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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】熱伝導性マイクロプレート
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
B29C45/56
B29C45/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521049
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022077311
(87)【国際公開番号】W WO2023057336
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201203.3
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】501112208
【氏名又は名称】グライナー バイオ-ワン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー、ズンマー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ、ノル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、ゴルツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント、カルトホーフ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク、ヒューザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、シャーデ
(72)【発明者】
【氏名】ミケ、キュスター
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン、フェラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン、クッティヒ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター、クネーベル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、クローム
(72)【発明者】
【氏名】ライナー、ヘラー
【テーマコード(参考)】
4B029
4F206
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA23
4B029BB16
4B029BB20
4B029FA12
4B029GA03
4F206AA11
4F206AA12
4F206AD02
4F206AD05
4F206AE10
4F206AF01
4F206AG05
4F206AH63
4F206AR02
4F206AR06
4F206AR15
4F206JA03
4F206JB12
4F206JB17
4F206JB28
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
熱可塑性材料から作製された熱伝導性マイクロプレートであって、マイクロプレート本体(150)に配置された少なくとも96個のウェル(151)を有するマイクロプレート本体(150)を含み、マイクロプレート本体(150)は平坦なマイクロプレート底部(154)を有し、各ウェルは、少なくとも1つのウェル壁(152)と、全てのウェル底部(153)に共通するウェル底面(200)で整列された、最大1000μmの底部厚さを有する平面のウェル底部(153)とを有する。熱伝導性マイクロプレートの製造方法も開示される。マイクロプレート本体(150)は、好ましくはフレームキャリア(300)に配置され、特に溶接、接着、またはリベット締めされる。高い熱伝導性を備えた直立型熱伝導性マイクロプレートは、温度に敏感で温度変化に基づく分析および合成法の自動処理に最適化されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料(14)から熱伝導性マイクロプレート(15)を製造する方法であって、マイクロプレート本体(150)に配置された少なくとも96個のウェル(151)を有する前記マイクロプレート本体(150)を含み、前記マイクロプレート本体(150)は、平坦なマイクロプレート底部(154)を有し、各ウェル(151)は、少なくとも1つのウェル壁(152)と、全てのウェル底部(153)に共通するウェル底部平面(200)で整列された、1000μm以下の底部厚さを有する平面のウェル底部(153)とを有し、
a) 液化熱可塑性材料(14)を提供することと、
b) 搬送スクリュー(112)と、前記マイクロプレート本体(150)を形成するのに好適なエンボスダイ(12)とを有する射出ユニット(11)を含む射出圧縮成形機(1)において、前記液化熱可塑性材料(14)の第1の部分を、第1射出圧力下で前記搬送スクリュー(112)を介して少なくとも部分的に開口した前記エンボスダイ(12)に導入し、前記熱可塑性材料(14)に閉鎖圧力を加えながら前記エンボスダイ(12)を閉鎖することによって、射出圧縮成形工程を実行することと、
c) 次いで、前記液化熱可塑性材料(14)の第2の部分を、第2射出圧力下で前記搬送スクリュー(112)を介して前記閉鎖されたエンボスダイ(12)に導入することによって、射出成形工程を実行することと、
d) 前記マイクロプレート本体(150)を得ることと、を含む方法。
【請求項2】
前記第1射出圧力が700~1100バールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2射出圧力が200~700バールである、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記閉鎖圧力が600~1000kNである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性材料(14)が、少なくとも120℃で安定である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性材料(14)が、ポリプロピレンまたはCOCである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性材料が、任意の熱伝導性を増強する媒体を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロプレート本体(150)が、フレームキャリア(300)に配置され、特に溶接、接着、またはリベット締めされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液化熱可塑性材料(14)の前記第1の部分と前記液化熱可塑性材料(14)の前記第2の部分の質量比が、第1の部分と第2の部分で0.5対2.5、特に1対2、特に2対1である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱可塑性材料から作製された熱伝導性マイクロプレート(15)であって、マイクロプレート底部(154)を有するマイクロプレート本体(150)と、前記マイクロプレート本体に配置された少なくとも96個のウェル(151)とを含み、各ウェル(151)は、ウェル壁(152)および平面のウェル底部(153)によって画定され、前記マイクロプレート底部(154)は平坦であり、全てのウェル底部(153)はウェル底部平面(200)で整列し、前記ウェル底部平面(200)と前記マイクロプレート底部(154)間の前記マイクロプレート本体(15)が1000μm以下の底部厚さを有する、熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項11】
前記熱可塑性材料が、任意の熱伝導性を増強する媒体を含まない、請求項10に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項12】
前記熱可塑性材料(14)が、ポリプロピレンまたはCOCである、請求項10~11のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項13】
前記マイクロプレート本体(150)が、フレームキャリア(300)に配置され、特に溶接、接着、またはリベット締めされる、請求項10~12のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項14】
