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特表2024-536398回腸嚢炎および遠位潰瘍性大腸炎を治療するためのリファマイシンのインサイチュゲル化浣腸剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】回腸嚢炎および遠位潰瘍性大腸炎を治療するためのリファマイシンのインサイチュゲル化浣腸剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/395 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240927BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/395
A61P1/04
A61P1/00
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/42
A61P1/12
A61P29/02
A61P7/10
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024520975
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022077675
(87)【国際公開番号】W WO2023057499
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,315
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21203010.0
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505400004
【氏名又は名称】コスモ・テクノロジーズ・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マラ ゲルローニ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ マセローニ
(72)【発明者】
【氏名】カリダード ロゼット
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ ロンゴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB29
4C076CC16
4C076EE13
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE42
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB25
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA60
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA07
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA83
(57)【要約】
本開示は、リファマイシンSVを含有するインサイチュゲル化浣腸剤、並びに、回腸嚢炎、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療におけるその使用に関する。より具体的には、本開示は、回腸嚢炎、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、緩和、重症度の低減、または進行の遅延のための、リファマイシンSVを含有するインサイチュゲル化保持性浣腸剤を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩と、
ポリマー混合物と、を含み、
前記医薬組成物は、室温で液体であり、体温でインサイチュでゲルを形成することができる、医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリマー混合物が、
少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
少なくとも1つの生体接着性ポリマー
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が浣腸剤である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記熱応答性ポリマーが、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ラクチド-コグリコリド)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、およびセルロース誘導体からなる群から選択される、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407からなる群から選択されるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである、請求項2、3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記熱応答性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー188、ポロキサマー407、またはそれらの混合物である、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約1重量%~約25重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在する、請求項2~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記イオン感応性ポリマーが多糖である、請求項2~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記イオン感応性ポリマーが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸、その塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記イオン感応性ポリマーが、アルギン酸ナトリウムである、請求項2~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約3重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する、請求項2~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記生体接着性ポリマーが、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記生体接着性ポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、請求項2~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記生体接着性ポリマーが、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩である、請求項2~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記生体接着性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約2.0重量%の量で、好ましくは、前記医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の量で存在する、請求項2~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、抗酸化剤、防腐剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み、および/または任意選択的に、前記組成物が、6.5~7.5、好適にはpH6.8~7.2の範囲のpHを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、好ましくは、前記医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約3.0重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、例えば、前記医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約2.5重量%を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
治療上有効な量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩と、ポリマー混合物とを含む、回腸嚢炎、直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療における使用のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は直腸投与され、室温で液体であり、前記患者の体温でインサイチュでゲルを形成する、医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が浣腸剤である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
排泄頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱、および腸管外症状からなる群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減するための、請求項19または20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍からなる群から選択される1つ以上の内視鏡症状の発生を緩和または低減するための、請求項19または20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
1日に1回または1日に2回投与される、請求項19~22のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記直腸投与が、少なくとも2週間行われる、請求項19~23のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
それを必要とする患者の回腸嚢炎、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法であって、
前記患者に、治療有効量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩と、ポリマー混合物とを含む医薬組成物を直腸投与する工程を含み、
前記医薬組成物は、室温で液体であり、前記患者の体温でインサイチュでゲルを形成する、方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が、浣腸剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物は、前記医薬組成物の重量に対して、約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記医薬組成物を直腸投与する工程が、排泄の頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱および腸外症状からなる群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物を直腸投与する工程が、粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍からなる群から選択される1つ以上の内視鏡検査症状の発生を緩和および/または低減する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物が毎日投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物が1日2回投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記直腸投与が少なくとも2週間行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記直腸投与が少なくとも2週間行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
回腸嚢炎、直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)を治療するための医薬品の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リファマイシンSV(本明細書において、リファマイシンともいう)を含有するインサイチュゲル化浣腸剤、並びに、回腸嚢炎、直腸炎および遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療におけるその使用に関する。より具体的には、本開示は、回腸嚢炎の治療、改善、重症度の低減、または進行の遅延のための、リファマイシンSVを含有する長期持続性インサイチュゲル化保持浣腸剤を記載する。
【0002】
背景を明らかにするために、または実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で使用される刊行物および他の資料は、参照により組み込まれ、便宜上、それぞれ参考文献一覧にまとめられる。
【背景技術】
【0003】
潰瘍性大腸炎(UC)および家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の両方に対する潜在的に治癒的な外科的選択肢は、肛門括約筋を保存する肛門温存大腸切除術(RPC)、続いて便のリザーバを再現する回腸嚢肛門吻合術(IPAA)である(非特許文献1)。この手術は、患者の生活の質を改善し、潰瘍性大腸炎患者の異形成または腫瘍のリスクを有意に低下させたが、合併症が一般的である。
【0004】
回腸嚢炎は、回腸腸組織(ileal gut tissue)から外科的に作製された人工直腸である回腸嚢の炎症性障害である。回腸嚢手術の最も一般的な長期的合併症であり、患者の生活の質に重大な悪影響を及ぼす(非特許文献1)。UCに対してIPAAを受けた約50%の患者は、長期的な合併症に発展し得る回腸嚢の続発性の炎症(回腸嚢炎)の少なくとも1つのエピソードを発症する(非特許文献1)。対照的に、FAP患者のわずか0~11%が回腸嚢炎を発症する。このデータは、回腸嚢炎は回腸嚢の構造にあまり関係しないが、回腸嚢と相互作用する、患者の根底にある免疫調節異常の作用であるという証拠を提供する。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)と同様に、回腸嚢炎は、いかなる単一の因子によっても引き起こされない複雑な疾患である。回腸嚢炎は、調節不全の宿主の炎症機構および管腔内微生物叢との相互作用の両方の組み合わせによって起こる可能性が高い。小腸における細菌の過剰増殖および便の停滞は、回腸嚢炎の発症に寄与する可能性がある。したがって、回腸嚢炎のほとんどの患者は、抗生物質で治療される。
【0006】
回腸嚢炎の最も頻繁に示される症状は、排泄の頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血(rectorrhagia)、疼痛、腹部痙攣(cramp-like abdominals)、切迫感、しぶり、便失禁、発熱および腸管外症状に関連する機能障害である。臨床診断は、理想的には、内視鏡検査および回腸嚢の粘膜生検によって確認されるべきである。内視鏡検査では、粘膜浮腫、粒状性(granularity)、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍を含み得る炎症性変化が示される。組織学的検査では、絨毛萎縮、陰窩の過形成、および慢性炎症性細胞浸潤を含む慢性炎症の背景に重ねられた、好中球浸潤および粘膜潰瘍を含む急性炎症が示される。
【0007】
回腸嚢炎は、急性回腸嚢炎または慢性回腸嚢炎に分類される。急性回腸嚢炎は、最大4週間持続し、2週間の抗生物質治療に反応する症状と定義される。慢性回腸嚢炎は、標準的な抗生物質治療にもかかわらず、4週間を超えて(>4週間)持続する症状を有し、長期抗生物質治療または抗炎症療法を必要とすると定義される(引用文献2)。急性回腸嚢炎を有する患者の約10%~15%が、抗菌薬依存性回腸嚢炎および抗菌薬抵抗性回腸嚢炎などのサブグループを有する慢性回腸嚢炎を発症する。
【0008】
回腸嚢炎の診断は、症状、内視鏡、および組織学的所見の組み合わせ評価に基づく。Sandbornら(1994)は、回腸嚢炎疾患活動性指標(pouchitis disease activity index、PDAI)を提案し、これは臨床症状並びに内視鏡的および組織学的所見の両方に基づく回腸嚢炎の活動性の19の指標である。活動性回腸嚢炎はPDAI≧7と定義され、寛解はPDAI<7と定義される(非特許文献3)。最近の研究では、急性回腸嚢炎患者のPDAIと比較して、PDAIからの組織学的スコアの省略(修正PDAI)が同様の診断精度を提供できることが示唆された(非特許文献4)。
【0009】
回腸嚢炎の病因は明確には理解されていないが、(1)UCの再発、(2)回腸嚢微生物の細菌叢異常、(3)栄養性短鎖脂肪酸の欠乏、(4)粘膜虚血および酸素フリーラジカル傷害、(5)宿主の遺伝的感受性、および(6)免疫調節不全を含む様々な仮説が提案されている。しかし、これらのどれも単独では、回腸嚢炎の病因を完全に説明することはできない。回腸嚢炎は、炎症性腸疾患(IBD)の新規の第3の形態を示し得ることが示唆されている。IBDと同様に、回腸嚢炎は、いずれの単一の因子によっても引き起こされない複雑な疾患である。回腸嚢炎は、調節不全の宿主の炎症機構および管腔内微生物叢の相互作用の両方の組み合わせによって起こる可能性が高い。小腸における細菌の過剰増殖および糞便の停滞が回腸嚢炎の発症に寄与し得るように、細菌は疾病過程に関与している。
【0010】
回腸嚢炎はよく理解されていないが、回腸嚢炎のほとんどの患者は抗生物質で治療されている。抗生物質は、クローン病(CD)においていくつかの臨床的利益を有するが、他のいかなる療法よりも効果的である回腸嚢炎の治療における利益よりもはるかに少ない。回腸嚢炎に対する多くの異なる治療法が様々な結果と共に報告されているが、抗生物質治療は依然として最も研究されており、治療の主力となっている。
【0011】
回腸嚢炎は、標準的な抗生物質ベースの医学療法に対する応答に基づいて、(1)抗生物質応答性、(2)抗生物質依存性、および(3)抗生物質不応性の3つのカテゴリーに分類される。10~14日間の抗生物質投与に好ましく反応する患者は、抗生物質反応性であると考えられる。回腸嚢炎患者の約7~19%は、回腸嚢炎の寛解を維持するために抗生物質の長期連続使用を必要とし、これらの患者は抗生物質依存性であると考えられる。患者のわずかな割合(5%未満)は、抗生物質不応性として分類され得る。これらの患者は、抗生物質療法に応答せず、多くの場合、寛解を誘導または維持するために、アミノサリチル酸塩(例えば、メサラミン)、免疫抑制剤(例えば、6-メルカプトプリン)、または生物学的製剤を必要とする(非特許文献5)。
【0012】
回腸嚢炎の治療は主に経口であるが、インサイチュゲルを含む浣腸剤およびゲルなどの、いくつかの製品が局所治療用に開発中である。例えば、中国特許第102151242号明細書(特許文献1)は、活性成分の微粒子および温度イオン感受性型のインサイチュゲルを含むインサイチュゲル徐放性調製物を記載している。特定された活性成分は、活性成分のリストにリファンピシンを含む。
【0013】
Al-Joufi,F.ら(2021)は、例えば、リファンピシンを含有する直腸粘膜接着性ゲルおよびインサイチュ直腸ゲルを開示する。
【0014】
国際公開第2019/122253号(特許文献2)は、活性薬剤のインサイチュ送達または放出のための2つまたは3つの定義されたポリマーを含有する構造化粘性組成物またはソフトゲルとなり得る液体組成物を開示する。活性薬剤は、とりわけ、リファマイシンSV、リファキシミン、およびリファンピシンから選択される抗菌剤または抗生物質であり得る。液体組成物は、炎症性および/または変性病態である疾患などの胃腸管に影響を及ぼすものを含む、人体に影響を及ぼす病態または疾患の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用され得る。実施例11は、瘻を治療するための3つの定義されたポリマーおよびリファマイシンSVを含有する液体組成物を記載する。
【0015】
