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特表2024-536419レボチロキシンの注射可能な徐放性薬学的製剤およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レボチロキシンの注射可能な徐放性薬学的製剤およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K47/34
A61K9/16
A61K9/10
A61P5/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521050
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022025463
(87)【国際公開番号】W WO2023057088
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】20210100683
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(31)【優先権主張番号】2119164.8
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510022369
【氏名又は名称】ファーマシェン エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カラバス, エバンゲロス
(72)【発明者】
【氏名】クトリス, エフシミオス
(72)【発明者】
【氏名】カランツィ, リダ
(72)【発明者】
【氏名】チャイティドー, ソティリア
(72)【発明者】
【氏名】レモナキス, ニコス
(72)【発明者】
【氏名】パパダキ, アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ブリューデス, ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】カレジ, アルテミス
(72)【発明者】
【氏名】カツェニス, アタナシオス
(72)【発明者】
【氏名】コッティ, カテリーナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA31
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC30
4C076CC45
4C076DD09
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD30
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE23
4C076EE24A
4C076EE32
4C076EE48A
4C076FF02
4C076FF32
4C076GG26
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA01
4C206KA12
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA29
4C206MA43
4C206MA61
4C206MA86
4C206NA12
4C206ZC06
(57)【要約】
本発明は、レボチロキシンを含むポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)微小粒子に基づく、安定な注射可能な徐放性製剤に関する。また、本発明は、微小粒子を調製する方法、ならびに成人の甲状腺機能低下症、乳児の先天性甲状腺機能低下症、および小児の後天性甲状腺機能低下症を制御するための使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物とポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体の微小粒子を含む徐放性薬学的製剤であって、少なくとも1.5%w/wの理論レボチロキシン担持率を有する、製剤。
【請求項2】
1.5%w/wから3%w/wまでの理論レボチロキシン担持率を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項3】
2%w/wから3%w/wまでの理論レボチロキシン担持率を有する、請求項1または2に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体が、80:20から20:80までのラクチド対グリコリドの比を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項5】
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体が、75:25から25:75までのラクチド対グリコリドの比を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体が、75:25から50:50までのラクチド対グリコリドの比を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項7】
