(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/50 20100101AFI20240927BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20240927BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240927BHJP
C01B 35/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/50
H01M4/52
H01M10/054
C01B35/12 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521068
(86)(22)【出願日】2023-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2023109516
(87)【国際公開番号】W WO2024022431
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】202210905141.2
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522485888
【氏名又は名称】湖北万潤新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI WANRUN NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK02
5H029AL08
5H029AM07
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5H029CJ08
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5H029CJ28
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5H050AA02
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5H050BA15
5H050CA02
5H050CA05
5H050CB09
5H050GA01
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に関し、特にナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法、並びに応用に関する。本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、(A)水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガンとの混合物を研磨し、第1スラリーを得て噴霧乾燥し、焼成して第1焼成物を得るステップと、(B)前記第1焼成物、炭素源、バナジウム源、重炭酸ナトリウム及び水の混合物を研磨し、第2スラリーを得て噴霧乾燥、焼成、粉砕、篩い分け、鉄除去を順に行って前記ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップと、を含む。当該方法は、ステップが簡単であり、コストが低く、製造されたナトリウムイオン電池用正極材料が良好な導電性、高容量、高エネルギー密度などの特徴を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法であって、
(A)水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガンとの混合物を研磨し、第1スラリーを得て噴霧乾燥し、焼成して第1焼成物を得るステップと、
(B)前記第1焼成物、炭素源、バナジウム源、ナトリウム源及び水の混合物を研磨し、第2スラリーを得て噴霧乾燥、焼成、粉砕、篩い分け、鉄除去を順に行って前記ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップと、を含む、
ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項2】
ステップ(A)において、前記焼成は、窒素雰囲気において、400~500℃に昇温度して4~5h保温した後、650~700℃に昇温して3~5h保温し、その後、120℃以下まで冷却することを含み、
好ましくは、前記焼成の相対湿度は、3%~5%であり、
好ましくは、前記焼成は、窒素雰囲気において、1~3℃/minの速度で400~500℃に昇温して4~5h保温した後、1~3℃/minの速度で650~700℃に昇温して3~5h保温し、その後、1~3℃/minの速度で120℃以下まで冷却し、正極材料を得ることを含む、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項3】
ステップ(A)において、前記水酸化フェロマンガンにおけるFeとMnのモルの和と前記水素化ホウ素ナトリウムにおけるNaのモルとの比は、0.97~1.02:1であり、
好ましくは、前記第1スラリーの粒径は、200~300nmである、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項4】
ステップ(A)において、前記水酸化フェロマンガンの製造方法は、
マンガン塩、第一鉄塩、錯化剤、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物、アンモニア水及び硫酸チタニルを水相中で反応させて前記水酸化フェロマンガンを得るステップを含み、
好ましくは、反応温度は、50~60℃であり、反応時間は、15~150minである、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記マンガン塩におけるMnと前記第一鉄塩におけるFeとのモル比は、1:1.5~4であり、
