(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気油圧式の補助動力ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20240927BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240927BHJP
B60T 8/48 20060101ALI20240927BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240927BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T8/17 B
B60T8/48
B60T17/18
B60T15/36 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521199
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022076330
(87)【国際公開番号】W WO2023066587
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】102021211886.0
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048BB07
3D048CC49
3D048CC54
3D048GG05
3D048GG35
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH37
3D048HH42
3D048HH50
3D048HH74
3D048KK18
3D048PP02
3D048PP05
3D048RR35
3D049BB02
3D049BB05
3D049CC02
3D049CC07
3D049HH12
3D049HH20
3D049HH30
3D049HH39
3D049HH42
3D049KK18
3D049PP03
3D049RR13
3D246BA02
3D246BA08
3D246CA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB01
3D246GB02
3D246GB37
3D246HA03A
3D246HA04A
3D246LA02Z
3D246LA05A
3D246LA10Z
3D246LA15Z
3D246LA33Z
3D246LA60Z
3D246LA63A
3D246LA64Z
3D246LA73Z
3D246LA75Z
3D246LA79B
3D246MA23
(57)【要約】
自律走行のために、本発明は、2つのピストンシリンダユニット(2,5)を有する補助動力ブレーキ装置(1)を提案し、これらのピストンシリンダユニット(2,5)のうちの一方のピストンシリンダユニットが、液圧のブレーキ圧を電動機(8)により電気機械的に発生させ、他方のピストンシリンダユニットは、圧力負荷によって第2のブレーキ回路(II)内でブレーキ圧を発生させるように、前記一方のピストンシリンダユニットと連通している。第2のピストンシリンダユニット(5)は、2つのブレーキ回路(I,II)を液圧的に互いに分離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気油圧式の補助動力ブレーキ装置(1)であって、第1のピストン(3)を備えた第1のピストンシリンダユニット(2)を有しており、前記第1のピストン(3)が、補助動力で液圧のブレーキ圧を発生させるために第1の電動機(8)により回転/並進運動変換伝動装置(9)を介して前記第1のピストンシリンダユニット(2)の第1のシリンダ(4)内でしゅう動可能である形式のものにおいて、
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、第2のピストン(6)および第2のシリンダ(7)を備えた第2のピストンシリンダユニット(5)を有しており、前記第2のシリンダ(7)は、前記第1のシリンダ(4)の液圧のブレーキ圧が前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で前記第2のピストン(6)の背面(10)を負荷することにより、前記第2のピストン(6)が該第2のピストン(6)の前記背面(10)とは反対側の前面(11)で前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で液圧のブレーキ圧を生ぜしめるように、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)と連通していることを特徴とする、電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項2】
前記補助動力ブレーキ装置(1)は、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の第1のシリンダ(4)に接続されているかまたは前記第2のピストン(6)の前記背面(10)で前記第2のシリンダ(7)に接続されている第1のブレーキ回路(I)と、前記第2のピストン(6)の前記前面(11)で前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)に接続されている第2のブレーキ回路(II)とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項3】
