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特表2024-536427静電気散逸性ポリアミド組成物及びそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】静電気散逸性ポリアミド組成物及びそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/40
C08K7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521069
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2021122523
(87)【国際公開番号】W WO2023056581
(87)【国際公開日】2023-04-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, ジン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, リンジー
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナン, ヴィジェイ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB054
4J002CL012
4J002CL031
4J002CL033
4J002DA016
4J002DA039
4J002DL007
4J002EJ068
4J002FA017
4J002FA046
4J002FD017
4J002FD069
4J002FD078
4J002FD116
4J002FD174
4J002GQ00
(57)【要約】
(A)(A1)60~90重量パーセント(重量%)の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、(A2)10~40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、(A3)0~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマーを含む20~69重量%のポリアミド混合物(ここで、(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの重量%は、(A1)、(A2)及び(A3)の総重量を基準とする)と;(B)1~20重量%の導電性材料と;(C)30~55重量%のガラスフレークと;(D)0~10重量%の添加剤とを含む、ポリアミド組成物であって、(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とするポリアミド組成物。特に優れた機械的特性及び表面特性を有し、厳しい寸法公差の及び最適機能性のためのESD特性を必要とする用途に好適であるそのようなポリアミド組成物を含む物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、
(A)
(A1)60~90重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
(A2)10~40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、
(A3)0~30重量%の、前記脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含む20~69重量%のポリアミド混合物
(ここで、前記ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの各重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする)と;
(B)1~20重量%の導電性材料と;
(C)30~55重量%のガラスフレークと;
(D)0~10重量%の添加剤と
を含み、
A、B、C及びDのそれぞれの重量%は、前記アミド組成物の総重量を基準とするポリアミド組成物。
【請求項2】
前記半芳香族ポリアミド(A1)が、PA10T/10I、PA10T、PA6T/6I、PA6T、PA9T、PA12T、PA10T/66、PA6T/66、PA6,I、PA12I、PAMXD6、PAPXD10、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリアミド;好ましくはPA6T/6I、PA6T、PA9T、PA12T、PA10T/66、PA6T/66、PA6,I、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリフタルアミド;最も好ましくはPA6T/66を含むか、又はそれから本質的になるポリフタルアミドを含むか、又はそれらから本質的になる、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記半芳香族ポリアミド(A1)が、ポリフタルアミドを含むか、又はそれから本質的になる、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミドポリマー(A2)が、PA12を含むか、又はそれから本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる前記脂肪族ポリアミドポリマー(A3)を含み、前記脂肪族ポリアミドポリマー(A3)が、PA610、PA612、PA1010、PA510、PA66、PA1012、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され;好ましくはPA610、PA612、PA510、PA66及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され;より好ましくはPA610、PA510、PA66、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され;最も好ましくは前記脂肪族ポリアミドポリマー(A3)がPA610である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記ガラスフレーク含有量が、前記ポリアミド組成物の総重量を基準として、35重量%~55重量%、又は35重量%~50重量%、又は40重量%~50重量%、又は45重量%~50重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記ガラスフレーク(C)とは異なる強化剤、強靭化剤、可塑剤、光安定剤、紫外線安定剤、熱安定剤、顔料、着色剤、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤、及び2種以上のそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
前記導電性材料が、2・10-2Ω.cm未満、又は最大でも1・10-2Ω.cm、又は最大でも5・10-3Ω.cm、又は最大でも3・10-3Ω.cm、又は最大でも1・10-3Ω.cmの、ASTM D257に従って測定される、体積抵抗率、好ましくは1・10-4Ω.cm~20・10-4Ω.Cm以下の、ASTM D257に従って測定される、体積抵抗率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記導電性材料(B)が、単独で又は組み合わせて、繊維、ミルド又はチョップド繊維、フレーク、粉末、微小球、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノ繊維、ナノフレーク、ナノロープ、ナノリボン、ナノフィブリル、ナノニードル、ナノシート、ナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、ナノプレートレット、ナノドット、デンドライト、ディスク又は任意の他の三次元体からなる群から選択される少なくとも1つの三次元構造を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
前記導電性材料(B)が、炭素ベースの繊維、例えば連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び/又は粒状のミルド/チョップド炭素繊維など、カーボンナノチューブ(CNT)、例えば単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)など、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノオーム、導電性カーボンブラック粉末、グラファイトフィブリル、グラファイトナノプレートレット、ナノドット、グラフェン、及び2つ以上のそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素ベースの構造物を含み;好ましくは、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、粒状のミルド/チョップド炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、例えば単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)など、カーボンブラック粉末、並びにそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素ベースの構造物を含み;より好ましくは、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、粒状のミルド/チョップド炭素繊維、カーボンブラック粉末、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素ベースの構造物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)が、
- 25~55重量%の前記ポリアミド混合物(A);
- 5~15重量%の前記導電性材料(B);
- 40~55重量%の前記ガラスフレーク(C);及び
- 0~10重量%の1種以上の添加剤(D);
又は
- 30~50重量%の前記ポリアミド混合物(A);
- 5~15重量%の前記導電性材料(B);
- 45~50重量%の前記ガラスフレーク(C);及び
- 0~10重量%の1種以上の添加剤(D)
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド混合物(A)が、
A1)85~90重量%のPA6T/66、
A2)10~15重量%のPA12
(ここで、前記ポリアミド(A1)及び(A2)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)及び(A2)の組合せの総重量を基準とする)
又は
A1)60~65重量%のPA6T/66、
A2)10~15重量%のPA12、
A3)20~30重量%のPA610
(ここで、前記ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする)
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
前記ポリアミド混合物(A)と、前記導電性材料(B)と、前記ガラスフレーク(C)と、いずれかの任意選択的な添加剤(D)とを溶融ブレンドすることを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を製造するための方法。
【請求項14】
1・10+5Ω.cm~5・10+12Ω.cm以下の、ASTM D257に従って測定される、体積抵抗率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む成形品。
【請求項15】
1・10+5Ω.cm~5・10+12Ω.cm以下の、ASTM D257に従って測定される、体積抵抗率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む携帯電子機器部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
【0002】
本発明は、静電気散逸性ポリアミド組成物に、及びまた、そのようなポリマー組成物を含む物品、例えば成形品、特に電子機器部品に関する。
【背景技術】
【0003】
厳しい寸法公差の成形部品を使用するエレクトロニクス用途において、高い耐熱性を有する液晶ポリマー(LCP)を使用する試みが行われてきた。LCPの機械的特性を改善するために、タルク及びミルドガラスなどの充填材が、引張強度及び弾性率を改善するために添加され得る。しかしながら、そのような材料を寸法公差が小さい成形部品に使用することを試みる場合に依然として問題に直面する。例えば、機械的特性は、多くの場合、不十分であるか又は一様ではなく、それは、成形部品において不十分なファイリング及び寸法安定性の欠如につながる。さらに、機械的特性を改善するための充填材の量の増加は、粗すぎる表面をもたらし得、それは、その意図される用途における成形部品の性能の誤りをもたらし得る。
【0004】
したがって、小さい寸法公差の成形部品に容易に用いることができる、及びその上さらに良好な機械的特性及び表面特性を達成するLCPを含有しないポリマー組成物が必要とされている。
【0005】
半結晶性ポリアミドは、良好な機械的特性及び加工性を有し、それらを、良好な機械的性能を必要とする様々な用途に好適なものにする。ポリアミド成形品は、エンジニアリング分野において、特に電子部品向けに並びに自動車分野の構成部品に広く使用されている。減量した、しかし高い機械的強度を有する成形品に対する需要のために、これらの物品は、一般に充填材、特に繊維状充填材によって強化されている。特にポリフタルアミドは、それらの高いガラス転移温度Tg及び高い融解温度Tmに由来する、高温性能で評価されている。