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体が、50:50のラクチド対グリコリドの比を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項8】
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体が、75:25のラクチド対グリコリドの比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項9】
重合体が5から200kDaまでの範囲にある重量平均分子量を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項10】
重合体が15~120kDaの範囲にある重量平均分子量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
重合体が18kDaから115kDaまでの範囲にある重量平均分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項12】
微小粒子が、レーザー光回折によって測定された10から200ミクロンまでの粒度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項13】
筋肉内または皮下投与前に希釈剤で再構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項14】
希釈剤が、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、ポリソルベート、酢酸、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二ナトリウム七水和物のうちの1つまたは複数を含む、請求項13に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
筋肉内または皮下注射によって投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項16】
月1回から2カ月に1回まで投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項17】
月1回または2カ月に1回投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項18】
デュアルチャンバー型シリンジまたは希釈剤を前もって満たしたシリンジを有するキット、および別のバイアルに存在する微小粒子を用いて、筋肉内または皮下投与される、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項19】
レボチロキシンまたは薬学的に許容される塩を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項20】
水和レボチロキシンナトリウムまたは無水レボチロキシンナトリウムを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項21】
成人の甲状腺機能低下症、乳児の先天性甲状腺機能低下症、および小児の後天性甲状腺機能低下症を制御するための、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤に存在する微小粒子を調製する方法であって、以下の工程:
- PLGA重合体を撹拌しながらDCMに溶解する工程と、
- レボチロキシンをMeOHに溶解し、重合体溶液と混合して分散相(DP)を形成する工程と、
- ポリ(ビニルアルコール)を80℃で注射のための水に溶解し、その溶液を25℃に冷却して連続相(CP)を形成する工程と、
- 分散相および連続相を混合し、高せん断ローターステーター連続流分散機(すなわち、インラインホモジナイザー)またはオーバーヘッドスターラーを用いて乳化して懸濁液を形成する工程と、
- 激しく撹拌してDPをCPに乳化する工程と、
- 懸濁液を溶媒抽出、および5~25℃に制御された温度および空気流の下で撹拌することによるエバポレーションに供し、確実に有機溶媒の除去および粒子の固化を行う工程と、
- 3時間後、微小粒子をガラスフィルタードライヤー上に集積し、室温で過剰の水により洗浄し、24時間減圧下に放置して乾燥させる工程と
を含む方法。
【請求項23】
分散相が5℃から25℃までの温度に保たれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
分散相が5℃から10℃までの温度に保たれる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
MeOHの質量に対するレボチロキシンの質量が3.41%を下回る、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
DCMにMeOHを加えた合計質量に対するレボチロキシンの割合が0.1%を下回る、請求項22または23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体もしくは代謝物の安定な注射可能な徐放性製剤、本製剤の製造方法、および製剤を使用して甲状腺機能低下症を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
