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特表2024-536413二環式ペプチドリガンド薬物コンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二環式ペプチドリガンド薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240927BHJP
   C07K 7/02 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240927BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K47/64
C07K7/02 ZNA
C07K7/08
A61K38/05
A61K47/65
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 105
A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521039
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 GB2022052524
(87)【国際公開番号】W WO2023057758
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2114279.9
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ベスウィック,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マッド,ジェマ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA59
4C084DA32
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA13
4H045BA17
4H045BA50
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、ペプチドリガンドに結合した2種類の細胞毒性剤を含む薬物コンジュゲートに関する。また、本発明は、前述の薬物コンジュゲートを含む医薬組成物および疾患の予防、抑制または治療における前述の薬物コンジュゲートの使用方法にも関する。それら疾患の例としては、細胞死によって緩和され得る疾患があり、特に、欠損型細胞によって特徴づけられる疾患、がんなどの細胞増殖性疾患および関節リウマチなどの自己免疫疾患が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも2つのループ配列によって分離された少なくとも3つの反応性基を含むペプチドリガンド、および、少なくとも2つのポリペプチドループが分子足場上に形成されるようにペプチドリガンドの反応性基と共有結合を形成する非芳香族分子足場;ならびに
(ii)前記ペプチドリガンドにコンジュゲートした2種類の細胞毒性剤
を含む薬物コンジュゲート。
【請求項2】
前記反応性基が、システインおよび/または(S)-2-アミノ-3-(メチルアミノ)プロパン酸(Dap(Me))を含む、請求項1に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項3】
前記ペプチドリガンドがネクチン-4に特異的である、請求項1または請求項2に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項4】
前記ループ配列が3つまたは9つのアミノ酸を含む、請求項3に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項5】
前記ペプチドリガンドが、
CP(1Nal)(dD)CM(HArg)DWSTP(HyP)WC (配列番号1)
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表す)
のコア配列を有する、請求項3または請求項4に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項6】
前記ペプチドリガンドが、
CP(1Nal)(dD)CMKDWSTP(HyP)WC(配列番号2)
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表す)
のコア配列を有する、請求項3または請求項4に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項7】
分子足場が1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項8】
細胞毒性剤が、以下の構造を有する(S)-N-((3R,4S,5S)-1-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミド)(モノメチルアウリスタチンE;MMAE)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬物コンジュゲート。
【化1】
【請求項9】
前記ペプチドリガンドと各前記細胞毒性剤との間にリンカーをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーが、Val-Cit、β-Ala、p-アミノベンジルカルバメート(PABC)、グルタリル、N-(ビスアミノプロピル)グリシン(BAPG)および1つ以上(例えば10個)のサルコシン(Sar)残基、例えば:(i)-Sar10-βAla-BAPG-(グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカー、(ii)-BAPG-(Sar10-βAla-グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカー、(iii)(Sar10-βAla-グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカーの1つ以上から選択される、請求項9に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項11】
BCY8391、BCY8242およびBCY8243から選択される、請求項1に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項の薬物コンジュゲートを、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項13】
疾患の予防、抑制または治療に使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項14】
前記疾患が細胞死によって緩和され得る疾患である、請求項13に記載の使用のための薬物コンジュゲート。
【請求項15】
前記疾患が、欠損型細胞によって特徴づけられる疾患、がんなどの細胞増殖性疾患および関節リウマチなどの自己免疫疾患から選択される、請求項14に記載の使用のための薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドリガンドに結合した2種類の細胞毒性剤を含む薬物コンジュゲートに関する。また、本発明は、前述の薬物コンジュゲートを含む医薬組成物ならびに細胞死によって緩和され得る疾患、特に、欠損型細胞によって特徴づけられる疾患、がんなどの細胞増殖性疾患および関節リウマチなどの自己免疫疾患などの疾患の予防、抑制または治療における前述の薬物コンジュゲートの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
環状ペプチドは、高い親和性および標的特異性で、標的タンパク質に結合することができ、そのため環状ペプチドは、治療薬開発において魅力的な分子群である。実際に、例えば抗菌ペプチドであるバンコマイシン、免疫抑制剤であるシクロスポリンまたは抗がん剤であるオクトレオチドなど、いくつかの環状ペプチドは既に臨床での使用が成功している(Driggers et al.(2008), Nat Rev Drug Discov 7 (7), 608-24)。良好な結合特性は、ペプチドと標的の間に形成される比較的大きな相互作用表面と、環状構造のコンフォメーションの柔軟性が低下していることに起因する。一般的に、例えば、環状ペプチドCXCR4拮抗薬CVX15(400 Å2; Wu et al.(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフの環状ペプチド(355 Å2)(Xiong et al. (2002), Science 296 (5565), 151-5)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウペイン-1(603 Å2; Zhao et al.(2007), J Struct Biol 160 (1), 1-10)のように、大環状ペプチドは数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
ペプチドの大環状構造は、環状構造のため、直鎖ペプチドよりも柔軟性が低く、標的への結合時のエントロピーの損失が小さくなり、結果として結合親和性が高くなる。また、柔軟性が低下することで、標的特異的なコンフォメーションが固定され、直鎖ペプチドに比べて結合特異性が高まる。この効果は、マトリックスメタロプロテアーゼ8(MMP-8)に対する強力で選択的な阻害剤が、開環すると他のMMPと比較したその選択性を失うという例で示されている(Cherney et al.(1998), J Med Chem 41 (11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えばバンコマイシン、ナイシン、アクチノマイシンのように、2つ以上のペプチド環を持つ多環式ペプチドではさらに顕著である。
【0004】