リファマイシンSVは、アンサマイシン類に属する半合成抗菌剤であり、細菌DNA依存性RNAポリメラーゼβサブユニットに不可逆的に結合することによってその抗菌活性を発揮し、それによって細菌RNA合成を阻害する。リファマイシンSVは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)および非腸内細菌科を含む、感染性下痢症および他の腸管感染症に頻繁に関連するほとんどの細菌性腸病原体に対して抗菌活性を示す(非特許文献6)。リファマイシンSVは、リファマイシンのナトリウム塩またはリファマイシンナトリウムに相当する。憩室炎、炎症性腸症候群(IBS)またはIBDなどの結腸疾患の場合、細菌増殖または細菌叢異常は、強力な炎症要素と関連している。この炎症は、腸肝軸(gut-liver axis)を介して肝臓に深刻な影響を及ぼす。リファマイシンSVは、炎症の2つの主要な調節因子、すなわちプレグナンX受容体(PXR)および核因子κB(NFκB)への影響に基づく、抗炎症活性を備える。リファマイシンSVは、肝臓および腸細胞株において、PXRおよびその下流標的のうちの2つ、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)およびP糖タンパク質(PgP)を活性化することが見出された。リファマイシンはまた、PXR発現を欠く細胞株におけるNFκBも直接阻害した(引用文献7)。これらの二重活性は、ヒト結腸細胞株および活性化CD4+T細胞からの炎症誘発性サイトカイン分泌の阻害をもっともらしく説明する(引用文献8)。リファマイシンは、腸管(回腸嚢炎の場合はJ型回腸嚢(J-Pouch)、またはS型回腸嚢(S-Pouch)、またはW型回腸嚢(W-Pouch))への局所作用としてその臨床的利益を発揮し、血流における無視できるほどの吸収を特徴とする。リファマイシンは、安全な薬物であり、例えば、現在、回腸嚢炎、または直腸炎、または潰瘍性大腸炎などの炎症性要素を有する胃腸疾患の治療に使用されている、シプロフロキサシンおよびメトロニダゾールと比較して、良好な安全性プロファイルを有する。
【0016】
直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎は、症状および原因の観点からIBDに高い頻度で関連する炎症性疾患である。直腸炎は、直腸の内膜の炎症である。原因に応じて、直腸炎は突然起こり、短時間続く場合もあれば、頻繁に再発するエピソードを伴って長期間続く場合もある。一般的にIBDのように、細菌の過剰増殖および/または調節不全は、悪化因子であり得る。遠位潰瘍性大腸炎は、直腸炎(直腸のみの関与)、直腸S状結腸炎(直腸およびS状結腸の関与)、および左側大腸炎(下行結腸または脾湾曲の範囲までの関与)を含む、脾湾曲より遠位の疾患を定義する。
【0017】
UCは、クローン病と共に、IBDの主な形態の1つを表す。UCは、結腸および直腸における炎症および潰瘍を特徴とする慢性疾患を表し、これは、主な臨床症状、すなわち、直腸出血、下痢、切迫感、腹痛、しぶり、および発熱をもたらす。UCの正確な病因は完全には理解されていないが、通常はヒトの結腸に定着する宿主の腸内免疫系と共生細菌との間の相互作用の変化が、疾患の病因において主要な役割を果たすことは、科学界内で広く受け入れられている。この変化した相互作用は、先天性免疫細胞(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)を共生細菌叢およびそれらの抗原と相互作用させる、結腸粘膜の内側にある上皮のバリア機能の障害によって悪化する。これは、異常な免疫応答をもたらし、結果として炎症を引き起こす。発症時には、ほとんどの場合、UCは直腸を冒し(潰瘍性直腸炎)、その後、炎症は近位に広がり、S状結腸(直腸S状結腸炎)および脾湾曲部までの下行結腸を冒す(遠位UC、左側UCとしても知られる)場合がある。脾湾曲を超えて広がる炎症は、広範なUC(または全大腸炎)として知られる。最近の体系的な文献レビューでは、診断時に、患者の約40.1%が遠位UC、30.5%が広範な大腸炎、29.4%が直腸炎であると推定されている(非特許文献9)。
【0018】
現在、米国および欧州のガイドラインを含むUCの管理のための臨床ガイドラインでは、直腸炎、直腸S状結腸炎、または遠位UCの患者に局所(直腸)治療を使用することを推奨している。一次治療は、5-アミノサリシリン酸(メサラミンまたはメサラジンとしても知られる)を含有する直腸製品によって代表され、二次治療は、コルチコステロイド(例えば、ブデソニドまたはヒドロコルチゾン)を含有する直腸製品によって代表される。これらの直腸治療は、坐剤(直腸炎の治療に使用)および浣腸剤または直腸フォーム剤(直腸S状結腸炎および遠位UCの治療に使用)の形態で利用可能である。しかし、承認されたすべての製品は、投与時に液体のままである(浣腸剤およびフォーム剤)、または投与時に液体になる(坐剤)という欠点を有する。したがって、これらの製品は、一度投与されると、患者によって容易に排出される可能性があり、結果として、作用部位での接触時間が短縮され、経時的に活性が失われる。さらに、これらの承認された製品は、抗炎症活性のみを発揮し、疾患の病因において主要な役割を果たす疾患の細菌要素を標的としない。最後に、生物学的製剤(例えば、抗TNFαまたは抗インテグリンモノクローナル抗体)を研究するものを含む、UCにおけるほとんどの臨床試験は、直腸炎と診断された患者を除外するための特定の除外基準を有する。したがって、UC用の最近承認された製品のほとんどは、直腸炎用に承認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】中国特許第102151242号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/122253号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Li, Y. and Shen, B. (2014). Management of acute and chronic pouchitis. Medical Therapy of Ulcerative Colitis, Springer, New York, pp. 367-376.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、直腸炎、直腸S状結腸炎および/または遠位UCの治療を目的とした新しい有効な製品に対する特定の医学的ニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本開示は、リファマイシンSV(本明細書においてリファマイシンともいう)またはその薬学的に許容可能な塩を含有するインサイチュゲル化浣腸剤、ならびに回腸嚢炎および/または直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療におけるその使用に関する。本開示はまた、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する(インサイチュゲル化)浣腸剤を、それを必要とする対象に投与することによる、回腸嚢炎の治療方法に関する。本開示はさらに、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有するインサイチュゲル化浣腸剤を、それを必要とする対象に投与することによる、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法に関する。本開示はさらに、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有するインサイチュゲル化浣腸剤を、それを必要とする対象に投与することによる、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法に関する。本開示はさらに、回腸嚢炎を治療するための薬剤の製造における、リファマイシンSVを含む本明細書に開示される医薬組成物の使用に関する。本開示はさらに、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)を治療するための薬剤の製造における、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、本明細書に開示される医薬組成物の使用に関する。より具体的には、本開示は、回腸嚢炎の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘導、寛解の維持、および/または進行の遅延のための、リファマイシンSVを含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤を記載する。さらに、本開示は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、改善、重症度の軽減、誘導、寛解の維持、および/または進行の遅延のためのリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤を記載する。適切には、本発明の組成物は、即時使用可能な(ready-to-use)浣腸溶液であってもよい。さらに、本発明は、本発明の組成物を含む浣腸キットを提供する。浣腸キットは、容器およびカニューレを含み得る。カニューレは、直腸を介して浣腸溶液を投与するのに適する。好適には、組成物は、水または生理学的に許容可能な溶媒、および任意選択的に、エタノール等のアルコールを含む。例えば、液体担体は、水または生理学的に許容可能な溶媒、または水と1つ以上の生理学的に許容可能な溶媒との混合物であってもよい。典型的なそのような溶媒としては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。特に好ましい液体担体は水である。
【0023】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の活性薬剤およびポリマー混合物を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、標的作用部位(胃腸管の遠位部分および/または外科的に作成された人工空洞、例えば、回腸嚢)と接触すると、インサイチュでゲル化することができ、その中の粘膜との接触時間の延長を確実にし、活性薬剤の局所的な経時的持続放出を確実にすることができる。これは、医薬組成物が、腸粘膜に適用されると、標的部位で経時的に作用する長期持続性ゲルになる組成物を提供することができることを意味する。一実施形態において、高分子混合物は、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(第1のポリマー)、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(第2のポリマー)、および少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)を含む。
【0024】
一実施形態において、第1のポリマーは、これらに限定されるものではないが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ラクチド-コグリコリド)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、および、メチルセルロース(MC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体、並びにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0025】
別の実施形態において、第2のポリマーは、これらに限定されるものではないが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギネート、アルギン酸塩など、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0026】
さらなる実施形態において、第3のポリマーは、これらに限定されるものではないが、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、シクロデキストリン、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチンなど、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0027】
医薬組成物は、例えば、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、界面活性剤、補助界面活性剤、親油性化合物、精製水、有機塩、無機塩、緩衝剤、またはそれらの混合物など、少なくとも1つの他の賦形剤をさらに含んでもよい。好ましい実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤および少なくとも1つの防腐剤をさらに含む。
【0028】
第2の態様において、本発明は、回腸嚢炎および/または直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、改善、重症度の低減、進行の遅延、寛解の誘導、または寛解の維持のための長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤としての医薬組成物の使用に関する。好ましい実施形態において、活性薬剤は、リファマイシンSVである。
【0029】
一実施形態において、長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤は、活性成分の持続放出を提供することができる保持性浣腸剤であり、作用部位と密接に接触しているゲルの薄層に原薬が組み込まれたままであることを確実し、そのインサイチュでの薬理学的活性の持続時間を延長する。
【0030】
第3の態様において、本発明は、回腸嚢炎の治療、改善、重症度の軽減、進行の遅延、寛解の誘導、または寛解の維持の方法に関し、前記方法は、それを必要とする患者に、医薬組成物を長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤として投与することを含む。好ましい実施形態において、活性薬剤は、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0031】
別の態様において、本発明は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、改善、重症度の軽減、進行の遅延、寛解の誘導、または寛解の維持方法に関し、前記方法は、それを必要とする患者に、医薬組成物を長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤として投与することを含む。好ましい実施形態において、活性薬剤は、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0032】
一実施形態において、医薬組成物は、ヒト患者に直腸投与される。
【0033】
第4の態様において、本発明は、回腸嚢炎の治療のための薬剤の製造における、本明細書に記載のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物の使用に関する。
【0034】
別の態様において、本発明は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療のための薬剤の製造における、本明細書に記載のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物の使用に関する。
【0035】
図面は、本明細書に記載される実施例に直接関連し、本明細書の後半で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ポリマー混合物の最適な量的組成を特定するために使用されるDoEアプローチ、「単体重心計画(simplex centroid design)」の因子空間を示す。
図2】25℃および37℃の両方で、リファマイシンSVを用いた1~6のランおよび8~9のランの粘度曲線を示す。
図3】10HzでのRun2の温度ランプ(temperature ramp)を示す。
図4】8% w/wのムチンの存在下および非存在下(ブランク)でのRun1~10のFmax値を示す。
図5】8% w/wのムチンの存在下および非存在下(ブランク)でのRun1~10の接着仕事(Work of Adhesion)を示す。
図6】正規化された接着仕事の等高線プロットを示す。
図7】ポリマー混合物の最適な量的組成を特定するために使用されるDoEアプローチの「完全実施要因計画(full factorial design)」の因子空間を示している。
図8】リファマイシンSVを用いた「完全実施要因計画」のラン1~14の対数粘度曲線を示す。
図9】ビヒクル9の温度ランプを示す。
図10】ビヒクル14の温度ランプを示す。
図11】正規化された接着仕事の等高線プロットを示す。
図12】25℃および40℃における周波数の関数としての損失正接(Tanδ)を示す。
図13】プラセボおよびリファマイシンSV製剤の両方の時間依存性プロファイルを示す。
図14】37℃で、リファマイシンSVを含まないポリマーの混合物(ビヒクル)を、0.5%および1%のリファマイシンSVを含む医薬組成物と比較した粘度曲線を示す。
図15】回腸嚢炎に関与する細菌で試験したリファマイシンSVのMIC値を示す。
図16】リファマイシンSVインサイチュ浣腸製剤についての細菌増殖阻止ハロー(mm)、およびリファマイシンSVについてのMIC(μg/mL)を示す。
図17】リファマイシンインサイチュ浣腸製剤7670および7574並びにリファマイシンSVによる、レポーター細胞株におけるPXR転写活性の刺激を示す。
図18】ヒト初代結腸細胞におけるmTORおよびS6Rリン酸化の阻害を示す。
図19】インサイチュゲル化浣腸剤中のリファマイシンおよびリファマイシンSVによるレポーター細胞株におけるPXR転写活性の刺激を示す。
図20】結腸におけるゲルの滞留性を評価するために配合物7639の浣腸剤による単回投与後0.5、1、2、4および6時間で撮られた結腸画像を示す。ボックス内の領域は、ゲルがはっきりと見える場所を示す。
図21】投与後の異なる時点で、製剤7639の浣腸剤によって処置されたラット由来のラットの結腸ホモジネートにおけるリファマイシン濃度(ng/g)を示す。
図22】DSS誘導大腸炎のマウスモデル、「生きている大腸炎(in live colitis)」パラメータにおいてインビボで試験した化合物の効果を示す。A.体重AUC、B.結腸 重量/長さ(CW/CL)、C.臨床スコアAUC、D.累積便スコア。
図23】DSS誘導大腸炎のマウスモデルにおいてインビボで試験した化合物の効果:組織学的スコアを示す。
図24】(インサイチュゲル化)浣腸製剤(図中でCB0125として示される)および水に溶かしたリファマイシンによって処置されたマウスの結腸における、投与後の示された時点での、HPLC MS/MSによって測定されたリファマイシン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、治療用途を有するリファマイシンSVを含有する製剤に関し、好ましくは、リファマイシンSV(リファマイシンまたはリファマイシンナトリウムともいう)またはその薬学的に許容可能な塩を含有するインサイチュゲル化浣腸剤、並びに消化管の遠位部分に影響を及ぼす疾患の治療におけるその使用に関する。いくつかの実施形態において、胃腸管の遠位部分のそのような疾患は、回腸嚢炎、および/または直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)を含む群において選択されてもよい。本明細書で意図されるように、遠位潰瘍性大腸炎(左側潰瘍性大腸炎としても知られる)という用語は、潰瘍性直腸S状結腸炎(または単純化すると直腸S状結腸炎)も含む。本開示はまた、回腸嚢炎、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法に関し、本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、そのような医薬組成物は、好ましくは、インサイチュゲル化浣腸剤の形態で提供され、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を活性物質として含む。本開示はまた、回腸嚢炎、および/または直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療における本発明の医薬組成物の使用に関し、そのような医薬組成物が、それを必要とする対象に投与されること、好ましくはインサイチュゲル化浣腸剤の形態で提供され、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を活性物質として含むことを特徴とする。さらに、本開示は、回腸嚢炎、および/または直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療のための薬剤の製造における、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む本明細書に記載の医薬組成物の使用に関する。
【0038】