好ましくは、前記マンガン塩におけるMnと前記第一鉄塩におけるFeとのモルの和と前記硫酸チタニルにおけるTiのモル数との比は、100:0.1~0.2であり、
好ましくは、前記マンガン塩、前記錯化剤、前記水酸化ナトリウム、前記ヒドラジン水和物及び前記アンモニア水におけるNH
3・H
2Oのモル比は、1:0.01~0.1:5.5~10.5:0.01~0.1:0.05~0.5であり、
好ましくは、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記第一鉄塩は、硫酸第一鉄、塩化第一鉄及び酢酸第一鉄のうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む、
請求項4に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項6】
ステップ(B)において、前記バナジウム源は、メタバナジン酸アンモニウムを含み、
好ましくは、前記ナトリウム源は、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム及び硝酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記炭素源は、ナノ親水性グラファイト及び/又はポリエチレングリコールを含み、
好ましくは、前記ナノ親水性グラファイトと前記ポリエチレングリコールの質量比は、1:5~10である、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項7】
ステップ(B)において、前記第1焼成物におけるナトリウム、前記バナジウム源におけるバナジウム及び前記ナトリウム源におけるナトリウムのモル比は、1:0.02~0.03:0.06~0.09であり、
好ましくは、前記炭素源と前記第1焼成物の質量比は、3~10:100であり、
好ましくは、前記第1焼成物、前記炭素源、前記バナジウム源及び前記ナトリウム源の合計質量と前記水の質量との比は、1:2~3である、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項8】
ステップ(B)において、前記焼成は、窒素雰囲気において、720~750℃に昇温して2~4h保温した後、80℃以下まで冷却することを含み、
好ましくは、前記焼成は、窒素雰囲気において、1~3℃/minの速度で720~750℃に昇温して2~4h保温した後、1~3℃/minの速度で80℃以下まで冷却し、
好ましくは、前記第2スラリーの粒径は、100~200nmであり、
好ましくは、前記噴霧乾燥後の第2スラリーの粒径は、5~10μmである、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料製造方法により製造される、
ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項10】
請求項9に記載のナトリウムイオン電池用正極材料を含む、
ナトリウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2022年7月29日に中国特許庁に提出された、出願番号が202210905141.2であり、名称が「ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法、並びに応用」である中国特許出願に対する優先権を主張し、その全ての内容が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に関し、特にナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の生産能力の爆発的な増加により、リチウム資源の価格が高騰しており、リチウム電池には、リチウムに加えて別のレアメタルであるコバルト(Co)も使用される。研究によると、現在の技術を使用して1台の純粋な電気自動車(EV)を製造するために、約20kgのリチウムと約40kgのコバルトを使用する必要がある。リチウムとコバルトのような希少なエネルギー源は、必然的に資源の減少と価格の上昇に直面する。ナトリウムは、リチウムに次いで軽い金属元素として、存在量が2.3~2.8%であり、リチウムより4~5桁多く、物理化学的性質がリチウムと類似し、したがって、ナトリウムイオン電池は、広く注目される。
【0004】
早くも1970年代から1980年代にかけて、「ポストリチウム電池」と呼ばれるナトリウムイオン電池は、提案され、リチウムイオン電池とほぼ同時に実用化されるが、リチウムイオン電池の商業化の成功につれて、ナトリウムイオン電池の研究は、徐々に軽視されるようになる。
【0005】
当時、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の材料格子構造に対する要件の違いを考慮することなく、リチウムイオン電池への適用に成功した電極材料をそのままナトリウムイオン電池に簡単に適用しただけであるため、ナトリウムイオン電池の効果が低い。近年、リチウムイオン電池の大規模応用によるリチウム資源の不足が徐々に認識され、また、ナトリウムイオン電池の特性から電極材料を十分に設計し、より良い効果を得るにつれて、ナトリウムイオン電池は、再び研究のホットスポットとなる。
【0006】
現在、層状酸化ナトリウム電池材料は、エネルギー密度が高いという利点があるが、サイクル性能が低い。プルシアンブルー構造のナトリウム電池材料は、エネルギー密度が低すぎ、構造が不安定であり、有毒で有害な原材料が存在する。ポリアニオン性ナトリウム電池材料は、構造が安定し、サイクル寿命が長いなどの利点があるが、一般的に容量が低く、エネルギー密度が低い。
【0007】
これに鑑みて本発明が提案される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1目的は、ステップが簡単であり、コストが低く、製造されたナトリウムイオン電池用正極材料が良好な導電性、高容量、高エネルギー密度などの特徴を有する、ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の第2目的は、上記ナトリウムイオン電池用正極材料製造方法により製造されたナトリウムイオン電池用正極材料を提供することにある。