これまでにも、さまざまな研究チームが、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に結合させてきた(Kemp and McNamara (1985), J. Org. Chem; Timmerman et al. (2005), ChemBioChem)。Meloenらは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンとその関連分子を用いて、タンパク質表面の構造模倣のための合成足場上に、複数のペプチドループを迅速かつ定量的に環化した(Timmerman et al. (2005), ChemBioChem)。システインを含むポリペプチドを、例えばトリス(ブロモメチル)ベンゼンなどの分子足場に連結することによって生成される、候補薬物化合物の生成のための方法が、WO 2004/077062およびWO 2006/078161に開示されている。
【0005】
ファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチは、目的のターゲットに対する二環式ペプチドの大規模なライブラリーを生成し、スクリーニングするために開発された(Heinis et al. (2009), Nat Chem Biol 5 (7), 502-7およびWO 2009/098450)。簡潔に説明すると、3つのシステイン残基と、6つのランダムアミノ酸の2つの領域(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)を含む、直鎖ペプチドのコンビナトリアルライブラリーをファージ上に表示し、システイン側鎖を低分子(トリス-(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合させることによって環化した。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、
(i)少なくとも2つのループ配列によって分離された少なくとも3つの反応性基を含むペプチドリガンド、および、少なくとも2つのポリペプチドループが分子足場上に形成されるようにペプチドリガンドの反応性基と共有結合を形成する非芳香族分子足場;ならびに
(ii)前記ペプチドリガンドにコンジュゲートした2種類の細胞毒性剤
含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、本明細書で定義される薬物コンジュゲートを、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、細胞死によって緩和され得る疾患、特に、欠損型細胞によって特徴づけられる疾患、がんなどの細胞増殖性疾患および関節リウマチなどの自己免疫疾患の予防、抑制または治療に使用するための、本明細書で定義される薬物コンジュゲートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】NCI-H292異種移植片を有する雌のBalb/cヌードマウスにBCY8243を投与した後の腫瘍体積のトレース。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
図2】NCI-H292異種移植片を有する雌のBalb/cヌードマウスにBCY8391を投与した後の腫瘍体積のトレース。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
図3】NCI-H292異種移植片を有する雌のBalb/cヌードマウスにBCY8242を投与した後の腫瘍体積のトレース。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の第一の態様によれば、
(i)少なくとも2つのループ配列によって分離された少なくとも3つの反応性基を含むペプチドリガンド、および、少なくとも2つのポリペプチドループが分子足場上に形成されるようにペプチドリガンドの反応性基と共有結合を形成する非芳香族分子足場;ならびに
(ii)前記ペプチドリガンドにコンジュゲートした2種類の細胞毒性剤
含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0011】
ある実施態様では、前記ペプチドリガンドは、ネクチン-4に対して特異的である。
【0012】
ネクチン-4は、タンパク質のネクチンファミリーに属する表面分子であり、4つのメンバーを含む。ネクチンは、上皮細胞、内皮細胞、免疫細胞、神経細胞の極性、増殖、分化、遊走などのさまざまな生物学的プロセスにおいて、発生中および成体期に重要な役割を果たす細胞接着分子である。ネクチンは、ヒトのいくつかの病理学的過程に関与している。ネクチンは、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスの主要な受容体である。ネクチン-1(PVRL1)またはネクチン-4(PVRL4)をコードする遺伝子の変異は、他の異常に関連する外胚葉異形成症候群を引き起こす。ネクチン-4は胎児の発育中に発現する。成体組織では、ネクチン-4の発現は、ネクチンファミリーの他のメンバーよりも制限されている。ネクチン-4は、乳がん、卵巣がん、肺がんのそれぞれ50%、49%、86%における腫瘍関連抗原であり、主に予後不良の腫瘍に存在する。その発現は、対応する正常組織では検出されない。乳房腫瘍では、ネクチン-4は主にトリプルネガティブおよびERBB2+型がんに発現する。これらのがん患者の血清では、可溶性型のネクチン-4の検出は予後不良と関連している。血清ネクチン-4は、転移の進行中に増加し、治療後に減少する。これらの結果は、ネクチン-4が、がん治療のための信頼できる標的となり得ることを示唆している。したがって、いくつかの抗ネクチン-4抗体が先行文献に記載されている。特に、エンホルツマブ ベドチン(ASG-22ME)は、ネクチン-4を標的とする抗体薬物コンジュゲート(ADC)であり、固形腫瘍を有する患者の治療のために現在臨床的に研究されている。
【0013】
ある実施態様では、ネクチン-4は、哺乳動物のネクチン-4である。さらなる実施態様において、哺乳動物のネクチン-4は、ヒトネクチン-4である。
【0014】
ある実施態様では、前記ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、前記ループ配列は3つまたは9つのアミノ酸を含む。
【0015】
さらなる実施態様では、前記ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、前記ループ配列は、2つのループ配列(そのうちの1つは3つのアミノ酸からなり、もう1つは9つのアミノ酸からなる)によって分離された3つのシステイン残基を含む。したがって、ある実施態様では、前記ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、
CP(1Nal)(dD)CM(HArg)DWSTP(HyP)WC (配列番号1)
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを、HArgはホモアルギニンを、HyPはヒドロキシプロリンを表す)
のコア配列を有する。
【0016】
別の実施態様では、前記ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、
CP(1Nal)(dD)CMKDWSTP(HyP)WC (配列番号2)
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを、HyPはヒドロキシプロリンを表す)
のコア配列を有する。
【0017】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、ペプチド化学、細胞培養およびファージディスプレイ、核酸化学および生化学の技術分野などの分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学、遺伝学的および生化学的方法には、参照により本明細書に組み込まれる、標準的な手法が使用されている(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd ed., 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th ed., John Wiley & Sons, Inc.参照)。
【0018】
命名法
番号付け
本発明の二環式ペプチド内のアミノ酸残基位置について言及する場合、システイン残基(Ci、CiiおよびCiii)は不変であるため、番号付けから省略され、したがって、本発明の選択された二環式ペプチド内のアミノ酸残基の番号付けは、
-Ci-P1-1Nal2-dD3-Cii-M4-HArg5-D6-W7-S8-T9-P10-HyP11-W12-Ciii- (配列番号1)
のとおり記載される。
【0019】
この記載の目的上、すべての二環式ペプチドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロップ-2-エン-1-オン(TATA)で環化され、三置換構造をもたらすと仮定する。TATAによる環化は、Ci、Cii、およびCiiiで行われる。
【0020】
分子形式
二環式コア配列のNまたはC末端延長部分は、ハイフンで区切られて配列の左側または右側に追加される。例えば、N末端βAla-Sar10-Alaテールは
βAla-Sar10-A-(配列番号X)
のとおりに表される。
【0021】
反転ペプチド配列
Nair et al (2003) J Immunol 170(3), 1362-1373の開示に鑑みると、本明細書に開示されるペプチド配列は、レトロインベルソ型でも有用であることが予想される。例えば、配列は逆転し(すなわち、N末端はC末端になり、逆もまた同様)、立体化学もまた逆転する(すなわち、D-アミノ酸はL-アミノ酸になり、逆もまた同様)。
【0022】
ペプチドリガンド
本明細書でいうペプチドリガンドとは、分子足場に共有結合したペプチド、ペプチド類またはペプチド模倣体をいう。典型的には、このようなペプチド、ペプチド類またはペプチド模倣体は、天然または非天然アミノ酸、足場と共有結合を形成することができる2つ以上の反応性基(すなわち、システイン残基)、およびペプチド、ペプチド類またはペプチド模倣体が足場に結合したときにループを形成することからループ配列と呼ばれる前記反応性基の間に挟まれた配列を有するペプチドを含む。本件の場合、ペプチド、ペプチド類またはペプチド模倣体は、少なくとも3つのシステイン残基(本明細書ではCi、CiiおよびCiiiと記載する)を含み、足場上で少なくとも2つのループを形成する。
【0023】
ペプチドリガンドの利点
本発明の特定の二環式ペプチドは、注射、吸入、鼻腔、眼、経口、または局所投与に適した薬物様分子として考慮することを可能にする多くの有利な特性を有する。このような有利な特性には次のものが含まれる:
-種の交差反応性。これは、前臨床薬力学および薬物動態評価の一般的な要件である;
-プロテアーゼ安定性。二環式ペプチドリガンドは、理想的には、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃および腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対して安定性を示すのが理想的である。プロテアーゼ安定性は、二環式リード候補を動物モデルで開発できるだけでなく、ヒトに確信を持って投与できるように、異なる種間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、荷電残基、親水性残基と疎水性残基の比率、および分子内/分子間の水素結合の関数であり、製剤化と吸収の目的で重要である;
-体内循環における最適な血漿半減期。臨床的適応や治療計画によっては、循環中滞留性を向上させることで、より慢性的な疾患状態の管理に最適である二環式ペプチドを開発するために、短時間暴露用の二環式ペプチドを開発する必要があるかもしれない。望ましい血漿中半減期を導く他の要因は、治療効率を最大にするための持続的曝露の必要性と、薬剤の持続的曝露による付随する毒性である;および
-選択性。本発明の特定のペプチドリガンドは、他の受容体サブタイプよりも良好な選択性を示す。例えば、二環式ペプチドがネクチン-4に対して特異的である場合、前記二環式ペプチドは、他のネクチンサブタイプよりもネクチン-4に対して理想的に選択的である。
【0024】
薬学的に許容される塩
塩の形態は本発明の範囲内にあり、ペプチドリガンドへの言及には前記リガンドの塩の形態が含まれることは理解される。
【0025】
本発明の塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法、例えば、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Heinrich Stahl (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388 pages, August 2002に記載される方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で、適切な塩基または酸と反応させることによって調製できる。
【0026】
酸付加塩(一塩または二塩)は、無機酸と有機酸の両方の幅広い種類の酸を用いて形成され得る。酸付加塩の例には、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+) 樟脳酸、樟脳スルホン酸、(+)-(1S)-樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例:D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例:L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例:臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、吉草酸、アシル化アミノ酸および陽イオン交換樹脂より成る群から選択される酸で形成される、一塩または二塩が含まれる。
【0027】
1つの特定の塩群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシレート)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸およびラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は塩酸塩である。別の特定の塩は酢酸塩である。
【0028】
化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性で存在し得る官能基(例えば、COOHはCOO-で存在し得る)を有する場合、適切な陽イオンを生成する有機塩基または無機塩基と塩を形成することができる。適切な無機カチオンの例としては、Li+、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、ならびにAl3+またはZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2 +、NHR3 +、NR4 +)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの適切な置換アンモニウムイオンの例は、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリジンやアルギニンなどのアミノ酸に由来するものである。一般的な第4級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4 +である。
【0029】
本発明の化合物がアミン官能基を含む場合、これらは、例えば当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応により、第4級アンモニウム塩を形成し得る。このような第4級アンモニウム化合物は、本発明の化合物の範囲内である。
【0030】
修飾された誘導体
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾された誘導体は、本発明の範囲内であることが理解される。このような適切な修飾誘導体の例としては、N末端および/またはC末端修飾;1つ以上のアミノ酸残基に対する、1つ以上の非天然アミノ酸残基による置換(1つ以上の極性アミノ酸残基を1つ以上の等配性または等電子性アミノ酸で置換する;1つ以上の非極性アミノ酸残基を他の非天然等配性アミノ酸または等電子性アミノ酸で置換するなど);スペーサー基の追加;1つ以上の酸化感受性アミノ酸残基に対する、1つ以上の酸化耐性アミノ酸残基による置換;1つ以上のアミノ酸残基に対する1つ以上のアミノ酸による置換(例えばアラニンによる置換);1つ以上のL-アミノ酸残基に対する1つ以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1つ以上のアミド結合のN-アルキル化;1つ以上のペプチド結合に対する代替結合による置換;ペプチド骨格の長さの修飾;1つ以上のアミノ酸残基のアルファ炭素上の水素に対する別の化学基での置換;システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、チロシンなどのアミノ酸を、適切なアミン、チオール、カルボン酸、およびフェノール反応性試薬で修飾し、前記アミノ酸の官能化する;官能基化に適した直交反応性を有するアミノ酸の導入または置換(例えば、アジド基またはアルキン基を有するアミノ酸で、それぞれアルキンまたはアジドを有する部位での官能基化を可能にする)から選択される1つ以上の修飾が挙げられる。
【0031】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。さらなる実施態様では、修飾誘導体は、適切なアミノ反応性化学を使用するN末端修飾、および/または適切なカルボキシ反応性化学を使用するC末端修飾を含む。さらなる実施態様では、前記N末端またはC末端修飾は、細胞毒性剤、放射性キレート剤、または発色団を含むがこれらに限定されないエフェクター基の付加を含む。
【0032】
さらなる実施態様では、修飾された誘導体はN末端修飾を含む。さらなる実施態様では、N末端修飾はN末端アセチル基を含む。この実施態様では、N末端残基は、ペプチド合成中に無水酢酸または他の適切な試薬でキャップされ、N末端がアセチル化された分子が得られる。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識部位を除去し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避するという利点をもたらす。
【0033】
別の実施態様では、N末端修飾は、エフェクター基の結合およびその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0034】
さらなる実施態様では、修飾された誘導体はC末端修飾を含む。さらなる実施態様では、C末端修飾はアミド基を含む。この実施態様では、C末端残基はペプチド合成中にアミドとして合成され、C末端がアミド化された分子が得られる。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識部位を除去し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低減するという利点をもたらす。
【0035】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、1つ以上のアミノ酸残基に対する1つ以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様では、分解性プロテアーゼによって認識されず、標的効力にいかなる悪影響も及ぼさない等配位/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択することができる。
【0036】
あるいは、近くのペプチド結合のタンパク質分解による加水分解が構造的および立体的に妨げられるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用することもできる。特に、これらはプロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(アミノイソ酪酸、Aibなど)、およびシクロアミノ酸(単純な誘導体はアミノ-シクロプロピルカルボン酸)に関係する。
【0037】
ある実施態様では、修飾された誘導体はスペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様では、修飾された誘導体は、N末端システイン(Ci)および/またはC末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0038】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、1つ以上の酸化感受性アミノ酸残基に対する1つ以上の酸化耐性アミノ酸残基による置換も含む。さらなる実施態様では、修飾された誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニンまたはアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドの薬学的安定性プロファイルを改善するという利点をもたらす。
