(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】高性能ベンゾオキサジン誘導体ビトリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 14/073 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08G14/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521081
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022077812
(87)【国際公開番号】W WO2023057568
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518008275
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴァージュ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】プチョト,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アドジャオウド,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペラン,ヘンリー
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033FA01
4J033FA04
4J033FA11
4J033HA22
4J033HB01
4J033HB08
4J033HB09
(57)【要約】
本発明はまた、式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを合成するプロセスであって、以下からなるステップを含むプロセスに関する:
c)フェノール環上に少なくとも1つのR
***基を含む式(II)のフェノール酸誘導体を:
【化1】
(式中、xは、0~1、y=1-xである)、
式(III)の多官能性分子またはオリゴマーと、
【化2】
ブレンステッド酸型の触媒の存在下、温度25℃~200℃で1時間~72時間で反応させ、フェノール末端オリゴマーまたは分子(化合物(IV))を生成するステップと、化合物(IV)を:
-式(V)のアミノアルコール:
【化3】
-式(VI)の第一級アミン誘導体、
R
**-NH
2 (VI)、及び
-式(VII)のパラホルムアルデヒドの混合物と、
【化4】
m=8~100
80℃~100℃の温度範囲で1時間~10時間撹拌下で反応させて、式(I)の化合物を得るステップ。
【化5】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマー
【化1】
ここで、
Rは、任意によりヘテロ原子を含む、直鎖または分岐鎖状のC
1~C
20アルキル基、シクロ(C
3~C
6アルキル)基、ヘテロシクロ(C
3~C
6アルキル)基からなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、N、S、Si及びO、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
12アルケニル基、置換または非置換直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
12アルキニル基、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基、-(CH
2)
n3-フェニル基(式中、n3は、1から10の整数である)、シロキサン基から選択され;
R
1は、
【化2】
であり;R
2は、
【化3】
であり;
R
pは、H、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
20アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
12アルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
12アルキニル基、直鎖もしくは分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基及び
【化4】
からなる群から選択され;
ここで、
式(I)のR
1とR
2は異なり;
x
1、x
2、及びx
pは、独立して0~1であり;y
1=1-x
1であり;y
2=1-x
2y
p=1-x
pであり、x
1、x
2及びx
pは、共に0ではない;
pは、1~100であり;
R
1’、R
2’、及びR
p’は、独立して、C-直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基またはアルコキシ基、-C-直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、-C-置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルキニル基、及び-C-直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換または非置換フェニル基からなる群から選択され;
R
p’’は、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルキニル基、及び直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基からなる群から選択され;
R
*は、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基またはアルコキシ基、シクロ(C
3~C
6アルキル)基、ヘテロシクロ(C
3~C
6アルキル)基からなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、N、Si、S、及びO、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルキニル基、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基、(CH
2)n
3-フェニル基及び-(CH
2)n
3-O-(CH
2)n
4(式中、n3及びn4は、独立して1~10の整数である)から選択され;
R
**は、R
*と同じであり、O-、N-、Si-またはS-(CH
2)
n3-CH-(CH
3)
2基、O-、N-、Si-またはS-(CH
2)n
3-(CHZ)
n4-(CH
3)
2基、O-、N-、Si-またはS-(CH
2)
n3-(CHZ)
n4-(CH
2)
n3-CH
3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)
n4-(CH
2)
n3-CH
3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)
n4-[(CH
2)
n3-CH
3]
2基、O-置換または非置換のC
2-C
6直鎖または分枝鎖状アルキニル基、-(CH
2)
n3-C≡N基、多環芳香族または複素芳香族炭化水素(例えば、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン)からなる群から選択されるメンバーをさらに含み、これらは、任意により、直鎖状または分枝鎖状のC
1-C
6アルキル基またはアルコキシ基、シクロ(C
3-C
6アルキル)、ヘテロシクロ(C
3-C
6アルキル)によって置換され、ここで、ヘテロ原子は、N、S、Si、及びO、直鎖もしくは分岐鎖状のC
2~C
6アルケニル基もしくはアルキレンオキシ基からなる群から選択されるか、または置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖状のC
2~C
6アルキニル基によって置換され、式中、n3及びn4は、独立して1~10の整数であり、Zは、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、及び直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルケニル置換または非置換フェニル基からなる群から選択され、少なくとも1つのO原子は、隣接する2つのCの間に存在するかまたは存在しない、
R
***は、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基からなる群から選択され、さらに直鎖もしくは分枝鎖状のC
1~C
15アルキル基またはC
2~C
15のアルケニル基または
【化5】
を含み、
【数1】
ここで、
【数2】
は、R
1基あたりのアミノアルコールの数であり、
【数3】
は、R
1基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表し、
【数4】
は、R
1基あたりのアミノ基の総数であり;
ここで、
【数5】
は、R
2基あたりのアミノアルコールの数であり、
【数6】
は、R
2基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表し、
【数7】
は、R
2基あたりのアミノ基の総数であり;
ここで、
【数8】
は、R
p基あたりのアミノアルコールの数であり、
【数9】
は、R
p基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表し、
【数10】
は、R
p基あたりのアミノ基の総数である。
【請求項2】
請求項1に記載のベンゾオキサジン含有エステルモノマー
R
*は、直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
4アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
4アルケニル基またはアルキレンオキシ基、非置換の直鎖状または分枝鎖状のC
2~C
4アルキニル基、非置換フェニル基及び(CH
2)n
3-フェニル基、-(CH
2)
n3-O-(CH