本開示はまた、回腸嚢炎、および/または直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法であって、それを必要とする患者に医薬組成物を投与することを含む、治療方法と、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療のための薬剤の製造における、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む本明細書に記載の医薬組成物の使用と、に関する。
【0039】
より具体的には、本開示は、リファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤、および胃腸管の遠位部位の胃腸疾患の治療、改善、重症度の低減または進行の遅延、寛解の誘導および/または維持のためのその使用を記載する。いくつかの実施形態において、長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤は、保持力のある浣腸剤である。いくつかの実施形態において、長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤は、作用部位における活性成分の持続的および/または長期的作用を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、消化管のそのような遠位部位は、遠位結腸(下行結腸およびS状結腸)および直腸、より具体的にはS状結腸および直腸を含む。そのような実施形態によれば、胃腸管の遠位部分、より具体的には下行結腸、S状結腸および直腸に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)を含む群から選択することができる。一実施形態によれば、胃腸の遠位部分に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸S状結腸炎を含む遠位潰瘍性大腸炎である。別の実施形態によれば、消化管の遠位部分に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸炎である。別の実施形態において、消化管のそのような遠位部分は、疾患から、または傷害から結果として外科的に生じた人工的な空洞を含む。一実施形態において、空洞は、回腸吻合(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)術または回腸造瘻手術(K型回腸嚢)によって作成された回腸嚢(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)である。そのような実施形態によれば、胃腸管の遠位部分、より具体的には回腸嚢に影響を及ぼす疾患は、回腸嚢炎である。
【0041】
一実施形態において、本開示は、回腸嚢炎の治療、改善、重症度の低減、または進行の遅延のための、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤を記載する。
【0042】
一実施形態において、本開示は、直腸炎の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘発および/もしくは維持、または進行の遅延のための、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤を記載する。別の実施形態において、本開示は、遠位潰瘍性大腸炎の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘導および/もしくは維持、または進行の遅延のための、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する、長期持続性インサイチュゲル化保持性浣腸剤を記載する。好ましい実施形態において、本開示は、直腸炎の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘発および/もしくは維持、または進行の遅延のための、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化保持性浣腸剤を記載する。さらに好ましい実施形態において、本開示は遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘導および/もしくは維持、または進行の遅延のためのリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する長期持続性インサイチュゲル化浣腸剤を記載する。
【0043】
一態様において、本発明は、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、および本明細書に記載のポリマー混合物を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、標的部位との接触時にインサイチュでゲル化することができ、標的部位での経時的で局所的な活性薬剤の持続的および/または長期的な放出を確実にする。一実施形態において、高分子混合物は、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(第1のポリマー)、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(第2のポリマー)、および少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)を含む。
【0044】
これらのポリマーの作用機序は異なる。熱応答性ポリマー(第1のポリマー)は、温度が適切な範囲の値に達すると、体内または体腔内でゲル化するか、構造体を形成することができる。イオン感応性ポリマー(第2のポリマー)は、適切な濃度の特定のイオンの存在下で、生体関連媒体(bio-relevant medium)と共にゲル化するか、構造体を形成することができる。生体接着性ポリマー(第3のポリマー)は、医薬組成物の接着性を改善し、標的部位での滞留時間を改善する。生体接着性ポリマー(第3のポリマー)は、消化管の遠位部分の粘膜および/または外科的に作成された人工空洞(回腸嚢)との相互作用を介して、改善された接着を確実にする。同時に、生体接着性ポリマーは、医薬組成物の体組織への接合(grafting)を強化し、一方、第1および第2のポリマーは、医薬組成物を標的体表面に広げることにより得られるゲル化薄層の構造体が、リザーバまたは三次元マトリックス系として機能し、持続性および長期的な薬理学的活性を確実にすることを強化する。
【0045】
一実施形態において、第1のポリマーは、生体関連媒体と接触した後、または生理学的温度(すなわち、約37℃)でゲル化または構造化状態を生成する。第1のポリマーの作用は、第2のポリマーと標的部位との相互作用によってさらに強化され、そこでの特定のトリガーイオンの存在は、他方の環境媒体との相互作用を強化し、ゲルまたは構造化状態を形成するポリマー混合物の能力の拡大をもたらす。生理学的温度(すなわち、34℃以上)によって特徴付けられる、体または体腔(例えば、胃腸管の遠位部分および/または外科的に作成された人工空洞-例えば、回腸嚢)内の部位と接触すると、第3のポリマーは、医薬組成物を体組織に移植する生体接着をさらに確実にし、強化する。ポリマー自体と、ポリマーおよび微小環境との間の相乗効果をもたらす第1、第2および第3のポリマーの最適な混合物のために、ポリマー混合物は有効であり、標的部位での医薬組成物の強化されたゲル化/構造化をもたらす。そのような強化されたゲル化は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2019/122253号に記載されるように、粘弾性係数G’の大幅な増加によって実証される。
【0046】
リファマイシンSVがポリマー混合物と積極的に相互作用することが発見されており、この相互作用は、実施例に記載されている混合物設計モデル(Mixture Design model)を使用して調査されている。インサイチュゲル化製剤のレオロジー特性の評価は、インビボでの挙動を予測することができる最も重要なパラメータの1つである。レオロジー特性は、特に、標的領域における適用の容易さおよび保持時間に影響を及ぼす。レオロジー特性は、ゲル構造の変化を観察するために、室温(25℃)および生理学的温度(37℃)で測定される。構造的および動的特性は、G’、貯蔵弾性係数(弾性の尺度)およびG’’、損失弾性係数(粘性要素を表す)の測定によって調査される。
【0047】
粘弾性挙動は、試料の熱ゲル化を意味するG’(貯蔵弾性係数)とG’’(粘弾性係数)との間の切り替え傾向によって特徴付けられ、同じ温度のG’’(粘性弾性率)と比較される37℃のG’弾性係数(貯蔵弾性係数)を通して測定される。37℃でG’はG’’を支配し、2つの係数間のギャップは、37℃でより広く、強力なゲルまたは構造化状態の形成および弾性に関しての増加を示し、適用時の液体形態から、適用後のゲル状態または構造化状態への遷移を裏付ける。ゾル-ゲル遷移は、ゲル層として標的部位での製剤の広がりおよび付着を可能にし、その後、長期の適切な期間にわたって接着特性を強化させる。ゾル-ゲル遷移は、主に、投与時の体温、好ましくは回腸嚢炎の場合の回腸嚢の管腔、および腸内環境(主に結腸液および/または結腸様粘膜および/または回腸嚢)との相互作用によって誘発され、リファマイシンSVを作用部位と密接に接触するゲルの薄層に埋め込まれたままにし、インサイチュでのその薬理学的活性の持続時間を延長することを可能にする。
【0048】
本明細書に記載するように、医薬組成物は、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(第1のポリマー)、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(第2のポリマー)、および少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)を含むポリマー混合物を含み、その結果、製剤はそれを必要とする患者に容易に投与することができ、所望の期間、作用部位での長期の永続性を確実にする。
【0049】
本明細書に記載の医薬組成物の調製において、好適な熱応答性ポリマー(第1のポリマー)およびそれらの濃度の選択は、体温未満(すなわち、約37℃未満、好ましくは約20℃~約25℃)で液体状態であり、体温以上(すなわち、約37℃以上)に暴露されるとゲル、または構造化状態になる最終組成物を得るために行われる。イオン性巨大分子であるリファマイシンSVは、それぞれの特性(例えば、熱ゲル化、および/または生体接着性および/またはイオノトロピック特性)を変化させながら、バイオポリマーと潜在的に相互作用することが知られている。前述の3つのポリマーの組み合わせを含む本発明の組成物は、驚くべきことに、この問題を克服し、標的部位での前記組成物の永続時間を調節することを可能にする。
【0050】
本明細書に記載の医薬組成物の調製において、好適なイオン感応性ポリマー(第2のポリマー)およびそれらの濃度の選択は、特定のイオンの存在下で好適なゾル-ゲル遷移または構造化組成物への遷移を得るために行われる。
【0051】
本明細書に記載されるように、イオン感応性ポリマーは、Na、K、Mg2+、Ca2+およびZn2+、並びに高い親和性を有する有機イオンなどの、一価および/または二価の無機イオンに結合することができるものの中から選択することができる。イオン強度に対する応答性は、イオン化可能な基を含有するポリマーの典型的な特性である。イオン強度の変化は、ポリマーミセルのサイズおよびポリマー溶解度の変化を引き起こし得る。
【0052】
投与されると、活性薬剤、好ましくはリファマイシンSV、および本明細書に記載のポリマー混合物を含む本発明による医薬組成物は、体温(すなわち、約37℃)まで自動的に加熱される。温度のこの上昇は、熱応答性の第1のポリマーに起因して、液体からゲル状態(ゾル-ゲル遷移)または構造化状態への医薬組成物の遷移を引き起こし、次いで、イオン感応性の第2のポリマーと生体関連媒体および/または環境に存在するイオンとの相互作用を通じて、粘弾性係数G’の増加によって示されるように、前記ゲルまたは構造化状態がさらに強化される。
【0053】
液体形態からゲル状態または構造化状態への遷移は、ポリマー混合物中の前記少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)の存在によって引き起こされる医薬組成物の生体接着性を増強し、その後、37℃での粘膜接着結果によって示されるように、適切な期間、腸または直腸粘膜などの組織への接着性を増強する。
【0054】
加えて、医薬組成物の粘弾性係数の増加は、少なくとも1つの活性薬剤の拡散を遅らせ、罹患部位へのその送達を遅らせ、治療効果を延長する。
【0055】
投与されると、本明細書に記載の医薬組成物は、患部上に薄いゲルまたは構造化層(状態)を形成することができ、臓器の壁に沿って流れる傾向が低下する。この特性は、本明細書に記載の医薬組成物と患部との間の接触時間を最大化する。その結果、その中に含まれる活性薬剤は、他の既知の組成物と比較して、粘膜の上皮細胞の細胞膜と長期間接触し続けることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、好ましくは、標的部位が移植プロセスを可能にする粘膜組織によって覆われている、胃腸管の遠位部分の疾患の治療に使用され得る。いくつかの実施形態よれば、消化管のそのような遠位部位は、遠位結腸(すなわち下行結腸およびS状結腸)および直腸、より具体的にはS状結腸および直腸を含む。そのような実施形態によれば、胃腸管の遠位部分、より具体的には下行結腸、S状結腸および直腸に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎を含む群から選択することができる。一実施形態によれば、胃腸の遠位部分に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸S状結腸炎を含む遠位大腸炎である。別の実施形態によれば、消化管の遠位部分に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸炎である。別の実施形態において、消化管のそのような遠位部分は、疾患から、または傷害から結果として外科的に生じた人工的な空洞を含む。一実施形態において、空洞は、回腸吻合(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)術または回腸造瘻手術(K型回腸嚢)によって作成された回腸嚢(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)である。そのような実施形態によれば、胃腸管の遠位部分、より具体的には回腸嚢に影響を及ぼす疾患は、回腸嚢炎である。
【0057】
一実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、直腸炎の寛解を誘導する。別の実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、直腸炎の寛解を維持する。別の実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の寛解を誘導する。別の実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の寛解を維持する。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、回腸嚢炎の寛解を誘導する。別の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、回腸嚢炎の寛解を維持する。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明は、胃腸管の遠位部分に影響を及ぼす疾患の寛解を誘導する方法を開示し、そのような方法は、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むインサイチュゲル化浣腸剤の形態の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、それを必要とする胃腸管の遠位部分の疾患の寛解を誘導するための、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むインサイチュゲル化浣腸剤の形態の医薬組成物の使用を開示する。いくつかの実施形態において、本発明は、胃腸管の遠位部分に影響を及ぼす疾患の寛解を維持する方法を開示し、そのような方法は、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むインサイチュゲル化浣腸剤の形態の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。さらにいくつかの実施形態において、本発明は、それを必要とする胃腸管の遠位部分の疾患の寛解を維持するための、リファマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むインサイチュゲル化浣腸剤の形態の医薬組成物の使用を開示する。いくつかの実施形態において、胃腸管の遠位部分の前記疾患は、回腸嚢炎、遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)および/または直腸炎を含む群において選択されてもよい。好ましい実施形態において、胃腸管の遠位部分の前記疾患は、遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)である。別の好ましい実施形態において、胃腸管の遠位部分の前記疾患は、回腸嚢炎である。
【0059】
本発明の目的のために、寛解の誘導および寛解の維持は、これらに限定されるものではないが、臨床症状、内視鏡的症状、もしくは組織学的症状、またはそれらの組み合わせの緩和もしくは改善もしくは低減を含むように意図されなければならない。一実施形態において、医薬組成物の投与は、これらに限定されるものではないが、排泄の頻度の増加(排便習慣の変化ともいう)、便の硬さの変化、直腸出血、血便、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱および/もしくは腸外症状、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減および/または改善する。
【0060】
回腸嚢炎治療の目的は、粘膜治癒を示すことにより、症状を緩和し、臨床的および内視鏡的寛解を達成および/または維持することである。組織学的改善(すなわち、急性炎症性細胞の浸潤の解消)は、疾患寛解の追加の構成要素として出現している。症状だけでは回腸嚢の炎症状態を反映しない可能性があるため、内視鏡的治癒は治療の重要な目標である。一実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、回腸嚢炎の寛解を誘導する。別の実施形態において、本発明の医薬組成物のそれを必要とする対象への投与は、回腸嚢炎の寛解を維持する。本発明の目的のために、寛解の誘導および寛解の維持は、これらに限定されるものではないが、臨床症状、内視鏡的症状、もしくは組織学的症状、またはこれらの組み合わせを、緩和もしくは改善もしくは低減することを含むように意図されなければならない。一実施形態において、医薬組成物の投与は、これらに限定されるものではないが、排泄の頻度の増加(排便習慣の変化ともいう)、便の硬さの変化、直腸出血、血便、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱および/もしくは腸外症状、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減および/または改善する。一実施形態において、医薬組成物の投与は、これらに限定されるものではないが、粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍を含む群から選択される1つ以上の内視鏡検査症状の発生を緩和および/または低減および/または改善する。一実施形態において、医薬組成物の投与は、これらに限定されるものではないが、多形浸潤、潰瘍、びらん、単核白血球浸潤、および絨毛萎縮を含む群から選択される1つ以上の組織学的症状の発生を緩和および/または低減および/または改善する。
【0061】