【0039】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、1つ以上の荷電アミノ酸残基に対する1つ以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。別の実施態様では、修飾された誘導体は、1つ以上の疎水性アミノ酸残基に対する1つ以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の適切なバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は血漿タンパク質の結合度、したがって血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を与える一方、荷電アミノ酸残基(特にアルギニン)はペプチドと細胞表面のリン脂質膜の相互作用に影響を与える可能性がある。この2つは組み合わさって、ペプチド薬物の半減期、分布量、および曝露に影響を与える可能性があり、臨床エンドポイントに応じて調整できる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の適切な組み合わせと数により、注射部位の刺激が軽減される可能性がある(ペプチド薬物が皮下投与された場合)。
【0040】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、1つ以上のL-アミノ酸残基に対する1つ以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害と、βターン構造を安定化させるD-アミノ酸の性質によって、タンパク質分解の安定性を高めると考えられている(Tugyi et al. (2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0041】
ある実施態様では、修飾された誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去およびD-アラニンなどのアラニンによる置換を含む。この実施態様は、重要な結合残基を同定し、タンパク質分解における潜在的な攻撃部位を除去するという利点をもたらす。
【0042】
上記の各修飾は、ペプチドの効力または安定性を意図的に改善するのに役立つことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力の改善は、以下のメカニズムを通じて達成され得る;
-疎水性部分を組み込むことで、疎水性効果を利用し、オフ速度を低下させ、より高い親和性を達成する;
-長距離イオン相互作用を利用する荷電基を組み込むことで、より速いオン速度とより高い親和性を実現する(例えばSchreiber et al, Rapid, electrostatically assisted association of proteins (1996), Nature Struct. Biol. 3, 427-31参照);および
-例えば、標的結合時のエントロピー損失が最小限になるようにアミノ酸の側鎖を適切に拘束したり、標的結合時のエントロピー損失が最小限になるように骨格のねじれ角を拘束したり、同じ理由で分子内に追加の環化を導入したりすることによって、ペプチドに追加の拘束を組み込む(レビューについては、Gentilucci et al, Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、または、Nestor et al, Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418参照)。
【0043】
同位体変異体
本発明は、1つ以上の原子が、同じ原子番号を有するが自然界に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量番号を有する原子で置換されている、本発明のすべての薬学的に許容される(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、金属キレート基(「エフェクター」と呼ぶ)が結合され、関連する(放射性)同位体を保持し得る本発明のペプチドリガンドおよび特定の官能基が関連する(放射性)同位体または同位体標識された官能基に共有結合的に置換された本発明のペプチドリガンドを含む。
【0044】
本発明のペプチドリガンドに包含されるのに適する同位体の例は、2H(D)および3H(T)などの水素、11C、13Cおよび14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、123I、125Iおよび131Iなどのヨウ素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17Oおよび18Oなどの酸素、32Pなどのリン、35Sなどの硫黄、64Cuなどの銅、67Gaおよび68Gaなどガリウム、90Yなどのイットリウム、177Luなどのルテチウムならびに213Biなどのビスマスの同位体を含む。
【0045】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば放射性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質の組織分布研究、ならびに疾患組織上のEphA2標的の存在および/または非存在を臨床的に評価するのに有用である。本発明のペプチドリガンドは、さらに、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素または受容体との間のコンジュゲート形成の検出または同定に使用できるという点で、貴重な診断特性を有することができる。検出または同定方法には、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、エクオリン、ルシフェラーゼ)などの標識剤で標識された化合物を使用することができる。放射性同位体であるトリチウム、すなわち3H(T)、および、炭素-14、すなわち14Cは取り込みが容易でありすぐに検知できるという観点から、この目的に特に有用である。
【0046】
重水素、すなわち2H(D)などのより重い同位体での置換は、より優れた代謝安定性に起因する治療上の利点、例えば生体内半減期の延長または必要な用量の減少をもたらす可能性があるため、状況によっては好ましい場合がある。
【0047】
11C、18F、15O、13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的の占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)研究に役立ち得る。
【0048】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、当業者に知られている従来の技術によって、または、以前使用した非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用した下記実施例に記載されたものに類似する工程によって、一般に製造できる。
【0049】
反応性基
本発明の分子足場は、ポリペプチド上の官能基または反応性基を介して、ポリペプチドに結合することができる。これらは通常、ポリペプチドポリマーに見られる特定のアミノ酸の側鎖から形成される。
【0050】
反応性基は、分子足場と共有結合を形成できる基である。通常、反応性基はペプチドのアミノ酸側鎖に存在する。例は、リジン、アルギニン、ヒスチジンならびにシステイン、メチオニンおよびセレノシステインなどの類似体などの硫黄含有基である。
【0051】
ある実施態様では、前記反応性基は、システインおよび/または(S)-2-アミノ-3-(メチルアミノ)プロパン酸(Dap(Me))を含む。さらなる実施態様では、3つの反応性基はすべてシステインを含む。別の実施態様では、2つの反応性基は(S)-2-アミノ-3-(メチルアミノ)プロパン酸(Dap(Me))を含み、1つの反応性基はシステインを含む。
【0052】
天然アミノ酸の反応性基の例は、システインのチオール基、リシンのアミノ基、アスパラギン酸またはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジニウム基、チロシンのフェノール基、またはセリンのヒドロキシル基である。非天然アミノ酸は、アジド、ケトカルボニル、アルキン、ビニル、ハロゲン化アリール基を含む幅広い反応性基をもたらし得る。ポリペプチドの末端のアミノ基およびカルボキシル基は、分子足場/分子コアとの共有結合を形成するための反応性基としても機能し得る。
【0053】
本発明のポリペプチドは、少なくとも3つの反応性基を含む。前記ポリペプチドは、4つ以上の反応性基を含むこともできる。より多くの反応性基が使用されるほど、分子足場内により多くのループが形成され得る。
【0054】
好ましい実施態様では、3つの反応性基を有するポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドと、3回回転対称性を有する分子足場/分子コアとの反応により、単一生成物異性体が生成される。単一生成物異性体の生成は、いくつかの理由から有利である。化合物ライブラリーの核酸は、ポリペプチドの一次配列のみをコードし、ポリペプチドと分子コアとの反応時に形成される分子の異性体状態はコードしない。単一の生成物異性体が生成される場合、生成物異性体に対する核酸の割り当ては明確に定義される。複数の生成物異性体が形成される場合、核酸はスクリーニングまたは選択プロセスで単離された生成物異性体の性質に関する情報を与えることができない。単一生成物異性体の形成は、本発明のライブラリーにおける特定の化合物を合成する場合にも有利である。この場合、ポリペプチドと分子足場との化学反応により、異性体の混合物ではなく単一の生成物異性体が得られる。本発明の別の実施態様では、4つの反応性基を有するポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドを、四面体対称性を有する分子足場/分子コアと反応させると、2つの生成物異性体が生成する。2つの異なる生成物異性体が1つの同じ核酸によってコードされていても、単離された異性体の異性体的性質は、両方の異性体を化学的に合成し、2つの異性体を分離し、標的リガンドへの結合について両方の異性体を試験することによって決定することができる。