2)n
4(式中、n3及びn4は、独立して、1~6の整数である)からなる群から選択される;
R
**は、R
*と同じであり、O-、N-、SiまたはS-(CH
2)
n3-CH-(CH
3)
2基、O-、N-、SiまたはS-(CH
2)
n3-(CHZ)
n4-(CH
3)
2基、O-、N-、SiまたはS-(CH
2)
n3-(CHZ)
n4-(CH
2)
n3-CH
3基、O-、N-、SiまたはS-(CHZ)
n4-(CH
2)
n3-CH
3基、O-、N-、SiまたはS-(CHZ)
n4-[(CH
2)
n3-CH
3]
2基、及びO-置換または非置換のC
2~C
4直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基(式中、Zは、請求項1で定義したとおりである)、-(CH
2)
n3-C≡N、シクロ(C
3~C
4アルキル)、ヘテロシクロ(C
3~C
4アルキル)、多環芳香族または複素芳香族炭化水素から選択されるメンバーをさらに含み、式中、ヘテロ原子は、N、S、Si、及びOからなる群から選択され、任意により、直鎖もしくは分枝鎖状のC
1~C
4アルキル基もしくはアルコキシ基、直鎖もしくは分枝鎖状のC
2~C
4アルケニル基もしくはアルキレンオキシ基によって置換されるか、または置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐鎖状のC
2~C
4アルキニル基によって置換され、式中、n3及びn4は、独立して1~6の整数であり;
R
***は、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
4アルキル基からなる群から選択され、直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1~C
10アルキル基またはC
2~C
10のアルケニル基または
【化6】
をさらに含む。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエステル含有ベンゾオキサジンモノマー;
R
*は、-CH
3、-(CH
2)n
3-CH
3、-(CH
2)n
3-CH-[(CH
2)n
4-CH
3]
2、-C(CH
3)
3、(CH
2)n
3-(C
6H
5)、-(CH
2)n
3-CH=CH
2、-(CH
2)n
3-C≡CH、-(CH
2)n
3-O-(CH
2)n
4(式中、n3及びn4は、独立して、1~4の整数である)、フェニル、及び-(CH
2)
3-フェニルからなる群から選択され;
R
**基は、R
*であるか、または、CH
3、-(CH
2)
n3-CH
3、-(CH
2)
n3-CH-[(CH
2)
n4-CH
3]
2、-C(CH
3)
3、(CH
2)
n3-(C
6H
5)、-(CH
2)
n3-CH=CH
2、-(CH
2)
n3-C≡CH,O-(CH
2)
n3-C≡CH、O-(CH
2)
n3-C≡N、(CH
2)
n3-C≡N、及び-(CH
2)
n3-置換または非置換フラン、フェニル(式中、n3及びn4は、独立して1~4の整数である)からなる群から選択され;
R
***は、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC
1~C
3アルキル基からなる群から選択され、直鎖もしくは分枝鎖状のC
1~C
6アルキル基またはC
2~C
6のアルケニル基または
【化7】
をさらに含む。
【請求項4】
以下からなるステップを含む、式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを合成するためのプロセス:
a)フェノール環上に少なくとも1つのR
***基を含む式(II)のフェノール酸誘導体を:
【化8】
(式中、xは、0~1、y=1-xである)、
式(III)の多官能性分子またはオリゴマーと、
【化9】
ブレンステッド酸型の触媒の存在下、温度25℃~200℃で1時間~72時間で反応させ、フェノール末端オリゴマーまたは分子(化合物(IV))を生成するステップと、
b)前記化合物(IV)を:
-式(V)のアミノアルコール:
【化10】
-式(VI)の第一級アミン誘導体、
R
**-NH
2 (VI)、及び
-式(VII)のパラホルムアルデヒドの混合物と、
【化11】
m=8~100
80℃~100℃の温度範囲で1時間~10時間撹拌下で反応させて、式(I)の化合物を得るステップ
(式中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
p、R
*、R
**、R
***及びx
1、x
2、x
p、y
1、y
2、y
p、及びpは、請求項1~3のいずれか一項に記載のとおりであり、R
n’は、R
1’またはR
2’であり、R
1’は、R
2’とは異なる、ただし、フェノール酸誘導体の少なくとも1つのR
***が-OH基に関してオルト位にある場合、R
***は、Hである)。
【請求項5】
前記フェノール酸誘導体(式(II))が、モノ-、ジ-、トリ-ヒドロキシ安息香酸誘導体、アナカルド酸誘導体、ヒドロキシ桂皮酸誘導体、脂肪族X-ヒドロキシフェニル酸誘導体(Xは、2~4である)、及び脂肪族ジフェノール酸誘導体、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ステップa)における出発反応物である、フェノール酸誘導体:多官能性分子またはオリゴマーのそれぞれの化学量比が、1.0~3.0当量:1.0当量であり、結果として、1.0当量のフェノール末端オリゴマーまたは分子が得られる、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第一級アミン誘導体が、アリルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2-アミノフルオレン、アミノフェニルアセチレン、プロパルギルエーテルアニリン、4-アミノベンゾニトリル、フルフリルアミン及びアニリン、またはそれらの混合物からなる群からさらに選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップb)の前記温度範囲が、80℃~95℃である、請求項4~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップb)が1~8時間実施される、請求項4~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップb)における前記出発反応物、フェノール末端オリゴマーまたは分子:アミノアルコール:第一級アミン誘導体:パラホルムアルデヒドのそれぞれの化学量が、1.0当量:x
1(1.0当量18.0当量:y
1(1.0当量18.0当量:2.0~36.0当量または1.0当量:x
2(1.0当量18.0当量:y
2(1.0当量18.0当量:2.0~36.0当量または1.0当量:x
p(1.0当量18.0当量:yp(1.0当量18.0当量:2.0~36.0当量であり、結果として、1.0当量のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーとなり、式中、x
1、x
2及びx
pは、独立して、=0,1~1であり、y
1=1~x
1、y
2=1~x
2及びy
p=1~x
pである、請求項4~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
アミノアルコールの相対モル%対第一級アミン誘導体の相対モル%が、それぞれ10モル%対90モル%である、請求項4~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを調製するためのプロセスであって、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを得るために、100℃~250℃の範囲内の温度で、1時間~24時間、請求項1~3のいずれか一項に記載のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを重合するステップまたは請求項4~11のいずれか一項に記載のプロセスによって得られるようなステップを含む、プロセス。
【請求項13】
以下の特徴の少なくとも1つを呈する、請求項12に記載のプロセスによって得られ得るポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマー:
(i)-50℃~250℃のT
V値;好ましくは、130℃~220℃、より好ましくは130℃~190℃、
(ii)-50℃~300℃、好ましくは130℃~200℃、より好ましくは130℃~180℃のT
V値以上の緩和温度値。
【請求項14】
以下からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを呈する、請求項13に記載のポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマー:
-緩和時間が、0.5秒~2時間、好ましくは1秒~1時間、より好ましくは5秒~50分である;
-前記緩和時間に関連する活性化エネルギーが、50kJ/mol~200kJ/mol、好ましくは70kJ/mol~170kJ/mol、より好ましくは100kJ/mol~160kJ/molである;
-加工温度が、100℃~250℃、好ましくは130℃~250℃、より好ましくは150℃~200℃、最も好ましくは150℃~170℃である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル含有ベンゾオキサジン誘導体ビトリマーの分野、及びその製造プロセス、ならびに様々な用途におけるビトリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、ほとんどすべての場合、熱硬化性樹脂から製造され、熱硬化性樹脂は、その寸法安定性、機械的特性、及びクリープ/薬品耐性により、多くの用途のために選択される材料である。しかし、これらが永続的分子構造である結果として、リサイクルまたは再加工が不可能であり、最終的に埋め立て処分される。
【0003】