それを必要とする対象に対する本発明の組成物の治療レジメンおよび投与スケジュールは、疾患の性質(例えば、急性または慢性)、その重症度、および患者の全体的な状態に応じて適合され得る。一実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、治療の各サイクルについて約2週間~約4週間続くことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、約1週間、2週間、3週間、または4週間続くことができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、2週間続くことができる。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、4週間続くことができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、治療の各サイクルについて約2週間~約8週間続くことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、約2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間続くことができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、4週間続くことができる。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、6週間続くことができる。さらに好ましい別の実施形態において、本発明の組成物による治療期間は、8週間続くことができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日1回、または1日2回、または1日3回、または1日4回投与されてもよい。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日1回投与される。別の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日2回投与される。
【0064】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、60mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0065】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、60mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0066】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、60mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0067】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、60mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0068】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、80mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0069】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、80mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0070】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、80mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0071】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、80mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0072】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、100mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0073】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日1回、100mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0074】
一実施形態において、0.5重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、100mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0075】
一実施形態において、1.0重量%のリファマイシンSVを含む本発明の医薬組成物は、1日2回、100mLの浣腸剤の単回用量で投与されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物による治療は、それを必要とする対象における疾患の寛解の誘導を達成、または寛解を維持するために、一度に行うことができる。他の実施形態において、本発明の医薬組成物による治療は、それを必要とする対象において、疾患の寛解を維持するために、および/または疾患の再発を予防するために、周期的に繰り返すことができる。後者の実施形態によれば、本発明の医薬組成物によるそのような周期的な治療は、月に1回または2ヶ月毎、または3ヶ月毎、または4ヶ月毎、または5ヶ月毎、または6ヶ月毎に繰り返すことができる。好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物によるそのような周期的な治療は、月に1回繰り返される。好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物によるそのような周期的な治療は、2ヶ月ごとに1回繰り返される。さらなる好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物によるそのような周期的な治療は、3ヶ月ごとに1回繰り返される。本発明の医薬組成物による治療のサイクルの頻度は、疾患の再発の頻度に依存する。本発明の医薬組成物による治療のサイクルの頻度は、寛解の維持に依存する。いくつかの実施形態において、寛解の維持の場合の治療の頻度は、毎月2週間から4週間である。投与のスケジュールは、回腸嚢炎が急性であるか慢性であるか、患者が抗生物質応答性であるか抗生物質依存性であるかに依存する。
【0077】
一実施形態において、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(第1のポリマー)は、これらに限定されるものではないが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ラクチド-コグリコリド)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、および、メチルセルロース(MC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体、並びにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0078】
好ましい実施形態において、ポリマー混合物の少なくとも1つの熱応答性ポリマーは、ポロキサマー188である。別の好ましい実施形態において、ポリマー混合物の熱応答性ポリマーは、ポロキサマー407である。さらなる好ましい実施形態において、ポリマー混合物の熱応答性ポリマーは、ポロキサマー188およびポロキサマー407のいくつかの混合物を含む。別の好ましい実施形態において、ポリマー混合物の熱応答性ポリマーは、セルロース誘導体、好ましくはメチルセルロースである。
【0079】
少なくとも1つの熱応答性ポリマーの量は、(液体)医薬組成物の重量に対して約0.5重量%~約30重量%、好ましくは液体医薬組成物の重量に対して約1重量%~約25重量%、より好ましくは液体医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の範囲である。最適なインサイチュゲル化は、少なくとも1つの熱応答性ポリマーが、(液体)医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在するときに生じる。
【0080】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーは、液体医薬組成物の重量に対して約0.5重量%または約1.0重量%または約5.0重量%または約10.0重量%または約14重量%または約15重量%または約16重量%または約16.5重量%の量で含有される。
【0081】
一実施形態において、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(第2のポリマー)は、これらに限定されるものではないが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチンを含む多糖類、アルギン酸および/またはその塩の群から選択されてもよい。これらのイオン感応性ポリマーの任意の混合物を使用して、適切なポリマー混合物を形成することができる。好ましい実施形態において、前記少なくとも1つのイオン感応性は、アルギン酸および/またはその塩である。別の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、アルギン酸ナトリウムである。
【0082】
一実施形態において、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、液体医薬組成物の重量に対して約0.005重量%~約5重量%、より好ましくは液体医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約3重量%、さらにより好ましくは液体医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の範囲の量で含有される。最適なインサイチュゲル化は、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーが、(液体)医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在するときに生じる。
【0083】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、液体医薬組成物の重量に対して約0.1重量%または約0.2重量%または約0.3重量%、または約0.4重量%または約0.5重量%または約1重量%または約2重量%の量で含有される。
【0084】
一実施形態において、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)は、これらに限定されるものではないが、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチンなど、並びにそれらの混合物を含む群から選択される。これらの生体接着性ポリマーの任意の混合物を使用して、本明細書に定義される適切な医薬組成物を得ることができる。
【0085】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。別の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、ヒアルロン酸および/またはその塩である。少なくとも1つの生体接着性ポリマー(第3のポリマー)は、医薬組成物の改善された接着レベルおよび改善された所望の部位での滞留時間につながる、第1および第2のポリマーとの追加の相乗効果を提供する。
【0086】
一実施形態において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、医薬組成物の重量に対して約0.005重量%~約5重量%、より好ましくは医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約2.0重量%、さらにより好ましくは医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の範囲の量で含有される。生体接着性ポリマーが多すぎると、投与前のゲル化を引き起こす可能性がある。最適なインサイチュゲル化は、生体接着性ポリマーが、(液体)医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の量で存在するときに生じる。
【0087】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、医薬組成物の重量に対して約0.005重量%または約0.01重量%、好ましくは約0.05重量%の量で含有される。
【0088】
一実施形態において、医薬組成物中に存在する活性薬剤は、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩である。リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約10重量%、好ましくは医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%、より好ましくは医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約3重量%、例えば医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約2.5重量%の範囲の量で含有される。いくつかの実施形態において、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、約0.1%、または0.2%、または0.3%、または0.4%、または0.5%、または0.6%、または0.7%、または0.8%、または0.9%、または1.0%、または1.1%、または1.2%、または1.3%、または1.4%、または1.5%、または1.6%、または1.7%、または1.8%、または1.9%、または2.0%の量で含有される。好ましい実施形態において、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、医薬組成物の重量に対して約0.1重量%または約0.2重量%または約0.25重量%または約0.3重量%または約0.4重量%または約0.5重量%または約1重量%または2.5重量%、より好ましくは約0.5重量%または1.0重量%の量で含有される。1つの好ましい実施形態では、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、医薬組成物の重量に対して約0.5重量%の量で含有される。別の好ましい実施形態において、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、医薬組成物の重量に対して約1.0重量%の量で含有される。一実施形態において、本発明の医薬組成物中のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩の投薬強度は、作用部位におけるリファマイシンSVの局所濃度が、その中に一般的に局在する特定の細菌集団に対するその最小阻止濃度(MIC)を超えることを達成するために確立される。MICは、静菌性、すなわち、細菌の目に見える増殖を防止する抗微生物(antimicrobial)または抗菌(antibacterial)活性薬剤のmg/L(μg/mLに相当する)で表される最低濃度として定義される。MICは、微生物集団の成長の阻害に関して、定義された区間にわたる抗生物質の濃度の低下の効果を測定することによって、様々な化合物の抗菌効果を評価するために使用される。MICは、一般に、生物に対する抗菌剤の活性の最も基本的な実験室測定値と見なされる。より低いMIC値は、生物の成長を阻害するために必要な薬物が少ないことを示すため、より低いMIC値を有する薬剤は、より効果的な抗微生物または抗菌活性薬剤である。
【0089】
一実施形態において、リファマイシンSVの用量は、回腸嚢(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)または回腸造瘻手術(K型回腸嚢)内およびその周辺に一般的に見られる細菌に対するリファマイシンSVのMICに基づいて決定することができる。一実施形態において、リファマイシンSVの用量は、一般的に見出される細菌のMIC値内から選択することができる。リファマイシンSVの用量は、回腸嚢炎を引き起こす細菌のすべてを殺す用量とすることができる。一実施形態において、医薬組成物は、この用量のリファマイシンSVを含有するように調製され、将来の使用のために保存され得る。別の実施形態において、医薬組成物は、活性薬剤なしで調製することができ、使用するまで保存することができる。上記のような適切な用量のリファマイシンSVを、その後、投与前にそのような医薬組成物に添加することができる。
【0090】
一実施形態において、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、本発明の医薬組成物中に完全に溶解される。別の実施形態において、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩は、本発明の医薬組成物中で部分的に溶解され、部分的に固体懸濁液の状態で存在する。1つのある実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含有してもよい。本発明によれば、前記薬学的に許容可能な賦形剤は、希釈剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、緩衝剤、並びに、本明細書に記載の医薬組成物の性質、組成および投与様式に適切な他の成分を含む群から選択されてもよい。医薬組成物中で使用することができる薬学的に許容可能な賦形剤の種類および量は、当業者によって容易に決定することができる。一実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤として少なくとも1つの抗酸化剤を含む。別の実施形態において、少なくとも1つの抗酸化剤を含有する医薬組成物は、さらなる薬学的に許容可能な賦形剤として、少なくとも1つの防腐剤をさらに含む。薬学的に許容可能な抗酸化剤および防腐剤は、当業者に周知である。
【0091】
一実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物を使用して、リファマイシンSVを、直接の局所投与によって大腸の標的直腸S状部領域に直接送達することができる。一実施形態において、医薬組成物は、直腸投与に適する。一実施形態において、医薬組成物は、浣腸剤の形態である。一実施形態において、医薬組成物は、溶液、懸濁液、発泡体、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態の液体であり、好ましくは、医薬組成物は、溶液の形態であり、より好ましくは水溶液の形態である。
【0092】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、浣腸剤の形態であり、そのユニット当たりの個々の内容量は、50mL~150mLの範囲である。いくつかの実施形態において、浣腸剤の形態の本発明の医薬組成物のユニット当たりの個々の内容量は、50mL、または60mL、または70mL、または80mL、または90mL、または100mL、または110mL、または120mL、または130mL、または140mL、または150mLである。好ましい実施形態において、浣腸剤の形態の本発明の医薬組成物のユニット当たりの個々の内容量は、50mLである。別の好ましい実施形態において、浣腸剤の形態の本発明の医薬組成物のユニット当たりの個々の内容量は、60mLである。別の好ましい実施形態において、浣腸剤の形態の本発明の医薬組成物のユニット当たりの個々の内容量は、80mLである。さらに別の好ましい実施形態において、浣腸剤の形態の本発明の医薬組成物のユニット当たりの個々の内容量は、100mLである。
【0093】
したがって、本発明の医薬組成物は、大腸の遠位部分、より具体的にはS状結腸および直腸に影響を及ぼす疾患の治療を目的とする。いくつかの実施形態において、大腸の遠位部分に影響を及ぼすそのような疾患は、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)である。別の実施形態において、医薬組成物は、疾患から、または傷害から外科的に生じた空洞に、浣腸剤を使用するなどして、直腸投与によって直接投与することができる。一実施形態において、空洞は、回腸吻合(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)術または回腸造瘻手術(K型回腸嚢)によって作成された回腸嚢(J型回腸嚢またはS型回腸嚢またはW型回腸嚢)である。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、回腸嚢炎の治療に特に適する。
【0094】
医薬組成物は、以下の実施例でより完全に記載されるように、完全に溶解するまで、または部分的に懸濁したリファマイシンSVを有する均質な混合物が最終的に得られるまで撹拌しながら、医薬組成物の成分を水に連続的に添加することによって調製される。
【0095】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、活性薬剤としてのリファマイシンSVと、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および少なくとも1つの生体接着性ポリマーを含むポリマー混合物とを含む。一実施形態において、少なくとも1つの熱応答性ポリマーは、ポロキサマー407を含んでもよく、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、アルギン酸またはその塩を含んでもよく、少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含んでもよい。1つの好ましい実施形態において、ポリマー混合物は、ポロキサマー407、アルギン酸ナトリウム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0096】