【0006】
しかしながら、半結晶性ポリアミドは、結晶化の結果として異方性の成形収縮を示し、ガラス繊維のような繊維状の強化充填材は、この影響を増幅する。加えて、線熱膨張係数「CLTE」、又は吸湿による膨張などの、寸法安定性も異方性であり、半結晶性ポリマーモルフォロジ及び強化充填材の高いアスペクト比に起因する。
【0007】
ポリアミドは、ほとんどのプラスチック樹脂と同様に、絶縁材料である。実際に、プラスチック樹脂は、それらが典型的には電流を容易には通しにくく、他の公知の絶縁材料と比較して一般的にかなり安価であるので、電気絶縁材料としての使用を検討されることが多い。多くの公知のプラスチックは、少なくともある程度の電気絶縁有効性を提供するのに十分に耐久性があり、且つ耐熱性であるが、多くのそのようなプラスチックは、材料の表面上の静電荷の蓄積のために問題がある。
【0008】
そのような表面電荷蓄積は、様々な理由から望ましくないことがある。そのような材料は、非常に急速に放電することがあり、これは、環境によっては、電子部品に損傷し得る、又は火災若しくは爆発を引き起こし得る。突然の静電気放電はまた、材料を使用する人にとって迷惑なものであり得る。
【0009】
突然の静電気放電が問題ではない場合であっても、ちりは典型的には静電荷を帯びた材料に引き寄せられ、材料上に蓄積するであろう。さらに、静電荷は敏感な電子部品又は電子機器等に干渉し得る。
【0010】
抵抗率は、表面抵抗率及び体積抵抗率を含むものとして定義することができる。体積抵抗率が適切な範囲内にある場合、電荷が(一般に表面に沿って)それを通って散逸することができる代替経路が提供される。実際に、表面抵抗率は、典型的には、静電気散逸(「ESD」)ポリマー材料についての主な焦点である。
【0011】
表面抵抗率は、室温で材料の表面において測定される電気抵抗測定値(典型的にはオーム毎平方、すなわち「Ω/sq」単位で測定される)である。表面抵抗率が約10Ω/sq以下である場合、組成物の表面は非常に少ない絶縁能力を有し、一般に導電性であると見なされる。そのような組成物は、ブリードオフの速度が高すぎるので、一般的には不十分な静電気散逸ポリマー材料である。
【0012】
表面抵抗率が1012Ω/sqよりも大きい場合、組成物の表面は一般に絶縁体であると見なされる。特定の用途において、そのような組成物はまた、表面が静電荷を散逸させるのに必要な必要量の導電性を持たないので、不十分な静電気散逸材料である。典型的には、表面抵抗率が約10~1012Ω/sqである場合、表面に接触するいかなる電荷も容易に散逸するか又は「減衰」する。表面抵抗率及び体積抵抗率の評価に関するさらなる情報は、米国標準試験法D257の中で見いだすことができる。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、静電気散逸(ESD)特性及び好適な寸法安定性、並びに改善された機械的特性を有する、ポリアミドベースの物品、好ましくは成形品を製造するために使用されるポリアミド組成物を提供することである。特定の実施形態は、さらに、高い光沢などの、改善された表面特性を有するポリアミドベースの成形品を提供する。
【0014】
特性のこの組合せは、そのような物品を、電子用途に好適な、特に、厳しい寸法公差、滑らかな表面の及び最適な機能のためのESD特性を必要とする電子機器部品として好適なものにする。
【0015】
本発明は、非常に厳しい寸法公差を有するポリアミドベースの成形品(例えば、電子機器の部品など)における異方性成形収縮及び寸法変化(低い反り)に関連した様々な問題を解決する。「反り」とは、成形中に樹脂の異方性収縮によって引き起こされ得る1つ以上の方向での成形部品の変形を意味する。
【0016】
本発明はまた、その動作中に発生する静電荷を蓄積するポリアミドベースの物品又は機器における不十分な静電気散逸という問題を、これらの静電荷のゆっくりとした散逸を容易にすることによって解決する。導電性材料なしで、ポリアミドベースの物品又は機器は絶縁性であり、電荷散逸は起こらないであろう。他方で、導電性材料が多すぎると、ポリアミドベースの物品又は機器は、低すぎる抵抗率(高すぎる導電性)を有し、それによって、物品又は機器の接地をもたらし、それは、その性能を阻害する可能性がある。
【0017】
いつくかの実施形態において、本発明はまた、高い充填材含有量を有するポリマー組成物から製造された成形品における、低い光沢などの、表面粗さに関連した問題を解決する。
【0018】
本発明の第1の態様は、ポリアミド混合物と、導電性材料とガラスフレークとを含むポリアミド組成物を指向する。ポリアミド組成物は、ガラスフレークとは異なる強化剤、熱安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、UV安定剤、染料、顔料、着色剤等などの任意選択的な1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0019】
いくつかの特定の実施形態において、ポリアミド組成物は、
A)
A1)60~90重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
A2)10~40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、
A3)0~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含む35~50重量パーセント(重量%)のポリアミド混合物であって、
ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの各重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする、ポリアミド混合物と;
B)1~20重量%の導電性材料と;
C)30~55重量%のガラスフレークと;
D)0~10重量%の添加剤と
を含み、
ここで、A、B、C及びDのそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0020】
本発明の第2の態様は、本発明によるポリアミド組成物を製造するための方法であって、前記方法は、ポリアミド混合物(A)と、導電性材料(B)と、ガラスフレーク(C)と、いずれかの任意選択的な添加剤(D)とを溶融ブレンドすることを含む方法に関する。
【0021】
本発明の第3の態様は、本発明によるポリアミド組成物を含む成形品に関する。
【0022】
本発明の第4の態様は、本発明によるポリアミド組成物を含む電子機器部品に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、ポリアミド混合物(A)と、ガラスフレーク(C)と、任意選択的な添加剤(D)とを、導電性材料(B)と溶融ブレンドして成形組成物を形成し、その後成形組成物を成形、好ましくは射出成形に供して成形品を形成することを含む、ポリアミドベースの成形品の体積抵抗率を低減するための方法に関する。
【0024】
本発明の様々な態様、利点、及び特徴は、詳細な説明及び実施例を参照することにより、より容易に理解され及び正しく評価されるであろう。
【0025】
定義
本記述的な明細書において、いくつかの用語は、以下の意味を有することを意図する。
【0026】
本明細書で使用されるところでは、ポリアミドは、一般に、少なくとも1種の芳香族又は脂肪族飽和二酸と、少なくとも1種の脂肪族飽和又は芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られる。
【0027】
本明細書で使用されるところでは、脂肪族ポリアミドポリマーは、アミド結合(-NH-CO-)を有する少なくとも50モル%の繰り返し単位を含み、いかなる芳香族基も含まない。言い換えると、重縮合によってポリアミドの繰り返し単位を形成する二酸部分及び、ジアミン、ラクタム又はアミノ酸部分の両方が、いかなる芳香族基も含まない。
【0028】
本明細書で使用されるところでは、「半結晶性」ポリアミドは、20℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定法を使用して測定される1グラム当たり少なくとも5ジュール(J/g)の融解熱(「ΔH」)を構成する。同様に、本明細書で使用されるところでは、非晶質ポリアミドは、20℃/分の加熱速度で示差走査熱量計を使用して測定される5J/g未満のΔHを備える。ΔHは、ASTM D3418に従って測定することができる。いくつかの実施形態において、ΔHは、少なくとも20J/g、又は少なくとも30J/g又は少なくとも40J/gである。
【0029】
本明細書で使用されるところでは、ポリフタルアミド(PPA)は、一般に、少なくとも1種の二酸と少なくとも1種のジアミンとの間の重縮合によって得られ、ポリフタルアミドにおいてポリマー鎖中の繰り返し単位の二酸部分の少なくとも55モル%はテレフタル酸及び/又はイソフタル酸であり、ジアミンは脂肪族である。
【0030】
三次元構造、例えば、チューブ、シート、フレーク、ディスク、球状、又は任意の他の3-D構造に関連して本明細書で使用されるような用語「ナノ」は、約0.1マイクロメートルよりも小さい(100ナノメートル未満の)少なくとも1つの寸法及び約50:1~約5000:1の最短寸法に対する最大寸法からのアスペクト比を有する構造を指す。ナノ3-D構造の寸法は、動的光散乱(DSL)及び/又は走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる顕微鏡写真での直接測定によって測定することができる。
【0031】
本明細書において、要素の群からの1つの要素の選択はまた、
- その群からの2つの要素の選択又は数個の要素の選択、
- 1つ以上の要素が除かれている要素の群からなる要素の部分群からの1つの要素の選択
を明示的に記述する。
【0032】
以下の本明細書の一節において、任意の説明は、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、他の実施形態と交換可能である。このように定義される各実施形態は、別段の指示がない限り又は明らかに不適合でない限り、別の実施形態と組み合わせられ得る。加えて、本明細書に記載の、組成物、部品若しくは物品、プロセス、方法又は使用の要素及び/又は特徴は、明示的に又は暗示的に、あらゆる可能な方法で組成物、部品若しくは物品、プロセス、方法又は使用の他の要素及び/又は特徴と組み合わせられ得ることが理解されるべきであり、これは、本明細書の範囲から逸脱することなく行われる。
【0033】
本明細書において、下限、若しくは上限によって、又は下限及び上限によって定義される、変数についての値の範囲の記述はまた、変数が、それぞれ、下限を除いた、若しくは上限を除いた、又は下限及び上限を除いた値の範囲内で選択される実施形態を含む。端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0034】
用語「含んでいる」(又は「含む」)は、「から本質的になっている」(又は「から本質的になる)」及びまた「からなっている」(又は「からなる」)を包含する。
【0035】
本明細書で使用されるところでは、ポリアミド組成物又はそれの成分に関して「本質的になる」は、明示的に列挙されていない成分の含有量が、1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満であることを意味する。
【0036】
本明細書における単数形「1つの(a)」又は「1つの(one)」の使用は、特に明記しない限り複数形を含む。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるポリアミド組成物が、ポリアミド混合物(A)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、及び任意選択的に添加剤(D)を含む場合、得られるポリアミド組成物は、優れた機械的性能を示しながら、静電気散逸特性、改善された収縮及び/若しくは反り特性並びに/又は良好な寸法安定性(CLTE)を有するポリアミドベースの成形品をもたらすことが意外にも見いだされた。
【0038】
ポリアミドベースの成形品の体積抵抗率は、本発明によるそのようなポリアミド組成物を含有する成形品が静電気散逸(ESD)材料であるようなものである。成分(A)、(B)及び(C)と任意選択的に(D)とのこの組合せは、本発明によるポリアミド組成物を、寸法公差が厳しく最適機能のためにESD特性を必要とする電子用途に好適なものにする。好ましくは、本発明によるそのようなポリアミド組成物を含有する成形品は、電子機器部品、特に携帯電子機器部品である。
【0039】
いくつかの実施形態において、ポリアミドベースの成形品又は電子機器部品、特に携帯電子機器部品は、さらに、高い光沢によって評価される滑らかな表面などの、良好な表面特性を示す。
【0040】
いくつかの特定の実施形態において、ポリアミド組成物は、
A)
A1)60~90重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
A2)10~40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、
A3)0~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含む20~69重量%のポリアミド混合物であって、
ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの各重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする、ポリアミド混合物と;