レボチロキシンはホルモンであり、1915年に初めて結晶形で単離された。その構造式は1926年に発見され、1927年に初めて合成された。甲状腺は、生物の代謝を調節するホルモンを生成する。甲状腺が活動しすぎる状態(甲状腺機能亢進症)またはその働きが不十分である状態(甲状腺機能低下症)につながり得る、いくつかの障害が存在し、橋本病、グレーヴズ病、甲状腺腫、および結節性甲状腺腫が最もよく知られている。甲状腺機能低下症の一般的な症状には、疲労、体重増加、耐寒性不能、遅い心拍数、乾燥皮膚、および便秘が含まれる。レボチロキシンは経口剤で、通常甲状腺腫低下症および甲状腺腫瘍などの甲状腺ホルモン欠損症を治療するのに使用され、甲状腺腫を治療するか防ぐのに使用され、多くの場合生涯治療としてレボチロキシンを服用している。粘液水腫性昏睡として知られている重度の種類の甲状腺ホルモン欠損症には、レボチロキシンは初回負荷用量で静脈内投与され、その後レボチロキシンレベルが制御されるまで1日静脈内維持用量により続く。静脈内製剤は、早くも1960年代に使用されていた。
【0003】
レボチロキシンの現在承認されている経口剤および注射剤には、毎日の投与が求められているが、長期間薬理的作用を持続し、投与頻度がより少ない必要がある、レボチロキシンの承認された経口または注射可能な薬学的剤形(徐放性製剤)は存在しない。甲状腺機能低下症および他の甲状腺障害はほとんどの患者で長く続くので、多くの場合薬剤を生涯にわたる治療として服用しており、そして少なくとも30分間、他の治療薬、補助食品、または食物がない空の胃に薬剤を摂取する必要があることも考えると、投与頻度を減らせば。患者の服薬遵守を確実に高め、生活の質の向上に寄与することになる。注射可能な徐放性製剤であるならば、毎日の投与、さらには絶食が必要なくなる。
【0004】
過去に徐放性を有する注射可能な製剤の作製が試みられた。例えば1996年に公表されたCN1127634に、30から90日までの間、薬剤の放出を制御すると言われている、エストリオール、吉草酸エストラジオール(estradiol valearate)、プロピオン酸テストステロン、および甲状腺-T3およびT4-粉末微小粒子の注射可能な(筋肉内)制御放出性製剤が開示された。ポリ乳酸(PLA)は、レボチロキシンの微小粒子を形成するのに使用された。但し、発明者らは、模範的製剤とかけ離れたいかなる実際の放出データも発表せず、今日まで承認された製剤は存在しない。
【0005】
Biopharma.Drug.Dispos.32:380-388、2011に公表された研究において、局所および経皮送達用のレボチロキシン微小粒子が調製された。それらは、様々な重合体基材、すなわちポリD,Lラクチド(PLA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、およびエチルセルロース(EC)で調製された。その放出率(in vitro)から、レボチロキシンが高分子の種類にかかわらず急峻な放出を示し、60%超の薬物が最初の1時間以内で放出されることが示された。初期の急峻な速度が高いと、不穏、過敏性、および神経過敏症などの好ましくない副作用、または胸痛、動悸、呼吸困難、および心不全などの重大な副作用を引き起こすように、これらの調製物は、最大2カ月までの放出を目指す注射可能な徐放性製剤に用いるには、明らかにふさわしくない(その意味で少なくとも急峻な放出をより下げることが求められる)。
【0006】
初期の急峻を弱め、放出を制御し、毒性を低減させ、体の半減期を延ばし、投与頻度を減らし、患者の服薬遵守を高めた、そして医療費全体の削減を可能にする、レボチロキシンの注射可能な徐放性製剤が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明に従って、レボチロキシン、またはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物とポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)重合体の微小粒子を含む徐放性薬学的製剤であって、少なくとも1.5%w/wの理論レボチロキシン担持率を有する、製剤が提供され、これは先行技術の欠陥を克服し、レボチロキシンの相対的に低い初期の急峻な放出、および長時間にわたる放出率の持続をもたらす。
【0008】
理論薬物担持率(TDL)は方程式を用いて算出される:
【0009】
本発明の別の目的は、活性成分としてレボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含み、毒性学的に安全である安定した非経口薬学的製剤を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含み、良好な注射針通過性、注射可能性、注射針の目詰まりも閉塞もない状態、良好な排液、無菌状態、および再懸濁性を示す、注射可能な制御放出性製剤を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる利点は、レボチロキシン製剤が患者による薬物療法の遵守を向上させ、頻回の(毎日の)経口または注射投与を必要とする既存の治療方式に代わり得ることである。
