN 11024601)の存在下、96ウェル丸底プレートに入れた5% プールヒト血清を含有するIMDM培地中4倍系列希釈(0.00005~0.8μg/mLの範囲)で、1:10の比でインキュベートした。陰性対照抗体IgG1-ctrl-FERRを0.8μg/mLの単一濃度で使用した。4日間培養後、細胞をAPCコンジュゲート型抗ヒトCD8抗体で染色した。BD FACSCelesta(商標)フローサイトメータ(Becton Dickinson GmbH)を使用してCD8+ T細胞におけるCFSE希釈のフローサイトメトリー分析によってT細胞の増殖を評価した。
【0500】
FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を使用してフローサイトメトリーのデータを解析した。FlowJo内の増殖モデリングツールを使用してCD8+ T細胞のCFSE標識希釈を評価し、組み込まれた式を使用して拡大指数を計算した。GraphPad Prismバージョン9(GraphPad Software, Inc.)で4パラメータ対数フィットを使用して用量反応曲線を作成した。GraphPad Prismバージョン9を使用するフリードマン検定およびダンの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【0501】
CD8+ T細胞の抗原特異的増殖は、IgG1-PD1によって用量依存的に高まり(図11)、EC50値はピコモル濃度範囲であった(表21)。ペムブロリズマブまたはニボルマブによる処置もまた、T細胞の増殖を用量依存的に高めた。ペムブロリズマブの平均EC50はIgG1-PD1と同等であり、一方でニボルマブのEC50は、IgG1-PD1よりも有意(P=0.0267)に高かった。
【0502】
(表21)抗原特異的増殖アッセイでのEC50
抗原特異的T細胞増殖アッセイにより測定した場合のCD8+ T細胞拡大増殖指数を使用してIgG1-PD1、ペムブロリズマブ、およびニボルマブのEC50値を決定した。示されたデータは、4パラメータ対数フィットに基づき計算された値である。略語:EC50=最大半値有効濃度;FERR=L234F/L235E/G236R-K409R;PD1=プログラム細胞死タンパク質1;SD=標準偏差。
【0503】
実施例10:同種MLRアッセイにおけるサイトカイン分泌に対するIgG1-PD1の効果
IgG1-PD1が混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてサイトカイン分泌を高める能力を検討するために、ヒト成熟樹状細胞(mDC)およびCD8+ T細胞の3つの独特な同種ペアをIgG1-PD1の存在下で共培養した。IFNγ特異的イムノアッセイを使用してIFNγのレベルを測定したのに対し、特別注文のLuminexマルチプレックスイムノアッセイを使用して単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、GM-CSF、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL12-p40、IL-15、IL-17α、および腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルを決定した。
【0504】
ヒトCD14+単球を健康なドナー(BioIVT)から得た。未熟樹状細胞(iDC)に分化させるために、単球を、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS;Gibco, cat. no. 16140071)、100ng/mL GM-CSFおよび300ng/mL IL-4(BioLegend, cat. no. 766206)を補充したRPMI-1640完全培地(ATCC変法処方;Thermo Fisher, cat. no. A1049101)中、37℃で6日間培養した。4日目に、培地を、補充物を有する新鮮培地と交換した。iDCを成熟させるために、MLRアッセイの開始前に、10% FBS、100ng/mL GM-CSF、300ng/mL IL-4、および5μg/mL リポ多糖(LPS;Thermo Fisher Scientific, cat. no. 00 4976 93)を補充したRPMI-1640完全培地中で細胞を37℃で24時間インキュベートした。並行して、同種健康ドナー(BioIVT)から得た精製CD8+ T細胞を解凍して、10% FBSおよび10ng/mL IL-2(BioLegend, cat. no. 589106)を補充したRPMI-1640完全培地中、37℃で一晩インキュベートした。
【0505】
翌日、LPS-成熟樹状細胞(mDC)および同種CD8+ T細胞を回収し、予温したAIM-V培地(Thermo Fisher Scientific, cat. no. 12055091)中にそれぞれ4×105個/mLおよび4×106個/mLで再懸濁した。mDC(20,000個/ウェル)を、同種ナイーブCD8+ T細胞(200,000個/ウェル)と共に、96ウェル丸底プレートに入れたAIM-V培地中IgG1-PD1、IgG1-ctrl-FERR、もしくはペムブロリズマブ(MSD, cat. no. T019263)の抗体濃度範囲(0.001~30μg/mL)の存在下で、または30μg/mL IgG4アイソタイプ対照(BioLegend, cat. no. 403702)の存在下で37℃でインキュベートした。
【0506】
5日後、無細胞上清を各ウェルから新しい96ウェルプレートに移し、サイトカインの濃度のさらなる分析まで-80℃で保存した。
【0507】
Envision機器で製造業者の説明書に従ってIFNγ特異的イムノアッセイ(Alpha Lisa IFNγ kit;Perkin Elmer, cat. no. AL217)を使用してIFNγレベルを決定した。
【0508】
特別注文のLuminex(登録商標)マルチプレックスイムノアッセイ(Millipore、オーダno. SPR1526)を使用してヒトTH17 Magnetic Bead Panel(MILLIPLEX(登録商標))に基づきMCP-1、GM-CSF、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL12-p40、IL-15、IL-17αおよびTNFαのレベルを決定した。簡潔には、無細胞上清を解凍し、各試料10μLを、1×洗浄緩衝液で予洗した384ウェルプレート(Greiner Bio-One, cat. no. 781096)のウェル内のアッセイ緩衝液10μLに添加した。並行して、アッセイ緩衝液中の標準または対照10μLをウェルに添加し、その後、アッセイ培地10μLを添加した。異なるサイトカインに対する磁気ビーズを混合し、Bead Diluent中に1×濃度まで希釈し、その後、混合されたビーズ10μLを各ウェルに添加した。プレートを密封し、振盪しながら4℃で一晩インキュベートした。ウェルを1×Wash Buffer 60μLで3回洗浄した。続いて、特別注文の検出抗体10μLを各ウェルに添加し、プレートを密封し、振盪しながらRTで1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジン-PE 10μLを各ウェルに添加し、プレートを密封し、振盪しながらRTで30分間インキュベートした。上記のようにウェルを1×Wash Buffer 60μLで3回洗浄し、その後、RTで5分間振盪することによってビーズをLuminex Sheath Fluid 75μL中に再懸濁した。試料をLuminex FlexMap 3Dシステムで運転した。
【0509】
MLRアッセイの開始時および終了時に、PE-Cy7-コンジュゲート型抗PD-1(BioLegend, cat. no. 329918;1:20)、アロフィコシアニン-コンジュゲート型抗PD-L1(BioLegend, cat. no. 329708;1:80)、BUV496-コンジュゲート型抗CD3(BD Biosciences, cat. no. 612940;1:20)、およびBUV395-コンジュゲート型抗CD8(BD Biosciences, cat. no. 563795;1:20)を使用するフローサイトメトリーによってCD8+ T細胞上のPD-1の発現およびmDC上のPD-L1の発現を確認した。
【0510】
IgG1-PD1は、IFNγの分泌(図12)を用量依存的に一貫して高めた。IgG1-PD1はまた、MCP-1、GM-CSF、IL-2、IL-6、IL-12p40、IL-17α、IL-10、およびTNFαの分泌を高めた(図13)。ペムブロリズマブは、サイトカイン分泌に同等の効果を有した。
【0511】
実施例11:IgG1-PD1とのC1qの結合の評価
定常重鎖領域にFER Fc-サイレンシング変異を有するIgG1-PD1との補体タンパク質C1qの結合を、活性化ヒトCD8+ T細胞を使用して評価した。陽性対照として、CD52抗体CAMPATH-1Hに基づくVHおよびVLドメインを有し、かつ細胞表面と結合した場合にC1qと効率的に結合することが公知であるFc-強化骨格を有するIgG1-CD52-E430Gを包含した。非結合性陰性対照抗体として、IgG1-ctrl-FERRおよびIgG1-ctrlを包含した。
【0512】