前記第1の電動機(8)および前記回転/並進運動変換伝動装置(9)が、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)に対して同軸的に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項4】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、ブレーキ液タンク(22)と逆止弁(23)とを有しており、前記逆止弁(23)は、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)または前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)および前記第1のブレーキ回路(I)または前記第2のブレーキ回路(II)を前記ブレーキ液タンク(22)に接続し、前記第1のシリンダ(4)または前記第2のシリンダ(7)に向かう方向で貫流可能、かつ前記第1のブレーキ回路(I)または前記第2のブレーキ回路(II)に向かう方向で貫流可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項5】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が接続バルブ(31)を有しており、該接続バルブ(31)によって、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)および/または前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)が前記ブレーキ液タンク(22)に接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項6】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が補助動力ブレーキ圧発生器を有しており、該補助動力ブレーキ圧発生器により、前記2つのピストンシリンダユニット(2,5)で選択的にブレーキ圧を発生させるために液圧のブレーキ圧が発生可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項または複数項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項7】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)は、前記第1のピストン(3)が前記第1の電動機(8)により前記回転/並進運動変換伝動装置(9)を介して前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で逆向きの2つの方向でしゅう動可能であるように、前記回転/並進運動変換伝動装置(9)に引張りに対して強くかつ圧縮に対して強く接続されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項または複数項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項8】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)が、前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のピストン(6)よりも大きい直径を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項または複数項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項9】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記補助動力ブレーキ圧発生器を有するスリップ制御システム(13)を有していることを特徴とする、請求項5または6に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項10】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1の電動機(8)のためのおよび前記補助動力ブレーキ圧発生器または前記スリップ制御システム(13)のための冗長型の電力供給部(26)および/または冗長型の電子制御装置(27)を有していることを特徴とする、請求項5または6に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項11】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が筋力操作装置を有していないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項または複数項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する電気油圧式の補助動力ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気油圧式の補助動力ブレーキ装置は、ホイールブレーキを操作するために補助動力により液圧のブレーキ圧を発生させる。このために、例えばピストンが電動機によりねじ伝動装置を介してシリンダ内でしゅう動せしめられる。例えば電動機またはその電力供給部が故障した場合の非常制動のために、補助動力ブレーキ装置を代替的に操作するために筋力により操作可能なマスタブレーキシリンダが設けられていることができる。
【0003】