この欠点に取り組むための化学的方法は、交換可能な化学結合の導入によってもたらされ、これが、動的架橋となる。このような交換可能な結合を含むポリマーネットワークは、共有結合適応性ネットワーク(CAN)としても知られている(W.Denissen et al.-Wim Denissen,Johan M.Winne and Filip E.Du Prez,Chem.Sci.,2016,7,30-38)。CANは、交換機構に応じて、解離型または結合型いずれか2つのグループにさらに分類され得る。第一に、化学結合がまず破壊され、次に別の場所で再び形成される。ディールスアルダー反応は、解離型CANの最も一般的な機構である。第二に、ポリマーネットワークは、加熱時に解重合しない、固定された架橋密度を特徴とする。共有結合による結合は、新しい結合が形成されたときにのみ破壊されるため、これらのネットワークは、永続的かつ動的になる。最初に報告された結合型CAN(2005年)は、例えば、硫化アリルを使用することによる光媒介反応に基づくものであった。後に、トリチオカーボネートと代替ラジカル発生剤を使用することにより、同様の交換機構が導入された。
【0004】
2011年に、Leibler et al(D.Montarnal,M.Capelot,F.Tournilhac and L.Leibler,Science,2011,334,965-968)は、好適なエステル交換触媒をエポキシ/酸またはエポキシ/無水物ポリエステルベースのネットワークに追加することにより、結合型CANの分野を拡大させ、その結果、加熱時に、粘度の緩徐な低下を示す永続的なポリエステル/ポリオールネットワークが得られた。このような溶融石英特有の特徴は、有機高分子材料ではこれまで観察されなかった。したがって、発明者は、これらの材料にビトリマーという名前のものを導入した。
【0005】
ビトリマーは、その優れた機能により、高分子材料の第3のクラスとして表現されている。この共有結合ネットワークの動的性質は、可逆的化学結合から生じ、材料を熱可塑性樹脂のように修復、リサイクル、及び再加工できるようになる。これらの交換反応は、外部刺激、最も高い頻度で、温度によって引き起こされる。ビトリマーの粘度は、加熱時に徐々に減少し、ネットワークに可鍛性をもたらしながら、内部応力を緩和させる。全用途範囲でのネットワーク完全性により、耐機械性及び耐溶剤性が確保される。
【0006】
2011年にLeibler et al.(前述)によって開発された原型のビトリマー後、動的エステル交換反応は、過去10年にわたって大きな重要性を示した。エステル結合とヒドロキシル基との間の高温において誘導されるこれらの化学交換は、トポロジー再編成の原因である。エステル交換機構は、調整可能な特性を備えた自己修復可能、リサイクル可能、及び再加工可能な材料を設計するために、架橋ネットワークに実装された。
【0007】
Demongeot et al.(A.Demongeot,R.Groote,H.Goossens,T.Hoeks,F.Tournilhac and L.Leibler,Macromolecules,2017,50(16),6117-6127)は、ビトリマーの概念を市販の熱可塑性樹脂に適応させた。エステル交換による交換をベースにした架橋ポリブチレンテレフタレート(PBT)ビトリマーは、反応押出によって意図したとおりに調製された。製造技術及びこれらのネットワークの潜在的範囲を改善することに加えて、地球環境状況により、科学界は、自然発生原料に由来する持続可能なポリマーを促進するよう求められている。Altuna et al.(F.I.Altuna,V.Pettarin and R.Williams,Green Chem.,2013,15,3360-3366)は、エポキシ化大豆油及びクエン酸水溶液から開始して、ビトリマーを連想させる特性を示す完全バイオベースポリエステルを生成する試みを行った。さらに、Legrand et al.(A.Legrand and C.Soulie-Ziakovic,Macromolecules,2016,49,5893-5902)は、増強された特性を有するシリカ強化エポキシビトリマーナノ複合体の開発により、ビトリマーネットワークの用途スケールの拡張を可能にした。
【0008】
ポリベンゾオキサジンは、優れた機械的及び熱的特性を有する新しい種類の熱硬化性樹脂である。他の多くの熱硬化性樹脂と同様に、再成形、再加工、リサイクルはできない。妥当なレベルの修復能力を示すいくつかの例が報告されている(L.Zhang,Z.Zhao,Z.Dai,L.Xu,F.Fu,T.Endo,X.Liu,ACS Macro.Lett.2019,8,5,506-511及びArslan M.,Kiskan B.,Y.Yagci,Sci.Rep.2017,7,5207)。しかし、ポリベンゾオキサジンは、ビトリマー能力がいずれも示されていない場合であっても、依然として、高性能材料クラスである。このような持続可能なビトリマーは、スマートコーティング、可逆接着剤、さらには複合材料用のリサイクル可能なマトリックス樹脂に向けて、ポリベンゾオキサジンの使用を拡大させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】W.Denissen et al.-Wim Denissen,Johan M.Winne and Filip E.Du Prez,Chem.Sci.,2016,7,30-38
【非特許文献2】D.Montarnal,M.Capelot,F.Tournilhac and L.Leibler,Science,2011,334,965-968
【非特許文献3】A.Demongeot,R.Groote,H.Goossens,T.Hoeks,F.Tournilhac and L.Leibler,Macromolecules,2017,50(16),6117-6127
【非特許文献4】F.I.Altuna,V.Pettarin and R.Williams,Green Chem.,2013,15,3360-3366
【非特許文献5】A.Legrand and C.Soulie-Ziakovic,Macromolecules,2016,49,5893-5902
【非特許文献6】L.Zhang,Z.Zhao,Z.Dai,L.Xu,F.Fu,T.Endo,X.Liu,ACS Macro.Lett.2019,8,5,506-511及びArslan M.,Kiskan B.,Y.Yagci,Sci.Rep.2017,7,5207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記で引用した先行技術の少なくとも1つの欠点に対する解決策を提供する技術的課題を有する。
【0011】
本発明は、式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーに関する:
【0012】
【0013】
ここで、Rは、直鎖状または分枝鎖状のC1~C20アルキル基、好ましくはC1~C12アルキル基、より好ましくはC1~C6アルキル基、任意により、ヘテロ原子を含む、シクロ(C3~C6アルキル)基、ヘテロシクロ(C3~C6アルキル)基からなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、N、S、Si及びO、直鎖状または分枝鎖状のC2~C12、好ましくはC2~C6のアルケニル基、置換または非置換直鎖状または分枝鎖状のC2~C12、好ましくはC2~C6のアルキニル基、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはC2~C6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基、-(CH2)n3-フェニル基(式中、n3は、1から10の整数である)、シロキサン基から選択され;
R1は、以下に示す化2である。
【0014】
【0015】
【0016】
Rpは、H、直鎖状または分枝鎖状のC1~C20、好ましくはC1~C12、アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC2~C12、好ましくはC2~C6のアルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC2~C12、好ましくはC2~C6のアルキニル基、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6、好ましくはC1~C4、アルキルまたはC2~C6、好ましくはC2~C4アルケニル置換もしくは非置換フェニル基および以下に示す化4からなる群から選択される。
【0017】
【0018】
ここで、
式(I)のR1とR2は異なり;
x1、x2、及びxpは、独立して0~1であり;y1=1-x1であり;y2=1-x2yp=1-xpであり、x1、x2及びxpは、共に0ではない;
pは、1~100であり;
R1’、R2’、及びRp’は、独立して、C-直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキル基またはアルコキシ基、-C-直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、-C-置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルキニル基、及び-C-直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはC2~C6アルケニル置換または非置換フェニル基からなる群から選択され;
Rp’’は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルキニル基、及び直鎖状もしくは分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはC2~C6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基からなる群から選択され;