RosetteSep(商標)ヒトCD8+ T Cell Enrichment Cocktail(Stemcell Technologies, cat. no. 15023C.2)を使用する陰性選択によって、またはCD8 MicroBeads(Miltenyi Biotec, cat. no. 130-045-201)およびLSカラム(Miltenyi Biotec, cat. no. 130-042-401)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)を介する陽性選択によって、すべて製造業者の説明書に従って、健康な志願者(Sanquin)から得たバフィーコートからヒトCD8+ T細胞を精製した(濃縮した)。T細胞培地(鉄[DBSI;Gibco, cat. no. 20731-030]およびペニシリン/ストレプトマイシン[pen/strep;Lonza, cat. no. DE17-603E]と共に10%熱失活ドナーウシ血清を補充した、25mM HEPESおよびL-グルタミン[Lonza, cat. no. BE12-115F]を有するRoswell Park Memorial Institute [RPMI]-1640培地)中に精製T細胞を再懸濁した。
【0513】
抗CD3/CD28ビーズ(Dynabeads(商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28;ThermoFisher Scientific, cat. no. 11132D)をPBSで洗浄し、T細胞培地中に再懸濁した。ビーズを濃縮ヒトCD8+ T細胞に1:1の比で添加し、37℃、5% CO2で48時間インキュベートした。次いで、磁石を使用してビーズを除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、再度計数した。
【0514】
活性化CD8+ T細胞上のPD-1の発現を、IgG1-PD1(30μg/mL)およびR-フィコエリトリン(PE)-コンジュゲート型ヤギ-抗ヒトIgG F(ab')2(GMB FACS緩衝液中に1:200希釈;Jackson ImmunoResearch, cat. no. 109-116-098)、または市販のPE-コンジュゲート型PD-1抗体(BioLegend, cat. no. 329906;1:50希釈)を使用するフローサイトメトリーによって確認した。
【0515】
活性化CD8+ T細胞を丸底96ウェルプレートに蒔き(細胞30,000または50,000個/ウェル)、ペレットにし、アッセイ培地(0.1%[w/v]ウシ血清アルブミン画分V[BSA;Roche, cat. no. 10735086001]およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充した25mM HEPESおよびL-グルタミンを有するRPMI-1640)30μL中に再懸濁した。続いて、IgG1-PD1、IgG1-ctrl-FERR、IgG1-CD52-E430G、またはIgG1-ctrl(アッセイ培地中に3倍希釈段階で終濃度1.7×10-4~30μg/mL)50μLを各ウェルに添加し、37℃で15分間インキュベートして、抗体を細胞と結合させた。
【0516】
C1q源としてヒト血清(20μL/ウェル;Sanquin、lot 20L15-02)を終濃度20%まで添加した。細胞を氷上で45分間インキュベートし、続いて冷GMB FACS緩衝液で2回洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート型ウサギ抗ヒトC1q(20μg/mLの終濃度[DAKO, cat no. F0254];GMB FACS緩衝液中に1:75希釈)50μLと共にアロフィコシアニン-コンジュゲート型マウス-抗CD8(BD Biosciences, cat. no. 555369;GMB FACS緩衝液中に1:50希釈)の存在下または非存在下で、4℃の暗条件で30分間インキュベートした。細胞を冷GMB FACS緩衝液で2回洗浄し、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA;Sigma-Aldrich, cat. no. 03690)および4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)生存度色素(1:5,000;BD Pharmingen, cat. no. 564907)を補充したGMB FACS 20μL中に再懸濁した。生存細胞へのC1qの結合(DAPIの排除によって特定)を、IntelliCyt(登録商標)iQue Screener PLUS(Sartorius)またはiQue3(Sartorius)を用いるフローサイトメトリーによって分析した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰分析(傾き可変のシグモイド用量反応)を使って結合曲線を解析した。
【0517】
膜結合型IgG1-CD52-E430Gへの用量依存性C1q結合が観察された一方で、膜結合型IgG1-PD1または非結合性対照抗体とのC1q結合は観察されなかった(図14)。
【0518】
これらの結果は、IgG1-PD1の機能的に不活性な骨格がC1qと結合しないことを示す。
【0519】
実施例12:SPRによって決定した場合のIgG1-PD1とFcγ受容体との結合
IgG1-PD1の固定化FcγR(FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIbおよびFcγRIIIa)との結合をSPRによってインビトロで評価した。FcγRIIa(H131およびR131)およびFcγRIIIa(V158およびF158)について両方の多型バリアントを包含した。FcγR結合についての陽性対照として、野生型Fc領域を有するIgG1-ctrlを包含した。
【0520】
最初の実験で、Biacore 8K SPRシステムを使用してIgG1-PD1またはIgG1-ctrlと固定化ヒト組み換えFcγRバリアント(FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIa)との結合を分析した。同じ方法を使用する第2セットの実験で、IgG1-PD1、ニボルマブ(Bristol-Meyers Squibb, lot no. ABP6534)、ペムブロリズマブ(Merck Sharp & Dohme, lot no. U013442)、ドスタルリマブ(GlaxoSmithKline, lot. no. 1822049)、セミプリマブ(Regeneron, lot no. 1F006A)、IgG1-ctrl、またはIgG4-ctrlの結合を分析した。
【0521】
アミンカップリングおよびHis捕捉キット(Cytiva, cat. no. BR100050およびcat. no. 29234602)を製造業者の説明書に従って使用して、Biacore Series S Sensor Chips CM5(Cytiva, cat. no. 29104988)に抗ヒスチジン(His)抗体を共有結合的にコーティングした。HBS-EP+(Cytiva, cat. no. BR100669)中に希釈したFcγRIa、FcγRIIa(H131およびR131)、FcγRIIbおよびFcγRIIIa(V158およびF158)(SinoBiological、それぞれcat. no. 10256-H08S-B、10374-H08H1、10374-H27H、10259-H27H、10389-H27H1、および10389-H27H)を、抗Hisコーティングセンサーチップの表面に流速10μL/minおよび接触時間60秒で捕捉し、結果として約350~600共鳴単位(RU)の捕捉レベルがもたらされた。
【0522】
HBS-EP+ 緩衝液の3スタートアップサイクル後、表22に示す抗体範囲を使用して試験抗体(IgG1-PD1、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブ、セミプリマブ、IgG1-ctrl、またはIgG4-ctrl)を注入して、結合曲線を作成した。捕捉されたFcγRを有する表面(活性表面)で分析した各試料を、捕捉されたFcγRを有しない並列フローセル(参照表面)でも分析し、それをバックグラウンド補正のために使用した。(モック)分析物としてHBS-EP+を含む第3のスタートアップサイクルを他のセンサーグラムから差し引いて、二重参照データをもたらした。
【0523】
各サイクルの終わりに、10mM グリシンHCl pH1.5(Cytiva, cat. no. BR100354)を使用して表面を再生した。Biacore Insight Evaluationソフトウェア(Cytiva)を使用してセンサーグラムを作成し、4パラメータロジスティックフィットをエンドポイント測定値(捕捉後ベースラインに対して結合がプラトー)に適用した。最初の実験からのデータ(n=1;適格SPRアッセイ)を図15に示し;第2セットの実験のデータ(n=3)を図16に示す。
【0524】
(表22)個別のFcγRと結合させるための試験条件
【0525】
最初の実験からの結果は、IgG1-ctrlがすべてのFcγRと結合することを示したが、IgG1-PD1についてFcγRIa、FcγRIIa(H131およびR131)、FcγRIIb、およびFcγRIIIa(V158およびF158)(図15)との結合は観察されなかった。
【0526】
第2セットの実験からの結果により、IgG1-PD1に対するFcγRの結合の欠如が確認された(図16)。試験されたIgG4-ctrlおよびその他の抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブ、およびセミプリマブ;すべてIgG4サブクラス)は、FcγRIa、FcγRIIa-H131、FcγRIIa-R131、およびFcγRIIbとの明らかな結合、ならびにFcγRIIIa-F158およびFcγRIIIa-V158との最小限~非常に小さな結合を示した。