【0010】
本発明の第3目的は、上記ナトリウムイオン電池用正極材料を含むナトリウムイオン電池を提供することにある。
【0011】
本発明の上記目的を達成するために、特に、以下の技術的解決手段が採用される:
本発明は、ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供する。前記方法は、
(A)水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガンとの混合物を研磨し、第1スラリーを得て噴霧乾燥し、焼成して第1焼成物を得るステップと、
(B)前記第1焼成物、炭素源、バナジウム源、重炭酸ナトリウム及び水の混合物を研磨し、第2スラリーを得て噴霧乾燥、焼成、粉砕、篩い分け、鉄除去を順に行って前記ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップと、を含む。
【0012】
本発明は、上記ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法により製造されたナトリウムイオン電池用正極材料をさらに提供する。
【0013】
本発明は、上記ナトリウムイオン電池用正極材料を含むナトリウムイオン電池をさらに提供する。
【発明の効果】
【0014】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、次のとおりである:
本発明によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法では、金属イオンのドーピング、バナジン酸ナトリウムと炭素の被覆により、イオン導電性と電子導電性を大幅に向上させることができ、ナトリウムイオン電池用正極材料の一次粒子径を適切に大きくすることができ、これにより、圧密密度、酸素及び水分に対する耐性が向上し、それによって製造されたナトリウムイオン電池用正極材料のエネルギー密度がリン酸鉄リチウム材料のエネルギー密度に近くなり、170wh/kgに達することができ、コストもリン酸鉄リチウム材料よりも低い。
【0015】
本発明のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法により製造されたナトリウムイオン電池用正極材料は、ポリアニオン性ナトリウム電池材料、即ちホウ酸マンガン鉄ナトリウムをコアとし、ポリアニオン性ナトリウム電池材料の表面にバナジン酸ナトリウムと炭素を同時に被覆することにより、一層の保護層が形成され、バナジン酸ナトリウムがコアのポリアニオン性ナトリウム電池を、酸素及び水分との接触を回避するように保護することができ、イオン導電性及び電子導電性、容量、サイクル性能の向上に役立ち、炭素が電子導電性をさらに向上させることができるため、ナトリウムイオン電池用正極材料は、優れた電気化学的性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明される図面は、本発明の幾つかの実施形態だけであり、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の実施例1で製造された水酸化フェロマンガン(II)のSEMイメージである。
【
図2】本発明の実施例1で製造された第1焼成物のSEMイメージである。
【
図3】本発明の実施例1で製造された噴霧材料のSEMイメージである。
【
図4】本発明の実施例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料のSEMイメージである。
【
図5】本発明の実施例1で製造されたトリウムイオン電池用正極材料の容量維持率とサイクル数との関係の概略図である。
【
図6】本発明の実施例1で製造されたトリウムイオン電池用正極材料の充放電曲線グラフである。
【
図7】本発明の実施例1で製造されたトリウムイオン電池用正極材料の残存容量50%における直流抵抗の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面と具体的な実施形態を組み合わせながら本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、当業者であれば、以下で説明される実施例が本発明の実施例の一部だけであるが、全ての実施例ではなく、本発明を説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解すべきである。
【0018】
本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要せずに取得した全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。実施例に特定の条件が示されていない場合、従来の条件又は製造業者によって推奨される条件に従う。メーカーが示されていない試薬又は器具は、全て市場から入手できる従来の製品である。
【0019】
以下、本発明の実施例のナトリウムイオン電池用正極材料その製造方法、並びに応用について、具体的に説明する。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態では、ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法が提供される。前記方法は、
(A)水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガンとの混合物を研磨し、第1スラリーを得て噴霧乾燥し、焼成して第1焼成物を得るステップと、
(B)第1焼成物、炭素源、バナジウム源、ナトリウム源及び水の混合物を研磨し、第2スラリーを得て噴霧乾燥、焼成、粉砕、篩い分け、鉄除去を順に行ってナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップと、を含む。
【0021】