【0055】
本発明のある実施態様では、ポリペプチドの反応性基の少なくとも1つは、残りの反応性基に対して直交している。直交反応性基の使用により、前記直交反応性基を分子コアの特定の部位に向けることが可能になる。生成する異性体の数を制限するために、直交する反応性基を含む連結戦略を用いることができる。言い換えれば、少なくとも3つの結合のうちの1つ以上に、少なくとも3つの結合の残りの部分について選択されたものと異なる反応性基を選択することによって、ポリペプチドの特定の反応性基を、分子足場上の特定の位置に結合または誘導する特定の順序が有用に達成され得る。別の実施態様では、本発明のポリペプチドの反応性基は、分子リンカーと反応し、ここで、前記リンカーは分子足場と反応することができ、これによりリンカーは最終的に結合した状態で分子足場とポリペプチドの間に介在する。
【0056】
共有結合を介して分子足場をペプチドに結合させるために、チオールを介したコンジュゲーションに代わる方法が使用され得る。あるいはこれらの技術は、本発明に従って選択または単離された後のポリペプチドへの、更なる部分(例えば、分子足場とは異なる関心のある低分子)の修飾または結合に使用することができる-この実施態様では、結合は明らかに共有結合である必要はなく、非共有結合を包含することができる。これらの方法は、チオールを介する方法の代わりに(あるいはチオールを介する方法と組み合わせて)、必要な化学反応性基をもつ非天然アミノ酸を有するタンパク質およびペプチドを発現するファージを作製することによって、相補的な反応性基を有する低分子を組み合わせて、あるいは選択/単離段階の後に分子を作製する際に、非天然アミノ酸を化学合成または組換え合成されたポリペプチドに組み込むことによって用いることができる。さらなる詳細はWO 2009/098450、または、Heinis, et al., Nat Chem Biol 2009, 5 (7), 502-7に見ることができる。
【0057】
ループ状二環式ペプチド構造は、少なくとも1つのチオエーテル結合を介して、分子足場にさらに結合していることは理解される。チオエーテル結合は、二環式ペプチドの形成中にアンカーをもたらす。ある実施態様では、そのようなチオエーテル結合は1つだけ存在する。さらなる実施態様では、1つのそのようなチオエーテル結合と2つのアミノ結合が存在する。さらなる実施態様では、1つのそのようなチオエーテル結合と2つのアルキルアミノ結合が存在する。好適には、チオエーテル結合は、二環式または多環式ペプチドコンジュゲートの中心結合である、すなわち、ペプチド配列において、ペプチド内のアミノ結合を形成する2つの残基(例えば、ジアミノプロピオン酸残基)は、チオエーテル結合を形成するアミノ酸残基(例えば、リジン)から間隔をあけていずれかの側に位置する。好適には、ループペプチド構造は、したがって、中心チオエーテル結合および2つの周辺アミノ結合を有する二環式ペプチドコンジュゲートである。いくつかの実施態様では、チオエーテル結合の配置は、2つのN-アルキルアミノ結合のN末端またはC末端であり得る。
【0058】
ある実施態様では、反応性基は、1つのシステイン残基および2つの(S)-2-アミノ-3-(メチルアミノ)プロパン酸(Dap(Me))またはN-β-C1-4アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)残基を含む。
【0059】
非芳香族分子足場
本明細書において「非芳香族分子足場」という用語は、芳香族(すなわち不飽和)炭素環式環系または複素環式環系を含まない、本明細書で定義される分子足場のいずれかを指す。
【0060】
非芳香族分子足場の適切な例は、Heinis et al (2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606に記載されている。
【0061】
前述の文献に記載されているとおり、分子足場は低分子、例えば低分子有機分子でもあり得る。
【0062】
ある実施態様では、分子足場は巨大分子でもあり得る。ある実施態様では、分子足場は、アミノ酸、ヌクレオチド、または炭水化物から構成される高分子である。
【0063】
ある実施態様では、分子足場は、ポリペプチドの官能基と反応して共有結合を形成することができる反応性基を含む。
【0064】
分子足場は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、コハク酸イミド、マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アシルなど、ペプチドとの結合を形成する化学基を含んでもよい。
【0065】
αβ不飽和カルボニル含有化合物の例としては、1,1',1''-(1、3、5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロプ-2-エン-1-オン(TATA)が挙げられる(Angewandte Chemie, International Edition (2014), 53(6), 1602-1606)。
【0066】
細胞毒性剤
細胞毒性剤の適切な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロランブシル、イホスファミドなどのアルキル化剤;プリン類似体であるアザチオプリン、メルカプトプリン、ピリミジン類似体などの代謝拮抗物質;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む植物アルカロイドおよびテルペノイド;ポドフィロトキシンとその誘導体エトポシドおよびテニポシト;パクリタキセル(当初はタキソールとして知られていた)を含むタキサン系薬剤;カンプトテシン(イリノテカン、トポテカン)を含むトポイソメラーゼ阻害剤およびアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシドなどのII型阻害剤が挙げられる。さらなる薬剤には、免疫抑制剤のダクチノマイシン(腎移植に使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、カリケアマイシンなどを含む抗腫瘍抗生物質が含まれ得る。
【0067】
本発明のある実施態様では、細胞毒性剤はメイタンシノイド(DM1など)またはモノメチルアウリスタチン(MMAEなど)から選択される。
【0068】
DM1は、メイタンシンのチオール含有誘導体であり、次の構造を持つ細胞毒性剤である:
【化1】
【0069】
(S)-N-((3R,4S,5S)-1-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミド)(モノメチルアウリスタチンE;MMAE)は合成抗悪性腫瘍剤であり、次の構造を持つ:
【化2】
【0070】
本発明のさらに特定の実施態様では、細胞毒性剤はMMAEである。
【0071】
ある実施態様では、細胞毒性剤は、ジスルフィド結合またはプロテアーゼ感受性結合などの切断可能な結合によって二環式ペプチドに連結される。さらなる実施態様では、ジスルフィド結合に隣接する基は、ジスルフィド結合の阻害を制御するために修飾され、これにより切断とそれに伴う細胞毒性剤の放出が制御される。
【0072】
発表された研究では、ジスルフィド結合のいずれかの側に立体障害を導入することによって、還元に対するジスルフィド結合の感受性を調整できる可能性があることが立証された(Kellogg et al (2011) Bioconjugate Chemistry, 22, 717)。立体障害が大きいと、細胞内のグルタチオンや細胞外(全身)の還元剤による還元速度が低下し、その結果、細胞内外両方で毒素が放出されやすくなる。したがって、循環におけるジスルフィドの安定性(毒素の望ましくない副作用を最小にする)と細胞内環境における効率的な放出(治療効果を最大にする)の最適の選択は、ジスルフィド結合のいずれかの側における障害の程度を慎重に選択することによって達成することができる。
【0073】
ジスルフィド結合のいずれか側の障害は、分子構築物の、標的物(ここでは二環式ペプチド)側または毒物側に1つ以上のメチル基を導入することによって調節される。
【0074】
ある実施態様では、細胞毒性剤およびリンカーは、WO2016/067035に記載されるものの任意の組み合わせから選択される(それらの細胞毒性剤およびリンカーは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0075】
ある実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、1つ以上のアミノ酸残基を含む。適切なリンカーとして適切なアミノ酸残基の例としては、Ala、Cit、Lys、TrpおよびValが挙げられる。さらなる実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、Val-Cit部分を含む。さらなる実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、β-Ala部分を含む。
【0076】
ある実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、p-アミノベンジルカルバメート(PABC)を含む。
【0077】
ある実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、グルタリル部分を含む。
【0078】
ある実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、N-(ビスアミノプロピル)グリシン(BAPG)を含む。
【0079】
ある実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、1つ以上(例えば、10個)のサルコシン(Sar)残基を含む。
【0080】
さらなる実施態様では、前記細胞毒性剤と前記二環式ペプチドとの間のリンカーは、以下を含む:
(i)-Sar10-βAla-BAPG-(グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカー(すなわち、得られた二環式ペプチド薬物コンジュゲートは、二環式ペプチド-Sar10-βAla-BAPG-(Glu-Val-Cit-PABC-MMAE)2部分);または