一実施形態において、ポロキサマー407は、医薬組成物の重量に対して約5重量%~約30重量%の量で、任意選択的に、医薬組成物の重量に対して約10重量%~約25重量%の範囲で、または医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の範囲で、好ましくは医薬組成物の重量に対して約16重量%または15重量%または14重量%で存在してもよい。好ましい実施形態において、ポロキサマー407は、医薬組成物の重量に対して約16.5重量%の量で存在してもよい。
【0097】
一実施形態において、アルギン酸ナトリウムは、医薬組成物の重量に対して約0.005重量%~約5重量%の量で、任意選択的に、医薬組成物の重量に対して約0.001重量%~約3.0重量%の範囲で、または医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約2.0重量%の範囲で、好ましくは医薬組成物の重量に対して0.2%または0.1%(w/w)で存在してもよい。
【0098】
一実施形態において、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、医薬組成物の重量に対して約0.005重量%~約5重量%の量で、任意選択的に、医薬組成物の重量に対して約0.001重量%~2重量%の範囲で、または医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の範囲で、好ましくは組成物の重量に対して約0.05%(w/w)で存在してもよい。
【0099】
一実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含有してもよい。一実施形態において、抗酸化剤は、メタ重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、もしくはアスコルビン酸ナトリウム、またはそれらの混合物であってもよい。一実施形態において、抗酸化剤は、これらの3つの抗酸化剤を含む。
【0100】
一実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの防腐剤をさらに含有してもよい。一実施形態において、防腐剤は、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、もしくはエタノール、またはそれらの混合物であってもよい。一実施形態において、防腐剤は、エタノール、またはソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウムの混合物を含む。
【0101】
一実施形態において、ポリマーおよびリファマイシンSVの混合物は、可溶性形態および部分的に懸濁した形態のリファマイシンSVの量がポリマーの混合物のレオロジー特性に影響を与える独自の系である。医薬組成物に添加されるリファマイシンSVの量の増加に伴い、レオロジー特性は予想外に低下する。一実施形態において、0.25~3.0重量%のリファマイシンSVを含有する医薬組成物は、選択されたポリマーの定性的/定量的組成を有し、これは、27℃~37℃の温度でのゾルからゲルへの遷移の開始を導く。例えば、0.5重量%または1.0重量%のリファマイシンSVを含有する医薬組成物は、27℃~37℃の温度でゾルからゲルへの遷移の開始をもたらす、選択されたポリマーの定性的/定量的組成物を有する。例えば、0.5重量%または1.0重量%のリファマイシンSVを含有する医薬組成物は、体温(約37℃)でゲル化し、これにより、液体形態として室温で生成物を管理し(患者のコンプライアンス)、直腸経路による投与後に体温(約37℃)でゲル生成物を有することを可能にする。ポリマーの混合物にリファマイシンSVを添加すると、ビヒクル(リファマイシンSVを含まないポリマー混合物またはプラセボ)と比較して、2度(2℃)の係数G’およびG’’間の温度切り替えのずれを予想外にもたらし、ビヒクルと比較してG’係数の強度が低下する。一実施形態において、組成物に添加されるリファマイシンSVの量は、驚くべきことに、37℃での経時的なG’係数の増加(時間依存性)を示し、リファマイシンSVがないポリマー混合物(ビヒクル)では明らかではない。G’曲線によって証明されるように、ビヒクル組成物に関して、リファマイシンSVを有する医薬組成物の時間依存性が驚くべきことに見出される。これは、驚くべきことに、ポリマー混合物へのリファマイシンSVの添加が、ポリマー混合物単独と比較して、標的部位での経時的なゲルの改善された長期持続効果をもたらすことを実証した。予期せぬことに、リファマイシンSVは、ポリマー混合物と相互作用して、G’係数を経時的に増加させ、リファマイシンSVを作用部位と密接に接触するゲルの薄層に埋め込まれたままにさせ、その薬理学的活性の持続時間をインサイチュで延長させて、標的部位におけるゲル構造を強化する(実施例7を参照されたい)。一実施形態において、リファマイシンSVを含む医薬組成物は、以下の実施例に報告されるように、単独で試験したリファマイシンSVのMICS値を完全に維持する。浣腸剤ビヒクルによる改善されたインサイチュ滞留に加えて、MICのこの維持は、抗生物質効果に関して、局所投与薬剤のより長い有効性を可能にする。一実施形態において、リファマイシンSVを含む医薬組成物は、単独で試験した同量のリファマイシンSVと比較して、向上した抗炎症効果を示す。当業者は、本発明のリファマイシンSVを含有する医薬組成物の向上した抗炎症作用が、単独で試験した同量の活性物質リファマイシンSVと比較して、予想外かつ予測不可能であることを認識するであろう。本発明の医薬組成物の非活性成分は、上に開示されるように、いかなる抗炎症活性も付与されていない既知の医薬賦形剤によって構成される。この抗炎症活性の欠如の証拠として、活性物質を含まない本発明の医薬組成物(「ビヒクル」ともいう)に対して行われた抗炎症試験の結果が示される。予想されるように、そのような試験は、リファマイシンSVを含まない、ビヒクル単独のあらゆる抗炎症活性の欠如を裏付け、本明細書に開示される本発明の医薬賦形剤の薬理学的活性の既知の欠如を与えた。当業者は、本発明のビヒクルとリファマイシンSV活性物質との間に、リファマイシンSV活性物質の固有の抗炎症活性を高める相乗効果または有利かつ有益な相互作用が存在する可能性があることを認識するであろう。したがって、リファマイシンSVを含有するインサイチュゲル化浣腸剤として製剤化された本発明の医薬組成物は、リファマイシンSV単独よりも高い抗炎症活性を発揮し、回腸嚢炎、または直腸炎、または潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)などの炎症性要素を有する胃腸疾患の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘導、維持、および/または進行の遅延に特に有用である。
【0102】
したがって、リファマイシンSVおよび上述の3つのポリマーを含む本発明の医薬組成物は、活性の著しい喪失を伴う組成物の迅速な排出を回避して、作用部位(胃腸管の遠位部分および/または外科的に作成された人口空洞、回腸嚢)におけるリファマイシンSVまたはその薬学的に活性な塩の長期持続効果および強化された接着を提供することができる。さらに、リファマイシンSVは、抗菌性と抗炎症作用とを組み合わせた二重の治療効果を示し、作用の広範なスペクトラムを有する完全な治療系を提供した。現時点では、改善された長期持続接着を伴う作用部位でのより長い永続時間と、改善された長期的な接着性とを共に有する二重の治療効果を組み合わせることができる治療法はない。
【0103】
3つのポリマー混合物を含む本発明の医薬組成物に製剤化されたリファマイシンSVの抗生物質効果と共に、抗炎症効果は、炎症性および/または感染性要素を有する胃腸疾患の治療、改善、重症度の低減、寛解の誘導、維持、および/または進行の遅延に効果をもたらす。リファマイシンの炎症を軽減する短期的であるが即時の臨床的利益、細菌感染の根絶の臨床的利益、および腸レベルでの最小限の吸収は、本発明の組成物を、抗生物質応答性、抗生物質依存性、および抗生物質耐性の3つのカテゴリーすべての回腸嚢炎、または炎症性および/もしくは感染性要素を有するあらゆる他の胃腸疾患に対する有利な治療にする。
【0104】
本発明によるインサイチュゲル化製剤に製剤化されたリファマイシンSVは、独自のものである。
【0105】
リファマイシンSVの胃腸管における最小限の全身吸収は、回腸嚢炎治療に現在使用されている他の抗生物質(例えば、シプロフロキサシンおよびメトロニダゾール)と比較して、独特の重要な要素である。これらの治療薬は経口投与され、それらの全身吸収は、全身曝露および生体内分布に起因する長期的な有害作用と共に、経時的な抗生物質耐性細菌株の増加をしばしばもたらし得る。回腸嚢炎の患者は、年間2~3回以上の急性エピソードに苦しむことが多いため、リファマイシンなどの非吸収性抗生物質の使用は、これらの頻繁に再発する患者にとって重要な利点を提供することができる。さらに、例えば、けいれん性発作および末梢神経障害などの、異なる抗生物質で治療された患者で報告されている重篤な有害反応が予防され得る。したがって、そのような患者では、リファマイシンSVとして良好な安全性プロファイルを有する非吸収性抗生物質の使用は、現在の標準的なケア治療(例えば、シプロフロキサシンおよびメトロニダゾールなど)に代わるより安全な代替案を提供し得る。
【0106】
遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)および/または直腸炎の治療において、本発明による製剤は、現在利用可能な治療よりも実質的な利点を提供する。実際、本発明の医薬組成物は、生理学的条件でゾルからゲルへの移行を経て、投与時に組成物自体を作用部位に長期間保持することを可能にすることが実証されたが、現在利用可能な治療は、体温で液体(浣腸剤または直腸フォーム)のままであるか、または液化(坐剤)し、したがって、それらの物理的構造のために短時間で体から排出される。さらに、本発明の組成物は、そのような疾患の病因に関与することが知られている2つの要素、すなわち、先天性免疫系の活性化および結果として生じる炎症の原因となる腸内細菌を標的とするという実質的な利点を提供する。現在利用可能な治療法は、炎症のみを対象とする。
【0107】
本発明の医薬組成物の別の利点は、リファマイシンおよびその塩の溶液の向上した安定性によって構成される。実施例でさらに詳述されるように、本発明の医薬組成物を、リファマイシンの市販の液体製剤(Rifocin(登録商標))と共に、異なる保管条件下で安定性試験に入れた。分析の結果、リファマイシン活性物質は、リファマイシンの標準的な液体製剤と比較して、より少ない程度の分解を示すことが示されている。向上した安定性は、製品の取り扱いを簡素化し、少なくとも数ヶ月間室温で保管することを可能にする。
【0108】
定義
本明細書において、「一つの実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「一つの態様(one aspect)」、「一態様(an aspect)」の言及および同様の言及は、記載した実施形態または態様が特定の態様、特徴、構造または特性を含みうることを示す。さらに、かかる表現は、本明細書の他の部分で言及されたのと同じ実施形態または態様いうが、必ずしもそうであるとは限らない。さらに、特定の態様、特徴、構造または特性が一実施形態または一態様と共に記載されている場合、前記態様、特徴、構造または特性が他の実施形態または態様に影響すること、または関連することは、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、当業者の知識の範囲内である。単数の形態「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確に指示していない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば「一化合物(a compound)」の言及は、複数のかかる化合物を含む。さらに、特許請求の範囲は、任意選択的な要素を排除するように草案され得ることに注意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素の記載または「負」の限定の使用と関連して「もっぱら(solely)」、「単に(only)」などのような排他的な用語を使用するための先行詞として機能することを意図する。
【0109】
用語「および/または」は、その項目のどれか、その項目の任意の組み合わせ、またはこの項目が関連するすべての項目を意味する。
【0110】
用語「含む」、「有する」、「含む」、および「含有する」は、オープンエンド型の用語(即ち、「含むが、これに限定されない」を意味する。)として解釈されるべきであり、「~から本質的になる」、「~から本質的になる」、「~からなる」、または「~からなる」、という用語のサポートも提供すると考えるべきである。
【0111】
用語「~から本質的になる("consist essentially of"、"consisting essentially of")」はセミクローズドな用語として、本発明の基本的特徴および新規な特性に実質的に影響する他の成分(および任意選択的な生理学的に許容可能な賦形剤および/またはアジュバント)を含まないことを意味すると解釈されるべきである。
【0112】
「からなる、からなる("consists of"、"consisting of")」という用語は、クローズドな用語として解釈されるべきである。
【0113】
用語「ポリマー混合物」は、活性薬剤を含まない医薬組成物を意味することが意図されている。したがって、その最も単純な使用法では、「ポリマー混合物」は、浣腸剤の製剤化のための水または他の適切な担体、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーおよび少なくとも1つの生体接着性ポリマー、並びに本明細書に記載の任意の賦形剤を含む。
【0114】
本明細書で特に示さない限り、用語「約」は、個々の成分、組成物、または実施形態の機能性に関して等価な、記載された範囲に隣接する値、例えば重量百分率を含むことを意図する。
【0115】
当業者は、任意のおよび全ての目的について、特に明細書を提供することによって、本明細書に記載された全ての範囲は、任意のおよび全ての可能なサブ範囲およびそのサブ範囲の組み合わせ、並びに当該範囲を構成する個々の数値、特に整数値も包含することを認識するであろう。記載された範囲は、当該範囲内の、各々の具体的値、整数、小数、または単位元(identity)を含む。
【0116】
当業者は、構成要素(member)がマーカッシュグループなどの一般的な形式で一緒にグループ化される場合、本発明は全体として列挙された全グループのみでなく、個別にグループの各構成要素と、主要グループのすべての可能なサブグループを包含することを認識するであろう。さらに、全ての目的について、本発明は主要グループだけでなく、1以上のグループの構成要素のない主要グループも包含する。したがって、本発明は、記載されたグループの構成要素のいずれかまたは複数の明示的排除を想定する。したがって、但し書きは、開示されたカテゴリーまたは実施形態のいずれかに適用され、これによって記載された要素、種、または実施形態のいずれかまたは複数が、例えば明示的な負の限定で使用された場合、かかるカテゴリーまたは実施形態から排除され得る。
【0117】
用語「緩和する」は、胃腸管の炎症および/または変性疾患の徴候および/または出現を和らげることをいう。
【0118】
用語「低減する」は、胃腸管の炎症および/または変性疾患によって引き起こされるダメージの広がりを減らすこと、または、かかるダメージに関連する臨床的サインまたは徴候を減らすことをいう。
【0119】
「粘度」は、流れに対する液体または半固体の抵抗を定義する。液体または半固体の流れは、粘度、またはより正確にはせん断粘度ηによって説明される。流体のせん断粘度は、隣接する層が異なる速度で互いに平行に移動するせん断流に対するその抵抗を表す。粘度の測定の一般的な単位は、パスカル秒(Pas)、ポアズ(P)およびcP(センチポアズ)である。
【0120】
「係数G'」は、動的レジメンで得られた弾性係数または貯蔵係数を指す。弾性係数(elastic modulus)(弾性係数(modulus of elasticity)とも知られる)は、応力が加えられたときに弾性的に(すなわち、非永久的に)変形することに対する物体または物質の抵抗を測る値である。物体の弾性係数は、弾性変形領域におけるその応力-ひずみ曲線の傾きとして定義される。
【0121】
「体温」は、生体の過程で生じるおよび維持される熱の水準をいう。熱は、栄養分の代謝を通して体内で生成され、放射、対流、および汗の蒸発を通して体の表面から消失される。熱の生成および消失は視床下部および脳幹で調節および制御される。健常な大人の体温は、口で測定した場合、通常小さな変動が1日の間で記録されるが、37℃である。
【0122】
「室温」(RT)は、一般に、所与の手順に使用されている任意の環境における周囲空気温度として定義される。より具体的には、一部の周囲温度は、本質的に、この範囲内に入らないため、それは20~25℃と定義される。一般に、RTで実施されるステップを要求するプロトコルは、温度が18℃を下回らず、27℃を超えないことを必要とする。
【0123】
「MIC」は、最小阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentraion)を指し、静菌性である(細菌の目に見える増殖を防止する)抗菌成分または薬剤のmg/L(μg/mLに相当する)で表される最低濃度として定義される。
【0124】
「DoE」とは実験計画法(Design of Experiments)を指し、系統的な方法で実験を実行し、データを効率的に分析するための統計的および数学的ツールとして定義される。
【0125】
「リファマイシンSV」は、CAS No.14897-39-3に定義されるリファマイシン、リファマイシンナトリウム塩を指す。
【0126】
用語「治療上有効な量」は、それを必要とする対象への投与時に、疾患を治療するのに十分な化合物の量を指す。この場合、リファマイシンSVの治療上有効な量は、それを必要とする患者に投与したときに、回腸嚢炎および/または直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療、改善、重症度の低減、進行の遅延、寛解の誘導、または寛解の維持に必要なリファマイシンSVの量である。
【0127】
「長期持続性」という用語は、製剤が、治療効果を発揮するのに必要な時間、作用部位に留まることを意味する。
【0128】
実施形態
以下に、いくつかの好ましい実施形態の概要を述べる。
【0129】
1.治療有効量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩と、
ポリマー混合物と、を含み、
前記医薬組成物は、室温で液体であり、体温でインサイチュでゲルを形成することができる、医薬組成物。
【0130】
2.前記ポリマー混合物が、
少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
少なくとも1つの生体接着性ポリマーを含む、実施形態1の医薬組成物。
【0131】
3.前記医薬組成物が浣腸剤である、実施形態1または2の医薬組成物。
【0132】
4.前記熱応答性ポリマーが、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ラクチド-コグリコリド)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、およびセルロース誘導体からなる群から選択される、実施形態2または3の医薬組成物。
【0133】
5.前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407からなる群から選択されるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである、実施形態2、3または4の医薬組成物。
【0134】
6.前記熱応答性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、実施形態2~4のいずれかの医薬組成物。
【0135】
7.前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー188、ポロキサマー407、またはそれらの混合物である、実施形態2~5のいずれかの医薬組成物。
【0136】
8.前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約1重量%~約25重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在する、実施形態2~7のいずれか1つの医薬組成物。
