(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒成分を形成するプロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08F4/654
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521186
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022078455
(87)【国際公開番号】W WO2023062108
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラトネ クムディニ
(72)【発明者】
【氏名】ロンッコ ハンナ-レーナ
(72)【発明者】
【氏名】シュトフ パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】ケットナー ヨアナ エルヴィラ
(72)【発明者】
【氏名】パルヤネン ユッカ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ティーティネン エミリア
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA03
4J128AB03
4J128AC05
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15A
4J128CB45A
4J128DB03A
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA02
4J128GA05
4J128GA19
4J128GA21
4J128GB02
4J128GB07
(57)【要約】
洗浄工程の特定の組み合わせが用いられ、上昇した融解温度、低下したXCS含有量を有するポリプロピレンを合成することができ、かつ逐次重合プロセスにわたって触媒活性をより効率的に維持することができる本発明の触媒の提供を可能にするチーグラー・ナッタ触媒成分を形成するプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタ触媒成分を形成する方法であって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を懸濁液として得る工程と、
c)工程b)から得られた懸濁液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる、方法。
【請求項2】
工程d1)の洗浄溶液は、内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d2)は、四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄を含む請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた前記洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程d)の洗浄は、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程をさらに含み、工程d4)は工程d2)の後かつ工程d3)の前に行われる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程d4)で添加される内部電子供与体(ID)の量と前記チーグラー・ナッタ触媒成分中のマグネシウムの量との間のモル比([ID]/[Mg])は0.01~0.20の範囲、より好ましくは0.02~0.15の範囲、最も好ましくは0.03~0.10の範囲にある請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非フタル酸内部電子供与体は、非フタル酸ジエステル、より好ましくはモノ不飽和ジエステルである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記非フタル酸内部電子供与体は、マレイン酸エステル、シトラコン酸エステル、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸エステル並びにこれらのいずれかの誘導体及び/又は混合物の群から選択され、最も好ましくは前記非フタル酸電子供与体はシトラコン酸エステル内部電子供与体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程e)の後に、前記チーグラー・ナッタ触媒成分は、式(I)のビニルモノマーを重合することによって得られるポリマー核形成剤によってさらに改質され、
H
2C=CH-CHR
1R
2 (I)
式中、R
1及びR
2は、独立に、1~4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表すか、又はそれらが結合している炭素原子とともに、置換されていてもよい飽和、不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成し、前記環又は縮合環部分は4~20個の炭素原子を含有し、好ましくはR
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子とともに、5~12員の飽和若しくは不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法によって得られるチーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項11】
1.00~2.40重量%の範囲、より好ましくは1.30~2.20重量%の範囲、最も好ましくは1.50~2.00重量%の範囲のチタン含有量を有する請求項10に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項12】
前記チーグラー・ナッタ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比([Ti]/[Mg])は0.06~0.14の範囲、より好ましくは0.07~0.13の範囲、最も好ましくは0.08~0.12の範囲にある請求項10又は請求項11に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物と、共触媒(Co)と、任意選択で外部ドナー(ED)とを含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合を含む、ポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項14】
ポリプロピレン組成物の製造方法であって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を得る工程と、
c)工程b)から得られた溶液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われ、
工程e)で回収された固体触媒成分、共触媒(Co)及び任意選択で外部ドナー(ED)を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、プロピレンを、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーと重合する工程をさらに含む
方法。
【請求項15】
任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合のための、共触媒(Co)及び任意選択の外部ドナー(ED)を伴う請求項10から請求項12のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄工程の特定の組み合わせが関与するチーグラー・ナッタ触媒成分を形成するプロセス、このチーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ組成物、及びこのチーグラー・ナッタ触媒組成物を含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下でプロピレンを(共)重合するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta、ZN)型ポリオレフィン触媒は、ポリマーの分野において周知であり、一般に、この型の触媒は、(a)少なくとも、周期表(IUPAC,Nomenclature of Inorganic Chemistry,1989)の第4族~第6族の遷移金属化合物、周期表(IUPAC)の第1族~第3族の金属化合物、並びに任意選択で周期表(IUPAC)の第13族の化合物及び/又は内部ドナー化合物から形成される触媒成分を含む。ZN触媒は、(b)共触媒及び/又は外部ドナー等のさらなる触媒成分(複数種可)も含んでもよい。
【0003】
多種多様なチーグラー・ナッタ触媒が、反応特性における異なる要求を満たすために、並びに所望の物理的及び機械的性能を有するポリ(α-オレフィン)樹脂を製造するために開発されている。ZN触媒を調製するための様々な方法が先行技術において公知である。1つの公知の方法では、担持型ZN触媒系は、触媒成分を粒子状担体材料に含浸させることによって調製される。国際公開第01/55230号パンフレットでは、触媒成分は、シリカ等の多孔質の、無機又は有機の粒子状担体材料上に担持される。
【0004】
さらなる周知の方法では、担体材料は、触媒成分の1つ、例えばMgCl2等のマグネシウム化合物に基づく。このタイプの担体材料も、様々な方法で形成することもできる。日本ポリオレフィンの欧州特許出願公開第713886号明細書は、アルコールとのMgCl2付加物の形成を記載しており、これは次いで乳化され、最終的に得られた混合物は、液滴の凝固を引き起こすために急冷(クエンチ)される。あるいは、BPの欧州特許出願公開第856013号明細書は、Mg成分含有相が連続相に分散され、この二相混合物を液体炭化水素に添加することによって分散されたMg相が固化される、固体Mg系担体の形成を開示する。形成された固体担体粒子は、通常、遷移金属化合物で処理され、場合により活性触媒を形成するための他の化合物で処理される。
【0005】
従って、外部担体の場合、そのいくつかの例が上に開示されているが、担体の形態は最終触媒の形態の規定因子の1つである。
【0006】
国際公開第00/08073号パンフレット及び国際公開第00/08074号パンフレットは、Mg系化合物及び1種以上のさらなる触媒化合物の溶液が形成され、その反応生成物が、系を加熱することによって溶液から沈殿される、固体ZN触媒を製造するためのさらなる方法を記載している。さらには、欧州特許出願公開第926165号明細書は、MgCl2とMgアルコキシドとの混合物がTi化合物とともに沈殿されてZN触媒が得られる、別の沈殿方法を開示する。
