IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アムジエン・インコーポレーテツドの特許一覧

特表2024-536440マイクロフィルタの細孔サイズの決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】マイクロフィルタの細孔サイズの決定
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20240927BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N15/08 C
C07K1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521142
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077622
(87)【国際公開番号】W WO2023064697
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,468
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シャオジュウ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ミンダ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045EA20
4H045GA10
(57)【要約】
マイクロフィルタの細孔プロファイルは:(210)第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含む飽和多孔性マイクロフィルタ膜を提供すること(マトリックスは、貯蔵溶液によって飽和している)と;(220)飽和多孔性マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させることで、貯蔵溶液が中間溶媒中に溶解することによって膜を脱飽和することと;(230)試験流体を脱飽和膜にアプライすることによって膜を再飽和させることと;(240)再飽和した膜の第1の表面に圧力を加えること(圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる)と;(250)前記圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出することと;(260)第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて、細孔マイクロフィルタ膜の細孔サイズプロファイルを決定することとによって決定される。続いて、細胞培養生成物を濾過する(281)のに用いられるフィルタが、適切な細孔サイズプロファイルを有するフィルタを選択する(171)ことによって選択され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定する方法であって:
第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含む飽和多孔性マイクロフィルタ膜を提供する工程であって、前記マトリックスは、貯蔵溶液によって飽和している、提供する工程と;
前記飽和多孔性マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させることで、前記貯蔵溶液が前記中間溶媒中に溶解することによって前記膜を脱飽和する工程と;
試験流体を、脱飽和された前記膜にアプライすることによって前記膜を再飽和させる工程と;
再飽和した前記膜の前記第1の表面に圧力を加える工程であって、前記圧力は、前記第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる、圧力を加える工程と;
前記圧力に応じた前記第2の表面からの前記気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出する工程と;
前記第2の表面からの前記気体、液体、及び/又は試験流体の前記フローをもたらす前記圧力のレベルに基づいて、前記細孔マイクロフィルタ膜の前記細孔サイズプロファイルを決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過する方法であって:
第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含み、前記マトリックスは貯蔵溶液によって飽和している、飽和多孔性マイクロフィルタ膜を提供する工程と;
前記飽和多孔性マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させることで、前記貯蔵溶液が前記中間溶媒中に溶解することによって前記膜を脱飽和する工程と;
試験流体を、脱飽和された前記膜にアプライすることによって前記膜を再飽和させる工程と;
再飽和した前記膜の前記第1の表面に圧力を加える工程であって、前記圧力は、前記第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる、圧力を加える工程と;
前記圧力に応じた前記第2の表面からの前記気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出する工程であって、前記膜の前記細孔サイズプロファイルは、前記第2の表面からの前記気体、液体、及び/又は試験流体の前記フローをもたらす前記圧力のレベルに基づいて決定される、検出する工程と;
前記膜の決定された前記細孔サイズプロファイルが、指定された範囲内にある場合にのみ、濾過に用いられる前記膜を選択する工程であって、前記指定された範囲は、前記多孔性マイクロフィルタ膜を通した前記治療的タンパク質の通過に対応する、選択する工程と;
選択された前記マイクロフィルタ膜又は選択された前記マイクロフィルタ膜と同じバッチのマイクロフィルタ膜を通して、前記治療的タンパク質を含む前記細胞培養生成物を濾過する工程と
を含む方法。
【請求項3】
前記指定された範囲は、前記多孔性マイクロフィルタ膜を通した、分子量が最大50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、750kDa、又は1000kDaである分子の通過に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記指定された範囲は、5~120ナノメートル、60~100ナノメートル、5~100ナノメートル、又は60~120ナノメートルである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞培養生成物は、前記治療的タンパク質に加えて、細胞破壊片及び宿主細胞タンパク質を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞培養生成物は:哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、又はヒト上皮腎臓293細胞;昆虫細胞、例えば、Sf21/Sf9又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5bl-4;酵母細胞、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属又はピキア(Pichia)属;植物細胞;ニワトリ細胞;及び原核細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞からなる群から選択される細胞培養物のものである、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療的タンパク質は:抗体、抗原結合抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))分子、多重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択される、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
飽和した前記マイクロフィルタ膜を前記中間溶媒と接触させる前に、前記多孔性マイクロフィルタ膜を、指定された寸法、例えば5~15cmの長さにカットする工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロフィルタ膜は、フラットシート繊維を含み、そして前記指定された寸法は、指定された長さ及び指定された幅を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロフィルタ膜は、限外濾過膜又はその部分である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロフィルタ膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、又はセルロースを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記貯蔵溶液は、水溶性不揮発性溶液、例えば、水、ベンジルアルコール、又はポリオールを含むか、又はこれからなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオールは、グリセロール、例えばグリセリンを含むか、又はこれからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記貯蔵溶液は、前記中間溶媒中に可溶性であり、前記中間溶媒は、前記マイクロフィルタ膜を溶解させず、前記中間溶媒は、1気圧20℃にて蒸発する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記中間溶媒は、イソプロピルアルコール等のアルコールを含むか、又はこれからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試験流体をアプライする前に、脱飽和された前記マイクロフィルタ膜を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフィルタ膜を脱飽和する工程は、例えば、前記第1の表面及び/又は第2の表面のATR-FTIRスペクトルが、前記マイクロフィルタ膜が作製される純粋な材料(ポリスルホン又はポリエーテルスルホン等)の参考スペクトルにマッチする場合、前記貯蔵溶液がATR-FTIR分光法による検出限界未満にあることを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥工程は、前記中間溶媒がATR-FTIR分光法による検出限界未満になるまで実行される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥工程は、前記マトリックス中の貯蔵溶液の量が、飽和の1%、0.5%、0.1%、又は0.01%以下になるまで実行される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試験流体は、表面張力が70mN