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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】DRIの誘導加熱
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/00 20060101AFI20240927BHJP
   C22B 1/248 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C21B13/00
C22B1/248
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521351
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022077590
(87)【国際公開番号】W WO2023060114
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201451.8
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132140
【氏名又は名称】アルセロールミタル・テキサス・エイチ・ビー・アイ・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ピューリンガー,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA23
4K001CA26
4K012DA10
(57)【要約】
本発明は、直接還元鉄(DRI)からのホットブリケットアイアン(HBI)の製造のためのプロセスであって、鉄鉱石が昇温下で天然ガスおよび/または水素および/または一酸化炭素からなる還元ガスによって反応炉内で直接還元され、直接還元鉄を、直接還元鉄からブリケットがプレスされる少なくとも1つのブリケット化装置に排出し、直接還元鉄が反応炉を出た後、ブリケット化の前に、目標ブリケット化温度まで加熱されることを特徴とするプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接還元鉄(DRI)からのホットブリケットアイアン(HBI)の製造のためのプロセスであって、鉄鉱石が昇温下で天然ガスおよび/または水素および/または一酸化炭素からなる還元ガスによって反応炉内で直接還元され、直接還元鉄を、直接還元鉄からブリケットがプレスされる少なくとも1つのブリケット化装置に排出し、
直接還元鉄は、反応炉を出た後、ブリケット化の前に、目標ブリケット化温度まで加熱されることを特徴とする、製造のためのプロセス。
【請求項2】
ブリケット化後の微粉はブリケットプレスの下流で回収され、ブリケットプレスに再導入される前に目標ブリケット化温度まで加熱されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
DRIおよび/または微粉は誘導加熱によって加熱されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
DRIおよび微粉は別々に加熱されるか、または混合されて、混合後に一緒に加熱されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
誘導加熱は、DRIまたは微粉あるいはその両方をブリケットプレスまで運ぶダクトまたはチャネルの周囲に位置づけられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
DRIは、700℃を上回る温度、好ましくは、従来の運転時により高い品位の鉱石を処理する場合には700~750Cの間の温度、および、より低い品位の原材料を使用するか、または水素を使用するハイブリッド運転モードで運転する場合には750~800Cの間の温度まで加熱されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
誘導プロセスのために持続可能なエネルギー源が使用され、好ましくは風力および/または太陽光エネルギーおよび/または固体酸化物燃料電池からのエネルギーが使用され、これらの燃料電池に使用される水素は、鉄鉱石の直接還元のために使用される水素と同じ供給源からのものであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
誘導加熱装置は、約2~18kWh/t HBIのDRIへのエネルギー入力のために設計されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
