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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】急性及び慢性創傷のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/185 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/191 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/77 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/185
A61K45/00
A61P17/02
A61P17/00
A61P17/00 101
A61P43/00 121
A61K31/10
A61K31/045
A61K31/357
A61K33/10
A61K31/198
A61K31/191
A61K31/695
A61K31/77
A61K9/06
A61K47/02
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520943
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022067593
(87)【国際公開番号】W WO2023057098
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021000025541
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522281420
【氏名又は名称】ディーイービーエックス メディカル ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DEBX MEDICAL HOLDING B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ビグノッツィ, カルロ アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】コゴ, アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クイント, ベルトゥス ヨゼフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC50
4C076DD27
4C076DD64
4C076FF67
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA12
4C086FA02
4C086HA16
4C086HA18
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA89
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206DB02
4C206FA55
4C206JA09
4C206JA19
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、急性若しくは慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、若しくは口腔から、細菌バイオフィルム及び/若しくは壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、又は急性若しくは慢性の皮膚病変を消毒することに使用するための、一般式(A)

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)を有するスルホン酸に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性又は慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、又は口腔から、細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、一般式(A)
【化1】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、前記アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、前記置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含む組成物。
【請求項2】
急性又は慢性の皮膚病変を消毒することに使用するための、一般式(A)
【化2】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、前記アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、前記置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含む組成物。
【請求項3】
非水性プロトン受容体をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記非水性プロトン受容体が、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、無水炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、無水二酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの成分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記非水性プロトン受容体がジメチルスルホキシドであるか又はジメチルスルホキシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
最大で5wt.%の水を含有し、好ましくは水を実質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記スルホン酸が、2~700の間、好ましくは2~200の間、より好ましくは2~100の間、さらにより好ましくは2~10の間、最も好ましくは2~5の間の酸解離定数(K)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
一般式(A)(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、前記ベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、前記置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)による別のスルホン酸をさらに含み、前記スルホン酸と他のスルホン酸とが異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記スルホン酸の量又は前記スルホン酸の総量が、前記組成物の総重量に対して50w/w%~90w/w%、好ましくは60w/w%~80w/w%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記非水性プロトン受容体成分が、前記組成物の総重量に対して5w/w%~50w/w%、好ましくは10w/w%~40w/w%の量である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
