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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240927BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/22
H01B7/295
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521273
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022078042
(87)【国際公開番号】W WO2023061908
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202561.3
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】カールソン ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】スルタン ベルント-アケ
(72)【発明者】
【氏名】リバリッツ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】カールソン リヌス
(72)【発明者】
【氏名】エフライムソン ラース
【テーマコード(参考)】
4J002
5G315
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002BB05Y
4J002BB07X
4J002BB214
4J002CP035
4J002DA037
4J002DE076
4J002FD136
4J002FD207
4J002GQ01
5G315CA03
5G315CB02
5G315CD02
5G315CD14
(57)【要約】
本発明は、難燃性ポリマー組成物であって、(A)2.0~15.0重量%の、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位を含むエチレンのコポリマーと、(B)0~4.0重量%の、無水マレイン酸に由来する単位を含有するポリエチレン及び/又はポリプロピレンと、(C)0.1~3.0重量%の、シリコーン流体及び/又はシリコーンゴムと、(D)40.0~55.0重量%の水酸化マグネシウムと、(E)2.0~15.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、860~910kg/mのISO1183に従って決定された密度を有するコポリマーと、(F)18.0~35.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、920~960kg/mのISO1183に従って決定された密度、及び0.05~2.50g/10分の、ISO1133に従って190℃の温度及び5.0kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有するコポリマーと、(G)0~8.0重量%のカーボンブラックとを含み、すべての重量パーセントはこの難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく難燃性ポリマー組成物、この難燃性ポリマー組成物を含むワイヤ又はケーブル等の物品、並びにワイヤ又はケーブル等の物品の製造のための前記難燃性ポリマー組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ポリマー組成物であって、
(A)2.0~15.0重量%の、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位を含むエチレンのコポリマーと、
(B)0~4.0重量%の、無水マレイン酸に由来する単位を含有するポリエチレン及び/又はポリプロピレンと、
(C)0.1~3.0重量%の、シリコーン流体及び/又はシリコーンゴムと、
(D)40.0~55.0重量%の水酸化マグネシウムと、
(E)2.0~15.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、860~910kg/mのISO1183に従って決定された密度を有するコポリマーと、
(F)18.0~35.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、920~965kg/mのISO1183に従って決定された密度、及び0.05~2.50g/10分の、ISO1133に従って190℃の温度及び5.0kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有するコポリマーと、
(G)0~8.0重量%のカーボンブラックと
を含み、すべての重量パーセントは前記難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく、難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
成分(A)は、920~960のkg/mの範囲、好ましくは935~950kg/mの範囲のISO1183に従って決定された密度、及び/又は0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.1~5.0g/10分の範囲、より好ましくは0.2~0.7g/10分の範囲の、ISO1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有する請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
成分(A)は、加水分解性シラン基を有する単位をさらに含み、前記加水分解性シラン基を有する単位は、好ましくは式(I)によって表され、
SiR 3-q (I)
式中、
は、エチレン性不飽和のヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又は(メタ)アクリルオキシヒドロカルビル基であり、
各Rは、独立に、脂肪族飽和ヒドロカルビル基であり、
Yは、同じであってもよいし異なっていてもよく、加水分解性有機基であり、
qは0、1又は2であり、加水分解性シラン基を有する単位の量は、成分(A)の総重量に基づいて、好ましくは0.2~4.0重量%の範囲、より好ましくは0.4~2.0重量%の範囲にある
請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
成分(B)は、910~950kg/mの範囲、好ましくは920~940kg/mの範囲の、ISO1183に従って決定された密度、及び/又は0.5~5.0g/10分の範囲、好ましくは1.5~2.5g/10分の範囲の、ISO1133に従ってポリエチレンについては190℃又はポリプロピレンについては230℃の温度及び2.16kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項5】
成分(C)は、ポリシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサン、及びアルコキシ官能基又はアルキル官能基を含有するシロキサン及びこれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン流体又はシリコーンゴムであり、好ましくは成分(C)は有機変性シロキサンである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項6】
成分(D)は、粉砕水酸化マグネシウム又は沈降水酸化マグネシウム、好ましくは粉砕水酸化マグネシウムであり、より好ましくは成分(D)は、ステアリン酸で表面処理された粉砕水酸化マグネシウムである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項7】
成分(E)は、エチレン及び1-オクテンのコポリマーである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項8】
成分(F)は、エチレン及び1-ヘキセンのコポリマーである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項9】
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.5~12.5重量%の成分(A)と、
0.5~3.5重量%、好ましくは1.0~3.0重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%の成分(B)と、
0.3~2.8重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、より好ましくは0.7~2.3重量%の成分(C)と、
42.5~53.5重量%、好ましくは45.0~52.5重量%、より好ましくは47.5~51.0重量%の成分(D)と、
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.0~12.5重量%の成分(E)と、
20.0~32.5重量%、好ましくは22.0~30.0重量%、より好ましくは24.0~28.0重量%の成分(F)と、
0~7.5重量%、好ましくは0~6.5重量%、より好ましくは0~6.0重量%のカーボンブラックマスターバッチであって、前記カーボンブラックマスターバッチの総重量に基づいて30~50重量%のカーボンブラック(G)をポリエチレン系マトリックス中に含むカーボンブラックマスターバッチと、
0.05~2.5重量%、好ましくは0.10~1.5重量%、より好ましくは0.15~1.0重量%の、スリップ剤、UV安定剤、酸化防止剤、添加剤担体、核形成剤、マイカ、スコーチ防止剤及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤
を含み、好ましくはそれらからなり、すべての重量パーセントは前記難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項10】
以下の特性:
12.5MPa~25.0MPa、好ましくは13.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さ、