【0012】
本発明は、活性成分としてレボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含み、単回投与で少なくとも1週間から最大2カ月間まで薬理作用を現すことができる、1つのまたは複数の注射部位に筋肉内または皮下投与するための薬学的製剤を提供する。その製剤は、月1回から2カ月に1回まで、好ましくは月1回または2カ月に1回投与してよい。
【0013】
本発明は、即時使用溶液、即時使用懸濁液、ならびに投与(注射)直前に適切な希釈液で再構成して形成される懸濁液/溶液の形態の、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含む、滅菌した注射可能な制御放出性製剤をさらに含む。
【0014】
本発明のさらなる態様は、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含む、安定な注射可能な薬学的製剤を調製するための、迅速で簡単な費用効率の高い方法を提供する。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の詳細な説明を考慮して当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の用語は、以下の意味で本発明において使用される。
【0017】
「微小粒子」または「ミクロスフィア」とは、粒子のマトリックスまたは結合剤として働く重合体を含む粒子である。微小粒子は、重合体のマトリックスに分散または溶解した活性化合物を含有することができ、生分解性および生体適合性である。
【0018】
「生分解性の物質」とは、体の処理によって体がすぐに簡単に処理できる生成物に分解する物質であり、体内に蓄積してはならない。
【0019】
「生体適合性」とは、体に対して毒でなく、薬学的に許容され、発癌性がないことを意味し、体組織に著しく炎症を誘発しないことである。「重量%」とは、微小粒子の総重量当たりの重量の割合を意味する。
【0020】
「徐放性製剤」:単回投与で数日から数カ月までの持続した期間、薬学的活性成分の持続放出を提供する薬学的な剤形。
【0021】
「PLGA」は、乳酸グリコール酸共重合体である。
【0022】
合成重合体の様々な鎖は、様々な長さおよび様々な数の側鎖を有するので、合成重合体の分子量の数値は1つではない。そのため、分子量が分布するので、一般に重合体の「平均分子量」が算出される。
【0023】
「活性剤」、「API」、「活性化合物」、「薬物」の用語は、互換可能に使用され、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物である、本発明の薬理的に活性な化合物を指す。レボチロキシンの用語は、同じ意味で現時の明細書全体にわたって互換可能に使用される。
【0024】
「浸食」は、その分解の結果としての重合体の物理的溶解と定義される。
【0025】
MeOH:メタノール
DCM:ジクロロメタン
「抽出因子g」は:
と定義される。
【0026】
既に記載したように、本発明の目的は、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物の、注射可能な徐放性製剤を提供して、既存の甲状腺治療の課題を克服し、長期間にわたって均等で持続する放出率を実現することである。
【0027】
製剤は、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を含み、好ましくはレボチロキシンまたは水和もしくは無水の薬学的に許容される塩を含む。製剤が薬学的に許容される塩を含む場合、塩はナトリウム、カリウムなどから選択され、好ましくはナトリウムである。
【0028】
レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物は、総じて疎水性または両親媒性であり、通常、重合体溶液を形成するのに使用される溶媒に不溶性であるので、レボチロキシンをマトリックスの重合体に配合するのが難しい。そのため、本発明の別の目的は、発明された製剤のレボチロキシン微小粒子を調製する方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、最大投与要件を満たすのに適した薬物担持率を有する、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物の注射可能な徐放性製剤を提供することである。
【0030】
さらに本発明のさらなる目的は、皮下または筋肉内に注射される場合、長期間にわたる放出、好ましくは1週から2カ月に及ぶ期間にわたる放出、より好ましくは1から2カ月までの期間にわたる放出を示すと同時に、放出を開始する前に(遅滞期)排出されないか、または短期間しか排出されず、一般的な数値と比較して低い初期の急峻な放出を示す、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物の注射可能な徐放性製剤を提供することである。ミクロスフェアにおいて、遅滞期は一般的に最大10日までであり、初期の急峻な放出は全レボチロキシンの40%未満である。
【0031】