硫酸を実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
スルホン酸とその塩とのモル比が、少なくとも10:1、より好ましくは20:1、最も好ましくは50:1であり、特に前記その塩が実質的に存在しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記スルホン酸が、式(I)
【化3】

(式中、nは0~20、好ましくは1~20、より好ましくは2~13の整数であり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するアルキルベンゼンスルホン酸であり、急性又は慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
nが0、1又は11と等しい、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の4位にある、請求項13又は14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
nが0~20、好ましくは1~13であり、前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の4位に位置する、請求項13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
nが0、1、2又は12と等しく、前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の3位又は4位、好ましくは4位にある、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記アルキルベンゼンスルホン酸が2~5の間の酸解離定数を有する、請求項13~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記スルホン酸が、4-ドデシル-ベンゼン-スルホン酸、メチル-ベンゼン-スルホン酸及びエチル-ベンゼン-スルホン酸から選択される、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記使用が、前記組成物を前記皮膚病変の細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織に塗布することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記使用が、前記組成物を塗布した後1秒~30分の間の時間内に前記組成物を前記皮膚病変から除去することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
急性又は慢性の皮膚病変を消毒するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
アモルファスシリカ及び好ましくはテトラエトキシランをさらに含み、ゲルとして製剤化されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
一般式(A)
【化4】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、前記ベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、前記置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を50w/w%~90w/w%、好ましくは60w/w%~80w/w%の量で、並びにジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、無水炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、無水二酸化ケイ素、テトラエトキシシラン及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのプロトン受容体を5w/w%~50w/w%、好ましくは10w/w%~40w/w%の量で含む組成物であって、好ましくは前記組成物がアモルファスシリカ及びより好ましくはテトラエトキシランをさらに含み、ゲルとして製剤化されている、組成物。
【請求項25】
前記非水性プロトン受容体がジメチルスルホキシドであるか、又はジメチルスルホキシドを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
最大で5wt.%の水を含有し、好ましくは水を実質的に含まない、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
前記スルホン酸が、2~700の間、好ましくは2~200の間、より好ましくは2~100の間、さらにより好ましくは2~10の間、最も好ましくは2~5の間の酸解離定数(K)を有する、請求項24~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
一般式(A)(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、前記ベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、前記置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)による別のスルホン酸をさらに含み、前記スルホン酸と他のスルホン酸とが異なる、請求項24~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
硫酸を実質的に含まない、請求項24~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
スルホン酸とその塩とのモル比が、少なくとも10:1、より好ましくは20:1、最も好ましくは50:1であり、特に前記その塩が実質的に存在しない、請求項24~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記スルホン酸が、式(I)
【化5】

(式中、nは0~20、好ましくは1~20、より好ましくは2~13の整数であり、前記アルキル鎖は前記ベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するアルキルベンゼンスルホン酸である、急性又は慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、請求項24~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
nが0、1又は11と等しい、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の4位にある、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
nが0~20、好ましくは1~13であり、前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の4位に位置する、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