m-1未満である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記試験流体は、有機溶媒若しくは有機溶媒の混合液を含むか、若しくはこれからなり、且つ/又は前記試験流体は、Porofil(登録商標)製品、Fluorinert(登録商標)製品、Porefil(登録商標)製品、Porewick(登録商標)製品、若しくはGalwick(登録商標)製品を含むか、若しくはこれからなる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記試験流体の、前記第1の表面に対する接触角度は、前記フィルタを試験流体で飽和させるのに十分であり、例えば15°以下の角度、例えば0°の角度である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記マイクロフィルタ膜は、中空繊維を含み、前記圧力を加える前記工程は、前記圧力を、前記マイクロフィルタ膜の前記繊維の破裂を引き起こさないレベルに制限することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクロフィルタ膜は、フラットシート膜を含み、前記圧力を加える前記工程は、前記圧力を、前記マイクロフィルタ膜の前記フラットシート膜の破裂又は破壊を引き起こさないレベルに制限することを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細孔サイズプロファイルは、前記多孔性マイクロフィルタ膜の細孔からの前記試験流体の放出をもたらす前記圧力の前記レベルに反比例し、加えられる圧力(P)、前記試験流体の表面張力(γ)、前記膜表面と前記試験流体との接触角度(θ)、及び最も狭い点での前記細孔の直径(D)は:
P=4*γ*(cosθ)/D [式I]
として関係する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記細孔サイズプロファイルを決定する工程は、[式I]:
P=4*γ*(cosθ)/D
を用いることを含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中の実施形態は、マイクロフィルタの細孔サイズの決定、及び細胞培養生成物を濾過する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年10月11日出願の米国特許出願第63/254,468号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
フィルタは、数多くの薬学的及び他の産業的な製造用途に用いられている。モノクローナル抗体等の治療用タンパク質の製造において、治療用タンパク質は、これが生成されるバイオリアクタから収集される。収集は、多くの場合、生成タンパク質を、これを生成する細胞から分離する中空繊維膜(HFM)又はフラットシート膜(FSM)フィルタ等のマイクロフィルタを利用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の態様において、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定する方法が記載される。本方法は、第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含む飽和多孔性マイクロフィルタ膜を提供することを含み得、マトリックスは、貯蔵溶液によって飽和している。本方法はさらに、飽和多孔性マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させて、貯蔵溶液が中間溶媒中に溶解することで膜を脱飽和することを含む。本方法はさらに、試験流体を脱飽和膜にアプライすることで膜を再飽和させることを含む。本方法はさらに、再飽和膜の第1の表面に圧力を加えることを含み、圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる。本方法はさらに、前記圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出することを含む。本方法はさらに、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて、細孔マイクロフィルタ膜の細孔サイズプロファイルを決定することを含む。
【0005】
一部の態様において、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過する方法が記載される。本方法は、第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含み、マトリックスは貯蔵溶液によって飽和している、飽和多孔性マイクロフィルタ膜を提供することを含み得る。本方法はさらに、飽和多孔性マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させて、貯蔵溶液が中間溶媒中に溶解することで膜を脱飽和することを含む。本方法はさらに、試験流体を脱飽和膜にアプライすることで膜を再飽和させることを含む。本方法はさらに、再飽和膜の第1の表面に圧力を加えることを含み、圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる。本方法はさらに、前記圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出することを含み、膜の細孔サイズプロファイルは、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて決定される。本方法はさらに、膜の決定された細孔サイズプロファイルが、指定された範囲内にある場合にのみ、濾過に用いられる膜を選択することを含み、指定された範囲は、多孔性マイクロフィルタ膜を通した治療的タンパク質の通過に対応する。本方法はさらに、選択されたマイクロフィルタ膜又は選択されたマイクロフィルタ膜と同じバッチのマイクロフィルタ膜を通して、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過することを含む。一部の実施形態において、指定された範囲は、多孔性マイクロフィルタ膜を通した、分子量が最大50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、750kDa、又は1000kDaである分子の通過に対応する。例えば、指定された範囲は、5~120ナノメートル、60~100ナノメートル、5~100ナノメートル、又は60~120ナノメートルであり得る。細胞培養生成物を濾過する一部の方法において、細胞培養生成物は、治療的タンパク質に加えて、細胞破壊片及び宿主細胞タンパク質を含む。本明細書中に記載される細胞培養生成物を濾過する方法のいずれについても、細胞培養生成物は:哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、又はヒト上皮腎臓293細胞;昆虫細胞、例えば、Sf21/Sf9又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5bl-4;酵母細胞、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属又はピキア(Pichia)属;植物細胞;ニワトリ細胞;及び原核細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞からなる群から選択される細胞培養物のものであり得る。本明細書中に記載される細胞培養生成物を濾過するいずれの方法も、治療的タンパク質は:抗体、抗原結合抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))分子、多重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択される。
【0006】
本明細書中に記載されるいずれの方法も、飽和マイクロフィルタ膜を中間溶媒と接触させる前に、多孔性マイクロフィルタ膜を、指定された寸法、例えば5~15cmの長さにカットすることをさらに含み得る。例えば、マイクロフィルタ膜は、フラットシート繊維を含み得、そして指定された寸法は、指定された長さ及び指定された幅を含み得る。
【0007】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ膜は、限外濾過膜又はその部分であり得る。
【0008】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、又はセルロースを含んでもよいし、これから本質的になってもよいし、これからなってもよい。