本発明によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法では、水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガン(II)を使用して第1焼成物、即ちホウ酸マンガン鉄ナトリウム(Na(Fe,Mn)BO3)を製造し、水素化ホウ素ナトリウムをホウ素源及びナトリウム源とし、水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として使用することにより、
マンガンイオン及び第一鉄イオンの酸化を回避することができ、高純度のホウ酸マンガン鉄ナトリウムを得ることができ、フェロマンガンの均一なドーピングを達成することができ、次に、製造されたホウ酸マンガン鉄ナトリウムを炭素源、バナジウム源及びナトリウム源などの成分と混合し、研磨、噴霧乾燥、焼成した後、ホウ酸マンガン鉄ナトリウムの表面にバナジン酸ナトリウムと炭素を同時に被覆することにより、一層の保護層が形成され、ポリアニオン性ナトリウム電池材料、即ちホウ酸マンガン鉄ナトリウムの表面に被覆されたバナジン酸ナトリウムがコアのポリアニオン性ナトリウム電池を、酸素及び水分との接触を回避するように保護することができ、同時に、バナジン酸ナトリウムが良好なイオン導電性及び電子導電性、高容量、サイクル性能が優れるという特徴を有し、ポリアニオン性ナトリウム電池材料の表面に被覆された炭素が電子導電性をさらに向上させることができ、これにより、製造されたナトリウムイオン電池用正極材料は、優れた電気化学的性能を有する。
【0022】
本発明によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法では、マンガンのドーピング、バナジン酸ナトリウムと炭素の被覆により、電圧プラットフォーム、イオン導電性及び電子導電性を向上させることができ、ナトリウムイオン電池用正極材料の一次粒子径を適切に大きくすることができ、これにより、圧密密度が向上し、さらに酸素及び水分に対する耐性が向上し、それによって製造されたナトリウムイオン電池用正極材料は、高容量、高エネルギー密度の特徴を有し、そのエネルギー密度がリン酸鉄リチウム材料のエネルギー密度に近く、コストもリン酸鉄リチウム材料よりも大幅に削減される。
【0023】
各種原材料の現在の価格に基づいて計算すると、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料の原料費、エネルギー消費量、設備減価償却費及び人件費が合計約39500元/トンであるが、リン酸鉄リチウム材料の原料費、エネルギー消費量、設備減価償却費及び人件費が合計約132000元/トンであり、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料の製造コストは、リン酸鉄リチウム材料の製造コストよりも大幅に低い。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(A)において、焼成は、窒素雰囲気において、400~500℃に昇温して4~5h保温した後、650~700℃に昇温して3~5h保温し、その後、120℃以下まで冷却することを含み、好ましくは、焼成の相対湿度は、3%~5%である。
【0025】
本発明の幾つかの具体的な実施形態では、ステップ(A)において、焼成は、窒素雰囲気において、1~3℃/minの速度で400~500℃に昇温して4~5h保温した後、1~3℃/minの速度で650~700℃に昇温して3~5h保温し、その後、1~3℃/minの速度で120℃以下まで冷却し、仕上げることを含む。
【0026】
本発明のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法では、上記焼成プロセスにおいて、一定の湿度を有する窒素を保護ガス及び反応剤として使用し、水素化ホウ素ナトリウムと反応して還元ガスを得ることができ、これにより、マンガンイオン及び第一鉄イオンは、酸化されないように保護される。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(A)において、水素化ホウ素ナトリウムと水酸化フェロマンガンとの混合物を研磨し、第1スラリーを得る。好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム水溶液の濃度は、1~1.5mol/Lである。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(A)において、水酸化フェロマンガン(II)におけるFeとMnのモルの和と水素化ホウ素ナトリウムにおけるNaのモルとの比は、0.97~1.02:1であり、典型的であるが限定的ではなく、例えば、水酸化フェロマンガン(II)におけるFeとMnのモルの和と水素化ホウ素ナトリウムにおけるNaのモルとの比は、0.97:1、0.98:1、0.99:1、1:1、1.01:1又は1.02:1などである。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(A)において、第1スラリーの粒径は、200~300nmであり、典型的であるが限定的ではなく、例えば、ステップ(A)において、第1スラリーの粒径は、200nm、220nm、240nm、260nm、280nm又は300nmなどである。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(A)において、水酸化フェロマンガン(II)の製造方法は、
マンガン塩、第一鉄塩、錯化剤、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物、アンモニア水及び硫酸チタニルを水相中で反応させて水酸化第二鉄マンガン(II)を得るステップを含む。
【0031】