nが0、1、2又は12と等しく、前記アルキル鎖が前記ベンゼン環の3位又は4位、好ましくは4位にある、請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
前記アルキルベンゼンスルホン酸が2~5の間の酸解離定数を有する、請求項31~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記スルホン酸が、4-ドデシル-ベンゼン-スルホン酸、メチル-ベンゼン-スルホン酸及びエチル-ベンゼン-スルホン酸から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項38】
急性又は慢性の皮膚病変を消毒するための、請求項31~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
アモルファスシリカ及び好ましくはテトラエトキシランをさらに含み、ゲルとして製剤化されている、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、急性及び慢性の両方の皮膚創傷の清浄及び/若しくは消毒のための、並びに表面身体病変、特に創傷及び慢性の潰瘍において存在するバイオフィルムの除去のための、又は口腔、特に歯周ポケット、インプラント周囲ポケットからの、若しくは創傷からの壊死若しくは感染した組織の除去のための、特に医療スタッフ(医者/看護師)により使用可能であるか、又は患者自身(若しくは彼らの介護者)によっても直接使用可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
急性及び慢性の両方の皮膚創傷は、複製し持続的な炎症応答を引き起こす微生物、特に細菌を含有することがよく知られている。慢性病変では、ウイルス微生物の継続的な存在が重度且つ持続的な炎症応答をもたらし、最終的に宿主生物への損傷の原因となる。実際、炎症メディエータの持続的な産生及び好中性顆粒球の一定の遊走が起こる。好中性顆粒球の一定の遊走は、創傷に、組織損傷の主な原因である細胞溶解生酵素及びフリーラジカルを放出する。さらにマクロファージが阻害され、結果として慢性病変は自動再生することができなくなる。その上、限局的な血栓症が起こり得、血管収縮作用を伴う代謝産物が放出され、血管収縮作用を伴う代謝産物は組織の低酸素症を誘発し、さらなる細菌増殖及び組織損傷を引き起こす。いくつかの感染性細菌種の相当な侵襲性に起因して、微生物成分は、病変を悪化させバイオフィルムの層を増加させる原因となり得る。
【0003】
用語「バイオフィルム」は、活性であるがゆっくりと複製する細菌により産生され、病変床(lesion bed)に付着する、多糖、核酸、タンパク質、脂質及び糖タンパク質材料の薄い層と定義する。感染した創傷で形成されるバイオフィルムは、治癒の遅延の原因となる。実際、バイオフィルムの存在下で、個々の微生物が相互に交換される栄養及び代謝産物と相互作用して、その結果実際に組織化された細菌集団を確立するための状態が作り出される。したがって、バイオフィルムは感染の保護として作用し、創傷に細菌の抵抗性が突発し、細菌の抵抗性は細菌を抗菌剤、例えば抗生物質及び防腐剤の作用から保護する可能性がある。通常、バイオフィルムは微生物の複数の層からなり、微生物細胞間のコミュニケーションは、バイオフィルム自体の発生及び維持のための必須の因子である。
【0004】
用語「慢性皮膚潰瘍」は、適切な処置の少なくとも6週間後に治癒に向けて進行しない皮膚病変と定義する。病因とは無関係に(実際、糖尿病性、静脈性、動脈症性、血管炎性及び外傷後の慢性潰瘍が存在する)、慢性皮膚潰瘍は、皮膚潰瘍を慢性にするいくつかの共通な発病機構を示す。これらの発病機構のうち、最もよく知られているものは、滲出液の炎症性タンパク質(サイトカイン及びプロテアーゼ)の過剰な存在、病原微生物による病変底部の持続的なコロニー形成、病変底部を薬物及びドレッシングについて接近不可能にするバイオフィルムの発生である。慢性皮膚潰瘍のこれらの特徴は、非生存材料の除去行為の自己分解過程、肉芽組織の形成に必須である新たな血管の増殖、並びに皮膚細胞及び表皮細胞の増殖を緩徐化又は停止する。
【0005】
慢性皮膚潰瘍、例えば下肢の慢性皮膚潰瘍は、世界中にわたる問題である。実際、世界人口の1.5%がそのような病理に罹患していると推定される。年齢は有意なリスク因子であるため、前記慢性皮膚潰瘍の有病率は小児の年齢では低く、高齢では非常に高い。
慢性の皮膚潰瘍の問題と特に関連して上記で強調されたものに加えて、微生物増殖の現象が、さらに、口腔に関連する病理、例えば歯周病及びインプラント周囲炎の原因となるか又は口腔に関連する病理に関与することが観察されるであろう。
【0006】
用語「歯周病」は、歯を支持する組織又は歯周組織の系を攻撃する炎症性病理の群と定義し、歯周組織表面(歯肉)及び歯周組織深部(歯周靱帯、根セメント質(root cementum)及び歯槽骨)に区別され得る。歯周病の最も頻度の高い原因は、微生物性、特に細菌性であり、関与する微生物は細菌プラークに通常存在するものである。感染は、過剰な細菌増殖及び/又は生物の防衛機構の減少に起因して、組織を健康に保つ正常な平衡が失われる場合に起こる。炎症が歯周組織表面のみである場合、臨床像は歯肉炎であり、一方で(適切な処置なしで)炎症が歯肉領域を超えて広がり、歯周組織の深部域(歯槽骨、歯周靱帯及びセメント質)を冒す場合、臨床像は歯周炎である。歯肉炎は歯の近くの歯肉(辺縁歯肉)を攻撃し、症状(適切な治療処置後に完全に可逆的となる)は、歯肉辺縁の発赤、浮腫及び機械的刺激後の出血を含む。歯周炎では歯を支持する系が破壊され、アタッチメント及び骨の喪失、ポケットの形成及び歯肉の収縮を呈する。歯周炎の典型的な徴候は、歯のぐらつき(dental looseness)に関連する歯周ポケットの形成である。歯を支持する組織の崩壊は、大半の場合不可逆的である。歯肉炎は常に歯周炎に先行し、そのため、歯肉炎を予防することにより歯周炎を予防することが可能である。
【0007】
歯肉炎及び歯周炎は本質的には細菌性であるが多因子の病因を示す病理であり、3つの共通因子である、宿主の感受性、環境因子及び行動因子が相互作用する。細菌プラークは歯周病の発症に必須であるが、宿主との相互作用により、並びに臨床経過に影響を及ぼす多数の局所及び全身性の因子、例えば糖尿病などにより影響を受ける。イタリアでは、歯周病は人口の約60%を冒し、35歳から44歳の間の個人が特に罹患する。このパーセンテージは、表面形態(歯肉炎、歯の近くの歯肉又は辺縁歯肉の部分を冒す)及び深部形態(厳密な歯周炎(periodontitis proper))の両方を含む。
【0008】
歯周病の処置は、疾患の進行を停止し、考えられる再発の発症を予防又は減少することを目的とする必要がある。特に、歯周炎治療では、病理の多因子的性質を考慮し、問題の複雑性に対応することができる臨床処置を提供する必要がある。病原の管理は、歯肉縁上又は歯肉縁下の細菌プラークの機械的除去(例えばキュレット又は超音波デバイスによる)により、並びに局所又は全身性薬物の考えられる使用により、遂行及び達成される。歯周の病原微生物のうち、以下の種が数に含められる:アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)及びトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)。