【0009】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、貯蔵溶液は、水溶性不揮発性溶液、例えば、水、ベンジルアルコール、又はポリオールを含んでもよいし、これからなってもよい。一例として、ポリオールは、グリセリン等のグリセロールを含んでもよいし、これからなってもよい。本明細書中に記載される方法のいずれについても、貯蔵溶液は、中間溶媒中に可溶性であり得、中間溶媒は、マイクロフィルタ膜を溶解させず、中間溶媒は、1気圧20℃にて蒸発する。
【0010】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、中間溶媒は、イソプロピルアルコール等のアルコールを含んでもよいし、これからなってもよい。
【0011】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、方法はさらに、試験流体をアプライする前に脱飽和マイクロフィルタ膜を乾燥させることを含み得る。
【0012】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ膜を脱飽和することは、例えば、第1の表面及び/又は第2の表面の全反射測定-フーリエ変換赤外(ATR-FTIR)スペクトルが、マイクロフィルタ膜が作製される純粋な材料(ポリスルホン又はポリエーテルスルホン等)の参考スペクトルにマッチする場合、貯蔵溶液がATR-FTIR分光法による検出限界未満にあることを含む。
【0013】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、乾燥は、中間溶媒がATR-FTIR分光法による検出限界未満になるまで実行され得る。
【0014】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、乾燥は、マトリックス中の貯蔵溶液の量が、飽和の1%、0.5%、0.1%、又は0.01%以下になるまで実行される。
【0015】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、試験流体は、表面張力が70mN m-1未満である。
【0016】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、試験流体は、有機溶媒若しくは有機溶媒の混合液を含み得、且つ/又は試験流体は、Porofil(登録商標)製品、Fluorinert(登録商標)製品、Porefil(登録商標)製品、Porewick(登録商標)製品、若しくはGalwick(登録商標)製品を含むか、若しくはこれからなる。
【0017】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、試験流体の、第1の表面に対する接触角度は、フィルタを試験流体で飽和させるのに十分であり得、例えば15°以下の角度、例えば0°の角度である。
【0018】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ膜は、中空繊維を含み得、圧力を加えることは、圧力を、マイクロフィルタ膜の繊維の破裂を引き起こさないレベルに制限することを含み得る。
【0019】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ膜は、フラットシート膜を含み得、圧力を加えることは、圧力を、マイクロフィルタ膜のフラットシート膜の破裂又は破壊を引き起こさないレベルに制限することを含み得る。
【0020】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、細孔サイズプロファイルは、多孔性マイクロフィルタ膜の細孔からの試験流体の放出をもたらす圧力のレベルに反比例し得、加えられる圧力(P)、試験流体の表面張力(γ)、膜表面と試験流体との接触角度(θ)、及び最も狭い点での細孔の直径(D)は:
P=4*γ*(cosθ)/D [式I]
として関係する。
【0021】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、細孔サイズプロファイルを決定することは、[式I]:
P=4*γ*(cosθ)/D
を用いることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、一部の実施形態の多孔性マイクロフィルタの概略図である。
図2A図2A~Bはフロー図である。図2Aは、一部の実施形態のマイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定する方法を示すフロー図である。図2Bは、一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法を示すフロー図である。
図2B図2A~Bはフロー図である。図2Aは、一部の実施形態のマイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定する方法を示すフロー図である。図2Bは、一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法を示すフロー図である。
図3A図3A~Bは、一部の実施形態の方法に従って、繊維について、そしてマイクロフィルタについて得られたATR-FTIR分光法スペクトルを示すグラフである。
図3B図3A~Bは、一部の実施形態の方法に従って、繊維について、そしてマイクロフィルタについて得られたATR-FTIR分光法スペクトルを示すグラフである。
図4A図4A~Dは、貯蔵溶液(この例では、グリセロール)除去及び乾燥手順前の(図4A及び4C)、そしてその後(図4B及び4D)の、細孔形態学の電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)の顕微鏡写真である。画像は、20,000×倍(図4A~B)及び50,000×倍(図4C~D)にて得られた。
図4B図4A~Dは、貯蔵溶液(この例では、グリセロール)除去及び乾燥手順前の(図4A及び4C)、そしてその後(図4B及び4D)の、細孔形態学の電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)の顕微鏡写真である。画像は、20,000×倍(図4A~B)及び50,000×倍(図4C~D)にて得られた。
図4C図4A~Dは、貯蔵溶液(この例では、グリセロール)除去及び乾燥手順前の(図4A及び4C)、そしてその後(図4B及び4D)の、細孔形態学の電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)の顕微鏡写真である。画像は、20,000×倍(図4A~B)及び50,000×倍(図4C~D)にて得られた。
図4D図4A~Dは、貯蔵溶液(この例では、グリセロール)除去及び乾燥手順前の(図4A及び4C)、そしてその後(図4B及び4D)の、細孔形態学の電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)の顕微鏡写真である。画像は、20,000×倍(図4A~B)及び50,000×倍(図4C~D)にて得られた。
図5図5は、本明細書中の実施形態に従う細孔サイズプロファイルの測定値が再現可能であったことを示すグラフであり、細孔サイズプロファイルは、予想される傾向と一致して測定された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
マイクロフィルタの細孔サイズの分布は、フィルタの性能に影響を与えて、結果的に、バイオリアクタからの治療用タンパク質の収集量に影響を与える属性である。したがって、フィルタ間の細孔サイズプロファイルの変動性が、プロセス性能をかなり変更する潜在性を有する。多くのマイクロフィルタ製品は、多くの場合、グリセリン等の、湿潤剤とも時折称される貯蔵溶液中で飽和して提供される。本明細書中で、貯蔵溶液は、細孔サイズプロファイルの測定値の正確さ及び信頼性に干渉し得ることが観察される。しかしながら、貯蔵溶液を除去する従来のアプローチは、マイクロフィルタの細孔構造を撹乱して、マイクロフィルタ性能に影響を与え得る。したがって、マイクロフィルタの細孔サイズを評価する従来のアプローチは、不正確さを生じさせ得、これにより治療用タンパク質の細胞培養生成物を濾過するのに細孔サイズ分布が適していないフィルタの使用に至る虞がある。
【0024】
本明細書中に記載されるのは、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定する方法、及び細胞培養生成物を濾過する方法である。本明細書中に記載される方法は、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを正確に確認することができる。本方法において、マイクロフィルタは、貯蔵溶液中で飽和して提供され得る。本方法は、マイクロフィルタを中間溶媒と接触(例えば、浸漬)させて、貯蔵溶液を中間溶媒中に溶解させることで、貯蔵溶液をマイクロフィルタから除去することと、(微量の貯蔵溶液がまだ存在し得ると考えられるが)貯蔵溶液が残らないようにマイクロフィルタを脱飽和することとを含み得る。マイクロフィルタは、場合によっては、中間溶媒との接触後に乾燥させて、残留する貯蔵溶液及び/又は中間溶媒をさらに除去することができる。続いて、マイクロフィルタを通る気体又は液体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを算出することができる。試験流体が、脱飽和されたマイクロフィルタにアプライされ得る。続いて、例えば第1の表面に気体又は液体をアプライすることによって、脱飽和されたマイクロフィルタの第1の表面に圧力が加えられ得る。圧力は、マイクロフィルタを通る気体又は液体のフローをもたらし得るので、気体又は液体が、マイクロフィルタの、第1の表面とは反対側にある第2の表面から生ずるのが検出され得る。本方法は、マイクロフィルタを通る気体又は液体のフローをもたらすまで、圧力を増大させることを含み得る。マイクロフィルタの決定された細孔サイズに基づいて、治療用タンパク質を含む細胞培養生成物プールを濾過するためのマイクロフィルタを選択しても拒絶してもよい。
【0025】
