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特表2024-536392画像複製コンバイナを使用したアイボックスの対象設定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像複製コンバイナを使用したアイボックスの対象設定
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240927BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520935
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077768
(87)【国際公開番号】W WO2023057543
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2114297.1
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2207876.0
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521309824
【氏名又は名称】ヴィヴィッドキュー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VividQ Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, アルフレッド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】サリバン, ダリアス マーティン
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA45
2H199CA49
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA96
2H199DA13
2H199DA18
2H199DA25
2H199DA26
(57)【要約】
画像複製コンバイナを使用して対象の光照射野を表示する方法が説明される。方法は、視聴位置に表示される対象の光照射野を決定することと、視聴位置と画像複製コンバイナの入力面に近い入力位置との間で、画像複製コンバイナを通る光の伝搬を記述する伝達関数を決定することと、決定された伝達関数を対象の光照射野に適用することによって入力光照射野を決定することと、入力位置に入力光照射野を表示することとを含む。対象の光照射野を表示するための表示システムも説明される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像複製コンバイナを使用して対象の光照射野を表示する方法であって、
視聴位置に表示される対象の光照射野を決定することと、
前記視聴位置と前記画像複製コンバイナの入力面に近い入力位置との間で、前記画像複製コンバイナを通る光の伝搬を記述する伝達関数を決定することと、
前記決定された伝達関数を前記対象の光照射野に適用することによって入力光照射野を決定することと、
前記入力位置に前記入力光照射野を表示することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記画像複製コンバイナの前記入力面に入射する光線の複数のコピーが、前記対象の光照射野に存在すると判断することと、
前記入力光照射野から前記光線を除外することと
を含む、いずれかの請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像複製コンバイナの前記入力面に入射する光線の複数のコピーが、前記対象の光照射野に存在すると判断することと、
前記光線の少なくとも2つのコピーが実質的に同等であると判断し、前記光線の前記少なくとも2つのコピーを前記入力光照射野に保持することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象の光照射野から前記画像複製コンバイナの入射瞳に逆伝搬された光線が、前記入力光照射野に存在しないと判断することと、
前記対象の光照射野から前記光線を除外することと
を含む、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記除外された光線を補償するために別の光線のパワーを増加させることを含む、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象の光照射野が、前記視聴位置における視聴者の瞳孔と少なくとも同程度に大きい、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の光照射野の面積が視聴者の瞳孔の面積に満たず、前記方法が、
ゼロ振幅の要素を用いて前記対象の光照射野を拡大して、その結果、前記拡大した対象の光照射野が、少なくとも前記瞳孔の前記サイズの面積を有すること
を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記対象の光照射野を決定することが、
離散フーリエ変換を使用して前記対象の光照射野を平面波のセットに分解することと、
ゼロ振幅の要素を含むパディングを前記対象の光照射野の境界に適用することと
を含む、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項9】
視聴者の瞳孔のポジションを決定すること
を含み、
前記視聴位置が、前記視聴者の瞳孔の前記決定されたポジションである、
いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の光照射野が、それぞれが、各々の視聴位置を有する複数の別々の光照射野を含み、前記方法が、
対象の光照射野を決定し、前記複数の別々の光照射野のそれぞれの入力光照射野を決定することと、
表示のために前記複数の別々の光照射野のそれぞれの前記入力光照射野を結合することと
を含む、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の光照射野及び前記入力光照射野が、ホログラフィックフィールドまたは4次元光照射野である、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象の光照射野がホログラフィック光照射野であり、
前記視聴位置が実質的に一定であり、
前記入力光照射野を決定することが、前記視聴位置と前記入力位置との間の前記伝搬に基づいた所定の定数を使用する、
請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記入力位置が、前記画像複製コンバイナの前記入力面に平行ではない表面である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記伝達関数を決定することが、前記入力光照射野の少なくとも2つの異なる複製から受け取られた光線が、前記対象の光照射野を形成するものであると判断することを含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つの異なる複製から受け取られた光線が、仮想オブジェクト上の単一の点で一致する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表示システムであって、
画像複製コンバイナと、
前記画像複製コンバイナに入力を提供するように配置された画像生成ユニットと、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を実行し、前記画像生成ユニットに前記入力光照射野を表示させるように構成された処理システムと
を備える、前記表示システム。
【請求項17】
前記視聴ポジションを示すデータを前記処理システムに提供するように配置された視線追跡システムを備える、請求項16に記載の表示システム。
【請求項18】
前記画像複製コンバイナが、すべての複製が、同じ入力電力に対して実質的に同じ出力電力を有するように構成される、請求項16または17に記載の表示システム。
【請求項19】
前記画像複製コンバイナへの前記入力が、前記画像複製コンバイナの前記入力面に平行ではない、請求項16~18のいずれかに記載の表示システム。
【請求項20】
前記画像複製コンバイナが、前記入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され、隣接する複製画像間のギャップが、視聴者の瞳孔の直径よりも大きくない、請求項16~19のいずれかに記載の表示システム。
【請求項21】
前記画像複製コンバイナが、前記入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され、前記複数の複製画像の結合位相体積が、対象の位相体積の大部分をカバーする、請求項16~20のいずれかに記載の表示システム。
【請求項22】
前記複製画像の前記位相体積が、前記対象の位相体積のごく一部分で重複する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記画像複製コンバイナの複製ピッチが、前記入力瞳孔の幅にほぼ等しい、請求項16~22のいずれかに記載の表示システム。
【請求項24】
前記画像複製コンバイナの複製ピッチが、前記視聴者の瞳孔の直径の半分よりも大きい、請求項16~23のいずれかに記載の表示システム。
【請求項25】
請求項16~24のいずれかに記載の表示システムを備える、ヘッドマウントディスプレイまたはヘッドアップディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像複製コンバイナによって対象の光照射野を生成及び表示するための方法及びシステムに関する。例は、コンピュータ生成ホログラフィ(CGH)に適用される。
【背景技術】
【0002】
連続した深度範囲を有する画像を示すことが可能な表示システムは、集合的に光照射野ディスプレイとして知られている。そのようなディスプレイは、CGH技術またはいわゆる4D光照射野技術のいずれかを広範に用い得る。両方の技術とも、通常、やや小さいアイボックスを備えたディスプレイを生じさせる。本明細書で使用する場合、「アイボックス」は、画像を見ることができる瞳孔の位置、つまり画像ソースから画像を見るために、視聴者の瞳孔を位置決めできる体積を定義する。画像を見るためには、視聴者の瞳孔は、瞳孔自体よりもそれほど大きくない場合があるアイボックス範囲内に位置していなければならない。これは、アイボックスを視聴者の瞳孔と位置合わせするという課題を提示している。
【0003】
いくつかの表示システムは、例えば、ヘッドマウントディスプレイ上で瞳孔間距離(IPD)を調整すること、または視聴者がヘッドアップディスプレイを見ることができるように、ヘッドアップディスプレイの位置を機械的に調整することなど、アイボックスを物理的に移動させ、アイボックスを視聴者の瞳孔と位置合わせするための機械的な調整を含む。他のディスプレイは、特定のユーザー向けの特注品であり、North(登録商標)によって市販されているFocals1.0は、カスタムフィッティング手順に従って、表示システムのアイボックスを視聴者の瞳孔に位置合わせするように設計されている。そのようなハードウェア方法は通常、拡張性がないか、またはアイボックスを瞳孔と正確に位置合わせするために、視聴者の側での多大な労力を必要とする。複数のユーザーが表示システムを使用することはまた、時間がかかる再調整を必要とするか、または単に不可能である。
【0004】
別の方式は、導波路コンバイナとしても知られる画像複製コンバイナを使用してアイボックスを拡大することである。これは、複数の空間的に分離された画像の複製を生成することによって、画像ソースによって提供されるアイボックスを拡大する。これにより、視聴者の瞳孔はより大きい領域に配置されても、依然として完全な画像を見ることができる。しかしながら、画像複製コンバイナは、焦点の拡散などの問題により画質の低下を被る。
【0005】
ディスプレイのアイボックスを視聴者の瞳孔と位置合わせする改善された方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、視聴位置に表示される対象の光照射野を決定することと、視聴位置と画像複製コンバイナの入力面に近い入力位置との間で、画像複製コンバイナを通る光の伝搬を記述する伝達関数を決定することと、決定された伝達関数を対象の光照射野に適用することによって入力光照射野を決定することと、入力位置に入力光照射野を表示することとを含む、画像複製コンバイナを使用して対象の光照射野を表示する方法が提供される。
【0007】
伝達関数は、任意の適切な方法で決定することができる。いくつかの例では、伝達関数は、画像複製コンバイナの特性、視聴位置、及び入力位置の知識に基づいた解析法及び/または数値法を使用して計算またはそれ以外の場合、決定され得る。他の例では、伝達関数は、入力位置、視聴位置、及び画像複製コンバイナの特性の所与の組み合わせについて、以前に決定された伝達関数を検索または使用することによって決定することができる。
【0008】
従来の画像複製コンバイナとは異なり、入力光照射野は、視聴ポジションの知識なしに複数の複製を生成するよりむしろ、視聴ポジションの知識をもって単一の対象の光照射野が生成されるように決定される。画像複製コンバイナの特性は、対象の光照射野が、画像複製コンバイナを通って異なる経路をたどった入力光照射野の要素から構成されることが可能にする。これにより、入力光照射野を変更することで対象の光照射野の位置を適所に調整することができる。他の複製は依然として、画像複製導波路によって形成されるが、見られないため、これらの他の複製が対象の光照射野を正確に反映しているかどうかは問題にならない。
【0009】
方法は、ハードウェアの調整またはカスタムフィッティングを必要とせずに、対象の光照射野を適所に調整することを可能にする(ただし、これらは、例えば、アイボックスを位置合わせするのではなく快適なフィット感を提供するために、または微調整を提供する方法による広範な調整を提供するために、依然として表示システムの一部として存在する場合がある)。
【0010】
光学システムを通る光の伝搬は、伝達関数によって決定され得る。伝達関数は、光学システムを通るコヒーレントな波面の伝搬を定義する光学伝達関数であってよい。代わりに、伝達関数は、それぞれ光学システムに入り、光学システムを出る入力4d光照射野と出力4d光照射野の光線間のマッピングの形を有し得る。
【0011】
光学システムを通して光照射野を伝搬した結果は、光学システムの伝達関数を光照射野に適用することによって計算され得る。したがって、用語「伝搬する」は、伝達関数を決定し、伝達関数を適用することと同義に使用される場合がある。
【0012】