【0009】
上記で強調されたことから、歯周病を効果的に防ぐために、口腔における細菌負荷の減少が必要であることが明らかである。
【0010】
用語「インプラント周囲炎」は、オッセオインテグレーションされたインプラント(固定された歯科補綴物の支持体として作用する人工根)に隣接する組織を攻撃し、歯槽骨組織の崩壊及び喪失をもたらす炎症プロセスと定義する。原因は可変的であり、補綴物をインプラントする外科手技及び随伴する細菌感染の両方に関連し得る。それにもかかわらず、細菌の病原学的成分は、補綴物の外科的インプラントに関する問題を悪化させることに留意されたい。オッセオインテグレーションプロセスを保護するために、抗生物質及び抗炎症薬の投与、関係する区域の可能性のある外科的処置(いわゆる掻爬術)、並びに誘導骨再生が使用される。
【0011】
すべての処置はインプラントの表面から細菌を排除することを目的とし、非観血技術(blind technique)(すなわち、目視可能な歯肉を突刺することのない)及び観血手術(すなわち、歯肉の突刺及び挙上)の両方である。非観血技術処置は、侵襲性は低いが骨再生を伴うことができず、歯肉弁の挙上を常に必要とする。さらに、非観血技術処置は実質的に「非観血的」な方法で行われる処置であり、処置された区域における微生物負荷が実際に最小化されたかどうかを見て確認することが可能とはならない。
【0012】
機械的な種類の処置は、キュレット、重炭酸ナトリウム噴射デバイス又は粉末噴射デバイス、粉砕機械(インプラントのすべての表面コイル及び粗さを除去するための)の使用を提供する。非機械的処置は、活性な原理をゆっくりと放出する洗口液及び組成物の両方として、防腐剤及び抗生物質溶液の使用を提供する。レーザーは、表面を物理的に滅菌するために使用することができる。
【0013】
化学的に消毒することによるか又は物理的に滅菌することによる細菌の排除に制限されるすべての処置の欠点は、細菌が消毒又は滅菌された区域に再びコロニー形成するということである。これは、細菌がインプラントにのみ存在するのではなく、実質的に口腔に遍在するためである。
【0014】
中度から重度のインプラント周囲炎及び歯周病の両方において、インプラント又は歯に隣接した感染した組織を除去するために外科的治療(局所麻酔下の創傷清拭)を達成することがしばしば必要であることにも留意されたい。それにもかかわらず、外科手技は単独では病変を形成するバイオフィルムを感染に除去することはできないため、抗生物質及び消毒剤の投与に創傷清拭を随伴させることが必要である。
【0015】
口腔の病理の文脈では、アフタも、その特定の頻度のために言及されなければならない。用語「アフタ」は、口腔内側の粘膜の損傷により引き起こされる痛みを伴う潰瘍と定義する。これらの潰瘍は周期的に形成され、あるエピソードから次の間に完全に治癒し得る。大半の場合では、個々のアフタは8~10日の間で変動する持続期間を有する。アフタの大半は口の非角質化上皮の表面に現れ、より具体的には、接着歯肉(adherent gingiva)、硬口蓋及び舌の裏側以外のすべての場所に現れる。アフタの症状は、軽度の不快感から飲食の困難まで変動する。この状態は非常に一般的であり、人口の約20%が罹患する。アフタの形成は多くの場合幼児期又は青年期に発症し、この状態は通常数年続き、その後徐々に消失する。現在、アフタのための決定的な処置は未だ特定されておらず、処置は、疼痛管理、治癒時間の減少及び再発の頻度の減少に集中している。
【0016】
上記で説明されたことから、皮膚病理(慢性皮膚潰瘍)の最適な処置及び口腔の病理(歯周病、インプラント周囲炎、アフタ)は細菌汚染の劇的な減少を必要とし、次にバイオフィルム及び壊死又は感染した組織の有効な除去を必要とすることが明らかである。それにもかかわらず、壊死又は感染した組織を除去するために最も使用される外科的方法、すなわち創傷清拭は、多数の欠点(患者の出血のリスク、入院の必要性、複雑性及び実行のための高いコスト)を有する。
【0017】
近年、相当な数の研究が、微生物の病原性及びバイオフィルムの形成に対する脂質の寄与を強調している。これらの分子は、細菌及び真菌バイオフィルムをその潜在的に溶解性の薬剤による侵襲から保護する細胞外組織の重要な構成要素を構成する。バイオフィルムを囲む密な細胞外基質は、主に糖タンパク質(55%)、炭水化物(25%)、核酸(5%)及び脂質(15%)、主に糖脂質及びスフィンゴ脂質からなり、脂質は表面への細胞付着及びバイオフィルムの形成に必須である。前述の組成物を考慮すると、石鹸及び洗剤の成分であるアニオン性界面活性剤の使用は、バイオフィルムの成分の溶媒化及びその結果としての分解を可能にするであろう。しかし、異なる種類の石鹸を慢性創傷に塗布して行った試験では、決して所望の結果は得られなかった。実際、以前の研究により、慢性創傷及び歯周ポケットにも存在するバイオフィルムの破壊における、スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸の並外れた活性が明らかとなった(国際出願PCT/IB2019/051146、国際出願PCT/EP2020/051652)。バイオフィルムの崩壊に続き、次に処置した創傷の自発的な進行性の治癒が観察される。
【0018】
それにもかかわらず、存在する微生物種を変性させると同時に、皮膚潰瘍に存在するバイオフィルム及び壊死又は感染した組織の崩壊及び除去のために等しく効率的な方法で使用することができる、代替の組成物を提供することが所望されている。
【0019】
特定の例では、97%の水から構成されるバイオフィルムと接触する際の、プロトンと対応するスルホンアニオンとの解離に起因する、接触時間に依存する灼熱感を伴う発熱効果の存在により、専門の医療看護スタッフによるこれらの製剤の塗布が必要となる。
【0020】
したがって、侵襲性が低い方法で、したがっておそらく患者により自主的に、しかし等しく効率的な方法で、存在する微生物種を変性させると同時に、皮膚潰瘍に存在するバイオフィルム及び壊死又は感染した組織を除去することを可能にする新たな組成物がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、急性若しくは慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、又は口腔から、細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、一般式(A)
【化1】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含む組成物の使用に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、急性又は慢性の皮膚病変を消毒することに使用するための、一般式(A)
【化2】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含む組成物の使用に関する。
【0023】
アリールスルホン酸は、一般に酸性度が強いが、酸性度は置換基に依存する。本発明による例示的なスルホン酸、並びにスルホン酸のpK及び酸解離定数Kを表1に示す。
【0024】