【0007】
Montedison(モンテジソン)の欧州特許出願公開第83074号明細書及び欧州特許出願公開第83073号明細書は、Mg及び/又はTi化合物のエマルション又は分散液が不活性液体媒体又は不活性気相中で形成され、この系がAl-アルキル化合物との反応に供されて固体触媒が沈殿される、ZN触媒又はその前駆体を製造する方法を開示する。実施例によれば、上記エマルションは、次いで、ヘキサン中のより大量のAl化合物に添加され、沈殿を引き起こすために前(予備)重合される。
【0008】
重合プロセスにおいて、これは、いずれ、反応器の壁上及びライン内及び押出機のようなさらなる装置内での詰まり、ポリマー層の形成等の望ましくない有害な障害を引き起こし、加えてポリマー粉末の流動性の低下及び他のポリマーの取扱いの問題を引き起こす。
【0009】
欧州特許出願公開第1403292A1号明細書、欧州特許出願公開第0949280A1号明細書、米国特許第4294948号明細書、米国特許第5413979号明細書及び米国特許第5409875号明細書並びに欧州特許出願公開第1273595A1号明細書は、オレフィン重合触媒成分又はオレフィン重合触媒の調製のプロセス及びオレフィンのポリマー又はコポリマーの調製のプロセスを記載している。
【0010】
多数の代替ZN触媒調製物が開発されてきたが、溶融温度の上昇及びXCS含有量の減少に関連して、微調整された機械的特性、特に結晶性(結晶化度)が高められたポリプロピレンの製造を可能にするさらなる触媒にアクセスする必要性が依然として存在する。さらには、逐次重合プロセスの各工程において活性の低下が可能な限り低い触媒を有することが望ましい。特に、そのような修正された方法が触媒調製のただ1つの工程への単純な変更の結果である場合、この改変は、広範囲の既存の触媒調製プロセスに容易に適用することができよう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第01/55230号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第713886号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第856013号明細書
【特許文献4】国際公開第00/08073号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/08074号パンフレット
【特許文献6】欧州特許出願公開第926165号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第83074号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第83073号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1403292A1号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0949280A1号明細書
【特許文献11】米国特許第4294948号明細書
【特許文献12】米国特許第5413979号明細書
【特許文献13】米国特許第5409875号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第1273595A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、触媒調製プロセス中の洗浄工程を変更することにより、プロピレンの重合のための改善された特性を有する触媒の提供を可能にすることができるという知見に基づく。
【0013】
従って、本発明は、チーグラー・ナッタ触媒成分を形成するプロセス(方法)であって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を懸濁液として得る工程と、
c)工程b)から得られた懸濁液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序(given order)で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる、プロセスに向けられる。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係るプロセスによって得られるチーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物に向けられる。
【0015】
別の態様では、本発明は、本発明に係るチーグラー・ナッタ触媒組成物と、共触媒(Co)と、任意選択で外部ドナー(ED)とを含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合を含むポリプロピレン組成物の製造のプロセス(方法)に向けられる。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、ポリプロピレン組成物の製造のプロセスであって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を得る工程と、
c)工程b)から得られた溶液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われ、
工程e)で回収された固体触媒成分、共触媒(Co)及び任意選択で外部ドナー(ED)を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、プロピレンを、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーと重合する工程をさらに含む、プロセスに向けられる。
【0017】
最終の態様では、本発明は、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合のための、共触媒(Co)及び任意選択の外部ドナー(ED)を伴う本発明に係るチーグラー・ナッタ触媒組成物の使用に向けられる。
【0018】
定義
特段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験のために実践において使用することができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。本発明の説明及び特許請求において、以下の用語が、以下に示される定義に従って使用される。
【0019】
明示的に特段の記載がない限り、「a(ある、1つの)」、「an(ある、1つの)」等の用語の使用は、1つ以上を指す。
【0020】
プロピレンホモポリマーは、プロピレンモノマー単位から本質的になるポリマーである。特に商業的重合プロセス中の不純物に起因して、プロピレンホモポリマーは、1.0モル%までのコモノマー単位、好ましくは0.5モル%までのコモノマー単位、より好ましくは0.1モル%までのコモノマー単位、さらにより好ましくは0.05モル%までのコモノマー単位、最も好ましくは0.01モル%までのコモノマー単位を含むことができる。プロピレンが唯一の検出可能なモノマーであることが特に好ましい。
【0021】
プロピレンランダムコポリマーは、プロピレンモノマー単位と、好ましくはエチレン及びC4~C12α-オレフィンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーであって、コモノマー単位がポリマー鎖にわたってランダムに分布しているコポリマーである。プロピレンランダムコポリマーは、炭素原子の量が異なる1種以上のコモノマーからのコモノマー単位を含むことができる。以下において、別段の記載がない限り、量は重量%で示される。
【0022】
本発明の文脈において、洗浄工程は、触媒粒子が、通常は撹拌しながら、特定の時間にわたって洗浄溶液と接触させられる工程である。この時間の後、懸濁液は静置(沈降)され、洗浄溶液は除去される。新しい洗浄溶液が、さらなる洗浄のために添加される。それゆえ、当業者は、同じ特定の洗浄溶液を用いた2回の連続する洗浄は、2倍の継続時間にわたる単一の洗浄工程と同じではなく、これは、第2の特定の洗浄は、第1の洗浄の終わりに存在する汚染された可能性がある溶液ではなく、新しい洗浄溶液を用いるからであることを理解するであろう。
【0023】
さらには、本発明の文脈において、洗浄溶液が、成分Aの洗浄溶液、又は成分A及び成分Bの洗浄溶液であると特定される場合、特定された成分以外のさらなる成分は存在しないとされる。換言すれば、「成分Aの洗浄溶液」は、「成分Aからなる洗浄溶液」と解釈されるべきである。この定義は、「洗浄溶液」という用語に特有である。一方、「成分Aの溶液」という用語は、成分Aに加えて、少なくとも1種の溶媒の存在を含意する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】比較の触媒粒子及び本発明の触媒粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像及び光学顕微鏡(LM)像
【
図2】本発明の触媒又は比較触媒によって重合されたポリプロピレンの分子量分布
【
図3】比較の触媒及び本発明の触媒を使用して得られたポリマー粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像及び光学顕微鏡(LM)像
【発明を実施するための形態】
【0025】
触媒調製
本発明に係るプロセスは、チーグラー・ナッタ触媒成分を形成するプロセスであって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を懸濁液として得る工程と、
c)工程b)から得られた懸濁液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる、プロセスである。
【0026】
最も単純な形式では、工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含む。
【0027】
しかしながら、工程d1)の洗浄溶液は、内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液であり、従って、工程d)は、
d1)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
を記載される順序で含むことが好ましい。
【0028】
同様に、工程d2)は、四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄を含み、従って、工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
を記載される順序で含むことが好ましい。
【0029】