B)1~20重量%の導電性材料と;
C)30~55重量%のガラスフレークと;
D)0~10重量%の添加剤と
を含み、
ここで、成分(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明によるポリアミド組成物は、ポリアミドポリマー(A1)、(A2)及び(A3)以外のポリマーを、5重量%を超えて含まず、好ましくは2重量%を超えて含まず、より好ましくは1重量%を超えて含まない。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明によるポリアミド組成物は、ポリアミド混合物(A)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、任意選択的に1種以上の添加剤(D)から本質的になる。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、
A)25~55重量%のポリアミド混合物と;
B)5~15重量%の導電性材料と;
C)40~55重量%のガラスフレークと;
D)0~10重量%の添加剤と
を含み、
ここで、成分(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0044】
より特定の実施形態において、ポリアミド組成物は、
A)30~50重量%のポリアミド混合物と;
B)5~15重量%の導電性材料と;
C)45~50重量%のガラスフレークと;
D)0~10重量%の添加剤と
を含み、
ここで、成分(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、少なくとも300℃、少なくとも305℃、又は少なくとも310℃の融解温度Tmを有する。加えて又は代わりに、いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、360℃以下、350℃以下、又は345℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドポリマーは、300℃~360℃、305℃~350℃、又は310℃~345℃のTmを有する。Tmは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0046】
ポリアミド混合物(A)
本発明によるポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の総重量を基準として20~69重量%、又は25~55重量%、又は30~50重量%のポリアミド混合物(A)を含む。
【0047】
ポリアミド混合物(A)は、少なくとも2種のポリアミドポリマーを含み: 少なくとも1種は、半芳香族ポリアミドポリマーであり、少なくとも別のポリアミドは、脂肪族ポリアミドポリマーである。
【0048】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物中のポリアミド混合物(A)の少なくとも一部は、バイオベースである。
【0049】
ポリアミド混合物(A)は、好ましくは、
A1)60~90重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
A2)10~40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、
A3)0~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含み、
ここで、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0050】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、
A1)85~90重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
A2)10~15重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含み、
ここで、ポリアミド(A1)及び(A2)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)及び(A2)の組合せの総重量を基準とする。
【0051】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、
A1)85~90重量%のPA6T/66、
A2)10~15重量%のPA12
を含み、
ここで、ポリアミド(A1)及び(A2)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)及び(A2)の組合せの総重量を基準とする。
【0052】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、
A1)60~65重量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドポリマー、
A2)10~15重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー、
A3)20~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー
を含み、
ここで、ポリアミ(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、
A1)60~65重量%のPA6T/66、
A2)10~15重量%のPA12、
A3)20~30重量%のPA610
を含み、
ここで、ポリアミ(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれの重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0054】
ポリアミド混合物(A)のいくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A3)が存在する場合、異なったポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の総合重量を基準とするポリアミド(A3)の重量%は、異なったポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の総合重量を基準とする脂肪族ポリアミドポリマー(A2)の重量%よりも高い。
【0055】
脂肪族ポリアミドポリマー(A3)を含有しないポリアミド混合物(A)のいくつかの実施形態において、(A1)/(A2)の重量比は、5.66~9.0、好ましくは6.5~9であり得る。
【0056】
脂肪族ポリアミドポリマー(A3)を含有するポリアミド混合物(A)のいくつかの実施形態において、ポリアミド(A2)+(A3)に対するポリアミド(A1)の重量比は、1.33~2.15、好ましくは1.5~2、より好ましくは1.6~1.8であり得る。
【0057】
半芳香族ポリアミド(A1)
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、60~90重量%、好ましくは60~65重量%又は85重量%~90重量%の、半芳香族ポリアミドポリマー(A1)を含み、ここで、ポリアミド(A1)の重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、60~65重量%の半芳香族ポリアミドポリマー(A1)を含み、ここで、ポリアミド(A1)の重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。そのような実施形態は、ポリアミド混合物が、脂肪族ポリアミド(A2)とは異なる脂肪族ポリアミド(A3)を含む場合に好ましい。
【0059】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、85重量%~90重量%の半芳香族ポリアミドポリマー(A1)を含み、ここで、ポリアミド(A1)の重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。そのような実施形態は、ポリアミド混合物が、脂肪族ポリアミド(A3)を含まない場合に好ましい。
【0060】
いくつかの実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、PA10T/10I、PA6T/66、PA6T/6I、PA6I/66、PA6T/6、PA6I/6、PA6I/66、PA6T/6I/66、PA6T/6I/6、PA10T/66、PA6T、PA6I、PA9T、PA10T、PA12T、PA12I、PAMXD6、PAPXD10、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリアミドを含むか、又はそれから本質的になる。
【0061】
好ましい実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、ポリフタルアミドを含むか、又はそれから本質的になる。
【0062】
いくつかの実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸成分と6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンとの重縮合によって得られるポリマーである。標準的な命名において、「T」及び「I」は、脂肪族モノマーの長さを示す数字と組み合わせられる。例えば、PA6Tは、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とから誘導される。半芳香族ポリアミド(A1)のための好適なポリフタルアミドには、PA6T/66、PA6T/6I、PA6I/66、PA6T/6、PA6I/6、PA6T/6I/66、PA6T/6I/6又はそれらの任意の組合せから選択されるコポリマーが含まれる。半芳香族ポリアミド(A1)のための他の好適なポリフタルアミドには、PA6T、PA6I、PA9T、PA10T、PA12T、PA12I、又はそれらの任意の組合せから選択されるホモポリマーが含まれる。
【0063】
より好ましい実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、PA6T/66、PA6T/6I、PA10T/66、PA6T、PA9T、PA12T、PA6I、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリフタルアミドを含むか、又はそれから本質的になる。
【0064】
さらにより好ましい実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、PA6T/66並びに任意選択的に、PA10T/10I、PA6T/6I、PA6I/66、PA6T/6、PA6I/6、PA6I/66、PA6T/6I/66、PA6T/6I/6、PA10T/66、PA6T、PA6I、PA9T、PA10T、PA12T、PA12I、PAMXD6、PAPXD10及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリアミドを含むか、又はそれらから本質的になる。そのような実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)の(重量で)半分超はPA6T/66である。
【0065】
最も好ましい実施形態において、半芳香族ポリアミド(A1)は、PA6T/66から本質的になる。
【0066】
脂肪族ポリアミド(A2)
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、10~40重量%、好ましくは10~15重量%の、少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー(A2)を含み、ここで、ポリアミド(A2)の重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0067】
好ましい実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)は、PA12を含むか、又はそれから本質的になる。
【0068】
脂肪族ポリアミド(A3)
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)は、0~30重量%の、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドポリマー(A3)を含み、ここで、ポリアミド(A3)の重量%は、ポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)の組合せの総重量を基準とする。
【0069】
いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミド(A2)とは異なる脂肪族ポリアミドポリマー(A3)は、PA610、PA612、PA1010、PA510、PA6、PA66、PA1012、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A3)からは、PA12は排除される。
【0071】
好ましい実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる脂肪族ポリアミドポリマー(A3)は、PA610、PA612、PA510、PA6、PA66、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0072】