12.5MPa~25.0MPa、好ましくは13.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、試験片を110℃で240時間コンディショニングした後にISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さ
コンディショニング前の引張強さのコンディショニング後の引張強さに対する比として、-5.0%~+5.0%、好ましくは-3.5%~+3.5%引張強さの変化、
350%~550%、好ましくは370%~525%、より好ましくは390%~500%、さらにより好ましくは400%~480%の、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸び、
300%~500%、好ましくは310%~475%、より好ましくは315%~450%、さらにより好ましくは320%~430%の、試験片を110℃で240時間コンディショニングした後にISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸び、
コンディショニング前の破断点伸びのコンディショニング後の破断点伸びに対する比として、0%~20.0%、好ましくは5.0%~15.0%の破断点伸びの変化、
8.5~25.0N/mm、より好ましくは10.0~22.5N/mm、さらにより好ましくは11.0~20.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って23℃の温度で決定された23℃での引裂強さ、並びに/又は
8.5~20.0N/mm、より好ましくは9.0~17.5N/mm、さらにより好ましくは10.0~15.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って50℃の温度で決定された50℃での引裂強さ
のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
以下の特性:
75~250kW/m、より好ましくは75~230kW/m、さらにより好ましくは75~210kW/mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定されたピーク発熱速度(pHRR)、及び/又は
0.3~7.5m、好ましくは0.5~6.5m、さらにより好ましくは0.7~5.5mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定された総発煙量(TSP)
のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む物品。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むワイヤ又はケーブル、好ましくは請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む高電圧ケーブルである請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記層はジャケット層である請求項13に記載の物品。
【請求項15】
ワイヤ又はケーブルの難燃性層における請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリマー組成物、及び物品、とりわけ前記難燃性ポリマー組成物を含む層、例えばジャケット層、を含むワイヤ又はケーブルの製造のための前記難燃性ポリマー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性化合物は、典型的には、引張特性及び引裂強さ等の機械的特性、又は難燃(FR)特性のいずれかに制限を抱える。機械的特性とFR特性の両方を満たすことができる難燃性製品に対する需要が高まっている。そのような高需要製品の一例は、IEC60840:2020「Power cables with extruded insulation and their accessories for rated voltages above 30 kV (Um= 36 kV) up to 150 kV (Um = 170 kV) - Test methods and requirements(30kV(Um=36kV)超150kV(Um=170kV)までの定格電圧用の押出絶縁体を有する電力ケーブル及びその付属品 - 試験方法及び要求事項)」(Um=最大許容電圧(maximum permitted voltage))に記載されているST12ジャケットである。この規格では、110℃で10日間熱エージングする前と後の両方で12.5MPaの引張強さ及び300%の破断点伸びの引張限界という、低電圧ジャケット層と比較してより高い機械的要求がある。今日の市販のFR製品は、劣った引張特性及び/又は限られた難燃性という短所を抱えていることが多い。難燃性材料で見られる別の問題は、設置及び使用中のケーブルリール上での、又はさらには火災中のケーブルシースの亀裂である。材料の亀裂特性は、異なる温度での引裂強さの測定によって理解することができる。
【0003】
国際公開第2021/111006A1号パンフレットは、良好な難燃特性及び低電圧ケーブル用途のための許容できる機械的特性を有するが、IEC60840:2020に記載されている上記のより高い機械的要求には十分ではない難燃性ポリマー組成物を開示する。
【0004】
従って、当該技術分野では、例えば、IEC60840:2020に記載されている中電圧及び高電圧のケーブル用のケーブルジャケットの要求事項を満たすために、十分な難燃特性と、引張強さ、破断点伸び及び引裂強さにおける改善された機械的特性とを示す難燃性ポリマー組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/111006A1号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、難燃性ポリマー組成物であって、
(A)2.0~15.0重量%の、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位を含むエチレンのコポリマーと、
(B)0~4.0重量%の、無水マレイン酸に由来する単位を含有するポリエチレン及び/又はポリプロピレンと、
(C)0.1~3.0重量%の、シリコーン流体及び/又はシリコーンゴムと、
(D)40.0~55.0重量%の水酸化マグネシウムと、
(E)2.0~15.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、860~910kg/mのISO1183に従って決定された密度を有するコポリマーと、
(F)18.0~35.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、920~960kg/mのISO1183に従って決定された密度、及び0.05~2.50g/10分の、ISO1133に従って190℃の温度及び5.0kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有するコポリマーと、
(G)0~8.0重量%のカーボンブラックと
を含み、すべての重量パーセントは、この難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく、難燃性ポリマー組成物に関する。
【0007】
さらに、本発明は、上記又は下記の難燃性ポリマー組成物を含む物品に関する。
【0008】
なおさらに、本発明は、物品の製造のための上記又は下記の難燃性ポリマー組成物の使用に関する。
【0009】
定義
本発明の意味でのポリエチレンは、モル過半数(すなわち、少なくとも50モル%)のエチレンモノマー単位を有するポリマーである。
エチレンのコポリマーは、モル過半数のエチレンモノマー単位及び異なる化学部分(例えば、α-オレフィン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸から選択される)の少なくとも1種の単位を有するポリマーである。異なる化学部分の単位は、当該技術分野で公知のように、共重合(すなわち、コモノマー単位)によって、又はポリマー主鎖上にグラフトすることによってポリマーに導入することができる。
【0010】
本発明の意味でのポリプロピレンは、モル過半数(すなわち、少なくとも50モル%)のプロピレンモノマー単位を有するポリマーである。
プロピレンのコポリマーは、モル過半数のプロピレンモノマー単位及び異なる化学部分(例えば、無水マレイン酸から選択される)の少なくとも1種の単位を有するポリマーである。異なる化学部分の単位は、当該技術分野で公知のように、共重合(すなわち、コモノマー単位)によって、又はポリマー主鎖上にグラフトすることによってポリマーに導入することができる。
【0011】
本出願を通して、粒子材料の画分の粒子サイズ(粒径)は、その粒子サイズ分布によって記載される。値dは、粒子のx重量%がdx未満の直径を有するという、そのような直径を表す。従って、d50値は、すべての粒子の50重量%が示された粒子サイズより小さい「メジアン(中央)粒子サイズ」である。
【0012】
本発明に従って成分D)として使用される水酸化マグネシウム材料は、酸化カルシウム、二酸化ケイ素及び酸化鉄のような不純物を含んでもよい。成分D)は、80~98重量%の水酸化マグネシウムを含むことが好ましく、好ましくは85重量%を超える水酸化マグネシウム、より好ましくは90重量%を超える水酸化マグネシウム、さらにより好ましくは92.5重量%を超える水酸化マグネシウムを含む。不純物の量及び性質は、出発鉱物の供給源に応じて変わってもよい。
【0013】
用語「含む(comprising)」が本明細書及び請求項において使用される場合、それは、機能的に重要な他の特定されていない要素又は機能的にさほど重要ではない他の特定されていない要素を除外しない。本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下において、群が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これも、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示すると理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