【0527】
これらのデータは、IgG1-PD1のFcドメインに対するFcγRの結合の欠如を確認しており、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブ、およびセミプリマブとのFcγRの結合を実証している。まとめると、これらのデータは、IgG1-PD1のFcドメインがFcγR媒介エフェクター機能(ADCC、ADCP)を誘導できないことを示唆している。
【0528】
実施例13:フローサイトメトリーによって決定された場合のIgG1-PD1の細胞表面発現FcγRIaとの結合
IgG1-PD1、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブ、およびセミプリマブとヒト細胞表面発現FcγRIaとの結合を、フローサイトメトリーを使用して分析した。
【0529】
一過性トランスフェクトされたCHO-S細胞上にFcγRIaを発現させ、FITC-コンジュゲート型抗FcγRI抗体(BioLegend, cat. no. 305006;1:25)を使用するフローサイトメトリーによって細胞表面発現を確認した。抗PD-1抗体とトランスフェクトされたCHO-S細胞との結合を実施例6記載のように評価した。簡潔には、IgG1-PD1、ニボルマブ(Bristol-Meyers Squibb, lot no. ABP6534)、ペムブロリズマブ(Merck Sharp & Dohme, lot no. U013442)、ドスタルリマブ(GlaxoSmithKline, lot. no. 1822049)、セミプリマブ(Regeneron, lot no. 1F006A)、IgG1-ctrl、およびIgG1-ctrl-FERRの抗体希釈物(終濃度:1.69×10-4~10μg/mL、3倍希釈)をGMB FACS緩衝液中に調製した。細胞を遠心分離し、上清を除去し、細胞(50μL中30,000個)を抗体希釈物50μLと共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をGMB FACS緩衝液で2回洗浄し、遮光して二次抗体(PE-コンジュゲート型ヤギ-抗ヒトIgG F(ab')2;1:500)50μLと共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をGMB FACS緩衝液で2回洗浄し、2mM EDTAおよびDAPI生存度マーカー(1:5,000)を補充したGMB FACS緩衝液中に再懸濁した。
【0530】
Intellicyt iQue PLUS Screener(Intellicyt Corporation)を用いるフローサイトメトリーによって、PE陽性、DAPI陰性細胞にゲート設定することによってFlowJoソフトウェアを使用して生存細胞との抗体結合を分析した。GraphPad Prismで非線形回帰分析を使用して結合曲線を分析した(4パラメータ用量反応曲線フィット)。
【0531】
フローサイトメトリー結合アッセイでは、陽性対照抗体IgG1-ctrl(野生型Fc領域を有する)は、FcγRIaを一過性発現している細胞との結合を示し、陰性対照抗体IgG1-ctrl-FERR(FER不活性変異および本研究に関連して機能的に無関係な追加的なK409R変異を含むFc領域を有する)に関して結合は観察されなかった(図17)。IgG1-PD1に関して結合は観察されなかったのに対し、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、およびドスタルリマブに関して濃度依存的結合が観察された。
【0532】
これらのデータは、IgG1-PD1のFcドメインに対するFcγRIa結合の欠如を確認しており、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ドスタルリマブ、およびセミプリマブとのFcγRIa結合を実証している。まとめると、これらのデータは、IgG1-PD1のFcドメインがFcγRIa媒介エフェクター機能を誘導できないことを示唆している。
【0533】
実施例14:IgG1-PD1による新生児型Fc受容体との結合
新生児型Fc受容体(FcRn)は、IgGを分解から守ることによってIgGの長い血漿半減期の原因となる。IgGは、酸性(pH6.0)エンドソーム環境でFcRnと結合するが、中性pH(pH7.4)でFcRnから解離する。抗体とFcRnとの、このpH依存性結合は、FcRnと一緒になった抗体のリサイクリングを引き起こし、細胞内抗体分解を阻止し、したがって、その抗体のインビボ薬物動態に関する指標である。IgG1-PD1と固定化FcRnとの結合を、pH6.0およびpH7.4で表面プラズモン共鳴(SPR)によってインビトロ評価した。
【0534】
Biacore 8K SPRシステムを使用してIgG1-PD1と固定化ヒトFcRnとの結合を分析した。アミンカップリングおよびHis捕捉キット(Cytiva, cat. no. BR100050およびcat. no. 29234602)を製造業者の説明書に従って使用して、Biacore Series S Sensor Chips CM5(Cytiva, cat. no. 29104988)に抗ヒスチジン(His)抗体を共有結合的にコーティングした。PBS-P+ 緩衝液、pH7.4(Cytiva, cat. no. 28995084)またはpHを6.0に調整した(塩酸[Sigma-Aldrich, cat. no. 07102]の添加による)PBS-P+緩衝液中5nMのコーティング濃度に希釈したFcRn(SinoBiological, cat. no. CT071-H27H-B)を抗Hisコーティングセンサーチップの表面に流速10μL/minおよび接触時間60秒で捕捉した。この結果として、約50RUの捕捉レベルがもたらされた。pH6.0またはpH7.4のPBS-P+緩衝液の3スタートアップサイクル後、試験抗体(IgG1-PD1、ペムブロリズマブ(MSD、lot. no. T019263)、またはニボルマブ(Bristol-Myers Squibb, lot. no. ABP6534)のpH6.0またはpH7.4 PBS-P+緩衝液中の6.25~100nMの2倍希釈系列)を注入して、結合曲線を作成した。捕捉されたFcRnを有する表面(活性表面)で分析された各試料を、バックグラウンド補正のために使用した、捕捉されたFcRn(参照表面)を有しない並行フローセルでも分析した。(モック)分析物としてHBS-EP+を含む第3のスタートアップサイクルを他のセンサーグラムから差し引いて、二重参照データをもたらした。各サイクルの終わりに、10mM グリシンHCl、pH1.5(Cytiva, cat. no. BR100354)を使用して表面を再生した。予め規定された「捕捉を使用するマルチサイクル速度論」評価法を使用して、Biacore Insight Evaluationソフトウェア(Cytiva)でデータを解析した。データは、技術的繰り返しを有する3つの別々の実験に基づく。
【0535】
pH6.0で、IgG1-PD1はFcRnと50nMの平均親和性(KD)で結合し(表23)、これは、野生型Fc領域を有するIgG1-ctrl抗体と同等である(文献では野生型IgG1分子に対して広範囲の親和性が報告されている;同じアッセイ設定の以前の自家実験では、IgG1-ctrlに対して12個のデータ点にわたり34nMの平均KDが測定された)。ペムブロリズマブおよびニボルマブの親和性は、約2倍低かった(それぞれ116nMおよび133nMのKD)。pH7.4でFcRn結合は観察されなかった(示さず)。まとめると、これらの結果は、IgG1-PD1 Fc領域におけるFER不活性変異が、FcRnの結合に影響しないことを実証し、IgG1-PD1がインビボで典型的なIgG薬物動態特性を保持することを示唆している。
【0536】
(表23)SPRによって決定した場合のFcRnに対する親和性
IgG1-PD1、ペムブロリズマブ、およびニボルマブと、ヒトFcRnがコーティングされたセンサーチップとの結合をSPRによって分析した。平均親和性およびSDは、技術的繰り返しを有する3つの独立した測定値に基づく。
略語:KD=平衡解離定数;ka=会合速度定数;kd=解離速度定数またはオフレート;SD=標準偏差。
【0537】
実施例15:標的結合の非存在下でのIgG1-PD1の薬物動態分析
IgG1-PD1の薬物動態特性をマウスにおいて分析した。PD-1は主として活性化BおよびT細胞に発現され、その場合その発現は、成熟BおよびT細胞を欠如する非腫瘍担持SCIDマウスでは限定的であると考えられる。さらに、IgG1-PD1は、マウスPD-1を一過性過剰発現している細胞と実質的に低減した交差反応性を示す(実施例6)。したがって、非腫瘍担持SCIDマウスにおけるIgG1-PD1の薬物動態(PK)特性は、標的結合の非存在下でIgG1-PD1のPK特性を反映すると予想される。本研究におけるマウスを、中央実験動物施設(Utrecht、the Netherlands)で飼育した。すべてのマウスを個別に換気されたケージの中で食物および水を自由に与えて飼った。すべての実験は、指令(2010/63/EU)から翻訳されたオランダ動物保護法(WoD)を遵守し、動物実験のためのオランダ中央委員会および地域の倫理委員会により承認された。SCIDマウス(C.B-17/IcrHan(登録商標)Hsd-Prkdcscid、Envigo)にマウス3匹/群を使用して1または10mg/kg IgG1-PD1を静脈内注射した。抗体投与後10分、4時間、1日、2日、8日、14日、および21日目に伏在静脈または頬の静脈から血液試料(40μL)を収集した。K2-エチレンジアミン四酢酸が入ったバイアル中に採血し、それを抗体濃度の決定まで-65℃で保存した。