各供給チャネルのための誘導加熱装置は、DRI材料の少なくとも100℃以上の昇温を可能にするように設計され、好ましくは、より高い品位の材料を処理する場合はDRI材料の20℃の昇温、および、より低い品位の鉱石を処理するか、または水素を使用するハイブリッド運転モードで運転する場合は、50~100℃の昇温のために設計されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より均一な特性を有するホットブリケットアイアン(hot briquetted iron(HBI))を生成することおよび、直接生成鉄の温度のよりすぐれた制御を可能にするプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題に起因し、および特に従来の製鋼プロセスにおける二酸化炭素の放出に起因して、放出される二酸化炭素の回避がますます鉄鋼業界の関心事になっている。
【0003】
1つの焦点は、いわゆる直接還元鉄(direct reduced iron(DRI))の製造にある。この直接還元鉄は、天然ガスまたは石炭から生成される還元ガスまたは元素状炭素によって、鉄鉱石の直接還元から生成される。鉄の直接還元は、鉄の融点未満で作用する固体プロセスである。一例は、水素と一酸化炭素との混合物である還元ガス、いわゆる合成ガスの存在下での鉄鉱石の直接還元である。これは、800~1200℃の温度で起こる。
【0004】
これらの直接生成プロセスは、ガスベースのプロセスと石炭ベースのプロセスに分けることができ、両方の場合において、従来の製鋼におけるように、目的は様々な形態で含有されている酸素を酸化鉄として除去することである。
【0005】
二酸化炭素の放出を回避することに加えて、直接還元プロセスは、比較的エネルギー効率がよい。たとえば、DRIプロセスは、従来の溶鉱炉よりも必要燃料が大幅に少ない。直接還元プロセスを使用することにより、典型的な総合製鉄プラントを回避することが可能である。出荷、取り扱いおよび貯蔵のために、直接還元鉄は、ブリケット化された形態とすることができ、これは、通常、ホットブリケット化と呼ばれる高温プロセスにおいて行われ、ホットブリケットアイアン(HBI)が得られる。HBIの生成のために、鉄鉱石が、コークスを使用するよりもはるかに環境に優しい水素または天然ガスを使用して還元される。還元プロセスは還元塔において行われる。塔はプラントの中核である。直接還元プロセスは、かなり複雑であり、鉄鉱石をペレット化する工程、またはペレット化鉄鉱石を使用し、それらを反応炉に投入する工程を含む。天然ガスを還元ガスに変換し、次に、システム内に還元ガスを注入し、それを密閉系において循環させる。高温還元ガスは、逆流原理を使用して還元炉の底部から最上部まで鉄鉱石を通って導かれる。鉄鉱石は、還元され、スポンジ鉄が生成される。その後、スポンジ鉄は高温プロセスにおいてブリケットにプレスされ、その結果、ホットブリケットアイアン(HBI)となる。
【0006】
HBIの適切な密度および望まれる物理特性を実現するために、ブリケットプレスへの供給材料の温度が重要である。プレスに到着する材料の温度は、その上方の炉内の熱によって決まり、これは主として還元のために必要なガス流と温度とによって影響される。還元ゾーンの下に注入される天然ガスの量が、材料を冷却し、炭素を加える。ベッドの温度を上昇させるために、酸素を注入することができるが、その使用は材料のクラスタ化が起こる温度によって制限される。また、炉の底部に注入された天然ガス注入と結合した一酸化炭素を、炭素が加えられるときの温度低下を制限するために使用することができるが、圧力スイング吸着法(pressure swing absorption(PSA))、真空スイング吸着法(vacuum swing absorption(VSA))または当技術分野で知られているその他の方法などの方法による水素分離を含む、複雑なフローシートを必要とする。
【0007】
たとえば、還元炉内の反応炉ゾーン温度は約850℃であり、天然ガス注入および冷却後のHDRI温度は、約650-680℃である。天然ガス注入および冷却後、複数の供給チャネルが材料をブリケット製造機に分配する。
【0008】
従来技術は、様々な問題、たとえば、各ブリケット製造機が異なる温度で材料を受け取る結果となる可能性がある温度不均等に対処する。ペレットの品質は、ブリケット化、したがって最終的なHBI品質に影響を与える。また供給材料の最高温度は、炉運転と連関している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、より均一な特性を有するホットブリケット鉄を生成することと、直接生成鉄の温度のよりすぐれた制御を可能にするプロセスを提供することである。さらなる目的は、ホットブリケット化プロセスに供給する前に均一な材料特性を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は請求項1に記載されているプロセスを用いて達成される。