R*は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキル基またはアルコキシ基、シクロ(C3~C6アルキル)基、ヘテロシクロ(C3~C6アルキル)基からなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、N、Si、S及びO、直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、置換または非置換直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルキニル基、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはC2~C6アルケニル置換もしくは非置換フェニル基、-(CH2)n3-フェニル基及び-(CH2)n3-O-(CH2)n4基(式中、n3及びn4は、独立して1から10の整数である)から選択され;
R**は、R*と同じであり、O-、N-、Si-またはS-(CH2)n3-CH-(CH3)2基、O-、N-、SiまたはS-(CH2)n3-(CHZ)n4-(CH3)2基、O-、N-、Si-またはS-(CH2)n3-(CHZ)n4-(CH2)n3-CH3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)n4-(CH2)n3-CH3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)n4-[(CH2)n3-CH3]2基及びO-置換または非置換C2~C6直鎖または分岐鎖状のアルキニル基、-(CH2)n3-C≡N、多環芳香族または複素芳香族炭化水素、例えば、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレンから選択され、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはアルコキシ基、シクロ(C3~C6アルキル)、ヘテロシクロ(C3~C6アルキル)によって任意により置換されるメンバーを含み、ここで、ヘテロ原子は、N、S、Si、及びO、直鎖もしくは分岐鎖状のC2~C6アルケニル基もしくはアルキレンオキシ基からなる群から選択されるか、または置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖状のC2~C6アルキニル基によって置換され、式中、n3及びn4は、独立して1~10の整数であり;Zは、直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC2~C6アルケニル基またはアルキレンオキシ基、及び直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキルまたはC2~C6アルケニル置換または非置換フェニル基からなる群から選択され、少なくとも1つのO原子は、隣接する2つのCの間に存在するかまたは存在せず、
R***は、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC1~C6アルキル基からなる群から選択され、直鎖もしくは分枝鎖状のC1~C15アルキル基またはC2~C15のアルケニル基または以下の化5に示すもののうち1つをさらに含む。
【0019】
【0020】
本発明のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーは、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを得るのに有利に好適であり、ベンゾオキサジン開環を伴う重合及び加熱下での自己重合によって、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーとなる。特定のモノマー出発生成物により、本発明のビトリマーは、自己修復、再成形、再加工性及びリサイクル特性を呈する。本明細書のこの後の部分では、ベンゾオキサジンビトリマーは、常に、エステル結合ベンゾオキサジンモノマーの重合形態を指す。
【0021】
ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーの特性は、エステル含有ベンゾオキサジンモノマーの特性と密接に関連している。
【0022】
式(I)から分かり得るように、モノマーは、加熱時にモノマーの架橋が可能になり、架橋後に形成される交換可能エステル結合により、得られたベンゾオキサジンビトリマーの再加工が促進されるベンゾオキサジン環部分を含む。ベンゾオキサジンは、高温及び可燃性性能、高強度、熱安定性、低吸水率、耐薬品性、低溶融粘度、及びほぼゼロの収縮などの熱硬化特性を付与する。
【0023】
エステル結合及び遊離脂肪族ヒドロキシル基からなる部分の存在は、ベンゾオキサジン誘導体ビトリマーの動的かつ可逆的ネットワークを形成するために不可欠であり、これにより、材料のリサイクル、再成形、及び再加工が可能になる。ヒドロキシル基を末端に有するアミンは、オキサジン環を閉じ、エステル交換反応を可能にする。したがって、本発明のモノマーの本質的な特徴は、ベンゾオキサジン含有部分、エステル結合、及び遊離脂肪族ヒドロキシル基に依存する。このようなポリベンゾオキサジンのTgは、25℃~300℃であり得る。
【0024】
x1、x2、及びxpの値は、独立して、0~1の値であり得、x1、x2、及びxpは、共に0ではなく、y1、y2、及びypの値は、それぞれ独立して、1-x1、1-x2及び1-xpであり、より優先的には0.5~1である。
【0025】
好ましくは、R*は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキル基またはアルコキシ基、直鎖状または分枝鎖状のC2~C4アルケニル基またはアルキレンオキシ基、非置換の直鎖状または分枝鎖状のC2~C4アルキニル基、非置換フェニル基及び(CH2)n3-フェニル基、-(CH2)n3-O-(CH2)n4(式中、n3及びn4は、独立して、1~6の整数である)からなる群から選択される;
【0026】
より好ましくは、R*は、-CH3、-(CH2)n3-CH3、-(CH2)n3-CH-[(CH2)n4-CH3]2、-C(CH3)3、-(CH2)n3-(C6H5)、-(CH2)n3-CH=CH2、-(CH2)n3-C≡CH、-(CH2)n3-O-(CH2)n4(式中、n3及びn4は、独立して、1~4の整数である)、フェニル、及び-(CH2)3-フェニルからなる群から選択され得る。
【0027】
好ましくは、R**は、R*と同じであり、O-、N-、Si-またはS-(CH2)n3-CH-(CH3)2基、O-、N-、Si-またはS-(CH2)n3-(CHZ)n4-(CH3)2基、O-、N-、Si-またはS-(CH2)n3-(CHZ)n4-(CH2)n3-CH3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)n4-(CH2)n3-CH3基、O-、N-、Si-またはS-(CHZ)n4-[(CH2)n3-CH3]2基及びO-置換または非置換C2~C4直鎖または分岐鎖状のアルキニル基、-(CH2)n3-C≡N、シクロ(C3~C4アルキル)、ヘテオシクロ(C3~C4アルキル)、多環芳香族または複素芳香族炭化水素から選択されるメンバーを含み得、式中、ヘテロ原子は、N、S、Si、及びO、例えば、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フランからなる群から選択され、任意により、直鎖もしくは分枝鎖状のC1~C4アルキル基もしくはアルコキシ基、直鎖もしくは分枝鎖状のC2~C4アルケニル基もしくはアルキレンオキシ基によって置換され得るか、または置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐鎖状のC2~C4アルキニル基によって置換され得、式中、n3及びn4は、独立して1から6の整数であり、Zは、上で定義したとおりである。
【0028】
より好ましくは、R**は、基R*であってよく、または、CH3、-(CH2)n3-CH3、-(CH2)n3-CH-[(CH2)n4-CH3]2、-C(CH3)3、-(CH2)n3-(C6H5)、-(CH2)n3-CH=CH2、-(CH2)n3-C≡CH、O-(CH2)n3-C≡CH、O-(CH2)n3-C≡N,(CH2)n3-C≡N、及び-(CH2)n3-置換または非置換フラン、フェニル(式中、n3及びn4は、独立して1~4の整数である)からなる群から選択され得る。
R***は、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキル基からなる群から選択され得、直鎖もしくは分枝鎖状のC1~C10アルキル基またはC2~C10のアルケニル基または以下の化6に示したもののうち1つをさらに含み得る。
【0029】
【0030】
R***は、好ましくは、H、OH、及びO-直鎖状または分枝鎖状のC1~C3アルキル基からなる群から選択され得、直鎖もしくは分枝鎖状のC1~C6アルキル基またはC2~C6のアルケニル基または以下の化7に示すもののうち1つをさらに含み得、より好ましくは、R***は、Hである。
【0031】
【0032】
上で定義した「置換された」という表現は、C1~C6におけるいくつかの直鎖状または分枝鎖状のアルキル基の存在に関する。
【0033】
本発明はまた、式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを合成するプロセスであって、以下からなるステップを含むプロセスに関する:
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
x1、x2、xp及びy1、y2、ypは、アミノアルコールと他のアミン(複数可)から調製される場合のベンゾオキサジン基間の割合を表す。換言すれば、x1、x2、xp及びy1、y2、及びypは、次の数1のように定義できる。
【0039】
【0040】
ここで、以下に示す数2は、R1基あたりのアミノアルコールの数である。
【0041】
【0042】
以下に示す数3は、R1基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表す。
【0043】
【0044】
以下に示す数4は、R1基あたりのアミノ基の総数である。