【0137】
9.前記イオン感応性ポリマーが多糖である、実施形態2~8のいずれか1つの医薬組成物。
【0138】
10.前記イオン感応性ポリマーが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸、その塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態2~9のいずれかの医薬組成物。
【0139】
11.前記イオン感応性ポリマーが、アルギン酸ナトリウムである、実施形態2~10のいずれかの医薬組成物。
【0140】
12.前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約3重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する、実施形態2~11のいずれか1つの医薬組成物。
【0141】
13.前記生体接着性ポリマーが、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態2~12のいずれかの医薬組成物。
【0142】
14.前記生体接着性ポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、実施形態2~13のいずれかの医薬組成物。
【0143】
15.前記生体接着性ポリマーが、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩である、実施形態2~14のいずれかの医薬組成物。
【0144】
16.前記生体接着性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約2.0重量%の量で、好ましくは、前記医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の量で存在する、実施形態2~15のいずれかの医薬組成物。
【0145】
17.前記医薬組成物が、抗酸化剤、防腐剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み、および/または任意選択的に、前記組成物が、6.5~7.5、好適にはpH6.8~7.2の範囲のpHを有する、前述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0146】
18.医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、好ましくは、医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約3.0重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、例えば、医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約2.5重量%を含む、前述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0147】
19.治療上有効な量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩、およびポリマー混合物を含む、回腸嚢炎、直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療に使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は直腸投与され、室温で液体であり、前記患者の体温でインサイチュでゲルを形成する、医薬組成物。
【0148】
20.前記医薬組成物が浣腸剤である、実施形態19の使用のための医薬組成物。
【0149】
21.排泄の頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱、および腸管外症状からなる群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減するための、実施形態19または20の使用のための医薬組成物
【0150】
22.粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍からなる群から選択される1つ以上の内視鏡症状の発生を緩和または低減するための、実施形態19または20の使用のための医薬組成物。
【0151】
23.1日に1回または1日に2回投与される、請求項19~22のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0152】
24.前記直腸投与が、少なくとも2週間行われる、請求項19~23のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0153】
25.それを必要とする患者の回腸嚢炎、直腸炎および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療方法であって、
前記患者に、治療有効量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩、およびポリマー混合物を含む医薬組成物を直腸投与する工程を含み、
前記医薬組成物は、室温で液体であり、前記患者の体温でインサイチュでゲルを形成する、医薬組成物。
【0154】
26.前記医薬組成物が、浣腸剤である、請求項25に記載の方法。
【0155】
27.前記医薬組成物は、前記医薬組成物の重量に対して、約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項25に記載の方法。
【0156】
28.前記医薬組成物を直腸投与する工程が、排泄の頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱および腸外症状からなる群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減する、請求項25に記載の方法。
【0157】
29.前記医薬組成物を直腸投与する工程が、粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍からなる群から選択される1つ以上の内視鏡検査症状の発生を緩和および/または低減する、請求項25に記載の方法。
【0158】
30.前記医薬組成物が毎日投与される、請求項25に記載の方法。
【0159】
31.前記医薬組成物が1日2回投与される、請求項25に記載の方法。
【0160】
32.前記直腸投与が少なくとも2週間行われる、請求項30に記載の方法。
【0161】
33.前記直腸投与が少なくとも2週間行われる、請求項31に記載の方法。
【0162】
34.回腸嚢炎、直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)を治療するための医薬品の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【実施例
【0163】
以下の実施例は、本発明の特定の態様および態様を例示する目的で含まれており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0164】
実施例1
リファマイシンありおよびなしの単体重心計画(Simplex Centroid Design)
リファマイシンSVと、ポロキサマー、アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むポリマー混合物とを含む医薬組成物を調製した。医薬組成物は、回腸嚢、遠位腸および直腸への適用を意図される。DoEアプローチ、「単体重心計画」は、リファマイシンSVありおよびなしのポリマー(ビヒクル)の混合物間の相互作用および比率をよりよく理解するために使用される。考慮される応答変数は次のとおりである。
【0165】
1)容易な投与に機能する、室温(25℃)でのポリマー混合物粘度;
2)塗布部位におけるポリマー混合物の徐放作用に機能する、投与後の粘弾性挙動、および
3)投与後のポリマー混合物のインサイチュでの維持に機能する、37℃での粘膜接着。
【0166】
表1および図1は、単体重心計画の因子空間および実験点を報告する。
【0167】
【表1】
【0168】
図1に示される混合物計画は、三角形の角に対応する3つの単体混合物成分、三角形の縁に沿った点としてグラフィカルに表される3つの二元組合せ、三角形の中心と重なる1つの三元組合せ、および三角形内側の領域内の3つの三元組合せを含む(非特許文献10)。2つの平行な重心混合物計画は、単体重心計画の有意な点を得るために、表1のスキームに従って、活性成分(リファマイシンSV 0.5% w/w、5mg/gに相当)を添加したものと、活性成分を添加しないものとを実施した。このような計画の重複(薬剤物質ありおよびなし)の理由は、リファマイシンが選択されたポリマー混合物のゲル化特性と特異的に相互作用するかどうか、並びに、化学的および/または物理的干渉が発生した場合、この相互作用がレオロジー特性の改善または悪化をもたらすかどうかを検証するためであった。
【0169】
表1の10点のポリマー混合物(リファマイシンSVありおよびなし)を、25℃および37℃の回転レオメーター(Kinexus Pro+)によって、増加させていくせん断速度(0.1~300s-1)で粘度について特徴付けた。すべてのポリマー混合物(リファマイシンSVありおよびなし)を、上述の回転レオメーター(Kinexus Pro+)による25℃および37℃の両方での粘弾性測定(振動試験)および粘膜接着特性評価に供した。粘膜接着特性を特徴付けるために、リファマイシンを有するすべてのビヒクルを、TA-XT plus Texture Analyzerによって37℃で評価した。そのような試験は、ブランク溶液としての精製水と比較して、市販の胃ムチン(II型、Sigma、I)の8% w/w懸濁液に浸漬されたフィルターディスクからビヒクル層を分離するために必要な剥離力(Fmax、mN)および接着仕事(AUC、mN.mm)を測定する。データはまた、2つの基質を比較して製剤の接着をよりよく理解するために、ムチンとブランクとの間で正規化された。正規化された力および接着仕事(AUC)は、以下の方程式に従って計算した。
【0170】
ΔFmax/Fmaxブランク=(Fmaxムチン-Fmaxブランク)/Fmaxブランク、および
ΔAUC/AUCブランク=(AUCムチン-AUCブランク)/AUCブランク
式中、FmaxムチンおよびAUCムチンは、それぞれ、8% w/wの胃ムチン分散液の存在下で得られる接着力および接着仕事であり、FmaxブランクおよびAUCブランクは、それぞれ、ブランク測定から得られる接着力および接着仕事である。
【0171】
以下の応答変数を測定した。
1)25℃および37℃、10s-1のせん断速度でのポリマー混合物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
粘膜接着の測定に関して
1)剥離の最大力(Fmax)
2)接着仕事(AUC)
3)正規化された力のデータ(ΔFmax/Fmaxブランク)
4)正規化された仕事のデータ(ΔAUC/AUCブランク)
【0172】
各応答の変数は、適切な数学モデルによってポリマー混合物組成物に関連することができる。この目的のために、実験データを複数の線形回帰分析に供し、一連のモデル(線形、二次、および特殊立方体)をテストした(非特許文献11)。各応答変数の最適適合モデルを決定するために、統計ソフトウェアパッケージ(Minitab(登録商標)19、2020)により統計解析(ANOVA)を行った。
【0173】
リファマイシンSVありまたはなし、並びに25℃および37℃での各ランについて粘度曲線を得た。リファマイシンを有する25℃および37℃での代表的な粘度曲線を図2に示す。ラン1~10(プラセボ対リファマイシンSV製剤)から得られた粘度データの比較は、以下を示す。
・ラン7およびラン10の粘度データは、プラセボおよびリファマイシン製剤の両方で類似しており、10s-1でより高い粘度値(25℃および37℃で他のものより100倍高い)を示し、25℃および37℃での粘度曲線の間に差はなく、これはおそらくポロキサマーの濃度が高いためであり、温度とともに遷移が起こらないことを意味する。
・製剤中に15%のポロキサマーを含有するラン2およびラン3は、25℃~37℃の粘度プロファイルの差を示す。両方の製剤は、25℃でニュートン挙動を示し、一方、37℃で擬塑性挙動を示す。さらに、37℃、10s-1での粘度値は、25℃での値と比較して高い。リファマイシンSVバッチが、対応するビヒクルランと比較して粘度値の減少を示す場合でも、プラセボおよびリファマイシンSVバッチについて同じ挙動が各サンプルランで示される。
【0174】
粘弾性データを考慮すると、ラン7およびラン10(どちらも20%を超えるポロキサマーの濃度を有する)は、係数G’およびG’’の25℃から37℃への切り替えを示さない。実際、25℃でのラン7およびラン10の粘度曲線は、他のランと比較して高い値を示す。一方、ラン2およびラン3は、28℃付近での係数G’とG’’の切り替えを示す。図3は、ラン2の温度ランプを示す。
【0175】
リファマイシンSVを含有するランのFmaxの観点からの粘膜接着結果は、ラン3、4、7、8およびラン10が、図4に示すように、ムチンとの相互作用後の粘膜接着特性の増加を示す。接着仕事の結果(AUC)は、Fmax値によって得られた結果を確認し、主に、両方の基質において高い値を提示するラン7および10で、両方の条件において高い相互作用を意味する結果を確認した。この相互作用は、両方のランにおける高濃度のポロキサマーに起因する。図5を参照されたい。正規化された結果は、データのより容易な理解を可能にする:3つのポリマーの組み合わせは、ラン4で観察されるように、高い粘膜接着をもたらした。図6は、混合物計画から外挿された正規化仕事(AUC)の等高線図を例示する。接着仕事の最も高い値は、約15%未満のポロキサマー407、約0.5%超のアルギン酸ナトリウム、および約0.17%未満のCMCナトリウムの値を有する、3つのポリマーのすべての組み合わせを含む領域(濃い緑色)に収まった。
【0176】
この第1の混合物計画の結果により、ポリマー混合物の最適化領域は、約14%~15% w/wのポロキサマー407、約0.4%~0.1%のアルギン酸ナトリウム、および約0.4~0.01のCMCナトリウムであると定義された。製剤組成物の最適化をより良く定義するために、選択されたポリマー範囲を使用することによって、さらなる3因子完全実施要因(Full Factorial)計画を実施した。
【0177】
実施例2
完全実施要因
ポリマー混合物の最適な定量的組成の同定
医薬組成物は、J型回腸嚢、遠位腸および直腸への適用を目的としている。DoEアプローチ、「完全実施要因設計」を使用して、ポリマー混合物の最適な定量的組成を特定した。考慮される応答変数は次のとおりである。
1)容易な投与に機能する、室温(25℃)でのポリマー混合物粘度;
2)適用部位におけるポリマー混合物の徐放作用に機能する、投与後の粘弾性挙動、および
3)投与後のポリマー混合物のインサイチュでの維持に機能する、37℃での粘膜接着。
【0178】
表2および図7は、面心完全実施要因計画の係数空間および実験点を報告する。
【0179】
【表2】
【0180】
DoEセットには、3つのポリマーに対応する3つの因子がある。各因子には2つの水準があり、軸方向の点(面心)も含む。各因子には、より低い水準(-1)、より高い水準(+1)、および軸方向のもの(0)がある。
【0181】
表2の14点のポリマー混合物(リファマイシンSV有り)を、25℃の回転レオメーター(Kinexus Pro+)によって、増加させていくせん断速度(0.1~300s-1)で粘度について特徴付けた。すべてのポリマー混合物(リファマイシンSV有りおよび無し)を、上述の回転レオメーター(Kinexus Pro+)による25℃および37℃の両方での粘弾性測定(振動試験)および粘膜接着特性評価に供した。
【0182】
以下の応答変数を測定した。
1)25℃および37℃、10s-1のせん断速度でのポリマー混合物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
粘膜接着の測定に関して
1)剥離の最大力(Fmax)
2)接着仕事(AUC)
3)正規化された力のデータ(ΔFmax/Fmaxブランク)
4)正規化された仕事のデータ(ΔAUC/AUCブランク)。
【0183】
各応答の変数は、適切な数学モデルによってポリマー混合物組成物に関連することができる。この目的のために、実験データを複数の線形回帰分析に供し、一連のモデル(線形、二次、および特殊立方体)をテストした(非特許文献11)。各応答変数の最適適合モデルを決定するために、統計ソフトウェアパッケージ(Minitab(登録商標)19、2020)により統計解析(ANOVA)を行った。
【0184】
25℃でのリファマイシンSVを有する各ランについて、粘度曲線を得た。25℃における代表的な粘度曲線を図8に示す。ラン1~14から得られた粘度データの比較は、より低い水準のすべてのポリマーを有するラン2が、少なくとも粘性挙動を示したことを示した。逆に、ラン1は、3つのポリマーすべてに関してより高い水準を有するが、最も粘性が高い。
【0185】
実験から、低水準のポロキサマー407およびCMCナトリウムは、25℃および10s-1でのビヒクル粘度に影響を及ぼすようであり、実際には、これらの2つのポリマーの最低水準を有するビヒクルは、低粘度を特徴とするビヒクルである(例えば、ラン4)。しかし、これらのビヒクルにアルギン酸ナトリウムを添加すると、粘度が急激に増加する。
【0186】
粘弾性データを考慮すると、ポロキサマーは、その熱ゲル化特性により、生理学的条件での製剤ゲル化の主要な要因であることが評価された。ポロキサマー407の濃度が12% w/wである場合、ラン2を除いて、試験したランのほとんどで熱ゲル化は発生しなかった。一方、濃度が18% w/wであった場合、製剤は既に室温で固体様の特性を示した。ポロキサマー407がその軸上の点(15% w/w)にあったとき、係数G’およびG’’の切り替えは、製剤に応じて27~37℃の温度範囲に発生した。切り替えは、製剤に固体様の挙動を与えた。図9および図10は、この傾向の例を示す。
【0187】
粘膜接着は、粘膜接着力によって得られた両方のシリーズの確認されたデータの接着作業の観点から生じる。Fmaxおよび接着仕事(AUC)の正規化された結果を、完全実施要因計画によって分析し、パレート図から、最も統計的に有意な因子が、ポロキサマー407および3つのポリマーの混合物であることが確認された。さらに、正規化された力および仕事の輪郭プロットは、完全実施要因計画から外挿された。接着力および接着仕事の高い値は、ポロキサマー407が約15%、約1.0%未満のアルギン酸ナトリウム、および約0.5%未満CMCナトリウムの値で確認された。図11は、ポロキサマーP407が約15%、アルギン酸ナトリウムが約1.0%未満、およびCMCナトリウムが約0.5%未満の場合に良好な接着仕事を示す。
【0188】
実施例3
バッチ7568
バッチ7568水溶液を以下のように調製した。
【0189】
【表3】
【0190】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。次いで、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、ソルビン酸カリウムを上記の混合物に添加する。次いで、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、安息香酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0191】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度;
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0192】
10Hzでの温度ランプは、約27℃から29℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0193】
25℃および40℃での周波数の関数としての損失正接(Tanδ)を決定した。Tanδ<1は、40℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及(prevalence)を意味するゲル様挙動を示す。一方、25℃では、TANδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。図12は、バッチ7568の損失正接(tanδ)のグラフを提供する。このグラフは、他の損失正接を代表する。
【0194】
実施例4
バッチ7569
バッチ7569水溶液を以下のように調製した。
【0195】
【表4】
【0196】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHを確認し、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0197】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度;