工程d1)の洗浄溶液が、内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液であり、工程d2)が、四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄を含み、従って、工程d)の洗浄が、
d1)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
を記載される順序で含むことがさらに好ましい。
【0030】
このような実施形態では、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄のうちの少なくとも2回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われることが好ましい。
【0031】
さらなる好ましい実施形態では、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる。この要件は、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄が存在する実施形態、又は実際に、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄が存在する実施形態に等しく当てはまりうる。
【0032】
工程d)の洗浄は、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程をさらに含み、工程d4)は、工程d2)の後かつ工程d3)の前に行われることがさらに好ましい。
【0033】
そのような実施形態では、工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含む。
【0034】
工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含むことがさらに好ましい。
【0035】
あるいは、工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含むことが好ましい。
【0036】
工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含むことがなおさらに好ましい。
【0037】
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~120℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われることがとりわけ好ましい。
【0038】
工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~120℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われることがなおさらに好ましい。
【0039】
工程d1)及び任意選択の工程d4)で用いられる溶媒はトルエンであることが特に好ましい。
【0040】
従って、工程d)の洗浄は、好ましくは、
d1)トルエン及び任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d4)任意選択で、内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含む。
【0041】
より好ましくは、工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d4)任意選択で、内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含む。
【0042】
工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)トルエン及び任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われることが特に好ましい。
【0043】
工程d)の洗浄は、
d1)内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄、
d4)内部電子供与体(ID)及びトルエンの洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われることが特に好ましい。
【0044】
工程d)が工程d4)をさらに含むこれらの実施形態の各々において、内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液の中に存在する供与体の量は、内部電子供与体(ID)の量とチーグラー・ナッタ触媒成分中のマグネシウムの量との間のモル比([ID]/[Mg])が0.01~0.20の範囲、より好ましくは0.02~0.15の範囲、最も好ましくは0.03~0.10の範囲にあるような量である。
【0045】
チーグラー・ナッタ触媒中のマグネシウムの量は、マグネシウムを導入する先行する触媒調製工程において使用されるマグネシウムの量と等しいと仮定され、すなわち、触媒調製において使用されるすべてのマグネシウムが最終的にチーグラー・ナッタ触媒に存在すると仮定されてもよい。
【0046】
理論に束縛されるものではないが、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄における温度が高いほど、工程d4)においてより多くの供与体(ドナー)が存在する必要があると考えられる。
【0047】
上述の実施形態の各々では、工程d1)(ドナーが存在する場合)、d2)、d4)(この工程が存在する場合)及び工程c)の前の任意の工程で用いられる内部ドナー(ID)は、非フタル酸内部ドナーである。
【0048】
これらの工程で使用される非フタル酸内部ドナーは、同じであってもよいし異なっていてもよく、又は非フタル酸内部ドナーの混合物であってもよい。
【0049】
1つの好ましい実施形態では、工程d1)(ドナーが存在する場合)、d2)、d4)(この工程が存在する場合)及び工程c)の前の任意の工程の各々における非フタル酸内部ドナーは、同じ非フタル酸内部ドナーであり、単一の非フタル酸内部ドナー又は非フタル酸内部ドナーの混合物のいずれかであり、最も好ましくは単一の非フタル酸内部ドナーである。
【0050】
非フタル酸内部電子供与体は、非フタル酸ジエステル、又は非フタル酸ジエステルの混合物であることが特に好ましく、最も好ましくは単一の非フタル酸ジエステルである。
【0051】
非フタル酸内部電子供与体がモノ(一価)不飽和ジエステル、又はモノ不飽和ジエステルの混合物であることがさらに好ましく、最も好ましくは単一のモノ不飽和ジエステルである。
【0052】
特に、非フタル酸内部電子供与体は、好ましくは、マレイン酸エステル、シトラコン酸エステル、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸エステル(シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート)、並びにこれらのいずれかの誘導体及び/又は混合物の群から選択される。
【0053】
最も好ましくは、非フタル酸電子供与体は、シトラコン酸エステル内部電子供与体である。
【0054】
工程a)のマグネシウム成分は、任意のマグネシウム含有化合物であってもよいが、好ましくは、ハロゲン化マグネシウム(マグネシウムハライド)、マグネシウムアルコキシド及びこれらの混合物から選択される。
【0055】
1つの特に好ましい実施形態では、マグネシウム成分はマグネシウムアルコキシドである。
【0056】
少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液が提供される工程a)は、当該技術分野において公知の少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供するための任意の公知の方法に従って行うことができる。
【0057】
好適な方法としては、方法a1)~a5)が挙げられる。
a1)任意選択で有機液体反応媒体中のマグネシウム化合物(MgC)とヒドロキシル部分に加えて少なくとも1つのエーテル部分を含む一価アルコール(A)との反応生成物である少なくとも1種のマグネシウムアルコキシ化合物(Ax)の溶液を提供すること、又は
a2)任意選択で有機液体反応媒体中のマグネシウム化合物(MgC)と上記一価アルコール(A)及び式ROHの一価アルコール(B)のアルコール混合物との反応生成物である少なくとも一種のマグネシウムアルコキシ化合物(Ax’)の溶液であって、Rは2~16個の炭素原子の直鎖状若しくは分枝状(branched)のアルキル基である溶液、又は
a3)任意選択で有機液体反応媒体中の上記マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)及びマグネシウム化合物(MgC)と上記一価アルコール(B)との反応生成物であるマグネシウムアルコキシ化合物(Bx)の混合物の溶液を提供すること、又は
a4)式Mg(OR1)n(OR2)mX2-n-mのマグネシウムアルコキシ化合物若しくはマグネシウムアルコキシドMg(OR1)n’X2-n’及びMg(OR2)m’X2-m’の混合物の溶液であって、Xはハロゲンであり、R1及びR2は、2~16個の炭素原子の異なる直鎖状若しくは分枝状のアルキル基であり、0≦n<2、0≦m<2及び0<n+m≦2であり、0<n’≦2及び0<m’≦2である溶液を提供すること、
a5)少なくとも式ROHの一価アルコール(A1)(及び任意選択で、ヒドロキシル基に加えてヒドロキシル基ではない別の酸素含有官能基を含むアルコール(A2))を含むアルコール混合物中にMgジハライドを含む溶液であって、Rは3~16個のC原子のヒドロカルビルから選択される溶液を提供すること、
a6)有機溶媒中にMgジハライドを含む溶液を提供すること。
【0058】
1つの好ましい実施形態では、工程a)は、
a1)任意選択で有機液体反応媒体中のマグネシウム化合物(MgC)とヒドロキシル部分に加えて少なくとも1つのエーテル部分を含む一価アルコール(A)との反応生成物である少なくとも1種のマグネシウムアルコキシ化合物(Ax)の溶液を提供すること、又は
a2)任意選択で有機液体反応媒体中のマグネシウム化合物(MgC)と上記一価アルコール(A)及び式ROHの一価アルコール(B)のアルコール混合物との反応生成物である少なくとも一種のマグネシウムアルコキシ化合物(Ax’)の溶液であって、Rは2~16個の炭素原子の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である溶液、又は
a3)任意選択で有機液体反応媒体中の上記マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)及びマグネシウム化合物(MgC)と上記一価アルコール(B)との反応生成物であるマグネシウムアルコキシ化合物(Bx)の混合物の溶液を提供すること、又は