伝搬は、「順方向伝搬」と呼ばれることもある入力位置と視聴位置との間である場合もあれば、視聴位置に向かう方向である場合もある。伝搬はまた、「逆伝搬(reverse propagating)」または「逆伝搬(back-propagating)」と呼ばれることもある視聴位置と入力位置との間である場合もあれば、視聴位置から遠ざかる方向である場合もある。これは、光線の伝搬の方向が可逆であるためである。伝搬は、フーリエ変換技術またはレイトレーシング技術によってなど、任意の適切な方法で実施することができる。
【0013】
方法は、画像複製コンバイナの入力面に入射する光線の複数のコピーが、対象の光照射野に存在すると判断することと、入力光照射野から光線を除外することとを含み得る。追加のコピーは、ノイズまたは画像アーチファクトとして視聴者によって知覚されるため、これにより画質を向上させることができる。
【0014】
複数のコピーを有するすべての光線を除外してよいわけではない。例えば、方法は、画像複製コンバイナの入力面に入射する光線の複数のコピーが、対象の光照射野に存在すると判断することと、光線の少なくとも2つのコピーが実質的に同等であると判断し、光線の少なくとも2つのコピーを入力光照射野に保持することとを含み得る。光線が実質的に同等である場合、画質に悪影響を与えずに、光線を保持することができる。実質的に同等な光線の例は、異なる経路によって移動したものの、実質的には同じ経路長を有する光線を含む。
【0015】
いくつかの例では、対象の光照射野に複数のコピーが存在する光線は、選択的に保持または除外され得る。例えば、実質的に同等であると判断される光線のコピーは保持され得、他は除外され得る。
【0016】
方法は、対象の光照射野から画像複製コンバイナの入射瞳に逆伝搬された光線が、入力光照射野に存在しないと判断することと、対象の光照射野から光線を除外することとを含み得る。また、これにより、画質を向上させることができる。
【0017】
光線が対象の光照射野または入力光照射野から除外されると、方法は、除外された光線を補償するために別の光線のパワーを増加させることを含み得る。これにより、単に光線を除外することと比較して、知覚される画質を向上させることができる。例えば、これは、より正確な明るさを維持するために役立つ可能性がある。
【0018】
対象の光照射野は、視聴位置における視聴者の瞳孔と少なくとも同程度に大きい場合がある。その場合、他の複製から迷光を受け取る可能性は減少し、画質を向上させる。
【0019】
対象の光照射野の面積が視聴者の瞳孔の面積に満たない場合、方法は次に、ゼロ振幅の要素を用いて対象の光照射野を拡大して、その結果、拡大した対象の光照射野が、少なくとも瞳孔のサイズの面積を有することを含み得る。ゼロ振幅の要素は、不確定な光線が視聴者の瞳孔に到達することを低減させるように作用し、画質を向上させる。
【0020】
対象の光照射野を決定することは、離散フーリエ変換を使用して対象の光照射野を平面波のセットに分解することと、ゼロ振幅の要素を含むパディングを対象の光照射野の境界に適用することとを含み得る。対象の光照射野の境界をパディングすると、伝搬中のタイル表示されたコピーからの潜在的にスプリアスなスピルオーバーが減少する。
【0021】
方法は、視聴者の瞳孔のポジションを決定することを含み得、視聴位置は、視聴者の瞳孔の決定されたポジションである。ポジションを決定することは、例えば、視線追跡システムを使用することによってなど、視聴中に動的に起こる場合もあれば、初期較正プロセスの一部である場合もあれば、視聴者の要求に応じて実行される場合もある。
【0022】
対象の光照射野は、それぞれが、各々の視聴位置を有する複数の別々の光照射野を含み得、方法は、対象の光照射野を決定し、複数の別々の光照射野のそれぞれの入力光照射野を決定することと、表示のために複数の別々の光照射野のそれぞれの入力光照射野を結合することとを含み得る。例えば、視聴者の瞳孔のそれぞれに配置された別々の光照射野がある場合があり、次にこれにより単一のディスプレイからの両眼の視聴が可能になる。入力光照射野を結合することは、加算によってなど、任意の適切な方法で行うことができる。
【0023】
入力位置は、画像複製コンバイナの入力面に平行ではない表面である場合がある。これは、射出瞳画像間のギャップを最小限に抑えることによって、目で見たときの画像の均一性を改善し得る。さらに、これは、隣接する射出瞳画像間の光路長を最小限に抑えることによって、目で見たときの画像の解像度を改善し得、その結果、画像生成ユニットの照明源が低いコヒーレンス長を有するとしても、射出瞳画像全体にわたってコヒーレンスが維持され得る。入力位置の表面は、所望の対象の光照射野に応じて平面的である場合もあれば、曲線状である場合もある。入力位置にある表面を画像複製コンバイナの入力面と非平行にできるいくつかの方法がある。これは、入力面に対して入力位置を傾斜させること、高さを調節すること(pitching)、及び/または歪ませること、ならびに入力面の平面内の軸に平行な軸の周りで入力位置の表面を回転させることの1つ以上を含む。
【0024】
入力位置が、入力面に平行ではない表面であるとき、方法は、入力光照射野に対して予歪を加えること、または伝達関数の一部として、非平行関係により導入される歪みを補償することを含み得る。例えば、予歪は、中心の出力複製が、視聴位置で見られるときに実質的に歪みなしで表示されるほどであってよい。
【0025】
上述の方法では、入力光照射野は、ホログラフィックフィールドまたは4次元光照射野であってよい。
【0026】
入力光照射野がホログラフィック光照射野であり、視聴ポジションが実質的に一定であるとき、入力光照射野を決定することは、視聴ポジションと入力位置との間の伝搬に基づいた所定の一定の伝達関数を使用し得る。視聴ポジションが一定の場合、対象の光照射野から入力光照射野への変換の一部は一定であり、計算負荷及び処理リソースを低減させることが判明している。
【0027】
伝達関数を決定することは、入力光照射野の少なくとも2つの異なる複製から受け取られる光線が、対象の光照射野を形成するものであると判断することを含み得る。例えば、対象の光照射野のある部分は、1つの複製からの光線から形成され得、対象の光照射野の別の部分は、別の複製からの光線から形成され得る。これにより、対象の光照射野は、2つ以上の複製に広がる領域を有することが可能になり、その結果、対象の光照射野は任意のポジションにあり得る。いくつかの例では、少なくとも2つの異なる複製からの光線は、仮想オブジェクト上の単一の点で一致する。いくつかの例では、少なくとも2つの異なる複製からの光線は、単一の仮想オブジェクト点で一致する。
【0028】
第2の態様によれば、画像複製コンバイナと、画像複製コンバイナに入力を提供するように配置された画像生成ユニットと、上述の第1の態様による方法を、同様に説明されたあらゆる任意選択の特徴を用いてまたは用いずに実行し、画像生成ユニットに入力光照射野を表示させるように構成された処理システムとを含む、表示システムが提供される。
【0029】
第3の態様によれば、入力面及び出力面を有する画像複製コンバイナと、入力面の近くに入力光照射野を提供するための表示ユニットと、処理システムとを含む、表示システムが提供される。処理システムは、視聴のための所望の光照射野を決定することと、視聴ポジションにある所望の光照射野と、入力面に近い入力ポジションとの間で画像複製コンバイナを通して伝搬することによって入力光照射野を決定することと、表示ユニットに入力光照射野を表示させることとを行うように配置される。第1の態様の方法の特徴のいずれも、この第3の態様に適用することができる。
【0030】
第2の態様または第3の態様のいずれかは、視聴ポジションを示すデータを処理システムに提供するように配置された視線追跡システムを含み得る。
【0031】
第2の態様または第3の態様のいずれかでは、画像複製コンバイナは、すべての複製が同じ入力電力に対して実質的に同じ出力電力を有するように調整される。これは、光線が画像複製コンバイナを通って対象の光照射野までたどった経路に関わりなく、光線の知覚された明るさが実質的に同じであり、画質を向上させることを意味する。別の言い方をすると、光線が画像複製コンバイナ内でどれほど多く跳ね返るのかに関わりなく、出力電力は実質的に同じである。
【0032】
第2の態様または第3の態様のいずれかでは、入力位置は、画像複製コンバイナの入力面に平行ではない表面であってよい。これにより、目で見たときの画像の均一性及び解像度は改善し得る。第2の態様または第3の態様のいずれかでは、表示システムは、画像生成ユニットと、画像複製コンバイナの入力面との間の光路に配置された光学システムを含み得る。光学システムは、画像生成ユニットから入力を受け取り、入力光照射野が入力面に平行にならないように、入力光照射野を入力面に提供するように配置され得る。光学システムは、回折格子及びプリズムの1つ以上を含み得る。
【0033】
いくつかの例では、画像複製コンバイナは、入力結合回折格子と、リダイレクション回折格子と、出力結合回折格子とを含む可能性がある。リダイレクション回折格子及び出力結合回折格子の結合効率は、入力結合回折格子によって結合される所与の光線の場合、出力結合回折格子で抽出される各光線が、実質的に等しい強度になるように構成される。
【0034】
画像複製コンバイナは、入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され得、隣接する複製画像間のギャップは、視聴者の瞳孔の直径よりも大きくない。「ギャップ」は、光線が実質的に存在しない複製間の空間を指す。例えば、光線が実質的に存在しない領域が複製間にあるように、複製は互いから離間され得る。これらのギャップを有することによって、(入力された光はすべての複製にわたって保存されるので)より大きい範囲が可能になり得、ギャップが視聴者の瞳孔のサイズよりも大きくないことを確実にすることによって、視聴者の瞳孔のすべてのポジションについて、光線が可視であることを確実にする。いくつかの例では、視聴者の瞳孔の直径は4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、または6mmであると想定され、したがって、直接的に隣接する複製間の空間は4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、または6mm以下であってよい。
【0035】
画像複製コンバイナは、入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され得、複数の複製画像の結合位相体積は、対象の位相体積の大部分をカバーする。いくつかの例では、複製画像の位相体積は、対象の位相体積のごく一部分で重複する。
【0036】
画像複製コンバイナの複製ピッチは、視聴者の瞳孔の直径の半分よりも大きい場合がある。上述のように、視聴者の瞳孔の直径は、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、または6mmであると想定され得るため、複製ピッチは、2mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、または3mmより大きい場合がある。代わりにまたはさらに、画像複製コンバイナの複製ピッチは、入力瞳孔の幅にほぼ等しい場合がある。
【0037】
表示システムは、画像が視聴者の瞳孔と位置合わせされる必要がある任意のディスプレイの一部を形成し得る。例は、拡張現実ヘッドセットまたは仮想現実ヘッドセットなどのヘッドマウントディスプレイ、または自動車用ヘッドアップディスプレイなどのヘッドアップディスプレイを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】2d光照射野の位相体積の概略表示である。
図2A】2d光照射野の位相体積のさらなる概略表示である。
図2B】2d光照射野のなおさらなる位相体積の概略表示である。
図3】従来の画像複製コンバイナの動作の概略図である。
図4】従来の画像複製コンバイナの動作の代替の概略図である。
図5】表示のための例示的なシーンを示す。
図6】画像複製コンバイナを含む従来の表示システムを通して表示される例示的なシーンを示す。
図7A】本開示による例示的な画像複製コンバイナによって生成される第1の複製の概略図である。
図7B】本開示による例示的な画像複製コンバイナによって生成される第2の複製の概略図である。
図7C】本開示による例示的な画像複製コンバイナによって生成される第3の複製の概略図である。
図7D図7A図7Cに示される3つの複製を含む、本開示による例示的な画像複製コンバイナによって生成される画像の概略図である。
図8】本開示による例示的な画像複製コンバイナによって生成される画像の概略図である
図9】本開示による例示的な画像複製コンバイナの別の例によって生成されるホログラフィック画像の概略図である。
図10A】一実施形態による入力光照射野を計算する方法を示す。
図10B】一実施形態による入力光照射野を計算する別の方法を示す。
図11】入力光照射野を対象の光照射野に変換する例示的な画像複製コンバイナの概略図を示す。
図12】画像複製コンバイナを通る光線の伝搬の概略図である。
図13A図10Aまたは図10Bの方法を使用した高品質画像表示の第1の条件を満たさない第1の光線を示す。
図13B図10Aまたは図10Bの方法を使用した高品質画像表示の第2の条件を満たさない第2の光線を示す。
図13C図10Aまたは図10Bの方法を使用した高品質画像表示に必要とされる第3の条件を満たさない第3の光線を示す。
図14A】画像複製コンバイナによって生成された複製の幾何学形状を示す例示的な表示システムの概略図を示す。
図14B】画像複製コンバイナによって生成された複製の幾何学形状を示す例示的な表示システムのさらなる概略図を示す。
図14C】画像複製コンバイナによって生成された複製の幾何学形状を示す例示的な表示システムのなおさらなる概略図を示す。
図14D】画像複製コンバイナによって生成された複製の幾何学形状を示す例示的な表示システムのなおさらなる概略図を示す。
図15】入力光線及び出力光線の同じ対形成が、コンバイナを通る複数の経路を介して達成され得るという特性を備えた、画像複製コンバイナ内の光線が横断可能な例示的な経路の表示を示す。
図16】例示的な画像複製コンバイナによって生成される2つの対象の光照射野の概略図である。
図17】入力光照射野を2つの対象の光照射野に変換する例示的な画像複製コンバイナを示す。
図18図17の画像複製コンバイナによって生成される複製の一例を示す。
図19】一実施形態による表示システムの概略図である。
図20】画像生成ユニットが、画像複製コンバイナに対して傾斜している撮像システムの例示的な概略図を示す。
図21】本明細書に記載の技術を使用せずに表示された例示的な画像を示す。