【0538】
総ヒトIgG(hIgG)電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)によって、特異的hIgG濃度を決定した。Meso Scale Discovery(MSD)標準プレート(96ウェルMULTI-ARRAYプレート、cat. no. L15XA-3)に、PBS(Lonza, cat. no. BE17-156Q)中に希釈したマウス抗hIgG捕捉抗体(IgG2amm-1015-6A05)を2~8℃で16~24時間コーティングした。プレートをPBS-Tween(PBS-T;0.05%(w/v)Tween-20[Sigma, cat. no. P1379]を補充したPBS)で洗浄して未結合の抗体を除去した後、未占有の表面をRTで60±5分間ブロッキングし(3% (w/v) Blocker-A[MSD, cat. no. R93AA-1]を補充したPBS-T)、続いてPBS-Tで洗浄した。マウス血漿試料をアッセイ緩衝液(1% (w/v) Blocker-Aを補充したPBS-T)で最初に50倍希釈した(2%マウス血漿)。参照曲線を作成するために、IgG1-PD1(注射に使用した材料とおなじバッチ)をCalibrator Diluent(アッセイ緩衝液中2%のマウス血漿[K2EDTA、プール血漿、BIOIVT, cat. no. MSE00PLK2PNN])中に希釈した(測定範囲:0.156~20.0μg/mL;アンカー点:0.0781および40.0μg/mL)。試料中に存在する抗体濃度の予想される広い範囲に適応させるために、試料を追加的にSample Diluentで1:10または1:50希釈した(アッセイ緩衝液中2%のマウス血漿)。コーティングおよびブロッキングしたプレートを、希釈したマウス試料、参照曲線、および適切な品質管理試料(参照曲線の範囲をカバーするIgG1-PD1を加えたプールマウス血漿)50μLと共にRTで90±5分間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、プレートをSULFO-TAG-コンジュゲート型マウス抗hIgG検出抗体IgG2amm-1015-4A01と共にRTで90±5分間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、Read Buffer(MSD GOLD Read Buffer, cat. no. R92TG-2)を添加し、MSD Sector S600プレートリーダを使用して約620nmで発光を測定することによって固定化抗体を視覚化した。SoftMax Pro GxP Software v7.1を使用して分析データの処理を行った。定量実行下限(LLOQ)を下回るまたは定量上限(ULOQ)を上回る外挿は許されなかった。
【0539】
標的結合の非存在下でのIgG1-PD1の血漿クリアランスプロファイルは、ヒトにおけるIgG1クリアランスに基づく2区画モデルによって予測されるSCIDマウスにおける野生型ヒトIgG1抗体のクリアランスプロファイルと同等であった(Bleeker et al., 2001, Blood. 98(10):3136-42)(図18)。臨床所見は認められず、体重減少は観察されなかった。
【0540】
結論として、これらのデータは、IgG1-PD1のPK特性が標的結合の非存在下の正常ヒトIgG抗体のPK特性と同等であることを示している。
【0541】
実施例16:ヒトPD-1ノックインマウスにおけるIgG1-PD1の抗腫瘍活性
IgG1-PD1は、マウスPD-1を一過性過剰発現している細胞と限定的な結合しか示さない(実施例6)。したがって、IgG1-PD1のインビボ抗腫瘍活性を評価するために、マウスPD-1遺伝子座位にヒトPD-1細胞外ドメイン(ECD)を発現するように操作されたC57BL/6マウス(hPD-1ノックイン[KI]マウス)を使用した。
【0542】
すべての動物実験を、Crown Bioscience Inc.で行い、動物実験は、実施前にそれらの所内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認された。動物を、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)の規制によって規定されるgood animal practiceに従って飼育し、取り扱った。C57BL/6バックグラウンドで7~9週齢の雌性ホモ接合型ヒトPD-1ノックインマウス(hPD-1 KIマウス;Beijing Biocytogen Co., Ltd;C57BL/6-Pdcd1tm1(PDCD1)/Bcgen, stock no. 110003)の右下側腹部に、同系MC38結腸がん細胞(1×106個)を皮下(SC)注射した。ノギスを使用して腫瘍の増殖を評価し(無作為化後に週3回)、ノギスの測定値から腫瘍体積(mm3)を腫瘍体積=0.5×(長さ×幅2)として計算し、式中、長さは、腫瘍の最長寸法であり、幅は、その長さと垂直の腫瘍の最長寸法である。腫瘍が約60mm3の平均体積に達したとき(0日目として表される)に腫瘍体積および体重に基づきマウスを無作為化した(1群9匹)。処置の開始時に、マウスに0.5、2、もしくは10mg/kgのIgG1-PD1もしくはペムブロリズマブ(Crown Bioscience Inc.によりMerckから入手、lot no. T042260)、または10mg/kg アイソタイプ対照抗体IgG1-ctrl-FERRを静脈内注射(IV;投薬体積はPBS中10mL/kg)した。その後の用量を腹腔内(IP)投与した。週2回、3週間(2QW×3)の投薬レジメンを使用した。罹患および死亡について動物を毎日モニタリングし、他の臨床所見について日常的にモニタリングした。腫瘍体積が1,500mm3を超えた場合または動物が他の人道的エンドポイントに達した場合、個別のマウスについて実験を終了した。
【0543】
群間で無増悪生存率を比較するために、個別の腫瘍増殖グラフに曲線フィットを適用してマウス毎に500mm3の腫瘍体積を超えた進行日を確定した。これらの日数をKaplan-Meier生存曲線にプロットし、SPSSソフトウェアを使用して個別の曲線の間でMantel-Cox分析を行うために使用した。全群がまだ完全な状態であった最終日に(すなわち試験における最初の腫瘍関連死、すなわち11日目まで)ノンパラメトリックMann-Whitney分析(GraphPad Prism中)を使用して群間で腫瘍体積の差を比較した。中央値の差の95%信頼区間を含む中央値(群あたり)と共にP値を提示する(Hodges Lehmann)。
【0544】
マウスは病気の徴候を示さなかったが、2匹のマウスが死んでいるのが発見された(1匹は2mg/kg IgG1-PD1群、1匹が2mg/kg ペムブロリズマブ処置群)。これらの死亡原因は決定されなかった。
【0545】
IgG1-PD1およびペムブロリズマブによる処置は、試験したすべての用量で腫瘍増殖を阻害した(図19A)。11日目に、すべての処置群が完全であった最終日に、IgG1-PD1またはペムブロリズマブにより処置されたマウスにおける腫瘍は、試験したすべての用量で10mg/kg IgG1-ctrl-FERRにより処置されたマウスにおける腫瘍よりも有意に小さかった(図19B)。加えて10mg/kgで、IgG1-PD1により処置したマウスにおける腫瘍体積は、同等用量のペムブロリズマブにより処置したマウスよりも有意に小さかった(Mann-Whitney検定、p=0.0188)。
【0546】
IgG1-PD1またはペムブロリズマブによる処置は、10mg/kg IgG1-ctrl-FERRにより処置したマウスと比較して試験したすべての用量で無増悪生存期間(PFS)を有意に増大させた(図19C)。10mg/kgで、IgG1-PD1により処置したマウスにおける無増悪生存期間は、ペムブロリズマブにより処置したマウスと比較して有意に延長した(10mg/kg IgG1-PD1のPFS中央値:20.56日、10mg/kgペムブロリズマブのPFS中央値:13.94日;P値=0.0021)。
【0547】
結論としてIgG1-PD1は、MC38腫瘍担持hPD-1 KIマウスにおいて強力な抗腫瘍活性を示した。
【0548】
実施例17:同種MLRアッセイにおけるIL-2分泌に対するIgG1-PD1と組み合わせたGEN1046の効果
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてGEN1046とIgG1-PD1との組み合わせが、単剤活性を上回るサイトカイン産生の増強を結果としてもたらすことができるかを分析するために、ヒト成熟樹状細胞(mDC)およびCD8+ T細胞の2つの独特な同種ペアを、GEN1046単独、IgG1-PD1単独または両方の抗体の組み合わせの存在下で共培養した。インターロイキン(IL)-2特異的イムノアッセイを使用して共培養の上清中のIL-2の分泌を評価した。
【0549】
方法
健康ドナーからの単球およびT細胞
CD14+単球および精製CD8+ T細胞をBioIVTから得た。2つの独特な同種ドナーペアをMLRアッセイのために使用した。
【0550】
単球の未熟樹状細胞への分化