a4)式Mg(OR1)n(OR2)mX2-n-mのマグネシウムアルコキシ化合物若しくはマグネシウムアルコキシドMg(OR1)n’X2-n’及びMg(OR2)m’X2-m’の混合物の溶液であって、Xはハロゲンであり、R1及びR2は、2~16個の炭素原子の異なる直鎖状若しくは分枝状のアルキル基であり、0≦n<2、0≦m<2及び0<n+m≦2であり、0<n’≦2及び0<m’≦2である溶液を提供すること、
a5)少なくとも式ROHの一価アルコール(A1)(及び任意選択で、ヒドロキシル基に加えてヒドロキシル基ではない別の酸素含有官能基を含むアルコール(A2))を含むアルコール混合物中にMgジハライドを含む溶液であって、Rは3~16個のC原子のヒドロカルビルから選択される溶液を提供すること、
a6)有機溶媒中にMgジハライドを含む溶液を提供すること
からなり、加えて、本発明に係る非フタル酸内部電子供与体は、いずれの段階で添加されてもよい。
【0059】
従って、内部ドナー(ID)又はその前駆体は、好ましくは、工程a)の溶液に、又は工程a)の溶液を添加する前にチタン(IV)化合物に添加される。
【0060】
上記の手順によれば、当該チーグラー・ナッタ触媒成分は、物理的条件、とりわけ工程b)及びc)で使用される温度に応じて、沈殿法又はエマルション凝固法によって得ることができる。エマルションは、本出願において液/液二相系とも呼ばれる。
【0061】
両方の方法(沈殿又はエマルション凝固)において、触媒の化学的性質は同じである。
【0062】
沈殿法では、工程a)の溶液と工程b)における少なくとも1種のチタン(IV)化合物との組み合わせが行われ、固体粒子の形態の触媒成分の完全な沈殿(工程c)を確保するために、反応混合物全体が少なくとも50℃、より好ましくは55~110℃の温度範囲、より好ましくは70~100℃の範囲に維持される。
【0063】
工程b)におけるエマルション凝固法では、工程a)の溶液は、典型的には、低温で、例えば-10~50℃未満、好ましくは-5~30℃で、少なくとも1種のチタン(IV)化合物に添加される。エマルションの撹拌中、温度は、典型的には-10~40℃未満、好ましくは-5~30℃に維持される。エマルションの分散相の液滴は、活性触媒組成物を形成する。液滴の凝固(工程c)は、エマルションを70~150℃、好ましくは80~110℃の温度に加熱することによって適切に行われる。
【0064】
本発明においては、エマルション凝固法により調製された触媒が使用されることが好ましい。
【0065】
工程a)における好ましい実施形態では、a2)又はa3)の溶液、すなわち(Ax’)の溶液又は(Ax)と(Bx)の混合物の溶液、とりわけa2)の溶液が使用される。
【0066】
上で定義されたマグネシウムアルコキシ化合物は、触媒調製プロセスの第1の工程である工程a)において、マグネシウム化合物を上に記載したようなアルコールと反応させることによってその場で調製することができ、又は上記マグネシウムアルコキシ化合物は別途調製されたマグネシウムアルコキシ化合物であることができ、又はそれらはすぐに入手可能なマグネシウムアルコキシ化合物として市販され、本発明の触媒調製プロセスにおいてそのまま使用することができる。
【0067】
アルコール(A)の具体例は、グリコールモノエーテルである。好ましいアルコール(A)は、エーテル部分が2~18個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子を含むC2~C4グリコールモノエーテルである。好ましい例は、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール、2-ブチルオキシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール及び1,3-プロピレン-グリコール-モノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールであり、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール及び1,3-プロピレン-グリコール-モノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールが特に好ましい。
【0068】
例示的な一価アルコール(B)は、式ROHのものであり、Rは、直鎖状又は分枝状のC2~C16アルキル基、好ましくはC4~C10、より好ましくはC6~C8アルキル基である。最も好ましい一価アルコールは2-エチル-1-ヘキサノール又はオクタノールである。
【0069】
好ましくは、それぞれMgアルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)の混合物又はアルコール(A)及び(B)の混合物が使用され、10:1~1:10、より好ましくは6:1~1:6、最も好ましくは4.1~1:4のBx:Ax又はB:Aのモル比で用いられる。
【0070】
マグネシウムアルコキシ化合物は、上で定義されたアルコールと、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、マグネシウムジアルコキシド、アルコキシマグネシウムハライド及びアルキルマグネシウムハライドから選択されるマグネシウム化合物との反応生成物であってもよい。さらに、マグネシウムジアルコキシド、マグネシウムジアリールオキシド、マグネシウムアリールオキシハライド、マグネシウムアリールオキシド及びマグネシウムアルキルアリールオキシドを使用することができる。アルキル基は、同様又は異なるC1~C20アルキル、好ましくはC2~C10アルキルであることができる。使用される場合、典型的なアルキルアルコキシマグネシウム化合物は、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシド及びオクチルマグネシウムオクトキシドである。好ましくは、ジアルキルマグネシウムが使用される。最も好ましいジアルキルマグネシウムはブチルオクチルマグネシウム又はブチルエチルマグネシウムである。
【0071】
マグネシウム化合物がアルコール(A)及びアルコール(B)に加えて式R”(OH)mの多価アルコール(C)とも反応して上記マグネシウムアルコキシド化合物を得ることができるということも可能である。使用される場合、好ましい多価アルコールは、R”が直鎖状、環状又は分枝状のC2~C10炭化水素基であり、mが2~6の整数であるアルコールである。
【0072】
従って、工程a)のマグネシウム成分は、マグネシウムジハライド、マグネシウムジアルコキシド、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハライド、アリールオキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシド及びアルキルマグネシウムアリールオキシドからなる群から選択される。加えて、マグネシウムジハライドとマグネシウムジアルコキシドとの混合物を使用することができる。
【0073】
当該触媒の調製に用いられる溶媒は、5~20個の炭素原子、より好ましくは5~12個の炭素原子を有する芳香族及び脂肪族の直鎖状、分枝状及び環状の炭化水素、又はこれらの混合物から選択されてもよい。好適な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クメン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びノナンが挙げられる。ヘプタン、ヘキサン及びペンタンが特に好ましい。
【0074】
マグネシウム成分の調製のための反応は、40~70℃の温度で実施されてもよい。最も好適な温度は、使用されるMg化合物及びアルコールに応じて選択される。
【0075】
チタン(IV)化合物は、TiCl4のようなハロゲン化チタン(IV)であることが最も好ましい。
【0076】
乳化法では、単純に撹拌することと、任意に(さらなる)溶媒及び/又は添加剤、例えば乱流最小化剤(turbulence minimizing agent、TMA)並びに/又は乳化剤及び/若しくは界面活性剤のようなエマルション安定剤を添加することとにより、二相の液液系が形成されてもよく、これらの乳化剤及び/又はエマルション安定剤はエマルションの形成を容易にするため、及び/又はエマルションを安定化させるために当技術分野で知られているように使用される。好ましくは、界面活性剤はアクリルポリマー又はメタクリルポリマーである。特に好ましいのは、ポリ(ヘキサデシル)メタクリレート、ポリ(オクタデシル)メタクリレート等の非分岐のC12~C20(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物である。使用される場合、乱流最小化剤(TMA)は、好ましくは、6~20個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーのα-オレフィンポリマー、例えばポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセン若しくはポリドデセン、又はこれらの混合物から選択される。最も好ましいのはポリデセンである。
【0077】
沈殿法又はエマルション凝固法によって得られた固体粒子状生成物は、上記及び下記の洗浄工程d)に従って洗浄される。
【0078】
アルミニウム化合物は、触媒合成中に添加することもできる。触媒は、蒸発又は窒素によるフラッシング(flushing)等によってさらに乾燥させることができ、又はいかなる乾燥工程も伴わずに油性液体にスラリー化することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、工程e)の後に、当該チーグラー・ナッタ触媒成分は、式(I)のビニルモノマーを重合することによって得られるポリマー核形成剤によってさらに改質(変性)される。
H2C=CH-CHR1R2 (I)
式中、R1及びR2は、独立に、1~4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表すか、又はそれらが結合している炭素原子とともに、置換されていてもよい飽和、不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成し、この環又は縮合環部分は4~20個の炭素原子を含有し、好ましくはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子とともに、5~12員の飽和若しくは不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成する。
【0080】