図22】本明細書に記載の技術を使用して表示された例示的な画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
画像複製コンバイナは、視聴者のために画像の可視領域のサイズを拡大する。画像複製コンバイナは、入力画像に対応する光線を受け取るために、入力カプラまたは入射瞳としても知られる入力面を含む。入射瞳という概念は、画像複製コンバイナの入力における制限開口に相当する。入力面は、外部から伝搬する光波を画像複製コンバイナの内部に結合する結合機構である。結合機構は、例えば、ミラーのアレイ、プリズムのアレイ、回折光子、またはホログラムであってよい。さらなる可能性のある結合機構は、埋め込みミラー、マイクロプリズム、表面レリーフ傾斜格子、表面レリーフブレーズド回折格子、表面レリーフバイナリ格子、マルチレベル表面レリーフ格子、薄い体積ホログラム、薄いフォトポリマーホログラム、分散型ホログラフィックポリマー液晶(H-PDLC)体積ホログラフィックカプラ、厚いフォトポリマーホログラム、共振導波路回折格子、メタサーフェスカプラ、及び埋め込みハーフトーンミラーを含む。画像複製コンバイナは、入力画像に対応する光を出力するために、出力カプラとも呼ばれる出力面をさらに含む。出力面は、入力面と同じ技術を使用し得るさらなる結合機構である。画像複製コンバイナは、広範囲の内部入射角にわたって全内部反射をサポートする高屈折率を有する材料から製造され得る。例えば、Schott(商標)製のN-LASF46などのランタン高密度フリントガラスは、波長λ=530nmでθ=31°の臨界角を有する。画像複製コンバイナは、臨界角を超えるすべての内角で全内部反射によって波を伝搬する。
【0040】
一例では、画像複製コンバイナは、実質的に平面シートの形をとる。平面シートは、ガラスなどの透明な材料から構築され得る。この場合、入力面及び出力面の1つの配置は、光が平面シートの同じ側に出入りするように、平面シートの同じ側に入力面及び出力面を配置することである。別の配置では、入力面及び出力面は、平面シートの両側に配置され得る。特定の配置は、画像複製コンバイナの機能に基づいて選択されてよい。他の例では、コンバイナは非平面シートの形をとる。そのようなコンバイナは、例えば眼鏡の一対のレンズとして使用される場合がある。非平面コンバイナでは、上述のように、コンバイナの入力面及び出力面は、コンバイナの機能に応じてシートの同じ側または反対側にある場合がある。
【0041】
画像複製コンバイナの特徴は、内部光線が反射光線及び透過光線に繰り返し分割されることである。したがって、出力光線アンサンブルのエタンデュは、入力アンサンブルのエタンデュよりも大きい。位相空間の観点では、考えられる出力光線のポジション及び角度の位相体積は、考えられる入力光線のポジション及び運動量の位相体積よりも大きい。発明者は、所望の光照射野の位相体積が、入力光照射野よりも大きくないならば、画像複製コンバイナを通した伝搬後に、所望の光照射野を生成することが可能であることを発見した。
【0042】
一例では、これは、典型的な平面的な画像複製コンバイナを通る伝搬後の出力光照射野の最大有効アイボックス及び視野(またはより具体的には、位相体積)が、それぞれ、瞳孔及び入力光照射野の視野(または具体的には位相体積)よりも大きくないことを意味する。用語「有効なアイボックス」は、ここで、実質的にノイズ及び/またはアーチファクトがないアイボックスを指す。これは、明確にするために、2D光照射野の異なる位相体積の概略表示100である図1で表される。図1が、単一の空間次元及び角度次元を有する2D光照射野を示しているが、概念が、2つの空間次元及び2つの角度次元を有する4D光照射野などのさらなる次元にどのように拡張するのかを容易に確かめることができることに留意されたい。図1は、4D光照射野の2D断面と見なし得る。
【0043】
通常、位相空間は4次元であり、2つの空間次元及び2つの角度次元を含む。位相空間表現は、所与の平面を通る各光線に(光線が平面と交差する点を表す)空間座標、及び(光線が平面に対して進んでいる方向を表す)角座標でラベルを付ける。光照射野は、この位相空間内の各点の強度を説明する。入力光照射野は、位相空間内のなんらかの体積102(「位相体積」)に広がり、出力光照射野は、複製プロセスのため、入力よりも大きい位相体積104に広がる。「複製現象」により、第2の体積104は、第1の体積102と比較して光線位置(空間)軸に沿って細長く見える。本発明者は、位相空間106内でのその体積が第1の体積102よりも大きくなく、第2の体積104内のどこでも対象に設定できる対象の光照射野を生成できることを発見した。
【0044】
図2Aは、画像複製コンバイナの入力面に入射する光照射野202の位相空間、及び出力面(すなわち、出力アイボックス)を出た結果として生じた光照射野204の位相空間の概略図を提供する。図1と同様に、明確にするために、位相体積は、2D空間(x、θ)で示される。
【0045】
図2Aに示される画像複製コンバイナの働きは、x次元で空間的に分離された入力光照射野の複数のコピーを生成することである。さらに、入力光照射野の複製は、出力アイボックスの平面からz方向に偏位される。さらに、異なる複製は、互いに対してz方向に偏位される。基本的な画像複製コンバイナのこの説明は、図3に図示される。
【0046】
位相空間表現では、zでの偏位は、(x、θ)平面でのせん断に相当するため、図2Aの出力で複製された光照射野は、このようにせん断されていることが分かる。複製はまた、z方向で互いから偏位されているため、せん断の程度は、複製ごとにわずかに異なることが示される。個々の出力複製の位相体積のサイズは、入力光照射野の位相体積のサイズに等しい。画像複製コンバイナは、複製された画像間の重複及びギャップを最小限に抑えるために選ばれた複製ピッチを有し得る。
【0047】
図2Bは、複製コンバイナ入力面に入射する予歪を受けた入力光照射野206の位相空間の概略図を提供する。予歪を受けた入力光照射野206は、本開示の方法に従って計算され得る。特に、予歪は、中心の出力複製が、出力アイボックス208の位相体積のサブセットで正確に表示されるように選ばれ得る。入力光照射野は、出力アイボックス内の選ばれた位置にある対象の光照射野に伝達関数を適用することによって生成され得る。
【0048】
入力光照射野206は、1つのポジションで良質の画像を生成し、他のポジションでは良質の画像を生成しないように計算される。画像複製コンバイナのアイボックスは、カスタムフィッティング手順または機械的調整を必要とせずに高品質の画像を提供するために、視聴者の瞳孔と位置合わせすることができる。
【0049】
図1図2A、及び図2Bを参照する上記説明は、簡略にするために、2D位相体積に対する1D複製導波路の変換を説明する。ただし、概念を2D複製導波路、及び4D位相体積に直接移行できることを理解されたい。さらに、4D位相体積の概念は、光線方向及び光線ポジションの概念を、局所化された領域内の空間周波数の範囲の概念に置き換えることによって(例えば、各光線を、光線と同じ指向方向及びポジションを有するガウスビームに置き換え、このガウスビームのセットで定義される基底でホログラムを拡大することによって)ホログラム画像及び4D光照射野に適用することができる。
【0050】
図3は、従来の動作及び制限の理解を助けるための画像複製コンバイナ304を備えた従来の表示システム300の概略図である。表示システムは、入力光照射野310を生成するように構成された画像生成ユニット302と、入力面306及び出力面308を含む画像複製コンバイナ304とを含む。入力光照射野310の複数の複製は、出力面308で生成される。画像生成ユニットは、好ましくは、画像生成ユニット302の射出瞳が入力面306と一致するように配置される。図3では、3つの複製312、314、316が示されており、それぞれが、画像複製コンバイナ304内で異なる回数の内部反射を受けた光に相当する。
【0051】
図3から観察できるように、入力光照射野310に相当する光は、(定義によって)画像生成ユニット302の射出瞳に収束する。複製された入力瞳孔が、複製された光照射野312、314、316のそれぞれの一部を形成することが分かる。光は、射出瞳を越えて、画像複製コンバイナの入力面を通って移動するにつれ、分岐する。この結果、複製312、314、316のそれぞれは、画像複製コンバイナ304の出力面308での抽出時に分岐する。したがって、複製314と位置合わせされた視聴者の目324の瞳孔はまた、隣接する複製312及び316からの光線も受け取る。図3からさらに観察できるように、複製312、314、316のそれぞれは、画像複製コンバイナ304に沿った異なる水平ポジションに位置しており、結果的に、視聴者は、入力光照射野310の複数のコピーを観察する。複製312、314、316のそれぞれは、同じ入力光照射野を図に対して水平に平行移動させて表している。画像生成ユニット302によって表示される画像が、有限深さで仮想オブジェクトを含むとき、視差のために結果として生じる複製に顕著な効果が観察され得、視聴者は、異なる知覚可能なポジションで仮想オブジェクトの(この例では)3つのコピーを知覚するであろう。これは、画像複製コンバイナ304に入射するすべての光線が無限遠の共通点から発するように見える遠視野画像と対照的である。したがって、連続する複製間の水平距離は、画像内のオブジェクトの知覚可能なポジションにほとんど影響を与えない。視差のため、各複製における有限深さでの仮想オブジェクトのポジションの違いは、オブジェクトがそれぞれの瞳孔のより近くに移動するにつれて、より顕著になる。すなわち、知覚可能な効果は、瞳孔からの仮想オブジェクトの距離の関数である。
【0052】
さらに、各複製312、314、316は、抽出前に異なる回数の内部反射を受ける光、したがって異なる光路長から生じるため、各複製は、異なる焦点深度を有するとして知覚される。言い換えれば、複製312、314、316は、異なる深度に現れるため、異なる見かけサイズを有する。したがって、視聴者は、光照射野310内の仮想オブジェクトの3つのコピーをわずかに異なる深度/サイズで見て、結果的に、満足のいかない視聴経験が生じる。これは「焦点の拡散」として知られている。
【0053】
例えば、CGH画像など、画像内に深度情報を含めるためには、(画像内の仮想オブジェクトに対応する)画像の領域は、視聴者の近くに表示される必要がある場合がある。いくつかの例では、画像の領域を、視聴者から100mmの近さまで表示する必要がある場合がある。上述のように、表示システム300は、満足のいく画像を生成するには十分ではない。(異なる見かけサイズ及び知覚されるポジションの複製画像からなどの)満足のいかない画質は、無限遠以外のすべての深度で当てはまるが、視聴者からの画像領域の見かけの距離が近いほどより大きい影響を与えることを理解されたい。したがって、50mm~300mmの範囲、さらには1mまたは2mの表示深度での画質も、満足のいかない画質から悪影響を受ける可能性がある。
【0054】
図4は、入力光照射野内の仮想オブジェクト上の単一の点からの光線に何が起こるのかに焦点を当てるのかによって、画像複製コンバイナを通して有限深さで画像を表示しようと素朴に試みることで、どのように不必要な二重画像が生じるのかを示している。表示システム400は、図3に示される表示システム300と同じであり、対応する部分の参照番号は、「3」ではなく「4」で始まる。画像生成ユニット402は、好ましくは、画像生成ユニット402の射出瞳が入力面406と一致するように配置される。入力光照射野410内の仮想オブジェクト点430からの(斜めの斜線領域によって示される)光線の円錐が、画像生成ユニット402の射出瞳を満たすように示されている。これは、従来の表示システムがどのように動作するのかと一致している。
【0055】
画像複製コンバイナは、複製412、414、416を生成する。各複製は、画像生成ユニット402の射出瞳における光照射野の複製に相当する。一次元瞳孔拡大を実行する表示システム400が示されている。二次元瞳孔拡大を実行する画像複製コンバイナは、複製された入力瞳孔及び光照射野の2Dグリッドを生成する。
【0056】
水平斜線領域によって示されるように、複製された光照射野からの光線のサブセットだけが、アイボックス426を通って目の瞳孔424に到達する。目の瞳孔424に達する光線は、異なる複製416及び414から発しており、仮想オブジェクト点430に対応する2つの別々の複製点436及び434から分岐するように見える。したがって、2つの別々の画像(つまり「ゴースト」)は、1つの単一の画像の代わりに知覚される。目の瞳孔によって同時に見ることができる複製の数に対して本質的な制限はないため、ゴースト画像の数は、2つ以上である可能性がある。複製された画像/光照射野の斜めの斜線領域が、複製された瞳孔で切り取られて示されていることに留意されたい。それらの光線が、コンバイナ出力面408から伝搬することは言うまでもないが、それらの光線は目の瞳孔424に到達しない。例えば、仮想オブジェクト点430に対応する複製された点432から伝搬する光線は、目の瞳孔424に到達しない。
【0057】
二次元的に複製されたシステムでは、4つ以上のゴースト画像が観察される場合がある。多くの画像複製コンバイナでは、目の瞳孔から見ると、複製された光照射野と瞳孔はかなり重複している。この状況では、より多くのゴースト画像が観察される場合がある。
【0058】
図4は、仮想オブジェクト上の単一の点から発する光線の状況を示す。他のオブジェクト点は、異なって挙動する異なる光線の円錐を生成する。具体的には、複製された光線の異なるサブセットが目の瞳孔に到達する。
【0059】
図5は、異なる深度でのオブジェクトを含む例示的なシーン500を示す。図6は、図3及び図4に示される従来の表示システムを備えた画像複製コンバイナを通して見られるときに、このシーンがどのように見えるのかを示す。
【0060】
シーン500の惑星502は、無限深さでのオブジェクトである。このオブジェクト上の任意の点から発する光線が平行にされる。したがって、オブジェクトは、画像複製コンバイナを通して見られるときに正確に表示されると期待される。シーン500の宇宙飛行士504は、有限深さを有するオブジェクトである。このオブジェクト上の任意の点から発する光線は、平行にされていない。
【0061】
ホログラフィック画像生成ユニットは、異なる深度にオブジェクトがあるこのようなシーンを表示できるシステムの一例である。人間の目で直接的に見られるとき、表示されるシーンは正確であり、目は、異なるオブジェクトを見るためには異なって適応しなければならない。
【0062】
しかしながら、直接視聴では正確に見えるシーン500は、画像複製コンバイナを通して見られると不正確に見える。これは、図6に示される。シーン600では、惑星602は無限深さに置かれているため、惑星602は正確に見える。宇宙飛行士604は有限深さに置かれているため、複数のゴースト画像として現れる。これは、本明細書に説明される例示的な技術が対処する焦点の拡散の問題である。