本発明は、共沈により、フェロマンガンが均一に共沈した水酸化フェロマンガンを製造し、次に水素化ホウ素ナトリウムと反応させてフェロマンガンの均一なドーピングを達成し、特定の箇所にホウ酸マンガンナトリウムの濃縮物が別に存在して容量の低減を引き起こすことを回避することができる。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガン(II)の製造方法では、反応温度は、50~60℃であり、反応時間は、15~150minである。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガンの製造方法において、マンガン塩におけるMnと第一鉄塩におけるFeとのモル比は、1:1.5~4であり、典型的であるが限定的ではないが、例えば、マンガン塩におけるMnと第一鉄塩におけるFeとのモル比は、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5又は1:4などである。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガンの製造方法において、マンガン塩におけるMnと第一鉄塩におけるFeとのモルの和と硫酸チタニルにおけるTiのモル数との比は、100:0.1~0.2である。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガンの製造方法において、マンガン塩、錯化剤、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物及びアンモニア水におけるNH3・H2Oのモル比は、1:0.01~0.1:5.5~10.5:0.01~0.1:0.05~0.5である。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガンの製造方法において、マンガン塩、第一鉄塩、錯化剤、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物、アンモニア水及び酸チタニルの質量の和と水の質量との比は、10:1.5~3である。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、水酸化フェロマンガンの製造方法において、硫酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1つを含み、第一鉄塩は、硫酸第一鉄、塩化第一鉄及び酢酸第一鉄のうちの少なくとも1つを含み、錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
本発明の幾つかの具体的な実施形態では、水酸化フェロマンガン(II)の製造方法では、アンモニア水の濃度は、5~8mol/Lである。
【0039】
本発明の幾つかの具体的な実施形態では、水酸化フェロマンガン(II)の製造方法は、
マンガン塩、第一鉄塩、錯化剤、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物、アンモニア水、硫酸チタニル及び水の混合溶液を反応釜にゆっくりと加え、混合溶液のpHが9.5~10であり、添加中に温度を50℃に制御し、添加が完了した後、50~60℃の条件で反応を15~30min続け、反応中に混合溶液の遊離アンモニアの濃度を8~12g/Lに制御するステップを含む。反応中、反応が発生し、アンモニア水と金属イオンが沈殿し、遊離アンモニアではないアンモニウムラジカルが得られ、同時に、アンモニアの一部も揮発するため、アンモニア水の添加量を絶え間なく調整して、溶液中の遊離アンモニアを調整する必要がある。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、バナジウム源は、メタバナジン酸アンモニウムを含む。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、ナトリウム源は、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム及び硝酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、ナトリウム源は、重炭酸ナトリウムを含む。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、炭素源は、ナノ親水性グラファイト及び/又はポリエチレングリコールを含み、好ましくは、ナノ親水性グラファイトとポリエチレングリコールの質量比は、1:5~10である。
【0043】
本発明によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法では、ステップ(B)において、焼成前、無機炭素源を導入することにより、被覆層の導電性を大幅に向上させることができる。従来の有機炭素源を熱分解して得られた炭素は、黒鉛化度が非常に低く、黒鉛化炭素に比べて導電性が低い無定形炭素であるが、本発明では、無機炭素源を直接導入し、同時にポリエチレングリコールを添加して分散を達成し、同時に二次焼成プロセスでポリエチレングリコールも熱分解して炭素を得て、無機炭素源と有機炭素源の複合化を実現し、有機炭素源が1つの炭素ネットワークを形成して無機炭素源と結合し、それによって被覆層における無機炭素源の被覆の不均一の問題を解決する。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、第1焼成物におけるナトリウム、バナジウム源におけるバナジウム及びナトリウム源におけるナトリウムのモル比は、1:0.02~0.03:0.06~0.09である。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、炭素源と第1焼成物の質量比は、3~10:100であり、好ましくは、炭素源と第1焼成物の質量比は、5~8:100である。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、第1焼成物、炭素源、バナジウム源及びナトリウム源の合計質量と水の質量の比は、1:2~3である。