好ましくは、R1及びR2は、それらが結合しているC原子とともに、5員若しくは6員の飽和若しくは不飽和若しくは芳香族の環を形成するか、又は独立に、1~4個の炭素原子を含む低級アルキル基を表す。
【0081】
本発明に従って使用されるポリマー核形成剤の調製のための好ましいビニル化合物は、特にビニルシクロアルカン、特にビニルシクロヘキサン(VCH)、ビニルシクロペンタン、及びビニル-2-メチルシクロヘキサン、3-メチル-1-ブテン、3-エチル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン又はこれらの混合物である。
【0082】
VCHは特に好ましいモノマーである。
【0083】
ポリマー核形成剤は、好ましくは、以下に述べるように、いわゆるBNT技術によって触媒成分に組み込まれる。
【0084】
BNT技術に関しては、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット、特に国際公開第00/68315号パンフレットが参照される。この技術によれば、触媒成分は、特に特別の触媒成分、外部ドナー及び共触媒を含む上記触媒系の存在下でビニル化合物を重合することにより改質される。
【0085】
液体媒体及びプロセスパラメータのような触媒の改質のための一般的な条件も、重合触媒の改質に関して参照により本明細書に組み込まれる国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット、特に国際公開第00/68315号パンフレットに開示されている。
【0086】
重合触媒の改質工程における重合触媒に対するビニル化合物の重量比は、好ましくは0.3以上40以下、例えば0.4~20、より好ましくは0.5~15、例えば0.5~2.0である。
【0087】
改質工程に適した媒体としては、油に加えて、ペンタン及びヘプタン等の低粘度の脂肪族の不活性有機溶媒も挙げられる。さらには、改質中に少量の水素を使用することができる。
【0088】
ポリマー核形成剤は、通常、最終生成物中に、(ポリプロピレン組成物の重量に基づいて)10ppm超、典型的には15ppm超の量で存在する。好ましくは、この剤は、ポリプロピレン組成物中に10~1000ppm、より好ましくは15超~500ppm、例えば20~100ppmの範囲で存在する。
【0089】
触媒と上記ビニル化合物との重合は、未反応ビニル化合物の濃度が約0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満になるまで行われる。
【0090】
この重合工程は、通常、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンを製造するために使用される重合プロセスの前に前重合(プレポリマー化)工程で行われる。
【0091】
チーグラー・ナッタ触媒組成物
本発明はさらに、上記の触媒調製プロセスによって得られるチーグラー・ナッタ触媒組成物に向けられる。
【0092】
工程e)で得られたチーグラー・ナッタ触媒成分が、式(I)のビニルモノマーを重合することによって得られるポリマー核形成剤によってさらに改質される場合、チーグラー・ナッタ触媒組成物は、この改質された触媒成分を含み、より好ましくはそれからなる。
【0093】
さらなる改質が行われない場合、当該チーグラー・ナッタ触媒組成物は、上記及び下記のチーグラー・ナッタ触媒成分を含み、より好ましくはそれからなる。
【0094】
特に、当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物のチタン含有量は、1.00~2.40重量%の範囲、より好ましくは1.30~2.20重量%の範囲、最も好ましくは1.50~2.00重量%の範囲にあることが好ましい。
【0095】
さらには、当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比([Ti]/[Mg])は、0.06~0.14の範囲、より好ましくは0.07~0.13の範囲、最も好ましくは0.08~0.12の範囲にあることが好ましい。
【0096】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物のマグネシウム含有量が11.0~24.0重量%の範囲、より好ましくは14.0~22.0重量%の範囲、最も好ましくは17.0~20.0重量%の範囲にあることも好ましい。
【0097】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物の内部ドナー含有量は、10.0~23.0重量%の範囲、より好ましくは13.0~20.0重量%の範囲、最も好ましくは15.0~18.0重量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0098】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物中のチタン対内部ドナーの重量比([Ti]/[ID])は、0.06~0.13の範囲、より好ましくは0.07~0.12の範囲、最も好ましくは0.08~0.11の範囲にあることが好ましい。
【0099】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物中のマグネシウム対内部ドナーの重量比([Mg]/[ID])が1.00~1.50の範囲、より好ましくは1.00~1.35の範囲、最も好ましくは1.05~1.20の範囲にあることも好ましい。
【0100】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分、より好ましくは当該チーグラー・ナッタ触媒組成物は、一般に5~200μm、好ましくは10~100の平均粒子サイズ範囲を有する粒子の形態にあることが望ましい。粒子は、コンパクトであり多孔性が低く、20g/m2未満、より好ましくは10g/m2未満の表面積を有する。
【0101】
触媒の調製の詳細な説明は、国際公開第2012/007430号パンフレット、欧州特許出願公開第2610271号明細書、欧州特許出願公開第2610270号明細書及び欧州特許出願公開第2610272号明細書に開示されている。
【0102】
上記のセクション及び以下のセクションにおいて表されるすべての好ましい実施形態及び代替(フォールバック)範囲は、変更すべきところは変更して、当該チーグラー・ナッタ触媒成分及び/又はチーグラー・ナッタ触媒組成物に適用される。
【0103】
重合プロセス
本発明は、本発明の触媒を使用するポリプロピレン組成物の製造のプロセス、及びそのようなプロセスのためのそのような触媒の使用にも向けられる。
【0104】
1つの実施形態では、本発明は、本発明に係るチーグラー・ナッタ触媒組成物と、共触媒(Co)と、任意選択で外部ドナー(ED)とを含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合を含むポリプロピレン組成物の製造のプロセスに向けられる。
【0105】
別の実施形態では、本発明は、ポリプロピレン組成物の製造のプロセスであって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を得る工程と、
c)工程b)から得られた溶液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われ、
工程e)で回収された固体触媒成分、共触媒(Co)及び任意選択で外部ドナー(ED)を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、プロピレンを、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーと重合する工程をさらに含む、プロセスに向けられる。
【0106】
さらには、本発明は、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合のための、共触媒(Co)及び任意選択の外部ドナー(ED)を伴う本発明に係るチーグラー・ナッタ触媒組成物の使用に向けられる。
【0107】
適切な外部ドナー(ED)としては、特定のシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトン、複素環化合物、及びこれらのブレンドが挙げられる。シランを使用することがとりわけ好ましい。一般式
Ra
pRb
qSi(ORc)(4-p-q)
のシランを用いることが最も好ましく、式中、Ra、Rb及びRcは、炭化水素ラジカル、特にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、p及びqは、0~3の範囲の数であり、それらの合計p+qは3以下である。Ra、Rb及びRcは、互いに独立して選ぶことができ、同じであってもよいし異なっていてもよい。このようなシランの具体例は、(tert-ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH3)2、(フェニル)2Si(OCH3)2及び(シクロペンチル)2Si(OCH3)2、又は一般式
Si(OCH2CH3)3(NR3R4)
であり、式中、R3及びR4は、同じであってもよいし異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0108】
R3及びR4は、独立に、1~12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族炭化水素基、1~12個の炭素原子を有する分枝状脂肪族炭化水素基及び1~12個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。R3及びR4が、独立に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、オクチル、デカニル、iso-プロピル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ブチル、tert-アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0109】
より好ましくは、R1及びR2の両方が同じであり、さらにより好ましくは、R3及びR4の両方がエチル基である。
【0110】
とりわけ好ましい外部ドナー(ED)は、ジ-シクロペンチル-ジメトキシシランドナー(D-ドナー)又はシクロヘキシルメチルジメトキシシランドナー(C-ドナー)である。
【0111】
チーグラー・ナッタ触媒組成物及び任意選択の外部ドナー(ED)に加えて、共触媒が使用されるべきである。この共触媒は、好ましくは周期表(IUPAC)の第13族の化合物であり、例えば、アルミニウムアルキル、ハロゲン化アルミニウム(アルミニウムハライド)又はアルミニウムアルキルハライド化合物等のアルミニウム化合物などの有機アルミニウムである。従って、1つの特定の実施形態では、共触媒(Co)は、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEAl)、ジアルキルアルミニウムクロリド若しくはアルキルアルミニウムジクロリド、又はこれらの混合物である。1つの具体的な実施形態では、共触媒(Co)はトリエチルアルミニウム(TEAl)である。