好ましくは、組成物は、非水性プロトン受容体をさらに含む。発明者らは、スルホン酸と非水性プロトン受容体とを組み合わせることが、スルホン酸の酸性活性により引き起こされる皮膚病変及び周囲の皮膚へのいかなる損傷も予防すると同時に、皮膚病変に存在する細菌バイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織を除去する驚くべき組合せの効果をもたらすことを見出した。
【0025】
スルホン酸及び非水性プロトン受容体を含有する組成物は、好ましくは急性又は慢性の皮膚潰瘍において、皮膚病変に存在する細菌バイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織を除去するのに特に有用であることが証明された。
【0026】
特に、強スルホン酸の場合、侵襲的な作用をもたらし得る強酸性は、望ましくは非水性プロトン受容体を添加することにより組成物において補正される。
【0027】
発明者らにより、非水性プロトン受容体の代わりに水を組成物に添加した場合、組成物が皮膚病変に存在するバイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織を除去するのに有効であることを相当に妨げることがさらに見出された。
【0028】
抗菌性効果は、いくつかのスルホン酸化合物及びスルホン酸化合物の組成物について報告されている。しかし、これらの公知の組成物が水を相当な量(少なくとも10wt.%以上)で含有し、公知の組成物が非水性プロトン受容体を含有しないことを考慮すると、これらの組成物は皮膚病変に存在するバイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織を除去するのに有効ではない。これらの場合、バイオフィルムを除去するために、追加の機械的、すなわち外科的な創傷清拭(debriment)行為が必要であることが見出されている。
【0029】
好ましい実施形態では、非水性プロトン受容体は、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、無水炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、無水二酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの成分である。好ましくは、非水性プロトン受容体はジメチルスルホキシドである。
【0030】
別の態様では、本発明は、急性又は慢性の皮膚創傷の消毒及び清浄のための、好ましくは、2~10の間、好ましくは2~5の間の酸解離定数Kを有する弱スルホン酸、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸の使用に関する。
【0031】
弱スルホン酸も、好ましくは急性又は慢性の皮膚潰瘍において、皮膚病変に存在する細菌バイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織を除去するのに特に有用であることが証明された。発明者らによって行われた実験では、弱スルホン酸は、その成分に対する並外れた界面活性効果とともに細菌バイオフィルムに浸透することができ、熱又は痛みの感覚を与えることなくその完全な除去を可能にすることが実証された。
【0032】
したがって、特に弱スルホン酸の軽度の活性は、副作用、例えば灼熱感を引き起こすことなく、バイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織の消毒及び除去の優秀な結果を得ることを可能にする。結果として、弱スルホン酸は、専門のスタッフ、例えば医師及び看護師の介入なしに患者によって自主的に適用することができ、したがって公知の組成物の限界を克服する。
【0033】
本発明は、好ましくは塩基性の特徴を有する溶媒及び/又は物質/溶媒であり、したがってプロトンを受容することが可能であり、本発明による組成物の酸性度を調節、好ましくは減少させることを可能にする、非水性プロトン受容体を少なくとも有する混合物にスルホン酸を含む組成物にも関する。好ましくは、スルホン酸は弱スルホン酸である。
【0034】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの非水性プロトン受容体は、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、無水炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、無水二酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される。
【0035】
本発明の組成物は、50w/w%~90w/w%の間、好ましくは60w/w%~80w/w%の間の濃度のスルホン酸を含む。
【0036】
本発明の組成物は、非水性プロトン受容体を、5w/w%~50w/w%、好ましくは10w/w%~40w/w%の量で含む。
【0037】
一部の実施形態では、スルホン酸が非水性プロトン受容体又は非水性プロトン受容体の混合物に完全に溶解可能でない場合、必要であれば少量の水が最大5w/w%添加される。
【0038】
本発明は、例示的且つ非限定的な形態の実施を例示する添付の図面を参照して、よりよく理解及び実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】4-エチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)を含有する本発明による組成物の沈着区域周辺の微生物増殖の阻害の環を示す、ペトリ皿の写真である。
図2】4-メチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)を含有する本発明による組成物の沈着区域周辺の微生物増殖の阻害の環を示す、ペトリ皿の写真である。
図3】70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2プロパノール(30%)を含む本発明による組成物の沈着区域周辺の微生物増殖の阻害の環を示す、ペトリ皿の写真である。 70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及びDMSO(30%)を含む組成物を用いると、類似の結果が得られる。
図4】本発明による組成物を用いて足の親指に存在する慢性創傷を処置する効果を示す写真である。
図5】本発明による組成物を用いて患者の脚に存在する慢性創傷を処置する効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、急性若しくは慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から、又は口腔から、細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、一般式(A)
【化3】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含有する組成物に関する。
【0041】
本発明は、急性又は慢性の皮膚病変を消毒することに使用するための、一般式(A)
【化4】

(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、アレーン基又はベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)
を有するスルホン酸を含有する組成物に関する。
【0042】