このような形式の補助動力ブレーキ装置は、特許文献1および特許文献2に開示されており、補助動力ブレーキ装置のためのシリンダが、2系統の車両ブレーキ装置のマスタブレーキシリンダのように、2つのブレーキ回路の接続を液圧的に分離する2系統シリンダとして構成されているという特徴を有している。2系統マスタブレーキシリンダのように、補助動力ブレーキ装置のためのシリンダは、シリンダ内で相前後して同軸的に互いに間隔を保って配置された2つのピストンを有しており、2つのピストンのうちの第1のピストンは一次ピストンともロッド形ピストンとも呼ばれ、電動機によりボールねじ伝動装置を介してしゅう動せしめられ、二次ピストンとも浮動ピストンとも呼ばれる第2のピストンは第1のピストンが生ぜしめる液圧のブレーキ圧によって負荷され、それによって第2のピストンは同じブレーキ圧を生ぜしめる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第1970271号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第2641788号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の前提部の特徴を有する本発明による電気油圧式の補助動力ブレーキ装置は、2つのピストンシリンダユニットを有しており、この場合、補助動力で液圧のブレーキ圧を発生させるために第1のピストンが第1のピストンシリンダユニットの第1のシリンダ内で電動機により回転/並進運動変換伝動装置、例えばねじ伝動装置を介してしゅう動可能である。第2のピストンシリンダユニットの第2のシリンダは、ここでは背面と呼ばれる側または第2のシリンダ内の第2のピストンのピストン面が、第1のシリンダ内で第1のピストンが発生させる液圧のブレーキ圧により負荷されるように、第1のシリンダと連通している。圧力負荷によって第2のピストンは第2のシリンダ内で、ここでは前面と呼ばれる、背面とは反対側またはピストン面に液圧のブレーキ圧を生ぜしめる。ブレーキ圧は、第2のピストンの両側で同じであってよいか、または、例えば直径の段付けされた第2のピストンにより、この場合、同様に直径の段付けされた第2のシリンダ内で圧力上昇または圧力低下が生ぜしめられてよい。
【0006】
一般的な2系統マスタブレーキシリンダのように、本発明による補助動力ブレーキ装置の2つのピストンシリンダユニットは2つのブレーキ回路の液圧的な分離を可能にする。
【0007】
従属請求項は、独立請求項に記載した本発明の実施態様および有利な実施形態を対象としている。
【0008】
請求項4の実施形態によれば、第1のシリンダまたは第2のシリンダ、およびこれらのシリンダに接続されたブレーキ回路をブレーキ液タンクに接続する逆止弁が設けられている。このような逆止弁は、1つのブレーキ回路または2つのブレーキ回路内に設けられていてよい。ブレーキ液タンクの方向からシリンダおよびブレーキ回路の方向に貫流可能であって、ブレーキ液をブレーキ液タンクからシリンダ内にまたはブレーキ回路内に吸い込むことができる。例えばピストンがシリンダ内で固着するとブレーキ液はブレーキ液タンクから逆止弁によってシリンダの傍らを通り過ぎてブレーキ回路内に流れることができる。この逆止弁は補助動力ブレーキ装置の作動可能性を高める。
【0009】
本発明による補助動力ブレーキ装置の作動可能性を高めるために、請求項5によれば、補助動力ブレーキ圧発生器が設けられており、この補助動力ブレーキ圧発生器によって、液圧のブレーキ圧が独立的にかつ選択的に2つのピストンシリンダユニットで生ぜしめられる。補助動力ブレーキ圧発生器は、例えば補助動力ブレーキ装置のスリップ制御システムの液圧ポンプであってよい。この実施形態では、本発明による補助動力ブレーキ装置は自律走行のためにも適している。
【0010】
本発明によれば、補助動力ブレーキ装置は、筋力により操作可能なマスタブレーキシリンダなしで構成することが可能である(請求項9)。
【0011】
明細書および図面に開示されたすべての特徴は、個別でも、また基本的に任意の組合せでも、本発明の実施形態において実現され得る。本発明の実施形態または請求項のすべてではなく、1つだけまたは複数の特徴を有する本発明の構成が基本的に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による電気油圧式の補助動力ブレーキ装置の液圧回路図である。
【
図2】本発明による電気油圧式の補助動力ブレーキ装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を以下に、図面に示した実施形態を用いて詳しく説明する。
【0014】
図1に示した電気油圧式の補助動力ブレーキ装置1は、第1のシリンダ4内でしゅう動可能な第1のピストン3を備えた第1のピストンシリンダユニット2、および第2のシリンダ7内でしゅう動可能な第2のピストン6を備えた第2のピストンシリンダユニット5を有している。好適な形式で、第1のピストン3は、第2のピストン6よりも大きい直径を有している。
【0015】
補助動力により液圧のブレーキ圧を生ぜしめるために、第1の電動機8を有する第1のピストン3は、ねじ伝動装置9、特にボールねじ伝動装置を介して第2のシリンダ4内でしゅう動可能である。ねじ伝動装置9は、一般的に回転/並進運動変換伝達装置と解釈されてよい。第1の電動機8とねじ伝動装置9との間に、図示していない減速歯車装置、特に遊星歯車装置が配置されていてよい。本発明によれば、第1の電動機8と、ねじ伝動装置9と、(設けられていれば)減速歯車装置とが、第1のピストンシリンダユニット2に対して同軸的に、つまり第1のシリンダ4および第1のピストン3に対して同軸的に配置されており、この場合、本発明は、第1の電動機8、ねじ伝動装置9および場合によっては減速歯車装置の、第1のピストンシリンダユニット2、第1のシリンダ4および第1のピストン3に関連した別の配置も基本的に排除しない。
【0016】
第2のシリンダ7は、第2のピストン6のピストン面またはここでは背面10と呼ばれる端面側が、第1のシリンダ4内に生ぜしめられる若しくは第1のシリンダ4内で優勢である液圧のブレーキ圧により負荷されるように、第1のシリンダ4と連通する。背面10が第1のシリンダ4からの液圧のブレーキ圧により負荷されることによって、第2のピストン6は、その背面10とは反対側の前面11で、この実施例では背面10の液圧のブレーキ圧と同じ大きさの液圧のブレーキ圧を第2のシリンダ内に生ぜしめる。直径が段付けされた第2のシリンダ7内で例えば同様に直径が段付けされた第2のピストン6によって、圧力上昇または圧力低下の実施が可能である(図示せず)。