【0011】
従属請求項では有利な特徴がクレームされている。
【0012】
本発明人らは、排出システム内の流れの問題に起因してブリケット化への影響を有する温度不均衡が生じることを見出した。材料の一部が、きわめて低い温度を有する場合があり、それによってブリケット化密度に問題を生じさせ、その結果として多くの微粉および小片が生じる。
【0013】
また、ブリケット製造機への高温微粉の再循環が、ふるい分け操作によりDRIを大幅に冷却する。
【0014】
また、本発明人らは、部分的な水素使用による将来の運転において、還元ゾーン自体で形成される炭素が、熱力学的条件に起因して大幅に減少するであろうという問題を認識した。下部炉ゾーンにおける天然ガス注入により加えることができる炭素の最大量がブリケット化に必要な温度によって制限されるため、これは、ベッドを冷却する吸熱還元反応と組み合わさって生成物に加えることができる炭素の量を限定される。発泡スラグを確実にするために下流のEAF運転にとって生成物中の少量の炭素は重要であり、したがって、特に水素を含有する還元ガスを使用する場合には、生成物中に残留炭素含有量を有することが望ましい。
【0015】
さらに、本発明人らは、反応炉内の材料の温度と反応炉からブリケットプレスまで行く材料の温度とを独立して制御する方法がないことを考慮した。ブリケットプレスに到着する材料の温度を上昇させる必要がある場合、従来技術によると、反応炉全体の温度を上昇させなければならない。しかし、これは炉内のクラスタ化のリスクを高め、エネルギー効率を低下させる。
【0016】
したがって、本発明者らは、DRIがブリケットプレスに達する前にDRIの温度を上昇させ、それにより反応炉内の温度の調整を必要としないことが有利であることを見出した。さらに、本発明者らは、供給チャネル間の温度を平衡させる手段と、ブリケットプレスに入る前に再循環される微粉を昇温させる手段の必要を特定した。
【0017】
上記を達成するためと、従来技術における欠点を回避することを目的として、ブリケットプレスに入る前に温度を制御するために供給チャネルにおいてこれらの材料の誘導加熱が行われるように供給チャネルおよび/または高温微粉が修正される。
【0018】
この温度制御により、DRI温度が反応炉内の温度から切り離され、それによって反応炉を直接還元のための最適条件において稼働させることを可能にする。ホットブリケット化の温度を、このプロセスのための最適温度により独立して選択することができる。
【0019】
DRIの温度が誘導プロセスにおいて監視および調整され、それによって、特定の供給チャネルにかかわりなく、DRI温度の目標温度までの制御された上昇を可能にする。したがって、ブリケットプレスには同じ温度のDRIが供給され、その結果としてブリケットの均一な特性となる。
【0020】
DRIの温度を25℃上昇させることによって、HDI小片および微粉の発生を数パーセント低減することができることがわかった。これは、歩留まり増大につながり、顧客により高い価値をもたらす。
【0021】
注目すべき副次的作用として、より高いブリケット化温度での運転が、将来より重要となる可能性があるより多量のより低品位の鉱石の使用を可能にすることがわかった。より低品位の鉱石の使用はコストをさらに節減する。
【0022】
さらに、DRIを再加熱することができるので、天然ガスおよび/または、バイオガスなどの他の炭素含有ガスにより遷移ゾーンにおいて追加炭素を加えることができ、これにより反応炉における炭素の損失と水素使用に起因する冷却の両方を補償する。
【0023】
誘導プロセスには持続可能なエネルギー源、たとえば風力および/または太陽光エネルギーおよび/または固体酸化物燃料電池からのエネルギーを使用することが好ましい。持続可能なエネルギーが十分でない期間には、これらの燃料電池のためと鉄鉱石の直接還元のために貯蔵水素が使用されてもよい。
【0024】
一実施形態では、各供給チャネルの周囲に誘導加熱装置が設置される。
【0025】
有利な実施形態では、各供給チャネルのためのシステムまたは誘導加熱装置が、DRI材料の100℃までの昇温を可能にするように設計されることが推奨される。典型的には、DRI材料の20℃の昇温が使用される。
【0026】
さらなる有利な実施形態では、各供給チャネルの各システムのための誘導加熱装置は、2~18kWh/t HBIの間、好ましくはより高い品位の鉱石による従来の運転時には2~8kWh/t HBIの間、および、より低い品位の鉱石による運転時、または水素を使用するハイブリッド運転モード中には、8~18kWh/t HBIの間の特定のエネルギー入力のために設計される。
【0027】