ヒトCD14+ 単球を健康なドナーから得た。未熟樹状細胞(iDC)に分化させるために、1~1.5×106個/mLの単球を、T25培養フラスコ(Falcon, cat. no. 353108)に入れた10% 熱失活ウシ胎仔血清(FBS;Gibco, cat. no. 16140071)、100ng/mL 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;BioLegend, cat. no. 766106)および300ng/mL インターロイキン-4(IL-4;BioLegend, cat. no. 766206)補充Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640完全培地(ATCC改変処方;ThermoFisher, cat. no. A1049101)中、37℃で6日間培養した。4日後に、培地を新鮮培地および補充物と交換した。
【0551】
iDCのmDCへの成熟
MLRアッセイの開始前に、非接着細胞を収集することによってiDCを回収し、10% FBS、100ng/mL GM-CSF、300ng/mL IL-4および5μg/mL リポ多糖(LPS;ThermoFisher, cat. no. 00-4976-93)を補充したRPMI1640完全培地中1~1.5×106個/mLで、37℃で24時間インキュベートすることによって成熟DC(mDC)に分化させた。
【0552】
混合リンパ球反応(MLR)
MLRアッセイの開始の1日前に、同種健康ドナーから得られた精製CD8+ T細胞を解凍し、10% FBSおよび10ng/mL IL-2(BioLegend, cat. no. 589106)を補充したRPMI1640完全培地中に1×106個/mLで再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。
【0553】
翌日、LPS-成熟樹状細胞(mDC、iDCの成熟参照)および同種精製CD8+ T細胞を回収し、AIM-V培地(ThermoFisher, cat. no. 12055091)中にそれぞれ4×105個/mLおよび4×106個/mLで再懸濁した。
【0554】
共培養物を、200,000個の同種精製CD8+ T細胞と共にインキュベートされた20,000個のmDCに対応する1:10のDC:T細胞比で播種し、96ウェル丸底プレート(Falcon, cat. no. 353227)に入れたAIM-V培地中、単剤としてのIgG1-PD1(1μg/mL)、研究グレードのペムブロリズマブ(1μg/mL, Seleckchem, cat. no. A2005(臨床製品ペムブロリズマブの非臨床/研究グレードバージョン)、単剤としてのGEN1046(0.001~30μg/mL)、または両方の作用物質の組み合わせの存在下、37℃で5日間培養した。bsIgG1-PD-L1xctrl(30μg/mL)、bsIgG1-ctrlx4-1BB(30μg/mL)、IgG4(Biolegend, cat. no. 403702)、IgG1-ctrl-FERR(100μg/mL)またはIgG1-ctrl-FEAL(30μg/mL)により処理した共培養物を対照として包含した。5日後、プレートを500×gで5分間遠心分離し、上清を各ウェルから新しい96ウェル丸底プレートに慎重に移した。
【0555】
Luminex FLEXMAP 3D機器を用いて、MLRアッセイから集めた上清を、Milliplex MAP-ヒトサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(Millipore Sigma, cat. no. HCYTOMAG-60K-08)の一部としてIL-2レベルについて分析した。
【0556】
(表24)
1抗HIV gp120抗体IgG1-b12に基づく対照結合部分(Barbas et al., 1993, J mol Biol 230: 812-823)
【0557】
結果
GEN1046、ペムブロリズマブまたはIgG1-PD1単独のいずれかによる処置は、非結合性対照抗体と比較してIL-2の分泌を高めた。GEN1046と1μg/mL IgG1-PD1との組み合わせは、GEN1046またはIgG1-PD1のいずれか単独と比較してIL-2の分泌をさらに強化した(図20)。単剤としてのGEN1046は濃度依存性応答を示し、IL-2のピーク誘導は0.1~1μg/mLであった。1μg/mL IgG1-PD-1または1μg/mL ペムブロリズマブによるIL-2産生の強化は、GEN1046の全濃度にわたり観察された。
【0558】
結論
これらの結果は、mDC/CD8+ T細胞MLRアッセイにおいて単剤の活性と比べて、GEN1046とIgG1-PD1とを組み合わせることによってIL-2分泌が強化されることを示している。
【0559】
実施例18:IgG1-PD1と組み合わせたGEN1046がT細胞増殖およびサイトカイン分泌を高める能力を決定するための抗原特異的刺激アッセイ
IgG1-PD1と組み合わせたGEN1046がT細胞増殖を高める能力を決定するために、PD1を過剰発現しているヒトCD8+ T細胞および同族抗原を発現している未熟樹状細胞(iDC)の共培養を使用する抗原特異的刺激アッセイを行った。共培養物の上清中のサイトカイン濃度を評価した。
【0560】
方法
細胞の単離および単球の未熟樹状細胞への分化
健康なドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)からHLA-A*02+末梢血単球細胞(PBMC)を得た。抗CD14 MicroBeads(Miltenyi;cat. no. 130-050-201)を製造業者の説明書に従って使用する磁気活性化細胞分取(MACS)技術によってPBMCから単球を単離した。末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)をCD8+ T細胞の単離のために凍結保存した。iDCへの分化のために、1×106個/mLの単球を、5% プールヒト血清(One Lambda Inc., cat. no. A25761)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH, cat. no. 11360-039)、1×可欠アミノ酸(Life Technologies GmbH, cat. no. 11140-035)、200ng/mL 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi, cat. no. 130-093-868)および200ng/mL インターロイキン-4(IL-4;Miltenyi, cat. no. 130-093-924)を含有するRPMI1640(Life Technologies GmbH, cat. no. 61870-010)中で5日間培養した。3日目に、培地の半分を、補充物を含有する新鮮培地と交換した。非接着細胞を収集することによってiDCを回収し、接着細胞を2mM EDTAを含有するダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)と共に37°で10分間インキュベートすることによって剥離させた。DPBSで洗浄後、将来的に抗原特異的T細胞アッセイに使用するために、10% DMSO(AppliChem GmbH, cat. no A3672,0050)を含有するFBS(Sigma-Aldrich, cat. no. F7524)中でiDCを凍結保存した。
【0561】
iDCおよびCD8 + T細胞のエレクトロポレーションならびにCFSE標識
抗原特異的CD8+ T細胞刺激アッセイ開始の1日前に、同じドナーからの凍結PBLおよびiDCを解凍した。抗CD8 MicroBeads(Miltenyi, cat. no. 130-045-201)を製造業者の説明書に従って使用して、MACS技術によりPBLからCD8+ T細胞を単離した。X-Vivo15培地(Lonza, cat. no. BE02-060Q)250μL中で約10×106~15×106個のCD8+T細胞に、ヒトクローディン-6(CLDN6;HLA-A*02拘束型;WO2015150327 A1に記載)に特異的なマウスTCRのアルファおよびベータ鎖をコードするインビトロ転写(IVT)-RNA 各10μgにヒトPD1をコードするIVT-RNA(UniProt Q15116)10μgを加えたものをエレクトロポレーションした。細胞を4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH, cat. no. 732-0023)に移し、BTX ECM(登録商標)830エレクトロポレーションシステム(BTX;500V、3msパルス)を使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、5% プールヒト血清を含有する新鮮IMDM GlutaMAX培地(Life Technologies GmbH, cat. no. 319800-030)に細胞を移し、37℃、5% CO2で少なくとも1時間休ませた。PBS中0.8μMのカルボキシフルオセインサクシニミジルエステル(CFSE;Life Technologies GmbH, cat. No V12883)を製造業者の説明書に従って使用してT細胞を標識し、5% ヒトAB血清を補充したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0562】