より好ましい実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる脂肪族ポリアミドポリマー(A3)は、PA610、PA510、PA6、PA66、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0073】
最も好ましい実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマー(A2)とは異なる脂肪族ポリアミドポリマー(A3)は、PA610を含むか、又はそれから本質的になる。
【0074】
任意選択的なポリマー
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物を製造する前に添加剤又は/及び導電性材料がその中に混ぜ込まれるマスターバッチを形成するために使用されるポリマー担体を含み得る。そのような場合に、マスターバッチ担体として使用されるそのようなポリマー担体の重量含有量(重量%)は、ポリアミド混合物(A)の重量含有量(重量%)未満であるべきであり、それらのそれぞれの重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0075】
ポリマー担体は、ポリアミド組成物(A)に使用されるポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)のいずれかを含み得る、若しくはいずれかからなり得る、並びに/又はポリオレフィン若しくはポリアミド混合物(A)に使用されるポリアミド(A1)、(A2)及び(A3)とは異なるポリアミド、例えばPAMXD6などを含み得る、又はそれらからなり得る。PAMXD6ポリマーは、アジピン酸とメタ-キシリレンジアミンとから製造されるポリマー(とりわけ、Solvay Specialty Polymers U.S.A,L.L.C.からIXEF(登録商標)ポリアリールアミドとして市販されている)である。
【0076】
導電性材料(B)
ポリアミド組成物はまた、ポリアミド組成物の総重量を基準として、1~20重量%、又は5~15重量%の、少なくとも1種の導電性材料(B)を含む。導電性材料(B)は、それがその中に組み入れられる物品又は機器又はそれの部品の改善されたESD特性を提供する。
【0077】
導電性材料は、単独で又は組み合わせて、連続繊維、粒状形態にあるか又はそうではないかのどちらかであるミルド若しくはチョップド繊維、フレーク、粉末、微小球、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノ繊維、ナノフレーク、ナノロープ、ナノリボン、ナノフィブリル、ナノニードル、ナノシート、ナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、ナノプレートレット、ナノドット、デンドライト、ディスク又は任意の他の三次元体からなる群から選択される三次元構造などの任意の好適な形状及びモルフォロジのものであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、2・10-2Ω.cm未満、又は最大でも1・10-2Ω.cm、又は最大でも5・10-3Ω.cm、又は最大でも3・10-3Ω.cm、又は最大でも2・10-3Ω.cmの体積抵抗率を有する。いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、少なくとも1・10-4Ω.cmの体積抵抗率を有する。いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、1・10-4Ω.cm~20・10-4Ω.cm以下の体積抵抗率を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、無機導電性材料からなる。
【0080】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、導電性カーボンブラック、金属フレーク、金属粉、金属化ガラス球、金属化ガラス繊維、金属繊維、金属化ウィスカー、任意選択的に金属化されている炭素繊維(例えば、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び/又は粒状形態にある若しくはないミルド/チョップド炭素繊維など)、カーボンナノチューブ、本質的に導電性のポリマー又はグラファイトフィブリルから選択される少なくとも1種の材料を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、炭素ベースの材料から本質的になる。
【0082】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、炭素ベースの繊維(例えば、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び/又は粒状形態にあるか若しくはないミルド/チョップド炭素繊維)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノ繊維、カーボンナノフレーク、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノオーム、導電性カーボンブラック粉末、グラファイトフィブリル、グラファイトナノプレートレット、ナノドット、グラフェン、及び2つ以上のそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素ベースの構造物を含み得る、又はそれらからなり得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)に使用される炭素ベースの構造物は、一般に、少なくとも90重量%の炭素を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)に使用される炭素ベースの構造物は、金属化され得る。
【0085】
好ましい実施形態において、導電性材料(B)に使用される炭素ベースの構造物は、金属化されていない。
【0086】
任意選択的に金属化され得る、好適な炭素ベースの繊維には、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び/又は粒状形態にある若しくはないミルド/チョップド炭素繊維が含まれるが、それらに限定されない。
【0087】
好ましい実施形態において、導電性材料(B)は、カーボンナノチューブ、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、粒状形態にある若しくはないミルド/チョップド炭素繊維、導電性カーボンブラック粉末、又はそれらの任意の組合せを含み得る、又はそれらからなり得る。
【0088】
炭素繊維は、長さが数千マイクロメートル(μm)又はミリメートル(mm)であり得る連続フィラメントであり得、本明細書において「連続炭素繊維」と言われる。連続炭素繊維の群は、多くの場合、連続炭素繊維フィラメントの束として類別される。炭素繊維「トウ」は、通常、数千の多数のフィラメントとして表される(それぞれのトウ番号の後にKで表される)。炭素繊維束は、チョップドであっても又はミルドであってもよく、こうして炭素繊維(フィラメント又は束)の短いセグメントを形成し得る。
【0089】
様々な態様において、連続炭素繊維は、チョップド又はミルド炭素繊維と比べて、約50mm以上の長さを有する。ある種の態様において、連続炭素繊維は、約50mm以上、任意選択的に約75mm以上、任意選択的に約100mm以上、任意選択的に約125mm以上、任意選択的に約150mm以上、任意選択的に約175mm以上、任意選択的に約200mm以上、任意選択的に約225mm以上、任意選択的に約250mm以上、及びある種の変形において、任意選択的に約300mm以上の長さを有する。
【0090】
チョップド又はミルド炭素繊維は、典型的には、50μm~50mmの平均繊維長を有する。
【0091】
ポリアミドと適合する好適なチョップド炭素繊維は、ProcotexからCF.OS.U1-6mm、CF.OS.U2-6mm、CF.OS.A-6mm、CF.OS.I-6mmとして市販されており、7ミクロンの平均モノフィラメント径、6mmの平均長さ、15・10-4Ω.cm~20・10-4Ω.cm以下の体積抵抗率を有する。
【0092】
好適なミルド炭素繊維は、ProcotexからCF.LS-MLD80~CF.LS-MLD250として市販されており、7ミクロンの平均モノフィラメント径、80~250ミクロンの中間長さ、15・10-4Ω.cm~20・10-4Ω.cm以下の体積抵抗率を有する。
【0093】
カーボンナノチューブは、ナノメートル又は分子サイズの導電性材料の例である。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)、2層カーボンナノチューブ(「DWCNT」)、多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)(それは、入れ子状態の(nested)SWCNTからなる)、又はそれらの混合物であることができる。好ましくは、カーボンナノチューブは、MWCNTである。カーボンナノチューブ、及びカーボンナノチューブのロープなどのカーボンナノロープ(例えば、SWNT又はMWNT、及びSWNT又はMWNTのロープ)は、高い機械的強度、導電性、及び高い熱伝導性を示す。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、100以上の、長さ割る直径として定義される、平均アスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、1000以上の平均アスペクト比を有することができる。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、1ナノメートル(nm)~3.5nm又は4nm(ロープ状(roping))の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、少なくとも1μmの平均長さを有する。
【0094】
90~95%C純度の市販の工業グレードの炭素ベースのナノ構造物は、前処理なしでポリアミドポリマー中に直接分散させることができる。好適な多層CNT(MWCNT)には、90%C純度ほどに低い純度を有するNanocyl(登録商標)NC7000 MWCNT銘柄、又は95%C純度よりも大きいC純度のNanocyl(登録商標)NC3100 MWCNT銘柄が含まれ、両方ともNanocyl(Belgium)製である。Nanocyl(登録商標)NC7000 MWCNTは、9.5ナノメートルの平均径、1.5ミクロンの平均長さ、250~300m/gのBET表面積及び1・10-4Ω.cmの体積抵抗率を有する。炭素ベースのナノ構造物のための他の好適な供給源は、Hyperion Catalysis International製のFRIBIL(登録商標)多層カーボンナノチューブである。これらのMWCNTは、約10ナノメートルの外径及び10ミクロン超の長さを有し得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、導電性材料(B)は、標準的なBrunauer-Emmett-Teller(BET)測定法によって測定されるように少なくとも0.1m/g、好ましくは10m/g以上、例えば約10m/g~約500m/gの比表面積(SSA)を有し得る。例えば、標準窒素システムを備えたMicro-metrics TriStar IIを用いるBET測定法が使用され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物中の導電性材料(B)の含有量は、少なくとも1重量%、若しくは少なくとも1.5重量%及び/又は最大でも30重量%、若しくは最大でも25重量%、若しくは最大でも20重量%であり、重量%は、ポリアミド組成物の総重量を基準とする。
【0097】
導電性材料(B)が、炭素繊維(それは、連続炭素繊維、チョップド炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び/又は粒状形態にあるか若しくはないミルド/チョップド炭素繊維を含む)を含む場合、ポリアミド組成物中の炭素繊維含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%、又は少なくとも8重量%である。そのような実施形態のいくつかにおいて、炭素繊維含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、最大でも20重量%、又は最大でも17重量%、又は最大でも15重量、又は最大でも13重量%、最大でも11重量%である。いくつかの実施形態において、炭素繊維含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、6重量%~30重量%、又は8重量%~30重量%、又は6重量%~25重量%、又は8重量%~25重量%、又は6重量%~20重量%、又は8重量%~20重量%、又は6重量%~15重量%、又は7重量%~15重量%、又は7重量%~13重量%、又は7重量%~11重量%、又は8重量%~15重量%、又は8重量%~13重量%、又は8重量%~10重量%である。
【0098】