【0045】
【0046】
以下に示す数5は、R2基あたりのアミノアルコールの数である。
【0047】
【0048】
以下に示す数6は、R2基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表す。
【0049】
【0050】
以下に示す数7は、R2基あたりのアミノ基の総数である。
【0051】
【0052】
ここで、以下に示す数8は、Rp基あたりのアミノアルコールの数である。
【0053】
【0054】
以下に示す数9は、Rp基あたりのアミンの数(アミノアルコールの数を除く)を表す。
【0055】
【0056】
以下に示す数10は、Rp基あたりのアミノ基の総数である。
【0057】
【0058】
本発明のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーは、ベンゾオキサジン開環を伴う重合及び加熱下での自己重合によって、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを得るのに有利に好適である。
【0059】
本出願人は、特定の出発反応物がエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを提供し、それが重合後、重合ベンゾオキサジンを含むポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを付与することを示した。
【0060】
特定の化合物(II)~(VII)の反応から得られるベンゾオキサジン環により、加熱時にこの材料が架橋(加工)できるようになり、交換可能で可逆的なエステル結合及び遊離脂肪族ヒドロキシル基が、再加工を助ける。ベンゾオキサジン環部分は、高温及び可燃性性能、高強度、熱安定性、低吸水率、耐薬品性、低溶融粘度、及びほぼゼロの収縮などの熱硬化特性を付与する。
【0061】
フェノール酸誘導体(式(II))は、より好ましくは、モノ-、ジ-、トリ-ヒドロキシ安息香酸誘導体、アナカルド酸誘導体、ヒドロキシ桂皮酸誘導体、脂肪族X-ヒドロキシフェニル酸誘導体(Xは、2~4である)、脂肪族ジフェノール酸誘導体、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0062】
最も好ましい脂肪族モノ-、ジ-、トリ-ヒドロキシ安息香酸誘導体は、式(VIII)のものであり得る。
【0063】
【0064】
式中、R’は、省略され、R1~R5基は、R***に相当し、R1~R5のうちの1つは、ヒドロキシル基であり、少なくとも1つのHが、フェノール性オルト位にあり、残りは上で定義されたものである。
【0065】
特に、式(VIII)において、R1~R5の少なくとも1つの組み合わせは、以下からなる群から選択され得る:
R1=OH、R2=H、R3=R4=R5=HまたはCH3またはCH2-CH3またはCH2-CH2CH3またはCH2-CH(CH3)2、
R2=OH、R1=R3=H、R4=R5=HまたはCH3またはCH2-CH3またはCH2-CH2CH3またはCH2-CH(CH3)2、
R3=OH、R2=R4=H、R1=R5=HまたはCH3またはCH2-CH3またはCH2-CH2CH3またはCH2-CH(CH3)2、
R4=OH、R3=R5=H、R1=R2=HまたはCH3またはCH2-CH3またはCH2-CH2CH3またはCH2-CH(CH3)2、
R5=OH、R1=H、R2=R3=R4=HまたはCH3またはCH2-CH3またはCH2-CH2CH3またはCH2-CH(CH3)2。
【0066】
最も好ましいアナカルド酸誘導体は、式(IX)のものであり得る。
【0067】
【0068】
【0069】
最も好ましいヒドロキシ桂皮酸誘導体は、式(X)のものであり得る。
【0070】
【0071】
最も好ましい脂肪族X-ヒドロキシフェニル酸誘導体は、式(XI)の脂肪族ヒドロキシフェニル酸(X=1)、ジ-ヒドロキシフェニル酸(X=2)、脂肪族トリ-ヒドロキシフェニル酸(X=3)及び脂肪族テトラ-ヒドロキシフェニル酸(X=4)、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0072】
【0073】
環内のR***の数は、環内のヒドロキシル基の数に依存し、少なくとも1つ、好ましくは1~3のR***は、フェノールのオルト位に向かってHであり、整数qは、1~3で構成される。
【0074】
最も好ましいジフェノール酸誘導体は、式(XII)のものである。
【0075】
【0076】
ここで、
上記式において、-Ra-C-Rb-部分はR’であり;
それぞれのフェノール環において、少なくとも1つのR***(好ましくは1~3)は、フェノールのオルト位に向かってHであり、別の方法では、R***は、前述の定義のとおりであり、Rbは、(CH2)n5CH3、(CH2)n4-(脂肪族C1~C6脂肪族アルキルまたはアルコキシ置換または非置換フェニル基)(式中、n5は、1~12、好ましくは1~10、より好ましくは1~6の整数である)、及び-(CH2)n5(CH(CH3)2)からなる群から選択され、
Raは、(CH2)n6(式中、n6は、1~3までの整数である)、-CH(CH2)n6(CH3)、-CH(CH(CH3)2)及び-C(CH3)2からなる群から選択され、-(CH2)n6が、立体障害を下げるために最も好ましい。
【0077】
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸(VAまたはDPA)が最も好ましい。
【0078】
式(III)の多官能性分子またはオリゴマー化合物は、ベンゾオキサジンポリマーの加工温度を選択するために重要である。
【0079】
式(III)の化合物は、有利には1~30、より好適には1~20、特に1~10のp値を有得、より好ましくは、Rp=Hの場合には、C1~C20、好ましくはC1~C12、さらに好ましくはC1~C6のエチレンジオールを表し得る。
【0080】
ブレンステッド酸型の触媒は、フィッシャーエステル化に一般的に使用されるものであり、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)、無水塩酸(HCl)、リン酸(H3PO4)、メタン酸(CH3-CO2H)、硫酸、トシル酸、及びルイス酸、例えば、スカンジウム(III)トリフラートが挙げられる。触媒の含有量は、典型的には、0.5重量%~2重量%であり得る。
【0081】
ステップa)は、95%を超える最良の合成収率のために、80℃~150℃、最も好ましくは100℃~140℃の範囲の温度で有利に実施され得、選択される温度は、反応物の性質、すなわち反応物媒体の融解温度に依存する。
【0082】
有利には、ステップa)は、少なくとも95%の最高収率を得るために12時間~24時間実施され、持続時間は、反応速度に基づく。
【0083】
ステップa)における出発反応物であるフェノール酸誘導体:多官能性分子またはオリゴマーのそれぞれの化学量比は、好ましくは1.0~3.0当量:1.0当量であり得、結果として、1.0当量のフェノール末端オリゴマーまたは分子が得られる。
【0084】
このプロセスの第2ステップであるステップb)は、任意により触媒の存在下で、ステップa)((IV))のフェノール末端オリゴマーまたは分子と、式(VI)の第一級アミン誘導体であるアミノアルコール(式(V))及びパラホルムアルデヒド(式(VII))とのマンニッヒ縮合型反応に対応する。したがって、外部触媒の使用を必要としないため、ステップb)は、より容易な方法で実施される。
【0085】
有利には、式(V)のアミノアルコールは、最高収率及び最良の反応条件でオキサジン環を得るために、第一級アミン部分及び脂肪族ヒドロキシル部分を有する直鎖状アミノアルコール誘導体であるR*基を含む。
【0086】
式(V)のアミノアルコールは、より好ましくは、2-アミノエタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、5-アミノペンタン-1-オール、ヘプタミノール、及びジグリコールアミン、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0087】
第一級アミン誘導体には、上で定義したR**基が含まれる。
【0088】
第一級アミン誘導体は、R*と同じであり、アリルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2-アミノフルオレン、アミノフェニルアセチレン、プロパルギルエーテルアニリン、4-アミノベンゾニトリル、フルフリルアミン及びアニリン、またはそれらの混合物からなる群からさらに選択され得る。
【0089】
ステップb)の温度範囲は、好ましくは80℃~95℃であり得、これにより、少なくとも75%の最高変換収率を得ることができる。
【0090】
有利には、ステップb)は、少なくとも75%の最高収率のために、1時間~8時間、最も好ましくは1時間~5時間実施される。
【0091】
本発明の1つの利点は、ステップb)がいかなる触媒もなく、実施されることである。
【0092】
ステップb)の出発反応物、フェノール末端オリゴマーまたは分子:アミノアルコール:第一級アミン誘導体:パラホルムアルデヒドのそれぞれの化学量は、好ましくは1.0当量:x1(1.0当量~18.0当量):y1(1.0当量~18.0当量):2.0~36.0当量;または1.0当量:x2(1.0当量~18.0当量):y2(1.0当量~18.0当量):2.0~36.0当量;または1.0当量:xp(1.0当量~18.0当量):yp(1.0当量~18.0当量):2.0~36.0当量であり得、結果として、1.0当量のエステル含有ベンゾオキサジンモノマーとなり、ここで、独立して、x1、x2及びxp=0,1~1であり、かつy1=1-x1、y2=1-x2及びyp=1-xpである。また、x1、x2、及びxpが独立して高いほど、ROPの効率が高いと想定される。
【0093】