一態様において、注射可能な徐放性製剤のレボチロキシン微小粒子は、単回乳化処理によって製造される。この処理に従って、PLGA重合体は、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ヘキサフルオロイソプロパノール、クロロホルム、もしくはアセトン、またはそれらの組合せに限定されないが、それらを含む適した溶媒に溶解して、PLGA重合体溶液を形成する。レボチロキシンは適した溶媒に溶解してレボチロキシン溶液を形成し、適した溶媒にはレボチロキシンのナトリウム塩の形についてメタノールが含まれる。分散(油)相は、PLGA重合体溶液とレボチロキシン溶液とを混合して調製され、PLGAおよびレボチロキシンの両方が溶解できる共溶媒系をもたらす。
【0032】
本発明に従って、レボチロキシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、もしくは代謝物を活性成分として含む、筋肉内または皮下投与に用いる徐放性薬学的製剤を調製する方法も提供される。
【0033】
本発明の製剤中のレボチロキシンは、好ましくはレボチロキシンまたは薬学的に許容される塩、より好ましくは水和または無水のレボチロキシンナトリウムである。
【0034】
本発明の製剤は、薬学的活性成分、ビヒクル、他の薬学的に許容される添加物、およびpH調節剤を含む。製剤の構成物を混合する順序は互換可能である。
【0035】
微小粒子を調製する一般的な好ましい方法は、以下の工程:
- PLGA(ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド))重合体を撹拌しながらDCMに溶解する工程と、
- レボチロキシンをMeO中に溶解し、重合体溶液と混合して分散相(DP)を形成する工程と、
- ポリ(ビニルアルコール)を80℃で注射のための水に溶解し、その溶液を25℃に冷却して連続相(CP)を形成する工程と、
- 分散相および連続相を混合し、高せん断ローターステーター連続流分散機(すなわち、インラインホモジナイザー)またはオーバーヘッドスターラーを用いて乳化して懸濁液を形成する工程と、
- 激しく撹拌してDPをCPに乳化する工程と、
- 懸濁液を溶媒抽出、および5~25℃に制御された温度および空気流の下で撹拌することによるエバポレーションに供し、確実に有機溶媒の除去および粒子の固化を行う工程と、
- 3時間後、微小粒子をガラスフィルタードライヤー上に集積し、室温で過剰の水により洗浄し、24時間減圧下に放置して乾燥する工程と
を含む。
【0036】
好ましい態様において、PLGAは撹拌しながらジクロロメタンに溶解する。レボチロキシンナトリウムはメタノールに(撹拌しながら)溶解し、その後撹拌しながら重合体溶液に加えて分散相を形成する。分散相は、5℃から25℃までに、好ましくは5~10℃に制御された温度下に保たれる。
【0037】
レボチロキシンナトリウムとPLGA重合体との形成された混合物(油相または分散相)は、続けて界面活性剤水溶液を含む水相または連続相に乳化し、界面活性剤はポリビニルアルコール(PVA)水溶液が好ましい。好ましい態様において、レボチロキシンナトリウムとPLGA重合体との混合物はPVA水溶液中で乳化する。
【0038】
乳化は、高せん断ローターステーター連続流分散機(インラインホモジナイザーなど)またはオーバーヘッドスターラーを用いて行うのが好ましい。次に、乳濁液を受容槽に移し、温度、空気流、および撹拌を制御する条件の下に置いて有機溶媒を取り除く。その懸濁液は、3から4時間まで20℃より低い温度、より好ましくは5~10℃にサーモスタットで調節される。有機溶媒を取り除いた後、微小粒子の懸濁液が形成され、ガラスフィルタードライヤーを通してろ過して望まれる粒度の微小粒子を集積する。その後、微小粒子はガラスフィルタードライヤー上で室温で過剰の水により洗浄し、24時間減圧下に放置して乾燥する。本発明の方法は、レーザー光回折によって測定された、10~200ミクロンの粒度分布を有する微小粒子を提供する。
【0039】
20℃でMeOH中のAPIの溶解度は以下のとおり決定された:おおよそ50mgのレボチロキシンナトリウムはバイアルで量られた。メタノールの溶液が透明になるまでメタノールを少しずつ加えた。溶解度は、3.41%のLVX質量/MeOHの質量と決定された。
【0040】
次に、20℃でDCM/MeOH混合液中のPLGAの溶解度が測定された。PLGA重合体(PURASORB PDLG5002A)の5%DCM溶液が調製された。重合体の沈殿物が観察されるまでメタノールを少しずつ加えた。PLGAの5%DCM溶液の最小許容DCM/MeOH比は、10/3と決定された。
【0041】
おおよそ0.25gの量の重合体ならびに理論薬物担持率値1%、2%、3%、および4%に相応する様々な量のLVXが、4本のバイアルに量り取られた。10/3の比のDCM/MeOH混合液(確実に重合体を常に溶解するため)が、各バイアルに少しずつ加えられた。それぞれのPLGA(PURASORB PDLG5002A)濃度、LVX含有率%、およびLVX溶解度が評価され、下表に示す。
最大理論薬物担持率値の評価。
【0042】
結果から、
・ LVX/(DCM+MeOH)の割合が0.1%を下回る場合にレボチロキシンは溶解すること、