成分(A)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(A)として、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位を含むエチレンのコポリマーを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて2.0~15.0重量%、好ましくは3.0~14.0重量%、より好ましくは4.0~13.0重量%、さらにより好ましくは5.5~12.5重量%の量で含む。
【0015】
成分(A)は、好ましくは、エチレン単位及びアクリル酸メチル単位を含む、好ましくはそれらからなるコポリマーである。
【0016】
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位の含有量、好ましくはアクリル酸メチル単位の含有量は、成分(A)の総重量に基づいて、好ましくは10~35重量%の範囲、好ましくは20~30重量%の範囲にある。
【0017】
好ましくは、成分(A)は、920~960kg/mの範囲、好ましくは935~950kg/mの範囲のISO1183に従って決定された密度を有する。
【0018】
成分(A)は、0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.1~5.0g/10分の範囲、より好ましくは0.2~0.7g/10分の範囲の、ISO1133(2.16kg、190℃)に従って決定されたMFRを有することが好ましい。
【0019】
1つの好ましい実施形態では、成分(A)は、加水分解性シラン基を有する単位を含み、この加水分解性シラン基を有する単位は、好ましくは式(I)によって表される。
SiR 3-q (I)
式中、
は、エチレン性不飽和のヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又は(メタ)アクリルオキシヒドロカルビル基であり、
各R、独立に、脂肪族飽和ヒドロカルビル基であり、
Yは、同じであってもよいし異なっていてもよく、加水分解性有機基であり、
qは0、1又は2である。
架橋性シラン基を含むコモノマー単位の含有量は、成分(A)の全重量に基づいて、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.4~2.0重量%の範囲にある。
【0020】
本発明に従って成分(A)として使用されてもよい好適な成分は、例えば、DuPont(デュポン)(米国)からElvaloy(登録商標)AC1125の名称で市販されている。
【0021】
成分(B)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(B)として、無水マレイン酸に由来する単位を含有するポリエチレン及び/又はポリプロピレンを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0~4.0重量%、好ましくは0.5~3.5重量%、より好ましくは1.0~3.0重量%、さらにより好ましくは1.5~2.5重量%の量で含む。
【0022】
成分(B)は、好ましくは、ポリエチレンを無水マレイン酸と共重合及び/又はグラフトすることによって得られ、グラフト化直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、より好ましくは、無水マレイン酸の含有量は0.3~2.0重量%の範囲にある。
【0023】
好ましくは、成分(B)は、910~950kg/mの範囲、好ましくは920~940kg/mの範囲のISO1183に従って決定された密度を有する。
【0024】
成分(B)は、0.5~5.0g/10分の範囲、好ましくは1.5~2.5g/10分の範囲の、ISO1133(ポリエチレンについては2.16kg、190℃及びポリプロピレンについては2.16kg、230℃)に従って決定されたMFRを有することが好ましい。
【0025】
本発明に係る成分(B)として使用されてもよい無水マレイン酸に由来する単位を含有する好適なポリエチレン及び/又はポリプロピレンは、例えば、HDC Hyundai EP Co.Ltd.(HDC・ヒョンデ・EP)から商品名Polyglue(登録商標)GE300Cで市販されている。
【0026】
成分(C)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(C)として、シリコーン流体及び/又はシリコーンゴムを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1~3.0重量%、好ましくは0.3~2.8重量%、より好ましくは0.5~2.5重量%、さらにより好ましくは0.7~2.3重量%の量で含む。
【0027】
成分(C)は、好ましくは、ポリシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサン、及びアルコキシ官能基又はアルキル官能基を含有するシロキサン及びこれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン流体又はシリコーンゴムであり、より好ましくは、成分(C)は有機変性シロキサンである。
【0028】
成分(C)が、化学的に組み合わされたシロキシ単位を含むオルガノポリシロキサンポリマーであることがとりわけ好ましい。好ましくは、シロキシ単位は、RSiO0.5、RSiO、RSiO1.5、RSiO0.5、RRSiO、R SiO、RSiO1.5及びSiO単位並びにこれらの混合物からなる群から選択され、式中、各Rは、独立に、飽和又は不飽和の一価炭化水素置換基を表し、各Rは、R等の置換基又は水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリール基、ビニル基若しくはアリル基からなる群から選択される置換基を表す。
【0029】
成分(C)は、25℃で約600~300×10センチポアズの粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマーであることが好ましい。
適切であることが判明しているオルガノポリシロキサンの例は、25℃で約20×10センチポアズの粘度を有するポリジメチルシロキサンポリマーである。
【0030】
好ましくは、成分(C)は、シリコーンゴムを固くするために通常使用されるタイプのヒュームドシリカ充填剤を50重量%まで含有する。
【0031】
成分(C)として使用されてもよい好適なシリコーン流体及び/又はシリコーンゴムは、例えば、Evonik Nutrition & Care GmbH(エボニック・ニュートリション・アンド・ケア)(ドイツ)からTegomer(登録商標)6264として、DuPontからDOW CORNING(商標)AMB-12235 MASTERBATCHとして、又はBorealis AG(ボレアリス)(オーストリア共和国)からFR4897として市販されている。
【0032】
成分(D)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(D)として、水酸化マグネシウムを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて40.0~55.0重量%、好ましくは42.5~53.5重量%、より好ましくは45.0~52.5重量%、さらにより好ましくは47.5~51.0重量%の量で含む。
【0033】
成分(D)は、好ましくは、粉砕(ground)水酸化マグネシウム又は沈降(precipitated)水酸化マグネシウムであり、より好ましくは粉砕水酸化マグネシウムである。
【0034】
沈降水酸化マグネシウムは、一般に、粉砕水酸化マグネシウムよりも高価であるが、沈降水酸化マグネシウムの種類は、それらのより小さい粒子サイズ及びより均質な粒子サイズ分布に起因して、ポリマーマトリックスの機械的特性を著しくは損なわないので、依然として優勢である。本発明における難燃性ポリマー組成物中の成分の特定の組み合わせは、良好な機械的特性を得るために粉砕マグネシウムタイプを使用することも可能にする。
【0035】
本発明によれば、「粉砕水酸化マグネシウム」は、水酸化マグネシウムをベースとする鉱物、例えばブルーサイト(水滑石)等、を粉砕することによって得られる水酸化マグネシウムである。ブルーサイトは、その純粋な形態で、又はより多くの場合、カルサイト(方解石)、アラゴナイト(霰石)、タルク若しくはマグネサイト(菱苦土石)等の他の鉱物と組み合わせて、しばしば、ケイ酸塩堆積物間の層状形態で、例えば、蛇紋石系アスベスト、クロライト(緑泥石)又は片岩中に見出される。
【0036】
水酸化マグネシウムを含有する鉱物は、以下の技術に従って粉砕することができる。有利には、鉱山から得られる鉱物は、最初に破砕され(crushed)、次いで、好ましくは繰り返し粉砕され(ground)、各破砕/粉砕工程の後にふるい分け工程が続く。粉砕は、湿式又は乾式条件下で、例えばボールミル粉砕によって、場合により粉砕共補助剤(coadjuvant)、例えばポリグリコール等の存在下で行うことができる。
【0037】
成分(D)として使用されてもよい好適な粉砕水酸化マグネシウムは、例えば、Europiren B.V(ユーロピレン)(オランダ)から商品名Ecopiren(登録商標)3.5Cで市販されている。
【0038】
好ましい実施形態では、成分(D)は、好ましくは、8~24個の炭素原子を含有する少なくとも1種の飽和若しくは不飽和の脂肪酸、又はその金属塩、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸;ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸亜鉛又はオレイン酸マグネシウム又はオレイン酸亜鉛等で表面が処理された粒子の形態で使用される。
成分(D)は、表面処理をせずに使用されてもよい。
【0039】
好ましくは、成分(D)は、1.0~10.0μmの範囲、好ましくは2.0~5.0μmの範囲、さらにより好ましくは3.0~4.0μmの範囲のメジアン粒子サイズd50を有する粉砕水酸化マグネシウムである。
【0040】
成分(D)は、好ましくは、ステアリン酸で表面処理された粉砕水酸化マグネシウムである。
この際、ステアリン酸の含有量は、粉砕水酸化マグネシウムの重量に対して好ましくは1.0~3.0重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%である。
【0041】
成分(D)は、1~20m/gの範囲、好ましくは5~12m/gの範囲のBET表面積を有する粉砕又は沈降水酸化マグネシウムであることがさらに好ましい。
【0042】