導電性材料(B)が、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素ベースのナノ構造物を含む場合、ポリアミド組成物中の炭素ベースのナノ構造物の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、少なくとも1重量%、又は少なくとも1.5重量%である。そのような実施形態のいくつかにおいて、炭素ベースのナノ構造物(例えば、CNT)の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、最大でも10重量%、又は最大でも8重量%、又は最大でも7重量%、又は最大でも6重量%、又は最大でも5重量%、又は最大でも4重量%、又は最大でも3重量%である。いくつかの実施形態において、炭素ベースのナノ構造物の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、1重量%~5重量%、又は1重量%~4重量%、又は1重量%~3重量%、又は1.5重量%~5重量%、又は1.5重量%~4重量%、又は1.5重量%~3重量%、又は1重量%~8重量%、又は1.5重量%~8重量%である。
【0099】
ガラスフレーク(C)
ポリアミド組成物はまた、ガラスフレーク(C)を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%である。
【0101】
追加の又は代わりの実施形態において、ガラスフレーク(C)の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、最大でも55重量%、又は最大でも50重量%である。
【0102】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)の含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、30重量%~55重量%、又は30重量%~50重量%、又は35重量%~55重量%、又は35重量%~50重量%、又は40重量%~55重量%、又は40重量%~50重量%、又は45重量%~55重量%、又は45重量%~50重量%である。
【0103】
ガラスフレーク(C)は、好ましくは、最大でも500ミクロン、又は最大でも450ミクロン、又は最大でも400ミクロン、又は最大でも350ミクロン、又は最大でも200ミクロン、又は最大でも250ミクロンの平均長さで特徴付けられる三次元構造を有する。三次元構造を有するガラスフレーク(C)について、その「長さ」は、その最大寸法と見なされる。
【0104】
ガラスフレーク(C)は、好ましくは、一般に10+12Ω.cm超、又は5・10+12Ω.cm超の体積抵抗率を有する、電気絶縁性充填材である。
【0105】
ガラスフレーク(C)は、好ましくは、非繊維状である。「非繊維状」充填材は、本明細書においては、長さ及び幅の両方がその厚さよりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する三次元構造を有すると見なされる。一般に、三次元構造を有するそのようなガラスフレーク(C)は、最大でも3、又は最大でも2.5、又は最大でも2、又は最大でも1.5の、平均長さ割る平均幅及び平均厚さの最大として定義されるアスペクト比を有する。
【0106】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)は、0.4ミクロン~10ミクロンの平均厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)は、0.4ミクロン~2ミクロン以下、又は1ミクロン以下の平均厚さを有する。
【0107】
三次元構造の寸法(長さ、幅、厚さ)は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られる顕微鏡写真での直接測定によって決定することができる。
【0108】
ガラスフレークの三次元構造の平均寸法(すなわち、長さ、幅及び厚さ)は、ポリアミド組成物中への組込み前のガラスフレーク(C)の平均長さと見なすことができるか或いはポリアミド組成物中のガラスフレーク(C)の平均寸法と見なすことができる。
【0109】
ガラスフレーク(C)は、異なるタイプのガラスを生み出すように調整することができる幾つかの金属酸化物を含有するシリカ系ガラスコンパウンドである。主な酸化物は、ケイ砂の形態のシリカであり;カルシウム、ナトリウム及びアルミニウムなどの他の酸化物が、融解温度を低下させ、結晶化を妨げるために組み込まれる。A、C、D、E、M、S、R、Tガラス又はそれらの混合物などの、任意のガラスタイプ、好ましくはC又はEガラスがガラス充填材に使用され得る。Cガラスは、アルカリ成分を含有し、高い耐酸性を有する。Eガラスは、アルカリをほとんど含有しないため、樹脂中で高い安定性を有し、導電性を持たない。
【0110】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)は、好ましくは、Cガラス又はEガラスを使ったガラスフレークを含むか、又はそれらからなる。E又はCガラスを使った好適なガラスフレーク(C)は、NSGからGLASFLAKE(登録商標)として市販されている。E-ガラスフレークは、熱可塑性ポリマー製の精密部品において反りを防止し、寸法精度を向上させるのに特に有効である。0.4~1ミクロンの平均厚さのNSGからまた市販されているFINEFLAKE(登録商標)ガラスフレークは、微細な薄い成形品に好適である。いくつかの実施形態において、ガラスフレークは、粒状にされていてもよい。例えば、Eガラスを使ったFLEKA(登録商標)粒状ガラスフレークがNSGから市販されている。
【0111】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)の少なくとも一部は、ポリアミド組成物中でチョップドガラス繊維によって、それらの平均長さが最大でも500ミクロン、又は最大でも450ミクロン、又は最大でも400ミクロン、又は最大でも350ミクロン、又は最大でも200ミクロン、又は最大でも250ミクロンである限り、置換されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)が、ガラスフレーク及び平均長さが最大でも500ミクロンであるチョップドガラス繊維の両方を含む場合、ガラスフレークは、50重量%超、又は60重量%超、又は70重量%超、又は80重量%超を表し、重量%は、(C)中のガラスフレーク及びチョップドガラス繊維の総合重量を基準とする。
【0113】
いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)がチョップドガラス繊維をさらに含む場合、これらのチョップドガラス繊維は、一般に、
- 5~20μmの、好ましくは5~15μmの、より好ましくは5~10μmの厚さ;及び/又は
- 100~500ミクロン、若しくは150~450ミクロンの平均長さ;及び/又は
- 最大でも5、若しくは最大でも3、若しくは最大でも2.5、若しくは最大でも2、若しくは最大でも1.5の、それらの平均長さ割るそれらの平均幅及び平均厚さの最大として定義される、アスペクト比
を有する。
【0114】
チョップドガラス繊維のモルフォロジは、特に限定されない。チョップドガラス繊維は、円形の断面(「円形ガラス繊維」)又は非円形の断面(「扁平ガラス繊維」)を有することができる。好適なチョップド扁平ガラス繊維の例としては、卵形、楕円形及び長方形の断面を有するガラス繊維が挙げられるが、それらに限定されない。
【0115】
任意選択的な添加剤(D)
ポリアミド組成物は、上記のような、ガラスフレークとは異なる強化剤、強靱化剤、可塑剤、光安定剤、紫外線安定剤、熱安定剤、顔料、染料/着色剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤、又は2つ以上のそれらの任意の組合せなどの、0重量%~20重量%以下(ポリアミド組成物の総重量を基準として)の1種以上の任意選択的な添加剤(D)をさらに含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、1重量%~20重量%以下(ポリアミド組成物の総重量を基準として)の、上記のような、ガラスフレーク(C)とは異なる少なくとも1種の強化剤をさらに含み得る。
【0117】
強化充填材とも呼ばれる、幅広く選択される強化剤が、本発明によるポリアミド組成物に任意選択的に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状強化剤から選択することができる。
【0118】
任意選択的な強化剤は、無機充填材(例えば、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイト、ガラス玉(例えば、中空ガラス微小球)、及び本発明によるポリアミド組成物に使用されるガラスフレーク(C)とは異なる、ガラス繊維から選択され得る。
【0119】
粒子状強化剤は、無機充填材(例えば、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)又はガラス玉(例えば、中空ガラス微小球)から選択され得る。
【0120】
繊維状強化充填材は、本明細書において、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する三次元材料であると見なされる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、平均長さと、平均幅及び平均厚さの最大との間の比として定義される、アスペクト比を有する。
【0121】
いくつかの実施形態において、任意選択的な強化繊維(例えば、ガラス繊維)は、0.5mm超、好ましくは少なくとも1mmの、及び50mm以下の平均長さを有するチョップドガラス繊維(ガラスフレークとは異なる)、又は連続ガラス繊維であり得る。任意選択的な強化ガラス繊維の平均長さは、ポリアミド組成物中への組込み前の強化ガラス繊維の平均長さと見なすことができるか或いはポリアミド組成物中の強化繊維の平均長さと見なすことができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、3mm~50mmの平均長さを有する。いくつかのそのような実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、3mm~10mm、3mm~8mm、3mm~6mm、又は3mm~5mmの平均長さを有する。代わりの実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、10mm~50mm、10mm~45mm、10mm~35mm、10mm~30mm、10mm~25mm又は15mm~25mmの平均長さを有する。いくつかの実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、一般に、5~20μmの、好ましくは5~15μmの、より好ましくは5~10μmの相当径を有する。
【0123】
A、C、D、E、M、S、R、Tガラス若しくはそれらの任意の混合物などの、全てのガラスタイプ、又はそれらの混合物が使用され得る。E、R、S及びTガラス繊維は、当本技術分野において周知である。それらは、とりわけ、Fiberglass and Glass Technology,Wallenberger,Frederick T.;Bingham,Paul A.(Eds.),2010,XIV,chapter 5,pages 197-225に記載されている。R、S及びTガラス繊維は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物から本質的に構成される。特に、それらのガラス繊維は、典型的には、62~75重量%のSiO、16~28重量%のAl及び5~14重量%のMgOを含む。他方では、R、S及びTガラス繊維は、10重量%未満のCaOを含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、高弾性率ガラス繊維である。高弾性率ガラス繊維は、ASTM D2343に従って測定されるように、少なくとも76GPa、好ましくは少なくとも78GPa、より好ましくは少なくとも80GPa、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性率を有する。高弾性率ガラス繊維の例としては、S、R、及びTガラス繊維が挙げられるが、それらに限定されない。高弾性率ガラス繊維の市販の供給源は、それぞれ、Taishan及びAGY製のS-1及びS-2ガラス繊維である。
【0125】
任意選択的なガラス繊維は、円形ガラス繊維又は扁平ガラス繊維であることができる。好適な扁平ガラス繊維の例としては、卵形、楕円形及び長方形断面を有するガラス繊維が挙げられるが、それらに限定されない。
【0126】
ポリアミド組成物が扁平ガラス繊維をさらに含むいくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維は、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも22μm、さらにより好ましくは少なくとも25μmの断面最大径を有する。加えて又は代わりに、いくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維は、最大でも40μm、好ましくは最大でも35μm、より好ましくは最大でも32μm、さらにより好ましくは最大でも30μmの断面最大径を有する。いくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維は、少なくとも4μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、さらにより好ましくは少なくとも7μmの断面最短径を有する。加えて又は代わりに、いくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維は、最大でも25μm、好ましくは最大でも20μm、より好ましくは最大でも17μm、さらにより好ましくは最大でも15μmの断面最短径を有する。