【0063】
画像複製コンバイナは、CGH画像のアイボックスを拡大するために不十分な選択であるように見えるであろう。しかしながら、発明者は、入力光照射野を制御することによって、対象に設定される光照射野を視聴者の瞳孔に位置決めし、上記問題の1つ以上に対処できることを発見した。
【0064】
図7A図7Dは、画像生成ユニット702からの入力光照射野が、画像複製コンバイナ704を通して、ゴースト画像または焦点の拡散なしに、有限深さで画像内の単一の点を表示するようにどのように構成され得るのかを示す例示的な表示システム700を示す。
【0065】
図7A図7Cは、画像生成ユニット702によって生成された光照射野の個々の複製を示す。画像生成ユニット702は、この例では、2つの光線の円錐が、2つの点730から分岐するように見える光照射野を生成する。どちらの光線の円錐も、好ましくは、画像複製コンバイナ704の入力面706と一致するように配置され得る、画像生成ユニット702の射出瞳を満たしていない。画像生成ユニット702は、仮想オブジェクトの点源の位置だけではなく、それらの点光源から発する光線の方向も制御する能力を有さなければならない。ホログラフィックディスプレイ及び4D光照射野ディスプレイは、このタイプの制御を提供する。
【0066】
図7Aは、入力光照射野710の第1の複製716を示す。仮想オブジェクト点736から分岐し、斜めの斜線領域によって表される光線の円錐だけが、有効なアイボックス726及び目の瞳孔724に到達する。第2の点仮想オブジェクト点737から分岐し、水平斜線領域によって表される第2の光線の円錐からの点線は、光線が有効なアイボックス726及び目の瞳孔724をどのように見逃しているのかを示すために示されている。
【0067】
図7Bは、入力光照射野の第2の複製714を示す。この場合、仮想オブジェクト点735から分岐し、水平斜線領域によって表される光線の円錐だけが、有効なアイボックス726及び目の瞳孔724に到達する。第2の点仮想オブジェクト点734から分岐し、斜めの斜線領域によって表される第2の光線の円錐からの点線は、光線が有効なアイボックス726及び目の瞳孔724をどのように見逃しているのかを示すために示されている。
【0068】
図7Cは、入力光照射野の第3の複製712を示す。この場合、仮想オブジェクト点733、732から分岐するいずれの円錐からの光線も、有効なアイボックス726及び目の瞳孔724に到達しない。
【0069】
図7Dは、図7A図7Cに示される3つすべての複製の複合効果を示す。2つの点730のポジションのおかげで、図7Aの仮想オブジェクト点736及び図7Bの735は一致していることが分かる。したがって、有効なアイボックス726及び目の瞳孔724に到達するすべての光線は、仮想オブジェクト上の単一の点から分散しているように見える。これは、仮想画像内の単一の点が、ゴースト画像または焦点の拡散なしにどのように表示され得るのかを示す。単一の仮想オブジェクト点から分岐するように見える光線は、複数の複製(この例では、図7A及び図7Bに示される2つの複製)からの光線を含む。
【0070】
あらゆる仮想オブジェクト点は、その点が正確に表示されるには異なる円錐のセットを必要とする。任意の仮想オブジェクトを含むシーンのために正確な光照射野を決定するためのプロセスが、本明細書に説明される。
【0071】
示されている画像複製コンバイナ704が、意図された画像の再構築を可能にするために複製を適切に配置していることに留意されたい。つまり、(i)複製された画像の瞳孔は、大きく重複しないが、(ii)その全範囲間に大きなギャップを有していない。大きな重複またはギャップは、目の瞳孔の直径に匹敵するであろう。例えば、複製された画像の瞳孔は、重複する場合もあれば、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、または0.5mm未満のギャップによって分離される場合もある。一般に、(i)無限遠に仮想オブジェクトを表示するために第1の特性は必要とされないため、画像複製コンバイナは第1の特性を有していない。
【0072】
図8は、上述のゴーストまたは焦点の拡散の問題に対処する例示的な配置800の概略図である。そのような配置800により、図7Dに示されるシステム700を複製することが可能である。配置800は、コンバイナ802の入射瞳804における光照射野が、コンバイナ802の有効なアイボックス806における対象の光照射野に変換されている画像複製コンバイナ802を含む。有効なアイボックスは、アドレス指定可能なアイボックス808の体積内のどこにでも位置決めすることができ、瞳孔の位置決めの自由度を高めることを可能にする。
【0073】
入力光照射野は、関連する画像内の深度情報が、コヒーレント光源の位相及び/または振幅の変調によって表現されるホログラフィック光照射野であってよい。代わりに、入力光照射野は、x、y、θ、φ空間の光線の強度を表す4D光照射野であってよい。
【0074】
この例では、コンバイナ802の有効なアイボックス806は、コンバイナ802のいずれの部分も含まない所定の体積808内に位置する。対象の光照射野の中心は、コンバイナ802の入射瞳804における入力光照射野の中心から距離|s|に位置し、sは、三次元変位ベクトルである。さらに、対象の光照射野の変位は、位相体積を増加させることなく達成され得、その結果、対象の光照射野のエタンデュは、入力光照射野のエタンデュと同じである。
【0075】
生成された入力光照射野に基づいて対象の光照射野をどこに配置するのかを事前に決定することによって、瞳孔間距離(IPD)及び頂点距離などの特性は、コンバイナ802を含むヘッドセットでいかなる機械的な調整機能を必要とせずにソフトウェアに設定することができる。これらの特性は、例えば、ユーザーフィードバックを使用した較正ルーチンによって設定できる、及び/または視線追跡センサを介して自動的に設定できる。
【0076】
入力光照射野がホログラフィック光照射野であるとき、画像生成ユニット(図示せず)は、深度情報を含む入力光照射野を生成するように構成される。画像生成ユニットは、空間光変調器の形態の光変調素子を照明するように構成される、この場合はレーザーダイオードである少なくとも部分的にコヒーレントな光源を含む。レーザーダイオードは、例えば、Sumitomo Electric(商標)SLM-RGB-T20-F-2レーザーダイオードであるが、他のレーザーダイオードも使用し得る。RGBダイオードは、異なる色のレーザー光の発出を迅速に切り替えることができ、赤色光、緑色光、及び青色光を連続して発する。異なる色が発せられる異なるときにレーザー光を変調することによって、残像性によって視聴者にカラーホログラフィック画像の見かけが作成され得る。他の例は、白黒である場合もあれば、赤色光、緑色光、青色光の光源を同時に使用する場合があること、ならびに本開示は特定の光源に限定されないことを理解されたい。
【0077】
例示的な空間光変調器は、Compound Photonics(RTM)DP1080p26マイクロディスプレイであり、光の位相を調整するように構成される。光の位相を制御することによって、干渉を使用してホログラフィック光照射野を作成することが可能である。本開示は、特定の空間光変調器技術またはコンポーネントに限定されない。ホログラフィック再生画像は、終端光学素子における画像生成ユニットから出力される。
【0078】
図9は、有効なアイボックス904に対象の光照射野を表示するための3次元シーンを生成するように配置された画像複製コンバイナ902を含む例示的な光学システム900の一部を示す。例示的な光学システム900では、入力光照射野Hinは、コンバイナ902の入射瞳906で生成される。上述のように、Hinは、適切な画像生成ユニットによって生成され得る。図9から、第1の深度にある第1の仮想オブジェクト908、及び第2の深度にある第2の仮想オブジェクト910に対応する光線が、入力光照射野Hinが画像複製コンバイナ902を通して対象の光照射野から光線を逆伝搬することによってとらなければならない形態を決定することによって対象で生成されることが分かる。結果として生じる入力光照射野Hinは、その表面上では、有効なアイボックス904で生成される画像に対応しないように見える光線の組み合わせとして現れる。しかしながら、画像複製コンバイナ902を通して光線を順方向伝搬すると、コンバイナ902から抽出された光線が、事実上、必要とされる深度で第1及び第2の仮想オブジェクト908、910を表すことが示される。第1及び第2の仮想オブジェクト908、910に対応する光線が、コンバイナ902から抽出され、有効なアイボックス904に到達する前にコンバイナ902内で異なる回数の内部反射を受けていることが分かる。さらに、対象の光照射野を形成する光線が、以下に詳細に説明されるいくつかの条件を満たすことを確実にすることによって、位置合わせされた瞳孔にとって可視のアイボックスは、実質的にスプリアスなノイズ及び/またはアーチファクトなしに画像を知覚する(したがって、アイボックスは「有効」である)。
【0079】
本開示は、所望の位置に所望の対象の光照射野(この場合、ホログラフィック光照射野Hであるが、本開示が対象のホログラフィックフィールドの生成に限定されないことを理解されたい)を生成するためにHinを決定するための方法を提供する。三次元空間内の任意の体積内に有効なアイボックスを生成する例示的なプロセスは、ここで図10図12に関してより詳細に説明される。
【0080】
図10Aは、図8及び図9に示されるように、入力光照射野を所定の体積内の対象の光照射野に変換する例示的な方法1000を示す。本方法1000では、Hinは、対象の光照射野Hからコンバイナ902を通してHinの位置への逆経路を考慮した結果生じる光照射野を計算することによって決定できる。
【0081】
ブロック1002で、方法1000は、対象の光照射野Hの必要とされる位置(すなわち、有効なアイボックス)を決定することを含む。これは、図8及び図9の変位ベクトルsを決定することに相当する。これは、視聴者の瞳孔の既知の位置に従って設定され得る。例えば、1つ以上の視線追跡センサは、視聴者の瞳孔の中心の現在の3次元位置を決定するために使用され得る。この場合、視線追跡センサは、視聴者の瞳孔の中心の現在位置を示すデータを生成し、そのデータをコンピューティングデバイスに中継する。コンピューティングデバイスは、視聴者の瞳孔の中心の決定された位置と一致するようにHの位置を決定するように構成され得る。
【0082】
別の例では、必要とされる位置は事前に決定されてよい。例えば、視聴者は、較正ルーチンを受ける場合がある。これは、画像生成ユニットが、様々な3次元位置にある一連の対象の光照射野を通過するように構成されることを含み得る。一連の対象の光照射野のうちの対象の光照射野が表示されるたびに、コンピューティングデバイスは、視聴者に、画像が許容可能な品質であるかどうかを尋ね得る。較正手順の最後に、コンピューティングデバイスは、視聴者によって知覚される最高の画質を生成する位置が、Hが生成されるべきである位置であると判断し得る。
【0083】
いくつかの例では、対象の光照射野は、対象の光照射野の必要とされる位置を決定することが、複数の光照射野のそれぞれの必要とされる位置を決定することを含むように、複数の光照射野(H、H、…)を含む。これは、視聴者の瞳孔の両方で対象の画像を生成するために、単一の画像生成ユニット及び画像複製コンバイナだけが必要とされる両眼ディスプレイで役立ち得る。この例は、図16図18に関してさらに詳細に説明される。
【0084】
いくつかの例では、ブロック1002は省略され得、所定のポジションの入力が(例えば、上記の較正プロセスから)使用され得る。
【0085】
ブロック1004で、方法1000は、コンバイナを通してコンバイナの入射瞳の近くの入力面へ、必要とされる位置での光照射野の伝搬のための伝達関数を決定することを含む。ブロック1004は、ここで、例示的な画像複製コンバイナ1100を示す図11を参照することによって詳細に説明される。画像複製コンバイナ1100の仕様は、表示システムの物理的な要件によって決定される。例えば、画像複製コンバイナ1100は、広範囲の内部入射角にわたって全内部反射をサポートできる必要がある。例えば、Schott(商標)製のN-LASF46などのランタン高密度フリントガラスは、波長λ=530nmでθ=31°の臨界角を有する。画像複製コンバイナは、臨界角を超えるすべての内部入射角で全内部反射によって波を伝搬する。
【0086】
画像複製コンバイナ1100は、ホログラフィック画像に対応する入力光照射野を受け取るために、入力面または入力カプラとしても知られる入力結合回折格子1102を含む。入力結合回折格子1102は、自由空間波が、回折によって入力結合回折格子1102においてコンバイナ1100内に結合されるように表面レリーフ回折格子を表す。2580線/mmの溝周波数を有する表面レリーフ回折格子は、N-LASF46内の自由空間と全内部反射との間の入力カプラまたは出力カプラとして機能できる。平行な等間隔の線形溝からの単純な回折に加えて光パワーを示す、より複雑な表面レリーフ回折格子が製造され得る。
【0087】
画像複製コンバイナ1100は、入力光照射野の複数の複製を生成するために、出力面または出力カプラとしても知られる出力結合回折格子1106をさらに含む。画像複製コンバイナ1100は、内部反射を受ける光を入力結合回折格子1102から出力結合回折格子1106に向けてリダイレクトするように配置された、射出瞳拡大器としても知られるリダイレクション回折格子1104をさらに含む。
【0088】
この例での画像複製コンバイナ1100は、すべて同じ面上に入力結合回折格子1102と、リダイレクション回折格子1104と、出力結合回折格子1106とを有する。これは、1110で入射する光線によって明示されるように、すべての内部光線が、リダイレクション回折格子(存在する場合)によるリダイレクションの前に、及びコンバイナを出る前にも、偶数回コンバイナを横断することを意味する。他の実施形態は、出力結合回折格子に反対側の面に、入力結合回折格子及びリダイレクション回折格子のいずれかまたは両方を有する場合がある。これらの場合、内部光線は、リダイレクション回折格子によるリダイレクションの前に、及び/またはコンバイナを出る前に、奇数回コンバイナを横断し得る。
【0089】
図11の例は、すべてコンバイナの同じ側(つまり、正のz方向)で、入力カプラ1102に対する入射光線及び出力カプラ1106からの出力光線と動作する画像複製コンバイナを示す。いくつかの構成では、入射光線は、負のz方向、つまり入射光線が出力カプラ回折格子で射出される場所の反対側からコンバイナに入射し得る。構成の最適な選択は、多くの場合、光学システムの全体的なレイアウトにおける制約によって決定される。