成分(E)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(E)として、860~910kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて2.0~15.0重量%、好ましくは3.0~14.0重量%、より好ましくは4.0~13.0重量%、さらにより好ましくは5.0~12.5重量%の量で含む。
【0043】
成分(E)は、好ましくは、エチレン並びに1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンから選択される1種以上のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーである。
好ましくは、成分(E)は、エチレン及び1-ブテンのコポリマー、エチレン及び1-ヘキセンのコポリマー並びにエチレン及び1-オクテンのコポリマーから、より好ましくはエチレン及び1-ブテンのコポリマー並びにエチレン及び1-オクテンのコポリマーから選択される。
成分(E)がエチレン及び1-オクテンのコポリマーであることがとりわけ好ましい。
【0044】
成分(E)は、860~910kg/m、好ましくは870~905kg/m、より好ましくは880~903kg/mの、ISO1183に従って決定された密度を有する。
【0045】
好ましくは、成分(E)は、0.1~10.0g/10分の範囲、より好ましくは0.5~5.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは1.0~3.5g/10分の範囲のISO1133(2.16kg、190℃)に従って測定されたメルトフローレートMFRを有する。
【0046】
好ましくは、成分(E)は、シングルサイト触媒の存在下で重合される。好適には、成分(E)は、当該技術分野において公知の溶液重合プロセスで重合される。
【0047】
成分(E)として使用されてもよい、860~910kg/mの密度を有するエチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーは、例えば、Borealis AG(オーストリア共和国)から商品名Queo 8201又はQueo 8203で市販されている。
【0048】
成分(F)
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(F)として、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、920~965kg/mのISO1183に従って決定された密度、及び0.05~2.50g/10分の、ISO1133(5.0kg、190℃)に従って決定されたメルトフローレートMFRを有するコポリマーを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて18.0~35.0重量%、好ましくは20.0~32.5重量%、より好ましくは22.0~30.0重量%、さらにより好ましくは24.0~28.0重量%の量で含む。
【0049】
成分(F)は、好ましくは、エチレン並びに1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンから選択される1種以上のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーである。
好ましくは、成分(F)は、エチレン及び1-ブテンのコポリマー、エチレン及び1-ヘキセンのコポリマー並びにエチレン及び1-オクテンのコポリマーから、より好ましくはエチレン及び1-ブテンのコポリマー並びにエチレン及び1-ヘキセンのコポリマーから選択される。
成分(F)がエチレン及び1-ヘキセンのコポリマーであることがとりわけ好ましい。
【0050】
成分(F)は、920~965kg/m、好ましくは930~963kg/m、より好ましくは940~960kg/mの、ISO1183に従って決定された密度を有する。
【0051】
1つの実施形態では、成分(F)は、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーそのままの(natural)樹脂であり、すなわちカーボンブラックを含まない。
上記実施形態では、成分(F)は、好ましくは920~955kg/m、好ましくは930~953kg/m、より好ましくは940~950kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する。
別の実施形態では、成分(F)は、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーの黒色樹脂であり、すなわち、最大5.0重量%、好ましくは最大3.5重量%の量のカーボンブラックを含む。
上記実施形態では、成分(F)は、好ましくは930~965kg/m、好ましくは940~963kg/m、より好ましくは950~960kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する。
【0052】
さらに、成分(F)は、0.05~2.50g/10分、好ましくは0.10~1.50g/10分、より好ましくは0.15~1.00g/10分、さらにより好ましくは0.20~0.50g/10分のISO1133(5.0kg、190℃)に従って決定されたメルトフローレートMFRを有する。
【0053】
加えて、成分(F)は、好ましくは2.0~40.0g/10分、好ましくは3.0~30.0g/10分、より好ましくは4.0~20.0g/10分、さらにより好ましくは5.0~15.0g/10分のISO1133(21.6kg、190℃)に従って決定されたメルトフローレートMFR21を有する。
【0054】
成分(F)は、好ましくはマルチモーダル(多峰性)であり、より好ましくはバイモーダル(二峰性)の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーである。
用語「マルチモーダル(多峰性)」は、本明細書では、特段の記載がない限り、分子量分布に関するマルチモーダル性を意味し、それゆえバイモーダルポリマーを含む。通常、各画分について異なる(重量平均)分子量及び分子量分布をもたらす異なる重合条件下で製造された少なくとも2種のポリエチレン画分を含むポリエチレン組成物は「マルチモーダル」と呼ばれる。接頭辞「マルチ」、「多」は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数に関する。従って、例えば、マルチモーダルポリマーは、2つの画分からなるいわゆる「バイモーダル」ポリマーを含む。マルチモーダルポリマーの分子量分布曲線の形態、すなわち、その分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観は、2つ以上の極大値を示すか、又は典型的には、個々の画分に対する曲線と比較して明確に広がる。例えば、ポリマーが、直列に連結された反応器を利用し、各反応器において異なる条件を使用して、逐次(連続)多段階プロセスにおいて生成される場合、異なる反応器において生成されるポリマー画分は、それぞれ、それら自体の分子量分布及び重量平均分子量を有することになる。このようなポリマーの分子量分布曲線を記録すると、これらの画分からの個々の曲線は、典型的には合わさって、得られるポリマー生成物全体についての広がった分子量分布曲線を形成する。
【0055】
成分(F)の調製のために、当業者に周知の重合方法が使用されてもよい。マルチモーダル、例えば少なくともバイモーダルのポリマーが、その重合プロセス中に成分の各々をインサイチュ(in-situ)でブレンドすることによって(いわゆるインサイチュプロセス)、又は代替的に、2種以上の別々に製造された成分を当該技術分野で公知の方法で機械的にブレンドすることによって製造されることは、本発明の範囲内である。
【0056】
本発明において成分(F)として有用なエチレンコポリマーは、好ましくは、多段階重合プロセスにおいてインサイチュブレンドによって得られる。従って、ポリマーは、任意の順序で溶液プロセス、スラリープロセス及び気相プロセスを含む多段階、すなわち2段階以上の重合プロセスにおいてインサイチュブレンドによって得られる。プロセスの各段階において異なる重合触媒を使用することが可能であるが、用いられる触媒が両方の段階において同じである場合が好ましい。
【0057】
それゆえ理想的には、本発明のブレンドに使用されるポリエチレンポリマーは、シングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ(Ziegler Natta)触媒を使用して少なくとも2段階の重合で生成される。従って、例えば、2つのスラリー反応器若しくは2つの気相反応器、又はこれらのいずれかの組み合わせを任意の順序で用いることができる。しかしながら、好ましくは、エチレンコポリマーは、ループ反応器中でのスラリー重合と、それに続く気相反応器中での気相重合を用いて製造される。
ループ反応器-気相反応器システムは、Borealis技術として、すなわちBORSTAR(商標)反応器システムとして周知である。このような多段階プロセスは、例えば欧州特許出願公開第517868号明細書に開示されている。
このようなプロセスで使用される条件は周知である。スラリー反応器については、反応温度は通常60~110℃、例えば85~110℃の範囲にあり、反応器圧力は通常5~80bar(バール)、例えば50~65barの範囲にあり、滞留時間は通常0.3~5時間、例えば0.5~2時間の範囲にある。使用される希釈剤は、一般に、-70~+100℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素、例えばプロパンである。このような反応器において、重合は、必要に応じて超臨界条件下で行われてもよい。スラリー重合は、重合されるモノマーから反応媒体が形成されるバルクでも、実施されてもよい。
気相反応器については、使用される反応温度は通常60~115℃、例えば70~110℃の範囲にあり、反応器圧力は通常10~25barの範囲にあり、滞留時間は通常1~8時間である。使用されるガスは、モノマー、例えばエチレンと一緒に、通常、窒素等の非反応性ガス、又はプロパン等の低沸点炭化水素である。好ましくは、第1のポリマー画分は、連続運転ループ反応器中で生成され、その反応器で、エチレンが上記の重合触媒及び水素等の連鎖移動剤の存在下で重合される。希釈剤は、典型的には不活性脂肪族炭化水素、好ましくはイソブタン又はプロパンである。次いで、反応生成物は、好ましくは連続的に稼働する気相反応器に移送される。次いで、第2の成分は、好ましくは同じ触媒を使用して気相反応器中で形成することができる。