前記マイクロプレート本体(150)が、
a 液化熱可塑性材料(14)を提供することと、
b 搬送スクリュー(112)と、前記熱伝導性マイクロプレート本体(150)を形成するのに好適なエンボスダイ(12)とを有する射出ユニット(11)を含む射出圧縮成形機(1)において、前記液化熱可塑性材料(14)の第1の部分を、第1射出圧力下で前記搬送スクリュー(112)を介して少なくとも部分的に開口した前記エンボスダイ(12)に導入し、前記熱可塑性材料(14)に閉鎖圧力を加えながら前記エンボスダイ(12)を閉鎖することによって、射出圧縮成形工程を実行することと、
c 次いで、前記液化熱可塑性材料(14)の第2の部分を、第2射出圧力下で前記搬送スクリュー(112)を介して前記閉鎖されたエンボスダイ(12)に導入することによって、射出成形工程を実行することと、
d 前記熱伝導性マイクロプレート本体(150)を得ることと、によって製造可能である、請求項10~13のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項15】
前記マイクロプレート本体(150)および/または前記フレームキャリア(300)が、不透明に着色されている、請求項10~14のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項16】
前記熱伝導性マイクロプレート本体(150)および/または前記フレームキャリア(300)が、黒または白に不透明に着色されている、請求項10~15のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項17】
前記ウェル(151)が、それぞれ10μl以下、特に0.3~6μl、特に0.5~4μl、特に4μl、特に1μlの内容積を有する、請求項10~16のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項18】
前記熱伝導性マイクロプレート(15)が、タンパク質と結合しない、請求項10~17のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【請求項19】
前記熱伝導性マイクロプレートが、2~5mmの高さを有する、請求項10~18のいずれか一項に記載の熱伝導性マイクロプレート(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性マイクロプレートおよびそれを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートは、マイクロタイタープレートとも呼ばれるが、特に製薬研究または作物保護研究に利用される物質、物質混合物、化学系または生物学系の生物学的または/および物理化学的特性を調査するための消耗検査材料である。マイクロプレートは、一般にプラスチックで作製されており、典型的には、行列の形態で行と列とに配置された互いに隔離されたウェル(キャビティとしても知られている)を含む。標準的なマイクロプレートの寸法は、Society for Laboratory Automation and Screeningで推奨されているようなANSI規格(ANSI/SLAS1-2004、ANSI/SLAS2-2004、ANSI/SLAS3-2004、ANSI/SLAS4-2004、およびANSI/SLAS6-2004)によって規格化されている。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応、鎖伸長反応)法、例えば製薬産業での活性成分の開発における熱泳動、特にマイクロスケールの熱泳動、細胞サーマルシフトアッセイ(CETSA)、化学合成、バイオアッセイ、保存、診断、または顕微鏡的FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)などの、熱的に敏感で温度変化に基づいた分析法および合成法には、均一で制御可能なプロセスパラメータが必要となる。PCR法の過程では、遺伝物質が複製されるが、この複製は複数のサイクルのポリメラーゼによって達成される。熱泳動では、タンパク質または小分子は、温度の作用下でタンパク質などの生体試料と共に分析される。細胞サーマルシフトアッセイ(CETSA)では、活性成分と標的タンパク質間の相互作用が定量化される。
【0003】
対応する方法は、典型的に、一連の加熱および/または冷却工程においてそれぞれ所望のサイクル数または方法工程を実施することにより、サーモサイクラーまたは別の好適な分析デバイスに配置されたマイクロプレートのそれぞれのウェル内で極めて少量で実行される。マイクロプレートによって、例えば、蛍光および/または発光などの任意の所望の試験方法が可能になる。
【発明の概要】
【0004】
熱的に安定なマイクロタイタープレートは、熱的に敏感で温度変化に基づいた多くの反応(qPCRを含む)のために、長年使用されてきた。底部または構造に凹凸のある、多くの市販のマイクロプレートの型式が存在する。それにより、これらのマイクロプレートは、加熱および/または冷却用ホットプレートによる熱を均一に伝導することができない。これらのマイクロプレートの多くは、特別な形式を有しており、標準的なデバイスでは使用することができない。
【0005】
特に、標準的な高度な形式のマイクロプレート、すなわち多数のウェルを有するマイクロプレートを、加熱および/または冷却用のホットプレートまたは水槽と共に利用することにより、特に熱的に敏感なPCR法では、エンドポイント分析のみが可能となる。従って、各サイクルの後にPCR反応を測定または定量化するリアルタイムPCR反応を、このようなデバイスで実行することができない。
【0006】
マイクロプレート内の試料に信頼性が高く正確な熱的方法を実行するには、マイクロプレート全体にわたって均一となるようなプロセスパラメータを正確に適用することが必要とされる。従って、熱伝導性マイクロプレートは、多数のウェルを有するだけでなく、高く均一な熱伝導性および安定性を特徴とするものでなければならない。マイクロプレートは、全てのウェル底部にわたり、最大限の均一さで、ホットプレートからマイクロプレートへの迅速な熱伝達が可能である場合、本発明の文脈では「熱伝導性」であると称される。
【0007】
提供されるマイクロプレートは、ハンドリングの自動化、特に(例えば、図15に概略的に図示されるように)測定デバイス内の加熱ブロック間で高温状態のマイクロプレートが移動できるようにすることが意図され、これによって、ハンドリング全体を通して可能な限りマイクロプレートの寸法安定性が維持される。
【0008】
この目的は、均一な底部厚さと、可能な限り薄い全てのウェル底部にわたる高度な平坦度とを特徴とするマイクロプレートを提供することによって達成された。
【0009】
高い平坦度と均一な底部厚さとを有するウェル底部を提供することは、第一に、所定のマイクロプレート形式には比較的多くの数のウェルがあるため、第二に、多くの用途に求められるウェル底部の薄さのため、特に困難であることが分かっている。同様に、全てのウェル底部にわたり底部材料の高密度化が均一なウェル底部を有するマイクロプレートを提供することは困難である。
【0010】
この問題は、請求項1に記載されるような熱可塑性材料で作製された熱伝導性マイクロプレートを製造する方法によって解決された。
【0011】
本発明は更に、請求項10に記載されるような熱可塑性材料で作製された熱伝導性マイクロプレートを提供する。
【0012】
特定の実施形態は、請求項1または10に従属する請求項により明らかとなるであろう。
【0013】
本発明のマイクロプレートでは、マイクロプレート本体にウェルが配置され、マイクロプレート本体は、各ウェル壁が上方向でウェル開口部に融合され、各ウェルがマイクロプレート本体の対向する下側でウェル底部により閉鎖されることで、ウェル壁およびウェル底部を形成する。マイクロプレート本体は、ウェル壁およびウェル底部から形成されたウェルを一体に形成し、このウェル底部は、ウェル底部平面で整列して、連続した底部要素を形成する(マイクロプレート底部またはマイクロプレート本体底部とも呼ばれる)。
【0014】
本発明との関連において、本出願の文脈における「底部厚さ」であるBTは、ウェル底部の高さに関してSociety for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格で定義されるような底部厚さ、すなわち、単一のマイクロプレートにおける、すなわち、本発明では図6Bに図示されるような単一のマイクロプレート本体における全てのウェル底部の平均的な厚さに相当する。底部厚さは、公称値として報告する[ASNI_SLAS_6, https://www.slas.org/SLAS/assets/File/public/standards/ASNI_SLAS_6-WellBottomElevation.pdf]。