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0198】
10Hzでの温度ランプは、約26℃から29℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0199】
Tanδ<1は、40℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル様挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0200】
実施例5
バッチ7572
バッチ7572水溶液を以下のように調製した。
【0201】
【表5】
【0202】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0203】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0204】
10Hzでの温度ランプは、約26℃から31℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0205】
Tanδ<1は、40℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル様挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0206】
実施例6
バッチ7567
バッチ7567水溶液を以下のように調製した。
【0207】
【表6】
【0208】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、ヒドロキシプロピルセルロースを上記混合物に添加する。その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、アスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度で冷却し、次に、均質な混合物が得られるまでポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次に、溶液のpHを確認し、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、ジェランガムを上記の混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0209】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0210】
10Hzでの温度ランプは、G’およびG’’係数間の切り替えがおそらく25℃から30℃までの前に開始したことを示していない。しかし、G’係数はG’’よりもはるかに高い。
【0211】
Tanδ<1は、25℃および40℃の両方で粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル様挙動を示す。Tanδ<1は、この温度範囲ではゾル-ゲル遷移が観察されないことを示す。
【0212】
実施例7
バッチ7570
バッチ7570水溶液を以下のように調製した。
【0213】
【表7】
【0214】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。その後、pHを確認し、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0215】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0216】
10Hzでの温度ランプは、約26℃から28℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。リファマイシンSVを含まないビヒクルの10Hzでの温度ランプは、約24℃から26℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。
【0217】
Tanδ<1は、40℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル状挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0218】
リファマイシンSV製剤および対応するプラセボ製剤を、一定の周波数およびせん断応力に20分間、一定の温度、37℃で供して、時間依存性が生じるかどうかを評価した(図13)。
【0219】
驚くべきことに、リファマイシンSVを含有する製剤のみが、経時的なG’係数の増加を意味する時間依存性を示すことが見出された。時間依存性は、ゲルの三次元構造が破壊されるのを防ぎながら、作用部位における薬物の滞留時間の増加を裏付ける。
【0220】
実施例8
バッチ7574
バッチ7574水溶液を以下のように調製した。
【0221】
【表8】
【0222】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHを確認し、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0223】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0224】
温度ランプは、約26℃から29℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0225】
Tanδ<1は、40℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル状挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0226】
プラセボおよびリファマイシン製剤の両方を、一定の周波数およびせん断応力に20分間、一定の温度、37℃で供して、時間依存性が生じるかどうかを評価した。驚くべきことに、リファマイシンを含有する製剤のみが、経時的なG’係数の増加を意味する時間依存性を示すことが見出された。時間依存性は、ゲルの三次元構造が破壊されるのを防ぎながら、作用部位における薬物の滞留時間の増加を裏付ける。
【0227】
実施例9
バッチ7601
このバッチは、完全実施要因計画によって外挿された最適化された製剤に対応する。バッチ7601水溶液を以下のように調製した。
【0228】
【表9】
【0229】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0230】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度;
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0231】
温度ランプは、32℃から35℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0232】
Tanδ<1は、37℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル状挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0233】
製剤を、一定の周波数およびせん断応力に20分間、一定の温度(37℃)で供して、時間依存性が生じるかどうかを評価した。
【0234】
時間依存性は、ゲルの三次元構造が破壊されるのを防ぎながら、作用部位における薬物の滞留時間の増加を裏付ける。
【0235】
実施例10
バッチ7604
このバッチは、完全実施要因計画によって外挿された最適化された製剤に対応する。バッチ7604水溶液を以下のように調製した。
【0236】
【表10】
【0237】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、ソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウムを添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHを確認し、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0238】
以下の特性が考慮されている。
1)10Hzで、温度が25℃から37℃に上昇した後の組成物の粘度
2)粘弾性測定に関して
1)貯蔵弾性係数(G’)
2)損失粘性係数(G’’)
3)損失正接(Tanデルタ)、粘性挙動(G’’)係数および貯蔵弾性(G’)係数の指標であり、損失係数間の比として計算される
【0239】
温度ランプは、29℃から31℃までに開始するG’およびG’’係数間の切り替えを示す。この交差は、試料の弾性の増加に関連する。
【0240】
Tanδ<1は、37℃で、粘性挙動上の弾性挙動の普及を意味するゲル状挙動を示す。一方、25℃では、tanδ>1は、ゾル-ゲル遷移を確認する液体様挙動を示す。
【0241】
製剤を、一定の周波数およびせん断応力に20分間、一定の温度(37℃)で供して、時間依存性が生じるかどうかを評価した。
【0242】
時間依存性は、ゲルの三次元構造が破壊されるのを防ぎながら、作用部位における薬物の滞留時間の増加を裏付ける。
【0243】
実施例11
バッチ7611
バッチ7611水溶液を以下のように調製した。
【0244】
【表11】
【0245】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0246】
図14は、リファマイシン濃度が粘度挙動に及ぼす影響を示す。
【0247】
実施例12
バッチ7615
バッチ7615水溶液を以下のように調製した。
【0248】
【表12】
【0249】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0250】
実施例13
バッチ7616
バッチ7616水溶液を以下のように調製した。
【0251】
【表13】
【0252】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度に冷却し、次いで、ポロキサマーを添加する。完全な溶解が達成されるまで混合物を撹拌下に保ち、次いで室温まで加温する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0253】
実施例14
リファマイシンSV抗菌活性
回腸肛門吻合手術を受けた患者では、ストーマ閉鎖時に上流回腸吻合部位から得られた生検で、主に通性嫌気菌(乳酸菌、腸球菌、大腸菌群など)、硫酸還元菌の少なさ、および低水準のウェルシュ菌(Clostridium perfringens)が示されている。一方、回腸嚢炎のエピソードの間、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の豊富さの増加、バクテロイデス属(Bacteroides)の豊富さの減少、およびフィーカリバクテリウム プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)が示されている。
【0254】
リファマイシンは局所抗生物質であり、実際、胃腸感染症を引き起こす微生物に対して抗菌活性を発揮するが、全身感染症には効果を示さない。実際に、それは消化管で放出され、主に未変化体として糞便中に排泄される。
【0255】
最小阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration、MIC)は、静菌性である(細菌の目に見える増殖を防止する)抗菌成分または薬剤のmg/L(μg/mLに相当する)で表される最低濃度として定義される。MICは、微生物集団の成長の阻害に関して、定義された期間にわたる抗生物質の濃度の低下の効果を測定することによって、様々な化合物の抗菌効果を評価するために使用される。MICは、一般に、生物に対する抗菌剤の活性の最も基本的な実験室測定値と見なされる。より低いMIC値は、生物の成長を阻害するために必要な薬物が少ないことを示すため、より低いMICスコアを有する薬物は、より効果的な抗菌(antimicrobial)または抗菌(antibacterial)活性剤である。
【0256】
リファマイシンナトリウム塩の抗菌特性を、回腸嚢炎の病因に関与する選択された細菌のパネルで評価し、標準的なブロス希釈法を使用してリファマイシンのMICを決定した。簡潔に述べると、試験化合物の2倍希釈液を96丸底ウェルプレートに分注し、各希釈液を試験細菌種に適した液体培養培地中で処理した。滅菌水の生理食塩水の微生物株の懸濁液によって細菌接種材料を調製し、1.5×10CFU/mlに対応する0.5McFarland標準の濃度に調節した。各ウェルに0.5~1×10CFU/mLの最終細菌濃度を分布させた。各プレートを、試験される細菌種(好気性または嫌気性)に適した温度および酸素濃度でインキュベートした。インキュベーション時間は、最小24時間から最大72時間の範囲であった。MICは、陽性増殖対照カラム(被験物質を含まない細菌接種材料)に目に見える増殖があったときに記録した。試験されたリファマイシンに対して、選択された細菌(好気性菌および嫌気性菌)のインビトロ抗菌薬感受性の結果を表3に示す。
【0257】
【表14】
【0258】
【表15】
【0259】
【表16】
【0260】
表3および図15に図示される結果によって示されるように、リファマイシンは、インビトロで強力な抗菌活性を示し、回腸嚢炎を含むいくつかの胃腸疾患の病因に関与するグラム陽性およびグラム陰性、好気性および嫌気性細菌に対する広範なスペクトルを有する。
【0261】
実施例15
リファマイシンSV(インサイチュゲル化)浣腸製剤の抗菌活性
リファマイシンSV(インサイチュゲル化)浣腸製剤、バッチ7570およびバッチ7574、並びにそれらに関連するプラセボ製剤(7571および7575)の抗菌活性を、固体接種培地における寒天拡散アッセイによって決定した。寒天ウェル拡散法は、抗生物質活性を評価するために広く使用されており、この場合、製剤拡散能力と共に抗菌活性の複合試験を可能にする。
【0262】
簡潔に述べると、寒天培地を製造業者の使用説明書に従って調製し、121℃で15分間オートクレーブにかけた。その後、温度を恒温的に制御された水浴によって寒天化温度(agarization point)をわずかに上回るように低下させ、次いで、1×10CFU/mlの最終濃度で培地生菌接種液に添加した。接種した培地をペトリ皿に分注し、固化させた。次いで、各ペトリ皿に対して穴(直径6mm)を作成して、被験物質(40μl)を分注した。最後に、プレートを、試験される細菌種(好気性または嫌気性)に適した温度および酸素濃度でインキュベートして、細菌の増殖および寒天プレートを通る化合物の拡散を可能にした。インキュベーション時間は、最小24時間から最大72時間の範囲であった。抗菌薬感受性は、微生物の増殖を妨げるために試験化合物によって発揮される阻害のハロー(mm)の範囲として評価した。実験は2回実施し、結果は平均および標準偏差として表された。ゲル製剤および関連するプラセボを並行して試験した。試験製剤に対する選択された細菌(好気性菌および嫌気性菌)における寒天拡散によって決定されるインビトロ抗菌剤感受性結果を表5に示す。より大きなハロー阻害直径は、より高い抗菌活性に対応する。
【0263】
2つの医薬組成物を調製し、試験した。(1)リファマイシンSVバッチ7570、およびその関連するプラセボバッチ7571(リファマイシンSVなし)、並びに(2)リファマイシンSVバッチ7574およびプラセボバッチ7575(リファマイシンSVなし)。医薬組成物中のリファマイシンSVの濃度は、表3に列挙される追加の成分を含む5mg/mLまたは7mMである。
【0264】
【表17】
【0265】
【表18】
【0266】
【表19】
【0267】
試験した2つのバッチ(7570および7574)は、回腸嚢炎の病因に関与する細菌の顕著な増殖阻害を示した。図16に示されるように、結果は、塩としてのリファマイシンのみについて得られたMIC値(表3に報告される)と、リファマイシンSV(インサイチュゲル化)浣腸製剤バッチ7570および7574の阻害ハローとの間の一致を確認した。実際、同じ細菌株について、より低いMIC値は、より大きな直径を有する阻害ハローに対応する。加えて、2つのプラセボ製剤(7571および7575)は、特定のリファマイシンSV製剤の抗菌活性を確認する試験細菌株に対していかなる抗菌活性も発揮しなかった。
【0268】
実施例16
リファマイシンSV医薬組成物のPXR活性化による抗炎症活性
リファマイシンSV(インサイチュゲル化)浣腸製剤、バッチ7570およびバッチ7574、並びにそれらの関連するプラセボ製剤(7571および7575)の抗炎症活性を、インビトロアッセイを使用して決定し、プレグネインX受容体(PXR)転写因子の活性化、核因子kB(NFkB)転写因子の阻害、およびラパマイシンの機械的ターゲット(mTOR)経路の阻害を測定した。
【0269】
解毒機構におけるその役割に加えて、転写因子PXRは、別の転写因子、NFkBの抑制を通じて間接的に炎症を阻害することが示されている。これは最終的に、腸細胞におけるIL8を含む複数の炎症性サイトカインの発現の低下をもたらす(非特許文献12)。ハイブリッドPXRタンパク質を発現するヒト胚性腎臓(HEK293t)レポーター細胞株を使用して、リファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸製剤の抗炎症活性をリファマイシンナトリウム塩と比較した。細胞を96ウェルコラーゲンコーティングプレートに播種し、7点対数用量滴定で試験溶液で24時間処理した。PXR活性に比例する発光を、発光計を使用して定量した。図17に示されるように、リファマイシンSVを含有する両方の(インサイチュゲル化)浣腸製剤は、3×10-6Mの濃度で試験した場合、リファマイシンと比較して、PXR転写活性に対する刺激有効性が向上したことを示した。このレポーターアッセイシステムにおけるPXR活性化の参照標準であるため、リファンピシンによる最大活性を比較の基準(100%刺激)として使用した。3×10-6Mの濃度は、回腸嚢炎のための提案された浣腸ゲル製剤で容易に達成され、それは7mM、またはPXRアッセイで試験された最高濃度の200倍を含む。加えて、200μg/mL(0.3mM)の最高抗菌MIC値は、提案された7mMの回腸嚢炎製剤よりも23倍低い。したがって、抗炎症(PXR活性)および抗菌(MIC)活性の両方に必要な濃度は、ゲル製剤中の7mMのリファマイシン濃度よりもはるかに低い。プラセボゲル製剤(ビヒクルともいう)およびDMSO単独の両方は、製剤活性の特異性を証明するPXR転写活性を誘導しなかった(データは示さず)。
【0270】
実施例17
mTOR経路の阻害によるリファマイシンSV抗炎症活性
ラパマイシンの機械的ターゲット(mTOR)は、mTOR複合体1(mTORC1)およびmTORC2と呼ばれる2つの生化学的に異なる複合体の触媒サブユニットとして存在するセリン/スレオニンキナーゼである。古典的には、mTORC1は、栄養素の利用可能性および成長因子に応答して細胞の成長を制御する。しかし、最近のエビデンスは、様々な炎症性疾患における免疫細胞特異的mTORC1の関与を明らかにした(非特許文献13)。mTOR経路は、IL10、IFNγ、およびIL17などのUCに関与する主要なエフェクターおよび調節サイトカインの発現を促進し、非特許文献14は、UCの病因における上皮性mTORC1の重要な役割を実証し、UCの進行中に結腸上皮と免疫細胞との間の通信リンクを確立した。この研究は、2つの遺伝子マウスモデルを使用し、重要なことには、UC患者からの生検を使用した。ラパマイシンなどのmTOR阻害剤は、実験性大腸炎のモデルにおいて抗炎症作用を有し、抗生物質リファキシミンは、大腸上皮細胞においてインビトロでmTOR経路を阻害することが示されている。
【0271】
炎症を起こしたJ型回腸嚢は、UC患者の結腸と同様の炎症特徴を有し、それらが同様の炎症メカニズムによって引き起こされ、したがって同様の治療に応答し得ることを示す。したがって、mTOR阻害剤は、回腸嚢炎の治療にも有効であり得る。
【0272】
mTOR経路におけるリファマイシン活性を評価するために、初代結腸上皮細胞を血清で24時間飢餓状態にし、血清で48時間再刺激して、mTORおよびその下流の標的タンパク質S6Rのリン酸化を誘導した。血清刺激細胞を、リファマイシンSV、リファキシミン、陽性対照のラパマイシン、または陰性ビヒクル対照のDMSOで処理した。細胞を固定し、pmTORおよびpS6Rに対する抗体で染色した後、フローサイトメトリーによって分析した。両方の抗体について陽性に染色した細胞の割合を定量化し、DMSO対照に対して正規化した(100%に設定した)。
【0273】
図18は、DMSOと比較して、抗pmTORおよび抗pS6Rについて陽性に染色した細胞の%を示す。mTOR経路の効力の順序は、ラパマイシン>リファマイシンSV>リファキシミン(それぞれ、IC50 5.3×10-7、9.9×10-6、4.3×10-5)である。したがって、リファマイシンSVは、リファキシミンよりも4倍強力であり、標準的な参照mTOR経路阻害剤であるラパマイシンよりもわずか20倍弱いだけである。
【0274】
実施例18
リファマイシンSV製剤を水溶液中で以下のように調製した。