【0058】
成分(F)として使用されてもよい、920~965kg/mの密度及び0.05~2.50g/10分のメルトフローレートMFRを有するエチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーは、例えば、Borealis AG(オーストリア共和国)から商品名Borsafe HE3490-LS-H又はBorsafe HE3493-LS-Hで市販されている。
【0059】
成分(G)
当該難燃性ポリマー組成物は、任意選択で、成分(G)として、カーボンブラックを、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0~8.0重量%、好ましくは0~7.5重量%、より好ましくは0~6.5重量%、さらにより好ましくは0~6.0重量%の量で含む。
【0060】
カーボンブラックは、好ましくは、カーボンブラックマスターバッチとして当該難燃性ポリマー組成物に添加され、このカーボンブラックマスターバッチは、ポリエチレン系マトリックス中にカーボンブラックマスターバッチの総重量に基づいて30~50重量%のカーボンブラックを含む。カーボンブラックマスターバッチを使用する場合、当該難燃性ポリマー組成物中のカーボンブラックの量は、ポリエチレン系マトリックスの量を含む。
【0061】
上記カーボンブラックマスターバッチは、好ましくは1100~1200kg/m、好ましくは1115~1150kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する。
【0062】
1つの実施形態では、当該難燃性難燃性ポリマー組成物はカーボンブラックを含まない。この実施形態では、当該難燃性ポリマー組成物中の成分(G)の量は0重量%であり、成分(F)は、920~955kg/m、好ましくは930~953kg/m、より好ましくは940~950kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーのそのままの樹脂である。
【0063】
第2の実施形態では、当該難燃性難燃性ポリマー組成物は、成分(G)の形態のカーボンブラックを含む。この実施形態では、当該難燃性ポリマー組成物中の成分(G)の量は、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0.5~8.0重量%、1.0~7.5重量%、好ましくは1.5~6.5重量%、より好ましくは2.0~6.0重量%であり、成分(F)は、920~955kg/m、好ましくは930~953kg/m、より好ましくは940~950kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーのそのままの樹脂である。
【0064】
第3の実施形態では、当該難燃性難燃性ポリマー組成物は、成分(F)としてのエチレンコポリマーの黒色樹脂の形態でカーボンブラックを含む。この実施形態では、当該難燃性ポリマー組成物中の成分(G)の量は0重量%であり、成分(F)は、930~965kg/m、好ましくは940~963kg/m、より好ましくは950~960kg/mのISO1183に従って決定された密度を有する、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーの黒色樹脂である。
【0065】
成分(F)として使用されてもよい、本発明における成分(G)として好適なカーボンブラックマスターバッチは、例えば、Borealis AG(オーストリア共和国)から商品名Borlink LE7710で市販されている。
【0066】
添加剤
本発明に係る難燃性ポリマー組成物は添加剤も含んでもよい。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該ポリマー組成物は、好ましくはスリップ剤、UV安定剤、酸化防止剤、添加剤担体、核形成剤、マイカ(雲母)、スコーチ防止剤(scorch retarder)及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0068】
添加剤は、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~5.0重量%、好ましくは0.05~2.5重量%、より好ましくは0.10~1.5重量%、さらにより好ましくは0.15~1.0重量%の量で存在する。
【0069】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、立体障害の大きいフェノール基又は脂肪族硫黄基を含む酸化防止剤を含む。このような化合物は、加水分解性シラン基を含有するポリオレフィンの安定化に特に好適な酸化防止剤として欧州特許出願公開第1254923A1号明細書に開示されている。
他の好ましい酸化防止剤は、国際公開第2005/003199A1号パンフレットに開示されている。好ましくは、酸化防止剤は、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0.01~3重量%、より好ましくは0.05~2重量%、最も好ましくは0.08~1.5重量%の量で当該組成物中に存在する。
【0070】
本発明の難燃性ポリマー組成物が架橋されている場合、その組成物はスコーチ防止剤を含んでもよい。スコーチ防止剤は、欧州特許出願公開第0449939A1号明細書に記載されているシラン含有スコーチ防止剤であってもよい。適用できる場合、スコーチ防止剤は、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づいて0.3重量%~5.0重量%の量で当該難燃性ポリマー組成物中に存在してもよい。
【0071】
難燃性ポリマー組成物
当該難燃性ポリマー組成物は、成分(A)~(F)と、任意選択で成分(G)と、添加剤とを上記の量で含む。
【0072】
好ましくは、当該難燃性ポリマー組成物は、
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.5~12.5重量%の成分(A)と、
0.5~3.5重量%、好ましくは1.0~3.0重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%の成分(B)と、
0.3~2.8重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、より好ましくは0.7~2.3重量%の成分(C)と、
42.5~53.5重量%、好ましくは45.0~52.5重量%、より好ましくは47.5~51.0重量%の成分(D)と、
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.0~12.5重量%の成分(E)と、
20.0~32.5重量%、好ましくは22.0~30.0重量%、より好ましくは24.0~28.0重量%の成分(F)と、
0~7.5重量%、好ましくは0~6.5重量%、より好ましくは0~6.0重量%のカーボンブラックマスターバッチであって、このカーボンブラックマスターバッチの総重量に基づいて30~50重量%のカーボンブラックをポリエチレン系マトリックス中に含むカーボンブラックマスターバッチと、
0.05~2.5重量%、好ましくは0.10~1.5重量%、より好ましくは0.15~1.0重量%の、スリップ剤、UV安定剤、酸化防止剤、添加剤担体、核形成剤、マイカ及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤
を含み、より好ましくはこれらからなり、すべての重量パーセントは、当該難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0073】
本発明に係る好ましい実施形態によれば、当該難燃性ポリマー組成物はホウ酸カルシウム及びホウ酸亜鉛を含有しないが、当該難燃性ポリマー組成物は金属ホウ酸塩を含まないことがさらに好ましい。
【0074】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、当該難燃性ポリマー組成物が無機次亜リン酸塩を含まないことを規定している。
【0075】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは12.5MPa~25.0MPa、好ましくは13.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さを有する。
【0076】
試験片を110℃で240時間コンディショニングした後、当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは12.5MPa~25.0MPa、好ましくは3.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さを有する。
【0077】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、コンディショニング前の引張強さのコンディショニング後の引張強さに対する比として、-5.0%~+5.0%、好ましくは-3.5%~+3.5%の引張強さの変化を示す。
【0078】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは350%~550%、好ましくは370%~525%、より好ましくは390%~500%、さらにより好ましくは400%~480%の、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸びを有する。
【0079】
試験片を110℃で240時間コンディショニングした後、当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは300%~500%、好ましくは310%~475%、より好ましくは315%~450%、さらにより好ましくは320%~430%の、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸びを有する。
【0080】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、コンディショニング前の破断点伸びのコンディショニング後の破断点伸びに対する比として、0%~20.0%、好ましくは5.0%~15.0%の破断点伸びの変化を示す。
【0081】