特定の範囲の化学量は、アミノアルコールと第一級アミン誘導体とのそれぞれの当量比に依存する。反応が起こるためには最小量を必要とすることに留意されたい。例えば、アミノアルコールの相対モル%対第一級アミン誘導体の相対モル%は、それぞれ10モル%対90モル%である。これは、第一級アミンが省略され得(0モル%)、代わりにアミノアルコールのみが使用され得る(100モル%)ことも意味する。さらに、アミノアルコール/アミン及びパラホルムアルデヒドの両方の選択された化学量範囲では、好ましくは、オキサゾリジン、トリアザ誘導体、または縮合誘導体などの直鎖状及び/または脂肪族反応副生成物のいずれかの形成が回避される。
【0094】
優先的に、プロセス全体がバイオベースの反応物で実施される。
【0095】
モノエステル-ベンゾオキサジン合成は、出発反応物を溶解するために溶媒を添加することができるとしても、無溶媒であることが最も好ましくあり得る。このプロセスは、本発明の利点の1つであるワンステップ合成を含む。
【0096】
有利なことに、合成全体は、一般に、本発明を実施するためにさらなるモノマー精製をいずれも必要としない場合があり得る。しかし、必要に応じて、モノマーの精製は、任意の既知の技術(真空、蒸留など)によって実施され得る。
【0097】
ステップa)及びb)の両方の反応混合物は、古典的な機械的撹拌機または任意の非限定的手段を使用して撹拌される。
【0098】
このプロセスは、実験室規模または工業規模のいずれかで適切な容器を使用して、当業者に知られている任意の既知の手段によって実施され得る。
【0099】
本発明はまた、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを調製するためのプロセスに関し、本プロセスは、ポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーを得るために、100℃~250℃の範囲内の温度で、1時間~24時間、本発明のエステル含有ベンゾオキサジンモノマー(式(I))または上記のプロセスによって得られるようなエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを重合するステップを含む。
【0100】
本発明のビトリマーを調整するためのプロセスによれば、硬化ステップである重合ステップにより、ベンゾオキサジン環が開環し、それ自体で反応して三次元ネットワークを形成することが可能になる。一旦冷却すると、この材料の形状は、数ヶ月、典型的には12ヶ月後も維持される。少なくとも100℃まで数分間再加熱すると、エステル結合が脂肪族ヒドロキシル基と交換され、これにより、構造の完全性及び共有結合による結合数を維持しながら、材料の再成形、リサイクル、または再加工が可能になる。マンニッヒ縮合反応が定量的であることを考慮すると、ほぼ2つのヒドロキシル基が、エステル交換反応によって結合した各エステルと反応し得る(硬化後であっても)。ビトリマーの挙動は、エステル交換反応が大幅に増加する温度とも考えられるビトリマーのガラス転移(TV)に強く依存する。ビトリマーの挙動は、いくつかの実験を通じて実証した。硬化ステップ後、ビトリマーをTVより高く加熱することにより、ビトリマーの初期形状を他の元の形状に設計することができる。例えば、ビトリマーを粉末に粉砕し、150℃で、数分で再成形または再加工することができる。しかし、その形状は、室温では、依然として安定している。
【0101】
重合時間は、硬化温度及び/またはエステル含有ベンゾオキサジンモノマーの性質に依存する。重合温度は、モノマーを合成するのに必要な温度より高くなるように、所定のモノマーについて選択される。一般に、重合温度が高いほど、硬化時間が短くなる。例えば、重合温度が250℃である場合、硬化時間は、少なくとも1時間であり得、重合温度が100℃である場合、硬化時間は、24時間以下であり得る。好ましくは、硬化温度は、140℃~200℃、より好ましくは140℃~180℃であり、140℃~180℃の範囲では、1.5時間~3時間、好ましくは1.5時間~2.5時間の硬化時間となる。重合は、レーザー光、及び赤外線など、任意の公知の加熱手段により実施され得る。
【0102】
このプロセスは、好ましくは重合加熱ステップよりも高い温度で行われ得る加熱ステップからなる後重合ステップを含み得る。
【0103】
本発明はまた、以下の特徴のうちの少なくとも1つを呈する、上記のプロセスによって得られ得るポリベンゾオキサジン誘導体ビトリマーに関する:
(i)-50℃~250℃のTV値;好ましくは、130℃~220℃、より好ましくは130℃~190℃、
(ii)-50℃~300℃、好ましくは130℃~200℃、より好ましくは130℃~180℃のTV値以上の緩和温度値。
【0104】
ビトリマーのTV値は、一般に、ステップb)の触媒が存在する場合、その性質及び含有量に依存する。
【0105】
緩和温度は、典型的には、ビトリマーの分解が観察されることなく、歪み、例えばねじれなどの物理的変形が加えられた後のビトリマーの緩和温度に相当する。有利には、ビトリマーはまた、以下からなる群から選択される特徴のうちの少なくとも1つを呈し得る:
-緩和時間が、0.5秒~2時間、好ましくは1秒~1時間、より好ましくは5秒~50分である。緩和時間は、サンプルが元の弾性率の1/e(0.37)に対応する値に対して、緩和する時間として従来は定義される。一般に、温度が高いほど、緩和時間は短くなる。例えば、緩和時間は、120℃~170℃の温度値では、約150分~200秒であり、150℃~200℃の温度範囲では、200秒以下、好ましくは100秒~20秒である。
いくつかの実施形態では、ビトリマーは、その初期サイズの0.1%~100%で変形され得る。
-緩和時間に関連する活性化エネルギーが、50kJ/mol~200kJ/mol、好ましくは70kJ/mol~170kJ/mol、より好ましくは100kJ/mol~160kJ/molであり得る;
-加工温度が、100℃~250℃、好ましくは130℃~250℃、より好ましくは150℃~200℃、最も好ましくは150℃~170℃であり得る。
【0106】
本発明によるビトリマーはまた、多くの溶媒、これらに限定されないが、水、CHCl3、CH2Cl2、DMF、THF、芳香族溶媒、例えば、トルエン及び/またはキシレン、ケトン、アルコールまたはカルボン酸などにおいて、熱硬化性及び/または不溶性として挙動する特徴を呈し得ることが非常に好ましい。膨潤性は、その初期重量の0~500%の程度として観察される。架橋ネットワークの形成を評価するために、例えばアセトン、クロロホルム及び水などの様々な溶媒中で膨潤実験が実施され得る。中でもクロロホルムは、ビトリマーの膨潤率が最も高く約100%となる溶媒である。アセトン及び水では、ビトリマーは、それぞれ40%~50%及び20%~30%膨潤する。
【0107】
本発明のビトリマーは、自己修復、再成形、再加工可能性、リサイクル及び可逆接着特性を示す。
【0108】
ビトリマーは、金属、ポリマー、ガラス及びセラミック材料などの少なくとも2つの基材の間に中間層を構成し得る。結果として得られる複合材料は、少なくとも1つのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを2つの考慮される基材の間に設定し、次いで基材の完全性を変化させることなく、ビトリマーを提供する温度で硬化することによって調製され得る。各基材は、他と異なり得る。
【0109】
金属基材は、限定されず、アルミニウム、鉄、鋼などであり得る。
【0110】
ポリマー基材は、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリエチレン、またはテレフタレートであり得る。
【0111】
次いで、ベンゾオキサジンビトリマーは、非限定的な様々な技術分野、例えば、電子工学、航空宇宙、航空、自動車、防衛、及び自動車分野などで有利に使用され得る。
【0112】
本発明は、以下を含む組成物Aにも関する:
a)式(I)のエステル含有ベンゾオキサジン誘導体、及び
b)ベンゾオキサジン部分を含むまたは含まない有機分子型の少なくとも1つ以上の追加の化合物。
【0113】
好ましくは、有機分子型は、ベンゾオキサジン部分を含むまたは含まないポリマーであり得る。
【0114】
追加の化合物を使用して、モノマーまたはビトリマーのいずれかの特性(すなわち、粘度、機械的及び熱的特性)、またはその両方を向上させ得る。
【0115】
ポリマーは、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂またはベンゾオキサジン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴムであり得る。式Iのエステル含有ベンゾオキサジン誘導体は、最終組成物の0.1~80%の重量比で使用され得る。
【0116】
式(I)の化合物は、上述のポリマーにビトリマー特性(自己修復、再加工など)をもたらすために使用され得る。
【0117】
本発明は、以下を含む組成物Bにも関する:
a)式(I)のエステル含有ベンゾオキサジンモノマー、及び
b)充填剤、繊維、顔料、染料、及び可塑剤からなる群から選択される材料。
【0118】
追加の化合物を使用して、モノマーまたはビトリマーのいずれかの特性(すなわち、粘度、機械的及び熱的特性)、またはその両方を向上させ得る。
【0119】
追加の化合物は、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、麻繊維、及びバイオベース繊維、粘土、カーボンブラック、シリカ、カーボンナノチューブ、グラフェン、複合材の熱的または機械的強化のための任意の既知の手段であり得る。
【0120】
本発明はまた、金属、ポリマー、ガラス、及びセラミック材料からなる群から選択される、基材のための可逆的な接着剤、密封材、コーティングまたは封入システムとしての本発明によるビトリマーの使用に関する。好ましくは、金属及びポリマーは、上記で定義したとおりである。
【0121】
本発明はまた、本発明によるビトリマーの3D印刷プロセスまたは付加製造プロセスにおける使用にも関する。
【0122】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及びそれらの図面から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】BUTD-PA-mea/faタイプのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得るための概略的合成反応を示し、式中、x