具体的には、本発明は、直接還元鉄(DRI)からのホットブリケットアイアン(HBI)の製造のためのプロセスに関し、このプロセスでは、鉄鉱石は天然ガスおよび/または水素および/または一酸化炭素からなる還元ガスによって反応炉内において昇温下で直接還元され、直接還元鉄は少なくとも1つのブリケット化装置に排出され、そこで直接還元鉄からブリケットはプレスされ、直接還元鉄は反応炉を出た後、ブリケット化の前に、目標ブリケット化温度まで加熱される。
【0028】
一実施形態では、ブリケット化後の微粉はブリケットプレスの下流で回収され、ブリケットプレスに再導入される前に目標ブリケット化温度まで加熱される。
【0029】
一実施形態では、DRIおよび/または微粉は誘導加熱によって加熱される。
【0030】
一実施形態では、DRIと微粉は別々に加熱されるか、または混合され、混合後に一緒に加熱される。
【0031】
一実施形態では、誘導加熱は、DRIまたは微粉あるいはその両方をブリケットプレスまで運ぶダクトまたはチャネルの周囲に配置される。
【0032】
一実施形態では、DRIおよび/または微粉は、ブリケット化の前に700℃より上、好ましくは700℃~800℃の間の温度まで加熱される。
【0033】
一実施形態では、誘導プロセスのために持続可能エネルギー源が使用され、好ましくは風力エネルギーまたは固体酸化物燃料電池からのエネギーが使用され、これらの燃料電池に使用される水素は、鉄鉱石の直接還元に使用される水素と同じ供給源からのものである。
【0034】
一実施形態では、誘導加熱装置が、2~18kWh/t HBIの間、好ましくは、より高い品位の材料を処理する場合は2~8kWh/t HBIの間、および、より低い品位の鉱石を処理するか、または水素によるハイブリッド運転モードで運転する場合は、8~18kWh/t HBIの間のエネルギーが材料へ投入されるように設計される。
【0035】
したがって、年間2百万トンの生産能力と7本の供給脚を有する還元炉の場合、1供給脚当たり75~700kWの材料への公称投入電力が必要となる。
【0036】
一実施形態では、各供給チャネルのための誘導加熱装置は、DRI材料の少なくとも100℃以上の昇温を可能にするように設計され、好ましくは、従来のプロセスにおいて高い品位の鉱石を処理する場合はDRI材料の20~50℃、およびより低い品位の材料を処理するかまたは水素によるハイブリッド運転モードで運転する場合には50~100℃の間の、昇温を可能にするように設計される。
【0037】
以下、実施例および添付図面を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】ブリケットの密度との相関で供給チャネル温度を華氏度で示す図である。
図2】温度との相関でブリケットの相対強度を示す図である。
図3】より高い炭素含有量を有する材料の低下温度を示す図である。
図4】修正が加えられた供給チャネルを示す概略図である。
図5】供給チャネル温度との相関でHBIの小片および微粉の割合を示す図である。
図6a】700℃における還元前のペレット中のFe含有量との相関でブリケット密度を示す図である。
図6b】800℃における還元前のペレット中のFe含有量との相関でブリケット密度を示す図である。
図7】100%天然ガスによる従来技術の比較を示す図であり、低減された炭素含有量による水素天然ガス運転、および本発明による水素/天然ガス運転における望まれる炭素含有量による水素天然ガス運転と比較されている。
図8】ブリケット化プロセスの結果生じた微粉がDRIに送り戻される、ブリケット化プラントのための可能な設置位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1において、華氏度の供給チャネル温度と、5t/mを上回る密度を有するブリケットの割合が示されている。このチャートから、供給チャネル温度が高いほどブリケットの密度が高く、密度の上昇は線形ではなく、30°Fの昇温によって大幅に低下させられ得ることを導き出されることができる。また、図2においてブリケットの相対強度が供給チャネル温度との相関で示されており、より高い温度がより高い相対強度を生じさせることを示している。
【0040】
天然ガスが導入されて水素が部分的に使用されるプロセスでは、熱力学的条件に起因して、還元ゾーン自体において形成される炭素の量が大幅に減少することになる。下部炉ゾーンに注入される天然ガスによって加えられ得る炭素の最大量がブリケット化に必要な温度によって制限されることになるため、これはベッドを冷却する吸熱還元反応と組み合わさって、生成物に加えられ得る炭素の量を制限することになる。
【0041】
図3において、炭素含有量が高いほど供給チャネル内の材料温度が低く、これはブリケットの十分な密度および十分な相対強度のためには、図1および図2に示す値より低くなることが明確にわかる。
【0042】