さらに、当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは8.5~25.0N/mm、より好ましくは10.0~22.5N/mm、さらにより好ましくは11.0~20.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って23℃の温度で決定された23℃での引裂強さを有する。
【0082】
なおさらに、当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、8.5~20.0N/mm、より好ましくは9.0~17.5N/mm、さらにより好ましくは10.0~15.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って50℃の温度で決定された50℃での引裂強さを有する。
【0083】
当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、75~250kW/m、より好ましくは75~230kW/m、さらにより好ましくは75~210kW/mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定されたピーク発熱速度(peak heat release rate、pHRR)を有する。
【0084】
さらに、当該難燃性ポリマー組成物は、好ましくは、0.3~7.5m、好ましくは0.5~6.5m、さらにより好ましくは0.7~5.5mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定された総発煙量(total smoke production、TSP)を有する。
【0085】
従って、本発明に係る難燃性ポリマー組成物は、引張強さ、破断点伸び及び引裂強さに関して改善された機械的特性とともに良好な難燃特性を示し、好ましくは、IEC60840:2020「Power cables with extruded insulation and their accessories for rated voltages above 30 kV (Um= 36 kV) up to 150 kV (Um = 170 kV) - Test methods and requirements」(Um=最大許容電圧)に記載されているST12ジャケットの要件を満たす。
【0086】
物品
本発明はさらに、難燃性ポリマー組成物のすべての態様及び実施形態において上記又は下記に記載される当該難燃性ポリマー組成物を含む物品に関する。
【0087】
当該物品は、好ましくは、当該難燃性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むワイヤ又はケーブルである。
【0088】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のポリオレフィン組成物から得られる少なくとも1つの層は架橋されていてもよい。
【0089】
上記ワイヤ又はケーブルは、導電性コア上への異なる層の共押出によって製造されてもよい。次いで、成分(A)が架橋性シラン基を含むコモノマー単位を含む場合、架橋は、好ましくは湿気硬化によって任意選択で実施され、湿気硬化では、シラン基は水又は水蒸気の影響下で加水分解される。湿気硬化は、好ましくは、70~100℃の温度の高温多湿室若しくは水浴中で、又は周囲条件で行われる。
【0090】
本発明に係る難燃性ポリマー組成物は、ワイヤ又はケーブルの周りに押し出されて絶縁層若しくはジャケット層(被覆層)を形成することができ、又は寝具コンパウンド(配合物)として使用することができる。
次いで、この難燃性ポリマー組成物は架橋されてもよい。
【0091】
好ましい実施形態によれば、当該ワイヤ又はケーブルは、好ましくは架橋ポリエチレン若しくは熱可塑性ポリエチレン、熱可塑性ポリプロピレン若しくは難燃性ポリオレフィンからなる群から選択される材料を含むか又はそれからなる絶縁層を含む。好適な難燃性ポリオレフィンは、とりわけ国際公開第2013/159942A2号パンフレットに記載されている。好適な熱可塑性絶縁体は、例えば国際公開第2007/137711A1号パンフレット又は国際公開第2013/1599442A2号パンフレットに開示されており、例えばBorealis AG(オーストリア共和国)から商品名FR4802、FR4803、FR4807、FR6082、FR6083及びFR4804で市販されている。市販されている架橋性絶縁材料も、Borealis AG(オーストリア共和国)から商品名FR4450及びFR4451で入手可能である。
【0092】
低電圧電力ケーブルの絶縁層は、用途に応じて、0.4mm~3.0mmの範囲、好ましくは2.0mm未満の厚さを有してもよい。好ましくは、絶縁体は、導電体上に直接コーティングされる。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明に係る難燃性ポリマー組成物は、ワイヤ又はケーブルのジャケット層、好ましくは中電圧(MW)又は高電圧(HV)ケーブルのジャケット層に含まれる。
MW及びHVケーブルは、概して導体を有し、この導体は、内側半導電層と、それに続く絶縁層と、次いで外側半導電層と、保護外層としてのジャケット層とによって囲まれる。MWケーブル及びHVケーブルは、主に絶縁層の厚さが異なる。
MWケーブルは、通常、1kV~36kVの最大許容電圧Umに分類される。
HWケーブルは、通常、36kV~230kVの最大許容電圧Umに分類される。
【0094】
上記の難燃性ポリマー組成物のすべての好ましい態様及び実施形態は、本発明に係る物品にも当てはまるものとする。
【0095】
使用
なおさらに、本発明は、ワイヤ又はケーブルの難燃性層における等の物品の製造のための、上記又は下記の難燃性ポリマー組成物の使用に関する。
【0096】
上記の難燃性ポリマー組成物及び物品のすべての好ましい態様及び実施形態は、本発明に係る物品にも当てはまるものとする。
【実施例
【0097】
実験部
a)測定方法
以下の用語及び決定方法の定義は、別段の定義がない限り、本発明の上記概説及び以下の実施例に適用される。
【0098】
メルトフローレート(MFR)
MFRは、ISO1133に従って測定した(Daventest Ltd(ダーベンテスト)製のDavenport R-1293)。
MFR値は、ポリエチレンについては190℃の温度で2.16kg(MFR)、5.0kg(MFR)及び21.6kg(MFR21)の3つの異なる荷重で測定した。
ポリプロピレンについては、メルトフローレートは、230℃の温度で同じ荷重で測定する。
【0099】
密度
密度はISO1183-1-方法A(2019)に従って測定した。試料調製は、ISO1872-2:2007に従って圧縮成形によって行った。
【0100】
成分(A)中のコモノマー含有量
NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。
定量的H NMRスペクトルは、500.13MHzで動作するBruker Avance III 500 NMR分光計を使用して溶融状態で記録した。すべてのスペクトルを、150℃の13Cに最適化した7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。約200mgの物質を外径7mmのジルコニアMASローターに充填し、4kHzで回転させた。迅速な同定及び正確な定量に必要な高感度を主な理由としてこの設定を選んだ{klimke06、parkinson07、castignolles09}。2sの繰り返し時間(recycle delay)を使用する標準的なシングルパルス励起{pollard04、klimke06}を採用した。1スペクトルあたり全部で16の過渡信号を取得した。
スペクトル毎に合計16のトランジェントが得られた。
【0101】
定量的H NMRスペクトルを、特注のスペクトル解析自動化プログラムを使用して処理し、積分し、定量的特性を求めた。すべての化学シフトは、1.33ppmのバルクエチレンメチレンシグナルを内部標準とした。
【0102】
アクリル酸メチル(MA)組み込みの帰属{brandolini01}
【化1】
可能な様々なコモノマー配列におけるアクリル酸メチルの組み込みから生じる特徴的なシグナルを観察した。1MA部位に帰属された3.6ppmのシグナルの積分を使用して、コモノマー当たりの報告核の数を考慮して、全アクリル酸メチル組み込みを定量した。
MA=I1MA/3
【0103】
エチレン含有量は、0.00~3.00ppmのバルク脂肪族(Iバルク)シグナルの積分を使用して定量化した。総エチレン含有量は、バルク積分値に基づいて、かつ観察したコモノマーを補償して計算した。
E=(1/4)×[Iバルク-3×MA]
【0104】
ポリマー中のアクリル酸メチルの総モル分率を以下のように計算した。
fMA=MA/(E+MA)
【0105】
モルパーセントでのアクリル酸メチルの総コモノマー組み込みは、標準的な方法でモル分率から計算した。
MA[モル%]=100×fMA
【0106】
重量パーセントでのアクリル酸メチルの総コモノマー組み込みは、標準的な方法でモル分率から計算した。
MA[重量%]=100×(fMA×86.09)/((fMA×86.09)+((1-fMA)×28.05))
【0107】
klimke06 Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382.
parkinson07 Parkinson,M.、Klimke,K.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2007;208:2128.
pollard04 Pollard,M.、Klimke,K.、Graf,R.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Sperber,O.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Macromolecules 2004;37:813.
castignolle309 Castignolles,P.、Graf,R.、Parkinson,M.、Wilhelm,M.、Gaborieau,M.、Polymer 50(2009) 2373.
brandolini01 A.J.Brandolini、DD.Hills、「NMR spectra of polymers and polymer additives」、Marcel Deker Inc.、2000.