【0090】
図11の例では、画像複製コンバイナ1100は、結合機構として回折格子を含むが、他のタイプのカプラも考えられることを理解されたい。例えば、画像複製コンバイナに対する入力カプラは、ミラー、プリズム、またはホログラムを含み得る。他の例が、曲線状または非平面的な設計を含む他の形態の画像複製コンバイナを使用できることも理解されたい。
【0091】
図11の回折格子などの回折格子の形態のカプラを含む典型的な画像複製コンバイナは、kgratingによってパラメータ化された回折格子kベクトルのセット、コンバイナの厚さt、及びコンバイナを含む材料の屈折率nによって特徴付けられる。回折格子kベクトルは、入力結合回折格子、リダイレクション回折格子、及び出力結合回折格子が、それぞれの回折格子に入射する光波にどのように影響を与えるのかを説明する。図11に示される例示的な画像複製コンバイナ1100では、回折格子毎の回折格子kベクトルは以下のとおりである。
入力結合回折格子では、kin=(0,-kgrating,0)、
リダイレクション回折格子では、kredirection=(kgrating,kgrating,0)、
出力結合回折格子では、kout=(-kgrating,0,0)。
【0092】
簡単に言うと、入力結合回折格子は、光線を下方へ(図11のリダイレクション回折格子に向かって)リダイレクトする。リダイレクション回折格子は、次に、光線を水平に右にリダイレクトし、垂直リダイレクションを取り消す。最後に、出力結合回折格子は、コンバイナからの抽出時に水平リダイレクションを取り消す。
【0093】
リダイレクション回折格子及び出力結合回折格子1104、1106の結合効率は、入力結合回折格子1102によって内部に結合された所与の光線の場合、出力結合回折格子1106で抽出された各光線がほぼ等しい強度となるように調整することができる。
【0094】
さらに、画像複製コンバイナ1100の記載された特性は、kベクトル(k、k)=(0、0)を有する入力結合回折格子1102に入射する光線について、コンバイナ1100内の光線が、sinθ=kgratingλ/2πnを有する角度となり、結果的に、2t tanθの複製ピッチ(最近傍の入力間瞳孔複製間の間隔)になるほどである。
【0095】
図11に示される例では、座標系1108の原点は、ブロック1002で決定された対象の光照射野の位置に位置決めされる。この定義により、画像複製コンバイナ1100の入射瞳は、Hの決定された位置に対して位置spupil=(xpupil、ypupil、zpupil)に位置する。上述のように、Hinは、(ブロック1002で決定された)決定された位置から、コンバイナ1100を通して入射瞳へ(ブロック1004で決定された)Hを逆伝搬することによって計算できる。ホログラフィック対象光照射野Hは、複素電界強度
【数1】


で表し得る。実際には、振動の時間依存性は無視でき、代わりに振幅A(x,y)及び位相φ(x,y)を有する全複素ホログラムを定義することが通常である。対象の光照射野Hは、kを排除するために、平面z=0で評価されるフーリエ変換(FT)を使用して無限範囲の平面波に分解できる。この平面の外側でのHの評価のために、kは、制約
【数2】


によってk及びk関数として暗黙的に定義され、上式で、nは媒体の屈折率であり、λは真空内の場の波長である。
【0096】
したがって、ポジション(x、y、z)にある対象の光照射野Hは、方程式1に従って評価することができる。
方程式1
【数3】

【0097】
この場合、積分に対する制限により、kmin未満またはkmaxより大きいkの係数がゼロになるようにHが定義されることが確実になる。これは、ホログラムの視野を制限することに相当する。実際に、この分解は離散フーリエ変換として実行され、積分はkの離散値の合計に置き換えられる。この結果、Hのタイル表示が生じるため、伝搬中のタイル表示されたコピーからのスプリアスなスピルオーバーを回避するために、フーリエ分解の前にHにゼロが埋め込まれ得る。
【0098】
座標系1108の原点から、kz0で示される出力結合回折格子1106への経路値kは、上述のように、関係
【数4】


を使用して評価することができる。これにより、対象の光照射野Hは、座標系1108の原点から出力結合回折格子1106へz軸に沿って距離zpupilだけ伝搬することができ、これは、方程式1にzpupilを代入することによって達成することができる。
【0099】
出力結合回折格子1106では、kベクトルkoutによって表される回折格子の効果が、Hをコンバイナ1100に結合するために適用される。これは、光照射野波動ベクトルkのx成分及びy成分をk+koutの成分で置換し、次に再び関係
【数5】


を使用して、kz1で示される出力結合回折格子1106におけるkベクトルを評価することに相当する。出力結合回折格子1106で評価される光照射野により、光照射野は、距離-2ntだけz軸に沿って伝搬することができ、ここで、nは、出力結合回折格子1106とリダイレクション回折格子1104との間でのコンバイナ内の内部横断回数である。
【0100】
画像複製コンバイナ1100を通してz軸に沿ってある距離を伝搬することは、光照射野がいずれの内部反射も受けない同等な状況を考慮することによって理解できる。この状況は、ここで、厚さtを有する画像複製コンバイナ1200、及びkinによってパラメータ化された回折格子kベクトルを有する結合回折格子を通して伝搬する光線の例を示す図12に関して説明される。z方向に成分を有する光線1210は、回折格子に垂直な方向で結合回折格子に入射する。光線1210は、結合回折格子によってコンバイナ1200に結合される。コンバイナ1200に入射すると、光線1210は、コンバイナ1200の下面法線に対して角度θで偏向され、sinθ=kinλ/2πnである。θは、光線とコンバイナ1200の下面の法線との間の角度である。光線は、z方向に距離tを移動し、負のx方向に距離t tanθを移動し、その点で、光線は反射の法則に従ってコンバイナ1200の内面に対する第1の内部反射を受ける。実際には、光線は、光線がコンバイナ1200に入った表面に向かって戻るが、これは、数学的には、光線が、コンバイナ1200の上に積み重ねられ、コンバイナ1200と同じ幾何学的特性を有する仮想体積1202の中へ正のz方向に沿って進み続けることと同等である。図12に示されるように、正のz方向に進み続ける仮想光線は、連続する仮想体積1202、1204、1206を通過する点線矢印として示される。仮想光線が仮想体積1202~1206の水平内部境界と交差するたびに、仮想光線はコンバイナ1200内で内部反射を受ける実際の光線と同等である。言い換えれば、2n水平境界と交差した仮想光線は、コンバイナを2n回横断した実際の光線と同等である。したがって、コンバイナの2n回の横断の後、光線は、z方向で2tの距離移動している。
【0101】
この論理を図11に示す例に適用すると、光線が、z軸に沿って距離-2nt移動した後に、リダイレクション回折格子1104に到達することが確認される。リダイレクション回折格子1104では、回折格子の効果が、kベクトルkredirectionによって表される光照射野に適用される。これは、ここでリダイレクション回折格子で評価され、kで示される光照射野波動ベクトルのx成分及びy成分を、k’+kredirectionからの成分で置換し、kz1に関して上述されるように、関係
【数6】


を使用してkz2を評価することに相当する。
【0102】
光照射野は、次に、z軸に沿って距離-2nt伝搬し、ここでnは、図12に示されているのと同じロジックを使用して、入力結合回折格子1102とリダイレクション回折格子1104との間でのコンバイナ1100の内部横断回数である。入力結合回折格子1102では、回折格子の効果が、kベクトルkinによって表される光照射野に適用される。これは、ここで入力結合回折格子で評価され、kで示される光照射野波動ベクトルのx成分及びy成分を、k’’+kinからの成分で置換し、kz1に関して上述されるように、関係
【数7】


を使用してkz3を評価することに相当する。
【0103】
上述のプロセスは、対象の光照射野Hを、コンバイナ1100の入射瞳にz方向だけに伝搬している。x方向及びy方向での光照射野の伝搬を完了するために、光照射野は、コンバイナ1100の入射瞳孔へ距離(xpupil、ypupil、0)だけ伝搬される。
【0104】
これまで説明されたように、視聴者の瞳孔からの平面波のセットの伝搬が考慮されてきた。平面波のセットは、(各回折格子間の内部反射の回数によって設定される)画定された経路に沿ってコンバイナ1100を通して、コンバイナ1100の入射瞳へ伝搬されている。完全解のために、n、nの値に限定されるコンバイナ1100を通るすべての可能なルートを合計することが必要であり、Hinは、コンバイナ1100の入射瞳の範囲内のなんらかの閾値を超えるエネルギーを有する。
【0105】
可能なルートの合計は、照明のコヒーレンス長、及び異なるn、nの経路間の光路長の差などの要因に応じて、コヒーレントである場合もあれば、インコヒーレントである場合もある。
【0106】
コヒーレンス長が経路長の差よりもはるかに大きい場合、寄与はコヒーレントに合計される。異なる経路の複素振幅はともに加算され、干渉効果は異なるn、n寄与間で可能である。
【0107】
コヒーレンス長が経路長の差よりもはるかに小さい場合、寄与はインコヒーレントに合計される。異なる経路の複素振幅は、合計の前に、時間とともに変化する無作為な位相係数で効果的に乗算される。位相係数は、人間の目の知覚時間に比べて迅速に変化し得るため、異なるn、n寄与間の干渉効果は観察されない。
【0108】
コヒーレントな場合のHinの完全解は、方程式2によって与えられる。
方程式2
【数8】

【0109】
プライム座標x’、y’、z’は、プライム座標系1110の原点が変位ベクトルspupilによって非プライム座標系1108の原点に関連付けられるように、入射瞳に対して定義される。したがって、方程式2は、適切な座標変換を使用して、非プライム座標系の観点から作成できるであろう。
【0110】
上述のように、方程式2は、決定された位置に対象の光照射野Hを生成するために、コンバイナ1100の入射瞳で生成される必要とされる光照射野を表す。計算はソフトウェアで実行され得、その場合、積分が合計になる。計算は、一般的に新しいビデオフレームまたは静的なディスプレイ上の新しい情報など、新しい対象の光照射野Hが表示されることが必要とされるたびに実行できるであろう。
【0111】
上述の計算による伝達関数の決定は、入力光照射野の少なくとも2つの異なる複製から受け取られる光線が、対象の光照射野のそれぞれの部分を形成すると判断することを含み得る。言い換えれば、対象の光照射野Hの部分は1つの複製から形成され得、Hの別の部分は別の複製から形成され得る。これは、視聴者の瞳孔724に到達する光が、仮想オブジェクト730の異なる複製からの光を含む図7Dで理解できる。
【0112】
上記の例では、入力カプラ1102及び出力カプラ1106は、コンバイナ1100の同じ面を共有する。入力カプラ及び出力カプラが、コンバイナの反対側の面に配置される場合、(i)対象の光照射野の中心と(ii)入射瞳の中心に最も近くに面する出力カプラコンバイナ上の点との間の変位としてspupilを定義することが必要である。
【0113】
入力カプラ、リダイレクションカプラ、及び出力カプラが、同じコンバイナ面を共有しないシステムでは、カプラ間の光路長は、コンバイナの奇数の横断によって定義され得る。この状況では、コンバイナ横断の正しい数が数えられるように、方程式2の指数の(n+1/2)をn、及び/または(n+1/2)をnに置き換える必要がある場合がある。
【0114】
図10Aに戻って参照すると、ブロック1006で、方法1000は、決定された位置に表示される対象の光照射野Hを計算することを含む。すなわち、対象の光照射野の特性は、決定された位置に所望の画像を生成するために決定される。図9に示される例では、Hを決定することは、それぞれの深度で第1及び第2の画像908、910を生成するために光照射野の特性を決定することを含む。当業者は、この画像を決定するための技術を認識している。
【0115】
ブロック1002及び1006は、任意の特定の順序で発生する可能性があることを理解されたい。例示的な方法1000では、対象の光照射野の位置を決定することは、対象の光照射野を計算する前に発生する。しかしながら、最初に対象の光照射野を計算してから、対象の光照射野を表示する位置を決定することも可能である。
【0116】
ブロック1008で、方法1000は、光学伝達関数を対象の光照射野Hに適用することによって、入力光照射野Hinを計算することを含む。すなわち、方程式2を使用してHinを計算する。
【0117】
ブロック1010で、方法1000は、適切なディスプレイを使用して、入力光照射野Hinを表示することを含む。対象の光照射野がホログラフィック光照射野である場合、次にHinは、ホログラフィック光照射野を生成するように構成された画像生成ユニットを使用して生成される。図11に示される例では、Hはホログラフィック光照射野であるため、Hinを生成することは、コンバイナ1100の入射瞳でHinに対応する光照射野を生成するために画像生成ユニットを使用することを含む。Hが4D光照射野である場合、次にHinは、適切な4D光照射野ジェネレータを使用して生成することができる。1つのそのような適切な4D光照射野ジェネレータは、2013年11月1日に公開され、2020年11月14日にweb.archive.orgによって最初にアーカイブに保管された、https://research.nvidia.com/sites/default/files/pubs/2013-11_Near-Eye-Light-Field/NVIDIA-NELD.pdfから入手可能なLanman et al.の「Near-eye light field displays」に記載されている。Lanman 4D光照射野ジェネレータは、OLEDマイクロディスプレイと、マイクロディスプレイと視聴者の目との間の中間マイクロレンズアレイとから成る。
【0118】
方程式2に戻って参照すると、この式は方程式3で書き換えることが可能である。
方程式3
【数9】


上式では、
方程式4
【数10】

【0119】
すなわち、合計及び積分の順序は入れ替えることができ、追加の伝搬項は、フーリエ係数の新しく定義されたセットに吸収することができる。特に、方程式4の合計部分は、光学伝達関数であり、Hinのフーリエ係数とは関係なく評価できるため、spupilが変化する場合にだけ再計算される必要がある。これは、(ブロック1002で)対象の光照射野の決定された位置がめったに変化しないとき、または時間の関数として完全に固定されるときに特に役立つ。これらの場合、計算の数は削減され、処理の効率は向上する。