X-Vivo15培地 250μL中、上記のエレクトロポレーションシステム(300V、12msパルス)を使用して最大5×106個の解凍iDCに完全長ヒトCLDN6をコードするIVT-RNA(WO2015150327 A1)2μgをエレクトロポレーションし、5% プールヒト血清を補充したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0563】
翌日、細胞を回収した。iDC上のCLDN6の細胞表面発現のみならず、T細胞上のCLDN6特異的TCRおよびPD1の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって確認した。この目的で、iDCを蛍光標識CLDN6特異的抗体(市販されていない;自家生産)で染色した。ブリリアントバイオレット(BV)421-コンジュゲート型抗マウスTCR-β鎖抗体(Becton Dickinson GmbH、cat. no. 562839)およびアロフィコシアニン(APC)-コンジュゲート型抗ヒトPD1抗体(Thermo Fisher Scientific, cat. no. 17-2799-42)でT細胞を染色した。
【0564】
抗原特異的インビトロT細胞刺激アッセイ
エレクトロポレーションしたiDCを、エレクトロポレーションしたCFSE標識CD8+ T細胞と共に1:10の比で、96ウェル丸底プレートに入れた5% プールヒト血清を含有するIMDM培地中で、単独またはGEN1046(0.0022、0.0067、もしくは0.2μg/mL)と組み合わせたIgG1-PD1(0.8μg/mL)、臨床グレードペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標), Merck Sharp & Dohme GmbH, PZN 10749897)(0.8μg/mL)、または陰性対照抗体IgG1-ctrl-FERR(0.8μg/mL)の存在下でインキュベートした。培養4日後、細胞をAPC-コンジュゲート型抗ヒトCD8抗体で染色した。BD FACSCelesta(商標)フローサイトメータ(Becton Dickinson GmbH)を使用してCD8+ T細胞中のCFSE希釈のフローサイトメトリー分析によってT細胞の増殖を評価した。
【0565】
FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を使用してフローサイトメトリーのデータを解析した。FlowJo内の増殖モデリングツールを使用してCD8+ T細胞のCFSE標識希釈を評価し、組み込まれた式を使用して拡大増殖指数を計算した。
【0566】
サイトカイン濃度の決定
10種のヒトサイトカイン(GM CSF、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、インターフェロン[IFN]-γ、IFN-γ-誘導タンパク質[IP]-10[C-X-Cモチーフケモカインリガンド10としても知られる]、マクロファージ走化性タンパク質[MCP]-1、および腫瘍壊死因子[TNF]-α;Meso Scale Discovery, cat. No. K15067L-2)のパネルの検出のための特別注文U-Plexバイオマーカーグループ1(ヒト)アッセイを製造業者のプロトコルに従って使用するマルチプレックス電気化学発光イムノアッセイによって、4日後のT細胞/iDCの共培養物から収集された上清中のサイトカイン濃度を決定した。
【0567】
(表25)
【0568】
結果
GEN1046およびIgG1-PD1による併用処置は、IgG1-ctrl-FERRと組み合わせたGEN1046と比較して、および単剤処置としてのIgG1-PD1と比較してCD8+ T細胞の増殖を強化した(図21)。GEN1046単独と比較してIgG1-PD1との組み合わせたすべての濃度のGEN1046で増加した増殖が見られた。ペムブロリズマブおよびGEN1046による併用処置もまた、単剤としての両方の化合物と比較して増殖を高めた。
【0569】
GEN1046およびIgG1-PD1による併用処置は、IgG1-ctrl-FERRと組み合わせたGEN1046と比較して、および単一処置としてのIgG1-PD1と比較して、炎症性サイトカインGM-CSF、IFN-γ、およびIL-13の分泌を強化した(図22)。GEN1046単独と比較してIgG1-PD1と組み合わせたすべての濃度のGEN1046で増加したサイトカイン分泌が見られた。中(0.0067μg/mL)または低(0.0022μg/mL)濃度のGEN1046をIgG1-PD1と組み合わせた場合、GEN1046単剤活性の実質的な強化が検出された。IgG1-PD1単剤活性の強化は、漸増するGEN1046濃度と組み合わせた場合にますます顕著になった。ペムブロリズマブおよびGEN1046による併用処置はまた、単剤としての両方の化合物と比較してサイトカイン分泌を高めた。試験した他のサイトカインの分泌は、単剤処置と比較して組み合わせによって低い絶対濃度で検出された、一貫して強化されたわけではなかった、または強化されなかった。
【0570】
実施例19:mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせによる処置を受けたMC38マウス結腸がん腫瘍の増生における抗腫瘍活性
目的:C57BL/6マウスでのMC38結腸がんモデルにおける単独または抗mPD-1抗体と組み合わせたmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB抗体の抗腫瘍活性を検討すること
【0571】
方法
MC38マウス結腸がん細胞を、10% 熱失活ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地中、37℃、5% CO2で培養した。対数期増殖している細胞培養物からMC38細胞を回収し、定量化した。
【0572】
MC38細胞(PBS 100μL中、腫瘍細胞1×106個)を、雌性C57BL/6マウス(Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltd and Servicesから入手;実験開始時6~8週齢)の右下側腹部に皮下注射した。
【0573】
ノギスを使用して腫瘍の増殖を週3回評価した。ノギスの測定値から腫瘍体積(mm3)を([長さ]×[幅]2)/2として計算し、式中、長さは最長腫瘍径であり、幅は、その長さと垂直な最長腫瘍径である。
【0574】
腫瘍が平均体積60mm3に達したときに処置を開始した。処置前に、等しい平均腫瘍体積を有する群(n=10/群)にマウスを無作為化した。処置日(週2回、3週間[2QW×3])に、マウスに、表26に示す抗体を10μL/g体重の注射体積で腹腔内注射した。併用処置のために、抗体を20分間隔を空けて2回、別々に注射した(表26)。用量レベルは、MC38マウスモデルにおけるこれらの抗体による以前の経験に基づいた。
【0575】
病気の臨床徴候についてマウスを毎日モニタリングした。無作為化の後に体重測定を週3回行った。マウスは処置に対して最小の体重減少(<20%)を示し、むしろ体重の増加を示したので、抗体およびそれらの組み合わせは耐容性良好であった。腫瘍体積が1500mm3を超えた場合、または動物が人道的エンドポイントに達した場合(例えば、マウスが>20%の体重減少を示した場合、腫瘍が潰瘍形成[>75%]を示した場合、重篤な臨床徴候が観察された場合、および/または腫瘍の増殖がマウスの身体活動性を遮断した場合)、個別のマウスについて実験を終了した。
【0576】
抗体処置後に腫瘍の完全退縮を示したマウスに、処置開始の121日後にMC38腫瘍細胞を再投与した。マウスの元の腫瘍細胞接種の反対側の側腹部に1×106個の新鮮MC38腫瘍細胞を接種した。腫瘍増生の対照処置として、齢がマッチする未処置C57BL/6マウスの群(n=6)に、同じ細胞培養物からのMC38腫瘍細胞を接種した。
【0577】
(表26)処置群および投薬レジメン
a 最初にmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBを注射し、20分後に第2の抗体を注射した。
【0578】
結果
非結合性対照抗体mIgG2a-ctrl-AAKR(5mg/kg;図23A)により処置したMC38担持マウスにおいて急速な腫瘍増生が観察された。単剤としての抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg)またはmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg;図23A)により処置したマウスにおいて、遅延した腫瘍増生が観察され、腫瘍増生におけるより顕著な遅れがmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって誘導された。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)を抗mPD-1(10mg/kg;両方とも2QW×3)と組み合わせたものにより処置したマウスでは、各作用物質単独と比較して腫瘍増生がさらに遅延し(図23A)、処置開始後23日目に4/10匹のマウスに完全な腫瘍退縮が観察され(それぞれmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1単独について観察された1/10匹および0/10匹のマウスでの完全な腫瘍退縮と比較して;表28)、これは、組み合わせの相乗活性を示唆している。Kaplan-Meier分析は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせによる処置が、対照抗体処置群と比較した場合(p<0.001)およびいずれかの抗体単独と比較した場合(p<0.05;Mantel-Cox;図23B、表27)に、500mm3よりも小さな腫瘍体積を有するマウスのパーセントとして定義される無増悪生存率に有意な増加をもたらしたことを示した。したがって、単剤療法としての各作用物質によって示される活性と比べて優れた抗腫瘍有効性(p<0.05)として定義される治療相乗作用が、この組み合わせで観察された。