【0108】
メジアン粒子サイズ(d50
金属水酸化物のメジアン粒子サイズは、レーザー回折(ISO13320)、動的光散乱(ISO22412)又はふるい分析(ASTM D 1921-06)によって測定することができる。実施例で用いた金属水酸化物については、メジアン粒子サイズd50の決定はレーザー回折によって行った。請求項のいずれの限定も、レーザー回折(ISO13320)から得られる値を指すものとする。
【0109】
BET表面
BET表面は、ISO9277(2010)に従って決定する。
【0110】
引張強さ及び破断点伸びの決定に使用するテープの製造
引張強さ及び破断点伸びを決定するために、テープ(1.8mm)を、直径20mmの4.2:1の20D圧縮スクリューを備えたCollin TeachLine E20Tテープ押出機で製造した。温度プロファイルは150/160/170℃であり、スクリュー速度は55rpmであった。
【0111】
引張試験
引張試験は、Alwetron TCT10引張試験機を使用してISO527-1及びISO527-2に従って行った。10個の試験片を、ISO527-2/5A試験片を用いて小板から打ち抜き、試験前に少なくとも16時間、23℃の温度で相対湿度50±5%の気候室内に置いた。
コンディショニングのために、10個の試験片を、試験前に少なくとも240時間、110℃の温度の気候室に追加的に置いた。
試験片を、50±2mmの距離を有するクランプ、20mmの距離を有する延伸計クランプ、及び1kNのロードセルの間に鉛直方向に配置した。試験を行う前に、各試料の正確な幅及び厚さを測定し、記録した。各試料ロッドを50mm/分の一定速度で破断まで引張試験し、少なくとも6回の承認された並行試験を行った。高充填系では、概して、結果の大きい変動があり、それゆえ、中央値(メジアン)を使用して、破断点伸び(%)及び引張強さ(MPa)の単一の値とした。
【0112】
耐引裂性(エルメンドルフ(Elmendorf)引裂(N)として決定)
耐引裂性は、BS6469、セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って測定した。
この方法は、被覆材料において、厚さ1mmのケーブル試料又は圧縮成形した小板上で、引裂抵抗がどのように測定されるかについて記載している。切り込みを有する試験片を使用して、500mm/分及び50mmの引張試験クランプ間の距離で引張機によって引裂力を測定する。耐引裂性は、試料を引裂くのに必要な最大力をその厚さで割ることによって計算する。
【0113】
圧縮成形
小板を、ISO293に従って圧縮成形(Collin R 1358、版:2/060510)による限界酸素指数及び垂直燃焼試験のために調製した。ペレットを2枚のMylar(マイラー)フィルムシートの間に押し込み、正しい形状及び寸法(3×100×100mm)を有する特定のフレームに配置した。試料を、20barを170℃で1分間印加し、続いて200barの圧力を同じ温度で5分間印加することによってプレスした。残りの圧縮は、同じ高圧で9分間、15℃/分の冷却速度で行った。各小板に使用したペレットの量は、10重量%過剰に、材料の密度を用いて計算した。
【0114】
難燃性
難燃性は、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験においてピーク発熱速度(pHRR)及び総発煙量(TSP)として測定した。
コーンカロリメータは、凝縮相中の様々な材料の小試料の火災挙動を研究するために使用される装置である。コーンカロリメータは、火災安全工学の分野で広く使用されている。コーンカロリメータは、着火時間、質量減少、燃焼生成物、発熱速度、及びその燃焼特性に関連する他のパラメータに関するデータを収集する。装置は、通常、燃料試料がその表面にわたって異なる熱流束に曝されることを可能にする。発熱速度の測定の原理は、任意の有機材料の総燃焼熱が燃焼に必要な酸素の量に直接関係することに基づく。
3×100×100mmの試料を圧縮成形によって調製した。次いで、コーン試験を35kW/mの一定の熱流束、及び60mmの試料とコーンヒーターとの間の距離で行った。ピーク発熱は、コーン燃焼試験中の最大熱放出である。黒煙の生成は、コーンダクト内のレーザーによって測定する。
【0115】
b)使用した材料
成分(A)
「EMA」は、DuPont(米国)からElvaloy(登録商標)AC1125の名称で市販されている、0.4g/10分のMFR及び944kg/mの密度を有するエチレン及びアクリル酸メチル(重量比=75:25)のコポリマーである。
【0116】
成分(B)
「LLDPE-MAH」は、HDC Hyundai EP Co.,Ltd.から商品名Polyglue(登録商標)GE300Cで市販されている、無水マレイン酸でグラフトされた直鎖状低密度ポリエチレン(無水マレイン酸含有量=0.5~1.0重量%、MFR=2.0g/10分、密度=930kg/m)である。
【0117】
成分(C)
「OMS-1」は、Evonik Nutrition & Care GmbH(ドイツ)からTegomer(登録商標)6264として市販されている、LDPEマトリックス中に50重量%の有機変性シロキサンを含有するマスターバッチである。
【0118】
「OMS-2」は、Evonik Nutrition & Care GmbH(ドイツ)からTegomer(登録商標)V-Si- 4042として市販されている、純粋な液体有機変性シロキサン(OMS-1と同じ)である。
【0119】
成分(D)
「MDH-1」は、3.5μmのd50、7~10m/gの範囲の比表面積を有する、Europiren B.V(オランダ)によって製造され市販されているブルーサイト(粉砕水酸化マグネシウム)(Ecopiren(登録商標)3.5C)であり、2重量%のステアリン酸でコーティングされている。
化学組成は、Mg(OH)>92.8重量%、CaO<2.3重量%、SiO<1.3重量%及びFe<0.13重量%である。
【0120】
成分(E)
「VLDPE」は、Borealis AG(オーストリア共和国)からQueo 8201として市販されている、883kg/mの密度及び1.1g/10分のMFRを有するエチレン及び1-オクテンの超低密度コポリマーである。
【0121】
成分(F)
「HDPE-1」は、Borealis AG(オーストリア共和国)からHE3493-LS-Hとして市販されている、949kg/mの密度及び0.23g/10分のMFRを有するエチレン及び1-ヘキセンのそのままの高密度コポリマーである。
【0122】
「HDPE-2」は、Borealis AG(オーストリア共和国)からHE6068として市販されている、944kg/mの密度、1.7g/10分のMFR及び5.1g/10分のMFRを有するエチレン及び1-ブテンのそのままの高密度コポリマーである。HDPE-2は、請求項に記載されるよりも高いMFRを有するので、成分(F)に匹敵する成分と見なされる。
【0123】
成分(G)
「CBMB」は、Borealis AG(オーストリア共和国)からBorlink LE7710として市販されている、カーボンブラックマスターバッチとして使用した1135kg/mの密度を有する熱可塑性黒色ポリエチレン配合物である。
【0124】
さらなる成分
「AO」は、BASF SEからIrganox 1010として市販されている高分子量の高立体障害のフェノール系酸化防止剤である。
【0125】
「UV」は、BASF SEからTinuvin 783 FDLとして市販されている、Chimassorb 944とTinuvin 622との相乗的混合物であり、光安定剤として使用する。
【0126】
c)難燃性ポリマー組成物の調製
発明例(IE1~IE3)及び比較例(CE1~CE6)に係るポリマー組成物は、BUSSコニーダー(共混練機)(46mm)中で、スクリュー回転数225rpm及びゾーン1において180℃、ゾーン2において160℃の設定温度で成分を一緒に混合することによって製造した。ミキサースクリューを120℃に加熱した。押出機スクリュー温度は160℃であり、バレルは170℃に加熱し、回転数は4rpmであった。すべての成分をポート1に添加した。ポリマー組成物中の異なる成分の量並びに発明例及び比較例に係るポリマー組成物の特性を下記表1に列挙する。実施例の特性も表1に示す。
【0127】
国際公開第2021/111006A1号パンフレットの実施例IE2を反映する比較例CE6は、発明例IE1~IE3と比較して劣った機械的特性を示すことが分かる。
比較例CE5は、より少ない量の異なる成分(F)を使用する点で異なり、本発明の範囲に入らないが、発明例IE1~IE3と比較して劣った機械的特性及び劣ったpHRR難燃特性を示す。
比較例CE1~CE4は、成分(F)の量がより少ないという点で発明例と異なり、すべて、発明例IE1~IE3と比較して、とりわけ50℃においてより低い引裂強さを示し、コンディショニング後の機械的特性、とりわけ破断点伸びにおいてより高い変化を示す。
【0128】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ポリマー組成物であって、
(A)2.0~15.0重量%の、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル又はこれらの混合物からなる群から選択される単位を含むエチレンのコポリマーと、
(B)0~4.0重量%の、無水マレイン酸に由来する単位を含有するポリエチレン及び/又はポリプロピレンと、
(C)0.1~3.0重量%の、シリコーン流体及び/又はシリコーンゴムと、
(D)40.0~55.0重量%の水酸化マグネシウムと、