・ 3%より高い、理論薬物担持率では、PLGA濃度は、微小粒子の製剤には低すぎる3%より低くなければならないことが示される。
【0043】
溶解度試験の結果から理論薬物担持率の選択につながった。PLGA(PURASORB PDLG5002A)濃度は、DCM中で5%に設定された(DCM+MeOH混合液中で3.8%)。製剤の理論薬物担持率値は、1.5から3%の間の範囲になる。少なくとも1.5%、好ましくは1,5%から3.0%まで、およびより好ましくは2%から3%までのそのような理論薬物含有率、ならびに1から1.5までのg因子によって、本発明に従って少なくとも1カ月の放出および低い初期遅滞期を有する微小粒子を導く。理論薬物担持率がより低いレボチロキシン微小粒子は、十分な時間放出しない。また、MWおよびラクチド対グリコリド比がより高いPLGA重合体から、本発明の目的には遅すぎると考えられる放出プロファイルの結果となる。
【0044】
好ましくはMeOHの質量に対するレボチロキシンの質量が約3.41%である場合に、レボチロキシンはメタノールに溶解されるのが好ましい。さらに、PLGAは特にDCMに溶解されるのが好ましく、DCMにMeOHを加えた合計質量に対するレボチロキシンの割合は0.1%を下回る。
【0045】
PLGAは、その構成する単量体、乳酸(LA)、およびグリコール酸(GA)の間の様々な割合で得られる直鎖脂肪族共重合体である。それは、LAとGAとのいずれかの割合、10,000未満から最大200,000g/molまでの広範囲にある分子量(Mw)で、および完全な非晶質または高い結晶性の形状で合成することができる。非晶質形態は、重合体マトリックスでより多くの積み荷の分散ももたらすので、薬物放出に適しているとわかる。放出および分解速度にMwおよびLA/GA比が非常に影響する。総じて、より高いMwの重合体は、架橋により構造のより完全な状態を獲得し、放出がより長い特徴を示す。GA含有率が高いPLGAは、より親水性であり、より高い水透過性を可能にするため、より早い分解速度を生じると同時に、より高い程度の結晶性を示すことになる。
【0046】
現在PLGA重合体は、様々な供給業者から市販されており、いずれの顧客の要求にも簡単に特注で作ることができる。本発明に使用することができる典型的な市販PLGA重合体は、Resomer(登録商標)、Medisorb(登録商標)、Expansorb(登録商標)、およびPurasorb(登録商標)PDLGである。これらの重合体は、分子量および乳酸対グリコール酸の比が広い範囲で、様々な重合体鎖末端基で、利用することができる。
【0047】
本発明の発明者らは、先行技術であるレボチロキシンの注射可能な徐放性製剤に使用されるPLAの分解速度が遅く、非常に遅い薬物放出につながることを見い出した。驚くべきことに、現在請求されている、レボチロキシンの注射可能な徐放性製剤に適しているPLGA重合体は、80:20から20:80まで、より好ましくは75:25から25:75まで、および最も好ましくは75:25から50:50までのラクチド対グリコリド比を有することが現在わかっている。特に好ましいPLGA重合体は、50:50および75:25のラクチド対グリコリド比を有するものである。PLGA重合体の平均分子量(M)は、好ましくは5kDaから200kDaまで、より好ましくは15~120kDaの間の範囲にある。特に好ましいPLGA重合体は、18kDaおよび115kDaの平均分子量を有するものである。
【0048】
本発明の注射可能な徐放性製剤は、レボチロキシンまたはレボチロキシン塩、好ましくはナトリウム塩、および高分子、好ましくはPLGAを含む微小粒子を備えることが開示されている。レボチロキシンまたはレボチロキシンナトリウムは、1.0~5.0重量%濃度、より好ましくは1.5~3.0重量%で存在してよく、一方PLGA濃度は、99.0から95.0重量%の間、好ましくは97.0から98.5重量%の間の範囲でよい。レボチロキシンは2.5%濃度で、およびPLGAは97.5%濃度で存在するのが最も好ましい。
【0049】
PLGA分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)ポリスチレン(PS)較正標準(M範囲3~200kDa)と比較して決定される。その方法に従って、較正標準および試料はTHF中に溶解され、一列に連結した、同じ特徴をもつ2本のGPCカラムを用いて分析される。その保持時間値は標準溶液のCoAsのMW値と組み合わせて、保持時間対log(M)を描く較正曲線を作製するのに使用される。試料の保持時間は、較正曲線に基づき分子量に変換される。較正曲線は、GPCソフトウエアにより算出された、保持時間対log(M)の三次式である。
【0050】
本発明の微小粒子からの、薬物のin vitro放出は、様々なpH値のリン酸緩衝食塩水溶液で検討された。製剤の微小粒子は、リン酸緩衝食塩水の放出媒体中に懸濁され、水槽系で37℃に保温される。一定の時間間隔で試料は採取され、放出された薬物の量がHPLCにより測定される。
【0051】
本発明の微小粒子は、注射前に再構成されて懸濁液を形成する。懸濁液は微小粒子および媒体(希釈液)を含み、媒体は水溶性または非水溶性であり得る。また懸濁液は、1つまたは複数の可溶化剤または湿潤剤、1つもしくは複数の凝集剤または懸濁剤、1つまたは複数の抗菌性防腐剤、1つまたは複数の抗酸化剤、1つまたは複数の緩衝剤、1つまたは複数のpH調節剤、1つまたは複数の張性調節剤、および1つまたは複数のキレート剤を含んでもよい。