本明細書中で用いられる「細孔サイズプロファイル」は、マイクロフィルタの細孔サイズ分布を指す。細孔サイズプロファイルは、数学的分布として、範囲として、又は単一の数値、例えば平均若しくは中央値として、場合によっては、標準偏差又は四分位値等の分布の特性評価を伴って、表され得る。マイクロフィルタが一般に、各々正確に同じサイズでない数多くの細孔を含有することは勿論であるので、1つ以上の数値による細孔サイズプロファイルの特定は、マイクロフィルタの単一の細孔全てが正確に同じサイズであることを意味しない。簡潔にするために、「細孔サイズプロファイル」は、本明細書中で「細孔サイズ」と称され得る。明示的にそうでないと述べられなければ、又は文脈から明らかでなければ、当然のことながら、「細孔サイズ」は、マイクロフィルタの単一の細孔全てが同じサイズであるという含意ではなく、細孔サイズプロファイルを指す。マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルの厳密な特性評価は、本明細書中に記載される方法によって達成され得、そして当該フィルタが用いられる用途において、一致したプロセス性能を確実にするのに有益である。
【0026】
キャピラリフローポロメトリ(CFP)
キャピラリフローポロメトリ(CFP)は、中空繊維(及びフラットシート)精密濾過(MF)膜の細孔サイズを測定するための確立されている解析手法である。当該方法は、1923年にA.Einsteinによって記載された(A.Einstein and H.Muehsam.Deutsche medizinische Wochenschrift.v49,no.31(1923):1012-1013、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0027】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、細孔サイズプロファイルは、キャピラリフローポロメトリ(CFP)によって決定され得る。CFPにおいて、膜(マイクロフィルタ等)は最初に、試験流体により満たされる。続いて、膜は、気体圧増大に曝されて、毛細管力によって膜細孔内の適所に最初に保持されている試験流体は、細孔から追い出される。気体が液体を細孔から追い出すにつれ、膜を越える気体フローが測定される。試験流体は、Young-Laplace式に従う、加えられる圧力(P)、試験流体の表面張力(γ)、膜表面と試験流体との接触角度(θ)、及び最も狭い点での細孔の直径(D)の関数:
P=4γcosθ/D [式I]
として、細孔から追い出される。
【0028】
したがって、本明細書中に記載される方法について、細孔サイズプロファイルは、[式I]に記載されるように、多孔性マイクロフィルタの細孔からの試験流体の放出(及び/又は気体の排出)をもたらす圧力のレベルに反比例し得る。一部の実施形態の方法において、[式1]は、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定するのに用いられる。
【0029】
細孔サイズプロファイルの決定は、本明細書中に記載される第2の表面からの気体又は液体のフローをもたらす圧力のレベルに基づき得る。
【0030】
CFPの性能は、適切に選択された試験流体、例えば本明細書中に記載される試験流体により試験されることとなる膜を均一に濡らすことを含み得る。
【0031】
マイクロフィルタ中等の膜(HFM等)の細孔の内側にトラップされるグリセロール等の貯蔵溶液を除去するために、液体の高い表面張力、及び5~200nmのオーダーであり得る膜の小さな細孔サイズによって引き起こされるフロー耐性に起因して、典型的には、液体中でのモーションを生み出すのに、かなりの量の機械的圧力が必要とされる。一部の膜供給会社による慣例は、非常に低い表面張力の液体、例えばPorolfil(登録商標)製品(又は他の液体、例えば、Fluorinert(登録商標)製品、Porefil(登録商標)製品、Porewick(登録商標)製品、又はGalwick(登録商標)製品)を利用して、グリセロールが自動的に置き換えられるか、又は低い表面張力の液体によって膜からポンプで吸い出されることを期待して、膜を「濡らす」(膜の細孔を満たす)というものである。続いて、CFP測定が、均一にPorofil(登録商標)製品で濡れていると推定して、膜上に直接的に実行される。低い表面張力の液体は、細孔内にトラップされている液体がない場合に、HFM等の膜の細孔を濡らすことができるか、又は満たすことができる。なぜなら、低い表面張力の液体は、単純に、細孔内にトラップされる空気を置き換えるからである。空気の粘度は、液体の粘度の1000倍未満であるので、エアフロー耐性は、液体と比較して、取るに足りない。しかしながら、高度に湿潤性の、低い表面張力の液体は、追加の機械的圧力なしで、膜の細孔内部の別の液体を置き換えることができない。この従来の実施は、典型的に、CFP測定の誤差及び不整合性を生じさせる。例えば本明細書中に記載される方法における、より繊細な手順は、CFP測定の前にHFM又はフラットシート等の膜中のグリセロールを除去して、細孔構造を保存することができる。
【0032】
マイクロフィルタ
本明細書中で用いられる「マイクロフィルタ」は、フラットシート膜(FSM)又は中空繊維膜(HFM)を含むか、又はこれからなるフィルタ膜を指す。マイクロフィルタは、細孔を含むので、「多孔性マイクロフィルタ」とも称され得る。正確な分子量カットオフ(MWCO)の厳密な決定は、複雑な分析的チャレンジであるかもしれないが、膜は、MWCOが指定され得る。MWCOを決定する標準化された方法の不在下で、膜メーカーは、多くの場合、適切なMWCO範囲内で膜を産することが知られているレシピに従う製造手順に単純に従う。マイクロフィルタは、ポリマー、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、若しくはセルロース、又は一覧にされた項目の2つ以上の組合せを含み得るか、又はそれからなり得る。一部の実施形態において、マイクロフィルタは、限外濾過(UF)フィルタである。マイクロフィルタは一種類の膜を指すので、「マイクロフィルタ」は本明細書中で「マイクロフィルタ膜」とも称され得る。したがって、「多孔性マイクロフィルタ」は、「多孔性マイクロフィルタ膜」とも称され得る。膜は、HFM又はFSMを含んでもよいか、又はそれからなる。
【0033】
図1は、試験流体110で満たされ、且つ細孔構造120a、120b、120cを含有する、第1の表面101及び第2の表面102を備えるマイクロフィルタ膜100の概略図を示す。各細孔構造120a、120b、120cの最も狭い点が、白色の矢印によって示される。圧力が第1の表面101に加えられる(黒色の矢印、130)場合、試験流体は、最初に最も大きな細孔から第2の表面102に向けて空にされ、そして圧力が増すにつれ、連続的により小さな直径の細孔がその後、空にされる(第2の表面から測定されるフローの増大として現れる)。第1の表面101と第2の表面102との間の材料は、「マトリックス」103と称され得る。
【0034】
貯蔵溶液の全て又は実質的に全てが除去されたマイクロフィルタは、「脱飽和(de-saturated or desaturated)」マイクロフィルタと称され得る。マイクロフィルタ中のあらゆる貯蔵溶液が、全反射測定-フーリエ変換赤外(ATR-FTIR)分光法によって測定される検出限界未満である場合、貯蔵溶液の全て又は実質的に全てが除去されている。すなわち、ATR-FTIRスペクトルは、純粋なマイクロフィルタ材料単独のスペクトルとマッチし得る。例えば、マイクロフィルタがポリスルホン又はポリエーテルスルホンでできているならば、マイクロフィルタのATR-FTIRスペクトルは、(必要に応じて)純粋なポリスルホン又はポリエーテルスルホンのスペクトルと比較されて、貯蔵溶液又は他の濡らし液体が少しでも検出され得るかを判定することができる。本明細書中で用いられる「乾燥」マイクロフィルタは、脱飽和マイクロフィルタを指す。
【0035】
一部の実施形態において、マイクロフィルタは、指定されたMWCOを有するように選択される。例えば、マイクロフィルタは、マイクロフィルタの決定された細孔サイズプロファイルが、指定された範囲内にある場合にのみ、濾過するのに、例えば、マイクロフィルタを通る分子量が最大50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、750kDa、又は1000kDaである分子の通過に対応するのに用いられるために選択され得る。一部の実施形態において、マイクロフィルタは、マイクロフィルタの決定された細孔サイズプロファイルが、マイクロフィルタを通る分子量が50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、750kDa、又は1000kDa未満である分子の通過に対応する場合にのみ、濾過するのに用いられるために選択される。
【0036】
一部の実施形態において、マイクロフィルタは、細孔の平均直径が、指定された範囲、例えば、5~120ナノメートル、5~100ナノメートル、60~120ナノメートル、又は60~100ナノメートル内に入る細孔サイズプロファイルを有するように選択される。
【0037】
貯蔵溶液
マイクロフィルタは、多くの場合、保存液又は湿潤剤とも称され得る貯蔵溶液中で飽和して提供される。UF HFM又はFSMマイクロフィルタは、典型的に、貯蔵溶液グリセリン又は他の不揮発性の液体で飽和するまで含浸されて、繊維製造中の膜中に存在する水の乾燥中の崩壊又は他の物理的変形に対して、細孔構造を保護する。そのような貯蔵溶液は、典型的に、表面張力が、UF膜上のCFPの性能に必須である表面張力よりも高い。したがって、CFP測定のためのマイクロフィルタサンプルの調製は、有利には、本明細書中に記載される、(A)貯蔵溶液を除去して、選択されたCFP試験流体により置き換え、且つ(B)膜の細孔構造を実質的に撹乱することなく済ませる方法による。細孔構造は、パータベーションがサンプル、例えばSEMによって観察されるサンプル中で検出されない場合、且つ/又はサンプル中の細孔の少なくとも85%、90%、若しくは95%が貯蔵溶液の除去前からその構造を保持している場合、「実質的には」撹乱されていないことは勿論である。