【0127】
いくつかの実施形態において、任意選択的な扁平ガラス繊維は、少なくとも2、好ましくは少なくとも2.2、より好ましくは少なくとも2.4、さらにより好ましくは少なくとも3の、ガラス繊維の断面における最短径に対する同じ断面における最大径の比を有する。加えて又は代わりに、いくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維のこの比は、最大でも8、好ましくは最大でも6、より好ましくは最大でも4である。
【0128】
任意選択的な繊維が円形ガラス繊維である、いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.2未満、さらにより好ましくは1.1未満、最も好ましくは1.05未満の、ガラス繊維の断面における最短径に対する同じ断面における最大径の比を有する。当然のことながら、当業者は、ガラス繊維のモルフォロジ(例えば、円形又は扁平)にかかわらず、定義により、アスペクト比が1未満であり得ないことを理解するであろう。
【0129】
いくつかの実施形態において、任意選択的なガラス繊維は、E-ガラス繊維;ASTM D2343に従って測定されるように少なくとも76GPaの引張弾性率を有する高弾性率ガラス繊維;及びそれらの組合せからなる群から選択される円形又は扁平ガラス繊維である。
【0130】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物が、上記の説明に従ったガラスフレーク(C)及び少なくとも1種の任意選択的な強化剤を含む場合、ガラスフレーク+任意選択的な強化剤の総計含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、少なくとも31重量%、又は少なくとも32重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%である。追加の又は代わりの実施形態において、ガラスフレーク(C)+任意選択的な強化剤の総計含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、最大でも60重量%、又は最大でも55重量%、又は最大でも50重量%である。いくつかの実施形態において、ガラスフレーク(C)+任意選択的な強化剤の総計含有量は、ポリアミド組成物の総重量を基準として、31重量%~60重量%、又は32重量%~55重量%、又は35重量%~55重量%、又は35重量%~50重量%、又は40重量%~55重量%である。
【0131】
いくつかの実施形態において、ポリアミドポリマーが、ガラスフレーク(C)+任意選択的な強化剤を含む場合、ポリアミド組成物中の任意選択的な強化剤の重量は、好ましくは、ポリアミド組成物の総重量を基準として、10重量%以下である。
【0132】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物からは、上記のような、ガラスフレーク(C)とは異なる強化剤は排除される。
【0133】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物からは、0.5mm超、又は1mm超の平均長さを有する繊維状強化剤は排除される。
【0134】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物からは、0.5mm超、又は1mm超の平均長さを有するガラス繊維は排除される。
【0135】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物からは、ガラス球又は玉は排除され、特に中空ガラス玉は排除される。
【0136】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、任意選択的に、0.1重量%~10重量%以下の、又は0.5~5重量%の、強靭化剤、可塑剤、光安定剤、紫外線(「UV」)安定剤、熱安定剤、染料、顔料、着色剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤、及び2つ以上のそれらの任意の組合せからなる群から選択される添加剤を含む。
【0137】
ポリアミド組成物が、強靭化剤、可塑剤、光安定剤、紫外線(「UV」)安定剤、熱安定剤、顔料、染料、顔料、着色剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤、及び2つ以上のそれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の任意選択的な添加剤を含むいくつかの実施形態において、これらの添加剤の全濃度は、10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、及び/又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%、又は少なくとも0.5重量%である。
【0138】
いくつかの好ましい実施形態において、ポリアミド組成物は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤、熱安定剤、染料、顔料、着色剤、及び/又は潤滑剤を含む。
【0139】
好ましい実施形態において、カーボンブラック粉末を含む添加剤は、例えば着色剤として、ポリアミド組成物に含まれ得る。そのようなカーボンブラック粉末は、ポリマー担体を含むマスターバッチの形態で添加され得る。そのようなマスターバッチは、「カーボンブラックコンセントレート」と呼ばれ得る。カーボンブラックコンセントレートは、1~10pph添加され得、ここで、「pph」は、ポリアミド組成物(A+B+C+D)の総重量による100当たりの部を意味する。そのようなカーボンブラック粉末は、導電性であり得る。しかしながら、本発明によるポリアミド組成物中のそのようなカーボンブラック粉末の唯一の存在は、それだけで-すなわち、導電性材料(B)の不在下で-使用される場合に、そのようなポリアミド組成物(又はそれを含む成形品)の体積抵抗率を十分に低下させてESD材料を生成するという結果にならないであろう。しかし、添加剤(例えば、着色剤など)としてのこの追加の導電性カーボンブラック粉末は、導電性材料(B)の存在で既に観察される体積抵抗率をさらに低下させることができることは指摘されるべきである。
【0140】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、帯電防止添加剤を含まない。
【0141】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、耐衝撃性改良剤を含まない。
【0142】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物は、難燃剤を含まない。
【0143】
ポリアミド組成物の調製
本発明は、上に詳述されたようなポリアミド組成物を製造するための方法であって、前記方法が、ポリアミドポリマー(A1)、ポリアミドポリマー(A2)、存在する場合ポリアミドポリマー(A3)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、ガラスフレークとは異なる強化剤、潤滑剤、UV安定剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、着色剤等などの1種以上の任意選択的な添加剤を溶融ブレンドすることを含む方法に関する。
【0144】
任意の溶融ブレンディング方法が、本発明との関連でポリマー原料と非ポリマー原料とを混合するために用いられ得る。
【0145】
例えば、ポリマー原料及び非ポリマー原料は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー混錬機、又はバンバリーミキサーなどの、溶融ミキサー中へ供給され得、添加ステップは、全ての原料の同時添加又はバッチ式の漸次添加であり得る。ポリマー原料及び非ポリマー原料がバッチ式に徐々に添加される場合、ポリマー原料及び/又は非ポリマー原料の一部がまず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー原料及び非ポリマー原料と溶融混合される。
【0146】
任意選択的な強化剤が長い物理的形状(例えば、長い又は「エンドレス」繊維)を示す場合、延伸押出成形、長繊維ペレットを形成するための引抜成形、又は一方向複合テープを形成するための引抜成形が、強化された組成物を調製するために用いられ得る。
【0147】
物品及び用途
本発明の別の態様は、物品でのポリアミド組成物の使用を提供する。
【0148】
ポリアミド組成物は、望ましくは、物品、好ましくは成形品に組み込むことができる。
【0149】
物品は、とりわけ、電気及び電子装置、LEDパッケージング、電気及び電子部品(コンピューティング、データシステム及びオフィス設備用の電源ユニット部品、並びに表面実装技術適合性コネクタ及び接点を含むが、それらに限定されない)、医療機器部品;並びにミニサーキットブレーカー、コンタクター、スイッチ及びソケット用の電気保護装置;自動車部品、及び航空宇宙部品(インテリアキャビン部品を含むが、それらに限定されない)に使用することができる。
【0150】
用語「電子機器」は、電子部品を含む機器を意味することを意図する。ある種の電子機器は、ポータブルである及び様々な場所で使用されることを意図しないが、一方、いくつかは、人によって容易に運ばれるなどのポータブル(「モビール」)であることを意図する。
【0151】
用語「携帯電子機器」は、ハンドヘルドで、手首若しくは鼻梁上に装着されて、ケース、ブリーフケース、財布、ハンドバッグなどのキャリア中で運ばれて、又は衣類の一片中に及び/若しくは上に装着されて若しくは貼られて等などで、人によって便利に運ばれ、様々な場で使用されるように設計されている電子機器を意味することを意図する。携帯電子機器の代表的な例は、携帯電子電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラ及びカメラアクセサリ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウオッチ、スマートグラス等)、電卓、音楽プレーヤー、全地球測位システム受信機、ポータブルゲームコンソール及びコンソールアクセサリ、ハードドライブ並びに他の電子記憶装置からなる群から選択され得る。
【0152】
好ましい携帯電子機器には、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電子電話及びウェアラブルコンピューティングデバイス、例えば、時計及びグラスが含まれる。
【0153】
本明細書において興味のある携帯電子機器の構成部品には、アンテナウインドウ、取付け部品、スナップ嵌め部品、相互可動式部品、機能素子、作動要素、トラッキング素子、調整素子、キャリア素子、フレーム素子、スイッチ、コネクタ、ケーブル、ハウジング、及び、例えばスピーカー部品などの、携帯電子機器で使用されるようなハウジング以外の任意の他の構造部品が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、機器構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、カメラモジュール、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、携帯電子機器の別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品からなることができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、電子機器は、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0155】
本発明の特定の実施形態は、電子機器、特に携帯電子機器用の静電気散逸性部品に関する。電子機器用のそのような静電気散逸性部品は、本明細書に記載されるようなポリアミド組成物を含む成形品であり得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、携帯電子機器部品はまた、携帯電子機器ハウジングであってもよい。「携帯電子機器ハウジング」は、携帯電子機器の裏面カバー、前面カバー、アンテナハウジング、フレーム及び/又は骨格のうちの1つ以上を指す。ハウジングは、単一の物品であり得るか又は2つ以上の構成部品を含み得る。「骨格」は、機器の他の部品、例えばエレクトロニクス、マイクロプロセッサ、スクリーン、キーボード及びキーパッド、アンテナ、バッテリーソケット等などの他の部品がその上に取り付けられる構造部品を指す。骨格は、携帯電子機器の外部から見えない又は部分的に見えるにすぎない内部部品であり得る。ハウジングは、衝撃並びに環境作用剤(例えば、液体、ちり等など)による汚染及び/又は損傷からの機器の内部部品の保護を提供し得る。カバーなどのハウジング部品はまた、スクリーン及び/又はアンテナなどの機器の外部に露出している特定の部品のための実質的な又は主要な構造支持と、その特定の部品の衝撃からの保護とを提供し得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、携帯電子機器のハウジングは、携帯電話ハウジング、アンテナハウジング、アンテナウインドウ、タブレットハウジング、ラップトップコンピュータハウジング、タブレットコンピュータハウジング又は時計ハウジングからなる群から選択される。
【0158】