【0017】
本発明による補助動力ブレーキ装置1は、2つのブレーキ回路I,IIを有する2系統ブレーキ装置として構成されており、図示の実施例では4つの液圧式のホイールブレーキ12が設けられていて、これら4つのホイールブレーキのうちのそれぞれ2つが1つのブレーキ回路I,IIに接続されている。2つのブレーキ回路のうちの第1のブレーキ回路Iは、第1のピストン3が第1のシリンダ4内でしゅう動する際に生ぜしめる液圧のブレーキ圧で第1のシリンダ4が負荷されるように、第1のシリンダ4に接続されている。第1のブレーキ回路Iが第2のシリンダ7に接続されていることによって同時に、第1のブレーキ回路Iは第2のピストン6の背面10でも第2のシリンダ7に接続されている。
【0018】
第2のブレーキ回路IIは、第2のピストン6の前面11で第2のシリンダ7に接続されていて、ここで生ぜしめられているかまたはここで優勢な、本発明の実施例では第1のシリンダ4内のブレーキ圧と同じ大きさであるが本発明の実施例ではそれよりも大きくても小さくてもよい液圧のブレーキ圧で負荷される。
【0019】
補助動力ブレーキ装置1は、各ホイールブレーキ12のためのそれぞれ1つの吸入バルブ14および吐出バルブ15を備えたスリップ制御システム13を有している。吸入バルブ12によって、ホイールブレーキ12は2つのピストンシリンダユニット2,5のシリンダ4,7に接続されており、各ブレーキ回路I,II内で1つのセパレートバルブ16がそれぞれのシリンダ4,7と吸入バルブ14との間に配置されている。
【0020】
吐出バルブ15によって、ホイールブレーキ12は、各ブレーキ回路I,II内で液圧ポンプ17の吸込み側に接続されており、2つのブレーキ回路I,IIの2つの液圧ポンプ17は1つの共通の第2の電動機18によって駆動可能である。第2の電動機18を有する液圧ポンプ17は補助動力ブレーキ圧発生器を形成する。スリップ制御システム13の構成部分である液圧ポンプ17の吐出側は、セパレートバルブ16と吸入バルブ14との間に接続されている。液圧ポンプ17の吸込み側に、スリップ制御中にホイールブレーキ12からのブレーキ液を中間貯蔵するためのそれぞれ1つの液圧蓄圧器19が設けられている。さらに、液圧ポンプ19の吸込み側は、吸込みバルブ20によって2つのシリンダ4,7に接続されている。
【0021】
吸入バルブ14、吐出バルブ15、セパレートバルブ16、吸込みバルブ20および接続バルブ31は、2ポート2位置方向制御弁であって、吸入バルブ14、セパレートバルブ16および接続バルブ31は、その無電流の基本位置で開放していて、吐出バルブ15および吸込みバルブ20は、その無電流の基本位置で閉鎖されている。スリップ制御システム13によって、ホイールブレーキ12内のホイール個別のブレーキ圧制御が可能である。特に、略語ABS、ASRおよびFDRで一般的である、例えばロック防止制御、トラクションスリップ制御およびビークルダイナミックコントロール等のスリップ制御が可能である。このようなスリップ制御は公知であって、ここでは詳しく説明しない。
【0022】
第2の電動機18によって駆動可能な、補助動力ブレーキ圧発生器を形成する、スリップ制御システム13の液圧ポンプ17によって、冗長性が保証されている。つまり、液圧のブレーキ圧は、スリップ制御システム13の液圧ポンプ17の駆動によって2つのピストンシリンダユニット2,5で選択的に生ぜしめるために、発生可能であり、これによって、本発明による補助動力ブレーキ装置1の作動可能性は、第1の電動機8が故障した場合でも保証されていて、したがって、この補助動力ブレーキ装置1は自律走行のためにも適している。
【0023】
2つのピストンシリンダユニット2,5のシリンダ4,7は、ブレーキパイプ21によってブレーキ液タンク22に接続されており、このブレーキ液タンク22の、シリンダ4,7内に通じる開口は、筋力により操作可能なマスタブレーキシリンダで公知なように、ピストン3,6がブレーキ圧を生ぜしめるためにその基本位置からしゅう動せしめられて、しゅう動開始時にシリンダ4,7をブレーキ液タンク22から液圧的に分離するときに、ピストン3,6を通過する。
【0024】
2つのブレーキ回路の一方Iは、逆止弁23によってブレーキ液タンク22に接続されており、この逆止弁23は、一方ではブレーキ液タンク22とセパレートバルブ16との間、他方ではブレーキ液タンク22と吸込みバルブ20との間に配置されていて、ブレーキ液タンク22からブレーキ回路Iに向かう方向に貫流可能となっている。これによって、スリップ制御システム13の液圧ポンプ17は、吸込みバルブ20が開放されると、このブレーキ回路I内でブレーキ液をブレーキ液タンク22からシリンダ4,7の傍らを通過させて吸い込むこともできる。これにより、特に例えばピストンシリンダユニット2,5のピストン3,6が、ブレーキ液タンク22を液圧的にシリンダ4,7から分離する、前に押しやられた位置でシリンダ4,7内で固着されるかまたはその他の形式でロックされた場合でも、ブレーキ圧を発生させることができる。
【0025】
別のブレーキ回路IIは、バルブの介在なしに、ブレーキ液タンク22に直接接続されているので、このブレーキ回路II内でも液圧ポンプ17によりブレーキ圧上昇が可能である。
【0026】
逆止弁23と液圧的に平行に接続バルブ31が配置されており、この接続バルブ31によって、ブレーキ液を、2つのピストンシリンダユニット2,5によっておよび一方のブレーキ回路Iの液圧ポンプ17によって、ブレーキ液タンク22から吸い込むことも、またブレーキ液タンク22内に押しのけることもできる。