(ii)-BAPG-(Sar10-βAla-グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカー(すなわち、得られた二環式ペプチド薬物コンジュゲートは、二環式ペプチド-BAPG-(Sar10-βAla-Glu-Val-Cit-PABC-を含む)MMAE)2部分);または
(iii)(Sar10-βAla-グルタリル-Val-Cit-PABC)2リンカー(すなわち、得られた二環式ペプチド薬物コンジュゲートは、二環式ペプチド-(Sar10-βAla-Glu-Val-Cit-PABC-MMAE)2部分を含み、ここでSar10部分は、2つの独立した結合点で前記二環体に結合している)。
【0081】
ある実施態様では、二環式ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、細胞毒性物質はMMAEであり、MMAE部分の数は2であり、薬物コンジュゲートはBCY8391の化合物を含む:
【化3】
(ここで、Rは配列番号1を表し、Rは前記ペプチドのN末端を介して連結される)。
【0082】
BCY8391が有意な抗腫瘍活性、特に同等の腫瘍抑制効果を示し、腫瘍を強力に退縮させたことを示すデータを図2および表1および2に記載する。
【0083】
別の実施態様では、二環式ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、細胞毒性剤はMMAEであり、MMAE部分の数は2であり、薬物コンジュゲートはBCY8242の化合物を含む:
【化4】
(ここで、Rは配列番号1を表し、Rは前記ペプチドのN末端を介して連結される)。
【0084】
BCY8242が有意な抗腫瘍活性を生じたことを示すデータを、本明細書の図3ならびに表3および4に記載する。
【0085】
別の実施態様では、二環式ペプチドリガンドはネクチン-4に特異的であり、細胞毒性薬剤はMMAEであり、MMAE部分の数は2であり、薬物コンジュゲートはBCY8243の化合物を含む:
【化5】
(ここで、Rは配列番号2を表し、Rは前記ペプチドの、N末端およびLys残基を介して連結される)。
【0086】
BCY8243が有意な抗腫瘍活性、特に同等の腫瘍抑制効果を示し、腫瘍を強力に退縮させたことを示すデータを図1ならびに表1および2に記載する。
【0087】
合成
本発明のペプチドは、標準的な技術とその後のインビトロでの分子足場との反応によって合成的に製造することができる。これを実行する場合、標準的な化学反応を使用できる。これにより、さらなる下流の実験または検証のための可溶性材料の迅速かつ大規模な調製が可能になる。このような方法は、Timmerman et al (supra)に開示されているものなどの従来の化学を使用して達成することができる。
【0088】
したがって、本発明はまた、本明細書で規定されるとおりに選択されたポリペプチドまたはコンジュゲートの製造に関し、その製造は、以下に説明するような任意選択のさらなる工程を含む。ある実施態様では、これらの工程は、化学合成により製造された最終生成物ポリペプチド/コンジュゲートに対して実施される。
【0089】
コンジュゲートまたはコンプレックスを製造する際に、任意で、目的のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換することもできる。
【0090】
ペプチドはまた、例えば別のループを組み込んで伸長し、これにより複数の特異性を導入することもできる。
【0091】
ペプチドを伸長させるには、単純に、標準的な固相化学あるいは溶液相化学を利用し、直交保護されたリジン(および類似体)を用いて、ペプチドのN末端またはC末端またはループ内で、化学的に伸長させ得る。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技術を利用して、活性化型または活性化可能であるN末端またはC末端を導入することができる。あるいは、フラグメントの縮合またはネイティブケミカルライゲーションによって(例えばDawson et al. 1994. Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation. Science 266:776-779に示されている)、もしくは酵素によって(例えば、Chang et al Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8、または、Hikari et al Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters Volume 18, Issue 22, 15 November 2008, Pages 6000-6003に記載されているとおり、サブチリガーゼを使用して)付加することもできる。
【0092】
あるいは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介したさらなる結合によって、伸長または修飾されてもよい。これには、細胞の還元的環境内で、第一のペプチドと第二のペプチドが互いに一度解離することを可能にするという利点もある。この場合、分子足場(例えばTATA)は、3つのシステイン基と反応するために、第一のペプチドの化学合成中に添加することができる。次いで、さらにシステインまたはチオールを第一のペプチドのN末端またはC末端に付加し、このシステインまたはチオールが第二のペプチドの遊離システインまたはチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成するようにすることができる。
【0093】
同様の技術は、2つの二環式および二重特異性大環状化合物の合成/カップリングにも同様に適用され、四重特異性分子を作り出す可能性がある。
【0094】
さらに、他の官能基またはエフェクター基の付加は、適切な化学的方法、N末端もしくはC末端でのカップリングまたは側鎖を介したカップリングを用いて、同様に達成され得る。ある実施態様では、カップリングは、いずれかの物体の活性を阻害しないような方法で実施される。
【0095】
医薬組成物
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンドまたは薬物コンジュゲートを、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。
【0096】
一般に、本発明のペプチドリガンドは、精製された形態で、薬理学的に適切な賦形剤または担体とともに利用される。典型的には、これらの賦形剤または担体には、生理食塩水および/または緩衝化媒体を含む、水溶液またはアルコール性/水溶液、乳濁液または懸濁液が含まれる。非経腸溶媒には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムおよび乳酸化リンゲルなどが含まれる。ポリペプチドコンジュゲートを懸濁状態に保つために必要であれば、適切な生理学的に許容されるアジュバントは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。
【0097】
静脈内溶媒には、リンゲルデキストロースを基剤とするものなどの、輸液、栄養補給剤および電解質補給剤が含まれる。抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存料やその他の添加剤も存在し得る(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition)。
【0098】
本発明のペプチドリガンドは、別個に投与される成分として、あるいは他の薬剤と共に使用することができる。これらには、抗体、抗体フラグメント、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチナムなどの種々の免疫治療薬および免疫毒素が挙げられ得る。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと組み合わせた様々な細胞毒性剤または他の薬剤の「カクテル」、あるいは、投与前にプールされているか否かにかかわらず本発明に従って選択された異なる特異性を有するポリペプチド(例えば、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなど)の組み合わせさえも含むことができる。
【0099】
本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に一般的に知られているものであればいずれでもよい。治療のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技術に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を介する、またはカテーテルによる直接注入を適宜含む任意の適切な様式によって行うことができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は吸入により投与される。投与量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌および臨床医が考慮すべき他のパラメーターに依存する。
【0100】
本発明のペプチドリガンドは、保存のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体中で再構成することができる。この技術は有効であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥および再構成技術を用いることができる。凍結乾燥および再構成は、様々な程度の活性損失をもたらし得ること、およびそれを補うためにレベルを上方調整しなければならない場合があることは、当業者には理解される。
【0101】
本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。特定の治療的適用において、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅、または他の測定可能なパラメーターを達成するのに十分な量は、「有効治療量」として定義される。この投与量を達成するために必要な量は、疾患の重症度や患者自身の免疫系の一般的な状態によって異なるが、一般的には体重1kgあたり0.005~5.0mg内の選択されたペプチドリガンドが使用され、0.05~2.0mg/kg/投与がより一般的に使用される。予防的適用のためには、本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含む組成物もまた、同様のまたはわずかに低い用量で投与することができる。