【0015】
マイクロプレートにわたる熱伝導性を均一にするために、マイクロプレート本体全体にわたる底部厚さのばらつきの程度が小さいことが重要である。このことは、ウェル底部の高さに関するSociety for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格に従って、以下のパラメータを特徴とするものである:
- ウェル底部の高さのばらつき(Well Bottom Elevation Variation: WBEV)は、単一のマイクロプレートにおけるWBE値の最高値から最低値の最大の許容可能な分散値である。WBEVは、典型的には最大値として記載される。(ASNI_SLAS_6-WellBottomElevation 図2を参照されたい。)
- 内部ウェル底部の高さのばらつき(Intra-Well Bottom Elevation Variation: IWBEV)は、基準点(A)から単一のウェルの内部底部表面の任意の点までの距離の範囲(最大値-最小値)である。IWBEVは、典型的には最大値として報告される(ASNI_SLAS_6-WellBottomElevation 図3を参照されたい);
- ウェル深さ(WD):それぞれの個々のウェルの最大突起部からウェルの内部底部表面の任意の点までの距離である。WDは、典型的には、公差を含む公称値として記載される(ASNI_SLAS_6-WellBottomElevation 図4を参照されたい)。
【0016】
このように、マイクロプレートを製造するのにプラスチック射出成形法を使用することができることは既に知られている。しかしながら、これらの方法により、要求される平坦度および均一な底部厚さ、ならびに/または材料の均一な高密度化を含む、要求される低い底部厚さを確立することは通常では不可能である。
【0017】
特にそのような理由のため、二部構造を有し、特に、ウェル壁と連結部とを形成するフレームと、ウェル壁の端面の一端に接着または溶接された硬い透明な底部要素とで構成されている、複合マイクロプレートと呼ばれるものが開発されている(例えば、独国特許第101 09 704 B4号明細書を参照されたい)。また、ウェル底部とウェル壁の一部を構成する部分が熱伝導性材料とフレームキャリアから製造され、ウェル壁の残りの部分が断熱材料から製造された複合マイクロプレートも公知である(国際公開第2009/030908 A2号パンフレットを参照されたい)。このような複合マイクロプレートは、製造の観点から複雑であり、漏出が生じる可能性がある。
【0018】
独国実用新案第20 2007 003 536 U1号明細書には、プラスチック射出圧縮成形法によってマイクロプレートを提供することが開示されている。この方法で製造されたマイクロプレートにも、特にスプルー領域に望ましくない凹凸がある。
【0019】
従って、本発明の根底にある技術的問題は、上記の要求を満たす熱伝導性マイクロプレートおよびそれを製造するための方法、特に、極めて高度な平坦度および均一な底部厚さを特徴とし、特にウェル底部内、特に全てのウェル底部内の材料の均一な高密度化を特徴とする熱伝導性マイクロプレート、従って、特に、PCR法、特にqPCR法およびリアルタイムPCR法、熱泳動法、合成法、CETSA法および/またはFISH法における使用に好適な熱伝導性マイクロプレートを提供することである。
【0020】
必要とされる形状安定性のために、マイクロプレート本体は、固定されたフレームキャリアに配置され、特に溶接、接着、またはリベット締めされる。換言すれば、本発明のマイクロプレートは二部形式である。
【0021】
本発明は、本教示、特に独立請求項および添付の明細書の教示を提供することにより、その根底にある技術的問題を解決する。
【0022】
本発明は、マイクロプレート底部を有するマイクロプレート本体と、マイクロプレート本体に配置された少なくとも96個のウェルとを含む熱可塑性材料から熱伝導性マイクロプレートを製造する方法であって、各ウェルは、ウェル壁および平面のウェル底部によって画定され、マイクロプレート底部は平坦であり、全てのウェル底部はウェル底部平面で整列し、ウェル底部平面とマイクロプレート底部間のマイクロプレート本体が1000μm以下の底部厚さを有し、
a)液化熱可塑性材料を提供することと、
b)搬送スクリューと、熱伝導性マイクロプレート本体を形成するのに好適なエンボスダイとを有する射出ユニットを含む射出圧縮成形機において、液化熱可塑性材料の第1の部分を、第1射出圧力下で搬送スクリューを介して少なくとも部分的に開口したエンボスダイに導入し、熱可塑性材料に閉鎖圧力を加えながらエンボスダイを閉鎖することによって、射出圧縮成形工程を実行することと、
c)次いで、液化熱可塑性材料の第2の部分を、第2射出圧力下で搬送スクリューを介して閉鎖されたエンボスダイに導入することによって、射出成形工程を実行することと、
d)マイクロプレート本体を得ることと、を含む方法に関する。
【0023】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されるか、または製造可能な熱伝導性マイクロプレートに関する。
【0024】
本発明はまた、マイクロプレート底部を有するマイクロプレート本体と、マイクロプレート本体に配置された少なくとも96個のウェルとを含む、熱可塑性材料から作製された熱伝導性マイクロプレートであって、各ウェルは、ウェル壁および平面のウェル底部によって画定され、マイクロプレート底部は平坦であり、全てのボウル底部はウェル底部平面で整列し、ウェル底部平面とマイクロプレート底部間のマイクロプレート本体が1000μm以下の底部厚さを有する熱伝導性マイクロプレートに関する。
【0025】
本発明のマイクロプレートは、薄い底部と固定されたフレームキャリアとを組み合わせることにより、マイクロプレートを加熱ブロック間で移動させることで、マイクロプレートを急速に加熱および冷却するための輸送システムによって接続された複数の加熱ブロックを含むデバイス内で、正確に設定された異なる温度で行われる反応を実行するのに好適である。例えば、これらのマイクロプレートは、この用途に限定されることなく、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を実行するために使用してもよい。
【0026】
特定の実施形態では、熱伝導性マイクロプレート、またはマイクロプレート本体は、以下の方法:
a)液化熱可塑性材料を提供することと、
b)搬送スクリューと、マイクロプレート本体を形成するのに好適なエンボスダイとを有する射出ユニットを含む射出圧縮成形機において、液化熱可塑性材料の第1の部分を、第1射出圧力下で搬送スクリューを介して少なくとも部分的に開口したエンボスダイに導入し、熱可塑性材料に閉鎖圧力を加えながらエンボスダイを閉鎖することによって、射出圧縮成形工程を実行することと、
c)次いで、液化熱可塑性材料の第2の部分を、第2射出圧力下で搬送スクリューを介して閉鎖されたエンボスダイに導入することによって、射出成形工程を実行することと、
d)マイクロプレート本体を得ることと、によって製造可能である。
【0027】
従って、本発明は、熱伝導性マイクロプレートをもたらす教示を提供するものであり、この熱伝導性マイクロプレートは、その製造様式のために、有利なことに、特にウェル底部の高度な平坦度および/または均一な底部厚さおよび/または材料の均一な高密度化を特徴とする。本発明に従って提供される熱伝導性マイクロプレートは、ウェル底部の平坦度、ウェル底部の底部厚さ、およびウェル底部の領域の材料の高密度化に関して均一性が特に高いため、注目に値する。ウェル底部の平坦度および厚さ、ならびにウェル底部の材料の高密度化に関するこの均一性は、好ましくは、熱伝導性マイクロプレート全体にわたって、特にウェル底部が存在するマイクロプレート本体の全領域にわたって拡大適用される。
【0028】
ウェル底部は、平坦な底部の形態を取っていることが好ましい。全てのウェルのウェル底部は、平面のウェル底部平面で集合的に整列され、それらは全体的に平面で平坦な連続した底部要素を形成する。ウェル底部およびウェル壁の両方がマイクロプレート本体の一体部品であり、従って有利なことに一体品の形態であるため、先行技術の二体品からなるウェル構造に伴う問題点が回避される。より好ましくは、マイクロプレート本体は、それに応じて全てのウェルの底部を形成する連続的な底部要素を有し、この底部要素は1000μm以下の厚さを有し、且つ平面である。