本発明は、一方では、還元ガスにおけるより高い水素含有量および天然ガスの注入による炭素の導入により運転されるDRI反応炉を最適なモードで運転し、他方では、ブリケットが十分な強度および密度で形成され得るようにブリケット化を運転することに起因する、異なる温度の問題を解決することを目的とする。
【0043】
図4によると、これは、ブリケット製造機への供給チャネル内のDRIまたはスポンジ鉄の誘導加熱によって達成され、スポンジ鉄またはDRIは、通常は華氏1300°を上回る、理想温度まで調整されることができる。
【0044】
図5でわかるように、ブリケットの生成における小片および微粉の量は、わずか25℃の昇温によって大幅に低減可能である。これは、温度を上昇させることによってブリケットの密度と強度を高めることができるという事実に起因する。
【0045】
現在の供給チャネル温度でのペレット品位限界を、本発明によるものよりも高い供給チャネル温度と比較して示す。さらなる利点として、約66.5%の還元の前の鉱石ペレットにおけるFe含有量を有する鉄鉱石は1m当たり5トンの必要ブリケット密度を生じさせることがわかった。これは、通常、700℃(1292°F)のブリケット温度で達成される(図6a)。ブリケット化温度を800℃(1472F)(図6b)に100℃だけ上昇させることによって、顕著により低いFe含有量を有する鉄鉱石で同じ密度を達成することができ、それによって将来において重要となり得るより多量のより低い品位の鉱石使用を可能にし、コスト優位性をもたらすことがわかった。
【0046】
図7に、反応炉を運転するための3つの異なる運転システムが示されている。左側には、反応炉中への還元のための合成ガスを生成すべく改質のために100%天然ガスが使用される現状が示されている。図でわかるように、生成物は約1.5重量%の炭素含有量を有し、DRIの運転温度は約670~700℃である。中央には、DRI温度を約670℃の最低値に維持した状態での最大炭素含有量による水素/天然ガス混合運転が示されている。この場合、生成物は1wt%未満の炭素含有量を有する。
【0047】
右側には、水素/天然ガス混合運転が示されている。運転条件は中央に示されているが、炭素含有量は生成物に必要な、約1.5wt%に保たれる必要がある。中央の図に示されている運転条件は、十分に高い炭素含有量を達成しない。約1.2~1.5wt%の炭素含有量の達成は、ブリケット化には低温過ぎる600℃のDRIの温度で可能である。
【0048】
本発明によれば、十分な炭素含有量を有する生成物が得られるように、右側に示す運転ルートを選択することができる。反応炉からのより低い出力温度は、本発明により、ブリケット化の前のDRIの誘導加熱によって補償される。好ましい実施形態では、DRIの誘導加熱は、反応炉からブリケット製造機までの供給チャネルにおいて行われる。誘導加熱システムを、DRI材料の少なくとも100℃以上の昇温を可能にするように設計することが有利である。DRI材料の100℃までの温度の上昇を可能にすれば十分である可能性がある。典型的な運転時は、20℃の材料温度の上昇で十分であると予想される。
【0049】
DRIの十分な加熱を目的として、誘導加熱ゾーンに達する前にDRIの温度を監視することができ、必要であれば所定温度まで昇温させることができる。これは、すべての供給チャネルのすべての材料が、所定温度でブリケット製造機に到着することを可能にする。
【0050】
図8に、微粉がブリケット製造機に送り戻されるブリケット化プラントについて示す誘導加熱の異なる設置可能性を示す。DRI(温度T1)と微粉(温度T2)との温度の差に起因して、結果のDRI/微粉混合物温度(温度T3)は、再循環される微粉の相対量と、流入するDRIおよび微粉の両方の温度とに依存する。最初の例では、ブリケットプレスに供給されるDRIと微粉との混合物の温度を制御するためにDRIの温度のみが調整される(2)。2番目の例では、DRIと微粉の温度の独立した制御を可能にするために、追加の加熱源(5)が微粉再循環ラインに設置される。
【0051】
誘導加熱は高効率度を有するため、誘導加熱は好ましい加熱方法である。さらに、DRIまたはスポンジ鉄材料の高質量流をきわめて効率的に処理することができる。この誘導加熱に要する電力は持続可能なエネルギー源から導出することができ、その結果、全体的プロセスは、すでに従来の製鋼よりも環境に優しい。
【0052】
たとえば、誘導加熱用の電気エネルギーの生成のために、還元用の同じ水素源を使用することができ、または風力エネルギーによる電気エネルギーなどを使用することができる。また、供給チャネルパイプは、パイプ上に誘導コイルを配置することによって誘導加熱プロセスに容易に適合させることができ、これはたとえば可燃エネルギー源による加熱よりもはるかに容易に実現され、かつ安全である。
【0053】