【0102】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物は、哺乳動物における選択的標的細胞集団の変化、不活性化、死滅または除去を補助するために、予防的および治療的場面において利用され得る。加えて、本明細書に記載のペプチドリガンドは、体外またはインビトロで選択的に用いて、異種細胞の集合体から標的細胞集団を死滅させ、枯渇させ、またはその他の方法で効果的に除去することができ得る。哺乳動物からの血液は、選択されたペプチドリガンドと体外で結合させることができる。これによって望ましくない細胞は、標準的な技術に従って、哺乳動物に戻すために血液から死滅させるか、あるいは他の方法で除去される。
【0103】
治療上の使用
細胞毒性剤の存在により、本発明の薬物コンジュゲートは、細胞死によって緩和され得る疾患の治療において特に有用である。適した疾患の例には、欠損型細胞によって特徴づけられる疾患、がんなどの細胞増殖性疾患および関節リウマチなどの自己免疫疾患が挙げられる。
【0104】
がん細胞結合二環式ペプチドに結合した細胞毒性剤の存在により、本発明の二環式ペプチドは、がんの治療において特異的な有用性をもつ。したがって、本発明のさらなる態様によれば、がん(腫瘍など)の予防、抑制、または治療に使用するための、本明細書に定義される薬物コンジュゲートが提供される。
【0105】
本発明のさらなる態様によれば、がん(腫瘍など)を予防、抑制または治療する方法が提供される。これらの方法には、本明細書で定義される薬物コンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することが含まれる。
【0106】
治療(または抑制)できるがん(およびその良性の対応物)の例には、上皮由来の腫瘍(腺がん、扁平上皮がん、移行細胞がん、その他のがんを含む様々なタイプの腺腫およびがん)、例えば膀胱、尿路、乳、消化管(食道、胃(胃部)、小腸、結腸、直腸および肛門を含む)、肝臓(肝細胞がん)、胆嚢および胆道系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、気管支肺胞がんおよび中皮腫など)、頭頸部(舌、頬腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔および副鼻腔のがんなど)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(甲状腺濾胞がんなど)、副腎、前立腺、皮膚および付属器(黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、ケラトアカントーマ、異形成性母斑など)などのがん;リンパ系の、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫など)および前悪性血液疾患および血液悪性腫瘍を含む境界悪性腫瘍および関連疾患(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]などのB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫および白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害)、ならびに骨髄系の血液悪性腫瘍および関連疾患(急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症などの骨髄増殖性疾患、骨髄増殖症候群、骨髄異形成症候群、前骨髄球性白血病など);間葉系腫瘍、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫などの軟部組織、骨または軟骨の肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮肉腫、消化管間質腫瘍、良性および悪性組織球腫、皮膚線維肉腫;中枢神経系または末梢神経系の腫瘍(星細胞腫、神経膠腫および神経膠芽腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍および神経鞘腫など);内分泌腫瘍(下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、甲状腺髄様がんなど);眼球および付属器腫瘍(網膜芽細胞腫など);胚細胞および絨毛腫瘍(奇形腫、セミノーマ、異胚葉腫、胞状奇胎、絨毛がんなど);小児および胚性腫瘍(髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および原始神経外胚葉腫瘍など);先天性またはその他の患者を悪性腫瘍に罹患しやすくする症候群(色素性乾皮症など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
さらなる実施態様では、がんは、乳がん、肺がん、胃がん、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、神経膠芽腫および血管新生から選択される。
【0108】
本明細書において「予防」という用語は、疾患の誘発前の保護組成物の投与を含む。「抑制」は、誘発事象の後、疾患の臨床的症状の出現前に組成物を投与することを指す。「治療」は、疾患の症状が顕在化した後の保護組成物の投与を含む。
【0109】
疾患からの保護や治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために用いることができる動物モデル系が、利用可能である。ヒトや動物の標的と交差反応し得るポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって、動物モデル系の使用は促進される。
【0110】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【実施例
【0111】
略語
1NAI 1-ナフチルアラニン
HyP ヒドロキシプロリン
HArg ホモアルギニン
β-Ala β-アラニン
Sar サルコシン(Sarxはx個のSar残基を表す)
【0112】
材料および方法
ペプチド合成
ペプチドは固相合成で合成した。Rink Amide MBHA Resinを用いた。Rink Amide MBHA (0.4~0.45 mmol/g)とFmoc-Cys(Trt)-OH (3.0当量)を含む混合物にDMFを加え、次に、DIC (3当量)とHOAt (3当量)を加え、1時間混合した。DMF溶媒中の20%ピペリジンを脱ブロッキングに使用した。続く各アミノ酸を、DMF中DIC (3.0当量)およびHOAT (3.0当量)の活性化試薬を用いて3当量カップリングさせた。反応はニンヒドリン呈色反応またはテトラクロル呈色反応でモニターした。合成終了後、ペプチド樹脂をDMF x 3、MeOH x 3で洗浄し、N2バブリング下で一晩乾燥させた。その後、ペプチド樹脂を92.5%TFA/2.5%TIS/2.5%EDT/2.5%H2Oで3時間処理した。ペプチドを冷イソプロピルエーテルで沈殿させ、遠心分離した(3000 rpmで3分間)。ペレットをイソプロピルエーテルで2回洗浄し、粗ペプチドを真空下で2時間乾燥し、凍結乾燥した。凍結乾燥粉末をACN/H2O(50:50)に溶解し、ACN溶媒中の100mM TATA溶液を添加し、続いてH2O溶媒中の炭酸水素アンモニウム(1M)を添加し、溶液を1時間撹拌した。システイン塩酸塩(TATAに対して10当量)でクエンチし、混合して1時間放置した。溶液を凍結乾燥して粗生成物を得た。粗ペプチドを分取HPLCで精製し、凍結乾燥して生成物を得た。
【0113】
特に断りのない限り、すべてのアミノ酸はL-配置で使用した。
【0114】
本発明の薬物コンジュゲートの調製
反応は、LC-MS(Acquity UPLC CSH C18カラム、1.7μm、2.1 x 30mm、アセトニトリル/水/HCOOH含有緩衝液および10分間にわたる15~60%アセトニトリル勾配溶出)を使用してモニタリングした。反応生成物を、RP-HPLC(Gemini C18 - セミ分取カラム、5μm、110Å、250 x 10mm;アセトニトリル/水/TFA含有緩衝液および20分間にわたる20~80%アセトニトリル勾配溶出)を用いて精製した。
【0115】
BCY8391の調製
(i)Fmoc-BAPG-TFPの調製
【化6】
【0116】
Fmoc-BAPG(200 mg、316 μmol)をDMA(4.5 mL)およびDCM(1.5 mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール(157 mg、947 μmol)およびEDCI(212 mg、1.10 mmol)を加えた。その後、混合物を25℃で16時間撹拌した。LC-MSは、Fmoc-BAPGが完全に消費され、目的の質量を有する1つのメインピークが検出されたことを示した。反応混合物を濃縮してDCMを除去した。残った溶液をprep-HPLC(中性条件)で精製し、化合物Fmoc-BAPG-TFP(140 mg、179 μmol、収率56.7%)を白色固体として得た。LCMS m/z = 782.5 [M+H]+、RT = 1.0分。
【0117】
(ii)化合物2の調製
【化7】
DMA (1 mL)溶媒中の化合物1(50.0 mg、16.9 μmol)の溶液にDIEA (10.9 mg、84.6 μmol、14.7 μL)を加え、混合物を25℃で10分間撹拌した。次に、Fmoc-BAPG-TFP(36.0 mg、46.1 μmol)を窒素下で加え、混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSは、化合物1が完全に消費され、目的の質量を有する1つのメインピークが検出されたことを示した。LCMS m/z =1191.0 [M+H]3+、RT = 0.86分。
【0118】
(iii)化合物3の調製
【化8】