1またはy
1=0の場合、x
2またはy
2=0の場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-CH
2-であり、x
1及びy
1≠0、ならびにx
2及びy
2≠0、ならびに0,05≦x
1<1、0<y
1≦0,95、ならびに0,05≦x
2<1、0<y
2≦0,95のいずれかの場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-C(CH
3)-である。
【
図2a】BUTD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーのNMRスペクトルを示す。
【
図2b】BUTD-PA-meaのDSC曲線を示す。
【
図2c】140℃でのBUTD-PA-meaの等温レオロジーの観測結果を示す。
【
図3a】異なる温度でのBUTD-PA-meaビトリマーの応力緩和曲線を示す。
【
図3b】BUTD-PA-meaビトリマーの応力緩和実験から得られたアレニウスプロットを示す。
【
図4】HEXD-PA-mea/faタイプのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得るための概略的合成反応を示し、式中、x
1またはy
1=0の場合、x
2またはy
2=0の場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-CH
2-であり、x1及びy1≠0、ならびにx
2及びy
2≠0、ならびに0,05≦x1<1、0<y1≦0,95、ならびに0,05≦x
2<1、0<y
2≦0,95のいずれかの場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-C(CH
3)-である。
【
図5a】HEXD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーのNMRスペクトルを示す。
【
図5b】HEXD-PA-meaのDSC曲線を示す。
【
図5c】140℃でのHEXD-PA-meaの等温レオロジーの観測結果を示す。
【
図6a】異なる温度におけるHEXD-PA-meaビトリマーの応力緩和曲線を示す。
【
図6b】HEXD-PA-meaビトリマーの応力緩和実験から得られたアレニウスプロットを示す。
【
図7】CHXD-PA-mea/faタイプのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得るための概略的合成反応を示し、式中、x
1またはy
1=0の場合、x
2またはy
2=0の場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-CH
2-であり、x1及びy1≠0、ならびにx
2及びy
2≠0、ならびに0,05≦x1<1、0<y1≦0,95、ならびに0,05≦x
2<1、0<y
2≦0,95のいずれかの場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-C(CH
3)-である。
【
図8a】CHXD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーのNMRスペクトルを示す。
【
図8b】CHXD-PA-meaのDSC曲線を示す。
【
図8c】140℃でのCHXD-PA-meaの等温レオロジーの観測結果を示す。
【
図9a】異なる温度でのCHXD-PA-meaビトリマーの応力緩和曲線を示す。
【
図9b】CHXD-PA-meaビトリマーの応力緩和実験から得られたアレニウスプロットを示す。
【
図10】OCTD-PA-mea/faタイプのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得るための概略的合成反応を示し、式中、x
1またはy
1=0の場合、x
2またはy
2=0の場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-CH
2-であり、x1及びy1≠0、ならびにx
2及びy
2≠0、ならびに0,05≦x1<1、0<y1≦0,95、ならびに0,05≦x
2<1、0<y
2≦0,95のいずれかの場合、R
1’及びR
2’は、-CH
2-C(CH
3)-である。
【
図11a】OCTD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーのNMRスペクトルを示す。
【
図11b】OCTD-PA-meaのDSC曲線を示す。
【
図11c】140℃でのOCTD-PA-meaの等温レオロジーの観測結果を示す。
【
図12a】異なる温度でのOCTD-PA-meaビトリマーの応力緩和曲線を示す。
【
図12b】OCTD-PA-meaビトリマーの応力緩和実験から得られたアレニウスプロットを示す。
【0124】
すべての化学物質は市販されており、出発化合物が適用される場合には、購入したまま使用される。
【実施例】
【0125】
1,4-ブタンジオール(BUTD)、フェノール酸誘導体としての3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)、及び脂肪族OHを有する第一級アミンとしてのエタノールアミン(mea)からのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーの合成。
【0126】
第1のステップであるステップa)は、触媒量(1重量%)で導入されたp-トルエンスルホン酸(p-TSA)の存在下で、1,4-ブタンジオール(M=90.12g.mol-1、1当量、3g)と3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)(M=166.18g.mol-1、2当量、11.06g)との間のフィッシャーエステル化に相当する。BUTD、PA、及びp-TSAを110℃で一緒に溶融状態で反応させ、機械的撹拌により24時間撹拌して、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル末端1,4-ブタンジオール(BUTD-PA)を得た。
【0127】
第2のステップ(ステップb)は、ステップa)からの3-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン酸エステル末端BUTD(BUTD-PA)(M=386.48g.mol
-1、1当量、8g)、エタノールアミン(mea)(M=61.08g.mol
-1、2当量、2.53g)、及びパラホルムアルデヒド(PFA)(M=30.03g.mol
-1、4当量、2.49g)間のマンニッヒ縮合に相当する。これらのすべての反応物を、85℃で、溶融状態で一緒に反応させ、機械的撹拌によって8時間撹拌して、BUTD-PA-meaと名付けられたエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得た(
図1)。
【0128】
図2a)は、BUTD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを含むDMSO-d
6中でのNMRスペクトル(AVANCE III HD Bruker分光計)を示す。
【0129】
DSC曲線(Netzsch DSC 204 F1 Phoenix装置)は、110℃の温度で始まる発熱ピークを示し、最大値は170℃にある(
図2b)。このピークは、加熱時のベンゾオキサジン環の開環に相当する。第2のピークは、TGA実験によって確認されたエステル結合の熱分解に相当する。
【0130】
G′とG″の交差点として定義される近似ゲル化点(tgel)は、140℃で550秒間の等温硬化後に急速に達成された(
図2c)。
【実施例】
【0131】
BUTD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーからのビトリマー合成
【0132】
BUTD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーを150℃で1時間硬化させ、ベンゾオキサジン環を開いてそれ自体で反応させて、ディスク形状に3Dネットワークビトリマーを形成させた。このサンプルのビトリマーの挙動は、いくつかのレオロジー実験を通じて実証された。
【0133】
BUTD-PA-meaビトリマーの粘弾性特性は、Anton Paar Physica MCR302レオメーターのプレート-プレートモードで、1%せん断ひずみで記録された応力緩和実験によって試験した(
図3a)。ポリマーの緩和時間は、明らかに顕著で、150℃で2分と記録された。
【0134】
エステル交換反応の活性化エネルギー(Ea)は、アレニウス式の傾きから得られ、102kJ.mol
-1が得られた(
図3b)。
【実施例】
【0135】
1,6-ヘキサンジオール(HEXD)、フェノール酸誘導体としての3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)、及び脂肪族OHを有する第一級アミンとしてのエタノールアミン(mea)からのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーの合成。
【0136】
第1のステップであるステップa)は、触媒量(1重量%)で導入されたp-トルエンスルホン酸(p-TSA)の存在下で、1,6-ヘキサンジオール(M=118.17g.mol-1、1当量、3g)と3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)(M=166.18g.mol-1、2当量、8.44g)との間のフィッシャーエステル化に相当する。HEXD、PA、及びp-TSAを110℃で一緒に溶融状態で反応させ、機械的撹拌により24時間撹拌して、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル末端1,6-ヘキサンジオール(HEXD-PA)を得た。
【0137】