いくつかの実施形態において、携帯電子機器部品は、例えば、無線アンテナ又はカメラモジュールを含み得る。この場合に、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。いくつかのそのような実施形態において、無線アンテナ又はカメラモジュールの少なくとも一部分は、ポリアミド組成物上に配置される。加えて又は代わりに、無線アンテナ又はカメラモジュールの少なくとも一部は、ポリアミド組成物から置き換えることができる。
【0159】
自動車部品の例としては、自動車電子部品、自動車照明部品(モーターエンドキャップ、センサー、ECUハウジング、ボビン及びソレノイド、コネクタ、回路保護/リレー、アクチュエータハウジング、Liイオン電池システム、及びヒューズボックスを含むが、それらに限定されない)、トラクションモーター及びパワーエレクトロニック部品(電池パックを含むが、それらに限定されない)、電池ハウジングが挙げられるが、それらに限定されない。
【0160】
物品は、ポリアミド組成物から、熱可塑性樹脂に適した任意のプロセス、例えば、押出、射出成形、ブロー成形、回転成形、オーバーモールド又は圧縮成形によって成形することができる。
【0161】
成形品又は電子機器部品の好ましい形成には、ポリアミド組成物の射出成形又は押出成形などの好適な溶融加工方法が含まれ、射出成形が好ましい成形方法である。
【0162】
いくつかの実施形態において、本発明による成形品又は電子機器部品は、以下の特性のうちの少なくとも1つを有する。
【0163】
いくつかの実施形態において、ポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、少なくとも1・10+5Ω.cm、若しくは少なくとも1.5・10+5Ω.cm、及び/又は最大でも5・10+12Ω.cm、若しくは最大でも3・10+12Ω.cm、若しくは最大でも1・10+12Ω.cmの体積抵抗率(ASTM D257に従って測定される)を有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、1・10+5Ω.cm~5・10+12Ω.cm以下の体積抵抗率を有する。体積抵抗率は、それ故に、特定の体積抵抗率を有する導電性材料を選択すること、及び成形品を製造するために使用されるポリアミド組成物中の導電性材料含有量を変えることによって、少なくとも約7桁にわたって調整可能である。
【0164】
いくつかの実施形態において、本発明による成形品又は 電子機器部品は、最大でも0.35%、又は最大でも0.33%、又は最大でも0.32%、又は最大でも0.31%の、ISO 294(ASTM D955)に従って測定される、横方向の成形収縮(%単位)を有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本発明による成形品又は電子機器部品は、55%超、又は60%超、又は65%超の流れ方向の成形収縮対横方向の成形収縮の比率を有し、ここで、流れ方向の及び横方向の成形収縮(%単位)は、ISO 294(ASTM D955)に従って測定される。
【0166】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のポリアミド混合物(A)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、任意選択的に添加剤(D)(例えば、熱安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、UV安定剤、染料、顔料、着色剤等など)を含むポリアミド組成物の成形から生じる、本発明によるポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、同様なしかし導電性材料(B)なしの組成物と比較して、流れ方向の成形収縮対横方向の成形収縮(%単位)のより低い比率を有する。
【0167】
いくつかの実施形態において、本発明による成形品又は電子機器部品は、最大でも0.1、又は最大でも0.09の反りを有する。反りは、ポリアミド組成物を含む成形品又は電子機器部品の横方向のパーセント収縮から流れ方向のパーセント収縮を引いた絶対値であり、%収縮の両方とも、好ましくはASTM D955に従って測定される。
【0168】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のポリアミド混合物(A)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、及び任意選択的に添加剤(D)(例えば、熱安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、UV安定剤、染料、顔料、着色剤等など)を含むポリアミド組成物の成形から生じる、本発明によるポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、同様なしかし導電性材料(B)なしの組成物と比較してより低い反り(%単位)を有する。
【0169】
いくつかの実施形態において、ポリアミド混合物(A)、導電性材料(B)、ガラスフレーク(C)、任意選択的に添加剤(D)(例えば、熱安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、UV安定剤、染料、顔料、着色剤等など)を含むポリアミド組成物の成形から生じる、本発明によるポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、同様なしかし導電性材料(B)なしの組成物と比較して、改善された引張弾性率、改善された引張強度、改善された曲げ弾性率、改善された曲げ強度、及び/又は改善された衝撃特性(ノッチ付き及びノッチなし値)を有する。
【0170】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物の成形から生じる、本発明によるポリアミドベースの成形品又は電子機器部品は、以下の特性:
- 少なくとも15GPa若しくは少なくとも16GPa及び/又は最大でも30GPa、若しくは最大でも26GPaの引張弾性率(ISO 527に従って測定される);
- 少なくとも150MPa、若しくは少なくとも156MPa及び/又は最大でも210MPa、若しくは最大でも200MPa、若しくは最大でも190MPaの引張強度(ISO 527に従って測定される);
- 少なくとも14GPa及び/又は最大でも30GPa、若しくは最大でも25GPaの曲げ弾性率(ISO 178に従って測定される);
- 少なくとも200MPa、若しくは少なくとも225MPa及び/又は最大でも350MPa若しくは最大でも330MPaの曲げ強度(ISO 178に従って測定される);
- 少なくとも3kJ/m若しくは少なくとも3.2kJ/m及び/又は最大でも6kJ/mのノッチ付き衝撃(ISO 180に従って測定される);
- 少なくとも21.5kJ/m若しくは少なくとも27kJ/m及び/又は最大でも40kJ/mのノッチなし衝撃(ISO 180に従って測定される)
の1つ以上を有する。
【0171】
物品を製造するために用いられる成形技法にかかわらず、いくつかの実施形態において、本発明による成形品又は電子機器部品は、その表面光沢度で表され得る、比較的滑らかな表面を有し得る。例えば、光沢計を約80°~約85°の角度で用いて測定されるような表面光沢度は、少なくとも35%、又は少なくとも約38%、又は少なくとも40%であり得る。約80°~約85°の角度で測定される表面光沢度は、最大でも99%、又は最大でも98%、又は最大でも97%、又は最大でも96%、又は最大でも95%、又は最大でも94%、又は最大でも93%、又は最大でも92%、又は最大でも91%、又は最大でも90%であり得る。約80°~約85°の角度で測定される光沢度の好ましい範囲は、約40%~95%であり得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物がポリアミド(A3)を省く場合、約85°の角度で測定される表面光沢度は、約40%~60%の範囲であり得る。他の実施形態において、ポリアミド組成物がポリアミド(A3)を含有する場合、約85°の角度で測定される表面光沢度は、約60%~95%、好ましくは約65%~90%の範囲であり得る。
【0173】
滑らかな表面を有する部品は十分に良好な機械的特性を有さないであろうと従来考えられているが、しかしながらそれとは反対に、本発明のポリアミドベースの成形品は、前に記載されたように及び実施例に例示されるように、優れた機械的特性を有することが分かった。
【0174】
ポリアミド組成物の使用
いくつかの実施形態において、ポリアミド組成物又は物品は、上記のような、電子機器部品、好ましくは携帯電子機器部品を製造するために使用することができる。
【0175】
ポリアミド組成物の反り及び/又は成形収縮を低減するための方法
本発明の別の態様は、ポリアミド混合物(A)、ガラスフレーク(C)、及び任意選択的に添加剤(D)を、導電性材料(B)(好ましくはそれは、ミルド炭素繊維を含む)とブレンドして成形組成物を形成し、その後成形組成物を成形、好ましくは射出成形に供して成形品を形成することを含む、ポリアミド組成物から製造された成形品の反り及び/又は成形収縮を低減するための方法に関する。ブレンディングは、好ましくは、上記のような溶融ブレンディングによって実施される。
【0176】
ポリアミド組成物の体積抵抗率を低減するための方法
本発明の別の態様は、ポリアミド混合物(A)、ガラスフレーク(C)及び任意選択的に少なくとも1種の添加剤(D)を、導電性材料(B)(好ましくはそれは、炭素繊維又はミルド炭素繊維を含む)とブレンドして成形組成物を形成し、その後成形組成物を成形、好ましくは射出成形に供して成形品を形成することを含む、ポリアミド組成物から製造される成形品の体積抵抗率を低減するための方法に関する。ブレンディングは、好ましくは、上記のような溶融ブレンディングによって実施される。
【実施例
【0177】
本発明は、これから、以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0178】
以下の実施例は、
○ ESD材料をもたらすための減少した体積抵抗率、
○ 下記を含む改善された機械的特性
- 改善された衝撃特性、
- 改善された引張特性(引張弾性率、引張強度)、
- 改善された曲げ特性(曲げ弾性率、曲げ強度)
○ 改善された成形収縮特性
- 改善された収縮(流れ方向の及び横方向のin/in%収縮)
- 改善された収縮比(流れ方向の%収縮/横方向の%収縮)
- 低下した反り(横方向の収縮及び流れ方向の収縮の差の絶対値)
を実証する。
【0179】
いくつかの実施例は、さらに、
○ 優れた表面特性
- 高い光沢度
○ 良好なCLTE(寸法安定性)
を実証する。
【0180】
本実施例で用いるところでは、「E」は本発明の実施例実施形態を意味し、「CE」は比較例を意味する。
【0181】
原材料
サンプルを形成するために使用される原材料は、以下に示す通りである:
ポリアミド:
- ポリアミド(A1):PA6T/66(Tg=100℃、Tm=311℃) Solvay Specialty Polymers製のAmodel(登録商標)4002(65モル%のテレフタル酸及び35モル%のアジピン酸のヘキサメチレンジアミンとの重縮合から製造された)のような
- ポリアミド(A2):PA12(Tg=40~50℃、Tm=178~180℃) Evonik製のVestamid L-1700のような
- ポリアミド(A3):PA610(Tg=50~60℃、Tm=220℃) Radici製のRadipol DC 40のような
導電性材料(B):
- 導電性材料(「B1」):粒状の300ミクロンのミルド炭素繊維、ProcotexからAPPLY CARBON CF MLD 300 G U1リサイクルド炭素繊維粒状物として市販されている;約300±40ミクロンの平均サイズ、約94重量%の炭素含有量、約7±2ミクロンのモノフィラメント繊維径、及び15・10-3ohm.mの平均体積抵抗率で特徴付けられる。
- 導電性材料(「B2」):APPLY CARBONチョップド炭素繊維CF.OS.U1-6MM、Procotex製
ガラスフレーク(C):
MEG160FY-M03 160ミクロンの平均長さ(平面)及び0.7ミクロンの厚さ、NSG製
添加剤(D)
- 添加剤1(「D1」): 潤滑剤(LLDPE GRSN-9820 Dow製)
- 添加剤2(「D2」): 熱安定剤(Irganox(登録商標)1010 BASF製)
- 添加剤3(「D3」): カーボンブラックコンセントレート Plasblak UN2014 Cabot製(ポリオレフィン担体中のカーボンブラック)
- 添加剤4(「D4」): カーボンブラックコンセントレート CPTA-25759-CA1000 80重量%のAmodel(登録商標)1006及び20重量%のカーボンブラックを含む、Clariant製
- 任意選択的な添加剤:顔料/染料がポリアミド組成物に添加されてもよい。
【0182】
試験方法
● 引張特性-ISO 527
〇 引張弾性率、引張強度、及び破断点伸びは、5つの射出成形したISOタイプ1a引張検体(全長=170mm、ゲージ長=50mm、試験区間の幅=10mm、及び厚さ=4mm)で測定した。
● 曲げ特性-ISO 178
〇 曲げ弾性率、曲げ強度、及び曲げ破断点伸びは、5つの射出成形したISOタイプ1A試験片(80±2mmの長さ、10±0.2mmの幅、4±0.2mmの厚さ)で測定した。
● 衝撃強度-ISO 180
〇 ノッチ付き及びノッチなしアイゾット衝撃強度特性は、10の射出成形されたISOタイプ1A試験片(80±2mmの± ±長さ、10±0.2mmの幅、4±0.2mmの厚さ)を使用してkJ/m単位で測定した。
● CLTE-ASTM E831