【0579】
例えば観察期間に腫瘍が完全に消失した(表28)完全腫瘍退縮を有するマウスにMC38腫瘍細胞を(再)投与した。MC38腫瘍細胞は、抗体による処置を開始後121日目にSC注射した。同時に、齢がマッチする腫瘍ナイーブマウス6匹の対照群にMC38腫瘍細胞をSC注射した。すべてのナイーブマウスでは、MC38腫瘍は腫瘍接種後24日目に1,500mm3まで増殖したが、一方で、再投与されたマウスからは再投与後35日間(最初のMC38腫瘍細胞接種後156日間)の全フォローアップ期間中に腫瘍増生は観察されず、これは免疫記憶の発生と矛盾しない(図24)。
【0580】
これらの結果は、GEN1046と抗PD-1抗体との組み合わせが、がん患者における抗腫瘍免疫応答をさらに増幅して、持続性で重大な臨床応答を生じ、かつ生存率を高めるということを評価するための理論的根拠を提供している。
【0581】
(表27)C57BL/6マウスでのMC38モデルにおけるmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1、またはそれらの組み合わせによって誘導される無増悪生存率のMantel-Cox分析
1腫瘍体積<500mm3を無増悪生存期間についてのカットオフとして使用した。69日目にMantel-Cox分析を行った。
2p値<0.05を有意と見なした。
【0582】
(表28)MC38腫瘍担持マウスの処置を受けた場合の完全な腫瘍退縮
【0583】
実施例20:mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBの抗mPD-1抗体との組み合わせにより処置したMC38腫瘍担持マウスの末梢血におけるサイトカイン分析
目的:単独のまたは抗mPD-1抗体と組み合わせたmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBにより処置したMC38腫瘍担持C57BL/6マウスの末梢血中のサイトカインレベルを検討すること。
【0584】
方法
実施例19に記載した実験では、MC38腫瘍担持C57BL/6マウスから血液試料を以下の時点に収集した:処置開始後-1日目(ベースライン;最初の用量による処置の1日前)、2日目(最初の用量の2日後)および5日目(第2の用量の2日後)。
【0585】
V-PLEX Proinflammatory Panel 1マウスキット(MSD LLC、cat. no. K15048D-2)およびV-PLEX サイトカインPanel 1マウスキット(MSD LLC、cat. no. K15245D-2)を使用し、MESO QuickPlex SQ 120機器(MSD、LLC. R31QQ-3)を製造業者の説明書に従って用いる電気化学発光(ECLIA)によって血漿試料からサイトカインを分析した。
【0586】
結果
単剤としてのmIgG2a-ctrl-AAKR(5mg/kg)または抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg)により処置したマウスでは-1日目と比較して2日目または5日目にIFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10のレベルに変化は観察されなかった、または小さな変化が観察された(図25)。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)により処置したマウスでは、IFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10の血漿レベルは2日目に増加し、5日目にさらに高まった。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)および抗mPD-1(10mg/kg)の組み合わせにより処置したマウスでは、2日目および/または5日目に各単剤と比べてIFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10のレベルにおける増加が強化された(図25)。5日目に、IFNγ、TNFαおよびIP-10のレベルは、mIgG2a-ctrl-AAKRおよび抗PD-1処置群の両方と比較して、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせにより処置したマウスにおいて>3倍高く、TNFαおよびIP-10のレベルは、mbsIgG2-PD-L1×4-1BB処置群と比較して>1.48倍高かった(表29)。
【0587】
これらの結果は、GEN1046と抗PD-1抗体との組み合わせが、がん患者における抗腫瘍免疫応答をさらに増幅するということを評価するための理論的根拠を提供している。
【0588】
(表29)単剤と比較したmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせに応答したサイトカインレベルにおける変化倍率
【0589】
実施例21:mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせは別個および相補的免疫調節効果を介してMC38マウス結腸がん腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫を強化する
目的:実施例19に記載するように、抗mPD-1と組み合わせたmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBは、C57BL/6マウスでのMC38結腸がんモデルにおいて持続性応答を有する強力な抗腫瘍活性を示した。したがって、このモデルを使用して、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせのインビボ作用機作をさらに研究した。MC38担持マウスをmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1またはそれらの組み合わせにより処置した。
【0590】
方法
MC38結腸がんモデル
2つの独立した試験からのMC38マウス結腸がん腫瘍を免疫組織化学およびフローサイトメトリー評価のために収集して、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の単剤療法および組み合わせのインビボ活性を特徴付けした。
【0591】
MC38腫瘍モデルを実施例19に記載したように樹立した。腫瘍が50~70mm3の腫瘍体積に達したときに、MC38皮下腫瘍を担持するマウスの処置を開始した。処置前にマウスを等しい平均腫瘍体積を有する群に無作為化した。処置日(週2回2週間[2QW×2])に、マウスに、表30に示す抗体を10μL/g体重の注射体積で腹腔内注射した。併用処置のために、抗体を20分間隔を空けて2回、別々に注射した(表30)。
【0592】
病気の臨床徴候についてマウスを毎日モニタリングした。無作為化後、体重測定を週3回行った。腫瘍の切除のために、処置開始後7または14日目にマウス(n=5匹/群)を安楽死させた。
【0593】
(表30)処置群および投薬レジメン
a mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBを最初に注射し、第2の抗体を20分後に注射した
【0594】
腫瘍組織の免疫組織化学およびインサイチューハイブリダイゼーション
腫瘍を切除し、ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片にした(4μm)。組織学的評価のために、組織切片を脱パラフィンし、Tissue-Tek Prisma Plus Automated Slide Stainer(Sakura)を使用してTissue-Tek Prisma H&E Stain Kit(Sakura [Torrance、CA], 6190)で染色した。腫瘍内のCD3+、CD4+およびCD8+細胞の評価のために、切片を脱パラフィンし、CC1緩衝液(Roche, 950-124)を使用して抗原を賦活化し、続いて内因性ペルオキシダーゼをクエンチし(Dako Agilent, S2003)、Roche Ventana Discovery(DISC)自動染色プラットフォームを使用してブロッキング緩衝液(Roche, 05268869001)により非特異的結合部位をブロッキングした。切片を一次抗体(表31に記載)と共にインキュベートし、抗ウサギ免疫組織化学検出キットを使用して検出した。キットは、CD3およびCD4について抗ウサギDISC、Omnimap(Roche、05269679001)だけを用い、CD8についてDISC抗ウサギHQ(Roche, 07017812001)およびDISCならびに抗HQ HRP Multimer(Roche, 06442544001)について増幅を順次用いた。3,3'-ジアミノベンジジン(ChromoMap DAB; Roche, 05266645001)を製造業者の説明書に従って使用してHRPを視覚化した。