【0027】
逆止弁23によって、2つのピストンシリンダユニット2,5のピストン3,6もブレーキ液タンク22に接続されており、これによってピストン3,6は戻りストローク時に、ブレーキ液をブレーキ液タンク22からシリンダ4,7内へ吸い込むことができる。逆止弁23および/または接続バルブ31なしの補助動力ブレーキ装置1の構成も可能である(図示せず)。
【0028】
図1とは異なり、
図2に示した本発明による補助動力ブレーキ装置1は、各ブレーキ回路I,II内にそれぞれ1つの逆止弁23を有しており、これらの逆止弁23はピストンシリンダユニット2,5のシリンダ4,7をブレーキ液タンク22に接続し、これらの逆止弁23によって、スリップ制御システム13の液圧ポンプ17はブレーキ液をブレーキ液タンク22から吸い込むことができる。
図2では接続バルブは設けられていないが、本発明は、本発明のこの実施例において接続バルブを設けることを排除しない。2つの図面において補助動力ブレーキ装置1は同様に構成されているので、
図2の説明のために
図1の説明が参照される。
【0029】
本発明の実施例では、補助動力ブレーキ装置1はモジュール方式で構成されており、2つのピストンシリンダユニット2,5はここでは圧力発生モジュール24と呼ばれるモジュール内に収容されていて、スリップ制御システムは、ここでは圧力調整モジュール25と呼ばれる別のモジュール内に収容されている。例えば2つのピストンシリンダユニット2,5もそれぞれ1つの固有のモジュール内に収容されているか(図示せず)、またはピストンシリンダユニット2,5およびスリップ制御システム13が1つの共通のモジュールに収容されていてよい(図示せず)。
【0030】
冗長性の理由により、圧力発生モジュール24および圧力調整モジュール25は、それぞれ1つの固有の電気的な電力供給部26および固有の電子制御装置27を有しており、これによって、圧力発生モジュール24若しくは圧力調整モジュール25の故障時またはスリップ制御システム13の故障時に、補助動力ブレーキ装置1の作動可能性が保証されている。
【0031】
図1では、第2のシリンダ7内にピストンリセットばね28が配置されており、このピストンリセットばね28は、第2のピストン6をその基本位置へ付勢する。第1のピストン3がブレーキ圧を発生させるためだけではなく逆方向でも第1の電動機8によりねじ伝動装置9を介してしゅう動せしめられる程度に高い引張り強さで、第1のピストン3が一般的に回転/並進運動変換伝動装置とも解釈され得るねじ伝動装置9に結合されていれば、第1のシリンダ4内のピストンリセットばねは省くことができる。
【0032】
図2では2つのシリンダ4,7内にピストンリセットばね28が設けられており、ここでも、第1のピストン3がねじ伝動装置9に高い引張り強さで結合されていれば、第1のシリンダ4内のピストンリセットばね28は省くことができる。
【0033】
ピストンシリンダユニット2,5により生ぜしめようとするブレーキ圧のための目標値送信器として、補助動力ブレーキ装置1はストロークセンサ30または選択的にフォースセンサを備えたばね付勢されたフットブレーキペダル29を有している。冗長性のために、複数のストロークセンサ若しくはフォースセンサ、または1つのストロークセンサおよび1つのフォースセンサが設けられていてもよい(図示せず)。基本的に、筋力で操作可能な1系統マスタブレーキシリンダを設け、この1系統マスタブレーキシリンダによって、2つのブレーキ回路I,IIのうちの一方を選択的に、ピストンシリンダユニット2,5で圧力を発生させるために液圧のブレーキ圧で負荷可能であるか、または2系統マスタブレーキシリンダを設け、この2系統マスタブレーキシリンダによって2つのブレーキ回路I,IIを圧力負荷可能である(図示せず)。このようなマスタブレーキシリンダによって、補助動力ブレーキ装置1は、特に第1のピストンシリンダユニット2の故障時に、およびスリップ制御システム13の液圧ポンプ17の故障時に、筋力で操作することができる。図示の実施例では、補助動力ブレーキ装置1はマスタブレーキシリンダを有しておらず、筋力で操作可能ではない。しかしながら、第1のピストンシリンダユニット2または液圧ポンプ17による選択的なブレーキ圧発生を可能にするために、補助動力ブレーキ装置1は自律的な運転のためにも使用可能であり、この自律的な運転において、補助動力ブレーキ装置1は車両運転者による操作なしでも自律的に操作可能でなければならない。
【符号の説明】
【0034】
1 補助動力ブレーキ装置
2 第1のピストンシリンダユニット
3 第1のピストン
4 第1のシリンダ
5 第2のピストンシリンダユニット
6 第2のピストン
7 第2のシリンダ
8 第1の電動機
9 回転/並進運動変換伝動装置、ねじ伝動装置
10 背面
11 前面
12 ホイールブレーキ
13 スリップ制御システム
14 吸入バルブ
15 吐出バルブ
16 セパレートバルブ
17 液圧ポンプ
18 第2の電動機
19 液圧蓄圧器
20 吸込みバルブ
21 ブレーキパイプ
22 ブレーキ液タンク
23 逆止弁
24 圧力発生モジュール
25 圧力調整モジュール
26 電力供給部
27 電子制御装置
28 ピストンリセットばね
29 フットブレーキペダル
30 ストロークセンサ
31 接続バルブ
I,II ブレーキ回路
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気油圧式の補助動力ブレーキ装置(1)であって、第1のピストン(3)を備えた第1のピストンシリンダユニット(2)を有しており、前記第1のピストン(3)が、補助動力で液圧のブレーキ圧を発生させるために第1の電動機(8)により回転/並進運動変換伝動装置(9)を介して前記第1のピストンシリンダユニット(2)の第1のシリンダ(4)内でしゅう動可能である形式のものにおいて、