【0029】
本発明の熱伝導性マイクロプレートの特定の特徴は、マイクロプレート本体が、特に、射出圧縮成形機内の射出圧縮成形工程と、同一の射出圧縮成形機で実行される後続の射出成形工程とを用いることによって形成されることで、特別な2段階の製造方法で提供されることであり、この手順により、極めて平坦で均一な厚さ、且つ均一に高密度化されたウェル底部が提供される。
【0030】
本発明に従って使用される射出圧縮成形機の特徴は、エンボスダイと、液化熱可塑性材料をエンボスダイに導入、特に射出するために少なくとも1つの搬送スクリューが形成された射出ユニットとを有することである。エンボスダイは、所望のマイクロプレート本体を形成することができるように、三次元形成されている。
【0031】
従って、第1の方法工程a)では、液化熱可塑性材料が提供され、その第1の部分、特に主要な第1の部分が、射出圧縮成形機において、後続の方法工程b)の第1射出圧力下で部分的に開口したエンボスダイに導入、特に射出される。エンボスダイは、キャビティまたは中空空間を包囲する、というよりもむしろそれらを形成する少なくとも2つのダイ部品を有しており、このキャビティは、少なくとも2つのダイ部品が互いに対して相対移動することによって調節可能になっている。エンボスダイが開口した状態であるときに、少なくとも2つのダイ部品によって比較的大きなキャビティが画定され、このキャビティには液化熱可塑性材料が導入され、この導入の間および/または導入後に、液化プラスチックを圧縮するように少なくとも2つのダイ部品を互いに相対して移動させることができるようになっている。それに応じて、導入後にエンボスダイが閉鎖され、エンボスダイ内に存在する熱可塑性材料に閉鎖圧力がかかり、熱可塑性材料が固化する。本発明による後続の方法工程c)では、第2射出圧力下の射出成形工程において、射出ユニット、特に搬送スクリュー内にまだ存在する液化熱可塑性材料の第2の部分が、閉鎖されたエンボスダイに導入される。方法工程b)の後にエンボスダイを開口することは、方法工程c)の前でも、またはその間でも想定されない。
【0032】
液化熱可塑性材料の第2の部分は、好ましくは、搬送スクリューのエンボスダイ端部に配置された射出ノズルと、エンボスダイの対応する受容チャネルが設けられた搬送スクリューを介してエンボスダイに導入される。このようにして導入された液化熱可塑性材料の第2の部分は、既にエンボスダイの内部に存在する方法工程b)からの熱可塑性材料の射出部位に到達し、これによって、この時点で形成された凹凸を平らにし、および/または底部材料の均一な高密度化がもたらされる。従って、本発明に従って製造されるマイクロプレート本体の特定の特徴は、マイクロプレート本体が射出圧縮成形方法工程と射出成形方法工程とを有する2段階の方法で一体に製造されており、底部要素によって形成されたそのウェル底部が、特に高度な平坦度を有することである。これは、特に、射出圧縮成形方法工程の後に実行される射出成形方法工程により、方法工程b)で製造された成形品の底部要素およびウェル底部の凹凸が、方法工程c)においてその後に射出されるプラスチックによって除去されるためである。従って、マイクロプレート本体は、極めて平坦で、厚みが均一であり、均一に高密度化された底部要素を有するため、全てが一平面上に位置する極めて平坦なウェル底部を有し、本明細書ではスプルーとも称される射出部位の周囲に、(任意の)機能を阻害する凹凸、隆起、または他のアーチファクトが存在しないという特定の特徴を有する。マイクロプレート本体は、特にウェル底部の厚さに関して極めて高い均一性を有する。本発明に従って提供されたウェル底部の平坦度の高い均一性により、特に高い均一な熱伝達が可能となり、これによって特に信頼性が高く正確な反応がもたらされる。従って、本発明の熱伝導性マイクロプレートは、特に、PCRマイクロプレート、特にqPCRマイクロプレート(定量PCR)としても好適である。有利な様式では、本発明の熱伝導性マイクロプレートにより、それらのウェルで実行した反応をカメラによって評価することが可能となる。特に、本発明の熱伝導性マイクロプレートにより、それらのウェルで実行したPCR反応を各サイクル後にカメラによって評価することが可能となり、従ってリアルタイムPCRが可能となる。
【0033】
マイクロプレート本体は、フレームキャリア内に配置、特に溶接、接着、またはリベット締めされることが好ましい。これにより、底部が薄いにもかかわらず、より良好な輸送およびハンドリングの安定性が達成される。
【0034】
本発明の熱伝導性マイクロプレートは、自動化、ハイスループットスクリーニング、およびハイスループット診断に特に好適である。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートは、PCRマイクロプレートである。
【0036】
底部厚さにわたってマイクロプレート本体の熱伝導性を最適化することが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、マイクロプレート本体は、20~900μm、特に20~800μm、特に20~600μm、特に20~550μm、特に20~500μm、特に20~450μm、特に20~400μm、特に20~350μm、特に20~300μm、特に20~250μm、特に20~200μm、特に20~190μmの底部厚さ(BT)を有する。
【0038】
特に好ましい実施形態では、マイクロプレート本体は、300μm以下の底部厚さBTを有する。
【0039】
記載された製造方法を用いることにより、マイクロプレート本体の全領域にわたって、特に0.15mm以下の小さなばらつき(ウェル底部の高さのばらつきであるWBEV)を達成することが可能となる。
【0040】
記載された製造方法を用いることにより、0.05mm以下のマイクロプレート本体の平均的な内部ウェル底部の高さのばらつき(IWBEV)を達成することが可能となる。
【0041】
本発明のマイクロプレートは、Society for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格の要件[https://www.slas.org/SLAS/assets/File/public/standards/ASNI_SLAS_6-WellBottomElevation.pdf]を満たしている。
【0042】
低い底部厚さにより、Horst Czichos(ed.)[Die Grundlagen der Ingenieurwissenschaften,D Werkstoffe,Warmeleitfahigkeit von Werkstoffen[The Fundamentals of Engineering,D Materials,Thermal conductivity of materials],31st edition,Springer,2000,ISBN 3-540-66882-9,p.D 54.]による方法で測定された熱伝導性が0.1~0.8W/mKの熱可塑性材料を使用することが可能となる。
【0043】
多くの生物学的試験方法でマイクロプレートが利用される場合、先行技術では、反応物質をウェルに導入した後に、使い捨て物品の形態のマイクロプレートを封止フィルムで封止していた。この透明な薄い封止フィルムは、従来技術で知られているように、ポリカーボネート、ポリプロピレン、シクロオレフィンもしくは他のポリマー材料から製造されている場合があり、または所望のバリア特性を有する2つ以上の透明材料から製造された多層フィルムを形成している場合がある。封止は、封止フィルムを使い捨て物品の本体に溶接することによって達成することができる。実験により、熱伝導性を増強する媒体を含む熱可塑性材料を使用することで、従来の溶接方法による封止を達成することが困難となることが示されている。
【0044】
より好ましくは、熱可塑性材料は、熱伝導性を増強する媒体、例えば、導電性カーボンブラックまたは熱伝導性セラミック充填剤を含まない。
【0045】
必要とされる熱伝導性は、マイクロプレートの構造、特に底部の薄さによって達成される。
【0046】
熱可塑性材料は、少なくとも120℃で安定であることがより好ましい。
【0047】
特に好ましい実施形態では、熱可塑性材料は、ポリプロピレンおよび/またはCOC(シクロオレフィンコポリマー)および/またはポリスチレン、特にポリプロピレンである。
【0048】
特に好ましい実施形態では、熱可塑性材料は、いずれのタンパク質および/または核酸にも結合しない。
【0049】