必要な昇温のための材料への期待エネルギー入力は、2~18kWh/t HBIの間、より高い品位の材料を処理する場合は2~8kWh/t HBIの間の期待範囲、および、より低い品位の鉱石を処理するか、または混合水素/天然ガス運転モードでの運転の場合には、8~18kWh/t HBIの範囲とすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接還元鉄からのホットブリケットアイアンの製造のためのプロセスであって、プロセスは、
然ガス、水素および一酸化炭素のうちの少なくとも1つからなる還元ガスによって、鉄鉱石を反応炉内で直接還元して、直接還元鉄を生成することと
直接還元鉄を、直接還元鉄からブリケットがプレスされる少なくとも1つのブリケットプレスに排出することとを含み
直接還元鉄は、反応炉を出た後、ブリケット化の前に、目標ブリケット化温度まで加熱される、プロセス。
【請求項2】
ブリケット化後の微粉を、ブリケットプレスの下流で回収、ブリケットプレスに再導入される前に目標ブリケット化温度まで加熱ることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
粉は誘導加熱によって加熱される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
直接還元鉄は誘導加熱によって加熱される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
直接還元鉄および微粉は別々に加熱される、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
直接還元鉄および微粉は、一緒に混合されて、混合後に一緒に加熱される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
誘導加熱は、直接還元鉄をブリケットプレスまで運ぶダクトまたはチャネルの周囲に位置づけられる、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
誘導加熱は、微粉をブリケットプレスまで運ぶダクトまたはチャネルの周囲に位置づけられる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項9】
直接還元鉄は、700℃を上回る温度まで加熱される、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
直接還元鉄は、従来の運転時に特定の品位の鉱石を処理する場合には700~750Cの間の温度、および、特定の品位の鉱石よりも低い、より低い品位の原材料を使用するか、または水素を使用するハイブリッド運転モードで運転する場合には750~800Cの間の温度まで加熱される、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
誘導加熱は、持続可能なエネルギーによって駆動される、請求項に記載のプロセス。
【請求項12】
持続可能なエネルギーは、風力または太陽光エネルギーからのものである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
誘導加熱は、固体酸化物燃料電池からのエネルギーによって駆動され、燃料電池に使用される水素は、鉄鉱石の直接還元のために使用される水素と同じ供給源からのものである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項14】
誘導加熱は、持続可能なエネルギーによって駆動される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項15】
持続可能なエネルギーは、風力または太陽光エネルギーからのものである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
誘導加熱は、固体酸化物燃料電池からのエネルギーによって駆動され、燃料電池に使用される水素は、鉄鉱石の直接還元のために使用される水素と同じ供給源からのものである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項17】
誘導加熱装置は、2~18kWh/t HBIの直接還元鉄へのエネルギー入力のために設計されている、請求項に記載のプロセス。
【請求項18】
給チャネルのための誘導ヒータは、直接還元鉄の少なくとも100℃以上の昇温を可能にするように設計される、請求項に記載のプロセス。
【請求項19】
誘導ヒータは、特定の品位の材料を処理する場合は直接還元鉄の20℃の昇温、および、特定の品位の鉱石よりも低い、より低い品位の鉱石を処理するか、または水素を使用するハイブリッド運転モードで運転する場合は、50~100℃の昇温のために設計される、請求項4に記載のプロセス。
【国際調査報告】