【0038】
一部の実施形態の方法において、貯蔵溶液は、水溶性不揮発性溶液、例えば、水、水性液体、ベンジルアルコール、又はポリオールを含むか、又はこれからなる。例えば、ポリオールは、グリセリン又はグリセロールを含み得るか、又はこれからなり得る。
【0039】
中間溶媒
本明細書中の一部の実施形態の方法用の中間溶媒は、1)貯蔵溶液を溶解させ、2)フィルタ膜を溶解させず、且つ3)乾燥(エバポレーション)によって、又は試験流体による置換えによって除去することができる溶媒を含むか、又はこれからなる。
【0040】
好都合にも、中間溶媒は、表面張力が水(約70mN m-1である)よりも低いことで、細孔構造に発揮されるより弱い毛細管力の原因となり、且つ細孔を変形させることなくエバポレーションが進行するのを可能にし得る。本明細書中の方法に適した中間溶媒の例として、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。一部の実施形態の方法において、中間溶媒は、1)貯蔵溶液を溶解させ、2)フィルタ膜を溶解させず、且つ3)乾燥(エバポレーション)によって、又は試験流体による置換えによって除去することができる溶媒を含むか、又はこれからなる。
【0041】
試験流体
本明細書中の方法に適した試験流体として、マイクロフィルタの表面を完全に濡らすことができる流体が挙げられる。典型的には、フィルタマトリックス材料との接触角度が低い、又はゼロの流体が、通常、マイクロフィルタのマトリックスを完全に濡らすことができる。したがって、本明細書中に記載される方法について、表面(例えば、本明細書中に記載される第1の表面)に対する試験流体の接触角度は、マイクロフィルタを試験流体で飽和させるほど十分に低い。例えば、試験流体の接触角度は、15°以下、10°以下、又は0°以下であってもよい。
【0042】
表面張力が低いことは、本明細書中に記載される方法の試験流体について、有利であり得る。UF膜に典型的な小さい細孔サイズについて、CFP測定を完了する圧力は、膜(HFM又はFSM)の破裂圧力よりも高くなり得る。したがって、表面張力が低い試験流体は、低い加圧力にてCFP測定を実行するので、膜の破裂を回避するのを可能にし得る。一例として、試験流体は、表面張力が水よりも低い。水の表面張力は、70mN m-1として参照され得る。したがって、試験流体は、表面張力が70mN m-1未満であり得る。
【0043】
本明細書中に記載される方法に適した試験流体の他の有益な特徴として、マイクロフィルタ用の構築の膜材料を溶解させず、これを膨張させず、且つ/又はそれ以外ではこれと相互作用しない試験流体が挙げられる。
【0044】
本明細書中に記載される方法用の試験流体は、有機溶媒又はその混合液を含み得るか、又はこれからなり得る。一部の実施形態の方法において、試験流体は、Porofil(登録商標)製品、Fluorinert(登録商標)製品、Porefil(登録商標)製品、Porewick(登録商標)製品、又はGalwick(登録商標)製品を含むか、又はこれからなる。
【0045】
治療用タンパク質
本明細書中で用いられる「治療用タンパク質」及びこのルート用語の変形は、本開示に鑑みて当業者によって理解されるその通常の慣習的な意味を有する。これは、ヒト対象等の対象における医療用の、又は非ヒト哺乳動物における獣医学的使用のためのポリペプチドを指す。治療用タンパク質は、医療用のタンパク質、例えば医療用の候補であっても、FDA又はEMA等の政府当局によって医療用に承認されたタンパク質であってもよい。
【0046】
本明細書中に記載される方法において、治療用タンパク質は、抗体、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))分子、多重特異性抗体(二重特異性抗体又は三重特異性抗体等)、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、合成ペプチド、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択され得る。
【0047】
「抗体」は、本開示に鑑みて当業者によって理解されるその慣習的な通常の意味を有する。これは、標的抗原に特異的に結合する免疫グロブリンを指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体が挙げられる。例として、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。例として、ヒト抗体は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4サブタイプが挙げられる)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプが挙げられる)、IgM、及びIgEが挙げられる、特定のアイソタイプのものがあり得る。ヒトIgG抗体は、一般に、2本の完全長重鎖及び2本の完全長軽鎖を含む。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよく、「キメラ」であってもよく、すなわち、当該抗体の異なる部分が、同じ又は異なる種由来の2種以上の異なる抗体に由来してもよい。当然のことながら、抗体が供給源から得られると、当該抗体は、例えば安定性及び折畳みを増強するために、更なる操作を施されてもよい。したがって、当然のことながら、「ヒト」抗体は、ある供給源から得ることができ、例えばFc領域内に、更なる操作を施されてもよい。操作された抗体は、依然としてヒト抗体の一種と称され得る。同様に、特に明記しない限り、例えば親和性成熟したものといった、ヒト抗体のバリアントも、「ヒト抗体」であると理解されよう。一部の実施形態において、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラモノクローナル抗体を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0048】
抗体、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ分子、又は多重特異性抗体の「重鎖」は、可変領域(「VH」)並びに3つの定常領域、即ちCH1、CH2、及びCH3を含む。抗体、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ分子、又は多重特異性抗体の「軽鎖」は、可変領域(「VL」)及び定常領域(「CL」)を含む。ヒト軽鎖は、カッパ鎖及びラムダ鎖を含む。抗原結合タンパク質に適した例示的な軽鎖定常領域として、ヒトラムダ定常領域及びヒトカッパ定常領域が挙げられる。
【0049】
種々の態様において、治療用タンパク質は、抗体タンパク質生成物である。本明細書中で用いられる用語「抗体タンパク質生成物」は、種々の例において、抗体の構造に基づくが、自然界では見られないいくつかの抗体代替物のいずれか1つを指す。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、少なくとも約12kDa~約250kDaの範囲内の分子量を有する。特定の態様において、抗体タンパク質生成物は、高次の価数でなければ、単量体(n=1)から二量体(n=2)まで、三量体(n=3)まで、四量体(n=4)までの価数(n)範囲を有する。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、完全抗体構造に基づくもの、並びに/又は完全抗原結合能を保持する抗体断片、例えば、scFv、Fab、及びVHH/VH(以下で説明する)を模倣するものである。完全抗原結合部位を保持する最小の抗原結合抗体断片は、完全に可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性のフレキシブルなアミノ酸ペプチドリンカーを用いて、分子を安定化させるためにV領域をscFv(単鎖断片可変)断片に連結するか、又は定常(C)ドメインをV領域に加えてFab断片[抗原結合性の断片]を生成する。scFv断片及びFab断片は双方とも、宿主細胞、例えば原核生物宿主細胞内で容易に産生させることができる。他の抗体タンパク質生成物として、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)、並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なるフォーマットを含む、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ、又はミニボディ(ミニAb)のような二量体抗体及び多量体抗体フォーマットが挙げられる。最小の断片は、ラクダ科重鎖Ab及び単一ドメインAb(sdAb)のVHH/VHである。新規の抗体フォーマットを作出するのに最も頻繁に用いられる構築ブロックは、約15個のアミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VHドメイン及びVLドメイン)を含む単鎖可変(V)ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上にグラフト化された生物活性ペプチドからなる。ペプチボディは、当該技術において十分に説明されている。例えば、Shimamoto et al..,mAbs 4(5):586-591(2012)参照。二重特異性T細胞エンゲージャ分子、例えば半減期延長部分を含むものも、抗体タンパク質生成物の例である。
【0050】