好ましくは、組成物は、非水性プロトン受容体をさらに含む。
【0043】
好ましくは、非水性プロトン受容体は、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、無水炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、無水二酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの成分である。
【0044】
好ましくは、非水性プロトン受容体は室温の液体である。好ましい一実施形態では、非水性プロトン受容体は、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される溶媒である。
【0045】
より好ましくは、非水性プロトン受容体は、組成物のスルホン酸のための溶媒である。
【0046】
最も好ましくは、非水性プロトン受容体はジメチルスルホキシドであるか、又はジメチルスルホキシドを含む。
【0047】
特に、組成物は、最大で5wt.%の水を含有し、好ましくは水を実質的に含まない。
【0048】
実施形態では、スルホン酸は、2~700の間、好ましくは2~200の間、より好ましくは2~100の間、さらにより好ましくは2~10の間、最も好ましくは2~5の間の酸解離定数(K)を有する。
【0049】
実施形態では、スルホン酸は、一般式(I)を有するベンゼンスルホン酸、グアヤコールスルホン酸、2-フェノールスルホン酸、3-フェノールスルホン酸、4-フェノールスルホン酸及びアルキルベンゼンスルホン酸から選択される。
【0050】
実施形態では、組成物は、一般式(A)(式中、Rはアレーン基、好ましくはベンゼン基であり、ベンゼン基は、アルキル、OH及びアルコキシ、例えばメトキシから独立的に選択される1つ又は複数の置換基と任意選択で置換されており、置換基は好ましくは1~20個の炭素原子数を有するアルキルであり、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位にある)による別のスルホン酸をさらに含み、このスルホン酸は他のスルホン酸とは異なる。組成物は、一般式(A)によるスルホン酸と一般式(A)による別のスルホン酸との混合物を含有する。
【0051】
実施形態では、スルホン酸の量又はスルホン酸の総量は、組成物の総重量に対して50w/w%~90w/w%、好ましくは60w/w%~80w/w%である。
【0052】
実施形態では、非水性プロトン受容体成分は、組成物の総重量に対して5w/w%~50w/w%、好ましくは10w/w%~40w/w%の量である。
【0053】
好ましくは、組成物は硫酸を実質的に含まない。
【0054】
実施形態では、スルホン酸とその塩とのモル比は、少なくとも10:1、より好ましくは20:1、最も好ましくは50:1であり、特にその塩は実質的に存在しない。スルホン酸の塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等を含む任意の塩であり得る。
【0055】
実施形態では、使用は、組成物を皮膚病変の細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織に塗布することを含む。
【0056】
実施形態では、使用は、組成物を塗布した後1秒~30分の間の時間内に組成物を皮膚病変から除去することを含む。
【0057】
特定の実施形態では、使用は、組成物を塗布した後1秒~10分の間の時間内、好ましくは5分以内、より好ましくは1分以内に組成物を皮膚病変から除去することを含む。この使用は、スルホン酸が2~100の範囲内のKを有する場合、特にスルホン酸が10~100の範囲内のKを有する場合に好ましい。
【0058】
非水性プロトン受容体を選択すること、及びスルホン酸と非水性プロトン受容体との相対量を調節することにより、塗布の時間窓が調整され得る。
【0059】
特定の実施形態では、使用は、組成物を塗布した後1秒~30分の間、好ましくは1分~30分の間、より好ましくは5分~30分の間の時間内に組成物を皮膚病変から除去することを含む。この使用は、スルホン酸が100より低いK、特に10より低いKを有する場合に好ましい。非水性プロトン受容体を選択すること、並びにスルホン酸及び非水性プロトン受容体の相対量を調節することにより、塗布の時間窓が調節され得る。
【0060】
特定の一実施形態では、本発明は、急性又は慢性、好ましくは慢性の皮膚病変から細菌バイオフィルム及び/又は壊死若しくは感染した組織を除去することに使用するための、一般式(I)
【化5】

を有するアルキルベンゼンスルホン酸に関する。
【0061】
式(I)中、nは0~20、好ましくは1~20、好ましくは2~13の整数である。好ましくは、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20と等しい。
【0062】
アルキル鎖は、ベンゼン環の3位又は4位にあり得る。
【0063】
好ましくは、式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸は、2~10の間、好ましくは2~5の間の酸解離定数Kを有する。
【0064】
好ましい一実施形態では、アルキル鎖はベンゼン環の4位にある。
【0065】
好ましい一実施形態では、アルキル鎖は、0~20の間、好ましくは1~13の間のnを有し、ベンゼン環の4位に位置する。
【0066】
本発明の一実施形態では、nは0、1又は11と等しく、アルキル鎖はベンゼン環の3位又は4位、好ましくは4位にある。特に好ましい一実施形態では、式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸は、4-エチル-ベンゼン-スルホン酸である。
【0067】
好ましい一実施形態では、アルキルベンゼンスルホン酸は、有機スルホン酸の中で最も弱いもののうちの1つである4-ドデシル-ベンゼン-スルホン酸
【化6】

であり、4-ドデシル-ベンゼン-スルホン酸は、推定2~3の範囲内の酸解離定数Kを有する。これは、バイオフィルムと接触する際に酸形態の約57%が解離しないままであることを意味する(値は、二次方程式、X+K×X-70×K=0(式中、Xはプロトン濃度(H+)濃度を表す)を解くことにより推定する)。したがって、中性形態は、非極性部分、特にバイオフィルムの脂質成分に容易に浸透する能力を有する。同時に、水の存在下で起こる解離は、プロトンの高い水和エネルギーによる脱水効果をもたらし、バイオフィルム及びバイオフィルムが含有する微生物種に存在する水分子を捕捉することができる。
【0068】
バイオフィルムに対するドデシルベンゼンスルホン酸の作用の有効性は、これらの2つの作用の繊細且つ予測不可能な均衡を生じる可能性が最も高い。
【0069】
この効果は特に4-ドデシル-ベンゼン-スルホン酸に関して観察されたが、好ましくは2~100の間の酸解離定数を有するすべての弱アルキルベンゼンスルホン酸に置き換え可能である。
【0070】
したがって、式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸は、急性及び/又は慢性の皮膚病変(創傷及び/又は潰瘍)に対する消毒作用を発揮し、副作用、例えば灼熱感を引き起こすことなくバイオフィルム並びに壊死及び/又は感染した組織の除去をもたらす。結果として、弱スルホン酸は、専門のスタッフ、例えば医師及び看護師の介入なしに患者により自主的に適用することができ、したがって公知の組成物の限界を克服する。