腫瘍内のPD-L1+細胞の評価のために、切片を脱パラフィンし、ER2緩衝液(Leica Biosystems, AR9640)を使用して抗原を賦活化し、続いて内因性ペルオキシダーゼ(Dako Agilent, S2003)をクエンチし、Leica Bond Rx自動染色プラットフォームを使用してブロッキング緩衝液(Leica Biosystems, DS9800)により非特異的結合部位をブロッキングした。切片を一次抗体(表31に記載)と共にインキュベートし、抗ウサギ免疫組織化学検出キット(Leica Biosystems, DS9800)を製造業者の説明書に従って使用して検出した。腫瘍内の4-1BB+およびPD-L2+細胞の評価のために、遺伝子特異的mRNA分子の検出のためにLeica Bond Rxで、対応するRNAscopeプローブ(それぞれACDBio, 493658および447788)およびRNAscope検出キット(ACDBio, 322150)を用いてRNAscopeアッセイを行った。すべてのアッセイにおいて、マイヤーヘマトキシリンとのインキュベーションによって核を対比染色した。連続する組織切片にアイソタイプ、陽性および陰性対照染色を組み入れることによって染色特異性を調節した。染色されたスライドを全スライドイメージング(Zeiss, Axioscan)に供し、全スライドイメージをHaloソフトウェア(Indica Labs, Albuquerque, NM)にアップロードし、事前プログラムしたソフトウェア解析ツールを使用してそれにより解析して、CD3+、CD4+、CD8+およびPD-L1+細胞を決定し(CytoNuclear v2.0.9)、4-1BB+およびPD-L2+細胞を決定した(ISH v4.1.3)。続いて、CD3+、CD4+、CD8+、およびPD-L1+細胞に関する定量データを、総細胞数に対するマーカー陽性細胞のパーセントとして表現した。4-1BB+およびPD-L2+細胞に関する定量データを、4つのRNAscope強度バケットを作成し、式:H-スコア=[(0×0個のドット/細胞を有する細胞の%)+(1×1~3個のドット/細胞を有する細胞の%)+(2×4~9個のドット/細胞を有する細胞の%)+(3×10~15個のドット/細胞を有する細胞の%)+(4×>15個のドット/細胞を有する細胞の%)]によりH-スコアを計算することによってRNAscope H-スコアとして表現した。
【0595】
(表31)免疫組織化学のために使用された抗体
【0596】
腫瘍組織のフローサイトメトリー
解離した腫瘍細胞を1μg/mL マウスBD Fc Block(商標)(Fcブロッキング緩衝液;BD, cat. no. 553141)により4℃、暗条件で10分間ブロッキングした。細胞表面マーカーの染色のために、Fcブロッキング緩衝液中に希釈した表32記載の蛍光標識抗体混合物(Ki67およびGzmBを除く)を細胞に添加し、遮光して4℃で30分間インキュベートした。細胞内染色のために(Ki67およびGzmB)、Fix/Perm希釈緩衝液(1:4;eBioscience, cat. no. 00-5223)で希釈したFix/Perm濃縮物(eBioscience, cat. no. 00-5123)200μLと共に遮光してRTで30分間インキュベートすることによって細胞を透過処理した。透過処理緩衝液(eBioscience, cat. no. 00-8333)中で2回洗浄後、細胞を、透過処理緩衝液で希釈したKi67およびGzmB抗体(表32)と共に遮光してRTで30分間インキュベートした。最終的に、細胞をFACS緩衝液(10% FBS[Gibco, cat、no. 10099-141]および40mM EDTA[Boston BioProducts, cat no. BM-711-K]を補充したPBS)250μL中に再懸濁し、BD LSRFortessa(商標)X20細胞分析機(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)で測定した。Kaluza Analysis Softwareを使用してデータを解析した。
【0597】
(表32)フローサイトメトリーのために使用した抗体
【0598】
結果および結論
処置開始後7日目および14日目に、免疫組織化学(IHC)およびインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)によってT細胞サブセットおよび標的発現について腫瘍組織切片を評価し(図26)、処置開始後7日目に切り離した腫瘍組織を、フローサイトメトリーによってKi67+増殖CD8+ T細胞およびGzmB+細胞傷害性腫瘍内CD8+ T細胞について評価した(図27)。
【0599】
単剤としてのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1による処置は、処置後7日目および14日目に腫瘍内のCD3+細胞のパーセントを高めた。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせは、14日目のCD3+細胞のパーセントをさらに増加させた(図26A)。7日目に処置群の間でCD4+細胞のパーセントの差は観察されなかった。対照的に、CD4+細胞のパーセントは、14日目にPBS処置群と比較して単剤としてのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1による処置によって増加し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせによってさらにいっそう高まった(図26B)。
【0600】
CD8+細胞のパーセントは、7日目および14日目の両方でPBS群と比較してmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって増加したが、抗mPD-1によっては増加しなかった。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせは、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB単独と比較して類似レベルのCD8+細胞を示したが、これは、CD8+細胞の増加がmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって推進されたことを示唆している(図26C)。
【0601】
7日目および/または14日目に、腫瘍内のPD-L1およびPD-L2の発現は、PBS処置マウスと比較して単剤としてのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1によって増加した。対照的に、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせは、このような増加を示さず、これは、腫瘍内のPD-L1およびPD-L2のレベルがPBS処置マウスにおけるレベルと同等であったからである(図26D~E)。最終的に、4-1BBの腫瘍発現は、7日目にmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって増加した。対照的に、4-1BBの発現は、14日目に単剤としての抗mPD-1およびmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との組み合わせによって減少した(図26F)。
【0602】
解離した腫瘍組織において、総腫瘍内CD8+ T細胞集団内のGzmB+のパーセントは、各単剤と比較してmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせによって有意に高まったことが見出されたが(図27A)、これは、増加したCD8 T細胞細胞傷害性を示唆している。同様に、総腫瘍浸潤CD8+ T細胞集団内のKi67+のパーセントは、各単剤単独と比較してmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせによって高まり、これは、増加したCD8 T細胞増殖を示唆している(図27B)。
【0603】
まとめると、これらの結果は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の組み合わせが、単剤としてのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBまたは抗mPD-1による処置と比較して、腫瘍免疫状況の別個の相補的なモジュレーションにつながることを示唆している。特に、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBの抗PD1との組み合わせ処置群における増殖CD8+ TILおよび細胞傷害性CD8+ TILのより大きな頻度は、TILの高まった機能的およびエフェクター機能を示し、これは改善した抗腫瘍活性と関連する可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
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図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
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図19A
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図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【国際調査報告】