【0120】
入力光照射野及び対象の光照射野の平面は互いに平行である場合があるが、コンバイナの入力カプラ及び出力カプラに対しては平行ではない。コンバイナが、入力光照射野及び対象の光照射野のx軸の周りで角度α、及びy軸の周りで角度β、回転される場合、コンバイナのローカル座標系内の回転された波動ベクトルk’は以下のとおり、定義される。
【数11】

【0121】
この場合、方程式4は、合計和項の波動ベクトルkを回転された波動ベクトルk’で置換することによって修正される。これは方程式5に示される。
方程式5
【数12】

【0122】
図11に示される例では、画像複製コンバイナ1100は、矩形平面シートの形をとる。しかしながら、本開示は任意の特定の形状を有する画像複製コンバイナに限定されない。特に、方法1000は、コンバイナが非平面であるときに適用可能である。この場合、コンバイナを通して対象の光照射野を逆伝搬することによって入力光照射野を計算することは、図11に関して説明された例に関してHinを計算した方法と同様に行われるが、コンバイナの特定の幾何学形状に対して考慮がなされている。
【0123】
さらに、入力光照射野を計算することは、ホログラフィック光照射野を計算することに関して説明されているが、本開示は、ホログラフィに結び付けられていない。特に、本開示を使用すると、決定された位置に所望の対象の4D光照射野を生成するために入力4D光照射野を計算することが可能である。4D光照射野は、x、y、θ、φの関数として光の強度を指定しており、x、yは視聴者の瞳孔の中心の位置における空間座標であり、θ、φはその位置での光の角座標である。コンバイナ(コンバイナ1100など)を通した伝搬は、4D位相空間の再マッピングを必然的に伴い、Hでx、y、θ、φの値を有する各光線は、Hinで値x’、y’、θ’、φ’を有する一意の対応する光線を有する。このマッピングは、標準のレイトレーシング技術を使用して決定できる。ただし、典型的な光照射野ディスプレイは、これらがディスプレイの見かけの解像度を設定するため、x、yで粗くサンプリングし、θ、φでは密にサンプリングする。Hinでのx、yのこのまばらなサンプリングは、Hでの画像アーチファクトとして現れる場合があるため、ホログラフィック光照射野はより高い画質を有し得る。
【0124】
方法1000は、所望の位置に対象の光照射野を生成するために必要とされる入力光照射野を計算するために使用することができる。いくつかの例では、所望の位置は時間の関数として変化する場合がある。例えば、1つ以上の視線追跡センサは、リアルタイムの視聴者の瞳孔の位置に基づいて、ブロック1002でHの必要とされる位置を決定するために使用され得る。視線追跡センサは、視聴者の瞳孔の現在位置についてのライブデータを生成し、これをコンピューティングデバイスに中継し得る。コンピューティングデバイスは次に、対象の光照射野が、視聴者の瞳孔の中心の現在位置に生成される必要があるようにsを決定し得る。実際には、視聴者は、現在表示中である画像内の対象のオブジェクトのポジションの変化、表示画像の明るさの変化、及びユーザーが画像を見ているときのユーザー自身の動きなど、いくつかの要因に基づいて目を動かす場合がある。この場合、Hの必要とされる位置は時間の関数s(t)であり、決定されたHの必要とされる位置は、時間の関数として相応して変化する。
【0125】
他の例では、対象の光照射野の決定された位置は、初期較正に基づいている場合がある。固定ポジションに対象の光照射野を表示することの利点は、方程式4の式が、決定された固定ポジションで評価される項だけに依存するため、一度計算するだけで十分であることである。これにより、プロセスの効率は向上し、同じ処理リソースまたは省電力動作でより高速のフレームレート及び/またはより高い解像度が可能になる。このことの欠点は、表示される対象の光照射野のポジションが固定されているため、視聴者の瞳孔の移動によって、対象の光照射野の少なくとも一部が、視聴者の瞳孔が占めている現在の領域に重複しない場合があることである。
【0126】
図10Bは、図8及び図9に示されるように、入力光照射野を所定の体積内の対象の光照射野に変換する別の例示的な方法1020を示す。方法1020は、それが方法1000のブロック1002~1010を含む点で方法1000に類似している。例示的な方法1020では、入力光照射野Hinを表示した後、ブロック1012は、対象の光照射野の位置が変更されるべきかどうかを判断することを含む。例えば、対象の光照射野が異なる位置に表示されるべきであると判断される場合がある。これは、例えば、視聴者の瞳孔が移動し、その結果、対象の光照射野が、新しい瞳孔の位置に再配置されるべきであると判断したことに基づくであろう。
【0127】
ブロック1012で、光照射野の位置が変更されるべきであると判断された場合、方法1020は、対象の光照射野の更新された位置が決定されるブロック1002に戻り、続いて、ブロック1004で、その更新された位置のための伝達関数を決定する。
【0128】
ブロック1012で、光照射野の位置が変更されるべきではないと判断された場合、次に、方法1020は、対象の光照射野が、必要とされる位置に表示されるために(再)計算されるブロック1006に戻る。
【0129】
したがって、図10Bの方法では、ブロック1012での決定は、視聴位置が変化したために伝達関数が更新されるべきであるかどうかを判断する。他の例では、表示される対象の光照射野はまた、方法1020の連続ループで変化する場合がある。例えば、対象の光照射野の位置が変化した場合、入力光照射野はブロック1008で再計算され得、その場合、新しい伝達関数はブロック1004で決定され、対象の光照射野に適用される。代わりに、またはさらに、表示のためのデータの変化がある場合、入力光照射野が再計算され得る。例えば、表示システムは、方法1020の各ループ(1002~1012または1006~1012のいずれか)がビデオコンテンツの単一のフレームの表示に対応し得るように、ビデオコンテンツを表示するように構成され得る。方法1020がブロック1006に進むたびに、対応する新しい対象の光照射野を有する新しいフレームが存在する場合がある。ブロック1008で、入力光照射野は、伝達関数を対象の光照射野に適用することによって計算される。伝達関数は、対象の光照射野の位置の変化に基づいて再計算された可能性がある。したがって、方法1020は、対象の光照射野が、フレーム単位で変更されるだけではなく、対象の光照射野の位置が、視聴位置が変化するにつれ変更される場合があるビデオ更新ループで使用することができる。
【0130】
別の例では、表示システムは、対象の光照射野が、これらのループ間で変化し得ないように静止画像を表示し得、その場合、いくつかの例は、ブロック1006及び1008におけるH及びHinの計算を省略し得る。ただし、入力光照射野は、対象の光照射野の位置の変化に基づいて依然として再計算される場合がある。
【0131】
入力光照射野が、画像複製コンバイナの物理的な入力面と一致する必要がないことを理解されたい。例えば、入力面に近い入力光照射野を対象に設定すると、満足のいく対象の光照射野が得られる場合もある。この文脈では、「近い」は、入力光照射野が入力面と一致すること、または入力面からの入力照射野の特定の距離を含む。例では、特定の距離は、5mm、10mm、20mm、30mm、及び40mmであってもよい。特定の距離は、対象の光照射野の所望の画質に依存する場合がある。例えば、表示システムでの1つの考慮事項は、対象の光照射野の物理的な面積が、人間の瞳孔の面積とほぼ一致することを確実にすることである。このため、特定の距離は、対象の光照射野の面積に依存する場合がある。入力光照射野が入力面に近いほど、画像生成ユニット側では、光線がコンバイナを横断するときの光線の拡散により、対象の光照射野の面積は大きくなる。入力光照射野が入力面に近いほど、画像生成ユニットの反対側では、対象の光照射野の面積は小さくなる。
【0132】
対応する入力光照射野を計算するためのコンバイナ1100を通る対象の光照射野の逆伝搬は、そのような入力光照射野をどのように計算できるのかの一例である。本開示は、そのような計算を実行するためのいかなる特定の方法にも限定されない。方法1000は、コンバイナの入射瞳へコンバイナを通して対象の光照射野を逆伝搬することによって入力光照射野を計算することを説明しているが、入力光照射野はまた、入射瞳から対象の光照射野の位置へ光照射野を順方向伝搬することによって計算することもできる。例えば、順方向伝搬は、所与の入力照射野から対象の光照射野を決定するために逆問題解決プログラムと併せて使用され得る。入力光照射野は、所望の対象の光照射野を生成するためになんらかの形態の反復処理を受ける場合がある。これは、所与の数の内部反射の場合、伝搬が厳密に可逆であるため、伝搬の方向が任意となるためである。
【0133】
入力光照射野がどのように決定されるのかに関わりなく、対象の光照射野の結果として得られる画質を向上させるために、3つの条件の1つ以上が適用され得る。これらの条件は、ここで、図13A図13B、及び図13Cに関して説明される。
【0134】
第1の条件は、Hinから順方向伝搬される光線ごとに、Hに寄与する1つの光線しかないことを必要とする。コンバイナの特性の結果として、複数の複製が、コンバイナの出力カプラで抽出される。コンバイナの入射瞳に入射する光線の2つ以上のコピーがHの部分を形成することが可能である。Hを形成する追加の意図されていない光線の結果が、画像ノイズまたはアーチファクトとして現れる。この条件を満たさない光線の一例は、図13Aに示される。この配置では、コンバイナ1300に対する単一の入射光線1302により、2つの光線1304、1306が、コンバイナ1300から抽出され、Hの部分を形成することが分かる。
【0135】
いくつかの例では、第1の条件は、実質的に同等である光線のコピーに適用しない。実質的に同等な光線は、実質的に同じ経路長を有するが、コンバイナを通る異なるルートをたどる光線を含む。これは、各光線1304、1306が異なる経路長を有する図13Aに示される状況ではない。これは、図15に関して以下にさらに説明される。
【0136】
第2の条件は、Hが、視聴者の瞳孔を完全にカバーするほど十分に大きい面積にわたって定義されることを必要とする。Hの面積が視聴者の瞳孔よりも小さい場合、次に、Hを形成しない複製された光線が視聴者の瞳孔によって受け取られる場合があり、その結果、視聴者が見る未定義の光線が画像ノイズまたはアーチファクトとして現れる。これを克服するために、Hは、例えば、(光に順応した瞳孔の典型的なサイズに相当する)少なくとも直径4mmもしくは少なくとも6mm、または(暗さに順応した、つまり暗所視の瞳孔の典型的なサイズに相当する)少なくとも直径8mmもしくは少なくとも10mmなど、少なくとも視聴者の瞳孔の面積に広がると定義され得る。代わりに、Hによって定義される光照射野が、視聴者の瞳孔の面積よりも小さい場合、Hは、必要とされるエタンデュを低減させるために、この領域の一部の境界面積についてゼロであると定義され得る。第2の条件を満たさない光線1308の一例は、図13Bに示される。この例では、Hは、視聴者の瞳孔の面積よりも小さい面積を占めるように定義される。結果的に、入射光線1308は、Hの部分を形成しないが、視聴者の瞳孔と交差するコピー1310を有する。
【0137】
第3の条件は、Hから逆伝搬される光線ごとに、Hinに寄与する光線があることを必要とする。これが当てはまらない場合、次に、Hinから開始する光線で光線を生成する可能性はないため、Hから欠落する光線がある。第3の条件を満たさない逆伝搬された光線1312の例が、図13Cに示される。この例では、コンバイナ1300の出力カプラに入射する逆伝搬光線1312によって、Hinを形成しない反射光線が生じる。
【0138】
図10Aに示される方法1000を実行する任意のプロセスの場合、上記の3つの条件は、満足のいく結果を達成するためにほぼ満たされる必要がある。光線ごとにすべての条件が満たされることは重要ではないが、これらの条件を満たしていない光線は画像内でエラーとして表示されるため、準拠していない光線(3つすべての条件を満たしていない光線)の合計割合は、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満など、小さくなければならない。いくつかの場合、特定の光線を含めることによって、条件の1つ(以上)が違反となるであろう場合、その光線は、Hから除外するように選ばれ得る。これが当てはまる場合、H内の他の光線は、準拠していない光線の除外を補償するための高められた強度を有するように任意選択で選ばれ得る。
【0139】
方法1000または代替の方法に従って入力光照射野を計算し、上述の3つの条件をほぼ満たすことによって、画像複製コンバイナに対して任意の体積内に対象の光照射野を配置できるだけではなく、結果として得られる対象の光照射野は、スプリアスなノイズ及びアーチファクトが低減されて表示される。特に、通常、焦点の拡散など、画像複製コンバイナを使用して近視野の画像を表示することに関連する問題は、視聴者に表示される所望の光照射野を生成するために入力光照射野を明確に計算し、意図しない光線が所望の光照射野の一部を形成しないことを確実にすることによって回避される。これは、複数の複製を生成するために、入力光照射野が最初に計算され、コンバイナの入射瞳で表示される対象の光照射野を生成する通常の方法とは対照的である。
【0140】
ここで図2Bに戻り、上記の理解を踏まえると、出力での位相空間の所与の領域内で対象の光照射野が達成されるように、光照射野が入力でどのように選ばれ得るのかが分かる。これが最高の成功で達成されるためには、各別個の複製の位相体積の重複が、可能な限り少なくなることが必要である(これは、間接的には、入力での所与の光線の場合、出力で1つの光線しか存在してはならないという、図13Aに示される要件に相当する)。さらに、別個の複製の結合された位相体積は、指定された出力位相体積208の可能な限り大きい割合をカバーする必要がある(これは、図13Cに示される、出力でのあらゆる光線は、入力での対応する光線でなければならないという要件に相当する)。
【0141】
説明されたように、これらの条件は正確に満たされる必要はなく、これらの条件からのわずかな逸脱は、特定の光線を除外し、光線を、同じオブジェクト点から発生する準拠した光線に置き換えることによって補償され得る。
【0142】