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、焼成は、窒素雰囲気において、720~750℃に昇温して2~4h保温した後、80℃以下まで冷却することを含み、好ましくは、ステップ(B)において、焼成は、窒素雰囲気において1~3℃/minの速度で720~750℃に昇温して2~4h保温した後、1~3℃/minの速度で80℃まで冷却することを含む。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、第2スラリーの粒径は、100~200nmである。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、噴霧乾燥後の第2スラリーの粒径は、5~10μmであり、好ましくは、噴霧乾燥には、加圧噴霧乾燥機が使用される。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、粉砕は、気流粉砕機による粉砕を含み、好ましくは、噴霧乾燥後の第2スラリーの粒径が0.5~2μmになるまで粉砕し、より好ましくは、粉砕温度は、120~150℃であり、粉砕圧力は、0.25~0.5MPaであり、粉砕は、窒素雰囲気における粉砕を含む。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、篩い分けは、100~200メッシュの超音波振動篩による篩い分けを含む。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態では、ステップ(B)において、鉄の除去は、電磁式鉄除去装置を用いて、粉砕後の第2スラリーにおける磁性物質≦1ppmまで鉄を除去することを含む。
【0053】
本発明の幾つかの実施形態では、上記ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法により製造されたナトリウムイオン電池用正極材料も提供される。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態では、ナトリウムイオン電池正極材の一次粒子径は、150~250nmである。
【0055】
本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、層状酸化物バナジン酸ナトリウムと炭素を表面とし、ポリアニオン性ナトリウム電池材料をコアとし、ポリアニオン性ナトリウム電池材料の表面にバナジン酸ナトリウムと炭素を被覆して一層の保護層を形成するように構成される。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態では、上記ナトリウムイオン電池用正極材料を含むナトリウムイオン電池も提供される。
【0057】
実施例1
本実施例によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法は、以下のステップを含む:
(A)濃度1.3mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液と水酸化フェロマンガン(II)とを混合し、サンドミルに加えてサンディングを行い、粒径252nmの第1スラリーを得て、第1スラリーを噴霧乾燥した後、相対湿度4.1%の窒素中で、まず3℃/minの速度で450℃に昇温して5h保温し、次に2℃/minの速度で680℃に昇温して4h保温し、次に3℃/minの速度で120℃に冷却し、仕上げて第1焼成物を得る。
【0058】
ここで、水酸化フェロマンガン(II)におけるMnとFeのモルの和と水素化ホウ素ナトリウムのモルとの比は、1.01:1である。
【0059】
水酸化フェロマンガン(II)の製造方法は、硫酸マンガン、硫酸第一鉄、EDTA、水酸化ナトリウム、アンモニア水(濃度:6mol/L)、ヒドラジン水和物、硫酸チタニル及び脱イオン水の混合物を反応釜に加え、硫酸マンガン、硫酸第一鉄、EDTA、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物及びアンモニア水におけるNH3・H2Oのモル比が1:2.52:0.05:7.58:0.04:0.18であり、硫酸マンガンにおけるMnと硫酸第一鉄におけるFeのモルの和と硫酸チタニルにおけるTiのモルとの比が100:0.2であり、添加時間が95minであり、添加中に混合溶液のpHが9.76であり、撹拌速度が500r/minであり、温度が55℃であり、添加が完了した後、55℃で25min反応し続けて反応液を得て、反応中に溶液中の遊離アンモニアの濃度を10g/Lに制御するステップと、反応液を濾過して濾過ケーキを得て、0.015mol/Lのヒドラジン水和物で洗浄し、真空オーブンに入れて乾燥して水酸化フェロマンガンン(II)を得るステップとを含む。
【0060】
(B)第一焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム及び水を混合してサンドミルに加えて、サンディングを行い、粒径183nmの第2スラリーを得て、第2スラリーを加圧噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、粒径8.7μmの噴霧材料を得て、窒素雰囲気において、まず、噴霧材料を3℃/minの速度で735℃に昇温して3h保温し、次に3℃/minの速度で80℃に冷却し、仕上げて第2焼成物を得て、第2焼成物を、圧力0.35MPaの窒素雰囲気において、145℃で第2焼成物の粒径が1.2μmになるまで粉砕し、次に150メッシュの超音波振動篩を用いて、さらに電磁式鉄除去装置を用い、第2焼成物における磁性物質が0.21ppmになるまで鉄を除去し、真空包装してナトリウムイオン電池用正極材料を得る。
【0061】
ここで、炭素源は、質量比1:7のナノ親水性グラファイトとポリエチレングリコールであり、第1焼成物におけるナトリウム、メタバナジン酸アンモニウムにおけるバナジウム及び重炭酸ナトリウムのモル比は、1:0.025:0.08であり、炭素源と第1焼成物の質量比は、6:100であり、第1焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム及び重炭酸ナトリウムの合計質量と水の質量との比は、1:2.5である。