粗化合物2にピペリジン(86.2 mg、1.01 mmol、100 μL)を加え、混合物を25℃で10分間撹拌した。LC-MSの結果、化合物2は完全に消費され、目的の質量の1つのメインピークが検出された。反応混合物を0.5 mLの水で希釈し、prep-HPLC(中性条件)で精製して、化合物3(40.0 mg、12.8 μmol、76.2%収率)を白色固体として得た。LCMS m/z =782.4 [M+H]3+、RT = 0.72分。
【0119】
(iv)BCY8391の調製
【化9】
DMA(3 mL)溶媒中の化合物3(30.0mg、9.60μmol)の溶液に、窒素雰囲気下で10分間撹拌しながらDIEA(24.8mg、192μmol、33.4μL)を加えた。次に、MMAE-PABC-VC-グルタリル-NHS (64.1 mg、48.0 μmol)をDMA溶液に添加し、混合物を15℃でさらに4時間撹拌した。LC-MSで目的の質量が検出された。HPLCは目的の生成物の純度を示した。反応混合物を1 mLの水で希釈し、prep-HPLC(TFA条件)で精製して、化合物BCY8391(17.8 mg、3.10 μmol、収率32.3%、純度96.9%)を白色固体として得た。LCMS m/z =1856.0 [M+H]3+、RT = 1.13分、HPLC RT = 11.47分。
【0120】
BCY8242の調製
BCY8242は次のスキームに従って調製された:
【化10】
【0121】
中間体4(80 mg)とMMAE-PABC-vc-グルタル酸-NHS(50 mg)から出発し、上記と類似の方法で最終工程を実施した。反応はBCY8243(48.7 mg、43.9%)と97.4%の純度をもたらした。LCMS m/z =1587.4、[M+H]3+、RT = 1.08分、HPLC RT = 1357分。
【0122】
BCY8243の調製
BCY8243は次のスキームに従って調製された:
【化11】
【0123】
中間体5(70 mg)とMMAE-PABC-vc-グルタル酸-NHS(50 mg)から出発し、上記と類似の方法で最終工程を実施した。反応はBCY8243(54.6 mg、48.46%)と92.7%の純度をもたらした。LCMS m/z =1022.4、[M+H]4+、RT = 1.06分、HPLC RT = 9.30分。
【0124】
生物学的データ
実施例1:Balb/cヌードマウスのNCI-H292異種移植片の治療におけるBCY8391およびBCY8243のインビボ有効性試験
【0125】
1.研究目的
研究の目的は、Balb/cヌードマウスのNCI-H292異種移植片の治療におけるBCY8391とBCY8243のインビボ抗腫瘍効果を評価することである。
2.実験デザイン
【表1】
【0126】
3.材料
3.1 動物および飼育条件
3.1.1 動物
種: Mus Musculus
系統: Balb/cヌード
年齢: 6~8週齢
性別: 雌
体重: 18~22 g
飼育数:43匹+予備のマウス
動物提供者: Shanghai Lingchang Biotechnology Experimental Animal Co. Ltd
3.1.2 飼育条件
マウスは恒温恒湿の個別換気ケージで、各ケージに3~4匹ずつ入れた。
・温度: 20-26℃。
・湿度: 40-70%。
ケージ: ポリカーボネート製。サイズは300mm×180mm×150mm。寝具の素材はトウモロコシの穂軸で、週に2回交換された。
食事:動物には、研究期間全体を通じて、照射滅菌した乾燥顆粒食品を自由に摂取させた。
水: 動物には滅菌飲料水を自由に摂取させた。
ケージの識別: 各ケージの識別ラベルには次の情報が含まれていた:動物の数、性別、系統、受け取った日、治療、研究番号、群番号、および治療の開始日。
動物識別:動物には耳標を付けた。
【0127】
3.2 実験と陽性対照
製品識別: BCY8243
メーカー: Bicycle Therapeutics
ロットナンバー: 1
物理的性質: 凍結乾燥粉末
分子量: 6133.18
純度: 97.70%
包装および保管条件:-80℃で保管
製品識別: BCY8391
メーカー: Bicycle Therapeutics
ロットナンバー: 1
物理的性質: 凍結乾燥粉末
分子量: 5564.73
純度: 96.90%
包装および保管条件:-80℃で保管
【0128】
4.実験方法および手順
4.1 細胞培養
NCI-H292腫瘍細胞は単層培養として、10%熱不活化ウシ胎児血清を添加したRPMI-1640培地中、37℃、大気中5%CO2雰囲気で、インビトロで維持した。腫瘍細胞は、トリプシン-EDTA処理により週2回、定期的に再培養された。指数関数的増殖期に成長した細胞を採取し、腫瘍移植用に数えた。
【0129】
4.2 腫瘍移植
各マウスにNCI-H292腫瘍細胞(10×106個)を0.2 mlのPBS中で右脇腹に皮下接種し、腫瘍を発生させた。平均腫瘍体積が168 mm3に達した時点で43匹を無作為化した。被験物質の投与および各群の動物数を実験デザイン表に示した。
【0130】
4.3 試験物質製剤の調製
【表2】
【0131】
4.4 観察
本研究における動物の取り扱い、世話および治療に関するすべての手順は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)のガイダンスに従って、WuXi AppTecのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認されたガイドラインに基づいて行われた。定期的な観察の際には、腫瘍の増殖や治療が、運動能力、餌と水の消費量(目視のみ)、体重の増加/減少、目/毛の艶消しに対する影響、および、プロトコルに記載されているその他の異常な影響などの動物の正常な習性に影響を及ぼしていないかを確認した。死亡および観察された臨床徴候は、各サブセット内の動物の数に基づいて記録した。
【0132】
4.5 腫瘍の測定とエンドポイント
主要エンドポイントは、腫瘍の成長を遅らせることができるかどうか、あるいはマウスを治癒させることができるかどうかであった。腫瘍体積はキャリパを用いて毎週3回2次元的に測定し、体積は次の式を用いてmm3単位で表した:V = 0.5 a x b2 ここでaおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径である。次に、腫瘍の大きさをT/C値の計算に用いた。T/C値(%)は抗腫瘍効果の指標であり、TとCはそれぞれ、ある日の治療群と対照群の平均体積である。TGIは、各群について次の式を用いて計算した:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100;Tiは、ある日の治療群の平均腫瘍体積、T0は治療開始日の治療群の平均腫瘍体積、ViはTiと同じ日の溶媒対照群の平均腫瘍体積、V0は治療開始日の溶媒対照群の平均腫瘍体積である。
【0133】
4.7 統計解析
各時点における各群の腫瘍体積について、平均値および平均値の標準誤差(SEM)を含む要約統計量がもたらされた。腫瘍体積の群間差の統計学的解析は、最終投与後の治療上最良の時点で得られたデータを用いて行った。腫瘍体積を群間で比較するためにt検定を行い、有意な差がある場合は、その差を検定した。すべてのデータはGraphPad Prism 5.0を用いて解析した。P< 0.05を統計学的に有意とみなした。
【0134】
5.結果
5.1 腫瘍増殖曲線
腫瘍増殖曲線は図6および図7に示されている。
【0135】
5.2 腫瘍体積トレース
NCI-H292異種移植片を有する雌Balb/cヌードマウスの経時的平均腫瘍体積を表1に示す。
【表3】
【0136】
5.3 腫瘍増殖抑制解析
NCI-H292異種移植モデルにおける試験物質の腫瘍増殖抑制率は、投与開始後14日目の腫瘍体積測定値に基づいて算出した。
【0137】
【表4】

a 平均 ± SEM。
b 腫瘍増殖抑制率は、治療群の群平均腫瘍体積を、対照群の群平均腫瘍体積で除して算出する(T/C)。
【0138】
6.結果の要約および考察
本研究では、NCI-H292異種移植モデルにおけるBCY8391およびBCY8243の治療効果を評価した。各時点における全治療群の腫瘍体積の測定値を図1および図2、ならびに、表1および表2に示す。
【0139】
溶媒対照群のマウスの平均腫瘍サイズは、14日目に843 mm3に達した。
【0140】
3 mg/kgのBCY8391とBCY8243は有意な抗腫瘍活性を示し、特に、同程度の腫瘍抑制効果を示し、腫瘍を強力に退縮させた。
【0141】
この研究では、すべてのマウスが体重を良好に維持した。
【0142】
実施例2:Balb/cヌードマウスのNCI-H292異種移植片の治療におけるBCY8242のインビボ有効性試験
この試験は、以下の相違点を除き、実施例1に記載した試験と同一の方法で実施した:
【0143】
2.実験デザイン
【表5】
【0144】
3.2 実験と陽性対照
製品識別: BCY8242
メーカー: Bicycle Therapeutics
ロットナンバー: 1
物理的性質: 凍結乾燥粉末
分子量: 6346、46
純度: 97.40%
包装および保管条件:-80℃で保管
【0145】
4.2 腫瘍移植
平均腫瘍体積が162 mm3に達した時点で41匹を無作為化した。
【0146】
4.3 試験品の製剤の調製
【表6】
【0147】
5.結果
5.1 腫瘍増殖曲線
腫瘍増殖曲線は図8に示されている。
【0148】
5.2 腫瘍体積トレース
NCI-H292異種移植片を有する雌Balb/cヌードマウスの経時的平均腫瘍体積を表3に示す。
【表7】
【0149】
5.3 腫瘍増殖抑制解析
NCI-H292異種移植モデルにおける試験物質の腫瘍増殖抑制率は、投与開始後14日目の腫瘍体積測定値に基づいて算出した。
【表8】

a 平均 ± SEM。
b 腫瘍増殖抑制率は、治療群の群平均腫瘍体積を、対照群の群平均腫瘍体積で除して算出する(T/C)。
【0150】
6.結果の要約および考察
本研究では、NCI-H292異種移植モデルにおけるBCY8242の治療効果を評価した。各時点における全治療群の腫瘍体積の測定値を図3および図4ならびに表3および表4に示す。
【0151】
溶媒対照群のマウスの平均腫瘍サイズは、14日目に948 mm3に達した。BCY8242は3 mg/kg、qw(TV=92 mm3、TGI=108.6%、p<0.001)、3 mg/kg、biw(TV=73 mm3、TGI=111.4%、p<0.001)および5 mg/kg、qw(TV=81 mm3、TGI=110.4%、p<0.001)で有意な抗腫瘍活性を示した。
図1
図2
図3
【配列表】
2024536413000001.xml
【国際調査報告】