好ましい実施形態では、アッセイ処理、インキュベーションまたは保存中にウェルの内容物が脱出、汚染および蒸発するのを保護するために、市販のマイクロタイタープレートの封止フィルムまたは粘着テープを用いた、製造したマイクロプレートが浸透せずに封止可能となる熱可塑性材料が使用される。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態では、マイクロプレートは、マイクロプレートのウェルの位置に関するSociety for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格に従って確立された形式(例えば、ANSI/SLAS 4-2004-https://www.slas.org/SLAS/assets/File/public/standards/ANSI_SLAS_4-2004_WellPositions.pdf)で、少なくとも96個、好ましくは384個、1536個または3456個、より好ましくは1536個のウェルを有する。
【0051】
特に好ましい実施形態では、ウェル壁は、300~800μm、特に400~700μm、特に500~600μmの厚さを有する。
【0052】
本発明の特に好ましい実施形態では、断面積で見たウェルは、丸形、正方形または矩形である。
【0053】
本発明の特に好ましい実施形態では、熱伝導性マイクロプレートは、少なくとも96個、特に384個、特に1536個のウェルを有し、Society for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格(ANSI/SLAS 1-2004、ANSI/SLAS 2-2004、ANSI/SLAS 3-2004および/またはANSI/SLAS 4-2004)に従った長さおよび幅の寸法を有する。
【0054】
特に好ましい実施形態では、マイクロプレート本体は、1~8mm、特に2~5mm、特に3.3mmの高さを有する。
【0055】
特に好ましい実施形態では、ウェルは、それぞれ10μl以下、特に0.3~6μl、特に0.5~4μl、特に4μlまたは1μlの内容積を有する。
【0056】
特に好ましい実施形態では、マイクロプレート本体は、フレームキャリアに配置、特に溶接、接着、またはリベット締め、特にリベット締めされる。フレームキャリアに配置されたマイクロプレート本体は共に、本発明の目的のためのマイクロプレートを形成する。
【0057】
特に好ましい実施形態では、フレームキャリアは、ポリカーボネートまたはポリスチレンから製造される。
【0058】
マイクロプレート本体および/またはフレームキャリアは、透明であってもよく、または適宜不透明に着色されてもよい。特に、視覚的評価による測定デバイスに適用するためには、不透明に着色されたマイクロプレートが好ましい。特に好ましい実施形態では、熱伝導性マイクロプレートは、黒または白に不透明に着色されている。
【0059】
本発明の特に好ましい実施形態では、マイクロプレート本体を共に備える本発明の熱伝導性マイクロプレートのフレームキャリアは、Society for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格[ANSI/SLASマイクロプレート規格-https://www.slas.org/education/ansi-slas-microplate-standards/;ANSI SLAS 1-2004(R2012);フットプリント寸法、ANSI SLAS 2-2004(R2012);高さ寸法、ANSI SLAS 3-2004(R2012);フランジ外部の底部寸法、ANSI SLAS 4-2004(R2012);ウェル位置、ANSI SLAS 6-2012;ウェル底部の高さ]で定義されている寸法を有する。
【0060】
本発明の特に好ましい実施形態では、熱伝導性マイクロプレートは、Society for Laboratory Automation and ScreeningのANSI規格(ANSI/SLAS 1-2004、ANSI/SLAS 2-2004、ANSI/SLAS 3-2004および/またはANSI/SLAS 4-2004)に従った長さおよび幅の寸法、特に長さ127.76mm×幅85.48mmを有する。
【0061】
特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートのフレームキャリアは、10.4mmの高さを有する。
【0062】
本発明の特に好ましい変形形態では、フレームキャリアは、矩形である。
【0063】
本発明のマイクロプレートは、本発明の製造方法によって提供することができる。本発明の方法では、工程b)で、射出圧縮成形機において、液化熱可塑性材料の第1の部分を、第1射出圧力下で搬送スクリューを介して少なくとも部分的に開口したエンボスダイに導入し、熱可塑性材料に閉鎖圧力を加えながらエンボスダイを閉鎖することによって、射出圧縮成形工程を実行する。
【0064】
本発明の文脈では、工程b)の「少なくとも部分的に開口したエンボスダイ」とは、好ましくは、開口によって生じるエンボスダイのオフセットであることを意味し(図2)、経験から、最適なオフセットは0.1~0.8mm、好ましくは0.3~0.6mm、好ましくは0.5mmであることが明らかになっているが、このことは、実験的に解明または確認することが好ましい。
【0065】
本方法の特に好ましい実施形態では、方法工程b)で提供される第1射出圧力は、方法工程c)で提供される第2射出圧力よりも高い。
【0066】
更に好ましい実施形態では、方法工程b)で提供される第1射出圧力、特に方法工程b)で提供されるより高い第1射出圧力および方法工程c)で提供される第2射出圧力は、方法工程c)で提供される第2射出圧力よりも短い期間で加えられる。
【0067】
特に好ましい実施形態では、第1射出圧力は、700~1100バール、特に750~1000バール、特に750~950バール、特に750~900バール、特に900バールである。
【0068】
特に好ましい実施形態では、第1射出圧力は、0.1~10秒、特に0.1~9秒、特に0.1~5秒、特に0.1~2秒、特に0.25秒の期間にわたって加えられる。
【0069】
特に好ましい実施形態では、液化熱可塑性材料の第1の部分は、方法工程b)において100mm/秒の速度でエンボスダイに導入される。
【0070】
特に好ましい実施形態では、第2射出圧力は、200~700バール、特に250~700バール、特に300~700バール、特に500バールである。
【0071】
特に好ましい実施形態では、第2射出圧力は、10~30秒、特に11~30秒、特に12~28秒、特に14~25秒の期間にわたって加えられる。
【0072】
特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、方法工程c)で想定される射出成形工程は、2段階、特に異なる射出圧力で、特に第1の第2射出圧力と第2の第2射出圧力とによって、少なくとも2段階で実行される。この実施形態では、第1の第2射出圧力は第2の第2射出圧力よりも大きく、特に2倍高い。第1の第2射出圧力は、好ましい実施形態における第2射出圧力よりも大きく、好ましくは4~13秒、特に7~11秒、特に9秒の期間にわたって加えられ、第2射出圧力は、好ましくは2~8秒、特に4~6秒、特に5秒の期間にわたって加えられ、期間の合計は、好ましくは10~30秒、特に12~28秒、特に14~25秒である。
【0073】
本方法の特に好ましい実施形態では、閉鎖圧力は、600~1000kN、特に700~900kN、特に800kNである。
【0074】
特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、エンボスダイを開口して熱伝導性マイクロプレートが得られるまで、特に方法工程c)の期間にわたって閉鎖圧力が維持される。
【0075】
特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、熱可塑性材料は、少なくとも120℃で安定である。
【0076】
特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、熱可塑性材料は、ポリプロピレンおよび/またはシクロオレフィンポリマー(COP)および/またはCOC(シクロオレフィンコポリマー)および/またはポリスチレン、特にポリプロピレンである。
【0077】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、液化熱可塑性材料の第1の部分の質量は、液化熱可塑性材料の第2の部分の質量よりも大きい。