第2のステップ(ステップb)は、ステップa)からの3-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン酸エステル末端HEXD(HEXD-PA)(M=414.53g.mol
-1、1当量、8g)、エタノールアミン(mea)(M=61.08g.mol
-1、2当量、2.36g)、及びパラホルムアルデヒド(PFA)(M=30.03g.mol
-1、4当量、2.32g)間のマンニッヒ縮合に相当する。これらのすべての反応物を、85℃で、溶融状態で一緒に反応させ、機械的撹拌によって8時間撹拌して、HEXD-PA-meaと名付けられたエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得た(
図4)。
【0138】
図8a)は、HEXD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを含むDMSO-d
6中でのNMRスペクトル(AVANCE III HD Bruker分光計)を示す。
【0139】
DSC曲線(Netzsch DSC 204 F1 Phoenix装置)は、120℃の温度で始まる発熱ピークを示し、最大値は185℃にある(
図5b)。このピークは、加熱時のベンゾオキサジン環の開環に相当する。第2のピークは、TGA実験によって確認されたエステル結合の熱分解に相当する。
【0140】
G′とG″の交差点として定義される近似ゲル化点(tgel)は、140℃で1550秒間の等温硬化後に急速に達成された(
図5c)。
【実施例】
【0141】
HEXD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーからのビトリマー合成
HEXD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーを150℃で1時間硬化させ、ベンゾオキサジン環を開いてそれ自体で反応させて、ディスク形状に3Dネットワークビトリマーを形成させた。このサンプルのビトリマーの挙動は、いくつかのレオロジー実験を通じて実証された。
【0142】
HEXD-PA-meaビトリマーの粘弾性特性は、Anton Paar Physica MCR302レオメーターのプレート-プレートモードで、1%せん断ひずみで記録された応力緩和実験によって試験した(
図6a)。ポリマーの緩和時間は、明らかに顕著で、150℃で88秒と記録された。
【0143】
エステル交換反応の活性化エネルギー(Ea)は、アレニウス式の傾きから得られ、95kJ.mol
-1が得られた(
図6b)。
【実施例】
【0144】
1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHXD)、フェノール酸誘導体としての3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)、及び脂肪族OHを有する第一級アミンとしてのエタノールアミン(mea)からのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーの合成。
【0145】
第1のステップであるステップa)は、触媒量(1重量%)で導入されたp-トルエンスルホン酸(p-TSA)の存在下で、1,4-シクロヘキサンジメタノール(M=144.21g.mol-1、1当量、3g)と3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)(M=166.18g.mol-1、2当量、6.91g)との間のフィッシャーエステル化に相当する。CHXD、PA、及びp-TSAを110℃で一緒に溶融状態で反応させ、機械的撹拌により24時間撹拌して、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル末端1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHXD-PA)を得た。
【0146】
第2のステップ(ステップb)は、ステップa)からの3-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン酸エステル末端CHXD(HEXD-PA)(M=440.57g.mol
-1、1当量、8g)、エタノールアミン(mea)(M=61.08g.mol
-1、2当量、2.22g)、及びパラホルムアルデヒド(PFA)(M=30.03g.mol
-1、4当量、2.18g)間のマンニッヒ縮合に相当する。これらのすべての反応物を、85℃で、溶融状態で一緒に反応させ、機械的撹拌によって8時間撹拌して、CHXD-PA-meaと名付けられたエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得た(
図7)。
【0147】
図8a)は、CHXD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを含むDMSO-d
6中でのNMRスペクトル(AVANCE III HD Bruker分光計)を示す。
【0148】
DSC曲線(Netzsch DSC 204 F1 Phoenix装置)は、120℃の温度で始まる発熱ピークを示し、最大値は185℃にある(
図8b)。このピークは、加熱時のベンゾオキサジン環の開環に相当する。第2のピークは、TGA実験によって確認されたエステル結合の熱分解に相当する。
【0149】
G′とG″の交差点として定義される近似ゲル化点(tgel)は、140℃で1700秒間の等温硬化後に急速に達成された(
図8c)。
【実施例】
【0150】
CHXD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーからのビトリマー合成
CHXD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーを150℃で1時間硬化させ、ベンゾオキサジン環を開いてそれ自体で反応させて、ディスク形状に3Dネットワークビトリマーを形成させた。このサンプルのビトリマーの挙動は、いくつかのレオロジー実験を通じて実証された。
【0151】
CHXD-PA-meaビトリマーの粘弾性特性は、Anton Paar Physica MCR302レオメーターのプレート-プレートモードで、1%せん断ひずみで記録された応力緩和実験によって試験した(
図9a)。ポリマーの緩和時間は、明らかに顕著で、150℃で202分と記録された。
【0152】
エステル交換反応の活性化エネルギー(Ea)は、アレニウス式の傾きから得られ、139kJ.mol
-1が得られた(
図9b)。
【実施例】
【0153】
1,8-オクタンジオール(OCTD)、フェノール酸誘導体としての3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)、及び脂肪族OHを有する第一級アミンとしてのエタノールアミン(mea)からのエステル含有ベンゾオキサジンモノマーの合成。
【0154】
第1のステップであるステップa)は、触媒量(1重量%)で導入されたp-トルエンスルホン酸(p-TSA)の存在下で、1,8-オクタンジオール(OCTD)(M=146.22g.mol-1、1当量、3g)と3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(PA)(M=166.18g.mol-1、2当量、6.91g)との間のフィッシャーエステル化に相当する。OCTD、PA、及びp-TSAを110℃で一緒に溶融状態で反応させ、機械的撹拌により24時間撹拌して、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル末端1,8-オクタンジオール(OCTD-PA)を得た。
【0155】
第2のステップ(ステップb)は、ステップa)からの3-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン酸エステル末端OCTD(OCTD-PA)(M=442.59g.mol
-1、1当量、8g)、エタノールアミン(mea)(M=61.08g.mol
-1、2当量、2.21g)、及びパラホルムアルデヒド(PFA)(M=30.03g.mol
-1、4当量、2.17g)間のマンニッヒ縮合に相当する。これらのすべての反応物を、85℃で、溶融状態で一緒に反応させ、機械的撹拌によって8時間撹拌して、OCTD-PA-meaと名付けられたエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを得た(
図10)。
【0156】
図11a)は、OCTD-PA-meaエステル含有ベンゾオキサジンモノマーを含むDMSO-d
6中でのNMRスペクトル(AVANCE III HD Bruker分光計)を示す。
【0157】
DSC曲線(Netzsch DSC 204 F1 Phoenix装置)は、100℃の温度で始まる発熱ピークを示し、最大値は180℃にある(
図12b)。このピークは、加熱時のベンゾオキサジン環の開環に相当する。第2のピークは、TGA実験によって確認されたエステル結合の熱分解に相当する。
【0158】
G′とG″の交差点として定義される近似ゲル化点(tgel)は、140℃で640秒間の等温硬化後に急速に達成された(
図11c)。
【実施例】
【0159】
OCTD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーからのビトリマー合成
【0160】
OCTD-PA-meaベンゾオキサジンモノマーを150℃で1時間硬化させ、ベンゾオキサジン環を開いてそれ自体で反応させて、ディスク形状に3Dネットワークビトリマーを形成させた。このサンプルのビトリマーの挙動は、いくつかのレオロジー実験を通じて実証された。
【0161】
OCTD-PA-meaビトリマーの粘弾性特性は、Anton Paar Physica MCR302レオメーターのプレート-プレートモードで、1%せん断ひずみで記録された応力緩和実験によって試験した(
図12a)。ポリマーの緩和時間は、明らかに顕著で、150℃で68秒と記録された。
【0162】
エステル交換反応の活性化エネルギー(Ea)は、アレニウス式の傾きから得られ、106kJ.mol
-1が得られた(
図12b)。
【国際調査報告】