【0071】
この作用は、病変に存在するバイオフィルムに浸透し、壊死組織の脱離及び水で単に洗浄することによる完全な除去を可能にすることができる、酸の界面活性能力に起因する。さらに、界面活性作用は酸解離の効果と一緒になって、バイオフィルムに存在する微生物、特に、細菌及び真菌の排除に寄与する。
【0072】
酸解離定数の値が600ほどの他のスルホン酸、例えば4位に非極性の基を含有するもの、例えば3-メチルベンゼンスルホン酸又は4-エチルベンゼンスルホン酸は、たとえこれらが上に列挙した理由及びより長いアルキル鎖に起因して4-ドデシルベンゼンスルホン酸よりも低い浸透効果及びより低い界面活性を有していても、相当な抗菌活性を有する。
【0073】
患者のバイオフィルムに行った試験では、実際、4-ドデシルベンゼンスルホン酸の抗菌活性より低いけれども良好である抗菌活性が明らかとなった。
【化7】
【0074】
別の態様では、本発明は、好ましくは適切な非水性補助成分、好ましくは非水性プロトン受容体として作用し、組成物の酸性度を調節する、特に減少させることができる補助成分と組み合わせて、式(A)のスルホン酸、好ましくは式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸を活性な原理として含む組成物に関する。
【0075】
本発明による組成物は、塗布からわずか数十秒以内に、バイオフィルム及び壊死組織を感染した皮膚の区域から除去することができる。組成物は、その分布を可能にするのに適切な任意の手段により、処置される区域に直接塗布することができる。
【0076】
数分の接触時間の後、組成物は、シンプルガーゼを使用し、処置された皮膚又は粘膜の表面を生理溶液又は滅菌水の流れで洗浄することにより、皮膚又は粘膜から容易に除去することができる。
【0077】
したがって、本発明による組成物を皮膚病変に塗布することにより、外科的創傷清拭の手順に関連する周知の欠点なしに1回の外科的創傷清拭を通して得ることができるのと同じ効果を得ることが可能である。この新規且つ有効な治療可能性は使用可能であり、軽度、中等度及び重度の場合、直接患者によるものであっても有意な利益を有する。
【0078】
式(A)のスルホン酸、好ましくは式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸を含む本発明による組成物は、溶液として又はゲルとして製剤化することができ、急性及び慢性の皮膚潰瘍に容易に塗布することができる。
【0079】
本発明による組成物が呈する驚くべき意外な性質は、本発明による組成物がバイオフィルム及び壊死又は感染した組織で作用することができ、バイオフィルム及び壊死又は感染した組織の崩壊を引き起こし、塗布から数分後にシンプルガーゼ及び水又は生理食塩水溶液の流れを用いてバイオフィルム及び壊死又は感染した組織の容易且つ痛みのない除去を可能にし、したがって複雑で痛みのある高価な外科手技を回避することができるということである。
【0080】
組成物の作用は、バイオフィルムの成分に対するアルキルベンゼンスルホン酸の浸透及び界面活性力に明らかに起因し、組成物の作用は、高い水和エンタルピー(-1130KJ/モル)を有し、バイオフィルムを構成するか又は感染した組織で増殖する微生物種の脱水を引き起こす、水素イオン(H)又はプロトンのその後の放出にも起因する。この作用機序は存在する微生物種に関わらず起こり、本発明による組成物を、いかなる微生物種に対しても、たとえ細菌、真菌又はウイルスであっても活性とする。
【0081】
さらに、発明者らは、本発明による組成物の酸性度を調整する、より正確には減少させることができる少量の溶媒又は非水性プロトン受容体と組み合わせた、式(A)のスルホン酸、特に式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸の使用を見越していた。本発明による組成物の酸性度を調節する、より正確には減少させることができる少量の溶媒又は非水性プロトン受容体と組み合わせた、式(A)のスルホン酸、特に式(I)のアルキルベンゼンスルホン酸の使用は、健康な周囲組織にいかなる損傷ももたらすことなく、感染性微生物種を排除すると同時に望ましい妨害作用を得るために、スルホン酸から放出されるプロトンの濃度を低下させることにより、バイオフィルムが存在する急性及び慢性の皮膚病変及び潰瘍の自主的な処置にも効率的に利用され得る。
【0082】
一実施形態では、組成物は、スルホン酸、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸を、50w/w%~90w/w%の間、好ましくは60w/w%~80w/w%の間の量で含む。
【0083】
好ましくは、組成物は、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール及び炭酸プロピレンから選択され、組成物に10w/w%~50w/w%の間、好ましくは20w/w%~40w/w%の量で存在する非水性プロトン受容体として作用する溶媒をさらに含む。任意選択で、少量の水は、スルホン酸のための溶媒として添加される。
【0084】
一実施形態では、組成物は、上に列挙したものの中から選択される溶媒の混合物を含む。このうち、10%~50%又は20%~40%の濃度が、使用される溶媒のうちで分けられる。
【0085】
一実施形態では、組成物はゲルとして製剤化されている。この場合、ゲル形態の生成物を得るために、アモルファスシリカが1w/w%~10w/w%の間の量でスルホン酸の希釈溶液に添加される。
【0086】
本発明による組成物のさらなる一実施形態では、ゲルのレオロジーは、架橋剤として作用するテトラエトキシシランの添加により最適化される。
【0087】
様々な製剤の化学成分が、可変的な順序により、さらに最終溶液の特性を変化させることなくスルホン酸に添加され得るため、様々な製剤の分離手順は以下では詳述しない。
【0088】
例示として、しかし非限定的に、以下の本発明の例は、2つのin vitroの抗菌活性試験(実施例1)及び本発明による組成物の使用をベースとする皮膚病変の処置の手順(実施例2)で説明される。
【0089】
製剤
例示的な本発明の製剤は以下のとおりである。
組成物1:ベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)
組成物2:フェノールスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)
組成物3:グアヤコールスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)
組成物4:4-エチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)
組成物5:4-メチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)
組成物6:70w/w%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2-プロパノール(30w/w%)
【0090】
スルホン酸のpK及びK値を以下の表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
pK及びK値は、以下を含む文献の参照に基づく。