(E)2.0~15.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、860~910kg/mのISO1183に従って決定された密度を有するコポリマーと、
(F)18.0~35.0重量%の、エチレン及び炭素原子数4~10のαオレフィンコモノマー単位のコポリマーであって、920~965kg/mのISO1183に従って決定された密度、及び0.05~2.50g/10分の、ISO1133に従って190℃の温度及び5.0kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有するコポリマーと、
(G)0~8.0重量%のカーボンブラックと
を含み、すべての重量パーセントは前記難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく、難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
成分(A)は、920~960のkg/mの範囲、好ましくは935~950kg/mの範囲のISO1183に従って決定された密度、及び/又は0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.1~5.0g/10分の範囲、より好ましくは0.2~0.7g/10分の範囲の、ISO1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有する請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
成分(A)は、加水分解性シラン基を有する単位をさらに含み、前記加水分解性シラン基を有する単位は、好ましくは式(I)によって表され、
SiR 3-q (I)
式中、
は、エチレン性不飽和のヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又は(メタ)アクリルオキシヒドロカルビル基であり、
各Rは、独立に、脂肪族飽和ヒドロカルビル基であり、
Yは、同じであってもよいし異なっていてもよく、加水分解性有機基であり、
qは0、1又は2であり、加水分解性シラン基を有する単位の量は、成分(A)の総重量に基づいて、好ましくは0.2~4.0重量%の範囲、より好ましくは0.4~2.0重量%の範囲にある
請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
成分(B)は、910~950kg/mの範囲、好ましくは920~940kg/mの範囲の、ISO1183に従って決定された密度、及び/又は0.5~5.0g/10分の範囲、好ましくは1.5~2.5g/10分の範囲の、ISO1133に従ってポリエチレンについては190℃又はポリプロピレンについては230℃の温度及び2.16kgの荷重において決定されたメルトフローレートMFRを有する請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項5】
成分(C)は、ポリシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサン、及びアルコキシ官能基又はアルキル官能基を含有するシロキサン及びこれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン流体又はシリコーンゴムであり、好ましくは成分(C)は有機変性シロキサンである請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項6】
成分(D)は、粉砕水酸化マグネシウム又は沈降水酸化マグネシウム、好ましくは粉砕水酸化マグネシウムであり、より好ましくは成分(D)は、ステアリン酸で表面処理された粉砕水酸化マグネシウムである請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項7】
成分(E)は、エチレン及び1-オクテンのコポリマーである請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項8】
成分(F)は、エチレン及び1-ヘキセンのコポリマーである請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項9】
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.5~12.5重量%の成分(A)と、
0.5~3.5重量%、好ましくは1.0~3.0重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%の成分(B)と、
0.3~2.8重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、より好ましくは0.7~2.3重量%の成分(C)と、
42.5~53.5重量%、好ましくは45.0~52.5重量%、より好ましくは47.5~51.0重量%の成分(D)と、
3.0~14.0重量%、好ましくは4.0~13.0重量%、より好ましくは5.0~12.5重量%の成分(E)と、
20.0~32.5重量%、好ましくは22.0~30.0重量%、より好ましくは24.0~28.0重量%の成分(F)と、
0~7.5重量%、好ましくは0~6.5重量%、より好ましくは0~6.0重量%のカーボンブラックマスターバッチであって、前記カーボンブラックマスターバッチの総重量に基づいて30~50重量%のカーボンブラック(G)をポリエチレン系マトリックス中に含むカーボンブラックマスターバッチと、
0.05~2.5重量%、好ましくは0.10~1.5重量%、より好ましくは0.15~1.0重量%の、スリップ剤、UV安定剤、酸化防止剤、添加剤担体、核形成剤、マイカ、スコーチ防止剤及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤
を含み、好ましくはそれらからなり、すべての重量パーセントは前記難燃性ポリマー組成物の総重量に基づく請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項10】
以下の特性:
12.5MPa~25.0MPa、好ましくは13.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さ、
12.5MPa~25.0MPa、好ましくは13.0~22.5MPa、より好ましくは13.5~21.0MPa、さらにより好ましくは14.0~20.0MPaの、試験片を110℃で240時間コンディショニングした後にISO527-1及びISO527-2に従って決定された引張強さ
コンディショニング前の引張強さのコンディショニング後の引張強さに対する比として、-5.0%~+5.0%、好ましくは-3.5%~+3.5%引張強さの変化、
350%~550%、好ましくは370%~525%、より好ましくは390%~500%、さらにより好ましくは400%~480%の、ISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸び、
300%~500%、好ましくは310%~475%、より好ましくは315%~450%、さらにより好ましくは320%~430%の、試験片を110℃で240時間コンディショニングした後にISO527-1及びISO527-2に従って決定された破断点伸び、
コンディショニング前の破断点伸びのコンディショニング後の破断点伸びに対する比として、0%~20.0%、好ましくは5.0%~15.0%の破断点伸びの変化、
8.5~25.0N/mm、より好ましくは10.0~22.5N/mm、さらにより好ましくは11.0~20.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って23℃の温度で決定された23℃での引裂強さ、並びに/又は
8.5~20.0N/mm、より好ましくは9.0~17.5N/mm、さらにより好ましくは10.0~15.0N/mmの、BS 6469 セクション99.1:1992、HD 605 S2:2008 条項2.2.2.2 方法2に従って50℃の温度で決定された50℃での引裂強さ
のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
以下の特性:
75~250kW/m、より好ましくは75~230kW/m、さらにより好ましくは75~210kW/mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定されたピーク発熱速度(pHRR)、及び/又は
0.3~7.5m、好ましくは0.5~6.5m、さらにより好ましくは0.7~5.5mの、ISO5660-1に従ってコーンカロリメータ試験で決定された総発煙量(TSP)
のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む物品。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むワイヤ又はケーブル、好ましくは請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む高電圧ケーブルである請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記層はジャケット層である請求項13に記載の物品。
【請求項15】
ワイヤ又はケーブルの難燃性層における請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリマー組成物の使用。
【国際調査報告】