以下の医薬組成物を調製した:(1)リファマイシンSVバッチ7639および7663(バッチ7663の組成物は、バッチ7639の組成物と同じである)、その関連するプラセボバッチ7642(リファマイシンSVなし)およびプラセボバッチ7679(リファマイシンSV+赤色染料なし)。
【0275】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を充填し、その後、完全な溶解が達成されるまで撹拌下でアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを添加する。次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、メタ重亜硫酸カリウムを上記の混合物に添加する。
【0276】
次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、アルギン酸ナトリウムを上記の混合物に添加する。
【0277】
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを上記の混合物に添加する。
【0278】
次いで、溶液を5℃~20℃の範囲の温度で冷却し、次に、均質な混合物が得られるまでポロキサマーを添加する。
【0279】
次に、溶液のpHをチェックし、必要に応じてpH範囲を6.0~6.5にする。
【0280】
次に、完全な溶解が達成されるまで撹拌しながら、リファマイシンSVを上記混合物に添加する。
【0281】
その後、pHをチェックし、必要に応じてpH7.0にする。
【0282】
次いで、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら、エタノール96%を上記混合物に添加する。
【0283】
精製水を加えて混合物を最終重量にする。
【0284】
【表20】
【0285】
実施例19
前臨床インビトロおよびインビボ試験は、新たに最適化された(インサイチュゲル化)浣腸製剤を用いて実施されており、範囲を限定することなく本発明をより良く説明し、支持するために、以下に記載する。
【0286】
以下の実施例の目的のために、バッチ7639(その組成および調製方法は実施例18に含まれる)として特定される製剤は、バッチ7663にも対応し、また、以下の図において参照コードCB0125で示される。
【0287】
インビトロ試験
本発明による1つのリファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸製剤(バッチ7639)および上記表6によるその関連するプラセボ製剤(バッチ7642)を寒天拡散アッセイで試験し、特に回腸嚢炎の病因に関与する細菌の増殖阻害を示した。寒天拡散法は、抗生物質活性を評価するために広く使用されており、この場合、試験製剤の拡散能力と共に抗菌活性の複合試験を可能にする。
【0288】
【表21】
【0289】
【表22】
【0290】
製剤7639は、回腸嚢炎として腸炎症性疾患の病因に関与する代表的な細菌パネルで有意な増殖阻害を示した。結果は、リファマイシンについて得られたMIC値(表3に示される)とリファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸剤製剤7639の阻害ハローとの間の一致を確認した。実際、同じ細菌株について、より低いMIC値は、より大きな直径を有する阻害ハローに対応する。したがって、この場合もまた、インサイチュゲル化溶液としてのリファマイシンの製剤化は、回腸嚢炎などの腸炎症性疾患に関与する細菌のパネルで試験した場合、リファマイシンの抗菌活性に影響を与えず、または低下させなかった。
【0291】
予想通り、プラセボ製剤7642(リファマイシンなし)は、特異性を裏付ける抗菌活性を発揮しなかった。
【0292】
リファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸製剤(7639および7640)の抗菌活性を寒天透過アッセイによって試験した。これは、感度が高く定量的な抗菌試験であり、各製剤の異なる濃度を、固体寒天支持体中で増殖させた微生物の上に重ねた。このアッセイは、有効な抗微生物活性を定量化するだけでなく、より重要なことに、回腸嚢および腸内の腸上皮粘膜に起こり得ることと同様の、物理的バリアを通ってインビボで浸透する配合物の能力を決定することを可能にする。2つの異なる寒天濃度(0.8%および1.5寒天W/v)を試験して、異なる寒天密度におけるリファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸製剤の透過率を決定した。
【0293】
【表23】
【0294】
表8に提示されるデータは、異なる寒天濃度が、試験された(インサイチュゲル化)浣腸剤の抗生物質活性に影響を与えなかったことを示した。様々なリファマイシン製剤バッチと異なる寒天濃度との間でわずかに観察された差は有意ではなかったと見なされた。したがって、リファマイシン製剤の抗菌活性は寒天密度の影響を受けず、粘膜および腸上皮密度とは無関係に、インビボで同じ抗菌活性を発揮するはずである。
【0295】
製剤7637、7639、7640の抗炎症活性を、ハイブリッドPXRタンパク質を発現するヒト胚性腎臓(HEK293t)レポーター細胞株を使用して決定した。このインビトロ抗炎症活性を、活性成分としてのリファマイシン単独(DMSO中で可溶化させた)の抗炎症活性と比較した。
【0296】
図19に報告された結果は、(7637を除く)ほぼ全てのゲル溶液が、DMSO中のリファマイシンと比較して、PXR転写活性における増強されたアゴニストの効力を特徴とすることを示す。
【0297】
インビボ試験
インビボ製剤インサイチュゲル化浣腸剤バッチ7639 ゲル化、表面接触面積、放出特性および生体適合性などの物理化学的特性の決定および特徴付け。
試験は、リファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸製剤が浣腸投与後37℃で液体からゲル/固体状態に移行したことを示す範囲で実施された。
簡潔に述べると、ラットを麻酔し、カテーテルを使用した直腸内への、製剤7639(2mL/ラット)を用いた浣腸によって処置した。全てのラットを所定の時点でCO吸入により屠殺した。
安楽死の後すぐに、動物を開腹し、腸を露出させた。結腸全体を盲腸から肛門まで分離し、ハサミを使用して血管および脂肪を腸間膜から慎重に取り除き、縦方向に切断し、検査して、ゲル化製剤の存在を評価した。
【0298】
図20は、浣腸剤による単回投与後、製剤7639が容易に5分後に結腸内でゲルを形成し(図示せず)、ゲルは少なくとも4時間維持された。浣腸剤は腸の表面を覆い、ゲル膜を形成した。ゲル滞留性は時間と逆相関し、ゲル滞留性は0.5時間から4時間まで徐々に減少した。6時間で、ゲルはもはや存在しなかった。
【0299】
7639製剤の単回浣腸投与後、様々な時点で収集された試料において、結腸ホモジネートおよび血漿中のリファマイシンの濃度をHPLC/MS-MSによって決定した。
【0300】
図21は、結腸ホモジネート試料において、リファマイシンが、投与2~4時間後に濃度ピークを有し、分析されたすべての時点で検出され、投与の6時間後に、リファマイシンが平均濃度123ng/gで検出されたことを示す。リファマイシンの結腸濃度は、結腸内のゲル滞留性と相関しているようである。
【0301】
血液試料を試験した場合、すべての時点(30分、1時間、2時間、4時間および6時間)でのリファマイシン濃度は、試験したすべての時点で、浣腸剤投与後の全身吸収の欠如を示す方法のLLOQ(1ng/mL)よりも常に低かった。
【0302】
したがって、本発明の組成物は、投与後少なくとも4時間のゲルの保持時間を伴う、37℃でのインサイチュでのゲル化を示す。これは、結腸組織中のリファマイシンの治療濃度に反映されるが、全身吸収は無視できる。これは、全身有害作用のリスクを低下させる本発明の組成物を用いた直腸病理の局所治療の有効性を強く支持する。
【0303】
インサイチュゲル浣腸製剤バッチ7663(バッチ7639と同じ製剤)のインビボ有効性を、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導される急性大腸炎のマウスモデルで試験した。この動物モデルは、おそらく最も広く使用されている大腸炎のマウスモデルであり、抗凝血特性を有する化学的大腸炎誘発剤(colitogen)であるDSSを用いて、ヒトUCによく似た疾患を誘導する。DSSが誘導した腸の炎症は、大腸を覆う上皮単層の損傷をもたらし、炎症誘発性の腸の内容物(例えば、細菌およびその生成物)を基礎組織に播種することを可能にする。
【0304】
この研究では、あるマウス群をバッチ7663(図中ではCB0125と示される)で浣腸剤によって処置し(用量45mg/kg)、1つの群を7663の比較薬としてプラセボバッチ7679で浣腸剤によって処置し、1つの群を水に溶解したリファマイシン粉末(67mg/kg)で浣腸剤によって処置した。マウスの1つの群を、100mg/Kgの用量で5-ASAで経口POによって処置した。この群を陽性対照として導入した。5-ASAは、UC、遠位UCおよび直腸炎を含む炎症性腸疾患のための素晴らしい標準療法である。1つの群は、陰性対照として、ビヒクル(HO)のみで浣腸剤によって処置された。
【0305】
簡潔に、DSS(2%)を水(w/v)に溶解させ、通常の飲料水の代わりにマウスに与えた。DSS水を5日間自由に提供し、毎日交換した。この期間に続けて、水のみの5日間のウォッシュアウト期間を設けた。マウスを毎日秤量し、背を丸める(hunching)、運動性、軟便および/または下痢を含む臨床状態を監視した。試験終了時に、CO吸入によりマウスを屠殺した。安楽死の後すぐに、動物を開腹し、腸を露出させた。結腸全体を盲腸から肛門まで分離し、伸ばさずに定規に配置し、次いで生理食塩水で管腔をすすいだ後に測定し、重量を量った。比率を計算することによって、重量を結腸長さに正規化した。
【0306】
図22Aに示されるように、製剤7663(CB0125)による処置は、ビヒクルおよびプラセボ7679と比較してBW変化の改善を示した。水に溶かしたリファマイシンによる浣腸処置だけでなく、5-ASAによる処置PO(陽性対照)は、ビヒクル処置マウス(HO)と比較して、BW改善によって同様の結果を示した。
【0307】
重要なことに、配合物7663による処置は、ビヒクルおよびプラセボと比較して、結腸重量/結腸長さ(CW/CL)の有意な改善を示した。特に、水に溶かしたリファマイシンおよび5-ASAによる処置は、バッチ7663と比較して低い有効性を示した(図22B)。
【0308】
さらに、配合物バッチ7663による処置は、ビヒクルおよびプラセボと比較したときの臨床スコアAUCの有意な改善を示した。水に溶かしたリファマイシンおよび5-ASAによる処置は、バッチ7663と比較して低い有効性を示した(図22C)。
【0309】
最後に、(インサイチュゲル化)浣腸製剤7663および水に溶かしたリファマイシンによる処置は、ビヒクルと比較して累積便スコアの有意な改善を示した(図22D)。プラセボ7679による処置は、ビヒクルと比較して便スコアを有意に改善したが、リファマイシン(インサイチュゲル化)浣腸剤7663よりも程度が低かった。
【0310】
結腸試料の組織学的解析のために、分離した結腸の中間部分の約2cmを10%ホルマリンで固定した。各固定断片をパラフィンに埋め込んだ。スライドをヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、組織学スコアに従って評価した。
【0311】
図23は、7663/CB0125製剤による処置で観察された有意な臨床効果が組織学的調査によって確認されたことを示す。7663で処置したマウスでは、プラセボおよびビヒクルと比較して、組織学的スコアの有意な低下が観察された。水に溶かしたリファマイシンおよび5-ASAでの処置は、7663と比較して、組織学的スコアの低い改善を示した。
【0312】
PK分析のために、結腸試料を細かく切断し、PBSで3回洗浄して表面汚染物質を除去した。
【0313】
図24は、(インサイチュゲル化)浣腸製剤7663または水に溶かしたリファマイシンで処置したマウスにおいて、リファマイシンが結腸ホモジネートにおいて一貫して検出されたことを示す。水に溶かしたリファマイシンで処置した動物の結腸組織中のリファマイシンの濃度は、水に溶かしたリファマイシンがより高い用量で投与されたにも関わらず(67mg/kg対45mg/kg)、試験されたすべての時点で、製剤7663で処置した動物の濃度よりも低かった。データは、本発明の組成物が、結腸組織におけるリファマイシンの局所透過および同じ組織におけるその滞留性を改善することができることを明確に実証する。
【0314】
安定性試験は、新たに最適化された製剤、特に、(インサイチュゲル化)浣腸剤バッチ7639について実施されており、その組成は実施例18に記載されている。この試験は、5℃で保管した場合、ポリエチレン(PE)ボトルに梱包された製品の安定性が最大6ヶ月間良好であり、市販のリファマイシン溶液(Rifocin(登録商標)5g/100g、バッチA9073)と比較して、25℃での安定性が有意に高いことを実証する。データは、製剤中の既知の不純物(リファマイシンS)および未知の不純物をまとめた以下の表に示されている。
【0315】
【表24】
【0316】
【表25】
【0317】
上記のデータから明らかなように、本発明の組成物の安定性は、Rifocin(登録商標)と比較して有意に優れている。重要なことに、本発明の組成物の6ヶ月時点のデータは、Rifocin(登録商標)の1ヶ月時点のデータよりもはるかに優れている。したがって、本発明の組成物は、6ヵ月での分解が、1ヵ月でのRifocin(登録商標)よりも少ないことを示し、室温でのより長い保管を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量のリファマイシンSV、またはその薬学的に許容可能な塩と、ポリマー混合物とを含む、回腸嚢炎、直腸炎、および/または遠位潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎を含む)の治療おける使用のための医薬組成物であって、
直腸投与され、室温で液体であり、患者の体温でインサイチュでゲルを形成する、医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリマー混合物が、
少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
少なくとも1つの生体接着性ポリマー
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が浣腸剤である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記熱応答性ポリマーが、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ラクチド-コグリコリド)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、およびセルロース誘導体からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407からなる群から選択されるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記熱応答性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記熱応答性ポリマーが、ポロキサマー188、ポロキサマー407、またはそれらの混合物である、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約1重量%~約25重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在する、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記イオン感応性ポリマーが多糖である、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記イオン感応性ポリマーが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸、その塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記イオン感応性ポリマーが、アルギン酸ナトリウムである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約3重量%、好ましくは前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記生体接着性ポリマーが、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記生体接着性ポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記生体接着性ポリマーが、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記生体接着性ポリマーが、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約2.0重量%の量で、好ましくは、前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在する、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、抗酸化剤、防腐剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み、および/または任意選択的に、前記組成物が、6.5~7.5、好適にはpH6.8~7.2の範囲のpHを有する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、好ましくは、前記医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約3.0重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩、例えば、前記医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約2.5重量%を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
排泄頻度の増加、便の粘度の低下、直腸出血、疼痛、けいれん様腹部、切迫感、しぶり、便失禁、発熱、および腸管外症状からなる群から選択される1つ以上の臨床症状を緩和および/または低減するための、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
粘膜浮腫、粒状性、接触出血、血管パターンの喪失、出血、および潰瘍からなる群から選択される1つ以上の内視鏡症状の発生を緩和または低減するための、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
毎日または1日に2回投与され、任意選択的に、毎日または1日2回、少なくとも2週間投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩と、
前記医薬組成物の重量に対して約1重量%~約25重量%の量で存在する、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約3重量%の量で存在する、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
前記医薬組成物の重量に対して約0.01重量%~約2.0重量%の量で存在する、少なくとも1つの生体接着性ポリマー
を含むポリマー混合物と、
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩と、
前記医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在する、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
前記医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の量で存在する、少なくとも1つの生体接着性ポリマー
を含むポリマー混合物と、
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物の重量に対して約0.25重量%~約2.5重量%のリファマイシンSVまたはその薬学的に許容可能な塩と、
前記医薬組成物の重量に対して約12重量%~約18重量%の量で存在する、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、
前記医薬組成物の重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー、および
前記医薬組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.1重量%の量で存在する、少なくとも1つの生体接着性ポリマー
を含むポリマー混合物と、
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【国際調査報告】