別個の複製が位相空間内でどのように現れるのかの幾何学形状は、画像複製コンバイナの特性である。上述の条件に概して準拠するためには、画像複製コンバイナが、位相空間内で複製された出力の最適なタイル表示を提供するように設計される必要があることは明らかである。具体的には、画像複製コンバイナは、1)対象の出力位相体積に必要とされる位相空間内の高い割合の体積に、別個の複製の結合された位相体積が広がり、2)対象の出力位相体積に必要とされる位相空間内の低い割合の体積が、複数の重複する別個の複製によってカバーされるように設計される必要がある。いくつかの例では、コンバイナは、別個の複製の結合された位相体積が、対象の出力位相体積に必要とされる位相空間内で体積の75%、80%、90%、95%、及び99%と同程度に広がるように設計される必要がある。ただし、十分に高い割合は、光照射野及びユーザーの瞳孔のサイズの特性に依存する。特定の場合、許容可能な割合は、5%ほど低くなるであろう(例えば、まばらにサンプリングされた光照射野及び高度に拡張された瞳孔の場合)。複数の重複する別個の複製によってカバーされる位相空間内の体積は、50%、40%、30%、20%、または10%など、いくつかの例では対象の出力位相体積の50%と10%との間であってよい。複数の重複する別個の複製によってカバーされる位相空間内の体積は、他の例では対象の出力位相体積の5%または1%など、より低い場合がある。
【0143】
ここで図14A図14B図14C、及び図14Dを使用して、画像複製コンバイナの幾何学形状を上記の条件との準拠に関して考慮する方法を説明する。図14A図14B図14C、及び図14Dは、1つの軸に沿った複製を示しているが、この概念を2方向での複製にどのように拡張し得るのかは容易に理解し得る。
【0144】
理想的な状況が上述されており、対象の位相体積の大部分は最小の重複で広がり、欠落または重複した光線に対する補正はほとんどまたは全く適用される必要はない。ただし、十分に大きい位相体積を有する画像生成ユニットを生成することも、複製間にギャップを有さない画像複製コンバイナを生成することも不可能または効率的ではない場合があり、したがって、好ましい設計は、実際的な制限を考慮する必要がある場合がある。
【0145】
図14Aを参照すると、法線入射の方向で移動する光線だけから成る入力光照射野1410が示されている。この入力光照射野は、1412、1414、1416として複数回複製される。単一の光線の複数の複製は、出力面1408において、複製ピッチと呼ぶ特定の間隔1418で画像複製コンバイナ1404から抽出される。制限開口1406の幅が複製ピッチ1418よりも小さい場合、複製間にギャップ1420があり、この入射角には光線は存在しない。システム1400の制限開口が、どちらがより小さいのかに関わりなく、画像生成ユニット1402の射出瞳、または画像複製コンバイナ1404の入力瞳孔1406である場合があることに留意されたい(ただし、通常、両方ともほぼ同じサイズとなる設計となる)。
【0146】
複製ピッチ1418、したがって、複製間のギャップ1420も、光が画像複製コンバイナ1404に入射する角度の関数である。図14Bを参照すると、1428で示される入射角での光線だけから成る入力光照射野1426の場合、複製ピッチ1430は最大化され、1432として示される複製間の最大ギャップを生じさせる。
【0147】
視聴者の目1424の位置だけではなく、1422で示される視聴者の瞳孔のサイズも示される。視聴者の瞳孔の幅が複製間の最大ギャップよりも大きいのであれば、次に、すべての角度からの少なくとも1つの光線が目に入り、複製間のギャップのために表現できないいずれの光線も、他の光線の強度を高めることによって補償され得る。
【0148】
図14Cを参照すると、1436で示される入射角での光線だけから成る異なる入力光照射野1434の場合、複製ピッチ1438は最小限に抑えられ、1440として示される複製間の最小ギャップを生じさせる。図14Dに示される実施形態など、特定の実施形態では、最小複製ピッチ1442は、制限開口1406よりも小さい場合がある。これにより、複製間の最小ギャップ1444が負になり、隣接する複製間に、ギャップではなく重複があることを意味する。
【0149】
どちらの場合も、最小複製ピッチが視聴者の瞳孔の幅よりも大きいならば、視聴者は、任意の所与の光線の複製の1つだけしか見ない。視聴者の瞳孔のサイズが最小複製ピッチよりも大きい場合、次に、複数の複製が瞳孔に入る光線は除外され、他の光線の強度の増加により補償され得る。これにより、最大瞳孔サイズを最小複製ピッチの約2倍にすることが可能である。
【0150】
視聴者の瞳孔の幅は照明条件に依存し、さらに人により変わるため、考えられる瞳孔サイズの範囲を検討しなければならない。画像生成ユニット及び画像複製コンバイナの具体的な設計は、システムが連動するように指定された視聴者の瞳孔サイズの指定された範囲に依存する。
【0151】
典型的なアプリケーションは、2~8mmの範囲の視聴者の瞳孔の名目上の幅のために設計され得る。これらの条件を満たすことは、複製間の最大ギャップが、2mmという視聴者の最小瞳孔サイズ未満となり、最小複製ピッチが4mm以上(つまり、視聴者の最大瞳孔サイズの半分以上)になることを必要とするであろう。そのような画像複製コンバイナの出力は、瞳孔サイズの範囲にわたって許容可能な性能を提供しながらも、比較的に小さい割合の対象の位相体積にしか及ばない場合がある。
【0152】
導波路の特定の非限定的な例は、(図14A図14Dの要素を参照すると)以下のパラメータを有し得る。制限開口1406は5.5mmであり、視野は18度である。
【0153】
導波路は、厚さが4.0mm、及び屈折率が2.0のガラス基板を有する。入力結合回折格子は、入射角1428、1436がゼロであるときに、5.5mmの制限開口幅1406に一致する複製ピッチ1418を有する。
【0154】
+9°の入射角1428(図14B)で、複製ピッチは6.7mmとなるため、複製1432の間の最大ギャップは1.2mmとなる。これは、人間の目の瞳孔の典型的な最小直径に満たない。
【0155】
-9°の入射角1436(図14D)で、最小複製ピッチ1442は4.5mmとなる。この距離は、周辺輝度が1Cd/mであるとき、典型的な人間の目の瞳孔の直径よりも大きい。
【0156】
これらのパラメータは、視野測定と同じ軸に沿った1次元の複製を考慮する。ただし、これらのパラメータは、当業者が自身で導き出すことができる2次元複製コンバイナの場合には、大きく変化しない。
【0157】
2D画像複製コンバイナの他の設計の場合、複製された位相体積が非直線グリッド上でモザイク状になるような設計になる可能性がある。
【0158】
入力光線と出力光線の同じ対形成が(例えば、WaveOptics(登録商標)導波路においてのように)コンバイナを通る複数の別個の経路を介して達成され得る画像複製コンバイナ設計の場合、重複しない位相体積という条件は、互いにほぼ同一である重複する位相体積について無視してよい。このタイプのコンバイナ設計がどのように動作するのかの一例は、図15に示される。特に、図15は、そのようなコンバイナを通る別個の経路の表示、及び光線がどのように異なる経路に沿って移動するが、コンバイナの出力面上の同じ点1508に到達するのかを示す。例えば、1502及び1504とラベルが付けられたコンバイナを通る2つの別個の経路に沿って移動する光線は、コンバイナ上またはコンバイナ内の同じ点に到達する。その点1508で抽出された光線は、(コンバイナを通る他の考えられる経路だけではなく)経路1502及び1504の両方に沿って移動したことになる。
【0159】
図15の画像複製コンバイナを用いるなど、いくつかの場合、入力光照射野の少なくとも2つの異なる複製から受け取られた光線は、対象の光照射野Hの単一の点で一致する。それらの光線は、一般にコンバイナを通して同じ経路長をたどっており、その結果、それらの光線は実質的に同等であるため、これは許容できる。いくつかの例では、第1の角度でHの単一点で受け取られた光線は、第1の複製からである場合があり、第2の角度でHの単一の点で受け取られた光線は、第2の複製からである場合がある。
【0160】
異なる経路をたどるが、実質的に同等である光線は、図15に示されるコンバイナの構造に限定されない。
【0161】
両眼撮像
上記説明は、近視野表示用に所望の光照射野Hを生成するための入力光照射野の計算を含んでおり、Hは、単一の連続する瞳孔に相当する。実際に、両眼画像は、瞳孔ごとに1つずつ、2つのディスプレイを提供することによって形成することができる。そのような解決策は、例えば、ヘッドマウントディスプレイの様式の従来のメガネによく適しているだろう。
【0162】
上述の原理を拡張して、画像複製コンバイナの入射瞳に表示されるときに、コンバイナに対して任意の位置に複数の対象の光照射野を形成する入力光照射野を計算することも可能である。特に、逆伝搬瞳孔のための上述のプロセスは、依然として適用可能であり、Hは、ここで複数の逆伝搬された光照射野の合計となる。これは、特に、視聴者の瞳孔の両方に対応する2つの対象の光照射野を生成するために、ただ1つの画像生成ユニット及び1つの画像複製コンバイナが必要とされ、視聴者の瞳孔のポジションに対応する位置に表示される、ヘッドマウントディスプレイ及びヘッドアップディスプレイで役立ち得る。そのようなヘッドマウントディスプレイは、例えば、両眼を覆う単一のバイザーを含む可能性があり、一方、ヘッドアップディスプレイは、両眼が見るフロントスクリーンなどの単一のスクリーンを含む可能性がある。
【0163】
図16は、コンバイナ1600の入射瞳1602における光照射野が、コンバイナ1600のそれぞれの有効なアイボックス1604、1606で2つの対象の光照射野、H及びHに変換されている例示的な画像複製コンバイナ1600の概略図である。第1の有効なアイボックス1604は、コンバイナ1600の入射瞳1602の中心から距離|s|に位置する。第2の有効なアイボックス1606は、コンバイナ1600の入射瞳1602の中心から距離|s|に位置しており、s及びsは、有効なアイボックス1604、1606の中心から入射瞳1602の中心への変位ベクトルである。視聴者の瞳孔と位置合わせするためにs及びsを選択すると、この配置が両眼ディスプレイの一部を形成することが可能になり、単一の入力光照射野Hinは、コンバイナ1600に対して所定の体積内に位置決めされる所望の光照射野H及びHを生成するために計算され、コンバイナ1600の入射瞳1602に表示され得る。
【0164】
複数の対象の光照射野(H、H、…)の結合されたエタンデュが、Hで利用可能なエタンデュに満たないならば、次に解決策はまだ存在する場合がある。ただし、より複雑な幾何学形状は、すべての瞳孔に対して図13A図13B、及び図13Cを参照して上述された3つの条件を同時に満たすコンバイナがより複雑であることを意味する。
【0165】
図17は、単一の入力光照射野から対象の光照射野H及びHを生成するために使用され得る回折格子幾何学形状を含む、例示的な画像複製コンバイナ1700を示す。コンバイナ1700は、コンバイナ1100の対応する回折格子1102、1104、1106に類似した結合機構を有する入力結合回折格子1702と、リダイレクション回折格子1704と、出力結合回折格子1706とを含む。しかしながら、コンバイナ1700の入射瞳の面積は、必要とされるエタンデュを達成するために、同じ視野を有する対象瞳孔の面積(H及びHのそれぞれの面積)の2倍である。この場合、これは、視聴者の目がコンバイナ1700に対して水平であると仮定して、2:1のポートレートアスペクト比で達成される。図17では、例えば、H及びHを結合する線とコンバイナ1700の両方が、x方向に沿って位置合わせされている。
【0166】
方法1000は、対象の光照射野H及びHを生成するために、コンバイナの入射瞳に表示するための入力光照射野を計算するためにこの配置に適用され得る。すなわち、対象の光照射野H及びHのそれぞれの必要とされる位置は、コンバイナに対して決定され得る。必要とされる位置は、H及びHが瞳孔と位置合わせするように配置されるように、視聴者の瞳孔の決定された位置であってよい。
【0167】
必要とされる位置に表示される対象の光照射野H及びHが計算される。上述のように、H及びHを計算することは、それらの必要とされる位置を決定することの前に発生し得る。入力光照射野は、次に、コンバイナを通してコンバイナの入射瞳へ対象の光照射野H及びHを逆伝搬することによって計算される。これは、コンバイナ(コンバイナ1700など)のより複雑な幾何学形状を考慮に入れ、図11を参照して上述されたように達成することができる。計算された入力光照射野は、次に、適切な表示方法を使用してコンバイナの入射瞳に表示され得る。
【0168】
両眼視聴の視聴経験を改善するために、図13A図13B、及び図13Cを参照して上述された3つの条件は、少なくともほぼ満たされるべきである。これは、コンバイナの設計によって達成できる。例えば、コンバイナの回折格子は、コンバイナの表面に垂直な線の周りで回転され、コンバイナの中心に位置決めされ得る。図17の例では、コンバイナ1700の回折格子1702、1704、1706は、コンバイナに対して回折格子1102、1104、1106に関して回転される。結果的に、複製は、コンバイナ1100によって生成される複製と比較すると、コンバイナ1700に対して回転されるグリッドを形成する。特に、回折格子の方向は、コンバイナ1700の設計中に、所与のIPDに対して逆正接(瞳孔直径/IPD)となるように設定された角度だけ、回転される。人間の成人の大部分でのIPDの典型的な値は50~75mmの範囲にあり、研究によると、成人の平均IPDが約63mmであることが判明している。視聴者の目を結ぶ線がコンバイナ1700に対して水平であるとき、これは、上述の必要とされる3つの条件を満たす光線の数を最大にする。すなわち、Hを通過する光線のすべての複製を考慮すると、最小数の意図しない光線もHを通過し、その逆も同様である。
【0169】
この例は、ここで、コンバイナ1700によって生成される複製1800のアレイを示す図18を参照することによりさらに説明される。Hを通過する所与のフィールドからの光線の束は、(長い破線の輪郭で示される)設定されたピッチで複製され、H(短い破線の輪郭で示される)についても同様である。複製ピッチの角度及びアスペクト比によって、Hからの複製された光線は、一般にHと交差せず、逆も同様である。複製ピッチは、一般に光線角度の関数であるため、一般にすべての光線に対して必要とされる条件を満たすことは可能ではない。しかしながら、上述のように、3つの条件を満たさない光線は、除外され、同じ像点から発生するが、可能であれば、条件を満たす他の光線に置き換えられ得る。
【0170】
上記の配置は、視聴者の瞳孔の両方による視聴のために対象の光照射野の表示を必要とする任意のシステムにおいて実装され得る。例は、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、ディスプレイパネル、または他のディスプレイタイプを含む。自動車用HUDの場合、本開示によるコンバイナは、コンバイナからの光を視聴者に反射する曲線状のフロントガラスの一部を形成し得る。このフロントガラスの影響は、方法1000のブロック1004(コンバイナを通る対象の光照射野の伝搬)中にモデル化され、考慮に入れられ得る。