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、第2のピストン(6)および第2のシリンダ(7)を備えた第2のピストンシリンダユニット(5)を有しており、前記第2のシリンダ(7)は、前記第1のシリンダ(4)の液圧のブレーキ圧が前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で前記第2のピストン(6)の背面(10)を負荷することにより、前記第2のピストン(6)が該第2のピストン(6)の前記背面(10)とは反対側の前面(11)で前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で液圧のブレーキ圧を生ぜしめるように、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)と連通していることを特徴とする、電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項2】
前記補助動力ブレーキ装置(1)は、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の第1のシリンダ(4)に接続されているかまたは前記第2のピストン(6)の前記背面(10)で前記第2のシリンダ(7)に接続されている第1のブレーキ回路(I)と、前記第2のピストン(6)の前記前面(11)で前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)に接続されている第2のブレーキ回路(II)とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項3】
前記第1の電動機(8)および前記回転/並進運動変換伝動装置(9)が、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)に対して同軸的に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項4】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、ブレーキ液タンク(22)と逆止弁(23)とを有しており、前記逆止弁(23)は、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)または前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)および前記第1のブレーキ回路(I)または前記第2のブレーキ回路(II)を前記ブレーキ液タンク(22)に接続し、前記第1のシリンダ(4)または前記第2のシリンダ(7)に向かう方向で貫流可能、かつ前記第1のブレーキ回路(I)または前記第2のブレーキ回路(II)に向かう方向で貫流可能であることを特徴とする、請求項
2に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項5】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が接続バルブ(31)を有しており、該接続バルブ(31)によって、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のシリンダ(4)および/または前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)が前記ブレーキ液タンク(22)に接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項6】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が補助動力ブレーキ圧発生器を有しており、該補助動力ブレーキ圧発生器により、前記2つのピストンシリンダユニット(2,5)で選択的にブレーキ圧を発生させるために液圧のブレーキ圧が発生可能であることを特徴とする、請求項1
または2または4または5のいずれか1
項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項7】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が補助動力ブレーキ圧発生器を有しており、該補助動力ブレーキ圧発生器により、前記2つのピストンシリンダユニット(2,5)で選択的にブレーキ圧を発生させるために液圧のブレーキ圧が発生可能であることを特徴とする、請求項3に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項8】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)は、前記第1のピストン(3)が前記第1の電動機(8)により前記回転/並進運動変換伝動装置(9)を介して前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で逆向きの2つの方向でしゅう動可能であるように、前記回転/並進運動変換伝動装置(9)に引張りに対して強くかつ圧縮に対して強く接続されていることを特徴とする、請求項1
または2または4または5のいずれか1
項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項9】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)は、前記第1のピストン(3)が前記第1の電動機(8)により前記回転/並進運動変換伝動装置(9)を介して前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のシリンダ(7)内で逆向きの2つの方向でしゅう動可能であるように、前記回転/並進運動変換伝動装置(9)に引張りに対して強くかつ圧縮に対して強く接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項10】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)が、前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のピストン(6)よりも大きい直径を有していることを特徴とする、請求項1