【0078】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、方法工程(b)および(c)で製造された液化熱可塑性材料の全質量を基準として、40重量%~90重量%、特に50重量%~80重量%、特に60重量%~70重量%が第1の部分として製造され、10重量%~60重量%、特に20重量%~50重量%、特に30重量%~40重量%が熱可塑性材料の第2の部分として製造される。
【0079】
特に好ましい実施形態では、方法工程b)に従って製造される液化熱可塑性材料の第1の部分が、50重量%~80重量%、特に60重量%~70重量%であり、方法工程c)に従って製造される液化熱可塑性材料の第2の部分が、20重量%~50重量%、特に30重量%~40重量%である(いずれの場合も導入される熱可塑性材料の全質量を基準とする)。特に好ましい実施形態では、本発明の熱伝導性マイクロプレートを製造する方法が提供され、液化熱可塑性材料の第1の部分と液化熱可塑性材料の第2の部分の質量比は、第1の部分と第2の部分で0.5対2.5、特に1対2、特に2対1である。
【0080】
本発明の特に好ましい実施形態では、方法工程b)の方法は、ゲート法、特にニードルバルブゲート法として実行される。
【0081】
本発明の特に好ましい実施形態では、方法工程c)の方法は、ゲート法、特にニードルバルブゲート法として実行される。
【0082】
本発明の特に好ましい実施形態では、方法工程b)およびc)の方法は、ゲート法、特にニードルバルブゲート法として実行される。
【0083】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用される射出圧縮成形機は、少なくとも1つの射出ユニットと、少なくとも1つのエンボスダイとを含み、射出ユニットは、特に、少なくとも1つの可塑化シリンダーと、回転可能な搬送スクリューとを含み、エンボスダイに面する搬送スクリューの端部には、エンボスダイへの移行部を構成する射出ノズルが存在する。射出ユニットとエンボスダイは、温度が制御可能であり、特に温度が誘導され、異なる温度を有してもよい。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるエンボスダイは、可変容積の本発明の熱伝導性マイクロプレートを形成するためのキャビティを画定する少なくとも2つのダイ部品を含み、第1のダイ部品は、熱伝導性マイクロプレートの底部領域を画定し、第2のダイ部品は、第1のダイ部品に相対して、特にその法線方向で移動可能であり、ウェルの数に対応する多数のエンボスコア要素を有する。
【0085】
本発明との関連において、「スプルー」とは、射出圧縮成形機の射出ノズルによって液化熱可塑性材料がエンボスダイに導入される、マイクロプレート本体内の場所を意味するものと理解される。
【0086】
本発明との関連において、「ひけマーク」とは、特にウェル底部の領域において、底部厚さ、高密度化の低減、および/または凹凸をもたらすマイクロプレート本体の陥没を意味するものと理解される。
【0087】
本発明との関連において、「熱伝導性」とは、物質移動を生じることなく材料内で熱を伝導する材料の特性を意味するものと理解される。
【0088】
本発明との関連において、「および/または」という表現は、「および/または」という表現によって関連付けられるグループの全ての要素が、任意の組み合わせで共に累積的にも、互いに代替としても、その両方で表現されることを意味するものと理解される。例として、「A、Bおよび/またはC」という表現は、以下の開示内容を意味するものである:i)(AもしくはBもしくはC)、またはii)(AおよびB)、またはiii)(AおよびC)、またはiv)(BおよびC)、またはv)(AおよびBおよびC)、またはvi)(AおよびBもしくはC)、またはvii)(AもしくはBおよびC)、またはviii)(AおよびCもしくはB)。
【0089】
本発明の更なる好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0090】
符号のリスト
1 射出圧縮成形機
11 射出ユニット
111 可塑化シリンダー
112 搬送スクリュー
113 射出ノズル
12 エンボスダイ
121/122 ダイ部品
13 キャビティ/容積
14 熱可塑性材料/溶融物
15 熱伝導性マイクロプレート
150 マイクロプレート本体
151 ウェル
152 ウェル壁
153 ウェル底部
154 底部要素/マイクロプレート本体の底部/マイクロプレート底部
155 スプルー
16 エンボスダイの開口に関係するオフセット
50 エンボスコア要素を有するダイ部品122の中間要素
51 ダイ部品122の端部要素
60 エンボスコア要素
200 ウェル底部平面
300 フレームキャリア
301 リベット
WBE-ウェル底部の高さ
WD-ウェル深さ
ECTP-プレート底部までの外部クリアランス
WBW-ウェル底部幅
BT-底部厚さ
IWBEV-内部ウェル底部の高さのばらつき
400 プラスチックを溶解するための発熱体
500 ホットプレート
501 カバープレート
600/600’ カメラ
601 照明
【0091】
以下に続く実施例と対応する図によって、本発明を詳細に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】射出ユニット内に溶融していない熱可塑性材料(14)を含む、射出ユニット(11)とエンボスダイ(12)とを備えた射出圧縮成形機(1)を示す。搬送スクリュー(112)が開始位置にあり、エンボスダイがわずかに開口した状態にあるが、これは相対的な期間で移動可能なエンボスコア要素(60)を有する中間要素(50)と、ウェル壁によって形成される容積(13)を画定するダイ部品(122)の端部要素(51)間のオフセット(16)から理解できる。
図2】熱可塑性材料(14)が射出ノズル(113)を介してエンボスダイ(12)のキャビティ(13)に第1射出圧力で射出される射出圧縮成形機(1)を示す。搬送スクリューは、ここでは射出ノズルに向かって移動する。熱可塑性材料(14)は、搬送スクリューの発熱体(400)の領域内で、加熱と摩擦とによって溶融(可塑化)される。
図3】エンボスダイ(12)が閉鎖され、閉鎖圧力が加えられている射出圧縮成形機(1)を示す。このことは、ウェル壁によって形成される容積を画定するダイ部品(122)の中間要素(50)が、ダイ部品(122)の端部要素(51)に相対して移動していることから理解できる。
図4】搬送スクリュー(112)が、第2射出圧力を加えながら、閉鎖されたエンボスダイ(12)に更に熱可塑性材料(14)を導入する射出圧縮成形機(1)を示す。
図5】エンボスダイ(12)を開口することで、マイクロプレート本体(150)が得られたことを示す。
図6A】フレームキャリア(300)に配置されたマイクロプレート本体(150)を含む、側面図でのマイクロプレート(15)の概略図を示す。
図6B】本発明のマイクロプレート(15)の主な品質パラメータを明記した、図6Aの拡大部分を示す。
図7】スプルー(155)の領域にひけマークが存在せず、従って、ウェル底部の底部厚さ、高密度化の低減、または凹凸をもたらす陥没がなく、ウェル底部の底部厚さ、高密度化の低減、または凹凸をもたらす陥没を有する本発明以外のマイクロプレートと比較して、底部が特に平坦な、マイクロプレート本体(150)の表面の3Dスキャンを示す。
図8】スプルー(155)の領域にひけマークがあり、本発明の熱伝導性マイクロプレート本体と比較して底部が平坦でない、本発明に従って製造されていないマイクロプレート(射出圧縮成形法)の表面の3Dスキャンを示す。
図9】スプルー(155)の領域に明らかなひけマークがなく、本発明に従って製造されていないマイクロプレートと比較して底部が特に平坦な、本発明に従って製造されたマイクロプレート本体(150)の表面の写真を示す。
図10】スプルーの領域に目で認識できるひけマーク(155)があり、本発明に従って製造されたマイクロプレート本体(150)と比較して底部が平坦でない、本発明に従って製造されていないマイクロプレート(射出圧縮成形法)の表面の写真を示す。
図11A】マイクロプレート本体(150)がフレームキャリア300内でリベット締めされている、1536個のウェル(151)を有する本発明の熱伝導性マイクロプレート(15)を上部から斜めに見た3D図を示す。
図11B】マイクロプレート本体(150)がフレームキャリア300内でリベット締めされている、1536個のウェル(151)を有する本発明の熱伝導性マイクロプレート(15)を底部から斜めに見た3D図を示す。
図12A】本発明のマイクロプレートによる、サーモグラフィー実験の断面の構造を示す。
図12B】位置SP1がマイクロプレート内のウェルを示す、FLIR 645sc(LWIR)サーモグラフィーカメラによって上部から撮影した実験装置の画像を示す。