【0171】
例示的な表示システム
図19は、画像を生成し、視聴者に対して表示するために、上述のシステムのいずれかに実装され得る例示的な表示システム1900の概略図を示す。表示システム1900は、処理システム1910と、画像生成ユニット1920と、画像複製コンバイナ1930と、視線追跡システム1940とを含む。処理システム1910は、1つ以上のプロセッサと、メモリと、ソフトウェアコンポーネントとを含み得る。1つ以上のプロセッサは、データを処理するように構成され、メモリは、様々な動作及び/または機能を実行するための命令を格納するように構成されたコンピュータ可読媒体(例えば、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体、ソフトウェアコンポーネントの1つ以上がロードされたデータストレージ)を含むことができる。プロセッサは、メモリに格納された命令を実行して、動作の1つ以上を実行するように構成される。
【0172】
処理システム1910は、処理システム1910から受け取られた命令に従って光照射野を生成するように構成された画像生成ユニット1920に結合される。画像生成ユニット1920は、画像複製コンバイナ1930が視聴者への表示のために対象の光照射野を生成するように、画像複製コンバイナ1930の入射瞳の近くに入力光照射野を表示するように配置される。
【0173】
視線追跡システム1940は、処理システム1910に結合され、視聴者の瞳孔の位置を監視するように構成される。視線追跡システム1940は、視聴者の瞳孔の位置を示すデータを処理システム1910に提供する。視線追跡システム1940は、視聴者の瞳孔の位置を示す更新されたデータを、時間の関数として周期的に、非周期的に、または連続して提供し得る。処理システム1910は、提供されたデータを使用して、対象の光照射野を表示する位置を決定する(例えば、方法1000のブロック1002で)。処理システム1910はまた、決定された位置に表示される対象の光照射野も計算する(例えば、方法1000のブロック1006)。さらに、処理システム1910は、視聴位置にある対象の光照射野と画像複製コンバイナの入力面に近い入力位置との間で、画像複製コンバイナを通る光の伝搬を定義する伝達関数を最初に決定することによって、入力光照射野を計算し、入力光照射野を得るために対象の光照射野に伝達関数を適用し、入力位置に入力光照射野を表示するように構成される。処理システム1910は、画像生成ユニット1920に、計算された入力光照射野を表示するように命令するようにさらに構成される(例えば、方法1000のブロック1010)。
【0174】
いくつかの例では、視線追跡システム1940は、初期較正手順の一部として視聴者の瞳孔の位置を示すデータを生成するように構成される。その初期較正手順の後、視線追跡システム1940は、視聴者の瞳孔の位置をさらに監視しない場合があり、その結果、位置は、別の較正が実行されるまで同じままとなる。
【0175】
傾斜画像生成ユニット
図11では、画像生成ユニット(図示せず)は、(図7a~図7dに示される配置と同様に)画像生成ユニットの射出瞳が、コンバイナ1100の入力カプラ1102とほぼ一致し、コンバイナ1100の入力カプラ1102に概して平行になるように、入力光照射野を提供するように配置される。ただし、これは当てはまる必要はない。図20は、画像生成ユニット2002と、画像複製コンバイナ2004と、画像生成ユニット2002の射出瞳にある回折格子2006とを有し、したがって、画像生成ユニット2002の射出瞳が、画像複製コンバイナの入力面に対して傾斜している、例示的な光学システム2000を示す。射出瞳の複製された画像は、コンバイナ出力アイボックスから見られるとき、単一平面上にある。したがって、射出瞳画像間のギャップを最小限に抑えることができる。これにより、目で見たときの画像の均一性は改善し得る。さらに、隣接する射出瞳画像間の光路長は最小限に抑えられ得、その結果、画像生成ユニットの照明源が低いコヒーレンス長を有するとしても、射出瞳画像全体にわたってコヒーレンスが維持され得る。これにより、目で見たときの画像の解像度は改善し得る。
【0176】
この例では、画像生成ユニット2002の射出瞳における回折格子2006によって、画像複製コンバイナ2004の出力面に垂直な軸上で視野を中心に置くことが可能になる。画像生成ユニット2002によって発せられた光線の束を傾斜させる別の手段はプリズムである。そのような回折格子またはプリズムは、画像複製コンバイナ2004の不可欠な部分となるであろう。
【0177】
実験結果
図21は、図3に示される表示システム300などの従来の表示システムによって生成された画像2100を示す。この例では、画像生成ユニットは、14mmの射出瞳直径、及び約10度の視野(対角線)を有する。画像2100は、5mmの入力瞳孔サイズを有するカメラを使用して取り込まれた。画像2100は、図5及び図6に関して説明された例に類似しているが、宇宙飛行士504、604は、宇宙船2104に置き換えられている。再び、惑星2102は、惑星2102上の任意の点から発する光線が平行にされるように、無限深さにあるオブジェクトである。したがって、予想どおり、惑星2102は、アーチファクトなしで表示される。一方、宇宙船2104は、宇宙船2104のオブジェクト上の任意の点から発する光線が平行にされないように、有限深さを有するオブジェクトである。宇宙船2104の有限深さから生じるゴーストの影響は明確に見ることができ、結果的に、満足のいかないホログラフィック視聴経験となる。
【0178】
図22は、本明細書に説明される例に従って表示システムによって生成される画像2200を示しており、伝達関数が決定され、表示前に対象の光照射野に適用される(表示システム700、800、900、1600、1900のいずれかなど)。使用された画像生成ユニットは、図21に示される画像2100を生成するために使用された従来の表示システムで使用されたのと同じであった。図21に示される画像2100を取り込むために使用されたのと同じカメラはまた、図2200に示される画像2200を取り込むために使用された。方法1000、1020のいずれかを適用する効果により、有限深さでのオブジェクトのゴーストが大幅に低減されたホログラフィック画像が得られることが観察できる。図21においてのように、惑星2202は、平行にされた光線を使用して無限深さで表示されるため、惑星2202はゴーストなしで表示される。しかしながら、ここでまた、宇宙船2204は、著しいゴーストなしに単一のオブジェクトとして示される。したがって、本明細書に説明される技術は、ホログラフィック画像を生成するために使用することができ、従来の表示システムを使用して生成されたホログラフィック画像と比較して改善された視聴経験を提供することが分かる。
【0179】
本開示の一部が、光線の概念に言及していることに留意されたい。Hがホログラムを記述している場合、「光線を除外する」概念は、「Hの一部の局所化された領域から空間周波数を除去すること」を意味すると解釈され得る。
【0180】
上記実施形態は、本発明の例示的な例として理解されるべきである。例えば、画像複製コンバイナは、任意のタイプの画像複製コンバイナを含み得、その例は、導波路コンバイナ及びフリーフォームを含み、画像複製コンバイナは、いくつかの実施形態で使用される平面的な入力面及び出力面を有する2D画像複製導波路の特定な例に限定されない。
【0181】
詳細な説明は、対象の光照射野から入力光照射野に戻す逆伝搬に焦点を当てているが、方法は、入力光照射野から対象の光照射野への順方向伝搬にも等しく適用できる。
【0182】
本発明のさらなる実施形態は、例えば、同様の設計制約及び仮定を使用する方法などの代替設計方法を使用して想定される。任意の1つの実施形態に関連して説明された任意の特徴は、単独でまたは説明した他の特徴と組み合わせて使用し得、また、他の任意の実施形態の1つ以上の特徴、または任意の他の実施形態の任意の組み合わせと組み合わせて使用し得ることを理解されたい。さらに、添付の特許請求の範囲において定義される、本発明の範囲から逸脱することなく、上記説明されていない同等物及び修正も採用され得る。

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像複製コンバイナを使用して対象の光照射野を表示する方法であって、
視聴位置に表示される対象の光照射野を決定することと、
前記視聴位置と前記画像複製コンバイナの入力面に近い入力位置との間で、前記画像複製コンバイナを通る光の伝搬を記述する伝達関数を決定することと、
前記決定された伝達関数を前記対象の光照射野に適用することによって入力光照射野を決定することと、
前記入力位置に前記入力光照射野を表示することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記画像複製コンバイナの前記入力面に入射する光線の複数のコピーが、前記対象の光照射野に存在すると判断することと、
前記入力光照射野から前記光線を除外することと
を含む、いずれかの請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像複製コンバイナの前記入力面に入射する光線の複数のコピーが、前記対象の光照射野に存在すると判断することと、
前記光線の少なくとも2つのコピーが実質的に同等であると判断し、前記光線の前記少なくとも2つのコピーを前記入力光照射野に保持することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象の光照射野から前記画像複製コンバイナの入射瞳に逆伝搬された光線が、前記入力光照射野に存在しないと判断することと、
前記対象の光照射野から前記光線を除外することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記除外された光線を補償するために別の光線のパワーを増加させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記対象の光照射野が、前記視聴位置における視聴者の瞳孔と少なくとも同程度に大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の光照射野の面積が視聴者の瞳孔の面積に満たず、前記方法が、
ゼロ振幅の要素を用いて前記対象の光照射野を拡大して、その結果、前記拡大した対象の光照射野が、少なくとも前記瞳孔の前記サイズの面積を有すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象の光照射野を決定することが、
離散フーリエ変換を使用して前記対象の光照射野を平面波のセットに分解することと、
ゼロ振幅の要素を含むパディングを前記対象の光照射野の境界に適用することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
視聴者の瞳孔のポジションを決定すること
を含み、
前記視聴位置が、前記視聴者の瞳孔の前記決定されたポジションである、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の光照射野が、それぞれが、各々の視聴位置を有する複数の別々の光照射野を含み、前記方法が、
対象の光照射野を決定し、前記複数の別々の光照射野のそれぞれの入力光照射野を決定することと、
表示のために前記複数の別々の光照射野のそれぞれの前記入力光照射野を結合することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の光照射野及び前記入力光照射野が、ホログラフィックフィールドまたは4次元光照射野である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記対象の光照射野がホログラフィック光照射野であり、
前記視聴位置が実質的に一定であり、
前記入力光照射野を決定することが、前記視聴位置と前記入力位置との間の前記伝搬に基づいた所定の定数を使用する、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記入力位置が、前記画像複製コンバイナの前記入力面に平行ではない表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記伝達関数を決定することが、前記入力光照射野の少なくとも2つの異なる複製から受け取られた光線が、前記対象の光照射野を形成するものであると判断することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つの異なる複製から受け取られた光線が、仮想オブジェクト上の単一の点で一致する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表示システムであって、
画像複製コンバイナと、
前記画像複製コンバイナに入力を提供するように配置された画像生成ユニットと、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を実行し、前記画像生成ユニットに前記入力光照射野を表示させるように構成された処理システムと
を備える、前記表示システム。
【請求項17】
前記視聴ポジションを示すデータを前記処理システムに提供するように配置された視線追跡システムを備える、請求項16に記載の表示システム。
【請求項18】
前記画像複製コンバイナが、すべての複製が、同じ入力電力に対して実質的に同じ出力電力を有するように構成される、請求項16に記載の表示システム。
【請求項19】
前記画像複製コンバイナへの前記入力が、前記画像複製コンバイナの前記入力面に平行ではない、請求項16に記載の表示システム。
【請求項20】
前記画像複製コンバイナが、前記入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され、隣接する複製画像間のギャップが、視聴者の瞳孔の直径よりも大きくない、請求項16に記載の表示システム。
【請求項21】
前記画像複製コンバイナが、前記入力光照射野の複数の複製画像を生成するように配置され、前記複数の複製画像の結合位相体積が、対象の位相体積の大部分をカバーする、請求項16に記載の表示システム。
【請求項22】
前記複製画像の前記位相体積が、前記対象の位相体積のごく一部分で重複する、請求項21に記載の表示システム
【請求項23】
前記画像複製コンバイナの複製ピッチが、前記入力瞳孔の幅にほぼ等しい、請求項16に記載の表示システム。
【請求項24】
前記画像複製コンバイナの複製ピッチが、前記視聴者の瞳孔の直径の半分よりも大きい、請求項16に記載の表示システム。
【請求項25】
請求項16に記載の表示システムを備える、ヘッドマウントディスプレイまたはヘッドアップディスプレイ。
【国際調査報告】