または2または4または5のいずれか1
項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項11】
前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1のピストン(3)が、前記第2のピストンシリンダユニット(5)の前記第2のピストン(6)よりも大きい直径を有していることを特徴とする、請求項3に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項12】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記補助動力ブレーキ圧発生器を有するスリップ制御システム(13)を有していることを特徴とする、請求
項6に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項13】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記補助動力ブレーキ圧発生器を有するスリップ制御システム(13)を有していることを特徴とする、請求項7に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項14】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1の電動機(8)のためのおよび前記補助動力ブレーキ圧発生器または前記スリップ制御システム(13)のための冗長型の電力供給部(26)および/または冗長型の電子制御装置(27)を有していることを特徴とする、請求項
12に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項15】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が、前記第1のピストンシリンダユニット(2)の前記第1の電動機(8)のためのおよび前記補助動力ブレーキ圧発生器または前記スリップ制御システム(13)のための冗長型の電力供給部(26)および/または冗長型の電子制御装置(27)を有していることを特徴とする、請求項13に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項16】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が筋力操作装置を有していないことを特徴とする、請求項1
または2または4または5のいずれか1
項に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【請求項17】
前記補助動力ブレーキ装置(1)が筋力操作装置を有していないことを特徴とする、請求項3に記載の電気油圧式の補助動力ブレーキ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
補助動力により液圧のブレーキ圧を生ぜしめるために、第1の電動機8を有する第1のピストン3は、ねじ伝動装置9、特にボールねじ伝動装置を介して第1のシリンダ4内でしゅう動可能である。ねじ伝動装置9は、一般的に回転/並進運動変換伝達装置と解釈されてよい。第1の電動機8とねじ伝動装置9との間に、図示していない減速歯車装置、特に遊星歯車装置が配置されていてよい。本発明によれば、第1の電動機8と、ねじ伝動装置9と、(設けられていれば)減速歯車装置とが、第1のピストンシリンダユニット2に対して同軸的に、つまり第1のシリンダ4および第1のピストン3に対して同軸的に配置されており、この場合、本発明は、第1の電動機8、ねじ伝動装置9および場合によっては減速歯車装置の、第1のピストンシリンダユニット2、第1のシリンダ4および第1のピストン3に関連した別の配置も基本的に排除しない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
補助動力ブレーキ装置1は、各ホイールブレーキ12のためのそれぞれ1つの吸入バルブ14および吐出バルブ15を備えたスリップ制御システム13を有している。吸入バルブ14によって、ホイールブレーキ12は2つのピストンシリンダユニット2,5のシリンダ4,7に接続されており、各ブレーキ回路I,II内で1つのセパレートバルブ16がそれぞれのシリンダ4,7と吸入バルブ14との間に配置されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
吐出バルブ15によって、ホイールブレーキ12は、各ブレーキ回路I,II内で液圧ポンプ17の吸込み側に接続されており、2つのブレーキ回路I,IIの2つの液圧ポンプ17は1つの共通の第2の電動機18によって駆動可能である。第2の電動機18を有する液圧ポンプ17は補助動力ブレーキ圧発生器を形成する。スリップ制御システム13の構成部分である液圧ポンプ17の吐出側は、セパレートバルブ16と吸入バルブ14との間に接続されている。液圧ポンプ17の吸込み側に、スリップ制御中にホイールブレーキ12からのブレーキ液を中間貯蔵するためのそれぞれ1つの液圧蓄圧器19が設けられている。さらに、液圧ポンプ17の吸込み側は、吸込みバルブ20によって2つのシリンダ4,7に接続されている。
【国際調査報告】