【0112】
有利には、トリエチルアルミニウム(TEAl)は、トリエチルアルミニウム(TEAl)に対して1.0重量%未満の、AlH3として表される水素化物含有量を有する。より好ましくは、水素化物含有量は0.5重量%未満であり、最も好ましくは、水素化物含有量は0.1重量%未満である。
【0113】
好ましくは、共触媒(Co)と外部ドナー(ED)との間の比[Co/ED]及び/又は共触媒(Co)とチタンとの間の比[Co/Ti]は注意深く選択されるべきである。
【0114】
従って、
(a)共触媒(Co)の外部ドナー(ED)に対するモル比[Co/ED]は、5~45の範囲になければならず、好ましくは5~35の範囲にあり、より好ましくは5~25の範囲にあり、かつ任意選択で
(b)共触媒(Co)のチタンに対するモル比[Co/Ti]は、70超~500の範囲になければならず、好ましくは80~300の範囲にあり、さらにより好ましくは90~200の範囲にある。
【0115】
ポリプロピレンの製造のための重合プロセスは、公知の方法を利用し、液相で、任意選択で不活性希釈剤の存在下で、又は気相で、又は混合液-ガス技術によって稼働する連続プロセス又はバッチプロセスであってもよい。
【0116】
重合プロセスは、気相重合、スラリー重合、溶液重合又はこれらの組み合わせ等の一段階又は多段階の重合プロセスであってもよい。
【0117】
本発明の目的のために、「スラリー反応器」は、バルク又はスラリーで稼働しその中でポリマーは粒子形態で形成される任意の反応器、例えば連続又は単純バッチ式の撹拌槽反応器又はループ反応器を意味する。「バルク」は、少なくとも60重量%のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。好ましい実施形態によれば、スラリー反応器はバルクループ反応器を含む。「気相反応器」とは、任意の機械的混合反応器又は流動床反応器を意味する。好ましくは、気相反応器は、少なくとも0.2m/秒のガス流速(ガス速度)を用いる機械的に撹拌された流動床反応器を含む。
【0118】
ポリプロピレンは、例えば、1つ若しくは2つのスラリーバルク反応器において、好ましくは1つ若しくは2つのループ反応器において、又は1つ若しくは2つのループ反応器と少なくとも1つの気相反応器との組み合わせにおいて製造することができる。これらのプロセスは当業者に周知である。
【0119】
好ましくは、使用される反応器は、ループ反応器及び気相反応器の群から選択され、特に、当該プロセスは、少なくとも1つのループ反応器及び少なくとも1つの気相反応器を用いる。各タイプのいくつかの反応器、例えば、1つのループ反応器及び2つ若しくは3つの気相反応器、又は2つのループ反応器及び1つの気相反応器を直列に使用することも可能である。
【0120】
重合が1つ又は2つのループ反応器で行われる場合、重合は、好ましくは、液体プロピレン混合物中で20~100℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、温度は60~80℃の範囲にある。圧力は、好ましくは5~60bar(バール)である。加えられる場合のコモノマーは、いずれの反応器に供給することもできる。ポリマー鎖の分子量、従ってポリプロピレンのメルトフローレートは、水素を添加することによって調節される。
【0121】
気相反応器は、通常の流動床反応器であってもよいが、他のタイプの気相反応器を使用することができる。流動床反応器では、床は、形成され生長するポリマー粒子と、ポリマー画分を伴う依然として活性な触媒とからなる。床は、粒子を流体として作用させるような流量で気体成分、例えばモノマーを導入することによって流動状態に保たれる。流動化ガスは、窒素等の不活性キャリアガスも、改質剤としての水素も含有することができる。流動気相反応器は、機械的混合機を備えることができる。
【0122】
使用される気相反応器は、50~110℃、好ましくは60~90℃の温度範囲で、5~40barの反応圧力で運転することができる。
【0123】
適切なプロセスは、とりわけ、国際公開第98/58976号パンフレット、欧州特許出願公開第887380号明細書及び国際公開第98/58977号パンフレットに開示されている。
【0124】
あらゆる重合工程において、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等及びこれらの混合物の群から選択されるコモノマーを使用することも可能である。
【0125】
プロピレンのホモポリマー又はコポリマーを製造するために使用される実際の重合反応器に加えて、重合構成は、前(予備)反応器及び/又は後反応器等のいくつかの追加の反応器も含むことができる。前反応器は、必要に応じて、改質触媒をプロピレン及び/又はエチレン若しくは他の1-オレフィンと前重合するための任意の反応器を含む。
【0126】
後反応器は、ポリマー生成物の特性を改変及び改善するために使用される反応器を含む(下記参照)。反応器システムのすべての反応器は、好ましくは直列に配置される。
【0127】
所望に応じて、重合生成物は、改質重合生成物を生成するために、ゴム状コポリマーが(共)重合反応によって提供される気相反応器に供給することができる。この重合反応は、例えば改善された衝撃強さの重合生成物特性を与える。エラストマーを提供する工程は、様々な方法で行うことができる。従って、好ましくは、エラストマーは、少なくともプロピレン及びエチレンをエラストマーへと共重合することによって製造される。
【0128】
反応器からの本発明の重合生成物、ポリプロピレン粉末、フラッフ、球体等の形態のいわゆる反応器粉末は、通常、当該技術分野で従来から使用されている添加剤、充填剤及び補強剤等の補助剤及び/又は他のポリマーと溶融ブレンドされ、配合され、ペレット化される。従って、好適な添加剤としては、酸化防止剤、酸捕捉剤、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤及び熱安定剤、潤滑剤、任意選択で追加の核形成剤、清澄剤(clarifying agent)、顔料、及びカーボンブラックを含む他の着色剤が挙げられる。充填剤、例えばタルク、マイカ及び珪灰石も使用することができる。
【実施例】
【0129】
1. 定義/測定方法
以下の用語及び決定方法の定義は、別段の定義がない限り、本発明の上記概説及び以下の実施例に適用される。
【0130】
MFR2(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定した。
【0131】
キシレン可溶部(XCS、重量%):冷キシレン可溶部(XCS)の含有量はISO16152;第1版;2005-07-01に従って25℃で決定した。
【0132】
融解温度(Tm):TA Instrument(TAインスツルメント) Q2000示差走査熱量測定(DSC)を用いるDSC分析によって、5~7mgの試料について測定した。DSCは、ISO11357/パート3/方法C2に従い、-30~+225℃の温度範囲の10℃/分の走査速度での加熱/冷却/加熱サイクルにおいて実行した。結晶化温度及び結晶化熱(Hc)は、冷却工程から決定し、融解温度及び融解熱(Hf)は、第2の加熱工程から決定する(しかしながら、融解温度のみが、以下の実施例に関して関連して与えられる)。
【0133】
分子量分布 - GPC:分子量平均値(Mz、Mw、Mn)、分子量分布(MWD)、及び多分散性指数PDI=Mw/Mn(Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)で表される分子量分布の広さは、ISO16014-1:2003、ISO16014-2:2003、ISO16014-4:2003、ASTM D 6474-12に準拠したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記式を用いて決定した。
【数1】
【0134】
一定の溶出量間隔ΔViに対して、Ai及びMiは、それぞれ、溶出量Viに関連するクロマトグラフィーのピークのスライス面積及びポリオレフィンの分子量(MW)であり、Nは積分限界間のクロマトグラムから得られたデータポイントの数に等しい。
【0135】
赤外(IR)検出器(PolymerChar(ポリマーチャ)(バレンシア、スペイン)製IR4又はIR5)を備え、3×Agilent-PLgel Olexis及び1×Agilent-PLgel Olexis Guardカラムを装着した高温GPC装置を使用した。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化した1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用した。クロマトグラフィーシステムは160℃で、1mL/分の一定流量で運転した。1回の分析につき200μLの試料溶液を注入した。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IR制御ソフトウェアを用いて行った。
【0136】
0.5kg/モル(mol)から11500kg/モルの範囲の19種類の細幅MWDポリスチレン(PS)標準物質を用いて、ユニバーサルキャリブレーション(ISO16014-2:2003に準拠)を用いてカラムセットを較正した。PS標準物質は、室温で数時間かけて溶解させた。ポリスチレンピーク分子量のポリオレフィン分子量への変換は、Mark Houwink方程式と以下のMark Houwink定数を使用して行う。
KPS=19×10-3mL/g、 αPS=0.655
KPE=39×10-3mL/g、 αPE=0.725
KPP=19×10-3mL/g、 αPP=0.725
【0137】
3次多項式フィッティングを使用して、検量データを当てはめた。
【0138】
すべての試料は、0.5~1mg/mlの濃度範囲に調製し、PPについては2.5時間、PEについては3時間、160℃で、連続的な穏やかな振盪下で溶解した。
【0139】
走査型電子顕微鏡法 - SEM
走査型電子顕微鏡法(SEM)は、FEI Quanta 200 FEG顕微鏡を用いて実施した。触媒粒子を、炭素又は銅の導電性接着剤を用いて試料ホルダーに付着させた。必要に応じて、ミクロトームブレードを用いて触媒粒子の一部を切断した。試料をAgar Autoスパッタコーター中でAu/Pdでスパッタコーティングした。像は、典型的には、1.5~3kVの加速電圧、高真空モード、作動距離10mm、3.0スポットサイズの設定で、Everhart-Thornley検出器(ETD)を使用して取得する。像は、60倍~6000倍の範囲の倍率で1024×884ピクセル2で収集した。