E.P.Serjeant及びB.Dempsey(編)、Ionization Constants of Organic Acids in Solution、IUPAC Chemical Data Series 23巻、Pergamon Press、Oxford、UK、1979年;
Part of Journal of Research of the National Bureau of Standards.31巻、1943年12月、pH VALUES OF ACID.SALT MIXTURES OF SOME AROMATIC SULFONIC ACIDS AT VARIOUS TEMPERATURES AND A CRITERION OF COMPLETENESS OF DISSOCIATION、Walter j.Hamer.Gladys D.Pinching及び S.F.Acree;
Guthrie,J.P.Hydrolysis of esters of oxy acids: pKa values for strong acids.Can.J.Chem.1978年、56巻、2342~2354頁;
【0093】
実施例1-In vitroの抗菌活性試験
本発明による組成物の製剤の抗菌活性を、以下の微生物の株(Diagnostic International Distribution S.p.A.から購入):緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 15442、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538、大腸菌(Escherichia coli)ATCC 10536、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)ATCC 10541、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231に対して試験した。各種について1.5×1012~5.5×1012の範囲のコロニー形成単位(CFU)で表される濃度を有する、微生物の異なる株の混合物を調製した。100μlの混合物の試料を、TSA(トリプトンソイ寒天)固体培養培地を含有するペトリ皿に蒔いた。播種を公知の標準化された分析方法によって、すなわち寒天の表面の液体試料をマイクロピペットによって沈着させ、滅菌ガラスビーズを使用して寒天の表面の液体試料を分布させることによって行った。続いて、本発明による組成物の6つの製剤の50μlのアリコートを、各ペトリ皿の寒天の中心区域に沈着させた。次に、プレートを37℃で24時間インキュベートした。
【0094】
図1は、4-エチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)を含有する製剤の50μlのアリコートを沈着させた、X1と印をつけたペトリ皿を示す。
【0095】
図2は、4-メチルベンゼンスルホン酸(70w/w%)、水(5w/w%)及びDMSO(25w/w%)を含有する製剤の50μlのアリコートを沈着させた、X2と印をつけたペトリ皿を示す。
【0096】
図3は、70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2-プロパノール(30%)を含有する製剤の50μlのアリコートを沈着させた、X3と印をつけたペトリ皿を示す。
【0097】
70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及びDMSO(30%)を含有する製剤を用いると、類似の結果が得られた。
【0098】
インキュベーション後、微生物増殖(コロニー形成)及び6つの製剤の試料が沈着した寒天区域の周囲の阻害の環の幅(すなわち、微生物増殖が阻害された場所の部分のサイズ)を評価するために、プレートを調査した。図に示すように、本発明による製剤の沈着区域の周囲の微生物増殖の明確な阻害区域が、すべてのペトリ皿において観察された。組成物6では、環がより大きかった。得られた分析結果は、様々な製剤が、1011CFUのグラム陽性細菌、グラム陰性細菌及び真菌種カンジダ・アルビカンスの増殖を阻害することができることを示す。
【0099】
実施例2-慢性皮膚潰瘍に罹患した患者の処置
本発明による組成物を、20名を超える志願した患者に対して、以下のステップを含む処置プロトコルを適用することにより試験した:
a)製剤を塗布する前に創傷をすすぎ乾燥させることにより、創傷を用意するステップ、
b)製剤を塗布するステップ、
c)約5~10分待つステップ、
d)シンプルガーゼ及び水又は生理食塩水溶液の流れを用いて創傷から製剤を除去するステップ。
【0100】
組成物4及び5で行った試験は、in vitroで確認して抗菌活性が示されていたにもかかわらず、不良な結果となった。in vitroの試験とin vivoの試験との間の差は、バイオフィルムの存在に関連しており、それに対して本発明の組成物6対象はより良好な活性を示す。
【0101】
患者に対する4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び30%のイソプロピルアルコールを含有する組成物6の有効性の例を、図4及び5において報告する。
【0102】
図4。左の画像は、糖尿病患者の左足の橈骨の慢性潰瘍を示す。潰瘍の底部は黄色がかった軟らかい瘡蓋で全体的に覆われており、左の部分ではより厚い。右は、本発明の組成物6対象(70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2-プロパノール(30%)を含有する)で処置した後の足の同じ部分である。潰瘍の底部は、瘡蓋が除去されたために完全に清浄されているように見える。
【0103】
図5。左の画像は、静脈起源の慢性の内果潰瘍を示す。底部は、硬い黄色がかった瘡蓋でほぼ全体的に覆われている。右の画像は、本発明の組成物6対象(70%の4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2-プロパノール(30%)を含有する)で処置した後の、瘡蓋が除去されたために清浄され粒状であるように見える潰瘍の底部を示す。
【0104】
病変の底部の肉芽形成は、すべての処置された患者において達成された。
【0105】
なおさらに改善された結果が、4-ドデシルベンゼンスルホン酸及び2-プロパノール又はジメチルスルホキシド(DMSO)を含む以下の製剤7及び8で得られる。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
組成物は、アモルファスシリカSiO及びテトラエトキシシラン(TEOS)を含み、ゲルとして製剤化されている。ゲル形態の組成物は、塗布の間に創傷に静止したままであるため、創傷の局所処置を強化する。
【0109】
したがって、適切な溶媒で希釈した4-ドデシルベンゼンスルホン酸を含有する本発明による組成物6の塗布は、すべての場合に、病変の組織の完全な回復をもたらし、その治癒を促進した。上記のような処置プロトコルは、すべての患者に適用できる可能性があり、したがって、複雑で高価且つリスクの可能性がある外科手技を避けることができる。さらに、本発明による組成物を用いた処置は、実質的に高価であり出現が増えつつある抗生物質耐性の現象に関連する抗生物質治療の必要性を減少させることができる。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】