図13】60℃、80℃および95℃の異なる温度でウェル(151)内で実施された測定の詳細な画像、ならびに比較用のカラースケールを示す。
図14】経時的に60℃~95℃に加熱した過程における、本発明のマイクロプレート(15)の加熱曲線とその再現性を示す。
図15】マイクロプレートを急速に加熱および冷却するための、3つのPCRブロックB1~B3を含むそのような測定デバイスの概略図を示す。
図16】プレート全体にわたって均一に増幅していることを示す、35mmのF1.6 Cマウント対物レンズを備えたsCMOSカメラで記録された測定値のプロットを示す。図17Aおよび図17B、ならびに図18は、射出圧縮成形法によるものと、記載される本発明の方法によるものとで製造されたプレートの白色干渉法によるトポグラフィ測定を示す。
図17A】測定デバイスのCCDセンサによる干渉信号の画像を示す。
図17B】測定デバイスのCCDセンサによる干渉信号の画像を示す。
図18】プロファイルPaおよびPb上のさまざまな測定点におけるプレートの対応する隆起を示す。
図19A】射出圧縮成形法によるか、または記載される本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、射出部位周辺の白色干渉法を示す。
図19B】射出圧縮成形法によるか、または記載される本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、射出部位周辺の白色干渉法を示す。
図20】射出部位における対応する隆起を示す。
図21A】射出圧縮成形法によるか、または記載される本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、ウェル内の平坦度の白色干渉法を示す。
図21B】射出圧縮成形法によるか、または記載される本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、ウェル内の平坦度の白色干渉法を示す。
図22】ウェル内の平坦度の対応するプロファイルの測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
下記に記載される熱伝導性マイクロプレート(15)を製造する方法は、射出ユニット(11)を含む射出圧縮成形機(1)で実施され、射出ユニットは、発熱体(400)に設けられた可塑化シリンダー(111)内で回転可能な搬送スクリュー(112)を含み、エンボスダイ(12)に面する搬送スクリューの端部に射出ノズル(113)が存在する。射出圧縮成形機は更に、少なくとも2つのダイ部品(121/122)から形成されるエンボスダイ(12)を有し、この2つのダイ部品は、互いに相対して移動可能であり、液化熱可塑性材料(14)が導入されるキャビティ(13)を形成し、そこに熱伝導性マイクロプレートが形成される。ダイ部品(121)の一方は、ウェルの底部を画定し、もう一方のダイ部品はウェル壁によって形成される容積(122)を画定する(図1の射出圧縮成形機の構造も参照されたい)。
【0094】
以下、添付図面および例示的な特定の設定を参照しながら、本発明の方法を詳細に説明して明らかにする。
【0095】
本明細書に提供される全ての例または例示的な語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特に明記されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0096】
本発明は、現行法の下で許容される範囲で、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている主題の全ての変更および均等物を包含する。加えて、本明細書で特に明記されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形形態で上記に記載される要素の任意の組み合わせが本開示に包含される。
【0097】
第1の方法工程a)では、ポリプロピレンを溶融物(14)として液化形態で供給した。第2の方法工程b)では、エンボスダイ(12)を半開口状態で提供し(図1)、エンボスダイを0.5mmだけ開口し、液化ポリプロピレンの第1の部分、すなわち15g(67重量%または第1の部分の約2倍)を、射出に必要とされる射出ノズルに向かう距離の87%にわたって移動する搬送スクリュー(112)によって、0.25秒の期間にわたり900バールの第1射出圧力でエンボスダイのキャビティ(13)内に導入し(図2)、エンボスダイを閉鎖して800kNの閉鎖圧力を加えた(図3)。後続の方法工程c)では、500バールの第1の第2射出圧力を9秒間にわたり、次いで250バールの第2の第2射出圧力を5秒間にわたり、すなわち合計で14秒間の2段階の射出成形工程を実行し、液化ポリプロピレンの第2の部分、すなわち7.5g(33重量%)を、閉鎖されたエンボスダイ(閉鎖状態では、エンボスダイは0.3mmだけ開口する)に、搬送スクリューによって導入する(この場合、搬送スクリューは射出に必要とされる残りの13%の距離にわたって移動する)(図4)。液化ポリプロピレンが固化した後にエンボスダイを開口すると、方法工程d)において本発明の熱伝導性マイクロプレート(15)のマイクロプレート本体(150)が得られた(図5)。製造されたマイクロプレート本体(150)を、ポリカーボネートから製造されたフレームキャリア(300)内にリベット(301)によって固定した。
【0098】
まとめると、製造されたマイクロプレートは、以下の特徴を有する:ウェルの数:1536個のウェル;WBE=7.4mm;WD=3mm;WBW=1.2mm;BT=0.3mm;ECTP=7.1mm;マイクロプレート本体の材料:ポリプロピレン;フレームキャリアの材料:ポリカーボネート。
【0099】
図6Aは、本発明に従って得られた熱伝導性マイクロプレート(15)を示す。この図は、マイクロプレート本体(150)に配置され、ウェル壁(152)を有するウェル(151)を示しており、その個々のウェル底部(153)が、形成されたウェル底部平面(200)に位置し、マイクロプレート底部(154)は平坦になっている。各ウェルは、断面で見ると円形のウェル壁(152)から形成されており、このウェル壁は、ウェル開口部で上方向に開口し、対向する下側で平面のウェル底部(153)によって閉鎖され、境界が画定されている。マイクロプレート本体(150)は、フレームキャリア(300)内にリベット(301)によって固定されている。図6Bは、本発明のマイクロプレート(15)の主な品質パラメータを明記した、図6Aの拡大部分を示す。共焦点距離センサを備えた表面測定デバイスによってプレート全体または底部からのプレート断面の表面を測定し、個々の測定線により高プロファイルを決定すると、射出圧縮成形によりプレートに0.1mm未満の曲げが生じることが示された。標準的な製造方法によるマイクロプレート試料の場合では、この低い程度の曲げは達成されなかった(0.3mm超の曲げ)。
【0100】
個々のウェルの曲げを評価するために、底部からのプレートの断面を分析した。測定値から、射出圧縮成形によってばらつきが10μm未満の均一なプレートの底部構造がもたらされたことが示された。標準的な製造方法によるマイクロプレート試料の場合では、この均一性および平坦度は達成されなかった(14μm超のばらつき)。
【0101】
図7図10は、従来の射出圧縮成形法によって製造されたマイクロプレートと比較することにより、マイクロプレートを製造するための本発明の方法の利点を示すものである。
【0102】
本発明の熱伝導性マイクロプレート(15)はまた、特に平坦なマイクロプレート底部(154)を有しており、特に、内側が暗い色の円としての図7(本発明のマイクロプレート)のスプルー(155)の領域では、図8の標準的なマイクロプレートの製造方法のものと比較すると明白である。スプルーとマイクロプレートのウェルの間の領域において、陥没した形態の本発明以外のマイクロプレートでは、凹凸の原因となるひけマークが明白である(図7図8、特に4~6mm(x軸)の領域、および図9図10、特にスプルーの右側の領域の色の暗い領域を比較されたい)。
【0103】
従って、熱伝導性マイクロプレートを製造するための本発明の手順により、特に顕著な底部(154/153)の平坦度、および特に均一な熱伝導性マイクロプレート(15)の底部厚さがもたらされる。図11Aおよび図11Bは、フレームキャリア(300)内にリベット締めされた、本発明の熱伝導性マイクロプレート(15)の上部および底部から斜めに見た3D図を示し、このマイクロプレートは1536個のウェル(151)を有している。
【0104】