【0052】
適した可溶化剤の例として、モノステアリン酸ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノラウレート、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビトールミツロウ、ポリエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンレウリルエーテル(polyoxyethylene leuryl ether)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリエチレンソルビタンモノオレエート、ポリエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オレイン酸カリウム、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。ポロキサマーおよびLutrol(登録商標)F108は、可溶化剤または湿潤剤として特に好ましい。カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、凝集剤または懸濁剤として特に好ましい。
【0053】
存在してもよい抗酸化剤の例として、アセトン重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、α-トコフェロール、重硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、システイン、システイネートHCL、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチシン酸、ゲンチシン酸エタノールアミン(gentisic acid athanolamine)、グルタミン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、α-トコフェロール、チオグリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。ブチルヒドロキシルアニソールおよび/または亜硫酸水素塩は、特に抗酸化剤として好ましい。
【0054】
注射可能な制御放出性の懸濁液を使用するために準備される非水の調製に、緩衝液は任意に用いられる。適した緩衝液の例として、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、硫酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸、トロメタミンが挙げられる。リン酸ナトリウムは特に緩衝剤として好ましい。
【0055】
懸濁液のpHを約6から約8までに、好ましくは約7に調節するため、1つまたは複数のpH調節剤もまた存在してよい。pH調節剤は、酸または塩基のどちらかであってよい。本発明に使用するのに適したpH調節剤の例として、酢酸、炭酸カルシウム、塩酸、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。水酸化ナトリウムおよび塩酸は、特にpH調節剤として好ましい。
【0056】
懸濁液の調製には、1つまたは複数の張性調節剤が任意に使用される。適した張性調節剤の例としては、硫酸マグネシウム、マルトース、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリソルベート、塩化カリウム、ポビドン、塩化ナトリウム、コレステリル硫酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、ショ糖、トレハロースが挙げられる。塩化ナトリウムは、特に張性調節剤として好ましい。
【0057】
懸濁液は、任意に1つまたは複数のキレート剤を含んでよい。適したキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)カルシウム二ナトリウム、EDTA二ナトリウム、EDTAナトリウム、およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が挙げられる。またクエン酸、酒石酸、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸もキレート剤として作用することができる。EDTA二ナトリウムは、特にキレート剤として好ましい。
【0058】