〇 寸法変化は、3.2mm厚さ×12.7mm幅×12.0~13.0mm長さの寸法を有する射出成形された検体で測定した。TMAを使用して流れ及び横方向に5℃/分の加熱速度で0℃から50℃までCLTEを測定した。
● 成形収縮-ISO 294(ASTM D955)
〇 成形収縮(流れ方向の成形収縮(%)及び横方向の成形収縮(%))は、60mm幅×60mm長さ×2mm厚さの寸法の5つの射出成形したプラークで測定した。
● 反りは、以下の通り測定する:上で詳述されたような、ASTM D955に従って、ポリアミド組成物を60mm×60mm×2mmの寸法を有するプラークへと射出成形した。反りは、横方向のパーセント収縮から流れ方向のパーセント収縮を引いた絶対値として計算した。
● 光沢試験方法-ASTM D523
〇 収縮プラーク(60mm×60mm×2mm)を使用して光沢を測定した。これらのプラークの表面の光沢度を測定するために任意の光沢計を使用し得る。光沢度測定値は、各場所で2つの繰り返し測定で、プラークの表面に対して20°、60°又は85°の入射光角度で表面の2つの異なる場所において取った。光沢度を計算するために測定値の平均を取った。
● 体積抵抗率-ASTM D257
〇 体積抵抗率は、寸法4インチ×4インチ×1/8インチ(長さ×幅×厚さ)又は60mm×60mm×2mm(長さ×幅×厚さ)の5つの射出成形したプラークで測定した。
【0183】
実施例1-ポリアミド混合物: PA6T/66(A1としての)及びPA12(A2としての)を使ったポリアミド組成物
この実施例において、ポリアミドA1(PA6T/66)が、ポリアミドA2(PA12)、ガラスフレーク(C)、ミルド炭素繊維(B1)、添加剤(D1)としての潤滑剤、添加剤(D2)としての熱安定剤と配合された(溶融ブレンドされた)ポリアミド組成物の幾つかのサンプルを調製した。サンプルE1及びE2は、1pphのカーボンブラックコンセントレート(D3)をさらに含有した。脂肪族ポリアミド(A2)に対する半芳香族ポリアミド(A1)の重量比は、それぞれ、サンプルE1及びE2において7.2及び6.8であった。
【0184】
比較のために、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0を調製した。脂肪族ポリアミド(A2)に対する半芳香族ポリアミド(A1)の重量比は、サンプルCE0において8.8であった。
【0185】
溶融ブレンディングは、Coperion(登録商標)ZSK-26共回転二軸スクリュー押出機を使用して実施し、配合されたサンプルを、その後ASTM D3641に従って成形した。
【0186】
表1は、ポリアミド組成物及びまた以下の特性: 組成物サンプルCE0及びE1~E2の体積抵抗率、衝撃特性、引張弾性率、引張強度、引張破断点伸びを含む機械的特性、成形収縮特性(流れ方向の及び横方向のin/in%)、反り及び収縮比(流れ方向の%収縮/横方向の%収縮)を示す。
【0187】
表1に示されるように、サンプルE1、E2においてポリアミド組成物への8重量%及び10重量%のミルド炭素繊維の添加は、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0と比較して体積抵抗率を低下させた。サンプルE1、E2は、それらの体積抵抗率が10+5~5・10+12ohm・cmの範囲内にあるので、静電気散逸性であった。サンプルCE0は、ESD材料ではなかった。
【0188】
さらに、8重量%及び10重量%のミルド炭素繊維(B1)ありのサンプルE1、E2の衝撃特性(ノッチ付きアイゾット及びノッチなしアイゾット)、引張弾性率並びに引張強度は、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0と比較して改善された。
【0189】
【表1】
【0190】
8重量%及び10重量%の炭素繊維ありのサンプルE1、E2の引張破断点伸び(%)は、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0と比較してわずかにより低かった。
【0191】
さらに、成形収縮特性はまた、ミルド炭素繊維の添加で改善された。
【0192】
8及び10重量%のミルド炭素繊維(B1)の添加で、サンプルE1、E2におけるポリアミド組成物の横の成形収縮は、サンプルCE0と比較して36及び39%だけ減少し、8~10重量%のミルド炭素繊維(B1)の添加が横の成形収縮を減少させることを示した。さらに、サンプルE1、E2におけるポリアミド組成物の流れ方向の成形収縮はまた、横の成形収縮について観察されたものよりも少ない程度であるが、ミルド炭素繊維(B1)なしのサンプルCE0と比較して減少した。
【0193】
サンプルE1、E2の流れ方向の対横方向の収縮比は、67%及び72%であり、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0についての56%と比較して等方性収縮にはるかにより近かった。
【0194】
反りはまた、ミルド炭素繊維の添加で低下した。サンプルE1、E2の反りは、それぞれ、0.09%及び0.07%であり、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0の反り(0.19%)よりもはるかに低かった。
【0195】
8重量%及び10重量%の炭素繊維ありのサンプルE1、E2の表面光沢は、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE0の値(85°で59%)と比較してより低かった。しかしながら、サンプルE1、E2について85°で測定された光沢は、それでも少なくとも40%であった。
【0196】
サンプルE1、E2で得られた結果は、PA6T/66及びPA12を含むポリアミド組成物における8及び10重量%のミルド炭素繊維並びに50重量%のガラスフレークの添加によって、耐衝撃性を改善し、引張弾性率及び引張強度を改善し、並びにまた成形収縮特性を改善(より低い反り及び等方性収縮への近づき)しながら、好適なESD材料を得ることができることを実証した。
【0197】
融解温度(Tm)は、ASTM D3418に従って並びにサンプルCE0、E1及びE2について測定し、Tm値は、323~326℃であった。PA6T/66及びPA12を含むポリアミド組成物におけるミルド炭素繊維の添加によって引き起こされるTmへの悪影響はなかった。
【0198】
実施例2-PA6T/66+PA12+PA610を使ったポリアミド組成物
この実施例において、ポリアミドA1(PA6T/66)が、ポリアミドA2(PA12)、ポリアミドA3(PA610)、ガラスフレーク(C)、チョップド炭素繊維(B2)及び添加剤(D1)としての潤滑剤と配合された(溶融ブレンドされた)ポリアミド組成物の幾つかのサンプルE4~E6を調製した。サンプルE5は、さらに、10pphのカーボンブラックコンセントレート(D4)を含有し、一方、他のサンプルE4及びE6は、1pphのカーボンブラックコンセントレート(D4)を含有した。脂肪族ポリアミド(A2)+(A3)に対する半芳香族ポリアミド(A1)の重量比は、それぞれ、サンプルE4、E5及びE6において1.64、1.67、及び1.67であった。
【0199】
比較のために、炭素繊維(B2)なしのサンプルCE3を調製した。
【0200】
溶融ブレンディングは、Coperion(登録商標)ZSK-26共回転二軸スクリュー押出機を使用して実施し、配合されたサンプルを、その後ASTM D3641に従って成形した。
【0201】
表2は、ポリアミド組成物及びまた以下の特性: 組成物サンプルCE3及びE4~E6の、サンプルの厚さが約2mmであったものについての体積抵抗率、衝撃特性、引張特性(弾性率、強度、破断点伸び)、曲げ特性(弾性率、強度、破断点伸び)を含む機械的特性、流れ及び横方向のCLTE(0~50℃)特性、成形収縮特性(流れ方向の及び横方向のin/in%)、反り及び収縮比(流れ方向の%収縮/横方向の%収縮)を示す。
【0202】
表2に示されるように、サンプルE4~E6におけるポリアミド組成物への8及び10重量%のチョップド炭素繊維の添加は、チョップド炭素繊維なしのサンプルCE3と比較して体積抵抗率を低下させた。サンプルE4~E6は、それらの体積抵抗率が10+5~5・10+12ohm.cmの範囲内にあったので、静電気散逸性であった。サンプルCE3は、ESD材料ではなかった。
【0203】
ポリアミド組成物サンプルE5における8重量%の炭素繊維と10pphのカーボンブラックとの組合せは、8重量%のチョップド炭素繊維及び1pphのみのカーボンブラックを含有するサンプルE6と比較して37%だけ体積抵抗率を低下させた。それ故に、カーボンブラックコンセントレートの量を1pphから10pphまで増加させると、体積抵抗率を減少させることができることが観察された。
【0204】
さらに、8重量%又は10重量%のチョップド炭素繊維(B2)ありのサンプルE4~E6の衝撃特性(ノッチ付きアイゾット及びノッチなしアイゾット)、引張弾性率、引張強度、曲げ弾性率並びに曲げ強度は、チョップド炭素繊維なしのサンプルCE3と比較して改善された。
【0205】
8重量%又は10重量%のチョップド炭素繊維(B2)ありのサンプルE4~E6の引張破断点伸びは、チョップド炭素繊維なしのサンプルCE3と比較してわずかにより低かった。8重量%又は10重量%の炭素繊維(B2)ありのサンプルE4~E6の曲げ破断点伸び(%)は、炭素繊維なしのサンプルCE3と比較して同じものであるか、又より低いかのどちらかであった。
【0206】
【表2】
【0207】
サンプルE6(8重量%のB2、1pphのD4)について、流れ方向の対横方向の収縮比は、82%であり、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE3についての75%と比較して等方性収縮にはるかにより近かった。サンプルE6の反り0.05%はまた、改善され、チョップド炭素繊維なしのサンプルCE3(0.08%)よりも低かった。
【0208】
他方で、サンプルE4(10重量%のB2、1pphのD4)及びサンプルE5(8重量%のB2、10pphのD4)について、収縮特性は、改善されなかった。10重量%のチョップド炭素繊維+1pphのカーボンブラックコンセントレート又は8重量%のチョップド炭素繊維+10pphのカーボンブラックコンセントレートの添加は、流れ方向の収縮の減少をもたらしたが、同じ程度まで横方向の収縮を減少させなかった。より多い量の炭素繊維(E4における)及びまた10倍高い量のカーボンブラック粉末(E5における)は、流れ方向に沿った繊維の配列に有利に働く可能性が高い。結果として、サンプルE4及びE5について、収縮比(58%、51%)は、比較サンプルCE3よりも低かったし、反り(0.13%、0.16%)はそれよりも高かった。
【0209】
8重量%及び10重量%の炭素繊維ありのサンプルE4~E6の表面光沢は、ミルド炭素繊維なしのサンプルCE3の値(85°で86.8%)と比較してより低かった。しかしながら、サンプルE4~E6について85°で測定された光沢は、それでも少なくとも75%であり、滑らかな表面外観の保持を示した。
【0210】
サンプルE4~E6で得られた結果は、PA6T/66、PA12及びPA610を含むポリアミド組成物における8及び10重量%のチョップド炭素繊維並びに50重量%のガラスフレークの添加によって、耐衝撃性を改善し、引張弾性率及び引張強度を改善し、曲げ弾性率及び曲げ強度を改善し、並びに優れた表面特性(高い光沢度)を保持しながら、好適なESD材料を得ることができることを実証した。
【0211】
サンプルE5はまた、成形収縮特性の改善(より低い反り及び等方性収縮への近づき)を示した。
【0212】
実施例2を実施例1と比較するときに、PA6T/66及びPA12(ポリアミド(A1)及び(A2)としての)の混合物へのPA610(ポリアミド(A3)としての)の添加が、滑らかな表面(高い光沢)を有するESD材料をもたらしたことがまた観察される。
【0213】
Tmは、ASTM D3418に従って測定した。サンプルCE3及びE4~E6について、Tm値は、336~340℃であった。PA6T/66、PA12及びPA610を含むポリアミド組成物においてチョップド炭素繊維の添加によって引き起こされるTmへの悪影響はなかった。
【0214】
本発明の好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、それらの変更は、本発明の主旨又は教示から逸脱することなく当業者により行うことができる。本明細書に記載される実施形態は、例示的であるにすぎず、限定的ではない。組成物、物品、及び方法の多くの変形及び変更は、可能であり、本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、上で説明された記載によって限定されないが、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の全ての同等物を含む。それぞれの及びあらゆるクレームは、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は、さらなる説明であり、本発明の好ましい実施形態への追加である。上記の文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明白な開示に反する主題が援用されないように限定される。
【0215】
本明細書に引用される全ての特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されるものを補完する例示的な、手続上の又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書によって援用される。参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【国際調査報告】