更なる実験では、空のウェルを含む本発明のマイクロプレート(15)をホットプレート(500)上に置き、不透明なカバープレート(501)で1つのウェル(151/sp1)を除いて覆い、サーモグラフィーカメラ(600)、例えばFLIR 645 sc(LWIR)と光源(601)を使用して、ウェル底部(153)の温度の変化を記録して測定した。図12Aは、サーモグラフィー実験の構造を断面で示す。
【0105】
図12Bは、位置SP1がマイクロプレート内のウェルを示す、FLIR 645sc(LWIR)サーモグラフィーカメラによって上部から撮影した実験装置の画像を示す。
【0106】
図13は、60℃、80℃および95℃の異なる温度でウェル(151)内で実施された測定の詳細な画像、ならびに比較用のカラースケールを示す。
【0107】
図14は、経時的に60℃~95℃に加熱した過程における、本発明のマイクロプレート(15)の加熱曲線とその再現性を示す。名目上の35Kの温度ジャンプの場合における上昇は、約2秒で20Kであった。この熱的実験は、ホットプレートからマイクロプレートへの迅速な熱伝達が達成されることを示している。
【0108】
更に、リアルタイムPCRに対する本発明のマイクロプレートの使用可能性を実験的に検証した。
例えば、1536個のウェルの本発明の白色マイクロプレートにおいて、以下の工程を実行した:
マイクロプレート(15)の各ウェルに、以下の溶液の混合物を使用し、ピペット操作でウェル(151)に移した:
【0109】
【表1】
【0110】
続いて、マイクロプレート(15)を視覚的に透明な永久粘着性フィルム(Applied Biosystems、4311971)(図示せず)で封止し、マイクロプレート(15)を遠心分離して、リアルタイムPCR測定用の測定デバイス(PC測定デバイスとも呼ばれる)に入れた。
【0111】
図15は、加熱ブロック(500)による手順プロトコルに従ってマイクロプレートを急速に加熱および冷却するための3つのPCRブロックB1~B3と、マイクロプレート(15)の温度を制御するための加熱ブロック(500)および透明なホットプレート(501)を含むイメージングステーションIと、光源(401)と、35mmのF1.6 Cマウント対物レンズ(600’)を備えたsCMOSカメラとを含む、そのような測定デバイスの概略図を示す。マイクロプレート(15)は、水平の矢印で概略的に図示された搬送システムを用いて、PCRブロックB1~B3(番号付けは任意である)とイメージングステーションIの間を手順プロトコルに従って移動する。
【0112】
以下の手順プロトコルをPCR測定デバイスに使用した:95℃で2分間の最初の時間の後に、それぞれの場合で最初に95℃で10秒、2回目に60℃で30秒、および3回目に72℃で5秒の3つの温度工程のサイクルを45回繰り返す。各サイクルにおいて、3回目の工程(72℃)の後に、プレートに波長539nmの光を照射/励起し、次いで放出された光を569nmで記録/測定する。
【0113】
PCR反応に使用されるプライマー/試料の概要:
【0114】
【表2】
【0115】
図16は、プレート全体にわたって均一に増幅していることを示す、35mmのF1.6 Cマウント対物レンズを備えたsCMOSカメラで記録された測定値のプロットを示す。
【0116】
プレート全体にわたる均一な温度分布は、特にスプルーの領域における製造方法の利点を示している。
【0117】
異なる製造方法によって製造された1536ウェルプレート本体の更なる比較:
従来の射出圧縮成形によって、標準的な射出成形によって、および図1の型を用いて本発明の方法によって製造された1536ウェルプレート本体の比較を行った。
【0118】
全ての製造プロセスに対して、ポリプロピレンを溶融物として液化形態で供給した。以下に詳述するパラメータで、溶融物を型/圧縮ダイのキャビティ(13)に導入した。液化ポリプロピレンが固化した後に、エンボスダイを開口し、マイクロプレート本体を得た。
【0119】
プレート本体を射出圧縮成形するために、完全に閉鎖されていないエンボスダイのキャビティ(13)に、以下のパラメータで溶融物を導入した:保持力950kN、射出時間0.3秒、切換点10.61mm、および射出速度106.1mm/秒。
【0120】
標準的な射出成形では、同様のパラメータで溶融物を目的に適した型に導入する。しかしながら、経験から、このようなプレートの達成可能な底部厚さは少なくとも0.6mmであることが明らかであり、このようなプレートは、熱伝達が適切でないためにqPCR実験には好適でない。
【0121】
本発明のプレートは、上記に記載された方法によって提供された。
【0122】
それぞれのプレート本体の下面のトポグラフィ測定を、白色光干渉計を用いて室温で実行した。白色光干渉法は、広帯域光(白色光)の干渉を利用した非接触の光学的試験方法であり、従って、数センチメートルから数マイクロメートルの寸法の構造物の3Dプロファイル測定が可能となる。白色光干渉法は、ウェハーの分析(品質検査)で頻繁に使用されている。
【0123】
それぞれの測定対象物を白色光干渉計に入れて測定した。
【0124】
白色光干渉計の有効面積は約80mm×120mmであった。
【0125】
図17Aおよび図17Bは、それぞれの個々の画素ごとの測定対象物の位置に応じた、測定デバイスのCCDセンサによって得られた干渉信号を示す。図18は、対応する画素の測定値に基づく先行技術による方法によって導き出された、対応する参照プロファイルPaおよびPbの異なる点における対応するプレートの湾曲を示す。
【0126】
従来の射出圧縮成形法によって製造されたプレートには、測定領域の外側に部分的に干渉信号が示されている(灰色の領域、図17A)。プレートは、測定可能な領域において約0.35mmの一般的な湾曲を示している(図18、プロファイルPa)。
【0127】
本発明の方法によって製造されたプレートの干渉信号は、全て測定範囲内であり(図17B)、このプレートは、約0.15mmの改善された平坦度を示している(図18、プロファイルPb)。
【0128】
平坦度と湾曲は、図5によるデバイスにおいて、95℃の温度で使用する間に、2つのホットプレート500、501の間で二部構成のプレート15を圧縮することによって、更に改善することもできる。
【0129】
プレートの反りの少なさは、プレート底部と熱源を確実に密着させることができるため、qPCRプロセスには不可欠である。
【0130】
射出部位のひけマークに関する測定:
図19Aおよび図19Bは、射出圧縮成形法によるか、または本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、射出部位周辺の白色干渉法による測定を示す。図20は、対応する位置PaおよびPbの射出部位における対応するプロファイルを示す。
【0131】
射出部位周辺のプレート下面からの白色光干渉法による測定(図19A図19B)のために、8mm×8mmの有効領域を画定した。信頼できるqPCR結果を得るためには、全てのウェルで同等の検出力を示す必要がある。従来の射出成形によって製造されたqPCRプレート内の射出部位における著しいひけマークにより、プレート下面と熱源との間の接触が不均一になる。その結果、不正確であるか、または少なくとも遅延したqPCRの信号強度がもたらされる。
【0132】
ウェル内の平坦度の測定
図21Aおよび図21Bは、射出圧縮成形法によるか、または本発明の方法により製造されたプレートのそれぞれの場合における、ウェル内の平坦度の白色干渉法による測定を示す。図22は、対応する参照プロファイルPaおよびPbに対する、ウェル内の平坦度の対応するプロファイルの測定値を示す。
【0133】
この測定のために、7mm×9mmの断面を各プレートのプレート底部から測定した。図21A図21Bは、測定されたプレートの白色光干渉法による測定を示す。
【0134】
本発明の方法によって製造されたプレートのウェル底部は、ばらつきが10μm未満であり、従来の射出圧縮成形法によって製造されたプレートのウェル底部よりも平坦である。
【0135】
信頼できるqPCR結果を得るためには、全てのウェルで同等の検出力を示す必要がある。従来の射出圧縮によって製造されたプレートの場合におけるウェル底部の顕著なばらつきにより、プレートと熱源との間に不均一な熱伝達が生じる。その結果、不正確であるか、または少なくとも遅延したqPCRの信号強度がもたらされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図18
図19a
図19b
図20
図21a
図21b
図22
【配列表】
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【国際調査報告】