本明細書中に記載される方法に適した治療用タンパク質には、以下の1つ以上に結合するものが挙げられるポリペプチドが含まれ得る:CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD30、及びCD34;例えば、受容体結合に干渉するもの。HER受容体ファミリータンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4、及びEGF受容体。細胞接着分子、例えば、LFA-I、MoI、pl50、95、VLA-4、ICAM-I、VCAM、及びアルファv/ベータ3インテグリン。成長因子、例えば、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー管阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-Iアルファ)、エリトロポイエチン(EPO)、神経成長因子、例えばNGF-ベータ、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子、例えば、aFGF及びbFGF、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、とりわけ、TGF-α及びTGF-β、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5、インスリン様成長因子-I及びII(IGF-I及びIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、並びに骨誘導因子。インスリン及びインスリン関連タンパク質、例えば、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、及びインスリン様成長因子結合タンパク質。凝固及び凝固関連タンパク質、例えば、とりわけ、第VIII因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、プロテインC、アルファ-1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン、及びトロンボポイエチン;(vii)アルブミン、IgE、及び血液型抗原が挙げられるがこれらに限定されない他の血液タンパク質及び血清タンパク質。コロニー刺激因子及びその受容体、例えば、とりわけ、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF、並びにこれらの受容体、例えばCSF-1受容体(c-fms)。受容体及び受容体関連タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、LDL受容体、成長ホルモン受容体、トロンボポイエチン受容体(「TPO-R」、「c-mpl」)、グルカゴン受容体、インターロイキン受容体、インターフェロン受容体、T細胞受容体、幹細胞因子受容体、例えば、c-Kit、及び他の受容体。受容体リガンド、例えば、OX40受容体のリガンドであるOX40L。神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、及びニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)。リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、及びプロリラキシン;インターフェロン及びインターフェロン受容体、例えば、インターフェロン-α、-β、及び-γ、並びにこれらの受容体。インターロイキン及びインターロイキン受容体、例えば、とりわけ、IL-1~IL-33及びIL-1~IL-33受容体、例えばIL-8受容体。ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープウイルス抗原。リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性物質、腫瘍壊死因子アルファ及びベータ、エンケファリナーゼ、RANTES(活性化直後に調節され、通常T細胞により発現且つ分泌される(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted))、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、DNAse、インヒビン、及びアクチビン。インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、HIVエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、イムノアドヘシン、抗体。ミオスタチン、TALLタンパク質、例えば、TALL-I、アミロイドタンパク質、例えば、以下に限定されないが、アミロイドベータタンパク質、胸腺間質性リンパ球新生因子(「TSLP」)、RANKリガンド(「RANKL」又は「OPGL」)、c-kit、TNF受容体、例えば、TNF受容体1型、TRAIL-R2、アンジオポエチン、及び前述の内のいずれかの生物活性断片又は類似体若しくはバリアント。
【0051】
本明細書に記載される方法に適した治療用タンパク質の例として、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C、及びK334Cからなる群から選択される変異の内の1つ以上を含むIgG1定常領域を含む、抗体又はそのバリアントが挙げられる。例えば、インフリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ラニビズマブ、パリビズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴル、ald518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アルチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ(atorolimiumab)、トシリズマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cc49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、cr6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、fbta05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、gs6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-cd3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、又はゾリモマブアリトクスがある。
【0052】
一部の実施形態において、治療用タンパク質は、BiTE(登録商標)分子である。BiTE(登録商標)分子は、癌細胞に対してT細胞の細胞傷害活性を向ける操作された二重特異性抗原結合コンストラクトである。これは、約55kDaの単ペプチド鎖上に、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)、又は4種の異なる遺伝子由来のアミノ酸配列が融合したものである。scFvの一方はCD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する。ブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標)製品)は、CD19に特異的なBiTE(登録商標)分子の一例である。修飾されているBiTE(登録商標)分子(半減期を延長するように修飾されているもの等)も、開示される方法に用いることができる。種々の態様において、ポリペプチドは、抗原結合タンパク質、例えばBiTE(登録商標)分子である。一部の実施形態において、抗体タンパク質生成物は、BiTE(登録商標)分子を含む。
【0053】
細胞培養及び細胞培養生成物
本明細書中に記載される治療的タンパク質は細胞培養によって生成され得るので、細胞培養生成物によって構成され得ることは勿論である。本明細書中の方法に従って濾過され得る細胞培養生成物として:哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、又はヒト上皮腎臓293細胞;昆虫細胞、例えば、Sf21/Sf9又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5bl-4細胞;酵母細胞、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属又はピキア(Pichia)属細胞;植物細胞;鳥細胞、例えばニワトリ細胞;及び原核細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞からなる群から選択される細胞培養物のものが挙げられ得る。
【0054】
細孔サイズプロファイルを決定する方法
一部の実施形態において、細孔サイズプロファイルを決定する方法が記載される。本方法は、飽和多孔性マイクロフィルタを提供することを含み得る。多孔性マイクロフィルタは、第1の表面、第2の表面、及び第1の表面と第2の表面との間に配置されたマトリックスを含み得る。マトリックスは、貯蔵溶液によって飽和し得る。本方法はさらに、飽和多孔性マイクロフィルタを中間溶媒と接触させて、貯蔵溶液が中間溶媒中に溶解することでマイクロフィルタを脱飽和することを含み得る。本方法はさらに、試験流体を脱飽和マイクロフィルタにアプライすることで、マイクロフィルタを再飽和させることを含み得る。本方法はさらに、再飽和マイクロフィルタの第1の表面に圧力を加えることを含み得る。圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられ得る。本方法はさらに、前記圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出することを含み得る。本方法はさらに、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルを決定することを含み得る。
【0055】