【0140】
光学顕微鏡法によるポリマーイメージング
機器:Leica(ライカ) MZ16
説明:試料をプラスチックバッグ中でスプーンを用いてよく混合する。約5mLのアリコートをイメージング(撮像)のために採取する。試料をペトリ皿中の黒色無光沢紙上に置く。像を様々な倍率(0.71、1.0、1.25、1.6、2.0、2.5、3.2、4.0、5.0、及び6.3)で取得する。
【0141】
光学顕微鏡による触媒イメージング
機器:Polyvar顕微鏡
説明:油スラリー試料を、カルーセルミキサーを用いて約30分間よく混合する。
約0.5mlのアリコートを2mmの針で3mlのシリンジに取り、約1mlの清浄な油で希釈する。試料をシリンジ内で数回にわたって傾けることによって混合する。
2滴の希釈試料を顕微鏡観察用ガラス上に置き、ガラス板間の気泡を避けてカバースリップを上に置く。
4倍、10倍及び25倍対物レンズでいくつかの像を撮影する。
【0142】
ZNPP - ID、2-EHA、PGBE及びHC含有量 - GC-FID:クリンプキャップガラスバイアル中で不活性にサンプリングした60~90mgの乾燥触媒の一部を溶解し、5mLのジクロロメタンと1.0mLの内部標準(0.71%V/V)の蒸留脱イオン水溶液との混合物によって抽出する。混合物を30分間超音波処理して完全に溶解させた後、相を落ち着かせ、有機相をサンプリングし、0.45μmシリンジフィルターを用いて機器バイアルに濾過する。水素炎イオン化型検出器を備えたAgilent(アジレント) 7890Bガスクロマトグラムシステムを用いてGC分析を行った。使用したカラムは、1.5m×320μm×0μmのプレカラム制限キャピラリーを伴うZB-5HT Inferno 15m×320μm×0.25μmであった。最初のオーブン温度は3分間40℃に設定し、その後、昇温(ramp)プログラムは、5℃/分で70℃までの第1の昇温、40℃/分で330℃までの第2の昇温、及び20℃/分で350℃までの第3の昇温及び1分の保持時間からなる。注入量は1μLであり、スプリット比は1:20であった。キャリアガスは99.995%Heであった。入口及びFIDは、それぞれ280℃及び370℃で操作した。クロマトグラムにおけるFIDからのシグナルを積分し、分析物についてのシグナルと内部標準との間の応答比を使用して、一連の標準化試料に対して計算した。各試料から2回の並行測定を行い、内部ドナー含有量を2回の反復の平均として報告した。
【0143】
ZNPP - Al、Ti及びMg含有量 - ICP OES:20~50mgの乾燥ZN触媒の試験部分を、クリンプキャップガラスバイアル中で不活性にサンプリングした。5mLの体積のHNO3(65%)及び蒸留脱イオン水をこの試料バイアルに加え、触媒が完全に溶解するまで混合物を撹拌した。試料溶液を100mLメスフラスコに移し、蒸留脱イオン水で印まで満たした。
【0144】
元素分析は、Thermo Scientific(サーモ・サイエンティフィック)誘導結合プラズマ-発光分光分析装置(ICP-OES)iCAP 6300 Radialを用いて行った。ブランク(5%HNO3の溶液)、並びに脱イオン水中の5%HNO3の溶液中の0.5、1、10、50、及び100mg/LのAl、Ti及びMgの5つの標品を使用して、機器をAl、Ti及びMgについて較正した。マグネシウムの含有量は285.213nmの線で、チタンの含有量は336.121nmの線でモニターする。アルミニウムの含有量は、試験部分のAl濃度が0~10重量%の場合は167.079nmの線、10重量%を超える場合は396.152nmの線でモニターする。報告した値は、同一試料から連続して採取した3つの分液の平均であり、試験部分の元の質量と希釈量をソフトウェアに入力することによって、元の触媒試料に関連づけられている。
【0145】
粒子サイズ分布 - Malvern(マルバーン)PSD分析
ZNPP - 粒子サイズ分布 - 自動画像解析
最終混合物が約0.5~0.7重量%の濃度を保持するように、ZN触媒粉末の不活性にサンプリングした試験部分に白色鉱油を添加することによって試験溶液を調製する。試験溶液を注意深く混合した後、機器に適した測定セルに入れる部分を採取する。
自動画像解析は、Malvern Morphologi 3Gシステムを用いて行った。測定セルを顕微鏡ステージ上に置く。透過型光源を使用し、照明強度及び焦点レベルを、各実行の前に調整する。部分的に重複する顕微鏡像フレームをCCDカメラによって記録し、像を、対物レンズに十分な作動距離及び5倍の倍率を有する顕微鏡を介してシステム固有のソフトウェアに保存した。収集した像は、ソフトウェアによって分析し、この分析では、粒子は、材料の予め定義されたグレースケール設定を使用して、バックグラウンドとの比較によって個々に特定される。分析における試料材料粒子の像のみを含むために、分類スキームを個々に識別された粒子に適用する。
粒子直径(粒子径)は、円相当(circular equivalent、CE)直径として計算する。分布に含まれる粒子のサイズ範囲は6.5~420μmである。分布は、数値モーメント比密度関数分布及び数値分布に基づいて計算される統計記述子として計算する。数値分布は、各ビンサイズについて体積変換分布の推定値について再計算することができる。
すべてのグラフィック表現は、11点に基づく平滑化関数に基づき、母集団の統計記述子は、非平滑化曲線に基づく。粒子サイズ分布は、統計記述子を使用して報告し、d90は90%累積サイズでの粒子直径を示し、d10は10%累積サイズでの粒子直径を示し、d50は50%累積サイズでの粒子直径を示す。モードは、平滑化度数曲線のピークとして手動で決定する。スパン(span)は、(CE D[x,0.9]-CE D[x,0.1])/CE D[x,0.5]として計算する。
【0146】
実施例で使用した化学物質
2-エチル-ヘキサノール - CAS番号104-76-7
プロピレングリコールブチルモノエーテル - CAS番号5131-66-8、Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ)により提供される
シトラコン酸ビス(2-エチルヘキシル) - CAS番号1354569-12-2
Viscoplex 1-254 - RohMax Additives GmbH(ローマックス・アディティブズ)により提供される
0.62Mのn-ヘプタン溶液としてのトリエチルアルミニウム(TEAl)をChemtura(ケムチュラ)から入手し、「そのまま」で使用した
ジシクロペンチルジメトキシシラン(ドナーD) - CAS番号126990-35-0を99.0%純度でWacker(ワッカー)から入手し、n-ヘプタンで希釈して0.3M溶液を調製した。
MEHO+は、Mg含有量3.2重量%のマグネシウム化合物の混合物(n-ヘプタン/トルエン(8:2重量比)中33%のマグネシウムビス(2-エチルヘキソキシド)及びマグネシウムビス(1-ブトキシプロパン-2-オレート)混合物)であり、Albemarle(アルベマール)から入手し、「そのまま」で使用した。
【0147】
2. 実験
a)触媒調製
発明例1
16.1kgのMEHO+(n-ヘプタン/トルエン中33重量%)を、メカニカルスターラーを備えた90Lの反応器に14℃で添加した。0.15kgのViscoplex 1-254を混合(200rpm)しながら添加し、続いて120分間撹拌した後、2.9kgのシトラコン酸ビス(2-エチルヘキシル)を混合しながら添加し、続いて30分間撹拌した。
【0148】
21.4kgの四塩化チタンを、メカニカルスターラーを備えた90Lの反応器に14℃で入れた。混合速度は280rpmに調整した。19.6kgの上記で調製したMg錯体を、温度を14℃に維持して、190分以内に添加した。0.47kgのViscoplex 1-254を添加した。次いで、12.6kgのヘプタンを添加してエマルションを形成した。混合を14℃で120分間続けた後、反応器温度を75分間にわたって一定の速度で90℃に上昇させた。反応混合物を90℃でさらに60分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を85℃で90分間沈降させた。
【0149】
上記固体材料を7回洗浄した。280rpmで撹拌しながら30分間洗浄を行った。撹拌を止めた後、反応混合物を90分間沈降させ、続いて洗浄溶液を除去する吸い上げ(サイフォン吸引)を行った。原則として、吸い上げは、次の洗浄工程の温度で行う。
【0150】
洗浄1:24.9kgのトルエンと0.37kgのドナーとの混合物を用いて80℃で洗浄した。
洗浄2:24.9kgのTiCl4と0.49kgのドナーとの混合物を用いて100℃で洗浄した。
洗浄3:24.9kgのTiCl4と0.49kgのドナーとの混合物を用いて100℃で洗浄した。
洗浄4:24.9kgのトルエン及び0.37kgのドナーを用いて80℃で洗浄した。
洗浄5:27.0kgのヘプタンを用いて75℃で洗浄した。
洗浄6:30.3kgのヘプタンを用いて55℃で洗浄した。
洗浄7.30.3kgのヘプタンを用いて55℃で洗浄した。
【0151】
最後の吸い上げ工程の後、白色油(Primol 325)を55℃で300rpmの撹拌速度で添加した。次いで、得られた懸濁液を真空下、55℃で240分間、100rpmの撹拌速度で乾燥し、空気に敏感な触媒スラリーを得た。
【0152】
発明例2
ヘプタンの第1の添加後、14℃で120分間混合を続けた後、400分間にわたって一定の速度で反応器温度を90℃に上昇させたことを除いて、発明例1と同じ手順を使用した。
【0153】
比較例1
洗浄2の温度を80℃とし、洗浄3を省略し、洗浄4においてドナーを使用しなかったことを除いて、発明例1と同じ手順を使用した。
【0154】
比較例2
ヘプタンのまさに最初の添加において6kgのヘプタンを添加し、その後、14℃で120分間混合を続けた後、45分間にわたって一定の速度で反応器温度を90℃に上昇させたことを除いて、比較例1と同じ手順を使用した。
【0155】
このようにして得られた触媒粒子の特性を表1にまとめる。
【0156】
【0157】
本発明の触媒は、比較触媒の触媒と同様に高い触媒収率を示すが、わずかに低いチタン及びドナー含有量と、わずかに高いマグネシウム含有量を有する。メジアン粒子サイズ(d50)もわずかに大きい。
【0158】
図1はさらに、本発明の触媒粒子が比較触媒粒子と同様の球形形態を示すが、特にCE1とは異なり、内部空隙又は表面破壊がより少ない、よりコンパクトな内部形態を呈することを示す。
【0159】
b)重合
各触媒の性能を評価するために、プロピレン重合を、以下に記載するように、厳密に同じ条件を用いて各触媒で行った。
【0160】