本発明の徐放性製剤は、成人の甲状腺機能低下症、乳児の先天性甲状腺機能低下症、および小児の後天性甲状腺機能低下症を制御するのに使用することができる。製剤は、亜急性甲状腺炎の回復期の段階における一過性の甲状腺機能低下症を除き、いずれかの病因による先天性または後天性の甲状腺機能低下症の代替または補充治療としてさらに使用することができる。具体的な適応症には、原発性(甲状腺の)、続発性(下垂体の)、および三次性(視床下部の)甲状腺機能低下症、ならびに潜在性甲状腺機能低下症が含まれる。原発性甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能性欠如、原発性萎縮、および部分的もしくは全体の先天性欠損に、または甲状腺腫の存在の有無にかかわらず、外科手術、放射線、または薬物の作用に起因する場合がある。別の態様において、製剤は、甲状腺小節、亜急性もしくは慢性リンパ球性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、多結節性甲状腺腫などの様々な種類の甲状腺機能正常な甲状腺腫、の治療または防止に、ならびにサイロトロピン依存性高分化型甲状腺がんの処理における外科手術および放射性ヨウ素治療の補助として使用してもよい。
【0059】
製剤は、適した希釈液で再構成されてから、皮下または筋肉内注射によって投与されるのが好ましい。より詳細には、製剤は、希釈液がプレフィルドシリンジに詰め込まれ、微小粒子がバイアルの中にあるキットとして提供されてよい。使用する直前に、プレフィルドシリンジ(希釈液)およびバイアル(粉末)の内容物が混合されて、患者に注射される懸濁液を調製する。代わりに、デュアルチャンバーシリンジを使用してよく、微小粒子はシリンジの一方のチャンバーに備えられ、希釈液はプレフィルドシリンジの他方のチャンバー中に保存されており、注射直前に各チャンバーの内容物が混合されて、患者に注射される懸濁液を形成する。
【0060】
適した希釈液として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、ポリソルベート、酢酸、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二ナトリウム七水和物などの不活性成分が挙げられる。
【0061】
製剤は、1または2カ月に1回投与されるのが好ましい。
【実施例
【0062】
実施例1(比較例)
3種のPLGA重合体、すなわち、両方ともラクチド対グルコリド比が50:50である、分子量18kDaのPURASORB PDLG 5002A、および分子量60kDaのRESOMER RG 504H、ならびに分子量115kDaおよびラクチド対グルコリド比75:25のPURASORB PDLG 7510を用いて、上記の説明で例示される方法により微小粒子を調製した。
【0063】
これらは、薬物担持率、粒度分布およびin vitro放出によって特徴付けた。その結果を以下の表に示す。
製剤LVX_1.2、LVX_1.3、およびLVX_1.4のPSD(粒度分布)およびin vitro放出率
【0064】
製剤LVX_1.2およびLVX_1.3は、それぞれ約10日および20日の遅滞期に続いて、それぞれ最大約25日目までおよび40日目までの主放出期を有するシグモイド型プロファイルの特徴を示す。
【0065】
この結果から、レボチロキシン微小粒子のPSDおよび放出プロファイルに対する重合体MWの効果が示されている。MWがより高ければ(製剤LVX_1.3)、より大きい微小粒子(乳化の段階で分散期の粘性がより高い)となり、その結果、より遅い放出プロファイルをもたらした(単位容量当たりの表面積がより小さくなると、水の浸透およびマトリックス分解の速度低下につながる)。
【0066】
製剤LVX_1.4の場合、高いMWに加えてラクチド対グリコリド比がより高くなると(他の2製剤で50:50であるのに対して75:25)、本発明の目的には遅すぎると考えられる放出プロファイルになった。ラクチド対グリコリド比は、微小粒子の分解率、従って放出率に影響を及ぼした。
【0067】
実施例2
2つの製剤(LVX_1.5およびLVX_1.6)はLVX_1.2に基づいて、1つの製剤(LVX_1.12)はLVX_1.3に基づいて調製し、理論薬物担持率およびg因子の変化をもたらした。両方のパラメータは、より高い薬物含有率を目指して増加する(理論薬物含有率1.5%から2.0および3.0%まで、ならびにg因子1から1.5まで)。
製剤LVX_1.5、LVX_1.6、およびLVX_1.12の理論薬物担持率(TDL)、PSD、およびin vitro放出率
【0068】
理論薬物担持率値およびg因子値の増加により実際の薬物含有率がより高くなった。これに加えて、両製剤(LVX_1.5およびLVX_1.6)の放出時間は、LVX_1.2製剤と比較してより長くなった。より詳細には、50%放出時点は、14日から(LVX_1.2)、20~22日へ(LVX_1.5およびLVX_1.6)移り、100%放出時点は、25日からそれぞれ35日へ移った。より長い放出へ移行する特徴が見られたことは、コア薬物担持率の増加によって正当化される。同様な初期の急峻な値が得られ、1.0~1.5の範囲で適用されるg値により、同様な、表面および表面下の薬物含有率対全薬物含有率の比が生じることが示唆された。
【0069】
低いMWの重合体PLGAについて見られたことと同様に、薬物担持率の増加は、高いMWに関してより長い放出プロファイルを導く。また薬物担持率の増加は、初期の急峻の増加とも相関関係にあるように思われる(LVX_1.3をLVX_1.12と比較する)。
【0070】
より低いMW(18kDa)およびおよそ55kDaのより高いMWのPLGAで行われた製剤試行から、放出時間がそれぞれ25から35日まで、または最大60日までに及ぶことが示される。また高いMWの重合体を有する製剤は、より低い初期の急峻も示す。
【国際調査報告】