一部の実施形態に従って細孔サイズプロファイルを決定する方法が、図2Aに例示される。第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含む飽和多孔性マイクロフィルタが提供され、マトリックスは、貯蔵溶液によって飽和している210。飽和多孔性マイクロフィルタは、中間溶媒と接触し、ここで貯蔵溶液は中間溶媒中に溶解することでマイクロフィルタを脱飽和する220。例えば、マイクロフィルタを中間溶媒と接触させることは、マイクロフィルタを中間溶媒中に浸漬させることを含み得る。続いて、試験流体が、脱飽和マイクロフィルタにアプライされることで、マイクロフィルタを再飽和させる230。圧力が、再飽和マイクロフィルタの第1の表面に加えられる240。圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられ得る。圧力が加えられた後に、圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出される250。例えば、圧力を加えるのに用いられる試験流体それ自体の、又は気体及び/若しくは液体の第2の表面からの放出が検出され得る。圧力は、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出されるまで、徐々に(例えば、連続的に、又は段階的に)増大し得る。第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出されると、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルは、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて決定され得る260。マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルが決定され得る。例えば、細孔サイズプロファイルは、本明細書中に記載されるCFPによって決定され得る。例えば、式1を用いて、圧力のレベルに基づいて、細孔サイズプロファイルを決定することができる。一部の実施形態において、マイクロフィルタの決定された細孔サイズプロファイルが、指定された範囲内にある場合にのみ、濾過に用いるマイクロフィルタが選択され得る。指定された範囲は、多孔性マイクロフィルタを通した、治療的タンパク質の通過に対応する範囲であり得る。例えば、治療的タンパク質は、本明細書中に記載される指定された治療的タンパク質であり得る。本方法はさらに、選択されたマイクロフィルタ(又は選択されたマイクロフィルタと同じバッチのマイクロフィルタ)を通して、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過することを含み得る。本方法の注目部分の1つ以上が繰り返されてもよいし、文脈において必要に応じて、省略されても、異なる順序で実行されてもよいことが理解されよう。一部の実施形態において、本方法は、試験流体をアプライする前に脱飽和マイクロフィルタを乾燥させることを含む230。乾燥は、中間溶媒がATR-FTIR分光法による検出限界未満になるまで実行され得る。
【0056】
一部の実施形態の方法において、本方法は、貯蔵溶液が導入される前に、HFM製造ラインから引き出されるマイクロフィルタサンプルに実行される。そのような方法について、210及び220が省略され得ることは勿論である。
【0057】
細胞培養生成物を濾過する方法
一部の実施形態において、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過する方法が記載される。本方法は、第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含み、マトリックスは貯蔵溶液によって飽和している、飽和多孔性マイクロフィルタを提供することを含み得る。本方法は、飽和多孔性マイクロフィルタを中間溶媒と接触させて、貯蔵溶液が中間溶媒中に溶解することでマイクロフィルタを脱飽和することを含み得る。本方法は、試験流体を脱飽和マイクロフィルタにアプライすることによってマイクロフィルタを再飽和させることを含み得る。本方法は、再飽和マイクロフィルタの第1の表面に圧力を加えることを含み得、圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられる。本方法は、前記圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローを検出することを含み得、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルは、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて決定される。マイクロフィルタの決定された細孔サイズプロファイルが、多孔性マイクロフィルタを通した治療的タンパク質の通過に対応する指定された範囲内にある場合にのみ、濾過に用いるマイクロフィルタが選択され得る。本方法はさらに、選択されたマイクロフィルタを通して治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過することを含み得る。細胞培養生成物は、本明細書中に記載される細胞培養の生成物であり得る。選択されたマイクロフィルタを通して細胞培養生成物を濾過することは、本方法に従ってプロセシングされた材料の正確な一画を通して細胞培養物を濾過することを必要とせず、細胞培養生成物を、試験したマイクロフィルタと同じバッチのマイクロフィルタを通して濾過することも包含することは勿論である。
【0058】
一部の実施形態に従って細胞培養生成物を濾過する方法が、図2Bに例示される。第1の表面、第2の表面、及びそれらの間に配置されたマトリックスを含み、マトリックスは貯蔵溶液によって飽和している、飽和多孔性マイクロフィルタが提供される211。飽和多孔性マイクロフィルタは、中間溶媒と接触し、ここで貯蔵溶液は中間溶媒中に溶解することでマイクロフィルタを脱飽和する221。例えば、マイクロフィルタを中間溶媒と接触させることは、マイクロフィルタを中間溶媒中に浸漬させることを含み得る。続いて、試験流体が、脱飽和マイクロフィルタにアプライされることで、マイクロフィルタを再飽和させる231。圧力が、再飽和マイクロフィルタの第1の表面に加えられる241。圧力は、第1の表面を気体又は液体と接触させることによって加えられ得る。圧力が加えられた後に、圧力に応じた第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出される251。例えば、圧力を加えるのに用いられる試験流体それ自体の、又は気体及び/若しくは液体の第2の表面からの放出が検出され得る。圧力は、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出されるまで、徐々に(例えば、連続的に、又は段階的に)増大し得る。第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローが検出されると、マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルは、第2の表面からの気体、液体、及び/又は試験流体のフローをもたらす圧力のレベルに基づいて決定され得る261。マイクロフィルタの細孔サイズプロファイルが決定され得る。例えば、細孔サイズプロファイルは、本明細書中に記載されるCFPによって決定され得る。例えば、式1を用いて、圧力のレベルに基づいて、細孔サイズプロファイルを決定することができる。マイクロフィルタの決定された細孔サイズプロファイルが、指定された範囲内にある場合にのみ、濾過に用いるマイクロフィルタが選択され得る271。指定された範囲は、多孔性マイクロフィルタを通した、治療的タンパク質の通過に対応し得る。本方法はさらに、選択されたマイクロフィルタ、又は選択されたマイクロフィルタと同じバッチのマイクロフィルタを通して、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過することを含み得る281。細孔サイズプロファイルが決定されるマイクロフィルタが、より大きなマイクロフィルタのサンプルであってもよいこと、そして細孔サイズプロファイルの決定に実際に用いられなかったマイクロフィルタ、又は同じバッチ由来の他のマイクロフィルタの部分が、細胞培養生成物を濾過するのに用いられ得、且つ実際に試験されるマイクロフィルタと一致して細孔サイズプロファイルを有すると理解され得ることが理解されよう。本方法の注目部分の1つ以上が繰り返されてもよいし、文脈において必要に応じて、省略されても、異なる順序で実行されてもよいことが理解されよう。細胞培養生成物は、本明細書中に記載される細胞培養の生成物であり得る。一部の実施形態において、本方法は、試験流体をアプライする前に脱飽和マイクロフィルタを乾燥させることを含む231。乾燥は、中間溶媒がATR-FTIR分光法による検出限界未満になるまで実行され得る。
【0059】
一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法において、指定された範囲は、多孔性マイクロフィルタを通した、分子量が最大50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、750kDa、又は1000kDaである分子の通過に対応する。一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法において、指定された範囲は、5~120ナノメートル、60~100ナノメートル、5~100ナノメートル、又は60~120ナノメートルの平均細孔直径である。
【0060】
一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法に従えば、細胞培養生成物は、治療的タンパク質に加えて、細胞及び/又は細胞の構成要素を含み得る。例えば、細胞培養生成物は、治療的タンパク質に加えて、細胞破壊片及び/又は宿主細胞タンパク質を含み得る。濾過は、治療的タンパク質がマイクロフィルタを通過するのを許容する一方、細胞培養生成物の他の部分の通過を許容しないことによって、治療的タンパク質を、細胞培養生成物中の他の物質の一部又は全部から分離し得る。
【0061】