ヘリカルスターラーを備えた21.3Lオートクレーブ反応器をプロピレンでパージし、5300gの液化プロピレンを充填し、350rpmで撹拌しながら20℃に維持した。1.22mlのTEAl(ヘプタン中0.582M)を捕捉(scavenging)目的で反応器に注入し、追加の250gのプロピレンでフラッシングした。3Lの水素を反応器に供給し、反応器を20分間撹拌した。
【0161】
一方、59mgのドナー(D)(n-ヘプタン中0.3M)及び246mgのTEAl(ヘプタン中0.58M)を7分間混合し([TEAl]/[D]モル比8.3:1)、その後、工程a)で得た38mgの固体触媒前駆体(白色油スラリーとして供給する)成分に添加して([TEAl]/[Ti]モル比100:1;[D]/[Ti]モル比12:1)、チーグラー・ナッタ触媒系を形成した。十分なn-ヘプタンを添加して、0.1MのTEAl濃度を得た。これらの成分を合計10分間接触させた。
【0162】
得られたチーグラー・ナッタ触媒系スラリーを反応器に注入し、追加の450gのプロピレンでフラッシングした。温度を20分かけて80℃まで上昇させ、この温度で60分間維持し、その間、350rpmの撹拌速度を維持した。昇温の間、9.8Lの水素を17分間かけて添加した。80℃でのバルク重合中、さらなるプロピレンも水素も反応器に添加しなかった。
【0163】
バルク相の後、撹拌速度を100rpmに低下させ、続いて反応器を0.5bargの圧力までパージした。反応器の撹拌速度を再び350rpmに上げ、温度及び圧力を80℃及び20bargに達するまで上げながら、反応器にプロピレン及び水素([H2]/[C3]は10モル/キロモル)を充填した。反応器温度及び圧力条件に達したら、その反応条件を180分間一定に保持し、その間、モノマー供給を適切に調整することによって圧力を一定に保持した。未反応のプロピレン及び水素を、100rpmの撹拌速度で反応器から0.5bargまでパージした。30℃で数回の窒素/真空フラッシングサイクルで反応器を処理することによって残留ガスを反応器から除去し、その後、ポリマー粉末を集め、乾燥し、計量した。
【0164】
本発明の触媒及び比較触媒のそれぞれについてのMFR2、XCS、Tm及び触媒生産性データを表2に示す。
【0165】
【0166】
表2のデータから分かるように、本発明の触媒は、より低いMFR
2、より低いXCS含有量及びより高い融解温度を有するプロピレンホモポリマーを生成することができ、このようなより低いMFR
2、より低いXCS含有量及びより高い融解温度は、より高い結晶化度を有するより高い分子量のh-PP(
図2も参照)を示す。さらには、GPRスプリットは、比較触媒の場合よりも著しく高く、触媒の活性がプロセス全体を通してより少ない減衰を経験することを示す。これは、3つ、4つ、又はそれより多い逐次重合工程を含んでもよい多段階逐次重合プロセスにとってとりわけ重要である。
【0167】
理論に拘束されることを望むものではないが、四塩化チタン洗浄(洗浄2及び洗浄3)の際のより高い洗浄温度は、触媒粒子の表面における改質された結晶構造をもたらし、これは触媒特性に影響を及ぼし、表2に示される効果をもたらすと考えられる。
【0168】
図2は、本発明の触媒を使用して得たh-PPのより高い平均分子量を示す表2のデータを裏付け、
図3は、触媒IE1を用いた場合に得られたポリマー粒子が、無視できる粒子破壊しか伴わず、ポリマー微粉を含まない球状粒子形態を示し、IE2及びCE2は、無視できる破壊及びいくらかのポリマー微粉を示し、CE1は、かなりのポリマー破壊及びいくらかのポリマー微粉の両方を呈することを示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタ触媒成分を形成する方法であって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を懸濁液として得る工程と、
c)工程b)から得られた懸濁液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる、方法。
【請求項2】
工程d1)の洗浄溶液は、内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d2)は、四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた2回以上の洗浄を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた前記洗浄のすべては、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
工程d)の洗浄は、
d4)内部電子供与体(ID)並びに好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程をさらに含み、工程d4)は工程d2)の後かつ工程d3)の前に行われる請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
工程d4)で添加される内部電子供与体(ID)の量と前記チーグラー・ナッタ触媒成分中のマグネシウムの量との間のモル比([ID]/[Mg])は0.01~0.20の範囲、より好ましくは0.02~0.15の範囲、最も好ましくは0.03~0.10の範囲にある請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非フタル酸内部電子供与体は、非フタル酸ジエステル、より好ましくはモノ不飽和ジエステルである請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記非フタル酸内部電子供与体は、マレイン酸エステル、シトラコン酸エステル、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸エステル並びにこれらのいずれかの誘導体及び/又は混合物の群から選択され、最も好ましくは前記非フタル酸電子供与体はシトラコン酸エステル内部電子供与体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程e)の後に、前記チーグラー・ナッタ触媒成分は、式(I)のビニルモノマーを重合することによって得られるポリマー核形成剤によってさらに改質され、
H
2C=CH-CHR
1R
2 (I)
式中、R
1及びR
2は、独立に、1~4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表すか、又はそれらが結合している炭素原子とともに、置換されていてもよい飽和、不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成し、前記環又は縮合環部分は4~20個の炭素原子を含有し、好ましくはR
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子とともに、5~12員の飽和若しくは不飽和若しくは芳香族の環又は縮合環系を形成する
請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
請求項
1に記載の方法によって得られるチーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項11】
1.00~2.40重量%の範囲、より好ましくは1.30~2.20重量%の範囲、最も好ましくは1.50~2.00重量%の範囲のチタン含有量を有する請求項10に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項12】
前記チーグラー・ナッタ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比([Ti]/[Mg])は0.06~0.14の範囲、より好ましくは0.07~0.13の範囲、最も好ましくは0.08~0.12の範囲にある請求項1
0に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物。
【請求項13】
請求項1
0に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物と、共触媒(Co)と、任意選択で外部ドナー(ED)とを含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合を含む、ポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項14】
ポリプロピレン組成物の製造方法であって、
a)少なくとも1種のマグネシウム成分の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの前記溶液をチタン(IV)化合物に添加し、これにより固体触媒成分粒子を得る工程と、
c)工程b)から得られた溶液から前記固体触媒成分粒子を回収する工程と、
d)前記固体触媒成分粒子を洗浄する工程と、
e)オレフィン重合触媒成分の前記固体触媒成分粒子を回収する工程と
を記載される順序で含み、内部電子供与体(ID)が工程c)の前のいずれかの工程で添加され、前記内部電子供与体(ID)は非フタル酸内部電子供与体であり、
工程d)の洗浄は、
d1)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素並びに任意選択で内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、
d2)四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄、並びに
d3)好ましくはトルエン、ヘキサン又はペンタンから選択される芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄
の工程を記載される順序で含み、工程d2)の四塩化チタン及び内部電子供与体(ID)の洗浄溶液を用いた1回以上の洗浄のうちの少なくとも1回は、80~120℃の範囲、より好ましくは85~120℃の範囲、なおより好ましくは85~115℃の範囲、さらにより好ましくは90~110℃の範囲、最も好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われ、
工程e)で回収された固体触媒成分、共触媒(Co)及び任意選択で外部ドナー(ED)を含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を含むチーグラー・ナッタ触媒系の存在下で、プロピレンを、任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーと重合する工程をさらに含む
方法。
【請求項15】
任意選択でC2又はC4~C12αオレフィンから選択されるコモノマーとのプロピレンの重合のための、共触媒(Co)及び任意選択の外部ドナー(ED)を伴う請求項1
0に記載のチーグラー・ナッタ触媒組成物の使用。
【国際調査報告】