【0062】
実施例2
本実施例のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法は、以下のステップを含む:
(A)濃度1mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液と水酸化フェロマンガン(II)とを混合してサンドミルに加えて、サンディングを行い、粒径200nmの第1スラリーを得て、第1スラリーを噴霧乾燥した後、相対湿度3%の窒素中で、まず、1.5℃/minの速度で400℃に昇温して5h保温し、次に1℃/minの速度で650℃に昇温して5h保温し、次に3℃/minの速度で120℃に冷却し、仕上げて第1焼成物を得る。
【0063】
ここで、水酸化フェロマンガン(II)におけるMnとFeのモルの和と水素化ホウ素ナトリウムのモルとの比は、0.97:1である。
【0064】
水酸化フェロマンガン(II)の製造方法は、塩化マンガン、硫酸第一鉄、EDTA、水酸化ナトリウム、アンモニア水(濃度:5mol/L)、ヒドラジン水和物、硫酸チタニル及び脱イオン水の混合溶液を反応釜に加えて、塩化マンガン、硫酸第一鉄、EDTA、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物及びアンモニア水におけるNH3・H2Oのモル比が1:1.5:0.01:5.5:0.01:0.05であり、塩化マンガンにおけるMnと硫酸第一鉄におけるFeのモルの和と硫酸チタニルにおけるTiのモルとの比が100:0.1であり、添加時間が60minであり、添加中に混合溶液のpHが9.6であり、撹拌速度が600r/minであり、温度が60℃であり、添加が完了した後、60℃で30min反応し続けて反応液を得て、反応中に溶液中の遊離アンモニアの濃度を10g/Lに制御するステップと、反応液を濾過して濾過ケーキを得て、0.01mol/Lのヒドラジン水和物で洗浄し、真空オーブンに入れて乾燥して水酸化フェロマンガン(II)を得るステップとを含む。
【0065】
(B)第一焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム及び水を混合してサンドミルに加えて、サンディングを行い、粒径100nmの第2スラリーを得て、第2スラリーを加圧噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、粒径5μmの噴霧材料を得て、窒素雰囲気中で、まず、噴霧材料を3℃/minの速度で720℃に昇温して2h保温し、次に3℃/minの速度で80℃に冷却し、仕上げて第2焼成物を得て、第2焼成物を、圧力0.35MPaの窒素雰囲気において、145℃で第2焼成物の粒径が1.1μmになるまで粉砕し、次に150メッシュの超音波振動篩を用い、さらに電磁式鉄除去装置を用い、第2焼成物における磁気物質が0.3ppmになるまで鉄を除去し、真空包装してナトリウムイオン電池用正極材料を得る。
【0066】
ここで、炭素源は、質量比1:5のナノ親水性グラファイトとポリエチレングリコールであり、第1焼成物におけるナトリウム、メタバナジン酸アンモニウムにおけるバナジウム及び重炭酸ナトリウムのモル比は、1:0.02:0.06であり、炭素源と第1焼成物の質量比は、3:100であり、第1焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム及び重炭酸ナトリウムの合計質量と水の質量との比は、1:2である。
【0067】
実施例3
本実施例のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法は、以下のステップを含む:
(A)濃度1.5mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液と水酸化フェロマンガン(II)とを混合してサンドミルに加えて、サンディングを行い、粒径300nmの第1スラリーを得て、第1スラリーを噴霧乾燥した後、相対湿度5%の窒素中で、まず、3℃/minの速度で500℃に昇温して5h保温し、次に1℃/minの速度で700℃に昇温して4h保温し、次に1℃/minの速度で120℃に冷却し、仕上げて第1焼成物を得る。
【0068】
ここで、水酸化フェロマンガン(II)におけるMnとFeのモルの和と水素化ホウ素ナトリウムのモルとの比は、1.02:1である。
【0069】
水酸化フェロマンガン(II)の製造方法は、酢酸マンガン、塩化第一鉄、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、アンモニア水(濃度:8mol/L)、ヒドラジン水和物、硫酸チタニル及び脱イオン水の混合物を反応釜に加え、酢酸マンガン、塩化第一鉄、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、ヒドラジン水和物及びアンモニア水におけるNH3・H2Oのモル比が1:4:0.1:10.5:0.1:0.5であり、塩化マンガンにおけるMnと硫酸第一鉄におけるFeのモルの和と硫酸チタニルにおけるTiのモルとの比が100:0.2であり、添加時間が120minであり、添加中に混合溶液のpHが9.9であり、撹拌速度が550r/minであり、温度が50℃であり、添加が完了した後、50℃で25min反応し続けて反応液を得て、反応中に溶液中の遊離アンモニアの濃度を10g/Lに制御するステップと、反応液を濾過して濾過ケーキを得て、0.015mol/Lのヒドラジン水和物で洗浄し、真空オーブンに入れて乾燥して水酸化フェロマンガン(II)を得るステップとを含む。
【0070】