適切な細胞培養生成物の例として:哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、又はヒト上皮腎臓293細胞;昆虫細胞、例えば、Sf21/Sf9又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5bl-4細胞;酵母細胞、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属又はピキア(Pichia)属細胞;植物細胞;鳥細胞、例えばニワトリ細胞;及び原核細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞からなる群から選択される細胞培養物のものが挙げられ得る。
【0062】
本明細書中に記載される細胞培養生成物を濾過する方法は、医療用の候補であるか、又はFDA若しくはEMA等の政府当局によって医療用に承認されている治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過するのに用いられ得る。一部の実施形態の細胞培養生成物を濾過する方法において、治療的タンパク質は:抗体、抗原結合抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))分子、多重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択される。
【0063】
本明細書中に記載される方法についての追加のオプション
本明細書中に記載される方法について、一バッチのマイクロフィルタ由来のサンプルが試験されて、バッチのマイクロフィルタが、治療的タンパク質を含む細胞培養生成物を濾過するのに用いられ得るかを判定することができるのは勿論である。また、膜のサンプルは、フィルタデバイス中への膜のアセンブリ前に直接的に試験され得る。本明細書中に記載されるあらゆる方法について、当該方法において試験されるマイクロフィルタは、フルサイズのマイクロフィルタである必要はないが、より大きなマイクロフィルタのサンプルであってもよい(ので、より大きなマイクロフィルタ、及び/又は同じバッチの他のマイクロフィルタはその後、本明細書中に記載されるように、細胞培養生成物を濾過するのに用いられ得る)ことは勿論である。本明細書中に記載される一部の方法において、当該方法は、飽和マイクロフィルタを中間溶媒と接触させる前に、多孔性マイクロフィルタの繊維を指定された寸法にカットすることを含む。指定された寸法は、例えば、5~10cm、5~15cm、5~20cm、10~15cm、又は10~20cmの長さであってもよいし、指定された長さ及び幅であってもよい(例えば、フラットシートフィルタが、指定された長さ及び幅、例えば、10cm×10cm、10cm×20cm、又は20cm×20cmにカットされてもよい)。
【0064】
本明細書中に記載される一部の方法において、マイクロフィルタは、貯蔵溶液、例えばグリセリン中で提供され得る。本方法は、グリセリンと混和性であるが、膜を溶解させないし過剰に変形させない中間溶媒を用いて、貯蔵溶液をマイクロフィルタから抽出することを含み得る。これは、単純に溶媒中への膜の浸漬によって達成され得る。本方法は、中間溶媒からマイクロフィルタを取り出すことと、マイクロフィルタを乾燥させることとを含み得る。乾燥により、中間溶媒は蒸発し得る。中間溶媒は、水よりも表面張力が低い。マイクロフィルタ(今はいかなる液体もない)はこれで、単純にマイクロフィルタを試験流体中に浸漬させることによって、試験流体と容易に接触することができて、試験流体がマイクロフィルタを浸潤させるのを可能にする。場合によっては、マイクロフィルタは、CFP用の特殊なサンプルホルダー内にマイクロフィルタを取り付ける前又は後に、試験流体と接触してもよい。
【0065】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタは、限外濾過膜又はその部分であり得る。これらの方法において、マイクロフィルタは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、又はセルロースを含んでもよいし、これから本質的になってもよいし、これからなってもよい。
【0066】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、貯蔵溶液は、中間溶媒中に可溶性であり得、中間溶媒は、マイクロフィルタを溶解させず、中間溶媒は、1気圧20℃にて蒸発する。本明細書中に記載される方法のいずれについても、貯蔵溶液は、水溶性不揮発性溶液、例えば、水、ベンジルアルコール、又はポリオールを含むか、又はこれからなる。例えば、ポリオールは、グリセリン又はグリセロールを含んでもよいし、これからなってもよい。
【0067】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、中間溶媒は、イソプロピルアルコール等のアルコールを含んでもよいし、これからなってもよい。
【0068】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタ(又はそのサンプル)中の貯蔵溶液が、ATR-FTIR分光法による検出限界未満である場合、マイクロフィルタは脱飽和している。第1の表面及び/又は第2の表面のATR-FTIRスペクトルが、マイクロフィルタが作製される純粋な材料(ポリスルホン又はポリエーテルスルホン等)の参照スペクトルにマッチする場合、マイクロフィルタは脱飽和されていると結論され得る。
【0069】
十分な貯蔵溶液が中間溶媒によって溶解して、更なるプロセシングなしで細孔サイズプロファイルの決定を可能にすると考えられる一方、更なる量の貯蔵溶液及び/又は中間溶媒が、試験流体をアプライする前に脱飽和マイクロフィルタを乾燥させることによって除去され得るとさらに考えられる。したがって、一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法はさらに、試験流体をアプライする前に脱飽和マイクロフィルタを乾燥させることを含む。一部の実施形態の方法において、乾燥は、中間溶媒がATR-FTIR分光法による検出限界未満になるまで実行される。一部の実施形態の方法において、乾燥は、マイクロフィルタのマトリックス中の貯蔵溶液の量が、飽和の1%、0.5%、0.1%、又は0.01%以下になるまで実行される。
【0070】
本明細書中に記載される方法のいずれについても、マイクロフィルタは、中空繊維膜又はフラットシート膜を含み、圧力を加えることは、圧力を、マイクロフィルタの繊維又はシートの破裂を引き起こさないレベルに制限することを含む。本明細書中で説明されるように、表面張力が低い(70mN m-1未満等)試験流体により、CFPは、比較的低い圧力で完了することが可能となるので、繊維又はシートの破裂を回避することができる。
【実施例
【0071】
実施例1:サンプル調製
UF HFM繊維サンプルを、Cytiva(繊維タイプ750E、MWCO 750kDa)から得た。繊維を、ミクロスフェアを用いて所望の長さ(12cm)にカットした。カットしたセグメントを、溶媒(イソプロピルアルコール)で満たした適切なコンテナ内に置いて、保存液(グリセリン)を除去した。セグメント及び抽出溶媒を有するコンテナを、撹拌(オービタルシェーカー、200rpm、1時間)に供した。セグメントを溶媒から取り出して、乾燥させた(1時間)。その時点で、セグメント(本明細書中の図及び説明において「乾燥した」と称される)は、膜中へのCFP試験流体(Porofil(登録商標))の導入の準備が整った。これは、単純にPorofil中に浸漬することによって達成された。
【0072】
全反射測定-フーリエ変換赤外(ATR-FTIR)分光法及び電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)測定を、サンプル調製の種々のステージにて実行した。
【0073】
HFMサンプルの内表面にATR-FTIR分光法を実行して、貯蔵溶液の除去及び選択した試験流体との置換えが実証された。図3A図3Bは、未処理の繊維(グリセリンを容易に検出することができる)、「ボーンドライ」繊維(グリセリンを検出することができず、スペクトルは、HFMを製造するのに用いたポリマーである純粋なポリスルホンの参照スペクトルにマッチする)、及びフルオロカーボンの混合物であるPorofil(登録商標)製品を裏込めした繊維(Porofil(登録商標)製品を実際に検出することができる)について得られたスペクトルを示す。グリセリン及びポリスルホンについての参照スペクトルを含めている。
【0074】
グリセリンをPorofil(登録商標)製品で直接的に(すなわち、未処理の繊維をPorofil(登録商標)製品中に浸すことによって)置き換える試みでは、グリセロールは除去されなかった。このように調製した繊維のスペクトルは依然として、大量のグリセロールの存在を示した(データ示さず)。サンプル調製手順が膜の細孔構造を大きく撹乱するのを回避することを実証するために、高解像度SEM画像を、グリセリン除去の前に(図4A及び図4C)、そして「ボーンドライ」状態を達成した後に(図4B及び図4D)、HFM内表面から得た。代表画像を図4A図4Dに示す。これは、HFM細孔構造へのダメージの証拠を示さない。図4A図4Bは、20,000×倍にて得られた画像を示し、図4C図4Dは、50,000×倍にて得られた画像を示す。
【0075】
したがって、本明細書中の方法が、細孔サイズプロファイルを実質的に混乱させることなくマイクロフィルタから貯蔵溶液を全部又は実質的に全部除去することで、マイクロフィルタをCFPに適したものにすると結論した。
【0076】
実施例2:調製したUF HFMサンプルのCFP測定
実施例1における手順に従うこれらのサンプルの調製後に、CFP測定をHFMサンプルに実行した。得られた結果は、図5に示すように、再現可能な測定値を示し、細孔サイズは、予想される傾向に従って測定された。この結果は、本明細書中に記載されるサンプル調製手順の有効性を実証する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
【国際調査報告】