(B)第一焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム及び水を混合してサンドミルに加えて、サンディングを行い、粒径200nmの第2スラリーを得て、第2スラリーを加圧噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、粒径10μmの噴霧材料を得て、窒素雰囲気中で、まず、噴霧材料を3℃/minの速度で750℃に昇温して3h保温し、次に3℃/minの速度で80℃に冷却し、仕上げて第2焼成物を得て、第2焼成物を、圧力0.35MPaの窒素雰囲気において、145℃で第2焼成物の粒径が1.3μmになるまで粉砕し、次に150メッシュの超音波振動篩を用い、さらに電磁式鉄除去装置を用い、第2焼成物における磁性物質が0.2ppmになるまで鉄を除去し、真空包装してナトリウムイオン電池用正極材料を得る。
【0071】
ここで、炭素源は、質量比1:10のナノ親水性グラファイトとポリエチレングリコールであり、第1焼成物におけるナトリウム、メタバナジン酸アンモニウムにおけるバナジウム及び重炭酸ナトリウムのモル比は、1:0.03:0.09であり、炭素源と第1焼成物の質量比は、10:100であり、第1焼成物、炭素源、メタバナジン酸アンモニウム及び重炭酸ナトリウムの合計質量と水の質量との比は、1:3である。
【0072】
比較例1
この比較例によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法は、実施例1を参照すると、ステップ(B)においてメタバナジン酸アンモニウムが添加されない点のみが異なる。
【0073】
試験例1
実施例1で製造された水酸化フェロマンガン(II)に対して走査試験を行い、その結果を
図1に示す。
【0074】
図1から分かるように、本発明で製造された水酸化フェロマンガン(II)は、球状であり、比表面積が大きく、一次粒子径が小さく、反応性が高い綿状の凝集体である。
【0075】
実施例1で製造された水酸化フェロマンガン(II)の性質に対して試験を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
試験例2
実施例1で製造された第1焼成物に対して走査試験を行い、その結果を
図2に示す。実施例1で製造された第1焼成物の性質に対して行い、その結果を表2に示す。圧密密度は、3T圧力での粉末製品の密度である。
【0078】
【0079】
試験例3
実施例1で製造された噴霧材料に対して走査試験を行い、その結果を
図3に示す。実施例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料に対して走査試験を行い、その結果を
図4に示す。実施例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料の性質に対して試験を行い、その結果を表3に示す。圧密密度は、3T圧力での粉末製品の密度である。
【0080】
【0081】
実施例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料と比較例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料を、それぞれ炭素被覆アルミニウム箔を集電体として使用して製造し、同時に六フッ化リン酸ナトリウムを電解質として使用し、ハードカーボンを負極として使用し、3Ahのソフトパック電池を製造する。サイクル性能試験を25℃で、1C倍率で行う。
【0082】
図5は実施例1で製造されたトリウムイオン電池用正極材料の容量維持率とサイクル数との関係の概略図である。
図6は実施例1で製造されたトリウムイオン電池用正極材料の充放電曲線グラフであり、A1とAが0.2C倍率での充放電曲線であり、B1とBが1C倍率での充放電曲線である。次に、50%SOC(残存容量50%)における直流抵抗(DCR)を検出し、放電倍率が2Cであり、電池が3Ahであり、Aが1回目に作成した電池に対して行われた2つの並列実験であり、Dが同じ材料で2回目に作成した電池に対して行われた2つの並列実験であり、それらの結果は、
図7に示される。
【0083】
図5から分かるように、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、サイクル性能が優れ、1C条件での500サイクル後の容量維持率が≧95%である。
図6から分かるように、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、1Cで約118mAh/gの高容量を有するが、比較例1のナトリウムイオン電池用正極材料は、1C条件での500サイクル後の容量維持率が91%に過ぎず、1Cでの放電容量が110.5mAh/gに過ぎない。
【0084】
図7から分かるように、DCRが全て16mΩと低い。
【0085】
表3及び
図5-7から分かるように、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、圧密密度が2.37g/mLと高く、予想される電極シートは、使用されると圧密密度が2.45g/mL以上に達することができる。また、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、サイクル性能が優れ、容量が大きく、電圧プラットフォームが高い。同時に、計算によれば、本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、コストがリン酸鉄リチウムのコストの30%未満に過ぎず、コストパフォーマンスが非常に優れ、二輪車、電気バス、航続距離が短い電気自動車などの分野に適用できる。
【0086】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものだけであり、それを限定するものではない。上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記の各実施例に記載される技術的解決手段を変更し、又はその中の一部又は全ての技術的特徴に対して同等入れ替えを行うことができ、これらの変更又は入れ替えが対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の各技術的解決手段の範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
【国際調査報告】